JP2023184298A - 垂直共振器型発光素子及びその製造方法 - Google Patents

垂直共振器型発光素子及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】長寿命かつ高効率な垂直共振器型発光素子及びその製造方法を提供する。【解決手段】垂直共振器型発光素子は、p型ドーパントのMgを含み、Al組成の異なる3つ以上のAlGaN層が積層され、SIMSによる層厚方向のAl組成曲線において、p型AlGaN層を、活性層側からp型AlGaN層の1/10の層厚を有する第1領域、2/5の層厚をする第2領域及び1/2の層厚を有する第3領域、に区分し、Al組成曲線により示されるAl組成の大小関係は、第1領域<第3領域<第2領域であり、Mg濃度曲線によって示されるMg濃度はp型AlGaN層の層厚の全体に亘って3×1019atoms/cm3未満、かつ、Mg濃度の大小関係は、第1領域<第2領域<第3領域であり、第2領域の少なくとも一部の領域におけるMg濃度が3×1018atoms/cm3以上であり、Mg濃度曲線は、第2領域においてピークを有する。【選択図】図1

Description

本発明は、半導体多層膜反射鏡を用いた垂直共振器型発光素子、特に垂直共振器型面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser;VCSEL)などの垂直共振器型半導体発光素子に関する。また、当該垂直共振器型発光素子の製造方法に関する。
活性層の上下に分布ブラッグ反射鏡(Distributed Bragg Reflector;DBR)を配置した垂直共振器型発光素子が知られている。また、半導体発光素子において、電子キャリアのオーバーフローを防止するために、活性層よりもバンドギャップエネルギーの高い電子ブロック層を設けることが知られている。
例えば、特許文献1には、GaN系半導体から構成される、活性層とp型半導体のメサ状構造体との間に、電子ブロック層としてAlGaN層を有する垂直共振器型発光素子が開示されている。また、特許文献1において、電子ブロック層のAl組成を増大させてバンドギャップエネルギーを増大させることが開示されている。
特許第6966843号
例えば、上記のような垂直共振器型発光素子において、p型AlGaN層のp型ドーパント濃度を高くすると、正孔キャリア濃度が高まりキャリアの注入効率が高くなる効果が得られる。しかし、当該p型ドーパント濃度を高くし過ぎると、p型ドーパントの活性層への拡散や、p型ドーパント濃度が高いことに起因する欠陥が活性層に拡がることによる素子寿命の低下が生じ易くなるという問題があった。
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、高いキャリアの注入効率を確保しつつ素子の寿命の低下を抑制することができ、長寿命かつ高効率な垂直共振器型発光素子及びその製造方法を提供することを目的としている。
本発明による垂直共振器型発光素子は、基板と、前記基板上に、屈折率が互いに異なる2つの半導体層が交互に複数回繰り返し積層された半導体多層膜である第1の多層膜反射鏡と、前記第1の多層膜反射鏡上に形成され、n型のドーパントを含む窒化物半導体からなるn型窒化物半導体層と、前記n型窒化物半導体層上に形成された活性層と、前記活性層上に形成され、p型のドーパントとしてMgを含み、Al組成の異なる3つ以上のAlGaN層が積層された構成を有するp型AlGaN層と、前記p型AlGaN層上に形成され、p型のドーパントを含む窒化物半導体からなる半導体層であるp型窒化物半導体層と、前記p型窒化物半導体層上に形成され、前記第1の多層膜反射鏡に対向する位置に設けられた第2の多層膜反射鏡と、を含み、前記p型AlGaN層の二次イオン質量分析法(SIMS)による分析によって、前記p型AlGaN層中のAl組成の層厚方向における変化を示すAl組成曲線及び前記p型AlGaN層中のMg濃度の層厚方向の変化を示すMg濃度曲線のうち、前記Al組成曲線のピーク値の50%における幅の範囲を前記p型AlGaN層と規定し、前記p型AlGaN層をその層厚方向に、前記活性層側から前記p型AlGaN層の1/10の層厚を有する第1領域、前記p型AlGaN層の2/5の層厚を有する第2領域及び前記p型AlGaN層の1/2の層厚を有する第3領域、に順に区分したとき、前記Al組成曲線によって示されるAl組成の各領域間の大小関係は、前記第1領域<前記第3領域<前記第2領域であり、前記Mg濃度曲線によって示されるMg濃度は前記p型AlGaN層の層厚の全体に亘って3×1019atoms/cm未満であり、かつ、Mg濃度の各領域間の大小関係は、前記第1領域<前記第2領域<前記第3領域であり、前記第2領域の少なくとも一部の領域におけるMg濃度が3×1018atoms/cm以上であり、前記Mg濃度曲線は、前記第2領域においてピークを有することを特徴とする。
また、本発明による垂直共振器型発光素子は、基板と、前記基板上に、屈折率が互いに異なる2つの半導体層が交互に複数回繰り返し積層された半導体多層膜である第1の多層膜反射鏡と、前記第1の多層膜反射鏡上に形成され、n型のドーパントを含む窒化物半導体からなるn型窒化物半導体層と、前記n型窒化物半導体層上に形成された活性層と、前記活性層上に形成され、p型のドーパントとしてMgを含み、Al組成の異なる3つ以上のAlGaN層が積層された構成を有するp型AlGaN層と、前記p型AlGaN層上に形成され、p型のドーパントを含む窒化物半導体からなる半導体層であるp型窒化物半導体層と、前記p型窒化物半導体層上に形成され、前記第1の多層膜反射鏡に対向する位置に設けられた第2の多層膜反射鏡と、を含み、前記p型AlGaN層の二次イオン質量分析法(SIMS)による分析によって、前記p型AlGaN層中のAl組成の層厚方向における変化を示すAl組成曲線及び前記p型AlGaN層中のMg濃度の層厚方向の変化を示すMg濃度曲線のうち、前記Al組成曲線のピーク値の50%における幅の範囲を前記p型AlGaN層と規定し、前記p型AlGaN層をその層厚方向に、前記活性層側から前記p型AlGaN層の1/10の層厚を有する第1領域、前記p型AlGaN層の2/5の層厚を有する第2領域及び前記p型AlGaN層の1/2の層厚を有する第3領域、に順に区分したとき、前記Al組成曲線によって示されるAl組成の各領域間の大小関係は、前記第1領域<前記第3領域<前記第2領域であり、前記Mg濃度曲線によって示されるMg濃度は前記p型AlGaN層の層厚の全体に亘って3×1019atoms/cm3未満であり、かつ、Mg濃度の各領域間の大小関係は、前記第1領域<前記第2領域<前記第3領域であり、前記第2領域におけるMg濃度の平均値は3×1018atoms/cm以上であり、前記第2領域における前記Mg濃度曲線は、前記第2領域のうち前記第2領域の層厚方向の中心よりも前記第1領域側の部分における傾きの絶対値の平均値よりも前記第3領域側の部分における傾きの絶対値の平均値の方が大きいことを特徴とする。
本発明による垂直共振器型発光素子の製造方法は、有機金属気相成長法(MOCVD)により、基板上に、屈折率が互いに異なる2つの半導体層を交互に成長させて第1の多層膜反射鏡を形成するステップと、n型ドーパントの材料ガスを供給しつつ前記第1の多層膜反射鏡上にn型窒化物半導体層を成長させるn型窒化物半導体層成長ステップと、前記n型窒化物半導体層上に活性層を形成するステップと、p型ドーパントとしてMgの材料ガスを供給しつつ前記活性層上に、p型の導電型を有するAlGaN層であるp型AlGaN層を成長させるp型AlGaN層成長ステップと、前記p型AlGaN層上にp型窒化物半導体層を成長させるp型窒化物半導体層成長ステップと、前記p型窒化物半導体層上に前記第1の多層膜反射鏡に対向する第2の多層膜反射鏡を形成するステップと、を含み、前記p型AlGaN層成長ステップは、第1の温度から第2の温度まで昇温しつつ、窒素源ガス及びGaの材料ガスを所定の供給量で供給し、Alの材料ガスを第1の供給量で供給し、前記Mgの材料ガスを第2の供給量で供給して第1のp型AlGaN層を成長する第1の成長ステップと、前記第1の成長ステップの後、前記第1の成長ステップにおける前記窒素源ガス、前記Gaの材料ガス、前記Alの材料ガス及び前記Mgの材料ガスの供給量を維持しつつ第2のp型AlGaN層を成長する第2の成長ステップと、前記第2の成長ステップの後、前記Alの材料ガスを前記第1の供給量よりも低い第3の供給量で供給し、かつ、前記Mgの材料ガスを前記第2の供給量よりも低い第4の供給量で供給しつつ第3のp型AlGaN層を成長する第3の成長ステップと、を含むことを特徴とする。
また、本発明による垂直共振器型発光素子の製造方法は、有機金属気相成長法(MOCVD)により、基板上に、屈折率が互いに異なる2つの半導体層を交互に成長させて第1の多層膜反射鏡を形成するステップと、n型ドーパントの材料ガスを供給しつつ前記第1の多層膜反射鏡上にn型窒化物半導体層を成長させるn型窒化物半導体層成長ステップと、前記n型窒化物半導体層上に活性層を形成するステップと、p型ドーパントとしてMgの材料ガスを供給しつつ前記活性層上に、p型の導電型を有するAlGaN層であるp型AlGaN層を成長させるp型AlGaN層成長ステップと、前記p型AlGaN層上にp型窒化物半導体層を成長させるp型窒化物半導体層成長ステップと、前記p型窒化物半導体層上に前記半導体多層膜に対向する第2の多層膜反射鏡を形成するステップと、を含み、前記p型AlGaN層成長ステップは、第1の温度から第2の温度まで昇温しつつ、窒素源ガスを所定の供給量で供給し、前記Mgの材料ガスを第1の供給量で供給する前処理ステップと、前記前処理ステップの後、前記窒素源ガスの供給を継続しつつ、Gaの材料ガスを所定の供給量で供給し、Alの材料ガスを第2の供給量で供給し、前記Mgの材料ガスを第3の供給量で供給して第1のp型AlGaN層を成長する第1の成長ステップと、前記第1の成長ステップの後、前記第1の成長ステップにおける前記窒素源ガス、前記Gaの材料ガス、前記Alの材料ガス及び前記Mgの材料ガスの供給量を維持しつつ第2のp型AlGaN層を成長する第2の成長ステップと、前記第2の成長ステップの後、前記Alの材料ガスを前記第2の供給量よりも低い第4の供給量で供給し、かつ、前記Mgの材料ガスを前記第3の供給量よりも低い第5の供給量で供給しつつ第3のp型AlGaN層を成長する第3の成長ステップと、を含むことを特徴とする。
実施例1に係る面発光レーザの構成を示す斜視図である。 実施例1に係る面発光レーザの構成を示す上面図である。 実施例1に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。 実施例1に係る面発光レーザのp型AlGaN層のSIMS分析結果を示す図である。 実施例1に係る面発光レーザの製造工程の概要を示すフローチャートである。 実施例1に係る面発光レーザのp型AlGaN層の成長シーケンスを模式的に示す図である。 比較例の面発光レーザのp型AlGaN層のSIMS分析結果を示す図である。 比較例の面発光レーザのp型AlGaN層のSIMS分析結果を示す図である。 実施例2に係る面発光レーザのp型AlGaN層のSIMS分析結果を示す図である。 実施例2の変形例に係る面発光レーザのp型AlGaN層のSIMS分析結果を示す図である。 実施例2の変形例に係る面発光レーザのp型AlGaN層の成長シーケンスを模式的に示す図である。 実施例2の他の変形例に係る面発光レーザのp型AlGaN層のSIMS分析結果を示す図である。 実施例2の他の変形例に係る面発光レーザのp型AlGaN層のSIMS分析結果を示す図である。 実施例3に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。 実施例3に係る面発光レーザのp型AlGaN層のSIMS分析結果を示す図である。 実施例3に係る面発光レーザのp型AlGaN層の成長シーケンスを模式的に示す図である。
以下においては、本発明の好適な実施例について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
添付図面を参照しつつ、本発明の実施例1に係る垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser、以下、単に面発光レーザとも称する)10の構成について説明する。実施例1の面発光レーザ10は、窒化物系半導体層によって構成されている。
図1は、面発光レーザ10の構成の概要を示す斜視図である。
基板11は、面発光レーザ10を構成する窒化物半導体層の成長用基板である。基板11は、例えば、矩形の上面形状を有している。本実施例において、基板11は、GaN基板である。基板11の上面、すなわち窒化物半導体層が成長される面は、C面又はC面から1°以内にオフした面であることが好ましい。なお、基板11として、GaN基板の他に、サファイア基板、AlN基板等の基板を用いることができる。
下地層13は、基板11上に形成されている。下地層13は、アンドープGaN層である。下地層13は、下地層13上に成長される窒化物半導体層の結晶性を高めるためのバッファ層として機能する。
第1の多層膜反射鏡15は、下地層13上に形成されている。第1の多層膜反射鏡15は、AlInNの組成を有する低屈折率半導体膜と、GaN組成を有し低屈折率半導体膜よりも屈折率が高い高屈折率半導体膜とが交互に積層された半導体多層膜反射鏡である。第1の多層膜反射鏡15は、窒化物半導体材料からなる分布フラッグ反射器(DBR:Distributed Bragg Reflector)である。言い換えれば、第1の多層膜反射鏡15は、窒化物半導体多層膜反射鏡である。
n型半導体層17は、第1の多層膜反射鏡15上に形成されたn型GaN層である。n型半導体層17には、n型不純物としてSiがドープされている。
n型半導体層17は、角柱状の下部17Aと、下部17A上に配された円柱状の上部17Bとを有する。言い換えれば、n型半導体層17は、角柱状の下部17Aの上面から突出した円柱状の上部17Bを有している。言い換えれば、n型半導体層17は、上部17Bを含むメサ形状の構造を有する。n型半導体層17は、下部17Aの上面が部分的に露出した露出部17Eを有している。
活性層19は、n型半導体層17の上部17B上に形成されている。活性層19は、例えば多重量子井戸(MQW:Multi Quantum Well)構造をなす複数の半導体層からなる発光構造層である。具体的には、活性層19は、InGaN組成を有する井戸層及びGaN組成を有する障壁層を含む量子井戸構造を有する層である。面発光レーザ10に電流が注入されると、活性層19において光が発生する。
中間層21は、活性層19上に形成されたアンドープのGaN層である。中間層21は、中間層21上に形成されるp型半導体層23から活性層19に不純物が拡散することを防止すべく、活性層19と、中間層21上に形成されるp型半導体層23との間の距離を離す緩衝層の機能を有する。
p型半導体層23は、上述のように中間層21上に形成され、p型不純物がドープされた複数の半導体層を含む層である。p型不純物として、Mgがドープされている。
n電極25は、n型半導体層17の露出部17E上に設けられた金属電極である。n電極25は、n型半導体層17に電気的に接続されている。例えば、n電極25は、n型半導体層17の上部17Bを囲むように環状に形成されている。n電極25の形状はこれに限られず、例えば露出部17Eの全面に層状に形成された電極層であってもよい。
絶縁層27は、p型半導体層23上に形成されている絶縁体又はp型半導体層23よりも導電性の低い材料からなる層である。絶縁層27は、例えばSiO等のp型半導体層23を構成する材料よりも低い屈折率を有する物質によって構成されている。絶縁層27は、p型半導体層23上に環状に形成されており、中央部分にp型半導体層23を露出する開口部(図示せず)を有している。
透光性電極29は、絶縁層27上に形成されている。また、透光性電極29は、絶縁層27の開口部を介してp型半導体層23上に形成されており、p型半導体層23に電気的に接続されている。透光性電極29は、例えば、ITO又はIZO等の活性層19からの出射光に対して透光性を有する金属酸化物によって形成されている。
第2の多層膜反射鏡31は、絶縁層27の開口部上の透光性電極29上に設けられた誘電体多層膜である。第2の多層膜反射鏡31は、例えば酸化ニオブ(Nb)と酸化ケイ素(SiO)等の、屈折率の異なる2種の誘電体膜が交互に積層されてなる誘電体多層膜ミラーである。
p電極33は、透光性電極29上に設けられた金属電極である。p電極33は、透光性電極29に電気的に接続されている。p電極33は、第2の多層膜反射鏡31を囲むように環状に形成されている。
図2は、面発光レーザ10の上面図である。上述したように、面発光レーザ10は、矩形の上面形状を有する基板11上に形成され、メサ形状の構造を有するn型半導体層17を有している。
n型半導体層17のメサ形状の部分から露出している露出部17E上に、当該メサ形状の部分を囲むように環状のn電極25が形成されている。
また、上述したように、面発光レーザ10は、n型半導体層17のメサ形状の部分である上部17B上に順に形成されて円形の上面形状を有する活性層19,中間層21,及びp型半導体層、及び環状の絶縁層27(図2では図示せず)を有している。絶縁層27は、開口部OPを有している。
透光性電極29は、絶縁層27の開口部OPを覆うように、絶縁層27上に形成されている。透光性電極29上の透光性電極29の中心CAを含む領域に、第2の多層膜反射鏡31が設けられている。
第2の多層膜反射鏡31は、上面視において開口部OPを覆うように形成されている。なお、第2の多層膜反射鏡31は、上面視において開口部OPと重なるように形成されていてもよい。
また、透光性電極29の外周部に環状のp電極33が設けられている。
図3は、面発光レーザ10の図2の3-3線に沿った断面図である。上述したように、p型半導体層23は、p型不純物を含む複数の半導体層を含んで構成されている。以下、p型半導体層23の構成について説明する。
p型AlGaN層35は、中間層21上に形成されており、p型不純物としてMgがドープされている。p型AlGaN層35は、電子ブロック層として機能する。
p型AlGaN層35は、互いにMg濃度の分布とAl組成の分布が異なる3層のp型AlGaN層によって構成されている。図3において、p型AlGaN層35を構成する3層について、第1の層37、第2の層39、第3の層41として示している。
面発光レーザ10において、電子キャリアと正孔キャリアを効率良く活性層19に注入して活性層19に留まらせること、それによって閾値電流密度を低く抑えることが重要である。電子キャリアのオーバーフローが起こると、閾値電流密度が上昇し、電流の利用効率が低下するだけでなく、発光に寄与しないキャリアによって放出される熱の影響等によって素子が劣化するので、素子寿命が低下する。
電子ブロック層としてのp型AlGaN層35にMgをドープすることによって、p型AlGaN層35の正孔キャリア濃度が高まりかつフェルミ準位が下がる。これにより、キャリアオーバーフローを抑制してキャリアの注入効率を高めることができ、面発光レーザ10の閾値電流密度の上昇を抑制することができる。
一方、p型AlGaN層35中のMg濃度を高くし過ぎると、Mgが活性層まで拡散することや、Mgに起因する欠陥が活性層まで拡がることによって、素子寿命が低下する場合がある。
本願の発明者らは、上記のようなp型AlGaN層35中のMgに起因する素子寿命の低下を抑制しつつ、キャリアの注入効率を高くするためには、p型AlGaN層35中のMgの層厚方向における濃度分布を精密に制御することが重要であることを見出した。
そこで、本発明においては、最も活性層19に近い第1の層37においては、Mg濃度が高くなり過ぎないように制御し、第1の層37に隣接する第2の層39及び最も活性層から遠い第3の層41においては、キャリアの注入効率を高めるために適したMg濃度及びMg濃度分布となるように、Mg濃度及びAl組成を制御している。
なお、上記したように、活性層19とp型半導体層23との間に、中間層21が設けられている。中間層21は、p型半導体層23と、活性層19との間の距離を長くし、p型不純物が活性層19に拡散することやp型不純物に起因する欠陥の影響が及ぶことを抑制する機能を有する。例えば、中間層21は、30~145nmの層厚で形成されている。なお、例えば、面発光レーザ10において、中間層21を設けない構成としてもよい。
p型窒化物半導体層43は、p型AlGaN層35上に形成され、p型不純物がドープされた窒化物半導体層である。p型窒化物半導体層43は、例えば、p型不純物としてMgがドープされたGaN層である。
p型コンタクト層45は、p型窒化物半導体層43上に形成され、p型窒化物半導体層43よりも高濃度でp型不純物がドープされた窒化物半導体層である。p型コンタクト層45は、例えば、p型不純物としてMgがp型窒化物半導体層43よりも高濃度でドープされたGaN層である。
このように、p型半導体層23は、p型AlGaN層35、p型窒化物半導体層43、及びp型コンタクト層45がこの順に積層されて構成されている。
絶縁層27は、p型コンタクト層45上に形成されている。上述したように、透光性電極29は、絶縁層27上に絶縁層27の開口部OPを覆うように形成されており、透光性電極29は、開口部OPを介してp型コンタクト層45に接している。
p電極33は、透光性電極29と電気的に接触している。従って、p電極33は、透光性電極29を介してp型半導体層23と電気的に接続されている。
面発光レーザ10において、p型半導体層23には、絶縁層27の開口部OPによって露出している部分のみから、電流が注入される。従って、開口部OPは、活性層19への電流の供給範囲を制限する電流狭窄構造となっている。
面発光レーザ10において、第1の多層膜反射鏡15と第2の多層膜反射鏡31とが対向して配置されている。第1の多層膜反射鏡15は、第2の多層膜反射鏡31よりもわずかに低い反射率を有する。従って、活性層19から出射し、第1の多層膜反射鏡15と第2の多層膜反射鏡31との間で共振した光は、その一部が第1の多層膜反射鏡15及び基板11を透過し、外部に取り出される。
図4は、実施例1に係る面発光レーザ10のp型AlGaN層35のSIMS分析結果を示す図である。図4は、p型AlGaN層35の上層であるp型窒化物半導体層43から、p型AlGaN層35の下層である中間層21に向かって(すなわち、表面側から活性層側(基板11側)に向かって)、深さ方向、すなわち層厚方向のAl組成及びMg濃度のプロファイルを示している。
図4において、横軸は、表面側から活性層側に向かっての層厚すなわち深さ(nm)、主軸はMg濃度、第2軸はAl組成を示している。図4において、Al組成の深さ方向の変化を示すAl組成曲線を破線で示している。また、図4において、Mg濃度の深さ方向の変化を示すMg濃度曲線を実線で示している。
図4に示すAl組成曲線について、Al組成の最大ピークの50%における幅である半値幅の範囲を、p型AlGaN層35と規定する。また、本実施例において、Al組成曲線上において規定したp型AlGaN層を層厚方向に3つの領域に区分する。具体的には、p型AlGaN層35を、その層厚方向に、活性層側から表面側に向かって、10分の1(10%)の層厚を有する領域を第1領域AR1、5分の2(40%)の層厚を有する領域を第2領域AR2、2分の1(50%)の層厚を有する領域を第3領域AR3として順に区分して、Al組成及びMg濃度について説明する。
従って、図4に示すグラフにおいて層厚を示す横軸に着目すると、上述した半値幅はp型AlGaN層35の全層厚に相当し、当該横軸上において第1領域AR1はp型AlGaN層35の10分の1の層厚部分に相当し、第2領域AR2は5分の2の層厚部分に相当し、第3領域AR3は2分の1の層厚部分に相当する。
[Mg濃度曲線]
まず、Mg濃度曲線によって示されるMg濃度及びMg濃度の層厚方向のプロファイルについて説明する。
図4に示すように、Mg濃度曲線によって示されるMg濃度は、p型AlGaN層35の層厚の全体に亘って1×1019atoms/cm未満となっている。Mg濃度を1×1019atoms/cm未満とすることで、Mgの活性層への拡散及びMgに起因する欠陥の活性層への拡がりを防止している。これによって、高濃度のMgに起因する素子寿命の低下を防止している。
p型AlGaN層35中のMgのピーク濃度が3×1019atoms/cm以上となると、Mgが多く存在することによってキャリアの注入効率が向上する一方で、Mgが活性層に拡散しやすくなり、また、Mgに起因する欠陥が活性層まで拡がりやすくなるため、素子寿命が低下し易くなる。
従って、p型AlGaN層35中のMg濃度を3×1019atoms/cm未満に、より好ましくは1×1019atoms/cm未満に制御することで、このような高濃度のMgに起因する素子寿命の低下を抑制することができる。
本実施例において、上記のような高濃度のMgに起因する素子寿命の低下を抑制するため、Mg濃度曲線のp型AlGaN層35の層厚の全体に亘って、Mg濃度を1×1019atoms/cm未満に制御している。
また、p型AlGaN層35の層厚方向の領域のうち、活性層19までの距離が近い領域ほど、Mgが活性層19に拡散しやすくなり、また、Mgに起因する欠陥が活性層まで拡がりやすくなる。これらのことを考慮すると、最も活性層19に近い第1領域AR1のMg濃度が最も低く、活性層19から最も遠い第3領域AR3のMgが最も高いことが好ましい。
図4に示すように、本実施例においては、Mg濃度曲線によって示されるMg濃度の各領域内の平均値を各領域間で比較すると、第3領域AR3が最も大きく、第2領域AR2が次に大きく、第1領域AR1が最も小さくなっている(第1領域AR1<第2領域AR2<第3領域AR3)。このように、最も活性層19に近い第1領域AR1のMg濃度を最も低くすることで、Mgの活性層への拡散及びMgに起因する欠陥の活性層への拡がりを防止し、高濃度のMgに起因する素子寿命の低下を防止している。
なお、このような高濃度のMgに起因する素子寿命の低下を防止する観点から、第1領域のMg濃度としては、2×1018atoms/cm未満とすることが好ましい。
さらに、面発光レーザ10において、十分なキャリア注入効率を確保するためには、第2領域におけるMg濃度が低すぎないことが必要であり、第2領域AR2の少なくとも一部の領域で3×1018atoms/cm以上であることが指標の一つとなる。加えて、第2領域AR2におけるMg濃度のプロファイルも重要であり、Mg濃度曲線が第2領域AR2にピークを有している場合に十分なキャリア注入効率を確保できることがわかった。
図4に示すように、本実施例においては、Mg濃度曲線によって示されるMg濃度が第2領域AR2の一部の領域において3×1018atoms/cm以上であり、Mg濃度曲線が第2領域においてピークを有している。このようにMg濃度を制御することで、十分なキャリア注入効率を確保し、それによって閾値電流密度の上昇を抑制している。
[Al組成曲線]
図4に示すAl組成曲線は、第2領域AR2にピークを有している。より詳細には、Al組成曲線によって示されるAl組成の各領域内の平均値を各領域間で比較すると、第2領域AR2が最も大きく、第3領域AR3が次に大きく、第1領域AR1が最も小さくなっている(第1領域AR1<第3領域AR3<第2領域AR2)。
Mg濃度が低い領域でAl組成を大きくすると、閾値電圧が高くなるので、Mg濃度が低い第1領域AR1では、Al組成も低くして、閾値電圧の上昇を抑制している。
また、第2領域AR2のAl組成を最も高くすることで、障壁電位を高め、電子キャリアのオーバーフローを抑制することができる。
さらに、p型AlGaN層全体のAl組成を高くするのではなく、第2領域AR2のAl組成のみを最も高くすることで、Al組成の高い層と、隣接するGaN層との間の格子不整合によるクラックの発生も抑制することができる。
以上、説明したように、実施例1の面発光レーザ10は、基板上に積層された第1の多層膜反射鏡と、第1の多層膜反射鏡上に形成されたn型窒化物半導体層と、n型窒化物半導体層上に形成された活性層と、活性層上に形成され、p型のドーパントとしてMgを含み、Al組成の異なる3つのAlGaN層が積層された構成を有するp型AlGaN層と、p型AlGaN層上に形成されたp型窒化物半導体層と、p型半導体層上に形成され、第1の多層膜反射鏡に対向する位置に設けられた第2の多層膜反射鏡と、を含んで構成されている。
実施例1に係るp型AlGaN層は、p型AlGaN層の二次イオン質量分析法(SIMS)による分析によって、p型AlGaN層中のAl組成の層厚方向における変化を示すAl組成曲線及びp型AlGaN層中のMg濃度の層厚方向の変化を示すMg濃度曲線のうち、Al組成曲線のピーク値の50%における幅の範囲をp型AlGaN層と規定し、p型AlGaN層を、活性層側からp型AlGaN層の1/10の層厚を有する第1領域、p型AlGaN層の2/5の層厚をする第2領域及びp型AlGaN層の1/2の層厚を有する第3領域、に順に区分したとき、以下のように規定される。
Al組成曲線によって示されるAl組成の各領域間の大小関係は、第1領域<第3領域<第2領域であり、Mg濃度曲線によって示されるMg濃度はp型AlGaN層の層厚の全体に亘って3×1019atoms/cm未満であり、かつ、Mg濃度の各領域間の大小関係は、第1領域<第2領域<第3領域であり、第2領域の少なくとも一部の領域におけるMg濃度が3×1018atoms/cm以上であり、Mg濃度曲線は、第2領域においてピークを有する。
上記のような構成により、p型AlGaN層の層厚方向における適切な領域に適切な量のMgが含有されているので、p型AlGaN層における充分な正孔キャリア濃度を確保しつつも、過剰なMgに起因する素子寿命の低下を抑制することができる。
従って、本実施例の面発光レーザ10によれば、高いキャリアの注入効率を確保しつつ素子の寿命の低下を抑制することができ、長寿命かつ高効率な垂直共振器型発光素子を提供することができる。
図5及び図6を参照しつつ、面発光レーザ10の製造方法の一例について説明する。図5は、面発光レーザ10の製造工程の概要を示すフローチャートである。各半導体層の形成は、有機金属気相成長法(MOCVD:metal organic chemical vapor deposition)によって行った。
まず、基板11上に、下地層13を形成し、下地層13上に、第1の多層膜反射鏡15を形成した(ステップS11)。
成長基板である基板11にはC面GaN基板を用いた。なお、図示しないが、半導体層の成長装置において、基板11はサセプタ上に配置されている。そして、サセプタの下に熱電対が配置されており、その熱電対の温度を本願明細書における「基板温度」としている。また、本明細書において、「成長温度」とは、基板温度を指す。
ステップS11において、まず、基板11の温度を1200℃まで上昇させ、水素キャリアガス(雰囲気ガス)内で、トリメチルガリウム(以下、TMGと称する)、アンモニア(NH)ガスを供給してアンドープGaNからなる下地層13を100nm成長した。なお、ホモエピタキシャル成長の場合、必ずしも下地層13を積層する必要はなく任意である。
続いて第1の多層膜反射鏡15の形成を行った。下地層13上にInAlN/GaNの積層体からなる半導体DBR(Distributed Bragg reflectors:分布ブラッグ反射器)を成長した。
まず、下地層13上にInAlN層を成長した。基板温度を950℃、キャリアガス窒素(N)ガスとし、インジウムの材料ガスであるトリメチルインジウム(以下、TMIと称する)、アルミニウムの材料ガスであるトリメチルアルミニウム(以下、TMAと称する)及びアンモニアガスを供給し、InAlN層を成長した。
続いて、InAlN層上にGaN層を成長した。基板温度を1100℃まで上昇させ、キャリアガスを水素ガスに変更し、ガリウムの材料ガスであるトリメチルガリウム(以下、TMGと称する)とアンモニアガスを供給し、InAlN層上にGaN層を形成した。
その後、上記のInAlN層を成長する工程及びGaN層を成長する工程をさらに40回繰り返し、InAlN層とGaN層とのペアを合計で41ペア積層した。AlInN及びGaNは、基板11の結晶面の(0001)面上に層状に形成され、各々の層厚が所望の波長に対する光学的層厚の1/4になるように形成した。
その後、第1の多層膜反射鏡15上にn型半導体層17を形成した(ステップS12)。ステップS12において、基板温度1200℃、キャリアガスを水素ガスとして、ガリウムの材料ガスとしてのTMG、窒素源ガスとしてのアンモニアガス及びn型ドーパントの材料ガスでありシリコン含有ガスとしてのジシラン(Si)を供給し、第1の多層膜反射鏡15上に、Siを3×1018atoms/cmドープしたn型GaN層(高温n-GaN層)を1500nm形成した。
n型半導体層17の形成後、n型半導体層17上に、活性層19を積層した(ステップS13)。
ステップS13において、n型半導体層17上に、多重量子井戸層(以下、MQW:Multi Quantum Well)を形成した。障壁層及び井戸層はInAlGa1-x-yNからなる。本実施例では、井戸層として3nmのノンドープInGaN(y=0)、障壁層として4nmのノンドープGaN(x=y=0)、を5回繰り返して積層し、5ペアから成るMQWを形成した。
活性層19の形成後、活性層19上にp型半導体層23を形成した(ステップS14)。なお、ステップ14において、活性層19上に、中間層21として130nmの層厚でGaN層を形成し、中間層21上にp型半導体層23を形成した。
図6は、面発光レーザ10のp型AlGaN層35の成長シーケンス(p型AlGaN層成長ステップ)を模式的に示す図である。図6において、横軸は時間Tを示している。また、図6中の縦軸は基板温度Tsを示している。図6中、基板温度Tsの経時変化とともに、供給ガス種毎に、供給されているか否かを表すON状態又はOFF状態が示されている。また、供給ガス種のうち、Alの材料ガス(TMA)及びMgの材料ガス(ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(以下、CpMg))については、ON状態のうち、大きい供給量で供給されている場合についてON(High)、小さい供給量で供給されている場合についてON(Low)と示している。
図6に示すように、p型AlGaN層35は、3つのステップによって成長した。まず、第1の成長ステップ(図中、STEP1)では、基板温度をTP1(950℃、第1の温度)からTP2(1000℃、第2の温度)まで30秒かけて(時間T=T1~T2)上昇させつつ、キャリアガスを窒素ガス及びアンモニアガスとして、Alの材料ガスであるTMAを9.4sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)(第1の供給量、図中、ON(high))、Gaの材料ガスであるTMGを1.6sccmで供給し、さらにMgの材料ガス(CpMg)を37.2sccm(第2の供給量、図中、ON(high))で供給して第1のp型AlGaN層(図3中、第1の層37)を成長した。なお、アンモニアガスは、p型AlGaN層35の窒素源ガスとなる。第1のp型AlGaN層の層厚の設計値は、0.8nmである。また、第1のp型AlGaN層のAl組成の設計値は、25%である。
第2の成長ステップ(図中、STEP2)では、基板温度をTP2に維持し、TMG,窒素ガス及びアンモニアガス、TMA及びCpMgの供給を、第1の成長ステップにおける供給量を維持して継続して第2のp型AlGaN層(図3中、第2の層39)を成長した(T=T2~T3)。第2の成長ステップにおいて、TMAは第1の供給量、CpMgは第2の供給量を維持して供給した。第2のp型AlGaN層の層厚の設計値は、2.2nmである。また、第2のp型AlGaN層のAl組成の設計値は、42%である。
第3の成長ステップ(図中、STEP3)では、基板温度をTP2に維持し、TMG,窒素ガス及びアンモニアガスの供給量を維持しつつ、TMAを第1の供給量よりも小さい4.9sccm(第3の供給量、図中、ON(Low))、CpMgを第2の供給量よりも小さい2.5sccm(第4の供給量、図中、ON(Low))で供給して第3のp型AlGaN層(図3中、第3の層41)を成長した(T=T3~T4)。第3のp型AlGaN層の層厚の設計値は、7nmである。また、第3のp型AlGaN層のAl組成の設計値は、28%である。
以上のようにして、設計値10nmのp型AlGaN層35を形成した。上記のp型AlGaN層成長ステップにおけるMgの材料ガスの供給量は、上述したSIMSプロファイルに対応していない。具体的には、上記したように、Mgの材料ガスの供給量は、第3の成長ステップにおいては、第1,第2の成長ステップよりも大幅に低下しており、10分の1以下となっている。これに対して、図4に示したSIMS分析結果では、Mg濃度曲線が示すMg濃度は、第3の領域で最も高くなっている。
これは、基板温度が高いほどCPMgの分解効率が高くなりMgが成長層内に取り込まれ易いことに加えて、Mgのメモリー効果による影響と考えられる。MOCVD法では、Mgドーパントの固相熱拡散やチャンバ内等に残存するMg原料が意図せず膜中に混入するメモリー効果と呼ばれる現象が起こることが知られている。例えば第3の成長ステップにおいてCpMgの供給量が多すぎると、第1及び第2の成長ステップにおいて供給されて残存していたMg成分の影響が加わって、p型AlGaN層35中のMg濃度が過剰となり、例えば3×1019atoms/cmを超える場合、素子寿命の低下に繋がる。
上記の成長シーケンスは、このようなMgの特性を考慮して、所望のSIMSプロファイルが得られるように供給量を調整したものである。具体的には、第3の成長ステップにおけるCpMgの供給量(第4の供給量)を第2の成長ステップにおけるCpMgの供給量(第2の供給量)の10分の1以下にすることで、メモリー効果によってMg濃度が3×1019atoms/cmを越えないようにしている。また、本実施例において、Mgが層内に取り込まれやすい水素ガスではなく窒素ガスをキャリアガスに採用している。
本実施例において、上記のような成長方法の工夫をすることで、図4に示したようなSIMSプロファイルとなるp型AlGaN層35を形成することができる。それによって、面発光レーザ10の閾値電流密度の上昇を抑制し、寿命の低下も抑制できる。
p型AlGaN層35の形成後、p型窒化物半導体層43としてMgを5×1018atoms/cmドープしたp型GaN層を形成した。その後、p型窒化物半導体層43上に、p型コンタクト層45としてMgを5×1020atoms/cm以上ドープしたp型GaNコンタクト層を形成し、p型半導体層23の形成を終了した。
[素子化工程]
p型半導体層の形成後、急速熱処理(以下、RTA:Rapid Thermal Annealing)装置にて熱処理によるMgの活性化を行った。その後、フォトレジストによりメサパターンを形成し、ドライエッチングにて、メサ構造を形成しつつ、このメサ構造の周りにn型半導体層17が部分的に露出した露出部17E(図1参照)を形成した。その後、フォトレジストを除去した。
スパッタにて絶縁層27として酸化シリコン(SiO)をメサ構造及び露出部17E上に150nm形成した。フォトレジストにてパターンを形成し、バッファードフッ酸(以下、BHF)にてエッチング処理し、メサ構造上の絶縁層27に光の出射開口部として開口部OPを形成した。その後、フォトレジストを除去した。
スパッタにて透光性電極29として酸化インジウムスズ(以下、ITO:Indium Tin Oxide)を約17nm形成した。フォトレジストにてパターンを形成し、混酸にてITOをエッチング処理し、メサ構造上の絶縁層27上及び絶縁層27の開口部OPによって露出したp型コンタクト層45上に透光性電極29を形成した。その後、フォトレジストを除去し、RTAにて熱処理を行い、ITOの透明化と導電性向上を図った。
電子ビーム(以下、EB)蒸着にて、透光性電極29上に開口部を覆わないp側メタル層(p電極33)を約300nm形成した。p側メタル層には白金(Pt)、金(Au)、チタン(Ti)の積層体を用いた。次に薬品にてリフトオフした後、フォトレジストを除去した。
フォトレジストにてパターンを形成後、EB蒸着にて、n型半導体層17の露出部17Eに電気的に接続されたn電極25を約700nm形成した。n電極にはTi、Al、Pt、Auの積層体を用いた。薬品にてリフトオフし、フォトレジストを除去した。
EB蒸着にて、透光性電極29上に第2の多層膜反射鏡31としての誘電体多層膜(誘電体多層膜ミラー、誘電体DBR)10.5ペア(約1300nm)を形成した。誘電体DBRには酸化ニオブ(以下、Nb5、膜厚約45nm)とSiO(膜厚約76nm)の積層体を用いた。次にフォトレジストにて誘電体DBRパターンを形成し、ドライエッチング装置にて誘電体DBRの不要部分(p電極上、n電極上)をエッチング除去した。最後に薬品にてフォトレジストを除去した。
フォトレジストにてパターンを形成し、EB蒸着にて、p電極に電気的に接続された更なるp側メタル層(図示せず)を約2200nm形成した。p電極(pパッド層)にはTi、Pt、Auの積層体を用いた。次に薬品にてリフトオフし、フォトレジストを除去した。このようにして、素子化を行った(ステップS15)。
以上の工程により、面発光レーザ10を製造した。
図7を参照しつつ、比較例1の面発光レーザのp型AlGaN層について説明する。比較例1の面発光レーザは、p型AlGaN層35に代えて、Alの材料ガス(TMA)の供給量を4.9sccmで一定とし、かつ、Mgの材料ガス(CpMg)供給量を37.2sccmで一定とし、層厚の設計値10nm、Al組成の設計値30%で成長したp型AlGaN層を有する点において実施例1と異なり、その他の点においては実施例1と同様に構成されている。つまり、比較例1のp型AlGaN層は、1つのステップで成長したものであり、3つのステップを含む実施例1の成長方法とは異なる方法で成長したものである。
図7は、比較例1の面発光レーザのp型AlGaN層のSIMS分析結果を示す図である。図4に示したグラフと同様に、図7においても、Al組成の深さ方向の変化を示すAl組成曲線を破線で示し、Mg濃度の深さ方向の変化を示すMg濃度曲線を実線で示している。また、図4に示した実施例1の場合と同様に、Al組成の最大ピークの50%における幅を、p型AlGaN層と規定し、p型AlGaN層35の活性層側から表面側に向かって、10%の層厚を有する第1領域AR1、40%の層厚を有する第2領域AR2、50%の層厚を有する第3領域AR3に順に区分している。
図7に示すように、Mg濃度曲線は、第2領域AR2においてピークを有しており、第2領域AR2及び第3領域AR3の大部分において、3×1019atoms/cmを超えている。このように、第2領域においてMg濃度が3×1019atoms/cmを超える高濃度である場合、キャリアの注入効率は高くなるが、Mgの活性層への拡散やMgに起因する欠陥の活性層への拡がりも発生し易くなり、それによって素子寿命が低下する。
図8を参照しつつ、比較例2の面発光レーザのp型AlGaN層について説明する。比較例2の面発光レーザは、実施例1のp型AlGaN層35及び比較例1のp型AlGaN層とは異なる方法で成長したp型AlGaN層を有している点において実施例1及び比較例1と異なり、その他の点においては実施例1と同様に構成されている。
比較例2のp型AlGaN層は、層厚の全体にわたってMg濃度が3×1019atoms/cm未満となるように成長されたものである。比較例2において、Mgの最大濃度がそれぞれ0.9×1019atoms/cm、2.0×1019atoms/cm、2.6×1019atoms/cmである3つのサンプルを作製した。
Mg最大濃度0.9×1019atoms/cmのサンプル(以下、サンプル1とも称する)は、Alの材料ガス(TMA)の供給量を6.0sccmで一定とし、かつ、Mgの材料ガス(CpMg)供給量を37.2sccmで一定とし、層厚の設計値10nm、Al組成の設計値30%で成長した。
Mg最大濃度2.0×1019atoms/cmのサンプル(以下、サンプル2とも称する)は、Alの材料ガス(TMA)の供給量を6.0sccmで一定とし、かつ、Mgの材料ガス(CpMg)供給量を5nmの成長までは37.2sccm、その後5nmの成長時は2.5sccmで供給し、層厚の設計値10nm、Al組成の設計値30%で成長した。
Mg最大濃度2.6×1019atoms/cmのサンプル(以下、サンプル3とも称する)は、Alの材料ガス(TMA)の供給量を4.9sccmで一定とし、かつ、Mgの材料ガス(CpMg)供給量を5nmの成長までは37.2sccm、その後5nmの成長時は2.5sccmで供給し、層厚の設計値10nm、Al組成の設計値30%で成長した。
図8は、比較例2の面発光レーザのp型AlGaN層のSIMS分析結果を示す図である。図8においても、Al組成の深さ方向の変化を示すAl組成曲線を破線で示し、Mg濃度の深さ方向の変化を示すMg濃度曲線を実線で示している。また、Al組成曲線及びMg濃度曲線を、2.0×1019atoms/cmのサンプル(サンプル2)について、サンプル1よりも太い線で、2.6×1019atoms/cmのサンプル(サンプル3)についてはサンプル2よりも太い線で示している。
図8中、サンプル3のMg濃度曲線は、Mgの最大濃度が3×1019atoms/cm未満であり、第1領域AR1のMg濃度が低く、活性層から最も遠い第3領域AR3にピークを有している。このように、Mgのピーク濃度が低くかつ活性層から遠い領域にピークが存在することから、Mgの活性層への拡散やMg起因の欠陥の活性層への影響は生じにくい点では好ましい。
一方で、サンプル3のMg濃度曲線は、第2領域AR2において、活性層に向かって単調減少している。このような場合、第2領域AR2の殆ど全体において、十分な正孔キャリア濃度を得るための指標の1つとなる3×1018atoms/cmを超えているにも関わらず、正孔キャリア濃度が不足し、電子キャリアのオーバーフローが抑制できず、キャリア注入効率が下がり、閾値電流密度が上昇することがわかった。
サンプル2についても3×1019atoms/cm未満であり、サンプル1についてはMg最大濃度がさらに低く1×1019atoms/cm未満であるため、Mgの活性層への拡散やMg起因の欠陥の活性層への影響は生じにくい点で好ましい。
しかし、サンプル2及びサンプル1では第2領域AR2におけるMg濃度はサンプル3の場合よりもさらに低下し、正孔キャリア濃度が不足し、キャリア注入効率が低下する。
図7及び図8を参照して説明したように、比較例1ではMgのピーク濃度が3×1019atoms/cm以上、比較例2ではMgのピーク濃度が3×1019atoms/cm未満のサンプルを作製したが、いずれの場合もMg濃度プロファイルの制御が適切にできなかった。
具体的には、比較例1において、Mgのピーク濃度を3×1019atoms/cm以上とすると、活性層19に近い領域にMg濃度が高いピークが現れ、Mgの活性層への拡散、Mg起因の欠陥による活性層への影響が大きくなる。これによって素子寿命が低下する。
また、比較例2において、Mgのピーク濃度を3×1019atoms/cm以下とすると、Mg濃度曲線のピークが現れる位置が第3領域AR3となり、第2領域におけるMg濃度が活性層に向かって単調減少し、正孔キャリアの減少によってキャリア注入効率が低下し、閾値電流密度の上昇につながる。閾値電流密度の上昇も、素子寿命を低下させる。
これに対して、実施例1では、Mg濃度曲線によって示されるMg濃度がp型AlGaN層35の層厚の全体に亘って1×1019atoms/cm未満であり、当該Mg濃度曲線が第2領域AR2において、3×1019atoms/cmを超えるピークを有している。このようなMgプロファイルを示すp型AlGaN層35は、p型AlGaN層における充分な正孔キャリア濃度を提供しつつも、過剰なMgに起因する素子寿命の低下を抑制することができる。このようなMgプロファイルを示すp型AlGaN層35は、図6に示したような3つのステップを含む方法によって成長することで実現できる。
なお、本実施例において、第1のp型AlGaN層の層厚は、0.4nm以上1nm以下とすることが好ましい。0.4nm未満ではMgの活性層への拡散やMgに起因する欠陥の活性層への拡がりを防止する効果が乏しく、1nmを越えると素子電圧の上昇を招くおそれがある。
本実施例において、第1のp型AlGaN層のAl組成の設計値は、25%以下とすることが好ましい。Al組成が25%を超えると、素子電圧が上昇するおそれがあるからである。
また、本実施例において、第2のp型AlGaN層のAl組成の設計値は、33%以上50%以下とすることが好ましい。Al組成が33%未満では電子キャリアのオーバーフローが生じ易くなり、閾値電流密度が上昇し易くなる。Al組成が50%を超えると、p型AlGaN層の結晶性の低下、クラックの発生、動作電圧の上昇等の影響が大きくなる。
また、本実施例において、第2のp型AlGaN層の層厚は、2nm以上6nm以下とすることが好ましい。2nm未満では第2領域のMg濃度を3×1018atoms/cm以上とすることが困難であり、6nmを越えると素子電圧が顕著に上昇する場合がある。
また、本実施例において、第3のp型AlGaN層のAl組成の設計値は、20%以上30%以下とすることが好ましい。第3のp型AlGaN層のAl組成をこの範囲にすることで、第2のp型AlGaN層とともに電子キャリアのオーバーフローを抑制しつつ、クラックの発生や動作電圧の上昇も抑制することができる。
また、本実施例において、第3のp型AlGaN層の層厚は、第2のp型AlGaN層の層厚よりも大きいことが好ましい。第3のp型AlGaN層の層厚を第2のp型AlGaN層の層厚よりも厚くすることで、p型AlGaN層35全体の平均Al組成を下げることができ、クラックの発生を抑制することができる。
図9を参照しつつ、実施例2に係る面発光レーザ50の構成について説明する。面発光レーザ50は、図1~3を参照して説明した実施例1の面発光レーザ10と同様に構成されているが、p型AlGaN層35の構成のみが面発光レーザ10とは異なる。具体的には、実施例2のp型AlGaN層35は、SIMS分析によって得られる層厚方向のAl組成及びMg濃度のプロファイルが実施例1の場合とは異なる。
図9は、面発光レーザ50のp型AlGaN層35について、実施例1と同様のSIMS分析を行った結果を示す図である。図9において、実施例1と同様に、Al組成(%)の半値幅の範囲をp型AlGaN層35と規定し、p型AlGaN層35の層厚方向において第1領域AR1~第3領域AR3に順に区分している。また、図9において、Al組成曲線を破線で示し、Mg濃度曲線を実線で示している。
図9に示すように、Mg濃度曲線によって示されるMg濃度がp型AlGaN層35の層厚の全体に亘って1×1019atoms/cm未満となっている点においては実施例1と共通している。また、Mg濃度曲線によって示されるMg濃度の各領域内の平均値を各領域間で比較すると、第3領域AR3が最も大きく、第2領域AR2が次に大きく、第1領域AR1が最も小さくなっている(第1領域AR1<第2領域AR2<第3領域AR3)点においても実施例1と共通している。このようにp型AlGaN層35の層厚の全体に亘るMg濃度及び各領域のMg濃度を制御することで、Mgの活性層への拡散及びMgに起因する欠陥の活性層への拡がりに起因する素子寿命の低下を防止している。
図9に示すMg濃度曲線において、第2領域におけるMg濃度の平均値が3×1019atoms/cm以上である。また、図9に示すように、Mg濃度曲線は、第3領域にピークを有しており、第2領域AR2と第3領域AR3との境界付近を中心として、第2領域AR2の一部領域と第3領域AR3の一部領域にまで広がる、他の部分よりも平坦な部分(略平坦な部分)を有している。
より詳細には、図9において、第2領域におけるMg濃度曲線を、第2領域の層厚方向の中心を境に第1領域側の部分と第3領域側の部分とに分けた場合、第1領域側の部分の傾きよりも第3領域側の部分の傾きの方が緩やかである。
図9に示すグラフの例において、当該第1領域側の部分の近似式の傾きの絶対値(以後、傾きは絶対値で表記する)は約2×1018であり、第3領域側の部分の近似式の傾きは約2×1017ある。つまり、第2領域におけるMg濃度曲線は、第2領域の層厚方向の中心よりも第1領域側の部分における傾きの平均値よりも第3領域側の部分における傾きの平均値の方が小さいといえる。
Mg濃度を上記のようなプロファイルに制御した場合にも、第2領域におけるMg濃度が低くなりすぎることを防止し、十分なキャリア注入効率を確保できることがわかった。実施例2の面発光レーザ50において、第2領域におけるMg濃度の平均値が3×1018atoms/cm以上であり、第2領域におけるMg濃度曲線は、第2領域の層厚方向の中心よりも第1領域側の部分における傾きの平均値よりも第3領域側の部分における傾きの平均値の方が小さくなるようにMg濃度を制御することで、十分なキャリア注入効率を確保し、それによって閾値電流密度の上昇を抑制することができる。
なお、本実地例において、Al組成曲線によって示されるAl組成の各領域内の平均値を各領域間で比較すると、第2領域AR2が最も大きく、第3領域AR3が次に大きく、第1領域AR1が最も小さくなっている(第1領域AR1<第3領域AR3<第2領域AR2)点については実施例1と共通している。
[実施例2の製造方法]
実施例2のp型AlGaN層35は、図6に示したシーケンスと同様に、3つのステップによって成長した。実施例2では、ステップ1及びステップ2について、Alの材料ガスであるTMAの供給量、層厚の設計値、及びAl組成の設計値が実施例1の場合とは異なり、その他の条件については、実施例2と同様として、p型AlGaN層35を成長した。
具体的には、TMAの第1の供給量を6.2sccmとしたこと、第1のp型AlGaN層について設計層厚を0.6nm、Al組成の設計値を23%とし、第2のp型AlGaN層について設計層厚を2.4nm、Al組成の設計値を実施例1よりも低い33%とした点において実施例1と異なる。雰囲気ガスである窒素ガス及びアンモニアガスの供給量、ガリウムの材料ガスであるTMGの供給量は実施例1と同じである。
このように、TMAの供給量によってAlの組成比を調節することで、Mgの膜中への取り込まれ方も調整することができる。それによって、成長したp型AlGaN層35のSIMS分析を行うと、図9に示したようなプロファイルが得られる。具体的には、第2領域におけるMg濃度の平均値が3×1018atoms/cm以上であり、第2領域の層厚方向の中心よりも第1領域側の部分における傾きの平均値よりも第3領域側の部分における傾きの平均値の方が小さいMg濃度曲線が得られる。
従って、実施例2のp型AlGaN層35の成長方法を含む面発光レーザ50の製造方法によれば、p型AlGaN層の層厚方向における適切な領域に適切な量のMgが含有されているp型AlGaN層を形成することができ、充分な正孔キャリア濃度を確保しつつも、過剰なMgに起因する素子寿命の低下を抑制することができる。
従って、本実施例の面発光レーザ50によれば、高いキャリアの注入効率を確保しつつ素子の寿命の低下を抑制することができ、長寿命かつ高効率な垂直共振器型発光素子を提供することができる。
[変形例]
図10~14を参照しつつ、実施例2の変形例に係る面発光レーザ60の構成について説明する。面発光レーザ60は、実施例2の面発光レーザ50と同様に構成されており、p型AlGaN層35の成長方法の一部のみが異なる。
図10は、面発光レーザ60のp型AlGaN層35のサンプルAについてのSIMS分析によって得られるAl組成曲線(Al-A)及びMg濃度曲線(Mg-A)を示す図である。実施例2の場合と同様に、Al組成曲線(Al-A)の半値幅の範囲をp型AlGaN層35と規定し、p型AlGaN層35の層厚方向において第1領域AR1~第3領域AR3に順に区分している。図10中、実施例2のAl組成曲線をAl-EX2、Mg濃度曲線をMg-EX2として示している。
図10に示すように、面発光レーザ60のp型AlGaN層35のMg濃度曲線は、実施例2に係るMg濃度曲線と同様の特徴を有している。具体的には、変形例に係るMg濃度曲線Mg-Aは、実施例2のMg-EX2と同様に、第2領域において、第2領域の層厚方向の中心よりも第1領域側の部分における傾きの平均値よりも第3領域側の部分における傾きの平均値の方が小さくなっている。
しかし、図10に示すように、面発光レーザ60のp型AlGaN層35のMg濃度曲線は、実施例2のMg濃度曲線と比較して高濃度側にシフトしている。当該高濃度側へのシフトは、第2領域から第3領域にかけての領域、特に、第2領域と第3領域との境界を中心とした第3領域のピークの肩部となっている略平坦な部分を含む領域において顕著である。当該平坦な部分のMg濃度が上昇することで、正孔キャリア濃度が上昇し、キャリア注入効率が向上する点で好ましい。
上記のようなMg濃度プロファイルの高濃度側へのシフトは、p型AlGaN層35の成長開始前に、Mgの材料ガスを供給するステップを追加したことによる。以下、面発光レーザ60のp型AlGaN層35の製造方法について説明する。
図11は、面発光レーザ60のp型AlGaN層35のサンプルAについての成長シーケンスを示す図であるp型AlGaN層成長ステップを模式的に示す図である。図11に示すように、本変形例では、前処理ステップとしての昇温ステップの実行後、3つのステップによってp型AlGaN層を成長した。
昇温ステップでは、基板温度をTP1(950℃、第1の温度)からTP2(1000℃、第2の温度)まで30秒かけて(時間T=T1~T2)上昇させつつ、キャリアガスを窒素ガス及びアンモニアガスとして、Mgの材料ガス(CpMg)を37.2sccm(第1の供給量、図中、ON(high))で供給した。昇温ステップにおいては、Alの材料ガス(TMA)及びGaの材料ガス(TMG)を供給しない。よって、昇温ステップにおいては、p型AlGaN層は成長しない。
昇温ステップの後、第1の成長ステップ(図中、STEP1)では、基板温度をTP2(1000℃、第2の基板温度)に維持し、キャリアガスは継続して窒素ガス及び窒素源ガスとしてのアンモニアガスとした。第1の成長ステップにおいて、Alの材料ガスであるTMAを6.2sccmで供給し(第2の供給量、図中、ON(high))、Gaの材料ガスであるTMGを1.6sccmで供給した(図中、ON)。さらにMgの材料ガス(CpMg)については、37.2sccm(第3の供給量、図中、ON(high))で供給した。以上の条件で、第1のp型AlGaN層(図3中、第1の層37)を成長した(T2~T3)。第1のp型AlGaN層の層厚の設計値は、0.6nmである。また、第1のp型AlGaN層のAl組成の設計値は、25%である。
第1の成長ステップの後、第2の成長ステップ(図中、STEP2)及び第3の成長ステップ(図中、STEP3)については、実施例2における第2の成長ステップ及び第3の成長ステップと同様に進行した。
第2の成長ステップでは、基板温度をTP2に維持し、TMG,窒素ガス及びアンモニアガス、TMA及びCpMgを、第1の成長ステップにおける供給量を維持して供給し、第2のp型AlGaN層(図3中、第2の層39)を成長した(T=T3~T4)。第2の成長ステップにおいて、TMAは第2の供給量、CpMgは第3の供給量を維持して供給した。第2のp型AlGaN層の層厚の設計値は、2.4nmである。また、第2のp型AlGaN層のAl組成の設計値は、33%である。
第2の成長ステップの後、第3の成長ステップでは、基板温度をTP2に維持し、TMG,窒素ガス及びアンモニアガスの供給量を維持しつつ、TMAを第2の供給量よりも低い4.9sccm(第4の供給量、図中、ON(Low))、CpMgを第3の供給量よりも低い2.5sccm(第5の供給量、図中、ON(Low))で供給して第3のp型AlGaN層(図3中、第3の層41)を成長した(T=T4~T5)。第3のp型AlGaN層の層厚の設計値は、7nmである。また、第3のp型AlGaN層のAl組成の設計値は、28%である。
以上のようにして、変形例に係るp型AlGaN層35を設計値10nmで形成した。
上記の説明においては、昇温ステップにおける処理時間(T1~T2)(すなわち、昇温時間)を30秒とし、Mg材料ガスの供給量(第1の供給量)を37.2sccmとした例について説明した。本変形例において、さらに、昇温時間及びMg材料ガスの供給量を調整することにより、第2領域のMg濃度を調整することが可能であることがわかった。
図12は、昇温ステップにおけるMg材料ガスの供給量(第1の供給量)を75sccm、昇温時間を15秒として、その他の条件については図11において説明した条件で成長したp型AlGaN層35のサンプルBについてのAl組成曲線及びMg濃度曲線を、実施例2の結果と併せて示す。
第2領域と第3領域との境界を中心とした第3領域のピークの肩部となっている略平坦な部分を含む領域で、Mg濃度曲線が、実施例2と比較して高濃度側へシフトしている。サンプルBについて実施例2と比較したMg濃度の上昇幅は、図10に示したサンプルAの上昇幅と同程度である。
図13は、昇温ステップにおけるMg材料ガスの供給量(第1の供給量)を37.5sccm、昇温時間を15秒として、その他の条件については図11において説明した方法で成長したp型AlGaN層35のサンプルCについてのAl組成曲線及びMg濃度曲線を示す。Mg濃度の上昇幅は、図10に示したサンプルAの上昇幅よりも小さいが、サンプルCは、p型AlGaN層35の層厚の全体に亘って、1×1019atoms/cm未満となっている。サンプルCの条件によれば、層厚の全体に亘って1×1019atoms/cm未満の範囲で第2領域のMg濃度を高濃度側にシフトさせることができるといえる。
以上より、第2領域におけるMg濃度プロファイルが平坦な部分、すなわち第2領域を層厚方向の中心よりも第3領域側の部分のMg濃度は、昇温ステップにおける昇温時間すなわちMg材料ガスの供給時間及びMg材料ガスの供給量に応じて上昇することがわかった。また、当該平坦な部分におけるMg濃度の上昇幅は、Mg材料ガスの供給時間と供給量との積に概ね相関があることがわかった。
上記したように、p型AlGaN層を成長する際に、Mgのメモリー効果が生じ易く、また、基板温度が高いほどCpMgがMgに分解されやすい。本変形例では、メモリー効果及び基板温度の影響を考慮して、昇温ステップにおいて、Mgの材料ガスを先行して供給することで、Mg濃度プロファイルを確実に制御することができる。
以上、説明したように、本変形例のp型AlGaN層成長ステップによれば、p型AlGaN層中のMg濃度が3×1019atoms/cm未満、好ましくは1×1019atoms/cm未満であり、かつ、第2領域におけるMg濃度の平均値が3×1018atoms/cm以上であり、第2領域におけるMg濃度曲線は、第2領域の層厚方向の中心よりも第1領域側の部分における傾きの平均値よりも第3領域側の部分における傾きの平均値の方が小さくなるように確実に制御することができる。
図14~17を参照しつつ、実施例3に係る面発光レーザ70について説明する。図14は、面発光レーザ70の構成を示す断面図である。面発光レーザ70は、実施例1の面発光レーザ10及び実施例2の面発光レーザ50と基本的に同様に構成されている。
面発光レーザ70は、3層構造を有するp型AlGaN層35に代えて、5層構造を有するp型AlGaN層71を有する点で面発光レーザ10及び面発光レーザ50と異なる。
p型AlGaN層71は、p型AlGaN層35と同様に、中間層21上に形成され、p型不純物としてMgがドープされたAlGaN層であり、電子ブロック層として機能する層である。
p型AlGaN層71は、互いにMg濃度の分布とAl組成の分布が異なる5層のp型AlGaN層によって構成されている。図14において、p型AlGaN層71を構成する5つの層について、第1の層72、第2の層73、第3の層74、第4の層75、及び第5の層76として示している。
図15は、面発光レーザ70のp型AlGaN層71について、実施例2と同様のSIMS分析を行った結果を示す図である。図15において、実施例2と同様に、Al組成(%)の半値幅の範囲をp型AlGaN層71と規定し、p型AlGaN層71の層厚方向において第1領域AR1~第3領域AR3に順に区分している。また、図15において、Al組成曲線を破線で示し、Mg濃度曲線を実線で示している。
図15に示すように、p型AlGaN層71のAl組成曲線及びMg濃度曲線は、実施例2の場合と同様の特徴を有している。
具体的には、p型AlGaN層71のMg濃度曲線によって示されるMg濃度がp型AlGaN層71の層厚の全体に亘って1×1019atoms/cm未満となっている点においては図9に示した実施例2の分析結果と共通している。また、Mg濃度曲線によって示されるMg濃度の各領域内の平均値を各領域間で比較すると、第3領域AR3が最も大きく、第2領域AR2が次に大きく、第1領域AR1が最も小さくなっている(第1領域AR1<第2領域AR2<第3領域AR3)点においても実施例2の分析結果と共通している。
また、p型AlGaN層71の第2領域におけるMg濃度の平均値が3×1018atoms/cm以上である点においても実施例2の分析結果と共通している。
さらに、実施例2と比較して、p型AlGaN層71のMg濃度曲線では、第2領域の層厚方向の中心から、第1領域に近い領域を下層、第3領域に近い領域を上層としたとき、当該上層の領域において傾きがより小さくなっている。すなわち、第3領域のピークの肩部となっている部分がより平坦になっている。また、当該上層の領域において、Mg濃度が5×1018atoms/cm以上となっている。
上述したように、p型AlGaN層のMg濃度曲線に、第2領域の層厚方向の中心から第3領域に近い領域に平坦な部分が現れると、正孔キャリア濃度が十分に得られ、キャリア注入効率が高くなり、閾値電流密度が低く抑えられる。従って、本実施例においても、p型AlGaN層71において高い正孔キャリア濃度が得られる。よって、面発光レーザ70は、キャリア注入効率が高く、閾値電流密度が低く、素子寿命が長いといえる。
図16は、面発光レーザ70のp型AlGaN層71の成長シーケンス(p型AlGaN層成長ステップ)を模式的に示す図である。
図16に示すように、p型AlGaN層71は、5つのステップによって成長した。図16に示す成長シーケンスは、ステップ3までは図6に示した実施例1の成長シーケンスと同様に進行するが、本実施例においては、ステップ3の設計膜厚が実施例1よりも小さい。本実施例においては、ステップ3の後、ステップ4及びステップ5において、実施例1のステップ2及びステップ3に相当するステップを小さい設計層厚で繰り返す点で実施例1と異なる。p型AlGaN層71を成長した際の、各材料ガスの供給量及び設計層厚を含む成長条件の一例を表1に示す。
Figure 2023184298000002
図16及び表1に示すように、ステップ1~ステップ5において、キャリアガスを窒素ガス及び窒素源ガスとしてのアンモニア(NH)ガスとし、Gaの材料ガスであるTMGを一定の供給量1.6sccmで供給した。
第1の成長ステップ(図中、STEP1)は、実施例1と同様に進行した。第1の成長ステップでは、基板温度をTP1(950℃、第1の温度)からTP2(1000℃、第2の温度)まで30秒で(時間T=T1~T2)上昇させつつ、Alの材料ガスであるTMAを9.4sccm(第1の供給量、図中、ON(high))Mgの材料ガス(CpMg)を37.2sccm(第2の供給量、図中、ON(high))で供給して、設計層厚0.8nm、Al組成の設計値25%で第1のp型AlGaN層(図14中、第1の層72)を成長した。
第2の成長ステップ(図中、STEP2)では、基板温度をTP2(1000℃)に維持し、TMAの供給量及びCpMgの供給量は変更せず、設計層厚2.2nm、Al組成の設計値42%で第2のp型AlGaN層(図14中、第2の層73)を成長した(T2~T3)。
第3の成長ステップ(図中、STEP3)において、TMAの供給量を4.9sccm(第3の供給量、図中、ON(Low))、CpMgの供給量を、第2の供給量の10分の1以下である2.5sccm(第4の供給量、図中、ON(Low))とし、設計層厚2.0nm、Al組成の設計値28%で、第3のp型AlGaN層(図14中、第3の層74)を成長した(T3~T4)。
第4の成長ステップ(図中、STEP4)において、TMAの供給量を再び9.4sccm(第1の供給量、図中、ON(high))とし、CpMgの供給量を2.5sccm(第4の供給量、図中、ON(Low))に維持し、設計層厚3.0nm、Al組成の設計値42%で、第4のp型AlGaN層(図14中、第4の層75)を成長した(T4~T5)。
第5の成長ステップ(図中、STEP5)において、TMAの供給量を4.9sccm(第3の供給量、図中、ON(Low))に下げ、CpMgの供給量を2.5sccm(第4の供給量、図中、ON(Low))に維持し、設計層厚2.0nm、Al組成の設計値28%で、第5のp型AlGaN層(図14中、第5の層76)を成長した(T5~T6)。
以上のようにして、設計値10nmのp型AlGaN層71を形成した。ステップ3以降ではMgのメモリー効果により想定以上のMgが層中に取り込まれる。上記のように、ステップ3以降ではCPMgの供給量をステップ2までの第1の供給量の10分の1以下まで下げることで、p型AlGaN層全体に亘ってMg濃度を3×1019atoms/cm未満とすることができる。
なお、実施例3において、第1のp型AlGaN層の層厚は、0.4nm以上1nm以下とすることが好ましい。0.4nm未満ではMgの活性層への拡散やMgに起因する欠陥の活性層への拡がりを防止する効果が乏しく、1nmを越えると素子電圧の上昇を招くおそれがある。
また、本実施例において、第1のp型AlGaN層のAl組成の設計値は、25%以下とすることが好ましい。Al組成が25%を超えると、素子電圧が上昇するおそれがあるからである。
また、本実施例において、第2のp型AlGaN層及び第4のp型AlGaN層Al組成の設計値は、33%以上50%以下とすることが好ましい。Al組成が33%未満では電子キャリアのオーバーフローが生じ易くなり、閾値電流密度が上昇し易くなる。Al組成が50%を超えると、p型AlGaN層の結晶性の低下、クラックの発生、動作電圧の上昇等の影響が大きくなる。
また、本実施例において、第2のp型AlGaN層の層厚は、2nm以上3nm以下とすることが好ましい。2nm未満では第2領域のMg濃度を3×1018atoms/cm以上とすることが困難であり、3nmを越えると、第4の素子p型AlGaN層との兼ね合いから素子電圧の上昇が危惧されるからである。同様に、第4のp型AlGaN層の層厚についても、2nm以上3nm以下とすることが好ましい。
また、本実施例において、第3のp型AlGaN層及び第5のp型AlGaN層のAl組成の設計値は、20%以上30%以下とすることが好ましい。第3のp型AlGaN層及び第5のp型AlGaN層のAl組成をこの範囲にすることで、第2のp型AlGaN層及び第4のp型AlGaN層との組み合わせにより、電子キャリアのオーバーフローを抑制しつつ、クラックの発生や動作電圧の上昇を抑制することができる。
以上、説明したように、本実施例のp型AlGaN層成長ステップによれば、p型AlGaN層を上記のように5つのステップに分けて成長することで、p型AlGaN層中のMg濃度が3×1019atoms/cm未満、好ましくは1×1019atoms/cm未満であり、かつ、第2領域におけるMg濃度の平均値が3×1018atoms/cm以上であり、第2領域におけるMg濃度曲線は、第2領域の層厚方向の中心よりも第1領域側の部分における傾きの平均値よりも第3領域側の部分における傾きの平均値の方が大きく小さくなるように確実に制御することができる。
なお、上記の実施例において、p型AlGaN層の層厚が10nmである例について説明したが、これに限られない。p型AlGaN層の層厚は、8nm以上15nm以下であることが好ましい。層厚が8nm未満では電子キャリアのオーバーフローが生じ易くなり、閾値電流密度が上昇し易くなる。層厚が15nmを越えると、クラックの発生や動作電圧の上昇を招くおそれがある。
なお、上記の実施例において、Al組成曲線によって示される第2領域におけるAl組成と第3領域におけるAl組成との差は、3%以上18%以下であることが好ましい。例えば、第2領域におけるAl組成の最大値と、第3領域におけるAl組成の最大値との差(以下、単にAl組成の差と称する)が3%以上で実施例2、実施例3のようにMg濃度曲線の第2領域に平坦な部分があらわれ、当該Al組成の差が8%を超えると実施例1のようにMg濃度曲線の第2領域にピークが現れる点で好ましい。しかし、当該Al組成の差が18%以上ではp型AlGaN層の結晶性の低下が生じ始める点で好ましくない。
なお、上記の実施例において、窒化物半導体多層膜を下部の反射鏡として用いている。AlInNを含む窒化物半導体多層膜は熱伝導率が低いので、共振器長を長くしている関係で、窒化物半導体多層膜を反射鏡とする面発光レーザでは特に閾値電流密度が高くなりやすく、それによってキャリアオーバーフローが起きやすい傾向がある。従って、AlInNを含む窒化物半導体を反射鏡に用いた垂直共振器型発光素子に本発明を適用することは有効である。
上述した実施例及び製造方法における構成は例示に過ぎず、用途等に応じて適宜変更可能である。
10、50、60、70 面発光レーザ
11 基板
15 第1の多層膜反射鏡
17 n型半導体層
19 活性層
21 中間層
23 p型半導体層
25 n電極
27 絶縁層
29 透光性電極
31 第2の多層膜反射鏡
33 p電極

Claims (13)

  1. 基板と、
    前記基板上に、屈折率が互いに異なる2つの半導体層が交互に複数回繰り返し積層された半導体多層膜である第1の多層膜反射鏡と、
    前記第1の多層膜反射鏡上に形成され、n型のドーパントを含む窒化物半導体からなるn型窒化物半導体層と、
    前記n型窒化物半導体層上に形成された活性層と、
    前記活性層上に形成され、p型のドーパントとしてMgを含み、Al組成の異なる3つ以上のAlGaN層が積層された構成を有するp型AlGaN層と、
    前記p型AlGaN層上に形成され、p型のドーパントを含む窒化物半導体からなる半導体層であるp型窒化物半導体層と、
    前記p型窒化物半導体層上に形成され、前記第1の多層膜反射鏡に対向する位置に設けられた第2の多層膜反射鏡と、を含み、
    前記p型AlGaN層の二次イオン質量分析法(SIMS)による分析によって、前記p型AlGaN層中のAl組成の層厚方向における変化を示すAl組成曲線及び前記p型AlGaN層中のMg濃度の層厚方向の変化を示すMg濃度曲線のうち、
    前記Al組成曲線のピーク値の50%における幅の範囲を前記p型AlGaN層と規定し、前記p型AlGaN層をその層厚方向に、前記活性層側から前記p型AlGaN層の1/10の層厚を有する第1領域、前記p型AlGaN層の2/5の層厚を有する第2領域及び前記p型AlGaN層の1/2の層厚を有する第3領域、に順に区分したとき、
    前記Al組成曲線によって示されるAl組成の各領域間の大小関係は、前記第1領域<前記第3領域<前記第2領域であり、
    前記Mg濃度曲線によって示されるMg濃度は前記p型AlGaN層の層厚の全体に亘って3×1019atoms/cm未満であり、かつ、Mg濃度の各領域間の大小関係は、前記第1領域<前記第2領域<前記第3領域であり、
    前記第2領域の少なくとも一部の領域におけるMg濃度が3×1018atoms/cm以上であり、
    前記Mg濃度曲線は、前記第2領域においてピークを有することを特徴とする垂直共振器型発光素子。
  2. 基板と、
    前記基板上に、屈折率が互いに異なる2つの半導体層が交互に複数回繰り返し積層された半導体多層膜である第1の多層膜反射鏡と、
    前記第1の多層膜反射鏡上に形成され、n型のドーパントを含む窒化物半導体からなるn型窒化物半導体層と、
    前記n型窒化物半導体層上に形成された活性層と、
    前記活性層上に形成され、p型のドーパントとしてMgを含み、Al組成の異なる3つ以上のAlGaN層が積層された構成を有するp型AlGaN層と、
    前記p型AlGaN層上に形成され、p型のドーパントを含む窒化物半導体からなる半導体層であるp型窒化物半導体層と、
    前記p型窒化物半導体層上に形成され、前記第1の多層膜反射鏡に対向する位置に設けられた第2の多層膜反射鏡と、を含み、
    前記p型AlGaN層の二次イオン質量分析法(SIMS)による分析によって、前記p型AlGaN層中のAl組成の層厚方向における変化を示すAl組成曲線及び前記p型AlGaN層中のMg濃度の層厚方向の変化を示すMg濃度曲線のうち、
    前記Al組成曲線のピーク値の50%における幅の範囲を前記p型AlGaN層と規定し、前記p型AlGaN層をその層厚方向に、前記活性層側から前記p型AlGaN層の1/10の層厚を有する第1領域、前記p型AlGaN層の2/5の層厚を有する第2領域及び前記p型AlGaN層の1/2の層厚を有する第3領域、に順に区分したとき、
    前記Al組成曲線によって示されるAl組成の各領域間の大小関係は、前記第1領域<前記第3領域<前記第2領域であり、
    前記Mg濃度曲線によって示されるMg濃度は前記p型AlGaN層の層厚の全体に亘って3×1019atoms/cm未満であり、かつ、Mg濃度の各領域間の大小関係は、前記第1領域<前記第2領域<前記第3領域であり、
    前記第2領域におけるMg濃度の平均値は3×1018atoms/cm以上であり、
    前記第2領域における前記Mg濃度曲線は、前記第2領域のうち前記第2領域の層厚方向の中心よりも前記第1領域側の部分における傾きの絶対値の平均値よりも前記第3領域側の部分における傾きの絶対値の平均値の方が小さいことを特徴とする垂直共振器型発光素子。
  3. 前記Mg濃度曲線によって示される前記p型AlGaN層中のMg濃度は前記層厚の全体に亘って1×1019atoms/cm未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の垂直共振器型発光素子。
  4. 前記Mg濃度曲線によって示される前記第1領域におけるMg濃度が2×1018atoms/cm未満であることを特徴とする請求項1に記載の垂直共振器型発光素子。
  5. 前記Al組成曲線によって示される、前記第2領域におけるAl組成と前記第3領域におけるAl組成との差は、3%以上18%以下であることを特徴とする請求項1に記載の垂直共振器型発光素子。
  6. 前記p型AlGaN層の前記層厚は8nm以上15nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の垂直共振器型発光素子。
  7. 垂直共振器型発光素子を製造する方法であって、
    有機金属気相成長法(MOCVD)により、
    基板上に、屈折率が互いに異なる2つの半導体層を交互に成長させて第1の多層膜反射鏡を形成するステップと、
    n型ドーパントの材料ガスを供給しつつ前記第1の多層膜反射鏡上にn型窒化物半導体層を成長させるn型窒化物半導体層成長ステップと、
    前記n型窒化物半導体層上に活性層を形成するステップと、
    p型ドーパントとしてMgの材料ガスを供給しつつ前記活性層上に、p型の導電型を有するAlGaN層であるp型AlGaN層を成長させるp型AlGaN層成長ステップと、
    前記p型AlGaN層上にp型窒化物半導体層を成長させるp型窒化物半導体層成長ステップと、
    前記p型窒化物半導体層上に前記第1の多層膜反射鏡に対向する第2の多層膜反射鏡を形成するステップと、を含み、
    前記p型AlGaN層成長ステップは、
    第1の温度から第2の温度まで昇温しつつ、窒素源ガス及びGaの材料ガスを所定の供給量で供給し、Alの材料ガスを第1の供給量で供給し、前記Mgの材料ガスを第2の供給量で供給して第1のp型AlGaN層を成長する第1の成長ステップと、
    前記第1の成長ステップの後、前記第1の成長ステップにおける前記窒素源ガス、前記Gaの材料ガス、前記Alの材料ガス及び前記Mgの材料ガスの供給量を維持しつつ第2のp型AlGaN層を成長する第2の成長ステップと、
    前記第2の成長ステップの後、前記Alの材料ガスを前記第1の供給量よりも低い第3の供給量で供給し、かつ、前記Mgの材料ガスを前記第2の供給量よりも低い第4の供給量で供給しつつ第3のp型AlGaN層を成長する第3の成長ステップと、
    を含むことを特徴とする製造方法。
  8. 前記第3の成長ステップの実行後、さらに前記第2の成長ステップ及び前記第3の成長ステップを実行するステップを含むことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記第4の供給量は、前記第2の供給量の10分の1以下であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
  10. 垂直共振器型発光素子を製造する方法であって、
    有機金属気相成長法(MOCVD)により、
    基板上に、屈折率が互いに異なる2つの半導体層を交互に成長させて第1の多層膜反射鏡を形成するステップと、
    n型ドーパントの材料ガスを供給しつつ前記第1の多層膜反射鏡上にn型窒化物半導体層を成長させるn型窒化物半導体層成長ステップと、
    前記n型窒化物半導体層上に活性層を形成するステップと、
    p型ドーパントとしてMgの材料ガスを供給しつつ前記活性層上に、p型の導電型を有するAlGaN層であるp型AlGaN層を成長させるp型AlGaN層成長ステップと、
    前記p型AlGaN層上にp型窒化物半導体層を成長させるp型窒化物半導体層成長ステップと、
    前記p型窒化物半導体層上に第1の多層膜反射鏡に対向する第2の多層膜反射鏡を形成するステップと、を含み、
    前記p型AlGaN層成長ステップは、
    第1の温度から第2の温度まで昇温しつつ、窒素源ガスを所定の供給量で供給し、前記Mgの材料ガスを第1の供給量で供給する前処理ステップと、
    前記前処理ステップの後、前記窒素源ガスの供給を継続しつつ、Gaの材料ガスを所定の供給量で供給し、Alの材料ガスを第2の供給量で供給し、前記Mgの材料ガスを第3の供給量で供給して第1のp型AlGaN層を成長する第1の成長ステップと、
    前記第1の成長ステップの後、前記第1の成長ステップにおける前記窒素源ガス、前記Gaの材料ガス、前記Alの材料ガス及び前記Mgの材料ガスの供給量を維持しつつ第2のp型AlGaN層を成長する第2の成長ステップと、
    前記第2の成長ステップの後、前記Alの材料ガスを前記第2の供給量よりも低い第4の供給量で供給し、かつ、前記Mgの材料ガスを前記第3の供給量よりも低い第5の供給量で供給しつつ第3のp型AlGaN層を成長する第3の成長ステップと、
    を含むことを特徴とする製造方法。
  11. 前記p型AlGaN層成長ステップにおいて、雰囲気ガスが窒素ガスであることを特徴とする請求項8又は10に記載の製造方法。
  12. 前記第3の供給量は、前記第1の供給量以下であることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
  13. 前記第5の供給量は、前記第3の供給量の10分の1以下であることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
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