JP2023177378A - 多甲板船のデッキストリンガ構造 - Google Patents

多甲板船のデッキストリンガ構造 Download PDF

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【課題】船舶仕様の変更があった場合でも、最大喫水線を当初計画どおりに維持できる多甲板船のデッキストリンガ構造を提供する。【解決手段】多甲板船Sにおいて、乾舷甲板7を船側外板2に取付けるためのデッキストリンガとして、船長方向の一部において板厚を上方に向けて厚くした増厚デッキストリンガ20を用いる。増厚デッキストリンガ20の上面を基準として乾舷fbを決定できるので、結果として満載喫水線WLを引き上げることができる。また、増厚デッキストリンガ20は船長方向の一部であるので、最小限の船殻重量の増加で最大貨物積載量の低減も最小限にできる。【選択図】図1

Description

本発明は、多甲板船のデッキストリンガ構造に関する。さらに詳しくは、本発明は、RORO船(Roll-on/Roll-off船)やPCTC船(Pure Car and Truck Carrier船)などの多甲板船のデッキストリンガ構造に関する。
船の乾舷は、船の予備浮力を確保し復原性を示す指標であり、乾舷が大きいほど復原性が高くなる。通常の船舶において乾舷は、船の船長方向中央において、上甲板の上面から満載喫水線までの垂直距離をいう。
船に積載できる貨物等の最大積載量は船が充分な予備浮力を持って航海できるよう船の構造強度や船体形状から制限されており、この制限いっぱいの状態での喫水線を満載喫水線という。
RORO船などの多甲板船では、乾舷の基準が上甲板でなく、より下層の甲板であっても、全通甲板にして機関室と船首隔壁との間において前後に連通し、かつ横方向に連続する甲板を乾舷甲板とされることがある。
船の満載喫水線から上の垂直距離である乾舷は安全上の指標であると共に船の総トン数にも影響する。
総トン数とは、「船舶のトン数の測度に関する法律」の第4条に規定する船舶の大きさを表す指標に、同法第5条2項に規定する係数を乗じて得た数値にトンを付したものである。要するに、重量でなく船の容積を表す指標であり、この総トン数は、入港税や船舶の登録税に影響するので、乾舷甲板を多甲板のうちのどの甲板にするかは、総トン数とのバランスを考慮して決定される。
特許文献1の多甲板船(RORO船)では、図4に示すように上甲板112と船底104との間に2層の甲板111,118が設けられており、2層のうちの上側の甲板111が乾舷甲板とされている。また、満載喫水線WLは上側の甲板111と下側の甲板118との間に位置している。この船舶で乾舷fbは、甲板111と満載喫水線WLとの間の垂直距離となる。
図4の従来技術において、符号121は横隔壁である。各甲板112,111,118は船幅方向に延びて横隔壁121を貫き船側外板(これは垂直に延在している)に接合される。
非特許文献1に示すように、甲板と船側外板の接合はデッキストリンガを介して行われる。図5に示すように、デッキストリンガ10は舷側に最も近い1列の鋼板であり、船側外板2に溶接等で取付けられる。このデッキストリンガ10に乾舷甲板7が溶接等で結合される。
ところで、船舶の設計施工は初期計画を行い、その初期計画に基づき進められるが、その後の仕様変更によって、予想以上に乾舷が大きくなると、当初とる予定であった最大喫水線が低いままとなりかねない。最大喫水線が低いと最大貨物積載も少ないままとなるので、船主にとっては不利となる。
特開2016-124467号公報
「航海造船学」 118頁 平成15年3月10日第11版発行 野原威男著 海文堂出版株式会社
本発明は上記事情に鑑み、船舶仕様の変更があった場合でも、最大喫水線を当初計画どおりに維持できる多甲板船のデッキストリンガ構造を提供することを目的とする。
第1発明の多甲板船のデッキストリンガ構造は、多甲板船において、乾舷甲板を船側外板に取付けるためのデッキストリンガとして、船長方向の一部において板厚を上方に向けて厚くした増厚デッキストリンガを用いたことを特徴とする。
第2発明の多甲板船のデッキストリンガ構造は、第1発明において、前記増厚デッキストリンガは、船長方向の中心点を境に前後方向において所定長さにわたって形成されていることを特徴とする。
第3発明の多甲板船のデッキストリンガ構造は、第2発明において、前記増厚デッキストリンガは、乾舷甲板との接続部における上面を船幅方向内側に向けて下がる傾斜面に形成していることを特徴とする。
第1発明によれば、増厚デッキストリンガの上面を基準として乾舷を決定できるので、結果として満載喫水線を引き上げることができる。また、増厚デッキストリンガは船長方向の一部であるので、最小限の船殻重量の増加で最大貨物積載量の低減も最小限にできる。
第2発明によれば、増厚デッキストリンガが、船体の船長方向中心をまたいで設けられているので、満載喫水線を引き上げる効果が最大になる。
第3発明によれば、増厚デッキストリンガの乾舷甲板との接合部上面は傾斜面であるので、積載する自動車のタイヤが角部に当たって損傷する等の不都合が生じなくなる。
本発明の一実施形態に係るデッキストリンガ構造を示す要部断面図である。 図1に示すデッキストリンガ構造の部分平面図である。 本発明の一実施形態に係る多甲板船の縦断面図である。 特許文献1に記載の船舶の要部縦断面図である。 非特許文献1に記載のデッキストリンガの一例を示す斜視図である。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図3は本発明の一実施形態に係る多甲板船Sにおける船長方向中央での縦断面を示している。1は上甲板、2は船側外板、3は船底である。上甲板1の上面には船室等の上部構造物4が設けられている。
上甲板1と船底3との間には3層の甲板5,6,7が設けられている。5は第2甲板、6は第3甲板、7は第4甲板である。8はタンクトップである。
図3の多甲板船Sにおいては、乾舷fbは乾舷甲板7と満載喫水線WLとの間の垂直距離として算出される。
この乾舷fbの計測は、正確には乾舷甲板7の上面を基準として計測される。設計施工の当初計画に基づくデッキストリンガ10は図5に示すように、乾舷甲板7を船側外板2に結合する役目を果たしており、乾舷fbの計測は、その上面10aが基準となる。
本発明は、当初計画後の仕様変更に対処できるようにするため増厚デッキストリンガ20を用いることを特徴としている。
この増厚デッキストリンガ20は、図1に示すように、板厚を上方に向けて厚くしたものである。そして、この増厚デッキストリンガ20を当初取付けていたデッキストリンガ10を外して取付ける。その取付けは増厚デッキストリンガ20を船側外板2に対して溶接することにより行われ、乾舷甲板7は増厚デッキストリンガ20の端面に溶接付けされる。
増厚デッキストリンガ20は、一枚物の鋼板であることが強度確保の点から好ましい。ただし、当初用いていたデッキストリンガ10の上面に増厚用の鋼板を溶接等で接合したものであっても溶接強度が充分であれば、本発明の増厚デッキストリンガ20に含まれる。
増厚デッキストリンガ20の乾舷甲板7に対する接続部の上面は、傾斜面23に形成される。傾斜面23は船幅方向内側に向けて下がる斜面である。
このように傾斜面23を設けておくと、多甲板船が自動車運搬船である場合に、船倉内を走行する自動車のタイヤが角部に当たって損傷する等の不具合が生じなくなる。
増厚デッキストリンガ20の厚さや船幅方向の幅の寸法は任意の数値を選択できる。
図1の実施形態では、増厚デッキストリンガ2の厚さは約36mmであるが、この寸法に限られない。また、船幅方法の幅wは約1200mmであるが、この寸法に限られず、船体の幅に応じて任意の寸法を採用できる・
増厚デッキストリンガ20は、船体の船長方向の中央点(多くの貨物船では、前部垂線と後部垂線との間の垂線間長の中央点、ミッドシップmsともいう)を基準として、これをまたぐように前方と後方に必要な長さだけ設けられている。
船の長さに応じて、増厚デッキストリンガ20を形成する長さLは任意に選択できる。図2の実施形態では、ミッドシップmsを中心に前方10mで合計20mであるが、この長さに限られず、船体の長さに応じて任意の寸法を採用できることももちろんである。
本発明が適用される多甲板船Sでは、当初計画ではデッキストリンガ10は図5に示す1枚物鋼板で設計される。
しかし、設計および構造中の仕様変更によって、当初計画以上に乾舷fbが大きくなった場合は、増厚デッキストリンガ20を用いる。
増厚デッキストリンガ20の厚さは満載喫水線WLを引き上げたい垂直距離に合わせて定めればよい。
そうして厚さが決まると、多甲板船Sのサイズに合わせて増厚デッキストリンガ20の幅wと長さLを決めればよい。
本実施形態の増厚デッキストリンガ20によれば、つぎの効果を奏する。
(1)増厚デッキストリンガ20の上面を基準として乾舷fbを決定できる。この場合、当初計画のデッキストリンガ10の上面を基準とする乾舷fb′と比べると満載喫水線WLを引き上げることができる。
(2)増圧デッキストリンガ20は船長方向の一部であるので、最小限の船殻重量の増加で最大貨物積載量の低減も最小限にできる。
(3)増厚デッキストリンガ20が、船体の船長方向中心(ミッドシップms)をまたいで設けられているので、満載喫水線WLを引き上げる効果が最大になる。
(4)増厚デッキストリンガ20の乾舷甲板7との接合部上面は傾斜面23であるので、積載する自動車のタイヤが角部に当たって損傷する等の不都合が生じなくなる。
図示の実施形態はRORO船であるが、これ以外の船であっても多甲板船であれば、本発明を適用することができる。
1 上甲板
2 船側外板
3 船底
4 上部構造物
7 乾舷甲板
10 デッキストリンガ
20 増厚デッキストリンガ
23 傾斜面

Claims (3)

  1. 多甲板船において、
    乾舷甲板を船側外板に取付けるためのデッキストリンガとして、船長方向の一部において板厚を上方に向けて厚くした増厚デッキストリンガを用いた
    ことを特徴とする多甲板船のデッキストリンガ構造。
  2. 前記増厚デッキストリンガは、船長方向の中心点を境に前後方向において所定長さにわたって形成されている
    ことを特徴とする請求項1記載の多甲板船のデッキストリンガ構造。
  3. 前記増厚デッキストリンガは、乾舷甲板との接続部における上面を船幅方向内側に向けて下がる傾斜面に形成している
    ことを特徴とする請求項2記載の多甲板船のデッキストリンガ構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016124467A (ja) * 2015-01-07 2016-07-11 三菱重工業株式会社 船舶
JP2021008271A (ja) * 2015-12-30 2021-01-28 コリア シップビルディング アンド オフショア エンジニアリング カンパニー リミテッド 液化ガス運搬船
CN112356972A (zh) * 2020-11-19 2021-02-12 上海船舶研究设计院(中国船舶工业集团公司第六0四研究院) 液化天然气运输船舶和液化天然气运输系统

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