JP2023184283A - ラジアル軸受 - Google Patents

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啓一 居島
Keiichi Ijima
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Abstract

Figure 2023184283000001
【課題】長期間にわたって高い耐電食性能を得ることができ、かつ高速回転に対応可能なラジアル軸受を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかるラジアル軸受100の構成は、内輪110と、外輪120と、内輪110と外輪120の間に配置され主転動体130とを有するラジアル軸受であって、内輪110に固定された円環状の内輪スリンガー150と、外輪120に固定された円環状の外輪スリンガー160と、内輪スリンガー150と外輪スリンガー160の間にアキシャル方向に接触して転動する副転動体180とを備え、内輪スリンガー150、外輪スリンガー160および副転動体180は導電性を有し、副転動体180の硬度は、主転動体130の硬度より低いことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、内輪と、外輪と、外輪と内輪の間に配置され主転動体とを有するラジアル軸受に関する。
近年、EV車(electric car)やHV車(hybrid car)等の開発の進展もあり、一台の自動車に搭載される高電圧部品の数が増加しつつある。この高電圧部品の電流が軸受に通電すると、軸受の転動体の表面、外輪や内輪の軌道面に電食が生じてしまい、損傷の一因となる。そのため、自動車における電食対策が要望されている。
電食対策は、高電圧部品に起因する電荷(迷走電流)をその周辺ケースにアースさせることである。電食としては例えば特許文献1に、「モータと、モータコイルに接続され、スイッチング素子により電流の向きを変える高周波制御器としてのインバータと、モータシャフトから駆動輪に至る動力伝達経路上に設けられ、モータシャフトより下流位置にて電気抵抗を与える抵抗体と、抵抗体より動力伝達経路上の下流位置と、車体と、の間を電気的に接続するアース接続体と」を備える電動車両用動力伝達装置が開示されている。
特許第5943033号
特許文献1のようなアース接続体を備えることにより、電食を低減することができる。しかしながら特許文献1のようにアース接続体として摺接ブラシを用いる場合、軸受の動作時に摺接ブラシが摩耗する。その結果、長期間の使用によって耐電食性能の低下が生じてしまう。特に軸受を高速回転させると摩耗が顕著になるため、軸受の寿命がさらに短くなってしまうという問題もある。したがって、特許文献1の技術には更なる改善の余地がある。
本発明は、このような課題に鑑み、長期間にわたって高い耐電食性能を得ることができ、かつ高速回転に対応可能なラジアル軸受を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかるラジアル軸受の代表的な構成は、内輪と、外輪と、内輪と外輪の間に配置され主転動体とを有するラジアル軸受であって、内輪に固定された円環状の内輪スリンガーと、外輪に固定された円環状の外輪スリンガーと、内輪スリンガーと外輪スリンガーの間にアキシャル方向に接触して転動する副転動体とを備え、内輪スリンガー、外輪スリンガー、および副転動体は導電性を有し、副転動体の硬度は、主転動体の硬度より低いことを特徴とする。
上記主転動体および副転動体は鋼材からなり、主転動体は焼き入れ処理が施されていて、副転動体は焼き入れ処理が施されていないとよい。
本発明によれば、長期間にわたって高い耐電食性能を得ることができ、かつ高速回転に対応可能なラジアル軸受を提供することができる。
本実施形態にかかるラジアル軸受を説明する図である。 電極材料のロックウェル硬度と絶縁破壊電圧との関係を例示する図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
図1は、本実施形態にかかるラジアル軸受100を説明する図である。図1に例示するように本実施形態のラジアル軸受は、内輪110、外輪120、主転動体130および保持器140を備える。主転動体130は、保持器140に保持された状態で内輪110および外輪120の間に配置され、それらの間で転動する。
また本実施形態の100では、内輪110には円環状の内輪スリンガー150が固定されていて、外輪120には円環状の外輪スリンガー160が固定されている。内輪スリンガー150と外輪スリンガー160は接触していない。内輪スリンガー150には円形の溝である軌道面152が形成されていて、この軌道面152と対向するように、外輪スリンガー160には円形の溝である軌道面162が形成されている。これら対向する軌道面152,162で構成される隙間に副転動体180が配置されている。副転動体は保持器170によって一定の間隔を保つように保持されている。
副転動体180は、内輪スリンガー150および外輪スリンガー160にアキシャル方向に接触していて、それらの間で転動しながら通電する。なお副転動体180は、内輪スリンガー150および外輪スリンガー160に挟持されていることで接触していてもよいし、副転動体180の自重または軸受回転時の遠心力によって内輪スリンガー150および外輪スリンガー160の両方に接触するようにしてもよい。ここで重要なことは、ラジアル軸受100において副転動体180はアキシャル方向に接触しているから、原則として副転動体180はラジアル軸受100にかかるメインの荷重(外力)を受けない点である。なお、仮にアキシャル荷重を与えられたとしても、内輪スリンガー150および外輪スリンガー160は薄板の円環状の部材であるから、内輪スリンガー150および外輪スリンガー160がたわんでしまうために副転動体180によってアキシャル荷重を受けることはできない。
上述した主転動体130および副転動体180はいずれも金属材料であって、導電性を有する。ラジアル軸受100に対してかかるラジアル方向の外力は、内輪110、外輪120および主転動体130によって受け持つ。一方で、主転動体130を通る経路のインピーダンスより、副転動体180を通る経路のインピーダンスを低く設定する。これにより、高電圧部品に起因する電荷(迷走電流)を、内輪スリンガー150、外輪スリンガー160および副転動体180に通電させることで周辺の部材にアースさせることができる。したがって、内輪110、外輪120および主転動体130における通電に起因するそれらの電食を効果的に抑制し、高い耐電食性能を得ることが可能である。
本発明では、いずれも金属材料である副転動体180の硬度を、主転動体130の硬度より低く設定することによって、主転動体130を通る経路のインピーダンスより、副転動体180を通る経路のインピーダンスを低く設定する。
図2は、電極材料のロックウェル硬度と絶縁破壊電圧との関係を例示する図であり、図2では硬度としてロックウェル硬度を例示している(出典:渡辺秀雄,他:「最近の真空しゃ断器の動向」電気学会雑誌 102巻6号 p.465-472(1982年))。図2には、電極材料としてBi、Al、Cu、SUS合金、Mo、Cu-W合金を使用した場合のそれぞれのロックウェル硬度に対する絶縁破壊電圧がプロットしてあり、その近似関数の一次曲線Sが例示してある。図2のグラフからは、絶縁体が変わらずとも、電極材料の硬度が高いほど絶縁破壊電圧が大きくなることがわかる。
本実施形態のラジアル軸受100において絶縁体は、主転動体130や副転動体180の表面に形成されている油膜である。そして絶縁破壊電圧とは、絶縁体(油膜)が電気的に破壊し絶縁性を失って電流を流すようになったときの電圧のことである。
本実施形態のラジアル軸受100において電気の経路は、主転動体130を通る経路と、副転動体180を通る経路である。そして、早期に絶縁破壊した経路を電気が通ることになる。そこで本実施形態のラジアル軸受100では特に、副転動体180の硬度を、主転動体130の硬度より低く設定している。したがって、副転動体180を通る経路の方が早期に絶縁破壊するため、電気は「副転動体180と内輪スリンガー150および外輪スリンガー160」を主に流れることとなる。したがって、主転動体130、内輪110および外輪120の通電を防ぐことができる。
上述した効果を得る手法としては、例えば主転動体130および副転動体180に鋼材を用い、主転動体130には焼き入れ処理を施し、副転動体180には焼き入れ処理を施さない構成とするとよい。これにより、主転動体130の硬度を高くし副転動体180の硬度を低くすることが可能となる。
ただし、かかる構成は例示にすぎず、他の材料を用いたり、焼き入れ処理の有無を除外したりするものではない。ラジアル軸受100において、アキシャル軸受の構造を有する副転動体180には、外部からの荷重は基本的にかからない。したがって副転動体180には高い剛性は必要なく、様々な材料を使用することができる。具体的には、副転動体180に銅やアルミニウムを用いることができる。銅とアルミニウムは図2のグラフで確認されているため、絶縁破壊電圧が低くなることは確実である。さらに焼き入れした鋼よりも硬度が低い導電性材料であれば本発明に沿う挙動を示すはずであるから、軟鉄や真鍮その他の合金を用いてもよい。
また、副転動体180には電流が流れるために、副転動体180や内輪スリンガー150、外輪スリンガー160には電食が発生することが考えられる。しかし副転動体180には外部からの荷重はかからないのであるから、ラジアル軸受100の回転性能に影響を及ぼすことはない。換言すれば、ラジアル軸受100の機能に影響しない副転動体180において電食を発生させることにより、主転動体130の電食を回避する。そしてブラシではなく転動体(副転動体180)によって導通することから、高速回転にも対応することが可能である。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、内輪と、外輪と、外輪と内輪の間に配置され主転動体とを有するラジアル軸受として利用することができる。
100…ラジアル軸受、110…内輪、112…軌道面、120…外輪、122…軌道面、130…主転動体、140…保持器、150…内輪スリンガー、152…軌道面、160…外輪スリンガー、162…軌道面、170…保持器、180…副転動体

Claims (2)

  1. 内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪の間に配置され主転動体とを有するラジアル軸受であって、
    前記内輪に固定された円環状の内輪スリンガーと、
    前記外輪に固定された円環状の外輪スリンガーと、
    前記内輪スリンガーと前記外輪スリンガーの間にアキシャル方向に接触して転動する副転動体とを備え、
    前記内輪スリンガー、前記外輪スリンガー、および前記副転動体は導電性を有し、
    前記副転動体の硬度は、前記主転動体の硬度より低いことを特徴とするラジアル軸受。
  2. 前記主転動体および前記副転動体は鋼材からなり、
    前記主転動体は焼き入れ処理が施されていて、前記副転動体は焼き入れ処理が施されていないことを特徴とする請求項1に記載のラジアル軸受。
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