JP2023174760A - 向上した免疫抑制作用を有する間葉系前駆または幹細胞 - Google Patents

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Abstract

【課題】向上した免疫抑制活性を有する、既製のエクスビボで増殖させた同種間葉系前駆または幹細胞(MLPSC)製品を開発する。【解決手段】本開示は、間葉系前駆または幹細胞を含む細胞治療用製品、及びこれらの製品のための力価検定法に関する。本開示はまた、間葉系前駆または幹細胞を投与することにより、免疫または炎症性疾患を治療するための、移植片対宿主病(GVHD)またはGVHDに関連する1種または複数種の症状を治療または予防するための方法に関する。【選択図】なし

Description

本明細書で引用または参照した全ての文献、及び本明細書で引用した文献内において引用または参照した全ての文献に加え、本明細書または参照により本明細書に組み込まれる任意の文献内において言及した任意の製品用の製造業者の取扱説明書、説明書、製品仕様書及び製品パンフレットは、それら全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
本開示は、2017年5月4日出願の「Potency assay for immunosuppression」と題された豪州仮出願AU2017901633、2017年5月4日出願の「Method for treating Graft versus Host Disease(GVDH)」と題された豪州仮出願AU2017901636、及び2018年2月21日出願の「Potency assay for immunosuppression II」と題された豪州仮特許出願AU2018900551の優先権を主張する。これら文献の内容全体は、それら全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
本開示は、間葉系前駆または幹細胞を含む細胞治療用製品、及びこれらの製品のための力価検定法に関する。本開示はまた、間葉系前駆または幹細胞を投与することにより、免疫または炎症性疾患を治療するための、移植片対宿主病(GVHD)またはGVHDに関連する1種または複数種の症状を治療または予防するための方法に関する。
再生または免疫治療用途用のいくつかの細胞治療用製品が、臨床評価及び市販承認に進んでいる。しかしながら、これら細胞治療用製品の市場への上市は、それらの複雑さ及び異種性により妨げられており、有意味な生物学的活性の同定、それによる、安定した細胞治療用製品の品質の定義を困難なものとしている。
生理化学的パラメータ(例えば、サイズ、形態、光散乱特性、抗張力、細胞数、コンフルエントのキャラクタリゼーション、表現型マーカー、分泌物質、遺伝子型、遺伝子発現プロファイルの同定)は、活性物質、中間体、不純物及び夾雑物を同定及び定量するために日常的に用いられている。しかしながら、生理化学的パラメータでは、製品が生物学的に活性であり効力を有する(すなわち、所望の効果を誘導する)ことを確認することはできない。それに対し、生物学的キャラクタリゼーションは、動物及び最終的には臨床におけるインビトロモデルまたはインビボモデルのいずれかにおける、生物学的機構に対する製品の効果を考慮に入れている。
米国及び欧州における医薬品法令は、その分子構造を完全には定義することができない活性物質が、市場上市前にそれらの力価について評価されることを求めている。認可済み細胞治療用製品のそれぞれのバッチの力価を評価することが法的要件となっている。
力価検定では、製品の有意味な生物学的活性(または複数の生物学的活性)を示す必要がある。力価検定では、製品の生物学的作用の全てを反映する必要はないが、1つまたは複数の有意味な生物学的作用を示す必要がある。力価検定に用いる解析法のための精度、感度、特異度及び再現精度が確立され、それらが好適にロバストであることが求められる。
免疫抑制が望まれる疾患の治療用の向上した力価を有する製品を開発することが求められている。細胞治療用製品の効果にとって重要なパラメータを同定し、安定した品質の製品が製造可能となるようにそれらパラメータを制御すること(例えば、力価検定を介して)がまた好ましい。
豪州仮出願AU2017901633 豪州仮出願AU2017901636 豪州仮特許出願AU2018900551
本出願人は、向上した免疫抑制活性を有する、既製のエクスビボで増殖させた同種間葉系前駆または幹細胞(MLPSC)製品を開発した。
本開示は、間葉系前駆もしくは幹細胞またはその子孫を含む組成物を提供し、間葉系前駆または幹細胞は凍結保存され、解凍後、PBMCの試料中の活性化T細胞の増殖を少なくとも約65%阻害する。
一実施形態では、1 間葉系前駆または幹細胞:5 PBMC以下の比で、間葉系前駆または幹細胞をPBMCと共培養することにより、阻害が測定される。例えば、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、または1 間葉系前駆または幹細胞:100 PBMC以下である。
一実施形態では、1 間葉系前駆または幹細胞:5 PBMC以下の比で、間葉系前駆または幹細胞をPBMCと共培養すると、T細胞増殖を、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、または少なくとも約90%阻害する。
一実施形態では、活性化T細胞の増殖の阻害は、活性化T細胞におけるIL-2R 2Rα発現の阻害により測定される。
一実施形態では、間葉系前駆または幹細胞組成物は、少なくとも110pg/mlの量でTNFR1を発現する。例えば、間葉系前駆または幹細胞組成物は、少なくとも150pg/ml、少なくとも200pg/ml、少なくとも250pg/ml、少なくとも300pg/ml、少なくとも320pg/ml、少なくとも330pg/ml、少なくとも340pg/ml、または少なくとも350pg/mlの量でTNFR1を発現する。
一実施形態では、間葉系前駆または幹細胞は、少なくとも13pg/10細胞の量でTNFR1を発現する。例えば、間葉系前駆または幹細胞は、少なくとも15pg/10細胞、少なくとも20pg/10細胞、少なくとも25pg/10細胞、少なくとも30pg/10細胞、少なくとも35pg/10細胞、少なくとも40pg/10細胞、少なくとも45pg/10細胞、または少なくとも50pg/10細胞の量でTNFR1を発現する。
一実施形態では、間葉系前駆または幹細胞は、免疫選択により単離され、その後、培養液で増殖される。
一実施形態では、間葉系前駆または幹細胞は培養液で増殖される。一実施形態では、間葉系前駆または幹細胞は、単離される、または、単離及び濃縮されて、凍結保存前にエクスビボまたはインビトロで培養液で増殖される。別の例では、間葉系前駆または幹細胞は、単離される、または、単離及び濃縮され、凍結保存され、解凍され、それに続いて、培養液で増殖される。更に別の例では、間葉系前駆または幹細胞は、凍結保存の前及び後に培養液で増殖される。
一実施形態では、間葉系前駆または幹細胞は、本組成物の細胞集団のうちの少なくとも5%を含む。
一実施形態では、本組成物は、42.5% Profreeze(商標)/50% αMEM/7.5% DMSOを用いて凍結保存される。
一実施形態では、本組成物は、Plasmalyte-A、25% HSA及びDMSOを用いて凍結保存される。
本発明の範囲がいかなる仮定上の理論に限定されるわけではないが、本発明者らは、T細胞の増殖を少なくとも約65%阻害する間葉系前駆または幹細胞が、免疫応答を阻害するのに特に有用であること、より詳細には、このような間葉系前駆または幹細胞が、移植片対宿主病;固形臓器移植拒絶反応、例えば、心臓移植拒絶反応、肝臓移植拒絶反応、膵臓移植拒絶反応、腸移植拒絶反応及び腎臓移植拒絶反応など;ならびに、自己免疫疾患、例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、I型糖尿病、クローン病、ギランバレー症候群、エリテマトーデス、重症筋無力症、視神経炎、乾癬、グレーヴス病、橋本病、オード甲状腺炎、再生不良性貧血、ライター症候群、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、抗リン脂質抗体症候群、オプソクローヌスミオクローヌス症候群、側頭動脈炎、急性散在性脳脊髄炎、グッドパスチャー症候群、ヴェゲナー肉芽腫症、セリアック病、天疱瘡、多発性関節炎、温式自己免疫性溶血性貧血及び強皮症などの予防または治療に有用であることを見出した。
本発明者らはまた、間葉系前駆または幹細胞がまた、炎症性疾患、とりわけ、T細胞介在性炎症性疾患の治療に有用であることを見出した。
本発明はまた、以下の工程、
組換えトリプシンを含む培地内で間葉系前駆または幹細胞の集団を培養すること;
1つまたは複数の装着エアフィルターを備えたセルファクトリー内で細胞を培養すること;
タンジェンシャルフローろ過(TFF)を用いて細胞を濃縮及び/または洗浄すること;または、
回収した細胞をデュアルスクリーンメッシュフィルターに通すことにより、目に見える微粒子及び/または細胞凝集塊を減少させること、
のうちの1つまたは複数を含む、間葉系前駆または幹細胞の集団を作製するための方法を提供する。
一実施形態では、本方法は、
組換えトリプシンを含む培地内で間葉系前駆または幹細胞の集団を培養すること;及び、
タンジェンシャルフローろ過(TFF)を用いて細胞を濃縮及び/または洗浄すること、
を含む。
一実施形態では、本方法は、
組換えトリプシンを含む培地内で間葉系前駆または幹細胞の集団を培養すること;
タンジェンシャルフローろ過(TFF)を用いて細胞を濃縮及び/または洗浄すること;及び、
回収した細胞をデュアルスクリーンメッシュフィルターに通すことにより、目に見える微粒子及び/または細胞凝集塊を減少させること、
を含む。
一実施形態では、本方法は、以下の工程、
組換えトリプシンを含む培地内で間葉系前駆または幹細胞の集団を培養すること;
1つまたは複数の装着エアフィルターを備えたセルファクトリー内で細胞を培養すること;
タンジェンシャルフローろ過(TFF)を用いて細胞を濃縮及び/または洗浄すること;及び、
回収した細胞をデュアルスクリーンメッシュフィルターに通すことにより、目に見える微粒子及び/または細胞凝集塊を減少させること、
を含む。
一実施形態では、本方法は、図2に概要を示した工程のうちの1つもしくはそれ以上または全てを含む。
一実施形態では、間葉系前駆または幹細胞は免疫選択により単離される。例えば、免疫選択により単離された間葉系前駆または幹細胞は、STRO-1+間葉前駆細胞またはその子孫であってもよい。
一実施形態では、間葉系前駆または幹細胞はプラスチック接着法により単離される。例えば、プラスチック接着法により単離された間葉系前駆または幹細胞は、間葉系幹細胞またはその子孫であってもよい。
本発明者らはまた、間葉系前駆または幹細胞を含む細胞治療用製品の生物学的活性または治療効果を測定するための力価検定法を開発した。
それゆえ、本開示はまた、
(i)間葉系前駆または幹細胞を含む細胞集団を得ること(細胞は凍結保存され解凍されている);
(ii)その細胞を培地内でT細胞を含む細胞集団と共培養すること;
(iii)T細胞IL-2Rα発現の阻害レベルを測定すること(≧65%阻害の量は、間葉系前駆または幹細胞の生物学的活性または治療効果を示す)、
を含む、間葉系前駆または幹細胞の力価を測定するための方法を提供する。例えば、少なくとも約70%阻害、少なくとも約75%阻害、少なくとも約80%阻害、少なくとも約85%阻害、または少なくとも約90%阻害の量は、生物学的活性または治療効果を示す。
一実施形態では、少なくとも約65%阻害の量は、免疫応答の阻害における細胞の治療効果を示す。
1つまたは更なる実施形態では、少なくとも約65%阻害の量は、移植片対宿主病の予防または治療における細胞の治療効果を示す。
本開示はまた、
(i)間葉系前駆または幹細胞を含む細胞集団を得ること(細胞は凍結保存され解凍されている);
(ii)その細胞を培地内でT細胞を含む細胞集団と共培養すること;
(iii)≧65%阻害のT細胞IL-2Rα発現の阻害レベルを示す細胞を選択すること、
を含む、効力を有する間葉系前駆または幹細胞を選択するための方法を提供する。
一実施形態では、上記の検定法または選択法を用いて、間葉系前駆幹細胞の濃縮集団の力価を測定する。例えば、間葉系前駆または幹細胞は間葉系幹細胞用に濃縮される。別の実施形態では、間葉系前駆または幹細胞は、STRO-1+細胞の選択により濃縮される。一実施形態では、間葉系前駆細胞はSTRO-1明るい細胞である。
1つまたは更なる実施形態では、本検定法または選択法を用いて、間葉系前駆または幹細胞の力価を測定するか、または、エクスビボまたはインビトロで増殖させた間葉系前駆または幹細胞の集団を選択する。1つの例では、間葉系前駆または幹細胞は、単離される、または、単離及び濃縮されて、凍結保存前にエクスビボまたはインビトロで培養液で増殖される。別の例では、間葉系前駆または幹細胞は、単離される、または、単離及び濃縮され、凍結保存され、解凍され、それに続いて、培養液で増殖される。更に別の例では、間葉系前駆または幹細胞は、凍結保存の前及び後に培養液で増殖される。
一実施形態では、間葉系前駆または幹細胞はヒト間葉系前駆または幹細胞である。
一実施形態では、T細胞はヒトT細胞である。別の実施形態では、T細胞はCD4及びCD8を発現する。別の実施形態では、T細胞はCD69及び/またはCD137を発現する。
1つまたは更なる例では、T細胞を含む集団は、末梢血単核球(PBMC)の集団である。
一実施形態では、本検定法または選択法は、1種または複数種のT細胞刺激リガンドを含む培地内で間葉系前駆または幹細胞をT細胞と培養することを含む。例えば、培地は、抗CD3抗体またはそのフラグメント及び抗CD28抗体またはそのフラグメントを含む。別または更なる実施形態では、本方法は、間葉系前駆または幹細胞を、間葉系前駆細胞と共培養する前に刺激及び/または活性化されたT細胞と培養することを含む。
一実施形態では、本検定法または選択法は、10%FBS及び2mMのグルタミンを補足し任意選択的に1種または複数種のT細胞刺激リガンドを含むDMEM内で細胞を培養することを含む。
一実施形態では、本方法は、約1 間葉系前駆または幹細胞:2 T細胞以下の比で、間葉系前駆または幹細胞とT細胞を共培養することを含む。例えば、1:3、1:4、1:5、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:701:80、1:90、または1 間葉系前駆または幹細胞:100 T細胞以下である。
一実施形態では、本方法は、IL-2Rα発現を測定する前に、細胞を60~84時間共培養することを含む。
1つまたは更なる実施形態では、本方法は、細胞を共培養してから溶解して細胞溶解液を作製した後に、細胞を回収することを含む。
1つまたは更なる実施形態では、本方法は、酵素免疫測定法(ELISA)を用いて、細胞溶解液中におけるIL-2Rαの量を測定することを含む。
1つの例では、ELISAは、
(i)IL-2Rαに特異的なモノクローナル抗体でプレコーティングしたマイクロプレートのそれぞれのウェルに試料希釈液を加えること;
(ii)IL-2Rαに特異的なモノクローナル抗体でプレコーティングしたマイクロプレートのウェルに共培養した試料を加えること;
(iii)マイクロプレートを十分な時間培養し、IL-2Rαに特異的なモノクローナル抗体を試料中の任意のIL-2Rαに特異的に結合させること;
(iv)マイクロプレートを洗浄すること;
(v)IL-2Rαコンジュゲートをウェルに加えること;
(vi)マイクロプレートを十分な時間培養し、コンジュゲートを任意の捕捉IL-2Rαに特異的に結合させること;
(vii)マイクロプレートを洗浄すること;
(viii)基質溶液をウェルに加えること;
(ix)マイクロプレートを色の発現に十分な時間培養すること;
(x)停止液をウェルに加えること;
(xi)450nmに設定(570nmで波長補正)したマイクロプレートリーダー上の吸光度を読むこと;
(xii)IL-2Rαの濃度を測定すること、
を含む。
一実施形態では、本方法は、
試料希釈液を用いてIL-2Rα標準液の系列希釈液を調製し、例えば、7.8~500pg/mlの範囲の終濃度を得ること;
工程(iii)の前に標準液をマイクロプレートに加えること;
4パラメータロジスティックカーブフィッティングを用いて標準曲線を構築すること;及び、
標準曲線を基準とすることでIL-2Rαの濃度を測定すること、
を更に含む。
一実施形態では、本方法は、
間葉系前駆または幹細胞の集団のTNFR1発現を測定すること(≧100pg/ml TNFR1の量は、間葉系前駆または幹細胞の生物学的活性または治療効果を示す)、
を更に含む。例えば、少なくとも約101pg/ml TNFR1、少なくとも約102pg/ml TNFβ1、少なくとも約103pg/ml TNFR1、少なくとも約104pg/ml TNFR1、少なくとも約105pg/ml TNFR、少なくとも約106pg/ml TNFR1、少なくとも約107pg/ml TNFR1、少なくとも約108pg/ml TNFR1、少なくとも約109pg/ml TNFR1、少なくとも約110pg/ml TNFR1、少なくとも約150pg/ml、少なくとも約200pg/ml、少なくとも約250pg/ml、少なくとも約300pg/ml、少なくとも約320pg/ml、少なくとも約330pg/ml、少なくとも約340pg/ml、または少なくとも約350pg/mlの量は、生物学的活性または治療効果を示す。
本開示はまた、免疫応答の阻害を必要とする対象においてそれを実施するための方法を提供し、その方法は、本開示のMLPSCの集団を含む組成物を対象に投与することを含む。
本開示はまた、炎症性疾患の予防または治療を必要とする対象においてそれを実施するための方法を提供し、その方法は、本開示のMLPSCを含む組成物を対象に投与することを含む。炎症性疾患はT細胞介在性炎症性疾患であってもよい。
本開示はまた、対象における移植片対宿主病を予防、その進行を緩和、または、それを治療するための方法を提供し、本開示のMLPSCを含む組成物を対象に投与することを含む。
本開示はまた、対象における移植片対宿主病を予防するための方法を提供し、その方法は、本開示のMLPSCと共培養した造血幹細胞を対象に投与することを含む。
一実施形態では、本組成物は、3×10細胞/kg(体重)未満の用量で週に1回(qw)対象に投与される。
本開示はまた、哺乳動物対象における移植片対宿主病(GVHD)を予防、その進行を緩和、または、それを治療するための方法を提供し、MLPSC及び/またはその子孫細胞を3×10細胞/kg(体重)未満の用量で週に1回(qw)対象に投与することを含む。
一実施形態では、対象は、約2×10細胞/kg(体重)の用量でqwでMLPSCを投与される。別の実施形態では、対象は、最大2×10細胞/kg(体重)の用量でqwで細胞を投与される。別の実施形態では、対象は、2×10細胞/kg(体重)の最大用量をqwで投与される。疑義を避けるため、用語「1週」、「週に1回」または「qw」は、7日間に1回の期間を意味することを意図している。
別の実施形態では、MLPSCは、単回用量で週に1回(qw)投与される。別の実施形態では、MLPSCは、週(すなわち、7日間)あたり分割用量で投与される。例えば、対象は、2用量(それぞれの用量は1×10細胞/kg(体重))を1週間にわたり投与されてもよい。その他の実施形態では、対象は、週あたり2またはそれ以上の用量(投与される総用量は2×10細胞/kg(体重))を投与されてもよい。
一実施形態では、移植片は同種細胞を含む。別の実施形態では、移植片は自家細胞を含む。
一実施形態では、対象に投与されるMLPSCは、MPC及び/またはその子孫細胞である。
別の実施形態では、対象に投与されるMLPSCは、MSC及び/またはその子孫細胞である。
一実施形態では、MLPSC及び/またはその子孫細胞は、単回用量でqwで送達される。別の実施形態では、MLPSC及び/またはその子孫細胞は、分割用量で1週間にわたり送達される。
一実施形態では、哺乳動物対象はヒト対象である。一実施形態では、対象は小児対象である。別の実施形態では、対象は成人対象である。
別の実施形態では、本開示の対象は、血液の悪性または遺伝性疾患(例えば、がん)を有する対象である。更なる例では、対象は、造血細胞を含むドナー移植片を投与された、投与されている、または、今まさに投与されようとしている。
造血細胞を含む移植片は、内部に造血細胞が存在する血液、末梢血単核球(PBMC)、血液製剤または固形臓器からなる群から選択されてもよい。1つの例では、移植片は造血幹細胞(HSC)を含む。
一実施形態では、対象は急性GVHDを有する。急性GVHDの症状は通常、標準的な臨床診断基準により格付けされる(Glucksberg H.et al.(1974)Transplantation 1974;18(4):295-304)。
一実施形態では、対象は、間葉系前駆または幹細胞の投与前にステロイド治療を受けている。1つの例では、ステロイドはメチルプレドニゾロンである。別の例では、ステロイドは、MLPSC及び/またはその子孫細胞の投与の少なくとも3(3)日前に対象に投与される。
一実施形態では、対象は、移植片(例えば、骨髄またはPBMC)の投与の同日にMLPSC及び/またはその子孫細胞を投与される。
MLPSC及び/またはその子孫細胞は、移植片の移植中または移植後であり得る適切な時点で対象に投与されてもよい。例えば、予防目的のため、MLPSC及び/またはその子孫細胞は、移植片の移植の日の初期に対象に投与されてもよい。別の例では、MLPSC及び/またはその子孫細胞は、移植片の投与前に対象に投与されてもよい。別の例では、MLPSC及び/またはその子孫細胞は、移植片の投与前の7日以内、5日以内、3日以内、または2日以内に投与されてもよい。別の例では、MLPSC及び/またはその子孫細胞は、移植片の投与の前日に対象に投与される。
別の実施形態では、MLPSC及び/またはその子孫細胞は、対象がステロイド抵抗性であると判定された後に対象に投与される。ステロイド抵抗性急性GVHDの定義に対する一般的な合意は存在していないが、通常、ステロイド抵抗性急性GVHDとは、ステロイド治療の3~5日後に悪化するGVHD、5~7日後に改善しないGVHD、または14日後において完全には寛解しないGVHDのことを意味する。別の例では、MLPSC及び/またはその子孫細胞は、ステロイドまたは免疫抑制治療の少なくとも3日後に対象に投与される。別の例では、MLPSC及び/またはその子孫細胞は、ステロイドまたは免疫抑制治療の少なくとも1ヶ月後に対象に投与される。1つの例では、ステロイド抵抗性の対象は、ステロイド(例えば、メチルプレドニゾロンまたは同等物)の少なくとも3日後において、グレードB~Dの急性GVHD用のステロイド治療に反応を示していない対象である。更なる例では、対象は、>1mg/kg/日のメチルプレドニゾロンまたは同等物に反応を示していない。
別の実施形態では、対象は、MLPSC及び/またはその子孫細胞の投与前に非ステロイド免疫抑制治療を受けている。別の例では、対象は、体外フォトフォレーシス(ECP)、インフリキシマブ、ルキソリチニブ、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、エタナセプト及びバシリキシマブからなる群から選択される1種または複数種の非ステロイド治療を受けている。1つの例では、MLPSC及び/またはその子孫細胞は、非ステロイド剤を用いた免疫抑制治療に抵抗性を示す対象に投与される。
1つの例では、対象は、GVHDの改善が認められるまでMLPSC及び/またはその子孫細胞を投与される。別の例では、対象は、GVHDの寛解が認められるまでMLPSC及び/またはその子孫細胞を投与される。
1つの例では、MLPSC及び/またはその子孫細胞の投与は、注入関連反応、高血圧症、嘔吐、悪心、徐脈及び発熱のうちの1つまたは複数から選択される有害事象を予防、緩和または治療する。1つの例では、MLPSC及び/またはその子孫細胞の投与は、MLPSC及び/またはその子孫細胞を投与されていない対象と比較して、対象が被る有害事象の数を減少させる。
1つの例では、対象は、急性GVHD グレードB、CまたはDを有する。別の例では、GVHDは、皮膚、胃腸管もしくは肝臓、または、これら組織のうちのいずれか1つまたは複数の組み合わせに関連する。
1つの例では、GVHDは、T細胞免疫応答の結果である。1つの例では、T細胞はドナー由来であり、抗原はレシピエント由来である。例えば、T細胞は移植片内に存在していてもよい。別の実施形態では、T細胞はレシピエント由来であり、抗原はドナー由来である。
本方法の別の実施形態では、間葉系前駆または幹細胞は、T細胞の共刺激を阻害する分子を発現するように遺伝子組換えされる。
本方法の別の実施形態では、間葉系前駆または幹細胞は、対象への投与前に培養液内で増殖されている。
一実施形態では、MLPSC及び/またはその子孫細胞は、薬学的に許容される組成物の形態で投与される。更なる例では、薬学的に許容される組成物は、薬学的に許容される担体及び/または賦形剤を含む。
MLPSC及び/またはその子孫細胞は、4(4)週間連続のそれぞれの週の間、週に1回対象に投与されてもよい。別の例では、MLPSC及び/またはその子孫細胞は、8週間連続のそれぞれの週の間、週に1回対象に投与される。別の例では、対象のGVHDは、4回にわたる週に1回の注入後に評価され、対象のGVHD寛解が部分的または混合である場合、対象は、更に4回にわたる週に1回の注入を受けることが望ましい。1つの例では、対象は、MLPSC及び/またはその子孫細胞を最大で8回投与される。別の例では、対象は、MPC及び/またはその子孫細胞を合計で8回投与される。別の例では、対象は、少なくとも部分寛解または完全寛解が認められるまで、週に1回をベースにMLPSC及び/またはその子孫細胞の注入を行われる。
一実施形態では、ベースライン(スクリーニング)である0日目に、対象におけるGVHDの状態または等級分けについて評価を行う。
別の実施形態では、14日目、28日目、56日目及び100日目に、対象におけるGVHDの状態または等級分けについて評価を行う。別の実施形態では、これらの日の何日か、例えば、ベースライン(0日目)、28日目及び100日目に、GVHDを評価する。
完全寛解、部分寛解、混合寛解(mixed response)、悪化、または効果なしを示すものとして、対象を評価してもよい。
本開示はまた、哺乳動物対象における移植片対宿主病(GVHD)を予防、その進行を緩和、または、それを治療するために用いる、週に1回のベースの、3×10細胞/kg(体重)未満の用量でMLPSC及び/またはその子孫細胞を含む組成物を提供する。
一実施形態では、本組成物は、約2×10細胞/kg(体重)の用量でMLPSC及び/またはその子孫細胞を含む。別の実施形態では、本組成物は、最大2×10細胞/kg(体重)の用量でMPC及び/またはその子孫細胞を含む。別の実施形態では、本組成物は、その2×10細胞/kg(体重)の最大用量を含む。
1つの例では、本組成物は医薬組成物である。
本開示はまた、哺乳動物対象におけるGVHDの発症を予防、または、それを治療するための医薬品の製造における、3×10細胞/kg(体重)未満の用量でのMLPSC及び/またはその子孫細胞の使用を提供する。1つの例では、MLPSC及び/またはその子孫細胞とは、それを必要とする対象に週に1回(qw)投与することを意味している。
1つの例では、本医薬品は、約2×10細胞/kg(体重)の用量でMLPSC及び/またはその子孫細胞を含む。別の例では、本医薬品は、最大2×10細胞/kg(体重)の用量でMLPSC及び/またはその子孫細胞を含む。別の例では、本医薬品は、2×10細胞/kg(体重)の最大用量を含む。
1つの例では、間葉系前駆または幹細胞は、STRO-1明るい細胞を濃縮した細胞集団である。別の例では、間葉系前駆または幹細胞は、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+(HSP-90β)及び/またはCD146+から選択される1種または複数種の別のマーカーで濃縮した細胞集団である。
1つの例では、間葉系前駆または幹細胞は、間葉系幹細胞の集団である。
1つの例では、MLPSC及び/またはその子孫細胞を全身的に投与する。例えば、MLPSC及び/またはその子孫細胞を、心臓の大動脈、心房または心室へと、または、臓器につながる血管、例えば、腹部大動脈、上腸管膜動脈、膵臓十二指腸動脈または脾臓動脈へと、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下で投与してもよい。
別の実施形態では、本開示の方法は、免疫抑制剤を投与することを更に含む。移植した造血細胞が機能を発揮するのに十分な期間、免疫抑制剤を投与してもよい。免疫抑制剤は、以下、コルチコステロイド、例えば、プレドニゾン、ブデソニド及びプレドニゾロンなど;カルシニューリン阻害剤、例えば、シクロスポリン及びタクロリムスなど;mTOR阻害剤、例えば、シロリムス及びエベロリムスなど;IMDH阻害剤、例えば、アザチオプリン、レフルノミド及びミコフェノール酸など;生物学的製剤、例えば、アバタセプト、アダリムマブ、エタナセプト、インフリキシマブまたはリツキシマブなど、を含むがこれらに限定されないもののうちの1種または複数種から選択され得る。
1つの例では、免疫抑制剤はシクロスポリンである。シクロスポリンは、5~40mg/kg(体重)の用量で投与されてもよい。
非刺激ヒトPBMC、刺激ヒトPBMC、及び、ヒトMPC(長く扁平)とヒトPBMC(丸く円形で若干凝集)の共培養の形態を示す図である。 従来の作製条件下で作製したMLPSCの3種の異なる試料(すなわち、試料、MLPSC A、MLPSC B、及びMLPSC C)、及び、改善された免疫選択MLPSCの3種の異なる試料(すなわち、試料、MLPSC D、MLPSC E、及びMLPSC F)に対して実施した、T細胞増殖アッセイ(IL2Rの阻害率)の結果を示す図である。 従来の作製条件下で作製したMLPSCの3種の異なる試料(すなわち、試料、MLPSC A、MLPSC B、及びMLPSC C)、及び、改善された免疫選択MLPSCの3種の異なる試料(すなわち、試料、MLPSC D、MLPSC E、及びMLPSC F)に対して実施した、TNFR1発現アッセイの結果を示す図である。 反応対象対非反応対象における、MPCの注入後100日間にわたる生存率を示す図である。28日目において反応を示した全9名の対象は100日目まで生存したが、28日目における3名の非反応者のうちの1名のみが100日目まで生存した(p値=0.0068)。 培養液で増殖させたMLPSCの改良された作製プロセスに含まれる工程を示す図である。 改良された作製条件下で作製された10種の異なるMLPSCロット作製物に対して実施した、TNFR1発現アッセイの結果を示す図である。 改良された作製条件下で作製された10種の異なるMLPSCロット作製物に対して実施した、T細胞増殖アッセイの結果を示す図である(IL2Rの阻害率)。
一般的な技術及び定義
本明細書の全体にわたり、特に明記しない限り、または、文脈上特に必要としない限り、単一の工程、物質の組成、工程の群、または、物質の組成の群への言及は、これら工程、物質の組成、工程の群、または、物質の組成の群のうちの1つ及び複数(すなわち、1つまたは複数)を包含すると解釈されるべきである。
本明細書において具体的に記載されている変形形態及び変更以外の変形形態及び変更を、本明細書に記載する本開示が実施可能であることを当業者は理解する。本開示が全てのこのような変形形態及び変更を含むことを理解すべきである。本開示はまた、本明細書において個別にまたは集合的に言及または示す全ての工程、特性、組成物及び化合物、ならびに、上記工程または特性の全ての組み合わせまたは任意の2つ以上を含む。
本開示は本明細書に記載の特定の実施形態の範囲内に限定されず、それらは例示目的に過ぎないことを意味する。機能的に同等な生成物、組成物及び方法が本開示の範囲内であることは明らかである。
本明細書で開示するいずれの例も、特に明記しない限り、任意のその他の例に準用されると解釈されるべきである。
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝学、幹細胞分化、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学及び生化学の)に一般に理解される意味と同一の意味を有すると解釈されるべきである。
特に明記しない限り、本開示に利用する幹細胞技術、細胞培養技術及び外科技術は、当業者に周知の標準的な方法である。このような技術については、Perbal,1984;Sambrook & Green,2012;Brown,1991;Glover & Hames,1995 and 1996;Ausubel.,1987 現在までの全ての改定版を含む;Harlow & Lane,1988;及び、Coligan et al.,1991 現在までの全ての改定版を含む、などの出典における文献の全体にわたり記載及び説明されている。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数及び単数形の用語、例えば、「a」、「an」及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、任意選択的に複数の指示対象を包含する。
用語「移植片対宿主病」すなわち「GVHD」とは、宿主の組織、最も頻繁には、皮膚、肝臓及び腸がドナー由来のリンパ球により損傷を受ける、同種造血細胞移植における合併症のことを意味する。この疾患については以下でより詳細に説明する。
本明細書で使用する場合、用語「対象」とは、ヒト及び非ヒト動物を含む哺乳動物のことを意味する。より詳細には、哺乳動物はヒトである。「対象」、「患者」または「個体」などの用語は、本開示において文脈に応じ同じ意味で用いられ得る用語である。特定の例では、対象は、成人対象または小児(小児)対象であってもよい。
「有効量」とは、必要とされる用量及び期間において、所望の治療または予防結果を達成するのに最低限の有効な量のことを意味する。有効量は、1回または複数回の投与で提供されてもよい。本開示の一部の例では、用語「有効量」とは、上に記載した疾患または症状の治療を達成するのに必要な量を意味するために用いられる。有効量は、治療する疾患または症状に応じて、また、治療する哺乳動物の体重、年齢、種族的背景、性別、健康状態及び/または身体的状態、ならびに、治療する哺乳動物に関連するその他の因子に応じて様々であり得る。通常、有効量は、通常の試験及び実験を介して医師が測定することのできる比較的広い範囲(例えば、「用量」範囲)の中に含まれる。単回用量で、または、治療期間にわたり1回または複数回繰り返す用量で、有効量を投与してもよい。
「治療有効量」とは、特定の疾患(例えば、GVHD)における測定可能な改善を達成するのに必要な少なくとも最低限の濃度のことである。本明細書における治療有効量は、患者の病態、年齢、性別及び体重、ならびに、個体における所望の反応を誘導する細胞組成物の機能などの因子に応じて様々であり得る。治療有効量はまた、組成物の任意の毒性または有害作用よりも治療上の有益な作用が上回る量でもある。GVHDの場合、治療有効量は、重症度を低下させる、GVHDの進行を阻害または遅延させる、及び/または、この疾患に関連する症状のうちの1種または複数種をある程度軽減させることを可能とする。
本明細書で使用する場合、用語「予防すること」または「予防する」とは、GVHDに関連する症状の重症度を予防、遅延及び/または軽減させることを意味する。この用語は、GVHDの初期症状の発症後に行われる「治療」とは区別される。
本明細書で使用する場合、用語「緩和すること」とは、疾患の重症度を低下させる、及び/または、疾患(例えば、GVHD)に関連する1種または複数種の症状を軽減させることを意味する。疾患の完全な阻害または排除を意味するものではない。
本明細書で使用する場合、用語「治療」とは、治療する個体または細胞の自然経過を臨床病理学の経過中に変化させることを目的とした臨床介入のことを意味する。治療の望ましい効果としては、疾患進行の速度を低下させること、病態を緩和または軽減すること、及び、寛解または優れた予後が挙げられる。例えば、疾患に関連する症状のうちの1種または複数種が緩和または排除される場合、個体は成功裏に「治療される」。
本明細書で参照する場合、用語「完全寛解」すなわち「CR」は、二次的なGVHD治療を行うことなく、全ての器官における急性GVHD症状が完全に回復することと定義される。
本明細書で参照する場合、用語「部分寛解」すなわち「PR」とは、二次的なGVHD治療を行わない状態で、完全に回復することはないが全ての初期GVHD標的器官において少なくとも1つのGVHDのステージが改善すること(任意のその他のGVHD標的器官が悪化することなく)と定義される。
本明細書で参照する場合、用語「効果なし」すなわち「NR」は、同じグレードのGVHDであるか、任意の器官におけるGVHDの進行(例えば、少なくとも1種類の評価可能な器官症状が1ステージまたはそれ以上悪化すること)であるか、死亡するか、または、二次的なGVHD治療を追加することと定義される。
本明細書で使用する場合、用語「悪化すること」とは、任意の器官における緩和を伴うかまたは伴わずに、少なくとも1つの器官においてGVHD進行が悪化することを意味する。
用語「非常に良い部分寛解(VGPR)」とは、(i)非進行性のステージ1発疹(残留したかすかな紅斑または色素沈着過剰を含まない)、(ii)ベースラインから<25%の総血清中ビリルビンの分散増加、または(iii)極めてわずかな消化管症状のうちの1つまたは複数を除き、効果判定基準を満たすことを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「混合寛解」すなわち「MR」とは、少なくとも1つの評価可能な器官のステージが改善し、別の器官が悪化することを意味する。
用語「進行」とは、少なくとも1つの器官系が1ステージまたはそれ以上悪化し、任意のその他の器官で改善が認められないことを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「成人」とは、18歳齢以上のヒト対象のことを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「小児」とは、誕生から最高17歳齢まで(17歳齢を含む)の年齢の範囲のヒト対象のことを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「急性GVHD」とは、移植片、例えば、骨髄移植片の投与から最初の6ヶ月以内に通常は発症するGVHDのことを意味する。移植片の投与から数日以内に発症する場合もある。
本明細書で使用する場合、用語「慢性GVHD」とは、通常は、移植片の投与後3ヶ月を超えて発症するGVHDのことを意味する。慢性GVHDの症状は生涯続く場合もある。
本明細書で使用する場合、用語「移植片」とは、内部に造血細胞が存在する骨髄、血液(例えば、全血または末梢血単核球(PBMC))、血液製剤または固形臓器から選択される生体試料のことを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「同種」とは、遺伝特性(特に、個体の細胞の表面上に発現した主要組織適合遺伝子複合体(MHC)及び非主要組織適合性因子に関する)がレシピエントのそれとは異なる個体から提供された移植片(例えば、造血細胞)のことを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「自家」とは、対象自身の細胞を用いた移植片(例えば、骨髄または末梢血中に存在する造血細胞)のことを意味する。細胞は通常、治療(例えば、化学療法)を受ける対象から事前に採取されて保存され、その後、再度対象に注入される。
本明細書で使用する場合、用語「ステロイド抵抗性」とは、ステロイド治療の3~5日後に悪化するGVHD、5~7日後に改善しないGVHD、または14日後において完全には寛解しないGVHDのことを意味する。
用語「及び/または」、例えば、「X及び/またはY」は、「X及びY」または「XまたはY」のいずれかのことを意味するものと理解されるべきであり、両方の意味またはいずれかの意味への明確な裏付けを提供するものと解釈されるべきである。
本明細書で使用する場合、用語「約」とは、特に異議を唱えない限り、指定数値の±10%、より好ましくは±5%のことを意味する。
本明細書の全体にわたり、用語「含む(comprise)」、または、「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形形態は、明示した要素、整数もしくは工程、または、要素、整数もしくは工程の群を包含するが、任意のその他の要素、整数もしくは工程、または、要素、整数もしくは工程の群を除外しないことを意味するものと理解されるべきである。
間葉系前駆または幹細胞
本明細書で使用する場合、用語「間葉系前駆または幹細胞」とは、多能性を維持しつつ自己複製する能力、及び、間葉系(例えば、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、間質細胞、線維芽細胞及び腱)または非中胚葉系(例えば、肝細胞、神経細胞及び上皮細胞)のいずれかの多数の細胞型へと分化する能力を有する、未分化多能性細胞のことを意味する。
用語「間葉系前駆または幹細胞」は、親細胞とそれらの未分化子孫の両方を含む。この用語はまた、間葉前駆細胞(MPC)、多能性間質細胞、間葉系幹細胞、血管周囲間葉前駆細胞、及びそれらの未分化子孫を含む。
間葉系前駆または幹細胞は、自家、同種、異種、同系(syngeneic)または同系(isogeneic)であってもよい。自家細胞は、それら細胞が再移植される同一個体から単離される。同種細胞は、同一種のドナーから単離される。異種細胞は、別種のドナーから単離される。同系または同系細胞は、遺伝的に同一な生物、例えば、双子、クローン、または高近交系の研究用動物モデルなどから単離される。
間葉系前駆または幹細胞は主に骨髄内に存在しているが、例えば、臍帯血及び臍帯、成人末梢血、脂肪組織、骨梁及び歯髄を含む多種多様な宿主組織内に存在していることも分かっている。
間葉系前駆または幹細胞は、宿主組織から単離して、免疫選択により濃縮させることができる。例えば、STRO-1またはTNAPに対する抗体で対象由来の骨髄吸引液を更に処理して、間葉系前駆または幹細胞の選択を可能としてもよい。1つの例では、Simmons & Torok-Storb,1991に記載されているSTRO-1抗体を用いることにより、間葉系前駆または幹細胞を濃縮させることができる。
STRO-1+細胞は、骨髄、血液、歯髄細胞、脂肪組織、皮膚、脾臓、膵臓、脳、腎臓、肝臓、心臓、網膜、脳、毛嚢、腸、肺、リンパ節、胸腺、骨、靱帯、腱、骨格筋、真皮及び骨膜中に存在する細胞であり、中胚葉及び/または内胚葉及び/または外胚葉などの生殖細胞系へと分化することができる。それゆえ、STRO-1+細胞は、脂肪組織、骨組織、軟骨組織、弾性組織、筋肉組織及び線維性結合組織を含むがこれらに限定されない多数の細胞型へと分化することができる。これらの細胞が辿る、特定の系統に決定し分化する経路は、機械的作用及び/または内因性生理活性因子(例えば、増殖因子、サイトカインなど)及び/または宿主組織が構築した局所微小環境条件に由来する様々な作用に依存する。
本明細書で使用する場合、用語「濃縮された」とは、未処理細胞集団(例えば、その天然環境に置かれた細胞)と比較した場合に、1つの特定細胞型の比率または多数の特定細胞型の比率が上昇した細胞集団のことを表す。1つの例では、STRO-1+細胞を濃縮した集団は、少なくとも約0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、または75%のSTRO-1+細胞を含む。これに関連し、用語「STRO-1+細胞を濃縮した細胞集団」は、用語「X%のSTRO-1+細胞を含む細胞集団」(X%は本明細書で列挙したパーセンテージ)への明確な裏付けを提供するものと理解される。一部の例では、STRO-1+細胞はクローン原性コロニーを形成することができ、例えば、CFU-F(線維芽細胞)またはそのサブセット(例えば、50%、60%、70%、70%、90%または95%)は、この活性を有し得る。
1つの例では、細胞集団は、STRO-1+細胞を含む細胞試料から選択可能な方式で濃縮される。これに関連し、用語「選択可能な方式」は、STRO-1+細胞の選択を可能とするマーカー(例えば、細胞表面マーカー)を細胞が発現することを意味するものと理解される。マーカーはSTRO-1であってもよいが、そうである必要はない。例えば、本明細書に記載及び/または例示するように、STRO-2及び/またはSTRO-3(TNAP)及び/またはSTRO-4及び/またはVCAM-1及び/またはCD146及び/または3G5を発現する細胞(例えば、MPC)はまた、STRO-1(STRO-1明るいであってもよい)を発現する。それゆえ、細胞がSTRO-1+であるという記載は、その細胞がSTRO-1発現により選択されるということを意味しない。1つの例では、細胞は、少なくともSTRO-3発現を基準にして選択されるが、例えば、それら細胞はSTRO-3+(TNAP+)である。
細胞またはその集団の選択への言及は、特定の組織供給源からの選択を必ずしも必要としない。本明細書に記載するとおり、多種多様な供給源からSTRO-1+細胞を選択、単離または濃縮することができる。つまり、一部の例では、これらの用語は、STRO-1+細胞を含む任意の組織、血管化組織、周皮細胞(例えば、STRO-1+周皮細胞)を含む組織、または、本明細書で列挙した組織のうちのいずれか1種または複数種からの選択への裏付けを提供する。
1つの例では、本開示の間葉系前駆または幹細胞は、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+(HSP-90β)、CD45+、CD146+、3G5+からなる群から個別または集合的に選択される1種または複数種のマーカーを発現する。
「個別に」とは、本開示が、列挙したマーカーまたはマーカーの群を別々に包含すること、個々のマーカーまたはマーカーの群が本明細書において別々に列挙されていない場合があるにもかかわらず、添付の特許請求の範囲が、このようなマーカーまたはマーカーの群を別々に、互いに分割可能なように定義し得るということを意味する。
「集合的に」とは、本開示が、任意の数または組み合わせの列挙したマーカーまたはマーカーの群を包含すること、このような数または組み合わせのマーカーまたはマーカーの群が本明細書において明確に列挙されていないにもかかわらず、添付の特許請求の範囲が、このような組み合わせまたは副組み合わせを別々に、マーカーまたはマーカーの群の任意のその他の組み合わせから分割可能なように定義し得るということを意味する。
所定のマーカーに対して「陽性」であると言及された細胞は、そのマーカーが細胞表面上に存在する度合いに応じて、そのマーカーを、低(lo、薄暗いまたは鈍い)レベル、中(中間)レベルまたは高(明るい、bri)レベルのいずれかで発現し得るが、これらの用語は、細胞の分離プロセスまたは細胞のフローサイトメトリー解析に用いる蛍光またはその他のマーカーの強度に関連している。低(lo、薄暗いまたは鈍い)、中(中間)または高(明るい、bri)の区別は、分離または解析を行う特定の細胞集団に用いるマーカーとの関係において理解される。所定のマーカーに対して「陰性」であると言及された細胞は、その細胞中に必ずしも完全に不在であるということではない。この用語は、マーカーが比較的非常に低いレベルで細胞によって発現されていること、及び、検出可能に標識されている場合にマーカーが非常に低いシグナルを生成していること、または、バックグラウンドレベル、例えば、アイソタイプ対照抗体を用いて検出されるレベルを超えてマーカーが検出不能であることを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「明るい」すなわち「bri」とは、検出可能に標識されている場合に、細胞表面上のマーカーが比較的高いシグナルを生成していることを意味する。理論に制限されるものではないが、「明るい」細胞が、試料中のその他の細胞が発現しているよりも多くの標的マーカータンパク質(例えば、STRO-1抗体が認識する抗原)を発現していることが提案されている。例えば、STRO-1bri細胞は、FITCコンジュゲートSTRO-1抗体で標識して蛍光活性化細胞分離(FACS)解析で測定する際に、明るくない細胞(STRO-1lo/薄暗い/鈍い/中/中間)と比較してより高い蛍光シグナルを生成する。1つの例では、間葉系前駆または幹細胞は、骨髄から単離されて、STRO-1+細胞の選択により濃縮される。この例では、「明るい」細胞は、出発試料中に含まれる最も明るく標識された骨髄単核球のうちの少なくとも約0.1%を構成する。その他の例では、「明るい」細胞は、出発試料中に含まれる最も明るく標識された骨髄単核球のうちの少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%、または少なくとも約2%を構成する。1つの例では、STRO-1明るい細胞は、「バックグラウンド」(すなわち、STRO-1-である細胞)と比較して2対数規模高いSTRO-1表面発現の発現を示す。比較として、STRO-1lo/薄暗い/鈍い及び/またはSTRO-1中/中間細胞は、2対数規模未満高いSTRO-1表面発現の発現を示す(通常は、約1対数、または「バックグラウンド」未満)。
1つの例では、STRO-1+細胞はSTRO-1明るいである。1つの例では、STRO-1明るい細胞は、STRO-1lo/薄暗い/鈍いまたはSTRO-1中/中間細胞と比較して優先的に濃縮される。
1つの例では、STRO-1明るい細胞は更に、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+(HSP-90β)及び/またはCD146+のうちの1種または複数種である。例えば、細胞は、上記のマーカーのうちの1種または複数種で選択される、及び/または、上記のマーカーのうちの1種または複数種を発現することが示されている。これに関連し、マーカーを発現することが示されている細胞については特に試験する必要はなく、むしろ、あらかじめ濃縮または単離された細胞については試験を行ってから使用してもよく、単離または濃縮された細胞については同一のマーカーを発現するということも合理的に推測され得る。
1つの例では、STRO-1明るい細胞は、WO2004/85630において定義されている血管周囲間葉前駆細胞(血管周囲マーカー3G5の存在を特徴とする)である。
本明細書で使用する場合、用語「TNAP」は、組織非特異的アルカリホスファターゼの全てのアイソフォームを包含することを意図する。例えば、この用語は、肝臓アイソフォーム(LAP)、骨アイソフォーム(BAP)及び腎臓アイソフォーム(KAP)を包含する。1つの例では、TNAPはBAPである。1つの例では、TNAPとは、ブダペスト条約の条項に基づき委託受入番号PTA-7282で2005年12月19日にATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生されたSTRO-3抗体に結合可能な分子のことを意味する。
更に、1つの例では、STRO-1+細胞は、クローン原性CFU-Fを生じさせることができる。
1つの例では、かなりの比率のSTRO-1+細胞は、少なくとも2種の異なる生殖細胞系へと分化することができる。細胞が分化決定され得る系統の非限定例としては、骨前駆細胞;肝細胞前駆細胞(胆管上皮細胞及び肝細胞に分化する能力を有する);神経限定細胞(neural restricted cells)(オリゴデンドロサイト及びアストロサイトへと進行するグリア細胞前駆体を産生することができる);神経細胞へと進行する神経細胞前駆体;心筋及び心筋細胞、グルコース応答性インスリン分泌膵臓β細胞株の前駆体、が挙げられる。その他の系統としては、象牙芽細胞、象牙質産生細胞及び軟骨細胞、ならびに、以下、網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイトなどの皮膚細胞、樹状細胞、毛嚢細胞、腎管上皮細胞、平滑及び骨格筋細胞、精巣前駆細胞、血管内皮細胞、腱細胞、靱帯細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、線維芽細胞、骨髄間質細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、周皮細胞、血管細胞、上皮細胞、グリア細胞、神経細胞、アストロサイト細胞及びオリゴデンドロサイト細胞、の前駆細胞が挙げられるがこれらに限定されない。
1つの例では、間葉系前駆または幹細胞は間葉系幹細胞(MSC)である。MSCは、均一組成物であってもよく、または、MSCが濃縮された混合細胞集団であってもよい。接着性骨髄または骨膜細胞を培養することにより均一MSC組成物を得てもよく、独特なモノクローナル抗体で同定される特定の細胞表面マーカーによりMSCを同定してもよい。プラスチック接着法を用いてMSCが濃縮された細胞集団を得るための方法については、例えば、米国特許5486359に記載されている。通常のプラスチック接着単離法により調製したMSCは、CFU-Fの非特異的なプラスチック接着特性に依存している。MSCの別の供給源としては、血液、皮膚、臍帯血、筋肉、脂肪、骨及び軟骨膜が挙げられるがこれらに限定されない。
対象への投与前に、間葉系前駆または幹細胞を凍結保存してもよい。
本発明の好ましい実施形態では、間葉系前駆または幹細胞は、健康なボランティアの骨髄から濃縮した間葉系前駆または幹細胞に由来するマスターセルバンクから得られる。このような供給源に由来する間葉系前駆または幹細胞の使用は、間葉系前駆または幹細胞のドナーとして機能し得る適切な親族を持たない対象、または、速やかな治療を必要とする対象、及び、間葉系前駆または幹細胞を産生するのに要する期間の間、疾患に関連する衰弱に再び陥るまたは死亡するリスクの高い対象にとって特に有利である。
本発明者らは、本開示の間葉前駆細胞が、凍結保存して解凍した後に、T細胞増殖を阻害するそれらの能力という点において予想外に高い効果を有していることを示している。対照的に、従来の刊行物は、凍結保存間葉系幹細胞が解凍後に免疫抑制特性障害を示すことを教示している(Francois et al.,2012;Chinnadurai et al.,2016)。
培養液を用いてエクスビボまたはインビトロで、単離または濃縮された間葉系前駆または幹細胞を増殖してもよい。当業者には理解されるように、単離または濃縮された間葉系前駆または幹細胞を凍結保存、解凍し、それに続いて、または更に、培養液を用いてエクスビボまたはインビトロで増殖してもよい。
培養した間葉系前駆または幹細胞は、表現型においてインビボ細胞とは異なっている。例えば、一実施形態では、培養した間葉系前駆または幹細胞は、以下のマーカー、CD44、NG2、DC146及びCD140bのうちの1種または複数種を発現する。
培養した間葉系前駆または幹細胞はインビボ細胞とは生物学的に異なっており、大部分の非サイクル(休止)インビボ細胞と比較して、より高い増殖速度を示す。
1つの例では、間葉系前駆または幹細胞を濃縮した細胞集団は、血清を補足した培地、例えば、10%ウシ胎児血清(FBS)及び2mMのグルタミンを補足したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)内に、約6000~7000生存細胞/cmで播種され、培養容器に20%O下37℃で一晩接着される。一実施形態では、細胞は、約6000、6100、6200、6300、6400、6500、6600、6700、6800、6810、6820、6830、6840、6850、6860、6870、6880、6890、6890、6900、6910、6920、6930、6940、6970、6980、6990、または7000生存細胞/cm、好ましくは約6850~6860生存細胞/cmで播種される。それに続き、培地を交換し、T細胞と共培養する前に、5%O下37℃で合計68~72時間細胞を培養し、T細胞が発現するIL-2Rαの量を測定する。
Ang1レベル及びVEGFレベル
1つの例では、間葉系前駆または幹細胞は、少なくとも0.1μg/10細胞の量でAng1を発現する。しかしながら、その他の例では、MLPSCは、少なくとも0.2μg/10細胞、0.3μg/10細胞、0.4μg/10細胞、0.5μg/10細胞、0.6μg/10細胞、0.7μg/10細胞、0.8μg/10細胞、0.9μg/10細胞、1μg/10細胞、1.1μg/10細胞、1.2μg/10細胞、1.3μg/10細胞、1.4μg/10細胞、1.5μg/10細胞の量でAng1を発現する。
別の例では、MLPSCは、約0.05μg/10細胞未満の量でVEGFを発現する。しかしながら、その他の例では、間葉前駆細胞は、約0.05μg/10細胞、0.04μg/10細胞、0.03μg/10細胞、0.02μg/10細胞、0.01μg/10細胞、0.009μg/10細胞、0.008μg/10細胞、0.007μg/10細胞、0.006μg/10細胞、0.005μg/10細胞、0.004μg/10細胞、0.003μg/10細胞、0.002μg/10細胞、0.001μg/10細胞未満の量でVEGFを発現する。
MLPSCの組成物または培養液中で発現している細胞性Ang1及び/またはVEGFの量は、当業者に周知の方法を用いて測定することができる。このような方法としては、例えば、定量的ELISAアッセイなどの定量的アッセイが挙げられるがこれらに限定されない。この例では、間葉前駆細胞の培養液に由来する細胞溶解液をELISAプレートのウェルに加える。ウェルは、Ang1またはVEGFに対する一次抗体(モノクローナルまたはポリクローナル抗体(複数可)のいずれかである)でコーティングされていてもよい。その後、ウェルを洗浄し、次に、一次抗体に対する二次抗体(モノクローナルまたはポリクローナル抗体(複数可)のいずれかである)と接触させる。二次抗体は、適切な酵素、例えば、西洋わさびペルオキシダーゼなどにコンジュゲートさせる。その後、ウェルを培養してもよく、それから、培養期間後に洗浄する。その後、二次抗体にコンジュゲートした酵素用の適切な基質、例えば、1種または複数種の色原体などとウェルを接触させる。使用可能な色原体としては、過酸化水素及びテトラメチルベンジジンが挙げられるがこれらに限定されない。基質(複数可)を加えた後、適切な期間ウェルを培養する。培養が完了すると、酵素の基質(複数可)との反応を停止させるために「停止」液をウェルに加える。次に、試料の吸光度(OD)を測定する。試験する幹細胞の培養液が発現するAng1またはVEGFの量を測定するために、試料の吸光度を、既知量のAng1またはVEGFを含有する試料の吸光度と相関させる。
別の例では、MLPSCは、少なくとも約2:1の比でAng1:VEGFを発現する。しかしながら、その他の例では、間葉前駆細胞は、少なくとも約10:1、15:1、20:1、21:1、22:1、23:1、24:1、25:1、26:1、27:1、28:1、29:1、30:1、31:1、32:1、33:1、34:1、35:1、50:1の比でAng1:VEGFを発現する。
Ang1:VEGF発現比を測定するための方法は当業者に明らかである。例えば、Ang1及びVEGFの発現レベルについては、上述したとおり定量的ELISAを介して定量することができる。Ang1及びVEGFのレベルを定量した後、定量したAng1及びVEGFのレベルに基づいた比率は、(Ang1のレベル/VEGFのレベル)=Ang1:VEGF比として表すことができる。
1つの例では、本開示のMLPSCは、上で例示したレベルまたは比でAng1及び/またはVEGFを発現するように遺伝子組換えされていない。Ang1及び/またはVEGFを発現するように遺伝子組換えされていない細胞は、Ang1及び/またはVEGFを発現またはコードする核酸を用いたトランスフェクションにより改変されていない。疑義を避けるため、本開示の文脈において、Ang1及び/またはVEGFをコードする核酸をトランスフェクションした間葉前駆細胞は、遺伝子組換えされたものとみなす。本開示の文脈において、Ang1及び/またはVEGFを発現するように遺伝子組換えされていない細胞は、Ang1及び/またはVEGFをコードする核酸を用いたトランスフェクションを行わずに、Ang1及び/またはVEGFをある程度、自然に発現する。
T細胞
本開示の力価検定法では、間葉系前駆または幹細胞をT細胞と共培養することを必要とする。一実施形態では、間葉系前駆または幹細胞は、少なくとも1種のT細胞刺激リガンドを含む培地内でT細胞と共培養される。一実施形態または更なる実施形態では、T細胞は活性化されている。T細胞は、間葉系前駆または幹細胞との共培養前に、最初に刺激または活性化されてもよい。
本明細書で使用する場合、用語「T細胞」とは、様々な細胞介在性免疫応答に関与する胸腺由来細胞のことを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「刺激」とは、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)がその関連リガンドと結合し、それにより、シグナル伝達イベント、限定するわけではないが例えば、TCR/CD3複合体を介したシグナル伝達を介在することにより誘導される一次応答のことを意味する。刺激は、特定分子の変化した発現、例えば、TGF-βの下方制御、及び/または、細胞骨格構造の再構築などを介在することができる。
本明細書で使用する場合、用語「活性化」とは、検出可能な細胞増殖を誘導するために十分に刺激された、T細胞の状態のことを意味する。活性化はまた、誘導されたサイトカイン産生、及び検出可能なエフェクター機能と関連し得る。用語「活性化T細胞」とは、特に、細胞分裂を受けたT細胞のことを意味する。
直近に活性化されたT細胞は通常、活性化に続く異なる時点において一連の活性化マーカーを発現する。活性化マーカーとしては、受容体、例えば、ケモカイン受容体及びサイトカイン受容体など、接着分子、共刺激分子、ならびに、MHCクラスIIタンパク質が挙げられる。フローサイトメトリーを使用して、T細胞の活性化状態を示す様々なタイプの表面または細胞内マーカーを評価してもよい。ヒト末梢血単核球(PBMC)T細胞の活性化状態を評価するために最も一般的に使用されている即時初期活性化マーカーのうちの2つは、CD69及びCD40Lである。
CD69(AIM、Leu23、MLR3)は、T細胞増殖の誘導に関与するシグナル伝達膜糖タンパク質である。CD69は通常、PBMC中の休止CD4+またはCD8+T細胞上において非常に低いレベル(<5~10%)で発現しているが、プロテインキナーゼC(PKC)依存性経路を介したTCR刺激またはその他のT細胞活性化因子(例えば、ホルボールエステルなど)の1時間以内にCD4+またはCD8+T細胞上で速やかに上方制御されることから、最も早く評価可能な活性化マーカーのうちの1つである。CD69の発現は通常、16~24時間あたりで頂点に達し、その後減少するため、刺激が取り除かれた後72時間の時点ではほとんど検出することができない。
CD40L(CD154)は、抗原提示細胞(APC)上に構成的に発現しているCD40に結合することにより共刺激分子として機能する、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。CD40LとCD40が連結することにより、MAPK(JNK、p38、ERK1/2)、NF-κB、及びSTAT3転写因子を含む複数の下流経路が活性化される。CD40L発現は、転写因子NFAT及びAP-1を介したTCR刺激後1~2時間以内に速やかに上方制御される。CD40L発現は、刺激後6時間あたりで頂点に達し、16~24時間あたりで減少する。しかしながら、CD40L発現は二相性であり、TCR刺激と共に抗CD28またはIL-2を加えると、通常は、数日間発現が持続することになる。
本明細書で使用する場合、用語「特異的に結合する」とは、試料中に存在する関連結合パートナー(例えば、T細胞上に存在する刺激及び/または共刺激分子)を認識してそれに結合するが、実質的には、試料中のその他の分子を認識しないまたはそれらと結合しないリガンド、例えば、抗体のことを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「刺激リガンド」とは、T細胞細胞上の関連結合パートナー(本明細書では、「刺激分子」と呼ぶ)に特異的に結合し、それにより、T細胞による一次応答を介在可能なリガンドのことを意味する。刺激リガンドは当該技術分野において周知であり、とりわけ、ペプチドが結合したMHCクラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体、及びスーパーアゴニスト抗CD2抗体を包含する。刺激リガンドは、細胞の表面で発現したまたはそこに結合した、または、表面上に固定された、可溶性形態で用いられてもよい。
本明細書で使用する場合、用語「スーパーアゴニスト抗体」とは、T細胞上の分子に特異的に結合して、T細胞上のTCR/CD3複合体またはCD2との相互作用を伴わずに、T細胞における一次活性化シグナルイベントを介在することができる抗体のことを意味する。例示的スーパーアゴニスト抗体としては、スーパーアゴニスト抗CD28抗体及びスーパーアゴニスト抗CD2抗体が挙げられるがこれらに限定されない。「スーパーアゴニスト」と呼ばない限り、抗CD2抗体または抗CD28抗体などは、本明細書中の他の箇所で定義する共刺激リガンドであり、一次活性化シグナルではなく共刺激シグナルをもたらす。
本明細書で使用する場合、用語「刺激分子」とは、関連刺激リガンドに特異的に結合する、T細胞上の分子のことを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「共刺激シグナル」とは、TCR/CD3結合などの一次シグナルと協同して、限定するわけではないが例えば、活性化、増殖、エフェクター細胞への分化、細胞傷害またはサイトカイン分泌の誘導などのT細胞応答を介在するシグナルのことを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「共刺激リガンド」としては、T細胞上の関連共刺激分子に特異的に結合し、それにより、例えば、TCR/CD3複合体がペプチド結合MHC分子と結合することによりもたらされた一次シグナルに加えて、活性化、増殖、エフェクター細胞への分化、細胞傷害またはサイトカイン分泌の誘導などを含むがこれらに限定されないT細胞応答を介在するシグナルをもたらす、抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞、B細胞など)または人工APC(aAPC)上の分子が挙げられる。共刺激リガンドとしては、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンフォトキシンβ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、Tollリガンド受容体に結合するアゴニストまたは抗体、及び、B7-H3に特異的に結合するリガンドを挙げることができるがこれらに限定されない。共刺激リガンドはまた、とりわけ、限定するわけではないが例えば、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、及び、CD83に特異的に結合するリガンドなどの、T細胞上に存在する共刺激分子に特異的に結合する抗体を包含する。これら及びその他のリガンドは当該技術分野において周知であり、例えば、Schwartz et al.,2001;Schwartz et al.,2002;及び、Zhang et al.,2004に記載されているとおり、十分にキャラクタライズされている。当業者は、周知のリガンドの変異体または変異型が使用可能であることを理解するであろうし、このような変異体または変異型を調製するための方法は当該技術分野において周知である。
本明細書で使用する場合、用語「aAPC」としては、細胞ベースのaAPC、ビーズベースのAPC、マイクロ粒子aAPC、及びナノ粒子aAPCが挙げられるがこれらに限定されない。使用されている原料としては、ガラス、ポリ(グリコール酸)、乳酸-グリコール酸共重合体、酸化鉄、リポソーム、脂質二重層、セファロース、及びポリスチレンが挙げられる。aAPCは、刺激リガンド、例えば、TCR/CD3複合体に特異的に結合し、その結果、一次シグナルが伝達するような刺激リガンドを含む。aAPCは、T細胞上に存在する少なくとも1種の共刺激分子に特異的に結合する少なくとも1種の共刺激リガンドを更に含んでいてもよい。
本開示の目的のため、用語「抗体」は、Fv内に含まれる抗原結合ドメインを介してT細胞上の刺激分子に特異的に結合可能なタンパク質を含む。この用語は、4本鎖抗体(例えば、2本の軽(L)鎖と2本の重(H)鎖)、組換えまたは修飾抗体(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、CDRグラフト抗体、霊長類化抗体、脱免疫化抗体、合成ヒト化抗体、半抗体、二重特異性抗体)を含む。
本明細書で使用する場合、「可変領域」とは、抗原に特異的に結合することができ、相補性決定領域(CDR)、すなわち、CDR1、CDR2及びCDR3、ならびにフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む、本明細書で定義する抗体の軽鎖及び/または重鎖の一部のことを意味する。例えば、可変領域は、3つのCDRと共に、3または4つのFR(例えば、FR1、FR2、FR3、及び任意選択的にFR4)を含む。Vとは、重鎖の可変領域のことを意味する。Vとは、軽鎖の可変領域のことを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「相補性決定領域」(別名、CDR、すなわち、CDR1、CDR2及びCDR3)とは、抗体可変領域のアミノ酸残基のことを意味し、その存在が主に、特異的な抗原結合をもたらしている。それぞれの可変領域ドメイン(VまたはV)は通常、CDR1、CDR2及びCDR3として区別される3つのCDR領域を有する。
「フレームワーク領域」(FR)とは、CDR残基以外の可変領域残基の領域のことである。
本明細書で使用する場合、用語「Fv」は、複数のポリペプチドからなるかまたは単一のポリペプチドからなるかにかかわらず、VとVが結合して、抗原に特異的に結合可能な抗原結合ドメインを有する複合体を形成する、任意のタンパク質を意味するものと解釈されるべきである。抗原結合ドメインを形成するV及びVは、単一のポリペプチド鎖内にあってもよく、または、異なるポリペプチド鎖内にあってもよい。更に、本開示のFv(本開示の任意のタンパク質に加えて)は、同一抗原に結合してもしなくてもよい複数の抗原結合ドメインを有していてもよい。この用語は、抗体に直接由来するフラグメントに加え、組換え手法を用いて作製されたこのようなフラグメントに対応するタンパク質を包含するものと理解されるべきである。一部の例では、Vは重鎖定常ドメイン(C)1に連結していない、及び/または、Vは軽鎖定常ドメイン(C)に連結していない。例示的なFv含有ポリペプチドまたはタンパク質としては、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、scFv、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディもしくはより高次の複合体、または、その定常領域またはドメイン、例えば、C2またはC3ドメインに連結した上記のうちのいずれか、例えば、ミニボディが挙げられる。
「Fabフラグメント」は、免疫グロブリンの一価の抗原結合フラグメントからなり、完全抗体を酵素パパインで消化して、インタクトな軽鎖と重鎖の一部からなるフラグメントを生成することによって作製することができるか、または、組換え手法を用いて作製することができる。
抗体の「Fab’フラグメント」は、完全抗体をペプシンで処理してから還元し、インタクトな軽鎖と、Vを含む重鎖の一部と単一の定常ドメインからなる分子を生成することによって得ることができる。この方法で処理した抗体あたり2つのFab’フラグメントが得られる。Fab’フラグメントはまた、組換え手法を用いて作製することができる。
抗体の「F(ab’)フラグメント」は、2つのジスルフィド結合で共に結合した2つのFab’フラグメントの二量体からなり、完全抗体分子を酵素ペプシンで処理する(続けて還元することなく)ことにより得られる。
「Fab」フラグメントは、例えば、ロイシンジッパーまたはC3ドメインを用いて連結させた2つのFabフラグメントを含む組換えフラグメントである。
「単鎖Fv」すなわち「scFv」は、軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域が好適なフレキシブルポリペプチドリンカーにより共有結合した、抗体の可変領域フラグメント(Fv)を含む組換え分子である。
T細胞刺激
本開示の一実施形態では、T細胞は、単一の因子によって刺激されてもよい。別の実施形態では、T細胞は2種の因子で刺激されるが、一方の因子は一次シグナルを誘導し、第2の因子は共刺激シグナルである。
単一のシグナルを刺激するまたは一次シグナルを刺激するのに有用なリガンド、及び、第2のシグナルを刺激する補助分子は、細胞の表面で発現したまたはそこに結合した、または、表面上に固定された、可溶性形態で用いられてもよい。
表面は、因子/リガンドをそこに結合させるまたは一体化させることができ、生体適合性、すなわち、刺激する標的細胞に対して実質的に非毒性である、任意の表面であってもよい。生体適合性表面は、生分解性または非生分解性であってもよい。表面は天然または合成であってもよく、合成表面はポリマーであってもよい。
当該技術分野において周知かつ利用可能な様々な方法を用いて、因子を表面に結合もしくは連結または一体化させてもよい。因子は、天然リガンド、タンパク質リガンド、または合成リガンドであってもよい。結合は、共有もしくは非共有、静電気、または疎水性であってもよく、例えば、化学的、機械的、酵素的、静電気、または、それによってリガンドが細胞を刺激可能となるその他の方法を含む、様々な結合方法を用いて実行してもよい。例えば、リガンドに対する抗体を最初に表面に結合させてもよく、または、ビオチン化リガンドへと結合させるために、アビジンまたはストレプトアビジンを表面に結合させてもよい。抗イディオタイプ抗体を介して、リガンドに対する抗体を表面に結合させてもよい。別の例としては、抗体を結合させるための表面に結合させた、タンパク質Aもしくはタンパク質Gまたはその他の非特異的抗体結合分子を使用することが挙げられる。代替的に、市販の架橋試薬(Pierce,Rockford,IL)を使用し、表面への架橋などの化学的方法により、または、その他の方法により、リガンドを表面に結合させてもよい。
表面に結合した特定のリガンドの量は、その表面がビーズの表面である場合、フローサイトメトリー解析を用いて容易に測定することができる、または、その表面が、例えば、組織培養ディッシュ、メッシュ、ファイバー、バッグである場合、酵素免疫測定法(ELISA)を用いて測定することができる。
表面に連結させる場合、因子を、同一の表面に(すなわち、「シス」形成)、または、別々の表面に(すなわち、「トランス」形成)、連結させてもよい。代替的に、一方の因子を表面に連結させて、もう一方の因子を溶液中に入れてもよい。一実施形態では、共刺激シグナルをもたらす因子を細胞表面に結合させて、一次活性化シグナルをもたらす因子を溶液に入れるかまたは表面に連結させる。好ましい実施形態では、同一のビーズ上、すなわち、「シス」、または、別々のビーズ上、すなわち、「トランス」のいずれかで、2種の因子をビーズ上に固定する。
一実施形態では、一次活性化シグナルをもたらす分子はCD3リガンドであり、共刺激分子はCD28リガンドである。好ましい実施形態では、CD3リガンドは抗CD3抗体またはそのフラグメントであり、CD28リガンドは抗CD28抗体またはそのフラグメントである。一実施形態では、抗CD3抗体またはそのフラグメント及び抗CD28抗体またはそのフラグメントを可溶性形態で用いる。代替的な実施形態では、抗CD3抗体またはそのフラグメントと抗CD28抗体またはそのフラグメントの一方または両方を表面上に固定する。一実施形態では、抗CD3抗体またはそのフラグメントと抗CD28抗体またはそのフラグメントの両方を共に、同一の表面、例えば、ビーズ上に固定する。
一実施形態では、ビーズに結合したCD3抗体:CD28抗体の比率は、100:1~1:100の範囲(間にある全ての整数値)である。本発明の一態様では、抗CD3抗体と比較してより多くの抗CD28抗体が粒子に結合しており、それはすなわち、CD3:CD28の比率は1未満である。本発明の特定の実施形態では、ビーズに結合した抗CD28抗体:抗CD3抗体の比率は2:1超である。1つの特定の実施形態では、ビーズに結合した1:100 CD3:CD28の比の抗体を使用する。別の実施形態では、ビーズに結合した1:75 CD3:CD28の比の抗体を使用する。更なる実施形態では、ビーズに結合した1:50 CD3:CD28の比の抗体を使用する。別の実施形態では、ビーズに結合した1:30 CD3:CD28の比の抗体を使用する。1つの好ましい実施形態では、ビーズに結合した1:10 CD3:CD28の比の抗体を使用する。別の実施形態では、ビーズに結合した1:3 CD3:CD28の比の抗体を使用する。更に別の実施形態では、ビーズに結合した3:1 CD3:CD28の比の抗体を使用する。
当業者は、T細胞を刺激するために用いられる因子(複数可)が、限定するわけではないが例えば、活性化、増殖、エフェクター細胞への分化、細胞傷害またはサイトカイン分泌の誘導などのT細胞応答を介在するのに十分な量で提供されるということを理解する。T細胞を刺激するために用いられる因子(複数可)は、T細胞増殖を介在するのに十分な量で提供されることが好ましい。
T細胞の供給源
刺激/活性化の前に、T細胞の供給源を対象から得る。用語「対象」とは、免疫応答を誘導可能な生物(例えば、哺乳動物)を含むことを意味している。対象の例としては、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、及びその遺伝子組換え種が挙げられる。T細胞は、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含む多数の供給源から得ることができる。本発明の特定の実施形態では、当該技術分野において利用可能な多くのT細胞株を使用してもよい。本発明の特定の実施形態では、T細胞は、当業者に周知の多くの技術、例えば、フィコール分離などを用い、対象から採取した血液単位から得ることができる。1つの好ましい実施形態では、個体の循環血液由来の細胞は、アフェレーシスまたはロイコフェレーシスにより得られる。アフェレーシス産物は通常、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、その他の有核白血球を含むリンパ球、赤血球、及び血小板を含有している。一実施形態では、アフェレーシスにより採取した細胞を洗浄し、血漿画分を除去してから、続く加工工程用にその細胞を適切な緩衝液または培地内に入れてもよい。一実施形態では、細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄する。代替実施形態では、洗浄液は、カルシウムを欠き、マグネシウムを欠いていてもよく、または、全てが二価カチオンでなければ、多くを欠いていてもよい。当業者に周知の方法、例えば、半自動「フロースルー」遠心分離機(例えば、the Cobe 2991 cell processor、the Baxter CytoMate、または、the Haemonetics Cell Saver 5)を製造業者の取扱説明書に従って使用することにより、洗浄工程を実施することができるということを当業者は容易に理解するであろう。洗浄後、様々な生体適合性緩衝液中に、例えば、Caフリー、MgフリーPBS、PlasmaLyte A、または、緩衝液を含むまたは含まないその他の生理食塩水溶液中に、細胞を再懸濁させてもよい。代替的に、アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去してから、培地中に細胞を直接再懸濁させてもよい。
ネガティブセレクションによるT細胞集団の濃縮は、ネガティブに選択された細胞に固有の表面マーカーへと向かう抗体を組み合わせて実施することができる。1つの方法は、細胞分離、及び/または、ネガティブに選択された細胞上に存在する細胞表面マーカーに向かうモノクローナル抗体のカクテルを使用した陰性磁気免疫接着法またはフローサイトメトリーを介した選択である。例えば、ネガティブセレクションによりT細胞(CD3+)を濃縮するためのモノクローナル抗体カクテルは通常、B細胞(CD19)、単球(CD14)、NK細胞(CD56)などに特異的な抗体を含む。抗体は通常、表面(例えば、ビーズなどの粒子)上に固定される。
ポジティブまたはネガティブセレクションによる所望の細胞集団の単離において、ビーズに対する細胞の濃度は変化し得る。特定の実施形態では、細胞とビーズの最大限の接触を確保するためには、ビーズと細胞が共に混合される容量を著しく減少させる(すなわち、細胞の濃度を上昇させる)ことが望ましい場合がある。例えば、一実施形態では、20億細胞/mlの濃度を用いる。一実施形態では、10億細胞/mlの濃度を用いる。更なる実施形態では、100百万細胞/ml超を用いる。更なる実施形態では、10、15、20、25、30、35、40、45、または50百万細胞/mlの細胞の濃度を用いる。更に別の実施形態では、75、80、85、90、95、または100百万細胞/mlの細胞の濃度を用いる。更なる実施形態では、125または150百万細胞/mlの濃度を用いてもよい。高濃度を用いることにより、細胞収率、細胞活性化、及び細胞増殖における上昇をもたらすことができる。更に、高細胞濃度を用いることにより、目的の標的抗原を弱く発現し得る細胞、例えば、CD28陰性T細胞などのより効率的な捕捉が可能となる。
所望の場合または必要に応じて、間葉系前駆または幹細胞と共培養する前に、または、抗CD14でコーティングしたビーズまたはカラムを含む様々な方法を用いたエクスビボ増殖を行う前に、血液製剤から単球集団(すなわち、CD14細胞)を除去してもよく、これらの細胞の貪食活性を利用して除去を促進してもよく、または、対流遠心エルトリエーションを使用することにより除去してもよい。それゆえ、一実施形態では、本発明では、貪食単球が飲み込むのに十分なサイズの常磁性粒子を用いる。特定の実施形態では、常磁性粒子は、市販のビーズ、例えば、Dynal ASが商標名Dynabeads(商標)で製造しているビーズである。これに関連すると、例示的なDynabeads(商標)は、M-280、M-450、及びM-500である。一態様では、常磁性粒子を「関連性のない」タンパク質(例えば、血清タンパク質または抗体)でコーティングすることにより、その他の非特異的細胞を除去する。関連性のないタンパク質及び抗体としては、増殖させるT細胞を特異的には標的としないタンパク質及び抗体またはそのフラグメントが挙げられる。特定の実施形態では、関連性のないビーズとしては、ヒツジ抗マウス抗体、ヤギ抗マウス抗体、及びヒト血清アルブミンでコーティングしたビーズが挙げられる。
T細胞の増殖
当該技術分野において一般的に周知の方法を用い、細胞培養液中で、刺激または活性化されたT細胞を更に増殖してもよい。
一実施形態では、T細胞を増殖させるのに用いる培地は、T細胞上の、CD3を刺激可能な因子、及びCD28を刺激可能な因子を含む。
間葉系前駆または幹細胞と刺激または活性化されたT細胞の共培養
本発明の力価検定法では、T細胞を間葉系前駆または幹細胞と共培養した後における、T細胞IL-2Rα発現の阻害を測定する。IL-2Rα発現の阻害は、T細胞増殖に対する抑制効果に関係している。理論に制限されるものではないが、間葉系前駆または幹細胞がT細胞刺激及び/または活性化を阻害または抑制することによりT細胞増殖が抑制され得ること、または、間葉系前駆または幹細胞が活性化T細胞の増殖を抑制するように作用し得ることを、当業者は理解する。
一実施形態では、T細胞は、少なくとも1種のT細胞刺激因子を含む(好ましくは、T細胞を刺激及び/または活性化することができる濃度で)培地内で、間葉系前駆または幹細胞と共培養される。別の実施形態では、T細胞は、間葉系前駆または幹細胞との共培養前に、最初に刺激及び/または活性化される。
一実施形態では、間葉系前駆または幹細胞はPBMCと共培養される。
一実施形態では、間葉系前駆または幹細胞は、T細胞上のCD3を刺激可能な因子及びCD28を刺激可能な因子、例えば、CD3に対する抗体及びCD28に対する抗体、例えば、マウス抗ヒトCD3及びマウス抗ヒトCD28を含む培地中で、PBMCと共培養される。一実施形態では、CD3に対する抗体及び/またはCD28に対する抗体は、それぞれ約2μg/mlの濃度で、可溶性形態で培地に加えられる。
一実施形態では、PBMCは、5 PBMC:1 間葉前駆または幹細胞の比で、間葉前駆または幹細胞と共培養される。例えば、1×10PBMCは、間葉系前駆または幹細胞の濃縮集団から増殖させた2×10細胞と共培養され得る。更なる実施形態では、細胞は1mlの最終容量で共培養される。
一実施形態では、単離または濃縮された間葉系前駆または幹細胞は、培養液を用いてエクスビボまたはインビトロで最初に増殖されて、その後、PBMCと共培養される。
代替実施形態では、単離、濃縮または培養された間葉系前駆または幹細胞は、濃縮及び/または増殖されたT細胞の集団と共培養される。
間葉系前駆または幹細胞は、1種または複数種のT細胞刺激因子/リガンドを含む培地内で、T細胞と共培養されることが好ましい。T細胞を最初に刺激及び/または活性化させてから、少なくとも1種のT細胞刺激因子の存在下または不存在下で間葉系前駆または幹細胞と共培養してもよいということを、当業者は理解するであろう。
IL-2Rαレベルの量の測定
本開示では、ウェスタンブロット法、酵素免疫測定法(ELISA)、蛍光免疫測定法(FLISA)、競合アッセイ、ラジオイムノアッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、フロースルーイムノアッセイ、電気化学発光アッセイ、比濁分析ベースアッセイ、濁度ベースアッセイ、間葉系または前駆細胞を培養するのに用いる培地中のTGFβ1を検出するための蛍光活性化細胞分離(FACS)ベースアッセイ、及び表面プラズモン共鳴(SPRまたはBiacore)を含む任意の様式のアッセイについて考察する。
間葉系前駆または幹細胞とT細胞の共培養後、当該技術分野において周知の方法を用い、細胞を回収してから溶解させてもよい。その後、IL-2Rαの存在下、例えば、ELISAまたはFLISAを用いて細胞溶解液をアッセイしてもよい。代替的に、例えば、フローサイトメトリーを用いてインタクトな細胞をアッセイすることにより、IL-2Rα発現のレベルを測定してもよい。
好適なアッセイの1つ様式は、例えば、ELISAまたはFLISAである。
1つの様式では、このようなアッセイは、例えば、ポリスチレンまたはポリカーボネートのマイクロウェルまたはディップスティック、膜、またはガラス支持体(例えば、スライドガラス)などの固体マトリックス上にIL-2Rα結合タンパク質を固定することを含む。次に、試験試料をIL-2Rα結合タンパク質に直接接触させると、試料中のIL-2Rαが結合または捕捉される。試料中の全ての非結合タンパク質を除去するために洗浄を行った後、異なるエピトープにおいてIL-2Rαに結合したタンパク質を、捕捉されたIL-2Rαに直接接触させる。この検出用タンパク質は通常、検出可能なレポーター分子、例えば、ELISAの場合には、酵素(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)またはβ-ガラクトシダーゼ)、または、FLISAの場合には、蛍光体などで標識されている。代替的に、検出用タンパク質に結合する二次標識タンパク質を使用してもよい。全ての非結合タンパク質を除去するために洗浄を行った後、ELISAの場合には、基質、例えば、過酸化水素、TMBもしくはトルイジン、または5-ブロモ-4-クロロ-3-インドール-β-D-ガラクトピラノシド(x-gal)などを加えることにより、検出可能なレポーター分子を検出する。当然、固定(捕捉)タンパク質と検出用タンパク質を逆の様式で使用してもよい。
次に、既知量のマーカーを用いて作製した標準曲線を使用することにより、または、対照試料と比較することにより、試料中におけるIL-2Rαのレベルを測定する。
一実施形態では、T細胞を含む細胞集団のIL-2Rα発現のレベルを、T細胞を含む細胞集団と間葉系前駆または幹細胞を含む細胞集団を共培養した後の細胞集団のIL-2Rαのレベルと比較することにより、IL-2Rα発現の阻害を測定し、差異を「阻害率」で表す。
上記のアッセイは、化学発光または電気化学発光を検出基準として使用するように容易に調整される。
当業者には明らかだが、免疫吸着アッセイに基づいたその他の検出法は、本開示の実施に有用である。例えば、上の記載に基づいた免疫吸着法では、検出用の放射能標識、検出用の金標識(例えば、コロイド金)、検出用の、例えば、NAD+を封入したリポソーム、または、アクリジニウム免疫測定法を使用する。
本開示の一部の例では、表面プラズモン共鳴検出器(例えば、BIAcore(商標)GE Healthcare,Piscataway,N.J.)、フロースルー装置(例えば、米国特許7205159に記載されている)、マイクロまたはナノイムノアッセイ装置(例えば、米国特許7271007に記載されている)、ラテラルフロー装置(例えば、米国公開20040228761または米国公開20040265926に記載されている)、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA、例えば、米国特許4593089または米国特許4751190に記載されている)、免疫比濁アッセイ(例えば、米国特許5571728または米国特許6248597に記載されている)を使用して、IL-2Rαのレベルを測定する。
TNFR1レベルの量の測定
本開示の力価検定法はまた、間葉系前駆または幹細胞によるTNFR1の発現を測定する工程を含んでいてもよい。TNFR1は可溶性TNFR1(sTNFR1)であってもよい。この工程は、間葉系前駆または幹細胞とT細胞の共培養後に実施されてもよい。代替的に、T細胞との共培養前に、単離、濃縮または増殖させた間葉系前駆または幹細胞の細胞溶解液中のTNFR1発現を測定してもよい。一実施形態では、凍結保存された濃縮及び/または増殖間葉系前駆または幹細胞の細胞溶解液中のTNFR1発現を測定する。
IL-2Rα発現を検出するための上記の方法が、TNFR1発現を検出するためにも使用可能であることを、当業者は理解する。好ましい実施形態では、ELISAまたはFLISAを用いて細胞溶解液をアッセイする。
1つの様式では、このようなアッセイは、固体マトリックス上にTNFR1結合タンパク質を固定することを含む。次に、試験試料をTNFR1結合タンパク質に直接接触させると、試料中のTNFR1が結合または捕捉される。試料中の全ての非結合タンパク質を除去するために洗浄を行った後、異なるエピトープにおいてTNFR1に結合したタンパク質を、捕捉されたTNFR1に直接接触させる。この検出用タンパク質は通常、上記のとおり標識される。代替的に、検出用タンパク質に結合する二次標識タンパク質を使用してもよい。全ての非結合タンパク質を除去するために洗浄を行った後、上記のELISAの場合には、基質を加えることにより、検出可能なレポーター分子を検出する。次に、既知量のマーカーを用いて作製した標準曲線を使用することにより、または、対照試料と比較することにより、試料中におけるTNFR1のレベルを測定する。
一実施形態では、凍結保存された濃縮及び/または増殖間葉系前駆または幹細胞の細胞溶解液中のTNFR1発現を測定するが、少なくとも100pg/mL TNFR1は、生物学的活性または治療効果を示す。
組成物及び投与
薬学的に許容される担体を用いて、間葉系前駆または幹細胞を含む組成物を調製してもよい。本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される担体」とは、間葉系前駆または幹細胞の保存、投与を容易にする、及び/または、それらの生物学的活性を維持する、物質の組成物のことを意味する。
1つの例では、担体は、レシピエントに重大な局所または全身性の有害事象をもたらさない。薬学的に許容される担体は固体または液体であってもよい。薬学的に許容される担体の有用な例としては、間葉系前駆または幹細胞の生存能及び活性に影響を及ぼさない、希釈剤、溶媒、界面活性剤、賦形剤、懸濁剤、緩衝剤、滑沢剤、補助剤、媒体、乳化剤、吸収剤、分散媒、コーティング剤、安定剤、保護コロイド、接着剤、増粘剤、チキソトロープ剤、浸透剤、金属イオン封鎖剤、スキャフォールド、等張化剤及び吸収遅延剤が挙げられるがこれらに限定されない。好適な担体の選択は当業者の技能の範囲内である。
本開示の組成物は、単位投与剤形で都合よく提供されてもよく、当該技術分野において周知の方法のいずれかにより調製されてもよい。本明細書で使用する場合、用語「単位投与剤形」とは、治療する対象用の単一用量に適した物理的に不連続な単位のことを意味し、それぞれの単位は、医薬品担体と協同して所望の治療または予防効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含有している。間葉系前駆または幹細胞の用量は、治療する対象の病態、年齢、性別及び体重などの因子に応じて様々であり得る。
用語「対象」とは、動物、好ましくは、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットまたはマウス)及び霊長類(例えば、サルまたはヒト)を含む哺乳動物のことを意味する。好ましい実施形態では、対象はヒトである。
例示的な用量は、少なくとも約1×10細胞を含む。例えば、用量は、約1.0×10~約1×1010細胞、例えば、約1.1×10~約1×10細胞、例えば、約1.2×10~約1×10細胞、例えば、約1.3×10~約1×10細胞、例えば、約1.4×10~約9×10細胞、例えば、約1.5×10~約8×10細胞、例えば、約1.6×10~約7×10細胞、例えば、約1.7×10~約6×10細胞、例えば、約1.8×10~約5×10細胞、例えば、約1.9×10~約4×10細胞、例えば、約2×10~約3×10細胞を含んでいてもよい。
1つの例では、用量は、約5×10~2×10細胞、例えば、約6×10細胞~約1.8×10細胞を含む。用量は、例えば、約6×10細胞または約1.8×10細胞であってもよい。
間葉系前駆または幹細胞は、本組成物の細胞集団のうちの、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%を含む。
本開示の組成物は凍結保存されていてもよい。間葉系前駆または幹細胞の凍結保存は、当該技術分野において周知の低速冷却法または「急速」凍結プロトコルを使用して実施することができる。凍結保存の方法は、非凍結細胞と比較して同様の、凍結保存した細胞における表現型、細胞表面マーカー及び増殖速度を維持することが好ましい。
凍結保存した組成物は、凍結保存液を含んでいてもよい。凍結保存液のpHは通常、6.5~8、好ましくは7.4である。
凍結保存液は、滅菌非発熱性等張液、例えば、PlasmaLyte A(商標)などを含んでいてもよい。100mLのPlasmaLyte A(商標)は、526mgの塩化ナトリウム、USP(NaCl);502mgのグルコン酸ナトリウム(C11NaO);368mgの酢酸ナトリウム三水和物、USP(CNaO・3HO);37mgの塩化カリウム、USP(KCl);及び30mgの塩化マグネシウム、USP(MgCl・6HO)を含有する。抗菌剤は含有していない。pHは水酸化ナトリウムで調節されている。pHは7.4(6.5~8.0)である。
凍結保存液はProfreeze(商標)を含んでいてもよい。凍結保存液は、追加的にまたは代替的に培地を含んでいてもよい。
凍結を容易とするため、通常は、凍結保護剤、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)などを凍結保存液に加える。理想的には、凍結保護剤は、細胞及び患者に対して非毒性、非抗原性、化学的に不活性である必要があり、解凍後における高い生存率をもたらし、洗浄を伴わない移植が可能となる必要がある。しかしながら、最も一般的に使用されている凍結保護剤であるDMSOは、ある程度細胞傷害性を示す。ヒドロキシエチルデンプン(HES)を代用として使用して、または、DMSOと組み合わせて使用して、凍結保存液の細胞傷害性を低下させてもよい。
凍結保存液は、DMSO、ヒドロキシエチルデンプン、ヒト血清成分、及びその他のタンパク質増量剤のうちの1種または複数種を含んでいてもよい。1つの例では、凍結保存液は、約5%のヒト血清アルブミン(HSA)、及び約10%のDMSOを含む。凍結保存液は、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びトレハロースのうちの1種または複数種を更に含んでいてもよい。
一実施形態では、42.5% Profreeze(商標)/50% αMEM/7.5% DMSO中に細胞を懸濁させて、温度を制御したフリーザー内で冷却させる。
凍結保存した組成物は、解凍してから対象に直接投与してもよく、または、例えば、HAを含む別の溶液に加えてもよい。代替的に、凍結保存した組成物を解凍してから、投与する前に、間葉系前駆または幹細胞を別の担体中に再懸濁させてもよい。
治療する特定の病態に好適な経路を介して、本開示の組成物を投与してもよい。例えば、全身的に、すなわち、非経口、静脈内、または注射により、本開示の組成物を投与してもよい。本開示の組成物は、特定の組織または器官を標的とすることができる。
投与レジメンを調節して最適な治療効果をもたらしてもよい。例えば、単回ボーラスで投与してもよく、数回の分割用量で徐々に投与してもよく、または、治療状況の緊急性に比例させて用量を減少または増加させてもよい。非経口組成物を、投与し易くかつ用量が均一な単位投与剤形で製剤化するのが有益であり得る。
一部の実施形態では、細胞組成物を用いた治療を開始する前に患者に対して免疫抑制を行うことは、必須または望ましいことではない場合がある。実際に、ヒツジにおける同種STRO-1+細胞の移植では、免疫抑制のない状態で十分に耐性を示した。しかしながら、その他の例では、細胞治療を開始する前に患者に対して薬理学的な免疫抑制を行うことは、望ましいことまたは適切である場合がある。このことは、全身または局所性の免疫抑制剤を使用することにより達成することができ、または、封入デバイスを用いて細胞を送達することにより達成することができる。細胞が必要とする栄養素及び酸素ならびに細胞治療用因子を透過するが、免疫液性因子及び細胞は透過しないカプセル内に、細胞を封入してもよい。カプセル用材料は、アレルギーを起こしにくく、標的組織に容易かつ安定的に配置され、移植構造物に追加の保護を提供することが好ましい。移植細胞に対する免疫応答を低下または除去するためのこれら及びその他の方法は、当技術分野において周知である。別の方法として、細胞の免疫原性が低下するようにその細胞を遺伝子組換えしてもよい。
その他の有益な薬物または生体分子(増殖因子、栄養因子)と共に間葉系前駆または幹細胞を投与してもよいということが理解される。その他の因子と共に投与する場合、間葉系前駆または幹細胞を、単一の医薬組成物または別々の医薬組成物で、その他の因子と同時または連続的に共に投与してもよい(その他の因子を投与する前または後のいずれかで)。同時投与され得る生理活性因子としては、抗アポトーシス因子(例えば、EPO、EPOミメティボディ、TPO、IGF-I及びIGF-II、HGF、カスパーゼ阻害因子)、抗炎症剤(例えば、p38 MAPK阻害剤、TGF-β阻害剤、スタチン、IL-6及びIL-1阻害剤、ペミロラスト(商標)、トラニラスト(商標)、レミケード(商標)、シロリムス(商標)、ならびに、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、テポキサリン(商標)、トルメチン(商標)、スプロフェン(商標)など);免疫抑制/免疫調節剤(例えば、カルシニューリン阻害剤、例えば、シクロスポリン、タクロリムスなど);mTOR阻害剤(例えば、シロリムス(商標)、エベロリムス(商標));抗増殖剤(例えば、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン);抗体、例えば、モノクローナル抗IL-2Rα受容体抗体(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ)、ポリクローナル抗T細胞抗体(例えば、抗胸腺細胞グロブリン(ATG);抗リンパ球グロブリン(ALG);モノクローナル抗T細胞抗体OKT3)など;抗血栓薬(例えば、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害薬、及び抗血小板薬);ならびに、抗酸化薬(例えば、プロブコール、ビタミンA、アスコルビン酸、トコフェロール、コエンザイムQ-10、グルタチオン、L-システイン、N-アセチルシステイン)に加え、局所麻酔薬が挙げられる。
移植片対宿主病及びそのステージ分類
急性及び慢性移植片対宿主病(GVHD)は、同種造血細胞移植(通常は、骨髄または末梢血幹細胞の採取という形で)の合併症である多系統疾患である。GVHDは、異なるドナーから移植された免疫細胞(移植片)が移植レシピエント(宿主)を異物と認識し、それにより、移植レシピエントにおいて疾患を引き起こす免疫応答が開始される際に発症する。急性GVHDの臨床症状としては、古典的な斑丘疹性発疹、持続性の悪心及び/または嘔吐;下痢を伴う腹部痙攣;及び、血清中ビリルビン濃度の上昇が挙げられる。それに対し、慢性GVHDを有する患者は通常、扁平苔癬に似た皮膚浸潤、または強皮症の皮膚症状;胃腸管の潰瘍形成及び硬化症を伴う乾燥口腔粘膜;及び、血清中ビリルビン濃度の上昇を示す。
GVHDは一般的に、100日のカットオフを用いた発症時期に基づいて、急性異型と慢性異型に分類されている。しかしながら、この一般的な分類は、急性及び慢性GVHDの徴候がこれらの指定期間を外れて現れる場合があるという認識によって疑いを持たれている。この観察結果により、急性GVHDと慢性GVHDを区別するためには、所定の期間ではなくむしろ臨床所見を用いることが増えるようになってきている。広く一般に認められている国立衛生研究所(NIH)によるGVHD診断に用いるコンセンサス基準は、GVHDの症状を、慢性GVHDに「診断的」または「固有」なもの、または、急性GVHDと慢性GVHDの両方に共通するものに分類している(Filipovich AH et al.(2005)Biol Blood Marrow Transplant 11:945)。
GVHDを有する患者は、発症のタイミング及び現れる特徴に基づいて以下のように細分類される。
・古典的な急性GVHD-造血細胞移植(HCT)の100日以内に発症し、急性GVHDの特徴を示す症例。慢性GVHDにおける診断的で固有の特徴がない。
・持続性、再発性、遅発性の急性GVHD-HCT後100日を超えて発症し、急性GVHDの特徴を示す症例。慢性GVHDにおける診断的で固有の特徴がない。
・古典的な慢性GVHD-HCT後の任意の時点で発症し得る症例。慢性GVHDにおける診断的で固有の特徴がある。急性GVHDの特徴がない。
・オーバーラップ症候群-HCT後の任意の時点で発症し得、慢性GVHDと急性GVHDの両方の特徴を示す症例。これは時折、口語体で「慢性」GVHDの「急性増悪」と呼ばれる。
急性GVHDの病態生理学については、十分に説明され広範囲にわたり精査されている(Ferrara JL et al.(2006)Semin Hematol 43(1):3-10)。簡潔に説明すると、臨床的に明らかなGVHDの発症につながるイベントは、移植前処置中、移植レシピエントが大量の化学療法及び/または放射線療法を受けている間に始まる。大量療法によって生じた組織損傷は、宿主抗原提示細胞(APC)の活性化、APC表面上の主要組織適合抗原の上方制御、及び宿主抗原の提示をもたらす。幹細胞移植片を注入されたドナーのTリンパ球は、この環境における抗原性の違いに対して、クローン増殖、組織遊走、及び細胞間の直接的な細胞傷害で応じる。高レベルの炎症性サイトカイン(特に、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン-1(IL-1)及びインターロイキン-2(IL-2))及び大量の宿主抗原は、重篤な組織損傷、臓器機能障害、及び死亡をもたらし得る、炎症カスケードを引き起こす。
臨床的に有意な急性GVHDは、免疫抑制剤を用いた徹底的な予防にもかかわらず、同種造血細胞移植(HCT)を受けた患者において発症する。同種HCT後における急性GVHDの正確な発症率は未知である。遺伝子型的にHLA同一の同胞由来の同種HCTを受けた患者の発症率は、9~50パーセントの範囲であると報告されている(Lee SE et al.(2013)Bone Marrow Transplant 48:587)。
急性GVHDは、適合した非血縁ドナー及びハプロタイプが一致する血縁ドナーにおいても一般的である。
多数の研究により、以下の、急性移植片対宿主病(GVHD)の発症リスク因子が同定されている(Hahn T et al.(2008)J Clin Oncol 26:5728)。
・HLAの不一致度合い(HLA不適合ドナーまたは非血縁ドナー);
・ドナーとレシピエントの性別不一致(女性ドナー対男性レシピエント);
・移植前処置の強度;
・使用する急性GVHD予防処置;及び
・移植片の供給源(臍帯血より多量の末梢血または骨髄)
それほど確立していないリスク因子としては、宿主の加齢、ドナー及び宿主のサイトメガロウイルス(CMV)の状態、ドナーエプスタインバーウイルス(EBV)血清反応陽性(Styczynski J et al.(2016)J Clin Oncol 34:2212)、骨髄移植に対する末梢血幹細胞移植、滅菌環境の存在(腸内殺菌を含む)、及び特定のHLAハプロタイプが挙げられる。しかしながら、急性GVHDのリスク因子は基礎疾患とは異なり、それぞれの条件に対する異なるリスクモデルが必要とされる(Hahn T et al.(2008)J Clin Oncol 26:5728)。
GVHDは、典型的には移植後初期に現れる、同種造血細胞移植(HCT)の一般的な合併症である。急性GVHDの初期の徴候及び症状は、最も一般的には、白血球が生着する時期頃に現れる。急性GVHDの当初の定義は、移植から100日後の前における症状の発症を必要としていたが、現在の国立衛生研究所(NIH)コンセンサス基準では、急性GVHDと慢性GVHDを区別するために所定の期間ではなくむしろ臨床所見を用いている。それゆえ、100日目の前に急性GVHDの典型的な所見を示す患者が「古典的急性GVHD」を有するとみなされる一方で、100日目の後(通常は、免疫抑制作用が低下すると)に同一所見を示す患者は「遅発性急性GVHD」を有するものと分類される(Vigorito AC et al.(2009)Blood 114:702)。一部の臨床医はまた、移植から14日以内に現れる急性GVHDの症状を表現するのに、用語「早発性急性GVHD」または「超急性GVHD」を使用している(Sullivan KM et al.(1986)Blood 67:1172)。
器官浸潤
皮膚、胃腸管及び肝臓は、急性GVHDを有する患者における主要な標的器官である。ほとんどの患者における急性GVHDの第1の(かつ最も一般的な)臨床症状は、通常は白血球が生着する時点またはその頃に現れる斑丘疹性発疹である。発疹は、首筋、耳、肩、手のひら及び足の裏に最初に現れる。発疹は日焼けを表すこともあり、かゆみまたは痛みを伴う場合もある。皮膚の組織学的検査により、真皮層及び表皮層における変化が明らかとなった(Sale GE et al.(1977)Am J Pathol 89:621)。特徴的な所見としては、エキソサイトーシスによって放出されたリンパ球、異常角化表皮ケラチノサイト、濾胞浸潤、異常角化表皮ケラチノサイトに隣接するまたはそれを取り囲むサテライトリンパ球、及び真皮血管周囲のリンパ球浸潤が挙げられる(Darmstadt GL et al.(1992)J Invest Dermatol 99:397)。急性GVHDの総合的な重症度グレードを判定するために、皮膚浸潤のステージを胃腸管浸潤及び肝浸潤のステージに関する情報と組み合わせる。
急性GVHDはしばしば、胃腸管の上部と下部の両方に関係している。胃腸管浸潤は通常、下痢及び腹痛を伴って現れるが、悪心、嘔吐及び食欲不振が現れることもあり得る。上部内視鏡検査、直腸生検または結腸内視鏡検査により得られた組織を病理学的に評価することにより、診断の確定がもたらされる。胃腸管浸潤の診断には組織の病理学的評価が必要となる。診断されると、胃腸管浸潤の度合いは、下痢の重症度、ステージ1-500~1000mL/日の下痢、ステージ2-1000~1500mL/日の下痢、ステージ3-1500~2000mL/日の下痢、及び、ステージ4->2000mL/日の下痢または疼痛もしくは腸閉塞に基づいて等級分けされる。
急性GVHDによる下部胃腸管の浸潤は重度である場合が多く、下痢(血便排泄を伴うまたは伴わない)及び腹部痙攣を特徴とする。直腸生検または結腸内視鏡検査により得られた組織を病理学的に評価することにより、診断の確定が行われる。急性GVHDを有する患者は、重度の下痢(場合によっては1日に10リットルを超える)を発症する場合がある。糞便は最初水分を多く含む場合があるが、しばしば血液を含むようになる。下痢は分泌性であり、特質上、絶食にもかかわらず継続し、絶え間なく現れる。下痢は、これもまた管理が困難となり得る痙攣性の腹痛を伴う場合がある。重度の腸閉塞は、急性GVHDに関連して、または、身体的な不快感の制御に必要なオピオイド使用の増加に起因して発症し得る。直腸生検は一般的に、胃腸管に影響を及ぼす急性GVHDの診断を下す上で有用である。組織学的検査では、死陰窩内における変性物質の蓄積により陰窩細胞の壊死が認められた。
急性GVHDによる上部胃腸管の浸潤によりしばしば、食欲不振、消化不良、食物不耐症、悪心及び嘔吐が現れる(Weisdorf DJ et al.(1990)Blood 76:624)。患者はまた、歯肉炎及び粘膜炎を示す場合がある(これらの所見は、より一般的には、移植前処置の影響によるものであるが)。食道及び胃の上部内視鏡検査による陽性生検により診断を確認した。鑑別診断は、単純ヘルペスウイルス食道炎またはカンジダ食道炎、胃炎、消化性潰瘍、及び、化学療法及び/または放射線による胃腸毒性を含む。
肝浸潤は通常、皮膚及び/または胃腸管急性GVHDの徴候を有する患者に見られる(Ratanatharathorn V et al.(1998)Blood 92:2303)。患者は稀に、その他の器官浸潤の形跡を示さずに、中程度から重度の肝GVHDを有する。肝浸潤が、皮膚または胃腸管GVHD環境の肝機能検査における異常により示唆され得るとはいえ、肝臓のGVHDを証明するには肝生検が必要となる。肝浸潤は、コンジュゲートしたビリルビン及びアルカリホスファターゼの血清中濃度の上昇という最も早く一般的な所見をもとに、異常肝機能検査により明らかとなる。通常は血清コレステロールが上昇する一方、凝血異常及び高アンモニア血症は非常に稀ではあるが、重症症例において発症する場合がある。患者はまた、痛みを伴う肝腫大、暗色尿、淡色便、体液貯留、及びかゆみを示し得る。発熱、食欲不振及び悪心は、一般的な非特異的症状である。特徴的な発疹の併発は示唆的な臨床エビデンスを提供するが、肝臓のGVHDを診断するには生検が最も確実な方法である。しかしながら、HCT直後においては重度の血小板減少症による急性出血の可能性があることから、この生検は実行可能でない場合がある。
急性GVHDの診断用バイオマーカー
急性GVHDを診断するための血清バイオマーカーの使用は活発な研究領域である。バイオマーカーまたはバイオマーカーのパネルは通常、互いに組み合わされて、または、その他の知見と組み合わされて使用される。理想的なバイオマーカーは、臨床的な急性GVHDの発症を予測するだけではなく、管理を誘導することもできる。多くの候補バイオマーカーが存在しているが、そのどれも臨床適用できる状態にはない。
1つの候補バイオマーカーは、インターロイキン-1受容体ファミリーのメンバーである腫瘍形成抑制因子2(ST2)である。
プロテオミクスを用いた血漿及び尿ポリペプチドのパターン解析は、急性GVHDの早期診断を可能とする裏付けを示している(Srinivasan R et a.(2006)Exp Hematol 34:796)。一例として、インターロイキン-2受容体-α、腫瘍壊死因子受容体-1、インターロイキン-8、及び肝細胞増殖因子を含むマーカーのパネルにより、臨床症状の発症時における急性GVHDの診断を確実なものとし、GVHDの重症度に依存しない予後情報を提供可能であるということが提案されている(Paczesny S et al.(2009)Blood 113:273)。Reg3の使用はまた、急性消化管GVHDの診断に有用であることが判明している(Ferrara JL et al.(2011)Blood 118:6702)。加えて、急性GVHDを有する患者においてCD30の血漿中濃度が上昇していることも判明している(Chen YB et al.(2012)Blood 120:691)。
血漿中マイクロRNAシグネチャーの解析は、急性GVHDの非侵襲性バイオマーカーを提供し得る。1つの研究では、6マイクロRNAのパネルを評価することにより、急性GVHDを有するHCTレシピエントと急性GVHDを有さない患者を区別することができ、急性GVHDの重症度を予測することができた(Xiao B et al.(2013)Blood 122:3365)。急性GVHDを予測するパネルに4つのマーカーを組み入れると、miRNAバイオマーカーのレベルは急性GVHDの重症度と明確に関連付いていた。より重要なことに、急性GVHDの発症前に、これら上昇したmiRNAを検出することができる。これらのデータはより大きな患者のコホートで確認される。
GVHDのステージ分類
急性GVHDを等級分けするためのいくつかのシステムが開発されている。最も一般的な2つは、Glucksbergグレード(I~IV)(Glucksberg H et al(1974)Transplantation 18(4):295)及び国際骨髄移植登録機構(IBMTR)等級分けシステム(A~D)(Rowlings PA et al.,(1997)Br J Hematol 97(4):855)である。急性GVHDの重症度は、皮膚、肝臓及び胃腸管の浸潤の度合いを評価することにより決定される。(Glucksberg)を用いたまたは(IBMTR)を用いない個々の器官浸潤のステージを、患者のパフォーマンスステータスと組み合わせて、予後有意性を有する総合的なグレードを作成する。グレードI(A)のGVHDを軽度の疾患、グレードII(B)のGVHDを中程度の疾患、グレードIII(C)のGVHDを重度の疾患、グレードIV(D)のGVHDを生命を脅かす疾患と記述する(Przepiorka D,Weisdorf D,Martin P,Klingemann HG,Beatty P,Hows J,Thomas ED(1995)Bone Marrow Transplant.1995;15(6):825;Cahn JY et al.(2005)Blood 106(4):1495)。
IBMTR等級分けシステムは、以下の急性GVHDの重症度、
・グレードA-肝浸潤または胃腸管浸潤を伴わないステージ1の皮膚浸潤(身体の<25パーセント超の斑丘疹性発疹)のみ
・グレードB-ステージ2の皮膚浸潤、ステージ1~2の消化管浸潤または肝浸潤
・グレードC-任意の器官系におけるステージ3の浸潤(全身性紅皮症、6.1~15.0mg/dLのビリルビン、1500~2000mL/日の下痢)
・グレードD-任意の器官系におけるステージ4の浸潤(水疱形成を伴う全身性紅皮症、>15mg/dLのビリルビン、>2000mL/日の下痢または疼痛もしくは腸閉塞)
を定義する。
予防または治療に対する効果、生存に及ぼす影響、及び移植片対白血病効果を評価するという点から、等級分けは重要である。中程度から重度のGVHDを有する患者は、軽度の疾患を有する患者と比較して、有意により高い死亡率を示す。一例として、グレードIII(C)及びグレードIV(D)の急性GVHDを有する患者の推定5年生存率はそれぞれ25パーセント及び5パーセントである(Przepiorka D et al.(1995)Bone Marrow Transplant 15:825)。しかしながら、HCT後ケアが変更された現在の患者集団にこれらの推定生存率を適用する際には注意しなければならない。現在の予防処置により、総合的なアウトカム及び疾患の発現が変化し得る。通常、それぞれの器官の最初の等級分けは、ステロイド治療の開始の10日ウインドウ(-5日~+5日)以内に算出される。その後、可能であれば、検査及び臨床情報ならびに組織学的確定に基づき、主治医が週に1回、リアルタイムのステージ分類及び等級分けを決定する。
最近の研究(例えば、MacMillan ML et al(2010)Blood 115:5412-5417を参照のこと)では、PR及びCrを含む28日目の効果が、急性GVHDを有する患者における後々のより決定的なアウトカムを予想を可能とする初期標的として組み込まれることが提案されている。
造血幹細胞移植片(HSCT)
「造血幹細胞移植片(HSCT)」とは、例えば、骨髄または末梢血に由来し得る多能性造血幹細胞を含む移植片のことである。移植片は、若干の非幹細胞、例えば、DC及び/またはリンパ球を含むAPCを含んでいてもよい。
「造血幹細胞」は、自己複製することができ、分化して、骨髄系(単球及びマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、樹状細胞)、赤血球系(赤血球)、巨核球系(血小板)、及びリンパ球系(T細胞、B細胞、NK細胞)を含む全ての血液細胞型を生じることができる。分化の最中、造血幹細胞は最初にその自己複製能を失い、その後、成熟エフェクター細胞になることが決定するにつれて系統の潜在能を段階的に失っていく。典型的には、Lin-、CD34+、CD38-、CD90+、CD45RA-ヒト細胞は造血幹細胞である。1つの例では、CD34の発現を利用して、ヒトドナーから単離した末梢血内における造血幹細胞を同定する。
HSCTは、幹細胞移植片を必要とする疾患及び症状の治療に使用することができる。例えば、幹細胞は、正常血液細胞産生及び成熟の障害または機能不全、造血系悪性腫瘍、自己免疫疾患、肝疾患、または免疫不全症(例えば、放射線被曝、化学療法、または病原体への感染の理由により)の治療に使用することができる。
対象への投与前に、幹細胞をエクスビボで増殖または分化させてもよい。
同種造血幹細胞移植片を用いて、以下の症状、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、再生不良性貧血、赤芽球癆、発作性夜間血色素尿症、ファンコニ貧血、サラセミアメジャー、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症(SCID)、ウィスコットオールドリッチ症候群、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、代謝の先天異常(例えば、ムコ多糖症、ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、及び副腎白質ジストロフィー)のうちの1種または複数種を治療してもよい。
GVHDの予防または治療
予防または治療するのに有効な量で対象に細胞を投与する工程を含むGVDHを有する対象を予防または治療するための方法に、間葉系前駆または幹細胞及び/またはその子孫細胞を使用してもよい。一実施形態では、対象は、GVHDをもたらす1種または複数種の同種造血幹細胞移植片を投与されている。
GVHDの症状としては、皮膚硬化、経口摂取の制限、眼の乾燥、胃腸(GI)管症状、例えば、嚥下障害、食欲不振、悪心、嘔吐、腹痛または下痢など、ビリルビンの上昇、アルカリホスファターゼの上昇、及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)/アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)比率の上昇により明らかとなる肝症状、息切れ、及び/または、腕または脚の張りが挙げられる。
対象は、移植片対宿主病が影響を及ぼす組織に応じて複数の症状を示し得る。ある対象は4~5種の症状を示し、その他の対象は1~2種の症状を示し得る。間葉系前駆または幹細胞及び/またはその子孫細胞を用いて、対象におけるGVHDに関連する症状のうちの1つ、もしくはそれ以上、または全てを治療してもよい。
哺乳動物、特にヒトにおけるGVHDまたはGVHDの症状を治療するための間葉系前駆または幹細胞及び/またはその子孫細胞の注入あたりの有効量は、1×10細胞/kg(体重)~1×10細胞/kg(体重)、1×10細胞/kg(体重)~1×10細胞/kg(体重)、2×10細胞/kg(体重)~1×10細胞/kg(体重)、2.5×10細胞/kg(体重)~1×10細胞/kg(体重)、2×10細胞/kg(体重)~1×10細胞/kg(体重)、2.5×10細胞/kg(体重)~I×10細胞/kg(体重)、2×10細胞/kg(体重)~3×10細胞/kg(体重)、2.5×10細胞/kg(体重)~3×10細胞/kg(体重)、2×10細胞/kg(体重)~2×10細胞/kg(体重)、2.5×10細胞/kg(体重)~2×10細胞/kg(体重)、2×10細胞/kg(体重)~1×10細胞/kg(体重)、2.5×10細胞/kg(体重)~1×10細胞/kg(体重)、2×10細胞/kg(体重)~1×10細胞/kg(体重)、または、2.5×10細胞/kg(体重)~1×10細胞/kg(体重)であってもよい。
修復または増強を必要とする対象の部位、例えば、器官へと、または、血液系へと、間葉系前駆または幹細胞及び/またはその子孫細胞を外科的に移植、注入、送達(例えば、カテーテルまたは注射器を用いて)してもよく、または別の方法で、直接または間接的に投与してもよい。
一実施形態では、間葉系前駆または幹細胞及び/またはその子孫細胞は、対象の血流へと送達される。例えば、間葉系前駆または幹細胞及び/またはその子孫細胞は非経口送達される。非経口投与の例示的な経路としては、静脈内、筋肉内、皮下、動脈内、腹腔内、心室内、脳室内、硬膜内が挙げられるがこれらに限定されない。
一実施形態では、間葉系前駆または幹細胞及び/またはその子孫細胞は、例えば、注射器を用いて、または、カテーテルまたは中心ラインを介して、送達部位へと注入される。
治療用製剤の投与レジメンの選択は、血清または組織におけるその要素の代謝速度、症状のレベル、及びその要素の免疫原性を含むいくつかの因子によって決まる。投与レジメンは、許容レベルの副作用に合わせ、患者へと送達される治療用化合物の量を最大化することが好ましい。
1つの例では、間葉系前駆または幹細胞及び/またはその子孫細胞は、単回ボーラス用量で送達される。代替的に、間葉系前駆または幹細胞及び/またはその子孫細胞は、持続注入で投与される。
任意の特定の投与法に限定するわけではないが、非経口投与法が好ましい。全身投与または局所投与が可能であるが、全身投与が好ましく、静脈注射が最も好ましい。
間葉系前駆または幹細胞及び/またはその子孫細胞、または、それらを含む組成物は、その他の活性剤(複数可)と組み合わせて使用することができる。例えば、本開示の間葉系前駆または幹細胞を、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症化合物、または、炎症を治療するのに有効なその他の薬剤と組み合わせてもよい。間葉系前駆または幹細胞とこれらその他の薬剤の併用においては、同時または連続的に投与されてもよく、それはすなわち、間葉系前駆または幹細胞、または、それらを含む組成物は、1種または複数種のその他の活性剤を用いた治療の前または後に投与されてもよい。
一実施形態では、間葉系前駆または幹細胞及び/またはその子孫細胞は、造血幹細胞の投与の前に、それらと同時に、または、それらの投与の後に投与される。
別の実施形態では、対象への投与前に、造血幹細胞を、間葉系前駆または幹細胞及び/またはその子孫細胞と共培養する。
間葉系前駆または幹細胞、または、それらを含む組成物を、その他の活性剤と組み合わせて投与する適切な順序を主治医が決定してもよい。
炎症性疾患の治療
本開示はまた、対象における自己免疫疾患を治療するための方法を提供する。本方法は、対象における自己免疫疾患を治療するのに有効な量で、本明細書に記載の間葉系前駆もしくは幹細胞またはその子孫を対象に投与することを含む。本開示に従い治療可能な自己免疫疾患としては、多発性硬化症、1型糖尿病、関節リウマチ、ブドウ膜炎、セリアック病、狼瘡、自己免疫性甲状腺疾患、炎症性腸疾患、自己免疫性リンパ増殖性疾患(ALPS)、脱髄性疾患、自己免疫脳脊髄炎、自己免疫性胃炎(AIG)、及び自己免疫性糸球体疾患が挙げられるがこれらに限定されない。
遺伝子組換え細胞
一実施形態では、間葉系前駆または幹細胞は、例えば、目的のタンパク質、例えば、治療及び/または予防効果をもたらすタンパク質を発現及び/または分泌するように、遺伝子組換えされる。
細胞を遺伝子組換えするための方法は当業者に明らかである。例えば、細胞内で発現される核酸は、細胞内における発現を誘導するためのプロモーターに機能的に連結する。例えば、核酸は、対象の様々な細胞内のプロモーター、例えば、ウイルスプロモーター、例えば、CMVプロモーター(例えば、CMV-IEプロモーター)、またはSV-40プロモーターなどに機能的に連結する。別の好適なプロモーターは当技術分野において周知である。
発現構築物の形態で核酸を提供することが好ましい。本明細書で使用する場合、用語「発現構築物」とは、細胞内において機能的に連結する核酸に発現を付与する機能を有する核酸(例えば、レポーター遺伝子及び/または逆選択レポーター遺伝子)のことを意味する。本開示の文脈内において、発現構築物が、プラスミド、バクテリオファージ、ファージミド、コスミド、ウイルス性のサブゲノムまたはゲノムフラグメント、または、非相同DNAを発現可能な形態で維持及び/または複製することができるその他の核酸を含み得る、または、それらであり得るということが理解される。
本発明を実施するために好適な発現構築物を構築するための方法は当業者に明らかであり、例えば、Ausubel F.M.,1987(現在に至る全て改定版を含む);またはSambrook & Green,2012に記載されている。例えば、発現構築物の構成成分のそれぞれは、例えば、PCRを用いて好適な鋳型核酸から増幅され、それに続いて、好適な発現構築物、例えば、プラスミドまたはファージミドなどにクローニングされる。
このような発現構築物に好適なベクターは、当該技術分野において周知及び/または本明細書に記載されている。例えば、哺乳動物細胞に用いる本発明の方法に好適な発現ベクターは、例えば、pcDNAベクターシリーズ(Invitrogen)のベクター、pCIベクターシリーズ(Promega)のベクター、pCMVベクターシリーズ(Clontech)のベクター、pMベクター(Clontech)、pSIベクター(Promega)、VP 16ベクター(Clontech)、または、pcDNAベクターシリーズ(Invitrogen)のベクターである。
当業者は、別のベクター、及びこのようなベクターの供給元、例えば、Invitrogen Corporation、ClontechまたはPromegaなどについて認識している。
単離した核酸分子またはそれを含む遺伝子構築物を発現用の細胞へと導入するための方法は当業者に周知である。任意の生物に用いる技術は、周知の成功した技術に依存する。組換えDNAを細胞へと導入するための方法としては、とりわけ、マイクロインジェクション、DEAE-デキストランを介したトランスフェクション、例えば、リポフェクタミン(Gibco,MD,USA)及び/またはセルフェクチン(Gibco,MD,USA)などを使用した、リポソームを介したトランスフェクション、PEGを介したDNA取り込み、例えば、DNAをコーティングしたタングステンまたは金粒子(Agracetus Inc.,WI,USA)を使用した、エレクトロポレーション及び微粒子ボンバードメントが挙げられる。
代替的に、本発明の発現構築物はウイルスベクターである。好適なウイルスベクターは当技術分野において周知であり、市販されている。核酸を送達してその核酸を宿主細胞ゲノムへと組み込むための従来のウイルスをベースとした系としては、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはアデノ随伴ウイルスベクターが挙げられる。代替的に、アデノウイルスベクターは、エピソーム状に維持された核酸を宿主細胞へと導入するのに有用である。ウイルスベクターは、標的細胞及び組織へと遺伝子を導入するための効率的で汎用性のある方法である。加えて、多くの異なる細胞型及び標的組織において、高い形質導入効率が認められている。
例えば、レトロウイルスベクターは通常、最大6~10kbの外来配列のパッケージング能を有する、シス作用性長末端反復配列(LTR)を含む。最低限のシス作用性LTRはベクターの複製及びパッケージングに十分であり、発現構築物を標的細胞へと組み込んで長期的な発現をもたらすのに使用される。広く使用されているレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SrV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及びこれらの組み合わせをベースとするベクターが挙げられる(例えば、国際公開WO1994/026877;Buchschacher & Panganiban,1992;Johann et al.,1992;Sommerfelt & Weiss,1990;Wilson et al.,1989;Miller et al.,1991;Lynch,et al.,1991;Miller & Rosman,1989;Miller,1990;Scarpa et al.,1991;Burnset al.,1993を参照のこと)。
様々なアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター系はまた、核酸送達用に開発されている。AAVベクターは、当該技術分野において周知の技術を使用して容易に構築することができる(例えば、米国特許5173414及び5139941;国際公開WO92/01070及びWO93/03769;Lebkowski et al.,1988;Vincent et al.,1990;Carter,1992;Muzyczka,1992;Kotin,1994;Shelling & Smith,1994;Zhou et al.,1994を参照のこと)。
本発明の発現構築物を送達するのに有用な別のウイルスベクターとしては、例えば、ポックスウイルス科、例えば、ワクシニアウイルス及びアビポックスウイルス、または、アルファウイルスなどに由来するウイルスベクター、または、コンジュゲートウイルスベクター(例えば、Fisher-Hoch et al.,1989に記載されている)が挙げられる。
本開示の広範で一般的な範囲を逸脱することなく、上記の実施形態に対して多数の変形形態及び/または修正を行うことができるということを当業者は理解する。そのため、本実施形態は、あらゆる点において、限定するものではなく例示と捉えられるものである。
造血細胞
一部の例では、レシピエント対象は、造血細胞を含むドナー移植片を投与されている。更なる例では、ドナー移植片は、骨髄、または、血液から回収した末梢血単核球(PBMC)である。このような移植片は造血細胞を含む。移植片、骨髄移植片、PBMC移植片などの用語は、造血細胞を含有する移植片のことを表すために用いられる。造血細胞移植(HCT)は、多種多様な悪性及び非悪性疾患のための、重要で潜在的に根治的な治療選択肢である。この方法に必要な多能性造血幹細胞は通常、血縁または非血縁ドナーの骨髄または末梢血から得られる。臍帯血(乳児の誕生後に臍帯と胎盤に残っている血液)は、同種HCTにおける、造血幹細胞の確立された代替供給源として現れた。
本明細書で参照する場合、用語「造血細胞」とは、任意の供給源(例えば、骨髄、末梢血、臍帯血)に由来する前駆/造血幹細胞を意味する一般的な用語のことである。他の場合、このような細胞の供給源について詳細に記載する(例えば、自家末梢血前駆細胞移植)。
一部の例では、PBMCは、ドナーのアフェレーシスにより得られる。この場合、ドナーは非血縁ドナーであってもよく、その場合には、移植片は同種PBPC移植片と呼ばれる。その他の例では、PBMCは、治療(例えば、化学療法治療)を受ける前にレシピエントから得られる。この場合、移植片は自家PBPC移植片と呼ばれる。
一部の例では、PBPCは、ドナー(またはレシピエント)が一連の顆粒球コロニー幹細胞因子(G-CSF)注射を受けた後に得られる。理論に束縛されるものではないが、通常、対象は、G-CSFの皮下注射を毎日受け、幹細胞の末梢血への動員をモニターするために、対象の白血球カウントを数日毎にモニターされる。一部の例では、対象は、少なくとも7日間にわたり毎日連続でG-CSFの注射を受けている。一部の例では、対象は、少なくとも10日間にわたり毎日連続でG-CSFの注射を受けている。一部の例では、G-CSFを別の因子(例えば、プレリキサフォル注射液または幹細胞因子(SCF))と組み合わせてもよい。
本開示の広範で一般的な範囲を逸脱することなく、上記の実施形態に対して多数の変形形態及び/または修正を行うことができるということを当業者は理解する。そのため、本実施形態は、あらゆる点において、限定するものではなく例示と捉えられるものである。
実施例1 原料及び方法
プラスチック接着法を用いて調製した間葉系前駆または幹細胞(MLPSC)
US5,837,539に記載のとおり、骨髄から新たにMLPSCを作製した。約80~100mlの骨髄を滅菌ヘパリン含有注射器に吸引し、MSC作製用にMDACC Cell Therapy Laboratoryに送付した。フィコールハイパックを用いて骨髄単核球を単離し、ゲンタマイシン、グルタミン(2mM)及び20%(体積/体積)ウシ胎児血清(FBS)(Hyclone)を含有するアルファ改変MEM(αMEM)を含むMLPSC増殖培地をフラスコあたり50ml含む2つのT175フラスコに入れた。
細胞を37℃、5%CO下で2~3日間培養し、その時点で、非接着細胞を除去し、残った接着細胞を、細胞のコンフルエンスが70%以上に達するまで継続的に培養(7~10日間)し、次に、細胞をトリプシン処理してから、増殖培地(フラスコあたり50mlの培地)を含む6つのT175フラスコに移し換えた。
間葉系前駆または幹細胞(MLPSC)の免疫選択
健康で標準的な成人ボランティア(20~35歳)から骨髄(BM)を採取した。簡潔に説明すると、40mlのBMを、後部腸骨稜からリチウムヘパリン抗凝固薬を含有するチューブに吸引する。
以前にZannettino et al.,1998が記載しているように、Lymphoprep(商標)(Nycomed Pharma,Oslo,Norway)を用いた密度勾配分離により、骨髄単核球(BMMNC)を調製した。4℃、400×gの遠心分離に30分間かけた後、トランスファーピペットを用いて軟層を除去し、5%ウシ胎児血清(FCS,CSL Limited,Victoria,Australia)を含有するハンクス液(HBSS;Life Technologies,Gaithersburg,MD)で構成される「HHF」で3回洗浄した。
それに続き、以前にGronthos & Simmons,1995;及びGronthos,2003が記載しているように、磁気活性化細胞選別によりSTRO-3+(またはTNAP+)細胞を単離した。簡潔に説明すると、HHF中の10%(体積/体積)正常ウサギ血清からなるブロッキング緩衝液を用いて、約1~3×10BMMNCを氷上で20分間培養する。ブロッキング緩衝液中のSTRO-3 mAbの10μg/ml溶液(200μl)を用いて、細胞を氷上で1時間培養する。それに続き、400×gの遠心分離によりHHFで細胞を2回洗浄する。HHF緩衝液中のヤギ抗マウスγ-ビオチン(Southern Biotechnology Associates,Birmingham,UK)の1/50希釈溶液を加え、細胞を氷上で1時間培養する。上記のとおり、MACS緩衝液(1%BSA、5mM EDTA、及び0.01%アジ化ナトリウムを補足した、Ca2+とMg2+を含まないPBS)で細胞を2回洗浄し、最終容量0.9mlのMACS緩衝液中に再懸濁させる。
100μlのストレプトアビジンマイクロビーズ(Miltenyi Biotec;Bergisch Gladbach,Germany)を細胞懸濁液に加え、氷上で15分間培養する。細胞懸濁液を2回洗浄してから0.5mlのMACS緩衝液中に再懸濁させ、それに続き、mini MACSカラム(MS Columns,Miltenyi Biotec)に充填し、0.5mlのMACS緩衝液で3回洗浄して、STRO-3 mAb(2005年12月19日、受入番号PTA-7282でAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託済み(国際公開WO2006/108229を参照のこと))に結合しなかった細胞を回収する。更に1mlのMACS緩衝液を加えた後、マグネットからカラムを取り外し、陽圧でTNAP+細胞を単離する。それぞれの画分に由来する細胞のアリコートをストレプトアビジン-FITCで染色し、フローサイトメトリーで純度を評価する。
IL-2Rα発現の測定
培地の調製
10%ウシ胎児血清と2mMのGlutaMax-Iを含有するDMEMを調製し、0.2μmフィルターに通してろ過し、2~8℃で有効期限1ヶ月のラベルを貼った。使用前に、37℃の水浴内で最低30分間培地を予め温めた。
0.5%トリプシン/EDTAの調製
0.5%EDTAを含有するEDTAを調製し、0.2μmフィルターに通してろ過し、12ヶ月の有効期限または試薬の有効期限(どちらか早い方)のラベルを貼り、アリコートで-20℃で保存した。
MLPSCの解凍
MLPSCバッチの試料バイアル瓶を解凍した。バッチあたり最多で2つの試料を解凍した。気相LNフリーザーから試料バイアル瓶を取り出し、≦15分以内に解凍する場合はドライアイス上に移し、または、直ちに(≦1分)解凍する場合はウェットアイス上に置いた。37℃±2℃の水浴内に試料バイアル瓶を置いて、≦5分間解凍してから水浴から取り出し、70%イソプロピルアルコールで外側表面を噴霧するかまたは拭い、安全キャビネットに移した。16g以上の針を取り付けた10ml注射器を使用して、15mlの予め温めた培地を含む50ml遠心チューブに細胞を滴加して移し、十分に混合させた。それに続き、細胞を40μmセルストレーナーに通して、新しい50mlチューブに回収した。次に、室温または2~8℃で、細胞を250×gの遠心分離に8分間かけた。上清を廃棄し、8mlの培地(標的濃度3~5×10細胞/ml)中に細胞を再懸濁させた。均一な懸濁液を確保するために細胞を軽く粉砕した。0.2mlの試料を用いてトリパンブルーによる細胞カウントを実施した。平均的な生存能は≧70%であった。2種の試料を試験する場合は上記の手順を繰り返した。
MLPSCの予備培養
最低3つ、好ましくは4つのT175フラスコに、6,857細胞/cmの細胞で細胞を播種した。フラスコを穏やかに振盪して細胞を均一に分布させ、それに続き、37℃±2℃、5±2%CO下で一晩、最長で24時間培養した。細胞をインキュベーターから取り出し、顕微鏡下で検査して≧30%コンフルエントを確認し、コンタミネーションの可視徴候のために細胞形態を観察した。それぞれのフラスコから培地を無菌状態で吸引し、30mLの予め温めた培地に置き換えた。37℃±2℃、5±2%CO下で、1日目の培養開始時から合計で60~84時間フラスコを培養した。
共培地の調製
等容量の培地とDMEMを加えることにより、共培地を調製した。使用前に、37℃の水浴内で最低30分間共培地を予め温めた。
PBMCの解凍
必要条件を備えたPBMCのバイアル瓶を解凍した。解凍するバイアル瓶の数は、バイアル瓶あたりの細胞の総数によって決まる(製造業者の主張に基づく)。バイアル瓶あたり>2×10生存細胞である場合、バイアル瓶を1つだけ解凍した。気相LNフリーザーからバイアル瓶(複数可)を取り出し、≦15分以内に解凍する場合はドライアイス上に移し、または、直ちに(≦1分)解凍する場合はウェットアイス上に置いた。37℃±2℃の水浴内にバイアル瓶を置いて、2~3分間解凍してから水浴から取り出し、70%イソプロピルアルコールで外側表面を噴霧するかまたは拭い、安全キャビネットに移した。16g以上の針を取り付けた10ml注射器を使用して、20mlの予め温めた培地を含む50ml遠心チューブに細胞を滴加して移し、十分に混合させた。バイアル瓶を培地ですすいで全ての残存細胞をチューブに加えた。それに続き、細胞を40μmセルストレーナーに通して、新しい50mLチューブに回収した。次に、室温または2~8℃で、細胞を350×gの遠心分離に5分間かけた。上清を廃棄し、2.5×10細胞/mlで共培地中に細胞を再懸濁させた。0.2mlの試料を用いてトリパンブルーによる細胞カウントを実施した。平均的な生存能は≧70%であった。共培地中で2×10細胞/mlの8mlのPBMC(1.6×10の総PBMC)を調製し、MLPSCを調製する間にPBMCを氷上で培養した。細胞カウント後の総生存細胞が<1.6×10である場合、PBMCの別のバイアル瓶を解凍して上記の手順を繰り返した。
MLPSCの調製
間葉系細胞をインキュベーターから取り出し、顕微鏡下で検査して細胞接着及び細胞形態(長く扁平な線維芽細胞)を観察した。フラスコから培地を無菌状態で吸引し、9mlの予め温めたDPBSで細胞を洗浄した。それに続き、DPBSを吸引し、フラスコあたり4mlの予め温めた0.05%トリプシン/EDTAを加えた。フラスコを振盪して被覆し、37℃で3~6分間培養した。培養中にフラスコの側面を軽く叩いた。顕微鏡下で細胞を検査して、細胞が完全に剥離したことを確認した。剥離していない場合は、フラスコを再度軽く叩いた。それぞれのフラスコに7mlの予め温めた培地を加えて細胞を移動させた。細胞をフラスコから50mlコニカルチューブへとプールした。追加の1mlの予め温めた培地でフラスコをすすいで全ての残存細胞をチューブに加えた。次に、室温または2~8℃で、細胞を350×gの遠心分離に5分間かけた。上清を吸引し、2mlの共培地/フラスコ中に細胞を再懸濁させた。0.2mlの試料を用いてトリパンブルーによる細胞カウントを実施した。平均的な生存能は≧70%であった。共培地中で4×10細胞/mlの1.5mlのMLC(6×10の総MPC)を調製し、PBMCを刺激する間、脇に置いておいた。
PBMCの刺激
5mlのPBMC懸濁液を15mlコニカルチューブに移し、20μlの1mg/ml CD3抗体ストック及び20μlの1mg/ml CD28抗体ストックを加えて、終濃度、4μg/mlの抗CD3抗体及び4μg/mlの抗CD28抗体(刺激PBMC)を得た。残存するPBMCは刺激されなかった。24ウェルプレートのレイアウトは以下に示すものに従った。
24ウェルプレートのウェルB2、B3、C2及びC3に、500μlの非刺激PBMC(陰性対照)を加えた。ウェルB4及びC4に、500μlの刺激PBMC(陽性対照)を加えた。ウェルA5、B5、C5及びD5に、500μlの刺激PBMCを加えた。MLPSC試料を1つだけ試験する場合、ウェルA5とB5だけに、500μlの刺激PBMCを加えた。共培養ウェルA5及びB5に、培地で増殖させた500μlのMLPSC(試料1)を加えた。共培養ウェルC5及びD5に、培地で増殖させた500μlのMLPSC(試料2)を加えた。ウェルB2、B3、B4、C2、C3及びC4に、500μlの共培地を加えた。蒸発ロスを抑制するために、全ての空のウェルを1000μlの共培地で満たした。これらの条件は、約1 MLC:5 PMBCの比を表していた。
37℃±2℃、5±2%CO下で60~84時間プレートを培養し、形態を観察した(図1を参照のこと)。
ELISA
市販のELISAキット(R&D systems)を製造業者の取扱説明書に従って使用し、IL-2Rα発現を測定した。製造業者のプロトコルに従いELISAを実施した。このアッセイは、定量的なサンドイッチ酵素免疫アッセイ技術を採用している。このアッセイは、IL-2Rαに特異的なモノクローナル抗体がプレコートされたウェルを含むマイクロプレートを採用している。標準試料、品質対照試料または共培養試料中に存在するIL-2Rを、固定したIL-2Rα抗体で捕捉した。全ての非結合物質を洗い流した後、IL-2Rαに特異的な酵素結合ポリクローナル抗体をウェルに加えた。全ての非結合酵素結合抗体を除去するための洗浄工程の後、基質溶液をウェルに加え、結合したIL-2Rαの量に比例して色を発現させた。その後、色の発現を停止させ、ELISAリーダーを用いて色の強度を測定した。ELISAの詳細については以下で説明する。
1000μlピペットを使用してそれぞれのウェル中の細胞を回収し、それらの対応する微量遠心チューブへと移した。200μlの予め温めたDPBSでウェルをすすいで全ての残存細胞をチューブに加えた。顕微鏡下で培養プレートを観察して、細胞が完全に除去されたことを確認した。室温または2~8℃で、細胞を最大rpmの遠心分離に90秒間かけた。上清を吸引してから、溶解緩衝液を調製する間に細胞ペレットを氷上に置いた。1つの完全なMini-Tabletを10mlのCellLytic-M cell Lysis Extraction Reagentに加えることにより、溶解緩衝液を調製した。溶解緩衝液をボルテックスして混合し、氷上で保存した。250μlの溶解緩衝液をそれぞれのチューブに加えた。1000μlピペットを使用してそれぞれのペレットを再懸濁させてからボルテックスした。細胞を氷上で15分間培養した。次に、複製溶解液をプールして混合した。室温または2~8℃で、溶解液を最大rpmの遠心分離に10分間かけ、全てのペレット化物質を避けるようにして溶解液を新しいチューブに移した。溶解液を最長29日間、≦-60℃で保存するか、さもなければ、同日にELIZAを実施した。ELIZAを同日に実施する場合、溶解液は最初に、ドライアイス上または≦-60℃のフリーザーで最低15分間凍結させた。
全ての試料及び試薬は、周囲温度に戻してから、使用前に少なくとも30分間放置した。20mlの濃縮洗浄緩衝液を480mlのNANO水に希釈し(1:25の希釈溶液を得る)、十分に混合させた。1ヶ月の有効期限またはキットの有効期限(どちらか早い方)のラベルを溶液に貼り、2~8℃で保存した。マイクロプレート上の3行のウェルを標準、対照及び試料に割り当てた。余分の行をマイクロプレートから除外した。2つの完全なMini-Tabletを20mlのCellLytic-M Reagentに加えることにより、溶解緩衝液を調製した。溶解緩衝液をボルテックスして混合し、氷上で保存した。1mlの溶解緩衝液を2つのIL-2Rα標準液に加えて、5000pg/mlの標準液を調製した。標準液を穏やかに攪拌しながら室温で最低30分間培養した。培養後、それぞれの標準液の容量をプールし、以下の表1及び表2に従い系列希釈液及び対照希釈液を調製した。
以下の表3に従い非刺激試料を調製した。
以下の表4に従い共培養試料を調製した。
抗IL-2Rαモノクローナル抗体がプレコートされたマイクロプレートの全てのウェルに100μlのアッセイ希釈液RD1-1を加えた。50μlの標準、対照または試料を適切なウェルに加えた。ポリクローナル抗IL-2Rα HRPコンジュゲートをそれぞれのウェルに加え、プレートにカバーをし、オービタルシェーカー上で穏やかに攪拌しながら室温で3時間±20分間培養した。その後、ウェルあたり300μlの洗浄緩衝液でプレートを4回洗浄した。最後の洗浄の後、プレートについているものを吸取紙上に吸収させることにより残存する液体を除去した。使用中の15分間以内に、同等部の試薬Aと試薬Bを混合することにより基質溶液を調製した。200μlの基質溶液をそれぞれのウェルに加え、プレートにカバーをし、暗黒下、室温で20±5分間培養した。50μlの停止液をそれぞれのウェルに加えてから、5~30分以内に、450nmに設定(570nmで波長補正)したマイクロプレートリーダー上のそれぞれの試料の吸光度(OD)を読んだ。4パラメータロジスティックカーブフィッティングを用いて標準曲線を構築した。それぞれの試料中におけるIL-2Rαの濃度を標準曲線から導き、希釈液に対する補正を行い最終結果を得た。
TNFR1発現の測定
培地の調製
10%ウシ胎児血清と1mMのGlutaMax-Iを含有するDMEMを調製し、0.2μmフィルターに通してろ過し、2~8℃で有効期限1ヶ月のラベルを貼った。使用前に、37℃の水浴内で最低30分間培地を予め温めた。
0.5%トリプシン/EDTAの調製
0.5%EDTAを含有するEDTAを調製し、0.2μmフィルターに通してろ過し、12ヶ月の有効期限または試薬の有効期限(どちらか早い方)のラベルを貼り、アリコートで-20℃で保存した。
間葉系細胞の解凍
MLPSCバッチの試料バイアル瓶を解凍した。バッチあたり最多で2つの試料を解凍した。気相LNフリーザーから試料バイアル瓶を取り出し、≦15分以内に解凍する場合はドライアイス上に移し、または、直ちに(≦1分)解凍する場合はウェットアイス上に置いた。37℃±2℃の水浴内に試料バイアル瓶を置いて、≦5分間解凍してから水浴から取り出し、70%イソプロピルアルコールで外側表面を噴霧するかまたは拭い、安全キャビネットに移した。16g以上の針を取り付けた10ml注射器を使用して、8mlの予め温めた培地を含む50ml遠心チューブに2mlの細胞を滴加して移し、十分に混合させた。それに続き、細胞を40μmセルストレーナーに通して、新しい50mLチューブに回収した。次に、室温または2~8℃で、細胞を250×gの遠心分離に5分間かけた。上清を廃棄し、5mLの培地(標的濃度3~5×10細胞/mL)中に細胞を再懸濁させた。均一な懸濁液を確保するために細胞を軽く粉砕した。0.2mlの試料を用いてトリパンブルーによる細胞カウントを実施した。平均的な生存能は≧70%であった。2種の試料を試験する場合は上記の手順を繰り返した。
ELISA
市販のELISAキットであるQuantikine(R&D systems)を製造業者の取扱説明書に従って使用し、TNFRI発現を測定した。製造業者のプロトコルに従いELISAを実施した。このアッセイは、可溶性TNFRIと細胞結合TNFRIの両方の測定を提供する(Qjwang et al.,1997)。このアッセイは、定量的なサンドイッチ酵素免疫アッセイ技術を採用している。このアッセイは、TNFRIに特異的なモノクローナル抗体がプレコートされたウェルを含むマイクロプレートを採用している。標準試料、品質対照試料またはMPC細胞溶解物の試料中に存在するTNFRIを、固定したTNFRI抗体で捕捉した。全ての非結合物質を洗い流した後、TNFRIに特異的な酵素結合ポリクローナル抗体をウェルに加えた。全ての非結合酵素結合抗体を除去するための洗浄工程の後、基質溶液をウェルに加え、結合したTNFRIの量に比例して色を発現させた。その後、色の発現を停止させ、ELISAリーダーを用いて色の強度を測定した。ELISAの詳細については以下で説明する。
室温または2~8℃で、細胞を250×gの遠心分離に5分間かけた。上清を吸引してから、溶解緩衝液を調製する間に細胞ペレットを氷上に置いた。2つの完全なMini-Tabletを20mlのCellLytic-M cell Lysis Extraction Reagentに加えることにより、溶解緩衝液を調製した。溶解緩衝液をボルテックスして混合し、氷上で保存した。溶解緩衝液を加えた。1000μlピペットを使用してそれぞれのペレットを再懸濁させてからボルテックスした。細胞を氷上で10~15分間培養し、5分毎にボルテックスした。次に、複製溶解液をプールして混合し、2ml微量遠心チューブ(複数可)に移した。2~8℃で、溶解液を最大rpmの遠心分離に10分間かけ、全てのペレット化物質を避けるようにして溶解液を新しいチューブに移した。溶解液を最長29日間、≦-60℃で保存するか、さもなければ、同日にELIZAを実施した。ELIZAを同日に実施する場合、溶解液は最初に、ドライアイス上または≦-60℃のフリーザーで最低1時間凍結させた。
全ての試料及び試薬は、周囲温度に戻してから、使用前に少なくとも30分間放置した。20mlの濃縮洗浄緩衝液を480mlのNANO水に希釈し(1:25の希釈溶液を得る)、十分に混合させた。1ヶ月の有効期限またはキットの有効期限(どちらか早い方)のラベルを溶液に貼り、2~8℃で保存した。マイクロプレート上の3行のウェルを標準、対照及び試料に割り当てた。余分の行をマイクロプレートから除外した。2つの完全なMini-Tabletを20mlのCellLytic-M Reagentに加えることにより、溶解緩衝液を調製した。溶解緩衝液をボルテックスして混合し、氷上で保存した。0.5mlの溶解緩衝液をsTNFR1標準液に加えて、5000pg/mlの標準液を調製した。標準液を穏やかに攪拌しながら室温で最低15分間培養した。培養後、以下の表5及び表6に従い系列希釈液及び対照希釈液を調製した。
以下の表7に従い試料を調製した。
抗TNFR1モノクローナル抗体がプレコートされたマイクロプレートの全てのウェルに50μlのアッセイ希釈液HD1-7を加えた。200μlの標準、対照または試料を適切なウェルに加えた。プレートにカバーをし、オービタルシェーカー上で穏やかに攪拌しながら室温で2時間±10分間培養した。その後、ウェルあたり300μlの洗浄緩衝液でプレートを3回洗浄した。最後の洗浄の後、プレートについているものを吸取紙上に吸収させることにより残存する液体を除去した。ポリクローナル抗TNFR1 HRPコンジュゲートをそれぞれのウェルに加え、プレートにカバーをし、オービタルシェーカー上で穏やかに攪拌しながら室温で2時間±10分間培養した。その後、ウェルあたり300μlの洗浄緩衝液でプレートを3回洗浄した。最後の洗浄の後、プレートについているものを吸取紙上に吸収させることにより残存する液体を除去した。使用中の15分間以内に、同等部の試薬Aと試薬Bを混合することにより基質溶液を調製した。200μlの基質溶液をそれぞれのウェルに加え、プレートにカバーをし、暗黒下、室温で20±10分間培養した。50μlの停止液をそれぞれのウェルに加えてから、5~30分以内に、450nmに設定(570nmで波長補正)したマイクロプレートリーダー上のそれぞれの試料の吸光度(OD)を読んだ。4パラメータロジスティックカーブフィッティングを用いて標準曲線を構築した。それぞれの試料中におけるTNFR1の濃度を標準曲線から導き、希釈液に対する補正を行い最終結果を得た。
統計解析
MSCまたはMPCを用いた治療に対する急性GVHD(aGVHD)応答の客観的な評価については、28日目における総合効果率で判定した。aGVHD器官ステージの変化を示すために、それぞれの器官におけるベースラインから28日目までの応答データを、完全寛解、部分寛解、悪化、または安定に分類した。
総合生存率に対する応答の影響を評価するために、100日目までに2回のカプランマイヤー生存解析を実施した。28日目において総合効果(完全寛解または部分寛解)を達成した患者のカプランマイヤー曲線を作製し、28日目における非反応者の別のカプランマイヤー曲線を作製した。2群間には総合生存率に差異がないという帰無仮説について、市販のソフトウェアを使用して、ログランク検定を用いた検定を実施した。p<0.05の有意水準で検定を実施した。
カテゴリー変数は頻度及びパーセンテージとして要約した。連続変数は、記述統計学(数値、平均値、標準偏差、中央値及び範囲)を用いて要約した。全ての信頼区間は95%の信頼水準を有していた。
実施例2:向上した免疫抑制特性を有する免疫選択された間葉系前駆または幹細胞
従来の作製プロセス(US9,828,586に記載されているような)により得られた作製物と比較することにより、免疫選択された間葉系前駆または幹細胞(MLPSC)の免疫抑制能を評価した。従来の作製条件下で作製したMLPSCの3種の異なる試料(すなわち、試料、MLPSC A、MLPSC B、及びMLPSC C)に対して実施したT細胞増殖アッセイ(IL2Rの阻害率)の結果と、改善された免疫選択MLPSCの3種の異なる試料(すなわち、試料、MLPSC D、MLPSC E、及びMLPSC F)に対して実施したT細胞増殖アッセイ(IL2Rの阻害率)の結果を比較したものを図2に示す。これらの結果は、アッセイが、T細胞増殖を阻害する能力を基準として、第1分類の多能性の系統細胞と第2分類の多能性の系統細胞を区別していることを示している。特に、第2分類の細胞は、第1分類の細胞と比較して実質的により効果的にT細胞増殖を阻害する。
それに対し、図3に示すTNFR1発現アッセイの結果は、同一の2分類の間葉系前駆または幹細胞の間に有意差がないことを示している。TNFR1発現は以前より、T細胞増殖を阻害する細胞を同定するためのマーカーとして記載されている(US20140248244を参照のこと)。
図2及び図3で本明細書が提供する結果は、T細胞増殖を阻害する向上した能力を有する改善された間葉系前駆または幹細胞集団を作製することが可能であることを示している。これらの改善された間葉系前駆または幹細胞集団は、高レベルのTNFR1を発現する細胞のサブセットである。言い換えると、TNFR1発現は、特定の間葉系前駆または幹細胞集団のT細胞阻害特性から切り離して考えることができる。凍結保存して解凍した後であっても、T細胞増殖を阻害する向上した能力を示す間葉系前駆または幹細胞集団を作製することが可能であるという事実は、凍結保存間葉系幹細胞が解凍後に免疫抑制特性障害を示す(Francois et al.,2012;Chinnadurai et al.,2016)という常識に鑑みて、とりわけ驚くべきものである。
実施例3:ステロイド抵抗性の小児対象を治療するために注入される、IL-2R阻害の低い間葉系前駆または幹細胞(MLPSC)
本試験は、急性移植片対宿主病(GVHD)用のステロイド治療に反応を示していない小児患者を治療するためのものである。急性GVHD用のステロイド治療に失敗するということは、メチルプレドニゾロン(≧1mg/kg/日)または同等物の少なくとも3日後に改善が認められない任意のグレードB~D(IBMTR等級分け)の急性GVHDと定義される。
エクスビボで培養されたIL-2R阻害の低いMLPSCを用いて、4週間連続のそれぞれの週に、週に2回、2×10hMSC/kg(実際の体重)の用量で患者を治療した。少なくとも3日の間隔をあけて注入を行った。
試験デザイン:
HSCTを受けた241名の小児患者を登録し、2007~2014年にわたり北米及び欧州の50拠点で治療を行った。
年齢 2ヶ月~17歳
急性GvHDグレードB~D(CIBMTR)
ステロイド治療及び複数のその他の薬剤に失敗
メチルプレドニゾロン(少なくとも1mg/kg/日または同等物)の少なくとも3日後に改善が認められないaGVHD
結果:
EAP下の241名の小児における28日目の総合効果(CR+PR)は65%(95%CI:58.9%、70.9%)であった。100日目の生存率は総合効果と一致し、28日目に効果を示した小児において著しい向上が認められた(82%対39%、p<0.0001)。
実施例4:ステロイド抵抗性の小児対象を治療するために注入される、IL-2R阻害の高い間葉系前駆または幹細胞(MLPSC)(低用量)
試験目的
主な目的は、同種HSCT後のステロイド治療に反応を示していないグレードB~DのaGVHDを有する対象に静脈内投与されたIL-2R阻害の高いMLPSCの反復用量における安全性の情報を集めること、及び、同種HSCT後のステロイド治療に反応を示していないグレードB~DのaGVHDを有する対象に静脈内投与されたMPCの反復用量における有効性を評価することであった。
本試験の第2の目的は、28日目におけるMPCに対する効果と100日目における生存率の間の相関関係を明らかにすることであった。
治療計画
静脈内(IV)MPCを用いて、4週間連続のそれぞれの週に、週に1回、2×10MPC/kg(スクリーニング時の体重)用量で小児対象を治療した。
適格となる場合、対象は、当初の4回の用量の後に、更に4回のMPC注入を、1×10MPC/kgに減らした用量で週に1回受けてもよい。追加の治療を受けるための適格性は、28日目に行われた対象の急性GVHD(aGVHD)の効果判定評価(部分または混合)によって決まった。
対象は最多で8回の注入を受けた。
急性GVDHの評価
スクリーニング時、14日目、28日目、56日目、及び100日目/試験終了時に実施した。
対象の個体群統計
7ヶ所の移植センターにおいて12(12)名の対象を治療した。対象のうちの6名についてはFed Hutchinson Cancer Research Centreにおいて治療を行い、残りの対象のそれぞれについては異なる移植センターにおいて治療を行った(表10に示すとおり)。
全ての対象は3~17歳の範囲の18歳齢未満であった。平均年齢は10.3歳であり、中央年齢は10.5歳であった。
治験への参加に適格であった対象は、同種造血幹細胞治療(HSCT)後に、グレードB~Dの急性GVHD(aGVHD)用のステロイド治療に反応を示していない必要があった。急性GVHD用のステロイド治療に反応を示さないということは、メチルプレドニゾロン(>1mg/kg/日)または同等物の少なくとも3(3)日後に改善が認められない任意のグレードB~Dの急性GVHDと定義される。
全ての対象は、下部胃腸管(GI)及び/または肝臓を含む内臓疾患を有していた。9名の対象は下部GIのみを有し(8名はグレードD、1名はグレードB)、1名の対象はグレードCの下部GI及びグレードDの肝臓を有し、1名の対象はグレードBの上部GI及びグレードCの下部GIを有し、1名の対象はグレードCの肝臓を有していた。
ベースライン時において、12名の対象のうちの9名(9/12、すなわち75%)はグレードDの移植片対宿主病(GVHD)を有し、12名の対象のうちの2名(2/12、すなわち17%)はグレードCのGVHDを有し、1名の対象(1/12、すなわち18%)はグレードBのGVHDを有していた。
以下の非ステロイド治療、体外フォトフェレーシス(ECP、7名の対象)、インフリキシマブ(5名の対象)、ルキソリチニブ(3名の対象)、ミコフェノール酸(MMF、3名の対象)、エタナセプト(1名の対象)またはバシリキシマブ(1名の対象)を含むMPC治療の前に、平均4.5回のGVHD治療で対象に治療を行った。
スクリーニング時における対象の体重を基準として、2×10細胞/kgの用量の静脈内(IV)で対象に治療を行った。4週間連続のそれぞれの週に、週に1回(qw)対象に細胞を送達した。
適格対象は、当初の4回の用量の後に、更に4回の細胞注入を、1×10細胞/kgに減らした用量で週に1回受けた。追加の治療を受けるための適格性は、28日目に行われた対象の急性GVHD(aGVHD)の効果判定評価(部分または混合)によって決まった。対象は最多で8回の注入を受けた。
スクリーニング時、14日目、28日目、56日目及び100日目(試験終了時)にGVHD評価を実施した。
治療に対する効果及び100日目までの生存率
IL-2R阻害の高いMLPSCを用いた治療(2×10MPC/kg(体重)で週に1回投与した)に対する効果及び対象の生存率については、以下の表9にまとめている。細胞注入を受けた後、スクリーニング時(0日目)、14日目、28日目、56日目及び100日目にGVHD評価を実施した。細胞投与量を算出するための体重は、スクリーニング時における対象の体重を基準としている。
12名の対象のうちの10名(10/12)(83%)が100日目まで生存し、うち7名が8回の注入を受け、3名が4回の注入を受けた。全12名の対象が下部GI及び/または肝臓のGVHDを有し、9/12名の対象(75%)がベースライン時においてグレードDのGVHDを有し、1名の対象(8%)のみがベースライン時においてグレードBのGVHDを有していた。急性GVHDを発症した前治療の平均数は4.25であった。
図4は、反応者対非反応者の100日目までの生存率をグラフを用いて示しており、0日目をベースラインとする最初の試験治療からの生存日数に対する生存確率がY軸で示されている。28日目における全9名の反応者は100日目まで生存した。それに対し、28日目における3名の非反応者のうちの1名が28日目まで生存した(すなわち、75%対8%)。
結果は、28日目における総合効果率(すなわち、完全寛解及び部分寛解の率)が75%であったことを示している。これはMSCの注入後に確認された平均総合効果率よりも高い。更に、28日目に確認された効果率は、100日目における総合生存率の強力な予測因子であった(表9を参照のこと)。
注目すべきことに、IL-2R阻害の高いMLPSCの注入後において特定の安全性問題は認められなかった。
IL-2R阻害の高いMLPSCを用いた治療に対する効果、及び個々の対象の生存については、以下に提供する表10に示している。
治療した患者において安全性問題は認められず、GI管疾患におけるパイロットスタディは、75%の総合効果率を示した(表10)。IL-2R阻害の高いMLPSCの注入後28日目において反応を示したこれらの対象のうち、100%が100日目まで生存した。このことは、28日目における効果が、長続きする有効な効果の徴候であり、100日目における生存率と一致するということを示している。
それゆえ、IL-2R阻害の低いMLPSCを投与する際に必要となる週に2回の用量の2×10細胞/kg(体重)の用量の半分である週に1回の用量で、IL-2R阻害の高いMLPSC(この場合、MPC)を投与された対象において、より高い効果率が達成され得ない場合、結果は同等であるということを示している(上記の比較実施例3を参照のこと)。
実施例5 MSCの改良された作製プロセス
高いIL-2R阻害を示すMLPSCを用いたGvHDの治療により得られた優れた結果(実施例4に記載のとおり)を考慮して、プラスチック接着法を用いて単離した幹細胞から力価の高いMLPSCを作製するためのプロセスに関する研究を実施した。
プラスチック接着法を用いて単離した細胞からMLPSCを作製するための従来の作製プロセスについては、US9,828,586に記載されている。この従来の作製プロセスに以下で説明する多数の変更を導入した。驚くべきことに、この改良された作製プロセス(以下で説明する)により、向上した免疫抑制特性を有するMLPSCの作製がもたらされた。
機器の変更
1つの機器の変更は、細胞を洗浄、移送及び濃縮するために用いる方法に関する。従来のプロセスでは、これらの作業プロセスにおけるいくつかの異なる工程でCytomate Cell Processor(Baxter)を使用していた。この1台の機器は、白血球を洗浄、濃縮及び移送するために独自に設計された使い捨て器具を備えたベンチトップ型機器である。従来のプロセスでは、Cytomateを使用して、細胞を培養容器(セルファクトリー)に播種し、回収時には、Cytomateを使用して、細胞を洗浄し、容量を減らすことにより濃縮していた。新しいプロセスでは、細胞播種工程用の手順(syringe tree)ならびに細胞の洗浄及び濃縮工程用の手順(タンジェンシャルフローろ過(TFF))がCytomateに取って代わった。
プロセス及び検定法におけるその他の変更
ceMSC作製物の作製及び検定についての以下の態様はまた、改良された作製プロセスを用いて実施された。
・無菌加工リスクを低下させるために、滅菌前に取り付けた(組立て済み)エアフィルターを備えたセルファクトリーを使用した。
・動物由来の外来性因子、例えば、パルボウイルス及びサーコウイルスなどに由来するリスクを最小化するために、ブタトリプシンの使用を排除して、組換えトリプシン(酵母菌を用いて生成)の使用を導入した。このことは、トリプシンの培養時間の変更に加え、この工程で使用する細胞及び溶液の変更を必要とした。
・細胞凝集塊及び目に見える微粒子物質の可能性を低下/最小化するために、血液フィルターの使用を導入した。
・最終容器として、15mL充填容量のクライオバッグではなく、4.3mL充填容量のクライオバイアルの使用を導入した。従来プロセスと同一の濃度の細胞/mLを維持したが、1つのクライオバッグの代わりに、同等数の細胞を4つのバイアルへと分配した。
解凍後、最終作製物中の凍結保存細胞の試料に対して全ての最終作製物検定を実施した。従来プロセスでは、チューブ(最終容器の代表ではない)内に保存した細胞アリコートに対していくつかの検定を実施していた。図5は、ドナー細胞バンク(DCB)の解凍からce-MSC作製物の凍結保存及び検定までの全ての工程を示している。
実施例6-改良された作製プロセスにより得られたMLPSC作製物の検定
実施例5に記載の改良された作製プロセスに従い作製されたMLPSC最終作製物ロットについて、以下、表8に記載する販売基準の検定を行った。
表8は、検定を行った作製物ロットの全てにおいて一様に高いレベルのTNFR1発現を示している。図6に示すとおり、それぞれの作製物ロットは、>275pg/mlのTNFR1発現レベルを示した。
表8はまた、検定を行った10作製物ロットによる予想外に高いレベルのIL-2Rα発現阻害を示している。図7に示すとおり、それぞれの作製物ロットは、80%以上の阻害レベルを示した。
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Claims (33)

  1. 間葉系前駆または幹細胞を含む組成物であって、前記間葉系前駆または幹細胞は凍結保存され、解凍後、PBMCの試料中の活性化T細胞の増殖を少なくとも約65%阻害する、前記組成物。
  2. 活性化T細胞の増殖の前記阻害は、前記活性化T細胞におけるIL-2R 2Rα発現の阻害により測定される、請求項1に記載の組成物。
  3. 1 間葉系前駆または幹細胞:5 PMBC以下の比で、間葉系前駆または幹細胞をPMBCと共培養すると、T細胞増殖を少なくとも約65%阻害する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
  4. 1 間葉系前駆または幹細胞:10 PMBC以下の比で、間葉系前駆または幹細胞をPMBCと共培養すると、T細胞増殖を少なくとも約65%阻害する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
  5. 1 間葉系前駆幹細胞:50 PMBC以下の比で、間葉系前駆または幹細胞をPMBCと共培養すると、T細胞増殖を少なくとも約65%阻害する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
  6. 1 間葉系前駆または幹細胞:100 PBMC以下の比で、間葉系幹細胞をPBMCと共培養すると、T細胞増殖を少なくとも約65%阻害する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
  7. 1 間葉系前駆または幹細胞:5 PMBC以下の比で、間葉系前駆または幹細胞をPMBCと共培養すると、T細胞増殖を少なくとも約70%阻害する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の組成物。
  8. 1 間葉系前駆または幹細胞:5 PMBC以下の比で、間葉系前駆または幹細胞をPMBCと共培養すると、T細胞増殖を少なくとも約80%阻害する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の組成物。
  9. 前記間葉系前駆または幹細胞は、少なくとも270pg/mlの量でTNFR1を発現する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の組成物。
  10. 前記間葉系前駆または幹細胞は、少なくとも300pg/mlの量でTNFR1を発現する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の組成物。
  11. 前記間葉系前駆または幹細胞は、少なくとも320pg/mlの量でTNFR1を発現する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の組成物。
  12. 前記間葉系前駆または幹細胞は、免疫選択により単離される、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の組成物。
  13. 前記間葉系前駆または幹細胞は、培養液で増殖させた間葉系幹細胞である、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の組成物。
  14. 炎症性疾患を治療することを必要とする対象においてそれを実施するための方法であって、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の間葉系前駆または幹細胞を含む組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
  15. 前記炎症性疾患はT細胞介在性炎症性疾患である、請求項14に記載の方法。
  16. 対象における移植片対宿主病(GVHD)を予防、その進行を緩和、または、それを治療するための方法であって、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の間葉系前駆または幹細胞を含む組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
  17. 前記組成物は、3×10細胞/kg(体重)未満の用量で週に1回(qw)前記対象に投与される、請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記組成物は、約2×10細胞/kg(体重)の用量でqwで前記対象に投与される、請求項14から請求項17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記組成物は、2×10細胞/kg(体重)の最大用量でqwで前記対象に投与される、請求項14から請求項18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 前記組成物は、単回用量または分割用量(複数可)で投与される、請求項14から請求項19のいずれか1項に記載の方法。
  21. 哺乳動物対象における移植片対宿主病(GVHD)を予防、その進行を緩和、または、それを治療するための方法であって、間葉系前駆または幹細胞(MLPSC)及び/またはその子孫細胞を3×10MPC/kg(体重)未満の用量で週に1回(qw)前記対象に投与することを含む、前記方法。
  22. 前記対象は、MLPSC及び/またはその子孫細胞を約2×10細胞/kg(体重)の用量でqwで投与される、請求項21に記載の方法。
  23. 前記対象は、MLPSC及び/またはその子孫細胞を2×10細胞/kg(体重)の最大用量でqwで投与される、請求項21または請求項22に記載の方法。
  24. 前記哺乳動物は小児ヒト対象である、請求項14から請求項23のいずれか1項に記載の方法。
  25. 前記対象は、血液の悪性または遺伝性疾患を有する、請求項14から請求項24のいずれか1項に記載の方法。
  26. 前記対象は、造血細胞を含むドナー移植片を投与された、投与されている、または、今まさに投与されようとしている、請求項14から請求項25のいずれか1項に記載の方法。
  27. 前記移植片は造血幹細胞(HSC)を含む、請求項26に記載の方法。
  28. 前記移植片は同種造血細胞を含む、請求項26または請求項27のいずれか1項に記載の方法。
  29. 前記MLPSCは間葉系前駆細胞(MPC)である、請求項14から請求項28のいずれか1項に記載の方法。
  30. 前記MLPSC及び/またはその子孫細胞は、前記移植片の移植の日の初期に投与される、請求項14から請求項28のいずれか1項に記載の方法。
  31. 前記MLPSC及び/またはその子孫細胞は、前記対象がステロイド抵抗性であると判定された後に投与される、請求項14から請求項28のいずれか1項に記載の方法。
  32. 前記対象は急性GVHDを有する、請求項14から請求項30のいずれか1項に記載の方法。
  33. 前記細胞は、薬学的に許容される組成物の形態で投与される、請求項14から請求項31のいずれか1項に記載の方法。
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