JP2024010900A - ガスセンサ - Google Patents

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雅俊 神崎
Masatoshi Kanzaki
寛 大井川
Hiroshi Oigawa
敏嗣 植田
Toshitsugu Ueda
潔 都甲
Kiyoshi Toko
塁 矢田部
Rui Yatabe
武 小野寺
Takeshi Onodera
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Abstract

【課題】湿度の影響を補正でき、対象ガス濃度を精度よく測定できるガスセンサを提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、湿度を含む混合ガス中の対象ガス濃度を測定するVOCセンサ(1)であって、圧電振動子(2)と、一つ又は複数の前記圧電振動子に設けられた複数の感応膜(3、4)と、を有し、前記感応膜の前記混合ガスに対する感度は、前記対象ガス濃度に対する感度と前記湿度に対する感度との和に等しく、前記複数の感応膜は、夫々、同じ混合ガスに対して、前記対象ガス濃度に対する感度及び前記湿度に対する感度が異なる、ことを特徴とする。【選択図】図2

Description

この発明は、圧電振動子と感応膜とを備えたガスセンサに関する。
例えば、特許文献1、2のように、圧電振動子と、感応膜を有し、対象ガスの吸着による感応膜の質量変化に基づき、対象ガスの濃度を測定するガスセンサが知られている。
特開2011-85428号公報 特開2020-46252号公報
しかしながら、ガスセンサは、湿度にも応答するため、対象ガスの濃度を正確に測定できない問題があった。
例えば、特許文献2に記載の発明には、サンプルガスとしての水と酢酸の混合ガスに対して、酢酸及び水の濃度を夫々算出するガスセンサが開示されているが、湿度の影響を補正する技術思想は有していない。
例えば、特許文献2では実験例において、サンプルガスの水及び酢酸の算出濃度と、サンプルガスの実際の水及び酢酸の濃度とを比較しているが、その差は小さくなく、対象ガス濃度を高精度に測定できるとまで言えない。
例えば、ガスセンサの一例として、大気汚染の主原因となる浮遊粒子状物質の原因物資の一つである揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)を検知するVOCセンサがある。VOCセンサでは、キシレンやエチルベンゼンなどのVOCガスを、小型且つ安価にて、高精度に測定できる技術が求められた。
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、湿度の影響を補正でき、対象ガス濃度を精度よく測定できるガスセンサを提供することを目的とする。
本発明は、湿度を含む混合ガス中の対象ガス濃度を測定するガスセンサであって、圧電振動子と、一つ又は複数の前記圧電振動子に設けられた複数の感応膜と、を有し、前記感応膜の前記混合ガスに対する感度は、前記対象ガス濃度に対する感度と前記湿度に対する感度との和に等しく、前記複数の感応膜は、夫々、同じ混合ガスに対して、前記対象ガス濃度に対する感度及び前記湿度に対する感度が異なる、ことを特徴とする。
本発明では、前記複数の感応膜の膜厚は、夫々、異なることが好ましい。或いは、本発明では、前記複数の感応膜を構成する感応材料は、夫々、異なることが好ましい。
本発明では、前記感応膜は、有機感応膜であることが好ましい。例えば、前記有機感応膜は、フタロシアニン系の感応膜であることが好ましい。
本発明では、前記圧電振動子は、水晶振動子であることが好ましい。本発明では、前記混合ガスには、VOCガスが含まれることが好ましい。
本発明のガスセンサによれば、湿度の影響を補正でき、対象ガス濃度を高精度に測定できる。特に、本発明では、小型且つ安価にて、高精度にVOCガス測定できるVOCセンサを提供できる。
図1は、本実施形態におけるVOCセンサを示す模式図である。 図2は、図1に示すVOCセンサの断面図である。 図3は、図1と別の実施形態におけるVOCセンサを示す模式図である。 図4は、対象ガスの検出原理を説明するための概念図である。 図5は、トルエン50ppmと相対湿度40%を含む混合ガスを感応膜に暴露した際の感応膜の膜厚と、混合ガス、トルエン、及び湿度に対するセンサ出力との関係を示すグラフである。 図6は、エチルベンゼン50ppmと相対湿度40%を含む混合ガスを感応膜に暴露した際の感応膜の膜厚と、混合ガス、エチルベンゼン、及び湿度に対するセンサ出力との関係を示すグラフである。 図7は、キシレン50ppmと相対湿度40%を含む混合ガスを感応膜に暴露した際の感応膜の膜厚と、混合ガス、キシレン、及び湿度に対するセンサ出力との関係を示すグラフである。 図8は、酢酸エチル50ppmと相対湿度40%を含む混合ガスを感応膜に暴露した際の感応膜の膜厚と、混合ガス、酢酸エチル、及び湿度に対するセンサ出力との関係を示すグラフである。 図9は、感応膜の膜厚が異なる検出素子A及び検出素子Bの夫々における、トルエン濃度とセンサ出力との関係を示すグラフである。 図10は、感応膜の膜厚が異なる検出素子A及び検出素子Bの夫々における、キシレン濃度とセンサ出力との関係を示すグラフである。 図11は、感応膜の膜厚が異なる検出素子A及び検出素子Bの夫々における、エチルベンゼン濃度とセンサ出力との関係を示すグラフである。 図12は、感応膜の膜厚が異なる検出素子A及び検出素子Bの夫々における、湿度とセンサ出力との関係を示すグラフである。 図13は、各種ガスを、ガスセンサ(CuPC)及びガスセンサ(ttb-CuPC)に暴露した際のセンサ出力を測定したグラフである。
以下、本発明の一実施形態(以下、「実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<本実施形態に至る経緯>
従来より、圧電振動子と、感応膜を有し、感応膜の質量変化を共振周波数の変化として取り出すガスセンサが知られている。ガスセンサのうち、揮発性有機化合物(VOC)を測定するVOCセンサは、労働環境中のVOCガス濃度やVOCガスの排出量の規制強化によりニーズが高まっている。
ところで、VOCセンサなどガスセンサは、湿度にも応答してしまう。そこで、湿度を除去或いは極力低くしたり、湿度を別途測定する方法が考えられる。例えば、シリカゲルなどの乾燥剤を使用して湿度を取り除く方法が考えられる。しかしながら、乾燥剤を使用すると、VOCガスなどの対象ガスも乾燥剤に吸着されてしまい、対象ガス濃度を正確に測定できない問題が生じる。また、湿度計を別途設ける方法として、例えば、市販の有機膜の膨潤を利用した湿度センサを用いると、小型化できるメリットがある。しかしながら、VOCガス環境下では、VOCガスにより有機膜がダメージを受けるために、使用が困難であり、或いは長寿命を実現できない。一方、乾湿球湿度計や露点計の使用は、大型になり、設備費の面でも現実的ではない。
ところで、特許文献2には、混合ガス濃度の測定が可能なガスセンサに関する発明が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載された発明は、湿度の影響を補正して、高精度に対象ガス濃度を測定することを目的としていない。特許文献2に記載された発明では、例えば、水と酢酸の各濃度を測定可能としているが、算出された酢酸濃度と、標準酢酸濃度(真値)との間に比較的大きな差があり、具体的には10ppm以上の差、或いは実際の濃度に対して10%前後の誤差が生じている。
特許文献2に記載の発明は、VOCガスを測定の対象としていない。人体に有害なVOCガスを測定するVOCセンサでは、より高精度な測定が求められる。
そこで、本発明者らは、鋭意研究を行った結果、湿度の影響を補正して、高精度に対象ガス濃度を測定できるガスセンサを開発するに至った。すなわち、本実施形態のガスセンサは、(構成1)湿度を含む混合ガス中の対象ガス濃度を測定するガスセンサであって、圧電振動子と、一つ又は複数の圧電振動子に設けられた複数の感応膜と、を有すること、(構成2)感応膜の混合ガスに対する感度は、対象ガス濃度に対する感度と湿度に対する感度との和に等しいこと、(構成3)複数の感応膜は、夫々、同じ混合ガスに対して、対象ガス濃度に対する感度及び湿度に対する感度が異なること、を特徴とする。
以下、本実施形態のガスセンサの各構成を詳しく説明するが、本実施形態のガスセンサは、VOCセンサとして好ましく使用されるものであり、ガスセンサをVOCセンサとして説明する。なお、VOCガスは、有機溶剤が気化したガスの総称であり、塗料や接着剤、洗浄剤などが主な発生要因とされている。VOCガスは、人体に有害であり、労働環境中の濃度や排出量の規制が強化されている。VOCガスとして、ベンゼン、エチルベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、キシレン、酢酸エチル、トルエン及びホルムアルデヒドなどを挙げることができる。本実施形態では、VOCガスのうち、ベンゼンなどの危険性の高い六員環構造を有したVOCガスにも応答できる。
<本実施形態のVOCセンサ1の概要>
図1は、本実施形態におけるVOCセンサ1を示す模式図である。図2は、図1に示すVOCセンサ1の断面図である。
図1、図2に示すように、VOCセンサ1は、圧電振動子2と、電極5と、感応膜(3、4)とを有して構成される。各感応膜(3、4)は、圧電振動子2の一方の主面2aに電極5を介して形成される。「主面」とは、圧電振動子2の表裏面を意味し、或いは面積の広い面を指す。電極5は、圧電振動子2の他方の主面2bにも形成される。主面2a、2bに設けられた電極5は、圧電振動子2を介して互いに対向している。電極材料としては、Au/Cr、Au/Ni、Au/Tiなどの積層膜、或いはAl単層膜など、従前の構成を用いることができる。
図1では、一つの圧電振動子2の主面2aに複数の感応膜(3、4)が配置されているが、図3の別の実施形態に示すように、複数の圧電振動子2の各主面2a、2aに、夫々、電極5、感応膜(3、4)を配置して1つの検出素子としてもよい。
また、図1、図2、図3において、各感応膜(3、4)は、圧電振動子2の一方の主面2aのみならず他方の主面2bの双方に設けることができる。これにより、感応膜の感度を向上させることができる。
圧電振動子2の主面2a、2bの双方に形成された一対の電極5を介する感応膜3、及び一対の電極5を介する感応膜4とによって、夫々、検出素子(A、B)を構成する。本実施形態の(構成1)に示す「複数の感応膜」とは、圧電振動子2の一方の主面2aに設けられた検出素子(A、B)の感応膜(3、4)を指す。
以上により、本実施形態のVOCセンサ1は、圧電振動子2と電極5、感応膜3とを備えた検出素子Aと、圧電振動子2と電極5、感応膜4とを備えた検出素子Bとを有し、各感応膜(3、4)は、上記した構成(2)及び構成(3)の特性を備えている。
[ガス測定の原理]
図4を用いてガス測定の原理を説明する。図4では、圧電振動子2の主面2a、2bに電極5を介して感応膜Sを設けた。感応膜Sを多数の吸着サイトDで模式化した。
図示しない駆動回路(発振回路)が、圧電振動子2に電気的に接続されており、圧電振動子2の固有振動数に応じた共振周波数にて発振させる。このとき、図4(a)に示すように、対象ガス濃度がゼロであれば、振動数に変化はない(初期状態)。
図4(b)に示すように、ガスセンサが対象ガスG1に暴露されると、対象ガスG1が感応膜Sに吸着される(換言すれば、対象ガス分子が吸着サイトDに捕捉される)。このとき、対象外のガス(対象外ガスG2)が発生しても、対象外ガスG2は、感応膜Sに吸着されない。
対象ガスG1が感応膜Sに吸着されると、圧電振動子2の振動数は低下する。このとき、対象ガス濃度が高濃度になるほど固有振動数は低下する(図4(b)(c)参照)。
一方、対象ガス濃度がゼロに戻ると、図4(d)に示すように、固有振動数は初期状態に戻る。
以上により、圧電振動子2の固有振動数に基づく共振周波数の変化を捉えることで、対象ガス濃度を測定できる。
次に、圧電振動子2及び、感応膜(3、4)の材質について説明する。
[圧電振動子2]
本実施形態に使用される圧電振動子2は、水晶振動子やセラミック振動子(例えば、LiNbO)など、本実施形態の効果を発揮し得るものであれば特に限定するものではないが、水晶振動子であることが好ましい。したがって、本実施形態のVOCセンサ1は、水晶振動子マイクロバランス(Quartz Crystal Microbalance:QCM)方式であることが好適である。
[感応膜(3、4)]
感応膜(3、4)は、対象ガスのみを吸着可能な有機感応膜であることが好ましい。有機感応膜としては、フタロシアニンやポリフィリンなどのマクロ環を有する有機膜を例示できるが、このうち、フタロシアニン(Phthalocyanine)系の感応膜であることが好ましい。使用可能な金属フタロシアニンとしては、銅フタロシアニン(CuPC)やCuの代わりにZnを配したZnPCなどを選択できるが、特に、CuPCの周囲に三級ブチル基を修飾したttb-CuPCは、感度により優れるため好ましい。ttb-CuPCの化学式を以下に示す。
Figure 2024010900000002
VOCセンサ1の製法の一例としては、水晶板から切り出した水晶振動子(圧電振動子2)の主面2a(或いは両方の主面2a、2b)に電極5を介して、ttb―CuPCを真空蒸着して堆積させ、複数の感応膜(3、4)を形成する。
感応膜の感度について、実験例を交えながら以下で説明する。
<感応膜の感度について>
本実施形態のVOCセンサ1は、湿度を含む混合ガス中の対象ガス濃度を測定するものである。本実施形態でいう「混合ガス」とは、測定対象としての例えばVOCガスと湿度とを含むガスを指す。
実験では、混合ガスとして、湿度を含んだ4種類のVOCガスを用い、ttb-CuPCからなる感応膜の膜厚を変化させたときの膜厚と感度との関係について測定した。感応膜単体を水晶振動子の電極表面に形成した。なお、実験では、QCMの共振周波数(初期状態)を約30MHzに設定した。
図5は、濃度50ppmのトルエンガスと相対湿度40%を含む混合ガスを感応膜に暴露した際の感応膜の膜厚と、混合ガス、トルエン、及び湿度に対するセンサ出力との関係を示すグラフである。センサ出力は、周波数変化率[ppm]で求めることができ、「感度」を示している。図5以降の各実験においても同様である。なお、周波数変化率はマイナス値となるが、絶対値で表記した。
図5に示すように、感応膜の膜厚にかかわらず、混合ガスに対するセンサ出力は、トルエンに対するセンサ出力と、湿度に対するセンサ出力の和に等しかった。すなわち、混合ガスに対する感度は、トルエンに対する感度と、湿度に対する感度の和に等しい。
ここで、「感度の和に等しい」とは、混合ガスに対する感度と、VOCガス濃度に対する感度及び湿度に対する感度の和とが、厳密な意味で等しいことに限らず、本実施形態の効果を発揮し得れば許容範囲(誤差範囲)として認められる。具体的には、誤差率(%)は、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましく、0.5%以下であることが更により好ましい。「誤差率」とは、VOCガス濃度に対する感度及び湿度に対する感度の和と、混合ガスに対する感度との両者の一致度からのずれで定義され、「誤差率」は、[(感度の和―混合ガスに対する感度)/混合ガスに対する感度]×100(%)で計算される。
また、図5に示すように、感応膜の膜厚が異なると、トルエン50ppmと相対湿度40%を含む同じ混合ガスに対して、VOCガス濃度に対するセンサ出力及び湿度に対するセンサ出力が異なることがわかった。
図6は、濃度50ppmのエチルベンゼンと相対湿度40%を含む混合ガスを感応膜に暴露した際の感応膜の膜厚と、混合ガス、エチルベンゼン、及び湿度に対するセンサ出力との関係を示すグラフである。図7は、濃度50ppmのキシレンと相対湿度40%を含む混合ガスを感応膜に供給した際の感応膜の膜厚と、混合ガス、キシレン、及び湿度に対するセンサ出力との関係を示すグラフである。図8は、濃度50ppmの酢酸エチルと相対湿度40%を含む混合ガスを感応膜に供給した際の感応膜の膜厚と、混合ガス、酢酸エチル、及び湿度に対するセンサ出力との関係を示すグラフである。
図6~図8においても、図5と同様に、混合ガスに対するセンサ出力は、VOCガスに対するセンサ出力と、湿度に対するセンサ出力の和に等しく、更に、感応膜の膜厚が異なると、同じ混合ガスに対して、VOCガス濃度に対するセンサ出力及び湿度に対するセンサ出力が異なることがわかった。
<感応膜の感度の直線性について>
上記では、混合ガス中に含まれるVOCガス濃度及び湿度を一定にして感度の膜厚依存性を測定したが、次に、感応膜の膜厚が異なる各VOCセンサにおいて、VOCガス濃度及び湿度を変化させたときの各感度の直線性について測定した。
実験では、以下の2つの検出素子を有するVOCセンサを作製した。
[検出素子A]
圧電振動子:水晶振動子(共振周波数:約30MHz)
感応膜:ttb-CuPC
感応膜の膜厚:800nm
[検出素子B]
圧電振動子:水晶振動子(共振周波数:約30MHz)
感応膜:ttb-CuPC
感応膜の膜厚:300nm
実験では、検出素子A及び検出素子Bを、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及び湿度の各ガスに曝して、ガス濃度とセンサ出力との関係を測定した。
図9~図12に示すように、2種類の検出素子(A、B)では、トルエン濃度、キシレン濃度、エチルベンゼン濃度及び相対湿度に対して異なる感度を示すとともに、濃度変化に対して直線性を有することがわかった。
<本実施形態における感応膜(3、4)の構成、及び、VOCガス濃度の算出>
本実施形態における感応膜(3、4)の膜厚は、夫々、異なっているか、或いは、各感応膜(3、4)を構成する感応材料が、夫々、異なっている。又は、感応膜(3、4)の膜厚及び感応材料の双方が、夫々、異なっていてもよい。
図2に示す実施形態では、感応膜(3、4)の膜厚が異なる。これにより、上記実験例で示したように、各感応膜(3、4)は、夫々、同じ混合ガスに対して、VOCガス濃度に対する感度及び湿度に対する感度が異なる(構成3)。また、各感応膜(3、4)の混合ガスに対する感度は、VOCガス濃度に対する感度と湿度に対する感度との和に等しい(構成2)。
そして、上記実験例で示したように、各感応膜(3、4)は、VOCガスの濃度変化及び湿度変化に対する感度が、直線性を有して変化する。
各感応膜(3、4)の混合ガスに対する感度を、圧電振動子2と感応膜3からなる検出素子A、及び、圧電振動子2と感応膜4からなる検出素子Bの各センサ出力として表すと、以下の濃度計算式(1)を導き出すことができる。
Figure 2024010900000003
ここで、Fは、検出素子Aのセンサ出力であり、Fは、検出素子Bのセンサ出力であり、いずれも周波数変化率[ppm]で示すことができる。
また、SVAは、検出素子AのVOCガス濃度に対する感度定数[ppm/ppm]であり、SHAは、検出素子Aの湿度に対する感度定数[ppm/%]であり、SVBは、検出素子BのVOCガス濃度に対する感度定数[ppm/ppm]であり、SHBは、検出素子Bの湿度に対する感度定数[ppm/%]である。
これら感度定数は、VOCガスの濃度変化及び湿度変化に対するセンサ出力が、直線的に変化することで精度よく取得できる。
上記の4つの感度定数は全て既知の値として取得できる。ただし、これら感度定数は、以下の式(2)の条件を備えている。
Figure 2024010900000004
濃度計算式(1)に示すVは、VOCガス濃度(ppm)であり、Hは相対湿度(%)を示す。このため、濃度計算式(1)の「SVA×V」、「SVB×V」は、VOCガス濃度に対するセンサ出力を示し、「SHA×H」、「SHB×H」は、湿度に対するセンサ出力を示す。このことから濃度計算式(1)は、各感応膜(3、4)の混合ガスに対する感度が、VOCガス濃度に対する感度と湿度に対する感度との和に等しいこと、及び、各感応膜(3、4)は、夫々、同じ混合ガスに対して、VOCガス濃度に対する感度及び湿度に対する感度が異なること、の双方を満たす式となっている。
以上により、濃度計算式(1)の連立方程式を解くことで、VOCガス濃度V(ppm)と、相対湿度H(%)の変数を夫々、求めることができる。
本実施形態では、各感応膜(3、4)の混合ガスに対する感度が、VOCガス濃度に対する感度と湿度に対する感度との和に等しい。これは、VOCガスと湿度ガスとが互いに干渉せずに感応膜(3、4)に吸着される特長を有すると考えられる。すなわち、図4に示すように、感応膜Sを構成する多数の吸着サイトDのうち、VOCガスを捕捉する吸着サイトDと、水分子を捕捉する吸着サイトDとが適切に棲み分けされていると推測され、これにより、混合ガスに対する感度と、VOCガス濃度に対する感度及び湿度に対する感度の和とを等しくできる。
以上により、本実施形態によれば、対象ガス濃度の測定にあたり、湿度の影響を補正して、対象ガス濃度を高精度に測定できる。また、本実施形態では、一つ或いは複数の圧電振動子2と複数の感応膜(3、4)を組み合わせ、このとき感応膜(3、4)が、構成(2)(3)を有することで、精度よく対象ガス濃度を測定できるとともに、小型で安価なガスセンサを提供できる。
本実施形態では、複数の感応膜(3、4)の膜厚が異なり、或いは、感応膜(3、4)を構成する感応材料が、夫々異なっている。これにより、同じ混合ガスに対して、各感応膜(3、4)の対象ガス濃度に対する感度及び湿度に対する感度を異ならせることができる。
本実施形態のガスセンサは、限定されるものではないが、VOCセンサ1であることが好ましく、感応膜(3、4)をフタロシアニン系の感応膜とすることで、特に、VOCガスに対する感度を高めることができ、より高精度にVOCガス濃度を測定できる。
本実施形態のVOCセンサ1の一例として、圧電振動子2は、水晶振動子であり、各感応膜(3、4)は、いずれもttb―CuPCで形成された互いに膜厚が異なる構成であり、或いは、感応膜3はCuPCで形成され、感応膜4は、感応膜3と同じ膜厚或いは異なる膜厚のttb―CuPCで形成された構成であることが好ましい。
以下、本発明の実施例及び比較例により本発明の効果を説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
<CuPC及びttb―CuPCのガス選択性について>
実験では、水晶振動子の表面に、CuPCからなる単体の感応膜を成膜したガスセンサ(CuPC)と、水晶振動子の表面に、ttb-CuPCからなる単体の感応膜を成膜したガスセンサ(ttb-CuPC)を作製した。センサ条件として、感応膜の膜厚を100nmに固定し、初期状態におけるQCMの共振周波数を約30MHzとした。
実験では、トルエン、キシレン、ニチルベンゼン、酢酸エチルのVOCガスと、相対湿度40%の各ガスを、夫々、ガス温度:25℃として、ガスセンサ(CuPC)及びガスセンサ(ttb-CuPC)に暴露し、センサ出力を測定した。その実験結果が図13に示されている。
また、図13に示すように、ガスセンサ(ttb-CuPC)は、ガスセンサ(CuPC)に比べて、全てのガスに対して高い感度を有することがわかった。特に、ガスセンサ(ttb-CuPC)は、トルエン、キシレン、エチルベンゼンの各VOCガスに高い感度を示した。
以上から、複数の感応膜には、異なる膜厚のttb-CuPCを用いるか、或いは、一方の感応膜をttb-CuPCで形成し、他方の感応膜をCuPCで形成することで、混合ガス、対象ガス及び湿度に対する各感度を異ならせることができるとわかった。特に、VOCセンサに好ましく適用できることがわかった。
<VOCガスの濃度算出の実験例>
実験では、上記の検出素子A及び検出素子Bを有するVOCセンサを用い、該VOCセンサを、トルエン50ppmと相対湿度40%を含む混合ガス、キシレン50ppmと相対湿度40%を含む混合ガス、及び、エチルベンゼン50ppmと相対湿度40%を含む混合ガスにそれぞれ暴露して、VOCガス濃度及び湿度を上記した濃度計算式(1)より算出した。その実験結果が以下の表1に示されている。
Figure 2024010900000005
表1に基づいて、標準ガス濃度(真値)と算出されたガス濃度(指示値)との指示誤差を調べた。指示誤差は、([指示値-真値]/真値)×100(%)で計算した。その結果が、以下の表2に示されている。
表2に示すように、本実施例では、VOCガス濃度の指示誤差を5%以内に抑えることができた。
このように湿度を含むVOC混合ガスに対して、高精度にVOCガスを測定できることがわかった。
本実施例では、VOCガス濃度の指示誤差を5%以内に抑えることができ、好ましくは、4%以内に抑えることができ、より好ましくは3.5%以内に抑えることができる。
本発明のガスセンサによれば、湿度の影響を補正して、対象ガス濃度を高精度に測定することができる。特にVOCガスの測定に優れており、VOCセンサとして好ましく適用できる。
1 :VOCセンサ
2 :圧電振動子
2a、2b :主面
3、4、S :感応膜
5 :電極
A、B :検出素子
D :吸着サイト
G1 :対象ガス
G2 :対象外ガス

Claims (7)

  1. 湿度を含む混合ガス中の対象ガス濃度を測定するガスセンサであって、
    圧電振動子と、
    一つ又は複数の前記圧電振動子に設けられた複数の感応膜と、を有し、
    前記感応膜の前記混合ガスに対する感度は、前記対象ガス濃度に対する感度と前記湿度に対する感度との和に等しく、
    前記複数の感応膜は、夫々、同じ混合ガスに対して、前記対象ガス濃度に対する感度及び前記湿度に対する感度が異なる、
    ことを特徴とするガスセンサ。
  2. 前記複数の感応膜の膜厚は、夫々、異なることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
  3. 前記複数の感応膜を構成する感応材料は、夫々、異なることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ。
  4. 前記感応膜は、有機感応膜であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ。
  5. 前記有機感応膜は、フタロシアニン系の感応膜であることを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
  6. 前記圧電振動子は、水晶振動子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ。
  7. 前記混合ガスには、VOCガスが含まれることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ。





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