JP2023168250A - 偏光異方に基づく測定による解析方法及び解析装置 - Google Patents

偏光異方に基づく測定による解析方法及び解析装置 Download PDF

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考洋 増村
Takahiro Masumura
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Fumio Yamauchi
健吾 金崎
Kengo Kanezaki
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Tomohiro Nakamura
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Ikuo Nakajima
悌互 榊原
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Abstract

【課題】標的物質と発光試薬の反応を短時間で行い、かつ、高感度な測定が可能な偏光異方に基づく測定を行うことを課題とする。
【解決手段】標的物質と反応する発光試薬を用いて、偏光異方に関する値(R)を測定することで、前記標的物質の有無及び前記標的物質の濃度の少なくともいずれか一方を決定する解析方法であって、前記標的物質を含む試料、および前記発光試薬を混合して反応させ、反応液を得る反応工程、前記反応液を希釈して希釈液を得る希釈工程、および前記希釈液の前記Rを測定する測定工程、を有し、さらに、前記発光試薬は発光粒子を含むことを特徴とする解析方法を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、偏光異方に基づく測定による解析方法及び解析装置に関する。
医学、臨床検査の分野において、血液や採取された臓器の一部等から微量な生体成分を高感度で検出または定量することは、病気の原因、有無等を追究するために必要である。
生体成分の検査手法の中でも、免疫分析は広く利用されている。多くの免疫分析においては、B/F(Bound/Free)分離と呼ばれる洗浄工程が必要である。B/F分離を必要としない免疫分析の一つに、抗原抗体反応を利用したラテックス凝集法がある。ラテックス凝集法では、標的物質に特異的に結合する抗体等を担持させたラテックス粒子と、標的物質を含み得る液体とを混合して、ラテックス粒子の凝集の程度を測定する。
ラテックス凝集法では、標的物質がラテックス粒子に結合した標的物質に特異的な抗体に捕捉され、捕捉した標的物質を介して複数のラテックス粒子が架橋し、その結果、ラテックス粒子の凝集が起きる。つまり、生体試料等の液体試料中の標的物質の量を、ラテックス粒子の凝集の程度を評価することで定量できる。この凝集の程度は、液体試料を透過、あるいは散乱する光の量の変化を測定し、評価することで定量できる。
ラテックス凝集法は、簡便かつ迅速に、標的物質である抗原の検出・定量評価ができる一方、生体試料等の液体試料中における抗原の量が少ないと、検出できないという検出限度の課題があった。
標的物質の検出感度を向上させるためには、凝集の程度をより高感度に測定することが求められる。すなわち、液体試料を透過、あるいは散乱する光の量の変化を測定するシステムをより感度の高い発光特性を利用して検出・定量する方法に置き換えることが考えられる。具体的には蛍光偏光解消法を利用した検体検査方法等が提案されている(特許文献1、2)。
特許文献1では、蛍光偏光解消法の装置を臨床に用いるために改良する提案がされている。
蛍光偏光解消法では、一般的な蛍光測定法で必要とされるB/F分離を必要としない。
したがって、蛍光偏光解消法を用いると、ラテックス凝集法と同様に簡便な検体検査が可能である。さらに、蛍光偏光解消法を用いると、測定プロセスが、標的物質と特異的に反応する発光物質を混合するだけで、ラテックス凝集法と同検査システムで測定することが可能であると考えられる。一方、特許文献1では、フルオレセイン等の単分子を発光材料に用いることを提案していて、原理的に薬物や低分子の抗原等にしか適用ができなかった。
特許文献2は、特許文献1の課題であった、薬物や低分子の抗原等にしか蛍光偏光解消法が適用されないという点を解消した。すなわち、特許文献2では、タンパク質等の高分子に蛍光偏光解消法を適用することを目的とし、発光材料としてラテックス粒子に長寿命の発光特性を有する色素を吸着した材料を用いることを提案する。特許文献2では、蛍光偏光解消法の原理から、粒径が大きくなることに伴う液中の物質の回転ブラウン運動の低下と、発光寿命の長さのバランスをとることで、高分子の物質の定量を提案している。しかし、特許文献2では、蛍光物質をラテックス粒子合成後に粒子に担持させるため、粒子表面近傍に吸着した蛍光物質同士の相互作用等により、検査用粒子の偏光異方性を安定して決定することが難しい。さらに特許文献2では、非特異吸着を抑制するために、粒子は表面に生体分子であるウシ血清アルブミン(BSA)を担持するため、粒度分布が広いことや、タンパク質であるBSAによって、ロット間にばらつきが生じる可能性があった。
そのため、標的物質の濃度がμg/mLオーダーでの測定となり、測定感度の上でラテックス法と大きな差がない。
特公平3-52575号公報 特許第2893772号公報
蛍光偏光解消法に基づく測定は、標的物質と発光物質との反応を十分に行うことが重要であるが、標的物質と発光物質とのアフィニティーが弱い場合など、反応に時間がかかる場合がある。蛍光偏光解消法を用いる測定において、なるべく短い時間で、かつ、高い感度で測定を行うことは課題であった。
本発明は一実施形態として、標的物質と反応する発光試薬を用いて、偏光異方に関する値(R)を測定することで、前記標的物質の有無及び前記標的物質の濃度の少なくともいずれか一方を決定する解析方法であって、
前記標的物質を含む試料、および前記発光試薬を混合して反応させ、反応液を得る反応工程、
前記反応液を希釈して希釈液を得る希釈工程、および
前記希釈液の前記Rを測定する測定工程、
を有し、さらに、
前記発光試薬は発光粒子を含むことを特徴とする解析方法を提供する。
また、本発明は一実施形態として、標的物質と反応する発光試薬を用いて、偏光異方に関する値(R)を測定することで、前記標的物質の有無及び前記標的物質の濃度の少なくともいずれか一方を測定する解析装置であって、
前記標的物質を含む試料、および前記発光試薬を混合して反応させ、反応液を得る反応部、
前記反応液を希釈して希釈液を得る希釈部
前記希釈液の前記Rを測定する測定部、および
制御部
を有し、
前記発光試薬は発光粒子を含むことを特徴とする解析装置を提供する。
本発明の実施形態に係る解析方法によると、反応工程においては標的物質を含む試料と発光試薬が濃縮された状態で反応するため、反応時間を短くすることができる。一方、希釈工程によって反応液が希釈されるため、測定工程において、発光試薬の散乱が抑制され、高感度の測定が可能となる。また、測定時の溶液の粘度が高すぎると、偏光異方に関する値は、高くなり、Rの変化を大きく捉えることができないが、この点についても、希釈工程を設けることで、解消される。また、さらには、Rを測定する際の光学系の光路長を短くすることで、多重散乱による影響をさらに抑制できることが見出された。
本発明の実施形態に係る解析方法を説明する概略図である。 本発明の実施形態に係る装置を説明する概略図である。 本発明の実施形態に用いられる発光試薬を説明する概略図である。 CRP抗原濃度を、本発明の実施形態に係る解析方法を用いて定量した結果を説明する図である。 CRP抗原濃度を、本発明の実施形態に係る解析方法を用いて定量した結果を説明する図である。 TSH抗原濃度を、本発明の実施形態に係る解析方法を用いて定量した結果を説明する図である。
以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
本発明は実施形態の一として以下の解析方法を提供する。
標的物質と反応する発光試薬を用いて、偏光異方に関する値(R)を測定することで、前記標的物質の有無及び前記標的物質の濃度の少なくともいずれか一方を決定する解析方法であって、
前記標的物質を含む試料、および前記発光試薬を混合して反応させ、反応液を得る反応工程、
前記反応液を希釈して希釈液を得る希釈工程、および
前記希釈液の前記Rを測定する測定工程、
を有し、さらに、
前記発光試薬は発光粒子を含むことを特徴とする解析方法。
本実施形態に係る解析方法は、標的物質と発光試薬の反応を短時間で行い、かつ、高感度な測定が可能な偏光異方に基づく測定を行う、という課題を解決するものである。標的物質と発光試薬の反応とは、標的物質と、発光試薬に含まれる物質のうち標的物質と結合できる物質(例えば後述のリガンド)とが結合すること、が例示できる。
本願発明者らは、反応時間を短くするためには、特に標的物質の量が少ない場合、標的物質と発光試薬のアフィニティーが低い場合など、標的物質を含む試料と発光試薬を、できるだけ濃縮された状態で反応することが好ましいことに着目した。
ここで、発光試薬が、複数の蛍光物質を含有する発光粒子を含むことで反応後の発光試薬のサイズの変化を大きくできる。その結果、偏光異方に基づく値(R)の変化を大きく捉えることができ、感度の高い測定が可能となる。更に、発光試薬が発光粒子を含み、粒子形状とすることで、発光試薬1粒子あたりに標的物質を捉えることができるリガンドを多く担持することが可能となり、標的物質に対する。反応性を高くすることができる。その結果、感度の高い測定が可能となる。
一方、Rを測定する際、発光試薬の濃度が濃いと、多重散乱が生じ、Rの変化を大きく捉えることができない。すなわち、多重散乱が起きると、標的物質と反応しておらず、凝集していない発光試薬についてもRが高くなり、標的物質との反応前後でのRの変化をとらえにくい。
本願発明者らは、上記反応工程では、標的物質および発光試薬が濃縮されており、その後、希釈工程を経ることで、反応時間が短く、かつ、高感度な偏光異方に基づく解析方法が実現できることを見出した。
すなわち上記本実施形態に係る解析方法によって、偏光異方に基づいて短時間かつ高感度に標的物質の有無及び前記標的物質の濃度の少なくともいずれか一方を決定することのできる、解析方法と解析装置を提供することを目的とする。
(偏光異方に関する値)
本実施形態において、偏光異方に関する値(Rと示すことがある)は以下のように定められる。すなわち、発光物質に偏光を照射して励起して生じた発光について、照射した偏光に対して平行方向の偏光成分の発光強度と、垂直方向の偏光成分の発光強度の関係を示す値である。より具体的には、Rとは、発光物質を、ある偏光で励起したとき、その偏光と振動方向が平行な発光成分の発光強度を求め、これに由来して算出される値である。さらには、第一の偏光で励起したときの、第一の偏光と振動方向が平行な発光成分の発光強度と、第一の偏光で励起したときの、第一の偏光と振動方向が直交する発光成分の発光強度の差と、これらの和との割合を示す値である。ただし、Rは第一の偏光と振動方向が直交する第二の偏光で励起したときの、第二の偏光と振動方向が直交する発光成分の発光強度と第一の偏光と振動方向が直交する第二の偏光で励起したときの、第二の偏光と振動方向が平行な発光成分の発光強度の割合、及びその他定数で補正されてもよい。偏光異方に関する値は、偏光異方性、偏光度等と称呼される値を含む。
より具体的には、例えば、Rは、下記式(1)のrとすることができる。
Figure 2023168250000002
(式(1)中、
VV・・・第一の偏光で励起したときの、第一の偏光と振動方向が平行な発光成分の発光強度
VH・・・第一の偏光で励起したときの、第一の偏光と振動方向が直交する発光成分の発光強度
HV・・・第一の偏光と振動方向が直交する第二の偏光で励起したときの、第二の偏光と振動方向が直交する発光成分の発光強度
HH・・・第一の偏光と振動方向が直交する第二の偏光で励起したときの、第二の偏光と振動方向が平行な発光成分の発光強度
G・・・補正値
である。)
また、Rは、下記式(2)のr’とすることができる。
Figure 2023168250000003
各記号については式(1)に同じである。
Rの測定の条件は、例えば、温度0℃以上50℃の液中で、該液体の粘度は0.5mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。発光試薬がユーロピウム錯体を含む粒子である場合、発光試薬の濃度は0.001mg/ml以上0.1mg/ml以下で測定することが好ましく、また、測定波長(励起波長)が500nm以上700nm以下であることが好ましい。
また、標的物質と混合していない前記発光試薬について測定される前記RであるR0については、好ましくはR0≧0.001を満たす。
(反応工程について)
各工程については、図1を参照することができる。反応工程において、標的物質を含む試料と、発光試薬を混合して、混合液とし、標的物質と発光試薬とを反応させる。混合液は、発光試薬と標的物質を含んだ液であり、さらに、それ以外の添加剤などを含んでもよい。反応は、pHが3.0以上11.0以下の範囲で行われることが好ましい。また、混合温度は20℃以上50℃以下の範囲である。反応時間は、試料中の標的物質の濃度や、標的物質と発光試薬のアフィニティーなどを鑑みて設定されるが、好ましくは5分以上24時間以下であり、さらに好ましくは5分以上1時間以下である。標的物質、発光試薬については、後述する。
(希釈工程について)
希釈工程において反応液を希釈して希釈液を得る。希釈工程は反応工程より後に行われる。希釈工程を設けることで、発光試薬と標的物質を十分に高い濃度で反応することが可能となり、短時間で十分な反応を行うことが可能となる。標的物質とリガンドの反応速度はそれらの結合定数により決まり、結合定数は標的物質とリガンドの拡散定数に依存する。したがって、反応系中の標的物質またはリガンドのいずれかの濃度が低いと反応速度も遅くなる。そして、例えば、抗原抗体反応においては、多くの場合、解離速度定数は結合速度よりも遅く、平衡反応であるが、一度結合したら解離しにくい。そこで、反応を起こす際は、系中における標的物質とリガンドの濃度を高く保ち、測定時には希釈する本実施形態の解析方法が有効である。
本実施例に係る解析方法は、発光試薬が発光粒子を含むため、その効果が強く発揮される。発光試薬が発光粒子を含むことで、その凝集・分散の挙動に対応し、偏光発光の異方性の変化を高感度に検出することができる。すなわち、発光試薬を粒子とすることで、Rの変化は大きく捉えることができ、感度の高い測定が可能となる。一方、Rを測定する際、発光試薬の濃度が濃いと、多重散乱が生じ、Rの変化を大きく捉えることができない。
すなわち、多重散乱が起きると、標的物質と反応しておらず、凝集していない粒子を測定した場合のRであるR0が高くなり、標的物質との反応前後でのRの変化をとらえにくい。しかしながら、反応時に発光試薬の濃度が薄いと、標的物質と発光試薬の反応に時間がかかってしまう。反応後に希釈を行うことで、測定時の多重散乱を抑制しつつ、反応工程においては、発光試薬の濃度を高くできるので、反応時間を短縮することができる。また、測定時の溶液の粘度が高すぎると、R0が高くなるため、Rの変化を大きく捉えることができない。この点についても、希釈工程を設けることで、解消される。
一方、粒子を高濃度で含む液体のRを計測すると、粒子による散乱の影響で発光の偏光成分が解消されて、標的物質が存在しない場合にもRが高くなってしまう。そのため希釈工程により、反応液を適切に希釈して計測することが必要である。また、Rを測定する際の測定物の粘度はRに大きな影響を与えるが、希釈工程で希釈して粘度が一定の値となるとRが安定する。
希釈倍率は、Rの測定が十分に行うことが可能であれば特に指定はないが、2倍以上が好ましく、さらに2倍以上1000倍以下が好ましく、さらには10倍以上100倍以下が好ましい。あるいは、発光試薬が0.05mg/ml以下となるように希釈することが好ましい。また、粘度が25mPa・s以下、より好ましくは、2.5mPa・s以下となるように希釈することが好ましい。
(測定工程について)
測定工程において、反応液のRを測定する。測定の条件は、例えば、温度0~50℃の液中で、該液体の粘度は0.5mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。発光試薬の濃度が0.001mg/ml以上0.1mg/ml以下で測定することが好ましく、また、測定波長(励起波長)が500nm以上700nm以下であることが好ましい。多重散乱の影響を抑制するために、光学系の光路を短くすることができる。例えば一般的に光路は10mmと設定される場合が多いが、これを5mm以下とすることができる。
(標的物質)
標的物質の例として、抗原、抗体、低分子化合物、各種レセプター、酵素、基質、核酸、サイトカイン、ホルモン、神経伝達物質、情報伝達物質、膜タンパク質等を挙げることができる。抗原として、アレルゲン、細菌、ウィルス、細胞、細胞膜構成成分、がんマーカー、各種疾病マーカー、抗体、血液由来物質、食品由来物質、天然物由来物質、あらゆる低分子化合物を挙げられる。核酸として、細菌、ウィルス、細胞等由来のDNA、RNA、cDNA、それらの一部または断片、合成核酸、プライマー、プローブ等を挙げられる。低分子化合物としては、サイトカイン、ホルモン、神経伝達物質、情報伝達物質、膜タンパク質等とそれらのレセプター等を挙げられる。本実施形態に係る解析方法によってこれらの標的物質の有無及び標的物質の濃度の少なくともいずれか一方を決定することができる。標的物質の有無は、標的物質の濃度を所定の閾値と比較して決定できる。例えば、標的物質の濃度が所定の閾値以上である場合に標的物質がある、所定の閾値未満である場合に標的物質がない、のように決定することができる。
(発光試薬)
本実施形態において、発光試薬は、発光を生じる試薬であり、特に、光の照射により励起され発光する試薬であり、ルミノールのように化学反応により生じる発光によるものは除く。発光は、燐光、蛍光を含むが、好ましくは燐光である。より好ましくは、本実施形態において発光試薬は、ユウロピウム錯体を含む。また、より好ましくは本実施形態において、発光試薬は粒子を含む。最も好ましくは、本実施形態において、発光試薬は、ユウロピウム錯体を含む粒子を含む。また、発光試薬は、標的物質に特異的なリガンドを有することが好ましい。リガンドを有することで、本実施形態の発光試薬は、偏光異方に基づく、標的物質の検出・定量が可能となる。本実施形態において、リガンドとは、特定の標的物質に特異的に結合する化合物のことである。
リガンドは特定の物質にアフィニティーを示すものであれば、あらゆるものを用いることができる。リガンドと標的物質あるいは標的物質とリガンドの組み合わせの例として以下を挙げることができる。すなわち、抗原と抗体、低分子化合物とそのレセプター、酵素と基質、相補的核酸同士を挙げることができる。さらに、抗体と、それに特異的な、アレルゲン、細菌、ウィルス、細胞、細胞膜構成成分、がんマーカー、各種疾病マーカー、抗体、血液由来物質、食品由来物質、天然物由来物質、あらゆる低分子化合物等を挙げることができる。さらには、レセプターと、それに特異的な、低分子化合物、サイトカイン、ホルモン、神経伝達物質、情報伝達物質、膜タンパク質等を挙げることができる。さらには、細菌、ウィルス、細胞等由来のDNA、RNA、cDNA、それらの一部または断片、合成核酸、プライマー、プローブ等と、それらに相補性を有する核酸等を挙げることができる。上記以外においても、アフィニティーを有することが知られる組合せであれば、あらゆるものが、標的物質とリガンドの組合せとして用いられる。本実施形態におけるリガンドは典型的には、抗体、抗原、および核酸のいずれかを挙げられる。また、標的物質とリガンドの組合せとして、抗原と抗体の組み合わせは、その効果が下記実施例においても明確にしめされており、特に好ましい例として挙げられる。
図3は本実施形態に用いられる発光試薬の一例を示す概略図である。本実施形態に用いられる発光試薬4には、例えば発光分子としてユウロピウム錯体3を含有する粒子基質1を有する。さらに、発光試薬4は、その表面を被覆する親水層2を有してもよい。図3中の粒子の直径は25nm以上500nm以下である。
粒子の直径は動的光散乱法により求めることができる。溶液中に分散している粒子にレーザー光を照射し、その散乱光を光子検出器で観測すると、粒子はブラウン運動によりその位置を絶えず移動しているため、散乱光の干渉による強度分布は絶えず揺らいでいる。
動的光散乱法は、このブラウン運動の様子を散乱光強度の揺らぎとして観測する測定法である。時間に対する散乱光の揺らぎを自己相関関数で表し、並進拡散係数を決定する。決定した拡散係数からストークス径を求めて、溶液中に分散している粒子サイズを導き出せる。
発光試薬は、粒子の均一性と単分散性を保つという観点からは、粒子の表面に何も付与しないことが望ましい。しかし、本実施形態に係る解析方法に用いるためには、目的以外の物質が粒子に非特異吸着することを防ぐ必要があるため、発光試薬の表面を親水性に保つための親水層を有することが好ましい。
親水性を保つ手法として、粒子の表面にBSAを担持する方法が汎用されるが、この方法はロットばらつきを生じる場合がある。そこで、発光試薬は、親水性のポリマーからなる親水層を含むことが好ましい。発光試薬の濃度は、混合液中、好ましくは0.000001質量%以上1質量%以下、より好ましくは0.00001質量以上0.001質量%以下である。
本実施形態に用いられる発光試薬は、ユウロピウム錯体を含むことで、長寿命で発光することができる。本実施形態に用いられる発光試薬は、好ましくは、粒子の直径の平均である平均粒子径が25nm以上500nm以下であり、より好ましくは、平均粒子径は50nm以上300nm以下である。平均粒子径が500nmを超えると、凝集前のR(R0)が高くなり、凝集反応後のRとの差が小さくなってしまう。また、平均粒子径が25nm未満では、凝集前後の大きさの変化が小さくなり、発光の偏光解消ではRの変化を捉えることが難しくなる。
発光試薬の粒度分布を小さくすることと、発光分子としてユウロピウム錯体を導入することで、粒子の液中での分散状態にわずかな変化が起きたとしても、偏光発光特性の変化を捉えることができる。具体的には、溶液中の標的物質の濃度が1mL当たりナノグラム~ピコグラム程度、例えば1ピコグラム以上100ピコグラム以下であったとしても、標的物質を介して発光試薬が凝集したときに、発光試薬の回転ブラウン運動の変化を偏光異方の変化として捉えることができる。
偏光発光とは、遷移モーメント(遷移双極子モーメント)に異方性がある発光材料において、その遷移モーメントに沿った偏光を励起光とすると、発光も同様に遷移モーメントに沿った偏光となることをいう。ユウロピウム錯体は、配位子から中心金属イオンへのエネルギー移動に基づいた蛍光発光を示すため、遷移モーメントは複雑になるが、最低励起状態5D0から7F2への電子遷移に由来する610nm付近における赤色発光は偏光発光する。
偏光異方の原理は偏光発光が起きている時間内における発光材料の回転運動による遷移モーメントのズレを計測するものである。発光材料の回転運動は式(3)で表せる。
Q=3Vη/kT・・・(3)
ここで、
Q:材料の回転緩和時間
V:材料の体積
η:溶媒の粘度
k:ボルツマン定数
T:絶対温度
である。
材料の回転緩和時間は、cosθ=1/eとなる角度θ(68.5°)を分子が回転するのに要する時間である。
式(3)より、発光材料の回転緩和時間は材料の体積、つまり発光材料が粒子形状である場合、粒径の3乗に比例することがわかる。一方、発光材料の発光寿命と偏光異方に関する値である偏光度の関係は式(4)で表せる。
p0/p=1+A(τ/Q)・・・(4)
ここで、
p0:材料が停止しているとき(Q=∞)の偏光度
p:偏光度
A:定数
τ:材料の発光寿命
Q:回転緩和時間
である。
式(3)および式(4)より、偏光度には発光材料の発光寿命と回転緩和時間、すなわち発光材料の体積(粒径)が影響し、すなわち、発光材料の粒径と発光寿命のバランスが影響することが分かる。
式(4)で示した発光材料の偏光度を実験から求める場合、発光材料に偏光を入射し、励起光の進行方向および振動方向と90度方向に発光を検出すればよい。この時、検出光を入射光の偏光と平行と垂直方向の偏光成分に分けて検出し、例えば式(5)に示す偏光異方性を偏光異方に関する値とすればよい。
r(t)=(I∥(t)―GI⊥(t))/(I∥(t)+2GI⊥(t))・・・(5)
ここで、
r(t):時間tにおける偏光異方性
I∥(t):時間tにおける励起光と平行な発光成分の発光強度
I⊥(t):時間tにおける励起光と垂直な発光成分の発光強度
G:補正値、サンプル測定に使用した励起光と振動方向が90度異なる励起光で計測したI⊥/I∥の比
である。
つまり、適切な粒子サイズと発光寿命の範囲で有れば、標的物質との反応等による発光材料のサイズの変化を鋭敏に偏光異方性の変化として読み取ることが可能となる。すなわち、凝集していない発光材料のr(t)は低く、凝集した発光材料のr(t)は高く観察される。これが偏光異方の原理である。
なお、偏光異方に関する値は、Gおよび2Gで補正をしてもよいし、あるいは、Gおよび2Gを外した値としてもよい。
(粒子基質1)
本実施形態に用いられる発光試薬4および粒子基質1の形状は限定されるものではない。粒子基質1は、ユウロピウム錯体を安定に取り込める材料であれば特に指定はないが、スチレンユニットと有機シランユニットとを含む重合体であることが好ましく、特にスチレンを主成分にラジカル重合性有機シランを含む組成物を重合した重合体等が好適に用いられる。組成物中、スチレンを主成分に含むことで、後述する乳化重合法で非常に粒度分布が揃った粒子を作製することが可能であり、また、有機シランユニットを含む重合体とすることで、水溶媒中で重合体にシラノール基(Si-OH)が生じ、粒子基質表面で互いにシロキサン結合(Si-O-Si)を形成し、これを介して後述する親水層やリガンドを付与することができる。本実施形態に係る粒子は、粒子基質の外側にリガンドを結合できるリガンド結合官能基を有していることが好ましい。
(親水層2)
親水層2は、粒子基質1の外側に、親水性ポリマーまたは親水性分子を含み構成されることができる。親水性ポリマーまたは親水性分子とは、親水基を含むポリマーあるいは分子であり、親水基としては、具体的には水酸基、エーテル、ピロリドン、ベタイン構造等を有する分子、ポリマーを挙げられる。親水性ポリマーとして、具体的にはポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、スルホベタインのポリマー、ホスホベタインのポリマー、グリシジル基を開環し水酸基を分子の末端に修飾したポリグリシジルメタクリル酸等を挙げられ、これらを親水層2の主成分とすることができる。あるいは、親水基を有する単分子を粒子基質1の表面にシランカップリング剤等を用いて直接付与することで親水層2としてもよい。親水層2の厚さに限定はないが、親水性を発揮できる厚さ以上に厚くする必要はない。親水層2が厚すぎるとヒドロゲルの様になり、溶媒中のイオンの影響で水和して親水層の厚さが不安定となる可能性がある。親水層2の厚さは1nm以上15nm以下が好適である。
(ユウロピウム錯体3)
本実施形態に用いられる発光試薬は発光色素としてユウロピウム錯体3を含むことができる。ユウロピウム錯体3は、発光の波長や強度が周囲の影響を受けにくく、発光が長寿命であるという特徴を有する。ユウロピウム錯体3はユウロピウム元素と配位子より構成される。発光寿命や可視の発光波長領域等を考慮し、発光色素は、ユウロピウム錯体が好ましい。ユウロピウムは一般的に0.1ms以上1.0ms以下の発光寿命を有する。この発光寿命と、式(1)より得られる回転緩和時間を適度に調整する必要がある。水分散液中のユウロピウムの場合、発光試薬の直径が50nm以上300nm以下だと、凝集前後においてRが大きく変化する。
ユウロピウム錯体3を構成する配位子のうち、少なくとも一つは光集光機能を有した配位子である。光集光機能とは、特定の波長で励起し、エネルギー移動によって錯体の中心金属を励起する作用のことである。また、ユウロピウム錯体3を構成する配位子にβ-ジケトン等の配位子が存在し、水分子の配位を防いでいることが好ましい。ユウロピウムイオンに配位しているβ-ジケトン等の配位子が、溶媒分子等へのエネルギーの移動による失活過程を抑制し、強い蛍光発光が得られる。
ユウロピウム錯体3は、多核錯体であっても構わない。
また、ユウロピウム錯体の具体例として、[トリス(2-テノイルトリフルオロアセトン)ビス(トリフェニルホスフィンオキシド)ユウロピウム(III)]([Tris(2-thenoyltrifluoroacetone)(Bis(triphenylphosphineoxide))europium(III)])、[トリス(2-テノイルトリフルオロアセトン)(トリフェニルホスフィンオキシド)(ジベンジルスルホオキシド)ユウロピウム(III)]([Tris(2-thenoyltrifluoroacetone)(triphenylphosphineoxide)(dibenzylsulfoxide)europium(III)])、[トリス(2-テノイルトリフルオロアセトン)(フェナントロリン)ユウロピウム(III)]([Tris(2-thenoyltrifluoroacetone)(phenanthroline)europium(III)])が挙げられる。
媒体中でユウロピウム錯体3のブラウン回転運動が停止しているとみなせる状態の時、式(3)で表されるRが0.08以上あることが望ましい。ブラウン回転運動が停止しているとみなせる状態とは、粒子の回転緩和時間がユウロピウム錯体3の発光寿命よりも十分に長い状態のことを示す。
ユウロピウム錯体3は粒子基質1に多く取り込まれた方が一粒子当たりの発光強度が強くなるので好ましい。一方で、粒子基質1中でユウロピウム錯体3が凝集すると、配位子同士の相互作用によりユウロピウム錯体3の励起効率等に影響を及し、再現性を保ってRの測定することが難しくなる。粒子基質1中で非凝集的な発光挙動をユウロピウム錯体3が示しているかどうかは、試料の励起スペクトルから判断することができる。
強い発光を有する粒子は、単に高感度計測を可能にするだけではなく、粒子径を小さくしても発光を保つので、生化学的な反応速度を早くすることを可能にする。粒径が小さいほうが液中のブラウン運動の拡散係数が大きくなるため、より短時間で反応を検出することが可能となる。
本実施形態に係る解析方法に、このような粒子を分散した液体を用いると、高感度に、粒子の凝集・分散の挙動に対応して偏光発光の異方性の変化を検出することができる。このような粒子を水溶媒に分散した分散液は、偏光異方を用いた高感度な検査試薬として利用することができる。水溶媒には、緩衝液を用いてもよい。また、粒子を分散した液体の安定性を増すために、水溶媒中に、界面活性剤、防腐剤や増感剤等を添加してもよい。
(発光試薬の製造方法)
次に、本実施形態に用いられる発光試薬の製造方法の一例を説明する。
発光試薬の製造方法は、少なくともスチレンおよびラジカル重合性有機シランを含むラジカル重合性モノマー、ラジカル重合開始剤、偏光発光性ユウロピウム錯体、および、親水性ポリマーを水系媒体と混合して乳濁液を調製する工程(第一の工程)を有する。
さらに、発光試薬の製造方法は、乳濁液を加熱し、ラジカル重合性モノマーを重合する工程(第二の工程)を有する。
発光試薬の製造方法は、後述するリガンド結合官能基を発光試薬表面に付与する工程(第三の工程)を有することができる。ここで、リガンド結合官能基とは、リガンドを結合できる官能基であって、具体的には、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、エポキシ基、マレイミド基、スクシンイミジル基、または、アルコキシシリル基(シリコンアルコキシド構造)のいずれかを用いることができる。
(ラジカル重合性モノマー)
発光試薬の製造は、ラジカル重合性モノマーを重合して行い、ラジカル重合性モノマーは少なくとも、スチレンおよびラジカル重合性有機シランを含む。ラジカル重合性モノマーはさらに、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマーからなる群より選択されるモノマーを含むことができる。モノマーとして、例えば、ブタジエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリロニトリル、アクリル酸メチル、これらの混合物等を挙げることができる。すなわち、これらのモノマーのうち、1種であるいは複数種を、スチレンおよびラジカル重合性有機シランに加えて使用できる。また一つの分子内に二重結合を2つ以上有するモノマー、例えばジビニルベンゼンを架橋剤として用いてもよい。
ラジカル重合性モノマーが、ラジカル重合性有機シランを含むことで、粒子基質1には、シロキサン結合が付与される。ラジカル重合性有機シランの例として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、あるいはこれらの組合せを挙げることができる。ラジカル重合性有機シランを用いることで、粒子基質1内に無機酸化物の骨格が形成され、発光試薬の物理、化学的安定性を向上する役割がある。さらに、ラジカル重合性有機シランを用いることで、粒子基質1と、親水層2やリガンド結合官能基との親和性が高まる。
さらに、ラジカル重合性モノマーが、ラジカル重合性有機シランを含むことで、粒子基質1の表面にシラノール基が付与される。シラノール基と親水性ポリマー、例えばPVPは水素結合を形成する。これによって、PVP等の親水性ポリマーはより強固に粒子基質1の表面に吸着する。
(ラジカル重合開始剤)
ラジカル重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物等から広く使用することができる。具体的には、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸ナトリウム(NPS)、過硫酸カリウム(KPS)等を挙げることができる。
(親水性ポリマー)
発光試薬は親水層として、親水性ポリマーを含むことができる。親水性ポリマーは、非特異吸着を抑制することが好ましい。親水性ポリマーの例として、エーテル、ベタイン、ピロリドン環等を有するユニットを含む親水性ポリマーを挙げられる。親水層は、合成した発光試薬に含まれ、主に粒子基質の外側の粒子表面に存在することが好ましい。本明細書中において、ピロリドン環を有するポリマーを、「PVP」と略す場合がある。発光試薬の合成時にPVPを投入することにより、発光試薬に非特異吸着抑制能と、リガンド結合能を一度に付与することが可能となる。合成時に投入されるPVPは、ラジカル重合性モノマーよりも親水性が高いので、合成時に溶媒と重合中の粒子基質との界面に存在する。粒子基質は、重合時にPVPを一部巻き込むことや、ピロリドン環とスチレン(ラジカル重合性モノマー)との相互作用等の物理・化学吸着によって、その外側にPVPを吸着する。
PVPの分子量は10000以上100000以下が好ましく、40000以上70000以下がより好適である。分子量が10000未満だと、発光試薬表面の親水性が弱く、非特異吸着を起こし易くなる。分子量が100000より大きいと、親水層が厚くなりすぎて、ゲル化して扱いにくくなる。
PVPに加えて、粒子基質合成時に保護コロイドとして親水性ポリマーを添加しても構わない。
また、発光試薬は、好ましくはA2-A1≦0.1を満たす。
A1、A2は次のように定義される。すなわち、15倍希釈したヒト血清16μLを混合した60μLの緩衝液に、0.1重量%の発光試薬の分散液30μLを添加した混合物の、添加の直後の吸光度をA1とし、前記添加後37℃にて5分間放置した後の吸光度をA2とする。吸光度は光路10mm、波長572nmで測定される。
A2-A1が0.1以下となる粒子は、血清中の夾雑物の非特異吸着が小さいため、好ましい。
(水系媒体)
上述の発光試薬の製造方法に用いられる水系媒体(水溶液)は、媒体中に含まれる水が80重量%以上100重量%以下であることが好ましい。水系溶媒は、水や、水に可溶な有機溶媒が好ましく、例としてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトンを水に混合した溶液を挙げられる。水以外の有機溶媒を20重量%より多く含有させると、粒子製造時に重合性モノマーの溶解が生じるおそれがある。
また上記水系媒体は、pHが6以上9以下に予め調整されていることが好ましい。pHが6未満または9より大きい値であると、ラジカル重合性有機シランのアルコキシド基やシラノール基が重合体の形成前に縮重合や他の官能基と反応してしまい、得られる粒子が凝集するおそれがある。本実施形態においては、重合前にアルコキシドを意図的に縮重合することは行わない。
上記pHの調整は、pH緩衝剤を用いて調整することが好ましいが、酸、塩基で調整しても構わない。
そのほかに、界面活性剤、消泡剤、塩、増粘剤等を水系媒体に対して10%以下の割合で添加して用いても構わない。
発光試薬の製造の際には、はじめにpHが6乃至9に調整された水系媒体にPVPを溶解することが好ましい。PVPの含有量は水系媒体に対して0.01重量%以上10重量%以下が好ましく、より好ましくは、0.03重量%から5重量%である。0.01重量%未満だと、粒子基質への吸着量が少なくその効果が発現されない。また10重量%より多いと水系媒体の粘度が上昇し、撹拌が十分に行えない可能性がある。
続いて、スチレン(A)およびラジカル重合性有機シラン(B)を含むラジカル重合性モノマーを上記水系媒体中に添加し乳濁液とする。スチレン(A)とラジカル重合性有機シラン(B)の重量比は、6:4から100:1である。さらに、調製した乳濁液にユウロピウム錯体を混合する。この時、ユウロピウム錯体の溶解度が低い場合は非水溶性の有機溶媒を加えてもよい。ユウロピウム錯体とラジカル重合性モノマーの重量比は1:1000から1:10である。
スチレン(A)とラジカル重合性有機シラン(B)の重量比が6:4より小さいと、粒子全体の比重が上がり、粒子の沈降が顕著となるおそれがある。また、PVPと発光粒子の密着性を上げるためには、スチレン(A)とラジカル重合性有機シラン(B)の重量比を100:1以上とすることが望ましい。
水系媒体の重量とラジカル重合性モノマーの合計量の重量比は、5:5から9.5:0.5が好ましい。水系媒体の重量とラジカル重合性モノマーの合計量の重量比が5:5より小さいと生成される粒子の凝集が顕著となるおそれがある。また、水系媒体の重量とラジカル重合性モノマーの合計量の重量比が9.5:0.5より大きいと、粒子の生成には問題ないが、生成量が少なくなるおそれがある。
ラジカル重合開始剤は、水、緩衝剤等に溶解させて用いる。スチレン(A)、ラジカル重合性有機シラン(B)の合計の重量に対するラジカル重合開始剤は、乳濁液において0.5質量%から10質量%の間で用いることができる。
上記乳濁液を加熱する工程は、乳濁液全体が均一に加熱されればよい。加熱温度は、50℃から80℃、加熱時間は2時間から24時間の間で任意に設定できる。乳濁液を加熱することにより、ラジカル重合性モノマーが重合される。
発光試薬は、リガンド結合官能基を表面に有することができる。リガンド結合官能基は、抗体、抗原、酵素等を結合できる官能基であれば特に限定はないが、例えば、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、エポキシ基、マレイミド基、スクシンイミジル基、シリコンアルコキシド基等であること、あるいはこれらの官能基を含むことができる。例えば、リガンド結合官能基を有するシランカップリング剤と、合成した粒子を混合することで、官能基を粒子表面に付与することが可能である。具体的には、カルボキシ基を有するシランカップリング剤の水溶液を用意して、合成した粒子分散液に混合することで、粒子表面にカルボキシ基を付与することができる。この時、反応溶液にTween20等の分散剤を添加してもよい。反応温度は、0℃から80℃、反応時間は1時間から24時間の間で任意に設定できる。急激なシランカップリング剤の縮合反応を抑えるために、25℃程度の室温からそれ以下の温度で、3時間から14時間程度の反応時間で設定することが好適である。リガンド結合官能基によっては酸、またはアルカリの触媒を添加して、粒子表面への反応を促進させることもできる。
発光試薬に各種の抗体等のリガンドを結合させることで、検体検査用粒子として利用することができる。親水層2に存在する官能基を利用して目的の抗体等を結合させるための最適な手法を選択すればよい。
(リガンドの導入)
リガンド結合官能基とリガンドとを化学結合する化学反応は、本発明の目的を達成可能な範囲において、従来公知の方法を適用することができる。また、リガンドをアミド結合させる場合は、1-[3-(ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド]等の触媒を適宜用いることができる。
本実施形態に用いられる発光試薬は、臨床検査、生化学研究等の領域において広く活用されている免疫ラテックス凝集測定法に好ましく適用できる。
(解析装置)
本発明は実施形態の一として以下の解析装置を提供する。
標的物質と反応する発光試薬を用いて、偏光異方に関する値(R)を測定することで、前記標的物質の有無及び前記標的物質の濃度の少なくともいずれか一方を測定する解析装置であって、
前記標的物質を含む試料、および前記発光試薬を混合して反応させ、反応液を得る反応部、
前記反応液を希釈して希釈液を得る希釈部
前記希釈液の前記Rを測定する測定部、および
制御部
を有し、
前記発光試薬は発光分子を有する粒子であることを特徴とする解析装置。
本実施形態に係る解析装置については図2に概略が示される。
反応部は、反応工程を行う部である。希釈部は希釈工程を行う部である。測定部は測定工程を行う部である。制御部は反応部、希釈部、測定部を制御する。制御部は、コンピュータの機能を有する。例えば、制御部は、デスクトップPC(Personal Computer)、ラップトップPC、タブレットPC、スマートフォン等と一体に構成されていてもよい。制御部は、演算および記憶を行うコンピュータとしての機能を実現するため、CPU、RAM、ROMおよびHDDを備え、また、通信I/F(インターフェース)、表示装置、および入力装置を備えることができる。
(試薬)
本実施形態に係る解析方法は、検体検査や、体外診断に用いることができる。これらに用いるための試薬は、本実施形態に用いられる発光試薬と、発光試薬を分散させる分散媒とを有することができる。試薬中に含有される発光試薬の量は、0.000001質量%以上20質量%以下が好ましく、0.0001質量%以上1質量%以下がより好ましい。試薬は、本発明の目的を達成可能な範囲において、発光試薬の他に、添加剤やブロッキング剤等の第三物質を含んでも良い。添加剤やブロッキング剤等の第三物質は2種類以上を組み合わせて含んでも良い。本実施形態において用いる分散媒の例としては、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、グッド緩衝液、トリス緩衝液、アンモニア緩衝液等の各種緩衝液が例示されるが、本実施形態における試薬に含まれる分散媒はこれらに限定されない。
試薬を、検体中の抗原または抗体の検出に用いる場合は、リガンドは、抗体または抗原を用いることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
(1)発光粒子の作製
pH7のMES(2-モルホリノエタンスルホン酸)緩衝液(キシダ化学社製)にポリビニルピロリドン(PVP-K30:東京化成工業社製)を溶解して溶媒Aを調製した。
ユウロピウム錯体である[トリス(2-テノイルトリフルオロアセトン)ビス(トリフェニルホスフィンオキシド)ユウロピウム(III)]([Tris(2-thenoyltrifluoroacetone)(Bis(triphenylphosphineoxide))europium(III)])(セントラルテクノ株式会社製、以下「Eu(TTA)(TPPO)」と略)、スチレンモノマー(キシダ化学社製)、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製、以下「MPS」と略す。)を混合して反応液Bを調製した。溶媒Aを含む4つ口フラスコ中に、反応液Bを添加してメカニカルスターラーを300rpmに設定して攪拌を行った。窒素フロー条件下で15分攪拌後、用意していた油浴の温度を70℃に設定してさらに15分窒素フローを行った。混合液を加熱攪拌後、過硫酸カリウム(以下、「KPS」と略す。)(アルドリッチ社製)を溶解した水溶液を反応溶液内に加えて20時間乳化重合を行った。重合反応後、得られた懸濁液を分画分子量100Kの限外ろ過膜を用いて約4Lのイオン交換水で限外ろ過を行い生成物の洗浄を行い発光粒子の分散液を得た。
乳化重合により得られた発光粒子の分散液を分取してTween20(キシダ化学社製)が1質量%溶解している水溶液に添加した。10分間攪拌後、シランカップリング剤、X12-1135(信越化学工業社製)を添加して一晩攪拌した。攪拌後、分散液を遠心分離し、上清を除去して沈殿物を純水で再分散した。遠心分離と再分散の作業を3回以上行い、生成物を洗浄した。洗浄後の沈殿物を純水に再分散させた。以上により粒子1~8にはリガンド結合官能基が導入された。仕込んだ粒子、純水、X12-1135の質量比は、1:300:2とした。
(抗CRP抗体修飾発光試薬の作製)
合成した発光粒子に相当する1.2wt%の粒子分散液を0.25mL分取し、1.6mLのpH6.0のMES緩衝液で溶媒を置換した。粒子MES緩衝液に、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミドおよびN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウムを0.5wt%添加し、25℃、で1時間反応させた。反応後、分散液をpH5.0のMES緩衝液で洗浄し、抗CRP抗体を100μg/mL添加し、25℃で2時間抗CRP抗体を粒子に結合させた。結合後、粒子をpH8のTris緩衝液で洗浄した。反応後、粒子をリン酸緩衝液で洗浄し、0.3wt%濃度の抗CRP抗体修飾発光試薬(アフィニティー粒子ともいう)を得た。
(抗TSH抗体修飾発光試薬の作製)
合成した発光粒子に相当する1.2wt%の粒子分散液を0.25mL分取し、1.6mLのpH6.0のMES緩衝液で溶媒を置換した。粒子MES緩衝液に、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミドおよびN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウムを0.5wt%添加し、25℃、で1時間反応させた。反応後、分散液をpH5.0のMES緩衝液で洗浄し、抗TSH抗体を100μg/mL添加し、25℃で2時間抗TSH抗体を粒子に結合させた。結合後、粒子をpH8のTris緩衝液で洗浄した。反応後、粒子をリン酸緩衝液で洗浄し、1.0wt%濃度の抗TSH抗体修飾発光試薬(アフィニティー粒子ともいう)を得た。使用した抗TSH抗体はモノクロナール抗体であり、測定物であるTSH抗原に少なくとも2個以上粒子を反応させるため、2種類の抗TSH抗体を発光粒子に修飾した。
粒子に抗体が結合していることは、抗体を加えた緩衝液中の抗体濃度の減少量をBCAアッセイで測定することで確認した。
(発光試薬液の調製)
得られた抗CRP抗体修飾発光試薬を、0.1mg/mLの濃度になる様にpH7.4のリン酸(PBS)緩衝液で希釈して発光試薬液を調製した。また、得られた抗TSH抗体修飾発光試薬を、1.0mg/mLの濃度になる様にpH7.4のリン酸(PBS)緩衝液で希釈して発光試薬液を調製した。
(希釈用添加液の調製)
4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)緩衝液とPBS緩衝液を体積比で1:1の割合で混合し、希釈用添加液を調製した。
(実施例1)
抗CRP抗体修飾発光試薬液を75μL、CRP抗原液を15μL混合し、37℃で10分間静置した。
そこに37℃の希釈用添加液を1335μL添加してRを測定した。CRP抗原の濃度は200pMで検討した。測定は後述の装置1を用いて行った。
(実施例2)
抗CRP抗体修飾発光試薬液を30μL、CRP抗原液を30μL混合し、37℃で10分間静置した。
この液を8μL分取し、37℃の希釈用添加液392μLと混合してRを測定した。CRP抗原の濃度は0pM~10.24pMの範囲で検討した。測定は後述の装置2を用いて行った。
(実施例3)
抗TSH抗体修飾発光試薬液を70μL、TSH抗原液を15μL混合し、37℃で10分間静置した。
そこに37℃の希釈用添加液を1335μL添加してRを測定した。TSH抗原の濃度は1600pMで検討した。測定は後述の装置1を用いて行った。
(比較例1)
希釈用添加液1335μLに、CRP抗原液を15μL混合し、37℃で加温した。そこに抗CRP抗体修飾発光試薬液を75μL添加してRを測定した。CRP抗原の濃度は200pMで検討した。測定は後述の装置1を用いて行った。
(比較例2)
希釈用添加液392μLに、CRP抗原液を4μL混合し、37℃で加温した。そこに抗CRP抗体修飾発光試薬液を4μL添加してRを測定した。CRP抗原の濃度は0pM~10.24pMの範囲で検討した。測定は後述の装置2を用いて行った。
(比較例3)
希釈用添加液1335μLに、TSH抗原液を15μL混合し、37℃で加温した。そこに抗TSH抗体修飾発光試薬液を70μL添加してRを測定した。TSH抗原の濃度は1600pMで検討した。測定は後述の装置1を用いて行った。
(評価)
得られた発光試薬の形状は、電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー製S5500)を用いて評価した。
発光試薬の平均粒子径は、動的光散乱(マルバーン製ゼータサイザーナノS)を用いて評価した。
発光試薬を分散した懸濁液の濃度は、重量分析装置(リガク製サーモプラスTG8120)を用いて評価した。
Rの測定は装置1と装置2を用いた。装置1は以下の様な構成の装置である。
励起光340nmのLED光源を用意し、偏光フィルタ(シグマ光機社製、NSPFU-30C)およびショートパスフィルタ(エドモンド・オプティクス社製、84-706)を光路に差し込み、1cmの石英角セルに照射できる光学系をセットした。入射光と90°の方向に偏光フィルタ(ソーラボ社製、PIVISC050)およびバンドパスフィルタ(ソーラボ社製、FB610-10)をセットした。発光はIVVとIVHの2方向を同時に測定する為、入射光と90°方向で偏光子の組み方を変えた2つのセットを用意した。偏光の検出には、オーシャンオプティクス社製のQEProを用いて分光測定を行った。サンプルホルダーには温調をセットして37℃で計測できるようにした。偏光異方性の測定は、LED光源を12mWの出力に固定し、積算時間を3秒として行った。測定間隔は15秒とした。得た偏光発光の蛍光スペクトルより、波長600nmから630nmの範囲における発光強度を式(1)に当てはめてRを求めた。
装置2は以下の様な構成の装置である。
励起光340nmのLED光源を用意し、偏光フィルタ(シグマ光機社製、NSPFU-30C)およびショートパスフィルタ(エドモンド・オプティクス社製、84-706)を光路に差し込み、光路長5mmの石英セルに照射できる光学系をセットした。サンプルより発生した偏光発光を、サンプルを挟んで励起光と直線状にある光路に励起光カットフィルタ(エドモンド・オプティクス社製、33-910)、偏光ビームスプリッタ(エドモンド・オプティクス社製、47-127および、偏光子シグマ光機社製、SPF―30C―32)、の順にセットして偏光を2方向に分光した。分光した偏光発光(2方向)を、アバランジェフォトダイオード(APD、浜松ホトニクス社製、C15522-3010SA)を用いて検出した。サンプルホルダーは温調をセットして37℃で計測できるようにした。偏光異方性の測定は、LED光源を60mWの出力に固定し、積算時間を8ミリ秒として行った。測定間隔は30秒とした。得た偏光発光の信号をオシロスコープで計測し、式(1)に当てはめてRを求めた。
発光試薬の非特異凝集抑制評価は以下の通りに行った。
発光試薬分散液(3mg/mL)に、緩衝液で15倍に希釈したヒト血清溶液60μlを添加し、37℃で5分保温した。保温の前後で527nmの吸光度を測定し、保温前後での吸光度の変化量を3回測定した。表2に3回の平均値を示す。吸光度×10000の値の変化量が1000未満を非特異凝集が抑制されているとし、1000以上を非特異凝集が起こっていると評価した。
(性能評価)
合成した発光試薬の粒径は約100nmであり、340nmの励起光で強い赤色の発光を示した。
非特異凝集抑制評価の結果、吸光度の変化が規定の数値以下であり(吸光度×10000の値の変化量が1000以下)、非特異吸着を抑制することができる粒子であることを確認した。
実施例1および比較例1の結果を図4に示す。図4は、横軸に反応時間、縦軸にR(偏光異方性r)をプロットした図である。図4中の丸でプロットした実施例1は測定直後のrが0.105を超えていてその後緩やかにrが上昇している。一方、図4中のバツ印でプロットした比較例1は測定直後のrが0.065であり、2000秒経過後に実施例1と同じ程度のrに達することがわかった。実施例1における反応時間の600秒を、2000秒から差し引いても実施例1の方がCRPの抗原抗体反応が早く進行しRが短時間で高い値を示すことが確認できた。
実施例2及び比較例2の結果を図5に示す。図5は、横軸に測定したCRP抗原の濃度、縦軸に反応時間で20分後の偏光異方性、rをプロットしたグラフである。反応時間とは、発光試薬とCRP抗原を混合した時間をゼロとして計測した時間のことを意味する。
図5中の丸でプロットした実施例2は、CRP濃度の増加と共に観測されたrも上昇していることが確認できる。一方、図5中のバツ印でプロットした比較例2は、僅かにrが上昇しているものの、CRP濃度によるrの差が判別困難な傾きとなった。実施例2および比較例2は、実施例1および比較例1と比べて希釈倍率が10倍高く、CRP測定濃度も低濃度となっている。そのため測定方法による感度差も大きくなり、より明確な差がわかる結果となった。
実施例2および比較例2の検討結果を表1に示す。
表1より、実施例2では、偏光異方性の変化が、CRP抗原濃度が10.24pMの時に0.095まで上昇しているが、比較例2では0.045に留まった。また、結果より検量線が描けて濃度計測が可能な測定下限値が実施例2では0.16pMまで確認することができたが、比較例2では測定範囲では10pM程度までに留まった。
実施例2と比較例2は、使用した試薬の種類、量、測定時間は同じであるが、適切な希釈工程の有無で測定感度に大きな差が出ることが明らかとなった。
Figure 2023168250000004
実施例3および比較例3の結果を図6に示す。図6は横軸に測定時間(すなわち試薬に含まれる抗体と、抗原との反応時間)、縦軸にR(偏光異方性r)をプロットした図であり、図6における〇は実施例3の結果、×は比較例3の結果を示す。図6中の〇のプロットは測定直後のrが0.106を超えていてその後緩やかにrが上昇している。一方、図6中の×のプロットは測定直後のrが0.075であり、600秒経過後に実施例3と同じ程度のrに達することがわかった。
以上のことから、本実施例に係る測定方法は、標的物質であるCRP抗原を、高感度かつ短時間で測定できる方法であることが明らかとなった。
よって、本実施例に係る測定方法を用いると、標的物質を短時間かつ高感度で計測することが可能となる。本実施例に係る測定方法を用いると、短時間で大量に検査を行う検体検査のような応用に対して、高感度で計測をおこなう装置を実現することが可能であると考えられる。
本実施形態の開示は以下の方法および構成を含む。
(方法1)
標的物質と反応する発光試薬を用いて、偏光異方に関する値(R)を測定することで、前記標的物質の有無及び前記標的物質の濃度の少なくともいずれか一方を決定する解析方法であって、
前記標的物質を含む試料、および前記発光試薬を混合して反応させ、反応液を得る反応工程、
前記反応液を希釈して希釈液を得る希釈工程、および
前記希釈液の前記Rを測定する測定工程、
を有し、さらに、
前記発光試薬は発光粒子を含むことを特徴とする解析方法。
(方法2)
前記発光粒子がユウロピウム錯体を含むことを特徴とする方法1に記載の解析方法。
(方法3)
前記発光試薬が前記標的物質に結合するリガンドを含むことを特徴とする方法1または方法2に記載の解析方法。
(方法4)
前記リガンドが抗体であり、前記標的物質が抗原であることを特徴とする方法3に記載の解析方法。
(方法5)
前記標的物質と反応していない前記発光試薬について測定される前記RをR0としたとき、R0≧0.001であることを特徴とする方法1から方法4のいずれかに記載の解析方法。
(方法6)
前記希釈工程で、前記反応液を2倍以上に希釈することを特徴とする方法1から方法5のいずれかに記載の解析方法。
(方法7)
前記希釈工程で、前記発光試薬が0.05mg/ml以下となるように希釈することを特徴とする方法1から方法6のいずれかに記載の解析方法。
(方法8)
光路長が5mm以下である光学系で偏光異方に関する値(R)を測定することを特徴とする方法1から方法7のいずれかに記載の解析方法。
(方法9)
前記Rが下記式(1)のrで定められることを特徴とする方法1から方法8のいずれかに記載の解析方法。
Figure 2023168250000005
(式(1)中、
VV・・・第一の偏光で励起したときの、第一の偏光と振動方向が平行な発光成分の発光強度
VH・・・第一の偏光で励起したときの、第一の偏光と振動方向が直交する発光成分の発光強度
HV・・・第一の偏光と振動方向が直交する第二の偏光で励起したときの、第二の偏光と振動方向が直交する発光成分の発光強度
HH・・・第一の偏光と振動方向が直交する第二の偏光で励起したときの、第二の偏光と振動方向が平行な発光成分の発光強度
G・・・補正値
である。)
(構成1)
標的物質と反応する発光試薬を用いて、偏光異方に関する値(R)を測定することで、前記標的物質の有無及び前記標的物質の濃度の少なくともいずれか一方を測定する解析装置であって、
前記標的物質を含む試料、および前記発光試薬を混合して反応させ、反応液を得る反応部、
前記反応液を希釈して希釈液を得る希釈部
前記希釈液の前記Rを測定する測定部、および
制御部
を有し、
前記発光試薬は発光粒子を含むことを特徴とする解析装置。
1粒子基質
2親水層
3ユウロピウム錯体

Claims (10)

  1. 標的物質と反応する発光試薬を用いて、偏光異方に関する値(R)を測定することで、
    前記標的物質の有無及び前記標的物質の濃度の少なくともいずれか一方を決定する解析方法であって、
    前記標的物質を含む試料、および前記発光試薬を混合して反応させ、反応液を得る反応工程、
    前記反応液を希釈して希釈液を得る希釈工程、および
    前記希釈液の前記Rを測定する測定工程、
    を有し、さらに、
    前記発光試薬は発光粒子を含むことを特徴とする解析方法。
  2. 前記発光粒子がユウロピウム錯体を含むことを特徴とする請求項1に記載の解析方法。
  3. 前記発光試薬が前記標的物質に結合するリガンドを含むことを特徴とする請求項1に記載の解析方法。
  4. 前記リガンドが抗体であり、前記標的物質が抗原であることを特徴とする請求項3に記載の解析方法。
  5. 前記標的物質と反応していない前記発光試薬について測定される前記RをR0としたとき、R0≧0.001であることを特徴とする請求項1に記載の解析方法。
  6. 前記希釈工程で、前記反応液を2倍以上に希釈することを特徴とする請求項1に記載の解析方法。
  7. 前記希釈工程で、前記発光試薬が0.05mg/ml以下となるように希釈することを特徴とする請求項1に記載の解析方法。
  8. 光路長が5mm以下である光学系で、前記Rを測定することを特徴とする請求項1に記載の解析方法。
  9. 前記Rが下記式(1)のrで定められることを特徴とする請求項1に記載の解析方法。
    Figure 2023168250000006
    (上記式(1)中、
    VVは第一の偏光で励起したときの、第一の偏光と振動方向が平行な発光成分の発光強度、
    VHは第一の偏光で励起したときの、第一の偏光と振動方向が直交する発光成分の発光強度、
    HVは第一の偏光と振動方向が直交する第二の偏光で励起したときの、第二の偏光と振動方向が直交する発光成分の発光強度、
    HHは第一の偏光と振動方向が直交する第二の偏光で励起したときの、第二の偏光と振動方向が平行な発光成分の発光強度、
    G・・・補正値
    である。)
  10. 標的物質と反応する発光試薬を用いて、偏光異方に関する値(R)を測定することで、
    前記標的物質の有無及び前記標的物質の濃度の少なくともいずれか一方を測定する解析装置であって、
    前記標的物質を含む試料、および前記発光試薬を混合して反応させ、反応液を得る反応部、
    前記反応液を希釈して希釈液を得る希釈部
    前記希釈液の前記Rを測定する測定部、および
    制御部
    を有し、
    前記発光試薬は発光粒子を含むことを特徴とする解析装置。
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