JP2023526114A - 安定性強化変異を含む免疫グロブリンFc領域バリアント - Google Patents

安定性強化変異を含む免疫グロブリンFc領域バリアント Download PDF

Info

Publication number
JP2023526114A
JP2023526114A JP2022571753A JP2022571753A JP2023526114A JP 2023526114 A JP2023526114 A JP 2023526114A JP 2022571753 A JP2022571753 A JP 2022571753A JP 2022571753 A JP2022571753 A JP 2022571753A JP 2023526114 A JP2023526114 A JP 2023526114A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mutation
substitution
variant
mutations
phe
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022571753A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2021232163A5 (ja
Inventor
ジュヌビエーブ デジャルダン
エリック エスコバル-カブレラ
アントニオス サミオタキス
ギャビン カール ジョーンズ
Original Assignee
ザイムワークス ビーシー インコーポレイテッド
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ザイムワークス ビーシー インコーポレイテッド filed Critical ザイムワークス ビーシー インコーポレイテッド
Publication of JP2023526114A publication Critical patent/JP2023526114A/ja
Publication of JPWO2021232163A5 publication Critical patent/JPWO2021232163A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/18Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans
    • C07K16/32Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against translation products of oncogenes
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/20Immunoglobulins specific features characterized by taxonomic origin
    • C07K2317/24Immunoglobulins specific features characterized by taxonomic origin containing regions, domains or residues from different species, e.g. chimeric, humanized or veneered
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/50Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments
    • C07K2317/52Constant or Fc region; Isotype
    • C07K2317/524CH2 domain
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/50Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments
    • C07K2317/52Constant or Fc region; Isotype
    • C07K2317/526CH3 domain
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/50Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments
    • C07K2317/55Fab or Fab'
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/60Immunoglobulins specific features characterized by non-natural combinations of immunoglobulin fragments
    • C07K2317/62Immunoglobulins specific features characterized by non-natural combinations of immunoglobulin fragments comprising only variable region components
    • C07K2317/622Single chain antibody (scFv)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/90Immunoglobulins specific features characterized by (pharmaco)kinetic aspects or by stability of the immunoglobulin
    • C07K2317/92Affinity (KD), association rate (Ka), dissociation rate (Kd) or EC50 value
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/90Immunoglobulins specific features characterized by (pharmaco)kinetic aspects or by stability of the immunoglobulin
    • C07K2317/94Stability, e.g. half-life, pH, temperature or enzyme-resistance

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Oncology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)

Abstract

1つ以上のアミノ酸変異を含まない親Fcと比較してFcバリアントの安定性を増加させる前記1つ以上のアミノ酸変異、ならびにFcバリアントを含むポリペプチド及びFcバリアントをコードするポリヌクレオチドを含むFcバリアントが記載されている。【選択図】図1

Description

分野
本開示は、免疫グロブリンの分野に関し、特に、安定性強化変異を含む免疫グロブリンFcバリアントに関する。
背景
免疫グロブリンベースの薬物は、ますます重要な治療アプローチになりつつあり、モノクローナル抗体は、過去25年間にわたって様々な疾患の主な治療様式として認識されている。
相当数の研究が、免疫グロブリンを操作して様々な機能を改善することを対象としている。例えば、抗体Fc領域に対して修飾を施し、薬物動態の改善、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性の強化もしくは低減、特異的Fcγ受容体またはFcRn受容体についての選択性の強化もしくは低減、または二重特異性抗体におけるヘテロ二量体Fc領域の形成の改善を行っている。しかしながら、そのような修飾は、熱安定性を含む抗体の他の特性に悪影響を及ぼし得る。
操作された抗体の安定性を改善するための取り組みとしては、新しいジスルフィド結合を提供する変異の導入(Gong et al.,2009,J Biol Chem,284(21):14203-14210(非特許文献1);Jacobsen et al.,2017,J Biol Chem,292(5):1865-1875(非特許文献2))、及び点突然変異の組み合わせの導入(国際特許出願公開第WO2012/032080号(特許文献1))などがある。抗体Fc領域のループ領域に様々なアミノ酸置換を導入することによって抗体Fc領域の安定性を改善するための方法も記載されている(米国特許出願公開第2015/0210763号(特許文献2))。
この背景情報は、本開示に関連する可能性があると出願人によって考えられている既知の情報を提供する目的で提供される。先行する情報のいずれかが、特許請求される本発明に対する先行技術を構成することを意図すると必ずしも認めるものではなく、そう解釈されるべきであると認めるものでもない。
国際特許出願公開第WO2012/032080号 米国特許出願公開第2015/0210763号
Gong et al.,2009,J Biol Chem,284(21):14203-14210 Jacobsen et al.,2017,J Biol Chem,292(5):1865-1875
概要
安定性強化変異を含む免疫グロブリンFc領域バリアントが本明細書に記載される。本開示の一態様は、250位における変異であって、該変異が250位におけるアミノ酸のAla、Ile、またはValとの置換である、250位における変異、287位における変異であって、該変異が287位におけるアミノ酸のPhe、His、Met、Trp、またはTyrとの置換である、287位における変異、308位における変異であって、該変異が308位のアミノ酸のIleとの置換である、308位における変異、309位における変異であって、該変異が309位におけるアミノ酸のGlnまたはThrとの置換である、309位における変異、428位における変異であって、該変異が428位におけるアミノ酸のPheとの置換である、428位における変異、ならびに242位及び336位における一対の変異であって、両方の変異がCysとの置換である、242位及び336位における一対の変異から選択される1つ以上の安定性強化アミノ酸変異を含む、Fcバリアントであって、Fcバリアントが、1つ以上の安定性強化アミノ酸変異を含まない親Fcと比較して増加したCH2ドメイン融解温度(Tm)を有する、Fcバリアントに関する。
本開示の別の態様は、1~3つの安定性強化アミノ酸変異を含むFcバリアントであって、該変異が、(a)Phe、His、Met、TrpもしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、及びGlnもしくはThrとの置換である309位における変異から選択される、1つ以上の変異、または(b)Ala、IleもしくはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、TrpもしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnもしくはThrとの置換である309位における変異、Pheとの置換である428位における変異、ならびに両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異から選択される、2つ以上の変異、または(c)両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異と、Ala、Ile、もしくはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、Trp、もしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnもしくはThrとの置換である309位における変異、及びPheとの置換である428位における変異、から選択される変異とを含む、3つ以上の変異を含み、Fcバリアントが、1つ以上の安定性強化アミノ酸変異を含まない親Fcと比較して、増加したCH2ドメイン融解温度(Tm)を有する、Fcバリアントに関する。
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるFcバリアント、及び該Fcバリアントに融合または共有結合した1つ以上のタンパク質性部分を含むポリペプチドに関する。
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるFcバリアントをコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットに関する。
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるFcバリアント、及び該Fcバリアントに融合または共有結合した1つ以上のタンパク質性部分を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットに関する。
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるFcバリアントをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含むベクターまたはベクターのセットに関する。
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるFcバリアント、及び該Fcバリアントに融合または共有結合した1つ以上のタンパク質性部分を含むポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含むベクターまたはベクターのセットに関する。
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるFcバリアントをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む宿主細胞に関する。
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるFcバリアント、及び該Fcバリアントに融合または共有結合した1つ以上のタンパク質性部分を含むポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む宿主細胞に関する。
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるFcバリアントを調製する方法であって、Fcバリアントをコードする1つ以上のポリヌクレオチドで宿主細胞をトランスフェクトすることと、Fcバリアントの発現に好適な条件下で宿主細胞を培養することとを含む方法に関する。
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるFcバリアントと、該Fcバリアントに融合または共有結合した1つ以上のタンパク質性部分を含むポリペプチドを調製する方法であって、ポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドで宿主細胞をトランスフェクトすることと、ポリペプチドの発現に好適な条件下で宿主細胞を培養することとを含む方法に関する。
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるFcバリアントを含む薬学的組成物に関する。
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるFcバリアント、及び該Fcバリアントに融合または共有結合した1つ以上のタンパク質性部分を含むポリペプチドを含む薬学的組成物に関する。
本開示の別の態様は、FcのCH2ドメイン融解温度(Tm)を増加させる方法であって、親Fcと比較して増加したCH2ドメインTmを有するFcバリアントを提供するために親Fcに1つ以上の安定性強化アミノ酸変異を導入することを含み、該変異が、250位における変異であって、250位におけるアミノ酸のAla、IleまたはValとの置換である、250位における変異、287位における変異であって、該変異が287位におけるアミノ酸のPhe、His、Met、TrpまたはTyrとの置換である、287位における変異、308位における変異であって、該変異が308位におけるアミノ酸のIleとの置換である、308位における変異、309位における変異であって、該変異が309位におけるアミノ酸のGlnまたはThrとの置換である、309位における変異、428位における変異であって、該変異が428位におけるアミノ酸のPheとの置換である、428位における変異、ならびに242位及び336位における一対の変異であって、両方の変異がCysとの置換である、242位及び336位における一対の変異から選択される方法に関する。
本開示の別の態様は、FcのCH2ドメイン融解温度(Tm)を増加させる方法であって、親Fcと比較して増加したCH2ドメインTmを有するFcバリアントを提供するために親Fcに1~3つの安定性強化アミノ酸変異を導入することを含み、該変異が、(a)Phe、His、Met、TrpもしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、及びGlnもしくはThrとの置換である309位における変異から選択される、1つ以上の変異、または(b)Ala、IleもしくはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、TrpもしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnもしくはThrとの置換である309位における変異、Pheとの置換である428位における変異、ならびに両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異から選択される、2つ以上の変異、または(c)両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異と、Ala、Ile、もしくはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、Trp、もしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnもしくはThrとの置換である309位における変異、及びPheとの置換である428位における変異、から選択される変異とを含む、3つ以上の変異を含む方法に関する。
(A)IgG1 Fc領域配列[配列番号1]の配列を提供する。(B)例示的な安定性強化設計T250V、A287F及びM428Fの位置を示すIgG1 Fc領域(PDB ID:4BSV)の構造図を提供する。 種々のFc骨格に例示的な安定性強化変異を導入することによって生じるCH2ドメイン融解温度(Tm)の改善を示す。(A)ヘテロ二量体Fc形成を促進するための非対称変異を含む骨格3への変異導入。骨格1は、ホモ二量体IgG1 Fcである。 種々のFc骨格に例示的な安定性強化変異を導入することによって生じるCH2ドメイン融解温度(Tm)の改善を示す。(B)N297A変異を含む骨格6への変異導入。骨格1は、ホモ二量体IgG1 Fcである。 種々のFc骨格に例示的な安定性強化変異を導入することによって生じるCH2ドメイン融解温度(Tm)の改善を示す。(C)S239D/I332E変異を含む骨格7への変異導入。骨格1は、ホモ二量体IgG1 Fcである。 (A)IgA、IgD及びIgGのCH2ドメインのIgE及びIgMのCH3ドメインとの配列アラインメントを示す。IgG1 T250、A287、及びM428に相当する位置は枠で囲まれている。 (B)IgA、IgD及びIgGのCH3ドメインのIgE及びIgMのCH4ドメインとの配列アラインメントを示す。IgG1 T250、A287、及びM428に相当する位置は枠で囲まれている。 安定性強化変異T250V/A287Fの有無にかかわらず、抗体バリアントについて、酸性または中性条件での40℃での2週間のインキュベーションによって誘導される凝集と、CH2ドメインの熱安定性との間の相関を示す。(A)標準スケールx軸、弱酸性条件下でのインキュベーションの下での相関を示す。研究を通じて凝集の変化が小さいか、または負の変化を示さないバリアントは省略される。親配列(非安定化)は丸で、安定化バリアントは四角形で示され、非安定化バリアント及び対応する安定化バリアントの各々は、矢印で結ばれている。 安定性強化変異T250V/A287Fの有無にかかわらず、抗体バリアントについて、酸性または中性条件での40℃での2週間のインキュベーションによって誘導される凝集と、CH2ドメインの熱安定性との間の相関を示す。(B)標準スケールx軸、中性条件下でのインキュベーションの下での相関を示す。研究を通じて凝集の変化が小さいか、または負の変化を示さないバリアントは省略される。親配列(非安定化)は、丸で、安定化バリアントは四角形で示され、非安定化バリアント及び対応する安定化バリアントの各々は、矢印で結ばれている。 安定性強化変異T250V/A287Fの有無にかかわらず、抗体バリアントについて、酸性または中性条件での40℃での2週間のインキュベーションによって誘導される凝集と、CH2ドメインの熱安定性との間の相関を示す。(C)対数スケールx軸、弱酸性条件下でのインキュベーションの下での相関を示す。研究を通じて凝集の変化が小さいか、または負の変化を示さないバリアントは省略される。親配列(非安定化)は、丸で、安定化バリアントは四角形で示され、非安定化バリアント及び対応する安定化バリアントの各々は、矢印で結ばれている。 安定性強化変異T250V/A287Fの有無にかかわらず、抗体バリアントについて、酸性または中性条件での40℃での2週間のインキュベーションによって誘導される凝集と、CH2ドメインの熱安定性との間の相関を示す。(D)対数スケールx軸、中性条件下でのインキュベーションの下での相関を示す。研究を通じて凝集の変化が小さいか、または負の変化を示さないバリアントは省略される。親配列(非安定化)は、丸で、安定化バリアントは四角形で示され、非安定化バリアント及び対応する安定化バリアントの各々は、矢印で結ばれている。
詳細な説明
1つ以上のアミノ酸変異を含まない親Fcと比較してFcバリアントの安定性を増加させる1つ以上のアミノ酸変異を含むFcバリアントが、本明細書に記載されている。これらの変異は、本明細書において「安定性強化アミノ酸変異」または「安定性強化変異」と称される。
特定の実施形態では、Fcバリアントによって構成される1つ以上の安定性強化アミノ酸変異は、
250位における変異であって、該変異が、250位におけるアミノ酸のAla、IleまたはValとの置換である、250位における変異、
287位における変異であって、該変異が、287位におけるアミノ酸のPhe、His、Met、TrpまたはTyrとの置換である、287位における変異、
308位における変異であって、該変異が、308位におけるアミノ酸のIleとの置換である、308位における変異、
309位における変異であって、該変異が、309位におけるアミノ酸のGlnまたはThrとの置換である、309位における変異、
428位における変異であって、該変異が、428位におけるアミノ酸のPheとの置換である、428位における変異、及び
242位における変異及び336位における変異であって、両方の変異が、Cysとの置換である、242位における変異及び336位における変異から選択される。
本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載のFcバリアントを含むポリペプチドに関する。そのようなポリペプチドの例としては、抗体、抗体断片、及びFc融合タンパク質が挙げられるが、それらに限定されない。本明細書に記載されるFcバリアントを含むポリペプチドは、治療、診断、または研究ツールとして使用され得る。
本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載のFcバリアントをコードするポリヌクレオチド及び該Fcバリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびに該ポリヌクレオチドを含む宿主細胞、及びFcバリアントまたは該Fcバリアントを含むポリペプチドを調製するために該ポリヌクレオチド及び宿主細胞を使用する方法に関する。
本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載される1つ以上の安定性強化変異をFcに導入することによってFc(親Fc)を安定化させる方法に関する。本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載される1つ以上の安定性強化変異をFcに導入することによってFc(親Fc)のCH2ドメイン融解温度(Tm)を増加させる方法に関する。親Fcは、野生型Fcか、または、例えば、Fc領域の機能を改善するために、1つ以上のアミノ酸変異をそれ自体にすでに含むバリアントFcであり得る。
定義
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、所与の値から約±10%の変動を指す。そのような変動は常に、それが具体的に言及されているか否かにかかわらず、本明細書で提供される任意の所与の値に含まれることを理解するものとする。
「1つの(aまたはan)」という用語の使用は、「含む(comprising)」という用語と併せて本明細書で使用される場合、「1つ」を意味し得るが、それはまた、「1つ以上」、「少なくとも1つ」または「1つまたは2以上」と同義である。
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する」という用語及びその文法的変化形は、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素及び/または方法工程を排除しない。「~から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、組成物、使用、または方法に関連して本明細書で使用される場合、追加の要素及び/または方法ステップが存在し得るが、これらの追加は、列挙される組成物、方法、または使用が機能する様式に実質的に影響を与えないことを意味する。組成物、使用または方法に関連して本明細書で使用される場合、「からなる(consisting of)」という用語は、追加の要素及び/または方法工程の存在を除外する。ある特定の要素及び/または工程を含むものとして本明細書に記載される組成物、使用または方法はまた、ある特定の実施形態では、それらの要素及び/または工程から本質的になる場合もあり、他の実施形態では、それらの要素及び/または工程からなる場合もあり、これらの実施形態が特に言及されるか否かを問わない。
「単離された」という用語は、材料に関して本明細書で使用される場合、材料がその元の環境(例えば、それが天然に存在する場合、自然環境)から除去されることを意味する。例えば、生きている動物内に存在する天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、天然系内に共存する材料の一部または全てから分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されている。そのようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部であり得るし、及び/またはそのようなポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは、組成物の一部であり得るが、依然として、そのようなベクターもしくは組成物がその天然環境の一部ではないという点で単離されたと言える。
「Fc領域」及び「Fc」という用語は、本明細書で互換的に使用される場合、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を指す。ヒトIgG重鎖Fc領域配列は、例えば、通常、239位から重鎖のC末端まで延在すると定義される。二量体Fcの「Fcポリペプチド」は、二量体Fcドメインを形成する2つのポリペプチドのうちの1つ、すなわち、安定な自己会合が可能な免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含むポリペプチドを指す。Fc領域は、通常は、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。Fc領域はまた、特定の実施形態において、ヒンジ領域を包含するとみなされ得る。
ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」は、通常は、239位から340位まで延在すると定義される。「CH3ドメイン」は、通常は、Fc領域のCH2ドメインのC末端アミノ酸残基、すなわち、341位から447位までのアミノ酸残基を含むと定義される。ヒトIgG1の「ヒンジ領域」は、一般に、216位から238位まで延在すると定義される(Burton,1985,Molec.Immunol.,22:161-206)。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖内ジスルフィド結合を形成する最初及び最後のシステイン残基を整列させることによってIgG1配列と整列され得る。
本明細書において別段の定めがない限り、Fc領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に記載される、EUインデックスとも称されるEU番号付けシステムに従う。
天然に存在するアミノ酸は、当該技術分野で一般的に受け入れられ、IUPAC-IUB生化学命名委員会によって推奨される、以下の表Aに示される従来の3文字または1文字の略語によって全体を通して識別される。
Figure 2023526114000002
一実施形態において特徴を積極的に列挙することが、代替的な実施形態において特徴を除外するための基礎として機能することが理解されるべきである。例えば、選択肢の一覧が所与の実施形態または特許請求の範囲について提示される場合、1つ以上の選択肢が一覧から削除される場合があり、特段言及されるか否かにかかわらず、そのような短縮された一覧が、代替的な実施形態を形成する場合があることが理解されるべきである。
本明細書で開示される任意の実施形態は、本明細書に開示される方法、使用または組成物に関して実施され得るが、逆もまた同様であり得ることが企図される。
Fcバリアント
本開示のFcバリアントは、親Fcと比較してFcバリアントの安定性を増加させる1つ以上のアミノ酸変異(「安定性強化変異」)を含む。安定性の増加は、CH2ドメインの熱安定性の増加、凝集の可能性の減少、血清半減期の増加、製造可能性の改善、またはそれらの組み合わせをもたらし得る。特定の実施形態では、Fcバリアントに含まれる1つ以上の安定性強化変異は、親Fcと比較してCH2ドメインの熱安定性(Tm)を増加させる。
いくつかの実施形態では、Fcバリアントに含まれる1つ以上の安定性強化変異は、親Fcと比較してCH2ドメインの熱安定性(Tm)を増加させ、またFc領域の凝集を減少させる。いくつかの実施形態では、Fcバリアントに含まれる1つ以上の安定性強化変異は、親Fcと比較してCH2ドメインの熱安定性(Tm)を増加させ、低いpHでのFc領域の凝集を減少させる。この文脈における「低いpH」は、約4.0~7.5のpHを指す。
いくつかの実施形態では、Fcバリアントに含まれる1つ以上の安定性強化変異は、親Fcと比較してCH2ドメインの熱安定性(Tm)を増加させ、弱酸性条件下でFc領域の凝集を減少させるが、その弱酸性条件は、中性を下回るpHを含む。いくつかの実施形態では、弱酸性条件は、約4.0~7.0のpHを含む。いくつかの実施形態では、弱酸性条件は、約4.0~6.5のpHを含む。
Fcバリアントは、1つの安定性強化変異を含み得るか、または1つ以上の安定性強化変異を含み得る。特定の実施形態では、Fcバリアントは、1~5つの安定性強化変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、1~4つの安定性強化変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、1~3つの安定性強化変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、1、2、または3つの安定性強化変異を含む。
特定の実施形態では、FcバリアントのCH2ドメインTmは、親Fcと比較して、少なくとも0.5℃増加する。いくつかの実施形態では、FcバリアントのCH2ドメインTmは、親Fcと比較して、少なくとも1.0℃、少なくとも1.5℃、少なくとも2.0℃、少なくとも2.5℃、または少なくとも3.0℃増加する。いくつかの実施形態では、FcバリアントのCH2ドメインTmは、親Fcと比較して、少なくとも5.0℃、少なくとも5.5℃、少なくとも6.0℃、少なくとも6.5℃、または少なくとも7.0℃増加する。
特定の実施形態では、FcバリアントのCH2ドメインTmは、親Fcと比較して、約0.5℃~約6.5℃増加する。いくつかの実施形態では、FcバリアントのCH2ドメインTmは、親Fcと比較して、約0.5℃~約9.0℃増加する。いくつかの実施形態では、FcバリアントのCH2ドメインTmは、親Fcと比較して、約1.0℃~約9.0℃、約2.0℃~約9.0℃、または約3.0℃~約9.0℃増加する。いくつかの実施形態では、FcバリアントのCH2ドメインTmは、親Fcと比較して、約2.0℃~約10.5℃、または約3.0℃~約10.5℃増加する。
特定の実施形態では、CH2ドメインTmは、DSCまたはDSFによって測定される。
親Fcは、野生型Fcであり得るか、または、例えば、Fc領域の機能を改善するために、1つ以上のアミノ酸変異をそれ自体にすでに含むバリアントFcであり得る。いくつかの実施形態では、親Fcは、Fc領域を機能的に強化する1つ以上のアミノ酸変異を含むFcであり得る。いくつかの実施形態では、親Fcは、Fc領域を機能的に強化するが、野生型Fcと比較して安定性の減少をもたらす1つ以上のアミノ酸変異を含むFcであり得る。いくつかの実施形態では、親Fcは、Fc領域を機能的に強化するが、野生型Fcと比較してCH2ドメインの熱安定性を減少させる1つ以上のアミノ酸変異を含み得る。
Fc領域を機能的に強化するが、野生型Fcと比較してCH2ドメインの熱安定性を減少させるアミノ酸変異の例としては、ヘテロ二量体Fc形成を促進する変異(例えば、Atwell et al.,1997,J Biol Chem,270:26-35及びGunasekaran et al.,2010,J Biol Chem,285(25):19637-19646により記載されるknobs-into-holesまたは静電ステアリング変異)、アグリコシル化Fcを生成する変異(例えば、Lund et al.,1995,FASEB,9(1):115-119、Leabman et al.,2013,mAbs,5(6):896-903及びJacobsen et al.,2017,JBC,292(5):1865-1875に記載されるN297A変異)、ならびにFcγR選択性を変化させる変異(例えば、Lazar et al.,2006,PNAS,103(11):4005-4010及びOganesyan et al.,2008,Molec Immunol,45(7):1872-1882により記載されるFcγRIIIaへの親和性を増加させるS239D/I332EもしくはS239D/A330L/I332E変異、またはMimoto,et al.,2013,Protein Eng.Des.Sel.,26:589-598により記載されるFcγRIIbについての選択性を増加させるE233D/G237D/P238D/H268D/P271G/A330R変異)が挙げられるが、それらに限定されない。Fc領域を機能的に強化するが、野生型または親Fcと比較してCH2ドメインの熱安定性を減少させるアミノ酸変異の追加の例を、本明細書の実施例に記載する。
安定性強化変異が導入される親Fcは、IgG Fc、IgA Fc、IgD Fc、IgE Fc、またはIgM Fcであり得る。本明細書で使用されるアミノ酸番号付けは、IgG Fcに関するが、当業者は、当該技術分野で既知のいくつかの配列アラインメントツールのうちの1つを使用して、配列アラインメントによって、他のIg Fc配列における変異に相当する位置を容易に決定することができる。したがって、本明細書において、安定性強化変異のためのFc領域における特定の位置を言及しているが、それはIgG Fcにおける特定の位置、ならびにIgA、IgD、IgE、またはIgM Fc領域における対応する位置を包含することが意図される。IgA、IgD及びIgGのCH2ドメインとIgE及びIgMのCH3ドメインとの配列アラインメント、ならびにIgA、IgD及びIgGのCH3ドメインとIgE及びIgMのCH4ドメインとの配列アラインメントを図3A及び3Bに示す。
特定の実施形態では、Fcバリアントは、IgG、IgA、IgD、IgE、またはIgM Fcに基づく。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、ヒトIgG、IgA、IgD、IgE、またはIgM Fcに基づく。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、IgGまたはIgA Fcに基づく。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、ヒトIgGまたはIgA Fcに基づく。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、IgG Fcに基づく。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、ヒトIgG Fcに基づく。
特定の実施形態では、Fcバリアントは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fcであり得るIgG Fcに基づく。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fcに基づく。ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のCH2及びCH3ドメインの配列アラインメントを、図3A及び3Bに示す。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、IgG1 Fcに基づく。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、ヒトIgG1 Fcに基づく。
安定性強化変異
本明細書に記載されるように、インシリコ及びバイオインフォマティクスアプローチを用いて、Fcの安定性を改善させるために変異させることができるFc領域内の位置を特定した。これらのアプローチは、安定性強化変異として表1に示される変異を特定した。
Figure 2023526114000003
特に、インシリコアプローチにより、単一の変異として導入されたときにFcの安定性を増加させる変異として、以下のアミノ酸変異が特定された。
A287F、A287H、A287M、A287W及びA287Yから選択される287位における変異、ならびに
変異M428F。
また、バイオインフォマティクスアプローチにより、単一の変異として導入されたときにFcの安定性を増加させる変異として、以下のアミノ酸変異が特定された。
T250A、T250I及びT250Vから選択される250位における変異、
変異V308I、ならびに
L309Q及びL309Tから選択される309位における変異。
加えて、それぞれがFc領域に追加のジスルフィド結合を導入する変異対L242C_I336C、V240C_I332C及びV263C_V302Cは、任意の追加の安定性強化変異の非存在の際に、Fcの安定性を増加させることが示された。
表1に示される安定性強化変異の組み合わせはまた、Fcバリアントの安定性をさらに増加させることも示された。
したがって、特定の実施形態では、Fcバリアントは、少なくとも1つの変異が表1に示される変異から選択される1つ以上の安定性強化変異を含む。同じ実施形態では、Fcバリアントは、表1に示される変異から選択される1つ以上の安定性強化変異を含む。
いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、1つ以上の安定性強化変異を含み、その少なくとも1つの変異は、以下から選択される。
287位における変異であって、該変異が、287位におけるアミノ酸のPhe、His、Met、TrpまたはTyrとの置換である、287位における変異、
308位における変異であって、該変異が、308位におけるアミノ酸のIleとの置換である、308位における変異、及び
309位における変異であって、該変異が309位におけるアミノ酸のGlnまたはThrとの置換である、309位における変異。
特定の実施形態では、Fcバリアントは、単一の安定性強化変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、以下選択される単一の安定性強化変異を含む。
287位における変異であって、変異が、287位におけるアミノ酸のPhe、His、Met、TrpまたはTyrとの置換である、287位における変異、
308位における変異であって、変異が、308位におけるアミノ酸のIleとの置換である、308位における変異、及び
309位における変異であって、変異が309位におけるアミノ酸のGlnまたはThrとの置換である、309位における変異。
いくつかの実施形態では、Fcバリアントに含まれる287位における変異は、287位におけるアミノ酸のPheとの置換である。いくつかの実施形態では、Fcバリアントに含まれる309位における変異は、309位におけるアミノ酸のGlnとの置換である。
特定の実施形態では、Fcバリアントは、一対の安定性強化変異を含み、その各々は、Fc領域において新しいジスルフィド結合の形成を可能にするシステイン残基を導入する。いくつかの実施形態では、一対の安定性強化変異は、242C_336C、240C_332C及び263C_302Cから選択される。いくつかの実施形態では、一対の安定性強化変異は、242C_336Cまたは240C_332Cである。いくつかの実施形態では、一対の安定性強化変異は、242C_336Cである。
特定の実施形態では、Fcバリアントは、2つ以上の安定性強化変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、以下から選択される2つ以上の安定性強化変異を含む。
250位における変異であって、変異が、250位におけるアミノ酸のAla、IleまたはValとの置換である、250位における変異、
287位における変異であって、変異が、287位におけるアミノ酸のPhe、His、Met、Trp、またはTyrとの置換である、287位における変異、
308位における変異であって、変異が、308位におけるアミノ酸のIleとの置換である、308位における変異、
309位における変異であって、変異が、309位におけるアミノ酸のGlnまたはThrとの置換である、309位における変異、
428位における変異であって、変異が、428位におけるアミノ酸のPheとの置換である、428位における変異、ならびに
224位及び336位における一対の変異であって、各々の変異が、Cysへの置換である、242位及び336位における一対の変異。
特定の実施形態では、Fcバリアントは、2つの安定性強化変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、以下を含む:
250位における変異、287位における変異、308位における変異、309位における変異、428位における変異から選択される2つの安定性強化変異であって、250位における変異は、Ala、Ile、もしくはValとの置換であり、287位における変異は、Phe、His、Met、Trp、もしくはTyrとの置換であり、308位における変異は、Ileとの置換であり、309位における変異は、GlnまたはThrとの置換であり、428位における変異は、Pheとの置換である、2つの安定性強化変異、または
242位及び336位における一対の変異であって、各々の変異のが、Cysとの置換である、242位及び336位における一対の変異。
いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、以下を含む:
250位における変異及び287位における変異であって、250位における変異が、Ala、IleもしくはValとの置換であり、287位における変異が、Phe、His、Met、TrpもしくはTyrとの置換である、250位における変異及び308位における変異、
250位における変異及び308位における変異であって、250位における変異が、Ala、IleもしくはValとの置換であり、308位における変異が、Ileとの置換である、250における変異及び308位における変異、
250位における変異及び309位における変異であって、250位における変異が、Ala、IleもしくはValとの置換であり、309位における変異が、GlnまたはThrとの置換である、250位における変異及び309位における変異、
250位における変異及び428位における変異であって、250位における変異が、Ala、IleもしくはValとの置換であり、428位における変異が、Pheとの置換である、250位における変異及び428位における変異、
287位における変異及び308位における変異であって、287位における変異が、Phe、His、Met、TrpもしくはTyrとの置換であり、308位における変異が、Ileとの置換である、287位における変異及び308位における変異、
287位における変異及び309位における変異であって、287位における変異が、Phe、His、Met、TrpもしくはTyrとの置換であり、309位における変異が、GlnまたはThrとの置換である、287位における変異及び309位における変異、
287位における変異及び428位における変異であって、287位における変異が、Phe、His、Met、TrpもしくはTyrとの置換であり、428位における変異が、Pheとの置換である、287位における変異及び428位における変異、
308位における変異及び309位における変異であって、308位における変異が、Ileとの置換であり、309位における変異が、GlnもしくはThrとの置換である、308位における変異及び309位における変異、
308位における変異及び428位における変異であって、308位における変異が、Ileとの置換であり、428位における変異が、Pheとの置換である、308位における変異及び428位における変異、
309位における変異及び428位における変異であって、309位における変異が、GlnもしくはThrとの置換であり、428位における変異が、Pheとの置換である、309位における変異及び428位における変異、または
242位及び336位における一対の変異であって、各々の変異が、Cysとの置換である、242位及び336位における一対の変異。
いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、以下を含む:
250位における変異及び287位における変異であって、250位における変異が、Ala、IleもしくはValとの置換であり、287位における変異が、Phe、His、Met、TrpもしくはTyrとの置換である、250位における変異及び287位における変異、
250位における変異及び309位における変異であって、250位における変異が、Ala、IleもしくはValとの置換であり、309位における変異が、GlnまたはThrとの置換である、250位における変異及び309位における変異、
250位における変異及び428位における変異であって、250位における変異が、Ala、IleもしくはValとの置換であり、428位における変異が、Pheとの置換である、250位における変異及び428位における変異、
287位における変異及び428位における変異であって、287位における変異が、Phe、His、Met、TrpもしくはTyrとの置換であり、428位における変異が、Pheとの置換である、287位における変異及び428位における変異、または
242位及び336位における一対の変異であって、各々の変異が、Cysとの置換である、242位及び336位における一対の変異。
いくつかの実施形態では、Fcバリアントに含まれる250位における変異は、Valとの置換である。いくつかの実施形態では、Fcバリアントに含まれる287位における変異は、Pheとの置換である。いくつかの実施形態では、Fcバリアントに含まれる309位における変異は、Glnとの置換である。
いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、安定性強化変異250V/287F、250V/308I、250V/309Q、250V/428F、287F/308I、287F/309Q、287F/428F、308I/309Q、308I/428F、309Q/428Fまたは242C/336Cを含む。
いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、安定性強化変異250V/287F、250V/309Q、250V/428F、287F/428Fまたは242C_336Cを含む。
いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、安定性強化変異250V/287F、250V/309Q、250V/428Fまたは287F/428Fを含む。
いくつかの実施形態では、Fcバリアントに含まれる安定性強化変異は、250V、287F、308I、309Q、428F、242C_336C、287F/428F、250V/287F、250V/309Q、250V/428F及び242C_336C/308Iから選択される。
いくつかの実施形態では、Fcバリアントに含まれる安定性強化変異は、287F、308I、309Q、242C_336C、287F/428F、250V/287F、250V/309Q、250V/428F及び242C_336C/308Iから選択される。
特定の実施形態では、Fcバリアントは、3つ以上の安定性強化変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、以下から選択される3つ以上の安定性強化変異を含む。
Ala、IleまたはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、TrpまたはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnまたはThrとの置換である309位における変異、Pheとの置換である428位における変異、ならびに両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異。
いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、3つの安定性強化変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、以下から選択される3つの安定性強化変異を含む。
Ala、IleまたはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、TrpまたはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnまたはThrとの置換である309位における変異、Pheとの置換である428位における変異、ならびに両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異。
いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、
両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異、ならびに
Ala、IleまたはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、TrpまたはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnまたはThrとの置換である309位における変異、及びPheとの置換である428位における変異、から選択される変異
を含む。
特定の実施形態では、Fcバリアントは、1~3つの安定性強化変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、
Phe、His、Met、TrpまたはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、及びGlnもしくはThrとの置換である309位における変異から選択される、1つ以上の変異、または
Ala、Ile、もしくはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、Trp、もしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnもしくはThrとの置換である309位における変異、Pheとの置換である428位における変異、ならびに両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異、から選択される、2つ以上の変異、または
両方ともCysとの置換である242位における変異及び336位における変異と、Ala、Ile、もしくはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、Trp、もしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnもしくはThrとの置換である309位における変異、及びPheとの置換である428位における変異、から選択される変異とを含む、3つ以上の変異
を含む。
特定の実施形態では、Fcバリアントは、IgG Fcバリアントである。特定の実施形態では、IgG Fcバリアントは、1つ以上の安定性強化変異を含む。いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントは、1つ以上の安定性強化変異を含み、そのうちの少なくとも1つの変異は、
A287F、A287H、A287M、A287W及びA287Yから選択される287位における変異、
変異V308I、ならびに
L309Q及びL309Tから選択される309位における変異
から選択される。
特定の実施形態では、IgG Fcバリアントは、単一の安定性強化変異を含む。いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントは、
A287F、A287H、A287M、A287W及びA287Yから選択される287位における変異、
変異V308I、ならびに
L309Q及びL309Tから選択される309位における変異
から選択される、単一の安定性強化変異を含む。
いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントに含まれる287位における変異は、A287Fである。いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントに含まれる309位における変異は、L309Qである。
特定の実施形態では、Fcバリアントは、一対の安定性強化変異を含み、その各々は、Fc領域への新しいジスルフィド結合の形成を可能にするシステイン残基を導入する。いくつかの実施形態では、一対の安定性強化変異は、L242C_I336C、V240C_I332C、及びV263C_V302Cから選択される。いくつかの実施形態では、一対の安定性強化変異は、L242C_I336CまたはV240C_I332Cである。いくつかの実施形態では、一対の安定性強化変異は、L242C_I336Cである。
特定の実施形態では、IgG Fcバリアントは、2つ以上の安定性強化変異を含む。いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントは、以下から選択される2つ以上の安定性強化変異を含む。
T250A、T250I及びT250Vから選択される250位における変異、
A287F、A287H、A287M、A287W及びA287Yから選択される287位における変異、
変異V308I、
L309Q及びL309Tから選択される309位における変異、
変異M428F、ならびに
L242C及びI336C変異。
特定の実施形態では、IgG Fcバリアントは、2つの安定性強化変異を含む。いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントは、以下を含む。
250位における変異、287位における変異、308位における変異、309位における変異、及び428位における変異から選択される2つの安定性強化変異であって、250位における変異は、T250A、T250I及びT250Vから選択され、287位における変異は、A287F、A287H、A287M、A287W及びA287Yから選択され、308位における変異は、V308Iであり、309位における変異は、L309Q及びL309Tから選択され、かつ428位における変異は、M428Fである、2つの安定性強化変異、または
変異L242C及びI336C。
いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントは、以下を含む。
T250A、T250I及びT250Vから選択される250位における変異、ならびにA287F、A287H、A287M、A287W及びA287Yから選択される287位における変異、
T250A、T250I及びT250Vから選択される250位における変異、ならびに変異V308I、
T250A、T250I及びT250Vから選択される250位における変異、ならびにL309Q及びL309Tから選択される309位における変異、
T250A、T250I及びT250Vから選択される250位における変異、ならびに変異M428F、
A287F、A287H、A287M、A287W及びA287Yから選択される287位における変異、ならびに変異V308I、
A287F、A287H、A287M、A287W及びA287Yから選択される287位における変異、ならびにL309Q及びL309Tから選択される309位における変異、
A287F、A287H、A287M、A287W及びA287Yから選択される287位における変異、ならびに変異M428F、
変異V308I、ならびにL309Q及びL309Tから選択される309位における変異、
変異V308I、及び変異M428F、
L309Q及びL309Tから選択される309位における変異、ならびに変異M428F、または
変異L242C及びI336C。
いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントは、以下を含む。
T250A、T250I及びT250Vから選択される250位における変異、ならびにA287F、A287H、A287M、A287W及びA287Yから選択される287位における変異、
T250A、T250I及びT250Vから選択される250位における変異、ならびにL309Q及びL309Tから選択される309位における変異、
T250A、T250I及びT250Vから選択される250位における変異、ならびに変異M428F、
A287F、A287H、A287M、A287W及びA287Yから選択される287位における変異、ならびに変異M428F、または
変異L242C及びI336C。
いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントに含まれる250位における変異はT250Vである。いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントに含まれる287位における変異はA287Fである。いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントに含まれる309位における変異はL309Qである。
いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントは、安定性強化変異T250V/A287F、T250V/V308I、T250V/L309Q、T250V/M428F、A287F/V308I、A287F/L309Q、A287F/M428F、V308I/L309Q、V308I/M428F、L309Q/M428FまたはL242C_I336Cを含む。
いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントは、安定性強化変異T250V/A287F、T250V/L309Q、T250V/M428F、A287F/M428FまたはL242C_I336Cを含む。
いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントは、安定性強化変異T250V/A287F、T250V/L309Q、T250V/M428FまたはA287F/M428Fを含む。
いくつかの実施形態では、Fcバリアントに含まれる安定性強化変異は、T250V、A287F、V308I、L309Q、M428F、L242C_I336C、A287F/M428F、T250V/A287F、T250V/L309Q、T250V/M428F及びL242C_I336C/V308Iから選択される。
いくつかの実施形態では、Fcバリアントに含まれる安定性強化変異は、A287F、V308I、L309Q、L242C_I336C、A287F/M428F、T250V/A287F、T250V/L309Q、T250V/M428F及びL242C_I336C/V308Iから選択される。
特定の実施形態では、IgG Fcバリアントは、3つ以上の安定性強化変異を含む。いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントは、以下から選択される3つ以上の安定性強化変異を含む。
T250A、T250I及びT250Vから選択される250位における変異、A287F、A287H、A287M、A287W、及びA287Yから選択される287位における変異、変異V308I、L309Q及びL309Tから選択される309位における変異、変異M428F、ならびに変異L242C及びI336C。
いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントは、3つの安定性強化変異を含む。いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントは、以下から選択される、3つの安定性強化変異を含む。
T250A、T250I及びT250Vから選択される250位における変異、A287F、A287H、A287M、A287W、及びA287Yから選択される287位における変異、変異V308I、L309Q及びL309Tから選択される309位における変異、変異M428F、ならびに変異L242C及びI336C。
いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントは、変異L242C及びI336Cと、T250A、T250I、及びT250Vから選択される250位における変異;A287F、A287H、A287M、A287W、及びA287Yから選択される287位における変異;変異V308I;L309Q及びL309Tから選択される309位における変異、ならびに変異M428Fから選択される変異を含む。
特定の実施形態では、IgG Fcバリアントは、1~3つの安定性強化変異を含む。いくつかの実施形態では、IgG Fcバリアントは以下を含む。
A287F、A287H、A287M、A287W及びA287Yから選択される287位における変異、変異V308I、ならびにL309Q及びL309Tから選択される309位における変異、から選択される、1つ以上の変異、
T250A、T250I及びT250Vから選択される250位における変異、A287F、A287H、A287M、A287W及びA287Yから選択される287位における変異、変異V308I、L309Q及びL309Tから選択される309位における変異、変異M428F、ならびに変異L242C及びI336C、から選択される、2つ以上の変異、または
変異L242C及びI336Cと、T250A、T250I及びT250Vから選択される250位における変異、A287F、A287H、A287M、A287W及びA287Yから選択される287位における変異、変異V308I、L309Q及びL309Tから選択される309位における変異、ならびに変異M428Fから選択される変異とを含む、3つ以上の変異。
特定の安定性強化変異は、当該技術分野で既知である。例えば、Fc領域内の変異L242C_K334C、L240C_K334C、A287C_L306C、V259C_L306C、R292C_V302CまたはV323C_I332Cを含むことによる追加のジスルフィド結合の導入は、安定性を増加させることが示されている(Gong et al.,2009,J Biol Chem,284(21):14203-14210、Jacobsen et al.,2017,J Boil Chem,292(5):1865-1875)。他の安定性強化変異は、米国特許出願公開第2015/0210763号に記載されている。本開示の特定の実施形態は、本明細書に開示される安定性強化変異のうちの1つ以上と、Fc領域の安定性を増加させることが以前に示された1つ以上の変異との組み合わせを含むFcバリアントを企図する。
方法
本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載される1つ以上の安定性強化変異を親Fcに導入して、Fcバリアントを提供することによって、Fc領域(親Fc)を安定化する方法に関する。
本開示のいくつかの実施形態は、親Fcに本明細書に記載される1つ以上の安定性強化変異を導入して、親Fcと比較して少なくとも0.5℃増加したCH2ドメイン融解温度(Tm)を有するFcバリアントを提供することによって、Fc領域(親Fc)のCH2ドメインTmを増加させる方法に関する。
本開示のいくつかの実施形態は、親FcのCH2ドメインTmを増加させる方法に関するものであり、該方法は、本明細書に記載される1つ以上の安定性強化変異をFcに導入して、Fcバリアントを提供することを含み、該Fcバリアントは、親FcのCH2ドメインTmより少なくとも0.5℃高いCH2ドメインTmを有する。
親Fcは、野生型Fcか、または、例えば、Fc領域の機能を改善するための1つ以上のアミノ酸変異をすでにそれ自体に含むバリアントFcであり得る。いくつかの実施形態では、親Fcは、Fc領域の機能を改善するが、同時にCH2ドメインTmを減少させる、1つ以上のアミノ酸変異を含み得る。
本開示のいくつかの実施形態は、対応する野生型Fcよりも低いCH2ドメインTmを有する親FcのCH2ドメインTmを増加させる方法に関するものであり、該方法は、本明細書に記載される1つ以上の安定性強化変異をFcに導入して、Fcバリアントを提供することを含み、Fcバリアントは、親FcのCH2ドメインTmより少なくとも0.5℃高いCH2ドメインTmを有する。
いくつかの実施形態では、本方法は、親FcのCH2ドメインTmよりも少なくとも1.0℃、少なくとも2.0℃、または少なくとも3.0℃高いCH2ドメインTmを有するFcバリアントを提供する。
いくつかの実施形態では、本方法は、親FcのCH2ドメインTmよりも約0.5℃~約6.5℃高いCH2ドメインTmを有するFcバリアントを提供する。いくつかの実施形態では、FcバリアントのCH2ドメインTmは、親FcのCH2ドメインTmよりも約0.5℃~約9.0℃、約1.0℃~約9.0℃、約2.0℃~約9.0℃、または約3.0℃~約9.0℃高い。いくつかの実施形態では、FcバリアントのCH2ドメインTmは、親FcのCH2ドメインTmよりも約2.0℃~約10.5℃、または約3.0℃~約10.5℃高い。
特定の実施形態では、本方法は、FcバリアントのCH2ドメインTmを測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、DSCまたはDSFによってFcバリアントのCH2ドメインTmを測定することをさらに含む。
特定の実施形態では、本方法は、本明細書に記載される1~5つの安定性強化変異を親Fcに導入することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載される1~4つの安定性強化変異を親Fcに導入することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載される1~3つの安定性強化変異を親Fcに導入することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、1、2、または3つの安定性強化変異を親Fcに導入することを含む。
いくつかの実施形態では、本方法は、親Fcに、以下から選択される1つ以上安定性強化変異を導入することを含む。
250位における変異であって、変異が、250位におけるアミノ酸のAla、IleまたはValとの置換である、250位における変異、
287位における変異であって、変異が、287位におけるアミノ酸のPhe、His、Met、TrpまたはTyrとの置換である、287位における変異、
308位における変異であって、変異が、308位におけるアミノ酸のIleとの置換である、308位における変異、
309位における変異であって、変異が、309位におけるアミノ酸のGlnまたはThrとの置換である、309位における変異、
428位における変異であって、変異が、428位におけるアミノ酸のPheとの置換である、428位における変異、及び
242位における変異及び336位における変異であって、両方の変異が、Cysとの置換である、242位における変異及び336位における変異。
いくつかの実施形態では、本方法は、親Fcに、Phe、His、Met、TrpまたはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnまたはThrとの置換である309位における変異、から選択される単一の安定性強化アミノ酸変異を導入することを含む。
いくつかの実施形態では、本方法は、親Fcに、Ala、Ile、またはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、Trp、またはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnまたはThrとの置換である309位における変異、Pheとの置換である428位における変異、ならびに両方ともCysとの置換である242位及び336位における変異、から選択される2つ以上の安定性強化アミノ酸変異を導入することを含む。
いくつかの実施形態では、本方法は、親Fcに、両方ともCysとの置換である242位における変異及び336位における変異と、Ala、Ile、もしくはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、Trp、もしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnもしくはThrとの置換である309位における変異、及びPheとの置換である428位における変異、から選択される変異とを含む、3つ以上の安定性強化アミノ酸変異を導入することを含む。
特定の実施形態は、Fc領域(親Fc)のCH2ドメインTmを増加させる方法であって、親Fc領域と比較して増加したCH2ドメインTmを有するFcバリアントを提供するために親Fcに、1~3つの安定性強化アミノ酸変異を導入することを含む、方法に関するものであり、該1~3つの安定性強化変異は以下を含む。
(a)Phe、His、Met、TrpもしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnもしくはThrとの置換である309位における変異から選択される、1つ以上の変異、または
(b)Ala、IleもしくはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、Trp、もしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnもしくはThrとの置換である309位における変異、Pheとの置換である428位における変異、ならびに両方ともCysとの置換である242位における変異及び336位における変異、から選択される、2つ以上の変異、または
(c)両方ともCysとの置換である242位における変異及び336位における変異と、Ala、Ile、もしくはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、Trp、もしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnもしくはThrとの置換である309位における変異、及びPheとの置換である428位における変異、から選択される変異とを含む、3つ以上の変異。
いくつかの実施形態では、本方法は、安定性強化変異250V/287F、250V/308I、250V/309Q、250V/428F、287F/308I、287F/309Q、287F/428F、308I/309Q、308I/428F、309Q/428Fまたは242C_336Cを親Fcに導入することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、安定性強化変異250V/287F、250V/309Q、250V/428F、287F/428Fまたは242C_336Cを親Fcに導入することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、安定性強化変異250V/287F、250V/309Q、250V/428Fまたは287F/428Fを親Fcに導入することを含む。
特定の実施形態では、本方法は、250V、287F、308I、309Q、428F、242C_336C、287F/428F、250V/287F、250V/309Q、250V/428F及び242C_336C/308Iから、選択される安定性強化変異を親Fcに導入することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、287F、308I、309Q、242C_336C、287F/428F、250V/287F、250V/309Q、250V/428F及び242C_336C/308Iから、選択される安定性強化変異を親Fcに導入することを含む。
特定の実施形態では、親Fcは、IgG、IgA、IgD、IgE、またはIgM Fc、例えば、ヒトIgG、IgA、IgD、IgE、またはIgM Fcである。いくつかの実施形態では、親Fcは、IgGまたはIgA Fc、例えば、ヒトIgGまたはIgA Fcである。いくつかの実施形態では、親Fcは、IgG Fc、例えば、ヒトIgG Fcである。
特定の実施形態では、親Fcは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fcである。いくつかの実施形態では、親Fcは、IgG1 Fc、例えば、ヒトIgG1 Fcである。
特定の実施形態では、本方法は、親Fcと比較して少なくとも0.5℃増加したCH2ドメインTmを有するFcバリアントを提供し、親Fcと比較して減少したFc領域の凝集を示す。いくつかの実施形態では、本方法によって産生されるFcバリアントは、親Fcと比較して少なくとも0.5℃の増加したCH2ドメインTmを有し、親Fcと比較して低いpHでの減少したFc領域の凝集を示す。いくつかの実施形態では、本方法によって産生されるFcバリアントは、親Fcと比較して少なくとも0.5℃の増加したCH2ドメインTmを有し、親Fcと比較して弱酸性条件下での減少した凝集を示す。
アッセイ
本開示のFcバリアントは、親Fcと比較して増加した安定性を有する。この増加した安定性は、増加したCH2ドメインの熱安定性、凝集の減少、血清半減期の増加、製造可能性の増加、またはそれらの組み合わせをもたらし得る。
特定の実施形態では、Fcバリアントは、CH2ドメイン融解温度(Tm)によって決定される、親Fcよりも増加した熱安定性を有する。Fcバリアント及び親FcのCH2ドメインTmは、例えば、標準技術を使用して、円二色性(CD)、示差走査熱量測定(DSC)、または示差走査蛍光測定(DSF)によって測定され得る。特定の実施形態では、Fcバリアントは、CH2ドメインTmによって決定される親Fcよりも増加した安定性を有し、CH2ドメインTmは、DSCまたはDSFによって測定される。
特定の実施形態では、安定性強化変異は、単一の変異としてFcに導入されるときに、親Fcよりも少なくとも0.5℃のFcバリアントのCH2ドメインTmの増加をもたらす。いくつかの実施形態では、安定性強化変異は、単一の変異としてFcに導入されるときに、親Fcよりも少なくとも1.0℃、少なくとも1.5℃、少なくとも2.0℃、少なくとも2.5℃、または少なくとも3.0℃のFcバリアントのCH2ドメインTmの増加をもたらす。いくつかの実施形態では、安定性強化変異は、単一の変異としてFcに導入されるときに、親Fcよりも約0.5℃~約6.5℃のFcバリアントのCH2ドメインTmの増加をもたらす。
特定の実施形態では、安定性強化変異は、2つ以上の変異の組み合わせとしてFcに導入されるときに、親Fcよりも少なくとも0.5℃のFcバリアントのCH2ドメインTmの増加をもたらす。いくつかの実施形態では、安定性強化変異は、2つ以上の変異の組み合わせとしてFcに導入されるときに、親Fcよりも少なくとも1.0℃、少なくとも1.5℃、少なくとも2.0℃、少なくとも2.5℃、または少なくとも3.0℃のFcバリアントのCH2ドメインTmの増加をもたらす。いくつかの実施形態では、安定性強化変異は、2つ以上の変異の組み合わせとしてFcに導入されるときに、親Fcよりも少なくとも5.0℃、少なくとも5.5℃、少なくとも6.0℃、少なくとも6.5℃、または少なくとも7.0℃のFcバリアントのCH2ドメインTmの増加をもたらす。いくつかの実施形態では、安定性強化変異は、2つ以上の変異の組み合わせとしてFcに導入されるときに、親Fcよりも約0.5℃~約9.0℃のFcバリアントのCH2ドメインTmの増加をもたらす。いくつかの実施形態では、安定性強化変異は、2つ以上の変異の組み合わせとしてFcに導入されるときに、親Fcよりも約1.0℃~約9.0℃、約2.0℃~約9.0℃、または約3.0℃~約9.0℃のFcバリアントのCH2ドメインTmの増加をもたらす。いくつかの実施形態では、安定性強化変異は、2つ以上の変異の組み合わせとしてFcに導入されるときに、親Fcよりも約2.0℃~約10.5℃、または約3.0℃~約10.5℃のFcバリアントのCH2ドメインTmの増加をもたらす。
特定の実施形態では、Fcバリアントの安定性の増加は、親Fcと比較して、Fcバリアントの凝集の減少及び/または血清半減期の増加をもたらす。凝集及び血清半減期は、当該技術分野で既知の様々な標準技術によって測定され得る。例えば、Fcバリアント及び親Fcの凝集は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)または動的光散乱法(DLS)によって評価され得る。Fcバリアント及び親Fcの血清半減期は、例えば、モデル動物における薬物動態研究によって評価され得る。
特定の実施形態では、Fcバリアントは、CH2ドメイン融解温度(Tm)によって決定される、親Fcよりも増加した熱安定性を有し、凝集の減少も示す。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、親Fcよりも増加した熱安定性(Tm)を有し、また、低pHでの凝集の減少も示す。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、親Fcよりも増加した熱安定性(Tm)を有し、弱酸性条件下での凝集の減少も示す。
Fcバリアントをさらに特徴付けるために、標準的な技術を使用して、他のアッセイが、任意選択で、行われ得る。例えば、Fcバリアントは、純度、FcR結合、FcRn結合、凝集及び/またはC1q結合について評価され得る。純度及び凝集は、例えば、それぞれ液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって評価され得る。FcR及びFcRn結合は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)、SPRイメージング(SPRi)、バイオレイヤー干渉法(BLI)、ELISA、動態排除アッセイ(KinExA(登録商標))、またはMeso Scale Discovery(商標)(MSD(商標))に基づく方法によって測定され得る(例えば、Current Protocols in Immunology:Ligand-Receptor Interactions in the Immune System,Eds.J.Coligan et al.,2018&updates,Wiley Inc.,Hoboken,NJ、及びYang et al.,2016,Analytical Biochem,508:78-96を参照されたい)。C1q結合は、例えば、ELISAまたはSPRによって評価され得る。
特定の実施形態では、Fcバリアントは、IgG Fcバリアントであり、FcγR結合及び/またはFcRn結合について評価され得る。典型的には、結合親和性は、FcバリアントのFcγRまたはFcRnへの結合のための解離定数(K)の観点で表される。FcバリアントがIgG Fcバリアントであるいくつかの実施形態では、Fcバリアントは、親Fcと実質的に同じFcγ受容体の各々への結合を保持する。FcバリアントがIgG Fcバリアントであるいくつかの実施形態では、Fcバリアントは、親Fcと実質的に同じFcRnへの結合を保持する。この文脈における「実質的に同じ結合」は、親Fcと比較して、Kにおける3倍以下の変化を意味する。
ポリペプチド
本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載のFcバリアントを含むポリペプチドに関する。典型的には、ポリペプチドは、例えば、リンカーによって、Fcバリアントに融合されるか、またはFcバリアントに共有結合される1つ以上の追加のタンパク質性部分を含む。例えば、ポリペプチドは、Fc融合タンパク質または抗体もしくは抗体断片であり得る。Fcバリアントに融合または結合され得るタンパク質性部分の例としては、抗原結合ドメイン、リガンド、受容体、受容体断片、サイトカイン及び抗原が挙げられるが、それらに限定されない。
ポリペプチドが2つ以上の追加のタンパク質性部分を含む場合、これらの部分は、同じものか、または異なるものであり得る。1つ以上の追加のタンパク質性部分は、Fcポリペプチドの一方または両方のN末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方で融合され得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、Fcポリペプチドの一方または両方のN末端に融合された1つ以上の追加のタンパク質性部分を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、Fcポリペプチドの一方のN末端に融合された1つの追加のタンパク質性部分を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、2つの追加のタンパク質性部分であって、第1のFcポリペプチドのN末端に融合された一方の部分、第2のFcポリペプチドのN末端に融合された他方の部分を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドによって含まれる2つの追加のタンパク質性部分は、タンデムで連結され得る。
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗原結合ドメインである1つ以上のタンパク質性部分に融合されたFcバリアントを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、Fcバリアント及び1つ以上の抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、Fcバリアント及び2つ以上の抗原結合ドメイン、例えば、2、3、4、5、6、7または8つの抗原結合ドメインを含む。ポリペプチドがFcバリアント及び2つ以上の抗原結合ドメインを含む場合、抗原結合ドメインは、同じ抗原に結合し得る、またはそれらは、異なる抗原に結合し得る。
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗原結合ドメインである1つ以上のタンパク質性部分、及び1つ以上の他のタンパク質性部分に融合されたFcバリアントを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗原結合ドメイン及び1つ以上の他のタンパク質性部分に融合されたFcバリアントを含む。この文脈における他のタンパク質性部分の例としては、受容体、受容体断片(細胞外部分など)、リガンド及びサイトカインが挙げられるが、それらに限定されない。
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上のタンパク質性部分のうちの少なくとも1つが抗原結合ドメインである、抗体または抗体断片であり得る。例えば、抗原結合ドメインは、Fab断片、Fv断片、一本鎖Fv断片(scFv)または単一のドメイン抗体(sdAb)であり得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、単一特異性抗体であり得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、1つの抗原結合ドメインを含む単一特異性抗体であり得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、2つの抗原結合ドメインを含む単一特異性抗体であり得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、2つを超える抗原結合ドメインを含む単一特異性抗体であり得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、Fcバリアント及び2つ以上の抗原結合ドメインを含む二重特異性または多重特異性抗体であり得るが、それらにおける2つ以上の抗原結合ドメインは、異なる抗原に結合する。
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、治療もしくは診断用抗体または抗体断片であり得るが、それらにおける1つ以上のタンパク質性部分のうちの少なくとも1つは、抗原結合ドメインである。
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、Fcバリアントと、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原に結合する1つ以上の抗原結合ドメインを含む。
Fcバリアントの調製
本明細書に記載されるFcバリアント及び本明細書に記載されるFcバリアントを含むポリペプチドは、標準的な組換え方法を使用して調製され得る。Fcバリアント及びポリペプチドの組換え産生は、概して、Fcバリアントまたはポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを合成すること、1つ以上のポリヌクレオチドを1つまたは複数の適切なベクターにクローニングすること、及びFcバリアントまたはポリペプチドの発現のために、ベクター(複数可)を好適な宿主細胞に導入することを含む。タンパク質の組換え産生は、当該技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(2001)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,(1987&updates),John Wiley&Sons,New York,NY、及びHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1990)に記載される標準技術を使用して達成され得る。
したがって、本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載されるFcバリアントをコードするか、または本明細書に記載のFcバリアントを含むポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットに関する。この文脈におけるポリヌクレオチドは、Fcバリアントまたはポリペプチドの全部または一部をコードし得る。
用語「核酸」、「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」は、本明細書において互換的に使用され、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれか、またはそれらの類似体である、任意の長さのヌクレオチドの高分子形態を指す。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、遺伝子、遺伝子断片、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、組換えポリヌクレオチド、単離されたDNA、単離されたRNA、核酸プローブ、及びプライマーが挙げられる。
所与のポリペプチドを「コードする」ポリヌクレオチドは、適切な調節配列の制御下に置かれるときに、(DNAの場合)転写され、(mRNAの場合)インビボでポリペプチドに翻訳されるポリヌクレオチドである。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドン及び3’(カルボキシ)末端の翻訳停止コドンによって決定される。転写終結配列は、コード配列の3’に位置し得る。
Fcバリアントまたはポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドは、標準的なライゲーション技術を使用して、直接または1つ以上のサブクローニングステップの後に、1つまたは複数の好適な発現ベクターに挿入され得る。好適なベクターの例としては、プラスミド、ファージミド、コスミド、バクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウイルスまたはDNAウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。ベクターは、典型的には、用いられる特定の宿主細胞において機能的であるように選択される、すなわち、該ベクターは、宿主細胞機構と適合し、ポリヌクレオチド(複数可)の増幅及び/または発現を可能にする。この点で適切なベクター及び宿主細胞の組み合わせの選択は、十分に当該技術分野の当業者の通常の技能範囲内である。
したがって、本開示の特定の実施形態は、FcバリアントまたはFcバリアントを含むポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含むベクター(発現ベクターなど)に関する。該ポリヌクレオチド(複数可)は、単一のベクター、または1つを超えるベクターを構成し得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、マルチシストロン性ベクターに含まれる。
典型的には、発現ベクターは、プラスミド維持のため、及び外因性ポリヌクレオチド配列のクローニング及び発現のための1つ以上の調節エレメントを含有する。かかる調節エレメントの例としては、プロモーター、エンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナー及びアクセプタースプライス部位、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを挿入するためのポリリンカー領域、ならびに選択可能なマーカーが挙げられる。
調節エレメントは、相同(すなわち、宿主細胞と同じ種及び/または株由来)、異種(すなわち、宿主細胞種または株以外の種由来)、ハイブリッド(すなわち、2つ以上の供給源由来の調節エレメントの組み合わせ)、または合成であり得る。したがって、調節エレメントの供給源は、用いられる宿主細胞の機構において機能的であり、かつそれによって活性化され得ることを条件とする任意の原核生物または真核生物であり得る。
任意選択で、ベクターは「タグ」コード配列も含有し得る。タグコード配列は、ポリHis(例えば、6×His)、FLAG(登録商標)、HA(ヘマグルチニンインフルエンザウイルス)、myc、金属親和性、アビジン/ストレプトアビジン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)またはビオチンタグなどの異種ペプチド配列をコードする、コード配列の5’または3’末端に位置する核酸配列である。このタグは、典型的には、発現したポリペプチドに融合したままであり、ポリペプチドの親和性精製または検出のための手段として機能し得る。任意選択で、タグは、その後、切断のために特定のペプチダーゼを使用するなどの様々な手段によって、精製ポリペプチドから除去され得る。
様々な発現ベクターは、市販の供給源から容易に入手可能である。代替的に、全ての所望の調節エレメントを含有する市販のベクターが入手可能ではない場合には、発現ベクターは、市販の入手可能なベクターを出発ベクターとして使用して構築され得る。所望の調節エレメントのうちの1つ以上がベクター中にすでに存在していない場合、それらは、個々に入手し、ベクター中にライゲートされ得る。様々な調節エレメントを得るための方法及び供給源は、当業者に周知である。
Fcバリアントまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(複数可)を含む発現ベクター(複数可)の構築後に、該ベクター(複数可)は、増幅及び/またはタンパク質発現のための好適な宿主細胞に挿入され得る。発現ベクターの選択された宿主細胞へのトランスフェクションは、トランスフェクション、感染、リン酸カルシウム共沈殿、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、及び他の既知の技術を含む周知の方法によって達成され得る。選択される方法は、部分的に、使用される宿主細胞の種類に応じて決まる。これらの方法及び他の好適な方法は、当業者に周知である(例えば、Sambrook,et al.,同前書を参照されたい)。
宿主細胞は、適切な条件下で培養されるときに、ベクターによってコードされるポリペプチドを発現し、その後、ポリペプチドが培養培地から(宿主細胞がポリペプチドを分泌する場合)、またはそれを産生する宿主細胞から直接(ポリペプチドが分泌されない場合)、収集され得る。宿主細胞は、原核細胞(例えば、細菌細胞)または真核細胞(例えば、酵母、真菌、植物、または哺乳類細胞)であり得る。適切な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、活性に所望のまたは必要なポリペプチド修飾(グリコシル化またはリン酸化など)、及び生物学的活性分子への折り畳みの容易さなどの様々な因子を考慮して、当業者によって容易に行われ得る。
したがって、本開示のある特定の実施形態は、FcバリアントまたはFcバリアントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(複数可)、またはポリヌクレオチド(複数可)を含む1つ以上のベクターを含む宿主細胞に関する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、真核細胞である。
例えば、糸状菌または酵母などの真核微生物は、グリコシル化経路が「ヒト化」された真菌及び酵母株を含む宿主細胞として用いられ得る(例えば、Gerngross,(2004),Nat.Biotech.,22:1409-1414、及びLi et al.,(2006),Nat.Biotech.,24:210-215を参照されたい)。植物細胞はまた、宿主細胞として利用され得る(例えば、PLANTIBODIES(商標)技術を記載する米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号及び同第6,417,429号を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、真核宿主細胞は、哺乳類細胞である。様々な哺乳類細胞株が、宿主細胞として使用され得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の例としては、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胎児腎臓株293(例えば、Graham et al.,(1977),J.Gen Virol.,36:59に記載されるようなHEK293)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,(1980),Biol.Reprod.,23:243-251に記載されるようなTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍細胞(MMT060562)、TRI細胞(例えば、Mather et al.,1982,Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44-68に記載されるような)、MRC5細胞、FS4細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub,et al.,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216に記載されるようなDHFRCHO細胞を含む)、及び骨髄腫細胞系統(Y0、NS0及びSp2/0など)が挙げられるが、それらに限定されない。また、Yazaki and Wu,2003,Methods in Molecular Biology,Vol.248,pp.255-268(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.)を参照されたい。
本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載されるFcバリアントまたは本明細書に記載されるFcバリアントを含むポリペプチドを調製する方法であって、宿主細胞を、例えば、ポリヌクレオチド(複数可)を含む1つ以上のベクターの形態で、Fcバリアントまたはポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドでトランスフェクトすることと、コードされたFcバリアントまたはポリペプチドの発現に好適な条件下で宿主細胞を培養することとを含む方法に関する。
典型的には、Fcバリアントまたはポリペプチドは、発現後に宿主細胞から単離され、任意選択で、精製され得る。発現したタンパク質を単離及び精製する方法は、当該技術分野において周知である。標準的な精製方法には、例えば、FPLC、MPLC及びHPLCなどのシステムを使用して、大気圧または中圧もしくは高圧で実施され得る、イオン交換、疎水性相互作用、親和性、サイズ調整、ゲル濾過、または逆相などのクロマトグラフィー技術が含まれる。他の精製方法としては、電気泳動、免疫学的、沈殿、透析、及びクロマトフォーカシング技術が挙げられる。タンパク質濃度と組み合わせた限外濾過及び透析濾過技術も有用であり得る。
様々な天然タンパク質が、抗体のFc領域に結合することが当該技術分野で既知であり、したがって、これらのタンパク質をFc含有タンパク質の精製に使用することができる。例えば、細菌タンパク質A及びGは、Fc領域に結合する。精製は、多くの場合、上記のような特定の融合パートナーまたは親和性タグによって可能になり得る。例えば、抗体は、GST融合が用いられる場合には、グルタチオン樹脂、Hisタグが用いられる場合には、Ni+2アフィニティークロマトグラフィー、またはFLAGタグが使用される場合には、固定化抗flag抗体を使用して、精製され得る。有用な精製技術の例は、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1990)、及びProtein Purification:Principles and Practice,3rd Ed.,Scopes,Springer-Verlag,NY(1994)に記載されている。
薬学的組成物
本開示の特定の実施形態は、FcバリアントまたはFcバリアントを含むポリペプチドの療法的使用に関する。療法的使用のために、Fcバリアント及びポリペプチドは、Fcバリアントまたはポリペプチドと、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む、組成物の形態で提供され得る。組成物は、周知で容易に入手可能な成分を使用して、既知の手順によって調製され得る。例えば、経口(例えば、頬側もしくは舌下)、局所、非経口、直腸、もしくは膣経路、または吸入もしくは噴霧による患者への投与のために製剤化され得る。「非経口」という用語は、本明細書で使用される場合、皮下、皮内、関節内、静脈内、筋肉内、血管内、胸骨内、またはくも膜下腔内経路による注射または注入を含む。
組成物は、典型的に、選択された経路、例えば、シロップ、エリキシル、錠剤、トローチ、ロゼンジ、硬または軟カプセル、丸剤、坐剤、油性もしくは水性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、乳剤、注射剤または溶液として、対象への投与のために好適な形式で製剤化される。組成物は、単位用量製剤として提供され得る。
薬学的に許容される担体は、一般に、使用される用量及び濃度でレシピエントに無毒である。そのような担体の例として、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸、酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸及びメチオニン、保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(例えば、メチルもしくはプロピルパラベン)、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール及びm-クレゾール)、低分子量(約10アミノ酸未満)ポリペプチド、タンパク質、例えば、血清アルブミンもしくはゼラチン、親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジン、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノースもしくはデキストリン、キレート剤、例えば、EDTA、糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール、塩形成対イオン、例えば、ナトリウム、金属錯体、例えば、Zn-タンパク質錯体;ならびに非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が含まれるが、これらに限定されない。
特定の実施形態では、組成物は、滅菌注射用水性もしくは油性溶液または懸濁液の形態であり得る。かかる懸濁液は、当該技術分野において既知の好適な分散剤もしくは湿潤剤及び/または懸濁剤を使用して製剤化され得る。滅菌注射用溶液または懸濁液は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中にFcバリアントまたはポリペプチドを含み得る。使用され得る許容される希釈剤及び溶媒としては、例えば、1,3-ブタンジオール、水、リンガー溶液、または等張食塩水が挙げられる。加えて、減菌固定油は、溶媒または懸濁化剤として用いられ得る。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む様々な穏やかな不揮発性油が用いられ得る。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が注入可能な調製物中で使用されることが分かっている。当該技術分野で既知の局所麻酔剤、保存剤及び/または緩衝剤などのアジュバントがまた、注射用溶液または懸濁液に含まれ得る。
他の薬学的組成物及び薬学的組成物の調製方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”(以前は“Remingtons Pharmaceutical Sciences”);Gennaro,A.,Lippincott,Williams&Wilkins,Philadelphia,PA(2000)を参照されたい。
使用方法
本開示の特定の実施形態は、療法、診断または研究ツールとしてのFcバリアントまたはFcバリアントを含むポリペプチドの使用に関する。いくつかの実施形態は、Fcバリアント及びFcバリアントを含むポリペプチドの療法的使用に関する。
本明細書に記載されるFcバリアント及び1つ以上の抗原結合ドメイン、例えば、抗体または抗体断片を含むポリペプチドは、診断及び療法として特に有用である。したがって、いくつかの実施形態は、患者における疾患または障害の診断において、Fcバリアント及び1つ以上の抗原結合ドメインを含むポリペプチドを使用する方法に関する。いくつかの実施形態は、Fcバリアント及び1つ以上の抗原結合ドメインを含むポリペプチドを、それを必要とする患者の疾患または障害の治療において使用する方法に関する。
診断または治療される疾患または障害は、抗原結合ドメインによって標的化される抗原または複数の抗原に依存する。診断または治療され得る疾患及び障害の例として、炎症性疾患及び障害、自己免疫疾患及び障害、ならびに種々のがんなどの増殖性疾患及び障害が挙げられるが、それらに限定されない。
以下の実施例は、例証目的で提示され、決して請求項に係る本発明の範囲を限定するようには意図されていない。
一般的な方法
バリアントの調製
標準的な方法を使用して、部位特異的変異誘発及び/または制限/ライゲーションによりバリアント及び対照を調製した。最終DNAをベクターpTT5にサブクローニングした(米国特許第9,353,382号を参照されたい)。バリアントの調製のために使用した全ての骨格は、IgG1 Fcに基づいていた。IgG1 Fc領域の配列を、図1Aに提供する。特定のクローンにおいて、C末端リジン残基は、Fc配列から省かれた。
以下の骨格が使用された。
骨格1:ホモ二量体IgG1 Fc(配列番号1)を有するトラスツズマブに基づくフルサイズ抗体(FSA)。
骨格2:トラスツズマブFabと、以下の変異を含むヘテロ二量体IgG1 Fcとを含む、一群武装化抗体(OAA)骨格:
鎖A:T350V_L351Y_F405A_Y407V
鎖B:T350V_T366L_K392L_T394W
骨格3:骨格2と同じヘテロ二量体Fcを含むトラスツズマブに基づくフルサイズ抗体(FSA)。
骨格4:骨格2と同じヘテロ二量体Fcを含む4G7抗CD19抗体(Meeker,et al.,1984,Hybridoma,3:305-320、米国特許第8,524,867号)に基づくフルサイズ抗体(FSA)。
骨格5:骨格2と同じヘテロ二量体Fcを含むCP-870,893抗CD40抗体(Gladue,et al.,2011,Cancer Immunol Immunother,60:1009-1017)に基づくフルサイズ抗体(FSA)。可変ドメイン配列は、国際特許出願公開第WO2013/132044号から得た。
骨格6:アグリコシル化Fcをもたらし、全てのFcγRへの結合を抑制する、N297A変異(Leabman,et al,2013,mAb,5(6):896-903)を含むトラスツズマブに基づくフルサイズ抗体(FSA)。
骨格7:FcγRIIIa結合の増加をもたらす、S239D及びI332E変異(Lazar,et al,2006,PNAS,103:4005-4010)を含むトラスツズマブに基づくフルサイズ抗体(FSA)。
骨格8:トラスツズマブFabと、FcγRIIb選択性の増加をもたらす以下の変異を含むヘテロ二量体IgG1 Fcとを含む、一群武装化抗体(OAA)骨格:
Figure 2023526114000004
「テンプレート1」は、325~331位のアミノ酸残基の以下の配列との置換を示す。STWFDGGYAT[配列番号2]。
骨格9:トラスツズマブFabと、FcγRIIb選択性の増加をもたらす以下の変異を含むヘテロ二量体IgG1 Fcとを含む、一群武装化抗体(OAA)骨格:
Figure 2023526114000005
発現-プロトコル1
発現を、200mLのCHO3E7細胞で行った。CHO細胞を、水性の1mg/mLの25kDaポリエチレンイミン(PEIpro、Polyplus Transfection SA,Illkirch,France)を用いて、2.5:1のPEI:DNA比で指数的増殖相(150~200万個の細胞/mL)でトランスフェクトした(Delafosse,et al.,2016,J.Biotechnol.,227:103-111)。ヘテロ二量体を形成するための最適な濃度範囲を決定するために、DNAを、ヘテロ二量体形成を可能にする重鎖A(HC-A)、軽鎖(LC)、及び重鎖B(HC-B)の最適なDNA比(例えば、HC-A/HC-B/LC比=30:30:40%)でトランスフェクトした。ホモ二量体を発現する場合、HC:LCについて50:50%の比を使用した。トランスフェクトした細胞を、遠心分離後に4000rpmで収集した培地で5~6日後に採取し、0.45μmフィルターを使用して清澄化した。
清澄化した培地を、MabSelect(商標)SuRe(商標)(GE Healthcare,Baie-d’Urfe,QC,Canada)Protein-Aカラムにロードし、pH7.2で10カラム体積のPBS緩衝液で洗浄した。抗体を、pH3.6で10カラム体積のクエン酸緩衝液で、中和した抗体を含有するプールされた画分を用いてpH11でのTRISで溶出した。次いで、試料を、PBS pH7.4に緩衝液交換し、-80℃で保存した。
発現-プロトコル2
発現を、HEK293-6E細胞(NRC,Canada)を用いて、小さいスケール(1mL)または大きいスケール(30mL以上)のいずれかで行った。
1mLスケールの発現のために、HEK293-6E細胞を、カチオン性脂質293Fectin(商標)(Life Technologies,Paisley,U.K.)と予め複合体化されたDNAを使用して、1μg DNA/mLの細胞を用いて、指数的増殖期(150~200万個の細胞/mL)にトランスフェクトした。重鎖及び軽鎖DNAを、47.5:52.5%の比で混合し、DNAを、最終濃度11.7μg/mLのDNA、1.65%(v/v)の293Fectin(商標)で293Fectin(商標)と複合体化し、次いで、細胞への添加前に周囲温度において30分間インキュベートした。最適なヘテロ二量体形成を達成するためのトランスフェクション混合物のHC-A及びHC-BのDNA比は、50:50%、またはそれがわずかに変化したもののいずれかであった。細胞を、ガス透過性シールで密封された96ウェルディープウェルプレート中で、37℃及び5%の二酸化炭素濃度で、加湿されたシェーキングインキュベーター中で5~6日間培養した。次いで、1600×gでの遠心分離後に、培地を回収した。
大きいスケールの発現については、HEK293-6E細胞を、Gemini陽イオン性脂質と予め複合体化されたDNAを使用して、1μg DNA/mLの細胞で指数的増殖期(150~200万個の細胞/mL)にトランスフェクトした(Camilleri et al.,2000,Chem.Commun.,1253-1254)。重鎖及び軽鎖DNAを、50:50%の比率で混合し、DNAを、10μg/mLのDNA、40μg/mLのGeminiの最終濃度でGeminiと複合体化し、次いで、細胞への添加前に周囲温度で15~30分間インキュベートした。トランスフェクション混合物のHC-A及びHC-B DNAの比は上記の通りであった。細胞を、適切なサイズのErlenmeyerフラスコまたはBioReactorチューブ内に入れ、37℃及び5%の二酸化炭素濃度で、加湿シェーキングインキュベーター内で最大10日間培養した。次いで、培養液を、2750xgでの遠心分離後に回収し、0.22μmフィルターを使用して清澄化した。
清澄化した培養液を、MabSelect(商標)SuRe(商標)(GE Healthcare,Little Chalfont,U.K.)タンパク質Aカラムにロードし、pH7.5で3~10カラム体積のTris-Acetate緩衝液で洗浄し、次いで、TRISで中和した溶出画分を用いて、pH2.6で2~5カラム体積の酢酸で溶出した。サイズ排除クロマトグラフィー(PBSランニングバッファーを用いたSuperdex(商標)200カラム(GE Healthcare,Little Chalfont,U.K.))及び/またはカチオン交換(ReSource(商標)Sカラム(GE Healthcare,Little Chalfont,U.K.))によるさらなる精製を、選択された試料に関して利用した。タンパク質A精製抗体を、PBSに緩衝液交換した。
Fcγ及びFcRn受容体の調製
プロトコル1
FcγRIIaH、IIaR、IIb、IIIaF及びIIIaVは、HEK293-6E細胞において産生され、一方、FcγRIaは、前述のように、CHO-3E7細胞において産生された(Dorian-Thibaudeau,et al.,2014,J.Immunol.Methods,408:24-34を参照されたい)。また、ヒトFcRnを、TEV切断可能C末端Hisタグを含有するアルファサブユニット(p51)細胞外ドメインとβ2-マイクログロブリンを1:1の比で同時トランスフェクションすることによって、HEK293-6E細胞において発現した。Dorion-Thibaudeau et al.(同前書)に記載されるような精製の後、C末端Hisタグを、TEV切断によって除去した。
プロトコル2
C末端6xHisタグを有する可溶性FcγRI細胞外ドメインを、R&D Systems(カタログ番号1257-Fc)から購入した。可溶性FcγRIIaH、IIaR、IIb、IIIaF及びIIIaV細胞外ドメインを、C末端10xHisタグを有するHEK293-6E細胞において産生した。細胞を、Gemini陽イオン性脂質と予め複合体化されたDNAを使用して、1μg DNA/mLの細胞で指数的増殖期(150~200万個の細胞/mL)にトランスフェクトした(Camilleri et al.,2000,Chem.Commun.,1253-1254.)。細胞を、適切なサイズのErlenmeyerフラスコ内に入れ、37℃及び5%の二酸化炭素濃度で、加湿シェーキングインキュベーター内で最大7日間培養した。収穫時間は、細胞生存率が50%未満に低下したときに決定した。次いで、培養液を、2750xgでの遠心分離後に回収し、0.22μmフィルターを使用して清澄化した。
清澄化した培養液を、透析またはタンジェンシャルフロー濾過によって、25mMのイミダゾールを含有するpH7.7の負荷緩衝液に交換し、Ni Sepharose6カラム(GE Healthcare,Little Chalfont,U.K.)に供し、次いで、緩衝液イミダゾール濃度を300mMに増加させることによって溶出した。溶出したタンパク質を、濃縮し、ダイアフィルトレーションによってPBSに緩衝液交換し、次いで、サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex(登録商標)75カラム(GE Healthcare,Little Chalfont,U.K.))によってさらに精製した。
可溶性ヒトFcRn細胞外ドメインを、C末端6×Hisタグを含有するアルファサブユニットとβ2マイクログロブリンを1:1の比で同時トランスフェクションすることによってHEK293-6E細胞において発現し、FcγRについては別途記載されているように発現した。清澄化した培養液のpHを、クエン酸塩でpH5.3に調整し、次いで、IgG Sepharoseカラム(GE Healthcare,Little Chalfont,U.K.)にロードした。結合したタンパク質を、pH7.7のHEPES緩衝液で溶出した。溶出したタンパク質を、濃縮し、ダイアフィルトレーションによってPBSに緩衝液交換し、次いで、サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex(登録商標)75カラム(GE Healthcare,Little Chalfont,U.K.))によってさらに精製した。
Fcγ受容体結合(表面プラズモン共鳴(SPR))
プロトコル1
FcγRの抗体Fcに対する親和性は、pH7.4で150mMのNaCl、3.4mMのEDTA、及び0.05%のTween20を含有するPBSをランニングバッファーとして、25℃でProteOn(商標)XPR36を使用してSPRによって測定した。トラスツズマブバリアントについては、組換えHER2を、BioRadアミンカップリングキットで標準的なアミンカップリングを使用してGLMセンサーチップ上に固定化した。簡潔に述べると、GLMセンサーチップを、NHS/EDCで活性化し、続いて、約3000個の共鳴単位(RU)が固定化されるまで、10mMのNaOAc(pH4.5)中に調製したHER2を4.0μg/mLで注入した。続いて、残りの活性基をエタノールアミンでクエンチした。野生型トラスツズマブバリアントは、25μL/分でリガンド方向に240秒間、40μg/mLの溶液精製抗体を注入することにより、それらのSPR表面上に間接的に捕捉され、表面上に約500RUをもたらした。分析物方向に安定したベースラインを確立するための緩衝液注入に続いて、分析物を、50μL/分で120秒間、180秒の解離相とともに注入して、結合センサーグラムのセットを得た。FcγR1aについて30nMだったのを除いて、全ての受容体について、10μMの最上位公称濃度を有する3倍希釈系列のFcγRを5つの濃度で使用し、さらに緩衝液を二重参照のために含めた。結果として得られるKd(親和性)値をProteOn(商標)マネージャーv3.1.0における平衡適合モデルを使用して、アラインメント及び参照センサーグラムから測定し、2つまたは3つの独立した実行の平均値として報告した。
プロトコル2
FcγRの抗体Fcへの親和性を、PBSTE(0.05%のTween-20及び3.4mMのEDTAを有するPBS)をランニングバッファーとして、25℃でBiacore(商標)4000(GE Healthcare,Little Chalfont,U.K.)を使用してSPRによって測定した。抗HER2抗体については、CM5チップ(GE Healthcare,Little Chalfont,U.K.)を、アミンカップリング(EDC/NHS chemistry)を利用して、組換えHER2細胞外ドメイン(Merck,Darmstadt,Germany、またはThermoFisher Scientific,Loughborough,U.K.)で固定化した。簡潔に述べると、CM5センサーチップを、NHS/EDCで活性化し、続いて、10mMのNaOAc(pH4.5)中に調製したHER2を10.0μg/mLで注入した。固定化レベルは、1000~4000RUの範囲であった。次いで、任意の残りの活性基を、エタノールアミンでクエンチした。抗体は、まず、約15μg/mlでスポット及びフローセルにわたって10μl/分の流速で35秒間注入することによって、チップの固定化された表面上で捕捉した。基準減算のためにスポット3を空白のままにした。受容体を、PBSTE緩衝液で、予想される親和性に依存する規定の濃度範囲まで希釈した。ゼロを含む1分析物当たり6つの濃度を使用した。分析物の接触時間は、使用される受容体及びその予想される動態に応じて最適化された。例えば、FcγRIIB及びFcγRIIaRの接触時間は、30μl/分で18秒であった。チップ表面を、各分析物の濃度注入後に87mMのリン酸で再生した。試験前に、87mMのリン酸を3×18sで注射してチップを調製した。二重参照減算を実行し(参照スポット3及び0受容体濃度)、結合応答を抗体捕捉レベルによって正規化した。試料を、動態及び/または定常状態(平衡)適合モデルのいずれかを使用して、分析した。
FcRn結合(表面プラズモン共鳴(SPR))
プロトコル1
抗体バリアントFcに対するFcRnの親和性を、pH7.4またはpH6.0のHBS-EP+(10mMのHEPES、150mMのNaCl、0.003%MのEDTA、及び0.05%v/vの界面活性剤P20(Teknova,Hollister,U.S.A.))をランニングバッファーとして、25℃でProteOn(商標)XPR36を使用してSPRによって測定した。プロテインL(ThermoScientific,Loughborough,U.K.)を、GE Healthcareカップリングキットで標準的なアミンカップリングを使用してGLMセンサーチップ上に固定した。簡潔に述べると、GLMセンサーチップを、NHS/EDCで活性化し、続いて、約3000共鳴単位(RU)が固定化されるまで、10mMのNaOAc(pH4.5)中に調製したタンパク質Lを50μg/mLで注入し、続いて、残りの活性基をエタノールアミンでクエンチした。抗体バリアントを、30μL/分でリガンド方向に50μg/mLの精製抗体溶液を120秒間注入することによって、SPR表面上に間接的に捕捉した。安定したベースラインを分析物方向に確立するための緩衝液注入に続いて、分析物を40μL/分で300秒間、600秒の解離相とともに注入して、結合センサーグラムのセットを得た。2048nMの最上位公称濃度を有するFcRnの4倍希釈系列の5つの濃度を使用した。そして、緩衝液を二重参照のために含めた。得られたKd(親和性)値は、ProteOn(商標)マネージャーv3.1.0の平衡適合モデルを使用して、アラインメント及び参照センサーグラムから決定した。
プロトコル2
抗体バリアントFcに対するFcRnの親和性を、HBS-EP+pH7.4またはMES pH6.0をランニングバッファーとして、25℃でBiacore(商標)T200(GE Healthcare,Little Chalfont,U.K.)を使用して、SPRによって測定した。試料を固定化されたタンパク質L CM5チップ(GE Healthcare)上で捕捉したが、4G7抗CD19抗体は捕捉に失敗した。抗体を、まず、スポット及びフローセルに約15μg/mlで、5μl/分の流速で60秒間注入することによって、チップの固定化された表面上で捕捉した。受容体を、HBS-EP+pH7.4またはMES pH6.0緩衝液で所定の濃度範囲に希釈した。pH7.4では検体ごとに3つの濃度(4096、512、及び0nM)を使用し、pH6.0では検体ごとに4つ(512、64、8、及び0nM)を使用した。チップ表面を、各分析物濃度注入後に、10mMのグリシンpH1.5を用いて再生した。結果を、Biacore(商標)T200 Evaluation V2ソフトウェア及び1:1結合動態モデルを使用して、分析した。
プロトコル3
FcRnの親和性は、HBS-EP+pH7.4またはMES pH6.0をランニングバッファーとして、25℃でIBIS MX96(IBIS Technologies,Enschede,The Netherlands)を使用して、SPRによって測定した。試料をpH4.5の酢酸緩衝液で希釈し、次いで、連続フローマイクロスポッター(Carterra,Salt Lake City,USA)を使用して、SensEye(登録商標)G Easy2Spot(登録商標)センサーチップ(SensEye,Enschede,The Netherlands)上に捕捉した。受容体を、HBS-EP+pH7.4またはMES pH6.0緩衝液で所定の濃度範囲に希釈した。pH7.4では検体ごとに3つの濃度(4096、512、及び0nM)を使用し、pH6.0では検体ごとに4つ(512、64、8、及び0nM)を使用した。チップ表面を、各分析物濃度注入後に、10mMのグリシンpH2.0を用いて再生した。結果を、Scrubber V2(BioLogic Software,Campbell,Australia)及び動態適合モデルを使用して、分析した。
プロトコル4
抗体を、Biacore(商標)T200(GE Healthcare)表面プラズモン共鳴器具を使用して、FcRn結合についてスクリーニングした。実験は、PH6で0.05%Tween(登録商標)20及び3.4mMのEDTAを有するPBSを含有するランニングバッファーを使用して、25℃で行った。ビオチン化FcRn(上記プロトコル1によって産生された)を、標準的なアミンカップリングを使用して以前にブランク表面及び捕捉表面上に固定化されたニュートラビジン(Thermo Fisher,Waltham MA)を有したCM-5センサーチップ上に捕捉した。次いで、抗体希釈液を、FcRn表面及び対照表面上に流した。Biacoreコントロールソフトウェア内の固定化ウィザードを使用して、10mMの酢酸ナトリウムpH4.5緩衝液に調製したニュートラビジンを、2000RUに達するまで各NHS/EDC活性化表面に25ug/mLで添加した。FcRn表面を作製するために、ビオチン化FcRnを、pH7.4で0.05%のTween(登録商標)20及び3.4mMのEDTAを含有するPBSで2ug/mLに希釈し、32RUを捕捉するまで、捕捉表面上に25ug/mLの流量で110秒間注入した。このFcRn表面を、全ての抗体に対して使用した。抗体を、シングルサイクル動態を使用して、二重にスクリーニングした。900~11.1nMの間の5つの濃度を、pH6ランニングバッファーで3倍希釈したものを使用して、90秒の会合及び180秒の解離を伴った25uL/分の流量で注入した。FcRn表面を、異なる抗体バリアント間で、30uL/分でpH7.4緩衝液を30秒注入することで再生した。センサーグラムがブランク対照表面に対して二重に参照され、親和性結合モデルを使用して適合させて、各抗体-FcRn相互作用のKD値を生成した。
示差走査熱量測定
プロトコル1
各抗体構築物をPBSで0.2mg/mLに希釈し、合計400μLをVP-Capillary DSC(GE Healthcare)を用いたDSC分析に使用した。各DSC実行の開始時に、5回の緩衝液ブランク注入を実行してベースラインを安定させ、参照のために緩衝液注入を各試料注入前に設定した。各試料を、低フィードバック、8秒フィルター、5分のプレ走査サーモスタット、及び70psiの窒素圧を用いて、60℃/時間の速度で20~100℃で走査した。得られたサーモグラムを参照し、Origin7ソフトウェア(OriginLab Corporation,Northampton,MA)を使用して分析した。
プロトコル2
0.1~1.0mg/mlの抗体濃度好ましくは0.4mg/ml以上の濃度を使用したことを除いて、上記のプロトコル1について記載したのと同じ方法によって抗体構築物を評価した。
示差走査型蛍光定量法
プロトコル1
20μLの精製試料(0.2~1.0mg/mL)を、10μLのSYPRO(登録商標)Orange(Invitrogen,Paisley,U.K.)に添加し、逆浸透(RO)水で5000倍ストックから20倍に希釈し、透明な壁付き96ウェルPCRプレートに入れた。試料を、40℃で5分間インキュベートし、次いで、BioRad CFX Connect(商標)RT-PCRマシン(BioRad,Watford,U.K.)を使用して、15℃/hの速度で、SYPRO(登録商標)Orangeの蛍光発光を40~95℃で測定した。Bio-Rad CFX Manager(商標)バージョン3.1を使用して、タンパク質内の既知のドメインの展開と相関したタンパク質展開イベントのピークを分析し、かつ温度を導出した。
プロトコル2
10μLの精製試料(0.2~1.0mg/mL)を、Prometheus NT.Plex nanoDSF標準グレードのガラスキャピラリー(PR-AC002、NanoTemper Technologies,London,U.K.)に充填し、60℃/時の速度を使用して、20~95℃で、Prometheus NT.Plex nanoDSF(NanoTemper Technologies,London,U.K.)中で分析した。PR.stability Analysisソフトウェアバージョン1.02を使用して、タンパク質内の既知のドメインの展開と相関したタンパク質展開イベントのピークを分析し、温度を導出した。
サイズ排除クロマトグラフィー:
10μLの精製試料(0.2~2mg/mLの濃度範囲内)を、1試料当たり15分間の実行時間で1.0mL/分の一定速度で400mMのリン酸ナトリウム、200mMのNaCl、pH6.8移動相を流れるAgilent1100 HPLCシステム(Agilent,Stockport,U.K.)を使用して、Supelco TSKgel(登録商標)G3000 SWXLサイズ排除カラム(Tosoh,Reading,U.K.)に注入した。ダイオードアレイ検出器は、カラム及び210nm及び280nmでのUV/vis吸収が記録された後の流れに沿って接続された。得られたトレースをChemstationソフトウェア(Agilent,Stockport,U.K.)を使用して統合し、続いて、ChromView(商標)ソフトウェアを使用して分析した。試料純度は、メインピークよりも高い分子量を有するピークの総面積%とメインピークよりも低い分子量を有するピークの総面積%と比較して、メインピークの面積%の分類によって記録された。
液体クロマトグラフィー質量分析
質量分析を使用して、試料の同一性を確認した。N結合グリコシル化を除去するため、5%のグリセロール中の10μlの80μg/mLのPNGase Fを50μLの抗体試料(0.2~2mg/mLの濃度範囲内)に添加し、混合物を30℃で一晩インキュベートした。MS分析の直前に、5μLの0.5MのDTTを各試料に添加した。Agilent1200 HPLCシステム(Agilent Technologies,Stockport,U.K.)を使用して、3~5μgの試料を、逆相ガードカラムに注入し、0.1%のギ酸塩、5%アセトニトリルで洗浄した後、試料を0.1%のギ酸塩、90%のアセトニトリルで0.5mL/分の流量で溶出させた。溶出液は、MassHunterソフトウェア(Agilent Technologies)を実行しているPCから制御された6224 Accurate-Mass TOF LC/MS質量分析計(Agilent Technologies)に向けられた。試料の質量を、MassHunterを使用して電荷エンベロープのデコンボリューションにより決定した。
C1q結合
抗体構築物のヒトC1qへの結合を、ELISAによって評価した。試験抗体構築物を、PBS中に溶解した10μg/mlの試験抗体を1ウェル当たり100μl添加することによって、96ウェル平底Nunc Maxisorp(登録商標)プレート(Invitrogen,Paisley,U.K.)のウェル上にコーティングした。プレートを、密封し、4℃で16時間インキュベートした。プレートを、0.05%(v/v)のTween(登録商標)20を含有する300μlのPBSで3回洗浄した。次いで、プレート表面を、ウェルごとに200μlの1%(w/v)ウシ血清アルブミンの添加によってブロッキングした。プレートを、周囲温度で1時間インキュベートし、前述のように洗浄した。組換えヒトC1q(C1740、Sigma Aldrich,Gillingham,U.K.)を、最終アッセイ濃度まで、50mMの炭酸塩/重炭酸塩緩衝液(C3041、Sigma Aldrich)で希釈し、1ウェル当たり100μl添加した。試料を周囲温度で2時間インキュベートし、プレートを前述のように洗浄した。次いで、PBSで2μg/mlまで希釈した100μlのヒツジ抗ヒトC1q-HRP(Ab46191、AbCam,Cambridge,U.K.)をウェルごとに添加し、試料を周囲温度で1時間インキュベートし、次いで、プレートを前と同様に洗浄した。検出のために、1ウェル当たり100μlのSureblue(商標)TMB(52-00-01、Seracare,Milford,U.S.A.)を添加し、試料を、周囲温度で20分間撹拌しながらインキュベートした。100μlの1MのHClの各ウェルへの添加によって、反応を停止させた。次いで、M5e SpectraMax(登録商標)プレートリーダー(Molecular Devices,Wokingham,U.K.)を使用して、各試料ウェルの吸光度を450nmで測定した。各抗体バリアント7C1q濃度について、2μg/mL~6ng/mLのハーフログステップとno C1q対照とを二重に試験した。データを、Prism(GraphPad,San Diego,U.S.A.)を使用して、分析した。結合曲線を、吸光度及び対数変換C1q濃度の4パラメータ非線形回帰モデルを使用して、適合させた。結合が閾値吸光度を超えたC1qの濃度を、適合曲線から補間した。
実施例1:インシリコ予測ツールで識別された安定性変異
IgG1 Fcに結合したFcγRIIbの三次元構造を使用して、単一の変異を、CH2ドメイン内の各位置、及びCH2ドメインの2つのシェル内にあるCH3ドメイン内の特定の位置でインシリコで作製した。第1のシェル残基は、CH2ドメインと直接相互作用する残基であり、第2のシェル残基は、少なくとも1つの第1のシェル残基と相互作用する残基である。プロリンまたはシステインを除く全ての可能なアミノ酸との置換を、各位置で行った。Fcの熱安定性を強化する特定された変異は、安定性強化変異と称される。
まず、安定性強化変異のFcγRIIbに対する選択的なFcバリアントとの関連を調べた。FcγRIIbのIgG Fcへの結合は不斉複合体をもたらすため、Fcの両方の鎖についてのインシリコでの安定性を改善した変異のみを試験のために選択して、安定性変異が、確実にFcγRIIbについて選択的なバリアント、ならびに他の抗体治療薬と適合するようにした。
インシリコで生成された全てのモデルを、インシリコ変異誘発及びインハウスソフトウェアツールによるパッキングモデリングを含む複数の分子モデリングツールを使用して分析した。全てのモデルを、フォールディング及び複合体形成のための知識ベース及び物理ベースの可能性、ならびに静電学、溶媒スクリーニング、Lennard-Jones及び疎水性相互作用を組み合わせたエネルギー寄与を含む、複数の因子に基づいて、スコア付け及びランク付けした。
結果をさらにフィルタリングして、好ましくは以下の特徴を有する最良の安定性強化変異を選択した。
●溶剤にさらされていない(30%未満の溶媒接触可能表面積(SASA)が好ましく、50%未満が受け入れられる)
●FcγR界面から離れている
●FcRn結合に悪影響を与えることが知られていない
●C1q結合に悪影響を与えることが知られていない
●N297位でのFcのN-グリコシル化には影響しない。
上記のプロセスにより、可能性のある安定性強化変異として、変異A287F、T289W、A339W、A339Q、A378W及びM428Fが特定された。トラスツズマブの6つのバリアント(骨格1)を、各々が上記の特定された変異の1つを含むように、一般的な方法に記載されているように構築した。各バリアントを、一般的な方法に記載されているように、FcγRIIa、FcγRIIb及びFcRnについての発現、凝集、熱安定性及び結合親和性について評価した。具体的には、凝集を分析的SECによって評価し、熱安定性をDSC(プロトコル2)及びDSF(プロトコル1)によって評価し、FcγRIIa及びFcγRIIb結合をBiacore結合(プロトコル2)によって評価し、FcRn結合をプロトコル1によって評価した。結果を、表1.1及び表1.2に示す。
Figure 2023526114000006
Figure 2023526114000007
変異A287F及びM428Fを選択し、以下の基準に基づいてさらに評価した:
●点変異に対する2℃を超えるDSCによるTの増加
●FcγRIIb及びFcγRIIa結合に関しての野生型様特性の保持(WT値±30%)
●FcRnへの結合の保持(WTに対するKにおける2倍未満の差)
●分析SECによる95%を超える単量体含有量。
変異A287Fによる安定化は、エネルギー的に好ましく、W277位とのスタッキングΠ-Π相互作用の生成、及びW277とS304との間の水素結合の埋め込みから生じる可能性が高い。したがって、芳香族性及び疎水性の点で類似の特性を有するアミノ酸とのこれらの位置における交互の変異は、安定性を増加させ、かつ安定性を強化する変異であると予測される。これらには、変異A287Y、A287W及びA287H、ならびにA287Mが含まれる。後者の変異は、水素結合を埋め込むことが予測されるが、Π-Πスタッキング相互作用の損失に起因して、より低い安定化をもたらす可能性が高い。
図1Bは、IgG Fc領域におけるA287位及びM428位を示す。
実施例2:バイオインフォマティクス解析により特定された安定性変異
複数の生物由来の配列及びIgGのサブタイプ(Uniprotから抽出された59個の非冗長配列)をClustalXとアラインメントして(Larkin,et al.,2007,Bioinformatics,23:2947-2948)、フォールディングのために保存されるか、または置換され得る残基から機能する残基を分化させた。全てのIgGにわたるいくつかの配列同一性を有する非表面曝露位置を、他の種またはサブタイプに見出される代替の共通残基(複数可)とともに特定した。選択された位置(複数可)での相対SASAに基づく追加のフィルタリングを含めて、免疫原性のリスクを低減させた。
結果をフィルタリングして、好ましくは、以下の特徴を有する最良の安定性強化変異を選択した。
●溶剤にさらされていない(30%未満の溶媒接触可能表面積(SASA)が好ましく、50%未満が受け入れられる)
●部分的に保存されている(全てのCH IgGにわたる配列同一性は85%未満が好ましく、95%未満が受け入れられる)
●FcγR界面から離れている
●FcRn結合に悪影響を与えることが知られていない
●C1q結合に悪影響を与えることが知られていない
●N297位でのFcのN-グリコシル化には影響しない。
マウスIgG2aに見られるアミノ酸置換は、CH2ドメインTがマウスIgG2a(T=約80℃)においてヒトIgG1(T=72℃)よりも高いため、他の種よりも好ましかった。他の種についてのCH2ドメインの安定性は、考慮されなかった。
上記アプローチは、可能性のある安定性強化変異として、変異L242I、T250V、F275I、V279I、V308I、Y319F、P247I、M252S、L309Q、L314M及びK334Rを特定した。トラスツズマブ(骨格1)の11個のバリアントが、各々が特定された変異のうちの1つを含むように一般的な方法に記載されているように構築した。各バリアントを、実施例1に記載されるように、哺乳動物細胞における発現、精製後の凝集、熱安定性、ならびにFcγRIIb、FcγRIIa及びFcRnについての結合親和性について評価した。結果を、表2.1及び表2.2に示す。
Figure 2023526114000008
Figure 2023526114000009
変異T250V、L309Q及びV308Iを、以下の基準に基づいて選択し、さらなる評価を行った:
●点変異に対する2℃を超えるDSCによるTの増加
●FcγRIIb及びFcγRIIa結合に関しての野生型様特性の保持(WT値±30%)
●FcRnへの結合の保持(WT未満に対するKにおける2倍の差)
●95%を超える分析SECによる単量体含有量。
T250I、T250AまたはL309Tなどのこれらの位置における交互変異は、サイズ及び疎水性の点で同様のアミノ酸特性により安定性を増加させることが予測される。アミノ酸サイズ(V対IまたはA)及び側鎖分岐(Cβ分岐残基対非分岐残基)の小さな差異は、安定化効果における小さな変動をもたらし得る。
図1Bは、IgG Fc領域におけるT250位の場所を示す。
実施例3:非天然ジスルフィド結合を含む安定性変異
IgG1 Fcに結合したFcγRIIbの三次元構造を使用して、ジスルフィド結合が導入され得る場所を決定するために、CH2ドメインの全てのCα及びCβ原子対間の距離を計算し、Fcの両方の鎖について平均化した。フィルタリングは、Cα-Cα対についての最大距離7.5Å及びCβ-Cβ対についての最大距離5.0Åに基づいていた。
FcγRIIbのIgG Fcへの結合は、非対称複合体をもたらすため、Fcの両方の鎖のためのインシリコでの安定性を改善した変異のみが、試験のために選択された。この選択により、FcγRIIb及び非結合Fcについての選択的なバリアントと適合する変異に安定性変異が付与される。
全ての可能な人工ジスルフィド結合についてインシリコモデルが生成され、最低エネルギーをもつものを決定するためにエネルギーが最小化された。モデルが、目視検査され、両方の鎖におけるシステイン残基の相対的な溶媒接触可能表面積(SASA)、野生型構造に対する主鎖、骨格及び側鎖の平均二乗偏差(RMSD)、親和性及び安定性のための知識ベース及び物理ベースの可能性における改善、立体衝突及び二硫化物ひずみエネルギー(DSE)スコアに基づいて、スコア付けされた(Katz&Kossiakoff,1986,J Biol Chem,261(33):15480-15485)。
結果をフィルタリングして、好ましくは、以下の特徴を有する最良の安定性強化変異を選択した。
●溶媒にさらされていない(30%を超える相対SASAが好ましく、50%未満が受け入れられる)
●FcγR界面から離れている
●FcRn結合に悪影響を与えることが知られていない
●C1q結合に悪影響を与えることが知られていない
●N297位でのFcのN-グリコシル化には影響しない
●低い骨格及び側鎖RMSD(骨格についてはRMSD<0.5Å、側鎖についてはRMSD<1.0Å)
●安定性のための同等のまたは改善された知識ベース及び物理ベースの可能性
●低いDSEスコア(30(DSE)未満が好ましく、50未満が受け入れられる)。
上記のプロセスによって、可能性のある安定性強化変異として、変異対D249C-P257C、F275C-S304C、V263C-V302C、L242C-I336C、T289C-S304C、F243C-T260C、V266C-Y300C、V240C-I332C及びW277C-V284Cが特定された。トラスツズマブ(骨格1)の13個のバリアントを一般的な方法に記載されるように構築し、各々がジスルフィド結合の導入を通して安定性を改善させるために文献に以前に報告された、特定された複数の変異対のうちの1つまたは1つの変異対を含むようにした(Jacobsen,et al,2017,J Biol Chem,292(5):1865-1875、Gong,et al,2009,J Biol Chem,284(21):14203-14210、Gong,et al,2011,J Biol Chem,286(31):27288-27293)。各バリアントを、実施例1に記載されるFcγRIIb、FcγRIIa及びFcRnについての哺乳動物細胞における発現、凝集、熱安定性、及び結合親和性について評価した。FcRn受容体についての親和性をまた、成功したバリアントのサブセットにおいて評価した。結果を、表3.1及び表3.2に示す。
Figure 2023526114000010
Figure 2023526114000011
特定されたジスルフィド結合のうち、L242C-I336Cのみを選択し、以下の基準に基づいてさらに評価した:
●単一の対の変異に対する2℃を超えるDSCによるTの増加
●FcγRIIb及びFcγRIIa結合に関しての野生型様特性の保持(WT値±30%)
●95%を超える分析SECによる単量体含有量。
変異対当該技術分野で既知の変異対L242C-K334C、A287C-L306C及びV259C-L306Cは、以下の基準を満たした。
●単一の対の変異に対する2℃を超えるDSCによるTの増加
●FcγRIIb及びFcγRIIa結合に関しての野生型様特性の保持(WT値±30%)
ジスルフィド結合V240C-I332Cは、Tmを改善したが、FcγR結合を部分的に抑制した。このジスルフィド結合は、結合の抑制が所望されるか、または1つ以上のFcγRへの結合を促進する他の変異を含むことによって結合の抑制が緩和され得る特定の状況において依然として有用であり得ると考えられる。
実施例4:FcγRIIB選択的Fcバリアントの安定化
実施例1~3に記載されるトラスツズマブホモ二量体において特定された6つの最良の個体変異(A287F、M428F、T250V、L309Q、L242C_I336C及びV308I)を、2つの異なるヘテロ二量体トラスツズマブFcγRIIb選択的バリアント(骨格8及び骨格9)に移行させ、他のCH2ドメイン変異との適合性を評価した。さらに、2つまたは3つの安定性強化変異(A287F/M428F、A287F/T250V、M428F/T250V、A287F/M428F/T250V、T250V/L309Q及びL242C_I336C/V308I)の6つの組み合わせを試験して、加算的または相乗的効果によって安定性の増加が得られるかどうかを評価した。
一群武装化抗体フォーマットにおけるトラスツズマブの24個のバリアントを、一般的な方法に記載されるように構築した。各バリアントは、表4.2~4.4に示される安定性強化変異とともに、2組のFcγRIIb選択性強化変異(骨格8または骨格9、表4.1を参照)のうちの1組を含んだ。各バリアントを、実施例1に記載されるように、FcγRIIb、FcγRIIa及びFcγRIについての発現、凝集、熱安定性及び結合親和性について評価した。結果を、表4.2~4.4に示す。
Figure 2023526114000012
第1の層のフィルタリングを、分析的SECプロファイルに基づいて精製後に行った適。クロマトグラムの曲線下の面積を、存在する全てのシグナルについて統合し、バリアント試料中に存在する各種の割合に変換した。分析的SECプロファイルで観察される高分子量(HMW)種の割合は、発現のために単一のDNA比を使用して各バリアントについて形成されるフルサイズ抗体の存在量を示す。単一のDNA比での発現時に20%未満のHMW種を有するバリアントは、成功したとみなされた。3つのバリアントのみが、20%を超えるHMW種を有した(表4.2を参照)ので、さらなる特徴付けには含めなかった。低分子量(LMW)種は、Tmの決定、またはいずれかのFcγRについての結合親和性に干渉しない、誤対合Fcホモ二量体の存在を示す。
Figure 2023526114000013
Figure 2023526114000014
Figure 2023526114000015
変異を、以下の基準に基づいて評価した。
●単一の点変異についてのDSF>1℃によるTの増加、及び組み合わせた場合の最小限の添加物の効果
●FcγRIIb、FcγRIIa及びFcγRI結合に関しての野生型様特性の保持(親バリアントと比較して2倍未満の差)
●分析SECによる75%を超えるヘテロ二量体含有量。
上記に基づく最も有効な単一変異は、A287F(+3.5-4℃)、T250V(+5.5℃)、L309Q(+2-2.5℃)及びM428F(+2℃)であった。単一の変異としてのV308Iはまた、Tmのわずかな増加(+0.5~1.0℃)をもたらした。
加算的寄与または相乗的寄与を有する安定性強化設計には、A287F/M428F(+6.5-7℃)、A287F/T250V(+9.0-9.5℃)、M428F/T250V(+8.5℃)及びT250V/L309Q(+8.5-9.0℃)が含まれる。A287F/M428F、M428/T250V及びT250V/L309Qの組み合わせは、加算的効果よりもわずかに高いTの増加をもたらし、A287F/T250Vは、加算的効果をもたらした。組み合わせL242C_I336C/V308Iはまた、L242C_I336C変異単独に比べて、Tmにおけるわずかな増加をもたらした。
実施例5:追加のフルサイズ抗体試験系の安定化
安定性強化設計のうちの3つを、3つのFcγRIIb選択性強化設計と各々組み合わせ、3つの異なるフルサイズ抗体系に移し、抗体間で設計のトランスファラビリティーを評価した。該設計物を、一般的な方法に記載されるようにヘテロ二量体トラスツズマブ、抗CD19及び抗CD40抗体(骨格3~5)にクローニングした。3つのFcγRIIb選択性強化設計を、表5.1に示し、3つの選択された安定性強化設計を、表5.2~5.5に示す。
Figure 2023526114000016
各バリアントを、実施例1に記載されるように、哺乳類細胞における発現、精製後の凝集及び熱安定性について評価した。トラスツズマブベースのバリアントについてのFcγRI、FcγRIIb、FcγRIIa及びFcγRIIIaについての結合親和性を、実施例1に記載されるように、評価した。トラスツズマブベースのバリアントについてのC1q結合を、一般的な方法に記載されるように、評価した。熱安定性を、複数の抗体にわたるDSFによって及びトラスツズマブベースのバリアントについてのDSCによって、評価した。結果を、表5.2~5.6に示す。
分析SECプロファイルを、一般方法に記載されるように回収し、フルサイズ抗体種については以下の修飾を行った。クロマトグラムの曲線下の面積を、存在する全てのシグナルについて統合し、各種の割合に変換した。aSECプロファイルにおいて観察される高分子量(HMW)種の割合は、安定性強化変異の導入時に各バリアントについて形成される凝集体の量を示し、各抗体系にわたって親バリアントと比較した。複数の抗体にわたる親様特性(+/-5%のHMW種)を有するバリアントが好ましかった。低分子量(LMW)種は、ハーフ抗体をもたらす誤対合ヘテロ二量体重鎖の存在を示し、発現中の非最適化DNA比の使用によるものである。その結果を、表5.2に示す。
LC-MSによる純度を、一般的な方法に記載されているように評価して、モノマー含有量が主に所望のヘテロ二量体種であることを確認した。半身A及び半身Bの累積割合は、発現に使用される所与のDNA比についての各試料中に存在する誤対ホモ二量体の量を示す。安定性強化変異は対称的であるため、CH2ドメインTm、FcRn及びC1q結合は、誤対合種の存在によって影響を受けない。しかしながら、誤対合ホモ二量体の高い含有量は、SPRによって観察されるFcγRIIbの選択性に影響を与えるであろう。ほとんどの試料は、10%未満の誤対合ホモ二量体を示した。表5.3を参照されたい。
Figure 2023526114000017
Figure 2023526114000018
Figure 2023526114000019
Figure 2023526114000020
Figure 2023526114000021
試験した3つの安定性強化設計(A287F/T250V、M428F/T250V及びA287F/M428F)は全て、評価した他の全ての態様において親様特性を維持しながら、6~10℃の熱安定性を増加させることに成功した。具体的には、設計は、以下の基準を満たしていた。
●3つ全ての抗体にわたる、DSF>5℃のTにおける増加。
●FcγRI、FcγRIIaH、FcγRIIaR、FcγRIIb、FcγRIIIa及びC1q結合に関して野生型様特性の保持(親バリアントとの2倍未満の差)。
●LC-MSによる親バリアントと同等以上のヘテロ二量体含有量。
●aSECによる親バリアントに類似した、またはそれよりも優れたモノマー含有量。
実施例6:安定性強化設計を含むフルサイズ抗体のFcRn結合
安定性強化設計のうちの3つは各々、3つのFcγRIIb選択性強化設計と組み合わせ、実施例5に記載されるように、3つの異なるフルサイズ抗体系(トラスツズマブ、抗CD19抗体、及び抗CD40抗体;骨格3~5)に移行した。得られたバリアントを、一般的な方法(骨格3/5についてのプロトコル2及び骨格3~5についてのプロトコル3)に記載されるように、FcRn結合について評価した。その結果を、表6.1に示す。
Figure 2023526114000022
試験した全ての抗体について、安定性強化設計は、それぞれの親バリアント(親バリアントのK<3倍)と比較して、FcRn結合を変化させず、設計が異なる抗体にわたって移行可能であることが示された。
実施例7:安定性損失を引き起こす他の変異との安定性強化設計の適合性
最良の安定性強化設計のうちの3つ(A287F/T250V、M428F/T250V及びA287F/M428F)の移行性及び適合性をさらに評価するために、これらの設計を各々、以下の3組のCH2またはCH3変異(骨格3、6及び7;一般的な方法を参照されたい)と組み合わせた:
●骨格3:ヘテロ二量体Fc形成を促進するためのCH3ドメインにおける不斉変異。
●骨格6:アグリコシル化抗体を産生し、抗体のエフェクター機能を抑止するN297A変異。N297A変異の導入は、野生型抗体と比較して、バリアント抗体の熱安定性を10℃低減させる。
●骨格7:FcγRIIIa受容体についての抗体の親和性を増加させるS239D/I332E変異。S239D/I332E変異の導入は、野生型抗体と比較して、バリアント抗体の熱安定性を20℃低減させる。
それぞれの親バリアント及び変異体を、一般的な方法に記載されるように、トラスツズマブ骨格にクローニングした。各バリアントを、哺乳類細胞(プロトコル1)における発現、熱安定性、FcγRI、FcγRIIb、FcγRIIa及びFcγRIIIaについての結合親和性(プロトコル1)、ならびに一般的な方法に記載されるFcRn結合(プロトコル4)について、評価した。熱安定性は、DSC(プロトコル1)によって評価した。結果を、表7.1~7.4及び図2A~Cに示す。
Figure 2023526114000023
Figure 2023526114000024
Figure 2023526114000025
Figure 2023526114000026
試験した3つの安定性強化設計(A287F/T250V、M428F/T250V及びA287F/M428F)は全て、評価した他の全ての態様において親様特性を維持しながら、試験した骨格の各々の熱安定性を6~10℃増加させることに成功した。具体的には、3つの設計は全て、以下の基準を満たしていた。
●3つの骨格全てにわたるDSC>5℃のTにおける増加
●FcγRI、FcγRIIaH、FcγRIIaR、FcγRIIb、FcγRIIIa及びFcRn結合に関して野生型様特性の保持(親バリアントとの2倍未満の差)。
したがって、安定性強化設計は、抗体の機能的及び生物学的特性を変化させるCH2ドメイン及びCH3ドメインにおける変異と適合し、かつ安定化させることができる。
上記のCH2変異またはCH3変異のセット(骨格3、6及び7によって例示される)は、現在臨床的に評価されている療法分子に含まれる変異の例である(Saxena et al.,2016,Front Immunol,7:580)。knobs-into-holes(Ridgeway et al.,1996,Protein Eng.,9:617-621)、静電ステアリング(Gunasekaran et al,2010,JBC,285,19637-19646)、または当該技術分野で既知である他のものなどの、抗体機能及び安定性に影響を与える他のCH2及び/またはCH3変異も、安定性強化変異と適合し、かつそれによって安定化されることが予想される。
実施例8:他の免疫グロブリンクラスとの安定性強化設計の互換性
IgG、IgA、IgD、IgE及びIgM定常ドメインの配列及びトポロジーを評価し、上記で識別された安定性強化設計のうちの最も効果的なものが、他の免疫グロブリン(Ig)クラス及び/またはサブタイプに移行され得るかどうかを判定した。
種々のIgクラスは、異なる機能及び生物学的活性を有するが、共通のトポロジーを共有する。IgG、IgA、IgD、IgE及びIgMは全て、重鎖及び軽鎖からなる。IgG、IgA、及びIgD定常領域は、共通のIgフォールドを共有するCH1、CH2及びCH3ドメインを含有し、IgGの安定性を増加させる変異は、IgA及びIgDクラスへ移行可能であり得ることを示唆する。IgE及びIgMは、他のIgクラスとは異なり、CH1、CH2、CH3及びCH4ドメインからなる。配列同一性に基づいて、IgM及びIgEのCH3及びCH4ドメインは、他のIgクラスのCH2及びCH3ドメインと等価であるとみなされ得る(図3A及び3Bを参照されたい)。タンパク質データバンク(PDB)(それぞれPDB ID:2QEJ、2WAH及び6KXS)から得られたIgG、IgA及びIgM Igドメインの構造のレビューは、構造的観点から、これらのドメインが、類似のフォールディングを有することを示し、IgGの安定性を増加させる変異は、IgMクラス、及びIgEクラスに移行可能であり得ることを示唆する。
CH2ドメイン及びCH3ドメイン内のT250V、A287F、及びM428F変異の各々の特異的相互作用のさらなる分析により、安定性強化変異が他のIgクラスへ移行可能であるはずだという命題がさらに指示された。
残基T250は、CH2ドメインのFcRn結合部位に近く、かつCH3ドメインに空間的に近いIgG1の螺旋領域内に位置する。スレオニン残基は、この位置で全てのIgGサブタイプにわたって保存され、IgMにおける同様の極性残基(セリン)、ならびにIgA、IgD及びIgEにおける荷電残基(アスパラギン酸)によって置換される(図3Aを参照されたい)。IgA、IgM及びIgGにおけるこの領域の構造解析は、IgA及びIgMにおける螺旋が、IgG1(PDB ID:2WAH)におけるよりも、埋め込みが少ない(PDB ID:2QEJ及び6KXS)ことを示した。したがって、他のIgクラスにおいてT250に相当する位置での荷電残基または極性残基のより小さな疎水性残基への変異は、第2の螺旋(309~316)に対する第1の螺旋(246~254)の充填及びCH2-CH3ドメインの接合を改善し、増加した埋め込み界面を有するよりコンパクトな構造をもたらし得る。これは、次いで、CH2ドメインを熱変性に対して安定化させ得る。したがって、安定性強化変異T250Vは、IgA、IgD及びIgG抗体のCH2ドメイン、ならびにIgE及びIgM抗体のCH3ドメインの安定性を増加させるのに有効であると予測される。
残基A287は、IgG1のCH2ドメインのIgフォールドの外側の露出したβ鎖領域に位置する。アラニン残基は、IgGサブタイプ及びIgAの全てにわたって287位に保存されるが、IgD、IgE、及びIgM中のバリン、ヒスチジン及びスレオニンなどの残基によって置換される。しかしながら、この位置に存在する異なる残基にかかわらず、局所環境及びフォールドは、構造が利用可能である全てのIgクラスにわたって類似している。実施例1に記載されるように、IgG1における変異A287Fによる安定化は、エネルギー的に好ましく、W277位と積み重ねられたΠ-Π相互作用の生成、ならびにW277及びS304位間の水素結合の埋め込みから生じる可能性が高い。残基W277は、全てのIgクラスにわたって保存され、残基S304は、IgMを除く全てのIgにわたって保存される(図3A及び図3Bを参照されたい)。したがって、A287F変異はまた、IgA、IgD及びIgG抗体のCH2ドメイン、ならびにIgE及びIgM抗体のCH3ドメインの安定性を増加させるのに有効であると予測される。
残基M428は、IgG1のCH3ドメインの露出したβ鎖領域に位置し、CH2ドメインとの界面に空間的に位置する。428位におけるメチオニンは、全てのIgGサブタイプにわたって保存されているが、他のIgクラスは、グリシン、バリン、アラニン、またはセリンなどのより小さい残基をこの位置に含有する(図3A及び3Bを参照されたい)。この位置におけるフェニルアラニンなどのより大きい残基の導入は、CH2ドメインからの螺旋に対して疎水性側鎖を埋め込み、CH2-CH3ドメインの接合部における埋め込み表面の増加がもたらされ、柔軟性が低下し、CH2ドメインの安定性を増加させる可能性が高い。IgA及びIgMにおける局所構造環境は、この領域におけるIgGと類似しており、フェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンなどの大きい芳香族残基の導入は、周囲の芳香族残基とさらに積み重ねられたΠ-Π相互作用を形成することが予想される。したがって、変異M428Fは、IgA、IgD及びIgG抗体のCH2ドメイン、ならびにIgE及びIgM抗体のCH3ドメインの安定性を増加させることも予測される。
実施例4~7に示されるように、T250V、A287F及びM428Fの安定性強化変異は、対として適合性があり、追加の安定化効果をもたらすように組み合わせることができる。これらの安定性強化設計(A287F/T250V、M428F/T250V及びA287F/M428F)については、他のIgクラスにわたって、同様の適合性が期待される。
実施例9:ストレス条件下での凝集傾向に対する安定性変異の影響
安定性強化変異の組み込みによって達成された増加した熱安定性が抗体の凝集傾向を低減させ得るかどうかを評価するために、T250V/A287F安定性強化設計の有無にかかわらず、ある程度の熱安定性を有するバリアントFc領域を有する15個の抗体を調製した。次いで、得られた抗体バリアントでストレス実験を行い、中性または弱酸性条件下で40℃で2週間のインキュベーションの後に凝集割合の変化について評価した。
各抗体バリアントは、骨格3に基づいており、表9.1に示されるように、CH2ドメインにおける変異の様々な組み合わせを含んでいた。それぞれの親バリアント及び安定性変異体を、一般的な方法に記載されるように骨格3にクローニングした。各バリアントを、哺乳動物細胞内での発現(プロトコル2)、サイズ排除クロマトグラフィーによる凝集、及びDSFによる熱安定性について評価した(プロトコル2)。結果を、表9.1及び9.2に示す。
その後、各バリアントを10mg/mlに正規化し、酢酸緩衝液またはリン酸塩系緩衝液のいずれかに透析して、それぞれ弱酸性または中性条件下で試験し、4℃または40℃のいずれかで2週間インキュベートした。次いで、バリアントを、サイズ排除クロマトグラフィーによって、凝集体、モノマー及び断片の割合について各々評価し、4℃及び40℃の試料を比較した。結果を表9.3及び図4に示す。
Figure 2023526114000027
Figure 2023526114000028
Mimoto, et al., 2013, Prot. Eng. Des. Sel., 26:589-598
Chu, et al., 2008, Mol. Immunol., 45:3926-3933
Lazar, et al., 2006, PNAS, 103:4005-4010
「テンプレート1.1」は、鎖Bの325~331位のアミノ酸残基の、配列:STWFIGGYAT[配列番号3]との置換を示す。
「テンプレート1.2」は、鎖Bの325~331位のアミノ酸残基の、配列:STWFDKGYAT[配列番号5]との置換を示す。
「テンプレート7.1」は、鎖Bの325~331位のアミノ酸残基の、配列:GLDHRGKGYV[配列番号4]との置換を示す。
Figure 2023526114000029
Figure 2023526114000030
表9.2から分かるように、T250V/A287F安定性強化変異の組み込みは、15個のバリアントの熱安定性を7.7℃~10.6℃の間で正常に増加させた。したがって、これらの安定性強化変異は、抗体構築物の開始安定性に依存しないCH2安定性を増加させることができる。
表9.3の結果は、酸性条件下40℃での2週間のインキュベーション後に、最も低いCH2 Tmを有するバリアントのうちの3つ(バリアントv31186、v32210及びv32242)が、分析SECにより高レベルの観察された凝集を示したことを示している。これらのバリアントに安定性強化T250V/A287F変異を添加したとき、バリアントのTmが増加し、ストレス実験後に最小量のHMW種が検出された。これらのバリアントについて、CH2 Tmと弱酸性条件下で観察された凝集との間に強くかつほぼ指数関数的な相関があることが、図4を見ても分かる。60℃を超える初期(非安定化)CH2 Tmを有するバリアントについては、高分子量種における変化がほとんど観察されなかった(2%未満)。中性条件下でのインキュベーション後に観察される高分子量種における小さな変化は、CH2 Tmとは無関係に見える。
全体として、これらの結果は、一般に、安定化変異、具体的には、T250V/A287Fの組み込みが、弱酸性条件下での凝集傾向を低下させ得ることを示している。
本明細書で参照される全ての特許、特許出願、刊行物及びデータベースエントリーの開示は、そのような個々の特許、特許出願、刊行物及びデータベースエントリーの各々が、参照によって組み込まれると具体的かつ個別に示されている場合と同程度に、その全体が参照によって特に本明細書に組み込まれる。
当業者には明らかであると思われる本明細書に記載される特定の実施形態の改変は、以下の特許請求の範囲内に含まれることを意図する。

Claims (59)

  1. 250位における変異であって、前記変異が、250位におけるアミノ酸のAla、Ile、またはValとの置換である、前記250位における変異、
    287位における変異であって、前記変異が、287位におけるアミノ酸のPhe、His、Met、Trp、またはTyrとの置換である、前記287位における変異、
    308位における変異であって、前記変異が、308位におけるアミノ酸のIleとの置換である、前記308位における変異、
    309位における変異であって、前記変異が、309位におけるアミノ酸のGlnまたはThrとの置換である、前記309位における変異、
    428位における変異であって、前記変異が、428位におけるアミノ酸のPheとの置換である、前記428位における変異、ならびに
    242位及び336位における一対の変異であって、両方の変異が、Cysとの置換である、前記242位及び336位における一対の変異
    から選択される1つ以上の安定性強化アミノ酸変異を含む、Fcバリアントであって、
    前記Fcバリアントが、前述の1つ以上の安定性強化アミノ酸変異を含まない親Fcと比較して、増加したCH2ドメイン融解温度(Tm)を有し、
    アミノ酸の番号付けが、EUインデックスによる、
    前記Fcバリアント。
  2. Phe、His、Met、Trp、またはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、及びGlnまたはThrとの置換である309位における変異、から選択される単一の安定性強化アミノ酸変異を含む、請求項1に記載のFcバリアント。
  3. Ala、Ile、またはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、Trp、またはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnまたはThrとの置換である309位における変異、Pheとの置換である428位における変異、ならびに両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異、から選択される2つ以上の安定性強化アミノ酸変異を含む、請求項1に記載のFcバリアント。
  4. 前記Fcバリアントが、3つ以上の安定性強化アミノ酸変異を含み、前記変異が、両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異と、Ala、Ile、またはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、Trp、またはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnまたはThrとの置換である309位における変異、及びPheとの置換である428位における変異、から選択される変異とを含む、請求項1に記載のFcバリアント。
  5. 1~3つの安定性強化アミノ酸変異を含むFcバリアントであって、前記変異が、
    (a)Phe、His、Met、Trp、もしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、及びGlnもしくはThrとの置換である309位における変異から選択される、1つ以上の変異、または
    (b)Ala、Ile、もしくはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、Trp、もしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnもしくはThrとの置換である309位における変異、Pheとの置換である428位における変異、ならびに両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異、から選択される、2つ以上の変異、または
    (c)両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異と、Ala、Ile、もしくはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、Trp、もしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnもしくはThrとの置換である309位における変異、及びPheとの置換である428位における変異、から選択される変異とを含む、3つ以上の変異
    を含み、
    前記Fcバリアントが、前述の1つ以上の安定性強化アミノ酸変異を含まない親Fcと比較して、増加したCH2ドメイン融解温度(Tm)を有し、
    アミノ酸の番号付けが、EUインデックスによる、
    前記Fcバリアント。
  6. Phe、His、Met、Trp、またはTyrとの置換である287位における変異を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のFcバリアント。
  7. 前記287位における変異が、Pheとの置換である、請求項6に記載のFcバリアント。
  8. Ileとの置換である308位における変異を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のFcバリアント。
  9. GlnまたはThrとの置換である309位における変異を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のFcバリアント。
  10. 前記309位における変異が、Glnとの置換である、請求項9に記載のFcバリアント。
  11. Ala、Ile、またはValとの置換である250位における変異、及びPhe、His、Met、Trp、またはTyrとの置換である287位における変異を含む、請求項1及び請求項3~5のいずれか1項に記載のFcバリアント。
  12. 前記250位における変異が、Valとの置換である、請求項11に記載のFcバリアント。
  13. 前記287位における変異が、Pheとの置換である、請求項11または12に記載のFcバリアント。
  14. Ala、Ile、またはValとの置換である250位における変異、及びGlnまたはThrとの置換である309位における変異を含む、請求項1及び請求項3~5のいずれか1項に記載のFcバリアント。
  15. 前記250位における変異が、Valとの置換である、請求項14に記載のFcバリアント。
  16. 前記309位における変異が、Glnとの置換である、請求項14または15に記載のFcバリアント。
  17. Ala、Ile、またはValとの置換である250位における変異、及びPheとの置換である428位における変異を含む、請求項1及び請求項3~5のいずれか1項に記載のFcバリアント。
  18. 前記250位における変異が、Valとの置換である、請求項17に記載のFcバリアント。
  19. Phe、His、Met、Trp、またはTyrとの置換である287位における変異、及びPheとの置換である428位における変異を含む、請求項1及び請求項3~5のいずれか1項に記載のFcバリアント。
  20. 前記287位における変異が、Pheとの置換である、請求項19に記載のFcバリアント。
  21. 両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異を含む、請求項1及び請求項3~5のいずれか1項に記載のFcバリアント。
  22. 両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異、ならびにIleとの置換である308位における変異を含む、請求項1、4または5のいずれか1項に記載のFcバリアント。
  23. 前記Fcバリアントに含まれる安定性強化変異が、250V、287F、308I、309Q、428F、242C_336C、287F/428F、250V/287F、250V/309Q、250V/428F、及び242C_336C/308Iから選択される、請求項1または5に記載のFcバリアント。
  24. 前記Fcバリアントに含まれる安定性強化変異が、287F、308I、309Q、242C_336C、287F/428F、250V/287F、250V/309Q、250V/428F、及び242C_336C/308Iから選択される、請求項1または5に記載のFcバリアント。
  25. IgG、IgA、IgD、IgE、またはIgM Fcに基づく、請求項1~24のいずれか1項に記載のFcバリアント。
  26. ヒトIgG、IgA、IgD、IgE、またはIgM Fcに基づく、請求項25に記載のFcバリアント。
  27. IgG Fcに基づく、請求項1~24のいずれか1項に記載のFcバリアント。
  28. 前記IgG Fcが、IgG1 Fcである、請求項27に記載のFcバリアント。
  29. 前記IgG Fcが、ヒトIgG Fcである、請求項27または28に記載のFcバリアント。
  30. 前記親FCが、Fc領域の機能を改善する1つ以上のアミノ酸変異を含む、請求項1~29のいずれか1項に記載のFcバリアント。
  31. 前記親Fcが、
    前記Fc領域の機能を改善し、かつ対応する野生型FcのCH2ドメインTmを減少させる、1つ以上のアミノ酸変異
    を含む、請求項1~29のいずれか1項に記載のFcバリアント。
  32. 前記Fcバリアントの前記CH2ドメインTmが、前記親Fcと比較して、少なくとも0.5℃増加する、請求項1~31のいずれか1項に記載のFcバリアント。
  33. 前記Fcバリアントの前記CH2ドメインTmが、前記親Fcと比較して、少なくとも1.0℃、少なくとも2.0℃、または少なくとも3.0℃増加する、請求項32に記載のFcバリアント。
  34. 前記Fcバリアントの前記CH2ドメインTmが、前記親Fcと比較して、0.5℃~9.0℃増加する、請求項1~31のいずれか1項に記載のFcバリアント。
  35. 前記Fcバリアントの前記CH2ドメインTmが、前記親Fcと比較して、2.0℃~10.5℃増加する、請求項1~31のいずれか1項に記載のFcバリアント。
  36. 請求項1~35のいずれか1項に記載のFcバリアントと、前記Fcバリアントに融合または共有結合した1つ以上のタンパク質性部分とを含む、ポリペプチド。
  37. 前記1つ以上のタンパク質性部分が、抗原結合ドメイン、リガンド、受容体、受容体断片、サイトカイン、または抗原を含む、請求項36に記載のポリペプチド。
  38. 前記1つ以上のタンパク質性部分のうちの少なくとも1つが、抗原結合ドメインである、請求項37に記載のポリペプチド。
  39. 前記抗原結合ドメインが、FabまたはscFvである、請求項37に記載のポリペプチド。
  40. 抗体または抗原結合抗体断片である、請求項36~39のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  41. 治療用抗体または抗体断片である、請求項40に記載のポリペプチド。
  42. 請求項1~35のいずれか1項に記載のFcバリアントをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセット。
  43. 請求項36~41のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセット。
  44. 請求項1~35のいずれか1項に記載のFcバリアント、または請求項36~41のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む、ベクターまたはベクターのセット。
  45. 請求項1~35のいずれか1項に記載のFcバリアント、または請求項36~41のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
  46. 請求項1~35のいずれか1項に記載のFcバリアントを調製する方法であって、宿主細胞を、前記Fcバリアントをコードする1つ以上のポリヌクレオチドでトランスフェクトすることと、前記Fcバリアントの発現に好適な条件下で前記宿主細胞を培養することとを含む、前記方法。
  47. 請求項36~41のいずれか1項に記載のポリペプチドを調製する方法であって、宿主細胞を、前記ポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドでトランスフェクトすることと、前記ポリペプチドの発現に好適な条件下で前記宿主細胞を培養することとを含む、前記方法。
  48. 請求項1~35のいずれか1項に記載のFcバリアント、または請求項36~41のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む、薬学的組成物。
  49. FcのCH2ドメイン融解温度(Tm)を増加させる方法であって、親Fcと比較して増加したCH2ドメインTmを有するFcバリアントを提供するために前記親Fcに1つ以上の安定性強化アミノ酸変異を導入することを含み、前記変異が、
    250位における変異であって、前記変異が、250位におけるアミノ酸のAla、Ile、またはValとの置換である、前記250位における変異、
    287位における変異であって、前記変異が、287位におけるアミノ酸のPhe、His、Met、Trp、またはTyrとの置換である、前記287位における変異、
    308位における変異であって、前記変異が、308位におけるアミノ酸のIleとの置換である、前記308位における変異、
    309位における変異であって、前記変異が、309位におけるアミノ酸のGlnまたはThrとの置換である、前記309位における変異、
    428位における変異であって、前記変異が、428位におけるアミノ酸のPheとの置換である、前記428位における変異、ならびに
    242位及び336位における一対の変異であって、両方の変異が、Cysとの置換である、前記242位及び336位における一対の変異
    から選択され、
    アミノ酸の番号付けが、EUインデックスによる、
    前記方法。
  50. 前記親Fcに単一の安定性強化アミノ酸変異を導入することを含み、前記変異が、Phe、His、Met、TrpまたはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、及びGlnまたはThrとの置換である309位における変異から選択される、請求項49に記載の方法。
  51. 前記親Fcに2つ以上の安定性強化アミノ酸変異を導入することを含み、前記変異が、Ala、IleまたはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、TrpまたはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnまたはThrとの置換である309位における変異、Pheとの置換である428位における変異、ならびに両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異から選択される、請求項49に記載の方法。
  52. 前記親Fcに3つ以上の安定性強化アミノ酸変異を導入することを含み、前記変異が、両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異と、Ala、IleまたはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、TrpまたはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnまたはThrとの置換である309位における変異、及びPheとの置換である428位における変異、から選択される変異とを含む、請求項49に記載の方法。
  53. FcのCH2ドメイン融解温度(Tm)を増加させる方法であって、親Fcと比較して増加したCH2ドメインTmを有するFcバリアントを提供するために前記親Fcに1~3つの安定性強化アミノ酸変異を導入することを含み、前記変異が、
    (a)Phe、His、Met、TrpもしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、及びGlnもしくはThrとの置換である309位における変異から選択される、1つ以上の変異、または
    (b)Ala、IleもしくはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、TrpもしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnもしくはThrとの置換である309位における変異、Pheとの置換である428位における変異、ならびに両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異から選択される、2つ以上の変異、または
    (c)両方ともCysとの置換である242位及び336位における一対の変異と、Ala、Ile、もしくはValとの置換である250位における変異、Phe、His、Met、Trp、もしくはTyrとの置換である287位における変異、Ileとの置換である308位における変異、GlnもしくはThrとの置換である309位における変異、及びPheとの置換である428位における変異、から選択される変異とを含む、3つ以上の変異
    を含み、
    アミノ酸の番号付けが、EUインデックスによる、
    前記方法。
  54. 前記Fcバリアントの前記CH2ドメインTmが、親Fcと比較して少なくとも0.5℃増加する、請求項49~53のいずれか1項に記載の方法。
  55. 前記Fcバリアントの前記CH2ドメインTmが、親Fcと比較して少なくとも1.0℃、少なくとも2.0℃、または少なくとも3.0℃増加する、請求項54に記載の方法。
  56. 前記Fcバリアントの前記CH2ドメインTmが、親Fcと比較して0.5℃~9.0℃増加する、請求項49~53のいずれか1項に記載の方法。
  57. 前記Fcバリアントの前記CH2ドメインTmが、親Fcと比較して2.0℃~10.5℃増加する、請求項49~53のいずれか1項に記載の方法。
  58. 親Fcに前記安定性強化アミノ酸変異を導入することにより、親Fc領域と比較して弱酸性条件下で減少した凝集を示すFcバリアントが提供される、請求項49~57のいずれか1項に記載の方法。
  59. 前記安定性強化アミノ酸変異が、250V及び287Fを含む、請求項58に記載の方法。
JP2022571753A 2020-05-20 2021-05-20 安定性強化変異を含む免疫グロブリンFc領域バリアント Pending JP2023526114A (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US202063027569P 2020-05-20 2020-05-20
US63/027,569 2020-05-20
US202163163686P 2021-03-19 2021-03-19
US63/163,686 2021-03-19
PCT/CA2021/050691 WO2021232163A1 (en) 2020-05-20 2021-05-20 Immunoglobulin fc region variants comprising stability-enhancing mutations

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2023526114A true JP2023526114A (ja) 2023-06-20
JPWO2021232163A5 JPWO2021232163A5 (ja) 2024-05-28

Family

ID=78708881

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022571753A Pending JP2023526114A (ja) 2020-05-20 2021-05-20 安定性強化変異を含む免疫グロブリンFc領域バリアント

Country Status (10)

Country Link
US (1) US20230303715A1 (ja)
EP (1) EP4153620A1 (ja)
JP (1) JP2023526114A (ja)
KR (1) KR20230043790A (ja)
CN (1) CN116133685A (ja)
AU (1) AU2021274316A1 (ja)
BR (1) BR112022023570A2 (ja)
CA (1) CA3144731A1 (ja)
MX (1) MX2022014454A (ja)
WO (1) WO2021232163A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20240166750A1 (en) * 2022-10-25 2024-05-23 Ablynx N.V. GLYCOENGINEERED Fc VARIANT POLYPEPTIDES WITH ENHANCED EFFECTOR FUNCTION

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1673395A1 (en) * 2003-10-15 2006-06-28 PDL BioPharma, Inc. Alteration of fc-fusion protein serum half-lives by mutagenesis of positions 250, 314 and/or 428 of the heavy chain constant region of ig
EP1778728A2 (en) * 2004-08-19 2007-05-02 Genentech, Inc. Polypeptide variants with altered effector function
MX2011007833A (es) * 2009-01-23 2011-10-06 Biogen Idec Inc Polipeptidos fc estabilizados con funcion efectora reducida y metodos de uso.
WO2012032080A1 (en) * 2010-09-07 2012-03-15 F-Star Biotechnologische Forschungs- Und Entwicklungsges.M.B.H Stabilised human fc
JP5972915B2 (ja) * 2011-03-16 2016-08-17 アムジエン・インコーポレーテツド Fc変異体

Also Published As

Publication number Publication date
CN116133685A (zh) 2023-05-16
BR112022023570A2 (pt) 2023-01-24
EP4153620A1 (en) 2023-03-29
US20230303715A1 (en) 2023-09-28
MX2022014454A (es) 2023-02-27
KR20230043790A (ko) 2023-03-31
WO2021232163A1 (en) 2021-11-25
AU2021274316A1 (en) 2023-02-02
CA3144731A1 (en) 2021-11-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7438953B2 (ja) 完全ヒト化抗b細胞成熟抗原(bcma)の単鎖抗体およびその応用
JP7273453B2 (ja) IL-15/IL-15RアルファFc融合タンパク質およびPD-1抗体の断片を含む二重特異性ヘテロ二量体融合タンパク質
KR102568808B1 (ko) 면역활성화 항원 결합 분자
US11952424B2 (en) Multivalent antibody
JP2019535650A (ja) ヘテロダイマー免疫グロブリン構造体及びその製造方法
KR20150130349A (ko) 4가 이중특이적 항체
WO2023072217A1 (en) Fusion proteins targeting cd3 and cd47
JP2023526114A (ja) 安定性強化変異を含む免疫グロブリンFc領域バリアント
US11965019B2 (en) Stabilized chimeric Fabs
CN117043184A (zh) 抗人血清白蛋白(hsa)的纳米抗体及其应用
JP7440516B2 (ja) 切断多価多量体
TW202128747A (zh) TGF-β-RII結合蛋白
WO2019184898A1 (zh) 抗糖皮质激素诱导的肿瘤坏死因子受体(gitr)的小型化抗体、其聚合物及应用
CA3231124A1 (en) Antibodies targeting ccr2
KR20230030577A (ko) Fc 감마 RIIb에 대해 선택적인 이종이량체 Fc 변이체
WO2024033522A1 (en) Antibodies targeting il3
JP2024517907A (ja) 抗原結合分子
CN117003872A (zh) 含有突变轻链可变区骨架的单链抗体片段

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230202

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20231016

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240517

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240517