JP2023163081A - 光学素子及びそれを有する撮像装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】光学系の光学伝達関数を実質的に不変にしつつ、方向によらず光学性能を維持可能な光学素子を提供すること。【解決手段】光学素子は、被写体からの光束に対して所定の位相を与える光学素子であって、光学素子の光束が入射する入射面は、変曲点を有すると共に、該変曲点を通る対称軸を中心として2回対称であり、変曲点における入射面の法線に対して直交し、対称軸に対してなす角が45度であり、かつ互いに直交する軸をx軸及びy軸とし、該x軸及びy軸に対する冪級数の和で入射面の形状を近似したとき、入射面における光束の半径を1に規格化した場合の冪級数の係数のうち、偶数次の係数の絶対値は3次の係数の絶対値よりも小さく、3次と5次の係数の符号が互いに異なる。【選択図】図1

Description

本発明は、光学素子及びそれを有する撮像装置に関する。
従来、透過光の位相を変調させる波面変調素子を含む光学系と画像処理の組み合わせにより被写界深度を拡大する技術が提案されている(非特許文献1参照)。具体的には、波面変調素子により光束を規則的に分散させ、被写体距離の変化に対し光学系の光学伝達関数を実質的に不変にする。そして、撮像素子等を介して得られた画像に対し復元処理を行うことで被写界深度の深い画像が生成される。
E.R.Dowski and W.T.Cathey,"Extended depth of field through wave-front coding",Applied Optics,vol.34,no.11,pp.1859-1866,April,1995
非特許文献1に開示されている波面変調素子を光学系に導入した場合、光学系が持つ波面収差に対して十分に大きい位相を与えることが可能であれば、デフォーカス方向や像高方向の点像分布関数の変化をほぼ一定にすることができる。しかしながら、非特許文献1の波面変調素子は、回転非対称な形状を有するため、方向によって光学性能が異なる。光学性能が低い方向では、後段の復元処理において補正効果を強める必要があるため、ノイズも強調されてしまう。
本発明は、光学系の光学伝達関数を実質的に不変にしつつ、方向によらず高い光学性能を維持可能な光学素子を提供することを目的とする。
本発明の一側面としての光学素子は、被写体からの光束に対して所定の位相を与える光学素子であって、光学素子の光束が入射する入射面は、変曲点を有すると共に、該変曲点を通る対称軸を中心として2回対称であり、変曲点における入射面の法線に対して直交し、対称軸に対してなす角が45度であり、かつ互いに直交する軸をx軸及びy軸とし、該x軸及びy軸に対する冪級数の和で入射面の形状を近似したとき、入射面における光束の半径を1に規格化した場合の冪級数の係数のうち、偶数次の係数の絶対値は3次の係数の絶対値よりも小さく、3次と5次の係数の符号が互いに異なることを特徴とする。
また、本発明の他の側面としての光学素子は、被写体からの光束に対して所定の位相を与える光学素子であって、光学素子が発生させる位相分布は、変曲点を有すると共に、該変曲点を通る対称軸を中心として2回対称であり、変曲点における位相分布の法線に対して直交し、対称軸に対してなす角が45度であり、かつ互いに直交する軸をμ軸及びν軸とし、該μ軸及びν軸に対する冪級数の和で位相分布を近似したとき、光学素子に入射する光束に対応する位相分布の領域の半径を1に規格化した場合の冪級数の係数のうち、偶数次の係数の絶対値は3次の係数の絶対値よりも小さく、3次と5次の係数の符号が互いに異なることを特徴とする。
本発明によれば、光学系の光学伝達関数を実質的に不変にしつつ、方向によらず高い光学性能を維持可能な光学素子を提供することができる。
画像回復フィルタの説明図である。 画像回復フィルタの断面図である。 点像分布関数の説明図である。 光学伝達関数の振幅成分と位相成分の説明図である。 波面符号化用の撮像光学系の説明図である。 実施例1の撮像装置の構成図である。 実施例1の波面変調素子の位相分布を示す図である。 実施例1の波面変調素子を備える撮像光学系の点像分布関数の説明図である。 実施例1の波面変調素子を備える撮像光学系の変調伝達関数の説明図である。 実施例1の波面変調素子の位相分布の断面図である。 実施例1の波面変調素子の位相分布と従来例の回転非対称な波面変調素子の位相分布との差分を示す図である。 実施例2の波面変調素子を備える撮像光学系の変調伝達関数の説明図である。 実施例2の誤差を有する場合の波面変調素子を備える撮像光学系の変調伝達関数の説明図である。 従来例の回転非対称な波面変調素子の位相分布の説明図である。 従来例の通常の撮像光学系の点像分布関数の説明図である。 従来例の通常の撮像光学系の変調伝達関数の説明図である。 従来例の回転非対称な波面変調素子を用いた波面符号化用の撮像光学系の点像分布関数の説明図である。 従来例の回転非対称な波面変調素子を用いた波面符号化用の撮像光学系の変調伝達関数の説明図である。 従来例の回転対称な波面変調素子を用いた波面符号化用の撮像光学系の点像分布関数の説明図である。 従来の回転対称な波面変調素子を用いた波面符号化用の撮像光学系の変調伝達関数の説明図である。
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
まず、各実施例の具体的な構成について説明を行う前に、本発明の要旨を説明する。本実施形態の光学素子(波面変調素子)は、撮像光学系内に配置されると、撮像光学系の波面に対してデフォーカス方向や像高方向の点像分布関数PSF(Point Spread Function)の変化をほぼ一定にする位相を付与することができる。光軸に対して回転非対称な形状を有する波面変調素子は方向によって光学性能が異なるが、本実施形態では冪級数の高次項を用いることで光学性能が高い方向では光学性能を維持しつつ、低い方向では光学性能を向上させることができる。
また、本実施形態の光学素子を備える撮像光学系を撮像装置に適用した場合、撮影画像に対して撮像光学系の光学特性に基づいた鮮鋭化処理(画像回復処理)が行われる。以下、本実施形態で用いられる技術について述べる。
[画像回復処理]
画像回復処理の概要について説明する。撮影画像(劣化画像)について、以下の式(1)が成立する。
g(x,y)=h(x,y)*f(x,y) (1)
ここで、g(x,y)は撮影画像、f(x,y)は元の画像、h(x,y)は光学伝達関数(OTF:Optical Transfer Function)のフーリエペアである点像分布関数(PSF:Point Spread Function)である。
また、*はコンボリューション(畳み込み積分、積和)、(x,y)は撮影画像上の座標である。
また、式(1)をフーリエ変換して周波数面での表示形式に変換すると、周波数ごとの積で表される以下の式(2)が得られる。
G(u,v)=H(u,v)・F(u,v) (2)
ここで、H(u,v)は点像分布関数をフーリエ変換することにより得られる光学伝達関数であり、G(u,v),F(u,v)はそれぞれ撮影画像g(x,y)、元の画像f(x,y)をフーリエ変換して得られる関数である。(u,v)は、2次元周波数面での座標、すなわち周波数である。
撮影画像g(x,y)から元の画像f(x,y)を得るには、以下の式(3)のように両辺を光学伝達関数H(u,v)で除算すればよい。
G(u,v)/H(u,v)=F(u,v) (3)
そして、関数F(u,v)(=G(u,v)/H(u,v))を逆フーリエ変換して実面に戻すことにより、元の画像f(x,y)が回復画像として得られる。
光学伝達関数の逆関数1/H(u,v)を逆フーリエ変換することで得られる関数をR(x,y)とするとき、以下の式(4)のように実面での画像に対するコンボリューション処理を行うことで、元の画像f(x,y)を得ることができる。
g(x,y)*R(x,y)=f(x,y) (4)
ここで、関数R(x,y)は、画像回復フィルタと呼ばれる。撮影画像が2次元画像である場合、一般的に、画像回復フィルタも撮影画像の各画素に対応したタップ(セル)を有する2次元フィルタとなる。また、画像回復フィルタのタップ数(セルの数)は、一般的に多いほど回復精度が向上する。このため、要求画質、画像処理能力、及び収差の特性等に応じて実現可能なタップ数が設定される。画像回復フィルタは、少なくとも収差の特性を反映している必要があるため、従来の水平垂直各3タップ程度のエッジ強調フィルタ等とは異なる。画像回復フィルタは、光学伝達関数に基づいて設定されるため、振幅成分及び位相成分の劣化の両方を高精度に補正することができる。
また、実際の撮影画像にはノイズ成分が含まれるため、光学伝達関数の逆数に基づく画像回復フィルタを用いると、撮影画像の回復と共にノイズ成分が大幅に増幅されてしまう。これは撮影画像の振幅成分にノイズ成分の振幅が付加されている状態で、振幅成分である撮像光学系の変調伝達関数(MTF:Modulation Transfer Function)を全周波数に渡って1に戻すように変調伝達関数を持ち上げるためである。撮像光学系による振幅劣化である変調伝達関数は1に戻るが、ノイズ成分のパワースペクトルが持ち上がり、結果的に変調伝達関数を持ち上げる度合(回復ゲイン)に応じてノイズ成分が増幅されてしまう。
したがって、ノイズ成分が含まれる場合、以下の式(5a),(5b)に示されるように、鑑賞用画像としては良好な画像は得られない。
G(u,v)=H(u,v)・F(u,v)+N(u,v) (5a)
G(u,v)/H(u,v)=F(u,v)+N(u,v)/H(u,v) (5b)
ここで、N(u,v)は、ノイズ成分である。
ノイズ成分が含まれる画像に関しては、例えば以下の式(6)で表されるウィナーフィルタのように、画像信号とノイズ信号の強度比SNRに応じて回復度合を制御する方法がある。
ここで、M(u,v)はウィナーフィルタの周波数特性であり、|H(u,v)|は光学伝達関数の絶対値(変調伝達関数)である。この方法では、周波数ごとに、変調伝達関数が小さいほど回復ゲイン(回復度合)を小さくし、変調伝達関数が大きいほど回復ゲインを大きくする。一般的に、撮像光学系の変調伝達関数は低周波側が高く高周波側が低くなるため、この方法では、実質的に画像の高周波側の回復ゲインを低減することができる。
以下、画像回復フィルタについて説明する。図1及び図2はそれぞれ、画像回復フィルタの説明図及び断面図である。画像回復フィルタは、撮像光学系の収差特性や要求される回復精度に応じてそのタップ数が決定される。図1の画像回復フィルタは、11×11タップの2次元フィルタである。図1では、各タップ内の値(係数)は省略されている。画像回復フィルタは、収差により空間的に広がった信号値(PSF)を、理想的には元の1点に戻す機能を有する。
画像回復フィルタの各タップは、画像の各画素に対応して画像回復処理の工程でコンボリューション処理(畳み込み積分、積和)される。コンボリューション処理では、所定の画素の信号値を改善するために、その画素を画像回復フィルタの中心と一致させる。そして、画像と画像回復フィルタの対応画素ごとに画像の信号値と画像回復フィルタの係数の積をとり、その総和を中心画素の信号値として置き換える。
以下、画像回復の実空間と周波数空間での特性について説明する。図3は、点像分布関数PSFの説明図である。図3(a)は画像回復前の点像分布関数、図3(b)は画像回復後の点像分布関数を示している。図4は、光学伝達関数の振幅成分(MTF)と位相成分(PTF)の説明図である。図4(M)中の破線(a)は画像回復前の振幅成分、一点鎖線(b)は画像回復後の振幅成分を示している。図4(P)中の破線(a)は画像回復前の位相成分、一点鎖線(b)は画像回復後の位相成分を示している。
図3(a)に示されるように、画像回復前の点像分布関数は、非対称な広がりを有し、この非対称性により位相成分は周波数に対して非直線的な値を有する。画像回復処理は、振幅成分を増幅し、位相成分がゼロになるように補正するため、画像回復後の点像分布関数は対称で先鋭な形状になる。このように画像回復フィルタは、撮像光学系の光学伝達関数の逆関数に基づいて設計された関数を逆フーリエ変換して得ることができる。各実施例の鮮鋭化フィルタとして用いることが可能な画像回復フィルタは適宜変更可能であり、例えば式(6)で表されるウィナーフィルタを用いることができる。ウィナーフィルタを用いる場合、式(6)を逆フーリエ変換することで、実際に画像に畳み込む実空間の画像回復フィルタを生成することが可能である。
[被写界深度拡大]
被写界深度を拡大させる方法として、撮影中に撮像素子を前後させる方法(Focus Sweep)等があるが、本実施形態では波面符号化(Wavefront Coding)を用いる。図5は、波面符号化用の撮像光学系の説明図である。図5(a)は通常の撮像光学系、図5(b)は波面符号化用の撮像光学系を示している。本実施形態では、深度方向(奥行き方向)をz軸、z軸に垂直な2軸をx軸、y軸とする。図5では、紙面に平行な方向をy軸、奥行き方向をx軸と定義する。図5(a)の通常の撮像光学系の場合、入射する平行光は撮像光学系の焦点距離となる1点に結像するように設計されている。一方、図5(b)の波面符号化用の撮像光学系の場合、撮像光学系に波面変調素子を挿入し、光軸を通る光線と光軸外の光線との交点を意図的にずらすことで深度方向に光線を分散させる。光線を分散させることにより、深度方向の変動(デフォーカス変動)に対する点像分布関数の変化を鈍化させ、不変に近い状態にすることができる。
また、波面変調素子は、撮像光学系の光軸に対して垂直な面内で二次元的な分布を持つ位相を与える。例えば、厚みや屈折率が面内で変化する光学素子や液晶空間位相変調素子等であり、撮像光学系内の光学素子に非球面形状として与えてもよい。波面変調素子の代表的な例として、面形状が3次関数で表されるCubic Phase Mask(CPM)がある。波面変調素子の位相分布φは、以下の式(7)の奇関数形状で表すことができる。
ここで、αは定数、座標(μ,ν)は実空間上の座標(x,y)に対応する周波数空間上の座標である。図14は、従来例の回転非対称な波面変調素子の位相分布の説明図であり、式(7)の関数を図示したものである。図14において、座標(μ,ν)は、上限下限が±1となるように規格化されている。このように、撮像光学系の瞳近傍に式(7)に示される位相分布を波面に対して付加することで、デフォーカスの変化に対する撮像光学系の光学伝達関数の変動を抑制することができる。また、光学系の瞳関数P(μ,ν)は、以下の式(8)で表される。
ここで、T(μ,ν)は瞳面上での振幅透過率、W(μ,ν)は撮像光学系の波面収差である。通常の撮像光学系の場合、波面収差W(μ,ν)が撮影条件によって変動するため、撮像光学系の光学伝達関数も変化する。一方、波面符号化用の撮像光学系の場合、式(8)に示される波面変調素子による位相分布φ(μ,ν)を付与する。本実施形態では、式(8)における波面収差W(μ,ν)のμ,νの2乗の係数を変化させることで、デフォーカス変動に対する撮像光学系の性能評価を行う。すなわち、式(8)の波面収差W(μ,ν)は、以下の式(9)で表される。
ここで、W20は、デフォーカス係数である。デフォーカス係数W20が変化すると、結像位置がz軸方向へ変化する。デフォーカス係数W20を変化させた際、性能変化が小さければ、デフォーカス変動に対してロバストな波面変調素子となる。なお、実際の撮像光学系では、2次の係数以外の波面収差も存在するが、通常の撮像光学系であればデフォーカス変動や波面変調素子の位相分布φ(μ,ν)に比べると影響は少ない。したがって、本実施形態では、式(8),(9)を用いてデフォーカス変動の評価を行う。
まず、通常の撮像光学系の場合について説明する。図15は、従来例の通常の撮像光学系の点像分布関数の説明図であり、位相分布φ(μ,ν)を0としてデフォーカス係数W20を変化させた場合の点像分布関数を示している。図15(a)-図15(c)のデフォーカス係数W20はそれぞれ、0,π,2πである。図15(a)は、F値と波長によって決まる理想的な点像分布関数である。図15(b)と図15(c)に示されるように、デフォーカス係数W20を大きくすると、点像分布関数の広がりが大きくなる。
図16は、従来例の通常の撮像光学系の変調伝達関数の説明図である。図16(a)-図16(d)はそれぞれ、図15に示される点像分布関数に対して中心(DC成分)から上方向、右方向、右上方向、右下方向の断面を示している。図16において、横軸は空間周波数であり、Fは撮像光学系のF値(絞り値)である。また、実線、破線、一点鎖線はそれぞれ、デフォーカス係数W20が0,π,2πの場合である。なお、変調伝達関数は偶関数であるため、上方向と下方向のように180度回転させた方向は同じ特性となる。波面変調素子を挿入しない状態の撮像光学系は回転対称性を有するため、方向による変化はなく、図16(a)-図16(d)は一致する。実線で示されるデフォーカス係数W20が0である場合、最も光学性能が高くなる。デフォーカス係数W20がπである場合、変調伝達関数が0に落ちることはないものの実線で示される場合と比べると大きく下落し、デフォーカス係数W20が2πである場合、低周波側から変調伝達関数が0に落ちる。このように、通常の撮像光学系の場合、ピント面では変調伝達関数が高くなるが、デフォーカスさせると急激に変調伝達関数が低下する。
次に、回転非対称な波面変調素子として、式(7)において定数αを19としたCPMを用いた波面符号化用の撮像光学系の場合について説明する。図17は、従来例の回転非対称な波面変調素子を用いた波面符号化用の撮像光学系の点像分布関数の説明図である。図17(a)-図17(c)のデフォーカス係数W20はそれぞれ、0,π,2πである。波面変調素子としてCPMを用いる場合、デフォーカス係数W20による位相量よりもCPMによる位相量の方が大きくなる。そのため、図17に示されるように、デフォーカス係数W20を変化させても点像分布関数の変化はほとんどなくなる。
図18は、従来例の回転非対称な波面変調素子を用いた波面符号化用の撮像光学系の変調伝達関数の説明図である。図18(a)-図18(d)はそれぞれ、図17に示される点像分布関数に対して中心から上方向、右方向、右上方向、右下方向の断面を示している。図18において、横軸は空間周波数であり、Fは撮像光学系のF値(絞り値)である。また、実線、破線、一点鎖線はそれぞれ、デフォーカス係数W20が0,π,2πの場合である。式(7)において、変数μ,νは対称であるため、図18(a)と図18(b)の変調伝達関数の特性は一致する。また、図18において、実線、破線、一点鎖線はほぼ重なっており、デフォーカス係数W20の変化に対する変調伝達関数の変化は非常に小さい。しかしながら、CPMは回転非対称な分布であり、方向によって変調伝達関数が変化する。CPMを波面変調素子として用いる場合、図18(a)と図18(b)に示されるように、水平方向と垂直方向ではデフォーカス変動に対してロバストで高周波側まで変調伝達関数が残存する。また、図18(c)と図18(d)に示されるように、水平方向と垂直方向の間の方向では変調伝達関数が極端に低くなる。なお、定数αを19とは異なる値に変化させても、変調伝達関数の曲線は変化するもののこの傾向は変わらない。図18(c)と図18(d)に示されるように、変調伝達関数が低下すると、画像回復処理の工程においてより大きな回復ゲインを掛けなければならず、結果としてアーティストが生じやすくなってしまう。
次に、回転対称な波面変調素子として、Quartic filter(QF)を用いた波面符号化用の撮像光学系の場合について説明する。ここでは、QFの位相分布を表す以下の式(10)において、定数αを1.5πとしたQFが用いられる。
座標(μ,ν)は、上限下限が±1となるように規格化されている。図19は、従来例の回転対称な波面変調素子を用いた波面符号化用の撮像光学系の点像分布関数の説明図である。図19(a)-図19(c)のデフォーカス係数W20はそれぞれ、0,π,2πである。図19に示されるように、QFの点像分布関数は、通常の撮像光学系の点像分布関数の変化ほどデフォーカスによって変化しないが、CPMの点像分布関数の変化よりも大きい。
図20は、従来例の回転対称な波面変調素子を用いた波面符号化用の撮像光学系の変調伝達関数の説明図である。図20(a)-図20(d)はそれぞれ、図19に示される点像分布関数に対して中心から上方向、右方向、右上方向、右下方向の断面を示している。図20において、横軸は空間周波数であり、Fは撮像光学系のF値(絞り値)である。また、実線、破線、一点鎖線はそれぞれ、デフォーカス係数W20が0,π,2πの場合である。QFを波面変調素子として用いる場合、QFは回転対称性を有するため、図19に示される点像分布関数は回転対称で、図20(a)-図20(d)に示される変調伝達関数の特性は一致する。このようにQFであればCPMを用いた際の方向による変調伝達関数のばらつきはないものの、図20に示されるように実線、破線、一点鎖線でばらつきがある。また、図18(a)と図18(b)と比べても高周波側の変調伝達関数が0に落ちている。図18に示されるように、デフォーカス変動によって変調伝達関数の変化が小さい場合、同一の画像回復フィルタを適用することができる。しかしながら、図20に示されるように、デフォーカス変動によって変調伝達関数が変化する場合、デフォーカスに応じて画像回復フィルタを変化させる必要がある。仮に、同一の画像回復フィルタで画像回復処理を行うと、実際の撮影画像に含まれる光学系の光学性能の影響と画像回復フィルタとの間で乖離するため、オーバーシュートやアンダーシュート等の弊害が生じてしまう。また、図20に示されるように、変調伝達関数が0に落ちてしまうと、原理的に画像回復処理では復元できない。
上述した従来例の波面変調素子に対して、より方向ごとの変調伝達関数の乖離を小さくしつつ、低周波から高周波まで高い光学性能を維持することが可能な光学素子の構成について各実施例で説明する。
図6は、本実施例の撮像装置の構成図である。不図示の被写体からの光は、撮像光学系101及び光学ローパスフィルタ102を介して撮像素子103に導かれる。撮像素子103は、CCDやCMOS等の2次元撮像素子である。撮像素子103は、それぞれ撮像光学系101を介して素子面上に到達した光学像(被写体像)を電気信号に変換する。A/D変換器104は、撮像素子103からのアナログ信号をデジタル信号に変換して画像処理部105に供給する。画像処理部105は、所定の処理と併せて画像回復処理を行う。状態検出部108は、撮像装置の撮像条件情報を取得する。撮像条件情報とは、絞りやズームレンズにおける焦点距離等である。状態検出部108は、システムコントローラ111から直接、撮像条件情報を取得してもよい。また、状態検出部108は、撮像光学系101の絞り101aの動作やズームレンズ等の移動を制御する光学系制御部107から撮像光学系101に関する撮像条件情報を取得してもよい。記憶部109は、光学伝達関数又は光学伝達関数を生成するための係数を記憶する。画像処理部105は、画像回復処理により生成した出力画像である回復画像を半導体メモリや光ディスク等の画像記録媒体110に出力して記録させたり、表示部106に出力して表示させたりする。以上説明した一連の動作は、システムコントローラ111により制御される。なお、撮像光学系101は、撮像装置の一部として構成されているが、撮像装置に着脱可能に構成されてもよい。
以下、本実施例の撮像光学系101の詳細な構成について説明する。撮像光学系101は、光学伝達関数を変調する波面変調素子(光学素子)101bを有する。波面変調素子101bは、絞り101aに隣接して配置され、被写体からの光束に対して所定の位相を与える。本実施例の波面変調素子の被写体からの光束が入射する入射面は、変曲点を有すると共に、該変曲点を通る対称軸を中心として2回対称である。本実施例では、変曲点を通る波面変調素子の面の形状の法線に対して直交し、かつ対称軸に対してなす角45度で互いに直交する2軸をx軸とy軸とする。絞り101aは、円形の開口絞りである。絞り101aの開口径は、光学系制御部107によって制御される。波面変調素子101bの回転非対称な形状は、本実施例では絞り101aの側に形成されている。しかしながら、波面変調素子101bは、これに限らず両面回転非対称な形状を有してもよいし、反対側の面に形成されてもよい。また、波面変調素子101bの位相分布φは、μ軸とν軸に対する冪級数の和で近似した以下の式(11)で表せられる。
ここで、α,β,γは係数(定数)、座標(μ,ν)は実空間上の座標(x,y)に対応する周波数空間上の座標である。本実施例では、撮像素子103に対して垂直な方向(撮像光学系101の光軸方向)をz軸とし、z軸に対して垂直で互いに直交する2軸をx軸とy軸とする。本実施例では、式(11)の係数α,β,γはそれぞれ、19.0,-11.9,16.8である。
図7は、波面変調素子101bの位相分布を示す図である。図7において、座標(μ,ν)は、上限下限が±1となるように規格化されている。本実施例では、絞り101aが円形開口であるため、座標(0,0)を原点とする半径1の円の内側が有効な領域となる。
図8は、波面変調素子101bを備える撮像光学系101の点像分布関数の説明図である。図8(a)-図8(c)のデフォーカス係数W20はそれぞれ、0,π,2πである。式(11)において、変数μ,νは対称であるため、点像分布関数もx軸とy軸について対称となる。図8の点像分布関数は、図17の点像分布関数と分布の外形は類似しているが、図17の点像分布関数よりも水平方向(x軸方向)と垂直方向(y軸方向)の輝度の広がりがより大きい。一方、斜め方向の輝度は小さい。
図9は、波面変調素子101bを備える撮像光学系101の変調伝達関数の説明図である。図9(a)-図9(d)はそれぞれ、図8に示される点像分布関数に対して中心から上方向、右方向、右上方向、右下方向の断面を示している。図9において、横軸は空間周波数であり、Fは撮像光学系101のF値(絞り値)である。また、実線、破線、一点鎖線はそれぞれ、デフォーカス係数W20が0,π,2πの場合である。図9では、3本の曲線が重なって1本の曲線となっており、どの方向においてもデフォーカスによる変調伝達関数の変動がほぼない。図9(a)と図9(b)、及び図18(a)と図18(b)を比較すると、低周波側の変調伝達関数は図18の方が少し高くなっている。図9(c)と図9(d)、及び図18(c)と図18(d)を比較すると、変調伝達関数は大きく改善されている。特に、図18(d)では低周波側で0に落ちているのに対して、図9(d)では高周波側まで0に落ちることなく変調伝達関数を残せている。このように、式(11)で表される波面変調素子101bは斜め方向の変調伝達関数を高周波側まで維持することができるため、方向ごとの変調伝達関数のばらつきを低減することができる。
図10は、式(7)のCPMと式(11)の波面変調素子101bの位相分布の断面図である。図10(a)は水平方向(μ軸方向)、図10(b)は座標(-1,-1),(1,1)を通る方向(45度方向)の断面、図10(c)は座標(-1,1),(1,-1)を通る方向(135度方向)の断面である。各断面は、原点((μ,ν)=(0,0))を通る。図10において、実線が波面変調素子101b、破線がCPMを表している。式(7)の係数αは、19.0である。式(11)の係数α,β,γはそれぞれ、19.0,-11.9,16.8である。
図11は、波面変調素子101bの位相分布とCPMの位相分布との差分を示す図であり、図10の実線から破線を引いた差分を示している。図11(a)-図11(c)はそれぞれ、図10(a)-図10(c)に対応する。式(7)と式(11)での位相量が0であるため、図10(c)及び図11(c)はいずれも1つの実線のみが示されている。また、図10及び図11では垂直方向(ν軸方向)の断面は記載されていないが、式(7)と式(11)から明らかなように垂直の断面は水平方向の断面と一致する。図10(a)と図11(a)の水平方向及び垂直方向において、波面変調素子101bの位相量はCPMの位相量に比べて中心部の平坦な領域が増え、周辺部ではより急峻に変化する。一方、図10(b)と図11(b)の斜め45度方向において、CPMの位相量は波面変調素子101bの位相量に比べて周辺部で大きい。このように本実施例の波面変調素子101bでは、斜め方向において位相量が少なくなるため、デフォーカスしていない状態の変調伝達関数がより高くなる。また、水平方向と垂直方向において、周辺部の位相量を増やすことにより、周辺部を通過する光束をデフォーカス方向(z軸方向)や斜め方向に分散させる。すなわち、水平方向と垂直方向の高次の光を分散させることによって、方向による変調伝達関数のばらつきを低減し、デフォーカスの変化による変調伝達関数の変動を抑制することができる。本実施例では、係数αと係数γ(3次と7次の係数)を同符号、係数αと係数β(3次と5次の係数)を異符号とすることで、中心部付近を平坦にしつつ、周辺部では急峻な変化を付けている。
なお、本実施例では、係数αと係数γが負、係数βが正となっているが、正負が逆でもよい。逆にした場合、軸の正負の向きが変わるが、被写界深度拡大の効果は同様である。また、係数αの絶対値が係数βの絶対値よりも大きいことが望ましい。係数αの絶対値に比べて係数βの絶対値が大きくなると、係数αと係数βが異符号であるため図10(a)と図10(b)の実線が中心部付近でうねることになり、余計な位相を与えて変調伝達関数の低下を招く可能性がある。また、デフォーカスによる変調伝達関数の変動も大きくなってしまう。また、係数βの絶対値は、係数γの絶対値よりも小さいことが望ましい。また、係数αの絶対値が係数γの絶対値よりも大きいことが望ましい。係数αの絶対値に比べて係数γの絶対値が大きくなると、周辺部の変化が急峻になるため、高次光がより分散されてしまう。その場合、デフォーカス変動に対してはより効果が拡大するが、全体的に変調伝達関数が低下してしまう。なお、係数αが冪級数の係数の絶対値のうち最も大きいことが望ましい。
本実施例の波面変調素子101bの被写体からの光束が入射する面の形状は、x軸とy軸に対する冪級数の和で近似した以下の式(12)で表される。
式(12)において、座標(0,0)は撮像光学系101の光軸上に位置し、XY平面は光軸に対して垂直である。また、F(x,y)は、座標(x,y)におけるz軸方向(光軸方向)の厚みである。
以下の式(13)-(15)は、式(11)の位相分布の係数から式(12)の波面変調素子101bの形状の係数に変換するための変換式である。
ここで、λは波長、nは波面変調素子101bの屈折率、rは光束が通過する有効径の半径である。係数α,β,γがそれぞれ、19.0,-11.9,16.8である場合、係数C3,C5,C7はそれぞれ、1.73×10-3,-1.60×10-5,3.35×10-7となる。半径rを1に規格化した場合、係数C3,C5,C7はそれぞれ、3.04×10-3,-1.91×10-3,C7=2.69×10-3となる。なお、波長λを587nm、硝材はS-BAL42を想定し、屈折率nを1.583としている。上記波長や硝材は一例であって、本発明はこれに限定されず、用途や撮像光学系101の仕様に応じて適宜選択することが望ましい。規格化した半径rで表現する場合、係数C3、C5、C7の符号や絶対値の大小関係は前述した係数α,β,γと同様になる。このようなバランスの係数データを用いて波面変調素子101bを構成することで、図9に示されるデフォーカス変動に対してロバストで、どの方向においても高周波側まで高い光学性能を実現することができる。
以下、後段の画像回復処理について説明する。本実施例では、波面変調素子101bを含む撮像光学系101と撮像素子103を介して得られる劣化画像に対して画像の復元処理が実行される。本実施例では、画像処理に利用される入力画像とは、撮像光学系101を介して撮像素子103で受光することで得られたデジタル画像であり、波面変調素子101bを含む撮像光学系101等の光学伝達関数により劣化している。撮像光学系101は、レンズの他にも曲率を有するミラー(反射面)を含んでいてもよい。ミラー等を備える撮像光学系101の場合であっても、波面変調素子101bを絞り101aの近傍に配置することで、被写界深度を拡大することが可能である。また、撮像光学系101は、赤外線カットフィルタ等の光学素子を含んでいてもよい。
入力画像の色成分は、例えばRGB色成分の情報を含む。色成分として、LCHで表現される明度、色相、彩度や、YCbCrで表現される輝度、色差信号等一般に用いられている色空間を選択して用いてもよい。その他の色空間として、XYZ、Lab、Yuv、JChを用いることが可能である。更には、色温度を用いることも可能である。
本実施例の画像回復処理では、被写界深度の拡大方向に対して回復処理を行う回復フィルタが利用される。被写界深度拡大方向に対して回復処理を行う回復フィルタとは、式(1)において回復ゲインが1を超えることを意味する。ただし、高周波側の一部の回復ゲインが1を下回る周波数があってもよい。波面変調素子101bによって与えられる位相量が大きい場合、像高や撮影距離等の撮影条件に応じて変化する収差の影響が相対的に小さくなるため、撮影条件には依存しない一律の画像回復フィルタで補正することができる。逆に、波面変調素子101bの位相量を減らしてピント面における変調伝達関数の特性を残すように設計した場合、撮影条件よって回復フィルタを変化させてもよい。基本的には、波面変調素子101bの位相量を増やすほど、収差やデフォーカスによる影響が相対的に小さくなるもの、全体的な変調伝達関数は低くなる傾向がある。そのため、被写界深度の拡大効果とピント面における変調伝達関数の特性のどちらを優先するかは用途に応じて適宜決めることが望ましい。前述したように、波面変調素子101bの位相量を収差に対して十分に大きくすれば、撮影条件の変化に対する光学伝達関数の変動も実質的に無視することができ、画像の位置に対して同一の画像回復フィルタを利用することができる。そのため、画像回復処理を実行する際に1つのフィルタを画面全域に適用することができ、画像回復処理をより高速かつ軽量化することができる。
本実施例の波面変調素子101bは、どの方向の変調伝達関数の特性も高周波側まで高い光学性能を維持することができる。原理的には変調伝達関数が0とならなければ画像回復フィルタにより復元することができるが、実際には製造誤差等によって変調伝達関数が設計値よりも低くなる場合がある。そのため、本実施例の波面変調素子101bのように全方向で変調伝達関数を高周波側まで高く維持することが望ましい。更に、図9に示されるように、本実施例の波面変調素子101bはデフォーカス変動に対して変調伝達関数の特性がロバストであるため、一律の画像回復フィルタで補正した際、オーバーシュートやアンダーシュート等の弊害が出にくい。
以上説明したように、本実施例の波面変調素子101bを備える撮像光学系101を用いて撮影した画像に対して、対応した画像回復フィルタで補正することにより、補正画像は被写界深度の拡大された画像となる。
また、本発明では式(12)に示すような面形状にすることで、式(11)の位相分布の分布を実現する方法を示した。しかしながら、必ずしも素子の厚みを変える必要はなく、屈折率を面内で変化させることでも式(12)の位相分布を実現することができる。このように屈折率を変化させた場合であっても、面形状を変化させる場合と同様の効果を得ることができる。ここでは2つの例を示したが、式(12)を実現するために、微細構造を有する光学素子を用いてもよい。
本実施例の撮像装置は、実施例1の撮像装置に対して波面変調素子のみが異なる。本実施例では、実施例1と共通の構成については説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
以下の式(16)は、本実施例の波面変調素子の位相分布を一般化した式である。
ここで、nは3以上の整数で、nが偶数である場合、αは0である。また、mは、7以上の整数である。実施例1で説明した式(11)は、式(16)においてmを7として冪級数で展開した式である。
また、式(16)は、以下の式(17),(18)のように変形することができる。
このように位相分布φ(μ,ν)は変数μのみに依存した関数(第一項θ(μ))と変数νのみに依存した関数(第二項θ(ν))の和で表現することができる。なお、式(18)では変数をμとしているが、変数をνとする場合も同様である。式(18)においてμ=0、式(16)と式(17)において座標(μ,ν)=(0,0)は変曲点となる。式(16)は変曲点を複数有することも可能であるが、変曲点の数は少ない方が望ましい。変曲点の数が多いと、変調伝達関数の特性もうねりやすくなり、光学性能の低下を招く恐れがある。また、式(18)において、関数θ(μ)は、変曲点を中心点として2回対称な分布になる。同様に、式(16)と式(17)において、変曲点を中心として、変曲点を通る位相量が最も小さくなる直線方向を対称軸として2回対称(線対称)な分布となる。対称性が上がるほど、方向ごとの変調伝達関数の差は小さくなるものの、図20に示されるように、高周波側の変調伝達関数が低下したり、デフォーカス変動の影響が大きくなったりする。したがって、本実施例のように2回対称な分布で、かつ変調伝達関数の特性が低くなる方向を高次の係数によって底上げする方法がバランスの良い解となる。
本実施例では、実施例1よりも高次の次数を使う波面変調素子について説明する。本実施例の波面変調素子の位相分布は、式(16)において、mを11とし3次から11次までの係数で表現される。式(16)の係数α,α,α,α,α11はそれぞれ、-12.0,5.0,-8.0,3.0,-4.0である。すなわち、奇数次項の係数は、正数及び負数を含む。
図12は、本実施例の波面変調素子を備える撮像光学系の変調伝達関数の説明図である。図12(a)-図12(d)はそれぞれ、本実施例の波面変調素子を備える撮像光学系の点像分布関数に対して中心から上方向、右方向、右上方向、右下方向の断面を示している。図12において、横軸は空間周波数であり、Fは撮像光学系のF値(絞り値)である。また、実線、破線、一点鎖線はそれぞれ、デフォーカス係数W20が0,π,2πである。図9と図12を比較すると、図12の変調伝達関数の特性の方が全体的に高くなっている。本実施例では実施例1の波面変調素子101bよりも更に高次の係数を設定することにより水平垂直方向の高次光を様々な方向に分散させ、低周波側から全体的に変調伝達関数の特性を押し上げている。
以下、位相分布に誤差を与えた場合について説明する。波面変調素子を設計し実施例1で述べたように硝材を用いて位相分布を実現する場合、実際に製造しようとすると製造誤差が含まれる。したがって、設計した位相分布と必ずしも一致するとは限らない。しかしながら、設計値に対して大きく外れていなければ、被写界深度の拡大効果を得ることができる。例えば、誤差として式(16)において4次の係数を与えた場合について評価する。図13は、本実施例の係数αを2.0とした場合の波面変調素子を備える撮像光学系の変調伝達関数の説明図である。図13(a)-図13(d)はそれぞれ、本実施例の係数αを2.0とした場合の波面変調素子を備える撮像光学系の点像分布関数に対して中心から上方向、右方向、右上方向、右下方向の断面を示している。図12と図13の変調伝達関数の特性を比較すると、ほとんど変化がない。このように波面変調素子の位相分布を大きく変えるような位相量でなければ、多少の誤差が生じても影響はほとんどない。また、4次の位相量は、球面収差にも対応する。すなわち、撮像光学系において、与えた誤差の球面収差が発生したとしても、被写界深度の拡大効果を十分に得られる。しかしながら、製造時の誤差や収差によって発生する位相量も吸収できる量には限度があり、誤差が大きくなりすぎると被写界深度の拡大効果は得られなくなる。
以下、上述した誤差等を含む場合の波面変調素子の評価方法について説明する。ここでは、ムーア・ペンローズの擬似逆行列を用いて波面変調素子の位相分布に対する係数を求める。求める関数として、式(16)が用いられる。なお、式(16)におけるmの値は十分に大きく、nが偶数の場合、αは0とする。このような関数で表現した場合の各次数の係数データを以下の表1に示す。
表1において、次数はnの値であり、2列目の(1)と3列目の(2)はそれぞれ、図12と図13に対応するαの値である。表1では、次数は19までしか記載されていないが、疑似逆行列計算時はmを99に設定している。mは大きい方がよいが、低次の次数はmがある程度大きくなると収束するため、本実施例ではmを99に設定している。表1の(1)の図12の結果ではα19=0.01という値が含まれるものの、こちらはn=3以上の奇数次項のみ与えているため、そのままの値が記載されている。なお、α19は0.01という値が入っているがこれは計算誤差となる。今回の計算では位相分布の直径を255分割している。仮に、より高精度に計算するには計算時の位相分布のサンプリング点数を増やせばよい。また、表1の(2)の図13は(1)の図19の位相分布に対して、α=2.0を追加した場合の結果となる。(2)の図13の場合、式(16)の偶数次項を含めずに疑似逆行列を解いているため、α13以降も大きな係数となっている。表1では、α19までしか記載していないが、それ以降の係数にも値は入っており、mを変化させると係数値も変化する。しかしながら、低次の係数はほぼ収束しており、mによって大きく変化することはない。(2)の図13ではαにも値を有するが、疑似逆行列を解いて、奇数次項の係数のみで表現しても7次までは大きな差はない。少なくとも各偶数次の係数の絶対値は3次の係数の絶対値よりも小さくする必要がある。このように低次の係数に大きな差がなければ、図12と図13に示されるように変調伝達関数の特性もほとんど差異はなくなる。したがって、波面変調素子の位相分布や形状を評価する際には本実施例のように疑似逆行列を解いて各係数値を算出するのがよい。なお、疑似逆行列を解く際にはデータをサンプリングする必要があるが、サンプリングされたデータと疑似逆行列によって求まった係数を用いて再構成したデータの差が最も小さくなるようにする。また、疑似逆行列ではなく、非線形最適化等を用いて位相分布や素子の面形状の係数値を算出してもよい。
このように製造誤差や収差等によって位相分布がずれる場合であっても、元の分布形状に対して変動量が小さければ、被写界深度の拡大効果は得ることができる。どの程度あればよいかについては前述のように例えば疑似逆行列を解く等の方法により分析することが可能となる。なお、本実施例では波面変調素子の位相分布を用いて説明してきたが、実施例1で述べた波面変調素子の面形状や、屈折率分布であっても同様の説明が成り立つ。また、ここでは説明を省略するが、面形状の場合も形状が大きく変化する誤差でなければ同様に被写界深度の拡大効果を得ることが可能となる。
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
被写体からの光束に対して所定の位相を与える光学素子であって、
前記光学素子の前記光束が入射する入射面は、変曲点を有すると共に、該変曲点を通る対称軸を中心として2回対称であり、
前記変曲点における前記入射面の法線に対して直交し、前記対称軸に対してなす角が45度であり、かつ互いに直交する軸をx軸及びy軸とし、該x軸及びy軸に対する冪級数の和で前記入射面の形状を近似したとき、前記入射面における前記光束の半径を1に規格化した場合の冪級数の係数のうち、偶数次の係数の絶対値は3次の係数の絶対値よりも小さく、3次と5次の係数の符号が互いに異なることを特徴とする光学素子。
(構成2)
前記入射面のx軸における位置をx、前記入射面のy軸における位置をy、定数をα、3以上の整数をn、7以上の整数をmとするとき、前記入射面の形状は、
なる式で表されることを特徴とする構成1に記載の光学素子。
(構成3)
前記形状は、
なる式で表され、
第1項θ(x)と第2項θ(y)を、前記変曲点を原点とした冪級数で展開した場合、前記第1項θ(x)と前記第2項θ(y)の奇数次項の係数は正数と負数を含むことを特徴とする構成2に記載の光学素子。
(構成4)
前記第1項θ(x)と前記第2項θ(y)の偶数次の係数はゼロであることを特徴とする構成3に記載の光学素子。
(構成5)
被写体からの光束に対して所定の位相を与える光学素子であって、
前記光学素子が発生させる位相分布は、変曲点を有すると共に、該変曲点を通る対称軸を中心として2回対称であり、
前記変曲点における前記位相分布の法線に対して直交し、前記対称軸に対してなす角が45度であり、かつ互いに直交する軸をμ軸及びν軸とし、該μ軸及びν軸に対する冪級数の和で前記位相分布を近似したとき、前記光学素子に入射する前記光束に対応する前記位相分布の領域の半径を1に規格化した場合の冪級数の係数のうち、偶数次の係数の絶対値は3次の係数の絶対値よりも小さく、3次と5次の係数の符号が互いに異なることを特徴とする光学素子。
(構成6)
前記位相分布のμ軸における位置をμ、前記位相分布のν軸における位置をν、定数をα、3以上の整数をn、7以上の整数をmとするとき、前記位相分布は、
なる式で表されることを特徴とする構成5に記載の光学素子。
(構成7)
前記位相分布は、
なる式で表され、
第1項θ(μ)と第2項θ(ν)を、前記変曲点を原点とした冪級数で展開した場合、前記第1項θ(μ)と前記第2項θ(ν)の奇数次項の係数は正数と負数を含むことを特徴とする構成6に記載の光学素子。
(構成8)
5次の係数の絶対値は、3次の係数の絶対値と7次の係数の絶対値よりも小さいことを特徴とする構成1乃至7の何れか一つの構成に記載の光学素子。
(構成9)
3次の係数の絶対値は、冪級数の係数の絶対値のうち最も大きいことを特徴とする構成1乃至8の何れか一つの構成に記載の光学素子。
(構成10)
光軸に対して回転非対称な形状を有することを特徴とする請求項1乃至9の何れか一つの構成に記載の光学素子。
(構成11)
構成1乃至10の何れか一つの構成に記載の光学素子を含む光学系と、
前記光学系を介して前記被写体を撮像する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
(構成12)
前記光学系は、開口絞りを含むことを特徴とする構成10又は11に記載の撮像装置。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
101b 波面変調素子(光学素子)

Claims (12)

  1. 被写体からの光束に対して所定の位相を与える光学素子であって、
    前記光学素子の前記光束が入射する入射面は、変曲点を有すると共に、該変曲点を通る対称軸を中心として2回対称であり、
    前記変曲点における前記入射面の法線に対して直交し、前記対称軸に対してなす角が45度であり、かつ互いに直交する軸をx軸及びy軸とし、該x軸及びy軸に対する冪級数の和で前記入射面の形状を近似したとき、前記入射面における前記光束の半径を1に規格化した場合の冪級数の係数のうち、偶数次の係数の絶対値は3次の係数の絶対値よりも小さく、3次と5次の係数の符号が互いに異なることを特徴とする光学素子。
  2. 前記入射面のx軸における位置をx、前記入射面のy軸における位置をy、定数をα、3以上の整数をn、7以上の整数をmとするとき、前記入射面の形状は、

    なる式で表されることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記形状は、

    なる式で表され、
    第1項θ(x)と第2項θ(y)を、前記変曲点を原点とした冪級数で展開した場合、前記第1項θ(x)と前記第2項θ(y)の奇数次項の係数は正数と負数を含むことを特徴とする請求項2に記載の光学素子。
  4. 前記第1項θ(x)と前記第2項θ(y)の偶数次の係数はゼロであることを特徴とする請求項3に記載の光学素子。
  5. 被写体からの光束に対して所定の位相を与える光学素子であって、
    前記光学素子が発生させる位相分布は、変曲点を有すると共に、該変曲点を通る対称軸を中心として2回対称であり、
    前記変曲点における前記位相分布の法線に対して直交し、前記対称軸に対してなす角が45度であり、かつ互いに直交する軸をμ軸及びν軸とし、該μ軸及びν軸に対する冪級数の和で前記位相分布を近似したとき、前記光学素子に入射する前記光束に対応する前記位相分布の領域の半径を1に規格化した場合の冪級数の係数のうち、偶数次の係数の絶対値は3次の係数の絶対値よりも小さく、3次と5次の係数の符号が互いに異なることを特徴とする光学素子。
  6. 前記位相分布のμ軸における位置をμ、前記位相分布のν軸における位置をν、定数をα、3以上の整数をn、7以上の整数をmとするとき、前記位相分布は、

    なる式で表されることを特徴とする請求項5に記載の光学素子。
  7. 前記位相分布は、

    なる式で表され、
    第1項θ(μ)と第2項θ(ν)を、前記変曲点を原点とした冪級数で展開した場合、前記第1項θ(μ)と前記第2項θ(ν)の奇数次項の係数は正数と負数を含むことを特徴とする請求項6に記載の光学素子。
  8. 5次の係数の絶対値は、3次の係数の絶対値と7次の係数の絶対値よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の光学素子。
  9. 3次の係数の絶対値は、冪級数の係数の絶対値のうち最も大きいことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の光学素子。
  10. 光軸に対して回転非対称な形状を有することを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の光学素子。
  11. 請求項1乃至7の何れか一項に記載の光学素子を含む光学系と、
    前記光学系を介して前記被写体を撮像する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
  12. 前記光学系は、開口絞りを含むことを特徴とする請求項11に記載の撮像装置。
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