JP2023173359A - 成形部品の遅れ破壊特性評価方法、及び成形部品の製造方法 - Google Patents

成形部品の遅れ破壊特性評価方法、及び成形部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】成形部品におけるせん断端面での遅れ破壊特性をより精度良く評価可能とする。【解決手段】金属板を成形した成形部品を他の部品に組み付けて使用される当該成形部品のせん断端面での遅れ破壊特性を評価する。金属板のせん断面に負荷応力を負荷し拘束した状態で金属板を水素侵入環境に設置する工程とを備える試験の結果に基づき、応力的余裕度をひずみ量を変数として求める第1の工程1と、金属板を成形部品に成形する成形解析を行って、成形部品のせん断端面での残留応力とひずみ量を求める第2の工程2と、成形部品を他の部品に組み付けることで、せん断端面に負荷される負荷応力を求める第3の工程3と、求めたひずみ量に応じた応力的余裕度と、求めた残留応力と求めた負荷応力との合計応力と、に基づき、成形部品の遅れ破壊の余裕度を評価する第4の工程4と、を備える。【選択図】図2

Description

本発明は、プレス成形などの成形で製造される成形部品のせん断端面での遅れ破壊特性を評価する、成形部品の遅れ破壊特性評価方法、及びその方法を用いた成形部品の製造方法に関する技術である。
ここで、本明細書では、金属板にせん断加工を施した端面をせん断端面と呼ぶ。本発明は、特に引張強度980MPa以上の高強度鋼板(高張力鋼板)からなる成形部品に好適な技術である。また、本明細書では、高強度鋼板のうち、引張強度1470MPa以上の鋼板を超高強度鋼板と呼ぶ。
現在、自動車には軽量化による燃費向上と衝突安全性の向上が求められている。そして、車体の軽量化と衝突時の搭乗者保護の両立を目的として、車体に高強度鋼板が使用されており、特に近年では引張強度980MPa以上の高強度鋼板が、車体に適用され始めている。高強度鋼板の車体適用時における課題の一つに遅れ破壊がある。特に引張強度980MPa以上の高強度鋼板では、せん断加工後の端面であるせん断端面から発生する遅れ破壊が重要な課題となっている。この課題は、高強度鋼板のうち、引張強度1470MPa以上の超高強度鋼板で特に問題となる。
ここで、せん断端面は大きな引張応力が残留することが知られており、金属板から製造された成形部品の経時的な遅れ破壊の発生が懸念される。
せん断端面での遅れ破壊を予め予測するためには、評価用の試験片を作製し、その試験片を水素侵入環境下に設置する必要がある。更に、せん断端面については、せん断加工時の塑性変形により端面の性質が変化し、一般的には、端面での遅れ破壊の危険が高まる。そのため、例えば特許文献1では、圧延による板厚方向への圧縮加工をせん断端面に付加した後に、水素侵入環境下に設置して遅れ破壊の発生を評価している。
一方で、せん断したままの状態のせん断端面を、無負荷で水素侵入環境下に設置して遅れ破壊が生じない場合でも、外部から応力を負荷して試験を行えば、遅れ破壊が発生する場合がある。これは、せん断端面に残留した大きな引張応力に対し、更に外部からの負荷応力が上乗せされるためである。このため、例えば特許文献2では、せん断端面を含む評価試料に引張による定荷重を負荷し拘束状態で水素侵入環境下に設置し、遅れ破壊特性を評価している。また、特許文献3では、より簡便な方法として、曲げによる荷重を負荷した状態で水素環境下に設置し、遅れ破壊特性を評価している。ただし、特許文献3においては、せん断端面が対象ではなく、試験片表面における遅れ破壊特性の評価を主眼としている。このため、特許文献3では、評価試料のせん断端面表面は樹脂塗膜によりシールし、評価の対象から外している。
しかし、発明者らが検討したところ、実際の自動車部品に対して、これらの遅れ破壊評価手法を基に、遅れ破壊の発生を予測、あるいは予防することについて、更なる課題があるとの知見を得た。
すなわち、例えば特許文献1のような圧延によるひずみ導入は、自動車部品に用いられるプレス成形によって導入される成形ひずみでの変形状態と乖離しているという課題がある。プレス成形においては、せん断端面に対しては単軸的な引張と圧縮、そしてそれらの組合せによる曲げ変形が導入されるため、特許文献1のような評価手法として十分ではない。また、特許文献2、3では、せん断端面のせん断加工後の塑性変形による遅れ破壊特性の変化を考慮しておらず、せん断端面に様々な成形ひずみが発生する成形部品における遅れ破壊評価としては不十分である。
そして、特許文献1~3のいずれにおいても、実験室的な個別の水素侵入条件・応力条件における遅れ破壊発生の有無や時間を評価するのみであった。
特開2020-41837号公報 特許第5196926号公報 特許第5971058号公報
従来、実際の使用環境において自動車部品に生じている応力と比較することで、遅れ破壊の発生に関し、応力の条件にどれだけ余裕度があるか、という観点での評価が行われていなかった。
そして、発明者らは、実際の自動車部品においては、加工される金属板には、せん断端面の形成箇所によって異なる成形ひずみが導入され、その成形ひずみによって、塑性変形による遅れ破壊特性に変化が生じるとの知見を得た。更に、せん断端面においては、せん断による残留応力に加えて、プレス成形後の負荷応力が上乗せされることで、遅れ破壊が生じやすくなることがあるとの知見を得た。
また、発明者らは、ある水素侵入環境下において、成形ひずみが導入されたせん断端面に対して、成形残留応力が負荷された場合に、成形部品のせん断端面が遅れ破壊発生に対して、どれほどの余裕度を持っているか評価することが、自動車部品におけるせん断端面での遅れ破壊を回避する上で非常に重要であるとの知見を得た。
以上のように、自動車部品におけるプレス成形により、せん断端面性質は塑性変形により変化する。一方で、従来、実際の自動車部品において発生する応力と比較して遅れ破壊の発生を予測できる指標が存在せず、応力的な余裕度という観点から遅れ破壊評価できる手法が存在しなかった。
本発明は、上記のような点に着目したもので、使用時の成形部品のおける、せん断端面での遅れ破壊特性をより精度良く評価して、遅れ破壊を抑制した成形部品を製造可能とすることを目的としている。
課題解決のために、本発明の一態様は、高強度鋼板からなる金属板を成形して成形部品を製造し、その成形部品を他の部品に組み付けて使用される当該成形部品のせん断端面での遅れ破壊特性を評価する成形部品の遅れ破壊特性評価方法であって、上記金属板のせん断面に予め設定した負荷応力を負荷した状態で拘束する工程と、上記拘束した状態で、当該金属板を予め設定した水素侵入環境に予め設定した時間設置する工程とを備える試験の結果に基づき、上記金属板のせん断面での遅れ破壊が発生しない外的負荷応力の許容値である応力的余裕度を、ひずみ量を変数として求める第1の工程と、上記金属板を上記成形部品に成形する成形解析を行って、上記金属板を上記成形部品に成形する際に発生する、上記成形部品のせん断端面での残留応力とひずみ量を求める第2の工程と、上記成形部品を他の部品に組み付けることで、上記せん断端面に負荷される負荷応力を求める第3の工程と、上記第2の工程で求めたひずみ量を変数とした上記金属板の応力的余裕度と、上記第2の工程で求めた残留応力と上記第3の工程で求めた負荷応力との合計応力と、に基づき、上記成形部品の遅れ破壊の余裕度を評価する第4の工程と、を備えることを要旨とする。
上記成形は、例えばプレス成形である。
本発明の態様によれば、使用環境におかれた状態での成形部品のおける、せん断端面での遅れ破壊特性をより精度良く評価して、遅れ破壊を抑制した成形部品を製造可能となる。
このとき、遅れ破壊評価の指標である応力的余裕度は、応力を単位としており、応力による余裕度という観点から評価することが可能である。このため、例えば、自動車のパネル部品、構造・骨格部品等の各種部品に高強度鋼板を適用する際に、成形部品についての遅れ破壊の発生を、応力の次元を有する余裕度を含めて予測することが可能となる。
そして、例えば、超高強度鋼板の適用範囲を拡大することで、自動車車体の軽量化も可能とするができる。
せん断端面の遅れ破壊と応力的余裕度との関係を示す概念図である。 本発明に基づく実施形態に係る構成例を示す図である。 第1の工程の構成例を示す図である。 曲げ成形で残留応力が残る場合のせん断端面の遅れ破壊と応力的余裕度との関係を示す概念図である。 本手法の評価で用いることの可能な処理フローの一例を表す図である。 応力的余裕度のひずみ量に対する関数の例を表す図である。 本実施例における成形部品(実部品)の形状を示す図である。 応力的余裕度を用いた遅れ破壊判定の一例を表す図である。 残留応力と組付け・使用による外部負荷応力との合計応力による遅れ破壊判定の一例を示す図である。 成形条件を見直して、遅れ破壊が生じないように、中間工程を追加した場合における、残留応力と組付け・使用による外部負荷応力との合計応力による遅れ破壊判定の一例を示す図である。
(開示の詳細について)
最初に、本開示の知見について説明する。
発明者らは、せん断端面の遅れ破壊を評価する中で、次の(1)~(3)の知見を見出した。
(1)せん断端面に定荷重による負荷応力(外部的な負荷応力)を負荷し拘束した状態で、水素侵入環境下に所定時間設置すると、負荷応力について、せん断端面に遅れ破壊が発生する限界の負荷応力(限界負荷応力とも呼ぶ)が存在する。これは、せん断端面での、せん断加工による残留応力と外部からの負荷応力との合計が、せん断端面の遅れ破壊発生の閾値に達した場合に、遅れ破壊が発生するためである。
(2)上記遅れ破壊が発生する限界負荷応力は、せん断端面では、せん断後に付加される成形ひずみの引張と圧縮のひずみ量によって変化する。これは、せん断端面の残留応力が、成形ひずみによって変化するためである。
(3)したがって、各せん断端面の限界負荷応力は、そのせん断端面に対し付与された成形ひずみ量と、負荷応力(外部的な負荷応力)とによって変化する。そして、所定の水素侵入環境下に予め設定した所定の設置時間、設置した際に、せん断端面に遅れ破壊が発生する限界の負荷応力は、成形ひずみ量と、負荷応力(外部的な負荷応力)とを考慮した「応力的余裕度」という指標として整理することができる。
ここで、本開示では、せん断端面が有する、ひずみ量に応じた、遅れ破壊の発生しない外的負荷応力の許容量を、「応力的余裕度」と定義した。
図1に、上記(1)~(3)を説明する概念図を示す。図1(a)は、端部をせん断してせん断端面を形成した金属板について、成形ひずみを付与しない場合における限界の負荷応力の状態を例示したものである。一方、図1(b)は、せん断端面を形成した後に、成形ひずみを付与した場合における、限界の負荷応力の状態を例示したものである。
この図1は、金属板をプレス成形する前に、金属板に対し、成形ひずみを付与することで、残留応力が低下する場合を例示している。
ここで、せん断による残留応力と外部からの負荷応力の合計が、遅れ破壊発生の閾値に達すると遅れ破壊が発生する。したがって、成形ひずみによってせん断端面の残留応力が変化すると、遅れ破壊が発生する限界負荷応力も変化する。その限界負荷応力は、せん断端面の残留応力と、遅れ破壊発生の閾値との差であり、そのせん断端面が遅れ破壊を起こさない限界の外的負荷応力である。
このようなことに鑑み、本開示では、せん断端面において、付与される成形ひずみを考慮した、遅れ破壊の発生しない外的負荷応力の許容量を、「応力的余裕度」と定義した。すなわち、本実施形態では、外的負荷応力の許容量を、成形ひずみを変数とした応力的余裕度という指標で規定した。
ここで、せん断によるせん断端面での残留応力は、せん断端面表面から100μm程度のごく表層の微小な領域にのみ存在する。このため、その残留応力変化は、通常のシェル要素を用いたCAEなどでは計算が困難である。微細な領域の応力は、X線応力測定などで測定できるが、測定範囲によって測定値が変化する場合のあることや、測定深さが材料最表層に限られるという問題がある。したがって、必ずしも測定値の大小が遅れ破壊の危険度と対応しない場合がある。
一方で、本開示のように、成形ひずみを変数とした上記「応力的余裕度」を、応力負荷状態での遅れ破壊試験により実験的に求める手法を用いれば、このような計算や測定に関する問題を生じずに、成形部品について、直接的に遅れ破壊の危険度を評価する指標を得ることが可能である。
この応力的余裕度は、自動車部品が実際に晒される水素侵入環境下の条件で評価すれば、それ自体を、自動車部品のせん断端面における遅れ破壊発生までの余裕度とみなすことができる。
しかも、この応力的余裕度は、応力を単位としており、応力により表現されるから、部品の成形による残留応力に加えて、組立てや使用の際などに部品に付与される外的負荷応力が上乗せされた場合でも、この応力的余裕度を超えない限りは、遅れ破壊が発生しないことが推測可能である。
したがって、この遅れ破壊の発生しない外的負荷応力の許容量であって、ひずみ量に応じた指標である、応力的余裕度という概念は、簡便であり、なおかつ応力の次元を有する余裕度としての評価も可能な、優れた遅れ破壊の評価指標である。
逆に、応力負荷の値を一定値として、水素侵入環境の方を変化させる手法も考えうる。しかし、これは前述した部品の成形による残留応力と、組み立てや使用の際に部品が変形されること等による外的負荷応力の上乗せに対して、応力を尺度として比較し余裕度の評価ができないという点において有用性が低い。
なお、上記の成形ひずみはせん断面に延在方向のひずみである。
更に、実際的な評価の方法については、発明者らは、次の(4)(5)の知見を見出した。
(4)せん断端面に対して、せん断加工後に与える成形ひずみ量を変化させて、応力を負荷して水素環境下に設定して遅れ破壊が発生する限界の負荷応力を求めることにより、応力的余裕度を成形ひずみ量の関数とすることができる。
(5)せん断端面に対する引張及び圧縮の成形ひずみを評価試験片に導入する方法としては、単軸による引張変形や圧縮変形が望ましい。これは、単軸による成形では、成形後にスプリングバックすることでせん断端面以外の部分の成形後の残留応力がほぼ0となり、その影響が無視できるためである。したがって、成形ひずみの付与が単軸による引張や圧縮の場合、追加工後のせん断端面における遅れ破壊が発生する限界の外的負荷応力が、そのまま「応力的余裕度」として評価が可能であり、最も簡便である。
ここで、応力的余裕度を評価する試験片については、実験室的にせん断したものを用いても良いし、プレス成形後の成形部品のせん断端面の一部を切り出してきても良い。
更に、このようにして得た「応力的余裕度」を用いて、自動車用部品を念頭においた成形部品において、せん断端面の遅れ破壊の発生を評価、予測する方法として、次のような手法を発明者らは考案した。その例を以下の第一~第三に示す。
(第一)
第一に、試験片を用いて上記(4)(5)の方法で試験を行い、引張-圧縮によるひずみ量に応じた応力的余裕度を測定する。そして、ひずみ量を変数とした応力的余裕度を求める。
ここで、水素侵入環境とその環境への設置時間は、実際の自動車部品において許容上限として予め設定した侵入する水素量と、試験片に侵入する水素量とが同等になるような条件に設定することが好ましい。
せん断端面に与える成形ひずみのひずみ量としては、遅れ破壊特性に十分な影響を与える量を考慮すると、ひずみ量を0.1%以上とすることが好ましい。より影響の度合いが大きいひずみ量としてはひずみ量が0.5%以上で、塑性ひずみが導入されるような場合、特に本発明による遅れ破壊評価が有効である。このため、成形ひずみの代わりに、せん断端面への塑性ひずみ量を評価指標とすることも可能である。試験片への負荷応力については、第一主応力やミーゼス応力など、応力に関するパラメータであれば、本開示に用いることが可能である。
(第二)
第二に、公知の方法により、成形部品のCAEによる成形解析(コンピュータによるシミュレーション解析)を行い、成形部品における、せん断端面各所での引張-圧縮による成形ひずみ量と成形後の残留応力とを計算する。
(第三)
第三に、他の部品への想定される成形部品の組付け・組み付けた後の使用時に想定される当該成形部品への外部負荷応力を、成形後の残留応力に足し合わせることで、成形後の残留応力と外部負荷応力の合計応力を求める。
(第四)
第四に、金属板に対するせん断端面各所について、引張-圧縮によるひずみ量に応じた応力的余裕度と、成形部品における上記の成形後の残留応力と外部負荷応力の合計応力を比較する。
せん断端面の各所における応力的余裕度を超過する箇所については、遅れ破壊の危険があると判定する。ただし、応力的余裕度は、安全率を考えて、実際に測定された値よりも小さくとることも可能である。
更には、上記の応力的余裕度を参考にして、遅れ破壊が発生しないと予測されるような金属部品形状並びに製造工程(成形の条件)を設計することも可能である。成形の条件としては、残留応力を緩和するためのプレス工程を追加することが例示できる。
次に、以上の本開示に基づく、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、以下の説明では、成形部品とする成形として、プレス成形を想定して説明する。
本開示による成形部品の遅れ破壊の評価方法は、自動車部品を構成するプレス部品(成形部品)に好適である。ただし適用対象はプレス部品に限らない。せん断端面を有する遅れ破壊の危険性のある様々な金属部品に対して適用が可能である。例えばロールフォーミング成形、インクリメンタルフォーミング成形、バルジ成形、ホットスタンプ成形、ハンマー鍛造成形、テイラードブランク品に対する成形などを含めた、様々な成形方法による金属部品の製造への適用が想定される。
(構成)
本実施形態の成形部品の遅れ破壊特性評価方法は、高強度鋼板からなる金属板をプレス成形して成形部品を製造し、その成形部品を他の部品に組み付けて使用される当該成形部品のせん断端面での遅れ破壊特性を評価する方法である。本発明は、特に、金属板が高強度鋼板の場合により効果を奏する。
本実施形態の遅れ破壊特性評価方法は、図2に示すように、第1の工程1、第2の工程2、第3の工程3、及び第4の工程4を備える。
(第1の工程1)
第1の工程1は、試験の工程1Aと、応力的余裕度設定の工程1Bとを備える。
試験の工程1Aは、実際の実験を実行する工程であって、金属板のせん断面に予め設定した負荷応力を負荷した状態で拘束する工程と、上記拘束した状態で、金属板を予め設定した水素侵入環境に予め設定した時間設置する工程とを備える。
応力的余裕度設定の工程1Bは、試験の工程1Aによる試験の結果に基づき、金属板のせん断面の遅れ破壊が発生しない限界の負荷応力をひずみ量毎に求め、その求めた情報によって、ひずみ量に応じた、遅れ破壊が発生しない外的負荷応力の許容値である応力的余裕度を求める。
すなわち、本実施形態では、遅れ破壊特性評価方法のための評価指標として、本開示で新たに設定した指標である「応力的余裕度」を求める。
本開示における「応力的余裕度」とは、せん断端面が有する、ひずみ量に応じた、遅れ破壊の発生しない外的負荷応力の許容量である。
ここで、上記の外的な負荷応力は、目的とする製品形状にプレス成形する際や、その製品を組み付けた時の拘束に発生する応力である。
以下に示す実施形態では、応力的余裕度を、試験条件の一つのパラメータである、成形ひずみを変数とした値(関数)とした。
なお、限界応力負荷からなる応力的余裕度は、試験から求めた限界応力負荷に所定の安全係数を乗算した値でも良い。また、限界応力負荷からなる応力的余裕度は、試験から求めた限界応力負荷に安全代分だけ小さな値としても良い。
第1の工程1は、例えば、図3に示すような5つの工程からなる。
図1中、符号10~13が試験の工程1Aに対応し、符号14の工程が、応力的余裕度設定の工程1Bに対応する。試験の工程1Aは、公知の方法を採用しても良い。
その各工程について説明する。
<せん断加工工程10>
せん断加工工程10は、成形部品の加工する金属板と同じ条件の金属板から、試験片を作製する工程である。せん断加工工程10は、評価対象の金属板と同じ材料や厚さからなる金属板に対し、せん断加工を施して、応力的余裕度を求めるための、せん断端面を有する試験片を作成する。
<ひずみ導入工程11>
ひずみ導入工程11は、試験片のせん断端面の少なくとも一部に、成形ひずみを付与する工程である。付与する成形ひずみは、せん断端面の延在方向に沿ったひずみとする。
付与する成形ひずみは、例えば、0.1%以上の大きさとする。
成形ひずみの付与は、例えば、試験片に対し、単軸引張又は単軸圧縮を行うことより実行する。また、成形ひずみの付与は、例えば、試験片に対し、板厚方向への曲げにより実行する。
<負荷工程12>
負荷工程12は、試験片のせん断端面に対し、予め設定した外的な負荷応力を負荷し、その負荷状態で拘束する工程である。応力負荷の方法は、例えば、引張応力負荷又は曲げ応力負荷により行う。この場合、治具を用いた曲げ応力負荷による方法が、簡便性の観点から特に望ましい。
<水素侵入工程13>
負荷工程12で外的な負荷応力を負荷し拘束した試験片を、予め設定した水素侵入環境に対し予め設定した時間設置し、その状態での当該試験片で、亀裂の発生状況を評価する工程である。
このとき、水素侵入環境と設置時間は、評価の対象となる材料が実際に使用される環境下で侵入すると推定される水素量と同等の、水素侵入量が得られる条件にすることが好ましい。
試験片の水素侵入環境下への設置は、例えば、塩酸やNHSCN水溶液などの酸液を収容した浴槽内に試験片を浸漬することで行う。酸液の濃度や浸漬時間は、許容上限として予め設定した水素量が試験片に侵入する条件となるように設定する。
せん断加工工程10で作成した各試験片について、上記のひずみ導入工程11~水素侵入工程13を、付与する成形ひずみや負荷する負荷応力の条件を変えて実行する。
<応力的余裕度決定の工程14>
応力的余裕度決定の工程14は、上記試験の結果に基づき、上記金属板のせん断面の遅れ破壊が発生しない限界の負荷応力である限界負荷応力を評価し、その限界負荷応力に基づき、上記金属板のせん断端面の遅れ破壊の発生に対する応力的余裕度を求める。具体的には、限界負荷応力を、その試験条件での応力的余裕度とする。
例えば、各試験片の試験条件(成形ひずみと外的な負荷応力)と、せん断端面での割れ発生の有無の評価結果に基づき、同一の成形ひずみに対する割れ発生が発生する外的な負荷応力と、割れが発生しない外的な負荷応力との境界値(割れが発生しない外的な負荷応力の最大値など)である限界応力負荷の値を求める。
これを、複数の成形ひずみについて整理して、(成形ひずみ、限界応力負荷)のデータを複数取得し、図4のグラフで表されるような、成形ひずみを変数とした限界応力負荷の値(関数)を、ひずみに応じた遅れ破壊の発生しない外的負荷応力の許容値である応力的余裕度を表現するデータとして求める。すなわち、応力的余裕度を、例えば、引張-圧縮による成形ひずみを変数とした関数として記述する。
なお、図4では、成形ひずみに応じてせん断端面の残留応力が増減し、成形ひずみの絶対値が大きいほど、遅れ破壊の応力的余裕度が増加する場合を例示している。ただし、材料やせん断端面の状態によっては、付与する成形ひずみによりせん断端面に亀裂や損傷が生じることで、成形ひずみにより逆に遅れ破壊の応力的余裕度が減少する場合も想定される。
そして、本実施形態では、上記のようにして求めた応力的余裕度と比較することで、応力的余裕度の評価に用いなかったせん断端面を有する試験片についても、金属板に負荷予定の外的負荷(負荷応力)に対する遅れ破壊の可能性を、試験を行うことなく、評価することが可能となる。
(第2の工程2)
第2の工程2は、金属板を目的とする成形部品にプレス成形する処理について成形解析(CAE解析)を行って、金属板を成形部品に成形することで発生する、成形部品のせん断端面の各所における、残留応力とひずみ量を求める処理を実行する。
(第3の工程3)
第3の工程3は、成形部品を他の部品に組み付けることで、成形部品のせん断端面の各所に負荷される負荷応力を求める。例えば、離型時のスプリングバック分だけ変形させて組み付けることで負荷応力が発生する。
なお、端面について、組付け時に発生する成形部品の変形は、プレス成形時の変形に比べ小さいので、組付け時に発生するひずみは無視した。
成形部品が、自動車用構造部品の場合、単体で又は他の部品と組み付けられた後で、自動車の躯体に組み付けられる。このように、成形部品が、他の部品と組み付けられたり、自動車の躯体に組み付けられたりする際に、所定の負荷応力が外部負荷として加えられた状態で組み付けられることがある。この外部負荷を負荷応力として求める。
負荷応力は、例えば、実際に製造した成形部品に対しゲージその他のセンサを貼り付けた状態で、組み付けてみて測定する。また、負荷応力は、目的の成形部品を他の部品に組み付けた際に入力される応力を、公知のCAE解析によって実行して求めても良い。
なお、本開示が対象とする遅れ破壊は、成形部品の経時的な使用により発生するものであって、成形部品を他の部品に組み付けて直ぐに発生する現象ではない。このため、実際に組み付けて外部負荷を求めることも可能である。
(第4の工程4)
第4の工程4は、第2の工程2で求めたひずみ量を変数とした上記金属板の応力的余裕度と、第2の工程2で求めた残留応力と上記第3の工程3で求めた負荷応力との合計応力と、に基づき、成形部品の遅れ破壊の余裕度を評価する。
ここで、合計応力を算出する残留応力と負荷応力は、せん断端面における同一領域(同一箇所)に発生する、残留応力と負荷応力同士を合算させる。すなわち、せん断端面の各所毎に合計応力を算出する。
なお、ひずみ量が予め設定した閾値以上の部分についてだけ、合計応力を算出するようにしてもよい。
第4の工程4では、例えば、せん断端面の各所毎に、第2の工程2で求めたひずみ量に対応する応力的余裕度と、成形部品のCAEによる残留応力と組付け時の外部負荷応力との合計応力とを比較することで、遅れ破壊の発生の有無を評価する。また、応力的余裕度と合計応力の差分からなる応力の余裕度を算出して、遅れ破壊に対しどの程度の応力的な余裕があるか評価しても良い。
例えば、遅れ破壊の発生を評価したい自動車部品に対して、CAEによる成形解析を行い、せん断端面各所での引張-圧縮によるひずみ量と成形後の残留応力を計算する。更に部品の組付け・使用時に想定される外部負荷応力を成形後の残留応力に足し合わせることで、その合計を求める。成形後の残留応力とくみつけ・使用時の外部負荷応力の合計が、せん断端面の各所における応力的余裕度を超過するか否かを判定し、超過する場合は遅れ破壊の危険度が高いと判断する。ただし、応力的余裕度は安全率を考えて、実際に測定された値よりも小さくとることも可能である。更には、前記の応力的余裕度を参考にして、遅れ破壊が発生しないと予測されるような金属部品形状並びに製造工程を設計することも可能である。
ここで、第2の工程2でCAEから出力するひずみの一例として、本開示では好ましくはせん断端面と平行方向へのひずみを用いる。用いるひずみは、塑性ひずみなどのその他のひずみに関するパラメータを用いても良い。
同様に、残留応力や負荷応力に対しても、好ましくは第一主応力を用いることが望ましいが、ミーゼス応力などのその他の応力に関するパラメータを用いても良い。
(処理フロー)
以上の本開示の評価方法に使用される、処理フローの例を示す。
この処理フローは、第1の工程1で求めた、成形ひずみに応じた応力的余裕度を記憶部に記憶しておき、コンピュータに、上記記憶している応力的余裕度を参照させ、入力された成形ひずみのひずみ量に対応する応力的余裕度の値を決定する。そして、入力された成形ひずみのひずみ量及び外的負荷応力に対する、遅れ破壊の可能性を評価する処理を実行させる。
この処理フローを、図5を参照して説明する。図5のような処理で評価を行えば、成形部品について、より効率的な遅れ破壊の評価が可能となる。
図5に示す例は、応力的余裕度算出部20、評価本体部30、記憶部40、及び見直し部50を備えている。そして、応力的余裕度算出部20、及び評価本体部30の処理を行う処理フローは、コンピュータのRAMやROMなどの記憶部40に記憶され、コンピュータで実行される。
<記憶部40>
記憶部40は、データベースなどの記録媒体からなる。
記憶部40には、成形ひずみ量を種々変更しつつ、せん断加工工程10~応力的余裕度決定の工程14の試験を繰り返すことで、金属板の材料条件、水素環境の条件、せん断条件毎に、試験条件を変数として、成形ひずみを変数として求めた応力的余裕度dのデータを記憶しておく。
<応力的余裕度算出部20>
応力的余裕度算出部20は、第1の工程1に対応する。
応力的余裕度算出部20では、まず、ステップS10にて、評価の基礎条件として、材料の種類(鋼種や厚さ)の条件と、遅れ破壊の条件である水素環境の条件(酸度や設置時間)の入力を促し、作業者の入力操作で、上記入力を取得する。
次に、ステップS20にて、せん断条件の入力を促し、作業者の入力操作で、上記入力を取得する。
次に、ステップS30では、ステップS10及びステップ20で入力された条件に合致した、各ひずみ量に対する応力的余裕度のデータ群((ひずみ量、応力的余裕度の値)のデータの集まり)を、記憶部40から取得する。
又は、試験によって求めた各ひずみ量に対する応力的余裕度のデータ群の入力を促し、作業者の入力操作で、上記入力情報を取得する。取得したデータは、記憶部40に記憶する。
次に、ステップS40では、ステップS30が取得した、ひずみ量に対する応力的余裕度のデータ群を参照し、公知の処理方式によって、応力的余裕度dを、ひずみ量xを変数とした関数f(x)として求める演算処理を実行する。
次に、ステップS50では、ステップS40で求めた応力的余裕度dの関数を、下記式のような、安全率s(:0<s≦1)を考慮した式に変更する。
d =s・f(x)
そして、求めた、応力的余裕度dの関数の情報は、試験条件をキーとして記憶部40に記憶する。
<評価本体部30>
評価本体部30では、まず、ステップS100にて、評価の対象とする実部品の材料の種類(鋼種や厚さ)や成形形状等の部品条件、せん断条件等の金属板の条件、及び成形条件と、遅れ破壊の条件である水素環境の条件(酸度や設置時間)の入力を促し、作業者の入力操作で、上記入力を取得する。
次に、ステップS110では、ステップS100にて取得した金属板及びせん断加工の条件と成形する実部品の形状情報などに基づき、CAEによる成形解析を実行する。
次に、ステップS120では、ステップS110での成形解析の処理結果から、実部品の全せん断端面部について、ひずみ量xと残留応力gを求める。
ステップS130では、組み付け・使用時の負荷応力hの入力を促して、操作者の入力によって負荷応力hを取得する。
ステップS140では、ステップS100で入力した条件に合致した応力的余裕度dの関数「s・f(x)」の情報を記憶部40から取得し、各せん断端面箇所について、ステップS110で入力したひずみ量xに応じた応力的余裕度dと、ステップS120で出力した残留応力gとステップS130で入力した負荷応力hとの合計応力(g+h)とを比較して、遅れ破壊のリスクがあるか否かの判定を行う。
ここで、図5のステップS140では、遅れ破壊のリスクがあるか否かの判定を行っているが、遅れ破壊の余裕度(=d-(g+h))を併せて出力するようにしてもよい。
また、応力的余裕度算出部20について、別途計算処理を実行して、ステップS10~S20での入力値を条件とした応力的余裕度dの関数を求め、その求めた関数をステップS10~S20での入力値をキーとしたデータとして記憶部40に入力しても良い。
<見直し部50>
見直し部50は、成形条件や部品形状に対し見直しの処理を実行し、その見直しで変更した成形条件や部品形状の変更条件をステップS120に出力する。
見直しの処理は、例えば、遅れ破壊の余裕度(=d-(g+h))が負値となっているせん断端面の箇所について、余裕度の絶対値を越える応力分だけ残留応力が小さくなるように、成形条件や部品形状の変更を行う。成形条件の見直しについては、例えば、プレス工程の工程数を増やして残留応力の緩和を図る。
部品が大型でせん断端面のすべてに手作業で評価を与えるのが困難な場合では、図5のような処理フローによる評価を行えば、自動で効率的に評価が可能となり、遅れ破壊のリスクがあると判断された場合、遅れ破壊のリスクが無いと判断されるまで、繰り返し成形条件を見直すことも可能である。
本実施形態の実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例では、引張強度1470MPa級鋼板で厚さが1.0mmの金属板からなる供試材Xを、評価対象の金属板として説明する。
なお、本発明は、この供試材Xの板条件に限定されるものではなく、せん断端面に遅れ破壊が発生するような引張強度が980MPa以上の高強度鋼板をはじめとした金属材料に対して適用が可能である。
初めに、供試材Xをせん断加工によりせん断して、長さ100mmの直線状のせん断端面を有する試験片を作製した。せん断する際の試験片の幅は30mmとして、試験片を100mm×30mmの短冊形状とした。せん断加工時のクリアランスは、板厚に対して12%に設定した。なお、上記実施形態での説明では、せん断条件が単一の場合を例に説明したが、せん断加工時のクリアランスなどのせん断条件が変化した場合にも、それに対応した評価が可能である。すなわち、そのせん断条件での応力的余裕度を求めれば良い。
次に、試験片のせん断端面に対し、せん断端面の延在方向に沿って引張又は圧縮による成形ひずみを与えた。本例では、成形ひずみは、試験片の両端をクランプした状態で単軸荷重試験機によって与えた。なお、本例では、成形ひずみを引張又は圧縮の場合について説明したが、成形ひずみが曲げによる変形の場合でも、同様の結果が得られることを確認している。また、成形ひずみを与えずにせん断加工のままの試験片も用意した。
次に、各試験片について、治具を用いた四点曲げにより外部的な拘束を与え、試験片のせん断端面の中央部に応力を負荷した。ただし、せん断時のバリ側を曲げの外側とし、引張応力が負荷されるようにした。
ここで負荷応力の大きさは、試験片の幅中央部かつ頂点部の第一主応力-第一主ひずみ関係をCAEによって求め、実際に試験片を曲げた際のひずみ量を測定し、対応づけることによって測定した。
本例では、応力負荷の方法として、四点曲げの場合について説明した。その他の曲げ荷重方法や、単軸引張などの荷重方法でも同様の傾向の結果が得られる。また、本例では、応力負荷の際には、せん断時のバリ側を曲げの外側とし、引張応力を負荷したが、同様にバリ側と反対側の面についても評価を行うことが可能である。
本例では、各試験片に負荷する負荷応力を、表に記載のように100MPa刻みで変更して、各成形ひずみの条件毎に、複数の試験片を用意した。
そして、負荷応力を負荷した試験片を、pH6のチオシアン酸溶液の浴槽に96時間、浸漬し、96時間後の遅れ破壊による亀裂発生の有無により遅れ破壊特性の評価を行った。
上記条件及び評価結果を、表1~表11に示す。
各表は、成形ひずみのひずみ量毎に纏めたものである。
Figure 2023173359000002
Figure 2023173359000003
Figure 2023173359000004
Figure 2023173359000005
Figure 2023173359000006
Figure 2023173359000007
Figure 2023173359000008
Figure 2023173359000009
Figure 2023173359000010
Figure 2023173359000011
Figure 2023173359000012
各表は、引張を正、圧縮を負としたときの、ひずみ量によって異なる負荷応力毎の遅れ破壊の発生の有無を表している。
表1~表11から分かるように、成形ひずみのひずみ量の絶対値が大きいほど、限界負荷応力が大きくなることが分かる。本例では、この成形ひずみを変数とした限界負荷応力が応力的余裕度となる。
図6は、遅れ破壊が発生しなかった限界の負荷応力から応力的余裕度を求め、応力的余裕度をひずみの関数として記述したものである。
このように、せん断後の成形ひずみに応じた応力的余裕度を記述することが出来ることが分かる。なお、本例では、せん断後の成形ひずみによって応力的余裕度が増加する場合を示したが、逆にせん断後の成形ひずみによって応力的余裕度が減少する場合でも同様の評価が可能である。
(実施例2)
次に、実施例1で求めた、せん断後の成形ひずみに応じた応力的余裕度を用いた遅れ破壊判定の一例を説明する。
実施例2では、自動車部品における実部品想定して、図7に示す形状のせん断端面を有する実部品を想定し、供試材Xを用いて、その実部品の形状にプレス成形した。図7に示す部品形状では、端面にひずみが入力される。
このとき、成形後の部品における、代表的なせん断端面部の代表的な箇所A~J(不図示)の10箇所において、せん断時のバリ側の表面における、成形ひずみと残留応力を、CAEによって計算した。
CAEには1.0mm角のシェル要素を用いて、動的陽解法により成形とスプリングバックの工程を計算した。
なお、本実施例では図7に示す実部品を例示したが、この部品に限らず、遅れ破壊の危険がある材料のせん断端面を有する部品であれば、同様の評価が可能である。
その後、成形後の実部品に対して、遅れ破壊試験を行った。ただし遅れ破壊試験では、pH6のチオシアン酸溶液に浸漬し、96時間後の遅れ破壊による亀裂発生の有無により遅れ破壊の評価を行った。
せん断後の成形ひずみと残留応力のCAE結果を、遅れ破壊試験発生の有無と共に表12に示した。
Figure 2023173359000013
(実施例3)
次に図8においては、表12に示したせん断後の成形ひずみと残留応力、及び遅れ破壊の発生の有無を、図6の応力的余裕度と共にプロットして比較した。図8によると、応力的余裕度の線を超過するか否かで、実際の部品におけるせん断端面の遅れ破壊の発生の有無を予測することができることが分かった。
更に、実部品の組付け・使用時の外部応力負荷を全ての箇所で最大300MPaと想定した。組付けや使用時の外部負荷応力の最大量については、ひずみゲージを用いて組付けや想定される使用時の実部品の弾性的な変形量を測定することにより推定した。
その分の応力を上乗せした場合の、A~Jの代表的な箇所における、せん断後の成形ひずみと残留応力を求めた。それを成形したままでの遅れ破壊の発生の有無と共に、図6の応力的余裕度と共にプロットして比較したのが、図9である。
図9においては、部品成形後の遅れ破壊試験では遅れ破壊が発生しない場合でも、組付け・使用時の外部応力負荷を考慮すると、応力的余裕度を超過する箇所が存在した。これらの箇所は、成形したままでの遅れ破壊試験では遅れ破壊が発生しないが、組付け・使用時の負荷応力を考慮すると遅れ破壊が発生する可能性のある、潜在的な遅れ破壊危険箇所であるといえることが分かった。
表13は、応力的余裕度を参考に、組付け・使用時の応力を考慮した場合でも、遅れ破壊が生じないようにするため、同一の成形部品に対し、最終的な成形工程の前に中間の成形工程を新たに設ける例である。中間の成形工程を設けることで、応力とひずみ量を変化させた場合の部品の代表的箇所A~Jの成形ひずみと残留応力を表している。
また、表13の部品箇所に対し、最大300MPaと想定した組付け応力を負荷して図6の応力的余裕度と比較をしたのが、図10である。図10においては組付け・使用時の応力を考慮しても応力的余裕度を超過しないことから、遅れ破壊の危険性が小さいと予測される。応力的余裕度を参考にすることで、このように遅れ破壊を生じない自動車部品、並びにその製造工程を設計することができことが分かった。
Figure 2023173359000014
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)高強度鋼板からなる金属板を成形して成形部品を製造し、その成形部品を他の部品に組み付けて使用される当該成形部品のせん断端面での遅れ破壊特性を評価する成形部品の遅れ破壊特性評価方法であって、
上記金属板のせん断面に予め設定した負荷応力を負荷した状態で拘束する工程と、上記拘束した状態で、当該金属板を予め設定した水素侵入環境に予め設定した時間設置する工程とを備える試験の結果に基づき、上記金属板のせん断面での遅れ破壊が発生しない外的負荷応力の許容値である応力的余裕度を、ひずみ量を変数として求める第1の工程と、
上記金属板を上記成形部品に成形する成形解析を行って、上記金属板を上記成形部品に成形する際に発生する、上記成形部品のせん断端面での残留応力とひずみ量を求める第2の工程と、
上記成形部品を他の部品に組み付けることで、上記せん断端面に負荷される負荷応力を求める第3の工程と、
上記第2の工程で求めたひずみ量を変数とした上記金属板の応力的余裕度と、上記第2の工程で求めた残留応力と上記第3の工程で求めた負荷応力との合計応力と、に基づき、上記成形部品の遅れ破壊の余裕度を評価する第4の工程と、
を備える。
(2)上記第4の工程において、第2の工程で求めた残留応力とひずみ量では、遅れ破壊が発生すると評価した場合に、上記成形部品の形状、及び上記成形の条件のうちのいずれか一方を変更する第5の工程を有し、
上記第5の工程は、遅れ破壊が発生すると評価された箇所について、上記第2の工程で求める残留応力が小さくなる方向に変更を行う。
(3)上記金属板は、引張強度が980MPa以上の鋼板である。
(4)本開示の成形部品の遅れ破壊特性評価方法によって、成形部品が遅れ破壊を発生しないと評価される上記成形の条件を決定し、その決定した成形の条件によって成形して成形部品を製造する、成形部品の製造方法。
1 第1の工程
2 第2の工程
3 第3の工程
4 第4の工程
10 せん断工程
11 ひずみ導入工程
12 負荷工程
13 水素侵入工程
14 応力的余裕度決定の工程
20 応力的余裕度算出部
30 評価本体部
40 記憶部
50 見直し部
d 応力的余裕度
g 残留応力
h 負荷応力
x ひずみ量

Claims (4)

  1. 高強度鋼板からなる金属板を成形して成形部品を製造し、その成形部品を他の部品に組み付けて使用される当該成形部品のせん断端面での遅れ破壊特性を評価する成形部品の遅れ破壊特性評価方法であって、
    上記金属板のせん断面に予め設定した負荷応力を負荷した状態で拘束する工程と、上記拘束した状態で、当該金属板を予め設定した水素侵入環境に予め設定した時間設置する工程とを備える試験の結果に基づき、上記金属板のせん断面での遅れ破壊が発生しない外的負荷応力の許容値である応力的余裕度を、ひずみ量を変数として求める第1の工程と、
    上記金属板を上記成形部品に成形する成形解析を行って、上記金属板を上記成形部品に成形する際に発生する、上記成形部品のせん断端面での残留応力とひずみ量を求める第2の工程と、
    上記成形部品を他の部品に組み付けることで、上記せん断端面に負荷される負荷応力を求める第3の工程と、
    上記第2の工程で求めたひずみ量を変数とした上記金属板の応力的余裕度と、上記第2の工程で求めた残留応力と上記第3の工程で求めた負荷応力との合計応力と、に基づき、上記成形部品の遅れ破壊の余裕度を評価する第4の工程と、
    を備えることを特徴とする成形部品の遅れ破壊特性評価方法。
  2. 上記第4の工程において、第2の工程で求めた残留応力とひずみ量では、遅れ破壊が発生すると評価した場合に、上記成形部品の形状、及び上記成形の条件のうちのいずれか一方を変更する第5の工程を有し、
    上記第5の工程は、遅れ破壊が発生すると評価された箇所について、上記第2の工程で求める残留応力が小さくなる方向に変更を行う、
    ことを特徴とする請求項1に記載した成形部品の遅れ破壊特性評価方法。
  3. 上記金属板は、引張強度が980MPa以上の鋼板である、請求項1又は請求項2に記載した成形部品の遅れ破壊特性評価方法。
  4. 請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の成形部品の遅れ破壊特性評価方法によって、成形部品が遅れ破壊を発生しないと評価される上記成形の条件を決定し、その決定した成形の条件によって成形して成形部品を製造する、
    ことを特徴とする成形部品の製造方法。
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