JP2023170738A - 電子銃、3次元積層造形装置及び電子顕微鏡 - Google Patents
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Abstract
【課題】イオンリフレクタ用電圧電源の保護回路を簡易化する。
【解決手段】電子銃200は、加熱されて熱電子を放出するカソード101と、カソードの先端の中心軸に沿って第1開口が形成され、カソードより低い電位で印加される引出し電圧により、第1開口を通過する熱電子を集束するウェネルト102と、中心軸に沿って第2開口が形成され、印加されたイオンリフレクタ電圧により、カソードから引き出した熱電子を電子ビームとして第2開口に通過させるイオンリフレクタ103と、イオンリフレクタにイオンリフレクタ電圧を印加するイオンリフレクタ用電圧電源108と、イオンリフレクタに設置される放電装置110とを備える。
【選択図】 図6
【解決手段】電子銃200は、加熱されて熱電子を放出するカソード101と、カソードの先端の中心軸に沿って第1開口が形成され、カソードより低い電位で印加される引出し電圧により、第1開口を通過する熱電子を集束するウェネルト102と、中心軸に沿って第2開口が形成され、印加されたイオンリフレクタ電圧により、カソードから引き出した熱電子を電子ビームとして第2開口に通過させるイオンリフレクタ103と、イオンリフレクタにイオンリフレクタ電圧を印加するイオンリフレクタ用電圧電源108と、イオンリフレクタに設置される放電装置110とを備える。
【選択図】 図6
Description
本発明は、電子銃、3次元積層造形装置及び電子顕微鏡に関する。
熱電子等の電子源を光源とした電子顕微鏡装置や3次元積層造形装置には、電子ビームカラムが搭載されている。電子顕微鏡では、電子ビームを試料に照射し、試料の表面から発生する2次電子や透過電子から画像を得ている。3次元積層造形装置では、mAオーダーの電流をパウダーベッドに敷き詰められた金属粉末(粉末試料)に照射して、金属粉末を溶融した層を重ねることで造形物を造形している。
従来、電子ビームを出射する電子銃を用いた各種の装置においては、電子ビームの放出により、電子ビームの下部のチャンバー内の金属粉体や残留ガスがイオン化されるが、そのイオンのほとんどが正イオンである。これらの正イオンはカソードに衝突してイオンボンバードが発生し、イオンボンバードによりカソードが損傷する。そこで、イオンボンバードを防ぐ技術が開示されている(特許文献1を参照)。
特許文献1に開示される技術では、正イオンの上昇を防止するため、イオンリフレクタ(アノード)にイオンリフレクタ用電圧電源で正電圧を印加する。正電圧が印加されたイオンリフレクタのポテンシャル障壁により、正イオンはイオンリフレクタより上に到達しない。
ところで、電子銃では、カソードに負電位を印加する加速電圧電源による放電が起こったり、カソードから広がった電子ビームがイオンリフレクタ(アノード)に当たったりすることがある。この場合、加速電圧電源の放電、イオンリフレクタ(アノード)に当たった電子ビーム等により発生した電流がイオンリフレクタ用電圧電源に流れ込み、イオンリフレクタ用電圧電源が故障することが発生する。イオンリフレクタ用電圧電源を保護するため、流れ込む電流を遮断する保護回路を利用することがある。しかしながら、保護回路が遮断する電流が大きければ保護回路の構成が複雑になり、保護回路の設置面積が大きくなる問題がある。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、イオンリフレクタ用電圧電源の保護回路を簡易化することである。
本発明は、加熱されて熱電子を放出するカソードと、カソードの先端の中心軸に沿って第1開口が形成され、カソードより低い電位で印加される引出し電圧により、第1開口を通過する熱電子を集束するウェネルトと、中心軸に沿って第2開口が形成され、印加されたイオンリフレクタ電圧により、カソードから引き出した熱電子を電子ビームとして第2開口に通過させるイオンリフレクタと、イオンリフレクタにイオンリフレクタ電圧を印加するイオンリフレクタ用電圧電源と、イオンリフレクタに設置される放電装置とを備える。
上記構成の本発明によれば、イオンリフレクタ用電圧電源の保護回路を簡易化することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものである。以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
<従来の電子銃の構成例>
まず、従来の電子銃の構成例について、図1を参照して説明する。図1は、熱電子タイプの電子銃11の構成例を示す拡大図である。
まず、従来の電子銃の構成例について、図1を参照して説明する。図1は、熱電子タイプの電子銃11の構成例を示す拡大図である。
電子銃11は、後述の図2に示す制御部10、及び、後述の図3に示す制御部30と同じ機能を有する制御部(図1では不図示)、カソード20、グリッド(ウェネルト)21及びアノード(イオンリフレクタ)22に加えて、ガンチャンバー51、真空引きパイプ52、ガイシ53,54、ライナーチューブ55、グリッド電圧電源(引出し電圧電源)23、加速電圧電源24、アノード電圧電源(イオンリフレクタ用電圧電源)25及びカソード加熱用電源27を備える。
ガンチャンバー51は、カソード20、グリッド21及びアノード22を内部に備えて形成される。真空引きパイプ52は、ガンチャンバー51の一側面に取り付けられ、不図示の真空ポンプに接続される。真空ポンプが稼働すると、ガンチャンバー51内の空気が真空引きパイプ52を通って排出され、ガンチャンバー51内がほぼ真空状態となる。ただし、ガンチャンバー51内には、わずかなガスが残留する。
ガイシ53,54は、いずれも非導電材料で形成され、絶縁性を有する。ガイシ53には、カソード20に接続された2本の電流導入端子20a、グリッド21に接続された1本の電流導入端子21bが貫通され、カソード20とグリッド21がガンチャンバー51と接触しないように構成される。カソード20に接続された2本の電流導入端子20aは、それぞれガンチャンバー51の外部にある導線を通じてカソード加熱用電源27の正極又は負極に接続される。2本の電流導入端子20aにより通電されたPGヒータ20bは、カソード20を加熱する。グリッド21に接続された電流導入端子21bは、ガンチャンバー51の外部にある導線を通じてグリッド電圧電源23の負極に接続される。カソード20及びグリッド21には、加速電圧電源24により共通して負電圧が印加される。
ガイシ54は、アノード22がガンチャンバー51と接触しないように、アノード22を保持する。アノード22は、ガンチャンバー51内に入り込んだ導線を通じて外部のアノード電圧電源25の正極に接続される。
ライナーチューブ55は、カソード20から放出される電子ビームB(後述する図2、図3を参照)の通路に設けられた筒である。ライナーチューブ55は、例えば、後述する図2に示すガンアライメント13、集束レンズ14及び対物レンズ15を備える電子光学系12を真空外に置くための真空隔壁として機能する。ライナーチューブ55は、例えば、基準電位(接地電位)に保たれている。そして、ライナーチューブ55とアノード22は、互いに接触していないため、アノード電圧電源25によりアノード22が正電位に保たれる。そして、カソード20から放出される電子ビームBは、ライナーチューブ55を通ってステージ16に載置された試料に照射される。
このように電子ビームカラムが構成されるため、ガンチャンバー51や電子ビームカラム内で発生した正イオンは、接地電位であるライナーチューブ55に引き付けられる。また、正イオンのエネルギーが最大でも100eV程度であるので、60V~1kV程度の正電圧がアノード22に印加されていると、ほとんどの正イオンがアノード22のポテンシャル障壁を越えられず、アノード22に取り込まれる。このため、アノード22より上にあるカソード20との加速電場に正イオンが到達しない。
また、カソード20から広がって放出される電子ビームBの一部がアノード22に当たっても、アノード22から発生する2次電子が少なくなる。また、アノード22から発生した低いエネルギーの2次電子は、正電圧が印加されたアノード22に取り込まれ、アノード22の上方に放出されにくい。このためカソード20とアノード22との間に生成されるイオンの生成量が少なくなり、カソード20へのイオンボンバードが抑制できる。
<電子顕微鏡の構成例>
次に、電子顕微鏡の構成例について、図2を参照して説明する。図2は、電子顕微鏡1の電子ビームカラムの構成例を示す概要図である。電子顕微鏡1は、図1に示す電子銃11、電子光学系12及びステージ16を備える。また、電子光学系12は、ガンアライメント13、集束レンズ14及び対物レンズ15を備える。その他、図示していないが、電子顕微鏡1には、電子ビームBを走査する偏向コイルや非点補正するためのスティグマコイル等が構成されている。
次に、電子顕微鏡の構成例について、図2を参照して説明する。図2は、電子顕微鏡1の電子ビームカラムの構成例を示す概要図である。電子顕微鏡1は、図1に示す電子銃11、電子光学系12及びステージ16を備える。また、電子光学系12は、ガンアライメント13、集束レンズ14及び対物レンズ15を備える。その他、図示していないが、電子顕微鏡1には、電子ビームBを走査する偏向コイルや非点補正するためのスティグマコイル等が構成されている。
カソード20は、カソード加熱用電源27(図1を参照)がカソード20を加熱するために供給するカソード電流によって加熱されて熱電子を放出する。
グリッド21には、カソード20の先端の中心軸Cに沿って第1開口21aが形成される。そして、グリッド21は、カソード20より低い電位で印加されるグリッド電圧により、第1開口21aを通過する熱電子を集束する。
アノード22には、中心軸Cに沿って第2開口22aが形成される。そして、アノード22は、アノード電圧電源25から印加されたアノード電圧により、カソード20から熱電子を引き出して、電子ビームBとして第2開口22aに通過させる。
そして、制御部10は、正電位としたアノード電圧をアノード電圧電源25からアノード22に印加させる。また、制御部10は、電子顕微鏡1におけるグリッド電圧電源(引出し電圧電源)23、加速電圧電源24、アノード電圧電源(イオンリフレクタ用電圧電源)25、及び電子光学系12の動作を制御する。そして、電子光学系12は、ステージ16に載置された試料に対して電子ビームBを走査する。
そこで、ガンアライメント13は、電子ビームBを集束レンズ14及び対物レンズ15のレンズ中心を通るように、装置内の機械的な軸ずれ等を補正する。集束レンズ14は、電子ビームBをクロスオーバーして、電子ビームBの照射範囲を規制する。電子顕微鏡1では、不図示のアパーチャで電子ビームBの形状や開き角を調整する。対物レンズ15は、試料に電子ビームBを集束させる。
カソード20から放出される熱電子の一部は、アノード22に当たることがある。アノード22に熱電子が当たると、アノード22から2次電子が発生する。2次電子の大半は約100eV以下のエネルギーを持っているので、その周辺の残留ガスが容易にイオン化して、そのイオンがカソード20に衝突するイオンボンバードが発生する。
<3次元積層造形装置の構成例>
次に、従来の3次元積層造形装置の構成例について、図3を参照して説明する。図3は、3次元積層造形装置2の電子ビームカラムの構成例を示す概要図である。3次元積層造形装置2は、電子銃31、電子光学系32及び粉末供給系33を備える。粉末供給系33は、粉末試料をパウダーベッド37に敷き詰める。電子銃31は、電子ビームBを発生し、電子光学系32がパウダーベッド37に敷き詰められた粉末試料に対して電子ビームBを走査する。
次に、従来の3次元積層造形装置の構成例について、図3を参照して説明する。図3は、3次元積層造形装置2の電子ビームカラムの構成例を示す概要図である。3次元積層造形装置2は、電子銃31、電子光学系32及び粉末供給系33を備える。粉末供給系33は、粉末試料をパウダーベッド37に敷き詰める。電子銃31は、電子ビームBを発生し、電子光学系32がパウダーベッド37に敷き詰められた粉末試料に対して電子ビームBを走査する。
この電子銃31は、制御部30、カソード40、グリッド(ウェネルト)41、アノード(イオンリフレクタ)42、グリッド電圧電源(引出し電圧電源)43、加速電圧電源44及びアノード電圧電源(イオンリフレクタ用電圧電源)45を備える。電子光学系32は、ガンアライメント34、集束レンズ35及び対物レンズ36を備える。粉末供給系33は、パウダーベッド37を備える。
カソード40は、カソード加熱用電源27(図1を参照)がカソード40を加熱するために供給するカソード電流によって加熱されて熱電子を放出する。
グリッド41には、カソード40の先端の中心軸Cに沿って第1開口41aが形成される。そして、グリッド41は、カソード40より低い電位で印加されるグリッド電圧により、第1開口41aを通過する熱電子を集束する。
アノード42には、中心軸Cに沿って第2開口42aが形成される。そして、アノード42は、アノード電圧電源45から印加されたアノード電圧により、カソード40から引き出した熱電子を電子ビームBとして第2開口42aに通過させる。
制御部30は、正電位としたアノード電圧をアノード電圧電源45からアノード42に印加させる。制御部30は、3次元積層造形装置2におけるグリッド電圧電源(引出し電圧電源)43、加速電圧電源44、アノード電圧電源(イオンリフレクタ用電圧電源)45、及び電子光学系32及び粉末供給系33の動作を制御する。
グリッド電圧電源(引出し電圧電源)43は、カソード40より低い電位のグリッド電圧をグリッド41に印加し、熱電子をカソード40からグリッド41までに引き込む。加速電圧電源44は、カソード40及びグリッド41に共通して負電圧を印加し、カソード40から出された熱電子を加速する。アノード電圧電源(イオンリフレクタ用電圧電源)45は、アノード42に正電圧を印加する。
また、3次元積層造形装置2が備える電子銃31についても、図1に示した電子顕微鏡1が備える電子銃11と同様の構成である。このため、3次元積層造形装置2の電子銃31及び電子ビームカラムの構成例については、詳細な説明を省略する。
次に、図2に示す電子銃11の制御部10、及び、図3に示す電子銃31の制御部30のハードウェア構成例について、図4を参照して説明する。図4は、電子銃11及び電子銃31の制御部のハードウェア構成例を示すブロック図である。なお、電子銃11が備える制御部10は、電子銃31における制御部30と同様に動作するため、以下では、制御部30の構成を例として説明し、制御部10について重複説明を省略する。
制御部30は、情報処理装置の一例となり、バス64にそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit)61、ROM(Read Only Memory)62、RAM(Random Access Memory)63及びバス64を備える。さらに、制御部30は、表示装置65、入力装置66、不揮発性ストレージ67及びネットワークインターフェイス68を備える。
CPU61は、本実施の形態に係る各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM62から読み出してRAM63にロードし、実行する。RAM63には、CPU61の演算処理の途中で発生した変数やパラメーター等が一時的に書き込まれ、これらの変数やパラメーター等がCPU61によって適宜読み出される。ただし、CPU61に代えてMPU(Micro Processing Unit)を用いてもよい。そして、CPU61は、図1に示したグリッド電圧電源(引出し電圧電源)23、加速電圧電源24、アノード電圧電源(イオンリフレクタ用電圧電源)25、又は、図3に示したグリッド電圧電源(引出し電圧電源)43、加速電圧電源44及びアノード電圧電源(イオンリフレクタ用電圧電源)45の動作を制御して所望の電子ビームBを得る。
表示装置65は、例えば、液晶ディスプレイモニターであり、制御部30で行われる処理の結果等をユーザーに表示する。例えば、電子顕微鏡1に設けられる表示装置65には、試料の測定結果や画像が表示され、3次元積層造形装置2に設けられる表示装置65には、積層造形された各層における造形結果等が表示される。入力装置66には、例えば、キーボード、マウス等が用いられ、ユーザーが所定の操作入力、指示を行うことが可能である。
不揮発性ストレージ67としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ又は不揮発性のメモリ等が用いられる。この不揮発性ストレージ67には、OS(Operating System)、各種のパラメーターの他に、制御部30を機能させるためのプログラムが記録されている。ROM62及び不揮発性ストレージ67は、CPU61が動作するために必要なプログラムやデータ等を永続的に記録しており、制御部30によって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
ネットワークインターフェイス68には、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられる。NICの端子に接続されたLAN(Local Area Network)、専用線等を介して、例えば、3次元積層造形装置2と制御部30と間で各種のデータを送受信することが可能である。
以上説明した電子銃31が備える制御部30は、アノード電圧電源45を制御して、アノード42に正電圧を印加する。このため、アノード42は、2次電子を取り込む。また、アノード42は、アノード42より下方で残留ガスがイオン化されて生成された正イオンをアノード電位で跳ね返し、カソード40まで正イオンを向かわせないので従来のイオンリフレクタのように機能する。アノード42についても、2次電子の生成を抑制するチタン(Ti)によって形成される。このため、アノード42は、カソード40とアノード42間でのイオン化を促進する2次電子の生成を抑制でき、イオンボンバードによるカソード40へのダメージを軽減することができる。
<電界放射型の電子銃の構成例>
次に、従来の電界放射型SEM(FE-SEM:Field-Emission Scanning Electron Microscope)の電子銃の構成例について、図5を参照して説明する。図5は、電界放射型の電子銃の構成例を示す図である。電子銃100は、図5に示すように、カソード101、ウェネルト(グリッド)102、イオンリフレクタ(アノード)103、カラムフレーム(ライナーチューブ)104、カソード加熱用電源105、引出し電圧電源106、加速電圧電源107及びイオンリフレクタ用電圧電源108を備える。また、電子銃100は、不図示の制御部を備える。
次に、従来の電界放射型SEM(FE-SEM:Field-Emission Scanning Electron Microscope)の電子銃の構成例について、図5を参照して説明する。図5は、電界放射型の電子銃の構成例を示す図である。電子銃100は、図5に示すように、カソード101、ウェネルト(グリッド)102、イオンリフレクタ(アノード)103、カラムフレーム(ライナーチューブ)104、カソード加熱用電源105、引出し電圧電源106、加速電圧電源107及びイオンリフレクタ用電圧電源108を備える。また、電子銃100は、不図示の制御部を備える。
制御部(不図示)は、カソード加熱用電源105、引出し電圧電源106、加速電圧電源107及びイオンリフレクタ用電圧電源108の動作を制御する。この制御部は、図4で説明した制御部30と同じ構成及び機能を有する。
カソード101は、カソード加熱用電源105がカソード101を加熱するために供給するカソード電流によって加熱されて熱電子を放出する。カソード101は、タングステン等の単結晶線材を電解研磨等で先鋭化した部品である。そして、カソード101に対して、ウェネルト102が配置される。ウェネルト102は、カソード101の先端の中心軸に沿って第1開口が形成され、カソード101より低い電位で印加される引出し電圧により、第1開口を通過する熱電子を集束する。また、イオンリフレクタ103についても、カソード101の先端の中心軸に沿って第2開口が形成され、印加されたイオンリフレクタ電圧により、カソード101から引き出した熱電子を電子ビームとして第2開口に通過させる。
ウェネルト102には、引出し電圧電源106により数kVプラスの電圧(引出し電圧)が印加されてカソード101から電子を引き出して集束する。
イオンリフレクタ103は、ウェネルト102の下方に配置される。上述したようにイオンリフレクタ103には、カソード101の先端の中心軸に沿って第2開口が形成される。イオンリフレクタ103は、印加されたイオンリフレクタ電圧により、カソード101から引き出した電子を電子ビームとして第2開口に通過させる。また、イオンリフレクタ103には、イオンリフレクタ用電圧電源108によりプラスのイオンリフレクタ電圧(60V~100V程度)が印加されるので、イオンリフレクタ103のポテンシャル障壁により、正イオンをイオンリフレクタ103より上に到達させない。
カラムフレーム104は、ライナーチューブ(図1のライナーチューブ55参照)であり、基準電位(接地電位)に保たれて、イオンリフレクタ103との間で、放電誘発及び流入電流を誘引する。
電界放射型SEMでは、カソード101の先端に吸着するガス等により、電子のエミッションが不安定になった際に、カソード101を加熱して、カソード101に対してフラッシング処理を行うことで、カソード101の先端を清浄化する。
ここで、フラッシング処理とは、カソード加熱用電源105がカソード101の先端を加熱する工程である。この際、制御部(不図示)は、正電位としたアノード電圧をイオンリフレクタ用電圧電源108からイオンリフレクタ103に印加させ、カソード加熱用電源105にカソード101を通電させてフラッシング処理を行う。フラッシング処理により、カソード101の先端から吸着ガスが脱離し、カソード101が清浄化される。
なお、フラッシング処理ではカソード101の先端が加熱されるので、処理時の温度によっては原子レベルでカソード101の先端形状が変化し、図5に示すように、カソード101から放出される電子ビームBの電子エミッションの開き角が増加する場合がある。このような場合には、広がった電子ビームBがイオンリフレクタ103に当たって、広がった電子ビームBによる電流がイオンリフレクタ用電圧電源108側に流れ込んで、イオンリフレクタ用電圧電源108の故障を起こす可能性がある。また、加速電圧電源107による放電電流がイオンリフレクタ用電圧電源108側に流れ込むことも発生する。
<第1実施形態に係る電子銃の構成例>
次に、本実施形態に係る電子銃の構成例について、図6を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る電子銃200の構成例を示す図である。図6に示す電子銃200は、図5に示す電子銃100の構成に加え、さらに、保護回路109及び放電装置110を備える。
次に、本実施形態に係る電子銃の構成例について、図6を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る電子銃200の構成例を示す図である。図6に示す電子銃200は、図5に示す電子銃100の構成に加え、さらに、保護回路109及び放電装置110を備える。
保護回路109は、イオンリフレクタ103とイオンリフレクタ用電圧電源108との間に設けられ、コンデンサー109a及びバリスタダイオード109bにより構成されるローパスフィルタ回路である。コンデンサー109aとバリスタダイオード109bとは並列に接続され、一端側がイオンリフレクタ用電圧電源108のプラス極とイオンリフレクタ103との間に接続され、他端側がイオンリフレクタ用電圧電源108のマイナス極に接続される。保護回路109は、イオンリフレクタ103からイオンリフレクタ用電圧電源108に流れ込む電流、すなわち、上述の広がった電子ビームBによる電流及び加速電圧電源107による放電電流を遮断する。具体的には、イオンリフレクタ103からイオンリフレクタ用電圧電源108に流れ込む電流が、所定閾値を超える場合に、保護回路109により遮断される。この所定閾値は、保護回路109(ローパスフィルタ回路)の減衰係数により決められるものである。すなわち、保護回路109は、許容される電流量(所定閾値)を超える電流(過剰な電流)が流れた場合に、この電流を遮断する。
放電装置110は、電流を誘発できる金属等で構成され、イオンリフレクタ103とカラムフレーム104との間に、イオンリフレクタ103に連結して配置される。この放電装置110は、イオンリフレクタ103とカラムフレーム104との間の放電を誘発し、流入電流をカラムフレーム104へ誘引する。放電装置110を設けることにより、イオンリフレクタ103に流れ込む電流の大部分はカラムフレーム104へ誘引されるので、イオンリフレクタ用電圧電源108に流れ込む電流が大幅に低減され、ほとんど流れなくなる。このため、保護回路109は、コンデンサー109aとバリスタダイオード109bとで簡易に構成される。なお、電子銃200の効果について、図7を参照して詳しく説明する。
図7は、電子銃200の効果を説明するための図である。図7に示す電子銃300は、放電装置を備えない構成である。また、保護回路以外の各構成部は図6に示す電子銃200のこれらの構成部と同じである。
電子銃300の保護回路111は、図7に示すように、イオンリフレクタ103とイオンリフレクタ用電圧電源108との間に設けられ、インダクタ111a、ダイオード111b、抵抗111c、コンデンサー111d及びコンデンサー111eで構成されるローパスフィルタ回路である。コンデンサー111dとダイオード111bとは並列に接続され、一端側がイオンリフレクタ用電圧電源108のプラス極とインダクタ111aの一端側との間に接続され、他端側がイオンリフレクタ用電圧電源108のマイナス極に接続される。抵抗111cとコンデンサー111eとは並列に接続され、一端側がインダクタ111aの他端側とイオンリフレクタ103との間に接続され、他端側がイオンリフレクタ用電圧電源108のマイナス極に接続される。保護回路111は、保護回路109と同様に、イオンリフレクタ103からイオンリフレクタ用電圧電源108に流れ込む電流を遮断する。
電子銃300では、放電装置が設けられていないため、イオンリフレクタ103からイオンリフレクタ用電圧電源108に流れ込む電流は、電子銃200におけるイオンリフレクタ用電圧電源108に流れ込む電流より多くなる。このため、保護回路111は、より高い電流を遮断するため、図6に示す保護回路109より複雑な構成を有し、保護回路111の設置面積も保護回路109より大きくなる。
なお、上述した本実施形態の電子銃200は、電子顕微鏡(図2参照)及び3次元積層造形装置(図3参照)に適用可能である。
[効果]
上述したように、本実施形態の電子銃200では、イオンリフレクタ103とカラムフレーム104との間に、イオンリフレクタ103に連結する放電装置110が設けられている。それゆえ、イオンリフレクタ用電圧電源108に流れ込む電流の大部分は、放電装置110によりカラムフレーム104へ誘引されるので、保護回路109は簡易に構成されることができる。
上述したように、本実施形態の電子銃200では、イオンリフレクタ103とカラムフレーム104との間に、イオンリフレクタ103に連結する放電装置110が設けられている。それゆえ、イオンリフレクタ用電圧電源108に流れ込む電流の大部分は、放電装置110によりカラムフレーム104へ誘引されるので、保護回路109は簡易に構成されることができる。
<第2実施形態に係る電子銃の構成例>
次に、本発明の第2実施形態に係る電界放射型電子銃の構成について、図8を参照しながら説明する。図8は、第2実施形態に係る電界放射型電子銃の構成例を示す図である。図8に示す電子銃400と図6に示す電子銃200との構成を比較して分かるように、電子銃400は、電子銃200の構成に加え、さらに電流検出部112を備える。
次に、本発明の第2実施形態に係る電界放射型電子銃の構成について、図8を参照しながら説明する。図8は、第2実施形態に係る電界放射型電子銃の構成例を示す図である。図8に示す電子銃400と図6に示す電子銃200との構成を比較して分かるように、電子銃400は、電子銃200の構成に加え、さらに電流検出部112を備える。
電流検出部112は、例えば電流計で構成され、イオンリフレクタ用電圧電源108に流れ込む電流を検出する。電流検出部112は、電流を検出した場合に、電流を検出した情報を制御部(不図示)に出力する。そして、制御部は、カソード加熱用電源105をパワーオフして、電子ビームBを安全に停止させる。電流検出部112が、電流を検出していない場合に何も動作しない。
通常、保護回路109及び放電装置110を設けることにより、イオンリフレクタ用電圧電源108に流れ込む電流はほとんどないが、例えば、イオンリフレクタ用電圧電源108の保護への要求が極めて高い場合や、保護回路109又は放電装置110が故障して動作しない場合などには、電流検出部112はバックアップ保護手段として用いられる。
また、例えば、電子銃400において、保護回路109を設けず、放電装置110及び電流検出部112のみをイオンリフレクタ用電圧電源108を保護する手段としてもよい。
なお、上述した本実施形態の電子銃400は、電子顕微鏡1(図2参照)及び3次元積層造形装置2(図3参照)に適用可能である。
[効果]
上述したように、本実施形態の電子銃400では、イオンリフレクタ用電圧電源108に流れ込む電流を検出する電流検出部112が設けられる。このため、イオンリフレクタ用電圧電源108の保護への要求が極めて高い場合や、保護回路109又は放電装置110が故障して動作しない場合などには、電子ビームBを安全に停止させることができ、イオンリフレクタ用電圧電源の保護の安全性を向上することができる。
上述したように、本実施形態の電子銃400では、イオンリフレクタ用電圧電源108に流れ込む電流を検出する電流検出部112が設けられる。このため、イオンリフレクタ用電圧電源108の保護への要求が極めて高い場合や、保護回路109又は放電装置110が故障して動作しない場合などには、電子ビームBを安全に停止させることができ、イオンリフレクタ用電圧電源の保護の安全性を向上することができる。
<変形例>
以上、本発明の各実施形態に係る電子銃の構成について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限り、その他種々の変形例の態様を取ることができる。
以上、本発明の各実施形態に係る電子銃の構成について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限り、その他種々の変形例の態様を取ることができる。
上記各実施形態の電子銃では、イオンリフレクタ103とカラムフレーム104との間に、イオンリフレクタ103に連結する1つの放電装置110(図6,図8参照)を設ける例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、イオンリフレクタ103上の電流を完全にカラムフレーム104へ誘引するため、イオンリフレクタ103に複数の放電装置を設けてもよい。
図9は、本変形例に係る電界放射型電子銃の構成例を説明するための図である。なお、図9には、図6に示す電子ビームBの照射方向に沿ってイオンリフレクタ103を見るときのイオンリフレクタ103と、イオンリフレクタ103に設置された放電装置とイオンリフレクタ用電圧電源108とのイメージを示す図である。図9(A)は、1つの放電装置110が設置された場合のイメージを示す図である。図9(B)は、3つの放電装置が設置された場合のイメージを示す図である。
図9に示すように、イオンリフレクタ103は丸形であり、イオンリフレクタ103の真ん中の穴は電子ビームBが通過する第2開口である。イオンリフレクタ103にイオンリフレクタ用電圧電源108が接続されている。イオンリフレクタ103に1つの放電装置110のみを設置する場合、図9(A)に示すように、イオンリフレクタ103上の任意位置に設置してもよい。イオンリフレクタ103に複数(例えば3つ)の放電装置110a~110cを設置する場合、図9(B)に示すように、イオンリフレクタ103において、複数(例えば3つ)の放電装置110a~110cを分散して設置する。分散配置の一例として、イオンリフレクタ103の中心点に対する角度を120度のように等角度とする。このようにすれば、イオンリフレクタ103上に分散した電流を完全にイオンリフレクタ103に誘引し易い。また、一つの放電装置(例えば、放電装置110a)が破損しても、他の放電装置(例えば、放電装置110b,110c)がカラムフレーム104に放電可能である。
イオンリフレクタ103に2つの放電装置110を分散配置する場合、イオンリフレクタ103の中心点に対する角度を180度のように等角度とする。このようにイオンリフレクタ103に設置する放電装置110の数に合わせて等角度で複数の放電装置110を配置すればよい。
1…電子顕微鏡、2…3次元積層造形装置、11,31,100,200,300,400…電子銃、12,32…電子光学系、13,34…ガンアライメント、14,35…集束レンズ、15,36…対物レンズ、16…ステージ、18,108…イオンリフレクタ用電圧電源、19,103…イオンリフレクタ、20,40,101…カソード、20a,21b…電流導入端子、20b…PGヒータ、21,41…グリッド、21a,41a…第1開口、22,42…アノード、22a,42a…第2開口、23,43…グリッド電圧電源、24,44,107…加速電圧電源、25,45…アノード電圧電源、27,105…カソード加熱用電源、30…制御部、33…粉末供給系、37…パウダーベッド、51…ガンチャンバー、52…真空引きパイプ、53,54…ガイシ、55…ライナーチューブ、61…CPU、62…ROM、63…RAM、64…バス、65…表示装置、66…入力装置、67…不揮発性ストレージ、68…ネットワークインターフェイス、102…ウェネルト、104…カラムフレーム、106…引出し電圧電源、109,110、111…保護回路、109a,111d,111e…コンデンサー、109b…バリスタダイオード、110…放電装置、111a…インダクタ、111b…ダイオード、111c…抵抗、112…電流検出部
Claims (7)
- 加熱されて熱電子を放出するカソードと、
前記カソードの先端の中心軸に沿って第1開口が形成され、前記カソードより低い電位で印加される引出し電圧により、前記第1開口を通過する前記熱電子を集束するウェネルトと、
前記中心軸に沿って第2開口が形成され、印加されたイオンリフレクタ電圧により、前記カソードから引き出した前記熱電子を電子ビームとして前記第2開口に通過させるイオンリフレクタと、
前記イオンリフレクタに前記イオンリフレクタ電圧を印加するイオンリフレクタ用電圧電源と、
前記イオンリフレクタに設置される放電装置と、を備える
電子銃。 - 前記イオンリフレクタには、一又は複数の前記放電装置が設置され、一又は複数の前記放電装置が、接地電位に保たれるカラムフレームに放電する
請求項1に記載の電子銃。 - 前記イオンリフレクタに流れ込む過剰な電流を遮断する保護回路を備える
請求項1に記載の電子銃。 - 前記保護回路は、コンデンサー及びバリスタダイオードにより構成されるローパスフィルタ回路である
請求項3に記載の電子銃。 - 前記イオンリフレクタに流れ込む電流を検出する電流検出部を備え、
前記電流検出部が前記電流を検出した場合、前記カソードを加熱する電源がパワーオフされる
請求項1に記載の電子銃。 - 請求項1~5のいずれか一項に記載の電子銃と、
粉末試料が敷き詰められるパウダーベッドと、
前記粉末試料を前記パウダーベッドに敷き詰める粉末供給系と、
前記パウダーベッドに敷き詰められた前記粉末試料に対して前記電子ビームを走査する電子光学系と、を備える
3次元積層造形装置。 - 請求項1~5のいずれか一項に記載の電子銃と、
試料が載置されるステージと、
前記ステージに載置された前記試料に対して前記電子ビームを走査する電子光学系と、を備える
電子顕微鏡。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022082712A JP2023170738A (ja) | 2022-05-20 | 2022-05-20 | 電子銃、3次元積層造形装置及び電子顕微鏡 |
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JP2022082712A Pending JP2023170738A (ja) | 2022-05-20 | 2022-05-20 | 電子銃、3次元積層造形装置及び電子顕微鏡 |
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- 2022-05-20 JP JP2022082712A patent/JP2023170738A/ja active Pending
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