JP2024003268A - 制振部材、ルーフライナー、車両の天井構造及び制振構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】新規な制振技術が求められている。【解決手段】本開示の制振部材は、圧縮歪み0~3%の範囲における平均弾性率が、40kPa以上200kPa以下の発泡体からなる制振部材である。【選択図】図1
Description
本開示は、制振部材に関する。
振動を抑えるための様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
新規な制振技術が求められている。
発明の第1態様は、圧縮歪み0~3%の範囲における平均弾性率が、40kPa以上200kPa以下の発泡体からなる制振部材である。
本開示の一実施形態に係る制振部材10は、他の部材に宛がわれてその部材の振動を低減するものであり、発泡体からなる。図1(A)には、制振部材10の使用例が示されている。この例では、制振部材10は、車両90の車体パネルに宛がわれて、車体パネルの制振をする。具体的には、制振部材10は、車両90の天井構造100に備えられる(図1(B)及び図2参照)。天井構造100には、車体パネルとしてのルーフパネル91と、天井の内装材であり、ルーフパネル91に下方から重ねられるルーフライナー20と、が設けられている。そして、天井構造100では、制振部材10が、ルーフパネル91とルーフライナーに挟まれている。
図2及び図3に示すように、ルーフパネル91とルーフライナー20の間には、リインフォースメント80が設けられてもよい。この場合、例えば、制振部材10は、リインフォースメント80を避けた位置に配置される。本実施形態の例では、制振部材10は、シート状をなし、車幅方向(左右方向)に延びると共に、ルーフライナー20に前後方向で複数載置されている(図1(A)及び図2参照)。
なお、リインフォースメント80は、ルーフパネル91に宛がわれて固定され(図2参照)、ルーフパネル91を補強するものである。例えば、図3に示すように、リインフォースメント80には、ルーフパネル91の側辺部に重ねられる1対のサイドレールリインフォースメント80Sが設けられると共に、それらサイドレールリインフォースメント80Sに差し渡されて車幅方向に延びた横梁81が設けられている。横梁81は、ルーフパネル91の下面に宛がわれる(図2参照)。本実施形態の例では、制振部材10は、車幅方向で1対のサイドレールリインフォースメント80S同士の間に配置されると共に、前後方向で、横梁81同士の間に配置される。
なお、ルーフライナー20は、例えば、ルーフパネル91に取り付けられるアシストグリップやルームミラー、ルームライト等の部材に貫通され、これら部材により車体パネルに固定される。この場合、例えば、制振部材10は、これらの部材も避けた位置に配置される。
図3に示すように、例えば、ルーフパネル91では、車両90のピラーに側縁部が支持される。このような構成では、ルーフパネル91において、その側縁部よりも車幅方向の中央部が振動し易くなると考えられる。このため、制振部材10は、ルーフパネル91のうち少なくとも車幅方向の中央部に当接していることが好ましい。
制振部材10は、ルーフライナー20の上面に固定(例えば接着)されていてもよい。なお、制振部材10のルーフライナー20への固定は、車両90への組み付け工程の際に行われてもよいし、制振部材10がルーフライナー20の上面に固定された制振部材付きルーフライナー30(図3参照)が、前もって形成されていてもよい。
本実施形態では、例えば、ルーフライナー20は、複数のシートが積層された積層シートがルーフパネル91に沿った形状に成形(例えば加熱プレス成形)されてなる。例えば、この積層シートは、図5に示すように、発泡シート21を1対の繊維シート22(例えばガラス繊維シート)で挟み、さらに外側からそれらを1対の面材23,24で挟んだ構成となっていてもよい。この構成では、例えば、面材23,24は、樹脂シートや不織布等で構成される。
本実施形態の例では、制振部材10を構成する発泡体は、通気性を有していて、連続気泡構造又は半連続気泡構造を有する。制振部材10が通気性を有する発泡体からなることにより、制振部材10に吸音性を持たせることが可能となる。なお、発泡体の発泡セル間のセル膜(いわゆるミラー)は、例えば燃焼ガスの爆風やアルカリによる加水分解等で除去することができるが、除去せずに残しておくことが望ましい。セル膜があることで、セル膜がない場合よりも、発泡体の制振性を良好にすることが可能となる。なお、制振部材10を構成する発泡体は、非通気性のものであってもよく、独立気泡構造のものであってもよい。
制振部材10を構成する発泡体は、本実施形態では、ポリウレタン樹脂の発泡体であるが、これに限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂の発泡体であってもよいし、フェノール樹脂の発泡体であってもよい。本実施系形態の例では、制振部材10は、スラブウレタンからなり、例えば、シート状にカットされたものである。
制振部材10の見掛け密度は、例えば、軽量化の観点から、40kg/m3以下であることが好ましい。このように、制振部材10の軽量化を図ることにより、例えば、制振部材10が車両90等の乗り物に搭載される場合には、乗り物の燃費や電費の向上を図ることが可能となる。
上述のように、本実施形態の制振部材10は、発泡体からなり、例えば2つの部材間に挟まれる等して振動する部材に宛がわれることで、その部材の制振を図ることが可能となる。ここで、このような制振部材に対して、さらなる制振性の向上が望まれる。そこで、本願発明者は、制振性と発泡体の特性との関係を精査した。そして、鋭意検討の結果、発泡体の弾性率に着目することで、制振性のさらなる向上を図ることが可能な構成についての知見を得て、本開示の制振部材10を発明するに至った。
具体的には、制振部材10では、圧縮歪み0~3%の範囲(圧縮歪みが0以上、0.03以下である範囲)における平均弾性率が、40kPa以上200kPa以下になっている。これにより、後述するように、制振性の顕著な向上を図ることが可能となる。ここで、圧縮歪み0~3%の範囲における平均弾性率とは、制振部材10を圧縮変形したときの応力-歪み曲線に対しての、歪みが0%以上で3%以下となる範囲における近似直線の傾きとして求められるものである。近似直線及びその傾きは、最小二乗法により算出され、例えば、表計算ソフト「マイクロソフト エクセル」(マイクロソフト社製)で求めることができる。
なお、例えば、制振部材10は、ルーフパネル91とルーフライナー20のような2つの部材間に、所定の圧縮歪みの範囲内となるように挟まれる用い方をされてもよい。例えば、この範囲として、応力-歪み曲線において、圧縮歪み0%から比例限度以下の圧縮歪みまでの範囲(例えば、圧縮歪み0~3%の範囲)を採用してもよい。なお、比例限度(歪みの増加に対して応力が直線的に増加する限界)以下となる圧縮歪みの範囲としては、例えば、応力-歪み曲線の近似直線における決定係数R2(相関係数の2乗)が、0.95以上となった範囲を採用してもよい。
本実施形態の天井構造100では、例えば、制振部材10が、車幅方向に延びると共に、ルーフライナー20に前後方向で複数載置され、ルーフパネル91のうち少なくとも車幅方向の中央部に当接している。このように、制振部材10が複数に分かれていることで、ルーフパネル91とルーフライナー20との間隔が場所によって異なる場合等に、その間隔に応じた厚さの制振部材10を配置することが可能となり、ルーフパネル91の下面と制振部材10の接触部分を広くすることが可能となる。また、上述のように、ルーフパネル91の側縁部がピラーに支持される構成では、ルーフパネル91の車幅方向の中央部が振動し易くなると考えられる。これに対し、本実施形態の制振部材10は、ルーフパネル91のうち少なくとも車幅方向の中央部に当接するので、該中央部の制振をし易くすることが可能となる。なお、制振部材10が、ルーフパネルの車幅方向の中央部に当接しない構成とすることもできる。
ルーフライナー20は、制振部材10が上面に固定された構成になっていてもよい。このようにすれば、ルーフライナーに、ルーフパネル91の振動を低減する機能を持たせることが可能となる。また、この構成によれば、ルーフライナー20を車両90に取り付けるだけで、制振部材10も車両90に取り付けられることとなるので、制振部材10の取り付けを容易にすることが可能となる。
なお、上記では、車両90において制振部材10を挟む車体パネルと内装材の例として、ルーフパネル91とルーフライナー20が示されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、ルーフパネル91以外の車体パネルと内装材とに挟まれて、該車体パネルの制振に用いられてもよい。
また、制振部材10は、自動車以外の乗り物に配置されてもよいし、例えば、建物に配置されてもよい。例えば、制振部材10を、2つの部材間に挟んだ制振構造を設け、それら部材のうち制振部材10に宛がわれる少なくとも一方の部材を制振するようにしてもよい。
以下、実施例及び比較例によって上記実施形態をさらに具体的に説明するが、本開示の制振部材は、以下の実施例に限定されるものではない。
1.実施例及び比較例の制振部材の構成
図6(A)に示す実施例1~5及び比較例1~7の制振部材として、シート状のものを用意した。各制振部材は、互いに材料が異なっている。
図6(A)に示す実施例1~5及び比較例1~7の制振部材として、シート状のものを用意した。各制振部材は、互いに材料が異なっている。
<実施例1>
実施例1の制振部材10は、ポリウレタン樹脂の発泡体であり、厚さが20mm、見掛け密度が16.7kg/m3、硬さ(JIS K6400-2 D法に準拠。以下同様)が、59Nである。引っ張り強さが91kPaで、伸びが257%である。
実施例1の制振部材10は、ポリウレタン樹脂の発泡体であり、厚さが20mm、見掛け密度が16.7kg/m3、硬さ(JIS K6400-2 D法に準拠。以下同様)が、59Nである。引っ張り強さが91kPaで、伸びが257%である。
<実施例2>
実施例2の制振部材10は、ポリウレタン樹脂の発泡体であり、厚さが20mm、見掛け密度が11.9kg/m3、硬さが52Nである。引っ張り強さが47kPa、伸びが30%である。
実施例2の制振部材10は、ポリウレタン樹脂の発泡体であり、厚さが20mm、見掛け密度が11.9kg/m3、硬さが52Nである。引っ張り強さが47kPa、伸びが30%である。
<実施例3>
実施例3の制振部材10は、ポリウレタン樹脂の発泡体であり、厚さが20mm、見掛け密度が34.7kg/m3、硬さが、147Nである。引っ張り強さが131kPa、伸びが176%である。
実施例3の制振部材10は、ポリウレタン樹脂の発泡体であり、厚さが20mm、見掛け密度が34.7kg/m3、硬さが、147Nである。引っ張り強さが131kPa、伸びが176%である。
<実施例4>
実施例4の制振部材10は、ポリウレタン樹脂の発泡体であり、厚さが20mm、見掛け密度が23.7kg/m3、硬さが、128Nである。引っ張り強さは135kPa、伸びが168%である。
実施例4の制振部材10は、ポリウレタン樹脂の発泡体であり、厚さが20mm、見掛け密度が23.7kg/m3、硬さが、128Nである。引っ張り強さは135kPa、伸びが168%である。
<実施例5>
実施例5の制振部材10は、ポリウレタン樹脂の発泡体であり、厚さが20mm、見掛け密度が150.5kg/m3、引っ張り強さは198kPa、伸びが295%である。
実施例5の制振部材10は、ポリウレタン樹脂の発泡体であり、厚さが20mm、見掛け密度が150.5kg/m3、引っ張り強さは198kPa、伸びが295%である。
<比較例1>
比較例1の制振部材は、ポリエチレンテレフタラート樹脂繊維のフェルトであり、厚さが30mmである。
比較例1の制振部材は、ポリエチレンテレフタラート樹脂繊維のフェルトであり、厚さが30mmである。
<比較例2>
比較例2の制振部材は、シンサレートTF2300(3M社製)であり、厚さが27mmである。
比較例2の制振部材は、シンサレートTF2300(3M社製)であり、厚さが27mmである。
<比較例3~5>
比較例3~5の制振部材は、ポリウレタン樹脂の発泡体であり、厚さが20mmである。後述するように、比較例3~5の制振部材においては、実施例1~5の制振部材に比べて、圧縮歪み0~3%の範囲における平均弾性率が高くなっている。比較例3では、見掛け密度が28.2kg/m3、硬さが170N、引っ張り強さが90kPa、伸びが93%である。比較例4では、見掛け密度が32.2kg/m3、引っ張り強さが252kPa、伸びが232%である。比較例5では、見掛け密度が16.9kg/m3、引っ張り強さが106kPa、伸びが48%である。
比較例3~5の制振部材は、ポリウレタン樹脂の発泡体であり、厚さが20mmである。後述するように、比較例3~5の制振部材においては、実施例1~5の制振部材に比べて、圧縮歪み0~3%の範囲における平均弾性率が高くなっている。比較例3では、見掛け密度が28.2kg/m3、硬さが170N、引っ張り強さが90kPa、伸びが93%である。比較例4では、見掛け密度が32.2kg/m3、引っ張り強さが252kPa、伸びが232%である。比較例5では、見掛け密度が16.9kg/m3、引っ張り強さが106kPa、伸びが48%である。
<比較例6,7>
比較例6,7の制振部材は、ポリウレタン樹脂の発泡体であり、厚さが20mmである。後述するように、比較例6,7の制振部材においては、実施例1~5の制振部材に比べて、圧縮歪み0~3%の範囲における平均弾性率が低くなっている。比較例6では、見掛け密度が21.7kg/m3、硬さが30N、引っ張り強さが197kPa、伸びが483%である。比較例7では、見掛け密度が29.4kg/m3、硬さが66N、引っ張り強さが38kPa、伸びが131%である。
比較例6,7の制振部材は、ポリウレタン樹脂の発泡体であり、厚さが20mmである。後述するように、比較例6,7の制振部材においては、実施例1~5の制振部材に比べて、圧縮歪み0~3%の範囲における平均弾性率が低くなっている。比較例6では、見掛け密度が21.7kg/m3、硬さが30N、引っ張り強さが197kPa、伸びが483%である。比較例7では、見掛け密度が29.4kg/m3、硬さが66N、引っ張り強さが38kPa、伸びが131%である。
<比較例8>
比較例8は、制振部材なしのブランクである。
比較例8は、制振部材なしのブランクである。
2.評価
実施例及び比較例の制振性等を評価した。実施例及び比較例の各特性の測定方法は、以下の通りである。
実施例及び比較例の制振性等を評価した。実施例及び比較例の各特性の測定方法は、以下の通りである。
<測定方法>
(1)見掛け密度
制振部材の密度は、JIS K7222に準拠して測定されたものである。
(1)見掛け密度
制振部材の密度は、JIS K7222に準拠して測定されたものである。
(2)硬さ
制振部材の硬さは、JIS K6400-2 D法に準拠して測定されたものである。
制振部材の硬さは、JIS K6400-2 D法に準拠して測定されたものである。
(3)平均弾性率
実施例1~5、比較例1~7の制振部材を、オートグラフAG-X/R(株式会社島津製作所製)を用いて、23℃において圧縮し、圧縮歪み0~3%の範囲における平均弾性率を求めた。制振部材のサイズは、100mm×100mm×20mm(厚さ)である。そして、制振部材の平面形状の中心部に、加圧子(押圧面が直径50mmの円形のもの)を宛がって、50mm/minの速度で、制振部材の圧縮歪みが75%になるまで(厚さがもとの25%になるまで)圧縮し、応力-歪み曲線を得た。さらに、その応力-歪み曲線に対しての、圧縮歪みが0%以上で3%以下となる範囲における近似直線を、表計算ソフト「マイクロソフト エクセル」(マイクロソフト社製)を用いて求め、その近似直線の傾きを算出した(y軸切片は固定しない)。なお、上記応力-歪み曲線の応力データは、加圧開始から歪みが3%に達するまで0.01秒毎にプロットされたものである。
実施例1~5、比較例1~7の制振部材を、オートグラフAG-X/R(株式会社島津製作所製)を用いて、23℃において圧縮し、圧縮歪み0~3%の範囲における平均弾性率を求めた。制振部材のサイズは、100mm×100mm×20mm(厚さ)である。そして、制振部材の平面形状の中心部に、加圧子(押圧面が直径50mmの円形のもの)を宛がって、50mm/minの速度で、制振部材の圧縮歪みが75%になるまで(厚さがもとの25%になるまで)圧縮し、応力-歪み曲線を得た。さらに、その応力-歪み曲線に対しての、圧縮歪みが0%以上で3%以下となる範囲における近似直線を、表計算ソフト「マイクロソフト エクセル」(マイクロソフト社製)を用いて求め、その近似直線の傾きを算出した(y軸切片は固定しない)。なお、上記応力-歪み曲線の応力データは、加圧開始から歪みが3%に達するまで0.01秒毎にプロットされたものである。
(4)制振性
各実施例及び各比較例について、制振性を比較した。制振性を評価する試験器具は、図4に示されている。この試験器具は、制振部材10をルーフパネル91としての鋼板91A上に固定して、鋼板91Aに振動を与え、制振部材10による制振性を評価するものである。具体的には、この試験器具は、鋼板91Aの外縁部を固定するフレーム部60を備えている。フレーム部60は、鋼板91Aの外縁部を上下に挟んだ状態でねじ止めされる上フレーム61と下フレーム62を備えると共に、下フレーム62を下側から支持するベース部63を備える。ベース部63は、板状の底部64の外縁部から側壁部65が上側に立設されてなり、側壁部65の上端に下フレーム62が固定されている(例えば、下フレーム62と一体に形成されている)。また、フレーム部60は、図示しない支持部に吊るされたバネによって四つ角を支持されている。鋼板91Aの下面のうち中央部には、加速度センサ67が取り付けられている。なお、上記バネの振動の周波数は、後述の共振ピークの周波数よりもずっと低くなっている。
各実施例及び各比較例について、制振性を比較した。制振性を評価する試験器具は、図4に示されている。この試験器具は、制振部材10をルーフパネル91としての鋼板91A上に固定して、鋼板91Aに振動を与え、制振部材10による制振性を評価するものである。具体的には、この試験器具は、鋼板91Aの外縁部を固定するフレーム部60を備えている。フレーム部60は、鋼板91Aの外縁部を上下に挟んだ状態でねじ止めされる上フレーム61と下フレーム62を備えると共に、下フレーム62を下側から支持するベース部63を備える。ベース部63は、板状の底部64の外縁部から側壁部65が上側に立設されてなり、側壁部65の上端に下フレーム62が固定されている(例えば、下フレーム62と一体に形成されている)。また、フレーム部60は、図示しない支持部に吊るされたバネによって四つ角を支持されている。鋼板91Aの下面のうち中央部には、加速度センサ67が取り付けられている。なお、上記バネの振動の周波数は、後述の共振ピークの周波数よりもずっと低くなっている。
鋼板91Aの上には、各実施例及び各比較例の制振部材(図4には実施例1~4の制振部材10が示されている。)が載置され、さらにその上からルーフライナー20が載置される。制振部材の平面サイズは、500mm×400mmである。鋼板91Aは、600mm×500mm×0.8mm(厚さ)のサイズであり、ルーフライナー20は、500mm×400mm×6.5mm(厚さ)のサイズで、目付量が580g/m2となっている。鋼板91A、制振部材、ルーフライナー20は、長手方向が同じになるように配置される。
なお、ルーフライナー20は、積層シートからなり、図5に示すように、発泡シート21を1対のガラス繊維シートで挟み、さらに外側からそれらを1対の面材23,24で挟んだ構成を有する。これらシート同士は、加熱プレス成形により積層一体化され、熱硬化性のバインダにより接着されている。なお、この試験では、鋼板91A(ルーフパネル)、制振部材、ルーフライナー20が、車両90に備えられたときとは上下逆に配置される。即ち、この試験において最も上側に配置される一方の面材24は、ルーフライナー20が車両に配置されたときには、最も下側(車室側)に配置される。
そして、上述のように、鋼板91Aをフレーム部60に固定した状態で、ベース部63の底部64の中央部を、インパルスハンマー68で下方から叩き、フレーム部60を通じて鋼板91Aに振動を与える。なお、インパルスハンマー68で底部64を叩いた場合のフレーム部60の振動は、鋼板91Aの振動に比べて無視できる程度になっている。
インパルスハンマー68と加速度センサ67は、FFTアナライザに接続される。そして、インパルスハンマー68の加振力と加速度センサ67の検出結果とから、周波数毎の振動伝達率[dB]を得て(図8(A)及び図8(B)参照)、得られた共振ピークのうち、ロードノイズに特に寄与が大きいとされる125~400Hz付近にみられる4つの共振ピーク(約160Hz、約220Hz、約240Hz、約370Hz。図8(B)において矢印で示されるピーク)について、振動伝達率(共振ピークの高さ)を評価した。
制振性は、上記4つのピークにおける振動伝達率の平均値が、16dB以下の場合に〇、16dBを超えた場合に×、と評価した。なお、振動伝達率が低い程、制振性は良好である。
(5)引っ張り強さ、伸び
制振部材の引っ張り強さ及び伸びは、JIS K6400-5に準拠して測定されたものである。
制振部材の引っ張り強さ及び伸びは、JIS K6400-5に準拠して測定されたものである。
<評価結果>
図6(A)に示すように、実施例1~5では、制振部材が不織布からなる比較例1,2、及び、制振部材が無いブランクの比較例8に比べて、制振性が大幅に向上することが確認できた(制振性の評価が〇)。また、ポリウレタン樹脂の発泡体からなる制振部材において、実施例1~5の制振部材では、比較例3~7の制振部材に比べて、優れた制振性を発揮できることが確認できた。ここで、実施例1~5の制振部材では、比較例3~5の制振部材(制振性の評価が×)に比べて、圧縮歪み0~3%の範囲における平均弾性率が低くなっている一方で、比較例6,7の制振部材(制振性の評価が×)に比べては、上記平均弾性率が高くなっている。具体的には、図6(A)及び図7に示すように、制振部材の上記平均弾性率(近似直線の傾き)は、実施例1~5では、40kPa以上200kPa以下となっているが、比較例3~5では、200kPaを超えていて、比較例6,7では、40kPaより低い。
図6(A)に示すように、実施例1~5では、制振部材が不織布からなる比較例1,2、及び、制振部材が無いブランクの比較例8に比べて、制振性が大幅に向上することが確認できた(制振性の評価が〇)。また、ポリウレタン樹脂の発泡体からなる制振部材において、実施例1~5の制振部材では、比較例3~7の制振部材に比べて、優れた制振性を発揮できることが確認できた。ここで、実施例1~5の制振部材では、比較例3~5の制振部材(制振性の評価が×)に比べて、圧縮歪み0~3%の範囲における平均弾性率が低くなっている一方で、比較例6,7の制振部材(制振性の評価が×)に比べては、上記平均弾性率が高くなっている。具体的には、図6(A)及び図7に示すように、制振部材の上記平均弾性率(近似直線の傾き)は、実施例1~5では、40kPa以上200kPa以下となっているが、比較例3~5では、200kPaを超えていて、比較例6,7では、40kPaより低い。
なお、実施例1~5では、応力-歪み曲線において、比例限度に対応する圧縮歪みは、3%(0.03)以上になっている(即ち、歪みの少なくとも3%までの増加に対して応力が直線的に増加する。例えば図6(B)参照)。また、制振性の試験において、制振部材に載っているルーフライナー20の目付量は、上述のように、580g/m2(約5.7Paに相当)であるが、図7より、実施例1~5と比較例3~7の制振部材では、圧縮歪み1%(0.01)に対応する応力が約780Pa(比較例6)以上であることから、これらの制振部材は、この試験では、ほとんど圧縮されていないと考えられる。
以上のように、発泡体であり、かつ圧縮歪み0~3%における平均弾性率が40kPa以上200kPa以下となった実施例1~5は、特に優れた制振性を発揮できることが確認できた。また、実施例1~4の制振部材では、見掛け密度が40kg/m3以下となっており、軽量化の観点から特に好ましい。ここで、実施例5の結果から、一般的に、見掛け密度が高い制振部材では、制振性が良くなる傾向があると考えられる。これに対し、例えば、実施例1,2の制振部材では、見掛け密度が同等以上である比較例3~5の制振部材と比べても、制振性に特に優れていることがわかる。このように、平均弾性率が40kPa以上200kPa以下である制振部材によれば、見掛け密度が同等以上の制振部材と比べても制振性が特に良好となるという、従来の技術水準からは予測できない優れた効果が奏されることが確認できた。
<付記>
以下、上記実施形態及び実施例から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
以下、上記実施形態及び実施例から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
例えば、以下の特徴群は、制振部材に関し、「振動を抑えるための様々な技術が提案されている(例えば、特開平10-203267(段落[0010]等))。」という背景技術について、「新規な制振技術が求められている。」という課題をもって想到されたものと考えることができる。
[特徴1]
圧縮歪み0~3%の範囲における平均弾性率が、40kPa以上200kPa以下の発泡体からなる制振部材。
圧縮歪み0~3%の範囲における平均弾性率が、40kPa以上200kPa以下の発泡体からなる制振部材。
本特徴の制振部材によれば、制振性の向上を図ることが可能となる。制振部材の圧縮歪み0~3%の範囲における平均弾性率は、50kPa以上180kPa以下であることがより好ましい。
[特徴2]
見掛け密度が、40kg/m3以下である特徴1に記載の制振部材。
見掛け密度が、40kg/m3以下である特徴1に記載の制振部材。
本特徴によれば、制振部材の軽量化を図ることが可能となる。例えば、制振部材が乗り物に搭載される場合には、乗り物の燃費や電費の向上を図ることが可能となる。
[特徴3]
JIS K6400-2 D法に準拠した硬さが、40N以上である特徴1又は2に記載の制振部材。
JIS K6400-2 D法に準拠した硬さが、40N以上である特徴1又は2に記載の制振部材。
[特徴4]
見掛け密度が、10kg/m3以上である特徴1から3の何れか1の特徴に記載の制振部材。
見掛け密度が、10kg/m3以上である特徴1から3の何れか1の特徴に記載の制振部材。
[特徴5]
特徴1から4の何れか1の特徴に記載の制振部材が上面に固定されている車両用のルーフライナー。
特徴1から4の何れか1の特徴に記載の制振部材が上面に固定されている車両用のルーフライナー。
本特徴によれば、ルーフライナーに、ルーフパネルの振動を低減する機能を持たせることが可能となる。また、本特徴によれば、ルーフライナーを車両に取り付けるだけで、制振部材も車両に取り付けられることとなるので、制振部材の取り付けを容易にすることが可能となる。
[特徴6]
特徴1から4の何れか1の特徴に記載の制振部材が、ルーフライナーとルーフパネルとに挟まれている車両の天井構造。
特徴1から4の何れか1の特徴に記載の制振部材が、ルーフライナーとルーフパネルとに挟まれている車両の天井構造。
本特徴によれば、ルーフパネルの振動を低減することができる。
[特徴7]
前記制振部材は、車幅方向に延びると共に、前記ルーフライナーに前後方向で複数載置され、前記ルーフパネルのうち少なくとも車幅方向の中央部に当接している特徴6に記載の車両の天井構造。
前記制振部材は、車幅方向に延びると共に、前記ルーフライナーに前後方向で複数載置され、前記ルーフパネルのうち少なくとも車幅方向の中央部に当接している特徴6に記載の車両の天井構造。
本特徴では、制振部材が複数に分かれていることで、ルーフパネルとルーフライナーとの間隔が場所によって異なる場合等に、その間隔に応じた厚さの制振部材を配置することが可能となり、ルーフパネルの下面と制振部材の接触部分を広くすることが可能となる。また、車両のルーフパネルは、ピラーにより側縁部が支持されるため、車幅方向の中央部が振動し易くなると考えられる。これに対し、本特徴では、ルーフパネルのうち少なくとも車幅方向の中央部に当接するので、該中央部の制振をし易くすることが可能となる。
[特徴8]
特徴1から4の何れか1の特徴に記載の制振部材が部材間に挟まれている制振構造。
特徴1から4の何れか1の特徴に記載の制振部材が部材間に挟まれている制振構造。
本特徴によれば、制振部材が宛がわれる部材の制振が可能となる。
[特徴9]
特徴1から4の何れか1の特徴に記載の制振部材と、
前記制振部材が宛がわれる部材と、を含む制振構造。
特徴1から4の何れか1の特徴に記載の制振部材と、
前記制振部材が宛がわれる部材と、を含む制振構造。
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
10 制振部材
20 ルーフライナー
90 車両
91 ルーフパネル
100 天井構造
20 ルーフライナー
90 車両
91 ルーフパネル
100 天井構造
Claims (6)
- 圧縮歪み0~3%の範囲における平均弾性率が、40kPa以上200kPa以下の発泡体からなる制振部材。
- 見掛け密度が、40kg/m3以下である請求項1に記載の制振部材。
- 請求項1又は2に記載の制振部材が上面に固定されている車両用のルーフライナー。
- 請求項1又は2に記載の制振部材が、ルーフライナーとルーフパネルとに挟まれている車両の天井構造。
- 前記制振部材は、車幅方向に延びると共に、前記ルーフライナーに前後方向で複数載置され、前記ルーフパネルのうち少なくとも車幅方向の中央部に当接している請求項4に記載の車両の天井構造。
- 請求項1又は2に記載の制振部材が部材間に挟まれている制振構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022102297A JP2024003268A (ja) | 2022-06-26 | 2022-06-26 | 制振部材、ルーフライナー、車両の天井構造及び制振構造 |
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- 2022-06-26 JP JP2022102297A patent/JP2024003268A/ja active Pending
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