JP2023521505A - 一本鎖rnaの精製方法 - Google Patents

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Abstract

一本鎖RNAを含有する試料を、少なくとも主に前記一本鎖RNAを結合させるのに十分なpHで、その表面上に第一級アミノ基を主に担持する又は第一級アミノ基のみを担持する固相に適用するステップ、上昇するpHに前記固相の表面を曝露させることによって、吸着された前記一本鎖RNAを前記固相の表面から溶出するステップ、を含む、一本鎖RNA精製の方法。

Description

本発明は、二本鎖RNAと一本鎖RNAとの本質的に水性である混合物から二本鎖RNAを除去する方法に関する。
遺伝子治療用途のためのメッセンジャーRNA(mRNA)の合成は、所望の一本鎖(ss)RNAに加えて、二本鎖(ds)RNAの望ましくない亜集団を含有する調製物を生じる。これらのdsRNA種は、塩基鎖内の相補配列の鎖内相互作用によって合成後物(post-synthesis)を形成する。dsRNA配列の形成はまた、隣接するssRNA分子間における相補的配列との対合によっても起こり得、それによって、鎖内ds配列も含み得る非特異的鎖間二量体及びより高次の多量体を作出する。二本鎖RNAは、対象に注射されると、望ましくない潜在的に致死的な免疫応答を誘発するため、これを除去することは精製の格別な目標となる。
mRNA調製物からのdsRNAの含有量を減少させる方法は公知である。dsRNA混入のレベルは、セルロースベースのクロマトグラフィー媒体[1~3]を用いたアフィニティー吸着クロマトグラフィーによって低減することができる。吸着の精確なメカニズムは定かではないが、dsRNAはある条件下で結合し、一方、ssRNAは通過する。この方法は単純であり実験室規模では有効であるが、容量が低いため負担がかかる。低容量は、製造スケールでは、製造設備の生産性を低下させる、大量の緩衝液、大量の製造領域、及び延長されたプロセス時間を必要とする、大きいカラムに関連する。この方法はまた、処理されたssRNAの希釈を引き起こし、これは、後続の精製工程に負担がかかる生成物体積の増加に関連する。
あるいは、dsRNAのレベルは、スチレン-ジビニル-ベンゼン(SDVB)固相を使用する逆相クロマトグラフィー(RPC)によって減少させることができる[4-7]。RPCは、有毒な可燃性有機溶剤を使用するので、火災や爆発のリスクを軽減するために、工業規模では極めて高価な特殊機器を必要とする。RPCはまた、作業環境における有機溶剤毒性及び有害廃棄物処理問題に関連した安全の問題についてさらなる負担を課す。溶剤の問題に加えて、RPC分離は、最良の結果を得るために高温を必要とするというさらなる負担をしばしば課す。
アニオン交換クロマトグラフィーは、低分子mRNA(1000塩基未満)の精製で有用性を示している[8]。今日までに評価されているアニオン交換媒体としては、第四級アミン(QA)アニオン交換体に言及する、いわゆる強アニオン交換体が挙げられる。いわゆる弱アニオン交換体、特に第三級アミン配位子を用いるジエチルアミノエチル(DEAE)アニオン交換体も評価されている。
DNA及びタンパク質混入物質を大きなmRNA(1000~10000塩基)から除去することにおいてはアニオン交換クロマトグラフィーの示す有用性は限られており、上昇した動作温度においてのみである[9]。65℃まで昇温すると、塩化ナトリウム勾配中で大きなmRNAを溶出することができる。しかしながら、高温操作は、緩衝液、試料、及びカラムがすべて、プロセスの全期間にわたって、事前に平衡化され、特定の操作温度に正確に維持されなければならず、潜在的に数年間、製品の製造寿命の間、すべてのバッチにわたって再現可能に維持されなければならないので、複合的な物流負荷を課す。
タンパク質はpHの低下に伴ってより電気的に陽性になり、電気的陰性度が下がり、その結果、アニオン交換体との会合を停止させる効果を有するので、タンパク質は、下降するpH勾配によってアニオン交換体から溶出されることが知られている。RNAの電荷特性が約pH 2.6~pH13.0で一定のままであるため、このアプローチは、RNAでは機能せず機能し得ない。pHを上昇させることはRNAをより強く結合させるので、これによるアニオン交換体からの生体分子の溶出は機能しないことが知られている。タンパク質はpH勾配を増加させることによってカチオン交換体から溶出することができるが、ssRNA及びdsRNAはカチオン交換体に結合しないため、該方法はssRNAからdsRNAを分離するには有用性がない。
ssRNAとの混合調製物からdsRNAを除去するための新規な方法が開発されており、これは公知の方法を超える改善をあらわす。これはすべてのサイズのmRNAに関連するが、特に、1,000~25,000塩基のサイズ範囲などの、大きい又は巨大なmRNAに関連する。この方法は第一級アミノ固相に結合したssRNA及びdsRNAの分離を上昇pH勾配によって可能にする。ssRNAはdsRNAよりも高いpHで溶出する。本方法はまた、ssRNAのサイズに応じたssRNAの分画を可能にする。
本発明によれば、一本鎖RNA精製の方法が請求され、前記方法は:
一本鎖RNAを含有する試料を、少なくとも主に前記一本鎖RNAを結合させるのに十分なpHで、その表面上に第一級アミノ基を主に担持する又は第一級アミノ基のみを担持する固相に適用するステップ、
上昇するpHに前記固相の表面を曝露させることによって、吸着された前記一本鎖RNAを前記固相の表面から溶出するステップ、
を含む。
本発明の方法のある実施形態では、前記試料を適用した後でありかつ前記一本鎖RNAを溶出するより前に、前記一本鎖RNAの溶出に用いられた溶出緩衝液に比べてより高いイオン強度を有する洗浄緩衝液を用いて前記固相を洗浄するステップが少なくとも1つ提供されうる。
本発明の方法の別の実施形態では、前記のより高いイオン強度を低下させるために前記少なくとも1つの洗浄ステップが提供されうる。
本発明の方法のさらなる実施形態では、前記試料を適用した後でありかつ前記一本鎖RNAを溶出するより前に、一本鎖RNAは前記固相に吸着されたままに維持し残存する二本鎖RNAは脱着させる上昇したpHを有する洗浄緩衝液を用いる洗浄ステップが少なくとも1つ提供されうる。
前記洗浄ステップ(washing steps)は、前記試料を前記固相に適用した後の2つの後続洗浄工程として組み合わせることができる。
本発明の方法のさらに別の実施形態では、前記洗浄緩衝液のイオン強度は、前記一本鎖RNAを溶出するために必要な緩衝液のイオン強度に比べて0.5M~12M、又は1.0M~10M、又は2.0M~8.0M、又は4.0M~6.0M高い範囲にある範囲で選択することができる。NaClを使用する場合、イオン強度は溶液のモル濃度に相当する。例えば、ssRNAが溶出する対応するイオン強度が2.0M未満である場合、洗浄緩衝液のイオン強度は2.5Mであり得る。別の例では、ssRNAが溶出するイオン強度が0.5Mである場合、洗浄緩衝液のイオン強度は1.0Mであり得る。
典型的には、洗浄緩衝液のモル濃度は0.51M~12.0Mの範囲であり、一方、ssRNAが溶出するモル濃度は0.01M~0.5Mの範囲である。
本発明の方法のさらに別の実施形態では、前記洗浄緩衝液のイオン強度はカオトロピック塩、特にグアニジニウム塩、チオシアネート、過塩素酸塩及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるカオトロピック塩、の濃度で調整することができる。
本発明の方法のさらなる実施形態では、前記固相の表面からの前記一本鎖RNAの溶出はpH7.5~pH12.0、又はpH8.0~pH11.5、又はpH8.5~pH11、又はpH9.0~pH10.5のpH範囲のpHを有する溶出緩衝液によって行うことができる。
本発明の方法のなおさらなる実施形態では、前記固相に前記試料を適用することは、pH約8.5未満のpH値で起こり得る。
本発明の方法のなおさらなる実施形態では、前記の本質的に水性である混合物中に、前記水性混合物との前記接触より前の前記固相の表面の環境中に、前記固相の表面から前記一本鎖RNAを溶出するための緩衝液中に、並びに/又は前記試料を前記固相に適用するステップ及び/若しくは前記固相の表面から前記一本鎖RNAを溶出するステップの間に使用される別個の緩衝液中に、キレート剤が存在し得る。
本発明の別の実施の形態では、前記キレート剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸塩、リン酸、又はエチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’ -四酢酸(EGTA)、トリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)及びそれらの混合物からなる群より独立して選択することができる。
典型的には、前記一本鎖RNAは1,000塩基~25,000塩基の範囲のサイズである。
本発明の主題はまた、一本鎖RNA精製のための、その表面上に主に第一級アミノ基を含む又は第一級アミノ基のみを含む固相の使用である。特に、一本鎖RNAは、pHを上昇させることによって二本鎖RNAから精製又は分離することができる。
この方法の驚くべき性質は、それが先行技術の教示に反するものであるという事実によって強調される。本技術分野の既公開物では、周囲温度で強アニオン交換体(QA)及び弱アニオン交換体(DEAE)を用いて大型dsRNAから大型ssRNAを溶出することが不可能であると教示されている。
pHを増加させることによっては任意のアニオン交換体から任意の生体分子種を溶出させることは不可能であると考えられていたということは、本発明の第2の驚くべき特徴を強調する。それは、何十年もの間、当技術分野で知られている基礎原理に反している。この原理は、酸性溶質(正味で負荷電)がpHの上昇に伴って強力なアニオン交換体をより強く結合することである。アニオン交換体がpH勾配で溶出されるという、頻度の低い場合には、本発明の方法とは逆に、アニオン交換体はもっぱら下降pH勾配で溶出に供される。
本発明は、当該技術分野において先例のない第3の驚くべき特徴を具現化するものである。予備データは、pH勾配による第一級アミノ固相からのssRNAの溶出でssRNA種がサイズに応じて選別され、より大きいssRNA種を溶出するためにはより高いpH値が必要であることを示している。注目すべきことに、dsRNA種の間のサイズの識別性は比較的に悪い。
本発明はまた、当該技術分野において先例のない第4の驚くべき特徴を具現化する。実験データは、dsRNAが、ssRNAが同じ表面で挙動するのと同じ方法で第一級アミノ固相と相互作用するものでないことを示す。所与のインビトロ転写混合物中においてssRNAとdsRNAとは組成的に同一であり、同じ配列中に同じ数のヌクレオチド塩基を有するので、このことは予想外である。注目すべきことに、多種多様な塩が、所望のssRNAを溶出することなく、第一級アミノ固相からdsRNAの大部分を退かせることができる。さらに注目すべきことに、ssRNAは、極めて高濃度の既知の侵襲性カオトロピック塩によってさえ溶出されない。
上昇するpH勾配で溶出される第一級アミノ固相の逆説的挙動について、なぜ伝統的なアニオン交換体に基づく予測に反するのか、どのようにdsRNAをssRNAから分離するのか、又はどのようにssRNAのサイズ分画を達成するのか、を説明する理論は、いまだ展開されていない。
ssRNAの溶出に先立ってdsRNAを単に退かせるだけでなく、高塩洗浄は、さもなければ安定的であるssRNAとタンパク質及びDNAなどの混入物質との間の複合体を解離する、独特の機会を提供する。これは、本分野において認識され始めたばかりの主要な課題に対する解決策を提供する。核酸は、混入物質との安定な複合体中に存在することがしばしばある。これらの複合体のいくつかは、純粋な核酸と同じ又はほぼ同じ条件下で溶出する。したがって、これらの複合体は、混入物質が独立している場合の特性ではその可能性が排除されているはずであるにもかかわらず、純粋なssRNA溶出画分であるべきものに該混入物質を持ち込む、トロイの木馬である。解離高塩洗浄は、その混入経路を止める可能性を提供する。このアプローチの錯体解離ポテンシャルは、NaClなどの中性塩よりも強い解離ポテンシャルを具現化するグアニジンなどのカオトロピック塩で増強される。錯体解離能は、キレート剤の存在によってさらに増強することができる。
混入しているdsRNAが高塩化学環境において第一級アミノ固相に結合することができないことはまた、アフィニティークロマトグラフィーとして当技術分野で知られている技術に匹敵するワークフローの簡素化を可能にする。アフィニティークロマトグラフィーは、抗体などの生体特異的リガンドを固相に共有結合させる技術である。その抗体の標的を担持する混入された試料が固相に適用されると、標的分子のみが捕捉され、一方、混入物質はカラムを通って流れることによって除去される。微量レベルの所望されない種を洗い流すためにカラムを洗浄した後、標的分子は、単一の高度に精製された画分中に溶出される。この場合、dsRNA及びssRNAを含有する試料は、中性pHで高塩中にロードされる。dsRNAの大部分は固相中を流れて通過する。高度に精製されたssRNAは、pHの上昇によって濃縮画分中に溶出される。
このワークフローの単純化は、本発明の基本的な構成において使用されるものと同じ原理を使用する、わずかにプロセスを変形させたものであり、その原理がdsRNAが高濃度の塩の存在下で第一級アミノ固相によって結合されないことであることは、本技術分野の経験者によって認識されるであろう。
本発明の最終的な驚くべき特徴は、RNAとは組成が異なる混入物質の溶出挙動が、dsRNAと同様に溶出するが、ssRNAの溶出とは異なる、ということである。そのような混入物質には、タンパク質及びDNAが含まれ、その両方がpH勾配においてssRNAよりも早く溶出する。それらの大部分はまた、pHの上昇勾配によってssRNAからそれらの微量残基を分離する前に固相に適用される塩によっても除去される。
発明に係る一般的記載
本発明は、一般的な態様においては、二本鎖メッセンジャーRNA(dsRNA)と一本鎖メッセンジャーRNA(ssRNA)との混合物を含有する調製物からdsRNAを除去するための固相抽出方法である。本発明はさらに、ssRNA種をそのサイズに従って分離する方法に関する。
特定の態様において、本発明はssRNAからのdsRNAの分離、及び/又は、ssRNA種をそれらのサイズに従って分離することに関し、ここで、dsRNA及びssRNAは、第一級アミノ固相への非共有相互作用によって結合する。
別の特定の態様では、本発明は、dsRNAがssRNAよりも低いpH値で溶出する上昇pH勾配を用いての、ssRNAからのdsRNAの分離に関する。小さいssRNA種は、大きいssRNA種よりも低いpH値で溶出する。
より具体的な態様では、本発明は、pH 3.5~11.5、又はpH 4.5~pH11.5、pH 5.5~pH11.5、pH 6.5~pH11.5、又はpH7.5~pH11.5、又はpH8.5~pH11.5、又はpH8.5~pH11.0、又はpH8.5~pH10.5、又はpH8.5~pH10.0、又はpH8.5~pH9.5、又はpH8.5~pH9.0、又はよりpHの高い範囲、又はよりpHの低い範囲、又は中間の範囲にわたるpH勾配に関する。特定のssRNAからdsRNAを分離するか、又は異なるサイズのssRNA種を分画するのに必要な値が、それらのそれぞれのサイズに依存することから、pHの範囲が特定される。
ある実施形態では、pH値はいわゆる線形勾配(linear gradient)を形成する特定の範囲にわたって連続的に増加させることができる。関連する実施形態において、pHは不連続的に、別々のステップで増加され、いわゆる段階的勾配を形成しうる。別の関連する実施形態では、勾配は単一のステップからなってもよい。
別の実施形態において、pHを増加させることによる溶出は、ssRNAの回収を増加させる目的で、塩の存在下で行われ得る。このような実施形態では、塩種は10mM~250mM、又は20mM~200mM、又は50mM~100mMの範囲の濃度の塩化ナトリウムであり得る。別のそのような実施形態では、塩種は同様の範囲内の濃度の塩化カリウム、又は同様の範囲内の濃度のグアニジン-HCl、又は同様の範囲内の濃度のグアニジンチオシアネートであってもよい。溶出中の塩の含有はまた、ssRNAをより低いpH値で溶出させる。
別の態様では、本発明は、第一級アミノ固相に結合したssRNAをキレート剤で洗浄する方法に関する。
ある実施形態では、キレート剤は2mM~200mM、又は5mM~100mM、又は10mM~50mM、又は20mM~25mM、又はより低い、又は中間の範囲、又は最大完全飽和までのより高い範囲の濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)であり得る。密接に関連する実施態様において、キレート剤はクエン酸、リン酸、エチレングリコールビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N’、N’ -四酢酸(EGTA)の塩、又はトリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)、又は別のキレート剤の塩であってもよく、又は、EDTAについて説明したのと同じ範囲に渡る濃度のキレート剤の混合物であってもよい。
本発明のある実施形態では、キレート剤での処理は、pH溶出の間を含む前記方法のステップを実施するために、以下のいずれかを含むことができる:試料へのキレート剤の添加、試料の緩衝液を金属イオン非含有緩衝液へと交換すること、試料の緩衝液をキレート化緩衝液へと交換すること、及び、金属イオン非含有又はキレート化緩衝液を使用すること。かかる実施形態のいくつかでは、キレート剤の種類及び/又はそれらの濃度は、前記方法の各ステップで異なり得る。
ある態様では、本発明は、pHを上昇させることによってdsRNAとssRNAとの最終的な分離を行う前に、第一級アミノ固相を塩で洗浄してdsRNAのサブセットを除去するdsRNA及びssRNAの分離に関する。全てのそのような実施形態において、洗浄中の塩の濃度は、溶出中に存在する塩の濃度よりも高い。
ある実施形態では、pHを上昇させることによって溶出前に固相を洗浄するために使用される塩は、最大完全飽和濃度までを含む、任意の濃度の任意の種の塩でありうる。塩が約5.0Mで飽和する塩化ナトリウムである、かかる実施形態の一つでは、塩の濃度は10mM~5M、又は50mM~5M、又は100mM~5M、又は500mM~5M、又は1M~5M、又は2M~5M、又は3M~5M、又は4M~5Mの範囲、又は中間の範囲であってもよいが、好ましくは1M~5Mの範囲である。密接に関連する実施形態において、塩は塩化カリウムであってもよい。RNAが、塩化ナトリウム又は塩化カリウムなどによって沈殿し得ることと同様に、塩化リチウムなどの他の高濃度の中性塩によっても沈殿し得ることは、認識されるであろう。試料適用中又は溶出中のRNAの沈殿は、固相クロマトグラフィー装置を通る緩衝液の流れを妨害する可能性があるため、非常に望ましくないこともさらに認識されるであろう。厳密に言えば、これは試料をロードした後に塩洗浄を行い、溶出前に過剰な塩が除去される場合には問題ではないものの、代わりに非RNA沈殿塩を使用することによって問題を完全に回避することが好ましいことが多い。
RNA沈殿塩が非RNA沈殿塩で置き換えられる、ある実施形態では、塩は約6Mで飽和する塩酸グアニジニウムなどのカオトロピック塩であり、濃度は10mM~6M、又は50mM~6M、又は100mM~6M、又は500mM~6M、又は1M~6M、又は2M~6M、又は3M~6M、又は4M~6M、又は5M~6Mの範囲、又は中間の範囲であり得、好ましくは3M~4Mの範囲の値であり得る。塩が約12Mで飽和するグアニジンチオシアネートなどのカオトロピック塩である密接に関連する実施形態では、濃度は10mM~12M、又は50mM~12M、又は100mM~12M、又は500mM~12M、又は1M~12M、又は2M~12M、又は3M~12M、又は4M~12M、又は5M~12M、又は6M~12M、又は7M~12M、又は8M~12M、又は9M~12M、又は10M~12M、又は11M~12M、又は中間範囲であり得、好ましくは1.5M~3.0Mの範囲の値であり得る。これらの2つの塩の例から、他の塩を、飽和点までであるがそれを超えない範囲で同様に使用することができることが明らかであろう。
ある実施形態では、キレート剤を塩と併せて使用することができる。本発明の様々な実施形態において、塩及び/又はキレート剤による処理は、以下のいずれかを含み得る:試料への塩及びキレート剤の添加、試料の緩衝液を塩及び/又はキレート剤含有緩衝液へと交換すること、試料の緩衝液を塩及び/又はキレート剤含有緩衝液へと交換すること、並びに、ssRNAの溶出を含む前記方法のステップを実施するために塩含有緩衝液及び/又はキレート剤含有緩衝液を使用すること。かかる実施形態のいくつかでは、塩の種類、キレート剤、及びそれらのそれぞれの濃度は、前記方法の各ステップで異なり得る。
いくつかの実施形態において、dsRNAは、グアニジンチオシアネートなどの高濃度の非RNA沈殿塩にEDTAなどのキレート剤をプラスしたものに試料を平衡化することによってssRNAから分離され得る。固相は、同じ濃度のグアニジンチオシアネート及びEDTAを含有する緩衝液に平衡化されうる。試料を固相に適用する間、dsRNAの大部分は固相に結合しない。同じ濃度のグアニジンチオシアネート及びEDTAを用いた洗浄工程の終わる時点で、dsRNAは痕跡レベルまで減少している。次いで、グアニジンチオシアネート及びEDTAが、これらを含まない緩衝液で系から洗い流される。残存するdsRNAは、上昇pH勾配でssRNAから分離される。
目的が何らかの目的のためにある量の精製ssRNAを単離することである準備的実施形態では、pH溶出後すぐにssRNAのpHを中和して、pH9又はそれ以上の値に近いpH値への曝露を最小限にすることが最も望ましい。アルカリ条件への曝露が本発明の方法を実施するために必要とされる期間だけであったssRNAはその天然の組成を保ち、無期限に安定なままであることが、実験データで示されている。本質的に瞬間的である中和は、画分を中和溶液に回収することによって実施することができる。あるいは、画分回収の直後に中和溶液を添加することによって、急速中和を行ってもよい。中和は、クロマトグラフィー又は透析濾過を含む緩衝液交換法による画分回収後に行うこともできる。これらの方法の全ては、当技術分野、例えば、試料の溶出後pH中和が日常的であるアフィニティークロマトグラフィーの分野において、一般的に実施され周知である。
本発明の方法は当技術分野で通常の任意の装置を用いて実施することができ、例えば、第一級アミノ固相はクロマトグラフィー装置に配置することができる。典型的には、固相表面は他のクロマトグラフィーフォーマットの中でも、モノリス、充填粒子のカラム、充填ナノファイバーのカラム、膜吸着剤、又はヒドロゲルの形態であり得る。
本発明の方法は、分析用途又は準備(preparative)用途で実施する目的で使用することができる。これはすべてのmRNAに適用可能であるが、1000塩基~25,000塩基のサイズ範囲のmRNAに特に有用である。具体的なクロマトグラフィー条件は、RNAのサイズ及び適用された試料中の混入物質分布に応じて変化し得る。任意の特定のssRNA種について最良の分析又は準備結果を達成するために具体的条件を調整することは、数十年間、クロマトグラフィーの技術の実務者に知られているのと同じ実験技能を使用する。
任意の単一の処理方法単独によって達成され得るよりも大きい程度でssRNAを精製するために、本発明の方法には、1つ以上の追加の処理方法が、先行しても、後続しても、又は先行及び後続してもよい。
第一級アミノ固相を用いてのssRNAからのdsRNAの分離を示し、dsRNAは、周囲温度でpH勾配を用いてssRNAを溶出する前に、塩化ナトリウムステップによって除去される。 第一級アミノ固相を用いてのssRNAからのdsRNAの分離を示し、dsRNAは、周囲温度でpH勾配を用いてssRNAを溶出するより前に、6Mグアニジンステップによって除去される。 強アニオン交換体及び弱アニオン交換体から周囲温度でpH勾配でssRNAを溶出するのが失敗することを示す。 第一級アミノ固相を用いて周囲温度でpH勾配によりssRNAからプラスミドDNAを分離することを示す。 第一級アミノ固相を用いてssRNAからプラスミドDNAを分離することを示し、DNAは、周囲温度でpH勾配を用いてssRNAを溶出するより前に、塩ステップによって除去される。 周囲温度における塩とpH勾配溶出との組み合わせの、DNA及びssRNAの分離に対する効果を示す。 周囲温度でpH勾配により第一級アミノ固相上で小型ssRNAから大型DNA及び巨大dsRNAを分離することを示す。 第一級アミノ固相を用いてのssRNAからのdsRNAの分離を示し、DNAは、周囲温度でpH勾配を用いてssRNAを溶出するより前に、キレート剤-カオトロープ組み合わせステップによって除去される。 キレート塩(chelating salts)を含めることによる、pH勾配におけるssRNA溶出pHの低下を示す。 塩の存在下でpH勾配で溶出された、第一級アミン固相を用いた異なる時点でのインビトロ転写反応のモニタリングを示す。
用語「第一級アミノ固相」は、その表面上に第一級アミノリガンドを主に(dominantly)担持する又は第一級アミノリガンドのみを(exclusively)担持する、クロマトグラフィーを実施するのに適した固相を指す。用語「第一級アミノ固相(primary amino solid phase)」、「第一級アミノ基を担持する固相(solid phase bearing primary amino groups)」、「第一級アミン担持固相(primary amine-bearing solid phase)」、「第一級アミノ担持固相(primary amino-bearing solid phase)」又は「第一級アミン固相(primary amine solid phase)」は同義であり、交換可能である。第二級アミンは、固相の表面に存在しないか、又は存在が少数であるべきである。第三級及び第四級アミンは存在しないか、又は少数であるべきである。負に荷電した残基は不在であるべきである。非荷電疎水性又は水素結合残基が存在してもよい。
「第一級アミノ基」という用語は、2個の水素原子の各々に単一共有結合によって連結され、また、炭素原子に単一共有結合によって連結された窒素原子を表す。第一級アミノ基は、その炭素原子を介して固相に直接共有結合していてもよい。あるいは、第一級アミノ基は、固相に共有結合しているいわゆるスペーサーアームへのその炭素原子の共有結合によって、固相に間接的に結合していてもよい。第一級アミノ基はまた、第一級アミノ基を含む固相に共有結合したポリマー構造の一部であってもよく、ここで該ポリマーの繰り返しサブユニットは第一級アミノ基を含む。
「固相」は、1つ若しくは複数の多孔質膜、1つ若しくは複数の繊維、1つ若しくは複数の多孔質若しくは非多孔質の粒子、モノリス固相(単一のポリマー混合物から合成されたモノリスを含む)、又は、マクロ骨格として最初に合成されたモノリスの上に合成された第二級次リガンド担持ポリマー相を有するいわゆるヒドロゲルの形態である、クロマトグラフィー固相を指し得る。クロマトグラフィーの実施を容易にするために、これらの固相材料のいずれをもハウジング内に設けることができる。ハウジング内のクロマトグラフィー固体相は、一般にクロマトグラフィー装置と称され、クロマトグラフィーカラム、又は単にカラムと称されることが多い。
第一級アミノ基を有するクロマトグラフィー固相は公知であり、市販されている。その一例は、東ソー・バイオサイエンス社が製造するトヨパールNH2-750Fという名称で販売されているものであり、ここで「NH2」とは第一級アミノ基を指す[www.separations.eu.tosohbioscience.com/solutions/process-media-products/by-mode/ion-exchange/anion-exchange/toyopearl-nh2-750f]。販売資料によれば第一級アミノ基はポリアミンの形態であり、これは、それが固相に共有結合的に固定された反復第一級アミンサブユニットを有するポリマーであることを意味する。そのようなポリマーは、典型的にはその第一級アミノ基のうち1つ以上を介して固相の表面に連結される。この結合は連結アミノ残基を第一級アミノ基から第二級アミノ基に変換し、それによって固相の表面上に第一級アミノ基と第二級アミノ基の混合物を生成する効果を有する。
別の例はSartoriusによってSartobind STIC PAの名称で製造されており、ここで「PA」は第一級アミンを指す[www.sartorius.com/shop/ww/en/usd/sartobind-stic(R)-pa/c/M_Sartobind_STIC_PA]。販売資料によれば第一級アミノ基はポリマー、具体的にはポリアリルアミンの形態であり、固相に共有結合された反復第一級アミノサブユニットを有することを示す。上述の製品と同様に、そのようなポリマーは、典型的にはその第一級アミノ基のうち1つ以上を介して固相の表面に連結される。この結合は、連結アミノ残基を第一級アミノ基から第二級アミノ基に変換し、それによって固相の表面上に第一級アミノ基と第二級アミノ基との混合物を生成する効果を有する。
クロマトグラフィー固相のすべての主要な商業的製造者は、その表面上にアミノ誘導体を有する製品(アニオン交換体を含む)を製造しており、定期的又は実験的なベースで第一級アミン含有固相を製造するために必要な知識及び資源を示している。
第一級アミノ基を有するクロマトグラフィー固相が、その組成を明確に又は完全に明らかにする方法で命名されない場合があることを考慮すると、所与のクロマトグラフィー固相が本発明を実施するのに適切な特性を有するかどうかを決定するための単純な分析方法を有することが有用である。この決定を行うための1つの簡単な方法は、問題のクロマトグラフィー固相を50mM Tris、pH7.5などの緩衝液で平衡化し、次いで、それぞれ異なるサイズを有するRNA分子のサブセットを含有するいわゆるssRNAラダーからなる試料を注入することである。そのようなRNAラダーは一般に、50~500塩基、又は100~1000塩基、又は200~6000塩基、又はいくつかの他の範囲のサイズをカバーし、Thermo Scientific及びNew England BioLabsなどの一般的な供給業者から市販されている。試料注入及び平衡化緩衝液での簡単な洗浄で未結合の試料成分を退かせた後、pH7.5~約pH11の線形pH勾配で第一級アミノクロマトグラフィー装置を溶出に供する。第一級アミノ固相は図1に示すように、ssRNAをサイズが昇順(in order of increasing size)となる種類順に溶出させる。ssRNAが溶出しないか、最小のssRNA種しか溶出しないことは、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第四級アミノ基のいずれか1つ又は任意の組み合わせを含む、過剰な割合の非第一級アミノ基を固相が含むことを示唆しうる。
「RNAサイズ」又は「RNAのサイズ」という用語は、ヌクレオチド鎖中の塩基の数を指す。塩基は、一般に「b」と称される。したがって、100bという呼称は、100塩基のRNAストランドを指す。RNAサイズは、一本鎖(ssRNA)及び二本鎖(dsRNA)を指すRNAコンホメーションとは無関係である。所与のインビトロ転写混合物とは、試薬と、mRNAの合成中に生成される生成物及び副生成物と、の混合物を指し、ssRNA及びdsRNAの両方を含有し得るが、これらは両方とも同じDNAプラスミドに由来するので、塩基の数に関して両方とも同じサイズである。いくつかの場合において、ssRNA鎖は、剪断応力又は酵素的溶解のいずれかを介して、プロセシングの間に切り抜かれるか(clipped)又は切り詰められ(truncated)、先の完全な鎖の断片亜集団の形成をもたらし得る。他の場合には、不完全な転写から切り詰め形態(truncated forms)が仮説的に生じ得る。供給源が何であれ、サイズに従ってssRNAを分画する本発明の方法の能力は、所望されない断片形態を除去するためのツールを提供する。
「平衡化された」又は「平衡化」という用語は、特定の化学的環境を作り出すために固相及び/又は試料に対して行われた化学的コンディショニングステップを指す。固相は、通常、所望のpH及び塩組成を具体化する緩衝液にそれらを曝露することによって調整される。試料は、通常、pHの滴定によって、時には塩濃度を低下させるための希釈によって、時にはクロマトグラフィーを含む緩衝液交換技術によって、又は透析によって、又はタンジェンシャルフロー濾過膜を用いた透析濾過によって、調整される。これらの方法及び1つ又は別のものを選択するための基準はすべて、何十年もの間、当技術分野で知られている。
用語「ロードする」又は「試料適用」は、平衡化された試料を平衡化され正に荷電した第一級アミノ基を主に担持する固相と接触させるプロセスを指す。これは、通常、クロマトグラフィー装置を用い、重力又はポンピングなどの外力によって試料を装置に通過させることによって行われる。
用語「吸着(adsorption)」は、生物学的産物を化学的に相補的な(chemically complementary)表面に結合させるプロセスを指す。吸着は毛管現象の物理的作用を介したスポンジによる水の取り込みと同様であるが、化学的相互作用を伴わない「吸収(absorption)」とは異なる。この場合の相補性は、静電荷を包含するものと解される。RNAの表面上の負の静電荷は、その表面上の第一級アミノ基によって電気的に陽性にされた固相の表面へのその吸着を媒介する。生物学的生成物の吸着は、多くの場合、より一般的な用語「結合(binding)」によって言及される。
用語「選択的吸着」は1種以上の他の種の吸着を防止しながら、少なくとも1種の吸着を可能にする条件を指す。本件の場合、操作条件は、ssRNAの結合を可能にしながら、dsRNAの大部分の結合を防止するように調整され得る。
用語「脱着」は、生物学的生成物を、それが以前に吸着されている化学的に相補的な表面から放出するプロセスを指す。本発明の方法では、ssRNAの脱着は通常、少なくともpH9.0、又はpH 9.5、pH 10.0以上のアルカリ性pH値を必要とする。塩は脱着を増強するために使用され得、典型的には塩の非存在下よりも低いpHで所与のssRNA種の溶出を達成する効果を伴う。しかしながら、酸性又は中性のpHでは、いかなる濃度であっても塩又は塩の組み合わせが大きなssRNAの溶出を達成することはない。
「選択的脱離」という用語は、1つ以上の他の種が依然として吸着されたままになる条件の変化によって、1つ以上の吸着された種が固相表面から放出される状況を指す。次いで、固相表面から異なる種のサブセットを放出するために、さらに異なる条件のセットを適用することができる。1つのそのような例では、中性又は中性に近いpHで高濃度の塩を適用することによって、ssRNAは結合したままでありながら、dsRNAの大部分は第一級アミノ固相から除去され得る。dsRNAは、選択的に脱着されたと言われる。ssRNAは、アルカリ性pHで、おそらく塩の存在下で、後続の工程において選択的に脱着される。
「洗浄(washed)」という用語は、装置内の細孔又はチャネルから非結合種を退かせる目的で、ロードされたカラムを洗浄緩衝液に曝露するプロセスを指す。用語「すすぎ(rinsed)」は、本文脈において、同じ意味を有する。最も基本的な場合、洗浄緩衝液は、平衡緩衝液と同じ組成を有する。より複雑な構成では、洗浄緩衝液は、所望の生成物を溶出するより前に、弱く結合している混入物質のサブセットが化学的に除去されるように、該サブセットを化学的に放出するという追加の役割を有し得る。あるいは1回目には平衡緩衝液と同一の条件を用いるが、2回目には溶出前の弱く結合した混入物質のサブセットの除去が可能なように、該サブセットを固相から退かせる条件を用いる、2回以上の洗浄工程があってもよい。洗浄はまた、異なる又はより制御された条件のセット下で溶出を可能にする緩衝液に移行するために使用され得る。例えば、混入物質を退かせる高塩での洗浄後、無塩洗浄を実施して、無塩pH塩勾配でssRNAを溶出する条件を設定することが望ましい場合がある。その洗浄がないと、デフォルトで高塩で溶出が始まり、pHが上昇する間に塩濃度が下降する勾配が作り出される。
用語「溶出」は、クロマトグラフィーの分野に関連する用語「脱着」の特別な場合を表す。これは、固相が存在する化学環境を変化させて、第一級アミノ固相と、装填及び洗浄工程後に結合したままである種との間の相互作用の解離を引き起こすプロセスを指す。dsRNA及びタンパク質が固相から除去されれば、ssRNAは、pHを単純に増加させること、又は塩類と共にpHを増加させることによって、溶出することができる
溶出は、各工程が固相とssRNAとの間の相互作用の強度を低下させる1つ又は一連の工程で行うことができる。条件の変化はまた、連続的又は線形的な様式でなされ得、弱く結合した種が連続工程の初期に脱着される一方で、強く結合した種は連続工程の後期に溶出する。段階的形式であろうと線形形式であろうと、操作条件の変化は、一般に勾配と称され、特に溶出勾配と称される。段階的勾配は多くの場合、より便利であると考えられるが、線形勾配の方が典型的にはより良好な再現性を支持する。
「周囲温度」という用語は一般に、「室温」又は「常温」という表現に類似していると考えられる。それは典型的には約20~22℃の範囲の温度に対応するが、約18~25℃などのより広い範囲を含んでもよい。
用語「カオトロピック塩」は、その構成イオンの少なくとも1つが、リオトロピック及びカオトロピックイオンのHofmeister系列において高いカオトロピック順位を有する塩種を指す。リオトロピックイオンは、Hofmeister系列の一端に存在する。カオトロピックイオンは、シリーズの反対側の端部に存在する。カオトロピックイオンは、多くの場合、生体分子によって優先的に結合されると記載される。カオトロピック塩は生体分子内及び生体分子間の非共有結合性相互作用を緩和する効果を有し、時には、多成分非共有結合性混合物中のそれぞれの要素間の相互作用を不安定化し、相互作用を解離させる程度まで緩和する効果を有する。それらは、通常、溶解度を増加させる効果を有する。カオトロピック塩の例としては、とりわけグアニジニウム塩、チオシアネート、及び過塩素酸塩が挙げられる。ある場合には、グアニジンチオシアネートの場合のように、特定の塩のアニオン及びカチオンの両方が強くカオトロピックである。このような塩は、カオトロピックアニオン又はカオトロピックカチオンのみを含む塩よりもカオトロピック電位が高い。リオトロピックイオンはHofmeister系列の反対側の端に存在する。それらは、しばしば、生体分子によって優先的に排除されると記載される。リオトロピックイオンは生体分子を安定化させる効果を有し、混合物の個々の要素間の非特異的会合を促進する。強力なリオトロピックイオンは、通常、大きな生体分子の溶解度を低下させる。リオトロピック塩の例としては、とりわけ、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。Hofmeister系列における中間体を表す塩は、安定性、会合-解離、又は生体分子に対する溶解性に中程度又はほとんど影響を及ぼさない傾向がある。例としては、塩化ナトリウム及び塩化カリウムなどのいわゆる中性塩が挙げられる。そのような塩が安定性、会合-解離、又は溶解性に影響を及ぼし得る程度まで、それらの影響は、主にクーロン(静電)力を介して媒介される。
「多価金属カチオン」という用語は、金属の正に帯電したイオン形態であって、イオンの正味電荷が2以上であるものを指す。多価金属カチオンとしては、類似の又は異なる原子価を有する他種の中でも特に、カルシウム、マグネシウム、及び亜鉛(これらは全て2+の正味電荷を有する)、及び3+の正味電荷を有する第二級鉄が挙げられる。これらのイオンはすべて、配位結合を介して結合する核酸に対して親和性を有する。配位結合はイオン結合よりも15~60倍強く、これは、多価金属カチオンの核酸又は他の生体分子への結合が塩の飽和濃度でも持続することを意味する。多価金属カチオンは、dsRNA配列の形成を促進し得、又は既存のdsRNA配列を安定化し得るため、RNAの精製において問題となり得る。それらはまた、複数のRNA分子の間、RNAとDNA分子の間、及びRNA、DNA、及び混入物質であるタンパク質の間における、複合体の形成を促進し得、又は既存の該複合体(会合体)を安定化し得る。
用語「キレート剤」は、本発明の方法の文脈においては、従前存在していた多価金属カチオンとmRNAを含む核酸を含む生体分子との会合体から、金属イオンを競合的に除去することができるような、多価金属カチオンとの強い配位結合を形成する能力を有する分子を指す。
「ヌクレアーゼ」又は「ヌクレアーゼ酵素」という用語は、核酸の鎖を、理想的には個々のヌクレオチド、ダブレット、又はトリプレットに、切断する能力を有するタンパク質を指す。それらは2つの主要なクラス、すなわちDNAを溶解するDNAse酵素、及びRNAを溶解するRNAase酵素、に分類することができる。RNAseは、ssRNA産物を破壊するので、厳密に避けるべきである。DNAseは、mRNAを産生するために使用されるDNAプラスミド鋳型を破壊することによって精製を単純化するためにしばしば使用される。DNAse酵素はしばしば、適切に機能するために多価金属カチオン補因子の使用を必要とする。多価金属カチオンは、上記のようにRNA精製を妨害しうる。
「プロテアーゼ」又は「プロテイナーゼ」又は「タンパク質分解酵素」という用語は、他のタンパク質を切断して断片にする能力を有するタンパク質を指す。これは、タンパク質混入によって負担を被る可能性があるクロマトグラフィー工程の前にそのような混入を低減する方法として使用されることがある。トリプシンなどの多くのプロテアーゼは、適切に機能するために多価金属カチオン補因子を必要とする。多価金属カチオンは、上記のようにRNA精製を妨害しうる。この目的で一般に使用されるプロテアーゼには、多価金属カチオン補因子の非存在下でさえ良好な結果を提供するプロテイナーゼKが含まれる。
所望又は必要であれば、後続の分析方法又は精製工程の選択において部分的に、本方法の実施の間に塩を含む、という決定がなされることがある。例えば、後続の方法が塩に対して耐性がない場合、妨害を回避するためには、第一級アミノ基を主に有する正に荷電した固相から、塩の非存在下で、又は十分に低い塩濃度で、ssRNAを溶出することが有利である。後続の方法が塩に非常に耐性があるのであれば、装置の溶出は、後続の工程にが耐性を有する塩種を実質的な濃度で使用することができる。
ある実施形態では、pH勾配終点緩衝液に50mM NaClが含まれると、終点緩衝液にNaClが存在しない場合よりも低いpHでssRNAが溶出される。勾配終点緩衝液のみに50mM NaClが存在することは、ssRNAがpH勾配のみで溶出されるのではなく、NaCl増加及びpH上昇の同時勾配によって溶出されることを示唆する。密接に関連する実施形態では、pH勾配終点緩衝液中に100mM NaClが含まれることにより、勾配終点緩衝液が50mM NaClを含む場合よりも低いpHでRNAが溶出される。どちらの場合も、勾配終点の緩衝液にNaClが含まれると、ssRNAの回収率が有意に増加する。dsDNAとssRNAとの間の分離は、0mM NaClで最も広い。これは終点緩衝液が50mMのNaClを含有する場合に減少し、終点緩衝液が100mMのNaClを含有する場合にさらに減少するが、100mMでも分離は良好なままである。同様の濃度のカオトロピック塩及びキレート化塩などの他の塩に置き換えることもできる。
ある実施形態では、第一級アミノ固相からのpH勾配溶出は、ssRNA種をそれらのサイズに従って分離するために実施され、ここでより小さい種はより大きい種よりも勾配においてより早く溶出する。
以下の一連の基本的な方法オプションの一般的で非限定的な説明は、本方法がどのように実行され得るかのバリエーションを示すものであり、操作変数のより詳細な議論のためのプラットフォームを提供する。これらのシナリオのそれぞれにおいて言及された緩衝液条件は、本方法がどのように実施され得るかの一般的な概念を提供することを意図しており、異なるサイズのssRNA種及び異なる混入物質負荷が伴うことから緩衝液組成の最適化が必要とされることが理解される。
ある実施形態では、モノリスなどのクロマトグラフィー装置の形態の第一級アミノ固相を、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、pH7.5±0.5などの中性に近いpH値に平衡化する。dsRNA及びssRNAの混合物を含有する試料を、緩衝液交換により、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、pH7.5±0.5に平衡化する。次いで、クロマトグラフィー装置を、平衡化緩衝液から、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、100mM NaCl、pH11±0.5の終点緩衝液に向かって、20装置容量超、又は50装置容量超、又は100装置容量超の線形pH勾配で溶出し、ここで、装置容量の数値は、勾配中にpHが変化する率、言い換えると勾配の傾きを調節する手段として使用される。このアプローチは、dsRNA、ssRNA、DNA断片、及びタンパク質がすべて第一級アミン含有固相に結合し、勾配内で溶出し、したがって、試料(すなわち生成物及び混入物質)の総含有量の指標を提供するので、分析用途に特に有用であり得る。このアプローチはまた、準備的分離のための条件の開発の出発点として使用され得る。
異なる実施形態では、第一級アミン固相に同じ条件下でロードし、次いで3M NaClの溶液で洗浄して、dsRNA、DNA、及びタンパク質混入の大部分を除去することができる。次いで、過剰な塩が存在しない後続の洗浄によってNaCl自体を除去して、過剰な塩が存在しない状態でssRNAのpH勾配溶出が始まるようにする。前述の実施形態との結果比較により、NaCl洗浄がssRNAの純度を改善する程度を評価することが可能となる。NaClの最も好ましい濃度の決定はクロマトグラフィーの技術分野において周知の日常的な活動であり、その目的は、生成物純度と生成物収率との最良のバランスを達成することである。
密接に関連する実施形態において、前述の実施形態のいずれか又は両方は、pH勾配緩衝液中に50mM塩化ナトリウムを含み得る。他の密接に関連する実施形態では、100mM塩化ナトリウムをpH勾配緩衝液に含ませることができる。他の密接に関連する実施形態では、任意の他の塩を塩化ナトリウムの代わりに用いうる。
別の関連する実施形態では、第一級アミノ固相に同じ条件でロードし、次いで3Mグアニジン-HClの溶液で洗浄して、pH勾配を用いて所望のssRNA産物を溶出する前にdsRNAの大部分を除去することができる。グアニジン洗浄に続いて、グアニジン塩無しの洗浄を行い、過剰な塩の非存在下でssRNAのpH勾配溶出が始まるようにする。密接に関連する実施形態では、100mM塩化ナトリウムをpH勾配緩衝液に含ませることができる。別の密接に関連する実施形態において、グアニジン-HClは、グアニジンイソチオシアネートによって置き換えられてもよい。前述の2つの実施形態との結果比較により、グアニジン洗浄がssRNAの純度を改善する程度を評価することが可能となる。
上記の一連処理を拡張した関連する実施形態では、ssRNAを溶出する前に、金属安定化複合体を解離させ、非ssRNA種を固相から退かせる目的で、20mMの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などであるがこれらに限定されないキレート剤を、グアニジンと組み合わせることができる。3つの前述の実施形態との結果比較により、カオトロープ-キレート剤洗浄がssRNAの純度を改善する(のであればその)程度を評価することが可能となる。
他の関連する実施形態では、dsRNAのクリアランスを最大にするために、ssRNAの溶出に先立って、種々のpH値での他の塩種又は複数塩種の組合せを用いた洗浄を評価することができる。基礎となる概念は一般に、ssRNAの溶出を引き起こさない最高pHにおける最も解離性の高い塩の濃度という条件は、所望のssRNAの溶出に先立って望ましくない混入物質の最も大きなサブセットを除去する可能性が高い、という考えのもと、かかる条件を適用する、というものである。その後に、所望の効果の達成に必要な最小塩濃度を決定するための調整を行うことができる。
いくつかの実施形態では、線状であるpH勾配は、その勾配で溶出する種間の分離の程度を変更するために、又は特にサイズの異なるssRNA分子間の分画を改善するために、改変され得る。10装置容量のpH勾配で溶出することが、所望の程度の分離を生じない場合、その持続時間は20装置容量、又は50装置容量、若しくは100装置容量、又はそれ以上に延長され得る。
いくつかの実施形態では所望のssRNAを溶出し、それをdsRNAから分離するためのpHの増加は段階的に行うことができる。前の洗浄工程においてdsRNA含有量が十分に減少した場合、方法を単純化し、可能な限り最高の濃度及び可能な限り最低の容積で溶出されたssRNAを得るために、ssRNAを単一工程で溶出することができる。あるいは、pHを上昇させるステップの連続において段階的溶出が行われてもよい。個々のステップは、比較的穏和であってもよく、又は特定の調製物の必要性に応じて大きくてもよい。いくつかの実施形態では、所望のssRNAを溶出するためのpHの上昇が単一のステップで行われ得る。
ある実施形態では、dsRNA及びssRNAを含有する試料は、dsRNAの大部分による結合を妨げるpHで、第一級アミノ固相上にロードされ得る。いくつかのそのような実施形態では、mRNAのサイズに応じて、試料ロード中のpHはpH8.0、若しくはpH8.5、若しくはpH9.0、又はssRNAの結合を妨げないより高いpHであり得る。
特別な場合を代表する実施形態において、ssRNAは、一定のpHで塩勾配によって溶出され得る。これは、最初に、塩の非存在下でssRNAが溶出する値のすぐ下の値までpHを上昇させることを必要とする。次いで、塩勾配をそのpHで適用する。この実施形態は、固定されたpHでの塩勾配の標準的なアニオン交換溶出形式と表面的な類似性を有するが、大きなmRNAの塩勾配が成功するのはさもなければ上昇した動作温度においてのみであるため、dsRNAをssRNAから分離する分野では依然として異彩を放つもの(distinctive)である。
クロマトグラフィーカラムに試料をロードするための条件に試料を平衡化する多くの方法は、当業者に公知である。これらの方法のいずれも、方法の真の性質を変更することなく使用することができる。これらの方法の中には、実験室規模の透析方法、タンジェンシャルフロー濾過膜による透析濾過方法、及び緩衝液交換クロマトグラフィーの方法がある。場合によっては、試料を目標pHまで滴定し、必要であれば、試料を水又は低塩若しくは非塩含有緩衝液で希釈することによって、適切な試料平衡化が達成され得る。
ある実施形態では、ssRNAと固相の第一級アミノ基との間の水素結合と競合する糖の存在により、pHを上昇させることによるdsRNAからのdsRNAの分離が増強されて、糖の非存在下よりも低いpHでssRNAを溶出させる、という結果が予想される。かかる実施形態の一つにおいて、糖は、ソルビトール、又はキシリトール、又はマンニトール、トレハロース、又はスクロース、又は別の糖、又は糖の組み合わせである。かかる実施形態のいくつかでは、糖の濃度は、0.1%~20%、又は1%~20%、又は5%~20%、又は10%~20%、又はより高い、より低い、又は中間の範囲内の値の範囲であり得る。
関連する実施形態では、ssRNAと固相の第一級アミノ基との間の水素結合と競合する非イオン性カオトロープの存在により、pHを上昇させることによるdsRNAからのdsRNAの分離が増強されて、カオトロープの非存在下よりも低いpHでssRNAを溶出させる、という結果が予想される。かかる実施形態の一つにおいて、カオトロープは尿素である。かかる実施形態のいくつかでは、尿素の濃度が0.1M~10M、又は1M~9M、又は2M~8M、又は4M~6M、又はより高い、より低い、又は中間の範囲内の値の範囲であり得る。別のそのような実施形態では、カオトロープはジメチルスルホキシドである。いくつかのそのような実施形態において、ジメチルスルホキシドの濃度は、99%までである。他の関連する実施形態において、非イオン性カオトロープはpH勾配によって所望のssRNAを溶出する前に、洗浄ステップ中に適用され得る。
別の実施形態では、アルカリ性アミノ酸の存在により、pHを上昇させることによるdsRNAからのdsRNAの分離が増強されて、アルカリ性アミノ酸の非存在下よりも低いpHでssRNAを溶出させる、という結果が予想される。かかる実施形態の一つにおいて、アルカリ性アミノ酸は、ヒスチジン、又はヒスタミン、又はリジン、又はアルギニン、又は別のアルカリ性アミノ酸、又はアルカリ性アミノ酸の混合物である。かかる実施形態の一つにおいて、ヒスチジンの濃度は1mM~250mM、又は10mM~250mM、又は20mM~250mM、又は50mM~250mM、又は100mM~250mMの範囲、又はより高い、より低い、又は中間の範囲内の値であり得る。別のかかる実施形態では、リジンの濃度は1mM~10M、又は10mM~10M、又は100mM~10M、又は1M~10M、又はより高い、より低い、又は中間の範囲内の値であり得る。別のかかる実施形態では、アルギニンの濃度は1mM~850mM、又は10mM~850mM、又は100mM~850mM、又は425mM~850mMの範囲、又はより高い、より低い、又は中間の範囲内の値であり得る。
mRNAを含む核酸は、多価金属カチオンに対して高い親和性を有することが知られている。それらは、主に、金属イオンと、核酸の骨格に沿った負に荷電したホスファチジン酸残基との間の配位結合によって、互いに強い会合を形成する。カルシウム及びマグネシウムは両方ともこのような相互作用に関与することが知られており、両方とも2+の電荷を有する二価の金属カチオンである。3+の電荷をもつ3価のカチオンである第二級鉄は、核酸とより積極的に相互作用する。これらのイオンのいずれか1つが核酸と相互作用する各時点で、それは、同等数の負電荷を中和する。これは、所与のmRNA分子上の負電荷が減少し、アニオン交換体とのmRNAの相互作用を弱めるという表面的な予想を作り出す。そうではなく、多価金属カチオンの添加は典型的には非特異的架橋の形成をもたらし、これは、ssRNAに、クロマトグラフィー装置から溶出しない大きな凝集体を形成させる。
mRNA調製には一般に多価カチオンが添加されるので、全ての実施形態において、正に荷電した第一級アミノ基を主に担持する固相上に試料をロードする前に、その含量を減少させ、好ましくは多価金属カチオンを試料から完全に排除する工程を行うこと;又は装置が溶出に供される前に、多価金属カチオンを除去するための工程を少なくとも行うこと、が推奨される。多価金属カチオンを事前に除去することにはさらなる理由が少なくとも2つある。第1の理由は、多価金属カチオンには鎖内dsRNA配列及び鎖間dsRNA配列の形成又は安定化を促進する傾向があり得ることである。第2の理由は、金属イオンが核酸とタンパク質との間の非特異的会合を安定化し、それらの間に安定な架橋を本質的に形成することである。配位結合はイオン結合よりも15~60倍強いので、配位錯体は、飽和レベルのNaCl及びグアニジニウム塩を含む非金属塩への曝露にも容易に耐える。このことは、本発明の方法から最高のssRNA純度及び回収率を得るために、多価金属カチオンを可能な限り抽出することを必須にする。多価金属カチオンの効果的な抽出を考慮すると、核酸-タンパク質複合体の効果的な解離は、グアニジニウム塩などの高濃度のカオトロピック塩で、及びより低い程度で、NaClなどの高濃度の非カオトロピック塩で、達成されうる。
核酸-金属-混入物質複合体のキレート剤による解離又はキレート剤-高塩による解離が試料調製中に実施され、及び/又はキレート化洗浄又はキレート化-カオトロープ洗浄が実施されるいくつかの実施形態では、その後、pH制御を提供するために使用される薬剤を超えて塩を含まない洗浄工程が実施され得る。これは、ssRNAが低塩環境で溶出されることを可能にする。
他の実施形態では、pHを増加させることによって、ssRNAの溶出中にキレート剤濃度及び高塩濃度が維持され得る。他の実施形態では、高塩が維持されている間、キレート剤は排除されていてもよい。他の実施形態では、キレート剤が維持されている間、高塩は除去されていてもよい。
本発明の特に利益のある点は、ssRNA調製物からDNAプラスミドを除去するその能力が、インビトロ転写混合物又は部分的に精製されたインビトロ転写混合物のヌクレアーゼ消化の実施を不要にすることである。このことは、ヌクレアーゼ消化では酵素を活性とするためにマグネシウムイオンの添加を必要とすることからして、不釣り合いに高い価値を有する。該マグネシウムイオンは所望のssRNAの、それ自体及び他の試料成分との架橋に潜在的に寄与し、実際的な結果として、所望のssRNA産物の回収を低減させる。ヌクレアーゼ消化を不要にすることにより、マグネシウムイオンの添加が不要となり、ssRNAの収率が損なわれることがなくなる。
本発明の方法がssRNAからプラスミドDNAを分離する能力にかかわらず、ヌクレアーゼ消化を望まれる程度まで実施し、次いで、第一級アミノ基を主に有する正に荷電した固相を過剰のキレート剤で洗浄して、残留マグネシウムイオンを退かせてもよい。このような実施形態では、5mMヌクレアーゼ酵素の存在下でプラスミドDNAをヌクレアーゼで消化した後、EDTAが10~50mMの範囲かそれ以上のEDTAを含むキレート洗浄を行うことができる。
インビトロ転写混合物から始まる、ある実施形態では、多価金属カチオンを捕捉する目的で、EDTAを10~50mmの最終濃度まで添加する。pHがpH7~pH8.0の範囲にあると仮定すると、必要に応じて試料を濾過し、次いで、50mM Tris、100mM NaCl、10mM EDTA、pH8.0に平衡化した第一級アミノクロマトグラフィー装置にロードすることができる。試料をロードした後、装置を50mM Tris、3Mグアニジン-HCl、20mM EDTA、pH8.0で10~20装置容量洗浄する。次いで、カラムを20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、pH8.0で洗浄して、グアニジン及びEDTAを装置から洗い流し、ssRNAの溶出の準備をする。次いで、ssRNAを、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、250mMアルギニン、pH11.0に向かう線形勾配で50装置容量で溶出する。画分回収の直後に、ssRNAピークを含有する容器を、1M酢酸を添加することによって中和する。
上記実施形態を拡張したある実施形態では、本発明の方法の後の中和試料を、最終精製のためにオリゴdTアフィニティークロマトグラフィー装置に適用する。
上記の実施形態を拡張した代替的実施形態では、中和された試料が最終精製のために疎水性相互作用クロマトグラフィー装置に適用される。
インビトロ転写混合物で始まる、ある実施形態では、混合物が最終濃度が2.0M~2.5Mになるように塩化リチウム(LiCl)を添加することによって沈殿させられる。上清を廃棄し、沈殿物を50mM Tris、100mM NaCl、20mM EDTA、pH8.0で再懸濁し、必要に応じて濾過して濁りを除去する。次いで、試料を、50mM Tris、100mM NaCl、10mM EDTA、pH8.0に平衡化した第一級アミノ固相にロードする。試料をロードした後、装置を50mM Tris、1.5Mグアニジンイソチオシアネート、20mM EDTA、pH8.0で10~20装置容量で洗浄する。次いで、カラムを20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、100mM NaCl、pH8.0で洗浄して、グアニジン及びEDTAを装置から洗い流し、ssRNAの溶出の準備をする。次いで、ssRNAを、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、100mM NaCl、pH11.0に向かう50装置容量の線形勾配で溶出する。画分回収の直後に、ssRNAピークを含む容器を、画分体積の5%の最終割合となるまで1M酢酸を添加することによって中和する。密接に関連する実施形態では、LiClの代わりにNaCl又は別の塩でmRNAが沈殿される。別の密接に関連する実施形態において、mRNAは、約2.5%の最終割合までエタノールを添加することによって沈殿させられる。
工業プロセスの開発者はしばしば、酵素の使用を避けることを好む。これは、酵素の使用でプロセスの費用が増加するためであり、また、添加されるものは、後で除去されなければならず、そして、それが除去されたことを文書化するために試験を実施しなければならないからである。しかし、開発プログラムの初期段階での酵素の使用は企業がより早く臨床試験に参加することを可能にする便利なショートカットであり得、酵素の使用を必要としないプロセスのより進んだバージョンはその後に開発される。上記のように、インビトロ転写混合物は一般に、mRNAの産生のための鋳型として使用されるDNAプラスミドを排除するために、DNAアーゼ酵素で処理される。RNA精製では、所与のインビトロ転写混合物中のタンパク質混入物質負荷を減少させるために、タンパク質分解酵素を用いることもできる。いくつかの実施形態では、インビトロ転写混合物をまずDNAseで処理してプラスミドを除去し、次いでプロテイナーゼKなどのタンパク質分解酵素で処理して、本発明の方法を実施する前にDNAse及び大量の他のタンパク質混入物質を除去することができる。他の実施形態では、本発明の方法がDNAseを使用することを不要にするので、インビトロ転写混合物はプロテイナーゼK又は別のタンパク質分解酵素のみで処理され得る。
ある実施形態では、インビトロ転写混合物をプロテイナーゼKで処理して、タンパク質負荷を減少させる。試料をメンブランフィルターに通して濾過して粒子を除去し、次いで、50mM Tris、10mM EDTA、pH8.0に平衡化した第一級アミノ固相にロードする。試料をロードした後、装置を50mM Tris、3Mグアニジン-HCl、20mM EDTA、pH8.0にて10~20装置容量で洗浄する。次いで、カラムを20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、50mM NaCl、pH8.0で洗浄して、グアニジン及びEDTAを装置から洗い流し、ssRNAの溶出の準備をする。次いで、ssRNAを、20mM Tris、20mM ビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、50mM NaCl、pH 11.0に向かう50装置容量の線形勾配で溶出する。画分回収の直後に、ssRNAピークを含有する容器を、1M酢酸を添加することによって中和する。
ある実施形態では、インビトロ転写混合物を、2Mのグアニジンイソチオシアネート及び20mMのEDTAで処理する。必要であればpHを7.5±0.5に調整し、必要であれば試料を濾過して固形物を除去する。第一級アミノ固相を、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、pH8.0中の2Mグアニジンイソチオシアネート及び20mM EDTAで平衡化する。試料を固相上にロードし、次いで、UV吸光度がゼロに近づくまで平衡化緩衝液で追跡する。次いで、固相を20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、50mM NaCl、pH8.0で洗浄し、次いで20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、20mM EDTA、pH11.0に向かうpH勾配で溶出させる。勾配は、単一ステップ、一連のステップとして、又は連続(線形)フォーマットで実行されうる。画分回収の直後に、ssRNAピークを含有する容器を、1M酢酸を添加することによって中和する。
本発明は高温でdsRNAとssRNAとの分離を実施することの必要性を後回しにできるという利点を提供するが、そうする可能性を排除するものではない。
いくつかの実施形態では、周囲温度で方法を実施する前に、37℃、45℃、56℃、60℃、70℃、又は中間、より高い、若しくはより低い温度などの高温に、試料が平衡化されてもよい。
いくつかの実施形態では、本発明の方法は37℃、45℃、56℃、60℃、70℃、又は中間、より高い、若しくはより低い温度などの高温で実施され得る。このような実施形態では、ssRNAが周囲温度で溶出するよりも低いpHで溶出する。
いくつかの実施形態では試料が高温に平衡化され、本方法は高温で実施されうる。
ある実施形態では、本発明の方法がオリゴdT(OdT)リガンドを使用するアフィニティークロマトグラフィーの方法と組み合わせることができる。2つの方法は、所望の任意の順序で組み合わせることができる。
ある実施形態では、本発明の方法は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)の方法と組み合わせることができる。2つの方法は、所望の任意の順序で組み合わせることができる。かかる実施形態の一つでは、HIC固相上の疎水性リガンドはフェニル基からなり得る。別のかかる実施形態では、HIC固相上の疎水性リガンドはブチル基からなり得る。別のかかる実施形態では、HIC固相上の疎水性リガンドはヘキシル基からなり得る。他のかかる実施形態では、HIC固相上の疎水性リガンドは異なる脂肪族基若しくは芳香族基、又は脂肪族特性及び芳香族特性の両方を具現化する基からなり得る。
ある実施形態では、本発明の方法は、逆相クロマトグラフィー(RPC)の方法と組み合わせることができる。2つの方法は、所望の任意の順序で組み合わせることができる。かかる実施形態の一つでは、固相表面の疎水性は、固相を合成するために使用されるスチレンジビニルベンゼン(SDVB)ポリマーの本来の疎水性によって付与され得る。別のかかる実施形態では、固相表面の疎水性は、固相の表面に固定されたリガンドの疎水性によって付与され得、ここで該リガンドは脂肪族炭化水素、若しくは芳香族炭化水素、又は脂肪族特性及び芳香族特性の混合を有するリガンドを表す。
ある実施形態では、本発明の方法は、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーの方法と組み合わせることができる。2つの方法は、所望の任意の順序で組み合わせることができる。
ある実施形態では、本発明の方法は、オリゴdTリガンドを使用するアフィニティークロマトグラフィー及びRPCと組み合わせることができる。3つの方法は、所望の任意の順序で組み合わせることができる。
ある実施形態では、本発明の方法は、DNAプラスミドの調製物からssRNAを除去するために使用することができる。密接に関連する実施形態において、本発明の方法は、タンパク質調製物からssRNAを除去するために使用され得る。このような実施形態では、この方法がmRNAの合成に使用される酵素調製物から混入ssRNAを除去するために使用され得る。これらの実施形態のいずれにおいても、DNA及びタンパク質が、主に第一級アミノ基を有する正に荷電した固相に結合する、酸性から中性のpH条件及び低塩濃度で、試料をロードすることができる。次いで、それらを塩勾配で溶出させて、固相の表面に結合したssRNAを残しながら、混入物質に対するそれらの純度を増加させることができる。ssRNAを除去することのみを意図する、密接に関連する実施形態では、試料及び固相条件は、RNAが結合したままとしながらDNA及びタンパク質が固相を通って流れる、酸性から中性のpHでの高濃度の塩を含み得る。
ある実施形態では、本発明の方法は、試料中のssRNAの量を定量するための分析ツールとして使用することができる。このような実施形態では、酸性から中性のpHの試料を高濃度の塩と混合して、ほとんどの非ssRNA分子が結合しないようにすることができる。次いで、第一級アミノ固相は、結合したssRNAをサイズ増加でソートするためにpHの勾配を増加させることによって溶出に供される。密接に関連する実施形態においては、第一級アミン固相は、アッセイの感度を最大にする目的のために、単一のピークにおいて全ssRNAを溶出するのに十分なアルカリ性pHまで、単一のステップで溶出に供され得る。関連する実施形態において、第一級アミン固相は25mM NaOH、又は50mM NaOH、又は100mM NaOH、又はより高い、より低い、又は中間の濃度に向かう線形勾配で溶出に供され得る。別のそのような実施形態では、第一級アミノ固相は25mM NaOH、又は50mM NaOH、又は100mM NaOH、又はより高い、より低い、又は中間の濃度まで漸増ステップで溶出に供され得る。別のそのような実施形態では、第一級アミノ固相が25mM NaOH、又は50mM NaOH、又は100mM NaOH、又はより高い、より低い、又は中間濃度までの単一のステップで溶出に供され得る。上記の実施形態のいずれにおいても、試料を第一級アミノ固相上にロードした後、RNAと相互作用して蛍光を生成する色素を注入し、蛍光色素-RNA複合体を蛍光モニタに通してアッセイの感度を増幅することができる。このような実施形態では、色素はリボグリーンでありうる。
ある実施形態において、本発明の方法は、その実施を容易にするためのキットの形態で提供され得る。キットは2つ以上の固相を含み得、そのうちの少なくとも1つは主に第1級アミノ基を担持する正に荷電した固相であり、キットはまた本発明の方法を説明する説明書を含みうる。このような実施形態では、第2の固相はオリゴdTクロマトグラフィー装置である。別のかかる実施形態では、第2の固相は疎水性相互作用クロマトグラフィー装置である。別のかかる実施形態では、第2の固相はオリゴdTクロマトグラフィー装置であり、第3の固相は疎水性相互作用クロマトグラフィー装置である。
本発明に従って使用される固相を用いたmRNAの精製の典型的なプロトコールにおいて、第一級アミンモノリスは以下のように使用される。
第一級アミンモノリスは、周囲温度で水性条件下で大きな一本鎖mRNA(ssRNA)を精製する。第一級アミンモノリスはdsRNA、DNA、タンパク質、エンドトキシンを除去し、一方、ssRNAをサイズの昇順に分画する(図1)。第一級アミンモノリスは、研究グレードのssRNAの一段階精製のために、又は多段階精製プロセスにおける高分解能捕捉段階として、使用することができる。また、インビトロ転写混合物、部分精製試料、クロマトグラフィー画分、及び製剤化された原薬の迅速な高分解能分析特性決定を可能にする。
第一級アミンモノリスは、上昇pH勾配でssRNAを精製するアニオン交換及び水素結合の独特の組み合わせを使用する。DNA、タンパク質、及びdsRNAは、ssRNAの前に溶出する。精製性能は、溶出前にdsRNA、DNA、及びタンパク質の大部分を除去する高塩洗浄によって増強される。注目すべきことに、ssRNAは、カオトロピック塩が飽和濃度であっても結合したままである。高塩洗浄中のキレート剤の含有は混入物質の除去をさらに増強し、残留する微量レベルの混入物質及び凝集体をpH勾配により除去することを可能とする。
第一級アミンモノリスからのssRNA画分は所望により、CIMmultus Oligo dTを使用するアフィニティークロマトグラフィー、CIMmultus C4 HLDを使用する疎水性相互作用クロマトグラフィー、又はCIMmultus SDVBを使用する逆相クロマトグラフィー (これらのカラムのいずれかに関するより詳細な情報についてはBIA Separationsに問い合わせのこと)によってさらに精製することができる。第一級アミンモノリスはまた、高塩試料をさらなる試料調製なしでロードすることができるので、特に高塩ステップ様沈殿又は疎水性相互作用クロマトグラフィーの後に、仕上げ方法(polishing method)として使用することができる。
第一級アミンモノリスは、ラジアルフロークロマトグラフィー装置である。これは、シリンダの外側から内側へ流れを分配するように設計されている。これは、シリンダーの物理的構造を安定化する効果を有し、また、分離性能を改善する溶出中の濃縮効果を有する。実験を実施する前には、流れの方向が装置のマーキングに沿ったものとなるように、装置をクロマトグラフに接続するよう注意すること。一部のクロマトグラフには、ソフトウェアに組み込まれているデフォルトの逆流機能があり、これにより、フロー方向が警告なしに逆になる可能性があることに注意する。実験を行う前に、この機能が無効になっていることを確認する。
第一級アミンモノリスは、20%エタノール中で送達される。実際に使用する前に、下記のように消毒及び再生することが推奨される。また、実験結果を比較するためのベースラインを提供するために、試料なしの実行(run)を実施することが推奨される。いくつかの緩衝液成分はUVを吸収し、緩衝液間を移ることのいくつかは、実験結果の解釈を混乱させ得る屈折率アーチファクトを生成しうる。
試料及び調製:第一級アミンモノリスは、DNAse及び/又はプロテイナーゼKによる消化後を含むインビトロ転写混合物、並びに塩沈殿物又は有機溶媒沈殿物から再懸濁されたssRNA、又は他の精製方法からの部分的に精製されたssRNAを処理するために使用することができる。二価金属カチオンを含有する試料は、金属イオンの推定濃度の約10倍のキレート剤で処理されるべきである。粒子は、注入の前に遠心分離又は濾過(0.45μm)によって除去されなければならない。試料のpHはpH6.0~8.0とする。塩分含有量は考慮されない。
緩衝液A:平衡緩衝液/勾配開始緩衝液。20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、50mM NaCl、pH8.0。
緩衝液B:高塩洗浄緩衝液。50mM Tris、3.0Mグアニジン-HCl、20mM EDTA、pH8.0。
緩衝液C:勾配終点緩衝液。20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、50mM NaCl、pH 11.0。
緩衝液D:洗浄/消毒用緩衝液。2M NaCl、1M NaOH.
緩衝液E:再生緩衝液。3.0M酢酸アンモニウム。
緩衝液Aを用いてカラムを平衡化する:出てくる緩衝液(output buffer)のpH及び導電率が入れる緩衝液(input buffer)と同じになるまで、ポンプで平衡化緩衝液をカラムに入れて通す。流量:10カラム容量(CV)/分。
試料を注入する。大量の試料、特にインビトロ転写混合物のような粗試料を適用する間、操作圧力を観察する。必要に応じて流量を減らし、使用圧力を許容範囲内に維持する。
緩衝液Aを用いた洗浄1:10~20CVの平衡化緩衝液。後端の混入物質は後続の高塩洗浄ステップによって除去されるので、UV信号が完全にベースラインに戻るのを待つ必要はない。
緩衝液Bを用いた洗浄2:10~20CVの平衡化緩衝液。グアニジンはUVを吸収するので、直ちにピークが生じることに留意されたい。DNA及びdsRNAは、典型的にはピークの頂点に接近するかなり鋭いピークとして溶出する。グアニジンピークがレベルプラトーに達するまで洗浄を続ける。
緩衝液Aを用いた洗浄3:10~20CVの平衡化緩衝液、又はUVがベースラインに戻るまで。
緩衝液Cに向かう溶出勾配:100%勾配終点緩衝液に向かう50~100CVの線形勾配、次いで、10 CVの間100%で保持する。溶出直後に画分を中和する。
緩衝液Dで洗浄/消毒する。pH勾配の最後にかなりの量の物質がカラムに結合したままであるかどうかを明らかにするため、10~20CVの消毒緩衝液で処理することが、毎回の実行後に推奨される。消毒ステップの内容物はさらなる分析のために、溶出時に収集され、中和されてもよい。カラムにインビトロ転写混合物をロードする場合、消毒工程の持続時間を1時間に延長する必要があり得る。極端な汚損の場合には、消毒期間を16~24時間に延長することが必要な場合がある。消毒中に最小の流速を維持することは、OHイオンを連続的に補充し、単にそれらをその場で加水分解するのみならずカラムから混入物質を洗い流すので、より良好な結果をもたらす傾向がある。
カラムを再生する:20CVの緩衝液A又は水を用いてカラムからNaOHを洗い流し、次いで20CVの緩衝液Eで洗浄する。これはモノリスの表面から水酸化物対イオンを退かせるためであり、さもなければ水酸化物対イオンがカラムの平衡化を遅らせ、溶出中にpHアーチファクトを生成し得る。
保存:消毒後、緩衝液A又は水でカラムを洗い流し、20%エタノール中に保存する。
代表的なクロマトグラムを図8に示す。
変更(Variations)、最適化、トラブルシューティング
個々のステップの時間を最適化するためのガイドとしてクロマトグラムを使用する。
例えば、完全飽和までの濃度の異なるカオトロピック塩、及び異なる濃度のキレート剤を使用して、高塩洗浄の大幅な変更が可能である。プロトコールに示される濃度は、出発点として意図される。より低い濃度で同等の純度が提供される場合、かかるより少ない量とすることで材料費が低減され、緩衝液調製が単純化される。
カオトロピック塩は非カオトロピック塩に置き換えうるが、RNAを沈殿させる高濃度の塩を適用する場合には注意が必要である。これらは、とりわけ、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウムを含む。予備的実験結果では、1M塩化ナトリウムでの洗浄が、dsRNA及びDNAの大部分を除去するものの、UV吸光度をベースラインに回復させるために長期洗浄を必要とし得ることが示されている(図1)。
グアニジン及びEDTAを試料に直接添加し、カラムを高塩洗浄緩衝液に向けて平衡化するワークフロー単純化を実施することができる。試料ロードに続いて高塩緩衝液を使用した最初の洗浄を行い、次に上から緩衝液Aを使用した第2洗浄を行い、その後溶出を行う。このアプローチはまた、dsRNA及びDNAが結合表面積に対して競合することを妨げるので、より高いssRNA結合能力をサポートし得ることに留意されたい。このアプローチによれば、カラムの汚れも低減され得る。
高塩洗浄ステップは、完全に省略することができる。これは、dsRNA及びssRNA、又はDNA及びssRNAの相対量を決定することを目的とする試料の分析的特徴解析に好ましい場合がある。本方法は一般に、dsRNAとDNAとを区別しない。
pH勾配からの塩の除去はdsRNA及びssRNAの分離を増すが、そのようにすることは収率を低下させ、溶出が起こるpHも上昇させる。RNAを沈殿させる塩の使用は、その濃度が沈殿レベルを十分下回って維持される限り許容される(図6)。カオトロープのような、RNAの溶解性を促進する塩もまた、pH溶出中に使用され得るが、それらは後続の精製方法を妨害し得ることを考慮すること。
動作温度は、溶質をより早く溶出させる効果を伴って、pH勾配中に上昇し得る。制御されていない操作温度は、再現性を損なうことがある。
線形pH勾配は、段階的勾配フォーマットに変換することができる。CIMmultus dsX-βが直交精製法(orthogonal purification method)と組み合わされる場合などのいくつかの場合には、単一のpHステップでssRNAを溶出することが実用的であり得る。
不適切な洗浄の兆候としては、一連のランにわたる操作圧力の漸増、所定の種が先に行ったランにおけるより早く又は遅く溶出する選択性シフト、及び/又は、試料が注入されていないにもかかわらず溶出中にピークが現れるゴーストピークの出現、が挙げられよう。
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
実施例1.
周囲温度においてpH勾配を用いて、第一級アミノ固相を用いてssRNAからdsRNAを分離するに際して、ssRNAを溶出する前に、塩ステップによってdsRNAを除去する
21b~500bの範囲のdsRNA分子を含むdsRNAラダーと、200b~6000bの範囲のssRNA分子を含むssRNAラダーと、を含む試料を、モノリスクロマトグラフィー装置の形態の第一級アミン固相に適用した。第一級アミンモノリスを、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、pH8.0で平衡化した。試料を適用し、モノリス内のチャネルから未結合材料を退かせるために洗浄液を適用した。次いで、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、1M NaCl、pH8.0を用いた洗浄工程を適用し、続いて、NaClを除去するための別の洗浄工程を適用した。次いで、モノリスを、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、pH 11.0に向かう線形勾配で溶出に供した。図1に示すように、すべてのdsRNA種はNaClステップで溶出し、一方、ssRNAは結合したままであり、pH勾配の後の方で溶出した。dsRNAラダー内の種間で明らかなサイズ分離は観察されないが、ssRNAラダー内の種間では明確な分離が観察される。
実施例2.
周囲温度においてpH勾配を用いて、第一級アミノ固相を用いてssRNAからdsRNAを分離するに際して、ssRNAを溶出する前に、6Mグアニジン-HCl及び20mM EDTAを含有する洗浄ステップによってdsRNAを除去する
21b~500bの範囲のdsRNA分子を含むdsRNAラダーと、5000bのssRNAと、を含む試料を、モノリスクロマトグラフィー装置の形態の第一級アミン固相に適用した。第一級アミンモノリスを、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、pH8.0で平衡化した。試料を適用し、モノリス内のチャネルから未結合材料を退かせるために洗浄液を適用した。次いで、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、6Mグアニジン、20mM EDTA、pH8.0を用いた洗浄工程を適用し、その後、グアニジン及びEDTAを除去するための別の洗浄工程を行った。次いで、モノリスを、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、pH 11.0に向かう線形勾配で溶出に供した。図2に示すように、すべてのdsRNA種は塩ステップで溶出し、一方、ssRNAは結合したままであり、pH勾配の後の方で溶出した。
実施例3.
強アニオン交換体及び弱アニオン交換体からssRNAを溶出するpH勾配は失敗
pH勾配中のssRNAの挙動を、強アニオン交換体(第四級アミン、QA)及び弱アニオン交換体(第三級アミン、DEAE)を実験対照区として用いて、これらに対して第一級アミノ固相上におけるpH勾配溶出の性能を比較することで特徴解析した。両アニオン交換体の物理的形態は、1mLの体積を有するモノリス装置であった。カラムを20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、pH8.0で平衡化した。約5000ヌクレオチド塩基(5000b)のssRNAを含有する試料を注入し、カラムを平衡化緩衝液で洗浄して、非結合物質を退かせた。次いで、カラムを、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、pH11.0に向かう線形勾配で溶出に供した。図3は、ssRNAが強アニオン交換体又は弱アニオン交換体のいずれにおいてもpH勾配内で溶出せず、1M NaOHでカラムを洗浄することによってのみ除去されたことを示す。
実施例4.
周囲温度においてpH勾配を用いて、第一級アミノ固相を用いてssRNAからプラスミドDNAを分離する
約6000塩基対のサイズを有するスーパーコイルdsDNAプラスミド及び約5000塩基のサイズを有するssRNAを含有する試料を、モノリスクロマトグラフィー装置の形態である第一級アミン固相に適用した。第一級アミンモノリスを、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、pH8.0で平衡化した。試料を適用し、モノリス内のチャネルから未結合材料を退かせるために洗浄液を適用した。次いで、モノリスを、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、pH 11.0に向かう線形勾配で溶出に供した。図4に示すように、DNAプラスミドは最初に溶出され、後に溶出されるssRNAから十分に分離された。
実施例5.
周囲温度においてpH勾配を用いて、第一級アミノ固相を用いてssRNAからプラスミドDNAを分離するに際して、ssRNAを溶出する前に、塩ステップによってDNAを除去する
約6000塩基対のサイズを有するスーパーコイルdsDNAプラスミド及び約5000塩基のサイズを有するssRNAを含有する試料を、モノリスクロマトグラフィー装置の形態である第一級アミン固相に適用した。第一級アミンモノリスを、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、pH8.0で平衡化した。試料を適用し、モノリス内のチャネルから未結合材料を退かせるために洗浄液を適用した。次いで、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、1M NaCl、pH8.0を用いた洗浄工程を適用し、続いて、NaClを除去するための別の洗浄工程を適用した。次いで、モノリスを、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、pH11.0に向かう線形勾配で溶出に供した。図5に示すように、DNAプラスミドは塩段階で溶出し、一方、ssRNAは結合したままであり、pH勾配の後の方で溶出した。
実施例6.
周囲温度における、塩とpH勾配溶出との組み合わせの、DNAとssRNAの分離に対する効果
一連の分離を、単純なpH勾配溶出と、終点緩衝液が50mM NaClを含むpH勾配溶出と、終点緩衝液が1000mM NaClを含むpH勾配溶出と、を比較して行った。各実験において、約6000塩基対のサイズを有するスーパーコイルdsDNAプラスミド及び約5000塩基のサイズを有するssRNAを含有する試料を、モノリスクロマトグラフィー装置の形態である第一級アミン固相に適用した。第一級アミンモノリスを100mM Tris、pH8.0で平衡化した。試料を適用し、モノリス内のチャネルから未結合材料を退かせるために洗浄液を適用した。第1の実験では、モノリスを125mMグリシン、pH10.5に向かう線形勾配で溶出に供した。第2の実験では、モノリスを、125mMグリシン、50mM NaCl、pH10.5に向かう線形勾配で溶出に供した。第3の実験では、モノリスを、125mMグリシン、100mM NaCl、pH10.5に向かう線形勾配で溶出に供した。図6に示すように、塩化ナトリウムを含まない場合では、ssRNAピークの中心はpH 10.2で生じた。勾配終点緩衝液中に50mM塩化ナトリウムを含む場合では、ssRNAはpH 10.0で溶出した。勾配終点緩衝液中に100mM塩化ナトリウムを含む場合では、ssRNAはpH9.9で溶出した。塩化ナトリウムがpH勾配にわたって50mMの濃度レベルに維持された場合、ssRNAはpH 9.8で溶出した(図示せず)。塩化ナトリウムがpH勾配にわたって100mMの濃度レベルに維持された場合、ssRNAはpH9.6で溶出した(図示せず)。塩化ナトリウムの含有は、他の興味深い影響を引き起こした。DNAとssRNAとの間の分離はNaClの非存在下で最大であり、大量のNaClは、分離をさらに減少させた。しかし、ssRNAの収率は塩化ナトリウムの存在下で明らかに改善された。
実施例7.
dsRNAとDNAによる反応の均一性
前述の実験の中で明らかなように、dsRNA及びDNAは同様に挙動し、両方とも塩洗浄によって排除され、両方ともpH勾配内でssRNAから分離されるべきであることを示唆し、また、DNAが本発明の方法を特徴解析するためのdsRNA挙動のモデルとして使用され得ることを示唆する。代表的な転写混合物からssRNAを精製する過程で決して起こらない極端に最悪の場合における本発明の方法の能力を試験するために実験を行った。この試験は、約13,000塩基のサイズのdsRNAから約1700塩基の比較的小さなssRNAを分離すること、及び13kbのdsRNAの溶出挙動を約6000塩基対のDNAプラスミドと比較することを含んでいた。第一級アミンモノリスを100mM Tris、pH8.0で平衡化した。各実験において、試料を適用し、モノリス内のチャネルから未結合の材料を退かせるために洗浄液を適用した。次いで、モノリスを125mMグリシン、pH10.5に向かう線形勾配で溶出に供した。図7に示されるように、予想と一致して、DNA及び巨大dsRNAは、はるかに小さなssRNAの前に両方が溶出することで、大部分が共溶出した。ssRNAと2つのより大きな混入物質との間の分離の程度は他の実施例と比較して低くなったが、それにもかかわらず、明確な分離は明らかであった。実際には、所与のインビトロ転写混合物中のdsRNAは、ssRNAと同じ数の塩基を含有する。ssRNAがそのサイズに従ってpH勾配の後の方で溶出することを示す実施例4と比較して、これは、本発明がそれらのサイズにかかわらず、dsRNAとssRNAとの間の良好な分離を提供することを示唆する。この点はpH勾配でssRNAを溶出する前に塩洗浄によってdsRNAを容易に除去することができることを考慮すると、意味がないようであるが、本発明が塩洗浄を欠く場合であっても効果的な分離を達成しうるものであることを示す。図7の結果はまた、本発明が、ssRNAが15,000b以上、おそらく25,000b又はそれ以上てもうまく働くはずであることを示すことで注目される。
実施例8.
周囲温度においてpH勾配を用いて、第一級アミノ固相を用いてssRNAからdsRNAを分離するに際して、ssRNAを溶出する前に、キレート剤-カオトロープの組み合わせステップによってDNAを除去する
6000bpのスーパーコイルdsDNAプラスミド及び5000bのssRNAを含む試料を、モノリスクロマトグラフィー装置の形態である第一級アミン固相に適用した。第一級アミンモノリスを、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、pH8.0で平衡化した。試料を適用し、モノリス内のチャネルから未結合材料を退かせるために洗浄液を適用した。次いで、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、1Mグアニジン-HCl、20mM EDTA、pH8.0を用いた洗浄工程を適用し、その後、グアニジン及びEDTAを除去するための別の洗浄工程を行った。次いで、モノリスを、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、20mMグリシン、pH11.0に向かう線形勾配で溶出に供した。図8は、DNAプラスミドの大部分がグアニジン-EDTA(カオトロープ-キレート剤)洗浄で除去されたことを示している。残りの結合DNAは、pH勾配においてssRNAに先立って溶出した。
図8(1Mのグアニジンを使用)を図5(6Mのグアニジンを使用)とを比較すると、その結果は、ssRNAを溶出する前にDNAを完全に退かせるには1Mのグアニジン-HClでは不十分であることを示唆している。図5において、dsRNAピークは、6Mグアニジン洗浄ピークの最先の端に集中していた。図8ではDNAはグアニジン洗浄の始めの方(toward the front of the guanidine wash)で溶出し始めるが、図5より明らかに遅く、目立った尾部がある。ssRNAピークの直前に溶出するDNA/ssRNAピークの相対的サイズは、1MグアニジンHClがDNA/dsRNAを事前に退かせないという結論をさらに支持する。しかしながら、ssRNAは1Mグアニジンでの事前洗浄後に単一のピークで溶出する(図8)のに対して、図5(6Mグアニジン後)ではssRNAピークが予想通りに観察されたものの、その後、凝集体を表すと解釈される溶出物質が後に続いたことにも留意されたい。この比較は、所望のssRNAの挙動を変化させることなくDNA/sdRNAの最良のクリアランスを提供するためにカオトロープ濃度を調整することが、プロセス最適化のルーティンの一部として有用であることを示唆する。
実施例9.
多価アニオンの含有によるssRNA溶出pHの低下
DNAとssRNAの混合物をpH勾配で分画する一連の実験を行った。第一級アミン固相を100mM Tris、pH8.0で平衡化した。次いで、試料をロードし、平衡化緩衝液で洗浄した。125装置容量の線形勾配を125mMグリシン、pH10.5の終点緩衝液まで適用した。第2の実験では、100mMクエン酸塩を緩衝液に添加したことを除いて、前記条件を繰り返した。第3の実験では、100mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を緩衝液に添加したことを除いて、条件を繰り返した。図9に示されるように、添加剤は両方とも、DNA及びssRNAが溶出するpHの両方を強く低下させ、観察される内ではEDTAが最も強いpHを低下させた。pH低下の程度も両方とも、100mM塩化ナトリウムで達成されたよりも大きかった(図6)。塩化ナトリウムの結果と共通する点は、塩の存在が溶出勾配におけるDNA及びssRNAの収率を増加させたことであった。別の類似点は、塩化ナトリウム、クエン酸塩、又はEDTAのいずれによる溶出もpH8.0以下のpH値でssRNAを溶出させなかったことであった。
実施例10.
塩の存在下においてpH勾配を用いた溶出に先立ち高塩洗浄を行うssRNAの精製
モノリスなどのクロマトグラフィー装置の形態の第一級アミン固相を、50mM Tris、20mM EDTA、2M グアニジンイソチオシアネート、8.0±0.5に平衡化する。UVモニターをゼロにさせる。EDTA及びグアニジンイソチオシアネートを試料に添加し、試料のpHをpH8.0±0.5に調整する。必要であれば、試料を濾過して濁りを除去する。試料を第一級アミンモノリスに適用し、モノリスを、ベースラインがゼロに戻るまで平衡化緩衝液で洗浄する。強力なキレート-カオトロープ溶液中での試料の適用及び洗浄は、微量レベルのdsRNA、DNA、及びタンパク質の結合防止及び/又は除去を意図するものである。次いで、モノリスを、50mM Tris、5mM EDTA、100mMグアニジンイソチオシアネート、pH8.0±0.5にて少なくとも10装置容量で洗浄する。次いで、ssRNAを、65mMグリシン、5mM EDTA、100mMグアニジンイソチオシアネート、pH10.5±0.5に向かう線形勾配で溶出する。キレート剤の存在は多価金属カチオンの潜在的な存在による悪影響を防止するために、本方法全体を通して維持される。ssRNAの溶解度の低下を避けるために、実施例6に記載の100mM塩化ナトリウム又は実施例9に記載の100mMクエン酸若しくは100mM EDTAの代わりに100mMグアニジンイソチオシアネートを使用する。所望であれば、並行する実験において、ssRNAが溶出するpHをさらに低下させる目的で、グアニジンイソチオシアネートの濃度を上昇させる。所望であれば、並行する実験において、カオトロピック塩であるグアニジンチオシアネートを、異なる塩で置き換える。所望であれば、並行する実験において、キレート剤の種及び濃度を変更する。
実施例11.
pH-塩勾配の組み合わせを用いて、第一級アミン固相からインビトロ転写混合物を溶出する
以下の緩衝液を調製した:50mM Hepesを含有する緩衝液A、pH7.0;50mM Hepes、200mMピロリン酸ナトリウムを含有する緩衝液B、pH8.5;100mM水酸化ナトリウム、2.0M塩化ナトリウムを含有する緩衝液C;及び1.5M Hepesを含有する緩衝液D、pH7.0.2μmチャネル及びベッド容積100μLを有し20%エタノール中に保存される第一級アミンモノリスを、50CVの水で2mL/分(20CV/分)の流速にて洗浄した。カラムを緩衝液Aで平衡化し、反応の開始から30秒で採取した25μLのインビトロ転写混合物試料を注入した。カラムを20CVの緩衝液Aで洗浄し、次いで、20%緩衝液Bに向かう40CVの線形勾配を適用し、続いて、20%緩衝液Bで10CV分の勾配保持を行った。このセグメントは、DNAプラスミドを含むヌクレオチド及び二本鎖種を溶出した。50%緩衝液Bに向かう10CVの線形勾配を適用してmRNAを溶出し、続いて50%Bで勾配を保持した。100%Bに向かう追加の10CV線形勾配を適用し、続いて10CV分の勾配保持を行った。カラムを緩衝液Cで洗浄し、次いで緩衝液DでpH7に戻した。カラムを再平衡化し、インビトロ転写の開始4時間後に採取した試料を注入した。溶出は、前の試料と同様に行った。ランの完了後、カラムを20%エタノールで洗浄し、その溶液中に保存した。全てのクロマトグラフィー工程は、周囲温度で行った。溶出プロファイルを図10に示す。30秒で採取した試料に対応するプロファイルは長破線で示す。4時間で採取した試料に対応するプロファイルは実線で示す。短い破線は導電率を示す。予想された通り、CTP、UTP、ATP、及びGTPなどの構成ヌクレオチドのレベルは、新たに合成されたmRNAへのそれらの組み込みを反映して、インビトロ転写の過程にわたってより低いレベルに減少した。
参照文献
本明細書に引用される全ての参考文献は、その組み込みが本明細書の明示的な教示と矛盾しない限り、参照により本明細書に組み込まれる。
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[9] WO 2014/144767 A1

Claims (13)

  1. 一本鎖RNAを含有する試料を、少なくとも主に前記一本鎖RNAを結合させるのに十分なpHで、その表面上に第一級アミノ基を主に担持する又は第一級アミノ基のみを担持する固相に適用するステップ、
    上昇するpHに前記固相の表面を曝露させることによって、吸着された前記一本鎖RNAを前記固相の表面から溶出するステップ、
    を含む、一本鎖RNA精製の方法。
  2. 前記試料を適用した後でありかつ前記一本鎖RNAを溶出するより前に、前記一本鎖RNAの溶出に用いられた溶出緩衝液に比べてより高いイオン強度を有する洗浄緩衝液を用いて前記固相を洗浄するステップが少なくとも1つ提供される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記のより高いイオン強度を低下させるために前記少なくとも1つの洗浄ステップが提供される、請求項2に記載の方法。
  4. 前記試料を適用した後でありかつ前記一本鎖RNAを溶出するより前に、一本鎖RNAは前記固相に吸着されたままに維持し残存する二本鎖RNAは脱着させる上昇したpHを有する洗浄緩衝液を用いる洗浄ステップが少なくとも1つ提供される、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記洗浄緩衝液のイオン強度が、前記一本鎖RNAを溶出するために必要な塩のモル濃度に比べて0.5M~12M、又は1.0M~10M、又は2.0M~8.0M、又は4.0M~6.0M高い範囲にある、請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記洗浄緩衝液のイオン強度がカオトロピック塩、特にグアニジニウム塩、チオシアネート、過塩素酸塩及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるカオトロピック塩、の濃度で調整される、請求項2~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記固相の表面からの前記一本鎖RNAの溶出がpH7.5~pH12.0、又はpH8.0~pH11.5、又はpH8.5~pH11、又はpH9.0~pH10.5のpH範囲のpHを有する溶出緩衝液によって行われる、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記固相への前記試料の適用がpH約8.5未満のpH値で起こる、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記の本質的に水性である混合物中に、前記水性混合物との前記接触より前の前記固相の表面の環境中に、前記固相の表面から前記一本鎖RNAを溶出するための緩衝液中に、並びに/又は前記試料を前記固相に適用するステップ及び/若しくは前記固相の表面から前記一本鎖RNAを溶出するステップの間に使用される別個の緩衝液中に、キレート剤が存在する、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸塩、リン酸、又はエチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、トリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)及びそれらの混合物からなる群より独立して選択される、請求項9に記載の方法。
  11. 前記一本鎖RNAが1,000塩基~25,000塩基の範囲のサイズを有する、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 一本鎖RNA精製のための、その表面上に主に第一級アミノ基を含む又は第一級アミノ基のみを含む固相の使用。
  13. 一本鎖RNAを、pHを上昇させることによって二本鎖RNAから精製する、請求項12に記載の使用。
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