JP2023159879A - 印刷層付きセメント硬化体及び印刷層付きセメント硬化体の製造方法 - Google Patents

印刷層付きセメント硬化体及び印刷層付きセメント硬化体の製造方法 Download PDF

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俊介 清村
Shunsuke Kiyomura
真人 辻埜
Masato Tsujino
学 兼松
Manabu Kanematsu
昂 楊
Ang Yang
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Abstract

Figure 2023159879000001
【課題】先行技術文献に記載された発明では、自由な色彩や模様を実現することは困難である。また、コンクリート(セメント硬化体)の表面に直接印刷を施す場合、コンクリート表面と印刷層との間の付着性が問題となる。そこで、本発明は、付着性をより高められる印刷層付きセメント硬化体及び印刷層付きセメント硬化体の製造方法を目的とする。
【解決手段】セメント硬化体10と、セメント硬化体10の表面10Aの少なくとも一部に設けられた印刷層30と、を備え、セメント硬化体10の表面10Aの表面粗さ(Ra)が1.0μm以上である、印刷層付きセメント硬化体1。
【選択図】図1

Description

本発明は、印刷層付きセメント硬化体及び印刷層付きセメント硬化体の製造方法に関する。
鉄筋コンクリート構造物の外装仕上げとしては、従来からタイル仕上げや塗装仕上げ等の手法が一般的に用いられている。タイル仕上げの場合、作業が煩雑になることに加え、剥落のおそれがある。
塗装仕上げとしては、例えば、特許文献1には、平滑面に耐候性塗料による白又はグレー色のベース塗りを施し、その上から耐候性塗料による、上記とは異なる色調の白又はグレー色を含浸させたフェルト又は不織布による圧着を繰返し行って模様付け塗りを行う打放しコンクリート模様塗膜の形成方法が提案されている。特許文献1の発明によれば、打放しコンクリート模様を再現することが図られている。
特開2001-070876号公報
特許文献1の発明では、自由な色彩や模様を実現することは困難である。自由な色彩や模様を実現するために、コンクリート(セメント硬化体)の表面に直接印刷を施す場合、コンクリート表面と印刷層との間の付着性が問題となる。
そこで、本発明は、付着性をより高められる印刷層付きセメント硬化体及び印刷層付きセメント硬化体の製造方法を目的とする。
さらに、本発明は、自由な色彩や模様を実現し、意匠性に優れる印刷層付きセメント硬化体及び印刷層付きセメント硬化体の製造方法を目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を有する。
[1]セメント硬化体と、
前記セメント硬化体の表面の少なくとも一部に設けられた印刷層と、を備え、
前記セメント硬化体の表面の表面粗さ(Ra)が1.0μm以上である、印刷層付きセメント硬化体。
[2]前記印刷層の表面の少なくとも一部に設けられた表面保護層をさらに備える、[1]に記載の印刷層付きセメント硬化体。
[3]前記印刷層がUVインクからなる、[1]又は[2]に記載の印刷層付きセメント硬化体。
[4]前記セメント硬化体と前記印刷層との間に、下地調整剤からなる下地調整剤層を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の印刷層付きセメント硬化体。
[5]前記下地調整剤が、UVプライマー、オレフィン系下地調整剤及びウレタン系下地調整剤から選択される1種以上である、[4]に記載の印刷層付きセメント硬化体。
[6]前記印刷層と前記セメント硬化体との下記付着性試験における剥離率が15%以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の印刷層付きセメント硬化体。
<付着性試験>
JIS K5600-5-6:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第6節:付着性(クロスカット法)」に基づき、印刷層の表面に30°の刃を有する単一刃切込み工具を用いて25マスの直角の格子パターンの切込みを入れ、幅25mmの付着テープを切込みを入れた箇所に貼付け、60°の角度で前記付着テープを引きはがした際の前記格子パターンを目視で確認し、25マス全部が剥離した場合を100%として、印刷層が剥離したマスの数から剥離率を算出する。
[7]セメント硬化体の塗布面の表面粗さを調整する工程と、
前記塗布面にインクを塗布して印刷層を形成する工程と、を有する、印刷層付きセメント硬化体の製造方法。
[8]前記印刷層の表面に表面保護剤を塗布して表面保護層を形成する工程をさらに有する、[7]に記載の印刷層付きセメント硬化体の製造方法。
[9]前記表面粗さを調整する工程が、前記セメント硬化体の表面を粗化する工程を含む、[7]又は[8]に記載の印刷層付きセメント硬化体の製造方法。
[10]表面粗さを調整した前記セメント硬化体の表面に、下地調整剤を塗布する工程をさらに有する、[7]~[9]のいずれかに記載の印刷層付きセメント硬化体の製造方法。
本発明の印刷層付きセメント硬化体及び印刷層付きセメント硬化体の製造方法によれば、付着性をより高められる。
本発明の第一実施形態に係る印刷層付きセメント硬化体の断面図である。 本発明の第二実施形態に係る印刷層付きセメント硬化体の断面図である。 実験例1の付着性試験の結果を示すグラフである。 実験例2の付着性試験の結果を示すグラフである。 実験例3の付着性試験の結果を示すグラフである。 実験例4の付着性試験の結果を示すグラフである。 実験例5の付着性試験の結果を示すグラフである。 実験例6の付着性試験の結果を示すグラフである。 実験例1、2、5の剥離率の標準偏差を示すグラフである。 実験例3、4、6の剥離率の標準偏差を示すグラフである。 実験例7の光沢保持率の結果を示すグラフである。 実験例7の色差の結果を示すグラフである。 実験例7の接触角の差の結果を示すグラフである。 実験例8の光沢保持率の結果を示すグラフである。 実験例8の色差の結果を示すグラフである。 実験例8の接触角の差の結果を示すグラフである。
[第一実施形態]
≪印刷層付きセメント硬化体≫
本発明の印刷層付きセメント硬化体は、セメント硬化体の表面の少なくとも一部に設けられた印刷層を備える。印刷層付きセメント硬化体は、表面に印刷層を備えることで、自由な色彩や模様を実現できる。
以下、本発明の印刷層付きセメント硬化体の第一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の印刷層付きセメント硬化体1は、セメント硬化体10と、下地調整剤層20と、印刷層30とをこの順に備える。
<セメント硬化体>
セメント硬化体10は、セメントと水とを含有する含セメント組成物の硬化物である。
含セメント組成物としては、例えば、コンクリート、モルタル、セメントミルク等が挙げられる。
本明細書において、コンクリートとは、セメントと細骨材(砂)と粗骨材(砂利(砕石))とを混合し、水で練ったものをいう。
本明細書において、モルタルとは、セメントと細骨材(砂)とを混合し、水で練ったものをいう。
本明細書において、セメントミルクとは、セメントを水だけで練ったものをいう。
本明細書において、セメントとは、石灰石、粘土、珪石、酸化鉄原料等を主原料とした、水による化学反応で硬化する粉体のことをいう。
本明細書において、細骨材とは、直径5mm以下の砂をいう。
本明細書において、粗骨材とは、直径5mm超の砂利(砕石)をいい、粗骨材の直径は、25mm以下が好ましい。
コンクリートにおけるセメントと細骨材と粗骨材との混合割合は、コンクリートに求める強度に応じて適宜決定できる。セメントと細骨材と粗骨材との混合割合は、質量比で、例えば、セメント1に対して、細骨材2~3、粗骨材4~6が好ましい。
モルタルにおけるセメントと細骨材との混合割合は、モルタルに求める強度に応じて適宜決定できる。セメントと細骨材との混合割合は、質量比で、例えば、セメント1に対して、細骨材2~4が好ましい。
セメント硬化体10の表面10Aの表面粗さ(Ra)は、1.0μm以上であり、2.5μm以上が好ましく、5.0μm以上がより好ましい。表面10Aの表面粗さ(Ra)が上記下限値以上であると、印刷層30の付着性をより高められる。表面10Aの表面粗さ(Ra)の上限値は、印刷層30を形成しやすく、意匠性により優れることから、例えば、100μmとされる。
本明細書における表面粗さ(Ra)は、JIS B0633:2001に記載された算術表面粗さ(Ra)と同義であり、評価長さを4mmとして、デジタルマイクロスコープを用いて測定される12点の平均値で表される値である。
<下地調整剤層>
下地調整剤層20は、セメント硬化体10の表面10Aに位置する。印刷層付きセメント硬化体1は、下地調整剤層20を有することで、印刷層30の付着性をより高められる。
下地調整剤層20は、下地調整剤の硬化物である。
下地調整剤としては、例えば、UV(紫外線)プライマー、オレフィン系下地調整剤、ウレタン系下地調整剤、エポキシ系下地調整剤、アクリル系下地調整剤等が挙げられる。
本明細書において、「UVプライマー」とは、UV照射によって硬化する樹脂成分を含むプライマー組成物をいう。「オレフィン系下地調整剤」とは、オレフィンに由来する樹脂成分を含む樹脂組成物をいう。「ウレタン系下地調整剤」とは、硬化時にウレタン結合を生成する樹脂成分を含む樹脂組成物をいう。「エポキシ系下地調整剤」とは、エポキシ結合に由来する樹脂成分を含む樹脂組成物をいう。「アクリル系下地調整剤」とは、アクリル系モノマーに由来する樹脂成分を含む樹脂組成物をいう。ここで、「アクリル系モノマー」としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はこれらの混合物等が挙げられる。
下地調整剤としては、印刷層30との付着性により優れることから、UVプライマー、オレフィン系下地調整剤、ウレタン系下地調整剤が好ましく、UVプライマー、オレフィン系下地調整剤がより好ましく、UVプライマーがさらに好ましい。
下地調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
下地調整剤層20の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1~10mmが好ましく、1~10mmがより好ましい。下地調整剤層20の厚さが上記下限値以上であると、印刷層30の付着性をより高められる。下地調整剤層20の厚さが上記上限値以下であると、印刷層付きセメント硬化体1の意匠性をより高められる。
下地調整剤層20の厚さは、印刷層付きセメント硬化体1の厚さ方向の断面を顕微鏡等で観察することにより求められる。
<印刷層>
印刷層30は、下地調整剤層20の表面に直接印刷を施すことにより形成された層である。印刷層付きセメント硬化体1は、印刷層30を備えることで、自由な色彩や模様を実現できる。印刷層30によって実現される模様としては、例えば、木目調、石調、タイル調等が挙げられる。このような模様を実現することで、印刷層付きセメント硬化体1の意匠性をより高めることができ、外観が美麗なセメント硬化体を提供できる。
印刷層30は、例えば、印刷層30を形成するインク組成物(以下、単に「インク」ともいう。)が硬化してなる。印刷層30を形成するインクとしては、特に限定されないが、例えば、UVインク、ラテックス系インク、油性インク、水性インク等が挙げられる。
本明細書において、「UVインク」とは、UV照射によって硬化する樹脂成分を含むインク組成物をいう。「ラテックス系インク」とは、ゴム成分を含む樹脂成分を含むインク組成物をいう。「油性インク」とは、親油性のインク組成物をいう。親油性のインク組成物は、有機溶剤を含む。「水性インク」とは、親水性のインク組成物をいう。親水性のインク組成物は、溶媒として水を含む。
印刷層30を形成するインクとしては、付着性により優れることから、UVインク、ラテックス系インクが好ましく、UVインクがより好ましい。
印刷層30を形成するインクとしてUVインクを用いた場合、日光の照射や雨風に対して耐性を備える(耐候性に優れる)印刷層付きセメント硬化体とすることができる。
印刷層30の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.006~1.0mmが好ましく、0.008~0.1mmがより好ましい。印刷層30の厚さが上記下限値以上であると、自由な色彩や模様を実現できる。印刷層30の厚さが上記上限値以下であると、付着性をより高められる。
印刷層30の厚さは、印刷層付きセメント硬化体1の厚さ方向の断面を顕微鏡等で観察することにより求められる。
印刷層30とセメント硬化体10との下記付着性試験における剥離率は、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましく、0%が最も好ましい。剥離率が上記上限値以下であると、印刷層付きセメント硬化体1は付着性が充分に高く、意匠性をより高められる。
(付着性試験)
付着性試験は、JIS K5600-5-6:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第6節:付着性(クロスカット法)」に基づいて行うことができる。具体的には、30°の刃を有する単一刃切込み工具(ナイフ等)を用いて印刷層30の表面に25マスの直角の格子パターン(一辺1mm)の切込みを入れる。次に、幅25mmの付着テープを切込みを入れた箇所に貼付け、60°の角度で付着テープを引きはがす。付着テープを引きはがした後の格子パターンを目視で確認し、25マス全部が剥離した場合を100%として、印刷層30が剥離したマスの数から剥離率を算出する。
例えば、印刷層30が剥離したマスの数が4マスの場合、剥離率は、4/25×100=16%となり、印刷層30が剥離したマスの数が3マスの場合、剥離率は、3/25×100=12%となる。
≪印刷層付きセメント硬化体の製造方法≫
本発明の印刷層付きセメント硬化体の製造方法は、セメント硬化体の塗布面の表面粗さを調整する工程と、塗布面にインクを塗布して印刷層を形成する工程と、を有する。
セメント硬化体の塗布面の表面粗さを調整する工程は、セメント硬化体の塗布面の表面粗さ(Ra)を1.0μm以上にする工程である。
セメント硬化体の塗布面の表面粗さを調整する工程としては、セメント硬化体の塗布面の表面粗さを1.0μm以上にできればよく、例えば、セメント硬化体の表面を粗化する工程等が挙げられる。セメント硬化体の塗布面の表面粗さを調整する工程としては、印刷層の付着性をより高められることから、セメント硬化体の表面を粗化する工程が好ましい。
セメント硬化体の表面を粗化する方法としては、例えば、紙やすり、セラミックス、ワイヤブラシ、鉱物等を用いてセメント硬化体の表面を研磨する方法、エアーブラスト機等のブラスト装置を利用してセメント硬化体の表面に研磨剤(水や薬剤等)を打ち付ける方法(ブラスト加工)等が挙げられる。
セメント硬化体の表面を粗化する方法としては、作業効率を高められることから、ブラスト装置を利用してセメント硬化体の表面に研磨剤を打ち付ける方法が好ましい。
印刷層付きセメント硬化体の製造方法は、表面粗さを調整したセメント硬化体の表面に、下地調整剤を塗布する工程をさらに有していてもよい。印刷層付きセメント硬化体の製造方法が、表面粗さを調整したセメント硬化体の表面に下地調整剤を塗布する工程を有することで、印刷層の付着性をより一層高められる。
表面粗さを調整したセメント硬化体の表面に下地調整剤を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、下地調整剤を刷毛等で塗布する方法、下地調整剤を噴霧する方法、表面粗さを調整したセメント硬化体の表面を下地調整剤に浸漬する方法等が挙げられる。
下地調整剤としては、例えば、UVプライマー、オレフィン系下地調整剤、ウレタン系下地調整剤、エポキシ系下地調整剤、アクリル系下地調整剤等が挙げられる。下地調整剤としては、印刷層30との付着性により優れることから、UVプライマー、オレフィン系下地調整剤、ウレタン系下地調整剤が好ましく、UVプライマー、オレフィン系下地調整剤がより好ましく、UVプライマーがさらに好ましい。
下地調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
下地調整剤を塗布する際の下地調整剤塗布量は、特に限定されず、例えば、0.07~0.25kg/mが好ましく、0.20~0.25kg/mがより好ましい。下地調整剤塗布量が上記下限値以上であると、印刷層の付着性をより高められる。下地調整剤塗布量が上記上限値以下であると、印刷層付きセメント硬化体の意匠性をより高められる。
下地調整剤を塗布した後、塗布した下地調整剤を乾燥することで、下地調整剤が硬化し、下地調整剤層20が得られる。
塗布した下地調整剤を乾燥させる際の乾燥温度は、特に限定されず、例えば、10~50℃が好ましく、20~40℃がより好ましい。乾燥温度が上記下限値以上であると、塗布した下地調整剤の硬化が促進される。乾燥温度が上記上限値以下であると、塗布した下地調整剤の変質等を抑制できる。
塗布した下地調整剤を乾燥させる際の乾燥時間は、特に限定されず、例えば、1~24時間が好ましく、2~12時間がより好ましい。乾燥時間が上記下限値以上であると、塗布した下地調整剤を充分に硬化できる。乾燥時間が上記上限値以下であると、印刷層付きセメント硬化体の生産性をより高められる。
塗布面にインクを塗布して印刷層を形成する工程は、インクを塗布する工程と、塗布したインクを乾燥させる工程と、有する。
インクを塗布する方法は、特に限定されず、例えば、セメント硬化体の表面にインクを刷毛等で塗布する方法、インクを噴霧する方法、セメント硬化体の表面をインクに浸漬する方法等が挙げられる。
インクとしては、特に限定されず、例えば、UVインク、ラテックス系インク、油性インク、水性インク等が挙げられる。インクとしては、付着性により優れることから、UVインク、ラテックス系インクが好ましく、UVインクがより好ましい。
UVインクを塗布する方法としては、プラスチック、金属、ガラス、セメント硬化体等の非吸収性基材への高精細な印刷が可能であるUVプリンタを使用した方法が好ましい。
インクを塗布する際のインク塗布量は、特に限定されず、例えば、1~100g/mが好ましく、4~30g/mがより好ましい。インク塗布量が上記下限値以上であると、印刷層付きセメント硬化体の意匠性をより高められる。インク塗布量が上記上限値以下であると、印刷層の付着性をより高められる。
塗布したインクを乾燥させる工程における乾燥温度としては、例えば、10~50℃が好ましく、20~40℃がより好ましい。乾燥温度が上記下限値以上であると、塗布したインクの硬化が促進される。乾燥温度が上記上限値以下であると、塗布したインクの変質等を抑制できる。
塗布したインクを乾燥させる工程における乾燥時間としては、例えば、1~24時間が好ましく、2~12時間がより好ましい。乾燥時間が上記下限値以上であると、塗布したインクを充分に硬化できる。乾燥時間が上記上限値以下であると、印刷層付きセメント硬化体の生産性をより高められる。
塗布したインクを乾燥させることで、インク組成物が硬化し、印刷層30が得られる。
[第二実施形態]
≪印刷層付きセメント硬化体≫
図2に、本発明の第二実施形態に係る印刷層付きセメント硬化体の断面図を示す。第一実施形態と同じ構成には、同じ符号を付して、その説明を省略する。
図2に示すように、本実施形態の印刷層付きセメント硬化体2は、セメント硬化体10と、下地調整剤層20と、印刷層30と、表面保護層40とをこの順に備える。
本実施形態の印刷層付きセメント硬化体2は、印刷層30の表面30Aに表面保護層40をさらに備える点で、第一実施形態の印刷層付きセメント硬化体1と異なる。
<表面保護層>
表面保護層40は、印刷層30の表面30Aに位置する。印刷層付きセメント硬化体2は、表面保護層40を有することで、印刷層30の耐候性をより高められる。
表面保護層40は、表面保護剤(上塗剤)の硬化物である。
表面保護剤としては、例えば、シリコン系表面保護剤、水性シリコン系表面保護剤、フッ素系表面保護剤等が挙げられる。
表面保護剤としては、印刷層30の耐候性を高める効果により優れることから、水性シリコン系表面保護剤、フッ素系表面保護剤が好ましい。
表面保護剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、「シリコン系表面保護剤」とは、表面保護剤を構成する樹脂の主成分がアクリルシリコン樹脂である表面保護剤のことをいう。ここで、「アクリルシリコン樹脂」とは、アクリル系モノマーに由来する化学構造を含むシリコン樹脂のことをいう。アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はこれらの混合物等が挙げられる。
「水性シリコン系表面保護剤」とは、シリコン系表面保護剤のうち、下記濁度測定方法で測定される濁度保持率が90%以上である表面保護剤のことをいう。なお、濁度が大きいほど水系溶剤に対する分散度合いが良好であることを意味し、濁度が小さい表面保護剤は、水系溶剤中で沈殿し、水系溶剤に対する分散度合いが小さい。
(濁度測定方法)
室温(20℃)で、50gの水系溶剤(エタノール)に5gの表面保護剤を添加し、よく撹拌して静置した直後に濁度計(ハンナインスツルメンツ社製、ポータブル濁度計、HI93703)で測定した濁度に対する、90分間経過後の分散液を再び測定したときの濁度の割合を本明細書における濁度保持率(%)とする。
本明細書において、「フッ素系表面保護剤」とは、表面保護剤を構成する樹脂がフッ素を含有する樹脂である表面保護剤のことをいう。フッ素を含有する樹脂としては、例えば、4フッ化エチレン(テトラフルオロエチレン)に由来する樹脂、トリフルオロエチレンに由来する樹脂、ジフルオロエチレンに由来する樹脂等が挙げられる。
フッ素系表面保護剤において、フッ素の含有量は、炭素原子の物質量1モルに対して0.1モル以上が好ましく、0.5モル以上がより好ましく、1モル以上がさらに好ましい。フッ素系表面保護剤におけるフッ素の含有量が上記下限値以上であると、印刷層30の耐候性を高める効果により優れる。フッ素系表面保護剤におけるフッ素の含有量は、特に限定されないが、例えば、3モルとされる。
フッ素系表面保護剤におけるフッ素の含有量は、例えば、プロトン核磁気共鳴(HNMR)等により求めることができる。
表面保護層40の厚さは、例えば、0.1~10mmが好ましく、1~5mmがより好ましい。表面保護層40の厚さが上記下限値以上であると、印刷層30の耐候性をより高められる。表面保護層40の厚さが上記上限値以下であると、印刷層付きセメント硬化体2の意匠性をより高められる。
表面保護層40の厚さは、印刷層付きセメント硬化体2の厚さ方向の断面を顕微鏡等で観察することにより求められる。
≪印刷層付きセメント硬化体の製造方法≫
本実施形態の印刷層付きセメント硬化体2の製造方法は、印刷層30の表面30Aに表面保護剤を塗布して表面保護層40を形成する工程をさらに有する。
印刷層30の表面30Aに表面保護剤を塗布して表面保護層40を形成する工程は、表面保護剤を塗布する工程と、塗布した表面保護剤を乾燥させる工程と、を有する。
表面保護剤を塗布する工程は、特に限定されず、例えば、印刷層30の表面30Aに表面保護剤を刷毛等で塗布する方法、表面保護剤を噴霧する方法、印刷層30の表面30Aを表面保護剤に浸漬する方法、表面保護剤を浸み込ませたシート体を印刷層30の表面30Aに貼付する方法等が挙げられる。
表面保護剤を塗布する際の表面保護剤塗布量は、特に限定されず、例えば、0.01~1kg/mが好ましく、0.05~0.5kg/mがより好ましい。表面保護剤塗布量が上記下限値以上であると、印刷層30の耐候性をより高められる。表面保護剤塗布量が上記上限値以下であると、印刷層付きセメント硬化体2の意匠性をより高められる。
なお、表面保護剤を塗布する際は、表面保護層40の形成をより促進できることから、上記の表面保護剤塗布量となるまで2~3回に分けて表面保護剤を塗布することが好ましい。
塗布した表面保護剤を乾燥させる工程における乾燥温度としては、例えば、20~60℃が好ましく、30~50℃がより好ましい。乾燥温度が上記下限値以上であると、塗布した表面保護剤の硬化がより促進される。乾燥温度が上記上限値以下であると、塗布した表面保護剤の変質等を抑制できる。
塗布した表面保護剤を乾燥させる工程における乾燥時間としては、例えば、1~24時間が好ましく、2~12時間がより好ましい。乾燥時間が上記下限値以上であると、塗布した表面保護剤を充分に硬化できる。乾燥時間が上記上限値以下であると、印刷層付きセメント硬化体2の生産性をより高められる。
表面保護剤を塗布した後、塗布した表面保護剤を乾燥することで、表面保護剤が硬化し、表面保護層40が得られる。
表面保護層40は、表面保護剤を塗布する工程と、塗布した表面保護剤を乾燥させる工程と、を1回ずつ行うことで得られてもよく、表面保護剤を塗布する工程と、塗布した表面保護剤を乾燥させる工程と、を2~3回行うことで得られてもよい。表面保護層40の形成をより促進できることから、表面保護層40は、表面保護剤を塗布する工程と、塗布した表面保護剤を乾燥させる工程と、を2~3回行うことで得られることが好ましい。
本発明の印刷層付きセメント硬化体は、セメント硬化体の表面の表面粗さが1.0μm以上であるため、印刷層の付着性をより高められる。
本発明の印刷層付きセメント硬化体は、表面に印刷層を備えるため、自由な色彩や模様を実現できる。
本発明の印刷層付きセメント硬化体は、表面に印刷層を備えるため、意匠性をより高めることができ、外観を美麗にできる。
以上、本発明の印刷層付きセメント硬化体及び印刷層付きセメント硬化体の製造方法について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、印刷層付きセメント硬化体1は、下地調整剤層20を有するが、印刷層付きセメント硬化体は、下地調整剤層を有しなくてもよい。しかし、印刷層の付着性をより高められることから、印刷層付きセメント硬化体は、下地調整剤層を有することが好ましい。
例えば、印刷層付きセメント硬化体1における印刷層30は単層であるが、印刷層は、2層以上が積層されていてもよい。
例えば、印刷層付きセメント硬化体1における印刷層30は、セメント硬化体10の表面10Aの全面に形成されているが、印刷層は、セメント硬化体の表面の一部に設けられていればよい。
印刷層付きセメント硬化体は、印刷層の表面に装飾層をさらに有していてもよい。
例えば、印刷層付きセメント硬化体2は、表面保護層40を有するが、印刷層付きセメント硬化体は、表面保護層を有していなくてもよい。しかし、印刷層の耐候性をより高め、印刷層の付着性をより高められることから、印刷層付きセメント硬化体は、表面保護層を有することが好ましい。
例えば、印刷層付きセメント硬化体2における表面保護層40は、印刷層30の表面30Aの全面に形成されているが、表面保護層は、印刷層の表面の一部に設けられていればよい。
印刷層付きセメント硬化体は、表面保護層の表面に装飾層をさらに有していてもよい。
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
セメント硬化体として、縦105mm×横154mm×厚さ14mmのモルタル板を用いた。モルタル板の組成は、水セメント比(W/C)50%、容積比はセメント1に対し、水1.57、細骨材3.65、重量比は水1に対し、セメント2、細骨材6とした。
印刷層を形成するインクは、UVプリンタで使用されるUVインクを使用した。
下地調整剤は、UVプライマー、オレフィン系下地調整剤、ウレタン系下地調整剤、エポキシ系下地調整剤A、エポキシ系下地調整剤B、アクリル系下地調整剤の6種類の下地調整剤を用いた。
モルタル板の表面を紙やすり(番手#800、#400、#80)、ワイヤブラシ、ダイヤモンドで研磨して、表面粗さを調整した。それぞれのモルタル板の表面粗さは、0.7μm、1.2μm、3.5μm、7.0μm、12μmであった。モルタル板の表面粗さは、評価長さを4mmとして、デジタルマイクロスコープを用いて無作為に測定した12点の平均値とした。
[実験例1]
表面粗さを調整したモルタル板を用い、エポキシ系下地調整剤Aを刷毛を用いて0.07~0.25kg/m塗布し、室温(20℃)で6時間乾燥し、下地調整剤層を形成した。30°の刃を有するカッターナイフを用いて、下地調整剤層の表面に25マスの直角の格子パターン(一辺1mm)の切込みを入れた。次に、幅25mmの付着テープを切込みを入れた箇所に貼付け、60°の角度で付着テープを引きはがした。付着テープを引きはがした後の格子パターンを目視で確認し、25マス全部が剥離した場合を100%として、下地調整剤層が剥離したマスの数から剥離率を算出した。
次に、下地調整剤層の表面にUVプリンタを用いてUVインクを塗布し、厚さ8~40μmの印刷層を設けた。下地調整剤層の剥離率を算出した際と同様の方法で、印刷層の剥離率を算出した。結果を図3に示す。
図3に示すように、印刷層の有無にかかわらず、Ra=0.7μmの場合は、剥離率が大きく、Raが1.2μm以上の場合は、剥離率が0%であった。なお、剥離率が15%以下の場合、印刷層又は下地調整剤層の付着性は良好であると判断した。
図3の結果から、下地調整剤としてエポキシ系下地調整剤Aを用いた場合、Raが1.2μm以上で、印刷層の付着性が良好であることが確認できた。
[実験例2]
下地調整剤としてオレフィン系下地調整剤を用いた以外は、実験例1と同様にして下地調整剤層及び印刷層の剥離率を算出した。結果を図4に示す。
図4に示すように、下地調整剤層の剥離率は、Raの値によらず0%であった。
また、印刷層の剥離率は、Raが1.2μm以上で15%以下となり、下地調整剤としてオレフィン系下地調整剤を用いた場合、Raが1.2μm以上で、印刷層の付着性が良好であることが確認できた。
[実験例3]
下地調整剤としてウレタン系下地調整剤を用いた以外は、実験例1と同様にして下地調整剤層及び印刷層の剥離率を算出した。結果を図5に示す。
図5に示すように、印刷層の有無にかかわらず、Ra=0.7μmの場合は、剥離率が大きく、Raが1.2μm以上の場合は、剥離率が15%以下であった。
図5の結果から、下地調整剤としてウレタン系下地調整剤を用いた場合、Raが1.2μm以上で、印刷層の付着性が良好であることが確認できた。
[実験例4]
下地調整剤としてUVプライマーを用いた以外は、実験例1と同様にして下地調整剤層及び印刷層の剥離率を算出した。結果を図6に示す。
図6に示すように、下地調整剤層の剥離率は、Raの値によらず0%であった。
また、印刷層の剥離率は、Raが1.2μm以上で15%以下となり、下地調整剤としてUVプライマーを用いた場合、Raが1.2μm以上で、印刷層の付着性が良好であることが確認できた。
[実験例5]
下地調整剤としてエポキシ系下地調整剤Bを用いた以外は、実験例1と同様にして下地調整剤層及び印刷層の剥離率を算出した。結果を図7に示す。なお、「エポキシ系下地調整剤B」は、エポキシ系下地調整剤Aと品番が異なるものである。
図7に示すように、下地調整剤層の剥離率は、Raの値によらず0%であった。
印刷層の剥離率は、Raが0.7μmと1.2μmの場合に15%超となっており、下地調整剤としてエポキシ系下地調整剤Bを用いた場合、Raが3.5μm以上で、印刷層の付着性が良好であることが確認できた。
[実験例6]
下地調整剤としてアクリル系下地調整剤を用いた以外は、実験例1と同様にして下地調整剤層及び印刷層の剥離率を算出した。結果を図8に示す。
図8に示すように、下地調整剤としてアクリル系下地調整剤を用いた場合、Raが3.5μm以上で、印刷層の付着性が良好であることが確認できた。
実験例1~6の結果から、モルタル板表面のRaが12μmの場合、下地調整剤層及び印刷層の剥離率は0%であり、剥離しないことが分かった。
モルタルの表面をケルヒャー社製の高圧水洗浄機(常用吐出圧力8MPa、ブラスト装置)で処理をするとRaの平均が8.06μmであった。このことから、実際の施工において、高圧水洗浄機を用いてセメント硬化体の表面を処理することで、充分な付着効果を得られることが考えられる。
各実験例の下地調整剤層及び印刷層の剥離率のばらつきを示す指標として、標準偏差を示すグラフを図9、図10に示す。
グラフ中、「なし」は、モルタル板の表面の粗さを調整していないサンプル、「#800」は、番手800の紙やすりで表面を粗化したもの、「#400」は、番手400の紙やすりで表面を粗化したものを示す。「なし」及び「#800」におけるモルタル板表面のRaは、約0.6μm、「#400」におけるモルタル板表面のRaは、約1.0μmであった。
図9、図10に示すように、「なし」及び「#800」においては、「#400」に比べて標準偏差が大きいことが確認できた。これは、モルタル板表面の場所によって剥離率がばらつくことを示しており、品質にばらつきが生じる可能性が有ることを示している。一方、「#400」では、下地調整剤としてエポキシ系下地調整剤B、アクリル系下地調整剤を用いた場合を除き、標準偏差が小さくなっており、モルタル板表面のRaを調整することで、品質のばらつきを低減できることが確認できた。
[実験例7]
セメント硬化体として、縦105mm×横154mm×厚さ14mmのモルタル板を用いた。モルタル板の組成は、水セメント比(W/C)50%、容積比はセメント1に対し、水1.57、細骨材3.65、重量比は水1に対し、セメント2、細骨材6とした。
表面粗さRaを5μmに調整したモルタル板を用い、エポキシ系下地調整剤Aを刷毛を用いて0.07~0.25kg/m塗布し、室温で6時間乾燥し、下地調整剤層を形成した。次に、下地調整剤層の表面にUVプリンタを用いてUVインクを塗布し、厚さ100μmの印刷層を設けた。印刷層は、1層目に白(wp)を印刷し、2層目にシアン(c)、マゼンダ(m)、イエロー(y)、黒(k)又は白(w)の5種類を使用した。2層目の印刷層の表面に、表面保護剤(上塗剤)を刷毛を用いて0.1~0.3kg/m塗布し、室温で24時間乾燥し、表面保護層を形成し、測定サンプルとした。表面保護剤は、シリコン系表面保護剤(以下、単に「シリコン系」ともいう。)、水性シリコン系表面保護剤(以下、単に「水性シリコン系」ともいう。)、フッ素系表面保護剤(以下、単に「フッ素系」ともいう。)の3種類を用いた。
促進耐候性試験機(メタルハライドランプ)を使用し、UV照射4時間、結露2時間を1サイクルとして、50サイクル終了時に以下の測定を行った。測定した色は、2層目のシアン、マゼンダ、イエロー、黒、白及び1層目の白の6種類を比較した。
(光沢保持率)
JIS K5600-4-7:1999「塗料一般試験方法-第4部:塗膜の視覚特性-第7節:鏡面光沢度」に準拠して、各測定サンプルの鏡面光沢度を測定し、イニシャルとして測定していた初期状態(促進耐候性試験機に入れる前の状態)の鏡面光沢度で、50サイクル終了時の鏡面光沢度を除して、光沢保持率(以下、単に「保持率」ともいう。)(%)を算出した。保持率は、各測定サンプルの各色について3点測定した算術平均値とした。保持率は、初期状態の鏡面光沢度を100%とし、劣化後にどれだけ鏡面光沢度を保持しているかの割合で評価した。結果を図11に示す。保持率が高いほど、耐候性に優れる。
(色差)
JIS K5600-4-6:1999「塗料一般試験方法-第4部:塗膜の視覚特性-第6節:測色(色差の計算)」に準拠して、各測定サンプルの色差(△Eab)を測定し、50サイクル終了時の色差と初期状態の色差との差を算出した。色差は、各測定サンプルの各色について3点測定した算術平均値とした。色差は、見た目の色の違いであり、紫外線や熱や水分等による色の劣化の度合いを評価した。日本産業規格に、認められる色差の範囲が示されている。AAA級許容差(色差0.4以上0.8以下)、AA級許容差(色差0.8超1.6以下)、A級許容差(色差1.6超3.2以下)、B級許容差(色差3.2超6.5以下)、C級許容差(色差6.5超13.0以下)、D級許容差(色差13.0超15.0以下)の6段階で色差が示される。結果を図12に示す。色差が小さいほど、耐候性に優れる。
(接触角)
JIS K5600-1-7:2014「塗料一般試験方法-第1部:通則-第7節:膜厚」に準拠して、各測定サンプルの接触角を測定し、50サイクル終了時の接触角と初期状態の接触角との差を算出した。接触角は、各測定サンプルの各色について3点測定した算術平均値とした。接触角は、固体の表面と液体との濡れ性の評価指標で、表面保護剤の撥水性や親水性の劣化の度合いを評価した。結果を図13に示す。接触角(°)の差が小さいほど、耐候性に優れる。
図11に示すように、フッ素系は、どの色も80%程度の保持率を維持していた。水性シリコン系は、1層目の白(wp)は、保持率100%、2層目のマゼンダ(m)、黒(k)、白(w)は、保持率80%程度、2層目のシアン(c)、イエロー(y)は、保持率60%程度であった。シリコン系は、保持率40~65%程度であった。フッ素系と水性シリコン系とが良好な結果であった。
図12に示すように、黒及び白は、表面保護剤の種類によらず色差の変化が小さかった。イエローは、色差の変化が大きく、劣化が激しいことが分かった。
表面保護剤を比較した場合、フッ素系が最も良好で、イエロー以外は評価B(B級許容差)の基準をクリアしていた。評価Bは、日本産業規格にて、印象レベルでは同じ色として扱える範囲と定められている。シリコン系と水性シリコン系については、イエロー以外は、評価C(C級許容差)の基準をクリアしていた。評価Cは、日本産業規格の色鉛筆や水彩絵の具等の規格に相当する。
図13に示すように、シリコン系とフッ素系は、撥水性の表面保護剤であるが、接触角の差が大きく、撥水性が失われていることが確認できた。水性シリコン系は、親水性の表面保護剤であり、接触角が減少しているため、親水性が大きくなり、初期状態よりも親水性に優れ、良好な状態であった。よって、3種類の表面保護剤を比較した場合、水性シリコン系が良好な結果であり、次いでフッ素系が良好な結果であった。
[実験例8]
実験例7と同様に測定サンプルを作製し、屋外に1年間曝露し、耐候性試験を行った。実験例7と同様に、耐候性試験後の保持率、色差、接触角を測定し、測定サンプルの表面の劣化の度合いを評価した。結果を図14~図16に示す。
図14~図16に示すように、光沢保持率は、フッ素系が良好な結果であった。色差においても、フッ素系の結果が良好であった。また、接触角においては、水性シリコン系の結果が良好であり、実験例7と同様の傾向であった。
1,2…印刷層付きセメント硬化体、10…セメント硬化体、10A…セメント硬化体の表面、20…下地調整剤層、30…印刷層、30A…印刷層の表面、40…表面保護層

Claims (10)

  1. セメント硬化体と、
    前記セメント硬化体の表面の少なくとも一部に設けられた印刷層と、を備え、
    前記セメント硬化体の表面の表面粗さ(Ra)が1.0μm以上である、印刷層付きセメント硬化体。
  2. 前記印刷層の表面の少なくとも一部に設けられた表面保護層をさらに備える、請求項1に記載の印刷層付きセメント硬化体。
  3. 前記印刷層がUVインクからなる、請求項1又は2に記載の印刷層付きセメント硬化体。
  4. 前記セメント硬化体と前記印刷層との間に、下地調整剤からなる下地調整剤層を有する、請求項1又は2に記載の印刷層付きセメント硬化体。
  5. 前記下地調整剤が、UVプライマー、オレフィン系下地調整剤及びウレタン系下地調整剤から選択される1種以上である、請求項4に記載の印刷層付きセメント硬化体。
  6. 前記印刷層と前記セメント硬化体との下記付着性試験における剥離率が15%以下である、請求項1又は2に記載の印刷層付きセメント硬化体。
    <付着性試験>
    JIS K5600-5-6:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第6節:付着性(クロスカット法)」に基づき、印刷層の表面に30°の刃を有する単一刃切込み工具を用いて25マスの直角の格子パターンの切込みを入れ、幅25mmの付着テープを切込みを入れた箇所に貼付け、60°の角度で前記付着テープを引きはがした際の前記格子パターンを目視で確認し、25マス全部が剥離した場合を100%として、印刷層が剥離したマスの数から剥離率を算出する。
  7. セメント硬化体の塗布面の表面粗さを調整する工程と、
    前記塗布面にインクを塗布して印刷層を形成する工程と、を有する、印刷層付きセメント硬化体の製造方法。
  8. 前記印刷層の表面に表面保護剤を塗布して表面保護層を形成する工程をさらに有する、請求項7に記載の印刷層付きセメント硬化体の製造方法。
  9. 前記表面粗さを調整する工程が、前記セメント硬化体の表面を粗化する工程を含む、請求項7又は8に記載の印刷層付きセメント硬化体の製造方法。
  10. 表面粗さを調整した前記セメント硬化体の表面に、下地調整剤を塗布する工程をさらに有する、請求項7又は8に記載の印刷層付きセメント硬化体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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