JP2024007517A - 光学部材及びその製造方法 - Google Patents

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Tetsuo Tsuchiya
裕子 鵜澤
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淳一 野本
Junichi Nomoto
佑樹 北中
Yuki Kitanaka
望月 章
Akira Mochizuki
厚生 内藤
Atsuo Naito
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Abstract

【課題】基材の面上に、低屈折率、且つ、平坦性や高耐久性に優れた反射防止膜を有する光学部材を提供する。【解決手段】基材2の面上に、フッ素含有無機膜5と、シリコン酸化膜6とを順次積層した反射防止膜3を有する光学部材1。特に、反射防止膜3を形成する工程において、金属有機酸塩と、金属水酸化物と、トリフルオロ酢酸と、トリフルオロ酢酸エチルと、必要に応じてポリマー溶液とを含む前駆体溶液を前記基材の面上に塗布して塗膜を形成した後に、塗膜を熱分解する、及び/又は、塗膜に対して光を照射することによって、フッ素含有無機膜5を形成する。【選択図】図1

Description

本発明は、光学部材及びその製造方法に関する。
例えば、レンズ等の光学部材では、表面に反射防止膜を設けることが一般的に行われている。反射防止膜は、低屈折率膜と高屈折率膜とを積層して形成される。下記特許文献1には、低屈折率膜の作製に各層の屈折率を適宜調整することで、可視光領域から近赤外線領域の屈折率を更に低くでき、反射防止帯域を更に広くすることが記載されている。
下記特許文献2には、低屈折率膜として、屈折率の低いフッ素系材料やナノSiO材料を用いたコーティング手法が記載されている。また、これまでに真空蒸着法を用いた光学薄膜が知られている。しかしながら、蒸着によるMgF膜、SiO膜では、屈折率がそれぞれ1.39、1.47程度であり、なお且つ、平坦性が悪く、耐久性にも課題がある。
一方、溶液法は、大面積コーティングや真空が不要であるなど生産性において優れた手法である。これまでに湿式プロセスの膜としては、酸化ケイ素(SiO)膜やフッ化マグネシウム(MgF)膜のようなアルカリ土類金属のフッ化物のナノ粒子をゾルゲル法で形成した成膜法が好ましい例として挙げられる。
例えば、下記特許文献3には、フッ化マグネシウム膜を形成する場合は、フッ酸/酢酸マグネシウム法により調製したゾル液をオートクレーブ中で約150℃の温度及び150kgf/cmの圧力の条件下で、高温加熱処理(オルガノサーマル処理)したナノ粒子を用いる方法が記載されている。しかしながら、結晶化した数nmから数十nm粒子からなる溶液を塗布して成膜するため、粒界等の表面平坦性が悪く、擦り試験等において耐久性に大きな課題がある。
また、下記特許文献4には、ナノ粒子のトリフルオロ酢酸マグネシウムを用いる方法が記載されているが、低屈折率膜の作製には至っていない。
一方、下記特許文献5には、波長246nm以下の光線を照射しながら加熱処理する工程を有するフッ化マグネシウム膜の製造方法が記載されている。しかしながら、紫外光照射と同時に200℃の加熱が必要であるため、室温での成膜は実現していない。
また、紫外光を照射した場合、基板やガラス材料が着色する課題も生じるため、透過率が低減する課題も生じる。以上のように、光学薄膜の作製では、平坦性や擦り試験などの耐久性に加えて、溶液法では加熱プロセスで必要である点が大きな課題となっている。
特開2004-163549号公報 特開2021-26163号公報 特開2005-284040号公報 特許第6768346号公報 特開2011-46595号公報
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、基材の面上に、低屈折率、且つ、平坦性や高耐久性に優れた反射防止膜を有する光学部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 基材の面上に、フッ素含有無機膜と、シリコン酸化膜とを順次積層した反射防止膜を有する光学部材。
〔2〕 前記基材及び前記反射防止膜の間にアルカリ土類金属酸化膜を有することを特徴とする前記〔1〕の光学部材。
〔3〕 前記反射防止膜の屈折率(波長550nm)が1.15~1.38であることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の光学部材。
〔4〕 前記アルカリ土類金属酸化膜の厚みが1~300nmであり、
前記フッ素含有無機膜の厚みが10~1000nmであり、
前記シリコン酸化膜の厚みが1~100nmであることを特徴とする前記〔1〕~前記〔3〕のいずれかに記載の光学部材。
〔5〕 前記フッ素含有無機膜は、MgF、CaF、BaF、NaF、LiFの中から選ばれる単層膜と複層膜と複合コンポジット膜との何れかからなることを特徴とする前記〔1〕~前記〔4〕のいずれかに記載の光学部材。
〔6〕 前記フッ素含有無機膜は、酸化物を含むことを特徴とする前記〔5〕に記載の光学部材。
〔7〕 前記アルカリ土類金属酸化膜がMgOであることを特徴とする前記〔1〕~前記〔6〕のいずれかに記載の光学部材。
〔8〕 前記シリコン酸化膜の表面粗さが二乗平均平方根粗さ(RMS)で1.0nm以下であることを特徴とする前記〔1〕~前記〔7〕のいずれかに記載の光学部材。
〔9〕 基材の面上に、フッ素含有無機膜と、シリコン酸化膜とを順次積層した反射防止膜を形成する工程を含む光学部材の製造方法。
〔10〕 前記反射防止膜を形成する工程において、金属有機酸塩と、金属水酸化物と、トリフルオロ酢酸と、トリフルオロ酢酸エチルと、必要に応じてポリマー溶液とを含む前駆体溶液を前記基材の面上に塗布して塗膜を形成した後に、
前記塗膜を熱分解する、及び/又は、前記塗膜に対して光を照射することによって、前記フッ素含有無機膜を形成することを特徴とする前記〔9〕に記載の光学部材の製造方法。
〔11〕 前記反射防止膜を形成する工程において、金属有機酸塩、金属アセチルアセトナートと、金属水酸化物と、金属酸化物とのいずれか一つもしくは、混合物にトリフルオロ酢酸と、トリフルオロ酢酸エチルと、シリコンを含むポリマー溶液とを含む前駆体溶液を前記基材の面上に塗布して塗膜を形成した後に、
前記塗膜を熱分解する、及び/又は、前記塗膜に対して光を照射することによって、前記フッ素含有無機膜を形成することを特徴とする前記〔9〕又は前記〔10〕に記載の光学部材の製造方法。
〔12〕 前記塗膜を室温~500℃の範囲で加熱処理した後に、前記塗膜に対して光を照射することを特徴とする前記〔10〕又は前記〔11〕に記載の光学部材の製造方法。
〔13〕 前記光として、266~450nmの範囲にピーク波長を含む光を用いることを特徴とする前記〔10〕又は前記〔11〕に記載の光学部材の製造方法。
〔14〕 前記反射防止膜を形成する工程において、前記フッ素含有無機膜の面上に、シリコンを含むポリマー溶液を塗布して塗膜を形成した後に、
前記塗膜を熱分解する、及び/又は、前記塗膜に対して光を照射することによって、前記シリコン酸化膜を形成することを特徴とする前記〔9〕~前記〔13〕のいずれかに記載の光学部材の製造方法。
〔15〕 前記基材の面上に、アルカリ土類金属酸化膜を形成する工程をさらに含むことを特徴とする、前記〔9〕~前記〔14〕のいずれかに記載の光学部材の製造方法。
以上のように、本発明によれば、基材の面上に、低屈折率、且つ、平坦性や高耐久性に優れた反射防止膜を有する光学部材及びその製造方法を提供することが可能である。
本発明の一実施形態に係る光学部材の構成を示す断面図である。 実施例1、参考例1及びBK7の透過率を測定した結果を示すグラフである。 図3(a)は、実施例4の膜表面のSEM像であり、図3(b)は、実施例4の断面のSEM像である。 実施例1,6,9及び参考例1のXRD測定の結果を示すグラフである。 実施例6のXRD測定の結果を示すグラフである。 図6(a)は、実施例8の膜表面のSEM像であり、図6(b)は、実施例8の断面のSEM像である。 実施例9のXRD測定の結果を示すグラフである。 図8(a)は、参考例7の膜表面のSEM像であり、図8(b)は、参考例7の断面のSEM像グラフである。 図9(a)は、参考例12の膜表面のSEM像であり、図9(b)は、参考例12の断面のSEM像である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
(光学部材)
先ず、本発明の一実施形態として、例えば図1に示す光学部材1について説明する。
なお、図1は、光学部材1の構成を示す断面図である。
本実施形態の光学部材1は、図1に示すように、基材2の面上に反射防止膜3が形成された反射防止膜付き光学部材である。反射防止膜3は、基材2の面上に、少なくともフッ素含有無機膜5と、シリコン酸化膜6とを順次積層した積層膜により構成されており、例えば、基材2の面上にアルカリ土類金属酸化膜4を介して、フッ素含有無機膜5及びシリコン酸化膜6が形成されている。すなわち、アルカリ土類金属酸化膜4は、例えば、基材2及び反射防止膜3の間に設けられている。反射防止膜3は、フッ素含有無機膜5及びシリコン酸化膜6で構成されている。本実施形態において、基材2の面上とは、基材2と直接接する構成に限定されず、基材2と直接接しない構成であってもよい。例えば、他の層を介して基材2の主面の上方に形成されていればよい。
基材2ついては、本実施形態に係る反射防止膜3が形成可能であれば特に限定されるものではない。具体的に、基材2の材料としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、石英ガラス、低温焼成積層セラミックス、ホウケイ酸塩ガラス、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルイミド(PEI)等が挙げられる。
また、基材2の材料としては、コストや用途の観点から、例えば、低温成膜が可能なポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、PVA樹脂、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン6(ポリアミド)、エンジニアリングプラスチック、アセタール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ウレタン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、フッ素化樹脂共重合体等が挙げられる。
その中でも特に、基材2の材料としては、アルミナ、ジルコニア、低温焼成積層セラミックス、液晶ポリマー、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドを用いることが好ましい。
また、基材2ついては、金属の上に、絶縁性の保護膜を形成したものを用いてもよい。金属としては、特に限定されないものの、例えば、Ti、Al、Cu、Fe、Cr、Ni、W、Zrなどが挙げられる。また、基材2の表面には、目的に応じて、めっきや電極、絶縁層などを設けてもよい。
基材2の耐熱温度は、150℃以下であることが好ましい。なお、耐熱温度とは、融点、ガラス転移点、分解温度などの樹脂基材が変質、状態変化などが起こる温度であって、これらの中で最も低い温度のことを意味する。
基材2の厚みについては、用途に応じて適宜調整することが可能である。したがって、基材2の厚みについては、特に限定されないものの、例えば50~100mmであることが好ましい。また、基材2の応力緩和のためには、50~500μmであることがより好ましい。
アルカリ土類金属酸化膜4としては、例えば酸化マグネシウム(MgO)膜を好適に用いることができる。アルカリ土類金属酸化膜4の厚みは、1~300nmであることが好ましい。アルカリ土類金属酸化膜4が表面に形成された基材1を基板と称する場合がある。
フッ素含有無機膜5としては、例えば、MgF、CaF、BaF、NaF、LiFの中から選ばれる単層膜と複層膜と複合コンポジット膜との何れかからなることが好ましく、その中でも特に、MgF膜を好適に用いることができる。本実施形態において、複合コンポジット膜は、MgF、CaF、BaF、NaF及びLiFからなる群から選択される複数の材料が組み合わされた複合材料を意味する。また、フッ素含有無機膜5の厚みは、10~1000nmであることが好ましく、より好ましくは1~500nmあり、さらに好ましくは10~100nmである。
フッ素含有無機膜5は、アモルファス組織を主体的に含み、その表面から基材2の方向に向かって微結晶からアモルファス組織となる傾斜組織を有している。
さらに、フッ素含有無機膜5は、酸化物を含んでいてもよい。酸化物としては、アルカリ土類金属酸化膜4やシリコン酸化膜6と同じ酸化物に限らず、それ以外の酸化物を含んでいてもよい。
シリコン酸化膜6は、SiO膜であり、反射防止膜3を形成する積層膜の中で最上層に位置して、平坦な面を形成している。シリコン酸化膜6の厚みは、1~100nmであることが好ましい。特に、1~10nmのシリコン酸化膜6を数回積層させることで、対候性が向上させることが可能である。また、シリコン酸化膜6の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で1.0nm以下であることが好ましい。
反射防止膜3の屈折率(波長550nm)は、全体として1.15~1.38であることが好ましい。また、SiO膜の屈折率は、1.45以下の低屈折率を示し、且つ対候性にも優れた特性を有する。1.40以下の低屈折率の応用では、フッ素含有無機膜5やSiOナノ粒子を含んでもよい。
以上のような構成を有する本実施形態の光学部材では、基材2の面上に、低屈折率、且つ、平坦性や高耐久性に優れた反射防止膜3を設けることが可能である。
(光学部材の製造方法)
次に、上記光学部材1の製造方法について説明する。
上記光学部材1は、基材の面上に、フッ素含有無機膜と、シリコン酸化膜とを順次積層した反射防止膜を形成する工程を含む方法により製造可能である。
本実施形態では、基材2となるガラス基板の面上に、アルカリ土類金属酸化膜4となるMgO膜と、フッ素含有無機膜5となるMgF膜と、シリコン酸化膜6であるSiO膜とを順次積層した積層膜により反射防止膜3を形成する場合を例に挙げて説明する。
上記光学部材1を製造する際は、先ず、基材2となるガラス基板の面上に、アルカリ土類金属酸化膜4となるMgO膜を形成する。具体的に、MgO膜は、金属有機化合物の熱分解法や光照射法を用いて形成する。
金属有機化合物としては、例えば、金属有機酸塩、β-ジケトナート、金属アルコキシド、金属酢酸塩、金属2-エチルヘキサン酸塩、金属アセチルアセトナート、金属ナフテン酸塩などが挙げられるが、溶媒に溶解する金属有機化合物であれば、特に制限なく用いることができる。
溶液の塗布方法は、特に限定されない。スラリーの塗布方法としては、例えば、アプリケーター方式、ブレードコート方式、グラビアコート方式、スプレーコート方式、スピンコート方式、刷毛塗りなどが挙げられる。
光反応でMgO膜を形成する場合、塗膜に光(紫外光など)を照射することで行う。光反応で用いる光源は、レーザ光源又はランプ光源を用いることができる。特に、ガラス材料への紫外線照射は、膜の酸素欠損を生じさせることから基材2の透過率を低下させる。このため、本実施形態では、低屈折率層を成膜する際の光反応条件として、266~450nmの範囲にピーク波長を有する光を用いることが好ましい。
レーザ光源としては、XeCl、XeFから選ばれるエキシマレーザ又は半導体レーザの高調波を用いることができる。ランプ光源としては、キセノンフラッシュランプやメタルハライドランプに紫外線フィルターを組み合わせたものを好適に用いることができる。
また、光照射は、大気中にて、室温(20~30℃)でレーザ照射又はランプ照射を行うことが好ましい。レーザ照射によって、MgO膜の形成が可能である。また、ガラスやフィルム等の幅広い基材2を使用することができる。基材2の熱変形等が起こらない温度で基材2を加熱した後に照射することもできる。
光反応により形成されたMgO膜は、膜の表面から基材2の方向に向かって結晶粒が大きな組織から小さな組織となる傾斜組織を示す膜となる。また、光照射により基材2側から膜表面に向かって、結晶粒が大きな組織から小さな組織となる傾斜組織を形成することができる。
なお、MgO膜(アルカリ土類金属酸化膜4)を形成する際は、上述した塗膜に対して熱分解と光照射との何れか一方に限らず、塗膜に対して熱分解と光照射との両方を行ってもよい。
次に、MgO膜(アルカリ土類金属酸化膜4)が形成された基材2の面上に、フッ素含有無機膜5を形成する。具体的には、金属有機酸塩、金属アセチルアセトナート、金属酸化物、金属水酸化物のいずれかもしくは複合原料に、必要に応じて含まれるトリフルオロ酢酸と、トリフルオロ酢酸エチルと、必要に応じてポリマー溶液とを含む前駆体溶液を基材2の面上に塗布して塗膜を形成した後に、塗膜を熱分解する、及び/又は、塗膜に対して光を照射することによって、フッ素含有無機膜5を形成する。本実施形態において、基材2の面上に塗布した塗膜を熱分解する工程を熱分解工程と称する場合があり、塗膜に対して光を照射する工程を光照射工程と称する場合があり、熱分解工程及び光照射工程を総称して塗膜処理工程という場合がある。すなわち、塗膜処理工程は、熱分解工程及び光照射工程の一方又は双方を有する。
前駆体溶液は、例えば、金属2-エチルヘキサン酸塩、金属アセチルアセトナート、金属酸化物、金属ナフテン酸塩のいずれか、或いは、金属酸化物、金属水酸化物、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸エチル、若しくは、ポリマー溶液やシランカップリング剤を含んでもよい。トリフルオロ酢酸エチルの好ましい量は、0.01~10ml、より好ましくは0.5~2mlである。
前駆体溶液の塗布方法は、特に限定されない。スラリーの塗布方法としては、例えば、アプリケーター方式、ブレードコート方式、グラビアコート方式、スプレーコート方式、スピンコート方式、刷毛塗りなどが挙げられる。
熱分解法では、フッ素の分解反応を避けるため、先ず350℃、より好ましくは300℃以下で反応させることが好ましい。特に、急激な粒成長や結晶成長に伴う粒界の形成を防ぐために結晶成長を抑制することが有効である。このような目的から、250℃~300℃で数秒~120分程度の反応後、300℃~500℃の温度(例えば、350℃、400℃、500℃)、で30秒以上60分以下、例えば1分以上30分以下の反応、生産性の観点から1分程度の反応により、結晶成長を抑制しつつ、原料に含まれる有機分解を促進することで、低屈折率を有するフッ素含有無機膜5が形成することが好ましいが、250℃~300℃の温度での反応(予備加熱)をせずに、300℃~500℃の温度、好ましくは400℃~500℃の温度での加熱を行ってもよい。より好ましくは、熱分解は、400℃~500℃の温度で30秒以上の加熱を含むように行う。熱分解のための加熱は、上記温度範囲における異なる複数の温度で合計時間が上記時間の範囲内となるように行ってもよい。このとき、400℃以上500℃以下での温度範囲における加熱時間が30秒以上となるように行うことが好ましい。通常、500℃以上で長時間焼成することでフッ素の離脱など分解反応が起こる。こうした分解反応は、高温高湿試験の際前後で透過率の変化の原因となるため、組成を制御した焼成温度の調整は重要である。本実施形態に係る光学部材の製造方法では、トリフルオロ酢酸エチルを含む溶液を用いることで500℃未満の低い焼成温度での熱分解や後述する低いエネルギーの光照射により緻密膜を得ることができる。これらを利用して、多孔質と緻密膜の積層構造を有する光学薄膜を作製することが可能となる。形成されるフッ素含有無機膜5が緻密膜であると耐久性の観点で好ましい。また、本実施形態において緻密であるとは、SEM観察により空孔が見られない膜構造、または粒界が見られたとしてもまた、粒子と粒子が強く結合した膜構造であることを意味する。形成されるフッ素含有無機膜5が多孔質を有すると、緻密化した構造であるものと比べ、耐久性が劣る。そのため、フッ素含有無機膜5としては、多孔質でないものが好ましい。
光反応でフッ素含有無機膜5を形成する場合、塗膜に光(紫外光など)を照射することで行う。光反応で用いる光源は、レーザ光源又はランプ光源を用いることができる。特に、ガラス材料への紫外線照射は、膜の酸素欠損を生じさせることから基材2の透過率を低下させる。このため、本実施形態では、低屈折率層を成膜する際の光反応条件として、266~450nmの範囲にピーク波長を有する光を用いることが好ましい。
レーザ光源としては、XeCl、XeFから選ばれるエキシマレーザ又は半導体レーザの高調波を用いることができる。ランプ光源としては、キセノンフラッシュランプやメタルハライドランプに紫外線フィルターを組み合わせたものを好適に用いることができる。
また、光照射は、大気中にて、室温(20℃~30℃)から500℃の範囲でレーザ照射又はランプ照射を行うことが好ましい。光照射によって、MgF膜の形成が可能である。また、ガラスやフィルム等の幅広い基材2を使用することができる。基材2の熱変形等が起こらない温度で基材2を加熱した後に照射することもできる。光のエネルギーを多段階にすることで傾斜組織を有する膜を作製することができる。
光反応により形成されたMgF膜は、膜の表面から基材2の方向に向かって結晶粒が大きな組織から小さな組織となる傾斜組織を示す膜となる。また、光照射により基材2側から膜表面に向かって、結晶粒が大きな組織から小さな組織となる傾斜組織を形成することができる。また、特に上記の通り、トリフルオロ酢酸エチルを含む溶液を用いることで緻密膜や多孔質な膜を作製することができる。
また、フッ素含有無機膜5を形成する際は、上述した前駆体溶液にシリコンを含むポリマー溶液を含有させてもよい。シリコンを含むポリマー溶液には、後述するシリコン酸化膜6を形成する際に用いられるシリコンを含むポリマー溶液を用いることができる。
また、フッ素含有無機膜5を形成する際は、上述した塗膜に対して熱分解と光照射との何れか一方に限らず、塗膜に対して熱分解と光照射との両方を行ってもよい。
また、フッ素含有無機膜5を形成する際は、上述した塗膜を加熱処理した後に、塗膜に対して光照射を行ってもよい。
次に、MgF膜(フッ素含有無機膜5)の面上に、シリコン酸化膜6であるSiO膜を形成する。具体的には、フッ素含有無機膜5の面上に、シリコンを含むポリマー溶液を塗布して塗膜を形成した後に、塗膜を熱分解する、及び/又は、塗膜に対して光を照射することによって、SiO膜(シリコン酸化膜6)を形成する。
具体的に、SiO膜は、金属有機化合物の熱分解法や光照射法を用いて形成する。金属有機化合物としては、ポリマー系のシリコンを含む金属有機化合物を使うことができ、例えば、ポリカルボシラン、ポリカルボシラザンなどが挙げられるが、溶媒に溶解する金属有機化合物であれば、特に制限なく用いることができる。
また、金属酸化物の平均粒径は、5~50nmであることが好ましく、より好ましくは5~20nmである。
スラリー中の溶媒は、金属有機化合物を溶解する溶媒であれば特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、アセチルアセトナート、エチレングリコールなどが挙げられる。
溶液の塗布方法は、特に限定されない。スラリーの塗布方法としては、例えば、アプリケーター方式、ブレードコート方式、グラビアコート方式、スプレーコート方式、スピンコート方式、刷毛塗りなどが挙げられる。
熱分解法では、有機官能基やカーボンの分解反応を促進するため、350℃、好ましくは400℃で反応させることが好ましい。特に、急激な粒成長や結晶成長に伴う粒界の形成を防ぐために結晶成長を抑制することが有効である。このような目的から、250℃~300℃で数秒~120分程度の反応後、400℃~500℃で1分から30分の反応、生産性の観点から1分程度の反応により、対候性に優れたSiO膜が形成される。
光反応でSiO膜を形成する場合、ポリカルボシランからなる塗膜に光(紫外光など)を照射することで行う。光反応で用いる光源は、レーザ光源又はランプ光源を用いることができる。特に、SiO膜やガラス基材への紫外線照射は、膜や基材の酸素欠損を生じさせることから、基材2の透過率を低下させる。このため、本実施形態では、低屈折率層を成膜する際の光反応条件として、266~450nmの範囲にピーク波長を有する光を用いることが好ましい。
レーザ光源としては、XeCl、XeFから選ばれるエキシマレーザ又は半導体レーザの高調波を用いることができる。ランプ光源としては、キセノンフラッシュランプやメタルハライドランプに紫外線フィルターを組み合わせたものを好適に用いることができる。
また、光照射は、大気中にて、室温(20℃~30℃)から500℃でレーザ照射又はランプ照射を行うことが好ましい。光照射によって、SiO膜の生成が可能であり、また、ガラスやフィルム等の幅広い基材2を使用することができる。基材2の熱変形等が起こらない温度で基材2を加熱した後に照射することもできる。
また、光反応により形成されたSiO膜は、膜の表面から基材2の方向に結晶粒が大きな組織から小さな組織となる傾斜組織を示す膜となる。また、光照射により基材2側から膜表面に向かって、結晶粒が大きな組織から小さな組織となる傾斜組織を形成することができる。
以上のような工程を経ることによって、基材2となるガラス基板の面上に、アルカリ土類金属酸化膜4となるMgO膜を含んでもよいフッ素含有無機膜5となるMgF膜と、シリコン酸化膜6であるSiO膜とを順次積層した積層膜により反射防止膜3を形成することが可能である。
本実施形態の光学部材1の製造方法では、基材2の面上に、低屈折率、且つ、平坦性や高耐久性に優れた反射防止膜3を形成することが可能である。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
本実施例(及び参考例)では、下記溶液A~Eを作製した。
(溶液A)EMODMg溶液(高純度化学社製)をトルエンで2倍に希釈した溶液。
(溶液B)Mg(OH):0.04gにTFA:0.4ml、エタノール:1ml、トリフルオロ酢酸エチル:1mlを混合した溶液。
(溶液C)ポリカルボシラン:0.005gにトルエン:2mlで溶解した溶液。
(溶液D)TEOS:塩酸:水:加水分エタノール=1:0.01:2:6の割合で混合し6時間の加水分解反応により作製したSiOナノ粒子溶液。
(溶液E)TECNAN社のSiOナノ粒子0.063gを溶液2mlの割合で混合し、遊星ボールミルでエタノール溶媒に分散させたSiOナノ粒子溶液。
(実施例1)
溶液AをBK7のガラス基材上に塗布した後、300℃で5分の加熱、次いで、500℃で10分の加熱を行うことで、ガラス基材上にMgO膜を形成した。次に、溶液BをMgO膜が形成されたガラス基材上にスピンコートで塗布した後、250℃で30秒の加熱、次いで、450℃で30秒の加熱を行うことで、MgF膜を形成した。
図2に示すように、このようにして得られた積層膜の350nm、400nm、500nmの透過率は、それぞれ94.5%、95.0%、95.7%であった。また、図4に示すように、XRD測定より積層膜は結晶相を含まなかった。尚、透過率は、分光光度計(島津 UV-3150)を用いた透過率測定により行った。
(実施例2)
溶液CをイーグルXGのガラス基材上に塗布した後、500℃で10分の加熱を行うことで、ガラス基材上にSiO膜を形成した。そして、このSiO膜の表面粗さ(RMS)をX線反射率測定による臨界角及び傾きから求めた。
その結果、SiO膜の表面粗さは、ガラス基材の表面粗さが1.5nmであるのに対して、0.74nmまで低減し、SiO膜の平坦化が示された。また、SiO膜の350nm、400nm、500nmの透過率は、それぞれ88.2%、89.8%、90.8%であった(イーグルXGの透過率:89.6%)。また、SiO膜の屈折率(550nm)は、1.43を示した。屈折率はオリンパスUSPMを用いて反射率を測定後、薄膜計算ソフト(Essential Macleod)を用いて算出した。
(実施例3)
実施例1で作製した積層膜上に、溶液Cを塗布した後、100℃で10分の加熱、次いで、500℃で10分の加熱を行う工程を2回繰り返すことで、SiO膜を形成し、実施例3の積層膜を得た。
XRD測定より、積層膜はアモルファスであった。また、このようにして得られた積層膜の350nm、400nm、500nmの透過率は、それぞれ94.9%、95.5%、95.5%であった。また、積層膜(550nm)の屈折率は、1.28を示した。また、200gの荷重を加えたキムワイプの擦り試験(20往復)により傷は生じなかった。
(実施例4)
基材に溶液Bを塗布し、450℃30秒の加熱の代わりに、350℃30分で加熱し、MgF膜を形成した以外は、実施例1と同じ条件にて実施例4の積層膜を得た。得られた膜の表面及び断面をSEMにより観察した。図3(a)は、実施例4の膜表面のSEM像であり、図3(b)は、実施例4の断面のSEM像である。得られたMgF膜は、図3に示すように緻密であった。
(実施例5)
実施例3の溶液Bの処理条件で、トリフルオロ酢酸エチルを1mlから0mlに変更し、250℃30秒及び450℃30秒の加熱の代わりに、250℃30分及び500℃30分の加熱をした点、次いで、溶液Cを塗布後、100℃10分及び500℃10分の加熱を2回行う代わりに、450℃で30分の加熱を1回行う工程で、SiO膜を形成し、実施例5の積層膜を得た。得られた膜について60℃、湿度90%、高温高湿試験を実施した結果、試験前後で波長400~700nmにおける透過率の変化はなかった。
(実施例6)
実施例3の溶液Bの処理条件で、トリフルオロ酢酸エチルを1mlから1.5mlに変更し、450℃の加熱の代わりに、100℃で加熱、次いで、室温で300~450nmの波長範囲で主波長が365nmの光を照射するランプ光源を用いて、10分の光照射により、MgF膜を形成した以外は、実施例3と同じ条件にて実施例6の積層膜を得た。
粉末XRD測定より、MgF膜のピークは観測されなかった。一方、図4及び図5に示すように、斜入射測定ではMgF相が確認された。また、このようにして得られた積層膜の350nm、400nm、500nmの透過率は、それぞれ93.5%、95.3%、95.5%であった。
(実施例7)
実施例3の溶液Bの処理条件で、トリフルオロ酢酸エチルを1mlから2.0mlに変更し、450℃の加熱の代わりに、100℃で加熱、次いで、室温で300~450nmの波長範囲で主波長が365nmの光を照射するランプ光源を用いて、10分の光照射により、MgF膜を形成した以外は、実施例3と同じ条件にて実施例7の積層膜を得た。
粉末XRD測定より、MgF膜のピークは観測されなかった。一方、斜入射測定ではMgF相が確認された。また、このようにして得られた積層膜の350nm、400nm、500nmの透過率は、それぞれ93.9%、95.5%、95.4%であった。
(実施例8)
実施例3の溶液Bの処理条件で、450℃30秒の加熱の代わりに、250℃30秒で加熱、次いで、室温で300~450nmの波長範囲で主波長が365nmの光を照射するランプ光源を用いて、10分の光照射により、MgF膜を形成した以外は、実施例3と同じ条件にて実施例8の積層膜を得た。
粉末XRD測定より、MgF膜のピークは観測されなかった。一方、斜入射測定ではMgF相が確認された。得られたMgF膜は、図6に示すように緻密化した膜が生成した。
(実施例9)
実施例3の溶液Bの処理条件で、トリフルオロ酢酸エチルを1mlから2.0mlに変更し、450℃の加熱の代わりに、(加熱を行わずに、)室温で300~450nmの波長範囲で主波長が365nmの光を照射するランプ光源を用いて、20分の光照射により、MgF膜を形成した以外は、実施例3と同じ条件にて実施例9の積層膜を得た。図7は、実施例9のXRD測定の結果を示すグラフである。
粉末XRD測定より、MgF膜のピークは観測されなかった。一方、図4及び図7に示すように、斜入射測定ではMgF相が確認された。また、このようにして得られた積層膜の350nm、400nm、500nmの透過率は、それぞれ93.0%、95.4%、95.9%であった。
(実施例10)
実施例3の溶液Cの処理条件で、500℃で10分の加熱を行う代わりに、(加熱を行わずに、)室温で300~450nmの波長範囲で主波長が365nmの光を照射するランプ光源を用いて、20分の光照射により、SiO膜を形成した以外は、実施例3と同じ条件にて実施例10の積層膜を得た。
このようにして得られた積層膜の350nm、400nm、500nmの透過率は、それぞれ90.1%、91.3%、92.0%であった。
(実施例11)
実施例1の溶液Aの処理条件で、300℃で5分の加熱、次いで、500℃で10分の加熱を行う代わりに、(加熱を行わずに、)室温で300~450nmの波長範囲で主波長が365nmの光を照射するランプ光源を用いて、20分の光照射により、MgO膜を形成した。
また、実施例1の溶液Bの処理条件で、450℃で30秒の加熱を行う代わりに、(加熱を行わずに、)室温で300~450nmの波長範囲で主波長が365nmの光を照射するランプ光源を用いて、20分の光照射により、MgF膜を形成した。
また、実施例3の溶液Cの処理条件で、500℃で10分の加熱を行う代わりに、(加熱を行わずに、)室温で300~450nmの波長範囲で主波長が365nmの光を照射するランプ光源を用いて、20分の光照射を行う工程を2回繰り返すことで、SiO膜を形成し、実施例11の積層膜を得た。
XRD測定より、積層膜は結晶層を含まなかった。また、このようにして得られた積層膜の350nm、400nm、500nmの透過率は、それぞれ91.0%、93.8%、95.4%であった。また、200gの荷重を加えたキムワイプの擦り試験(20往復)により傷は生じなかった。
(実施例12)
溶液CをイーグルXGのガラス基材上に塗布した後、室温で300~450nmの波長範囲で主波長が365nmの光を照射するランプ光源を用いて、20分の光照射を行うことで、ガラス基材上にSiO膜を形成した。200gの荷重を加えたキムワイプの擦り試験(20往復)により傷は生じなかった。
(実施例13)
溶液CをBK7のガラス基材上に塗布した後、室温で300~450nmの波長範囲で主波長が365nmの光を照射するランプ光源を用いて、20分の光照射を行うことで、ガラス基材上にSiO膜を形成した。200gの荷重を加えたキムワイプの擦り試験(20往復)により傷は生じなかった。
(実施例14)
実施例3の溶液Bの処理条件で、トリフルオロ酢酸エチルを1mlから0mlとし基板に塗布後、450℃の加熱の代わりに、250℃、10分360℃,10分でMgFを形成し、実施例14のMgF膜/基板を得た。すなわち、実施例14では、基材上にアルカリ土類金属酸化膜(MgO膜)を形成せずに、基材に接するようにフッ素含有無機膜(MgF膜)を形成した。実施例2と同様の方法で反射率より算出した膜の屈折率は、1.238(550nm)となった。また、得られた膜について実施例5と同様の方法で、60℃、湿度90%、高温高湿試験を実施した結果、試験前後で波長400~700nmにおける透過率の変化はなかった。
(実施例15)
溶液Bの処理条件で、トリフルオロ酢酸エチルを1mlから0mlとし直接基板にコートし、450℃の加熱の代わりに、250℃30分、500℃30分、次いで、溶液Cを塗布後、450℃で30分の加熱を行う工程で、SiO膜を形成し、実施例15のSiO/MgF/基板からなる積層膜を得た。すなわち、実施例15では、基材上にアルカリ土類金属酸化膜(MgO膜)を形成せずに、基材に接するようにフッ素含有無機膜(MgF膜)を形成した。実施例2と同様の方法で反射率より算出した膜の屈折率は、1.256(550nm)となった。また、得られた膜について実施例5と同様の方法で、60℃、湿度90%、高温高湿試験を実施した結果、試験前後で波長400~700nmにおける透過率の変化はなかった。
(参考例1)
BK7のガラス基材上に、真空蒸着によりMgF膜を形成した。図2に示すように、このようにして得られたMgF膜は、結晶化し、400nm、500nmの透過率は、それぞれ93.7%、94.6%であった。また、真空蒸着によりSiO膜を形成した。そして、このSiO膜の表面粗さ(RMS)をX線反射率測定による臨界角及び傾きから求めたところ、基材の表面粗さが2.65nmとなった。
(参考例2)
実施例1の溶液Bの処理条件で、トリフルオロ酢酸エチルを添加しない以外は、実施例1と同じ条件にて参考例2の積層膜を得た。このようにして得られた積層膜は、200gの荷重を加えたキムワイプの擦り試験(20往復)により傷が生じた。
(参考例3)
実施例3の溶液Cの処理条件で、500℃で10分の加熱を行う代わりに、250℃で10分の加熱を行い、次いで、室温で高圧水銀ランプを用いて、20分の光照射により、SiO膜を形成した以外は、実施例3と同じ条件にて参考例3の積層膜を得た。
このようにして得られた積層膜は、薄茶色に着色が見られ、350nm、400nm、500nmの透過率は、それぞれ87.4%、90.5%、91.5%であった。
(参考例4)
実施例3の溶液Cの処理条件で、500℃で10分の加熱を行う代わりに、(加熱を行わずに、)室温でKrFレーザ(波長248nm)を用いて、50mJ/cmの光照射により、SiO膜を形成した以外は、実施例3と同じ条件にて参考例4の積層膜を得た。
このようにして得られた積層膜は、薄茶色に着色が見られ、350nm、400nm、500nmの透過率は、それぞれ73.5%、85.3%、88.6%であった。
(参考例5)
実施例3の溶液Cの処理条件で、500℃で10分の加熱を行う代わりに、(加熱を行わずに、)室温で高圧水銀ランプを用いて、20分の光照射により、SiO膜を形成した以外は、実施例3と同じ条件にて参考例5の積層膜を得た。
このようにして得られた積層膜は、薄茶色に着色が見られ、350nm、400nm、500nmの透過率は、それぞれ82.7%、88.1%、89.3%であった。
(参考例6)
実施例8の溶液A,B,Cの各処理条件で、20分の光照射を5分の光照射とした以外は、実施例8と同じ条件にて参考例6の積層膜を得た。
このようにして得られた積層膜は、200gの荷重を加えたキムワイプの擦り試験(20往復)により傷が生じた。
(参考例7)
実施例4の溶液Bの処理条件で、トリフルオロ酢酸エチルを1mlから0mlとして、MgF膜を形成した以外は、実施例4と同じ条件にてMgF膜を得た。得られた膜の表面及び断面をSEMにより観察した。図8(a)は、参考例7の膜表面のSEM像であり、図8(b)は、参考例1の断面のSEM像である。図8に示すように、参考例7では、MgF膜は、緻密化した膜が形成されているとは言えず、ナノ粒子からなる多孔質膜であった。
(参考例8)
実施例5のSiO膜の形成条件で、550℃、30分で積層膜を作製した以外は実施例5と同様の操作を行った。得られた膜について実施例5と同様の方法で高温高湿試験を実施した結果、試験前後で波長500nmにおける透過率が99.68%から99.61%に変化した。
(参考例9)
実施例5のSiO膜の形成条件で、溶液Cの代わりに、溶液Dを用いた以外は実施例5と同様の操作を行った。得られた膜について高温高湿試験を実施した結果、試験前後で透過率が変化した。また、200gの荷重を加えたキムワイプの擦り試験(20往復)により傷が生じた。
(参考例10)
実施例5のSiO膜の形成条件で、溶液Cの代わりに、溶液Eを用いた以外は実施例5と同様の操作を行った。得られた膜について高温高湿試験を実施した結果、試験前後で透過率が変化した。また、200gの荷重を加えたキムワイプの擦り試験(20往復)により傷が生じた。
(参考例11)
実施例8の溶液Bの処理条件で、トリフルオロ酢酸エチルを1mlから0mlとした以外は、実施例8と同様の操作を行い、MgF膜を形成した。また、形成したMgFをSEMにより観察した。図9(a)は、参考例11の膜表面のSEM像であり、図9(b)は、参考例12の断面のSEM像である。図9に示すように、参考例11のMgF膜としては、緻密化した膜が形成されているとは言えず、ナノ粒子集合体膜が生成した。
(参考例12)
実施例12のSiO膜の形成条件で、溶液Cの代わりに、溶液Dを用いた以外は実施例5と同様の操作を行った。すなわち、SiO膜の成膜以外の条件は、実施例5と同様にした。得られた膜について高温高湿試験を実施した結果、試験前後で透過率が変化した。また、200gの荷重を加えたキムワイプの擦り試験(20往復)により傷が生じた。
(参考例13)
実施例12のSiO膜の形成条件で、溶液Cの代わりに、溶液Eを用いた以外は実施例5と同様の操作を行った。すなわち、SiO膜の成膜以外の条件は、実施例5と同様にした。得られた膜について高温高湿試験を実施した結果、試験前後で透過率が変化した。また、200gの荷重を加えたキムワイプの擦り試験(20往復)により傷が生じた。
以上説明したように、本実施形態に係る光学薄膜は、高透過率と低屈折率でありながら、平坦性と擦り試験に対する高耐久性を有することを示した。また、光反応プロセスを用いることで基材の劣化を抑制しつつ高温の加熱なしに低屈折率膜を作製することができ、高い透過性能を示した。
本実施形態の光学部材によれば、高い透過性能と平坦性を有することに加えて、高耐久性を有し、しかも、低コストで、低温で成膜可能な反射防止膜を有することから、省エネルギープロセスとしてCOを低減することが可能となる。加えて、加熱工程がないため、樹脂上にも低屈折率の反射防止膜を形成できるため、軽量な光学部材として、広く採用されることが期待できることから、産業上の利用可能性が高い。
1…光学部材 2…基材 3…反射防止膜 4…アルカリ土類金属酸化膜 5…フッ素含有無機膜 6…シリコン酸化膜

Claims (15)

  1. 基材の面上に、フッ素含有無機膜と、シリコン酸化膜とを順次積層した反射防止膜を有する光学部材。
  2. 前記基材及び前記反射防止膜の間にアルカリ土類金属酸化膜を有することを特徴とする請求項1に記載の光学部材。
  3. 前記反射防止膜の屈折率(波長550nm)が1.15~1.38であることを特徴とする請求項1に記載の光学部材。
  4. 前記アルカリ土類金属酸化膜の厚みが1~300nmであり、
    前記フッ素含有無機膜の厚みが10~1000nmであり、
    前記シリコン酸化膜の厚みが1~100nmであることを特徴とする請求項2に記載の光学部材。
  5. 前記フッ素含有無機膜は、MgF、CaF、BaF、NaF、LiFの中から選ばれる単層膜と複層膜と複合コンポジット膜との何れかからなることを特徴とする請求項1に記載の光学部材。
  6. 前記フッ素含有無機膜は、酸化物を含むことを特徴とする請求項4に記載の光学部材。
  7. 前記アルカリ土類金属酸化膜がMgOであることを特徴とする請求項2に記載の光学部材。
  8. 前記シリコン酸化膜の表面粗さが二乗平均平方根粗さ(RMS)で1.0nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学部材。
  9. 基材の面上に、フッ素含有無機膜と、シリコン酸化膜とを順次積層した反射防止膜を形成する工程を含む光学部材の製造方法。
  10. 前記反射防止膜を形成する工程において、金属有機酸塩と、金属水酸化物と、トリフルオロ酢酸と、トリフルオロ酢酸エチルと、必要に応じてポリマー溶液とを含む前駆体溶液を前記基材の面上に塗布して塗膜を形成した後に、
    前記塗膜を熱分解する、及び/又は、前記塗膜に対して光を照射することによって、前記フッ素含有無機膜を形成することを特徴とする請求項9に記載の光学部材の製造方法。
  11. 前記反射防止膜を形成する工程において、金属有機酸塩と、金属水酸化物と、トリフルオロ酢酸と、トリフルオロ酢酸エチルと、シリコンを含むポリマーを溶媒中に溶解した、いずれか一つの溶液を含む前駆体溶液を前記基材の面上に塗布して塗膜を形成した後に、
    前記塗膜を熱分解する、及び/又は、前記塗膜に対して光を照射することによって、前記フッ素含有無機膜を形成することを特徴とする請求項9に記載の光学部材の製造方法。
  12. 前記塗膜を加熱処理した後に、前記塗膜に対して光を照射することを特徴とする請求項10又は11に記載の光学部材の製造方法。
  13. 前記光として、266~450nmの範囲にピーク波長を含む光を用いることを特徴とする請求項10又は11に記載の光学部材の製造方法。
  14. 前記反射防止膜を形成する工程において、前記フッ素含有無機膜の面上に、シリコンを含むポリマー溶液を塗布して塗膜を形成した後に、
    前記塗膜を熱分解する、及び/又は、前記塗膜に対して光を照射することによって、前記シリコン酸化膜を形成することを特徴とする請求項9に記載の光学部材の製造方法。
  15. 前記基材の面上に、アルカリ土類金属酸化膜を形成する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の光学部材の製造方法。
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