JP2023159677A - 溶融めっき鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温環境中に保持した場合でも、めっき層の劣化が少なく加工箇所の耐パウダリング性が良好な溶融めっき鋼材を提供する。【解決手段】鋼材の表面に配置されためっき層とを有し、鋼材が、鋼板、鋼線材または鋼線であり、Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び300mAである条件で測定した、めっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgZn2のX線回折ピークの角度から求められる2θ1を式(A-1)で定義した場合に、式(A-2)を満足する、溶融めっき鋼材を採用する。2θ1={2θ(112)-40.47}+{2θ(201)-41.31}+{2θ(004)-42.24}+{2θ(202)-45.38} …(A-1)2θ1≦0.07 …(A-2)ただし、式(A-1)における2θ(hkl)は(hkl)面の面方位に対応するX線回折ピークの最高強度の回折角度であり、h、k、lはミラー指数である。【選択図】なし

Description

本発明は、溶融めっき鋼材に関する。
鋼材の防食手段として、鋼材の表面にZn系めっき層を備える手法がある。この手法によれば、ステンレス鋼と比較しても比較的安価な方法で、鋼材に長期間の耐食性を付与することができる。従って、Zn系めっき層が備えられためっき鋼材は、土木・建材分野で広く普及している。土木・建材分野で使用されるめっき鋼材には、大型商品としての利用や、大量生産が求められる。そのため、土木・建材分野で使用されるめっき鋼材は、大量生産に適した溶融めっきラインによって製造されるめっき鋼材が好適に用いられる。溶融めっきラインによって製造されるめっき鋼材は、コイル状またはフープ状の形態で供給される。
めっき鋼材の防食期間を長くするためには、鋼材表面に、腐食減量(年間当たりのめっき層の損耗量)が少ないめっき層を、厚く形成する必要がある。具体的には、鋼材の表面に厚さ10μm以上(片面50g/m以上の付着量)のめっき層を鋼材表面に付着させる必要がある。しかし、連続溶融めっきラインで製造されるめっき鋼材のめっき層の厚みには制限がある。連続溶融めっきラインでは、溶融めっき浴から鋼材を引き揚げる際にめっき層を凝固させるが、分厚いめっき層は重力によって垂れ下がってしまう。従って、厚さ100μm超(片面当たり500g/mのめっき層を連続溶融めっきラインで製造することは困難である。そのため、めっき層の耐食性を確保するために、Al、Mgなどの合金系元素を亜鉛に含有させて、めっき層の高耐食化が広くなされている。
例えば特許文献1、2、3には、Znめっき層中にAl、Mgなどの合金元素が加えられた高耐食性めっき鋼材が記載されている。Al、Mg等の成分元素の濃度が高いほど、鋼材の耐食性が高まる傾向にある。ただし、合金元素を含まないZnめっき層と比較すると、これらの合金系めっき層は加工性が乏しい傾向にある。
また、特許文献4及び5に記載されているように、微量のMgを含むめっき成分では、ZnとMgとからなる硬質の金属間化合物MgZn相が生成し、加工性が悪化する問題があることが示唆されている。めっきの後工程でめっき鋼材に対して各種加工がなされた際に、めっき層に割れが生じる場合がある。特に、比較的厚いめっき層を有するめっき鋼材において、めっき層に割れが生じると、亀裂の進展に伴ってめっき層の剥離(パウダリング)が起こり、耐食性が低下し、耐食性の低下に伴って鋼材強度が低下し、更には、鋼材の延性の低下や疲労特性の低下が起きる場合がある。従って、めっき鋼材には、加工を受けた場合であってもめっき層に割れが発生しない程度の優れた加工性が求められる。
近年、Al、Mg及びZnを含む高耐食性のめっき鋼材は、様々な分野、用途で使用されるようになっている。特に、屋内外の高温多湿環境など、従来まで想定されていなかった環境下でも使用可能なめっき鋼材が求められている。こうした高温多湿環境下で使用されるめっき鋼材には、めっき層の劣化や腐食の進行を遅らせることが求められる。特に、鋼材の主要成分であるFeに比べて、めっき層に含まれるZnは融点が低く、高温環境中において様々な状態変化が起こりうるため、めっき層は高温時の経時的な健全性を維持することが重要になっている。
国際公開第2013/002358号 特開2003-129208号公報 国際公開第2016/140370号 特開2021-172834号公報 国際公開第2019/124485号
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、Zn-Al-Mg系合金めっき層において、高温環境中に保持した場合であっても、めっき層の劣化が少なく加工箇所の耐パウダリング性が良好な、溶融めっき鋼材を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 鋼材と、前記鋼材の表面に配置されためっき層とを有する溶融めっき鋼材であり、
前記鋼材が、鋼板、鋼線材または鋼線であり、
前記めっき層の平均化学組成が、質量%で、
Al:15.0%超、40.0%未満、
Mg:1.0%超、5.0%以下、
Sn:0%以上、0.7%以下、
Bi:0%以上、0.3%以下、
In:0%以上、0.3%以下、
Sn、Bi及びInの合計量ΣX:0%以上、0.7%以下、
Ca:0%~0.6%、
Y :0%~0.3%、
La:0%~0.3%、
Ce:0%~0.3%、
Sr:0%~0.3%、
Li:0%~0.3%、
Ca、Y、La、Ce、Sr及びLiの合計量ΣYa:0%以上、0.6%以下、
Ni:0%以上、1.0%、
Cu:0%以上、1.0%、
Ag:0%以上、0.25%、
Sb:0%以上、0.25%、
Pb:0%以上、0.25%、
Ni、Cu、Ag、Sb及びPbの合計量のΣYb:0%以上、1.0%以下、
B :0%以上、0.5%以下、
P :0%以上、0.5%以下、
B及びPの合計量ΣYc:0%以上、0.5%以下、
Si:0%~1.0%、
Cr:0%以上、0.25%以下、
Ti:0%以上、0.25%以下、
Co:0%以上、0.25%以下、
V :0%以上、0.25%以下、
Nb:0%以上、0.25%以下、
Mn:0%以上、0.25%以下、
Zr:0%以上、0.25%以下、
Mo:0%以上、0.25%以下、
W :0%以上、0.25%以下、
Cr、Ti、Co、V、Nb、Mn、Zr、Mo及びWの合計量ΣZ:0%以上、0.25%以下、
Fe:0%以上、5.0%以下、
残部:Zn及び不純物、からなり、
Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び300mAである条件で測定した、前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgZnのX線回折ピークの角度から求められる2θを式(A-1)で定義した場合に、式(A-2)を満足する、溶融めっき鋼材。
2θ={2θ(112)-40.47}+{2θ(201)-41.31}+{2θ(004)-42.24}+{2θ(202)-45.38} …(A-1)
2θ≦0.07 …(A-2)
ただし、式(A-1)における2θ(hkl)は(hkl)面の面方位に対応するX線回折ピークの最高強度の回折角度であり、h、k、lはミラー指数である。
[2] Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び300mAである条件で測定した、前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、ZnのX線回折ピークの角度から求められる2θを式(B-1)で定義した場合に、式(B-2)を満足する、[1]に記載の溶融めっき鋼材。
2θ={2θ(002)-36.30}+{2θ(101)-43.23}+{2θ(102)-54.34} …(B-1)
2θ≦0.18 …(B-2)
ただし、式(B-1)における2θ(hkl)は(hkl)面の面方位に対応するX線回折ピークの最高強度の回折角度であり、h、k、lはミラー指数である。
[3] 前記めっき層の平均化学組成において、
Si:0.05%超、1.0%以下であり、Si>Ca+0.05を満足し、
前記めっき層中にMg-Si系金属間化合物が含有される、[1]または[2]に記載の溶融めっき鋼材。
[4] 前記めっき層の平均化学組成において、
Si:0.05%超、0.6%未満であり、Ca:0.05%超0.6%以下であり、
前記めっき層中にAl-Ca-Si系金属間化合物が含有される、[1]または[2]に記載の溶融めっき鋼材。
[5] 前記めっき層の平均化学組成において、
Si:0.05%超、1.0%以下であり、Ca:0.05%超0.6%以下であり、Si>Ca+0.05を満足し、
前記めっき層中にMg-Si系金属間化合物およびAl-Ca-Si系金属間化合物が含有される、[1]または[2]に記載の溶融めっき鋼材。
[6] 前記めっき層には、前記鋼材表面に接するAl-Fe系界面合金層が含まれ、
前記Al-Fe系界面合金層の厚みが、前記めっき層全体の厚みに対して10%未満、かつ、2μm以下である、[1]乃至[5]の何れか一項に記載の溶融めっき鋼材。
本発明によれば、150℃程度の高温環境中に保持した場合であっても、めっき層の劣化が少なく、加工箇所の耐パウダリング性が良好な、溶融めっき鋼材を提供できる。
図1は、溶融めっき鋼線の耐パウダリング性の評価方法を説明する断面模式図。
本発明者らは、Al、Mg及びZnを含有するめっき層を備え、連続式の溶融亜鉛めっき法により製造される溶融めっき鋼材(鋼板、鋼線材、鋼線)について、高温環境下でめっき層内に発生する亀裂を減少させるための鋼材の成分設計、製造方法、これらの組み合わせによるめっき層構成相の制御を鋭意検討した。
めっき層にMgが含有されると、めっき層の組織中にMgZn相が形成される。この化合物はめっき層中で比較的硬質であり、破壊しやすい結晶構造である。MgZn相の含有量を制限すれば、溶融めっき鋼材に対する加工に伴うめっき層の変形時の破壊を抑制することが可能である。よって、MgZnの晶出をなるべく抑制する成分系を採用する必要がある。
ところで、めっき層中でのMgZn相は、本来、非平衡相である。このため、MgZn相を含むめっき層が150℃程度の比較的高温に晒されると、MgZn相が容易にMgZn11(平衡相)に変態する。MgZn11は、極めて脆い化合物である。また、MgZnからMgZn11への変態は結晶構造の変化を伴う。このため、MgZnからMgZn11への結晶構造の変化に伴い、めっき層中に体積変化が生じてしまい、めっき層に亀裂を生み出すおそれがあり、更には、めっき層の剥離を引き起こすおそれがある。
そこで、本発明者らが検討したところ、めっき層形成時のMgZn相の結晶構造を改質する、具体的にはMgZn相の結晶格子の面間隔を通常よりも広くすることで、MgZnからMgZn11への変態を抑制できることを見出した。これにより、高温保持後のめっき層における亀裂の発生を抑制でき、めっき層の剥離を防止できる。すなわち、高温状態でもめっき層の劣化を防止することができる。
さらに、めっき層にAlが含有されると、めっき層の凝固時にAl相中へのZnの含有が活発になり、Znを過飽和に含有するAl相が凝固段階で形成することがある。Znを過飽和に含有するAl相が高温に晒されると、Zn相及びAl相の2相に分離し、更にはめっき層内でウィスカ状のZn相を形成して体積膨張を引き起こし、めっき層に亀裂を生じさせる場合がある。そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、めっき層形成時のZnの結晶構造について、Znの格子間隔を広くすることで、ウィスカ状のZn相の発生を抑制できることを見出した。これにより高温保持後のめっき層における亀裂の発生をより抑制して、めっき層の劣化をさらに改善できる。
そのほか、様々な元素について、めっき層内での効果を検証し、MgZn11や、ウィスカへの変態を抑制し、めっき層中の亀裂を大幅に減らす元素や、加工時に亀裂起点として問題となる界面合金層の形成の抑制に効果のある元素などの検証も行い、めっき層の化学成分の最適化を行った。
更には、めっき層の亀裂の抑制によって、溶融めっき鋼材が鋼板である場合は、加工部の耐食性を改善できるようになる。また、溶融めっき鋼材が鋼線材または鋼線である場合は、鋼線材または鋼線の耐食性、耐疲労特性を改善できるようになる。
以下、本発明の実施形態に係る溶融めっき鋼材について説明する。
本発明の実施形態の溶融めっき鋼材は、鋼材と、鋼材の表面に配置されためっき層とを有する溶融めっき鋼材であり、鋼材が、鋼板、鋼線材または鋼線であり、めっき層の平均化学組成が、質量%で、Al:15.0%超、40.0%未満、Mg:1.0%超、5.0%以下、Sn:0%以上、0.7%以下、Bi:0%以上、0.3%以下、In:0%以上、0.3%以下、Sn、Bi及びInの合計量ΣX:0%以上、0.7%以下、Ca:0%~0.6%、Y:0%~0.3%、La:0%~0.3%、Ce:0%~0.3%、Sr:0%~0.3%、Li:0%~0.3%、Ca、Y、La、Ce、Sr及びLiの合計量ΣYa:0%以上、0.6%以下、Ni:0%以上、1.0%、Cu:0%以上、1.0%、Ag:0%以上、0.25%、Sb:0%以上、0.25%、Pb:0%以上、0.25%、Ni、Cu、Ag、Sb及びPbの合計量のΣYb:0%以上、1.0%以下、B:0%以上、0.5%以下、P:0%以上、0.5%以下、B及びPの合計量ΣYc:0%以上、0.5%以下、Si:0%~1.0%、Cr:0%以上、0.25%以下、Ti:0%以上、0.25%以下、Co:0%以上、0.25%以下、V:0%以上、0.25%以下、Nb:0%以上、0.25%以下、Mn:0%以上、0.25%以下、Zr:0%以上、0.25%以下、Mo:0%以上、0.25%以下、W:0%以上、0.25%以下、Cr、Ti、Co、V、Nb、Mn、Zr、Mo、Wの合計量ΣZ:0%以上、0.25%以下、Fe:0%以上、5.0%以下、残部:Zn及び不純物、からなり、 Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び300mAである条件で測定した、前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgZnのX線回折ピークの角度から求められる2θを式(A-1)で定義した場合に、式(A-2)を満足する、溶融めっき鋼材である。
2θ={2θ(112)-40.47}+{2θ(201)-41.31}+{2θ(004)-42.24}+{2θ(202)-45.38} …(A-1)
2θ≦0.07 …(A-2)
ただし、式(A-1)における2θ(hkl)は(hkl)面の面方位に対応するX線回折ピークの最高強度の回折角度であり、h、k、lはミラー指数である。
なお、以下の説明において、化学組成の各元素の含有量の「%」表示は、「質量%」を意味する。また、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、「~」の前後に記載される数値に「超」または「未満」が付されている場合の数値範囲は、これら数値を下限値または上限値として含まない範囲を意味する。
めっきの対象となる鋼材について説明する。
鋼材は、例えば主に鋼板、鋼線材または鋼線であるが、そのサイズに特に制限はない。鋼板は、通常の溶融亜鉛めっき工程に適用可能なものであればよい。具体的には、連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)など、溶融金属に浸漬して凝固させる工程で適用可能な鋼板がこれに当てはまる。鋼板のサイズとしては、例えば、板厚10mm以下、板幅2000mm以下のものを適用できるが、鋼板のサイズはこれに限定されるものではない。
鋼線材または鋼線としては、鋼板と同様に連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)などに適用可能なものであればよく、例えば、線径が10mm以下のものが適用可能であるが、サイズはこれに限定されない。
これら鋼板、鋼線材または鋼線を加工(溶接を含む)や、組み合わせをすれば、様々な製品に加工でき、耐食性に優れた鋼構造部材(プレめっき製品)を製造することが可能である。
鋼材の材質には、特に制限はない。鋼材は、例えば、一般鋼、各種金属が薄くめっきされたプレめっき鋼、Alキルド鋼、極低炭素鋼、高炭素鋼、各種高張力鋼、一部の高合金鋼(Ni、Cr等の耐食性強化元素含有鋼等)、軟鋼線、硬鋼線、ばね鋼、スチールコード、ボルト用鋼、橋梁ケーブル用鋼線材などの各種の鋼板、鋼線材、鋼線が適用可能である。
また、鋼板、鋼線材、鋼線の製造工程としては、高炉または電炉による製銑・製鋼工程、熱間圧延工程、酸洗工程、冷間圧延工程、熱処理、伸線加工工程などの一般的な工程が挙げられるが、本実施形態の鋼材は、何れの工程を経たものでもよく、また、各工程の処理条件は限定されない。
次に、めっき層について説明する。本実施形態に係るめっき層は、Zn-Al-Mg系合金層を含む。ZnにAl、Mgなどの合金元素が含有されると耐食性が改善するため、薄膜、例えば、通常のZnめっき層の半分程度で同等の耐食性を有するため、本発明も同じように薄膜でZnめっき層と同等以上の耐食性が確保される。また、めっき層には、Al-Fe系界面合金層を含んでもよい。
Zn-Al-Mg系合金層は、Zn-Al-Mg系合金よりなる。Zn-Al-Mg系合金とは、Zn、Al及びMgを含む三元系合金を意味する。
Al-Fe系界面合金層は、鋼材とZn-Al-Mg系合金層との間にある界面合金層であり、鋼材の表面に接している。
つまり、めっき層は、Zn-Al-Mg系合金層の単層構造であってもよく、Zn-Al-Mg系合金層とAl-Fe系界面合金層とを含む積層構造であってもよい。積層構造の場合、Zn-Al-Mg系合金層は、めっき層の表面を構成する層とすることがよい。
なお、後述するように、めっき原材として、CGLで製造した溶融亜鉛めっき鋼材(形態は鋼板、鋼線材または鋼線)、または、バッチ式溶融亜鉛めっき法で製造した溶融亜鉛合金めっき鋼材(形態は鋼板、鋼線材または鋼線)を使用した場合は、本実施形態に係る溶融めっき鋼材に、めっき原材の界面合金層の痕跡が残る場合がある。一方、めっき原材として、電気亜鉛めっき鋼材(形態は鋼板、鋼線材または鋼線)を使用した場合は、界面合金層の痕跡がほとんど消失して、本実施形態に係る溶融めっき鋼材においてAl-Fe系界面合金層がほとんど確認できない場合もある。特にめっき原材がめっき鋼板である場合は、溶融めっき時のめっき浴に対する通板速度が高くなるため、Al-Fe系界面合金層が薄くなる傾向が強い。また、めっき原材として、Niプレめっき鋼材やSnプレめっき鋼材、Crプレめっき鋼材などを使用した場合は、これらの金属がAl-Fe系界面合金層に混入する場合がある。
Al-Fe系界面合金層によって、鋼材とZn-Al-Mg系合金層とが結合される。Al-Fe系界面合金層の厚みは、溶融めっき鋼材の製造時のめっき浴温や、めっき浴浸漬時間、めっき時の鋼材の通過速度、ワイピング圧力の制御によって厚みの制御が、ある程度可能である。
Al-Fe系界面合金層の形態は、めっき層の第一の要求特性とされる耐食性における寄与は小さいが、溶融めっき鋼材の加工時におけるめっき層の密着性確保と、加工性(亀裂の有無)に影響する。特に、Al-Fe系界面合金層の形態は、加工時のめっき層の剥落の度合いを示す耐パウダリング性に影響する場合がある。通常、Al-Fe系界面合金層の厚みが薄い方が、加工時のめっき層の亀裂発生起点を少なくして耐パウダリング性をより改善できる。このため、使用時に高い加工が付与される可能性のある溶融めっき鋼材では、Al-Fe系界面合金層が極力薄いことが好ましい。具体的には、Al-Fe系界面合金層の厚みは2μm以下とすることが好ましく、1μm以下でもよく、未満より好ましくは0.5μm以下でもよく、0.3μm以下でもよい。これにより、加工時における亀裂の発生を抑制して耐パウダリング性をより改善できる。さらには、めっき層の全体に占めるAl-Fe界面合金層の厚みが平均で10%未満、さらに好ましくは、5%未満とすることが良い。
Al-Fe系界面合金層は、鋼材の表面、具体的には、鋼材とZn-Al-Mg系合金層との間に形成されており、組織としてAlFe相が主相の層である。Al-Fe系界面合金層は、地鉄(鋼板)及びめっき浴の相互の原子拡散によって形成される。製法として連続式の溶融めっき法を用いた場合、Al元素を含有するめっき層では、Al-Fe系界面合金層が形成され易い。本実施形態ではめっき浴中に一定濃度以上のAlが含有されることから、Al-Fe系界面合金層にはAlFe相が最も多く形成する。しかし、原子拡散には時間を要するため、Al-Fe系界面合金層におるFe濃度は均一ではなく、地鉄に近い部分ではFe濃度が高くなる場合もある。そのため、Al-Fe系界面合金層は、部分的には、AlFe相、AlFe相、AlFe相などが少量含まれる場合もある。また、めっき浴中にZnも一定濃度含まれることから、Al-Fe系界面合金層には、Znも、もしくは界面に集積しやすいSiも少量含有される場合がある。
本実施形態では、めっき層中にSiを含有する場合がある。Siは、特にAl-Fe系界面合金層中に取り込まれ、Al-Fe-Si金属間化合物相となる。同定される金属間化合物相としては、AlFeSi相があり、異性体として、α、β、q1,q2-AlFeSi相等が存在する。そのため、Al-Fe系界面合金層では、これらAlFeSi相等が検出されることがある。これらAlFeSi相等を含むAl-Fe系界面合金層をAl-Fe-Si合金層とも称する。なお、この金属間化合物は製法によらず、めっき成分濃度(添加の有無)のみによって確定するので、めっき層にSiが含まれる場合は、確実にSiを含む金属間化合物相が形成する。
また、めっき浴に任意添加元素(Mg、Si、Cr、Ni、Co、Mn、V、Nb、Sn、Bi、In、B、La、Ca、Ce、Y)が含まれる場合、Al-Fe系界面合金層に混入するか、これらの元素を含む金属間化合物として存在する場合がある。例えばNiは、AlNi、もしくはAl-Ca-Si-Ni系金属間化合物を形成することがある。任意添加元素のうち、特に融点が高い元素は、Al-Fe系界面合金層に層状に残存する傾向にある。一方で、Snなどの低融点金属は、痕跡が残りにくく、確認できない場合がある。更には、めっき原材としてNi、Sn、Crなどのプレめっき層を備えた鋼材を使用する場合、Ni、Sn、Crなどが、界面合金層に層状に残存する場合があり、これらの元素を含む金属間化合物として存在する場合がある。
めっき層全体の厚みは、めっき条件に左右されるため、めっき層全体の厚みの上限及び下限については特に限定されるものではない。すなわち、めっき層全体の厚みは、通常の溶融めっき法ではめっき浴の粘性及び比重の影響を受ける。また、めっき浴からの鋼材の引抜速度及びワイピング条件の影響を受ける。鋼線材または鋼線に対して通常の溶融めっき法で形成されるめっき層の厚みの最大値は100μm以下であることが多いので、本実施形態の溶融めっき鋼材のめっき厚は例えば100μm以下でもよい。
なお、本実施形態のめっき層の最表面には、めっき層の構成元素の酸化被膜が1μm未満程度の厚みで形成している場合がある。めっき層に含有される元素は、めっき層表面で酸素と結合することから、酸化被膜には、XPS(X線分光分析)などの表面分析でZn-O、Mg-O、Al-O、Si-O、Ca-Oなどの結合、またはMg-Al-O、Al-Si-Oなどが確認される。エリンガム図などに従い、比較的酸化しやすい元素程、めっき表面に存在する傾向にある。
次に、めっき層の平均化学組成について説明する。めっき層全体の平均化学組成は、めっき層がZn-Al-Mg系合金層の単層構造の場合は、Zn-Al-Mg系合金層の平均化学組成である。また、めっき層がAl-Fe系界面合金層及びZn-Al-Mg系合金層の積層構造の場合は、Al-Fe系界面合金層及びZn-Al-Mg系合金層の合計の平均化学組成である。本発明に定義されるめっき層では、好ましくは、Al-Fe系界面合金層の厚みが、めっき層の全体厚みに対して10%以下と小さいことから、めっき層のFe濃度は5%以内であることが多い。従って、めっき層の平均化学組成は、おおむね、Zn-Al-Mg系合金層の成分とみなしても問題がない。さらには、めっき原材の痕跡も、めっき層の化学成分として残存しにくい。従って、めっき層の平均化学組成と、製造に使用しためっき浴の成分とは、ほぼ同等とみなしてよい。
Al:15.0%超、40.0%未満
Alは、めっき層の主体を構成する元素である。Zn-Al-Mg系めっきでのAlは、めっき層中で主にAl相を形成する。Al相は凝固中、その相内に多量のZnを含有することができる。Al相に含まれるZnは、Al相形成の後に続くMgZnの形成時のZn分配の供給元となり、また、凝固後のZn相の形成にも影響を与える。従って、Alは、MgZn相、Zn相の結晶格子面間隔に直接ないし間接に影響を与える元素である。また、Alがめっき層の主相を構成することにより、めっき層の加工性が向上する。Al濃度が15%未満では、必要な加工性が得られないため、その成分濃度は15.0%超とする。一方、Al濃度が40.0%以上になると、めっき浴の融点が上昇し、Al-Fe反応を抑えることができずにAl-Fe系界面合金層が厚く形成されて加工性が著しく劣化する。従って、Al濃度の上限を40.0%未満とする。
Mg:1.0%超、5.0%以下
Mgは、Znと同様に、めっき層の主体を構成する元素である。Mgは、高耐食化に必要であって、比較的硬質なMgZn相を形成させる。Mg濃度が高い程、MgZn相の形成量が多くなる。Mg濃度が5.0%超では、MgZn相の含有量が多くなり、めっき層の加工性確保が難しくなることから、Mg濃度を5.0%以下とする。MgZn相は、高温保持後に、きわめて脆いMgZn11を形成する場合があり、MgZn11が生成する確率はMgZnの形成量に依存する。このため、加工性の観点からは、Mg濃度が低い方が好ましい。ただし、Mgは、その濃度によるが、めっき浴の融点を下げて、Al-Fe間の合金化反応を遅延させる効果がある。Mg濃度が1.0%以下では、Al-Fe反応が極めて活発になってAl-Fe系界面合金層の形成量が著しく増大し、Al-Fe系界面合金層による加工性の劣化が引き起こされる。従って、Mg濃度を1.0%超とする。
本実施形態に係るめっき層において、Zn、Al及びMgは、めっき層を構成する必須元素であり、以下に説明するその他の元素は任意元素である。各任意元素は、それぞれの性質によって、めっき層の亀裂発生に対する影響の与え方が異なる。特性毎に同じ性質をもつ元素については群を分ける。
元素群X
Sn:0%以上、0.7%以下
Bi:0%以上、0.3%以下
In:0%以上、0.3%以下
Sn、Bi及びInの合計量ΣX:0%以上、0.7%以下
元素群X(Sn、Bi、In)の各元素は、めっき層に含有されることによってめっき層の軟化を促す元素である。Sn、Bi、Inは、任意に含有できる元素であるので、それぞれの含有量を0%以上とする。Snを含有させると、めっき層中にMgSnが形成する傾向にある。Biは、MgBi、InはMgInなども形成する。これらの元素はMgZn相より軟質で、加工性もよく、添加により明瞭に加工性の向上が確認できる元素である。それぞれの元素は、含有量の上限があり、多量に含有させると、MgZn相の結晶構造が崩れて、めっき層の加工性が極めて悪くなる傾向があるため、その上限濃度は、Snにおいては0.7%以下、Bi、Inについては0.3%以下とし、さらにその合計量ΣXも0.7%以下に制限する必要がある。
次に、以下に説明する元素群Ya、Yb及びYcの各元素は、何れも任意添加元素であり、その下限を0%以上とするが、めっき層に含有されると、MgZn相のMgまたはZnに置換して含有され、直接に、MgZn相の結晶格子の面間隔に影響を与える元素である。これらの元素がMgZn相のMgまたはZnと置換することによって、本来の結晶格子が歪み、面間隔が広がる方にシフトし、高温保持時のMgZn11への変態が抑制され、亀裂発生が抑えられて耐パウダリング性が向上する。
元素群Ya
Ca:0%~0.6%
Y :0%~0.3%
La:0%~0.3%
Ce:0%~0.3%
Sr:0%~0.3%
Li:0%~0.3%
Ca、Y、La、Ce、Sr及びLiの合計量ΣYa:0%以上、0.6%以下
元素群Yaの元素は、互いに共有する効果がある。これらの元素が上記の濃度範囲で含有されると、MgZn相のMgの位置と置換する傾向にあり、高温保持時のMgZnからMgZn11への変態を抑制する効果がある。ただし、これらの元素の合計の含有量が過剰になると、様々な金属間化合物が形成して、亀裂発生頻度が大きくなって耐パウダリング性が低下することから、その合計量ΣYaは0%以上0.60%以下とする。
元素群Yb
Ni:0%以上、1.0%
Cu:0%以上、1.0%
Ag:0%以上、0.25%
Sb:0%以上、0.25%
Pb:0%以上、0.25%
Ni、Cu、Ag、Sb及びPbの合計量ΣYb:0%以上、1.0%以下
元素群Ybの元素は、互いに共通する効果がある。これらの元素が上記の濃度範囲で含有されると、MgZn相のZnの位置と置換する傾向にあり、高温保持時のMgZnからMgZn11への変態を抑制する効果がある。ただし、これらの元素の合計の含有量が過剰になると、様々な金属間化合物が形成して、亀裂発生頻度が大きくなって耐パウダリング性が低下することから、その合計量ΣYbは0%以上1.0%以下とする。
元素群Yc
B :0%以上、0.5%以下
P :0%以上、0.5%以下
B及びPの合計量ΣYc:0%以上、0.5%以下
元素群Ycの元素は、互いに共有する効果がある。これらの元素が上記の濃度範囲で含有されると、MgZn相に侵入型固溶体を形成して、高温保持時のMgZnからMgZn11への変態を抑制する効果がある。ただし、これらの元素の合計の含有量が過剰になると、様々な金属間化合物が形成して、亀裂発生頻度が大きくなって耐パウダリング性が低下することから、その合計量ΣYcは0%以上0.5%以下とする。
Si:0%~1.0%
Siは任意元素であるので、その下限は0%とする。Siは、めっき浴に添加された際にAl-Fe間の合金化反応を抑制して、容易にAl-Fe系界面合金層の厚みを薄くさせる。溶融状態において、Siは原子サイズが小さく、原子間の運動が激しいため、Al-Fe間の反応よりもFe-Si間の反応が活発になる。従って、Al-Fe反応が開始する前に、Feの過度なめっき浴の拡散を抑制することが可能である。
特に本発明においては、加工性の確保が重要であるが、硬質かつ厚いAl-Fe合金層は、僅かな加工においても周囲のめっき層を破壊に至らしめる。従って、製造条件の前提としてAl-Fe合金層は薄くする必要があり、その成長を抑制、さらには、製造において時間的猶予を得るためにもSi添加は有用な手段である。
これにより、比較的薄いめっき層を製造でき、耐パウダリング性を更に向上できるようになる。この効果を得るためには、Si濃度を0.05%以上にするとよい。これは、Al-Fe-Si系化合物が鋼材とAl-Fe系界面合金層との界面近傍に形成することに起因する。なお、実際にAl-Fe合金層に取り込まれるSi濃度はわずかであるため、凝固時に液相側に残ったSiは、その後のめっき凝固反応によって、後述するMg-Si化合物やAl-Ca-Si化合物を形成する。
Siが0.05%超であり、Si>Ca+0.05を満足する場合、Siはめっき層中のMgと結合してMg-Si化合物を形成する。Mg-Si化合物は、Si濃度が0.3%以下までの範囲では、粒状の形態をとるものが多い。Siが0.3%を超えるとMg-Si化合物が塊状に形成する傾向がある。めっき層中にMg-Si化合物が粒状に存在する場合は,Al-Ca-Si化合物と同様にめっき層が硬質粒子によって複合材料的に強化されるため,亀裂親展の抑制の効果が高くなる。ただしその効果は,後述するAl-Ca-Si系化合物よりは効果が小さい。従って、Mg-Si化合物を形成させる場合のSi量は、0.05%超、1.0%以下の範囲でもよく、0.05%超、0.3%以下の範囲でもよい。
Siが0.05%超0.6%未満であり、Caが0.05%超0.6%以下である場合、鋼材とAl-Fe系界面合金層との界面近傍にAl-Ca-Si系化合物が形成し、特にAl-Fe合金化反応が抑制される。さらに、Al-Ca-Si系化合物は、めっき層中に針状に形成して、鋼材に対するめっき層のアンカー効果や、めっき層における亀裂進展の抑制の効果が高くなる。Al-Ca-Si系化合物によるこれらの効果は、めっき層中のCa濃度がSi濃度を超える場合、すなわち、Si<Caを満たす場合に得られやすい。
Siが0.05%超、1.0%以下であり、Caが0.05%超0.6%以下であり、Si>Ca+0.05を満足する場合、Mg-Si化合物およびAl-Ca-Si系化合物が形成する。Mg-Si化合物およびAl-Ca-Si系化合物の両方が形成する場合は、これらの化合物の両方の効果が得られる。
なお、これらの化合物両方が含有され、めっき層自体に十分な亀裂進展効果がある場合は、その効果が十分に確認されない場合もある。
なお、これらのMg-Si化合物、Al-Ca-Si化合物は、断面観察をすれば容易に確認することができ、SEMなどの5000倍程度の視野で、その存在を確認するのが最も簡便である。EPMAにて元素を確認すれば、その位置と成分も簡単に確認できる。
Si濃度が0%の場合は、Mg-Si化合物やAl-Ca-Si化合物は確認されない。
Siの含有によって、Al-Fe系界面合金層中にAl-Fe-Si系化合物が形成し、さらに、Caが含まれる場合はAl-Ca-Si系化合物が形成するが、これらの金属間化合物の形成は、鋼材をめっき浴に浸漬した直後に発生する。すなわち、これらの金属間化合物の形成の有無は、めっき層へのSiの含有の有無、またはめっき層へのSiとCaの含有の有無によって決定する。これらの金属間化合物の形成は、Al-Fe合金化反応と共に早く進展する。Al-Fe-Si系化合物は、Al-Fe界面合金層と比較すると薄膜であって、0.5μm未満の厚みにすることができ、加工性を容易に向上することができる。
元素群Z
Cr:0%以上、0.25%以下
Ti:0%以上、0.25%以下
Co:0%以上、0.25%以下
V :0%以上、0.25%以下
Nb:0%以上、0.25%以下
Mn:0%以上、0.25%以下
Zr:0%以上、0.25%以下
Mo:0%以上、0.25%以下
W :0%以上、0.25%以下
Cr、Ti、Co、V、Nb、Mn、Zr、Mo、Wの合計量ΣZ:0%以上、0.25%以下
元素群Zに含まれる元素は、めっき層中に含有されるAl相に固溶する元素である。元素群Zの元素がめっき浴に含有されると、めっき層の凝固過程においてAl相にZn及びこれらの元素が含有され、凝固仮定の最終段階でAl相から分離して形成するZn相にもこれらの元素が含有されることになる。これにより、高温保持時のZn相からのウィスカの形成が抑制されて、耐パウダリング性がより向上する。ただし、これらの元素の合計の含有量が過剰になると、様々な金属間化合物が形成して、亀裂発生頻度が大きくなって耐パウダリング性が低下することから、その合計量ΣZは0%以上0.25%以下とする。
Fe:0%以上、5.0%以下
本実施形態の溶融めっき鋼材は、連続式の溶融めっき法により製造されるため、製造時にめっき原材からめっき層にFeが拡散する場合がある。前述の通り、本実施形態では、めっき層のAl濃度が高く、Al-Fe系界面合金層が形成される場合があるが、その厚みは薄い。その結果として、めっき層中にFeが最大5.0%まで含有することがあるが、Fe濃度が5.0%以下に制限されていれば、めっき層中の亀裂の発生頻度等に影響はない。よって、Fe含有量は0~5.0%とする。
残部:Zn及び不純物
残部にはZnを含有することが好ましい。本実施形態の溶融めっき鋼材は、汎用性の高いZn系めっき鋼材であるため、めっき層の主相を構成する元素はZnである。
不純物は、原材料に含まれる成分、または、製造の工程で混入する成分であって、意図的に含有させたものではない成分を指す。例えば、めっき層には、鋼材(地鉄)とめっき浴との相互の原子拡散によって、不純物として、Fe以外の成分も微量混入することがある。
めっき層の平均化学組成の同定には、地鉄(鋼材)の腐食を抑制するインヒビターを含有した酸でめっき層を剥離溶解した酸液を得る。次に、得られた酸液をICP発光分光分析法またはICP-MS法で測定することで化学組成を得ることができる。酸種は、めっき層を溶解できる酸であれば、特に制限はない。剥離前後の面積と重量を測定しておけば、めっき付着量(g/m)も同時に得ることができる。めっき付着量(g/m)の算出は、鋼板のみならず、鋼線材または鋼線の場合も可能であり、鋼線材または鋼線の表面積(直径×π×長さ)をもとに、剥離されためっき層の重量からめっき付着量を計算することが可能である。
次に、めっき層に含有される金属間化合物について説明する。本実施形態のめっき層は、Zn-Al-Mg系合金めっきであることから、めっき層中にZn相、Al相、MgZn相が含有される。
MgZn
MgZn相は、めっき層の高耐食化を図るために意図的にめっき層中に形成させる相である。MgZn相の含有により、めっき層の耐食性が飛躍的に向上する。ただし、MgZn自体はLaves相と呼ばれるものであって硬質で比較的脆い物質であり、めっき層の加工性を著しく低下させる傾向にある。そのため、めっき層における含有量が1~5%の範囲になるようにめっき層の化学組成を制限する。これにより、通常の使用状況や加工形態においてめっき層に致命的な欠陥を与えることは少ない。
ところで、平衡状態では、MgZnは本来、析出しにくい物質である。しかしながら、めっき層の凝固過程を経ることによって、めっき層には、非平衡相であるMgZnが生成する。一方で、MgとZnとの金属間化合物のうちの平衡相の一つに、MgZn11相がある。本発明者らが、めっき層を100~150℃の高温状態に保持したところ、めっき層中のMgZn相がMgZn11相に変態することが見出された。この変態時には結晶構造も変化する。
MgZn11相は、MgZn相よりも更に硬質で脆い相である。また、高温保持によってめっき層中に形成したMgZn相の周囲には、形成時の体積変化に伴い、亀裂が集積することが確認される。従って、MgZnを含むめっき層を高温に保持すると、めっき層に亀裂が発生しやすくなる。この亀裂がAl-Fe系界面合金層まで到達してしまうと、特に鋼材の加工部においてめっき層が剥離して耐パウダリング性が低下する。発明者らが検討したところ、めっき層中のMgZn相の結晶格子面間隔を広げておくと、高温域でのMgZn相からMgZn11への変態挙動が抑制されて、高温状態でもMgZn相を維持でき、亀裂の発生を大幅に抑制することが確認できた。
具体的には、Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び300mAである条件で測定しためっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgZnのX線回折ピークの角度から求められる2θを式(A-1)で定義した場合に、式(A-2)を満足する必要がある。
2θ={2θ(112)-40.47}+{2θ(201)-41.31}+{2θ(004)-42.24}+{2θ(202)-45.38} …(A-1)
2θ≦0.07 …(A-2)
ただし、式(A-1)における2θ(hkl)は、(hkl)面の面方位に対応するX線回折ピークの最高強度の回折角度であり、h、k、lはミラー指数である。たとえば、2θ(112)は、めっき層表面のX線回折パターンから得られたMgZnの(112)面の回折ピークの最高強度の回折角度である。
MgZn相の標準的なX線回折パターンは、JCPDSカード(##00-034―0457)に示されるものが知られている。このMgZn相の標準的なX線回折パターンによれば、(112)面の回折強度は2θ=40.47°、(201)面は2θ=41.31°、(004)面は2θ=42.24°、(202)面は2θ=45.38°の位置にそれぞれ現れるとされている。従って、上記式(A-1)の2θは、めっき層のX線回折パターン上の各面方位に対応する回折ピークの位置と、標準的な回折ピークの位置との差分の総和を意味する。
2θの値が小さいほど、MgZnの結晶における格子面間隔が大きくなる。2θ≦0.07になると、高温域でのMgZn相からMgZn11への変態挙動が抑制されて、めっき層の亀裂の発生が抑制され、耐パウダリング性が向上する。なお、式(A-1)において選択した回折ピークは、めっき層において、他の金属・金属間化合物と回折ピークが重複せず、結晶格子間隔の広がりを確認するのに適した回折ピークである。また、2θの値は、標準的なMgZn相に対して複数の格子面で格子面間隔が特に広くなると、負の値を示す場合もある。2θの下限は特に限定する必要はないが、例えば-0.05以上であってもよい。
また、2θは、その値が閾値を超えるかどうかによって変態の進行の可否が決まる性質のものである。従って、2θに、より好ましい範囲は特にない。一方で、めっき層の化学組成や、製造条件の選択によって、高温保持時のMgZnからMgZn11の変態の抑制の程度を制御することは可能である。
Zn相
Zn相は、めっき層中に存在し、三元共晶組織(Zn/Al/MgZn三元共晶組織)として主に存在している。Mg濃度が低い場合、三元共晶組織が形成されない場合もあるため、塊状のZn相として形成する場合もある。Zn相は、凝固過程において、Zn元素の複雑な移動の結果として、形成する相である。Znは軟質な金属であるため、最終的にめっき層中に形成する塊状のZn相や三元共晶組織として形成するZn相は、めっき層中において延性に富み、亀裂の抑制に有効である。一方、本実施形態におけるめっき層は、Al成分濃度が高いために、凝固の過程でAl相に含有されるZnが存在する。すなわち、凝固後のAl相には、Znが過飽和状態で含まれる。このようなAl相は、低温状態ではほとんど変態を起こさないが、100~150℃の高温に保持されると、Zn原子の移動が活発となって新たなZn相が析出する。ただし、100~150℃の温度域ではめっき層は固相状態であるから、めっき層自体の体積膨張が起きにくい。このため、新たに析出するZn相は、ウィスカ状に析出する。比較的めっき層の表面に位置するAl相では、拘束力が弱いために、高温保持に伴うウィスカ状のZn相の成長が確認される。一方、めっき層の内部に位置するAl相は、周囲からの拘束力が強いために、ウィスカ状のZn相の成長が制限され、結晶粒界において亀裂が生じ、めっき層の亀裂の発生につながる場合がある。これらの現象は、めっき層中のZn相の格子面間隔を広げておくことで抑制できる。
具体的には、Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び300mAである条件で測定しためっき層表面のX線回折パターンにおいて、ZnのX線回折ピークの角度から求められる2θを式(B-1)で定義した場合に、式(B-2)を満足することが好ましい。
2θ={2θ(002)-36.30}+{2θ(101)-43.23}+{2θ(102)-54.34} …(B-1)
2θ≦0.18 …(B-2)
ただし、式(B-1)における2θ(hkl)は、(hkl)面の面方位に対応するX線回折ピークの最高強度の回折角度であり、h、k、lはミラー指数である。たとえば、2θ(002)は、めっき層表面のX線回折パターンから得られたZnの(002)面の回折ピークの最高強度の回折角度である。
式(B-2)を満たすことで、本実施形態に係るめっき層のZn相は、標準的なZn相よりも結晶面間隔が広くなる。これにより、高温保持された場合であっても、Znを含むAl相から新たなZn相が析出することがなく、高温保持状態においても亀裂の発生が抑制されるようになる。
Zn相の標準的なX線回折パターンは、JCPDSカード(##00-004―00831)に示されるものが知られている。このZn相の標準的なX線回折パターンによれば、(002)面の回折強度は2θ=36.30°、(101)面は2θ=43.23°、(102)面は2θ=54.34°の位置にそれぞれ現れるとされている。従って、上記式(B-1)の2θは、めっき層のX線回折パターン上の各面方位に対応する回折ピークの位置と、標準的な回折ピークの位置との差分の総和を意味する。
2θの値が小さいほど、Znの結晶における格子面間隔が大きくなる。2θ≦0.18になると、Al相からのウィスカ状のZn相の析出が抑制されて、めっき層の亀裂の発生が抑制され、耐パウダリング性が更に向上する。なお、式(B-1)において選択した回折ピークは、めっき層において、他の金属・金属間化合物と結晶回折ピークが重複せず、結晶格子間隔の広がりを確認するのに適した回折ピークである。
Al相
Al相は、めっき層中にAl初晶として塊状に存在する。Al相は、めっき層の凝固過程において様々な元素、特にZnをその相内に固溶する。本実施形態のめっき層が高いAl濃度を有するために、Al相は、凝固過程においてZnなどの元素を過飽和に含有するようになる。Al相は、凝固過程において、めっき層中で樹状に広がるデンドライト組織を形成し、めっき層内で縦横無尽に広がり、めっき層の骨格を形成する。Al相は、軟質で加工性に富むため、発生した亀裂の進展を妨害し、致命的なめっき層の欠陥を減らす役割をする。
しかしながら、Znを過飽和に含有するAl相が高温保持されると、先に説明したように、ウィスカ状のZn相を新たに形成する問題が引き起こされる。ウィスカ状のZn相の生成は、MgZn相の変態とは異なり、時間をかけて少しずつ成長していくため,めっき層に致命的な亀裂は生じさせにくいものの、それでもウィスカ状のZn相が生成した場合は亀裂の増加や発生を回避できない。上記のようなZn相の格子面間隔を拡げる以外の手段としては、Al相がZn元素以外にも様々な元素を高温状態で含有できる性質を利用し、元素群Zの元素などを含有させることで、ウィスカが発生する問題を解消でき、高温保持後も、加工性に優れためっき層を得ることが可能になる。
Zn-Al-Mg系合金層に含まれる、その他の金属間化合物として、元素群Xが含有される際には、元素群Xの元素とMgとを含む金属間化合物が形成する。その効果は前述の通りである。また、Siは、めっき層中にMgSiを形成する場合があるが、本実施形態のめっき層の化学組成の範囲内であれば、MgSiが加工性に大きな影響を及ぼすほどの相量にはならない。一方、Ca及びSiが含有される場合は、Al-Ca-Si金属間化合物がめっき層と地鉄との界面に形成して、樹状に形成するAl相と同様に、亀裂伝播を抑制する効果がある。このAl-Ca-Si金属間化合物は、めっき浴の浸漬直後に即座に形成するものであり、めっきの製法によらずに生成する。
めっき層に含まれるZn-Al-Mg合金めっき層及びAl-Fe系界面合金層の厚みの確認は、鋼材を任意の断面において樹脂埋め込みして、光学顕微鏡もしくは電子顕微鏡によって厚みを確認する。
上記の2θ及び2θの測定や、めっき層の金属組織中の各種の金属間化合物の同定には、X線回折法を使用する。X線回折法は、SEM観察、TEM観察などに比べてめっき層の平均情報が得られ、測定箇所(視野)選択性が少なく定量化に優れる。また測定条件を規定すれば、特定の金属間化合物が存在する場合、同じ角度(2θ)で回折ピーク強度が決まった割合で得られるため、簡単にめっき層の内部構造を推測することが可能である。
X線回折像を得る条件は下記の通りとする。
X線源として、CuをターゲットとするX線回折法が、めっき層における構成相の平均的な情報を得られるため、最も都合がよい。測定条件の一例として、X線の条件を電圧50kV、電流300mAとする。X線回折装置としては特に制限はないが、例えば、株式会社リガク製の試料水平型強力X線回折装置RINT-TTR IIIを用いることができる。
以上説明したように、本実施形態の溶融めっき鋼材によれば、150℃程度の高温環境中に保持した場合であっても、めっき層の劣化が少なく耐パウダリング性を改善できる。なお、本実施形態におけるめっき層の劣化及び耐パウダリング性の評価は、以下に説明する通りとする。
本実施形態に係る溶融めっき鋼材が鋼板の場合は、円筒絞り成型後のめっき層における亀裂の発生数及びパウダリングの有無によって評価する。また、溶融めっき鋼材が鋼線材または鋼線の場合は、巻き付け加工後のめっき層における亀裂の発生数及びパウダリングの有無によって評価する。また、加工前には、評価対象の溶融めっき鋼材に対して、150℃に加熱した大気加熱炉に1週間保持し、加熱後の溶融めっき鋼材に対して評価を行う。
(溶融めっき鋼材がめっき鋼板の場合の評価法)
めっき鋼板の評価では、円筒絞り成型加工を行う。円筒絞り成型加工の条件は、一般成型用塗油:有、ポンチ径:50mm、プランクサイズ:100mmφ、抑え圧:0.7ton、ポンチ肩:R5、絞り比:2.0、絞り速度:20mm/minの条件で行う。なお、鋼板に特に制限はないが、例えば、板厚1.6mmの冷延鋼板がよく、一般構造用鋼(SS400)を用いるのがよい。なお、円筒絞り成型は複雑な加工モードで、単純曲げ加工と比較して最も厳しい加工形態の一つであるため、試験方法として採用する。
最初に、円筒絞り成型加工時のパウダリングの有無を判定する。具体的には、加工後に、ポリエステルテープ(日東電工 No.31)を、最も塑性加工の厳しい部位(円筒部側面の鉛直方向部の外側)に貼り付けてから剥離し、めっき金属粉の有無を目視で確認する。
次にパウダリング評価後の同じ部位から任意の3か所のめっき断面を露出させる。めっき断面の露出は、樹脂埋め込み後に研削・研磨することで、断面を出す。露出させた断面をSEM観察して、長さ3mmの範囲での表面から亀裂を観察する。観察対象は、亀裂幅がめっき層表面で5μm以上のものとする。5μm未満の亀裂は、地鉄に到達する可能性が低いため、その後の犠牲防食性や耐食性などを踏まえ、加工劣化部位とみなさず、後述の平均亀裂間隔の測定対象に含めない。また、めっき表面から亀裂が発生したものであっても、地鉄に到達しない亀裂は、後述の平均亀裂間隔の測定対象に含めない。
MgZn11の発生は、亀裂数を増大させ、塑性変形が乏しくなる。また、ウィスカ状のZn相の形成は、めっき表面に凸部を形成するため、応力集中を生み、パウダリングの他、表面からの亀裂の発生数の増加が引き起こされる。従って、平均亀裂間隔を評価指標とする。平均亀裂間隔が広いものほど、めっき層の加工性に優れていると評価できる。評価基準は以下の通りとし、S~Dを合格とする。
評価基準
S …パウダリング無し。かつ、平均亀裂間隔が65μm以上。
AAA…パウダリング無し。かつ、平均亀裂間隔が60μm以上65μm未満。
AA …パウダリング無し。かつ、平均亀裂間隔が55μm以上60μm未満。
A …パウダリング無し。かつ、平均亀裂間隔が50μm以上55μm未満。
B …パウダリング無し。かつ、平均亀裂間隔が45μm以上50μm未満。
C …パウダリング無し。かつ、平均亀裂間隔が40μm以上50μm未満。
D …パウダリング無し。かつ、平均亀裂間隔が40μm未満。
E …パウダリング有り。
(溶融めっき鋼材がめっき鋼線材またはめっき鋼線の場合の評価法)
めっき鋼線材またはめっき鋼線(以下、評価対象の線材という)の評価では、巻き付け加工を行う。巻き付け加工では、評価対象の線材の直径の4倍の外径を有する巻き付け用鋼線を用意する。巻き付け用鋼線の外周に、評価対象の線材を螺旋状に6回巻きつける。そして、図1に示すように、評価対象の線材2の断面2aを露出させる。この断面2aは、巻き付け用鋼線1の中心軸が通るL断面1aと同一平面上にある。線材2の断面2aは、評価対象の線材2が巻き付け用鋼線1に螺旋状に6回巻きつけられているために、図1の巻き付け用鋼線1の図中左右両側にそれぞれ、6つの面が一列になって現れる。このうち、いずれか片方の列の6つの断面を評価対象の断面とする。
6つの評価対象の断面面には、鋼材とめっき層の断面が現れている。めっき層の断面を観察して、めっき層の亀裂の有無を確認する。亀裂は、めっき層表面に到達しているかどうか、また、界面合金層に到達しているかどうかも観察する。なお、亀裂が界面合金層に達している場合、耐パウダリング性が劣化すると推測される。更に、めっき層表面及び界面合金層に届いていない内部亀裂については、亀裂幅が10μm超のものを観察対象とする。めっき層表面に届いている外部亀裂については、最大亀裂幅が5μm以上の亀裂を観察対象とする。そして、観察結果から、以下の評価基準で評価する。S~Dを合格とする。
MgZn11の形成とウィスカの発生は、内部亀裂数を増加させ、表面から地鉄に到達するクラックの発生する確率を高める。
評価基準
S …観察対象の6つの断面のすべてにおいて、内部亀裂及び外部亀裂が観察されない。
AAA…観察対象の6つの断面のうち5つ以下の断面のそれぞれにおいて、外部亀裂は確認されないが、内部亀裂が1個以上観察される。
AA …観察対象の6つの断面のうち3つ以下の断面のそれぞれにおいて、外部亀裂は確認されないが、内部亀裂が1個以上観察される。
A …観察対象の6つの断面のうち4つ以上の断面のそれぞれにおいて、外部亀裂は確認されないが、内部亀裂が1個以上観察される。
B …観察対象の6つの断面のうち1つの断面において、外部亀裂が確認されるが地鉄界面まで進展していない。残りの5つの断面には外部亀裂がない。
C …観察対象の6つの断面のうち2つまたは3つの断面において、外部亀裂が確認されるが地鉄界面まで進展していない。残りの断面には、外部亀裂がない。
D …観察対象の6つの断面のうち3つ以上の断面において、外部亀裂が確認されるが地鉄界面まで進展していない。残りの断面には、外部亀裂がない。
E …観察対象の6つの断面のうち1つ以上の断面において、地鉄界面まで進展している外部亀裂が確認される。
次に、本実施形態の溶融めっき鋼材の製造方法について説明する。
本実施形態の溶融めっき鋼材は、連続溶融めっきラインによって製造することが好ましい。なお、鋼材のサイズの制約のため、必要に応じて、バッチ式の溶融めっき法にて製造することも可能である。
本実施形態の溶融めっき鋼材において、加工後のパウダリングを抑制するための前提条件として、Al-Fe系界面合金層の形成をなるべく抑制する必要がある。前述の通り、Al-Fe系界面合金層の厚みは2μm未満とし、めっき層の全体厚みの10%未満とする必要がある。
Al-Fe系界面合金層の形成を抑制するには、好適な製造条件を採用する必要がある。本実施形態のめっき層の平均化学組成は、Al濃度が15%超であり、Mg濃度が5.0%以下となっている。従って、めっき浴の融点は460℃以上になる。めっき浴の流動性を確保するためには、めっき浴の浴温を500℃超にする必要がある。好ましくは、520~600℃の範囲にするとよい。一方、めっき浴に鋼材を浸漬した際のAl-Fe反応は480℃近傍から活発になる。従って、めっき浴から引き上げ後は、速やかに500℃以下まで降温する必要がある。
なお、500℃超の温度範囲においては、めっき層の結晶構造に影響を与えないが、500℃以下の温度域の熱処理条件は、結晶構造に影響を与えるので、別途好適な条件に限定する必要がある。500℃以下の熱処理条件は後述する。
(めっき鋼板の製造方法)
本実施形態において、めっき鋼板を製造する場合は、水素による表面還元後の鋼材をめっき浴に浸漬する方法、すなわちゼンジマー法を採用するか、または、二段めっき法を採用する必要がある。以下、ゼンジマー法と二段めっき法について説明する。
(1)ゼンジマー法
ゼンジマー法では、本実施形態の溶融めっき鋼板を連続溶融めっきラインで製造する際に、約800℃程度の高温に加熱された鋼板(めっき原材)表面を水素で還元し、鋼板を浴温付近に降温させた後、還元された鋼板表面とめっき浴を反応させてめっき層を形成させる。
ゼンジマー法によって、Al-Fe系界面合金層の形成を抑制するには、好適な条件に限定する必要がある。例えば、500℃のめっき浴にめっき原材を浸漬すると、浸漬時間が3秒超で界面合金層が2μm超に成長してしまう。従って、ゼンジマー法で本実施形態の溶融めっき鋼板を製造する場合は、めっき原材の通過速度を早くし、かつ、めっき厚を調整するワイピングガス、及び、めっき浴から引き上げ後の冷却によって直ちに500℃以下まで鋼材を冷却する必要があり、ガス冷却またはミスト冷却等の優れた冷却設備を必要とする。
一方、Al-Fe間の合金化反応は、めっき浴温度の他、めっき浴に侵入する鋼板(めっき原材)の表面温度が影響する。鋼板のように比較的体積が大きなめっき原材は、めっき浴の侵入時の鋼板温度を、めっき浴温以下、より具体的には50℃以下の室温程度の比較的低温にすることで、鋼板の比熱容量効果でAl-Fe間の合金化反応を鈍化させ、界面合金層の成長を抑制できるようになる。
従って、ゼンジマー法において、めっき浴浸漬時の鋼板温度を浴温と同程度にする場合は、めっき浴浸漬時からめっき浴引き上げ後に500℃以下に低下するまでの時間(以下、500℃到達時間という)を3秒未満とする。一方、めっき浴浸漬時の鋼板温度を50℃以下の低温にする、もしくは(浴温-200)℃以下にする場合は、500℃到達時間を5秒以下とする。
また、めっき浴から引き上げ後の冷却は、冷却設備の制約が大きいため、めっき浴には、Al-Fe間の合金化反応を低下させる元素を含有させてもよい。Mg、Si、Cr、Ni、Co、Mn、V、Nb、Sn、Bi、In、B、La、Ca、Ce、Yは、Al-Fe間の合金化反応を抑制する効果があるので、上述しためっき層の平均化学組成の範囲内において、これらの元素を含有させてもよい。
Mgは、Al-Fe間の合金化反応を低下させる作用があるが、Mg濃度が5.0%以下に制限されるため、合金化反応を抑制するにはMgは濃度不足である。一方、Siはその効果が高く、1.0%以下の含有によってAl-Fe間の反応を十分に抑制することができる。SiはCaと併用されるとよい。
(2)二段めっき法
二段めっき法を採用する場合は、めっき原材として、溶融めっき鋼板、電気めっき鋼板またはプレめっき鋼板を用いる。これにより、めっき浴と地鉄との反応が抑制され、Al-Fe系界面合金層を薄くできるようになる。
めっき原材に用いる溶融めっき鋼板は、片面当たりのめっき付着量が100g/m以上のものがよい。めっき原材の界面合金層の厚みは1μm未満にする必要がある。1μm以上の界面合金層を有するめっき原材を用いると、その痕跡が残り、Al-Fe系界面合金層に置き換わってしまうので好ましくない。めっき層はZnめっきまたはSnめっきがよい。
めっき原材に用いる電気めっき鋼板は、片面当たりのめっき付着量が20g/m以上、好ましくは100g/m以上のものがよい。めっき原材の界面合金層の厚みは1μm未満にする必要があるが、電気めっきの場合、この条件は通常は満たされる。めっき層はZnめっきがよい。
また、めっき原材としてプレめっき鋼板を用いる場合は、片面当たりのめっき付着量が5g/m以下のものがよい。プレめっき層は、NiもしくはCrまたはこれらの元素を組み合わせた合金系等のめっき層がよい。ただし、プレめっき鋼板を使用する場合は、めっき浴の浸漬前に、380~420℃で水素還元処理を行ってプレめっき層表面を還元処理する必要がある。
溶融めっき鋼板、電気めっき鋼板またはプレめっき鋼板をめっき浴に浸漬すると、これらの鋼板に備えられていためっき層が溶融めっき浴の金属元素と容易に置き換わり、めっき浴と地鉄との反応を抑制したまま、めっき浴の成分からなるめっき層が形成されるようになる。
めっき浴浸漬時のめっき原材の温度は、プレめっき鋼板を用いる場合を除き、50℃以下の室温程度の低温とする。そして、500℃到達時間は、めっき原材として電気めっき鋼板を用いる場合は10秒以下とし、それ以外は5.0秒以内とする。
めっき原材として、あらかじめめっきされためっき鋼板を用いることで、鋼板表面のめっき層が溶融する時間的猶予を得ることができる。鋼板表面に、めっき浴の含有成分を含むめっき(例えばZnめっき層)を付与したものをめっき原材に用いることで、ゼンジマー法による水素還元の工程の省略が実現できる。また、めっき原材のめっき層がめっき浴成分と置き換わるため、表面の還元不足によるめっき未付着部分がない外観に優れた溶融めっき鋼材を製造することができる。
(めっき鋼線材またはめっき鋼線の製造方法)
めっき鋼線材またはめっき鋼線は、めっき鋼板と同様に、ゼンジマー法または二段めっき法で製造できる。以下、ゼンジマー法と二段めっき法について説明する。なお、本実施形態では、めっき浴にAl、Mg及びZnを含有するため、通常の溶融亜鉛めっき鋼線のように塩化アンモニウムを利用するフラックスを利用した一段めっき法の適用は困難である。また鋼板と異なり、鋼線材や鋼線は体積が小さい。そのため、めっき浴浸漬後の鋼材温度は容易に500℃以上に到達する。従って、鋼線材または鋼線の場合は、比熱の熱容量による効果が得られくい点に留意する必要がある。
(1)ゼンジマー法
めっき鋼線材またはめっき鋼線の製造方法としてゼンジマー法を用いる場合は、約800℃程度の高温に加熱されためっき原材の表面を水素で還元し、めっき浴温と同程度の温度に降温するか、または、50℃以下の低温に降温させた後、還元された鋼板表面とめっき浴とを反応させてめっき層を形成させる。鋼線材または鋼線は、鋼板よりも体積が小さいため、めっき浴浸漬時に早期に500℃以上に到達する可能性がある。よって、めっき原材は、50℃以下のものを用いることがより好ましい。
また、めっき原材には、鋼線材または鋼線を用いることができるが、好ましくは、あらかじめプレめっきされた鋼線材または鋼線を用いるとよい。プレめっきした鋼線材または鋼線としては、例えば、NiまたはCrを10g/m以下の付着量で付着させたものがよい。付着量は20g/m以下の付着量でもよい。これにより、めっき浴において、めっき原材の温度が早期に500℃以上に到達しにくくなり、Al-Fe系界面合金層の形成を抑制できる。
500℃到達時間は、3秒未満とする。ただし、めっき浴浸漬時のめっき原材の温度を50℃以下とする場合、または、めっき原材としてプレめっきされた鋼線材または鋼線を用いる場合は、500℃到達時間を5秒以下としてもよい。
(2)二段めっき法
二段めっき法を採用する場合は、めっき原材として、溶融めっき鋼線材または鋼線、電気めっき鋼線材または鋼線、プレめっき鋼線材または鋼線のいずれかを用いる。これにより、めっき浴と地鉄との反応が抑制され、Al-Fe系界面合金層を薄くできるようになる。必要に応じてめっき反応の補助として、表面に塩化アンモニウムなどのフラックスを塗布してもよい。
めっき原材に用いる溶融めっき鋼線材または鋼線は、めっき付着量が100g/m以上のものがよい。めっき原材の界面合金層の厚みは1μm未満にする必要がある。1μm以上の界面合金層を有するめっき原材を用いると、その痕跡が残り、Al-Fe系界面合金層に置き換わってしまうので好ましくない。めっき層はZnめっきがよい。
めっき原材に用いる電気めっき鋼線材または鋼線は、めっき付着量が20g/m以上、好ましくは100g/m以上のものがよい。めっき原材の界面合金層の厚みは1μm未満にする必要があるが、電気めっきの場合、この条件は通常は満たされる。めっき層はZnめっきがよく、15%のNiを含むZnめっきでもよい。
めっき原材としてプレめっき鋼線材または鋼線を用いる場合は、めっき付着量が20g/m以下のものがよい。プレめっき層は、NiまたはCrからなるめっき層がよい。
上記のめっき原材をめっき浴に浸漬すると、めっき原材に備えられていためっき層がめっき浴の金属元素と容易に置き換わり、めっき浴と地鉄との反応を抑制したまま、めっき浴の成分からなるめっき層が形成されるようになる。
めっき浴浸漬時のめっき原材の温度は、50℃以下の室温程度の低温とするか、もしくは200℃以下まで加熱したものとすることも可能である。また、500℃到達時間は、めっき原材として付着量が300g/mを超える溶融Znめっき鋼線材または鋼線を用いる場合に10秒以下としてもよく、それ以外は5秒以下とすることが好ましい。
なお、鋼板の場合と同様に、めっき浴から引き上げ後の冷却は、冷却設備の制約が大きいため、めっき浴には、Al-Fe間の合金化反応を低下させる元素を含有させてもよい。Mg、Si、Cr、Ni、Co、Mn、V、Nb、Sn、Bi、In、B、La、Ca、Ce、Yは、Al-Fe間の合金化反応を抑制する効果があるので、上述しためっき層の平均化学組成の範囲内において、これらの元素を含有させてもよい。
Mgは、Al-Fe間の合金化反応を低下させる作用があるが、Mg濃度が5.0%以下に制限されるため、合金化反応を抑制するにはMgは濃度不足である。一方、Siはその効果が高く、1.0%以下の含有によってAl-Fe間の反応を十分に抑制することができる。SiはCaと併用されるとよい。
次に、めっき層の凝固過程において、Zn-Al-Mg系合金層中のMgZn相及びZn相の結晶格子間隔を最適にするための熱処理条件について説明する。以下の条件は、鋼板、鋼線材、鋼線に共通する。
(500℃~420℃の平均冷却速度:10℃/秒以上)
500℃~420℃の平均冷却速度は10℃/秒以上、好ましくは15℃/秒以上とする。めっき層の温度が420℃に到達するまでに、めっき層の90%以上が凝固する。この温度域において、Znや他の元素を含有するAl相が形成される。平均冷却速度が10℃/秒未満では、420℃より低い温度域でのZn相の結晶格子面間隔の変化が起こりにくくなる。ウィスカ状のZn相の析出を抑制するためには、平均冷却速度を10℃/秒以上にする必要がある。
(420~380℃の平均冷却速度:4℃/秒未満)
420~380℃の温度範囲で温度を保持する保持時間を与える必要がある。従って、この温度域では、平均冷却速度を4℃/秒未満とし、この温度域での滞留時間を10秒以上にする必要がある。420~380℃の温度範囲において、凝固していない残液相の凝固が進むとともに、先に凝固したAl相からZn相(η相)が徐々に分離されて、過飽和に他の元素を含むη相が形成し、Znの結晶格子面間隔が標準的な結晶格子面間隔から変化する。420~380℃の平均冷却速度が4℃/秒以上になると、η相の結晶格子面間隔に変化が起こらず、容易にウィスカ状のZn相が形成してしまうようになる。また、420~380℃の温度域では、Al相からの元素吐き出しにより、結果として、MgZnの結晶格子間隔が変化する。従って、この温度範囲の冷却は、最も重要な冷却プロセスである。
(380℃~100℃の平均冷却速度:15℃/秒以上)
380℃~100℃の温度域では、平均冷却速度を15℃/秒以上とする。平均冷却速度が15℃/秒未満になると、MgZn11相が安定相として析出しやすくなる。また、結晶格子面間隔が広くなったMgZn相からも、MgZn11相への変態が起こりうる。更に、Zn相に固溶していた元素がZn相から吐き出されてしまい、Zn相の結晶格子面間隔が標準的な結晶格子面間隔に元に戻ってしまう。従って、380℃~100℃の平均冷却速度を15℃/秒以上にして、それぞれの金属間化合物の結晶格子面間隔を凍結する必要がある。
(100℃以下の冷却速度)
100℃以下の温度域においては、熱処理条件によって結晶格子面間隔などは変化しないので、特に制御する必要はない。
めっき浴引き上げ後から100℃に至るまでの冷却方法は、ガス冷却、ミスト冷却、固体接触による冷却、のいずれの手段を用いても何ら問題はない。また、冷却過程の雰囲気についても窒素などでパージされた環境や、大気環境下であっても問題はない。
めっき層の形成後は、各種化成処理、塗装処理を行ってもよい。めっき表面の凹凸状の模様を利用する、さらにCr、Ni、Auなどのめっき層を付与し、更に塗装して意匠を付与することも可能である。また、さらなる防食性を高めるため、溶接部、加工部などにおいては、補修用タッチアップペイント、溶射処理などを実施してもよい。
本実施形態の溶融めっき鋼材には、めっき層上に皮膜を形成してもよい。皮膜は、1層または2層以上を形成することができる。めっき層直上の皮膜の種類としては、例えば、クロメート皮膜、りん酸塩皮膜、クロメートフリー皮膜が挙げられる。これら皮膜を形成する、クロメート処理、りん酸塩処理、クロメートフリー処理は既知の方法で行うことができる。
クロメート処理には、電解によってクロメート皮膜を形成する電解クロメート処理、素材との反応を利用して皮膜を形成させ、その後余分な処理液を洗い流す反応型クロメート処理、処理液を被塗物に塗布し水洗することなく乾燥して皮膜を形成させる塗布型クロメート処理がある。いずれの処理を採用してもよい。
電解クロメート処理としては、クロム酸、シリカゾル、樹脂(りん酸、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、酢酸ビニルアクリルエマルション、カルボキシル化スチレンブタジエンラテックス、ジイソプロパノールアミン変性エポキシ樹脂等)、及び硬質シリカを使用する電解クロメート処理を例示することができる。
りん酸塩処理としては、例えば、りん酸亜鉛処理、りん酸亜鉛カルシウム処理、りん酸マンガン処理を例示することができる。
クロメートフリー処理は、特に、環境に負荷なく好適である。クロメートフリー処理には、電解によってクロメートフリー皮膜を形成する電解型クロメートフリー処理、素材との反応を利用して皮膜を形成させ、その後、余分な処理液を洗い流す反応型クロメートフリー処理、処理液を被塗物に塗布し水洗することなく乾燥して皮膜を形成させる塗布型クロメートフリー処理がある。いずれの処理を採用してもよい。
さらに、めっき層直上の皮膜の上に、有機樹脂皮膜を1層もしくは2層以上有してもよい。有機樹脂としては、特定の種類に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、又はこれらの樹脂の変性体等を挙げられる。ここで変性体とは、これらの樹脂の構造中に含まれる反応性官能基に、その官能基と反応し得る官能基を構造中に含む他の化合物(モノマーや架橋剤など)を反応させた樹脂のことを指す。
このような有機樹脂としては、1種又は2種以上の有機樹脂(変性していないもの)を混合して用いてもよいし、少なくとも1種の有機樹脂の存在下で、少なくとも1種のその他の有機樹脂を変性することによって得られる有機樹脂を1種又は2種以上混合して用いてもよい。また有機樹脂皮膜中には任意の着色顔料や防錆顔料を含んでもよい。水に溶解又は分散することで水系化したものも使用することができる。
(実施例1:溶融めっき鋼板)
表1A~表4Dに示す溶融めっき鋼板を製造し、性能評価した。
各種、めっき浴の調合には純金属を調合して建浴した。
めっき合金の成分は建浴後、Fe粉を足して、試験中におけるFe濃度の上昇がないようにした。めっき浴温はいずれも580℃とした。
めっき原板と浸漬条件は、表5の通りとした。表5に示す記号は、表1A~表1Dの「製法」の欄に記載した記号に対応する。表5のA1~Cのめっき原板は冷延鋼板であり、D1~Hのめっき原板は表5の原板の欄に示す通りのめっき鋼板である。
溶融めっき鋼板の製造には、連続溶融めっきラインを使用した。通常の溶融めっきラインと同等能力を持つラインであった。鋼板は、幅300mm×厚み1.6mm×コイル長である一般構造用の冷延鋼板とした。
表1A~表1D及び表5に記載の条件A1、A2、B、Cは、ゼンジマー法である。ゼンジマー方式においては、水素還元を実施するため、事前にN-5%H雰囲気(露点―40℃、O濃度10ppm未満)で800℃にて1分間以上加熱し、溶融めっき浴の浸漬前に鋼板表面を加熱し還元した。その後、各条件に従い、侵入温度まで還元雰囲気状態で冷却した。めっき浴に浸漬後、引き抜き速度とワイピング強度を調整して厚みを25μmに調整し、その後のNガス冷却設備で速やかに500℃まで冷却した。
条件D1~Hは、二段めっき法である。めっき原板には、事前のめっき処理したものを用いた。めっき浴に浸漬後、条件D1~Fでは、めっき浴温度がめっき原板のめっき層の融点よりも高いため、めっき浴の浸漬直後からごく短時間で溶解し、製造後のめっき層においてその痕跡はほとんど確認されなかった。
条件G、条件Hでは、めっき原板のめっき層の一部がめっき浴と地鉄に拡散し、まためっき層の別の一部は鋼材表面においてめっき浴の構成元素と反応して層状に分布した。Zn、Sn系のめっきと比較すると浸漬後のめっき層の密着性が劣るため、めっき原板時にN-H5%の環境でめっき浴温よりも低温で5分程度、還元処理を加える必要があった。
500℃まで冷却した後の冷却プロセスは、表6の通りとした。表6に示す記号は、表1A~表1Dの「冷却プロセス」の欄に記載した記号に対応する。表6に記載の冷却速度は、いずれも各温度範囲における平均冷却速度である。
冷却速度は、Nガスのガス温度と吹き付け速度によって調整した。一連の冷却過程はめっき浴引き上げ後、大気雰囲気下にて実施した。
得られた溶融めっき鋼板を20mm角の大きさに切断し、高角X線回折装置Rigaku社製(型番RINT-TTR III)を用い、X線出力50kV、300mA、銅ターゲット、ゴニオメーターTTR(水平ゴニオメータ)、Kβフィルターのスリット幅0.05mm、長手制限スリット幅2mm、受光スリット幅8mm、受光スリット2開放、をとし、測定条件としてスキャンスピード5deg./min、ステップ幅0.01deg、スキャン軸2θ(5~90°)として測定を実施し、各角度でのcps強度を得た。そして、2θ及び2θの値を求めた。結果を表4A~表4Dに示す。
また、X線回折測定により、めっき層中のMg-Si系金属間化合物、Al-Ca-Si系金属間化合物の有無を調べた。Mg-Si系金属間化合物、Al-Ca-Si系金属間化合物がそれぞれ検出された場合を「○」とし、検出されなかった場合を「-」とした。結果を表1A~表1Dに示す。
(めっき層の劣化の有無および耐パウダリング性の評価)
また、加工試験前に、乾燥炉(温度150℃、湿度30%)内部にて7日間連続で溶融めっき鋼板に対して熱処理を行った。熱処理後のめっき鋼板を円筒絞り成型加工に供した。円筒絞り成型加工の条件は、一般成型用塗油有、ポンチ径50mm、プランクサイズ:100mmφ、抑え圧:0.7ton、ポンチ肩R5、絞り比2.0、絞り速度:20mm/minにて実施した。
最初に、円筒絞り成型加工時のパウダリングの有無を判定した。具体的には、加工後に、ポリエステルテープ(日東電工 No.31)を、最も塑性加工の厳しい部位(円筒部側面の鉛直方向部の外側)に貼り付けてから剥離し、めっき金属粉の有無を目視で確認した。
次に、パウダリング評価後の同じ部位から任意の3か所のめっき断面を露出させた。めっき断面の露出は、樹脂埋め込み後に研削・研磨することで、断面を出した。露出させた断面をSEM観察して、長さ3mmの範囲での表面から亀裂を観察した。観察対象は、亀裂幅がめっき層表面で5μm以上のものとした。5μm未満の亀裂は、地鉄に到達する可能性が低いため、その後の犠牲防食性や耐食性などを踏まえ、加工劣化部位とみなさず、後述の平均亀裂間隔の測定対象に含めなかった。また、めっき表面から亀裂が発生したものであっても、地鉄に到達しない亀裂は、後述の平均亀裂間隔の測定対象に含めなかった。下記の評価基準で評価し、S~Dを合格とした。結果を表4A~表4Dに示す。
評価基準
S+ …パウダリング無し。かつ、平均亀裂間隔が70μm以上。
S …パウダリング無し。かつ、平均亀裂間隔が65μm以上。
AAA…パウダリング無し。かつ、平均亀裂間隔が60μm以上65μm未満。
AA …パウダリング無し。かつ、平均亀裂間隔が55μm以上60μm未満。
A …パウダリング無し。かつ、平均亀裂間隔が50μm以上55μm未満。
B …パウダリング無し。かつ、平均亀裂間隔が45μm以上50μm未満。
C …パウダリング無し。かつ、平均亀裂間隔が40μm以上50μm未満。
D …パウダリング無し。かつ、平均亀裂間隔が40μm未満。
E …パウダリング有り。かつ、平均亀裂間隔が40μm未満。
表1A~表4Dに示すように、No.1、36は、Al含有量が本発明範囲から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
No.37、41は、Mg含有量が本発明範囲から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
No.63、66、69、72は、元素群Xの含有量が本発明範囲から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
No.76、78、80、82、84、86、88は、元素群Yaの含有量が本発明範囲から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
No.91、94、96、98、100、102は、元素群Ybの含有量が本発明範囲から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
No.105、108、110は、元素群Ycの含有量が本発明範囲から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
No.141は、Siの含有量が本発明範囲から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
No.143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165は、元素群Zの含有量が本発明範囲から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
No.5、18、19、25、46、59、60、122、135、136、181、194、195は、製造条件が好ましい製造条件から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
上記以外の例は、めっき層の化学組成が本発明範囲を満たし、また、2θが本発明範囲を満たした。よって、めっき層の劣化がなく、耐パウダリング性も向上した。
Figure 2023159677000001
Figure 2023159677000002
Figure 2023159677000003
Figure 2023159677000004
Figure 2023159677000005
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Figure 2023159677000007
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Figure 2023159677000015
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Figure 2023159677000017
Figure 2023159677000018
(実施例2)
表7A~表10Dに示すめっき鋼線を製造し、性能評価した。
各種、めっき浴の調合には純金属を調合して建浴した。
めっき合金の成分は建浴後、Fe粉を足して、試験中におけるFe濃度の上昇がないようにした。めっき浴温はいずれも580℃とした。
めっき原線と浸漬条件は、表11の通りとした。表11に示す記号は、表7A~表7Dの「製法」の欄に記載した記号に対応する。表11のa1、a2のめっき原線は冷延鋼線であり、b~hのめっき原線は表11の原線の欄に示す通りのめっき鋼線である。
溶融めっき鋼線の製造には、連続溶融めっきラインを使用した。通常の溶融めっきラインと同等能力を持つラインであった。
表7A~表7D及び表11に記載の条件a1、a2、b、cは、ゼンジマー法である。溶融めっきシミュレーターを使用し、長さ150mm、φ3.2mmの軟線を使用した。鋼線の一か所に熱電対を取り付け、熱履歴を管理した。ゼンジマー方式においては、水素還元を実施するため、事前にN-5%H雰囲気(露点―40℃、O濃度10ppm未満)で800℃にて1分間以上加熱し、溶融めっき浴の浸漬前に鋼線表面を加熱し還元した。その後、各条件に従い、侵入温度まで還元雰囲気状態で冷却した。めっき浴に浸漬後、引き抜き速度とワイピング強度を調整して厚みを50μmで調整し、その後のNガス冷却設備で速やかに500℃まで冷却した。
条件d1~hは2段めっき法における製造方法である。めっき原線に事前にめっき処理したものを用いた。めっき浴に浸漬後、d1~eについては、めっき浴温度がめっき原線のめっき層の融点よりも高いため、浸漬直後からごく短時間で溶解し、製造後のめっき層においてその痕跡はほとんど確認できなかった。Zn-Niめっきはごく少量のNi層が界面付近に確認できる場合があった。
条件g、条件hでは、めっき原線のめっき層の一部がめっき浴と地鉄に拡散し、まためっき層の別の一部は鋼線表面においてめっき浴の構成元素と反応して層状に分布した。Zn、Sn系のめっきと比較すると浸漬後のめっき層の密着性が劣るため、めっき原線時に塩化アンモニウム(フラックス溶液)を付着させ乾燥させたものを使用する必要があった。
溶融めっき鋼線の製造には、連続溶融めっきライン(φ3.2mm×コイル長/軟線)を使用し、通常の溶融めっきラインと同等能力を持つラインであった。
500℃まで冷冷却プロセスは、上記表6の通りとした。表6に示す記号は、表7A~表7Dの「冷却プロセス」の欄に記載した記号に対応する。表6に記載の冷却速度は、いずれも各温度範囲における平均冷却速度である。
冷却速度は、Nガスのガス温度と吹き付け速度によって調整した。一連の冷却過程はめっき浴引き上げ後、大気雰囲気下にて実施した。
めっき後の溶融めっき鋼線を20mm長に切断してこれを隙間なく並べ、高角X線回折装置Rigaku社製(型番RINT-TTR III)を用い、X線出力50kV、300mA、銅ターゲット、ゴニオメーターTTR(水平ゴニオメータ)、Kβフィルターのスリット幅0.05mm、長手制限スリット幅2mm、受光スリット幅8mm、受光スリット2開放、をとし、測定条件としてスキャンスピード5deg./min、ステップ幅0.01deg、スキャン軸2θ(5~90°)として測定を実施し、各角度でのcps強度を得た。そして、2θ及び2θの値を求めた。結果を表10A~表10Dに示す。
また、X線回折測定により、めっき層中のMg-Si系金属間化合物、Al-Ca-Si系金属間化合物の有無を調べた。Mg-Si系金属間化合物、Al-Ca-Si系金属間化合物がそれぞれ検出された場合を「○」とし、検出されなかった場合を「-」とした。結果を表7A~表7Dに示す。
(めっき層の劣化の有無および耐パウダリング性の評価)
また、加工試験前に乾燥炉(温度150℃、湿度30%)内部にて7日間連続で溶融めっき鋼線に対して熱処理を行った。熱処理後の溶融めっき鋼線に対して巻き付け加工を行った。巻き付け加工は、評価対象の溶融めっき鋼線の直径の4倍の外径を有する巻き付け用鋼線を用意した。巻き付け用鋼線の外周に、評価対象の溶融めっき鋼線を螺旋状に6回巻きつけた。そして、図1に示すように、巻き付け用鋼線1のL断面1aと同一平面上にある評価対象の溶融めっき鋼線2の断面2aを露出させた。評価対象の溶融めっき鋼線2が螺旋状に6回巻きつけられているので、溶融めっき鋼線2の断面2aは、図1の巻き付け用鋼線1の図中左右両側にそれぞれ、6つの面が一列になって現れた。このうち、いずれか片方の列の6つの断面を評価対象の断面とした。
6つの評価対象の断面には、鋼材とめっき層の断面が現れていた。そして、めっき層の断面を観察して、めっき層の亀裂の有無を確認した。亀裂は、めっき層表面に到達しているかどうか、また、界面合金層に到達しているかどうかも観察した。そして、めっき層表面及び界面合金層に届いていない内部亀裂については、亀裂幅が10μm超のものを観察対象とした。めっき層表面に届いている外部亀裂については、最大亀裂幅が5μm以上の亀裂を観察対象とした。そして、観察結果から、以下の評価基準で評価した。S~Dを合格とした。結果を表10A~表10Dに示す。
評価基準
S+ …観察対象の6つの断面のすべてにおいて、内部亀裂及び外部亀裂が観察されない。
S …観察対象の6つの断面のうち5つ以下の断面のそれぞれにおいて、外部亀裂は確認されないが、内部亀裂が1個以上観察される。
AAA…観察対象の6つの断面のうち4つ以下の断面のそれぞれにおいて、外部亀裂は確認されないが、内部亀裂が1個以上観察される。
AA …観察対象の6つの断面のうち3つ以下の断面のそれぞれにおいて、外部亀裂は確認されないが、内部亀裂が1個以上観察される。
A …観察対象の6つの断面のうち2つ以上の断面のそれぞれにおいて、外部亀裂は確認されないが、内部亀裂が1個以上観察される。
B …観察対象の6つの断面のうち1つの断面において、外部亀裂が確認されるが地鉄界面まで進展していない。残りの5つの断面には外部亀裂がない。
C …観察対象の6つの断面のうち2つまたは3つの断面において、外部亀裂が確認されるが地鉄界面まで進展していない。残りの断面には、外部亀裂がない。
D …観察対象の6つの断面のうち3つ以上の断面において、外部亀裂が確認されるが地鉄界面まで進展していない。残りの断面には、外部亀裂がない。
E …観察対象の6つの断面のうち1つ以上の断面において、地鉄界面まで進展している外部亀裂が確認される。
表7A~表10Dに示すように、No.201、236は、Al含有量が本発明範囲から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
No.237、241は、Mg含有量が本発明範囲から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
No.263、266、269、272は、元素群Xの含有量が本発明範囲から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
No.276、278、280、282、284、286、288は、元素群Yaの含有量が本発明範囲から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
No.291、294、296、298、300、302は、元素群Ybの含有量が本発明範囲から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
No.305、308、310は、元素群Ycの含有量が本発明範囲から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
No.341は、Siの含有量が本発明範囲から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
No.343、345、347、349、351、353、355、357、359、361、363、365は、元素群Zの含有量が本発明範囲から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
No.205、218、219、225、246、259、260、322、335、336、379、392、393は、製造条件が好ましい製造条件から外れ、2θが本発明範囲から外れた。よって、めっき層が劣化し、耐パウダリング性も低下した。
上記以外の例は、めっき層の化学組成が本発明範囲を満たし、また、2θが本発明範囲を満たした。よってめっき層の劣化がなく、耐パウダリング性も向上した。
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Claims (6)

  1. 鋼材と、前記鋼材の表面に配置されためっき層とを有する溶融めっき鋼材であり、
    前記鋼材が、鋼板、鋼線材または鋼線であり、
    前記めっき層の平均化学組成が、質量%で、
    Al:15.0%超、40.0%未満、
    Mg:1.0%超、5.0%以下、
    Sn:0%以上、0.7%以下、
    Bi:0%以上、0.3%以下、
    In:0%以上、0.3%以下、
    Sn、Bi及びInの合計量ΣX:0%以上、0.7%以下、
    Ca:0%~0.6%、
    Y :0%~0.3%、
    La:0%~0.3%、
    Ce:0%~0.3%、
    Sr:0%~0.3%、
    Li:0%~0.3%、
    Ca、Y、La、Ce、Sr及びLiの合計量ΣYa:0%以上、0.6%以下、
    Ni:0%以上、1.0%、
    Cu:0%以上、1.0%、
    Ag:0%以上、0.25%、
    Sb:0%以上、0.25%、
    Pb:0%以上、0.25%、
    Ni、Cu、Ag、Sb及びPbの合計量のΣYb:0%以上、1.0%以下、
    B :0%以上、0.5%以下、
    P :0%以上、0.5%以下、
    B及びPの合計量ΣYc:0%以上、0.5%以下、
    Si:0%~1.0%、
    Cr:0%以上、0.25%以下、
    Ti:0%以上、0.25%以下、
    Co:0%以上、0.25%以下、
    V :0%以上、0.25%以下、
    Nb:0%以上、0.25%以下、
    Mn:0%以上、0.25%以下、
    Zr:0%以上、0.25%以下、
    Mo:0%以上、0.25%以下、
    W :0%以上、0.25%以下、
    Cr、Ti、Co、V、Nb、Mn、Zr、Mo及びWの合計量ΣZ:0%以上、0.25%以下、
    Fe:0%以上、5.0%以下、
    残部:Zn及び不純物、からなり、
    Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び300mAである条件で測定した、前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgZnのX線回折ピークの角度から求められる2θを式(A-1)で定義した場合に、式(A-2)を満足する、溶融めっき鋼材。
    2θ={2θ(112)-40.47}+{2θ(201)-41.31}+{2θ(004)-42.24}+{2θ(202)-45.38} …(A-1)
    2θ≦0.07 …(A-2)
    ただし、式(A-1)における2θ(hkl)は(hkl)面の面方位に対応するX線回折ピークの最高強度の回折角度であり、h、k、lはミラー指数である。
  2. Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び300mAである条件で測定した、前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、ZnのX線回折ピークの角度から求められる2θを式(B-1)で定義した場合に、式(B-2)を満足する、請求項1に記載の溶融めっき鋼材。
    2θ={2θ(002)-36.30}+{2θ(101)-43.23}+{2θ(102)-54.34} …(B-1)
    2θ≦0.18 …(B-2)
    ただし、式(B-1)における2θ(hkl)は(hkl)面の面方位に対応するX線回折ピークの最高強度の回折角度であり、h、k、lはミラー指数である。
  3. 前記めっき層の平均化学組成において、
    Si:0.05%超、1.0%以下であり、Si>Ca+0.05を満足し、
    前記めっき層中にMg-Si系金属間化合物が含有される、請求項1または請求項2に記載の溶融めっき鋼材。
  4. 前記めっき層の平均化学組成において、
    Si:0.05%超、0.6%未満であり、Ca:0.05%超0.6%以下であり、
    前記めっき層中にAl-Ca-Si系金属間化合物が含有される、請求項1または請求項2に記載の溶融めっき鋼材。
  5. 前記めっき層の平均化学組成において、
    Si:0.05%超、1.0%以下であり、Ca:0.05%超0.6%以下であり、Si>Ca+0.05を満足し、
    前記めっき層中にMg-Si系金属間化合物およびAl-Ca-Si系金属間化合物が含有される、請求項1または請求項2に記載の溶融めっき鋼材。
  6. 前記めっき層には、前記鋼材表面に接するAl-Fe系界面合金層が含まれ、
    前記Al-Fe系界面合金層の厚みが、前記めっき層全体の厚みに対して10%未満、かつ、2μm以下である、請求項1または請求項2に記載の溶融めっき鋼材。
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