JP2023518809A - アデノ随伴ウイルスの改変方法及び分離方法 - Google Patents

アデノ随伴ウイルスの改変方法及び分離方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023518809A
JP2023518809A JP2022557064A JP2022557064A JP2023518809A JP 2023518809 A JP2023518809 A JP 2023518809A JP 2022557064 A JP2022557064 A JP 2022557064A JP 2022557064 A JP2022557064 A JP 2022557064A JP 2023518809 A JP2023518809 A JP 2023518809A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
aav
cell type
raav
cells
library
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022557064A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2021188993A5 (ja
Inventor
マンフレッドソン、フレドリック
サンドバル、イベッテ
Original Assignee
ディグニティー ヘルス
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ディグニティー ヘルス filed Critical ディグニティー ヘルス
Publication of JP2023518809A publication Critical patent/JP2023518809A/ja
Publication of JPWO2021188993A5 publication Critical patent/JPWO2021188993A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/005Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from viruses
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/79Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
    • C12N15/85Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for animal cells
    • C12N15/86Viral vectors
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • C12N5/06Animal cells or tissues; Human cells or tissues
    • C12N5/0602Vertebrate cells
    • C12N5/0618Cells of the nervous system
    • C12N5/0619Neurons
    • GPHYSICS
    • G16INFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR SPECIFIC APPLICATION FIELDS
    • G16BBIOINFORMATICS, i.e. INFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR GENETIC OR PROTEIN-RELATED DATA PROCESSING IN COMPUTATIONAL MOLECULAR BIOLOGY
    • G16B20/00ICT specially adapted for functional genomics or proteomics, e.g. genotype-phenotype associations
    • G16B20/30Detection of binding sites or motifs
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2750/00MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA ssDNA viruses
    • C12N2750/00011Details
    • C12N2750/14011Parvoviridae
    • C12N2750/14111Dependovirus, e.g. adenoassociated viruses
    • C12N2750/14122New viral proteins or individual genes, new structural or functional aspects of known viral proteins or genes
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2750/00MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA ssDNA viruses
    • C12N2750/00011Details
    • C12N2750/14011Parvoviridae
    • C12N2750/14111Dependovirus, e.g. adenoassociated viruses
    • C12N2750/14141Use of virus, viral particle or viral elements as a vector
    • C12N2750/14143Use of virus, viral particle or viral elements as a vector viral genome or elements thereof as genetic vector

Abstract

改変されたアデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質は、それぞれが所望の標的細胞又は組織型に対する指向性を有することが開示される。また、改変タンパク質の生成方法、改変タンパク質を含むライブラリ、改変タンパク質を含む組み換えウイルス、及び改変タンパク質をコードする核酸構築物も開示される。

Description

政府の権利
この発明は、米国国立衛生研究所によって授与されたR21AG064221に基づいて政府の支援を受けて行われた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月20日に出願された米国仮出願第62/992,671号及び2021年1月26日に出願された米国仮出願第63/141,656号の優先権を主張し、これらの両方の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
配列表
本出願には、EFS-Webを介してASCII形式で送信された配列表が含まれており、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。そのASCIIコピーのファイル名は677427_SequenceListing_ST25.txtであり、そのサイズは647キロバイトである。
発明の分野
本開示は、それぞれが所望の標的細胞又は組織型への指向性(tropism)を有する、改変されてなるアデノ随伴ウイルス(engineered adeno-associated virus:AAV)カプシドタンパク質、及び改変AAVカプシドタンパク質の集団から改変されてなるAAVのカプシドタンパク質を同定するための方法を提供する。
遺伝子ツールの進歩により、脳の形態と機能を研究する我々の能力は大幅に向上してきた。例えば、誘導性トランスジェニック動物をウイルスベクターなどの他のツールと共に使用することで、かなり複雑な実験が可能になった。しかしながら、ミクログリアのような非ニューロン細胞を非常に正確に改変(例えば過剰発現)、標識/識別(例えば細胞追跡)、ターゲティング、又は調査(例えば細胞機能の研究)することを可能にするツールがないことが、依然として大きな障壁となっている。例えば、脳は科学や自然界における真の謎の一つであり続けている。前世紀の驚異的な進歩により神経系機能についての我々の理解は形作られたが、脳の接続性と細胞間の相互作用についての深い理解はまだ不足している。この重要なニーズは、複数の異なる細胞集団を改変する実験に特に当てはまる。実際、ミクログリアはシナプス形成、維持、剪定において重要な役割を果たすことが評価されるようになってきている。
したがって、ミクログリアの複雑な遺伝子改変を、時空間的な制御や投与量などのパラメータの制御とともに、他の細胞特異的な改変と組み合わせて行うことができる能力が、ますます重要になっている。
本開示の一態様は、改変AAVカプシドタンパク質の集団から、ミクログリア系統の細胞などの所望の細胞型に対して優先的な指向性を示すカプシドタンパク質を同定する方法を包含する。所望の細胞型の細胞は、神経細胞であり得る。この方法は、AAVベクターをカプシド化する改変カプシドタンパク質をそれぞれが含む複数の組み換えAAVビリオン(rAAV)を生成することを含む。AAVベクターは、導入遺伝子及びベクターをカプシド化するカプシドタンパク質に固有の(unique)識別子配列の両側に隣接するAAV末端逆位反復配列(ITR)を有する。本方法は、さらに、生成されたrAAVを複数の細胞型の集団に感染させて、それぞれがrAAVを含む複数の形質導入細胞を生成することを含む。各形質導入された細胞における固有の識別子配列の配列及び各形質導入された細胞の細胞型を決定して、各細胞に存在するカプシドタンパク質を同定する。各細胞の細胞型は、各細胞についての転写プロファイルを決定することを含み得る。所望の細胞型に対する優先的な指向性を示すカプシドタンパク質を、各細胞型における該タンパク質の存在及び不在に基づいて同定し、ここで、該タンパク質が所望の細胞型に存在し、所望の細胞型以外の細胞型に不在である場合、該タンパク質は所望の細胞型に対する優先的な指向性を示す。本方法は、それぞれが所望の細胞型に対する優先的な指向性を示す、複数の改変AAVカプシドタンパク質を同定するために使用することができる。
いくつかの態様において、導入遺伝子はレポーターをコードする。導入遺伝子がレポーターをコードする場合、本方法は、rAAVで形質導入された細胞を同定するために、細胞の集団中の各細胞において導入遺伝子を検出することをさらに含んでよい。
改変タンパク質は、挿入ペプチドを含みうる。挿入ペプチドは、I-261、I-381、I-447、I-534、I-573、I-587、I-453、I-520、I-588、I-584、I-585、I-588、I-46、I-115、I-120、I-139、I-161、I-312、I-319、I-459、I-496、I-657、Y257、N258、K259、S391、F392、Y393、C394、Y397、F398、Q536、Q539、及び他のAAV血清型のカプシドタンパク質における対応する位置から選択される領域にあってよい。いくつかの態様において、改変カプシドタンパク質は、Y444F、Y500F、Y730F、T491V、R585S、R588T、R487Gアミノ酸置換、若しくはそれらの組み合わせ、又は他のAAV血清型のカプシドタンパク質中における対応する置換を含むAAV2カプシドタンパク質である。いくつかの態様において、改変カプシドタンパク質は、R585S、R588T、及びR487Gアミノ酸置換、又は他のAAV血清型のカプシドタンパク質における対応する置換を含むAAV2カプシドタンパク質である。
本開示の別の態様は、所望の細胞型に対する優先的な指向性を示すrAAVを同定するためのコンピュータ化システムを包含する。このコンピュータ化システムは、少なくとも1つのプロセッサを有する汎用コンピュータ;上記のような方法を用いて同定された複数の改変AAVカプシドタンパク質によって示される指向性特性のデータベースを記憶するコンピュータ可読メモリ;及び少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、データベースに照会(query)し、複数の改変AAVカプシドタンパク質の中から、所望の細胞型への優先的な指向性を示すカプシドタンパク質を選択させる汎用コンピュータに対する指示を含む機能モジュールを含むコンピュータ可読媒体を含む。
データベースは、各細胞型に関連する複数の細胞型特異的転写プロファイル情報、及びそれぞれの配列が固有の改変AAVカプシドタンパク質をコードする複数の核酸配列、をさらに含んでよい。データベースは、複数の識別子配列をさらに含んでよく、ここで、各識別子は、固有の改変AAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列に固有である。
本開示のさらに別の態様は、複数のrAAVメンバーを含む組み換えAAVビリオン(rAAV)ライブラリを包含する。各rAAVメンバーは、AAVベクターをカプシド化する改変AAVカプシドタンパク質を含み、ここで前記AAVベクターは、導入遺伝子及び各rAAVのカプシドタンパク質に固有の識別子配列の両側に隣接するAAV末端逆位反復配列(ITR)を有している。各改変AAVカプシドタンパク質は、所望の細胞型に対する優先的な指向性を示す。前記改変カプシドタンパク質は、野生型カプシドタンパク質に対して少なくとも1つの変異を含んでよく、前記変異は、挿入ペプチド、アミノ酸置換、及びアミノ酸欠失から選択されてよい。いくつかの態様において、所望の細胞型は、グリア細胞である。前記細胞がグリア細胞である場合、各挿入ペプチドは、配列番号2~183のアミノ酸配列に由来してよい。各rAAVは、所望の標的細胞型に対する優先的な指向性を示してよい。
本開示のさらなる態様は、上記のrAAVライブラリをコードする核酸構築物のライブラリ、及びrAAVライブラリ、rAAVライブラリをコードする核酸構築物のライブラリ、又はそれらの組み合わせを含む複数の細胞を包含する。
本開示の一態様は、2つ以上の細胞型の集団における所望の細胞型への導入遺伝子の送達を最適化する方法が包含される。本方法は、上記の方法によって、又は上記のコンピュータ化システムによって、所望の細胞型に対する優先的な指向性を示す改変AAVカプシドタンパク質を同定すること又は同定したことを含んでいる。本方法は、所望の細胞型を含む細胞集団を、同定された工学的AAVカプシドタンパク質を含むrAAVで形質導入し、それによって所望の細胞型に導入遺伝子を送達することをさらに含む。所望の標的細胞型の細胞は、中枢神経系細胞、ミクログリア細胞、又は星状細胞であり得る。
本開示のさらなる態様は、所望の標的細胞型に対する優先的な指向性を示す改変AAVカプシドタンパク質を同定又は生成するためのキットを包含する。このキットは、上記のrAAVのライブラリ、上記の核酸コンストラストのライブラリ、若しくは前記rAAVライブラリを含む複数の細胞、ここで、前記核酸コンストラストのライブラリは前記rAAVライブラリをコードし、又はこれらの組み合わせを含む。
本件特許又は本件出願の書類には、少なくとも1つのカラー図面が含まれている。この特許又は特許出願公開のカラー図面の写しは、申請及び必要な手数料の支払によって、庁より提供される。
図1Aは、GFPがCAGプロモーターによって制御されたベクター調製物を示す。形質導入領域(主にニューロン)を示す低倍率画像である。 図1Bは、GFPがCAGプロモーターによって制御されたベクター調製物を示す。形質導入領域の周辺部では(おそらくミクログリア形質導入が中心部の大規模なニューロン形質導入によって覆い隠されたため)、多数の形質導入された(緑、GFP)ミクログリア(赤、Iba1)を見ることができる。様々なユビキタスプロモーターの活性を調べるため、別の動物にCMVプロモーター(同じカプシド)によって制御されるカセットも注入した。この画像は導入遺伝子(GFP)のみを描写しているが、ミクログリアの形態を有する多数の細胞を全体的に見ることができる。この図は、ミクログリアへのAAV形質導入に生物学的な「ブロック」がないことを示している。さらに、このアプローチは全体的に実現可能であることを示している。 図1Cは、GFPがCAGプロモーターによって制御されるベクター調製物を示す。図1Bにおいて囲まれている領域の共焦点画像は、ミクログリアにおけるGFP導入遺伝子の局在を示している。 図1Dは、GFPがCAGプロモーターによって制御されるベクター調製物を示す。ここではヒト化CMVプロモーターが使用されている。
図2は、ウイルスライブラリの設計である。AAVゲノムは、制限酵素による消化を介して直鎖化される。ステップ1:ウイルス成分を、ミクログリアリガンド(ML)オリゴヌクレオチドプール、及びバーコード(BC)オリゴヌクレオチドプールと混合し、4部分ギブソンアセンブリ(4-part Gibson assembly)を用いてゲノムライブラリへと組み立てる(ステップ2)。このライブラリを複製し、1コピーにCREリコンビナーゼ処理を施し、バーコードとMLを近接させる。このライブラリをペアエンドイルミナシークエンシングに供し、BCとMLとをリンクさせるデータベース(database linking the BC to the ML)を作成する(ステップ3;矢印はシークエンスプライマーを示す)。ステップ4:このライブラリの第二のコピーを、ウイルスベクター作製とインビボ実験に利用する(ステップ5)。ステップ6:シングルセルRNAseqを利用して、感染細胞のプロファイル及び付随バーコードを特定する(矢印はRNAseqプライマーを示す)。ゲノミクスを利用して、細胞プロファイル、バーコード、ミクログリアリガンドがリンクされたデータベースを作成する。このデータベースは、特定の細胞型(この場合はミクログリア)のみを形質導入するカプシドを特定するために照会することが可能である。
図3はscRNA seqの予備データ(Preliminary scRNA seq data)である。AAV2を成体C57bl6マウスの脳に注入した。4日後、動物を犠牲にし、核をscRNA seq処理用に収集した。参照トランスクリプトームの平均発現プロファイルと最もよくマッチするものを基に、予備的なクラスター分析を行った。主要なクラスター(ニューロン、希突起膠細胞と星状細胞、ミクログリア)が検出された。RNAseqデータは、ニューロンと希突起膠細胞で見つかったGFP転写物(すなわち形質導入細胞)についても照会された。ミクログリア細胞のクラスターが確認されたが、それらの細胞ではAAVの転写活性は検出されなかった。
図4AはデュアルRNAscope ISH/IHCの例である。AAV5を注入した動物からの切片を、ゲノムの非転写部分(茶色)に対するISH用に処理し、次いでIBA1(青色)に対するIHC用に処理した。黒質の低倍率顕微鏡写真である。 図4BはデュアルRNAscope ISH/IHCの例である。AAV5を注入した動物からの切片を、ゲノムの非転写部分(茶)に対するISH用に処理し、次いでIBA1(青)に対するIHC用に処理した。図4Aで囲んだ領域の拡大図である。AAV5では、AAVとIba1との重なりは見られなかった。 図4CはデュアルRNAscope ISH/IHCの例である。AAV5を注入した動物からの切片を、ゲノムの非転写部分(茶色)に対するISH用に処理し、次いでIBA1(青色)に対するIHC用に処理した。図4Bで囲んだ領域の拡大図は、ミクログリアがウイルスゲノムを完全に排除していることを示す。これはまた、分析が行われる際の解像度を示している。
図5は、インビボにおけるAAVを用いてのCRISPR/Cas9遺伝子不活性化の例である。図5Aは、切断された(赤矢印)DNA断片と親(黒矢印)DNA断片の間の比率によって決定される、TH遺伝子の効率的な標的化を示すSurveyor(登録商標)突然変異検出アッセイである。図5B及び図5Cにおいて、AAV-CRISPR処理したラットの脳切片の代表的な画像は、処理した半球(左下)で強固なTH遺伝子ノックアウトを明らかに示しており、これは対照のgRNA処理した半球(左上)では見られなかった。同様に、免疫蛍光染色(図5C)においては、AAV-CRISPR-THで形質導入した細胞(下)において効率的なTH(赤)遺伝子破壊が示されているが、対照の脳(上図)においては見られない。GFPはAAV-CRISPR形質導入のマーカーとなる。対照の脳では、GFPとTHの高度の共局在化が認められ、毒性がないことがわかる。一方、CRISPR-TH処理脳では、形質導入された細胞(緑)の大部分にTHの発現が見られない(高倍率画像中の白矢印)。図5Dにおいて、AAV-CRISPR形質導入細胞(GFP+)の蛍光強度(TH発現の指標として)を定量した結果、大部分の細胞がTHノックアウトのホモ接合体であることがわかった。本明細書においては、このワークフローを利用して、EEDに特異的なCRISPRを作製している。 図5Aは、インビボにおけるAAVを用いてのCRISPR/Cas9遺伝子不活性化の例である。切断された(赤矢印)DNA断片と親(黒矢印)DNA断片の間の比率によって決定される、TH遺伝子の効率的な標的化を示すSurveyor(登録商標)突然変異検出アッセイである。
図5Bは、インビボにおけるAAVを用いてのCRISPR/Cas9遺伝子不活性化の例である。AAV-CRISPR処理したラットの脳切片の代表的な画像は、処理した半球(左下)で強固なTH遺伝子ノックアウトを明らかに示しており、対照のgRNA処理した半球(左上)では見られなかった。
図5Cは、インビボにおけるAAVを用いてのCRISPR/Cas9遺伝子不活性化の例である。免疫蛍光染色では、AAV-CRISPR-THで形質導入した細胞(下)においては効率的なTH(赤)遺伝子破壊があるものの、対照の脳(上図)においては見られないことが示されている。GFPはAAV-CRISPR形質導入のマーカーとなる。対照の脳では、GFPとTHの高い共局在化が認められ、毒性がないことがわかる。一方、CRISPR-TH処理脳では、形質導入された細胞(緑)の大部分にTHの発現が見られない(高倍率画像中の白矢印)。図5Dにおいて、AAV-CRISPR形質導入細胞(GFP+)の蛍光強度(TH発現の指標として)を定量した結果、大部分の細胞がTHノックアウトのホモ接合体であることがわかった。本明細書において、このワークフローを利用して、EEDに特異的なCRISPRを作製している。
図5Cは、AAVを用いたCRISPR/Cas9遺伝子のインビボでの不活性化の例である。AAV-CRISPR形質導入細胞(GFP+)における蛍光強度(TH発現の表示として)の定量化は、細胞の大部分がTHノックアウトのホモ接合体であることを示す。本明細書において、このワークフローを利用して、EEDに特異的なCRISPRを作製している。
図6Aは、Neurolucidaに基づくスパインの定量である。この図は、ニューロン再構成の実現可能性を示すことを目的としている。このケースでは、組織にはGolgiを含浸させた。Golgiに代えてYFPを使用する他の実験でも同じ一般的なアプローチがとられる。 図6は、Neurolucidaに基づくスパインの定量である。この図は、ニューロン再構成の実現可能性を示すことを目的としている。Neurolucidaと光学切片を使用して線条体中型有棘ニューロン(Striatal medium spiny neuron)を再構成した。Golgiに代えてYFPを使用する他の実験でも同じ一般的なアプローチがとられる。
図7Aは、線条体MSN(striatal MSN)の単一回の活動のインビボ記録である。挿入図は、刺激の強度を増加させたときの皮質誘発線条体活動のトレースを示す(矢印:刺激アーチファクト)。
図7Bは、陰性対照ラットから記録されたMSNの自発的な活動である。
図7Cは、体細胞電流注入に対する典型的なMSN応答(図7Bと同じ細胞)である。赤い矢印の頭は、電流によって誘発された柔細胞排出(current-induced juxtacellular ejection)のオンセット-オフセットアーティファクトである。
図8は、改善されたニューロン指向性を有するrAAV2を注入したSprague Dawleyラットから採取した脊髄の写真である。
図9は、図8の脊髄の切片の免疫染色を示す写真である。
図10の1枚目のパネルは、図8における脊髄のL3切片の免疫染色の写真である。2枚目のパネルは、L3切片をより高倍率で撮影した写真であり、脊髄の背側角と腹側角の両方において導入遺伝子が発現していることを示すものである。
図11の上側のパネルは、図8の脊髄の切片の免疫染色及びFISH染色の写真であり、下側のパネルは、ベクターを1:10希釈していった結果(陰性対照)である。
図12は、図11の脊髄の免疫染色及びFISH染色の断面の高倍率図である。
図13は、図11の脊髄の後角、中間帯、腹角の切片のFISH染色の高倍率図である。
図14は、GFPを発現するrAAV2を注入した脊髄の切片の免疫染色の写真である。
図15は、図8に概略的に示す注入を受けた動物(上側)からの矢状切片であり、高倍率で撮影した運動皮質の写真である。
詳細な説明
本開示は、部分的には、改変AAVカプシドタンパク質の集団から所望の細胞型への指向性を示すアデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質を同定する方法の開発に基づいている。本明細書に記載の方法は、通常は野生型タンパク質による標的とされない細胞型を標的化する能力を有する改変カプシドタンパク質を同定するために使用することができる。さらに、本明細書に記載の方法は、所望の細胞型に対する優先的な指向性を示す改変カプシドタンパク質を同定するために使用することができる。記載された方法はまた、組み換えAAVビリオン(rAAV)のライブラリ及びrAAVのライブラリをコードする核酸を生成するために使用することができ、ここで各改変AAVカプシドタンパク質は、選択した細胞型に対する指向性を示す。本開示はまた、所望の細胞型に対する指向性を示すrAAVを同定するためにin silico選択を実行するように構成されたコンピュータ化システムを提供する。本開示の他の態様も記載される。
I.AAVカプシドタンパク質の同定方法
本開示の1つの態様は、改変AAVカプシドタンパク質の集団から、所望の細胞型への優先的な指向性を示すカプシドタンパク質を同定する方法を包含する。改変カプシドタンパク質は、以下のセクションI(b)に記載されるようなものでありうる。
本方法は、各々がAAVベクターをカプシド化する改変AAVカプシドタンパク質を含む複数の組み換えAAVビリオン(rAAV)を生成することを含む。例えば、rAAVを1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個、又はrAAVのライブラリを生成することができ、ここで各rAAVは、所望の細胞型に対する優先的な指向性を示す改変AAVカプシドタンパク質を含む。rAAVのライブラリは、以下のセクションIIに記載されているようなものであってよい。複数の細胞型の細胞の集団に、rAAVを感染させて、それぞれがrAAVを含んでいる形質導入された細胞を複数生成する。細胞及び細胞型は、以下のセクションI(c)に記載されるとおりであり、細胞を感染させる方法は、以下のセクションI(d)に記載されるとおりでありうる。
各形質導入細胞における固有の識別子の配列、及び固有の識別子を含む細胞の細胞型を決定し、それにより各固有の識別子をその識別子を含む細胞の細胞型とマッチさせる。以下のセクションIIでさらに説明するように、各固有の識別子は、1つの改変カプシドタンパク質にマッチさせる。従って、識別子を含むベクターをカプシド化する改変カプシドタンパク質を含むrAAVで形質導入された細胞における識別子の配列を決定することは、当該形質導細胞におけるマッチした改変カプシドタンパク質を同定することにもなる。
rAAVが形質導入できる細胞型を同定する能力は、野生型のAAVカプシドタンパク質による感染に通常抵抗性である細胞型を形質導入できる改変カプシドタンパク質を同定する能力を提供する。例えば、本発明者らは、野生型のAAVカプシドタンパク質による感染に著しく不応性の細胞型であるミクログリアに形質導入することができる、指向性の変化した少なくとも1つの改変カプシドタンパク質を、同定することができた。
重要なことに、ある改変カプシドタンパク質が形質導入できない各細胞型を決定することも可能である。従って、正の選択及び負の選択を使用して、2つ以上の細胞型の集団において、ある細胞型に対する改変カプシドタンパク質が示す優先的な指向性を決定することが可能である。より具体的には、所望の細胞型に対する優先的な指向性を示すカプシドタンパク質を、各細胞型における該タンパク質の存在及び不在に基づいて同定することができ、ここで該タンパク質が所望の細胞型に存在し、所望の細胞型以外の細胞型に不在である場合、該タンパク質は所望の細胞型に対する優先的な指向性を示すものである。
(a)アデノ随伴ウイルス(AAV)
本開示のrAAVは、AAVベクターをカプシド化するAAVカプシドタンパク質を含む。簡潔に言うと、AAVベクターは、一般に、関心のある異種核酸配列の両側に隣接するウイルスのAAV末端逆位反復(ITR)からなる。AAV ITRは、AAVゲノムのレスキュー、複製、及びパッケージングに関与する全てのシス作用要素を含む。したがって、ITRはウイルスコード領域から分離することができ、目的の異種核酸配列の両側に隣接するウイルスのITRのみを含むAAVベクターを設計することができる。一般に、rAAV粒子は、クローン化したAAVベクターと、ウイルスのrep及びcap遺伝子をトランス発現する別の構築物を含むプラスミド(AAVシスプラスミド)を生産細胞にトランスフェクトすることにより作製される。E1A、E1B、E2A、E4ORF6、VA RNAなどのアデノウイルスヘルパー因子は、アデノウイルス感染又はこれらのアデノウイルスヘルパー因子を提供する第三のプラスミドを生産細胞にトランスフェクトすることにより提供することができる。
本開示のAAVベクターは、導入遺伝子と、各rAAVのカプシドタンパク質に固有の識別子核酸配列(本明細書では識別子配列、固有識別子又は単に識別子とも呼ばれる)との両側に隣接するAAV ITRを含む。いくつかの態様において、導入遺伝子はまた、レポーターをコードしてもよい。本明細書において、「導入遺伝子」は、任意の核酸分子、例えば、分子が導入される細胞にとって外来のものである核酸配列を有するDNA分子を指す。例えば、DNA分子は、そのDNA分子が導入された細胞にとって外来のものである目的のタンパク質をコードする核酸配列を有していてもよい。レポーターの発現は、rAAVの形質導入効率を決定し、実験中にrAAVによって正常に形質導入された細胞を同定するために使用することができる。レポーターは、本明細書の以下のセクションI(d)に記載されているようなものでよい。
以下のセクションIIでさらに説明するように、固有の識別子はそれぞれ1つの改変タンパク質にマッチさせられ、形質導入された細胞においてマッチさせられた改変カプシドタンパク質を識別するために使用される。いくつかの態様において、AAVベクターは、少なくとも1つの第2の識別子をさらに含む。第2の識別子は、例えば、rAAVのライブラリを識別するために使用することができる。したがって、第2の識別子がrAAVのライブラリを識別するために使用される場合、第2の識別子は、AAVのライブラリ内の全ての第2の識別子と共通する配列を有する。
本明細書に記載のAAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh39、又はAAVrh43から選択される血清型を含む任意のAAV血清型でありうる。本開示のrAAVは、シュードタイプ化されたrAAV(pseudotyped rAAVs)であり得る。シュードタイプ化(Pseudotyping)とは、ウイルス又はウイルスベクターを、外来のものであるウイルスエンベロープタンパク質と組み合わせて、製造するプロセスである。その結果、異なる血清型からのAAVカプシドタンパク質によってカプシド化されたAAV血清型に由来するベクターを含むシュードタイプ化ウイルス粒子が得られる。したがって、外来ウイルスエンベロープタンパク質は、宿主の指向性を変更するため又はウイルス粒子の安定性を増加/減少させるために使用することができる。いくつかの態様において、シュードタイプ化rAAVは、2つ以上の異なるAAVからの核酸を含み、ここで1つのAAVからの核酸はカプシドタンパク質をコードし、少なくとも1つの他のAAVの核酸は他のウイルスタンパク質及び/又はウイルスゲノムをコードする。例えば、Yのタンパク質でカプシド化された血清型XのITRを含むシュードタイプ化AAVベクターは、AAVX/Yと呼ばれる(例えば、AAV2/1はAAV2のITRとAAV1のカプシドを有する)。いくつかの態様において、AAV血清型はAAV2である。
いくつかの態様においては、カプシドタンパク質がAAV2カプシドタンパク質である。AAVカプシドタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のアミノ酸配列を有するAAV2のカプシドタンパク質であってよい。いくつかの態様において、前記カプシドタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有するAAV2のカプシドタンパク質である。
(b)改変AAVカプシドタンパク質
本開示の方法は、所望の細胞型に対して優先的な指向性を示す改変AAVカプシドタンパク質を同定することができる。本明細書で使用される場合、改変AAVカプシドタンパク質に適用される場合、用語「優先的な指向性(preferential tropism)」又は「優先的な指向性を示す(preferentially tropic)」は、互換的に使用することができ、1つ以上の細胞型を含む細胞の集団において所望の細胞型以外の細胞型よりも所望の細胞型に対して形質導入する、改変タンパク質を含む組み換えAAVビリオン(rAAVs)の能力を意味する。従って、所望の細胞型に対する優先的な指向性を示すと言われる改変AAVカプシドタンパク質は、所望の細胞型以外の細胞型における形質導入効率と比較した場合、所望の細胞型においてより高い形質導入効率を示す。例えば、所望の細胞型に指向性を示す改変タンパク質は、所望の細胞型以外の細胞型に対する改変タンパク質の形質導入効率と比較して、所望の細胞型においては2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、又はそれ以上の高い形質導入効率を有することが可能である。所定のAAVカプシドタンパク質の形質導入効率は、AAVライフサイクルの異なる工程のそれぞれの効率によって決定される。rAAVの形質導入効率を決定する方法は公知であり、rAAVを感染させた細胞におけるrAAVの導入遺伝子の発現レベルを測定することが含まれる。
改変カプシドタンパク質は、野生型カプシドタンパク質に対して1つ又は複数の変異を含んでいる。変異は、挿入ペプチド、アミノ酸置換、又はアミノ酸欠失であり得る。改変カプシドタンパク質はまた、様々なAAV血清型のカプシドタンパク質の断片を含むキメラカプシドタンパク質であり得る。
いくつかの態様において、改変AAVカプシドタンパク質は、カプシドタンパク質における1つ又は複数の挿入ペプチドを含む。いくつかの態様において、改変AAVカプシドタンパク質は、カプシドタンパク質中の2つ以上の挿入ペプチドを含む。ペプチドは、改変カプシドタンパク質の指向性を変更するのに十分な長さの任意の配列であり得る。
例えば、ペプチドは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95アミノ酸長又はそれ以上であり得る。ペプチドはまた、長さが約5~10、7~15、10~15、10~20、15~20、20~25、20~30、30~35、30~40、35~40、40~45、40~50、45~50、50~55、50~60、55~60、60~65、60~70、65~70、70~75、70~80、75~80、80~85、80~90、85~90、90~95、90~100、95~100又は100アミノ酸より長いか、これらの範囲内の任意の個々の長さであり得る。
いくつかの態様において、挿入は、カプシドタンパク質の1つ又は複数の表面露出ループ領域内にある。いくつかの態様では、挿入はカプシドタンパク質の1つ以上の可変領域内にある。1つ以上の挿入部位は、I-261、I-381、I-447、I-534、I-573、I-587、I-453、I-520、I-588、I-584、I-585、I-588、I-46、I-115、I-120、I-139、I-161、I-312、I-319、I-459、I-496、I-657又は他のAAV血清型のカプシドタンパク質における相当位置から選ばれるAAV2のカプシドタンパクの領域であり得る。
ループ領域にペプチドを挿入するなどして、表面露出ループ領域を破壊すると、AAVの二次受容体であるHSPG結合を介したAAVの正規の侵入も阻害される。HSPG結合を介したAAVの侵入を阻害することにより、AAVR受容体への結合を強化し、それによって所望の細胞型の形質導入効率を向上させることができる。また、本発明者らは、驚くべきことに、表面露出ループ領域の外にある以下のアミノ酸残基、すなわちS153、D169、T174、D176、D177、若しくはK178、又はそれらの組み合わせ、を修飾することによっても、HSPG結合を介した進入を阻害し、所望の細胞型への形質導入効率を向上させることができることを見出した。さらに、本発明者らは、表面露出ループ領域の外にあるアミノ酸残基、すなわちY257、N258、K259、S391、F392、Y393、C394、Y397、F398、Q536、Q539、又はそれらの組み合わせ、が修飾されると、AAVR受容体への結合を増強し、所望の細胞型への形質導入効率を向上できることを発見した。したがって、本開示の改変カプシドタンパク質は、AAVR受容体への結合を強化するために、AAV2カプシドタンパク質の表面露出ループ領域のアミノ酸残基における変異S153、D169、T174、D176、D177、K178、Y257、N258、K259、S391、F392、Y393、C394、Y397、F398、Q536、Q539、若しくはそれらの組み合わせ、又は他のAAV血清型のカプシドタンパク質における前記アミノ酸置換に対応する置換を有し得る。これらの変異を含む改変カプシドタンパク質は、本開示の方法を用いて優先的な指向性を有する改変カプシドタンパク質を生成するための開始配列として使用することができる。いくつかの態様において、本開示の改変カプシドタンパク質は、Y444F、Y500F、Y730F、T491V、R585S、R588T、R487G変異、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様において、本開示の改変カプシドタンパク質は、R585S、R588T、及びR487G変異を含んでいる。この改変カプシドタンパク質は、かなり改善された形質導入効率を示し、本開示の方法を用いて優先的な指向性を有する改変カプシドタンパク質を生成するための開始配列として使用することができる。
いくつかの態様において、カプシドタンパク質に挿入されるペプチドは、関心の持たれる細胞型のリガンドである。他の態様において、カプシドタンパク質に挿入されたペプチドは、関心の持たれる細胞型のリガンドに由来する。リガンドに由来するペプチドは、変異リガンド、リガンドの断片、又は関心の持たれる細胞型のリガンドの変異断片であり得る。例えば、リガンド由来のペプチドは、変異リガンド、該リガンドの断片、又は該リガンドの変異断片と少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有していてもよい。
所望の細胞型の細胞がグリア系統である場合、ペプチドは、配列番号2~183から選択されるアミノ酸配列又はそれから誘導されるペプチドであり得る。いくつかの態様において、ペプチドは、配列番号2~153から選択されるアミノ酸配列又はそれから誘導されるペプチドである。他の態様においては、ペプチドは、配列番号154~176から選択されるアミノ酸配列又はそれから誘導されるペプチドである。さらに他の態様において、ペプチドは、配列番号177~183から選択されるアミノ酸配列又はそれから誘導されるペプチドである。
一態様において、ペプチドは、配列番号154と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号155と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号156と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号157と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号158と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号159と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号160と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号161と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号162と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号163と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号164と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号165と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号166と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号167と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号168と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号169と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号170と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号171と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号172と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号173と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号174と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号175と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号176と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号177と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号178と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号179と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号180と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号181と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号182と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。一態様において、ペプチドは、配列番号183と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列又はそれに由来するペプチドである。
(c)細胞型
本開示の方法は、各感染細胞の細胞型を決定することを含む。細胞型は、当該技術分野で公知の方法を使用して決定することができる。細胞型を決定するために使用される方法の非限定的な例には、細胞マーカーの同定及び細胞についての転写プロファイルの決定が含まれる。いくつかの態様において、細胞型は、固有の細胞型を識別する細胞マーカーを同定することによって決定される。細胞マーカーは、細胞表面の細胞外分子として又は細胞内分子として発現しうる。他の態様において、細胞型は、細胞についての転写プロファイルを決定することによって決定される。細胞についての転写プロファイルは、RNA転写産物のシングルセル配列決定(scRNA-seq)を使用して決定できる。マイクロアレイやバルクRNAシークエンス解析などの標準的な方法は、細胞の大規模な集団からのRNAの発現を分析する。
本開示の改変カプシドタンパク質は、所望の細胞型に対して優先的な指向性を示す。所望の細胞型は、上皮細胞、身体の臓器の細胞、結合組織の細胞、筋肉組織、並びに中枢神経系及び末梢神経系を含む神経組織、循環器系、がん細胞、若しくは腫瘍、又は免疫系の細胞であり得る。いくつかの局面において、所望の細胞型は中枢神経系の細胞である。神経系の細胞型の非限定的な例として、軸索、希突起膠細胞、神経芽細胞、ニューロン、グリア細胞、及び星状細胞が挙げられる。いくつかの態様において、所望の細胞型はグリア系統の細胞である。いくつかの態様において、所望の細胞型はミクログリア細胞である。他の局面において、所望の細胞型は星状細胞である。
いくつかの態様において、所望の細胞型はがん細胞である。がん細胞は、神経膠芽腫、結腸がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、骨肉腫、又は悪性黒色腫であり得る。本開示の方法での使用に適した新生物又はがん細胞の他の非限定的な例として、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質がん、AIDS関連がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、虫垂がん、星細胞腫(小児小脳又は大脳)、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳幹神経膠腫、脳腫瘍(小脳星細胞腫、脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視覚経路及び視床下部)神経膠腫)、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(小児、消化管)、未知の原発性がん、中枢神経系リンパ腫(原発性)、小脳星細胞腫、脳星細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸がん、小児がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍(小児期)、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん(眼内黒色腫、網膜芽細胞腫)、胆嚢がん、胃(胃)がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、胚細胞腫瘍(小児頭蓋外、性腺外、卵巣)、妊娠性絨毛腫瘍、神経膠腫(成人、小児脳幹、小児脳星細胞腫、小児視覚経路及び視床下部)、胃カルチノイド、有毛細胞白血病、頭頸部がん、肝細胞(肝臓)がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、視床下部及び視覚経路神経膠腫(小児)、眼内黒色腫、膵島細胞がん、カポジ肉腫、腎臓がん(腎細胞がん)、喉頭がん、白血病(急性リンパ芽球性、急性骨髄性、慢性リンパ球性、慢性骨髄性、有毛細胞)、口唇及び口腔がん、肝臓がん(原発性)、肺がん(非小細胞、小細胞)、リンパ腫(AIDS関連、バーキット、皮膚T細胞、ホジキン、非ホジキン、原発性中枢神経系)、マクログロブリン血症(Waldenstrom)、骨の悪性線維性組織球腫/骨肉腫、髄芽腫(小児期)、黒色腫、眼内黒色腫、メルケル細胞がん、中皮腫(成人悪性、小児期)、潜伏性原発の転移性扁平上皮頸がん、口腔がん、多発性内分泌腫瘍症候群(小児期)、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病(慢性)、骨髄性白血病(成人急性、小児急性)、複数骨髄腫、骨髄増殖性疾患(慢性)、鼻腔及び副鼻腔がん、上咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、経口がん、中咽頭がん、骨肉腫・骨悪性線維性組織球腫、卵巣がん、卵巣上皮がん(表面上皮間質腫瘍)、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓がん、膵臓がん(膵島細胞)、副鼻腔及び鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体星細胞腫、松果体胚細胞腫、松果体芽細胞腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍(小児期)、下垂体腺腫、形質細胞腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん(腎臓がん)、腎盂及び尿管移行上皮がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫(小児)、唾液腺がん、肉腫(ユーイング腫瘍ファミリー、カポジ、軟部組織、子宮)、セザリー症候群、皮膚がん(非黒色腫、黒色腫)、皮膚がん(メルケル細胞)、小細胞肺がん、小腸がん、軟部肉腫、扁平上皮がん、潜在性原発性(転移性)を伴う扁平上皮頸部がん、胃がん、テント上原始神経外胚葉性腫瘍(小児期)、T細胞リンパ腫(皮膚性)、精巣がん、咽頭がん、胸腺腫(小児期)、胸腺腫及び胸腺がん、甲状腺がん、甲状腺がん(小児)、腎盂及び尿管の移行上皮がん、栄養膜腫瘍(妊娠性)、原発部位不明(成人、小児)、尿管及び腎盂移行上皮がん、尿道がん、子宮がん(子宮内膜)、子宮肉腫、膣がん、視覚経路及び視床下部神経膠腫(小児期)、外陰がん、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、並びにウィルムス腫瘍(小児期)が挙げられる。
いくつかの態様において、所望の細胞型は、リンパ球、好中球、ミクログリア、及び単球/マクロファージ、又はそれらの組み合わせなどの免疫細胞である。いくつかの態様において、標的細胞又は組織型は単球又はミクログリアである。
(d)細胞感染
rAAVを細胞に感染させる細胞感染方法は公知である。例えば、細胞とrAAVとを接触させることで、細胞をrAAVに感染させることができる。例えば、細胞を組織培養細胞にすることができ、rAAVを細胞培養に加えることでrAAVと接触させることができる。細胞はまた、当技術分野で公知の任意の適切な方法に従って、組成物を被験体に送達することによって感染させることができる。rAAVは、好ましくは生理学的に適合するキャリア(例えば、組成物)に懸濁して、例えば、ヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、モルモット、ハムスター、ニワトリ、七面鳥、又はヒト以外の霊長類(例:マカク)などの宿主動物に投与することができる。
哺乳動物被験体へのrAAVの送達は、例えば、哺乳動物被験体の筋肉内注射又は血流への投与によるものであり得る。血流への投与は、静脈、動脈、又は任意の他の血管導管への注射によるものであり得る。いくつかの態様において、rAAVは、外科技術において周知の技術である分離四肢灌流によって血流に投与され、この方法は、rAAVビリオンの投与前に、当業者が体循環から四肢を隔離することを本質的に可能にする。分離四肢灌流技術のバリアントもまた、筋細胞又は組織への形質導入を潜在的に増強するために、分離四肢の血管系にビリオンを投与するために当業者によって使用され得る。さらに、特定の態様において、対象のCNSにビリオンを送達することが望ましい場合がある。「CNS」とは、脊椎動物の脳及び脊髄のすべての細胞及び組織を意味する。したがって、この用語には、ニューロン、グリア細胞、星状細胞、脳脊髄液(CSF)、間質腔、骨、軟骨などが含まれるが、これらに限定されない。組み換えAAVは、定位注射などの当該技術分野で公知の神経外科的技術を用いて、針、カテーテル又は関連デバイスを用いて、例えば脳室領域だけでなく、線条体(例えば、線条体の尾状核や被殻)、脊髄及び神経筋接合部、又は小脳小葉に注入することによって、中枢神経系又は脳に直接送達することができる。
適切なキャリアは、rAAVの適応先を考慮して、当業者によって容易に選択され得る。例えば、1つの適切なキャリアには生理食塩水が含まれ、これは様々な緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)で処方され得る。他の例示的なキャリアには、滅菌生理食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油、及び水が含まれる。キャリアの選択は、本開示を限定するものではない。
所望により、rAAV及びキャリアに加えて、防腐剤又は化学安定剤などの他の従来の薬学的成分を含めることができる。適切な防腐剤の例としては、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、及びパラクロロフェノールが挙げられる。適切な化学安定剤の例としては、ゼラチン及びアルブミンが挙げられる。
rAAVは、所望の組織の細胞をトランスフェクトするのに十分な量で投与され、過度の副作用なしに十分なレベルの遺伝子導入及び発現を提供することができる。従来の、薬学的に許容される投与経路には、選択された臓器への直接送達(例えば、肝臓への門脈内送達)、経口、吸入(鼻腔内及び気管内投与を含む)、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腫瘍内、及び他の親経路が含まれるが、それらに限定されない。投与経路は、希望により組み合わせることができる。
いくつかの態様において、rAAV組成物は、特に高rAAV濃度(例えば、約1013GC/ml以上)で存在する場合、組成物中のAAV粒子の凝集を低減するように処方される。rAAVの凝集を減少させる方法は当技術分野でよく知られており、例えば界面活性剤の添加、pH調整、塩濃度調整等を含む。
薬学的に許容される賦形剤及びキャリア溶液の製剤化は、当業者に周知であり、本明細書に記載される特定の組成物を様々な治療レジメンで使用するための適切な投与及び治療レジメンの開発も同様である。典型的には、これらの製剤は、少なくとも約0.1%以上の活性化合物を含むことができるが、活性成分の割合は、もちろん変動してもよく、好都合には、製剤全体の重量又は体積の約1又は2%と約70又は80%以上との間であってもよい。当然のことながら、各治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、化合物の任意の所与の単位用量において適切な投与量が得られるように調製され得る。溶解度、生物学的利用能、生物学的半減期、投与経路、製品の貯蔵寿命、及び他の薬学的考察などの要因は、このような医薬製剤を調製する当業者によって企図され、そのため、種々の投与及び治療レジメンが望まれ得る。
一態様において、本明細書に開示された好適に処方された医薬組成物中のrAAVベースの治療構築物を、皮下、胸腔内、経鼻、非経口、静脈内、筋肉内、若しくは腹腔内、又は吸入により送達することが望ましい。一態様において、細胞をrAAVで感染させるには、rAAVを薬学的に許容されるキャリアで被験者に、細胞を感染させるのに十分な量及び期間投与する。例えば、rAAVは、被験者に非経口的に投与することができる。細胞がミクログリア細胞を含む神経細胞である場合、rAAVは線条体に注入することにより投与することができる。
注入に適した医薬品の形態としては、無菌の水溶液又は分散液、及び無菌の注射用溶液又は分散液をその場で調製するための無菌の粉末を挙げることができる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれらの混合物、ならびに油中に調製することができる。通常の保管及び使用条件下では、これらの製剤は微生物の増殖を防ぐために防腐剤を含む。多くの場合、その形態は無菌であり、容易に注射できる程度に流動的である。製造及び保管の条件下で安定でなければならず、細菌や真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物、及び/又は植物油を含む溶媒又は分散媒体とすることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合の必要な粒子径の維持、界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの各種抗菌剤、抗真菌剤によってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖類又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長時間の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物における使用によってもたらされ得る。
注射用水溶液の投与のために、例えば、溶液は、必要に応じて適切に緩衝化され、液体希釈剤は、最初に十分な生理食塩水又はグルコースで等張にされ得る。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に特に適している。これに関連して、採用することができる無菌水性媒体は、当業者には公知である。例えば、1つの投与量を1mlの等張NaCl溶液に溶解し、1000mlの皮下注射液に添加するか、又は注入予定部位に注射することができる。投与量には、宿主の状態に応じて必然的にある程度の変動が生じうる。
無菌注射液は、必要な量の活性rAAVを適切な溶媒に、必要に応じてここに列挙した他の成分の様々なものを取り込み、次いで濾過滅菌することにより調製することができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒と上記に列挙した成分のうち必要な他の成分を含む無菌ビヒクルに、滅菌した様々な活性成分を取り込むことによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、あらかじめ無菌ろ過されたその溶液から活性成分及び任意の追加所望の成分の粉末を得ることができる。
rAAVはまた、中性又は塩の形態で製剤化することができる。薬学的に許容される塩には、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)が含まれ、これは例えば塩酸若しくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成されるものである。遊離カルボキシル基と形成される塩はまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄などの無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導することができる。製剤化された溶液は、製剤に適合した方法で、治療上有効な量だけ投与される。製剤は、注射剤、薬物放出カプセルなどの様々な投与形態で容易に投与することができる。
本明細書で使用される場合、「キャリア」は、あらゆる溶媒、分散媒体、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤、緩衝剤、キャリア溶液、懸濁液、コロイド等を含む。医薬活性物質に対するこのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で周知である。補足的な活性成分もまた、組成物に組み込むことができる。「薬学的に許容される」という語句は、宿主に投与されたときにアレルギー反応又は同様の不快な反応を生じない分子実体及び組成物を指す。
リポソーム、ナノカプセル、微粒子、マイクロスフィア、脂質粒子、ベシクル等の送達ビークルは、本開示の組成物の適切な宿主細胞への導入に使用されてもよい。特に、rAAVベクター送達された導入遺伝子は、脂質粒子、リポソーム、ベシクル、ナノスフィア、又はナノ粒子などにカプシド化されたいずれかの送達のために製剤化されてもよい。
(e)レポーター
導入遺伝子はまた、レポーター分子をコードする核酸配列を含んでもよい。本明細書において、「レポーター」という用語は、プロモーターを介した転写及び/又は翻訳の指標として使用され得る任意の生体分子を指す。レポーターは、ポリペプチドであってもよい。レポーターはまた、核酸であってもよい。適切なポリペプチド及び核酸レポーターは当技術分野で公知であり、視覚レポーター、選択可能レポーター、スクリーニング可能レポーター、及びそれらの組み合わせを含むことができる。他のタイプのレポーターは、当業者には認識されるであろう。
視覚レポーター(Visual reporters)は、典型的には、細胞の色の変化、又は細胞の蛍光若しくはルミネセンスのような視覚的なシグナルをもたらす。好適な視覚レポーターには、蛍光タンパク質、可視レポーター、エピトープタグ、アフィニティタグ、RNAアプタマーなどがある。好適な蛍光タンパク質の非限定的な例としては、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、GFP-2、tagGFP、turboGFP、EGFP、Emerald、Azami Green、Monomeric Azami Green、CopGFP、AceGFP、ZsGreen1)、黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、EYFP、シトリン、ヴィーナス、YPet、PhiYFP、ZsYellow1)、青色蛍光タンパク質(例えば、EBFP、EBFP2、Azurite、mKalama1、GFPuv、Sapphire、T-sapphire)、シアン蛍光タンパク質(例えば、ECFP、Cerulean、CyPet、AmCyan1、Midoriishi-Cyan)、赤色蛍光タンパク質(例えば、mKate、mKate2、mPlum、DsRedモノマー、mCherry、mRFP1、DsRed-Express、DsRed2、DsRed-モノマー、HcRed-Tandem、HcRed1、AsRed2、eqFP611、mRasberry、mStrawberry、Jred)、及びオレンジ蛍光タンパク質(例えば、mOrange、mKO、Kusabira-Orange、Monomeric Kusabira-Orange、mTangerine、tdTomato)、又は他の任意の好適な蛍光タンパク質が挙げられる。視覚レポーターの非限定的な例としては、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、β-グルクロニダーゼ(GUS)、β-ガラクトシダーゼ、β-ラクタマーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アントシアニン色素、及びそれらのバリアントが挙げられる。適切なエピトープタグとしては、myc、AcV5、AU1、AU5、E、ECS、E2、FLAG、HA、マルトース結合タンパク質、nus、Softag 1、Softag 3、Strep、SBP、Glu-Glu、HSV、KT3、S、S1、T7、V5、VSV-G、6xHis、BCCP及びカルモジュリンが挙げられるが、これらに限定されない。アフィニティタグの非限定的な例としては、キチン結合タンパク質(CBP)、チオレドキシン(TRX)、ポリ(NANP)、タンデムアフィニティ精製(TAP)タグ、及びグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)が挙げられる。RNAアプタマーの非限定的な例としては、低分子色素を封入し、その蛍光を活性化する蛍光性RNAアプタマーが挙げられる。
その他の視覚レポーターとしては、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ランタミド共鳴エネルギー移動(LRET)、蛍光相互相関分光法、蛍光消光、蛍光偏光、シンチレーション近接、化学発光エネルギー移動、生物発光共鳴エネルギー移動、エキシマー形成、リン光、電気化学変化、分子ビーコン、酸化還元電位変化などを挙げることができる。
レポーターの組み合わせが使用され得ることは理解されるであろう。例えば、目的の遺伝子によって発現されるタンパク質に融合された視覚レポーターは、正確な相同組み換え事象を同定するために使用されてもよいが、視覚レポーターはタンパク質に永続的に融合されない。第2のレポーターを視覚レポーターと組み合わせて使用してもよく、この場合、第2のレポーターはタンパク質に永続的に融合される。
さらに、トランスジーンに使用されるレポーターとは関係なく、レポーターは分割レポーターシステムであってもよい。分割レポーターシステムは、導入遺伝子のレポーター配列のサイズを小さくするために使用されることがある。適切な分割レポーターシステムの非限定的な例としては、分割GFPシステム及びグリホサート耐性用の分割5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼが挙げられる。同様に、使用されるレポーターとは無関係に、導入遺伝子は、AAVベクター以外の場所にコードされたレポーターを活性化するための活性化因子をコードしていてもよい。
II.rAAVライブラリ
本開示はまた、複数のrAAVメンバーからなるrAAVのライブラリを包含する。各rAAVメンバーは、AAVベクターをカプシド化する改変AAVカプシドタンパク質を含み、AAVベクターは、導入遺伝子の両側に隣接するAAV末端逆位反復(ITR)及び各rAAVのカプシドタンパク質に固有の識別子配列を有する。各改変AAVカプシドタンパク質は、選択された細胞型に対する優先的な指向性を示す。ライブラリのrAAVの数は、他の変数の中で改変カプシドタンパク質の数及びライブラリのrAAVメンバーによって感染される細胞の集団によって異なり得るし、異なるであろう。
本開示のウイルスライブラリは、実施例2に記載され、本開示の図2に概説されるように生成することができる。すなわち、以下の重要な特徴を含むクローニングプラスミドが構築される:1)AAV遺伝子はITRの外に収容され、ウイルス生産中に連続感染性が起こらないことを保証する。2)遺伝的に改変されたカプシドタンパク質をコードするAAVcap遺伝子のすぐ下流と、固有の識別子のすぐ上流に、一方指向性のLoxPサイトを導入する。クローニングプラスミドは、完全な明確さを保ちつつ多様性を最大化し(すなわち、1識別子=1カプシド変異体)、バーコード/ミクログリアリガンド配列決定の忠実度を保証するように設計された方法論を用いて構築される(実施例2)。
ライブラリを複製し、そのうちの1つをCREリコンビナーゼ処理することにより、バーコードとMLを近接させることができる。CREを介した組み換えにより、断片が切り取られ、カプシドタンパク質中の識別子と改変変異が近接する。これにより、リガンド配列とともに識別子を配列決定し、各識別子と改変カプシドタンパク質、又は改変カプシドタンパク質に対する優先的な指向性を与える変異を対応させた参照データベースを構築することが容易にできるようになる。
ライブラリの2番目のコピーは、プラスミド上のウイルスベクターと変異したカプシドタンパク質を含むrAAVのライブラリの生成のために利用される。いくつかの態様において、ライブラリ中のrAAV生成に用いられる感染条件は、特定のカプシドの感染性が特定のゲノムに関連していることを確認するために、各生産細胞(例えば、HEK293細胞)がcap遺伝子の1バージョンだけを含むことを保証する。
細胞集団にrAAVのライブラリを感染させた後、シングルセルRNA配列決定により、感染細胞のプロファイルと関連する識別子を同定する。それぞれのrAAVの細胞プロファイル、識別子、改変カプシドタンパク質がリンクされたデータベースを作成するためにゲノミクスが利用される。したがって、ライブラリの各rAAVの識別子、改変カプシドタンパク質、細胞プロファイルは既知であり、特定の細胞型(この場合はミクログリア)のみを形質導入するカプシドを識別するために照会することができる(本明細書の以下のセクションIVを参照)。
III.核酸ライブラリ
本開示はまた、複数のrAAVメンバーからなるrAAVのライブラリをコードする核酸構築物のライブラリを提供する。核酸構築物は、識別子配列を含むAAVベクターを含み、改変カプシドタンパク質をコードする遺伝子をさらに含む。本開示はまた、複数のrAAVメンバーからなるrAAVのライブラリをコードする核酸構築物を調製するために使用されるクローニングプラスミドのライブラリを提供する。rAAVのライブラリ及びクローニングプラスミドは、本明細書の上記セクションIIに記載されているようなものであってよい。
本明細書に記載される核酸構築物のいずれも、本明細書に記載されるように、異なる構成要素が2つ以上の核酸構築物の間で任意に分配され得るという意味で、モジュール式と見なされることになる。核酸構築物は、DNA若しくはRNA、線状若しくは環状、一本鎖若しくは二本鎖、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。核酸構築物は、タンパク質への効率的な翻訳、及び場合によっては目的の細胞におけるRNAドナーポリヌクレオチド転写物への転写のために、コドン最適化されてもよい。コドン最適化プログラムは、フリーウェアとして、又は商業的なソースから入手可能である。
核酸構築物は、遺伝的に修飾(genetically modified)されようとしている細胞に後で導入するために、システムの1つ又は複数の構成要素を発現させるために使用することができる。あるいは、核酸構築物は、細胞におけるシステムの構成要素の発現のために、遺伝的に修飾されようとしている細胞内に導入することができる。
発現構築物は一般に、目的の細胞での発現のために少なくとも1つのプロモーター制御配列に作動可能に連結されたDNAコード化配列を含む。プロモーター制御配列は、細菌(例えば、大腸菌)細胞若しくは真核生物(例えば、酵母、昆虫、哺乳類、植物)細胞における改変カプシドタンパク質、AAVベクター、又はそれらの組み合わせの発現を制御し得る。好適な細菌プロモーターの例としては、限定されないが、T7プロモーター、lacオペロンプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター(trp及びlacプロモーターのハイブリッドである)、前述のいずれかのバリアント、並びに前述のいずれかの組み合わせが挙げられる。適切な真核生物プロモーターの非限定的な例としては、構成的プロモーター、制御されたプロモーター、又は細胞若しくは組織特異的プロモーターが挙げられる。適切な真核生物構成的プロモーター制御配列の例としては、サイトメガロウイルス即時初期プロモーター(CMV)、シミアンウイルス(SV40)プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、ラス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、リングリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、伸長因子(ED1)-αプロモーター、ユビキチンプロモーター、アクチンプロモーター、チューブリンプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、その断片、又は前述のいずれかの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。適切な真核生物制御プロモーター制御配列の例としては、限定されないが、熱ショック、金属、ステロイド、抗生物質、又はアルコールにより制御されるものが挙げられる。組織特異的プロモーターの非限定的な例としては、B29プロモーター、CD14プロモーター、CD43プロモーター、CD45プロモーター、CD68プロモーター、デスミンプロモーター、エラスターゼ-1プロモーター、エンドグリンプロモーター、フィブロネクチンプロモーター、Flt-1プロモーター、GFAPプロモーター、GPIIbプロモーター、ICAM-2プロモーター、INF-βプロモーター、Mbプロモーター、NphsIプロモーター、OG-2プロモーター、SP-Bプロモーター、SYN1プロモーター及びWASPプロモーターが挙げられる。
プロモーターは、制御されたプロモーターを含む、構成的プロモーター又は非構成的プロモーターであり得る。プロモーターはまた、組織特異的であり得、例えば、神経組織に特異的なプロモーターである。プロモーター配列はいずれも野生型であってもよいし、より効率的又は効能的な発現のために修飾されていてもよい。DNAコード配列はまた、ポリアデニル化シグナル(例えば、SV40ポリAシグナル、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリAシグナルなど)及び/又は少なくとも1つの転写終結配列に連結されていてもよい。
IV.コンピュータに実装された方法とシステム
本開示はまた、所望の細胞型に対する優先的な指向性を示すrAAVを同定するためのコンピュータ実装型方法を包含する。この方法は、少なくとも1つのプロセッサと、複数の改変AAVカプシドタンパク質によって示される指向性特性のデータベースを記憶するコンピュータ可読メモリとを有する汎用コンピュータ化システムを提供するか又は提供されたことを含む。指向性特性は、ライブラリのrAAVが特定の細胞型を形質導入する能力、及びrAAVが残りの細胞型を形質導入することができないことに関する情報を含む。改変カプシドタンパク質は、セクションIIに記載されるように調製され得、各改変AAVカプシドタンパク質が示す指向性特性は、セクションIに記載されるように決定され得る。
コンピュータ化システムは、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのプロセッサに、データベースを照会し、複数の改変AAVカプシドタンパク質の中から所望の細胞型への指向性を示すカプシドタンパク質を選択させる汎用コンピュータのための命令を含む機能モジュールを含むコンピュータ読み取り可能媒体をさらに含む。データベースは、各細胞型に関連する複数の細胞型特異的転写プロファイル情報、及び複数の核酸配列であって、各配列が固有の改変AAVカプシドタンパク質をコードするものをさらに含むことができる。データベースは、複数の識別子配列をさらに含むことができ、各識別子は、固有の改変AAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列に固有である。指向性特性、識別子の配列、及びライブラリ内の各rAAVの細胞プロファイルは、データベース内で連結され、特定の細胞型のみを形質導入し、他の細胞型を形質導入しないカプシドを識別するために照会することができる。
一態様において、本システムは、照会出力を表示するためのインターフェースユニットも備える。インターフェースユニットは、例えば、CRT(陰極線管)又はLCD(液晶ディスプレイ)モニタなどの表示装置であってもよいが、これらに限定されるものではない。表示装置は、ユーザに情報を表示することができ、キーボード、タッチスクリーン、及び/若しくはポインティングデバイス(例えば、マウス又はトラックボール)などの入力装置を含むか又はそれと作動的に通信することができる。入力装置は、代替的に又は追加的に、音声命令、又は体の動きなどの他のタイプのユーザー入力に基づく信号を受信及び送信するように構成され得る。
開示された方法、方法工程及び/又はプロセッサ実行可能命令は、任意のデジタル電子システム、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせによって実施又は実行され得ることを理解されたい。プロセッサは、任意のプログラミング言語を使用して開示された方法を実行するようにプログラムされ得る、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、又は複数のコンピュータの形態をとることができる。命令のプログラムは、独立したプログラムを構成してもよいし、コンピュータプログラミングの技術分野で知られているように、2つ以上のモジュール、コンポーネント、サブルーチンなどを備えていてもよい。方法工程は、コンピュータプログラムを実行する一つ又は複数のプログラマブルプロセッサによって、入力データに対して動作し、出力情報を生成することによって、方法の機能又は態様を実行することができる。
プロセッサは、プロセッサ実行可能命令によって、命令及びデータを記憶するために構成され得るメモリデバイスから命令及びデータを受信するように構成されてもよい。プロセッサ、又はプロセッサを含むコンピュータは、データを格納するための少なくとも1つ以上の大容量記憶装置(例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、又は光ディスク)と作動的に通信し、プロセッサがこのような記憶装置からデータを受け取り、又はこのような記憶装置にデータを転送できるようにしてもよい。例えば、データ及び/又は命令通信は、デジタル通信ネットワークを介して実行することができる。
開示された方法、方法工程及び/又はプロセッサ実行可能命令は、分散コンピューティングシステムによって実行され得ることをさらに理解されたい。分散計算システムは、例えば、フロントエンド(ユーザエンド)インターフェース、ミドルウェア、及びバックエンド、又はこれらの要素のうちの2つ以上の任意の組み合わせを含む。フロントエンド構成要素は、例えば、プロセッサ実行可能命令によって、ユーザがシステムと対話し、システムに入力を提供することができるグラフィカルユーザインターフェースを表示するように構成されたクライアントコンピュータとすることができる。インターフェースは、ウェブブラウザインターフェースで具現化することができる。ミドルウェアコンポーネントは、例えば、アプリケーションサーバーとすることができる。バックエンドコンポーネントは、例えば、データサーバーとすることができる。このような分散システムの構成要素のいずれか又はすべては、有線及び/又は無線ネットワークであってよい1つ又は複数のデジタル通信ネットワークを介して動作可能な通信状態にあることが可能である。
V.集団中の所望の細胞型への導入遺伝子の送達の最適化
本開示はまた、2つ以上の細胞型の集団における所望の細胞型への導入遺伝子の送達を最適化する方法を包含する。本方法は、所望の細胞型に対する優先的な指向性を示す改変AAVカプシドタンパク質を同定すること又は同定したことを含む。所望の細胞型に対する優先的な指向性を示す改変AAVカプシドタンパク質は、セクションIに記載の方法を用いて同定することができ、又はセクションIVに記載のシステムを用いてin silicoで照会することができる。
本方法は、所望の細胞型を含む細胞集団を、改変AAVカプシドタンパク質を含むrAAVで形質導入し、それによって所望の細胞型に導入遺伝子を送達することをさらに含む。所望の標的細胞型の細胞は、中枢神経系細胞であり得る。一態様において、所望の標的細胞型は、ミクログリア細胞である。一態様において、所望の標的細胞型は、星状細胞である。所望の細胞型は、細胞培養物、生体外組織であることができ、又は被験体内であることができる。例えば、細胞型は、高齢で病気の霊長類、数週間生き続けた死後の脳/脊髄組織を含むヒト脳組織、又はてんかん患者から切除された組織からであってよい。
VI.キット
本開示はまた、所望の標的細胞型への指向性を示す改変AAVカプシドタンパク質を同定又は生成するためのキットを包含する。キットは、セクションIIに記載のrAAVのライブラリ、セクションIIIに記載の核酸構築物のライブラリ、又はrAAVのライブラリ、核酸構築物のライブラリ、又はそれらの組み合わせを含む複数の細胞からなる。
キットは、トランスフェクション試薬及び形質導入試薬、細胞増殖培地、選択培地、インビトロ転写試薬、核酸精製試薬、タンパク質精製試薬、緩衝剤等をさらに含んでもよい。本明細書で提供されるキットは、一般に、以下に詳述する方法を実施するための説明書を含む。キットに含まれる説明書は、包装材に貼付されていてもよいし、パッケージの挿入物として含まれていてもよい。説明書は、典型的には書面又は印刷物であるが、これに限定されるものではない。このような説明書を保存し、最終使用者に伝達することができるあらゆる媒体が、本開示によって企図されている。そのような媒体には、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD ROM)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。本明細書において、用語「説明書」は、説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含んでもよい。
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、この発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。以下の参考文献は、本発明で使用される多くの用語の一般的な定義を当業者に提供するものである。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994); The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988); The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al. (eds.), Springer Verlag (1991); and Hale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書において、以下の用語は、特に断らない限り、それらに付与された意味を有する。
本開示の要素又はその好ましい態様を紹介する場合、冠詞「a」、「an」、「the」及び「said」は、その要素が1つ以上存在することを意味することが意図される。用語「comprising」、「including」及び「having」は、包括的であることを意図し、列挙された要素以外の追加の要素が存在する可能性があることを意味する。
上記による方法は、コンピュータ可読媒体に格納されているか、そうでなければ利用可能なコンピュータ実行可能命令を使用して実施することができる。そのような命令は、例えば、汎用コンピュータ、特殊コンピュータ、又は特殊処理装置に特定の機能又は機能群を実行させるか又はその他の方法で構成する命令及びデータで構成することができる。使用されるコンピュータ資源の一部は、ネットワークを介してアクセス可能であることができる。コンピュータ実行可能命令は、例えば、バイナリ、アセンブリ言語のような中間フォーマットの命令、ファームウェア、又はソースコードであってもよい。説明された実施例による方法の間に使用される命令、情報、及び/又は作成される情報を格納するために使用され得るコンピュータ可読媒体の例は、磁気又は光ディスク、フラッシュメモリ、不揮発性メモリを備えるUSBデバイス、ネットワーク化された記憶デバイス等を含む。
これらの開示による方法を実施するデバイスは、ハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアから構成され、様々なフォームファクタのいずれかを取ることができる。そのようなフォームファクタの典型的な例としては、ラップトップ、スマートフォン、スモールフォームファクタのパーソナルコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント、ラックマウント装置、スタンドアロン装置などがある。本明細書で説明する機能は、周辺機器又はアドインカードに具現化することも可能である。このような機能はまた、さらなる例として、単一のデバイスにおいて実行される異なるチップ間又は異なるプロセス間で回路基板上に実装することができる。
命令、その命令を伝える媒体、その命令を実行するためのコンピュータ資源、及びそのコンピュータ資源を支援する他の構造は、これらの開示に記載された機能を提供するための手段である。
本明細書おいて、用語「ライブラリ」は、例えば、キメラカプシドタンパク質、ウイルス粒子(例えば、rAAV)、分子(例えば、核酸)などのエンティティの集合を意味する。ライブラリは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも25個、少なくとも50個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、又はそれ以上の異なるエンティティ(例えば、ウイルス粒子、分子(例えば、核酸))を含んでよい。一態様において、ライブラリの実体(例えば、ウイルス粒子、核酸)は、タグ(例えば、バーコード)に関連付けられ、又はリンクされ、これにより実体の回収又は識別を容易にすることが可能である。例えば、一態様において、本明細書で提供されるライブラリは、rAAVのコレクション及びrAAVをコードする核酸組成物のライブラリを含む。一態様において、ライブラリは、例えば、クローン増幅のプロセスを通じて伝播可能な核酸のコレクションを指す。ライブラリの実体は、別々に又は混合物として保存、維持又は含有させることができる。
導入遺伝子とは、ある生物から別の生物に自然に、又は多くの遺伝子工学技術のいずれかによって導入された遺伝子のことである。トランスジェネシスと呼ばれるプロセスで導入された導入遺伝子は、生物の表現型を変化させる可能性を有している。導入遺伝子とは、ある生物から分離され、別の生物に導入された遺伝子配列を含むDNAの断片を指す。この外来DNAセグメントは、トランスジェニック生物でRNA若しくはタンパク質を生産する能力を保持しているか、又はトランスジェニック生物の遺伝コードの正常な機能を変更する可能性がある。一般に、DNAは生物の生殖系列に組み込まれる。
本明細書において、「遺伝子」という用語は、RNA産物の制御された生合成のためのすべての情報を含むDNAセグメントを指し、プロモーター、エクソン、イントロン、及び発現を制御する他の非翻訳領域を含む。
本明細書で使用する「発現」は、以下の1つ以上を含むがこれらに限定されない:前駆体mRNAへの遺伝子の転写;前駆体mRNAのスプライシング及び他の処理による成熟mRNAの生成;mRNAの安定性;成熟mRNAのタンパク質への翻訳(コドン使用及びtRNA利用能を含む);並びに適切な発現及び機能に必要であれば翻訳産物のグリコシル化及び/又は他の修飾。
本明細書において、用語「変異体」は、突然変異、例えば、一塩基多型(「SNP」)の結果である野生型からの任意の遺伝的変異を意味する。用語「変異体」は、本明細書を通じて、用語「マーカー」、「バイオマーカー」、及び「標的」と互換的に使用される。
「ポリペプチド」と「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを意味するものとして互換的に使用される。
本明細書において、用語「コードする」は、生物学的分野で使用されるその平易かつ通常の意味、すなわち生物学的配列を特定することを有すると理解される。核酸分子の機能を説明するために使用される場合、用語「コードする」は、慣習的に、固有のポリペプチドを構成する1つの単一のアミノ酸配列、又は固有のRNAを構成する1つの核酸配列を特定することを意味する。その機能は、各核酸分子の特定の核酸配列によって実現される。
本発明の範囲から逸脱することなく、上述した細胞及び方法に様々な変更を加え得るので、上記の説明及び以下に示す実施例に含まれる全ての事柄は、例示であって限定的な意味ではないと解釈されることが意図される。
本明細書で言及されたすべての特許及び刊行物は、本開示が関係する当業者の水準を示すものである。すべての特許及び刊行物は、個々の刊行物が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
全体を通して論じられている出版物は、本出願の出願日前の開示のためにのみ提供される。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明によってそのような開示に先行する権利を有していないことを認めるものとは解釈されるものではない。
以下の実施例は、本開示を実証するために含まれている。以下の実施例に開示される技術は、本開示の実施において十分に機能することが発明者によって発見された技術を表すことを当業者は理解すべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示の精神及び範囲から逸脱することなく、開示において多くの変更がなされ、依然として同様又は類似の結果が得られることを理解すべきであり、したがって、記載された全ての事項は、例示として解釈され、制限的意味において解釈されないものである。
実施例1.導入
CNSにおけるミクログリアの役割は、誘導性の(例えば、タモキシフェン依存性CREリコンビナーゼのような)遺伝子導入動物を用いて研究することが可能である。このようなアプローチは、ある程度の制御を欠いている。例えば、導入遺伝子の投与は、一度誘導されると固定され、構成的である。対照的に、調節可能なベクターシステムでは、導入遺伝子の発現レベルは、例えば、ドキシサイクリンの投与に基づいて調節することができる。残念ながら、CRE依存性の誘導性プロモーターの使用は、そのようなカセットが複数の遺伝子要素やプロモーターを含んでいるため、簡単ではない。また、CREシステムは、すべてのタイプの遺伝的要素の単純かつ効率的な制御を提供するわけではない。例えば、ショートヘアピンRNAやCRISPR用途のガイドRNAなどの小分子RNAは、通常、ポリメラーゼ(pol)IIIプロモーターを介して発現するが、そのような転写カセットは同じ方法で制御できず、pol IIプロモーターの使用にはこれらの用途において一定の限界(例えば、不正確な転写開始)がある。さらに、この種の改変は、遺伝子導入が可能な種(すなわち、主にマウスとラット)に限定される。しかしながら、CREを介した遺伝子改変を具体的に研究するためにトランスジェニック動物を使用する際のおそらく最大の障壁は、表現型の異なる複数の細胞型(例えば、ミクログリアとニューロン)において遺伝子改変が望まれる状況においてである。例えば、CREがミクログリアにおいて特異的に発現するCX3CR1CreERマウスを、ニューロン特異的CREマウスと組み合わせて使用することは、それぞれの動物がそれ自体に与える遺伝子改変の精密さを失わせることになるため、不可能であった。
ミクログリアを改変するもう一つの方法は、ウイルスによる遺伝子治療である。それにもかかわらず、レンチウイルス(LV)は、インビボでミクログリアを形質導入する効果がかなり低く、アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ミクログリア形質導入に著しく不応性であることが証明されている。そこで、ミクログリアに特異的に形質導入するAAVウイルスベクターを作製し、同定した。本発明者らは、ミクログリアを効果的に標的とすることにおけるAAVのこの明白な無能力には生物学的根拠がないことを示した(図1)。図1で利用されるAAVカプシドは、AAVの「指向された(directed)」分子進化を使用して生成された。これは、AAVバリアントが、正の選択マーカーを使用して、高い多様性を有する大規模な改変AAVカプシドライブラリから選択される、一般的な方法である。図1に利用されるカプシドの同定に至ったアプローチは、シナプス前リガンドで強化されたウイルスライブラリに基づいており、逆行性輸送が強化されたバリアントを生産することを目的としていた。しかしながら、これまでのところ、古典的な意味での負の選択は不可能であった。したがって、細胞特異的な標的化は保証されない(例えば、ミクログリアを標的化できる特定されたAAVバリアントは、ニューロンも標的化する;図1)。

この技術的問題に対処するために、本発明者らは、新規なワークフローを提供する。当該ワークフローにおいては、1)AAV2のカプシドへのミクログリアリガンドの組込みによって、ミクログリアを標的とするバーコード付きAAVのライブラリが生成され;2)形質導入されたマウス脳のシングルセルRNAseqを使用して、AAV及び対応するバーコードによって形質導入された個々の細胞のプロファイルが同定され;3)バイオインフォマティクスを使用して、標的とすることが望ましくない細胞型にも存在する変異体(バーコード)に対して「in silico負の選択」が適用される(例えば、ミクログリアには存在するがニューロンには存在しないカプシドを特定できるようにする)。このアプローチにより、多数のAAVバリアントのトランスダクション特性を明らかにする大規模なデータベースが構築される。4)この新しいベクターの有用性は、ミクログリア機能の研究という文脈で、古典的なCREベースの改変では歴史的に不可能であった実験において実証される。その際、調査を拡大して、ミクログリアの後成的制御の領域特異的なモジュレーションが、皮質・三叉神経ネットワークのニューロンの興奮性の局所的な変化をもたらすかどうかを決定する。5)並行して、実験はこのアプローチを種(ヒト以外の霊長類)や年齢(老化したげっ歯類)を越えて拡大する。さらに、ここではミクログリアを例にとっているが、作成されたデータベースは、ニューロンや他の非ニューロンのサブセットに特異的なバーコード(すなわちカプシド)に対して照会することができ、細胞特異的AAV変異体の可能性を示す大きなリポジトリを提供し、神経系の研究にとって極めて強力なツールとなりうる。
生体内のミクログリア機能を研究するための、既存の技術に対するAAVの利点。「安静時」のミクログリアを改変することは、これらの細胞がその環境の微小な変化に容易に反応するため、比較的困難であることが判明している。そのため、ある改変に伴う真の結果が、ミクログリアプロセスに対する特定の効果によるものなのか、それとも環境の変化に対する一般的な反応によるものなのかを判断するのは難しい可能性がある。しかし、現在の最先端技術であるCXCR1CreERマウスのようなトランスジェニック技術を用いることで、ミクログリア改変に関連する解像度が著しく向上し、ミクログリア機能の理解を深める上で重要な背景となった。しかしながら、このような技術の使用は、大きな前進を意味するものの、まだいくつかの限界があるところ、そのほとんどは、ミクログリア特異的AAVベクターの開発によって克服することができる。CXCR1CreERのようなモデルの使用における最も重要な制限は、それを使用することにより、分子的に定義された細胞のサブセットへと異所性発現を制限するための交差型アプローチの使用が、依然として制限される、ということであろう。例えば、2つ以上の異なるCRE組み換えイベントが必要な場合(例えば、ニューロン特異的CREとミクログリア特異的CRE)、このモデルは適さない。しかし、特定のウイルスベクターを用いることで、そのような区別と精度を達成することができる。この有用性は、ニューロン特異的CRE発現がニューロンと樹状突起を標識している動物においてミクログリア特異的AAVをYFPと組み合わせることで、実証される。タモキシフェンを用いたCREシステムでは、遺伝子発現の時間的制御は可能であるが、用量制御はできない(すなわち、一度組み換え事象が起こると、遺伝子発現は持続的にオン又はオフとなる)。CRE依存性AAVベクター(別名「FLEX」ベクター)と組み合わせて使用する場合、様々な力価を使用することで、ある程度の投与量制御が可能である。しかし、このシステムは、制御可能なベクターシステムで達成できるような制御を欠いている。例えば、実験中に発現量を変化させることはできない。CREを発現するトランスジェニックを用いた遺伝子発現の空間的制御は、CRE依存性ベクターシステムと組み合わせて使用した場合にのみ達成され得る。一方、異所性に適用されたCRE-ERの使用(例えば、フロックス化トランスジェニックモデルにおける、AAVを介したCRE-ERの発現)は、組み換えを空間的に制限するために有用である。いずれの場合も、ミクログリアにおいてこのような改変を行うには、ミクログリア特異的なベクターが必要である。小さな懸念としては、CREシステムの漏れ、モザイク、CREやタモキシフェンによる毒性及びオフターゲット効果に関連する潜在的な交絡が挙げられるであろう。したがって、このことを念頭に置き、もし単一の改変を行う必要があるならば、ウイルスを介した遺伝子導入は、研究デザインへの交絡を少なくすることができる可能性がある。ミクログリア特異的ベクターを利用することの利点は、たとえ単一の改変であっても、新しい系統のマウスを作製する必要がなく、研究者がより迅速かつ経済的にデータを収集する手段を得られることである。最後に、ミクログリア特異的トランスジェニックマウスCXCR1Cre及びCXCR1CreERでは、CXCR1遺伝子に代えてCRE遺伝子が挿入されており、CXCR1がハプロ不全となっている。このマウスは、それ自体、可塑性や行動表現型に大きな変化をもたらし、ある種の実験には理想的でない。
分子進化の根拠。分子進化又は指向性進化(directed evolution)は、固有の特徴を有する新規なウイルスカプシドの開発に多大に役立ってきた。しかしながら、既存の手順は、負の圧力又は選択の生物学的プロセスを可能にしない。むしろ、これらの研究で同定された末端カプシドの選択は、ある標的外活性の程度が最も低いカプシドを選択するために、多数の変異体の広範なテストに基づいている場合が多い。これに対し、ゲノミクスやバイオインフォマティクスは、事実上のin silico負の選択を実現するために用いられている。
さらに、これまでの方法とは異なり、DNAバーコーディングを用いた合理的なカプシド進化のための新しい方法を提案する。この方法は、合理的設計のすべての利点を維持しながら、指向性進化の広いスクリーニング能力を維持する。この方法の新規な特徴は、各ウイルス粒子が、ゲノムに含まれる固有のDNAバーコードにリンクされたペプチド(ミクログリアリガンド由来)を表面に表示するウイルス生産アプローチであることである。この方法により、何百万ものカプシドの変異体を同時に並行してスクリーニングすることができる。このスクリーニング方法では、1回のスクリーニングで済むため、既存のスクリーニング方法よりも少ない動物数、短い時間でスクリーニングを行うことができる。
AAVは、ミクログリア形質導入に極めて難渋している。今日まで、AAVを用いた強力なミクログリア形質導入の観点からの報告はほとんどない。本明細書に記載されるものと類似のライブラリアプローチを用いた最近の予備的作業において、強力なミクログリア指向性を有するカプシドバリアントが本発明者らによって特定された(図1参照)。重要なことに、この発見は、ミクログリアをAAVで感染させるための生物学的障壁がないことを実証している。それにもかかわらず、分子進化の領域における負の選択は、シナプス前ニューロンを優先的に標的とするカプシドを同定することを目的とした図1に示す研究において、まだ達成されていない。したがって、同定されたカプシドは、複数の細胞型を高い親和性で標的にしていた(図1)。
シナプスにおけるミクログリアの役割。歴史的に、ミクログリアは、細胞の残骸やミスフォールドしたタンパク質の貪食及び病原体のクリアランスに顕著な役割を担う、CNSの「ゴミ集め」細胞と考えられていた。しかし、現在では、ミクログリアが、生物の一生を通じて、ニューロンの結合とネットワークの形成に重要かつ決定的な役割を果たすことが明らかになっている。発生過程では、ミクログリアはシナプスや「不要な」ニューロンを貪食することで、ニューロン回路を調節している。このようなミクログリアの役割は発生後も継続し、成人期にはシナプスの剪定が観察されるようになる。この活動は、様々なシグナル伝達に反応して起こる。実際、ミクログリアは神経伝達物質や他の神経調節物質に対する様々な受容体を発現している。したがって、ニューロンの活動は、シナプスとネットワークの形成におけるミクログリアの役割の重要な調節因子であると考えられている。重要なことは、最近、脳全体の領域別の後成的な差異が証明され、その差異が異なる領域でのミクログリア活性を調節していることである。
ポリコーム抑制複合体2(PRC2)とミクログリア活性。上記で言及したように、ミクログリアは領域特異的な差異を示す。例えば、線条体ミクログリアは恒常性表現型を有するが、小脳ミクログリアはクリアランス表現型を示す。これらの表現型は後成的に制御されており、線条体ミクログリアにおけるクリアランス表現型の抑制は、PRC2によって制御されている。線条体ミクログリアにおけるPRC2の異常な不活性化は、線条体中型有棘ニューロン(MSN)の形態やMSN制御行動の著しい変化をもたらすが、これは不適応なスパイン剪定の結果と考えられ、スパインの形成や維持を促す遺伝子の発現が減少していることが判明した。しかし、興味深いことに、PRC2はニューロンの分化や機能にも重要である。MSNにおいてPRC2をサイレンシングすると、ニューロン死や神経変性につながる転写プログラムが活性化される一方、他のニューロン集団では樹状突起の複雑さが劇的に変化することが確認されている。このように、この複合体の活性を調節することは、対象とする細胞型によって異なる結果をもたらす可能性がある。
実施例2 AAVのガイドされた分子進化(Guided molecular evolution)とシングルセルバイオインフォマティクスの組み合わせ、及びげっ歯類での検証。
ウイルスライブラリの生成。
ウイルスのゲノム。野生型(wt)AAVゲノムは、rep(複製タンパク質をコードする)及びcap(カプシドタンパク質をコードする)という2つの遺伝子を含む。カプシドは、様々な天然の血清型間で高度に保存されており、可変領域(VR)、細胞受容体結合及びその後の内在化に関与する領域で大きく異なっている。AAV2では、VRの1つがキャップR588からコードされており、ビリオンの構造又は生産を損なうことなく挿入ポリペプチドを許容できる高度に柔軟なループを表している。図2に、バーコード付きウイルスゲノムライブラリの生成に関わるステップの概要を示す。重要なことは、この部位に挿入すると、HSPGとの結合を介した正規の侵入が阻害されることである。
クローニングバックボーン:図2は、クローニングシステムの模式図を示す。このプラスミドは、以下を含む主要な特徴を含む。1)R588における切断部位は、ミクログリアリガンド(下記参照)に基づく、短いポリペプチド配列(14アミノ酸(AA))をコードするオリゴヌクレオチドの挿入を容易にするためである。2)AAV遺伝子はiTRの外側に収容され、ウイルス生産中に連続感染性が生じないことを保証する。3)キャップのすぐ下流とバーコードのすぐ上流に一方指向性のLoxPサイトが導入されている。CREを介した組み換えにより、(上流のiTRを含む)断片が切り取られ、バーコードとリガンド挿入部位が近接する。これにより、リファレンスデータベースを構築するための、バーコードとリガンド配列のペアエンドイルミナシークエンシングが、容易になる(1バーコードに1リガンドが対応する)。ウイルスゲノムのRNAseqは、4)単一核から単離された転写されたmRNA(すなわちGFP)の配列決定によって行われる。
ライブラリの生成(図2)。バーコード化されたウイルスゲノムを、標準的なギブソンクローニング方法論を用いて組み立てた(図2-ステップ1)。概略のクローニングスキーマは、完全な明確さを保持しながら多様性を最大化し(すなわち、1バーコード=1カプシド変異体)、バーコード/ミクログリアリガンド配列決定の忠実性を確保するように設計されている。
ミクログリアリガンド(ML)の選択。2つのクラスに属するMLを同定した。1)既知のミクログリア受容体(例えば、LAG-3-関連タンパク質、インターフェロン-γ)を有するリガンド;及び、2)ミクログリアに自然に感染する感染性物質に基づくリガンド。例えば、主にCNSのミクログリアに感染するヒト免疫不全ウイルス(例えば、HIV-1 YU2,ADA,89.6,Br20-4,HXB-2 glycoprotein 120)のエンベロープタンパク質が挙げられる。同定された各ポリペプチドに対して、ライブラリプールはAA1-14、AA2-15、AA3-16などをコードするオリゴヌクレオチドで構成される。オリゴヌクレオチドは、5’と3’キャップのオーバーラップをコードする隣接配列(flanking sequences)で設計されている(図2)。約250のリガンドが同定された(表2)。このライブラリのバリアントの総数は130,000と現在推定されている。
バーコードの生成。バーコードは、5’末端と3’末端に相同性を有する短いドメインに挟まれた20塩基対のオリゴヌクレオチドとして生成され挿入される(図2)。さらに、すべてのバーコードオリゴは、CRE組み換えのために5末端にLoxPTZ17配列も含んでいる。バーコードを識別するために、バーコード配列は、長いホモポリマーの形成を避けながら最大の可変性を可能にするために、循環する(5回繰り返される)V-H-D-B IUPAC曖昧コードに基づく。
ウイルスゲノムの生成。最終ゲノムは、1:1:1:1(ゲノム:ML:バーコード)の比率を確保するために、4つの成分(線形化シャトルベクター、ミクログリア標的配列(microglial targeting sequence)、キャップのC末端部分を含む配列、及びバーコード断片;図2)のギブソンアセンブリにより生成される。最終的なライゲーション産物は、すぐにパッケージできるゲノムを表す(図2-ステップ1、4)。
ペアエンドイルミナシークエンシングを用いたバーコードデータベースの生成。標準的なイルミナのショートリードNGSシーケンシングは、バーコードと挿入されたマイクログリアフラグメントの両方を包含するリード長を許容しない。この曖昧さを防ぐために、オリジナルライブラリのレプリカを利用する。ライブラリのペアエンドイルミナシークエンシングを可能にするために、プラスミドをCRE-リコンビナーゼで処理し、挿入ペプチド配列とバーコードを近づける(図2-ステップ2)。フラグメントとバーコードの間の組み換えを防ぐため、エマルジョンPCRを用いてシークエンスPCRステップを実施する。2000万回以上の読み取りを行い、各バリアントが複数回配列決定され、100%に近い忠実度で曖昧さがないこと(すなわち、ミクログリア標的配列がバーコードと明白に対になっていること)を確認する。この配列情報は、各ライブラリゲノムが1つのミクログリアリガンドと1つのバーコードで識別されるデータベースを作成するために利用される。
ウイルスの生成。ライブラリ生成中のウイルス生成の重要な構成要素は、各生産細胞(すなわちHEK293細胞)がcap遺伝子の1つのバージョンだけを含むことを確実にすることであり、そうして、特定のカプシドの感染性が特定のゲノムに関連しているという結論を得ることができるようになる。したがって、その化学量論は「標準的な」AAV製造のそれとは異なっている。それでもなお、この方法論は、高力価ベクター調製物の生成を可能にする(例えば、このパッケージング方法がカプシド変異体を単離するために利用されている図1を参照)。さらに、組み換えゲノムからのcap遺伝子の分離(図2-ステップ4)は、放出されたビリオンが生産中に細胞に交差感染することができないことを保証する。一般的なベクター生産は、いずれかの場所(elsewhere)に記載されているように行われる。しかしながら、カノニカル受容体結合部位が破壊されていることを考慮して、カラムクロマトグラフィーが行われる。
試行的注射。リガンドオリゴヌクレオチドの2つのプールに由来するウイルスライブラリを、リガンド自体に対する明白な炎症反応がないことを確認するために、線条体に片側ずつ注入した(n=3マウス/ライブラリ)。これらの動物は、Iba1及びGFAPの免疫反応について分析される。AAVを注入した半球とビヒクルを注入した半球の間で比較を行う。
脳定位注射。ベクター(ライブラリ;n=8マウス(雄/雌))は、標準的な定位送達を用いて線条体に注入される。低流量(0.5μl/min、合計2μl)とマンニトールの使用により、線条体のほぼ完全な形質導入が可能である。このターゲットが選ばれた理由は、この組織が容易に解剖できるためである。
単核の分離は、10X Genomics Chromium scRNAプラットフォームを使用して行われる。特異性及び感度と検出及びスループットとのバランスをとるために、低い3.1%のダブレット率で約4000個の核を回収するために、約7000個の核をChromium機器にロードする。このプロセスを繰り返し、合計で約20000個の核を回収する。1000個の細胞を用いてパワー解析を行った結果、偽発見率10%で脳細胞タイプ間の有意な発現差を検出するパワーが95%となった。最後に、この深さでは、非効率的なカプシド(すなわち、一般的な感染効率の悪さにより、標的外の細胞に極端に少ない数で存在する可能性があるカプシド)を同定することができる。
このアプローチの実現可能性は、予備的な研究で決定された。1)細胞タイプを区別する能力、及び、2)稀な導入事象を識別する能力を決定するために、単一の線条体に非常に低い力価のAAV2-CMV-GFP(1×1011ベクターゲノム/mlの2μl)を注射した。注射から3日後、導入遺伝子の発現が非常に低くなった時点で、核を採取し、RNAseqのために処理した。次元削減法であるt分布型確率的近傍埋め込み法(t-SNE)を用いて、脳内の様々な細胞タイプ(全人口の約10%を占めるミクログリアを含む)の識別と、AAV転写物の検出との両方が可能であった(図3)。
しかし、今回のアプローチでは、ウイルスカプシド特異的mRNAを確実に捕捉・濃縮するために、同様のプロトコルに基づき、AAVウイルスカプシド一本鎖逆転写酵素プライマーを10Xシングルマスターミックスにドープしている。10X Chromiumシステムの固有の3’バイアスに対応するため、プライマーはバーコード領域の5’、ポリAテールの100bp以内に設計されている(図1)。生成後、インデックスを付けてプールしたシングルセルライブラリは、イルミナNovaSeq装置でS1フローセルを用いて、細胞のタイプを決定しまた低発現AAVウイルスカプシドバーコードを捉えるのに十分な情報を提供するために、約120Kリード/細胞の深さで配列決定される。
バイオインフォマティクス。バーコード付きのコンセンサスリードに分割されると、対応するミクログリアリガンド配列は、Frame-Pro、BLAST及びHMMERアルゴリズムを組み込んだカスタム開発ワークフローを使用して同定される。10xシングルセルRNAシークエンスデータは、Cell Ranger 2.0.2とカスタムビルドのリファレンスを使用して処理される。カスタムレファレンスは、mm10マウスレファレンスゲノムと、注入される各々唯一であるウイルスゲノム(unique viral genomes)全てと、で構成される。これらのウイルスリガンドとその固有のバーコードは、遺伝子としてアノテーションされている。リガンドの発現は、前述の標準的な10xワークフローを使用して直接同定することができる。10xワークフローに従い、細胞特異的な転写プロファイルは、細胞タイプをクラスタリングし、ウイルスのリガンドを感染する特定の細胞タイプに定性的に関連付けるために、次元削減に使用される。さらに、新たに開発されたFast Batch Alignment(バッチバランスK近傍法-BBKNN)を使用することにより、細胞型の同定が容易になる。これにより、大規模なマウスscRNA seqデータセットを独立して照会したり、我々のアプローチで複数の動物からのデータをマージしたりすることが可能となった。一旦完了すると、マッチしたミクログリアリガンド、バーコード、細胞特異的転写プロファイル、及び対応する細胞タイプのデータベースが作成される。
重要なことは、分子進化アプローチは、しばしば、ウイルスゲノムの単離、さらなる多様化、及び下流ライブラリの生成からなる、複数回の注入を必要とするということである。本明細書に記載のアプローチは、ウイルスゲノムの単離に依存せず、同じ細胞内の複数のウイルスゲノムは、課題をもたらさない。むしろ、どのようなカプシド遺伝子がミクログリアと関連しているかをそれ自体で特定することが可能である。
バリデーション
上記の方法で特定された上位6つの候補は、選択されたカプシドの精度と忠実度を保証するために、個々の動物(雄と雌のマウス、n=5マウス×6ベクター×2性別=60マウス)でパッケージングしてテストされる。この実験では、ミクログリア以外のトランスダクションの欠如が用量に起因しないことを確認するために、比較的高タイター(1013ベクターゲノム(vg)/ml超)のAAVが使用される。バリデーションは、1)トランスジーンの定量的測定(GFPレポーターの近赤外デンシトメトリー75);2)ウイルスゲノムの非転写部分に対する定性的デュアルラベルISHと、ミクログリアマーカー又はニューロンマーカーに対するIHCのペアリング(図4)により、導入の忠実性を確認する;3)ベクター注入の結果、ミクログリア毒性がないことを確認するためにIba1+線条体細胞のステレオ検査を行い、神経炎症がないことを確認するためにIba1及びGFAPの近赤外濃度測定を行う(対側の半球に対して正規化する);4)GFP+ミクログリアの立体構造解析、から構成される。AAVゲノムがミクログリア以外の細胞に存在する懸念がある場合は、さらに動物を作製し、フローサイトメトリーで細胞を選別する。その後、ベクターゲノムは、我々の標準的なデジタル液滴PCR生物分布プロトコルを使用して、すべての異なる細胞集団で測定される。
ミクログリアにおけるAAVを介してのPRC2活性の調節と局所ニューロンの固有興奮性。
PRC2はヒストンメチル化酵素活性を持つタンパク質複合体で、この複合体の活性はクロマチンの後成的なサイレンシングに重要である。脳におけるPRC2は、発生過程における細胞分化と関連している。しかし、このタンパク質は成熟した中枢神経系でも役割を担っている。例えば、ニューロンでは、この複合体が不活性化すると、樹状突起の分布が劇的に変化し、神経変性さえも引き起こすことがある。さらに重要なことは、ミクログリア内でのこの複合体の活性が、ミクログリアの活性の領域特異的な差と関連していることである。上述したように、線条体ミクログリアにおけるPRC2の活性は、恒常性の維持を促進する一方、PRC複合体の破壊(構成要素である胚性外胚葉発生タンパク質(EED)の除去を介して)は、ミクログリアのエピジェネティック及び転写プロファイルを変化させ、最終的にその機能を変化させる。
先行研究では、ミクログリア遺伝子発現を特異的に調節するために、トランスジェニックマウスに依存してきた。しかしながら、このアプローチにはいくつかの注意点がある。CX3CR1CreERトランスジェニックマウスアプローチを用いた遺伝子改変の領域特異的制御の限界を考慮すると、上記の研究では、ミクログリアにおけるEEDの切除は、脳全体で行われた。したがって、観察されたスパイン密度や挙動の形態的変化が、局所ミクログリアの変化によるものか、又はまたは他の脳領域におけるミクログリアの変化が局所求心性の機能若しくはシグナル伝達に影響を与え、表現型に大きく寄与しているのかを明確に判断することは困難であった。例えば、皮質ニューロンの発火の変化は、MSNの形態と活性に大きな影響を与える可能性がある。そのために、そして本明細書で上記同定されたミクログリア特異的AAVの生物学的有用性の最初の検証として(表3)、この以前の研究のウイルスベクター相関が行われる。しかしながら、当該解析は、1)領域特異的改変を含み、また2)ミクログリアの局所的変化の結果としての、局所及び遠位ニューロン特性の両方の変化を決定すべく、細胞内電気生理学的記録を実行するように、拡張される。CRISPRを用いたアプローチにより、EEDをノックアウトする。(CRISPRアプローチに関する実現性については、図5を参照)。また、ウイルスカセットは、形質導入のマーカーとしてmCherryを含む。
この実験は、ニューロン及びスパインを標識する手段としてThy1媒介CRE発現がニューロン特異的YFP発現を駆動するトランスジェニックマウス(R26R-EYFPマウスとB6.Cg-Tg(Syn1-cre)671Jxm/Jマウスを交雑したもの;両方ともThe Jackson Laboratoryから容易に入手できる)で実施される。この交配を行う理由は多面的である。1)CX3CR1CreERマウスとは対照的に、ミクログリア特異的AAVを利用することの一つの利点を示している。上記のように、二つ以上の異なるCRE依存性の細胞タイプ特異的ツールを組み合わせることは困難である。しかし、このアプローチでは、2つの異なる細胞集団を、重複することなく改変することが可能である。2)このアプローチでは、スパインに密着している形質導入されたミクログリア(例えば、「グリアプス」)を同定し、区別することが可能である。3)樹状突起とスパインを特異的に標識・定量化する手段を提供する。
アプローチ。CRISPR/Casは、インビトロ及びインビボで遺伝子発現の操作を行うための絶大な人気を誇るツールとなっている。そのため、CNSにおいてインビボでこの種の改変を行うために、AAVベースのカセットが開発された。重要なことは、テンプレート指向の編集(template-directed editing)自体が有糸分裂後の細胞ではかなり限定的であることを考慮し、別の原理実証のアプローチとして、早発ストップコドンの作成に焦点を当てたことである。このシステムは、チロシン水酸化酵素(tyrosine hydroxylase:TH)タンパク質を標的として検証された。ヌルトランスクリプト(null-transcript)の生成を容易にするために、遺伝子の5’末端に挿入欠失(INDEL)を誘導するガイドRNA(gRNA)が開発された。図5に示すように、この方法は非常に効率的であり、標的領域の大部分のニューロンでTHのホモ接合性欠失をもたらす。ここで、同じワークフローを使用して、PRC2複合体のEEDサブユニットに対するgRNAを生成する。gRNA候補をマウスNIH/3T3細胞で変異検出アッセイを用いて試験・検証し、切断効率が最も高い候補を本発明者らが開発したAAV-CRISPRゲノムにクローニングし、上で選択したカプシドにパッケージングする。対照として、ナンセンスgRNA発現カセットを利用する。
ミクログリアツールの検証:CX3CR1マウスからの研究のエミュレーション。動物は、線条体(2μl、0.5μl/分)又はM1運動皮質(0.5μl、0.25μl/分100)のいずれかに片側定位注射を受ける(n=12マウス(雄+雌)×2注射部位×2ベクター×2結果指標=96マウス)。ベクター送達から4週間後、動物は運動テスト(両部位での加速ロータロッド及びオープンフィールドテスト)を受ける。その後、電気生理学的記録(RFU)及び定量的死後評価(MSU)を実施する。
ロータロッドの手順。加速するロータロッドパラダイム(3分間で0~100rpm)を使用する。落下時の待ち時間と速度が記録される。
オープンフィールドテスト。移動行動(総歩行距離)を10分間にわたり自動キャプチャで測定する。
樹状突起の解析。線条体及び皮質切片を、スパイン密度及び形態の変化について評価する。測定するYFP標識ニューロンは、形質導入されたミクログリアへの近接性に基づいて選択される。皮質の錐体樹状突起とスパインは、Neurolucidaソフトウェアを使用してカウントする。各動物について、2つの切片からそれぞれ20個のニューロンをサンプリングする。スパイン密度の有意差を検出するのにはこの数のニューロンをサンプリングすれば十分であることが、本発明者らによって行われた運動障害動物関与研究において以前に示されている(図6)。各ニューロンについて樹状突起アーバを再構築し、各ニューロンから1つの樹状突起をランダムに選択し、近位部分(細胞体から約50~90μm)及び遠位部分(細胞体から約130~170μm)におけるスパインの数及び表現型(細い、マッシュルーム、又は分岐した)を定量化する。データはスパイン/10μmで表される。
ニューロンの興奮性をインビボの電気生理学的に測定する。運動皮質及び線条体におけるインビボ細胞外記録を用いて、興奮性及び抑制性伝達のバランスにおけるミクログリア改変によって誘発される潜在的変化を調べる。記録はNeuroData社の増幅器を用いて行われる。柔細胞標識のため、ガラス電極はナリシゲ(PE-21)電極プーラーで引き、2M NaCl(細胞外、インピーダンス:15-25MΩ)と2%ニューロビオチンを充填する。電極電位は、市販の(Axon)ソフトウェアアプリケーションを使用してデジタル化、保存、及び分析される。同心円状の双極刺激電極(NE100X50)を線条体記録電極の同側の運動皮質に植え込む。自発的、求心性誘発、及び逆方向スパイク活動を大脳皮質及び線条体で測定し(図7参照)、上記の異なる実験条件にわたって比較する。本発明者らによる最近の研究に基づいて、10~15匹の大脳皮質、線条体、及び線条体のニューロンを収集するために、10~12匹/群が必要であると推定された。研究には雄と雌の両方を使用し、WTマウスでは誘発活動及びニューロン発火に関して性差は発見されなかった。記録セッションの最後に、すべてのニューロンを並置標識し、ニューロビオチン及びIHC二重標識によりニューロン亜集団を同定する。
ノックダウンの定量化。定量的デュアルISH/IHC法は、本発明者らによって以前に開発され、それによって表現型的に異なる細胞においてmRNAレベルが定量化され得る。対側半球は、対照として利用される。最後に、全ての動物を、形質導入の検証(すなわち、mCherry発現)に付す。
ミクログリアの機能を抑制すると、線条体虹彩突起ニューロン、線条体小丘突起ニューロン、及び大脳皮質錐体ニューロンにおいて樹状突起の複雑さが減少することが予想される。その結果、EEDのノックアウトとそれに続くPRC2複合体の破壊は、スパイン密度及び膜表面積の損失、すなわちこれらの細胞をより電気緊張的にコンパクトにする効果の結果として、皮質三葉及びMSNにおいて異常膜活動及び過興奮性を誘発することが予想される。
実施例3.ミクログリア特異的ベクター形質導入の有効性に対する種の影響。
実施例2で同定された上位4つのカプシドをセントキッツグリーンモンキー(chlorocebus sabaeus)で試験する。線条体十字路がないため、各半球を独立したサンプルとして扱うことが可能である。各ウイルスは3つの半球に注入され(n=3線条体/カプシド)、したがって合計6匹のサルが利用される。被験者は、被殻をターゲットとしたGFPを発現するrAAVを両側から注入される。上述のげっ歯類の検証研究と同様に、最大の導入量を得るために比較的高い力価を使用した。重要なことは、同じ手術セッション中に、各動物は小脳を標的としたオリジナルのライブラリの注入も受けるということである。この構造は尾状核/被殻から取り除かれているので、この実験の主目的の結果に影響を与えない。しかし、これにより、各サルを最大限に利用し、以下に説明するように、単一核RNAseqのために小脳組織を利用することができる。
定量的な死後分析。組織は、形質導入の評価のため、治療後1ヶ月目に採取される。安楽死時に、被験体を生理食塩水で灌流し、脳を取り出し、尾状核、被殻、小脳から採取した組織パンチを除去し、残りの組織を4%パラホルムアルデヒドに浸漬固定する。1系列の切片を上記のようにデュアルISH/IHCに供し、ミクログリア形質導入の忠実性を評価する(図4)。Iba1+免疫反応もまた、ベクター送達の結果としての任意の炎症を同定するために測定される。組織パンチは、ウェスタンブロッティング及びddPCRの両方を用いて導入遺伝子の発現を評価するために利用される。GFP+細胞の偏りのない立体的な推定のために1系列が利用される。炎症はIba1とGFAPの近赤外デンシトメトリーを用いて評価し、ミクログリア毒性はIba+細胞の立体構造解析を用いて評価する。残りの切片は必要に応じて使用する。後頭部/被殻からの新鮮な組織切片は、形質導入の確実性を検証するために細胞ソーティングが必要な場合に備えて保存しておく。
ウイルスライブラリを注入し、以下に記載するようにNHPから収集した組織を、実施例1に記載されるようにscRNA seqライブラリを生成するために使用する。RNAseqデータは、上記のように収集され、処理される。簡潔に説明すると、解剖した小脳組織から約7000個の核を単離し、10X Genomics Chromium装置にロードし、インデックス付けしプールしたシングルセルライブラリをイルミナNovaSeq装置で配列決定する(十分な数のミクログリアを配列するために再び複数回実行される)。配列データは、注釈付きアフリカングリーントランスクリプトーム及びEMBL-EBIアトラスとの関連で解析され、バイオインフォマティクスアプローチは上記の概要と全く同じである。
実施例4.AAV2-GFP軟膜下注射
Sprague Dawleyラットに、ニューロンへのニューロン指向性が改善された約1×1013gc/mlのGFP発現rAAV2を、軟膜下注射により注入した。1ヶ月後、脊髄を採取し(図8)、形質導入について評価した。有意なトランスジーン(緑色)の発現が、脊髄の胸部及び腰部のセクション全体に見られる(図9~14)。陰性対照(低濃度のベクターを注入した脊髄)では有意なGFP発現は観察されない。強力な逆行性形質導入(すなわち、上位運動ニューロンを介したウイルスの取り込み及び脳におけるトランスジーンの発現)が、運動皮質で見られる(図15)。結果はさらに、このウイルスが一般的な血清型よりも1)高齢者、及び2)死んだ神経系でよりよく機能することを示す。

Claims (25)

  1. 改変AAVカプシドタンパク質(engineered AAV capsid proteins)の集団から、所望の細胞型に対する優先的な指向性(preferential tropism)を示すカプシドタンパク質を同定する方法であって、前記方法は、
    a.AAVベクターをカプシド化する改変カプシドタンパク質をそれぞれ含む複数の組み換えAAVビリオン(rAAV)を生成すること、ここで前記AAVベクターは、導入遺伝子及び前記ベクターをカプシド化する前記カプシドタンパク質に固有の識別子配列の両側に隣接するAAV末端逆位反復配列(inverted terminal repeats:ITRs)を有する;
    b.複数の細胞型の集団に(a)で得られたrAAVを感染させて、それぞれが(a)で得られたrAAVを含む複数の形質導入された細胞を生成すること;
    c.各細胞に存在する前記カプシドタンパク質を同定するために、(b)で得られた形質導入された各細胞における前記固有の識別子配列の配列を決定すること;
    d.(b)からの各形質導入細胞の細胞型を決定すること;及び
    e.前記各細胞型における前記タンパク質の存在及び非存在に基づいて、前記所望の細胞型に対する優先的な指向性を示すカプシドタンパク質を同定すること、ここで、前記タンパク質が前記所望の細胞型に存在し、前記所望の細胞型以外の細胞型に存在しない場合、前記タンパク質は前記所望の細胞型に対する優先的な指向性を示す、
    を含む、方法。
  2. 各々が所望の細胞型に対する優先的な指向性を示す、複数の改変AAVカプシドタンパク質を同定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 各細胞の細胞型を決定することが、各細胞についての転写プロファイルを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記導入遺伝子がレポーターをコードする、請求項1に記載の方法。
  5. rAAVで形質導入された細胞を識別するために、前記細胞の集団中の各細胞において前記導入遺伝子を検出することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
  6. 前記所望の細胞種の細胞が、神経細胞である、請求項1に記載の方法。
  7. 前記所望の細胞型の細胞が、ミクログリア系統の細胞である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記改変タンパク質が、挿入ペプチド(peptide insertion)を含む、請求項1に記載の方法。
  9. 前記挿入ペプチドが、AAV2のカプシドタンパク質におけるI-261、I-381、I-447、I-534、I-573、I-587、I-453、I-520、I-588、I-584、I-585、I-588、I-46、I-115、I-120、I-139、I-161、I-312、I-319、I-459、I-496、I-657、Y257、N258、K259、S391、F392、Y393、C394、Y397、F398、Q536、Q539、及び他のAAV血清型のカプシドタンパク質における対応する位置から選択される領域にある、請求項8に記載の方法。
  10. 前記改変カプシドタンパク質が、アミノ酸置換Y444F、Y500F、Y730F、T491V、R585S、R588T、R487G、若しくはその組み合わせ、又は他のAAV血清型のカプシドタンパク質における対応する置換を含むAAV2カプシドタンパク質である、請求項1に記載の方法。
  11. 前記改変カプシドタンパク質が、アミノ酸置換R585S、R588T、及びR487G、又は他のAAV血清型のカプシドタンパク質における対応する置換を含むAAV2カプシドタンパク質である、請求項1記載の方法。
  12. 所望の細胞型に対する優先的な指向性を示すrAAVを同定するためのコンピュータ化システムであって、前記コンピュータ化システムは、
    a.少なくとも1つのプロセッサを有する汎用コンピュータ;
    b.請求項1に記載の方法を用いて同定された複数の改変AAVカプシドタンパク質によって示される指向性特性のデータベースを記憶するコンピュータ可読メモリ;及び
    c.前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されたとき、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記データベースを照会(query)し、複数の改変AAVカプシドタンパク質から、所望の細胞型に対する優先的な指向性を示すカプシドタンパク質を選択させる前記汎用コンピュータに対するの命令を含む機能モジュールを含むコンピュータ可読媒体
    を含む、コンピュータ化システム。
  13. 前記データベースは、さらに、
    a.各細胞型に関連する複数の細胞型特異的転写プロファイル情報;及び
    b.各配列が固有の改変AAVカプシドタンパク質をコードする、複数の核酸配列
    を含む、請求項12に記載のコンピュータ化システム。
  14. 前記データベースが、複数の識別子配列をさらに含み、各識別子が、固有の改変AAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列に固有である、請求項13に記載のコンピュータ化システム。
  15. 複数の組み換えAAVビリオン(rAAV)メンバーを含むrAAVライブラリであって、各rAAVメンバーは、AAVベクターをカプシド化する改変AAVカプシドタンパク質を含み、ここで前記AAVベクターは、導入遺伝子及び各rAAVの前記カプシドタンパク質に固有の識別子配列の両側に隣接するAAV末端逆位反復(inverted terminal repeats:ITRs)を有し、ここでそれぞれの改変AAVカプシドタンパク質は所望の細胞型への優先的な指向性を示す、rAAVライブラリ。
  16. 前記改変カプシドタンパク質が、野生型カプシドタンパク質に対して少なくとも1つの変異を含み、前記変異が、ペプチド挿入、アミノ酸置換、及びアミノ酸欠失から選択される、請求項15に記載のrAAVライブラリ。
  17. 前記所望の細胞型がグリア細胞である、請求項16に記載のrAAVライブラリ。
  18. 各ペプチド挿入物が、配列番号2~183のアミノ酸配列に由来する、請求項17に記載のrAAVライブラリ。
  19. 各rAAVが、所望の標的細胞型に対する優先的な指向性を示す、請求項15に記載のrAAVライブラリ。
  20. 請求項15に記載のrAAVライブラリをコードする核酸構築物のライブラリ。
  21. 請求項15に記載のrAAVライブラリ、請求項20に記載のrAAVライブラリをコードする核酸構築物のライブラリ、又はそれらの組み合わせを含む、複数の細胞。
  22. 2つ以上の細胞型の集団における所望の細胞型への導入遺伝子の送達を最適化する方法であって、前記方法は、
    a.請求項1に記載の方法によって、又は請求項12に記載のコンピュータ化システムによって、前記所望の細胞型に対する優先的な指向性を示す改変AAVカプシドタンパク質を同定すること、又は同定したこと;及び
    b.前記所望の細胞型を含む細胞の集団を、(a)で同定された前記改変AAVカプシドタンパク質を含むrAAVで形質導入し、それにより前記所望の細胞型に前記導入遺伝子を送達すること、
    を含む、方法。
  23. 前記所望の標的細胞型の細胞が中枢神経系細胞である、請求項22に記載の方法。
  24. 前記所望の標的細胞型の細胞が、ミクログリア細胞又は星状細胞である、請求項23に記載の方法。
  25. 所望の標的細胞型に対する優先的な指向性を示す改変AAVカプシドタンパク質を同定又は生成するためのキットであって、請求項15に記載のrAAVのライブラリ、請求項20に記載の核酸構築物のライブラリ、又は請求項21に記載の複数の細胞を含む、キット。
JP2022557064A 2020-03-20 2021-03-19 アデノ随伴ウイルスの改変方法及び分離方法 Pending JP2023518809A (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US202062992671P 2020-03-20 2020-03-20
US62/992,671 2020-03-20
US202163141656P 2021-01-26 2021-01-26
US63/141,656 2021-01-26
PCT/US2021/023314 WO2021188993A1 (en) 2020-03-20 2021-03-19 Method of engineering and isolating adeno-associated virus

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2023518809A true JP2023518809A (ja) 2023-05-08
JPWO2021188993A5 JPWO2021188993A5 (ja) 2024-03-29

Family

ID=77772193

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022557064A Pending JP2023518809A (ja) 2020-03-20 2021-03-19 アデノ随伴ウイルスの改変方法及び分離方法

Country Status (4)

Country Link
US (1) US20230357792A1 (ja)
EP (1) EP4121443A4 (ja)
JP (1) JP2023518809A (ja)
WO (1) WO2021188993A1 (ja)

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002074979A2 (en) * 2001-03-20 2002-09-26 Ortho-Clinical Diagnostics, Inc. Expression profiles and methods of use
US20120142023A1 (en) * 2010-12-02 2012-06-07 Ascoli Carl A Proteins and method for detection of lyme disease
US10480037B2 (en) * 2011-09-23 2019-11-19 Laboratory Corporation Of America Holdings Methods and systems for predicting HIV-1 coreceptor tropism
CA2941640A1 (en) * 2014-03-04 2015-09-11 University Of Florida Research Foundation, Inc. Improved raav vectors and methods for transduction of photoreceptors and rpe cells
ES2941502T3 (es) * 2016-05-13 2023-05-23 4D Molecular Therapeutics Inc Variantes de cápsides de virus adenoasociado y procedimientos de utilización de las mismas
CN112105630A (zh) * 2018-02-15 2020-12-18 T·比约尔克隆德 经修饰的病毒衣壳

Also Published As

Publication number Publication date
EP4121443A1 (en) 2023-01-25
WO2021188993A1 (en) 2021-09-23
US20230357792A1 (en) 2023-11-09
EP4121443A4 (en) 2024-05-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AU2018250161B2 (en) Tissue selective transgene expression
JP2022513426A (ja) 皮質興奮性ニューロンにおける遺伝子発現を選択的に調節するための人工発現構築物
JP7315475B2 (ja) 高活性制御エレメント
KR20200107949A (ko) 조작된 dna 결합 단백질
CN114174520A (zh) 用于选择性基因调节的组合物和方法
JP2021513847A (ja) 相同性非依存的ユニバーサルゲノムエンジニアリングテクノロジーを用いた遺伝子編集
WO2010010887A1 (ja) 組織発現プロモーター
Li et al. CRISPR-CasRx knock-in mice for RNA degradation
JP2022521432A (ja) Dna結合ドメイントランスアクチベーター及びその使用
KR20210143855A (ko) 세포-유형별 특이적 조절 요소들을 식별해내기 위한 조절 요소들의 멀티플렉싱
JP2023518809A (ja) アデノ随伴ウイルスの改変方法及び分離方法
US20230279405A1 (en) Dna-binding domain transactivators and uses thereof
US20230079754A1 (en) Methods and compositions for reducing pathogenic isoforms
WO2020187272A1 (zh) 一种用于基因治疗的融合蛋白及其应用
WO2023034775A1 (en) Aavr knockout mouse in combination with human liver chimerism and methods of use and production of the same
WO2024054864A1 (en) Cardioprotective heart disease therapies
CN118028267A (en) Mutant with CasRx activity and application thereof
Miller Utilizing gene therapy methods to probe the genetic requirements to prevent spinal muscular atrophy
JPWO2006129803A1 (ja) 新規時間遺伝子およびその応用

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240318

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240318