JP2024007764A - 電気化学セル - Google Patents

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Abstract

【課題】導電性粒子と機能性粒子を有するガス吸着用の電気化学セルにおいて、導電性粒子による導電性確保と、機能性粒子による機能性向上を両立させる。【解決手段】電気化学セルは、作用極104と対極106とを有するとともに、作用極と対極との間に電圧が印加されることで、作用極でガスを吸着および脱離する。作用極および対極の少なくとも一方の電極は、互いに接触して導電パスを形成する導電性粒子104bと、導電パスを形成しない機能性粒子104aとを有している。導電性粒子の粒径は機能性粒子の粒径以上である。【選択図】図4

Description

本発明は、ガスを吸着する電気化学セルに関する。
特許文献1に、混合ガスから回収対象の特定ガスを回収する電気化学セルが開示されている。特許文献1の電気化学セルは、作用極と対極からなる一対の電極を備えており、電気化学反応によって特定ガスを吸着する。作用極は、混合ガスから特定ガスを吸着するガス吸着材と、ガス吸着材への導電パスを形成する導電助剤を含んでいる。対極は、作用極と電子の授受を行う電気活性補助材と、電気活性補助材への導電パスを形成する導電助剤を含んでいる。
特表2018-533470号公報
例えば導電助剤を導電性粒子とし、ガス吸着材や電気活性補助材を機能性粒子とした場合に、電気化学セルのガス吸着効率を高めるためには、導電性粒子による導電性を確保しつつ、機能性粒子による機能性を高める必要がある。
本発明は上記点に鑑み、導電性粒子と機能性粒子を有するガス吸着用の電気化学セルにおいて、導電性粒子による導電性確保と、機能性粒子による機能性向上を両立させることを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の電気化学セルは、作用極(104)と対極(106)とを有するとともに、作用極と対極との間に電圧が印加されることで、作用極でガスを吸着および脱離する。作用極および対極の少なくとも一方の電極は、互いに接触して導電パスを形成する導電性粒子(104b)と、導電パスを形成しない機能性粒子(104a)とを有している。導電性粒子の粒径は機能性粒子の粒径以上である。
これにより、電極における導電性粒子の接触率を向上させることができ、電極の導電率を向上させることができる。このため、導電性粒子の体積比率を低減しても導電性粒子による導電性を確保することができる。さらに機能性粒子の体積比率を高くすることができることから、機能性粒子による機能性を向上させることができる。
なお、上記各構成要素の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
第1実施形態の二酸化炭素回収システムの全体構成を示す概念図である。 二酸化炭素回収装置の構成を示す説明図である。 二酸化炭素回収装置における電気化学セルの構成を示す説明図である。 電気化学セルの作用極の構成を示す図である。 作用極を構成する材料を拡大した図である。 導電性粒子を含んだ電極の導電率と電極における導電性粒子の体積比率との関係を示す図である。 粒子の粒径調整を行った場合の粒径と存在比率の関係を示す図である。 第2実施形態の作用極を構成する材料を拡大した図である。
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
以下、本発明に係る電気化学セルの第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明に係る電気化学セルを、二酸化炭素を含有する混合ガスから二酸化炭素を分離して回収する二酸化炭素回収システム1に適用している。従って、本実施形態の回収対象ガスは二酸化炭素である。
図1の全体構成図に示すように、本実施形態の二酸化炭素回収システム1は、二酸化炭素回収装置10、ポンプ11、流路切替弁12、二酸化炭素利用装置13、制御装置14を備えている。
二酸化炭素回収装置10は、混合ガスから二酸化炭素を分離して回収する。混合ガスとしては、大気や内燃機関の排気ガス等を用いることができる。混合ガスは、二酸化炭素以外に酸素等のガスも含有している。二酸化炭素回収装置10には、混合ガスが供給される。二酸化炭素回収装置10は、二酸化炭素が除去された後の混合ガス、あるいは、回収した二酸化炭素を排出する。二酸化炭素回収装置10の詳細構成については後述する。
二酸化炭素回収装置10の出口には、ポンプ11の吸入口側が接続されている。ポンプ11は、二酸化炭素回収装置10から、二酸化炭素が除去された後の混合ガス、あるいは、回収した二酸化炭素を吸引する。さらに、ポンプ11の吸引作用によって、混合ガスが二酸化炭素回収装置10に供給される。
本実施形態では、二酸化炭素回収装置10のガス流れ方向の下流側にポンプ11を配置した例を説明しているが、二酸化炭素回収装置10のガス流れ方向の上流側にポンプ11を配置してもよい。
ポンプ11の吐出口には、流路切替弁12の流入口側が接続されている。流路切替弁12は、二酸化炭素回収装置10から流出したガスの流路を切り替える三方弁である。流路切替弁12は、二酸化炭素回収装置10から流出したガスを大気側へ流出させる流路と、二酸化炭素回収装置10から流出したガスを二酸化炭素利用装置13側へ流出させる流路とを切り替える。
二酸化炭素利用装置13は、二酸化炭素を利用する装置である。二酸化炭素利用装置13としては、例えば、二酸化炭素を貯蔵する貯蔵タンクや二酸化炭素を燃料に変換する変換装置を用いることができる。変換装置は、二酸化炭素をメタン等の炭化水素燃料に変換する装置である。炭化水素燃料は、常温常圧で気体の燃料であってもよく、常温常圧で液体の燃料であってもよい。
制御装置14は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置14は、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。より具体的には、本実施形態の制御装置14は、二酸化炭素回収装置10、ポンプ11、流路切替弁12の作動を制御する。
ここで、二酸化炭素回収装置10について説明する。
図2に示すように、二酸化炭素回収装置10は、筐体100、および複数の電気化学セル101を有している。本実施形態の筐体100は、金属材料によって形成されている。筐体100は、樹脂材料によって形成されていてもよい。
筐体100には、ガス流入部、およびガス流出部が形成されている。ガス流入部は、混合ガスを筐体100内へ流入させるための開口部である。ガス流出部は、二酸化炭素が除去された後の混合ガス、あるいは、回収した二酸化炭素を筐体100内から流出させるための開口部である。
電気化学セル101は、電気化学反応によって二酸化炭素を吸着して、混合ガスから二酸化炭素を分離して回収する。また、電気化学セル101は、電気化学反応によって二酸化炭素を脱離させて、吸着した二酸化炭素を放出する。複数の電気化学セル101は、筐体100に収容されている。
電気化学セル101は、矩形の平板状に形成されている。複数の電気化学セル101は、筐体100の内部で、板面同士が互いに平行となるように、一定の間隔を開けて積層配置されている。隣り合う電気化学セル101同士の間には、ガス流入部から流入した混合ガスを流通させる複数のガス流路が形成される。
図3に示すように、電気化学セル101は、作用極集電材103、作用極104、対極集電材105、対極106、セパレータ107、電解質層108を有している。作用極集電材103、作用極104、対極集電材105、対極106、セパレータ107は、いずれも矩形の平板状に形成されている。作用極104と対極106は、一対の電極を構成している。
電気化学セル101は、作用極集電材103、作用極104、対極集電材105、対極106、セパレータ107を積層した積層体として形成されている。個々の電気化学セル101において作用極集電材103等が積層される積層方向と、筐体100の内部で複数の電気化学セル101が積層される積層方向は一致している。
作用極集電材103は、作用極104に当接して、作用極104と対極106とを電気的に接続する導電性部材である。作用極集電材103は、一方の平坦面が混合ガスに露出している。作用極集電材103は、他方の平坦面が作用極104に接触している。
図4に示すように、作用極104は、作用極集電材103とセパレータ107の間に設けられている。図4、図5に示すように、作用極104は、二酸化炭素吸着材104a、導電助剤104b、およびバインダ104cを有している。図4、図5では導電助剤104bに斜線を付しており、図4ではバインダ104cの図示を省略している。二酸化炭素吸着材104a、導電助剤104b、およびバインダ104cは、図4、図5で図示した形状、大きさに限定されるものではない。
二酸化炭素吸着材104a、導電助剤104b、およびバインダ104cは、混合物の状態で用いられる。より詳細には、本実施形態では、二酸化炭素吸着材104aの粒子および導電助剤104bの粒子が、バインダ104cによって保持された状態で用いられる。作用極104は、混合ガスから二酸化炭素を吸着して回収し、回収した二酸化炭素を脱離させて放出することができる。
二酸化炭素吸着材104aは、電子を受け取ることで二酸化炭素を吸着し、電子を放出することで吸着していた二酸化炭素を脱離する電気活性種である。二酸化炭素吸着材104aはガス吸着材の一例である。二酸化炭素吸着材としては、例えば、ポリアントラキノン、カーボン材、金属酸化物等を用いることができる。本実施形態では、二酸化炭素吸着材104aとしてポリアントラキノンを用いている。
導電助剤104bは、二酸化炭素吸着材104aへの導電パスを形成する導電物質である。導電助剤104bとしては、導電助剤104bとして、カーボン材、金属ポーラス材、金属担持セラミック等を用いることができる。導電助剤104bを構成するカーボン材は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭素繊維不織布等を用いることができる。
バインダ104cは、二酸化炭素吸着材104aおよび導電助剤104bを保持する高分子結合剤である。バインダ104cは、二酸化炭素吸着材104aと二酸化炭素吸着材104a、導電助剤104bと導電助剤104b、二酸化炭素吸着材104aと導電助剤104bを結着させる。バインダ104cとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂等を用いることができる。本実施形態のバインダ104cは、導電性を有しない非導電性高分子を用いている。
作用極104には、導電性を発揮させることを主目的とする導電性粒子と、導電性以外の機能を発揮させることを主目的とする機能性粒子が含まれている。本実施形態では、導電性粒子に導電助剤104bが含まれており、機能性粒子に二酸化炭素吸着材104aが含まれている。
導電性粒子は、互いに接触して電子の通過経路である導電パスを形成している。導電性粒子は、隣接する導電性粒子と連続的に接触しており、作用極104の導電骨格を構成している。導電骨格は、導電パスを形成している導電性粒子の連続的な構造体である。図4における破線が導電パスを示している。作用極104において、導電助剤104bによる導電パスは三次元状に形成されている。
機能性粒子は、基本的に導電性を有しない物質、あるいは導電性粒子よりも導電性が低い物質である。隣接する機能性粒子同士は連続的に接触しておらず、機能性粒子は導電パスを形成していない。
導電性粒子および機能性粒子は粒子状物質である。導電性粒子および機能性粒子は不定形であり、球状、塊状、チューブ状、シート状、繊維状の形状が含まれる。粒子には、1次粒子のみならず、1次粒子が集合して形成された2次粒子も含まれる。
本実施形態では、導電性粒子と機能性粒子の粒径比率の制御を行っており、導電性粒子の粒径が機能性粒子の粒径以上となるようにしている。本実施形態では、導電性粒子である導電助剤104bの粒径が機能性粒子である二酸化炭素吸着材104aの粒径以上となっている。
本明細書において、導電性粒子および機能性粒子の粒径は、粒子の径が最も大きい部分の長さであり、粒子の最大径や長径ということもできる。つまり、導電性粒子の少なくとも1軸方向の長さが、機能性粒子の粒径以上となっていればよい。炭素繊維不織布のような繊維状粒子は、直線的に伸ばした長さではなく、非直線状態のままで一端から他端までの直線距離を粒径とする。
本実施形態では、粒子の粒径分布の最頻値(ピーク値)を粒径としている。粒子の粒径は、次のように取得することができる。
電子顕微鏡(SEM、TEM)や原子間力顕微鏡(AFM)によって粒子の幾何学的形状観察を行い、測定対象の粒子の最大径を測定する。測定サンプル数Nは例えば30以上とする。測定した各粒子の最大径の分布が対数正規分布になると仮定することで推定される最頻値を粒径として取得する。
導電性粒子の粒径を機能性粒子の粒径以上とすることで、導電性粒子である導電助剤104bの粒径が大きくなり、隣接する導電助剤104b同士が接触しやすくなって、導電助剤104bの接触率を高めることができる。このため、導電助剤104bによって導電パスを形成しやすくなり、体積あたりの導電率を向上させることができる。
さらに、導電助剤104bの粒径を大きくすることで、導電パスを構成する導電助剤104bの粒子数が少なくなり、伝達距離あたりの経由粒界数が減少する。このため、導電パスを形成する複数の導電助剤104bによる粒界抵抗が低減され、導電率をより向上させることができる。
ここで、導電性粒子を含んだ電極の導電率と電極における導電性粒子の体積比率との関係について図6を用いて説明する。図6の縦軸は電極の導電率の対数であり、横軸は導電性粒子の体積比率である。図6では、導電性粒子として粒径0.04μmのカーボンブラックと粒径0.5μmのRuO2を用いている。図6では、粒径0.5μmの導電性粒子を丸図形と実線で示し、粒径0.04μmの導電性粒子を四角図形と破線で示している。なお、RuO2およびカーボンブラックの材料自体が有する導電率の違いが電極の導電率に与える影響は、粒径が電極の導電率に与える影響に比べて無視することができる。
図6に示すように、同じ体積比率で比較すると、粒径0.5μmの導電性粒子は、粒径0.04μmの導電性粒子よりも導電率が向上している。つまり、粒径0.5μmの導電性粒子は、粒径0.04μmの導電性粒子と比較して、同じ導電率を得るために体積比率を低減することができる。図6に示す例では、粒径0.04μmの導電性粒子は体積比率0.6程度で導電率1S/mが得られているのに対し、粒径0.5μmの導電性粒子は体積比率0.4程度で導電率1S/mが得られている。
図6に示すように、導電性粒子の粒径に関わらず、導電性粒子の体積比率をゼロから高くしていくと、導電率が急激に上昇する体積比率が存在する。この導電率が急激に上昇する体積比率を限界体積比率とする。導電性粒子の体積比率を限界体積比率よりも高くすると、導電率の上昇割合が緩やかになり、導電性粒子の体積比率が高くなっても導電率が上昇しにくくなっている。図6に示す例では、粒径0.5μmの導電性粒子は限界体積比率が0.3程度、粒径0.04μmの導電性粒子は限界体積比率が0.5程度となっている。
導電性粒子の体積比率が限界体積比率よりも低い領域では導電率がほぼゼロである。このため、導電性粒子の体積比率は限界体積比率以上にする必要がある。
本実施形態では、作用極104の厚み方向において、作用極104の導電率を導電助剤104bの体積比率を100%とした場合の導電率の1/10以上としている。これにより、作用極104における導電助剤104bの体積比率を限界体積比率以上に維持することができる。つまり、作用極104で隣接する導電助剤104bの接触を確保することができ、導電助剤104bによって形成される導電パスが途切れることを回避することができる。なお、作用極104の厚み方向は、作用極104を挟んで作用極集電材103とセパレータ107を結ぶ方向である。
体積あたりの導電率は体積抵抗率の逆数として取得することができる。体積抵抗率は単位体積あたりの電気抵抗値であり、次式によって求めることができる。
体積抵抗率(Ω・m)=電気抵抗(Ω)×面積(m2)/厚み(m)
導電助剤104bを含んだ作用極104と、導電助剤104bと同一材料かつ同一粒径分布の導電性粒子を円柱状、角柱状あるいはシート状等の形状に切り出しまたは成型して測定サンプルを作成する。導電助剤104bと同一材料かつ同一粒径分布の導電性粒子は、体積比率100%の導電助剤104bの測定サンプルである。作用極104および比較対象である導電性粒子の測定サンプルをそれぞれ金属平板を用いて厚み方向に同一荷重で締結し、電気抵抗を測定する。電気抵抗の測定値と、測定サンプルの面積および厚みを用い、上記数式によって体積抵抗率を計算することができる。
本実施形態では、作用極104において、導電助剤104bの体積比率をバインダ104cの体積比率以上としている。これにより、作用極104における導電助剤104bの体積比率を確保することができ、作用極104における導電助剤104bの体積比率を限界体積比率以上となるようにすることができる。
導電性粒子および機能性粒子は、任意に粒径調整することができる。例えば粒径調整によって粒子の粒径を小さくする場合には、遊星ボールミル等を用いて粒子を解砕し、目標粒径にすることができる。
図7は、粒径調整によって粒径を小さくした場合の粒径と存在比率の関係を示している。図7において、I、II、III、IVは順に粒径調整が進行した場合の粒径分布を示している。図7に示すように、粒径調整の進行にともなって、粒子の粒径が小さくなっている。さらに粒径調整の進行にともなって、粒径分布の範囲が狭くなり、粒径が平均化されている。
また、粒子の粒径を大きくする場合には、1次粒子から1次粒子の集合体である2次粒子を生成することで実現できる。例えば1次粒子を押し固めたり、1次粒子をバインダによって凝集させることで、2次粒子を得ることができる。
ここで、作用極104の製造方法について説明する。
例えば二酸化炭素吸着材104aと導電助剤104bとバインダ104cを溶剤に分散または溶解させてペースト化し、得られた電極ペーストを作用極集電材103またはセパレータ107に塗布することで、作用極104を製造できる。二酸化炭素吸着材104aと導電助剤104bは混合粒子として用いてもよく、導電助剤104bに二酸化炭素吸着材104aを担持させてからバインダ104cと混錬してもよい。導電助剤104bへの二酸化炭素吸着材104aの担持は、溶剤に分散または溶解させた二酸化炭素吸着材104aを導電助剤104bにコーティングすればよい。
また、導電助剤104bによって導電骨格を形成した後に、導電助剤104bに二酸化炭素吸着材104aを担持させることで、作用極104を製造してもよい。この場合は、導電助剤104bとバインダ104cを溶剤に分散または溶解させてペースト化し、作用極集電材103またはセパレータ107に塗布した上で乾燥させ、導電助剤104bとバインダ104cからなる多孔質体を作成する。そして、先に作成した多孔質体に、二酸化炭素吸着材104aを溶剤に分散または溶解させた液材を浸透または噴霧などによって付着させ、その後溶媒を除去して導電助剤104bに二酸化炭素吸着材104aを定着させる。二酸化炭素吸着材104aを分散または溶解させる溶剤には、バインダ104cを溶解させない溶剤を用いる。これにより、導電助剤104bの表面に、例えば導電助剤104bの粒径の1/N(Nは任意の整数)以下の膜厚で二酸化炭素吸着材104aやバインダ104cの被膜が形成される。
図3に戻り、対極集電材105は、対極106に当接して、作用極104と対極106とを電気的に接続する導電性部材である。対極集電材105は、一方の平坦面が混合ガスに露出している。対極集電材105は、他方の平坦面が対極106に接触している。
対極106は、二酸化炭素吸着材が二酸化炭素を吸着あるいは脱離する際に、作用極104と電子の授受を行う。対極106は、電気活性補助材、導電助剤、およびバインダを有している。電気活性補助材、導電助剤、およびバインダは、混合物の状態で用いられる。より詳細には、本実施形態では、電気活性補助材の粒子、および導電助剤の粒子が、バインダによって保持された状態で用いられる。
対極106の導電助剤およびバインダは、作用極104の導電助剤およびバインダと同様の材料を用いることができる。電気活性補助材は、作用極104の二酸化炭素吸着材との間で電子の授受を行う補助的な電気活性種であり、酸化還元性を持つ活物質である。活物質としては、π結合を有する有機化合物、複数の酸化数をとる遷移金属化合物、金属イオンの価数が変化することで電子の授受を可能とする金属錯体を用いることができる。
このような金属錯体としては、フェロセン、ニッケロセン、コバルトセン等のシクロペンタジエニル金属錯体、あるいはポルフィリン金属錯体等を挙げることができる。これらの金属錯体は、ポリマーでもモノマーでもよい。
セパレータ107は、作用極104と対極106の間に配置されており、作用極104と対極106を分離している。セパレータ107は、作用極104と対極106の物理的な接触を防いで電気的短絡を抑制するとともに、イオンを透過させる絶縁性イオン透過膜である。セパレータ107としては、セルロース膜やポリマー、ポリマーとセラミックの複合材料等を用いることができる。
電解質層108は、作用極104、セパレータ107、対極106を浸漬させる浸漬層である。電解質層108としては、例えば、イオン液体を採用することができる。イオン液体は、常温常圧下で不揮発性を有する液体の塩である。
さらに、電気化学セル101の作用極集電材103および対極集電材105には、電源109が接続されている。電源109は、作用極104と対極106に所定の電圧を印加し、作用極104と対極106の電位差を変化させることができる。作用極104は負極
であり、対極106は正極である。
電気化学セル101は、作用極104と対極106の電位差を変化させることで、作用極104で二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収モード、および作用極104から二酸化炭素を放出させる二酸化炭素放出モードで作動する。二酸化炭素回収モードは、電気化学セル101を充電する充電モードであり、二酸化炭素放出モードは、電気化学セル101を放電させる放電モードである。
具体的には、二酸化炭素回収モードでは、作用極104と対極106の間に第1電圧V1が印加され、対極106から作用極104に電子が供給される。第1電圧V1では、作用極電位<対極電位となっている。第1電圧V1は、例えば0.5~2.0Vの範囲内とすることができる。
二酸化炭素放出モードでは、作用極104と対極106の間に第2電圧V2が印加され、作用極104から対極106に電子が供給される。第2電圧V2は、第1電圧V1と異なる電圧である。第2電圧V2は、第1電圧V1より低い電圧であればよく、作用極電位と対極電位の大小関係は限定されない。つまり、二酸化炭素放出モードでは、作用極電位<対極電位でもよく、作用極電位=対極電位でもよく、作用極電位>対極電位でもよい。
次に、本実施形態の二酸化炭素回収システム1の作動について説明する。上述の如く、二酸化炭素回収システム1は、二酸化炭素回収モードと二酸化炭素放出モードを交互に切り替えて作動する。二酸化炭素回収システム1の作動は、制御装置14によって制御される。
まず、二酸化炭素回収モードについて説明する。二酸化炭素回収モードでは、ポンプ11を作動させる。これにより、二酸化炭素回収装置10に混合ガスが供給される。二酸化炭素回収装置10では、電気化学セル101の作用極104と対極106の間に印加される電圧を第1電圧V1とする。これにより、対極106の電気活性補助材の電子供与と、作用極104の二酸化炭素吸着材の電子求引を同時に実現できる。
対極106から電子を受け取った作用極104の二酸化炭素吸着材は二酸化炭素の結合力が高くなり、混合ガスに含まれる二酸化炭素を結合して吸着する。これにより、二酸化炭素回収装置10は、混合ガスから二酸化炭素を回収することができる。二酸化炭素が除去された後の混合ガスは、二酸化炭素回収装置10から排出される。
二酸化炭素回収モードでは、流路切替弁12が、二酸化炭素回収装置10から排出された混合ガスを大気側へ流出させる流路に切り替える。これにより、二酸化炭素回収装置10から排出された混合ガスは大気に排出される。
次に、二酸化炭素放出モードについて説明する。二酸化炭素放出モードでは、ポンプ11を停止させる。これにより、二酸化炭素回収装置10への混合ガスの供給が停止される。二酸化炭素回収装置10では、電気化学セル101の作用極104と対極106の間に印加される電圧を第2電圧V2とする。これにより、作用極104の二酸化炭素吸着材の電子供与と、対極106の電気活性補助材の電子求引を同時に実現できる。
作用極104の二酸化炭素吸着材は電子を放出し、酸化状態となる。二酸化炭素吸着材は二酸化炭素の結合力が低下し、二酸化炭素を脱離して放出する。二酸化炭素吸着材から放出された二酸化炭素は、二酸化炭素回収装置10から排出される。
二酸化炭素放出モードでは、流路切替弁12が、二酸化炭素回収装置10から排出された二酸化炭素を二酸化炭素利用装置13の入口側へ流出させる流路に切り替える。これにより、二酸化炭素回収装置10から排出された二酸化炭素は二酸化炭素利用装置13に供給される。
以上説明した本実施形態によれば、作用極104において、導電性粒子である導電助剤104bの粒径を機能性粒子である二酸化炭素吸着材104aの粒径以上としている。これにより、作用極104における導電助剤104bの接触率を向上させることができ、体積あたりの導電率を向上させることができる。さらに、導電助剤104bの粒径が大きくなることで、導電パスの距離あたりの粒子数が少なくなり、経由粒界数が減少する。このため、導電パスを形成する複数の導電助剤104bによる粒界抵抗が低減され、体積あたりの導電率をより向上させることができる。
また、導電助剤104bの粒径を二酸化炭素吸着材104aの粒径以上とすることで、導電助剤104bの体積比率を低減しても導電率を確保でき、さらに機能性粒子である二酸化炭素吸着材104aの体積比率を高くすることができる。このため、機能性粒子である二酸化炭素吸着材104aの機能性を向上させることができ、作用極104の二酸化炭素吸着効率を向上させることができる。
また、本実施形態では、作用極104において、導電助剤104bの体積比率をバインダ104cの体積比率以上としている。これにより、作用極104における導電助剤104bの体積比率を確保することができ、導電助剤104bによる導電性を確保することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
本第2実施形態では、作用極104において、二酸化炭素吸着材104aおよび導電助剤104bとしてカーボン材を用いている。二酸化炭素吸着材104aに用いるカーボン材と導電助剤104bに用いるカーボン材は、同一のカーボン材であってもよく、異なるカーボン材であってもよい。本第2実施形態では、二酸化炭素吸着材104aおよび導電助剤104bが導電性粒子に含まれており、触媒が機能性粒子に含まれている。触媒は、作用極104による二酸化炭素の吸着および作用極104からの二酸化炭素の脱離の少なくともいずれかに伴って進行する化学反応を促進する。触媒については後述する。
二酸化炭素吸着材104aとしてカーボン材を用いる場合、二酸化炭素回収モードでは、作用極104で以下の反応式(1)に示す酸素還元反応と反応式(2)に示す炭酸イオン生成反応が進行し、作用極104に二酸化炭素が吸着される。つまり、酸素還元反応が作用極104における二酸化炭素吸着の契機となる。
2+2e-→O2 -・・・(1)
2 -+CO2→1/2O2+CO3 2-・・・(2)
作用極104では、混合ガスに含まれる酸素が電子を受け取って還元され、活性酸素の一種であるスーパーオキシドO2 -が生成する酸素還元反応が行われる。酸素還元反応で生成した活性酸素O2 -は反応性が高く、二酸化炭素を酸化して二酸化炭素の酸化物イオンである炭酸イオンCO3 2-を生成する炭酸イオン生成反応が行われ、二酸化炭素は作用極104に吸着される。つまり、作用極104での二酸化炭素吸着に、酸素還元反応で生成する活性酸素O2 -が寄与している。
二酸化炭素放出モードでは、作用極104で以下の反応式(3)および反応式(4)に示す炭酸イオン解離反応の少なくともいずれかが進行する。炭酸イオン解離反応では、炭酸イオンCO3 2-が解離され、二酸化炭素が生成する。つまり、炭酸イオン解離反応は作用極104における二酸化炭素脱離の契機となる。
CO3 2-+C→3CO2+4e-・・・(3)
2CO3 2-→O2+2CO2+4e-・・・(4)
図8に示すように、本第2実施形態の作用極104には、酸素還元反応および炭酸イオン解離反応の少なくとも一方を促進する触媒104dが添加されている。このような触媒104dとして、Al、Cu、Ni、Ag、AuおよびPtの少なくとも何れかからなる金属粒子、RuO2、MnO2およびMoO2の少なくとも何れかからなる金属酸化物粒子を用いることができる。例えば、触媒104dは導電助剤104bに担持させて用いることができる。
上述のように、本第2実施形態では触媒104dが機能性粒子に含まれている。触媒104dとして用いられる材料自体の導電性が導電性粒子よりも高い場合であっても、触媒104dは導電性を発揮させることを主目的としておらず、触媒104dは導電パスを形成しないことから、触媒104dは機能性粒子に含まれる。
本第2実施形態においても、導電性粒子である二酸化炭素吸着材104aおよび導電助剤104bの粒径は、機能性粒子である触媒104dの粒径以上となっている。このため、上記第1実施形態と同様、作用極104における導電性粒子の接触率を向上させることができ、体積あたりの導電率を向上させることができる。
また、導電助剤104bの粒径を二酸化炭素吸着材104aの粒径以上とすることで、導電助剤104bの体積比率を低減しても導電率を確保でき、さらに機能性粒子である触媒104dの体積比率を高くすることができる。これにより、機能性粒子である触媒104dの機能性を向上させることができ、作用極104の二酸化炭素吸着効率を向上させることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
本第3実施形態では、作用極104のバインダ104cとして導電性高分子を用いている。導電性高分子はπ結合を有する高分子であり、例えばポリアセチレン、ポリピロール、ポリ(p-フェニレン)、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)を例示できる。
本第3実施形態では、バインダ104cとして導電性高分子を用いることで、バインダ104c自体に導電性を持たせることができる。バインダ104cは、少なくとも導電助剤104bを被覆するように設けられている。導電性高分子からなるバインダ104cを用いることで、導電助剤104bの全体がバインダ104cで覆われていたとしても、バインダ104cを介して導電性を保つことが可能となっている。
導電助剤104bを被覆するバインダ104cは、導電助剤104bによって形成される導電パスを補完することができる。つまり、隣接する導電助剤104bの間に隙間があり、バインダ104cを介して接続されていたとしても、導電助剤104bおよびバインダ104cによって導電パスを形成することができる。導電性高分子からなるバインダ104cは導電助剤104bとともに導電骨格を構成している。
バインダ104cには、導電性高分子に加えて非導電性高分子が含まれていてもよい。非導電性高分子からなるバインダ104cは、導電性高分子からなるバインダ104cに比べて結着性に優れている。導電性高分子と非導電性高分子が含まれるバインダ104cは、導電助剤104bと接触する部分に導電性高分子を用い、それ以外の部分に非導電性高分子を用いることが望ましい。これにより、バインダ104cは、導電助剤104bと接触する部分で導電性を確保することができ、それ以外の部分では結着性を向上させることができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
例えば、上記各実施形態では、電気化学セル101によって混合ガスに含まれる二酸化炭素を吸着する例について説明したが、これに限らず、電気化学セル101によって混合ガスから酸素などの他の種類のガスを吸着するようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、作用極104において、導電性粒子の粒径を機能性粒子の粒径以上にするようにしたが、これに限らず、対極106において、導電性粒子の粒径を機能性粒子の粒径以上にしてもよい。この場合、導電性粒子には対極106の導電助剤が含まれ、機能性粒子には対極106の電気活性補助材が含まれる。
本明細書に開示された電気化学セルの特徴を以下の通り示す。
(項目1)
作用極(104)と対極(106)とを有するとともに、前記作用極と前記対極との間に電圧が印加されることで、前記作用極でガスを吸着および脱離する電気化学セルであって、
前記作用極および前記対極の少なくとも一方の電極は、互いに接触して導電パスを形成する導電性粒子(104b)と、前記導電パスを形成しない機能性粒子(104a)とを有しており、
前記導電性粒子の粒径は前記機能性粒子の粒径以上である電気化学セル。
(項目2)
前記機能性粒子は、前記ガスを吸着および脱離するガス吸着材である項目1に記載の電気化学セル。
(項目3)
前記機能性粒子は、前記作用極によるガスの吸着および前記作用極からのガスの脱離の少なくともいずれかに伴って進行する化学反応を促進する触媒(104d)である項目1または2に記載の電気化学セル。
(項目4)
前記電極はバインダ(104c)を有しており、
前記電極において、前記導電性粒子の体積比率は前記バインダの体積比率以上である項目1ないし3のいずれか1つに記載の電気化学セル。
(項目5)
前記バインダは導電性高分子を含んでおり、前記導電性粒子とともに前記導電パスを形成している項目4に記載の電気化学セル。
104 作用極
104a 二酸化炭素吸着材(機能性粒子、ガス吸着材)
104b 導電助剤(導電性粒子)
104c バインダ
104d 触媒
106 対極

Claims (5)

  1. 作用極(104)と対極(106)とを有するとともに、前記作用極と前記対極との間に電圧が印加されることで、前記作用極でガスを吸着および脱離する電気化学セルであって、
    前記作用極および前記対極の少なくとも一方の電極は、互いに接触して導電パスを形成する導電性粒子(104b)と、前記導電パスを形成しない機能性粒子(104a)とを有しており、
    前記導電性粒子の粒径は前記機能性粒子の粒径以上である電気化学セル。
  2. 前記機能性粒子は、前記ガスを吸着および脱離するガス吸着材である請求項1に記載の電気化学セル。
  3. 前記機能性粒子は、前記作用極によるガスの吸着および前記作用極からのガスの脱離の少なくともいずれかに伴って進行する化学反応を促進する触媒(104d)である請求項1に記載の電気化学セル。
  4. 前記電極はバインダ(104c)を有しており、
    前記電極において、前記導電性粒子の体積比率は前記バインダの体積比率以上である請求項1に記載の電気化学セル。
  5. 前記バインダは導電性高分子を含んでおり、前記導電性粒子とともに前記導電パスを形成している請求項4に記載の電気化学セル。
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