JP2023182231A - Sars-cov-2 s糖タンパク質エクトドメインを含むプロテオリポソームおよびワクチンとしてのそれらの使用 - Google Patents

Sars-cov-2 s糖タンパク質エクトドメインを含むプロテオリポソームおよびワクチンとしてのそれらの使用 Download PDF

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Abstract

【課題】 コロナウイルス感染、特に、SARS-CoV-2感染の予防および/または治療。【解決手段】 それぞれ少なくともSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメインを含む3つの組換えプロトマーを含む組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体であって、各プロトマーにおいて、フューリン切断部位は不活化/破壊され;上記プロトマーの1つのArg408は上記プロトマーの別のもののLys378に共有結合的に連結され;かつ上記プロトマーの1つのLys947は、上記プロトマーの別のもののArg1019および/またはLys776に共有結合的に連結されている三量体が開示される。【選択図】図1

Description

特許法第30条第2項適用申請有り (1)2021年7月26日、「bioRxiv Preprint」(https://doi.org/10.1101/2021.07.26.453755)、(2)2022年1月23日、「Cell Reports Medicine」(https://doi.org/10.1016/j.xcrm.2022.100528)
本発明は、コロナウイルス感染、特に、SARS-CoV-2感染を予防および/または治療の分野に関する。
より詳しくは、本発明は、天然コンフォメーションで安定化された組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体、ならびにこのような組換え三量体を含むプロテオリポソームおよびこのようなプロテオリポソームに基づくワクチンに関する。本発明はまた、このようなワクチンを用いて対象におけるSARS-CoV-2感染を治療または予防する方法に関する。
ベータコロナウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2、すなわち、SARS-CoV-2は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)の病原体であり、瞬く間に世界的パンデミックに拡大し、2021年11月時点の死者は500万人を超え、有効な感染制御および予防の切迫したニーズが強調される。
抗ウイルスワクチンの保護と中和抗体の生成には大きな相関がある。中和抗体を誘導するための主要なSARS-CoV-2標的は、スパイク(S)糖タンパク質であり、これは特に表面に位置するために、宿主細胞に対するウイルスの付着、融合および侵入に不可欠な役割を果たしている。S糖タンパク質は、受容体結合ドメイン(RBD)を保持するS1サブユニットとウイルス膜にS三量体を係留するS2膜融合サブユニットから構成される。
RBDが細胞受容体アンギオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合するとウイルスが付着し、続いてのS2により媒介されるエンドソーム膜との融合が感染を確立する。S糖タンパク質は、三量体の前駆体ポリタンパク質として合成され、これはゴルジでフューリンおよびフューリン様プロテアーゼによってタンパク質分解により切断され、非共有結合的に連結されたS1-S2ヘテロ三量体を生成する。S糖タンパク質の構造から、S1(NTD、RBD、RBMおよび2つのサブドメイン)、S2(膜貫通領域)および細胞質ドメインから構成されるコンパクトなヘテロ三量体であることが明らかである。RBDのコンフォメーションは、受容体が接近不能な閉鎖したコンフォメーションにある全RBDまたは受容体が接近可能な「アップ」コンフォメーションにある1つもしくは2つのRBDの間の動的平衡状態にある。「アップ」位のS RBDのみに受容体の結合が可能であり、これによって、タンパク質分解により切断されたS糖タンパク質にS2融合後コンフォメーションが誘導される(非特許文献1;非特許文献2)。
S糖タンパク質を標的とする抗体は、SARS-CoV-2血清転換の際に同定され、主として免疫優性であるRBDを標的とする(非特許文献3)。これによって多くの中和抗体の単離に至り、抗体に基づくワクチン接種戦略が確立された。これらの抗体の多くは、小動物および非ヒト霊長類におけるSARS-Cov-2抗原投与に対してin vivo防御効果を有することが示されており、臨床開発および使用中である(非特許文献4)。
自然感染の際のS糖タンパク質に対する抗体応答の大きさは様々であり、疾病の重症度および期間と相関する。基礎応答は一般に感染後数か月維持されるが、特に無症候性個体では数週間で低下する。従って、ワクチンに基づくアプローチは長期間持続する免疫を誘導することを目標にする。
SARS CoV-2感染を研究するために、マカクザルモデルを始めとするいくつかの動物モデルが開発されており、感染時に自然応答、細胞性応答および体液性応答を誘導し、再感染に対して部分的保護を付与することが実証された(非特許文献5)。結果として、現在認可されているS特異的mRNA送達に基づくワクチン(BNT162b2、Pfizer/BioNTech;mRNA-1273、Moderna)、アデノウイルスベクター(ChAdOx1 nCoV-19、Oxford/AstraZeneca;Ad26.COV2.S、Johnson & Johnson)および不活化SARS-CoV-2(PiCoVacc/CoronaVac、Sinovac)を含む初期の多くのワクチン候補がマカクザルモデルに対して防御効果があった。古典的サブユニットアプローチを採った場合、S糖タンパク質サブユニットワクチン候補は、前臨床試験において種々のレベルの中和抗体応答を生じた(非特許文献6)。
Yan et al. (2020). Science 367, 1444-1448 Lan et al. (2020). Nature 581, 215-220 Piccoli et al. (2020). Cell 183, 1024-1042 Weinreich et al. (2021). N Engl J Med 384, 238-251 Deng et al. (2020). Science 369, 818-823 Liang et al. (2021). Nat Commun 12, 1346
本発明者らは、今般、特定の修飾を含む組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体は、リポソームを使用した合成ウイルス様粒子に組み込まれた場合に、それを投与した動物を少なくとも野生型SARS-CoV-2およびアルファ偽ウイルス変異株による感染から効率的に保護し、殺菌免疫を提供することによって、より詳しくは、粘膜の免疫応答を増強することによって低い効力でベータおよびガンマ偽ウイルス変異株を中和することを見出した。さらに、RBD特異的抗体は初回および2回目の免疫誘導後には優勢であるが、3回目の免疫誘導のS特異的ED50中央値はRBD特異的ED50の3倍であり、3回以上の免疫誘導が非RBD Sエピトープを標的とする反応性B細胞レパートリーの拡大増殖を可能とし、天然SARS-CoV-2およびその変異株に対するワクチン開発の分野で特に有利となることが示唆される。
より詳しくは、本発明の1つの目的は、それぞれ少なくともSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメインを含む3つの組換えプロトマーを含む組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体であり、少なくとも、
各プロトマーにおいて、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の682~685番に位置するフューリン切断部位は不活化/破壊され;
上記プロトマーの1つ天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の408番に位置するアミノ酸残基は、上記プロトマーの別のものの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の378番に位置するアミノ酸残基に共有結合的に連結され;ならびに
上記プロトマーの1つの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の947番に位置するアミノ酸残基は、上記プロトマーの別のものの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の1019番に位置するアミノ酸残基に共有結合的に連結され、かつ/または上記プロトマーの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の947番に位置するアミノ酸残基は、上記プロトマーの別のものの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の776番に位置するアミノ酸残基に共有結合的に連結されている。
これらの特徴を備えた三量体は有利には、天然コンフォメーションで安定化される。
本発明の特定の実施形態では、上記三量体組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメインの各プロトマーは、
天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の682~685番に位置するアミノ酸残基が配列GSAS(配列番号2)のアミノ酸モチーフにより置換され;かつ/または
それがC末端三量体化ドメインに連結され;かつ/または
それが天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の986および987番の位置の少なくとも2つのプロリン置換を含み;かつ/または
それがそのC末端で少なくとも1つのタグに連結され;かつ/または
それがSARS-CoV-2 S糖タンパク質の最初の1208のアミノ酸残基若しくはそれと少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質を含む、特に、それらからなる。
特定の実施形態では、
天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の408番に位置するアミノ酸残基はアルギニン残基であり、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の378番に位置するアミノ酸残基はリシン残基であり、かつ、上記プロトマーの1つの上記アルギニン残基と上記プロトマーの別のものの上記リシン残基は、メチレン架橋により連結され;かつ/または
天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の947番に位置するアミノ酸残基はリシン残基であり、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の1019番に位置するアミノ酸残基はアルギニン残基であり、かつ、上記プロトマーの1つの上記リシン残基と上記プロトマーの別のものの上記アルギニン残基は、メチレン架橋により連結され;かつ/または
天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の947番に位置するアミノ酸残基はリシン残基であり、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の776番に位置するアミノ酸残基はリシン残基であり、かつ、上記リシン残基どうしはメチレン架橋により連結されている。
本発明の特定の実施形態では、三量体は、ホモ三量体である。
本発明によれば、このような組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体を生産する方法は、宿主細胞において上記プロトマーをコードする核酸分子を発現させて上記三量体を生産すること、上記三量体を精製すること、および上記三量体をホルムアルデヒドで処理することを含む。
本発明の別の目的は、表面が本発明の組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体でコーティングされた脂質小胞を含むプロテオリポソームである。
このようなプロテオリポソームの調製方法は、上記三量体を上記脂質小胞とともにインキュベートすることを含む。
本発明の別の目的は、本発明のプロテオリポソーム、ならびに任意選択により薬学上許容される担体および/またはアジュバントを含むワクチンである。
本発明はまた、対象におけるSARS-CoV-2感染の治療または予防するための本発明のワクチンの治療的使用に関する。
本発明の特定の実施形態では、対象におけるSARS-CoV-2感染の治療または予防は、対象にワクチンを少なくとも2回、または少なくとも3回投与することを含む。
ワクチンは、特に、対象に筋肉内または鼻腔内投与され得る。
本発明の特徴および利点は、図1~7を補助として以下の実施例に照らしてより明らかとなり、これらの実施例は例示目的で提供されるに過ぎず、本発明を何ら限定しない。
図1は、本発明(FA-S)の三量体およびこの三量体に基づくプロテオリポソーム(FA-S-LVs)の構造的特徴の結果を示す。(A)左のパネル、3つ全てRBDダウンのFA-SのクライオEM密度。この構造はC3対称とした126,719粒子から計算した;中央のパネル、リボンとして示される3.4Åの分解能まで精密化したFA-Sの分子モデル。モデル化されたN結合グリカンが全原子モデルとして示される;右のパネル、異なるプロトマーからのRBDとS2サブユニットを共有結合的に連結する2つの主要な架橋部位。(B)RBD間の架橋部位の拡大(左のパネル);側鎖を接続する連続密度により示されるような隣接するプロトマーのK378およびR408のホルムアルデヒド架橋アミノ基(右のパネル)。(C)S2間の架橋部位の拡大(左のパネル);中央のヘリックスR1019ならびにS2 K776とS2 HR1K947との間の連続密度は、プロトマー間の、占有率の等しい2つの交互架橋を示す(右のパネル)。(D)S三量体によるリポソームの規則的装飾を明らかにするFA-S-LVsのネガティブ染色電子顕微鏡による分析。50のFA-S-LVs(ネガティブ染色EM二次元画)上でのFA-S三量体の計数は、231±92の三量体を示した。よって、およそまたは少なくとも460±184のFA-S三量体がLVsと結合していると推定される。スケールバーは200nm。 図2は、カニクイザルのFA-S-LVsワクチン接種により誘導された抗体応答の分析結果を示す。(A)ワクチン接種、抗原投与およびサンプル採取のスキーム。シリンジはワクチン接種の時点を示し、ウイルス粒子は抗原投与の時点を示す。全ての図で各マカクザルを識別する記号を使用する。(B)試験中、0、2、4、6、8、10、12、22、24、26、28週目に決定されたSARS-CoV-2 Sタンパク質特異的IgGのELISA、各動物のAb力価を示す。(C)試験中示された週数に決定されたSARS-CoV-2 FA-Sタンパク質特異的IgGのELISA。(D)試験中示された週数に決定されたSARS-CoV-2 S RBD特異的IgGのELISA。パネル(B)、(C)、および(D)については、対応する群間の差はウィルコクソンの符合順位検定(p<0.1)を用いて比較した。(EおよびF)鼻咽頭液におけるS特異的IgG(E)およびIgA(F)の検出。鼻咽頭ぬぐい液におけるLuminexに基づく血清アッセイで測定したSARS-CoV-2 SへのIgGおよびIgAの結合の相対平均蛍光強度(MFI)。バックグラウンドレベルを点線で示す。水平の線は、抗原投与日を示す。パネル(E)および(F)では、群はマン・ホイットニーU検定(p<0.05)を用いて比較した。A~Fに示されたデータは技術的反復からのものである。 図3は、FA-S-LVsワクチン接種時のSARS-CoV-2偽ウイルスの血清中和を示す。(A)Ab力価を中和するSARS-CoV-2の進化を、0、2、4、6、8、11、12、19週目に採取した血清に関して示す。バーは4個体の動物の力価中央値を示す。対応する群間の差はウィルコクソン符合順位検定(p<0.1)を用いて比較した。示されたデータは技術的反復からのものである。(B)アフィニティークロマトグラフィーによれば11週目の血清ではRBD特異的Abが枯渇し、各動物の完全な血清の中和活性を100%とし、RBD枯渇血清およびRBD特異的血清と比較した。 図4は、SARS-CoV-2感染に対するカニクイザルのFA-S-LVs免疫誘導の結果を示す。抗原投与後の対照(黒)およびワクチン接種した(灰色)マカクザルの気管ぬぐい液(左)および鼻咽頭ぬぐい液(中央)におけるゲノム(A)およびサブゲノム(sg)RNAウイルス量(B)。抗原投与後の対照およびワクチン接種したマカクザルにおける気管支肺胞洗浄(BAL)中のウイルス量を示す(右)。バーはウイルス量中央値を示す。垂直の点線は、抗原投与日を示す。水平の点線は、定量限界示す。示されたデータは技術的反復からのものである。示されたデータは技術的反復からのものである。 図5は、SARS CoV-2抗原投与後のワクチン接種および対照カニクイザルの血清抗体力価および中和の分析の結果を示す。抗体IgG力価は、(A)SARS-CoV-2 S、(B)SARS-CoV-2 FA-Sおよび(C)SARS-CoV-2 S RBDに対して24週目(抗原投与)、25週目、26週目、27週目および28週目にELISAによって決定した。ワクチン接種動物を灰色の記号で示し、対照動物を黒い記号で示す。(D)24週目(抗原投与)および曝露1週間後、2週間後および4週間後(25週目、26週目、28週目)のSARS CoV-2偽ウイルス中和力価。バーは力価中央値を示す。パネルA~Dについて、対応する群間の差は、ウィルコクソン符合順位検定(p<0.1)を用いて比較した。A~Dに示されたデータは技術的反復からのものである。 図6は、FA-S-LV免疫カニクイザルにおける抗原特異的CD4 T細胞応答を示す。免疫誘導後(p.im.)(W)21週目(すなわち、4回目の免疫誘導の2週間後、曝露前)および曝露14日後(dpe.)の各免疫したマカクザル(n=4)に関するそれぞれ総CD4+T細胞集団中の(A)IFNγ+、TFNα+およびIL-2+、(B)Th1(IFN γ+/-、IL-2+/-、TNFα+)、(C)IL-13+および(D)IL-17+抗原特異的CD4+T細胞(CD154+)の頻度。PBMCを培養培地単独(「NS」、薄い灰色の記号)またはSARS-CoV-2 Sオーバーラッピングペプチドプール(「S1+S2」、灰色の記号)で一晩刺激した。バーは平均を示す。各実験群の時点は、ウィルコクソン符合順位検定を用いて比較した。 図7は、FA-S-LVsワクチン接種により誘導されたSARS CoV-2変異株のロバストな中和を示す。B.1.1.7(アルファ、UK)、B.1.351(ベータ、SA)およびP.1(ガンマ、BR)偽ウイルス中和力価は、武漢ワクチン株と比較した。力価は、8週目(2回の免疫誘導)、12週目(3回の免疫誘導)、24週目および28週目(4回の免疫誘導)の血清から精製した総IgGを使用して決定した。ナイーブ動物から単離されたIgGによるバックグラウンド中和は全ての変異株で100未満であり、破線で示される。示されたデータは技術的反復からのものである。
組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体
本発明の組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体は、それぞれ少なくともSARS-CoV-2ウイルスS糖タンパク質エクトドメインを含む3つの組換えプロトマーを含む。
本発明の特に好ましい実施形態では、これらの3つのプロトマー同一であり、従って、本発明の三量体はホモ三量体である。
本発明の別の実施形態では、これらの3つのプロトマーは全て互いに異なるか、またはそのうち2つが同一であり、もう1つが異なる。
SARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメインは、本発明では、慣例として、細胞外間隙に伸びるタンパク質のドメインと定義される。より詳しくは、最初に同定されたSARS-CoV-2ウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2武漢-Hu-1分離株)のS糖タンパク質のアミノ酸配列では、SARS-CoV-2 S糖タンパク質のエクトドメインは、アミノ残基12~1190に相当する。本明細書で「天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質」と称されるこのS糖タンパク質のアミノ酸配列(配列番号1)は、GenBankデータベースには受託番号MN908947.3(「S」コード配列(ヌクレオチド21563~25384))として記載されている。
本発明によれば、SARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメインには、本明細書で「天然エクトドメイン」と称される配列番号3のアミノ酸配列の天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質のエクトドメイン、ならびに中和抗体応答を誘導する天然エクトドメインの応力を保持する、および好ましくは配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、いっそうより好ましくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するその任意の変異体が含まれる。
このような変異株は、最初に同定されたSARS-CoV-2ウイルスの任意の変異株または突然変異株、例えば、変異株アルファ(変異株B.1.1.7としても知られる)、変異株ベータ(変異株B.1.351としても知られる)、変異株ガンマ(変異株P.1としても知られる)、変異株デルタ(変異株B.1.617.2としても知られる)、変異株オミクロン(変異株B.1.1.529としても知られる)などのS糖タンパク質エクトドメインからなり得るか、またはそれと少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、いっそうより好ましくは少なくとも99%のアミノ酸同一性を有し、かつ、中和抗体応答を誘導するそれらの能力を保持する任意のタンパク質からなり得る。
天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメインの変異株は、特に、参照配列を構成する天然エクトドメインの配列に比べて、挿入、欠失および/または置換、特に、N末端および/またはC末端修飾、および/またはアミノ酸残基間の非天然結合を有してよい。置換の場合、これは好ましくは、元のアミノ酸と同じファミリーのアミノ酸によって、例えば、アルギニンなどの塩基性残基の、リシン残基などの別の塩基性残基による置換、アスパラギン酸などの酸性残基の、グルタミン酸などの別の酸性残基による置換、セリンなどの極性残基の、トレオニンなどの別の極性残基による置換、ロイシンなどの脂肪族残基の、イソロイシンなどの別の脂肪族残基による置換などによって行われる。
2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージは、本明細書では、それ自体慣例の方法で、2つの最適にアラインされた配列を比較ウインドウで比較することによって決定される。比較ウインドウ内で比較され、比較ウインドウ内に位置するアミノ酸配列は、それらの2配列間で最適なアラインメントを得るために参照配列に対して付加または削除を含んでもよい。次に、同一性パーセンテージは、比較する2配列でアミノ酸残基が同一である位置の数を求めた後、この位置の数を比較ウインドウ内の位置の総数で割り、得られた数値に100を掛けて2配列間の同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。
特に融合前の状態において安定性が改善されたと従来技術に記載された天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメインの変異体は、本発明の文脈で特に好ましい。
特定の実施形態では、少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つの本発明のプロトマーは、SARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメインからなる。別の実施形態では、それ/それらはまた、SARS-CoV-2 S糖タンパク質の付加的アミノ酸残基、例えば、その残基1~11および/または残基1191~1208も含む。
本明細書の全域において、アミノ酸の位置は、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)の配列を参照して示される。これらの位置は、考慮するSARS-CoV-2 S糖タンパク質の変異体に応じて若干異なる場合がある。所与の変異体に関して、特定のアミノ酸に基づいて、また、変異体の配列と天然配列との比較に基づいてこれらの位置を特定することは、当業者の技術の範囲内である。さらに、これらの位置がこのS糖タンパク質のエクトドメインの上流に位置するSARS-CoV-2 S糖タンパク質の最初のアミノ酸を含まない場合には、それらの位置は実際の組換えプロトマーにおける位置と必ずしも対応しない。本発明に関して定義されるアミノ酸残基のプロトマーにおける位置を天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質配列におけるその位置によって特定することは、当業者の技術の範囲内である。
本発明の三量体の各プロトマーは、SARS-CoV-2 S糖タンパク質の最初の1208のアミノ酸残基、あるいはそれと少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性有し、かつ、中和抗体応答を誘導するその能力を保持するタンパク質を含み得る、またはからなり得る。このようなタンパク質は特に、SARS-CoV-2 S糖タンパク質の最初の1208のアミノ酸残基に関して1以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含み得る。
本発明の組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体では、各プロトマーにおいて、フューリン切断部位が不活化/破壊されている。このフューリン切断部位は、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の682~685番に位置する残基に相当する4つのアミノ酸残基(天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質のアミノ酸配列のarg682、arg683、ala684およびarg685)からなる。
このフューリン切断部位のこのような不活性化は、フューリンなどの細胞プロテアーゼによるS1ドメインとS2ドメインの間の切断を防ぐことによって組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体の細胞安定性を増す。
特定の実施形態では、本発明の三量体のプロトマーの少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくはそれぞれは、682G、683S、684Aおよび/または685S置換を含む。
特定の実施形態では、本発明の三量体のプロトマーの少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくはそれぞれにおいて、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の682~685番に位置するものに相当するアミノ酸残基は、配列GSAS(配列番号2)のアミノ酸モチーフによって置換されている。
本発明の組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体において、上記プロトマーの1つの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の408番の位置のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基は、上記プロトマーの別のものの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の378番の位置のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基に共有結合的に連結されている。三量体の少なくとも2つのプロトマー間の架橋は有利には、これを天然の閉鎖した「RBD-ダウン」コンフォメーションに維持する。これらのアミノ酸は、共有結合によって直接相互に連結されていてもよいし、またはスペーサーアームによって共有結合的に連結されていてもよい。一例として、これらのアミノ酸は、メチレン架橋によって相互に連結することができる。それ以外では、1つのプロトマーと他のプロトマーの間のこの架橋は、プロトマー内の好適な置換によって導入されたシステイン残基間の非天然ジスルフィド結合であり得る。
好ましくは、少なくとも1つのプロトマーは、1つのプロトマーの408番の位置のアミノ酸と他のプロトマーの378番の位置のアミノ酸の間の分子間結合によって別のプロトマーに共有結合的に連結されている。これらのアミノ酸残基は、例えば、1つのプロトマーにおける378C置換および他のプロトマーにおける408C置換によって導入されるシステイン残基間のメチレン架橋または非天然ジスルフィド結合によって相互に結合させることができる。
本発明の特定の実施形態では、少なくとも1つのプロトマーにおいて、好ましくは各プロトマーにおいて、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の408番の位置のアミノ酸残基はアルギニン残基(Arg408)であり、少なくとも別のプロトマーにおいて、好ましくは各プロトマーにおいて、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の378番の位置のアミノ酸残基はリシン残基(Lys378)であり、上記プロトマーの上記アルギニン残基と上記プロトマーの別のものの上記リシン残基はメチレン架橋により連結されている。
本発明の組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体において、少なくとも1つのプロトマーは、S2サブユニット間の分子間結合によって別のプロトマー共有結合的に連結されている。より詳しくは、プロトマーの1つの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の947番の位置のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基は、中央のS2ヘリックスに位置するプロトマーの別のものの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の1019番の位置のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基に共有結合的に連結されている。三量体の少なくとも2つのプロトマー間のこの付加的架橋は有利には、三量体を安定化させる。これらのアミノ酸残基は、共有結合によって直接相互に連結されていてもよいし、またはスペーサーアームによって共有結合的に連結されていてもよい。一例として、これらのアミノ酸は、メチレン架橋によって相互に連結することができる。
好ましくは、少なくとも1つのプロトマーは、中央のS2ヘリックスにおいて、プロトマーの947番の位置のアミノ酸残基と他のプロトマーの1019番の位置のアミノ酸残基の間の分子間結合によって別のプロトマーに共有結合的に連結されている。これらのアミノ酸残基は、例えば、1つのプロトマーの947番の位置のリシン残基と他のプロトマーの1019番の位置のアルギニン残基に結合しているメチレン架橋によって相互に連結させることができる。
本発明の特定の実施形態では、少なくとも1つのプロトマーにおいて、好ましくは、各プロトマーにおいて、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の947番の位置のアミノ酸残基はリシン残基(Lys947)であり、少なくとも別のプロトマーにおいて、好ましくは各プロトマーにおいて、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の1019番の位置のアミノ酸残基はアルギニン残基(Arg1019)であり、上記プロトマーの1つの上記リシン残基と上記プロトマーの別のものの上記アルギニン残基はメチレン架橋により連結されている。
代わりに、または加えて、本発明の組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体において、少なくとも1つのプロトマーは、S2サブユニット間の異なる分子間結合によって別のプロトマーに共有結合的に連結されている。より詳しくは、プロトマーの1つの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の947番の位置のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基は、プロトマーの別のものの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の776番の位置のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基に共有結合的に連結されている。三量体の少なくとも2つのプロトマー間のこの付加的架橋もまた有利には、三量体を安定化させる。これらのアミノ酸は、共有結合によって直接相互に連結されていてもよいし、またはスペーサーアームによって共有結合的に連結されていてもよい。一例として、これらのアミノ酸は、メチレン架橋によって相互に連結することができる。
好ましくは、少なくとも1つのプロトマーは、1つのプロトマーの947番の位置のアミノ酸残基と他のプロトマーの776番の位置のアミノ酸の間の分子間結合によって別のプロトマーに共有結合的に連結されている。これらのアミノ酸残基は、例えば、1つのプロトマーの947番の位置のリシン残基および他のプロトマーの776番の位置のリシン残基に結合しているメチレン架橋によって相互に連結させることができる。
本発明の特定の実施形態では、少なくとも1つのプロトマーにおいて、好ましくは各プロトマーにおいて、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の947番の位置のアミノ酸残基はリシン残基(Lys947)であり、少なくとも別のプロトマーにおいて、好ましくは各プロトマーにおいて、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の776番の位置のアミノ酸残基はリシン残基(Lys776)であり、上記プロトマーの947番の位置の上記リシン残基と上記プロトマーの別のものの776番の位置の上記リシン残基は、メチレン架橋により連結されている。
本発明の三量体は、いずれの数およびいずれの組合せの上記の分子間共有結合を含むこともできる。
これらの共有結合的分子間結合は、例えば、組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体をホルムアルデヒドで処理することによって得ることができる。
本発明者らは、意外にも、これらの共有結合的分子間結合は組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体を、有利には,閉鎖したRBD-ダウンコンフォメーションで、長期間安定化させ、融合後コンフォメーションに至るコンフォメーション変化を防ぐが、抗体生産を妨げず、抗体により認識されるエピトープをマスクしないことを見出した。よって、本発明の組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体は、天然タンパク質の三次元エピトープを認識する抗体の生産を可能とする。
本発明の三量体はまた、分子間または分子内結合であり得る、特にメチレン架橋を介した付加的共有結合を含み得る。これらの付加的結合は、上記のアミノ酸残基間、このような残基と他のアミノ酸残基の間、または他のアミノ酸残基間のものであり得る。
本発明の組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体において、1つ、2つまたは3つのプロトマーは、C末端および/またはN末端修飾を含み得る。
本発明の特定の実施形態では、プロトマーの少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくはそれぞれは、三量体形態でのその安定性を増強するC末端三量体化ドメイン、例えば、C末端T4フィブリチン三量体化ドメイン、またはそれが連結されるタンパク質の三量体化を誘発および/または安定化するその能力が当業者に知られている他のいずれかのドメインに連結される。
本発明の好ましい実施形態では、各プロトマーは、そのC末端に、延長N末端領域(G1-Q11)、β-ヘアピン(A12-L23)、およびC末端310ヘリックス(L23-L27)からなるアミノ酸配列GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL(配列番号4)の、フォルドンドメインとしても知られるC末端T4フィブリチン三量体化モチーフを含む。この延長N末端領域は、P4残基とP7残基の間にポリプロリンIIヘリックスを含み、疎水性接触によってβ-ヘアピンの一端に接して稠密となっている。
本発明の特定の実施形態では、プロトマーの少なくとも1つ、好ましくは2、より好ましくはそれぞれは、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の986番および987番の位置のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基に少なくとも2つのプロリン置換を含む。これらのプロリン置換は、細胞において三量体のその天然コンフォメーションでの安定性を増強する。
本発明の特定の実施形態では、プロトマーの少なくとも1つ、好ましくは2、より好ましくはそれぞれは、好ましくは、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の817番、892番、899番および/または942番の位置のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基に、2~4つの付加的プロリン置換を含む。これらの付加的プロリン置換は、細胞において三量体のその天然コンフォメーションでの安定性をよりいっそう増強する。
本発明の特定の実施形態では、プロトマーの少なくとも1つ、好ましくは2、より好ましくはそれぞれは、好ましくは、そのC末端において、その精製を容易にするためにツインStrep-tag(登録商標)および/またはポリヒスチジンタグ(例えば、8つの連続するヒスチジン残基のもの)などの少なくとも1つのタグと連結される。
ツインStrep-tag(登録商標)は、配列WSHPQFEK(配列番号5)の、間隔をおいた2つの同一のアミノ酸配列からなり、特定の操作を行ったストレプトアビジンに特異的に結合する能力を有する。
各プロトマーは、C末端三量体化モチーフと1つまたは複数のタグの間に、配列LEVLFQGP(配列番号6)のHRV3Cプロテアーゼ切断部位などの切断部位をさらに含み得る。
本発明による組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つのプロトマーを含み得る。
特定の実施形態では、プロトマーの少なくとも1つ、好ましくは2、より好ましくはそれぞれは、配列番号8のアミノ酸配列からなる。
組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体を生産する方法
本発明による三量体を生産する方法は、
上記で定義されるような本発明の組換えプロトマーをコードする核酸分子を宿主細胞で発現させてこのようなプロトマーの三量体を生産すること、
この三量体を精製すること、および
この三量体をホルムアルデヒドで処理すること
を含む。
この方法の第一のステップは、遺伝子組換えによる、少なくともSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメインを含む3つのプロトマーの生産である。このステップは、当業者に公知の任意の様式によって、特に、これらのプロトマーをコードする核酸分子を含む発現ベクターを用いて行うことができる。全てのプロトマーが同一である場合このような核酸分子の1つだけが必要とされる。
発現ベクターは、遺伝子工学において使用するためのそれ自体公知のいずれのタイプのものであってもよく、特に、本発明によるプロトマーをコードする配列の転写および翻訳のために必要な要素を含むプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージであり得る。発現ベクターは特に、各プロトマーに関して、機能的に連結された以下の要素:本発明によるプロトマーをコードするヌクレオチド配列の5’側に位置するプロモーター、およびこの配列の3’側の転写終結シグナルを含み得る。
宿主細胞は、核酸分子が発現され得るいずれの細胞であってもよい。この宿主細胞は、同等に原核細胞、特に、プロトマーの大量生産のための細菌、または真核細胞であってよく、真核細胞は、下等または高等真核生物、例えば、酵母、無脊椎動物または哺乳動物細胞であり得る。宿主細胞は、安定な様式、誘導的様式もしくは構成的様式、あるいはまた一過性様式で本発明のプロトマーを発現し得る。一例として、本発明のプロトマーをコードする核酸分子は、ヒト胎児腎臓細胞株で一過性発現させ得る。
宿主細胞は、発現およびこのようにして生産されたプロトマーの回収を可能とする条件下で培養され、プロトマーは三量体形態で自然に組み立てられる。細胞種に応じてこのような培養条件を決定することは、当業者の技術の範囲内である。
このようにして得られた三量体は、それ自体公知のいずれの方法によって精製してもよい。本発明の特定の実施形態において、組換えプロトマーの少なくとも1つは、特に、そのC末端にポリヒスチジンタグなどのタグを含み、精製方法は、このタグの、結合相手、例えば、ポリヒスチジンタグの場合にはセファロース樹脂と結合する特定の能力を利用することができる。
三量体をホルムアルデヒドで処理するステップは、プロトマー間、例えば、
408番の位置のアミノ酸残基、好ましくはArg408と378番の位置のアミノ酸残基、好ましくはLys378の間、
および947番の位置のアミノ酸残基、好ましくはLys947と1019番の位置のアミノ酸残基、好ましくはArg1019の間、および/または
947番の位置のアミノ酸残基、好ましくはLys947と、776番の位置のアミノ酸残基、好ましくはLys776の間
の分子内メチレン架橋の形成を可能とする条件で行われる。
それは好ましくは、プロトマー間の完全な架橋を得るために数時間、少なくとも2時間、好ましくは一晩行われる。それは室温で、すなわち20~25℃の温度で行われる。
一例として、三量体をホルムアルデヒドで処理するステップは、三量体を4%v/vのホルムアルデヒドを含む水溶液と接触させることを含む。この水溶液に導入されるタンパク質の含量は好ましくは、0.3~1.2mg/mlである。それは例えば約1mg/mlである。
プロテオリポソーム
本発明によるプロテオリポソームは、表面が本発明による組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体によりコーティングされた脂質小胞を含む。
好ましくは定義された脂質組成のこのようなプロテオリポソームは、有利にはウイルス様粒子に類似し、組換え三量体の安定性の増大およびin vivo循環半減期の延長をもたらす。ワクチンとして使用される場合、本発明のプロテオリポソームは、本発明の組換え三量体単独での免疫誘導よりも効率的な免疫応答を誘導する。
脂質小胞は、特にワクチンとして、生物、例えば、ヒトへの投与のためのそれ自体公知のいずれのタイプのものであってもよい。
本発明の特定の実施形態では、脂質小胞は、L-α-ホスファチジルコリン、コレステロールおよびポリヒスチジンタグコンジュゲート脂質、特に、56~61質量%のL-α-ホスファチジルコリン、34~36質量%のコレステロールおよび3~10質量%のポリヒスチジンタグコンジュゲート脂質、例えば、60質量%のL-α-ホスファチジルコリン、36質量%のコレステロールおよび4質量%のポリヒスチジンタグコンジュゲート脂質の混合物を含む。
ポリヒスチジンタグコンジュゲート脂質は、ニッケルまたはコバルト陽イオンなどの金属陽イオンを固定化するキレート剤によって修飾された脂質であり得る。例えば、Avanti(登録商標)Polar Lipidsにより名称DGS-NTA-(Ni2+)(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[(N-(5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノ二酢酸)スクシニル](ニッケル塩))として市販されている製品が使用できる。
あるいは、脂質二重層に組み込まれたコバルトポルフィリンリン脂質(CoPoP)が、ポリヒスチジンタグを有する糖タンパク質(Federizon et al, 2021, Pharmaceutics, 13, 98)、より詳しくは、本発明の文脈では、本発明の組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体を付着させるために使用することができる。
プロテオリポソームを調製する方法
本発明によるプロテオリポソームを調製する方法は、本発明の組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体と脂質小胞とを、非共有結合的相互作用による脂質小胞の表面への三量体の固定化を確保するためにインキュベートすることを含む。
このインキュベーションは好ましくは、少なくとも6時間、好ましくは12~24時間、好ましくは20~25℃の温度で行われる。
三量体/脂質小胞比は好ましくは、脂質小胞を飽和させるために十分過剰量のタンパク質、より詳しくは少なくとも2倍過剰のタンパク質を含むように選択される。三量体/脂質小胞比は好ましくは、2:1 w/w~4:1 w/wである。この比は例えば3:1 w:wに相当する。
あるいは、本発明の組換え三量体は、例えば、三量体の少なくとも1つのプロトマーの少なくとも1つのシステイン残基、好ましくはプロトマーのC末端部分に位置するシステイン残基を、脂質小胞が保持する、スルフヒドリル基と反応し得る基と反応させることによって脂質小胞の表面に共有結合的に連結することができる。
この方法は、得られるプロテオリポソームを精製する最終工程を含み得る。
ワクチン
本発明によるワクチンは、上記で定義されるものなどのようなプロテオリポソーム、ならびに任意選択により薬学上許容される担体および/またはアジュバントを含む。
薬学上許容される担体は、特にワクチン組成物の分野での従来のいずれの担体からなってもよい。担体は例えば液体水性担体である。
宿主の免疫応答を増強し得るいずれのアジュバントが本発明のワクチンに含まれてもよい。アジュバントの例は、モノホスホリル脂質A(MPLA)およびアルミニウム塩、例えば、水酸化アルミニウムもしくはリン酸アルミニウム、例えば、AS504、またはスクアレン、例えば、MF59に基づく。
本発明によるワクチンは、さらに、それ自体公知の従来のいずれの添加剤、ならびに任意選択により、他の有効物質を含有してもよい。
本発明によるワクチンで使用可能な添加剤としては、賦形剤、希釈剤、界面活性剤、特に、ポリソルベート種のもの、分解防止剤などが挙げられる。
本発明によるワクチンは、哺乳動物、特に、ヒト対象への投与に好適ないずれの投与形態で調剤することもできる。このワクチンは、好ましくは非経口投与に好適な投与形態で調剤される。特に、このワクチンは、筋肉内注射、静脈内注射、腹腔内注射もしくは皮下注射、または鼻腔経路もしくは吸入による投与に好適な投与形態で調剤することができる。このワクチンは、例えば、注射用溶液またはスプレー用製剤として調剤することができる。
本発明のワクチンは、単回形態または多回形態、例えば、5用量バイアルに調整することができる。本発明の特定の実施形態では、ワクチンの単位用量は、50~100μgの本発明のプロテオリポソームを含む。
対象においてSARS-CoV-2感染を治療または予防するためのワクチンの治療的使用
本発明のワクチンは、対象においてSARS-CoV-2感染を治療または予防するために使用することができる。この使用は、この対象に治療上有効な量の本発明のワクチンを、SARS-CoV-2糖タンパク質Sエクトドメインに対する免疫応答が誘導されるように投与することを含む。
対象は好ましくは、哺乳動物、特に、ヒト対象である。
本発明のワクチンは、それを必要とする任意の対象、特に、SARS-CoV-2感染を受けている任意の対象、または予防的手段として、このような感染症にかかる可能性のある任意の非罹患対象を処置するために使用することができる。
特に、本発明のワクチンによるカニクイザルの免疫誘導はワクチン株、アルファ、ベータおよびガンマ変異株に対する強力な中和活性を伴う高い抗体力価ならびにTH1 CD4+に偏向したT細胞応答を誘導することが発明者らによって見出された。高い力価は2回の免疫誘導後にすでに誘導され、2回の免疫誘導から2週間後のID50中央値は約8000であった。さらに、抗RBD特異的抗体応答は初期に優勢であるが、3回目の免疫誘導は有意な非RBD抗体力価を増強する。3回目の免疫誘導から4週間後、S特異的ED50中央値はRBD特異的ED50の3倍である。この傾向は4回目の免疫誘導後も続き、免疫誘導から5週間後にSに対するID50中央値はRBDの3.5倍であることが明らかである。これらの結果は、3回以上の免疫誘導が非RBD Sエピトープを標的とする反応性B細胞レパートリーの拡大増殖を可能とすることを示す。さらに、ワクチン接種動物にSARS-CoV-2の抗原投与を行うと、殺菌免疫を介した完全な保護を示す。特に、Covid-19疾患に特徴的なリンパ球減少症および肺損傷などの感染の臨床的徴候がないことと一致して、上気道および下気道にはウイルス複製の徴候が検出できない。
ウイルス抗原投与時に鼻咽頭液には有意なIgGおよびIgAが検出され、本発明のワクチンの投与が粘膜の免疫応答を惹起することによって殺菌保護を誘導することを示す。よって、本発明のワクチンは有効かつ安全である。
この本発明のワクチンの投与は、いずれの経路によって行うこともできる。投与は好ましくは、非経口経路によって、特に、注射またはスプレーによって行われる。
本発明の特に好ましい実施形態では、ワクチンは、対象に筋肉内または鼻腔内投与される。
あるいは、ワクチンは、静脈内、腹腔内、動脈内もしくは皮下注射、または吸入によって対象に投与することができる。
本発明のワクチンは、対象に単回用量、または複数用量で投与することができ、特に、数日あけて投与することができる。
治療上有効な用量および投与される用量数は、対象、特に、その年齢、体重、症状などによって異なる。正確な投与条件の決定は、実務者の職務の範囲内である。
例えば、各投与は、50~100μgの本発明のプロテオリポソームを対象に送達するために行われる。
好ましくは、治療上有効な量のワクチンは対象に少なくとも2回投与される。2回の投与ステップは好ましくは、2~8週間の期間あけられる。
本発明の特定の実施形態では、治療上有効な量のワクチンは対象に少なくとも3回投与される。上記で示したように、3回目の免疫誘導は有利には、有意な非RBD抗体力価を増強する。
あるいは、本発明のワクチンは、他の抗SARS-CoV-2ワクチンの2回の投与後に対照に投与することもできる。
本発明の一態様は、対象においてSARS-CoV-2感染を治療または予防する方法であって、本発明によるワクチンをこの対象に投与することを含む。この方法は、対象においてSARS-CoV-2感染を治療または予防するための本発明のワクチンの使用に関して上記した特徴のいずれに応答してもよい。
実験モデルおよび対象の詳細
細胞株
HEK293T(ATCC CRL-11268)およびHEK293F(Thermo Fisher Scientific)は、ヒト胎児腎臓細胞株である。HEK293F細胞は、懸濁液中で増殖するように適合されている。HEK293F細胞は、37℃、8%CO、293FreeStyle発現培地(Life Technologies)中、125rpmで振盪しながら培養した。HEK293T細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS)、ストレプトマイシン(100μg/mL)およびペニシリン(100U/mL)を添加したDMEMが入ったフラスコにて、37℃、5%COで培養した。HEK293T/ACE2細胞は、ヒトアンギオテンシン変換酵素2を発現するヒト胎児腎臓細胞である。HEK293T/ACE2細胞は、10%FBS、ストレプトマイシン(100μg/mL)およびペニシリン(100U/mL)を添加したDMEMが入ったフラスコにて、37℃、5%COで培養した。VeroE6細胞(ATCC CRL-1586)は、アフリカミドリザルからの腎臓上皮細胞である。VeroE6細胞は、ストレプトマイシン(100μg/mL)およびペニシリン(100U/mL)を添加したまたは添加しない、また、5または10%FBSを添加したまたは添加しない、また、TPCK-トリプシンを添加したまたは添加しないDMEMにて、37℃、5%COで培養した。PBMCはマカクザル血清から単離し、10%FBSを添加したRPMI1640 GlutaMAX(登録商標)培地(Gibco(登録商標))中で培養した。
ウイルス
SARS-CoV-2ウイルス(hCoV-19/フランス/IDF0372/2020株)は、Lescure et al. (2020). Lancet Infect Dis 20, 697-706に記載されるように、呼吸器系ウイルスナショナルリファレンスセンター(National Reference Center for Respiratory Viruses)(Institut Pasteur、パリ、フランス)によって分離され、FBS不含で、1%P/S(ペニシリン10,000U.ml-1およびストレプトマイシン10,000μg.ml-1)および1μg.ml-1 TPCK-トリプシンを添加したDMEM(ダルベッコの改変イーグル培地)中、37℃、加湿COインキュベーター内で、Vero E6細胞上での2回の継代培養によって作出し、Vero E6細胞で力価測定を行った。全ゲノムシーケンシングを行ったところ、最初の検体と比較して改変は見られず、GISAID EpiCoVプラットフォームでのアセンブリの後に受託番号ID EPI_ISL_410720として配列を寄託した。
倫理および生物安全性の陳述
表1に記載されるMauritian AAALAC認定育種センターを起源とするカニクイザル(Macaca fascicularis)をこの試験で使用した。MF1~MF4はワクチン接種群であり、MF5~MF8は対照群である。
Figure 2023182231000002
全ての動物はIDMIT基盤施設(CEA、Fontenay-aux-roses)にて、必要であればBSL-2およびBSL-3の包含下(動物施設承認#D92-032-02、オー・ド・セーヌ県、フランス)、欧州指令2010/63/EU、フランス法および実験動物福祉法局のthe Standards for Human Care and Use of Laboratory Animals(保証番号#A5826-01、US)に準じて収容した。これらのプロトコールは、施設内倫理委員会“Comite d’Ethique en Experimentation Animale du Commissariat a l’Energie Atomique et aux Energies Alternatives”(CEtEA #44)によりステートメント番号A20-011として承認されたものである。この試験は、“Research, Innovation and Education Ministry”により登録番号APAFIS#24434-2020030216532863として認可されたものである。
動物および研究デザイン
カニクイザルを無作為に2つの試験群に割り当てた。ワクチン接種群(n=4)には、PBSに希釈した500μgのMPLAリポソーム(Polymun Scientific)をアジュバントとする50μgの本発明のプロテオリポソーム(SARSCoV-2 S-LV)を0、4、8および19週目に与え、対照動物(n=4)にはワクチン接種を施さなかった。ワクチン接種動物には0、2、4、6、8、11、12、14、19、21および22週目に血液採取を行った。24週目に、前投薬のためのアトロピン(0.04mg/kg)および麻酔のためのケタミン(5mg/kg)とメデトミジン(0.042mg/kg)を用い、全ての動物を鼻腔内経路と気管内経路の組合せ(各鼻孔に0,25mLおよび気管内に4,5mL、すなわち合計5mL;0日目)によって合計用量10pfuのSARS-CoV-2ウイルス(hCoV-19/フランス/lDF0372/2020株;受託番号EPI_ISL_410720としてGISAID EpiCoVプラットフォーム)に曝露した。鼻咽頭、気管および直腸のぬぐい液を曝露2、3、4、6、7、10、14および27日後に収集し、血液は曝露2、4、7、10、14および27日後に採取した。気管支肺胞洗浄(BAL)は、曝露3および7日後に50mLの無菌生理食塩水を用いて行った。麻酔した動物で、チレタミン(4mg.kg-1)およびゾラゼパム(4mg.kg-1)を用いて曝露3、7、10および14日後に胸部CTを行った。血液細胞総数、ヘモグロビン、およびヘマトクリットは、EDTA血液から、DHX800アナライザー(Beckman Coulter)を用いて決定した。
方法詳細
タンパク質発現および精製
残基986および987にプロリン置換(「2P」)、フューリン切断部位(残基682~685)に「GSAS」(配列番号2)置換を有し、そのC末端においてT4フィブリチン三量体化モチーフ(配列番号4の配列の)、C末端HRV3Cプロテアーゼ切断部位(配列番号6の配列の)、8XヒスチジンタグおよびTwin-Strepタグ(登録商標)(配列番号5の配列の間隔をあけた2つのリピート)に連続的に連結された、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質の残基1~1208に相当する配列番号8のアミノ酸配列のタンパク質/プロトマーをコードする配列番号9のヌクレオチド配列の遺伝子を、トランスフェクションのためにポリエチレンイミン(PEI)1μg/μlを用いて、ヒト胎児腎臓細胞株FreeStyle293F(Thermo Fisher scientific)で一過性に発現させた。
トランスフェクション5日後に上清を採取し、30分間、5000rpmで遠心分離し、0.20μmフィルター(ClearLine(登録商標))を用いて濾過した。三量体(「S」)を上清からバッファーA(50mM HEPES pH7.4、200mM NaCl)中、Ni2+-セファロースクロマトグラフィー(Excel purification resin、Cytiva)によって精製し、バッファーB(50mM HEPES pH7.4、200mM NaCl、500mMイミダゾール)で溶出させた。溶出した三量体含有画分をAmicon(登録商標)Ultra(カットオフ:30KDa)(Millipore)を用いて濃縮し、バッファーAまたはPBS中、スーパーロース(登録商標)6カラム(GE Healthcare)でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によってさらに精製した。
RBD発現については、以下の試薬はHHSN272201400008Cの下に作製され、BEI Resources、NIAID、NIHを通して入手した:SARS関連コロナウイルス2、武漢-Hu-1スパイク糖タンパク質受容体結合ドメイン(RBD)、NR-52309を含有するベクターpCAGGS。SARS-CoV-2 S RBDドメイン(残基319~541)を、製造者のプロトコール(Thermo Fisher Scientific)に従って一過性トランスフェクションによりEXPI293細胞で発現させた。上清をトランスフェクション5日後に採取し、遠心分離によって明澄化した。上清を0.45μmフィルターに通し、バッファーC(20mMトリスpH7.5および150mM NaClバッファー)中、Ni2+-クロマトグラフィー(HisTrap HPカラム、GE Healthcare)を用いてRBDを精製した後、バッファーD(20mMトリスpH7.5および150mM NaClバッファー、75mMイミダゾール)での洗浄工程およびバッファーE(20mMトリスpH7.5および150mM NaClバッファー、500mMイミダゾール)での溶出を行った。溶出したRBDをバッファーC中、スーパーデックス75カラム(GE Healthcare)でのSECによりさらに精製した。タンパク質濃度は、ProtParamを用い、それぞれSタンパク質およびRBDに対して10.4および13.06の280nm吸収係数(A1%、1cm)を用いて決定した。
三量体の架橋
PBS中、1mg/mlの三量体「Sタンパク質」を、室温で一晩、4%ホルムアルデヒド(FA)(Sigma)で架橋させた。反応を、1MトリスHCl pH7.4で、7.5mMトリス/HCl pH7.4にサンプルバッファーを調整して停止させた。FAは、30KDaカットオフ濃縮器(Amicon(登録商標))を用いてPBSバッファー交換によって除去した。FA架橋は、ホルムアルデヒドで処理した三量体「FA-Sタンパク質」を還元条件下での10%SDS-PAGEで分離することによって確認した。
リポソームへの三量体のカップリング
リポソームは次のように調製した。
リポソームは、60%のL-α-ホスファチジルコリン、4%Hisタグコンジュゲート脂質、DGS-NTA-(Ni2+)および36%コレステロール(Avanti Polar Lipids)から構成した。脂質成分をクロロホルムに溶解させ、混合し、真空下、室温でデシケーター内に2時間置いて脂質フィルムを得た。このフィルムを、濾過した(0.22μm)PBS中で水和させ、リポソームは、孔径0.1μmのメンブレンフィルター(Whatman(登録商標)Nuclepore(登録商標)Track-Etchedメンブレン)を用いた押出によって調製した。リポソームの完全性および大きさはネガティブ染色-EMによって分析した。
タンパク質のカップリングのために、リポソームを3:1比(w/w)のFA-Sタンパク質またはSタンパク質とともに一晩インキュベートした。
遊離FA-Sタンパク質は、SW55ローターにて40,000rpmで2時間のスクロース勾配(5~40%)遠心分離によりFA-S-プロテオリポソーム(S-LV)から分離した。リポソームにコンジュゲートされたタンパク質の量は、S-LVバンドを標準Sタンパク質濃度と比較するブラッドフォードアッセイおよびSDS-PAGE濃度計分析によって決定した。
三量体の熱安定性
天然またはFA架橋型のSタンパク質の熱変性は、Prometheus NT.48装置(Nanotemper Technologies)を用いる、後方散乱と組み合わせた示差走査蛍光定量法によって分析した。タンパク質サンプルはまずPBS pH7.4に対して十分に透析し、タンパク質濃度を0.3mg/mlに調整した。10μLのサンプルをキャピラリーにロードし、固有蛍光は励起出力30%、傾斜率1℃/分で測定した。タンパク質の折り畳み解除を、350および330nmでの蛍光放出の変化によってモニタリングした。タンパク質の熱変性中点(Tm)を、Prometheus NTソフトウエアを用いて決定した。
ネガティブ染色電子顕微鏡
タンパク質サンプルは、0.1~0.2mg/mlのタンパク質を含有する3~4μLのアリコートを使用するネガティブ染色電子顕微鏡(EM)によって可視化した。サンプルをマイカカーボンフィルムに10秒間塗布し、20mAで30秒間グロー放電させた400メッシュのCuグリッドに移した後、2%(wt/vol)酢酸ウラニル(UAc)で30秒間ネガティブ染色した。データは、Gatan Orius 1000 CCDカメラを用い、120kV加速電圧、23k倍率(画素サイズ2.8Å)で作動するFEI Tecnai T12 LaB6-EMで収集した。サンプル当たり平均30~40枚の顕微鏡写真を用い、ソフトウエアRelionで二次元(2D)クラス平均を求めた。得られた最良の5クラスを各6000前後の粒子から計算した。
クライオ電子顕微鏡
データ収集 3.5μLのサンプルを1.2/1.3 C-Flat(登録商標)(Protochips Inc)ホーリーカーボングリッドに塗布し、Vitrobot Mark IV(Thermo Fisher Scientific)(ブロット時間6秒、ブロット力0)を用い、液体エタン中で急速冷凍した。このサンプルをGlacios(登録商標)電子顕微鏡(Thermo Fischer Scientific)で200kVにて観察した。画像は、K2 summit直接電子検出器(Gatan Inc.、USA)にて、SerialEMを用いる連続様式で自動的に記録した。動画は、1動画当たり40フレームおよび総線量40e-/Åとして総露光4.5秒間記録した。倍率は36,000倍(カメラレベルで1.15Å/画素)であった。画像のデフォーカスは-1.0~-2.5μmの間で変更した。同じグリットに対して2つの異なるデータセットを取得した。まず、1040動画を各ホール間のステージ移動で記録し、次に、7518を超える動画を3×3ホールパターン上の画像シフトで記録した。
3D再構成 これらの画像をまずMotionCor2でドリフト補正した。後の画像処理は、RELION 3.1.2およびGCTFを用いたCTF estimationで行った。最初の粒子セット(ボックスサイズ200画素、サンプル採取2.3Å/画素)は、ガウシアンブロッブを用いたオートピッキングによって得た。2D分類の後、最も良く見える2Dクラス平均を2回目のオートピッキングに使用した。さらなる2D分類ステップの後、最も良く見える2Dクラス平均に属す粒子を最初の出発3Dモデルを作成するために使用し、次にこれを用いてC3対称性を有する最初の3D再構成を計算した。次に、3Dモデルからの2D投影を用いて最後に1回のオートピッキングを行い、合計2,582,857粒子を得た。さらなる2D分類および3D分類(C1対称性、5クラス)ステップの後、240,777粒子から4.6Å分解能の3Dマップを得た。これらの粒子を再抽出した(ボックスサイズ400画素、サンプル採取1.15Å/画素)。さらなる3D精密化(C3対称性)および3D分類(C1対称性、アラインメント無し、3クラス)ステップの後、126,719粒子の最終セットを特定し、これにより3D再構成が3.6Å分解能で得られた。CTFパラメーターの精密化、粒子ポリッシングおよび2回目のCTFパラメーターの精密化により、分解能はさらに向上し3.4Åとなった。分解能は、Fourier Shell Correlation(FSC)によって、2つの独立した3Dマップ間で0.143にて決定した。局部的分解能はblocresで計算し、3~5Åであることが判明した。最終3DマップをDeepEMhancerで鮮鋭化した。
モデルの精密化 ChimeraにてクライオEM密度マップ内で閉構造のSタンパク質の原子モデル(PDB 6VXX)のリジッドボディフィッティングを行った。次に、原子座標をPHENIXで精密化した。精密化した原子モデルを視覚的に確認し、COOTにて補正した(必要がある場合)。最終モデルは、MOLPROBITYでバリデートした。
図は、CHIMERAおよびCHIMERAXで作成した。原子座標およびクライオEMマップは、タンパク質データバンクおよび電子顕微鏡データバンクにそれぞれ受託コード7QIZおよびEMD-13776として寄託されている。
NHPサンプルにおけるウイルス定量
上気道(鼻咽頭および気管)および直腸検体をぬぐい液(Viral Transport Medium、CDC、DSR-052-01)で採取した。気管ぬぐい液は、喉頭蓋の先端の上から喉頭蓋からおよそ1.5cmの上気道にぬぐい液を挿入することによって行った。全ての検体をRT-qPCRによる分析まで2℃~8℃で保存し、プラスミドの標準濃度範囲は、RdRp-IP4 RT-PCR標的配列を含むRdRp遺伝子断片を含む。SARS-CoV-2 E遺伝子サブゲノムmRNA(sgRNA)レベルは、以下のプライマーおよびプローブを用いるRT-qPCRによって評価した。
下記配列のリーダー特異的プライマーsgLeadSARSCoV2-F:
CGATCTCTTGTAGATCTGTTCTC(配列番号10)、
下記配列のE-Sarbeco-Rプライマー:
ATATTGCAGCAGTACGCACACA(配列番号11)、および
下記配列のE-Sarbecoプローブ:
HEX-ACACTAGCCATCCTTACTGCGCTTCG-BHQ1(配列番号12)、ここで、HEXはヘキサクロロフルオレセインを表し、BHQ1はBHQ1クエンチャーを表す。
SARS-CoV-2の検出のためのこの手順を表すプロトコールは、WHOウェブサイト(https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/whoinhouseassays.pdf)で入手できる。
胸部CTおよび画像解析
肺画像は、コンピューター断層撮影(CT)システム(Vereos-Ingenuity、Philips)を用いて取得し、INTELLISPACE PORTAL 8ソフトウエア(Philips Healthcare)を用いて解析した。全ての画像は、同じウインドウレベル-300およびウインドウ幅1,600を有した。病変はすりガラス陰影、メロンの皮様所見、浸潤影胸膜肥厚として定義した。病変および瘢痕は、各肺葉において盲検で2人により独立に評価し、最終結果は総意によって確定した。総合CTスコアは、各肺葉について病変タイプ(スコア0~3)および病変体積(スコア0~4)の合計とした。
ELISA
可溶性天然S糖タンパク質、FA架橋三量体(FA-S)およびRBDに特異的な血清抗体力価は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて評価した。簡単に述べれば、96ウェルマイクロタイタープレートを4℃にて一晩PBS中で、1μgのS、FA-SまたはRBDタンパク質でコーティングし、150μLのPBS Tween(登録商標)-20 0.05%で3回洗浄した後、室温にて1時間3%BSAでブロッキングした。血清希釈液を各ウェルに37℃で2時間加え、プレートをPBS Tween(登録商標)で5回洗浄した。次に、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートヤギ抗サルH+L抗体(Invitrogen)を加え、1時間インキュベートした後、余分なAbを洗い流し、HRP基質を添加した。吸光度を450nmで決定した。抗体力価はED50(有効希釈50値)として表し、IgG結合が50%低下した血清希釈率として定義した。ED50を生データ(O.D)から、GraphPad Prism(version 6)"log(inhibitor) vs normalized response"関数を用いて正規化した後計算した。ELISAは二反復で行った。
Luminexビーズへのタンパク質のカップリング
タンパク質をMagPlex(登録商標)ビーズ(Luminex Corporation)に、1250万のビーズに対して75μgのS三量体の比率を用い、2段階カルボジイミド反応によって共有結合的にカップリングさせた。MagPlex(登録商標)ビーズを100mMの一塩基性リン酸ナトリウムpH6.2で洗浄し、室温にてローター上で、スルホ-N-ヒドロキシスルホスクシンイミド(Thermo Fisher Scientific)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(Thermo Fisher Scientific)の添加によって30分間活性化した。活性化したビーズを50mM MES pH5.0で3回洗浄し、S三量体に加え、これを50mM MES pH5.0で希釈した。カップリング反応物をローテーター上、室温で3時間インキュベートした。次に、これらのビーズをPBSで洗浄し、2%BSA、3%FCSおよび0.02%Tween(登録商標)-20を含有するPBSで、ローテーター上、室温で30分間ブロッキングした。最後に、ビーズを洗浄し、0.05%アジ化ナトリウムを含有するPBS中、4℃で保存し、3か月以内に使用した。
Luminexアッセイ
1μL当たり20個のビーズを含む50μLの実施用ビーズ混合物を50μLの希釈鼻咽頭液とともに4℃で一晩インキュベートした。鼻咽頭液は、S特異的IgGおよびIgAの検出のために1:20希釈した。プレートを密閉し、プレートシェーカー上で4℃にて一晩インキュベートした。ハンドヘルドマグネティックセパレーターを用いて0.05%Tween(登録商標)-20を含有するTBS(TBST)でプレートを洗浄した。ビーズを50μLのヤギ抗サルIgG-ビオチンまたはヤギ抗サルIgA-ビオチン(Sigma Aldrich)に再懸濁させ、プレートシェーカー上で室温にて2時間インキュベートした。その後、ビーズをTBSTで洗浄し、50μLのストレプトアビジン-PE(Thermo Fisher Scientific)に再懸濁させ、プレートシェーカー上で室温にて1時間インキュベートした。最後に、ビーズをTBSTで洗浄し、70μL Magpix(登録商標) drive fluid(Luminex Corporation)に再懸濁した。ビーズをプレートシェーカー上で、室温にて数分間振盪し、次いで、MAGPIX(登録商標)(Luminex Corporation)にて読み取りを行った。結果の再現性は、反復を行うことで確認した。
偽ウイルス中和アッセイ
偽ウイルスは、HEK293T細胞(ATCC、CRL-11268)にpCR3 SARS-CoV-2-SΔ19発現プラスミド(武漢Hu-1;GenBank:MN908947.3)とpHIV-1NL43 ΔEnv-NanoLucリポーターウイルスプラスミドを同時トランスフェクトすることによって作製した。pCR3 SARS-CoV-2-SΔ19発現プラスミドは、対象とする変異体に対する野生型と比較して以下の突然変異を含んでいた:B.1.1.7(アルファ、UK)におけるH69、V70およびY144の欠失(Δ)、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982AおよびD1118H;B.1.351(ベータ、SA)におけるL18F、D80A、D215G、L242H、R246I、K417N、E484K、N501Y、D614GおよびA701V;P.1(ガンマ、BR)におけるL18F、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、E484K、N501Y、D614G、H655YおよびT1027。
HEK293T/ACE2細胞は、中和アッセイの開始の1日前に、50μg/mLのポリ-L-リシンでコーティングした96ウェルプレートに20,000細胞/ウェルの密度で播種した。熱失活血清(1:100希釈)を10%FBS、ペニシリン(100U/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL)およびGlutaMax(登録商標)(Gibco)を添加した細胞培養培地(DMEM(Gibco)で3倍連続希釈し、偽ウイルスと1:1比で混合し、37℃で1時間インキュベートした。次に、これらの混合物を細胞に1:1比で加え、37℃で48時間インキュベートした後、PBS洗浄液および溶解バッファーを添加した。細胞溶解液のルシフェラーゼ活性は、Nano-Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)およびGloMaxシステム(Turner BioSystems)を用いて測定した。相対発光単位(RLU)を、細胞を血清の不在下で偽ウイルスに感染させた陽性対照ウェルに対して正規化した。中和力価(ID50)は、非線形回帰曲線フィット(GraphPad Prismソフトウエアバージョン8.3)を用いてそれぞれ感染力を50%阻害した血清希釈率として決定した。特に、この偽ウイルス中和アッセイは、ヒト回復期血清のパネルで真正の中和と優れた相関を示した。
非ヒト霊長類細胞を用いた抗原特異的T細胞アッセイ
SARS-CoV-2タンパク質特異的T細胞を分析するために、11のアミノ酸(aa)がオーバーラップし、SARS-CoV-2スパイク配列(aa1~1273)にわたる15マーのペプチド(n=157およびn=158)がJPT Peptide Technologies(ベルリン、ドイツ)により合成され、終濃度2μg/mLで使用された。
T細胞応答を、2つのペプチドプールで刺激した際にIL-2(PerCP5.5、MQ1-17H12、BD)、IL-17a(Alexa700、N49-653、BD)、IFN-γ(V450、B27、BD)、TNF-α(BV605、Mab11、BioLegend)、IL-13(BV711、JES10-5A2、BD)、CD137(APC、4B4、BD)およびCD154(FITC、TRAP1、BD)を発現するPBMCの頻度の測定によって特徴付けた。CD3(APC-Cy7、SP34-2、BD)、CD4(BV510、L200、BD)およびCD8(PE-Vio770、BW135/80、Miltenyi Biotec)抗体を細胞系マーカーとして使用した。100万個のPBMCを、補助刺激抗体(FastImmune(登録商標)CD28/CD49d、Becton Dickinson)を添加した完全培地(RPMI1640 Glutamax(登録商標)+、Gibco;10%FBSを添加)で培養した。これらの細胞を終濃度2μg/mLのS配列オーバーラッピングペプチドプールで刺激した。ブレフェルジンAを各ウェルに終濃度10μg/mLで加え、プレートを37℃、5%CO2で18時間インキュベートした。次に、細胞を洗浄し、生存力色素(LIVE/DEAD(登録商標)fixable Blue死細胞染色キット、ThermoFisher)で染色し、次いで、BD Cytofix/Cytoperm(登録商標)試薬で固定および透過処理を施した。透過処理を施した細胞サンプルを染色手順まで-80℃で保存した。抗体染色は透過処理の後に一段階で行った。4℃、暗所での30分のインキュベーションの後に、細胞をBD(登録商標)Perm/Washバッファーで洗浄し、次いで、LSRIIサイトメーター(Beckton Dickinson)で取得した。解析はFlowJo(登録商標)v.10ソフトウエアで行った。データは各ペプチドプールの合計として示し、非刺激(NS)条件に2を掛けた。
統計分析
群間の統計的有意性はGraphpad Prism(v9.2.0)を用いて調べた。対応しない群間の差は対応のないマン・ホイットニーのU検定(有意性p<0.05)を用いて比較し、対応する群間の差はウィルコクソン符合順位検定(p<0.1)を用いて比較した。NHP gRNAおよびsgRNAの統計分析は、GraphPad Prismソフトウエア(v8.3.0)にてマン・ホイットニーの対応のないt検定を用いて行った。
結果
S-LVの形成および特性評価
S糖タンパク質構築物「2P」を哺乳動物細胞で発現させ、Ni2+アフィニティーおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により精製し、Expi293F細胞を用いると収率は最大10mg/リットルであった。生成されたこの天然三量体は、単一粒子のネガティブ染色電子顕微鏡および2Dクラス平均化によって決定した。生成された4%ホルムアルデヒド(FA)による化学架橋は、熱安定性をTm65℃まで高めることで天然S三量体よりも長期間S三量体の天然構造を保存した。3.4Å分解能におけるFA架橋S(FA-S)のクライオ電子顕微鏡構造は、図1の(A)に示されるように、架橋の2つの主要部位を明らかにした。図1の(A)および(B)に示されるように、RBD残基のR408とK378がRBD近傍で架橋して閉鎖した「RBD-ダウン」コンフォメーションS三量体を生じていた。第2の部位は、図1の(C)に示されるように、中央のS2ヘリックスのR1019および/またはS2 K776とS2 HR1 K947の架橋により内部S2サブユニット結合を導入した。FA-Sは、リポソーム(ホスファチジルコリン60%、コレステロール36%、DGS-NTA 4%)とともにインキュベートしたところ、そのC末端Hisタグを介して有効に捕捉された。Sプロテオリポソームからスクロース勾配遠心分離によって遊離型の非結合Fa-Sを除去し、これらのリポソームのFA-Sによる修飾(S-LV)が、図1の(D)に示されるように、ネガティブ染色電子顕微鏡によって確認された。
FA-S-LVs免疫誘導はカニクイザルにおいて強力な中和抗体応答を誘導した
カニクイザルの小規模ワクチン接種試験に関して免疫原性および中和抗体の惹起を評価するためにFA-S-LVsを作製した。4個体のカニクイザルを、図2の(A)に示されるように、0、4、8および19週目に筋肉内経路によってモノリン脂質A(MPLA)リポソームをアジュバントとする50μgのS-LVsで免疫した。免疫したマカクザルの血清を2週間隔で、天然S糖タンパク質(S)、FA架橋S糖タンパク質(FA-S)およびRBDに対する結合に関して分析した。これらの結果から全ての動物で同等のS特異的Ab力価が明らかになった。S ED50力価は、図2の(B)に示されるように、それぞれ1回目、2回目および3回目の免疫誘導後に、4週目の約75から6週目の約10000、さらに12週目の約20000に増大した。図2の(C)に示されるように、FA-Sに対して力価の若干の低下が検出された。RBD単独に対する力価は、図2の(D)に示されるように、数個体で、4週目に約100、6週目に約4500のID50に達し、12週目に若干増加した。このことは1回目と2回目の免疫誘導は有意なRBD力価を誘導し、一方、3回目の免疫誘導は非RBD抗体を追加刺激したことを示し、これは、12週目のS特異的力価はこの比率が低かった従前の時点とは対照的にRBD特異的力価の4倍を超えたためである。4回目の免疫誘導は抗体生成をさらに刺激することはなく、22週目の力価は12週目の力価よりも低いか同等であった。これらの結果は、FA-S-LV免疫誘導は1回目および2回目の免疫誘導後に主としてRBD特異的抗体を誘導し、3回目の免疫誘導は非RBD抗体の生成を有意に増加させたことを示す。
野生型偽ウイルスを用いた血清中和力価は、4個体全ての動物に惹起された。1回目の免疫誘導後の2週目に、100~1000のID50力価が見られ、これは4週目にベースライン付近まで低下したが、6週目、すなわち2回目の免疫誘導後の2週間後に有意に上昇し、5000~約20000のID50を示した。その後、ID50は8週目に低下し、11週目、すなわち3回目の免疫誘導の3週間後に20000~約40000に増加した。19週目には、中和効力は低下したもののなお高く、3回の免疫誘導はロバストな中和力価を誘導したことを示す。4回目の免疫誘導は、図3の(A)に示されるように、3回目の免疫誘導後と同レベルまで中和力価を増強した。
11週目の血清を抗RBDアフィニティークロマトグラフィーによって除去操作を行ったところ、ELISAによって検出可能なRBD抗体は存在しなかった。RBD特異的Ab除去血清は、完全血清の10~30%の中和を示し、いくらかのレベルの非RBD特異的中和を示した。2個体の動物では主としてRBD特異的Ab中和が優勢であったが、図3の(B)に示されるように、非RBD特異的Ab中和活性の画分は他の2個体の動物でより高いと思われ、高い中和力価におけるこれらのAbの関与が示唆される。
FA-S-LV免疫誘導はカニクイザルをSARS-CoV-2感染から保護した
FA-S-LVワクチン接種により誘導される保護の程度を決定するために、ワクチン接種動物および非ワクチン接種動物(n=4)に初代SARS-CoV-2分離株(BetaCoV/フランス/IDF/0372/2020)を、総用量1×10プラーク形成単位(pfu)で感染させた。感染は、24週目、すなわち最後の免疫誘導から5週間後に鼻腔内経路(各鼻孔に0.25mL)と気管内経路(4.5mL)を組み合わせることによって誘導した。図4の(A)に示されるように、対照動物群のウイルス量は、曝露3日後に気管で最大となり、中央値は6.0log10コピー/mlであり、鼻咽頭では曝露4~6日後に最大となり、コピー数中央値は6.6log10コピー/mlであった。その後、ウイルス量は低下し、気管では曝露10日後にウイルスは検出されなくなったが、一部の動物では、鼻咽頭ぬぐい液に曝露14日後までウイルスの検出を示した。気管支肺胞洗浄(BAL)では、4個体のうち3個体の対照(CTRL)動物が曝露3日後に検出可能なウイルス量を示し、そのうち2個体は曝露7日後も検出可能なままであり、それぞれ平均値は5.4および3.6log10コピー/mLであった。1個体の動物で直腸液は陽性と判定され、この個体は気管および鼻咽頭のウイルス量も最大であった。ぬぐい液を用いてまたは洗浄中に回収された感染細胞および増殖感染細胞の数を推定すると考えられているウイルスサブゲノムRNA(sgRNA)は、図4の(B)に示されるように、気管および鼻咽頭液でそれぞれ曝露3/4~6日後に最大コピー数を示した。気管支肺胞洗浄(BAL)では、高いゲノムウイルス量を呈する2個体の動物はまた、曝露3~7日後に検出可能なsgRNAを示し、中央値はそれぞれ5.1および3.1log10コピー/mLであった。
対照動物とは対照的に、ワクチン接種群ではいずれの時点でも、gRNAもsgRNAも検出されなかった。対照群の気管および鼻咽頭の平均gRNAピーク(それぞれ6.0および6.6log10コピー/mL)は、ワクチン接種群よりも高かった(p=0.0286)。曲線下面積も対照群の気管のほうが高かった(6.2log10、p=0.286)。気管支肺胞洗浄(BAL)において、動物の数が少ないために、差は統計的に有意でなかった。ワクチン接種群には、上気道にも下気道にもウイルスRNAが全く無かったことは、ワクチン接種によって殺菌免疫が誘導されたことを強く示唆した。図5の(A)、(B)および(C)に示されるように、S、FA-SおよびRBDに対するID50抗体力価は、感染日(24週目)から曝露4週間後までやや低下したが、曝露1週間後(25週目)ではAb力価に小さな増加が見られる。図5の(D)に示されるように、Ab力価はまた、24週目から曝露4週間後まで中和における若干の低下と相関していたが、1個体の動物は、25週目、すなわち曝露1週間後には中和に小さな増大を示した。これは、ワクチン接種動物の抗原投与がそれらの免疫系を有意には追加刺激しなかったことを示した。対照的に、対照群は、曝露2週間後(26週目)にS、FA-SおよびRBD特異的IgGの明確な検出を示し始め、これはほとんどの動物で、曝露2週間後の中和の検出と相関していた。
ワクチン接種動物の保護は、図2の(E)に示されるように、鼻咽頭液の有意なSおよびRBD特異的IgGおよびIgAの存在とさらに相関していた。このことは、S-LVワクチン接種が粘膜免疫を誘導し、これがワクチン接種の殺菌効果に寄与している可能性が極めて高いことを示した。
曝露後最初の14日の間、全ての対照動物は、胸部コンピューター断層撮影法(CT)により検出される非拡張すりガラス陰影(GGO)を特徴とする軽度肺病変を示した。ワクチン接種動物は、CTスコアに抗原投与の有意な影響を示さなかった。10を超える病変スコアを示した唯一の動物は対照群のものであった。全ての対照動物が曝露2~8日の間に、おそらくは感染に対する応答に相当する単球増加症を受けたが、ワクチン接種サルでは、これらの動物における検出可能な既往応答の不在と一致して、単球総数は抗原投与後も安定なままであった。
CD4およびCD8特異的T細胞のレベルを、両動物群で測定した。図6に示されるように、曝露前、Th1型CD4T細胞応答は、PBMCのS-ペプチドプールによるex vivo刺激の後の全てのワクチン接種したマカクザルに見られた。検出可能な抗S CD8T細胞を有するものはいなかった。この場合にもワクチン接種動物における既往応答の不在と一致して、曝露14日後に有意差は見られなかった。対照的に、対照動物のほとんどのものでは、曝露後に抗S Th1 CD4+応答が増大した。
これらの結果は、FA-S-LVワクチン接種が殺菌免疫を生成し得ることを示し、このようなワクチン接種スキームがSARS-CoV-2伝達の連鎖を経つために有効であることを示す。
FA-S-LVsワクチン接種はSARS-CoV-2変異体のロバストな中和を生じた
血清中和を変異体B.1.1.7(アルファ、UK)、B.1.351(ベータ、SA)およびP.1(ガンマ、BR)に対してさらに試験した。ワクチン接種群と非ワクチン接種群の血清を24週目および28週目に比較したところ、3種類全ての変異体で高い中和力価を示し、ID50中央値は10.000~20.000の範囲であり、野生型偽ウイルスの中和に匹敵した。しかしながら、非ワクチン接種抗原投与群の曝露前血清中和のバックグラウンドは比較的高かった(ID50中央値は400~1100の範囲)ことから、8週目(2回の免疫誘導の後)、12週目(3回の免疫誘導)および24および28週目(4回の免疫誘導)からのワクチン接種群の血清サンプルから精製したIgGによる中和を繰り返した。これは、図7に示されるように、8週目に野生型(WT)およびアルファに対して、WT血清中和(図3(A))に匹敵する約4500のID50中央値を示した。8週目のベータおよびガンマに対してはそれぞれより低いID50が見られた。中和効力は3回目の免疫誘導(12週目)の後に増加し、ID50中央値は約5000(WT)、約8000(アルファ)、約800(ベータ)および1000(ガンマ)であった。図7に示されるように、中和力価は24週目の4回目の免疫誘導の後には増加せず、28週目に低下し始めた。これらの結果は、3回の免疫誘導が変異体に対するロバストな防御効果を発揮したことを示す。

Claims (20)

  1. それぞれ少なくともSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメインを含む3つの組換えプロトマーを含む組換えSARS-CoV-2 S糖タンパク質エクトドメイン三量体であって、
    前記プロトマーの各々において、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の682~685番に位置するフューリン切断部位は不活化/破壊され;
    前記プロトマーの1つの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の408番の位置のアミノ酸残基は、前記プロトマーの別のものの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の378番の位置のアミノ酸残基に共有結合的に連結され;並びに
    前記プロトマーの1つの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の947番の位置のアミノ酸残基は、前記プロトマーの別のものの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の1019番の位置のアミノ酸残基に共有結合的に連結され、かつ/または前記プロトマーの1つの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の947番の位置のアミノ酸残基は、前記プロトマーの別のものの天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の776番の位置のアミノ酸残基に共有結合的に連結されている、
    三量体。
  2. 前記プロトマーの各々において、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の682~685番に位置するアミノ酸残基は、配列GSAS(配列番号2)のアミノ酸モチーフによって置換されている、請求項1に記載の三量体。
  3. 前記プロトマーの各々は、C末端三量体化ドメインに連結されている、請求項1に記載の三量体。
  4. 前記プロトマーの各々において、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の408番の位置のアミノ酸残基はアルギニン残基であり、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の378番の位置のアミノ酸残基はリシン残基であり、かつ、前記プロトマーの1つの前記アルギニン残基と前記プロトマーの別のものの前記リシン残基はメチレン架橋により連結されている、請求項1に記載の三量体。
  5. 前記プロトマーの各々、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の947番の位置のアミノ酸残基はリシン残基であり、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の1019番の位置のアミノ酸残基はアルギニン残基であり、かつ、前記プロトマーの1つの前記リシン残基と前記プロトマーの別のものの前記アルギニン残基はメチレン架橋により連結されている、請求項1に記載の三量体。
  6. 前記プロトマーの各々、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の947番の位置のアミノ酸残基はリシン残基であり、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の776番の位置のアミノ酸残基はリシン残基であり、かつ、前記リシン残基どうしはメチレン架橋により連結されている、請求項1に記載の三量体。
  7. 前記プロトマーの各々は、天然SARS-CoV-2 S糖タンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列の986番および987番の位置に少なくとも2つのプロリン置換を含む、請求項1に記載の三量体。
  8. 前記プロトマーの各々は、そのC末端で少なくとも1つのタグに連結されている、請求項1に記載の三量体。
  9. 前記プロトマーの各々は、SARS-CoV-2 S糖タンパク質の最初の1208のアミノ酸残基またはそれと少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項1に記載の三量体。
  10. ホモ三量体である、請求項1に記載の三量体。
  11. 宿主細胞において前記組換えプロトマーをコードする核酸分子を発現させて前記三量体を生産すること、
    前記三量体を精製すること、および
    前記三量体をホルムアルデヒドで処理すること
    を含む、請求項1に記載の三量体の生産方法。
  12. 表面が請求項1に記載の三量体でコーティングされた脂質小胞を含むプロテオリポソーム。
  13. 前記脂質小胞は、60質量%のL-α-ホスファチジルコリン、36質量%のコレステロールおよび4質量%のポリヒスチジンタグコンジュゲート脂質を含む、請求項12に記載のプロテオリポソーム。
  14. 前記三量体を前記脂質小胞とともにインキュベートすることを含む、請求項12に記載のプロテオリポソームの調製方法。
  15. 請求項12または13に記載のプロテオリポソーム、ならびに任意選択により薬学上許容される担体および/またはアジュバントを含む、ワクチン。
  16. 単位用量中に50~100μgの前記プロテオリポソームを含む、請求項15に記載のワクチン。
  17. 対象におけるSARS-CoV-2感染を治療または予防するための請求項15または16に記載のワクチン。
  18. 前記対象におけるSARS-CoV-2感染の治療または予防は、前記ワクチンを前記対象に少なくとも2回投与することを含む、請求項17に記載のワクチン。
  19. 前記対象におけるSARS-CoV-2感染の治療または予防は、前記ワクチンを前記対象に少なくとも3回投与することを含む、請求項17に記載のワクチン。
  20. 前記対象におけるSARS-CoV-2感染の治療または予防は、前記ワクチンを前記対象に筋肉内または鼻腔内投与することを含む、請求項17に記載のワクチン。
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