JP2023510069A - ファージ環化アッセイ - Google Patents

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Abstract

本発明は、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドの環化の程度を決定するための方法に関し、ペプチドリガンドは2つ以上のアミノ酸残基において分子スカフォールドに共有結合で連結されたポリペプチドを含み、本方法は、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるポリペプチドを分子スカフォールドに曝露するステップであって、前記ポリペプチドが2つ以上のスカフォールド反応性基において分子スカフォールドと共有結合を形成する前記2つ以上のアミノ酸残基上の2つ以上のペプチド反応性基を含んでペプチドリガンドを生じるステップ、未反応の分子スカフォールドを遺伝子ディスプレイシステムから除去するステップ、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドを第1のプローブに曝露するステップであって、第1のプローブがペプチドリガンド上の第1のコンジュゲートしていない反応性基に結合するステップ、およびペプチドリガンド上の第1のコンジュゲートしていない反応性基を測定するステップを含む。

Description

環状ペプチドは高い親和性および標的特異性をもってタンパク質標的に結合することができ、したがって治療の開発に魅力的な分子クラスである。事実、いくつかの環状ペプチドが、たとえば抗菌性ペプチドであるバンコマイシン、免疫抑制薬であるシクロスポリン、または抗がん薬であるオクレオチドのように、臨床において成功裡に用いられている(Driggers,et al.,Nat Rev Drug Discov 2008,7(7),608-24)。良好な結合特性は、ペプチドと標的との間に形成される相互作用面積が比較的大きいこと、ならびに環状構造のコンフォメーションの可撓性が低いことに起因する。典型的には、大環状化合物は、たとえば環状ペプチドCXCR4アンタゴニストCVX15(400Å;Wu,B.,et al.,Science 330(6007),1066-71)、インテグリンαVb3に結合するArg-Gly-Aspモチーフを有する環状ペプチド(355Å)(Xiong,J.P.,et al.,Science 2002,296(5565),151-5)、またはウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーターに結合する環状ペプチド阻害剤ユーパイン-1(603Å;Zhao,G.,et al.,J Struct Biol 2007,160(1),1-10)のように、数百平方オングストロームの表面に結合する。
ペプチド大環状分子は、その環状コンフィギュレーションのために、線状ペプチドより可撓性が低く、それにより標的への結合に際してエントロピーの損失がより少なく、より高い結合親和性がもたらされる。可撓性の低下はまた標的特異的なコンフォメーションの固定化をもたらし、線状ペプチドと比較して結合特異性を増大させる。この効果は、その環が開いたときに他のMMPに対する選択性が失われたマトリックスメタロプロテイナーゼ8(MMP-8)の強力かつ選択的な阻害剤によって例示されている(Cherney,R.J.,et al.,J Med Chem 1998,41(11),1749-51)。大環状化によって達成される好ましい結合特性は、たとえばバンコマイシン、ニシン、またはアクチノマイシンにおけるように2つ以上のペプチド環を有する多環ペプチドにおいて、さらにより顕著である。
様々な研究チームが、システイン残基を有するポリペプチドを合成分子構造に結び付けてきた(Kemp,D.S.and McNamara,P.E.,J.Org.Chem,1985;Timmerman,P. et al.,ChemBioChem,2005)。Meloenおよび共同研究者らは、タンパク質表面の構造的模倣のための合成スカフォールド上の複数のペプチドループの迅速かつ定量的な環化のために、トリス(ブロモメチル)ベンゼンおよび関連する分子を用いた(Timmerman,P. et al.,ChemBioChem,2005)。システイン含有ポリペプチドをたとえばトリス(ブロモメチル)ベンゼン等の分子スカフォールドに連結することによって生成される候補薬物化合物を生成するための方法は、WO2004/077062、WO2006/078161、およびWO2018/197893に開示されている。
WO2004/077062は、候補薬物化合物を選択する方法を開示している。特にこの文献は、第1および第2の反応性基を含む種々なスカフォールド分子、ならびに前記スカフォールドをさらなる分子と接触させて、カップリング反応においてスカフォールドとさらなる分子との間に少なくとも2つのリンケージを形成することを開示している。
WO2006/078161は、結合化合物、免疫原性化合物、およびペプチド模倣体を開示している。この文献は、存在するタンパク質から得られたペプチドの種々の収集物の人工合成を開示している。次いでこれらのペプチドは、コンビナトリアルライブラリーを産生するために導入されたいくつかのアミノ酸の変化を有する一定の合成ペプチドと組み合わされる。化学的リンケージを介してこの多様性を導入して種々のアミノ酸の変化を特徴とするペプチドを分離することによって、所望の結合活性を発見出す機会が増大する。この文献の図1は、種々のループペプチド構築物の合成を概略図で表す。この文献で開示された構築物は、典型的にはシステイン残基を含む-SH機能化ペプチドおよび典型的にはビス-またはトリス-ブロモフェニルベンゼン等のベンジルハロゲン置換基を含むスカフォールド上のヘテロ芳香族基に依拠している。このような基は反応してペプチドとスカフォールドとの間にチオエーテルリンケージを形成する。
Heinisらは、ファージディスプレイ系コンビナトリアルアプローチを開発して、目的の標的に対する二環式ペプチドの大きなライブラリーを生成し、スクリーニングを行った(Heinis,et al.,Nat Chem Biol 2009,5(7),502-7。WO2009/098450も参照されたい)(図1A)。簡単に述べると、3つのシステイン残基と6個のランダムアミノ酸の2つの領域とを含む線状ペプチド(Cys-(Xaa)-Cys-(Xaa)-Cys)のコンビナトリアルライブラリーをファージ上に提示し、システイン側鎖を小分子(トリス(ブロモメチル)ベンゼン)に共有結合で連結することによって環化した。ヒトプロテアーゼカテプシンGおよび血漿カリクレイン(PK)に対する親和性による選択で単離した二環式ペプチドは、ナノモルの阻害定数を有していた。最良の阻害剤であるPK15は、3nMのKでヒトPK(hPK)を阻害する。単離されたいくつかの二環式ペプチドのアミノ酸配列の類似性により、両方のペプチドループが結合に寄与していることが示唆された。PK15は、試験した最大の濃度(10μM)においてラットPK(配列同一性81%)も、同種ヒトセリンプロテアーゼ第XIa因子(hfXIa、配列同一性69%)またはトロンビン(配列同一性36%)も、阻害しなかった(Heinis,et al.,Nat Chem Biol 2009,5(7),502-7)。この知見は、二環式阻害剤がその標的に対する高い親和性を保持し、高度に特異的であることを示唆した。WO2014/140342はさらに、ファージ上に提示される二環式ペプチドの産生のための改善されたプロトコルを開示している。
HeinisらおよびWO2014/140342によって開示された方法は、提示されるペプチドを改変して二環式ペプチドを産生するために有効ではあるが、二環式ペプチドの環化の程度を正確に決定することはできない。反応産生物を同定するためにマススペクトル(図1B)を用いることができるが、得られる産生物が、濃度に対するシグナル強度の標準曲線をプロットするために純粋な形態で常には利用可能でないので、これは環化反応の収率を定量化するための望ましいツールではない。さらに、ペプチドまたはペプチドリガンド(たとえば二環式ペプチド)のイオン化の程度はアミノ酸配列に依存するので、ペプチドリガンドのライブラリーが関与する場合には、定量化はより複雑である。2つの異なるペプチドのシグナル強度は、それらが同じ濃度を有していたとしても、極めて異なることがあり得る。
上記に鑑みて、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドの環化の程度を決定するための簡単かつ効率的なアッセイの開発に対するニーズが存在する。特に、アッセイはペプチドリガンドのライブラリーに適用可能である必要がある。
本発明は遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドの環化の程度を決定するための方法を提供し、ペプチドリガンドは2つ以上のアミノ酸残基において分子スカフォールドに共有結合で連結されたポリペプチドを含み、本方法は、
(a)遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるポリペプチドを分子スカフォールドに曝露するステップであって、前記ポリペプチドが2つ以上のスカフォールド反応性基において分子スカフォールドと共有結合を形成する前記2つ以上のアミノ酸残基上の2つ以上のペプチド反応性基を含み、ペプチドリガンドを生じるステップ、
(b)遺伝子ディスプレイシステムから未反応の分子スカフォールドを除去するステップ、
(c)遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドを第1のプローブに曝露するステップであって、第1のプローブがペプチドリガンド上の第1のコンジュゲートしていない(非コンジュゲート?)反応性基に結合するステップ、および
(d)ペプチドリガンド上の第1のコンジュゲートしていない反応性基を測定するステップ
を含む。
環化の程度の正確な決定は、温度、スカフォールド濃度、pH、および反応時間等の反応条件を最適化するために重要である。これは特に新規な分子スカフォールドの開発のために重要である。本発明はまた、様々な分子スカフォールドの環化効率の比較を可能にする。さらに本発明は、正しい環化を有する特定のクローンのスクリーニングを補助し、これは次に所望のペプチドリガンドの選択を容易にすることができる。
コンジュゲートしていない反応性基の量、分量、および/または割合は、プローブの特性に基づいて測定することができる。ある特定の実施形態では、プローブは検出可能かつ定量可能なシグナルを直接的または間接的に生成することができ、それによりコンジュゲートしていない反応性基を測定することができる。シグナルは、たとえば蛍光、発光、放射活性シグナル、またはNMR、IR、もしくはラマン分光法によって検出可能な任意の電磁気的シグナルであってよい。一実施形態では、プローブは、反応を触媒してそのようなシグナルを生成することができる酵素または触媒を含む。一実施形態では、プローブはそのようなシグナルを生成するように活性化または改変することができる。
ある特定の実施形態では、プローブはシグナル発生基を含むか、これに連結可能であり、シグナル発生基は直接的または間接的にシグナルを産生して、ペプチドリガンド上のコンジュゲートしていない反応性基の存在を示すように構成されている。
一実施形態では、プローブはシグナル発生部分およびシグナル非発生部分を含む。好ましくは、シグナル非発生部分は、標的に結合するプローブ反応性基を含む。
一実施形態では、プローブはシグナル発生ビーズおよび標的に結合するプローブ反応性基を含む。
一実施形態では、プローブ反応性基は、ポリエチレングリコール(PEG)等のポリマーリンカーに連結されている。一実施形態では、プローブはPEG2またはPEG3を含む。
ある特定の実施形態では、第1のプローブは、第1のコンジュゲートしていない反応性基に結合する第1のプローブ反応性基を含む。一実施形態では、第1のプローブ反応性基は、ペプチド反応性基またはスカフォールド反応性基と同一である。
ある特定の実施形態では、第1のプローブは第1のシグナル発生基を含むか、これに連結可能であり、第1のシグナル発生基は第1のシグナルを直接的または間接的に産生して、ペプチドリガンド上の第1のコンジュゲートしていない反応性基の存在を示す。
ある特定の実施形態では、本方法は、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドをステップ(c)の後で第2のプローブに曝露するステップをさらに含み、第2のプローブは、遺伝子ディスプレイシステムに結合し、第2のシグナル発生基を含むか、これに連結可能である。
一実施形態では、第2のシグナル発生基は第1のシグナルによって誘発されて第2のシグナルを産生する。
一実施形態では、第2のシグナル発生基は第2のシグナルを産生し、第2のシグナルは第1のシグナル発生基を誘発して第1のシグナルを産生させる。
ある特定の実施形態では、第2のプローブは、遺伝子ディスプレイシステム上の抗原に結合する第2のプローブ反応性基を含む。好ましくは、第2のプローブ反応性基は抗体である。
一実施形態では、第1の(第2の)シグナル発生基は、周囲の酸素分子を一重項酸素分子に変換するように構成された第1の光増感剤を含み、第2の(第1の)シグナル発生基は、一重項酸素分子によって励起されるように構成された第1の化学発光分子を含む。好ましくは、第1の化学発光分子はチオキセン誘導体である。好適には、第2の(第1の)シグナル発生基は第1の蛍光基をさらに含み、第1の蛍光基は第1の化学発光分子の化学発光によって励起されるように構成されている。
一実施形態では、第1のプローブおよび第2のプローブは、それぞれ増幅発光近接均一性アッセイスクリーン(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay screen(AlphaScreen)またはAlphaLISAのドナーおよびアクセプターを形成する。一実施形態では、第1のプローブおよび第2のプローブは、AlphaScreenまたはAlphaLISAのアクセプターおよびドナーをそれぞれ形成する。
ある特定の実施形態では、第1のプローブは蛍光であるか、第1の蛍光実体に連結可能である。一実施形態では、第1のプローブは蛍光部分および非蛍光部分を含む。好ましくは、非蛍光部分は第1のプローブ反応性基を含む。一実施形態では、第1のプローブは蛍光ビーズおよび標的に結合するプローブ反応性基を含む。
ある特定の実施形態では、第2のプローブは蛍光であるか、第2の蛍光実体に連結可能である。
一実施形態では、第1のプローブまたは第1の蛍光実体は、第2のプローブまたは第2の蛍光実体の吸収(または励起)スペクトルと重複する発光スペクトルを有する。好ましくは、第1のプローブ(または蛍光実体)および第2のプローブ(または蛍光実体)は、Forster共鳴エネルギー移動(FRET)のドナーおよびアクセプターをそれぞれ形成する。
一実施形態では、第2のプローブまたは第2の蛍光実体は、第1のプローブまたは第1の蛍光実体の吸収(または励起)スペクトルと重複する発光スペクトルを有する。好ましくは、第1のプローブ(または蛍光実体)および第2のプローブ(または蛍光実体)は、FRETのアクセプターおよびドナーをそれぞれ形成する。
ある特定の実施形態では、第1のコンジュゲートしていない反応性基は、2つ以上のペプチド反応性基のうちの1つである。好ましくは、第1のプローブの第1のプローブ反応性基は、2つ以上のペプチド反応性基のうちの1つに結合する。好ましくは、第1のプローブ反応性基は、第1のプローブの標的と同じ標的に結合する2つ以上のスカフォールド反応性基のうちの1つと同一である。好ましくは、第1のプローブ反応性基はマレイミド基を含む。
一実施形態では、第1のプローブは2つ以上のペプチド反応性基のうちの1つに結合し、ステップ(c)における第1のプローブの濃度は、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドの単一クローンについて100nM~100μMの間である。好ましくは、第1のプローブの濃度は1μM~10μMの間である。好ましくは、第1のプローブの濃度は1μM~5μMの間である。好ましくは、第1のプローブの濃度は2.5μMである。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは、5時間未満、好ましくは3時間未満、より好ましくは2時間未満、第1のプローブに曝露される。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは第1のプローブに室温で曝露される。一実施形態では、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは第1のプローブに室温で2時間、曝露される。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドの単一クローンは、ステップ(c)の後で第2のプローブに曝露される前に10倍に希釈される。
一実施形態では、第1のプローブは2つ以上のペプチド反応性基のうちの1つに結合し、ステップ(c)における第1のプローブの濃度は、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドのライブラリーについて1nM~10μMの間である。好ましくは、第1のプローブの濃度は10nM~1μMの間である。好ましくは、第1のプローブの濃度は50nM~500nMの間である。好ましくは、第1のプローブの濃度は50nM~150nMの間である。好ましくは、第1のプローブの濃度は100nMである。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは5時間未満、好ましくは3時間未満、より好ましくは2時間未満、第1のプローブに曝露される。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは第1のプローブに室温で曝露される。一実施形態では、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは第1のプローブに室温で2時間、曝露される。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドのライブラリーは、ステップ(c)の後で第2のプローブに曝露される前に100倍に希釈される。
一実施形態では、第1のコンジュゲートしていない反応性基は、2つ以上のスカフォールド反応性基のうちの1つである。好ましくは、第1のプローブの第1のプローブ反応性基は、2つ以上のスカフォールド反応性基のうちの1つに結合する。好ましくは、第1のプローブ反応性基は、第1のプローブの標的と同じ標的に結合する2つ以上のペプチド反応性基のうちの1つと同一である。好ましくは、第1のプローブ反応性基はチオール基を含む。
好適には、本方法のステップ(c)は、遺伝子ディスプレイシステムを第1のプローブに曝露した後で、遺伝子ディスプレイシステムを還元剤で処理するステップをさらに含む。好適な還元剤はTCEPである。DTT等のその他の還元剤は、本明細書で説明するように用いることができる。好ましくは、ペプチド反応性基と第1のプローブ反応性基の両方は、システインのチオール基である。用いる還元剤は、好ましくは500mM未満、好ましくは200mM未満、有利には100mM未満の濃度で含まれる。たとえば、還元剤は10mM以下、たとえば1mMの濃度で存在する。還元剤の添加により、ペプチド反応性基と第1のプローブ反応性基との間のジスルフィド結合の形成が防止される。第1のプローブ反応性基はスカフォールド反応性基を標的とするためであるので、還元剤の添加により、コンジュゲートしていないスカフォールド反応性基の測定の間の偽陽性を避けることができる。好ましくは、遺伝子ディスプレイシステムは還元剤による処理の後で中和される。
一実施形態では、第1のプローブは2つ以上のスカフォールド反応性基のうちの1つに結合し、ステップ(c)における第1のプローブの濃度は、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドの単一クローンについて10μM~10mMの間である。好ましくは、第1のプローブの濃度は100μM~1mMの間である。好ましくは、第1のプローブの濃度は100μM~500μMの間である。好ましくは、第1のプローブの濃度は320μMである。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは、4時間未満、好ましくは2時間未満、より好ましくは1時間未満、第1のプローブに曝露される。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは第1のプローブに室温で曝露される。一実施形態では、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは第1のプローブに室温で1時間、曝露される。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドの単一クローンは、ステップ(c)の後で第2のプローブに曝露される前に100倍に希釈される。
一実施形態では、第1のプローブは2つ以上のスカフォールド反応性基のうちの1つに結合し、ステップ(c)における第1のプローブの濃度は、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドのライブラリーについて10μM~10mMの間である。好ましくは、第1のプローブの濃度は100μM~5mMの間である。好ましくは、第1のプローブの濃度は500μM~2.5mMの間である。好ましくは、第1のプローブの濃度は1.28mMである。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは、4時間未満、好ましくは2時間未満、より好ましくは1時間未満、第1のプローブに曝露される。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは第1のプローブに室温で曝露される。一実施形態では、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは第1のプローブに室温で1時間、曝露される。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドのライブラリーは、ステップ(c)の後で第2のプローブに曝露される前に10倍に希釈される。
一実施形態では、第1のコンジュゲートしていない反応性基は2つ以上のペプチド反応性基のうちの1つであり、本方法はステップ(c)において第3のプローブを用いることによってさらに繰り返され、第3のプローブは第2のコンジュゲートしていない反応性基に結合し、第2のコンジュゲートしていない反応性基は2つ以上のスカフォールド反応性基のうちの1つである。好ましくは、第1のプローブの第1のプローブ反応性基は2つ以上のペプチド反応性基のうちの1つに結合する。好ましくは、第3のプローブは、2つ以上のスカフォールド反応性基のうちの1つに結合する第3のプローブ反応性基を含む。好適には、第3のプローブ反応性基は、第3のプローブの標的と同じ標的に結合する2つ以上のペプチド反応性基のうちの1つと同一である。好ましくは、第3のプローブ反応性基はチオール基を含む。好適には、本方法の第2ラウンドのステップ(c)は、遺伝子ディスプレイシステムを第3のプローブに曝露した後で遺伝子ディスプレイシステムを還元剤で処理するステップをさらに含む。好適な還元剤はTCEPである。DTT等のその他の還元剤は、本明細書で説明するように用いることができる。好ましくは、ペプチド反応性基と第1のプローブ反応性基の両方は、システインのチオール基である。用いる還元剤は、好ましくは500mM未満、好ましくは200mM未満、有利には100mM未満の濃度で含まれる。たとえば。還元剤は10mM以下、たとえば1mMの濃度で存在する。好ましくは、遺伝子ディスプレイシステムは還元剤による処理の後で中和される。
一実施形態では、第1のコンジュゲートしていない反応性基は2つ以上のスカフォールド反応性基のうちの1つであり、本方法はステップ(c)において第3のプローブを用いることによってさらに繰り返され、第3のプローブは第2のコンジュゲートしていない反応性基に結合し、第2のコンジュゲートしていない反応性基は2つ以上のペプチド反応性基のうちの1つである。好ましくは、第1のプローブの第1のプローブ反応性基は2つ以上のスカフォールド反応性基のうちの1つに結合する。好ましくは、第3のプローブは、2つ以上のペプチド反応性基のうちの1つに結合する第3のプローブ反応性基を含む。好適には、第3のプローブ反応性基は、第3のプローブの標的と同じ標的に結合する2つ以上のスカフォールド反応性基のうちの1つと同一である。好ましくは、第3のプローブ反応性基はマレイミド基を含む。
ある特定の実施形態では、第3のプローブは第3のシグナル発生基を含むか、これに連結可能であり、第3のシグナル発生基は第3のシグナルを直接的または間接的に産生して、ペプチドリガンド上の第2のコンジュゲートしていない反応性基の存在を示す。
ある特定の実施形態では、本方法は、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドをステップ(c)の後で第4のプローブに曝露するステップをさらに含み、第4のプローブは遺伝子ディスプレイシステムに結合し、第4のシグナル発生基を含むか、これに連結可能である。
一実施形態では、第4のシグナル発生基は第3のシグナルによって誘発されて第4のシグナルを産生する。
一実施形態では、第4のシグナル発生基は第4のシグナルを産生し、第4のシグナルは第3のシグナル発生基を誘発して第3のシグナルを産生させる。
ある特定の実施形態では、第4のプローブは、遺伝子ディスプレイシステム上の抗原に結合する第4のプローブ反応性基を含む。好ましくは、第4のプローブ反応性基は抗体である。好適には、第4のプローブは第2のプローブと同一である。
一実施形態では、第3の(第4の)シグナル発生基は、周囲の酸素分子を一重項酸素分子に変換するように構成された第2の光増感剤を含み、第4の(第3の)シグナル発生基は、一重項酸素分子によって励起されるように構成された第2の化学発光分子を含む。好ましくは、第2の化学発光分子はチオキセン誘導体である。好適には、第4の(第3の)シグナル発生基は第2の蛍光基をさらに含み、第2の蛍光基は第2の化学発光分子の化学発光によって励起されるように構成されている。好適には、第2の光増感剤、第2の化学発光剤、および第2の蛍光基は、第1の光増感剤、第1の化学発光剤、および第1の蛍光基とそれぞれ同一である。
一実施形態では、第3のプローブおよび第4のプローブは、AlphaScreenまたはAlphaLISAのドナーおよびアクセプターをそれぞれ形成する。一実施形態では、第3のプローブおよび第4のプローブは、AlphaScreenまたはAlphaLISAのアクセプターおよびドナーをそれぞれ形成する。
ある特定の実施形態では、第3のプローブは蛍光であるか、第3の蛍光実体に連結可能である。一実施形態では、第3のプローブは蛍光部分および非蛍光部分を含む。好ましくは、非蛍光部分は第3のプローブ反応性基を含む。一実施形態では、第3のプローブは蛍光ビーズおよび標的に結合するプローブ反応性基を含む。
ある特定の実施形態では、第4のプローブは蛍光であるか、第4の蛍光実体に連結可能である。
一実施形態では、第3のプローブまたは第3の蛍光実体は、第4のプローブまたは第4の蛍光実体の吸収(または励起)スペクトルと重複する発光スペクトルを有する。好ましくは、第3のプローブ(または蛍光実体)および第4のプローブ(または蛍光実体)は、それぞれFRETのドナーおよびアクセプターを形成する。
一実施形態では、第4のプローブまたは第4の蛍光実体は、第3のプローブまたは第3の蛍光実体の吸収(または励起)スペクトルと重複する発光スペクトルを有する。好ましくは、第3のプローブ(または蛍光実体)および第4のプローブ(または蛍光実体)は、それぞれFRETのアクセプターおよびドナーを形成する。
一実施形態では、第3のプローブは2つ以上のペプチド反応性基のうちの1つに結合し、ステップ(c)における第3のプローブの濃度は、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドの単一クローンについて100nM~100μMの間である。好ましくは、第3のプローブの濃度は1μM~10μMの間である。好ましくは、第3のプローブの濃度は1μM~5μMの間である。好ましくは、第3のプローブの濃度は2.5μMである。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは、5時間未満、好ましくは3時間未満、より好ましくは2時間未満、第3のプローブに曝露される。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは第3のプローブに室温で曝露される。一実施形態では、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは第3のプローブに室温で2時間、曝露される。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドの単一クローンは、ステップ(c)の後で第4のプローブに曝露される前に10倍に希釈される。
一実施形態では、第3のプローブは2つ以上のペプチド反応性基のうちの1つに結合し、ステップ(c)における第3のプローブの濃度は、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドのライブラリーについて1nM~10μMの間である。好ましくは、第3のプローブの濃度は10nM~1μMの間である。好ましくは、第3のプローブの濃度は50nM~500nMの間である。好ましくは、第3のプローブの濃度は50nM~150nMの間である。好ましくは、第3のプローブの濃度は100nMである。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは5時間未満、好ましくは3時間未満、より好ましくは2時間未満、第3のプローブに曝露される。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは第3のプローブに室温で曝露される。一実施形態では、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは第3のプローブに室温で2時間、曝露される。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドのライブラリーは、ステップ(c)の後で第4のプローブに曝露される前に100倍に希釈される。
一実施形態では、第3のプローブは2つ以上のスカフォールド反応性基のうちの1つに結合し、ステップ(c)における第3のプローブの濃度は、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドの単一クローンについて10μM~10mMの間である。好ましくは、第3のプローブの濃度は100μM~1mMの間である。好ましくは、第3のプローブの濃度は100μM~500μMの間である。好ましくは、第3のプローブの濃度は320μMである。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは4時間未満、好ましくは2時間未満、より好ましくは1時間未満、第3のプローブに曝露される。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは第3のプローブに室温で曝露される。一実施形態では、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは第3のプローブに室温で1時間、曝露される。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドの単一クローンは、ステップ(c)の後で第4のプローブに曝露される前に100倍に希釈される。
一実施形態では、第3のプローブは2つ以上のスカフォールド反応性基のうちの1つに結合し、ステップ(c)における第3のプローブの濃度は、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドのライブラリーについて10μM~10mMの間である。好ましくは、第3のプローブの濃度は100μM~5mMの間である。好ましくは、第3のプローブの濃度は500μM~2.5mMの間である。好ましくは、第3のプローブの濃度は1.28mMである。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは4時間未満、好ましくは2時間未満、より好ましくは1時間未満、第3のプローブに曝露される。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは第3のプローブに室温で曝露される。一実施形態では、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドは第3のプローブに室温で1時間、曝露される。好適には、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドのライブラリーは、ステップ(c)の後で第4のプローブに曝露される前に10倍に希釈される。
ある特定の実施形態では、2つ以上のペプチド反応性基はシステイン残基を含む。
ある特定の実施形態では、ペプチドリガンドは、遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドの単一クローンまたはライブラリーであってよい。ペプチドリガンドの単一クローンは、同じポリペプチド配列を有するペプチドリガンドを指す。
ある特定の実施形態では、遺伝子ディスプレイシステムはファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、酵母ディスプレイ、および細菌ディスプレイから選択される。一実施形態では、遺伝子ディスプレイシステムはファージディスプレイである。好ましくは、ポリペプチドはfdファージ、たとえばfd-tetファージのpIIIタンパク質への融合によって提示される。
ペプチドリガンドのライブラリーは、少なくとも10、10、10、10、10、10、1010、またはそれ以上のペプチドリガンドの複雑度を有する。ライブラリーのサイズは複雑度の少なくとも10倍、たとえば1011、1012、1013、またはそれ以上のペプチドリガンドであってよい。
ペプチドリガンドのライブラリーは、当技術分野で公知の方法に従って調製することができる。たとえば、方法はHeinis et al.,WO/2009/098450およびWO2014/140342に記載されている。Heinisらによる元の方法は、ペプチドと分子スカフォールド(TBMB)とのコンジュゲーションを遊離溶液中で実施する。次いでTBMBスカフォールドにコンジュゲートした(またはコンジュゲートしていなかった)ペプチドを担持するファージが、遠心分離によって単離される。ファージを固相の精製レジンにコンジュゲートすることによって改善された結果が得られ、これを次にファージを単離するために用いることができる(WO2014/140342を参照)。たとえば、レジンは遠心分離によって単離するかカラムに保持することができ、好ましい実施形態では、レジンは磁性であり、磁場の印加によって単離することができる。いずれのコンジュゲーションアプローチも、本発明とともに用いることができる。
ある特定の実施形態では、遺伝子ディスプレイシステムはステップ(a)の前に精製レジンと組み合わされ、それにより遺伝子ディスプレイシステムは精製レジンに結合される。
精製レジンは、タンパク質材料の精製のための固相として有用である。この目的のために有用な、ビーズおよびクロマトグラフィー材料を含むイオン交換レジン等の多くのレジンが当技術分野で公知である。
有利な実施形態では、レジンは磁性レジンであり、これは遺伝子ディスプレイシステムに結合したポリペプチドの磁気的分離を可能にする。
好ましくは、結合した遺伝子ディスプレイシステムはステップ(a)の前に還元剤によってさらに処理される。好適な還元剤はTCEPである。DTT等のその他の還元剤は、本明細書で説明するように用いることができる。用いる還元剤は、好ましくは500mM未満、好ましくは200mM未満、有利には100mM未満の濃度で含まれる。たとえば、還元剤は10mM以下、たとえば1mMの濃度で存在する。
好ましくは、結合した遺伝子ディスプレイシステムは分子スカフォールドを添加する前に洗浄される。洗浄は、たとえば還元剤の溶液によって実施することができる。有利には、洗浄ステップで用いられる還元剤は、結合した遺伝子ディスプレイシステムを処理するために用いられる還元剤よりも強力でないか、またはより希釈されている。
好ましくは、ステップ(a)における還元剤は、好ましくは500μM未満、好ましくは200μM未満、有利には100μM未満の濃度で含まれる。たとえば、還元剤は10μM以下、たとえば1μMの濃度で存在する。
レジンに結合したポリペプチドは、精製した形態で還元剤に曝露することができ、または培養中に存在してもよい。遺伝子ディスプレイシステムには、細菌または酵母等の細胞における複製が関与しており、これらの細胞は精製によって除去することができる。この場合には、遺伝子ディスプレイシステムを精製レジンと組み合わせた後で、レジンに結合したポリペプチドを緩衝液で洗浄して、細胞培養の夾雑物から分離することができる。
好適には、遺伝子ディスプレイシステムはステップ(b)の後で精製レジンから溶出される。次いでポリペプチドは遺伝子ディスプレイシステム上にコンジュゲートした形態で提示され、公知の手段によって選択され得る。
還元およびコンジュゲーション/環化反応は、好ましくは室温、たとえば25℃で実施される。一部の実施形態では、コンジュゲーション/環化反応は、30℃で実施することができる。Heinisらの上記の方法では、反応は室温を超える温度、たとえば42℃で実施される。
還元およびコンジュゲーション/環化反応は、有利には1時間未満の時間で実施される。たとえば、反応は30分、20分、15分、または10分で実施してよい。
一実施形態では、ポリペプチドは、分子スカフォールドに共有結合で連結された3つ以上のペプチド反応性基を含む。3つがペプチド反応性基の好ましい数であるが、4つまたは5つの基も意図することができる。一般に、より多い数の反応性基を有するポリペプチドは複雑であり、アイソマー形態の形成なしには一貫したアセンブリーが得られにくい。
一実施形態では、ポリペプチドは、好ましくは、いったん分子スカフォールドにコンジュゲートすれば、ポリペプチドの「ループ」を形成することができる少なくとも2つの配列によって分離された少なくとも3つのペプチド反応性基を含むポリペプチドである。ループは任意の好適な長さ、たとえば2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、またはそれ以上のアミノ酸の長さであってよい。ループは同じ長さ、または異なる長さであってよい。好ましくは、少なくとも2つのループが提供される。一部の実施形態では、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上のループが存在してもよい。
分子スカフォールドは、ポリペプチドの反応性基に複数の結合点を提供する任意の構造であってよい。例示的な分子スカフォールドを以下に記載する。分子スカフォールドがポリペプチドにコンジュゲートされる一方、ポリペプチドは遺伝子ディスプレイシステムに組み込まれ、それにより、遺伝子ディスプレイシステムは、分子スカフォールドを含むペプチドリガンドを提示する。過剰のスカフォールドは除去される。
ある特定の実施形態では、分子スカフォールドは、1,3,5-トリス(ブロモメチル)ベンゼン(TBMB)、1,3,5-トリアクリロイル-1,3,5-トリアジナン(TATA)、1,1’,1’’-(1,4,7-トリアゾナン-1,4,7-トリイル)トリス(2-クロロエタン-1-オン)(TCAZ)、および1,1’,1’’-[1H,4H-3a,6a-(メタノイミノメタノ)ピロロ[3,4-c]ピロール-2,5,8(3H,6H)-トリイル]トリス(2-クロロエタン-1-オン)(TCCU)の群から選択される。
ペプチドリガンドは単一特異的、即ち単一の標的分子に結合するか、または多特異的であってよい。多特異的ペプチドリガンドはWO2010/089115に記載されている。ペプチドリガンドのライブラリーは、2つの異なる種または2つの異なるアイソタイプ由来の標的の間の交差反応性についてスクリーニングすることができる。
実施形態では、ペプチドリガンドは多特異的である。たとえば第1の構成では、ポリペプチドと分子スカフォールドとの相互作用によって形成されるポリペプチドループは、2つ以上の標的に結合することができる。この構成において、一実施形態では、ループは所望の標的への結合について個別に選択され、次に組み合わされ得る。別の実施形態では、ループは異なる所望の標的への結合について、単一の構造の一部として、ともに選択される。
第2の構成では、官能基は、ポリペプチドのN末端もしくはC末端またはその両方に結合され得る。官能基は、標的に結合することができる抗体ドメイン、Fcドメイン、または上述のさらに構造化されたペプチドを含むポリペプチド等の結合基の形態を取り得る。官能基はさらに、標的と化学結合することができる反応性基の形態を取り得る。さらに、官能基は、血清アルブミン等の大きな血漿タンパク質および細胞透過性ペプチドを含むエフェクター基であってよい。
第3の構成では、官能基は分子スカフォールドそれ自体に結合され得る。官能基の例には、先行する構成に関するものがある。
さらなる実施形態では、ペプチドリガンドは分子スカフォールドにn個の結合点で連結されたポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは環化され、分子スカフォールド上の前記n個の結合点の間に内在するn個の分離したループを形成し、ここでnは2以上である。
ポリペプチドは好ましくはN末端からC末端への融合によって環化し、分子スカフォールドへの結合の前または後に環化することができる。環化の前の結合が好ましい。
ある特定の実施形態では、ペプチドリガンドは、2つ以上のアミノ酸残基のうちの2つの間に内在するアミノ酸の配列を含む少なくとも1つのループを含む。
ペプチドの環化のためのいくつかの方法が当技術分野で公知である。たとえば、ポリペプチドはEDC等の架橋剤を用いるN-C架橋によって環化される。
別の実施形態では、保護されたNαまたはCα誘導体化アミノ酸を含むようにポリペプチドを設計し、保護されたNαまたはCα誘導体化アミノ酸の脱保護によって前記アミノ酸をポリペプチドの反対側の末端に連結することによって環化することができる。
好ましい実施形態では、ポリペプチドは酵素的手段によって環化される。
たとえば、酵素はトランスグルタミナーゼ、たとえば微生物トランスグルタミナーゼ、たとえばストレプトミセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)トランスグルタミナーゼである。酵素的環化の利点を利用するため、酵素基質のN末端および/またはC末端配列をポリペプチドに組み込む必要があり得る。基質配列の一部または全部を酵素反応の間に除去することができ、これは、環化したポリペプチドがその最終構成の中に基質配列を含まなくてもよいことを意味する。
ペプチドリガンドを形成するための分子スカフォールドを有するポリペプチドを提示するファージ粒子の改変を示す図である。(A)改変プロセスを示すダイアグラムである。(B)マススペクトルで決定した、20mMのNHHCO、5mMのEDTA、pH8、20%のACN中の10mMのTBMBとの30℃、1時間の反応の前後におけるGCGSGCGSGCG-D1-D2融合タンパク質の分子質量である。反応したおよび未反応のペプチド融合タンパク質の質量差は、小分子コアメシチレンの質量に対応する。 様々なプローブ濃度を用いた、TBMBで改変した17-88単一クローンファージのペプチド反応性プローブアッセイを示す図である。非改変およびヨードアセトアミドキャップしたファージのそれぞれ1試料を、それぞれ陽性および陰性の対照として、任意のスカフォールド試料と同時にアッセイした。 様々なプローブ濃度を用いた、TBMBまたはTATAで改変した(A)3×3、(B)3×9、(C)2×7、および(D)7×2のファージライブラリーのペプチド反応性プローブアッセイを示す図である。非改変およびヨードアセトアミドキャップしたファージのそれぞれ1試料を、それぞれ陽性および陰性の対照として、任意のスカフォールド試料と同時にアッセイした。 ペプチド反応性プローブアッセイを用いた環化の適格性を示す図である。(A)未改変ファージ:TBMB環化ファージの様々な比における6×6ファージライブラリーのペプチド反応性プローブアッセイである。(B)未改変ファージ:TATA環化ファージの様々な比における6×6ファージライブラリーのペプチド反応性プローブアッセイである。非改変およびヨードアセトアミドキャップしたファージのそれぞれ1試料を、それぞれ陽性および陰性の対照として任意のスカフォールド試料と同時にアッセイした。 様々なスカフォールド濃度を用いた、(A)TBMBで改変した17-88単一クローン、(B)TATAで改変した55-28-00単一クローン、(C)TCAZで改変した06-663-00単一クローン、および(D)TCCUで改変した17-69-07単一クローンのペプチド反応性プローブアッセイである。非改変およびヨードアセトアミドキャップしたファージのそれぞれ1試料を、それぞれ陽性および陰性の対照として任意のスカフォールド試料と同時にアッセイした。 最適化したスカフォールド濃度(60μMのTBMB、400μMのTATA、400μMのTCAZ、400μMのTCCU)を用いた、ファージライブラリー(6×6、3×3、3×9、2×7、7×2)のペプチド反応性プローブアッセイを示す図である。未改変ファージの1試料を陽性対照として同時にアッセイした。用いたマレイミド-PEG2-ビオチンプローブ濃度は100nMであった。 (A)プローブ結合ファージを様々な濃度のTCEPで処理した、単一クローン(17-88、541、542)のスカフォールド反応性プローブアッセイを示す図である。未改変ファージの1試料を陰性対照として同時にアッセイした。用いたSH-PEG3-ビオチンプローブ濃度は320μMであった。(B)プローブ結合ファージを1mMのTCEPで処理しまたは処理しない、様々なプローブ濃度を用いた未改変の17-88単一クローンファージのスカフォールド反応性プローブアッセイである。 プローブ結合ファージを1mMのTCEPで処理し、様々なプローブ濃度を用いた、(A)TBMB、TATA、TCAZ、またはTCCUで改変した542単一クローン、(B)TBMBまたはTATAで改変した17-88-PCA5単一クローン、(C)TBMBまたはTATAで改変したFdDog単一クローン(陰性対照)、(D)TBMBまたはTATAで改変した17-88単一クローンの、スカフォールド反応性プローブアッセイを示す図である。未改変ファージの1試料を陰性対照として同時にアッセイした。 プローブ結合ファージを1mMのTCEPで処理し、様々なプローブ濃度を用いた、TBMBで改変した様々な単一クローン(17-88、FdDog、17-88-PCA3、17-88-PCA5、17-88-PCA7)のスカフォールド反応性プローブアッセイを示す図である。 (A)プローブ結合ファージを1mMのTCEPで処理した、様々な濃度のTATAで改変した55-28-02ファージのスカフォールド反応性プローブアッセイを示す図である。未改変ファージの1試料を陰性対照として同時にアッセイした。用いたSH-PEG3-ビオチンプローブの濃度は320μMであった。(B)様々な濃度のTATAで改変した55-28-00ファージのペプチド反応性プローブアッセイである。未改変ファージの1試料を陽性対照として同時にアッセイした。用いたマレイミド-PEG2-ビオチンプローブの濃度は2.5μMであった。 プローブ結合ファージを1mMのTCEPで処理した、TCAZで改変した単一クローンのスカフォールド反応性プローブアッセイを示す図である。用いたSH-PEG3-ビオチンプローブの濃度は320μMであった。
他に定義しない限り、本明細書で用いる全ての技術用語および科学用語は、当技術分野、たとえばペプチド化学、細胞培養およびファージディスプレイ、核酸化学、ならびに生化学の技術分野において、当業者によって共通に理解される同じ意味を有する。分子生物学、遺伝子および生化学的な方法については標準的な手法を用いる(引用することにより本明細書の一部をなすものとする、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,2001,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Ausubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology(1999)4th ed.,John Wiley & Sons,Inc.を参照)。
ペプチドリガンドの「環化の程度」は、単一のポリペプチドの2つ以上のペプチド反応性基の全てが単一の分子スカフォールドの2つ以上のスカフォールド反応性基に共有結合しているペプチドリガンドの割合を指す。一般に、ペプチドリガンドは、
(1)ポリペプチドの2つ以上のペプチド反応性基の全てがコンジュゲートしていない場合、
(2)ポリペプチドの2つ以上のペプチド反応性基が2つ以上の分子スカフォールドにコンジュゲートしている場合、
(3)分子スカフォールドの2つ以上のスカフォールド反応性基の全てがコンジュゲートしていない場合、および/または
(4)分子スカフォールドの2つ以上のスカフォールド反応性基が2つ以上のポリペプチドにコンジュゲートしている場合
には、完全に環化しているとみなされない。
(ポリ)ペプチドリガンドまたは(ポリ)ペプチドコンジュゲートは、本明細書で引用する場合、分子スカフォールドに共有結合したポリペプチドを指す。典型的には、そのようなポリペプチドは、分子スカフォールドと共有結合を形成することができる2つ以上のペプチド反応性基、およびポリペプチドが分子スカフォールドに結合した場合にループを形成するのでループ配列と称される、前記反応性基の間に内在する配列を含む。
ペプチド反応性基は、分子スカフォールドと共有結合を形成することができる基である。典型的には、ペプチド反応性基はペプチドのアミノ酸側鎖に存在する。例としては、システイン、リジン、セレノシステイン、セリン、L-2,3-ジアミノプロピオン酸、およびN-ベータ-アルキル-L-2,3-ジアミノプロピオン酸等のアミノ含有基がある。
用語「プローブ」は、標的または標的クラスに特異的(たとえばチオール特異的、アルキル化剤特異的)に結合する小分子、高分子、ポリマー、タンパク質、抗体、または任意の物質を指し得る。本明細書では、用語「プローブ」は、本発明で論じる任意のプローブを指し得る。
用語「結合する」は、共有結合、親水性相互作用、疎水性相互作用、ファンデルワールス分散力、双極子-双極子相互作用、および/または水素結合による結合を指し得る。
用語「コンジュゲートしていない反応性基」は、
(1)反応で用いられる対応するポリペプチドおよび/または分子スカフォールドにコンジュゲートしていない、ペプチドリガンド上のペプチド反応性基および/またはスカフォールド反応性基、
(2)反応で用いられる分子スカフォールドにコンジュゲートしていない、ポリペプチド上のペプチド反応性基、および/または
(3)反応で用いられるポリペプチドにコンジュゲートしていない、分子スカフォールド上のスカフォールド反応性基
を指し得る。
本明細書では、用語「コンジュゲートしていない反応性基」は、本発明で論じる任意のコンジュゲートしていない反応性基を指し得る。
用語「連結可能な」は、プローブとシグナル発生基/蛍光実体との間の任意の種類のリンケージ、たとえば共有結合、親水性相互作用、疎水性相互作用、ファンデルワールス分散力、双極子-双極子相互作用、および/または水素結合を指し得る。一実施形態では、プローブはビオチン基を含み、シグナル発生基/蛍光実体はストレプトアビジン基を含む。
用語「直接的に」は、シグナルがシグナル発生基それ自体によって産生される状況を指す。この状況には、そのようなシグナルを活性化、誘起、または生成するために必要な任意の励起(たとえば光および化学物質)が含まれる。
用語「間接的に」は、シグナルがシグナル発生基の補助を伴って別の実体によって産生される状況を指す。この状況には、そのような補助を活性化または誘起するために必要な任意の励起(たとえば光および化学物質)が含まれる。実体は小分子、高分子、ポリマー、またはタンパク質であってよい。たとえば、シグナル発生基は、試薬の反応を触媒してシグナルを発生することができる酵素または触媒を含み得る。
用語「存在を示す」は、ペプチドリガンド上のコンジュゲートしていない反応性基の存在を直接的または間接的に決定することを指し得る。好ましくは、シグナルによって、ペプチドリガンド上のコンジュゲートしていない反応性基の量、分量、および/または割合を直接的または間接的に決定または推定することが可能になる。
蛍光実体または蛍光基は、蛍光性である小分子、高分子、ポリマー、タンパク質、または任意の物質を指し得る。一実施形態では、蛍光実体または蛍光基は、蛍光ビーズである。
結合または阻害の活性(または他の任意の所望の特性)のスクリーニングは、当技術分野で周知の方法、たとえばファージディスプレイ技術に従って実行される。たとえば、固相に固定化された標的を用いて、あるレパートリーの結合メンバーを特定し単離することができる。スクリーニングにより、所望の特徴に従うレパートリーのメンバーの選択が可能になる。
用語「ライブラリー」は、不均一なポリペプチドまたは核酸の混合物を指す。ライブラリーは、同一ではないメンバーからなっている。この点で、ライブラリーはレパートリーと同義である。ライブラリーメンバーの間の配列の相違は、ライブラリー中に存在する多様性に関与している。ライブラリーはポリペプチドまたは核酸の単純な混合物の形態を取ってもよく、核酸のライブラリーによって形質転換された生物または細胞、たとえば細菌、ウイルス、動物、または植物の細胞等の形態であってもよい。好ましくは、それぞれの個別の生物または細胞は、ただ1つのまたは限定された数のライブラリーメンバーを含む。
一実施形態では、核酸にコードされるポリペプチドの発現を可能にするために、核酸が発現ベクターの中に組み込まれる。したがって好ましい態様では、ライブラリーは宿主生物の集団の形態を取り得、それぞれの生物は、その対応するポリペプチドメンバーを産生するように発現することができる核酸の形態におけるライブラリーの単一のメンバーを含む発現ベクターの1つまたは複数のコピーを含む。即ち、宿主生物の集団は、遺伝的に多様なポリペプチドのバリアントの大きなレパートリーをコードする可能性を有している。
一実施形態では、核酸のライブラリーは、ポリペプチドのレパートリーをコードする。ライブラリーのそれぞれの核酸メンバーは、好ましくはライブラリーの1つまたは複数の他のメンバーに関連する配列を有する。関連する配列は、ライブラリーの少なくとも1つの他のメンバーと少なくとも50%の同一性、たとえば少なくとも60%の同一性、たとえば少なくとも70%の同一性、たとえば少なくとも80%の同一性、たとえば少なくとも90%の同一性、たとえば少なくとも95%の同一性、たとえば少なくとも98%の同一性、たとえば少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を意味する。同一性は、参照配列の少なくとも3アミノ酸、たとえば少なくとも4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸、たとえば少なくとも12アミノ酸、たとえば少なくとも14アミノ酸、たとえば少なくとも16アミノ酸、たとえば少なくとも17アミノ酸、または完全長の連続セグメントにわたって判定することができる。
レパートリーは、その配列が異なるバリアント、この場合にはポリペプチドバリアントの集合体である。典型的には、反応性基の位置および性質は変動しないが、それらの間にループを形成する配列はランダム化することができる。レパートリーは大きさが異なるが、少なくとも10個のメンバーを含むと考えるべきである。1011個またはそれ以上のメンバーのレパートリーを構築することができる。
特異性は、本明細書の文脈では、その同族の標的に結合し、これを阻害し、またはその他これと相互作用して、標的に類似した実体を排除するリガンドの能力を指す。たとえば、特異性は、ヒト酵素の相互作用を阻害するが、異なる種に由来する相同の酵素を阻害しないリガンドの能力を指し得る。本明細書に記載したアプローチを用いて特異性を調節、即ち増大または低減させ、それによりリガンドと意図した標的のホモログまたはパラログとの相互作用をしやすくまたはしにくくすることができる。特異性は活性、親和性、または親和力と同義であることを意図しておらず、その標的に対するリガンドの作用の強さ(たとえば結合親和性または阻害のレベル等)はその特異性と必ずしも関連しない。
結合活性は、本明細書で用いられる場合、たとえば本明細書に記載したように、結合アッセイから得られる定量的結合測定を指す。したがって、結合活性は、所与の標的濃度で結合するペプチドリガンドの量を指す。
多特異性は、2つ以上の標的に結合する能力である。典型的には、結合ペプチドは、そのコンフォメーション特性によって、抗体の場合のエピトープ等の単一の標的に結合することができる。しかし、2つ以上の標的、たとえば二重特異的抗体に結合することができるペプチドを開発することができる。本発明では、ペプチドリガンドは2つ以上の標的抗原に結合することができ、したがって多特異的である。好ましくは、ペプチドリガンドは2つの標的抗原に結合し、したがって二重特異的である。結合は独立であってよい。これは、ペプチド上の標的のための結合部位が、標的の1つまたはその他の結合によって構造的に妨害されないことを意味する。この場合には、両方の標的が独立に結合することができる。より一般的には、1つの標的の結合は他の結合を少なくとも部分的に妨げることになる。
阻害は、本明細書で用いられる場合、標的または標的抗原に結合しまたはこれと相互作用して、その活性を低減させるか、またはその正常な機能に干渉するリガンドの能力を指す。標的抗原が酵素である場合、リガンドは、基質が酵素の活性部位に進入することを防止するか、および/または酵素が反応を触媒することを停止することによって、阻害し得る。リガンドはまた、標的の正常な機能のために必要な標的と他の分子との相互作用をブロックし得る。阻害活性(IC50)は、様々な濃度のリガンドとともにインキュベートした際の標的の残存活性を測定することによって決定し得る。見かけのK値は、ChengおよびPrusoffの式(Cheng,Y.and Prusoff,W.H.,Biochem.Pharmacol.,1973)に従って計算され得る。
標的、抗原、または標的抗原は、ペプチドリガンドがそれに結合するか、またはその他に相互作用する分子またはその部分である。結合は大部分の種類の活性の前提条件とみられ、またそれ自体で活性であるが、他の活性も想定される。本発明は直接的にも間接的にも結合の測定を必要としなくてよい。
(A)ペプチドリガンド
(i)分子スカフォールド
分子スカフォールドは、たとえばWO2009/098450およびその中に引用された参考文献、特にWO2004/077062、WO2006/078161、およびWO2018/197893に記載されている。
分子スカフォールド、分子コア、またはスカフォールドは、複数の点でペプチドを連結してペプチドに1つまたは複数の構造的特徴を付与することができる任意の分子である。これは単にジスルフィド結合を置き換えるだけではない点で架橋剤ではない。その代わりに、これはペプチドに2つ以上の結合点を提供する。好ましくは、分子スカフォールドはペプチドについてスカフォールド反応性基と称される少なくとも3つの結合点を含む。これらの基はペプチド上の反応性基と反応して共有結合を形成することができる。好ましくは、これらの基はペプチド上のシステイン残基(C、Cii、およびCiii)と反応して共有結合を形成することができる。これらは、還元的切断および付随する分子の崩壊の対象となるジスルフィド結合を形成するだけでなく、安定な共有結合のチオエーテルリンケージを形成する。分子スカフォールドの好ましい構造を以下に記載する。
即ち、本発明の化合物は、分子スカフォールドに共有結合したペプチドを含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。用語「スカフォールド」または「分子スカフォールド」は、本明細書では、本発明の化合物の中でアルキルアミノリンケージおよびチオエーテルリンケージでペプチドに結合した化学的部分を指す。用語「スカフォールド分子」または「分子スカフォールド分子」は、本明細書では、ペプチドまたはペプチドリガンドと反応してアルキルアミノ結合およびチオエーテル結合を有する本発明の誘導体を形成することができる分子を指す。即ち、スカフォールド分子は、分子のそれぞれの反応性基(脱離基等)がアルキルアミノ結合およびチオエーテル結合によってスカフォールド部分のペプチドに置き換えられていることを除いて、スカフォールド部分と同じ構造を有している。
分子スカフォールド分子は、多数の点でペプチドを連結して、ペプチドにチオエーテル結合およびアルキルアミノ結合を形成することができる任意の分子である。これは通常2つのペプチドを連結しない点で架橋剤ではなく、その代わりに、これは単一のペプチドに2つ以上の結合点を提供する。分子スカフォールド分子は、ペプチドについてスカフォールド反応性基と称される少なくとも3つの結合点を含む。これらの基はペプチド上の-SH基およびアミノ基と反応してチオエーテルおよびアルキルアミノリンケージを形成することができる。即ち、分子スカフォールドは、本発明のコンジュゲートにおけるチオエーテルおよびアルキルアミノリンケージまでであるがこれらを含まないスカフォールド部分を表す。スカフォールド分子はスカフォールドの構造を有するが、本発明のコンジュゲートにおけるチオエーテル結合およびアルキルアミノ結合の位置に反応性基を有している。
好適には、スカフォールドは(ヘテロ)芳香族または(ヘテロ)脂環式部分を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。
本明細書で用いられる場合、「(ヘテロ)アリール」は、芳香環、たとえば4~12員を有する芳香環、たとえばフェニル環を含むことを意味する。これらの芳香環は、チエニル環、ピリジル環、およびフラニル環のように、任意選択で1つまたは複数のヘテロ原子(たとえばN、O、S、およびPの1つまたは複数)を含み得る。芳香環は任意選択で置換され得る。「(ヘテロ)アリール」は、1つまたは複数のその他のアリール環または非アリール環が融合した芳香環を含むことも意味する。たとえば、ナフチル基、インドール基、チエノチエニル基、ジチエノチエニル、および5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフチル基(これらはそれぞれ、任意選択で置換することができる)は、本出願の目的のためのアリール基である。上で示したように、アリール環は任意選択で置換することができる。好適な置換基には、アルキル基(これは任意選択で置換することができる)、その他のアリール基(これはそれ自体置換され得る)、複素環(飽和または不飽和)、アルコキシ基(これはアリールオキシ基(たとえばフェノキシ基)を含むことを意味する)、ヒドロキシ基、アルデヒド基、ニトロ基、アミン基(たとえば未置換、またはアリール基もしくはアルキル基でモノ置換もしくはジ置換)、カルボン酸基、カルボン酸誘導体(たとえばカルボン酸エステル、アミド等)、ハロゲン原子(たとえばCl、Br、およびI)、その他が含まれる。
本明細書で用いられる場合、「(ヘテロ)脂環式」は、ホモ環式またはヘテロ環式の飽和環を指す。環は未置換でもよく、または1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。置換基は飽和または不飽和でよく、芳香族または非芳香族でよい。好適な置換基の例には、アルキル基およびアリール基の置換基に関して上記の考察で引用したものが含まれる。さらに、2つ以上の環置換基が組み合わされて別の環を形成してもよく、そのため、「環」は、本明細書で用いられる場合、融合環システムを含むことを意味する。
好適には、スカフォールドは、トリス置換の(ヘテロ)芳香族または(ヘテロ)脂環式部分、たとえばトリスメチレン置換の(ヘテロ)芳香族または(ヘテロ)脂環式部分を含む。(ヘテロ)芳香族または(ヘテロ)脂環式部分は、好適には六員環構造、好ましくはトリス置換の六員環構造であり、そのため、スカフォールドは3回対称軸を有する。
実施形態では、スカフォールドはトリスメチレン(ヘテロ)アリール部分、たとえば1,3,5-トリスメチレンベンゼン部分である。これらの実施形態では、対応するスカフォールド分子は、好適にはメチレン炭素上に脱離基を有する。次いでメチレン基は、本明細書で定義したアルキルアミノリンケージのR部分を形成する。これらのメチレン置換(ヘテロ)芳香族化合物では、芳香環の電子が、求核置換の間の遷移状態を安定化することができる。したがって、たとえばベンジルハライドは、求核置換に対して(ヘテロ)芳香族基に連結されていないアルキルハライドより100~1000倍、反応性が大きい。
これらの実施形態では、スカフォールドおよびスカフォールド分子は、一般式:
Figure 2023510069000001
を有する。
式中、LGは、スカフォールド分子について以下さらに記載する脱離基を表すか、またはLG(アルキルアミノ基のR部分を形成する隣接するメチレン基を含む)は、本発明のコンジュゲートにおけるペプチドのアルキルアミノリンケージを表す。
実施形態では、上の基LGはハロゲン、たとえばこれらに限定されないが、臭素原子であってよく、その場合にはスカフォールド分子は1,3,5-トリス(ブロモメチル)ベンゼン(TBMB)である。別の好適な分子スカフォールド分子としては、2,4,6-トリス(ブロモメチル)メシチレンがある。これは1,3,5-トリス(ブロモメチル)ベンゼンと類似しているが、ベンゼン環に結合したさらなる3つのメチル基を含む。このスカフォールドの場合、さらなるメチル基はペプチドとのさらなる接触を形成し、それにより、さらなる構造的束縛を加える。したがって、1,3,5-トリス(ブロモメチル)ベンゼンとは異なる多様性の範囲が達成される。
求核置換によるペプチドとの反応のためのスカフォールドを形成する別の好ましい分子としては、1,3,5-トリス(ブロモアセトアミド)ベンゼン(TBAB)がある。
Figure 2023510069000002
実施形態では、スカフォールド分子は(ヘテロ)脂環式部分、好ましくはトリス置換(ヘテロ)脂環式部分、より好ましくはトリス(2-ハロエタン-1-オン)(ヘテロ)脂環式部分を含む。
求核置換によるペプチドとの反応のためのスカフォールドを形成する好ましい分子は、1,1’、1’’-(1,4,7-トリアゾナン-1,4,7-トリイル)トリス(2-クロロエタン-1-オン)(TCAZ)がある。
Figure 2023510069000003
求核置換によるペプチドとの反応のためのスカフォールドを形成する別の好ましい分子は、1,1’、1’’-[1H,4H-3a,6a-(メタノイミノメタノ)ピロロ[3,4-c]ピロール-2,5,8(3H,6H)-トリイル]トリス(2-クロロエタン-1-オン)(TCCU)がある。
Figure 2023510069000004
他の実施形態では、分子スカフォールドは四面体形状を有してよく、それにより、コードされたペプチドの4つの官能基と分子スカフォールドとの反応によって、2つを超えない産生物アイソマーを生成する。他の形状も可能であり、まさにほとんど無限の数のスカフォールド形状が可能で、ペプチドリガンドの多様化のより大きな可能性がもたらされる。
他の実施形態では、スカフォールド分子は、2つ以上のアクリロイル基、たとえばアクリルアミドまたはアクリレート基で置換された(ヘテロ)芳香族または(ヘテロ)脂環式部分であってよい。これらの基は、-SHとα,β付加反応を受けてチオエーテル結合を形成することができる。この型の典型的なスカフォールド分子は、1,3,5-トリアクリロイル-1,3,5-トリアジナン(TATA)である。
Figure 2023510069000005
さらに他の実施形態では、分子スカフォールドは四面体形状を有してよく、それにより、コードされたペプチドの4つの官能基と分子スカフォールドとの反応によって、2つを超えない産生物アイソマーを生成する。他の形状も可能であり、まさにほとんど無限の数のスカフォールド形状が可能で、ペプチド誘導体の多様化のより大きな可能性がもたらされる。
本発明のリガンドを形成するために用いられるペプチドは、スカフォールドへのアルキルアミノリンケージを形成するためにDapまたはN-AlkDap残基を含んでよい。ジアミノプロピオン酸の構造は、先行技術においてスカフォールドへのチオエーテル結合を形成するために用いられたシステインと類似し、等比体積であり、システインの末端-SH基が-NHによって置換されている。
Figure 2023510069000006
用語「アルキルアミノ」は、その通常の化学的意味において2つの炭素原子に結合したNHまたはN(R)からなるリンケージを意味するために本明細書で用いられ、ここで炭素原子はアルキル、アルキレン、またはアリール炭素原子から独立に選択され、Rはアルキル基である。好適には、本発明のアルキルアミノリンケージは、2つの飽和炭素原子、最も好適にはメチレン(-CH-)炭素原子に結合したNH部分を含む。本発明で有用なアルキルアミノリンケージは、一般式:
S-R-N(R)-R-P
を有する。
式中、はスカフォールドコア、たとえば以下でさらに説明する(ヘテロ)芳香族または(ヘテロ)脂環式環を表し、
はC1~C3アルキレン基、好適にはメチレンまたはエチレン基、最も好適にはメチレン(CH)であり、
はDapまたはN-AlkDap側鎖のメチレン基であり、
は分枝アルキルおよびシクロアルキルを含むC1-4アルキル、たとえばメチル、またはHであり、
Pはペプチド骨格を表す。即ち、上記リンケージのR部分は、DapまたはN-AlkDap残基のカルボキシル炭素に隣接するペプチド骨格中の炭素原子に連結されている。
(ii)ポリペプチド
本発明において、用語「ペプチド」と「ポリペプチド」は、相互交換可能に用いられる。
ポリペプチドのペプチド反応性基は、天然または非天然のアミノ酸の側鎖によって提供することができる。ポリペプチドのペプチド反応性基は、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、グアニジニウム基、フェノール基、またはヒドロキシル基から選択することができる。ポリペプチドのペプチド反応性基は、アジド、ケトカルボニル、アルキン、ビニル、またはアリールハライド基から選択することができる。分子スカフォールドに連結するためのポリペプチドのペプチド反応性基は、ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端であってよい。対応するスカフォールド反応性基を分子スカフォールド上で用いて、上記のペプチド反応性基と反応させることができる。さらなる詳細は、WO2009/098450に見出すことができる。
天然のアミノ酸の反応性基の例としては、システインのチオール基、リジンのアミノ基、アスパラギン酸またはグルタミン酸のカルボキシル基、アルギニンのグアニジニウム基、チロシンのフェニル基、またはセリンのヒドロキシル基がある。
システインは、その反応性が他の全てのアミノ酸と最も異なるという利点を有するので、採用され得る。システインのチオール基と反応するために分子スカフォールドにおいて用いられ得るスカフォールド反応性基は、アルキルハライド(またはハロゲノアルカンまたはハロアルカンとも命名される)である。その例としては、ブロモメチルベンゼン(TBMBによって例示されるスカフォールド反応性基)またはヨードアセトアミドがある。タンパク質中のシステインに選択的に化合物をカップリングするために用いられるその他のスカフォールド反応性基としては、マレイミド類がある。本発明において分子スカフォールドとして用いられ得るマレイミド類の例には、トリス(2-マレイミドエチル)アミン、トリス(2-マレイミドエチル)ベンゼン、トリス(マレイミド)ベンゼンが含まれる。その他の可能なスカフォールド反応性基には、α-ハロカルボニル類、ビニルスルホン類、アルケン(チオール-エンカップリング)、アルキン(チオール-インカップリング)、チオール(ジスルフィド反応)、およびその他の当技術分野で公知のバイオコンジュゲート試薬が含まれる。セレノシステインもシステインと同様の反応性を有する天然のアミノ酸でもあり、同じ反応に用いることができる。したがって、システインが述べられる場合にはいつも、文脈によって他が示唆されなければ、セレノシステインを置換することが典型的には許容される。
リジン類(およびペプチドのN末端の一級アミン)も、分子スカフォールドに連結することによってファージ上のペプチドを改変するためのペプチド反応性基として好適である。しかし、これらはファージタンパク質中にシステインよりも豊富であり、ファージ粒子が架橋されるか、またはその感染性を喪失するという、より高いリスクがある。それにも関わらず、分子スカフォールドと第2のまたは継続的なリンケージを形成するための分子内反応では(たとえば分子スカフォールドが既にファージペプチドに連結されている場合)、リジン類が特に有用であることが見出された。この場合には、分子スカフォールドは、提示されるペプチドのリジン類(特に近接しているリジン類)と優先的に反応する。一級アミンと選択的に反応するスカフォールド反応性基としては、スクシンイミド類、アルデヒド類、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホニルハライド類、スルホネート類、アリールハライド類、イミドエステル類、アルキルハライド類、または当技術分野で公知の他の任意のバイオコンジュゲート試薬がある。付随するいくつかの実施例において用いられるブロモメチル基では、ベンゼン環の電子がカチオン性遷移状態を安定化することができる。したがってこの特定のアリールハライドは、アルキルハライドよりも100~1000倍、反応性が大きい。分子スカフォールドとしての使用のためのスクシンイミド類の例には、トリス(スクシンイミジルアミノトリアセテート)、1,3,5-ベンゼン三酢酸が含まれる。分子スカフォールドとしての使用のためのアルデヒド類の例には、トリホルミルメタンが含まれる。分子スカフォールドとしての使用のためのアルキルハライド類の例には、1,3,5-トリス(ブロモメチル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス(ブロモメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(ブロモメチル)-2,4,6-トリエチルベンゼンが含まれる。
本発明のポリペプチドは、少なくとも2つのペプチド反応性基を含む。前記ポリペプチドは、3つ以上のペプチド反応性基を含んでもよい。前記ポリペプチドは、4つ以上のペプチド反応性基を含んでもよい。より多くのペプチド反応性基を用いれば、より多くのループを分子スカフォールド中に形成することができる。
好ましい実施形態では、3つのペプチド反応性基を有するポリペプチドが生成される。前記ポリペプチドと3回転対称を有する分子スカフォールド/分子コアとの反応によって、単一の産生物アイソマーを生成する。単一の産生物アイソマーの生成は、いくつかの理由によって好ましい。化合物ライブラリーの核酸はポリペプチドの一次配列のみをコードするが、ポリペプチドと分子コアとの反応に際して形成されるアイソマー状態の分子をコードしない。ただ1つの産生物アイソマーが形成され得れば、産生物アイソマーに対する核酸の割り当ては明確に定義される。多数の産生物アイソマーが形成されれば、核酸は、スクリーニングまたは選択のプロセスにおいて単離された産生物アイソマーの性質についての情報を与えることができない。本発明のライブラリーの特定のメンバーが合成される場合には、単一の産生物アイソマーの形成はまた有利である。この場合には、ポリペプチドと分子スカフォールドとの化学反応によって、アイソマーの混合物よりむしろ単一の産生物アイソマーが得られる。
本発明の別の実施形態では、4つのペプチド反応性基を有するポリペプチドが生成される。前記ポリペプチドと四面体対称を有する分子スカフォールド/分子コアとの反応によって、2つの産生物アイソマーが生成される。2つの異なる産生物アイソマーが1つの同じ核酸によってコードされるとしても、両方のアイソマーを化学的に合成し、2つのアイソマーを分離し、標的リガンドへの結合について両方のアイソマーを試験することによって、単離されたアイソマーのアイソマー的性質を決定することができる。
一部の実施形態では、分子スカフォールドへの連結のためのポリペプチドのペプチド反応性基のそれぞれは、同じ型のものである。たとえば、それぞれのペプチド反応性基はシステイン残基であってよい。さらなる詳細は、WO2009/098450に記載されている。
一部の実施形態では、分子スカフォールドへの連結のためのペプチド反応性基は2つ以上の異なる型を含んでよく、または3つ以上の異なる型を含んでよい。たとえば、ペプチド反応性基は2つのシステイン残基および1つのリジン残基を含んでよく、または1つのシステイン残基、1つのリジン残基、および1つのN-末端アミンを含んでよい。
本発明の1つの実施形態では、ポリペプチドのペプチド反応性基のうち少なくとも1つは残りの反応性基に対して直交している。直交ペプチド反応性基の使用により、前記直交ペプチド反応性基を分子コアの特定の部位に指向させることが可能になる。直交ペプチド反応性基を含む連結戦略を用いて、形成される産生物アイソマーの数を制限することができる。換言すれば、少なくとも3つの結合のうちの残りについて選択したペプチド反応性基への前記少なくとも3つの結合のうちの1つまたは複数について、独特のまたは異なるペプチド反応性基を選択することによって、ポリペプチドの特定のペプチド反応性基を分子スカフォールド上の特定の位置に結合させまたは指向させる特定の順序が、有用に達成され得る。
別の実施形態では、本発明のポリペプチドのペプチド反応性基が分子リンカーと反応し、前記リンカーは分子スカフォールドと反応することができ、それによりリンカーは最終の結合状態において分子スカフォールドとポリペプチドとの間に介在することになる。
一部の実施形態では、ポリペプチドのライブラリーまたは組のメンバーのアミノ酸は、任意の天然または非天然のアミノ酸によって置き換えることができる。これらの交換可能なアミノ酸から除外されるものは、ポリペプチドを分子コアに架橋するための官能基を有するアミノ酸であり、それによりループ配列のみが交換可能である。交換可能なポリペプチド配列は、ランダム配列、定常配列、またはランダムおよび定常のアミノ酸を有する配列のいずれかを有する。反応性基を有するアミノ酸の位置がループの大きさを決定するので、これらのアミノ酸はポリペプチドの中の定義された場所に位置している。
分子スカフォールドに連結するためのペプチド反応性基を有するアミノ酸は、ポリペプチドの中の任意の好適な場所に位置してよい。創成される特定の構造またはループに影響を与えるため、ペプチド反応性基を有するアミノ酸の位置は、当業者によって、たとえば産生されるポリペプチドを変異させるためにポリペプチドをコードする核酸を操作することによって、変動させることができる。そのような手段によって、ループの長さを本教示に従って操作することができる。
たとえば、ポリペプチドは配列AC(X)C(X)CGを含んでよく、ここでXはランダムなアミノ酸、Aはアラニン、Cはシステイン、Gはグリシンを表し、nおよびmは同一でも異なっていてもよい2~15の数であり、実施形態では2~10、2~9、2~7、または2~6であってよい。
一実施形態では、3つのペプチド反応性基を有するポリペプチドは配列(X)Y(X)Y(X)Y(X)を有し、ここでYは反応性基を有するアミノ酸を表し、Xはランダムなアミノ酸を表し、mおよびnは介在するポリペプチドセグメントの長さを定義する同一でも異なっていてもよい2~9の数であり、lおよびoは側面にあるポリペプチドセグメントの長さを定義する0~20の数である。
チオール媒介コンジュゲーションへの代替案を用いて、共有結合相互作用によって分子スカフォールドをペプチドに結合させることができる。あるいは、本発明に従ってさらなる部分(たとえば分子スカフォールドとは区別できる目的の小分子)を選択または単離した後で、これらの部分のポリペプチドへの改変または結合において、これらの手法を用いることができる。この実施形態では明らかに、結合は共有結合でなくてもよく、非共有結合を包含してよい。これらの方法は、相補的反応性基を有する小分子と組み合わせて、必須の化学的反応性基を有する非天然アミノ酸を含むタンパク質およびペプチドを提示するファージを産生することによって、またはその分子が選択/単離の相の後で作成される場合に、非天然アミノ酸を化学的または組み換えによって合成されたポリペプチドに組み込むことによって、チオール介在法の代わりに(またはそれと組み合わせて)用いることができる。さらなる詳細は、WO2009/098450、またはHeinis,et al.,Nat Chem Biol 2009,5(7),502-7に見出すことができる。
(iii)多特異性分子を形成するためのループの組合せ
ペプチドリガンド由来のループ、またはペプチドリガンドのレパートリーは、組み合わされたループを組み込むポリペプチドのシーケンシングおよびde novo合成によって有利に組み合わされる。あるいは、そのようなポリペプチドをコードする核酸を合成することができる。
レパートリー、特に単一ループレパートリーを組み合わせる場合には、レパートリーをコードする核酸は、有利には消化され、再ライゲートされて、構成要素であるレパートリーとは異なるループの組合せを有する新規なレパートリーが形成される。ファージベクターは、ベクターを切断して再ライゲートし、所望の多特異性ペプチドリガンドを創成するための特有の点を提供することができるポリリンカーおよび制限酵素のためのその他の部位を含んでよい。ファージライブラリーを操作するための方法は抗体に関して周知であり、本例にも適用することができる。
(iv)エフェクター基と官能基との結合
エフェクター基および/または官能基は、たとえばポリペプチドのN末端もしくはC末端に、または分子スカフォールドに、結合することができる。
適切なエフェクター基には、抗体およびその部分または断片が含まれる。たとえば、エフェクター基は、1つまたは複数の定常領域ドメインに加えて、抗体軽鎖定常領域(CL)、抗体CH1重鎖ドメイン、抗体CH2重鎖ドメイン、抗体CH3重鎖ドメイン、またはこれらの任意の組合せを含み得る。エフェクター基は、抗体のヒンジ領域(IgG分子のCH1とCH2ドメインとの間に通常見られる領域)を含んでもよい。
一実施形態では、本発明によるエフェクター基は、IgG分子のFc領域である。有利には、本発明によるペプチドリガンド-エフェクター基は、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、または7日以上のtβ半減期を有するペプチドリガンドFc融合を含むかまたはからなる。最も有利には、本発明によるペプチドリガンドは、1日以上のtβ半減期を有するペプチドリガンドFc融合を含むかまたはからなる。
官能基には一般に、結合基、薬物、他の実体との結合のための反応性基、多環ペプチドの細胞内への取り込みを助ける官能基、その他が含まれる。
ペプチドの細胞内への浸透能力によって、細胞内標的に対するペプチドを効果的にすることが可能になる。細胞内に浸透する能力を有するペプチドによって接近され得る標的には、転写因子、チロシンキナーゼ等の細胞内シグナル伝達分子、およびアポトーシス経路に関与する分子が含まれる。細胞の浸透を可能にする官能基には、ペプチドまたは分子スカフォールドに付加されたペプチドまたは化学基が含まれる。たとえばChen and Harrison,Biochemical Society Transactions(2007)Volume 35,part 4,p821“Cell-penetrating peptides in drug development:enabling intracellular targets”およびGupta et al.によるAdvanced Drug Discovery Reviews(2004)Volume 57 9637における、“Intracellular delivery of large molecules and small peptides by cell penetrating peptides”に記載されている、VP22、HIV-Tat、ドロソフィラ(Drosophila(アンテナペディア(Antennapedia))のホメオボックスタンパク質から誘導されるペプチド等のペプチド。原形質膜を通るトランスロケーションにおいて有効であることが示された短いペプチドの例には、ドロソフィラアンテナペディアタンパク質由来の16アミノ酸の浸透ペプチド(Derossi,et al.(1994)J Biol.Chem.Volume 269 p10444 “The third helix of the Antennapedia homeodomain translocates through biological membranes”)、18アミノ酸の「モデル両親媒性ペプチド」(Oehlke,et al.(1998)Biochim Biophys Acts Volume 1414 p127“Cellular uptake of an alpha-helical amphipathic model peptide with the potential to deliver polar compounds into the cell interior non-endocytically”)、およびHIV TATタンパク質のアルギニンリッチ領域が含まれる。非ペプチド性のアプローチには、生体分子に容易に結合できる小分子の模倣体またはSMOCの使用が含まれる。(Okuyama,et al.(2007)Nature Methods Volume 4 p153‘Small-molecule mimics of an α-helix for efficient transport of proteins into cells’)。分子にグアニジニウム基を添加するその他の化学的戦略も、細胞の浸透を増強する(Elson-Scwab,et al.(2007)J Biol Chem Volume 282 p13585“Guanidinylated Neomcyin Delivers Large Bioactive Cargo into cells through a heparin Sulphate Dependent Pathway”)。細胞への取り込みを増強するために、ステロイド等の小分子量分子を分子スカフォールドに添加してよい。
ペプチドリガンドに結合することができる官能基の1つのクラスには、抗体およびその結合性断片、たとえばFab、Fv、または単一ドメイン断片が含まれる。特に、in vivoでペプチドリガンドの半減期を増大することができるタンパク質に結合する抗体を用いてよい。
多くの細胞上に存在するインテグリンに結合するRGDペプチドを組み込んでもよい。
一実施形態では、本発明によるペプチドリガンド-エフェクター基は、12時間以上、24時間以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、7日以上、8日以上、9日以上、10日以上、11日以上、12日以上、13日以上、14日以上、15日以上、または20日以上からなる群から選択されるtβ半減期を有する。有利には、本発明によるペプチドリガンド-エフェクター基または組成物は、12~60時間の範囲のtβ半減期を有することになる。さらなる実施形態では、これは1日以上のt半減期を有することになる。さらなる実施形態では、これは12~26時間の範囲になる。
官能基には、がん治療のための細胞傷害性薬剤等の薬物が含まれる。これらには、シスプラチンおよびカルボプラチン、ならびにオキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、イフォスファミド等のアルキル化剤;プリンアナログアザチオプリンおよびメルカプトプリンまたはピリミジンアナログを含む代謝拮抗薬;ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、およびビンデシン等のビンカアルカロイドを含む植物アルカロイドおよびテルペノイド;ポドフィロトキシンおよびその誘導体エトポシドおよびテニポシド;もともとタキソールとして知られるパクリタキセルを含むタキサン類;カントテシン類を含むトポイソメラーゼ阻害剤;イリノテカンおよびトポテカン、ならびにアムサクリン、エトポシド、エトポシドホスフェート、およびテニポシドを含むII型阻害剤が含まれる。さらなる薬剤には、免疫抑制剤ダクチノマイシン(これは腎移植において用いられる)、ドキソルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、およびその他を含む抗腫瘍抗生剤が含まれ得る。
可能なエフェクター基には、酵素、たとえば酵素/プロドラッグ療法における使用のためのカルボキシペプチダーゼG2等も含まれ、ここではペプチドリガンドはADEPTにおいて抗体を置き換える。
(v)ペプチドの改変
好適な薬物様分子中のペプチドリガンドまたは二環式ペプチド(二環式;分子スカフォールドにコンジュゲートされたペプチド)を開発するため、それが注射用、吸入用、経鼻用、経眼用、経口用、または局所投与用のいずれであっても、いくつかの特性を考慮する必要がある。少なくとも以下を所与のリード二環体に設計する必要がある。
・ プロテアーゼ安定性。これは血漿プロテアーゼ、上皮(「膜に固定された」)プロテアーゼ、胃腸プロテアーゼ、肺表面プロテアーゼ、細胞内プロテアーゼ、その他に対する二環体の安定性に関する。プロテアーゼ安定性は異なる種の間で維持されるべきであり、それにより二環体リード候補は動物モデルで開発され、信頼性をもってヒトに投与することができる。
・ 分子の薬学的安定性プロファイルを改善するための、トリプトファンおよびメチオニン等の酸化に敏感な残基の耐酸化性アナログへの置換え。
・ 荷電および親水性の残基と疎水性残基との割合の関数である望ましい溶解性プロファイル。これは製剤化および吸収の目的のために重要である。
・ 荷電した残基と疎水性残基との正しいバランス。疎水性残基は血漿タンパク質の結合の程度に、したがって血漿中の遊離の利用可能な分画の濃度に影響する一方、荷電した残基(特にアルギニン)はペプチドと細胞表面上のリン脂質膜との相互作用に影響し得る。この2つの組合せは半減期、分布の体積、およびペプチド薬物への曝露に影響し、臨床的エンドポイントに従って調節することができる。さらに、荷電した残基と疎水性残基との正しい組合せおよび数によって、注射部位(ペプチド薬物が皮下投与される)における刺激を低減することができる。
・ 臨床的適応症および処置レジメンに応じて調節される半減期。緊急の疾患管理の設定における短期の曝露のための未改変の分子を開発すること、または血漿中半減期を増大させ、それにより、より慢性的な疾患状態の管理のために最適な化学的改変を有する二環ペプチドを開発することが賢明であろう。
治療用ペプチドの候補をタンパク質分解に対して安定化させるアプローチは数多くあり、ペプチド模倣体の分野で重複している(総説としてGentilucci et al,Curr.Pharmaceutical Design,(2010),16,3185-203、およびNestor et al,Curr.Medicinal Chem(2009),16,4399-418を参照)。
これらには、以下が含まれる。
・ ペプチドの環化
・ N末端およびC末端のキャッピング、通常はN末端のアセチル化およびC末端のアミド化。
・ アラニンのスキャン、タンパク質分解の攻撃部位を明らかにし、可能であれば除去するため。
・ D-アミノ酸の置換え、アミノ酸側鎖の立体的要求を精査し、立体障害およびD-アミノ酸がβターンコンフォメーションを安定化する傾向によってタンパク質分解に対する安定性を増大するため(Tugyi,et al.(2005)PNAS,102(2),413-418)。
・ N-メチル/N-アルキルアミノ酸の置換え、切断可能なアミド結合の直接改変によってタンパク質分解に対する保護を付与するため(Fiacco,et al.,Chembiochem.(2008),9(14),2200-3)。N-メチル化はまた、ペプチド結合の捻じれ角に強い影響を有し、細胞の浸透および経口利用の可能性を助けると考えられている(Biron,et al.(2008),Angew.Chem.Int.Ed.,47,2595-99)。
・ 非天然アミノ酸の組み込み、即ち、
- プロテアーゼによって認識されず、かつ目標の有効性に影響しない、等比体積/等電子数の側鎖、
- 近傍のペプチド結合のタンパク質分解性加水分解がコンフォメーション的および立体的に妨害される、束縛されたアミノ酸側鎖(特にこれらにはプロリンアナログ、嵩高な側鎖、Cαジ置換誘導体が関与している(ここで最も単純な誘導体はAib、HN-C(CH-COOH、およびシクロアミノ酸、単純な誘導体はアミノシクロプロピルカルボン酸である))
を採用することによる。
・ ペプチド結合の代替、例には
- N-アルキル化(上記参照、即ちCO-NR)
- ペプチド結合の還元(CH-NH-)
- ペプトイド類(N-アルキルアミノ酸、NR-CH-CO)
- チオアミド類(CS-NH)
- アザペプチド類(CO-NH-NR)
- トランス-アルケン(RHC=C-)
- レトロ-インベルソ(NH-CO)
- 尿素代替(NH-CO-NHR)
が含まれる。
・ ペプチド骨格の長さの調整
- 即ち、β2/3-アミノ酸、(NH-CR-CH-CO、NH-CH-CHR-CO)
・ アミノ酸のアルファ炭素の置換、これは骨格のコンフォメーションを束縛する。最も単純な誘導体はアミノイソ酪酸(Aib)である。
これらの改変のいくつかが、標的に対するペプチドの効力を意図的に改善するように、またはたとえば酸化に敏感なアミノ酸(TrpおよびMet)の強力な代替物を特定するように、働き得ることは、明示的に注目すべきである。
本発明はまた、3つ以上のループを有するペプチドリガンドに関する。たとえば、本発明による分子スカフォールドに結合した二環ポリペプチドのN末端およびC末端を結合することによって、分子スカフォールドに結合した三環ポリペプチドを創成することができる。このようにして、結合したN末端とC末端が第3のループを創成し、三環ポリペプチドが作成される。この実施形態はファージ上で行う必要はなく、本明細書に記載したようにポリペプチド-分子スカフォールドコンジュゲート上で行うことができる。N末端とC末端の結合は、日常的なペプチド化学の事柄である。何らかのガイダンスが必要であれば、C末端を活性化し、ならびに/またはN末端およびC末端を延長してたとえばそれぞれの末端にシステインを付加して、次にこれらをジスルフィド結合によって結合してよい。あるいは、結合はN/C末端に組み込まれたリンカー領域の使用によって達成され得る。あるいは、N末端およびC末端を従来のペプチド結合によって結合してもよい。あるいは、N末端とC末端を結合するための他の任意の好適な方法を採用してもよく、たとえば、Linde,et al.Peptide Science 90,671-682(2008)“Structure-activity relationship and metabolic stability studies of backbone cyclization and N-methylation of melanocortin peptides”、またはHess,et al. J.Med.Chem.51,1026-1034(2008)“backbone cyclic peptidomimetic melanocortin-4 receptor agonist as a novel orally administered drug lead for treating obesity”に開示されている標準的な手法によってN-C環化を行うことができる。そのような三環分子の1つの利点は、特にエキソプロテアーゼの作用による自由末端のタンパク質分解が避けられることである。この性質の三環ポリペプチドの別の利点は、BSAの結合、細胞内への進入または輸送の効果、タギング、またはその他の任意のそのような使用等の一般的に適用可能な機能に第3のループが利用できることである。この第3のループは選択のために典型的には利用可能でなく(これはファージ上では産生されず、ポリペプチド-分子スカフォールドコンジュゲート上でのみ産生されるため)、したがって他のそのような生物学的機能のための第3のループの使用により、ループ1および2を選択/特異性の創成のために残しておけるという利点があることが注目される。
(B)ポリペプチドリガンドのレパートリー、組、および群
(i)ライブラリーの構築
選択のために意図したライブラリーは、当技術分野で公知の、たとえばWO2004/077062で説明されている手法、または本明細書に記載したファージベクター系を含む生物学的システムを用いて構築することができる。他のベクター系が当技術分野で公知であり、他のファージ(たとえばファージラムダ)、細菌プラスミド発現ベクター、酵母ベクターを含む真核細胞系発現ベクター等が含まれる。たとえば、WO2009/098450またはHeinis,et al.,Nat Chem Biol 2009,5(7),502-7を参照されたい。
WO2004/077062で説明されているような非生物学的システムは、従来の化学的スクリーニングアプローチに基づいている。これらは単純であるが、ペプチドリガンドの大きなライブラリーをスクリーニングすることは不可能か、または少なくとも実践できないほど煩雑であるので、生物学的システムのようなパワーを欠いている。しかし、これらはたとえば少数のペプチドリガンドのみをスクリーニングすることが必要な場合には有用である。しかし、そのような個別のアッセイによるスクリーニングは時間がかかり、特定の標的に対する結合を試験することができる特有の分子の数は一般に10個の化学的実体を超えない。
対照的に、生物学的スクリーニングまたは選択法は一般に、極めて大きな数の異なる分子のサンプリングを可能にする。したがって本発明の適用には生物学的方法を用いることができる。生物学的手順では、単一の反応容器中で分子をアッセイし、好ましい特性(即ち結合)を有する分子を不活性分子から物理的に分離する。1013個を超える個別の化合物を同時に生成しアッセイすることが可能な選択戦略が利用可能である。強力な親和性選択手法の例としては、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、またはRNA/DNAアプタマー法がある。これらの生物学的in vitro選択法では、共通して、リガンドレパートリーはDNAまたはRNAによってコードされる。これらはシーケンシングによる選択されたリガンドの増殖および同定を可能にする。ファージディスプレイ手法は、たとえば事実上いずれの標的にも極めて高い結合親和性を有する抗体の単離のために用いられてきた。
生物学的システムを用いる場合には、ベクター系がいったん選択され、目的のポリペプチドをコードする1つまたは複数の核酸配列がライブラリーベクター内にクローニングされれば、発現に先立って変異生成に着手することによって、クローニングされた分子内において多様性を生成することができる。あるいは、変異生成の前に、コードされたタンパク質を発現して選択し、さらなる選択のラウンドを実施してもよい。
構造的に最適化されたポリペプチドをコードする核酸配列の変異生成は、標準的な分子的方法によって行われる。特に用いられるものはポリメラーゼ連鎖反応、即ちPCRである(引用することにより本明細書の一部をなすものとする、Mullis and Faloona(1987)Methods Enzymol.,155:335)。熱安定性のDNA依存性DNAポリメラーゼによって触媒される多数サイクルのDNA複製を用いて目的の標的配列を増幅するPCRは、当技術分野で周知である。種々の抗体ライブラリーの構築は、Winter,et al.(1994)Ann.Rev.Immunology 12,433-55、および本明細書で引用した参考文献で論じられている。
あるいは、本発明によるポリペプチドの短い鎖長を前提として、バリアントは好ましくはde novoで合成され、好適な発現ベクター中に挿入される。ペプチド合成は、上記のように当技術分野で公知の標準的な手法によって行うことができる。Applied Biosystems ABI 433(Applied Biosystems社,Foster City,CA,USA)等の自動化されたペプチドシンセサイザーが広く利用可能である。
(ii)遺伝的にコードされる多様性
一実施形態では、目的のポリペプチドは遺伝的にコードされる。これにより、取り扱いの容易さとともに多様性が増強されるという利点が得られる。遺伝的にコードされたポリペプチドライブラリーの例として、mRNAディスプレイライブラリーがある。別の例として、ファージディスプレイライブラリー等の複製可能な遺伝子ディスプレイパッケージ(rgdp)ライブラリーがある。一実施形態では、目的のポリペプチドはファージディスプレイライブラリーとして遺伝的にコードされる。即ち、一実施形態では、本発明の複合体は、ファージ粒子等の複製可能な遺伝子ディスプレイパッケージ(rgdp)を含む。これらの実施形態では、核酸はファージゲノムに含まれてよい。これらの実施形態では、ポリペプチドはファージコートに含まれてよい。
一部の実施形態では、本発明を用いて、いくつかの核酸を対応するポリペプチドに翻訳し、前記分子スカフォールドの分子を前記ポリペプチドに連結することによって生成する、遺伝的にコードされたポリペプチドのコンビナトリアルライブラリーを産生することができる。
遺伝的にコードされたポリペプチドのコンビナトリアルライブラリーは、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、細菌ディスプレイ、またはmRNAディスプレイによって生成することができる。
ファージディスプレイを実施するための手法および方法は、WO2009/098450に見出すことができる。
一実施形態では、スクリーニングは、ポリペプチドリガンドのライブラリー、組、または群を標的と接触させ、前記標的に結合した1つまたは複数のメンバーを単離することによって、実施することができる。
別の実施形態では、前記ライブラリー、組、または群の個別のメンバーがスクリーン中の標的と接触させられ、前記標的に結合した前記ライブラリーのメンバーが同定される。
別の実施形態では、前記ライブラリー、組、または群のメンバーが同時に標的と接触させられ、前記標的に結合したメンバーが選択される。
標的はペプチド、タンパク質、多糖、脂質、DNA、またはRNAであってよい。
標的は受容体、受容体リガンド、酵素、ホルモン、またはサイトカインであってよい。
標的は原核生物タンパク質、真核生物タンパク質、または古細菌タンパク質であってよい。より具体的には、標的リガンドは哺乳動物タンパク質または昆虫タンパク質または細菌タンパク質または真菌タンパク質またはウイルスタンパク質であってよい。
標的リガンドは酵素、たとえばプロテアーゼであってよい。
本発明は、本発明によるスクリーンから単離されたポリペプチドリガンドも包含することは、注目すべきである。一実施形態では、本発明のスクリーニング法は、前記標的に結合することができるものとして単離されるある量のポリペプチドを製造するステップをさらに含む。
(iii)ファージの精製
本発明によれば、分子スカフォールドとの反応の前のファージの精製は任意選択である。精製が望まれる事象では、ファージの精製のための任意の好適な手段を用いてよい。本発明では標準的な手法を適用してよい。たとえば、ファージは濾過またはPEG沈殿等の沈殿によって精製してよい。ファージ粒子は、以前に記載されたようにポリエチレングリコール(PEG)沈殿によって産生され、精製されてよい。詳細はWO2009/098450に見出すことができる。
さらなるガイダンスが必要であれば、Jespers et al(Protein Engineering Design and Selection 2004 17(10):709-713.Selection of optical biosensors from chemisynthetic antibody libraries)を参照されたい。一実施形態では、ファージはここで教示されたように精製してよい。この出版物のテキストは、ファージ精製の方法のため具体的に引用することにより本明細書の一部をなすものとする。特に、Jespersらの709頁の右欄から始まる材料および方法のセクションを参照されたい。
さらに、ファージはMarks et al,J.Mol.Biol vol 222 pp581-597によって公開されたように精製してよい。この文献は、ファージの産生/精製がどのように行われるかの特定の説明のために、具体的に引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
ファージの精製が望まれない場合には、本明細書の実施例で説明するように、ファージを含む培養培地を精製レジンおよび還元剤(たとえばTCEP)と直接混合することができる。
(iv)反応化学
反応化学は、HeinisらによってWO2009/098450で説明されたもの、または好ましくはWO2014/140342で説明されたものであってよい。本発明で用いる反応条件は、好ましくは以下のステップを含み、好ましくは全て室温で実行される。
1.所望のポリペプチドを発現するファージを含み、それから細菌細胞が除去された培養培地を、緩衝液、還元剤、および緩衝液中で平衡化したレジンと混合する。
2.レジンを単離し、緩衝液および希釈還元剤の中に再懸濁する。
3.ポリペプチドを分子スカフォールドに曝露してこれと反応させ、それにより分子スカフォールドにポリペプチドとの共有結合を形成させる。
4.試料を洗浄して過剰の未反応スカフォールドを除去する。
5.ファージをレジンから溶出させる。
緩衝液は好ましくはpH8.0である。最終溶液中の緩衝液pHを調節する必要はない。好適な緩衝液には初期pH8.0のNaHCOが含まれる。NHCO、HEPESおよびトリス-ヒドロキシメチルアミノエタン、トリス、トリス-アセテート、またはMOPSを含む生理学的範囲のpHを有する緩衝液を含む代替の緩衝液を用いてもよい。NaHCO緩衝液は、好ましくは1Mの濃度で用いられ、レジンを平衡化するためにレジンの懸濁液に1mlが添加される。
レジンは好ましくはイオン交換レジンである。イオン交換レジンは当技術分野で公知であり、当技術分野で公知のアニオン交換クロマトグラフィーに好適な任意の材料、たとえばアガロース系クロマトグラフィー材料、たとえばFast FlowまたはCaptoのようなセファロース、ポリマー性合成材料、たとえばToyopearls等のポリメタクリレート、Poros、Source等のポリスチレン/ジビニルベンゼン、またはセルロース、たとえばCellufineを含む。好ましい実施形態では、アニオン交換レジン材料には、これらに限定されないが、リガンドとして一級アミンを有するレジン、たとえばアミノヘキシルセファロース、ベンズアミジンセファロース、リジンセファロース、またはアルギニンセファロースが含まれる。別の好ましい実施形態では、アニオン交換レジン材料には、これらに限定されないが、中性pHで陽性に荷電した部分、たとえばアルキルアミノエタン、同様にジエチルアミノエタン(DEAE)、ジメチルアミノエタン(DMAE)、またはトリメチルアミノエチル(TMAE)、ポリエチレンイミン(PEI)、四級アミノアルキル、四級アミノエタン(QAE)、四級アンモニウム(Q)、その他を有するレジンが含まれる。
ステップ(1)において、還元剤は1mMの濃度に添加される。ステップ(2)で用いる希釈還元剤は、好ましくは1μMの濃度である。いずれの濃度もTCEPについてであり、他の還元剤にはその他の値が適用され得る。希釈還元剤は、分子スカフォールドとの反応に先立ってポリペプチドを還元状態に維持するために用いられる。好ましくは、キレート化剤が洗浄ステップに含まれる。たとえば、EDTAが含まれ得る。
代替の還元剤は、ジチオスレイトール、チオグリコール酸、チオ乳酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2,3-ジメルカプトコハク酸、システイン、N-グリシル-L-システイン、L-システイニルグリシンおよびまたそのエステルおよび塩、チオグリセロール、システアミンおよびそのC1-C4アシル誘導体、N-メシルシステアミン、N-アセチルシステイン、N-(メルカプト-2-エチル)グルコンアミド等の、糖のN-メルカプトアルキルアミド類、パンテテイン、N-(メルカプトアルキル)-co-ヒドロキシアルキルアミド類、たとえば欧州特許出願第EP-A-354835号に記載されたもの、N-モノ-またはN,N-ジアルキルメルカプト-4-ブチルアミド類、たとえば欧州特許出願第EP-A-368743号に記載されたもの、アミノメルカプトアルキルアミド類、たとえば欧州特許出願第EP-A-432000号に記載されたもの、N-(メルカプトアルキル)スクシンアミン酸類およびN-(メルカプトアルキル)スクシンイミド類、たとえば欧州特許出願第EP-A-465342号に記載されたもの、アルキルアミンメルカプトアルキルアミド類、たとえば欧州特許出願第EP-A-514282号に記載されたもの、仏国特許出願第FR-A-2679448号に記載された2-ヒドロキシプロピルチオグリコレートと(2-ヒドロキシ-1-メチル)エチルチオグリコレートとの共沸混合物、メルカプトアルキルアミノアミド類、たとえば仏国特許出願第FR-A-2692481号に記載されたもの、およびN-メルカプトアルキルアルカンジアミド類、たとえば欧州特許出願第EP-A-653202号に記載されたものから選択してよい。
TBMBおよびその反応性基がチオール反応性であるその他のスカフォールドの場合の分子スカフォールドのコンジュゲーションは、好ましくはアセトニトリルの存在下で行われる。アセトニトリルは、好ましくは最終濃度の約20%である。
TBMBに代わる代替のスカフォールドを、本明細書で論じる。
未反応の分子スカフォールドは、洗浄によってファージから除去される。続いてファージをレジンから溶出し、既に説明したように選択することができる。
さらなるステップを手順に含ませることもできる。そのようなステップは必須ではなく、プロセスの収率または有効性を顕著に増大させるものではない。
たとえば、ファージを含む培養培地は、還元剤による還元に先立ってレジンと合わせて洗浄することができる。還元剤それ自体を2つのステップ、即ち還元を成し遂げるための濃縮された形態および提示されるポリペプチドを還元状態に維持するための希釈された形態(上のステップ2)で添加することができる。
手順の効率を顕著に変化させることなく、ステップのタイミングを変動させてもよい。たとえば、TCEP中20分間の還元は30分間の還元と同様に有効であることが見出された。同様に、TBMBとの10分間の反応は、30分間の反応より顕著に低い結合レベルを生じない。
(v)磁気分離
有利な実施形態では、レジンは磁性である。これにより、ポリペプチドを担持するファージを磁気分離によって単離することが可能になる。磁性セファロースビーズ等の磁性レジンビーズは、たとえばBangs Laboratories社、Invitrogen社、Origene社、およびGE Healthcare社から市場で得ることができる。米国特許第2,642,514号およびGB1239978も参照されたい。磁場の印加によってビーズの単離が可能になり、ビーズを含む培地からビーズに結合したポリペプチドを精製することができる。
一実施形態では、磁性ビーズは、磁性プローブを培地の中に挿入することによって培地から分離される。ビーズは磁性プローブに保持され、洗浄ステーションまたは異なる培地に移すことができる。あるいは、ビーズが含まれている容器に磁場を印加することによってビーズを単離し、ビーズが固定化されれば培地を除去することができる。
磁気分離により、本発明の方法においてより速く、より効率的なレジンの処理が提供される。
(C)プローブ
(i)プローブ反応性基
本発明では、プローブは一般に、以下の1つに結合するプローブ反応性基を含む。
(1)ペプチドリガンド上の2つ以上のペプチド反応性基のうちの1つ、
(2)ペプチドリガンド上の2つ以上のスカフォールド反応性基のうちの1つ、および
(3)遺伝子ディスプレイシステム。
(1)および(2)に関して、プローブ反応性基はそれぞれスカフォールド反応性基およびペプチド反応性基と同様または同一であってよい。
システインのチオール基と反応するために使用できるプローブ反応性基には、これらに限定されないが、アルキルハライド類(またハロゲノアルカンまたはハロアルカンとも命名される)、マレイミド類、α-ハロカルボニル類、ビニルスルホン類、アルケン(チオール-エンカップリング)、アルキン(チオール-インカップリング)、チオール(ジスルフィド反応)、およびその他の当技術分野で公知のバイオコンジュゲート試薬が含まれる。一級アミンと選択的に反応するプローブ反応性基には、これらに限定されないが、スクシンイミド類、アルデヒド類、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホニルハライド類、スルホネート類、アリールハライド類、イミドエステル類、アルキルハライド類、または当技術分野で公知の他の任意のバイオコンジュゲート試薬が含まれる。トリプトファン側鎖と反応することができるプローブ反応性基には、これらに限定されないが、マロンジアルデヒド類およびメタロカルベノイド類が含まれる。ヒスチジン側鎖と反応することができるプローブ反応性基には、これらに限定されないが、エポキシド類、遷移金属との複合体、およびヒスチジン選択性マイケル付加に好適な薬剤が含まれる。チロシン側鎖と反応することができるプローブ反応性基には、これらに限定されないが、無水酢酸、N-アセチルイミダゾール類、NHSエステル類、ジアゾニウム試薬、ジカルボキシレート類、ジカルボキサミド類、およびマンニッヒ型反応に好適な薬剤が含まれる。アルギニン側鎖と反応することができるプローブ反応性基には、これらに限定されないが、フェニルグリオキサール、ジャーミナルジオン類、およびα-オキソ-アルデヒド類が含まれる。アスパラギン酸およびグルタミン酸側鎖と反応することができるプローブ反応性基には、これらに限定されないが、カルボジイミド媒介活性化に好適な薬剤が含まれる。メチオニン側鎖と反応することができるプローブ反応性基には、これらに限定されないが、酸性条件において様々な構造を有するアルキル化剤が含まれる。N末端においてα-アミノ基と反応することができるプローブ反応性基には、これらに限定されないが、酸無水物、アシルハロゲニド類、ケテン類、2-ピリジンカルボキシアルデヒド類、およびトランスアミノ化に好適な薬剤が含まれる。N末端においてセリンおよびスレオニンと反応することができるプローブ反応性基には、これらに限定されないが、過ヨウ素酸酸化およびリン酸塩補助ライゲーションに好適な薬剤が含まれる。N末端においてシステインと反応することができるプローブ反応性基には、これらに限定されないが、天然の化学的ライゲーションおよびチアゾリジン媒介ライゲーションに好適な薬剤が含まれる。N末端においてトリプトファンと反応することができるプローブ反応性基には、これらに限定されないが、スルフェニル化-カップリングおよびPictet-Spengler反応に好適な薬剤が含まれる。N末端においてヒスチジンと反応することができるプローブ反応性基には、これらに限定されないが、Ellman試薬の存在下におけるチオカルボン酸が含まれる。N末端においてプロリンと反応することができるプローブ反応性基には、これらに限定されないが、酸化剤の存在下におけるO-アミノフェノール類およびO-カテコール類が含まれる。アミノ酸のバイオコンジュゲーションに関するさらなる詳細については、Koniev,et al.,Chem Soc Rev.2015 Aug 7;44(15):5495-551も参照されたい。
標的スカフォールド反応性基に結合するために用いられるプローブ反応性基は、基本的に上で論じたものの逆である。一般に、対応するアミノ酸の側鎖における反応性基は、プローブ反応性基として用いることができる。たとえば、チオールはTBMB(即ちアルキルブロミド)のスカフォールド反応性基を結合するためのプローブ反応性基として用いることができる。アミノ酸側鎖に存在するもの以外であるがスカフォールド反応性基と反応することが知られている官能基も用いることができる。
(3)に関して、プローブ反応性基は好ましくは遺伝子ディスプレイシステムに特異的である。一部の実施形態では、プローブ反応性基は、抗体、抗体の一部、または遺伝子ディスプレイシステム上の特定の抗原を標的とすることができる抗体誘導体であってよい。標的抗原は、遺伝子ディスプレイシステムにおいて天然に発現してもよいし、または遺伝子ディスプレイシステムが所望の核酸によって形質転換された場合にのみ発現してもよい。一実施形態では、標的抗原は遺伝子ディスプレイシステムの表面上に存在する任意のタンパク質、脂質、または糖類であってよい。一実施形態では、標的抗原は遺伝子ディスプレイシステムの膜タンパク質である。
(ii)プローブシグナル発生基
本明細書では、用語「プローブシグナル発生基」および「シグナル発生基」は相互交換可能に用いられる。
コンジュゲートしていないペプチド反応性基またはスカフォールド反応性基の存在を検出するため、プローブは、検出可能なシグナルを直接的または間接的に生じるシグナル発生基を含むか、またはこれに連結可能でなければならない。好ましくは、シグナルは定量することができ、それにより、対応するコンジュゲートしていない反応性基の量または割合を測定することができる。
一実施形態では、シグナル発生基は光励起に際して蛍光シグナルを提供する。蛍光分子は光に直接かつ明確に応答して検出可能なシグナルを産生するので、単純かつ有利である。さらに、蛍光標識は検出のためにさらなる薬剤を必要としない。生物学に好適な蛍光分子は当技術分野で周知である(たとえばLavis,et al.ACS Chem Biol.2008 Mar 20;3(3):142-155;Herman B,Curr Protoc Cell Biol.2001 May;Appendix 1:Appendix 1E;Christoph Greb,Fluorescent Dyes,Leica Microsystems,June 2012を参照)。シグナル発生基はまた、量子ドットまたは蛍光タンパク質を含んでよい。(たとえばBera,et al.,Materials(Basel).2010 Apr;3(4):2260-2345;Chudakov,et al.,Physiol Rev.2010 Jul;90(3):1103-63を参照)。一実施形態では、蛍光分子はFRETのドナーであり、蛍光分子の発光スペクトルは、近傍にある別の蛍光分子の吸収(または励起)スペクトルと重複する。一実施形態では、プローブシグナル発生基はアントラセンとルブレンとの組合せを含み、これは340nm付近の波長の光で励起されて520~620nmで検出可能な光を発する。一実施形態では、プローブシグナル発生基はユーロピウムキレートを含み、これは340nm付近で励起されて615nm付近の光を発する。
一実施形態では、プローブシグナル発生基は、化学発光(Dodeigne,et al.Talanta.2000 Mar 6;51(3):415-39を参照)および生物発光(Paley,et al.,Medchemcomm.2014 Mar 1;5(3):255-267;Aldo Roda,Chemiluminescence and Bioluminescence:Past,Present and Future(2011)を参照)等の発光を生じる。化学発光性標識には、これらに限定されないが、ルミノール、アクリジニウム化合物、セレンテラジンおよびアナログ、チオキセン誘導体、ジオキセタン類、過酸化シュウ酸およびその誘導体に基づくシステムが含まれる。生物発光を生じるためのルシフェラーゼ類には、これらに限定されないが、ホタルルシフェラーゼ、チックビートルグリーン、クリックビートルレッド、Lux AB、およびウミシイタケ(Renilla reniformis)、カイアシ(Gaussia princeps)、オワンクラゲ(Aequorea victoria)およびウミホタル(Vargula hilgendorfii)由来のルシフェラーゼが含まれる。生物発光を生じるためのルシフェリンには、これらに限定されないが、D-ルシフェリン、セレンテラジン、バルグリン、およびFMN補因子を有する長鎖アルデヒド類が含まれる。
一実施形態では、プローブシグナル発生基は光増感剤を含む。光増感剤は、適切な波長を有する光源の存在下でラジカルまたは反応性酸素種(または一重項酸素)を産生することができる。光増感剤には、これらに限定されないが、ポルフィリン類、クロリン類、および色素が含まれる。例としては、これらに限定されないが、アミノレブリン酸、シリコンフタロシアニンPc 4、m-テトラヒドロキシフェニルコリンおよびモノ-L-アスパルチルコリンe6が含まれる。一実施形態では、光増感剤はフタロシアニンであり、これは約680nmの照射で周囲酸素を一重項酸素に変換する。一実施形態では、一重項酸素は、同じプローブ中または近傍にある異なるプローブ中に存在する別のプローブシグナル発生基の化学発光等のさらなる反応を誘発することができる。
一実施形態では、プローブシグナル発生基は、当技術分野で公知の方法によって検出することができる放射活性シグナルを提供する。放射性同位元素の例には、これらに限定されないが、水素-3、窒素-13、炭素-14、酸素-15、フッ素-18、ナトリウム-22、塩素-36、硫黄-35、リン-33、リン-32、ガリウム-67、テクネチウム-99m、ヨウ素-123、およびヨウ素-125が含まれる。
一実施形態では、プローブシグナル発生基は、反応を触媒して検出可能なシグナルを生成するための酵素または触媒を含む。使用できる酵素には、これらに限定されないが、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、グルコースオキシダーゼ、およびβ-ガラクトシダーゼが含まれ、それらの中でそれぞれの酵素には特定の基質が必要である(Enzyme Probes,Pierce Protein Methods,ThermoFisher Scientific社を参照)。
(iii)リンカー
一実施形態では、プローブ反応性基とシグナル発生基とは同じプローブの中にあり、リンカーによって連結されている。リンカーは当技術分野で公知のスペーサーアーム、たとえばポリ(エチレン)グリコール(PEG)であってよい。繰り返しの数がプローブの溶解性に影響し得ることが当技術分野で知られている。当業者には、最良の結果を達成するために繰り返しの数を調節する知識がある。繰り返しの数は1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、最も好ましくは2~3であってよい。
一実施形態では、プローブ反応性基を含むプローブはシグナル発生基に連結可能である。プローブとシグナル発生基との間のリンケージは、共有結合、親水性相互作用、疎水性相互作用、ファンデルワールス分散力、双極子-双極子相互作用、および/または水素結合を含み得る。一実施形態では、プローブはビオチン基を含み、シグナル発生基はストレプトアビジン基を含む。プローブ反応性基は、当技術分野で公知の任意のリンカー、たとえばPEGによって、ビオチン基に連結することができる。
(iv)ペプチドリガンドのプローブへの曝露
遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンド上のコンジュゲートしていない反応性基を測定するために、遺伝子ディスプレイシステムは最初にプローブに曝露される。本発明で用いる条件は、好ましくは以下のステップを含み、好ましくは全て室温で実行される。
1.ペプチドリガンドを提示する精製されたファージを中和し、次いでアッセイ緩衝液で希釈する。
2.プローブ溶液をファージに加える。
任意選択で、効率的なプローブ結合のために還元剤が必要な場合には、以下のステップが実施される。
3.プローブで処理したファージを、アッセイ緩衝液中で平衡化したレジンと混合する。
4.任意選択でレジンをアッセイ緩衝液で洗浄する。
5.レジンを還元剤とともにインキュベートする。
6.任意選択でレジンをアッセイ緩衝液で洗浄する。
7.ファージをレジンから溶出させ、次いで中和する。
ステップ(1)において、ファージは緩衝液で、好ましくはpH8.0で中和される。中和緩衝液は、好ましくはトリス-HClである。緩衝液は、好ましくは1Mの濃度で用いられる。
一実施形態では、コンジュゲートしていない反応性基はペプチド反応性基である。アッセイ緩衝液は好ましくはpH7.0である。好適な緩衝液には、初期pH7.0のトリスが含まれる。NaHCO、NHCO、およびHEPESを含む生理学的範囲のpHを有する緩衝液を含む代替の緩衝液を用いてもよい。トリス緩衝液は、好ましくは塩化ナトリウムとともに用いられる。好ましくは、アッセイ緩衝液は、25mMトリス/150μM NaCl、pH7.0である。ファージは、好ましくはアッセイ緩衝液で半分に希釈される。
一実施形態では、コンジュゲートしていない反応性基はスカフォールド反応性基である。アッセイ緩衝液は好ましくはpH8.0である。アッセイ緩衝液は、好ましくは脱気される。好適な緩衝液には、初期pH8.0のNaHCOが含まれる。NHCO、HEPES、およびトリス-ヒドロキシメチルアミノエタン、トリス、トリス-アセテート、またはMOPSを含む生理学的範囲のpHを有する緩衝液を含む代替の緩衝液を用いてもよい。NaHCO緩衝液は、好ましくは20mMの濃度で用いられる。好ましくは、アッセイ緩衝液はEDTAを含まない。ファージは、好ましくはアッセイ緩衝液で半分に希釈される。
ステップ(2)におけるプローブの濃度、温度、および時間を、本明細書で論じる。
レジンは好ましくはイオン交換レジンである。イオン交換レジンは当技術分野で公知であり、当技術分野で公知のアニオン交換クロマトグラフィーに好適な任意の材料、たとえばアガロース系クロマトグラフィー材料、たとえばFast FlowまたはCaptoのようなセファロース、ポリマー性合成材料、たとえばToyopearls等のポリメタクリレート、Poros、Source等のポリスチレン/ジビニルベンゼン、またはセルロース、たとえばCellufineを含む。好ましい実施形態では、アニオン交換レジン材料には、これらに限定されないが、リガンドとして一級アミンを有するレジン、たとえばアミノヘキシルセファロース、ベンズアミジンセファロース、リジンセファロース、またはアルギニンセファロースが含まれる。別の好ましい実施形態では、アニオン交換レジン材料には、これらに限定されないが、中性pHで陽性に荷電した部分、たとえばアルキルアミノエタン、同様にジエチルアミノエタン(DEAE)、ジメチルアミノエタン(DMAE)、またはトリメチルアミノエチル(TMAE)、ポリエチレンイミン(PEI)、四級アミノアルキル、四級アミノエタン(QAE)、四級アンモニウム(Q)、その他を有するレジンが含まれる。
ステップ(5)において、還元剤は1mMの濃度に添加される。濃度はTCEPについてであり、他の還元剤には他の値が適用される。代替の還元剤は、ジチオスレイトール、チオグリコール酸、チオ乳酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2,3-ジメルカプトコハク酸、システイン、N-グリシル-L-システイン、L-システイニルグリシンおよびまたそのエステルおよび塩、チオグリセロール、システアミンおよびそのC1-C4アシル誘導体、N-メシルシステアミン、N-アセチルシステイン、N-(メルカプト-2-エチル)グルコンアミド等の、糖のN-メルカプトアルキルアミド類、パンテテイン、N-(メルカプトアルキル)-co-ヒドロキシアルキルアミド類、たとえば欧州特許出願第EP-A-354835号に記載されたもの、N-モノ-またはN,N-ジアルキルメルカプト-4-ブチルアミド類、たとえば欧州特許出願第EP-A-368743号に記載されたもの、アミノメルカプトアルキルアミド類、たとえば欧州特許出願第EP-A-432000号に記載されたもの、N-(メルカプトアルキル)スクシンアミン酸類およびN-(メルカプトアルキル)スクシンイミド類、たとえば欧州特許出願第EP-A-465342号に記載されたもの、アルキルアミンメルカプトアルキルアミド類、たとえば欧州特許出願第EP-A-514282号に記載されたもの、仏国特許出願第FR-A-2679448号に記載された2-ヒドロキシプロピルチオグリコレートと(2-ヒドロキシ-1-メチル)エチルチオグリコレートとの共沸混合物、メルカプトアルキルアミノアミド類、たとえば仏国特許出願第FR-A-2692481号に記載されたもの、およびN-メルカプトアルキルアルカンジアミド類、たとえば欧州特許出願第EP-A-653202号に記載されたものから選択してよい。
ステップ(7)において、溶出緩衝液は、好ましくはpH5である。好適な緩衝液には、好ましくは塩化ナトリウムを含むクエン酸緩衝液が含まれる。一実施形態では、溶出緩衝液は50mMクエン酸塩/1.5M NaCl、pH5である。
ステップ(7)において、ファージはステップ(1)と同様の方法で中和される。
ペプチドリガンドがAlphaScreenによって分析される状況では、上述のプローブはドナービーズを含む。プローブ処理されたファージは、AlphaScreen緩衝液(25mM HEPES、100mM NaCl、0.5% BSA、0.05% Tween20、1mM CaCl)でさらに希釈される。希釈のレベルは、ファージが単一クローンであるかライブラリーであるかに応じて5倍~200倍、好ましくは10倍~100倍で変動し得る。好ましくは、単一クローンのファージ試料は100倍に希釈される。好ましくは、プローブ結合ファージがTCEPで処理されている場合には、単一クローンのファージ試料は20倍に希釈される。好ましくは、ファージライブラリーの試料は10倍に希釈される。いったんファージが希釈されれば、これはPerkinElmer社の標準的プロトコルに従って、AlphaScreenのアクセプタービーズで処理される。
さらなるステップを手順に含ませることもできる。そのようなステップは必須ではなく、プロセスの収率または有効性を顕著に増大させるものではない。
たとえば、還元剤それ自体を2つのステップ、即ち還元を成し遂げるため、および提示されるポリペプチドを還元状態に維持するため、濃縮された形態で添加することができる。
手順の効率を顕著に変化させることなく、ステップのタイミングを変動させてもよい。たとえば、TCEP中20分間の還元は30分間の還元と同様に有効であることが見出された。
(D)環化の程度の決定
(i)ペプチドリガンド上のコンジュゲートしていない反応性基の測定
本発明においては、ペプチドリガンドはペプチド反応性基とスカフォールド反応性基の両方を含む。環化反応の間にコンジュゲートしていない反応性基のいずれか1つの測定により、ペプチドリガンドの環化の程度の決定または推定が可能になる。
一実施形態では、本発明はコンジュゲートしていない反応性基を測定するためにAlphaScreenまたはAlphaLISAを用いる。AlphaScreenおよびAlphaLISAアッセイは2つの型のビーズ、即ちドナービーズおよびアクセプタービーズを必要とする。ドナービーズは、680nmの照射で周囲酸素を一重項酸素に変換する光増感剤(フタロシアニン)を含む。一重項酸素は4μ秒の半減期を有し、溶液中でほぼ200nmに拡散することができる。アクセプタービーズがこの距離以内に存在すれば、一重項酸素はそのエネルギーをアクセプタービーズの中のチオキセン誘導体に移送し、その結果として検出のための520~620nm(AlphaScreen)または615nm(AlphaLISA)の光を発生させることになる。一実施形態では、ドナービーズおよびアクセプタービーズは、それぞれペプチドリガンドと遺伝子ディスプレイシステム上に配置されている。
本明細書に記載した蛍光(FRETを含む)、発光、および放射活性のためのその他の測定手法は、当技術分野で公知である。
(ii)ペプチドリガンド上の2つのコンジュゲートしていない反応性基の両方の測定
本発明は、異なるプローブを用いて(i)の方法を繰り返すことによって、ペプチド反応性基とスカフォールド反応性基の両方を測定する方法をさらに開示する。たとえば、ペプチド反応性基に結合するプローブを用いて、ペプチドリガンド上のコンジュゲートしていないペプチド反応性基を最初に測定する。次に、プロトコルを繰り返し、スカフォールド反応性基に結合する別のプローブを用いて、ペプチドリガンド上のコンジュゲートしていないスカフォールド反応性基を測定する。
両方のプローブからのアッセイデータの組合せを用いて、相互の結果を検証することができる。存在する分子スカフォールドの濃度が極めて低いか極めて高く、単一のプローブのみを用いると偽陽性の結果が得られる場合に、これは特に有用である。たとえば、AlphaScreenの場合、シグナルは試料中に存在するコンジュゲートしていない反応性基の量に比例する。分子スカフォールドの濃度が低い場合には、コンジュゲートしていないスカフォールド反応性基の量も少ないことが予想される。コンジュゲートしていないスカフォールド反応性基を結合するために単一のプローブのみを用いる場合には、弱いシグナルが得られることになる。それにも関わらず、ペプチド反応性基の大部分はコンジュゲートしていないので、これは実際の状況を反映していない。分子スカフォールドの濃度が高い場合には、ペプチド反応性基の大部分は分子スカフォールドにコンジュゲートしていることが予想される。コンジュゲートしていないペプチド反応性基に結合するために単一のプローブのみを用いる場合には、弱いシグナルが得られることになる。しかし、これはまた、同じポリペプチド上のペプチド反応性基が必ずしも単一の分子スカフォールドにコンジュゲートしていないという実際の状況を反映していない。単一のポリペプチド上のペプチド反応性基が単一の分子スカフォールド上のスカフォールド反応性基にコンジュゲートすれば、ペプチドリガンドは正しく環化しているとのみ考えられる。
一実施形態では、コンジュゲートしていないペプチド反応性基に結合するプローブは、環化反応のための分子スカフォールドの最小濃度を決定するために好適であり、一方、コンジュゲートしていないスカフォールド反応性基に結合するプローブは、人工的な結果なしに分子スカフォールドの最大濃度を決定するために好適である。
(iii)遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドの環化のための反応条件の最適化
ペプチドリガンドの環化のための反応条件は、本発明で開示した方法を用いて最適化することができる。環化の程度は、分子スカフォールドの濃度、温度、緩衝液、pH、反応時間、還元剤の種類、還元剤の濃度、洗浄の回数、および精製レジンの種類等の様々なパラメーターを用いて反応を行う場合に、測定することができる。一実施形態では、2つのプローブ((ii)に記載)の両方から最も弱いシグナルを生じる条件を選択することができる。
本方法は、様々な分子スカフォールドの環化の程度を比較するためにも用いることができる。より良い環化能力を有する分子スカフォールドはペプチドリガンドの収率を増大させ、薬物としてのペプチドリガンドのスクリーニングを容易にすることができるので、これはより良い分子スカフォールドのスクリーニングを補助することができる。
(iv)正しい環化を有するクローンのスクリーニング
本発明はまた、正しい環化を有するクローンのスクリーニングを可能にする。同じ分子スカフォールドおよび最適化された反応条件が用いられたとしても、遺伝子ディスプレイシステムのライブラリーにおける様々なポリペプチドの環化効率は異なることがある。これは、標的(たとえば細菌、ウイルス、またはがん細胞の抗原)に対して同様の結合活性を有するいくつかのペプチドリガンドが得られる場合に特に重要である。正しい環化のスクリーニングにより、高い産生物収率を有する最良のペプチドリガンドの選択が可能になる。
(E)本発明によるポリペプチドリガンドの使用
本発明のペプチドリガンドは、in vivoの治療および予防の応用、in vitroおよびin vivoの診断応用、in vitroのアッセイおよび薬剤の応用、その他に採用してよい。選択されたレベルの特異性を有するリガンドは、交差反応性が望ましい非ヒト動物における試験が関与する用途、またはホモログもしくはパラログとの交差反応性を慎重に制御する必要がある診断用途において有用である。ワクチン用途等のいくつかの用途では、所定の範囲の抗原に対する免疫応答を誘発する能力を利用して、特定の疾患および病原体に対するワクチンを調整することができる。
哺乳動物への投与には、少なくとも90~95%の均一性の実質的に純粋なペプチドリガンドが好ましく、医薬用途には、特に哺乳動物がヒトである場合には、98~99%またはそれ以上の均一性が最も好ましい。いったん精製されれば、部分的にまたは所望の均一性で、選択されたポリペプチドは、診断または治療(体外を含む)に、またはアッセイ手順、免疫蛍光染色、その他の開発および実施に、用いてよい(Lefkovite and Pernis,(1979 and 1981)Immunological Methods,Volumes I and II,Academic Press,NY)。
本発明のペプチドリガンドは、典型的には炎症状態、アレルギー性過敏症、がん、細菌またはウイルスの感染、および自己免疫障害(これらに限定されないが、I型糖尿病、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、全身性ループスエリテマトーデス、クローン病、および重症筋無力症を含む)の防止、抑制、または処置において用途がある。
本出願では、用語「防止」は、疾患の誘起に先立つ保護組成物の投与を含む。「抑制」は、誘起事象の後であるが、疾患の臨床的出現に先立つ組成物の投与を指す。「処置」は、疾患の症状が明白になった後の保護組成物の投与を含む。
疾患に対する保護または処置におけるペプチドリガンドの有効性をスクリーニングするために用いることができる動物モデル系が利用可能である。本発明によって動物モデル系の使用が容易になり、それにより、ヒトと動物の標的と交差反応することができ、動物モデルの使用を可能にするポリペプチドリガンドの開発が可能になる。
一般に、本発明のペプチドリガンドは精製された形態で、薬学的に適切な担体とともに利用される。典型的には、これらの担体には水性またはアルコール性/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液、食塩水および/または緩衝媒体を含む任意のものが含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロース、および塩化ナトリウムとラクテートリンゲル液が含まれる。必要であればポリペプチド複合体を懸濁液中に保持するための生理学的に許容される好適なアジュバントは、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、およびアルギネート類等の増粘剤から選択してよい。
静脈内ビヒクルには、リンゲルデキストロース系のような流体および栄養補充剤および電解質補充剤が含まれる。保存剤およびその他の添加物、たとえば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガスも存在してよい(Mack(1982)Remington‘s Pharmaceutical Sciences,16th Edition)。
本発明のペプチドリガンドは、分離して投与される組成物として、または他の薬剤と組み合わせて、用いてよい。これらには、抗体、抗体断片、および種々の免疫治療薬、たとえばシクロスポリン、メトトレキサート、アドリアマイシンまたはシスプラチン、およびイムノトキシンが含まれ得る。医薬組成物は、投与に先立ってプールされるか否かは、本発明の選択された抗体、受容体、またはその結合タンパク質、または様々な特異性を有する本発明による選択されたポリペプチド、たとえば様々な標的リガンドを用いて選択されたポリペプチドと組み合わせた種々の細胞傷害性またはその他の薬剤の「カクテル」を含み得る。
本発明による医薬組成物の投与の経路は、当業者に一般に知られている経路のいずれでもよい。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮を含む任意の適切な様式で、肺経路を通して、または適切にはカテーテルによる直接注入によってよい。投与の用量および頻度は、患者の年齢、性別、および状態、他の薬物の同時の投与、禁忌、ならびに臨床医によって考慮されるべき他のパラメーターに依存することになる。
本発明のペプチドリガンドは、保存のために凍結乾燥し、使用に先立って好適な担体中で再構成することができる。この手法は効果的であることが示されており、当技術分野で公知の凍結乾燥および再構成の手法を採用することができる。当業者であれば、凍結乾燥および再構成は種々の程度の活性の損失をもたらし、これを償うために使用レベルを上向きに調節しなければならないことが認識されよう。
本発明のペプチドリガンドまたはそのカクテルを含む組成物は、予防処置および/または治療処置のために投与することができる。ある特定の治療用途では、選択された細胞の集団の少なくとも部分的な阻害、抑制、調節、殺滅、またはいくつかの他の測定可能なパラメーターを達成するための適切な量は、「治療有効用量」と定義される。この投薬量を達成するために必要な量は、疾患の重症度および患者自身の免疫系の一般的状態によることになるが、一般に体重1kgあたり選択されたペプチドリガンド0.005~5.0mgの範囲であり、0.05~2.0mg/kg/用量がより一般的に用いられる。予防用途のためには、本発明のペプチドリガンドまたはそのカクテルを含む組成物は、同様のまたはやや少ない投薬量で投与してもよい。
本発明によるペプチドリガンドを含む組成物は、哺乳動物における選択標的細胞の集団の変化、不活化、殺滅、または除去を補助する予防的および治療的な設定において利用してよい。さらに、本明細書に記載したポリペプチドの選択されたレパートリーを体外でまたはin vitroで選択的に用いて、不均一な細胞の集合体から標的細胞集団を殺滅し、枯渇させ、またはそうでなければ効果的に除去してよい。哺乳動物からの血液を選択されたペプチドリガンドと体外で合わせ、それにより望ましくない細胞を殺滅しまたはそうでなければ血液から除去し、標準的な手法に従って哺乳動物に返還してよい。
(F)ポリペプチドの変異
所望の多様性は、典型的には選択した分子を1つまたは複数の位置で変化させることによって生成される。変化すべき位置は、ライブラリーがループ配列の中のそれぞれの個別の位置について構築されるように選択される。適切な場合には、たとえば活性の損失なしに変異させるために1つまたは複数の位置が利用可能でないことが明らかになれば、その位置を選択手順から除外してよい。
次いで変化は、存在するアミノ酸が天然または合成の任意のアミノ酸またはそのアナログでその間に置き換えられて極めて多数のバリアントを産生するランダム化によって、または存在するアミノ酸が定義されたアミノ酸のサブセットの1つまたは複数で置き換えられてより限定された数のバリアントを産生することによって、達成することができる。
そのような多様性を導入するために種々の方法が報告されている。選択された位置を変異させるための方法も当技術分野で周知であり、PCRを用いてまたは用いないで、ミスマッチしたオリゴヌクレオチドまたは分解したオリゴヌクレオチドの使用が含まれる。たとえば、抗原結合性ループへの変異を標的とすることによって、いくつかの合成抗体ライブラリーが創成されている。本発明の文脈においても同様の手法が用いられる。たとえば、ヒト破傷風トキソイド結合FabのH3領域がランダマイズされて新規な結合特異性の範囲が創成された(Barbas et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4457)。ランダムまたはセミランダムなH3およびL3領域が生殖細胞系列V遺伝子セグメントに付加されて、変異したフレームワーク領域を有する大きなライブラリーが産生された(Hoogenboom-& Winter(1992)R Mol.Biol.,227:381;Barbas et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4457;Nissim et al.(1994)EMBO J,13:692;Griffiths et al.(1994)EMBO J,13:3245;De Kruif et al.(1995)J.Mol.Biol.,248:97)。そのような多様化は、他の抗原結合性ループのいくつかまたは全てを含むように拡張されている(Crameri et al.(1996)Nature Med.,2:100;Riechmann et al.(1995)BiolTechnology,13:475;Morphosys,上記WO97/08320)。
しかし、本発明で用いるポリペプチドは抗体よりずっと小さいので、好ましい方法は変異体ポリペプチドをde novoで合成することである。構造化されたポリペプチドの変異生成については、ライブラリーの構築と関連して上に述べている。
以下の実施例を参照して、本発明を以下にさらに記述する。
他に述べない限り、本発明の実施または試験において、本明細書に記載した方法および材料と同様または等価の任意の方法または材料を用いることができる。そのような使用に好適な方法、デバイス、および材料は上に記載している。本明細書で引用した全ての出版物は、本発明に関連して用いることができる出版物において報告された方法、薬剤、およびツールを記述し開示する目的のために、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
[実施例1]
ペプチド反応性プローブアッセイのためのプローブ濃度の最適化
背景
ファージによって提示されるペプチド上のスカフォールドによる環化の程度の定量的解析のためのアッセイを開発した。ここでは、ビオチン化マレイミドプローブを用いて、環化が起こらなかったペプチド上の遊離チオールを測定した。最適のシグナルが生じたペプチド反応性プローブの濃度を特定した。未改変およびヨードアセトアミドでキャップしたファージのそれぞれ1試料をそれぞれ陽性および陰性の対照として、任意のスカフォールド試料とともにアッセイした。
目的
ファージディスプレイ上のペプチドリガンドの単一クローンおよびライブラリーに必要なペプチド反応性プローブの濃度を最適化すること。
材料および方法
(A)ファージの改変
改変プロトコルの詳細はWO2014/140342に開示されている。
改変緩衝液(20mM NaHCO、5mM EDTA)を調製し、脱気した。
単一クローンをアッセイするため、TG1大腸菌(E.coli)中の感染および一夜の増殖によってファージを増幅した。次いでKingfisher Duo、mLまたはFlex液体取り扱いシステムを用い、適切なスカフォールドによってファージを改変した。ファージライブラリーをアッセイする場合には、改変に先立ってTE/エチレングリコールストアの試料を改変緩衝液中で100倍に希釈した。
未改変およびヨードアセトアミドでキャップした試料をそれぞれ陽性および陰性の対照として、スカフォールド試料とともに操作した。
SuperQビーズを以下によって調製した。
(1)試料あたり25μLのビーズを1M NaHCO(ストックのpH>8.5)で3回洗浄する。
(2)元の体積のビーズを1M NaHCO中に再懸濁する。
(3)25μLのSuperQビーズごとに1.25μLの1M TCEPを加える。
洗浄緩衝液:単一クローンについてのみ、試料あたり改変緩衝液中1μMのTCEP 1mLを調製、プラス死体積1mL。
ヨードアセトアミド溶液:10μMのヨードアセトアミド1mL(プラス死体積1mL)を調製し、改変緩衝液で5倍に希釈した。
スカフォールド溶液:TBMBおよびTATAをそれぞれ60μMおよび400μMの最終濃度で分子スカフォールドとして用いた場合には、試料あたり1mLの分子スカフォールド(プラス死体積1mL)を調製し、改変緩衝液で5倍に希釈して、20%のアセトニトリルを含む適切な最終濃度とした。
TCEPを含む33μLの洗浄したビーズを、ファージを含む1mLの一夜培養液と合わせた。単一クローンについては、1mLの一夜培養液を用いた。ライブラリーについては、改変緩衝液中のライブラリーの100倍希釈液を用いた。2つ以上のライブラリーフォーマットをアッセイする場合には、改変緩衝液中の100倍希釈に先立って、試料ライブラリーを50:50のTE/エチレングリコール中で等価のファージタイターに希釈する。回転によって試料を20分間、混合した。試料を3000rpmで1分間、遠心分離し、上清を慎重に取り除いた。
単一クローンについては、分子スカフォールドの添加に先立って、1mLの洗浄緩衝液を加えてレジンを再懸濁する一方、残存するTCEPがあればその大部分を洗浄除去した。前と同様に試料を遠心分離し、上清を慎重に取り除いた。
・ 改変について:1mLのスカフォールド溶液を各試料に加えた。
・ 陽性対照について:1mLの改変緩衝液を加えた。
・ 陰性対照について:1mLのヨードアセトアミド溶液を加えた。
10分間の回転によって試料を混合した。前と同様に試料を遠心分離し、上清を慎重に取り除いた。1mLの改変緩衝液を加えた。前と同様に試料を遠心分離し、上清を慎重に取り除いた。50μLの溶出緩衝液(50mMのクエン酸塩、1.5MのNaCl、pH5.0)を各試料に加え、振盪台の上で5分間、試料を混合した。各試料をミクロ遠心機で13000rpm、1分間、遠心し、上清を慎重に取り除いて保管した。上清を再度遠心分離して残存する微量のレジンがあれば除去し、上清を慎重に取り除いて保管した。
ライブラリーについては、分子スカフォールドの添加に先立って、1mLの改変緩衝液を加えてレジンを再懸濁する一方、残存するTCEPがあればその大部分を洗浄除去した。前と同様に試料を遠心分離し、上清を慎重に取り除いた。
・ 改変について:1mLのスカフォールド溶液を各試料に加えた。
・ 陽性対照または予め改変したライブラリーファージについて:1mLの改変緩衝液を加えた。
・ 陰性対照について:1mLのヨードアセトアミド溶液を加えた。
10分間の回転によって試料を混合した。前と同様に試料を遠心分離し、上清を慎重に取り除いた。1mLの改変緩衝液を加えた。前と同様に試料を遠心分離し、上清を慎重に取り除いた。50μLの溶出緩衝液(50mMのクエン酸塩、1.5MのNaCl、pH5.0)を各試料に加え、振盪台の上で5分間、試料を混合した。各試料をミクロ遠心機で13000rpm、1分間、遠心し、上清を慎重に取り除いて保管した。上清を再度遠心分離して残存する微量のレジンがあれば除去し、上清を慎重に取り除いて保管した。
上記の手順は、Kingfisherを用い、予め設定したプログラムによって自動的に実施することができる。
ウェルあたり10μLの1M トリス-HCl/pH8.0によってファージを中和した。中和されたファージ60μLに対して60μLのアッセイ緩衝液(25mMのトリス、150μMのNaCl、pH7.0)を加えることによって、各ファージ試料をアッセイ緩衝液中、50:50で希釈した。
(B)プローブの調製および添加
粉末をPBS中に溶解して20mMの濃度とすることによって、マレイミド-PEG2-ビオチンプローブのストック溶液を調製した。ストックをアッセイ緩衝液で希釈することによって、各試料について20μLのプローブ溶液(プラス死体積20μL)を調製した。プロトコルを最適化するため、様々な濃度を有する一連のプローブ溶液を調製した。各ファージ試料20μLを20μLのプローブ溶液に加え、混合し、シールし、室温で2時間インキュベートした。
(C)AlphaScreen
単一クローンファージについては、プローブ結合ファージをAlphaScreen緩衝液(25mMのHEPES、100mMのNaCl、0.5%のBSA、0.05%のTween20、1mMのCaCl、pH7.4)中で200μLに100倍希釈した。ライブラリーファージについては、プローブ結合ファージをAlphaScreen緩衝液中で200μLにて10倍に希釈した。15μLのファージ試料をPerkinElmer社のOpti384プレートに加えた。控え目な光の下でAlphaScreenアクセプタービーズをボルテックス混合し、AlphaScreen緩衝液中で66倍に希釈した。希釈したAlphaScreenアクセプタービーズ5μLを各ウェルに加えた。プレートをシールし、室温、暗所で30分間インキュベートした。控え目な光の下でAlphaScreenストレプトアビジンドナービーズをボルテックス混合し、AlphaScreen緩衝液中で50倍に希釈した。希釈したAlphaScreenストレプトアビジンドナービーズ5μLを各ウェルに加えた。プレートをシールし、室温、暗所で1時間インキュベートした。次いでプレートをPherastarで読み取り、各ウェルからの蛍光シグナルを測定した。
結果
図2に、単一クローン17-88(配列番号1のポリペプチドを提示する)について様々なプローブ濃度を用いた結果を示す。陽性対照は強いシグナルを生じ、ポリペプチド上に遊離のシステイン残基が存在していたことを示した。陰性対照(システイン残基の全てがヨードアセトアミドによってキャップされていた)は弱いシグナルを生じ、アッセイのシグナルが他の基の存在によって影響されなかったことを示した。TBMBによって環化した試料も弱いシグナルを生じ、ポリペプチド上のシステイン残基の大部分が分子スカフォールドにコンジュゲートしたことを示した。図2に示すように、アッセイは繰り返し可能でもあった。単一クローンについての最適のプローブ濃度は2.5μMであると決定された。
図3A~3Dは、様々なプローブ濃度の様々なファージライブラリーを用いた結果を示す。単一クローンから得られた結果と同様に、ライブラリーの陽性および陰性の対照は、それぞれ強いおよび弱いシグナルを生じ、アッセイがファージライブラリーにも適用できることが示された。最適のプローブ濃度はライブラリーにおいてわずかに変動したが、100nMのプローブ付近で良好なウィンドウが見られた。一般に、より高いバックグラウンドシグナルがライブラリーにおいて見られた。これはおそらくライブラリーが、正しく環化しない3つより多いかまたは少ないシステイン残基を有するペプチドを提示するいくつかのファージを含んでいるためであり、プローブがこれらの残基に結合すればシグナルが見られる。
[実施例2]
ペプチド反応性プローブアッセイによるライブラリーの環化の適格性評価
背景
実施例1の結果より、ペプチド反応性プローブアッセイによってペプチドリガンドの環化の検出が可能になることが示された。それにも関わらず、アッセイによって環化の程度の推定が提供され得るかを理解することは重要である。ここでは、実施例1のビオチン化マレイミドプローブを用いて、様々な環化のレベルを有するライブラリー試料をアッセイした。
目的
ペプチドリガンドの環化の程度を決定するためにペプチド反応性プローブアッセイを用いることができるかを試験すること。
材料および方法
様々な未改変:環化ファージの比で6×6のファージライブラリー試料を組み合わせ、実施例1のプロトコルを用いてアッセイした。未環化ファージの相対量を検出してランク付けした。
結果
図4A~4Bより、アッセイから得られたシグナルは環化ファージのパーセンテージに反比例することが明らかである。これは、ペプチド反応性プローブアッセイがペプチドリガンドの環化の程度を決定または推定するために使用できることを実証している。
[実施例3]
ペプチド反応性プローブアッセイを用いる単一クローンおよびライブラリー上のスカフォールディング条件の最適化
背景および目的
実施例1のアッセイのプロトコルが最適化されたので、ペプチドリガンドの環化反応を最適化するためにこれを用いることができる。ここでは、様々な濃度の分子スカフォールドで処理した試料から得られたシグナルを解析して、最適化された濃度を選択した。
材料および方法
実施例1と同じプロトコルを単一クローンに用いた。単一クローンと分子スカフォールドの4つの組合せをアッセイした。
1)17-88ファージ(配列番号1のポリペプチドを提示)+TBMB(12.5μM、25μM、50μM、60μM、100μM、200μM)
2)55-28-00ファージ(配列番号2のポリペプチドを提示)+TATA(25μM、50μM、100μM、200μM、400μM、800μM、1600μM)
3)06-663-00ファージ(配列番号3のポリペプチドを提示+TCAZ(25μM、50μM、100μM、200μM、400μM、800μM、1600μM)
4)17-69-07ファージ(配列番号4のポリペプチドを提示)+TCCU(25μM、50μM、100μM、200μM、400μM、800μM、1600μM)
最適化されたプローブ濃度(100nM)によって得られたシグナルのみを測定したことを除いて、実施例1と同じプロトコルをライブラリーのために用いた。4つの異なる分子スカフォールド(60μMのTBMB、400μMのTATA、400μMのTCAZ、400μMのTCCU)で処理した5つの異なるライブラリー(6×6、3×3、3×9、2×7、7×2)をアッセイした。用いた分子スカフォールドの濃度は、単一クローンから得られた結果に基づいていた。
結果
図5A~5Dに、単一クローンと分子スカフォールドとの様々な組合せについての結果を示す。結果は、ペプチドリガンドの環化の程度が反応に用いた分子スカフォールドの濃度に依存したことを明らかに実証した。TBMB、TATA、TCAZ、およびTCCUの最適濃度は、それぞれ60μM以上、400μM以上、400μM以上、および400μM以上と決定された。図6は、スカフォールドが単一クローンのアッセイから得られた最適濃度で一連のライブラリーフォーマットを環化できることを示している。
[実施例4]
スカフォールド反応性プローブアッセイのためのTCEP濃度の最適化
背景
ファージによって提示されるペプチドにおけるスカフォールドによる環化の程度の定量的解析のために、さらなるアッセイを開発した。ここでは、ビオチン化チオールプローブを用いて、不完全な/正しくない環化が起こったペプチドにおける遊離スカフォールド基を測定し、ファージによって提示されるペプチドの環化の程度の定量的解析を可能にした。チオールプローブを用いることの主要な問題は、これがポリペプチドの遊離のチオール(即ちジスルフィドの形成)、ならびに遊離のスカフォールド基(たとえばTBMB)に結合し得ることである。本実施例では、TCEPの添加によって上の課題を解決できることが実証された。
目的
アッセイシグナルを阻害せずにポリペプチドからのバックグラウンドシグナルを除去するために添加されるTCEPの濃度を最適化すること。
材料および方法
(A)ファージの改変
改変プロトコルは、アッセイ緩衝液を20mMのNaHCO(EDTAなし)としたことを除いて、本明細書の実施例1のプロトコルと同じである。
(B)プローブの調製および添加
粉末をAcN/HO中に溶解して濃度20mMとすることによって、SH-PEG3-ビオチンプローブのストック溶液を調製した。ストックをアッセイ緩衝液で希釈することによって、各試料について20μLのプローブ溶液(プラス死体積20μL)を調製した。単一クローンおよびライブラリーのために用いたプローブ濃度は、それぞれ320μMおよび1280μMであった。各ファージ試料20μLを20μLのプローブ溶液に加え、混合し、シールし、室温で1時間インキュベートした。
(C)TCEP処理
各試料を427μLのアッセイ緩衝液で希釈し、改変プロセスにおいて前と同様に調製した33μLのSuporQビーズと混合した。1mLのアッセイ緩衝液を加えてレジンを再懸濁した。試料を前と同様に遠心分離し、上清を慎重に取り除いた。試料をアッセイ緩衝液中、様々な濃度のTCEP 1mLと30分間インキュベートした。試料を前と同様に遠心分離し、上清を慎重に取り除いた。1mLのアッセイ緩衝液を加えてレジンを再懸濁した。試料を前と同様に遠心分離し、上清を慎重に取り除いた。50μLの溶出緩衝液(50mMのクエン酸塩、1.5MのNaCl、pH5.0)を各試料に加え、振盪台の上で5分間、試料を混合した。各試料をミクロ遠心機で13000rpm、1分間、遠心し、上清を慎重に取り除いて保管した。上清を再度遠心分離して残存する微量のレジンがあれば除去し、上清を慎重に取り除いて保管した。上記の手順は、Kingfisherを用い、予め設定したプログラムによって自動的に実施することができる。次いでウェルあたり10μLの1M トリス-HCl/pH8.0によってファージを中和した。
(D)AlphaScreen
AlphaScreenのプロトコルは実施例1のプロトコルと同一である。
結果
図7Aで明らかなように、TCEPの添加は高濃度でアッセイシグナルを阻害したが、プローブの非特異的結合を防止するために必要であった。単一ファージクローン541および542は、それらの提示されるポリペプチド(配列番号5および6)が3つ未満のシステイン残基を有し、これはTBMBによって正しく環化できないので、これらを陽性対照として用いた。一般に、AlphaScreen試薬は10mM未満のTCEPとともに用いることができた。図7Bは、様々なプローブ濃度を用いた場合のTCEPの存在または非存在における改変されていないファージのシグナルの相違を実証しており、これもTCEPの重要性を明らかにしている。
[実施例5]
スカフォールド反応性プローブアッセイのためのプローブ濃度の最適化
目的
ファージディスプレイ上の単一クローンに必要なスカフォールド反応性プローブの濃度を最適化すること。
材料および方法
プロトコルは、様々なプローブ濃度でファージを処理したこと、およびプローブ結合ファージを1mMのTCEPで処理したことを除いて、実施例4のプロトコルと同一である。用いたTBMB、TATA、TCAZ、およびTCCUの濃度は、それぞれ60μM、400μM、400μM、および400μMであった。
結果
図8A~8Bに、2つの陽性対照の単一ファージクローン542および17-88-PCA5について様々なプローブ濃度を用いた結果を示す。ここではそれらの提示されるポリペプチド(配列番号6および7)は3つ未満のシステイン残基を有している。図8Cに、システイン残基を有するポリペプチドを何ら提示しない陰性対照FdDogファージについて様々なプローブ濃度を用いた結果を示す。図8Dに、単一クローン17-88ファージについて様々なプローブ濃度を用いた結果を示す。結果は図8B~8Dに示すように繰り返し可能であった。陰性対照は確実に低いシグナルを生じ、アッセイのシグナルが他の基の存在によって影響されないことを示した。しかし、陽性対照で見られたシグナルは顕著に変動した。単一クローンについての最適のプローブ濃度は320μMであると決定された。
[実施例6]
スカフォールド反応性プローブアッセイによるライブラリーの環化の適格性評価
背景
実施例5の結果より、ペプチド反応性プローブアッセイによってペプチドリガンドの環化の検出が可能になることが示された。それにも関わらず、アッセイによってコンジュゲートしていないスカフォールド反応性基の推定が提供されるかを理解することは重要である。ここでは、実施例4のビオチン化チオールプローブを用いて、様々な環化のレベルを有する単一クローン試料をアッセイした。
目的
コンジュゲートしていないスカフォールド反応性基を測定するためにスカフォールド反応性プローブアッセイを用いることができるかを試験すること。
材料および方法
様々な未改変:環化ファージの比で542および17-88の単一クローン試料をそれぞれ組み合わせ、実施例4のプロトコルを用いてアッセイした。プローブ結合ファージは1mMのTCEPで処理した。未環化ファージの相対量を検出してランク付けした。
結果
図9より、陽性対照(542クローン)についてのアッセイから得られたシグナルはTATA改変クローンのパーセンテージに比例することが明らかである。陽性対照上に提示されるポリペプチドは正しい環化を受けることができないので、TATA改変542クローンはシグナルを生じた。TBMB改変17-88クローンでは提示されるポリペプチドは正しく環化されたので、何もシグナルを生じなかった。この結果より、スカフォールド反応性プローブアッセイは、ペプチドリガンド上のコンジュゲートしていないスカフォールド反応性基を決定または推定するために使用できることが実証された。
[実施例7]
スカフォールド反応性プローブアッセイを用いる正しい環化を有するクローンのスクリーニング
背景
実施例6の結果より、スカフォールド反応性プローブアッセイがおそらく、正しく環化することができるポリペプチドと正しく環化できないポリペプチドとを区別するためのツールとして用いることができることが示された。このアッセイによって、理論的には全て正しい環化を受けると思われる3つのシステイン残基を有するポリペプチドについて環化の効率をさらに比較することができるかを知ることには興味がある。ここでは、最良の環化効率を有するクローンを選択するために、0~3個のシステイン残基を有するポリペプチドを提示するいくつかの単一クローンにこのアッセイを適用した。
目的
効率的な環化を有するクローンをスクリーニングするためにスカフォールド反応性プローブアッセイを用いることができるかを試験すること。
材料および方法
いくつかの単一クローンをTBMBまたはTCAZで処理し、実施例4のプロトコルを用いてアッセイした。プローブ結合ファージを1mMのTCEPで処理した。
結果
図9は、非二環クローンが、二環、ボールド、またはトリプルセリンのファージクローンより大きなシグナルを生じたことを明らかに示している。図11は1~3個のシステイン残基を提示するいくつかのクローンをさらに示す。シグナル:バックグラウンド(S:B)比は、TCAZ改変ファージから得られたシグナルと未改変ファージから得られたシグナルとの比に基づいて計算した。高いS:B比は、ポリペプチドが正しく環化していないことを示す。3個のシステイン残基を有するポリペプチドが一般に、3個未満のシステイン残基を有するポリペプチドより低いS:B比を有することが明らかである。驚くべきことに、3個のシステイン残基を有するポリペプチドについての環化効率をさらに顕著にすることができた。特に、クローンP-085-071_B12、P-085-071_D06、P-08-071_D08、およびP-085-071_G05は、3個のシステイン残基を有するポリペプチドを提示しても、わずかな環化を示した。
[実施例8]
ペプチド反応性プローブアッセイとスカフォールド反応性プローブアッセイとの組合せによる単一クローンにおけるスカフォールディング条件の最適化
背景および目的
実施例4のスカフォールド反応性プローブアッセイのプロトコルが最適化されたので、ペプチドリガンドの環化反応を最適化するためにこれを用いることができる。効果的な環化のために必要な分子スカフォールドの最適化された濃度を試験するため、様々な濃度の分子スカフォールドで処理した試料から得られたシグナルを解析した。
環化反応を最適化するためにただ1つのアッセイを用いることの問題は、偽陽性の結果が得られるかも知れないことである。ペプチド反応性プローブアッセイについては、高濃度の分子スカフォールドを用いた場合に弱いシグナルが得られるが、単一のポリペプチドが2つ以上の分子スカフォールドにコンジュゲートできるので、これは必ずしもポリペプチドが正しく環化されていることを示しているわけではない。一方、低濃度の分子スカフォールドを用いた場合、コンジュゲートしていないスカフォールド反応性基の数が少ないので、スカフォールド反応性プローブアッセイから弱いシグナルが得られるが、これは全てのポリペプチドが分子スカフォールドにコンジュゲートしていることを示さない。ここでは、ペプチドリガンドの環化反応を最適化するために、ペプチド反応性プローブアッセイとスカフォールド反応性プローブアッセイとの組合せを用いることができることが実証された。
材料および方法
実施例1のペプチド反応性プローブアッセイを用いた。55-28-00ファージを、様々な濃度のTATA(25μM、50μM、100μM、200μM、400μM、800μM、1600μM)で処理した。用いたプローブ濃度は2.5μMであった。
実施例4のスカフォールド反応性プローブアッセイを用いた。55-28-02(配列番号28のポリペプチドを提示する)ファージを、様々な濃度のTATA(20μM、60μM、100μM、200μM、400μM、800μM、1600μM)で処理した。用いたプローブ濃度は320μMであった。プローブ結合ファージは1mMのTCEPで処理した。
結果
図10A~10Bは、分子スカフォールドの最適の濃度が200μMであることを示している。2つのアッセイの結果の組合せによってペプチドリガンドの環化の程度の決定が可能になり、同時にポリペプチドの大部分が単一の分子スカフォールドにコンジュゲートされることが保証される。
配列

SEQ ID NO:1 (Polypeptide displayed by phage 17-88)

CPYSWETCLF GDYRC

SEQ ID NO:2 (Polypeptide displayed by phage 55-28-00)

CPLVNPLCLT SGWKC

SEQ ID NO:3 (Polypeptide displayed by phage 06-663-00)

CGHVAPWCWR TNHDC

SEQ ID NO:4 (Polypeptide displayed by phage 17-69-07)

CYNEFGCEDF YDIC

SEQ ID NO:5 (Polypeptide displayed by phage 541)

SGTGAASTGG ATC

SEQ ID NO:6 (Polypeptide displayed by phage 17-88-PCA5)

CPYSWETSLF GDYRS

SEQ ID NO:7 (Polypeptide displayed by phage 17-88-PCA3)

CPYSWETCLF GDYRS

SEQ ID NO:8 (Polypeptide displayed by phage 17-88-PCA7)

SPYSWETSLF GDYRS

SEQ ID NO:9 (Polypeptide displayed by phage P-085-071_B09)

CQGMPCPRLP C

SEQ ID NO:10 (Polypeptide displayed by phage P-085-071_B12)

CALFICWMML C

SEQ ID NO:11 (Polypeptide displayed by phage P-085-071_C01)

CDPKLCN*VM C

SEQ ID NO:12 (Polypeptide displayed by phage P-085-071_C05)

CSGSSCLQRE C

SEQ ID NO:13 (Polypeptide displayed by phage P-085-071_D04)

CSRSKCQHLK C

SEQ ID NO:14 (Polypeptide displayed by phage P-085-071_D06)

CTRPPCILSS C

SEQ ID NO:15 (Polypeptide displayed by phage P-085-071_D08)

CVDEWCDVDY C

SEQ ID NO:16 (Polypeptide displayed by phage P-085-071_G05)

CKSGCNMMC

SEQ ID NO:17 (Polypeptide displayed by phage P-085-071_G07)

CLQKCLKSC

SEQ ID NO:18 (Polypeptide displayed by phage P-085-071_G08)

CLRTCSSNC

SEQ ID NO:19 (Polypeptide displayed by phage P-085-071_G10)

CRLLCLSQC

SEQ ID NO:20 (Polypeptide displayed by phage P-085-071_G11)

CRPPCAPRC

SEQ ID NO:21 (Polypeptide displayed by phage P-055-173_B04)

YNTMVVDYQP VGKKC

SEQ ID NO:22 (Polypeptide displayed by phage P-055-173_E09)

CAKLALPYNF TTAGY

SEQ ID NO:23 (Polypeptide displayed by phage P-055-173_E04)

CATTAVPYNF HTHTY

SEQ ID NO:24 (Polypeptide displayed by phage P-055-173_D09)

YESVPMLYHD ENSEC

SEQ ID NO:25 (Polypeptide displayed by phage P-055-173_C02)

CKANRVPYNV NPDKC

SEQ ID NO:26 (Polypeptide displayed by phage P-055-173_E08)

CAMAPQTYQG VLSSY

SEQ ID NO:27 (Polypeptide displayed by phage P-055-173_D06)

YHKRMPKYNK MELRC

SEQ ID NO:28 (Polypeptide displayed by phage 55-28-02)

CPMVNPLCLH PGWIC

Claims (26)

  1. 遺伝子ディスプレイシステム上に提示されるペプチドリガンドの環化の程度を決定するための方法であって、前記ペプチドリガンドが2つ以上のアミノ酸残基において分子スカフォールドに共有結合で連結されたポリペプチドを含み、前記方法が、
    (a)前記遺伝子ディスプレイシステム上に提示される前記ポリペプチドを前記分子スカフォールドに曝露するステップであって、前記ポリペプチドが2つ以上のスカフォールド反応性基において前記分子スカフォールドと共有結合を形成する前記2つ以上のアミノ酸残基上の2つ以上のペプチド反応性基を含み、前記ペプチドリガンドを生じるステップ、
    (b)前記遺伝子ディスプレイシステムから未反応の分子スカフォールドを除去するステップ、
    (c)前記遺伝子ディスプレイシステム上に提示される前記ペプチドリガンドを第1のプローブに曝露するステップであって、前記第1のプローブが前記ペプチドリガンド上の第1のコンジュゲートしていない反応性基に結合するステップ、および
    (d)前記ペプチドリガンド上の前記第1のコンジュゲートしていない反応性基を測定するステップ
    を含む、方法。
  2. 前記第1のプローブが第1のシグナル発生基を含むか、これに連結可能であり、前記第1のシグナル発生基が第1のシグナルを直接的または間接的に産生して、前記ペプチドリガンド上の前記第1のコンジュゲートしていない反応性基の存在を示す、請求項1に記載の方法。
  3. 前記遺伝子ディスプレイシステム上に提示される前記ペプチドリガンドをステップ(c)の後で第2のプローブに曝露するステップをさらに含み、前記第2のプローブが前記遺伝子ディスプレイシステムに結合し、第2のシグナル発生基を含むか、これに連結可能である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記第2のシグナル発生基が前記第1のシグナルによって誘発されて第2のシグナルを産生する、請求項3に記載の方法。
  5. 前記第2のシグナル発生基が第2のシグナルを産生し、前記第2のシグナルが前記第1のシグナル発生基を誘発して前記第1のシグナルを産生させる、請求項3に記載の方法。
  6. 前記第1のシグナル発生基が、周囲の酸素分子を一重項酸素分子に変換するように構成された第1の光増感剤を含み、前記第2のシグナル発生基が、一重項酸素分子によって励起されるように構成された第1の化学発光分子を含む、請求項4に記載の方法。
  7. 前記第2のシグナル発生基が第1の蛍光基をさらに含み、前記第1の蛍光基が前記第1の化学発光分子の化学発光によって励起されるように構成されている、請求項6に記載の方法。
  8. 前記第1のコンジュゲートしていない反応性基が、前記2つ以上のペプチド反応性基のうちの1つである、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記第1のコンジュゲートしていない反応性基が、前記2つ以上のスカフォールド反応性基のうちの1つである、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
  10. ステップ(c)が、前記遺伝子ディスプレイシステムを前記第1のプローブに曝露した後で、前記遺伝子ディスプレイシステムを還元剤で処理するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
  11. 前記還元剤がTCEPである、請求項10に記載の方法。
  12. 前記方法が、ステップ(c)において第3のプローブを用いることによってさらに繰り返され、前記第3のプローブが第2のコンジュゲートしていない反応性基に結合し、前記第2のコンジュゲートしていない反応性基が前記2つ以上のペプチド反応性基のうちの1つである、請求項9から11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記第3のプローブが第3のシグナル発生基を含むか、これに連結可能であり、前記第3のシグナル発生基が第3のシグナルを直接的または間接的に産生して、前記ペプチドリガンド上の前記第2のコンジュゲートしていない反応性基の存在を示す、請求項12に記載の方法。
  14. 前記方法が、前記遺伝子ディスプレイシステム上に提示される前記ペプチドリガンドをステップ(c)において前記第3のプローブを用いた後で第4のプローブに曝露するステップをさらに含み、前記第4のプローブが前記遺伝子ディスプレイシステムに結合し、第4のシグナル発生基を含むか、これに連結可能である、請求項13に記載の方法。
  15. 前記第4のシグナル発生基が前記第3のシグナルによって誘発されて第4のシグナルを産生する、請求項14に記載の方法。
  16. 前記第4のシグナル発生基が第4のシグナルを産生し、前記第4のシグナルが前記第3のシグナル発生基を誘発して前記第3のシグナルを産生させる、請求項14に記載の方法。
  17. 前記第3のシグナル発生基が、周囲の酸素分子を一重項酸素分子に変換するように構成された第2の光増感剤を含み、前記第4のシグナル発生基が、一重項酸素分子によって励起されるように構成された第2の化学発光分子を含む、請求項15に記載の方法。
  18. 前記第4のシグナル発生基が第2の蛍光基をさらに含み、前記第2の蛍光基が前記第2の化学発光分子の化学発光によって励起されるように構成されている、請求項17に記載の方法。
  19. 前記遺伝子ディスプレイシステムがステップ(a)の前に精製レジンと組み合わされ、それにより前記遺伝子ディスプレイシステムが前記精製レジンに結合する、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 前記結合した遺伝子ディスプレイシステムがステップ(a)の前に還元剤によってさらに処理される、請求項19に記載の方法。
  21. 前記還元剤がTCEPである、請求項20に記載の方法。
  22. 前記遺伝子ディスプレイシステムがステップ(b)の後で前記精製レジンから溶出される、請求項19から21のいずれか1項に記載の方法。
  23. 前記遺伝子ディスプレイシステムがファージディスプレイである、請求項1から22のいずれか1項に記載の方法。
  24. 前記ペプチドリガンドが、2つ以上のアミノ酸残基のうちの2つの間に内在するアミノ酸の配列を含む少なくとも1つのループを含む、請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
  25. 前記分子スカフォールドが、TBMB、TATA、TCAZ、およびTCCUの群から選択される、請求項1から24のいずれか1項に記載の方法。
  26. 前記ペプチドリガンドが、ペプチドリガンドの単一クローンまたはライブラリーである、請求項1から25のいずれか1項に記載の方法。
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