JP2023551722A - ToBRFV、TMV、ToMV、およびToMMVに対する耐性を有するトマト植物および対応する耐性遺伝子 - Google Patents

ToBRFV、TMV、ToMV、およびToMMVに対する耐性を有するトマト植物および対応する耐性遺伝子 Download PDF

Info

Publication number
JP2023551722A
JP2023551722A JP2023533640A JP2023533640A JP2023551722A JP 2023551722 A JP2023551722 A JP 2023551722A JP 2023533640 A JP2023533640 A JP 2023533640A JP 2023533640 A JP2023533640 A JP 2023533640A JP 2023551722 A JP2023551722 A JP 2023551722A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
seq
protein
plant
tomato
resistance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2023533640A
Other languages
English (en)
Inventor
リンドボ ジョン
Original Assignee
ビルモラン エ コンパニー
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ビルモラン エ コンパニー filed Critical ビルモラン エ コンパニー
Publication of JP2023551722A publication Critical patent/JP2023551722A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/79Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
    • C12N15/82Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for plant cells, e.g. plant artificial chromosomes (PACs)
    • C12N15/8241Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology
    • C12N15/8261Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology with agronomic (input) traits, e.g. crop yield
    • C12N15/8271Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology with agronomic (input) traits, e.g. crop yield for stress resistance, e.g. heavy metal resistance
    • C12N15/8279Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology with agronomic (input) traits, e.g. crop yield for stress resistance, e.g. heavy metal resistance for biotic stress resistance, pathogen resistance, disease resistance
    • C12N15/8283Phenotypically and genetically modified plants via recombinant DNA technology with agronomic (input) traits, e.g. crop yield for stress resistance, e.g. heavy metal resistance for biotic stress resistance, pathogen resistance, disease resistance for virus resistance
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01HNEW PLANTS OR NON-TRANSGENIC PROCESSES FOR OBTAINING THEM; PLANT REPRODUCTION BY TISSUE CULTURE TECHNIQUES
    • A01H1/00Processes for modifying genotypes ; Plants characterised by associated natural traits
    • A01H1/12Processes for modifying agronomic input traits, e.g. crop yield
    • A01H1/122Processes for modifying agronomic input traits, e.g. crop yield for stress resistance, e.g. heavy metal resistance
    • A01H1/1245Processes for modifying agronomic input traits, e.g. crop yield for stress resistance, e.g. heavy metal resistance for biotic stress resistance, e.g. pathogen, pest or disease resistance
    • A01H1/126Processes for modifying agronomic input traits, e.g. crop yield for stress resistance, e.g. heavy metal resistance for biotic stress resistance, e.g. pathogen, pest or disease resistance for virus resistance
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/415Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from plants

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Botany (AREA)
  • Environmental Sciences (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Developmental Biology & Embryology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Photoreceptors In Electrophotography (AREA)
  • Paper (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

本発明は、トマトブラウンルゴースフルーツウイルス(ToBRFV)の移行タンパク質(MP)の認識を付与するTM-2-2タンパク質の変異体に関し、前記変異体は、TM-2-2タンパク質のチロシン767に対応する位置にチロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、またはトリプトファン(W)を含み、かつ潜在的にF655L変異と組み合わせて、TM-2-2タンパク質に対してC848R、N822C、N822F、N822M、N822Y、N822W、N825H、N825K、およびN825Tの変異のうちの少なくとも1つを含む。本発明はまた、そのような変異タンパク質をコードする遺伝子配列、好ましくは変異Tm-2-2遺伝子に関し、かつToBRFVに対する耐性を付与する前記変異遺伝子をそのゲノム中に含む植物、特にソラヌム・リコペルシクム(トマト)植物に関する。本発明はまた、これらの植物の部分ならびに子孫、およびToBRFV耐性を提供するためのこれらの配列の使用を対象とする。

Description

本発明は、リコペルシクム・エスクレントゥム(Lycopersicum esculentum)としても知られるソラヌム・リコペルシクム(Solanum lycopersicum)(トマト)植物でのトバモウイルス、特にトマトブラウンルゴースフルーツウイルス(ToBRFV、以前の略称はTBRFV)、好ましくはさらにタバコモザイクウイルス(TMV)、トマトモザイクウイルス(ToMV)、および/またはトマト斑点モザイクウイルス(ToMMV)に対する耐性に関する。より具体的には、本発明は、少なくともToBRFV、好ましくは少なくとも1種のさらなるトバモウイルスに対する耐性を誘導する耐性遺伝子を含むトマト植物およびトマト果実に関する。本発明によると、これらのトバモウイルスに対する耐性を付与する耐性遺伝子は、Tm-2遺伝子およびTm-2-2遺伝子の対立遺伝子の変異体である。耐性遺伝子は、トマト植物のゲノム中にホモ接合またはヘテロ接合で存在してもよい。本発明はさらに、この耐性遺伝子またはその一部、コードされたポリペプチドおよびタンパク質に関し、ならびにこれらの配列およびタンパク質を用いて耐性を有する植物を得ることに関する。本発明はまた、この植物の種子および子孫に関し、この植物を得るための繁殖部材に関し、かつこれらの植物の種々の活用に関する。
本発明の背景
トマトの全ての栽培形態および商業用形態は、最も頻繁にはリコペルシコン・エスクレントゥム・ミラー(Lycopersicon esculentum Miller)と呼ばれる種に属している。トマト属は、トウガラシ、タバコ、ナスなどの約90個の属からなると考えられている非常に広範囲で多様なナス科の中の比較的小さな属である。トマト属は、2種の亜属、すなわち市販のトマトと容易に交配できる種を含むエスクレントゥム複合体と、交配がかなり困難な種を含むペルウィアヌム複合体に区分されている。作物としてのその価値に起因して、リコペルシコン・エスクレントゥム・ミラーが世界中に広く普及している。
トマトは、果実を目的に栽培されていて、生鮮市場への産物あるいは加工品として広く利用されている。作物としてのトマトは、環境条件が経済的に実行可能な収量での生産を可能にするのなら、どこでも商業的に栽培される。生鮮市場でのトマトの大部分は、茎が成長して成熟した緑色の段階で手作業により収穫される。生鮮市場では、トマトは一年中入手可能である。加工トマトは、殆どは機械で収穫され、缶詰めトマト、トマトジュース、トマトソース、ピューレ、ペースト、さらにケチャップなど様々な形態に用いられている。
トマトは、通常は12対の分化した染色体を有する単純な二倍体の種である。但し倍数性のトマトも本発明の一部である。栽培されるトマトは自家受精でき、ほぼ例外なく自家受粉性である。トマトの花は雌雄同体である。市販の栽培品種は、当初は放任受粉性であった。トマトには雑種強勢が認められているので、より優れた収量および均一な植物特性を有する雑種が、放任受粉品種に取って代わり、農家の間で次第に汎用的になってきている。トマトは広く普及してその価値は高いことにより、集中的に品種改良が実施されてきた。このことが、現在このような幅広い種類のトマトが入手可能になった理由を物語っている。形状は幅広く小から大まで可能であり、サクランボ状、プラム状、ナシ状、ブロック型、丸型、ビフテキ型まで存在する。トマトは、植物が果実を成熟させて収穫するまでに要する時間によって分類されてもよく、一般的に栽培品種には、早生、中生、または晩生があると考えられる。トマトはまた、植物の成長習性、すなわち有限花序、半有限花序、または非有限花序の習性によって分類できる。有限花序の植物は、まずその葉を生長させ、次いで花を咲かせて受粉が成功すると成熟して実を結ぶ傾向がある。果実は全て、一本の木でほぼ同時に熟する傾向がある。非有限花序のトマトは、部分的な葉の生長から始まり、生長期の全体を通して葉および花を生成し続ける。これらの植物は、種々の成熟段階のトマト果実を常時実らせる傾向がある。半有限花序のトマトは、有限花序と非有限花序の中間の表現型を有し、それらトマトは有限花序の品種よりも大きく成長する点を除けば典型的な有限花序の種類となる。トマトの品種改良での最近の進歩により、果実の色はさらに多様になっている。トマトは、標準的な赤色の完熟色に加えて、クリーム白色、濃緑色、ピンク色、黄色、黄金色、オレンジ色、または紫色にできる。
雑種の市販トマトの種子は、手作業による受粉によって生産できる。雄親の花粉を採取して、近交系の雌親の柱頭表面に手で塗布する。人工受粉の前後には、昆虫が外来の花粉を持ち込んで混合物や不純物が生じないように花を覆う。花をタグ付けし受粉された果実を識別して、それから種子を収穫する。
ウイルス、真菌、細菌、線虫、および昆虫を含む様々な病原体がトマト植物の生産性に影響を及ぼす。トマトは、特に多くのウイルスに感染し易いので、ウイルス耐性は農業的に非常に重要である。
トバモウイルスは、世界中の農業、特に野菜および観賞用作物に深刻な被害を引き起こす最も重要な植物ウイルスの1つである。トバモウイルスは、器質的な手段によって伝染され易く、ならびに種子によっても伝染され易い。トバモウイルスは、一般的に、4つのタンパク質をコードする一本鎖のプラス鎖RNAゲノムをキャプシド形成する約300 nmの棒状粒子を特徴とする。トマトでは、タバコモザイクウイルス(TMV)およびトマトモザイクウイルス(ToMV)は、例えば不規則な熟成などにより(果実の表面に黄色味のある斑模様を持ち、その表面の下部に茶色味のある斑点がある)、作物の生産に重大な損害を与える可能性があるので、世界中の生産者に恐れられている。しかし長年に亘って植物栽培家によっていくつかの遺伝子が識別されていて、現在ではTMVおよび/またはToMVに耐性を有するトマト品種を入手可能である。
最近になって、別のトバモウイルス、すなわちトマト斑点モザイクウイルス(ToMMV)が、世界中のいくつかの国でトマト植物に感染することが報告されていて、この感染はトマト生産の年間収量および品質を低下させる。
トバモウイルスは、ウイルスのα様高次分類群に属する。それらは、鎖状のRNA(+)ゲノムを包含する外被タンパク質(CP)のコピーで構成されるタンパク質性の桿状体細胞を有する。植物細胞への感染後に、RNAゲノムは外被除去後に転写されて、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)、移行タンパク質(MP)、および外被タンパク質(CP)を生成する。ウイルスの隣接細胞への感染ならびに長距離の移動は、移行タンパク質(MP)に依存している。
トバモウイルスなどの病原体に対する耐性には、耐性(R)遺伝子の存在が必要であり、そのポリペプチド産物であるRタンパク質は、トバモウイルスの産物を識別して、続いて防御応答、一般的には過敏感反応を誘発できる。
過去数十年に亘って、最近の全ての有限花序のトマト品種および多くの有限花序のトマト品種は、確かに耐性遺伝子としてTm-2遺伝子あるいは好ましくはこの遺伝子のTm-2(Tm-2-2としても知られる)対立遺伝子を含んでいる。ソラヌム・ペルウィアヌム(野生種トマト)から移入されたこれらの遺伝子は、2014年以前に市販トマトに影響を及ぼしたトバモウイルス(ToMVおよびTMV)のほぼ全ての既知の種に対して、確かに免疫を付与している。耐性遺伝子であるTm-2-2はまた、ToMMVに対する耐性もほぼ付与しているように見受けられる(Nagai et al, 2019;Sui et al, 2017)。
Tm-2(配列番号2)耐性遺伝子およびTm-2-2(配列番号3)耐性遺伝子は、対立遺伝子であると考えられ、適合する非病原性(Avr)タンパク質としてToMVの移行タンパク質(MP)を共有する。TM-2タンパク質およびTM-2-2タンパク質(それぞれ配列番号7および8)は、Rタンパク質のヌクレオチド結合部位/ロイシンリッチリピート型(NBS-LRRタンパク質、NLRタンパク質としても知られる)の特徴を有し、易感染性のリコペルシクム・エスクレントゥム株から単離されたtm-2対立遺伝子(配列番号1)によってコードされたポリペプチド(配列番号6)とはかなり異なる(Lanfermeijer et al. 2003)。Tm-2およびTm-2-2を媒介とする耐性には、これらのNLRタンパク質がトバモウイルス移行タンパク質(MP)を認識することが必要となる(Calder and Palukaitis 1992;Meshi et al. 1989;Weber and Pfitzner 1998;Weber et al. 1993)。
tm2遺伝子とTm-2遺伝子の産物間の差異は、Tm-2遺伝子とTm-2-2遺伝子との間の差異と同様に、ロイシンリッチロイシンリッチ(LRR)ドメインに集中している(Lanfermeijer et al. 2005)。
2014年から2015年にかけて、ウイルスの深刻な流行が、ヨルダンやイスラエルなどの中東でのトマト生産地域に影響を及ぼした。影響を受けたトマト品種の大半は、TMV耐性および/またはToMV耐性を有すると考えられていたが、依然として深刻な影響を受けて典型的なTMV/ToMV様症状を呈示した。葉面の症状はTMV/ToMVの症状に極めて類似していたが、果実の症状は、果実の病変や変形を伴うこれらウイルスによる通常の症状よりも遥かに頻度高く見られかつ重篤であった。果実の品質は非常に劣り、より端的にいえば市場に適さないものであった。Salemら(2015)は、新たなトバモウイルス種を配列決定して、このヨルダンのウイルスをトマトブラウンルゴースフルーツウイルス(略称は、以前はTBRFVで現在はToBRFV)と命名するように提案した。他のトバモウイルス配列との比較により、そのウイルスは確かにトバモウイルスであるが、TMVやToMVではないことが分かった。TMVおよび/またはToMVに対する耐性は、この新たなウイルスであるToBRFVに対する耐性を付与せず、すなわちTm-2耐性遺伝子またはTm-2-2耐性遺伝子のいずれかを含む植物は、依然としてToBRFVに対して易感染性である。
Luriaら(2017)は、イスラエルのトマトに感染するイスラエルトバモウイルスの完全なゲノムを並行して単離・配列決定し、イスラエルウイルスとヨルダンウイルスの間の非常に高い配列同一性(99%を超える配列同一性)を明確にし、トマトブラウンルゴースフルーツウイルスの2種の異なる分離株であると結論付けた。
最近になってこのウイルスは、特にシチリア島、ドイツ、オランダ、およびフランスなどの欧州で、かつメキシコで確認されたので、現在ではトマト作物に対する国際的な重大な脅威と考えられている。
従って、この新たなトバモウイルスに対する耐性遺伝子の識別は、トマト栽培家にとって重要かつ緊急の課題となっている。
ToBRFVに対する耐性を示すトマト植物の識別ならびにトマトブラウンルゴースフルーツウイルスに対する耐性を誘導する、以下でQTL(定量形質遺伝子座)とも呼ぶ遺伝決定基の位置特定および識別が、最近になって国際特許WO2018/219941号に開示されている。それぞれ染色体6および9上の2個のQTL、すなわちQTL1およびQTL2は、ソラヌム・リコペルシクムの背景内にホモ接合で存在する場合に、単独でまたは組合せでToBRFVに感染したあるいは感染し得るトマト植物の果実に許容性または耐性の向上を付与する。染色体11上の第3のQTL、すなわちQTL3は、ホモ接合で存在する場合に、ToBRFVに感染したあるいは感染し得るトマト植物の葉部に許容性または耐性の向上を付与する。
単独または組合せのいずれかでのこれらのQTLは、ToBRFVに対する許容性または耐性を提供するが、この許容性/耐性は量依存でありかつ多遺伝子性であるように見受けられ、植物にはウイルスが含まれないことはない。さらにこれらのQTLは、ホモ接合で存在する場合に耐性を提供すると説明されている。染色体9上のQTL2がTm-2-2遺伝子と同じ遺伝子座に、すなわち一般的に組換えを伴わずに「一括して」伝達される領域内に存在する限り、そのような染色体9上のQTLは、商業植物にとって依然として必須であるTm-2-2遺伝子と結合するのが困難な可能性がある。
最近になってWO2020/148021号は、ToBRFVに対する耐性を付与する染色体8上の耐性遺伝子を開示していて、この遺伝子は、NBS-LRRタンパク質(ヌクレオチド結合部位ロイシンリッチリピート)をコードしている。従ってこの文献に開示の耐性遺伝子は、ToBRFV、TMV、およびToMVに対する耐性を同時に提供するために、Tm-2-2耐性遺伝子と結合されることになる。
トバモウイルス粒子は非常に安定でかつ感染性が高いので、その感染防止は一般的に非常に困難である。従ってトバモウイルス感染症と戦う最も効果的な方法のうちの1つは、耐性遺伝子の遺伝的な導入である。従ってこの新たなトバモウイルスであるToBRFVを含むいくつかのトバモウイルスに対する耐性を同時に向上する遺伝子を識別する緊急の必要性があり、これに失敗すると、これら地域全体でトマト作物がもはや生産できなくなる可能性がある。
植物性NLRタンパク質が広範囲に検討されている(Baggs et al. 2017;Kapos et al. 2019)。NLRは、植物内で「エフェクタータンパク質」を認識すると耐性応答を誘発するタンパク質である。NLRは、N末端ドメインに従って2つの主要な下位区分に分類される。2つの主要な下位区分は、N末端にそれぞれ二重コイル(CC)ドメインまたはトール/インターロイキン1受容体(TIR)ドメインのいずれかを含むタンパク質であるCNLおよびTNLである。N末端ドメインに加えて、NLRはまた、ヌクレオチド結合(NB)ドメインおよびロイシンリッチリピート(LRR)ドメインを有する。共通ドメイン(NB、LRR、CC、およびTIR)のそれぞれは、NLRタンパク質の活性化に役割を果たすことが提示されている(Wang et al. 2020)。特にLRRドメインは通常、エフェクタータンパク質の認識に関連している。結果として、LRRドメイン内の対立遺伝子の多様性は、エフェクタータンパク質結合の特異性に関連していることが多く、LRRドメインの多様性は正の選択を受けているように見受けられる(Mondragon-Palomino et al. 2002)。LRRドメインはまた、自動活性化および下流へのシグナル伝達を阻害する自己抑制ドメインとしても機能する。NBドメインはATPに結合し、それを活性形態と非活性形態に切り替えることができる。CCドメインおよびTIRドメインは、一般的にシグナル伝達に関与すると考えられている。さらに2つのNLRタンパク質の間でLRRドメインの一部を移動させると、NLRタンパク質に新たな特異性が付与される可能性があるという報告がある(Slootweg et al. 2017)。
NLRタンパク質であるTM2/TM-2-2の場合には、LRRドメイン内の単一アミノ酸(AA)の変化が、このタンパク質によって認識されるトバモウイルスの移行タンパク質(MP)の多様性の拡大を担っていることが証明されている(Kobayashi et al. 2011)。
本発明者らは、従来技術の教示に反して、TMV、ToMV、およびToBRFVに対する耐性が、種々の耐性遺伝子および耐性タンパク質の組合せを必要とせずに、単一の耐性遺伝子によってコードされる単一の耐性タンパク質によって付与できることを、予想外に見出した。
さらに本発明者らは、ToBRFVに対する耐性を付与するそのようなタンパク質が、TMVおよびToMVに対する耐性を付与するNLRタンパク質の認識ドメイン、すなわちLRRドメインを修飾して得ることができる、換言すればTM-2-2タンパク質のLRRドメインを修飾して得ることができることを見出した。
本発明は、TM-2-2タンパク質のLRRドメインに由来する変異型LRRドメインに関し、前記変異型LRRドメインを含むNBS-LRRタンパク質により、少なくともToBRFV、好ましくはTMV、ToMV、および/またはToMMV、最も好ましくはTMV、ToMV、およびToMMVを含むいくつかの異なるトバモウイルスの移行タンパク質を認識しかつ/あるいは結合するようになる。
本発明はまた、そのような変異型LRRドメインを含むポリペプチド、ならびに前記ドメインおよびポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に関する。
本発明はまた、少なくともToBRFVに対する耐性を含むいくつかのトバモウイルスに対する耐性をトマトに付与するTM-2-2タンパク質(配列番号8)の変異体または対立遺伝子変異体をコードする耐性遺伝子に関する。
新たに見出された耐性タンパク質またはLRRドメインは、TM-2-2タンパク質のLRRドメイン中の822位、825位、または848位の少なくとも1つの置換、すなわちアスパラギン(N)822のシステイン(C)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、チロシン(Y)、またはトリプトファン(W)による置換、セリン(S)825のヒスチジン(H)、リジン(K)、またはトレオニン(T)による置換、システイン(C)848のアルギニン(R)による置換、あるいはこれらの置換の組合せにより、好ましくはToMVおよびTMVに対する耐性に加えて、ToBRFVに対する耐性を付与する。
さらなる置換、好ましくは655位のフェニルアラニン(F)のロイシン(L)による置換により、848位、822位、および/または825位の置換、特に848位の置換によって付与される耐性を向上させてもよい。
本発明はまた、市販の植物、系統、および雑種を含む、ToBRFVに対する耐性を示す植物、特にトマト植物を提供し、ならびにToBRFVに対する耐性を示す植物、特にトマト植物またはトマト群(生殖質)を生産または識別する方法を提供する。本発明はまた、新たに見出された耐性遺伝子に結合する分子遺伝マーカーを開示する。さらにこのような分子マーカーの方法および使用によって得られる植物を提供する。
本発明はまた、ToBRFV耐性植物を識別する方法、ToBRFVを含む種々のトバモウイルスが蔓延する環境でのトマト生産の収量を向上する方法、ToBRFVを含むトバモウイルスの蔓延からトマト畑を保護する方法、および少なくともToBRFVに対する耐性を付与するTm-2-2遺伝子またはTm-2遺伝子の変異体を識別、検出、および/または選択する方法などのいくつかの方法を提供する。
定義
用語「耐性」は、野菜種子産業での有害生物または病原体および非生物的ストレスに対する植物の反応の説明のためにISF(国際種子連盟)の野菜および観賞用作物部門が定義する通りである。具体的には耐性とは、同一の環境条件および有害生物または病原体の影響力で、易感染性の植物品種と比較した場合に、特定の有害生物または病原体の成長および増殖および/またはそれらが引き起こす被害を抑制する植物品種の能力を意味する。耐性を有する品種は、重度の有害生物や病原体の影響力で何らかの病気の症状または被害を呈する場合がある。2種の耐性基準が定義されている。
高度の耐性:易感染性の植物に比較して、通常の有害生物の圧力で特定の有害生物の成長および/または増殖および/またはその有害生物が引き起こす被害が高度に抑制される植物を指す。但しこれらの植物は、重度の有害生物の影響力では何らかの症状や損傷を示す場合がある。
中度の耐性:特定の有害生物の成長および/または増殖および/またはその有害生物が引き起こす被害を高度に抑制するが、高度の耐性植物に対比してより広範囲の症状または被害を呈する可能性がある植物を指す。中度の耐性植物は、同一の環境条件および/または有害生物の影響力で栽培した場合に、易感染性植物ほど深刻な症状または被害を呈することはない。
用語「許容性」は通常、成長、外観、および収量に深刻な影響を及ぼすことなく非生物的ストレスに耐える植物の能力を説明するのに用いられる。
但し文献や特許では、この用語を用いて、植物が感染量のウイルスに曝露されても病気の症状の少なくとも一部を発生させない状態で、少なくともいくつかの培養条件では、全身的または局所的な感染、ウイルスの増殖、少なくとも前記植物の細胞内でのウイルスゲノム配列の存在、および/またはそのゲノムの組込みを構築できる植物の表現型を示す。従って許容性のある植物は、症状の発現には耐性があるが、ウイルスの無症状保菌体となる。場合によっては、ウイルス配列は、病気症状を引き起こすことなく植物内に存在しさらに増殖する場合がある。許容性のある植物は一般に、ウイルスに感染しているにも拘らず、ウイルスの成長および増殖を少なくとも適度に抑制できることが分かっている。これを根拠に、本定義による許容性のある植物は、中度の耐性植物を特徴とするのが最も適切である。
ToBRFV感染の葉部への症状には、一般的に、モザイク、小葉部の変形、また多くの場合に靴紐様症状が挙げられる。ToBRFV感染の果実への症状には、一般的に、典型的な黄色病変(変色)および果実の変形が含まれる。多くの場合に、果実への「赤色斑点病」も見られる。
易感染性:特定の有害生物または病原体の成長および増殖を植物が抑制できないことを指し、易感染性植物は、ウイルス感染に関連する有害な症状、すなわちToBRFV感染の場合には葉部の損傷および果実の損傷を示す。
トマトブラウンルゴースフルーツウイルスに対し易感染性のトマト植物には、例えば、Salemらからの刊行物(2015)に述べる市販品種のカンデラ(Candela)が挙げられる。
本明細書で使用される用語「子孫」または「後代」は、1つ以上の親植物またはその後継からの栄養生殖または有性生殖から後代として生じる任意の植物を指す。例えば子孫植物は、親植物のクローンもしくは自家受粉によって、あるいは2種の親植物の交配によって得られ、自家受粉、ならびにF1もしくはF2世代、またはさらなる世代を含んでもよい。F1は、少なくともその一方が初めて形質のドナーとして用いられる親から生産された第1世代の子孫であり、第2世代(F2)またはその後の世代(F3、F4など)の子孫は、第1世代、第2世代などの自家受粉から生産された試料である。従って、F1は2種の真の育種親(真の育種親は1つの形質に対しホモ接合性である)の間の交配から生じる雑種であってもよく、F2は前記F1雑種の自家受粉から生じる子孫であってもよい(通常はその子孫である)。
本明細書で使用される用語「交配する」、「交配」、「他家受粉」または「交雑育種」は、1つの植物の1つの花の花粉が、別の植物の1つの花の胚珠(柱頭)に(人工的にまたは天然に)塗布されるプロセスを指す。
本明細書で使用される用語「遺伝子型」は、個々の細胞、細胞培養物、組織、生物(例えば植物)、または生物群の遺伝子構造を指す。
本明細書で使用される用語「接ぎ木」は、台木に接ぎ穂を移植する操作である。接ぎ木の主な目的は、病気管理のための遺伝手法または化学手法が利用可能でない場合に、土壌由来の有害生物および病原体による被害を回避することである。易感染性の接ぎ穂を耐性のある台木に接ぎ木することにより、品種内に耐性を育種する必要がなく耐性品種を提供できる。さらに接ぎ木により非生物的ストレスに対する耐性を強化でき、収量を向上でき、かつより効率的な水および栄養素の使用を可能にできる。
本明細書で使用される用語「ヘテロ接合体」は、少なくとも1つの遺伝子座に存在する種々の対立遺伝子(所定の遺伝子、遺伝決定基、または遺伝配列の形態)を有する二倍体または倍数体の個々の細胞または植物を指す。
本明細書で使用される用語「ヘテロ接合性」は、特定の遺伝子座に種々の対立遺伝子(所定の遺伝子、遺伝決定基、または遺伝配列の形態)が存在することを指す。
本明細書で使用される用語「ホモ接合体」は、全ての相同染色体の1つ以上の遺伝子座に同一の対立遺伝子を有する個々の細胞または植物を指す。
本明細書で使用される用語「ホモ接合性」は、相同染色体部分の1つ以上の遺伝子座に同一の対立遺伝子が存在することを指す。
本明細書で使用される用語「雑種」は、1つ以上の遺伝子が異なる親の間の交配から生じる任意の個々の細胞、組織、または植物を指す。
本明細書で使用される用語「遺伝子座」は、遺伝的に定義された任意の部位を指し、この部位は単一の位置(ヌクレオチド)または染色体領域であってもよい。遺伝子座は、遺伝子、遺伝決定基、遺伝子の一部、またはDNA配列であってもよく、種々の配列で占有されていてもよい。遺伝子座は、1つのSNP(一塩基多型)、複数のSNP、または隣接する2つのSNPで定義されてもよい。
本明細書で使用される用語「台木」は、接ぎ木プロセスで接ぎ穂を受け入れることができる植物の下方部分を意味する。
本明細書で使用される用語「接ぎ穂」は、接ぎ木プロセスで台木上に接ぎ木することができる植物の上方部分である。
本発明は、種々の倍数性基準の植物、実質的には二倍体植物、さらに三倍体植物、四倍体植物などを包含する。
本発明の詳細な説明
本発明者らは、TM-2-2タンパク質のLRRドメインの変異体を識別し、LRRドメインの前記変異体を含むNBS-LRRタンパク質により、少なくともToBRFV(トマトブラウンルゴースフルーツウイルス)、好ましくはTMV(タバコモザイクウイルス)および/またはToMV(トマトモザイクウイルス)、また好ましくはToMMV(トマト斑点モザイクウイルス)を含むいくつかのトバモウイルスの移行タンパク質(MP)を認識かつ/あるいは結合する。
従って本発明は、TM-2-2タンパク質のロイシンリッチリピートの変異体すなわち配列番号11の変異体に関し、ここで前記変異体は、配列番号11と少なくとも90%の配列同一性を有し、NBS-LRRタンパク質内に組み込まれる場合に、前記変異体は、少なくともToBRFVの移行タンパク質(配列番号15)、また好ましくはToMVのMP(配列番号14)および/またはTMVのMP(配列番号13)、さらに好ましくはToMMVのMP(配列番号16)を認識かつ/あるいは結合する能力を付与する。対照的に、TM-2-2のLRRドメインすなわち配列番号11は、ToMVおよびTMVのMPに結合する能力を付与するが、ToBRFVのMPへの顕著な結合または認識を付与しない。本発明のTM-2-2のLRRドメインの変異体は、本発明のLRR変異体もしくは変異種、またはLRRドメインの変異体もしくは変異種、またはLRR変異体ドメインと互換的に呼ばれる。
本発明のLRR変異体によるTM-2-2のLRRドメインすなわち配列番号11の置換は、このように得られたタンパク質へのToBRFVのMPの認識を付与する、すなわちToBRFVのMPを認識するタンパク質を形成する。
NBS-LRRタンパク質は、直接的または間接的にToBRFVのMPに結合する場合に、ToBRFVのMPを認識すると言われていて、直接的または間接的な結合は、LRRドメイン基準であってもよく、あるいはタンパク質の全体が関与してもよい。このような認識は、実施例に開示される測定法によって検査できる。
本発明者らはさらに、ToBRFVのMPの認識を付与する変異が、TM-2-2タンパク質(配列番号8)の822位、825位、および848位のアミノ酸のうちの少なくとも1つの置換に依ることを、より具体的には、以下からなる置換のうちの少なくとも1つの置換に依ることを実証した:
・配列番号11(TM-2-2のLRRドメイン;TM-2-2タンパク質のアミノ酸477~861に対応する)の372位に対応するTM-2-2タンパク質(配列番号8)の848位にあるシステイン(C)のアルギニン(R)による置換;
・配列番号11(TM-2-2のLRRドメイン)の346位に対応するTM-2-2タンパク質(配列番号8)の822位にあるアスパラギン(N)のシステイン(C)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、チロシン(Y)、またはトリプトファン(W)による置換;および
・配列番号11(TM-2-2のLRRドメイン)の349位に対応するTM-2-2タンパク質(配列番号8)の825位にあるセリン(S)のヒスチジン(H)、リジン(K)、またはトレオニン(T)による置換。
従って本発明によるLRR変異体は、TM-2-2タンパク質中のシステイン848に対応する位置でのアルギニンの存在、および/またはTM-2-2タンパク質中のアスパラギン822に対応する位置でのシステイン、フェニルアラニン、メチオニン、チロシン、またはトリプトファンの存在、および/またはTM-2-2タンパク質のセリン825に対応する位置でのヒスチジン、リジン、またはトレオニンの存在によって特徴付けられる。本発明のLRR変異体は、説明された置換のうちの1つを、822位、825位、および848位のうちの1つの位置のみ、またはそれらのうちの2つの位置、またはそれら全部の位置に含んでもよい。本発明のLRR変異体は、C848R置換とN822Y置換を同時に含まないことが好ましい。
好ましい実施態様によれば、822位、825位、および848位のうちの1つの位置のみが置換される。
本発明者らはさらに、本発明のLRR変異体の655位での変異または置換、好ましくはロイシン(L)によるフェニルアラニン(F)の置換により、ToBRFVのMPの認識が向上できることを明らかにした。理論により束縛はされないが、655位での変異により、ToBRFVのMPと相互作用するLRR変異体のドメインの提示が改善されることが予測される。従って本発明の好ましいLRR変異体はまた、655位に変異、より好ましくはF655L変異を含む。TM2-2タンパク質全体に関して、655位は、配列番号11(TM-2-2のLRRドメイン)の179位に対応する。
本発明の変異体はまた、TM-2-2タンパク質中のチロシン767に対応する位置でのチロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、またはトリプトファン(W)の存在、すなわちTM-2-2のLRR(配列番号11)の291位に対応するLRR変異体中の位置にあるY、F、またはWの存在によって特徴付けられる。確かに本発明者らが実験の段落で示すように、TM-2-2のLRR/タンパク質中の天然起源の前記チロシンは、機能を失わずにFまたはWによって置換できる。さらにこの位置は、Kobayashiらの文献に示されるように、ToMVに対して永続的な耐性を提供する。
以下でのアミノ酸の番号付けは、全長TM-2-2タンパク質(配列番号8)内の前記アミノ酸の位置に相当する。
特定のLRRドメインがNBS-LRRタンパク質、特にTM-2-2タンパク質に対して付与する能力、すなわち少なくともトマトブラウンルゴースフルーツウイルス(ToBRFV)の移行タンパク質を認識かつ/あるいは結合する能力は、実験の段落で開示される一過性の発現測定法、すなわちToBRFVのMPの存在で試験対象のLRRドメインを含むNBS-LRRタンパク質をベンサミアナ・タバコ中で一過的に発現させ、かつ過敏感反応を検査することで容易に試験できる。NBS-LRRタンパク質は、天然起源のLRRドメインが試験対象のLRR変異体で置換されているTM-2-2タンパク質であることが好ましい。
本発明のLRRドメイン変異体は、本発明のLRR変異体によるTM-2-2のLRRドメインすなわち配列番号11の置換により、ToMV、TMV、および/またはToMMV、好ましくは少なくともTMVおよびToMVのMPを認識する能力を保持するものであることが好ましい。
本発明のLRRドメイン変異体は、TM-2-2のLRRドメインの配列に対応する配列番号11に対してアミノ酸の基準で少なくとも90%の配列同一性を示す。
2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、本発明のドメインで通常に定義される通りである。配列同一性を定義するための適切なプログラムは、例えばクラスタル・オメガ(Clustal Omega)である。
本発明の好ましい実施態様によれば、LRR変異体は、配列番号11に対して好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、少なくとも97%、または少なくとも98%の配列同一性を有する。さらなる実施態様によれば、LRR変異体は、配列番号11に対して99%以上の配列同一性を有する。
TM-2-2の野生型LRRドメインに対する配列同一性の比率に関係なく、本発明による変異体は、TM-2-2タンパク質の767位に対応する位置にY、F、またはW、および以下のうちの1種以上を含む:
・TM-2-2タンパク質のシステイン848に対応する位置にあるR;
・TM-2-2タンパク質のアスパラギン822に対応する位置にあるC、F、M、Y、またはW;および
・TM-2-2タンパク質のセリン825に対応する位置にあるH、K、またはT。
変異体はまた、上述の変異に加えて、TM-2-2タンパク質の655位に対応する位置にロイシン(L)を含むことが好ましい。
TM-2-2のLRRドメインの三次元構造内のアミノ酸822、825、および848の近傍でのLRRドメインの変異は、制限されることが好ましく、すなわち822位、825位、および848位の近傍のアミノ酸は、823位、826位、827位、830位、847位、849位、850位、851位、857位、および858位である。但し実施例に示されるように、K857Q置換などのこれらの位置でのいくつかの変異は許容される。
従って、本発明のLRR変異体と配列番号11との間の変形または変異は、好ましくは、(TM-2-2タンパク質中のアミノ酸822、825、および848に対応する)アミノ酸346、349、および372の近傍にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸に関連する。
変形または変異は、好ましくはLRRドメインの三次元構造を保存する、好ましくは保存的アミノ酸置換である。
すなわち、リジンまたはアルギニンなどの塩基性アミノ酸は、別の塩基性アミノ酸で置換されることが好ましく、アスパラギン酸またはグルタミン酸などの酸性アミノ酸は、別の酸性アミノ酸で置換されることが好ましい。グリシン、アラニン、プロリン、システイン、またはバリンなどの小さな無極性アミノ酸は、別の小さな無極性アミノ酸によって置換されることが好ましい。ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、またはトリプトファンなどの大きな無極性アミノ酸は、別の大きな無極性アミノ酸によって置換されることが好ましい。セリンまたはトレオニンなどの小さな極性アミノ酸は、別の小さな極性アミノ酸によって置換されることが好ましい。アスパラギンまたはグルタミンなどの大きな極性アミノ酸は、別の大きな極性アミノ酸によって置換されることが好ましい。チロシン、フェニルアラニン、またはトリプトファンなどの芳香族アミノ酸は、別の芳香族アミノ酸で置換されることが好ましい。
本発明による可能性のある変形または変異は、実験の段落で示すように、TM-2-2の655位、または857位、および/または769位に対応するアミノ酸に関連してもよい。
好ましい実施態様によれば、本発明によるLRRドメイン変異体は、TM-2-2のLRRドメインに対して20個以下の変異、好ましくは15個以下の変異、より好ましくは10個以下の変異を示す。前記変異は、好ましくは保存的変異であり、それら変異は、好ましくは、システイン848置換、アスパラギン822置換、およびセリン825置換の近傍にはないLRRドメインの位置に見られる。
本発明による可能性のあるLRR変異は、655位のロイシン(L)、848位のアルギニン(R)および767位のチロシン(Y)、あるいは655位のロイシン(L)、848位のアルギニン(R)および767位のフェニルアラニン(F)、あるいは655位のロイシン(L)、848位のアルギニン(R)および767位のトリプトファン(W)、あるいは848位のアルギニン(R)および767位のチロシン(Y)を含み、ならびに実施例に示される全てのLRR変異を含む。
本発明はまた、上述の定義のようにLRRドメインの変異をコードするヌクレオチド配列に関する。遺伝コードの縮重を考慮すると、TM-2-2タンパク質のシステイン848に対応する位置にあるアルギニン、および/またはアスパラギン822に対応する位置にあるシステイン、フェニルアラニン、メチオニン、チロシン、またはトリプトファン、および/またはセリン825に対応する位置にあるヒスチジン、リジン、またはトレオニンによって本質的に特徴付けられる本発明のLRRドメインの変異体をコードする、すなわち配列番号11の変異体をコードする大きく異なるヌクレオチド配列が想定でき、ここで配列番号11の前記変異体は、767位にチロシン、フェニルアラニン、またはトリプトファンを有し、655位にロイシンを有する可能性がある。この配列は、単離されていても単離されていなくてもよい。
適切なヌクレオチド配列は、例えば、配列番号12に対応する配列すなわちTm-2-2のLRRをコードする野生型配列であり、ここで少なくともTM-2-2の848位のシステインに対応するコドンは、アルギニンに対応するコドンによって置換されていて、あるいは少なくともTM-2-2の822位のアスパラギンに対応するコドンは、システイン、フェニルアラニン、メチオニン、チロシン、またはトリプトファンに対応するコドンによって置換されていて、あるいは少なくともTM-2-2の825位のセリンに対応するコドンは、ヒスチジン、リジン、またはトレオニンに対応するコドンによって置換されている。適切なヌクレオチド配列は、例えば、配列番号4または5のヌクレオチド1429~2586(または終止コドンを除く2583)である。他の適切なヌクレオチド配列は、配列番号12に由来し、以下のコドンのうちの少なくとも1つが置換されている:
・TM-2-2の848位にシステインをコードするコドンTGC、すなわち配列番号12の1114~1116位のヌクレオチドが、アルギニンをコードするコドンによって、すなわちAGA、AGG、CGG、CGA、CGC、またはCTGによって置換されている;
・TM-2-2の822位にアスパラギンをコードするコドンAAT、すなわち配列番号12の1036~1038位のヌクレオチドが、システインをコードするコドンによって、すなわちTGTまたはTGCによって置換されていて、フェニルアラニンをコードするコドンによって、すなわちTTTまたはTTCによって置換されていて、メチオニンをコードするコドンによって、すなわちATGによって置換されていて、チロシンをコードするコドンによって、すなわちTATまたはTACによって置換されていて、あるいはトリプトファンをコードするコドンによって、すなわちTGGによって置換されている;および
・TM-2-2の825位にセリンをコードするコドンTCT、すなわち配列番号12の1045~1047位のヌクレオチドが、ヒスチジンをコードするコドンによって、すなわちCATまたはCACによって置換されていて、リジンをコードするコドンによって、すなわちAAAまたはAAGによって置換されていて、あるいはトレオニンをコードするコドンによって、すなわちACC、ACT、ACG、またはACAによって置換されている。
さらに、TM-2-2の767位にチロシンをコードするコドンTAC、すなわち配列番号12の871~873位のヌクレオチドは、フェニルアラニンをコードするコドンによって、すなわちTTTまたはTTCによって、あるいはトリプトファンをコードするコドンによって、すなわちTGGによって置換されていてもよい。
TM-2-2の655位にフェニルアラニンをコードするコドン、すなわち配列番号12の535~537位のヌクレオチドは、ロイシンをコードするコドンによって、すなわちCTT、CTC、CTA、CTG、TTA、またはTTGによって置換されていてもよい。
本発明はまた、配列番号12に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の配列同一性を有する配列番号12に由来する配列に関する。配列番号12に対する配列同一性の百分率に関係なく、本発明による配列は、上述に定義の本発明のLRRドメイン変異体をコードする。遺伝コードの縮重を考慮すると、本発明のLRRドメイン変異体をコードする配列は、配列番号12に対して70%未満の配列同一性を有してもよいが、この配列もまた本発明の範囲内である。
さらなる側面によれば、本発明はまた、本発明の変異型LRRドメインを含むポリペプチドおよびタンパク質に関し、特に少なくともToBRFVの移行タンパク質(MP)、好ましくは少なくともToMVまたはTMV、さらに好ましくはToMMVを含む他のトバモウイルスの移行タンパク質(MP)を認識または結合するポリペプチドおよびタンパク質に関する。
本発明の好ましい実施態様によれば、目的の変異型または変形型LRRドメインを含むタンパク質は、NLR類のタンパク質(NBS-LRR)のメンバーであり、より好ましくは二重コイルNLR(CC-NBS-LRR)である。Slootwegらが示すように、NBS-LRRタンパク質間のLRRの交換は、確かにNBS-LRRタンパク質の標的を修飾する可能性がある。従って本発明のLRRドメイン変異体は、任意のNBS-LRRの野生型LRRに置換でき、これによりToBRFVのMP、好ましくはToMV、TMV、および/またはToMMVのMPを特異的に標的とするキメラ型NBS-LRRを形成できる。
従って本発明はまた、NBS-LRRタンパク質のNBS部分および本発明によるLRRドメイン変異体を含むそのようなキメラ型NBS-LRRタンパク質を包含する。上述に示すように、このようなNBS-LRRタンパク質は、好ましくはCC-NBS-LRRである。
このような本発明のNBS-LRRタンパク質は、好ましくは、本発明のLRRドメイン変異体に融合された配列番号8のアミノ酸1~476に対応するTM-2-2タンパク質のNBS部分を含む。このタンパク質は、有利なことには、配列番号9(TM2-14-25)、配列番号10(TM2-467)、配列番号17(TM2-4)、配列番号18(TM2-5)、配列番号19(TM2-825H)、配列番号20(TM2-825K)、配列番号21(TM2-825T)、配列番号22(TM1-822C)、配列番号23(TM2-822F)、配列番号24(TM2-822M)、配列番号25(TM2-822Y)、または配列番号26(TM2-822-W)の配列を有してもよい。従って本発明のこれらのタンパク質は、TM-2-2タンパク質変異体であり、LRRドメイン内だけに存在するTM-2-2タンパク質とは異なる。
本発明の別のNBS-LRRタンパク質は、本発明のLRRドメイン変異体に融合された配列番号6および7の(tm2遺伝子およびTm2遺伝子によってコードされたタンパク質に対応する)NBS部分を含む。
本発明はまた、TM-2-2タンパク質の配列(配列番号8)に対して少なくとも90%のアミノ酸同一性を有し、ToBRFVのMPと相互作用しかつ/あるいはそれを認識しあるいは標的とするTM-2-2タンパク質変異体に関し、この変異体は、配列番号8のY767に対応する位置にチロシン、フェニルアラニン、またはトリプトファンを含み、かつ配列番号8のC848に対応する位置にアルギニン、S825に対応する位置にヒスチジン、リジンまたはトレオニン、およびN822に対応する位置にシステイン、フェニルアラニン、メチオニン、チロシン、またはトリプトファンのうちの少なくとも1種を含み、すなわちN822C、N822F、N822M、N822Y、N822W、S825H、S825K、S825T、およびC848Rの変異のうちの少なくとも1種を含む。このような変異体はまた、配列番号8のF655に対応する位置にロイシンを含んでもよい。TM-2-2タンパク質内の変異は、タンパク質のNBSドメインまたはLRRドメイン内に存在してもよい。これらの変異は、主にNBSドメイン内で見られることが好ましい。LRRドメイン中の変異に関して、変形または変異の要件は、本発明のLRR変異体に関連して前述した通りである。変形または変異は、好ましくは保存的変異である。変異体は、単離されていても単離されていなくてもよい。
好ましい実施態様によれば、822位、825位、および848位のうちの1つの位置のみが置換されている。別の実施態様によれば、前記位置のうちの2つの位置、またはこれらの位置の全てが置換されている。この変異体は、C848R置換とN822Y置換を同時に含まないことが好ましい。
本発明によるTM-2-2タンパク質変異体は、TM-2-2タンパク質の配列に対して全体的に少なくとも90%のアミノ酸同一性を有し、LRRドメイン基準で少なくとも95%の配列同一性を有するのが好ましい。さらなる実施態様によれば、本発明のTM-2-2タンパク質変異体の配列同一性の全体的な百分率は、配列番号8に対して少なくとも95%であり、好ましくはLRRドメイン基準ではより高い配列同一性を有する。TM-2-2タンパク質と配列番号8との間の配列同一性は、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、さらに少なくとも99%であることが好ましい。
好ましい実施態様によれば、本発明によるTM-2-2タンパク質変異体は、TM-2-2タンパク質に対して60個以下の変異、好ましくは50個以下の変異、より好ましくは20個以下の変異を示す。前記変異は、好ましくは保存的変異であり、これら変異は、LRRドメインではないタンパク質のドメイン内に大部分が見られることが好ましい。
本発明によるTM-2-2タンパク質変異体は、ToBRFVのMPの存在で、好ましくはTMV、ToMV、およびToMMVのうちの少なくとも1つを含む他のトバモウイルスのMPの存在で過敏感反応(HR)を誘発する。従って本発明によるTM-2-2タンパク質変異体は、トマトでのToBRFV感染に対する耐性を付与し、好ましくは、TMV、ToMV、およびToMMVなどの他のトバモウイルスに対する耐性を付与する。
なおこの点に関して、ベンサミアナ・タバコのような代用植物での一過性発現測定法による過敏感反応の検出は、トマトでの耐性の検出と同等になる。NBS-LRRタンパク質が(トバモウイルスのMPの存在で)ベンサミアナ・タバコの葉で強力なHR反応を引き起こす能力とトマトでのウイルス耐性との間には、確かに完全な相関関係が存在する。この点については、実験の段落に示すように発明者らによって確認されている。
さらに別の実施態様によれば、本発明はまた、上述のポリペプチドまたはタンパク質をコードするヌクレオチド配列、特に本発明のLRRドメイン変異体、本発明の既述のキメラ型NBS-LRR、またはTM-2-2タンパク質変異体を含むタンパク質をコードするヌクレオチド配列を対象とする。本発明によるヌクレオチド配列には、少なくともDNA、一本鎖DNA、RNA、二本鎖RNA、およびDNAとRNAの混合物が包含される。この配列は単離されていても単離されていなくてもよい。
適切なヌクレオチド配列は、例えば配列番号4または5であり、これらの配列は、野生型配列であるTm-2-2をコードするTM-2-2に由来し、ここで少なくともTM-2-2の848位にあるシステインに対応するコドンは、アルギニンに対応するコドンによって置換されている。従って本発明はまた、例えば配列番号4(Tm2-14-25)または配列番号5(Tm2-467)のような変異Tm-2-2遺伝子を対象とする。本発明はまた、野生型配列であるTm-2-2をコードするTM-2-2に対応する配列番号3に由来する配列を対象とし、この配列では以下のコドンのうちの少なくとも1つが置換されている:
・TM-2-2の848位にシステインをコードするコドンTGC、すなわち配列番号3の2542~2544位のヌクレオチドが、アルギニンをコードするコドン、すなわちAGA、AGG、CGG、CGA、CGC、またはCTGによって置換されている;
・TM-2-2の822位にアスパラギンをコードするコドンAAT、すなわち配列番号3の2464~2466位のヌクレオチドが、システインをコードするコドン、すなわちTGTまたはTGCによって、フェニルアラニンをコードするコドン、すなわちTTTまたはTTCによって、メチオニンをコードするコドン、すなわちATGによって、チロシンをコードするコドン、すなわちTATまたはTACによって、あるいはトリプトファンをコードするコドン、すなわちTGGによって置換されている;かつ/あるいは
・TM-2-2の825位にセリンをコードするコドンTCT、すなわち配列番号3の2473~2475位のヌクレオチドが、ヒスチジンをコードするコドン、すなわちCATまたはCACによって、リジンをコードするコドン、すなわちAAAまたはAAGによって、あるいはトレオニンをコードするコドン、すなわちACC、ACT、ACG、またはACAによって置換されている。
TM-2-2の767位にチロシンをコードするコドンTAC、すなわち配列番号3の2299~2301位のヌクレオチドがさらに、フェニルアラニンをコードするコドン、すなわちTTTまたはTTCによって、あるいはトリプトファンをコードするコドン、すなわちTGGによって置換されていてもよい。
TM-2-2の655位にフェニルアラニンをコードするコドンTTT、すなわち配列番号3の1963~1965位のヌクレオチドがさらに、ロイシンをコードするコドン、すなわちCTT、CTC、CTA、CTG、TTA、またはTTGによって置換されていてもよい。
特定の実施態様によれば、上述のような配列番号3に由来する置換配列は、(TM2-4をコードする)配列番号27、(TM2-5をコードする)配列番号28、(TM2-825Hをコードする)配列番号29、(TM2-825Kをコードする)配列番号30、(TM2-825Tをコードする)配列番号31、(TM1-822Cをコードする)配列番号32、(TM2-822Fをコードする)配列番号33、(TM2-822Mをコードする)配列番号34、(TM2-822Yをコードする)配列番号35、あるいは(TM2-822-Wをコードする)配列番号36から選択される。
本発明はまた、配列番号3、4、5、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36に由来する配列、あるいは前記配列に対して少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の配列同一性を有する上記の置換配列に由来する配列に関連する。配列番号3、4、5、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36に対する、あるいは上記の置換配列に対する配列同一性の百分率に関係なく、そのような配列は、本発明によるタンパク質、ポリペプチド、またはTM-2-2変異体をコードする。しかしながら遺伝コードの縮重を考慮すると、本発明のこのポリペプチド、タンパク質、または変異体をコードする配列は、配列番号3、4、5、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36、あるいは上記の置換配列に対して70%未満の配列同一性を有していてもよいが、この配列もまた本発明の範囲内となる。
潜在的なさらなる変異は、特にFまたはWによるY767の置換である。本発明の前述の側面に既に詳述されたさらなる変異または異形は、この側面に対して変更すべきところは変更して応用される。
別の側面による本発明はまた、植物、特にトマトに、少なくともToBRFVに対する耐性、好ましくはさらにTMV、ToMV、およびToMMVのうちの少なくとも1つ以上に対する耐性を付与する、TM-2-2タンパク質の変異体または対立遺伝子であるNBS-LRRタンパク質をコードする耐性遺伝子に関する。そのような耐性遺伝子は、少なくともToBRFV、TMV、およびToMVに対する耐性を付与し、さらに好ましくはToBRFV、TMV、ToMV、およびToMMVに対する耐性を付与することが好ましい。TM-2-2タンパク質の変異体または対立遺伝子は、上述に開示のTM-2-2タンパク質の異形体であり、この異形体はTM-2-2タンパク質の848位のC848R、TM-2-2タンパク質の822位のN822C、N822F、N822M、N822Y、およびN822W、ならびにTM-2-2タンパク質の825位のS825H、S825K、およびS825Tの置換のうちの少なくとも1つを含む。
TM-2-2タンパク質の変異体または対立遺伝子は、822位、825位、および848位からの1つの位置のみに、あるいはそれらの2つの位置または全ての位置に既述の置換のうちの1つを含んでもよい。本発明のTM-2-2タンパク質の変異体または対立遺伝子は、C848R置換とN822Y置換を同時に含まないことが好ましい。TM-2-2タンパク質の変異体または対立遺伝子は、さらにF655L置換を含んでもよい。
新たに見出された耐性タンパク質およびこのタンパク質をコードする耐性遺伝子は、TM-2-2タンパク質のLRRドメイン内でのシステイン848、アスパラギン822、および/またはセリン825の置換によって、すなわちC848ではアルギニンによって、N822ではシステイン、フェニルアラニン、メチオニン、チロシン、またはトリプトファンによって、かつS825ではヒスチジン、リジン、またはトレオニンによって置換されて、好ましくはToMVおよびTMVに対する耐性に加えて、ToBRFVに対する耐性を付与する。
さらに別の側面によれば、本発明はまた、本発明によるポリペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む、あるいはTM-2-2変異体をコードするヌクレオチド配列を含む、あるいは本発明による耐性遺伝子を含む核酸構築物を対象とする。
本発明によるポリペプチドまたはタンパク質をコードする、あるいはTM-2-2変異体をコードするヌクレオチド配列を含む、あるいは耐性遺伝子を含むそのような配列は、互換的に、以下のように本発明のヌクレオチド配列または耐性遺伝子、あるいは異形Tm-2-2遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子とも呼ばれる。
目的のタンパク質、ポリペプチド、または変異体をコードするそのような配列は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターであるプロモーターの制御の下にあることが好ましい。プロモーターは、植物細胞内で活性なプロモーターであることが好ましい。一実施態様によれば、プロモーターは、Tm-2、Tm-2-2、またはtm-2遺伝子の野生型プロモーターではない。Tm-2-2異形遺伝子に対するプロモーターは、Tm-2、Tm-2-2またはtm-2の未変性プロモーターであることが好ましい。
従って本発明による核酸構築物は、ベクター、プラスミド、またはT-DNAプラスミドであってもよい。従って細胞内に本発明の構築物が存在すると、本発明によるかつ上述で定義のタンパク質、ポリペプチド、TM-2-2変異体、または耐性タンパク質の発現を生じることができる。
本発明はさらに、本発明によるポリペプチド、タンパク質、TM-2-2変異体、または耐性タンパク質の発現、好ましくは植物細胞内での発現に適する発現ベクターまたは構築物を包含する。
さらなる実施態様によれば、本発明はまた、本発明のTM-2-2変異体をコードする定義された配列の使用、または少なくともToBRFVに対する耐性をトマト植物に付与するために、またはToBRFVに対する耐性を有する遺伝子組換えトマト植物を得るために、その配列を含む構築物の使用を対象とする。確かに実施例に示されるように、TM-2-2変異体は、ToBRFVのMPを認識し、それによりToBRFV耐性に関連するHR応答を誘発できる。本発明のTM-2-2変異体はまた、少なくともTMV、ToMV、および/またはToMMVの移行タンパク質を認識し、それによりこれらのトバモウイルスに対する耐性を付与できる。従って本発明はさらに、ToBRFVに対する耐性およびTMV、ToMV、およびToMMVのうちの少なくとも1つに対する耐性をトマト植物に付与するための前記配列の使用、かつこれらの耐性を示す遺伝子組換えトマト植物を得るための前記配列の使用を包含する。
さらなる側面によれば、本発明はまた、本発明によるヌクレオチド配列または耐性遺伝子を含む細胞、あるいは上記に開示のDNA構築物を含む細胞に関連する。
この細胞は、好ましくは植物細胞、好ましくはナス科由来、例えばナス属由来の細胞、さらにより好ましくはトマト植物の細胞、またはトウガラシ属もしくはタバコ属の細胞である。この細胞は、そのゲノム中に、好ましくはその核ゲノム中に、本発明によるヌクレオチド配列または耐性遺伝子またはDNA構築物を含む。これらの配列の存在により、目的の表現型、すなわち適切な条件でHR応答を誘発する、少なくともToBRFVのMPと相互作用するタンパク質の発現を付与する。これらの配列の存在は、配列に基づいて当業者に周知の任意の技術によって明らかにできる。
特に好ましい種類の細胞は、ナス属、タバコ属、またはトウガラシ属の細胞であり、より好ましくはトマト細胞である。
本発明による細胞は、任意の種類の細胞、特に任意の種類のトマト細胞、とりわけ単離細胞および/または植物全体を再生できる細胞、特に本発明のヌクレオチド配列または耐性遺伝子を有するトマト植物の細胞であってもよい。従って細胞は、再生可能な細胞であってもよく、再生不能の細胞であってもよい。
目的のヌクレオチド配列または耐性遺伝子は、本発明の細胞内にホモ接合またはヘテロ接合で存在してもよい。本発明による細胞は、ヘテロ接合形態で上述に定義の耐性遺伝子またはヌクレオチド配列を含むことが好ましい。
本発明はまた、本発明に従って上述に定義の非再生可能細胞または再生可能細胞の組織培養を対象とし、好ましくは再生可能な細胞は、本発明の胚、原形質体、成長点細胞、カルス、花粉、葉、葯、茎、葉柄、根、根端、果実、種子、花、子葉、および/または胚軸に由来し、細胞は、少なくともToBRFVに対する耐性を付与するヌクレオチド配列または耐性遺伝子をそのゲノム中に含む。そのような配列または耐性遺伝子はさらに、TMVおよび/またはToMVに対する耐性、好ましくはToMMVに対する耐性を提供することが好ましい。
本発明はまた、任意の植物部分、特にトマトの植物部分、とりわけ種子、外植片、生殖材料、穂木、切穂、種子、果実、根、台木、花粉、胚珠、胚、原形質体、葉、葯、茎、葉柄、または花を対象とし、前記植物部分は、上述のような少なくとも1つの細胞を含む。
本発明はまた、本発明のヌクレオチド配列または耐性遺伝子を含む原形質体を提供する。
別の側面によれば、本発明は、そのゲノム中に本発明のタンパク質またはペプチドをコードする上述に定義のヌクレオチド配列または耐性遺伝子を含む植物、より好ましくはトマト植物を対象とする。従ってそのようなヌクレオチド配列または耐性遺伝子は、(1)848位にC848R変異、822位にN822C、N822F、N822M、N822Y、またはN822W変異、および825位にS825H、S825K、またはS825T変異のうちの少なくとも1つ、および(2)767位にY、F、またはWを含み、かつ少なくともToBRFVに対する耐性、好ましくはさらにTMV、ToMV、およびToMMVのうちの1つ以上に対する耐性、より好ましくは、ToBRFVに加えて、TMV、ToMV、およびToMMVに対する耐性を付与するTM-2-2タンパク質の変異体をコードする。ヌクレオチド配列または耐性遺伝子は、さらに655位にロイシンを含むTM-2-2タンパク質の変異体をコードすることが好ましい。
従って本発明はまた、少なくともToBRFVに対する耐性を有するトマト植物を包含し、このトマト植物は、本発明によるTM-2-2タンパク質(配列番号8)の変異体をコードする、すなわち配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有する変異Tm-2-2遺伝子を含み、配列番号8の767位に対応する位置にチロシン、フェニルアラニン、またはトリプトファンを含み、かつ以下の変異/変形のうちの少なくとも1つを含む:
・野生型TM-2-2配列内に存在するシステインに代えて、配列番号8の848位に対応する位置にあるアルギニン;
・野生型TM-2-2配列内に存在するアスパラギンに代えて、配列番号8の822位に対応する位置にあるシステイン、フェニルアラニン、メチオニン、チロシン、またはトリプトファン;および
・野生型TM-2-2配列内に存在するセリンに代えて、配列番号8の825位に対応する位置にあるヒスチジン、リジン、またはトレオニン。
変異Tm-2-2遺伝子は、本発明による耐性遺伝子である。
本発明はまた、有益なことには、野生型TM-2-2配列中に存在するフェニルアラニンに代えて、配列番号8の655位に対応する位置にロイシンを含んでもよい。
本発明の耐性遺伝子またはヌクレオチド配列は、植物の細胞の核ゲノム内に安定的に存在することが好ましい。この耐性遺伝子またはヌクレオチド配列は、例えば形質転換後に核ゲノム内に安定して組み込まれるか、または本出願の実験の段落に詳述のようにTILLINGなどの変異誘発プロセスから生じるかのいずれかの可能性がある。少なくともToBRFVに対する耐性を付与するこれらの配列の存在は、耐性親からの遺伝子移入の結果である可能性もある。少なくともToBRFVを含む、トバモウイルスに対する耐性を付与するこれらの配列は、必須ではないが、染色体9表面のtm-2またはTm-2遺伝子の遺伝子座に見られることが好ましい。例えば無作為の組込みから生じるゲノム中のその他の位置もまた、適切でありかつ本発明により包含される。
耐性の表現型は、実験の段落、特に実施例1.4に記載のように、自然感染または人工接種によって、最初に葉部基準あるいは果実基準で検定および格付けできる。
少なくともToBRFVに対する耐性を付与する配列または耐性遺伝子は、本発明による植物、特にトマト植物のゲノム中にホモ接合またはヘテロ接合で存在してもよい。これらの配列はまた、複数のコピーとして存在してもよい。
本発明のこの側面による耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子は、本発明の他の側面に関連して定義される通りであり、従って、配列番号9、配列番号10、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、または配列番号26であってもよいTM-2-2タンパク質の変異体をコードする。適切な耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子は、例えば、配列番号4もしくは配列番号5、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36を有する遺伝子、あるいは上述の置換配列を有する遺伝子、あるいは配列番号4もしくは配列番号5または上述の置換配列からさらに遺伝コードの縮重までに由来する配列を有する遺伝子である。
本発明はまた、本発明の植物の組織を対象とし、この組織は、未分化組織であっても分化組織であってもよい。この組織は、本発明の耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子を含む1つ以上の細胞を含む。
本発明はまた、本発明による耐性植物、特に上述に定義の耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子を含む耐性トマト植物を生産できる繁殖材料を対象とする。本発明は特に、耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子を含むそのような耐性植物の種子、特にトマトの種子、および本発明によるトマト植物に栽培できる種子を対象とする。
このようなトマトの種子は、植物栄養素、増強微生物、または種子および植物の環境を殺菌するための製品などの個別または組合せの活性種で被覆またはペレット化されていることが好ましい。そのような種や化学物質は、ホルモンなどの植物の成長を促進する製品、防御刺激物質などの環境ストレスに対する耐性を高める製品、基質およびその周囲のpHを安定化する製品、または栄養素であってもよい。
これら製品はまた、本明細書ではウイルスおよび病原性微生物を含む、若い植物の成長にとって好ましくない薬剤から保護する製品、例えば、接触、摂取、または気体拡散によって作用する殺真菌剤、殺細菌剤、殺線虫剤、殺虫剤、または除草剤製品であってもよく、その製品は、例えばタイムの抽出物などの任意の適切な精油である。これらの製品は全て、植物の耐性反応を強化し、かつ/あるいは前記植物の環境を消毒または調節する。それらはまた、必要に応じてその生存能力を保証する培地と共に、生存生体物質、例えば非病原性微生物、例えば少なくとも1つの真菌、細菌、またはウイルスであってもよく、例えばシュードモナス属、バチルス属、トリコデルマ属、クロノスタキス属、フザリウム属、リゾクトニア属などのこの微生物は、植物の成長を刺激し、または病原体から植物を保護する。
本発明の植物、細胞、または種子は、ToBRFV耐性を付与する本発明の耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子に対してヘテロ接合性またはホモ接合性であってもよい。この遺伝子が付与する耐性は優性形質であると予測され、それにより本発明の耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子をヘテロ接合で有する植物もまたToBRFVに対して耐性を有する。従って本発明はまた、上述に定義の本発明の耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子をそのゲノム中にヘテロ接合で有する植物、細胞、または種子を包含する。
本発明によるトマト植物は、商業用の植物または系統であることが好ましい。この商業用の植物または系統はまた、好ましくは、以下のさらなる特徴のうちの1つ以上を示す:線虫耐性の形質(Mi-1またはMi-j)、フザリウム耐性、ベルチシリウム耐性、および/またはTYLCV耐性。本発明によれば、その他の耐性または許容性もまた意図される。
さらに本発明の商業用の植物は、適切な条件で果実を生成し、その果実は、完全成熟で少なくとも10 g、好ましくは25 g、好ましくは完全成熟で少なくとも100 g、さらにより好ましくは完全成熟で少なくとも150 g、または少なくとも200 gである。さらに一植物当たりの果実の数は、本発明の耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子の存在によって本質的に影響を受けず、すなわち本発明による植物の生産性は、同一の遺伝子型を有するが前記耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子を含まない植物に対比して20%を超えて劣ることはない。
さらに別の実施態様によれば、本発明の植物は、有限花序、非有限花序、または半有限花序の植物、あるいはその種子もしくは細胞であり、すなわち、有限花序、非有限花序、または半有限花序の成長習性に対応している。
有限花序とは、まず葉が成長して、次いで受粉が成功した場合に成熟して果実になる花をつける傾向があるトマト植物を意味する。全ての果実は、一本の木にほぼ同時に熟す傾向がある。非有限花序のトマトは、いくつかの葉が成長することから始まり、次いで成長期を通して葉と花を生産し続ける。これらの植物は、いつでも種々の成熟段階のトマト果実を実らせる傾向がある。半有限花序のトマトは、有限花序と非有限花序の中間の表現型を有し、これは有限花序の品種よりも大きく成長することを除けば典型的な有限花序の種である。
本発明による植物、細胞、または種子はさらに、有益にはTm-1遺伝子を含んでもよい。Tm-1遺伝子は、特にIshibashiら(2007)の刊行物に定義される通りであり、好ましくは、「Tm-1遺伝子」とは、この論文に報告されるTm-1活性、すなわちTm-1に感受性の高い野生型ToMV株、例えばこの論文に開示するToMV-L株のウイルス複製を阻害する能力を有するタンパク質をコードする遺伝子配列を指す。
従って本発明はまた、本発明の耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子に加えて、ホモ接合性またはヘテロ接合性のいずれかでTm-1遺伝子を含むトマト植物、細胞、または種子を包含する。
さらに別の実施態様によれば、本発明の植物は、接ぎ木プロセスでの接ぎ穂または台木として用いられる。接ぎ木はウリ科などの作物に長年用いられてきた方法であるが、トマトに使用されたのはつい最近のことである。接ぎ木を使用して、フィトフトラ属などの地中病原体や特定の線虫に対して一定水準の耐性を提供できる。従って接ぎ木は、栽培される植物または品種と感染した土壌との接触を防止することを意図している。接ぎ木または接ぎ穂として用いられる目的の品種、必要に応じてF1雑種が、台木として用いられる耐性植物に移植される。耐性を有する台木は健全な状態を保持し、移植のために普通に供給されて土壌での病気から隔離される。
上に詳述のように、本発明は、ToBRFV耐性、好ましくはさらにTMV、ToMV、および/またはToMMV耐性を示すトマト植物ならびにそれらの植物を生産する種子を対象とし、そのゲノム中に耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子を含むこれらの植物または種子またはその他の植物部分の細胞を対象とし、かつ前記耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子を含む本発明のこのような植物の子孫を対象とする。
子孫は、本発明による植物との交配からの第1、第2、およびさらなる全ての後代を包含し、交配はそれ自身との交配または別の植物との交配を含む。
なお本発明の種子または植物は、種々のプロセスによって得られてもよく、1つの本質的な生体プロセスによって排他的に得られるわけではない。実際に耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子は、種々の技術によって「細胞内」に導入され、組込まれ、または得られる。従って本発明による植物、細胞、または種子は、遺伝子組換え型であっても非遺伝子組換え型であってもよく、本明細書の他の段落および実施例で詳述するように、これらは本質的に生体プロセスではない技術プロセスによって得られることが好ましい。好ましい実施態様によれば、本発明による植物、細胞、または種子は、本質的に生体プロセスのみにより得られるものではない。
開示のTM-2-2変異体をコードする変異Tm-2-2遺伝子は、変異誘発、特にTILLINGなどの標的変異誘発などの遺伝子編集技術、塩基編集、またはプライム編集技術、あるいはCRISPR/Casシステムなどの他の遺伝子編集技術、あるいは特注のエンドヌクレアーゼ、あるいはCas9、Cas12a、または他のCasタンパク質を用いる塩基編集またはプライム編集によって得られることが好都合である。
これらの技術は当業者には周知である。これらの技術の例は、本出願の実験の段落で説明されている。
本発明の特定の実施態様では、Tm-2-2遺伝子の変異は、遺伝子操作によって誘発される。使用できる遺伝子操作の手段には、新育種技術(New Breeding Technique)と呼ばれるその全ての技術の使用が含まれ、これら技術は、遺伝子変異により植物に新たな特性を形成するのに開発かつ/あるいは使用される種々の新技術であり、その目的は、標的変異誘発、新たな遺伝子の標的導入または遺伝子発現抑制(RdDM)である。このような新育種技術の例は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)技術(ZFN-1、ZFN-2、およびZFN-3、米国特許第9,145,565号を参照)、オリゴヌクレオチド指向性変異誘発(ODM)、シスジェネシスおよびイントラジェネシス、(GM台木上部への)接ぎ木、逆育種、アグロ浸潤(アグロ浸潤「センス・ストリクト」、アグロ接種、フローラル・ディップ)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN、米国特許第8,586,363号および9,181,535号を参照)、CRISPR/Casシステム(米国特許第8,697,359号、第8,771,945号、第8,795,965号、第8,865,406号、第8,871,445号、第8,889,356号、第8,895,308号、第8906,616号、第8,932,814号、第8,945,839号、第8,993,233号、および第8,999,641号を参照)、組換えメガヌクレアーゼ、再組換えホーミングエンドヌクレアーゼ、DNA誘導ゲノム編集(Gao et al., Nature Biotechnology (2016))、および合成ゲノミクスの使用を通して促進される標的配列改変である。新育種技術の別名である標的ゲノム編集の主要部分は、修飾が意図されるゲノム内の選択された位置で、DNA二本鎖切断(DSB)を誘発する応用技術である。DSBの指示された修復により、標的を絞ったゲノム編集が可能となる。このような応用技術を用いて、変異(例えば、標的化変異または高精度の天然遺伝子編集)ならびに遺伝子の高精度の挿入(例えば、シス遺伝子、イントラ遺伝子、または導入遺伝子)を生成できる。変異をもたらす応用技術は、部位特異的ヌクレアーゼ(SDN)技術、例えばSDN1、SDN2、およびSDN3などとして特定されていることが多い。SDN1の場合には、成果は標的を絞った非特異的な遺伝子欠失変異となり、DNAのDSBの位置は正確に選択されるが、宿主細胞によるDNA修復は無作為であり、小さなヌクレオチドの欠失、付加、または置換をもたらす。SDN2の場合には、SDNを用いて標的化DSBを生成し、DNA修復鋳型(1つまたは僅かのヌクレオチド以外の標的化DSBのDNA配列と同一の短いDNA配列)を用いてDSBを修復し、これにより、目的の所望の遺伝子内に標的かつ所定の点変異が生成される。SDN3に関しては、SDNは、新たなDNA配列(遺伝子など)を含むDNA修復鋳型とともに用いられる。この技術の成果は、そのDNA配列を植物ゲノム中に組込むことになる。SDN3の使用を説明する最も可能性の高い応用技術は、選択されたゲノム位置へのシス遺伝子、イントラ遺伝子、または導入遺伝子の発現カセットの挿入である。これらの各技術の完璧な説明は、2011年に欧州委員会の将来技術研究のための共同研究センター(JRC)研究機関(Joint Research Center Institute)が作成した「新たな植物育種技術-最新技術および商業的発展の見通し」という題目の報告書に記載されている。
定義の耐性遺伝子は、形質転換、特にアグロバクテリウム属の形質転換によって本発明の植物、細胞、または種子に導入してもよく、それにより遺伝子組換え植物、細胞、または種子を生成することができる。この技術はまた、本出願の実施例の段落に説明されている。
本出願は、これらの配列の表示様式に依らず、既に定義の耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子を含む植物、種子、または細胞を対象とし、従って遺伝子組換え植物および非遺伝子組換え植物を対象とする。
さらなる側面では、本発明はまた、ToBRFVに対する耐性、好ましくはさらにToMV、TMV、および/またはToMMVに対する耐性、より好ましくはさらにToMV、TMV、およびToMMVに対する耐性を有する植物、特にトマト植物を取得、生育、または生産するための種々の方法を対象とする。
従って本発明は、ToBRFVに対する耐性、好ましくはさらにToMV、TMV、および/またはToMMVに対する耐性を有する植物、特にトマト植物を生産する方法を包含し、この方法は以下の工程を含む:
a)変異誘発剤で改変される植物、好ましくはトマト植物のM0種子を処理してM1種子を得る工程;
b)こうして得られたM1種子から植物を生育させて、M1植物を得る工程;
c)M1植物の自家受精によりM2種子を生産する工程;および
d)必要に応じて、工程b)およびc)をn回繰り返して、M1+n種子を得る工程。
M1またはM2種子を植物に生育させて、ToBRFVへの感染あるいはTm-2-2遺伝子の変異を識別する検査に供する。
この方法では、工程a)のM1種子は、EMS変異誘発などの化学的変異誘発、または他の化学的変異誘発剤、または例えば選択された電離放射線(X線、γ線、α粒子など)である照射、重イオンビーム照射、紫外線照射、放射性崩壊、または高速中性子照射などの物理的手段を介して得ることができる。
少なくともToBRFVに対する耐性、好ましくはさらにTMV、ToMV、およびToMMVのうちの1つ以上に対する耐性を有するトマト植物を生産するための別の方法は、本発明による変異Tm-2-2遺伝子を形成するために第9染色体の表面にtm2、Tm-2、またはTm-2-2遺伝子を予め含む植物に、前記tm2、Tm-2、またはTm-2-2遺伝子への変異を導入することを含む、すなわちTM-2-2に対してC848R、N822C、N822F、N822M、N822Y、N822W、S825H、S825K、およびS825T変異のうちの少なくとも1つを含み、767位にF、YまたはWを含み、さらに潜在的にF655L変異を含むTM-2-2変異体をコードすることを含む。
出発材料がTm-2-2遺伝子を含むトマト植物である場合に、本方法は、有益には、好ましくは変異誘発により、TILLING法により、あるいはゲノム編集、塩基編集、またはプライム編集により、特に物理的手段または化学的手段によって誘発される変異誘発、特にメタンスルホン酸エチル(EMS)変異誘発、N-メチル-N-ニトロソ尿素(MNU)変異誘発、またはアジ化ナトリウム(NaN、SA)変異誘発、オリゴヌクレオチド指向性変異誘発(ODM)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)技術、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Casシステム、Cas9、Cas12a、またはその他のCasタンパク質、組換えメガヌクレアーゼ、再組換えホーミングエンドヌクレアーゼ、およびDNA誘導ゲノム編集により、前記Tm-2-2遺伝子内に少なくとも1つの変異を導入することを含み、ここで前記少なくとも1つの変異は、Tm-2-2遺伝子によってコードされるタンパク質内にC848R、N822C、N822F、N822M、N822Y、N822W、S825H、S825K、またはS825T置換を生じる。この方法は、例えばTm-2-2遺伝子がコードされるタンパク質内にY767FまたはY767W置換を生じさせるために、Tm-2-2遺伝子内にさらなる変異を導入することを含んでもよい。
ToBRFVのMPの認識が失われず、好ましくはさらにTMV、ToMV、およびToMMVのMPの認識も失われない条件のもとに、さらなる変異を導入してもよい。
本発明はまた、本発明による遺伝子組換え植物、特に本発明による耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子を導入することによって、少なくともToBRFVに対する耐性、好ましくはさらにToMV、TMV、および/またはToMMVに対する耐性を有する遺伝子組換えトマト植物を得るための種々の方法を包含する。これらの方法には、以下の工程が含まれてもよい:
・本発明の前述の側面に定義するDNA構築物、すなわち本発明によるTM-2-2変異体をコードする耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子を含むDNA構築物を取得する工程;
・前記構築物を細胞内に、特にトマト細胞内に導入する工程;
・遺伝子組換え植物を再生する工程;および
・必要に応じて、取得した植物を繁殖させる工程。
別の側面によれば、本発明はさらに、ToBRFV耐性の表現型を有するトマト植物、好ましくはToBRFV、ToMV、TMV、およびToMMV耐性を有するトマト植物を得るために、繁殖プログラム内での繁殖パートナーとして好ましくは本発明の耐性遺伝子または変異TM-2-2遺伝子をホモ接合で含む、本発明のトマト種子またはトマト植物の使用を対象とする。そのような繁殖パートナーは、確かに目的の表現型を付与する耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子をそのゲノム中にホモ接合で保有している。従ってこの植物をトマト植物、特にトマト系統と交配して、所望の表現型を付与する本発明の耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子を子孫に導入することが可能となる。従って本発明による植物は、耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子をトマト植物またはトマト生殖質中に遺伝子移入するための繁殖パートナーとして使用できる。目的の耐性遺伝子をヘテロ接合で保有する植物または種子は、上記に詳述の繁殖パートナーとして使用できるが、表現型の分離により繁殖プログラムがより複雑になる可能性がある。
従って本発明はまた、少なくともToBRFVに対する耐性、好ましくはさらにTMV、ToMV、および/またはToMMVに対する耐性、最も好ましくはそれらの全てに対する耐性を有するトマト植物を繁殖する方法を対象とし、この方法は以下の工程を含む:
(a)本発明による耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子を含むトマト植物を、耐性遺伝子または変異遺伝子を含まない初期のトマト植物と交配する工程;
(b)このように得られた子孫の中から、耐性遺伝子または変異遺伝子を有する植物を選択する工程;および
(c)必要に応じて、工程(b)で得られた植物を1回以上自家受粉させ、このように得られた子孫の中から耐性遺伝子または変異遺伝子を有する植物を選択する工程。
ここでの選択は、当業者に周知の任意の適切な手段によって、特に耐性遺伝子または変異遺伝子に特異的なマーカーを用いて実施できる。
本発明はまた、少なくともToBRFVに対する耐性、好ましくはさらにTMV、ToMV、および/またはToMMVに対する耐性、最も好ましくはそれらの全てに対する耐性を有するトマト植物を生産する方法を対象とし、この方法は、本発明による既に定義の耐性遺伝子または変異TM-2-2遺伝子を含む植物部分を得る工程、および前記植物部分を栄養繁殖させて前記植物部分から植物を生成する工程を含む。
本発明による全ての方法およびプロセスでは、トマト植物は、有限花序、非有限花序、または半有限花序である。
既に開示のように、本発明によるトマト植物はまた、好ましくは、線虫耐性、TYLCV耐性、フザリウム耐性、および/またはベルチシリウム耐性である。
本発明はまた、上記に開示の方法およびプロセスのいずれかによって得られる、または得ることが可能なトマト植物および種子を対象とする。このような植物は確かに、トバモウイルスに対する耐性、特にToBRFVに対する耐性、好ましくはさらにTMV、ToMV、およびToMMVのうちの少なくとも1つに対する耐性を付与する本発明のTM-2-2変異体を発現するトマト植物である。
さらに別の側面によれば、本発明はまた、植物、好ましくはトマト植物またはトマト生殖質を、ToBRFV感染に対する耐性に関連する本発明による耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子の存在について遺伝子型を決定する方法を対象とし、前記方法は、Tm-2-2遺伝子中のC848R、N822C、N822F、N822M、N822Y、N822W、S825H、S825K、およびS825T変異のうちの1つ以上を含むまたは1つ以上に対応する核酸を、被試験植物のゲノム中で決定または検出することを含む。好ましくは、この方法は、ToBRFVに対する耐性を付与するこれらの変異のうちの1つに関連する特異的配列を、被試験植物の試料中で識別する工程を含む。同様に本発明はまた、TMVおよびToMVに対する耐性を有する植物内で、ToBRFVに対する耐性を有するトマト植物を識別、検出、かつ/あるいは選択する方法を対象とし、前記方法は、前記植物のゲノム中でTm-2-2遺伝子の変異対立遺伝子を検出することを含み、前記変異対立遺伝子は、TM-2-2タンパク質の848位にC848Rアミノ酸置換を生じる変異、TM-2-2タンパク質の822位にN822C、N822F、N822M、N822Y、またはN822Wアミノ酸置換を生じる変異、およびTM-2-2タンパク質の825位にS825H、S825K、およびS825Tアミノ酸置換を生じる変異から選択される少なくとも1つの変異を含む。
ToBRFV感染を含む、種々のトバモウイルス感染によって引き起こされる被害を阻止する本発明の耐性植物の能力を考慮すると、それら植物は、ToBRFVさらに潜在的にTMV、ToMV、および/またはToMMVが蔓延しているか、または蔓延もしくは感染の可能性が高い環境で効率的に栽培され、これらの条件では、本発明の耐性植物は、易感染性植物よりも市場性の高いトマトを生産できる。従って本発明はまた、ToBRFVさらに潜在的にTMV、ToMV、および/またはToMMVが蔓延する環境でトマト植物の収量を向上する方法を対象とし、この方法は、それらのゲノム中に本発明の前述の側面により定義された耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子を含むトマト植物を栽培する工程、および前記植物に少なくともToBRFVに対する耐性を付与する工程を含む。
好ましくは、この方法は、目的の前記耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子を含むトマト植物を選択または選抜する第1の工程を含む。この方法はまた、トマト畑、トンネル、または温室での生産性を向上させる方法として、あるいはトマトの生産での化学薬品や殺菌剤の使用量または使用回数を低減する方法として定義できる。
本発明はさらに、ToBRFVの蔓延もしくは感染の条件、またはより一般的にはToMV、TMV、および/またはToBRFVの蔓延の条件の下でのトマト生産の損失を低減する方法を対象とし、この方法は、上述に定義のトマト植物を栽培する工程を含む。
これらの方法は、畑、トンネル、または温室のいずれかにあるトマト植物の集団では特に価値が高いものである。
あるいは、収量を向上させるまたはトマト生産の損失を低減する前記方法は、ToBRFVに対する耐性、好ましくはさらにToMV、TMV、およびToMMVに対する耐性を有し、そのゲノム中に、前記植物に少なくともToBRFV耐性を付与する耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子を含むトマト植物を識別する第1の工程、次いでウイルスが蔓延している、または蔓延している可能性がある環境で前記耐性植物を栽培する工程を含む。
本発明の耐性植物はまた、ToBRFVの増殖を阻止することができ、それによってさらに植物の感染およびウイルスの増殖を制限できる。従って本発明はまた、畑、トンネル、もしくは温室、または他の形態の農園をToBRFV感染から保護する方法、あるいは前記の畑、トンネル、もしくは温室でのToBRFVの感染水準を少なくとも制限する方法、あるいは前記の畑、トンネル、もしくは温室、特にトマト畑でのToBRFVの拡散を制限する方法を対象とする。このような方法は、好ましくは、本発明の耐性植物、すなわち前記植物にToBRFV耐性を付与する耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子をそのゲノム中に含む植物を栽培する工程を含む。
本発明はさらに、畑、トンネル、もしくは温室、または他の形態の農園でのToBRFVの感染または蔓延を制御するためのToBRFVに対する耐性を有する植物の使用に関し、その植物は、そのゲノム中に上述に定義の耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子を含む本発明の植物である。この使用または方法はさらに、ウイルスの個体数を減少させることによって、畑、トンネル、もしくは温室を消毒する方法でもある。
さらなる側面では、本発明はまた、以下の工程を含むトマトを生産する方法に関する:
a)先に定義の耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子を含む、本発明のトマト植物を生育する工程;
b)前記植物に果実を実らせる工程;および
c)前記植物の果実を、好ましくは成熟時および/または成熟前に収穫する工程。
耐性遺伝子または変異Tm-2-2遺伝子に関する好ましい実施態様は全て、本発明の前述の側面の文脈中に既に開示されている。この方法は、前記トマトをトマト加工食品に加工するさらなる工程を含むのが好都合である。
本発明はまた、遺伝子組換えトマト植物によってトマトを生産する方法に関し、この方法は、本発明によるTM-2-2変異体をコードする核酸分子をトマト植物内に導入することを含む。このプロセスは、遺伝子組換え植物を再生して、その植物に果実を実らせる工程をさらに含んでもよい。このプロセスはまた、前記遺伝子組換え植物の果実を収穫する工程を含んでもよい。
さらに別の実施態様によれば、本発明はまた、少なくともToBRFVに対する耐性、好ましくはさらにTMV、ToMV、およびToMMVのうちの少なくとも1つに対する耐性を付与するTm-2-2遺伝子の変異体を識別、検出、かつ/あるいは選択する方法を対象とし、この方法は以下の工程を含む:
・代用植物宿主、好ましくはナス科植物、さらにより好ましくはタバコ種またはトウガラシ種内で、ToBRFVの移行タンパク質(MP)の存在により、検定される変異TM-2-2遺伝子を一過的または構成的に発現させる工程;および
・変異遺伝子から発現されるタンパク質とToBRFVのMPタンパク質との間の相互作用を検出する、好ましくは過敏感反応を検出する工程。
好ましいタバコ種およびトウガラシ種は、ニコチアナ・ベンサミアナ、ニコチアナ・タバカム、およびカプシウム・アンニュームである。上述の方法は、本出願の実験の段落に、ベンサミアナ・タバコ植物およびタバカム・タバコ植物での方法として説明されている。TMV、ToMV、およびToMMVの一部または全てに対する耐性の検定が必要とされる場合には、本方法は、ToBRFVのMPをこれらのウイルスのMPで置換して同時に実行できる。好ましくは、変異Tm-2-2遺伝子またはTm-2-2遺伝子の変異体は、本発明の前述の側面、すなわちC848R、N822C、N822F、N822M、N822Y、N822W、S825H、S825K、およびS825T置換、および767位でのY、F、またはW置換、および潜在的な655位でのL置換との関連により定義される通りである。この方法により、Tm-2-2遺伝子のさらなる変異を容易かつ迅速に検定できる。既に強調したように、この測定法での過敏感反応の検出は、試験対象の変異Tm-2-2遺伝子を含むトマト中の前記トバモウイルスに対する耐性の検出の代用となる。
同様に、ToBRFVに対する耐性を付与するTM-2-2タンパク質の変異体を識別、検出、または選択するために、本方法を、試験対象のTM-2-2タンパク質の変異体をコードするヌクレオチド配列を一過的または構成的に発現させて実行する。
配列:
配列番号1:tm2のヌクレオチ配列。
配列番号2:Tm-2のヌクレオチ配列。
配列番号3:Tm-2-2のヌクレオチ配列。
配列番号4:Tm2-14-25のヌクレオチ配列。
配列番号5:Tm2-467のヌクレオチド配列。
配列番号6:tm2がコードされたタンパク質のアミノ酸配列。
配列番号7:Tm-2がコードされたTM-2のアミノ酸配列。
配列番号8:Tm-2-2がコードされたTM-2-2のアミノ酸配列。
配列番号9:Tm2-14-25がコードされたTM2-14-25のアミノ酸配列。
配列番号10:Tm2-467がコードされたTM2-467のアミノ酸配列。
配列番号11:TM-2-2のLRRドメインのアミノ酸配列。
配列番号12:TM-2-2のLRRドメインをコードするヌクレオチド配列。
配列番号13:TMVの移行タンパク質のアミノ酸配列。
配列番号14:ToMVの移行タンパク質のアミノ酸配列。
配列番号15:ToBRFVの移行タンパク質のアミノ酸配列。
配列番号16:ToMMVの移行タンパク質のアミノ酸配列。
配列番号17:TM2-4のアミノ酸配列。
配列番号18:TM2-5のアミノ酸配列。
配列番号19:TM2-825Hのアミノ酸配列。
配列番号20:TM2-825Kのアミノ酸配列。
配列番号21:TM2-825Tのアミノ酸配列。
配列番号22:TM2-822Cのアミノ酸配列。
配列番号23:TM2-822-Fのアミノ酸配列。
配列番号24:TM2-822-Mのアミノ酸配列。
配列番号25:TM2-822-Yのアミノ酸配列。
配列番号26:TM2-822-Wのアミノ酸配列。
配列番号27:TM2-4のヌクレオチド配列。
配列番号28:TM2-5のヌクレオチド配列。
配列番号29:TM2-825Hのヌクレオチド配列。
配列番号30:TM2-825Kのヌクレオチド配列。
配列番号31:TM2-825Tのヌクレオチド配列。
配列番号32:TM2-822Cのヌクレオチド配列。
配列番号33:TM2-822-Fのヌクレオチド配列。
配列番号34:TM2-822-Mのヌクレオチド配列。
配列番号35:TM2-822-Yのヌクレオチド配列。
配列番号36:TM2-822-Wのヌクレオチド配列。
配列番号37:プライマーnpt2Fのヌクレオチド配列。
配列番号38:プライマーnpt2Rのヌクレオチド配列。
配列番号39:プライマーTm-2-2-F2のヌクレオチド配列。
配列番号40:プライマーthsp-Rのヌクレオチド配列。
配列番号41:バイナリープラスミドpJL469のヌクレオチド配列。
配列番号42:バイナリープラスミドpJL470のヌクレオチド配列。
配列番号43:バイナリープラスミドpJL471のヌクレオチド配列。
配列番号44:プライマーLM_TBRFV-1-Fのヌクレオチド配列。
配列番号45:プライマーLM_TBRFV-1-Rのヌクレオチド配列。
配列番号44:プローブLM_TBRFV-1-プローブのヌクレオチド配列。
図1は、TMVまたはToBRFVの移行タンパク質の存在あるいは非存在下で、種々のTM-2-2変異体のベンサミアナ・タバコでの一過的な発現を示す。写真は浸潤から約5日後に撮影した。
図2は、TMVまたはToBRFVの移行タンパク質の存在あるいは非存在下で、種々のTM-2-2変異体のベンサミアナ・タバコでの一過的な発現を示す。2つの異なる日齢のベンサミアナ・タバコ植物の葉に浸潤させた。約50日齢の植物(左側)または43日齢の植物(右側)にアグロバクテリウム培養物を浸潤させて、TMVまたはToBRFVの移行タンパク質の存在あるいは非存在下で、種々のTM-2-2タンパク質変異体を一過的に発現させた。写真は浸潤から約5日後に撮影した。
図3は、トマトの形質転換用のプラスミドを示す。 図3AはバイナリープラスミドpJL469(配列番号41)であり、 図3BはバイナリープラスミドpJL470(配列番号42)であり、 図3CはバイナリープラスミドpJL471(配列番号43)である。
図4は、Tm2-2、Tm-2-14-25、およびTm2-467の各遺伝子のタンパク質配列を示す。
図5は、ToBRFVの移行タンパク質の存在あるいは非存在下で、種々のTM-2-2変異体のベンタミアナ・タバコおよびタバカム・タバコでの一過的な発現を示す。AA 767に種々のアミノ酸を有するTM22 848R変異体を、ToBRFVの移行タンパク質の存在(+MP)あるいは非存在下で一過的に発現させた。767位にある様々なアミノ酸は、変異体を識別するために標準的な単一アミノ酸コードを用いて図中に標識されている。写真はアグロ浸潤から2日後に撮影した。図5Aはベンサミアナ・タバコであり、 図5Bはタバカム・タバコである。
TM-2-2タンパク質(Tm-2-2遺伝子の産物)は、ヌクレオチド結合ロイシンリッチリピートリピートタンパク質(NLR)であり、TMVまたはToMVのいずれかのウイルスから産生される移行タンパク質(MP)に結合して、かつ侵入したウイルスに対する効果的な免疫応答をシグナル伝達して、TMVおよびToMVに対する耐性を付与する。TM-2-2とトバモウイルスのMPとの間の結合の結果は、ベンサミアナ・タバコの一過的発現測定法での過敏感反応(組織の壊死)として観察できる。
NLRタンパク質であるTM-2およびTM-2-2は、アミノ酸が4つだけ異なる(Lanfermeijer et al. 2005)。これらの違いは、種々の耐性の範囲に関連している。例えば、TM-2-2変異体は、TM-2よりも広い範囲のTMVおよびToMV分離株に対する耐性を付与できる(Lanfermeijer et al. 2005;Lanfermeirjer 2004)。特にLRRドメイン中のアミノ酸767の1つのアミノ酸変化は、TM-2-2タンパク質での耐性のより高耐久性でより広い宿主範囲に関与していることが実証された(Kobayashi et al. 2011)。しかしながらTM-2タンパク質およびTM-2-2タンパク質は、ToBRFVに対する耐性を示すことはない。
従って本発明者らは、TM-2タンパク質およびTM-2-2タンパク質内の変異が、ToMVおよびTMVのMPを認識する能力を保持しつつ、ToBRFVのMPも認識する能力を付与できるであろうとの仮説を立てた。
本発明者らは、トバモウイルスのMPを認識する能力を試験するためにベンサミアナ・タバコでの一過的発現測定法を用いて、多数の変異体を効率的に試験することができた。本発明者らは思いがけず、ToBRFVの移行タンパク質(MP)を効率的に認識して、ToBRFVのMP(エフェクター)とともに共発現されると過敏感反応を誘発できるTM-2-2タンパク質の変異体を単離した。さらにこれらの変異体は、ToMVおよびTMVのMPにもまた結合して応答できる。
これらの変異体のDNA配列が見出され、ならびにTMVおよびToMVのMPに加えてToBRFVのMPも認識するさらなる変異体の配列も得られた(実施例2、3、4、および5)。
既述のTM-2-2変異体を含む植物を、TILLING法によって得ることができ(実施例6)、ならびにアグロバクテリウムの形質転換によっても得ることができる(実施例7)。
実施例1:材料および方法
1.1.本段落に挙げるtm-2遺伝子の対立遺伝子およびMPタンパク質の配列:
Figure 2023551722000001
Figure 2023551722000002
Figure 2023551722000003
1.2.変異誘発:
ToBRFVのMP(以下、MPルゴースと呼ぶ)の存在でHRを誘発するTM-2-2タンパク質変異体を見出すために、2つの異なる手法、すなわちそのそれぞれがTM-2-2のLRRドメイン中に変異を形成するように設計されている無作為変異誘発および部位特異的変異誘発を用いた。
TakaraのDiversify PCR無作為変異誘発キットおよび平均で1000塩基対当たり4個の変化を生み出すPCR条件を用いて、TM-2-2遺伝子の最後の約750ヌクレオチドをPCRによって増幅した。得られたPCR産物をTm-2-2遺伝子発現プラスミドにクローンし、Tm-2-2遺伝子の野生型(wt)の3’~750 ntを置換した。
Tm-2-2遺伝子内の特定の位置に変異を導入することが望ましい場合には、部位特異的変異誘発を用いてもよい。この変異誘発は、対象となる特定のコドンに配列の変化を有するTm-2-2遺伝子の一部を合成して実現される。例えば、PCRにプライマーとして使用できる合成オリゴヌクレオチドを、Tm-2-2遺伝子の一部が増幅するように設計できるが、特定の位置に1つ以上の非野生型ヌクレオチドを有するように設計することもできる。このようなオリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCRに続いて、PCR産物をTm-2-2遺伝子の適切な位置にクローンできる。このようにして、遺伝子内の特定の位置にヌクレオチドの多様性を導入することが可能である。
1.3.ベンサミアナ・タバコでの一過的な発現および壊死の評価:
ベンサミアナ・タバコおよびタバカム・タバコでの一過的な発現は、基本的にMaらおよびKobayashiらが説明するように実施した。
実施例1.2に開示の連結反応の産物を、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(GV3101)に形質転換し、50 μg/mLのカナマイシンおよび25 μg/mLのゲンタマイシンを有するLBプレートに播種して、形質転換アグロバクテリウムを選択した。
約860個の種々のアグロバクテリウムコロニーを形質転換から選択した。各コロニーを液体培養で増殖し、それを用いて植物生物学で通常使用される標準手順(Tomita et al. 2019)によりアグロ浸潤用のアグロバクテリウム懸濁液を調製した。ベンサミアナ・タバコの葉に浸潤する前に、これら培養物を、トバモウイルスのMP発現プラスミド、例えばToBRFVのMP発現プラスミドであるpJL 379で形質転換されたアグロバクテリウムの懸濁液と共に1:1で混合した。
浸潤した植物を、22~25℃のLEDまたは蛍光灯のいずれかの下で保存した(18時間の点灯、6時間の消灯)。1 kb当たり約4個の変化の誤識別率として、約2500ヌクレオチドの変化が採取されると推定した(750 bp/クローン×860クローン×4個の誤識別/1000 bp = 約2580 ntの変化)。配列決定によるこのライブラリーの初期の特徴付けでは、発明者らは、ヌクレオチド変化の約75%がアミノ酸変化を生じると推定した。選別されたクローン内の全てのヌクレオチド変異の75%がアミノ酸変化を生成する場合には、TM-2-2タンパク質に対して約1900個のAAの変化が選別されたことになる(0.75×2580 = 1935)。
浸潤の約6日後に浸潤した葉を観察し、浸潤領域での壊死の程度(すなわち過敏感反応;HR)を測定した。典型的には、0~4の尺度を用いて壊死を示す浸潤領域の比率を評価した。尺度の詳細は次の通りである:0 = 0%のHR、1 = ~25%のHR、2 = ~50%のHR、3 = ~75%のHR、4 = 100%のHR。対照として、植物に野生型のTm-2-2発現プラスミド(pJL 366)およびルゴースMP発現プラスミド(pJL 379)を保有するアグロバクテリウムの1:1混合物を浸潤させた。
1.4.トバモウイルス耐性を評価する手順:
いくつかのトバモウイルス分離株:ToBRFV(特にJordan_2015)、ToMV、TMV、または他のトバモウイルス分離株を用いて生物検定を実施した。
ウイルス分離株を、水中に粉砕した14日齢の感染トマトの葉から得られる、冷凍保存の感染溶液によって保持した(接種材料の比率:4 mLの水に対して1 gの葉)。人差し指で子葉を擦って、二葉段階(すなわち播種後14~16日目)のトマト苗木に汁液接種して生物検定を実施した。トマト系統/系統種/遺伝子型ごとに少なくとも18本の苗木(2回または3回のリピートで分離)を、トバモウイルス耐性について試験した。
植物の表現型の評価を、植物に接触せずに植物ごとに点数を付けて実施する。接種された器官での局所病変の存在を、7~10日のDPIで評価する。遺伝子型ごとに少なくとも1つの植物が接種された器官に局所病変を示す場合には、その遺伝子型は潜在的に興味対象となる型と考えられる。トバモウイルスは、実際には、通常は易感染性の植物に壊死を誘発することはない。
全身の症状の評価を、14、21、および28日のDPIで実行し、最後の評価の実施は任意とする。症状を以下の尺度に従って視覚的に評価する;9:視覚的症状なし/7:表現型に小さな違いはあるが、明瞭に病気症状に起因するものではない/5:軽い症状(モザイクおよび/または軽い葉脈の縞模様)/3:強い症状(強いモザイクおよび/または顕著な葉脈の縞模様および/または小さな葉の変形)/1:非常に強い症状(葉の変形および/またはモザイクおよび/または非常に顕著な葉脈の縞模様)。
試験の14日および/または28日後に、症状のない植物をELISAおよび/または定量PCRによって試験して、植物内のトバモウイルスの存在を評価する。
1.5.TILLING(ゲノム内に誘発された局所病変を標的とする):
TILLING法を、通常の手順に従って実施する。
全てのDNA反応化学薬剤(変異誘発因子)を、DNAの傷害を誘発するのに使用できるが、EMSに限定はされない。
以下のような物理的DNA反応剤(変異誘発因子)もまた使用できる:
・電離放射線(X線、γ線、α線・・)、重粒子線照射
・紫外線放射
・放射性崩壊
物理的または化学的変異誘発因子をM0種子に加える。次いで変異誘発因子によって導入された全ての変異に対してヘテロ接合性であるM1植物を自家受粉して、M2種子を生成する。これらの種子の一部を保管する。次いで配列決定のために、少なくとも8個のM2植物に対し試料採取を行う。理論的な比率として、これら植物の1/2が特定の変異に対してヘテロ接合性であり、1/4がその変異に対してホモ接合性であり、かつ1/4が前記変異の存在がないホモ接合性である。あるいは、適切な変異の選別をM1植物に対して実施してもよい。
この場合に、Tm-2-2遺伝子内の予測される変異が高度に特異的である限り、非常に大きな変異集団を試験することが重要である。
実施例2:ToBRFVのMPを認識するTm2遺伝子の対立遺伝子の特定
背景:
トマトブラウンルゴースフルーツウイルス(ToBRFV)は、トマトおよびトウガラシの深刻な病原体である。このウイルスは、タバコモザイクウイルス(TMV)およびトマトモザイクウイルス(ToMV)などの他のトバモウイルスに関連している。
TMVおよびToMVに対する遺伝的耐性は、Tm-2-2遺伝子に位置付けられる。Tm-2遺伝子の産物であるTM-2-2タンパク質は、NBS-LRRの部類としても知られるヌクレオチド結合ロイシンリッチリピート(NLR)の部類の耐性(R)タンパク質である。商業的なトマト生殖質では、Tm-2遺伝子の2つの一般的に用いられる対立遺伝子、すなわちTm-2およびTm-2-2が存在する。異なる対立遺伝子により、異なるトバモウイルスに対する耐性が付与される(表1を参照)。特にTm-2-2対立遺伝子は、トマトにとって重大な病気の脅威となる2つのトバモウイルス(TMVおよびToMV)に対する永続的な遺伝的耐性を付与するので、商業的なトマト生殖質に広く展開されている。しかしToBRFVは、Tm-2またはTm-2-2遺伝子を保有する植物に感染する可能性があり、ToBRFVに対する耐性を付与するTm-2対立遺伝子は特定されていない。
さらに、ToBRFV、TMV、およびToMVに対して同時に効果的な耐性を提供する、既知の耐性遺伝子は存在しない。
TM-2-2タンパク質は、いずれかのウイルスから産生される移行タンパク質(MP)に結合し、トマトでの過敏感反応(HR)を誘発してそれにより細胞死をもたらす侵入ウイルスに対する効果的な免疫応答のシグナルを伝達することによって、TMVおよびToMVに対する耐性を付与する。TM-2-2とトバモウイルスのMPとの間の結合の結果、すなわちHR応答はさらに、Kobayashiら(2011)に開示された手順に従って、ベンサミアナ・タバコ植物の葉にTM-2-2タンパク質とTMVまたはToMVのMPのいずれかを一過的に発現させて観察できる。
(アグロ浸潤技術による)ベンサミアナ・タバコの葉でのTM-2-2とTMVまたはToMVのMPのいずれかの一過的な発現では、確かに僅か数日で過敏感反応および広範な組織壊死を引き起こす。対照的に、ベンサミアナ・タバコの葉のTM-2-2とToBRFVのMP(MPルゴース)の一過的な発現では、通常は壊死の発生が無い、あるいは場合によっては非常に軽度の壊死が発生する。
ベンサミアナ・タバコでのHR応答測定法は、トバモウイルスMPを認識するのに重要なNLRタンパク質中の特定のアミノ酸を識別するために以前から使用されている(Kobayashi et al, 2011)。TM2のNLRタンパク質がベンサミアナ・タバコの葉で(トバモウイルスのMPの存在で)強力なHR応答を誘発する能力と、トマトでのウイルス耐性との間には完全な相関関係が成立する。さらにアグロ浸潤によるタンパク質の一過的な発現は、植物生物学では十分に確立された技術である。
この完全な相関関係を考慮すると、ベンサミアナ・タバコでのこの測定法は、トマトでの耐性の代用として使用できる。
しかしながら、この測定法または方法の過去の使用では、機能の喪失を引き起こす変異を検出することによって、トバモウイルスのMPを認識するのに重要なNLRタンパク質内の特定のアミノ酸を識別することを目的としたのに対して、本発明者らは、初めてこの方法を用いて、機能の獲得、すなわちさらなるトバモウイルスのMPを認識する能力を提供する可能性のある変異体を試験した。
本発明者らは、まずエラープローンPCR法を用いて、Tm-2-2遺伝子の変異体のライブラリーを生成した。次いでこの変異体のライブラリーを、ToBRFVのMPとともにベンサミアナ・タバコ植物の葉で一過的に発現させた(実施例1.2および1.3での材料および方法を参照)。変異体当たり平均2.25個のアミノ酸修飾に相当する、860を超える形質転換アグロバクテリウム培養物を選別した後に、本発明者らは、ToBRFVのMPと共発現した場合に再現性があり(対照に比較して)顕著なHR応答の増加を示す1つのコロニー(LP 14~25)を特定した。本発明者らはさらに、ToBRFVのMPの存在で強固なHR応答を誘発するこの変異体が、TMVまたはToMVのMPの存在での強固なHR応答を誘発する能力を喪失していないことを確認した(図1および2、および表3を参照)。
Figure 2023551722000004
詳細な分析により、この変異体は、TM-2-2タンパク質とは2つのアミノ酸(F655LおよびC848R)が異なることが明らかになった。この新たな変異体はTm2-14-25と呼ばれる(表1を参照)。
部位特異的変異誘発を含む標準的な分子技術を用いるさらなる分析を通して、本発明者らは、ToBRFVのMPを認識する能力を単一のアミノ酸変化(C848R)に位置付けた。本発明者らは、この新たなTm-2対立遺伝子をTm2-467として特定する(表1および表4を参照)。この実験により、TM-2-2に対するC848Rの変化がMPルゴース(ToBRFVのMP)の検出および応答の両方に関与し、かつそれらのために十分であることが明らかになった。
Figure 2023551722000005
タンパク質TM2-2、TM2-14-25、およびTM2-467(それぞれTm-2-2、Tm2-14-25、およびTm2-467遺伝子のタンパク質産物)の配列を図4に示す。
TM2-14-25およびTM2-467タンパク質は両方ともToBRFVのMPを認識しているので、それらが共有するアミノ酸変化が、(TM-2-2タンパク質に対比して)ToBRFVのMPを強力に認識する能力に関与していることは明らかである。このタンパク質は、(TM2-14-25に固有の変化などの)さらなる変異を有する可能性があり、かつさらにToBRFVのMPを認識することがまた観察されている。TM2-14-25タンパク質およびTM2-467タンパク質は両方とも、さらにTMVおよびToMVのMPを認識する。
TM2_14-25またはTM2-467のタンパク質配列のいずれかは、トマトのToBRFVに対する耐性の向上を付与することができ、同時にTMVおよびToMVに対する耐性を付与することができる。
実施例3:さらなる変異体
上の実施例に詳述のように、本発明者らは、TM-2-2タンパク質での単一のアミノ酸変化が、ToBRFVのMPの存在で、TMVおよびToMVに対する耐性を失わずに強力なHR応答を誘発するのに十分であることを示している。
この変異および耐性を改善する可能性があるさらなる変異をよりうまく特徴付けるために、部位特異的手法を用いてその他のアミノ酸変異を生成した。LRRドメイン内の選択されたコドンは、非野生型アミノ酸をコードするように変更された。タンパク質変異体の機能的な選別を、(上述の)MPルゴースの存在でアグロ浸潤およびベンサミアナ・タバコでの一過的な発現によって実施した。場合によっては、選択したアミノ酸変化を、実施例2に述べた848R変化を有するTM-2-2タンパク質の環境で選別した。いくつかの選別の結果を表5~11に示す。
Figure 2023551722000006
結論:848位のアミノ酸変異のいずれもが、MPルゴースの存在でC848Rに類似の過敏感反応を誘発するTM-2-2変異体は言うまでもなく、C848Rよりも強い過敏感反応を誘発するTM-2-2変異体を形成することはできない。
857位
848位の近くでかつTM-2-2タンパク質の三次元構造内のアミノ酸848の近傍にある857位でのAAの変異の影響をさらに試験した。その結果を表6に示す。
Figure 2023551722000007
結論:AA848をRとして857位のいくつかのAAの変化は、MPルゴースに対するHR応答を低減させる。但し848Rの近傍の他のAAの変化は、MPルゴースへの応答を維持できる。
従って857位での変異は許容可能であるが、その範囲は限定される。許容可能な変異は容易に試験できる。
767位
767位(のみ)でのAAの変化の影響をさらに、(848位での変異は無しに)試験した。この位置のアミノ酸が、TM-2耐性とTM-2-2耐性の違いを決定的にすることを、Kobayasiらが実証している。その結果を表7に示す。
Figure 2023551722000008
結論:試験した767位の7種の異なるAAの変異体のうち、C848R変異の不在では、いずれもMPルゴースを検出しかつそれに応答する能力を向上させなかった。
769位
767位(のみ)でのAAの変化の影響をさらに、(848位での変異は無しに)試験した。その結果を表8に示す。
Figure 2023551722000009
結論:769位に6種の異なる(非野生型の)AAを有するTM22変異体の試験では、C848R変異体よりもMPルゴースへの結合および応答に優れるいずれの変異体も見出せなかった。
TM-2-2の848Rの環境での767位
C848R変異に加えて、767位のAAの変異の影響をさらに試験した。その結果を表9に示す。
Figure 2023551722000010
結論:MPルゴースの検出は、767位および848位の両方のAAに依存する。
AA848をRとしかつAA767をYとするTM-2-2変異体は、MPルゴースを検出かつそれに応答できる。しかしAA767をSまたはDに変更すると、MPルゴースに応答するタンパク質の能力が劇的に低下する。このことは、残基767および848の両方がMPルゴースに結合するのが重要であることを示している。
但し本発明者らのさらなる検討では、タンパク質がMPルゴースに応答する能力を著しく低下させることなく、767位をWおよびFで置換でき、さらにこの能力を増強できることが実証された(実施例4を参照)。
822位
822位のAAの変異の影響をさらに、C848R変異の環境で試験したが、この822位は、TM-2-2タンパク質の三次元構造内のアミノ酸848の近傍に位置すると言える。その結果を表10に示す。
Figure 2023551722000011
結論:822位の様々なアミノ酸は、MPルゴースに結合しかつそれに応答するTM22の848Rの能力を低下させる可能性があるが、その他の変異は許容可能となる。848がRである場合に、822位にはアミノ酸NおよびSが好ましい。
但し本発明者らのさらなる検討では、822位がC、F、M、Y、およびWで置換されると、C848R変異が起こらない場合でもタンパク質がMPルゴースに応答する能力を提供できることが実証された(実施例5を参照)。
要約すると、この変異体およびこの機能の獲得を可能にする変異を含むさらなる変異体を特定するプロセスでは、部位特異的変異誘発および無作為変異誘発の組合せを用いて、1000個を超える種々の変異体を選別できた。なお無作為変異誘発によって得られた変異体ライブラリーのメンバーの一部は、配列決定することなくHR測定法で選別された。
以下の表11は、ToBRFVのMPに対する応答について選別された種々の変異体を詳述し、分かっている場合には試験済みの変異を記載している。
Figure 2023551722000012
要約すると、これらの試験に従ってTM-2-2内の767Yおよび848Rが、MPルゴースへの結合およびそれに応答する重要な残基であるように見受けられる(但しさらなる修飾は許容されるように思われる;実施例4を参照)。LRRドメインの他の位置での他のアミノ酸の変化は、多くの場合に、MPルゴースの結合に軽度の低減をもたらし、場合によっては重大な低減を引き起こす可能性があるが、全ての場合にそうとは限らない。適切なアミノ酸の変化は、本発明に記載の測定法によって容易に試験することができる。
TM-2-2の三次元構造内でのアミノ酸848の近傍のアミノ酸は、ToBRFVへの結合を失うことなく変異することは困難である可能性が高い。
他の実験では、単一コドンでの変異体ライブラリーを選別した。コドン827でのそのような実験の一例およびその結果を以下に示す。
Figure 2023551722000013
Figure 2023551722000014
ライブラリー1~6で得られた結果は、他の位置で得られた結果と同様に、848位の変異が非常に重要であり、かつTM-2-2のLRR領域内の他のコドンの変異が、MPルゴースに対する認識および応答が向上する変異体を生じないことを実証している。いずれにしても、848位での変異はMPルゴースの認識に対して必須であるように見受けられる。
実施例4:767位でのさらなる修飾および種々のタバコ種での検証
C848R置換を含むTM-2-2タンパク質変異体の767位でのさらなる修飾を、種々のタバコ種で試験した。
具体的には、植物(ベンサミアナ・タバコおよびタバカム・タバコ)に、TM-2-2タンパク質変異体単独の発現あるいはTM-2-2タンパク質変異体とMPルゴースの共発現のためにT-DNAを有するプラスミドを含むアグロバクテリウム培養物を浸潤させた。
結果を図5に示す。葉表面の斑点の傍の文字は、TM-2-2の848R変異体の環境での767位のアミノ酸を示す。TM-2-2変異体を、単独で発現させ(文字のみで示す)、あるいはルゴースMP(+MPで示す)と共発現させた。これら植物を浸潤後の約48時間に撮像した。
結果は、TM-2-2の767Y 848R(TM2-467)、767F 848R(TM2-4)、および767W 848R(TM2-5)の全てが、ベンサミアナ・タバコ(図5A)またはタバカム・タバコcv Xanthi(図5B)のいずれかでのMPルゴースの存在でHR応答を誘発することを示している。この測定法では、767WおよびY変異体は、767F変異体よりもMPルゴースに対して「応答性が高い」ように見受けられる。対照的に、767位にR、Q、またはGの各アミノ酸を有するTM-2-2変異体は、MPルゴースの存在でHRを誘発しなかった。
実施例5:ToBRFVのMPを認識するさらなるTm2遺伝子の対立遺伝子の特定
C848R変異の重要性を考慮して、三次元構造でのC848の近傍のアミノ酸が変異しているさらなる変異体を試験した。すなわち、C848R変異の不在の下でTM2-2タンパク質の822位および825位の20種の異なるアミノ酸を試験した。
植物(ベンサミアナ・タバコ)に、TM-2-2タンパク質変異体単独の発現、あるいはTM-2-2タンパク質変異体とMPルゴースの共発現のためにT-DNAを有するプラスミドを含むアグロバクテリウム培養物を浸潤させた。
強い過敏感反応を誘発する変異体を、767位、822位、825位、および848位の対立遺伝子の詳細とともに表12に纏める。C848(wt)およびY767(wt)と組合せた822位および825位の他の変異体の全てが、MPルゴースに対するHRを誘発することはない。
Figure 2023551722000015
結論として、TM2-2タンパク質のC848R変異に加えて、TM2-2タンパク質のN822C、N822F、N822M、N822Y、N822W、S825H、S825K、およびS825T変異は、MPルゴースに対するHR応答から推測できるように、ToBRFVに対する耐性を付与するのに十分である。
実施例6:TILLING(ゲノム内での標的誘導局所病変)手法による、ToBRFVのMPを認識するTm2の新型変異体を保有する非遺伝子組換え植物の提供
変異誘発された集団内:
ヌクレオチド置換によりゲノム配列にあらゆる種類の無作為変異を誘発する、当業者には周知の物理的または化学的変異誘発剤を用いて、大規模な変異体トマト集団を形成する。集団に使用される親系統は、好ましくはホモ接合基準でTm2遺伝子を保有する系統である。この系統は、ToMV、TMVには耐性があるが、ToBRFVには易感染性である。
この集団の大規模な選別を、好ましくは分子測定法または配列決定に基づく周知の選別方法を用いて、Tm2遺伝子(Solyc09g018220)での変異を識別するために、M1またはM2段階(実施例1.5に詳述した手順)で実施する。
Tm2遺伝子内に変異を保有する植物を、種子の生産のために自家受粉する。次の世代(M2またはM3)を、標的の変異について遺伝子型決定し、ヘテロ接合またはホモ接合された植物(変異の固定)を用いて、表現型を決定しかつMABC(マーカー支援戻し交配)またはその他の古典的な育種法によりエリート系統内に遺伝子移入する。遺伝的な背景にある他の変異を排除するために、数回の戻し交配を実施する。
変異を保有する植物に、実施例1.4に詳述した手順を用いて、ToBRFV耐性および他のトバモウイルス耐性について表現型解析を実施する。
実施例7:ToBRFVのMPを認識するTm2の新型変異体を有する遺伝子組換え植物の提供
アナベルトマト系統を、前段落の結果に特定されているようにTm-2-2変異体によるアグロバクテリウムの形質転換に用いる。
種子を、2滴のTween(登録商標) 20を含む2%の次亜塩素酸ナトリウム溶液中で撹拌しながら20分間表面滅菌して、次いで滅菌蒸留水で3回洗浄する。
次いで種子を、20 g/Lのショ糖および0.8%の微小寒天を含有するpH 5.9のMS培地(M0222、Duchefa社)を有するプラスチックジャー内で培養し、25℃で光線(3000~4000ルクス、16時間の光周期)の下に配置する。
外植片を10日目の苗木の子葉から切除する。滅菌鉗子とカミソリ刃を用いて、それぞれの子葉の両端を取り除き、次いで子葉を2つの断片に切断する。外植片を、CC培地(2 mg/LのNAA、1 mg/LのBAP、160 mg/Lのグルクロン酸、および40 mg/Lのアセトシリンゴンを補充した20 g/Lのショ糖および0.8%の微小寒天を含むpH 5.9のMS培地)を含む直径10 cmのペトリ皿上に配置し、25℃で光線(3000~4000ルクス、16時間の光周期)の下に1日配置する。
アグロバクテリウム・ツメファシエンス株:A1224、A1225、およびA1250を、バイナリープラスミドであるpJL470、pJL471、およびpJL469(図3A、3B、および3Cを参照)それぞれのアグロバクテリウム・ツメファシエンス株:GV3101への電気穿孔によって得た。
T-DNAプラスミドを含むアグロバクテリウム・ツメファシエンスの単一コロニーを、28℃の撹拌機(200 rpm)内の10 μg/mLのリファンピシンおよび50 μg/mLのカナマイシンを含む15 mLのLB混合液中で20時間培養した。
細菌を、一晩放置した懸濁液の1000 gでの20分間の遠心分離によってペレットにして、滅菌したCC液体培地(2 mg/LのNAA、1 mg/LのBAP、160 mg/Lのグルクロン酸、および40 mg/Lのアセトシリンゴンを補充した20 g/Lのショ糖を含むpH 5.9のMS培地)中に600 nmでの光学濃度が0.1になるまで再懸濁する。
滅菌ビーカー中で、子葉の外植片をアグロバクテリウムの懸濁液中で徐々に撹拌(100 rpm)しながら15分間浸漬する。滅菌鉗子を用いて、外植片を滅菌した濾紙表面で吸い取らせ、次いで固形CC培地(2 mg/LのNAA、1 mg/LのBAP、160 mg/Lのグルクロン酸、および40 mg/Lのアセトシリンゴンを補充した20 g/Lのショ糖および0.8%の微小寒天を含むpH 5.9のMS培地)に移す。プレートを、25℃で光線(3000~4000ルクス、16時間の光周期)の下に48時間配置する。
外植片を、20 g/Lのショ糖を含有しかつ100 mg/Lのアモキシシリン、20 mg/Lのクラブラン酸を補充した100 mLの液体MS培地(pH 5.9)で2回濯いで滅菌紙に吸い取らせて、次いで固形選択培地(1 mg/Lのゼアチン、100 mg/Lのアモキシシリン、20 mg/Lのクラブラン酸、および100 mg/Lのカナマイシンを補充した20 g/Lのショ糖および0.8%の微小寒天を含むMS培地)に(1ペトリ皿当たり10個の外植片で)移す。ペトリ皿を、25℃で光線(3000~4000ルクス、16時間の光周期)の下に配置し、培地を新芽が再生するまで2週間ごとに交換する。
新芽および若木を単離し、発根培地(0.5 mg/LのIAA、100 mg/Lのアモキシシリン、20 mg/Lのクラブラン酸、および100 mg/Lのカナマイシンを補充した20 g/Lのショ糖および0.8%の微小寒天を含むpH 5.9のMS培地)を含むプラスチックジャー内に入れる。ジャーを25℃で光線(3000~4000ルクス、16時間の光周期)の下に配置する。
よく根が張った若木を土壌に移す。根を水で濯いで寒天を慎重に取り除いて、土壌を含むトレイにこの植物を入れて温室に移す。
順化から2週間後に、植物から試料採取し若葉の一片を流動細胞計測法によって分析して、二倍体植物を選択する。ゲノムDNAを円盤状の若葉から抽出し、以下のプライマーを用いてnptII遺伝子のPCR増幅を実施して形質転換体を選別する:
順方向プライマー:npt2F CCTGCCGAGAAAGTATCC(配列番号37)および
逆方向プライマー:npt2R GCCAACGCTATGTCCTGA(配列番号38)
形質転換体をまた、以下のプライマーを用いるPCR増幅で特性評価することもできる:
順方向プライマー:tm2-2-F2 TTCCTCCAAATCTCATCAAGC(配列番号39)および
逆方向プライマー:thsp-R CAACAAGCCAAGAgAAAACACA(配列番号40)。
この手順によって得られた植物を、ToBRFVに対する耐性、ならびにTMV、ToMV、およびToMMVに対する耐性を確認するために試験した。
感染した植物内のToBRFV配列の分子定量をまた、TaqManプローブを用いる定量PCR(qPCR)によって実施して、さらにウイルス複製の減少を確認した。
qPCRによるToBRFVの分子定量の手順は以下の通りである:
成長した頭部の若いラッパー葉から試料採取する(植物当たり3~4枚の葉)。これらの葉を液体窒素中で粉砕し、100 mgの分量をRNA抽出用に保存する。各試料について、RNA抽出には100 mgの粉砕した葉を用いる。
RNA抽出を、Promega社製の「Maxwell(登録商標)16 LEV Plant RNAキット」および「Maxwell(登録商標)抽出ロボット」(Promega社)を用いて実施する。抽出したRNAを-20℃で保存する。
ウイルス定量用qPCRを、キット:Gotaq Probe OneStep RTqPCRシステムA6120(Promega社)を備えたTaqMan universal Master Mix(ThermoFisher Scientific社)を用いて、製造業者の指示書に従って実施する。
Figure 2023551722000016
増幅された断片は187 bpである。
混合物:
キット:TaqMan universal Master Mix、Applied Biosystem、ThermoFisher Scientific社製
Figure 2023551722000017
混合物の総量は20 μLであり、最終容量が22 μLになるように2μLのRNAを加える。
サーモサイクラー:
逆転写:45℃で15分間;
逆転写の不活化および活性化:95℃で2分間;
以下を含む40回のサイクル:
変性:95℃で15秒;
アニーリングプライマー:54℃で15秒;および
アニーリングプローブ:48°Cで30秒。
各試料に対して3回のリピートを実施する。標準希釈曲線を用いて、相対的定量を実施する。
融解曲線をStepOne(登録商標)での手順の最後に実行して、検出/定量の特異性を保証する。
各試料のCtを標準曲線に適合させて、各試料中のウイルスの相対量を計算する。
結果:
この結果の前の段落に特定されるように、ToMV、TMV、ToBRFV、およびToMMVに易感染性のアナベルトマト系統を、Tm2-2変異体によるアグロバクテリウム形質転換に用いる。
ToBRFVによる感染を、項目1.4の開示のように、形質転換体(T-DNAの存在を上の開示のように確認する)および種々の対照(非形質転換のアナベル)に対して実施した。次に植物の表現型について、14日のDPIおよび21日のDPIで点数を付ける。ウイルスDNAの存在を28日のDPIでqPCRによって定量して、Ct値が得られる。Ctすなわちサイクル閾値は、反応内で生成された蛍光が、背景の蛍光を大幅に上回る蛍光信号に対応する蛍光閾値を超えるサイクル数である。サイクル閾値(Ct)では、検出可能な量の増幅産物が、反応の初期の指数関数的段階中に生成される。サイクル閾値は、対象の遺伝子の初期の相対発現水準に反比例し、すなわちCt値が高いほど耐性の水準は高くなる(これは植物内でのウイルス増殖がより少ないことを意味する)。Tm2-2の非変異配列を提供するT-DNAによって形質転換された易感染性の植物の数値を、対照として使用できる。Ctの差が3.32であると、試料中のウイルス量に関して10倍の差があることを意味する。
試験を2回再現する(試験1および試験2)。
結果の詳細を次の表13に示す。
この表では、「REP」はリピート数、「Plt nb」は植物数を指す。「T-DNA遺伝子型」の欄に「存在」と示す場合には、これは上の開示のように、T-DNAの存在がPCRによって確認されていることを意味する。
この表に報告された結果は、ベンサミアナ・タバコでの一過的な発現を用いる代用測定法で観察された耐性が、耐性遺伝子を含むトマト植物での耐性を実際に代表することを明瞭に示している。
これらの結果はさらに、少なくともC848R変異を有する変異体TM-2-2遺伝子がToBRFV感染に対する耐性を提供し、F655L変異の存在が耐性を向上させる可能性があることを実証している。
視覚症状(0、14、および21日のDPIでの疾患進行曲線下のAUDPC面積)によって評価された耐性、およびqPCRでの(ウイルスの存在に対応する)Ctによって評価された耐性に関する結果を、遺伝子型に応じて以下の表に纏めることができる。視覚症状を易感染性の対照に対して評価し、「+」は対照よりも症状が少ないことを指し、「-」は向上が無いことを指す。qPCRによって評価されたCtをまた、易感染性の対照に対し評価する。「+」は検出されたウイルス配列が少ないことを指し、「-」は向上が無いことを指す。
Figure 2023551722000018
次いで本発明者らは、他のトバモウイルス、特に二重変異(C848RおよびF655L)を有するTm2-2変異体を含むT-DNAで形質転換された植物のToMV race 0、TMV、およびToMMVに対する耐性を調べた。結果を表14に纏めるが、T-DNAを含む植物(すなわち最終列に「存在」の印を入れる)は、表13に示すようにToBRFVに加えてこれら全てのトバモウイルスに対する耐性を有することを明確に示す(同じ変異コード)。
これらの結果は、前述の実施例に示した結果、すなわちTM-2-2遺伝子の変異体がトマト植物へToBRFV感染に対する耐性を提供し、同時にToMV、TMV、およびToMMVに対する耐性も提供できることを完全に裏付けている。
Figure 2023551722000019
Figure 2023551722000020
Figure 2023551722000021
Figure 2023551722000022
Figure 2023551722000023
Figure 2023551722000024
Figure 2023551722000025
Figure 2023551722000026
Figure 2023551722000027
参考文献
Baggs, E., Dagdas, G., and Krasileva, K. V. 2017. NLR diversity, helpers and integrated domains: making sense of the NLR IDentity.「NLRの多様性、ヘルパーおよび統合ドメイン:NLR識別の理解」Curr Opin Plant Biol 38:59-67.
Calder, V. L., and Palukaitis, P. 1992. Nucleotide sequence analysis of the movement genes of resistance breaking strains of tomato mosaic virus.「トマトモザイクウイルスの耐性破壊株の移行遺伝子の塩基配列解析」J Gen Virol 73 ( Pt 1):165-168.
Ishibashi et al, 2007. An inhibitor of viral RNA replication is encoded by a plant resistance gene.「ウイルスのRNA複製の阻害剤を植物耐性遺伝子によりコードする」PNAS 104 (34) 13833-13838.
Kapos, P., Devendrakumar, K. T., and Li, X. 2019. Plant NLRs: From discovery to application.「植物のNLR:発見から応用まで」Plant Sci 279:3-18.
Kobayashi, M., Yamamoto-Katou, A., Katou, S., Hirai, K., Meshi, T., Ohashi, Y., and Mitsuhara, I. 2011. Identification of an amino acid residue required for differential recognition of a viral movement protein by the Tomato mosaic virus resistance gene Tm-2(2).「トマトモザイクウイルス耐性遺伝子Tm-2(2)によるウイルス移行タンパク質の差次的認識に必要なアミノ酸残基の特定」J Plant Physiol 168:1142-1145.
Lanfermeijer, F. C., Warmink, J., and Hille, J. 2005. The products of the broken Tm-2 and the durable Tm-2(2) resistance genes from tomato differ in four amino acids.「トマトからの破壊されたTm-2耐性遺伝子と永続性Tm-2(2)耐性遺伝子の産物は、4個のアミノ酸が異なる」J Exp Bot 56:2925-2933.
Lanfermeijer, F. C., Dijkhuis, J., Sturre, M. J., de Haan, P., and Hille, J. 2003. Cloning and characterization of the durable tomato mosaic virus resistance gene Tm-2(2) from Lycopersicon esculentum.「リコペルシクム・エスクレントゥムからの永続性トマトモザイクウイルス耐性遺伝子Tm-2(2)のクローニングおよび特性評価」Plant Mol Biol 52:1037-1049.
Lanfermeirjer, F., Jiang,G, Ferwerda, MA, Kijkhuis,J, de Haan, P, Yang, R, Hille, J. 2004. The durable resistance gene Tm-22 from tomato confers resistance against ToMV in tobacco and preserves its viral specificity.「トマトからの永続性耐性遺伝子Tm-22は、タバコ中のToMVに対する耐性を付与しかつそのウイルス特異性を維持する」Plant Science 167:687-692.
Luria N. et al. 2017. A New Israeli Tobamovirus Isolate Infects Tomato Plants Harboring Tm-2 Resistance Genes.「イスラエルの新型トバモウイルス分離株は、Tm-2耐性遺伝子を保有するトマト植物に感染する」PLoS One.; 12(1): e0170429.
Ma, L., Lukasik, E, Gawehns F, Takken F LW. 2012. The use of agroinfiltration for transient expression of plant resistance and fungal effector proteins in Nicotiana benthamiana leaves.「ベンサミアナ・タバコ葉での植物抵抗性タンパク質および真菌エフェクタータンパク質の一過的な発現のためのアグロ浸潤の使用」Methods Mol Biol 835:61-74.
Meshi, T., Motoyoshi, F., Maeda, T., Yoshiwoka, S., Watanabe, H., and Okada, Y. 1989. Mutations in the tobacco mosaic virus 30-kD protein gene overcome Tm-2 resistance in tomato.「タバコモザイクウイルスの30 kDのタンパク質遺伝子の変異により、トマト中のTm-2耐性を克服する」Plant Cell 1:515-522.
Mondragon-Palomino, M., Meyers, B. C., Michelmore, R. W., and Gaut, B. S. 2002. Patterns of positive selection in the complete NBS-LRR gene family of Arabidopsis thaliana.「シロイヌナズナの完全なNBS-LRR遺伝子ファミリーでの陽性選択のパターン」Genome Res 12:1305-1315.
Nagai, A., Duarte M. L.L., Chaves A. LR., Peres L. EP. , dos Santos D. Y.A.C. 2019. Tomato mottle mosaic virus in Brazil and its relationaship with Tm-2 gene.「ブラジルでのトマト斑点モザイクウイルスおよびTm-2遺伝子とのその関係」Eur J Plant Pathol 155, 353-359.
Salem N. et al, 2015. A new tobamovirus infecting tomato crops in Jordan.「ヨルダンでのトマト作物に感染する新型トバモウイルス」Arch.Virol. 161 (2), 503-506.
Segretin, M. E., Pais, M., Franceschetti, M., Chaparro-Garcia, A., Bos, J. I. B., Banfield, M. J., and Kamoun, S. 2014. Single Amino Acid Mutations in the Potato Immune Receptor R3a Expand Response to Phytophthora Effectors.「ジャガイモの免疫受容体R3a中の単一アミノ酸変異により、フィトフトラ属のエフェクターに対する応答が拡大する」Molecular Plant-Microbe Interactions(登録商標) 27:624-637.
Slootweg, E., Koropacka, K., Roosien, J., Dees, R., Overmars, H., Lankhorst, R. K., van Schaik, C., Pomp, R., Bouwman, L., Helder, J., Schots, A., Bakker, J., Smant, G., and Goverse, A. 2017. Sequence Exchange between Homologous NB-LRR Genes Converts Virus Resistance into Nematode Resistance, and Vice Versa.「相同なNB-LRR遺伝子間の配列交換は、ウイルス耐性を線虫耐性にかつその逆方向に変換する」Plant Physiol 175:498-510.
Sui, X. et al, 2017. Molecular and Biological Characterization of Tomato mottle mosaic virus and Development of RT-PCR Detection.「トマト斑点モザイクウイルスの分子生物学的特性評価およびRT-PCR検出の開発」Plant Disease 101, 704-711.
Tomita, R., Sekine, K. T., Tateda, C., and Kobayashi, K. 2019. Identification and Functional Analysis of NB-LRR-Type Virus Resistance Genes: Overview and Functional Analysis of Candidate Genes.「NB-LRR型ウイルス耐性遺伝子の識別および機能解析:候補遺伝子の概要および機能解析」Methods Mol Biol 2028:1-10.
Wang, J., Chen, T., Han, M., Qian, L., Li, J., Wu, M., Han, T., Cao, J., Nagalakshmi, U., Rathjen, J. P., Hong, Y., and Liu, Y. 2020. Plant NLR immune receptor Tm-22 activation requires NB-ARC domain-mediated self-association of CC domain.「植物NLR免疫受容体であるTm-22の活性化には、NB-ARCドメインを媒介とするCCドメインの自己会合を必要とする」PLoS Pathog 16:e1008475.
Weber, H., and Pfitzner, A. J. 1998. Tm-2(2) resistance in tomato requires recognition of the carboxy terminus of the movement protein of tomato mosaic virus.「トマトでのTm-2(2)耐性には、トマトモザイクウイルスの移行タンパク質のカルボキシ末端の認識を必要とする」Mol Plant Microbe Interact 11:498-503.
Weber, H., Schultze, S., and Pfitzner, A. J. 1993. Two amino acid substitutions in the tomato mosaic virus 30-kilodalton movement protein confer the ability to overcome the Tm-2(2) resistance gene in the tomato.「トマトモザイクウイルスの30 kDaの移行タンパク質中の2つのアミノ酸置換により、トマトでのTm-2(2)耐性遺伝子に打ち勝つ能力が付与される」J Virol 67:6432-6438.
Weber, H., Ohnesorge, S., Silber, M. V., and Pfitzner, A. J. 2004. The Tomato mosaic virus 30 kDa movement protein interacts differentially with the resistance genes Tm-2 and Tm-2(2).「トマトモザイクウイルスの30 kDaの移行タンパク質は、耐性遺伝子Tm-2およびTm-2(2)と差次的に相互作用する」Arch Virol 149:1499-1514.

Claims (29)

  1. 配列番号11に対して少なくとも90%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%、97%、または99%の配列同一性を有するTM-2-2タンパク質のLRRドメインの変異体であるロイシンリッチリピート(LRR)ドメインであって、
    前記LRR変異ドメインによるTM-2-2タンパク質のLRRドメインの置換により、トマトブラウンルゴースフルーツウイルス(ToBRFV)の移行タンパク質(MP)を認識するタンパク質を生じ、かつ前記LRR変異ドメインは、
    TM-2-2タンパク質(配列番号8)のチロシン767に対応する位置にチロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、またはトリプトファン(W)を含み、ならびに
    TM-2-2タンパク質(配列番号8)のシステイン848に対応する位置でアルギニン(R)への置換;
    TM-2-2タンパク質(配列番号8)のアスパラギン822に対応する位置でシステイン(C)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、チロシン(Y)、またはトリプトファン(W)への置換;および
    TM-2-2タンパク質(配列番号8)のセリン825に対応する位置でヒスチジン(H)、リジン(K)、またはトレオニン(T)への置換
    のうちの1つ以上を含む、ロイシンリッチリピート(LRR)ドメイン。
  2. TM-2-2タンパク質(配列番号8)のフェニルアラニン655に対応する位置にロイシンをさらに含む、請求項1に記載のロイシンリッチリピート(LRR)ドメイン。
  3. 好ましくは配列番号12に対して少なくとも70%の配列同一性を有する、請求項1または2に記載のLRRドメインをコードするヌクレオチド配列。
  4. 請求項1または2に記載のLRRドメインを含むポリペプチドまたはタンパク質であって、前記ポリペプチドまたはタンパク質が、ToBRFVの移行タンパク質(MP)、場合によってはトマトモザイクウイルス(Tomato Mosaic Virus)(ToMV)、タバコモザイクウイルス(Tobacco Mosaic Virus)(TMV)、および/またはトマト斑点モザイクウイルス(Tomato Mottle Mosaic Virus)(ToMMV)のうちの少なくとも1つの移行タンパク質(MP)に結合する、ポリペプチドまたはタンパク質。
  5. 前記ポリペプチドまたはタンパク質が、NLRタンパク質である、請求項4に記載のポリペプチドまたはタンパク質。
  6. 配列番号8に対して少なくとも90%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも95%、97%、または99%の配列同一性を有するTM-2-2タンパク質変異体であって、
    前記TM-2-2タンパク質変異体は、トマトでの少なくともToBRFV感染に対する耐性を付与し、かつ前記TM-2-2タンパク質変異体は、
    配列番号8のチロシン767に対応する位置にチロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、またはトリプトファン(W)を含み、ならびに
    TM-2-2タンパク質(配列番号8)のシステイン848に対応する位置でアルギニン(R)への置換;
    TM-2-2タンパク質(配列番号8)のアスパラギン822に対応する位置でシステイン(C)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、チロシン(Y)、またはトリプトファン(W)への置換;および
    TM-2-2タンパク質(配列番号8)のセリン825に対応する位置でヒスチジン(H)、リジン(K)、またはトレオニン(T)への置換
    のうちの1つ以上を含む、TM-2-2タンパク質変異体。
  7. TM-2-2タンパク質(配列番号8)のフェニルアラニン655に対応する位置にロイシンをさらに含む、請求項6に記載のTM-2-2タンパク質変異体。
  8. 請求項4~7のいずれか一項に記載のポリペプチドまたはタンパク質をコードし、トマト植物でのToBRFV感染に対する耐性を付与する耐性遺伝子であって、
    好ましくは配列番号3、4、または5に対して少なくとも70%の配列同一性を有する、好ましくは配列番号4、配列番号5、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、または配列番号36を有する、耐性遺伝子。
  9. 請求項4~7のいずれか一項に記載のポリペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む、または請求項8に記載のヌクレオチド配列を含む核酸構築物であって、
    好ましくはプロモーター、例えばベクター、プラスミド、またはT-DNAプラスミドの制御下にある、核酸構築物。
  10. 好ましくはそのゲノムDNA中にホモ接合またはヘテロ接合で存在する、請求項8に記載の耐性遺伝子または請求項9に記載の核酸構築物を含む、好ましくは植物細胞である、細胞。
  11. 請求項10に記載の細胞あるいは前記細胞の組織培養物であって、
    前記細胞は、胚、原形質体、成長点細胞、カルス、花粉、葉、葯、茎、葉柄、根、根端、種子、花、子葉、および/または胚軸に由来し、かつそれらのゲノム中に前記核酸構築物または前記耐性遺伝子を含む、細胞あるいは前記細胞の組織培養物。
  12. ToBRFVに対する耐性を有する植物、好ましくはトマト植物(S. lycopersicum plant)であって、
    前記植物は、そのゲノム中に、好ましくは染色体9に請求項7に記載の耐性遺伝子をホモ接合またはヘテロ接合で含む、植物。
  13. TM-2-2タンパク質変異体(配列番号8)をコードする変異Tm-2-2遺伝子を含む、ToBRFVに対する耐性を有するトマト植物(S. lycopersicum plant)であって、
    前記TM-2-2タンパク質変異体は、配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、
    配列番号8の767位に対応する位置のチロシン(Y)は変異されていない、あるいはフェニルアラニン(F)またはトリプトファン(W)により置換されていて、かつ前記TM-2-2タンパク質変異体は、
    配列番号8の848位に対応する位置で、システイン(C)は、アルギニン(R)により置換されている;
    配列番号8の822位に対応する位置で、アスパラギン(N)は、システイン(C)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、チロシン(Y)、またはトリプトファン(W)により置換されている;および
    配列番号8の825位に対応する位置で、セリン(S)は、ヒスチジン(H)、リジン(K)、またはトレオニン(T)により置換されている
    のうちの1つ以上を含む、トマト植物(S. lycopersicum plant)。
  14. 前記変異Tm-2-2遺伝子は、TM-2-2タンパク質(配列番号8)のフェニルアラニン655に対応する位置にロイシンをさらに含むTM-2-2タンパク質変異体をコードする、請求項13に記載のトマト植物(S. lycopersicum plant)。
  15. 前記変異Tm-2-2遺伝子は、配列番号9、配列番号10、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、または配列番号26を有するTM-2-2タンパク質変異体をコードする、請求項13または14に記載のトマト植物(S. lycopersicum plant)。
  16. 前記変異Tm-2-2遺伝子は、遺伝子編集、塩基編集、またはプライム編集の各技術によって、好ましくは変異誘発によって、TILLINGによって、および/またはCRISPR/Casシステムによって得られる、請求項13または14に記載のトマト植物(S. lycopersicum plant)。
  17. 請求項12~16のいずれか一項に記載のトマト植物(S. lycopersicum plant)の植物部分、特に種子、外植片、生殖材料、穂木、切穂、種、果実、根、台木、花粉、胚珠、胚、原形質体、葉、葯、茎、葉柄、または花であって、
    前記植物部分は、請求項10または11に記載の少なくとも1つの細胞を含む、トマト植物(S. lycopersicum plant)の植物部分。
  18. 請求項12~16のいずれか一項に記載のトマト植物(S. lycopersicum plant)に生育させることができる、あるいは請求項10または11に記載の少なくとも1つの細胞を含む、トマト(S. lycopersicum)の種子。
  19. ToBRFVに対する耐性を有する遺伝子組換えトマト植物(S. lycopersicum plant)を得る方法であって、
    請求項4~7のいずれか一項に記載のポリペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む構築物、あるいは請求項8に記載の耐性遺伝子を含む構築物を得る工程;
    前記構築物をトマトの細胞に導入する工程;
    遺伝子組換え植物を再生する工程;および
    必要に応じて、得られた植物を繁殖させる工程を含む、方法。
  20. Tm-2-2含有トマト植物(S. lycopersicum plant)の染色体9のTm-2-2遺伝子に少なくとも1つの変異を導入することを含む、ToMV、TMV、およびToBRFVに対する耐性を有するトマト植物(S. lycopersicum plant)を生産する方法であって、
    前記少なくとも1つの変異は、変異誘発によって、TILLINGによって、ゲノム編集、塩基編集、またはプライム編集によって、特にN-メチル-N-ニトロソ尿素(MNU)変異誘発、アジ化ナトリウム(NaN;SA)変異誘発、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発(ODM)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)技術、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Casシステム、Cas9、Cas21a、組換えメガヌクレアーゼ、再組換えホーミングエンドヌクレアーゼ、およびDNA誘導ゲノム編集から選択される技術によって導入され、
    前記変異は、Tm-2-2遺伝子がコードされたタンパク質中に、C848Rアミノ酸置換、N822Cアミノ酸置換、N822Fアミノ酸置換、N822Mアミノ酸置換、N822Yアミノ酸置換、N822Wアミノ酸置換、S825Hアミノ酸置換、S825Kアミノ酸置換、およびS825Tアミノ酸置換で構成される群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を生じる、方法。
  21. ToBRFV、かつ必要に応じてTMV、ToMV、および/またはToMMVのうちの少なくとも1つに対する耐性を有するトマト植物(S. lycopersicum plant)を育種する方法であって、
    a)請求項8に記載の耐性遺伝子を含むトマト植物(S. lycopersicum plant)と、耐性遺伝子を含まない初期のトマト植物(S. lycopersicum plant)とを交配する工程;
    b)このように得られた子孫の中から耐性遺伝子を有する植物を選択する工程;および
    c)必要に応じて、工程b)で得られた植物を1回以上自家受粉させて、このように得られた子孫の中から耐性遺伝子を有する植物を選択する工程を含む、方法。
  22. ToBRFV、および必要に応じてTMV、ToMV、および/またはToMMVのうちの少なくとも1つに対する耐性を有するトマト植物(S. lycopersicum plant)を生産する方法であって、
    a)請求項12~16のいずれか一項に記載の植物の部分を得る工程;および
    b)前記植物部分を栄養繁殖させて、前記植物部分から植物を生成する工程を含む、方法。
  23. ToMV、TMV、ToMMV、およびToBRFVに対する耐性をトマト植物(S. lycopersicum plant)に付与する、あるいはToMV、TMV、ToMMV、およびToBRFVに対する耐性を有する遺伝子組換えトマト植物(S. lycopersicum plant)を得るための、請求項8に記載の配列または請求項9に記載の構築物の使用。
  24. ToMV、TMV、ToMMV、およびToBRFVに対する耐性をトマト植物(S. lycopersicum plant)に付与するための育種プログラムでの育種パートナーとしての、請求項8に記載の耐性遺伝子を有するトマト(S. lycopersicum)の植物または種子、あるいはその一部またはその子孫の使用。
  25. 請求項8に記載の耐性遺伝子をそのゲノム中に含むトマト植物を栽培することを含む、ToBRFVが蔓延している、または蔓延している可能性がある環境でトマト植物の収量を向上する方法、あるいはトマト生産の損失を低減する方法。
  26. 請求項8に記載の耐性遺伝子をそのゲノム中に含むトマト植物を栽培することを含む、ToMV、TMV、ToMMV、および/またはToBRFV感染の条件の下でのトマト生産の損失を低減する方法。
  27. a)請求項12~16のいずれか一項に記載のトマト植物(S. lycopersicum plant)を栽培する工程;
    b)前記植物に果実を実らせる工程;および
    c)前記植物の果実を、好ましくは成熟前または成熟の段階で収穫する工程を含む、トマトを生産する方法。
  28. TMVおよびToMVに対する耐性を有するトマト植物内で、ToBRFVに対する耐性を有するトマト植物(S. lycopersicum plant)を識別、検出、および/または選択する方法であって、
    前記方法は、前記植物のゲノム中のTm-2-2遺伝子の変異対立遺伝子の検出を含み、
    前記変異対立遺伝子は、Tm-2-2遺伝子がコードされるタンパク質中に、TM-2-2タンパク質中のC848Rアミノ酸置換、N822Cアミノ酸置換、N822Fアミノ酸置換、N822Mアミノ酸置換、N822Yアミノ酸置換、N822Wアミノ酸置換、S825Hアミノ酸置換、S825Kアミノ酸置換、およびS825Tアミノ酸置換で構成される群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を生じる少なくとも1つの変異を含む、方法。
  29. ToBRFVに対する耐性を付与するTm-2-2遺伝子の変異体を識別、検出、および/または選択する方法であって、
    ナス科植物、好ましくはタバコ種(Nicotiana)またはトウガラシ種(Capsicum)中で、ToBRFVの移行タンパク質(MP)の存在で発現されるTm-2-2遺伝子の変異体を一過的または構成的に発現する工程;および
    変異遺伝子から発現したタンパク質とMPタンパク質の間の相互作用を検出する工程を含む、方法。
JP2023533640A 2020-12-03 2021-12-03 ToBRFV、TMV、ToMV、およびToMMVに対する耐性を有するトマト植物および対応する耐性遺伝子 Pending JP2023551722A (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
EP20306496.9 2020-12-03
EP20306496 2020-12-03
EP21306078 2021-08-02
EP21306078.3 2021-08-02
PCT/EP2021/084289 WO2022117884A1 (en) 2020-12-03 2021-12-03 Tomato plants resistant to tobrfv, tmv, tomv and tommv and corresponding resistance genes

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023551722A true JP2023551722A (ja) 2023-12-12

Family

ID=79185481

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023533640A Pending JP2023551722A (ja) 2020-12-03 2021-12-03 ToBRFV、TMV、ToMV、およびToMMVに対する耐性を有するトマト植物および対応する耐性遺伝子

Country Status (7)

Country Link
US (1) US20240049668A1 (ja)
EP (1) EP4255172A1 (ja)
JP (1) JP2023551722A (ja)
CA (1) CA3203609A1 (ja)
IL (1) IL303102A (ja)
MX (1) MX2023006612A (ja)
WO (1) WO2022117884A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024141599A1 (en) 2022-12-29 2024-07-04 Vilmorin & Cie Tomato plants resistant to resistance-breaking tswv strains and corresponding resistance genes

Family Cites Families (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE60310202T2 (de) 2002-01-23 2007-11-22 The University Of Utah Research Foundation, Salt Lake City Zielgerichtete chromosomale mutagenese mit zinkfingernukleasen
AU2010327998B2 (en) 2009-12-10 2015-11-12 Iowa State University Research Foundation, Inc. TAL effector-mediated DNA modification
US9181535B2 (en) 2012-09-24 2015-11-10 The Chinese University Of Hong Kong Transcription activator-like effector nucleases (TALENs)
DK2931898T3 (en) 2012-12-12 2016-06-20 Massachusetts Inst Technology CONSTRUCTION AND OPTIMIZATION OF SYSTEMS, PROCEDURES AND COMPOSITIONS FOR SEQUENCE MANIPULATION WITH FUNCTIONAL DOMAINS
WO2014093694A1 (en) 2012-12-12 2014-06-19 The Broad Institute, Inc. Crispr-cas nickase systems, methods and compositions for sequence manipulation in eukaryotes
US8697359B1 (en) 2012-12-12 2014-04-15 The Broad Institute, Inc. CRISPR-Cas systems and methods for altering expression of gene products
AU2013359262C1 (en) 2012-12-12 2021-05-13 Massachusetts Institute Of Technology CRISPR-Cas component systems, methods and compositions for sequence manipulation
AU2013359212B2 (en) 2012-12-12 2017-01-19 Massachusetts Institute Of Technology Engineering and optimization of improved systems, methods and enzyme compositions for sequence manipulation
CN105121648B (zh) 2012-12-12 2021-05-07 布罗德研究所有限公司 用于序列操纵的系统、方法和优化的指导组合物的工程化
EP3409106A1 (en) * 2017-06-01 2018-12-05 Vilmorin et Cie Tolerance in plants of solanum lycopersicum to the tobamovirus tomato brown rugose fruit virus (tbrfv)
WO2020147921A1 (en) 2019-01-14 2020-07-23 Enza Zaden Beheer B.V. Tomato plant resistant to tomato brown rugose fruit virus

Also Published As

Publication number Publication date
US20240049668A1 (en) 2024-02-15
WO2022117884A1 (en) 2022-06-09
MX2023006612A (es) 2023-06-19
CA3203609A1 (en) 2022-06-09
EP4255172A1 (en) 2023-10-11
IL303102A (en) 2023-07-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN111432630B (zh) Tbrfv抗性番茄植物
US11299746B2 (en) Disease resistant pepper plants
JP2023153180A (ja) トバモウイルスであるトマト褐色縮葉フルーツウイルス(tbrfv)に対するソヌラム・リコペルシカム植物における耐性
US10226014B2 (en) Peronospora resistance in spinacia sp
WO2021000878A1 (en) Novel genetic loci associated with rust resistance in soybeans
US10226015B2 (en) Peronospora resistance in Spinacia sp
EA034396B1 (ru) Выведение гибридного семенного картофеля
JP2023534811A (ja) S.リコペルシクムにおいてToBRFV抵抗性をもたらす遺伝子
US20240049668A1 (en) Tomato plants resistant to tobrfv, tmv, tomv and tommv and corresponding resistance genes
JP2023504713A (ja) ウイルス抵抗性のためのcca遺伝子
US20220098611A1 (en) Disease resistant petunia plants
CN111655026A (zh) 对至少粉霜霉8、9、11、13和16号小种具有抗性的菠菜植物
US11516980B2 (en) Genetic basis for Pythium resistance
WO2021170868A1 (en) Albino3-like gene involved in virus resistance
JP2023527925A (ja) トマトの植物におけるToBRFVに対する耐性
JP2022538791A (ja) トバモウイルスであるトマト褐色しわ果実ウイルスに対するトマトの植物体の抵抗力
AU2020360701A1 (en) Begomovirus resistance related genes
US11795469B2 (en) Scaevola plants with radially symmetrical flowers
CN111263582A (zh) 黄瓜中的角叶斑(假单胞菌)抗性
US20230287062A1 (en) Root-knot nematode resistance conferring gene
US20240065191A1 (en) Genetic basis for pythium resistance
WO2024141599A1 (en) Tomato plants resistant to resistance-breaking tswv strains and corresponding resistance genes
WO2023209047A1 (en) Phytophthora capsici resistant pepper
KR20230113598A (ko) 노균병에 내성이 있는 상추 식물 및 내성 유전자