JP2023163620A - 電極フィルム原反、電極、電極積層体 - Google Patents

電極フィルム原反、電極、電極積層体 Download PDF

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Ayumi Ando
久志 中澤
Hisashi Nakazawa
拓生 米田
Takuo Yoneda
充 東倉
Mitsuru Higashikura
泰紀 平田
Yasunori Hirata
勉 林
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Abstract

【課題】電極の材料として用いられる新規な電極フィルム原反を提供する。また、このような電極フィルム原反を材料として用いる電極、電極積層体を提供する。【解決手段】活物質と、バインダーとを含む混合物からなり、下記測定方法で行う90°剥離試験における接着強度が0.05N/cm以上である電極フィルム原反。(測定方法)電極フィルム原反から切り出した幅15mm、長さ50mmの試験片を、幅15mm、長さ60mmの銅箔の中央に貼合した後、試験片を20mm/minの速度で90°剥離したときの強度を測定する。同じ測定を3回行い、測定値の算術平均値を接着強度とする。(貼合条件)圧力:8.6kg/cm、速度:1m/min、温度:40℃でロール貼合。【選択図】なし

Description

本発明は、電極フィルム原反、電極、電極積層体、電気化学デバイス及び機器に関する。
近年、電源として用いられる二次電池の重要度が増している。二次電池は、携帯型電子機器の電源のような小型のものから、電気自動車や家庭用蓄電池のような中型、大型のものまで活発に研究開発が成されている。
二次電池は、活物質を含む一対の電極と、電極間に配置される電解質とを有する。一対の電極には、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極とを含む。これらの電極として、正極活物質または負極活物質を含む活物質層と、導電性に優れた集電体とが積層した構成が知られている。
上記活物質層は、粉末状の活物質と、バインダーとを溶剤に分散させてスラリー状の合剤を調製し、得られた合剤を集電体上に塗工し、プレス加工することにより形成する。活物質層と集電体との積層体は、所望の電池形状に切削され、電極として用いられる(例えば、特許文献1参照)。
特開2019-169444号公報
上述のように、電極を作製するためには、合剤の調整、合剤の塗工、乾燥、プレス加工等の多段階の加工を要する。二次電池の製造工程を簡略化し、製造コストを低減するために、材料面からの工夫の余地がある。
同様の課題は、二次電池に限らず、キャパシタのような他の電気化学素子においても生じ得る。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、電極の材料として用いられる新規な電極フィルム原反を提供することを目的とする。また、このような電極フィルム原反を材料として用いる電極及び電極積層体を提供することを併せて目的とする。
発明者らは、集電体を用いることなく電極として使用可能な特性を有する材料を実現できれば、上述したような合剤の調整や、集電体への合剤の塗工等の工程を省略できると考えた。また、当該材料がフィルム形状とすることにより、フィルム(電極フィルム原反)を切削し、電池要素に貼り付けることで、電気化学デバイスを容易に製造可能と考えられる。
さらに、発明者らは、上記課題について「電池要素に貼り付ける」という観点から鋭意検討し、電極自身が電池要素に対する十分な接着性を備えることにより、製造工程が簡略化可能になるとの着想を得たことにより、本発明を完成させた。
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の態様を包含する。
[1]活物質と、バインダーとを含む混合物からなり、下記測定方法で求めた90°剥離試験における接着強度が0.05N/cm以上である電極フィルム原反。
(測定方法)
前記電極フィルム原反から切り出した幅15mm、長さ50mmの試験片を、幅15mm、長さ60mmの銅箔の中央に貼合した後、前記試験片を20mm/minの速度で90°剥離したときの強度を測定する。
同じ測定を3回行い、測定値の算術平均値を接着強度とする。
(貼合条件)
圧力:8.6kg/cm、速度:1m/min、温度:40℃でロール貼合。
[2]前記バインダーは、前記混合物全体に対し13質量%以上30質量%以下含まれ、下記方法で求められるSOC-OCV値が12回以上である[1]に記載の電極フィルム原反。
(SOC-OCV値の測定方法)
前記電極フィルム原反から作製した試験極に含まれる活物質量を算出し、活物質の理論容量と、活物質量とから、試験極の理論容量(mAh/g)を求める。
次いで、測定用コインセルについて、0.1Cで30分充電と、5分間休止とを1回として、同じ操作を合計22回繰り返す。電圧が0.05Vに達したときまでの充電回数を、SOC-OCV値とする。
[3]前記バインダーは、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム、ポリイソブチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む[1]又は[2]に記載の電極フィルム原反。
[4]前記バインダーは、前記群から選ばれる2種以上を含む[3]に記載の電極フィルム原反。
[5]前記バインダーは、ポリアクリル酸及びスチレンブタジエンゴムを含み、前記ポリアクリル酸は、前記混合物全体に対し5質量%以上20質量%以下含まれ、前記スチレンブタジエンゴムは、前記混合物全体に対し1質量%以上15質量%以下含まれる[3]に記載の電極フィルム原反。
[6]下記測定方法で求めた破断強度が0.2MPa以上である[1]から[5]のいずれか1項に記載の電極フィルム原反。
(測定方法)前記電極フィルム原反を幅15mm、長さ50mmのサイズに切削して得た試験片を、チャック間距離を30mm、引張速度を100mm/minとした条件で測定したときの、最大応力の75%の強度を破断強度とする。
[7]剥離フィルムが積層された[1]から[6]のいずれか1項に記載の電極フィルム原反。
[8][1]から[7]のいずれか1項に記載の電極フィルム原反を材料とする電極。
[9][8]に記載の電極と、集電箔、セパレータ及び固体電解質膜からなる群から選ばれるいずれか1つと、が積層する電極積層体。
[10][8]に記載の電極と、前記電極の第1の面に積層する第1部材と、前記電極の第2の面に積層する第2部材と、を有し、前記第1部材及び前記第2部材はそれぞれ、集電箔、セパレータ及び固体電解質膜からなる群から選ばれるいずれか1つである電極積層体。
本発明によれば、電極の材料として用いられる新規な電極フィルム原反を提供することができる。また、このような電極フィルム原反を材料として用いる電極及び電極積層体を提供することができる。
図1は、本実施形態の電極フィルム原反1を示す模式図である。 図2は、本実施形態の電極フィルム原反2を示す模式図である。 図3は、電極積層体100を示す模式図である。 図4は、電極積層体150と、電極積層体150を有するセル500と、を示す模式図である。
[電極フィルム原反、電極]
図1は、本実施形態の電極フィルム原反1を示す模式図(断面図)である。
用語「電極フィルム原反」とは、電極に加工する前のフィルム状の成形体を指す。典型的には、電極フィルム原反は、帯状に形成された長尺の成形体、又はこのような帯状成形体を枚葉加工して得られるシート状の成形体である。
図1に示す電極フィルム原反1は、両面から剥離フィルム10で挟持されている。剥離フィルム10としては、離型処理がなされたPETフィルムなど、公知の材料を採用可能である。
なお、図1の電極フィルム原反1は、両面に剥離フィルム10を有するが、片面のみに剥離フィルム10を有する構成とすることもできる。
電極フィルム原反1は、活物質と、バインダーとを含む混合物からなる。電極フィルム原反1は、集電体を有さない。
電極フィルム原反1は、(a)接着性を有する、(b)電極として使用可能である、という特徴的な機能を有する。加えて、電極フィルム原反1は、(c)自立する、という機能を有していてもよい。
(a)接着性を有する
「接着性」とは、接着剤や粘着剤を別途用いることなく、自身の表面の性質により、他の部材に貼り合わせ可能である性質を意味する。電極フィルム原反1は、所望の形状に切削し電極に加工した後、例えば固体電解質の板材に貼り合わせることで、固体電池の電極として機能する。
(b)電極として使用可能である
電極フィルム原反1は、所望の形状に切削することで、二次電池やキャパシタと言った電気化学デバイスの電極として用いることができる。本明細書において、電極フィルム原反1が電極として使用可能であることは、SOC(State of Charge)-OCV(Open Circuit Voltage)値により判断する。
(c)自立する
電極フィルム原反1は、所望の形状に切削することで、電極に加工することができる。電極フィルム原反1を、そのまま電極としてもよい。得られる電極は、基材等の付属物を有することなく切削した形状を保つことができる。このような性質を有することを、本明細書では「自立する」「自立型」と称することがある。言い換えると、電極フィルム原反1は、支持無く存在可能な剛性を有する。
(a)(b)の機能を有する電極フィルム原反1を切削して得られた電極は、電気化学デバイスの部材に貼り合わせる作業を簡略化することができ、二次電池、キャパシタ等の電気化学デバイスの部材に貼り合わせるだけで、これらの電気化学デバイスの電極として用いることができる。また、(c)の機能を有することで、自立し(自立型電極であり)容易に加工することができる。
以下、電極フィルム原反1の各構成について順に説明する。
(活物質)
活物質としては、二次電池の負極活物質、キャパシタの負極活物質として知られた粉末状の物質を用いることができる。
二次電池としてリチウムイオン二次電池を採用する場合、リチウムイオン二次電池の負極活物質としては、黒鉛等の炭素系材料、金属リチウム、チタン酸リチウム等のリチウム化合物、リチウムと合金を形成することが可能なアルミニウム、スズ、シリコン等の金属、リチウムと他の金属との合金、酸化ケイ素等の金属酸化物などから選択される少なくとも1種が挙げられる。リチウムイオン二次電池の負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的にドープ・脱ドープできるものであればよい。
リチウムイオン二次電池用の活物質としては、体積平均粒子径0.1~100μmのものが用いられる。
キャパシタとしてリチウムイオンキャパシタを採用する場合、リチウムイオンキャパシタの負極活物質としては、黒鉛等の炭素系材料、上述したリチウムイオン二次電池用の負極活物質が挙げられる。
リチウムイオンキャパシタの活物質としては、体積平均粒子径0.1~100μmのものが用いられる。
(バインダー)
バインダーは、活物質等の粒子の結着に用いられる材料であって、例えば樹脂が用いられる。バインダーとしては、電極材料として上記目的に用いられる公知の熱可塑性樹脂を採用することができる。
バインダーの機能としては、上述の「活物質等の粒子の結着」の他、(i)電極フィルム原反に高強度を付与する、(ii)電極フィルム原反から作製した電極を他の部材に接着しやすくする、(iii)その他の物性調整、が挙げられる。(ii)は、「自立型電極」に求められる上記(b)(c)の機能を有するために必須ではないが、上記(a)の機能の実現のためには重要である。それぞれ、(i)の機能を特に強く有するバインダーを「高強度バインダー」、(ii)の機能を特に強く有するバインダーを「接着性バインダー」、(iii)を「その他バインダー」として説明する。
((i)高強度バインダー)
高強度バインダーとして、エラストマーを用いることができる。エラストマーとしての性質を有するバインダーは、電極に柔軟性及び強度を付与することができ、電極使用時の活物質の体積変化に起因した破損を抑制することができる。
高強度バインダーとしては、5MPa以上の破断強度を有することが望ましい。また、高強度バインダーは、電気化学素子(電池、キャパシタ)の内部において、電解液に対して安定であることが求められ、且つ電気化学的に安定であることが求められる。
例えば、電気化学素子としてリチウムイオン電池を採用し、電極フィルム原反1を切削して得られた電極を用いる場合、高強度バインダーは、上記電極から、電池内に充填する電解液に溶出しないことが求められる。また、上記電極を負極に用いる場合、高強度バインダーは、0~3V(vs.Li/Li+)において還元分解しないことが求められる。
高強度バインダーの引張強度は、後述する破断強度の測定方法により測定した値を採用する。
上記バインダーとして、スチレンと共役ジエンとを含む共重合体を用いることができる。このような共重合体としては、
・スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)
・スチレン-イソプレン共重合体
・スチレン-ブタジエン-メチルメタクリレート共重合体(MBS)
・アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体(ABS)
・アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン-メチルメタクリレート共重合体(MABS)
・カルボキシ変性スチレンブタジエンゴム
・スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)
・スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)
・スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SIBS)
が挙げられる。
上記共重合体は、共重合可能な他のビニル系モノマーが共重合していてもよい。
ビニル系モノマーとしては、
・アルキルアクリレート等のアクリレート系モノマー
・アルキルメタクリレート等のメタクリレート系モノマー
・アルコキシアクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー
・アルコキシメタクリルアミド等のメタクリルアミド系モノマー
・アクリル酸等のカルボン酸系モノマー
・アクリロニトリル等のニトリル系モノマー
・酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー
・塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系モノマー
・アリルアクリレート等の多官能系モノマー
が挙げられる。
これらのビニル系モノマーは、上記共重合体に1種が共重合していてもよく、2種以上が共重合していてもよい。
((ii)接着性バインダー)
接着性バインダーとして、反応性官能基やアンカー効果を有する樹脂材料を用いることができる。反応性官能基としては、水酸基(-OH)、カルボキシ基(-COOH)を挙げることができる。電極フィルム原反がこのようなバインダーを含むと、電極フィルム原反から得られる電極を他の部材に貼合する際、反応性官能基が貼合面で反応し、接着強度を高めることが期待できる。
また、電極フィルム原反が接着性バインダーを含むことにより、電極フィルム原反から製造する自立型電極が、上記(ii)の機能を発現しやすくなる。
接着性バインダーは、電気化学的に安定であり、その他の部材、特に電解液にさらされても接着性を有することが望ましい。
例えば、電気化学素子としてリチウムイオン電池を採用し、電極フィルム原反1を切削して得られた電極を用いる場合、接着性バインダーは、上記電極から、電池内に充填する電解液に溶出しないこと、及び、電解液に曝されても反応性官能基が失活しにくいことが求められる。
上記電極を負極に用いる場合、接着性バインダーは、0~3V(vs.Li/Li+)において還元分解しないことが求められる。
このようなバインダーとしては、カルボキシメチルセルロース(CMC)系バインダー、ポリアクリル酸(PAA)系バインダー、ビニルアルコール系バインダー、エポキシ系バインダーから選択される少なくとも1種が挙げられる。
また、接着性バインダーとして、ポリイソブチレン(PIB)を用いることもできる。
((iii)その他バインダー)
さらに併用可能なバインダーとして、アクリレート系バインダー、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)系バインダー、ポリイミド系バインダーを例示することができる。これらのバインダーにより電極として不足する機能を補うことが出来る。例えば、(i)高強度バインダーは電気化学的に不活性であると考えられ、活物質を(i)高強度バインダーで完全に覆ってしまうと、活物質の電気化学反応が生じず、且つ電極の抵抗が増大すると考えられる。対して、上述のような(iii)その他バインダーを併用することにより、不活性バインダーで活物質を覆うことによる抵抗の増大を抑制することが考えられる。
上記(i)~(iii)のバインダーの配合は、目的とする物性に応じ、次の指針に基づいて調整する。
(i)高強度バインダーは、主として電極(電極フィルム原反)において活物質をつなぎとめる役割を担う。そのため、(i)高強度バインダーの量は、用いる活物質の量に応じて正の相関を持って調整する。
また、(i)高強度バインダーは、活物質に対する使用量が増えると電極に柔軟性及び強度を付与することができる。さらに、(i)高強度バインダーは、接着性を示すものもある。
一方、(i)高強度バインダーは、絶縁であるため、使用量が増えるとIR領域の抵抗が増大する。
(ii)接着性バインダーは、電極フィルム原反に接着性を付与する。電極の接着性は、単位面積(単位体積)あたりに存在する、接着性を示すバインダーの量によって定まるため、(ii)接着性バインダーの使用量が増えると、電極の接着性が向上する。
一方、(ii)接着性バインダーは、活物質と混ぜることで活物質の表面を覆い、イオンの輸送を阻害する傾向にあるため、使用量が増えるとΔEτ領域の抵抗が増大する。
(iii)その他バインダーは、必要に応じて電極として不足する機能を補うために添加する。
(i)~(iii)のバインダーの配合は、上記各バインダーの性質を考慮し、目的に応じて、後述の要件(1)、(2)を満たすように設定する。さらに、活物質に対するバインダーの総量についても、上記各バインダーの性質を考慮して、後述の要件(1)、(2)を満たすように設定する。
さらに、後述する要件(1)、(2)を満たすならば、異なる複数種の(ii)接着性バインダーの混合物(例えばポリアクリル酸(PAA)系バインダーと、ポリイソブチレンとの混合物)を用いることもできる。
電極フィルム原反を構成する混合物は、上述の活物質およびバインダーのほか、物性調整のため必要に応じて、導電材等の添加物を含有してもよい。導電材としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、炭素繊維、活性炭、金属粉、導電性ポリマー等から選択される少なくとも1種が挙げられる。導電材は、活物質のような活性を有する必要はなく、電極の内部における導電性を向上させる材料であればよい。
また、電極フィルム原反を構成する混合物は、カーボンナノチューブ(CNT)を含んでいてもよい。CNTを添加した電極フィルム原反では、破断強度の向上と、導電性の向上とが期待できる。
また、電極フィルム原反の厚さは、1μm以上1000μm以下であると好ましい。
上記材料の混合物からなる電極フィルム原反は、上記(a)(b)の機能を発現するために、以下の要件(1)、(2)を満たす。さらに、電極フィルム原反は、上記(c)の機能を発現するために、以下の要件(3)を満たすとよい。
(要件(1))
電極フィルム原反1は、90°剥離試験における接着強度が0.05N/cm以上である。要件(1)を満たす電極フィルム原反1は、上述の「(a)接着性を有する」との特徴を有する。
(接着強度の測定方法)
電極フィルム原反から切り出した幅15mm、長さ50mmの試験片を、幅15mm、長さ60mmの銅箔の中央に貼合する。貼合は、下記条件で行う。
(貼合条件)
圧力:8.6kg/cm、速度:1m/min、温度:40℃でロール貼合。
詳細には、電極フィルム原反を幅50mm、長さ150mmに切削し、幅60mm、長さ200mmの銅箔に上記貼合条件で貼合する。得られた積層体の短手方向の寸法を維持したまま、長手方向に複数に切削し、幅15mm、長さ60mm(元の銅箔の幅)の銅箔に、幅15mm、長さ50mm(元の電極フィルムの幅)が積層された積層体を得る。
得られた積層体を銅箔側から直径11cmのリングコアに貼り付け、電極フィルム部分を20mm/minの速度で引っ張ることで、90°剥離試験を行う。接着強度は、金属箔から電極フィルムの剥離を進行させたときの剥離力(N)の大きさを、電極フィルムの幅(cm)で除した値(N/cm)として求めることができる。
剥離試験を3回行い、3回の算術平均値を接着強度として採用する。
電極フィルム原反がこのような接着強度を有することにより、電極フィルム原反から得られる電極を他部材に貼り合わせ易く、自重で剥離することが抑制される。そのため、後の組み立て工程が容易となる。また、貼り合わせた電極が剥離し難く、得られる電気化学デバイスの信頼性が向上する。
要件(1)を満たすため、バインダーは混合物全体に対し13質量%以上30質量%以下含まれることが好ましい。バインダーが混合物全体に対し13質量%以上であることにより、十分な接着力が得られる。またバインダーが混合物全体に対し30質量%以下であることにより、電極フィルム原反に含まれる活物質量を十分に確保し、二次電池等の電極として機能させることができる。
混合物全体に対するバインダーの割合は、形成する電極フィルム原反に求められる物性に応じて調整するとよい。電極フィルム原反から製造する電極について、セパレータ等の他の部材に対する接着力を重視する場合には、上記範囲内でバインダーの含有率を高めるとよい。また、電極の電気特性を重視する場合には、上記範囲内でバインダーの含有率を下げるとよい。
また、要件(1)を満たすため、バインダーは、5MPa以上35MPa以下の破断強度を有するバインダーを含むと好ましい。破断強度は、後述する破断強度の測定方法により測定した値を採用する。このようなバインダーとしては、スチレンブタジエンゴム、ポリイソブチレンが挙げられる。
また、バインダーは、双極子モーメント1.0以下のアクリル系樹脂を含むと好ましい。このようなバインダーとしては、分子構造内にカルボキシ基を含有する樹脂が好ましく、ポリアクリル酸を挙げることができる。
バインダーは、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム、ポリイソブチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、2種以上を含むことがより好ましい。
(要件(2))
上述したように電極フィルム原反1は、「(b)電極として使用可能である」という特徴を有する。上述したように、電極フィルム原反1が電極として使用可能であることは、SOC-OCV値により判断する。
(測定用コインセルの作製)
コイン型電池R2032用の下蓋に、電極フィルム原反から作製した試験極を配置する。試験極の上にセパレータ(セルガード社製、セルガード2300)を配置した後、電解液(LiPFの1mol/L溶液)を注入する。電解液の溶媒には、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを1:1:1(体積比)で混合した混合溶媒を用いる。
セパレータの上に対極(金属リチウム)を配置し蓋をした後、12時間静置して電解液を全体に浸漬させることにより、リチウム二次電池(測定用コインセル)を作製する。
(SOC-OCV値の測定方法)
電極フィルム原反から作製した試験極に含まれる活物質量を算出し、活物質の理論容量と、活物質量とから、試験極の理論容量(mAh/g)を求める。
次いで、測定用コインセルについて、0.1Cで30分充電と、5分間休止とを1回として、同じ操作を合計22回繰り返す。
電圧が0.05Vに達したときまでの充電回数を、SOC-OCV値とする。
本明細書においては、上記方法で測定したSOC-OCV値が12回以上であるとき、電極として十分使用可能であると判断する。
電極フィルム原反がこのようなSOC-OCV値を示すことにより、電極フィルム原反から得られる電極は電池として十分機能する。
(要件(3))
上述したように、電極フィルム原反1は、「(c)自立する」という特徴を有すると好ましい。このような剛性を有する電極フィルム原反1は、下記測定方法で求めた破断強度が0.2MPa以上である。
(破断強度の測定方法)
電極フィルム原反を幅15mm、長さ50mmのサイズに切削して得た試験片を、チャック間距離を30mm、引張速度を100mm/minとした条件で測定したときの、最大応力の75%の強度を破断強度とする。
試験片が破断したときの引張力(N)の大きさを最大応力とし、最大応力の75%の応力を求める。75%の応力(N)を、引張方向と直交する仮想面における試験片の断面積(mm)で除した値(N/mm=MPa)を破断強度として求める。
測定を5回行い、5回の算術平均値を破断強度として採用する。
電極フィルム原反がこのような破断強度を有することにより、電極フィルム原反から切削される電極を自立させることができる。電極を自立させることにより、後の組み立て工程において、電極の取扱いが容易になる。
破断強度は、0.1MPa以上が好ましく、0.2MPa以上がより好ましい。また、破断強度は高いほど破損し難いため好ましいと言えるが、10MPa以下であればよく、5MPa以下であってもよい。
(電極フィルム原反の構成)
一例として、電極フィルム原反1を構成するバインダーは、(i)高強度バインダーとしてスチレンブタジエンゴム、(ii)接着性バインダーとしてポリアクリル酸を含むことが好ましい。この場合、スチレンブタジエンゴムの含有率は、混合物全体に対し1質量%以上15質量%以下であり、ポリアクリル酸の含有率は、混合物全体に対し5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。また、スチレンブタジエンゴムの含有率は、混合物全体に対し5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
上記例の場合、電極フィルム原反1を構成するバインダーにおいて、スチレンブタジエンゴムの含有率は、バインダー全体に対し15質量%以上55質量%以下であり、ポリアクリル酸の含有率は、バインダー全体に対し45質量%以上85質量%以下であることが好ましい。さらに、電極フィルム原反1を構成するバインダーにおいては、ポリイソブチレンを、バインダー全体に対し0質量%以上10質量%以下含んでもよい。
電極フィルム原反1を構成する活物質の含有率は、電極フィルム原反1を構成する混合物全体に対し60質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
電極フィルム原反1を構成する混合物が、活物質及びバインダーのほかに添加物を含有する場合、添加物は、上記要件(1)(2)を損なわない範囲で混合物に含まれる。例えば、電極フィルム原反1を構成する混合物が導電材を含有する場合、導電材の含有率は、電極フィルム原反1を構成する混合物全体に対し0質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
一例として、電極フィルム原反1を構成する混合物は、混合物全体に対し、バインダーを13質量%以上30質量%以下、活物質を60質量%以上87質量%以下、導電材を10質量%以下の範囲で含むと好ましい。電極フィルム原反1を構成する混合物は、導電材を含まなくてもよい(0質量%)。ただし、バインダーと活物質と導電材とを合わせて100質量%とする。
[電極フィルム原反の製造方法]
電極フィルム原反は、上述の混合物を溶媒に溶解または分散させたスラリー(塗料)を、支持体上に塗布し、溶媒を除去することにより製造することができる。
溶媒は、少なくともバインダーを溶解させる溶媒を用いる。溶媒としては、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、ハロゲン系溶媒、硫黄系溶媒、無機系溶媒等が挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
エステル系溶媒としては、酢酸エチル、乳酸エチル等が挙げられる。
アミド系溶媒としては、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
ハロゲン系溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられる。
硫黄系溶媒としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が挙げられる。
無機系溶媒としては、水が挙げられる。
上記溶媒は、1種のみ用いてもよく、2種以上を混合した混合溶媒を用いてもよい。
塗料を調製する方法は特に限定されないが、活物質、バインダー、任意に添加される添加物等を、1種ずつ、又は2種以上を同時に溶媒と混合し、溶媒に溶解または分散させればよい。
溶媒に対する固形分(活物質、バインダー、任意に添加される添加物)の添加順には制限はない。可溶成分を溶媒に溶解させた溶液に不溶成分を添加して、不溶成分を溶液に分散させてもよい。また、不溶成分を溶媒に分散させた分散液に可溶成分を添加して、可溶成分を分散液に溶解させてもよい。
スラリー又は溶液を調製した後にさらに溶媒を添加して、塗料の粘度を調整してもよい。
脱泡、ろ過等の処理により、塗料の状態を調整してもよい。消泡剤、粘度調整剤、増粘剤、希釈剤、界面活性剤、安定剤等の添加物を塗料に添加してもよい。
塗料を塗布する方法は、特に限定されないが、ブレードコート、ディップコート、スプレーコート、バーコート、ダイコート等が挙げられる。
塗料の塗布対象物(支持体)は、離形処理された樹脂フィルムが好ましい。支持体は、帯状の長尺のものであってもよく、長尺の支持体を枚葉加工して得られる小型のシートであってもよい。
塗料を塗布して形成された塗膜から溶媒を除去することにより、電極シート原反を形成することができる。溶媒は、加熱、減圧、送風及びこれらの組み合わせにより除去することができる。
乾燥後の塗膜を、プレス加工してもよい。例えば、乾燥後の塗膜をプレス機等で圧縮することにより、電極に含まれる活物質、導電材等の粒子の接触状態を改善することができる。
支持体として帯状の長尺のものを用いた場合、電極フィルム原反は、ロール状に巻き取って保管、輸送してもよく、さらに枚葉加工を施し、複数枚のシート状の電極フィルム原反としてもよい。
このようにして、電極フィルム原反が得られる。
図2は、本実施形態の電極フィルム原反2を示す模式図である。
図2に示す電極フィルム原反2は、活物質層21と、機能層22とを有する。電極フィルム原反2も、両面から剥離フィルム10で挟持されている。活物質層21は、活物質と、バインダーとを含む混合物を材料とする。
なお、図2の電極フィルム原反2は、両面に剥離フィルム10を有するが、片面のみに剥離フィルム10を有する構成とすることもできる。
電極フィルム原反2は、集電体を有さない。
活物質層21を構成する混合物は、上述の電極フィルム原反1を構成する混合物と同じものを採用することができる。
機能層22としては、電極の機能を改善する目的で付属される層であれば特に限定されない。機能層22としては、例えば、放熱層、平坦化層、応力緩和層、密着層等が挙げられる。
電極フィルム原反2も、上記要件(1)、(2)を満たす。電極フィルム原反2は、上記要件(3)を満たしてもよい。
電極フィルム原反2は、上述の電極フィルム原反1と同様の方法で、電極フィルム原反1に該当する活物質層21を作製した後、活物質層21の表面に機能層22を作製することで製造できる。機能層22は、公知の材料を用い、公知の方法により適宜製造することができる。
以上のような構成の電極フィルム原反によれば、電極の材料として用いられる新規な電極フィルム原反を提供することができる。
また、以上のような構成の電極は、十分な接着力を有し、電池組み立て時の取り扱いが容易なものとなる。
[電極積層体]
図3は、電極積層体100を示す模式図(断面図)である。電極積層体100は、上述の電極フィルム原反1から作製した電極と同じ構成の電極110と、集電箔、セパレータ及び固体電解質膜からなる群から選ばれるいずれか1つの層120と、が積層する積層体である。電極積層体100において、電極110は、集電箔、セパレータ又は固体電解質膜と直接接していてもよく、間に他の部材を挟持していてもよい。図3に示す電極積層体100は、電極110と層120との間に、他の部材130を有する。
電極積層体100を電池又はキャパシタに組み込む場合、電極110は負極として機能する。以下、電極110を負極110と記載する。
層120がセパレータである場合、負極110とセパレータとの電極積層体100は、主として電解液を用いる電気化学デバイスに用いられる。
セパレータは、正極と負極との間を絶縁し、電極の機能に必要なイオン透過性を有する材料である。セパレータとしては、特に限定されず公知の樹脂フィルム、多孔質膜などを用いることができる。
樹脂フィルムとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、アラミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。イオン透過性を付与するため、樹脂フィルムを多孔性としてもよい。
多孔質膜としては、織布、不織布、セルロース、セラミック等が挙げられる。
層120が固体電解質膜である場合、負極110と固体電解質膜との電極積層体100は、電気化学デバイスの一種である全固体二次電池に用いられる。
固体電解質膜は、通常知られた固体電解質を板状又は膜状に加工した部材である。固体電解質膜の材料としては、通常知られた無機系固体電解質、高分子系固体電解質のいずれも用いることができる。
無機固体電解質としては、硫化物系無機固体電解質、酸化物系無機固体電解質、その他のリチウム系無機固体電解質のいずれも用いることができる。
硫化物系無機固体電解質としては、例えば、LiS-P、LiS-SiS、LiS-GeS、LiS-Al、LiS-SiS-LiPO、LiS-P-GeS、LiS-LiO-P-SiS、LiS-GeS-P-SiS、LiS-SnS-P-SiS等が挙げられる。
酸化物系無機固体電解質としては、例えば、LiTi(PO、LiZr(PO、LiGe(PO等のNASICON型、(La0.5+xLi0.5-3x)TiO等のペロブスカイト型等が挙げられる。
その他のリチウム系無機固体電解質材料としては、例えば、LiPON、LiNbO、LiTaO、LiPO、LiPO4-x(xは0<x≦1)、LiN、LiI、LISICON等が挙げられる。
高分子系固体電解質としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、これらの共重合体などのイオン伝導性を示す高分子材料が挙げられる。
層120が集電箔である場合、負極110と集電箔との電極積層体100は、電気化学デバイスに広く用いられる。層120が集電箔である場合には、他の部材130は有さず、負極110と集電箔とは直接接することが好ましい。その際、負極110において集電箔が設けられていない面に他の部材130と同じ部材を設けてもよい。
他の部材130としては、例えば電極表面を保護する保護膜が挙げられる。保護膜としては、電極の表面において活物質等の粒子の脱落や、電解質と電極との過剰な反応等から電極を保護することができる材料であれば特に限定されない。
図4は、電極積層体150と、電極積層体150を有するセル500と、を示す模式図(断面図)である。電極積層体150は、上述の負極110と、負極110の第1の面110aに積層する第1部材120と、負極110の第2の面110bに積層する第2部材125と、を有する。
第1部材120及び第2部材125は、それぞれ集電箔、セパレータ及び固体電解質膜からなる群から選ばれるいずれか1つであり、図3の層120に対応する。ここでは、第1部材120は集電箔、第2部材は固体電解質膜であることとする。
セル500は、2つの電極積層体150を有し、一方の電極積層体150Aの第2部材125と他方の電極積層体150Bの第1部材120との間に、正極111が挟持されている。また、電極積層体150Bの第2部材125には、正極111及び第1部材120(第1部材120B)がこの順に積層している。
負極110及び正極111は、第1部材120、第2部材125と直接接していてもよく、間に他の部材を挟持していてもよい。他の部材としては、上述したものと同じものを採用できる。
セル500は、第1部材120Aを負極側端子、第1部材120Bを正極側端子とするバイポーラ電池として機能する。
このような構成のセル500において、負極110には、上述の電極フィルム原反から形成した電極(負極)を用いている。負極110は、(a)接着性を有する、(b)電極として使用可能である、という機能を有することから、電極フィルム原反から切り出して負極110を形成し、第1部材120又は第2部材125と重ねることで、容易に界面を接着させ、容易に積層させることができる。
[電気化学デバイス]
電気化学デバイスは、上記電極積層体を有する。電気化学デバイスとしては、二次電池、キャパシタが挙げられる。
二次電池としては、電池のセル、セルを複数接続して作製されたモジュール、モジュールを複数接続して作製されたパック等が挙げられる。電気化学デバイスの製品には、過充電、過放電等の異常を防止するためのセンサ、制御回路等を備えていてもよい。電池を電気的に外部と接続するため、電極にはリード(端子)が取り付けられてもよい。
セパレータを有する電極積層体は、電解液を有する二次電池に用いられる。リチウムイオン二次電池の電解質としては、リチウム塩を非水系溶媒に溶解した溶液が挙げられる。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSONLi等が挙げられる。非水系溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート(炭酸エステル)が挙げられる。
電気化学デバイスは、上記電極積層体を、他の必要な部材、例えば、セパレータ、他の電極(対極)等と組み合わせることにより作製することができる。対極は、本実施形態の電極と異なってもよい。
電極積層体を収容する容器は、ラミネートフィルムや金属等から形成することができる。電極積層体は、容器内で平坦に配置されてもよく、湾曲、屈曲、巻回等された状態で収容されてもよい。
[機器]
セルを複数接続することで、モジュールを作製することができる。モジュールを複数接続することで、パックを作製することができる。セル、モジュール、パック等の電池を用いて作製された機器としては、特に限定されないが、例えば、スマートフォン、携帯電話、コンピュータ、ディスプレイ等の電子機器、電気自動車、ハイブリッド自動車等の輸送機器が挙げられる。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1~7、比較例1~4)
実施例及び比較例で用いた各材料は以下の通りである。
(バインダー)
PAA:ポリアクリル酸、藤森工業株式会社製、型番TR-853
SBR:スチレン-ブタジエンゴム、Sigma-Aldrich社製、型番182877
PIB:ポリイソブチレン、BASF社製、型番N150
(活物質(負極活物質))
昭和電工マテリアルズ株式会社製、型番MAGE3
(導電材)
AB:アセチレンブラック、Alfa Aesar社製、型番45527
各バインダーを溶媒に溶解して下記濃度の溶液とした後、表1に示す比率で各バインダーを混合し、バインダー溶液を得た。
SBR:24質量%トルエン溶液
PAA:40質量%酢酸エチル溶液
PIB:6質量%トルエン溶液
振動混合機を用いて、活物質及び導電材(アセチレンブラック)を表1に示す比率で混合し、混合粉体を得た。
混合粉体と、バインダー溶液とを表1に示す比率で混合し、スラリー状態とした。さらにトルエンを加えて粘度調整を行った。
スラリーを脱泡処理し、目開き100μmの篩を通過させて実施例及び比較例の塗料を得た。
離型処理がされたPETフィルムに、得られた塗料を0.6mAh/cmとなるように塗布した。具体的には、目標とする電極の容量と、用いる活物質の比容量(単位:mAh/g)とから、活物質の単位面積当たり質量(塗布質量。単位:g/cm)を算出して塗布する。塗膜を120℃で12分加熱することで乾燥させた。乾燥させた後、ロールプレス機で圧縮して密度を1.2g/cmとし、実施例及び比較例の電極フィルム原反を得た。
活物質の比容量は、用いた活物質のメーカ公称値を用いた。
Figure 2023163620000001
[接着強度の測定]
電極フィルム原反の接着強度は、上述の(接着強度の測定方法)に記載の方法で測定した。
[SOC-OCV値の測定]
電極フィルム原反から作製した電極が電極として使用できることについて、上述の(SOC-OCV値の測定方法)に記載の方法でSOC-OCV値を測定して判断した。
[破断強度の測定]
電極フィルム原反の破断強度は、上述の(破断強度の測定方法)に記載の方法で測定した。
[容量維持率の測定]
[電池の作製:負極活物質を有する電極フィルム原反]
活物質、導電材の量が等しく、バインダー組成が異なる実施例3、比較例3,4の各電極フィルム原反から、試験極としてコイン型電池R2032用の負極を切り出した。
各部材を105℃で真空乾燥させた後、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で組み立てを行った。
コイン型電池R2032用の下蓋に作製した試験極を配置した。試験極の上にセパレータ(セルガード社製、セルガード2300)を配置した後、電解液(LiPFの1mol/L溶液)を注入した。電解液の溶媒には、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを1:1:1(体積比)で混合した混合溶媒を用いた。
セパレータの上に対極(金属リチウム)を配置し蓋をした後、12時間静置して電解液を全体に浸漬させることにより、リチウム二次電池を作製した。
作製したリチウム二次電池について、0.05Cで0.05Vまで放電した状態(SOC0%)とし、5分間の休止をした。0.05Cで3.80Vまで充電した後(SOC100%)、0.05Cにて定電流放電を行い、定電流放電における放電容量を測定した。3回連続して測定を行い、初回、2回目、3回目の放電容量の算術平均値を「基準容量」とした(1C=5mA/cm)。
また、0.05C、0.1C、0.2C、0.4C、0.6Cでそれぞれ定電流放電を行ったこと以外は上記条件と同様として、「0.05Cの放電容量」「0.1Cの放電容量」「0.2Cの放電容量」「0.4の放電容量」「0.6Cの放電容量」をそれぞれ求めた。
基準容量と、各測定条件で求められた放電容量の測定値とから、理論容量に対する放電容量の測定値の割合を「容量維持率(%)」として求めた。
評価結果を表2、3に示す。表中、破断強度、接着強度の「測定不可」とは、試験片が脆過ぎて測定ができなかったことを意味する。また、接着強度の「剥がれない」とは、試験片の接着強度が強すぎて測定ができなかったことを意味する。接着強度が「剥がれない」との評価となった場合、試験片の接着強度は0.05N/cm以上であるとする。
Figure 2023163620000002
Figure 2023163620000003
実施例1~7の電極は、いずれも0.05N/cmを大きく超える接着強度を示し、他部材に対して貼り合わせが容易であることが示唆された。また、SOC-OCV値が12回以上であり、電極として使用可能であることが確認できた。
また、実施例3、比較例3,4について測定した容量維持率の結果から、接着強度が異なっても、充放電特性に大きな影響はないことが確認できた。
さらに、実施例1~7の電極は、自立可能であることが確認できた。
対して、比較例1,2の電極は、電極として使用可能であるが接着性が不足しており、比較例3,4の電極は、接着性は十分である一方で、SOC-OCV値が小さく電極としての性能が低いことが分かった。すなわち、比較例1~4の電極は、接着性を有する電極とは言えず、本発明の課題を解決できないことが確認できた。
以上の結果より、本発明は有用であることが分かった。
1,2…電極フィルム原反、10…剥離フィルム、100,150,150A,150B…電極積層体、110…電極、110a…第1の面、110b…第2の面、120…層、120,120A,120B…第1部材、125…第2部材

Claims (10)

  1. 活物質と、バインダーとを含む混合物からなり、
    下記測定方法で行う90°剥離試験における接着強度が0.05N/cm以上である電極フィルム原反。
    (測定方法)
    前記電極フィルム原反から切り出した幅15mm、長さ50mmの試験片を、幅15mm、長さ60mmの銅箔の中央に貼合した後、前記試験片を20mm/minの速度で90°剥離したときの強度を測定する。同じ測定を3回行い、測定値の算術平均値を接着強度とする。
    (貼合条件)
    圧力:8.6kg/cm、速度:1m/min、温度:40℃でロール貼合。
  2. 前記バインダーは、前記混合物全体に対し13質量%以上30質量%以下含まれ、
    下記方法で求められるSOC-OCV値が12回以上である請求項1に記載の電極フィルム原反。
    (SOC-OCV値の測定方法)
    前記電極フィルム原反から作製した試験極に含まれる活物質量を算出し、活物質の理論容量と、活物質量とから、試験極の理論容量(mAh/g)を求める。
    次いで、測定用コインセルについて、0.1Cで30分充電と、5分間休止とを1回として、同じ操作を合計22回繰り返す。電圧が0.05Vに達したときまでの充電回数を、SOC-OCV値とする。
  3. 前記バインダーは、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム、ポリイソブチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の電極フィルム原反。
  4. 前記バインダーは、前記群から選ばれる2種以上を含む請求項3に記載の電極フィルム原反。
  5. 前記バインダーは、ポリアクリル酸及びスチレンブタジエンゴムを含み、
    前記ポリアクリル酸は、前記混合物全体に対し5質量%以上20質量%以下含まれ、
    前記スチレンブタジエンゴムは、前記混合物全体に対し1質量%以上15質量%以下含まれる請求項3に記載の電極フィルム原反。
  6. 下記測定方法で求めた破断強度が0.2MPa以上である請求項1に記載の電極フィルム原反。
    (測定方法)
    前記電極フィルム原反を幅15mm、長さ50mmのサイズに切削して得た試験片を、チャック間距離を30mm、引張速度を100mm/minとした条件で測定したときの、最大応力の75%の強度を破断強度とする。
  7. 剥離フィルムが積層された請求項1に記載の電極フィルム原反。
  8. 請求項1に記載の電極フィルム原反を材料とする電極。
  9. 請求項8に記載の電極と、
    集電箔、セパレータ及び固体電解質膜からなる群から選ばれるいずれか1つと、が積層する電極積層体。
  10. 請求項8に記載の電極と、
    前記電極の第1の面に積層する第1部材と、
    前記電極の第2の面に積層する第2部材と、を有し、
    前記第1部材及び前記第2部材はそれぞれ、集電箔、セパレータ及び固体電解質膜からなる群から選ばれるいずれか1つである電極積層体。
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