JP2023172693A - インバータ装置及びそれを備えた電動圧縮機 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、モータを駆動するインバータ装置と、それを備えた電動圧縮機に関するものである。
ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両の車室内を空調するための車両用空気調和装置では、エンジン駆動の圧縮機に代わってモータを備えた電動圧縮機が使用される。その場合、車両には例えばDC300V程の高電圧バッテリから成る高電圧電源と、DC12V程の通常のバッテリから成る低電圧電源が搭載され、インバータ装置のインバータ回路により、高電圧電源の直流電圧を交流とした電圧が電動圧縮機のモータに供給される。
一方、インバータ装置のインバータ回路を制御する制御回路には、例えば低電圧電源の直流電圧をスイッチング電源装置により所定の電圧(例えばDC15V等)に変換して給電する。そのため、スイッチング電源装置には絶縁トランスから成るスイッチングトランスが設けられ、このスイッチングトランスの一次側の低電圧回路と、二次側の高電圧回路とを絶縁している。即ち、高電圧電源から電源が供給される高電圧回路と、低電圧電源から電源が供給される低電圧回路を備えたインバータ装置が、電動圧縮機のハウジングに構成されたインバータ収容部に収容されるかたちとされていた。
図6を用いて係る従来の電動圧縮機100の電気回路を説明する。図6において100は電動車両に搭載される車両用空気調和装置の冷媒回路を構成する従来の電動圧縮機であり、2はそのハウジングを示している。このハウジング2内に図示しない圧縮機構と、当該圧縮機構を駆動するモータ8が収容され、ハウジング2のインバータ収容部6にはモータ8を運転するためのインバータ回路34、このインバータ回路34を制御する制御回路36、高電圧回路フィルタ(EMIフィルタ)37、低電圧回路フィルタ(EMIフィルタ)38、及び、スイッチング電源装置39等を備えたインバータ装置103が収納される。
尚、車両には電動圧縮機100のモータ8や、図示しない走行用のモータに給電して駆動するための例えばDC300V程の高電圧バッテリから成る高電圧電源(HV電源)41と、DC12V程のバッテリから成る低電圧電源(LV電源)42が搭載されている。また、ハウジング2は車体(グランド)に導通されている。
インバータ装置103のインバータ回路34は、三相ブリッジ接続されたIGBT等から成る図示しない6個のスイッチング素子から構成されており、各スイッチング素子は制御回路36が有するゲートドライバが生成するゲート駆動信号により制御される。また、各スイッチング素子はハウジング2と熱交換関係に配置され、スイッチング素子が発生する熱はハウジング2に放出され、スイッチング素子は冷却される構成とされている。即ち、ハウジング2が各スイッチング素子のヒートシンクとされている。
制御回路36はマイクロプロセッサ(CPU)から構成されており、インバータ回路34の各スイッチング素子をゲートドライバによりスイッチングしてPWM変調を行うことで、高電圧電源41の直流電圧を所定周波数の交流電圧とし、モータ8に供給する。
高電圧回路フィルタ37は高電圧電源41とインバータ回路34の間に接続されており、コモンモードコイル43、Yコンデンサ44、46、平滑コンデンサ47から構成される。この高電圧回路フィルタ37は、インバータ回路34のスイッチングにより発生するEMIノイズを低減させる作用を奏する。低電圧回路フィルタ38は、Xコンデンサ48、コモンモードコイル49、Yコンデンサ51、52、平滑コンデンサ53から構成される。低電圧回路フィルタ38は、低電圧電源42とスイッチング電源装置39の間に接続され、スイッチング電源装置39でのスイッチングにより発生するEMIノイズを低減させる作用を奏する。
スイッチング電源装置39は、低電圧電源42(DC12V)をスイッチングして所定の直流電圧(HV15V、HV5V)を生成し、制御回路36に給電するためのDC-DCコンバータである。尚、HV15Vはインバータ回路34のゲート駆動信号を生成するゲートドライバ(制御回路36が有する)に供給される電圧であり、HV5Vは制御回路36の電源となる電圧である。
スイッチング電源装置39は、一次巻線56と、この一次巻線56とは絶縁された二次巻線57から成る絶縁トランス(カップリングトランス)にて構成されたスイッチングトランス60と、一次巻線56に接続されたスイッチング素子58を有している。そして、スイッチングトランス60の巻数比に応じて、DC15V(HV15V)とDC5V(HV5V)が出力されるようにスイッチング素子58がスイッチング制御される。
スイッチング電源装置39は低電圧電源42をスイッチングして制御回路36に電源を供給すると共に、スイッチングトランス60により、一次巻線56が位置する低電圧電源42側の低電圧回路101と、二次巻線57が位置する高電圧電源41側の高電圧回路102とを絶縁する。そして、このように絶縁されたインバータ装置103の高電圧回路102と低電圧回路101が、インバータ収容部6内に近接して収容されることになる。
ここで、インバータ回路34を構成するスイッチング素子のスイッチングに伴うサージ電圧(振動電圧)はモータ8側に伝達するため、電圧変動によりモータ8とハウジング2間の浮遊容量(図6に61で示す)を介してコモンモード電流が流出する(図6中に矢印で示す)。特に、電動圧縮機100では、モータ8とハウジング2間の浮遊容量61を介して流出するコモンモード電流によるノイズ(コモンモードノイズ)が支配的となる。尚、図6中の62はインバータ回路34とハウジング2間の浮遊容量である。
一方、従来より商用交流を電源とするエアコンや給湯器等の民生用機器においては、インバータ回路の出力部にコモンモードコイルやフェライトコアを挿入することにより、モータとハウジング間の浮遊容量を介して流出する経路のインピーダンスを高めてノイズの低減を図っていた(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、図6のような電動車両に搭載される電動圧縮機100のインバータ装置103では、小型軽量化(振動対策も含む)が必須事項であり、上述した民生用機器のようにインバータ回路34の出力部にコモンモードコイルを入れる、或いは、フェライトコアを付ける等といった対策を施し難い実情がある。
その上、前述した如くインバータ収容部6内で高電圧回路102と低電圧回路101が混在しているので、図7に示すように高電圧回路102にあるインバータ回路34の出力部(インバータ回路34とモータ8の間)に三相のコモンモードコイル104を挿入すると、民生用機器と同様に高電圧回路102のノイズ低減は図れるものの、新たな共振が発生し、結果として高電圧回路102とカップリングしている低電圧回路101のノイズが大幅に悪化してしまうと云う問題があった。
図8は係るコモンモードコイル104の構造を示している。図7のコモンモードコイル104は、図8に示す如く、インバータ回路34の出力のU相に接続されたU相線(コイル)104Uと、V相に接続されたV相線(コイル)104Vと、W相に接続されたW相線(コイル)104Wから成り、これらUVW相の三線104U、104V、104Wが、コア106に対して各相毎に個別に分割巻きされた構造であった。尚、図8中の矢印は磁束の向きを示す。
また、図9中のL100は図8のコモンモードコイル104のインピーダンスの周波数特性を示し、L101は図8のコモンモードコイル104のリーケージインダクタンスの周波数特性を示している(横軸は周波数、縦軸はインピーダンス)。
更に、図10中の(a)は高電圧回路102のノイズ測定結果を示し、横軸は周波数、縦軸はノイズである。また、L102は図6のようにコモンモードコイルを挿入していない場合、L103は図7のようにコモンモードコイル104を挿入した場合を示している。また、図10中の(b)は、改善差違:L102-L103を示している。
図10(b)から明らかな如く、インバータ回路34の出力部とモータ8の間に三相のコモンモードコイル104を挿入したことにより、モータ8とハウジング2間の浮遊容量61を介して流出するコモンモード電流(図7中に黒矢印で示す)によるノイズ(コモンモードノイズ)は低減される(図10(b)は0より大きい程、ノイズ低減効果が大)。
しかしながら、高電圧回路102に分割巻きのコモンモードコイル104を挿入したことにより、この経路のインピーダンスが高まるが、コモンモードコイル104のリーケージインダクタンスに起因する共振により、共振点においてインピーダンスが低下し、結果として図7中白抜き矢印や破線矢印で示すようにコモンモード電流が低電圧回路101に大幅に流出し、低電圧回路101のノイズの悪化をもたらす。
図11中の(a)は低電圧回路101のノイズ測定結果を示し、横軸は周波数、縦軸はノイズである。また、L104は図6のようにコモンモードコイルを高電圧回路102に挿入していない場合、L105は図7のように分割巻きのコモンモードコイル104を高電圧回路102に挿入した場合を示している。また、図11中の(b)は、それらの差違:L104-L105を示している。
コモンモードコイル104はU相線104Uと、V相線104Vと、W相線104Wがコア106に個別に分割巻きされた構造であるため、各相が疎結合となり、図9のL101に示すようにリーケージインダクタンスが大きくなる。そのため、コモンモードコイル104のリーケージインダクタンスとモータ8の巻線間容量とのディファレンシャルモード共振により、図10の6MHz付近でインピーダンスは極小値を持ち、この帯域のコモンモード電流が極端に多く流出することになる。その結果、高電圧回路102から低電圧回路101に流出するノイズが極端に大きくなり、図11(b)から明らかな如く、低電圧回路101のノイズが大幅に悪化する(図11(b)は0より小さい程、ノイズが増大していることを意味する)。
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、モータ及びハウジングから流出するコモンモード電流によるノイズを、支障無く、且つ、効果的に低減することができるインバータ装置及びそれを備えた電動圧縮機を提供することを目的とする。
本発明のインバータ装置は、スイッチング素子より構成された三相のインバータ回路を備え、このインバータ回路によりモータを駆動するものであって、インバータ回路の三相出力部に挿入されたコモンモードコイルを備え、このコモンモードコイルは、UVW相の三線がコアに対してトリファイラ巻きされていることを特徴とする。
請求項2の発明のインバータ装置は、上記発明において高電圧電源から電源が供給されるインバータ回路を含む高電圧回路と、低電圧電源から電源が供給される低電圧回路を備えたことを特徴とする。
請求項3の発明のインバータ装置は、請求項1の発明においてインバータ回路は高電圧電源から電源が供給されると共に、高電圧電源から各相のスイッチング素子に至る経路のインダクタンスのインピーダンスと、スイッチング素子と当該スイッチング素子のヒートシンク間の浮遊容量のインピーダンスがバランスされていることを特徴とする。
請求項4の発明の電動圧縮機は、モータが収容されるハウジングと、このハウジングに構成されたインバータ収容部を備え、上記各発明のインバータ装置が、インバータ収容部に収容されていることを特徴とする。
請求項5の発明の電動圧縮機は、上記発明においてハウジングが、スイッチング素子のヒートシンクとされていることを特徴とする。
請求項6の発明の電動圧縮機は、請求項4の発明において車両に搭載されることを特徴とする。
本発明によれば、スイッチング素子より構成された三相のインバータ回路を備え、このインバータ回路によりモータを駆動するインピーダンス装置において、インバータ回路の三相出力部に挿入されたコモンモードコイルを備え、このコモンモードコイルを、UVW相の三線がコアに対してトリファイラ巻きされた構成としたので、コモンモードコイルの各相の結合が密となり、リーケージインダクタンスが大幅に減少する。これにより、モータの各巻線間容量との共振周波数が高周波側に遷移し、モータのもともとのインピーダンスの方が支配的となるため、コモンモードコイルの挿入に伴うノイズ特性の悪化を防ぐことができるようになる。
また、コモンモードコイルをトリファイラ巻きとしたことで、各相の線間寄生容量も低減することができるため、高周波帯域でのインピーダンス低下も通常の分割巻きに比して優位となる(図9に示す)。
更に、コモンモードコイルを設けることによるノイズ特性の悪化が防止されることにより、請求項2の発明の如く高電圧回路と低電圧回路を備える場合にも、結果として低電圧回路におけるノイズも効果的に抑制することができるようになる。これは請求項4の発明の如くインバータ装置がハウジングのインバータ収容部に収容されて、請求項5の発明の如くハウジングがスイッチング素子のヒートシンクとされ、請求項6の発明の如く小型軽量化が要求される車両搭載型の電動圧縮機において極めて好適なものとなる。
更にまた、請求項3の発明の如きインピーダンスバランス法を適用するに当たり、バランス条件を複雑化させる中間容量の支配的成分はモータ/ハウジング間の浮遊容量となるが、本発明の如くコモンモードコイルを挿入して、この経路のインピーダンスを高くすることによって、係る浮遊容量の影響を受け難くすることができるので、インピーダンスバランス法を容易に適用することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。尚、下記の各図において、図6や図7と同一符号で示すものは同一若しくは同様の機能を奏するものとする。
先ず、図2を参照しながら本発明を適用した実施例の電動圧縮機(所謂インバータ一体型電動圧縮機)1について説明する。尚、実施例の電動圧縮機1は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両に搭載される車両用空気調和装置の冷媒回路の一部を構成するものである。
(1)電動圧縮機1の構成
図2において、電動圧縮機1の金属性の筒状ハウジング2内は、当該ハウジング2の軸方向に交差する仕切壁3により圧縮機構収容部4とインバータ収容部6とに区画されており、圧縮機構収容部4内に例えばスクロール型の圧縮機構7と、この圧縮機構7を駆動するモータ8が収容されている。
図2において、電動圧縮機1の金属性の筒状ハウジング2内は、当該ハウジング2の軸方向に交差する仕切壁3により圧縮機構収容部4とインバータ収容部6とに区画されており、圧縮機構収容部4内に例えばスクロール型の圧縮機構7と、この圧縮機構7を駆動するモータ8が収容されている。
この場合、実施例のモータ8はハウジング2に固定されたステータ9と、このステータ9の内側で回転するロータ11から成るIPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)である。
仕切壁3の圧縮機構収容部4側の中心部には軸受部12が形成されており、ロータ11の駆動軸13の一端はこの軸受部12に支持され、駆動軸13の他端は圧縮機構7に連結されている。ハウジング2の圧縮機構収容部4に対応する位置の仕切壁3近傍には吸入口14が形成されており、モータ8のロータ11(駆動軸13)が回転して圧縮機構7が駆動されると、この吸入口14からハウジング2の圧縮機構収容部4内に作動流体である低温の冷媒が流入し、圧縮機構7に吸引されて圧縮される。
そして、この圧縮機構7で圧縮され、高温・高圧となった冷媒は、図示しない吐出口よりハウジング2外の前記冷媒回路に吐出される構成とされている。また、吸入口14から流入した低温の冷媒は、仕切壁3近傍を通ってモータ8の周囲を通過し、圧縮機構7に吸引されることから、仕切壁3も冷却されることになる。
そして、この仕切壁3で圧縮機構収容部4と区画されたインバータ収容部6内には、モータ8を駆動制御する本発明のインバータ装置16が収容される。この場合、インバータ装置16は、仕切壁3を貫通する密封端子やリード線を介してモータ8に給電する構成とされている。
(2)インバータ装置16の構造
本発明の一実施例のインバータ装置16は、基板17と、この基板17の一面側に配線された6個のスイッチング素子18と、基板17の他面側に配線された制御回路36と、図示しないHVコネクタ、LVコネクタ等から構成されている。各スイッチング素子18は、実施例ではMOS構造をゲート部に組み込んだ絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等から構成されている。
本発明の一実施例のインバータ装置16は、基板17と、この基板17の一面側に配線された6個のスイッチング素子18と、基板17の他面側に配線された制御回路36と、図示しないHVコネクタ、LVコネクタ等から構成されている。各スイッチング素子18は、実施例ではMOS構造をゲート部に組み込んだ絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等から構成されている。
この場合、各スイッチング素子18が後述する三相のインバータ回路34を構成するものであり、各スイッチング素子18の端子部22は、基板17に接続されている。そして、このように組み立てられたインバータ装置16は、各スイッチング素子18がある一面側が仕切壁3側となった状態でインバータ収容部6内に収容されて仕切壁3に取り付けられ、カバー23にて塞がれる。この場合、基板17は仕切壁3から起立するボス部24を介して仕切壁3に固定されることになる。
このようにインバータ装置16が仕切壁3に取り付けられた状態で、各スイッチング素子18は仕切壁3に直接若しくは所定の絶縁熱伝導材を介して密着し、ハウジング2の仕切壁3と熱交換関係となる。そして、前述した如く仕切壁3は圧縮機構収容部4内に吸入される冷媒によって冷やされているので、各スイッチング素子18Aは仕切壁3を介して吸入冷媒と熱交換関係となり、仕切壁3の厚みを介して圧縮機構収容部4内に吸入された冷媒によって冷却され、各スイッチング素子18自体は仕切壁3を介して冷媒に放熱するかたちとなる。即ち、ハウジング2(仕切壁3)が各スイッチング素子18のヒートシンクとされている。
(3)インバータ装置16の回路構成
次に、図1において本発明のインバータ装置16は、モータ8を運転するためのインバータ回路34と、このインバータ回路34を制御する制御回路36と、高電圧回路フィルタ(EMIフィルタ)37と、低電圧回路フィルタ(EMIフィルタ)38と、スイッチング電源装置39等から構成され、これらが前述した基板17上に配線され、前述した如くインバータ収容部6内に収納される。
次に、図1において本発明のインバータ装置16は、モータ8を運転するためのインバータ回路34と、このインバータ回路34を制御する制御回路36と、高電圧回路フィルタ(EMIフィルタ)37と、低電圧回路フィルタ(EMIフィルタ)38と、スイッチング電源装置39等から構成され、これらが前述した基板17上に配線され、前述した如くインバータ収容部6内に収納される。
尚、車両には電動圧縮機1のモータ8や、図示しない走行用のモータに給電して駆動するための例えばDC300V程の高電圧バッテリから成る高電圧電源(HV電源)41と、DC12V程のバッテリから成る低電圧電源(LV電源)42が搭載されており、インバータ装置16は前述した図示しないHVコネクタにより高電圧電源41に接続され、LVコネクタにより低電圧電源42に接続される。また、ハウジング2は車体(グランド)に導通されている。
インバータ回路34は、三相ブリッジ接続の前述した6個のスイッチング素子18から構成されており、各スイッチング素子18は制御回路36が有するゲートドライバが生成するゲート駆動信号により制御される。制御回路36はマイクロプロセッサ(CPU)から構成されており、インバータ回路34の各スイッチング素子18をゲートドライバによりスイッチングしてPWM変調を行うことで、高電圧電源41の直流電圧を所定周波数の交流電圧とし、モータ8に供給する。
高電圧回路フィルタ37は高電圧電源41とインバータ回路34の間に接続されており、コモンモードコイル43、Yコンデンサ44、46、平滑コンデンサ47から構成される。この高電圧回路フィルタ37は、インバータ回路34のスイッチングにより発生するEMIノイズを低減させる作用を奏する。低電圧回路フィルタ38は、Xコンデンサ48、コモンモードコイル49、Yコンデンサ51、52、平滑コンデンサ53から構成される。低電圧回路フィルタ38は、低電圧電源42とスイッチング電源装置39の間に接続され、スイッチング電源装置39でのスイッチングにより発生するEMIノイズを低減させる作用を奏する。
スイッチング電源装置39は、低電圧電源42(DC12V)をスイッチングして所定の直流電圧(HV15V、HV5V)を生成し、制御回路36に給電するためのDC-DCコンバータである。尚、HV15Vはインバータ回路34のゲート駆動信号を生成するゲートドライバ(制御回路36が有する)に供給される電圧であり、HV5Vは制御回路36の電源となる電圧である。
スイッチング電源装置39は、一次巻線56と、この一次巻線56とは絶縁された二次巻線57から成る絶縁トランス(カップリングトランス)にて構成されたスイッチングトランス60と、一次巻線56に接続されたスイッチング素子58を有している。そして、スイッチングトランス60の巻数比に応じて、DC15V(HV15V)とDC5V(HV5V)が出力されるようにスイッチング素子58がスイッチング制御される。
スイッチング電源装置39は低電圧電源42をスイッチングして制御回路36に電源を供給すると共に、スイッチングトランス60により、一次巻線56が位置する低電圧電源42側の低電圧回路63と、二次巻線57が位置する高電圧電源41側の高電圧回路64とを絶縁する。そして、インバータ装置16は上記のように絶縁された高電圧回路64と低電圧回路63が基板17上で近接した状態で構成され、インバータ収容部6内に収容されている。
ここで、前述した如くインバータ回路34を構成するスイッチング素子18のスイッチングに伴うサージ電圧(振動電圧)はモータ8側に伝達するため、電圧変動によりモータ8とハウジング2間の浮遊容量61を介してコモンモード電流が流出する(図1中に矢印で示す)。特に、実施例のような電動圧縮機1では、モータ8とハウジング2間の浮遊容量61を介して流出するコモンモード電流によるノイズ(コモンモードノイズ)が支配的となる。尚、図7中の62はインバータ回路34のスイッチング素子18とハウジング2間の浮遊容量である。
そこで、この実施例ではインバータ回路34の三相出力部(インバータ回路34とモータ8の間の三線)にトリファイラ巻きのコモンモードコイル66を挿入している(図1)。図3は係るコモンモードコイル66の構造を示している。図2のコモンモードコイル66は、図3に示す如くインバータ回路34の出力のU相に接続されたU相線(コイル)66Uと、V相に接続されたV相線(コイル)66Vと、W相に接続されたW相線(コイル)66Wから成り、これらUVW相の三線66U、66V、66Wが例えば平行に、コア67に対してトリファイラ巻きされている。尚、図3中の矢印は磁束の向きを示す。
図9中のL1は図3のコモンモードコイル66のインピーダンスの周波数特性を示し、L2は図3のコモンモードコイル66のリーケージインダクタンスの周波数特性を示している(同様に横軸は周波数、縦軸はインピーダンス)。この図のL1とL100から明らかな如く、図3のコモンモードコイル66のインピーダンス特性は、図8のコモンモードコイル104のインピーダンス特性よりも高周波側で高くなる。
また、図3のコモンモードコイル66ではUVW相の三線66U、66V、66Wの結合が密となるため、図9中のL2とL101から明らかな如く、図3のコモンモードコイル66のリーケージインダクタンスは、図8のコモンモードコイル104よりも小さくなる。即ち、コモンモードコイル66の各相の結合が密となり、リーケージインダクタンスが大幅に減少する。これにより、モータ8の巻線間容量との共振周波数が高周波側に遷移し、モータ8のもともとのインピーダンスの方が支配的となるため、コモンモードコイル66の挿入に伴うノイズ特性の悪化が防止される。
また、コモンモードコイル66をトリファイラ巻きとしたことで、各相の線間寄生容量も低減することができるため、高周波帯域でのインピーダンス低下も図8の分割巻きのコモンモードコイル104に比して優位となる。
図4中の(a)は図1の高電圧回路64のノイズ測定結果を示し、横軸は周波数、縦軸はノイズである。また、L102は前述した図6の場合、L103は前述した図7の場合、L3は図1のようにトリファイラ巻きのコモンモードコイル66を挿入した場合を示している。また、図4中の(b)は、改善差違:L103-L3を示している。
図4(b)は0より大きい程、ノイズが改善されていることを意味する。この図4(b)から明らかな如く、インバータ回路34の三相出力部とモータ8の間の各相にトリファイラ巻きのコモンモードコイル66を挿入したことにより、コモンモードコイル66の挿入に伴うノイズ特性の悪化が防止され、高周波帯域でのインピーダンス低下も図8の分割巻きのコモンモードコイル104に比して優位となることが分かる。
更に、高電圧回路64のインバータ回路34の出力部にコモンモードコイル66を設けることによるノイズ特性の悪化が防止されることにより、結果として低電圧回路63におけるノイズも効果的に抑制することができるようになる。
また、図5中の(a)は図1の低電圧回路63のノイズ測定結果を示し、横軸は周波数、縦軸はノイズである。また、L104は前述した図6の場合、L105は前述した図7の場合、L4は図1のようにトリファイラ巻きのコモンモードコイル66を高電圧回路64に挿入した場合を示している。また、図5中の(b)は、それらの差違:L105-L4を示している。
図5中の(b)から明らかな如く、前述したコモンモードコイル66により高電圧回路64での効果により、結果として低電圧回路63におけるノイズも効果的に抑制できている(図5中の(b)は0より大きい程、ノイズ低減効果が大であることを示す)。特に、実施例のように車両搭載型の電動圧縮機1では、高電圧回路64と低電圧回路63がハウジング2のインバータ収容部6に収容され、小型軽量化が要求されるので、上記のようなノイズ抑制効果は極めて好適なものとなる。
ここで、高電圧電源41から各相のスイッチング素子18に至る経路のインダクタンスのインピーダンスと、スイッチング素子18とハウジング2(ヒートシンク)間の浮遊容量62のインピーダンスのバランスが阻害されると、EMIノイズが増大することになるので、実施例のインバータ装置16では各インピーダンスがバランスされるように各素子が設定されているが、インバータ回路34の三相出力部にコモンモードコイル66を挿入することで、浮遊容量61を経由する経路のインピーダンスが高くなる。
インピーダンスバランス法においてバランス条件を複雑化させる中間容量の支配的成分はモータ8とハウジング2間の浮遊容量61となるが、本発明の如くインバータ回路34の三相出力部にコモンモードコイル66を挿入して、浮遊容量61を経由する経路のインピーダンスを高くすることで、係る浮遊容量61の影響を受け難くすることができるので、インピーダンスバランス法を容易に適用することが可能となる。
尚、実施例ではDC300V程の高電圧バッテリから成る高電圧電源41と、DC12V程のバッテリから成る低電圧電源42を設け、この低電圧電源42から高電圧回路64側の直流電圧(HV15V、HV5V)を生成する場合で説明したが、それに限らず、高電圧電源41から直接高電圧回路64側の直流電圧(HV15V、HV5V)を生成するようにしてもよい。
また、実施例では電動圧縮機のモータを駆動するインバータ装置で本発明を説明したが、請求項1乃至請求項3の発明ではそれに限らず、高電圧回路と低電圧回路を備えてモータを駆動する種々のインバータ装置に適用可能である。更に、実施例で示した具体的な構成や数値はそれに限られるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
1 電動圧縮機
2 ハウジング
3 仕切壁
6 インバータ収容部
8 モータ
16 インバータ装置
17 基板
18 スイッチング素子
34 インバータ回路
36 制御回路
37 高電圧回路フィルタ
38 低電圧回路フィルタ
39 スイッチング電源装置
41 高電圧電源
42 低電圧電源
63 低電圧回路
64 高電圧回路
66 コモンモードコイル
66U U相線
66V V相線
66W W相線
67 コア
2 ハウジング
3 仕切壁
6 インバータ収容部
8 モータ
16 インバータ装置
17 基板
18 スイッチング素子
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36 制御回路
37 高電圧回路フィルタ
38 低電圧回路フィルタ
39 スイッチング電源装置
41 高電圧電源
42 低電圧電源
63 低電圧回路
64 高電圧回路
66 コモンモードコイル
66U U相線
66V V相線
66W W相線
67 コア
Claims (6)
- スイッチング素子より構成された三相のインバータ回路を備え、該インバータ回路によりモータを駆動するインバータ装置において、
前記インバータ回路の三相出力部に挿入されたコモンモードコイルを備え、該コモンモードコイルは、UVW相の三線がコアに対してトリファイラ巻きされていることを特徴とするインバータ装置。 - 高電圧電源から電源が供給される前記インバータ回路を含む高電圧回路と、低電圧電源から電源が供給される低電圧回路を備えたことを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。
- 前記インバータ回路は高電圧電源から電源が供給されると共に、
前記高電圧電源から各相の前記スイッチング素子に至る経路のインダクタンスのインピーダンスと、前記スイッチング素子と当該スイッチング素子のヒートシンク間の浮遊容量のインピーダンスがバランスされていることを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。 - 前記モータが収容されるハウジングと、該ハウジングに構成されたインバータ収容部を備え、
前記インバータ装置は、前記インバータ収容部に収容されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載のインバータ装置を備えた電動圧縮機。 - 前記ハウジングが、前記スイッチング素子のヒートシンクとされていることを特徴とする請求項4に記載の電動圧縮機。
- 車両に搭載されることを特徴とする請求項4に記載の電動圧縮機。
Priority Applications (2)
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---|---|---|---|
JP2022084667A JP2023172693A (ja) | 2022-05-24 | 2022-05-24 | インバータ装置及びそれを備えた電動圧縮機 |
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Applications Claiming Priority (1)
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Family Applications (1)
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JP2022084667A Pending JP2023172693A (ja) | 2022-05-24 | 2022-05-24 | インバータ装置及びそれを備えた電動圧縮機 |
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JP2022061801A (ja) * | 2020-10-07 | 2022-04-19 | 株式会社アイシン | 車両用駆動装置 |
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2022
- 2022-05-24 JP JP2022084667A patent/JP2023172693A/ja active Pending
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2023
- 2023-04-21 WO PCT/JP2023/015930 patent/WO2023228640A1/ja unknown
Also Published As
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WO2023228640A1 (ja) | 2023-11-30 |
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