JP2023160397A - 活性汚泥の処理水bod測定方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、活性汚泥に流入する排水(以下、原水)に遅分解性や難分解性のBOD成分を多く含む場合は、処理水CODや処理水TOCが高い場合があり、さらに原水の基質や負荷変動が重なると、BODとCODやTOCとの相関関係はバラつきが大となり、この方法を用いることは困難になる。
浮遊性の好気性微生物を処理主体とする曝気槽を有する生物処理装置における処理水BODの測定方法であって、
事前準備ステップと測定実行ステップとを含み、
(a)事前準備ステップ
(a-1) 曝気槽でのBOD処理が終了した活性汚泥混合液をサンプリングして、一定温度(θ)条件下で一定の総括物質移動係数KLaで曝気し、曝気開始から所定の曝気時間(t_max)(以下、測定時間という)までの溶存酸素濃度(DO)の変化データ(C(t))を測定し、
(a-2) 前記測定時間内または前記測定時間後に一時的に曝気を停止し、DOの低下速度に基づいて活性汚泥混合液の呼吸による酸素消費速度(以下、Rr1)を取得し、次いで、
(a-3) 曝気を再開してDOが上昇していく変化に基づいて、曝気による酸素供給速度の総括物質移動係数(KLa)を取得し、
ここにKLaは(3)式で表され、活性汚泥混合液の酸素消費速度rと、飽和溶存酸素濃度と活性汚泥混合液の溶存酸素濃度の差(Cs-C)と、の関係を示す係数であり、
r=KLa(Cs-C) (3)式
(a-4-1) 前記測定時間内にRr1、KLaを測定した場合は、(a-2)、(a-3)の操作を行うことなく連続して曝気を行ったと仮定したときの想定DO変化データ(C'(t))を求め、
(a-4-2) 前記測定時間後にRr1、KLaを測定した場合は、C(t)を以てC'(t)と見做し、
(a-5) tm時に取得したRr1を、(3a)式によりt_max時の測定値として補正し、
Rr1=Rr1-KLa×(C(t_max)-C(tm)) (3a)式
但し、C(t_max)は、t_max時のDO値、C(tm)は、tm時のDO値
(a-6) 測定時間内の経過時間をtとし、曝気開始時のDO値をC0とするとき、暫定的に設定するDO値(DOhf)を用いて(1)式で表される仮想のDOの変化データ(C_hf(t))を求め、
C_hf(t)=DOhf-(DOhf-C0)exp(-KLa・t) (1)式
(a-7) (a-4)、(a-6)を用いて、(2)式により事前準備ステップにおける活性汚泥混合液の液相部のBODを算出し、
BOD=KLa・∫(C_hf(t)-C'(t))dt (積分範囲は0からt_max)・・・・(2)式
(a-8)別途公定法により該活性汚泥混合液の液相部BOD値(BOD5)を測定し、
(a-9) (1)式のDOhfを変化させて(2)式で得られるBOD値と、前記(a-8)において取得したBOD5値と、が最も近似するDOhfを求め、
(a-10) (a-1)乃至(a-9)で取得した、活性汚泥混合液の温度θ、KLa、Rr1、t_max、DOhfを、それぞれθ_def、KLa_def、Rr1_def、t_max、DOhf_defと称して、以下の測定実行ステップの計算ファクターとして用いるために保存し、
(b)測定実行ステップ
次回以降における測定対象処理水のBOD測定に際して、
(b-1) 該活性汚泥混合液を測定装置にサンプリングし、(a-1)と同様の操作を行って、測定時間内におけるDOの変化(C(t)*)、θ*を測定し、
(b-2) (a-2)から(a-5)と同様の操作を行って、Rr1*、KLa*、C'(t)*を取得し
(b-3) 測定時の温度θ*、KLa*、Rr1*を使って、(4)式によりDOhf*を求め、
DOhf*=DOhf_def-(Rr1*/KLa*-Rr1_def/KLa_def)-(Cs_def-Cs)・・・(4)式
ここに、Cs_defは、温度θ_def時の飽和溶存酸素濃度、Csは温度θ*時の飽和溶存酸素濃度
(b-3) (5)式により仮想のDO変化であるC_hf(t)*を求め、
C_hf(t)*=DOhf*-(DOhf*-C0*)exp(-KLa*・t) (5)式
(b-5) (6)式により測定対象処理水のBOD*を求める、
BOD*=KLa*・∫(C_hf(t)*-C'(t)*)dt (積分範囲は0からt_max)(6)式
ことを特徴とする。
本発明は、後段において詳述する(7)式を基本式として展開して、目的とするBOD値を得るものである。
dC/dt=KLa(Cs-C)-Rr (7)式
(7)式中に含まれるRrはtと共に変化する値である。Rrの内訳を(9)式で表せば、
dC/dt=KLa(Cs-C)-(rSs+rXs+rAs) (9)式
rSs:易分解性BOD成分の分解による酸素消費速度
rXs:遅分解性BOD成分の分解による酸素消費速度
rAs:内生呼吸状態の活性汚泥混合液の呼吸による酸素消費速度
ここにrSs、rXsは、一般的にはrSs、rXsを構成する成分ごとに、
rAsは、本発明のR1に相当する内生呼吸状態の活性汚泥混合液の呼吸による酸素消費速度であるが、この値はDO依存性があり、DOが高い場合のrASはDOが低い場合のrASより大きくなる。またMLSSや汚泥の栄養状態などにも影響される。
本発明の意義は、事前準備ステップで求めたθ、Rr1_def、KLa_def、DOhf_defを使って、(4)式によりDOhf*を計算し、さらに(5)式、(6)式を使って精度よく公定法のBODを計算できることを見出したことにある。
DOhf*=DOhf_def-(Rr1*/KLa*-Rr1_def/KLa_def)-(Cs_def-Cs)(4)式
1)Rr1はDO>0.5以上では一定とする
2)易分解性BODの分解に要する酸素消費速度は成分ごとに濃度によらず一定速度とする
3)遅分解性BOD成分の分解は、濃度によらず一定とする
4)内生呼吸による酸素消費速度は一定とする
という実際の活性汚泥とは少し異なる前提を置いた。これにより、後述する(10)から(14)式までを介して(4)式を導くことを可能にした。
さらに、実際の活性汚泥の挙動とは少し異なる上記前提に基づく(4)式を用いて、どこまで精度よく処理水BODを計算できるかの確証試験を行い(後述実施例参照)、十分な測定精度を以て計算できることが実証でき、発明完成に至ったものである。
通常の公定法のBOD測定には、アンモニア態窒素の硝化に要する酸素消費量(N-BOD)も含まれる。処理水にアンモニア態窒素が多く含まれる場合の硝化は、5日間の測定時間では、理論的な硝化に要する酸素量の一部しか測定できないケースがある。処理水にアンモニア態窒素が多く含まれる場合には、BOD測定値の変動となるため、有機物の分解による酸素消費量(C-BOD)と区別する必要がある。C-BODを測定する場合は、測定試料にアリルチオ尿素などの硝化抑制剤を添加してから測定を行う。
公定法のC-BODに対応させるためには、公定法のC-BOD測定と同様にサンプリングした試料に硝化抑制剤を添加して本発明の操作を行い、実測の公定法のC-BODと突き合わせる操作を行えばよい。
また第二の発明によれば、硝化を除くBODも測定でき、処理水にアンモニア態窒素が多く残る場合であっても、C-BODとN-BODを分離でき、バラつきの少ないBODが測定可能となり、活性汚泥の運転管理に資する。
活性汚泥混合液を一定の酸素供給速度で曝気していく際の活性汚泥混合液のDOの変化は(7)式で表される。
dC/dt=KLa(Cs-C)-Rr (7)式
ここに、DOsatは飽和溶存酸素濃度[mg/l]、Cは曝気槽内溶存酸素濃度[mg/l]、Kabsは総括物質移動係数[1/min]、Rrは活性汚泥混合液による酸素消費速度[mg/l/min]、である。
多様な微生物の集合体である活性汚泥における「内生呼吸状態」を、「活性汚泥混合液の液相部のBODが0mg/lになったときの状態」と定義すると、内生呼吸状態において数時間の短い範囲では酸素の消費速度(Rr)は一定として扱えば、(3)式は容易に積分できる。また、内生呼吸状態における酸素消費速度と曝気による酸素供給速度がバランスするときのDO値をDOhfとすると、曝気経過時間tによるDOの変化C_hf(t)は、曝気開始時の初期値をC0として(1)式で表される。
C_hf(t)=DOhf-(DOhf-C0)exp(-KLa・t) (1)式
実際に測定する活性汚泥混合液の液相部には未処理のBOD成分が含まれ、これを微生物体内に取り込む際に、内生呼吸による酸素消費速度以上に酸素を消費する。図2を参照して(1)式の変化を点線であらわすと、実測値のDO変化(C'(t))は実線のように点線を下回り、未処理のBOD成分を取り込み終わった時点でDOhfになる。したがって、点線と実線で囲まれた面積にKLaを掛けた値は、未処理の液相部BOD成分を0mg/lにするまでに消費した酸素量ということになる。数式で表すと(2)式となる。
BOD=KLa・∫(C_hf(t)-C'(t))dt (2)式
さらに処理水BODのうち、易分解性BODは速やかに活性汚泥混合液中の微生物により生体内に取り込まれ、その際に使用される酸素消費速度は、処理が終わると多くの場合階段状に変化するため(図1のAに示す部分)、易分解性BODによる酸素消費量は内生呼吸による酸素消費量と区別できる。一方、遅分解性BODは、加水分解などにより微生物が生体内に取り込み可能な物質に変換されてから、易分解性BODと同様に取り込まれる。加水分解には時間を要するため、微生物による遅分解性BODの取り込みによる酸素消費速度は、数時間から数日程度の移動平均的な変化となる。
また内生呼吸状態の汚泥による酸素消費速度も、栄養源を与えずに曝気を継続すると、微生物の栄養状態や微生物相の変化などで、遅分解性成分の分解と同様に曝気経過時間とともに、少しずつ低下していくため、DOhfはゆっくりとした速度で上昇する。したがって、遅分解性成分の分解と内生呼吸状態の区切りを明確にすることは困難である。
以上のことから処理水BODが0mg/lになるときのDOhfを数式を用いて求めるのは困難であり、公定法のBODとの一致観点からは、(1)式、(2)式によりDOhfの値を変えて試行計算を行い、実測のBOD5と一致するようにDOhfを決めるのが実際的である。
C4(t)=C1-(C1-C2)exp(-KLa・t) (8)式
なお、Rr1を測定時間後に測定する場合は、逆にt_max時のDO値より高い値になる場合があるが、その場合でも(3a)式で、t_max時におけるRr1とする((a-5)ステップ)。
、Rr1はt_max時における値となるので(a-4)ステップの補正は必要ないが、別途Rr1とKLaを測定する時間が必要となるので、全体の測定時間が長くなる。
通常、Rr1とKLaの測定には30分から1時間程度を要するので、Rr1とKLaを測定時間終了直後に測定する場合、BODの測定間隔が長くなり測定頻度が少なくなるデメリットがあるが、活性汚泥によっては、さほど頻繁に測定する必要がない場合がある。またRr1とKLaを測定時間内に測定する場合、曝気を停止している図1のS2・1区間は、曝気を行ったものとしての補正が必要となるが、曝気の強さを調整してDOhfを4mg/l程度以上にして測定すれば、[0022]で記述したように、Rr1およびKLaを測定するに十分な差(通常1mg/l以上、より好ましくは2mg/l以上)を確保しても、図1のC2は2mg/l程度は確保できる。その結果、曝気停止中でも活性汚泥混合液中に溶存酸素は存在するので、曝気を行ってDOが高い場合と比べて、活性汚泥混合液の酸素消費速度の差はわずかであり、補正による誤差は、全体として許容できる範囲になる。
このように、Rr1とKLaの測定を測定範囲内でおこなうことも測定範囲直後に行うことも、いずれも取りうる方法である。
本ステップにおける活性汚泥混合液の測定では、温度、R1*、KLa*ともに準備ステップにおける値とは異なる。このため、DOhf*もDOhf_defの値を使用することはできず、(4)式によりDOhf_defの値をDOhf*に補正する。
DOhf*=DOhf_def-(Rr1*/KLa*-Rr1_def/KLa_def)-(Cs_def-Cs)(4)式
dC/dt=KLa(Cs-C)-Rr1 (10)式
DOの変化が一定になったとき(dC/dt=0)のCの値をDOhfとすると、
KLa(Cs-DOhf)=Rr1 (11)式
DOhf=Cs-Rr1/KLa (12)式
計算ファクター設定時の温度に対する飽和溶存酸素濃度をCs_defとすると、
DOhf_def=Cs_def-Rr1_def/KLa_def (13)式が成立
処理水BOD測定時のRr1、KLaで測定を行うと、測定時の温度に対する飽和溶存酸素濃度をCsとすると、
DOhf*=Cs-Rr1*/KLa* (14)式が成立
(10)式-(13)式より(4)式が得られる。
C_hf(t)*=DOhf*-(DOhf*-C0)exp(-KLa*・t) (5)式
BOD*=KLa*・∫(C_hf(t)*-C’(t))dt (6)式
Claims (2)
- 浮遊性の好気性微生物を処理主体とする曝気槽を有する生物処理装置における処理水BODの測定方法であって、
事前準備ステップと測定実行ステップとを含み、
(a)事前準備ステップ
(a-1) 曝気槽でのBOD処理が終了した活性汚泥混合液をサンプリングして、一定温度(θ)条件下で一定の総括物質移動係数KLaで曝気し、曝気開始から所定の曝気時間(t_max)(以下、測定時間という)までの溶存酸素濃度(DO)の変化データ(C(t))を測定し、
(a-2) 測定時間内または測定時間後に一時的に曝気を停止し、DOの低下速度に基づいて活性汚泥混合液の呼吸による酸素消費速度(以下、Rr1)を取得し、次いで、
(a-3) 曝気を再開してDOが上昇していく変化に基づいて、曝気による酸素供給速度の総括物質移動係数(KLa)を取得し、
ここにKLaは(3)式で表され、活性汚泥混合液の酸素消費速度rと、飽和溶存酸素濃度と活性汚泥混合液の溶存酸素濃度の差(Cs-C)と、の関係を示す係数であり、
r=KLa(Cs-C) (3)式
(a-4-1) 前記測定時間内にRr1、KLaを測定した場合は、(a-2)、(a-3)の操作を行うことなく連続して曝気を行ったと仮定したときの想定DO変化データ(C'(t))を求め、
(a-4-2) 前記測定時間後にRr1、KLaを測定した場合は、C(t)を以てC'(t)と見做し、
(a-5) tm時に取得したRr1を、(3a)式によりt_max時の測定値として補正し、
Rr1=Rr1-KLa×(C(t_max)-C(tm)) (3a)式
但し、C(t_max)は、t_max時のDO値、C(tm)は、tm時のDO値
(a-6) 測定時間内の経過時間をtとし、曝気開始時のDO値をC0とするとき、暫定的に設定するDOhfを用いて(1)式で表される仮想のDOの変化データ(C_hf(t))を求め、
C_hf(t)=DOhf-(DOhf-C0)exp(-KLa・t) (1)式
(a-7) (a-4)、(a-6)を用いて、(2)式により事前準備ステップにおける活性汚泥混合液の液相部のBODを算出し、
BOD=KLa・∫(C_hf(t)-C'(t))dt (積分範囲は0からt_max)・・・・(2)式
(a-8)別途公定法により該活性汚泥混合液の液相部BOD値(BOD5)を測定し、
(a-9)(1)式のDOhfを変化させて(2)式で得られるBOD値と、(a-8)において取得したBOD5値と、が最も近似するDOhfを求め、
(a-10) (a-1)乃至(a-9)で取得した、活性汚泥混合液の温度θ、KLa、Rr1、t_max、DOhfを、それぞれθ_def、KLa_def、Rr1_def、t_max、DOhf_defと称して、以下の測定実行ステップの計算ファクターとして用いるために保存し、
(b)測定実行ステップ
次回以降における測定対象処理水のBOD測定に際して、
(b-1) 該活性汚泥混合液を測定装置にサンプリングし、(a-1)と同様の操作を行って、測定時間内におけるDOの変化(C(t)*)、θ*を測定し、
(b-2) (a-2)から(a-5)と同様の操作を行って、Rr1*、KLa*、C'(t)*を取得し
(b-3) 測定時の温度θ*、KLa*、Rr1*を使って、(4)式によりDOhf*を求め、
DOhf*=DOhf_def-(Rr1*/KLa*-Rr1_def/KLa_def)-(Cs_def-Cs)・・・(4)式
ここに、Cs_defは、温度θ_def時の飽和溶存酸素濃度、Csは温度θ*時の飽和溶存酸素濃度
(b-4) (5)式により仮想のDO変化であるC_hf(t)*を求め、
C_hf(t)*=DOhf*-(DOhf*-C0*)exp(-KLa*・t) (5)式
(b-5) (6)式により測定対象処理水のBOD*を求める、
BOD*=KLa*・∫(C_hf(t)*-C'(t)*)dt (積分範囲は0からt_max)(6)式
ことを特徴とする処理水BODの測定法。 - 前記(a-1)、(a-8)及び(b-1)の各ステップに用いる活性汚泥混合液について、硝化抑制剤を添加して、それぞれ該当する測定を行うことにより、硝化によるBODを除くBOD(C-BOD5)を測定可能とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の処理水BODの測定法。
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