JP2024002337A - 結晶粒粗大化防止鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】結晶粒の粗大化が防止された肌焼鋼を提供する。【解決手段】肌焼鋼は、質量%で、0.10%以上0.35%以下の銅(C)、0%より大きく2.0%以下のケイ素(Si)、0.4%以上2.0%以下のマンガン(Mn)、0.03%未満のリン(P)、0.05%未満の硫黄(S)、0%より大きく2.0%以下のクロム(Cr)、0.1%以上2.0%以下のアルミニウム(Al)、0.02%以上1.00%以下の銅(Cu)、0.001%以上0.100%以下の窒素(N)を含み、残部がFe及び不可避的不純物である化学組成を有し、Nの質量含有率に対するAlの質量含有率の比であるAl/Nの値が30より大きい。【選択図】図2

Description

本発明は、鋼材の浸炭処理中に結晶粒の異常粒成長が発生することを抑制できる技術に関する。
一般に、例えば、ギヤやシフト等の自動車部品をはじめとして、鋼材を用いて作製される機械装置の部品には、高い強度と靭性とが求められる。鋼材の強度と靭性を向上させるための技術としては浸炭処理が知られている。鋼材の製造の効率化のためには浸炭処理を高温で処理してその処理時間を短縮することが望ましい。しかしながら、浸炭処理を高温で実施すると一部の結晶粒が局所的に異常粒成長し、鋼材の疲労強度を低下させてしまう場合があった。従来から、浸炭処理を高温で実施したときの結晶粒の異常粒成長による粗大化を抑制するための様々な技術が提案されている。
結晶粒の異常粒成長による粗大化を抑制する技術としては、例えば、鋼中に炭窒化物等の微細粒子を分散するように析出させ、その点在する析出物に囲まれた領域に存在する結晶粒の粗大化を抑制するピンニングが知られている。一般的に、ピンニングでは、窒化アルミニウム(AlN)の微細粒子を鋼中に析出させる。その他に、例えば、下記の特許文献1には、アルミニウム(Al)とニオブ(Nb)の複合組成からなる炭化物または炭窒化物の析出物によるピンニングが開示されている。また、特許文献2には、チタン(Ti)系炭窒化物の析出物によるピンニングが開示されている。
しかしながら、上記のようなピンニング技術では、析出物の分散状態によっては、結晶粒の異常粒成長を十分に抑制できない場合もある。これに対して、例えば、下記の特許文献3では、析出物のピンニング作用によらず、浸炭処理中の粒子の異常粒成長を防止する技術が提案されている。
特許文献3の技術では、ピンニング作用を生じさせる析出物の量を低減させ、浸炭処理中の各粒子同士の粒成長による圧力を均等に発生させることにより、一部の粒子のみが異常粒成長することを抑制している。特許文献3には、前記のような作用を得る方法として、AlとTiと窒素(N)の含有量の比率を制御することが記載されている。しかしながら、そうした比率を制御して理想通りの各粒子の成長を実現させながら、所望の鋼を製造することは、高い精度での製造条件の制御が求められるため決して容易ではない。
特開平9-78184号公報 特開2007-31787号公報 特開2015-28205号公報
本発明は、上記のようなピンニングなどの従来の技術とは異なる方法により、浸炭処理中の結晶粒の異常粒成長による粗大化を簡易な方法で抑制できる技術を提供することを課題とする。
本発明の発明者は、結晶粒の異常粒成長を防止できる肌焼鋼材の成分について鋭意研究を重ねてきた。その結果、Alの含有率とAlとNの含有率の比とを調整して鋼材中に、粗大なAlNを生成させることにより、炭窒化物粒子によるピンニング作用によらず、局所的な粒子の異常粒成長の発生を防止できるとの知見を得た。本発明の発明者は、その知見に基づいて、以下の形態に示すような、製造が容易な簡素な化学組成を有し、結晶粒の異常粒成長が防止された肌焼鋼の製造に成功した。
本発明は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
[第1形態]第1形態は、質量%で、0.10%以上0.35%以下の銅(C)、0%より大きく2.0%以下のケイ素(Si)、0.4%以上2.0%以下のマンガン(Mn)、0.03%未満のリン(P)、0.05%未満の硫黄(S)、0%より大きく2.0%以下のクロム(Cr)、0.1%以上2.0%以下のアルミニウム(Al)、0.02%以上1.00%以下の銅(Cu)、0.001%以上0.100%以下の窒素(N)を含み、残部が鉄(Fe)及び不可避的不純物である化学組成を有し、Nの質量含有率に対するAlの質量含有率の比であるAl/Nの値が30より大きい、結晶粒の粗大化が防止された肌焼鋼として提供される。
[第2形態]質量%で、0.01%以上2.00%以下のニッケル(Ni)をさらに含む化学組成を有する、上記第1形態に記載の肌焼鋼。
[第3形態]質量%で、0.01%以上0.50%以下のバナジウム(V)、または、0.005%以上0.200%以下のチタン(Ti)の少なくとも1種をさらに含む化学組成を有する、上記第1形態、または、第2形態に記載の肌焼鋼。
[第4形態]質量%で、0.001%以上1.00%以下のモリブデン(Mo)をさらに含む化学組成を有する、上記第1形態、第2形態、および、第3形態のいずれか1つに記載の肌焼鋼。
[第5形態]質量ppmで、5ppm以上30ppm以下のホウ素(B)をさらに含む化学組成を有する、上記第1形態、第2形態、第3形態、および、第4形態のいずれか1つに記載の肌焼鋼。
[第6形態]JIS G 0551に準じた粒度判定において求められる粒度番号の最大値と最小値の差である結晶粒度差が6以下である、上記第1形態、第2形態、第3形態、第4形態、および、第5形態のいずれか1つに記載の肌焼鋼。
[第7形態]JIS Z 2274に準じた疲労試験によって求められる疲労強度が、500MPa以上である、上記第1形態、第2形態、第3形態、第4形態、第5形態、および、第6形態のいずれか1つに記載の肌焼鋼。
本発明によれば、浸炭処理中に結晶粒が異常粒成長することが抑制された肌焼鋼を得ることができる。
本発明は、肌焼鋼以外の種々の形態で実現することが可能である。例えば、肌焼鋼の製造方法や、肌焼鋼を製造するための焼入れの方法、浸炭処理方法、肌焼鋼で製造された歯車やねじ等の金属部品、その金属部品を用いた機械、装置、器具等の形態で実現することもできる。
疲労試験用の供試材を構成する棒状鋼材片を示す概略図。 実施例と比較例の肌焼鋼の粒子構造の光学顕微鏡画像を並べて示す説明図。
以下に、本発明に係る、結晶粒の粗大化が防止された肌焼鋼の実施形態について説明する。
1.肌焼鋼の化学組成:
本実施形態の肌焼鋼は、少なくとも、Cと、Siと、Mnと、Pと、Sと、Crと、Alと、Cuと、Nと、を含有し、残部がFe及び不可避的不純物である化学組成を有する。
本実施形態の肌焼鋼における各化学成分の限定理由を以下に詳述する。以下の説明では、特に断らない限り、含有率は質量含有率であり、「%」は、「質量%」を意味する。また、「ppm」は、「質量ppm」を意味する。
C:0.10%以上0.35%以下
Cは、鋼材の硬さや強度を確保するために有効な元素である。Cを含有させることによって、浸炭部品の内部(芯部)硬さを高めることができる。Cを0.10%以上含有させることにより、鋼材に求められる強度を得ることができる。Cは、0.12%以上含有されていることがより好ましい。これにより、高い強度をより安定して得ることができる。ただし、本実施形態の肌焼鋼におけるCの含有率は、0.35%以下とする。Cの含有率が0.35%を超えると肌焼鋼の切削加工性が著しく低下する可能性があるためである。Cの含有率は、0.30%以下であることがより好ましい。これにより、肌焼鋼の切削加工性をより良好にすることができる。
Si:0%より大きく2.0%以下
Siは、肌焼鋼の焼入れ性を高めるのに有効な元素である。また、Siは、脱酸元素としても有効である。Siを、0%を超えて含有させることにより、肌焼鋼の焼入れ性を効果的に高めることができる。ただし、本実施形態の肌焼鋼におけるSiの含有率は2.0%以下とする。Siの含有率が2.0%を超えると脱炭によって肌焼鋼の加工性が著しく低下する可能性があるためである。肌焼鋼におけるSiの含有率は1.5%以下であることがより好ましい。これにより、肌焼鋼の加工性の低下をより確実に抑制することができる。
Mn:0.4%以上2.0%以下
Mnは、肌焼鋼の焼入れ性を向上させ、強度を高めるのに有効な元素である。Mnを0.4%以上含有させることにより、Sによってサルファイドが生成されることを抑制できる。Mnは、0.45%以上含有されていることがより好ましく、0.50%以上含有されていることがさらに好ましい。これにより、Sを含有することにより生じる不具合をより確実に抑制することができる。ただし、本実施形態の肌焼鋼におけるMnの含有率は2.0%以下とする。Mnの含有率が2.0%を超えると、肌焼鋼の被削性や加工性が著しく低下する可能性があるためである。また、Mnの含有率が2.0%を超えると、ベイナイトが生成されて、肌焼鋼の靭性が著しく低下する可能性があるためである。肌焼鋼におけるMnの含有率は1.8%以下であることがより好ましい。これにより、肌焼鋼の被削性や加工性の低下や、ベイナイトの生成による靭性の低下をより確実に抑制することができる。
P:0.03%未満
Pは、粒界偏析による脆化を招くため、その含有量がより少ないことが好ましい。Pの含有率の上限は、0.03%未満とする。これにより、肌焼鋼における粒界偏析による脆化の発生を抑制することができる。
S:0.05%未満
Sは、Pと同様に、粒界偏析による脆化を招くため、その含有量はより少ないことが好ましい。Sの含有率の上限は、0.05%未満とする。これにより、肌焼鋼における粒界偏析による脆化の発生を抑制することができる。
Cr:0%より大きく2.0%以下
Crは、肌焼鋼の焼入れ性を高める効果を有するため、0%を超えて含有されていることが好ましい。Crの含有率は、0.2%以上であることがより好ましい。これにより、肌焼鋼の焼入れ性をより確実に高めることができる。ただし、本実施形態の肌焼鋼におけるCrの含有率は、2.0%以下とする。Crの含有率が2.0%を超えると、肌焼鋼の被削性や加工性が著しく低下する可能性があるためである。Crの含有率は、1.50%以下であることがより好ましい。これにより、肌焼鋼の被削性や加工性の低下をより一層、抑制することができる。
Al:0.1%以上2.0%以下
本実施形態の肌焼鋼には、Alを0.1%以上含有させる。これにより、肌焼鋼材中に、ピンニングのために析出させるAlN粒子とは異なる粗大なAlN粒子の生成を促進させることができる。鋼材中にその粗大なAlN粒子を分散して存在させることにより、その周囲の粒子が異常粒成長することを抑制できる。Alは、0.2%以上含有させることがより好ましく、0.3%以上含有させることがさらに好ましい。これにより、粗大なAlN粒子の生成が促進され、局所的な粒子の異常粒成長の発生をさらに抑制することができる。また、肌焼鋼では、Alの含有率が大きいほど、脱酸の効果を得ることができる。
ただし、本実施形態の肌焼鋼では、酸化アルミニウム(Al)系の粗大な介在物の生成を抑制する観点から、Alの含有率は2.0%以下とする。Al系の粗大な介在物の生成は、肌焼鋼の強度を低下させる可能性がある。Alの含有率は、1.5%以下であることがより好ましい。これにより、Al系の粗大な介在物の生成をより確実に抑制することができる。
Cu:0.02%以上1.00%以下
Cuを0.02%以上含有させることにより、肌焼鋼の耐食性を向上させることができる。Cuは、0.03%以上含有されていることがより好ましい。これにより、肌焼鋼の耐食性をさらに向上させることができる。ただし、本実施形態の肌焼鋼では、Cuの含有率は、1.00%以下とする。これにより、肌焼鋼の熱間加工性の低下を抑制することができる。Cuの含有率は、0.50%以下であることがより好ましい。これにより、肌焼鋼の熱間加工性の低下をさらに抑制することができる。
N:0.001%以上0.100%以下
上記のように、本実施形態では、結晶粒の粗大化を防止するために肌焼鋼材中に粗大なAlN粒子を生成させるため、AlとともにNが添加される。本実施形態では、Nの含有率を0.001%以上とする。これにより、粗大なAlN粒子の生成を促進させることができる。また、炭窒化物の形成によって結晶粒の微細化が促進され、肌焼鋼の強度を高めることができる。ただし、本実施形態の肌焼鋼におけるNの含有率は、0.100%以下とする。Nの含有率が0.100%を超える場合には、窒化物の生成により、強度が低下する可能性があるためである。
不可避的不純物には、例えば、酸素(O)が含まれる。本実施形態の肌焼鋼では、Oの含有率は、0.002%未満とする。これによって、粗大酸化物が形成されることによる肌焼鋼の強度低下を抑制することができる。
さらに、本実施形態の肌焼鋼では、Nの含有率に対するAlの含有率の比であるAl/Nの値が30より大きい。これにより、粗大なAlN粒子の生成がより一層、促進され、微細なAlN粒子の析出によるピンニング作用が抑制される。また、その粗大なAlN粒子が分散して存在していることよって、その周りの他の粒子が異常粒成長することを抑制できる。
本実施形態における肌焼鋼の化学組成には、さらに、任意選択的に、下記の元素のうちのいずれか1つが含まれていてもよいし、2以上が組み合わされて含まれていてもよい。
Ni:0.01%以上2.00%以下
Niを0.01%以上含有させることにより、肌焼鋼の耐水素脆性、延靭性、および、耐食性を向上させることができる。Niは、0.10%以上含有されていることがより好ましい。これにより、延靭性、および、耐食性をさらに向上させることができる。Niの含有率を2.00%以下とすれば、ベイナイトの生成を抑制することができ、ベイナイトの生成による靭性の低下を抑制できる。ベイナイトの生成を抑制する観点からは、Niの含有率は、1.50%以下であることがより好ましく、1.00%以下であることがさらに好ましい。
V:0.01%以上0.50%以下
Vを0.01%以上含有させることにより、肌焼鋼の結晶粒を微細化させることができ、焼き戻しの後の硬さを高めることができる。Vの含有率を0.50%以下とすれば、Vの過剰添加に起因して肌焼鋼の加工性や切削性が低下することを抑制することができる。Vの含有率は、0.30%以下であることがより好ましい。これにより、肌焼鋼の加工性や切削性が低下することをさらに抑制することができる。
Ti:0.005%以上0.200%以下
Tiを0.005%以上含有させることにより、炭窒化物の形成が促進され、結晶粒を微細化でき、肌焼鋼の強度を高めることができる。Tiの含有率を0.200%以下にすれば、Tiの過剰添加による粗大なTiNの生成が抑制され、粗大なTiNの生成に起因して肌焼鋼の強度が低下することを抑制することができる。Tiの含有率は、0.100%以下であることがより好ましい。これにより、肌焼鋼の強度が低下することをさらに抑制することができる。
Mo:0.01%以上1.00%以下
Moを0.01%以上含有させることにより、肌焼鋼の焼入れ性を高めることができ、かつ、焼き戻しの後の硬さを高めることができる。Moは、0.10%以上含有されていることがより好ましい。これにより、肌焼鋼の焼入れ性をさらに高めることができ、焼き戻しの後の硬さをさらに高めることができる。また、Moの含有率を1.00%以下にすれば、Moの過剰添加に起因して肌焼鋼の加工性や切削性が低下することを抑制することができる。Moの含有率は、0.80%以下であることがより好ましい。これにより、肌焼鋼の加工性や切削性の低下をさらに抑制することができる。
B:5ppm以上30ppm以下
Bは、5ppm以上含有されていることが好ましい。これにより、PやSが粒界に偏析することを防止でき、疲労強度を向上させることができる。Bの含有率を30ppm以下とすれば、Bの過剰添加によってB窒化物が生成されて肌焼鋼の靭性が低下することを抑制できる。
2.肌焼鋼の組織:
上記の化学組成を有する肌焼鋼では、JIS G 0551:2020に準じた粒度判定において求められる粒度番号の最大値と最小値の差である結晶粒度差が6以下であることが好ましい。これにより、肌焼鋼における結晶粒のサイズのばらつきが抑制されるため、肌焼鋼の疲労強度を向上させることができる。
上記の化学組成を有する肌焼鋼では、JIS Z 2274:1978に準じた疲労試験によって求められる疲労強度が、500MPa以上であることが好ましい。これにより、結晶粒の異常粒成長が防止され、かつ、疲労強度が向上された肌焼鋼を得ることができる。
3.肌焼鋼の製造方法:
本実施形態の肌焼鋼の製造方法を説明する。肌焼鋼の製造方法は、以下の順で行われる。まず、上述した化学組成を有する鋼を、例えば、高周波誘導炉で溶製する。続いて、それにより得られた鋼塊を熱間圧延または熱間鍛造によって成形し、得られた成形後の鋼材に対して焼きならし処理を実行する。焼きならし処理は、鋼材を、例えば、800~1000℃の高温で加熱した後、所定の時間、空冷することにより行われる。その後、焼きならし処理が施された鋼材に対して浸炭処理を実行する。
本実施形態では、浸炭処理として、ガス浸炭処理を実行する。ガス浸炭処理では、ガス浸炭炉が用いられ、浸炭ガスとして、例えば、プロパンガスが供給される。ガス浸炭処理では、ガス浸炭炉において、鋼材を、例えば、1000~1200℃の温度で0.5~1.5時間程度、加熱処理をした後、例えば、900~1000℃程度の焼入れ開始温度まで降温させて、その温度で所定の時間保持する。また、浸炭処理では、油焼入れが実行され、その後、さらに焼き戻し処理が実行される。
以上の工程により、本実施形態の肌焼鋼が得られる。なお、浸炭処理では、ガス浸炭処理の代わりに、例えば、ガス浸炭窒化処理や、真空浸炭処理、真空浸炭窒化処理等を実行してもよい。
4.実施形態のまとめ:
本実施形態の肌焼鋼によれば、Alの含有率と、AlとNの含有率の比とが好適に調整されていることにより、鋼中に、粗大なAlN粒子を分散生成させることができる。鋼中に粗大なAlN粒子が分散して存在していることにより、浸炭処理の際に結晶粒の異常粒成長が生じることを抑制できる。これは、粗大なAlN粒子は、ピンニング作用を発揮することはないが、周りの結晶粒が異常粒成長する領域を制限する方向に作用するためであると考えられる。このように、浸炭処理中の結晶粒の異常粒成長を抑制できれば、結晶粒の大きさにばらつきが生じることを抑制でき、肌焼鋼の疲労強度を高めることができる。また、浸炭処理をより高温で実施し、その処理時間を短縮しても、肌焼鋼の疲労強度の低下を抑制することができる。よって、肌焼鋼の製造効率を高めることができる。その他に、本実施形態の肌焼鋼によれば、上述した元素を好適な含有率で含有していることにより、上述した様々な性能の向上が可能である。
次に、本発明に係る肌焼鋼の実施例を説明する。
A.化学組成
本発明に係る焼肌鋼の実施例および比較例として、下記の表1に示す化学組成を有する供試材を製造した。表1では、上述した実施形態の化学組成の範囲内の供試材を実施例1~15として示し、その化学組成の範囲から外れている供試材を比較例1~5として示してある。表1には、実施例1~15および比較例1~5の化学組成と、Nの含有率に対するAlの含有率の比であるAl/Nの値と、を示してある。また、表1には、各実施例1~15および各比較例1~5の評価結果として、平均結晶粒度と、結晶粒度差と、疲労強度と、を示してある。なお、各実施例1~15および各比較例1~5の供試材は、結晶粒度判定用と、疲労試験用とで、寸法・形状が異なるものを作製した。
Figure 2024002337000002
<供試材の製造条件>
評価・試験のための供試材を、以下の工程によって製造した。
[工程1]表1に示す化学組成を有する鋼を高周波誘導路で溶製し、得られた鋼塊を熱間圧延または熱間鍛造によって成形し、後述の寸法を有する円形断面形状の丸棒鋼材を作製した。
[工程2]丸棒鋼材に対して、焼きならし処理を実施し、結晶粒度判定用または疲労試験用とで形状・寸法を変えた鋼材片を作製した。焼きならし処理では、900℃で1時間加熱し、空冷した。結晶粒度判定用・疲労試験用の鋼材片の形状・寸法は後述する。
[工程3]鋼材片に対して、浸炭処理を実施して供試材を作製した。浸炭処理では、ガス浸炭炉を用いて、浸炭ガスとしてプロパンガスを供給し、1100℃で60分、加熱処理をした後、焼入れ開始温度である950℃まで降温させてその温度で保持した。また、その後に油焼入れを行い、さらに、180℃で120分間、焼き戻し処理を実施した。浸炭処理中のカーボンポテンシャル(CP)は、一酸化炭素と二酸化炭素の分圧を調整して、0.8に制御した。
B.評価・試験
1.断面組織の観察・評価方法
a.供試材について
上記の工程1において、溶製により得た鋼塊から、熱間圧延または熱間鍛造により、断面の直径が105mmの丸棒形状に成形した後、さらに、熱間鍛造をおこなって断面直径30mmの丸棒鋼材を作製した。その丸棒鋼材に対して、上記工程2の焼きならし処理を実施した後、断面積が25mmで、長さが100mmの丸棒形状の鋼材片を切り出し、その鋼材片に、上記工程3の浸炭処理を実施して、組織の観察・評価対象となる供試材を得た。
b.供試材断面組織の観察方法
供試材を中心軸に沿って半分に分割して半円断面形状とした。その切断面を被検面として樹脂埋めをして鏡面研磨した。結晶粒度判定は、供試材を研磨し、飽和ピクリン酸溶液で腐食させて旧オーステナイト粒界を現出させ、JIS G 0511:2020に準じておこなった。倍率400倍で、10視野程度の光学顕微鏡画像を得て、その光学顕微鏡画像を観察し、供試材ごとに、画像中で観察できる全結晶粒の結晶粒度番号の平均値である平均結晶粒度を算出した。また、画像中で観察できる全結晶粒の粒度番号の最大値と最小値の差である結晶粒度差を算出した。
2.疲労強度の測定方法
a.供試材について
上記の工程1において、溶製により得た鋼塊を、熱間圧延または熱間鍛造により、断面の直径が105mmの丸棒形状に成形した後、さらに、熱間鍛造をおこなって断面直径が25mmの丸棒鋼材を作製した。その丸棒鋼材に対して、上記工程2の焼きならし処理を実施した後、その丸棒鋼材から、断面積18mmで長さ210mmの丸棒片を切り出して、その中心軸方向の中央部位を加工することにより、図1に示す棒状鋼材片10を得た。この棒状鋼材片10に対して上記工程3の浸炭処理を実施して、疲労試験用の供試材とした。
図1に示すように、棒状鋼材片10は、2つの円柱状部位11と、その間の縮径部12と、を有する。2つの円柱状部位11はそれぞれ、中心軸方向の両端に位置する径が均一な部位である。縮径部12は、2つの円柱状部位11に挟まれた中央部位に位置し、円柱状部位11よりも径が小さくなっている部位である。縮径部12は、第1縮径部12aと、第2縮径部12bと、を含む。第1縮径部12aは、縮径部12の中心軸方向の中心部を切り欠いて形成したノッチ部であり、棒状鋼材片10の中で径が最も小さい部位である。第2縮径部12bは、中心軸方向において第1縮径部12aの両側に設けられ、第1縮径部12aよりも径が大きく、径が均一な部位である。棒状鋼材片10において、2つの円柱状部位11の長さLaはそれぞれ80mmであり、縮径部12の長さLbは50mmであった。また、第1縮径部12aの径φaは10mmであり、そのノッチ底は1Rであり、第2縮径部12bの径φbは15mmであった。
b.疲労試験の方法
上記の棒状鋼材片10によって構成された供試材に対して、JIS Z 2274:1978に準拠した方法で、小野式回転曲げ疲労試験を行って疲労強度を測定した(試験条件:回転数3500rpm,試験温度:室温)。疲労強度の値は、10回の繰り返し数で破断しない最大応力である疲労限度を意味している。
4.評価結果
図2には、実施例1と比較例5の結晶粒を写した光学顕微鏡画像を並べて示してある。図2の光学顕微鏡画像が示すように、比較例5では、異常粒成長をした極大のサイズの結晶粒が多く分散しており、それらの間に、サイズの小さい結晶粒が多数ひしめき合っている。これに対して、実施例1では、結晶粒の多くが、比較例5の結晶粒に比較して中程度のサイズを有しており、その大きさのばらつきも少ない。このことは、表1において、比較例5の平均結晶粒度が3であり、結晶粒度差が11であるのに対して、実施例1の平均結晶粒度が6.7で、結晶粒度が5であることからも確認できる。
表1に示すように、実施例1~15はいずれも、Alの含有率が、0.1%以上2.0%以下の範囲内にあり、Al/Nの値が、30より大きい。各実施例1~15では、粗大なAlN粒子が分散して析出していることが確認された。また、実施例1~15はいずれも、平均結晶粒度が5以上8以下の範囲内にあり、いずれも結晶粒度差が6以下であった。しかも、実施例1~15はいずれも、疲労強度の測定値が500MPa以上であり、いずれも高い疲労強度を示した。
これに対して、Al/Nの値が30以下であった比較例1,3,5はいずれも、結晶粒度差が9以上であり、結晶粒のサイズのばらつきが大きく、かつ、疲労強度が500MPa未満で、疲労強度の評価が実施例1~15よりも低かった。また、Alの含有率が0.1%未満である比較例2では、結晶粒度差が6より大きく、かつ、疲労強度が500MPa未満であった。Alの含有率が2.0%より大きい比較例4では、結晶粒度差については6以下であったが、疲労強度が500MPa未満であり、疲労強度の評価が実施例1~15よりも低かった。
以上の結果より、上記実施形態で説明した本発明に係る肌焼鋼によれば、ピンニング作用によらず、結晶粒の異常粒成長を防止でき、かつ、疲労強度の低下を抑制できることがわかる。
本発明は、上記実施形態および実施例に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
10…棒状鋼材片、11…円柱状部位、12…縮径部、12a…第1縮径部、12b…第2縮径部

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C:0.10%以上0.35%以下、
    Si:0%より大きく2.0%以下、
    Mn:0.4%以上2.0%以下、
    P:0.03%未満、
    S:0.05%未満、
    Cr:0%より大きく2.0%以下、
    Al:0.1%以上2.0%以下、
    Cu:0.02%以上1.00%以下、
    N:0.001%以上0.100%以下、
    を含み、残部がFe及び不可避的不純物である化学組成を有し、
    Nの質量含有率に対するAlの質量含有率の比であるAl/Nの値が30より大きい、肌焼鋼。
  2. 質量%で、
    Ni:0.01%以上2.00%以下、
    をさらに含む化学組成を有する、請求項1記載の肌焼鋼。
  3. 質量%で、
    V:0.01%以上0.50%以下、または、
    Ti:0.005%以上0.200%以下、
    の少なくとも1種をさらに含む化学組成を有する、請求項1記載の肌焼鋼。
  4. 質量%で、
    Mo:0.001%以上1.00%以下、
    をさらに含む化学組成を有する、肌焼鋼。
  5. 質量ppmで、
    B:5ppm以上30ppm以下、
    をさらに含む化学組成を有する、請求項1記載の肌焼鋼。
  6. JIS G 0551に準じた粒度判定において求められる粒度番号の最大値と最小値の差である結晶粒度差が6以下である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の肌焼鋼。
  7. JIS Z 2274に準じた疲労試験によって求められる疲労強度が、500MPa以上である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の肌焼鋼。

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