JP2023173674A - 偏光板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】偏光素子のホウ素の含有率を高くしても、偏光板の製造過程で変色が生じることを抑制することができる偏光板の製造方法を提供する。【解決手段】偏光素子と、前記偏光素子の少なくとも一方の面に積層された透明保護フィルムと、を有する偏光板の製造方法であって、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光素子を得る偏光素子製造工程と、前記偏光素子に、水系接着剤を介して前記透明保護フィルムを貼合する貼合工程と、を有し、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ホウ素吸着率が5.70質量%以上であり、前記水系接着剤は、エタノールの濃度が16質量%以上50質量%以下である、製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、偏光板の製造方法に関する。
液晶表示装置(LCD)は、液晶テレビだけでなく、パソコン、携帯電話等のモバイル、カーナビ等の車載用途などで広く用いられている。通常、液晶表示装置は、液晶セルの両側に粘着剤で偏光板を貼合した液晶パネル部材を有し、バックライト部材からの光を液晶パネル部材で制御することにより表示が行われている。また、有機EL表示装置も近年、液晶表示装置と同様に、テレビ、携帯電話等のモバイル、カーナビ等の車載用途で広く用いられてきている。有機EL表示装置では、外光が金属電極(陰極)で反射され鏡面のように視認されることを抑止するために、画像表示パネルの視認側表面に円偏光板(偏光素子とλ/4板を含む積層体)が配置される場合がある。
偏光板は上記のように、液晶表示装置や有機EL表示装置の部材として、車に搭載される機会が増えてきている。車載用の画像表示装置に用いられる偏光板は、それ以外のテレビや携帯電話等のモバイル用途に比較して、高温環境下に曝されることが多く高温での耐久性がより高いことが求められる。
このような高温耐久性の高い偏光素子の製造方法として、例えば、特許文献1~2では、亜鉛、銅、アルミニウム等を含む金属塩等の成分を処理浴に添加することで、偏光素子にこれら成分を含有させ、偏光素子の耐久性を向上させることが開示されている。また、特許文献3~4では、有機チタン化合物等の成分を処理浴に添加する、偏光素子の製造方法が開示されている。
国際公開第2016/117659号 特開2006-047978号公報 特開2008-46257号公報 特開平6-172554号公報
本発明者らは、偏光素子のホウ素の含有率を高くすることにより、偏光板の高温での耐久性を向上できることを見出した。しかしながら、偏光素子に多くのホウ素を含有させることに起因して偏光板の製造過程で変色が生じることがあるとの問題を知見した。
本発明は、偏光素子のホウ素の含有率を高くしても、偏光板の製造過程で変色が生じることを抑制することができる偏光板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の偏光板の製造方法を提供する。
〔1〕 偏光素子と、前記偏光素子の少なくとも一方の面に積層された透明保護フィルムと、を有する偏光板の製造方法であって、
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光素子を得る偏光素子製造工程と、
前記偏光素子に、水系接着剤を介して前記透明保護フィルムを貼合する貼合工程と、を有し、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ホウ素吸着率が5.70質量%以上であり、
前記水系接着剤は、エタノールの濃度が16質量%以上50質量%以下である、製造方法。
〔2〕 前記偏光素子は、ホウ素の含有率が4.0質量%以上8.0質量%以下である、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕 前記水系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂を含む、〔1〕または〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕 前記水系接着剤は、前記ポリビニルアルコール系樹脂の濃度が2.85質量%以上である、〔3〕に記載の製造方法。
〔5〕 前記偏光板において、前記偏光素子と前記透明保護フィルムとの間に介する前記水系接着剤により形成された接着剤層の厚みが0.01μm以上7μm以下である、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の製造方法。
本発明により、偏光素子のホウ素の含有率を高くしても、偏光板の製造過程で変色が生じることを抑制することができる偏光板の製造方法を提供することができる。
本発明に係る偏光素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
[偏光板の製造方法]
本発明は、偏光素子と、前記偏光素子の少なくとも一方の面に積層された透明保護フィルムと、を有する偏光板の製造方法であって、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、「PVA系樹脂フィルム」ともいう)から偏光素子を得る偏光素子製造工程と、前記偏光素子に、水系接着剤を介して前記透明保護フィルムを貼合する貼合工程と、を有する。前記PVA系樹脂フィルムは、ホウ素吸着率が5.70質量%以上である。前記水系接着剤は、エタノールの濃度が16質量%以上50質量%以下である。以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<偏光素子製造工程>
本実施形態において偏光素子は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素(ヨウ素や二色性染料)が吸着配向しているものである。
本実施形態において、ホウ素吸着率が5.70質量%以上のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを用いて偏光素子を作製する。このようなPVA系樹脂フィルムを用いることで、偏光板を高温環境下、例えば温度105℃の環境下に晒しても透過率が低下しにくくなる。また、PVA系樹脂フィルムのホウ素吸着率は10質量%以下であることが好ましい。
上記のようなホウ素吸着率のPVA系樹脂フィルムを用いることにより、偏光素子製造工程における、架橋処理浴中のホウ酸濃度を高濃度とすることなく、また架橋処理による処理時間も短縮することもでき、所望の偏光素子が得られやすくなり、偏光素子の生産性も高めることができる。PVA系樹脂のホウ素吸着率を10質量%以下とすると、PVA系樹脂フィルムへホウ素が適量取り込まれ、偏光素子の収縮力を小さくしやすい。その結果、画像表示装置に組み込んだ際に、前面板等の他の部材と偏光板との間で剥離が生じるなどの不具合が生じにくくなる。また、PVA系樹脂フィルムのホウ素吸着率が5.70質量%未満であると、高温環境下に晒したときに透過率が低下しやすくなり、さらに前述したように生産性が低下することがある。PVA系樹脂フィルムのホウ素吸着率は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
PVA系樹脂フィルムのホウ素吸着率は、PVA系樹脂フィルム中の、分子鎖同士の間隔や結晶構造を反映する特性である。ホウ素吸着率が5.70質量%以上であるPVA系樹脂フィルムは、ホウ素吸着率が5.70質量%未満であるPVA系樹脂フィルムに比べて、分子鎖同士の間隔が広く、PVA系樹脂の結晶が少ないと考えられる。そのため、PVA系樹脂フィルム中へホウ素が入り込みやすくなり、高温環境下において、ポリエン化が防止されやすくなると推定される。
PVA系樹脂フィルムのホウ素吸着率は、例えば、原料段階のPVA系樹脂フィルムに対して、熱水処理、酸性溶液処理、超音波照射処理、放射線照射処理などの事前処理を行うことにより調整することができる。これらの処理により、PVA系樹脂フィルム中の、分子鎖同士の間隔を広げたり、結晶構造を破壊したりすることができる。熱水処理としては、例えば、30℃~100℃の純水に1秒~90秒浸漬させ、乾燥させる処理が挙げられる。酸性溶液処理としては、例えば、10質量%~20質量%の濃度のホウ酸水溶液に1秒~90秒浸漬させ、乾燥させる処理が挙げられる。超音波処理としては、例えば、20~29kcの周波数の超音波を、200W~500Wの出力で30秒~10分照射する処理が挙げられる。超音波処理は、水などの溶媒中で行うことができる。
PVA系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」とも称する)は通常、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。そのケン化度は、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上である。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、例えば、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体等であることができる。共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類等を挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1000~10000、好ましくは1500~5000である。
これらのPVA系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等も使用し得る。
本発明では、偏光素子製造の開始材料として、厚みが65μm以下(例えば60μm以下)、好ましくは50μm以下、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下の未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルム(原反フィルム)を用いる。これにより市場要求が益々高まっている薄膜の偏光素子を得ることができる。原反フィルムの幅は特に制限されず、例えば400~6000mm程度であることができる。原反フィルムは、例えば長尺の未延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムのロール(原反ロール)として用意される。原反フィルムは、市販品でもよく、または製膜によって得てもよく、製膜する方法は特に限定されるものではなく、溶融押出法、溶剤キャスト法のような公知の方法を採用することができる。
また本発明で用いられるPVA系樹脂フィルムは、これを支持する基材フィルムに積層されたものであってもよく、すなわち、当該PVA系樹脂フィルムは、基材フィルムとその上に積層されるPVA系樹脂フィルムとの積層フィルムとして用意されてもよい。この場合、PVA系樹脂フィルムは、例えば、基材フィルムの少なくとも一方の面にPVA系樹脂を含有する塗工液を塗工した後、乾燥させることによって製造することができる。
基材フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。具体例としては、透光性を有する熱可塑性樹脂、好ましくは光学的に透明な熱可塑性樹脂で構成されるフィルムであり、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等であることができる。
基材フィルムとその上に積層されるPVA系樹脂フィルムとの積層フィルムを用いて偏光素子を製造した場合、基材フィルムは偏光素子の保護層として用いてもよく、必要に応じて偏光素子から剥離除去してもよい。
偏光素子は、上記の長尺の原反フィルムを原反ロールから巻出しつつ、偏光素子製造装置のフィルム搬送経路に沿って連続的に搬送させて、処理槽に収容された処理液(以下、「処理浴」ともいう)に浸漬させた後に引き出す所定の処理工程を実施した後に乾燥工程を実施することにより長尺の偏光素子として連続製造することができる。なお、処理工程は、フィルムに処理液を接触させて処理する方法であればフィルムを処理浴に浸漬させる方法に限定されることはなく、噴霧、流下、滴下等により処理液をフィルム表面に付着させてフィルムを処理する方法であってもよい。処理工程が、フィルムを処理浴に浸漬させる方法によってなされる場合、一つの処理工程を行う処理浴は一つに限定されることはなく、二つ以上の処理浴にフィルムを順次浸漬させて一つの処理工程を完成させてもよい。
上記処理液としては、膨潤液、染色液、架橋液、洗浄液等が例示される。そして、上記処理工程としては、原反フィルムに膨潤液を接触させて膨潤処理を行う膨潤工程と、膨潤処理後のフィルムに染色液を接触させて染色処理を行う染色工程と、染色処理後のフィルムに架橋液を接触させて架橋処理を行う架橋工程と、架橋処理後のフィルムに洗浄液を接触させて洗浄処理を行う洗浄工程とが例示される。また、これら一連の処理工程の間(すなわち、いずれか1以上の処理工程の前後及び/又はいずれか1以上の処理工程中)に、湿式又は乾式にて一軸延伸処理を施すことができる。必要に応じて他の処理工程を付加してもよい。
以下、図1を参照しながら、本発明に係る偏光素子の製造方法の一例を詳細に説明する。図1は、本発明に係る偏光素子の製造方法及びそれに用いる偏光素子製造装置の一例を模式的に示す断面図である。図1に示される偏光素子製造装置は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反(未延伸)フィルム10を、原反ロール11より連続的に巻出しながらフィルム搬送経路に沿って搬送させることにより、フィルム搬送経路上に設けられる膨潤浴(膨潤槽内に収容された膨潤液)13、染色浴(染色槽内に収容された染色液)15、第1架橋浴(架橋槽内に収容された第1架橋液)17a、第2架橋浴(架橋槽内に収容された第2架橋液)17b、及び洗浄浴(洗浄槽内に収容された洗浄液)19を順次通過させ、最後に乾燥炉21を通過させるように構成されている。得られた偏光素子23は、例えば、そのまま次の偏光板作製工程(偏光素子23の片面又は両面に保護フィルムを貼合する工程)に搬送することができる。図1におけるフィルム10,23上に示す矢印は、フィルムの搬送方向を示している。
図1の説明において、「処理槽」は、膨潤槽、染色槽、架橋槽及び洗浄槽を含む総称であり、処理液」は、膨潤液、染色液、架橋液及び洗浄液を含む総称であり、「処理浴」は、膨潤浴、染色浴、架橋浴及び洗浄浴を含む総称である。膨潤浴、染色浴、架橋浴及び洗浄浴は、それぞれ、本発明の製造装置における膨潤部、染色部、架橋部及び洗浄部を構成する。
偏光素子製造装置のフィルム搬送経路は、上記処理浴の他、搬送されるフィルムを支持する、あるいはさらにフィルム搬送方向を変更することができるガイドロール30~48,60,61や、搬送されるフィルムを押圧・挟持し、その回転による駆動力をフィルムに与えることができる、あるいはさらにフィルム搬送方向を変更することができるニップロール50~55を適宜の位置に配置することによって構築することができる。ガイドロールやニップロールは、各処理浴の前後や処理浴中に配置することができ、これにより処理浴へのフィルムの導入・浸漬及び処理浴からの引き出しを行うことができる〔図1参照〕。例えば、各処理浴中に1以上のガイドロールを設け、これらのガイドロールに沿ってフィルムを搬送させることにより、各処理浴にフィルムを浸漬させることができる。
図1に示される偏光素子製造装置は、各処理浴の前後にニップロールが配置されており(ニップロール50~54)、これにより、いずれか1以上の処理浴中で、その前後に配置されるニップロール間に周速差をつけて縦一軸延伸を行うロール間延伸を実施することが可能になっている。以下、各工程について説明する。
(膨潤工程)
膨潤工程は、原反フィルム10表面の異物除去、原反フィルム10中の可塑剤除去、易染色性の付与、原反フィルム10の可塑化等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、かつ原反フィルム10の極端な溶解や失透等の不具合を生じない範囲で決定される。
図1を参照して、膨潤工程は、原反フィルム10を原反ロール11より連続的に巻出しながら、フィルム搬送経路に沿って搬送させ、原反フィルム10を膨潤浴13に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。図1の例において、原反フィルム10を巻き出してから膨潤浴13に浸漬させるまでの間、原反フィルム10は、ガイドロール60,61及びニップロール50によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送される。膨潤処理においては、ガイドロール30~32及びニップロール51によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送される。
膨潤浴13の膨潤液としては、純水のほか、ホウ酸(特開平10-153709号公報)、塩化物(特開平06-281816号公報)、無機酸、無機塩、水溶性有機溶媒、アルコール類等を約0.01~10質量%の範囲で添加した水溶液を使用することも可能である。
膨潤浴13の温度は、例えば10~50℃程度、好ましくは10~40℃程度、より好ましくは15~30℃程度である。原反フィルム10の浸漬時間は、好ましくは10~300秒程度、より好ましくは20~200秒程度である。また、原反フィルム10が予め気体中で延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムである場合、膨潤浴13の温度は、例えば20~70℃程度、好ましくは30~60℃程度である。原反フィルム10の浸漬時間は、好ましくは30~300秒程度、より好ましくは60~240秒程度である。
膨潤処理では、原反フィルム10が幅方向に膨潤してフィルムにシワが入るといった問題が生じやすい。このシワを取りつつフィルムを搬送するための1つの手段として、ガイドロール30,31及び/又は32にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることが挙げられる。シワの発生を抑制するためのもう1つの手段は延伸処理を施すことである。例えば、ニップロール50とニップロール51との周速差を利用して膨潤浴13中で一軸延伸処理を施すことができる。
膨潤処理では、フィルムの搬送方向にもフィルムが膨潤拡大するので、フィルムに積極的な延伸を行わない場合は、搬送方向のフィルムのたるみを無くすために、例えば、膨潤浴13の前後に配置するニップロール50,51の速度をコントロールする等の手段を講ずることが好ましい。また、膨潤浴13中のフィルム搬送を安定化させる目的で、膨潤浴13中での水流を水中シャワーで制御したり、EPC装置(Edge Position Control装置:フィルムの端部を検出し、フィルムの蛇行を防止する装置)等を併用したりすることも有用である。
図1に示される例において、膨潤浴13から引き出されたフィルムは、ガイドロール32、ニップロール51、ガイドロール33を順に通過して染色浴15へ導入される。
(染色工程)
染色工程は、膨潤処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着、配向させる等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、かつフィルムの極端な溶解や失透等の不具合が生じない範囲で決定される。図1を参照して、染色工程は、ニップロール51、ガイドロール33~36及びニップロール52によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、膨潤処理後のフィルムを染色浴15(染色槽に収容された処理液)に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。二色性色素の染色性を高めるために、染色工程に供されるフィルムは、少なくともある程度の一軸延伸処理を施したフィルムであることが好ましく、又は染色処理前の一軸延伸処理の代わりに、あるいは染色処理前の一軸延伸処理に加えて、染色処理時に一軸延伸処理を行うことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合、染色浴15の染色液には、例えば、濃度が重量比でヨウ素/ヨウ化カリウム/水=0.003~0.3/0.1~10/100である水溶液を用いることができる。ヨウ化カリウムに代えて、ヨウ化亜鉛等の他のヨウ化物を用いてもよく、ヨウ化カリウムと他のヨウ化物を併用してもよい。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、ホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルト等を共存させてもよい。ホウ酸を添加する場合は、ヨウ素を含む点で後述する架橋処理と区別され、水溶液が水100重量部に対し、ヨウ素を0.003重量部以上含んでいるものであれば、染色浴15とみなすことができる。フィルムを浸漬するときの染色浴15の温度は、通常10~45℃程度、好ましくは10~40℃であり、より好ましくは20~35℃であり、フィルムの浸漬時間は、通常30~600秒程度、好ましくは60~300秒である。
二色性色素として水溶性二色性染料を用いる場合、染色浴15の染色液には、例えば、濃度が重量比で二色性染料/水=0.001~0.1/100である水溶液を用いることができる。この染色浴15には、染色助剤等を共存させてもよく、例えば、硫酸ナトリウム等の無機塩や界面活性剤などを含有していてもよい。二色性染料は1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上の二色性染料を併用してもよい。フィルムを浸漬するときの染色浴15の温度は、例えば20~80℃程度、好ましくは30~70℃であり、フィルムの浸漬時間は、通常30~600秒程度、好ましくは60~300秒程度である。
上述のように染色工程では、染色浴15でフィルムの一軸延伸を行うことができる。フィルムの一軸延伸は、染色浴15の前後に配置したニップロール51とニップロール52との間に周速差をつけるなどの方法によって行うことができる。
染色処理においても、膨潤処理と同様にフィルムのシワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送するために、ガイドロール33,34,35及び/又は36にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。シワの発生を抑制するためのもう1つの手段は、膨潤処理と同様、延伸処理を施すことである。
図1に示される例において、染色浴15から引き出されたフィルムは、ガイドロール36、ニップロール52、及びガイドロール37を順に通過して架橋浴17へ導入される。
(架橋工程)
架橋工程は、架橋による耐水化や色相調整(フィルムが青味がかるのを防止する等)などの目的で行う処理である。図1に示す例においては、架橋工程を行う架橋浴として二つの架橋浴が配置され、耐水化を目的として行う第1架橋工程を第1架橋浴17aで行い、色相調整を目的として行う第2架橋工程を第2架橋浴17bで行う。図1を参照して、第1架橋工程は、ニップロール52,ガイドロール37~40及びニップロール53aによって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、第1架橋浴17a(架橋槽に収容された第1架橋液)に染色処理後のフィルムを所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。第2架橋工程は、ニップロール53a,ガイドロール41~44及びニップロール53bによって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、第2架橋浴17b(架橋槽に収容された第2架橋液)に第1架橋工程後のフィルムを所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。以下、架橋浴という場合には第1架橋浴17a及び第2架橋浴17bいずれをも含み、架橋液という場合には第1架橋液及び第2架橋液いずれをも含む。
架橋液としては、架橋剤を溶媒に溶解した溶液を使用できる。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物や、グリオキサール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらは一種類でも良いし、二種類以上を併用しても良い。溶媒としては、例えば水が使用できるが、さらに、水と相溶性のある有機溶媒を含んでも良い。架橋溶液における架橋剤の濃度は、これに限定されるものではないが、1~20質量%の範囲にあることが好ましく、6~15質量%であることがより好ましい。
架橋液としては、水100重量部に対してホウ酸を例えば1~10重量部含有する水溶液であることができる。架橋液は、染色処理で使用した二色性色素がヨウ素の場合、ホウ酸に加えてヨウ化物を含有することが好ましく、その量は、水100重量部に対して、例えば1~30重量部とすることができる。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等を共存させてもよい。
架橋処理においては、その目的によって、ホウ酸及びヨウ化物の濃度、並びに架橋浴17の温度を適宜変更することができる。例えば、架橋処理の目的が架橋による耐水化である第1架橋液の場合、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=3~10/1~20/100の水溶液であることができる。必要に応じ、ホウ酸に代えて他の架橋剤を用いてもよく、ホウ酸と他の架橋剤を併用してもよい。フィルムを浸漬するときの第1架橋浴17aの温度は、通常50~70℃程度、好ましくは53~65℃であり、フィルムの浸漬時間は、通常10~600秒程度、好ましくは20~300秒、より好ましくは20~200秒である。また、膨潤処理前に予め延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して染色処理及び第1架橋処理をこの順に施す場合、第1架橋浴17aの温度は、通常50~85℃程度、好ましくは55~80℃である。
色相調整を目的とする第2架橋液においては、例えば、二色性色素としてヨウ素を用いた場合、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=1~5/3~30/100を使用することができる。フィルムを浸漬するときの第2架橋浴17bの温度は、通常10~45℃程度であり、フィルムの浸漬時間は、通常1~300秒程度、好ましくは2~100秒である。
架橋処理は複数回行ってもよく、通常2~5回行われる。この場合、使用する各架橋浴の組成及び温度は、上記の範囲内であれば同じであってもよく、異なっていてもよい。架橋による耐水化のための架橋処理及び色相調整のための架橋処理は、それぞれ複数の工程で行ってもよい。
ニップロール52とニップロール53aとの周速差を利用して第1架橋浴17a中で一軸延伸処理を施すこともできる。また、ニップロール53aとニップロール53bとの周速差を利用して第2架橋浴17b中で一軸延伸処理を施すこともできる。
架橋処理においても、膨潤処理と同様にフィルムのシワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送するために、ガイドロール38,39,40,41,42,43及び/又は44にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。シワの発生を抑制するためのもう1つの手段は、膨潤処理と同様、延伸処理を施すことである。
図1に示される例において、第2架橋浴17bから引き出されたフィルムは、ガイドロール44、ニップロール53bを順に通過して洗浄浴19へ導入される。
(洗浄工程)
図1に示される例においては、架橋工程後の洗浄工程を含む。洗浄処理は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに付着した余分なホウ酸やヨウ素等の薬剤を除去する目的等で行われる。洗浄工程は、例えば、架橋処理したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄浴19に浸漬することによって行われる。なお、洗浄工程は、洗浄浴19にフィルムを浸漬させる工程に代えて、フィルムに対して洗浄液をシャワーとして噴霧することにより、若しくは洗浄浴19への浸漬と洗浄液の噴霧とを併用することによって行うこともできる。
図1には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄浴19に浸漬して洗浄処理を行う場合の例を示している。洗浄処理における洗浄浴19の温度は、通常2~40℃程度であり、フィルムの浸漬時間は、通常2~120秒程度である。
なお、洗浄処理においても、シワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送する目的で、ガイドロール45,46,47及び/又は48にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。また、フィルム洗浄処理において、シワの発生を抑制するために延伸処理を施してもよい。
(延伸工程)
上述のように原反フィルム10は、上記一連の処理工程の間(すなわち、いずれか1以上の処理工程の前後及び/又はいずれか1以上の処理工程中)に、湿式又は乾式にて一軸延伸処理される。一軸延伸処理の具体的方法は、例えば、フィルム搬送経路を構成する2つのニップロール(例えば、処理浴の前後に配置される2つのニップロール)間に周速差をつけて縦一軸延伸を行うロール間延伸、特許第2731813号公報に記載されるような熱ロール延伸、テンター延伸等であることができ、好ましくはロール間延伸である。一軸延伸工程は、原反フィルム10から偏光素子23を得るまでの間に複数回にわたって実施することができる。上述のように延伸処理は、フィルムのシワの発生の抑制にも有利である。
原反フィルム10を基準とする、偏光素子23の最終的な累積延伸倍率は通常、4.5~7倍程度であり、好ましくは5~6.5倍である。延伸工程はいずれの処理工程で行ってもよく、2以上の処理工程で延伸処理を行う場合においても延伸処理はいずれの処理工程で行ってもよい。
(乾燥工程)
洗浄工程の後、PVA系樹脂フィルムを乾燥させる処理を行うことが好ましい。フィルムの乾燥は特に制限されないが、図1に示される例のように乾燥炉21を用いて行うことができる。乾燥炉21は例えば熱風乾燥機を備えるものとすることができる。乾燥温度は、例えば30~100℃程度であり、乾燥時間は、例えば30~600秒程度である。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾燥させる処理は、遠赤外線ヒーターを用いて行うこともできる。
(PVA系樹脂フィルムに対するその他の処理工程)
上記した処理以外の処理を付加することもできる。追加されうる処理の例は、架橋工程の後に行われる、ホウ酸を含まないヨウ化物水溶液への浸漬処理(補色処理)、ホウ酸を含まず塩化亜鉛等を含有する水溶液への浸漬処理(亜鉛処理)を含む。
(偏光素子)
以上のようにして得られる偏光素子23の厚みは、5~50μmが好ましく、8~28μmがより好ましく、12~22μmがさらに好ましく、12~15μmが最も好ましい。偏光素子の厚みが50μm以下であることにより、高温環境下でPVA系樹脂のポリエン化が光学特性の低下に与える影響を抑制することができ、また偏光素子の厚みが5μm以上であることにより所望の光学特性を達成する構成とすることが容易となる。
偏光板が位相差フィルムを有する場合、偏光素子の厚みは5~22μmであることが好まし、12~15μmであることがより好ましい。偏光素子の厚みをこのような範囲とすることで、高温環境下における偏光素子の収縮に伴い生じる面内の位相差分布が小さくなり、表示装置の表示品質が良好なものとなる。また、偏光素子の厚みを12μm以上とすることで、高湿環境下における偏光特性を維持しやすくなる。
偏光素子は、ホウ素の含有率が、好ましくは4.0質量%以上8.0質量%以下であり、より好ましくは4.2質量以上7.0質量%以下であり、さらに好ましくは4.4質量%以上6.0質量%以下である。偏光素子のホウ素含有率が4.0質量%以上であることにより、高温環境下、例えば温度105℃の高温環境下に晒したときであっても偏光素子の透過率が低下しにくくなる。ホウ素含有率が、4.0質量%以上である場合は、高温環境下でもポリエン化が生じにくくなり透過率の低下が抑制されることによるものと推測される。一方で、偏光素子のホウ素含有率が8.0質量%を超える場合には、偏光素子の収縮力が大きくなり、画像表示装置に組み込んだ際に貼り合わされる前面板等の他の部材との間で剥離が生じるなどの不具合が生じることがある。偏光素子におけるホウ素の含有率は、たとえば高周波誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光分析法により、偏光素子の質量に対するホウ素の質量分率(質量%)として算出することができる。ホウ素は、偏光素子中に、ホウ酸またはそれがポリビニルアルコール系樹脂の構成要素と架橋構造を形成した状態で存在すると考えられるが、ここでいうホウ素の含有率は、ホウ素原子(B)としての値である。
偏光素子は、ホウ素以外の金属のイオンを含んでいてもよい。例えば、色調調整や耐久性付与の点からコバルト、ニッケル、亜鉛、クロム、アルミニウム、銅、マンガン、鉄などの遷移金属の金属イオンの少なくとも1種を含むことが好ましい。これら金属イオンのなかでも、色調調整や耐熱性付与などの点から亜鉛イオンが好ましい。
偏光素子の視感度補正単体透過率Tyは、視感度補正偏光度Pyとのバランスを考慮して、40~47%であることが好ましく、41~45%であることがより好ましい。視感度補正偏光度Pyは、99.9%以上であることが好ましく、99.95%以上であることがより好ましく、値が大きいほど好ましい。
得られた偏光素子は、後段の貼合工程に供される。偏光素子は、偏光素子製造工程後に、巻取ロールに順次巻き取ってロール形態としてもよいし、巻き取ることなくそのまま貼合工程に供されてもよい。
<貼合工程>
貼合工程は、上記のように製造される偏光素子の少なくとも片面に、水系接着剤を介して透明保護フィルム(以下、単に「保護フィルム」とも称する)を貼合する工程である。貼合工程を経て偏光板が作製される。
偏光素子に水系接着剤を用いて保護フィルムを貼合する方法として、貼合される2枚のフィルムの一方又は両方の貼合面に接着剤を塗工し、その接着剤層を介して2枚のフィルムを重ね合わせる方法を挙げることができる。接着剤の塗工には、例えば流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクターブレード法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法等を採用することができる。流延法とは、貼合対象のフィルムを、概ね垂直方向、概ね水平方向、又は両者の間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤を流下して拡布させる方法である。接着剤層を介して重ね合わせてなるフィルム積層体は通常、ニップロール(貼合ロール)等に通して上下から押圧される。
偏光素子に保護フィルムを貼合するにあたり、保護フィルム又は偏光素子の貼合面には、接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理のような易接着処理を行うことができ、中でも、プラズマ処理、コロナ処理又はケン化処理を行うことが好ましい。例えば保護フィルムが環状ポリオレフィン系樹脂からなる場合には通常、保護フィルムの貼合面にプラズマ処理やコロナ処理が施される。また、保護フィルムがセルロースエステル系樹脂からなる場合には通常、保護フィルムの貼合面にケン化処理が施される。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリ水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
上述のフィルム貼合を実施した後、水系接着剤からなる接着剤層中に含まれる水を除去するためにフィルム積層体を乾燥させる乾燥工程を実施することが好ましい。乾燥は、例えばフィルム積層体を乾燥炉に導入することによって行うことができる。乾燥温度(乾燥炉の温度)は、好ましくは30~90℃である。30℃未満であると、保護フィルムが偏光素子から剥離しやすくなる傾向がある。また乾燥温度が90℃を超えると、熱によって偏光素子の偏光性能が劣化するおそれがある。乾燥時間は10~1000秒程度とすることができ、生産性の観点からは、好ましくは60~750秒、より好ましくは150~600秒である。
乾燥工程後、室温又はそれよりやや高い温度、例えば20~45℃程度の温度で12~600時間程度養生する養生工程を設けてもよい。養生温度は、乾燥温度よりも低く設定されるのが一般的である。
(水系接着剤)
偏光素子と保護フィルムとの貼合には水系接着剤が用いられる。水系接着剤は、接着剤成分を水に溶解したもの又は水に分散させたものである。本実施形態で用いられる水系接着剤は、エタノール濃度が16質量%以上50質量%以下であり、好ましくは18質量%以上48質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上46質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上35質量%以下である。
水系接着剤が、上記範囲内でエタノールを含有することにより、偏光板の製造工程において変色が生じるのを抑制することができる。ここでいう変色とは、偏光板をクロスニコルで配置し高輝度の光を透過させた際に観察される色ムラのことを意味し、より具体的にはクロスニコル状態になるように2枚の偏光板を重ねて、白色光を透過した際に、茶色に変色した部分が観察される色ムラのことを意味する。かかる茶色の変色は、偏光板内に点在して観察されることもあり、また特定部分のみに観察されることもある。また、かかる茶色の変色箇所は、偏光板内の複数箇所に観察されることもあり、また1箇所のみに観察されることもある。茶色の変色部分の領域の大きさは種々であるものの、例えば、直径100~4000μmの大きさであることがある。
色ムラは、水系接着剤を用いて偏光素子と保護フィルムとを貼合した場合に観察され、偏光素子におけるホウ素の含有率が高く、かつ水系接着剤がPVA系樹脂を含む場合に顕著に観察されることから、色ムラが発生するメカニズムは次のように考察される。偏光素子中のホウ酸は、水系接着剤中の水に溶出しやすく、溶出したホウ酸は水系接着剤に含まれるPVA系樹脂と反応する。かかる反応物が水系接着剤内での不均一化を生じさせ、かかる不均一化が水系接着剤の乾燥が進んだ際にムラとなって顕在化するものと推測される。
水系接着剤が、上記範囲内でエタノールを含有することにより変色を抑制できるメカニズムは明らかではないものの、水系接着剤内に存在するエタノールが、偏光素子中のホウ酸が水系接着剤に溶出することの抑制、および水系接着剤内でホウ酸とPVA系樹脂との反応が進行することの抑制、の少なくとも一方に寄与しているものと推測される。
水系接着剤としては、上記範囲内でエタノールを含有するものであれば特に限定されないものの、主成分としてPVA系樹脂又はウレタン樹脂を含む水系接着剤が挙げられる。PVA系樹脂を含む水系接着剤は、これを用いた場合に本発明に係る効果が顕著であることから好適に用いられる。水系接着剤から形成される接着剤層の厚みは通常、7μm以下であり、また通常は0.01μm以上である。接着剤層の厚みは、好ましくは0.01μm以上1.0μm以下であり、より好ましくは0.02μm以上0.8μm以下である。
接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、当該ポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコールのほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールのような変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。ポリビニルアルコール系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるポリビニルアルコール系共重合体であってもよい。
PVA系樹脂を接着剤成分とする水系接着剤は通常、PVA系樹脂の水溶液である。接着剤中のPVA系樹脂の濃度は、通常1~10質量%、好ましくは1~5質量%、より好ましくは2.85~5質量%である。
PVA系樹脂の水溶液からなる接着剤には、接着性を向上させるために、多価アルデヒド、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物、グリオキサール、水溶性エポキシ樹脂のような硬化性成分や架橋剤を添加することが好ましい。水溶性エポキシ樹脂としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアルキレンポリアミンと、アジピン酸等のジカルボン酸との反応で得られるポリアミドアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂を好適に用いることができる。かかるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂の市販品としては、「スミレーズレジン650」(田岡化学工業(株)製)、「スミレーズレジン675」(田岡化学工業(株)製)、「WS-525」(日本PMC(株)製)等が挙げられる。これら硬化性成分や架橋剤の添加量(硬化性成分及び架橋剤として共に添加する場合にはその合計量)は、PVA系樹脂100重量部に対して、通常1~100重量部、好ましくは1~50重量部である。上記硬化性成分や架橋剤の添加量がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して1重量部未満である場合には、接着性向上の効果が小さくなる傾向にあり、また、上記硬化性成分や架橋剤の添加量がPVA系樹脂100重量部に対して100重量部を超える場合には、接着剤層が脆くなる傾向にある。
PVA系樹脂がアセトアセチル基変性PVA系樹脂である場合は、架橋剤としてグリオキサール、グリオキシル酸塩、メチロールメラミンのうちのいずれかであることが好ましく、グリオキサール、グリオキシル酸塩のいずれかであることがより好ましく、グリオキサールであることが特に好ましい。
また、接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合、適当な接着剤組成物の例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤として好適である。
水系接着剤は、エタノールを含み、エタノール以外の有機溶剤を含有することもできる。有機溶剤は、水と混和性を有する点でアルコール類が好ましく、例えばメタノールを含むこともできる。水系接着剤は、耐熱性向上の観点から、さらに尿素、尿素誘導体、チオ尿素、及びチオ尿素誘導体等の尿素化合物;アスコルビン酸、エリソルビン酸、チオ硫酸、及び亜硫酸等の還元剤;マレイン酸及びフタル酸等のジカルボン酸;硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、及び弗化アンモニウム等のアンモニウム化合物;α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン等のデキストリン類;イソシアネート化合物がブロック剤によりブロックされているブロックイソシアネート化合物;N-オキシル化合物等のニトロキシラジカル;ニトロキシド基を有する化合物等を含有していてもよい。尿素系化合物の一部は水に対する溶解度が低い反面、アルコールに対する溶解度は十分なものがある。その場合は、尿素系化合物をアルコールに溶解し、尿素系化合物のアルコール溶液を調製した後、尿素系化合物のアルコール溶液をPVA水溶液に添加し、接着剤を調製することも好ましい態様の一つである。
(尿素系化合物)
接着剤層が尿素系化合物を含む場合、尿素系化合物は、尿素、尿素誘導体、チオ尿素及びチオ尿素誘導体から選ばれる少なくとも1種である。接着剤層に尿素系化合物を含有させる方法としては、上記の接着剤に尿素系化合物を含有させることが好ましい。なお、接着剤から乾燥工程などを経て接着剤層を形成する過程で、尿素系化合物の一部が接着剤層から偏光素子などに移動していても構わない。すなわち、偏光素子は、尿素系化合物を含んでいてもよい。尿素系化合物には水溶性のものと難水溶性のものがあるが、どちらの尿素系化合物も本実施形態の接着剤では使用することができる。難水溶性尿素系化合物を水系接着剤に用いる場合は、接着剤層を形成後、ヘイズ上昇などが起きないように分散方法を工夫することが好ましい。
接着剤がPVA系樹脂を含有する水系接着剤の場合、尿素系化合物の添加量は、PVA樹脂100質量部に対し、0.1~400質量部であることが好ましく、1~200質量部であることがより好ましく、3~100質量部であることが更に好ましい。
(尿素誘導体)
尿素誘導体は、尿素分子の4つの水素原子の少なくとも1つが、置換基に置換された化合物である。この場合、置換基に特に制限はないが、炭素原子、水素原子および酸素原子よりなる置換基であることが好ましい。
尿素誘導体の具体例として、1置換尿素として、メチル尿素、エチル尿素、プロピル尿素、ブチル尿素、イソブチル尿素、N-オクタデシル尿素、2-ヒドロキシエチル尿素、ヒドロキシ尿素、アセチル尿素、アリル尿素、2-プロピニル尿素、シクロヘキシル尿素、フェニル尿素、3-ヒドロキシフェニル尿素、(4-メトキシフェニル)尿素、ベンジル尿素、ベンゾイル尿素、o-トリル尿素、p-トリル尿素が挙げられる。
2置換尿素として、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジメチル尿素、1,1-ジエチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,3-tert-ブチル尿素、1,3-ジシクロヘキシル尿素、1,3-ジフェニル尿素、1,3-ビス(4-メトキシフェニル)尿素、1-アセチル-3-メチル尿素が挙げられる。
4置換尿素として、テトラメチル尿素、1,1,3,3-テトラエチル尿素、1,1,3,3-テトラブチル尿素、1,3-ジメトキシ-1,3-ジメチル尿素が挙げられる。
(チオ尿素誘導体)
チオ尿素誘導体は、チオ尿素分子の4つの水素原子の少なくとも1つが、置換基に置換された化合物である。この場合、置換基に特に制限はないが、炭素原子、水素原子および酸素原子よりなる置換基であることが好ましい。
チオ尿素誘導体の具体例として、1置換チオ尿素として、N-メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、プロピルチオ尿素、イソプロピルチオ尿素、1-ブチルチオ尿素、シクロヘキシルチオ尿素、N-アセチルチオ尿素、N-アリルチオ尿素、(2-メトキシエチル)チオ尿素、N-フェニルチオ尿素、(4-メトキシフェニル)チオ尿素、N-(2-メトキシフェニル)チオ尿素、N-(1-ナフチル)チオ尿素、(2-ピリジル)チオ尿素、o-トリルチオ尿素、p-トリルチオ尿素が挙げられる。
2置換チオ尿素として、1,1-ジメチルチオ尿素、1,3-ジメチルチオ尿素、1,1-ジエチルチオ尿素、1,3-ジエチルチオ尿素、1,3-ジブチルチオ尿素、1,3-ジイソプロピルチオ尿素、1,3-ジシクロヘキシルチオ尿素、N,N-ジフェニルチオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素、1,3-ジ(o-トリル)チオ尿素、1,3-ジ(p-トリル)チオ尿素、1-ベンジル-3-フェニルチオ尿素、1-メチル-3-フェニルチオ尿素、N-アリル-N’-(2-ヒドロキシエチル)チオ尿素が挙げられる。
3置換チオ尿素として、トリメチルチオ尿素が挙げられ、4置換チオ尿素として、テトラメチルチオ尿素、1,1,3,3-テトラエチルチオ尿素が挙げられる。
尿素系化合物の中では、尿素誘導体またはチオ尿素誘導体が好ましく、尿素誘導体がより好ましい。尿素誘導体の中でも、1置換尿素または2置換尿素であることが好ましく、1置換尿素であることがより好ましい。2置換尿素には1,1-置換尿素と1,3-置換尿素があるが、1,3-置換尿素がより好ましい。
(透明保護フィルム)
本実施形態において用いられる保護フィルムは、偏光素子の少なくとも片面に接着剤を介して貼合される。保護フィルムは、偏光素子を保護する機能を有する。
保護フィルムは、光学的機能を有していてもよく、複数の層が積層された積層構造に形成されていてもよい。保護フィルムの膜厚は光学特性の観点から薄いものが好ましいが、薄すぎると強度が低下し加工性に劣るものとなる。適切な膜厚としては、5~100μmであり、好ましくは10~80μm、より好ましくは15~70μmである。
保護フィルムは、セルロースアシレート系フィルム、ポリカーボネート系樹脂からなるフィルム、ノルボルネンなどシクロオレフィン系樹脂からなるフィルム、(メタ)アクリル系重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂系フィルムなどのフィルムを用いることができる。偏光素子の両面に保護フィルムを有する構成の場合、PVA接着剤などの水系接着剤を用いて貼合する場合は透湿度の点で少なくとも片側の保護フィルムはセルロースアシレート系フィルムまたは(メタ)アクリル系重合体フィルムの何れかであることが好ましく、中でもセルロースアシレートフィルムが好ましい。
少なくとも一方の保護フィルムとしては、視野角補償などの目的で位相差機能を備えていても良く、その場合、フィルム自身が位相差機能を有していても良く、位相差層を別に有していても良く、両者の組み合わせであっても良い。
なお、位相差機能を備えるフィルムは接着剤を介して、直接偏光素子に貼合される構成について説明したが、偏光素子に貼合された別の保護フィルムを介して粘着剤または接着剤を介して貼合された構成であっても構わない。
[画像表示装置の構成]
本実施形態の偏光板は、液晶表示装置や有機EL表示装置等の各種画像表示装置に用いられる。画像表示装置について、偏光板の両面が空気層以外の層、具体的には粘着剤層等の固体層が接するように構成されている層間充填構成である場合には、高温環境下で透過率が低下しやすい。本実施形態の偏光板を用いた画像表示装置においては、層間充填構成であっても、高温環境下での偏光板の透過率の低下を抑制することができる。画像表示装置としては、画像表示セルと、画像表示セルの視認側表面に積層された第1粘着剤層と、第1粘着剤層の視認側表面に積層された偏光板とを有する構成が例示される。かかる画像表示装置は、偏光板の視認側表面に積層された第2粘着剤層と、第2粘着剤層の表面に積層された透明部材とをさらに有してもよい。特に、本実施形態の偏光板は、画像表示装置の視認側に透明部材が配置され、偏光板と画像表示セルとが第1粘着剤層により貼り合わされ、偏光板と透明部材とが第2粘着剤層により貼り合わせられた層間充填構成を有する画像表示装置に好適に用いられる。本明細書においては、第1粘着剤層及び第2粘着剤層のいずれか一方又は両者を、単に「粘着剤層」と称する場合がある。なお、偏光板と画像表示セルとの貼り合わせに用いられる部材、及び偏光板と透明部材との貼り合わせに用いられる部材としては、粘着剤層に限定されることはなく接着剤層であってもよい。
<画像表示セル>
画像表示セルとしては、液晶セルや有機ELセルが挙げられる。液晶セルとしては、外光を利用する反射型液晶セル、バックライト等の光源からの光を利用する透過型液晶セル、外部からの光と光源からの光の両者を利用する半透過半反射型液晶セルのいずれを用いてもよい。液晶セルが光源からの光を利用するものである場合、画像表示装置(液晶表示装置)は、画像表示セル(液晶セル)の視認側と反対側にも偏光板が配置され、さらに光源が配置される。光源側の偏光板と液晶セルとは、適宜の粘着剤層を介して貼り合せられていることが好ましい。液晶セルの駆動方式としては、例えばVAモード、IPSモード、TNモード、STNモードやベンド配向(π型)等の任意なタイプのものを用いうる。
有機ELセルとしては、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成したもの等が好適に用いられる。有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、これらの発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体、あるいは正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の層構成が採用され得る。
<画像表示セルと偏光板の貼り合せ>
画像表示セルと偏光板との貼り合せには、粘着剤層(粘着シート)が好適に用いられる。中でも、偏光板の一方の面に粘着剤層が付設された粘着剤層付き偏光板を画像表示セルと貼り合わせる方法が、作業性等の観点から好ましい。偏光板への粘着剤層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えば、トルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物または混合物からなる溶剤にベースポリマーまたはその組成物を溶解あるいは分散させた10~40質量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上に直接付設する方式、あるいはセパレータ上に粘着剤層を形成してそれを偏光板に移着する方式などが挙げられる。
<粘着剤層>
粘着剤層は、1層からなるものであってもよく、2層以上からなるものであってもよいが、好ましくは1層からなるものである。粘着剤層は、(メタ)アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂を主成分とする粘着剤組成物から構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型又は熱硬化型であってもよい。
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(ベースポリマー)としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル化合物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート化合物、グリシジル(メタ)アクリレート化合物等の、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成する金属イオン、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリアミン化合物、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するポリエポキシ化合物又はポリオール、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリイソシアネート化合物が例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルム等の被着体に密着させることができ、活性エネルギー線の照射によって硬化して密着力の調整ができる性質を有する。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、ベースポリマー、架橋剤に加えて、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含有する。必要に応じて、光重合開始剤、光増感剤等を含有させてもよい。
粘着剤組成物は、光散乱性を付与するための微粒子、ビーズ(樹脂ビーズ、ガラスビーズ等)、ガラス繊維、ベースポリマー以外の樹脂、粘着性付与剤、充填剤(金属粉やその他の無機粉末等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、着色剤、消泡剤、腐食防止剤、光重合開始剤等の添加剤を含むことができる。
粘着剤層は、上記粘着剤組成物の有機溶剤希釈液を基材フィルム、画像表示セル、又は偏光板の表面上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。基材フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムであることが一般的であり、その典型的な例として、離型処理が施されたセパレートフィルムを挙げることができる。セパレートフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアレート等の樹脂からなるフィルムの粘着剤層が形成される面に、シリコーン処理等の離型処理が施されたものであることができる。
例えば、セパレートフィルムの離型処理面に粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成して粘着剤層とし、このセパレートフィルム付粘着剤層を偏光体の表面に積層してもよい。偏光板の表面に粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成し、粘着剤層の外面にセパレートフィルムを積層してもよい。
粘着剤層を偏光板の表面に設ける際には、偏光板の貼合面及び/又は粘着剤層の貼合面に表面活性化処理、例えばプラズマ処理、コロナ処理等を施すことが好ましく、コロナ処理を施すことがより好ましい。
また、第2セパレートフィルム上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、形成された粘着剤層上にセパレートフィルムを積層した粘着剤シートを準備し、この粘着剤シートから第2セパレートフィルムを剥離した後のセパレートフィルム付粘着剤層を偏光板に積層してもよい。第2セパレートフィルムは、セパレートフィルムよりも粘着剤層との密着力が弱く、剥離し易いものが用いられる。
粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、例えば1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましく、20μm以上であってもよい。
<透明部材>
画像表示装置の視認側に配置される透明部材としては、透明板(ウインドウ層)やタッチパネル等が挙げられる。透明板としては、適宜の機械強度および厚みを有する透明板が用いられる。このような透明板としては、例えばポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂のような透明樹脂板、あるいはガラス板等が挙げられる。透明板の視認側には反射防止層などの機能層が積層されていても構わない。また、透明板が透明樹脂板の場合は、物理強度を上げるためにハードコート層や、透湿度を下げるために低透湿層が積層されていても構わない。
タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、超音波方式等の各種タッチパネルや、タッチセンサー機能を備えるガラス板や透明樹脂板等が用いられる。透明部材として静電容量方式のタッチパネルが用いられる場合、タッチパネルよりもさらに視認側に、ガラスや透明樹脂板からなる透明板が設けられることが好ましい。
<偏光板と透明部材との貼り合せ>
偏光板と透明部材との貼り合せには、粘着剤または活性エネルギー線硬化型接着剤が好適に用いられる。粘着剤が用いられる場合、粘着剤の付設は適宜な方式で行い得る。具体的な付設方法としては、例えば、前述の画像表示セルと偏光板の貼り合せで用いた粘着剤層の付設方法が挙げられる。
活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合、硬化前の接着剤溶液の広がりを防止する目的で、画像表示パネル上の周縁部を囲むようにダム材が設けられ、ダム材上に透明部材を載置して、接着剤溶液を注入する方法が好適に用いられる。接着剤溶液の注入後は、必要に応じて位置合わせおよび脱泡が行われた後、活性エネルギー線が照射されて硬化が行われる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明は以下の実施例に限定され制限されるものではない。
(1)偏光素子の厚さの測定:
株式会社ニコン製のデジタルマイクロメーター“MH-15M”を用いて測定した。
(2)偏光素子のホウ素含有率の測定:
偏光素子0.2gを1.9質量%のマンニトール水溶液200gに溶解させた。次いで、得られた水溶液を1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、中和に要した水酸化ナトリウム水溶液の量と検量線との比較により、偏光素子のホウ素含有率を算出した。
(3)偏光素子の亜鉛イオン含有率の測定:
精秤した偏光素子に硝酸を加え、マイルストーンゼネラル株式会社製のマイクロ波試料前処理装置(ETHOS D)で酸分解して得られた溶液を測定液とした。亜鉛イオン含有率は、アジレントテクノロジー製ICP発光分光分析装置(5110 ICP-OES)で測定液の亜鉛濃度を定量し、偏光素子質量に対する亜鉛質量で算出した。
(4)PVA系樹脂フィルムのホウ素吸着率の測定:
100mm四方に裁断したPVA系樹脂フィルムを、30℃の純水に60秒間浸漬し、その後、ホウ酸5部を含む60℃の水溶液に120秒浸漬させた。ホウ酸水溶液から取り出したPVA系樹脂フィルムを80℃オーブンで11分間乾燥した。23℃55%RHの環境で24時間調湿し、ホウ素含有PVAフィルムを得た。こうして得られたホウ素含有PVA系樹脂フィルム0.2gを、1.9質量%のマンニトール水溶液200gに溶解させた。次いで、得られた水溶液を1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、中和に要した水酸化ナトリウム水溶液の量と検量線との比較により、PVA系樹脂フィルムのホウ素含有率を算出した。こうして得られたPVA系樹脂フィルムのホウ素含有率を、PVA系樹脂フィルムのホウ素吸着率として用いた。
<偏光素子の作製>
(偏光素子1)
ホウ素吸着率が5.71質量%である厚さ30μmのPVA系樹脂フィルムを、21.5℃の純水に79秒浸漬した(膨潤処理)。ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が2/2/100であり、ヨウ素を1.0mM含む、23℃の水溶液に、PVA系樹脂フィルムを151秒浸漬した(染色工程)。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が2.5/4/100のである、68.5℃の水溶液に、PVA系樹脂フィルムを76秒浸漬した(第1架橋工程)。引き続き、ヨウ化カリウム/ホウ酸/塩化亜鉛/水の質量比が3/5.5/0.6/100である、45℃の水溶液に、PVA系樹脂フィルムを11秒浸漬した(第2架橋工程、金属イオン処理工程)。その後、洗浄浴に浸漬させて洗浄し(洗浄工程)、38℃で乾燥して(乾燥工程)、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された厚み12μmの偏光素子を得た。延伸は、主に、染色工程および第1架橋工程の工程で行い、トータル延伸倍率は5.85倍であった。得られた偏光素子の亜鉛イオン含有率は0.17質量%、ホウ素含有率は4.62質量%であった。
<接着剤の調製>
(接着剤用PVA溶液Aの調製)
アセトアセチル基を含有する変性PVA系樹脂(三菱ケミカル株式会社製「ゴーセネックスZ-410」)50gを950gの純水に溶解した。この溶液を90℃で2時間加熱後に常温まで冷却し、接着剤用のPVA溶液Aを得た。
(接着剤1~5の調製)
次いで、夫々の成分が表1の濃度(質量%)になるように前記PVA溶液A、マレイン酸、グリオキサール、エタノール、純水を配合しPVA系接着剤(接着剤1~5)を調製した。
Figure 2023173674000001
<透明保護フィルムの準備>
(セルロースアシレートフィルムの鹸化)
市販のセルロースアシレートフィルムTJ40UL(富士フイルム株式会社製:膜厚40μm)を、55℃に保った1.5mol/LのNaOH水溶液(鹸化液)に2分間浸漬し、フィルムを水洗した。その後、フィルムを25℃の0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬し、更に水洗浴を30秒流水下に通して、フィルムを中性の状態にした。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返した。水を落とした後、フィルムを70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルム(透明保護フィルム1)を作製した。
<偏光板の作製>
(偏光板1の作製)
偏光素子1の両面に、上記で準備した透明保護フィルム1を、接着剤1を介し、ロール貼合機を用いて貼合した。接着剤1の塗布厚みは、乾燥後の接着剤層の厚みが両面共100nmになるように調整した。その後、80℃で3分間乾燥し、両面透明保護フィルム付きの偏光板1を得た。
(偏光板2~5の作製)
接着剤1をそれぞれ接着剤2~5に代えたこと以外は偏光板1の作製と同様にして、偏光板2~5を作製した。
<変色の評価>
対象の偏光板の裏面に対して、クロスニコル状態になるように検査用の直線偏光板を配置し、検査用の直線偏光板表面側から、10~50mm程度離した距離で、光束1000ルーメンの高輝度LEDペンライトを照射して暗室内に置いて目視で観察した。茶色い変色が観察される場合には変色「有」と判定し、茶色い変色が観察されない場合には変色「無」と判定した。表2に判定結果を示す。
評価結果を表2に示す。
<高温耐久試験(105℃)>
(評価用サンプルの作製)
上記で作製した偏光板1~5の片面に、アクリル系粘着剤(リンテック株式会社製)を塗布することによって厚み25μmの粘着剤層を形成した。片面に粘着剤層を形成した偏光板を、40mm×40mmの大きさに裁断して、粘着剤層の表面に無アルカリガラス〔商品名“EAGLE XG”、コーニング社製〕に貼合することによって、評価サンプルを作製した。
(高温耐久試験)
上記で得た評価サンプルに、温度50℃、圧力5kgf/cm(490.3kPa)で1時間オートクレーブ処理を施した後、温度23℃RH55%の環境下で24時間放置した。偏光板の偏光度、単体透過率、色相を測定し、これを初期値とした。次いで、評価用サンプルを温度105℃の高温環境下に500時間保管した。保管後の偏光板の偏光度、単体透過率、色相を測定した。
偏光板の視感度補正単体透過率、視感度補正偏光度、及び色相の初期値及び高温耐久試験後の測定値から、それぞれの変化量を算出した。視感度補正単体透過率の変化量ΔTy及び視感度補正偏光度の変化量ΔPyは、高温耐久試験後の測定値から初期値を差し引いた値として算出した。また、色相の変化量Δabは、下記式で求めた。
Δab={(a-a+(b-b1/2
ここで、a、bは、色相の初期値であり、a、bは、高温耐久試験後の色相の測定値である。
表2に、ΔTy、ΔPy、およびΔabの値を示す。
Figure 2023173674000002
10 ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルム、11 原反ロール、13 膨潤浴、15 染色浴、17a 第1架橋浴、17b 第2架橋浴、19 洗浄浴、21 乾燥炉、23 偏光素子、30~48,60,61 ガイドロール、50~52,53a,53b,54,55 ニップロール。

Claims (5)

  1. 偏光素子と、前記偏光素子の少なくとも一方の面に積層された透明保護フィルムと、を有する偏光板の製造方法であって、
    ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光素子を得る偏光素子製造工程と、
    前記偏光素子に、水系接着剤を介して前記透明保護フィルムを貼合する貼合工程と、を有し、
    前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ホウ素吸着率が5.70質量%以上であり、
    前記水系接着剤は、エタノールの濃度が16質量%以上50質量%以下である、製造方法。
  2. 前記偏光素子は、ホウ素の含有率が4.0質量%以上8.0質量%以下である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記水系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記水系接着剤は、前記ポリビニルアルコール系樹脂の濃度が2.85質量%以上である、請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記偏光板において、前記偏光素子と前記透明保護フィルムとの間に介する前記水系接着剤により形成された接着剤層の厚みが0.01μm以上7μm以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
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