JP2023532882A - レット症候群の処置のためのセマフォリン4d結合分子の使用 - Google Patents

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Abstract

セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量を対象に投与する段階を含む、レット症候群を有する対象において症状を軽減させる方法を、本明細書に提供する。

Description

配列表
本願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含有する。2020年6月24日に作成された該ASCIIコピーは、8555_039Z_SL.txtという名前であり、サイズは29,049バイトである。
開示の背景
レット症候群(RTT)は、主に、X連鎖遺伝子、メチルCpG結合タンパク質2(MECP2)の変異によって引き起こされる神経発達障害である。レット症候群は、主に、女児に影響し、ダウン症候群に次いで2番目に多い重度知的障害の原因であり、出生10,000例当たり1例という発生率を有する。患者は、認知能力障害および身体能力障害に苦しみ、その大部分が車椅子および常時介護を必要とする。現在のところ、治療法はないが、生後6~18ヶ月からの遅発は、治療的介入の貴重な好機を提供する。実験モデルであるMecp2欠損マウスが、前臨床研究のために利用可能である。RTTの研究への重要な貢献は、Mecp2欠損マウスにおいて、アストロサイトにおいて優先的に、MeCP2を再発現させることによって、包括的ヌルマウス(globally null mice)と比較して、自発運動および不安のレベルが有意に改善され、呼吸異常が正常パターンに回復し、寿命が大幅に延長されるという概念実証である。これらの研究は、ニューロンと同様に、グリアも、RTTの神経病理の不可欠な成分であることを示した(Lioy et al.,Nature,475(7357):497-500(2012)(非特許文献1))。変異マウスにおいてMecp2発現を回復させたところ、「レット様表現型」からの劇的な回復がもたらされたという画期的な成果は、治療法を見出す意欲を増加させた。しかしながら、障害に関連する症状を緩和するレット症候群の処置は、必要とされたままである。
Lioy et al.,Nature,475(7357):497-500(2012)
開示の概要
レット症候群を有する対象における症状を緩和するため、セマフォリン4D(SEMA4D)結合分子を使用する方法が、本明細書に開示される。本明細書に例示される本開示の局面によると、SEMA4Dと特異的に結合し、疾患進行に対するSEMA4Dの効果を阻害し、抑制し、防止し、逆転させ、または遅延させる有効量の単離された結合分子を対象へ投与する工程を含む、レット症候群を有する対象における症状を改善する方法が提供される。
本明細書に例示される局面によると、SEMA4Dと特異的に結合する有効量の単離された結合分子を対象へ投与する工程を含む、レット症候群を有する対象を処置する方法が提供され、ここで、SEMA4Dとの結合は、障害に関連する症状を改善するよう作用する。
SEMA4Dと特異的に結合する有効量の単離された結合分子を対象へ投与する工程を含む、レット症候群を有する対象における症状を緩和する方法が提供される。本法のある特定の態様において、結合分子は、SEMA4Dとその受容体またはその受容体の一部分との相互作用を阻害する。本法のある特定の態様において、受容体は、プレキシンB1、プレキシンB2、およびCD72からなる群より選択される。本法のある特定の態様において、結合分子は、SEMA4Dによって媒介されるプレキシンB1シグナル伝達を阻害する。本法のある特定の態様において、単離された結合分子は、VX15/2503、Mab D2517、D2585、およびMAb 67からなる群より選択される基準モノクローナル抗体と同じSEMA4Dエピトープと特異的に結合する。本法のある特定の態様において、単離された結合分子は、VX15/2503、Mab D2517、D285、およびMAb 67からなる群より選択される基準モノクローナル抗体のSEMA4Dとの特異的結合を競合的に阻害する。本法のある特定の態様において、単離された結合分子は、抗体またはその抗原結合断片を含む。本法のある特定の態様において、抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体VX15/2503またはMAb 67である。本法のある特定の態様において、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:3、4、および5をそれぞれ含むVHCDR1~3を含む可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO:8、9、および10をそれぞれ含むVLCDR1~3を含む可変軽鎖(VL)とを含む。本法のある特定の態様において、VHおよびVLは、それぞれ、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:11、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:12、またはSEQ ID NO:21およびSEQ ID NO:25を含む。本法のある特定の態様において、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、およびSEQ ID NO:24をそれぞれ含むVHCDR1~3を含む可変重鎖と、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、およびSEQ ID NO:28をそれぞれ含むVLCDR1~3を含む可変軽鎖とを含む。
前述の方法のいずれか1つのある特定の態様において、処置される症状は、精神神経症状、認知症状、運動機能障害、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。前述の方法のいずれかのある特定の態様において、対象は、第1期レット症候群を有する。ある特定の態様において、精神神経症状の緩和は、不安様行動の低減、睡眠障害の減少、激越の低減、不穏状態の低減、およびそれらの任意の組み合わせを含む。ある特定の態様において、緩和される症状は、精神神経症状、認知症状、身体発達の遅延、コミュニケーション発達の遅延、コミュニケーション技能の喪失、運動機能障害、睡眠障害、不規則な心拍、反復的な痙攣的(jerky)動作、身体振戦、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。ある特定の態様において、症状の緩和は、不安様行動の防止または低減、認知の増加、協調運動の増加、自発運動の増加、身体発達の進行、身体振戦の減少、反復動作の減少、運動技能の増加、コミュニケーション技能の増加、睡眠障害の減少、激越の減少、不穏状態の減少、およびそれらの任意の組み合わせを含む。
ある特定の態様において、対象は、レット症候群の第2期、第3期、または第4期にある。ある特定の態様において、第2期、第3期、または第4期の対象は、精神神経症状、認知症状、身体発達の遅延、運動機能障害、不規則な心拍および呼吸、コミュニケーション技能の減少、脊柱側弯症、睡眠障害、てんかん発作、胃腸問題、反復的な痙攣的動作、身体振戦、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される症状を示す。ある特定の態様において、症状の緩和は、不安様行動の低減、認知の増加、協調運動の増加、自発運動の増加、身体発達の進行、身体振戦の減少、反復動作の減少、運動技能の増加、コミュニケーション技能の増加、睡眠障害の減少、激越の減少、不穏状態の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
図1は、行動試験のために使用された加速式ロータロッド装置を示す。 図2は、行動試験のための高架式十字迷路装置を示す。 図3は、呼吸パターンを試験するための全身プレチスモグラフィ装置を示す。 図4Aは、Mecp2マウスの後肢抱え込み(hindlimb clasping)を、0(抱え込みなし)から2(最も重度)までのスケールで示す。 図4Bは、対照抗体によって処置された4週齢野生型マウス(黒丸、WT)、対照抗体によって処置された4週齢(発症前)Mecp2マウス(黒四角、P)、および抗SEMA4D抗体によって処置された4週齢(発症前)MeCP2マウス(黒三角、T)の後肢抱え込みの程度を示す。* WT対P、~ WT対T、P対T(WT=対照抗体によって処置された野生型マウス;P=対照抗体によって処置されたレットマウス;T=抗SEMA4D抗体によって処置されたレットマウス)。*~、および p≦0.05;**~~、および∧∧ p≦0.01;***~~~、および∧∧∧ p≦0.001。 図5は、同齢の対照抗体によって処置された野生型マウス(黒丸、WT)、対照抗体によって処置された発症前Mecp2マウス(黒四角、P)、および抗SEMA4D抗体によって処置された発症前Mecp2マウス(黒三角、T)が示した全身振戦を示すグラフである。* WT対P、~ WT対T、P対T(WT=対照抗体によって処置された野生型マウス;P=対照抗体によって処置されたレットマウス;T=抗SEMA4D抗体によって処置されたレットマウス)。*~、および p≦0.05;**~~、および∧∧ p≦0.01;***~~~、および∧∧∧ p≦0.001。 図6は、10週にわたる加速式ロータロッド装置における同齢の発症前マウスおよび野生型マウスの自発運動および協調運動の技能の試験の結果を示すグラフである:対照抗体によって処置された4週齢野生型マウス(黒丸、WT)、対照抗体によって処置された4週齢(発症前)Mecp2マウス(黒四角、P)、および抗SEMA4D抗体によって処置された4週齢(発症前)Mecp2マウス(黒三角、T)。* WT対P、~ WT対T、P対T(WT=対照抗体によって処置された野生型マウス;P=対照抗体によって処置されたレットマウス;T=抗SEMA4D抗体によって処置されたレットマウス)。*~、および p≦0.05;**~~、および∧∧ p≦0.01;***~~~、および∧∧∧ p≦0.001。 図7は、10週にわたる高架式十字迷路(EPM)装置を使用した同齢の発症前Mecp2マウスおよび野生型マウスの認知試験の結果を示すグラフである。図7Aは、装置のオープンアームエリアにおいて費やされた時間量のパーセンテージを示す。図7Bは、装置のオープンアームエリアへの進入回数のパーセンテージを示す:対照抗体によって処置された4週齢野生型マウス(黒丸、WT)、対照抗体によって処置された4週齢(発症前)Mecp2マウス(黒四角、P)、および抗SEMA4D抗体によって処置された4週齢(発症前)Mecp2マウス(黒三角、T)。* WT対P、~ WT対T、P対T(WT=対照抗体によって処置された野生型マウス;P=対照抗体によって処置されたレットマウス;T=抗SEMA4D抗体によって処置されたレットマウス)。*~、および p≦0.05;**~~、および∧∧ p≦0.01;***~~~、および∧∧∧ p≦0.001。 図8は、9週にわたる同齢の野生型マウスおよびMecp2マウスの全身プレチスモグラフィ試験の結果を示すグラフである。図8Aは吸気期間を示し;図8Bは呼気期間を示す:対照抗体によって処置された4週齢野生型マウス(黒丸、WT)、対照抗体によって処置された4週齢(発症前)Mecp2マウス(黒四角、P)、および抗SEMA4D抗体によって処置された4週齢(発症前)Mecp2マウス(黒三角、T)。* WT対P、~ WT対T、P対T(WT=対照抗体によって処置された野生型マウス;P=対照抗体によって処置されたレットマウス;T=抗SEMA4D抗体によって処置されたレットマウス)。*~、および p≦0.05;**~~、および∧∧ p≦0.01;***~~~、および∧∧∧ p≦0.001。 図8Aの説明を参照のこと。 図9は、対照抗体によって処置された8週齢野生型マウス(黒丸、WT)、対照抗体によって処置された8週齢(発症前)Mecp2マウス(黒四角、P)、および抗SEMA4D抗体によって処置された8週齢(発症前)Mecp2マウス(黒三角、T)の後肢抱え込みを示すグラフである。* WT対P、~ WT対T、P対T(WT=対照抗体によって処置された野生型マウス;P=対照抗体によって処置されたレットマウス;T=抗SEMA4D抗体によって処置されたレットマウス)。*~、および p≦0.05;**~~、および∧∧ p≦0.01;***~~~、および∧∧∧ p≦0.001。 図10は、同齢の対照抗体によって処置された野生型マウス(黒丸、WT)、対照抗体によって処置された8週齢有症状Mecp2マウス(黒四角、P)、および抗SEMA4D抗体によって処置された有症状Mecp2マウス(黒三角、T)が示した全身振戦を示すグラフである。* WT対P、~ WT対T、P対T(WT=対照抗体によって処置された野生型マウス;P=対照抗体によって処置されたレットマウス;T=抗SEMA4D抗体によって処置されたレットマウス)。*~、および p≦0.05;**~~、および∧∧ p≦0.01;***~~~、および∧∧∧ p≦0.001。 図11は、10週にわたる加速式ロータロッド装置における同齢の有症状マウスおよび野生型マウスの自発運動および協調運動の技能の試験の結果を示すグラフである:対照抗体によって処置された8週齢野生型マウス(黒丸、WT)、対照抗体によって処置された8週齢(有症状)Mecp2マウス(黒四角、P)、および抗SEMA4D抗体によって処置された8週齢(有症状)Mecp2マウス(黒三角、T)。* WT対P、~ WT対T、P対T(WT=対照抗体によって処置された野生型マウス;P=対照抗体によって処置されたレットマウス;T=抗SEMA4D抗体によって処置されたレットマウス)。*~、および p≦0.05;**~~、および∧∧ p≦0.01;***~~~、および∧∧∧ p≦0.001。 図12は、10週にわたる高架式十字迷路(EPM)装置を使用した同齢の有症状MeCP2マウスおよび野生型マウスの認知試験の結果を示すグラフである。図12Aは、装置のオープンアームエリアにおいて費やされた時間量のパーセンテージを示す 。図12Bは、装置のオープンアームエリアへの進入回数のパーセンテージを示す:対照抗体によって処置された8週齢野生型マウス(黒丸、WT)、対照抗体によって処置された8週齢(有症状)MeCP2マウス(黒四角、P)、および抗SEMA4D抗体によって処置された8週齢(発症前)MeCP2マウス(黒三角、T)。* WT対P、~ WT対T、P対T(WT=対照抗体によって処置された野生型マウス;P=対照抗体によって処置されたレットマウス;T=抗SEMA4D抗体によって処置されたレットマウス)。*~、および p≦0.05;**~~、および∧∧ p≦0.01;***~~~、および∧∧∧ p≦0.001。 図12Aの説明を参照のこと。 図13は、9週にわたる同齢の野生型マウスおよびMecp2マウスの全身プレチスモグラフィ試験の結果を示すグラフである。図13Aは吸気期間を示し;図13Bは呼気期間を示す:対照抗体によって処置された8週齢野生型マウス(黒丸、WT)、対照抗体によって処置された8週齢(発症前)Mecp2マウス(黒四角、P)、および抗SEMA4D抗体によって処置された8週齢(発症前)Mecp2マウス(黒三角、T)。* WT対P、~ WT対T、P対T(WT=対照抗体によって処置された野生型マウス;P=対照抗体によって処置されたレットマウス;T=抗SEMA4D抗体によって処置されたレットマウス)。*~、および p≦0.05;**~~、および∧∧ p≦0.01;***~~~、および∧∧∧ p≦0.001。 図14は、SEMA4D(CD100ポリクローナル抗体-Invitrogen-PA5-47711)およびニューロンマーカーHuC/HuD(HuC/HuDモノクローナル抗体(16A11)-Invitrogen:A-21271)について染色された、およそ8ヶ月齢の雌マウス(Mecp2T158Aおよび野生型同腹仔対照C57/BL6)に由来する脳のホルマリン固定パラフィン包埋切片を示す。海馬領域の代表的な画像が示される。図14A:SEMA4Dについて染色されたC57/BL6マウス。図14B:HuC/HuDについて染色されたC57/BL6マウス;図14C:SEMA4Dについて染色されたMecp2T158Aマウス;図14D:HuC/HuDについて染色されたMecp2T158Aマウス。
開示の詳細な説明
I. 定義
「1つの」(「a」または「an」)実体という用語は、1つまたは複数のその実体を指し;例えば、「抗SEMA4D抗体(an anti-SEMA4D antibody)」は、1つまたは複数の抗SEMA4D抗体を表すように理解されることに注意されたい。そのように、「1つの」、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書において互換的に使用することができる。
さらに、本明細書において使用される際、「および/または」とは、他方を含み、または他方を含まずに、2つの指定された特色または成分の各々を具体的に開示するものとして解釈されたい。従って、本明細書において「Aおよび/またはB」のような句において使用される際、「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むように意図される。同様に、「A、B、および/またはC」のような句において使用される際、「および/または」という用語は、以下の態様の各々を包含するように意図される:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
他に定義されない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は、本開示が関係している技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed., 2002, CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 3rd ed., 1999, Academic Press;およびthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised, 2000, Oxford University Pressが、本開示において使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
単位、接頭辞、および記号は、国際単位系 (SI)によって認められた形態で示される。数的な範囲は、範囲を定義する数を含む。他に示されない限り、アミノ酸配列は、左から右へ、アミノからカルボキシへの方向で記される。本明細書において提供される見出しは、明細書を全体として参照することによって入手され得る、開示の様々な局面を限定するものではない。従って、以下に定義される用語は、明細書全体を参照することによって、より完全に定義される。
本明細書において使用される際、「天然に存在しない」物質、組成物、実体、および/または物質、組成物、もしく実体の組み合わせ、またはその文法的な変化形は、「天然に存在する」と当業者によって十分に理解されているか、または「天然に存在する」と審査官もしくは行政機関もしくは司法機関によって決定もしくは解釈されているか、もしくは任意の時点で決定もしくは解釈される可能性のある、物質、組成物、実体、および/または物質、組成物、もしくは実体の組み合わせを明示的に除外するが、それらを除外するに過ぎない、条件的な用語である。
本明細書において使用されるように、「神経発達障害」という用語は、脳または中枢神経系の成長および発達の障害をさす。この用語は、個体が成長するにつれて進展する、即ち、障害の経過が時間と共に変化する、感情、学習能力、自己制御、運動制御、および記憶に影響する脳機能の障害をさす。レット症候群は、脳の発達の仕方に影響し、運動技能および発話の進行性の喪失を引き起こす、稀な遺伝性の神経発達障害(X連鎖神経発達障害)である。
本明細書において使用されるように、「レット症候群」(RTT)という用語は、ヒトにおいて約6~18ヶ月齢で最初に顕在化し、その後、まず、遅滞期があり、次いで、運動技能および言語技能の急速な退行が起こる進行性疾患をさす。レット症候群は、子供の生活のほぼ全ての局面:話す能力、歩く能力、食べる能力、さらには容易に呼吸する能力に影響する。症状には、言語、協調運動に関する問題、および反復動作が含まれる。より緩徐な成長、正常な運動および協調運動の喪失、コミュニケーション能力の喪失、異常な眼球運動、例えば、凝視、まばたき、斜視、または片目閉じ、呼吸問題、易刺激性、認知能力障害、不規則な心拍、ならびに通常より小さい頭囲が、しばしば、存在する。合併症には、てんかん発作、脊柱側弯症、および睡眠問題が含まれ得、呼吸問題も含まれ得る。レット症候群の最大の特徴は、ほぼ常時の反復的な手の動作である。しかしながら、影響される者は、種々の程度に影響され得る。一般に、障害は、障害が進行するにつれて、対象における特定の変化を含む、一続きの4つの「病期」で進展する。古典的なRTTを有する対象(主に、女児)は、一見正常な正常発達の時期を有し、約6~18ヶ月齢の時に、障害の初期の兆候が現れる。障害の第1期においては、発達の遅滞および/または遅延が起こり、対象は、期待される発達のマイルストーンを達成しなくなる。その後、1歳~4歳の間に、対象が、習得したコミュニケーションおよび社会化などの技能を喪失し、いくつかの微細運動および粗大運動の技能も喪失する、急速退行期である第2期が続く。さらに、頭部成長の減速が起こり得る。RTTの最大の特徴である常同的な手の動作が明らかになるのは、この時期である(Temudo,et al.(2007)Abnormal movements in Rett syndrome are present before the regression period:a case study.Mov.Disord.22,2284-2287;Einspieler et al.(2005)Is the early development of girls with Rett disorder really normal? Pediatr.Res.57,696-700)。第3期は、表現型が安定する退行後の病期である。この時期には、多くの対象が、凝視を発達させ、社会的意識を高める。第2期において失われた技能のうちのいくつかを部分的に再獲得することもある。最後の病期である第4期は、後期運動増悪期であり、数年~数十年続き得る。この病期は、可動性の低下、筋力低下、硬直、および痙縮を特徴とし、対象が高齢になるにつれ、ジストニアおよび手足変形が起こる。歩行不能になり得るが、凝視は一般的には改善され、反復的な手の動作は減少することがあり、認知、コミュニケーション、または手の技能は一般に衰退しない。
「治療的有効量」という用語は、対象または哺乳動物において疾患または障害を「処置する」ために有効である、抗体、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、有機低分子、または他の薬物の量を指す。神経発達障害の場合、治療的有効量の薬物は、障害の症状を軽減することができるか;症状の発生を減少させるか、低下させるか、遅延させるか、もしくは停止させることができるか;症状の重症度を減少させるか、低下させるか、遅延させることができるか;症状の顕在化を阻害すること、例えば、抑制するか、遅延させるか、防止するか、停止させるか、もしくは逆転させることができるか;障害に関連した症状のうちの1つもしくは複数をある程度まで和らげることができるか;罹患率および死亡率を低下させることができるか;生活の質を改善することができるか;またはそのような効果の組み合わせを有する。
本明細書において言及される際、「症状」という用語は、例えば、(1)精神神経症状、(2)認知症状、および(3)運動機能障害を指す。精神神経症状の例は、例えば、不安様行動、睡眠障害、および易刺激性を含む。認知症状の例は、例えば、学習および記憶の欠陥を含む。運動機能障害の例は、例えば、自発運動または協調運動障害または反復運動、例えば、手をもむなどの手の動きを含む。
「処置」または「軽減」または「改善」などの用語は、1)診断された病理学的状態または障害を治癒する、それを減速させる、その症状を減少させる、それを逆転する、および/またはその進行を停止させる治療的手段、ならびに2)標的とした病理学的状態または障害を予防する、および/またはその発症を緩徐化する防御的手段または予防的手段の両方を指す。従って、処置の必要がある人々は、既に障害を有する人々;障害を有する傾向がある人々;および障害が予防されるべき人々を含む。有益なまたは望ましい臨床結果は、検出可能であろうとまたは検出不可能であろうと、症状の軽減、疾患の程度の縮小、疾患の安定化(すなわち悪化させないこと)、疾患進行の遅延または緩徐化、疾患状態の改善または一時的緩和、および寛解(部分的であろうとまたは全体的であろうと)、あるいはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。「処置」とはまた、処置を受けていない場合に期待される生存と比較した際に延長した生存も意味することができる。処置の必要がある人々は、既に状態もしくは障害の症状を呈している人々および無症候性の対象を含む。
CD100としても公知のセマフォリン4D(SEMA4D)は、セマフォリン遺伝子ファミリーに属する膜貫通タンパク質(例えば、SEQ ID NO:1(ヒト);SEQ ID NO:2(マウス))である。SEMA4Dは、細胞表面にホモ二量体として発現されるが、細胞活性化によって、SEMA4Dは、タンパク質切断を介して細胞表面から放出され、可溶型タンパク質sSEMA4Dが生成される。sSEMA4Dも、生物学的活性を有する。Suzuki et al.,Nature Rev.Immunol.3:159-167(2003); Kikutani et al.,Nature Immunol.9:17-23(2008)を参照すること。SEMA4Dは、リンパ器官、例えば、脾臓、胸腺、およびリンパ節、ならびに非リンパ器官、例えば、脳、心臓、および腎臓において高レベルに発現されている。SEMA4Dは、神経系発達において軸索誘導タンパク質として重要な役割を果たしており、神経変性障害、自己免疫疾患、脱髄性疾患、およびある特定の癌の発症に関連付けられている。しかしながら、脳および脊髄を含む中枢神経系(CNS)の編成および機能、ならびにCNSによって制御される行動に対する、SEMA4Dシグナル伝達遮断の効果は、未だ解明されていない。CNSの変化は、対象の行動および生活の質に深刻な影響を及ぼすため、これは重要である。具体的には、そのような変化は、対象の精神神経医学的行動、認知行動、および運動技能に影響し得る。
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」により、それについて診断、予後診断、または治療が望ましい任意の対象、特に哺乳動物対象、例えばヒトが意味される。
本明細書において使用される際、「抗SEMA4D抗体の投与から恩恵を受けるであろう対象」および「処置の必要がある動物」などの句は、例えば、SEMA4Dポリペプチドの検出のために(例えば診断手順のために)使用される抗SEMA4D抗体もしくは他のSEMA4D結合分子の投与から、および/または、処置、すなわちレット症候群の発症の軽減または予防から恩恵を受けるであろう、哺乳動物対象などの対象を含む。
本開示の「結合分子」または「抗原結合分子」は、その最も広い意味において、抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。1つの態様において、結合分子は、SEMA4Dに、例えば、約150 kDaの膜貫通SEMA4Dポリペプチドまたは約120 kDaの可溶性SEMA4Dポリペプチド(一般的にsSEMA4Dと呼ばれる)に特異的に結合する。別の態様において、本開示の結合分子は、抗体またはその抗原結合断片である。別の態様において、本開示の結合分子は、抗体分子の少なくとも1個の重鎖CDRまたは軽鎖CDRを含む。別の態様において、本開示の結合分子は、1種または複数の抗体分子由来の少なくとも2個のCDRを含む。別の態様において、本開示の結合分子は、1種または複数の抗体分子由来の少なくとも3個のCDRを含む。別の態様において、本開示の結合分子は、1種または複数の抗体分子由来の少なくとも4個のCDRを含む。別の態様において、本開示の結合分子は、1種または複数の抗体分子由来の少なくとも5個のCDRを含む。別の態様において、本開示の結合分子は、1種または複数の抗体分子由来の少なくとも6個のCDRを含む。
本開示は、レット症候群として知られる神経発達障害を有する対象における症状を軽減させる方法であって、抗SEMA4D結合分子、たとえば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を、対象に投与する段階を含む方法に向けられる。天然に存在する抗体などの完全なサイズの抗体に具体的に言及しない限り、「抗SEMA4D抗体」という用語は、完全なサイズの抗体、およびそのような抗体の抗原結合断片、変異体、類似体、または誘導体、例えば、天然に存在する抗体、または免疫グロブリン分子、または操作された抗体分子、または抗体分子と類似した様式で抗原に結合する断片を包含する。
本明細書において使用される際、「ヒト」抗体または「完全ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、または、下記および例えばKucherlapatiらによる米国特許第5,939,598号に記載されるような、1種または複数のヒト免疫グロブリンの遺伝子導入動物であって、内因性の免疫グロブリンを発現しない動物から単離された抗体を含む。「ヒト」抗体または「完全ヒト」抗体は、少なくとも重鎖の可変ドメイン、または少なくとも重鎖および軽鎖の可変ドメインを含み、該可変ドメインがヒト免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を有する抗体もまた含む。
「ヒト」抗体または「完全ヒト」抗体は、本明細書において記載される抗体分子(例えば、VH領域および/またはVL領域)の変異体(誘導体を含む)を含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなり、抗体またはその断片がSEMA4Dポリペプチドまたはその断片もしくは変異体に免疫特異的に結合する、上記のような「ヒト」抗体または「完全ヒト」抗体もまた含む。アミノ酸置換を結果として生じる部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発を含むがこれらに限定されない、当業者に公知である標準的な技術を、ヒト抗SEMA4D抗体をコードするヌクレオチド配列中に変異を導入するために使用することができる。一部の態様では、変異体(誘導体を含む)は、参照VH領域、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VL領域、VLCDR1、VLCDR2、またはVLCDR3に対して、50アミノ酸未満の置換、40アミノ酸未満の置換、30アミノ酸未満の置換、25アミノ酸未満の置換、20アミノ酸未満の置換、15アミノ酸未満の置換、10アミノ酸未満の置換、5アミノ酸未満の置換、4アミノ酸未満の置換、3アミノ酸未満の置換、または2アミノ酸未満の置換をコードする。
ある特定の態様において、アミノ酸置換は、下記でさらに議論される保存的アミノ酸置換である。あるいは、変異を、飽和変異誘発などにより、コード配列のすべてまたは一部に沿って無作為に導入することができ、結果として生じた変異体を、活性(例えば、SEMA4Dポリペプチド、例えば、ヒト、マウス、またはヒトおよびマウス両方のSEMA4Dに結合する能力)を保持する変異体を同定するために生物学的活性についてスクリーニングすることができる。「ヒト」抗体または「完全ヒト」抗体のそのような変異体(またはその誘導体)は、「最適化された」または「抗原結合について最適化された」ヒト抗体または完全ヒト抗体と呼ぶこともでき、抗原に対して改善された親和性を有する抗体を含む。
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、本明細書において互換的に使用される。抗体または免疫グロブリンは、少なくとも重鎖の可変ドメインを含み、通常、少なくとも重鎖および軽鎖の可変ドメインを含む。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は、比較的よく理解されている。例えば、Harlow et al. (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (2nd ed.; Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照されたい。
本明細書において使用される際、「免疫グロブリン」という用語は、生化学的に区別することができる種々の広範なクラスのポリペプチドを含む。当業者は、重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として、それらの中にいくつかのサブクラス(例えばγ1~γ4)を伴って分類されることを認識するであろう。抗体の「クラス」をそれぞれIgG、IgM、IgA、IgG、またはIgEと決定することが、この鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2などは、十分に特徴決定されており、機能的特殊化を与えることが公知である。これらのクラスおよびアイソタイプの各々の修飾バージョンは、本開示を考慮して当業者が容易に識別可能であり、従って、本開示の範囲内である。すべての免疫グロブリンクラスが、明らかに本開示の範囲内であり、以下の議論は概して、IgGクラスの免疫グロブリン分子に向けられる。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量およそ23,000ダルトンの2個の同一の軽鎖ポリペプチド、および分子量53,000~70,000の2個の同一の重鎖ポリペプチドを含む。4本の鎖は典型的に、ジスルフィド結合により「Y」形態に連結され、軽鎖が、「Y」の口部から始まり可変領域を通して連続して、重鎖をひとまとめにする。
軽鎖は、カッパまたはラムダ(κ、λ)のいずれかとして分類される。各重鎖のクラスは、κ軽鎖またはλ軽鎖のいずれと結合しうる。概して、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞、または遺伝子操作された宿主細胞のいずれかにより生成される際、軽鎖および重鎖は互いに共有結合し、かつ2個の重鎖の「尾」部分は、共有ジスルフィド結合または非共有結合により互いに結合している。重鎖において、アミノ酸配列は、Y形態の叉状端のN末端から各鎖の底部のC末端までおよぶ。
軽鎖および重鎖は両方とも、構造的および機能的な相同性領域に分割される。「定常」および「可変」という用語は、機能的に使用される。この点において、軽鎖の可変ドメイン(VLまたはVK)および重鎖の可変ドメイン(VH)両方の部分は、抗原認識および特異性を決定することが、認識されるであろう。逆に、軽鎖の定常ドメイン(CL)および重鎖の定常ドメイン(典型的にはCH1、CH2、またはCH3)は、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合、補体結合などのような重要な生物学的特性を与える。慣例により、定常領域ドメインのナンバリングは、抗体の抗原結合部位またはアミノ末端からより遠くなるにつれて増大する。N末端部分が可変領域であり、C末端部分が定常領域である;CH3ドメインおよびCLドメインは典型的には、それぞれ重鎖および軽鎖のカルボキシ末端を含む。
上記に示されるように、可変領域は、抗体が抗原上のエピトープを選択的に認識し、かつ特異的に結合することを可能にする。すなわち、抗体のVLドメインおよびVHドメイン、またはこれらの可変ドメイン内の相補性決定領域(CDR)のサブセットは、組み合わさって、三次元の抗原結合部位を規定する可変領域を形成する。この4要素からなる抗体構造は、Yの各腕の末端に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位は、VH鎖およびVL鎖の各々上の3個のCDRにより規定される。いくつかの場合には、例えば、ラクダ科の種に由来するかまたはラクダ科の免疫グロブリンに基づいて操作されたある特定の免疫グロブリン分子は、完全な免疫グロブリン分子が軽鎖を有さず、重鎖のみからなり得る。例えば、Hamers-Casterman et al., Nature 363:446-448 (1993)を参照されたい。
天然に存在する抗体において、各抗原結合ドメイン中に存在する6個の「相補性決定領域」または「CDR」は、抗体が水性環境においてその三次元形態を呈する際に抗原結合ドメインを形成するように特異的に位置づけられる、アミノ酸の短い非隣接の配列である。「フレームワーク」領域と呼ばれる抗原結合ドメイン中のアミノ酸の残りの部分は、より低い分子間の可変性を示す。フレームワーク領域は、主としてβシート立体配座を採り、CDRは、βシート構造を連結し、いくつかの場合にはその一部を形成するループを形成する。従って、フレームワーク領域は、CDRを鎖間の非共有相互作用により正確な配向に位置づけることを提供する足場を形成するように作用する。位置づけられたCDRにより形成される抗原結合ドメインは、免疫反応性抗原上のエピトープに対して相補性の表面を規定する。この相補性の表面が、抗体のその同起源エピトープに対する非共有結合を促進する。それぞれCDRおよびフレームワーク領域を構成するアミノ酸は、正確に定義されているため(下記参照)、任意の所定の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインについて当業者が容易に同定することができる。
当技術分野内で使用される、および/または受け入れられる用語の2つまたはそれより多い定義がある場合には、本明細書において使用される用語の定義は、それとは反対に明示的に述べられない限り、そのような意味のすべてを含むように意図される。具体例は、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチド両方の可変領域内に見出される非隣接の抗原結合部位を記載するための、「相補性決定領域」(「CDR」)という用語の使用である。この特定の領域は、参照により本明細書に組み入れられる、Kabat et al. (1983) U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequences of Proteins of Immunological Interest"およびChothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)によって記載されており、定義は、互いに対して比較した際のアミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。それにもかかわらず、抗体またはその変異体のCDRに言及するためのいずれかの定義の適用は、本明細書において定義されかつ使用される用語の範囲内であることが意図される。上記で引用される参照文献の各々により定義されるCDRを包含する適切なアミノ酸残基を、比較として下記の表1に示す。特定のCDRを包含する正確な残基の数字は、CDRの配列およびサイズに応じて変動するであろう。当業者は日常的に、抗体の可変領域アミノ酸配列を考慮して、どの残基が特定のCDRを構成するかを決定することができる。
(表1)
Figure 2023532882000001
1表1におけるすべてのCDRの定義のナンバリングは、Kabatらにより示されるナンバリング慣例に従う(下記参照)。
Kabatらはまた、任意の抗体に適用可能である可変ドメイン配列についてのナンバリングシステムも定義した。当業者は、配列自体を超えるいずれの実験データにも頼ることなく、「Kabatナンバリング」のこのシステムを任意の可変ドメイン配列に明白に割り当てることができる。本明細書において使用される際、「Kabatナンバリング」とは、Kabat et al. (1983) U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequence of Proteins of Immunological Interest."により示されるナンバリングシステムを指す。別の方法で特定化されない限り、本開示の抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体における特定のアミノ酸残基の位置のナンバリングについての言及は、Kabatナンバリングシステムに従う。
本開示の抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、少なくとも1本の腕がSEMA4Dに特異的である多重特異性抗体および二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、またはキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab'およびF(ab')2、Fd、Fv、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VLドメインまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーにより産生された断片、ならびに抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書において開示される抗SEMA4D抗体に対する抗Id抗体を含む)を含むが、これらに限定されない。ScFv分子は当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号に記載されている。本開示の免疫グロブリンまたは抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2など)、またはサブクラスであり得る。
本明細書において使用される際、「重鎖部分」という用語は、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、重鎖部分を構成するポリペプチドは、VHドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中間部、および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはその変異体もしくは断片の、少なくとも1つを含む。例えば、本開示における使用のための結合ポリペプチドは、CH1ドメインを構成するポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、およびCH2ドメインを構成するポリペプチド鎖;CH1ドメインおよびCH3ドメインを構成するポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、およびCH3ドメインを構成するポリペプチド鎖、または、CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを構成するポリペプチド鎖を含んでもよい。別の態様において、本開示のポリペプチドは、CH3ドメインを構成するポリペプチド鎖を含む。さらに、本開示における使用のための結合ポリペプチドは、CH2ドメインの少なくとも一部(例えば、CH2ドメインのすべてまたは部分)を欠如していてもよい。上記に示されるように、これらのドメイン(例えば重鎖部分)は、アミノ酸配列において天然に存在する免疫グロブリン分子とは異なるように修飾されてもよいことが、当業者に理解されるであろう。
本明細書において開示されるある特定の抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体において、多量体の1本のポリペプチド鎖の重鎖部分は、多量体の2本目のポリペプチド鎖上のものと同一である。あるいは、本開示の重鎖部分を含有する単量体は、同一ではない。例えば、各単量体は、例えば二重特異性抗体を形成する、異なる標的結合部位を含んでもよい。
本明細書中で開示される方法における使用のための結合分子の重鎖部分は、異なる免疫グロブリン分子に由来してもよい。例えば、ポリペプチドの重鎖部分は、IgG1分子に由来するCH1ドメインおよびIgG3分子に由来するヒンジ領域を含むことができる。別の例において、重鎖部分は、部分的にIgG1分子に、および部分的にIgG3分子に由来するヒンジ領域を含むことができる。別の例において、重鎖部分は、部分的にIgG1分子に、および部分的にIgG4分子に由来するキメラヒンジを含むことができる。
本明細書において使用される際、「軽鎖部分」という用語は、免疫グロブリン軽鎖、例えば、κ軽鎖またはλ軽鎖に由来するアミノ酸配列を含む。一部の局面において、軽鎖部分は、VLドメインまたはCLドメインの少なくとも1つを含む。
本明細書において開示される抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、これらが認識するかまたは特異的に結合する抗原、例えば、本明細書において開示される標的ポリペプチド(例えばSEMA4D)のエピトープまたは部分の観点から記載されるか、または特定化されてもよい。抗体の抗原結合ドメインと特異的に相互作用する標的ポリペプチドの部分が、「エピトープ」または「抗原決定基」である。標的ポリペプチドは、単一のエピトープを含むことができるが、典型的には、少なくとも2個のエピトープを含み、かつ、抗原のサイズ、立体配座、およびタイプに応じて、任意の数のエピトープを含むことができる。さらに、標的ポリペプチド上の「エピトープ」は、非ポリペプチド要素であってもよいか、またはそれを含んでもよく、例えば、エピトープは炭水化物側鎖を含んでもよいことに注意されたい。
抗体のためのペプチドまたはポリペプチドエピトープの最小サイズは、約4個~5個のアミノ酸であると考えられている。ペプチドまたはポリペプチドエピトープは、例えば、少なくとも7個、少なくとも9個、または少なくとも約15個~約30個の間のアミノ酸を含有しうる。CDRは、その三次形態において抗原性ペプチドまたはポリペプチドを認識することができるため、エピトープを構成するアミノ酸は、隣接している必要がなく、いくつかの場合には、別個のペプチド鎖上にありうる。本開示の抗SEMA4D抗体により認識されるペプチドまたはポリペプチドエピトープは、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、または約15個~約30個の間の、SEMA4Dの隣接または非隣接のアミノ酸の配列を含有しうる。
「特異的に結合する」により、抗体がその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、および結合が抗原結合ドメインとエピトープとの間のいくらかの相補性を必然的に伴うことが、概して意味される。この定義に従って、抗体が、無作為の関連のないエピトープに結合するよりも容易に、その抗原結合ドメインを介してそのエピトープに結合する際、抗体はエピトープに「特異的に結合する」と言われる。「特異性」という用語は、それによりある特定の抗体がある特定のエピトープに結合する相対的親和性を認定するために、本明細書において使用される。例えば、抗体「A」は、所定のエピトープに対して抗体「B」よりも高い特異性を有すると考えられ得、または抗体「A」は、関連するエピトープ「D」に対して有するよりも高い特異性でエピトープ「C」に結合すると言うこともできる。
「優先的に結合する」により、抗体が、関連する、同様の、相同の、または類似のエピトープに結合するよりも容易に、エピトープに特異的に結合することが意味される。従って、所定のエピトープに「優先的に結合する」抗体は、そのような抗体が関連するエピトープと交差反応し得るにもかかわらず、関連するエピトープよりもそのエピトープに結合する可能性が高いであろう。
非限定的な例として、抗体は、第2のエピトープについての抗体の解離定数(KD)より低いKDで第1のエピトープに結合する場合、該第1のエピトープに優先的に結合すると考えられてもよい。別の非限定的な例において、抗体は、第2のエピトープについての抗体のKDより少なくとも1桁低い親和性で第1のエピトープに結合する場合、第1の抗原に優先的に結合すると考えられてもよい。別の非限定的な例において、抗体は、第2のエピトープについての抗体のKDより少なくとも2桁低い親和性で第1のエピトープに結合する場合、第1のエピトープに優先的に結合すると考えられてもよい。
別の非限定的な例において、抗体は、第2のエピトープについての抗体のオフ速度(off rate)(k(オフ))より低いk(オフ)で第1のエピトープに結合する場合、第1のエピトープに優先的に結合すると考えられてもよい。別の非限定的な例において、抗体は、第2のエピトープについての抗体のk(オフ)より少なくとも1桁低い親和性で第1のエピトープに結合する場合、第1のエピトープに優先的に結合すると考えられてもよい。別の非限定的な例において、抗体は、第2のエピトープについての抗体のk(オフ)より少なくとも2桁低い親和性で第1のエピトープに結合する場合、第1のエピトープに優先的に結合すると考えられてもよい。本明細書において開示される抗体、または抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、5×10-2-1、10-2-1、5×10-3-1、または10-3-1より低いかまたはそれと同等のオフ速度(k(オフ))で、本明細書において開示される標的ポリペプチド(例えば、SEMA4D、例えば、ヒト、マウス、またはヒトおよびマウス両方のSEMA4D)またはその断片もしくは変異体に結合すると言いうる。特定の局面において、本開示の抗体は、5×10-4-1、10-4-1、5×10-5-1、または10-5-1、5×10-6-1、10-6-1、5×10-7-1、または10-7-1より低いかまたはそれと同等のオフ速度(k(オフ))で、本明細書において開示される標的ポリペプチド(例えば、SEMA4D、例えば、ヒト、マウス、またはヒトおよびマウス両方のSEMA4D)またはその断片もしくは変異体に結合すると言われてもよい。
本明細書において開示される抗体、または抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、103 M-1-1、5×103 M-1-1、104 M-1-1、または5×104 M-1-1より高いかまたはそれと同等のオン速度(on rate)(k(オン))で、本明細書において開示される標的ポリペプチド(例えば、SEMA4D、例えば、ヒト、マウス、またはヒトおよびマウス両方のSEMA4D)またはその断片もしくは変異体に結合すると言われてもよい。一部の局面において、本開示の抗体は、105 M-1-1、5×105 M-1-1、106 M-1-1、または5×106 M-1-1、または107 M-1-1より高いかまたはそれと同等のオン速度(k(オン))で、本明細書において開示される標的ポリペプチド(例えば、SEMA4D、例えば、ヒト、マウス、またはヒトおよびマウス両方のSEMA4D)またはその断片もしくは変異体に結合すると言うことができる。
抗体は、参照抗体のエピトープへの結合をある程度遮断する範囲でそのエピトープに優先的に結合する場合、参照抗体の所定のエピトープへの結合を競合的に阻害すると言われる。競合的阻害は、当技術分野において公知である任意の方法、例えば、競合ELISAアッセイにより測定されてもよい。抗体は、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%、参照抗体の所定のエピトープへの結合を競合的に阻害すると言われてもよい。
本明細書において使用される際、「親和性」という用語は、個々のエピトープの免疫グロブリン分子のCDRとの結合の強度の尺度を指す。例えば、Harlow et al. (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed.) の27~28ページを参照されたい。本明細書において使用される際、「結合力」という用語は、免疫グロブリンの集団と抗原との間の複合体の全体の安定性、すなわち、免疫グロブリン混合物の抗原との機能的結合強度を指す。例えば、Harlowの29~34ページを参照されたい。結合力は、集団中の個々の免疫グロブリン分子の特異的なエピトープとの親和性、ならびにまた免疫グロブリンおよび抗原の結合価の両方に関連する。例えば、2価のモノクローナル抗体と、ポリマーなどの高度に反復するエピトープ構造を有する抗原との間の相互作用は、高い結合力の1つであろう。
本開示の抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体はまた、その交差反応性の観点から記載されるか、または特定化されてもよい。本明細書において記載される際、「交差反応性」という用語は、1種の抗原に特異的な抗体の第2の抗原と反応する能力;2種の異なる抗原性物質の間の関連性の尺度を指す。従って、抗体が、その形成を誘導したエピトープ以外のエピトープに結合する場合、交差反応性である。交差反応性エピトープは、概して、誘導エピトープと同一の相補的構造特性の多くを含有し、いくつかの場合には、実際に元よりも良好に適合し得る。
例えば、ある特定の抗体は、関連するが同一ではないエピトープ、例えば、参照エピトープと少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、および少なくとも50%の同一性(当技術分野において公知でありかつ本明細書において記載される方法を用いて算出した際)を有するエピトープに結合する、ある程度の交差反応性を有する。抗体は、参照エピトープと95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、および50%未満の同一性(当技術分野において公知でありかつ本明細書において記載される方法を用いて算出した際)を有するエピトープに結合しない場合、ほとんどまたはまったく交差反応性を有さないと言われてもよい。抗体は、そのエピトープの任意の他の類似体、オーソログ、または相同体に結合しない場合、ある特定のエピトープについて「高度に特異的」であると考えられてもよい。
本開示の抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体はまた、本開示のポリペプチド、例えば、SEMA4D、例えば、ヒト、マウス、またはヒトおよびマウス両方のSEMA4Dに対するその結合親和性の観点から記載されるか、または特定化されてもよい。特定の局面において、結合親和性は、5×10-2 M、10-2 M、5×10-3 M、10-3 M、5×10-4 M、10-4 M、5×10-5 M、10-5 M、5×10-6 M、10-6 M、5×10-7 M、10-7 M、5×10-8 M、10-8 M、5×10-9 M、10-9 M、5×10-10 M、10-10 M、5×10-11 M、10-11 M、5×10-12 M、10-12 M、5×10-13 M、10-13 M、5×10-14 M、10-14 M、5×10-15 M、または10-15 Mより低い解離定数またはKdを有するものを含む。ある特定の態様において、本開示の抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片は、約5×10-9~約6×10-9のKdでヒトSEMA4Dに結合する。別の態様において、本開示の抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片は、約1×10-9~約2×10-9のKdでマウスSEMA4Dに結合する。
本明細書において使用される際、「キメラ抗体」という用語は、免疫反応性領域または部位が第1の種から取得されているかまたは由来し、かつ、定常領域(本開示に従って、無傷であるか、部分的であるか、または修飾されていてもよい)が第2の種から取得されている任意の抗体を意味すると考えられるであろう。特定の態様において、標的結合領域または部位は、非ヒト供給源(例えば、マウスまたは霊長類)由来であると考えられ、かつ、定常領域はヒトである。
本明細書において使用される際、「操作された抗体」という用語は、重鎖または軽鎖のいずれかまたは両方における可変ドメインが、公知の特異性の抗体由来の1個または複数のCDRの少なくとも部分的な置換により、ならびに、必要な場合、部分的なフレーム領域の置換および配列交換により変更されている抗体を指す。CDRは、フレームワーク領域が由来する抗体と同一のクラスまたはさらにサブクラスの抗体に由来してもよいが、CDRが異なるクラスの抗体、または異なる種由来の抗体に由来することが、想定される。公知の特異性の非ヒト抗体由来の1個または複数の「ドナー」CDRがヒト重鎖または軽鎖のフレームワーク領域中に移植されている、操作された抗体は、本明細書において「ヒト化抗体」と呼ばれる。1個の可変ドメインの抗原結合能力を別の可変ドメインに移すために、CDRのすべてをドナー可変ドメイン由来の完全なCDRで置換することは、必ずしも必要ではない。むしろ、標的結合部位の活性を維持するために必要とされる残基のみを移すことができる。
ヒト化抗体の重鎖または軽鎖または両方における可変ドメイン内のフレームワーク領域は、ヒト起源の残基のみを含んでもよいことがさらに認識され、この場合、ヒト化抗体のこれらのフレームワーク領域は、「完全ヒトフレームワーク領域」と呼ばれる(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2010/0285036 A1号においてMAb 2503として開示されているMAb VX15/2503または67)。あるいは、ドナー可変ドメインのフレームワーク領域の1個または複数の残基は、SEMA4D抗原に対する妥当な結合を維持するためまたは結合を増強するために、必要な場合、ヒト化抗体の重鎖または軽鎖または両方における可変ドメインのヒトフレームワーク領域の対応する位置の中で操作されうる。この様式で操作されたヒトフレームワーク領域は、従って、ヒトおよびドナーのフレームワーク残基の混合物を含み、本明細書において「部分的ヒトフレームワーク領域」と呼ばれる。
例えば、抗SEMA4D抗体のヒト化は、Winterおよび共同研究者の方法に従って(Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988))、げっ歯類または変異げっ歯類のCDRまたはCDR配列を、ヒト抗SEMA4D抗体の対応する配列と置換することにより、本質的に行うことができる。参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,225,539号;米国特許第5,585,089号;米国特許第5,693,761号;米国特許第5,693,762号;米国特許第5,859,205号もまた参照されたい。結果として生じたヒト化抗SEMA4D抗体は、ヒト化抗体の重鎖および/または軽鎖の可変ドメインの完全ヒトフレームワーク領域内に少なくとも1個のげっ歯類または変異げっ歯類のCDRを含むであろう。いくつかの例において、ヒト化抗SEMA4D抗体の1個または複数の可変ドメインのフレームワーク領域内の残基は、対応する非ヒト(例えばげっ歯類)残基により置換されており(例えば、米国特許第5,585,089号;米国特許第5,693,761号;米国特許第5,693,762号;および米国特許第6,180,370号を参照されたい)、その場合、結果として生じたヒト化抗SEMA4D抗体は、重鎖および/または軽鎖の可変ドメイン内に部分的ヒトフレームワーク領域を含むであろう。
さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中またはドナー抗体中に見出されない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体の性能をさらに磨くために(例えば望ましい親和性を得るために)なされる。概して、ヒト化抗体は、少なくとも1個の、および典型的には2個の可変ドメインの実質的にすべてを含むと考えられ、その中で、CDRのすべてまたは実質的にすべては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク領域のすべてまたは実質的にすべては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は任意で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも含むであろう。さらに詳細には、参照により本明細書に組み入れられるJones et al., Nature 331:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照されたい。従って、そのような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応する配列により置換されているとは実質的に言えない抗体を含んでもよい。実際には、ヒト化抗体は、典型的に、いくつかのCDR残基および場合によりいくつかのフレームワーク残基が、げっ歯類抗体中の類似した部位由来の残基により置換されているヒト抗体である。例えば、米国特許第5,225,539号;米国特許第5,585,089号;米国特許第5,693,761号;米国特許第5,693,762号;米国特許第5,859,205号を参照されたい。また、あらかじめ決定された抗原について改善された親和性を有するヒト化抗体を産生するためのヒト化抗体および技術が開示されている、米国特許第6,180,370号、および国際公開公報第01/27160号も参照されたい。
本明細書において使用される際、「医療提供者」という用語は、生存している対象、例えば、ヒト患者と直接接するかまたは投与を行う個人または機関を指す。医療提供者の非限定的な例は、医師、看護師、技師、セラピスト、薬剤師、カウンセラー、代替医療実務者、医療施設、医院、病院、救急室、診療所、緊急ケアセンター、代替医療診療所/施設、ならびに一般医学的な、専門医学的な、外科的な、かつ/またはその他の型の処置、査定、維持、治療、薬物治療、および/または助言を含むが、これらに限定されない、患者の健康状態の全部または一部に関する一般的なかつ/または専門的な処置、査定、維持、治療、薬物治療、および/または助言を提供する他の実体を含む。
本明細書において使用される際、「医療給付金提供者」という用語は、1つまたは複数の医療給付金、給付プラン、医療保険、および/または医療費請求プログラムを、完全にまたは部分的に、提供するか、提示するか、提案するか、支払うか、またはそれらへの患者のアクセスに他の方法で関連している、個々の団体、組織、またはグループを包含する。
本明細書において使用される際、「臨床検査室」という用語は、生存している対象、例えば、ヒトに由来する材料または画像の調査または処理のための施設を指す。処理の非限定的な例は、例えば、生存している対象、例えば、ヒトの疾患もしくは障害の診断、防止、もしくは処置、または健康の査定のための情報を提供することを目的とした、ヒト身体に由来する材料またはヒト身体の一部もしくは全部の生物学的調査、生化学的調査、血清学的調査、化学的調査、免疫血液学的調査、血液学的調査、生物物理学的調査、細胞学的調査、病理学的調査、遺伝学的調査、画像に基づく調査、または他の調査を含む。これらの調査は、生存している対象、例えば、ヒトの身体、または生存している対象、例えば、ヒトの身体から入手された試料において、画像、試料を収集するか、もしくは他の方法で入手するか、様々な物質を調製するか、その存在もしくは欠如を決定するか、測定するか、または他の方法で記載するための手法も含んでいてよい。
II.標的ポリペプチドの説明
本明細書において使用される際、「セマフォリン-4D」、「SEMA4D」、および「SEMA4Dポリペプチド」という用語は、「SEMA4D」および「Sema4D」のように、互換的に使用される。SEMA4Dは、グリア細胞活性化、オリゴデンドロサイトおよびアストロサイトの遊走阻害、神経発達阻害、ならびにアポトーシスの誘導を含む、神経炎症を増加させる可能性のあるいくつかのプロセスに関係があるとされる膜貫通シグナル伝達タンパク質である。ある特定の態様において、SEMA4Dは、細胞の表面上に発現しているか、または細胞により分泌される。別の態様において、SEMA4Dは膜結合性である。別の態様において、SEMA4Dは可溶性、例えばsSEMA4Dである。他の態様において、SEMA4Dは、完全なサイズのSEMA4D、またはその断片、またはSEMA4D変異体ポリペプチドを含んでもよく、該SEMA4Dの断片またはSEMA4D変異体ポリペプチドは、完全なサイズのSEMA4Dのいくつかまたはすべての機能特性を保持している。
完全なサイズのヒトSEMA4Dタンパク質は、150 kDaの2本のポリペプチド鎖からなるホモ二量体膜貫通タンパク質である。SEMA4Dは、細胞表面受容体のセマフォリンファミリーに属し、CD100とも呼ばれる。ヒトおよびマウス両方のSEMA4D/Sema4Dは、それらの膜貫通型からタンパク質分解性に切断されて120-kDaの可溶型を生じ、2種のSema4Dアイソフォームの存在を示す(Kumanogoh et al., J. Cell Science 116(7):3464 (2003))。セマフォリンは、ニューロンとその適切な標的との間の正確な連結を確立する際に重要な役割を果たす発生中の軸索ガイダンス因子として元来定義された、可溶性タンパク質および膜結合性タンパク質からなる。SEMA4Dは、構造的にクラスIVセマフォリンと考えられ、アミノ末端のシグナル配列の後に、17個の保存されたシステイン残基を含有する特徴的な「セマ」ドメイン、Ig様ドメイン、リジンに富んだストレッチ、疎水性膜貫通領域、および細胞質尾部からなる。
SEMA4Dのポリペプチド鎖は、約13アミノ酸のシグナル配列を含み得、約512アミノ酸のセマフォリンドメイン、約65アミノ酸の免疫グロブリン様(Ig様)ドメイン、104アミノ酸のリジンに富んだストレッチ、約19アミノ酸の疎水性膜貫通領域、および110アミノ酸の細胞質尾部をさらに含む。細胞質尾部中のチロシンリン酸化のためのコンセンサス部位は、SEMA4Dのチロシンキナーゼとの予測される会合を支持する(Schlossman, et al., Eds. (1995) Leucocyte Typing V (Oxford University Press, Oxford))。
SEMA4Dは、少なくとも3種の機能的受容体、プレキシン-B1、プレキシン-B2、およびCD72を有することが公知である。プレキシン-B1は、非リンパ系組織において発現し、SEMA4Dに対する高親和性(1 nM)受容体であることが示されている(Tamagnone et al., Cell 99:71-80 (1999))。プレキシン-B1シグナル伝達のSEMA4D刺激は、ニューロンの成長円錐虚脱を誘導すること、ならびにオリゴデンドロサイトの突起伸長虚脱およびアポトーシスを誘導することが示されている(Giraudon et al., J. Immunol. 172:1246-1255 (2004);Giraudon et al., NeuroMolecular Med. 7:207-216 (2005))。プレキシン-B1シグナル伝達は、SEMA4Dへの結合後に、R-Rasの不活性化を媒介して、細胞外マトリクスへのインテグリン媒介性付着の減少およびRhoAの活性化をもたらし、細胞骨格の再構成および細胞遊走をもたらす。Kruger et al., Nature Rev. Mol. Cell Biol. 6:789-800 (2005);Pasterkamp, TRENDS in Cell Biology 15:61-64 (2005)を参照されたい。一方、プレキシン-B2はSEMA4Dに対して中間的な親和性を有し、最近の報告により、プレキシン-B2は成人脳室下帯における皮質ニューロンの遊走ならびに神経芽細胞の増殖および遊走を調節することが示されている(Azzarelli et al,. Nat Commun 2014 Feb 27, 5:3405, DOI: 10.1038/ncomms4405; およびSaha et al., J. Neuroscience, 2012 November 21, 32(47):16892-16905)。
リンパ系組織においては、CD72が、低親和性(300nM)SEMA4D受容体として利用されている(Kumanogoh et al., Immunity 13:621-631 (2000))。B細胞およびAPCがCD72を発現し、抗CD72抗体は、CD40により誘導されるB細胞応答およびCD23のB細胞切断の増強などの、sSEMA4Dと同一の作用の多くを有する。CD72は、多くの抑制性受容体と会合することができるチロシンホスファターゼSHP-1を動員することにより、B細胞応答の負の制御因子として働くと考えられている。SEMA4DのCD72との相互作用は、SHP-1の解離、およびこの負の活性化シグナルの損失を結果としてもたらす。SEMA4Dは、インビトロでT細胞刺激ならびにB細胞の凝集および生存を促進することが報告されている。SEMA4D発現細胞またはsSEMA4Dの添加によって、インビトロでCD40により誘導されるB細胞増殖および免疫グロブリン産生が増強され、ならびにインビボの抗体応答が加速化される(Ishida et al., Inter. Immunol. 15:1027-1034 (2003);Kumanogoh and H. Kukutani, Trends in Immunol. 22:670-676 (2001))。sSEMA4Dは、共刺激分子の上方制御およびIL-12の分泌の増加を含む、CD40により誘導される樹状細胞(DC)の成熟を増強する。さらに、sSEMA4Dは、免疫細胞の遊走を阻害することができ、それは、遮断する抗SEMA4D抗体の添加により逆転させることができる(Elhabazi et al., J. Immunol. 166:4341-4347 (2001);Delaire et al., J. Immunol. 166:4348-4354 (2001))。
Sema4Dは、脾臓、胸腺、およびリンパ節を含むリンパ系器官において、ならびに、脳、心臓、および腎臓などの非リンパ系器官において高レベルで発現している。リンパ系器官において、Sema4Dは、休止T細胞上に豊富に発現しているが、休止B細胞、およびDCなどの抗原提示細胞(APC)上には弱くしか発現していない。細胞の活性化により、SEMA4Dの表面発現および可溶性SEMA4D(sSEMA4D)の生成が増加する。
SEMA4Dの発現パターンにより、SEMA4Dが免疫系において重要な生理学的役割および病理学的役割を果たすことが示唆される。SEMA4Dは、B細胞の活性化、凝集、および生存を促進し;CD40により誘導される増殖および抗体産生を増強し;T細胞依存性抗原に対する抗体応答を増強し;T細胞増殖を増加させ;樹状細胞の成熟およびT細胞を刺激する能力を増強し;かつ脱髄および軸索変性に直接関係していることが、示されている(Shi et al., Immunity 13:633-642 (2000);Kumanogoh et al., J Immunol 169:1175-1181 (2002);およびWatanabe et al., J Immunol 167:4321-4328 (2001))。
SEMA4Dノックアウト(SEMA4D-/-)マウスは、SEMA4Dが体液性免疫応答および細胞性免疫応答の両方において重要な役割を果たすことの追加的な証拠を提供している。SEMA4D-/-マウスにおいて、非リンパ系組織の主要な異常性は知られていない。SEMA4D-/-マウス由来のDCは、不十分な同種刺激能力を有し、sSEMA4Dの添加により救出することができる共刺激分子の発現の欠陥を示す。ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質特異的なT細胞が、SEMA4Dの非存在下では十分に生成されないため、SEMA4Dが欠損している(SEMA4D-/-)マウスは、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質ペプチドにより誘導される実験的自己免疫性脳脊髄炎を発症することができない(Kumanogoh et al., J Immunol 169:1175-1181 (2002))。有意な量の可溶性SEMA4Dがまた、自己免疫の傾向があるMRL/lprマウス(SLEなどの全身性自己免疫疾患のモデル)の血清中に検出されるが、正常マウスにおいては検出されない。さらに、sSEMA4Dのレベルは、自己抗体のレベルと相関し、年齢とともに増加する(Wang et al., Blood 97:3498-3504 (2001))。可溶性SEMA4Dはまた、脱髄性疾患を有する患者の脳脊髄液および血清中に蓄積することも示されており、sSEMA4Dは、インビトロでヒト多能性神経前駆体(Dev細胞)のアポトーシスを誘導し、かつ、ラットオリゴデンドロサイトの突起伸長を阻害するとともにそのアポトーシスを誘導する(Giraudon et al., J Immunol 172(2):1246-1255 (2004))。このアポトーシスは、抗SEMA4D MAbにより遮断された。
本発明者らは、ハンチントン病およびアルツハイマー病を含む進行性神経変性疾患の経過においてストレスまたは損傷を受けた実験動物および患者、ならびにこれらの疾患の動物モデルの両方の脳内のニューロンが、SEMA4Dをアップレギュレートすることを以前に示した(US 9,598,495およびUS 10,385,136)。ニューロンのすぐ近くに位置するアストロサイトは、SEMA4Dのための高親和性プレキシンB1受容体を発現し、SEMA4Dリガンドとの結合によって、形態の変化および炎症性変換に関連する遺伝子発現を受けるよう誘発される。SEMA4Dに対する抗体による、この炎症性シグナル伝達経路の遮断は、HD(Southwell,A.L.,et al.Anti-semaphorin 4D immunotherapy ameliorates neuropathology and some cognitive impairment in the YAC128 mouse model of Huntington disease.Neurobiol.Dis 76,46-56 (2015))、AD、および多発性硬化症(Smith,E.S.,et al.SEMA4D compromises blood-brain barrier,activates microglia,and inhibits remyelination in neurodegenerative disease.Neurobiol.Dis 73,254-268(2014))の動物モデルにおいて病理を寛解させることが示されており、最近では、ハンチントン病を引き起こす遺伝子変異を発現する患者において、脳代謝活性の喪失を防止することが示されている。SEMA4Dが雌Mecpマウスの脳においてもアップレギュレートされているという観察、およびアストロサイトの役割の証拠(Lioy et al.,Nature,475(7357):497-500(2012))は、この同じ病原経路が、レット症候群においても活性であり、レット症候群の病理に寄与する可能性があることを示唆している。
III.抗SEMA4D抗体
SEMA4Dに結合する抗体は、当技術分野において記載されている。例えば、米国特許第8,496,938号、米国特許出願公開第2008/0219971 A1号、米国特許出願公開第2010/0285036 A1号、および米国特許出願公開第2006/0233793 A1号、国際特許出願である国際公開公報第93/14125号、国際公開公報第2008/100995号、および国際公開公報第2010/129917号、ならびにHerold et al., Int. Immunol. 7(1): 1-8 (1995)を参照されたく、これらの各々は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
本開示は、概して、レット症候群を有する対象、例えばヒト患者において、症状を軽減させる方法であって、SEMA4Dに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体の投与を含む方法に関連する。ある特定の態様において、抗体は、SEMA4Dの1種または複数のその受容体、例えばプレキシン-B1との相互作用を遮断する。これらの特性を有する抗SEMA4D抗体を、本明細書中で提供される方法において使用することができる。使用することができる抗体は、米国特許出願公開第2010/0285036 A1号に完全に記載されているMAb VX15/2503、67、および76、ならびにその抗原結合断片、変異体、または誘導体を含むが、これらに限定されない。本明細書中で提供される方法において使用することができる追加的な抗体は、米国特許出願公開第2006/0233793 A1号に記載されているBD16およびBB18抗体、ならびにその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体;または、米国特許出願公開第2008/0219971 A1号に記載されているMAb 301、MAb 1893、MAb 657、MAb 1807、MAb 1656、MAb 1808、Mab 59、MAb 2191、MAb 2274、MAb 2275、MAb 2276、MAb 2277、MAb 2278、MAb 2279、MAb 2280、MAb 2281、MAb 2282、MAb 2283、MAb 2284、およびMAb 2285の任意、ならびにその任意の断片、変異体、もしくは誘導体を含む。ある特定の態様において、本明細書中で提供される方法における使用のための抗SEMA4D抗体は、ヒト、マウス、またはヒトおよびマウス両方のSEMA4Dに結合する。また、任意の前述の抗体と同一のエピトープに結合する抗体、および/または任意の前述の抗体を競合的に阻害する抗体も有用である。
ある特定の態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、参照抗SEMA4D抗体分子、例えば上記のもののアミノ酸配列と少なくとも約80%、約85%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、または約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。さらなる態様において、結合分子は、参照抗体と少なくとも約96%、約97%、約98%、約99%、または100%の配列同一性を共有する。
別の態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VHドメイン)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、該VHドメインのCDRの少なくとも1個は、SEQ ID NO: 6、7、または21のCDR1、CDR2、またはCDR3と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または同一であるアミノ酸配列を有する。
もう1つの態様において、本明細書において提供される方法において有用な抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VHドメイン)を含むか、VHドメインから本質的になるか、またはVHドメインからなり、ここで、VHドメインのCDRのうちの少なくとも1つは、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、またはSEQ ID NO:5と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または同一であるアミノ酸配列を有する。
別の態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VHドメイン)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、該VHドメインのCDRの少なくとも1個は、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 23、またはSEQ ID NO: 24と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または同一であるアミノ酸配列を有する。
もう1つの態様において、本明細書において提供される方法において有用な抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VHドメイン)を含むか、VHドメインから本質的になるか、またはVHドメインからなり、ここで、VHドメインのCDRのうちの少なくとも1つは、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、またはSEQ ID NO:5と、1個、2個、3個、4個、または5個の保存的アミノ酸置換を除き、同一のアミノ酸配列を有する。
別の態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VHドメイン)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、該VHドメインのCDRの少なくとも1個は、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 23、またはSEQ ID NO: 24と、1、2、3、4、または5個の保存的アミノ酸置換以外は同一であるアミノ酸配列を有する。
別の態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、またはSEQ ID NO: 21と少なくとも約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有するVHドメインを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、該コードされたVHドメインを含む抗SEMA4D抗体は、SEMA4Dに特異的または優先的に結合する。
別の態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VLドメイン)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、該VLドメインのCDRの少なくとも1個は、SEQ ID NO: 11、12、またはSEQ ID NO: 25のCDR1、CDR2、またはCDR3と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または同一であるアミノ酸配列を有する。
もう1つの態様において、本明細書において提供される方法において有用な抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VLドメイン)を含むか、VLドメインから本質的になるか、またはVLドメインからなり、ここで、VLドメインのCDRのうちの少なくとも1つは、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、またはSEQ ID NO:10と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または同一であるアミノ酸配列を有する。
別の態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VLドメイン)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、該VLドメインのCDRの少なくとも1個は、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、またはSEQ ID NO: 28と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または同一であるアミノ酸配列を有する。
もう1つの態様において、本明細書において提供される方法において有用な抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VLドメイン)を含むか、VLドメインから本質的になるか、またはVLドメインからなり、ここで、VLドメインのCDRのうちの少なくとも1つは、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、またはSEQ ID NO:10と、1個、2個、3個、4個、または5個の保存的アミノ酸置換を除き、同一のアミノ酸配列を有する。
別の態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VLドメイン)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、該VLドメインのCDRの少なくとも1個は、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、またはSEQ ID NO: 28と、1、2、3、4、または5個の保存的アミノ酸置換以外は同一であるアミノ酸配列を有する。
さらなる態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 12、またはSEQ ID NO: 25と少なくとも約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有するVLドメインを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、該コードされたVLドメインを含む抗SEMA4D抗体は、SEMA4Dに特異的または優先的に結合する。
また、本明細書中で提供される方法における使用のために、本明細書において記載されるような抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体をコードするポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドを含むベクター、およびそのようなベクターまたはポリヌクレオチドを含む宿主細胞も含まれ、すべては、本明細書中で記載される方法における使用のために、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を産生するためのものである。
本開示の抗SEMA4D抗体の適した生物学的に活性を有する変異体を、本開示の方法において使用することができる。そのような変異体は、親抗SEMA4D抗体の望ましい結合特性を保持しているであろう。抗体変異体を作製する方法は、当技術分野において一般的に利用可能である。
変異誘発およびヌクレオチド配列変更のための方法は、当技術分野において周知である。例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Walker and Gaastra, eds. (1983) Techniques in Molecular Biology (MacMillan Publishing Company, New York);Kunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-492 (1985);Kunkel et al., Methods Enzymol. 154:367-382 (1987);Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor, N.Y.);米国特許第4,873,192号;およびこれらにおいて引用される参照文献を参照されたい。関心対象のポリペプチドの生物学的活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換についての手引きは、全体として参照により本明細書に組み入れられるAtlas of Protein Sequence and Structure (Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.)の345-352ページにおけるDayhoffらのモデル(1978)において見出され得る。Dayhoffらのモデルは、適した保存的アミノ酸置換を決定するために、Point Accepted Mutation(PAM)アミノ酸類似度マトリクス(PAM 250マトリクス)を使用する。特定の態様において、1個のアミノ酸を類似した特性を有する別のアミノ酸と交換するような保存的置換を用いうる。DayhoffらのモデルのPAM250マトリクスにより教示される保存的アミノ酸置換の例は、Gly⇔Ala、Val⇔Ile⇔Leu、Asp⇔Glu、Lys⇔Arg、Asn⇔Gln、およびPhe⇔Trp⇔Tyrを含むが、これらに限定されない。
関心対象のポリペプチドである、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片の変異体を構築する際には、変異体が、例えば、本明細書において記載されるような、例えば、細胞の表面上に発現しているかまたは細胞により分泌されるSEMA4D、例えば、ヒト、マウス、またはヒトおよびマウス両方のSEMA4Dに特異的に結合することができる、およびSEMA4D遮断活性を有する、望ましい特性を保有し続けるように修飾がなされる。明らかに、変異体ポリペプチドをコードするDNA中に作製されるどのような変異も、配列をリーディングフレームの外に置いてはならず、特定の態様においては、mRNAの二次構造を生じ得る相補性領域を創出しない。欧州特許出願公開第75,444号を参照されたい。
抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体の結合特異性を測定する方法は、標準的な競合結合アッセイ、T細胞またはB細胞による免疫グロブリン分泌をモニタリングするためのアッセイ、T細胞増殖アッセイ、アポトーシスアッセイ、ELISAアッセイなどを含むが、これらに限定されない。例えば、すべてが参照により本明細書に組み入れられる、国際公開公報第93/14125号;Shi et al., Immunity 13:633-642 (2000);Kumanogoh et al., J Immunol 169:1175-1181 (2002);Watanabe et al., J Immunol 167:4321-4328 (2001);Wang et al., Blood 97:3498-3504 (2001);およびGiraudon et al., J Immunol 172(2):1246-1255 (2004)において開示される、そのようなアッセイを参照されたい。
本明細書において開示される定常領域、CDR、VHドメイン、またはVLドメインを含む任意の特定のポリペプチドが、別のポリペプチドと少なくとも約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、またはさらに約100%同一であるか否かを、本明細書において議論する際、%同一性は、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711)などの、しかしこれに限定されない、当技術分野において公知である方法およびコンピュータプログラム/ソフトウェアを用いて決定することができる。BESTFITは、2種の配列間の相同性の最も高いセグメントを見出すために、Smith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2:482-489の局所相同性アルゴリズムを使用する。特定の配列が、例えば、本開示による参照配列と95%同一であるか否かを判定するためにBESTFITまたは任意の他の配列アラインメントプログラムを用いる際は、パラメータを、当然、同一性のパーセンテージが参照ポリペプチド配列の完全長にわたって計算されるように、かつ参照配列中のアミノ酸の総数の5%までの相同性におけるギャップが許容されるように、設定する。
本開示の目的で、パーセント配列同一性を、Smith-Waterman相同性検索アルゴリズムを使用して、12のギャップ開始ペナルティおよび2のギャップ伸長ペナルティ、62のBLOSUMマトリクスを有するアフィンギャップ検索を用いて決定してもよい。Smith-Waterman相同性検索アルゴリズムは、Smith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2:482-489において教示される。変異体は、例えば、参照抗SEMA4D抗体(例えば、MAb VX15/2503、67、または76)と、わずか1~15個のアミノ酸残基、わずか1~10個のアミノ酸残基、例えば6~10個、わずか5個、わずか4個、3個、2個、またはさらに1個のアミノ酸残基が異なっていてもよい。
2種の最適に整列化された配列を比較ウインドウにおいて比較することによっても、「配列同一性」の百分率を決定することができる。配列を比較のために最適に整列化するためには、参照配列を一定に保ったまま、比較ウインドウ内のポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の部分に、付加またはギャップと呼ばれる欠失を含めることができる。最適な整列化とは、ギャップを含んでいるとしても、参照配列と比較配列との間の「同一の」位置の数を可能な限り大きくする整列化である。2004年9月1日時点でNational Center for Biotechnology Informationから入手可能であったプログラム「BLAST 2 Sequences」のバージョンを使用して、2種の配列の間の「配列同一性」百分率を決定することができる。このプログラムには、Karlin and Altschul(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(12):5873-5877, 1993)のアルゴリズムに基づくプログラムBLASTN(ヌクレオチド配列比較のため)およびBLASTP(ポリペプチド配列比較のため)が組み込まれている。「BLAST 2 Sequences」を利用する時、ワードサイズ(3)、オープンギャップペナルティ(11)、エクステンションギャップペナルティ(1)、ギャップドロップオフ(50)、期待値(10)、およびマトリックスオプションを含むが、これに限定されない、他の必要とされるパラメータについて、2004年9月1日時点でデフォルトパラメータであったパラメータを使用することができる。
抗SEMA4抗体の定常領域は、多数の方式でエフェクター機能を変化させるように変異させることができる。例えば、Fc受容体に対する抗体結合を最適化するFc変異を開示している、米国特許第6,737,056B1号および米国特許出願公開第2004/0132101A1号を参照されたい。
本明細書中で提供される方法において有用である、ある特定の抗SEMA4D抗体、またはその断片、変異体、もしくは誘導体において、Fc部分を、当技術分野において公知である技術を用いてエフェクター機能を低下させるように変異させることができる。例えば、定常領域ドメインの(点変異または他の手段を通した)欠失または不活性化は、循環する修飾抗体のFc受容体結合を低減させ、それにより腫瘍局在化を増加させることができる。他の場合には、本開示と一致する定常領域修飾は、補体結合を緩和し、従って血清半減期を低減させる。定常領域のさらに他の修飾を、ジスルフィド結合またはオリゴ糖部分を修飾して、抗原特異性または抗体柔軟性の増加による局在化の増強を可能にするために、使用することができる。結果として生じた修飾体の生理学的プロフィール、生物学的利用能、および他の生化学的作用、例えば、腫瘍局在化、生体内分布、および血清半減期は、過度の実験を伴わない周知の免疫学的技術を用いて、容易に測定および定量化することができる。本明細書中で提供される方法における使用のための抗SEMA4D抗体は、例えば、共有結合が抗体のその同起源のエピトープに対する特異的結合を妨げないような、任意のタイプの分子の抗体への共有結合により修飾されている誘導体を含む。例えば、しかし限定としてではなく、抗体誘導体は、例えば、グルコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解性切断、細胞性リガンドまたは他のタンパク質への結合などにより修飾されている抗体を含む。多数の化学修飾の任意は、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化などを含むがこれらに限定されない公知の技術により行うことができる。さらに、誘導体は、1個または複数の非古典的アミノ酸を含有することができる。
「保存的アミノ酸置換」とは、その中でアミノ酸残基が類似した電荷をもつ側鎖を有するアミノ酸残基と置き換えられているものである。類似した電荷をもつ側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、当技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。あるいは、変異を、例えば飽和変異誘発により、コード配列のすべてまたは一部に沿って無作為に導入することができ、結果として生じた変異体を、活性(例えば、抗SEMA4Dポリペプチドに結合する能力、SEMA4Dのその受容体との相互作用を遮断する能力、または、患者における神経変性障害に関連する症状を軽減させる能力)を保持する変異体を同定するために生物学的活性についてスクリーニングすることができる。
例えば、抗体分子のフレームワーク領域のみまたはCDR領域のみに変異を導入することが可能である。導入された変異は、サイレント変異または中立ミスセンス変異である、すなわち、抗原に結合する抗体の能力に対して何も効果を有さないか、またはほとんど効果を有さないことができる。これらのタイプの変異は、コドン使用頻度を最適化するため、またはハイブリドーマの抗体産生を改善するために有用であり得る。あるいは、非中立ミスセンス変異は、抗原に結合する抗体の能力を変更してもよい。当業者は、抗原結合活性の無変更または結合活性の変更(例えば、抗原結合活性の改善または抗体特異性の変化)などの望ましい特性を有する変異体分子を、設計しかつ試験することができるであろう。変異誘発後に、コードされたタンパク質を、日常的に発現させてもよく、コードされたタンパク質の機能的活性および/または生物学的活性(例えば、SEMA4Dポリペプチドの少なくとも1個のエピトープに免疫特異的に結合する能力)を、本明細書において記載される技術を用いて、または当技術分野において公知である日常的な修飾技術により、測定することができる。
ある特定の態様において、本明細書中で提供される方法における使用のための抗SEMA4D抗体は、少なくとも1個の最適化された相補性決定領域(CDR)を含む。「最適化されたCDR」により、CDRが、最適化されたCDRを含む抗SEMA4D抗体に付与される結合親和性および/または抗SEMA4D活性を改善するように、修飾されかつ最適化されていることが意図される。「抗SEMA4D活性」または「SEMA4D遮断活性」は、SEMA4Dと関連する以下の活性の1つまたは複数を調節する活性を含むことができる:B細胞の活性化、凝集、および生存;CD40により誘導される増殖および抗体産生;T細胞依存性抗原に対する抗体応答;T細胞もしくは他の免疫細胞の増殖;樹状細胞の成熟;脱髄および軸索変性;多能性神経前駆体および/もしくはオリゴデンドロサイトのアポトーシス;内皮細胞遊走の誘導;自発性単球遊走の阻害;グリア細胞(アストロサイト、マイクログリア、オリゴデンドロサイト、前駆体)機能および炎症性活性の調節;細胞表面プレキシン-B1もしくは他の受容体に対する結合、または、可溶性SEMA4DもしくはSEMA4D+細胞の表面上に発現しているSEMA4Dと関連する任意の他の活性。抗SEMA4D活性はまた、リンパ腫を含む特定のタイプの癌、自己免疫疾患、中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)の炎症性疾患を含む炎症性疾患、移植片拒絶、ならびに浸潤性血管新生を含むが、これらに限定されない、SEMA4Dの発現と関連する疾患の発生率または重症度の低下に帰することができる。マウス抗SEMA4D MAb BD16およびBB18に基づく最適化された抗体の例は、米国特許出願公開第2008/0219971 A1号、国際特許出願である国際公開公報第93/141251号、およびHerold et al., Int. Immunol. 7(1): 1-8 (1995)に記載され、これらの各々は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。修飾は、抗SEMA4D抗体が、SEMA4D抗原についての特異性を保持し、かつ改善された結合親和性および/または改善された抗SEMA4D活性を有するように、CDR内のアミノ酸残基の置換を含んでもよい。
IV.MeCP2
MECP2(メチルCpG結合タンパク質2)遺伝子は、タンパク質MeCP2をコードする(Lewis et al.(June 1992).Cell.69 (6):905-14)。MeCP2タンパク質は、脳を含む体内の全ての細胞に見出され、そこで、状況に依って、転写の抑制因子および活性化因子として作用する。脳においては、ニューロンに高濃度に見出され、アストロサイトには、より低い程度に見出され、中枢神経系(CNS)の成熟およびシナプス結合の形成に関連付けられている(Luikenhuis et al.,(April 2004)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101(16):6033-8)。MeCP2は、神経細胞の正常な機能に不可欠であると考えられ、それが高レベルに存在する成熟神経細胞にとって特に重要である。全体として、MeCP2は、グルタミン酸クリアランス、サイトカイン産生、電気シグナル伝達、およびニューロン形態に影響することが見出されているが、これらは、全て、神経発達において役割を果たす。
多くの変異が、MECP2遺伝子の発現の喪失と関連付けられており、レット症候群患者において同定されている。MECP2遺伝子変異は、レット症候群の大部分の症例の原因である。これらの変異には、MECP2遺伝子内の単一DNA塩基対(SNP)の変化、DNAの挿入または欠失、およびRNAスプライシングに影響する変化が含まれる。MeCP2遺伝子の変異は、MeCP2タンパク質の構造を改変するか、またはタンパク質の量の低下をもたらす。その結果、タンパク質は、DNAに結合することができなくなり(MeCP2タンパク質は、メチル化CpGジヌクレオチドとのゲノムワイドの結合を通して遺伝子発現をエピジェネティックにモジュレートする)、他の遺伝子をオンオフすることができなくなる。MeCP2によって通常抑制されている遺伝子は、その産物が必要とされない時にも活性を有したままとなる。MeCP2によって通常活性化される他の遺伝子は、不活性のままとなり、遺伝子産物の欠如をもたらす。この欠陥が、おそらく、神経細胞の正常な機能性を妨害し、レット症候群の症状をもたらす。
V.レット症候群の特徴的な症状
科学者は、一般に、レット症候群の4つの病期を記載している。発症初期と呼ばれる第1期は、典型的には、6~18ヶ月齢で始まる。障害の症状がやや曖昧であり、発達の軽微な遅延が最初は気付かれない場合があるため、この病期は、しばしば、見過ごされる。乳児は、より少ないアイコンタクトを示し、玩具への低下した関心を有するようになり始めることがある。座位または腹這いなどの粗大運動技能の遅延が起こることがある。手もみおよび頭部成長の減少が起こることがあるが、注意を引くのに十分ではない。この病期は、一般的には、数ヶ月にわたるが、1年より長く続くこともある。
第2期または急速崩壊期は、一般的に、1歳~4歳の間に始まり、数週または数ヶ月にわたることがある。その発症は、急速または緩徐であり得、子供は、目的のある手の技能および発声言語を失う。手をもむ、洗う、拍手する、叩く、繰り返し口に入れるなどの特徴的な手の動作は、しばしば、この病期で始まる。子供は、手を、背中の後ろで握ったり、横に置いて、ランダムに触れたり、握ったり、放したりすることがある。これらの動作は、子供が起きている間、続くが、睡眠中は消失する。無呼吸および過換気のエピソードなどの呼吸不規則性が起こることがあるが、一般的に、睡眠中は呼吸が改善される。一部の女児は、社会的相互作用およびコミュニケーションの喪失などの自閉症様症状も示す。歩行は不安定であり得、動作の開始が困難であり得る。頭部成長の遅延は、一般的に、この病期で気付かれる。
第3期またはプラトー期もしくは偽安定期は、一般的に、2歳~10歳の間に始まり、数年にわたることがある。この病期では、失行症、運動問題、およびてんかん発作が顕著である。しかしながら、易刺激性、啼泣、および自閉症様特色が少なくなる、行動の改善が起こることがある。第3期の女児は、周囲への関心をより示すようになり、覚醒、注意持続時間、およびコミュニケーション技能が改善されることがある。多くの女児は、一生のうちの最も長い期間、この病期に留まる。
第4期または後期運動増悪期は、数年または数十年にわたることがある。顕著な特色には、可動性の低下、脊椎の湾曲(脊柱側弯症)および筋力低下、硬直、痙縮、ならびに腕、脚、または上半身の異常な姿勢を伴う筋緊張の増加が含まれる。以前には歩行可能であった女児が、歩行不能になることがある。認知、コミュニケーション、または手の技能は、一般に、第4期では衰退しない。反復的な手の動作は減少することがあり、凝視は一般的に改善される。
Mecp2欠損マウスは、レット症候群患者といくつかの症状および特徴を共有する。MeCP2欠損マウスは、低活動性であり(Chahrour M and Zoghbi,HY,Neuron.(2007)56:422-437;Guy et al.,Nat.Genet.(2001)3:3220326;Chen et al.,Nat.Genet.(2001)3:327-331)、不安関連行動、例えば、後肢抱え込みの尺度の改変を示す(McGill et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.(2006)103:18267-72)。レット症候群のヒトカウンターパートと同様に、MeCP2欠損マウスは、異常な呼吸も示す(Chahrour M and Zoghbi,HY,Neuron.(2007)56:422-437;Weese-Mayer et al.,Pediatr.(2006)60:443-449)。
VI.アストロサイト
アストロサイトは、健常CNSにおいて、血流の調節、体液/イオン/pH/神経伝達物質のホメオスタシス、シナプス形成/機能、エネルギーおよび代謝、ならびに血液脳関門の維持を含む、多くの必須の複雑な機能を実行する特殊なグリア細胞である(Barres B.A.(2008)Neuron 60:430-440)。ニューロンが、最も高レベルのMeCP2発現を有するが、アストロサイトおよびその他の細胞型も、検出可能なレベルのMeCP2を発現する。最近の研究は、アストロサイトが、レット症候群の進行に寄与する可能性が高いことを示唆している(McGann et al.,Curr Opin Neurobiol.2012 Oct;22(5):850-858を参照すること)。多くの研究が、MeCP2の欠陥によってアストロサイトの機能が損なわれることを示唆している(Maezawa et al.,J Neurosci.2009 Apr 22;29(16):5051-5061)。アストロサイトにおけるMeCP2レベルは、ニューロンよりおよそ5倍低いが(Skene et al.Mol Cell(2010)37:457-468;Maezawa et al.,Neurosci(2009)29:5051-5061)、最近の研究は、アストロサイトにおけるMeCP2の喪失が、レット様症状に寄与し、MeCP2の回復が、これらの欠陥のうちのいくつかを救済し得ることを示唆している(Lioy et al.,Nature(2011)475:497-500)。レット症候群における中心的な役割を考えると、障害の進行を効果的に遅延させ、さらには逆転させるため、正常なアストロサイト機能を回復させる新たな分子標的を同定し、精密に試験することが、大いに必要とされている。アストロサイトがレット症候群の病理に影響し得る、いくつかの可能性のある経路が存在する。
アストロサイトとレット症候群
Mecp2欠損マウスにおける生後のMeCP2の包括的な再発現は、正常な寿命をもたらし、運動行動を救済し、全体的な健康状態を改善する(Guy et al.,Science.(2007)315:1143-1147)。発生初期におけるニューロンtau遺伝子座からのMeCP2の発現は、いくつかのレット様症状の出現を防止するため(Luikenhuis et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.(2004)101:6033-6038)、ニューロンは救済において重大な役割を果たす可能性が高い。しかしながら、インビトロ研究は、アストロサイトMeCP2が、正常なニューロン形態を支持することを示している(Maezawa et al.,J.(2009)29:505105056;Ballas et al.,Nat.Neurosci.(2009)12:311-317)。従って、アストロサイトも、インビボのレット神経病理の救済において役割を果たす可能性が高い。
正常な発達においては、神経新生が最初に起こり、アストロサイト新生への切り替えは厳密に制御されている。神経新生が起こっている間は、アストロサイトの最大の特徴である中間フィラメントタンパク質、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)などのアストロサイト特異的遺伝子プロモーターのメチル化部分に、MeCP2が接着している。神経発達が進行するにつれて、このメチル化の低下が起こり、MeCP2がプロモーターに接着しなくなり、それによって、遺伝子転写が可能になる。この制御されたタイミングは、正しい数のニューロンおよびアストロサイトの生成をもたらす。しかしながら、レット症候群においては、Mecp2が変異しており、プロモーターのクロマチンを不活性状態にリモデリングする能力を有しないため、アストロサイト新生への切り替えが極めて急速に起こる。従って、アストロサイト遺伝子の極めて早期の転写が起こり得る。レット症候群患者においては、対照と比較した時、誘導多能性幹細胞(iPSC)がGFAP陽性細胞へより容易に分化することが観察されており、これは、レット症候群脳におけるGFAP染色の増加によってさらに確認されている(Axol Bioscience Ltd.(2020,February 18).Studying Astrocytes in Rett Syndrome.News-Medical.Retrieved on June 09,2020 from https://www.news-medical.net/whitepaper/20191112/Studying-Astrocytes-in-Rett-Syndrome.aspx)。
対照条件下では、健常ニューロンと共培養された時、健常アストロサイトによって、樹状突起成長が強化される。しかしながら、Mecp2-/+マウスに由来するアストロサイトと健常海馬ニューロンとの共培養は、より短い樹状突起および体細胞をもたらす。さらに、健常アストロサイトにおける、MeCP2を標的とするsiRNAも、樹状突起伸長の減少をもたらすことが観察されており、このことは、この影響がアストロサイトにおけるMeCP2欠損によるものであることを確認している(Axol Bioscience Ltd(前記))。
培養中の野生型iPSC由来介在ニューロンの形態は、レット症候群患者に由来するヒトiPSC由来アストロサイトによって有害な影響を受ける;しかしながら、レット症候群アストロサイトとの培養と比較して、健常iPSC由来アストロサイトは、レット症候群iPSC由来介在ニューロンに対して正の効果を及ぼした。これは、アストロサイトが疾患ニューロンに対して及ぼす効果をさらに強調している(Axol Biosciences(前記))。
Lioyらは、生後21日目における、アストロサイトのみからのMecp2の除去が、ヌルマウスにおける包括的な除去より、わずかな表現型をもたらすこと、アストロサイトにおける再発現が、主に、症状を安定させることを報告した(Nature(2012)475(7357):497-500)。疾患開始の誘導によって説明され得る、胚においてニューロンのサブセットからMecp2を除去した後の表現型のサブセットの出現(Chen et al.,Nat.(2001)3:327-33;Gemelli et al.,Biol.Psych.(2006)59:468-476)、および胚性ニューロンにおけるMecp2再発現後のレット様表現型の防止(Luikenhuis et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.(2004)101:6033-6038)を報告している者もいる。これらの研究は、Mecp2発現およびそれが制御する経路の経時的な変化が、疾患表現型をモジュレートし得ることを示唆している。
特に、アストロサイトへMecp2を再導入することによって、Mecp2ヌルマウスの症状の寛解がもたらされる(Lioy et al.,Nature(2012)475(7357):497-500)。さらに、アストロサイト条件培地は、Mecp2-/-マウスニューロンに対して有利な効果を及ぼし、樹状突起長を増強することが示されている(Axol Bioscience Ltd.(前記))。これらの研究は、アストロサイトを標的とすることによって、レット症候群モデルにおける負の影響のうちのいくつかを最小限に抑え得ることを証明している。
VII.治療用抗SEMA4D抗体を使用した処置方法
本開示の方法は、レット症候群を有する対象を処置するための、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体(その抗原結合断片、バリアント、および誘導体を含む)の使用に関する。ある特定の態様において、内皮細胞がSEMA4D受容体を発現し、他の態様において、ニューロン細胞がSEMA4D受容体を発現し、他の態様において、内皮細胞およびニューロン細胞の両方がSEMA4D受容体を発現する。ある特定の態様において、受容体はプレキシンB1である。以下の記述は抗SEMA4D抗体の投与に言及するが、本明細書に記載される方法は、本開示の抗SEMA4D抗体の所望の特性を保持する、例えば、SEMA4D、例えば、ヒトSEMA4D、マウスSEMA4D、もしくはヒトSEMA4DおよびマウスSEMA4Dと特異的に結合し、SEMA4D中和活性を有し、かつ/またはSEMA-4Dとその受容体、例えば、プレキシンB1との相互作用を阻止する、これらの抗SEMA4D抗体の抗原結合断片、バリアント、および誘導体、またはその他の生物製剤もしくは低分子にも適用可能である。もう1つの態様において、方法は、抗SEMA4D抗体の投与を含むが、本明細書に記載される方法は、プレキシンB1および/またはプレキシンB2と特異的に結合し、SEMA-4Dとそのプレキシン受容体、例えば、プレキシンB1および/またはプレキシンB2の一方または両方との相互作用を阻止することができる抗プレキシンB1結合分子または抗プレキシンB2結合分子の投与も含み得る。
1つの態様において、処置は、本明細書に記載される抗SEMA4D結合分子、例えば、SEMA4Dと結合し、SEMA4Dを中和する、抗体もしくはその抗原結合断片、またはその他の生物製剤もしくは低分子の患者への適用または投与を含み、ここで、患者は、レット症候群を有し、例えば、患者は、レット症候群の症状を有するか、またはレット症候群の症状を発症するリスクを有する。もう1つの態様において、処置は、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片を含む薬学的組成物の患者への適用または投与も含むものとし、ここで、患者は、レット症候群の症状を有するか、またはレット症候群の症状を発症するリスクを有する。
本明細書に記載される抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体またはその結合性断片は、レット症候群の様々な症状の処置のために有用である。いくつかの態様において、処置は、障害に関連する症状の改善を誘導することを目的とする。他の態様において、レット症候群の処置は、症状の顕在化を低減させ、遅延させ、またはその増加を中止することを目的とする。他の態様において、レット症候群の処置は、症状の顕在化を阻害し、例えば、抑制し、遅延させ、防止し、中止し、または逆転させることを目的とする。他の態様において、レット症候群の処置は、障害に関連する症状のうちの1つまたは複数を、ある程度、軽減することを目的とする。これらの状況において、症状は、精神神経症状、認知症状、および/または運動機能障害であり得る。他の態様において、レット症候群の処置は、呼吸器症状を低減させることを目的とする。他の態様において、処置は、生活の質を改善することを目的とする。
1つの態様において、本開示は、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体の、医薬としての使用、具体的には、レット症候群に関連する症状のうちの1つまたは複数を改善し、低減させ、または逆転させるためのレット症候群の処置における使用に関する。
本開示の方法に従って、本明細書中の他の箇所において定義される少なくとも1つの抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体、またはその他の生物製剤もしくは低分子を、レット症候群に関する正の治療応答を促進するために使用することができる。レット症候群に関する「正の治療応答」とは、有症状対象における障害に関連する症状の改善を含むものとし、無症状対象における、または障害の発症初期(第1期)における、症状の防止および/または改善も含むものとする。そのような正の治療応答は、投与経路に限定されず、ドナー、ドナー組織(例えば、臓器灌流)、宿主、それらの任意の組み合わせ等への投与を含み得る。具体的には、本明細書において提供される方法は、患者におけるレット症候群の阻害、防止、低減、緩和、または進行の減少に関する。従って、例えば、障害の改善は、いくつかのもしくは全ての臨床的に観察可能な症状の欠如、いくつかのもしくは全ての臨床的に観察可能な症状の発生率の減少、または臨床的に観察可能な症状のうちのいくつかもしくは全ての変化として特徴付けられ得る。
レット症候群に関連する症状を変化させる活性は、インビボマウスモデルを使用して検出され、測定され得る。ある特定の態様において、Mecp2マウスモデルが利用され得る。このマウスには、レット症候群の特徴であるMecp2の変異が組み込まれている。Mecp2マウスモデルは、レット症候群の様々な病期に関連する主要な病理のうちのいくつかを示す:不安、手もみに類似した反復動作、例えば、後肢抱え込み、呼吸障害、例えば、無呼吸または不規則な呼吸パターン、記憶障害、および筋緊張、および運動障害。他のモデルも、文献中に記載されており、レット症候群の疾患メカニズムの研究および症状の処置のために有用に利用されており、本開示が、1つの特定のモデルに限定されるべきではないことを、当業者は認識するであろうことが、理解されるべきである。
抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体、またはその他の生物製剤もしくは低分子を、レット症候群のための少なくとも1つまたは複数の他の処置と組み合わせて使用することができ;ここで、付加的な治療は、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体による治療の投与の前、途中、または後に投与される。従って、組み合わせ治療が、もう1つの治療剤の投与と組み合わせた、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体の投与を含む場合、本開示の方法は、同時に投与されるか、またはいずれかの順序で連続的に投与される、別々の製剤または単一の薬学的製剤を使用した同時投与を包含する。
VIII.薬学的組成物および投与法
抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を調製する方法、およびこれらを必要とする対象に投与する方法は、当業者に周知であるか、または当業者により容易に決定される。抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体の投与の経路は、例えば、経口であるか、非経口であるか、くも膜下腔内であるか、脳室内注射であるか、または吸入によるか、または局所投与であることができる。本明細書において使用される非経口という用語は、例えば、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、または膣投与を含む。投与のこれらの形態のすべてが、本開示の範囲内であると明らかに企図されるが、投与のための形態の例は、注射用、特に、静脈内または動脈内の注射または点滴用の溶液であろう。注射に適した薬学的組成物は、緩衝剤(例えば、酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、またはクエン酸緩衝剤)、界面活性剤(例えばポリソルベート)、任意で安定剤(例えばヒトアルブミン)などを含むことができる。しかしながら、本明細書における教示と適合する他の方法において、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を、有害な細胞集団の部位に直接送達し、それにより患部組織の治療剤への曝露を増加させることができる。
本明細書において議論される際、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、レット症候群のインビボ処置のための薬学的有効量で投与することができる。この点において、開示される結合分子を、投与を容易にし、かつ活性剤の安定性を促進するように製剤化できることが、認識されるであろう。ある特定の態様において、本開示に従う薬学的組成物は、生理食塩水、非毒性緩衝剤、保存薬などのような、薬学的に許容される非毒性の滅菌担体を含む。本出願の目的で、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体の薬学的有効量は、標的に対する有効な結合を達成するため、および有益性を達成するため、例えば、レット症候群に関連する症状の改善に十分な量を意味すると見なされる。
本開示において使用される薬学的組成物は、例えば、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリラート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂を含む、薬学的に許容される担体を含む。
非経口投与のための調製物は、滅菌の水性または非水性の溶液、懸濁液、および乳濁液を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体は、例えば、水、食塩水および緩衝媒体を含むアルコール性/水性溶液、乳濁液、または懸濁液を含む。本開示において、薬学的に許容される担体は、0.01~0.1 M、例えば約0.05 Mのリン酸緩衝液または0.9%の食塩水を含むが、これらに限定されない。他の一般的な非経口賦形剤は、リン酸ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンガー溶液、または固定油を含む。静脈内賦形剤は、リンガーデキストロースに基づくものなどのような、流体および栄養補液、電解質補液を含む。例えば、抗微生物薬、抗酸化薬、キレート剤、および不活性ガスなどのような保存薬および他の添加物もまた、存在してもよい。
より詳細に、注射可能な使用に適した薬学的組成物は、滅菌の注射可能な溶液または分散液の即時調製のための滅菌水性溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌粉末を含む。そのような場合に、組成物は滅菌でなければならず、かつ、易注射性(easy syringability)が存在する程度に流動性であるべきである。組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されうる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適当な混合物を含有する、溶媒または分散媒であることができる。妥当な流動性を、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。本明細書において開示される治療法における使用に適した製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co.) 16th ed. (1980)に記載されている。
微生物の作用の予防は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含みうる。注射可能な組成物の長期の吸収を、組成物中に吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含むことによりもたらすことができる。
いずれの場合にも、滅菌の注射可能な溶液を、活性化合物を(例えば、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体をそれ自体でまたは他の活性剤と組み合わせて)、必要に応じて本明細書において列挙される成分の1つまたは組み合わせを有する適切な溶媒中に必要量組み入れ、その後濾過滅菌することにより、調製することができる。概して、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒および上記で列挙されるもの由来の必要な他の成分を含有する滅菌賦形剤中に組み入れることにより、調製する。滅菌の注射可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製法は、真空乾燥および凍結乾燥を含み、活性成分に加えて任意の追加的な望ましい成分の粉末を、事前に濾過滅菌したその溶液から生じる。注射用の調製物を、当技術分野において公知である方法に従って無菌的条件下で、加工処理し、アンプル、袋、瓶、シリンジ、またはバイアルなどの容器中に満たし、密封する。さらに、調製物を、キットの形態でパッケージングして、販売してもよい。そのような製造品は、付随する組成物が、疾患または障害を患うかまたはその素因を有する対象を処置するために有用であることを示す、標識またはパッケージ挿入物を有することができる。
非経口製剤は、単回ボーラス用量、注入、またはその後維持用量が続く負荷ボーラス用量であることができる。これらの組成物は、特異的な固定された間隔もしくは可変の間隔で、例えば1日に1回、または「必要に応じて」随時、投与することができる。
本開示において使用されるある特定の薬学的組成物は、例えば、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液、または溶液を含む許容される剤形において経口投与することができる。ある特定の薬学的組成物はまた、鼻エアロゾルまたは吸入によっても投与することができる。そのような組成物は、ベンジルアルコールまたは他の適当な保存薬、生物学的利用能を増強するための吸収促進剤、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、食塩水中の溶液として調製することができる。
単一剤形を産生するために担体材料と組み合わされるべき抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその断片、変異体、もしくは誘導体の量は、処置される宿主、および投与の特定の様式に応じて変動すると考えられる。組成物は、単一用量として、複数用量として、または確立された期間にわたって注入において投与することができる。投薬レジメンはまた、最適な望ましい応答(例えば、治療応答または防御応答)を提供するように調整することもできる。
本開示の範囲に沿って、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を、前述の処置の方法に従って治療効果を生じるのに十分な量で、ヒトまたは他の動物に投与することができる。抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、公知の技術に従って本開示の抗体を従来の薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることにより調製された従来の剤形において、そのようなヒトまたは他の動物に投与することができる。薬学的に許容される担体または希釈剤の形態および特徴は、それと組み合わされるべき活性成分の量、投与の経路、および他の周知の変数により規定されることが、当業者により認識されるであろう。当業者はさらに、本開示の抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体の1つまたは複数の種を含むカクテルを使用できることを、認識するであろう。
「治療的に有効な用量もしくは量」または「有効量」とは、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体の、投与された時に、レット症候群を有する患者の処置に関して正の治療応答をもたらす量を意味する。正の治療応答は、障害の症状の緩和;症状の発生率の減少、低下、遅延、もしくは中止;症状の重症度の減少、低減、遅延;症状の顕在化の阻害、例えば、抑制、遅延、防止、中止、もしくは逆転;障害に関連する症状のうちの1つもしくは複数のある程度の軽減;罹患率および死亡率の低下;生活の質の改善;またはそのような効果の組み合わせであり得る。ある特定の態様において、治療的に有効な用量または量の投与は、1つまたは複数の症状の発生率を緩和し、減少させ、低減させ、遅延させ、または中止し;1つまたは複数の症状の重症度を減少させ、低減させ、遅延させ;1つまたは複数の症状の顕在化を阻害し、例えば、抑制し、遅延させ、防止し、中止し、または逆転させ、ここで、症状には、不規則な呼吸パターン、過換気、睡眠時無呼吸、不安、身体振戦、手をもむ、叩く、握るなどの反復的な手の動作、協調運動および/または自発運動の困難さ、微細運動または粗大運動の制御の発達の遅延、粗大運動または微細運動の制御の減少、認知の減少、記憶の減少、コミュニケーション技能の遅延または減少、失行、筋力低下、異常な姿勢、てんかん発作、胃腸問題、異常な心肺カップリング(cardiorespiratory coupling)、骨密度の減少、早期発症骨粗鬆症、歯ぎしり、脂質異常症、胆嚢の炎症、脊柱側弯症、泌尿器機能障害、および睡眠障害、生活の質不良(全て、非レット症候群「正常」対象と比較したもの)、ならびにそれらの組み合わせが含まれ得る(Vashi N and Justice MJ.Mammalian Genome(2019)30:90-110を参照すること)。
症状の発生の防止または症状の発生率の減少のための、本開示の組成物の治療的に有効な用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、障害の病理学的病期、投与される他の薬物治療、および処置が防止的であるか治療的であるかを含む、多くの異なる因子に依って変動する。処置投与量は、安全性および有効性を最適化するため、当業者に公知のルーチンの方法を使用して滴定され得る。
少なくとも1つの抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその結合性断片、バリアント、もしくは誘導体の、投与される量は、本開示があれば、過度の実験法なしに当業者によって容易に決定される。少なくとも1つの抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、その抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体の投与様式およびそれぞれの量に影響する因子には、障害の重症度、障害の病歴、障害の病期、ならびに治療を受ける個体の年齢、身長、体重、健康状態、および身体状態が含まれるが、これらに限定されるわけではない。同様に、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその断片、バリアント、もしくは誘導体の、投与される量は、投与様式、および対象がこの薬剤の単回投与を受けるか、複数回投与を受けるかに依存するであろう。
本開示は、本開示の抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体の、レット症候群を有する対象を処置するための医薬の製造における使用も提供する。ある特定の態様において、医薬は、レット症候群の最初の臨床病期、即ち、前記定義の第1期にある対象において使用するために製造される。もう1つの態様において、医薬は、レット症候群のその後の臨床病期、例えば、前記定義の第2期、第3期、または第4期にある対象において使用するために製造される。ある特定の態様において、医薬は、少なくとも1つの他の治療によって前処置された対象において使用するために製造される。「前処置される」または「前処置」とは、対象が、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体を含む医薬を受容する前に、1つまたは複数の他の治療を受容したことがある(例えば、レット症候群の1つまたは複数の症状のための少なくとも1つの他の治療によって処置されたことがある)ことを意味する。「前処置される」または「前処置」とは、抗SEMA4D結合分子、例えば、本明細書において開示されるモノクローナル抗体VX15/2503、67、もしくは76、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を含む薬剤での処置の開始の前の2年以内、18か月以内、1年以内、6か月以内、2か月以内、6週間以内、1か月以内、4週間以内、3週間以内、2週間以内、1週間以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、またはさらに1日以内に少なくとも1つの他の療法で処置されている対象を含む。対象が、1つまたは複数の先の療法での前処置に対して応答者であったことは必要ではない。従って、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を含む薬剤を受ける対象は、先の療法での前処置に対して、または前処置が複数の療法を含んだ先の療法の1つもしくは複数に対して、応答していてもよく、または応答できていなくてもよい。
本開示の実施は、別の方法で指示されない限り、当技術分野の技能内である、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子導入生物学、微生物学、組み換えDNA、および免疫学の従来の技術を使用するであろう。そのような技術は、文献において完全に説明されている。例えば、Sambrook et al., ed. (1989) Molecular Cloning A Laboratory Manual (2nd ed.; Cold Spring Harbor Laboratory Press);Sambrook et al., ed. (1992) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (Cold Springs Harbor Laboratory, NY);D. N. Glover ed., (1985) DNA Cloning, Volumes I and II;Gait, ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis;Mullis et al. 米国特許第4,683,195号;Hames and Higgins, eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins, eds. (1984) Transcription And Translation;Freshney (1987) Culture Of Animal Cells (Alan R. Liss, Inc.);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press) (1986);Perbal (1984) A Practical Guide To Molecular Cloning;論文であるMethods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.);Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells, (Cold Spring Harbor Laboratory);Wu et al., eds., Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155;Mayer and Walker, eds. (1987) Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Academic Press, London);Weir and Blackwell, eds., (1986) Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV;Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1986);およびAusubel et al. (1989) Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons, Baltimore, Md.)を参照されたい。
抗体工学の一般原理は、Borrebaeck, ed. (1995) Antibody Engineering (2nd ed.; Oxford Univ. Press)に示されている。タンパク質工学の一般原理は、Rickwood et al., eds. (1995) Protein Engineering, A Practical Approach (IRL Press at Oxford Univ. Press, Oxford, Eng.)に示されている。抗体および抗体-ハプテン結合の一般原理は、Nisonoff (1984) Molecular Immunology (2nd ed.; Sinauer Associates, Sunderland, Mass.);およびSteward (1984) Antibodies, Their Structure and Function (Chapman and Hall, New York, N.Y.)に示されている。さらに、当技術分野において公知であり、かつ具体的に記載されていない免疫学における標準的な方法は、概して、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York;Stites et al., eds. (1994) Basic and Clinical Immunology (8th ed; Appleton & Lange, Norwalk, Conn.)、およびMishell and Shiigi (eds) (1980) Selected Methods in Cellular Immunology (W.H. Freeman and Co., NY)におけるように従う。
免疫学の一般原理を示す標準的な参照著作物は、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York;Klein (1982) J., Immunology: The Science of Self-Nonself Discrimination (John Wiley & Sons, NY);Kennett et al., eds. (1980) Monoclonal Antibodies, Hybridoma: A New Dimension in Biological Analyses (Plenum Press, NY);Campbell (1984) "Monoclonal Antibody Technology" in Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, ed. Burden et al., (Elsevire, Amsterdam);Goldsby et al., eds. (2000) Kuby Immunology (4th ed.; H. Freemand & Co.);Roitt et al. (2001) Immunology (6th ed.; London: Mosby);Abbas et al. (2005) Cellular and Molecular Immunology (5th ed.; Elsevier Health Sciences Division);Kontermann and Dubel (2001) Antibody Engineering (Springer Verlag);Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press);Lewin (2003) Genes VIII (Prentice Hall2003);Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press);Dieffenbach and Dveksler (2003) PCR Primer (Cold Spring Harbor Press)を含む。
上記で引用された参照文献のすべて、および本明細書において引用されるすべての参照文献は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
以下の実施例は、例証として提供され、限定としては提供されない。
実施例1:Mecp2T158Aレット症候群マウスモデルにおけるレット症候群に関連する症状に対する抗SEMA4D結合分子の効果の試験
実験設計
Mecp2T158Aレット症候群マウスモデルは、Goffinらによって作製されたものであり(Nature Neuroscience volume 15,pages274-283(2012))、ヒト疾患の表現型特色を密接に再現する。トレオニン158における変異は、レット症候群患者において観察される最も多いMecp2変異であり、トランスジェニックマウスにおいて高度に可変性の表現型を生ずる。Mecp2T158A/yヘミ接合性雄マウス(以後、Mecp2マウスと呼ぶ)は、異なる齢で一連の症状を示し、一般的には、4~6週齢で症状を発症し始める。前臨床試験を、ヘミ接合性Mecp2T158A/y雄マウスおよび野生型C57BL/6雄マウスにおいて実施した。
Mecp2T158A/yマウスが発症前である4週齢、またはMecp2T158A/yマウスが有症状である8週齢において、ヘミ接合性Mecp2T158A/y雄マウスおよび野生型C57BL/6雄マウスを、抗SEM4D(Mab 67)またはアイソタイプ対照モノクローナル抗体のいずれかによって処置した(表1)。全てのマウスが、10週間、腹腔内注射によって、50mg/kgの抗SEM4D(Mab 67)またはアイソタイプ対照抗体(Mab 2B8マウスIgG1)を受容した。発症前マウス(4週コホート;「4週齢」)および4週齢対照は、週2回、注射を受け、一方、有症状マウス(8週コホート;「8週齢」)および8週齢対照は、試験の最初の4週間は、週2回、試験の第5~10週には、週1回、投与を受けた。
(表1)前臨床試験の実験計画
Figure 2023532882000002
表2の基準に従って、振戦および後肢抱え込みを含むRTT特異的症状の重症度についての表現型スコア化を、毎週、実施した。2週毎に、ロータロッド、高架式十字迷路、および全身プレチスモグラフィ試験を使用して、協調運動、自発運動、認知、および呼吸パターンの尺度を査定した。これらの行動試験は、マウスの不安および疲労を低減させるため、3~4日かけて実施された。週1回、マウスを体重測定した。
(表2)Mecp2T158Aマウスにおけるレット症候群特異的症状についてのスコア化基準
Figure 2023532882000003
ロータロッド。トライアルの間に少なくとも15分間休息させて、3回のトライアルを行うため、マウスを加速式ロータロッド装置(図1)に置いた。ロッドを5rpmから6rpmまで15秒毎に5rpm加速させながら、各トライアルを最大3分間続けた。ロッドから落下するまでの潜時を各トライアルについて記録した。
高架式十字迷路。以前に発表されたように(Komada et al.,2008,Vis.Exp.,Dec.22(22):1088)、各マウスを、5分間、高架式十字迷路装置(図2)の交差部分に置いた。クローズアームおよびオープンアームにおいて費やされた時間、ならびにクローズアームおよびオープンアームへの進入回数を記録した。
全身プレチスモグラフィ。各マウスを、干渉することなく、3時間、暗室において、全身プレチスモグラフィ装置(図3)のチャンバーに置いた。各動物の呼吸パターン(表3)を記録し、EMKA ioxソフトウェアによって分析した。
(表3)全身プレチスモグラフィ試験において測定されたパラメータ
Figure 2023532882000004
行動試験の完了後、マウスを屠殺し、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)免疫組織化学のため、脳組織を処理した。全ての試験について、二元配置反復測定分散分析検定を使用して統計分析を実施した。
4週齢発症前マウス(4週齢)の分析
抗SEMA4Dは、発症前マウスにおいて、後肢抱え込み表現型を改善し、身体振戦を減少させる
Mecp2マウスの後肢抱え込みは、レット症候群患者に存在する特徴的な手もみ常同症に類似した姿勢反応である。Mecp2マウスの表現型後肢抱え込みを図4Aに示す。表2に概説される0から2までの範囲のスコア化基準を使用して、後肢抱え込みの重症度を査定した。アイソタイプ対照抗体を受容した発症前マウスの後肢抱え込みは、10週研究の全体を通して次第に悪化し、およそ1.8のスコアに達した。対照的に、抗SEMA4Dによって処置されたマウスの後肢抱え込みは、3週目にピークに達し(およそ1.1のスコア)、2週間、衰退し、最終的には、プラトーに達し、研究の残りの期間、およそ0.75のスコアであった。野生型マウスは、研究全体を通して後肢抱え込みを示さなかった(図4B)。
身体振戦は、ヒトにおけるレット症候群の多くの症状のうちの1つである。Mecp2マウスは、障害が進行するにつれて振戦を発症する。表2に概説される0から2までの範囲のスコア化基準を使用して、10週研究の全体を通して全身振戦の重症度を査定した。アイソタイプ抗体対照を受容した発症前マウスの身体振戦は、第1週から第8週まで次第に悪化し、最終的には、およそ1.6~1.7のスコアで横ばいになった。抗SEMA4Dによって処置されたMecp2マウスの振戦は、処置の最初の4週間、アイソタイプ対照マウスと同じレベルで、およそ1のスコアまで進行し、次いで、10週研究の残りの期間は、およそ0.75のスコアに減少した。野生型マウスは、10週研究の全体を通して振戦を示さなかった(図5)。これらの結果は、抗SEMA4D抗体による処置が、障害の発症前の病期においてレット症候群の特徴的な姿勢常同症を改善し、障害のこの病期に関連する身体振戦も低減させることを示している。
抗SEMA4Dは、発症前マウスにおいて、協調運動および自発運動を改善する
時間の経過と共に、レット症候群を有する子供においては、動作、協調運動、コミュニケーションを制御する筋肉の使用に関する問題が増加する。Mecp2マウスは、協調運動および自発運動に関する類似した問題を示す。
4週齢マウスを、前記のように、ロータロッド装置において自発運動および協調運動について試験した。結果を図6に示す。見て分かるように、アイソタイプ抗体によって処置されたMecp2マウスは、第1週の後に改善を示すことができず、自発運動および協調運動は第3週の後に悪化した。対照的に、抗SEMA4Dによって処置されたMecp2マウスは、最初の協調運動および自発運動を保持し、野生型マウスと同程度ではないが、研究の過程で測定可能な改善を示した。
抗SEMA4Dは、発症前マウスにおいて、認知喪失を防止し、または減少させる
高架式十字迷路(EPM)試験は、2つのオープンアームおよび2つの囲われたアームを有する高架式の十字(+)形の装置を使用する。行動モデルは、オープンスペースに対するマウスの一般的な嫌悪に基づく。この嫌悪は、囲われた空間の中、または境界のある空間の端の近くに留まることへの嗜好、即ち、装置の囲われたアームへの動物の移動の制限として表される。高架式十字迷路においては、オープンアームにおいて費やされた時間の割合(オープンアームにいた時間/オープンアームまたはクローズアームにいた時間の合計)の増加、およびオープンアームへの進入回数の割合(オープンアームへの進入回数/オープンアームまたはクローズアームへの進入回数の合計)の増加によって、不安の低減が示される。アーム進入回数の合計およびクローズアーム進入回数は、一般的な活動性の尺度として使用される。
本研究においては、EPMを使用して、Mecp2タンパク質の欠損による認知障害が、EPMタスクにおけるマウスの行動にどのように影響するか、抗SEMA4Dによる処置が、障害マウスの認知に影響するか否かを決定した。野生型コホート、アイソタイプ抗体によって処置された対照コホート、および抗SEMA4Dによって処置されたコホートの各マウスを、5分間、高架式十字迷路装置(図2)の交差部分に置いた。クローズアームおよびオープンアームにおいて費やされた時間、ならびにクローズアームおよびオープンアームへの進入回数を記録した。Mecp2マウスは、研究の開始時には認知の障害を示さず、試験の最初の3週以内に、抗SEMA4Dによって処置されたMecp2マウスは、野生型マウスと同様に、オープンアームの嫌悪特性の認識を示すようになった。対照的に、アイソタイプ抗体によって処置された対照Mecp2マウスは、EPMのオープンアームの嫌悪特性を学習することができなかった。野生型マウスおよび抗SEMA4Dによって処置されたMecp2マウスは、アイソタイプ抗体によって処置されたMecp2マウスより、有意に少なくオープンアームに滞在し、オープンアームにいる時間量が減少し(図7A)、アイソタイプ抗体によって処置されたマウスと比較して、オープンアームへの進入回数がより少ないことから、オープンアームの危険性の認識も示した(図7B)。これらの結果は、MeCP2マウスの抗不安様行動が、先天性不安のレベルのみならず、EPMタスクのオープンアームに関連する潜在的な危険性を認識する能力の欠如にも関連していることを示している。抗SEMA4D抗体による処置は、発症前Mecp2マウスの認知を維持し、マウスがオープンアームの潜在的な危険性を認識し、それを回避することを可能にした。
これらの結果は、障害の発症前の時期における抗SEMA4D処置が、認知を維持すること、即ち、未処置のMecp2マウスにおいて観察される認知の減少を防止することを証明している。
抗SEMA4Dは発症前マウスの呼吸パターンを改善する
RTT患者は、過換気、無呼吸、バルサルバ法によって終了する息こらえ(breath holds terminated by Valsalva maneuvers)、強制呼吸および深呼吸、持続性吸息、ならびに心拍数制御および心肺統合の異常を含み得る、複雑な呼吸表現型を呈する。重度不整呼吸は、レット症候群の最大の特徴であり、患者およびその家族の生活の質に深刻に影響する。
RTTのマウスモデルの最近の研究は、呼吸機能障害に寄与する可能性が高い神経学的障害、具体的には、神経伝達物質および神経モジュレーターの発現の異常なパターンに起因する神経化学的シグナル伝達の欠陥を明らかにした。Mecp2マウスにおけるSEMA4Dシグナル伝達の遮断が、レット症候群対象の呼吸パターンに影響し得るか否かを決定するため、Mecp2マウスを前記のような全身プレチスモグラフィに供した。図8AおよびBに示されるように、抗SEMA4Dによって処置されたマウスは、野生型マウスと類似した呼吸パターン(吸気および呼気の両方)を示した。アイソタイプ抗体によって処置されたMecp2マウスは、抗SEMA4Dによって処置されたMecp2マウスと比較して、より低い吸気時間および呼気時間を含む、不規則な呼吸パターンを示した。これらのデータは、抗SEMA4D処置が、レット症候群に関連する呼吸不規則性を防止し得ることを証明している。
8週齢有症状マウス(8週齢)の分析
抗SEMA4Dは、有症状マウスにおいて、後肢抱え込み表現型を改善し、身体振戦を減少させる
表2に概説される0から2までの範囲のスコア化基準を使用して、野生型マウス、および対照によって処置された8週齢有症状Mecp2マウス、および抗SEMA4Dによって処置された8週齢有症状Mecp2マウスの後肢抱え込みの重症度を10週にわたって査定した。アイソタイプ対照抗体を受容した有症状マウスの後肢抱え込みは、10週研究の全体を通して次第に悪化し、アイソタイプ対照発症前マウス(図5B)に類似した、およそ1.8のスコアに達した。対照的に、抗SEMA4Dによって処置されたマウスの後肢抱え込みは、試験開始時に最も高く(およそ1.4のスコア)、試験期間中に減少し、そのレベルより低く維持された。野生型マウスは、研究全体を通して後肢抱え込みを示さなかった(図9)。
表2に概説される0から2までの範囲のスコア化基準を使用して、10週研究の全体を通して、有症状Mecp2マウスの全身振戦の重症度を査定した。アイソタイプ抗体対照を受容した有症状マウスの身体振戦は、第1週から第10週まで次第に悪化し、最終的には、およそ1.8のスコアで横ばいになった。抗SEMA4Dによって処置されたMecp2マウスの振戦は、第5週まで次第に減少し、次いで、1未満、即ち、アイソタイプ抗体対照マウスの半分未満のスコアで横ばいになった。野生型マウスは、10週研究の全体を通して振戦を示さなかった(図10)。
これらの結果は、抗SEMA4D抗体処置が、障害の発症前病期と同様に、障害の有症状病期においても、レット症候群の特徴的な姿勢常同症を改善し、障害の発症前病期に投与されるか、有症状病期に投与されるかに関わらず、身体振戦を有意に低減させることを示している。
抗SEMA4Dは、有症状Mecp2マウスにおいて、協調運動および自発運動を改善する
抗SEMA4D抗体による処置が、筋肉制御の問題が発生した後に投与された場合に、協調運動および自発運動に影響するか否かを決定するため、有症状マウスおよび対照を、加速式ロータロッド装置において試験した。有症状マウス(8週齢)を、前記のように、トライアルの間に少なくとも15分休息させて、3回のトライアルを行うため、2週毎に、加速式ロータロッド装置に置いた。結果を図11に示す。見て分かるように、アイソタイプ抗体によって処置されたMecp2マウスは、第1週の後に改善を示すことができず、試験期間中に自発運動および協調運動が悪化した。対照的に、抗SEMA4Dによって処置されたMecp2マウスは、研究の過程で有意な改善を示し、さらには、試験全体を通して比較的安定したレベルの技能を保持していた野生型マウスの技能レベルを上回った。
抗SEMA4Dは、有症状マウスにおいて、認知を増加させる
抗SEMA4Dによる有症状マウス(8週齢)の処置が、障害マウスにおいて認知に影響するか否かを決定するため、EPMを使用した。野生型コホート、アイソタイプ抗体によって処置された対照コホート、および抗SEMA4Dによって処置されたコホートの各マウスを、5分間、高架式十字迷路装置(図2)の交差部分に置いた。クローズアームおよびオープンアームにおいて費やされた時間、ならびにクローズアームおよびオープンアームへの進入回数を記録した。野生型マウスは、オープンアームの嫌悪特性の認識を示し、抗SEMA4Dによって処置されたMecp2マウスも同様であったが、アイソタイプ抗体によって処置された対照Mecp2マウスは、EPMのオープンアームの嫌悪特性を学習することができなかった。発症前マウスによって示されたように、野生型マウスおよび抗SEMA4Dによって処置されたMecp2マウスは、アイソタイプ抗体によって処置されたMecp2マウスより、有意に少なくオープンアームに滞在し、オープンアームにいた時間量が減少し(図12A)、アイソタイプ抗体によって処置されたマウスと比較して、オープンアームへの進入回数が少なかったことから、オープンアームの危険性の認識も示した(図12B)。これらの結果は、発症前マウスにおいて抗SEMA4D処置が認知衰退を防止するのと全く同様に、抗SEMA4D抗体による有症状マウスの処置が、認知を増加させることを示している。
抗SEMA4Dは有症状マウスの呼吸パターンを改善する
SEMA4Dシグナル伝達の遮断が有症状対象の呼吸パターンに対して正の効果を及ぼすか否かを決定するため、抗SEMA4Dによって処置されたMecp2マウス、対照Mecp2マウス、および野生型マウスを、前記のように全身プレチスモグラフィに供した。簡単に説明すると、野生型マウス、抗SEMA4Dによって処置されたMecp2マウス、およびアイソタイプ抗体によって処置されたMecp2マウスを、干渉することなく、3時間、暗室において、図3に示される全身プレチスモグラフィ装置のチャンバーに置いた。各動物の呼吸パターン(表3)を記録し、EMKA ioxソフトウェアによって分析した。
図13AおよびBに示されるように、抗SEMA4Dによって処置されたマウスは、3週処置後に、野生型マウスの呼吸パターンに近づいた、改善された呼吸パターン(吸気および呼気の両方)を示した。アイソタイプ抗体によって処置されたMeCP2マウスは、抗SEMA4Dによって処置されたMecp2マウスと比較して、より低い吸気時間および呼気時間の両方を含む、不規則な呼吸パターンを示した。これらのデータは、抗SEMA4D処置が、呼吸器症状の発症後の呼吸不規則性を改善し得ることを証明している。
以下の表4は、前記において報告された研究の結果を要約したものである。
(表4)
Figure 2023532882000005
SEMA4Dはレットマウスのニューロンにおいてアップレギュレートされている
およそ8ヶ月齢の雌マウス(Mecp2T158Aおよび野生型同腹仔対照C57BL/6)に由来する脳のホルマリン固定パラフィン包埋切片を、SEMA4D(CD100ポリクローナル抗体-Invitrogen-PA5-47711)およびニューロンマーカーHuC/HuD(モノクローナル抗体(16A11)-Invitrogen:A-21271)について染色した。海馬領域の代表的な画像を図14に示す。見て分かるように、SEMA4Dは、レットマウスのニューロンにおいて有意にアップレギュレートされているが、野生型対照と比較した、レットマウスにおけるニューロンマーカーHuC/HuDの発現には差がない。
ある特定の態様において、対象は、レット症候群の第2期、第3期、または第4期にある。ある特定の態様において、第2期、第3期、または第4期の対象は、精神神経症状、認知症状、身体発達の遅延、運動機能障害、不規則な心拍および呼吸、コミュニケーション技能の減少、脊柱側弯症、睡眠障害、てんかん発作、胃腸問題、反復的な痙攣的動作、身体振戦、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される症状を示す。ある特定の態様において、症状の緩和は、不安様行動の低減、認知の増加、協調運動の増加、自発運動の増加、身体発達の進行、身体振戦の減少、反復動作の減少、運動技能の増加、コミュニケーション技能の増加、睡眠障害の減少、激越の減少、不穏状態の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
[本発明1001]
その必要がある対象におけるレット症候群の処置において使用するための、セマフォリン4D(SEMA4D)と特異的に結合する単離された結合分子。
[本発明1002]
VX15/2503、D2517、D2585、およびMab 67からなる群より選択される基準モノクローナル抗体のSEMA4Dとの特異的結合を競合的に阻害する、本発明1001の使用のための単離された結合分子。
[本発明1003]
SEMA4Dとその受容体またはその受容体の一部分との相互作用を阻害する、本発明1001または1002の使用のための単離された結合分子。
[本発明1004]
受容体が、プレキシンB1およびプレキシンB2およびCD72からなる群より選択される、本発明1003の使用のための単離された結合分子。
[本発明1005]
SEMA4D受容体によって媒介されるシグナル伝達を阻害する、本発明1001~1004のいずれかの使用のための単離された結合分子。
[本発明1006]
VX15/2503、D2517、またはMab 67からなる群より選択される基準モノクローナル抗体と同じSEMA4Dエピトープと特異的に結合する、本発明1001の使用のための単離された結合分子。
[本発明1007]
抗体またはその抗原結合断片を含む、本発明1001~1006のいずれかの使用のための単離された結合分子。
[本発明1008]
抗体またはその抗原結合断片がVX15/2503、D2517、またはMab 67である、本発明1007の使用のための単離された結合分子。
[本発明1009]
抗体またはその抗原結合断片が、SEQ ID NO:3、4、および5をそれぞれ含むVHCDR1~3を含む可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO:8、9、および10をそれぞれ含むVLCDR1~3を含む可変軽鎖(VL)とを含む、本発明1007の使用のための単離された結合分子。
[本発明1010]
VHおよびVLが、それぞれ、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:11、またはSEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:12を含む、本発明1009の使用のための単離された結合分子。
[本発明1011]
抗体またはその抗原結合断片が、SEQ ID NO:22、23、および24をそれぞれ含むVHCDR1~3を含む可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO:26、27、および28をそれぞれ含むVLCDR1~3を含む可変軽鎖(VL)とを含む、本発明1007の使用のための単離された結合分子。
[本発明1012]
VHおよびVLが、それぞれ、SEQ ID NO:21およびSEQ ID NO:25を含む、本発明1011の使用のための単離された結合分子。
[本発明1013]
対象がレット症候群の第1期にある、本発明1001~1012のいずれかの使用のための単離された結合分子。
[本発明1014]
前記使用が、精神神経症状、認知症状、運動機能障害、身体発達の遅延、コミュニケーション発達の遅延、コミュニケーション技能の喪失、睡眠障害、不規則な心拍、不規則な呼吸パターン、反復的な痙攣的(jerky)動作、身体振戦、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるレット症候群の病期の症状を緩和する、本発明1013の使用のための単離された結合分子。
[本発明1015]
症状の緩和が不安様行動の防止または低減、認知の増加、協調運動の増加、自発運動の増加、身体発達の進行、身体振戦の減少、反復動作の減少、運動技能の増加、コミュニケーション技能の増加、睡眠障害の減少、激越の減少、不穏状態の減少、呼吸不規則性の減少、およびそれらの任意の組み合わせを含む、本発明1014の使用のための単離された結合分子。
[本発明1016]
対象がレット症候群の第2期、第3期、または第4期にある、本発明1001~1012のいずれかの使用のための単離された結合分子。
[本発明1017]
前記使用が、精神神経症状、認知症状、身体発達の遅延、運動機能障害、不規則な心拍および呼吸、コミュニケーション技能の減少、脊柱側弯症、睡眠障害、てんかん発作、胃腸問題、反復的な痙攣的動作、身体振戦、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるレット症候群の症状を緩和する、本発明1016の使用のための単離された結合分子。
[本発明1018]
症状の緩和が不安様行動の低減、認知の増加、協調運動の増加、自発運動の増加、身体発達の進行、身体振戦の減少、反復動作の減少、運動技能の増加、コミュニケーション技能の増加、またはそれらの任意の組み合わせを含む、本発明1017の使用のための単離された結合分子。

Claims (18)

  1. その必要がある対象におけるレット症候群の処置において使用するための、セマフォリン4D(SEMA4D)と特異的に結合する単離された結合分子。
  2. VX15/2503、D2517、D2585、およびMab 67からなる群より選択される基準モノクローナル抗体のSEMA4Dとの特異的結合を競合的に阻害する、請求項1記載の使用のための単離された結合分子。
  3. SEMA4Dとその受容体またはその受容体の一部分との相互作用を阻害する、請求項1または2記載の使用のための単離された結合分子。
  4. 受容体が、プレキシンB1およびプレキシンB2およびCD72からなる群より選択される、請求項3記載の使用のための単離された結合分子。
  5. SEMA4D受容体によって媒介されるシグナル伝達を阻害する、請求項1~4のいずれか一項記載の使用のための単離された結合分子。
  6. VX15/2503、D2517、またはMab 67からなる群より選択される基準モノクローナル抗体と同じSEMA4Dエピトープと特異的に結合する、請求項1記載の使用のための単離された結合分子。
  7. 抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項1~6のいずれか一項記載の使用のための単離された結合分子。
  8. 抗体またはその抗原結合断片がVX15/2503、D2517、またはMab 67である、請求項7記載の使用のための単離された結合分子。
  9. 抗体またはその抗原結合断片が、SEQ ID NO:3、4、および5をそれぞれ含むVHCDR1~3を含む可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO:8、9、および10をそれぞれ含むVLCDR1~3を含む可変軽鎖(VL)とを含む、請求項7記載の使用のための単離された結合分子。
  10. VHおよびVLが、それぞれ、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:11、またはSEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:12を含む、請求項9記載の使用のための単離された結合分子。
  11. 抗体またはその抗原結合断片が、SEQ ID NO:22、23、および24をそれぞれ含むVHCDR1~3を含む可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO:26、27、および28をそれぞれ含むVLCDR1~3を含む可変軽鎖(VL)とを含む、請求項7記載の使用のための単離された結合分子。
  12. VHおよびVLが、それぞれ、SEQ ID NO:21およびSEQ ID NO:25を含む、請求項11記載の使用のための単離された結合分子。
  13. 対象がレット症候群の第1期にある、請求項1~12のいずれか一項記載の使用のための単離された結合分子。
  14. 前記使用が、精神神経症状、認知症状、運動機能障害、身体発達の遅延、コミュニケーション発達の遅延、コミュニケーション技能の喪失、睡眠障害、不規則な心拍、不規則な呼吸パターン、反復的な痙攣的(jerky)動作、身体振戦、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるレット症候群の病期の症状を緩和する、請求項13記載の使用のための単離された結合分子。
  15. 症状の緩和が不安様行動の防止または低減、認知の増加、協調運動の増加、自発運動の増加、身体発達の進行、身体振戦の減少、反復動作の減少、運動技能の増加、コミュニケーション技能の増加、睡眠障害の減少、激越の減少、不穏状態の減少、呼吸不規則性の減少、およびそれらの任意の組み合わせを含む、請求項14記載の使用のための単離された結合分子。
  16. 対象がレット症候群の第2期、第3期、または第4期にある、請求項1~12のいずれか一項記載の使用のための単離された結合分子。
  17. 前記使用が、精神神経症状、認知症状、身体発達の遅延、運動機能障害、不規則な心拍および呼吸、コミュニケーション技能の減少、脊柱側弯症、睡眠障害、てんかん発作、胃腸問題、反復的な痙攣的動作、身体振戦、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるレット症候群の症状を緩和する、請求項16記載の使用のための単離された結合分子。
  18. 症状の緩和が不安様行動の低減、認知の増加、協調運動の増加、自発運動の増加、身体発達の進行、身体振戦の減少、反復動作の減少、運動技能の増加、コミュニケーション技能の増加、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項17記載の使用のための単離された結合分子。
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