JP2023177507A - 親水性塗料組成物 - Google Patents

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泰広 朝田
Yasuhiro Asada
和久 尾崎
Kazuhisa Ozaki
健 藤田
Takeshi Fujita
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Nippon Paint Automotive Coatings Co Ltd
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Abstract

【課題】本発明は親水性による防汚性に優れ、さらに水垢が固着しても容易に取り除くことができる塗料組成物を提供する。【解決手段】本発明は、特定の構造単位を有する4級アンモニウム塩基および水酸基を含有する樹脂(A)、水酸基を含有するバインダー樹脂(B)および硬化剤(C)を含む親水性塗料組成物であって、硬化した塗膜の動的ガラス転移温度が80℃~140℃である、ことを特徴とする親水性塗料組成物およびそれから得られた硬化塗膜や塗装物品を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、4級アンモニウム塩基含有樹脂を含有する親水性塗料組成物および塗装物品に関する。
プラスチック基材等に求められる表面特性として、防汚性、防曇性、帯電防止性、リコート性等がある。一般に、これらの表面特性は、基材に親水性を付与することによって発揮され、これまでに種々の親水性樹脂や親水性塗料組成物が提案されている。
特許文献1には2種類の4級アンモニウム塩を含有する親水性共重合体が開示されている。しかしながら特許文献1に記載の組成物は、持続性の高い親水性は発現するものの、洗浄などで水が残った場合に水垢が固着し除去できないという問題が生じる。
特許文献2では、4級アンモニウム塩を含む(メタ)アクリル系ポリマーと架橋剤とを含有する帯電防止剤組成物から形成される帯電防止層が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載の組成物では親水性は発現するものの吸水性が高く、水分を含んだ場合に白化するなどの不具合が発生する。
特許第6408096号 特許第6263379号
本発明の目的は親水性による防汚性に優れ、さらに水垢が固着しても容易に取り除くことができる塗料組成物を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、特定構造の4級アンモニウム塩基を有する樹脂を用いることにより親水性発現による防汚性と、水垢の固着を取り除く性能と、の両方を有するものを提供することが可能になった。
即ち、本発明は、以下の態様を提供する:
[1]
4級アンモニウム塩基および水酸基を含有する樹脂(A)、水酸基を含有するバインダー樹脂(B)および硬化剤(C)を含む親水性塗料組成物であって、
前記樹脂(A)の4級アンモニウム塩基が下記式(1):
Figure 2023177507000001
(式(1)中、Raは水素原子または置換もしくは非置換のC1~C6アルキル基であり、Yaは下記式(1’):
Figure 2023177507000002
(上記式(1’)中、R’は置換もしくは非置換のC12~C14の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、A’はC2~C4の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、mはA’Oの平均付加モル数であって2~50の整数である。)
で表されるアニオンである。)
で表される基であり、
硬化した塗膜の動的ガラス転移温度が80℃~140℃である、
ことを特徴とする親水性塗料組成物。
[2]
前記バインダー樹脂(B)が溶解性パラメータ(SP)値10.4~11.7を有する、[1]記載の親水性塗料組成物。
[3]
前記硬化剤(C)がイソシアネート化合物またはメラミン樹脂である、[1]記載の親水性塗料組成物。
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載の親水性塗料組成物を硬化した硬化塗膜。
[5]
[1]~[3]のいずれかに記載載の親水性塗料組成物の硬化塗膜を表面に有する塗装物品。
本発明によれば、特定構造の4級アンモニウム塩基と水酸基の両方を含有する樹脂を用いて形成される塗膜は表面親水性の発現による防汚性およびその持続性に優れ、さらに水垢が付着しても容易に取り除く事ができる。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
また、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」および「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。
本明細書において、「(メタ)アクリル」との語は、アクリルおよびメタクリルの双方を包含する。よって、例えば、「(メタ)アクリル酸」との語は、アクリル酸およびメタクリル酸の双方を包含する。同様に、「(メタ)アクリレート」との語は、アクリレートおよびメタクリレートの双方を包含する。
<4級アンモニウム塩基および水酸基を含有する樹脂(A)>
本発明で用いられる樹脂(A)は、下記式(1):
Figure 2023177507000003
(式(1)中、Raは水素原子または置換もしくは非置換のC1~C6アルキル基であり、Yaは下記式(1’):
Figure 2023177507000004
(上記式(1’)中、R’は置換もしくは非置換のC12~C14の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、A’はC2~C4の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、mはA’Oの平均付加モル数であって2~50の整数である。)
で表されるアニオンである。)
で表される4級アンモニウム塩基を有することを特徴とする。
上記4級アンモニウム塩基を表す式(1)中、R は、置換または非置換のC1~C6アルキル基であり、塗膜の表面親水性向上の観点から、好ましくは置換または非置換のC1~C3アルキル基であり、より好ましくは置換または非置換のC1~C2アルキル基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。この際、存在してもよい置換基としては、バインダー樹脂との相溶性の観点から、好ましくはC6~C18アリール基であり、より好ましくはフェニル基である。
上記式(1)中、Y は下記式(1’)で表されるアニオンであり、
Figure 2023177507000005
上記式(1’)中、R’は、置換もしくは非置換のC12~C14の直鎖状または分枝状のアルキル基、すなわち置換もしくは非置換のドデシル基(n-ドデシル基、イソドデシル基等)、置換もしくは非置換のトリデシル基(n-トリデシル基、イソトリデシル基等)、置換もしくは非置換のテトラデシル基(n-テトラデシル基、イソテトラデシル基等)のいずれかであるが、入手容易性の観点から、置換もしくは非置換のドデシル基または置換もしくは非置換のトリデシル基であることが好ましく、置換もしくは非置換のトリデシル基であることが特に好ましい。また、本発明の効果を一層向上させる観点から、R’におけるC12~C14アルキル基は分枝状であることが好ましい。したがって、本発明の好ましい一実施形態において、R’は、置換もしくは非置換の分枝状のトリデシル基である。
上記式(1’)中、A’は、C2~C4の直鎖状または分枝状のアルキレン基である。C2~C4の直鎖状または分枝状のアルキレン基の例としては、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基(-CH-CH(CH)-)、n-ブチレン基、1-メチルプロピレン基(-CH-CH-CH(CH)-)、2-メチルプロピレン基(-CH-CH(CH)-CH-)、ジメチルエチレン基(-CH-C(CH-)、エチルエチレン基(-CH-CH(CHCH)-)等が挙げられる。
上記式(1’)中、mは、A’Oの平均付加モル数であって、2~50であり、塗膜の表面親水性および粘度低下による作業性向上の観点から、好ましくは2~30であり、より好ましくは2~20であり、さらにより好ましくは2~10である。
すなわち、上記式(1’)中、(A’O)は、ポリオキシアルキレン基を表す。(A’O)は、好ましくは2種以上のオキシアルキレン基を含み、より好ましくはオキシブチレン基(-CO-)を含む。このような基を含むことで、共重合体の親水性が高くなりすぎず、バインダー樹脂や有機溶媒との親和性が良好となる。(A’O)は、オキシエチレン基(-CO-)をさらに含むことが好ましい。オキシブチレン基は、分枝状のアルキレン基を有することが好ましく、下記式で示される基のうち少なくとも一方を含むことがより好ましい。このような基を含むことで、バインダー樹脂や有機溶媒との親和性および塗膜の表面親水性が一層向上する。
Figure 2023177507000006
上記式(1’)中、(A’O)におけるオキシブチレン基の割合は、好ましくは3~90モル%であり、より好ましくは10~80モル%であり、さらにより好ましくは20~50モル%であり、特に好ましくは30~40モル%である。なお、オキシブチレン基が2種以上の構造を有する場合、上記オキシブチレン基の割合は、各構造の割合(モル%)の合計を表す。(A’O)が2種以上のオキシアルキレン基を含む場合、その配列はランダム型、ブロック型のいずれでもよいが、塗膜の表面親水性効果を一層高める観点から、ブロック型であることが好ましい。なお、ブロック型の場合、配列の順序は問わない。すなわち、スルホン酸基には、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシブチレン鎖の順で連結してもよいし、その逆であってもよい。
上記樹脂(A)は、上記式(1)で表される4級アンモニウム塩基を有する(メタ)アクリル系単量体(a)、水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体(b)および、必要に応じて、それらと共重合し得る単量体(c)の3種のモノマーを反応することにより形成される。従って、本発明の樹脂(A)では、親水性基は上記式(1)で表される4級アンモニウム塩基であり、それ以外の親水性基を含まないことが必要である。尚、樹脂(A)が上述のように(メタ)アクリル単量体を使用する場合、(メタ)アクリル樹脂(A)とも呼ぶことがある。
上記(メタ)アクリル系単量体(a)は、具体的には、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系単量体と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルとの塩等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。(メタ)アクリル系単量体(a)は、合成品、市販品のいずれを用いてもよい。
本発明の4級アンモニウム塩基および水酸基を含有する樹脂(A)の合成に用いられる水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体(b)は、一般に使用される水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体であって、具体的には2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
(メタ)アクリル系単量体(b)は、合成品、市販品のいずれを用いてもよい。単量体Bは、1種単独を用いてもよいし2種以上併用してもよい。
本発明の樹脂(A)は、上述のように特定の(メタ)アクリル系単量体(a)および(b)を用いて合成されるが、必要に応じて、それらの単量体(a)および(b)と共重合し得る単量体(c)を使用してもよい。単量体(c)は、上記4級アンモニウム塩基や水酸基に影響を与える基を含まなければどのようなものでも良く、具体的には官能基を含まないアルキル(メタ)アクリレート(具体的には、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等);アクリロニトリル;スチレン;等が一般的である。また、(メタ)アクリル系単量体(c)は、前述のように上記4級アンモニウム塩基や水酸基に影響を与えなければ、カルボン酸基、シリコーン変性基、フッ素含有基などを含んでもよい。そのような(メタ)アクリル系単量体(c)の具体例として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のカルボン酸基含有(メタ)アクリル系単量体;東亞合成株式会社製のAK-30、AK-32、AK-5等のシリコーン変性基含有(メタ)アクリル系単量体;2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有基を含む(メタ)アクリル系単量体;等が挙げられる。
本発明の樹脂(A)の合成において、(メタ)アクリル系単量体(a)の使用量は、単量体(a)、(b)および(c)の合計重量(樹脂(A)全体)に対して、5~80重量%である。5重量%以上であれば表面親水性が優れる。一方80重量%以下であれば有機溶媒やバインダー樹脂との親和性が良好であり、塗膜自体の耐水性も優れる。中でも、本発明の効果を一層奏する観点から、より好ましくは30~75重量%であり、さらにより好ましくは50~70重量%である。
本発明の樹脂(A)の合成において、(メタ)アクリル系単量体(b)の使用量は、単量体(a)、(b)および(c)の合計重量(樹脂(A)全体)に対して、5重量%以上40重量%未満である。5重量%未満の場合、親水性共重合体を含む架橋構造の形成が不十分となる。すなわち、親水性共重合体が塗膜中に強固に固定化されず、表面親水性が持続しない。また、塗膜の硬度も低下する。一方、40重量%以上の場合、バインダー樹脂との相溶性が悪く、塗膜を形成できないか、あるいは塗膜を形成できたとしても透明性が顕著に劣る。中でも、本発明の効果を一層奏する観点から、好ましくは10重量%以上35重量%未満であり、より好ましくは20重量%以上30重量%未満である。
本発明の樹脂(A)の合成において、(メタ)アクリル系単量体(c)の使用量は、単量体(a)、(b)および(c)の合計重量(樹脂(A)全体)に対して、好ましくは40重量%以下であり、より好ましくは30重量%以下であり、特に好ましくは20重量%以下である(下限値:0重量%)。
<樹脂(A)の物性>
本発明の樹脂(A)の重量平均分子量は、有機溶媒やバインダー樹脂との親和性および作業性の観点から、好ましくは1,000~50,000であり、より好ましくは5,000~40,000であり、さらにより好ましくは10,000~30,000であり、特に好ましくは15,000~20,000である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:ポリエチレングリコール・ポリエチレンオキシド)により求めた値である。
本発明の樹脂(A)のガラス転移温度は、-10~50℃であることが好ましい。
本発明の樹脂(A)の水酸基価は、好ましくは20~170mgKOH/gであり、より好ましくは50~150mgKOH/gであり、さらにより好ましくは90~120mgKOH/gである。かような範囲にあれば、本発明の効果が一層奏される。なお、樹脂(A)の水酸基価は、親水性共重合体1g中に含まれる水酸基をアセチル化するために要する水酸化カリウムのmg数を意味する。具体的には、4級アンモニウム塩基含有樹脂(A)の水酸基価は、4級アンモニウム塩基含有樹脂を、無水酢酸を含むピリジン溶液とし、親水性共重合体に含まれる水酸基をアセチル化させ、過剰のアセチル化試薬を水によって加水分解し、生成した酢酸を水酸化カリウムで滴定することにより測定される値である。
本発明の樹脂(A)は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
<樹脂(A)の製造方法>
本発明の4級アンモニウム塩基および水酸基を含有する樹脂(A)は、対応するモノマーを種々の重合方法、例えば溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法など従来公知の重合方法を用いて樹号することにより製造することができる。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法、等温重合法などが挙げられる。中でも、分子量の調節が容易であり、また不純物の量も少ないことから、重合開始剤(好ましくは、熱重合開始剤)を用いた溶液重合法が好ましい。
熱重合開始剤の例としては、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)、アゾビスシアノ吉草酸、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2.4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2.4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドレート、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ化合物;tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
また、重合体前駆体の合成に際して、分子量を調節するために、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤の添加量は、共重合させる単量体の合計重量に対して、好ましくは0.1~5重量%であり、より好ましくは0.5~3重量%であり、さらにより好ましくは1~2重量%である。
連鎖移動剤の例としては、メチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸およびそのエステル、2-エチルヘキシルチオグリコール、チオグリコール酸オクチルなどのメルカプタン類;メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;クロロエタン、フルオロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒドなどのカルボニル類;メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
重合溶媒としては、重合させる各単量体、生成する重合体前駆体、および必要に応じて
重合開始剤その他の添加剤を溶解できるものであれば特に制限されず、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2-メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸メチル、ジメチルスルホキシド、水等を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
上記方法で得られた共重合体は、必要に応じて固形分濃度を調整したり、溶媒交換したり、濾過処理を施した後、添加剤を配合することもできる。また、重合により生成した親水性共重合体をヘキサン等により沈殿又は再沈殿等により精製し、添加剤とともに用途に応じた溶剤に溶解することもできる。
<親水性塗料組成物>
本発明は、上記4級アンモニウム塩基および水酸基を含有する樹脂(A)と、水酸基を含有するバインダー樹脂(B)と、硬化剤(C)と、を含む親水性塗料組成物(以下、単に「組成物」とも称する)を提供する。
以下、組成物の各成分について説明する。
<水酸基を含有するバインダー樹脂(B)(以下、単に「バインダー樹脂(B)」とよぶこともある。)>
バインダー樹脂(B)は、水酸基を有する樹脂であれば、特に制限されないが、下記硬化剤(C)の働きにより架橋反応しうる樹脂であることが好ましい。これにより、塗膜内部に架橋構造が形成され、塗膜の硬度や耐久性が向上する。また、樹脂(A)がバインダー樹脂(B)に(硬化剤を介して)結合できるため、樹脂(A)が強固に固定化された塗膜を得ることができる。ゆえに、塗膜の表面親水性がより持続する(すなわち、耐久親水性が一層向上する)。
例えば、バインダー樹脂(B)は、水酸基を含有する。バインダー樹脂(B)を、4級アンモニウム塩基および水酸基を含有する樹脂(A)と、ポリイソシアネートやメラミン樹脂などの硬化剤(C)と組み合わせることで、三者間で架橋構造を形成することができる。すなわち、4級アンモニウム塩基および水酸基を含有する樹脂(A)に存在する特定の4級アンモニウム塩基が存在する塗膜を得ることができる。
水酸基を含有するバインダー樹脂(B)としては、例えば、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、エポキシポリオール、天然油ポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリウレタンポリオールなどのマクロポリオールが挙げられる。中でも、上記親水性共重合体との相溶性ひいては塗膜の透明性の観点から、アクリルポリオールを用いることが好ましい。
アクリルポリオールとしては、例えば、1つ以上の水酸基を有する重合性単量体と、それに共重合可能な別の単量体とを共重合させることによって得られる共重合体が挙げられる。水酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2,2-ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。また、それらと共重合可能な別の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1~12)、マレイン酸、マレイン酸アルキル、フマル酸、フマル酸アルキル、イタコン酸、イタコン酸アルキル、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールおよび/または低分子量ポリアミンと、アルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどの炭素数2~5のアルキレンオキサイド)、または環状エーテル(テトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、オキセタン化合物)を開環付加重合(単独重合または共重合(アルキレンオキサイドとして、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが併用される場合には、ブロック共重合および/またはランダム共重合))させることにより得ることができる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールと、多塩基酸、そのアルキルエステル、その酸無水物、および、その酸ハライドとの縮合反応またはエステル交換反応により得られるポリエステルポリオール;低分子量ポリオールと、ε-カプロラクトンやγ-バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合することにより得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどのラクトン系ポリオールなどが挙げられ、さらには、それらポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどに上記の2価アルコールを共重合させることにより得られるラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールを、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどのカーボネート類を重合して得られる、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
エポキシポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールと、例えば、エピクロルヒドリン、β-メチルエピクロルヒドリンなどの多官能ハロヒドリンとを反応させることによって得られるエポキシポリオールが挙げられる。
天然油ポリオールとしては、例えば、ひまし油、やし油などの水酸基含有天然油などが挙げられる。
シリコーンポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体として、ビニル基含有のシリコーン化合物などが用いられる共重合体、および、末端アルコール変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
フッ素ポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体としてビニル基含有のフッ素化合物などが用いられる共重合体などが挙げられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、部分ケン化エチレン-酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
水酸基を含有するバインダー樹脂(B)は、1種単独で用いても、2種類以上併用してもよい。
水酸基を含有するバインダー樹脂(B)は、溶解性パラメータ(SP)が10.4~11.7であることが必要であり、溶解性パラメータは好ましくは10.6~11.2、より好ましく10.8~11.0である。溶解性パラメータが10.4より小さいと、親水性が低下する。溶解性パラメータが11.7より高いと、耐水性が低下する。
溶解性パラメータ(SP)とは、solubility parameter(溶解性パラメータ)の略であり、溶解性の尺度となるものである。SP値は数値が大きいほど極性が高く、逆に数値が小さいほど極性が低いことを示す。SP値の単位は、(MPa)1/2が用いられるが、使用しない場合も多い。
例えば、SP値は次の方法によって実測することができる[参考文献:SUH、CLARKE、J.P.S.A-1、5、1671~1681(1967)]。
サンプルとして、有機溶剤0.5gを100mlビーカーに秤量し、アセトン10mlを、ホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーにより溶解したものを使用する。このサンプルに対して測定温度20℃で、50mlビュレットを用いて貧溶媒を滴下し、濁りが生じた点を滴下量とする。貧溶媒は、高SP貧溶媒としてイオン交換水を用い、低SP貧溶媒としてn-ヘキサンを使用して、それぞれ濁点測定を行う。有機溶剤のSP値δは下記計算式によって与えられる。
δ=(Vml 1/2δml+Vmh 1/2δmh)/(Vml 1/2+Vmh 1/2
=V/(φ+φ
δ=φδ+φδ
Vi:溶媒の分子容(ml/mol)
φi:濁点における各溶媒の体積分率
δi:溶媒のSP値
ml:低SP貧溶媒混合系
mh:高SP貧溶媒混合系
また、SP値は、「K.L.Hoy J.P.T.42,76(1970)」に記載のエネルギーパラメーターを用い、「P.A.Small J.Appl.Chem.3,71(1953)」でSmallが提案した方法に従って算出できる。
バインダー樹脂(B)の計算ガラス転移温度(Tg)は、10~100℃であることが好ましく、50~90℃であることがより好ましく、70~80℃であることがさらにより好ましい。なお、本明細書において、「計算ガラス転移温度」とは、下記式(1)に示すFoxの式により算出される値である。本明細書の実施例では、使用した各バインダー樹脂について、表に示すモノマーのTgから計算ガラス転移温度を算出した。
1/Tg=Wa/Tga+Wb/Tb+・・・Wn/Tgn (1)
式(1)中、
Tg:バインダー樹脂のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wn:モノマーNの重量分率
(Wa+Wb+・・・Wn=1)
水酸基を含有するバインダー樹脂(B)の水酸基価は、好ましくは20~170mgKOH/gであり、より好ましくは50~150mgKOH/gであり、さらにより好ましくは80~120mgKOH/gである。なお、バインダー樹脂の水酸基価は、バインダー樹脂1g中に含まれる水酸基をアセチル化するために要する水酸化カリウムのmg数を意味する。具体的には、バインダー樹脂の水酸基価は、バインダー樹脂を、無水酢酸を含むピリジン溶液とし、バインダー樹脂に含まれる水酸基をアセチル化させ、過剰のアセチル化試薬を水によって加水分解し、生成した酢酸を水酸化カリウムで滴定することにより測定される値である。
水酸基を含有するバインダー樹脂(B)の重量平均分子量は、好ましくは1,000~500,00であり、より好ましくは4,000~40,000であり、特に好ましく10,000~30,000である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:ポリスチレン)により求めた値である。
<硬化剤(C)>
硬化剤(C)は、上記4級アンモニウム塩基および水酸基を含有する樹脂(A)および水酸基を含有するバインダー樹脂(B)の架橋反応を促進し、塗膜内部の架橋構造の形成に寄与する。
架橋構造に組み込まれる硬化剤の場合、上記4級アンモニウム塩基および水酸基を含有する樹脂(A)と水酸基を含有するバインダー樹脂(B)に含まれる水酸基と架橋反応する官能基または構造を有することが好ましい。この際、架橋の様式は、共有結合、イオン結合、水素結合または配位結合のいずれでもよいが、共有結合が好ましい。
硬化剤(C)は、具体的にはポリイソシアネート化合物またはメラミン樹脂である。ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族、脂環式または芳香族のポリイソシアネートが挙げられる。具体的には、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリエンジイソシアネート、ポリメリックMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ジイソシアネート化合物のビウレット体やイソシアヌレート体などのイソシアネート誘導体などが挙げられる。中でも、塗膜の黄変を抑制する観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートが好ましい。市販品としては、旭化成株式会社製のデュラネート(登録商標)TPA-100、TKA-100、24A-100、22A-75P、P301-75E等、東ソー株式会社製のコロネート(登録商標)HX、HK、2715等、三井化学株式会社製のタケネート(登録商標)500、600、スタビオP-370N等を用いることができる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化剤はメラミン樹脂であってもよく、具体的にはグアナミン、メラミン、N-ブチルメラミン、N-フェニルメラミン、N,N-ジフェニルメラミン、N,N-ジアリルメラミン、N,N’,N”-トリフェニルメラミン、N,N’,N”-トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン、2,4-ジアミノ-6-メチル-sym-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ブチル-sym-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ベンジルオキシ-sym-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ブトキシ-sym-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-シクロヘキシル-sym-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-クロロ-sym-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メルカプト-sym-トリアジン、アメリン(N,N,N’,N’-テトラシアノエチルベンゾグアナミン)等のメラミン類と、ホルムアルデヒド、及びアルコール類(例えば、メタノール等)の縮合物である。市販品としては、三井化学株式会社製のユーバン(登録商標)20SE、225、DIC株式会社製のアミディア(登録商標)L-117-60、L-109-65、47-508-60、L-118-60、G821-60、J820-60等を用いることができる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化触媒としては、無機酸、有機酸、有機金属塩、ルイス酸等が挙げられる。無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜硝酸、過塩素酸、スルファミン酸等が挙げられる。有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸等が挙げられる。有機金属塩としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、n-ヘキシルアミン、ジメチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、酢酸エタノールアミン、ギ酸ジメチルアニリン、安息香酸テトラエチルアンモニウム塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、酢酸ベンゾイルトリメチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウムアセテート、オクチル酸スズ等が挙げられる。ルイス酸としては、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、塩化スズ(SnCl)、塩化チタン(TiCl)、塩化亜鉛(ZnCl)等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の親水性塗料組成物における硬化剤(C)の含有量は、硬化剤(C)がポリイソシアネート化合物である場合は、NCO/OHの当量比で0.5~1.5、好ましくは0.8~1.3、より好ましくは0.9~1.2で配合するのが好適であり、メラミン樹脂の場合は主剤(上記4級アンモニウム塩基および水酸基を含有する樹脂(A)および水酸基を含有するバインダー樹脂(B)の合計重量)/硬化剤(C)の重量で、50/50~90/10、好ましくは60/40~80/20である。硬化剤(C)の含有量が少なくても多くても硬化が不十分になる。
[溶媒]
本発明の親水性塗料組成物は、好ましくは溶媒を含む。溶媒は、4級アンモニウム塩基含有樹脂、バインダー樹脂、硬化剤、および必要に応じてその他の添加剤を溶解または分散でき、各成分と反応せず、後述の乾燥工程において容易に除去できるものであれば特に制限されない。溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2-メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、トルエン、酢酸エチル、水等が挙げられる。例えば、ポリイソシアネートを硬化剤として使用する場合、イソシアネート基と反応しない溶媒(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒)を用いることが好ましい。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[添加剤]
本発明の親水性塗料組成物は、必要に応じて、顔料、成膜助剤、充填剤(フィラー)、トナー、湿潤剤、帯電防止剤、顔料分散剤、可塑剤、酸化防止剤、流れコントロール剤、粘度調整剤、消泡剤、紫外線吸収剤、分散剤等の添加剤をさらに含んでもよい。
本発明の塗料組成物の固形分濃度は、塗工性および作業性の観点から、好ましくは5~80重量%であり、より好ましくは10~60重量%であり、さらにより好ましくは20~50重量%であり、特に好ましくは30~40重量%である。
本発明の親水性塗料組成物は、1液型であってもよいし、使用前に2液以上を混合して使用する型であってもよい。
<塗膜>
本発明の親水性塗料組成物を基材上に塗布し、加熱することにより、硬度、透明性、ならびに初期および耐久後の表面親水性に優れた塗膜を基板上に形成することができる。すなわち、本発明では、上記の親水性塗料組成物を硬化した塗膜についても提供する。必要に応じて、着色層を設けても良い。
基材としては、ガラス、金属、金属酸化物、シリカ等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、紙、パルプ等の有機材料等が挙げられる。これらの基材表面は、プラズマ処理、コロナ処理、グロー放電処理、火炎処理、プライマーコート処理、化学薬品等による酸化処理等の物理的または化学的な処理が施されていてもよい。
組成物の塗布方法については、特に制限されず、例えば、スプレーコーティング、ワイヤーバーによるコーティング、スピンコーティング、ディップコーティングなどの公知の手法を採用することができる。また、ダイコーター、グラビアコーター、コンマコーターなどの連続塗布装置でも塗布することが可能である。
基材上に組成物を塗布後、加熱することにより、硬化した塗膜を得ることができる。加熱温度は、好ましくは40~250℃であり、より好ましくは50~200℃であり、さらにより好ましくは60~150℃であり、特に好ましくは70~120℃である。乾燥時間は、好ましくは1分~3時間であり、より好ましくは10分~2時間であり、さらにより好ましくは20分~1時間である。なお、上記と同様の条件で予備乾燥を行い、組成物中の溶媒を除去してもよい。
本発明の塗膜の厚さ(乾燥膜厚)は、特に制限されないが、好ましくは2~200μmであり、より好ましくは10~100μmであり、さらにより好ましくは20~70μmであり、特に好ましくは30~60μmである。
<塗膜の物性>
本発明の親水性塗料組成物は、硬化時に昇温速度2℃/分、周波数8Hzでの条件の動的ガラス転移温度が80℃~140℃、好ましくは100℃~130℃、更に好ましくは110℃~120℃であることが必要である。動的ガラス転移温度(動的Tg)がこの温度範囲にあると、水垢形成時にコーティング塗膜に水垢が食い込み固着するのを抑制できる。そのため、さらに汚れが付くような状況になっても、水垢をトリガーとした汚れの蓄積を抑制できる。
動的ガラス転移温度(動的Tg)は、まず、ポリプロピレン製試験板にエアースプレーにて、単膜の乾燥膜厚が50μmとなるように塗料組成物を塗装し、100℃で1時間加熱硬化して塗膜を形成する。次に、塗膜を試験板から剥離し、5mm×20mmの大きさに切断して試験片とし、この試験片について強制伸縮振動型粘弾性測定装置(オリエンテック社の「バイブロン」)を使用して動的粘弾性測定を行い、昇温速度2℃/分、測定周波数8Hzの条件で、昇温時に発生する応力と振動歪との間に生じる位相差から-20℃損失正接tanδを求める。塗膜の動的Tgは、損失正接tanδが最大値を示した時の温度とした。「損失正接tanδ」は、JIS-K7244-4:1999の引張振動-非共振法に準拠して測定される値である。
<用途>
本発明の親水性塗料組成物をガラス、金属、有機物等の種々の基材に塗布することにより、基材表面に親水性を付与することができ、しかも水垢の付着も防止できる。従って、自動車のガラス、鏡等の表面を容易に親水化することができる。鏡、太陽電池パネルのガラス面、住宅の窓ガラス等に防曇性やセルフクリーニング機能を付与することができ、また水垢の付着も起こりにくくなる。また、液晶ディスプレイ等の光学フィルムには、帯電防止によるチリやホコリ等の付着を防止することができる。加えて、濡れ性が向上することから、インクジェットの受像層やリコート性を有する用途などにも有用である。前述のように、本発明の親水性塗料組成物から形成された塗膜の上に、着色塗膜を形成することもできる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
合成例1(アンモニウム塩基および水酸基を含有する樹脂(A)の合成:尚、簡単のため実施例中では「アンモニウム塩基含有樹脂」とよぶ。)
攪拌機、滴下ロート、冷却管および温度計を備えたフラスコに、1-メトキシ-2-プロパノール(以下、PMとする)を50.00重量部およびメチルエチルケトン(以下、MEKとする)を50.00重量部仕込み、窒素雰囲気中で70℃まで昇温した。ジメチルアミノエチルアクリレート-ポリオキシブチレン/ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸エステル塩([C1327-O-(BO)-(EO)-SO]-[(CHNH-(CH-OCO-CH=CH)(日本乳化剤株式会社製)を55.00 質量部、メチルメタクリレート(以下、MMAとする)を17.16重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、2-HEMAとする)を27.84重量部、α-メチルスチレンダイマー(日油株式会社製)を1.00重量部、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(以下AMBNとする。)を3.00重量部の混合物を滴下ロートを用い180分かけて等速で滴下し、70℃で30分熟成した後、AMBN1.00重量部を加え、70℃で180分熟成した。その後、MEK50重量部を加えて希釈し冷却してアンモニウム塩含有樹脂1を得た。得られた共重合体の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:ポリスチレン)により測定したところ、19,300であった。また、120℃、1時間での測定した不揮発分は41.2%であった。
合成例2(アンモニウム塩基含有樹脂2の合成(比較合成例))
攪拌機、滴下ロート、冷却管および温度計を備えたフラスコに、PM50.00重量部、MEK50.0 重量部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド-塩化メチル4級塩の75%水溶液(以下、DMAPAA-Qとする)(KJケミカルズ株式会社製)40.00重量部を仕込み窒素雰囲気中で70℃まで昇温した。ジメチルアミノエチルアクリレート-ポリオキシブチレン/ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸エステル塩([C1327-O-(BO)-(EO)-SO]-[(CHNH-(CH-OCO-CH=CH)(日本乳化剤株式会社製)25.00重量部、MMA10.00重量部、ノルマルブチルアクリレート(以下、NBAとする)7.16重量部、 2-HEMA27.84重量部、αメチルスチレンダイマー1.00重量部、AMBN3.00重量部の混合物を滴下ロートを用いて180分かけて等速で滴下し、 70℃で30分熟成した後、AMBN1.00重量部を加え、70℃で180分熟成した。その後、MEK40重量部を加えて希釈し冷却してアンモニウム塩含有樹脂2を得た。得られた共重合体の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:ポリスチレン) により測定したところ18,700であった。また、120℃、1時間で測定した不揮発分は42.0%であった。
合成例3(アンモニウム塩基含有樹脂3の合成(比較合成例))
攪拌機、滴下ロート、冷却管および温度計を備えたフラスコに、PM50.00重量部、MEK50.00重量部、DMAPAA-Q73.30重量部を仕込み窒素雰囲気中で70℃まで昇温した。NBA17.16重量部、2-HEMA20.88重量部、αメチルスチレンダイマー1.00重量部、AMBN3.00重量部の混合物を滴下ロートを用いて180分かけて等速で滴下し、70℃で30分熟成した後、AMBN1.00重量部を加え、70℃で180分熟成した。その後、MEK31.70重量部を加えて希釈し冷却してアンモニウム塩含有樹脂2を得た。得られた共重合体の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:ポリスチレン)により測定したところ18,300であった。また、120℃、1時間で測定した不揮発分は42.1%であった。
合成例4(アンモニウム塩基含有樹脂4の合成(比較合成例))
攪拌機、滴下ロート、冷却管および温度計を備えたフラスコに、PM50.00重量部、MEK50.00重量部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(以下、DMAPAAとする)(KJケミカルズ株式会社製)30.00重量部を仕込み窒素雰囲気中で70℃まで昇温した。NBA21.62重量部、2-HEMA20.88重量部、αメチルスチレンダイマー0.73重量部、AMBN2.20重量部の混合物を滴下ロートを用いて180分かけて等速で滴下し、70℃で30分熟成した後、AMBN1.00重量部を加え、70℃で180分熟成した。その後、ジエチル硫酸(以下、DESとする)27.50重量部を添加し更に70℃で6時間反応させた。MEK50.00重量部を加えて希釈し冷却してアンモニウム塩含有樹脂2を得た。得られた共重合体の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:ポリスチレン)により測定したところ22,300であった。また、120℃、1時間で測定した不揮発分は40.1%であった。
合成例1~4で合成したアンモニウム塩基含有樹脂のモノマー組成と使用量、開始剤の種類と使用量、溶剤の種類と使用量および合成で得られた樹脂の特数値(水酸基価、重量平均分子量および不揮発分(%))を以下の表1に記載する。
Figure 2023177507000007
合成例5(水酸基を含有するバインダー樹脂1の合成:尚、実施例中では簡単のため単に「バインダー樹脂」とよぶ。)
攪拌機、滴下ロート、冷却管および温度計を備えたフラスコに、1-メトキシ-2-プロパノール(以下、PM)90.00重量部を仕込み、続いて窒素雰囲気中でコンデンサーの還流下120℃まで昇温した。昇温後メタクリル酸(以下、MAA)0.77重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、2-HEMA)27.84重量部、メチルメタクリレート(以下、MMA)22.76重量部、イソボルニルメタクリレート(以下、IBOMA)22.94重量部、スチレン(以下、ST)20.00重量部、ノルマルブチルアクリレート(以下、NBA)5.69重量部のモノマー混合物およびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート(化薬ヌーリオン社製、以下、トリゴノックス21S)1.80重量部をPM8.20重量部に溶解した溶液を別々の滴下ロートから1 8 0 分かけて等速で滴下した。30分熟成後さらにトリゴノックス21S0.20重量部をPM1.80重量部に溶解させた溶液を30分かけて等速で滴下し、60分間熟成した。その後、冷却して水酸基含有共重合体溶液を得た。得られた共重合体の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:ポリスチレン)により測定したところ、21,200であった。また、120℃、1時間で測定した不揮発分は51.2%であった。
合成例6(バインダー樹脂2の合成)
合成例5においてモノマー混合物をMAA0.77重量部、2-HEMA23.20重量部、MMA40.31重量部、ST31.22重量部、NBA4.50重量部に変更した以外は合成例1と同様な方法で水酸基含有共重合体溶液を得た。得られた共重合体の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:ポリスチレン)により測定したところ、20,400であった。また、120℃1時間で測定した不揮発分は52.5%であった。
合成例7(バインダー樹脂3の合成)
合成例5においてモノマー混合物をMAA2.30重量部、2-HEMA27.84重量部、MMA60.35重量部、NBA1.13重量部、ノルマルブチルメタクリレート(以下、NBMA)8.38重量部に変更した以外は合成例1と同様な方法で水酸基含有共重合体溶液を得た。得られた共重合体の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:ポリスチレン)により測定したところ、21,900であった。また、120℃1時間で測定した不揮発分は51.0%であった。
合成例8(バインダー樹脂4の合成)
合成例5においてモノマー混合物をMAA0.77重量部、2-HEMA27.84重量部、MMA40.52重量部、ST29.37重量部、NBA1.50重量部に変更した以外は合成例1と同様な方法で水酸基含有共重合体溶液を得た。得られた共重合体の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:ポリスチレン)により測定したところ、19,900であった。また、120℃1時間で測定した不揮発分は51.6%であった。
合成例9(バインダー樹脂5の合成)
合成例5においてモノマー混合物をMAA0.77重量部、2-HEMA27.84重量部、MMA40.52重量部、ST9.37重量部、NBA1.50重量部に変更した以外は、合成例1と同様な方法で水酸基含有共重合体溶液を得た。得られた共重合体の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:ポリスチレン) により測定したところ、21,900であった。また、120℃1時間で測定した不揮発分は51.6%であった。
合成例10(バインダー樹脂6の合成(比較合成例))
合成例1においてモノマー混合物をMAA0.77重量部、2-HEMA27.84重量部、MMA8.18重量部、ST29.46重量%、NBA33.75重量部に変更した以外は合成例1と同様な方法で水酸基含有共重合体溶液を得た。得られた共重合体の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー( G P C ) ( 標準物質: ポリスチレン) により測定したところ、20400であった。また、120℃1時間で測定した不揮発分は51.2%であった。
合成例11(バインダー樹脂7の合成(比較合成例))
合成例1においてモノマー混合物をMAA0.77重量部、2-HEMA34.80重量部、MMA28.18重量部、IBOMA34.72重量%NBA1.53重量部に変更した以外は合成例1と同様な方法で水酸基含有共重合体溶液を得た。得られた共重合体の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:ポリスチレン)により測定したところ、19400であった。また、120℃1時間で測定した不揮発分は51.3%であった。
合成例5~11で合成したバインダー樹脂(B)のモノマー組成と使用量、開始剤の種類と使用量および合成で得られた樹脂(B)の特数値(SP値、水酸基価、酸価、ガラス転移温度(Tg[℃])、重量平均分子量および不揮発分(%))を以下の表2に記載する。
Figure 2023177507000008
ガラス転移温度(Tg)およびSP値は、各モノマーのTgおよびSP値から計算で求めた。バインダー樹脂(B)で使用したモノマーのTg値およびSP値を以下の表3に示す。
Figure 2023177507000009
実施例1
合成例1で調製したアンモニウム含有樹脂1(固形分41.1重量%)と合成例5で調製したバインダー樹脂1(固形分51.2重量%)を固形分比率が6.0/94.0となる比率で混合した主剤に、硬化剤(C)としてスタビオD-370N(三井化学株式会社製 固形分100%)をNCO/OH=1.0となる比率で投入し、希釈シンナーとしてPMを用いて不揮発分35重量%となるよう調整した。得られた組成物をスプレーガンを用いてPC(ポリカーボネート)とPBT(ポリブチレンテレフタレート)のポリマーアロイに塗装し10分間セッティング後100℃の温風乾燥機にて1時間焼き付けを行い、膜厚30μの塗膜を作製した。
得られた塗膜について、最初の段階での外観、親水性(水接触角[°])、水垢除去性および耐衝撃性を以下に記載の通り評価した。結果を表4の結果の欄の初期に示す。また、塗装板を70℃の温水に500時間浸漬させ、取り出し後に水を十分にふき取り室温放置1時間後に外観、親水性および水垢除去性(耐水後の特性)を同様に評価した。結果を表4の結果の欄の耐水後に記載する。表4には、各実施例における配合量、各実施例で使用している樹脂の特数値(具体的には、バインダー樹脂(B)のSP値)および塗膜の動的Tg値を記載した。
[初期外観]
塗膜を目視にて評価した。
○:初期と変化なし
×:白ボケ
[親水性]
塗装面に0.1mlの純水を滴下し、1秒後の水接触角の測定により親水性を判断した。
◎ :≦55°
○ :>55° ≦60°
○△:>60° ≦65°
△ :>65° ≦70°
× :>70°
[水垢除去性]
塗膜にエビアン(ダノン社製)を噴霧し、50℃の熱風乾燥器にて1時間乾燥させた。その後スコッチブライト(3M社製)のウレタンスポンジを用いて軽く5往復水道水で洗浄し、水垢の残り具合を目視判定した。
○ :全く残らない
○△:よく見ると僅かに残っている
△ :リング状に薄く残っている
△×:リング状にはっきり残っている。
× :全体にはっきり残っている。
[耐衝撃性]
デュポン式落下衝撃試験機を用いて温度23±2℃、湿度50±5%(相対湿度)の条件下、半径6.35の半球形の撃針を塗装面に載せ、500gの重りを50cmの高さから落下させ、塗膜の割れを確認した。
○:割れなし
×:割れ発生
耐水後(耐水試験後)の特性
[耐水後外観]
○:変化なし
×:吸水白化発生
耐水後の親水性(水接触角[°])および水垢除去性は、耐水試験前(初期)と同様である。
実施例2~5
実施例1において表4に示す配合とする以外は実施例1と同様に組成物を調整し、塗膜を作製した。実施例1と同様の測定を行い、結果を表4に示す。
Figure 2023177507000010
尚、塗膜の動的Tgは以下のように測定した。
[塗膜動的Tg]
PP(ポリプロピレン)基材上に実施例で得られた塗料を塗装し100℃で1時間焼付後に硬化した塗膜を剥がして50μのフィルムを作製した。作製したフィルムをRheogel E-4000(株式会社UBM社製)を用いて粘弾性を測定し、tanδの値が最大を示す温度を動的Tgとした。
比較例1
合成例2で示したアンモニウム含有樹脂2(固形分50.2重量%)と合成例6で調製したバインダー樹脂2(固形分52.5重量%)を固形分比率が6.0/94.0となる比率で混合した主剤に硬化剤(C)としてスタビオD-370N(三井化学株式会社製 固形分100%)をNCO/OH=1.0となる比率で投入し、希釈シンナーとしてPMを用いて不揮発分35重量%となるよう調整した。得られた組成物をスプレーガンを用いてPC/PBTの基材に塗装し10分間セッティング後100℃の温風乾燥機にて1時間焼き付けを行い、膜厚30μの塗膜を作製した。
得られた塗膜について、外観、親水性(水接触角[°])、水垢除去性および耐衝撃性を実施例と同様に評価した。結果を表5の結果の欄の初期に示す。また、塗装板を70℃の温水に500時間浸漬させ、取り出し後に水を十分にふき取り室温放置1時間後に外観、親水性および水垢除去性(耐水後の特性)を同様に評価した。結果を表5の結果の欄の耐水後に記載する。表5には、各実施例における配合量、各実施例で使用している樹脂の特数値(具体的には、バインダー樹脂(B)のSP値)および塗膜の動的Tg値を記載した。
比較例2~7
比較例1において表5に示す配合とする以外は実施例1と同様に組成物を調整し、塗膜を作製した。比較例1と同様の測定を行い、結果を表5に示す。
Figure 2023177507000011
上記実施例および比較例において、実施例1~5では本発明の要件を満足しているので、塗装直後(初期)および耐水試験後(耐水後)のいずれにおいても外観、親水性および水垢除去性、さらに初期の耐衝撃性に優れている。比較例1では、アンモニウム塩含有樹脂が4級アンモニウム塩含有樹脂2であり、この樹脂は本発明で特定された4級アンモニウム塩基以外に、別の4級アンモニウム塩基(具体的には、ジメチルアミノプロピルアミド基の塩化メチル4級塩基)を一部に有しているので、水垢除去性が良くない。比較例2では、アンモニウム塩含有樹脂がアンモニウム塩含有樹脂3であり、この樹脂は本発明で特定された4級アンモニウム塩基を有さないで、ジメチルアミノプロピルアミド基の塩化メチル4級塩基のみを有しているので、水垢除去性が非常に良くない。比較例3では、アンモニウム塩含有樹脂がアンモニウム塩含有樹脂4であり、この樹脂は本発明で特定された4級アンモニウム塩基を有さないで、ジメチルアミノプロピルアミド基のジエチル硫酸で4級化している塩基のみを有しているので、水垢除去性が非常に良くない。比較例4は、アンモニウム塩含有樹脂3を少ない量で用いた例であるが、やはり水垢除去性が低下している。比較例5は実施例で用いているアンモニウム塩含有樹脂1に、比較例1で用いたアンモニウム塩含有樹脂3を少し添加した例であるが、水垢除去性が劣る傾向が見られる。比較例6や7は、塗膜の動的Tgが本発明の有用な範囲(80℃~140℃)の範囲を外れる例であり、比較例6は動的Tgが下限より低く、水垢除去性が劣っている。比較例7では動的Tgが上限より高く、水垢除去性など良い傾向にあるが、塗装初期の耐衝撃性が悪く、使用できない。

Claims (5)

  1. 4級アンモニウム塩基および水酸基を含有する樹脂(A)、水酸基を含有するバインダー樹脂(B)および硬化剤(C)を含む親水性塗料組成物であって、
    前記樹脂(A)の4級アンモニウム塩基が下記式(1):
    Figure 2023177507000012
    (式(1)中、Raは水素原子または置換もしくは非置換のC1~C6アルキル基であり、Yaは下記式(1’):
    Figure 2023177507000013
    (上記式(1’)中、R’は置換もしくは非置換のC12~C14の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、A’はC2~C4の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、mはA’Oの平均付加モル数であって2~50の整数である。)
    で表されるアニオンである。)
    で表される基であり、
    硬化した塗膜の動的ガラス転移温度が80℃~140℃である、
    ことを特徴とする親水性塗料組成物。
  2. 前記バインダー樹脂(B)が溶解性パラメータ(SP)値10.4~11.7を有する、請求項1記載の親水性塗料組成物。
  3. 前記硬化剤(C)がイソシアネート化合物またはメラミン樹脂である、請求項1記載の親水性塗料組成物。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の親水性塗料組成物を硬化した硬化塗膜。
  5. 請求項1~3のいずれか1項に記載の親水性塗料組成物の硬化塗膜を表面に有する塗装物品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN118344806A (zh) * 2024-06-14 2024-07-16 烟台市洛蒙防水材料有限公司 一种高粘高分子聚合物防水涂料及其制备方法

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