JP2023175477A - 強度及び靭性に優れたAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高強度でありながら靭性にも優れたAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出材の製造方法の提供を目的とする。【解決手段】以下、質量%にて、Si:0.15~0.65%,Mg:0.40~0.95%で過剰Si量が0.51%以下であり、Mn:0.15%以下、Fe:0.4%以下、Mn+Feの合計量が0.15~0.55%であり、Cu:0.15%以下,Cr:0.15%以下,Zn:0.15%以下,Ti:0.01~0.15%含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金を用いてビレットを鋳造し、前記鋳造したビレットを560~590℃にて2~8時間均質化処理し、前記にて得られたビレットを用いて押出加工及びその直後に冷却速度10℃~500℃/minにて200℃以下まで冷却し、その後に相対的に低温の1段目とそれより高温からなる2段目の2段時効処理を行うことを特徴とする。【選択図】 図1
Description
本発明は、Al-Mg-Si(6000系)のアルミニウム合金を用い、強度と靭性との両立を図った押出材の製造方法に関する。
高強度のアルミニウム合金としては、Al-Mg-Si系(6000系)合金と
Al-Zn-Mg系(7000系)合金とが知られている。
その中でAl-Mg-Si系のアルミニウム合金は押出性に優れた人工時効処理合金である。
例えば特許文献1には、高強度で高延性のアルミニウム合金の板材の製造方法を開示するが、押出材に適用できるものではなく3段熱処理である点で高コストとなる。
特許文献2には、Mgの含有量を質量%にて≦1.73×Si(%)+0.2,かつ≧1.73×Si(%)-0.2に制御した押出材を開示するが、高強度であっても靭性に劣るものと推定される。
Al-Zn-Mg系(7000系)合金とが知られている。
その中でAl-Mg-Si系のアルミニウム合金は押出性に優れた人工時効処理合金である。
例えば特許文献1には、高強度で高延性のアルミニウム合金の板材の製造方法を開示するが、押出材に適用できるものではなく3段熱処理である点で高コストとなる。
特許文献2には、Mgの含有量を質量%にて≦1.73×Si(%)+0.2,かつ≧1.73×Si(%)-0.2に制御した押出材を開示するが、高強度であっても靭性に劣るものと推定される。
本発明は、高強度でありながら靭性にも優れたAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出材の製造方法の提供を目的とする。
本発明に係る強度及び靭性に優れたアルミニウム合金押出材の製造方法は、以下、質量%にて、Si:0.15~0.65%,Mg:0.40~0.95%で過剰Si量が0.51%以下であり、Mn:0.15%以下、Fe:0.4%以下、Mn+Feの合計量が0.15~0.55%であり、Cu:0.15%以下,Cr:0.15%以下,Zn:0.15%以下,Ti:0.01~0.15%含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金を用いてビレットを鋳造し、前記鋳造したビレットを560~590℃にて2~8時間均質化処理し、前記にて得られたビレットを用いて押出加工及びその直後に冷却速度10℃~500℃/minにて200℃以下まで冷却し、その後に相対的に低温の1段目とそれより高温からなる2段目の2段時効処理を行うことを特徴とする。
ここで、前記2段時効処理は、1段目:145~185℃×2~12hr,2段目:175~215℃×2~12hrの条件であるのが好ましい。
このようにすると、押出材の結晶粒の平均粒径が300μm以下で、耐力205MPa以上、シャルピー衝撃値20J/cm2以上である押出材が得られる。
ここで、前記2段時効処理は、1段目:145~185℃×2~12hr,2段目:175~215℃×2~12hrの条件であるのが好ましい。
このようにすると、押出材の結晶粒の平均粒径が300μm以下で、耐力205MPa以上、シャルピー衝撃値20J/cm2以上である押出材が得られる。
これまでのAl-Mg-Si系のアルミニウム合金を用いた押出材にあっては、押出加工直後に空冷や水冷によるダイス端焼入れが行われ、その後に1段時効処理が施されていた。
これに対して本発明は、1段目を相対的に低温にすることで緻密な初期析出物を発現させた後に、それよりも高温の2段目にて上記析出物を充分に成長させることで、析出効果による高強度と析出物の緻密化による靭性向上を図ったものである。
本発明に用いるアルミニウム合金の組成の設定理由を以下、説明する。
<Mg,Si>
Mg及びSi成分は組織中にMg2Siを析出させることで高強度が得られるが、Mgの添加量が過剰になると押出性が低下し、過剰Si量が多くなりすぎると靭性が低下する。
そこで本発明においては質量%にて、Mg:0.40~0.95%,Si:0.15~0.65%で過剰Si:0.51%以下とした。
<Mn,Fe>
Mnは結晶粒の微細化効果があり押出加工直後に空冷レベルのダイス端焼入れにて充分な強度と靭性の両立を図ることができ、Fe成分は押出加工時の再結晶を抑制し、押出軸方向に伸長した結晶組織となるので伸びや靭性が向上する。
しかし、Mn+Feの合計量が多くなりすぎるとビレットの鋳造時に晶出する金属間化合物が多くなり延性が低下する。
そこで、Mn:0.15%以下とし、好ましくは含有しているのがよい。
Feは0.40%以下、好ましくは0.15~0.40%の範囲で、Mn+Fe:0.15~0.55%の範囲とした。
<Cr>
Cr成分も結晶粒の微細化効果があるものの焼入れ感受性がMnよりも強く、空冷によるダイス端焼入れではCr成分を0.15%以下とし、好ましくは含有しているのがよい。
Fe:0.40%以下、好ましくは0.15~0.40%、Mn+Fe:0.15~0.55%の範囲とした。
<Cu>
Cu成分は固溶効果により高強度化を図ることができるが、多いと靭性,耐食性が低下するので本発明では、Cu:0.15%以下にするのが好ましい。
<Zn>
Zn成分はMgZn2の析出により靭性が低下するので、Zn:0.15%以下にするのが好ましい。
<Ti>
Ti成分はビレットの鋳造時に結晶粒の微細化に有効であり、Ti:0.01~0.15%の範囲にて添加するのが好ましい。
<Mg,Si>
Mg及びSi成分は組織中にMg2Siを析出させることで高強度が得られるが、Mgの添加量が過剰になると押出性が低下し、過剰Si量が多くなりすぎると靭性が低下する。
そこで本発明においては質量%にて、Mg:0.40~0.95%,Si:0.15~0.65%で過剰Si:0.51%以下とした。
<Mn,Fe>
Mnは結晶粒の微細化効果があり押出加工直後に空冷レベルのダイス端焼入れにて充分な強度と靭性の両立を図ることができ、Fe成分は押出加工時の再結晶を抑制し、押出軸方向に伸長した結晶組織となるので伸びや靭性が向上する。
しかし、Mn+Feの合計量が多くなりすぎるとビレットの鋳造時に晶出する金属間化合物が多くなり延性が低下する。
そこで、Mn:0.15%以下とし、好ましくは含有しているのがよい。
Feは0.40%以下、好ましくは0.15~0.40%の範囲で、Mn+Fe:0.15~0.55%の範囲とした。
<Cr>
Cr成分も結晶粒の微細化効果があるものの焼入れ感受性がMnよりも強く、空冷によるダイス端焼入れではCr成分を0.15%以下とし、好ましくは含有しているのがよい。
Fe:0.40%以下、好ましくは0.15~0.40%、Mn+Fe:0.15~0.55%の範囲とした。
<Cu>
Cu成分は固溶効果により高強度化を図ることができるが、多いと靭性,耐食性が低下するので本発明では、Cu:0.15%以下にするのが好ましい。
<Zn>
Zn成分はMgZn2の析出により靭性が低下するので、Zn:0.15%以下にするのが好ましい。
<Ti>
Ti成分はビレットの鋳造時に結晶粒の微細化に有効であり、Ti:0.01~0.15%の範囲にて添加するのが好ましい。
本発明においては、ビレットは連続鋳造され、その際の鋳造速度は60mm/min以上が好ましい。
また、ビレットの鋳造後の均質化処理にて鋳造時析出物の再固溶と、その冷却による析出物の均一化にも有効であり、均質化処理560~590℃,2~8hrで、その冷却は20℃/hr以上の冷却が好ましい。
また、ビレットの鋳造後の均質化処理にて鋳造時析出物の再固溶と、その冷却による析出物の均一化にも有効であり、均質化処理560~590℃,2~8hrで、その冷却は20℃/hr以上の冷却が好ましい。
本発明においては、アルミニウム合金の組成の適正化とビレットの均質化処理、押出成形後の人工時効処理を2段時効処理にすることで、高強度と高い靭性の両立を図ることができる。
また、圧壊試験においてエネルギー吸収性(EA)にも優れる。
また、圧壊試験においてエネルギー吸収性(EA)にも優れる。
図1の表に示したアルミニウム合金組成の溶湯を調成し、8インチサイズのビレットを鋳造した。
図2に、円柱ビレットの鋳造速度及び均質処理(HOMO)の条件と、押出材の製造条件を示す。
図3に、押出時の評価結果を示す。
実施例1~19は、図2に示すように2段人工時効処理を実施し、比較例は従来の1段人工時効処理をした例となっている。
図2に、円柱ビレットの鋳造速度及び均質処理(HOMO)の条件と、押出材の製造条件を示す。
図3に、押出時の評価結果を示す。
実施例1~19は、図2に示すように2段人工時効処理を実施し、比較例は従来の1段人工時効処理をした例となっている。
評価に用いた押出材は、140×70mm,肉厚3mmの略ロ字断面形状である。
機械的特性は、押出材の押出し方向に沿って、JIS-Z2241に基づき、JIS-5号引張試験片を作製し、JIS規格に準拠した引張試験を実施した。
シャルピー衝撃試験は、押出材の押出方向に沿って、JIS-Z2241に基づき、JIS-Vノッチ4号試験片を作製し、JIS規格に準拠したシャルピー衝撃試験機にて測定した。
EA量(エネルギー吸収量)は、図4に例を示すようにロ字断面形状の押出材を押出方向に沿って荷重を加えた際の変位(ストローク)と、荷重変化を測定した。
押出材は、蛇腹状に圧壊するが、最初に蛇腹状になる第1破断時のピークまでの間の積分値をEA量として評価した。
押出材断面の金属組成における平均結晶粒径は、サンプル断面を鏡面研磨仕上げし、3%NaOH水溶液でエッチング処理し、100倍画像の光学顕微鏡観察により、測定した。
機械的特性は、押出材の押出し方向に沿って、JIS-Z2241に基づき、JIS-5号引張試験片を作製し、JIS規格に準拠した引張試験を実施した。
シャルピー衝撃試験は、押出材の押出方向に沿って、JIS-Z2241に基づき、JIS-Vノッチ4号試験片を作製し、JIS規格に準拠したシャルピー衝撃試験機にて測定した。
EA量(エネルギー吸収量)は、図4に例を示すようにロ字断面形状の押出材を押出方向に沿って荷重を加えた際の変位(ストローク)と、荷重変化を測定した。
押出材は、蛇腹状に圧壊するが、最初に蛇腹状になる第1破断時のピークまでの間の積分値をEA量として評価した。
押出材断面の金属組成における平均結晶粒径は、サンプル断面を鏡面研磨仕上げし、3%NaOH水溶液でエッチング処理し、100倍画像の光学顕微鏡観察により、測定した。
図3に示した表中、BLT温度は押出機にビレットを装填する際のビレットの余熱温度を示し、押出速度は押出材の押出成形時の押出速度,冷却速度は押出直後の冷却速度を示す。
本発明においては、引張強さ225MPa以上,0.2%耐力205MPa以上,シャルピー衝撃値20J/cm3以上,EA量2.2kJ以上を目標とした結果、実施例1~19は、2段人工時効処理により全ての目標をクリアした。
これに対して、従来の1段人工時効処理である比較例1は、195℃×2hrの1段人工時効処理であり、EA量が実施例と同等であるものの、引張強さ200MPa,0.2%耐力180MPaと低く、目標未達であった。
比較例2は、Si:0.55%,Mg:0.75%と実施例レベルよりも相対的に多くした結果、強度が向上したものの、シャルピー衝撃値及びEA量が低い値となった。
これに対して、従来の1段人工時効処理である比較例1は、195℃×2hrの1段人工時効処理であり、EA量が実施例と同等であるものの、引張強さ200MPa,0.2%耐力180MPaと低く、目標未達であった。
比較例2は、Si:0.55%,Mg:0.75%と実施例レベルよりも相対的に多くした結果、強度が向上したものの、シャルピー衝撃値及びEA量が低い値となった。
Claims (3)
- 以下、質量%にて、Si:0.15~0.65%,Mg:0.40~0.95%で過剰Si量が0.51%以下であり、
Mn:0.15%以下、Fe:0.4%以下、Mn+Feの合計量が0.15~0.55%であり、
Cu:0.15%以下,Cr:0.15%以下,Zn:0.15%以下,Ti:0.01~0.15%含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金を用いてビレットを鋳造し、
前記鋳造したビレットを560~590℃にて2~8時間均質化処理し、
前記にて得られたビレットを用いて押出加工及びその直後に冷却速度10℃~500℃/minにて200℃以下まで冷却し、
その後に相対的に低温の1段目とそれより高温からなる2段目の2段時効処理を行うことを特徴とする強度及び靭性に優れたアルミニウム合金押出材の製造方法。 - 前記2段時効処理は、
1段目:145~185℃×2~12hr,
2段目:175~215℃×2~12hrの条件であることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金押出材の製造方法。 - 押出材の結晶粒の平均粒径が300μm以下で、耐力205MPa以上、シャルピー衝撃値20J/cm2以上であることを特徴とする請求項2記載のアルミニウム合金押出材の製造方法。
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