JP2024003322A - 工作機械 - Google Patents

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【課題】加工時間への影響を抑制しながら共振を回避した振動切削を行うことが可能な工作機械を提供する。【解決手段】工作機械1は、ワークW1の切削時に切削方向(F1)に沿って工具TO1がワークW1に向かう前進動作M1と該前進動作M1とは反対方向の後退動作M2とを含む振動を伴うように駆動対象の送り移動を制御する制御部U3を備える。制御部U3は、振動の周期に関するパラメーター(A)を含む指令に含まれるパラメーター(A)が禁止されるか許可されるかを、固有振動数に関する情報(NF)に基づいて判断し、パラメーター(A)が禁止されると判断すると、振動に、パラメーター(A)よりも長い周期で許可されるパラメーター(AB)に従った周期の部分と、パラメーター(A)よりも短い周期で許可されるパラメーター(AC)に従った周期の部分と、が含まれるように振動を制御する。【選択図】図10

Description

本発明は、主軸に把持されているワークの振動切削を行う工作機械に関する。
工作機械として、ワークを把持する主軸を備えるNC(数値制御)自動旋盤が知られている。主軸とともに回転するワークから生じる切屑が長くなると、切屑が切削工具に巻き付く等によりワークの連続加工に影響する可能性がある。そこで、工具をワークに向けて前進させる前進動作とワークから遠ざける後退動作とを交互に繰り返しながら工具を送ることにより切屑を分断する振動切削が行われている。切屑は、切粉とも呼ばれる。
振動切削の周波数が刃物台等の固有振動数近辺である場合、共振が生じ、そのために切屑を分断することができないことがある。
特許文献1に記載のNC工作機械の補正装置は、加工振動周波数が固有振動数に対して予め定められた一定の範囲内にあるときに、各送り機構部の送り速度及び/又は主軸の回転速度を減速若しくは増速させるための補正量を算出する。この補正量は、現在の送り機構に対する指令送り速度及び/又は主軸に対する指令回転速度に対し、予め定められた一定の定数を乗じることによって算出される。
特開2003-108206号公報
しかし、指令送り速度に一定の定数を乗じて送り機構部の送り速度を減速したり、指令回転速度に一定の定数を乗じて主軸の回転速度を減速したりすると、加工時間が長くなる。また、指令送り速度に一定の定数を乗じて送り機構部の送り速度を増速したり、指令回転速度に一定の定数を乗じて主軸の回転速度を増速したりすると、加工時間が短くなる一方で、工具や主軸回転モーターへの負担が増加する。
尚、上述のような課題は、旋盤に限らず、マシニングセンター等、種々の工作機械に存在する。
本発明は、加工時間への影響を抑制しながら共振を回避した振動切削を行うことが可能な工作機械を開示するものである。
本発明の工作機械は、
ワークを把持する主軸を回転させる回転駆動部と、
前記ワークを切削する工具と前記主軸の少なくとも一方の駆動対象を移動させる送り駆動部と、
前記ワークの切削時に切削方向に沿って前記工具が前記ワークに向かう前進動作と該前進動作とは反対方向の後退動作とを含む振動を伴うように前記駆動対象の送り移動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記振動の周期に関するパラメーター(A)を含む指令に含まれる前記パラメーター(A)が禁止されるか許可されるかを、固有振動数に関する情報(NF)に基づいて判断し、
前記パラメーター(A)が禁止されると判断すると、前記振動に、前記パラメーター(A)よりも長い周期で許可されるパラメーター(AB)に従った周期の部分と、前記パラメーター(A)よりも短い周期で許可されるパラメーター(AC)に従った周期の部分と、が含まれるように前記振動を制御する、態様を有する。
本発明によれば、加工時間への影響を抑制しながら共振を回避した振動切削を行うことが可能な工作機械を提供することができる。
工作機械の構成例を模式的に示す図である。 工作機械の電気回路の構成例を模式的に示すブロック図である。 切屑長係数A1が2である場合において主軸回転角度に対する工具位置の例を模式的に示す図である。 切屑長係数A1が2である場合において主軸位相に対する工具位置の例を模式的に示す図である。 切屑長係数A1が3である場合において主軸回転角度に対する工具位置の例を模式的に示す図である。 振動送りコマンドに基づいて工具の送り移動時の位置を制御する例を模式的に示す図である。 切屑長係数A1が2/3である場合において主軸回転角度に対する工具位置の例を模式的に示す図である。 切屑長係数A1が2/3である場合において主軸位相に対する工具位置の例を模式的に示す図である。 情報テーブルの構造の例を模式的に示す図である。 制御部が切屑長係数を変動させる場合において主軸回転角度に対する工具位置の例を模式的に示す図である。 制御部が切屑長係数を変動させる場合において主軸位相に対する工具位置の例を模式的に示す図である。 切屑長係数の変動パターンの例を模式的に示す図である。 制御部が1よりも小さい切屑長係数を変動させる場合において主軸位相に対する工具位置の例を模式的に示す図である。 振動送りコマンドを実行する振動制御処理の例を模式的に示すフローチャートである。 主軸回転角度に対する工具位置の別の例を模式的に示す図である。
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~15に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
[態様1]
図1,2に例示するように、本技術の一態様に係る工作機械1は、回転駆動部U1、送り駆動部U2、及び、制御部U3を備える.前記回転駆動部U1は、ワークW1を把持する主軸11を回転させる。前記送り駆動部U2は、前記ワークW1を切削する工具TO1と前記主軸11の少なくとも一方の駆動対象(例えば工具TO1)を移動させる。前記制御部U3は、図3に例示するように、前記ワークW1の切削時に切削方向(例えば送り軸F1)に沿って前記工具TO1が前記ワークW1に向かう前進動作M1と該前進動作M1とは反対方向の後退動作M2とを含む振動を伴うように前記駆動対象の送り移動を制御する。当該制御部U3は、図14に例示するように、前記振動の周期に関するパラメーター(A)を含む指令(例えば振動送りコマンド)に含まれる前記パラメーター(A)が禁止されるか許可されるかを、固有振動数に関する情報(NF)に基づいて判断する。当該制御部U3は、さらに、前記パラメーター(A)が禁止されると判断すると、図10に例示するように、前記振動に、前記パラメーター(A)よりも長い周期で許可されるパラメーター(AB)に従った周期の部分と、前記パラメーター(A)よりも短い周期で許可されるパラメーター(AC)に従った周期の部分と、が含まれるように前記振動を制御する。
振動の周期に関するパラメーター(A)が禁止される場合、切削の振動は、パラメーター(A)よりも長い周期で許可されるパラメーター(AB)に従った周期の部分と、パラメーター(A)よりも短い周期で許可されるパラメーター(AC)に従った周期の部分と、の両方を含む振動となる。これにより、共振が回避される。切削の振動に指令の周期よりも長い周期と短い周期の両方が含まれるため、切削の振動が全体にわたって長い周期に変わる場合と比べて加工時間が長くなることを抑制することができ、切削の振動が全体にわたって短い周期に変わる場合と比べて加工時間が短くなることを抑制することができる。従って、上記態様は、加工時間への影響を抑制しながら共振を回避した振動切削を行うことが可能な工作機械を提供することができる。
ここで、工作機械には、旋盤、マシニングセンター、等が含まれる。
送り駆動部は、ワークを移動させずに工具を切削方向に沿って移動させてもよいし、工具を移動させずにワークを切削方向に沿って移動させてもよいし、工具とワークの両方を切削方向に沿って移動させてもよい。
振動の周期に関するパラメーター(A)は、周期に関係したパラメーターであればよく、周期そのものに限定されない。パラメーター(A)には、切屑長係数A1、周期A2、等が含まれる。
固有振動数に関する情報(NF)は、工作機械の記憶部に予め記憶されてもよいし、工作機械に設けられた検出部が固有振動数を検出することにより保持されてもよいし、オペレーターから固有振動数の入力を受け付けることにより保持されてもよい。
工作機械が共振回避モードと共振非回避モードを有する場合、前記制御部は、前記共振回避モードにおいて前記パラメーター(A)が禁止されると判断すると、前記振動に、前記パラメーター(AB)に従った周期の部分と、前記パラメーター(AC)に従った周期の部分と、が含まれるように前記振動を制御し、前記共振非回避モードにおいて常に前記パラメーター(A)に従って前記振動を制御してもよい。
上述した付言は、以下の態様においても適用される。
[態様2]
前記指令には、単位時間当たりの一定の主軸回転数(S)が設定されてもよい。前記制御部U3は、前記パラメーター(A)が禁止されると判断すると、前記一定の主軸回転数(S)をそのままにし、前記指令のサイクルタイムを変えないように前記パラメーター(AB)に従った周期の部分と前記パラメーター(AC)に従った周期の部分とを前記振動に含めてもよい。
以上の場合、主軸回転数(S)が一定のままであるので、回転駆動部U1への負担の増加が抑制される。従って、上記態様は、回転駆動部への負担の増加を抑制し、加工時間が変わることを抑制しながら共振を回避した振動切削を行うことができる。
[態様3]
図10,12に例示するように、前記制御部U3は、前記パラメーター(A)が禁止されると判断すると、前記パラメーター(AB)に従った1周期以上の周期の部分と、前記パラメーター(AC)に従った1周期以上の周期の部分と、が交互に繰り返されるように前記振動を制御してもよい。
以上の場合、切削の振動において、指令の周期よりも長い周期で1周期以上振動することと、指令の周期よりも短い周期で1周期以上振動することと、が繰り返されるので、振動切削の加工時間が変わることが抑制され、切削の振動回数が変わることが抑制される。従って、上記態様は、加工時間と振動回数が変わることを抑制しながら共振を回避した振動切削を行うことができる。
[態様4]
前記制御部U3は、前記パラメーター(AC)で示される前記振動の周期が前記主軸11の1回転よりも大きい場合、前記パラメーター(AB)及び前記パラメーター(AC)を用いる前記振動において、図10に例示するように、前記振動の1周期において前記前進動作M1から前記後退動作M2に変化する第一変化点C1と、前記振動の1周期において前記後退動作M2から前記前進動作M1に変化する第二変化点C2と、の前記主軸11の回転角度の差を360°に制御してもよい。
以上により、第一変化点C1と第二変化点C2とにおける主軸11の位相が一致し、切り屑が効率的に分断される。従って、本態様は、振動の周期が主軸の1回転よりも大きい場合に切り屑を分断させる好適な例を提供することができる。
[態様5]
前記制御部U3は、3以上の奇数をODとして、前記パラメーター(A)で示される前記振動の周期が2/ODである場合、前記パラメーター(AB)及び前記パラメーター(AC)を用いる前記振動において、図7に例示するように、前記振動の1周期において前記前進動作M1から前記後退動作M2に変化する第一変化点C1と、前記振動の1周期において前記後退動作M2から前記前進動作M1に変化する第二変化点C2と、の前記主軸11の回転角度の差を前記振動の周期の1/2に相当する回転角度に制御してもよい。
以上により、第一変化点C1と第二変化点C2とにおける主軸11の位相がほぼ一致し、切り屑が効率的に分断される。従って、本態様は、振動の周期が主軸の1回転よりも小さい場合に切り屑を分断させる好適な例を提供することができる。
(2)工作機械の構成の具体例:
図1は、工作機械1の例として旋盤の構成を模式的に例示している。図1に示す工作機械1は、ワークW1の加工の数値制御を行うNC(数値制御)装置70を備えるNC自動旋盤である。工作機械1においてコンピューター100は必須の要素ではないため、機械本体2に外部のコンピューター100が接続されないことがある。本具体例において、NC装置70は、制御部U3の例である。尚、制御部U3は、コンピューター100に設けられてもよい。
工作機械1は、把持部12を有する主軸11が組み込まれている主軸台10、主軸台駆動部14、刃物台20、該刃物台20の送り駆動部U2、NC装置70、等を工作機械1に備えるNC工作機械である。ここで、主軸台10は、正面主軸台10Aと、対向主軸台とも呼ばれる背面主軸台10Bとを総称している。正面主軸台10Aには、コレット等といった把持部12Aを有する正面主軸11Aが組み込まれている。背面主軸台10Bには、コレット等といった把持部12Bを有する背面主軸11Bが組み込まれている。主軸11は、正面主軸11Aと、対向主軸とも呼ばれる背面主軸11Bとを総称している。把持部12は、把持部12Aと把持部12Bを総称している。主軸台駆動部14は、正面主軸台10Aを移動させる正面主軸台駆動部14Aと、背面主軸台10Bを移動させる背面主軸台駆動部14Bとを総称している。主軸11の回転駆動部U1は、主軸中心線AX1を中心として正面主軸11Aを回転させるモーター13A、及び、主軸中心線AX1を中心として背面主軸11Bを回転させるモーター13Bを含んでいる。モーター13A,13Bには、主軸に内蔵されたビルトインモーターを使用することができる。むろん、モーター13A,13Bは、主軸11の外に配置されてもよい。
図1に示す工作機械1の制御軸は、「X」で示されるX軸、「Y」で示されるY軸、及び、「Z」で示されるZ軸を含んでいる。Z軸方向は、ワークW1の回転中心となる主軸中心線AX1に沿った水平方向である。X軸方向は、Z軸と直交する水平方向である。Y軸方向は、Z軸と直交する鉛直方向である。尚、Z軸とX軸とは交差していれば直交していなくてもよく、Z軸とY軸とは交差していれば直交していなくてもよく、X軸とY軸とは交差していれば直交していなくてもよい。また、本明細書において参照される図面は、本技術を説明するための例を示しているに過ぎず、本技術を限定するものではない。また、各部の位置関係の説明は、例示に過ぎない。従って、左右を逆にしたり、回転方向を逆にしたり等することも、本技術に含まれる。また、方向や位置等の同一は、厳密な一致に限定されず、誤差により厳密な一致からずれることを含む。
図1に示す工作機械1は主軸移動型旋盤であり、正面主軸台駆動部14Aが正面主軸台10AをZ軸方向へ移動させ、背面主軸台駆動部14Bが背面主軸台10BをZ軸方向へ移動させる。むろん、工作機械1は正面主軸台10Aが移動しない主軸固定型旋盤でもよいし、背面主軸台10Bが移動せずに正面主軸台10AがZ軸方向へ移動してもよい。
正面主軸11Aは、把持部12AによりワークW1を解放可能に把持し、ワークW1とともに主軸中心線AX1を中心として回転可能である。加工前のワークW1が例えば円柱状(棒状)の長尺な材料である場合、正面主軸11Aの後端(図1において左端)から把持部12AにワークW1が供給されてもよい。この場合、正面主軸11Aの前側(図1において右側)には、ワークW1をZ軸方向へ摺動可能に支持するガイドブッシュが配置されてもよい。加工前のワークW1が短い材料である場合、正面主軸11Aの前端から把持部12AにワークW1が供給されてもよい。モーター13Aは、主軸中心線AX1を中心としてワークW1とともに正面主軸11Aを回転させる。正面加工後のワークW1は、正面主軸11Aから背面主軸11Bに引き渡される。背面主軸11Bは、把持部12Bにより正面加工後のワークW1を解放可能に把持し、ワークW1とともに主軸中心線AX1を中心として回転可能である。モーター13Bは、主軸中心線AX1を中心としてワークW1とともに背面主軸11Bを回転させる。正面加工後のワークW1は、背面加工により製品となる。
刃物台20は、ワークW1を加工するための複数の工具TO1が取り付けられ、X軸方向及びY軸方向へ移動可能である。X軸方向とY軸方向は、送り軸F1の例である。むろん、刃物台20は、Z軸方向へ移動してもよい。刃物台20は、タレット刃物台でもよいし、くし形刃物台等でもよい。複数の工具TO1には、突っ切りバイトを含むバイト、回転ドリルやエンドミルといった回転工具、等が含まれる。送り駆動部U2は、複数の工具TO1が取り付けられた刃物台20を送り軸F1に沿って移動させる。本具体例において、送り駆動部U2の駆動対象は工具TO1であり、送り駆動部U2は工具TO1を送り軸F1に沿って移動させる。
尚、送り軸F1は、X軸とY軸の2軸を補間する仮想軸でもよい。工具TO1が取り付けられた刃物台20がZ軸方向へも移動可能である場合、送り軸F1は、Z軸でもよいし、X軸とY軸とZ軸の3軸を補間する仮想軸でもよい。刃物台20がZ軸方向へ移動しない場合でも、主軸11が組み込まれている主軸台10がZ軸方向へ移動することにより、工具TO1と主軸11の両方を駆動対象として3軸を補間する送り軸F1を設定可能である。いずれの場合も、送り軸F1に沿った方向が切削方向となる。
NC装置70に接続された外部のコンピューター100は、プロセッサーであるCPU(Central Processing Unit)101、半導体メモリーであるROM(Read Only Memory)102、半導体メモリーであるRAM(Random Access Memory)103、記憶装置104、入力装置105、表示装置106、音声出力装置107、I/F(インターフェイス)108、時計回路109、等を備えている。コンピューター100の制御プログラムは、記憶装置104に記憶され、CPU101によりRAM103に読み出され、CPU101により実行される。記憶装置104には、フラッシュメモリーといった半導体メモリー、ハードディスクといった磁気記録媒体、等を用いることができる。入力装置105には、ポインティングデバイス、キーボード、表示装置106の表面に貼り付けられたタッチパネル、等を用いることができる。I/F108は、NC装置70に有線又は無線で接続され、NC装置70からデータを受信したりNC装置70にデータを送信したりする。コンピューター100と工作機械1との接続は、インターネットやイントラネット等のネットワーク接続でもよい。コンピューター100には、タブレット型端末を含むパーソナルコンピューター、スマートフォンといった携帯電話、等が含まれる。
図2は、工作機械1の電気回路の構成を模式的に例示している。図2に示す工作機械1において、NC装置70には、操作部80、主軸11の回転駆動部U1、主軸台駆動部14、刃物台20の送り駆動部U2、等が接続されている。回転駆動部U1は、正面主軸11Aを回転させるためにモーター13Aと不図示のサーボアンプを備え、背面主軸11Bを回転させるためにモーター13Bと不図示のサーボアンプを備えている。主軸台駆動部14は、正面主軸台駆動部14Aと背面主軸台駆動部14Bを含んでいる。送り駆動部U2は、サーボアンプ31,32とサーボモーター33,34を備えている。NC装置70は、プロセッサーであるCPU71、半導体メモリーであるROM72、半導体メモリーであるRAM73、時計回路74、I/F75、等を備えている。従って、NC装置70は、コンピューターの一種である。図2では、操作部80、回転駆動部U1、主軸台駆動部14、送り駆動部U2、外部のコンピューター100、等のI/FをまとめてI/F75と示している。
ROM72には、加工プログラムPR2を解釈して実行するための制御プログラムPR1、刃物台20等の固有振動数情報NF、等が書き込まれている。固有振動数情報NFは、刃物台20等の固有振動数に関する情報の例である。本具体例では、固有振動数情報NFは刃物台20等の固有振動数を表す数値であるものとし、単に「NF」と記載するときにはNFが固有振動数そのものの数値であるものとする。刃物台20等の固有振動数は、工作機械1の出荷前にハンマリング試験によって測定され、ROM72に書き込まれる。ROM72は、データを書き換え可能な半導体メモリーでもよい。
RAM73には、オペレーターにより作成された加工プログラムPR2が書き換え可能に記憶される。加工プログラムは、NCプログラムとも呼ばれる。
CPU71は、RAM73をワークエリアとして使用し、ROM72に記録されている制御プログラムPR1を実行することにより、NC装置70の機能を実現させる。むろん、制御プログラムPR1により実現される機能の一部又は全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)といった他の手段により実現させてもよい。
操作部80は、入力部81及び表示部82を備え、NC装置70のユーザーインターフェイスとして機能する。入力部81は、例えば、オペレーターから操作入力を受け付けるためのボタンやタッチパネルから構成される。表示部82は、例えば、オペレーターから操作入力を受け付けた各種設定の内容や工作機械1に関する各種情報を表示するディスプレイで構成される。オペレーターは、操作部80やコンピューター100を用いて加工プログラムPR2をRAM73に記憶させることが可能である。
送り駆動部U2は、X軸に沿って刃物台20を移動させるために、NC装置70に接続されたサーボアンプ31、及び、該サーボアンプ31に接続されたサーボモーター33を備えている。また、送り駆動部U2は、Y軸に沿って刃物台20を移動させるために、NC装置70に接続されたサーボアンプ32、及び、該サーボアンプ32に接続されたサーボモーター34を備えている。
サーボアンプ31は、NC装置70からの指令に従って、X軸方向において刃物台20の位置及び移動速度を制御する。サーボアンプ32は、NC装置70からの指令に従って、Y軸方向において刃物台20の位置及び移動速度を制御する。サーボモーター33は、エンコーダー35を備え、サーボアンプ31からの指令に従って回転し、X軸方向において不図示の送り機構及びガイドを介して刃物台20を移動させる。サーボモーター34は、エンコーダー36を備え、サーボアンプ32からの指令に従って回転し、Y軸方向において不図示の送り機構及びガイドを介して刃物台20を移動させる。送り機構には、ボールねじによる機構等を用いることができる。ガイドには、アリとアリ溝との組合せといった滑り案内等を用いることができる。
NC装置70は、工具TO1が取り付けられた刃物台20の送り移動時の位置指令をサーボアンプ31,32に出す。サーボアンプ31は、NC装置70からX軸の位置指令を入力し、サーボモーター33のエンコーダー35からの出力に基づいて位置フィードバックを入力し、位置指令を位置フィードバックに基づいて補正してサーボモーター33にトルク指令を出力する。これにより、NC装置70は、X軸に沿った刃物台20の送り移動時の位置を制御する。NC装置70は、X軸に沿った工具TO1の送り移動時の位置を制御するともいえる。また、サーボアンプ32は、NC装置70からY軸の位置指令を入力し、サーボモーター34のエンコーダー36からの出力に基づいて位置フィードバックを入力し、位置指令を位置フィードバックに基づいて補正してサーボモーター34にトルク指令を出力する。これにより、NC装置70は、Y軸に沿った刃物台20の送り移動時の位置を制御する。NC装置70は、Y軸に沿った工具TO1の送り移動時の位置を制御するともいえる。
図示していないが、主軸台駆動部14も、サーボアンプとサーボモーターを備えている。正面主軸台駆動部14AはZ軸方向において不図示の送り機構及びガイドを介して正面主軸台10Aを移動させ、背面主軸台駆動部14BはZ軸方向において不図示の送り機構及びガイドを介して背面主軸台10Bを移動させる。
刃物台20に取り付けられた工具TO1がワークW1を切削すると、切粉とも呼ばれる切屑が生じる。主軸中心線AX1を中心として回転するワークW1に対して送り駆動部U2が工具TO1を送り軸F1に沿って振動させずに切り込ませると、連続した長尺な切屑が生じる。連続した長尺な切屑は、工具TO1に巻き付く等によりワークW1の加工に影響を与える可能性がある。そこで、図3に例示するように、ワークW1の切削時に工具TO1を送り軸F1に沿って前進と後退を繰り返しながら送る振動切削により切屑を分断することにしている。まず、共振が生じない場合における振動切削の例を説明する。
図3は、振動の周期に関するパラメーター(A)の例である切屑長係数A1が2である場合において主軸回転角度に対する工具位置を模式的に例示している。単位時間当たりの主軸回転数Sは、一定であるものとする。切屑長係数A1は、振動の1周期に要する主軸11(正面主軸11A又は背面主軸11B)の回転数を意味し、1回の工具空振りに要する主軸回転回数ともいえる。工具空振りは、工具TO1の振動によりワークW1の切削が行われないことを意味する。以下、工具空振りを単に空振りと記載する。主軸回転角度は、工具TO1が現在位置P1にある時の回転角度を0°とした主軸11の回転角度である。工具位置は、切削方向(送り軸F1)において現在位置P1にある時の位置を0とした工具TO1の制御位置である。現在位置P1から終点P2に向かう二点鎖線の直線は、振動切削でない通常切削時の工具位置201を示している。現在位置P1から終点P2に向かう実線の折れ線は、振動切削時の工具位置202を示している。図3の下部には、主軸回転角度に対する工具位置の振動1周期分の拡大図が示されている。
図3に示す工具位置はNC装置70による制御位置であるため、実際の工具位置はサーボ系の応答の遅れ等により図示の位置からずれが生じる。図4~8に示す工具位置も、同様である。尚、図3等に示す具体的な数値は、あくまでも例である。
図3に示す振動は、切削方向に沿って工具TO1がワークW1に向かう前進動作M1と、該前進動作M1とは反対方向の後退動作M2と、が交互に繰り返されることを意味する。NC装置70は、ワークW1の切削時に前進動作M1と後退動作M2とを含む振動を伴うように工具TO1の送り移動を制御する。主軸回転角度に対する工具位置の折れ線は、前進動作M1から後退動作M2に変化する第一変化点C1、及び、後退動作M2から前進動作M1に変化する第二変化点C2を含んでいる。図3に示す例では、主軸回転角度に対する工具位置の波形として通常切削送りに三角波状の振動を重ねた波形が示されている。現在位置P1から終点P2までの主軸回転角度は、振動送りコマンドのサイクルタイムに対応している。
図3において、通常切削送り速度Fは、振動切削でない通常切削を行う時の工具TO1の送り速度であり、工具TO1の非振動時の送り速度である。通常切削送り速度Fの単位は、例えば、主軸1回転当たりのミリメートルを示すmm/revである。切屑長係数A1は、工具TO1の振動の1周期に要する主軸11の回転数であり、主軸11の回転数で表した振動周期といえる。切屑長係数A1の単位は、例えば、revである。切屑長係数A1は、少なくとも1revを除く正の数値である。前進量Dは、振動の1周期当たりに工具TO1の位置が変化する距離であり、各前進動作M1の相対的な終点位置(第一変化点C1の位置)を示している。前進量Dの単位は、例えば、mmである。後退量E1は、工具TO1の振動の1周期における後退動作M2の距離であり、各後退動作M2の相対的な終点位置(第二変化点C2の位置)を示している。後退量E1の単位は、例えば、mmである。工具TO1の振動の1周期において前進動作時に工具TO1が移動する距離は、D+E1である。本具体例では、A1>1である場合、振動の1周期において、工具TO1には、最初に距離(D+E1)/2の前進動作M1の制御が行われ、次に後退量E1の後退動作M2の制御が行われ、最後に距離(D+E1)/2の前進動作M1の制御が行われる。
本具体例では、「通常切削送り速度F」、「切屑長係数A1」、及び、「後退量E1」の設定により、前進動作の送り速度Fdや後退動作の送り速度Bといったパラメーターの試行錯誤的な調整を不要にしている。
図3は、A1>1、具体的にはA1=2である場合に振動の1周期において第一変化点C1と第二変化点C2を設定する例を示している。図4は、A1=2である場合において主軸位相に対する工具位置を模式的に例示している。分かり易く示すため、図4では主軸回転の偶数周目の工具位置が破線で示されている。
送り機構やガイド等の機構に加わる負荷を小さくするためには、速度Fd,Bや前進量Dや後退量E1をできるだけ小さくすることが好ましい。空振りが最も効率的に行われるのは、主軸11の位相において工具TO1の移動経路の山(第一変化点C1)と谷(第二変化点C2)が一致する場合である。山と谷を一致させるためには、例えば、振動の1周期における中間(A1/2)の主軸回転角度から、-180°の主軸回転角度に山を設定し、+180°の主軸回転角度に谷を設定すればよい。A1=2である場合、(2/2)×360-180=180°の主軸回転角度に山を設定し、(2/2)×360+180=540°の主軸回転角度に谷を設定すれば、図4に示すように山と谷の主軸位相が一致する。山と谷の主軸回転角度の差が360°であり、後退量E1が0よりも大きいので、主軸回転の奇数周目の山(第一変化点C1)よりもその次の偶数周目の谷(第二変化点C2)の方が若干後退した位置となる。これにより、切屑が分断される。また、前進動作時の工具位置の変化が一定であるので、効率的に切屑が分断される。
図5は、A1=3である場合において主軸回転角度に対する工具位置を模式的に例示している。A1=3である場合、(3/2)×360-180=360°の主軸回転角度に山(第一変化点C1)を設定し、(3/2)×360+180=720°の主軸回転角度に谷(第二変化点C2)を設定すれば、山と谷の主軸位相が一致する。これにより、効率的に切屑が分断される。
「切屑長係数A1」は、1よりも大きい場合、整数に限定されない。A1>3である場合や、2<A1<3である場合や、1<A1<2である場合も、同様に山と谷を設定することができる。ただし、1<A1<2である場合は前進動作の送り速度Fdが過大となることがあるので、A1は2以上であることが好ましい。また、共振を抑制するために切屑長係数A1を変動させることがある点でも、A1は2以上であることが好ましい。
図示していないが、振動の1周期における中間(A1/2)の主軸回転角度から、-180°の主軸回転角度に谷(第二変化点C2)を設定し、+180°の主軸回転角度に山(第一変化点C1)を設定することも可能である。
以上より、NC装置70は、A1>1である場合、振動の1周期において前進動作M1から後退動作M2に変化する第一変化点C1と、振動の1周期において後退動作M2から前進動作M1に変化する第二変化点C2と、の主軸回転角度の差を360°に制御する。
尚、A1>2であれば、振動の1周期における中間(A1/2)の主軸回転角度から、-360°の主軸回転角度に谷又は山を設定し、+360°の主軸回転角度に山又は谷を設定することも可能である。A1>3であれば、振動の1周期における中間(A1/2)の主軸回転角度から、-540°の主軸回転角度に谷又は山を設定し、+540°の主軸回転角度に山又は谷を設定することも可能である。切粉分断に要する主軸回転回数を少なくし、切粉をより細かく分断するためには、振動の1周期における中間(A1/2)の主軸回転角度から、-180°の主軸回転角度に山又は谷を設定し、+180°の主軸回転角度に谷又は山を設定することが、最も効率的である。
NC装置70が切削方向(送り軸F1)において通常切削の指令速度から送り移動の速度を変えずに工具TO1を移動させるためには、全体として主軸1回転当たりの工具TO1の移動量を通常切削時の移動量である通常切削送り速度Fと同じになるように制御すればよい。切屑長係数A1は工具TO1の振動の1周期に要する主軸11の回転数であるので、振動の1周期当たりの切削方向に沿った工具TO1の移動量は、A1×Fとなる。図3,5に示すように、工具TO1には、振動の1周期において、順に、距離(D+E1)/2の前進動作M1、後退量E1の後退動作M2、及び、距離(D+E1)/2の前進動作M1の制御が行われる。従って、
A1×F={(D+E1)/2}×2-E1
が成り立つ。上記式から、前進量Dは、以下の式で表される。
D=A1×F …(1)
工具TO1の前進動作の送り速度Fdは、以下の式で表される。
Fd={(D+E1)/2}/{(A1-1)/2}
=(D+E1)/(A1-1)
=(A1×F+E1)/(A1-1) …(2)
工具TO1の後退動作の送り速度Bは、以下の式で表される。
B=E1/1
=E1 …(3)
以上より、NC装置70は、A1>1である場合に切削方向(送り軸F1)について「通常切削送り速度F」、「切屑長係数A1」、及び、「後退量E1」の入力を受け付けると、上記式(1),(2),(3)に従って前進量D及び速度Fd,Bを決定することができる。前進量D及び速度Fd,Bが決まると、NC装置70は、切削方向について前進量D及び速度Fd,Bに基づいて工具TO1の送り移動時の位置を制御することができる。そこで、加工プログラムPR2のコマンドとして「通常切削送り速度F」、「切屑長係数A1」、及び、「後退量E1」を指定する振動送りコマンドが考えられる。ここで、この振動送りコマンドがフォーマット「G*** X(U)_Y(V)_Z(W)_A**_F**_E**」を有すると仮定する。Gの後の「***」は振動送りコマンドの番号を示し、「X(U)_Y(V)_Z(W)」は終点P2の位置を示し、Aの後の「**」は切屑長係数A1の数値を示し、Fの後の「**」は通常切削送り速度Fの数値を示し、Eの後の「**」は後退量E1の数値を示している。
図6は、振動送りコマンドから求められた前進量D及び速度Fd,Bに基づいてNC装置70が工具TO1の送り移動時の位置を制御する様子を模式的に例示している。
NC装置70は、切削方向(送り軸F1)において現在位置P1から前進動作M1及び後退動作M2を繰り返して終点P2に到るまでの複数の位置P3を前進量D及び速度Fd,Bに基づいて設定し、順次、工具TO1を位置P3に移動させる位置指令をサーボアンプ31又はサーボアンプ32に出す。図6には、各位置P3が白丸で示されている。設定される位置P3は、変化点(第一変化点C1と第二変化点C2)や終点P2に限定されず、前進動作M1や後退動作M2の途中の位置が含まれてもよい。前述の位置指令が繰り返されることにより、工具TO1の送り移動時の位置が前進量D及び速度Fd,Bに基づいた位置に制御される。
以上より、オペレーターは、加工プログラムPR2において「通常切削送り速度F」、「切屑長係数A1」、及び、「後退量E1」だけを指定することにより、通常切削と同じ加工時間で振動切削を実施させることができる。ここで、「切屑長係数A1」が大きくなると、切屑が長くなる一方で振幅が小さくなる。「切屑長係数A1」と「後退量E1」の好適な値は、工具TO1を移動させるサーボ系の追従性に依存し、単位時間当たりの主軸回転数と工具TO1の送り速度によって決まる。そこで、図9に例示するように、「切屑長係数A1」と「後退量E1」の組合せについて「単位時間当たりの主軸回転数S」と「通常切削送り速度F」に応じた目安の値を情報テーブルTA1として用意しておくことにより、オペレーターは容易に「切屑長係数A1」と「後退量E1」を指定することができる。図9に示すように、情報テーブルTA1には、S,Fの各組合せに対してA1,E1の複数の組合せが対応付けられている。A1,E1の組合せを識別する識別番号をjとすると、図9は、例えば、S=S1とF=F1の組合せに対してA1=a1jとE1=e1jで表される複数の組合せが対応付けられていることを示している。図9に示す情報テーブルTA1は、「単位時間当たりの主軸回転数S」と「通常切削送り速度F」の入力に対する「切屑長係数A1」と「後退量E1」の推奨される複数の組合せを出力するための情報テーブルともいえる。むろん、A1,E1の組合せの数は、有限である。
従って、「単位時間当たりの主軸回転数S」と「通常切削送り速度F」が決まると、情報テーブルTA1から「切屑長係数A1」と「後退量E1」の組合せを選ぶことが可能となる。また、情報テーブルTA1をNC装置70のRAM73に予め格納しておくことにより、NC装置70は、「単位時間当たりの主軸回転数S」及び「通常切削送り速度F」から「切屑長係数A1」及び「後退量E1」の推奨値を提示することができる。
図7は、切屑長係数A1、すなわち、切屑長係数A1が2/3である場合において主軸回転角度に対する工具位置を模式的に例示している。本具体例では、0<A1<1である場合、振動の1周期において、工具TO1には、前半に距離(D+E1)の前進動作M1の制御が行われ、後半に後退量E1の後退動作M2の制御が行われる。図8は、A1=2/3である場合において主軸位相に対する工具位置を模式的に例示している。
0<A1<1である場合、空振りを効率的に実現させるため、A1=2/3、2/5、2/7、…と、分母が3以上の奇数であって分子が2となるように「切屑長係数A1」を制限することにしている。主軸11の位相において山(第一変化点C1)と谷(第二変化点C2)を一致させるためには、例えば、振動の1周期における中間(A1/2)の主軸回転角度に山を設定し、振動の1周期における最後(A1)の主軸回転角度に谷を設定すればよい。A1=2/3である場合、(2/3)/2×360=120°の主軸回転角度に山を設定し、(2/3)×360=240°の主軸回転角度に谷を設定すれば、図8に示すように山と谷の主軸位相が一致する。山と谷が一致する主軸位相は、120°、240°、及び、360°となる。
A1=2/5である場合には、(2/5)/2×360=72°の主軸回転角度に山を設定し、(2/5)×360=144°の主軸回転角度に谷を設定すれば、山と谷の主軸位相が一致する。山と谷が一致する主軸位相は、72°、144°、216°、288°、及び、360°となる。
「切屑長係数A1」は、2/7以下でもよい。ただし、A1<2/3である場合は制御に対するサーボ系の追従性の点から工具TO1の送り速度や単位時間当たりの主軸11の回転数をかなり低くしなければならないことがあるので、A1は2/3が好ましい。
図示していないが、振動の1周期における中間(A1/2)の主軸回転角度に谷を設定し、振動の1周期における最後(A1)の主軸回転角度に山を設定することも可能である。
以上より、NC装置70は、「切屑長係数A1」の分母が3以上の奇数であって「切屑長係数A1」の分子が2である場合、振動の1周期において前進動作M1から後退動作M2に変化する第一変化点C1と、振動の1周期において後退動作M2から前進動作M1に変化する第二変化点C2と、の主軸回転角度の差を{(A1/2)×360}°に制御する。
NC装置70が切削方向(送り軸F1)において通常切削の指令速度から送り移動の速度を変えずに工具TO1を移動させるためには、全体として主軸1回転当たりの工具TO1の移動量を通常切削時の移動量である通常切削送り速度Fと同じになるように制御すればよい。上述したように、振動の1周期当たりの切削方向に沿った工具TO1の移動量は、A1×Fとなる。図7,8に示すように、工具TO1には、振動の1周期において、順に、距離(D+E1)の前進動作M1、及び、後退量E1の後退動作M2の制御が行われる。従って、
A1×F=(D+E1)-E1
が成り立つ。上記式から、前進量Dは、以下の式で表される。
D=A1×F …(4)
工具TO1の前進動作の送り速度Fdは、以下の式で表される。
Fd=(D+E1)/(A1/2)
=2(D+E1)/A1
=2(A1×F+E1)/A1 …(5)
工具TO1の後退動作の送り速度Bは、以下の式で表される。
B=E1/(A1/2)
=2E1/A1 …(6)
以上より、NC装置70は、A1<1である場合に切削方向(送り軸F1)について「通常切削送り速度F」、「切屑長係数A1」、及び、「後退量E1」の入力を受け付けると、上記式(4),(5),(6)に従って前進量D及び速度Fd,Bを決定することができる。前進量D及び速度Fd,Bが決まると、NC装置70は、切削方向について前進量D及び速度Fd,Bに基づいて工具TO1の送り移動時の位置を制御することができる。図6で示したように、NC装置70は、切削方向において現在位置P1から前進動作M1及び後退動作M2を繰り返して終点P2に到るまでの複数の位置P3を前進量D及び速度Fd,Bに基づいて設定し、順次、工具TO1を位置P3に移動させる位置指令をサーボアンプ31又はサーボアンプ32に出す。前述の位置指令が繰り返されることにより、工具TO1の送り移動時の位置が前進量D及び速度Fd,Bに基づいた位置に制御される。
ところで、振動切削の周波数(fとする。)が刃物台等の固有振動数近辺である場合、共振と呼ばれる大きな振動が発生する。これにより、空振りが生じるように設定されているにも関わらず切屑が分断されないことがある。
振動切削の周波数fは、単位時間当たりの主軸回転数S(rev/min)と切屑長係数A1(rev)と用いて、以下の式により算出される。
f=S/A1/60 (Hz) …(7)
振動切削の周波数fが刃物台等の固有振動数近辺である場合、例えば、単位時間当たりの主軸回転数Sに一定の定数を乗じると、振動切削の周波数fが固有振動数近辺からずれる。ただ、指令された「単位時間当たりの主軸回転数S」を下げると、加工時間が長くなる。指令された「単位時間当たりの主軸回転数S」を上げると、加工時間が短くなる一方で、工具TO1や回転駆動部U1への負担が増加する。むろん、振動切削中に単位時間当たりの主軸回転数Sを上下させることは、回転駆動部U1への負担が特に大きい。
切屑長係数A1に一定の定数を乗じても、振動切削の周波数fを固有振動数近辺からずらすことができる。ただ、切屑長係数A1を大きくすると、振動の周期が長くなり、前進動作M1の速度が遅くなる結果、加工時間が長くなる。切屑長係数A1を小さくすると、加工時間が短くなる一方で、工具TO1や回転駆動部U1への負担が増加する。
そこで、本具体例では、指令された切屑長係数A1に対応する振動数が刃物台等の固有振動数近辺となる場合、振動に、切屑長係数A1よりも大きい切屑長係数ABに従った周期の部分と、切屑長係数A1よりも小さい切屑長係数ACに従った周期の部分と、が含まれるようにしている。これにより、加工時間への影響を抑制しながら共振を回避した振動切削を行うことができる。また、制御プログラムPR1を実行するNC装置70が自動的に共振の発生を予測して切屑長係数をA1からAB,ACに切り替えるので、オペレーターは共振を回避した振動切削のために特別な加工プログラムを作成する必要が無い。
図10は、指令された切屑長係数A1に対応する振動数が刃物台等の固有振動数近辺である場合において主軸回転角度に対する工具位置を模式的に例示している。現在位置P1から終点P2までの主軸回転角度は、振動送りコマンドのサイクルタイムに対応している。
NC装置70は、まず、振動送りコマンドに含まれる切屑長係数A1が禁止されるか許可されるかを固有振動数情報NFに基づいて判断する。切屑長係数A1に対応する振動数がNF近辺である場合、NC装置70は、切屑長係数A1が禁止されると判断する。この場合、NC装置70は、切削の振動に、元の切屑長係数A1よりも長い周期で許可される切屑長係数ABに従った周期の部分と、元の切屑長係数A1よりも短い周期で許可される切屑長係数ACに従った周期の部分と、が含まれるように、切削の振動を制御する。
上述したように、切屑長係数A1に対応する振動の周波数fは、単位時間当たりの主軸回転数Sを用いて、f=S/A1/60で表される。切屑長係数A1に対応する振動数がNF近辺であるか否かの判断は、例えば、fとNFとの差の絶対値に対する正の閾値をTfとして、|f-NF|≦Tfであるか否かの判断とすることができる。切屑長係数AB,ACは、例えば、|(S/AB/60)-NF|>Tf且つ|(S/AC/60)-NF|>Tfを満たす範囲で、正の補正値をaとして、AB=A1+a、及び、AC=A1-aとすることができる。これにより、切屑長係数AB=A1+aは切屑長係数A1よりも長い周期で許可される切屑長係数となり、切屑長係数AC=A1-aは切屑長係数A1よりも短い周期で許可される切屑長係数となる。図10には、1周期の切屑長係数AB=A1+aと、1周期の切屑長係数AC=A1-aと、を交互に繰り返す例が示されている。現在位置P1から終点P2に向かう工具TO1の振動は、1周期分の切屑長係数ABに従った周期の部分と、1周期分の切屑長係数ACに従った周期の部分と、を交互に含んでいる。補正値aは、2×Tfに相当するS/2Tf/60よりも大きい範囲で、例えばA1/10以下とすることができる。例えば、A1=2であってa=A1/20=0.1である場合、1周期の切屑長係数AB=2.1と、1周期の切屑長係数AC=1.9と、が交互に繰り返される。A1=2であってa=A1/40=0.05である場合、1周期の切屑長係数AB=2.05と、1周期の切屑長係数AC=1.95と、が交互に繰り返される。
切屑長係数AB,ACに従った振動が交互に繰り返される結果、図10に示すサイクルタイムは図3で示したサイクルタイムと変わらないようにされ、切削の振動回数も元から変わらないようにされる。
AC>1である場合、切屑長係数AB,ACに従った振動については、例えば、切屑長係数A1に従った振動と同様に移動経路の山(第一変化点C1)と谷(第二変化点C2)を設定することができる。例えば、切屑長係数ABに従った振動については、振動の1周期における中間(AB/2)の主軸回転角度から、-180°の主軸回転角度に山を設定し、+180°の主軸回転角度に谷を設定すればよい。山と谷との主軸回転角度の差は、360°である。図10の下部には、A1=2であってa=0.1である場合に山と谷を設定する例が示されている。この場合、中間(AB/2)の主軸回転角度は(2.1/2)×360=378°であり、山の主軸回転角度は378-180=198°であり、谷の主軸回転角度は378+180=558°である。谷の主軸回転角度に対応する主軸位相は、558-360=198°である。切屑長係数ACに従った振動については、振動の1周期における中間(AC/2)の主軸回転角度から、-180°の主軸回転角度に山を設定し、+180°の主軸回転角度に谷を設定すればよい。山と谷との主軸回転角度の差は、360°である。A1=2であってa=0.1である場合、中間(AC/2)の主軸回転角度は(1.9/2)×360=342°であり、山の主軸回転角度は342-180=162°であり、谷の主軸回転角度は342+180=522°である。AB=2.1の1周期分の主軸回転角度756°を起点にすると、AC=1.9の周期における山の主軸回転角度は756+162=918°であり、この主軸回転角度に対応する主軸位相は198°である。
ここで、切屑長係数AB,ACに従った前進量Dは、以下の式で表される。
D=AB×F …(8)
D=AC×F …(9)
切屑長係数AB,ACに従った前進動作の送り速度Fdは、以下の式で表される。
Fd=(AB×F+E1)/(AB-1) …(10)
Fd=(AC×F+E1)/(AC-1) …(11)
切屑長係数AB,ACに従った後退動作の送り速度Bは、いずれも、以下の式で表される。
B=E1 …(12)
図11は、AB=2.1であってAC=1.9である場合において主軸位相に対する工具位置を模式的に例示している。分かり易く示すため、図11では主軸回転の偶数周目の工具位置が破線で示されている。
AC>1である場合、図11に示すように、主軸11の位相において工具TO1の移動経路の山(第一変化点C1)と谷(第二変化点C2)が一致する。AB=2.1であってAC=1.9である場合、山と谷の主軸位相は共に198°となる。これにより、切屑が分断される。周期毎に後退量E1は一定であるので、切屑を分断する条件を変えずに切屑長係数を変えることができるといえる。尚、周期毎に後退量E1は一定である一方で前進量Dが変動するので、切削の振動の周期が変動し、共振が抑制される。
以上により、NC装置70は、切屑長係数A1が禁止される場合、単位時間当たりの一定の主軸回転数Sをそのままにし、振動送りコマンドのサイクルタイムを変えないように切屑長係数ABに従った周期の部分と切屑長係数ACに従った周期の部分とを切削の振動に含める。
図12に例示するように、振動の周期数に応じた切屑長係数の変動パターンには、様々なパターンが考えられる。尚、振動の各回の切屑長係数は、固有振動数情報NFに基づいて許可されるように設定されている。
パターンPA1は、切屑長係数AB=A1+aに従った振動から開始し、切屑長係数AB=A1+aに従った振動1周期と、切屑長係数AC=A1-aに従った振動1周期と、を交互に繰り返すことを意味している。この場合、NC装置70は、切屑長係数AB=A1+aに従った1周期分の周期の部分と、切屑長係数AC=A1-aに従った1周期分の周期の部分と、が交互に繰り返されるように、切削の振動を制御する。尚、パターンPA1の代わりに、切屑長係数AC=A1-aに従った振動から開始して切屑長係数AC,ABを交互に繰り返す変動パターンが採用されてもよい。
パターンPA2は、切屑長係数AB=A1+aに従った振動2周期と、切屑長係数AC=A1-aに従った振動2周期と、を交互に繰り返すことを意味している。この場合、NC装置70は、切屑長係数AB=A1+aに従った2周期分の周期の部分と、切屑長係数AC=A1-aに従った2周期分の周期の部分と、が交互に繰り返されるように、切削の振動を制御する。パターンPA1よりもパターンPA2の方が共振を抑制する効果が大きい機種の工作機械1には、パターンPA2を採用すると好適である。
尚、パターンPA2の代わりに、切屑長係数AC=A1-aに従った振動から開始して切屑長係数AC,ABを2回ずつ交互に繰り返す変動パターンが採用されてもよい。また、周期H1,H2をいずれも1よりも大きい数として、切屑長係数AB=A1+aに従った振動H1周期と、切屑長係数AC=A1-aに従った振動H2周期と、を交互に繰り返す変動パターンが採用されてもよい。この場合、NC装置70は、切屑長係数AB=A1+aに従ったH1周期分の周期の部分と、切屑長係数AC=A1-aに従ったH2周期分の周期の部分と、が交互に繰り返されるように、切削の振動を制御する。周期H2は、周期H1と同じであることが好ましいものの、周期H1とは異なっていてもよい。さらに、周期H1,H2は、2,3,4,…といった整数が好ましいものの、整数でない実数でもよい。
パターンPA3は、切屑長係数AB=A1+aに従った振動1周期、切屑長係数AC=A1-0.5aに従った振動1周期、切屑長係数AB=A1+aに従った振動1周期、及び、切屑長係数AC=A1-1.5aに従った振動1周期を順に含む振動4周期を繰り返すことを意味している。この場合、NC装置70は、切屑長係数AB=A1+aに従った1周期分の周期の部分、切屑長係数AC=A1-0.5aに従った1周期分の周期の部分、切屑長係数AB=A1+aに従った1周期分の周期の部分、及び、切屑長係数AC=A1-1.5aに従った1周期分の周期の部分を順に含む部分が繰り返されるように、切削の振動を制御する。このように、NC装置70は、切屑長係数ACをさらに変動させてもよい。この場合も、NC装置70は、切屑長係数ABに従った1周期分の周期の部分と、切屑長係数ACに従った1周期分の周期の部分と、が交互に繰り返されるように振動を制御することになる。パターンPA1,PA2よりもパターンPA3の方が共振を抑制する効果が大きい機種の工作機械1には、パターンPA3を採用すると好適である。
尚、NC装置70は、切屑長係数ACの代わりに切屑長係数ABを変動させてよく、切屑長係数AB,ACの両方を変動させてもよい。
上述したパターンPA1~PA3等の変動パターンに従って、NC装置70は、切屑長係数A1が禁止されると判断すると、切屑長係数ABに従った1周期以上の周期の部分と、切屑長係数ACに従った1周期以上の周期の部分と、が交互に繰り返されるように、切削の振動を制御する。
尚、NC装置70は、切屑長係数を変動させることにより空振りが不十分となる場合、後退量E1を元から大きくすることにより空振りの確実性を向上させてもよい。
切屑長係数A1が1よりも小さい場合、3以上の奇数をODとして、A1=2/ODとなる。この場合、切屑長係数AB,ACは、2/ODからずれた値に設定され、例えば、|(S/AB/60)-NF|>Tf且つ|(S/AC/60)-NF|>Tfを満たす範囲で、正の補正値をaとして、AB=A1+a、及び、AC=A1-aとすることができる。これにより、切屑長係数AB=A1+aは切屑長係数A1よりも長い周期で許可される切屑長係数となり、切屑長係数AC=A1-aは切屑長係数A1よりも短い周期で許可される切屑長係数となる。AC<1における切屑長係数AB,ACに従った振動については、例えば、切屑長係数A1に従った振動と同様に移動経路の山(第一変化点C1)と谷(第二変化点C2)を設定することができる。例えば、切屑長係数ABに従った振動については、(AB/2)×360°の主軸回転角度に山を設定し、AB×360°の主軸回転角度に谷を設定すればよい。山と谷との主軸回転角度の差は、振動の周期の1/2に相当する回転角度(AB/2)×360°である。切屑長係数ACに従った振動については、(AC/2)×360°の主軸回転角度に山を設定し、AC×360°の主軸回転角度に谷を設定すればよい。山と谷との主軸回転角度の差は、振動の周期の1/2に相当する回転角度(AC/2)×360°である。
ここで、切屑長係数AB,ACに従った前進量Dは、以下の式で表される。
D=AB×F …(13)
D=AC×F …(14)
切屑長係数AB,ACに従った前進動作の送り速度Fdは、以下の式で表される。
Fd=2(AB×F+E1)/AB …(15)
Fd=2(AC×F+E1)/AC …(16)
切屑長係数AB,ACに従った後退動作の送り速度Bは、以下の式で表される。
B=2E1/AB …(17)
B=2E1/AC …(18)
図13は、A1=2/3である場合において主軸位相に対する工具位置を模式的に例示している。図13では、元の切屑長係数A1に従った工具位置が破線で示され、切削の振動が切屑長係数AC=A1-aに従った振動から開始し、切屑長係数AC=A1-aに従った振動1周期と、切屑長係数AB=A1+aに従った振動1周期と、が交互に繰り返されている。
補正量aが5°に相当する0.021である場合、切屑長係数ACの周期における谷の主軸回転角度は235°であり、切屑長係数ACの周期における山の主軸回転角度は235/2=117.5°である。切屑長係数ABの周期における谷の主軸回転角度は245°であり、切屑長係数ACの周期における山の主軸回転角度は245/2=122.5°である。切屑長係数ACの1周期分の主軸回転角度235°を起点にすると、切屑長係数ABの周期における谷の主軸回転角度は235+245=480°であり、この主軸回転角度に対応する主軸位相は120°である。従って、切屑長係数ABの周期における谷の主軸位相120°は、切屑長係数ACの周期における山の主軸位相117.5°からずれる。しかし、元の切屑長係数A1を使用する場合において十分な空振りを確保するために後退量E1が設定されると、山と谷の主軸位相が若干ずれても、空振りが実現される。むろん、NC装置70は、切屑長係数を変動させることにより空振りが不十分となる場合、後退量E1を元から大きくすることにより空振りの確実性を向上させてもよい。
A1<1である場合も、NC装置70は、図12で示したような様々な変動パターンに従って、切屑長係数A1が禁止されると判断すると、切屑長係数ABに従った1周期以上の周期の部分と、切屑長係数ACに従った1周期以上の周期の部分と、が交互に繰り返されるように、切削の振動を制御する。その際、NC装置70は、単位時間当たりの一定の主軸回転数Sをそのままにし、振動送りコマンドのサイクルタイムを変えないように切屑長係数ABに従った周期の部分と切屑長係数ACに従った周期の部分とを切削の振動に含める。
図14は、振動送りコマンドを実行する振動制御処理を模式的に例示している。振動制御処理は、NC装置70により行われる。尚、切屑長係数A1は、1よりも大きい場合、切屑長係数ACが1よりも大きくなるように設定されるものとする。
NC装置70は、単位時間当たりの一定の主軸回転数Sが設定された状態で加工プログラムPR2から振動送りコマンドを読み込むと、振動制御処理を開始させる。振動送りコマンドの前において最後に読み込まれた主軸回転数設定コマンドに含まれる「単位時間当たりの主軸回転数S」が振動送りコマンドに設定された主軸回転数Sとなる。振動送りコマンドは、指定するパラメーターとして、「通常切削送り速度F」、「切屑長係数A1」、及び、「後退量E1」を有している。
まず、NC装置70は、振動送りコマンドに含まれる切屑長係数A1が禁止されるか許可されるかを固有振動数情報NFに基づいて判断する(ステップS102)。固有振動数情報NFは、ROM72から読み出される。上述したように切屑長係数A1に対応する振動の周波数fはS/A1/60であり、例えば、fとNFとの差の絶対値に対する正の閾値をTfとして、NC装置70は、|f-NF|≦Tfであるか否かを判断すればよい。
|f-NF|>Tfである場合、切屑長係数A1は許可され、NC装置70は処理をステップS104に進める。A1>1である場合、NC装置70は、上述した式(1)に従って前進量Dを算出し、上述した式(2)に従って工具TO1の前進動作の送り速度Fdを算出し、上述した式(3)に従って工具TO1の後退動作の送り速度Bを決定する。A1<1である場合、NC装置70は、上述した式(4)に従って前進量Dを算出し、上述した式(5)に従って工具TO1の前進動作の送り速度Fdを算出し、上述した式(6)に従って工具TO1の後退動作の送り速度Bを算出する。その後、NC装置70は、処理をステップS110に進め、図6で示したように前進量D及び速度Fd,Bに基づいて工具TO1の送り移動時の位置を制御する。
|f-NF|≦Tfである場合、切屑長係数A1は禁止され、NC装置70は処理をステップS106に進める。A1>1である場合、NC装置70は、図12に示す変動パターンに従って、各振動の切屑長係数(AB又はAC)を設定する。例えば、パターンPA1が使用される場合、NC装置70は、奇数周期目の振動の切屑長係数ABをA1+aに設定し、偶数周期目の振動の切屑長係数ACをA1-aに設定する。
次に、NC装置70は、各振動のパラメーター(D,Fd,B)を算出する(ステップS108)。
A1>1すなわちAC>1である場合、NC装置70は、上述した式(8),(9)に従って各振動の前進量Dを算出し、上述した式(10),(11)に従って各振動の前進動作の送り速度Fdを算出し、上述した式(12)に従って各振動の後退動作の送り速度Bを決定する。A1<1すなわちAB<1である場合、NC装置70は、上述した式(13),(14)に従って前進量Dを算出し、上述した式(15),(16)に従って各振動の前進動作の送り速度Fdを算出し、上述した式(17),(18)に従って各振動の後退動作の送り速度Bを算出する。その後、NC装置70は、処理をステップS110に進め、図6で示したように前進量D及び速度Fd,Bに基づいて工具TO1の送り移動時の位置を制御する。
ステップS110の処理が終了すると、図14に示す振動制御処理が終了する。
ステップS106~S110に従って、NC装置70は、切屑長係数ABよりも長い周期で許可される切屑長係数ABに従った1周期以上の周期の部分と、切屑長係数ABよりも短い周期で許可される切屑長係数ACに従った1周期以上の周期の部分と、が交互に繰り返されるように、切削の振動を制御する。従って、振動切削の加工時間が変わらないように制御され、切削の振動回数が変わらないように制御される。また、NC装置70は、単位時間当たりの一定の主軸回転数Sをそのままにし、振動送りコマンドのサイクルタイムを変えないように切屑長係数ABに従った周期の部分と切屑長係数ACに従った周期の部分とを切削の振動に含める。単位時間当たりの主軸回転数Sが一定のままであるので、回転駆動部U1への負担の増加が抑制される。従って、本具体例は、加工時間への影響を抑制しながら共振を回避した振動切削を行うことができる。また、NC装置70が自動的に共振の発生を予測して切屑長係数をA1からAB,ACに切り替えるので、共振を回避した振動切削のための特別な加工プログラムは不要である。
尚、工作機械1が共振回避モードと共振非回避モードを有する場合、NC装置70は、共振回避モードにおいて図14に示す振動制御処理を行い、共振非回避モードにおいてステップS104,S110の処理のみ行ってもよい。
(3)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、切削方向に沿って移動する駆動対象は、工具TO1に限定されず、ワークW1を把持する主軸11でもよいし、工具TO1と主軸11の両方でもよい。駆動対象が主軸11である場合、NC装置70は、ワークW1の切削時に切削方向に沿って振動を伴うように主軸11の送り移動を制御すればよい。駆動対象が工具TO1と主軸11の両方である場合、NC装置70は、ワークW1の切削時に切削方向に沿って振動を伴うように工具TO1と主軸11の両方の送り移動を制御すればよい。
制御部U3は、機械本体2ではなく、コンピューター100(図1参照)に設けられてもよい。また、機械本体2とコンピューター100の両方が制御部U3を構成することも可能である。
工作機械1は、刃物台等の固有振動数を検出する検出部を備えていてもよく、検出部で検出した固有振動数を表す固有振動数情報NFをRAM73又はROM72に書き込んでもよい。図14に示す振動制御処理において、NC装置70は、RAM73又はROM72から固有振動数情報NFを読み出すことにより、ステップS102の判断処理を行うことができる。
また、工作機械1は、操作部80又はコンピューター100から刃物台等の固有振動数の入力を受け付けてもよく、受け付けた固有振動数を表す固有振動数情報NFをRAM73又はROM72に書き込んでもよい。図14に示す振動制御処理において、NC装置70は、RAM73又はROM72から固有振動数情報NFを読み出すことにより、ステップS102の判断処理を行うことができる。
固有振動数情報NFは、固有振動数を表す数値に限定されず、禁止される周波数帯(固有振動数を含む周波数帯)を表す情報等でもよい。
振動切削において主軸回転角度に対する工具位置の波形は、通常切削送りに三角波状の振動を重ねた波形に限定されない。
図15に例示するように、本技術は、主軸回転角度に対する工具位置の波形として通常切削送りに正弦波状の振動を重ねた波形にも適用可能である。図15は、主軸回転角度に対する工具位置の別の例を模式的に示している。図15において、通常切削送り速度Fの成分が破線で示され、最大送り速度Fmaxが細かいドット状の点線で示されている。
図15に示す波形から通常切削送り速度Fの成分を除いた正弦波は、周期がA2であり、振幅がE2である。従って、周期A2は振動の周期に関するパラメーターの例である。図15に示す正弦波における谷C4から山C3に向かう中間点C5の傾きは、最大送り速度Fmaxを示している。
図15に示す波形でも、NC装置70(又はコンピューター100)は、周期A2を含む振動送りコマンドに含まれる周期A2が禁止されるか許可されるかを固有振動数情報NFに基づいて判断することができる。そのうえで、NC装置70は、周期A2が禁止されると判断すると、切削の振動に、周期A2よりも長い周期で許可される周期(切屑長係数ABに相当)に従った周期の部分と、周期A2よりも短い周期で許可される周期(切屑長係数ACに相当)に従った周期の部分と、が含まれるように、切削の振動を制御することができる。従って、図15に示す波形の振動切削を行う工作機械も、加工時間への影響を抑制しながら共振を回避した振動切削を行うことができる。
(4)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、加工時間への影響を抑制しながら共振を回避した振動切削を行うことが可能な工作機械等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
1…工作機械、
10…主軸台、11…主軸、12…把持部、13A,13B…モーター、
14…主軸台駆動部、
20…刃物台、
31,32…サーボアンプ、33,34…サーボモーター、35,36…エンコーダー、
70…NC装置、
80…操作部、81…入力部、82…表示部、
100…コンピューター、
201…通常切削時の工具位置、202…振動切削時の工具位置、
AX1…主軸中心線、
C1…第一変化点、C2…第二変化点、
F1…送り軸、
M1…前進動作、M2…後退動作、
NF…固有振動数情報、
P1…現在位置、P2…終点、P3…位置、
PR1…制御プログラム、PR2…加工プログラム、
TO1…工具、
U1…回転駆動部、U2…送り駆動部、U3…制御部、
W1…ワーク。

Claims (5)

  1. ワークを把持する主軸を回転させる回転駆動部と、
    前記ワークを切削する工具と前記主軸の少なくとも一方の駆動対象を移動させる送り駆動部と、
    前記ワークの切削時に切削方向に沿って前記工具が前記ワークに向かう前進動作と該前進動作とは反対方向の後退動作とを含む振動を伴うように前記駆動対象の送り移動を制御する制御部と、を備え、
    前記制御部は、
    前記振動の周期に関するパラメーター(A)を含む指令に含まれる前記パラメーター(A)が禁止されるか許可されるかを、固有振動数に関する情報(NF)に基づいて判断し、
    前記パラメーター(A)が禁止されると判断すると、前記振動に、前記パラメーター(A)よりも長い周期で許可されるパラメーター(AB)に従った周期の部分と、前記パラメーター(A)よりも短い周期で許可されるパラメーター(AC)に従った周期の部分と、が含まれるように前記振動を制御する、工作機械。
  2. 前記指令には、単位時間当たりの一定の主軸回転数(S)が設定され、
    前記制御部は、前記パラメーター(A)が禁止されると判断すると、前記一定の主軸回転数(S)をそのままにし、前記指令のサイクルタイムを変えないように前記パラメーター(AB)に従った周期の部分と前記パラメーター(AC)に従った周期の部分とを前記振動に含める、請求項1に記載の工作機械。
  3. 前記制御部は、前記パラメーター(A)が禁止されると判断すると、前記パラメーター(AB)に従った1周期以上の周期の部分と、前記パラメーター(AC)に従った1周期以上の周期の部分と、が交互に繰り返されるように前記振動を制御する、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
  4. 前記制御部は、前記パラメーター(AC)で示される前記振動の周期が前記主軸の1回転よりも大きい場合、前記パラメーター(AB)及び前記パラメーター(AC)を用いる前記振動において、前記振動の1周期において前記前進動作から前記後退動作に変化する第一変化点と、前記振動の1周期において前記後退動作から前記前進動作に変化する第二変化点と、の前記主軸の回転角度の差を360°に制御する、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
  5. 前記制御部は、3以上の奇数をODとして、前記パラメーター(A)で示される前記振動の周期が2/ODである場合、前記パラメーター(AB)及び前記パラメーター(AC)を用いる前記振動において、前記振動の1周期において前記前進動作から前記後退動作に変化する第一変化点と、前記振動の1周期において前記後退動作から前記前進動作に変化する第二変化点と、の前記主軸の回転角度の差を前記振動の周期の1/2に相当する回転角度に制御する、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
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