JP2024006674A - 精巣体細胞様細胞の製造方法、精巣体細胞様細胞、精子の形成方法、中期中胚葉様細胞を精巣体細胞様細胞に分化誘導する方法、精巣体細胞様細胞の製造用培地サプリメント、及び精巣体細胞様細胞の製造用培地キット - Google Patents

精巣体細胞様細胞の製造方法、精巣体細胞様細胞、精子の形成方法、中期中胚葉様細胞を精巣体細胞様細胞に分化誘導する方法、精巣体細胞様細胞の製造用培地サプリメント、及び精巣体細胞様細胞の製造用培地キット Download PDF

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Abstract

【課題】生体組織に依存せずに精子形成支持能を有する精巣体細胞様細胞が得られる精巣体細胞様細胞の製造方法、前記製造方法で得られる精巣体細胞様細胞、及び前記精巣体細胞様細胞を用いた精子の形成方法を提供する。【解決手段】精巣体細胞様細胞の製造方法は、中期中胚葉様細胞をWNTシグナル阻害剤を含む培地で培養する工程を含む。精巣体細胞様細胞は、前記製造方法により得られる。精子の形成方法は、前記製造方法で得られた精巣体細胞様細胞と、前記精巣体細胞様細胞と同種由来の雄性生殖細胞とを共培養することを含む。【選択図】なし

Description

本発明は、精巣体細胞様細胞の製造方法、精巣体細胞様細胞、精子の形成方法、中期中胚葉様細胞を精巣体細胞様細胞に分化誘導する方法、精巣体細胞様細胞の製造用培地サプリメント、及び精巣体細胞様細胞の製造用培地キットに関する。
生殖細胞系列は、種の存続を支える唯一の細胞系列である。生殖細胞系列の発生及び分化には、性分化を始め、エピゲノム情報の再構成、減数分裂等、様々な特徴的な過程が含まれる。
これまで、生殖細胞系列の発生過程を明らかにするため、多能性幹細胞から生殖細胞系列の細胞を試験管内で誘導する試みが行われている。例えば、2011年に発明者らによって、多能性幹細胞から精子や卵子の元となる始原生殖細胞(PGCs)を誘導する手法が確立されている(例えば、非特許文献1等参照)。これ続いて、オス、メス各々について配偶子分化過程の再現を目指す研究がなされている。メスについては、多能性幹細胞から始原生殖細胞を経て卵子を試験管内で誘導する手法が報告されている(例えば、非特許文献2等参照)。一方、オスについては、多能性幹細胞から始原生殖細胞を経て、精子の前段階の細胞である、精子幹細胞を誘導する再構成精巣法が報告されている(例えば、非特許文献3等参照)。
発明者らは、ES細胞から始原生殖細胞様細胞(PGCLCs)を誘導し、再構成精巣法を用いて、精子の元である精子幹細胞様細胞の長期培養株であるGermline stem cell-like cells(GSCLCs)を誘導することに成功している。さらに、マウスES細胞由来のGSCLCsを、試験管内で健常な産仔に寄与する精子まで誘導することに成功している(例えば、非特許文献4等参照)。しかしながら、この方法では、精子を育てるための精巣体細胞を生体から採取する必要がある。そのため、精巣組織の採取が困難なヒトを含めた様々な動物において、精子の再生をすることが難しい。
上記課題を解決すべく、培地組成や培養条件を調整することで、多能性幹細胞から精巣体細胞を分化誘導する方法が検討されている(例えば、非特許文献5~7等参照)。
一方、最近、発明者らは、マウスES細胞から卵巣体細胞様細胞を試験管内で誘導する方法を確立している。得られた卵巣体細胞様細胞から卵巣を試験管内で再構築し、PGCs又はPGCLCsと共培養することで、卵子形成を進行させることに成功している(例えば、非特許文献5等参照)。
Hayashi K et al., "Reconstitution of the Mouse Germ Cell Specification Pathway in Culture by Pluripotent Stem Cells.", Cell, Vol. 146, Issue 4, pp. 519-532, 2011. Hikabe O et al., "Reconstitution in vitro of the entire cycle of the mouse female germ line.", Nature, Vol. 539, Issue 7628, pp. 299-303, 2016. Ishikura Y et al., "In Vitro Derivation and Propagation of Spermatogonial Stem Cell Activity from Mouse Pluripotent Stem Cells.", Cell Reports, Vol. 17, Issue 10, pp. 2789-2804, 2016. Ishikura Y et al., "In vitro reconstitution of the whole male germ-cell development from mouse pluripotent stem cells.", Cell Stem Cell, Vol. 28, Issue 12, pp. 2167-2179, 2021. Rore H et al., "Testicular somatic cell-like cells derived from embryonic stem cells induce differentiation of epiblasts into germ cells.", Commun Biol., Vol.4, Issue 1, Article no. 802, 2021. Xu C et al., "Inducing Non-genetically Modified Induced Embryonic Sertoli Cells Derived From Embryonic Stem Cells With Recombinant Protein Factors." Front Cell Dev Biol., Vol. 8, Article 533543, 2021. Seol DW et al., "In Vitro Derivation of Functional Sertoli-Like Cells from Mouse Embryonic Stem Cells.", Cell Transplant., Vol. 27, Issue 10, pp. 1523-1534, 2018. Yoshino T et al., "Generation of ovarian follicles from mouse pluripotent stem cells.", Science, Vol. 373, Issue 6552, eabe0237, 2021.
しかしながら、非特許文献5~7に記載の手法では、遺伝子発現プロファイルのみに基づいて精巣体細胞様細胞が得られたことが示されているだけで、精子形成をサポートできる機能的な精巣体細胞であるかまでは具体的に検討されていない。このように、現段階において、生体組織を使用することなく、多能性幹細胞の使用のみで機能的な精子の作製に成功した例はない。そのため、生体細胞を一切使用しない、機能的な精子の作製技術が望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、生体組織に依存せずに精子形成支持能を有する精巣体細胞様細胞が得られる精巣体細胞様細胞の製造方法、中期中胚葉様細胞を精巣体細胞様細胞に分化誘導する方法、精巣体細胞様細胞の製造用培地サプリメント、及び精巣体細胞様細胞の製造用培地キットを提供する。また、前記製造方法で得られる精巣体細胞様細胞、及び該精巣体細胞様細胞を用いた精子の形成方法を提供する。
発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、中期中胚葉様細胞から精巣体細胞様細胞へ分化誘導する際に、メス化を抑制することを目的としてWNTシグナル阻害剤存在下で中期中胚葉様細胞を培養することで、誘導効率よく精巣体細胞様細胞が得られ、また、得られた精巣体細胞様細胞が精子形成支持能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 中期中胚葉様細胞をWNTシグナル阻害剤を含む培地で培養する工程を含む、精巣体細胞様細胞の製造方法。
(2) 前記培地が線維芽細胞増殖因子9、及び骨形成因子4からなる群より選ばれる1種以上を更に含む、(1)に記載の精巣体細胞様細胞の製造方法。
(3) 前記WNTシグナル阻害剤がIWR-1又はIWP-2である、(1)又は(2)に記載の精巣体細胞様細胞の製造方法。
(4) 前記培地中の前記WNTシグナル阻害剤の濃度が10μM以上40μM以下である、(1)~(3)のいずれか一つに記載の精巣体細胞様細胞の製造方法。
(5) (1)~(4)のいずれか一つに記載の精巣体細胞様細胞の製造方法で得られた、精巣体細胞様細胞。
(6) (1)~(4)のいずれか一つに記載の精巣体細胞様細胞の製造方法で得られた精巣体細胞様細胞と、前記精巣体細胞様細胞と同種由来の雄性生殖細胞とを共培養することを含む、精子の形成方法。
(7) 中期中胚葉様細胞をWNTシグナル阻害剤を含む培地で培養することを含む、中期中胚葉様細胞を精巣体細胞様細胞に分化誘導する方法。
(8) WNTシグナル阻害剤を含む、精巣体細胞様細胞の製造用培地サプリメント。
(9) 基礎培地と、
(8)に記載の精巣体細胞様細胞の製造用培地サプリメントと、
を備える、精巣体細胞様細胞の製造用培地キット。
上記態様の製造方法によれば、生体組織に依存せずに精子形成支持能を有する精巣体細胞様細胞が得られる。
実施例1におけるマウスES細胞を用いた精巣体細胞様細胞への分化誘導のプロトコールを示す図である。 実施例1におけるSOX9-GFP及びNr5a1-hCD271(PE)のFACSプロットを示す。 実施例1におけるSOX9陽性及びNr5a1陽性細胞でのAmh遺伝子及びFoxl2遺伝子の定量PCRによる測定結果を示すグラフである。 実施例2における精巣体細胞様細胞を用いた精細管再構築実験のプロトコールを示す図である。 実施例2における培養8日目の精巣の明視野像(上)及び蛍光像(下)である。スケールバーは500μmを示す。 実施例2における培養8日目の精巣の切片の蛍光染色像である。 実施例2における精巣体細胞により分化した精子細胞を卵へ顕微授精を行い得られた産仔を示す画像である。 実施例3におけるSOX9-GFP及びNr5a1-hCD271(PE)のFACSプロットを示す。 実施例4におけるSOX9-GFP及びNr5a1-hCD271(PE)のFACSプロットを示す。
本明細書において、「多能性幹細胞」とは、未分化状態を保持したまま増殖できる「自己再生能」と三胚葉系列すべてに分化できる「分化多能性」とを有する未分化細胞を意味する。多能性幹細胞としては、以下に限定されないが、例えば、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)、始原生殖細胞に由来する胚性生殖細胞(EG細胞)、精巣組織からのGS細胞の樹立培養過程で単離されるmultipotent germline STEM細胞(mGS細胞)、骨髄間葉系細胞から単離されるMuse細胞等が挙げられる。上記に列挙した多能性幹細胞は、それぞれ公知の方法により得ることができる。
多能性幹細胞としては、哺乳動物に由来するものを用いる。哺乳動物の例としては、マウス、ラット、ヒト、サル、マーモセット、イヌ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、モルモット、ハムスター等が挙げられるが、好ましくはマウスである。
なお、本明細書における「iPS細胞」とは、分化した体細胞にいくつかの遺伝子を導入することによって様々な組織や器官の細胞へのリプログラミングが可能となった細胞を意味する。本実施形態の方法において、始原生殖細胞を分化誘導するために用いられるiPS細胞は、適当なドナーから採取した体細胞の初代培養細胞由来であってもよく、樹立細胞株由来であってもよい。iPS細胞は、いかなる胚葉系細胞にも分化誘導が可能であることから、iPS細胞の調製に用いる体細胞は、原則的には外胚葉系及び内胚葉系のいずれの胚葉系細胞由来のものであってもよい。侵襲性が低く採取が容易な皮膚、髪の毛、歯肉、血液等の細胞は、iPS細胞の調製に用いる体細胞として好適である。iPS細胞の調製方法については、当該分野で公知の方法に従えばよい。具体的には、例えば、「Okita K. et al., “Generation of germline-competent induced pluripotent stem cells.”, Nature, Vol. 448, p313-317, 2007.」(参考文献1)、「Hamanaka S. et al., “Generation of germline-competent rat induced pluripotent stem cells.”, PLoS One, Vol. 6, Issue 7, e22008, 2011.」(参考文献2)等の公知の文献に記載されている調製方法を利用できる。
また、ES細胞は、公知の方法により得ることができる。例えば、対象動物の受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を採取し、当該内部細胞塊を繊維芽細胞に由来するフィーダー細胞上で培養することによって樹立することができる。その他、体細胞の核を核移植することによって作製された初期胚を培養することによって樹立したES細胞も使用することができる。
また、本明細書において「エピブラスト様細胞(EpiLCs)」とは、多能性幹細胞に由来する、原腸陥入前のエピブラスト細胞と同等の特性を有する細胞である。より詳細には、EpiLCsは、以下の特性のいずれか又は両方を有する細胞として定義される。
(1)分化誘導前の多能性幹細胞と比較して、FGF5、WNT3及びDNMT3Bからなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子発現の上昇。
(2)分化誘導前の多能性幹細胞と比較して、GATA4、GATA6、SOX17及びBLIMP1からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子発現の低下。
ES細胞、iPS細胞からEpiLCsを分化誘導する方法は、公知の方法、例えば、国際公開第2012/020687号(参考文献3)、非特許文献1、「Hayashi K et al., “Offspring from oocytes derived from in vitro primordial germ cell-like cells in mice.”, Science, Vol. 338, Issue 6109, pp. 971-975, 2012.」(参考文献4)等を参考にして行うことができる。
≪精巣体細胞様細胞の製造方法≫
本実施形態の精巣体細胞様細胞の製造方法(以下、単に「本実施形態の製造方法」と称する場合がある)は、中期中胚葉様細胞をWNTシグナル阻害剤を含む培地で培養する工程(以下、「精巣体細胞様細胞誘導工程」と称する場合がある)を含む。
後述する実施例に示すように、従来の製造方法(非特許文献8)では、細胞のメス化が進行してしまい、精巣体細胞はほとんど分化誘導されない。しかしながら、本実施形態の製造方法によれば、後述する実施例に示すように、WNTシグナル阻害剤存在下で中期中胚葉様細胞を培養することで、メス化を抑制して、効率的に精巣体細胞様細胞を得ることができる。すなわち、本実施形態の製造方法は、中期中胚葉様細胞を精巣体細胞様細胞に分化誘導する方法ということもできる。
本実施形態の製造方法に含まれる工程について以下に詳細を説明する。
<精巣体細胞様細胞誘導工程>
精巣体細胞様細胞誘導工程では、中期中胚葉様細胞をWNTシグナル阻害剤を含む培地で培養する。
精巣体細胞様細胞誘導工程で用いられる培地は、WNTシグナル阻害剤を必須添加成分として含む。
WNTシグナル阻害剤としては、IWR-1(4-[(3aR,4S,7R,7aS)-1,3,3a,4,7,7a-hexahydro-1,3-dioxo-4,7-methano-2H-isoindol-2-yl]-N-8-quinolinyl-benzamide)、IWP-2、XAV939、Dkk1、Cerberus蛋白、Wnt抗体、カゼインキナーゼ阻害剤等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、IWR-1又はIWP-2が好ましい。
培地中に含まれるWNTシグナル阻害剤の濃度は、通常、0.1μM以上50μM以下、好ましくは10μM以上40μM以下、より好ましくは20μM以上30μM以下である。
精巣体細胞様細胞誘導工程で用いられる培地は、線維芽細胞増殖因子9(FGF9)、及び骨形成因子4(BMP4)からなる群より選ばれる1種以上を更に含むことができる。
培地中に含まれるFGF9の濃度は、好ましくは0.01ng/mL以上、より好ましくは0.1ng/mL以上、さらに好ましくは1ng/mL以上である。また、FGF9の濃度は、好ましくは300ng/mL以下、より好ましくは200ng/mL以下である。
培地中に含まれるBMP4の濃度は、好ましくは0.01ng/mL以上、より好ましくは1ng/mL以上、さらに好ましくは2ng/mL以上、特に好ましくは20ng/mL以上である。BMP4の濃度が上記下限値以上であることで、Nr5a1陽性の精巣体細胞様細胞をより効率的に得ることができる。また、BMP4の濃度の上限は、特に限定されないが、好ましくは100ng/mL以下である。
精巣体細胞様細胞誘導工程で用いられる培地は、高分子ポリマーを更に含むことができる。高分子ポリマーを含むことで、撹拌等の物理的な力を与えなくても細胞が浮遊し、沈殿せずに均一に細胞を分散しながら培養することができる。このような高分子ポリマーとしては、例えば、脱アシル化ジェランガムを主成分として含有する、日産化学社製の「FceM(登録商標)」シリーズの製品等が挙げられる。「FceM(登録商標)」シリーズを用いた培養については、例えば、特許第5629893号公報(参考文献5)の記載を参考に行うことができる。
精巣体細胞様細胞誘導工程で用いられる基礎培地としては、例えば、αMEM培地、Neurobasal培地、Neural Progenitor Basal培地、NS-A培地、BME培地、BGJb培地、CMRL 1066培地、最小必須培地(MEM)、Eagle MEM、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、Glasgow MEM(GMEM)、Improved MEM Zinc Option、IMDM、Medium 199培地、DMEM/F12培地、StemPro-34SFM培地、ハム培地、RPMI 1640培地、HTF培地、Fischer’s培地、Advanced DMEM、Advanced DMEM/F12、Advanced MEM、Advanced RPMI培地、及びこれらの混合培地等が挙げられるが、これらに限定されない。
培地は、血清含有培地であってもよく、無血清培地であってもよい。無血清培地が好ましく使用される。無血清培地(SFM)とは、未処理又は未精製の血清をいずれも含まない培地を意味し、精製された血液由来成分又は動物組織由来成分(増殖因子等)を含有する培地が挙げられる。血清(例えば、ウシ胎児血清(FBS)、ヒト血清等)の濃度は、0v/v%以上20v/v%以下とすることができ、好ましくは0v/v%以上5v/v%以下、より好ましくは0v/v%以上2v/v%以下、さらに好ましくは0v/v%(すなわち、無血清)である。SFMは任意の血清代替物を含んでもよい。血清代替物としては、例えば、アルブミン(例えば、脂質リッチアルブミン、組換えアルブミン等のアルブミン代替物;植物デンプン、デキストラン及びタンパク質加水分解物等)、トランスフェリン(又は他の鉄輸送体)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3’-チオグリセロール、及びこれらの均等物等が挙げられる。また、KnockOut(登録商標) Serum Replacement(KSR)、GlutaMax(登録商標)等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
培地は、その他公知の添加物を含んでもよい。添加物は特に限定されないが、例えば、上記以外の成長因子、ポリアミン類、ミネラル、糖類(例えば、グルコース等)、有機酸(例えば、ピルビン酸、乳酸等)及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アミノ酸(例えば、非必須アミノ酸(NEAA)、L-グルタミン等)、還元剤(例えば、2-メルカプトエタノール等)、ビタミン類(例えば、アスコルビン酸、d-ビオチン等)、ステロイド、抗生物質(例えば、ストレプトマイシン、ペニシリン等)、緩衝剤(例えば、HEPES等)、栄養添加物(例えば、B27 supplement、N2 supplement、StemPro-Nutrient Supplement等)が挙げられる。これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。各添加物は公知の濃度範囲で含むことができる。
精巣体細胞様細胞誘導工程における培養条件としては、例えば公知の細胞非接着性又は低接着性培養容器に中期中胚葉様細胞を播種し、培養することにより行うことができる。
培養条件は以下に限定されないが、例えば、1v/v%以上10v/v%以下の二酸化炭素及び90v/v%以上99v/v%以下の大気の雰囲気下で行うことができる。
培養温度は約30℃以上40℃以下であり、好ましくは約37℃である。
培養期間は、4日未満、好ましくは約2日間(例えば、48±12時間、好ましくは48±6時間)である。
精巣体細胞様細胞誘導工程で得られた細胞が精巣体細胞様細胞に分化していることは、AMH等のマーカー遺伝子の発現レベルを、免疫染色、FACS解析、定量PCR、RNAseq等の公知の方法を用いて分析することにより確認できる。
<中期中胚葉様細胞誘導工程>
本実施形態の製造方法は、精巣体細胞様細胞誘導工程の前に、中期中胚葉様細胞誘導工程を有することができる。
中期中胚葉様細胞は、例えば、非特許文献8、参考文献1(Rore et al.,“Testicular somatic cell-like cells derived from embryonic stem cells induce differentiation of epiblasts into germ cells.”, Commun Biol., Vol. 4, Issue 1, Article No. 802, pp. 1-12, 2021.)、参考文献2(Seol et al.,“In Vitro Derivation of Functional Sertoli-Like Cells from Mouse Embryonic Stem Cells.”, Cell Transplant., Vol. 27, Issue 10, pp. 1523-1534, 2018.)、参考文献3(Taguchi et al.,“Redefining the in vivo origin of metanephric nephron progenitors enables generation of complex kidney structures from pluripotent stem cells.”, Cell Stem Cell, Vol. 14, Issue 1, pp. 53-67, 2014.)、参考文献4(Mae et al., “Monitoring and robust induction of nephrogenic intermediate mesoderm from human pluripotent stem cells.”, Nat Commun., Vol. 4, Article No. 1367, pp. 1-23, 2013.)等に記載の方法を用いて、多能性幹細胞から誘導することができる。
具体的には、例えば、中期中胚葉様細胞誘導工程は、以下の工程を含むことができる。
多能性幹細胞から誘導されたEpiLCsを、BMP4及びWNTシグナル活性化剤存在下で培養して初期中胚葉様細胞を誘導する工程1;
得られた前記初期中胚葉様細胞を、ヘッジホッグシグナル活性化剤、BMP4、レチノイン酸、及びMEK阻害剤存在下で培養して中期中胚葉様細胞を誘導する工程2。
[工程1]
工程1では、多能性幹細胞から誘導されたEpiLCsを、BMP4及びWNTシグナル活性化剤存在下で培養して初期中胚葉様細胞を誘導する。
工程1で用いられる培地は、BMP4及びWNTシグナル活性化剤を必須添加成分として含む。
培地中に含まれるBMP4の濃度は、好ましくは0.01ng/mL以上、より好ましくは0.1ng/mL以上、さらに好ましくは0.5ng/mL以上である。また、BMP4の濃度は、好ましくは10ng/mL以下、より好ましくは5ng/mL以下、さらに好ましくは3ng/mL以下である。
WNTシグナル活性化剤としては、WNTファミリータンパク質、Frizzled受容体活性化物質、内在性WNTアンタゴニストの阻害剤、細胞内β-カテニン抑制物質の阻害剤、細胞内β-カテニン分解の阻害剤等が挙げられる。好ましくはGSK-3β阻害剤であり、より好ましくはCHIR99021である。
培地中に含まれるWNTシグナル活性化剤の濃度は、好ましくは3μM以上、より好ましくは5μM以上であり、さらに好ましくは10μM以上である。また、WNTシグナル活性化剤の濃度は、好ましくは50μM以下、より好ましくは20μM以下である。
工程1で用いられる培地は、上皮成長因子(EGF)を更に含むことができる。
培地中に含まれるEGFの濃度は、好ましくは0.01ng/mL以上、より好ましくは1ng/mL以上、さらに好ましくは10ng/mL以上、特に好ましくは30ng/mL以上である。また、EGFの濃度は、好ましくは100ng/mL以下、より好ましくは70ng/mL以下である。
工程1では、上述した添加剤を基礎培地に添加して用いることができる。基礎培地としては、上記精巣体細胞様細胞誘導工程で例示されたものと同じものを用いることができる。また、培地に添加されるその他添加剤としては、上記精巣体細胞様細胞誘導工程で例示されたものと同じものを用いることができる。
工程1の培養は、例えば公知の細胞非接着性又は低接着性培養容器にEpiLCsを播種し、培養することにより行うことができる。
中でも、培養容器としては、EZSPHERE(登録商標)等の細胞培養面に微細なウェルを有し、培養面に平坦な面を有さず、且つ、培養面がタンパク質等によって低接着コートされている培養容器を好ましく用いることができる。このような培養容器を用いることで、1つの培養容器で700個程度の大量の細胞塊を作製することができる。また、従来の96ウェルプレートを用いた場合には、一つ一つのウェルの培地交換を手作業で行う必要があり、60個の細胞塊に対して培地交換に30分間程度要していた。これに対して、上記培養容器では、700個の細胞塊の培地交換を10分間程度に短縮することができる。
培養条件は以下に限定されないが、例えば、1v/v%以上10v/v%以下の二酸化炭素及び90v/v%以上99v/v%以下の大気の雰囲気下で行うことができる。
培養温度は約30℃以上40℃以下であり、好ましくは約37℃である。
培養期間は、4日未満、好ましくは約2日間(例えば、48±12時間、好ましくは48±6時間)である。
工程1で得られた細胞が初期中胚葉様細胞に分化していることは、OSR1、TBXT等のマーカー遺伝子の発現レベルを、免疫染色、FACS解析、定量PCR、RNAseq等の公知の方法を用いて分析することにより確認できる。
[工程2]
工程2では、初期中胚葉様細胞を、ヘッジホッグシグナル活性化剤、BMP4、レチノイン酸、及びMEK阻害剤存在下で培養して中期中胚葉様細胞を誘導する。
工程2で用いられる培地は、ヘッジホッグシグナル活性化剤、BMP4、レチノイン酸、及びMEK阻害剤を必須添加成分として含む。
ヘッジホッグシグナル活性化剤とは、ソニックヘッジホッグ・パスウェイを活性化し、Wntシグナル伝達を阻害する物質であり、好ましくはソニックヘッジホッグ(SHH)である。
培地中に含まれるヘッジホッグシグナル活性化剤の濃度は、好ましくは1ng/mL以上、より好ましくは10ng/mL以上である。また、ヘッジホッグシグナル活性化剤の濃度は、好ましくは300ng/mL以下であり、より好ましくは50ng/mL以下である。
培地中に含まれるBMP4の濃度は、好ましくは0.01ng/mL以上、より好ましくは0.1ng/mL以上である。また、BMP4の濃度は、好ましくは10ng/mL以下、より好ましくは5ng/mL以下、さらに好ましくは2ng/mL以下である。
培地中に含まれるレチノイン酸の濃度は、好ましくは0.1μM以上、より好ましくは1μM以上である。また、レチノイン酸の濃度は、好ましくは10μM以下、より好ましくは5μM以下である。
MEK阻害剤マイトジェン活性化細胞外シグナル関連キナーゼに対する阻害活性を有する化合物である。そのような化合物としては、例えば、PD0325901(CAS番号:391210-10-9)、トラメチニブ(商品名「メキニスト」、CAS番号:871700-17-3)、セルメチニブ(CAS番号:606143-52-6)、MEK162(CAS番号:606143-89-9)、CH4987655(CAS番号:874101-00-5)等が挙げられるが、これに限定されない。これらの中でも、PD0325901が好ましい。
培地中に含まれるMEK阻害剤の濃度は、好ましくは0.1μM以上、より好ましくは0.5μM以上である。また、MEK阻害剤の濃度は、好ましくは10μM以下、より好ましくは5μM以下である。
工程2で用いられる培地は、EGFを更に含むことができる。
培地中に含まれるEGFの濃度は、好ましくは0.01ng/mL以上、より好ましくは1ng/mL以上、さらに好ましくは5ng/mL以上である。また、EGFの濃度は、好ましくは100ng/mL以下、より好ましくは50ng/mL以下である。
工程2で用いられる培地は、高分子ポリマーを更に含むことができる。高分子ポリマーを含むことで、撹拌等の物理的な力を与えなくても細胞が浮遊し、沈殿せずに均一に細胞を分散しながら培養することができる。このような高分子ポリマーとしては、上記精巣体細胞様細胞誘導工程で例示されたものと同じものを用いることができる。
工程2では、上述した添加剤を基礎培地に添加して用いることができる。基礎培地としては、上記精巣体細胞様細胞誘導工程で例示されたものと同じものを用いることができる。また、培地に添加されるその他添加剤としては、上記精巣体細胞様細胞誘導工程で例示されたものと同じものを用いることができる。
工程2の培養は、例えば公知の細胞非接着性又は低接着性培養容器に霊長類多能性幹細胞を播種し、培養することにより行うことができる。
培養条件は以下に限定されないが、例えば、1v/v%以上10v/v%以下の二酸化炭素及び90v/v%以上99v/v%以下の大気の雰囲気下で行うことができる。
培養温度は約30℃以上40℃以下であり、好ましくは約37℃である。
培養期間は、4日未満、好ましくは約2日間(例えば、48±12時間、好ましくは48±6時間)である。
≪精巣体細胞様細胞≫
本実施形態の精巣体細胞様細胞は、上述した製造方法で得られたものである。
本実施形態の精巣体細胞様細胞は、従来の製造方法で得られた精巣体細胞様細胞とは異なり、生体から採取された精巣体細胞と遺伝子発現プロファイル(AMH遺伝子の発現が上昇しており、FOXL2遺伝子の発現がほとんどみられないこと)が類似しているだけでなく、後述する実施例に示すように、精子形成支持能を有するものである。よって、本実施形態の精巣体細胞様細胞は、生体内の精巣体細胞により近しい機能を有するものであると考えられる。しかしながら、遺伝子発現プロファイルの相違等により、生体内の精巣体細胞やその他従来の製造方法で得られた精巣体細胞様細胞との相違を特定し、本実施形態の精巣体細胞様細胞を特定することは非常に困難であり、実際的ではない。このため、製造方法により特定することが現実的である。
≪精子の形成方法≫
本実施形態の精子の形成方法は、上述した製造方法で得られた精巣体細胞様細胞と、前記精巣体細胞様細胞と同種由来の雄性生殖細胞とを共培養することを含む。
本実施形態の精子の形成方法によれば、後述する実施例に示すように、SCP3遺伝子及びPNA遺伝子等のマーカー遺伝子が発現している精子が得られる。
精巣体細胞様細胞と共培養する該精巣体細胞様細胞と同種由来の雄性生殖細胞に代えて、始原生殖細胞、精原細胞、一次精母細胞、及び二次精母細胞からなる群より選ばれる1種以上の細胞を用いてもよい。
本明細書において、「始原生殖細胞」とは、生殖細胞へ分化する予定の細胞であり、卵原細胞又は精原細胞を経て卵子又は精子へと分化する細胞をいう。始原生殖細胞は、生体由来のものであっても、多能性幹細胞より分化した始原生殖細胞様細胞(primordial germ cell like cells:PGCLCs)であってもよい。
また、始原生殖細胞には、生体由来の始原生殖細胞及び多能性幹細胞由来のPGCLCsが含まれ、さらに、これら細胞の遺伝子を遺伝子工学の手法を用いて改変した細胞も含まれる。
多能性幹細胞、特にiPS細胞及びES細胞からPGCLCsを分化誘導する方法は、例えば、非特許文献1等を参考にして行うことができる。
また、共培養の開始の前に、雄性生殖細胞と精巣体細胞様細胞とからなる凝集塊を作製する培養工程を行うことが好ましい。雄性生殖細胞と精巣体細胞様細胞ととからなる凝集塊を作製する方法は、例えば、参考文献5(Yokonishi T et al., “In Vitro Reconstruction of Mouse Seminiferous Tubules Supporting Germ Cell Differentiation.”, Biol Reprod., Vol. 89, Issue 1, Article No. 15, pp. 1-6,2013.)等を参考にして行うことができる。
具体的には、例えば、AK10培地(aMEMに10v/v% KSR、1×penicillin/streptomycin(100U/mL Penicillin及び0.1mg/mL streptomycin)を添加した培地)中で、雄性生殖細胞と精巣体細胞様細胞とを混合し凝集させて培養することで実施することができる。培養には低吸着の培養皿を用いることが好ましい。例えば、凝集塊を作製するための培養期間を1日間以上4日間以下することができ、好ましくは2日間である。次いで、凝集塊をAK10培地に浸漬した1.5w/w%アガロースゲルブロック上に静置し培養する。
また、雄性生殖細胞と精巣体細胞様細胞との混合時の割合は、作製された凝集塊が精巣組織を形成し、機能的な精子を形成する限りにおいて限定されない。
雄性生殖細胞と精巣体細胞様細胞との共培養に用いられる基礎培地としては、精巣体細胞様細胞誘導工程において例示された基礎培地と同じものを使用することができ、これに血清、又は血清代替物を添加して用いることができる。血清(例えば、ウシ胎児血清(FBS)、ヒト血清等)の濃度は、通常0.1v/v%以上20v/v%以下、好ましくは2v/v%以上10v/v%以下である。
また、雄性生殖細胞と精巣体細胞様細胞との共培養に用いられるその他の添加剤としては、精巣体細胞様細胞誘導工程において例示されたその他の添加剤と同じものを使用することができる。
雄性生殖細胞と精巣体細胞様細胞との共培養において、精子を形成するための培養条件は、以下に限定されないが、例えば、1v/v%以上10v/v%以下の二酸化炭素及び90v/v%以上99v/v%以下の大気の雰囲気下で行うことができる。
培養温度は約30℃以上40℃以下であり、好ましくは約34℃である。
培養期間は予め作製した凝集塊の培養開始から数えて11日間以上50日間以下培養することが好ましい。なお、雄性生殖細胞と精巣体細胞様細胞との共培養の期間は、培養する雄性生殖細胞の由来する動物種等により異なるが、生体内で精巣において始原生殖細胞から精子を形成するまでの期間を目安とすることが好ましい。
このようにして得られた精子は、通常の体外受精に用いることができる。また、後述する実施例に示すように、得られた精子は、妊孕能を有する。
≪精巣体細胞様細胞の製造用培地サプリメント≫
本実施形態の精巣体細胞様細胞の製造用培地サプリメント(以下、単に「本実施形態の培地サプリメント」と称する場合がある)は、WNTシグナル阻害剤を含む。
本実施形態の培地サプリメントによれば、生体組織に依存せずに精子形成支持能を有する精巣体細胞様細胞が得られる。
また、別の実施形態において、本発明は、以下の培地サプリメント1~3を備える、多能性幹細胞から精巣体細胞様細胞への分化誘導用培地サプリメントセットを提供する。
BMP4及びWNTシグナル活性化剤を含む培地サプリメント1;
ヘッジホッグシグナル活性化剤、BMP4、レチノイン酸、及びMEK阻害剤を含む培地サプリメント2;
WNTシグナル阻害剤を含む培地サプリメント3。
培地サプリメント1は、多能性幹細胞から初期中胚葉様細胞への分化誘導用培地サプリメントである。
培地サプリメント2は、初期中胚葉様細胞から中期中胚葉様細胞への分化誘導用培地サプリメントである。
培地サプリメント3は、中期中胚葉様細胞から精巣体細胞様細胞への分化誘導用培地サプリメントである。
これら培地サプリメント1~3は、上記「精巣体細胞様細胞の製造方法」に記載の各種添加剤を更に含むことができる。
≪精巣体細胞様細胞の製造用培地キット≫
本実施形態の精巣体細胞様細胞の製造用培地キット(以下、単に「本実施形態の培地キット」と称する場合がある)は、基礎培地と、上述した精巣体細胞様細胞の製造用培地サプリメントと、を備える。
本実施形態の培地キットによれば、生体組織に依存せずに精子形成支持能を有する精巣体細胞様細胞が得られる。
また、別の実施形態において、本発明は、以下の構成を備える、多能性幹細胞から精巣体細胞様細胞への分化誘導用培地キットを提供する。
基礎培地;
BMP4及びWNTシグナル活性化剤を含む培地サプリメント1;
ヘッジホッグシグナル活性化剤、BMP4、レチノイン酸、及びMEK阻害剤を含む培地サプリメント2;
WNTシグナル阻害剤を含む培地サプリメント3。
基礎培地としては、上記「精巣体細胞様細胞の製造方法」において例示されたものと同様のものを用いることができる。また、上述したキットには培養に必要なその他の試薬、培養容器等の器具等を含むこともできる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<多能性幹細胞から精巣体細胞様細胞への誘導>
[実施例1]
図1に示すプロトコールに従って、マウスES細胞からエピブラスト様細胞(EpiLCs)へ(工程1)、EpiLCsから初期中胚葉様細胞へ(工程2)、初期中胚葉様細胞から中期中胚葉様細胞(精巣前駆細胞様細胞)へ(工程3)、中期中胚葉様細胞(精巣前駆細胞様細胞)から精巣体細胞へ(工程4)、順を追って誘導した。
工程2~工程4に使用する基礎培地(以下、「GK15」と称する場合がある)としては、15v/v%のKSR(KnockOutTM Serum Replacement)、0.1mM 非必須アミノ酸(NEAA)、1mM sodium pyruvate、0.1mM 2-mercaptoethanol、100U/mLのpenicillin、0.1mg/mLのstreptomycin、及び2mM L-glutamineを含有するGMEM(Invitrogen社製)を用いた。
(工程1:多能性幹細胞からEpiLCsへの誘導)
多能性幹細胞からEpiLCsへの誘導は、非特許文献1に記載の方法に従って、行なった。
使用したES細胞は、Sox9-GFP及びNr5a1-hCD271が遺伝子導入されたマウス(the Jackson Laboratory社製)の胚盤胞より樹立したES細胞株である。なお、Sox9は幹細胞のマーカー遺伝子であり、Nr5a1(SF1)は中期中胚葉のマーカー遺伝子である。また、使用したES細胞の核型は、40本の染色体(38XY)を有する雄の細胞である。
予め、ES細胞は2i(0.4μMのPD0325901(Stemgent社製)、3μMのCHIR99021(Stemgent社製))及びLIF(1000μmol/mL)を含むN2B27培地を用いて、フィーダーフリー、5v/v%CO、95v/v%空気、37℃の条件下で2日間培養した。
次いで、ヒト血漿由来フィブロネクチンでコーティングした培養皿と、Activin(20ng/mL)、bFGF(12ng/mL)、及び、KSR(1v/v%)を含むN2B27培地と、を用いて、ES細胞を43時間培養することによりEpiLCsに分化させた。
(工程2:EpiLCsから初期中胚葉様細胞への誘導)
工程1で得られたEpiLCsは、BMP4(1ng/mL;R&D Systems社製)、CHIR99021(14μM;R&D Systems社製)、及び、EGF(50ng/mL;R&D Systems社製)を含むGK15、並びに、EZSPHERE(登録商標)(AGCテクノグラス社製、型番4000-904SP)を用いて培養を行い、初期中胚葉様細胞へ分化誘導した、ES細胞は、3×10cells/dishでEZSPHERE(登録商標)に播種した。
(工程3:初期中胚葉から中期中胚葉様細胞への誘導)
工程2における培養開始から43時間後(工程2の培養開始から2日目)に、細胞塊を低吸着96well培養皿(NUNC社製)に移し、且つ、培地を、ソニックヘッジホッグ(SHH)(30ng/mL;R&D Systems社製)、BMP4(1ng/mL;R&D Systems社製)、EGF(50ng/mL;R&D Systems社製)、Retinoic Acid(3μM;Sigma社製)、PD0325901(1μM;Stemgent社製)、及び、FceM(登録商標)(2v/v%、日産化学社製)を含むGK15に換えて培養を行い、中期中胚葉様細胞へと分化誘導した。
(工程4:中期中胚葉様細胞から精巣体細胞様細胞への誘導)
工程3における培養開始から49時間後(工程2の培養開始から4日目)に、培地を、FGF9(2ng/mL;Peprotech社製)、BMP4(20ng/mL;R&D Systems社製)、IWR1(20μM;Sigma社製)、及び、FceM(登録商標)(2v/v%以上2.6v/v%以下、日産化学社製)を含むGK15に換えて培養を行い、精巣体細胞様細胞へと分化誘導した。対照として、IWR1を含まず、FGF9(2ng/mL;Peprotech社製)、BMP4(20ng/mL;R&D Systems社製)、及び、FceM(登録商標)を含むGK15に換えて培養を行ったものも準備した。
工程4における培養開始から48時間後(工程2の培養開始から6日目)に、FACS解析を行い、Sox9陽性及びNr5a1陽性の精巣体細胞様細胞を選別した。結果を図2に示す。
図2に示すように、E14(14日齢の雄マウスの精巣体細胞)と同様に、Sox9陽性及びNr5a1陽性の精巣体細胞様細胞が得られたことが確認された。また、工程4においてIWR1を含有する培地で培養した群では、IWR1を含まない培地で培養した群よりも、Sox9陽性及びNr5a1陽性細胞の誘導効率が優れていた。
選別された各Sox9陽性及びNr5a1陽性細胞について、精巣体細胞のマーカーであるAmh(抗ミュラー管ホルモン)遺伝子及び卵巣体細胞のマーカーであるFoxl2遺伝子の発現量を定量PCR法により確認した。結果を図3に示す。
図3に示すように、E14(14日齢の雄マウスの精巣体細胞)と同様に、IWR1を含有する培地で培養した群では、Amh遺伝子の発現が上昇し、且つ、Foxl2遺伝子の発現が低下していた。一方で、IWR1を含まない培地で培養した群では、Amh遺伝子の発現がほとんどみられず、その代わりにFoxl2遺伝子の発現が上昇していた。この結果から、従来の分化誘導法では、細胞のメス化が進行することで、セルトリ細胞を含む精巣体細胞が十分に誘導できないことが示された。
以上の結果から、中期中胚葉から精巣体細胞様細胞への分化誘導時に、IWR1等のWNTシグナル阻害剤を使用することで、メス化を抑制し、精巣体細胞様細胞への誘導を効率的に行えることが明らかとなった。
<精巣体細胞様細胞を用いた精子形成>
[実施例2]
ES細胞から誘導された精巣体細胞様細胞について、in vitroセルトリ細胞置換法により、該精巣体細胞様細胞の精子形成支持能を確認した。具体的には、図4に示すプロトコールに従って、実験を行なった。
(セルトリ様細胞の選別)
まず、実施例1と同様の方法を用いて、精巣体細胞様細胞を作製した。工程2の培養開始から9日目にFACS解析を行なった。図4に示すように、中胚葉細胞の表面マーカーであるCD140a(PDGFRα)陽性及びNr5a1陽性細胞を選別し、更に、当該CD140a陽性及びNr5a1陽性細胞の中から、Sox9陽性及びNr5a1陽性細胞であるセルトリ様細胞を選別した。
(in vitroセルトリ細胞置換による精細管の再構築)
次いで、ジフテリア毒素(DT)処理により任意の時期にセルトリ細胞を特異的に除去できるAMH-TRCKトランスジェニック(Tg)マウスの精巣を採取し、上記セルトリ様細胞の懸濁液(1μL以上2μL以下程度;1×10cells/μL)を注入した。次いで、精巣を1.5w/w%アガロースゲル(Dojindo社製)ブロック上に静置し、5ng/mLのDTを含むαMEM培地(10v/v%KSR含有)、34℃で8日間培養し、精細管が再構築されるか確認した。
図5に示すように、培養8日目において、移植したセルトリ様細胞のSOX9-GFPの蛍光が検出された。
次いで、精巣の切片について抗SCP3抗体及び蛍光標識peanut agglutinin(PNA)レクチンを用いた蛍光免疫染色を行なった。また、同時に核染色(DAPI)も行なった。SCP3は、精母細胞のマーカーである。PNAは精子先体マーカーである。結果を図6に示す。
図6に示すように、セルトリ様細胞のサポートによって、分化した精子細胞が確認された。この精子細胞の妊孕能を調べるため、卵へ顕微授精を行ったところ健康な産仔を得た(図7)。
以上のことから、ES細胞から誘導されたセルトリ様細胞は、精子形成支持能を有することが確認された。
<工程4におけるFGF9濃度の検討>
[実施例3]
工程4における培地組成の最適化の一つとして、FGF9の濃度をふった検討を行った。
(工程1~工程3)
工程1~工程3については、実施例1と同様の方法を用いて、マウスXY型ES細胞から中期中胚葉様細胞を得た。
(工程4:中期中胚葉様細胞から精巣体細胞様細胞への誘導)
工程3における培養開始から49時間後(工程2の培養開始から4日目)に、培地を、FGF9(0、2、100、又は200ng/mL;Peprotech社製)、BMP4(20ng/mL;R&D Systems社製)、IWR1(20μM;Sigma社製)、及び、FceM(登録商標)(2v/v%、日産化学社製)を含むGK15に換えて培養を行い、精巣体細胞様細胞へと分化誘導した。
工程4における培養開始から48時間後(工程2の培養開始から6日目)に、FACS解析を行い、Sox9陽性及びNr5a1陽性の精巣体細胞様細胞を選別した。結果を図8に示す。
図8に示すように、FGF9濃度の違いによって、Sox9陽性及びNr5a1陽性細胞の分化誘導効率に大きな違いはなかった。
以上の結果から、工程4において、FGF9は必須の培地成分ではないことが明らかとなった。
<工程4におけるBMP4濃度の検討>
[実施例4]
工程4における培地組成の最適化の一つとして、BMP4の濃度をふった検討を行った。
(工程1~工程3)
工程1~工程3については、実施例1と同様の方法を用いて、マウスXY型ES細胞から中期中胚葉様細胞を得た。
(工程4:中期中胚葉様細胞から精巣体細胞様細胞への誘導)
工程3における培養開始から49時間後(工程2の培養開始から4日目)に、培地を、FGF9(2ng/mL;Peprotech社製)、BMP4(0、2、20、又は100ng/mL;R&D Systems社製)、IWR1(20μM;Sigma社製)、及び、FceM(登録商標)(2v/v%、日産化学社製)を含むGK15に換えて培養を行い、精巣体細胞様細胞へと分化誘導した。
工程4における培養開始から48時間後(工程2の培養開始から6日目)に、FACS解析を行い、Sox9陽性及びNr5a1陽性の精巣体細胞様細胞を選別した。結果を図9に示す。
図9に示すように、BMP4濃度の違いによって、Sox9陽性及びNr5a1陽性細胞の分化誘導効率に劇的な変化はみられなかったが、BMP4濃度の上昇に伴って、Nr5a1陽性細胞の比率が高まる傾向がみられた。
以上の結果から、工程4において、BMP4濃度が2ng/mL以上であることで、Nr5a1陽性細胞の分化誘導効率が特に優れることが明らかとなった。
本実施形態の製造方法によれば、生体組織に依存せずに精子形成支持能を有する精巣体細胞様細胞が得られる。また、本実施形態の製造方法で得られた精巣体細胞様細胞を用いることで、生体外において精子を形成することができる。

Claims (9)

  1. 中期中胚葉様細胞をWNTシグナル阻害剤を含む培地で培養する工程を含む、精巣体細胞様細胞の製造方法。
  2. 前記培地が線維芽細胞増殖因子9、及び骨形成因子4からなる群より選ばれる1種以上を更に含む、請求項1に記載の精巣体細胞様細胞の製造方法。
  3. 前記WNTシグナル阻害剤がIWR-1又はIWP-2である、請求項1又は2に記載の精巣体細胞様細胞の製造方法。
  4. 前記培地中の前記WNTシグナル阻害剤の濃度が10μM以上40μM以下である、請求項1又は2に記載の精巣体細胞様細胞の製造方法。
  5. 請求項1又は2に記載の精巣体細胞様細胞の製造方法で得られた、精巣体細胞様細胞。
  6. 請求項1又は2に記載の精巣体細胞様細胞の製造方法で得られた精巣体細胞様細胞と、前記精巣体細胞様細胞と同種由来の雄性生殖細胞とを共培養することを含む、精子の形成方法。
  7. 中期中胚葉様細胞をWNTシグナル阻害剤を含む培地で培養することを含む、中期中胚葉様細胞を精巣体細胞様細胞に分化誘導する方法。
  8. WNTシグナル阻害剤を含む、精巣体細胞様細胞の製造用培地サプリメント。
  9. 基礎培地と、
    請求項8に記載の精巣体細胞様細胞の製造用培地サプリメントと、
    を備える、精巣体細胞様細胞の製造用培地キット。
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