JP2024009348A - コバエ駆除用エアゾール製品及びコバエ駆除方法 - Google Patents

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Yoshinari Nakahara
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Abstract

【課題】害虫に対して直接噴霧した場合の即時効果が得られるコバエ駆除用エアゾール剤を提供する。【解決手段】コバエ駆除用エアゾール製品は、温度25℃、噴射距離30cmの条件で測定した体積積算分布での50%粒子径が20μm以上120μm以下であり、1回の噴射操作によってエアゾール剤を一定量だけ噴射する定量バルブを備えている。一定量が1.0~3.0mlである。【選択図】図1

Description

本発明は、コバエを駆除するコバエ駆除用エアゾール製品及びコバエ駆除方法に関する。
従来より、害虫の行動を物理的に阻害することによって駆除する害虫駆除剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の害虫駆除剤は、飛翔中の害虫に向けて噴射される飛翔害虫用駆除剤である。飛翔害虫用駆除剤が付着した飛翔害虫を落下させるために、飛翔害虫用駆除剤は、動粘度が4cst以上の液体で構成されており、さらに、ビーワックス層の上面に上記駆除剤を滴下したときに、θ/2法で求めた接触角が70゜以下になる親油性を有している。具体的には、実施例として、ポリオキシエチレン、ソルビタンモノラウレート、ドデシル硫酸ナトリウム、キサンタンガム、ネオチオゾール、食用油を含有した複数の例が開示されており、これら実施例では、イエバエ、ヤブ蚊、チョウバエ、ショウジョウバエ等に対して落下効果を得ることができる。
一方、特許文献1には、比較例としてネオチオゾール100%の液剤例が記載されている。この比較例ではチョウバエ、ショウジョウバエ等のコバエに対する落下効果が無く、ネオチオゾールに食用油を加えた実施例ではコバエに対する落下効果を得ることができるとの記載が特許文献1にはある。
特開2018-177686号公報
ところで、コバエは室内で発生することもあり、その場合、室内で駆除したいが、特許文献1の駆除剤は、コバエに対する落下効果を得るために揮発性の無い食用油等が配合されているため、屋内での使用後は拭き取りが必要になる点で改良の余地がある。
また、コバエ等の小さくて素早く飛び回る害虫に対してはエアゾール等による噴霧が必ずしも的中するとは限らないところ、特許文献1の駆除剤は、噴霧した液滴が虫体に十分に付着しなければ十分な落下効果が得られないと考えられる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、害虫に対して直接噴霧した場合の即時効果が得られるコバエ駆除用エアゾール剤を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明では、ネオチオゾールを含むエアゾール剤とし、平均粒子径の範囲及び粒子濃度の範囲をそれぞれ所定の範囲とした。
第1の発明は、エアゾール容器に収容されるコバエ駆除用エアゾール剤において、前記エアゾール容器から噴射される粒子の平均粒子径が20μm以上120μm以下とされ、前記エアゾール容器から噴射される粒子濃度が2000以上とされていることを特徴とする。
この構成によれば、チョウバエ、ショウジョウバエ等のコバエが飛翔している時に当該コバエに向けてコバエ駆除用エアゾール剤を噴射すると、粒子がコバエに付着しやすくなるとともに、コバエに付着する粒子数も多くなり、これによりコバエの行動が阻害されて即時落下効果が得られる。
なお、特許文献1の比較例(ネオチオゾールだけの場合)では即時落下効果が得られなかったが、これはコバエのように小さくて動きが速い害虫はエアゾール容器から噴射された粒子が的中しにくく、ネオチオゾールが十分に付着しなかったためと考えられる。本発明では粒子径および粒子濃度を上記範囲としているので、エアゾール容器から噴射された粒子がコバエに当たりやすくなり、ネオチオゾールによるコバエの即時落下効果が得られる。これにより、特許文献1の比較例のように食用油等の不揮発性成分が不要となるため、例えば屋内での使用がより簡便となる。
コバエ駆除用エアゾール剤は、ネオチオゾールを含有する原液と、液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)等を含有する噴射剤とで構成することができる。原液には、ネオチオゾールのみ含まれていてもよいし、ネオチオゾール以外の薬剤等が含まれていてもよい。噴射剤は、液化石油ガスのみ、ジメチルエーテルのみ、液化石油ガス及びジメチルエーテルの混合物であってもよい。
第2の発明は、前記平均粒子径が25μm以上とされていることを特徴とする。
第3の発明は、前記平均粒子径が115μm以下とされていることを特徴とする。
エアゾール容器から噴射された平均粒子径を25μm以上とすること、また、平均粒子径を115μm以下とすることで、コバエの即時落下効果がより一層高まる。
第4の発明は、前記粒子濃度が2500以上とされていることを特徴とする。
この構成によれば、エアゾール容器から噴射された粒子の多くがコバエに当たりやすくなるので、コバエの即時落下効果がより一層高まる。
第5の発明は、コバエに対して殺虫作用を発揮する殺虫剤を含有していることを特徴とする。
この構成によれば、即時落下効果のみならず、殺虫剤によるコバエの殺虫効果も得ることができ、駆除効果がより一層高まる。すなわち、噴射された粒子が虫体に的中しなかった場合は即時落下効果が十分に得られない場合があるが、この場合でも、フェノトリン等の致死性に優れた薬剤(殺虫剤)を配合することにより最終的に致死させることができ、より確実な駆除効果を得ることができる。
さらに、トランスフルトリン等のノックダウン効果がある薬剤を配合してもよい。これにより、粒子の的中により即時落下したコバエがすぐにノックダウンするために高い駆除効果を実現できる。
第6の発明は、前記コバエ駆除用エアゾール剤と、前記コバエ駆除用エアゾール剤が収容されるエアゾール容器とを備えていることを特徴とする。
第7の発明は、コバエ駆除用エアゾール製品において、1回の噴射操作によって前記エアゾール容器内の前記コバエ駆除用エアゾール剤を一定量だけ噴射する定量噴射バルブを備えていることを特徴とする。
いわゆる定量噴射バルブは、使用者が噴射操作を行うと、一定量を超える量が噴射されないので、コバエに対する即時落下効果や殺虫効果が得られる必要量を噴射させることができ、使用が容易になる。前記一定量は、エアゾール容器内に収容されているコバエ駆除用エアゾール剤の全量ではなく、エアゾール容器内に収容されているコバエ駆除用エアゾール剤の量未満であり、例えば0.09ml~3.0mlの範囲に設定しておくことができる。
本発明によれば、ネオチオゾールを含むエアゾール剤とし、平均粒子径の範囲及び粒子濃度の範囲をそれぞれ所定の範囲としたので、飛翔害虫に対して直接噴霧した場合の即時効果を得ることができる。
本発明の実施形態に係るコバエ駆除用エアゾール製品の正面図である。 実施例と比較例のコバエ寄り付き防止率を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係るコバエ駆除用エアゾール製品1の正面図である。コバエ駆除用エアゾール製品1は、コバエ駆除用エアゾール剤と、コバエ駆除用エアゾール剤が収容されるエアゾール容器10と、噴射ボタン11と、定量噴射バルブ12とを備えている。
エアゾール容器10は、耐圧性を有する材料で構成されており、内容量は例えば80ml~200ml程度の間で設定することができる。エアゾール容器10の上部には、定量噴射バルブ12が設けられている。定量噴射バルブ12は、1回の噴射操作によってエアゾール容器10内のコバエ駆除用エアゾール剤を一定量だけ噴射するように構成されたバルブである。この定量噴射バルブ12は、従来から周知のものであることからその詳細な説明は省略する。
定量噴射バルブ12には、噴射ボタン11が接続されている。噴射ボタン11を使用者が下方へ押動操作すると、定量噴射バルブ12が開放される。使用者が噴射ボタン11を押動操作したままにすると、コバエ駆除用エアゾール剤が定量噴射バルブ12から一定量だけ噴射された後、閉止状態になり、それ以上の噴射が抑制される。つまり、使用者が噴射操作を行うと、一定量を超える量が噴射されないので、コバエに対する即時落下効果や殺虫効果、発生予防効果が得られる必要量を噴射させることができ、使用が容易になる。前記一定量は、エアゾール容器10内に収容されているコバエ駆除用エアゾール剤の全量ではなく、エアゾール容器10内に収容されているコバエ駆除用エアゾール剤の量未満であり、例えば0.09ml~3.0mlの範囲に設定しておくことができる。本例では、1mlに設定している。
噴射ボタン11の正面部には、噴射口11aが開口している。噴射口11aは、噴射ボタン11の内部に設けられた流路(図示せず)を介して定量噴射バルブ12と連通している。したがって、定量噴射バルブ12が開放されてエアゾール容器10内から流出したコバエ駆除用エアゾール剤は、噴射ボタン11の流路を流通して噴射口11aから噴射される。噴射ボタン11の形状や構造は特に限定されるものではなく、どのような形状や構造であってもよい。
噴射口11aから噴射された粒子の平均粒子径は20μm以上120μm以下とされている。平均粒子径の大きさは、噴射口11aの径、流路の形状や長さ、噴射剤の量等によって変更することができる。平均粒子径は25μm以上とするのが好ましい。また、平均粒子径は115μm以下とするのが好ましい。平均粒子径の設定根拠については、後述の試験結果に基づいて説明する。平均粒子径の測定装置は、レーザー光回折方式の粒子径測定装置 Microtrac Aerotrac LDSA-SPR 1500A(マイクロトラック・ベル株式会社製)を使用した。温度25℃、噴射距離30cmの条件で前記コバエ駆除用エアゾールの粒子径測定を行い、体積積算分布での50%粒子径(D50)を平均粒子径とした。
また、噴射口11aから噴射された粒子濃度(CNC)は、2000以上とされている。噴射口11aから噴射された粒子濃度は、2500以上が好ましい。粒子濃度は高いほど粒子が虫体に的中しやすくなり効力が上がるものと考えられるが、現実的な粒子濃度の上限を5000以下とすることができ、4500以下がより好ましい。粒子濃度の設定根拠については、後述の試験結果に基づいて説明する。粒子濃度(CNC)の測定装置は上記LDSA-SPR 1500Aを用い、温度25℃、噴射距離30cmの条件で測定した。なお粒子濃度(CNC)は、粒子によって散乱された光強度から計算される濃度指数であり、レーザー光回折方式の前記粒子径測定装置を用いて測定することができる。
コバエ駆除用エアゾール剤は、流動パラフィンであるネオチオゾールと噴射剤とを含有しており、上記エアゾール容器10に収容されて使用される。コバエ駆除用エアゾール剤は、ネオチオゾールを含有する原液と、噴射剤とで構成することができる。原液には、ネオチオゾールのみ含まれていてもよいし、ネオチオゾール以外の薬剤等が含まれていてもよい。噴射剤は、液化石油ガス(LPG)のみ、ジメチルエーテル(DME)のみ、液化石油ガス及びジメチルエーテルの混合物であってもよい。噴射剤は、液化石油ガス及びジメチルエーテル以外であってもよく、上述した平均粒子径、粒子濃度を実現可能な噴射剤であればよい。
コバエ駆除用エアゾール剤は、コバエに対して殺虫作用を発揮する殺虫剤やコバエに対して忌避作用を発揮する忌避剤、殺虫効果を増強する共力剤を含有していてもよい。殺虫剤としては、例えば、アレスリン、テトラメスリン、プラレトリン、フェノトリン、レスメトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、トラロメトリン、シフルトリン、フラメトリン、イミプロトリン、エトフェンプロックス、フェンバレレート、フェンプロパスリン、シラフルオフェン、メトフルトリン、メパフルトリン、ジメフルトリン、トランスフルスリン、2-メチル-4-オキソ-3-(2-プロピニル)-シクロペント-2-エニル-3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレート等のピレスロイド系化合物、ジクロルボス、フェニトロチオン、テトラクロロビンホス、フェンチオン、クロルピリホス、ダイアジノン等の有機燐化合物、プロポキサー、カルバリル、メトキサジアゾン、フェノブカルブ等のカーバメート化合物、ルフェヌロン、クロルフルアズロン、ヘキサフルムロン、ジフルベンズロン、シロマジン、1-(2,6-ジフルオロベンゾイル)-3-[2-フルオロ-4-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]ウレア等のキチン形成阻害物質、ピリプロキシフェン、メトプレン、ハイドロプレン、フェノキシカルブ等の幼若ホルモン様物質、フィプロニル等のN-フェニルピラゾール系化合物等が挙げられる。
忌避剤としては、例えば、N,N-ジエチル-m-トルアミド、リモネン、リナロール、シトロネラール、メントール、メントン、ヒノキチオール、ゲラニオール、ユーカリプトール、インドキサカルブ、カラン-3,4-ジオール、2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボン酸1-メチルプロピルエステル、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、P-メンタン-3,8-ジオール等が挙げられる。なお、殺虫剤の中には忌避作用も有するものがあり、このようなものとして例えばトランスフルトリン等を挙げることができる。
共力剤としては、例えば、ピペロニルブトキサイド、MGK264、S421、IBTA、サイネピリン500等が挙げられる。
コバエ駆除用エアゾール剤は、コバエに直接噴射して使うことができ、このときにはコバエを即時落下させる即時落下効果を発揮する。これは、コバエ駆除用エアゾール剤に含まれるネオチオゾールがコバエの虫体に付着することにより、羽ばたきを阻害したり虫体を重くしたりするといった物理的な作用によって落下させるものである。殺虫剤等のように薬剤の作用によって落下させる場合と比べて、極めて早く落下効果が得られる。
また、上記のように殺虫剤または忌避剤を含有している場合、コバエ駆除用エアゾール剤は、例えば生ゴミ等に噴射することでコバエの発生を予防するコバエ発生予防効果も発揮する。すなわち、コバエ駆除用エアゾール剤に含まれる殺虫剤または忌避剤と、流動パラフィンとにより、コバエ発生予防剤を構成することができる。
具体的には以下のとおりである。すなわち、このコバエ発生予防剤を例えば生ごみ等のコバエが発生し易い場所に吹き付けることにより、当該生ごみにすでに産み付けられている卵および幼虫を駆除できる。また、コバエ発生予防剤に含まれる殺虫剤または忌避剤により、生ごみに寄ってくるコバエを殺虫ないし忌避できるため、産卵を阻止できる。そして、コバエ発生予防剤を構成する成分のうち、流動パラフィンの親水性が低いので、例えば生ごみのように水分が多い場所に対して使用した場合でも殺虫剤・忌避剤の流出や分解等が抑制され長期にわたってコバエの寄り付きを防止できる。このように、すでに産み付けられている卵や幼虫を駆除し、更に産卵を長期にわたって阻止できるので、例えば生ごみにコバエが発生することを長期にわたり防止できる。
コバエ駆除用エアゾール剤は、抗菌剤を含有していてもよい。抗菌剤を含有していることで、コバエ駆除用エアゾール剤を例えば生ゴミ等に対して使用した場合に、生ゴミの臭いの発生を長期にわたり予防できる。抗菌剤としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール、二酸化塩素、ヨウ素、チモール、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、エタノール、プロピルアルコール、フェノール、クレゾール、フェノキシエタノール、塩化セチルピリジニウム等が挙げられる。
(即時落下試験)
表1は、実施例に係るコバエ駆除用エアゾール剤の組成を示すものである。
表2は、実施例1、2、3と比較例1、2の即時落下試験結果を示すものである。
実施例1は、噴射ボタン11の噴射口11aの径を1.5mmとした場合のエアゾール容器10を使用した例である。実施例2は、噴射ボタン11の噴射口11aの径を1.2mmとした場合のエアゾール容器10を使用した例である。実施例3は、噴射ボタン11の噴射口11aの径を0.9mmとした場合のエアゾール容器10を使用した例である。
一方、比較例1は、噴射ボタン11の噴射口11aの径を0.5mmとした場合のエアゾール容器10を使用した例であり、エアゾール剤の組成は実施例1、2、3と同じである。また、比較例2は、市販のハンドスプレーを使用して噴霧した例であり、組成は実施例1、2、3の原液と同じである。
試験方法は次の通りである。直径10cm×高さ5cmのガラスリング内に、供試虫を10匹放ち、供試薬剤を約30cmの距離から1回噴射した。そして供試虫が落下するか否かを確認した。
実施例1、2、3では、平均粒子径が20μm以上120μm以下の範囲にあり、粒子濃度が2000以上となっている。これら実施例1、2、3では、飛翔している複数のコバエに向けて噴射した場合に、大多数のコバエがすぐに落下した。即ち、即時落下効果が十分に得られた。尚、供試虫は、キイロショウジョウバエ成虫及びチョウバエ成虫である。
比較例1は、平均粒子径が20μm未満、具体的には10μm未満であり、粒子濃度は400未満である。この場合、飛翔しているコバエに向けて噴射しても殆ど落下することなく、飛翔し続けていたので、即時落下効果は極めて弱かった。
比較例2は、平均粒子径が80μmを超え、粒子濃度は2000未満である。この場合、飛翔しているコバエに向けて噴射しても落下する個体は少なく、飛翔し続けている個体が多く見られたので、即時落下効果は弱かった。
上記結果に示すように、所定範囲の平均粒子径および所定以上の粒子濃度とすることで、はじめて即時落下の効果が得られることが明らかになった。その理由は必ずしも十分に解明されていないが、コバエのように素早く飛び回る害虫に対しては粒子の濃度が一定以上必要であると考えられることに加え、そもそもコバエは虫体が小さいため小さすぎる粒子は当たりにくく、また大きすぎる粒子ではその周囲に生じた気流の乱れによってコバエの軽い虫体は吹き飛ばされてしまい接触できないためと考えられる。
このように、噴射口11aから噴射された粒子の平均粒子径は20μm以上120μm以下とされ、かつ、粒子濃度が2000以上とされていることで、この範囲を超える粒子を噴射した場合に比べて、即時落下効果を顕著に高めることができる。平均粒子径を25μm以上とすることで、即時落下効果を更に高めることができ、また、平均粒子径を115μm以下とすることで、即時落下効果を更に高めることができる。
また、噴射口11aから噴射された粒子濃度を2500以上とすることで、即時落下効果を更に高めることができる。粒子濃度の上限を5000以下とすることで、無用な濃度上昇が抑制されてコバエ駆除用エアゾール剤の使用量を多くすることなく、コバエ駆除用エアゾール剤による効果を十分に得ることができる。粒子濃度の上限を4500以下とすることで、コバエ駆除用エアゾール剤を効率よく使用することができる。
なお、この即時落下効果は、ネオチオゾールがコバエの虫体に付着することにより羽ばたきを防止したり虫体を重くしたりすることによって落下させる物理的な作用であるから、落下した直後のコバエはまだ生きており動き回る可能性がある。この点、実施例1、2、3のコバエ駆除用エアゾール剤にはノックダウン効果に優れた殺虫剤であるトランスフルトリンを配合しているので、落下したコバエは間もなくノックダウン作用により活動を停止して最終的に死に至る。
(遠距離からの噴霧試験)
次に、比較的遠距離からの噴霧試験について説明する。試験方法は次の通りである。直径9cm×高さ6cmのガラスリング内に供試虫を20匹放ち、供試薬剤を150cmの距離から1回噴射した。そして24時間後の致死率を算出した。なお、供試虫としてはショウジョウバエ成虫である。供試薬剤としては、前記実施例2と、当該実施例2からフェノトリンを抜いたもの(比較例3)を用意した。
その結果、実施例2では24時間後の致死率が100%であったのに対し、フェノトリンを抜いた比較例3では24時間後の致死率が80%であった。このように、比較的遠距離から噴霧した場合は、フェノトリンを配合することにより最終的な致死率を向上させることができる。なお、この距離から噴霧した場合は、即時落下の効果が得られないコバエが見られた。
すなわち、比較的遠距離から噴霧した場合、噴霧粒子が十分に付着しない場合があるため、即時落下の効果が十分に得られないうえ、トランスフルトリンによるノックダウン効果および致死も不十分(上記比較例3の場合)であったと考えられる。この点、実施例2に含まれるフェノトリンは、少量での確実な致死効果に優れた殺虫成分であるため、噴霧粒子がコバエに十分に付着しない場合でも最終的に死に至らしめることができる。このように、即時落下させることが難しい遠距離から噴霧する場合であっても、フェノトリンを配合することで最終的な駆除効果を担保することができる。
(定着防止効果確認試験)
定着防止効果確認試験はコバエの発生予防の効果確認試験である。試験方法について説明すると、まず、表3に示す実施例4のコバエ駆除用エアゾール剤と、表4に示す比較例4のエアゾール剤とを用意した。いずれも噴射ボタン11は、前記実施例2と同じもの(噴射口11aの径が1.2mmのもの)を用いた。
実施例4は、灯油(ネオチオゾール)を含有しており、比較例4は、灯油の代わりに合成アルコールを含有している。
実施例4のコバエ駆除用エアゾール剤を切断面に1回噴霧した実施例に係るオレンジと、比較例4のエアゾール剤を切断面に1回噴霧した比較例に係るオレンジと、無処理のオレンジとを用意した。これらオレンジを用意してから14日後、25cm×25cmのアクリルボックス内に、実施例に係るオレンジ、比較例に係るオレンジ及び無処理のオレンジを静置し、当該アクリルボックス内に供試虫(キイロショウジョウバエ)を放し、2時間後、各オレンジへの供試虫の寄り付き数を確認した。また、上記オレンジを用意してから21日後にも同様にして、各オレンジへの供試虫の寄り付き数を確認した。そして、以下の式に基づいて寄り付き防止率(定着防止率ともいう)を算出した。なお、寄り付き数とは、生きた状態でオレンジに寄り付いているコバエの数を言い、オレンジに接触して死んだコバエはカウントしない。
寄り付き防止率(%)=(無処理寄り付き数-処理寄り付き数)/無処理寄り付き数×100
表5及び図2から明らかなように、灯油を含有している実施例4では、合成アルコールを含有している比較例4に比べて寄り付き防止率が高く、特に長期間経過後の差が拡大している。これは、流動パラフィンである灯油の親水性が低いので、オレンジのように水分が多い場所に対して使用した場合でも、殺虫剤またが忌避剤(この試験の場合はトランスフルトリン)の流出や分解等を抑制し、長期にわたってコバエの寄り付きを防止できるからである。
また、同様の試験を実施例2のコバエ駆除用エアゾール剤で行ったところ、長期間経過後の寄り付き防止率が、実施例4よりも更に高くなることが確認された。すなわち、トランスフルトリンのみの場合(実施例4)に比べて、更にフェノトリンを含む(実施例2)ことにより長期間の寄り付き防止効果を得ることができる。トランスフルトリンは空間忌避作用およびノックダウン作用があるため特に初期での寄り付き防止効果が高いと期待できる一方、フェノトリンは少量でも致死効果が高いため寄り付き防止効果をより長期間にわたって維持する効果が期待できる。
上記定着防止効果確認試験の供試虫はキイロショウジョウバエとしたが、チョウバエ等のコバエでも同様な結果が得られる。また、上記定着防止効果確認試験では、オレンジを使用したが、オレンジ以外の肉、魚、野菜等の生ゴミを用いて上記試験を行っても同様な結果が得られる。
(孵化防止効果確認試験)
孵化防止効果確認試験は、前記試験と同じく、コバエの発生予防の効果確認試験である。試験方法について説明すると、まず、定着物としてのオレンジを3つ用意し、それぞれコバエの繁殖する部屋に3日間静置して、コバエに産卵させた。次に、産卵させた3つのオレンジの1つに実施例2のコバエ駆除用エアゾール剤を1回噴霧、別の1つに実施例4のコバエ駆除用エアゾール剤を1回噴霧し、残りの1つは無処理とした。各オレンジを14日間保管し、コバエ成虫の発生の有無を確認した。
その結果、無処理のオレンジは200匹以上のコバエが発生したのに対し、実施例2に係るオレンジは0匹、実施例4に係るオレンジは5匹だった。すなわち、コバエの発生源をコバエ駆除用エアゾール剤で処理することにより、すでに産み付けられている卵の孵化を防止し、あるいはすでに孵化した幼虫を駆除することができる。
以上のように、コバエの発生源をコバエ駆除用エアゾール剤で処理することにより、すでに産み付けられている卵や幼虫を駆除できる。そしてその後は、定着防止効果確認試験で示したように、長期間にわたって成虫の寄り付きを防止できるので、発生源にコバエが産卵することを防止できる。以上により、長期間にわたってコバエの発生を予防することができる。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、小さくて動きが速い害虫であるチョウバエ、ショウジョウバエ等のコバエが飛翔している時に当該コバエに向けてコバエ駆除用エアゾール剤を噴射すると、粒子がコバエに付着しやすくなるとともに、コバエに付着する粒子数も多くなり、即時落下効果が得られる。これにより、食用油等の不揮発性成分が不要となるため、例えば屋内での使用がより簡便となる。また、定量噴射バルブ12によって、その場にいるコバエを落下させるのに必要な量だけを無駄なく噴霧することができる。
また、噴射された粒子が虫体に的中しなかった場合は即時落下効果が十分に得られない場合があるが、この場合でも、フェノトリン等の致死性に優れた薬剤を配しているので、最終的に致死させることができ、より確実な駆除効果を得ることができる。
また、トランスフルトリン等のノックダウン効果が高い薬剤を配合することにより、粒子の的中により即時落下したコバエがすぐにノックダウンするために高い駆除効果を実現できる。
また、コバエ駆除用エアゾール剤に含まれる流動パラフィンの親水性が低いので、例えば生ごみのように水分が多い場所に対して使用した場合でも長期にわたってコバエの寄り付きを防止できる。しかもこのとき、例えば生ごみにすでに産み付けられている卵および幼虫を駆除できるので、当該生ごみにコバエが発生することを長期にわたり防止できる。
上記のように、トランスフルトリンとフェノトリンと灯油を配合した所定粒子径のエアゾール剤とすることで、コバエに対する直接噴霧も、対物処理による予防効果も優れたエアゾールを提供できる。
さらに、上記範囲の粒子径は、例えば屋内空間等において広がりやすいため、定量噴射バルブ12を用いたエアゾール製品1とすることにより、1回の噴霧処理で屋内空間全体を処理する空間処理剤としての使用も可能である。すなわちこの場合、コバエ駆除用エアゾール剤を、屋内空間に向けて1回噴射することにより、トランスフルトリンおよびフェノトリンを含んだ噴霧粒子が空間全体にひろがるので、コバエがいない空間を実現できる。
なお、従来からコバエ用空間処理剤として、溶剤にエタノールを用いたものがあった。この点、本発明は溶剤として灯油を用いるため、揮発性が高いエタノール製剤にくらべると拡散性が劣る。そこで本実施形態では、定量噴射バルブ12を用いて、従来よりも容量が大きい1mlのエアゾール剤を噴射可能にしている。このような大容量の定量噴射バルブ12を用いることにより、内容物が一度に勢いよく噴霧されるため、拡散性が向上する。これにより、灯油を溶剤とした本実施形態であっても、従来のエタノールを溶剤とする定量噴霧剤と同等以上の拡散性を実現することができる。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
コバエ駆除用エアゾール剤は、屋内や屋外の生ゴミに直接噴射する生ゴミ用エアゾール剤とすることもできるし、生ゴミを入れる容器に直接噴射する生ゴミ容器用エアゾール剤とすることもできる。また、台所のシンクやゴミ箱等に直接噴射することもできる。これらはコバエの発生源となるものであるが、それ以外にも、屋内空間、例えば台所、ダイニング、リビング等に噴射して使用することもできる。屋外空間を飛翔するコバエに対して使用することもできる。
以上説明したように、本発明は、例えばキイロショウジョウバエやチョウバエ等の駆除に使用することができる。
1 コバエ駆除用エアゾール製品
10 エアゾール容器
11 噴射ボタン
11a 噴射口
12 定量噴射バルブ

Claims (3)

  1. コバエに対して忌避作用または殺虫作用を発揮する薬剤を含むエアゾール剤を、エアゾール容器に収容したコバエ駆除用エアゾール製品であって、
    1回の噴射操作によって前記エアゾール剤を一定量だけ噴射する定量バルブを備え、
    前記一定量が1.0~3.0mlであり、
    前記エアゾール容器から噴射された粒子の平均粒子径が20μm以上120μm以下とされ、
    前記エアゾール容器から噴射された粒子濃度が2000以上とされていることを特徴とするコバエ駆除用エアゾール製品。
    但し、前記平均粒子径は、温度25℃、噴射距離30cmの条件で測定した体積積算分布での50%粒子径であり、前記粒子濃度は、温度25℃、噴射距離30cmで測定された粒子によって散乱した光強度から計算される濃度指数である。
  2. 請求項1に記載のコバエ駆除用エアゾール製品において、
    前記薬剤はトランスフルトリンを含むことを特徴とするコバエ駆除用エアゾール製品。
  3. コバエに対して忌避作用または殺虫作用を発揮する薬剤を含むエアゾール剤と、前記エアゾール剤を収容した容器と、1回の噴射操作によって前記エアゾール剤を一定量だけ噴射する定量バルブと、を備え、前記一定量が1.0~3.0mlであり、前記容器から噴射された粒子の平均粒子径が20μm以上120μm以下であり、前記容器から噴射された粒子濃度が2000以上であるコバエ駆除用エアゾール製品を用意し、
    前記コバエ駆除用エアゾール製品から前記エアゾール剤を屋内空間に向けて1回噴射することを特徴とするコバエ駆除方法。
    但し、前記平均粒子径は、温度25℃、噴射距離30cmの条件で測定した体積積算分布での50%粒子径であり、前記粒子濃度は、温度25℃、噴射距離30cmで測定された粒子によって散乱した光強度から計算される濃度指数である。
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