JP2023542298A - 肺高血圧症を治療又は予防する組成物及び方法 - Google Patents

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Abstract

本開示は、一般に、肺高血圧症を予防、改善、若しくは治療する、及び/又は肺高血圧症に関連する1つ又は複数のリスク因子、徴候、若しくは症状の重症度を軽減する組成物並びに方法に関する。【選択図】図10A

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月11日に出願された米国仮出願第63/077,102号の利益及び優先権を主張するものであり、同仮出願の開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
本技術は、一般に、肺高血圧症を予防、改善、若しくは治療する、及び/又は肺高血圧症に関連する1つ又は複数のリスク因子、徴候、若しくは症状の重症度を軽減する組成物並びに方法に関する。
本技術の背景に関する以下の説明は、本技術を理解する助けとして提供しているにすぎず、本技術の先行技術を説明又は構成することを認めるものではない。
肺高血圧症(PH)は平均肺動脈圧が正常値(安静時25mmHg、運動時30mmHg)よりも高い肺疾患である。PHは、動脈性、静脈性、低酸素性、血栓塞栓性、及びその他種々な種類に分類される。これらの様々なPHのうち、肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、通常、予後が極めて悪い。PAHは更に特発性PAH(IPAH)、家族性PAH(FPAH)、及び各種疾患に伴うPAH(APAH)に分類される。肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、内皮機能不全や、内皮細胞及び平滑筋細胞の血管リモデリングによって肺動脈が閉塞し、その結果肺血管抵抗と肺動脈圧が増加する肺血管系の慢性進行性疾患である。治療しなければ、診断から2~3年以内に心拍出量低下、右室不全(肺性心)から最終的に死に至る。
米国では、PAHの推定発生率及び罹患率は、成人100万人当たりそれぞれ2.3及び12.4例である。PAHは性別や年齢を問わず発症する可能性があるが、女性の発症率は男性のほぼ2倍である。近年、PAHに関与する潜在的な分子経路の解明が進み、治療アプローチによって一部のPAH患者では生存期間の延長が認められるものの、PAHの予後は依然として不良であり、治療法は見つかっていない。
一態様では、本開示は、必要とする対象において肺高血圧症を治療又は予防する方法であって、本技術の組成物の治療有効量(即ち、キナクリン又はそれらの薬学的に許容される塩)を対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は肺動脈性肺高血圧症(PAH)を有すると診断されている。特定の実施形態では、対象は特発性PAH(IPAH)、家族性PAH(FPAH)、又は各種疾患に伴うPAH(APAH)を有すると診断されている。追加的又は代替的に、いくつかの実施形態では、対象は骨形成タンパク質受容体II型(BMPR2)、セロトニン(5-HTT)トランスポーター、及びアクチビン様キナーゼI型受容体(ALK-1)からなる群から選択される変異を有する。追加的又は代替的に、特定の実施形態では、対象は小児患者、高齢患者、免疫不全患者、女性患者、若しくは男性患者であり、及び/又はコーカソイド、南アジア人、東南アジア人、若しくは中東系である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
本明細書に開示する方法のあらゆる実施形態において、キナクリン(QA)の投与は、PAHの徴候若しくは症状を予防し、遅延させ、又は軽減する。いくつかの実施形態では、PAHの徴候又は症状は、労作性持続性呼吸困難、胸痛、めまい、労作性失神寸前状態/失神、動悸、疲労、脱力、拡張した肺動脈による左喉頭神経の圧迫に起因する声のかすれ、頸静脈怒張、肝頸静脈逆流、肝腫大、肝臓痛、下肢浮腫、腹水、全身性浮腫、肺動脈内膜線維症、肺動脈の内膜厚増加、筋性肺動脈の内膜過形成、肺動脈血栓病変、肺細動脈閉塞、肺血管剪定、肺動脈の叢状病変、右室収縮期圧の上昇、右室肥大の増加、肺血管過剰増殖、血清若しくは血漿中の脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の上昇(>180pg/mL)、及び血清若しくは血漿中のproBNPのN末端フラグメント(NT-proBNP)の上昇(≧1400pg/mL)のうち1つ又は複数を含む。
追加的又は代替的に、いくつかの実施形態では、対象は、キナクリン投与後に右室収縮期圧(RVSP)の低下及び/又は右室肥大(RVH)の軽減を示す。追加的又は代替的に、特定の実施形態では、対象は、キナクリン投与後に、血管の筋性動脈化の減少及び/又は肺細動脈の内壁厚の減少を示す。
本明細書に開示する方法のあらゆる実施形態において、QA又はそれらの薬学的に許容される塩は、経口、局所、鼻腔内、吸入、胸膜内、全身、静脈内、皮下、腹腔内、皮内、眼内、イオン導入、経粘膜、又は筋肉内投与される。
追加的又は代替的に、いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩は、約1~約15mg/kg又は約1~約10μMの有効量で投与される。特定の実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩は、約1mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約3.5mg/kg、約4mg/kg、約4.5mg/kg、約5mg/kg、約5.5mg/kg、約6mg/kg、約6.5mg/kg、約7mg/kg、約7.5mg/kg、約8mg/kg、約8.5mg/kg、約9mg/kg、約9.5mg/kg、約10mg/kg、約10.5mg/kg、約11mg/kg、約11.5mg/kg、約12mg/kg、約12.5mg/kg、約13mg/kg、約13.5mg/kg、約14mg/kg、約14.5mg/kg、又は約15mg/kgの有効量で投与される。いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩は、約1μM、約1.5μM、約2μM、約2.5μM、約3μM、約3.5μM、約4μM、約4.5μM、約5μM、約5.5μM、約6μM、約6.5μM、約7μM、約7.5μM、約8μM、約8.5μM、約9μM、約9.5μM、又は約10μMの有効量で投与される。
追加的又は代替的に、いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法は、1つ又は複数の追加的な治療薬を別個に、連続的に、又は同時に対象に投与することを更に含む。追加的な治療薬の例として、エンドセリン受容体拮抗薬(ETRA)、グアニル酸シクラーゼ刺激薬、プロスタサイクリン類似体、ホスホジエステラーゼ(PDE)-5阻害剤、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、シクロスポリン、タクロリムス、ベスタチン、イマチニブ、カルシウムチャネル遮断薬(CCB)、ジクロロ酢酸(DCA)、トリメタジジン、ラノラジン、4-フェニルブチレート、タウロウルソデオキシコール酸、及びサルブリナルがあるがこれらに限定されない。
いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩は、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、又は12週間以上毎日投与される。
キナクリン(QA)の化学構造である。本明細書で使用する用語「PT001」もQAを指す。 QAのin vitro細胞毒性作用を示すグラフ。様々な濃度(0.15~50μM)のQAで初代ヒト肺動脈平滑筋細胞(PASMC)を24時間処理した。細胞生存率はCellTiter-Blueアッセイキットを用いて定量化した。 初代ヒトPASMCにおけるQAの濃度依存性抗増殖活性を示すグラフである。初代ヒトPASMCは最大濃度6.2μMのQAで処理した。細胞増殖はCyquant Directで定量化した。ヒトPASMCにおけるQAの抗増殖活性を示す。3.1及び6.2μMでの単回QA処理後、3日目及び5日目に細胞過剰増殖の著しい低下が認められた。 初代ヒトPASMCにおけるQAの濃度依存性抗増殖活性を示すグラフである。初代ヒトPASMCは最大濃度6.2μMのQAで処理した。細胞増殖はCyquant Directで定量化した。血清飢餓ヒトPASMCにおけるQAの抗増殖活性を示す。3.1及び6.2μMで5日目に、6.2μMで3日目に細胞過剰増殖の著しい低下が認められた。 初代ウシPASMCにおけるQAの濃度依存性抗増殖活性を示すグラフである。ウシ高地PASMCにおけるQAの抗増殖活性を示す。データは実験を3回超繰り返した平均±SD(n=5)を表す。 初代ウシPASMCにおけるQAの濃度依存性抗増殖活性を示すグラフである。血清飢餓ウシPASMCにおけるQAの抗増殖活性を示す。データは実験を3回超繰り返した平均±SD(n=5)を表す。 初代ウシPASMCにおけるQAの濃度依存性抗増殖活性を示すグラフである。ウシPASMCでの5-ヒドロキシトリプタミン誘導性細胞過剰増殖におけるQAの抗増殖活性を示す。データは実験を3回超繰り返した平均±SD(n=5)を表す。*p<0.05。 蛍光顕微鏡で測定した、初代ヒトPASMCにおけるQAの細胞取り込みを示す画像である。 初代ヒトPASMCにおける細胞アポトーシスに対するQAの影響を示すグラフである。カスパーゼ3アッセイで測定したアポトーシス誘導における変化を示す。 初代ヒトPASMCにおける細胞アポトーシスに対するQAの影響を示すグラフである。Annexin V FITCアッセイで測定したアポトーシス誘導における変化を示す。 初代ウシPASMCにおけるオートファジー過程に対するQAの影響を示すグラフである。Cyto-ID(登録商標)オートファジーで測定した、オートファゴソーム阻害アッセイを用いたリソソーム融合の結果を示す。 初代ウシPASMCにおけるオートファジー過程に対するQAの影響を示すグラフである。ウエスタンブロット解析で測定した、LC3B-II発現アッセイの結果を示す。 ユビキチンELISAアッセイで測定した、ITCH/AIP4 E3リガーゼ活性を直接阻害するQAの能力を示すグラフである。QAは、20μMの用量で、ITCH/AIP4 E3リガーゼによるポリユビキチン化全体を低下させ、ITCH/AIP4活性によるポリユビキチン化全体の約25%を低下させる用量依存的な能力を示した。 (図9A)アポトーシス及びリソソーム分解経路の調節におけるQAのin vitro活性を示すグラフである。PASMCは、24時間血清飢餓させ、次いで血清飢餓培地で様々なQA濃度で処理した。Cyto-ID(登録商標)オートファジーキット及びAnnexin-V/FITCアポトーシスキットを用いて定量化した。グラフは、蛍光で観察したオートファゴソーム蓄積の増加を示し、従ってオートファジーの阻害を実証している。データは平均±SD(n=3)を表す。*p<0.05。(図9B)アポトーシス及びリソソーム分解経路の調節におけるQAのin vitro活性を示すグラフである。PASMCは、24時間血清飢餓させ、次いで血清飢餓培地で様々なQA濃度で処理した。Cyto-ID(登録商標)オートファジーキット及びAnnexin-V/FITCアポトーシスキットを用いて定量化した。グラフは、血清飢餓細胞膜におけるホスファチジルセリンへのAnnexin-Vの相対的結合を示し、従ってQA処理によるアポトーシス細胞数の増加を実証している。データは平均±SD(n=3)を表す。*p<0.05。(図9C)アポトーシス及びリソソーム分解経路の調節におけるQAのin vitro活性を示すグラフである。ウエスタンブロットアッセイキットにより定量化したウシ高地PASMCにおけるLC3B-II濃度の増加によって表される、QA(5μM)によるオートファジー阻害。データは平均±SD(n=3)を表す。*p<0.05。 肺高血圧症(PH)のモノクロタリン(MCT)誘発治療ラットモデルにおけるQAのin vivo活性を示すグラフである。成体オスSDラットにMCT(50mg/kg)を皮下注射して誘発した。MCT投与の21日(3週間)後にQA投与を開始し、1日1回10mg/kgを10日間皮下投与した。グラフは、MCT誘発ラットモデルにおける右室収縮期圧(RVSP)の低下を示す。QAは疾患発症後のRVSPを有意に低下させた。データは平均±SEM(n=5)を表す。*p<0.05。 PHのMCT誘発治療ラットモデルにおけるQAのin vivo活性を示すグラフである。成体オスSDラットにMCT(50mg/kg)を皮下注射して誘発した。MCT投与の21日(3週間)後にQA投与を開始し、1日1回10mg/kgを10日間皮下投与した。グラフは、MCT誘発ラットモデルにおける右室肥大(RVH)の軽減を示す。QAは疾患発症後のRVHを有意に軽減した。データは平均±SEM(n=5)を表す。*p<0.05。 モノクロタリン(MCT)誘発PAH動物モデルの肺切片の三重染色を示す画像である。 MCT誘発PAH動物肺組織スライドの免疫蛍光イメージングである。2つの過剰増殖マーカー、Ki67及びPCNA(増殖細胞核抗原)は、対照と比べてQA治療動物において発現が低下していることがわかる。 MCT誘発PAH動物肺組織スライドの免疫蛍光イメージングである。vWF(フォン・ヴィレブランド因子)又はα平滑筋アクチン(α-SMA)は、対照と比べてQA治療動物において発現低下を示していないことがわかる。 MCT誘発PAH動物モデルにおける肺動脈の内壁厚に対するQAの効果を示すグラフである。MCT誘発PAH動物組織片において肺動脈内壁厚の有意な増加が認められたが(3倍超増加)、QA治療によりこれが低減し、対照動物と比べて壁厚はほぼ正常に戻った。 肺高血圧症のSU5416/低酸素誘発ラットモデルにおけるQAのin vivo活性を示すグラフである。成体雄ラットにSU5416(20mg/kg)を皮下注射し、低酸素(10%O2)下に3週間維持した。QAは10mg/kgの用量で1日目から開始し21日間、1日1回腹腔内投与した。グラフは、QA治療による右室収縮期圧(RVSP)の低下を示す。データは平均±SD(n=4~5)を表す。*p<0.05。 肺高血圧症のSU5416/低酸素誘発ラットモデルにおけるQAのin vivo活性を示すグラフである。成体雄ラットにSU5416(20mg/kg)を皮下注射し、低酸素(10%O2)下に3週間維持した。QAは10mg/kgの用量で1日目から開始し21日間、1日1回腹腔内投与した。グラフは、QA治療による右室肥大(RVH)の軽減を示す。データは平均±SD(n=4~5)を表す。*p<0.05。 肺高血圧症のSU5416/低酸素誘発ラットモデルにおけるQAのin vivo活性を示すグラフである。成体雄ラットにSU5416(20mg/kg)を皮下注射し、低酸素(10%O2)下に3週間維持した。QAは10mg/kgの用量で1日目から開始し21日間、1日1回腹腔内投与した。グラフは、QA治療による肺細動脈(直径<200mm)の筋性動脈化度を示す。データは平均±SD(n=4~5)を表す。*p<0.05。 肺高血圧症のSU5416/低酸素誘発ラットモデルにおけるQAのin vivo活性を示すグラフである。成体雄ラットにSU5416(20mg/kg)を皮下注射し、低酸素(10%O2)下に3週間維持した。QAは10mg/kgの用量で1日目から開始し21日間、1日1回腹腔内投与した。グラフは、QA治療による肺細動脈の内壁厚を示す。データは平均±SD(n=4~5)を表す。*p<0.05。 SU5416/低酸素誘発PAH動物モデルの肺切片の三重染色を示す。 SU5416/低酸素誘発PAH動物モデルの肺動脈の内壁厚に対するQAの効果を示す。 SU5416/低酸素誘発PAH動物肺組織スライドの免疫蛍光イメージングである。Ki67及びvWFのイメージングを示す。Ki67は、QA治療動物において、対照と比べて発現低下を示した。vWFは、QA治療動物において、対照と比べて発現低下を示さなかった。 SU5416/低酸素誘発PAH動物肺組織スライドの免疫蛍光イメージングである。PCNA及びα-SMAのイメージングを示す。PCNAは、QA治療動物において、対照と比べて発現低下を示した。α-SMAは、QA治療動物において、対照と比べて発現低下を示さなかった。 肺動脈性肺高血圧症のSU5416/低酸素誘発ラットモデルにおいて、疾患を引き起こす分子経路をQAがin vivo調節することを示すグラフである。QA治療は炎症マーカーIL-6のmRNA発現を阻害した。mRNAレベルはβ2ミクログロブリンmRNAで正規化した。データは平均±SD(n=3~4)を表す。*p<0.05。 肺動脈性肺高血圧症のSU5416/低酸素誘発ラットモデルにおいて、疾患を引き起こす分子経路をQAがin vivo調節することを示すグラフである。QA治療は平滑筋アクチンマーカーActa2のmRNA発現を阻害した。mRNAレベルはβ2ミクログロブリンmRNAで正規化した。データは平均±SD(n=3~4)を表す。*p<0.05。 肺動脈性肺高血圧症のSU5416/低酸素誘発ラットモデルにおいて、疾患を引き起こす分子経路をQAがin vivo調節することを示すグラフである。QA治療は内皮細胞増殖マーカーセルピン1のmRNA発現を阻害した。mRNAレベルはβ2ミクログロブリンmRNAで正規化した。データは平均±SD(n=3~4)を表す。*p<0.05。 肺動脈性肺高血圧症のSU5416/低酸素誘発ラットモデルにおいて、疾患を引き起こす分子経路をQAがin vivo調節することを示すグラフである。QA治療はBMPR2活性化マーカーId1のmRNA発現を阻害しなかった。mRNAレベルはβ2ミクログロブリンmRNAで正規化した。データは平均±SD(n=3~4)を表す。 肺動脈性肺高血圧症のSU5416/低酸素誘発ラットモデルにおいて、疾患を引き起こす分子経路をQAがin vivo調節することを示すグラフである。p62、BMPR2、及びLC3B-IIを含む様々な疾患マーカータンパク質の発現について、対応するモノクローナル抗体を用いた、組織(右肺)溶解物のウエスタンブロット解析を示す。データは平均±SD(n=3~4)を表す。*p<0.05。 肺動脈性肺高血圧症のSU5416/低酸素誘発ラットモデルにおいて、疾患を引き起こす分子経路をQAがin vivo調節することを示すグラフである。p21、p65、p53、リン酸化p53、及びリン酸化AKTを含む様々な疾患マーカータンパク質の発現について、対応するモノクローナル抗体を用いた、組織(右肺)溶解物のウエスタンブロット解析を示す。データは平均±SD(n=3~4)を表す。*p<0.05。
本技術の実質的な理解をもたらすために、本方法の特定の態様、様式、実施形態、変形、及び特徴を、以下に様々なレベルの詳細さで記載することを理解されたい。
本発明の方法の実施に当たっては、分子生物学、タンパク質生化学、細胞生物学、免疫学、微生物学、及び組換えDNAにおける多くの従来技術を使用する。例えば、Sambrook and Russell eds.(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd edition;the series Ausubel et al.eds.(2007)Current Protocols in Molecular Biology;the series Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);MacPherson et al.(1991)PCR 1:A Practical Approach(IRL Press at Oxford University Press);MacPherson et al.(1995)PCR 2:A Practical Approach;Harlow and Lane eds.(1999)Antibodies,A Laboratory Manual;Freshney(2005)Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique,5th edition;Gait ed.(1984)Oligonucleotide Synthesis;米国特許第4,683,195号明細書;Hames and Higgins eds.(1984)Nucleic Acid Hybridization;Anderson(1999)Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins eds.(1984)Transcription and Translation;Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press(1986));Perbal(1984)A Practical Guide to Molecular Cloning;Miller and Calos eds.(1987)Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(Cold Spring Harbor Laboratory);Makrides ed.(2003)Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells;Mayer and Walker eds.(1987)Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Academic Press,London);及びHerzenberg et al.eds(1996)Weir’s Handbook of Experimental Immunologyを参照のこと。当技術分野においてポリペプチド遺伝子発現産物のレベル(即ち、遺伝翻訳レベル)を検出及び測定する方法は周知であり、抗体検出及び定量化技術などのポリペプチド検出法が使用できる(Strachan&Read,Human Molecular Genetics,Second Edition.(John Wiley and Sons,Inc.,NY,1999)も参照)。
本開示は、必要とする対象において、有効量のQAを対象に投与することを含む、肺高血圧症を予防、改善、若しくは治療する方法、及び/又は肺高血圧症に関連する1つ又は複数のリスク因子、徴候、若しくは症状の重症度を軽減する方法を提供する。特定の理論に縛られることは望まないが、QAは、アポトーシス、オートファジー、BMPR2のリソソーム分解、及びTGF-βシグナル伝達を含むがこれらに限定されないPAH進行に関与する生物学的経路の上流の複数に作用すると考えられている。本明細書に記載する実施例で示すように、QAは(i)過剰増殖性PASMCにおけるアポトーシスを誘導し、それにより肺血管過剰増殖を抑制する;(ii)オートファジーの強力な阻害剤であるため、SMC増殖及びがん様増殖を抑制する;(iii)BMPR2のユビキチン化を阻止することによりBMPR2分解を阻害し、結果としてリソソーム機構による認識が回避される、並びに(iv)TGF-β1発現を阻害する。従って、QAは肺高血圧症、特にPAHを予防、改善、又は治療する方法において有用である。
定義
別段の定めがない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、一般に、本技術が属する技術分野における通常の技術者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容上明らかに他を規定しない限り、複数の指示物を含む。例えば、「a cell(細胞)」への言及は、2つ以上の細胞の組み合せなどを含む。一般に、本明細書で使用する命名法、並びに以下に記載する細胞培養、分子遺伝学、有機化学、分析化学、及び核酸化学、及びハイブリダイゼーションにおける実験手順は、当技術分野でよく知られ、通常採用されているものである。
本明細書で使用する、数に関する用語「約」は、別段の記載がない限り、又は文脈からそれ以外であることが明らかでない限り、一般に、数のいずれかの方向(より大きい又はより小さい)において1、5、又は10%の範囲にある数を含むとみなされる(ただし、そのような数が、可能な値の0%未満又は100%超となる場合を除く)。
本明細書で使用する、対象への薬剤又は薬物の「投与」は、その意図する機能を果たすために化合物を対象に導入又は送達する任意の経路を含む。投与は、経口、鼻腔内、吸入、胸膜内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、若しくは皮下)、直腸、髄腔内、又は局所を含むがこれらに限定されない任意の好適な経路によって実施できる。投与は、自己投与及び他者による投与を含む。
本明細書で使用する「対照」は、比較を目的として試験で使用する別の試料である。対照は「陽性」又は「陰性」であり得る。例えば、試験の目的が、特定種類の疾患の治療について治療薬の有効性の相関関係を決定することである場合、通常、陽性対照(所望の治療効果を示すことが知られている化合物又は組成物)と陰性対照(治療を受けない、又はプラセボを受け取らない対象又は試料)を使用する。
本明細書で使用する用語「有効量」は、所望の治療効果及び/又は予防効果を達成するのに十分な量、例えば、本明細書に記載する疾患若しくは状態、又は本明細書に記載する疾患若しくは状態に関連する1つ若しくは複数の徴候若しくは症状の予防又は軽減をもたらす量を指す。治療又は予防用途において、対象に投与する組成物の量は、組成物、疾患の程度、種類、及び重症度、並びに個人の特性、例えば全体的な健康、年齢、性別、体重、及び薬物耐性に応じて異なる。当業者は、これら及びその他の因子に応じて適切な投与量を決定する。組成物は、1つ又は複数の追加的な治療化合物と組み合わせて投与することもできる。本明細書に記載する方法では、治療組成物は、本明細書に記載する疾患又は状態の1つ又は複数の徴候又は症状を有する対象に投与してよい。本明細書で使用する、組成物の「治療有効量」は、疾患又は状態の生理作用を改善又は除去する組成物レベルを指す。治療有効量は1回又は複数回の投与で与え得る。
本明細書で使用する「発現」は、以下の1つ又は複数を含む:前駆mRNAへの遺伝子の転写;前駆mRNAのスプライシング及び他のプロセッシングによる成熟mRNAの産生;mRNAの安定;タンパク質への成熟mRNAの翻訳(コドン使用頻度及びtRNA利用度を含む);並びに適切な発現及び機能のために必要である場合は、翻訳産物のグリコシル化及び/又は他の修飾も含む。
本明細書で使用する用語「遺伝子」は、発現を制御するプロモーター、エクソン、イントロン、及び他の非翻訳領域を含む、RNA産物の生合成調節のための情報全てを含むDNAのセグメントを意味する。
本明細書で使用する用語「個人」、「患者」、又は「対象」は、個体、脊椎動物、哺乳動物、又はヒトであり得る。いくつかの実施形態では、個人、患者、又は対象はヒトである。
本明細書で使用する用語「薬学的に許容可能な担体」は、医薬品の投与に適合する、あらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌及び抗真菌化合物、等張及び吸収遅延化合物などである。薬学的に許容可能な担体及びそれらの製剤は当業者に知られており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(20th edition,ed.A.Gennaro,2000,Lippincott,Williams&Wilkins,Philadelphia,Pa.)に記載されている。
本明細書で使用する、障害又は状態の「予防」又は「予防すること」は、化合物が、統計的試料において、未治療の対照試料と比べて、治療した試料で障害若しくは状態の発生を減少させること、又は未治療の対照試料と比べて、障害若しくは状態の1つ若しくは複数の症状の発現を遅延させることを指す。本明細書で使用する、肺高血圧症を予防することは、肺高血圧症の発生を予防する又は遅延させることを含む。本明細書で使用する、肺高血圧症の予防は、肺高血圧症の1つ若しくは複数の徴候又は症状の再発を予防することも含む。
本明細書で使用する用語「別個の」治療的使用は、少なくとも2つの有効成分の同時の投与、又は異なる経路での実質的に同時の投与を指す。
本明細書で使用する用語「連続的な」治療的使用は、異なる時間における少なくとも2つの有効成分の投与を指し、投与経路は同じでも異なっていてもよい。より具体的には、連続的な使用は、1つの有効成分を完全に投与した後に、他の有効成分(複数可)の投与を開始することを指す。従って、他の有効成分(複数可)の投与前に、数分、数時間、又は数日にわたって1つの有効成分を投与することが可能である。この場合、同時治療は行わない。
本明細書で使用する用語「同時の」治療的使用は、同じ経路で同時に、又は実質的に同時に少なくとも2つの有効成分を投与することを指す。
本明細書で使用する用語「治療薬」は、有効量で存在する場合、必要とする対象に所望の治療効果をもたらす化合物を意味すると意図される。
本明細書で使用する「治療すること」又は「治療」は、ヒトなどの対象における、本明細書に記載する疾患又は障害の治療を含み、(i)疾患又は障害を抑制する、即ちその発症を妨げること;(ii)疾患又は障害を軽減する、即ち障害を後退させること;(iii)障害の進行を遅らせること;及び/又は(iv)疾患又は障害の1つ若しくは複数の症状の進行を抑制、軽減する、又は遅らせること、を含む。いくつかの実施形態では、治療は、疾患に関連する症状を、例えば改善、軽減する、治癒させる、又は寛解状態に置くことを意味する。
本明細書に記載する障害の治療又は予防の様々な態様は、完全な治療だけでなく完全な治療未満も含み、何らかの生物学的又は医学的に関連する結果が達成される「実質的」を意味すると意図されることも理解されたい。治療は、慢性疾患の継続的な長期治療でも、急性状態の治療のための単回若しくは数回の投与であってもよい。
肺動脈性肺高血圧症(PAH)
PAHは、心臓から肺に血液を運ぶ血管である肺動脈の血圧の異常な高さ(高血圧)を特徴とし、肺高血圧症(PH)として知られる上位状態の一形態である。
PAHは、血管収縮、中膜肥厚、細胞増殖、線維症、複雑な病変(叢状病変)、及びin situ血栓症を特徴とする。肺動脈の変化は、肺動脈の3つの層、即ち外膜、中膜、及び内膜の全てで生じる。PAHの重要な病理学的変化には、血管収縮、動脈リモデリング/炎症、叢状病変、及び血栓性病変がある。血管収縮によって内腔が狭まり、内弾性板がきつく折り畳まれ、そのひだに内皮細胞が挟まれる。動脈リモデリング及び炎症は、平滑細胞と線維芽細胞の増殖や移動、及びリンパ組織新生による新生内膜形成と共に、外膜と中膜の肥厚を引き起こす。肺血管収縮が長期化すると、血管収縮物質(エンドセリン)濃度の増加、及び血管拡張物質(一酸化窒素やプロスタサイクリン)の産生低下を特徴とする内皮機能不全に至る。こうした機構に基づいて、PAHの発症に関与する因子を抑制する薬剤が開発されている。PAHはまれであり、BMPR2、5-HTT、及びアクチビン様キナーゼI型受容体における変異など、素因となる遺伝要因と関連している。
PAHの徴候及び/又は症状には、労作性持続性呼吸困難、胸痛、めまい、労作性失神寸前状態/失神、動悸、疲労、脱力、拡張した肺動脈による左喉頭神経の圧迫に起因する声のかすれ、頸静脈怒張、肝頸静脈逆流、肝腫大、肝臓痛、下肢浮腫、腹水、全身性浮腫、肺動脈内膜線維症、肺動脈の内膜厚増加、筋性肺動脈の内膜過形成、肺動脈血栓病変、肺細動脈閉塞、肺血管剪定、肺動脈の叢状病変、右室収縮期圧の上昇、右室肥大の増加、肺血管過剰増殖、血清若しくは血漿中の脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の上昇(>180pg/mL)、及び血清若しくは血漿中のproBNPのN末端フラグメント(NT-proBNP)の上昇(≧1400pg/mL)があるがこれらに限定されない。
併存する他の基礎疾患に起因することの多い非特異的症状を伴う様々な病態生理学的・血行動態的機序によって起こるPAHの診断は特に難しく、そのため段階的アプローチが必要となる。通常は最初に病歴と身体検査を評価する。PAHを診断し、他の疾患を排除するために一般に実施される検査は、心エコー検査、血液検査、肺機能検査、胸部X線、肺血流スキャン、心電図検査(ECG)、及び6分間でどのくらい歩けるかを調べる「6分間歩行テスト」である。最終的に大部分の対象は、血管拡張検査を併う、又は伴わない心カテーテル法によって確認される。
リスク集団。BMPR2変異若しくはPAHを引き起こす可能性のある他の変異の保有が判明している罹患家族が複数人いる個人、又は結合組織病(CTD)若しくはHIVを有する個人は、ドプラ心エコー検査などの方法によるスクリーニングが推奨される。
身体検査。鑑別診断に役立ち得る徴候のいくつかに、狭心症、労作時呼吸困難、運動不耐性、疲労、及び失神の病歴があるが、関連する徴候はこれらに限らない。身体検査時にパルスオキシメトリの異常値、三尖弁逆流、下肢の浮腫、及び右心不全の徴候が認められた場合、その一部はPAHを示唆する徴候である可能性がある。これらの徴候のいずれかを呈する患者には、まず心エコー検査などの非侵襲的検査を実施する。
右心カテーテル検査(RHC)及び血管拡張検査。右心カテーテル検査は今なおPAHの診断基準である。重要な予後情報が得られる右心カテーテル検査は、肺毛細管楔入圧(PCWP)を測定して肺静脈高血圧を除外するために不可欠である。適切なPCWP追跡が得られない場合は、左室拡張末期圧を測定すべきである。更に、混合静脈飽和度を抽出し、心拍出量の測定値を得る必要がある。PAHの血行動態的定義は、平均肺動脈圧(mPAP)≧25mmHg、PCWP≦15mmHg、肺血管抵抗>3Wood単位である。
速効性で持続時間の短い血管拡張剤の投与によってmPAP及び肺血管抵抗が急激に低下する度合いは、血管平滑筋の収縮が高血圧状態に関与する程度を反映している。血管拡張反応はIPAHの治療に大きな影響を及ぼすため、大部分の患者では最初の心カテーテル検査時に血管拡張剤の試験を実施する必要がある。急性血管拡張試験には、エポプロステノールの静脈内投与、アデノシンの静脈内投与、及びNO吸入がよく用いられる。レトロスペクティブなデータに基づいて、この反応を有する患者はカルシウムチャネル遮断薬を用いた治療に対して有益な血行動態及び臨床反応を示す可能性が最も高いという観察から、良好な反応として一致した定義は、mPAPが少なくとも10mmHg低下して40mmHg以下の値になることである。この反応が得られない患者はカルシウムチャネル遮断薬による治療で改善する可能性が低いが、この反応が得られた患者では、カルシウムチャネル遮断薬による治療を行い、治療の安全性と有効性の両方について注意深く追跡してよい。血管拡張反応が顕著な場合は、疾患の初期段階又は質的に異なる疾患過程を反映している可能性がある。
PAHの現在の治療法
PAHの現在の治療選択肢には、支持療法及び疾患特異的療法がある。
支持療法
PAH患者の支持的管理では、経口抗凝固薬、利尿薬、酸素、ジゴキシン、及び貧血の管理が必要となることがある。右心不全と不動と併せて、凝固及び線維素溶解経路に異常があるため、特定の種類のPAHでは静脈血栓塞栓症の可能性がある。体液貯留、腹水、末梢性浮腫、及びその他の関連症状をもたらす非代償性右心不全の症状を有する患者では、利尿療法を考慮してもよい。酸素は末梢血管抵抗を低下させることが示されているが、長期治療が有益であるとは示されていない。慢性閉塞性肺疾患を有し、動脈血酸素圧が低く、症状改善が認められ、且つ労作時労作時脱飽和度の治療可能な患者では、酸素投与が推奨される場合がある。ジゴキシンはIPAHの心拍出量を改善し、動脈の頻脈性不整脈を有する患者の心拍数を遅くすることがある。PHでの慢性使用における有効性の証拠は不足している。この集団では鉄欠乏がよく見られるため、それが診断された場合には鉄分補給が推奨できる。理論的には、これらの患者では経口療法で吸収障害が生じるため、通常、経口療法よりも静脈内鉄分補給が好ましい。
標的/特異的薬物療法
現在のPAH特異的療法は、電位依存性カルシウムチャネル、L型カルシウムチャネル、一酸化窒素-サイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)、エンドセリン、及びプロスタサイクリンなどのPAH関連分子経路の構成要素を標的としている。
カルシウムチャネル遮断薬(CCB)。CCBは、血管拡張試験で良好な結果(例えば、RHC時の急性血管拡張試験に反応してmPAPが10~40mmHg低下し、心拍出量は低下しない)が記録されているPAH患者のみに指示される。こうした患者はまれで(全症例の5~10%)、様々な自然史を有し、CCB単独療法での5年生存率が90%である。CCBで治療した患者は、反応が適切か注意深くモニタリングし、症状が進行した場合はPAH特異的療法に移行すべきである。APAH患者では、CCBに対して長期的に適切な反応が得られることはまれである。
一酸化窒素刑を標的とする薬物。一酸化窒素は、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を活性化させてcGMPを産生する強力な肺血管拡張物質である。cGMPは、伝導度が高いカルシウム感受性カリウムチャネルBKcaを含む下流標的を活性化するcGMP依存性プロテインキナーゼによって、肺動脈平滑筋細胞(PASMC)の弛緩を引き起こす。PAH患者は、一酸化窒素を合成する内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の肺発現が低下し、cGMPを5’-GMPに分解するホスホジエステラーゼ5(PDE5)の発現が増加している。それによるcGMPの減少は、PAHにおける有害な肺血管リモデリングに関与している。PDE5阻害剤及びsGC刺激剤は一酸化窒素-cGMP経路を増強し、PAHの治療に認可されている。PAHにおける長期吸入一酸化窒素の安全性と有効性は第III相試験で評価中である(NCT02725372)。
PDE5阻害剤であるシルデナフィル及びタダラフィルは、PAHの治療に認可されている。PDE5阻害剤の主な副作用に、頭痛、潮紅、消化不良、及び鼻出血がある。
sGC刺激剤リオシグアトは一酸化窒素とは無関係にsGCを直接刺激し、cGMP及び肺血管拡張を増加させる。GC刺激剤及びPDE5阻害剤は、低血圧のリスクがあるため、同時に投与してはならない。しかし、PDE5阻害剤からsGC刺激剤に移行すると、PDE5阻害剤に対する反応が十分でない患者の運動能力と血行動態的が改善する。リオシグアトで最もよく見られる有害作用は、頭痛、めまい、低血圧、消化不良、及び胃食道逆流である。
エンドセリン受容体拮抗薬。エンドセリンは強力な血管収縮物質であり、平滑筋分裂促進因子である。エンドセリンA及びエンドセリンB受容体を通じて作用する。エンドセリンはPAH患者の肺及び血漿中で過剰発現する。内皮受容体拮抗薬(ERA)であるボセンタン、アンブリセンタン、及びマシテンタンはPAHに有効である。ERAの主な有害副作用に、肝毒性、末梢性浮腫、貧血、及び鼻閉がある。
プロスタサイクリン経路を標的とする薬物。プロスタサイクリン及びプロスタノイドは、環状アデノシン一リン酸の濃度を増加させ、非選択的肺血管拡張を引き起こすプロスタサイクリン(IP)受容体に結合する。これらは、抗血小板特性、抗血栓特性、抗増殖特性、及び抗炎症特性も有する。プロスタサイクリン発現は、PAH患者の肺では低下している。プロスタノイドにはエポプロステノール、トレプロスチニル、イロプロスト、及びベラプロストがあるがこれらに限定されない。セレキシパグは、IP受容体の経口投与可能な非プロスタノイド活性化剤である。
心房中隔欠損作成術及び肺移植。心房中隔欠損作成術は、左右の心房間シャントを作成して心拍出量を増加させるものであり、全身動脈血酸素飽和度が低下していても、全身の酸素運搬を増加させ、右心不全の徴候及び症状を抑制し得る。高度先進医療が利用できる場合、心房中隔欠損作成術は、治療にもかかわらず難治性右心不全又は失神/失神寸前を呈する患者を適切に選択した上で、改善措置又は肺移植への橋渡しとして使用される。最新の医療が利用できない地域では、心房中隔欠損作成術が一次治療として使用されることもある。この処置にはかなりのリスクが伴うため、経験豊富な術者のみが行うべきである。肺移植は、一般に、利用可能な最善の薬物療法に失敗した場合にのみ行われる。肺移植を受けたPAH患者の1年後の生存率は約66~75%である。殆どの施設では、両肺移植が選択される。心臓と肺の移植は、一般に、複雑な先天性心疾患を持つ患者にのみ行われる。
現在利用可能な治療があるにもかかわらず、PAHの予後は依然として不良であり、この疾患の治療法はまだ確立されていない。これまでのPAH治療は、こうした従来の薬物療法が、細胞機能に直接関与している下流経路を標的とし、これに作用するため限定的である。このような戦略は症状軽減をもたらすにすぎず、疾患の逆転や持続的な臨床反応は達成できない。更に、標的となる下流経路は飽和性であるため、一般に獲得耐性が生じ、無反応性の患者の大部分は侵襲的な肺移植を選択せざるを得ない。
本技術の組成物を使用したPAHの治療方法
一態様では、本開示は、必要とする対象において肺高血圧症を治療又は予防する方法であって、本技術の組成物の治療有効量(即ち、キナクリン又はそれらの薬学的に許容される塩)を対象に投与することを含む方法を提供する。キナクリンの化学構造は図1に示す。いくつかの実施形態では、対象は肺動脈性肺高血圧症(PAH)を有すると診断されている。いくつかの実施形態では、対象は特発性PAH(IPAH)、家族性PAH(FPAH)、又は各種疾患に伴うPAH(APAH)を有すると診断されている。追加的又は代替的に、いくつかの実施形態では、対象は、骨形成タンパク質受容体II型(BMPR2)、セロトニン(5-HTT)トランスポーター、及びアクチビン様キナーゼI型受容体(ALK-1)からなる群から選択される変異を有する。追加的又は代替的に、特定の実施形態では、対象は小児患者、高齢患者、免疫不全患者、女性患者、若しくは男性患者であり、及び/又はコーカソイド、南アジア人、東南アジア人、若しくは中東系である。
本明細書に開示する方法のあらゆる実施形態において、QAの投与は、PAHPAHの徴候若しくは症状を予防し、遅延させ、又は軽減する。いくつかの実施形態では、PAHの徴候又は症状は、労作性持続性呼吸困難、胸痛、めまい、労作性失神寸前状態/失神、動悸、疲労、脱力、拡張した肺動脈による左喉頭神経の圧迫に起因する声のかすれ、頸静脈怒張、肝頸静脈逆流、肝腫大、肝臓痛、下肢浮腫、腹水、全身性浮腫、肺動脈内膜線維症、肺動脈の内膜厚増加、筋性肺動脈の内膜過形成、肺動脈血栓病変、肺細動脈閉塞、肺血管剪定、肺動脈の叢状病変、右室収縮期圧の上昇、右室肥大の増加、肺血管過剰増殖、血清若しくは血漿中の脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の上昇(>180pg/mL)、及び血清若しくは血漿中のproBNPのN末端フラグメント(NT-proBNP)の上昇(≧1400pg/mL)のうち1つ又は複数を含む。
追加的又は代替的に、いくつかの実施形態では、対象は、キナクリン投与後に右室収縮期圧(RVSP)の低下及び/又は右室肥大(RVH)の軽減を示す。RVSPは、一般に、当業者には既知の右心カテーテル検査(上記参照)を用いて決定する。いくつかの実施形態では、対象はキナクリン投与後に、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のRVSP低下を示す。特定の実施形態では、対象はキナクリン投与後に、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のRVH軽減を示す。
追加的又は代替的に、対象はキナクリン投与後に、血管の筋性動脈化の減少及び/又は肺細動脈の内壁厚の減少を示す。いくつかの実施形態では、対象はキナクリン投与後に、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、少なくとも200%、少なくとも210%、少なくとも220%、少なくとも230%、少なくとも240%、少なくとも250%、少なくとも260%、少なくとも270%、少なくとも280%、少なくとも290%、少なくとも300%、少なくとも310%、少なくとも320%、少なくとも330%、少なくとも340%、少なくとも350%、少なくとも360%、少なくとも370%、少なくとも380%、少なくとも390%、少なくとも400%の内壁厚減少を示す。
追加的又は代替的に、対象はQAの投与後に、Ki67、増殖細胞核抗原(PCNA)、及びセルピン1などの過剰増殖バイオマーカーの発現低下を示す。追加的又は代替的に、対象はQAの投与後に、IL-6及び/又はActa2の発現低下を示す。
追加的又は代替的に、いくつかの実施形態では、本技術の方法は、1つ又は複数の追加的な治療薬を別個に、連続的に、又は同時に対象に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、追加的な治療薬は、エンドセリン受容体拮抗薬(ETRA)、グアニル酸シクラーゼ刺激薬、プロスタサイクリン類似体、ホスホジエステラーゼ(PDE)-5阻害剤、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、シクロスポリン、タクロリムス、ベスタチン、イマチニブ、カルシウムチャネル遮断薬(CCB)、ジクロロ酢酸(DCA)、トリメタジジン、ラノラジン、4-フェニルブチレート、タウロウルソデオキシコール酸、及びサルブリナルからなる群から選択される。
本明細書に開示する方法の任意の実施形態では、対象はヒトであり得る。
投与方法及び効果的な投与量
細胞、器官、又は組織とQAとの接触には、当技術分野で既知の方法を使用し得る。好適な方法に、in vitro、ex vivo、又はin vivo法がある。in vivo法は、通常、QA又はそれらの薬学的に許容される塩の、哺乳動物、好適にはヒトへの投与を含む。QA又はそれらの薬学的に許容される塩は、in vivoで治療に用いる場合、有効量(即ち、所望の治療効果を有する量)を対象に投与する。用量及び投与レジメンは、対象の疾患状態の程度、使用する特定の組成物の特徴、例えばその治療指数、対象、及び対象の病歴によって決まる。
有効量は、医師及び臨床医によく知られている方法によって、前臨床試験及び臨床試験中に決定し得る。方法において有用なQA又はそれらの薬学的に許容される塩の有効量は、医薬組成物の投与方法として既知の数多くの方法のいずれかによって、必要とする哺乳動物に投与し得る。QA又はそれらの薬学的に許容される塩を含む組成物は、全身又は局所に投与し得る。本明細書に開示する方法のあらゆる実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩は、経口、局所、鼻腔内、吸入、胸膜内、全身、静脈内、皮下、腹腔内、皮内、眼内、イオン導入、経粘膜、又は筋肉内投与される。
QAは薬学的に許容される塩として処方し得る。用語「薬学的に許容される塩」は、哺乳動物などの患者への投与に許容される塩基又は酸から調製される塩を意味する(例えば、既定の投与レジメンに対して哺乳動物の安全性が許容できる塩)。しかしながら、患者への投与を意図しない中間組成物の塩などの塩は薬学的に許容される塩である必要がないことが理解される。薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機又は有機塩基、及び薬学的に許容される無機又は有機酸に由来し得る。加えて、組成物が、アミン、ピリジン、又はイミダゾールなどの塩基性部分と、カルボン酸又はテトラゾールなどの酸性部分の両方を含む場合、双性イオンが形成されることがあり、これは本明細書で使用する用語「塩」に含まれる。薬学的に許容される無機塩基に由来する塩には、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、及び亜鉛塩などがある。薬学的に許容される有機塩基に由来する塩には、置換アミン、環状アミン、天然に存在するアミンなどを含む第一級、第二級、第三級アミン、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどがある。薬学的に許容される無機酸に由来する塩には、ホウ酸、炭酸、ハロゲン化水素酸(臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸、又はヨウ化水素酸)、硝酸、リン酸、スルファミン酸、及び硫酸の塩がある。薬学的に許容される有機酸に由来する塩には、脂肪族ヒドロキシル酸(例えば、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、及び酒石酸)、脂肪族モノカルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸、及びトリフルオロ酢酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸など)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、p-クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、ゲンチシン酸、馬尿酸、及びトリフェニル酢酸)、芳香族ヒドロキシル酸(例えば、o-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、1-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸、及び3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、及びコハク酸)、グルクロン酸、マンデル酸、ムチン酸、ニコチン酸、オロチン酸、パモ酸、パントテン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、樟脳スルホン(camphosulfonic)酸、エジシル(edisylic)酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸)、キシナホ酸などがある。
医薬組成物は、通常、投与の意図する経路に適合するように処方される。投与経路の例として、非経口(例えば、静脈内、皮内、腹腔内、又は皮下)、経口、吸入、経皮(局所)、眼内、イオン導入、及び経粘膜投与がある。
本明細書に記載する組成物又はそれらの薬学的に許容される塩は、本明細書に記載するPAHの治療又は予防として対象に単独又は併用で投与するために、医薬組成物に包含できる。そのような組成物は、通常、活性剤及び薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用する用語「薬学的に許容される担体」には、医薬品投与に適合する生理食塩水、溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、及び吸収遅延剤などがある。追加の活性組成物も組成物に包含できる。
例えば、LD50(集団の50%で致死的な用量)及びED50(集団の50%で治療効果のある用量)を決定するために、任意の治療薬の投与量、毒性、及び治療有効性を、細胞培養又は実験動物における標準的な製薬手順によって決定できる。毒性効果と治療効果の用量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。治療指数が高い組成物が有利である。毒性の副作用を示す組成物を使用してもよいが、非感染細胞に損傷を与える可能性を最小限にして副作用を低減するために、このような組成物を罹患組織の部位に向ける送達システムをデザインするよう気をつける必要がある。
細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトで使用する投与量の範囲を策定する際に使用できる。このような組成物の投与量は、殆ど又は全く毒性がない、ED50を含む循環濃度の範囲内とし得る。投与量は、採用する剤形及び利用する投与経路に応じて、この範囲内で変化してよい。方法で使用する任意の組成物について、治療上有効な用量は、最初に細胞培養アッセイから推定できる。細胞培養で決定したIC50(即ち、症状の半数阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルで用量を策定できる。このような情報は、ヒトにおける有用な用量を正確に決定するために使用できる。血漿中濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィーで測定してよい。
例示的な治療レジメンでは1日1回又は1週間に1回の投与を行う。治療用途では、疾患の進行が抑制される若しくは停止するまで、又は対象が疾患の症状の部分的若しくは完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高い投与量が必要となることがある。その後、患者には予防レジメンを投与できる。
通常、治療効果又は予防効果を得るのに十分な組成物の有効量は、約0.000001~約10,000mg/kg体重/日の範囲である。好適には、投与量は約0.0001~約100mg/kg体重/日の範囲である。例えば投与量は、毎日、1日おきに、若しくは2日おきに1若しくは10mg/kg体重、又は毎週、2週間ごとに、若しくは3週間ごとに1~10mg/kgの範囲内であり得る。一実施形態では、組成物の単回投与量は0.001~10,000μg/kg体重の範囲である。一実施形態では、担体中の組成物濃度は0.2~2000μg/mm送達の範囲である。例示的な治療レジメンでは、1日1回又は1週間に1回の投与を行う。治療用途では、疾患の進行が抑制される若しくは停止するまで、又は対象が疾患の症状の部分的若しくは完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高い投与量が必要となることがある。その後、患者には予防レジメンを投与できる。
いくつかの実施形態では、組成物の治療有効量は、標的組織における組成物の濃度が10-12~10-6モル、例えば、およそ10-7モルと定義し得る。この濃度は、0.001~100mg/kgの全身用量、又は体表面積による相当用量で送達し得る。用量の計画は、1日1回又は1週間に1回の投与などにより、ただし継続投与も含み、標的組織で治療濃度が維持されるように最適化されよう(例えば、非経口注入又は経皮投与)。
当業者は、疾患又は障害の重症度、以前の治療、対象の全体的な健康及び/又は年齢、並びに存在する他の疾患を含むがこれらに限定されない特定の要因が、対象を効果的に治療するために必要な投与量及びタイミングに影響し得ることを理解するであろう。更に、本明細書に記載の治療組成物の治療有効量による対象の治療は、単回の治療又は一連の治療を含み得る。
本発明の方法に従って治療される哺乳動物は、例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、及びウマなどの家畜、イヌ及びネコなどの愛玩動物、ラット、マウス、及びウサギなどの実験動物を含む任意の哺乳動物であり得る。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
治療及び/又は予防用途では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を含む組成物を対象に投与する。いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を約1~約15mg/kgの有効量で投与する。特定の実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を約1mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約3.5mg/kg、約4mg/kg、約4.5mg/kg、約5mg/kg、約5.5mg/kg、約6mg/kg、約6.5mg/kg、約7mg/kg、約7.5mg/kg、約8mg/kg、約8.5mg/kg、約9mg/kg、約9.5mg/kg、約10mg/kg、約10.5mg/kg、約11mg/kg、約11.5mg/kg、約12mg/kg、約12.5mg/kg、約13mg/kg、約13.5mg/kg、約14mg/kg、約14.5mg/kg、又は約15mg/kgの有効量で投与する。追加的又は代替的に、いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を約1~約10μMの有効量で投与する。特定の実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を約1μM、約1.5μM、約2μM、約2.5μM、約3μM、約3.5μM、約4μM、約4.5μM、約5μM、約5.5μM、約6μM、約6.5μM、約7μM、約7.5μM、約8μM、約8.5μM、約9μM、約9.5μM、又は約10μMの有効量で投与する。列挙した値の中間の値及び範囲も本開示の一部とみなされる。
いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を1日に1、2、3、4、又は5回投与する。いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を1日に6回以上投与する。追加的又は代替的に、いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を毎日、1日おき、2日おき、3日おき、4日おき、又は5日おきに投与する。いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を毎週、2週間ごとに、3週間ごとに、又は毎月投与する。いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を1、2、3、4、又は5週間にわたって投与する。いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を6週間以上投与する。いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を12週間以上投与する。いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を1年未満の期間にわたって投与する。いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を1年以上の期間にわたって投与する。いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を対象の生涯にわたって投与する。
いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を1週間以上にわたって毎日投与する。本技術の方法のいくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を2週間以上にわたって毎日投与する。本技術の方法のいくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を3週間以上にわたって毎日投与する。本技術の方法のいくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を4週間以上にわたって毎日投与する。本技術の方法のいくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を6週間以上にわたって毎日投与する。本技術の方法のいくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を12週間以上にわたって毎日投与する。いくつかの実施形態では、QA又はそれらの薬学的に許容される塩を対象の生涯にわたって毎日投与する。列挙した値の中間の値及び範囲も本開示の一部とみなされる。
以下の実施例によって本技術を更に説明するが、これらはいかなる形でも限定的に解釈されるべきではない。
(実施例1)
方法及び材料
PAH患者から初代ヒトPASMCを単離する。これらの試験には、具体的には肺高血圧症ブレークスルー・イニシアチブ(PHBI)から得たSMC IIのヒトPASMC(患者ID:L164)を使用した。
細胞毒性
病変IPAH SMC II(患者ID:L164)細胞に対するQAの細胞毒性解析を、CellTiter-Blue(登録商標)細胞生存率アッセイ(Promega、米国ウィスコンシン州マディソン)を用いて実施した。簡潔に説明すると、90%コンフルエントになった時点でSMC II細胞を回収し、TC処理した96ウェルプレートに細胞2500個/ウェルの密度で播種して一晩付着させた。翌日、様々な濃度のQA(0.15~50μM)で細胞を処理した。製造業者の手順書に従って、24時間後に細胞生存率を測定した。簡潔に説明すると、20μLのCellTiter-Blue(登録商標)アッセイ試薬を処理ウェルに添加し、プレートを37℃/5%CO2で2時間インキュベートした後、540ex/590emで蛍光を評価した。各処理群の細胞生存率(%)を、未処理の細胞の対照群と比較して計算した。データはSMC IIについてn=6から平均した。
標準細胞増殖
病変IPAH SMC II(患者ID:L164)細胞の細胞増殖を、CyQUANT(登録商標)Direct細胞増殖アッセイ(ThermoFisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)を用いて評価した。簡潔に説明すると、90%コンフルエントになった時点でSMCを回収し、TC処理した96ウェルプレートに細胞1000個/ウェルの密度で播種して一晩付着させた。
様々な濃度のQA(1.5、3.1、及び6.2μM)でヒト又はウシPASMCを処理した。細胞増殖は、1、3、及び5日目に製造業者の手順書に従って測定した。簡潔に説明すると、核酸染色とバックグラウンドサプレッサーの混合試薬をPBSに添加した後、その混合物を処理ウェルに添加した(100μL/ウェル)。プレートを37℃/5%CO2で1時間インキュベートした後、485ex/535emで蛍光を評価した。増殖阻害は各時点で対照ウェルと比較して解析した。データは、SMC IIについてはn=6の2試験から、SMC IIIについてはn=4の1試験から平均した。
細胞飢餓後の増殖
簡潔に説明すると、病変IPAH SMC II細胞をTC処理した96ウェルプレートのFBSに富む培地に播種し、一晩付着させた。翌日、FBSに富む培地をFBS飢餓培地(0%FBS)に置き換えた。細胞を更に37℃/5%CO2で24時間インキュベートした後、FBS飢餓培地で希釈した様々な濃度のQA(1.5、3.1、及び6.2μM)で処理した。細胞増殖は本明細書に記載するように測定した。
細胞取り込み
細胞取り込み試験を実施し、QAの病変IPAH SMC-II細胞内移行を可視化した。この試験は、主に受動拡散によって細胞膜を通り抜けるQAの能力を実証するものである。簡潔に説明すると、SMC-II細胞をトリプシン処理し、TC処理した8チャンバーのカバーガラス(Eppendorf、米国ニューヨーク州ホーポージ)に播種した(細胞10,000個/チャンバー)。細胞をインキュベートし、一晩付着させた。翌日、増殖培地を吸引し、細胞をQA(5及び10μM)で処理した後、37℃/5%CO2で3時間インキュベートした。更に、4%パラホルムアルデヒド(PFA)を用いて細胞を10分間固定した。次いで、PFAを吸引し、チャンバーを氷冷PBSで3回洗浄した。次に、カバーガラスからチャンバーを慎重に取り除いた。顕微鏡用スライドにDAPIを含むVECTASHIELD HardSet封入剤(Vector Laboratories、米国カリフォルニア州バーリンゲーム)を載せて準備した後、気泡が入らないように、カバーガラスを反転させてスライドに載せた。続いて、スライドを4℃で一晩置いて封入剤を硬化させた。次いで、EVOS-FL(Thermo Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)蛍光細胞イメージングシステムで20倍レンスを用いて細胞を撮像した。
カスパーゼ3アッセイ
QAが罹患患者由来のPASMCにおける過剰増殖をうまく阻害することが確認されたことから、この再利用分子の潜在的な作用機序を特定するために、SMC-II細胞を用いて分子マーカー及び経路の解析を行った。SMC II細胞中のカスパーゼ3レベルは、EnzCheck(登録商標)カスパーゼ3アッセイキット(ThermoFisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)を用いて、製造業者の手順書に従って評価した。簡潔に説明すると、90%コンフルエントになった時点でSMC II細胞を回収し、TC処理した100mm培養皿に細胞250,000個/ウェルの密度で播種して一晩付着させた。翌日、細胞はQA(5及び10μM)で6時間処理した後に回収した。回収した細胞は、溶解バッファーを用いて氷上で30分間溶解した。細胞を遠心分離し、上清を用いて、カスパーゼ3基質アミノメチルクマリン(AMC)由来基質Z-DEVD-AMCのレベルを解析した(360ex/460emでの蛍光測定)。
アネキシンVアッセイ
ウシPASMCはFBSフリー培地で24時間血清飢餓させ、次いで、様々な濃度のQA(0、2.5、又は5μM)で24時間処理した。アネキシンVレベルはアネキシンV FITCアッセイキット(#600300,Cayman Chemical、ミシガン州アナーバー)を用いて製造業者の取扱説明書に従って測定した。
オートファジー阻害アッセイ
ウシPASMCはFBSフリー培地で24時間血清飢餓させ、次いで、様々な濃度のQA(0、2.5、又は5μM)で24時間処理した。オートファジー阻害(オートファゴソームとリソソームの融合)は、Cyto-ID(登録商標)オートファジー検出キット(Enzo Lifesciences Inc.、ニューヨーク州ファーミングデール)を用いて製造業者の取扱説明書に従って測定した。
オートファジー阻害アッセイ(LC3B-II発現)
ウシ高地PASMCを用いて、オートファジーマーカーであるLC3B-IIに対するQAの効果を、ウェスタンブロット(#3868S,LC3B(D11)XP Rabbitモノクローナル抗体、Cell Signaling、マサチューセッツ州ダンバース)によって決定した。
ITCH/AIP E3リガンド活性アッセイ
ITCH/AIP4 E3リガンド活性を直接阻害するQAの能力を評価するために、ユビキチンELISAキットUbiQuant(登録商標)(Life Sensors、ペンシルベニア州モルバーン)を製造業者の取扱説明書に従って使用した。ユビキチン存在下での複数の濃度(0、10、又は20μM)のQAによるリガンド活性阻害を定量化した。
肺動脈の可視化及び内壁厚の評価のための三重染色
QAを用いた治療期間の最後に動物を屠殺した。外科的に開胸してラット肺を露出させた。肺組織を回収し、盲検組織をReveal Bio(カリフォルニア州サンディエゴ)で5μm厚の切片にした。各動物につき2組織片を三重染色用に確保し、更に8つの切片をカスタム染色用にブランクで用意した。
三重染色を用いて組織片を染色し、全ての治療群と対照群について肺動脈を可視化した。染色した肺切片は、Axiocam506カラーカメラ及びZeiss Zen 2.3ソフトウェアを装備したZeiss Axio Scope A1顕微鏡を用いて撮像した。同様の大きさの肺動脈の内壁厚は、Motic BA210顕微鏡及びMotic Image plus 2.0ソフトウェアを用いて測定した。動物(n=2~5)ごとに5つの肺動脈壁を解析した。
MCTモデルの免疫蛍光
事前にモノクロタリン(MCT)誘発治療PAHモデルにおいて1日1回10mg/kgの用量でQAの前臨床in vivo試験を実施した。血行動態的パラメーターを収集し、肺組織も回収して、in vivoで様々なPAHバイオマーカーに対するQA治療の影響を可視化するために切片にした。
対照動物、MCT誘発PAH動物、及びQA治療動物のOCT化合物包埋組織片に更に免疫蛍光染色を行い、必須分子マーカーの発現レベルを解析した。簡潔に説明すると、組織片を1X PBSで2回洗浄した後に、ブロッキングバッファー(Cell Signaling Technology、米国マサチューセッツ州ダンバース)を用いて1時間ブロッキングした。ブロッキング後、組織片はそれぞれ一次抗体で一晩染色した;VWF #ab15419、1:100(abcam)、α-SMA #48938S、1:500(CST)、Ki67 #9129S(CST)、1:250、及びPCNA #2586S(CST)、1:100。翌日、組織片を1X PBSで2回洗浄した後、抗ウサギIgG(H+L)、F(ab’)2フラグメント(Alexa Fluor(R)488標識)#4412S 1:250(CST)及び抗マウスIgG(H+L)、F(ab’)2フラグメント(Alexa Fluor(R)594標識)#8890S、1:500(CST)で1時間インキュベートした。更に、組織片を1X PBSで2回洗浄し、DAPIを含むVECTASHIELD HardSet退色防止封入剤(Vector Laboratories、米国カリフォルニア州バーリンゲーム)を用いて核をDAPIで染色した。組織はZeiss Axioplan2蛍光顕微鏡(Carl Zeiss AG、ドイツ、イエナ)を用いて撮像した。
低酸素モデルの免疫蛍光
事前にSU5416/低酸素誘発予防/予防処置PAHモデルにおいて1日1回10mg/kgの用量でQAの前臨床in vivo試験を実施した。血行動態的パラメーターを収集し、肺組織も回収して、in vivoで様々なPAHバイオマーカーに対するQA治療の影響を可視化するために切片にした。
対照動物、低酸素誘発PAH動物、及びQA治療動物のパラフィン包埋組織片に更に免疫蛍光染色を行い、必須分子マーカーの発現レベルを解析した。組織片をキシレン溶液に3分間2回さらして組織の脱パラフィンを行った後、200プルーフの無水エタノール99.8%及びエタノール50%で洗浄した。組織は1X PBSで更に2回洗浄し、確実に脱パラフィンを行った。組織片の免疫蛍光染色についても同様のプロトコルに従った。
(実施例2)
QAが初代肺動脈平滑筋細胞(PASMC)におけるin vitroでのPH関連細胞過剰増殖を改善
まず、初代ヒトPASMCに対するQAのin vitro細胞毒性をCellTiter-Blueアッセイキットを用いて調べた。最大6.2μMのQA濃度で85%超の生存率が認められたため、6.2μM以下の濃度では安全と考えられる(図2)。ウシHAPASMCにおけるQAの細胞毒性も最大48時間試験し、細胞生存率が90%超であったことから、正常細胞における薬剤の安全性が示された(データは示さず)。
初代ヒトPASMC(図3)、初代ウシPASMC(図4)、及び高地PASMC(HAPASMC)(図4)を用いて、肺高血圧症に対するQAの抗増殖活性を測定するin vitro試験を実施した。長時間の低酸素曝露によるHAPASMCは、通常の培養条件で過剰増殖性であることが知られているが、PASMC細胞では24時間の血清飢餓、又は5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)への曝露によって過剰増殖が誘発された。結果から、QAは、マイクロモル以下の濃度(1.5~5.0μM)で、時間及び濃度依存的に、全ての試験モデル、即ち、初代ヒトPASMC(図3A)、血清飢餓ヒトPASMC(図3B)、生来的に高増殖性のウシHAPASMC(図4A)、血清飢餓ウシPASMC(図4B)、及び5-HT誘発ウシPASMC(図4C)において、肺動脈平滑筋細胞の増殖を有意に阻害することが示された。血管平滑筋細胞の過剰増殖は、PH病原の臨床進行の主な根本原因の1つであるため、これらの試験は、非毒性用量でPHの症状及び進行を逆転させるQAの治療可能性を明示している。
これらの結果は、キナクリンを含む組成物が、肺高血圧症を予防、改善、又は治療する方法及び/又は肺高血圧症に関連する1つ又は複数のリスク因子、徴候、若しくは症状の重症度を軽減する方法に有用であることを示している。
(実施例3)
QAは生来的にPASMC内に移行し、アポトーシスを誘導する
初代ヒトPASMCにおけるQAの細胞取り込みを調べた。細胞を8チャンバーのカバーガラスに播種し、QA(2.5~10μM)で3時間処理した。処理後、細胞を固定し、EVOS-FL蛍光顕微鏡を用いて撮像した。QA(緑色蛍光)は濃度依存的に、生来的に初代ヒトPASMC内に移行できることが観察された(図5)。
6時間の処理後、初代ヒトPASMCにおける細胞アポトーシスに対するQAの影響を理解するために、アポトーシス誘導アッセイ、即ちカスパーゼ3アッセイを実施した。QAがPASMC中のカスパーゼ3レベルを濃度依存的に増加させ、従って、QAのアポトーシス誘導が主な作用機序の1つであるという仮説が立証されることが観察された(図6A)。更に、別のアポトーシス誘導アッセイ、即ちアネキシンV FITCアッセイも用いて、血清飢餓ウシPASMCに対するQAの効果を測定した。同様に、QA処理により、濃度依存的に、アネキシン-V染色細胞の蛍光強度によって測定されるアポトーシス誘導が有意に増強した(図6B)。
これらの結果は、キナクリンを含む組成物が、肺高血圧症を予防、改善、又は治療する方法及び/又肺高血圧症に関連する1つ又は複数のリスク因子、徴候、若しくは症状の重症度を軽減する方法に有用であることを示している。
(実施例4)
QAはウシPASMCにおけるオートファジー過程を阻害する
QAによるオートファジー阻害(オートファゴソームとリソソームの融合)を調べた。ウシPASMCはFBSフリー培地で24時間血清飢餓させ、次いでQA(2.5及び5μM)で24時間処理した。オートファジー阻害はCyto-ID(登録商標)オートファジー検出キットで測定した。図7Aに示すように、QA処理によってオートファゴソームにおける蛍光色素の蓄積が有意に増強し、従って、オートファゴソームとリソソームの融合が阻害されることでオートファジー過程が阻害された。HAPASMCを用いて、LC3B-II発現を標的とすることによるQA誘導性オートファジー阻害を調べた。QA処理した高地PASMC細胞溶解物は、LC3B-II発現が2倍超増加することが観察された。これは、ウシHAPASMC細胞がPAH関連過剰増殖を模倣する能力があるため重要である(図7B、図9C)。
別の独立した試験では、オートファジー/アポトーシス経路を調節するQAの能力を血清飢餓ウシPASMC細胞においてin vitroで定量化し、同様の結果が観察された。図9Aに示すように、QA処理によってオートファゴソームにおける蛍光色素の蓄積が有意に増強し、従って、オートファゴソームとリソソームの融合が阻害されることでオートファジー過程が阻害された。QA処理は濃度依存的にアポトーシス誘導を濃度依存的に有意に増強した(アネキシンV FITC染色細胞の蛍光強度によって測定)(図9B)。
ITCH/AIP4 E3リガンド活性を直接阻害するQAの能力を評価するために、ユビキチンELISAキットを使用して、ユビキチン存在下でリガンド活性を阻害するQAの能力を、複数の濃度で定量化した。QAは、ITCH/AIP4 E3リガーゼによるポリユビキチン化全体を減少させる用量依存的な能力を示し、20μMの用量では、ITCH/AIP4活性に起因するポリユビキチン化全体を約25%減少させた(図8)。
これらの結果は、キナクリンを含む組成物が、肺高血圧症を予防、改善、又は治療する方法及び/又は肺高血圧症に関連する1つ又は複数のリスク因子、徴候、若しくは症状の重症度を軽減する方法に有用であることを示している。
(実施例5)
QAは、PHのモノクロタリン(MCT)誘発治療げっ歯類モデルにおいて、確立した疾患症状を改善し、疾患進行を防ぐ
PHに対するQAの治療活性を決定するために、肺高血圧症のモノクロタリン(MCT)誘発げっ歯類モデルで慢性血行動態試験を実施した。MCT誘発は十分に確立された予備モデルで、ラットにMCTの単回皮下注射を行い、3~4週間かけて慢性PH様症状を引き起こす。簡潔に説明すると、成体Sprague Dawley(SD)雄ラットにMCTを50mg/kgで皮下注射し、餌と水を自由に摂取できるようにして3週間収容した。3週間後から、1日1回のキナクリン皮下注射を10mg/kgで10日間実施した。10日目終了時に動物に麻酔をかけ、RVカテーテル法によって右室収縮期圧(RVSP)を決定し、心肺ブロックを摘出して右室肥大(RVH)を測定した。図10A及び10Bからわかるように、MCT投与によってRVSPが有意に上昇した(対照動物の29.8±0.6mmHgに対して74.1±0.7mmHg)。QAを投与すると、RVSPは39.9±1.8mmHgに有意に低下し(図10A)、PH進行を防ぐQAの有効性が強く示された。QA投与によって、肺動脈血管拡張に起因する右室の仕事量及び増殖の減少を示す指標である右室肥大(RVH)指数も、0.66±0.08(MCTのみ)から0.36±0.05(QA治療動物)に有意に軽減した(図10B)。これらの結果は、キナクリンが血管拡張特性を有するとは示されていなかったことを考えると予想外であり、キナクリンの有効性に関連する新規の抗PH機序の可能性を示唆している。
加えて、三重染色を用いて、MCT誘発PAH肺組織の肺組織片を調べた。染色した試料の顕微鏡画像は、MCT処理した肺細動脈の過剰なコラーゲン沈着及び筋肉壁形成を明確に示している(図11、赤色の枠内)。QA治療によって、肺細動脈におけるコラーゲン及び筋肉の沈着に有意な減少が観察され(図11)、これは血行動態的に測定された肺動脈圧の低下にも反映されている。MCT誘発PAH動物肺組織スライドの免疫蛍光イメージングも実施した。図12Aに示すように、QA治療動物では、PAH動物モデルで過剰発現が頻繁に観察される過剰増殖マーカーのうちの2つ、Ki67及びPCNA(増殖細胞核抗原)の発現低下が示された。一方、vWF(フォン・ヴィレブランド因子)又はα平滑筋アクチン(α-SMA)の発現については、QA治療動物では対照と比べて低下が見られなかった(図12B)。興味深いことに、vWF及びα-SMAの発現は、MCT誘発PAH動物においても変化しなかった(図12B)。
肺動脈の内壁厚は、三重染色した顕微鏡画像を用いて測定した。MCT誘発PAH動物組織片で肺動脈の内壁厚の有意な増加が見られたが(3倍超増加)、QA治療によって減少し、対照動物と比べて壁厚はほぼ正常に戻った(図13)。
これらの結果は、キナクリンを含む組成物が、肺高血圧症を予防、改善、又は治療する方法及び/又は肺高血圧症に関連する1つ又は複数のリスク因子、徴候、若しくは症状の重症度を軽減する方法に有用であることを示している。
(実施例6)
QAは予防SU5416/低酸素誘発ラットモデルにおけるPAHの発症及び進行を防ぐ
QAは予防SU5416/低酸素誘発PAHモデルでも試験し、同様に傑出した予防結果と最低限の毒性が示された。図14A~14Dからわかるように、動物はSU5416注射後に低酸素(10%O2)中に保持し、1日目から3週間にわたって10mg/kgのQAを1日1回投与した。3週間後に血行動態試験を実施した。QA投与によって、RVSP(45.6±7.9mmHgに対して対照は62.8±9.5mmHg、図14A)及びRVH指数(51.8±7.2に対して対照は68.3±11.4、図14B)が有意に低下した。QA治療では、血管の筋性動脈化(対照と比較して、完全に筋性動脈化した血管が3.5分の1、図14C)及び内壁厚(図14D)も有意に低下した。これらのデータは、PH症状の発現を防ぐQAの有効性を明示している。
加えて、三重染色では、SU5416/低酸素処理した肺細動脈における過剰なコラーゲン沈着及び筋肉壁形成を明確に示している(図15、赤色の枠内)。QA治療によって、肺細動脈におけるコラーゲン及び筋肉の沈着に有意な減少が観察され、これは血行動態的に測定された肺動脈圧の低下にも反映されている。
内壁厚測定値からは、QA治療を行ったSU5416/低酸素誘発PAH動物組織で肺動脈の内壁厚の有意な減少が示され、SU5416/低酸素誘発PAH動物組織片と比べて壁厚が約2分の1に減少した(図16)。SU5416/低酸素誘発PAH動物肺組織スライドの免疫蛍光イメージングから、QA治療動物が、SU5416/低酸素処理対照動物と比べて、Ki67及びPCNAの発現低下を示した一方で、vWF又はα-SMAの発現低下を示さなかったことがわかる(図17A、17B)。
これらの結果は、キナクリンを含む組成物が、肺高血圧症を予防、改善、又は治療する方法及び/又は肺高血圧症に関連する1つ又は複数のリスク因子、徴候、若しくは症状の重症度を軽減する方法に有用であることを示している。
(実施例7)
QAはS5416/低酸素誘発ラットモデルにおいて疾患を引き起こす複数の経路を調節することによってPHの進行を防ぐ
QAの治療効果に関与する発症機序を突き止めるために、リアルタイムPCR及びウエスタンブロット解析を用いてmRNA発現を定量化することにより、QAが様々なタンパク質の発現に及ぼす効果を解析した(図18A~18F)。SuHx PHモデルではBMPR2の発現が低下し、炎症性サイトカインの発現が促進されることが報告されている。mRNA解析では、QA治療動物でIL-6 mRNAレベルが減少したことが明らかとなった(図18A)。更に、QA治療動物でActa2遺伝子(α平滑筋アクチン)発現が低下した(図18B)。セルピン1(プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1)は、通常、低酸素時に過剰発現し、血管リモデリング及び叢状形成に関与している。QA治療によりセルピン1のmRNAレベルが減少した(図18C)。しかし、BMPR2発現に対応するId3 mRNAレベルは、QA治療によって有意に変化しなかった(図18D)。
キナクリンはオートファジーを阻害し、PH肺においてin vivoで内在性BMPR2を守る。治療有効性の機序を評価するために、ウェスタンブロットを用いて、SU5416/低酸素対照及びQA治療動物の右肺ホモジネートにおけるいくつかのタンパク質マーカーを定量化した(図18E、18F)。QA治療後、オートファジーマーカーのLC3B-II及びp62が細胞溶解物全体に蓄積しているのが観察された(図18E)。オートファジー経路により分解されるタンパク質であるp62の蓄積は、オートファジー阻害を示唆する。ウェスタンブロット試験から、QAでは対照動物と比べてBMPR2の蓄積が2倍超増大したことも明らかとなったのに対し(図18E)、mRNA解析ではBMPR2 mRNA発現に有意な変化は示されなかった。両結果をまとめると、これらの結果から、QA治療後のBMPR2の蓄積増加は、実質的に、リソソーム経路でのBMPR2タンパク質の分解をブロックするQAの能力の結果であり得ることが示される。この観察は、in vivoでのBMPR2発現及び産生の改善に焦点を合わせた従来のアプローチとは異なる代替的な治療戦略が示されているため重要である。図18D及び18Eに示すように、QAはBMPR2タンパク質産生を促進せず、内在性BMPR2タンパク質を分解から守るため、BMPR2発現全体を改善する。
更に、p21、p53、及びリン酸化p53の発現/蓄積を測定して、アポトーシスに対するQA治療の効果を観察した。QA治療によって、組織溶解物におけるp21タンパク質の発現が有意に増加した(図18F)。興味深いことに、QA治療によって、NF-kB発現の代替マーカーであり、優れた炎症マーカーであるp65も有意に減少し、抗PH有効性におけるQAの抗炎症能の役割が示唆された(図18F)。ホスホAKT及びホスホp65(NF-kBの分子マーカー)の発現も減少した。これらの結果は、PHに対するQAの多標的性の可能性を示唆している。
これらの結果は、キナクリンを含む組成物が、肺高血圧症を予防、改善、又は治療する方法及び/又は肺高血圧症に関連する1つ又は複数のリスク因子、徴候、若しくは症状の重症度を軽減する方法に有用であることを示している。
等価物
本技術は、本技術の個々の態様の単一の例示として意図される、本願に記載された特定の実施形態に関して限定されるべきではない。当業者には明らかなように、本技術は、その精神及び範囲から逸脱することなく、多くの修正及び変形が可能である。本技術の範囲内にある機能的に等価な方法及び装置は、本明細書に列挙したものに加えて、前述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修正及び変形は、本技術の範囲に入ることが意図されている。本技術は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、又は生物系に限定されず、当然のことながら変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図していないことも理解されたい。
更に、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群の観点から記載されている場合、当業者は、それによって本開示がマーカッシュ群の任意の個々の構成要素又は構成要素の下位群の観点からも記載されていることを認識するであろう。
当業者には理解されるように、あらゆる目的のために、特に記述説明を提供することに関して、本明細書に開示する全ての範囲は、あらゆる可能な部分範囲及びその部分範囲の組み合わせも包含している。任意の列挙した範囲は、同じ範囲が少なくとも2等分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分割されることを十分に説明し、可能にすると容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で検討する各範囲は、下部3分の1、中間3分の1、及び上部3分の1などに容易に分割できる。また、当業者には理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「よりも大きい」、「よりも小さい」などの全ての文言は、言及した数を含み、上述したように、続いて部分範囲に分割できる範囲を意味する。最後に、当業者には理解されるように、範囲は個々の構成要素を含む。従って、例えば、1~3個の細胞を有する群は、1、2、又は3個の細胞を有する群を指す。同様に、1~5個の細胞を有する群は、1、2、3、4、又は5個の細胞を有する群を指す。
本明細書で言及又は引用する全ての特許、特許出願、仮出願、及び出版物は、本明細書の明示的な教示と矛盾しない範囲で、全ての図及び表を含め、その全体が参照により援用される。

Claims (15)

  1. それを必要とする対象において肺高血圧症を治療又は予防する方法であって、キナクリン又はその薬学的に許容される塩の治療有効量を前記対象に投与することを含む方法。
  2. 前記対象が肺動脈性肺高血圧症を有すると診断されている、請求項1に記載の方法。
  3. 肺動脈性肺高血圧症の徴候又は症状が、労作性持続性呼吸困難、胸痛、めまい、労作性失神寸前状態/失神、動悸、疲労、脱力、拡張した肺動脈による左喉頭神経の圧迫に起因する声のかすれ、頸静脈怒張、肝頸静脈逆流、肝腫大、肝臓痛、下肢浮腫、腹水、全身性浮腫、肺動脈内膜線維症、肺動脈の内膜厚増加、筋性肺動脈の内膜過形成、肺動脈血栓病変、肺細動脈閉塞、肺血管剪定、肺動脈の叢状病変、右室収縮期圧の上昇、右室肥大の増加、肺血管過剰増殖、血清若しくは血漿中の脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の上昇(>180pg/mL)、及び血清若しくは血漿中のproBNPのN末端フラグメント(NT-proBNP)の上昇(≧1400pg/mL)のうち1つ又は複数を含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記対象がヒトである、請求項1~3のうちいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記キナクリン又はその薬学的に許容される塩が、経口、局所、鼻腔内、吸入、胸膜内、全身、静脈内、皮下、腹腔内、皮内、眼内、イオン導入、経粘膜、又は筋肉内投与される、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の方法。
  6. 1つ又は複数の追加的な治療薬を別個に、連続的に、又は同時に前記対象に投与することを更に含む、請求項1~5のうちいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記追加的な治療薬が、エンドセリン受容体拮抗薬(ETRA)、グアニル酸シクラーゼ刺激薬、プロスタサイクリン類似体、ホスホジエステラーゼ(PDE)-5阻害剤、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、シクロスポリン、タクロリムス、ベスタチン、イマチニブ、カルシウムチャネル遮断薬(CCB)、ジクロロ酢酸(DCA)、トリメタジジン、ラノラジン、4-フェニルブチレート、タウロウルソデオキシコール酸、及びサルブリナルからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記対象が、キナクリン投与後に右室収縮期圧(RVSP)の低下及び/又は右室肥大(RVH)の軽減を示す、請求項1~7のうちいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記対象が、キナクリン投与後に血管の筋性動脈化の減少及び/又は肺細動脈の内壁厚の減少を示す、請求項1~8のうちいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記キナクリンが1週間以上にわたって毎日投与される、請求項1~9のうちいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記肺動脈性肺高血圧症が、特発性PAH(IPAH)、家族性PAH(FPAH)、又は各種疾患に伴うPAH(APAH)である、請求項2~10のうちいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記対象が、骨形成タンパク質受容体II型(BMPR2)、セロトニン(5-HTT)トランスポーター、及びアクチビン様キナーゼI型受容体(ALK-1)からなる群から選択される変異を有する、請求項1~11のうちいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記対象が、小児患者、高齢患者、免疫不全患者、女性患者、又は男性患者である、請求項1~12のうちいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記対象が、コーカソイド、南アジア人、東南アジア人、又は中東系である、請求項13に記載の方法。
  15. キナクリンの前記有効量が、約1~約15mg/kg又は約1~約10μMである、請求項1~14のうちいずれか一項に記載の方法。
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