JP2024004760A - 滑り止め部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温環境下およびクリーン環境下でも安定して使用可能であり、対象物を十分に固定することが可能な滑り止め部材を提供する。【解決手段】無機材料からなる基材11の表面の少なくとも一部に、一方向に延在する複数の突条部21からなるストライプ構造20が形成されており、突条部21の平均ピッチが20nm以上1000nm以下の範囲内とされており、表面における静摩擦係数が0.20以上とされていることを特徴とする。【選択図】図2
Description
本発明は、滑り止め部材に関するものである。
対象物を把持する把持部材、対象物を搬送する搬送部材においては、例えば、特許文献1,2に示すように、対象物を安定して固定するために、対象物と接触する部分には滑り止め部材が配設されている。
また、対象物を取り扱う際にも、例えば、特許文献3に示すように、対象物を仮固定して位置ずれを防止するために、滑り止め部材が用いられている。
ここで、滑り止め部材においては、対象物との間に十分な摩擦力を有することが要求されることから、通常、粘弾性体であるゴム等の有機材料で構成されている。
また、対象物を取り扱う際にも、例えば、特許文献3に示すように、対象物を仮固定して位置ずれを防止するために、滑り止め部材が用いられている。
ここで、滑り止め部材においては、対象物との間に十分な摩擦力を有することが要求されることから、通常、粘弾性体であるゴム等の有機材料で構成されている。
ところで、ゴム等の有機材料においては、耐熱性が不十分なために、高温環境下では安定して使用することができないといった問題があった。また、有機材料による汚染のおそれがあるため、クリーン環境下では使用できないといった問題があった。
よって、例えば、半導体製造プロセス用途、航空宇宙用途、ロボット用途においては、有機材料からなる滑り止め部材を適用することができなかった。
よって、例えば、半導体製造プロセス用途、航空宇宙用途、ロボット用途においては、有機材料からなる滑り止め部材を適用することができなかった。
ここで、各種部材を構成する工業材料は、樹脂やゴムなどの有機材料、セラミックスや金属等の無機材料に大別される。
有機材料においては、上述のように、柔軟性に優れるが耐熱性に劣ることになる。これに対して、無機材料においては、耐熱性に優れるが柔軟性に劣ることになる。このように、工業材料においては、選択する材料によって特性のトレードオフが発生してしまうことになる。
有機材料においては、上述のように、柔軟性に優れるが耐熱性に劣ることになる。これに対して、無機材料においては、耐熱性に優れるが柔軟性に劣ることになる。このように、工業材料においては、選択する材料によって特性のトレードオフが発生してしまうことになる。
このため、滑り止め部材を無機材料で構成した場合には、耐熱性に優れるとともに汚染の問題が少なくなるが、十分な摩擦力を得ることができず、対象物を十分に固定することができないおそれがあった。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、高温環境下およびクリーン環境下でも安定して使用可能であり、対象物を十分に固定することが可能な滑り止め部材を提供することを目的とする。
この課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、セラミックスや金属等の無機材料からなる基材の表面に微細な凹凸を形成することにより、その表面に十分な摩擦力が付与されることになり、滑り止め部材として使用することが可能となるとの知見を得た。
本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであって、本発明の態様1の滑り止め部材は、無機材料からなる基材表面の少なくとも一部に、一方向に延在する複数の突条部からなるストライプ構造を有しており、前記突条部の平均ピッチが20nm以上1000nm以下の範囲内とされており、前記表面における静摩擦係数が0.20以上とされていることを特徴としている。
本発明の態様1の滑り止め部材によれば、セラミックスや金属等の無機材料で構成されているので、耐熱性に優れるとともに、汚染の問題を十分に抑制することができる。そして、基材の表面の少なくとも一部に、一方向に延在する複数の突条部からなるストライプ構造が形成され、前記突条部の平均ピッチが20nm以上1000nm以下の範囲内とされており、前記表面における静摩擦係数が0.20以上とされているので、この表面の摩擦力によって対象物を十分に固定することができる。
よって、高温環境下およびクリーン環境下でも安定して使用することができるとともに、対象物を十分に固定することが可能となる。
よって、高温環境下およびクリーン環境下でも安定して使用することができるとともに、対象物を十分に固定することが可能となる。
本発明の態様2は、態様1の滑り止め部材において、前記表面における前記ストライプ構造の占有面積率が30%以上であることを特徴としている。
本発明の態様2の滑り止め部材によれば、前記表面における前記ストライプ構造の占有面積率が30%以上とされているので、前記表面にストライプ構造によってさらに十分な摩擦力が付与されており、さらに確実に対象物を固定することが可能となる。
本発明の態様2の滑り止め部材によれば、前記表面における前記ストライプ構造の占有面積率が30%以上とされているので、前記表面にストライプ構造によってさらに十分な摩擦力が付与されており、さらに確実に対象物を固定することが可能となる。
本発明の態様3は、態様1または態様2の滑り止め部材において、前記突条部の平均ピッチが500nm以下とされていることを特徴としている。
本発明の態様3の滑り止め部材によれば、前記突条部の平均ピッチが500nm以下とさらに微細な構造とされているので、前記表面にさらに十分な摩擦力を付与することができ、さらに確実に対象物を固定することが可能となる。
本発明の態様3の滑り止め部材によれば、前記突条部の平均ピッチが500nm以下とさらに微細な構造とされているので、前記表面にさらに十分な摩擦力を付与することができ、さらに確実に対象物を固定することが可能となる。
本発明の態様4は、態様1から態様3のいずれか一つの滑り止め部材において、前記突条部の平均高さが20nm以上1000nm以下の範囲内とされていることを特徴としている。
本発明の態様4の滑り止め部材によれば、前記突条部の平均高さが20nm以上1000nm以下の範囲内とされているので、前記表面にさらに十分な摩擦力を付与することができ、さらに確実に対象物を固定することが可能となる。
本発明の態様4の滑り止め部材によれば、前記突条部の平均高さが20nm以上1000nm以下の範囲内とされているので、前記表面にさらに十分な摩擦力を付与することができ、さらに確実に対象物を固定することが可能となる。
本発明の態様5は、態様1から態様4のいずれか一つの滑り止め部材において、前記突条部の延在方向に直交する断面が三角形状をなすことを特徴としている。
本発明の態様5の滑り止め部材によれば、前記突条部の延在方向に直交する断面が三角形状をなしていることから、突条部の先端が対象物の外形に沿って変形し易くなり、対象物をさらに確実に固定することが可能となる。
本発明の態様5の滑り止め部材によれば、前記突条部の延在方向に直交する断面が三角形状をなしていることから、突条部の先端が対象物の外形に沿って変形し易くなり、対象物をさらに確実に固定することが可能となる。
本発明の態様6は、態様1から態様5のいずれか一つの滑り止め部材において、前記基材の前記表面がアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、タングステン、タングステン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、石英、ガラス、シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタンのうち、少なくとも一つ以上で構成されていることを特徴としている。
本発明の態様6の滑り止め部材によれば、前記基材の前記表面がアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、タングステン、タングステン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、石英、ガラス、シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタンのうち、少なくとも一つ以上で構成されていることから、耐熱性に特に優れており、高温環境下およびクリーン環境下でも安定して使用することができる。
本発明の態様6の滑り止め部材によれば、前記基材の前記表面がアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、タングステン、タングステン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、石英、ガラス、シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタンのうち、少なくとも一つ以上で構成されていることから、耐熱性に特に優れており、高温環境下およびクリーン環境下でも安定して使用することができる。
本発明によれば、高温環境下およびクリーン環境下でも安定して使用可能であり、対象物を十分に固定することが可能な滑り止め部材を提供することができる。
以下に、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態である滑り止め部材10について説明する。
本実施形態である滑り止め部材10は、例えば、航空宇宙分野、半導体製造プロセス分野、医療分野等の高温環境下又はクリーン環境下で使用される把持装置、搬送装置、製造装置等において、対象物を仮固定するために用いられるものである。
本実施形態である滑り止め部材10は、例えば、航空宇宙分野、半導体製造プロセス分野、医療分野等の高温環境下又はクリーン環境下で使用される把持装置、搬送装置、製造装置等において、対象物を仮固定するために用いられるものである。
本実施形態である滑り止め部材10は、セラミックスや金属等の無機材料からなる基材11を有しており、図1に示すように、基材11の表面の少なくとも一部に、一方向に延在する複数の突条部21からなるストライプ構造20が形成されている。
なお、基材11の形状やサイズに特に制限はないが、本実施形態では、図1に示すように、板状とされており、その厚さが、例えば10μm以上10cm以下の範囲内とされている。
なお、基材11の形状やサイズに特に制限はないが、本実施形態では、図1に示すように、板状とされており、その厚さが、例えば10μm以上10cm以下の範囲内とされている。
ここで、基材11を構成する無機材料としては、金属、セラミックス、シリコン、ガラスが挙げられる。基材11を構成する無機材料は、融点が100℃以上、分解温度が100℃以上であることが好ましく、融点が300℃以上で、分解温度が300℃以上であることが好ましく、融点が500℃以上で、分解温度が500℃以上であることが好ましい。
基材11を構成する金属は、金属単体であってもよいし、合金であってもよい。合金は、複数の金属元素からなるもの及び金属元素と非金属元素からなるものを含む。金属単体の例としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、銅、チタン、タングステン、マグネシウムを挙げることができる。合金の例としては、アルミニウム合金、NiP、ステンレス鋼、銅合金を挙げることができる。
基材11を構成するセラミックスとしては、酸化物、窒化物、炭化物を用いることができる。セラミックスの例としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、石英を挙げることができる。
基材11を構成する無機材料は、金属であることが好ましく、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、NiP合金のいずれかを含むことがより好ましい。
基材11を構成するセラミックスとしては、酸化物、窒化物、炭化物を用いることができる。セラミックスの例としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、石英を挙げることができる。
基材11を構成する無機材料は、金属であることが好ましく、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、NiP合金のいずれかを含むことがより好ましい。
基材11の表面に形成されたストライプ構造20は、図2および図3に示すように、一方向に延在する複数の突条部21によって構成されている。
ここで、並列する突条部21,21の平均ピッチPが20nm以上1000nm以下の範囲内とされている。突条部21の平均ピッチPは、隣り合う突条部21,21の頂部21a,21aの間の距離の平均値である。突条部21の平均ピッチPは、SEM(走査型電子顕微鏡)で撮影されたストライプ構造20の断面SEM写真から測定することができる。
なお、突条部21の平均ピッチPは、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることが好ましい。また、突条部21の平均ピッチPは、20nm以上であることが好ましく、50nm以上であることが好ましい。
ここで、並列する突条部21,21の平均ピッチPが20nm以上1000nm以下の範囲内とされている。突条部21の平均ピッチPは、隣り合う突条部21,21の頂部21a,21aの間の距離の平均値である。突条部21の平均ピッチPは、SEM(走査型電子顕微鏡)で撮影されたストライプ構造20の断面SEM写真から測定することができる。
なお、突条部21の平均ピッチPは、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることが好ましい。また、突条部21の平均ピッチPは、20nm以上であることが好ましく、50nm以上であることが好ましい。
また、本実施形態においては、突条部21の平均高さHが20nm以上1000nm以下の範囲内であることが好ましい。突条部21の平均高さHは、SEM(走査型電子顕微鏡)で撮影されたストライプ構造20の断面SEM写真から測定することができる。
なお、突条部21の平均高さHは、800nm以下であることが好ましく、500nm以下であることが好ましい。また、突条部21の平均高さHは、20nm以上であることが好ましく、50nm以上であることが好ましい。
なお、突条部21の平均高さHは、800nm以下であることが好ましく、500nm以下であることが好ましい。また、突条部21の平均高さHは、20nm以上であることが好ましく、50nm以上であることが好ましい。
また、本実施形態においては、図3に示すように、突条部21の延在方向に直交する断面が三角形状をなすことが好ましい。
ここで、突条部21の断面形状は、二等辺三角形であることがさらに好ましい。突条部21の底角(図3のα)は、60度以上であることが好ましく、60度以上80度以下の範囲内にあることが好ましい。
ここで、突条部21の断面形状は、二等辺三角形であることがさらに好ましい。突条部21の底角(図3のα)は、60度以上であることが好ましく、60度以上80度以下の範囲内にあることが好ましい。
また、本実施形態においては、突条部21の平均ピッチPに対する平均高さHの比(平均高さH/平均ピッチP)は、0.8以上2.0以下の範囲内であることが好ましく、1.0以上1.5以下の範囲内であることがさらに好ましい。
平均高さH/平均ピッチPが0.8以上である場合には、突条部21が対象物の外形に沿って変形しやすくなり、対象物をさらに確実に固定することが可能となる。一方、平均高さH/平均ピッチPが2.0以下である場合には、突条部21の形状の復元力が高くなり、繰り返し使用することが可能となる。
平均高さH/平均ピッチPが0.8以上である場合には、突条部21が対象物の外形に沿って変形しやすくなり、対象物をさらに確実に固定することが可能となる。一方、平均高さH/平均ピッチPが2.0以下である場合には、突条部21の形状の復元力が高くなり、繰り返し使用することが可能となる。
また、本実施形態である滑り止め部材10においては、基材11において対象物と接触する表面におけるストライプ構造20の占める面積率(占有面積率)が30%以上であることが好ましい。
図1に示す滑り止め部材10においては、基材11の表面の約70%にストライプ構造20が形成されている。
なお、基材11の表面におけるストライプ構造20の占める面積率は50%以上であることが好ましく、70%以上であることが好ましい。また、基材11の表面におけるストライプ構造20の占める面積率は100%以下となる。
図1に示す滑り止め部材10においては、基材11の表面の約70%にストライプ構造20が形成されている。
なお、基材11の表面におけるストライプ構造20の占める面積率は50%以上であることが好ましく、70%以上であることが好ましい。また、基材11の表面におけるストライプ構造20の占める面積率は100%以下となる。
ここで、「ストライプ構造20の占有面積率」とは、一定方向に延在する複数の突条部21において、突条部21から突条部21までのピッチが、平均ピッチから-10%~+10%の範囲であって、その突条部21が3本以上連続して繰り返される範囲の面積を基材表面の面積で除した値のことである。
そして、本実施形態である滑り止め部材10においては、基材11のうちストライプ構造20が形成された表面における静摩擦係数μが0.20以上とされている。
なお、基材11の表面における静摩擦係数μは、0.30以上であることが好ましく、0.40以上であることが好ましい。なお、静摩擦係数μの上限に特に制限はないが、現実的には静摩擦係数μは10以下である。
ここで、基材11の表面における静摩擦係数μは、図4に示す式によって算出することができる。図4におけるmは物体の質量、gは重力加速度、F0は最大静止摩擦力、Nは垂直抗力である。具体的には、滑り始める角度をθとしたときに、静摩擦係数μ=tanθで表される。なお、本実施形態では、突条部21の延在方向に直交する方向、および、突条部21の延在方向に平行する方向のいずれの方法においても、静摩擦係数μが0.20以上とされている。
なお、基材11の表面における静摩擦係数μは、0.30以上であることが好ましく、0.40以上であることが好ましい。なお、静摩擦係数μの上限に特に制限はないが、現実的には静摩擦係数μは10以下である。
ここで、基材11の表面における静摩擦係数μは、図4に示す式によって算出することができる。図4におけるmは物体の質量、gは重力加速度、F0は最大静止摩擦力、Nは垂直抗力である。具体的には、滑り始める角度をθとしたときに、静摩擦係数μ=tanθで表される。なお、本実施形態では、突条部21の延在方向に直交する方向、および、突条部21の延在方向に平行する方向のいずれの方法においても、静摩擦係数μが0.20以上とされている。
次に、本実施形態である滑り止め部材10の製造方法の一例について説明する。本実施形態である滑り止め部材10は、図5のフロー図に示すように、研磨工程S01と、切削工程S02と、を有している。
研磨工程S01においては、無機材料からなる基材11の表面を研磨する。基材11の研磨は、例えば、グラインダー研磨、耐水紙による研磨、バフ研磨を用いることができる。研磨後の基材11の表面は、例えば、表面粗さRaで0.02μm以下であることが好ましい。
研磨工程S01においては、無機材料からなる基材11の表面を研磨する。基材11の研磨は、例えば、グラインダー研磨、耐水紙による研磨、バフ研磨を用いることができる。研磨後の基材11の表面は、例えば、表面粗さRaで0.02μm以下であることが好ましい。
切削工程S02においては、研磨工程S01で研磨した基材11の表面を切削加工して突条部21を形成する。切削加工方法は、特に制限はなく、種々の方法を選択することができる。
切削加工方法としては、例えば、刃具を周期的に上下に移動させながら刃具を刃面に対して直交する方向に移動させて溝を形成する方法(NP法:ナノペッキング法)、刃具を上下に移動させずに直線的に移動させて溝を形成する方法(従来法)を用いることができる。
切削加工方法としては、例えば、刃具を周期的に上下に移動させながら刃具を刃面に対して直交する方向に移動させて溝を形成する方法(NP法:ナノペッキング法)、刃具を上下に移動させずに直線的に移動させて溝を形成する方法(従来法)を用いることができる。
NP法において、加工装置としては、刃具と刃具を超音波振動させる超音波振動装置とを有する加工装置を用いることができる。刃具の刃面の形状は特に制限はなく、例えば、三角形や四角形とすることができる。NP法では、例えば、刃具を超音波振動させながら基材11の表面に斜めに押入し、次いで、刃具を周期的に上下に動かしながら、刃具を刃面に対して直交する方向に移動させる。これによって、基材11の表面に刃具の移動方向と直交する方向に延びる突条部21が形成される。
従来法において、加工装置としては、刃具と刃具を超音波振動させる超音波振動装置とを有する加工装置を用いることができる。刃具の刃面の形状は、三角形とする。従来法では、例えば、刃具を超音波振動させながら基材11の表面に垂直に押入し、次いで、刃具を上下に移動しないように固定しながら、刃具を刃面に対して直交する方向に移動させる。これによって、基材11の表面に刃具の移動方向と平行に延びる突条部21が形成される。
上述の各工程により、本実施形態である滑り止め部材10が製造される。
以上のような構成とされた本実施形態である滑り止め部材10によれば、セラミックスや金属等の無機材料で構成されているので、耐熱性に優れるとともに、汚染の問題を十分に抑制することができる。
そして、基材11の表面の少なくとも一部に、一方向に延在する複数の突条部21からなるストライプ構造20が形成され、突条部21の平均ピッチPが20nm以上1000nm以下の範囲内とされており、基材11の表面における静摩擦係数μが0.20以上とされているので、対象物を十分に固定することができる。
よって、高温環境下およびクリーン環境下でも安定して使用することができるとともに、対象物を十分に固定することが可能となる。
そして、基材11の表面の少なくとも一部に、一方向に延在する複数の突条部21からなるストライプ構造20が形成され、突条部21の平均ピッチPが20nm以上1000nm以下の範囲内とされており、基材11の表面における静摩擦係数μが0.20以上とされているので、対象物を十分に固定することができる。
よって、高温環境下およびクリーン環境下でも安定して使用することができるとともに、対象物を十分に固定することが可能となる。
ここで、本実施形態において、基材11の表面におけるストライプ構造の占める面積率が30%以上である場合には、ストライプ構造20によって対象物と接触する基材11の表面にさらに十分な摩擦力が付与されており、さらに確実に対象物を固定することが可能となる。
本実施形態において、突条部21の平均ピッチPが500nm以下とされている場合には、対象物と接触する基材11の表面にさらに十分な摩擦力を付与することができ、さらに確実に対象物を固定することが可能となる。
本実施形態において、突条部21の平均高さHが20nm以上1000nm以下の範囲内とされている場合には、対象物と接触する基材11の表面にさらに十分な摩擦力を付与することができ、さらに確実に対象物を固定することが可能となる。
本実施形態において、突条部21の延在方向に直交する断面が三角形状をなしている場合には、突条部21の先端が対象物の外形に沿って変形し易くなり、対象物をさらに確実に固定することが可能となる。
以上、本発明の実施形態である滑り止め部材について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述の実施形態では、切削加工によってストライプ構造を形成するものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の方法によってストライプ構造を形成したものであってもよい。
また、本実施形態では、突条部の断面形状が三角形状をなすものとして説明したがこれに限定されることはなく、台形形状等の他の断面形状をなしていてもよい。
例えば、上述の実施形態では、切削加工によってストライプ構造を形成するものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の方法によってストライプ構造を形成したものであってもよい。
また、本実施形態では、突条部の断面形状が三角形状をなすものとして説明したがこれに限定されることはなく、台形形状等の他の断面形状をなしていてもよい。
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
まず、表1に示す無機材料からなる基材(縦:10mm、横:10mm、板厚:1mm)を用意した。
用意した基材の表面に対して研磨加工を行い、表面粗さRaが0.02μm以下の平滑面とした。
用意した基材の表面に対して研磨加工を行い、表面粗さRaが0.02μm以下の平滑面とした。
次に、研磨した基材の表面に、NP法を用いて切削加工を行い、一方向に延在する複数の突条部からなるストライプ構造を形成した。
ここで、ストライプ構造を構成する突条部の平均ピッチP、平均高さH、P/H、表面におけるストライプ構造の占める面積率を、表1に示すものとした。
ここで、ストライプ構造を構成する突条部の平均ピッチP、平均高さH、P/H、表面におけるストライプ構造の占める面積率を、表1に示すものとした。
なお、加工装置としては、刃具と刃具を超音波楕円振動させる超音波振動装置とを有する加工装置を用いた。刃具を超音波振動させながら斜めに押入し、次いで、刃具を超音波楕円振動させながら、刃面に対して直交する方向に移動させる間に、刃先が上下方向に移動する周期で動かすことによって、基材の表面に刃具の移動方向と直交する方向に延びる突条部を形成し、表面にストライプ構造を有する滑り止め部材を作製した。
得られた滑り止め部材のうち、ストライプ構造が形成された表面の静摩擦係数を測定した。
300mmの円板状のシリコンウエハSを準備した。なお、シリコンウエハSの表面粗さRaは0.14nmとした。図6に示すように、シリコンウエハSの中心から140mmの径方向位置で周方向に120°間隔で3つの滑り止め部材10を配置し、固定板Qの上に載置した。
なお、ストライプ構造が形成された表面がシリコンウエハS側を向くように、滑り止め部材10を配置した。また、質量128gのシリコンウエハを用いることで、積層方向の荷重を43g/cm2とした。
300mmの円板状のシリコンウエハSを準備した。なお、シリコンウエハSの表面粗さRaは0.14nmとした。図6に示すように、シリコンウエハSの中心から140mmの径方向位置で周方向に120°間隔で3つの滑り止め部材10を配置し、固定板Qの上に載置した。
なお、ストライプ構造が形成された表面がシリコンウエハS側を向くように、滑り止め部材10を配置した。また、質量128gのシリコンウエハを用いることで、積層方向の荷重を43g/cm2とした。
そして、固定板Qを傾けて、シリコンウエハSが滑り落ちる角度θを測定し、静摩擦係数を算出した。
なお、表1において、シリコンウエハSの径方向とストライプ構造の突条部の延在方向とが平行な場合を「平行」とし、シリコンウエハSの径方向とストライプ構造の突条部の延在方向とが直交する場合を「直交」とした。
なお、表1において、シリコンウエハSの径方向とストライプ構造の突条部の延在方向とが平行な場合を「平行」とし、シリコンウエハSの径方向とストライプ構造の突条部の延在方向とが直交する場合を「直交」とした。
比較例1においては、ストライプ構造の突条部の平均ピッチPが1500nmとされており、静摩擦係数が0.14(平行)、0.15(直交)となり、表面の摩擦力が不十分となった。
比較例2においては、ストライプ構造の突条部の平均ピッチPが10nmとされており、静摩擦係数が0.17(平行)、0.17(直交)となり、表面の摩擦力が不十分となった。
比較例2においては、ストライプ構造の突条部の平均ピッチPが10nmとされており、静摩擦係数が0.17(平行)、0.17(直交)となり、表面の摩擦力が不十分となった。
これに対して、本発明例1-10においては、ストライプ構造の突条部の平均ピッチPが20nm以上1000nm以下の範囲内とされており、静摩擦係数が0.28(平行)以上、0.27(直交)以上となり、表面の摩擦力が十分に高く、対象物を十分に固定可能であることが確認された。
また、本発明例8,9では、基材を石英で構成されたものとしたが、表面に突条部の平均ピッチPが20nm以上1000nm以下のストライプ構造を形成することができ、ストライプ構造の占める面積率が30%以上確保されており、静摩擦係数が0.99(平行)以上、0.76(直交)以上となった。
また、本発明例8,9では、基材を石英で構成されたものとしたが、表面に突条部の平均ピッチPが20nm以上1000nm以下のストライプ構造を形成することができ、ストライプ構造の占める面積率が30%以上確保されており、静摩擦係数が0.99(平行)以上、0.76(直交)以上となった。
以上のことから、本発明例によれば、高温環境下およびクリーン環境下でも安定して使用可能であり、対象物を十分に固定することが可能な滑り止め部材を提供可能であることが確認された。
10 滑り止め部材
11 基材
20 ストライプ構造
21 突条部
11 基材
20 ストライプ構造
21 突条部
Claims (6)
- 無機材料からなる基材の表面の少なくとも一部に、一方向に延在する複数の突条部からなるストライプ構造が形成されており、前記突条部の平均ピッチが20nm以上1000nm以下の範囲内とされており、
前記表面における静摩擦係数が0.20以上とされていることを特徴とする滑り止め部材。 - 前記表面における前記ストライプ構造の占有面積率が30%以上であることを特徴とする請求項1に記載の滑り止め部材。
- 前記突条部の平均ピッチが500nm以下とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の滑り止め部材。
- 前記突条部の平均高さが20nm以上1000nm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の滑り止め部材。
- 前記突条部の延在方向に直交する断面が三角形状をなすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の滑り止め部材。
- 前記基材の前記表面がアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、タングステン、タングステン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、石英、ガラス、シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタンのうち、少なくとも一つ以上で構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の滑り止め部材。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022104569A JP2024004760A (ja) | 2022-06-29 | 2022-06-29 | 滑り止め部材 |
PCT/JP2023/023805 WO2024005014A1 (ja) | 2022-06-29 | 2023-06-27 | 滑り止め部材 |
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-
2022
- 2022-06-29 JP JP2022104569A patent/JP2024004760A/ja active Pending
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