JP2023527139A

JP2023527139A - アルコール入りビールを製造するためのシングルサーブカプセル

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Publication number: JP2023527139A
Application number: JP2022569609A
Authority: JP
Inventors: ブローウェル、エーリク・リシャルト; ベッカーズ、アウグスティヌス・コルネリウス・アルデホンデ・ペトリュス・アルベルト
Original assignee: Heineken Supply Chain BV
Current assignee: Heineken Supply Chain BV
Priority date: 2020-05-15
Filing date: 2021-05-11
Publication date: 2023-06-27
Also published as: DK4150040T3; CA3178830A1; AU2021269790A1; WO2021228871A1; EP4150040B1; CN115667486A; BR112022023007A2; MX2022014358A; EP4150040A1; US20230084750A1

Abstract

本発明は、第１の区画及び第２の区画を含む少なくとも２つの区画を備えるシングルサーブカプセルであって、第１の区画はアルコールフリービール濃縮液を含み、前記ビール濃縮液のエタノール含量は０～１％ＡＢＶであり、第２の区画はエタノールを１２～１００重量％及び水を０～８８重量％含有するアルコール溶液を含み、ここで、エタノールと水を合わせると前記アルコール溶液の８０～１００重量％である、シングルサーブカプセルに関する。本発明のカプセルは、カプセルの内容物を炭酸水と混合することで、品質が良好なアルコール入りビールを製造するために好適に使用できる。第１の区画中のビール濃縮液は、膜分離及び／又は凍結濃縮によるアルコールフリービールの水分量低減で、好適に生産できる。このようにして得たビール濃縮液の物理化学的安定性は、エタノール含量が非常に低い（又はゼロである）ため、非常に高い。

Description

本発明は、アルコール入りビールを製造するためのシングルサーブカプセルであって、前記カプセルが、別々の区画を備え、第１の区画がアルコールフリービール濃縮液を収容し、第２の区画がアルコール溶液を収容する、シングルサーブカプセルに関する。

さらに、本発明は、前記シングルサーブカプセルを製造する方法、及び、前記カプセルからビールを製造する方法であって、２つの区画の内容物を混合し、炭酸水を添加することを含む方法に関する。

本発明のシングルサーブカプセルは、安定性に優れ、品質が良好なビールの製造を可能にする。本発明のカプセルは、重量及び容積が小さいため、通常のビールよりも輸送が容易で、保管スペースが大幅に少なくて済む。

濃縮シロップから炭酸飲料を製造し供給する家庭用機器、例えばSodastream（登録商標）の人気が急速に増加している。これらの機器は、水を炭酸化し、これを香味入りシロップと混合することで、炭酸飲料を作り出す。これらの機器が提供する高い融通性と利便性を考慮すると、同様の機器によってビールを生産できるビール濃縮物が利用できることが望ましい。

ビールは、通常、９０％を超える水を含むため、水の大部分を除去することで、大幅に濃縮できる。濃縮物からビールを製造することの利点は、当技術分野において認識されている。しかし、品質が良好なビールを製造するために好適に使用できるビール濃縮物の生産は困難な課題である。

第１に、香味物質、色、並びに／又は、泡立ちの形成及び安定性に寄与するビールの成分が失われることを避けるためには、水を選択的に除去する必要がある。ビールからの水の除去は、ビールの成分間の化学反応（例．エタノールとカルボン酸の反応）と溶質（例．タンパク質、糖類）の沈殿を促進し、これらは、保管中の品質低下につながることから、この安定性の問題に対処する手段を見いだす必要がある。

国際公開第2017/167865号は、濃縮物が液体で、動粘度が最大４０．１０^３ｍＰａ・ｓ、真の抽出物密度が少なくとも２．６°Ｐ、アルコール含量が少なくとも１体積％であることを特徴とする、麦芽系飲料濃縮物又は発酵飲料濃縮物を含むシングルサーブ容器に関する。この特許出願は、
ａ．麦芽系飲料濃縮物が含まれる第１のシングルサーブ容器を準備する工程；
ｂ．エタノール濃度７５体積％以上のエタノール溶液が入った第２のシングルサーブ容器を準備する工程；
ｃ．液体希釈剤の供給源を準備する工程；
ｄ．前記希釈剤の供給源の一部を、前記第２のシングルサーブ容器の内容物と混合して、アルコール含量が３０体積％以下の中間液体混合物を得る工程；
ｅ．前記第１のシングルサーブ容器の内容物を、前記中間液体混合物、場合によっては更に前記液体希釈剤と混合して飲料を得る工程
を含む、飲料を得る方法も記載している。

国際公開第2018/134285号は、
Ａ）ビール又はサイダー（１）を第１の濃縮工程かけて、保持液（２）及びアルコール（３ａ）と揮発性の香味成分（３ｂ）を含む透過液（３）を得る工程、
Ｂ）前記透過液（３）を吸着工程にかける工程、ここで、揮発性の香味及びアルコールを有する透過液は、吸着ユニットを通過する、
Ｃ）さらなる回収処理で、吸着ユニットから香味成分（３ｂ）を収集する工程、
Ｄ）保持液（２）を香味成分（３ｂ）と混合する工程
を含む、濃縮物を製造する方法に関する。

米国特許出願公開第2016/0230133号は、アルコール飲料から濃縮物を製造する方法であって、
・少なくともいくらかの水とアルコールを、膜を通過させて透過液の一部とし、アルコール飲料の他の成分は膜を通過させず保持液の一部とする、アルコール飲料を膜処理すること；
・前記保持液中の水を凍結させて氷を形成すること；並びに
・前記保持液から氷を除去して水分量を減少させ、固形物濃度が少なくとも３０％でアルコール濃度が２０％以下の飲料濃縮物を形成すること；
を含む方法を記載している。

本発明者らは、カプセルの内容物を炭酸水と混合することで、品質が良好なアルコール入りビールを製造するために好適に使用できる、安定性に優れたビール濃縮物を含むカプセルを開発した。

本発明のカプセルは、第１の区画及び第２の区画を含む少なくとも２つの区画を備え、第１の区画はアルコールフリービール濃縮液を含み、前記ビール濃縮液のエタノール含量は０～１％ＡＢＶであり、第２の区画はエタノールを１２～１００重量％及び水を０～８８重量％含有するアルコール溶液を含み、ここで、エタノールと水を合わせると前記アルコール溶液の８０～１００重量％である。

第１の区画中のビール濃縮液は、膜分離（例．ナノ濾過、逆浸透又は正浸透）、及び／又は、凍結濃縮により、アルコールフリービールの水分量を減少させることで、好適に生産できる。

本発明者らは、このようにして得たビール濃縮液のエタノール含量が非常に低い（又はゼロである）ため、その物理化学的安定性が非常に高いことを見いだした。本発明者らは、理論に束縛されることを望むものではないが、ビール濃縮液中のかなりの量のエタノールの存在が、エチルエステル（例．酢酸エチル）の形成並びに／又はヘーズの形成（例．タンパク質及び／若しくは糖類の沈殿に起因）による、香味の変化を引き起こす可能性があると考えている。

本発明で使用するビール濃縮液は、エタノールが事実上存在しないため、表面張力が比較的高いという利点もある。高い表面張力は、ビール濃縮物をカプセルに充填する際の望ましくない発泡が低減するので、有利である。

本発明は、これまでに説明したカプセルを製造する方法であって、
・エタノール含量０～０．５％ＡＢＶのアルコールフリービールを準備すること；
・膜分離及び／又は凍結濃縮でアルコールフリービールの水分量を減少させて、ビール濃縮液を生産すること、ここで、膜濾過は、ナノ濾過、逆浸透及び正浸透から選択される；
・第１の区画及び第２の区画を有するカプセルを準備すること；
・必要に応じてビール濃縮液を１種以上の他の成分と混合した後に、ビール濃縮液を第１の区画に入れること；
・必要に応じてアルコール溶液を１種以上の他の成分と混合した後に、アルコール溶液を第２の区画に入れること；並びに
・カプセルの第１及び第２の区画を閉じること；
を含む方法も提供する。

ナノ濾過、逆浸透及び正浸透に使用する膜は、水、並びに場合により一価イオン及び非常に小さな有機分子（例．エタノール）以外の、アルコールフリービールの事実上全ての成分を通過させない。凍結濃縮は水を除去し、他のものは事実上除去しない。したがって、膜分離も凍結濃縮も、ビールの味、口当たり及び安定性に重要な成分がビール濃縮液中に効果的に保持されるという利点がある。

品質が良好なアルコール入りビールは、本発明のシングルサーブカプセルを使用して、
・シングルサーブカプセルを飲料製造装置に配置すること；
・第１の区画からビール濃縮液を放出させること；
・第２の区画からアルコール溶液を放出させること；
・放出されたビール濃縮液、放出されたアルコール溶液、水及び二酸化炭素を混合して、アルコール入りビールを生産すること；並びに
・アルコール入りビールを供給すること；
によって生産できる。

図１は、本発明によるシングルサーブカプセルの断面図を示す。図２は、本発明によるシングルサーブカプセルを製造する方法の概略図を示す。図３は、本発明によるシングルサーブカプセルが配置された飲料製造装置を示す。

本発明の１つの側面は、第１の区画及び第２の区画を含む少なくとも２つの区画を備えるシングルサーブカプセルであって、第１の区画はアルコールフリービールの濃縮物を含み、前記ビール濃縮液のエタノール含量は０～１％alcohol by volume（ＡＢＶ）であり、第２の区画はエタノールを１２～１００重量％及び水を０～８８重量％含有するアルコール溶液を含み、ここで、エタノールと水を合わせると前記アルコール溶液の８０～１００重量％である、シングルサーブカプセルに関する。

用語「カプセル」は、本明細書では、本発明による２種の液体成分を別々に収容するのに好適な、区画化された容器を指す。

用語「シングルサーブ」は、本明細書では、「一分量」又は「一回分量」の同義語であり、１回分の再構成ビールを製造するのに十分な量のビール濃縮物及びアルコール溶液を含むカプセルを指す。通常、１回分の再構成ビールは、１２０ｍｌ～１０００ｍｌである。

用語「ビール」は、本明細書では、必要に応じてホップで苦みを付与した、酵母発酵麦芽飲料を指す。ビールは通常、以下の基本的な工程：
・大麦麦芽、必要に応じて補助的な穀類、水を含む混合物を潰して、マッシュを生産すること；
・マッシュを麦汁と穀類かすに分離すること；
・麦汁を煮沸して煮沸麦汁を生産すること；
・煮沸麦汁を生きた酵母で発酵させて、発酵麦汁を生産すること；
・発酵麦汁を１以上のさらなる処理工程（例．熟成及び濾過）にかけて、ビールを生産すること；並びに
・ビールを密封容器、例えば、瓶、缶又は樽に入れること；
を含む方法で製造される。通常、麦汁の煮沸中にホップ又はホップ抽出物を加え、苦味、及び、花のような果実のような香味を最終的なビールに付与する。

用語「ビール濃縮物」は、本明細書では、例えば、ナノ濾過、逆浸透、正浸透及び／又は凍結濃縮によって水が除去されているビールを指す。

用語「膜分離」は、本明細書では、透過液及び保持液として知られている２つの液に分離する膜に、供給流を通過させることによって、分子を分離する分離方法を指す。膜分離の例としては、ナノ濾過、逆浸透及び正浸透が挙げられる。

用語「アルコールフリービール」は、本明細書では、別段の指示がない限り、エタノール含量が０～０．５％ＡＢＶのビールを指す。

用語「遊離アミノ窒素」は、本明細書では、ＥＢＣ法９．１０．１－分光光度計によるビール中の遊離アミノ窒素（ＩＭ）によって定まる、個々のアミノ酸及び小さなペプチドを合わせた濃度を指す。

本明細書における酸の濃度は、別段の指示がない限り、溶解したこれらの酸の塩、及びこれらの同じ酸と塩の解離形態も含む。

用語「イソアルファ酸類」は、本明細書では、イソフムロン、イソアドフムロン、イソコフムロン、プレ－イソフムロン、ポスト－イソフムロン及びこれらの組合せの群から選択される物質を指す。用語「イソアルファ酸類」は、異なる立体異性体（シス－イソアルファ酸類及びトランス－イソアルファ酸類）を包含する。イソアルファ酸類は、通常、ホップの沸騰麦汁への添加により、ビール中で生成する。これらはまた、事前に異性化したホップ抽出物の形態で、ビールに添加してもよい。イソアルファ酸類は極めて苦く、推定閾値は水中でおよそ６ｐｐｍである。

用語「水素化イソアルファ酸類」は、ジヒドロ－イソアルファ酸類、テトラヒドロ－イソアルファ酸類、ヘキサヒドロ－イソアルファ酸及びこれらの組合せから選択される物質を指す。

用語「フルポン類」は、本明細書では、コフルポン、n-フルポン、アドフルポン及びこれらの組合せから選択される物質を指す。フルポン類は、ホップのベータ酸類の酸化生成物である。

本発明のシングルサーブカプセルは、２つ以上の区画を含んでもいてよい。最も好ましくは、カプセルが２つの区画を備え、一方はビール濃縮液を含み、他方はアルコール溶液を含む。

好ましい態様では、本発明のカプセルは、隔壁によって隔てられた、ビール濃縮液を収容する第１の区画及びアルコール溶液を収容する第２の区画を含む少なくとも２つの区画を備える容器を含み、これらの区画は、例えば密封ホイル又は蓋によって閉じられる。

好ましくは、シングルサーブカプセルの第１の区画は、１０～６０ｍＬ、より好ましくは１５～５０ｍＬ、最も好ましくは２０～４０ｍＬのビール濃縮液を収容する。

シングルサーブカプセルの第２の区画は、好ましくは４～２５ｍＬ、より好ましくは６～２０ｍＬ、最も好ましくは７～１５ｍＬのアルコール溶液を収容する。

第１の区画及び第２の区画の内部容積の合計は、好ましくは７５ｍＬを超えず、より好ましくは１５～６５ｍＬであり、最も好ましくは２０～６０ｍＬである。

ビール濃縮液及びアルコール溶液の重量比は、好ましくは７：１～１：１で、より好ましくは６：１～１．２：１で、最も好ましくは５：１～１．５：１で、カプセルに収容する。

ビール濃縮液のエタノール含量は、好ましくは０．５％ＡＢＶを超えず、より好ましくは０．３％ＡＢＶを超えず、最も好ましくは０．１％ＡＢＶを超えない。

ビール濃縮液のｐＨは、好ましくは３．０～６．０であり、より好ましくは３．２～５．５であり、最も好ましくは３．５～５．０である。

ビール濃縮液の水分量は、好ましくは３５～８０重量％、より好ましくは４０～７５重量％、最も好ましくは４５～７０重量％である。

好ましい態様では、ビール濃縮液の密度は、２０～６０°Ｐ、より好ましくは２４～５０°Ｐ、最も好ましくは２８～４２°Ｐである。

リボフラビン、遊離脂肪酸（例．リノール酸）、アミノ酸及び小さなペプチドは、大麦麦芽中に天然に存在し、通常、アルコールフリービール中にかなりの濃度で見いだされる。同様に、マルトテトラオースは、すり潰す際のデンプンの酵素的加水分解によって形成され、酵母によって消化されないため、このオリゴ糖はアルコールフリービール中にかなりの濃度で見いだされる。水のみ、又は、水、低分子量物質及びイオンのみを除去する濃縮方法によって、アルコールフリービールからカプセル中のビール濃縮液を得るため、ビール濃縮液は、通常、顕著な量のリボフラビン、リノール酸、アミノ酸、ペプチド及び／又はマルトテトラオースを含有する。

ビール濃縮液のリボフラビン含量は、好ましくは２５０～３，０００μｇ／Ｌ、より好ましくは３００～２，５００μｇ／Ｌ、より好ましくは３５０～２，２００μｇ／Ｌ、最も好ましくは４００～２，０００μｇ／Ｌである。

ビール濃縮液は、リノール酸を、好ましくは１５０～５，０００μｇ／Ｌ、より好ましくは２００～４，０００μｇ／Ｌ、更により好ましくは２５０～３，５００μｇ／Ｌ、最も好ましくは３００～３，０００μｇ／Ｌ含有する。

リノール酸の他に、ビール濃縮液は、通常、他の脂肪酸、例えば、オレイン酸及び／又はα-リノレン酸も含有する。オレイン酸は、好ましくは３００～３，０００μｇ／Ｌ、より好ましくは４００～２，５００μｇ／Ｌ、更により好ましくは５００～２，０００μｇ／Ｌ、最も好ましくは６００～１，８００μｇ／Ｌの濃度で、ビール濃縮液中に存在する。

α-リノレン酸は、好ましくは１００～１，２００μｇ／Ｌ、より好ましくは１２０～１，１００μｇ／Ｌ、更により好ましくは１５０～１，０００μｇ／Ｌ、最も好ましくは１８０～９００μｇ／Ｌの濃度で、ビール濃縮液中に存在する。

ビール濃縮液の遊離アミノ窒素（ＦＡＮ）含量は、好ましくは６０～１，０００ｍｇ／Ｌ、より好ましくは８０～８００ｍｇ／Ｌ、更により好ましくは９０～７００ｍｇ／Ｌ、最も好ましくは１００～６００ｍｇ／Ｌである。

麦芽の糖類であるマルトース及びマルトトリオースとは異なり、マルトテトラオースは、大半のビール酵母によってほとんど消化されない。その結果、マルトテトラオースの濃度は、通常、酵母発酵の影響を受けにくい。したがって、ビール濃縮液は、マルトテトラオースを、好ましくは１０～１００ｇ／Ｌ、より好ましくは１２～８０ｇ／Ｌ、更により好ましくは１５～６０、最も好ましくは１８～４０ｇ／Ｌ含有する。

本発明の一態様では、ビール濃縮液は、アルコール入りビールの脱アルコールで生産したアルコールフリービールの濃縮物である。この態様によるビール濃縮液は、通常、限られた量のマルトース及び／又はマルトトリオースを含有する。

好ましくは、脱アルコールビールのビール濃縮液は、マルトースを、０～２０ｇ／Ｌ、より好ましくは０～１５ｇ／Ｌ、更により好ましくは０．５～１０ｇ／Ｌ、最も好ましくは１～８ｇ／Ｌの濃度で含有する。

脱アルコールビールのビール濃縮液は、マルトトリオースを、好ましくは１～３０ｇ／Ｌ、より好ましくは２～２５ｇ／Ｌ、更により好ましくは２．５～２２ｇ／Ｌ、最も好ましくは３～２０ｇ／Ｌの濃度で含有する。

本発明の別の態様では、ビール濃縮液は、事実上エタノールを産生しない発酵法により生産されたアルコールフリービールの濃縮物である。この態様によるビール濃縮液は、通常、比較的高レベルのマルトース及び／又はマルトトリオースを含有する。

この態様によるビール濃縮液は、マルトースを、好ましくは８０～４００ｇ／Ｌ、より好ましくは１００～３００ｇ／Ｌ、更により好ましくは１４０～２８０ｇ／Ｌ、最も好ましくは１５０～２５０ｇ／Ｌの濃度で含有する。

エタノール制限発酵により生産されたアルコールフリービールから得られるビール濃縮液は、マルトトリオースを、好ましくは３０～１５０ｇ／Ｌ、より好ましくは４０～１２０ｇ／Ｌ、更により好ましくは４５～１１０ｇ／Ｌ、最も好ましくは５０～１００ｇ／Ｌの濃度で含有する。

特に好ましい態様では、ビール濃縮液は、ビール中に天然に存在する酢酸の大部分を保持する濃縮方法によって生産する。ビール濃縮液のエタノール含量が非常に低いため、濃縮物中の酢酸の存在は、酢酸エチルが形成されることによる香味の不安定性をもたらさない。

好ましくは、ビール濃縮液は、酢酸を、１００～１，２００ｍｇ／Ｌ、より好ましくは１２０～１，０００ｍｇ／Ｌ、更により好ましくは１５０～９００ｍｇ／Ｌ、最も好ましくは１８０～８００ｍｇ／Ｌ、含有する。

上述したように、本発明によるアルコールフリービールのビール濃縮液は、アルコール含有ビール濃縮液と比較して、表面張力が相対的に高いという利点がある。好ましくは、ビール濃縮液の表面張力は、少なくとも４２．５ｍＮ／ｍ、より好ましくは４３．５～５５ｍＮ／ｍ、最も好ましくは４５～５３ｍＮ／ｍである。

表面張力を正確に測定するために、約３００ｍＬの濃縮物を、試料が十分に脱気されるまで、２０．０℃に設定したウォーターバス中の開放容器に移して、初期気体を放出する。次いで、試料を幅の広い大型試験ビーカー（５００ｍＬ）に注意深く注ぐ。均一性を確保するため、プラスチック製の使い捨て撹拌子を使用して、試料を注意深く撹拌する。１５０ｍｌの均一な試料を、測定カップに入れる。表面張力は、ウィルヘルミープレートを備えたKruess 9張力計を使用して測定する。装置のプロトコルに従って、最初に較正（純水＝７２．６ｍＮ／ｍ）を行い、続いて試料の表面張力を測定する。測定の間、プローブ／プレートを注意深く洗浄し、ブンゼンバーナーの火炎中に（鉗子で）短時間保持し、プローブ上の残留試料が次の測定の結果に影響しないことを確実にする。

好ましい態様では、ビール濃縮液は、０．４８ＭＰａ、２５℃及び回収率１５％で、２，０００ｍｇ／Ｌの硫酸マグネシウム水溶液を使用して測定した場合の硫酸マグネシウム除去率が、８０～１００％、より好ましくは９０～１００％、最も好ましくは９５～１００％の膜を用いた膜分離によって得る。

好ましい態様では、ビール濃縮液は、１．６ＭＰａ、２５℃及び回収率１５％で、２，０００ｍｇ／Ｌのグルコース水溶液を使用して測定した場合のグルコース除去率が、８０～１００％、より好ましくは９０～１００％、最も好ましくは９５～１００％の膜を用いた膜分離によって得る。

特に好ましい態様では、ビール濃縮液は、１０．３ｂａｒ、２５℃、ｐＨ８及び回収率１５％で、２０００ｍｇ／Ｌの塩化ナトリウム溶液を使用して測定した場合の塩化ナトリウム除去率が、８０～１００％、より好ましくは９０～１００％、最も好ましくは９５～１００％の膜を用いた逆浸透又は正浸透によって得る。

アルコールフリービールの膜分離及び／又は凍結濃縮によって生産されるビール濃縮液中の揮発性の香味物質及び麦芽の糖類の濃度は、濃縮物が生産されるアルコールフリービールのタイプに依存する。以下により詳しく説明するが、アルコールフリービールは、２つの異なる方法によって：すなわち、
・アルコール入りビールからエタノールを除去すること（例．減圧蒸留による）；
・酵母発酵中のエタノールの形成を制限すること；
によって好適に生産できる。

本発明の一態様では、ビール濃縮液は、アルコール入りビールの脱アルコールで得られるアルコールフリービールの濃縮によって得られ、濃縮物は、
・酢酸を１００～１，２００ｍｇ／Ｌ；
・マルトースを０～２０ｇ／Ｌ；
・マルトトリオースを１～３０ｇ／Ｌ；
含む。

本発明の別の態様では、ビール濃縮液は、エタノール形成が制限される酵母発酵によって得られるアルコールフリービールを濃縮することによって得られ、濃縮物は、
・酢酸を０～３００ｍｇ／Ｌ；
・マルトースを８０～４００ｇ／Ｌ；
・マルトトリオースを３０～１５０ｇ／Ｌ；
含む。

ビール濃縮液は、溶存二酸化炭素を、好ましくは０～５００ｍｇ／Ｌ、より好ましくは０～２００ｍｇ／Ｌ、最も好ましくは０～１００ｍｇ／Ｌ含有する。

好ましい態様では、アルコール溶液はエタノールを１３～９０重量％及び水を１０～８７重量％含有し、より好ましくは、アルコール溶液はエタノールを２５～８５重量％及び水を１５～７５重量％含有し、より好ましくは、アルコール溶液はエタノールを４０～８２重量％及び水を１８～６０重量％含有する。

好ましくは、水とエタノールを合わせると、アルコール溶液の８５～１００重量％、より好ましくは９０～１００重量％、最も好ましくは９５～１００重量％である。

イソアルファ酸類、水素化アルファ酸類及び酸化されたアルファ酸類（フルポン類）は、消費者に評価されるビールの心地よい苦味に寄与する。したがって、非常に好ましい態様では、ビール濃縮液及び／又はアルコール溶液は、イソアルファ酸類、水素化イソアルファ酸類及び／又はフルポ類ンを含有する。ビール濃縮液中のホップ酸の乏しい水溶性の観点から、ビール濃縮液は、イソアルファ酸類、水素化アルファ酸類、フルポン類及びこれらの組合せから選択されるホップ酸を、０～１００ｍｇ／Ｌ、好ましくは０～３０ｍｇ／Ｌ、より好ましくは０～１０ｍｇ／Ｌ含有することが好ましい。

エタノール及びエタノール／水混合物中のホップ酸の溶解性はビール濃縮液中のこれらのホップ酸の溶解性よりも遥かに高いため、カプセル中に存在するホップ酸の少なくとも一部は、アルコール溶液に含まれることが好ましい。したがって、好ましい態様では、アルコール溶液は、イソアルファ酸類、水素化アルファ酸類、フルポン類及びこれらの組合せから選択されるホップ酸を、５０～２，０００ｍｇ／Ｌ、より好ましくは１００～１，５００ｍｇ／Ｌ、最も好ましくは２００～１，０００ｍｇ／Ｌ含有する。

本発明のカプセルに利用されるアルコール溶液は、アルコール入りビールの脱アルコールで得られるエタノールを好適に含んでいてもよい。ビールからアルコールを除去するために、通常、減圧蒸留を使用する。このようにして得た蒸留液は、エタノール、水及びさまざまな揮発性のビール香味物質を含有する。とりわけ、ビール濃縮液を脱アルコールビールから生産した場合、その蒸留液は、本発明のカプセルのアルコール溶液に有利に利用してもよい。用語「減圧蒸留」は、本明細書では「減圧蒸発」も包含する。

したがって、好ましい態様では、アルコール溶液は、アルコール含有ビールの蒸留による脱アルコールで得た蒸留液を含む。最も好ましくは、アルコール溶液は、このような蒸留液からなる、又はこのような蒸留液の水性希釈物である。

好ましくは、アルコール溶液は、エタノール１ｋｇ当たり、５０～２，０００ｍｇ、より好ましくは７０～１，５００ｍｇ、更により好ましくは９０～１，２００ｍｇ、最も好ましくは１００～８００ｍｇの酢酸エチルを含む。

好ましくは、アルコール溶液は、エタノール１ｋｇ当たり、５～２００ｍｇ、より好ましくは７～１５０ｍｇ、更により好ましくは９～１２０ｍｇ、最も好ましくは１０～８０ｍｇの酢酸イソアミルを含む。

好ましい態様では、アルコール溶液は、エタノール１ｋｇ当たり、４００～５，０００ｍｇ、より好ましくは６００～４，０００ｍｇ、更により好ましくは７００～３，５００ｍｇ、最も好ましくは８００～３，０００ｍｇのアミルアルコール類を含有する。ここで、用語「アミルアルコール類」は、式Ｃ_５Ｈ_１２Ｏのアルコールを指す。

別の好ましい態様では、アルコール溶液は、エタノール１ｋｇ当たり、８～２４０ｍｇ、より好ましくは１１～１７０ｍｇ、更により好ましくは１３～１４０ｍｇ、最も好ましくは１５～１００ｍｇのフェニエチルアルコールを含有する。

好ましくは、アルコール溶液は、エタノール１ｋｇ当たり、２～５０ｍｇ、より好ましくは３～４０ｍｇ、更により好ましくは３．５～３２ｍｇ、最も好ましくは４～２５ｍｇの酢酸フェニルエチルを含有する。

本発明の別の側面は、これまでに説明したシングルサーブカプセルを製造する方法であって、
・エタノール含量０～０．５％ＡＢＶのアルコールフリービールを準備すること；
・膜分離及び／又は凍結濃縮によって、アルコールフリービールの水分量を減少させて、ビール濃縮液を生産すること、ここで、膜分離が、ナノ濾過、逆浸透及び正浸透から選択される；
・第１の区画及び第２の区画を有するカプセルを準備すること；
・必要に応じてビール濃縮液を１種以上の他の成分と混合した後に、ビール濃縮液を第１の区画に入れること；
・必要に応じてアルコール溶液を１種以上の他の成分と混合した後に、アルコール溶液を第２の区画に入れること；並びに
・カプセルの第１及び第２の区画を閉じること；
を含む方法に関する。

本発明の方法で利用するビール濃縮液及びアルコール溶液は、好ましくは、本明細書で説明したとおりである。

本発明の一態様では、アルコールフリービールは、
・エタノール含量３～１２％ＡＢＶのアルコール入りビールを準備すること；及び
・ビールからエタノールを、好ましくは蒸留又は膜分離（例．ナノ濾過、逆浸透、浸透蒸留、透析又はパーベーパレーション）によって除去し、アルコールフリービール及びエタノール含有蒸留液を生産すること；
によって生産する。

好ましくは、蒸留によるエタノールの除去は、１０～１００℃、より好ましくは２０～６５℃、更により好ましくは３０～５０℃、最も好ましくは４０～４６℃で行う。

蒸留によるエタノールの除去は、好ましくは０．０１～５００ｍｂａｒ、より好ましくは１～２００ｍｂａｒ、更により好ましくは５～１５０ｍｂａｒ、最も好ましくは８０～１１０ｍｂａｒで行う。

膜分離によるエタノール除去は、好ましくは、水及びエタノールを透過させる膜を使用して、ナノ濾過、逆浸透、浸透蒸留、透析又はパーベーパレーションによって行う。蒸留によるエタノールの除去と比較して、より多くの揮発性香味物質の画分が、脱アルコールビール中に保持される。

本発明の方法において得られるアルコールフリービールは、エタノール除去後のエタノール含量が、好ましくは０～０．４重量％、より好ましくは０～０．１重量％、最も好ましくは０～０．０５重量％である。

アルコール入りビールからエタノールを蒸留で除去した後に得られるエタノール含有蒸留液は、エタノール含量が、好ましくは１０～８０重量％、より好ましくは１５～７５重量％、最も好ましくは２０～７０重量％である。

好ましい態様では、アルコール入りビールは、蒸留によるエタノール除去の前に脱炭酸する。

特に好ましい態様では、エタノール含有蒸留液は、必要に応じて１種以上の他の成分（例．ホップ酸又は香味料）と混合して、第２の区画に入れられるアルコール溶液に利用する。

本発明の一態様では、アルコール入りビールからエタノールを蒸留で除去することで、４０～８０重量％、より好ましくは４５～７５重量％、最も好ましくは５０～７０重量％という高いエタノール含量の蒸留液が得られる。この蒸留液は、例えば、カプセルの第２の区画に入れるアルコール溶液に、それ自体で好適に利用してもよい。

別の態様では、アルコール入りビールからエタノールを蒸留で除去することで、１０～４０重量％、より好ましくは１２～３５重量％、最も好ましくは１５～３０重量％という低いエタノール含量の蒸留液が得られる。好ましくは、エタノール含量が低いこの蒸留液は、カプセルの第２の区画に入れるアルコール溶液に利用する前に、エタノール含量４０～８０重量％、より好ましくは４５～７５重量％、最も好ましくは５０～７０重量％に濃縮する。エタノール含量が低い蒸留液のエタノール含量は、蒸留又は逆浸透によって、４０重量％以上の濃度に、好適に上昇させることができる。

エタノール含量が高いエタノール含有蒸留液は、好ましくは、アルコール溶液が６０～１００重量％、より好ましくは８０～１００重量％、最も好ましくは９０～１００重量％の前記蒸留液を含有する量で、アルコール溶液に利用される。

本発明の方法の別の態様では、アルコールフリービールは、エタノールの形成が制限される酵母発酵（例．コールドコンタクト発酵）を使用して生産する。

コールドコンタクト発酵は、好ましくは７℃未満、より好ましくは－１～４℃、より好ましくは－０．５～２．５℃で行う。

コールドコンタクト発酵は、好ましくは８～７２時間、より好ましくは１２～４８時間に及ぶ（「コールドコンタクト発酵ビール」）。

アルコールフリービールを生産するために利用してもよい別の形態の制限エタノール発酵は、７℃以上で非常に短時間（例．２時間未満）の酵母発酵、続いて、低温による迅速な不活化（例．－０．５～１℃への急冷）、必要に応じて、低温殺菌を含む（停止発酵）。

使用できる別の形態の制限エタノール発酵は、適用する発酵条件下で比較的少量のエタノールを産生する酵母株、例えば、麦汁中の発酵性の糖１ｇ当たりエタノールを０．２ｇ未満、好ましくは０．１ｇ未満、産生する酵母株等を利用する。好適な株（例．クラブトリー陰性株）は当技術分野において公知であり、さまざまな発酵条件下で産生されるエタノールの量は、通常の実験で決定できる（酵母制限ビール）。

利用できる別の形態の制限エタノール発酵は、エタノール産生酵母株が産生するエタノールの事実上全てを消費する十分な量の第２の酵母株の存在下で、第１のエタノール産生酵母株を使用する。サッカロミセスルーキシイ（Saccharomyces rouxii）は、エタノールを消費する酵母株の例である。

利用できる更に別の形態の制限エタノール発酵は、例えば、発酵性の糖の含量が、発酵完了後に最大で１．０体積％のアルコールが産生されるような量の、麦汁を利用する。この場合、麦汁の発酵性の糖の含量は、通常、１７．５ｇ／Ｌ未満、好ましくは１２ｇ／Ｌ未満、より好ましくは８ｇ／Ｌ未満である（糖欠乏麦汁ビール）。

本発明の方法において、アルコールフリービールの水分量の低減は、膜分離及び／又は凍結濃縮によって達成する。アルコールフリービールの膜分離は、好ましくは－２℃～４０℃、より好ましくは３～２２℃で行う。

膜分離の圧力は、好ましくは６～８０ｂａｒｅ、より好ましくは１０～７５ｂａｒ、最も好ましくは１５～７０ｂａｒである。

特に好ましい態様では、ビール濃縮液は、名目脱塩率（２０００ｐｐｍＮａＣｌ、１０．３ｂａｒ、２５℃、回収率１５％）が、少なくとも６０％、より好ましくは少なくとも８０％、最も好ましくは少なくとも９０％の膜を使用する逆浸透又は正浸透で生産する。より好ましくは、ビール濃縮液は逆浸透で生産する。

ビール濃縮液は、有利には、凍結濃縮処理でも生産できる。この方法では、液体から氷結晶への相転移によって、ビールから水が引き抜かれる。この工程は主に３つの段階：水の結晶化、水の結晶の成長、及び水の結晶の分離があり、それぞれの段階のために特別に設計された設備で行う。例えば、それぞれ、掻き取り式表面熱交換器、成長再結晶化装置及び分離洗浄塔である。基本的に、アルコールフリービールの温度は、混合物の共晶点に達することなく、水の少なくとも一部が凍結する値まで低下させる。氷の結晶が十分に大きい、例えば、直径１００μｍ以上の場合、前記結晶は、例えば洗浄塔を使用して濃縮液から分離できる。０℃未満という低い処理温度のために、蒸発による熱劣化及び香りの損失が回避される。

凍結濃縮によるビールの濃縮では、エタノールは、最大濃縮度を限定する要因となる可能性がある。濃縮中のエタノールの濃度が上昇すると、結晶化温度が次第に低下し、粘度が高くなる。アルコールフリービールからビール濃縮液を製造することから、この問題は現在の方法では解消されている。

膜分離及び／又は凍結濃縮によるアルコールフリービールの水分量の低減は、アルコールフリービール中の著しい量の溶存二酸化炭素によって妨げられる。したがって、溶存二酸化炭素の含量が、０～５００ｍｇ／Ｌ、より好ましくは０～１００ｍｇ／Ｌ、最も好ましくは０～２０ｍｇ／Ｌであるアルコールフリービールを利用することが好ましい。

好ましい態様では、本発明の方法に利用するアルコールフリービールは、ホップ無添加又はわずかにホップが添加されたビールである。したがって、好ましい態様では、アルコールフリービールの、イソアルファ酸類、水素化イソアルファ酸類、フルポン類及びこれらの組合せから選択されるホップ酸の含有量は、０～１０ｍｇ／Ｌ、より好ましくは３ｍｇ／Ｌ未満、最も好ましくは１ｍｇ／Ｌ未満である。

好ましい態様では、アルコールフリービールの水分量は、少なくとも７０％、より好ましくは少なくとも７５％、最も好ましくは少なくとも８０％減少させる。

ビール濃縮液は、第１の区画に入れられる前に、１種以上の他の成分と混合してもよい。

好ましい態様では、アルコール溶液は、エタノール含有液、好ましくはこれまでに説明したエタノール含有蒸留液を、イソアルファ酸類、水素化イソアルファ酸類、フルポン類及びこれらの組合せから選択されるホップ酸と混合することで製造する。更により好ましくは、アルコール溶液は、エタノール含有液をイソアルファ酸類と混合することで製造する。イソアルファ酸類は、事前に異性化したホップ抽出物の形態で、好適に提供してもよい。

香味料は、第１の区画に入れる前に、アルコール溶液に好適に添加してもよい成分の例である。

本発明の別の側面は、ビール濃縮液からビールを製造する方法であって、
・本明細書で説明したシングルサーブカプセルを、飲料製造装置に配置すること；
・第１の区画からビール濃縮液を放出させること；
・第２の区画からアルコール溶液を放出させること；
・放出されたビール濃縮液、放出されたアルコール溶液、水及び二酸化炭素を混合して、アルコール入りビールを生産すること；
・アルコール入りビールを供給すること；
を含む方法に関する。

ビール濃縮液とアルコール溶液の放出は、同時であってもよく、いかなる順序であれ、順次であってもよい。

放出されたビール濃縮液、放出されたアルコール溶液、水及び二酸化炭素の混合は、さまざまな方法で行うことができる。

好ましい一態様では、まず水と二酸化炭素を混和して炭酸水を生産し、その後、放出されたアルコール溶液と炭酸水を混合して炭酸化アルコール溶液を生産し、最後に、放出されたビール濃縮液と混合する。

別の好ましい態様では、まず水と放出されたアルコール溶液を混和して希釈アルコール溶液を生産し、その後、二酸化炭素を混和して炭酸化アルコール溶液を生産し、最後に、放出されたビール濃縮液と混合する。

更に別の好ましい態様では、水、二酸化炭素及び放出されたアルコール溶液を単一の工程で混合して炭酸化アルコール溶液を生産し、その後、放出されたビール濃縮液を混和する。

好ましくは、炭酸水は、溶存二酸化炭素を、１～８ｇ／Ｌ、より好ましくは２～７ｇ／Ｌ、含有する。

好ましい態様では、飲料製造装置は、水タンク及び加圧二酸化炭素を収容する容器を備える。

図１は、アルミニウムのシートで構成された、全体的な形状が底部にリム（３０）を有する円錐台であるボディ（２０）を含むシングルサーブカプセル（１０）を示す。ボディ（２０）の小さな端は、鈍角円錐（２１）である。

リム（３０）は、ホイル（４０）の周囲をボディを挟んで締め付けることによって形成され、ボディ（２０）とホイル（４０）を熱封止することでカプセル（１０）を密封する。ホイル（４０）は、アルミニウムで構成されていてもよい。

カプセル（１０）は、分割壁（７０）によって隔てられた、第１の区画（５０）と第２の区画（６０）を有する。大きな第１の区画（５０）はビール濃縮液（５１）を収容し、小さな第２の区画（６０）はアルコール溶液（６１）を収容する。

鈍角円錐（２１）は、第１の区画（５０）を画定する部分に脆弱化凹部（２２）を含む。鈍角円錐（２１）は、第２の区画（６０）を画定する部分に脆弱化凹部（２３）を更に含有する。

ホイル（４０）は、第１の区画（５０）を画定する部分に複数の脆弱化セクション（４１）を、第２の区画（６０）を画定する部分に脆弱化凹部（４２）を有する。

使用の際に、管状注入口が脆弱化凹部（２２）及び（２３）の両者を穿刺し、管状放出口がホイルにおける脆弱化セクション（４１）及び（４２）を貫通する。次いで、管状注入口から第１の区画（５０）及び第２の区画（６０）に注入された炭酸水が、第１の区画（５０）からはビール濃縮液（５１）を、第２の区画（６０）からはアルコール溶液（６１）を、生産溝を通って洗い流す。

図２は、本発明によるシングルサーブカプセルを製造する方法の略図を示す。図中の工程Ａは、ホップ無添加アルコール入りビール（１）（例．エタノール含量５％ＡＢＶのホップ無添加ピルスナー）を脱アルコールして、ノンアルコールビール（２）及びアルコール溶液（３）を生産することを含む。工程Ｂは、逆浸透によってノンアルコールビールを濃縮して、ビール濃縮液（４）を生産することを含む。工程Ｃは、事前に異性化したホップ抽出物（５）と工程１で生産したアルコール溶液（３）を混合して、溶存ホップ酸を含有するアルコール溶液（６）を生産することを含む。工程Ｄは、カプセル（７）の一方の区画（８）にビール濃縮液（４）を、同じカプセル（７）の他方の区画（９）に溶存ホップ酸を含有するアルコール溶液（６）を入れ、２区画シングルサーブカプセル（７）を充填することを含む。工程Ｅは、充填されたカプセルを密封して、密封カプセル（１０）を生産することを含む。

図３は、図１に示したシングルサーブカプセルを使用して再構成ビールを製造する装置（１０）を示す。装置は、装置（１０）の機械的及び電子的構成要素を格納するハウジング（１１）を含む。ハウジング（１１）は、プラスチック及び／又は金属で形成できる。

装置（１０）は、電源（２０）、及び、装置を稼動し装置の機能（例．計量分配する再構成ビールの体積、温度及び／又はアルコール含量）を制御できる制御システム（３０）を備える。計量分配ユニット（５０）の下に配置された空のグラス（４０）も示されている。

装置（１０）は、給水栓（６０）の形態の水の供給源及び冷却ユニット（７０）も有する。装置（１０）は、加圧二酸化炭素が入ったシリンダー（８０）、炭酸化ユニット（９０）、混合ユニット（１００）及び２区画シングルサーブカプセル（１２０）の置き場所（１１０）を更に有する。

シングルサーブカプセル（１２０）は、ビール濃縮液（１２３）を収容する第１の区画（１２１）及びアルコール溶液（１２４）を収容する第２の区画（１２２）を含む。区画（１２１、１２２）は、ホイル（１２５）によって密封される。

装置（１０）は、シングルサーブカプセル（１２０）の第１の及び第２の区画（１２１、１２２）の上端及び下端を開放する手段を含む。

使用の際に、消費者は、装置（１０）の置き場所（１１０）にシングルサーブカプセル（１２０）を載置できる。次いで、消費者は、制御システム（３０）を使用して装置（１０）を稼動させ、計量分配ユニット（５０）からグラス（４０）に再構成ビールが注がれるのを待つことができる。

装置（１０）を稼動させると、栓（６０）からの水とシリンダー（８０）からの加圧二酸化炭素が、炭酸化ユニット（９０）で計量分配される。水は、炭酸化ユニット（９０）に向かう途中で、冷却ユニット（７０）によって冷却される。炭酸化ユニット（９０）で適量の水と二酸化炭素が混合されると、炭酸水が炭酸化ユニット（９０）から放出され、シングルサーブカプセル（１２０）を通過して混合ユニット（１００）に流れる。炭酸化ユニット（９０）からの炭酸水の流れは２つの流路をたどり、一方の流路は、シングルサーブカプセル（１２０）の第１の区画（１２１）を通過し、他方の流路は、シングルサーブカプセル（１２０）の第２の区画（１２３）を通過する。

シングルサーブカプセル（１２０）を通過する間に、炭酸水は、ビール濃縮液（１２３）及びアルコール溶液（１２４）を混合ユニット（１００）に洗い流す。混合ユニット（１００）では、炭酸水、洗い流されたビール濃縮液及び洗い流されたアルコール溶液を密接に混合して、透明な再構成ビールを生産する。

次いで、透明な再構成ビールが、混合ユニット（１００）から計量分配ユニット（５０）を経由し、泡立ちを形成してグラス（４０）に放出される。

図１では、シングルサーブカプセル（１２０）は、一方がビール濃縮液を収容し、他方がアルコール溶液を収容する、２つの別々のカプセルによって置きかえてもよいことが理解される。

本発明は、以下の非限定的な実施例によって更に説明される。

実施例１
５％ＡＢＶのホップ無添加ラガーを、減圧蒸留（Schmidt-Bretten, Bretten, Germany－供給：５ｈＬ／時；蒸気流量：１００ｋｇ／時；放出口圧力：３．５ｂａｒ；減圧設定：９０ｍｂａｒ；放出口温度：３℃）で脱アルコールした。得られた脱アルコールビールは、エタノール含量が０．０１％ＡＢＶであった。

脱アルコール中に生じた蒸留液を収集し、分析した。結果を表１に示す。

脱アルコールしたホップ無添加ラガーを、以下の装置を使用して、ナノ濾過により濃縮した。

構造：

Ａ（全長）＝１０１６ｍｍ
Ｂ（ＡＴＤ直径）＝１００．３ｍｍ
Ｃ（接続直径）＝１９．１ｍｍ
Ｄ_Ｆ（コアチューブ延長－供給側）＝２６．７ｍｍ
Ｄ_Ｃ（コアチューブ延長－濃縮側）＝２６．７ｍｍ

最大動作限界
・圧力：８０ｂａｒ
・温度：２８℃
・圧力低下：０．７ｂａｒ
・供給流量：３．６ｍ^３／時
・塩素濃度：＜０．１ｐｐｍ
・供給水ＳＤＩ（１５分）：５．０
・供給水濁度：１．０ＮＴＵ
・供給水ｐＨ：３．０～１０．０
・透過液に対する濃縮液の最大比：５：１

濾過運転
ビールの循環は、ピストンポンプによって行った。このポンプの能力は１ｍ^３／時で、最大吐出圧力は２０～８０ｂａｒである。試験ユニットは、およそ３０ｂａｒに制限し、設定点が４０ｂａｒの過圧リリーフ弁で保護した。

最初の透過液の生産は、１５ｂａｒ前後の圧力（浸透圧）で開始した。

合計１００Ｌのビールを濾過し、８４．６Ｌの透過液及び１６．１Ｌの濃縮液を得た。濃縮係数は、１００／１５．４＝６．５であった。

このようにして得たビール濃縮物の組成を、表２に示す。

ビール濃縮液の表面張力は４６ｍＮ／ｍであった。

比較例Ａ
アルコール含量が５．０％ＡＢＶでイソアルファ酸類の含量が１９ｍｇ／Ｌの市販のホップ添加ラガービールを、実施例１と同じ装置を使用して、ナノ濾過により濃縮した。

最初の透過液の生産は、４ｂａｒ前後の圧力（浸透圧）で開始した。合計２００Ｌのビールを濾過し、１７２．３Ｌの透過液及び２７．７Ｌの濃縮物を得た。濃縮係数は、２００／２７．７＝７．２であった。

このようにして得たホップ添加アルコール入りビール濃縮物は濁っており、エタノール含量が４．７１％ＡＢＶ、比重が１．８２９８（２０°Ｐ）及び表面張力が３９．７ｍＮ／ｍであった。濃縮物はイソアルファ酸類を７８．７ｍｇ／Ｌ含有しており、これは、イソアルファ酸類の４２．５％がナノ濾過中に失われたことを意味する。

実施例２
実施例１のビール濃縮物３０ｍＬを、エタノール含量５．９％ＡＢＶの炭酸水１７０ｍＬと混合して、５℃の再構成ビールを生産した。

このようにして得た再構成ビールは透明で（すなわち、濁りがない）、典型的なラガーの黄色を有し、発泡特性が良好であった。

専門家による再構成ビールの評価は、このビールが、通常のラガーと同様の心地よい味わいということであった。

実施例３
実施例１のビール濃縮物３０ｍＬを、エタノール含量５．９％ＡＢＶの炭酸水１７０ｍＬと混合して、５℃の再構成ビールを生産する。この場合、実施例１のアルコール入り蒸留液１６．６重量部と、炭酸水１５３．３重量部を混合することで、エタノール含有炭酸水を製造する。

このようにして得た再構成ビールは透明であり（すなわち、濁りがない）、典型的なラガーの黄色を有し、発泡特性が良好である。

専門家による再構成ビールの評価は、このビールが、実施例２の再構成ビールの味よりも好ましい、心地よい味わいということである。

実施例４
比較例Ａのビール濃縮液及び実施例１のビール濃縮物に、表３に示す希釈剤を添加することで、濃縮係数６（すなわち、元のホップ無添加ラガーの６倍濃縮）に標準化した。

製造後、試料を０℃で７日間維持した。続いて、Sigrist光度計を使用して、散乱角２５度及び９０度における試料の濁度を０℃で測定した（３回）。結果の平均を表４にＥＢＣ単位で示す。

これらの結果は、イソアルファ酸類のビール濃縮物への添加が、おそらくはイソアルファ酸類の沈殿の結果として、濁りを引き起こすことを示した。

試料Ａ、Ｂ、Ｃ及びＤの一部を３０℃及び４０℃で３カ月間保存し、その期間中、エチルエステルの濃度、濁度及び色を観察する。

試料Ｂ及びＤは、他の試料よりも安定であることが判明した。試料Ｂ及びＤとは異なり、試料Ａ及びＣは、保存期間中に、エチルエステルが大幅に形成されていた。

実施例５
脱アルコールしたホップ無添加ラガー及びアルコール入り蒸留液を、実施例１と同じ方法で生産する。

ポリエステル（ＰＥＴ）支持材料上にポリアミド膜層を含む薄膜複合体で作製した逆浸透フラットシート濾過膜（ＲＯ９０、ex Alfa Laval、動作圧力５～２５ｂａｒ）を使用して、脱アルコールしたホップ無添加ビールを逆浸透で濃縮する。この膜は、２０００ｐｐｍＮａＣｌにおいて、９ｂａｒ及び２５℃で測定すると、除去率が少なくとも９０％である。

実施例６
本発明によるシングルサーブカプセルを、２つの区画を含むカプセルを使用して製造する。一方の区画（区画Ａ）の内部容積は２０ｍＬで、他方の区画（区画Ｂ）の内部容積は３５ｍＬである。

実施例１のアルコール入り蒸留液を、事前に異性化したホップ抽出物と混合して、イソアルファ酸類を２１０ｍｇ／Ｌ含有する溶液を生産する。

ホップ抽出物を含有する濃縮アルコール溶液１８ｍＬを、カプセルの区画Ａに入れる。さらに、実施例１のビール濃縮液３２ｍＬを、区画Ｂに入れる。充填後、区画を柔軟なホイルで密封する。

実施例７
脱アルコールしたホップ無添加ラガーを、実施例１に記載のとおりに、ナノ濾過によって濃縮した。このようにして得たビール濃縮物（濃縮物Ａ）を、３０℃及び４０℃で加速保存した。エタノールの濃度を５重量％とした同じ濃縮物（濃縮物Ｂ）について、同じ保存試験を行った。

保存試験の前及び３か月保存後に、ビール香味物質の濃度を測定した。分析結果を表５に示す。

実施例８
エタノール含量５体積％のラガービールを、比較例Ａに記載のとおりに、ナノ濾過により濃縮した。この濃縮物（濃縮物Ａ）について、３０℃及び４０℃で加速保存試験を行った。

保存試験の前及び３カ月後に、ビール香味物質の濃度を測定した。分析結果を表６に示す。

実施例９
ビール濃縮物３２ｍＬを、アルコール溶液１１．４ｍＬ及び炭酸水（Royal Club（商標）ソーダ水, the Netherlands）２０５ｍＬと混合して、２つの再構成ビールを製造した。

再構成ビールの製造に使用したビール濃縮物及びアルコール溶液の組成を、表７に示す。

再構成ビールＡは完全に透明で、泡立ちが見事で、心地よい苦味であった。再構成ビールＢは、いくらかの沈殿を有していた。

Claims

第１の区画及び第２の区画を含む少なくとも２つの区画を備えるシングルサーブカプセルであって、前記第１の区画はアルコールフリービール濃縮液を含み、前記ビール濃縮液のエタノール含量は０～１％ＡＢＶであり、前記第２の区画はエタノールを１２～１００重量％及び水を０～８８重量％含有するアルコール溶液を含み、ここで、エタノールと水を合わせると前記アルコール溶液の８０～１００重量％である、シングルサーブカプセル。
前記ビール濃縮液が、リボフラビンを２５０～３，０００μｇ／Ｌ含有する、請求項１に記載のシングルサーブカプセル。
前記ビール濃縮液が、マルトテトラオースを１０～１００ｇ／Ｌ含有する、請求項１又は２に記載のシングルサーブカプセル。
前記ビール濃縮液及び前記アルコール溶液の重量比は、７：１～１：１で前記カプセル中に存在する、請求項１～３のいずれか一項に記載のシングルサーブカプセル。
前記ビール濃縮液が、イソアルファ酸類、水素化イソアルファ酸類、フルポン類及びこれらの組合せから選択されるホップ酸を０～１００ｍｇ／Ｌ含有する、請求項１～４のいずれか一項に記載のシングルサーブカプセル。
前記第２の区画中の前記アルコール溶液が、イソアルファ酸類、水素化イソアルファ酸類、フルポン類及びこれらの組合せから選択されるホップ酸を５０～２，０００ｍｇ／Ｌ含有する、請求項１～５のいずれか一項に記載のシングルサーブカプセル。
前記第２の区画中の前記アルコール溶液が、酢酸エチルを、エタノール１ｋｇ当たり５０～２，０００ｍｇ含有する、請求項１～６のいずれか一項に記載のシングルサーブカプセル。
前記アルコール溶液は、アルコール含有ビールの蒸留による脱アルコールで得た蒸留液を含む、請求項１～７のいずれか一項に記載のシングルサーブカプセル。
前記ビール濃縮液は、膜分離及び／又は凍結濃縮によるアルコールフリービールの濃縮で得る、請求項１～８のいずれか一項に記載のシングルサーブカプセル。
前記ビール濃縮液が、
・酢酸を１００～１，２００ｍｇ／Ｌ；
・マルトースを０～２０ｇ／Ｌ；
・マルトトリオースを１～３０ｇ／Ｌ；
含む、請求項１～９のいずれか一項に記載のシングルサーブカプセル。
前記ビール濃縮液が、
・酢酸を０～３００ｍｇ／Ｌ；
・マルトースを８０～４００ｇ／Ｌ；
・マルトトリオースを３０～１５０ｇ／Ｌ；
含む、請求項１～９のいずれか一項に記載のシングルサーブカプセル。
請求項１～１０のいずれか一項に記載のシングルサーブカプセルを製造する方法であって、
・エタノール含量０～０．５％ＡＢＶのアルコールフリービールを準備すること；
・前記アルコールフリービールの水分量を膜分離及び／又は凍結濃縮によって減少させて、ビール濃縮液を生産すること、ここで、前記膜分離は、ナノ濾過、逆浸透及び正浸透から選択される；
・第１の区画及び第２の区画を有するカプセルを準備すること；
・必要に応じて前記ビール濃縮液を１種以上の他の成分と混合した後に、前記ビール濃縮液を前記第１の区画に入れること；
・必要に応じてアルコール溶液を１種以上の他の成分と混合した後に、前記アルコール溶液を前記第２の区画に入れること；並びに
・前記カプセルの第１及び第２の区画を閉じること；
を含む、方法。
前記アルコールフリービールは、
・エタノール含量３～１２％ＡＢＶのアルコール入りビールを準備すること；及び
・蒸留によって前記ビールからエタノールを除去し、アルコールフリービール及びエタノール含有蒸留液を生産すること；
によって生産する、請求項１２に記載の方法。
前記アルコールフリービールは、コールドコンタクト発酵によって生産する、請求項１２に記載の方法。
ビール濃縮液からビールを製造する方法であって、
・請求項１～１１のいずれか一項に記載のシングルサーブカプセルを、飲料製造装置に配置すること；
・前記第１の区画から前記ビール濃縮液を放出させること；
・前記第２の区画から前記アルコール溶液を放出させること；
・前記放出されたビール濃縮液、前記放出されたアルコール溶液、水及び二酸化炭素を混合して、アルコール入りビールを生産すること；
・前記アルコール入りビールを供給すること；
を含む、方法。