JP2023182010A - 眼鏡レンズ - Google Patents

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Abstract

【課題】眼鏡レンズの変色を抑制することを目的とする。【解決手段】レンズ基材の屈折率が1.60以上であり、δYIが-1.20~0.20である、眼鏡レンズを提供する。【選択図】図2

Description

本発明は、眼鏡レンズに関する。
眼鏡レンズでは、耐擦傷性を向上させるべくレンズ基材上にハードコート層が設けられることが多い。
特許文献1には、高屈折率のレンズ基板を使用する場合、レンズ基板とハードコート層との間の屈折率差を近づける旨の開示がある。例えば、高屈折率のハードコート組成物として酸化チタン(ルチル:2.51、アナターゼ:2.54)を選択することが開示されている([0008])。酸化チタンのことをチタニアともいう。
その一方、酸化チタンは光触媒作用が強いため、ハードコート層の化学的安定性を維持することに留意すべきである旨の開示がある([0009])。
そして、特許文献1には、レンズ基板と、レンズ基板上に形成される第1の層と、上記第1の層上に形成される第2の層と、を備え、上記第1の層の直下の素地、上記第1の層及び第2の層の屈折率をそれぞれα、β、γとするとα>β>γを満たすプラスチックレンズが開示されている(請求項1)。
第1の層である中間層のおかげで、ハードコート層に用いる酸化物ゾルを、チタニアゾルではなく、光触媒作用が無いジルコニアゾルを使用できる旨の開示がある([0054])。
特開2011-113070号公報
本発明者の調べにより、特許文献1に記載の眼鏡レンズだと、レンズ材料により変色が生じ得ることを知見した。
本発明の一実施例は、眼鏡レンズの変色を抑制する技術を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様は、
レンズ基材の屈折率が1.60以上であり、δYIが-1.20~0.20である、眼鏡レンズである。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の態様であって、
δYIが-0.20~0.20である。
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載の態様であって、
δYIが-0.05~0.05である。
本発明の第4の態様は、第1~第3のいずれかの態様に記載の態様であって、
レンズ基材と、レンズ基材上に設けられたハードコート層と、ハードコート層上に設けられ且つ複数層により構成される反射防止層と、を備え、
ハードコート層内にはTiOゾルを含有させない。
また、上記の態様に組み合わせ可能な他の態様を列挙すると以下のとおりである。
反射防止層内の少なくとも一層は、紫外線を吸収する化合物を含有する、眼鏡レンズである。
紫外線を吸収する化合物を含有する層はTiO層である。
反射防止層内に複数のTiO層を有し、且つ、反射防止層内の最下層はTiO層である。
反射防止層内のTiO層の合計層厚は50nm以上である。
レンズ基材の屈折率は1.67以上である。
ハードコート層は、λ/4層を含む少なくとも2層以上からなる。
ハードコート層は樹脂を含有させてもよい(好適には樹脂が主成分)。主成分とは、被膜において最も多くを占める成分であって、通常は全体の50質量%程度~100質量%、更には90質量%程度~100質量%を占める成分である。
また、反射防止層のいずれの層も無機材料からなるのがよい。
ハードコート層の直上に、反射防止層内の最下層であるTiO層が配置されるのが好ましい。
最下層のTiO層の上のTiO層の合計膜厚は50nm以上が好ましく、80nm以上がより好ましく、100nm以上が更に好ましい。上限については特に限定は無いが、例えば500nm、好ましくは300nmが挙げられる。
最下層のTiO層は、他のいずれのTiO層よりも厚みが小さいのが好ましい。また、厚みの上限は10nmが好ましく、5nmがより好ましく、2nmが更に好ましい。
反射防止層内のTiO層(最下層のTiO層含む)の合計層厚は80nm以上がより好ましく、100nm以上が更に好ましい。上限については特に限定は無いが、例えば500nm、好ましくは300nmが挙げられる。
厚みは、最下層のTiO層a<その一つ上位のTiO層b<更にその一つ上位のTiO層c、という関係を有するのが好ましい。更には、上記TiO層c<その一つ上位のTiO層d、という関係を更に有するのがより好ましい。
また、反射防止層のうちの最下層ではないものの複数のTiO層のうち最下位のTiO層a´<その一つ上位のTiO層b´<更にその一つ上位のTiO層c´、という関係を有するのも好ましい。更には、上記TiO層c´<その一つ上位のTiO層d´、という関係を更に有するのもより好ましい。
TiO層bの厚みは、最下層(または最下位)のTiO層a(またはa´)の厚みの2倍以上(好適には4倍以下)が好ましい。
TiO層cの厚みは、最下層(または最下位)のTiO層a(またはa´)の厚みの4倍以上(好適には6倍以上、12倍以下)が好ましい。
TiO層dの厚みは、最下層(または最下位)のTiO層a(またはa´)の厚みの20倍以上(好適には50倍以上、100倍以下)が好ましい。
レンズ基材の直上にλ/4層を設けるのが好ましい。
λ/4層の代わりに、層厚を、0.2λを超え且つ0.3λ未満としてもよい。
なお、λ/4層の直上に、これまで述べてきた樹脂含有ハードコート層を設けてもよいし、λ/4層の直上に、耐衝撃性を向上させるプライマー層を設けたうえで、該プライマー層の直上に該樹脂含有ハードコート層を設けてもよい。
反射防止層を構成する複数層のうちの少なくとも一つが導電層であってもよい。
導電層の上にも低屈折率層と高屈折率層との組み合わせを設けてもよい。
眼鏡レンズの最上位に撥水層を設けてもよい。
眼鏡レンズが備える反射防止層は、波長320nmの紫外線のうち60%以上を吸収するのが好適であり、80%以上を吸収するのがより好適である。
本発明の一態様に係る眼鏡レンズと、この眼鏡レンズを取り付けたフレームとを有する眼鏡を提供できる。
レンズ基材の屈折率が1.60以上であり、δYIが-1.20~0.20である、眼鏡レンズの製造方法を提供できる。
上記製造方法の構成に加え、複数種類の屈折率のレンズ基材(例えば屈折率1.67以上のものと1.67未満のものを含む複数のレンズ基材)の各々の上に、共通した材料によりハードコート層を形成する、眼鏡レンズの製造方法を提供できる。
また、この製造方法で作製された眼鏡レンズ群にも本発明の技術的思想が反映されている。
本発明の一実施例によれば、眼鏡レンズの変色を抑制できる。
図1は、レンズ基材の屈折率が1.67である実施例1-2および比較例1-2に対する密着性試験に係る結果を示す写真である。 図2は、δYI試験に係る結果を示す棒グラフであり、縦軸はδYI値である。 図3は、実施例1-2および比較例1-2に係る反射防止層を紫外線透過率が高いガラス基板に製膜したものを測定して得られた透過率を示す図であり、縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。
本明細書において、「(例えばレンズ基材)上」とは、レンズ基材の主表面の上を意味する。「主表面」とは、眼鏡レンズとしたときに装用者の視線が通過する2つの面すなわち物体側の面および眼球側の面の少なくともいずれかである。
主表面が2つの面を指す場合、レンズ基材の厚み方向においてレンズ基材の中心からレンズ基材の主表面に向かう2つの正反対の方向の各々に向かって、後掲のハードマスク層および反射防止層を積層させることを意味する。
本明細書において、「眼球側の面」とは、眼鏡レンズを備えた眼鏡が装用者に装用された際に眼球側に配置される面をいい、「物体側の面」とは、物体側に配置される面をいう。
また、明細書において、「(例えばレンズ基材)上」とは、レンズ基材の主表面の直上を含むし、他の層を介在させたうえでのレンズ基材の上のことも含む。「(例えばハードマスク層)下」についても同様の意味とする。すなわち、ハードマスク層の直下を含むし、他の層を介在させたうえでのハードマスク層の下のことも含む。
後掲の反射防止層は複数層により構成されるが、各層の配置として「最下層」という表現は、反射防止層内でも最もレンズ基材およびハードマスク層に近い位置の層のことを指す。
本明細書において「~」は所定の値以上且つ所定の値以下を指す。
以下、本発明の実施形態について述べる。なお、以降に記載の無い内容は、本出願人による国際公開番号2018/038114号パンフレットを参照可能である。
[本発明の一態様に係る眼鏡レンズ]
本発明の一態様に係る眼鏡レンズは、
レンズ基材の屈折率が1.60以上であり、δYIが-1.20~0.20である、眼鏡レンズである。
「δYI」の定義および上記数値範囲の導出過程は、後掲の実施例の項目内の《δYI試験》にて説明する。
本発明の一態様ならば、本発明の課題であるところの眼鏡レンズの変色の抑制は達成される。
[本発明の一態様に係る眼鏡レンズの好適例]
以下、本発明の一態様の好適例について説明し、本発明の一態様に係る眼鏡レンズの構成の詳細について説明する。
δYIが-0.20~0.20であるのが好ましく、-0.05~0.05であるのがより好ましい。
レンズ基材と、レンズ基材上に設けられたハードコート層と、ハードコート層上に設けられ且つ複数層により構成される反射防止層と、を備え、
ハードコート層内にはTiOゾルを含有させないのが好ましい。
ハードコート層内にはTiOゾルを含有させなければよいが、紫外線を吸収する化合物、そしてそれに付随して有機化合物を分解する化合物を含有させないのがよい。
また、ハードコート層は樹脂を含有させてもよいし(好適には樹脂が主成分)、そうでなくともいい。主成分とは、被膜において最も多くを占める成分であって、通常は全体の50質量%程度~100質量%、更には90質量%程度~100質量%を占める成分である。本発明の一態様では、ハードコート層が樹脂含有組成物である場合を例示する。
反射防止層内の少なくとも一層は、紫外線を吸収する化合物を含有するのが好ましい。
また、反射防止層を構成する複数の層の各々には特に限定は無いが、いずれの層も無機材料からなるのがよい。本発明の一態様では、この場合を例示する。
本発明の好適な上記の一態様ならば、ハードコート層の化学的安定性を維持しつつ眼鏡レンズの変色の抑制は達成される。
反射防止層内に複数のTiO層を有し、且つ、反射防止層内の最下層はTiO層であるのが好ましい。
本発明の技術的思想が成されたきっかけとしては、樹脂を含有するハードコート層にTiOゾルを含めるのではなく、各層が無機材料からなる反射防止層内にTiO層を設けたことにある。この技術的思想に素直に従うと、反射防止層内のTiO層は、樹脂を含有するハードコート層から遠ざけて配置されるべきである。
ところが、本発明者が鋭意検討したところ、この知見とは逆に、ハードコート層に最も近い層(具体的にはハードコート層の直上の層)を、反射防止層内の最下層となるTiO層とすることにより、樹脂を含有するハードコート層に対する密着性が向上した。
しかも、最下層のTiO層以外にもTiO層を反射防止層が有することにより、最下層のTiO層の上のTiO層が紫外線を吸収する。そうなると、ハードコート層と最下層のTiO層とが接触するとしても、ハードコート層の化学的安定性を損なう元となる紫外線は最下層のTiO層には届きにくい。そうなると、最下層のTiO層では光触媒反応は起こりにくくなり、ひいてはハードコート層の化学的安定性が維持される。しかも、前段落に記載のようにハードコート層に対する密着性が向上する。
最下層のTiO層の上のTiO層が紫外線を吸収することを鑑みると、最下層のTiO層の上のTiO層の合計膜厚は50nm以上が好ましく、80nm以上がより好ましく、100nm以上が更に好ましい。上限については特に限定は無いが、例えば500nm、好ましくは300nmが挙げられる。
その一方、最下層のTiO層はその直下のハードコート層に対する密着性が担保できればよく、万一、紫外線が最下層のTiO層に比較的多量に届いた場合のことを想定すると、最下層のTiO層は、他のいずれのTiO層よりも厚みが小さいのが好ましい。また、厚みの上限は10nmが好ましく、5nmがより好ましく、2nmが更に好ましい。
なお、反射防止層内のTiO層(最下層のTiO層含む)の合計層厚は50nm以上が好ましく、80nm以上がより好ましく、100nm以上が更に好ましい。上限については特に限定は無いが、例えば500nm、好ましくは300nmが挙げられる。
また、最下層のTiO層の上のTiO層が紫外線を吸収することを鑑みると、厚みは、最下層のTiO層a<その一つ上位のTiO層b<更にその一つ上位のTiO層c、という関係を有するのが好ましい。更には、上記TiO層c<その一つ上位のTiO層d、という関係を更に有するのがより好ましい。この構成により、最下層のTiO層から離れたTiO層であるほど予め紫外線を十分に吸収させ、紫外線が下方に進行したとしても、最下層のTiO層には到達しないまたは到達したとしてもほぼ問題ない光量となる。
この光量の観点で見ると、TiO層が反射防止層のうちの最下層ではない場合も上記規定を適用できる。例えば、反射防止層のうちの最下層ではないものの複数のTiO層のうち最下位のTiO層a´<その一つ上位のTiO層b´<更にその一つ上位のTiO層c´、という関係を有するのも好ましい。更には、上記TiO層c´<その一つ上位のTiO層d´、という関係を更に有するのもより好ましい。
TiO層bの厚みは、最下層(または最下位)のTiO層a(またはa´)の厚みの2倍以上(好適には4倍以下)が好ましい。
TiO層cの厚みは、最下層(または最下位)のTiO層a(またはa´)の厚みの4倍以上(好適には6倍以上、12倍以下)が好ましい。
TiO層dの厚みは、最下層(または最下位)のTiO層a(またはa´)の厚みの20倍以上(好適には50倍以上、100倍以下)が好ましい。
レンズ基材の屈折率は1.67以上であるのが好ましい。反射防止層内にTiO層を設ける関係上、レンズ基材の屈折率も比較的高めに設定するのがよい。
但し、本発明はこの場合に限定されない。例えば、レンズ基材とハードコート層と反射防止層との間に屈折率差があり、干渉縞が生じるおそれがあったとしても、λ/4層を設けることによりこのおそれを解消できる。
具体的な好適構成としては、ハードコート層は、λ/4層を含む少なくとも2層以上からなる。なお、λ/4層の代わりに、層厚を、0.2λを超え且つ0.3λ未満としてもよい。但し、波長λにおける振幅が他の波長に比べて最も小さくなるように選択可能という効果を鑑みると、λ/4層が好適である。
λ/4層を設ける場所には特に限定は無いが、レンズ基材と他の層との屈折率差を考慮する場合、レンズ基材の直上にλ/4層を設けるのが好ましい。
なお、λ/4層の直上に、これまで述べてきた樹脂含有ハードコート層を設けてもよいし、λ/4層の直上に、耐衝撃性を向上させるプライマー層を設けたうえで、該プライマー層の直上に該樹脂含有ハードコート層を設けてもよい。
反射防止層は、低屈折率層と高屈折率層との組み合わせを複数設けたものであれば特に限定は無い。なお、反射防止層を構成する複数層のうちの少なくとも一つが導電層であってもよい。この構成によりチャージアップの発生を抑制できる。本発明の一態様における導電層の材料には特に限定は無いが、例えばITOが挙げられる。
なお、後掲の実施例のように、導電層の上にも低屈折率層と高屈折率層との組み合わせを設けてもよい。その一方、導電層の下では、厚みにおいて、最下層のTiO層a<その一つ上位のTiO層b<更にその一つ上位のTiO層c、という関係を有するのが好ましい。更には、上記TiO層c<その一つ上位のTiO層d、という関係を更に有するのがより好ましい。最下層のTiO層aを、最下位のTiO層a´と読み替えた場合も同様である。
[本発明の一態様に係る眼鏡レンズがもたらす効果]
本発明の一態様によれば、ハードコート層にTiOゾルを含有させないため、ハードコート層の化学的安定性を維持できる。その結果、ハードコート層の密着性を高く維持できる。
また、ハードコート層にTiOゾルを含有させないため、ハードコート層中の樹脂の分解により生成する化合物のせいでハードコート層が青色化するおそれもなくなる。
そして、反射防止層の複数層の少なくとも一層が、紫外線を吸収する化合物を含有する(一態様としてはTiO層)。そのため、紫外線を該化合物が吸収する。その結果、ハードコート層の下にあるレンズ基材が紫外線に晒されて変質し、黄変するおそれもなくなる。
以上の結果、本発明の好適な一態様によれば、ハードコート層の化学的安定性を維持しつつ眼鏡レンズの変色を抑制する技術を提供できる。
それに加え、以下のような予期せぬ効果もある。
従来だと、レンズ基材の屈折率が高い場合、ハードコート層の屈折率も高くすべきと考えられている。だからこそ、レンズ基材の屈折率が高い場合、例えばレンズ基材の屈折率が1.67以上の場合、TiOゾルを含有するハードコート材料へと変更することが通常であった。
その一方、本発明の一態様を採用すれば、ハードコート層にTiOゾルを含有させない。そして、反射防止層において、高屈折率および紫外線吸収を担保させる。その結果、ハードコート層の形成の際に、レンズ基材の屈折率によらず、共通したハードコート材料を使用できる、という予期せぬ効果がある。
[本発明の一態様に係る眼鏡レンズの構成の詳細]
以下、上記内容以外の具体的内容について述べる。
<眼鏡レンズの種類>
上記眼鏡レンズは、単焦点レンズ、多焦点レンズ、累進屈折力レンズ等の各種レンズであることができる。レンズの種類は、レンズ基材の両面の面形状により決定される。また、レンズ基材表面は、凸面、凹面、平面のいずれであってもよい。通常のレンズ基材および眼鏡レンズでは、物体側の面は凸面、眼球側の面は凹面である。ただし、本発明は、これに限定されるものではない。
<レンズ基材>
上記眼鏡レンズにおいて、レンズ基材の眼球側の面および物体側の面にそれぞれ設けられた多層膜は、眼鏡レンズに上記の反射分光特性を付与することができる。上記多層膜は、レンズ基材の表面上に、直接または一層以上の他の層を介して間接的に設けられる。レンズ基材は、特に限定されないが、ガラス、または、(メタ)アクリル樹脂をはじめとするスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アリル樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR-39)等のアリルカーボネート樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、イソシアネート化合物とジエチレングリコールなどのヒドロキシ化合物との反応で得られたウレタン樹脂、イソシアネート化合物とポリチオール化合物とを反応させたチオウレタン樹脂、分子内に1つ以上のジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物を含有する重合性組成物を硬化して得られる透明樹脂等を挙げることができる。また、無機ガラスも使用可能である。なおレンズ基材としては、染色されていないもの(無色レンズ)を用いてもよく、染色されているもの(染色レンズ)を用いてもよい。レンズ基材の屈折率は、例えば、1.60~1.75程度である。ただしレンズ基材の屈折率は、これに限定されるものではなく、上記の範囲内でも、上記の範囲から上下に離れていてもよい。
<ハードコート層>
ハードコート層の詳細については、例えば特開2012-128135号公報段落0025、0026、0030を参照できる。ハードコート層の材料としては特に限定は無いが、有機ケイ素化合物をハードコート液に用いてもよい。有機ケイ素化合物には特に限定は無く、例えばエポキシ系、アクリル系、ビニル系、メタクリル系のシランカップリング剤等を用いることができる。
[本発明の一態様に係る眼鏡レンズの好適例]にて記載したλ/4層の詳細については、例えば特許文献1の中間層を参照でき、段落0025~0033を参照できる。
同じく[本発明の一態様に係る眼鏡レンズの好適例]にて記載したプライマー層の詳細については、例えば特開2012-128135号公報の段落0029、0030を参照できる。
<反射防止層>
レンズ基材の眼球側の面上、物体側の面上にそれぞれ設ける多層膜は、これら多層膜を有する眼鏡レンズ表面に先に記載した反射分光特性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。そのような多層膜は、好ましくは、高屈折率層と低屈折率層を順次積層することにより形成することができる。より詳しくは、高屈折率層および低屈折率層を形成するための膜材料の屈折率と、反射すべき光や反射を低減すべき光の波長に基づき、公知の手法による光学的シミュレーションにより各層の膜厚を決定し、決定した膜厚となるように定めた成膜条件下で高屈折率層と低屈折率層を順次積層することにより、上記多層膜を形成することができる。成膜材料としては、無機材料であっても有機材料であっても有機無機複合材料であってもよく、成膜や入手容易性の観点からは、無機材料が好ましい。成膜材料の種類、膜厚、積層順等を調整することにより、青色光、紫外線、緑色光、赤色光のそれぞれに対する反射分光特性を制御することができる。
高屈折率層を形成するための高屈折率材料としては、[本発明の一態様に係る眼鏡レンズ]にて記載したチタン酸化物(例えばTiO)を採用する。そのうえで、別の高屈折率層において他の材料を採用してもよい。例えば、ジルコニウム酸化物(例えばZrO)、タンタル酸化物(Ta)、アルミニウム酸化物(Al)、イットリウム酸化物(例えばY)、ハフニウム酸化物(例えばHfO)、およびニオブ酸化物(例えばNb)からなる群から選ばれる酸化物の一種または二種以上の混合物を挙げることができる。一方、低屈折率層を形成するための低屈折率材料としてはケイ素酸化物(例えばSiO)、フッ化マグネシウム(例えばMgF)およびフッ化バリウム(例えばBaF)からなる群から選ばれる酸化物またはフッ化物の一種または二種以上の混合物を挙げることができる。なお上記の例示では、便宜上、酸化物およびフッ化物を化学量論組成で表示したが、化学量論組成から酸素またはフッ素が欠損もしくは過多の状態にあるものも、高屈折率材料または低屈折率材料として使用可能である。
多層膜に含まれる各層の膜厚は、上述の通り、光学的シミュレーションにより決定することができる。多層膜の層構成としては、例えば、レンズ基材側からレンズ最表面側に向かって、
第一層(低屈折率層)/第二層(高屈折率層)/第三層(低屈折率層)/第四層(高屈折率層)/第五層(低屈折率層)/第六層(高屈折率層)/第七層(低屈折率層)/第八層(高屈折率層)/第九層(低屈折率層)の順に積層された構成;
第一層(高屈折率層)/第二層(低屈折率層)/第三層(高屈折率層)/第四層(低屈折率層)/第五層(高屈折率層)/第六層(低屈折率層)/第七層(低屈折率層)/第八層(高屈折率層)の順に積層された構成、
等を挙げることができる。
なお、後者の構成において、第一層(高屈折率層)がTiO層である場合、この第一層が、「最下層(且つ最下位)であるTiO層」に該当する。
もちろん、前者の構成を採用しても構わない。前者の構成において、第二層(高屈折率層)がTiO層である場合、この第二層が、「TiO層のうち最下位の層」に該当する。
好ましくは、上記の各層は、前述の高屈折率材料または低屈折率材料を主成分とする被膜である。上記材料を主成分とする成膜材料(例えば蒸着源)を用いて成膜を行うことにより、そのような被膜を形成することができる。なお成膜材料に関する主成分も、上記と同様である。被膜および成膜材料には、不可避的に混入する微量の不純物が含まれる場合があり、また、主成分の果たす機能を損なわない範囲で他の成分、例えば他の無機物質や成膜を補助する役割を果たす公知の添加成分が含まれていてもよい。成膜は、公知の成膜方法により行うことができ、成膜の容易性の観点からは、蒸着により行うことが好ましい。本発明における蒸着には、乾式法、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が含まれる。真空蒸着法では、蒸着中にイオンビームを同時に照射するイオンビームアシスト法を用いてもよい。
上記の多層膜は、以上説明した高屈折率層および低屈折率層に加えて、導電性酸化物を主成分とする被膜、好ましくは導電性酸化物を主成分とする蒸着源を用いる蒸着により形成される一層以上の導電性酸化物層を、多層膜の任意の位置に含むこともできる。導電性酸化物としては、眼鏡レンズの透明性の観点から、インジウム酸化物、スズ酸化物、亜鉛酸化物、チタン酸化物、およびこれらの複合酸化物等の、一般に透明導電性酸化物として知られる各種導電性酸化物を用いることが好ましい。透明性および導電性の観点から特に好ましい導電性酸化物としては、スズ酸化物、インジウム-スズ酸化物(ITO、[本発明の一態様に係る眼鏡レンズの好適例]にて記載)を挙げることができる。導電性酸化物層を含むことにより、眼鏡レンズが帯電し塵や埃が付着することを防ぐことができる。
更に、多層膜上に、更なる機能性膜を形成することも可能である。そのような機能性膜としては、撥水性の防汚膜(例えばフッ化物ポリマーからなる)または親水性の防汚膜、防曇膜、偏光膜、調光膜等の各種機能性膜を挙げることができる。これら機能性膜については、いずれも公知技術を何ら制限なく適用することができる。
[本発明の一態様に係る眼鏡]
本発明の更なる態様は、上記の本発明の一態様に係る眼鏡レンズと、この眼鏡レンズを取り付けたフレームとを有する眼鏡を提供することもできる。眼鏡レンズについては、先に詳述した通りである。その他の眼鏡の構成については、特に制限はなく、公知技術を適用することができる。これまでに述べた好適例を適宜適用可能である。
[本発明の一態様に係る眼鏡レンズの製造方法]
本発明の更なる態様は、上記の本発明の一態様に係る眼鏡レンズの製造方法を提供することもできる。その具体的な構成は以下のとおりである。これまでに述べた好適例を適宜適用可能である。
「レンズ基材の屈折率が1.60以上であり、δYIが-1.20~0.20である、眼鏡レンズの製造方法。」
また、[本発明の一態様に係る眼鏡レンズがもたらす効果]にて述べたように、本発明の一態様を採用すれば、ハードコート層の形成の際に、レンズ基材の屈折率によらず、共通したハードコート材料を使用できる、という予期せぬ効果がある。この点に着目した場合の具体的な構成は以下のとおりである。
「上記製造方法の構成に加え、複数種類の屈折率のレンズ基材(例えば屈折率1.67以上のものと1.67未満のものを含む複数のレンズ基材)の各々の上に、共通した材料によりハードコート層を形成する、眼鏡レンズの製造方法。」
また、この製造方法で作製された眼鏡レンズ群にも本発明の技術的思想が反映されている。
以下、本発明を実施例により更に説明するが、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。本明細書において、屈折率とは、波長500nmにおける屈折率である。
[実施例1-1]
レンズ基材としては、屈折率1.60のプラスチックレンズ基材(HOYA株式会社製のEyas)を用意した。このレンズ基材は、物体側の面が凸面、眼球側の面が凹面であり、両面が光学的に仕上げられている。このレンズ基材の両面に、ハードコート層を設けた。
ハードコート層としては、実施例1-1では、レンズ基材の直上にλ/4層を設け、λ/4層の直上に樹脂含有(有機ケイ素化合物含有)ハードコート層(トップ層)を設けた。λ/4層にもトップ層にもTiOゾルは含有されない。λ/4層の屈折率は1.55に設定した。トップ層の屈折率は1.50に設定した。
このハードコート層の直上に、イオンアシスト蒸着により多層蒸着膜を順次形成して複数層を形成することにより、反射防止層を形成した。つまり、レンズ基材の両面側に対し、反射防止層を形成した。
この複数層は、低屈折率層と高屈折率層との組み合わせを複数積層させたものを含む。低屈折率層としてはSiO層が該当する。高屈折率層としては、実施例の場合はTiO層、比較例の場合はZrO層が該当する。
低屈折率層を形成するときの成膜レートは15Å/sとし、アシストガスとして酸素ガス(O)およびアルゴンガス(Ar)を用いた。両ガスの流量は10sccmとした。
高屈折率層を形成するときの成膜レートは3.5Å/sとし、アシストガスとして酸素ガス(O)およびアルゴンガス(Ar)を用いた。両ガスの流量は10sccmとした。
実施例1-1では、反射防止層を構成する複数層のうち計5層をTiO層とした。
実施例1-1では、凸面側、凹面側とも、多層蒸着膜は、レンズ基材側(ハードコート側)から主表面に向かって、表1に示す蒸着源を用いて第1層、第2層・・・の順に積層した。実施例1-1では、不可避的に混入する可能性のある不純物を除けばTiOからなる蒸着源を使用した。
以下の表1には、蒸着源の他に、屈折率、物体側の面および眼球側の面のハードコート層および反射防止層の各層の膜厚を記載する。
Figure 2023182010000002
以上の工程を経て、実施例1-1に係る眼鏡レンズを得た。
[実施例1-2]
レンズ基材を、屈折率1.67のプラスチックレンズ基材(HOYA株式会社製のEynoa)に変更した。λ/4層の屈折率は1.60に設定した。それ以外は、実施例1-1と同様の手法にて眼鏡レンズを得た。
[実施例1-3]
レンズ基材を、屈折率1.70のプラスチックレンズ基材(HOYA株式会社製のEyry)に変更した。λ/4層の屈折率は1.60に設定した。それ以外は、実施例1-1と同様の手法にて眼鏡レンズを得た。
[実施例1-4]
レンズ基材を、屈折率1.74のプラスチックレンズ基材(HOYA株式会社製のEyvia)に変更した。λ/4層の屈折率は1.60に設定した。それ以外は、実施例1-1と同様の手法にて眼鏡レンズを得た。
[比較例1-1]
実施例1-1と同様、レンズ基材としては、屈折率1.60のプラスチックレンズ基材(HOYA株式会社製のEyas)を用意した。
ハードコート層としては、実施例1-1とは異なり、レンズ基材の直上にλ/4層は設けなかった。レンズ基材の直上に樹脂含有ハードコート層(トップ層)を設けた。トップ層にはTiOゾルは含有されない。但し、実施例1-1とは異なり、トップ層の屈折率は1.60に設定した。
このハードコート層の直上に、アシストガスとして酸素ガス(O)およびアルゴンガス(Ar)を用いて、イオンアシスト蒸着により多層蒸着膜を順次形成して複数層を形成することにより、反射防止層を形成した。つまり、レンズ基材の両面側に対し、反射防止層を形成した。
比較例1-1では、反射防止層内にはTiO層は設けなかった。
以下の表2には、表1と同様、比較例1-1に係る諸条件を記載する。
Figure 2023182010000003
以上の工程を経て、比較例1-1に係る眼鏡レンズを得た。記載の無い内容は、実施例1-1と同様の手法を採用した。以降、他の試験例についても同様とする。
[比較例1-2]
レンズ基材を、屈折率1.67のプラスチックレンズ基材(HOYA株式会社製のEynoa)に変更した。また、実施例1-1と同様に、λ/4層を設けた。λ/4層の屈折率は1.70に設定した。トップ層の屈折率も1.70に設定した。但し、トップ層にはTiOゾルを含有させた。
以下の表3には、表1と同様、比較例1-2に係る諸条件を記載する。
Figure 2023182010000004
以上の工程を経て、比較例1-2に係る眼鏡レンズを得た。
[比較例1-3]
レンズ基材を、屈折率1.70のプラスチックレンズ基材(HOYA株式会社製のEyry)に変更した以外は、比較例1-2と同様の諸条件を採用し、眼鏡レンズを得た。
[比較例1-4]
レンズ基材を、屈折率1.74のプラスチックレンズ基材(HOYA株式会社製のEyvia)に変更した以外は、比較例1-2と同様の諸条件を採用し、眼鏡レンズを得た。
[比較例2-1]
実施例1-1だと反射防止層内に複数のTiO層を設けた一方、比較例2-1ではその代わりにZrO層を設けた。つまり、比較例2-1に係るハードコート層および反射防止層にはTiOゾルもTiO層も存在しない。
以下の表4には、表1と同様、比較例2-1に係る諸条件を記載する。
Figure 2023182010000005
以上の工程を経て、比較例2-1に係る眼鏡レンズを得た。
[比較例2-2]
レンズ基材を、屈折率1.67のプラスチックレンズ基材(HOYA株式会社製のEynoa)に変更した。λ/4層の屈折率は1.60に設定した。それ以外は、比較例2-1と同様の諸条件を採用し、眼鏡レンズを得た。
[比較例2-3]
レンズ基材を、屈折率1.70のプラスチックレンズ基材(HOYA株式会社製のEyry)に変更した。λ/4層の屈折率は1.60に設定した。それ以外は、比較例2-1と同様の諸条件を採用し、眼鏡レンズを得た。
[比較例2-4]
レンズ基材を、屈折率1.74のプラスチックレンズ基材(HOYA株式会社製のEyvia)に変更した。λ/4層の屈折率は1.60に設定した。それ以外は、比較例2-1と同様の諸条件を採用し、眼鏡レンズを得た。
《反射防止層の密着性試験》
実施例1-2および比較例1-2(いずれもレンズ基材の屈折率1.67)に対し、反射防止層の密着性試験を行った。なお、比較例1-2のハードコート層にはTiOゾルが含有されている。
密着性試験の内容としては、以下のとおりである。
各例に係る眼鏡レンズに対し、剃刀でレンズ表面に桝目を入れたのち、紫外線と湿度による促進試験により密着性を評価した。
紫外線照射(中心波長345nm、半値幅25nm、0.77Wの照射条件を大気雰囲気45℃にて4時間)-湿潤雰囲気(湿度90%、45℃にて4時間)を繰返す紫外線-湿度促進試験を1週間行った。1週間の促進試験後にレンズを取出し、レンズクリーニングペーパーで2kgの荷重を掛けて眼鏡レンズの表面を20往復摩擦し、摩擦後の眼鏡レンズの表面を顕微鏡で観察・撮影した。
以上の1週間の紫外線-湿度促進試験とその後の20往復摩擦、顕微鏡観察の工程を、所定期間(1週間(1W)、2週間(2W)、3週間(3W)、4週間(4W))繰返して行い、密着性を評価した。
図1は、レンズ基材の屈折率が1.67である実施例1-2および比較例1-2に対する密着性試験に係る結果を示す写真である。
図1に示す通り、レンズ基材の屈折率が1.67である実施例1-2は、比較例1-2に比べ、密着性が良好であった。
本試験では、密着性の定量化を試みた。具体的には、図1に示す写真から、画像処理ソフトウェア(ImageJ)により、反射防止層の残存割合を評価した。その結果を示すのが以下の表5である。
Figure 2023182010000006
《δYI試験》
眼鏡レンズの変色のしやすさを調査すべく、実施例1-1~1-4および比較例2-1~比較例2-4に対し、δYI試験を行った。
δYI試験の内容としては、以下のとおりである。
まず、各例に係る眼鏡レンズに対し、試験前でのYI値を計算した。なお、YI値の計算方法は、JIS K 7373:2006(プラスチック-黄色度及び黄変度の求め方)に記載の通りである。
YI値を得るための具体的な測定としては、日立製 U4100分光光度計で、D65光源を使用し、透過スペクトルを測定した。得られた透過スペクトルに対し、XYZ表色系でのX,Y,Z色座標を計算した(具体的な数式はJIS Z 8701:1999に掲載されている)。そして、以下の式に基づき、YI値を算出する(以下の数式はJIS K 7373:2006に掲載されている)。
YI=100*(1.2985X-1.1335Z)/Y
その後、各例に係る眼鏡レンズに対し、紫外~可視光線を大気雰囲気63℃にて300時間照射した。2.5kWキセノンランプを使用し、バンドパスフィルタを通して波長300nmから700nmの紫外~可視光線をレンズに照射した。レンズ面での照度は320W/mとした。そして、上記手法を用いてYI値を得た。そして、各例において、試験後のYI値から試験前のYI値を差し引いた値をδYI値とした。δYI値の絶対値が小さいほど、紫外線照射の影響が少なく良好であることを意味する。
図2は、δYI試験に係る結果を示す棒グラフであり、縦軸はδYI値である。
また、δYI試験で得られたδYIの具体的な値は以下のとおりである。
・屈折率1.60のレンズ基材を用いた場合のδYI値
実施例1-1:-0.52
比較例1-1: 0.14
比較例2-1: 0.22
・屈折率1.67のレンズ基材を用いた場合のδYI値
実施例1-2: 0.01
比較例1-2:-1.25
比較例2-2: 0.21
・屈折率1.70のレンズ基材を用いた場合のδYI値
実施例1-3:-0.01
比較例1-3:-1.50
比較例2-3: 0.24
・屈折率1.74のレンズ基材を用いた場合のδYI値
実施例1-4:-0.05
比較例1-4:-1.39
比較例2-4: 1.48
図2および上記まとめを見ると、レンズ基材が1.60の場合(すなわち実施例1-1、比較例1-1、および比較例2-1)、各例いずれも絶対値が小さなδYI値が得られた。
レンズ基材が1.67以上の場合(すなわち実施例1-2~1-4、比較例1-2~1-4、および比較例2-2~2-4)、実施例1-2~1-4だと、絶対値が極めて小さいδYI値が得られた。見方を変えると、レンズ基材が1.60の場合よりもかなり絶対値が小さなδYI値が得られた。
その一方、比較例1-2~1-4だと、δYI値が大きなマイナス値になった。比較例1-2~1-4に係る試験後の眼鏡レンズを肉眼で確認したところ、青色化していた。これは、ハードコート層にTiOゾルを含有させたため、ハードコート層中の樹脂の分解により生成する化合物のせいでハードコート層が青色化したことを表す。
また、比較例2-2~2-4だと、δYI値が、屈折率が増加するにつれて大きなプラス値になった。比較例2-2~2-4に係る試験後の眼鏡レンズを肉眼で確認したところ、黄色化していた。これは、反射防止層を構成する層としてZrO層を採用したものの、ZrO層には紫外線吸収の能力が無いないし乏しい。しかも、ハードコート層にはTiOゾルは含有されていない。そのため、ハードコート層の下にあるレンズ基材が紫外線に晒されて変質し、黄変したことを表す。
なお、図2および上記まとめから、本発明の一態様に係る好適な規定を導き出せる。すなわち、レンズ基材の屈折率が1.67以上のときのδYIが-1.20~0.20であるのが好適であり、-0.20~0.20であるのがより好適であり、-0.10~0.10であるのが更に好適であり、-0.05~0.05であるのが特に好適である。
《紫外線透過スペクトル試験》
各実施例に係る眼鏡レンズ(具体的には反射防止層)が紫外線を効果的に吸収していることを示すべく、実施例1-2~1-4および比較例2-2~比較例2-4に対し、紫外線透過スペクトル試験を行った。
紫外線透過スペクトル試験の内容としては、以下のとおりである。
各例の眼鏡レンズの物体側の面(凸面側)、眼球側の面(凹面側)の光学中心において、日立分光光度計U-4100を用い、280~780nmの波長域における透過スペクトルを測定した(測定ピッチ:1nm)。
図3は、実施例1-2および比較例1-2に係る反射防止層を紫外線透過率が高いガラス基板に製膜したものを測定して得られた透過率を示す図であり、縦軸は透過率(%)、横軸は波長(nm)である。なお、この図を得るために使用した透過スペクトルは、δYI試験にてYI値を得るために使用した透過スペクトルでもある。また、この図は、反射スペクトルの影響を排すべく、100×透過率/(100-反射率)の補正を行った後の図である。なお、反射率および反射スペクトルも日立分光光度計U-4100を使用して得た。
図3を見ると、実施例1-2だと、紫外線を示す波長315~400nmにおいて低い透過率を示す。一例として、波長320nmの紫外線において、実施例1-2に係る反射防止層の紫外線吸収率は、100*{(ガラス基板での紫外線透過率)-(実施例1での紫外線透過率)}/(ガラス基板での紫外線透過率)=(80.70-9.40)/80.70≒88%である。これは、実施例1-2に係る反射防止層内のTiO層が紫外線を適切に吸収しているおかげである。
その一方、比較例1-2だと、紫外線を示す波長315~400nmにおいてガラス基板と同等の高い透過率を示す。一例として、波長320nmの紫外線において、比較例1-2に係る反射防止層の紫外線吸収率は、100*{(ガラス基板での紫外線透過率)-(比較例1での紫外線透過率)}/(ガラス基板での紫外線透過率)=(80.70-73.55)/80.70≒8.9%である。これは、比較例1-2に係る反射防止層内にはTiO層が含まれていないためである。
なお、図3から、本発明の一態様に係る好適な規定を導き出せる。すなわち、本発明の一態様に係る眼鏡レンズが備える反射防止層は、波長320nmの紫外線のうち60%以上(より好ましくは80%以上)を吸収するのが好適である。
以上の各試験の結果、各実施例ならば、ハードコート層の化学的安定性を維持しつつ眼鏡レンズの変色を抑制できることが確認された。

Claims (4)

  1. レンズ基材の屈折率が1.60以上であり、δYIが-1.20~0.20である、眼鏡レンズ。
  2. δYIが-0.20~0.20である、請求項1に記載の眼鏡レンズ。
  3. δYIが-0.05~0.05である、請求項1に記載の眼鏡レンズ。
  4. レンズ基材と、レンズ基材上に設けられたハードコート層と、ハードコート層上に設けられ且つ複数層により構成される反射防止層と、を備え、
    ハードコート層内にはTiOゾルを含有させない、請求項1~3のいずれかに記載の眼鏡レンズ。

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