JP2024043451A - 歯車装置及びロボット用関節装置 - Google Patents

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剛 王
清次 峯岸
毅 伊佐地
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Abstract

【課題】内歯と外歯との噛み合いが安定しやすい歯車装置及びロボット用関節装置を提供する。【解決手段】歯車装置1Aは、内歯歯車2と、環状の外歯歯車3と、撓み発生器40と、を備える。外歯歯車3は、外歯31を有し、内歯歯車2の内側に配置される。撓み発生器40は、回転軸Ax1を中心に回転駆動される非円形状のカム41、及びカム41の外側に装着されるベアリング42を有する。撓み発生器40は、外歯歯車3の内側に配置され、外歯歯車3に撓みを生じさせる。歯車装置1Aは、カム41の回転に伴って外歯歯車3を変形させ、外歯31の一部を内歯21の一部に噛み合わせて、外歯歯車3を内歯歯車2との歯数差に応じて内歯歯車2に対して相対的に回転させる。内歯歯車2の周方向の180度以上を占める同時噛合範囲Ra1において、内歯と外歯とが噛み合う。【選択図】図12

Description

本開示は、一般に歯車装置及びロボット用関節装置に関し、より詳細には、内歯を有する内歯歯車の内側に外歯を有する外歯歯車が配置される歯車装置及びロボット用関節装置に関する。
関連技術として、外歯歯車と、内歯歯車と、を備え、外歯歯車の自転成分のみを取り出すように構成された内接噛合遊星歯車装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。外歯歯車は、入力軸の回転中心に対し偏心回転可能に取り付けられている。また、内歯歯車は、外歯歯車の各外歯と内接噛合しながら回転する複数の外ピンと、円筒状の内面を持ち各々の外ピンを回転自在に保持する歯車本体(外ピンホルダ)と、を有する。
ここで、歯車本体は、内面上に軸方向に凹設されて外ピンを保持する複数の内周溝(ピン溝)を有する。外歯歯車の外周には、トロコイド歯形又は円弧歯形といった外歯が設けられる。外ピンは、回転時に外歯歯車からの力を受けて撓む程度に細い円柱状のピン部材であり、その軸方向が回転中心と平行になるように配置されて内歯として機能する。また、関連技術における歯車本体では、1つの内周溝内で内径(半径)が異なる箇所が存在し、部分的に、内周溝の内径が外ピンの外径よりも大きく、外ピンの外周面と内周溝の内面との間のクリアランスによりガタが生じる。そのため、外ピンが低ロスで回転可能となる。
特開2020-153413号公報
上記関連技術では、外ピンの外周面と内周溝の内面との間にガタが生じることから、内歯(外ピン)と外歯との噛み合い時に、外歯によって内周溝から引っ張り出される向きの力が外ピンに作用し、内歯と外歯との噛み合いが不安定になる可能性がある。
本開示の目的は、内歯と外歯との噛み合いが安定しやすい歯車装置及びロボット用関節装置を提供することにある。
本開示の一態様に係る歯車装置は、内歯歯車と、環状の外歯歯車と、撓み発生器と、を備える。前記内歯歯車は、環状の歯車本体と、前記歯車本体の内周面に形成された複数の内周溝に自転可能な状態で保持され内歯を構成する複数の外ピンと、を有する。前記外歯歯車は、外歯を有し、前記内歯歯車の内側に配置される。前記撓み発生器は、回転軸を中心に回転駆動される非円形状のカム、及び前記カムの外側に装着されるベアリングを有する。前記撓み発生器は、前記外歯歯車の内側に配置され、前記外歯歯車に撓みを生じさせる。前記歯車装置は、前記カムの回転に伴って前記外歯歯車を変形させ、前記外歯の一部を前記内歯の一部に噛み合わせて、前記外歯歯車を前記内歯歯車との歯数差に応じて前記内歯歯車に対して相対的に回転させる。前記内歯歯車の周方向の180度以上を占める同時噛合範囲において、前記内歯と前記外歯とが噛み合う。
本開示の一態様に係るロボット用関節装置は、前記歯車装置と、前記歯車本体に固定される第1部材と、前記内歯歯車に対する前記遊星歯車の相対的な回転に伴って、前記第1部材に対して相対的に回転する第2部材と、を備える。
本開示によれば、内歯と外歯との噛み合いが安定しやすい歯車装置及びロボット用関節装置を提供することができる。
図1は、基本構成に係る歯車装置を含むアクチュエータの概略構成を示す斜視図である。 図2は、同上の歯車装置を回転軸の出力側から見た概略の分解斜視図である。 図3は、同上の歯車装置の概略断面図である。 図4は、同上の歯車装置を示す、図3のA1-A1線断面図である。 図5Aは、同上の歯車装置の遊星歯車を単体で示す斜視図である。 図5Bは、同上の歯車装置の遊星歯車を単体で示す正面図である。 図6Aは、同上の歯車装置の軸受け部材を単体で示す斜視図である。 図6Bは、同上の歯車装置の軸受け部材を単体で示す正面図である。 図7Aは、同上の歯車装置の偏心軸を単体で示す斜視図である。 図7Bは、同上の歯車装置の偏心軸を単体で示す正面図である。 図8Aは、同上の歯車装置の支持体を単体で示す斜視図である。 図8Bは、同上の歯車装置の支持体を単体で示す正面図である。 図9は、同上の歯車装置を示す、図3の領域Z1の拡大図である。 図10は、同上の歯車装置を示す、図3のB1-B1線断面図である。 図11は、実施形態1に係る歯車装置の概略断面図であって、要部の概略拡大図を吹き出し内に示している。 図12は、同上の歯車装置を示す、図11のA1-A1線断面図である。 図13は、同上の歯車装置を示す、図11のA1-A1線断面図である。 図14Aは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図14Bは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図15Aは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図15Bは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図16Aは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図16Bは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図17Aは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図17Bは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図18Aは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図18Bは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図19Aは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図19Bは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図20Aは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図20Bは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図21Aは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図21Bは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図22Aは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図22Bは、同上の歯車装置における外歯歯車の歯形設計の手順を説明するための概念図である。 図23は、同上の歯車装置における外歯及び内歯の要部拡大図である。 図24は、同上の歯車装置を用いたロボット用関節装置を示す概略断面図である。 図25は、実施形態2に係る歯車装置の概略断面図である。
(基本構成)
(1)概要
以下、本基本構成に係る歯車装置1の概要について、図1~図3を参照して説明する。本開示で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。例えば、図1~図3における、内歯21及び外歯31の歯形、寸法及び歯数等は、いずれも説明のために模式的に表しているに過ぎず、図示されている形状に限定する趣旨ではない。
本基本構成に係る歯車装置1は、内歯歯車2と、外歯歯車3と、複数の内ピン4と、を備える歯車装置である。この歯車装置1では、環状の内歯歯車2の内側に外歯歯車3が配置され、さらに、外歯歯車3の内側には偏心体軸受け5が配置される。偏心体軸受け5は、偏心体内輪51及び偏心体外輪52を有し、偏心体内輪51の中心C1(図3参照)からずれた回転軸Ax1(図3参照)まわりで偏心体内輪51が回転(偏心運動)することによって、外歯歯車3を揺動させる。偏心体内輪51は、例えば、偏心体内輪51に挿入される偏心軸7が回転することにより、回転軸Ax1まわりで回転(偏心運動)する。また、歯車装置1は、外輪62及び内輪61を有する軸受け部材6を更に備える。内輪61は、外輪62の内側に配置され、外輪62に対して相対的に回転可能に支持される。
内歯歯車2は、内歯21を有し、外輪62に固定される。特に、本基本構成では、内歯歯車2は、環状の歯車本体22と、複数の外ピン23と、を有する。複数の外ピン23は、自転可能な状態で歯車本体22の内周面221に保持され、内歯21を構成する。外歯歯車3は、内歯21に部分的に噛み合う外歯31を有する。つまり、内歯歯車2の内側で外歯歯車3は内歯歯車2に対して内接し、外歯31の一部が内歯21の一部に噛み合った状態となる。この状態で、偏心軸7が回転すると外歯歯車3が揺動して、内歯21と外歯31との噛み合い位置が内歯歯車2の円周方向に移動し、外歯歯車3と内歯歯車2との歯数差に応じた相対回転が両歯車(内歯歯車2及び外歯歯車3)の間に発生する。ここで、内歯歯車2が固定されているとすれば、両歯車の相対回転に伴って、外歯歯車3が回転(自転)することになる。その結果、外歯歯車3からは、両歯車の歯数差に応じて、比較的高い減速比で減速された回転出力が得られる。
この種の歯車装置1は、外歯歯車3の自転成分相当の回転を、例えば、軸受け部材6の内輪61と一体化された出力軸の回転として取り出すように使用される。これにより、歯車装置1は、偏心軸7を入力側とし、出力軸を出力側として、比較的高い減速比の歯車装置として機能する。そこで、本基本構成に係る歯車装置1では、外歯歯車3の自転成分相当の回転を、軸受け部材6の内輪61に伝達するべく、複数の内ピン4にて、外歯歯車3と内輪61とを連結する。複数の内ピン4は、外歯歯車3に形成された複数の遊嵌孔32にそれぞれ挿入された状態で、それぞれ遊嵌孔32内を公転しながら内歯歯車2に対して相対的に回転する。つまり、遊嵌孔32は、内ピン4よりも大きな直径を有し、内ピン4は、遊嵌孔32に挿入された状態で遊嵌孔32内を公転するように移動可能である。そして、外歯歯車3の揺動成分、つまり外歯歯車3の公転成分は、外歯歯車3の遊嵌孔32と内ピン4との遊嵌によって吸収される。言い換えれば、複数の内ピン4がそれぞれ複数の遊嵌孔32内を公転するように移動することで、外歯歯車3の揺動成分が吸収される。したがって、軸受け部材6の内輪61には、複数の内ピン4により、外歯歯車3の揺動成分(公転成分)を除いた、外歯歯車3の回転(自転成分)が伝達されることになる。
ところで、この種の歯車装置1では、外歯歯車3の遊嵌孔32内を内ピン4が公転しながら、外歯歯車3の回転が複数の内ピン4に伝達されるので、第1関連技術として、内ピン4に装着されて内ピン4を軸に回転可能な内ローラを用いることが知られている。つまり、第1関連技術においては、内ピン4は、内輪61(又は内輪61と一体化されたキャリア)に対して圧入された状態で保持されており、遊嵌孔32内を内ピン4が公転する際に、内ピン4は遊嵌孔32の内周面321に対して摺動する。そこで、第1関連技術としては、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の摩擦抵抗による損失を低減するために、内ローラが用いられる。ただし、第1関連技術のように内ローラを備える構成であれば、遊嵌孔32は、内ローラ付きの内ピン4が公転可能な径を有する必要があり、遊嵌孔32の小型化が困難である。遊嵌孔32の小型化が困難であると、外歯歯車3の小型化(特に小径化)の妨げとなって、ひいては歯車装置1全体の小型化の妨げとなる。本基本構成に係る歯車装置1は、以下の構成により、小型化しやすい歯車装置1を提供可能とする。
すなわち、本基本構成に係る歯車装置1は、図1~図3に示すように、軸受け部材6と、内歯歯車2と、外歯歯車3と、複数の内ピン4と、を備える。軸受け部材6は、外輪62及び外輪62の内側に配置される内輪61を有する。内輪61は外輪62に対して相対的に回転可能に支持される。内歯歯車2は、内歯21を有し外輪62に固定される。外歯歯車3は、内歯21に部分的に噛み合う外歯31を有する。複数の内ピン4は、外歯歯車3に形成された複数の遊嵌孔32にそれぞれ挿入された状態で、遊嵌孔32内を公転しながら内歯歯車2に対して相対的に回転する。ここで、複数の内ピン4の各々は、自転可能な状態で内輪61に保持されている。さらに、複数の内ピン4の各々は、少なくとも一部が軸受け部材6の軸方向において軸受け部材6と同じ位置に配置される。
この態様によれば、複数の内ピン4の各々は、自転可能な状態で内輪61に保持されるので、遊嵌孔32内を内ピン4が公転する際に、内ピン4自体が自転可能である。そのため、内ピン4に装着されて内ピン4を軸に回転可能な内ローラを用いなくとも、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の摩擦抵抗による損失を低減できる。したがって、本基本構成に係る歯車装置1では、内ローラが必須でなく、小型化しやすいという利点がある。しかも、複数の内ピン4の各々は、少なくとも一部が軸受け部材6の軸方向において軸受け部材6と同じ位置に配置されるので、軸受け部材6の軸方向における歯車装置1の寸法を小さく抑えることができる。つまり、軸受け部材6の軸方向に、軸受け部材6と内ピン4とが並ぶ(対向する)構成に比べて、本基本構成に係る歯車装置1では、軸方向における歯車装置1の寸法を小さくでき、歯車装置1の更なる小型化(薄型化)に貢献可能である。
さらに、上記第1関連技術と外歯歯車3の寸法が同じであれば、上記第1関連技術に比較して、例えば、内ピン4の数(本数)を増やして回転の伝達をスムーズにしたり、内ピン4を太くして強度を向上させたりすることも可能である。
また、この種の歯車装置1では、外歯歯車3の遊嵌孔32内を内ピン4が公転する必要があるので、第2関連技術として、複数の内ピン4は、内輪61(又は内輪61と一体化されたキャリア)のみで保持されることがある。第2関連技術によれば、複数の内ピン4の芯出しの精度向上が困難であって、芯出し不良により、振動の発生、及び伝達効率の低下等の不具合につながる可能性がある。つまり、複数の内ピン4は、それぞれ遊嵌孔32内を公転しながら内歯歯車2に対して相対的に回転することで、外歯歯車3の自転成分を、軸受け部材6の内輪61に伝達する。このとき、複数の内ピン4の芯出しの精度が不十分で、複数の内ピン4の回転軸が内輪61の回転軸に対してずれたり傾いたりしていると、芯出し不良の状態となり、振動の発生、及び伝達効率の低下等の不具合につながり得る。本基本構成に係る歯車装置1は、以下の構成により、複数の内ピン4の芯出し不良に起因した不具合が生じにくい歯車装置1を提供可能とする。
すなわち、本基本構成に係る歯車装置1は、図1~図3に示すように、内歯歯車2と、外歯歯車3と、複数の内ピン4と、支持体8と、を備える。内歯歯車2は、環状の歯車本体22と、複数の外ピン23と、を有する。複数の外ピン23は、自転可能な状態で歯車本体22の内周面221に保持され内歯21を構成する。外歯歯車3は、内歯21に部分的に噛み合う外歯31を有する。複数の内ピン4は、外歯歯車3に形成された複数の遊嵌孔32にそれぞれ挿入された状態で、遊嵌孔32内を公転しながら歯車本体22に対して相対的に回転する。支持体8は、環状であって複数の内ピン4を支持する。ここで、支持体8は、外周面81を複数の外ピン23に接触させることにより位置規制されている。
この態様によれば、複数の内ピン4は、環状の支持体8にて支持されているので、複数の内ピン4が支持体8にて束ねられ、複数の内ピン4の相対的なずれ及び傾きが抑制される。しかも、支持体8の外周面81は複数の外ピン23に接触し、これにより支持体8の位置規制がされている。要するに、複数の外ピン23によって支持体8の芯出しが行われ、結果的に、支持体8に支持されている複数の内ピン4についても、複数の外ピン23にて芯出しが行われる。したがって、本基本構成に係る歯車装置1によれば、複数の内ピン4の芯出しの精度向上を図りやすく、複数の内ピン4の芯出し不良に起因した不具合が生じにくい、という利点がある。
また、本基本構成に係る歯車装置1は、図1に示すように、駆動源101と共に、アクチュエータ100を構成する。言い換えれば、本基本構成に係るアクチュエータ100は、歯車装置1と、駆動源101と、を備えている。駆動源101は、外歯歯車3を揺動させるための駆動力を発生する。具体的には、駆動源101は、回転軸Ax1を中心として偏心軸7を回転させることにより、外歯歯車3を揺動させる。
(2)定義
本開示でいう「環状」は、少なくとも平面視において、内側に囲まれた空間(領域)を形成する輪(わ)のような形状を意味し、平面視において真円とある円形状(円環状)に限らず、例えば、楕円形状及び多角形状等であってもよい。さらに、例えば、カップ状のように底部を有する形状であっても、その周壁が環状であれば、「環状」に含まれる。
本開示でいう「遊嵌」は、遊び(隙間)をもった状態に嵌められることを意味し、遊嵌孔32は内ピン4が遊嵌される孔である。つまり、内ピン4は、遊嵌孔32の内周面321との間に、空間的な余裕(隙間)を確保した状態で遊嵌孔32に挿入される。言い換えれば、内ピン4のうち、少なくとも遊嵌孔32に挿入される部位の径は、遊嵌孔32の径よりも小さい(細い)。そのため、内ピン4は、遊嵌孔32に挿入された状態で、遊嵌孔32内を移動可能、つまり遊嵌孔32の中心に対して相対的に移動可能である。よって、内ピン4は、遊嵌孔32内を公転可能となる。ただし、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間には、空洞としての隙間が確保されることは必須ではなく、例えば、この隙間に液体等の流体が充填されていてもよい。
本開示でいう「公転」は、ある物体が、この物体の中心(重心)を通る中心軸以外の回転軸まわりを周回することを意味し、ある物体が公転すると、この物体の中心は回転軸を中心とする公転軌道に沿って移動することになる。したがって、例えば、ある物体の中心(重心)を通る中心軸と平行な偏心軸を中心に、この物体が回転する場合には、この物体は、偏心軸を回転軸として公転していることになる。一例として、内ピン4は、遊嵌孔32の中心を通る回転軸まわりを周回するようにして、遊嵌孔32内を公転する。
また、本開示では、回転軸Ax1の一方側(図3の左側)を「入力側」といい、回転軸Ax1の他方側(図3の右側)を「出力側」という場合がある。図3の例では、回転軸Ax1の「入力側」から回転体(偏心体内輪51)に回転が与えられ、回転軸Ax1の「出力側」から複数の内ピン4(内輪61)の回転が取り出される。ただし、「入力側」及び「出力側」は、説明のために付しているラベルに過ぎず、歯車装置1から見た、入力及び出力の位置関係を限定する趣旨ではない。
本開示でいう「回転軸」は、回転体の回転運動の中心となる仮想的な軸(直線)を意味する。つまり、回転軸Ax1は、実体を伴わない仮想軸である。偏心体内輪51は、回転軸Ax1を中心として回転運動を行う。
本開示でいう「内歯」及び「外歯」は、それぞれ単体の「歯」ではなく、複数の「歯」の集合(群)を意味する。つまり、内歯歯車2の内歯21は、内歯歯車2(歯車本体22)の内周面221に配置された複数の歯の集合からなる。同様に、外歯歯車3の外歯31は、外歯歯車3の外周面に配置された複数の歯の集合からなる。
(3)構成
以下、本基本構成に係る歯車装置1の詳細な構成について、図1~図8Bを参照して説明する。
図1は、歯車装置1を含むアクチュエータ100の概略構成を示す斜視図である。図1では、駆動源101を模式的に示している。図2は、歯車装置1を回転軸Ax1の出力側から見た概略の分解斜視図である。図3は、歯車装置1の概略断面図である。図4は図3のA1-A1線断面図である。ただし、図4では、偏心軸7以外の部品については、断面であってもハッチングを省略している。さらに、図4では、歯車本体22の内周面221の図示を省略している。図5A及び図5Bは、外歯歯車3を単体で示す斜視図及び正面図である。図6A及び図6Bは、軸受け部材6を単体で示す斜視図及び正面図である。図7A及び図7Bは、偏心軸7を単体で示す斜視図及び正面図である。図8A及び図8Bは、支持体8を単体で示す斜視図及び正面図である。
(3.1)全体構成
本基本構成に係る歯車装置1は、図1~図3に示すように、内歯歯車2と、外歯歯車3と、複数の内ピン4と、偏心体軸受け5と、軸受け部材6と、偏心軸7と、支持体8と、を備えている。また、本基本構成では、歯車装置1は、第1ベアリング91、第2ベアリング92及びケース10を更に備えている。本基本構成では、歯車装置1の構成要素である内歯歯車2、外歯歯車3、複数の内ピン4、偏心体軸受け5、軸受け部材6、偏心軸7及び支持体8等の材質は、ステンレス、鋳鉄、機械構造用炭素鋼、クロムモリブデン鋼、リン青銅又はアルミ青銅等の金属である。ここでいう金属は、窒化処理等の表面処理が施された金属を含む。
また、本基本構成では、歯車装置1の一例として、トロコイド系歯形を用いた内接式遊星歯車装置を例示する。つまり、本基本構成に係る歯車装置1は、トロコイド系曲線歯形を有する内接式の外歯歯車3を備えている。
また、本基本構成では一例として、歯車装置1は、内歯歯車2の歯車本体22が、軸受け部材6の外輪62と共に、ケース10等の固定部材に固定された状態で使用される。これにより、内歯歯車2と外歯歯車3との相対回転に伴って、固定部材(ケース10等)に対して、外歯歯車3が相対的に回転することになる。
さらに、本基本構成では、歯車装置1をアクチュエータ100に用いる場合に、偏心軸7に入力としての回転力が加わることで、軸受け部材6の内輪61と一体化された出力軸から出力としての回転力が取り出される。つまり、歯車装置1は、偏心軸7の回転を入力回転とし、内輪61と一体化された出力軸の回転を出力回転として動作する。これにより、歯車装置1では、入力回転に対して、比較的高い減速比にて減速された出力回転が得られることになる。
駆動源101は、モータ(電動機)等の動力の発生源である。駆動源101で発生した動力は、歯車装置1における偏心軸7に伝達される。具体的には、駆動源101は入力軸を介して偏心軸7につながっており、駆動源101で発生した動力は入力軸を介して偏心軸7に伝達される。これにより、駆動源101は、偏心軸7を回転させることが可能である。
さらに、本基本構成に係る歯車装置1では、図3に示すように、入力側の回転軸Ax1と、出力側の回転軸Ax1とは、同一直線上にある。言い換えれば、入力側の回転軸Ax1と、出力側の回転軸Ax1とは、同軸である。ここで、入力側の回転軸Ax1は、入力回転が与えられる偏心軸7の回転中心であって、出力側の回転軸Ax1は、出力回転を生じる内輪61(及び出力軸)の回転中心である。つまり、歯車装置1では、同軸上において、入力回転に対して、比較的高い減速比にて減速された出力回転が得られることになる。
内歯歯車2は、図4に示すように、内歯21を有する環状の部品である。本基本構成では、内歯歯車2は、少なくとも内周面が平面視において真円となる、円環状を有している。円環状の内歯歯車2の内周面には、内歯21が、内歯歯車2の円周方向に沿って形成されている。内歯21を構成する複数の歯は、全て同一形状であって、内歯歯車2の内周面における円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。つまり、内歯21のピッチ円は、平面視において真円となる。内歯21のピッチ円の中心は、回転軸Ax1上にある。また、内歯歯車2は、回転軸Ax1の方向に所定の厚みを有している。内歯21の歯筋は、いずれも回転軸Ax1と平行である。内歯21の歯筋方向の寸法は、内歯歯車2の厚み方向よりもやや小さい。
ここで、内歯歯車2は、上述したように、環状(円環状)の歯車本体22と、複数の外ピン23と、を有している。複数の外ピン23は、自転可能な状態で歯車本体22の内周面221に保持され、内歯21を構成する。言い換えれば、複数の外ピン23は、それぞれ内歯21を構成する複数の歯として機能する。具体的には、歯車本体22の内周面221には、図2に示すように、円周方向の全域に複数の内周溝223が形成されている。複数の内周溝223は、全て同一形状であって、等ピッチで設けられている。複数の内周溝223は、いずれも回転軸Ax1と平行であって、歯車本体22の厚み方向の全長にわたって形成されている。複数の外ピン23は、複数の内周溝223に嵌るようにして、歯車本体22に組み合わされている。複数の外ピン23の各々は、内周溝223内において自転可能な状態で保持される。また、歯車本体22は、(外輪62と共に)ケース10に固定される。そのため、歯車本体22には、固定用の複数の固定孔222が形成されている。
外歯歯車3は、図4に示すように、外歯31を有する環状の部品である。本基本構成では、外歯歯車3は、少なくとも外周面が平面視において真円となる、円環状を有している。円環状の外歯歯車3の外周面には、外歯31が、外歯歯車3の円周方向に沿って形成されている。外歯31を構成する複数の歯は、全て同一形状であって、外歯歯車3の外周面における円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。つまり、外歯31のピッチ円は、平面視において真円となる。外歯31のピッチ円の中心C1は、回転軸Ax1から距離ΔL(図4参照)だけずれた位置にある。また、外歯歯車3は、回転軸Ax1の方向に所定の厚みを有している。外歯31は、いずれも外歯歯車3の厚み方向の全長にわたって形成されている。外歯31の歯筋は、いずれも回転軸Ax1と平行である。外歯歯車3においては、内歯歯車2とは異なり、外歯31が外歯歯車3の本体と1つの金属部材にて一体に形成されている。
ここで、外歯歯車3に対しては、偏心体軸受け5及び偏心軸7が組み合わされる。つまり、外歯歯車3には、円形状に開口する開口部33が形成されている。開口部33は、外歯歯車3を厚み方向に沿って貫通する孔である。平面視において、開口部33の中心と外歯歯車3の中心とは一致しており、開口部33の内周面(外歯歯車3の内周面)と外歯31のピッチ円とは同心円となる。外歯歯車3の開口部33には、偏心体軸受け5が収容される。さらに、偏心体軸受け5(の偏心体内輪51)に偏心軸7が挿入されることで、偏心体軸受け5及び偏心軸7が外歯歯車3に組み合わされる。外歯歯車3に偏心体軸受け5及び偏心軸7が組み合わされた状態で、偏心軸7が回転すると、外歯歯車3は回転軸Ax1まわりで揺動する。
このように構成される外歯歯車3は、内歯歯車2の内側に配置される。平面視において、外歯歯車3は内歯歯車2に比べて一回り小さく形成されており、外歯歯車3は、内歯歯車2と組み合わされた状態で、内歯歯車2の内側で揺動可能となる。ここで、外歯歯車3の外周面には外歯31が形成され、内歯歯車2の内周面には内歯21が形成されている。そのため、内歯歯車2の内側に外歯歯車3が配置された状態では、外歯31と内歯21とは、互いに対向することになる。
さらに、外歯31のピッチ円は、内歯21のピッチ円よりも一回り小さい。そして、外歯歯車3が内歯歯車2に内接した状態で、外歯31のピッチ円の中心C1は、内歯21のピッチ円の中心(回転軸Ax1)から距離ΔL(図4参照)だけずれた位置にある。そのため、外歯31との内歯21とは、少なくとも一部が隙間を介して対向することになり、円周方向の全体が互いに噛み合うことはない。ただし、外歯歯車3は、内歯歯車2の内側において回転軸Ax1まわりで揺動(公転)するので、外歯31と内歯21とが部分的に噛み合うことになる。つまり、外歯歯車3が回転軸Ax1まわりを揺動することで、図4に示すように、外歯31を構成する複数の歯のうちの一部の歯が、内歯21を構成する複数の歯のうちの一部の歯に噛み合うことになる。結果的に、歯車装置1では、外歯31の一部を内歯21の一部に噛み合わせることが可能となる。
ここで、内歯歯車2における内歯21の歯数は、外歯歯車3の外歯31の歯数よりもN(Nは正の整数)だけ多い。本基本構成では一例として、Nが「1」であって、外歯歯車3の(外歯31の)歯数は、内歯歯車2の(内歯21の)歯数よりも「1」多い。このような外歯歯車3と内歯歯車2との歯数差は、歯車装置1での入力回転に対する出力回転の減速比を規定する。
また、本基本構成では一例として、外歯歯車3の厚みは、内歯歯車2における歯車本体22の厚みよりも小さい。さらに、外歯31の歯筋方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法は、内歯21の歯筋方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法よりも小さい。言い換えれば、回転軸Ax1に平行な方向においては、内歯21の歯筋の範囲内に、外歯31が収まることになる。
本基本構成では、上述したように、外歯歯車3の自転成分相当の回転が、軸受け部材6の内輪61と一体化された出力軸の回転(出力回転)として取り出される。そのため、外歯歯車3は、複数の内ピン4にて内輪61と連結される。外歯歯車3には、図5A及び図5Bに示すように、複数の内ピン4を挿入するための複数の遊嵌孔32が形成されている。遊嵌孔32は内ピン4と同数だけ設けられており、本基本構成では一例として、遊嵌孔32及び内ピン4は、18個ずつ設けられている。複数の遊嵌孔32の各々は、円形状に開口しており、外歯歯車3を厚み方向に沿って貫通する孔である。複数(ここでは18個)の遊嵌孔32は、開口部33と同心の仮想円上に、円周方向に等間隔で配置されている。
複数の内ピン4は、外歯歯車3と軸受け部材6の内輪61とを連結する部品である。複数の内ピン4の各々は、円柱状に形成されている。複数の内ピン4の直径及び長さは、複数の内ピン4において共通である。内ピン4の直径は、遊嵌孔32の直径よりも一回り小さい。これにより、内ピン4は、遊嵌孔32の内周面321との間に、空間的な余裕(隙間)を確保した状態で遊嵌孔32に挿入される(図4参照)。
軸受け部材6は、外輪62及び内輪61を有し、歯車装置1の出力を外輪62に対する内輪61の回転として取り出すための部品である。軸受け部材6は、外輪62及び内輪61に加えて、複数の転動体63(図3参照)と、を有している。
外輪62及び内輪61は、図6A及び図6Bに示すように、いずれも環状の部品である。外輪62及び内輪61は、いずれも平面視で真円となる、円環状を有している。内輪61は、外輪62よりも一回り小さく、外輪62の内側に配置される。ここで、外輪62の内径は内輪61の外径よりも大きいため、外輪62の内周面と内輪61の外周面との間には隙間が生じる。
内輪61は、複数の内ピン4がそれぞれ挿入される複数の保持孔611を有している。保持孔611は内ピン4と同数だけ設けられており、本基本構成では一例として、保持孔611は18個設けられている。複数の保持孔611の各々は、図6A及び図6Bに示すように、円形状に開口しており、内輪61を厚み方向に沿って貫通する孔である。複数(ここでは18個)の保持孔611は、内輪61の外周と同心の仮想円上に、円周方向に等間隔で配置されている。保持孔611の直径は、内ピン4の直径以上であって、遊嵌孔32の直径よりも小さい。
さらに、内輪61は出力軸と一体化され、内輪61の回転が出力軸の回転として取り出される。そのため、内輪61には、出力軸を取り付けるための複数の出力側取付穴612(図2参照)が形成されている。本基本構成では、複数の出力側取付穴612は、複数の保持孔611よりも内側であって、内輪61の外周と同心の仮想円上に配置されている。
外輪62は、内歯歯車2の歯車本体22と共に、ケース10等の固定部材に固定される。そのため、外輪62には、固定用の複数の透孔621が形成されている。具体的には、図3に示すように、外輪62は、ケース10との間に歯車本体22を挟んだ状態で、透孔621及び歯車本体22の固定孔222を通る固定用のねじ(ボルト)60にて、ケース10に対して固定されている。
複数の転動体63は、外輪62と内輪61との間の隙間に配置されている。複数の転動体63は、外輪62の円周方向に並べて配置されている。複数の転動体63は、全て同一形状の金属部品であって、外輪62の円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。
本基本構成では一例として、軸受け部材6は、クロスローラベアリングである。つまり、軸受け部材6は、転動体63として円筒状のコロを有している。そして、円筒状の転動体63の軸は、回転軸Ax1に直交する平面に対して45度の傾きを有し、かつ内輪61の外周に対して直交する。さらに、内輪61の円周方向において互いに隣接する一対の転動体63は、互いに軸方向が直交する向きに配置されている。このようなクロスローラベアリングからなる軸受け部材6では、ラジアル方向の荷重、スラスト方向(回転軸Ax1に沿う方向)の荷重、及び回転軸Ax1に対する曲げ力(曲げモーメント荷重)のいずれをも受けやすくなる。しかも、1つの軸受け部材6によって、これら3種類の荷重に耐えることができ、必要な剛性を確保することができる。
偏心軸7は、図7A及び図7Bに示すように、円筒状の部品である。偏心軸7は、軸心部71と、偏心部72と、を有している。軸心部71は、少なくとも外周面が平面視において真円となる、円筒状を有している。軸心部71の中心(中心軸)は、回転軸Ax1と一致する。偏心部72は、少なくとも外周面が平面視において真円となる、円盤状を有している。偏心部72の中心(中心軸)は、回転軸Ax1からずれた中心C1と一致する。ここで、回転軸Ax1と中心C1との間の距離ΔL(図7B参照)は、軸心部71に対する偏心部72の偏心量となる。偏心部72は、軸心部71の長手方向(軸方向)の中央部において、軸心部71の外周面から全周にわたって突出するフランジ形状をなす。上述した構成によれば、偏心軸7は、回転軸Ax1を中心に軸心部71が回転(自転)することで、偏心部72が偏心運動することになる。
本基本構成では、軸心部71及び偏心部72は1つの金属部材にて一体に形成されており、これにより、シームレスな偏心軸7が実現される。このような形状の偏心軸7は、偏心体軸受け5と共に外歯歯車3に組み合わされる。そのため、外歯歯車3に偏心体軸受け5及び偏心軸7が組み合わされた状態で偏心軸7が回転すると、外歯歯車3は、回転軸Ax1まわりで揺動する。
さらに、偏心軸7は、軸心部71を軸方向(長手方向)に貫通する貫通孔73を有している。貫通孔73は、軸心部71における軸方向の両端面に円形状に開口している。貫通孔73の中心(中心軸)は、回転軸Ax1と一致する。貫通孔73には、例えば、電源線及び信号線等のケーブル類を通すことが可能である。
また、本基本構成では、駆動源101から、偏心軸7に入力としての回転力が加えられる。そのため、偏心軸7には、駆動源101につながる入力軸を取り付けるための複数の入力側取付穴74(図7A及び図7B参照)が形成されている。本基本構成では、複数の入力側取付穴74は、軸心部71の軸方向に一端面における貫通孔73の周囲であって、貫通孔73と同心の仮想円上に配置されている。
偏心体軸受け5は、偏心体外輪52及び偏心体内輪51を有し、偏心軸7の回転のうちの自転成分を吸収し、偏心軸7の自転成分を除いた偏心軸7の回転、つまり偏心軸7の揺動成分(公転成分)のみを外歯歯車3に伝達するための部品である。偏心体軸受け5は、偏心体外輪52及び偏心体内輪51に加えて、複数の転動体53(図3参照)を有している。
偏心体外輪52及び偏心体内輪51は、いずれも環状の部品である。偏心体外輪52及び偏心体内輪51は、いずれも平面視で真円となる、円環状を有している。偏心体内輪51は、偏心体外輪52よりも一回り小さく、偏心体外輪52の内側に配置される。ここで、偏心体外輪52の内径は偏心体内輪51の外径よりも大きいため、偏心体外輪52の内周面と偏心体内輪51の外周面との間には隙間が生じる。
複数の転動体53は、偏心体外輪52と偏心体内輪51との間の隙間に配置されている。複数の転動体53は、偏心体外輪52の円周方向に並べて配置されている。複数の転動体53は、全て同一形状の金属部品であって、偏心体外輪52の円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。本基本構成では一例として、偏心体軸受け5は、転動体53としてボールを用いた深溝玉軸受けからなる。
ここで、偏心体内輪51の内径は、偏心軸7における偏心部72の外径と一致する。偏心体軸受け5は、偏心体内輪51に偏心軸7の偏心部72が挿入された状態で、偏心軸7と組み合わされる。また、偏心体外輪52の外径は、外歯歯車3における開口部33の内径(直径)と一致する。偏心体軸受け5は、外歯歯車3の開口部33に偏心体外輪52が嵌め込まれた状態で、外歯歯車3と組み合わされる。言い換えれば、外歯歯車3の開口部33には、偏心軸7の偏心部72に装着された状態の偏心体軸受け5が収容される。
また、本基本構成では一例として、偏心体軸受け5における偏心体内輪51の幅方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法は、偏心軸7の偏心部72の厚みと略同一である。偏心体外輪52の幅方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法は、偏心体内輪51の幅方向の寸法に比べてやや小さい。さらに、偏心体外輪52の幅方向の寸法は、外歯歯車3の厚みに比べて大きい。そのため、回転軸Ax1に平行な方向においては、偏心体軸受け5の範囲内に、外歯歯車3が収まることになる。一方で、偏心体外輪52の幅方向の寸法は、内歯21の歯筋方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法よりも小さい。そのため、回転軸Ax1に平行な方向においては、内歯歯車2の範囲内に、偏心体軸受け5が収まることになる。
偏心体軸受け5及び偏心軸7が外歯歯車3に組み合わされた状態で、偏心軸7が回転すると、偏心体軸受け5においては、偏心体内輪51の中心C1からずれた回転軸Ax1まわりで偏心体内輪51が回転(偏心運動)する。このとき、偏心軸7の自転成分は偏心体軸受け5で吸収される。したがって、外歯歯車3には、偏心体軸受け5により、偏心軸7の自転成分を除いた偏心軸7の回転、つまり偏心軸7の揺動成分(公転成分)のみが伝達されることになる。よって、外歯歯車3に偏心体軸受け5及び偏心軸7が組み合わされた状態で偏心軸7が回転すると、外歯歯車3は、回転軸Ax1まわりで揺動する。
支持体8は、図8A及び図8Bに示すように、環状に形成され、複数の内ピン4を支持する部品である。支持体8は、複数の内ピン4がそれぞれ挿入される複数の支持孔82を有している。支持孔82は内ピン4と同数だけ設けられており、本基本構成では一例として、支持孔82は18個設けられている。複数の支持孔82の各々は、図8A及び図8Bに示すように、円形状に開口しており、支持体8を厚み方向に沿って貫通する孔である。複数(ここでは18個)の支持孔82は、支持体8の外周面81と同心の仮想円上に、円周方向に等間隔で配置されている。支持孔82の直径は、内ピン4の直径以上であって、遊嵌孔32の直径よりも小さい。本基本構成では一例として、支持孔82の直径は、内輪61に形成されている保持孔611の直径と等しい。
支持体8は、図3に示すように、回転軸Ax1の一方側(入力側)から外歯歯車3に対向するように配置される。そして、複数の支持孔82に複数の内ピン4が挿入されることで、支持体8は、複数の内ピン4を束ねるように機能する。さらに、支持体8は、外周面81を複数の外ピン23に接触させることにより位置規制されている。これにより、複数の外ピン23によって支持体8の芯出しが行われ、結果的に、支持体8に支持されている複数の内ピン4についても、複数の外ピン23にて芯出しが行われる。支持体8については、「(3.3)支持体」の欄で詳しく説明する。
第1ベアリング91及び第2ベアリング92は、それぞれ偏心軸7の軸心部71に装着される。具体的には、第1ベアリング91及び第2ベアリング92は、図3に示すように、回転軸Ax1に平行な方向において偏心部72を挟むように、軸心部71における偏心部72の両側に装着される。第1ベアリング91は、偏心部72から見て、回転軸Ax1の入力側に配置される。第2ベアリング92は、偏心部72から見て、回転軸Ax1の出力側に配置される。第1ベアリング91は、ケース10に対して偏心軸7を回転可能に保持する。第2ベアリング92は、軸受け部材6の内輪61に対して偏心軸7を回転可能に保持する。これにより、偏心軸7の軸心部71は、回転軸Ax1に平行な方向における偏心部72の両側の2箇所において、回転可能に保持されることになる。
ケース10は、円筒状であって、回転軸Ax1の出力側に、フランジ部11を有している。フランジ部11には、ケース10自体を固定するための複数の設置孔111が形成されている。また、ケース10における回転軸Ax1の出力側の端面には、軸受け孔12が形成されている。軸受け孔12は、円形状に開口している。軸受け孔12内に第1ベアリング91が嵌め込まれることにより、ケース10に対して第1ベアリング91が取り付けられる。
また、ケース10における回転軸Ax1の出力側の端面であって、軸受け孔12の周囲には、複数のねじ穴13が形成されている。複数のねじ穴13は、内歯歯車2の歯車本体22及び軸受け部材6の外輪62をケース10に固定するために用いられる。具体的には、固定用のねじ60が、外輪62の透孔621及び歯車本体22の固定孔222を通して、ねじ穴13に締め付けられることにより、歯車本体22及び外輪62がケース10に対して固定される。
また、本基本構成に係る歯車装置1は、図3に示すように、複数のオイルシール14,15,16等を更に備えている。オイルシール14は、偏心軸7における回転軸Ax1の入力側の端部に装着され、ケース10と偏心軸7(軸心部71)との間の隙間を塞いでいる。オイルシール15は、偏心軸7における回転軸Ax1の出力側の端部に装着され、内輪61と偏心軸7(軸心部71)との間の隙間を塞いでいる。オイルシール16は、軸受け部材6における回転軸Ax1の出力側の端面に装着され、内輪61と外輪62との間の隙間を塞いでいる。これら複数のオイルシール14,15,16で密閉された空間は、潤滑剤保持空間17(図9参照)を構成する。潤滑剤保持空間17は、軸受け部材6の内輪61と外輪62との間の空間を含む。さらに、潤滑剤保持空間17内には、複数の外ピン23、外歯歯車3、偏心体軸受け5、支持体8、第1ベアリング91及び第2ベアリング92等が収容される。
そして、潤滑剤保持空間17には、潤滑剤が注入されている。潤滑剤は液体であって、潤滑剤保持空間内17を流動可能である。そのため、歯車装置1の使用時においては、例えば、複数の外ピン23からなる内歯21と外歯歯車3の外歯31との噛み合い部位には、潤滑剤が入り込む。本開示でいう「液体」は、液状又はゲル状の物質を含む。ここでいう「ゲル状」は、液体と固体との中間の性質を有する状態を意味し、液相と固相との2つの相からなるコロイド(colloid)の状態を含む。例えば、分散媒が液相であって、分散質が液相であるエマルション(emulsion)、分散質が固相であるサスペンション(suspension)等の、ゲル(gel)又はゾル(sol)と呼ばれる状態が「ゲル状」に含まれる。また、分散媒が固相であって、分散質が液相である状態も、「ゲル状」に含まれる。本基本構成では一例として、潤滑剤は、液状の潤滑油(オイル)である。
上述した構成の歯車装置1では、偏心軸7に入力としての回転力が加えられて、偏心軸7が回転軸Ax1を中心に回転することで、外歯歯車3は、回転軸Ax1まわりで揺動(公転)する。このとき、外歯歯車3は、内歯歯車2の内側で内歯歯車2に対して内接し、外歯31の一部が内歯21の一部に噛み合った状態で揺動するので、内歯21と外歯31との噛み合い位置が内歯歯車2の円周方向に移動する。これにより、外歯歯車3と内歯歯車2との歯数差に応じた相対回転が両歯車(内歯歯車2及び外歯歯車3)の間に発生する。そして、軸受け部材6の内輪61には、複数の内ピン4により、外歯歯車3の揺動成分(公転成分)を除いた、外歯歯車3の回転(自転成分)が伝達される。その結果、内輪61に一体化された出力軸からは、両歯車の歯数差に応じて、比較的高い減速比で減速された回転出力が得られることになる。
ところで、本基本構成に係る歯車装置1においては、上述したように、内歯歯車2と外歯歯車3との歯数差は、歯車装置1での入力回転に対する出力回転の減速比を規定することになる。つまり、内歯歯車2の歯数を「V1」、外歯歯車3の歯数を「V2」とした場合、減速比R1は、下記式1で表される。
R1=V2/(V1-V2)・・・(式1)
要するに、内歯歯車2と外歯歯車3との歯数差(V1-V2)が小さいほど、減速比R1は大きくなる。一例として、内歯歯車2の歯数V1が「52」、外歯歯車3の歯数V2が「51」、その歯数差(V1-V2)が「1」であるので、上記式1より、減速比R1は「51」となる。この場合、回転軸Ax1の入力側から見て、偏心軸7が回転軸Ax1を中心に時計回りに1周(360度)回転すると、内輪61は回転軸Ax1を中心に歯数差「1」の分(つまり約7.06度)だけ反時計回りに回転する。
本基本構成に係る歯車装置1によれば、このように高い減速比R1が、1段の歯車(内歯歯車2及び外歯歯車3)の組み合わせで実現可能である。
また、歯車装置1は、少なくとも、内歯歯車2と、外歯歯車3と、複数の内ピン4と、軸受け部材6と、支持体8と、を備えていればよく、例えば、スプラインブッシュ等を構成要素として更に備えていてもよい。
ところで、本基本構成に係る歯車装置1のように、高速回転側となる入力回転が偏心運動を伴う場合、高速回転する回転体の重量バランスがとれていないと、振動等につながる可能性があるため、カウンタウェイト等を用いて重量バランスをとることがある。すなわち、偏心体内輪51及び偏心体内輪51と共に回転する部材(偏心軸7)の少なくとも一方からなる回転体が高速で偏心運動することから、当該回転体の回転軸Ax1に対する重量バランスをとることが好ましい。本基本構成では、図3及び図4に示すように、偏心軸7における偏心部72の一部に、空隙75を設けることによって、回転軸Ax1に対する回転体の重量バランスをとる。
要するに、本基本構成では、カウンタウェイト等を付加するのではなく、回転体(ここでは偏心軸7)の一部を肉抜きすることで軽量化し、これによって回転軸Ax1に対する回転体の重量バランスをとっている。すなわち、本基本構成に係る歯車装置1は、外歯歯車3に形成された開口部33に収容され、外歯歯車3を揺動させる偏心体軸受け5を備えている。偏心体軸受け5は、偏心体外輪52及び偏心体外輪52の内側に配置される偏心体内輪51を有する。偏心体内輪51及び偏心体内輪51と共に回転する部材の少なくとも一方からなる回転体は、偏心体内輪51の回転軸Ax1から見て、偏心体外輪52の中心C1側の一部に空隙75を有する。本基本構成では、偏心軸7が「偏心体内輪51と共に回転する部材」であって、「回転体」に相当する。したがって、偏心軸7の偏心部72に形成された空隙75が、回転体の空隙75に相当する。この空隙75は、図3及び図4に示すように、回転軸Ax1から見て中心C1側の位置にあるので、偏心軸7の重量バランスを、回転軸Ax1から周方向に均等に近づけるように作用する。
より詳細には、空隙75は、偏心体内輪51の回転軸Ax1に沿って回転体を貫通する貫通孔73の内周面に形成された凹部を含む。つまり、本基本構成では、回転体は偏心軸7であるので、偏心軸7を回転軸Ax1に沿って貫通する貫通孔73の内周面に形成された凹部が、空隙75として機能する。このように、貫通孔73の内周面に形成された凹部を空隙75として利用することで、外観上の変更を伴わずに、回転体の重量バランスをとることが可能となる。
(3.2)内ピンの自転構造
次に、本基本構成に係る歯車装置1の内ピン4の自転構造について、図9を参照して、より詳細に説明する。図9は、図3の領域Z1の拡大図である。
まず前提として、複数の内ピン4は、上述したように、外歯歯車3と軸受け部材6の内輪61とを連結する部品である。具体的には、内ピン4の長手方向の一端部(本基本構成では回転軸Ax1の入力側の端部)は、外歯歯車3の遊嵌孔32に挿入され、内ピン4の長手方向の他端部(本基本構成では回転軸Ax1の出力側の端部)は、内輪61の保持孔611に挿入されている。
ここで、内ピン4の直径は、遊嵌孔32の直径よりも一回り小さいので、内ピン4と遊嵌孔32の内周面321との間には隙間が確保され、内ピン4は、遊嵌孔32内を移動可能、つまり遊嵌孔32の中心に対して相対的に移動可能である。一方、保持孔611の直径は、内ピン4の直径以上ではあるものの、遊嵌孔32の直径よりも小さい。本基本構成では、保持孔611の直径は、内ピン4の直径と略同一であって、内ピン4の直径よりも僅かに大きい。そのため、内ピン4は、保持孔611内での移動が規制、つまり保持孔611の中心に対する相対的な移動が禁止される。したがって、内ピン4は、外歯歯車3においては遊嵌孔32内を公転可能な状態で保持され、内輪61に対しては保持孔611内を公転不能な状態で保持される。これにより、外歯歯車3の揺動成分、つまり外歯歯車3の公転成分は、遊嵌孔32と内ピン4との遊嵌によって吸収され、内輪61には、複数の内ピン4により、外歯歯車3の揺動成分(公転成分)を除いた、外歯歯車3の回転(自転成分)が伝達される。
ところで、本基本構成では、内ピン4の直径が保持孔611よりも僅かに大きいことで、内ピン4は、保持孔611に挿入された状態において、保持孔611内での公転は禁止されるものの、保持孔611内での自転は可能である。つまり、内ピン4は、保持孔611に挿入された状態でも、保持孔611に圧入される訳ではないので、保持孔611内で自転可能である。このように、本基本構成に係る歯車装置1では、複数の内ピン4の各々は、自転可能な状態で内輪61に保持されるので、遊嵌孔32内を内ピン4が公転する際に、内ピン4自体が自転可能である。
要するに、本基本構成においては、内ピン4は、外歯歯車3に対しては遊嵌孔32内での公転及び自転の両方が可能な状態で保持され、内輪61に対しては保持孔611内での自転のみが可能な状態で保持される。つまり、複数の内ピン4は、各々の自転が拘束されない状態(自転可能な状態)で、回転軸Ax1を中心に回転(公転)可能であって、かつ複数の遊嵌孔32内で公転可能である。したがって、複数の内ピン4にて外歯歯車3の回転(自転成分)を内輪61に伝達するに際しては、内ピン4は、遊嵌孔32内で公転及び自転をしつつ、保持孔611内で自転することができる。そのため、遊嵌孔32内を内ピン4が公転する際に、内ピン4は、自転可能な状態にあるので、遊嵌孔32の内周面321に対して転動することになる。言い換えれば、内ピン4は、遊嵌孔32の内周面321上を転がるようにして遊嵌孔32内で公転するので、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の摩擦抵抗による損失が生じにくい。
このように、本基本構成に係る構成では、そもそも遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の摩擦抵抗による損失が生じにくいので、内ローラを省略することが可能である。そこで、本基本構成では、複数の内ピン4の各々は、遊嵌孔32の内周面321に直接的に接触する構成を採用する。つまり、本基本構成では、内ローラが装着されていない状態の内ピン4を遊嵌孔32に挿入し、内ピン4が直接的に遊嵌孔32の内周面321に接触する構成とする。これにより、内ローラを省略できて、遊嵌孔32の径を比較的小さく抑えることができるので、外歯歯車3の小型化(特に小径化)が可能となり、歯車装置1全体としても小型化を図りやすくなる。外歯歯車3の寸法を一定とするのであれば、上記第1関連技術に比較して、例えば、内ピン4の数(本数)を増やして回転の伝達をスムーズにしたり、内ピン4を太くして強度を向上させたりすることも可能である。さらに、内ローラの分だけ部品点数を少なく抑えることができ、歯車装置1の低コスト化にもつながる。
また、本基本構成に係る歯車装置1では、複数の内ピン4の各々は、少なくとも一部が軸受け部材6の軸方向において軸受け部材6と同じ位置に配置されている。つまり、図9に示すように、回転軸Ax1に平行な方向においては、内ピン4は、その少なくとも一部が軸受け部材6と同じ位置に配置されている。言い換えれば、回転軸Ax1に平行な方向における軸受け部材6の両端面間には、内ピン4の少なくとも一部が位置する。さらに言い換えれば、複数の内ピン4の各々は、少なくとも一部が軸受け部材6の外輪62の内側に配置されることになる。本基本構成では、内ピン4のうち、回転軸Ax1の出力側の端部は、回転軸Ax1に平行な方向において、軸受け部材6と同じ位置にある。要するに、内ピン4のうちの回転軸Ax1の出力側の端部は、軸受け部材6の内輪61に形成された保持孔611に挿入されているので、少なくとも当該端部は、軸受け部材6の軸方向において軸受け部材6と同じ位置に配置されることになる。
このように、複数の内ピン4の各々の少なくとも一部が、軸受け部材6の軸方向において軸受け部材6と同じ位置に配置されることで、回転軸Ax1に平行な方向における歯車装置1の寸法を小さく抑えることができる。つまり、軸受け部材6の軸方向に、軸受け部材6と内ピン4とが並ぶ(対向する)構成に比べて、本基本構成に係る歯車装置1では、回転軸Ax1に平行な方向における歯車装置1の寸法を小さくでき、歯車装置1の更なる小型化(薄型化)に貢献可能である。
ここで、保持孔611における、回転軸Ax1の出力側の開口面は、例えば、内輪61と一体化される出力軸等に閉塞される。これにより、回転軸Ax1の出力側(図9の右側)への内ピン4の移動に関しては、内輪61と一体化される出力軸等で規制される。
また、本基本構成では、内輪61に対する内ピン4の自転が円滑になされるように、以下の構成を採用している。すなわち、内輪61に形成された保持孔611の内周面と内ピン4との間に、潤滑剤(潤滑油)を介在させることにより、内ピン4の自転を円滑にしている。特に本基本構成では、内輪61と外輪62との間には潤滑剤が注入される潤滑剤保持空間17が存在するので、潤滑剤保持空間17内の潤滑剤を利用して、内ピン4の自転の円滑化を図る。
本基本構成では、図9に示すように、内輪61は、複数の内ピン4がそれぞれ挿入される複数の保持孔611と、複数の連結路64と、を有している。複数の連結路64は、内輪61と外輪62との間の潤滑剤保持空間17と複数の保持孔611との間をつなぐ。具体的には、内輪61には、保持孔611の内周面の一部であって転動体63に対応する部位から、ラジアル方向に延びる連結路64が形成されている。連結路64は、内輪61における外輪62との対向面における転動体63を収容する凹部(溝)の底面と、保持孔611の内周面との間を貫通する孔である。言い換えれば、連結路64の潤滑剤保持空間17側の開口面は、軸受け部材6の転動体63に臨む(対向する)位置に配置されている。このような連結路64を介して、潤滑剤保持空間17と保持孔611とが空間的につながる。
上述した構成によれば、連結路64にて潤滑剤保持空間17と保持孔611とが連結されるので、潤滑剤保持空間17内の潤滑剤が連結路64を通して保持孔611に供給されるようになる。つまり、軸受け部材6が動作して転動体63が回転すると、転動体63がポンプとして機能して、潤滑剤保持空間17内の潤滑剤を、連結路64経由で保持孔611に送り込むことが可能である。特に、連結路64の潤滑剤保持空間17側の開口面が、軸受け部材6の転動体63に臨む(対向する)位置にあることで、転動体63の回転時に、転動体63がポンプとして効率的に作用する。その結果、保持孔611の内周面と内ピン4との間には潤滑剤が介在し、内輪61に対する内ピン4の自転の円滑化を図ることができる。
(3.3)支持体
次に、本基本構成に係る歯車装置1の支持体8の構成について、図10を参照して、より詳細に説明する。図10は図3のB1-B1線断面図である。ただし、図10では、支持体8以外の部品については、断面であってもハッチングを省略している。また、図10では、内歯歯車2及び支持体8のみを図示し、その他の部品(内ピン4等)の図示を省略する。さらに、図10では、歯車本体22の内周面221の図示を省略している。
まず前提として、支持体8は、上述したように、複数の内ピン4を支持する部品である。つまり、支持体8は、複数の内ピン4を束ねることにより、外歯歯車3の回転(自転成分)を内輪61に伝達する際の、複数の内ピン4にかかる荷重を分散する。具合的には、複数の内ピン4がそれぞれ挿入される複数の支持孔82を有している。本基本構成では一例として、支持孔82の直径は、内輪61に形成されている保持孔611の直径と等しい。そのため、支持体8は、複数の内ピン4の各々が自転可能な状態で、複数の内ピン4を支持する。つまり、複数の内ピン4の各々は、軸受け部材6の内輪61と支持体8とのいずれに対しても、自転可能な状態で保持されている。
このように、支持体8は、周方向及び径方向の両方について、複数の内ピン4の支持体8に対する位置決めを行う。つまり、内ピン4は、支持体8の支持孔82に挿入されることで、回転軸Ax1に直交する平面内での全方向に対する移動が規制される。そのため、内ピン4は、支持体8にて、周方向だけでなく径方向(ラジアル方向)についても位置決めされることになる。
ここで、支持体8は、少なくとも外周面81が平面視において真円となる、円環状を有している。そして、支持体8は、外周面81を、内歯歯車2における複数の外ピン23に接触させることにより位置規制されている。複数の外ピン23は、内歯歯車2の内歯21を構成するので、言い換えれば、支持体8は、外周面81を内歯21に接触させることにより位置規制される。ここで、支持体8の外周面81の直径は、内歯歯車2における内歯21の先端を通る仮想円(歯先円)の直径と同一である。そのため、複数の外ピン23は、全て支持体8の外周面81に接触する。よって、支持体8が複数の外ピン23にて位置規制された状態では、支持体8の中心は、内歯歯車2の中心(回転軸Ax1)と重なるように位置規制される。これにより、支持体8の芯出しが行われ、結果的に、支持体8に支持されている複数の内ピン4についても、複数の外ピン23にて芯出しが行われる。
また、複数の内ピン4は、回転軸Ax1を中心に回転(公転)することで、外歯歯車3の回転(自転成分)を内輪61に伝達する。そのため、複数の内ピン4を支持する支持体8は、複数の内ピン4及び内輪61と共に、回転軸Ax1を中心に回転する。このとき、支持体8は複数の外ピン23にて芯出しがされているので、支持体8の中心が回転軸Ax1上に維持された状態で、支持体8は円滑に回転する。しかも、支持体8は、その外周面81が複数の外ピン23に接触した状態で回転するので、支持体8の回転に伴って、複数の外ピン23の各々は回転(自転)する。よって、支持体8は、内歯歯車2と共にニードルベアリング(針状ころ軸受け)を構成し、円滑に回転する。
すなわち、支持体8の外周面81は、複数の外ピン23に接した状態で複数の内ピン4と一緒に歯車本体22に対して相対的に回転する。そのため、内歯歯車2の歯車本体22を「外輪」、支持体8を「内輪」とみなせば、両者の間に介在する複数の外ピン23は「転動体(コロ)」として機能する。このように、支持体8は、内歯歯車2(歯車本体22及び複数の外ピン23)と共に、ニードルベアリングを構成することとなり、円滑な回転が可能となる。
さらに、支持体8は、歯車本体22との間に複数の外ピン23を挟んでいるので、支持体8は、歯車本体22の内周面221から離れる向きの外ピン23の移動を抑制する「ストッパ」としても機能する。つまり、複数の外ピン23は、支持体8の外周面81と歯車本体22の内周面221との間で挟まれることになり、歯車本体22の内周面221からの浮きが抑制される。要するに、本基本構成では、複数の外ピン23の各々は、支持体8の外周面81に接触することで、歯車本体22から離れる向きの移動が規制されている。
ところで、本基本構成では、図9に示すように、支持体8は、外歯歯車3を挟んで、軸受け部材6の内輪61と反対側に位置する。つまり、支持体8、外歯歯車3及び内輪61は、回転軸Ax1に平行な方向に並べて配置されている。本基本構成では一例として、支持体8は、外歯歯車3から見て回転軸Ax1の入力側に位置し、内輪61は、外歯歯車3から見て回転軸Ax1の出力側に位置する。そして、支持体8は、内輪61と共に、内ピン4の長手方向(回転軸Ax1に平行な方向)の両端部を支持し、内ピン4の長手方向の中央部が、外歯歯車3の遊嵌孔32に挿通される。要するに、本基本構成に係る歯車装置1は、外輪62及び外輪62の内側に配置される内輪61を有し、内輪61が外輪62に対して相対的に回転可能に支持される軸受け部材6を備えている。そして、歯車本体22は、外輪62に固定される。ここで、外歯歯車3は、支持体8の軸方向において支持体8と内輪61との間に位置する。
この構成によれば、支持体8及び内輪61は、内ピン4の長手方向の両端部を支持するので、内ピン4の傾きが生じにくい。特に、複数の内ピン4にかかる回転軸Ax1に対する曲げ力(曲げモーメント荷重)をも受けやすくなる。また、本基本構成では、回転軸Ax1と平行な方向において、支持体8は、外歯歯車3とケース10との間に挟まれている。これにより、支持体8は、回転軸Ax1の入力側(図9の左側)への移動がケース10にて規制される。支持体8の支持孔82を貫通して、支持体8から回転軸Ax1の入力側へ突出する内ピン4についても、回転軸Ax1の入力側(図9の左側)への移動はケース10にて規制される。
本基本構成ではさらに、支持体8及び内輪61は、複数の外ピン23の両端部に接触する。つまり、図9に示すように、支持体8は、外ピン23の長手方向(回転軸Ax1に平行な方向)の一端部(回転軸Ax1の入力側の端部)に接触する。内輪61は、外ピン23の長手方向(回転軸Ax1に平行な方向)の他端部(回転軸Ax1の出力側の端部)に接触する。この構成によれば、支持体8及び内輪61は、外ピン23の長手方向の両端部で芯出しされるので、内ピン4の傾きが生じにくい。特に、複数の内ピン4にかかる回転軸Ax1に対する曲げ力(曲げモーメント荷重)をも受けやすくなる。
また、複数の外ピン23は、支持体8の厚み以上の長さを有する。言い換えれば、回転軸Ax1に平行な方向においては、内歯21の歯筋の範囲内に、支持体8が収まることになる。これにより、支持体8の外周面81は、内歯21の歯筋方向(回転軸Ax1に平行な方向)の全長にわたり複数の外ピン23に接触することになる。したがって、支持体8の外周面81が部分的に摩耗する「片減り」のような不具合が生じにくい。
また、本基本構成では、支持体8の外周面81は、支持体8の外周面81に隣接する一表面に比べて表面粗さが小さい。つまり、支持体8における軸方向(厚み方向)の両端面に比べて、外周面81の表面粗さは小さい。本開示でいう「表面粗さ」は、物体の表面の粗さの程度を意味し、値が小さい程、表面の凹凸が小さく(少なく)、滑らかである。本基本構成では一例として、表面粗さは算術平均粗さ(Ra)であることとする。例えば、研磨等の処理により、外周面81は、支持体8における外周面81以外の面に比べて、表面粗さが小さくされている。この構成では、支持体8の回転がより円滑になる。
また、本基本構成では、支持体8の外周面81の硬度は、複数の外ピン23の周面より低く、歯車本体22の内周面221より高い。本開示でいう「硬度」は、物体の硬さの程度を意味し、金属の硬度は、例えば、鋼球を一定の圧力で押しつけてできるくぼみの大小で表される。具体的には、金属の硬度の一例として、ロックウェル硬さ(HRC)、ブリネル硬さ(HB)、ビッカース硬さ(HV)又はショア硬さ(Hs)等がある。金属部品の硬度を高める(硬くする)手段としては、例えば、合金化又は熱処理等がある。本基本構成では一例として、浸炭焼き入れ等の処理により、支持体8の外周面81の硬度が高められている。この構成では、支持体8の回転によっても摩耗粉等が生じにくく、支持体8の円滑な回転を長期にわたって維持しやすい。
(4)適用例
次に、本基本構成に係る歯車装置1及びアクチュエータ100の適用例について、説明する。
本基本構成に係る歯車装置1及びアクチュエータ100は、例えば、水平多関節ロボット、いわゆるスカラ(SCARA:Selective Compliance Assembly Robot Arm)型ロボットのようなロボットに適用される。
また、本基本構成に係る歯車装置1及びアクチュエータ100の適用例は、上述したような水平多関節ロボットに限らず、例えば、水平多関節ロボット以外の産業用ロボット、又は産業用以外のロボット等であってもよい。水平多関節ロボット以外の産業用ロボットには、一例として、垂直多関節型ロボット又はパラレルリンク型ロボット等がある。産業用以外のロボットには、一例として、家庭用ロボット、介護用ロボット又は医療用ロボット等がある。
(実施形態1)
<概要>
本実施形態に係る歯車装置1Aは、図11~図13に示すように、主として外歯歯車3、及び外歯歯車3を駆動するための構成が、基本構成に係る歯車装置1と相違する。以下、基本構成と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。図11は、歯車装置1Aの概略断面図である。図11においては、領域Z1,Z2の拡大図を吹き出し内に示している。図12及び図13は、図11のA1-A1線断面図である。ただし、図12及び図13では、断面であってもハッチングを省略している。さらに、図12及び図13では、歯車本体22の内周面221の図示を省略している。
内歯歯車2の構成自体は基本構成と同様であって、本実施形態においても、内歯歯車2は、環状の歯車本体22と、歯車本体22の内周面221に形成された複数の内周溝223に自転可能な状態で保持され内歯21を構成する複数の外ピン23と、を有する。一方、本実施形態では、外歯歯車3は、外歯31を有し、内歯歯車2の内側に配置される環状の部材である。また、本実施形態に係る歯車装置1Aは、基本構成との大きな相違点として、外歯歯車3の内側に配置され、外歯歯車3に撓みを生じさせる撓み発生器40、を備える。撓み発生器40は、回転軸Ax1を中心に回転駆動される非円形状のカム41、及びカム41の外側に装着されるベアリング42を有する。歯車装置1Aは、カム41の回転に伴って外歯歯車3を変形させ、外歯31の一部を内歯21の一部に噛み合わせて、外歯歯車3を内歯歯車2との歯数差に応じて内歯歯車2に対して相対的に回転させる。
本開示でいう「非円形状」とは、真円ではない形状を意味し、例えば、楕円形状及び長円形状等を含む。本実施形態では一例として、撓み発生器40の非円形状のカム41は、「長円形状」であることとする。つまり、本実施形態では、撓み発生器40は、外歯歯車3を長円形状に撓ませることになる。本開示でいう「長円形状」は、2つの半円を2本の直線でつないだ形状であって、いわゆるトラック形状(オーバル形状)を意味する。より詳細には、半径の等しい2つの半円を、2本の共通外接線でつないだ形状を「長円形状」とする。
すなわち、本実施形態では、内歯歯車2の歯車本体22が剛性を有するのに対して、外歯歯車3は可撓性を有している。本開示でいう「剛性」は、物体に外力が加わり物体が変形しようとするとき、物体がその変形に抵抗する性質のことを意味する。言い換えれば、剛性を持つ物体は、外力が加わっても変形しにくい。また、本開示でいう「可撓性」は、物体に外力が加わったときに、物体が弾性変形する(撓む)性質のことを意味する。言い換えれば、可撓性を持つ物体は、外力が加わったときに弾性変形しやすい。したがって、「剛性」と「可撓性」とは相反する意味である。
特に、本開示においては、内歯歯車2の歯車本体22が持つ「剛性」と、外歯歯車3が持つ「可撓性」とは、相対的な意味で用いている。すなわち、歯車本体22が持つ「剛性」は、少なくとも外歯歯車3に比較して相対的に、歯車本体22が高い剛性を持つ、つまり外力が加わっても変形しにくいことを意味する。同様に、外歯歯車3が持つ「可撓性」は、少なくとも歯車本体22に比較して相対的に、外歯歯車3が高い可撓性を持つ、つまり外力が加わったときに弾性変形しやすいことを意味する。
そして、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、撓み発生器40が外歯歯車3を非円形状(一例として長円形状)に撓ませることにより、内歯歯車2の内歯21(外ピン23)に対して外歯歯車3の外歯31を部分的に噛み合わせる。この状態で、撓み発生器40のカム41が回転すると、内歯21と外歯31との噛み合い位置が、内歯歯車2の円周方向に移動し、外歯歯車3を内歯歯車2との歯数差に応じた相対回転が両歯車(内歯歯車2及び外歯歯車3)の間に発生する。要するに、外歯歯車3は、基本構成のように回転軸Ax1からずれた偏心軸を中心に回転する偏心運動(揺動)するのではなく、撓み発生器40により非円形状(一例として長円形状)に変形した状態の長軸方向D1(図12参照)が回転軸Ax1を中心に回転することにより、内歯21と外歯31との噛み合い位置が、内歯歯車2の円周方向に移動する。ここで、内歯歯車2の歯車本体22が固定されているとすれば、両歯車の相対回転に伴って、外歯歯車3が回転することになる。その結果、外歯歯車3からは、両歯車の歯数差に応じて、比較的高い減速比で減速された回転出力が得られることになる。
ここで、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、図13に示すように、内歯歯車2の周方向の180度以上を占める同時噛合範囲Ra1において、内歯21と外歯31とが噛み合う。本開示でいう「同時噛合範囲」は、任意のタイミングにおいて、内歯21と外歯31とが同時に噛み合うことになる範囲を意味し、同時噛合範囲の全域が内歯21と外歯31との噛み合い位置になる。すなわち、歯車装置1Aにおいては、内歯歯車2の内歯21(外ピン23)に対して外歯歯車3の外歯31が部分的に噛み合うところ、内歯歯車2の周方向における同時噛合範囲Ra1でのみ内歯21と外歯31とが噛み合い、同時噛合範囲Ra1以外では内歯21と外歯31とは噛み合わない。そして、内歯21と外歯31との噛み合い位置である同時噛合範囲Ra1は、カム41の回転に伴って内歯歯車2の周方向に移動することになる。本実施形態では、このような同時噛合範囲Ra1が、内歯歯車2の周方向の180度以上、つまり半分以上を占めている。言い換えれば、内歯21と外歯31とが噛み合わない非噛合範囲Ra2は、内歯歯車2の周方向の180度未満、つまり半分未満である。
要するに、本実施形態に係る歯車装置1Aにおいては、内歯歯車2の周方向の半分以上の同時噛合範囲Ra1にて、外歯歯車3が内歯歯車2から拘束されることになり、撓み発生器40から離れる向きの外歯歯車3の移動(変形)が抑制される。したがって、内歯歯車2の周方向の半分以上の広範囲にわたって、内歯21と外歯31との噛み合いを安定させることができる。結果的に、歯車装置1Aは、動作中の振動、及び動作中に過度なトルクがかかった際に内歯歯車2と外歯歯車3との間の噛み合いが瞬間的にずれてしまうラチェッティング等の不具合が生じにくくなる。言い換えれば、本実施形態に係る歯車装置1Aによれば、低振動で、かつ耐衝撃性を向上させた構造を実現できる、という利点がある。
また、本実施形態においては、上述したように、外歯歯車3は回転軸Ax1からずれた偏心軸を中心に回転する偏心運動(揺動)するのではなく、撓み発生器40により非円形状に変形した状態の長軸方向D1が回転軸Ax1を中心に回転する。そのため、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、外歯歯車3を偏心運動させるための偏心軸7は省略され、偏心軸7に代えて入力手段として撓み発生器40のカム41が設けられている。
さらに、外歯歯車3は(出力側の)回転軸Ax1を中心に回転(自転)するのみであって、外歯歯車3の揺動成分(公転成分)は発生しないため、外歯歯車3の回転(自転成分)は、複数の内ピン4を用いることなく外歯歯車3から直接的に取り出し可能である。したがって、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、複数の内ピン4、及び複数の内ピン4を支持する支持体8についても省略されている。当然ながら、外歯歯車3において、複数の内ピン4が挿入される複数の遊嵌孔32についても省略されている。
<構成詳細>
以下、本実施形態に係る歯車装置1Aの詳細な構成について、図11~図13を参照して説明する。
本実施形態に係る歯車装置1Aは、上述したように、内歯歯車2と、外歯歯車3と、撓み発生器40と、を備えている。本実施形態では、歯車装置1Aの構成要素である内歯歯車2、外歯歯車3及び撓み発生器40の材質は、ステンレス、鋳鉄、機械構造用炭素鋼、クロムモリブデン鋼、リン青銅又はアルミ青銅等の金属である。ここでいう金属は、窒化処理等の表面処理が施された金属を含む。
また、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、円筒状に形成された外歯歯車3を用いている。撓み発生器40は、円筒状の外歯歯車3内に収容されるように、外歯歯車3と組み合わされる。
また、本実施形態では一例として、歯車装置1Aは、第1キャリア18(図11参照)及び第2キャリア19(図11参照)を備えている。第1キャリア18は内歯歯車2の歯車本体22に固定され、第2キャリア19は外歯歯車3に固定される。さらに、第1キャリア18は軸受け部材6の内輪61に固定され、第2キャリア19は軸受け部材6の外輪62に固定される。本実施形態では、第1キャリア18は内輪61と一体化されており、第2キャリア19は外輪62と一体化されている。これにより、内歯歯車2と外歯歯車3との相対回転に伴って、固定部材である第1キャリア18(及び内輪61)に対して、可動部材である第2キャリア19(及び外輪62)が相対的に回転することになる。第1キャリア18には、相手部材を取り付けるための取付孔181が形成されており、第2キャリア19には、相手部材を取り付けるための取付孔191が形成されている。
さらに、本実施形態では、歯車装置1Aをアクチュエータ100に用いる場合に、撓み発生器40に入力としての回転力が加わることで、外歯歯車3に固定された第2キャリア19から、出力としての回転力が取り出される。つまり、歯車装置1Aは、撓み発生器40の回転を入力回転とし、外歯歯車3(第2キャリア19)の回転を出力回転として動作する。これにより、歯車装置1Aでは、入力回転に対して、比較的高い減速比にて減速された出力回転が得られることになる。
さらに、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、入力側の回転軸Ax1と、出力側の回転軸Ax1とは、同一直線上にある。言い換えれば、入力側となる撓み発生器40の回転軸Ax1と、出力側となる外歯歯車3の回転軸Ax1とは、同軸である。ここで、入力側の回転軸Ax1は、入力回転が与えられる撓み発生器40の回転中心であって、出力側の回転軸Ax1は、出力回転を生じる外歯歯車3の回転中心である。つまり、歯車装置1Aでは、同軸上において、入力回転に対して、比較的高い減速比にて減速された出力回転が得られることになる。
内歯歯車2は、基本構成と同様に、環状(円環状)の歯車本体22と、複数の外ピン23と、を有している。内歯歯車2の歯車本体22は、上述したように、第1キャリア18(及び内輪61)に固定される。そのため、歯車本体22には、固定用の複数の固定孔222(図12参照)が形成されている。
外歯歯車3は、可撓性を有しており、外歯31を有する環状の部品である。本実施形態では、外歯歯車3は、比較的薄肉の金属弾性体(金属板)にて、円筒状に形成された部品である。つまり、外歯歯車3は、その厚みが比較的小さい(薄い)ことで可撓性を持つ。外歯歯車3は、円筒状の本体部34と、フランジ部35と、を有している。本体部34は、外歯歯車3に弾性変形が生じていない状態において、少なくとも内周面301が平面視で真円となる、円筒状を有している。本体部34の中心軸は、回転軸Ax1と一致する。フランジ部35は、本体部34の一方の開口端に連続し、本体部34から径方向の外側に延びることで、平面視において真円となる円環状を有している。
外歯歯車3は、上述したように、第2キャリア19(及び外輪62)に固定される。そのため、外歯歯車3のフランジ部35には、固定用の複数の固定孔351(図11参照)が形成されている。フランジ部35における固定孔351の周囲は、フランジ部35の他の部位よりも肉厚である。さらに、本体部34において、回転軸Ax1の方向におけるフランジ部35とは反対側の端面には、開口面36が形成されている。本実施形態では、本体部34及びフランジ部35は1つの金属部材にて一体に形成されており、これにより、シームレスな外歯歯車3が実現される。
ここで、外歯歯車3に対しては、本体部34の内側に、非円形状(長円形状)の撓み発生器40が嵌め込まれるようにして、撓み発生器40が組み合わされる。これにより、外歯歯車3は、内側から外側に向けて、撓み発生器40からラジアル方向(回転軸Ax1に直交する方向)の外力を受けることにより、非円形状に弾性変形する。本実施形態では、撓み発生器40が外歯歯車3に組み合わされることにより、外歯歯車3は、本体部34が長円形状に弾性変形する。つまり、外歯歯車3に弾性変形が生じていない状態とは、外歯歯車3に撓み発生器40が組み合わされていない状態を意味する。反対に、外歯歯車3に弾性変形が生じている状態とは、外歯歯車3に撓み発生器40が組み合わされた状態を意味する。
より詳細には、撓み発生器40は、外歯歯車3の本体部34のうち、回転軸Ax1の方向における開口面36側の端部に嵌め込まれている。そのため、外歯歯車3に弾性変形が生じている状態では、外歯歯車3は、回転軸Ax1の方向における開口面36側の端部において、フランジ部35側の端部に比較して、より大きく変形し、より長円形状に近い形状となる。このような回転軸Ax1の方向における変形量の違いから、外歯歯車3に弾性変形が生じている状態において、外歯歯車3の本体部34の内周面は、回転軸Ax1に対して傾斜するテーパ面を含むことになる。
また、本体部34の外周面のうち少なくともフランジ部35とは反対側(回転軸Ax1の入力側)の端部には、外歯31が、本体部34の円周方向に沿って形成されている。言い換えれば、外歯31は、外歯歯車3の本体部34のうち、少なくとも回転軸Ax1の方向における開口面36側の端部に設けられている。外歯31を構成する複数の歯は、全て同一形状であって、本体部34の外周面における円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。つまり、外歯31のピッチ円は、外歯歯車3に弾性変形が生じていない状態で、平面視において真円となる。外歯31は、本体部34の開口面36側の端縁から一定幅の範囲にのみ形成されている。具体的には、本体部34のうち、回転軸Ax1の方向において、少なくとも撓み発生器40(のベアリング42)が嵌め込まれる部分(開口面36側の端部)には、外周面に外歯31が形成されている。外歯31の歯筋は、いずれも回転軸Ax1と平行である。
要するに、本実施形態に係る歯車装置1Aにおいては、内歯歯車2の内歯21及び外歯歯車3の外歯31のいずれの歯筋も、回転軸Ax1と平行である。よって、本実施形態では、「歯筋方向」は、回転軸Ax1と平行な方向である。そして、内歯21における歯筋方向の寸法が内歯21の歯幅であって、同様に、外歯31における歯筋方向の寸法が外歯31の歯幅であるので、歯筋方向は歯幅方向と同義である。
このように構成される外歯歯車3は、内歯歯車2の内側に配置される。ここで、外歯歯車3は、本体部34の外周面のうちフランジ部35は反対側の端部のみが、内歯歯車2の内側に挿入されるように、内歯歯車2と組み合わされる。つまり、外歯歯車3は、本体部34のうち、回転軸Ax1の方向において、撓み発生器40が嵌め込まれる部分(開口面36側の端部)が、内歯歯車2の内側に挿入される。ここで、外歯歯車3の外周面には外歯31が形成され、内歯歯車2の内周面には内歯21(複数の外ピン23)が形成されている。そのため、内歯歯車2の内側に外歯歯車3が配置された状態では、外歯31と内歯21とは、互いに対向することになる。
ここで、内歯歯車2における内歯21の歯数は、外歯歯車3の外歯31の歯数よりも2N(Nは正の整数)だけ多い。本実施形態では一例として、Nが「1」であって、外歯歯車3の(外歯31の)歯数(58)は、内歯歯車2の(内歯21の)歯数(60)よりも「2」少ない。このような外歯歯車3と内歯歯車2との歯数差は、歯車装置1Aでの入力回転に対する出力回転の減速比を規定する。
ここにおいて、本実施形態では一例として、外歯31の歯筋方向の寸法(歯幅)は、内歯21(外ピン23)の歯筋方向の寸法(歯幅)よりも小さい。そのため、回転軸Ax1に平行な方向においては、内歯21の歯筋の範囲内に、外歯31が収まることになる。言い換えれば、内歯21は、外歯31に対して、歯筋方向の少なくとも一方に突出する。本実施形態では、内歯21は、外歯31に対して、歯筋方向の両方に突出する。
ここで、外歯歯車3に弾性変形が生じていない状態(外歯歯車3に撓み発生器40が組み合わされていない状態)で、真円を描く外歯31のピッチ円は、同じく真円を描く内歯21のピッチ円に比べて一回り小さくなるように設定されている。つまり、外歯歯車3に弾性変形が生じていない状態では、外歯31との内歯21とは、隙間を介して対向することになり、互いに噛み合ってはいない。
一方で、外歯歯車3に弾性変形が生じた状態(外歯歯車3に撓み発生器40が組み合わされた状態)では、本体部34が長円形状(非円形状)に撓むので、内歯歯車2の内歯21に対して外歯歯車3の外歯31が部分的に噛み合う。つまり、外歯歯車3の本体部34(の少なくとも開口面36側の端部)が長円形状に弾性変形することで、図12に示すように、長円形状の長軸方向D1の両端に位置する外歯31が、内歯21に噛み合うこととなる。これに対して、長円形状の短軸方向D2の両端に位置する外歯31は、内歯21と噛み合わない。
言い換えれば、長円を描く外歯31のピッチ円の長径は、真円を描く内歯21のピッチ円の直径に一致し、長円を描く外歯31のピッチ円の短径は、真円を描く内歯21のピッチ円の直径より小さくなる。このようにして、外歯歯車3が弾性変形すると、外歯31を構成する複数の歯のうちの一部の歯が、内歯21を構成する複数の歯(外ピン23)のうちの一部の歯に噛み合うことになる。結果的に、歯車装置1Aでは、外歯31の一部を内歯21の一部に噛み合わせることが可能となる。
撓み発生器40は、外歯歯車3に撓みを生じさせて、外歯歯車3の外歯31に波動運動を生じさせる部品である。本実施形態では、撓み発生器40は、平面視において外周形状が非円形状、具体的には長円形状となる部品である。
撓み発生器40は、非円形状(ここでは長円形状)のカム41と、カム41の外周に装着されるベアリング42と、を有している。つまり、ベアリング42に対しては、ベアリング42の内輪422の内側に非円形状(長円形状)のカム41が嵌め込まれるようにして、カム41が組み合わされる。これにより、ベアリング42は、内輪422の内側から外側に向けて、カム41からラジアル方向(回転軸Ax1に直交する方向)の外力を受けることにより、非円形状に弾性変形する。つまり、ベアリング42に弾性変形が生じていない状態とは、ベアリング42にカム41が組み合わされていない状態を意味する。反対に、ベアリング42に弾性変形が生じている状態とは、ベアリング42にカム41が組み合わされた状態を意味する。
カム41は、入力側の回転軸Ax1を中心に回転駆動される、非円形状(ここでは長円形状)の部品である。カム41は、筒状部411(図11参照)と、非円形部412(図11参照)と、を有しており、少なくとも非円形部412の外周面が、平面視において非円形状となる。非円形部412は、回転軸Ax1の方向に所定の厚みを持つ。これにより、非円形部412は、内歯歯車2と同程度の剛性を持つ。ただし、非円形部412の厚みは、内歯歯車2の厚みに比べて小さい(薄い)。本実施形態では、上述したように、撓み発生器40の回転を入力回転とする。そのため、撓み発生器40には、アクチュエータ100の駆動源101が取り付けられる。撓み発生器40のカム41の筒状部411には、駆動源101を取り付けるためのカム孔413が形成されている。
ベアリング42は、外輪421と、内輪422と、複数の転動体423と、を有している。本実施形態では一例として、ベアリング42は、転動体423として球体状のボールを用いた深溝玉軸受からなる。
外輪421及び内輪422は、いずれも環状の部品である。外輪421及び内輪422は、いずれも比較的薄肉の金属弾性体(金属板)にて、環状に形成された部品である。つまり、外輪421及び内輪422の各々は、その厚みが比較的小さい(薄い)ことで可撓性を持つ。本実施形態では、外輪421及び内輪422は、ベアリング42に弾性変形が生じていない状態(ベアリング42にカム41が組み合わされていない状態)において、いずれも平面視で真円となる、円環状を有している。内輪422は、外輪421よりも一回り小さく、外輪421の内側に配置される。ここで、外輪421の内径は内輪422の外径よりも大きいため、外輪421の内周面425と内輪422の外周面との間には隙間が生じる。
複数の転動体423は、外輪421と内輪422との間の隙間に配置されている。複数の転動体423は、外輪421の円周方向に並べて配置されている。複数の転動体423は、全て同一形状の金属球(ボール)であって、外輪421の円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。ベアリング42は保持器424を更に有しており、複数の転動体423は、保持器424にて外輪421と内輪422との間に保持されている。
このようなベアリング42の構成により、カム41がベアリング42に組み合わされることにより、ベアリング42は、内輪422がカム41に固定されることになり、カム41の非円形部412の外周形状に倣った長円形状に内輪422が弾性変形する。このとき、ベアリング42の外輪421は、複数の転動体423を介して、内輪422に押されて長円形状に弾性変形する。よって、ベアリング42は、外輪421及び内輪422のいずれもが、長円形状に弾性変形する。このようにベアリング42に弾性変形が生じている状態(ベアリング42にカム41が組み合わされた状態)で、外輪421及び内輪422は、互いに相似形となる長円形状をなす。
ベアリング42に弾性変形が生じている状態であっても、外輪421と内輪422との間には、複数の転動体423が介在することで、外輪421と内輪422との間の隙間は外輪421の全周にわたって略一定に維持されている。そして、この状態で、外輪421と内輪422との間の複数の転動体423が転がることで、外輪421は内輪422に対して相対的に回転可能である。よって、ベアリング42に弾性変形が生じている状態で、カム41が回転軸Ax1を中心に回転すると、カム41の回転は外輪421には伝わらず、内輪422の弾性変形が複数の転動体423を介して外輪421に伝わることになる。つまり、撓み発生器40においては、カム41が回転軸Ax1を中心に回転すると、外輪421によって象られる長円形状の長軸方向D1が回転軸Ax1を中心に回転するように外輪421が弾性変形する。そのため、撓み発生器40全体としては、回転軸Ax1の一方側から見た、長円形状をなす撓み発生器40の外周形状は、その長軸(長軸方向D1)が回転軸Ax1を中心に回転するように、カム41の回転に伴って変化する。
このように構成される撓み発生器40は、外歯歯車3の内側に配置される。ここで、外歯歯車3は、本体部34のうちフランジ部35とは反対側(開口面36側)の端部のみが、撓み発生器40に嵌め合わされるように、撓み発生器40と組み合わされる。このとき、撓み発生器40のベアリング42は、カム41の非円形部412の外周面と外歯歯車3の本体部34の内周面との間に配置されることになる。ここで、ベアリング42に弾性変形が生じていない状態(ベアリング42にカム41が組み合わされていない状態)での外輪421の外径は、同じく弾性変形が生じていない状態での外歯歯車3(本体部34)の内径と同一である。そのため、撓み発生器40における外輪421の外周面が、ベアリング42の円周方向の全周にわたって、外歯歯車3の内周面に接する。よって、外歯歯車3に弾性変形が生じた状態(外歯歯車3に撓み発生器40が組み合わされた状態)では、本体部34は長円形状(非円形状)に撓むことになる。この状態で、外歯歯車3はベアリング42の外輪421に対して固定される。
ただし、あくまで外歯歯車3と撓み発生器40とは嵌め合わされているだけであるので、外歯歯車3とベアリング42の外輪421とは、完全に固定される訳ではない。そのため、外歯歯車3と外歯歯車3の内側に嵌め込まれた外輪421との間には、僅かとはいえ隙間が生じることになる。厳密には、外歯歯車3の内周面よりも外輪421の外周面の方が僅かに小径であるため、外輪421と外歯歯車3との間の隙間が完全に埋まることはなく、少なくとも部分的に隙間が生じる。
本開示でいう「隙間」は、2つの物体の対向面間に生じ得る空間を意味し、当該2つの物体が離間していなくても両者の間に隙間が生じ得る。つまり、2つの物体が接触するとしても、当該2つの物体の間には、僅かながらにも隙間が生じ得る。外歯歯車3と外歯歯車3の内側に嵌め込まれた外輪421との間においては、互いに対向している外輪421の外周面と外歯歯車3の内周面との間に隙間が生じる。ただし、基本的には、外輪421の外周面と外歯歯車3の内周面とは接触するので、両者間に大きな隙間が生じることはない。そのため、外輪421と外歯歯車3との間の隙間は、外輪421の外周面と外歯歯車3の内周面との間において、部分的に生じ得る僅かな隙間である。一例として、外輪421の外周面と外歯歯車3の内周面には、潤滑剤が浸透可能な程度の微視的な隙間が生じる。
上述した構成の歯車装置1Aでは、図12に示すように、外歯歯車3が長円形状(非円形状)に撓むことで、内歯歯車2の内歯21に対して外歯歯車3の外歯31が部分的に噛み合う。つまり、外歯歯車3(の本体部34)が長円形状に弾性変形することで、その長円形状の長軸方向D1の両端に相当する2箇所の外歯31が、内歯21に対して噛み合うこととなる。そして、カム41が回転軸Ax1を中心に回転すると、カム41の回転は外輪421及び外歯歯車3には伝わらず、内輪422の弾性変形が複数の転動体423を介して外輪421及び外歯歯車3に伝わることになる。したがって、回転軸Ax1の一方側から見た、長円形状をなす外歯歯車3の外周形状は、その長軸(長軸方向D1)が回転軸Ax1を中心に回転するように、カム41の回転に伴って変化する。
その結果、外歯歯車3の外周面に形成された外歯31には、波動運動が発生する。外歯31の波動運動が発生することで、内歯21と外歯31との噛み合い位置が内歯歯車2の円周方向に移動し、外歯歯車3と内歯歯車2との間に相対回転が発生する。つまり、外歯31は、外歯歯車3(の本体部34)がなす長円形状の長軸方向D1の両端において内歯21と噛み合っているので、この長円形状の長軸が回転軸Ax1を中心に回転することで、内歯21と外歯31との噛み合い位置が移動する。このように、本実施形態に係る歯車装置1Aは、回転軸Ax1を中心とする撓み発生器40の回転に伴って外歯歯車3を変形させ、外歯31の一部を内歯21の一部に噛み合わせて、外歯歯車3を内歯歯車2との歯数差に応じて回転させる。
ところで、歯車装置1Aにおいては、上述したように、外歯歯車3と内歯歯車2との歯数差は、歯車装置1Aでの入力回転に対する出力回転の減速比を規定することになる。つまり、内歯歯車2の歯数を「V1」、外歯歯車3の歯数を「V2」とした場合、減速比R1は、下記式1で表される。
R1=V2/(V1-V2)・・・(式1)
要するに、内歯歯車2と外歯歯車3との歯数差(V1-V2)が小さいほど、減速比R1は大きくなる。一例として、内歯歯車2の歯数V1が「60」、外歯歯車3の歯数V2が「58」、その歯数差(V1-V2)が「2」であると、上記式1より、減速比R1は「29」となる。この場合、回転軸Ax1の入力側から見て、カム41が回転軸Ax1を中心に時計回りに1周(360度)回転すると、外歯歯車3は回転軸Ax1を中心に歯数差「2」の分(つまり12.9度)だけ反時計回りに回転する。
本実施形態に係る歯車装置1Aによれば、このように高い減速比R1が、1段の歯車(内歯歯車2及び外歯歯車3)の組み合わせで実現可能である。
ところで、本実施形態に係る歯車装置1Aは、上述したように、内歯21と外歯31との噛み合う同時噛合範囲Ra1が内歯歯車2の周方向の180度以上を占めるように構成されている。つまり、図13に示すように、同時噛合範囲Ra1は、内歯歯車2の周方向の180度以上、つまり半分以上を占める一方で、内歯21と外歯31とが噛み合わない非噛合範囲Ra2は、内歯歯車2の周方向の180度未満、つまり半分未満に抑えられている。
より詳細には、同時噛合範囲Ra1は、内歯歯車2の周方向における180度以上、300度以下を占める。つまり、非噛合範囲Ra2は、内歯歯車2の周方向における60度以上、180度以下を占める。内歯歯車2の周方向における同時噛合範囲Ra1が占める範囲の上限は300度に限らず、300度よりも大きくてもよいし、190度、200度、220度、240度、260度又は280度等であってもよい。
また、本実施形態では、同時噛合範囲Ra1は、内歯歯車2の周方向の2箇所に分かれて設けられている。つまり、図13に示すように、内歯歯車2の周方向の2箇所に設けられた同時噛合範囲Ra1において、内歯21と外歯31とが噛み合うことになる。そのため、非噛合範囲Ra2も同様に、内歯歯車2の周方向の2箇所に分かれて設けられることになる。
さらに、本実施形態では、カム41は、2つの半円を2本の直線でつないだ長円形状を有している。そのため、カム41によって弾性変形させられる外歯歯車3においても、(少なくとも開口面36側の端部)が長円形状に弾性変形する。したがって、当該長円形状の長軸方向D1の両端に位置する外歯31が、内歯21に噛み合うこととなり、内歯歯車2の周方向の2箇所の同時噛合範囲Ra1にて、外歯31が内歯21と噛み合う。
そして、同時噛合範囲Ra1は、内歯歯車2の周方向の180度以上を占めるので、長円形状の長軸方向D1の両端に位置する外歯31だけでなく、長円形状の短軸方向D2側に位置する外歯31の一部についても、内歯21と噛み合うことになる。要するに、内歯歯車2を、周方向において、長円形状の長軸方向D1及び短軸方向D2のそれぞれを中心とする4つの領域に等分したときに、短軸方向D2の両側に位置する2つの領域の少なくとも一部についても、同時噛合範囲Ra1として外歯31と内歯21とが噛み合うことになる。
よって、内歯歯車2の周方向の半分以上の同時噛合範囲Ra1にて、外歯歯車3が内歯歯車2から拘束されることになり、撓み発生器40から離れる向きの外歯歯車3の移動(変形)が抑制される。つまり、長円形状の短軸方向D2側に位置する外歯31においても、その少なくとも一部が内歯歯車2から拘束されることになり、撓み発生器40から離れる向きの移動が規制される。結果的に、内歯歯車2の周方向の半分以上の広範囲にわたって、内歯21と外歯31との噛み合いを安定させることができ、歯車装置1Aは、動作中の振動、及び動作中に過度なトルクがかかった際に内歯歯車2と外歯歯車3との間の噛み合いが瞬間的にずれてしまうラチェッティング等の不具合が生じにくくなる。
本実施形態では一例として、内歯歯車2の周方向において、長円形状の長軸方向D1の両側であって、長軸方向D1を中心とする各150度の範囲が同時噛合範囲Ra1となる。したがって、内歯歯車2の周方向全体でみれば、300度の範囲が同時噛合範囲Ra1となる。これに対して、内歯歯車2の周方向において、長円形状の短軸方向D2の両側であって、短軸方向D2を中心とする各30度の範囲が非噛合範囲Ra2となる。したがって、内歯歯車2の周方向全体でみれば、60度の範囲が非噛合範囲Ra2となる。
上述したように、内歯歯車2の周方向の180度以上の範囲を同時噛合範囲Ra1とするためには、外歯歯車3の変形量を比較的小さく抑えて、真円である内歯歯車2の内歯21のピッチ円と、長円形状である外歯歯車3の外歯31のピッチ円とのずれを小さく抑える必要がある。そのため、外歯歯車3における外歯31の歯形として、近似歯形による噛み合いでなく、機構学における等速度比で回転を伝達する歯車の噛み合い条件を満たした噛み合いを実現し得る歯形を採用する。具体的に、外歯31は、トロコイド系歯形を有する。内歯21に対する外歯31の歯数差は2枚差である。
すなわち、本実施形態に係る歯車装置1Aは、外歯歯車3が弾性変形することにより内歯歯車2と噛み合う「波動歯車装置」でなく、弾性変形しなくとも内歯歯車2と外歯歯車3との同時噛み合い歯数の多い噛合を実現する内接式遊星歯車装置をベースに、歯車の機構学的噛み合い条件を満足した噛み合いを多く確保する。これにより、歯車装置1Aにおいては、荷重の分散を図ることが可能となり、しかも外歯歯車3の変形量を小さく抑えることで外歯歯車3の応力集中が生じにくくなる。結果的に、外歯歯車3の弾性変形時の破損等が生じにくく、歯車装置1Aとしての耐久性が向上する。
<外歯歯車の歯形設計>
本実施形態に係る歯車装置1Aに用いられる外歯歯車3の歯形設計について、図14A~図23を参照して説明する。図14A~図23は、外歯歯車3の歯形設計の手順を説明するための概念図であって、本実施形態に係る歯車装置1Aの構成(歯数等を含む)を示す訳ではない。
まず、図14Aに示すように、内歯歯車2に相当する節S1、及び外歯歯車3に相当する節S2を設定する。節S2の中心は、節S1の中心に対して、偏心量e1だけ偏心している。節S1の内径d1は、噛み合いにおける内歯歯車2のピッチ円の直径であって、正の整数「n」を用いて下記式2で表される。
d1=(n+1)×e1×2・・・(式2)
一方、節S2の外径d2は、噛み合いにおける外歯歯車3のピッチ円の直径であって、正の整数「n」を用いて下記式3で表される。
d2=n×e1×2・・・(式3)
さらに、節S1の中心から、節S2の変位方向(図14Aでは右方)に向けて距離L0の位置に、内歯21を構成する外ピン23に相当する仮想ピンV0を設定する。節S1に対する仮想ピンV0の相対的な位置は固定的であって、後述するように節S1が公転(回転)する際には、仮想ピンV0も節S1と共に公転(回転)する。仮想ピンV0の直径dp1は、外ピン23の直径である。この仮想ピンV0が、節S2上に節S1(内歯21)の噛み合い相手となる(外歯31の)歯形を創成する。
ここでは一例として、整数nは「49」、偏心量e1は「0.7」であると仮定する。この場合、節S1の内径d1は「70」、節S2の外径d2は「68.6」となる。さらに、節S1の中心から仮想ピンV0の中心までの距離L0は「42.3」であると仮定する。
具体的には、図14Bに示すように、節S1が節S2上を滑ることなくn回(本実施形態では49回)公転すると、節S1に対して定位置にある仮想ピンV0は節S2の周囲をn回公転する。このとき、仮想ピンV0の中心の軌道がトロコイド曲線を形成し、当該トロコイド曲線上の仮想ピンV0が作る包絡線が外歯31の歯形となる。これにより、n個(49個)の歯形が形成され、歯先及び歯元がそれぞれn個ずつ形成される。
また、図15Aに示すように、節S1に付随する仮想ピンV0の数を「n+1」個(本実施形態では50個)とし、これら「n+1」個の仮想ピンV0を節S1の周方向において等ピッチで配置する場合を想定する。この場合、節S1が節S2上を滑ることなく1回公転するだけで、節S1に対して定位置にある複数(「n+1」個)の仮想ピンV0の中心の軌道がトロコイド曲線を形成し、図15Bに示すように、当該トロコイド曲線上の仮想ピンV0が作る包絡線が外歯31の歯形となる。これにより、1回の節S1の公転で、図14Bと同様にn個(49個)の歯形が形成される。
ここで、図15Bにおいて、創成される外歯歯車3の外歯31と内歯21(複数の外ピン23)との噛み合いは、全ての接触点の共通法線が定点(ピッチ点Pp1)を通っており、歯車の機構学的噛み合い条件を満足している。共通法線は、図15Bに想像線(二点鎖線)で示しており、これら共通法線の延長方向は外歯歯車3から内歯歯車2にかかる荷重の方向と一致する。そして、節S1の周方向において第1象限Q1、第2象限Q2、第3象限Q3及び第4象限Q4を設定した場合に、当該荷重の方向から、有効荷重を発生している噛み合いは第1象限Q1及び第4象限Q4にあることが分かる。一方、第2象限Q2及び第3象限Q3においては、荷重の方向からして、有効荷重を発生する噛み合いが殆どないことが分かる。そこで、このように有効な噛み合いが生じない第2象限Q2及び第3象限Q3における外歯31と内歯21との噛み合いを無くして、第2象限Q2及び第3象限Q3には、位相が180度ずれた別の外歯31を配置することとする。
すなわち、図16A及び図16Bに示すように、基本構成で示したのと同様の内接式遊星歯車装置において、偏心方向が180度異なる2つの外歯歯車3を想定する。図16Aは、内歯歯車2の中心に対して右方に偏心量e1だけ偏心した外歯歯車3Aを示し、図16Bは、内歯歯車2の中心に対して左方に偏心量e1だけ偏心した外歯歯車3Bを示す。
そして、これら位相が180度異なる2つの外歯歯車3A,3Bを用いて、本実施形態に係る歯車装置1Aにおける外歯歯車3の外歯31を構成する。具体的には、図17Aに示すように、内歯歯車2の中心を一致させた状態で、位相が異なる2つの外歯歯車3A,3Bを重ね合わせる。そして、図17Aから、重なり合った2つのトロコイド曲線を抽出することで、図17Bに示すような、2つの曲線S3,S4が得られる。
次に、図18Aには、図17Bにおいてラジアル方向において2つの曲線S3,S4が2重になっている箇所についてそれぞれ内側のみを抽出し外歯歯車3A(の外歯31)の歯形を形成した上で、内歯歯車2と重ね合わせた状態を示す。ここで、外歯歯車3Aは内歯歯車2の中心から右方に偏心量e1だけ偏心する。さらに、図16Aの外歯歯車3Aを、図18Aの外歯歯車3Aに入れ替えた状態を図18Bに示す。
同様に、図19Aには、図17Bにおいてラジアル方向において2つの曲線S3,S4が2重になっている箇所についてそれぞれ内側のみを抽出し外歯歯車3B(の外歯31)の歯形を形成した上で、内歯歯車2と重ね合わせた状態を示す。ここで、外歯歯車3Bは内歯歯車2の中心から左方に偏心量e1だけ偏心する。さらに、図16Bの外歯歯車3Bを、図19Aの外歯歯車3Bに入れ替えた状態を図19Bに示す。
さらに、外歯歯車3の回転(自転成分)を、複数の内ピン4を用いることなく外歯歯車3から直接的に取り出し可能とするために、以下の構成を採用する。
すなわち、図20Aは、図18Bに示す状態から、外歯歯車3Aの内側に位置する内ピン4等を省略し、外歯歯車3Aの開口を外歯31の歯底付近にまで拡大した構成を示す。同様に、図20Bは、図19Bに示す状態から、外歯歯車3Bの内側に位置する内ピン4等を省略し、外歯歯車3Bの開口を外歯31の歯底付近にまで拡大した構成を示す。
そして、図21Aは、図20Aの外歯歯車3Aの内側に、撓み発生器40Aが嵌め込まれた構成を示す。ここで、撓み発生器40Aは、真円状のカム41を有し、当該カム41の中心が内歯歯車2の中心から右方に偏心量e1だけ偏心している。同様に、図21Bは、図20Bの外歯歯車3Bの内側に、撓み発生器40Bが嵌め込まれた構成を示す。ここで、撓み発生器40Bは、真円状のカム41を有し、当該カム41の中心が内歯歯車2の中心から左方に偏心量e1だけ偏心している。
それから、上述したように180度位相がずれた状態の外歯歯車3A,3Bによる2組の噛み合いを合成する。具体的に、図22Aに示すように、図20A及び図20Bに示す外歯歯車3A,3Bを、その長軸方向の両端部において内歯歯車2と噛み合うように、偏心方向とは反対側(外歯歯車3Aであれば左側、外歯歯車3Bであれば右側)に延伸させて非円形状(ここでは長円状)の外歯歯車3を得る。ここで、外歯歯車3A,3Bは、弾性変形することで、図中の左右方向(長軸方向)の寸法が大きくなる一方、図中の上下方向(短軸方向)の寸法が小さくなる。
ただし、外歯歯車3A,3Bは単に弾性変形するのではなく、外歯歯車3と内歯歯車2とが機構学的噛み合い条件を満足するように設計されたカム41の形状に合わせて弾性変形する。つまり、図21Aに示すように、内歯歯車2の中心から右方に偏心した真円状のカム41の右半分からなる円弧と、図21Bに示すように、内歯歯車2の中心から左方に偏心した真円状のカム41の左半分からなる円弧と、を重ね合わせることで、長円状のカム41が設計される。当該カム41は、両円弧同士を、長さが「2×e1」である一対の直線にて連結した長円状を有している。
これにより、図22Bに示すように、図21A又は図21Bのカム41を、内歯歯車2の中心に対して長軸方向(左右方向)の両側にそれぞれ偏心した一対の偏心中心を有する長円状のカム41に置き換えた歯車機構1Xが得られる。このようにして得られる歯車機構1Xは、図21Aの歯車機構、及び図21Bの歯車機構の両方の機能を有している。そして、本実施形態に係る歯車装置1Aは、このようにして得られる歯車機構1Xを、内歯歯車2の歯車本体22に組み込むことによって実現される。
ところで、図22Bに示す歯車機構1Xにおいては、外歯歯車3が短軸方向の両端部となる非噛合範囲Ra2で内歯歯車2と干渉しないことが必要である。すなわち、図22Bの領域Z1を拡大した図23に示すように、カム41の短軸方向の両端部においては、外歯歯車3の外歯31が内歯歯車2の内歯21(外ピン23)に接触しないように、外歯歯車3(の外歯31)の歯形が設定されている。すなわち、図23に想像線(二点鎖線)で示すように、図17Aから抽出されるトロコイド曲線である2つの曲線S3,S4のままであれば、外歯31の歯丈が比較的大きくなり、外歯31の歯先にて内歯21と干渉する。
そこで、本実施形態では、図23に示すように、ラジアル方向において2つの曲線S3,S4が2重になっている箇所について、それぞれ内側となる曲線S3,S4のみを抽出し、外歯31の歯形を構成する。より厳密には、外歯31の歯先は、曲線S3,S4の交点より歯丈が低くなるように、曲線S3,S4の交点よりも更に内側にて丸められた形状を有している。すなわち、本実施形態では、外歯31は、歯先部311を欠いた形状を有する。これにより、外歯歯車3の外歯31と内歯歯車2の内歯21(外ピン23)との干渉高さは、偏心量e1に比べて十分に小さくなり、短軸方向の両端部の非噛合範囲Ra2では外歯歯車3と内歯歯車2とは干渉しにくくなる。
以上説明した歯形設計によれば、近似歯形による噛み合いでなく、機構学における等速度比で回転を伝達する歯車の噛み合い条件を満足し得る。つまり、「2つの節の接触点における共通法線が定点(ピッチ点Pp1)を通る」という噛み合い条件を満たす。言い換えれば、機構学的噛み合い条件を満足した噛み合いを多く確保することにより、荷重の分散を図ることができる。これにより、動力伝達性能の向上を図ることができ、加えて、回転精度及びバックラッシュ(バックラッシ)性能の改善を図ることができる。
さらに、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、外歯歯車3が弾性変形する際の変形量が比較的小さく抑えられるので、外歯歯車3を極端な薄肉にする必要がなく、外歯歯車3として十分な強度を確保しやすい。また、内歯21に外ピン23が用いられることにより、外ピン23と内周溝223との間の、相対曲率半径が大きく、面圧の小さい接触部位で滑り接触が行われることにも起因して、歯車装置1Aの動力の伝達効率(特に起動効率及び静的効率)の改善を図りやすい。
加えて、本実施形態では、内歯21における外歯31との接触点における共通法線の方向(荷重方向でもある)において、外歯歯車3を自転させる荷重分力(荷重の有効成分)が多い噛み合いとなる歯形部分を確保し(歯形を残し)つつ、荷重の有効成分が少ない噛み合い部分(外歯31の歯先部311)を無くして歯丈を低く抑えている。そのため、外歯歯車3の短軸方向D2において、外歯31が内歯21に干渉しにくくなる。
<適用例>
本実施形態に係る歯車装置1Aは、図24に示すように、第1部材201及び第2部材202と共に、ロボット用関節装置200を構成する。言い換えれば、本実施形態に係るロボット用関節装置200は、歯車装置1Aと、第1部材201と、第2部材202と、を備える。第1部材201は、歯車本体22に固定される。第2部材202は、内歯歯車2に対する外歯歯車3の相対的な回転に伴って、第1部材201に対して相対的に回転する。図24は、ロボット用関節装置200の概略断面図である。
本実施形態では一例として、第1部材201は、内輪61に固定され、第2部材202は、外輪62に固定される。これにより、第2部材202は、内歯歯車2に対する外歯歯車3の相対的な回転に伴って、第1部材201に対して相対的に回転することになる。より詳細には、第1部材201は、第1キャリア18に対して固定されることにより、軸受け部材6の内輪61に対して間接的に固定される。第2部材202は、第2キャリア19に対して固定されることにより、軸受け部材6の外輪62に対して間接的に固定される。
このように構成されるロボット用関節装置200は、第1部材201と第2部材202とが、回転軸Ax1を中心に相対的に回転することにより、関節装置として機能する。ここで、歯車装置1Aの撓み発生器40のカム41を、駆動源101(図1参照)としての第1モータ203にて駆動することによって、第1部材201と第2部材202とは相対的に回転する。このとき、駆動源101で発生する回転(入力回転)が、歯車装置1Aにおいて比較的高い減速比にて減速され、第1部材201又は第2部材202を比較的高トルクで駆動する。つまり、歯車装置1Aにて連結された第1部材201と第2部材202とは、回転軸Ax1を中心に屈伸動作が可能となる。
より詳細には、第1モータ203の出力軸には、第1プーリP1が固定されている。第1プーリP1には、タイミングベルトT1を介して、第2プーリP2が接続されている。ここで、第2プーリP2は、相手部材として、撓み発生器40のカム41に固定される。つまり、第1モータ203が駆動すると、その回転は、第1プーリP1、タイミングベルトT1及び第2プーリP2を介して、入力軸としてのカム41に伝達される。
また、ロボット用関節装置200は、第2モータ204を更に備えている。第2モータ204の出力軸には、第3プーリP3が固定されている。第3プーリP3には、タイミングベルトT2を介して、第4プーリP4が接続されている。ここで、第4プーリP4は、シャフト205に固定されている。シャフト205は、カム41の内部(開口)を通して歯車装置1Aを回転軸Ax1の方向に貫通する。シャフト205における第4プーリP4とは反対側の端部には、第5プーリP5が固定されている。これにより、第2モータ204が駆動すると、その回転は、第3プーリP3、タイミングベルトT2、第4プーリP4及びシャフト205を介して、第5プーリP5に伝達される。
ロボット用関節装置200は、例えば、水平多関節ロボット(スカラ型ロボット)のようなロボットに用いられる。さらに、ロボット用関節装置200は、水平多関節ロボットに限らず、例えば、水平多関節ロボット以外の産業用ロボット、又は産業用以外のロボット等に用いられてもよい。また、本実施形態に係る歯車装置1Aは、ロボット用関節装置200に限らず、例えば、インホイールモータ等の車輪装置として、無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)等の車両に用いられてもよい。
<変形例>
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、本開示で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
また、軸受け部材6は、クロスローラベアリングに限らず、例えば、アンギュラ玉軸受け、深溝玉軸受け又は4点接触玉軸受け等であってもよい。
また、実施形態1で説明した外ピン23の数(内歯21の歯数)、及び外歯31の歯数等は、一例に過ぎず、適宜変更可能である。
また、歯車装置1Aの各構成要素の材質は、金属に限らず、例えば、エンジニアリングプラスチック等の樹脂であってもよい。
また、歯車装置1Aは、軸受け部材6の内輪61と外輪62との間の相対的な回転を出力として取り出すことができればよく、外輪62(第2キャリア19)の回転力が出力として取り出される構成に限らない。例えば、外輪62に対して相対的に回転する内輪61(第1キャリア18)の回転力が出力として取り出されてもよい。
また、潤滑剤は、潤滑油(オイル)等の液状の物質に限らず、グリス等のゲル状の物質であってもよい。
(実施形態2)
本実施形態に係る歯車装置1Bは、図25に示すように、撓み発生器40のカム41の形状が楕円形状である点で、実施形態1に係る歯車装置1Aと相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。図25は、歯車装置1Bの概略構成を示す断面図である。図25では、断面であってもハッチングを省略し、かつ歯車本体22の内周面221の図示を省略している。
すなわち、本実施形態では、カム41は、楕円形状を有している。本開示でいう「楕円形状」は、真円が押し潰されて、互いに直交する長軸(長軸方向D1)と短軸(短軸方向D2)との交点が中心に位置するような形状全般を意味し、一平面上のある2定点からの距離の和が一定である点の集合からなる曲線である数学的な「楕円」に限らない。つまり、本実施形態におけるカム41は、数学的な「楕円」のように一平面上のある2定点からの距離の和が一定である点の集合からなる曲線状であってもよいし、数学的な「楕円」以外の楕円形状であってもよい。
本実施形態に係る歯車装置1Bでは、図25に示すように、楕円形状の長軸方向D1の両端に位置する外歯31が、内歯21に噛み合うこととなる。これに対して、楕円形状の短軸方向D2の両端に位置する外歯31は、内歯21と噛み合わない。
実施形態2の構成は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る歯車装置(1,1A,1B)は、内歯歯車(2)と、環状の外歯歯車(3)と、撓み発生器(40)と、を備える。内歯歯車(2)は、環状の歯車本体(22)と、歯車本体(22)の内周面(221)に形成された複数の内周溝(223)に自転可能な状態で保持され内歯(21)を構成する複数の外ピン(23)と、を有する。外歯歯車(3)は、外歯(31)を有し、内歯歯車(2)の内側に配置される。撓み発生器(40)は、回転軸(Ax1)を中心に回転駆動される非円形状のカム(41)、及びカム(41)の外側に装着されるベアリング(42)を有する。撓み発生器(40)は、外歯歯車(3)の内側に配置され、外歯歯車(3)に撓みを生じさせる。歯車装置(1,1A,1B)は、カム(41)の回転に伴って外歯歯車(3)を変形させ、外歯(31)の一部を内歯(21)の一部に噛み合わせて、外歯歯車(3)を内歯歯車(2)との歯数差に応じて内歯歯車(2)に対して相対的に回転させる。内歯歯車(2)の周方向の180度以上を占める同時噛合範囲(Ra1)において、内歯と外歯とが噛み合う。
この態様によれば、内歯歯車(2)の周方向の半分以上の同時噛合範囲(Ra1)にて、外歯歯車(3)が内歯歯車(2)から拘束されることになり、撓み発生器(40)から離れる向きの外歯歯車(3)の移動(変形)が抑制される。したがって、内歯歯車(2)の周方向の半分以上の広範囲にわたって、内歯(21)と外歯(31)との噛み合いを安定させることができる。つまり、内歯(21)と外歯(31)との噛み合いが安定しやすい、という利点がある。結果的に、歯車装置(1,1A,1B)は、動作中の振動、及び動作中に過度なトルクがかかった際に内歯歯車(2)と外歯歯車(3)との間の噛み合いが瞬間的にずれてしまうラチェッティング等の不具合が生じにくくなる。言い換えれば、歯車装置(1,1A,1B)によれば、低振動で、かつ耐衝撃性を向上させた構造を実現できる。
第2の態様に係る歯車装置(1,1A,1B)では、第1の態様において、同時噛合範囲(Ra1)は、内歯歯車(2)の周方向における180度以上、300度以下を占める。
この態様によれば、内歯(21)と外歯(31)との噛み合いがより安定しやすい。
第3の態様に係る歯車装置(1,1A,1B)では、第1又は2の態様において、同時噛合範囲(Ra1)は、内歯歯車(2)の周方向の2箇所に分かれて設けられている。
この態様によれば、内歯(21)と外歯(31)との噛み合いがより安定しやすい。
第4の態様に係る歯車装置(1,1A,1B)では、第3の態様において、カム(41)は、2つの半円を2本の直線でつないだ長円形状を有している。
この態様によれば、内歯(21)と外歯(31)とが噛み合わない非噛合範囲(Ra2)において、内歯(21)と外歯(31)との干渉が生じにくい。
第5の態様に係る歯車装置(1,1A,1B)では、第3の態様において、カム(41)は、楕円状を有している。
この態様によれば、内歯(21)と外歯(31)とが噛み合わない非噛合範囲(Ra2)において、内歯(21)と外歯(31)との干渉が生じにくい。
第6の態様に係る歯車装置(1,1A,1B)では、第1~5のいずれかの態様において、外歯(31)は、トロコイド系歯形を有し、内歯(21)に対する外歯(31)の歯数差が2枚差である。
この態様によれば、外歯歯車(3)における外歯(31)の歯形として、近似歯形による噛み合いでなく、機構学における等速度比で回転を伝達する歯車の噛み合い条件を満たした噛み合いを実現し得る。これにより、機構学的噛み合い条件を満足した噛み合いを多く確保することができ、荷重の分散を図ることが可能となり、しかも外歯歯車(3)の変形量を小さく抑えることで外歯歯車(3)の応力集中が生じにくくなる。
第7の態様に係る歯車装置(1,1A,1B)では、第6の態様において、外歯(31)は、歯先部(311)を欠いた形状を有する。
この態様によれば、内歯(21)と外歯(31)とが噛み合わない非噛合範囲(Ra2)において、内歯(21)と外歯(31)との干渉が生じにくい。
第8の態様に係るロボット用関節装置(200)は、第1~7のいずれかの態様に係る歯車装置(1,1A,1B)と、歯車本体(22)(22)に固定される第1部材(201)と、内歯歯車(2)(2)に対する外歯歯車(3)(3)の相対的な回転に伴って、第1部材(201)に対して相対的に回転する第2部材(202)と、を備える。
この態様によれば、内歯(21)と外歯(31)との噛み合いが安定しやすい、という利点がある。
第2~7の態様に係る構成については、歯車装置(1,1A,1B)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
1,1A,1B 歯車装置
2 内歯歯車
3 外歯歯車
21 内歯
22 歯車本体
23 外ピン
31 外歯
40 撓み発生器
41 カム
42 ベアリング
221 (歯車本体の)内周面
223 内周溝
311 歯先部
Ax1 回転軸
Ra1 同時噛合範囲

Claims (8)

  1. 環状の歯車本体と、前記歯車本体の内周面に形成された複数の内周溝に自転可能な状態で保持され内歯を構成する複数の外ピンと、を有する内歯歯車と、
    外歯を有し、前記内歯歯車の内側に配置される環状の外歯歯車と、
    回転軸を中心に回転駆動される非円形状のカム、及び前記カムの外側に装着されるベアリングを有し、前記外歯歯車の内側に配置され、前記外歯歯車に撓みを生じさせる撓み発生器と、を備え、
    前記カムの回転に伴って前記外歯歯車を変形させ、前記外歯の一部を前記内歯の一部に噛み合わせて、前記外歯歯車を前記内歯歯車との歯数差に応じて前記内歯歯車に対して相対的に回転させ、
    前記内歯歯車の周方向の180度以上を占める同時噛合範囲において、前記内歯と前記外歯とが噛み合う、
    歯車装置。
  2. 前記同時噛合範囲は、前記内歯歯車の周方向における180度以上、300度以下を占める、
    請求項1に記載の歯車装置。
  3. 前記同時噛合範囲は、前記内歯歯車の周方向の2箇所に分かれて設けられている、
    請求項1又は2に記載の歯車装置。
  4. 前記カムは、2つの半円を2本の直線でつないだ長円形状を有している、
    請求項3に記載の歯車装置。
  5. 前記カムは、楕円状を有している、
    請求項3に記載の歯車装置。
  6. 前記外歯は、トロコイド系歯形を有し、
    前記内歯に対する前記外歯の歯数差が2枚差である、
    請求項1又は2に記載の歯車装置。
  7. 前記外歯は、歯先部を欠いた形状を有する、
    請求項6に記載の歯車装置。
  8. 請求項1又は2に記載の歯車装置と、
    前記歯車本体に固定される第1部材と、
    前記内歯歯車に対する前記外歯歯車の相対的な回転に伴って、前記第1部材に対して相対的に回転する第2部材と、を備える、
    ロボット用関節装置。
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