JP2023169989A - 内接噛合遊星歯車装置、ロボット用関節装置及び波動歯車装置 - Google Patents

内接噛合遊星歯車装置、ロボット用関節装置及び波動歯車装置 Download PDF

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Kenichi Sonowa
雅之 田中
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Abstract

【課題】歯車間の噛合部位に生じる振動を低減可能な内接合遊星歯車装置、ロボット用関節装置及び波動歯車装置を提供する。【解決手段】内接噛合遊星歯車装置1Bは、内歯歯車2と、遊星歯車3と、を備える。内歯歯車2は、環状の歯車本体と、歯車本体の内周面に形成された複数の内周溝に自転可能な状態で保持され内歯を構成する複数の外ピンと、を有する。遊星歯車3は、内歯に部分的に噛み合う外歯を有する。内接噛合遊星歯車装置1Bは、回転軸Ax1を中心に遊星歯車3を揺動させることにより、遊星歯車3を内歯歯車2に対して相対的に回転させる。回転軸Ax1を中心とする第1歯車における複数の第2歯車との噛合部位間において、第1歯車の周方向に均等な噛み合い位相が設定されている。回転軸Ax1に対して対称な位置にある一対の噛合部位間においては噛み合い位相がゼロになる。【選択図】図19

Description

本開示は、一般に内接噛合遊星歯車装置、ロボット用関節装置及び波動歯車装置に関し、より詳細には、内歯を有する内歯歯車の内側に外歯を有する遊星歯車が配置される内接噛合遊星歯車装置、ロボット用関節装置及び波動歯車装置に関する。
関連技術として、振り分けタイプと称される偏心揺動型の内接噛合遊星歯車装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。関連技術に係る内接噛合遊星歯車装置では、内歯歯車の軸心からオフセットした位置に配置された複数(例えば3つ)のクランク軸を備え、クランク軸歯車によって各クランク軸を同期して駆動することにより、遊星歯車(外歯歯車)を揺動させながら内歯歯車に内接噛合させている。
遊星歯車は、第1遊星歯車及び第2遊星歯車を含んでいる。第1遊星歯車及び第2遊星歯車の軸方向両側には、一対のキャリアが配置されている。各クランク軸は一対の円錐ころ軸受けを介して一対のキャリアに支持されている。入力歯車が回転すると、当該入力歯車と同時に噛合している3つのクランク軸歯車が同一の方向に同一の回転速度で回転する。各クランク軸歯車にはクランク軸がスプライン連結されているため、3つのクランク軸が入力歯車とクランク軸歯車との歯数比に減速された状態で同一の方向に同一の回転速度で回転する。その結果、3つのクランク軸の軸方向同位置に形成された3つの第1偏心部が同期して回転して第1遊星歯車を揺動させると共に、3つのクランク軸の軸方向同位置にそれぞれ形成された3つの第2偏心部が同期して回転して第2遊星歯車を揺動させる。
第1遊星歯車及び第2遊星歯車は、それぞれ内歯歯車に内接噛合している。内歯歯車は、歯車本体と、歯車本体に回転可能に組み込まれ、当該内歯歯車の内歯を構成する外ピン(ピン部材)とを有している。ここで、内歯歯車の歯数(外ピンの本数)は、各遊星歯車の歯数よりも僅かに多い。そのため、各遊星歯車が1回揺動する毎に、第1遊星歯車及び第2遊星歯車は内歯歯車に対して歯数差分円周方向の位相がずれ(自転する)、この自転が、各クランク軸の内歯歯車の軸心(回転軸)の周りの公転として一対のキャリアに伝達される。これにより、回転軸を中心に、歯車本体(と一体化されたケーシング)に対して、一対のキャリアを相対的に回転させることができる。
特開2016-75354号公報
上記関連技術では、例えば、内歯歯車及び遊星歯車(第1遊星歯車及び第2遊星歯車)のような歯車間において、噛み合い伝達誤差による内歯歯車の周方向の振動、及び内歯歯車の半径方向の振動が生じることがある。
本開示の目的は、歯車間の噛合部位に生じる振動を低減可能な内接合遊星歯車装置、ロボット用関節装置及び波動歯車装置を提供することにある。
本開示の一態様に係る内接噛合遊星歯車装置は、内歯歯車と、遊星歯車と、を備える。前記内歯歯車は、環状の歯車本体と、前記歯車本体の内周面に形成された複数の内周溝に自転可能な状態で保持され内歯を構成する複数の外ピンと、を有する。前記遊星歯車は、前記内歯に部分的に噛み合う外歯を有する。前記内接噛合遊星歯車装置は、回転軸を中心に前記遊星歯車を揺動させることにより、前記遊星歯車を前記内歯歯車に対して相対的に回転させる。前記回転軸を中心とする第1歯車における複数の第2歯車との噛合部位間において、前記第1歯車の周方向に均等な噛み合い位相が設定されている。前記回転軸に対して対称な位置にある一対の前記噛合部位間においては噛み合い位相がゼロになる。
本開示の一態様に係るロボット用関節装置は、前記内接噛合遊星歯車装置と、前記歯車本体に固定される第1部材と、前記内歯歯車に対する前記遊星歯車の相対的な回転に伴って、前記第1部材に対して相対的に回転する第2部材と、を備える。
本開示の一態様に係る波動歯車装置は、内歯を有する環状の剛性内歯歯車と、外歯を有する環状の可撓性外歯歯車と、波動発生器と、を備える。前記可撓性外歯歯車は、前記剛性内歯歯車の内側に配置される。前記波動発生器は、前記可撓性外歯歯車の内側に配置され、前記可撓性外歯歯車に撓みを生じさせる。前記波動歯車装置では、回転軸を中心とする前記波動発生器の回転に伴って前記可撓性外歯歯車を変形させ、前記外歯の一部を前記内歯の一部に噛み合わせて、前記可撓性外歯歯車を前記剛性内歯歯車との歯数差に応じて前記剛性内歯歯車に対して相対的に回転させる。前記内歯における前記外歯との複数の噛合部位間において、前記内歯の周方向に均等な噛み合い位相が設定されている。前記回転軸に対して対称な位置にある一対の前記噛合部位間においては噛み合い位相がゼロになる。
本開示によれば、歯車間の噛合部位に生じる振動を低減可能な内接合遊星歯車装置、ロボット用関節装置及び波動歯車装置を提供することができる。
図1は、基本構成に係る内接噛合遊星歯車装置を含むアクチュエータの概略構成を示す斜視図である。 図2は、同上の内接噛合遊星歯車装置を回転軸の出力側から見た概略の分解斜視図である。 図3は、同上の内接噛合遊星歯車装置の概略断面図である。 図4は、同上の内接噛合遊星歯車装置を示す、図3のA1-A1線断面図である。 図5Aは、同上の内接噛合遊星歯車装置の遊星歯車を単体で示す斜視図である。 図5Bは、同上の内接噛合遊星歯車装置の遊星歯車を単体で示す正面図である。 図6Aは、同上の内接噛合遊星歯車装置の軸受け部材を単体で示す斜視図である。 図6Bは、同上の内接噛合遊星歯車装置の軸受け部材を単体で示す正面図である。 図7Aは、同上の内接噛合遊星歯車装置の偏心軸を単体で示す斜視図である。 図7Bは、同上の内接噛合遊星歯車装置の偏心軸を単体で示す正面図である。 図8Aは、同上の内接噛合遊星歯車装置の支持体を単体で示す斜視図である。 図8Bは、同上の内接噛合遊星歯車装置の支持体を単体で示す正面図である。 図9は、同上の内接噛合遊星歯車装置を示す、図3の領域Z1の拡大図である。 図10は、同上の内接噛合遊星歯車装置を示す、図3のB1-B1線断面図である。 図11は、実施形態1の第1比較例に係る内接噛合遊星歯車装置の概略構成を示す斜視図である。 図12は、同上の内接噛合遊星歯車装置を回転軸の入力側から見た概略の分解斜視図である。 図13は、同上の内接噛合遊星歯車装置の概略断面図である。 図14は、実施形態1に係る内接噛合遊星歯車装置の入力歯車及び複数のクランク軸歯車の関係を示す概略図である。 図15は、実施形態1に係る内接噛合遊星歯車装置、第1比較例及び第2比較例の各々について、入力歯車と複数のクランク軸歯車との間に生じる、噛み合い伝達誤差による周方向の振動を、模式的に示す説明図である。 図16は、実施形態2の第1比較例に係る内接噛合遊星歯車装置の概略断面図である。 図17は、同上の内接噛合遊星歯車装置を示す、図16のA1-A1線断面図である。 図18は、同上の内接噛合遊星歯車装置を示す、図16のB1-B1線断面図である。 図19は、実施形態2に係る内接噛合遊星歯車装置における内歯歯車及び複数の遊星歯車の関係を示す概略図である。 図20は、実施形態2に係る内接噛合遊星歯車装置、第1比較例及び第2比較例の各々について、内歯歯車と複数の遊星歯車との間に生じる、噛み合い伝達誤差による周方向の振動を、模式的に示す説明図である。 図21は、同上の内接噛合遊星歯車装置を用いたロボット用関節装置を示す概略断面図である。 図22は、実施形態3の第1比較例に係る波動歯車装置の概略構成を示す断面図である。 図23は、同上の波動歯車装置を回転軸の入力側から見た概略図である。 図24は、同上の波動歯車装置を回転軸の出力側から見た概略の分解斜視図である。 図25は、同上の波動歯車装置を回転軸の入力側から見た概略の分解斜視図である。 図26は、実施形態3に係る波動歯車装置における剛性内歯歯車及び可撓性外歯歯車の関係を示す概略図である。
(基本構成)
(1)概要
以下、本基本構成に係る内接噛合遊星歯車装置1の概要について、図1~図3を参照して説明する。本開示で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。例えば、図1~図3における、内歯21及び外歯31の歯形、寸法及び歯数等は、いずれも説明のために模式的に表しているに過ぎず、図示されている形状に限定する趣旨ではない。
本基本構成に係る内接噛合遊星歯車装置1(以下、単に「歯車装置1」ともいう)は、内歯歯車2と、遊星歯車3と、複数の内ピン4と、を備える歯車装置である。この歯車装置1では、環状の内歯歯車2の内側に遊星歯車3が配置され、さらに、遊星歯車3の内側には偏心体軸受け5が配置される。偏心体軸受け5は、偏心体内輪51及び偏心体外輪52を有し、偏心体内輪51の中心C1(図3参照)からずれた回転軸Ax1(図3参照)まわりで偏心体内輪51が回転(偏心運動)することによって、遊星歯車3を揺動させる。偏心体内輪51は、例えば、偏心体内輪51に挿入される偏心軸7が回転することにより、回転軸Ax1まわりで回転(偏心運動)する。また、内接噛合遊星歯車装置1は、外輪62及び内輪61を有する軸受け部材6を更に備える。内輪61は、外輪62の内側に配置され、外輪62に対して相対的に回転可能に支持される。
内歯歯車2は、内歯21を有し、外輪62に固定される。特に、本基本構成では、内歯歯車2は、環状の歯車本体22と、複数の外ピン23と、を有する。複数の外ピン23は、自転可能な状態で歯車本体22の内周面221に保持され、内歯21を構成する。遊星歯車3は、内歯21に部分的に噛み合う外歯31を有する。つまり、内歯歯車2の内側で遊星歯車3は内歯歯車2に対して内接し、外歯31の一部が内歯21の一部に噛み合った状態となる。この状態で、偏心軸7が回転すると遊星歯車3が揺動して、内歯21と外歯31との噛み合い位置が内歯歯車2の円周方向に移動し、遊星歯車3と内歯歯車2との歯数差に応じた相対回転が両歯車(内歯歯車2及び遊星歯車3)の間に発生する。ここで、内歯歯車2が固定されているとすれば、両歯車の相対回転に伴って、遊星歯車3が回転(自転)することになる。その結果、遊星歯車3からは、両歯車の歯数差に応じて、比較的高い減速比で減速された回転出力が得られる。
この種の歯車装置1は、遊星歯車3の自転成分相当の回転を、例えば、軸受け部材6の内輪61と一体化された出力軸の回転として取り出すように使用される。これにより、歯車装置1は、偏心軸7を入力側とし、出力軸を出力側として、比較的高い減速比の歯車装置として機能する。そこで、本基本構成に係る歯車装置1では、遊星歯車3の自転成分相当の回転を、軸受け部材6の内輪61に伝達するべく、複数の内ピン4にて、遊星歯車3と内輪61とを連結する。複数の内ピン4は、遊星歯車3に形成された複数の遊嵌孔32にそれぞれ挿入された状態で、それぞれ遊嵌孔32内を公転しながら内歯歯車2に対して相対的に回転する。つまり、遊嵌孔32は、内ピン4よりも大きな直径を有し、内ピン4は、遊嵌孔32に挿入された状態で遊嵌孔32内を公転するように移動可能である。そして、遊星歯車3の揺動成分、つまり遊星歯車3の公転成分は、遊星歯車3の遊嵌孔32と内ピン4との遊嵌によって吸収される。言い換えれば、複数の内ピン4がそれぞれ複数の遊嵌孔32内を公転するように移動することで、遊星歯車3の揺動成分が吸収される。したがって、軸受け部材6の内輪61には、複数の内ピン4により、遊星歯車3の揺動成分(公転成分)を除いた、遊星歯車3の回転(自転成分)が伝達されることになる。
ところで、この種の歯車装置1では、遊星歯車3の遊嵌孔32内を内ピン4が公転しながら、遊星歯車3の回転が複数の内ピン4に伝達されるので、第1関連技術として、内ピン4に装着されて内ピン4を軸に回転可能な内ローラを用いることが知られている。つまり、第1関連技術においては、内ピン4は、内輪61(又は内輪61と一体化されたキャリア)に対して圧入された状態で保持されており、遊嵌孔32内を内ピン4が公転する際に、内ピン4は遊嵌孔32の内周面321に対して摺動する。そこで、第1関連技術としては、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の摩擦抵抗による損失を低減するために、内ローラが用いられる。ただし、第1関連技術のように内ローラを備える構成であれば、遊嵌孔32は、内ローラ付きの内ピン4が公転可能な径を有する必要があり、遊嵌孔32の小型化が困難である。遊嵌孔32の小型化が困難であると、遊星歯車3の小型化(特に小径化)の妨げとなって、ひいては歯車装置1全体の小型化の妨げとなる。本基本構成に係る歯車装置1は、以下の構成により、小型化しやすい内接噛合遊星歯車装置1を提供可能とする。
すなわち、本基本構成に係る歯車装置1は、図1~図3に示すように、軸受け部材6と、内歯歯車2と、遊星歯車3と、複数の内ピン4と、を備える。軸受け部材6は、外輪62及び外輪62の内側に配置される内輪61を有する。内輪61は外輪62に対して相対的に回転可能に支持される。内歯歯車2は、内歯21を有し外輪62に固定される。遊星歯車3は、内歯21に部分的に噛み合う外歯31を有する。複数の内ピン4は、遊星歯車3に形成された複数の遊嵌孔32にそれぞれ挿入された状態で、遊嵌孔32内を公転しながら内歯歯車2に対して相対的に回転する。ここで、複数の内ピン4の各々は、自転可能な状態で内輪61に保持されている。さらに、複数の内ピン4の各々は、少なくとも一部が軸受け部材6の軸方向において軸受け部材6と同じ位置に配置される。
この態様によれば、複数の内ピン4の各々は、自転可能な状態で内輪61に保持されるので、遊嵌孔32内を内ピン4が公転する際に、内ピン4自体が自転可能である。そのため、内ピン4に装着されて内ピン4を軸に回転可能な内ローラを用いなくとも、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の摩擦抵抗による損失を低減できる。したがって、本基本構成に係る歯車装置1では、内ローラが必須でなく、小型化しやすいという利点がある。しかも、複数の内ピン4の各々は、少なくとも一部が軸受け部材6の軸方向において軸受け部材6と同じ位置に配置されるので、軸受け部材6の軸方向における歯車装置1の寸法を小さく抑えることができる。つまり、軸受け部材6の軸方向に、軸受け部材6と内ピン4とが並ぶ(対向する)構成に比べて、本基本構成に係る歯車装置1では、軸方向における歯車装置1の寸法を小さくでき、歯車装置1の更なる小型化(薄型化)に貢献可能である。
さらに、上記第1関連技術と遊星歯車3の寸法が同じであれば、上記第1関連技術に比較して、例えば、内ピン4の数(本数)を増やして回転の伝達をスムーズにしたり、内ピン4を太くして強度を向上させたりすることも可能である。
また、この種の歯車装置1では、遊星歯車3の遊嵌孔32内を内ピン4が公転する必要があるので、第2関連技術として、複数の内ピン4は、内輪61(又は内輪61と一体化されたキャリア)のみで保持されることがある。第2関連技術によれば、複数の内ピン4の芯出しの精度向上が困難であって、芯出し不良により、振動の発生、及び伝達効率の低下等の不具合につながる可能性がある。つまり、複数の内ピン4は、それぞれ遊嵌孔32内を公転しながら内歯歯車2に対して相対的に回転することで、遊星歯車3の自転成分を、軸受け部材6の内輪61に伝達する。このとき、複数の内ピン4の芯出しの精度が不十分で、複数の内ピン4の回転軸が内輪61の回転軸に対してずれたり傾いたりしていると、芯出し不良の状態となり、振動の発生、及び伝達効率の低下等の不具合につながり得る。本基本構成に係る歯車装置1は、以下の構成により、複数の内ピン4の芯出し不良に起因した不具合が生じにくい内接噛合遊星歯車装置1を提供可能とする。
すなわち、本基本構成に係る歯車装置1は、図1~図3に示すように、内歯歯車2と、遊星歯車3と、複数の内ピン4と、支持体8と、を備える。内歯歯車2は、環状の歯車本体22と、複数の外ピン23と、を有する。複数の外ピン23は、自転可能な状態で歯車本体22の内周面221に保持され内歯21を構成する。遊星歯車3は、内歯21に部分的に噛み合う外歯31を有する。複数の内ピン4は、遊星歯車3に形成された複数の遊嵌孔32にそれぞれ挿入された状態で、遊嵌孔32内を公転しながら歯車本体22に対して相対的に回転する。支持体8は、環状であって複数の内ピン4を支持する。ここで、支持体8は、外周面81を複数の外ピン23に接触させることにより位置規制されている。
この態様によれば、複数の内ピン4は、環状の支持体8にて支持されているので、複数の内ピン4が支持体8にて束ねられ、複数の内ピン4の相対的なずれ及び傾きが抑制される。しかも、支持体8の外周面81は複数の外ピン23に接触し、これにより支持体8の位置規制がされている。要するに、複数の外ピン23によって支持体8の芯出しが行われ、結果的に、支持体8に支持されている複数の内ピン4についても、複数の外ピン23にて芯出しが行われる。したがって、本基本構成に係る歯車装置1によれば、複数の内ピン4の芯出しの精度向上を図りやすく、複数の内ピン4の芯出し不良に起因した不具合が生じにくい、という利点がある。
また、本基本構成に係る歯車装置1は、図1に示すように、駆動源101と共に、アクチュエータ100を構成する。言い換えれば、本基本構成に係るアクチュエータ100は、歯車装置1と、駆動源101と、を備えている。駆動源101は、遊星歯車3を揺動させるための駆動力を発生する。具体的には、駆動源101は、回転軸Ax1を中心として偏心軸7を回転させることにより、遊星歯車3を揺動させる。
(2)定義
本開示でいう「環状」は、少なくとも平面視において、内側に囲まれた空間(領域)を形成する輪(わ)のような形状を意味し、平面視において真円とある円形状(円環状)に限らず、例えば、楕円形状及び多角形状等であってもよい。さらに、例えば、カップ状のように底部を有する形状であっても、その周壁が環状であれば、「環状」に含まれる。
本開示でいう「遊嵌」は、遊び(隙間)をもった状態に嵌められることを意味し、遊嵌孔32は内ピン4が遊嵌される孔である。つまり、内ピン4は、遊嵌孔32の内周面321との間に、空間的な余裕(隙間)を確保した状態で遊嵌孔32に挿入される。言い換えれば、内ピン4のうち、少なくとも遊嵌孔32に挿入される部位の径は、遊嵌孔32の径よりも小さい(細い)。そのため、内ピン4は、遊嵌孔32に挿入された状態で、遊嵌孔32内を移動可能、つまり遊嵌孔32の中心に対して相対的に移動可能である。よって、内ピン4は、遊嵌孔32内を公転可能となる。ただし、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間には、空洞としての隙間が確保されることは必須ではなく、例えば、この隙間に液体等の流体が充填されていてもよい。
本開示でいう「公転」は、ある物体が、この物体の中心(重心)を通る中心軸以外の回転軸まわりを周回することを意味し、ある物体が公転すると、この物体の中心は回転軸を中心とする公転軌道に沿って移動することになる。したがって、例えば、ある物体の中心(重心)を通る中心軸と平行な偏心軸を中心に、この物体が回転する場合には、この物体は、偏心軸を回転軸として公転していることになる。一例として、内ピン4は、遊嵌孔32の中心を通る回転軸まわりを周回するようにして、遊嵌孔32内を公転する。
また、本開示では、回転軸Ax1の一方側(図3の左側)を「入力側」といい、回転軸Ax1の他方側(図3の右側)を「出力側」という場合がある。図3の例では、回転軸Ax1の「入力側」から回転体(偏心体内輪51)に回転が与えられ、回転軸Ax1の「出力側」から複数の内ピン4(内輪61)の回転が取り出される。ただし、「入力側」及び「出力側」は、説明のために付しているラベルに過ぎず、歯車装置1から見た、入力及び出力の位置関係を限定する趣旨ではない。
本開示でいう「回転軸」は、回転体の回転運動の中心となる仮想的な軸(直線)を意味する。つまり、回転軸Ax1は、実体を伴わない仮想軸である。偏心体内輪51は、回転軸Ax1を中心として回転運動を行う。
本開示でいう「内歯」及び「外歯」は、それぞれ単体の「歯」ではなく、複数の「歯」の集合(群)を意味する。つまり、内歯歯車2の内歯21は、内歯歯車2(歯車本体22)の内周面221に配置された複数の歯の集合からなる。同様に、遊星歯車3の外歯31は、遊星歯車3の外周面に配置された複数の歯の集合からなる。
(3)構成
以下、本基本構成に係る内接噛合遊星歯車装置1の詳細な構成について、図1~図8Bを参照して説明する。
図1は、歯車装置1を含むアクチュエータ100の概略構成を示す斜視図である。図1では、駆動源101を模式的に示している。図2は、歯車装置1を回転軸Ax1の出力側から見た概略の分解斜視図である。図3は、歯車装置1の概略断面図である。図4は図3のA1-A1線断面図である。ただし、図4では、偏心軸7以外の部品については、断面であってもハッチングを省略している。さらに、図4では、歯車本体22の内周面221の図示を省略している。図5A及び図5Bは、遊星歯車3を単体で示す斜視図及び正面図である。図6A及び図6Bは、軸受け部材6を単体で示す斜視図及び正面図である。図7A及び図7Bは、偏心軸7を単体で示す斜視図及び正面図である。図8A及び図8Bは、支持体8を単体で示す斜視図及び正面図である。
(3.1)全体構成
本基本構成に係る歯車装置1は、図1~図3に示すように、内歯歯車2と、遊星歯車3と、複数の内ピン4と、偏心体軸受け5と、軸受け部材6と、偏心軸7と、支持体8と、を備えている。また、本基本構成では、歯車装置1は、第1ベアリング91、第2ベアリング92及びケース10を更に備えている。本基本構成では、歯車装置1の構成要素である内歯歯車2、遊星歯車3、複数の内ピン4、偏心体軸受け5、軸受け部材6、偏心軸7及び支持体8等の材質は、ステンレス、鋳鉄、機械構造用炭素鋼、クロムモリブデン鋼、リン青銅又はアルミ青銅等の金属である。ここでいう金属は、窒化処理等の表面処理が施された金属を含む。
また、本基本構成では、歯車装置1の一例として、トロコイド系歯形を用いた内接式遊星歯車装置を例示する。つまり、本基本構成に係る歯車装置1は、トロコイド系曲線歯形を有する内接式の遊星歯車3を備えている。
また、本基本構成では一例として、歯車装置1は、内歯歯車2の歯車本体22が、軸受け部材6の外輪62と共に、ケース10等の固定部材に固定された状態で使用される。これにより、内歯歯車2と遊星歯車3との相対回転に伴って、固定部材(ケース10等)に対して、遊星歯車3が相対的に回転することになる。
さらに、本基本構成では、歯車装置1をアクチュエータ100に用いる場合に、偏心軸7に入力としての回転力が加わることで、軸受け部材6の内輪61と一体化された出力軸から出力としての回転力が取り出される。つまり、歯車装置1は、偏心軸7の回転を入力回転とし、内輪61と一体化された出力軸の回転を出力回転として動作する。これにより、歯車装置1では、入力回転に対して、比較的高い減速比にて減速された出力回転が得られることになる。
駆動源101は、モータ(電動機)等の動力の発生源である。駆動源101で発生した動力は、歯車装置1における偏心軸7に伝達される。具体的には、駆動源101は入力軸を介して偏心軸7につながっており、駆動源101で発生した動力は入力軸を介して偏心軸7に伝達される。これにより、駆動源101は、偏心軸7を回転させることが可能である。
さらに、本基本構成に係る歯車装置1では、図3に示すように、入力側の回転軸Ax1と、出力側の回転軸Ax1とは、同一直線上にある。言い換えれば、入力側の回転軸Ax1と、出力側の回転軸Ax1とは、同軸である。ここで、入力側の回転軸Ax1は、入力回転が与えられる偏心軸7の回転中心であって、出力側の回転軸Ax1は、出力回転を生じる内輪61(及び出力軸)の回転中心である。つまり、歯車装置1では、同軸上において、入力回転に対して、比較的高い減速比にて減速された出力回転が得られることになる。
内歯歯車2は、図4に示すように、内歯21を有する環状の部品である。本基本構成では、内歯歯車2は、少なくとも内周面が平面視において真円となる、円環状を有している。円環状の内歯歯車2の内周面には、内歯21が、内歯歯車2の円周方向に沿って形成されている。内歯21を構成する複数の歯は、全て同一形状であって、内歯歯車2の内周面における円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。つまり、内歯21のピッチ円は、平面視において真円となる。内歯21のピッチ円の中心は、回転軸Ax1上にある。また、内歯歯車2は、回転軸Ax1の方向に所定の厚みを有している。内歯21の歯筋は、いずれも回転軸Ax1と平行である。内歯21の歯筋方向の寸法は、内歯歯車2の厚み方向よりもやや小さい。
ここで、内歯歯車2は、上述したように、環状(円環状)の歯車本体22と、複数の外ピン23と、を有している。複数の外ピン23は、自転可能な状態で歯車本体22の内周面221に保持され、内歯21を構成する。言い換えれば、複数の外ピン23は、それぞれ内歯21を構成する複数の歯として機能する。具体的には、歯車本体22の内周面221には、図2に示すように、円周方向の全域に複数の内周溝223が形成されている。複数の内周溝223は、全て同一形状であって、等ピッチで設けられている。複数の内周溝223は、いずれも回転軸Ax1と平行であって、歯車本体22の厚み方向の全長にわたって形成されている。複数の外ピン23は、複数の内周溝223に嵌るようにして、歯車本体22に組み合わされている。複数の外ピン23の各々は、内周溝223内において自転可能な状態で保持される。また、歯車本体22は、(外輪62と共に)ケース10に固定される。そのため、歯車本体22には、固定用の複数の固定孔222が形成されている。
遊星歯車3は、図4に示すように、外歯31を有する環状の部品である。本基本構成では、遊星歯車3は、少なくとも外周面が平面視において真円となる、円環状を有している。円環状の遊星歯車3の外周面には、外歯31が、遊星歯車3の円周方向に沿って形成されている。外歯31を構成する複数の歯は、全て同一形状であって、遊星歯車3の外周面における円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。つまり、外歯31のピッチ円は、平面視において真円となる。外歯31のピッチ円の中心C1は、回転軸Ax1から距離ΔL(図4参照)だけずれた位置にある。また、遊星歯車3は、回転軸Ax1の方向に所定の厚みを有している。外歯31は、いずれも遊星歯車3の厚み方向の全長にわたって形成されている。外歯31の歯筋は、いずれも回転軸Ax1と平行である。遊星歯車3においては、内歯歯車2とは異なり、外歯31が遊星歯車3の本体と1つの金属部材にて一体に形成されている。
ここで、遊星歯車3に対しては、偏心体軸受け5及び偏心軸7が組み合わされる。つまり、遊星歯車3には、円形状に開口する開口部33が形成されている。開口部33は、遊星歯車3を厚み方向に沿って貫通する孔である。平面視において、開口部33の中心と遊星歯車3の中心とは一致しており、開口部33の内周面(遊星歯車3の内周面)と外歯31のピッチ円とは同心円となる。遊星歯車3の開口部33には、偏心体軸受け5が収容される。さらに、偏心体軸受け5(の偏心体内輪51)に偏心軸7が挿入されることで、偏心体軸受け5及び偏心軸7が遊星歯車3に組み合わされる。遊星歯車3に偏心体軸受け5及び偏心軸7が組み合わされた状態で、偏心軸7が回転すると、遊星歯車3は回転軸Ax1まわりで揺動する。
このように構成される遊星歯車3は、内歯歯車2の内側に配置される。平面視において、遊星歯車3は内歯歯車2に比べて一回り小さく形成されており、遊星歯車3は、内歯歯車2と組み合わされた状態で、内歯歯車2の内側で揺動可能となる。ここで、遊星歯車3の外周面には外歯31が形成され、内歯歯車2の内周面には内歯21が形成されている。そのため、内歯歯車2の内側に遊星歯車3が配置された状態では、外歯31と内歯21とは、互いに対向することになる。
さらに、外歯31のピッチ円は、内歯21のピッチ円よりも一回り小さい。そして、遊星歯車3が内歯歯車2に内接した状態で、外歯31のピッチ円の中心C1は、内歯21のピッチ円の中心(回転軸Ax1)から距離ΔL(図4参照)だけずれた位置にある。そのため、外歯31との内歯21とは、少なくとも一部が隙間を介して対向することになり、円周方向の全体が互いに噛み合うことはない。ただし、遊星歯車3は、内歯歯車2の内側において回転軸Ax1まわりで揺動(公転)するので、外歯31と内歯21とが部分的に噛み合うことになる。つまり、遊星歯車3が回転軸Ax1まわりを揺動することで、図4に示すように、外歯31を構成する複数の歯のうちの一部の歯が、内歯21を構成する複数の歯のうちの一部の歯に噛み合うことになる。結果的に、歯車装置1では、外歯31の一部を内歯21の一部に噛み合わせることが可能となる。
ここで、内歯歯車2における内歯21の歯数は、遊星歯車3の外歯31の歯数よりもN(Nは正の整数)だけ多い。本基本構成では一例として、Nが「1」であって、遊星歯車3の(外歯31の)歯数は、内歯歯車2の(内歯21の)歯数よりも「1」多い。このような遊星歯車3と内歯歯車2との歯数差は、歯車装置1での入力回転に対する出力回転の減速比を規定する。
また、本基本構成では一例として、遊星歯車3の厚みは、内歯歯車2における歯車本体22の厚みよりも小さい。さらに、外歯31の歯筋方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法は、内歯21の歯筋方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法よりも小さい。言い換えれば、回転軸Ax1に平行な方向においては、内歯21の歯筋の範囲内に、外歯31が収まることになる。
本基本構成では、上述したように、遊星歯車3の自転成分相当の回転が、軸受け部材6の内輪61と一体化された出力軸の回転(出力回転)として取り出される。そのため、遊星歯車3は、複数の内ピン4にて内輪61と連結される。遊星歯車3には、図5A及び図5Bに示すように、複数の内ピン4を挿入するための複数の遊嵌孔32が形成されている。遊嵌孔32は内ピン4と同数だけ設けられており、本基本構成では一例として、遊嵌孔32及び内ピン4は、18個ずつ設けられている。複数の遊嵌孔32の各々は、円形状に開口しており、遊星歯車3を厚み方向に沿って貫通する孔である。複数(ここでは18個)の遊嵌孔32は、開口部33と同心の仮想円上に、円周方向に等間隔で配置されている。
複数の内ピン4は、遊星歯車3と軸受け部材6の内輪61とを連結する部品である。複数の内ピン4の各々は、円柱状に形成されている。複数の内ピン4の直径及び長さは、複数の内ピン4において共通である。内ピン4の直径は、遊嵌孔32の直径よりも一回り小さい。これにより、内ピン4は、遊嵌孔32の内周面321との間に、空間的な余裕(隙間)を確保した状態で遊嵌孔32に挿入される(図4参照)。
軸受け部材6は、外輪62及び内輪61を有し、歯車装置1の出力を外輪62に対する内輪61の回転として取り出すための部品である。軸受け部材6は、外輪62及び内輪61に加えて、複数の転動体63(図3参照)と、を有している。
外輪62及び内輪61は、図6A及び図6Bに示すように、いずれも環状の部品である。外輪62及び内輪61は、いずれも平面視で真円となる、円環状を有している。内輪61は、外輪62よりも一回り小さく、外輪62の内側に配置される。ここで、外輪62の内径は内輪61の外径よりも大きいため、外輪62の内周面と内輪61の外周面との間には隙間が生じる。
内輪61は、複数の内ピン4がそれぞれ挿入される複数の保持孔611を有している。保持孔611は内ピン4と同数だけ設けられており、本基本構成では一例として、保持孔611は18個設けられている。複数の保持孔611の各々は、図6A及び図6Bに示すように、円形状に開口しており、内輪61を厚み方向に沿って貫通する孔である。複数(ここでは18個)の保持孔611は、内輪61の外周と同心の仮想円上に、円周方向に等間隔で配置されている。保持孔611の直径は、内ピン4の直径以上であって、遊嵌孔32の直径よりも小さい。
さらに、内輪61は出力軸と一体化され、内輪61の回転が出力軸の回転として取り出される。そのため、内輪61には、出力軸を取り付けるための複数の出力側取付穴612(図2参照)が形成されている。本基本構成では、複数の出力側取付穴612は、複数の保持孔611よりも内側であって、内輪61の外周と同心の仮想円上に配置されている。
外輪62は、内歯歯車2の歯車本体22と共に、ケース10等の固定部材に固定される。そのため、外輪62には、固定用の複数の透孔621が形成されている。具体的には、図3に示すように、外輪62は、ケース10との間に歯車本体22を挟んだ状態で、透孔621及び歯車本体22の固定孔222を通る固定用のねじ(ボルト)60にて、ケース10に対して固定されている。
複数の転動体63は、外輪62と内輪61との間の隙間に配置されている。複数の転動体63は、外輪62の円周方向に並べて配置されている。複数の転動体63は、全て同一形状の金属部品であって、外輪62の円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。
本基本構成では一例として、軸受け部材6は、クロスローラベアリングである。つまり、軸受け部材6は、転動体63として円筒状のコロを有している。そして、円筒状の転動体63の軸は、回転軸Ax1に直交する平面に対して45度の傾きを有し、かつ内輪61の外周に対して直交する。さらに、内輪61の円周方向において互いに隣接する一対の転動体63は、互いに軸方向が直交する向きに配置されている。このようなクロスローラベアリングからなる軸受け部材6では、ラジアル方向の荷重、スラスト方向(回転軸Ax1に沿う方向)の荷重、及び回転軸Ax1に対する曲げ力(曲げモーメント荷重)のいずれをも受けやすくなる。しかも、1つの軸受け部材6によって、これら3種類の荷重に耐えることができ、必要な剛性を確保することができる。
偏心軸7は、図7A及び図7Bに示すように、円筒状の部品である。偏心軸7は、軸心部71と、偏心部72と、を有している。軸心部71は、少なくとも外周面が平面視において真円となる、円筒状を有している。軸心部71の中心(中心軸)は、回転軸Ax1と一致する。偏心部72は、少なくとも外周面が平面視において真円となる、円盤状を有している。偏心部72の中心(中心軸)は、回転軸Ax1からずれた中心C1と一致する。ここで、回転軸Ax1と中心C1との間の距離ΔL(図7B参照)は、軸心部71に対する偏心部72の偏心量となる。偏心部72は、軸心部71の長手方向(軸方向)の中央部において、軸心部71の外周面から全周にわたって突出するフランジ形状をなす。上述した構成によれば、偏心軸7は、回転軸Ax1を中心に軸心部71が回転(自転)することで、偏心部72が偏心運動することになる。
本基本構成では、軸心部71及び偏心部72は1つの金属部材にて一体に形成されており、これにより、シームレスな偏心軸7が実現される。このような形状の偏心軸7は、偏心体軸受け5と共に遊星歯車3に組み合わされる。そのため、遊星歯車3に偏心体軸受け5及び偏心軸7が組み合わされた状態で偏心軸7が回転すると、遊星歯車3は、回転軸Ax1まわりで揺動する。
さらに、偏心軸7は、軸心部71を軸方向(長手方向)に貫通する貫通孔73を有している。貫通孔73は、軸心部71における軸方向の両端面に円形状に開口している。貫通孔73の中心(中心軸)は、回転軸Ax1と一致する。貫通孔73には、例えば、電源線及び信号線等のケーブル類を通すことが可能である。
また、本基本構成では、駆動源101から、偏心軸7に入力としての回転力が加えられる。そのため、偏心軸7には、駆動源101につながる入力軸を取り付けるための複数の入力側取付穴74(図7A及び図7B参照)が形成されている。本基本構成では、複数の入力側取付穴74は、軸心部71の軸方向に一端面における貫通孔73の周囲であって、貫通孔73と同心の仮想円上に配置されている。
偏心体軸受け5は、偏心体外輪52及び偏心体内輪51を有し、偏心軸7の回転のうちの自転成分を吸収し、偏心軸7の自転成分を除いた偏心軸7の回転、つまり偏心軸7の揺動成分(公転成分)のみを遊星歯車3に伝達するための部品である。偏心体軸受け5は、偏心体外輪52及び偏心体内輪51に加えて、複数の転動体53(図3参照)を有している。
偏心体外輪52及び偏心体内輪51は、いずれも環状の部品である。偏心体外輪52及び偏心体内輪51は、いずれも平面視で真円となる、円環状を有している。偏心体内輪51は、偏心体外輪52よりも一回り小さく、偏心体外輪52の内側に配置される。ここで、偏心体外輪52の内径は偏心体内輪51の外径よりも大きいため、偏心体外輪52の内周面と偏心体内輪51の外周面との間には隙間が生じる。
複数の転動体53は、偏心体外輪52と偏心体内輪51との間の隙間に配置されている。複数の転動体53は、偏心体外輪52の円周方向に並べて配置されている。複数の転動体53は、全て同一形状の金属部品であって、偏心体外輪52の円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。本基本構成では一例として、偏心体軸受け5は、転動体53としてボールを用いた深溝玉軸受けからなる。
ここで、偏心体内輪51の内径は、偏心軸7における偏心部72の外径と一致する。偏心体軸受け5は、偏心体内輪51に偏心軸7の偏心部72が挿入された状態で、偏心軸7と組み合わされる。また、偏心体外輪52の外径は、遊星歯車3における開口部33の内径(直径)と一致する。偏心体軸受け5は、遊星歯車3の開口部33に偏心体外輪52が嵌め込まれた状態で、遊星歯車3と組み合わされる。言い換えれば、遊星歯車3の開口部33には、偏心軸7の偏心部72に装着された状態の偏心体軸受け5が収容される。
また、本基本構成では一例として、偏心体軸受け5における偏心体内輪51の幅方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法は、偏心軸7の偏心部72の厚みと略同一である。偏心体外輪52の幅方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法は、偏心体内輪51の幅方向の寸法に比べてやや小さい。さらに、偏心体外輪52の幅方向の寸法は、遊星歯車3の厚みに比べて大きい。そのため、回転軸Ax1に平行な方向においては、偏心体軸受け5の範囲内に、遊星歯車3が収まることになる。一方で、偏心体外輪52の幅方向の寸法は、内歯21の歯筋方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法よりも小さい。そのため、回転軸Ax1に平行な方向においては、内歯歯車2の範囲内に、偏心体軸受け5が収まることになる。
偏心体軸受け5及び偏心軸7が遊星歯車3に組み合わされた状態で、偏心軸7が回転すると、偏心体軸受け5においては、偏心体内輪51の中心C1からずれた回転軸Ax1まわりで偏心体内輪51が回転(偏心運動)する。このとき、偏心軸7の自転成分は偏心体軸受け5で吸収される。したがって、遊星歯車3には、偏心体軸受け5により、偏心軸7の自転成分を除いた偏心軸7の回転、つまり偏心軸7の揺動成分(公転成分)のみが伝達されることになる。よって、遊星歯車3に偏心体軸受け5及び偏心軸7が組み合わされた状態で偏心軸7が回転すると、遊星歯車3は、回転軸Ax1まわりで揺動する。
支持体8は、図8A及び図8Bに示すように、環状に形成され、複数の内ピン4を支持する部品である。支持体8は、複数の内ピン4がそれぞれ挿入される複数の支持孔82を有している。支持孔82は内ピン4と同数だけ設けられており、本基本構成では一例として、支持孔82は18個設けられている。複数の支持孔82の各々は、図8A及び図8Bに示すように、円形状に開口しており、支持体8を厚み方向に沿って貫通する孔である。複数(ここでは18個)の支持孔82は、支持体8の外周面81と同心の仮想円上に、円周方向に等間隔で配置されている。支持孔82の直径は、内ピン4の直径以上であって、遊嵌孔32の直径よりも小さい。本基本構成では一例として、支持孔82の直径は、内輪61に形成されている保持孔611の直径と等しい。
支持体8は、図3に示すように、回転軸Ax1の一方側(入力側)から遊星歯車3に対向するように配置される。そして、複数の支持孔82に複数の内ピン4が挿入されることで、支持体8は、複数の内ピン4を束ねるように機能する。さらに、支持体8は、外周面81を複数の外ピン23に接触させることにより位置規制されている。これにより、複数の外ピン23によって支持体8の芯出しが行われ、結果的に、支持体8に支持されている複数の内ピン4についても、複数の外ピン23にて芯出しが行われる。支持体8については、「(3.3)支持体」の欄で詳しく説明する。
第1ベアリング91及び第2ベアリング92は、それぞれ偏心軸7の軸心部71に装着される。具体的には、第1ベアリング91及び第2ベアリング92は、図3に示すように、回転軸Ax1に平行な方向において偏心部72を挟むように、軸心部71における偏心部72の両側に装着される。第1ベアリング91は、偏心部72から見て、回転軸Ax1の入力側に配置される。第2ベアリング92は、偏心部72から見て、回転軸Ax1の出力側に配置される。第1ベアリング91は、ケース10に対して偏心軸7を回転可能に保持する。第2ベアリング92は、軸受け部材6の内輪61に対して偏心軸7を回転可能に保持する。これにより、偏心軸7の軸心部71は、回転軸Ax1に平行な方向における偏心部72の両側の2箇所において、回転可能に保持されることになる。
ケース10は、円筒状であって、回転軸Ax1の出力側に、フランジ部11を有している。フランジ部11には、ケース10自体を固定するための複数の設置孔111が形成されている。また、ケース10における回転軸Ax1の出力側の端面には、軸受け孔12が形成されている。軸受け孔12は、円形状に開口している。軸受け孔12内に第1ベアリング91が嵌め込まれることにより、ケース10に対して第1ベアリング91が取り付けられる。
また、ケース10における回転軸Ax1の出力側の端面であって、軸受け孔12の周囲には、複数のねじ穴13が形成されている。複数のねじ穴13は、内歯歯車2の歯車本体22及び軸受け部材6の外輪62をケース10に固定するために用いられる。具体的には、固定用のねじ60が、外輪62の透孔621及び歯車本体22の固定孔222を通して、ねじ穴13に締め付けられることにより、歯車本体22及び外輪62がケース10に対して固定される。
また、本基本構成に係る歯車装置1は、図3に示すように、複数のオイルシール14,15,16等を更に備えている。オイルシール14は、偏心軸7における回転軸Ax1の入力側の端部に装着され、ケース10と偏心軸7(軸心部71)との間の隙間を塞いでいる。オイルシール15は、偏心軸7における回転軸Ax1の出力側の端部に装着され、内輪61と偏心軸7(軸心部71)との間の隙間を塞いでいる。オイルシール16は、軸受け部材6における回転軸Ax1の出力側の端面に装着され、内輪61と外輪62との間の隙間を塞いでいる。これら複数のオイルシール14,15,16で密閉された空間は、潤滑剤保持空間17(図9参照)を構成する。潤滑剤保持空間17は、軸受け部材6の内輪61と外輪62との間の空間を含む。さらに、潤滑剤保持空間17内には、複数の外ピン23、遊星歯車3、偏心体軸受け5、支持体8、第1ベアリング91及び第2ベアリング92等が収容される。
そして、潤滑剤保持空間17には、潤滑剤が注入されている。潤滑剤は液体であって、潤滑剤保持空間内17を流動可能である。そのため、歯車装置1の使用時においては、例えば、複数の外ピン23からなる内歯21と遊星歯車3の外歯31との噛み合い部位には、潤滑剤が入り込む。本開示でいう「液体」は、液状又はゲル状の物質を含む。ここでいう「ゲル状」は、液体と固体との中間の性質を有する状態を意味し、液相と固相との2つの相からなるコロイド(colloid)の状態を含む。例えば、分散媒が液相であって、分散質が液相であるエマルション(emulsion)、分散質が固相であるサスペンション(suspension)等の、ゲル(gel)又はゾル(sol)と呼ばれる状態が「ゲル状」に含まれる。また、分散媒が固相であって、分散質が液相である状態も、「ゲル状」に含まれる。本基本構成では一例として、潤滑剤は、液状の潤滑油(オイル)である。
上述した構成の歯車装置1では、偏心軸7に入力としての回転力が加えられて、偏心軸7が回転軸Ax1を中心に回転することで、遊星歯車3は、回転軸Ax1まわりで揺動(公転)する。このとき、遊星歯車3は、内歯歯車2の内側で内歯歯車2に対して内接し、外歯31の一部が内歯21の一部に噛み合った状態で揺動するので、内歯21と外歯31との噛み合い位置が内歯歯車2の円周方向に移動する。これにより、遊星歯車3と内歯歯車2との歯数差に応じた相対回転が両歯車(内歯歯車2及び遊星歯車3)の間に発生する。そして、軸受け部材6の内輪61には、複数の内ピン4により、遊星歯車3の揺動成分(公転成分)を除いた、遊星歯車3の回転(自転成分)が伝達される。その結果、内輪61に一体化された出力軸からは、両歯車の歯数差に応じて、比較的高い減速比で減速された回転出力が得られることになる。
ところで、本基本構成に係る歯車装置1においては、上述したように、内歯歯車2と遊星歯車3との歯数差は、歯車装置1での入力回転に対する出力回転の減速比を規定することになる。つまり、内歯歯車2の歯数を「V1」、遊星歯車3の歯数を「V2」とした場合、減速比R1は、下記式0で表される。
R1=V2/(V1-V2) (式0)
要するに、内歯歯車2と遊星歯車3との歯数差(V1-V2)が小さいほど、減速比R1は大きくなる。一例として、内歯歯車2の歯数V1が「52」、遊星歯車3の歯数V2が「51」、その歯数差(V1-V2)が「1」であるので、上記式0より、減速比R1は「51」となる。この場合、回転軸Ax1の入力側から見て、偏心軸7が回転軸Ax1を中心に時計回りに1周(360度)回転すると、内輪61は回転軸Ax1を中心に歯数差「1」の分(つまり約7.06度)だけ反時計回りに回転する。
本基本構成に係る歯車装置1によれば、このように高い減速比R1が、1段の歯車(内歯歯車2及び遊星歯車3)の組み合わせで実現可能である。
また、歯車装置1は、少なくとも、内歯歯車2と、遊星歯車3と、複数の内ピン4と、軸受け部材6と、支持体8と、を備えていればよく、例えば、スプラインブッシュ等を構成要素として更に備えていてもよい。
ところで、本基本構成に係る歯車装置1のように、高速回転側となる入力回転が偏心運動を伴う場合、高速回転する回転体の重量バランスがとれていないと、振動等につながる可能性があるため、カウンタウェイト等を用いて重量バランスをとることがある。すなわち、偏心体内輪51及び偏心体内輪51と共に回転する部材(偏心軸7)の少なくとも一方からなる回転体が高速で偏心運動することから、当該回転体の回転軸Ax1に対する重量バランスをとることが好ましい。本基本構成では、図3及び図4に示すように、偏心軸7における偏心部72の一部に、空隙75を設けることによって、回転軸Ax1に対する回転体の重量バランスをとる。
要するに、本基本構成では、カウンタウェイト等を付加するのではなく、回転体(ここでは偏心軸7)の一部を肉抜きすることで軽量化し、これによって回転軸Ax1に対する回転体の重量バランスをとっている。すなわち、本基本構成に係る歯車装置1は、遊星歯車3に形成された開口部33に収容され、遊星歯車3を揺動させる偏心体軸受け5を備えている。偏心体軸受け5は、偏心体外輪52及び偏心体外輪52の内側に配置される偏心体内輪51を有する。偏心体内輪51及び偏心体内輪51と共に回転する部材の少なくとも一方からなる回転体は、偏心体内輪51の回転軸Ax1から見て、偏心体外輪52の中心C1側の一部に空隙75を有する。本基本構成では、偏心軸7が「偏心体内輪51と共に回転する部材」であって、「回転体」に相当する。したがって、偏心軸7の偏心部72に形成された空隙75が、回転体の空隙75に相当する。この空隙75は、図3及び図4に示すように、回転軸Ax1から見て中心C1側の位置にあるので、偏心軸7の重量バランスを、回転軸Ax1から周方向に均等に近づけるように作用する。
より詳細には、空隙75は、偏心体内輪51の回転軸Ax1に沿って回転体を貫通する貫通孔73の内周面に形成された凹部を含む。つまり、本基本構成では、回転体は偏心軸7であるので、偏心軸7を回転軸Ax1に沿って貫通する貫通孔73の内周面に形成された凹部が、空隙75として機能する。このように、貫通孔73の内周面に形成された凹部を空隙75として利用することで、外観上の変更を伴わずに、回転体の重量バランスをとることが可能となる。
(3.2)内ピンの自転構造
次に、本基本構成に係る歯車装置1の内ピン4の自転構造について、図9を参照して、より詳細に説明する。図9は、図3の領域Z1の拡大図である。
まず前提として、複数の内ピン4は、上述したように、遊星歯車3と軸受け部材6の内輪61とを連結する部品である。具体的には、内ピン4の長手方向の一端部(本基本構成では回転軸Ax1の入力側の端部)は、遊星歯車3の遊嵌孔32に挿入され、内ピン4の長手方向の他端部(本基本構成では回転軸Ax1の出力側の端部)は、内輪61の保持孔611に挿入されている。
ここで、内ピン4の直径は、遊嵌孔32の直径よりも一回り小さいので、内ピン4と遊嵌孔32の内周面321との間には隙間が確保され、内ピン4は、遊嵌孔32内を移動可能、つまり遊嵌孔32の中心に対して相対的に移動可能である。一方、保持孔611の直径は、内ピン4の直径以上ではあるものの、遊嵌孔32の直径よりも小さい。本基本構成では、保持孔611の直径は、内ピン4の直径と略同一であって、内ピン4の直径よりも僅かに大きい。そのため、内ピン4は、保持孔611内での移動が規制、つまり保持孔611の中心に対する相対的な移動が禁止される。したがって、内ピン4は、遊星歯車3においては遊嵌孔32内を公転可能な状態で保持され、内輪61に対しては保持孔611内を公転不能な状態で保持される。これにより、遊星歯車3の揺動成分、つまり遊星歯車3の公転成分は、遊嵌孔32と内ピン4との遊嵌によって吸収され、内輪61には、複数の内ピン4により、遊星歯車3の揺動成分(公転成分)を除いた、遊星歯車3の回転(自転成分)が伝達される。
ところで、本基本構成では、内ピン4の直径が保持孔611よりも僅かに大きいことで、内ピン4は、保持孔611に挿入された状態において、保持孔611内での公転は禁止されるものの、保持孔611内での自転は可能である。つまり、内ピン4は、保持孔611に挿入された状態でも、保持孔611に圧入される訳ではないので、保持孔611内で自転可能である。このように、本基本構成に係る歯車装置1では、複数の内ピン4の各々は、自転可能な状態で内輪61に保持されるので、遊嵌孔32内を内ピン4が公転する際に、内ピン4自体が自転可能である。
要するに、本基本構成においては、内ピン4は、遊星歯車3に対しては遊嵌孔32内での公転及び自転の両方が可能な状態で保持され、内輪61に対しては保持孔611内での自転のみが可能な状態で保持される。つまり、複数の内ピン4は、各々の自転が拘束されない状態(自転可能な状態)で、回転軸Ax1を中心に回転(公転)可能であって、かつ複数の遊嵌孔32内で公転可能である。したがって、複数の内ピン4にて遊星歯車3の回転(自転成分)を内輪61に伝達するに際しては、内ピン4は、遊嵌孔32内で公転及び自転をしつつ、保持孔611内で自転することができる。そのため、遊嵌孔32内を内ピン4が公転する際に、内ピン4は、自転可能な状態にあるので、遊嵌孔32の内周面321に対して転動することになる。言い換えれば、内ピン4は、遊嵌孔32の内周面321上を転がるようにして遊嵌孔32内で公転するので、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の摩擦抵抗による損失が生じにくい。
このように、本基本構成に係る構成では、そもそも遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の摩擦抵抗による損失が生じにくいので、内ローラを省略することが可能である。そこで、本基本構成では、複数の内ピン4の各々は、遊嵌孔32の内周面321に直接的に接触する構成を採用する。つまり、本基本構成では、内ローラが装着されていない状態の内ピン4を遊嵌孔32に挿入し、内ピン4が直接的に遊嵌孔32の内周面321に接触する構成とする。これにより、内ローラを省略できて、遊嵌孔32の径を比較的小さく抑えることができるので、遊星歯車3の小型化(特に小径化)が可能となり、歯車装置1全体としても小型化を図りやすくなる。遊星歯車3の寸法を一定とするのであれば、上記第1関連技術に比較して、例えば、内ピン4の数(本数)を増やして回転の伝達をスムーズにしたり、内ピン4を太くして強度を向上させたりすることも可能である。さらに、内ローラの分だけ部品点数を少なく抑えることができ、歯車装置1の低コスト化にもつながる。
また、本基本構成に係る歯車装置1では、複数の内ピン4の各々は、少なくとも一部が軸受け部材6の軸方向において軸受け部材6と同じ位置に配置されている。つまり、図9に示すように、回転軸Ax1に平行な方向においては、内ピン4は、その少なくとも一部が軸受け部材6と同じ位置に配置されている。言い換えれば、回転軸Ax1に平行な方向における軸受け部材6の両端面間には、内ピン4の少なくとも一部が位置する。さらに言い換えれば、複数の内ピン4の各々は、少なくとも一部が軸受け部材6の外輪62の内側に配置されることになる。本基本構成では、内ピン4のうち、回転軸Ax1の出力側の端部は、回転軸Ax1に平行な方向において、軸受け部材6と同じ位置にある。要するに、内ピン4のうちの回転軸Ax1の出力側の端部は、軸受け部材6の内輪61に形成された保持孔611に挿入されているので、少なくとも当該端部は、軸受け部材6の軸方向において軸受け部材6と同じ位置に配置されることになる。
このように、複数の内ピン4の各々の少なくとも一部が、軸受け部材6の軸方向において軸受け部材6と同じ位置に配置されることで、回転軸Ax1に平行な方向における歯車装置1の寸法を小さく抑えることができる。つまり、軸受け部材6の軸方向に、軸受け部材6と内ピン4とが並ぶ(対向する)構成に比べて、本基本構成に係る歯車装置1では、回転軸Ax1に平行な方向における歯車装置1の寸法を小さくでき、歯車装置1の更なる小型化(薄型化)に貢献可能である。
ここで、保持孔611における、回転軸Ax1の出力側の開口面は、例えば、内輪61と一体化される出力軸等に閉塞される。これにより、回転軸Ax1の出力側(図9の右側)への内ピン4の移動に関しては、内輪61と一体化される出力軸等で規制される。
また、本基本構成では、内輪61に対する内ピン4の自転が円滑になされるように、以下の構成を採用している。すなわち、内輪61に形成された保持孔611の内周面と内ピン4との間に、潤滑剤(潤滑油)を介在させることにより、内ピン4の自転を円滑にしている。特に本基本構成では、内輪61と外輪62との間には潤滑剤が注入される潤滑剤保持空間17が存在するので、潤滑剤保持空間17内の潤滑剤を利用して、内ピン4の自転の円滑化を図る。
本基本構成では、図9に示すように、内輪61は、複数の内ピン4がそれぞれ挿入される複数の保持孔611と、複数の連結路64と、を有している。複数の連結路64は、内輪61と外輪62との間の潤滑剤保持空間17と複数の保持孔611との間をつなぐ。具体的には、内輪61には、保持孔611の内周面の一部であって転動体63に対応する部位から、ラジアル方向に延びる連結路64が形成されている。連結路64は、内輪61における外輪62との対向面における転動体63を収容する凹部(溝)の底面と、保持孔611の内周面との間を貫通する孔である。言い換えれば、連結路64の潤滑剤保持空間17側の開口面は、軸受け部材6の転動体63に臨む(対向する)位置に配置されている。このような連結路64を介して、潤滑剤保持空間17と保持孔611とが空間的につながる。
上述した構成によれば、連結路64にて潤滑剤保持空間17と保持孔611とが連結されるので、潤滑剤保持空間17内の潤滑剤が連結路64を通して保持孔611に供給されるようになる。つまり、軸受け部材6が動作して転動体63が回転すると、転動体63がポンプとして機能して、潤滑剤保持空間17内の潤滑剤を、連結路64経由で保持孔611に送り込むことが可能である。特に、連結路64の潤滑剤保持空間17側の開口面が、軸受け部材6の転動体63に臨む(対向する)位置にあることで、転動体63の回転時に、転動体63がポンプとして効率的に作用する。その結果、保持孔611の内周面と内ピン4との間には潤滑剤が介在し、内輪61に対する内ピン4の自転の円滑化を図ることができる。
(3.3)支持体
次に、本基本構成に係る歯車装置1の支持体8の構成について、図10を参照して、より詳細に説明する。図10は図3のB1-B1線断面図である。ただし、図10では、支持体8以外の部品については、断面であってもハッチングを省略している。また、図10では、内歯歯車2及び支持体8のみを図示し、その他の部品(内ピン4等)の図示を省略する。さらに、図10では、歯車本体22の内周面221の図示を省略している。
まず前提として、支持体8は、上述したように、複数の内ピン4を支持する部品である。つまり、支持体8は、複数の内ピン4を束ねることにより、遊星歯車3の回転(自転成分)を内輪61に伝達する際の、複数の内ピン4にかかる荷重を分散する。具合的には、複数の内ピン4がそれぞれ挿入される複数の支持孔82を有している。本基本構成では一例として、支持孔82の直径は、内輪61に形成されている保持孔611の直径と等しい。そのため、支持体8は、複数の内ピン4の各々が自転可能な状態で、複数の内ピン4を支持する。つまり、複数の内ピン4の各々は、軸受け部材6の内輪61と支持体8とのいずれに対しても、自転可能な状態で保持されている。
このように、支持体8は、周方向及び径方向の両方について、複数の内ピン4の支持体8に対する位置決めを行う。つまり、内ピン4は、支持体8の支持孔82に挿入されることで、回転軸Ax1に直交する平面内での全方向に対する移動が規制される。そのため、内ピン4は、支持体8にて、周方向だけでなく径方向(ラジアル方向)についても位置決めされることになる。
ここで、支持体8は、少なくとも外周面81が平面視において真円となる、円環状を有している。そして、支持体8は、外周面81を、内歯歯車2における複数の外ピン23に接触させることにより位置規制されている。複数の外ピン23は、内歯歯車2の内歯21を構成するので、言い換えれば、支持体8は、外周面81を内歯21に接触させることにより位置規制される。ここで、支持体8の外周面81の直径は、内歯歯車2における内歯21の先端を通る仮想円(歯先円)の直径と同一である。そのため、複数の外ピン23は、全て支持体8の外周面81に接触する。よって、支持体8が複数の外ピン23にて位置規制された状態では、支持体8の中心は、内歯歯車2の中心(回転軸Ax1)と重なるように位置規制される。これにより、支持体8の芯出しが行われ、結果的に、支持体8に支持されている複数の内ピン4についても、複数の外ピン23にて芯出しが行われる。
また、複数の内ピン4は、回転軸Ax1を中心に回転(公転)することで、遊星歯車3の回転(自転成分)を内輪61に伝達する。そのため、複数の内ピン4を支持する支持体8は、複数の内ピン4及び内輪61と共に、回転軸Ax1を中心に回転する。このとき、支持体8は複数の外ピン23にて芯出しがされているので、支持体8の中心が回転軸Ax1上に維持された状態で、支持体8は円滑に回転する。しかも、支持体8は、その外周面81が複数の外ピン23に接触した状態で回転するので、支持体8の回転に伴って、複数の外ピン23の各々は回転(自転)する。よって、支持体8は、内歯歯車2と共にニードルベアリング(針状ころ軸受け)を構成し、円滑に回転する。
すなわち、支持体8の外周面81は、複数の外ピン23に接した状態で複数の内ピン4と一緒に歯車本体22に対して相対的に回転する。そのため、内歯歯車2の歯車本体22を「外輪」、支持体8を「内輪」とみなせば、両者の間に介在する複数の外ピン23は「転動体(コロ)」として機能する。このように、支持体8は、内歯歯車2(歯車本体22及び複数の外ピン23)と共に、ニードルベアリングを構成することとなり、円滑な回転が可能となる。
さらに、支持体8は、歯車本体22との間に複数の外ピン23を挟んでいるので、支持体8は、歯車本体22の内周面221から離れる向きの外ピン23の移動を抑制する「ストッパ」としても機能する。つまり、複数の外ピン23は、支持体8の外周面81と歯車本体22の内周面221との間で挟まれることになり、歯車本体22の内周面221からの浮きが抑制される。要するに、本基本構成では、複数の外ピン23の各々は、支持体8の外周面81に接触することで、歯車本体22から離れる向きの移動が規制されている。
ところで、本基本構成では、図9に示すように、支持体8は、遊星歯車3を挟んで、軸受け部材6の内輪61と反対側に位置する。つまり、支持体8、遊星歯車3及び内輪61は、回転軸Ax1に平行な方向に並べて配置されている。本基本構成では一例として、支持体8は、遊星歯車3から見て回転軸Ax1の入力側に位置し、内輪61は、遊星歯車3から見て回転軸Ax1の出力側に位置する。そして、支持体8は、内輪61と共に、内ピン4の長手方向(回転軸Ax1に平行な方向)の両端部を支持し、内ピン4の長手方向の中央部が、遊星歯車3の遊嵌孔32に挿通される。要するに、本基本構成に係る歯車装置1は、外輪62及び外輪62の内側に配置される内輪61を有し、内輪61が外輪62に対して相対的に回転可能に支持される軸受け部材6を備えている。そして、歯車本体22は、外輪62に固定される。ここで、遊星歯車3は、支持体8の軸方向において支持体8と内輪61との間に位置する。
この構成によれば、支持体8及び内輪61は、内ピン4の長手方向の両端部を支持するので、内ピン4の傾きが生じにくい。特に、複数の内ピン4にかかる回転軸Ax1に対する曲げ力(曲げモーメント荷重)をも受けやすくなる。また、本基本構成では、回転軸Ax1と平行な方向において、支持体8は、遊星歯車3とケース10との間に挟まれている。これにより、支持体8は、回転軸Ax1の入力側(図9の左側)への移動がケース10にて規制される。支持体8の支持孔82を貫通して、支持体8から回転軸Ax1の入力側へ突出する内ピン4についても、回転軸Ax1の入力側(図9の左側)への移動はケース10にて規制される。
本基本構成ではさらに、支持体8及び内輪61は、複数の外ピン23の両端部に接触する。つまり、図9に示すように、支持体8は、外ピン23の長手方向(回転軸Ax1に平行な方向)の一端部(回転軸Ax1の入力側の端部)に接触する。内輪61は、外ピン23の長手方向(回転軸Ax1に平行な方向)の他端部(回転軸Ax1の出力側の端部)に接触する。この構成によれば、支持体8及び内輪61は、外ピン23の長手方向の両端部で芯出しされるので、内ピン4の傾きが生じにくい。特に、複数の内ピン4にかかる回転軸Ax1に対する曲げ力(曲げモーメント荷重)をも受けやすくなる。
また、複数の外ピン23は、支持体8の厚み以上の長さを有する。言い換えれば、回転軸Ax1に平行な方向においては、内歯21の歯筋の範囲内に、支持体8が収まることになる。これにより、支持体8の外周面81は、内歯21の歯筋方向(回転軸Ax1に平行な方向)の全長にわたり複数の外ピン23に接触することになる。したがって、支持体8の外周面81が部分的に摩耗する「片減り」のような不具合が生じにくい。
また、本基本構成では、支持体8の外周面81は、支持体8の外周面81に隣接する一表面に比べて表面粗さが小さい。つまり、支持体8における軸方向(厚み方向)の両端面に比べて、外周面81の表面粗さは小さい。本開示でいう「表面粗さ」は、物体の表面の粗さの程度を意味し、値が小さい程、表面の凹凸が小さく(少なく)、滑らかである。本基本構成では一例として、表面粗さは算術平均粗さ(Ra)であることとする。例えば、研磨等の処理により、外周面81は、支持体8における外周面81以外の面に比べて、表面粗さが小さくされている。この構成では、支持体8の回転がより円滑になる。
また、本基本構成では、支持体8の外周面81の硬度は、複数の外ピン23の周面より低く、歯車本体22の内周面221より高い。本開示でいう「硬度」は、物体の硬さの程度を意味し、金属の硬度は、例えば、鋼球を一定の圧力で押しつけてできるくぼみの大小で表される。具体的には、金属の硬度の一例として、ロックウェル硬さ(HRC)、ブリネル硬さ(HB)、ビッカース硬さ(HV)又はショア硬さ(Hs)等がある。金属部品の硬度を高める(硬くする)手段としては、例えば、合金化又は熱処理等がある。本基本構成では一例として、浸炭焼き入れ等の処理により、支持体8の外周面81の硬度が高められている。この構成では、支持体8の回転によっても摩耗粉等が生じにくく、支持体8の円滑な回転を長期にわたって維持しやすい。
(4)適用例
次に、本基本構成に係る歯車装置1及びアクチュエータ100の適用例について、説明する。
本基本構成に係る歯車装置1及びアクチュエータ100は、例えば、水平多関節ロボット、いわゆるスカラ(SCARA:Selective Compliance Assembly Robot Arm)型ロボットのようなロボットに適用される。
また、本基本構成に係る歯車装置1及びアクチュエータ100の適用例は、上述したような水平多関節ロボットに限らず、例えば、水平多関節ロボット以外の産業用ロボット、又は産業用以外のロボット等であってもよい。水平多関節ロボット以外の産業用ロボットには、一例として、垂直多関節型ロボット又はパラレルリンク型ロボット等がある。産業用以外のロボットには、一例として、家庭用ロボット、介護用ロボット又は医療用ロボット等がある。
(実施形態1)
<概要>
ここではまず、実施形態1に係る内接噛合遊星歯車装置1A(以下、単に「歯車装置1A」ともいう)と基本的な構成が共通である実施形態1の「第1比較例」に係る歯車装置1Aを示す図11~図13を参照して、歯車装置1Aの概要を説明する。
本実施形態に係る歯車装置1Aは、図11~図13に示すように、振り分けタイプと称される偏心揺動型の内接噛合遊星歯車装置である点で、基本構成に係る歯車装置1と相違する。以下、基本構成と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。図11は、歯車装置1Aの概略構成を示す斜視図である。図12は、歯車装置1Aを回転軸Ax1の入力側から見た概略の分解斜視図である。図13は、歯車装置1Aの概略断面図である。
本実施形態に係る歯車装置1Aは、図11~図13に示すように、内歯歯車2の軸心(回転軸Ax1)からオフセットした位置に配置された複数(第1比較例では3つ)の偏心軸(クランク軸)7A,7B,7Cを備えている。さらに、歯車装置1Aは、内歯歯車2の軸心(回転軸Ax1)上に配置された、回転軸Ax1を中心とする入力軸500と、入力軸500と一体に形成された入力歯車501と、を備えている。複数の偏心軸7A,7B,7Cには、それぞれクランク軸歯車502A,502B,502Cがスプライン連結されている。これら複数(第1比較例では3つ)のクランク軸歯車502A,502B,502Cは、入力歯車501に対して噛み合うように配置されている。そのため、歯車装置1Aは、入力軸500が駆動されると、入力歯車501によって偏心軸7A,7B,7Cを同期して駆動することにより、遊星歯車3を揺動させながら内歯歯車2に内接噛合させている。
また、本実施形態に係る歯車装置1Aは、複数の遊星歯車3を備えている。具体的には、歯車装置1Aは、第1遊星歯車301と第2遊星歯車302との2つの遊星歯車3を備えている。2つの遊星歯車3は、回転軸Ax1に平行な方向において対向するように配置されている。つまり、遊星歯車3は、回転軸Ax1に平行な方向に並ぶ第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302を含む。第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302の形状自体は共通である。
これら2つの遊星歯車3(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)は、回転軸Ax1まわりで180度の位相差をもって配置される。図13の例では、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302のうち、回転軸Ax1の入力側(図13の右側)に位置する第1遊星歯車301の中心C1が、回転軸Ax1に対して図の上方にずれた(偏った)状態にある。一方、回転軸Ax1の出力側(図13の左側)に位置する第2遊星歯車302の中心C2は、回転軸Ax1に対して図の下方にずれた(偏った)状態にある。ここで、回転軸Ax1と中心C1との間の距離ΔL1は、回転軸Ax1に対する第1遊星歯車301の偏心量となり、回転軸Ax1と中心C2との間の距離ΔL2は、回転軸Ax1に対する第2遊星歯車302の偏心量となる。このように、複数の遊星歯車3が、回転軸Ax1を中心とする周方向において均等に配置されることで、複数の遊星歯車3間での重量バランスをとることが可能である。
第1遊星歯車301と第2遊星歯車302とでは、その中心C1,C2が回転軸Ax1に対して180度回転対称に位置する。本実施形態では、偏心量ΔL1と偏心量ΔL2とでは、回転軸Ax1から見た向きが反対であるが、その絶対値は同じである。
より詳細には、各偏心軸7A,7B,7Cは、それぞれ1つの軸心部71に対して、2つの偏心部72を有している。これら2つの偏心部72の中心の軸心部71の中心からの偏心量は、それぞれ回転軸Ax1に対する第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302の偏心量ΔL1,ΔL2と同じである。複数の偏心軸7A,7B,7Cの形状自体は共通である。複数のクランク軸歯車502A,502B,502Cについても、その形状自体は共通である。
また、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302の回転軸Ax1に平行な方向の両側には、キャリアフランジ18及び出力フランジ19が配置されている。各偏心軸7A,7B,7Cは、その両端部が転がり軸受け41,42を介してキャリアフランジ18及び出力フランジ19に保持されている。つまり、各偏心軸7A,7B,7Cは、遊星歯車3に対して回転軸Ax1に平行な方向の両側において、自転可能な状態でキャリアフランジ18及び出力フランジ19に保持されている。
各偏心軸7A,7B,7Cの偏心部72には、偏心体軸受け5が装着される。第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302の各々には、3つの偏心軸7A,7B,7Cに対応する3つの開口部33が形成されている。そして、各開口部33には偏心体軸受け5が収容される。言い換えれば、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302には、それぞれ偏心体軸受け5が取り付けられ、偏心体軸受け5に各偏心軸7A,7B,7Cが挿入されることで、偏心体軸受け5及び各偏心軸7A,7B,7Cが遊星歯車3に組み合わされる。本実施形態に係る歯車装置1Aでは、内ピン4が省略されており、内ピン4の代わりに複数の偏心軸7A,7B,7Cにより、遊星歯車3の揺動成分(公転成分)を除いた、遊星歯車3の回転(自転成分)を取り出すことが可能である。
以上説明した構成によれば、入力軸500に入力としての回転力が加えられて、入力軸500が回転軸Ax1を中心に回転することで、この回転力が入力歯車501から複数の偏心軸7A,7B,7Cに振り分けられる。つまり、入力歯車501が回転すると、当該入力歯車501と同時に噛合している3つのクランク軸歯車502A,502B,502Cが同一の方向に同一の回転速度で回転する。各クランク軸歯車502A,502B,502Cには偏心軸7A,7B,7Cがスプライン連結されているため、3つの偏心軸7A,7B,7Cが入力歯車501とクランク軸歯車502A,502B,502Cとの歯数比にて減速された状態で、同一の方向に同一の回転速度で回転する。その結果、3つの偏心軸7A,7B,7Cにおける回転軸Ax1の入力側の同位置に形成された3つの偏心部72が同期して回転し、第1遊星歯車301を揺動させる。さらに、3つの偏心軸7A,7B,7Cにおける回転軸Ax1の出力側の同位置に形成された3つの偏心部72が同期して回転し、第2遊星歯車302を揺動させる。
その結果、複数の偏心軸7A,7B,7Cの軸心部71がそれぞれ回転軸Ax1を中心に回転(自転)することにより、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302は、回転軸Ax1まわりで180度の位相差をもって、回転軸Ax1まわりで回転(偏心運動)する。
ここで、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302は、それぞれ内歯歯車2に内接噛合している。そのため、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302が1回揺動する毎に、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302は、内歯歯車2に対して(内歯21と外歯31との)歯数差分の円周方向の位相ずれが生じ、自転することになる。この自転が、各偏心軸7A,7B,7Cの内歯歯車2の軸心(回転軸Ax1)の周りの公転として、キャリアフランジ18及び出力フランジ19に伝達される。これにより、回転軸Ax1を中心に、歯車本体(と一体化されたケース10)に対して、キャリアフランジ18及び出力フランジ19を相対的に回転させることができる。
要するに、本実施形態に係る歯車装置1Aは、回転軸Ax1からオフセットした位置に配置された複数の偏心軸7A,7B,7Cにて遊星歯車3を揺動させる点で、基本構成とは異なるものの、遊星歯車3の揺動を利用して回転出力を得る点では基本構成と共通である。つまり、歯車装置1Aでは、遊星歯車3が揺動して、内歯21と外歯31との噛み合い位置が内歯歯車2の円周方向に移動すると、遊星歯車3と内歯歯車2との歯数差に応じた相対回転が両歯車(内歯歯車2及び遊星歯車3)の間に発生する。ここで、内歯歯車2が固定されているとすれば、両歯車の相対回転に伴って、遊星歯車3が回転(自転)することになる。その結果、遊星歯車3からは、両歯車の歯数差に応じて、比較的高い減速比で減速された回転出力が得られる。
より詳細には、本実施形態に係る歯車装置1Aは、軸受け部材6Aが第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aを含む。第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aは、それぞれアンギュラ玉軸受けからなる。具体的には、図13に示すように、遊星歯車3から見て回転軸Ax1の入力側(図13の右側)には第1軸受け部材601Aが配置され、遊星歯車3から見て回転軸Ax1の出力側(図13の左側)には第2軸受け部材602Aが配置される。軸受け部材6Aは、第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aにて、ラジアル方向の荷重、スラスト方向(回転軸Ax1に沿う方向)の荷重、及び回転軸Ax1に対する曲げ力(曲げモーメント荷重)のいずれに対しても耐え得るように構成される。
ここで、第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aは、遊星歯車3に対して回転軸Ax1に平行な方向の両側に、回転軸Ax1に平行な方向において互いに反対向きで配置される。つまり、軸受け部材6Aは、複数(ここでは2つ)のアンギュラ玉軸受けを組み合わせた「組合せアンギュラ玉軸受け」である。ここでは一例として、第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aは、それぞれの内輪が互いに近づく向きのスラスト方向(回転軸Ax1に沿う方向)の荷重を受ける「背面組合せタイプ」である。さらに、歯車装置1Aにおいては、第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aは、それぞれの内輪を互いに近づける向きに締め付けることにより、内輪に対して適正な予圧が作用する状態で組み合わされる。
また、本実施形態に係る歯車装置1Aは、キャリアフランジ18及び出力フランジ19を備えている。キャリアフランジ18及び出力フランジ19は、遊星歯車3に対して回転軸Ax1に平行な方向の両側に配置され、遊星歯車3のキャリア孔34(図13参照)を通して、互いに結合されている。具体的には、図13に示すように、遊星歯車3から見て回転軸Ax1の入力側(図13の右側)にはキャリアフランジ18が配置され、遊星歯車3から見て回転軸Ax1の出力側(図13の左側)には出力フランジ19が配置される。軸受け部材6A(第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aの各々の)の内輪は、キャリアフランジ18及び出力フランジ19に対して固定されている。本実施形態では一例として、第1軸受け部材601Aの内輪は、キャリアフランジ18とシームレスに一体化されている。同様に、第2軸受け部材602Aの内輪は、出力フランジ19とシームレスに一体化されている。
出力フランジ19は、出力フランジ19の一表面から回転軸Ax1の入力側に向けて突出する複数(一例として3つ)のキャリアピン191(図12参照)を有している。これら複数のキャリアピン191は、遊星歯車3に形成されている複数(一例として3つ)のキャリア孔34をそれぞれ貫通し、その先端がキャリアフランジ18に対してキャリアボルトにて固定される。ここで、キャリアピン191とキャリア孔34の内周面との間には隙間が確保され、キャリアピン191は、キャリア孔34内を移動可能、つまりキャリア孔34の中心に対して相対的に移動可能である。これにより、遊星歯車3が揺動する際にキャリアピン191がキャリア孔34の内周面に接触することはない。
これにより、歯車装置1Aは、遊星歯車3の自転成分相当の回転を、軸受け部材6Aの内輪61と一体化されたキャリアフランジ18及び出力フランジ19の回転として取り出すように使用される。すなわち、基本構成では、遊星歯車3と内歯歯車2との間の相対的な回転は、遊星歯車3に複数の内ピン4にて連結された内輪61から、遊星歯車3の自転成分として取り出される。これに対して、本実施形態では、遊星歯車3と内歯歯車2との間の相対的な回転は、内輪と一体化されたキャリアフランジ18及び出力フランジ19から取り出される。本実施形態では一例として、歯車装置1Aは、軸受け部材6Aの外輪62(図13参照)が固定部材であるケース10に固定された状態で使用される。すなわち、遊星歯車3は複数の偏心軸7A,7B,7Cにて回転部材であるキャリアフランジ18及び出力フランジ19と連結され、歯車本体22は固定部材に固定されるため、遊星歯車3と内歯歯車2との間の相対的な回転は、回転部材(キャリアフランジ18及び出力フランジ19)から取り出される。言い換えれば、本実施形態では、歯車本体22に対して遊星歯車3が相対的に回転する際、キャリアフランジ18及び出力フランジ19の回転力を出力として取り出すように構成されている。
さらに、本実施形態では、ケース10が内歯歯車2の歯車本体22とシームレスに一体化されている。つまり、基本構成では、内歯歯車2の歯車本体22が、軸受け部材6の外輪62と共に、ケース10に固定された状態で使用される。これに対して、本実施形態では、回転軸Ax1に平行な方向において、固定部材である歯車本体22とケース10とはシームレスに連続して設けられる。
より詳細には、ケース10は、円筒状であって、歯車装置1Aの外郭を構成する。本実施形態では、円筒状のケース10の中心軸は、回転軸Ax1と一致するように構成されている。つまり、ケース10は、少なくとも外周面が、平面視において(回転軸Ax1方向の一方から見て)回転軸Ax1を中心とする真円となる。ケース10は、回転軸Ax1方向の両端面が開口する円筒状に形成されている。ここで、ケース10には、内歯歯車2の歯車本体22がシームレスに一体化されており、ケース10及び歯車本体22は、1部品として扱われる。そのため、ケース10の内周面は、歯車本体22の内周面221を含んでいる。さらに、ケース10には、軸受け部材6Aの外輪62が固定されている。つまり、ケース10の内周面における歯車本体22から見て回転軸Ax1の入力側(図13の右側)には、第1軸受け部材601Aの外輪62が嵌め込まれることにより固定される。一方、ケース10の内周面における歯車本体22から見て回転軸Ax1の出力側(図13の左側)には、第2軸受け部材602Aの外輪62が嵌め込まれることにより固定される。
さらに、ケース10における回転軸Ax1の入力側(図13の右側)の端面は、キャリアフランジ18によって閉塞され、ケース10における回転軸Ax1の出力側(図13の左側)の端面は、出力フランジ19によって閉塞される。そのため、図13に示すように、ケース10、キャリアフランジ18及び出力フランジ19で囲まれた空間内に、遊星歯車3(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)、複数の外ピン23、及び偏心体軸受け5等の部品が収容される。
また、本実施形態に係る歯車装置1Aは、歯車本体22の内側に配置され、ラジアル方向(歯車本体22の径方向)において歯車本体22との間に複数の外ピン23を保持する保持部材80を更に備える。保持部材80は、第1遊星歯車301と第2遊星歯車302との2つの遊星歯車3の間に配置されている。そして、保持部材80は、外周面に、複数の外ピン23を保持する複数の外周溝801を有する。すなわち、本実施形態では、基本構成の支持体8に代えて設けられた保持部材80が、歯車本体22との間に複数の外ピン23を挟むことにより、歯車本体22の内周面221から離れる向きの外ピン23の移動を抑制する「ストッパ」として機能する。要するに、複数の外ピン23の各々は、保持部材80の外周面に接触することで、歯車本体22から離れる向きの移動が規制され、かつ外周溝801に嵌め込まれることで、回転軸Ax1を中心とする周方向への移動も規制される。つまり、外ピン23は、保持部材80及び歯車本体22にて、径方向(ラジアル方向)だけでなく周方向についても位置決めされることになる。
したがって、外ピン23と、保持部材80及び歯車本体22との間には、ガタが生じにくく、内歯21(外ピン23)と外歯31との噛み合い時に、外歯31によって内周溝223から引っ張り出される向きの力が外ピン23に作用しても、内歯21と外歯31との噛み合いが不安定になりにくい。よって、本実施形態に係る歯車装置1Aによれば、内歯21と外歯31との噛み合いが安定しやすい、という利点がある。
<入力歯車とクランク軸歯車との関係>
次に、本実施形態に係る歯車装置1Aにおいて、入力歯車501と複数のクランク軸歯車502A,502B,502Cとの関係について、詳細に説明する。
複数(第1比較例では3つ)のクランク軸歯車502A,502B,502Cは、入力歯車501に対して噛み合うように、入力歯車501の周囲に配置されている。そして、中心に位置するサンギヤとしての入力歯車501が回転すると、その周囲に配置されているピニオンギヤとしての複数のクランク軸歯車502A,502B,502Cが同一の方向に同一の回転速度で回転することで、入力軸500の回転力が複数の偏心軸7A,7B,7Cに振り分けられる。そのため、入力歯車501と各クランク軸歯車502A,502B,502Cとの歯数比にて減速された状態で、複数の偏心軸7A,7B,7Cが同一の方向に同一の回転速度で回転する。要するに、サンギヤとしての入力歯車501と、ピニオンギヤとしての複数のクランク軸歯車502A,502B,502Cとは、歯車装置1Aの一次減速機構を構成する。
ところで、入力歯車501と複数のクランク軸歯車502A,502B,502Cとのような歯車間においては、噛み合い伝達誤差による入力歯車501の周方向の振動、及び入力歯車501の半径方向の振動が生じることがある。本実施形態に係る歯車装置1Aでは、このような歯車間の噛合部位に生じる振動を低減するべく、以下の構成を採用する。
本実施形態に係る歯車装置1Aは、内歯歯車2と、遊星歯車3と、を備える。内歯歯車2は、環状の歯車本体22と、歯車本体22の内周面221に形成された複数の内周溝223に自転可能な状態で保持され内歯21を構成する複数の外ピン23と、を有する。遊星歯車3は、内歯21に部分的に噛み合う外歯31を有する。歯車装置1Aは、回転軸Ax1を中心に遊星歯車3を揺動させることにより、遊星歯車3を内歯歯車2に対して相対的に回転させる。ここで、回転軸Ax1を中心とする第1歯車における複数の第2歯車との噛合部位間において、第1歯車の周方向に均等な噛み合い位相が設定されている。さらに、回転軸Ax1に対して対称な位置にある一対の噛合部位間においては噛み合い位相がゼロになる。
本実施形態に係る歯車装置1Aは、図11~図13に示す第1比較例と異なり、図14に示すように、4つのクランク軸歯車502A,502B,502C,502Dを備えている。つまり、第1比較例ではクランク軸歯車502A,502B,502Cの個数は「3」であるのに対し、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、クランク軸歯車502A,502B,502C,502Dの個数は「4」である。さらに、本実施形態に係る歯車装置1Aは、これら4つのクランク軸歯車502A,502B,502C,502Dに対応するように、4つの偏心軸7A,7B,7C,7Dを備えている。4つの偏心軸7A,7B,7C,7Dには、それぞれクランク軸歯車502A,502B,502C,502Dがスプライン連結されている。
本開示でいう「噛み合い伝達誤差」は、駆動歯車(第1歯車)の回転角と被動歯車(第2歯車)の回転角の間の非直線性の程度を意味する。また、本開示でいう「噛み合い位相」は、各ピニオンギヤ(第2歯車)の位置でのサンギヤ(第1歯車)との噛み合いのタイミングのずれを意味する。例えば、クランク軸歯車502Aの歯先が入力歯車501の歯元と噛み合っているときに、別のクランク軸歯車502Bも歯先が入力歯車501の歯元と噛み合っていれば、これらクランク軸歯車502A,502B間では噛み合いのタイミングのずれはなく、噛み合い位相(位相差)は「無し」(ゼロ)となる。本実施形態では、「第1歯車」がサンギヤとしての入力歯車501であって、「複数の第2歯車」がピニオンギヤとしての複数のクランク軸歯車502A,502B,502C,502Dである。
すなわち、本実施形態に係る歯車装置1Aは、回転軸Ax1を中心とする入力歯車501における複数のクランク軸歯車502A,502B,502C,502Dとの噛合部位間において、遊星歯車3の揺動時に均等な噛み合い位相が生じるように構成されている。具体的に、第1歯車(入力歯車501)の周方向において隣接するクランク軸歯車502A,502B,502C,502Dとの間の噛み合い位相(位相差)は、複数のクランク軸歯車502A,502B,502C,502Dの全てにおいて同一となる。例えば、クランク軸歯車502Aと、これに隣接するクランク軸歯車502Bとの間の噛み合い位相は、クランク軸歯車502Bと、これに隣接するクランク軸歯車502Cとの間の噛み合い位相と同一である。同様に、クランク軸歯車502Cと、これに隣接するクランク軸歯車502Dとの間の噛み合い位相は、クランク軸歯車502Dと、これに隣接するクランク軸歯車502Aとの間の噛み合い位相と同一である。これにより、第1歯車(入力歯車501)と複数の第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C,502D)との間において、噛み合い伝達誤差による周方向の振動を低減可能である。
さらに、回転軸Ax1に対して対称な位置にある一対の噛合部位間においては噛み合い位相(位相差)は「無し」(ゼロ)になる。つまり、回転軸Ax1を中心に2回回転対称(180度回転対称)の位置にある一対のクランク軸歯車502A,502B,502C,502D間においては、噛み合い位相(位相差)は「無し」(ゼロ)となり、噛み合いのタイミングは同一(同位相)となる。例えば、クランク軸歯車502Aと、回転軸Ax1に対して対称な位置にあるクランク軸歯車502Cとの間の噛み合い位相(位相差)は、ゼロである。同様に、クランク軸歯車502Bと、回転軸Ax1に対して対称な位置にあるクランク軸歯車502Dとの間の噛み合い位相(位相差)は、ゼロである。これにより、第1歯車(入力歯車501)と複数の第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C,502D)との間において、半径方向の振動を低減可能である。
結果的に、本実施形態の構成によれば、第1歯車(入力歯車501)と複数の第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C,502D)との間において、噛み合い伝達誤差による周方向の振動、及び半径方向の振動を低減可能である。
より詳細には、本実施形態に係る歯車装置1Aは、図14に示すように、回転軸Ax1を中心に回転する入力歯車501と、複数のクランク軸歯車502A,502B,502C,502Dと、を備える。複数のクランク軸歯車502A,502B,502C,502Dは、入力歯車501と噛み合うように入力歯車501の周囲に配置され、入力歯車501の回転時に、互いに同期して回転することにより遊星歯車3を揺動させる。第1歯車は、入力歯車501を含み、第2歯車は、複数のクランク軸歯車502A,502B,502C,502Dを含む。図14では、入力歯車501及び複数のクランク軸歯車502A,502B,502C,502Dのみを図示し、それ以外の図示を省略する。さらに、図14は、入力歯車501とクランク軸歯車502A,502B,502C,502Dとの関係を模式的に表す説明図であって、入力歯車501及びクランク軸歯車502A,502B,502C,502Dの歯形の図示等を省略している。
これにより、歯車装置1Aの一次減速機構を構成する入力歯車501と複数のクランク軸歯車502A,502B,502C,502Dとの間において、噛み合い伝達誤差による周方向の振動、及び半径方向の振動を低減可能である。
本実施形態に係る歯車装置1Aは、上記構成を具現化するために、下記2つの条件を満たしている。1つ目の条件は、第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C,502D)の個数kが偶数であること、である。2つ目の条件は、第1歯車(入力歯車501)の歯数Zsを個数k(本実施形態では「4」)で除したときの剰余R(つまり「余り」となる整数)が、「1」ではなく「k-1」でもないこと、である。すなわち、本実施形態では、第2歯車の個数kが偶数であって、かつ、第1歯車の歯数Zsを個数kで除したときの剰余Rが、下記式1で表される。
R≠1,(k-1) (式1)
例えば、本実施形態のように、クランク軸歯車502A,502B,502C,502Dの個数kが「4」であれば、剰余Rは「2」である。別の例として、第2歯車(クランク軸歯車)の個数kが「6」であれば、剰余Rは「2」、「3」、「4」のいずれかである。このような条件を課すことで、噛み合い伝達誤差による周方向の振動、及び半径方向の振動を低減するための上記構成を実現可能である。
ここで、複数の第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C,502D)は、回転軸Ax1を中心とする第1歯車(入力歯車501)の周方向において等間隔に配置されている。具体的には、図14に示すように、複数のクランク軸歯車502A,502B,502C,502Dの配置角δiは、同一の値となる。ここで、配置角δiは、回転軸Ax1を中心とする第1歯車(入力歯車501)の周方向において、隣接する第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C,502D)の中心同士の間隔(角度)とする。
本実施形態では特に、配置角δ1はクランク軸歯車502A,502Bの中心同士の間隔、配置角δ2はクランク軸歯車502B,502Cの中心同士の間隔、配置角δ3はクランク軸歯車502C,502Dの中心同士の間隔、配置角δ4はクランク軸歯車502D,502Aの中心同士の間隔である。さらに、配置角δiは、いずれも第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C,502D)の個数k(本実施形態では「k=4」)で「2π」を除した値(2π/k)と一致する。したがって、配置角δi(i=1,2,3,4)は、下記式2の関係を満たす。
δ1=δ2=δ3=δ4=2π/k (式2)
本実施形態の第1比較例として、第1歯車(入力歯車501)における3つの第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C)との噛合部位間において、噛み合い位相が「無し」(ゼロ)となる構成を想定する。第1比較例においては、第1歯車(入力歯車501)の歯数Zsを第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C)の個数k(第1比較例では「k=3」)で除した値(Zs/k)は整数となる。さらに、第1比較例においては、複数の第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C)は、回転軸Ax1を中心とする第1歯車(入力歯車501)の周方向において等間隔に配置され、配置角δi(i=1,2,3)は、下記式3の関係を満たす。
δ1=δ2=δ3=2π/k (式3)
また、本実施形態の第2比較例として、第1歯車(入力歯車501)における3つの第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C)との噛合部位間において、噛み合い位相が等分されている構成を想定する。つまり、第2比較例では、入力歯車501における複数のクランク軸歯車502A,502B,502Cとの噛合部位間において、均等に噛み合い位相が生じる。そのため、クランク軸歯車502A,502B間の噛み合い位相、クランク軸歯車502B,502C間の噛み合い位相、及びクランク軸歯車502C,502A間の噛み合い位相は、いずれも第1歯車のピッチ(2π/Zs)を第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C)の個数k(第2比較例では「k=3」)で除した値(2π/(Zs×k))となる。
ここで、第2比較例においては、第1歯車(入力歯車501)の歯数Zsを第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C)の個数k(第2比較例では「k=3」)で除した値(Zs/k)は整数とならない。さらに、第2比較例においては、複数の第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C)は、回転軸Ax1を中心とする第1歯車(入力歯車501)の周方向において等間隔に配置され、配置角δi(i=1,2,3)は、上記式3の関係を満たす。
図15は、本実施形態、第1比較例(第2歯車が3つ、噛み合い位相なし、等間隔配置)及び第2比較例(第2歯車が3つ、噛み合い位相等分、等間隔配置)の各々について、入力歯車501と複数のクランク軸歯車502A,502B,502C,502Dとの間に生じる、噛み合い伝達誤差による入力歯車501の周方向の振動を、模式的に表す説明図である。図15では、入力歯車501におけるクランク軸歯車502Aとの噛合部位に作用する力F1、クランク軸歯車502Bとの噛合部位に作用する力F2、クランク軸歯車502Cとの噛合部位に作用する力F3、及びクランク軸歯車502Dとの噛合部位に作用する力F4を、第1歯車の1ピッチ(一周期φ0)分だけ示している。力F0は、入力歯車501の周方向における力F1,F2,F3,F4の合成成分(F0=F1+F2+F3+F4)である。ただし、第1比較例及び第2比較例では、クランク軸歯車502Dが存在しないため力F4は0(ゼロ)である。ここで、図15では、噛み合い位相の作用を説明するために、各噛合部位で発生する周方向(回転方向)の振動を正弦波状の周期成分とし、かつこれらの大きさ(振幅)が全て等しいことと仮定した典型例を示す。
図15から明らかなように、第2歯車が3つ、噛み合い位相が「無し」(ゼロ)である第1比較例では、力F1,F2,F3間で位相差が生じないため、これらを合成した力F0の変動(振幅)は、各力F1,F2,F3の変動成分のk(=3)倍となる。一方、第2歯車が3つであるものの、噛み合い位相が等分である第2比較例では、力F1,F2,F3間には、一周期φ0をk(=3)等分した位相差が生じる(つまり、φ1=φ0×1/3、φ2=φ0×2/3)ため、これらを合成した力F0の変動(振幅)は、0(ゼロ)となる。これに対して、本実施形態では、力F1,F2,F3,F4間には、一周期φ0をk(=4)/2等分した位相差が生じる(つまり、φ1=φ0×1/2)ため、これらを合成した力F0の変動(振幅)は、0(ゼロ)となる。
同様に、入力歯車501の半径方向の振動に関しては、第2歯車が3つであるものの、噛み合い位相が「無し」(ゼロ)で、かつ複数の第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C)が等間隔に配置される第1比較例では、変動成分が完全に均衡するため振幅は0(ゼロ)となる。一方、第2歯車が3つ、噛み合い位相が等分で、かつ複数の第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C)が等間隔に配置される第2比較例では、入力歯車501の半径方向の振動の振幅は、各第2歯車との間に生じる変動成分のk(=3)倍となる。これに対して、本実施形態では、回転軸Ax1に対して対称な位置にある一対の噛合部位間においては噛み合い位相(位相差)が「無し」(ゼロ)であるため、変動成分が完全に均衡して振幅は0(ゼロ)となる。つまり、図14において、例えば、クランク軸歯車502A,502Cにおいて、入力歯車501の歯先に噛み合うタイミングでは、クランク軸歯車502A,502Cの対向方向(図14の上下方向)の振動が相殺され、この方向における振動が0(ゼロ)となる。同様に、クランク軸歯車502B,502Dにおいて、入力歯車501の歯元に噛み合うタイミングでは、クランク軸歯車502B,502Dの対向方向(図14の左右方向)の振動が相殺され、この方向における振動が0(ゼロ)となる。
以上説明したように、本実施形態に係る歯車装置1Aによれば、周方向の振動については噛み合い位相なしの第1比較例よりも小さく抑えることができ、半径方向の振動については噛み合い位相等分の第2比較例よりも小さく抑えることができる。したがって、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、周方向の振動及び半径方向の振動のいずれについても、極力小さく抑えることで低減を図ることが可能である。
<変形例>
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、本開示で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C,502D)の個数kは「4」に限らず、4以上の偶数であればよい。例えば、第2歯車(クランク軸歯車)の個数kは、「6」、「8」又は「10」のいずれかであってもよいし、「12」以上であってもよい。この場合でも、回転軸Ax1を中心とする第1歯車における複数の第2歯車との噛合部位間において、第1歯車の周方向に均等な噛み合い位相が設定され、回転軸Ax1に対して対称な位置にある一対の噛合部位間において噛み合い位相がゼロになることで、周方向の振動、及び半径方向の振動を低減可能である。
また、軸受け部材6Aは、基本構成と同様にクロスローラベアリングであってもよいし、深溝玉軸受け又は4点接触玉軸受け等であってもよい。
実施形態1では、遊星歯車3が2つのタイプの歯車装置1Aを例示したが、歯車装置1Aは、遊星歯車3を3つ以上備えていてもよい。例えば、歯車装置1Aが遊星歯車3を3つ備える場合、これら3つの遊星歯車3は、回転軸Ax1まわりで120度の位相差をもって配置されることが好ましい。また、歯車装置1Aは遊星歯車3を1つのみ備えていてもよい。あるいは、歯車装置1Aが遊星歯車3を3つ備える場合、これら3つの遊星歯車3のうち2つの遊星歯車3が同位相であって、残り1つの遊星歯車3が回転軸Ax1まわりで180度の位相差をもって配置されてもよい。
また、実施形態1で説明した第1歯車(入力歯車501)の歯数Zs、第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C)の歯数Zp、第2歯車(クランク軸歯車502A,502B,502C)の数、外ピン23の数(内歯21の歯数)、及び外歯31の歯数等は、一例に過ぎず、適宜変更可能である。
また、偏心体軸受け5は、コロ軸受けに限らず、例えば、深溝玉軸受け、又はアンギュラ玉軸受等であってもよい。
また、歯車装置1Aの各構成要素の材質は、金属に限らず、例えば、エンジニアリングプラスチック等の樹脂であってもよい。保持部材80の材質は、エンジニアリングプラスチック等の樹脂に限らず、例えば、金属であってもよい。
また、歯車装置1Aは、軸受け部材6Aの内輪と外輪62との間の相対的な回転を出力として取り出すことができればよく、内輪(キャリアフランジ18及び出力フランジ19)の回転力が出力として取り出される構成に限らない。例えば、内輪に対して相対的に回転する外輪62(ケース10)の回転力が出力として取り出されてもよい。
また、潤滑剤は、潤滑油(オイル)等の液状の物質に限らず、グリス等のゲル状の物質であってもよい。
(実施形態2)
ここではまず、実施形態2に係る内接噛合遊星歯車装置1B(以下、単に「歯車装置1B」ともいう)と基本的な構成が共通である実施形態2の「第1比較例」に係る歯車装置1Bを示す図16~図19を参照して、歯車装置1Bの概要を説明する。
本実施形態に係る歯車装置1Bは、図16に示すように、複数の遊星歯車3(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)を有する点で、基本構成に係る歯車装置1と相違する。以下、基本構成と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。図16は、歯車装置1Bの概略断面図である。
第1比較例に係る歯車装置1Bでは、実施形態1と同様に、遊星歯車3は、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302を有し、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302の回転軸Ax1に平行な方向の両側には、キャリアフランジ18及び出力フランジ19が配置されている。
図17及び図18に、ある時点における第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302の状態を示す。図17は、図16のA1-A1線断面図であって、第1遊星歯車301を示す。図18は、図16のB1-B1線断面図であって、第2遊星歯車302を示す。ただし、図17及び図18では、保持器54の図示を省略し、かつ断面であってもハッチングを省略している。図17及び図18に示すように、第1遊星歯車301と第2遊星歯車302とでは、その中心C1,C2が回転軸Ax1に対して略180度回転対称に位置する。第1比較例では、偏心量ΔL1と偏心量ΔL2とでは、回転軸Ax1から見た向きが反対であるが、その絶対値は略同じである。上述した構成によれば、軸心部71が回転軸Ax1を中心に回転(自転)することにより、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302は、回転軸Ax1まわりで略180度の位相差をもって、回転軸Ax1まわりで回転(偏心運動)する。
そして、複数の遊星歯車3が、回転軸Ax1を中心とする周方向において略均等に配置されることで、複数の遊星歯車3間での重量バランスをとることが可能である。本実施形態に係る歯車装置1Bでは、このように複数の遊星歯車3間で重量バランスをとるので、偏心軸7の空隙75(図3参照)は省略されている。
さらに、歯車装置1Bでは、実施形態1と同様に、軸受け部材6Aが第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aを含んでいる。また、偏心軸7は、実施形態1と同様に、1つの軸心部71に対して、2つの偏心部72を有している。偏心軸7は、その両端部が第1ベアリング91及び第2ベアリング92を介してキャリアフランジ18及び出力フランジ19に保持されている。つまり、偏心軸7は、遊星歯車3に対して回転軸Ax1に平行な方向の両側において、自転可能な状態でキャリアフランジ18及び出力フランジ19に保持されている。さらに、歯車装置1Bでは、実施形態1と同様に、ケース10が内歯歯車2の歯車本体22とシームレスに一体化されている。
また、本実施形態に係る歯車装置1Bは、複数の内ピン4を支持する構造(支持構造40)が、内ピン4の両端部を転がり軸受け41,42にて保持する構造である点で、基本構成と相違する。つまり、歯車装置1Bは、遊星歯車3に対して回転軸Ax1に平行な方向の両側において、複数の内ピン4の各々を保持する複数組の転がり軸受け41,42を備える。複数の内ピン4の各々は、自転可能な状態で各組の転がり軸受け41,42に保持されている。ここで、複数の内ピン4は、遊星歯車3に形成された複数の遊嵌孔32にそれぞれ挿入された状態で、遊嵌孔32内を公転しながら内歯歯車2に対して回転軸Ax1を中心に相対的に回転する。
ただし、転がり軸受け41,42は、軸受け部材6Aの内輪61に固定されており、内ピン4は、転がり軸受け41,42を介して軸受け部材6Aの内輪61に保持されることになる。したがって、本実施形態に係る歯車装置1Bにおいても、複数の内ピン4の各々が自転可能な状態で内輪61に保持される点については、基本構成と同様である。
さらに、本実施形態に係る歯車装置1Bは、入力軸としての偏心軸7に対して相手部材を固定するための固定構造701がブッシュ70に設けられている。つまり、歯車装置1Bは、遊星歯車3を偏心揺動させる入力軸(偏心軸7)と、ブッシュ70と、を備える。ブッシュ70は、相手部材を固定するための固定構造701を有し、入力軸(偏心軸7)に結合されて入力軸(偏心軸7)と共に回転する。
また、本実施形態では、図16に示すように、偏心体軸受け5は、基本構成で説明したような深溝玉軸受けに代えて、コロ軸受けからなる。つまり、本実施形態に係る歯車装置1Bでは、偏心体軸受け5は、転動体53として円柱状(円筒状)のコロを用いている。さらに、本実施形態では、偏心体内輪51(図3参照)及び偏心体外輪52(図3参照)が省略されている。そのため、遊星歯車3(の開口部33)の内周面が偏心体外輪52の代わりに複数の転動体53の転動面となり、偏心部72の外周面が偏心体内輪51の代わりに複数の転動体53の転動面となる。本実施形態では、偏心体軸受け5は、保持器(リテーナ)54を有しており、複数の転動体53は、それぞれ自転可能な状態で保持器54にて保持される。保持器54は、複数の転動体53を、偏心部72の円周方向において等ピッチで保持する。さらに、保持器54は、遊星歯車3及び偏心軸7に対して固定されておらず、遊星歯車3及び偏心軸7の各々に対して相対的に回転可能である。これにより、保持器54の回転に伴って、保持器54にて保持されている複数の転動体53は、偏心部72の円周方向へ移動する。
さらに、本実施形態に係る歯車装置1Bは、図16に示すように、スペーサ55を備えている。スペーサ55は、第1ベアリング91及び第2ベアリング92と、偏心体軸受け5との間に配置される。具体的には、スペーサ55は、第1ベアリング91と第1遊星歯車301側の偏心体軸受け5との間、及び第2ベアリング92と第2遊星歯車302側の偏心体軸受け5との間に、それぞれ配置される。スペーサ55は、少なくとも内周面が平面視において真円となる、円環状を有している。スペーサ55は、偏心体軸受け5の「押さえ」として機能し、回転軸Ax1に平行な方向への偏心体軸受け5(特に保持器54)の移動を規制する。
ここで、スペーサ55は、第1ベアリング91及び第2ベアリング92に対して、その外輪との間に隙間を確保する。したがって、第1ベアリング91及び第2ベアリング92においては、その外輪はスペーサ55に接することなく、その内輪のみがスペーサ55に接触する。一方で、軸受け部材6Aである第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aは、遊星歯車3との間に隙間を確保する。したがって、第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aは遊星歯車3に接することない。
また、本実施形態に係る歯車装置1Bは、実施形態1と同様に、保持部材80を、支持体8に代えて備えている。保持部材80は、ラジアル方向(歯車本体22の径方向)において歯車本体22との間に複数の外ピン23を保持する部材であって、その外周面に、複数の外ピン23を保持する複数の外周溝801を有している。
また、上述した点以外にも、例えば、内歯歯車2及び遊星歯車3の歯数、減速比、遊嵌孔32及び内ピン4の数、並びに、各部の具体的形状及び寸法等についても、本実施形態と基本構成とでは適宜相違する。例えば、遊嵌孔32及び内ピン4は、基本構成では18個ずつ設けられているのに対して、本実施形態では一例として6個ずつ設けられている。
さらに、本実施形態では、少なくとも軸受け部材6Aと内歯歯車2と遊星歯車3とが組み合わされた状態で、複数の内ピン4の各々を取外し可能に構成されている。つまり、歯車装置1Bは、複数の内ピン4の側方部位(回転軸Ax1に平行な方向の少なくとも一方側)が開放可能であって、当該側方部位から内ピン4の交換等が可能である。ただし、複数の内ピン4の側方部位は常に開放されているのではなく、少なくとも歯車装置1Bの使用時においては、カバー体163,164によって覆われている。カバー体163,164は、例えば、キャリアフランジ18及び出力フランジ19に対して、取外し可能に取り付けられる。
ところで、本実施形態に係る歯車装置1Bは、実施形態1と同様に、内歯歯車2と、遊星歯車3と、を備える。内歯歯車2は、環状の歯車本体22と、歯車本体22の内周面221に形成された複数の内周溝223に自転可能な状態で保持され内歯21を構成する複数の外ピン23と、を有する。遊星歯車3は、内歯21に部分的に噛み合う外歯31を有する。歯車装置1Bは、回転軸Ax1を中心に遊星歯車3を揺動させることにより、遊星歯車3を内歯歯車2に対して相対的に回転させる。ここで、回転軸Ax1を中心とする第1歯車における複数の第2歯車との噛合部位間において、第1歯車の周方向に均等な噛み合い位相が設定されている。さらに、回転軸Ax1に対して対称な位置にある一対の噛合部位間においては噛み合い位相がゼロになる。
本実施形態に係る歯車装置1Bは、図16~図18に示す第1比較例と異なり、図19に示すように、4つの遊星歯車3(第1遊星歯車301、第2遊星歯車302、第3遊星歯車303及び第4遊星歯車304)を備えている。つまり、第1比較例では遊星歯車3の個数は「2」であるのに対し、本実施形態に係る歯車装置1Bでは、遊星歯車3の個数は「4」である。
図19では、内歯歯車2及び複数の遊星歯車3(第1遊星歯車301、第2遊星歯車302、第3遊星歯車303及び第4遊星歯車304)のみを図示し、それ以外の図示を省略する。さらに、図19は、内歯歯車2と複数の遊星歯車3との関係を模式的に表す説明図であって、内歯歯車2及び複数の遊星歯車3の歯形(内歯21及び外歯31)の図示等を省略し、かつ各遊星歯車3を内歯歯車2に対して相対的に小さく表している。
より詳細には、本実施形態に係る歯車装置1Bは、図19に示すように、遊星歯車3として第1遊星歯車301、第2遊星歯車302、第3遊星歯車303及び第4遊星歯車304が設けられている。第1歯車は、内歯歯車2を含み、複数の第2歯車は、第1遊星歯車301、第2遊星歯車302、第3遊星歯車303及び第4遊星歯車304を含む。これにより、歯車装置1Bの内歯歯車2と複数の遊星歯車3(第1遊星歯車301、第2遊星歯車302、第3遊星歯車303及び第4遊星歯車304)との間において、噛み合い伝達誤差による周方向の振動、及び半径方向の振動を低減可能である。
本実施形態に係る歯車装置1Bは、上記構成を具現化するために、下記2つの条件を満たしている。1つ目の条件は、第2歯車(第1遊星歯車301、第2遊星歯車302、第3遊星歯車303及び第4遊星歯車304)の個数kが偶数であること、である。2つ目の条件は、第1歯車(内歯歯車2)の歯数Zsを個数k(本実施形態では「4」)で除したときの剰余Rが、「1」ではなく「k-1」でもないこと、である。すなわち、本実施形態では、第2歯車の個数kが偶数であって、かつ、第1歯車の歯数Zsを個数kで除したときの剰余Rが、上記式1で表される。
例えば、本実施形態のように、遊星歯車3の個数kが「4」であれば、剰余Rは「2」である。別の例として、第2歯車(遊星歯車3)の個数kが「6」であれば、剰余Rは「2」、「3」、「4」のいずれかである。このような条件を課すことで、噛み合い伝達誤差による周方向の振動、及び半径方向の振動を低減するための上記構成を実現可能である。
ここで、複数の第2歯車(第1遊星歯車301、第2遊星歯車302、第3遊星歯車303及び第4遊星歯車304)は、回転軸Ax1を中心とする第1歯車(内歯歯車2)の周方向において等間隔に配置されている。具体的には、図19に示すように、第1遊星歯車301、第2遊星歯車302、第3遊星歯車303及び第4遊星歯車304の配置角δi(i=1,2,3,4)は、同一の値となる。したがって、配置角δi(i=1,2,3,4)は、上記式2の関係を満たす。
本実施形態の第1比較例として、第1歯車(内歯歯車2)における2つの第2歯車(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)との噛合部位間において、噛み合い位相が「無し」(ゼロ)となる構成を想定する。第1比較例においては、第1歯車(内歯歯車2)の歯数Zsを第2歯車(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)の個数k(第1比較例では「k=2」)で除した値(Zs/k)は整数となる。さらに、第1比較例においては、複数の第2歯車は、回転軸Ax1を中心とする第1歯車(内歯歯車2)の周方向において等間隔に配置され、配置角δi(i=1,2)は、下記式4の関係を満たす。
δ1=δ2=2π/k (式4)
また、本実施形態の第2比較例として、第1歯車(内歯歯車2)における2つの第2歯車(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)との噛合部位間において、噛み合い位相が等分されている構成を想定する。つまり、第2比較例では、内歯歯車2における複数の遊星歯車3(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)との噛合部位間において、均等に噛み合い位相が生じる。そのため、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302間の噛み合い位相は、第1歯車のピッチ(2π/Zs)を第2歯車(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)の個数k(第2比較例では「k=2」)で除した値(2π/(Zs×k))となる。
ここで、第2比較例においては、第1歯車(内歯歯車2)の歯数Zsを第2歯車(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)の個数k(第2比較例では「k=2」)で除した値(Zs/k)は整数とならない。さらに、第2比較例においては、複数の第2歯車(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)は、回転軸Ax1を中心とする第1歯車(内歯歯車2)の周方向において等間隔に配置され、配置角δi(i=1,2)は、上記式4の関係を満たす。
図20は、本実施形態、第1比較例(第2歯車が2つ、噛み合い位相なし、等間隔配置)及び第2比較例(第2歯車が2つ、噛み合い位相等分、等間隔配置)の各々について、内歯歯車2と複数の遊星歯車3(第1遊星歯車301、第2遊星歯車302、第3遊星歯車303及び第4遊星歯車304)との間に生じる、噛み合い伝達誤差による内歯歯車2の周方向の振動を、模式的に表す説明図である。図20では、内歯歯車2における第1遊星歯車301との噛合部位に作用する力F1、第2遊星歯車302との噛合部位に作用する力F2、第3遊星歯車303との噛合部位に作用する力F3、及び第4遊星歯車304との噛合部位に作用する力F4を、第1歯車の1ピッチ(一周期φ0)分だけ示している。力F0は、内歯歯車2の周方向における力F1,F2,F3,F4の合成成分(F0=F1+F2+F3+F4)である。ただし、第1比較例及び第2比較例では、第3遊星歯車303及び第4遊星歯車304が存在しないため力F3,F4は0(ゼロ)である。ここで、図20では、噛み合い位相の作用を説明するために、各噛合部位で発生する周方向(回転方向)の振動を正弦波状の周期成分とし、かつこれらの大きさ(振幅)が全て等しいことと仮定した典型例を示す。
図20から明らかなように、第2歯車が2つ、噛み合い位相が「無し」(ゼロ)である第1比較例では、力F1,F2間で位相差が生じないため、これらを合成した力F0の変動(振幅)は、各力F1,F2の変動成分のk(=2)倍となる。一方、第2歯車が2つであるものの、噛み合い位相が等分である第2比較例では、力F1,F2間には、一周期φ0をk(=2)等分した位相差が生じる(つまり、φ1=φ0×1/2)ため、これらを合成した力F0の変動(振幅)は、0(ゼロ)となる。これに対して、本実施形態では、力F1,F2,F3,F4間には、一周期φ0をk(=4)/2等分した位相差が生じる(つまり、φ1=φ0×1/2)ため、これらを合成した力F0の変動(振幅)は、0(ゼロ)となる。
同様に、内歯歯車2の半径方向の振動に関しては、第2歯車が2つであるものの、噛み合い位相が「無し」(ゼロ)で、かつ複数の第2歯車(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)が等間隔に配置される第1比較例では、変動成分が完全に均衡するため振幅は0(ゼロ)となる。一方、第2歯車が2つ、噛み合い位相が等分で、かつ複数の第2歯車(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)が等間隔に配置される第2比較例では、内歯歯車2の半径方向の振動の振幅は、各第2歯車との間に生じる変動成分のk(=2)倍となる。これに対して、本実施形態では、回転軸Ax1に対して対称な位置にある一対の噛合部位間においては噛み合い位相(位相差)が「無し」(ゼロ)であるため、変動成分が完全に均衡して振幅は0(ゼロ)となる。つまり、図19において、例えば、第1遊星歯車301及び第3遊星歯車303において、内歯歯車2の内歯21の歯先に噛み合うタイミングでは、第1遊星歯車301及び第3遊星歯車303の対向方向(図19の上下方向)の振動が相殺され、この方向における振動が0(ゼロ)となる。同様に、第2遊星歯車302及び第4遊星歯車304において、内歯歯車2の内歯21の歯元に噛み合うタイミングでは、第2遊星歯車302及び第4遊星歯車304の対向方向(図19の左右方向)の振動が相殺され、この方向における振動が0(ゼロ)となる。
以上説明したように、本実施形態に係る歯車装置1Bによれば、周方向の振動については第1比較例よりも小さく抑えることができ、半径方向の振動については第2比較例よりも小さく抑えることができる。したがって、本実施形態に係る歯車装置1Bでは、周方向の振動及び半径方向の振動のいずれについても、極力小さく抑えることで低減を図ることが可能である。
<適用例>
本実施形態に係る歯車装置1Bは、図21に示すように、第1部材201及び第2部材202と共に、ロボット用関節装置200を構成する。言い換えれば、本実施形態に係るロボット用関節装置200は、歯車装置1Bと、第1部材201と、第2部材202と、を備える。第1部材201は、歯車本体22に固定される。第2部材202は、内歯歯車2に対する遊星歯車3の相対的な回転に伴って、第1部材201に対して相対的に回転する。図21は、ロボット用関節装置200の概略断面図である。また、図21では、遊星歯車3の個数が「2」である実施形態2の「第1比較例」に係る歯車装置1Bを例示している。
本実施形態では一例として、第1部材201は、外輪62に固定され、第2部材202は、内輪61に固定される。これにより、第2部材202は、内歯歯車2に対する遊星歯車3の相対的な回転に伴って、第1部材201に対して相対的に回転することになる。より詳細には、第1部材201は、ケース10に形成された複数の設置孔111に対して固定されることにより、軸受け部材6Aの外輪62に対して間接的に固定される。第2部材202は、キャリアフランジ18に対して固定されることにより、軸受け部材6Aの内輪61に対して間接的に固定される。
このように構成されるロボット用関節装置200は、第1部材201と第2部材202とが、回転軸Ax1を中心に相対的に回転することにより、関節装置として機能する。ここで、歯車装置1Bの偏心軸7を、駆動源101(図1参照)としての第1モータ203にて駆動することによって、第1部材201と第2部材202とは相対的に回転する。このとき、駆動源101で発生する回転(入力回転)が、歯車装置1Bにおいて比較的高い減速比にて減速され、第1部材201又は第2部材202を比較的高トルクで駆動する。つまり、歯車装置1Bにて連結された第1部材201と第2部材202とは、回転軸Ax1を中心に屈伸動作が可能となる。
より詳細には、第1モータ203の出力軸には、第1プーリP1が固定されている。第1プーリP1には、タイミングベルトT1を介して、第2プーリP2が接続されている。ここで、第2プーリP2は、相手部材として、ブッシュ70の固定構造701に固定される。つまり、第1モータ203が駆動すると、その回転は、第1プーリP1、タイミングベルトT1及び第2プーリP2を介して、入力軸としての偏心軸7に伝達される。
また、ロボット用関節装置200は、第2モータ204を更に備えている。第2モータ204の出力軸には、第3プーリP3が固定されている。第3プーリP3には、タイミングベルトT2を介して、第4プーリP4が接続されている。ここで、第4プーリP4は、シャフト205に固定されている。シャフト205は、貫通孔73を通してブッシュ70及び偏心軸7を貫通する。シャフト205における第4プーリP4とは反対側の端部には、第5プーリP5が固定されている。これにより、第2モータ204が駆動すると、その回転は、第3プーリP3、タイミングベルトT2、第4プーリP4及びシャフト205を介して、第5プーリP5に伝達される。
ロボット用関節装置200は、例えば、水平多関節ロボット(スカラ型ロボット)のようなロボットに用いられる。さらに、ロボット用関節装置200は、水平多関節ロボットに限らず、例えば、水平多関節ロボット以外の産業用ロボット、又は産業用以外のロボット等に用いられてもよい。また、本実施形態に係る歯車装置1Bは、ロボット用関節装置200に限らず、例えば、インホイールモータ等の車輪装置として、無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)等の車両に用いられてもよい。
<変形例>
実施形態1のような振り分けタイプの偏心揺動型の内接噛合遊星歯車装置であっても、実施形態2で説明したように、第1歯車は、内歯歯車2を含み、複数の第2歯車は、第1遊星歯車301、第2遊星歯車302、第3遊星歯車303及び第4遊星歯車304を含んでもよい。この場合、振り分けタイプの偏心揺動型の内接噛合遊星歯車装置において、第1歯車(内歯歯車2)における複数の第2歯車(第1遊星歯車301、第2遊星歯車302、第3遊星歯車303及び第4遊星歯車304)との噛合部位間で、内歯歯車2の周方向に均等な噛み合い位相が設定されることになる。さらに、回転軸Ax1に対して対称な位置にある一対の噛合部位間においては噛み合い位相がゼロになる。
また、歯車装置1Bは内ローラを備えていてもよい。つまり、歯車装置1Bにおいて、複数の内ピン4の各々が、遊嵌孔32の内周面321に直接的に接触することは必須ではなく、複数の内ピン4の各々と遊嵌孔32との間に内ローラが介在してもよい。この場合、内ローラは、内ピン4に装着されて内ピン4を軸に回転可能となる。
実施形態2の構成(変形例を含む)は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
(実施形態3)
ここではまず、実施形態3に係る波動歯車装置1C(以下、単に「歯車装置1C」ともいう)と基本的な構成が共通である実施形態3の「第1比較例」に係る歯車装置1Cを示す図22~図25を参照して、歯車装置1Cの概要を説明する。
本実施形態に係る歯車装置1Cは、図22~図25に示すように、剛性内歯歯車2Cと、可撓性外歯歯車3Cと、波動発生器4Cと、を備える点で、基本構成に係る歯車装置1と相違する。
本実施形態に係る歯車装置1Cは、環状の剛性内歯歯車2Cの内側に、環状の可撓性外歯歯車3Cが配置され、さらに、可撓性外歯歯車3Cの内側には波動発生器4Cが配置される。波動発生器4Cは、可撓性外歯歯車3Cを非円形状に撓ませることにより、剛性内歯歯車2Cの内歯21Cに対して可撓性外歯歯車3Cの外歯31Cを部分的に噛み合わせる。波動発生器4Cが回転すると、内歯21Cと外歯31Cとの噛み合い位置が、剛性内歯歯車2Cの円周方向に移動し、可撓性外歯歯車3Cを剛性内歯歯車2Cとの歯数差に応じた相対回転が両歯車(剛性内歯歯車2C及び可撓性外歯歯車3C)の間に発生する。ここで、剛性内歯歯車2Cが固定されているとすれば、両歯車の相対回転に伴って、可撓性外歯歯車3Cが回転することになる。その結果、可撓性外歯歯車3Cからは、両歯車の歯数差に応じて、比較的高い減速比で減速された回転出力が得られる。
また、可撓性外歯歯車3Cに撓みを生じさせる波動発生器4Cは、入力側の回転軸Ax1を中心に回転駆動される非円形状のカム41Cと、ベアリング42Cと、を有している。ベアリング42Cは、カム41Cの外周面と可撓性外歯歯車3Cの内周面301Cとの間に配置される。ベアリング42Cの内輪422Cは、カム41Cの外周面に固定され、ベアリング42Cの外輪421Cは、ボール状の転動体423Cを介して、カム41Cに押されて弾性変形する。ここで、転動体423Cが転がることで外輪421Cは内輪422Cに対して相対的に回転可能であるので、非円形状のカム41Cが回転すると、内輪422Cの回転は外輪421Cには伝わらず、カム41Cに押された可撓性外歯歯車3Cの外歯31Cには、波動運動が発生する。外歯31Cの波動運動が発生することで、上述したように内歯21Cと外歯31Cとの噛み合い位置が剛性内歯歯車2Cの円周方向に移動し、可撓性外歯歯車3Cと剛性内歯歯車2Cとの間に相対回転が発生する。
要するに、この種の歯車装置1Cにおいては、ベアリング42Cを有する波動発生器4Cが可撓性外歯歯車3Cを撓ませながら、内歯21Cと外歯31Cとの噛み合いによる動力の伝達が実現される。
より詳細には、歯車装置1Cの一例として、カップ型の波動歯車装置を例示する。つまり、本実施形態に係る歯車装置1Cでは、カップ状に形成された可撓性外歯歯車3Cを用いている。波動発生器4Cは、カップ状の可撓性外歯歯車3C内に収容されるように、可撓性外歯歯車3Cと組み合わされる。
本実施形態に係る歯車装置1Cでは、入力側の回転軸Ax1と、出力側の回転軸Ax2とは、同一直線上にある。言い換えれば、入力側の回転軸Ax1と、出力側の回転軸Ax2とは、同軸である。ここで、入力側の回転軸Ax1は、入力回転が与えられる波動発生器4Cの回転中心であって、出力側の回転軸Ax1は、出力回転を生じる可撓性外歯歯車3Cの回転中心である。つまり、歯車装置1Cでは、同軸上において、入力回転に対して、比較的高い減速比にて減速された出力回転が得られることになる。
剛性内歯歯車2Cは、サーキュラスプライン(circular spline)ともいい、内歯21Cを有する環状の部品である。本実施形態では、剛性内歯歯車2Cは、少なくとも内周面が平面視において真円となる、円環状を有している。円環状の剛性内歯歯車2Cの内周面には、内歯21Cが、剛性内歯歯車2Cの円周方向に沿って形成されている。内歯21Cを構成する複数の歯は、全て同一形状であって、剛性内歯歯車2Cの内周面における円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。つまり、内歯21Cのピッチ円は、平面視において真円となる。また、剛性内歯歯車2Cは、回転軸Ax1の方向に所定の厚みを有している。内歯21Cは、いずれも剛性内歯歯車2Cの厚み方向の全長にわたって形成されている。内歯21Cの歯筋は、いずれも回転軸Ax1と平行である。
可撓性外歯歯車3Cは、フレックススプライン(flex spline)ともいい、外歯31Cを有する環状の部品である。本実施形態では、可撓性外歯歯車3Cは、比較的薄肉の金属弾性体(金属板)にて、カップ状に形成された部品である。つまり、可撓性外歯歯車3Cは、その厚みが比較的小さい(薄い)ことで可撓性を持つ。可撓性外歯歯車3Cは、カップ状の本体部32Cを有している。本体部32Cは、胴部321C及び底部322Cを有している。胴部321Cは、可撓性外歯歯車3Cに弾性変形が生じていない状態において、少なくとも内周面301Cが平面視で真円となる、円筒状を有している。胴部321Cの中心軸は、回転軸Ax1と一致する。底部322Cは、胴部321Cの一方の開口面に配置され、平面視において真円となる、円盤状を有している。底部322Cは、胴部321Cの一対の開口面のうち、回転軸Ax1の出力側の開口面に配置されている。上記より、本体部32Cは、胴部321C及び底部322Cの全体で、回転軸Ax1の入力側に開放された、有底の円筒状、つまりカップ状の形状が実現される。言い換えれば、可撓性外歯歯車3Cの回転軸Ax1の方向における底部322Cとは反対側の端面には、開口面35Cが形成されている。つまり、可撓性外歯歯車3Cは、歯筋方向D1の一方(ここでは回転軸Ax1の入力側)に開口面35Cを有する筒状である。本実施形態では、胴部321C及び底部322Cは1つの金属部材にて一体に形成されており、これにより、シームレスな本体部32Cが実現される。
ここで、可撓性外歯歯車3Cに対しては、胴部321Cの内側に、非円形状の波動発生器4Cが嵌め込まれるようにして、波動発生器4Cが組み合わされる。これにより、可撓性外歯歯車3Cは、内側から外側に向けて、波動発生器4Cからラジアル方向(回転軸Ax1に直交する方向)の外力を受けることにより、非円形状に弾性変形する。本実施形態の第1比較例では、楕円形状の波動発生器4Cが可撓性外歯歯車3Cに組み合わされることにより、可撓性外歯歯車3Cは、胴部321Cが楕円形状に弾性変形する(図23参照)。つまり、可撓性外歯歯車3Cに弾性変形が生じていない状態とは、可撓性外歯歯車3Cに波動発生器4Cが組み合わされていない状態を意味する。反対に、可撓性外歯歯車3Cに弾性変形が生じている状態とは、可撓性外歯歯車3Cに波動発生器4Cが組み合わされた状態を意味する。
より詳細には、波動発生器4Cは、胴部321Cの内周面301Cのうち底部322Cとは反対側(回転軸Ax1の入力側)の端部に嵌め込まれる。言い換えれば、波動発生器4Cは、可撓性外歯歯車3Cの胴部321Cのうち、回転軸Ax1の方向における開口面35C側の端部に嵌め込まれている。そのため、可撓性外歯歯車3Cに弾性変形が生じている状態では、可撓性外歯歯車3Cは、回転軸Ax1の方向における開口面35C側の端部において、底部322C側の端部に比較して、より大きく変形し、より楕円形状に近い形状となる。このような回転軸Ax1の方向における変形量の違いから、可撓性外歯歯車3Cに弾性変形が生じている状態において、可撓性外歯歯車3Cの胴部321Cの内周面301Cは、回転軸Ax1に対して傾斜するテーパ面を含むことになる。
また、胴部321Cの外周面のうち少なくとも底部322Cとは反対側(回転軸Ax1の入力側)の端部には、外歯31Cが、胴部321Cの円周方向に沿って形成されている。言い換えれば、外歯31Cは、可撓性外歯歯車3Cの胴部321Cのうち、少なくとも回転軸Ax1の方向における開口面35C側の端部に設けられている。外歯31Cを構成する複数の歯は、全て同一形状であって、可撓性外歯歯車3Cの外周面における円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。つまり、外歯31Cのピッチ円は、可撓性外歯歯車3Cに弾性変形が生じていない状態で、平面視において真円となる。外歯31Cは、胴部321Cの開口面35C側(回転軸Ax1の入力側)の端縁から一定幅の範囲にのみ形成されている。具体的には、胴部321Cのうち、回転軸Ax1の方向において、少なくとも波動発生器4Cが嵌め込まれる部分(開口面35C側の端部)には、外周面に外歯31Cが形成されている。外歯31Cの歯筋は、いずれも回転軸Ax1と平行である。
このように構成される可撓性外歯歯車3Cは、剛性内歯歯車2Cの内側に配置される。ここで、可撓性外歯歯車3Cは、胴部321Cの外周面のうち底部322Cとは反対側(回転軸Ax1の入力側)の端部のみが、剛性内歯歯車2Cの内側に挿入されるように、剛性内歯歯車2Cと組み合わされる。つまり、可撓性外歯歯車3Cは、胴部321Cのうち、回転軸Ax1の方向において、波動発生器4Cが嵌め込まれる部分(開口面35C側の端部)が、剛性内歯歯車2Cの内側に挿入される。ここで、可撓性外歯歯車3Cの外周面には外歯31Cが形成され、剛性内歯歯車2Cの内周面には内歯21Cが形成されている。そのため、剛性内歯歯車2Cの内側に可撓性外歯歯車3Cが配置された状態では、外歯31Cと内歯21Cとは、互いに対向することになる。
ここで、剛性内歯歯車2Cにおける内歯21Cの歯数は、可撓性外歯歯車3Cの外歯31Cの歯数よりも2N(Nは正の整数)だけ多い。本実施形態では一例として、Nが「1」であって、可撓性外歯歯車3Cの(外歯31Cの)歯数は、剛性内歯歯車2Cの(内歯21Cの)歯数よりも「2」多い。このような可撓性外歯歯車3Cと剛性内歯歯車2Cとの歯数差は、歯車装置1Cでの入力回転に対する出力回転の減速比を規定する。
ここにおいて、本実施形態では一例として、外歯31Cの歯筋方向D1の中心と内歯21Cの歯筋方向D1の中心とが対向するように、回転軸Ax1の方向における可撓性外歯歯車3Cと剛性内歯歯車2Cとの相対位置が設定されている。つまり、可撓性外歯歯車3Cの外歯31Cと剛性内歯歯車2Cの内歯21Cとでは、歯筋方向D1の中心の位置が回転軸Ax1の方向の同一位置に合わされている。また、本実施形態では、外歯31Cの歯筋方向D1の寸法(歯幅)は、内歯21Cの歯筋方向D1の寸法(歯幅)よりも大きい。そのため、回転軸Ax1に平行な方向においては、外歯31Cの歯筋の範囲内に、内歯21Cが収まることになる。言い換えれば、外歯31Cは、内歯21Cに対して、歯筋方向D1の少なくとも一方に突出する。本実施形態では、外歯31Cは、内歯21Cに対して、歯筋方向D1の両方(回転軸Ax1の入力側及び出力側)に突出する。
ここで、可撓性外歯歯車3Cに弾性変形が生じていない状態(可撓性外歯歯車3Cに波動発生器4Cが組み合わされていない状態)で、真円を描く外歯31Cのピッチ円は、同じく真円を描く内歯21Cのピッチ円に比べて一回り小さくなるように設定されている。つまり、可撓性外歯歯車3Cに弾性変形が生じていない状態では、外歯31Cとの内歯21Cとは、隙間を介して対向することになり、互いに噛み合ってはいない。
一方で、可撓性外歯歯車3Cに弾性変形が生じた状態(可撓性外歯歯車3Cに波動発生器4Cが組み合わされた状態)では、胴部321Cが非円形状に撓むので、剛性内歯歯車2Cの内歯21Cに対して可撓性外歯歯車3Cの外歯31Cが部分的に噛み合う。つまり、第1比較例では、可撓性外歯歯車3Cの胴部321C(の少なくとも開口面35C側の端部)が楕円形状に弾性変形することで、図23に示すように、楕円形状の長軸方向の両端に位置する外歯31Cが、内歯21Cに噛み合うこととなる。言い換えれば、楕円を描く外歯31Cのピッチ円の長径は、真円を描く内歯21Cのピッチ円の直径に一致し、楕円を描く外歯31Cのピッチ円の短径は、真円を描く内歯21Cのピッチ円の直径より小さくなる。このようにして、可撓性外歯歯車3Cが弾性変形すると、外歯31Cを構成する複数の歯のうちの一部の歯が、内歯21Cを構成する複数の歯のうちの一部の歯に噛み合うことになる。結果的に、歯車装置1Cでは、外歯31Cの一部を内歯21Cの一部に噛み合わせることが可能となる。
波動発生器4Cは、ウェーブジェネレータ(wave generator)ともいい、可撓性外歯歯車3Cに撓みを生じさせて、可撓性外歯歯車3Cの外歯31Cに波動運動を生じさせる部品である。本実施形態の第1比較例では、波動発生器4Cは、平面視において外周形状が非円形状、具体的には楕円形状となる部品である。
ところで、可撓性外歯歯車3Cが楕円形状に弾性変形する場合には、上述したように、楕円形状の長軸方向の両端側の2箇所において、外歯31Cが内歯21Cに噛み合うこととなる。このように、内歯21Cにおける外歯31Cとの複数の噛合部位においては、噛み合い伝達誤差による剛性内歯歯車2Cの周方向の振動、及び剛性内歯歯車2Cの半径方向の振動が生じることがある。本実施形態に係る歯車装置1Cでは、このような噛合部位に生じる振動を低減するべく、以下の構成を採用する。
すなわち、本実施形態に係る歯車装置1Cは、内歯21Cを有する環状の剛性内歯歯車2Cと、外歯31Cを有する環状の可撓性外歯歯車3Cと、波動発生器4Cと、を備える。可撓性外歯歯車3Cは、剛性内歯歯車2Cの内側に配置される。波動発生器4Cは、可撓性外歯歯車3Cの内側に配置され、可撓性外歯歯車3Cに撓みを生じさせる。歯車装置1Cでは、回転軸Ax1を中心とする波動発生器4Cの回転に伴って可撓性外歯歯車3Cを変形させ、外歯31Cの一部を内歯21Cの一部に噛み合わせて、可撓性外歯歯車3Cを剛性内歯歯車2Cとの歯数差に応じて剛性内歯歯車2Cに対して相対的に回転させる。ここで、内歯21Cにおける外歯31Cとの複数の噛合部位間において、内歯21Cの周方向に均等な噛み合い位相が設定されている。さらに、回転軸Ax1に対して対称な位置にある一対の噛合部位間においては噛み合い位相がゼロになる。
本実施形態に係る歯車装置1Cは、図22~図25に示す第1比較例と異なり、図26に示すように、4つ(4箇所)の噛合部位Pg1,Pg2,Pg3,Pg4にて、可撓性外歯歯車3Cの外歯31Cが剛性内歯歯車2Cの内歯21Cに噛み合う。一例として、平面視において外周形状が角丸四角形状となる波動発生器4Cが可撓性外歯歯車3Cに組み合わされることで、図26に示すように、可撓性外歯歯車3Cが角丸四角形状に弾性変形し、頂点部に相当する4箇所にて外歯31Cが内歯21Cに噛み合うこととなる。つまり、可撓性外歯歯車3Cが楕円形状に弾性変形する第1比較例では、内歯21Cにおける外歯31Cとの噛合部位の個数は「2」であるのに対し、本実施形態に係る歯車装置1Cでは、噛合部位Pg1,Pg2,Pg3,Pg4の個数は「4」である。
図26では、剛性内歯歯車2C及び可撓性外歯歯車3Cのみを図示し、それ以外(波動発生器4C等)の図示を省略する。さらに、図26は、剛性内歯歯車2Cと可撓性外歯歯車3Cとの関係を模式的に表す説明図であって、剛性内歯歯車2C及び可撓性外歯歯車3Cの歯形(内歯21C及び外歯31C)の図示等を省略している。
本実施形態に係る歯車装置1Cは、上記構成を具現化するために、下記2つの条件を満たしている。1つ目の条件は、内歯21Cにおける外歯31Cとの噛合部位Pg1,Pg2,Pg3,Pg4の個数kが偶数であること、である。2つ目の条件は、剛性内歯歯車2Cの歯数Zsを個数k(本実施形態では「4」)で除したときの剰余Rが、「1」ではなく「k-1」でもないこと、である。すなわち、本実施形態では、噛合部位Pg1,Pg2,Pg3,Pg4の個数kが偶数であって、かつ、剛性内歯歯車2Cの歯数Zsを個数kで除したときの剰余Rが、上記式1で表される。
例えば、本実施形態のように、噛合部位Pg1,Pg2,Pg3,Pg4の個数kが「4」であれば、剰余Rは「2」である。別の例として、内歯21Cにおける外歯31Cとの噛合部位の個数kが「6」であれば、剰余Rは「2」、「3」、「4」のいずれかである。このような条件を課すことで、噛み合い伝達誤差による周方向の振動、及び半径方向の振動を低減するための上記構成を実現可能である。
ここで、複数の噛合部位Pg1,Pg2,Pg3,Pg4は、回転軸Ax1を中心とする剛性内歯歯車2Cの周方向において等間隔に配置されている。具体的には、図26に示すように、噛合部位Pg1,Pg2,Pg3,Pg4の配置角δi(i=1,2,3,4)は、同一の値となる。したがって、配置角δi(i=1,2,3,4)は、上記式2の関係を満たす。
すなわち、本実施形態に係る歯車装置1Cは、回転軸Ax1を中心とする剛性内歯歯車2Cにおける可撓性外歯歯車3Cとの複数の噛合部位Pg1,Pg2,Pg3,Pg4間において、均等な噛み合い位相が生じるように構成されている。具体的に、剛性内歯歯車2Cの周方向において隣接する噛合部位Pg1,Pg2,Pg3,Pg4との間の噛み合い位相(位相差)は、複数の噛合部位Pg1,Pg2,Pg3,Pg4の全てにおいて同一となる。例えば、噛合部位Pg1と、これに隣接する噛合部位Pg2との間の噛み合い位相は、噛合部位Pg2と、これに隣接する噛合部位Pg3との間の噛み合い位相と同一である。同様に、噛合部位Pg3と、これに隣接する噛合部位Pg4との間の噛み合い位相は、噛合部位Pg4と、これに隣接する噛合部位Pg1との間の噛み合い位相と同一である。これにより、内歯21Cと外歯31Cとの間において、噛み合い伝達誤差による周方向の振動を低減可能である。
さらに、回転軸Ax1に対して対称な位置にある一対の噛合部位Pg1,Pg2,Pg3,Pg4間においては噛み合い位相(位相差)は「無し」(ゼロ)になる。つまり、回転軸Ax1を中心に2回回転対称(180度回転対称)の位置にある一対の噛合部位Pg1,Pg2,Pg3,Pg4間においては、噛み合い位相(位相差)は「無し」(ゼロ)となり、噛み合いのタイミングは同一(同位相)となる。例えば、噛合部位Pg1と、回転軸Ax1に対して対称な位置にある噛合部位Pg3との間の噛み合い位相(位相差)は、ゼロである。同様に、噛合部位Pg2と、回転軸Ax1に対して対称な位置にある噛合部位Pg4との間の噛み合い位相(位相差)は、ゼロである。
つまり、図26において、例えば、噛合部位Pg1,Pg3において、内歯21Cの歯先に外歯31Cが噛み合うタイミングでは、噛合部位Pg1,Pg3の対向方向(図26の上下方向)の振動が相殺され、この方向における振動が0(ゼロ)となる。同様に、噛合部位Pg2,Pg4において、内歯21Cの歯元に外歯31Cが噛み合うタイミングでは、噛合部位Pg2,Pg4の対向方向(図26の左右方向)の振動が相殺され、この方向における振動が0(ゼロ)となる。これにより、内歯21Cと外歯31Cとの間において、半径方向の振動を低減可能である。
要するに、実施形態2では、第1歯車(内歯歯車2)における複数の第2歯車(遊星歯車3)との噛合部位間で均等な噛み合い位相が設定されるのに対し、本実施形態では、内歯21Cにおける外歯31Cとの複数の噛合部位Pg1,Pg2,Pg3,Pg4間で均等な噛み合い位相が設定される。この場合の作用については、実施形態2において第1歯車(内歯歯車2)における複数の第2歯車(遊星歯車3)との噛合部位を、内歯21Cにおける外歯31Cとの複数の噛合部位Pg1,Pg2,Pg3,Pg4に読み替えた場合と同様であるから、詳しい説明は省略する。したがって、本実施形態に係る歯車装置1Cによれば、内歯21Cにおける外歯31Cとの複数の噛合部位Pg1,Pg2,Pg3,Pg4において、噛み合い伝達誤差による周方向の振動、及び半径方向の振動を低減可能である。
<変形例>
波動発生器4Cは、可撓性外歯歯車3Cを(角丸)四角形状に弾性変形させる構成に限らず、例えば、(角丸)六角形状又は(角丸)八角形状等に可撓性外歯歯車3Cを弾性変形させてもよい。可撓性外歯歯車3Cを(角丸)六角形状に弾性変形させる場合には、六角形状の頂点部となる6箇所において、外歯31Cが内歯21Cに噛み合うこととなるので、内歯21Cにおける外歯31Cとの6箇所の噛合部位間において、均等な噛み合い位相が設定される構成とする。さらに、回転軸Ax1に対して対称な位置にある一対の噛合部位間においては噛み合い位相がゼロになる構成とする。
実施形態3(変形例を含む)の構成は、実施形態1又は実施形態2で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)は、内歯歯車(2)と、遊星歯車(3)と、を備える。内歯歯車(2)は、環状の歯車本体(22)と、歯車本体(22)の内周面(221)に形成された複数の内周溝(223)に自転可能な状態で保持され内歯(21)を構成する複数の外ピン(23)と、を有する。遊星歯車(3)は、内歯(21)に部分的に噛み合う外歯(31)を有する。内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)は、回転軸(Ax1)を中心に遊星歯車(3)を揺動させることにより、遊星歯車(3)を内歯歯車(2)に対して相対的に回転させる。回転軸(Ax1)を中心とする第1歯車における複数の第2歯車との噛合部位間において、第1歯車の周方向に均等な噛み合い位相が設定されている。回転軸(Ax1)に対して対称な位置にある一対の噛合部位間においては噛み合い位相がゼロになる。
この態様によれば、第1歯車における複数の第2歯車との噛合部位間において、第1歯車の周方向に均等な噛み合い位相が設定されることで、周方向の振動を小さく抑えることができる。さらに、回転軸(Ax1)に対して対称な位置にある一対の噛合部位間においては噛み合い位相がゼロになるので、半径方向の振動を小さく抑えることができる。したがって、第1歯車と複数の第2歯車との間において、噛み合い伝達誤差による周方向の振動、及び半径方向の振動を低減可能である、という利点がある。
第2の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)では、第1の態様において、遊星歯車として第1遊星歯車(301)、第2遊星歯車(302)、第3遊星歯車(303)及び第4遊星歯車(304)が設けられている。第1歯車は、内歯歯車(2)を含み、複数の第2歯車は、第1遊星歯車(301)、第2遊星歯車(302)、第3遊星歯車(303)及び第4遊星歯車(304)を含む。
この態様によれば、内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)の内歯歯車(2)と第1遊星歯車(301)、第2遊星歯車(302)、第3遊星歯車(303)及び第4遊星歯車(304)との間において、噛み合い伝達誤差による周方向の振動、及び半径方向の振動を低減可能である。
第3の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)は、第1又は2の態様において、回転軸(Ax1)を中心に回転する入力歯車(501)と、複数のクランク軸歯車(502A,502B,502C,502D)と、を更に備える。複数のクランク軸歯車(502A,502B,502C,502D)は、入力歯車(501)と噛み合うように入力歯車(501)の周囲に配置され、入力歯車(501)の回転時に、互いに同期して回転することにより遊星歯車(3)を揺動させる。第1歯車は、入力歯車(501)を含み、第2歯車は、複数のクランク軸歯車(502A,502B,502C,502D)を含む。
この態様によれば、内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)の一次減速機構を構成する入力歯車(501)と複数のクランク軸歯車(502A,502B,502C,502D)との間において、噛み合い伝達誤差による周方向の振動、及び半径方向の振動を低減可能である。
第4の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)では、第1~3のいずれかの態様において、第2歯車の個数kが偶数であって、かつ、第1歯車の歯数Zsを個数kで除したときの剰余Rが、
R≠1,(k-1)
で表される。
この態様によれば、噛み合い伝達誤差による周方向の振動、及び半径方向の振動を低減可能である。
第5の態様に係るロボット用関節装置(200)は、第1~4のいずれかの態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)と、歯車本体(22)に固定される第1部材(201)と、内歯歯車(2)に対する遊星歯車(3)の相対的な回転に伴って、第1部材(201)に対して相対的に回転する第2部材(202)と、を備える。
この態様によれば、第1歯車と複数の第2歯車との間において、噛み合い伝達誤差による周方向の振動、及び半径方向の振動を低減可能である、という利点がある。
第7の態様に係る波動歯車装置(1C)は、内歯(21C)を有する環状の剛性内歯歯車(2C)と、外歯(31C)を有する環状の可撓性外歯歯車(3C)と、波動発生器(4C)と、を備える。可撓性外歯歯車(3C)は、剛性内歯歯車(2C)の内側に配置される。波動発生器(4C)は、可撓性外歯歯車(3C)の内側に配置され、可撓性外歯歯車(3C)に撓みを生じさせる。波動歯車装置(1C)では、回転軸(Ax1)を中心とする波動発生器(4C)の回転に伴って可撓性外歯歯車(3C)を変形させ、外歯(31C)の一部を内歯(21C)の一部に噛み合わせて、可撓性外歯歯車(3C)を剛性内歯歯車(2C)との歯数差に応じて剛性内歯歯車(2C)に対して相対的に回転させる。内歯(21C)における外歯(31C)との複数の噛合部位(Pg1,Pg2,Pg3,Pg4)間において、内歯(21C)の周方向に均等な噛み合い位相が設定されている。回転軸(Ax1)に対して対称な位置にある一対の噛合部位(Pg1,Pg2,Pg3,Pg4)間においては噛み合い位相がゼロになる。
この態様によれば、複数の噛合部位(Pg1,Pg2,Pg3,Pg4)間において、内歯(21C)の周方向に均等な噛み合い位相が設定されることで、周方向の振動を小さく抑えることができる。さらに、回転軸(Ax1)に対して対称な位置にある一対の噛合部位(Pg1,Pg2,Pg3,Pg4)間においては噛み合い位相がゼロになるので、半径方向の振動を小さく抑えることができる。したがって、内歯(21C)における外歯(31C)との複数の噛合部位において、噛み合い伝達誤差による周方向の振動、及び半径方向の振動を低減可能である、という利点がある。
第2~4の態様に係る構成については、内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
1,1A,1B 内接噛合遊星歯車装置
1C 波動歯車装置
2 内歯歯車
2C 剛性内歯歯車
3 遊星歯車
3C 可撓性外歯歯車
4C 波動発生器
21,21C 内歯
22 歯車本体
23 外ピン
31,31C 外歯
200 ロボット用関節装置
201 第1部材
202 第2部材
221 (歯車本体の)内周面
223 内周溝
301 第1遊星歯車(第2歯車)
302 第2遊星歯車(第2歯車)
303 第3遊星歯車(第2歯車)
304 第4遊星歯車(第2歯車)
501 入力歯車(第1歯車)
502A,502B,502C,502D クランク軸歯車(第2歯車)
Ax1 回転軸
Pg1,Pg2,Pg3,Pg4 噛合部位

Claims (7)

  1. 環状の歯車本体と、前記歯車本体の内周面に形成された複数の内周溝に自転可能な状態で保持され内歯を構成する複数の外ピンと、を有する内歯歯車と、
    前記内歯に部分的に噛み合う外歯を有する遊星歯車と、を備え、
    回転軸を中心に前記遊星歯車を揺動させることにより、前記遊星歯車を前記内歯歯車に対して相対的に回転させ、
    前記回転軸を中心とする第1歯車における複数の第2歯車との噛合部位間において、前記第1歯車の周方向に均等な噛み合い位相が設定されており、
    前記回転軸に対して対称な位置にある一対の前記噛合部位間においては噛み合い位相がゼロになる、
    内接噛合遊星歯車装置。
  2. 前記遊星歯車として第1遊星歯車、第2遊星歯車、第3遊星歯車及び第4遊星歯車が設けられており、
    前記第1歯車は、前記内歯歯車を含み、
    前記複数の第2歯車は、前記第1遊星歯車、前記第2遊星歯車、前記第3遊星歯車及び前記第4遊星歯車を含む、
    請求項1に記載の内接噛合遊星歯車装置。
  3. 前記回転軸を中心に回転する入力歯車と、
    前記入力歯車と噛み合うように前記入力歯車の周囲に配置され、前記入力歯車の回転時に、互いに同期して回転することにより前記遊星歯車を揺動させる複数のクランク軸歯車と、を更に備え、
    前記第1歯車は、前記入力歯車を含み、
    前記第2歯車は、前記複数のクランク軸歯車を含む、
    請求項1又は2に記載の内接噛合遊星歯車装置。
  4. 前記第2歯車の個数kが偶数であって、かつ、前記第1歯車の歯数Zsを前記個数kで除したときの剰余Rが、
    R≠1,(k-1)
    で表される、
    請求項1又は2に記載の内接噛合遊星歯車装置。
  5. 請求項1又は2に記載の内接噛合遊星歯車装置と、
    前記歯車本体に固定される第1部材と、
    前記内歯歯車に対する前記遊星歯車の相対的な回転に伴って、前記第1部材に対して相対的に回転する第2部材と、を備える、
    ロボット用関節装置。
  6. 内歯を有する環状の剛性内歯歯車と、
    外歯を有し、前記剛性内歯歯車の内側に配置される環状の可撓性外歯歯車と、
    前記可撓性外歯歯車の内側に配置され、前記可撓性外歯歯車に撓みを生じさせる波動発生器と、を備え、
    回転軸を中心とする前記波動発生器の回転に伴って前記可撓性外歯歯車を変形させ、前記外歯の一部を前記内歯の一部に噛み合わせて、前記可撓性外歯歯車を前記剛性内歯歯車との歯数差に応じて前記剛性内歯歯車に対して相対的に回転させる波動歯車装置であって、
    前記内歯における前記外歯との複数の噛合部位間において、前記内歯の周方向に均等な噛み合い位相が設定されており、
    前記回転軸に対して対称な位置にある一対の前記噛合部位間においては噛み合い位相がゼロになる、
    波動歯車装置。
  7. 前記噛合部位の個数kが偶数であって、かつ、前記剛性内歯歯車の歯数Zsを前記個数kで除したときの剰余Rが、
    R≠1,(k-1)
    で表される、
    請求項6に記載の波動歯車装置。
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