JP2023159401A - 筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物 - Google Patents

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Masafumi Kuzuya
雅充 原田
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Abstract

【課題】 筋肉量の低下を抑制しうる細胞調製物を提供する。【解決手段】 本発明は、筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物であって、前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。【選択図】 図3

Description

本発明は、筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物に関する。
日本国では、急速に高齢化が進んでおり、2025年における高齢者数は、総人口の30%以上と予測されている。高齢者では、加齢に伴い、様々な生活機能の障害が生じる。前記生活機能の障害の原因の1つとして、加齢に伴う筋肉量の減少に伴う疾患(加齢性筋肉減少症)が知られている。また、加齢性筋肉減少症の1つとして、サルコペニアが知られている。サルコペニアの存在は、高齢者では「ふらつき」、「転倒」、さらには「フレイル」に密接に関連し、その先には要介護状態が待ち受けていることが知られており問題となっている(非特許文献1)。これまでのところ、栄養状態を改善し、日常の身体活動量を増やし、軽い運動をすることが推奨されているが、それらの実践は多くの高齢者にとって容易ではなく、新たな治療介入が求められている。
葛谷雅文、「3.サルコペニアの診断・病態・治療」、2015年、日本老年医学会雑誌、Vol. 52、No. 4、343-349頁
加齢性筋肉減少症の治療方法としては、運動または栄養に関する介入療法が実施されている。しかしながら、いずれの方法も、十分な効果があるかは現状不明である。
そこで、本発明は、筋肉量の低下を抑制しうる細胞調製物の提供を目的とする。
前記目的を達成するため、本発明は、筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物であって、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。
本発明は、加齢性筋肉減少症の治療に用いる細胞調製物であって、
前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物を含む。
本発明によれば、筋肉量の低下を抑制しうる。
図1は、実施例1における体重変化を示すグラフである。 図2は、実施例1における体重あたりの握力の変化を示すグラフである。 図3は、実施例1における持久力を示すグラフである。 図4は、実施例1における筋肉の重量の測定結果を示すグラフである。 図5は、実施例2における筋組織の染色結果を示す写真である。 図6は、実施例3における各マウスの腓腹筋およびヒラメ筋における、PGC1-α、COX4、GLUT4の発現量を示すグラフである。 図7は、実施例3におけるウェスタンブロットの結果を示す写真である。 図8は、実施例3におけるミトコンドリアの測定結果を示す写真および図である。 図9は、実施例4におけるアポトーシス解析の結果を示す写真およびグラフである。 図10は、実施例5における炎症性サイトカインの発現量を示すグラフおよび筋組織の写真である。 図11は、実施例6におけるTGF-β1の発現量を示すグラフおよび筋組織の写真である。 図12は、実施例7におけるCatK、Sirt1およびMHCの発現量を示すグラフまたは写真である。 図13は、実施例8における電子顕微鏡によるエクソソームの写真である。 図14は、実施例8におけるウエスタンブロッティングによるエクソソームマーカーの写真である。 図15は、実施例8におけるエクソソームマーカーの粒子径の分布を示したグラフである。 図16は、実施例8におけるエクソソームを取り込んだC2C12細胞を示した写真である。 図17は、実施例8におけるエクソソームを取り込ませたC2C12細胞のアポトーシスを示した写真およびグラフである。
<筋肉量の低下抑制用調製物>
本発明は、前述のように、筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物(以下、「筋肉量の低下抑制用調製物」ともいう)であって、前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、臍帯由来細胞を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。前記臍帯由来細胞は、後述するように、筋肉、筋組織、または筋細胞(「筋繊維(筋線維)」または「筋肉細胞」ともいう、以下同様。)におけるミトコンドリアの機能性向上、炎症の抑制、アポトーシス抑制、筋細胞の増殖促進、筋肉障害の抑制、筋組織の間質の線維化の抑制および/または筋肉修復の促進機能を有すると推定される。このため、本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、前記臍帯由来細胞を含むことにより、筋肉量の低下を抑制できる。
本発明において、「筋肉量」は、例えば、対象における四肢の筋肉の量を意味し、具体例として、腓腹筋の量があげられる。本発明において、前記「筋肉量」は、例えば、測定対象の筋肉の重量を測定することにより評価してもよいし、二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA法)、生体電気インピーダンス法、コンピュータ断層撮影法(CT)または核磁気共鳴画像診断法(MRI)を用いて得られた画像等を用いて間接的に体積を算出することにより評価してもよい。前記測定対象がヒト以外の哺乳動物の場合、前記筋肉量は、測定対象の筋肉の重量を測定することにより評価することが好ましい。他方、前記測定対象がヒトの場合、前記筋肉量は、二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA法)、生体電気インピーダンス法等を用いて間接的に体積を算出することにより評価することが好ましい。
本発明において、前記「筋肉量の低下抑制」は、筋肉量の低下(「減少」、「退縮」、または「低減」ともいう、以下、同様。)が有意に抑制(「阻害」、「阻止」、または「防止」ともいう、以下、同様。)されていることを意味する。具体的には、前記「筋肉量の低下抑制」は、例えば、前記細胞調製物を投与した対象が、前記細胞調製物を投与しない対象と比較として、有意に筋肉量の低下の程度が抑制されていることを意味する。このため、本発明では、前記細胞調製物を投与した対象において、前記細胞調製物の投与開始時と比較して、筋肉量が減少していても、前記細胞調製物を投与しない対象と比較として、有意に筋肉量の低下の程度が抑制されていれば、「筋肉量の低下抑制」が生じているといえる。
本発明の細胞調製物は、後述の実施例で示すように、筋肉量を増加させることにより、筋肉量の低下抑制効果を示すと推定される。このため、本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物は、例えば、筋肉量の増加(「増大」、「増強」、または「増量」ともいう、以下、同様。)に用いる細胞調製物ということもできる。
本発明の細胞調製物は、後述の実施例で示すように、持続的筋力等の筋力の低下を抑制または前記筋力の増加を促進する。これは、本発明の細胞調製物が、筋肉量の低下抑制機能等を示すことによると推定される。このため、本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物は、例えば、筋力の抑制または増加(「増大」または「増強」ともいう、以下、同様。)に用いる細胞調製物ということもできる。
本発明において、「臍帯」は、胎児と胎盤を繋ぐ白色の管状組織であり、胎盤および臍帯血を含まない組織を意味する。本発明において、「臍帯」の由来は、特に制限されず、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル、イルカ、アシカ等の哺乳類の臍帯があげられ、好ましくは、霊長類哺乳動物の臍帯であり、より好ましくは、ヒトの臍帯である。
本発明において、前記「臍帯」は、投与、治療、または処置対象(以下、あわせて「投与対象」という)から採取された臍帯であってもよいし、投与対象以外の対象から採取された臍帯であってもよい。調製時に制限を受けないとの観点から、投与対象以外から採取された臍帯を用いることが望ましい。なお、本発明の臍帯由来細胞は、後述する実施例において示されているとおり、投与対象以外から採取された臍帯由来の細胞であってもよい。前記臍帯由来細胞は、例えば、免疫拒絶等により排除されることなく治療効果を奏することが確認されている。
本発明において、前記臍帯は、例えば、経膣分娩または帝王切開にて娩出された胎盤および/または臍帯を含む産褥組織から適宜胎盤を取り除き回収することができる。本発明において、前記臍帯は、回収された臍帯から臍帯血を除去したものでもよく、さらに、無菌または制菌処理を行なったものでもよい。前記臍帯血の除去は、例えば、ヘパリン等の抗凝固剤を含む溶液ですすぐ、または灌流することによって実施できる。前記無菌または制菌処理は、特に制限されず、例えば、ポピドンヨード等の消毒剤の塗布;ペニシリン、ストレプトマイシン、アムホテリシンB、ゲンタマイシン、および/またはナイスタチン等の抗生剤、および/または抗真菌剤を添加した培地またはバッファー中に浸漬;等により実施できる。また、前記臍帯は、例えば、必要に応じて、赤血球を選択的に溶解してもよい。前記赤血球を選択的に溶解する方法としては、例えば、塩化アンモニウムによる溶解による高張培地または低張培地中でのインキュベーション等の当技術分野で周知の方法を使用することができる。
本発明において、前記「臍帯由来細胞」とは、臍帯を原材料として、調製された細胞集団を意味する。
本発明の臍帯由来細胞は、例えば、下記(a)~(c)のいずれか1つまたは複数の特性を有する細胞集団であってもよく、好ましくは全ての特性を有する細胞集団である。
(a)培地存在下の培養において、プラスチックに接着性を示す;
(b)CD105、CD73、CD90、CD44、HLA-classI、HLA-G5およびPD-L(Programmed cell death 1 ligand)2が陽性であり、CD45、CD34、CD11b、CD19およびHLA-ClassIIが陰性である;
(c)炎症の条件下でIDO(indoleamine 2,3-dioxygenase)、PGE(Prostaglandin E2)、PD-L1の遺伝子および/またはタンパクの発現が誘導される。
本発明において、「陽性」は、抗原抗体反応を利用して検出されるフローサイトメトリー等の解析方法により、前記抗原を発現しない陰性対照細胞または前記抗原と反応しない抗体を用いる陰性対照反応と比較して、高いシグナル等が検出されることを意味する。また、本発明において、「陰性」は、前記抗原を発現しない陰性対照細胞または前記抗原と反応しない抗体を用いる陰性対照反応と比較して、同等またはそれ以下のシグナル等が検出されることを意味する。
本発明において、前記「HLA-class I」とは、HLA-A、B、またはCを意味する。本発明において、「HLA-Class II」は、HLA-DR、DQ、またはDPを意味する。
本発明において、前記「炎症の条件下」は、インターフェロンγ等の炎症性サイトカインと接触させる条件、または添加された条件をいう。
本発明において、前記臍帯由来細胞は、前記臍帯由来細胞の抽出物および/または分泌物であってもよい。前記臍帯由来細胞の抽出物は、例えば、前記臍帯由来細胞に対して、濃縮処理、遠心分離処理、乾燥処理、凍結乾燥処理、溶媒処理、界面活性剤処理、プロテアーゼ、糖鎖分解酵素等を用いた酵素処理、タンパク質抽出処理、超音波処理、および/または磨砕処理により得られる処理物、またはこれらの処理の組合せにより得られる処理物等があげられる。前記臍帯由来細胞の分泌物は、例えば、エクソソーム(細胞外小胞)、臍帯由来細胞の細胞培養上清等があげられる。
本発明において、「細胞外小胞」は、細胞から分泌される膜を有する小胞を意味する。前記細胞外小胞は、一般的に、由来する細胞のエンドソーム内で形成された後、前記細胞の外に放出されると考えられている。このため、前記細胞外小胞は、通常、脂質二重膜と、内腔とを含み、前記内腔は、前記脂質二重膜に囲われた構造を有する。また、前記脂質二重膜は、由来する細胞の細胞膜由来の脂質を含む。そして、前記内腔は、由来する細胞由来の細胞質を含む。前記細胞外小胞は、その大きさおよび/または表面マーカーにより、例えば、エクソソーム(exosome)、マイクロベシクル(micro vesicle:MV)、アポトーシス小体等に分類される。
前記細胞外小胞の平均径(加重平均)は、例えば、1~500nm、好ましくは、10~400nm、より好ましくは、30~400nmである。前記平均径は、後述の実施例8に準じて測定できる。また、前記細胞外小胞の平均径は、例えば、前記細胞外小胞を含む液体を、所望の孔径を有するフィルタ等を用いてろ過することにより、調整できる。
本発明において、前記細胞調製物は、筋組織における間質線維化の抑制作用を示すことが好ましい。前記間質線維化の抑制作用は、例えば、後述の実施例2に準じて、筋組織の間質における線維化面積を指標に評価でき、具体的には、SAMP10マウスの筋組織(例えば、腓腹筋またはヒラメ筋)における間質の繊維化面積を指標に評価できる(間質線維化アッセイ)。前記評価では、例えば、前記被検物の投与群における間質の線維化面積が、前記被検物非投与下の群における間質の線維化面積と比較して、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下、55%以下、60%以下、65%以下、70%以下、75%以下、80%以下、85%以下、90%以下、95%以下、96%以下、97%以下、98%以下、または99%以下である場合、前記被検物は、筋組織における間質線維化の抑制作用があると評価できる。前記細胞調製物は、例えば、前記間質線維化アッセイにおいて、前記細胞調製物を被投与の群と比較して、前記間質線維化を、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下、55%以下、60%以下、65%以下、70%以下、75%以下、80%以下、85%以下、90%以下、95%以下、96%以下、97%以下、98%以下、または99%以下に低減できる。本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、前記筋組織において、間質の線維化を抑制できることから、例えば、筋組織における間質線維化の抑制に用いる細胞調製物ということもできる。
本発明において、「筋組織」は、筋細胞(筋繊維)から構成される組織を意味し、例えば、収縮能を有する興奮性の組織である。
本発明において、「間質」は、筋繊維の間の空間を意味する。
本発明において、前記細胞調製物は、ミトコンドリアの機能向上作用を示すことが好ましい。前記ミトコンドリアの機能向上作用は、例えば、後述の実施例3に準じて、筋組織におけるPGC1-α(Peroxisome proliferator-activated receptor gamma coactivator 1-alpha)、COX4(cytochrome c oxidase subunit 4)、GLUT4(glucose transporter type 4)等のミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現量、または筋組織におけるミトコンドリア数を指標に評価でき、具体的には、SAMP10マウスの筋組織(例えば、腓腹筋またはヒラメ筋)におけるミトコンドリアにおけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現量、または筋組織(例えば、腓腹筋またはヒラメ筋)におけるミトコンドリア数を指標に評価できる(ミトコンドリア機能アッセイ)。前記評価では、例えば、前記被検物の投与群におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現量が、前記被検物非投与下の群におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現量と比較して、1.5倍以上、2倍以上、2.5倍以上、5倍以上、10倍以上、25倍以上、50倍以上、100倍以上、125倍以上、250倍以上である場合、前記被検物は、ミトコンドリアの機能向上作用があると評価できる。また、前記評価では、例えば、前記被検物の投与群におけるミトコンドリア数が、前記被検物非投与下の群におけるミトコンドリア数と比較して、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または100%以上である場合、前記被検物は、ミトコンドリアの機能向上作用があると評価できる。前記細胞調製物は、例えば、前記ミトコンドリア機能アッセイにおいて、前記細胞調製物を被投与の群と比較して、前記ミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現量を、1.5倍以上、2倍以上、2.5倍以上、5倍以上、10倍以上、25倍以上、50倍以上、100倍以上、125倍以上、250倍以上に増加でき、その上限は、例えば、1000倍以下または500倍以下である。前記細胞調製物は、例えば、前記ミトコンドリア機能アッセイにおいて、前記細胞調製物を被投与の群と比較して、前記ミトコンドリア数を、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または100%以上に増加でき、その上限は、例えば、150%以下または125%以下である。本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、前記筋組織において、ミトコンドリアの機能を向上させることから、例えば、筋組織におけるミトコンドリアの機能向上に用いる細胞調製物ということもできる。また、本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、筋組織において、ミトコンドリアの機能性に関連する遺伝子の発現を誘導できることから、例えば、筋組織におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の誘導(発現誘導)に用いる細胞調製物ということもできる。また、本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、筋組織において、ミトコンドリア数を増加できることから、例えば、筋組織におけるミトコンドリア数の増加に用いる細胞調製物ということもできる。
ヒトPGC1-α、ヒトCOX4、およびヒトGLUT4のmRNAの塩基配列およびタンパク質のアミノ酸配列は、例えば、以下のGenbankのアクセッション番号で登録されている配列を参照できる。
・ヒトPGC1-α
mRNAのアクセッション番号:NM_001330751
タンパク質のアクセッション番号:NP_001317680
・ヒトCOX4
mRNAのアクセッション番号:NM_001861
タンパク質のアクセッション番号:NP_001852
・ヒトGLUT4
mRNAのアクセッション番号:NM_001042
タンパク質のアクセッション番号:NP_001033
本発明において、前記細胞調製物は、筋細胞のアポトーシス抑制作用を示すことが好ましい。前記筋細胞のアポトーシスの抑制作用は、例えば、後述の実施例4に準じて、Cleaved-caspase-3および/またはCleaved-caspase-8の発現量、またはDNAの断片化(ゲノムDNAの断片化)を指標に評価でき、具体的には、SAMP10マウスの筋組織(例えば、腓腹筋またはヒラメ筋)におけるアポトーシス細胞数を指標に評価できる(アポトーシスアッセイ)。前記評価では、例えば、前記被検物の投与群におけるアポトーシス細胞数が、前記被検物非投与下の群におけるアポトーシス細胞数と比較して、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下、55%以下、60%以下、65%以下、70%以下、75%以下、80%以下、85%以下、90%以下、95%以下、96%以下、97%以下、98%以下、または99%以下である場合、前記被検物は、筋細胞のアポトーシス抑制作用があると評価できる。前記細胞調製物は、例えば、前記アポトーシスアッセイにおいて、前記細胞調製物を被投与の群と比較して、前記アポトーシス細胞数を、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下、55%以下、60%以下、65%以下、70%以下、75%以下、80%以下、85%以下、90%以下、95%以下、96%以下、97%以下、98%以下、または99%以下に低減できる。本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、筋細胞のアポトーシスの抑制を示すことから、例えば、筋細胞におけるアポトーシス抑制に用いる細胞調製物ということもできる。前記筋細胞は、例えば、骨格筋細胞である。
本発明において、前記細胞調製物は、抗炎症作用を示すことが好ましい。前記抗炎症作用は、例えば、後述の実施例5に準じて、炎症性サイトカイン遺伝子またはケモカイン遺伝子の誘導能を指標に評価でき、具体的には、SAMP10マウスの筋組織(例えば、腓腹筋またはヒラメ筋)における炎症性サイトカイン遺伝子またはケモカイン遺伝子の発現量を指標に評価できる(炎症アッセイ)。前記評価では、例えば、前記被検物の投与群における炎症性サイトカイン遺伝子またはケモカイン遺伝子の発現量が、前記被検物非投与下の群における炎症性サイトカイン遺伝子またはケモカイン遺伝子の発現量と比較して、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下、55%以下、60%以下、65%以下、70%以下、75%以下、80%以下、85%以下、90%以下、95%以下、96%以下、97%以下、98%以下、または99%以下である場合、前記被検物は、抗炎症作用があると評価できる。前記細胞調製物は、例えば、前記炎症アッセイにおいて、前記細胞調製物を被投与の群と比較して、前記炎症性サイトカイン遺伝子および/またはケモカイン遺伝子の発現量を、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下、55%以下、60%以下、65%以下、70%以下、75%以下、80%以下、85%以下、90%以下、95%以下、96%以下、97%以下、98%以下、または99%以下に低減できる。本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、筋組織において、抗炎症性作用を示すことから、例えば、筋組織における炎症抑制に用いる細胞調製物ということもできる。また、本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、筋組織において、TNF(Tumor Necrosis Factor)-α等の炎症性サイトカイン遺伝子、および/またはMCP-1(CCL2、monocyte chemotactic and activating factor)等のケモカイン遺伝子の発現誘導を抑制できることから、例えば、筋組織における炎症性サイトカイン遺伝子および/またはケモカイン遺伝子の発現抑制または発現誘導の抑制に用いる細胞調製物ということもできる。
ヒトTNF-αおよびヒトMCP-1のmRNAの塩基配列およびタンパク質のアミノ酸配列は、例えば、以下のGenbankのアクセッション番号で登録されている配列を参照できる。
・ヒトTNF-α:
mRNAのアクセッション番号:NM_000594
タンパク質のアクセッション番号:NP_000585
・ヒトMCP-1
mRNAのアクセッション番号:NM_002982
タンパク質のアクセッション番号:NP_002973
本発明において、前記細胞調製物は、筋細胞の増殖促進作用を示すことが好ましい。前記増殖促進作用は、例えば、後述の実施例6に準じて、筋細胞の増殖、またはTGF(Transforming growth factor)-β1等の筋細胞の増殖誘導遺伝子の発現を指標に評価でき、具体的には、SAMP10マウスの筋組織(例えば、腓腹筋またはヒラメ筋)における筋細胞の増殖または筋細胞の増殖誘導遺伝子の発現量を指標に評価できる(筋増殖アッセイ)。前記評価では、例えば、前記被検物の投与群における筋細胞の数が、前記被検物非投与下の群における筋細胞の数と比較して、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上である場合、前記被検物は、筋細胞の増殖促進作用があると評価できる。また、前記評価では、例えば、前記被検物の投与群における筋細胞の増殖誘導遺伝子の発現量が、前記被検物非投与下の群における筋細胞の増殖誘導遺伝子の発現量と比較して、1.5倍以上、2倍以上、2.5倍以上、5倍以上、10倍以上、25倍以上、50倍以上、100倍以上、125倍以上、250倍以上、または500倍以上である場合、前記被検物は、筋細胞の増殖促進作用があると評価できる。前記細胞調製物は、例えば、前記筋増殖アッセイにおいて、前記細胞調製物を被投与の群と比較して、前記筋細胞の数を、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上増加でき、その上限は、例えば、150%以下または100%以下である。前記細胞調製物は、例えば、前記筋増殖アッセイにおいて、前記細胞調製物を被投与の群と比較して、前記筋細胞の増殖誘導遺伝子の発現量を、1.5倍以上、2倍以上、2.5倍以上、5倍以上、10倍以上、25倍以上、50倍以上、100倍以上、125倍以上、250倍以上、または500倍以上に増加でき、その上限は、例えば、1000倍以下または750倍以下である。本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、前記筋細胞の増殖を促進(「加速」、「増加」、または「増強」ともいう、以下同様。)できることから、例えば、筋細胞または筋組織の骨格筋の増殖促進に用いる細胞調製物ということもできる。また、本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、前記筋細胞の増殖誘導遺伝子の発現を誘導できることから、例えば、筋組織の増殖促進遺伝子の誘導(発現誘導)に用いる細胞調製物ということもできる。前記筋細胞は、例えば、骨格筋細胞である。
ヒトTGF-β1のmRNAの塩基配列およびタンパク質のアミノ酸配列は、例えば、以下のGenbankのアクセッション番号で登録されている配列を参照できる。
・ヒトTGF-β1:
mRNAのアクセッション番号:NM_000660
タンパク質のアクセッション番号:NP_000651
本発明において、前記細胞調製物は、筋組織、好ましくは、骨格筋の筋線維の修復を促進することが好ましい。前記筋組織の修復能は、例えば、後述の実施例7に準じて、Sirt1(Sirtuin 1)遺伝子、ミオシン重鎖(Myosin heavy chain:MHC)遺伝子等の筋組織の修復促進遺伝子の発現量、または、Sirt1および/またはミオシン重鎖等の修復促進遺伝子のタンパク質の発現量を指標に評価でき、具体的には、SAMP10マウスの筋組織(例えば、腓腹筋またはヒラメ筋)における筋組織の修復促進遺伝子の発現量を指標に評価できる(筋修復アッセイ)。前記評価では、例えば、前記被検物の投与群における筋組織の修復促進遺伝子の発現量が、前記被検物非投与下の群における筋組織の修復促進遺伝子の発現量と比較して、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上である場合、前記被検物は、筋組織の修復作用があると評価できる。前記細胞調製物は、例えば、前記筋修復アッセイにおいて、前記細胞調製物を被投与の群と比較して、前記筋組織の修復促進遺伝子の発現量を、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上増加でき、その上限は、例えば、150%以下または100%以下である。本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、筋組織または骨格筋の修復能を示すことから、例えば、筋組織または骨格筋の修復に用いる細胞調製物ということもできる。また、本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、筋組織または骨格筋において、修復促進遺伝子の発現、または、修復促進遺伝子のタンパク質の発現を誘導できることから、筋組織の修復促進に用いる細胞調製物または筋組織の修復促進遺伝子の発現誘導に用いる細胞調製物ということもできる。前記筋組織は、例えば、骨格筋の筋組織である。
ヒトSIRT1およびMHCのmRNAの塩基配列およびタンパク質のアミノ酸配列は、例えば、以下のGenbankのアクセッション番号で登録されている配列を参照できる。
・ヒトSIRT1:
mRNAのアクセッション番号:NM_012238
タンパク質のアクセッション番号:NP_036370
・ヒトMHC:
mRNAのアクセッション番号:NM_005963
タンパク質のアクセッション番号:NP_005954
本発明において、前記細胞調製物は、筋組織、好ましくは、骨格筋の筋組織の障害を抑制することが好ましい。前記筋組織の傷害抑制能は、例えば、後述の実施例7に準じてカテプシンK(CatK、Cathepsin K、CTSK)遺伝子等の筋障害の誘導遺伝子の発現量を指標に評価できる。前記CatKは、例えば、筋細胞の分解を誘導することにより、筋障害を引き起こす。本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、筋組織または骨格筋の筋組織の傷害抑制能を示すことから、例えば、筋組織または骨格筋の筋組織の障害抑制に用いる細胞調製物ということもできる。また、本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、筋組織または骨格筋において、筋障害の誘導遺伝子の発現を抑制できることから、筋障害の誘導遺伝子の発現抑制に用いる細胞調製物ということもできる。前記筋組織は、例えば、骨格筋の筋組織である。
ヒトCatKのmRNAの塩基配列およびタンパク質のアミノ酸配列は、例えば、以下のGenbankのアクセッション番号で登録されている配列を参照できる。
・ヒトCatK:
mRNAのアクセッション番号:NM_000396
タンパク質のアクセッション番号:NP_000387
本発明において、前記臍帯由来細胞の生産(調製)方法は、例えば、前記臍帯から細胞を単離する工程を含み、任意に、単離された細胞を継代する工程を含んでもよい。具体例として、前記調製方法は、例えば、(1)臍帯を切断する工程、(2)臍帯切片を培養する工程、および(3)継代する工程を含む。また、他の例として、前記調製方法は、例えば、(A)臍帯を切断する工程もしくは酵素処理する工程、またはその双方により組織を解離させる工程、(B)臍帯組織を培養する工程、および(C)継代する工程を含む。なお、前記臍帯由来細胞は、一様の細胞による集団であってもよいし、不均一な細胞集団であってよい。
前記(1)~(3)工程を含む方法、または前記(A)~(C)工程を含む方法により、前記臍帯由来細胞を調製する場合、一例として以下のように実施できる。なお、前記臍帯由来細胞の調製方法は、以下の例に限定されない。
まず、前記(1)~(3)工程を含む方法について説明する。前記(1)臍帯を切断する工程では、例えば、前述の方法で入手した臍帯を、羊膜、血管、血管周囲組織および/またはワルトンジェリーを含む状態にて機械力(細断力または剪断力)によって切断することにより実施できる。切断により得られる臍帯切片の大きさは、特に制限されず、例えば、1~10mm、1~5mm、1~4mm、1~3mmまたは1~2mm等があげられる。
つぎに、前記(2)臍帯切片を培養する工程では、例えば、切断された臍帯切片を、シャーレ、ディッシュ、フラスコ等の培養器に播種し、臍帯由来細胞に適した培養液中にて培養する。前記(2)工程では、前記臍帯切片に対して消化酵素処理を行わないことが好ましい。
本発明において、前記「培養器」は、例えば、固体表面を有する培養器であればよい。前記培養器としては、例えば、細胞、組織、および/または臓器の培養に用いられる培養器を使用できる。前記「固体表面」は、例えば、前記臍帯由来細胞との結合を可能とする任意の材料を意味する。具体的には、前記材料は、例えば、その表面への哺乳類細胞の結合を促すように処理(例えば、親水性増加処理)されたプラスチック材料等があげられる。前記固体表面を有する培養容器の種類は、特に制限されず、例えば、シャーレ、ディッシュ、フラスコ等があげられる。
本発明において、前記「臍帯由来細胞に適した培養液」は、例えば、基礎培地に、血清等の添加剤を添加することにより調製できる。前記添加剤は、例えば、血清、および/または、アルブミン、トランスフェリン、脂肪酸、インスリン、亜セレン酸ナトリウム、コレステロール、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3’-チオールグリセロール等の1つ以上の血清代替物があげられる。前記培養液は、例えば、必要に応じて、さらに、脂質、アミノ酸、タンパク質、多糖、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生剤、抗真菌剤、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの物質を添加してもよい。前記基礎培地は、特に制限されず、例えば、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)(高グルコースまたは低グルコース)、改良DMEM、DMEM/MCDB 201、Eagle’s 基本培地、Ham’s F10培地(F10)、Ham’s F-12培地(F12)、イスコーブの改変ダルベッコ(IMDM)培地、Fischer’s培地、間葉幹細胞増殖培地(MSCGM)、DMEM/F12、RPMI 1640、CELL-GRO-FREE、およびこれらの混合培地等があげられる。前記血清は、例えば、ヒト血清、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清、仔ウシ血清、ヤギ血清、ウマ血清、ブタ血清、ヒツジ血清、ウサギ血清、ラット血清等の動物由来の血清があげられる。前記基礎培地に対する血清の添加量は、例えば、5 v/v%~15 v/v%であり、好ましくは、約10v/v%である。前記脂肪酸は、特に制限されず、例えば、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸、およびステアリン酸等があげられる。前記脂質は、特に制限されず、例えば、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン等があげられる。前記アミノ酸は、特に制限されず、例えば、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン、L-システイン、L-シスチン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、L-グリシン等のアミノ酸のL体、これらのD体、またはこれらの混合物(DL体)等があげられる。前記タンパク質は、特に制限されず、例えば、エコチン、還元型グルタチオン、フィブロネクチン、β2-ミクログロブリン等があげられる。前記多糖は、特に制限されず、例えば、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸等のグリコサミノグリカン等があげられる。前記増殖因子は、特に制限されず、例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)、白血球阻害因子(LIF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、肝細胞増殖因子(HGF)、結合組織増殖因子(CTGF)、エリスロポエチン(EPO)等があげられる。前記抗生剤および/または抗真菌剤は、特に制限されず、例えば、ペニシリンG、ストレプトマイシン硫酸塩、アムホテリシンB、ゲンタマイシン、ナイスタチン、およびこれらの混合等があげられる。
前記(2)工程において、播種した臍帯切片が培養液中に浮遊することを防ぐため、培養期間中プレート等を用いて前記臍帯切片を押さえることが好ましい。前記プレートは、例えば、特開2015-70824に記載のプレートが例示できる。
前記(2)工程において、培養条件は、特に制限されず、例えば、細胞、組織、臓器等の一般的な培養条件を参照できる。具体例として、前記(2)工程におけるCO濃度は、例えば、0~5%である。前記(2)工程におけるO濃度は、例えば、2~25%であり、好ましくは、5~20%である。前記(2)工程における培養温度は、例えば、25~40℃であり、好ましくは、約37℃(35~39℃)である。
前記(2)工程において、前記培養期間は、特に制限されず、例えば、前記臍帯切片から細胞が遊走し、細胞が、培養器に対して50%、60%、70%、80%またはそれ以上のコンフルエントになるまで培養することが好ましい。
そして、前記(2)工程では、例えば、前記培養後、非結合状態の細胞および細胞の破片を除去するために、細胞を洗浄し、EDTA等のキレート剤を含む溶液、トリプシン、コラゲナーゼ、ディスパーゼ等のプロテアーゼ、ヒアルロニダーゼ等の糖鎖分解酵素、またはこれらの混合物を含む剥離剤によって剥離する。そして、前記(2)工程では、例えば、前記細胞および前記臍帯切片を含む剥離溶液を、セルストレーナー等を用いてろ過することで、臍帯由来細胞として細胞のみを入手することができる。得られた臍帯由来細胞は、例えば、前述の培養器へ播種し、前述の培養液を用いて培養できる。
前記(3)工程では、継代培養することで、適宜、必要数まで臍帯由来細胞を増殖することができる。前記(3)工程では、前記継代培養において、前記剥離剤によって剥離し、別途用意した培養器に適切な細胞密度で播種して培養を継続してもよい。前記細胞を播種する際の、細胞密度(播種密度)は、例えば、1×10~1×10細胞/cm、5×10~5×10細胞/cm、1×10~1×10細胞/cm、2×10~1×10細胞/cm等があげられ、好ましくは、2×10~1×10細胞/cmである。前記播種密度は、例えば、適切なコンフルエンシーに達するまでの期間が、3~7日間となるように調整することが好ましい。前記(3)工程の継代培養では、必要に応じて、適宜、培地を交換してもよい。
前記(3)工程の継代回数は、特に制限されず、例えば、細胞分裂の停止する老化まで行われてもよい。前記(3)工程の継代回数は、例えば、治療に用いるとの観点から、好ましくは、3~25回継代培養され、より好ましくは、4~12回継代培養される。
つぎに、前記(A)~(C)工程を含む方法について説明する。前記(A)酵素処理する工程では、前述の方法で入手した臍帯を、羊膜、血管、血管周囲組織および/またはワルトンジェリーを含む状態にて酵素処理にて、組織を解離させる工程により実施できる。前記酵素処理に用いる酵素は、特に制限されず、例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼ等のプロテアーゼ;ヒアルロニダーゼ等の糖鎖分解酵素;等があげられる。
つぎに、前記(B)臍帯組織を培養する工程、および(C)継代する工程は、例えば、それぞれ、前記(2)臍帯組織を培養する工程、および前記(3)継代する工程と同様にして実施できる。
これにより、前記(3)または(C)工程後、前記臍帯由来細胞を取得できる。
前記臍帯由来細胞の調製方法で得られた細胞は、前記臍帯由来細胞であることを確認するために、表面抗原等についてフローサイトメトリー等を用いて従来の方法で解析してもよい。また、前記臍帯由来細胞の調製方法で得られた細胞は、前記細胞より産生される各種タンパク質量を測定することで、前記臍帯由来細胞であるかを評価してもよい。
前記臍帯由来細胞の調製方法で得られた細胞は、そのまま、治療用に調製されてもよいし、凍結保存してもよい。前記凍結保存は、例えば、臍帯由来細胞を保存可能な凍結保存用溶液中に細胞を懸濁させ、-80℃~-180℃で保存することによって行われる。前記凍結保存用溶液は、特に制限されず、例えば、凍害防御剤およびグルコースを含む水溶液があげられる。前記凍害防御剤は、例えば、ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」ともいう)、デキストラン、グリセロール、プロピレングリコール、および1-メチル-2-ピロリドン等があげられ、好ましくは、DMSOおよび/またはプロピレングリコールであり、より好ましくは、DMSOである。前記凍害防御剤は、例えば、前記凍結保存用溶液中に、1~15w/v%含まれ、好ましくは、5~15w/v%含まれ、より好ましくは、5~12w/v%含まれ、さらに好ましくは、8~11w/v%含まれる。前記凍害防御剤は、例えば、前記凍結保存用溶液中に、1~15v/v%含まれ、好ましくは、5~15v/v%含まれ、より好ましくは、5~12v/v%含まれ、さらに好ましくは、8~11v/v%含まれる。
前記凍結保存用溶液に含まれるグルコースは、例えば、前記凍結保存用溶液中に、0.5~10w/v%含まれ、好ましくは、1~10w/v%含まれ、より好ましくは、2~8w/v%含まれ、さらに好ましくは、2~5w/v%含まれる。
前記凍結保存用溶液は、さらに、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、pH調整剤、増粘剤等が挙げられる。前記pH調整剤は、例えば、炭酸水素ナトリウム、HEPES、リン酸緩衝液等があげられる。また、basic Stock Solution(BSS)にリン酸緩衝液を添加しない場合、前記pH調整剤としては、例えば、前記臍帯由来細胞に適したpH付近で緩衝能を持たせる働きを有する塩化ナトリウムを添加したものも用いることもできる。前記pH調整剤としては、リン酸緩衝液を用いることが好ましい。前記pH調整剤は、前記凍結保存用溶液中のpHを、例えば、約6.5~9、好ましくは、7~8.5に調整するように用いられることが好ましい。なお、本発明において、前記「リン酸緩衝液」は、例えば、塩化ナトリウム、リン酸一ナトリウム(無水)、リン酸一カリウム(無水)、リン酸二ナトリウム(無水)、リン酸三ナトリウム(無水)、塩化カリウム、およびリン酸二水素カリウム(無水)等を含む緩衝液のことをいい、特に塩化ナトリウム、リン酸一ナトリウム(無水)、塩化カリウム、またはリン酸二水素カリウム(無水)を含む緩衝液が好ましい。前記pH調整剤は、例えば、前記凍結保存用溶液中に、0.01~1w/v%含まれ、好ましくは、0.05~0.5w/v%含まれる。
前記凍結保存用溶液は、天然の動物由来成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記天然の動物由来成分としては、例えば、前述の血清および基礎培地等があげられる。前記凍結保存用溶液は、天然の動物由来成分を含まないことが好ましい。前記天然の動物由来成分を含まない凍結保存用溶液では、天然の動物由来成分のロット間での品質の違いの問題を生じることがなく、血清に含まれる各種サイトカイン、増殖因子およびホルモン等の成分による臍帯組織中の細胞の性質の変化の可能性を抑制でき、さらに、基礎培地に含まれる由来が不明な成分による影響も抑制できる。このため、前記天然の動物由来成分を含まない凍結保存用溶液は、特に臨床使用において非常に有用である。
前記凍結保存用溶液は、さらに、増粘剤を含んでいてもよい。前記増粘剤は、特に制限されず、例えば、前記臍帯組織を十分に保存できる凍結保存用溶液を構成し得るものがあげられる。前記増粘剤は、例えば、カルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」ともいう)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(以下、「CMC-Na」ともいう)、有機酸ポリマー、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸ナトリウム等があげられる。増粘剤としては、CMCおよびCMC-Naが好ましく、CMC-Naが特に好ましい。前記有機酸ポリマーは、ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。前記増粘剤は、例えば、前記凍結保存用溶液中に、0.1~1w/v%含まれ、好ましくは、0.1~0.5w/v%含まれ、より好ましくは、0.2~0.4w/v%含まれる。
前記凍結保存用溶液は、水溶液であることが好ましい。前記凍結保存用溶液の浸透圧は、例えば、保存液としての性能を保持するために、好ましくは、1000mOsm以上であり、より好ましくは、1000~2700mOsmである。
前記凍結保存用溶液は、好ましくは、増粘剤、凍害防御剤、およびグルコースを含み、かつ天然の動物由来成分を含まない水溶液である。前記凍結保存用溶液は、より好ましくは、CMC-Na、DMSO、およびグルコースを含み、かつ天然の動物由来成分を含まない水溶液である。前記凍結保存用溶液は、さらに好ましいくは、CMC-Naを0.1~1w/v%含み、DMSOを1.0~15w/v%含み、グルコースを0.5~10w/v%含み、かつ天然の動物由来成分を含まない水溶液である。
前記臍帯由来細胞の調製方法で得られた細胞は、例えば、輸液製剤と混合することで、各種用途の細胞調製物として使用してもよい。また、前記臍帯由来細胞を凍結保存する場合、凍結保存された臍帯由来細胞は、前記凍結保存用溶液に懸濁され、解凍後にそのまま各種用途の細胞調製物として使用してもよいし、解凍後に輸液製剤と混合し、得られた混合物を各種用途の細胞調製物として使用してもよい。前記輸液製剤と混合する場合、前記臍帯由来細胞が懸濁された培養液または凍結保存用溶液を輸液製剤等と混合してもよいし、前記培養液または凍結保存用溶液について、遠心分離等により細胞を溶媒と分離した後、細胞のみを輸液製剤と混合してもよい。前記調製方法では、例えば、手技の煩雑さを回避するため、前記凍結した細胞を解凍後、培養する工程を含まないこと、または融解後の細胞が懸濁された凍結保存液を直接輸液製剤と混合することが好ましい。
本発明において、前記「輸液製剤」は、例えば、ヒトの治療の際に用いられる輸液等の溶液があげられ、具体例として、生理食塩水、5%ブドウ糖液、リンゲル液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、1号液、2号液、3号液、4号液等があげられる。
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、前記臍帯由来細胞に加えて、前記輸液製剤を含むキットであってもよい。
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、前記輸液製剤に加えて、または代えて、薬学的に許容される担体を含んでもよい。前記担体は、前記細胞調製物を投与するための懸濁剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、界面活性剤、希釈剤、媒体、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、含硫還元剤、酸化防止剤等があげられ、本発明の効果を妨げない範囲で適切に添加することができる。
前記懸濁剤は、特に制限されず、例えば、メチルセルロース、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、トラガント末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等があげられる。
前記溶液補助剤は、特に制限されず、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マクロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステル等があげられる。
前記安定化剤は、特に制限されず、例えば、デキストラン40、メチルセルロース、ゼラチン、亜硫酸ナトリウム、メタ硫酸ナトリウム等があげられる。
前記等張化剤は、特に制限されず、例えば、D-マンニトール、ソルビトール等があげられる。
前記保存剤は、特に制限されず、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール等があげられる。
前記吸着防止剤は、特に制限されず、例えば、ヒト血清アルブミン、レシチン、デキストラン、エチレンオキシドプロピレンオキシド共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール等があげられる。
前記含硫還元剤は、特に制限されず、例えば、N-アセチルシステイン、N-アセチルホモシステイン、チオキト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸およびその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、炭素原子数1~7のチオアルカン酸等のスルホヒドリル基を有するもの等があげられる。
前記酸化防止剤は、特に制限されず、例えば、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、L-アスコルビン酸およびその塩、L-アスコルビン酸パルミテート、L-アスコルビン酸ステアレート、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミル、没食子酸プロピルまたはエチレンジアミン4酢酸ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等のキレート剤等があげられる。
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、さらに、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩;クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム等の有機塩;グルコース等の糖類;等の一般的に添加される成分を適宜添加していてもよい。また、抗凝固剤および/または前記pH調整剤として、例えば、ACD-A液(クエン酸Na水和物クエン酸水和物、ブドウ糖等からなる組成)を添加してもよい。
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、例えば、局所投与のために、バイオポリマー等の有機物;ハイドロキシアパタイト等の無機物;等と混合してもよく、具体例として、コラーゲンマトリックス、ポリ乳酸ポリマーまたはコポリマー、ポリエチレングリコールポリマーまたはコポリマーおよびその化学的誘導体と混合してもよい。
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、例えば、in vitroで用いてもよいし、in vivoで用いてもよい。本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、例えば、研究用試薬として使用することもでき、医薬品として使用することもできる。後者の場合、本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、加齢性筋肉減少症の治療に用いる細胞調製物または医薬用細胞調製物ということもできる。
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物の投与対象は、特に制限されない。本発明の筋肉量の低下抑制用調製物をin vivoで使用する場合、前記投与対象は、例えば、ヒト、またはヒトを除く非ヒト動物があげられる。前記非ヒト動物としては、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル、イルカ、アシカ等の哺乳類;鳥類;魚類;等があげられる。前記本発明の筋肉量の低下抑制用調製物をin vitroで使用する場合、前記投与対象は、例えば、細胞、組織、器官等があげられ、前記細胞は、例えば、生体から採取した細胞、培養細胞等があげられ、前記組織または器官は、例えば、生体から採取した組織(生体組織)または器官等があげられる。前記細胞は、例えば、筋細胞、iPS細胞(induced pluripotent stem cells)、幹細胞等があげられる。
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物をin vivoで使用する場合、前記投与対象は、筋組織において炎症が生じている対象、筋組織において炎症性サイトカイン遺伝子の発現誘導(「増強」、「増加」、「向上」、または「亢進」ともいう、以下同様)および/またはケモカイン遺伝子の発現誘導が生じている対象、筋組織における間質線維化が誘導または生じている対象、筋組織の修復促進遺伝子の発現抑制が生じている対象、筋細胞におけるミトコンドリアの機能低下が生じている対象、筋細胞におけるミトコンドリア数が低下している対象、筋組織において障害が生じている対象、筋組織の障害誘導遺伝子の発現誘導が生じている対象、および/または筋細胞のアポトーシスが向上(亢進)している対象であってもよい。
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物をin vivoで使用する場合、前記投与対象は、筋肉量の低下が生じている対象が好ましい。また、本発明の筋肉量の低下抑制用調製物において、前記投与対象は、後述するように、加齢性筋肉減少症における筋肉量の低下を抑制できることから、加齢に起因する筋肉量の低下が生じている対象が好ましい。また、前記加齢性筋肉減少症は、例えば、中高年に生じる。このため、前記投与対象は、中高年が好ましい。前記中高年は、例えば、40歳以上、50歳以上、60歳以上、70歳以上、または80歳以上のヒトがあげられる。
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物の使用条件(投与条件)は、特に制限されず、例えば、投与対象の種類等に応じて、投与形態、投与時期、投与量等を適宜設定できる。
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物の投与方法は、例えば、脳内投与、髄腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与等が例示されるが、例えば、投与者の技術によらず、安全におよび安定的に投与できることから、静脈内投与が好ましい。
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物の投与量は、対象に投与した場合に、投与していない対象と比較して疾患に対して筋肉量の低下抑制効果(治療効果)を得ることができる細胞量である。具体的には、前記投与量は、例えば、被験者の年齢、体重、症状等によって適宜決定することができる。具体例として、前記投与量は、例えば、臍帯由来細胞数として、1回の投与当たり10~10個/kg体重、10~10個/kg体重、10~10個/kg体重があげられ、好ましくは、10~10個/kg体重、10~10個/kg体重である。前記投与量は、例えば、臍帯由来細胞数として、1回の投与当たり10~10個、10~10個、10~10個、10~10個があげられ、好ましくは、10~10個、10~10個である。前記投与量は、例えば、前記細胞調製物における臍帯由来細胞の数ということもできる。
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物の投与回数は、1または複数回である。前記複数回は、例えば、2回、3回、4回、5回またはそれ以上である。前記投与回数は、対象の治療効果を確認しながら、適宜決定されてもよい。前記複数回投与する場合、投与間隔は、対象の治療効果を確認しながら、適宜決定でき、例えば、1日1回、1週1回、2週1回、1ヶ月1回、3ヶ月1回、6か月1回等があげられる。
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、例えば、他の筋肉量の低下抑制に用いられる薬剤および/または方法と併用してもよい。前記筋肉量の低下抑制に用いられる方法としては、例えば、レジスタンス運動等の運動療法があげられ、具体例として、下記参考文献1~3が参照できる。
参考文献1:若林秀隆、「サルコペニアに対する運動療法の実際」、2013年、日本医事新報、No. 4677、32-36頁
参考文献2:Hidenori Arai et.al., “Special Issue: Clinical Guidelines for Sarcopenia. Guest Editor: Hidenori Arai. This publication has been supported by The Japanese Association on Sarcopenia and Frailty, The Japan Geriatrics Society and National Center for Geriatrics and Gerontology (NCGG) (Japan) Chapter 4 Treatment of sarcopenia”, 2018, Geriatrics & Gerontology International, pages 28-44
参考文献3:Masafumi Kuzuya et.al., “ Special Issue: Clinical Guide for Frailty. Guest Editors: Shosuke Satake and Hidenori Arai. This publication has been supported by The Japanese Association on Sarcopenia and Frailty, The Japan Geriatrics Society and National Center for Geriatrics and Gerontology (NCGG) (Japan) Chapter 3 Frailty prevention”, 2020, Geriatrics & Gerontology International, pages 20-24
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、筋肉量の低下が生じている対象に好適に使用でき、具体例として、加齢性筋肉減少症の対象に使用できる。前記加齢性筋肉減少症は、例えば、加齢に伴い、骨格筋等の筋肉量が低下する症状または疾患を意味する。前記加齢性筋肉減少症は、例えば、サルコペニア、フレイル等があげられる。
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、前述のように、対象における筋肉量の低下を抑制できる。このため、本発明は、対象における筋肉量低下の抑制方法を含んでもよい。この場合、本発明は、対象における筋肉量低下の抑制方法であって、対象に、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物を用いる。本発明の筋肉量低下の抑制方法は、例えば、前記対象に、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物を投与する工程を含む。前記投与工程における投与条件は、前述の説明を援用できる。
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、前述のように、対象における筋肉量の低下を抑制できる。このため、本発明は、筋肉量の低下が生じている対象の処置方法であって、対象に、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物を用いる。本発明の対象の処置方法は、例えば、前記対象に、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物を投与する工程を含む。前記投与工程における投与条件は、前述の説明を援用できる。
本発明の筋肉量の低下抑制用調製物は、前述のように、対象における筋肉量の低下を抑制できるため、例えば、加齢性筋肉減少症を治療できる。このため、本発明は、加齢性筋肉減少症患者の処置方法であって、前記加齢性筋肉減少症患者に、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物を投与する。前記投与工程における投与条件は、前述の説明を援用できる。
本発明において、「治療」は、対象疾患の発症の抑制、防止、抑止、予防、または遅延、発症した対象疾患もしくはその症状の進行の停止、抑制、抑止、または遅延、および対象疾患の改善または寛解のいずれの意味で用いてもよい。
<細胞調製物の用途>
別の実施形態において、本発明は、筋組織におけるミトコンドリアの機能向上に用いる細胞調製物または筋組織におけるミトコンドリアの機能向上方法を提供する。この場合、本発明は、筋組織におけるミトコンドリアの機能向上に用いる細胞調製物であって、前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。また。本発明は、対象の筋組織におけるミトコンドリアの機能向上方法であって、対象に、前記本発明の筋組織におけるミトコンドリアの機能向上に用いる細胞調製物を用いる。本発明は、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物の説明を援用できる。
また、別の実施形態において、本発明は、筋組織におけるミトコンドリア数の増加に用いる細胞調製物または筋組織におけるミトコンドリア数の増加方法を提供する。この場合、本発明は、筋組織におけるミトコンドリア数の増加に用いる細胞調製物であって、前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。また、本発明は、対象の筋組織におけるミトコンドリア数の増加方法であって、対象に、筋組織におけるミトコンドリア数の増加に用いる細胞調製物を用いる。本発明は、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物の説明を援用できる。
また、別の実施形態において、本発明は、筋組織におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現誘導に用いる細胞調製物または筋組織におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現誘導方法を提供する。この場合、本発明は、筋組織におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現誘導に用いる細胞調製物であって、前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。また、本発明は、対象の筋組織におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現誘導方法であって、対象に、筋組織におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現誘導に用いる細胞調製物を用いる。本発明は、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物の説明を援用できる。
また、別の実施形態において、本発明は、筋細胞のアポトーシス抑制に用いる細胞調製物または筋細胞のアポトーシスの抑制方法を提供する。この場合、本発明は、筋細胞のアポトーシス抑制に用いる細胞調製物であって、前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。また、本発明は、対象の筋細胞におけるアポトーシスの抑制方法であって、対象に、筋細胞のアポトーシス抑制に用いる細胞調製物を用いる。本発明は、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物の説明を援用できる。
また、別の実施形態において、本発明は、筋組織における炎症抑制に用いる細胞調製物または筋組織における炎症の抑制方法を提供する。この場合、本発明は、筋組織における抗炎症(炎症抑制)に用いる細胞調製物であって、前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。本発明は、対象の筋組織における炎症の抑制方法であって、対象に、筋組織における炎症抑制に用いる細胞調製物を用いる。本発明は、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物の説明を援用できる。
また、別の実施形態において、本発明は、筋組織における炎症性サイトカイン遺伝子および/またはケモカイン遺伝子の発現抑制に用いる細胞調製物、または筋組織における炎症性サイトカイン遺伝子および/またはケモカイン遺伝子の発現抑制方法を提供する。この場合、本発明は、筋組織における炎症性サイトカイン遺伝子および/またはケモカイン遺伝子の発現抑制に用いる細胞調製物であって、前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。また、本発明は、対象の筋組織における炎症性サイトカイン遺伝子および/またはケモカイン遺伝子の発現抑制方法であって、対象に、筋組織における炎症性サイトカイン遺伝子および/またはケモカイン遺伝子の発現抑制に用いる細胞調製物を用いる。本発明は、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物の説明を援用できる。
また、別の実施形態において、本発明は、筋細胞の増殖促進に用いる細胞調製物または筋細胞の増殖促進方法を提供する。この場合、本発明は、筋細胞の増殖促進に用いる細胞調製物であって、前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。また、本発明は、対象の筋細胞の増殖促進方法であって、対象に、筋細胞の増殖促進に用いる細胞調製物を用いる。本発明は、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物の説明を援用できる。
また、別の実施形態において、本発明は、筋細胞の増殖促進遺伝子の発現誘導に用いる細胞調製物または筋細胞の増殖促進遺伝子の発現誘導方法を提供する。この場合、本発明は、筋細胞の増殖促進遺伝子の発現誘導に用いる細胞調製物であって、前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。また、本発明は、対象の筋細胞の増殖促進遺伝子の発現誘導方法であって、
対象に、筋細胞の増殖促進遺伝子の発現誘導に用いる細胞調製物を用いる。本発明は、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物の説明を援用できる。
また、別の実施形態において、本発明は、筋組織の修復に用いる細胞調製物または筋組織の修復方法を提供する。この場合、本発明は、筋組織の修復に用いる細胞調製物であって、前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。本発明は、対象の筋組織の修復方法であって、対象に、筋組織の修復に用いる細胞調製物を用いる。本発明は、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物の説明を援用できる。
また、別の実施形態において、本発明は、筋組織の修復遺伝子の発現誘導に用いる細胞調製物または筋組織の修復遺伝子の発現誘導方法を提供する。この場合、本発明は、筋組織の修復遺伝子の発現誘導に用いる細胞調製物であって、前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。また、本発明は、対象の筋組織の修復遺伝子の発現誘導方法であって、対象に、筋組織の修復遺伝子の発現誘導に用いる細胞調製物を用いる。本発明は、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物の説明を援用できる。
また、別の実施形態において、本発明は、筋組織の障害抑制に用いる細胞調製物または筋組織の障害抑制方法を提供する。この場合、本発明は、筋組織の障害抑制に用いる細胞調製物であって、前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。また、本発明は、対象の筋組織の障害抑制方法であって、対象に、筋組織の障害抑制に用いる細胞調製物を用いる。本発明は、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物の説明を援用できる。
また、別の実施形態において、本発明は、筋組織の障害誘導遺伝子の発現抑制に用いる細胞調製物または筋組織の障害誘導遺伝子の発現抑制方法を提供する。この場合、本発明は、筋組織の障害誘導遺伝子の発現抑制に用いる細胞調製物であって、前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。また、本発明は、対象の筋組織の障害誘導遺伝子の発現抑制方法であって、対象に、筋組織の障害誘導遺伝子の発現抑制に用いる細胞調製物を用いる。本発明は、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物の説明を援用できる。
また、別の実施形態において、本発明は、対象の筋組織の間質の線維化の抑制に用いる細胞調製物または筋組織の間質の線維化の抑制方法を提供する。この場合、本発明は、対象の筋組織の間質の線維化の抑制に用いる細胞調製物であって、前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。また、本発明は、対象の筋組織の間質の線維化の抑制方法であって、対象に、対象の筋組織の間質の線維化の抑制に用いる細胞調製物を用いる。本発明は、前記本発明の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物の説明を援用できる。
<細胞調製物の使用>
本発明は、筋肉量の低下抑制、加齢性筋肉減少症の治療、筋組織におけるミトコンドリアの機能向上、筋組織におけるミトコンドリア数の増加、筋組織におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現誘導、筋細胞におけるアポトーシスの抑制、筋組織における炎症の抑制、筋組織における炎症性サイトカイン遺伝子および/またはケモカイン遺伝子の発現抑制、筋細胞の増殖促進、筋細胞の増殖促進遺伝子の発現誘導、筋組織の修復、筋組織の修復遺伝子の発現誘導、筋組織の障害抑制、および/または筋組織の障害誘導遺伝子の発現抑制に用いるための、細胞組成物であり、前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む。本発明は、筋肉量の低下抑制、加齢性筋肉減少症の治療、筋組織におけるミトコンドリアの機能向上、筋組織におけるミトコンドリア数の増加、筋組織におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現誘導、筋細胞におけるアポトーシスの抑制、筋組織における炎症の抑制、筋組織における炎症性サイトカイン遺伝子および/またはケモカイン遺伝子の発現抑制、筋細胞の増殖促進、筋細胞の増殖促進遺伝子の発現誘導、筋組織の修復、筋組織の修復遺伝子の発現誘導、筋組織の障害抑制、および/または筋組織の障害誘導遺伝子の発現抑制に用いるための、細胞組成物の製造するための、臍帯由来細胞の使用である。本発明は、前記本発明の筋肉量の低下抑制用調製物の説明を援用できる。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に記載された態様に限定されるものではない。なお、特に示さない限り、市販の試薬およびキット等は、そのプロトコルに従い使用した。
[実施例1]
本発明の細胞調製物により、サルコペニアが治療できることを確認した。
(1)臍帯由来細胞の調製
臍帯由来細胞は、Cytotherapy,18,229-241,2016に記載の方法で採取した。具体的には、東京大学医科学研究所の倫理委員会の承認を得た上で、提供者の同意を得て採取された臍帯の組織要素すべて(羊膜、血管、血管周囲組織およびワルトンジェリーを含む)を1~2mmの断片に細断し、培養皿上へ播種した。そして、セルアミーゴ(株式会社椿本チエイン製)を被せ、10% fetal bovine serum (FBS)と抗生物質とを添加したα-minimal essential medium (αMEM)中で培養する改良エクスプラント法により、臍帯由来細胞を得た。当該細胞の性状はプラスチック付着性である。
(2)表面抗原の確認
つぎに、得られた臍帯由来細胞について、表面抗原の発現の有無を確認した、前記表面抗原の発現の有無は、それぞれの抗原に対する特異抗体を用いたFACS解析により確認した。臍帯由来細胞の表面抗原としては、CD73、CD105、CD90、CD44およびHLA-classIが陽性、HLA-ClassII、CD34、CD45、CD19、CD80、CD86、CD40およびCD11bが陰性を呈した。さらに、HLA-G5およびPD-L2が陽性を呈した。また、HLA-Gは弱陽性、CD49d(ITGA4)およびCD184(CXCR4)は陰性~弱陽性、CD29(ITGB1)は陽性を呈した。
なお、前記臍帯由来細胞は、平常状態においてHGF(Hepatic Growth Factor)の遺伝子を高発現していること、炎症の条件下(IFN-γ 100ng/ml)においてIDO(Indoleamine 2,3-dioxygenase)の遺伝子発現が誘導されることを、Realtime PCRによって確認した。特にHGFの発現は、骨髄由来間葉系幹細胞に比べて、臍帯由来細胞でより高いことがわかった。また、臍帯由来細胞を、MLR(同種リンパ球混合反応)と共培養することにより、PGE2の分泌が誘導されることを、ELISAにより確認した。
(3)細胞調製物の調製
得られた臍帯由来細胞を、Corning(登録商標) CellBIND(登録商標) 表面100mm ディッシュ(コーニング社製、Product Number:#3292)に播種し、Passage 1からPassage 4まで継代し、増殖させた。なお、前記継代培養中の培養液は、ヒト間葉系幹細胞用基礎培養液である、CiMS(商標)-BM(ニプロ株式会社、製品コード:87-070)に、ヒト間葉系幹細胞用基礎培養液アニマルフリー添加剤であるCiMS(商標)-sAF(ニプロ株式会社、製品コード:87-072)を、添付文書に従った割合で添加したものを用いた。その後、TrypLE(商標) Select Enzyme(1X), no phenol red(ThermoFisher社、製品番号:12563011)を用いて前記細胞を剥離し、1×10cell/150μlとなるように調製し、本発明の細胞調製物とした。
(4)モデル動物
試験に供する動物として、促進老化・短寿命を示すSAMP(Senescence-Accelerated Mouse Prone)系統マウスである、SAMP10(中部科学資材株式会社から購入)を使用した。SAMP10は、脳萎縮を伴う、学習・記憶障害・情動障害・老化アミロイドーシス等の加齢に伴う障害が早期に発現する形質を示す系統である。SAMP10は、寿命が1年程度と短く、24週齢程度から老化現象が確認できるため、サルコペニアのモデル動物として使用した。
(5)マウスの調製
24週齢のSAMP10マウスをランダムにピックアップし、BDロードーズ(商標)30G インスリン皮下投与用針付注射筒(Becton Dickinson社、カタログ番号:326638)を使用して、前記細胞が1×10cell/マウスとなるように、マウス尾静脈に投与し、実施例のマウスとした。コントロールは、同容量の生理食塩水、または培養液を投与した24週齢のSAMP10マウスとした。
また、前記実施例のマウスと、コントロールのマウスとを、それぞれ、トレーニングをさせるグループ(Ex)と、そうでないグループとに分けた。すなわち、細胞を投与し、且つ、トレーニングを行わないグループ(Cell)を、実施例A(n=8)とし、細胞を投与し、且つ、トレーニングを行うグループ(Cell+Ex)を、実施例B(n=8)とした。そして、細胞を投与せず、トレーニングを行わないグループを、コントロール(n=7)とし、細胞を投与せず、トレーニングを行うグループ(Ex)を、参考例(n=7)とした。前記トレーニングは、週に3回のトレッドミルトレーニングを行った。前記トレッドミルトレーニングは、ベルトコンベアと、電気刺激を発生させる装置とを備えるトレーニング装置(マウス用ドレッドミル、有限会社メルクエスト社製)を用いて、マウスを強制的に走行させるトレーニングである。また、マウスの週齢によってトレーニング内容を変更した。具体的には、24週齢~26週齢のマウスには、装置の傾斜を0°に設定し、まず、7m/minの速度で5分間のウォーミングアップを行った後、17m/minの速度で35分間のエクササイズを行い、7m/minの速度で5分間のクールダウンを行った。27週齢~36週齢のマウスには、装置の傾斜を5°に設定し、まず、10m/minの速度で5分間のウォーミングアップを行った後、18m/minの速度で35分間のエクササイズを行い、10m/minの速度で5分間のクールダウンを行った。
(6)結果
各群のマウスについて、24週齢、28週齢、32週齢、および36週齢時点での体重を測定した。これらの結果を図1に示す。図1は、体重変化を示すグラフである。図1の各グラフにおいて、縦軸は、各群のマウスの平均体重(g)を示し、横軸は、マウスの週齢を示す。図1(A)は、各群のマウスの体重の推移を比較したグラフであり、円(●)のプロットは、コントロール(Control)を示し、四角(□)のプロットは、実施例A(Cell)を示し、三角(▲)のプロットは、参考例(Ex)を示し、三角(▽)のプロットは、実施例B(Ex+Cell)を示す。また、図1(B)は、コントロール(Control)のマウスの体重を示すグラフであり、図1(C)は、実施例A(Cell)のマウスの体重を示すグラフであり、図1(D)は、参考例(Ex)のマウスの体重を示すグラフであり、図1(E)は、実施例B(Ex+Cell)のマウスの体重を示すグラフである。図1に示すように、各群のマウスにおいて、体重に有意差は見られなかった。
また、各群のマウスについて、24週齢、28週齢、32週齢、および26週齢時点での握力を測定した。握力の測定は、市販の小動物用握力測定装置(マウス用握力メーター、AMETEK Chatillon社製)を用いて、以下のようにして行った。まず、マウスを、前記装置の網部に乗せ、前記網部に四肢でつかまらせた。その状態から、マウスの尾部を持って地面と水平に引っ張り、マウスが網を離すまでに必要な力(加重)を計測し、網を離す直前の力を握力とした。これらの結果を図2に示す。
図2は、体重あたりの握力の変化を示すグラフである。図2の各グラフにおいて、縦軸は、各群のマウスにおける体重当たりの握力(握力(g)/体重(g))の平均値を示し、横軸は、マウスの週齢を示す。図2(A)は、各群のマウスの体重当たりの握力(握力(g)/体重(g))を比較したグラフであり、円(●)のプロットは、コントロール(Control)を示し、四角(□)のプロットは、実施例A(Cell)を示し、三角(▲)のプロットは、参考例(Ex)を示し、三角(▽)のプロットは、実施例B(Ex+Cell)を示す。図2(B)は、コントロール(Control)のマウスの握力を示すグラフであり、図2(C)は、実施例A(Cell)のマウスの握力を示すグラフであり、図2(D)は、参考例(Ex)のマウスの握力を示すグラフであり、図2(E)は、実施例B(Ex+Cell)のマウスの握力を示すグラフである。
図2に示すように、実施例Aのマウスは、コントロールのマウスと比較して、32週齢および36週齢時点において、有意に握力が向上していた。また、実施例Bのマウスは、参考例(Ex)のマウスおよびコントロールのマウスと比較して、32週齢および36週齢時点において、有意に握力が向上していた。このため、本発明の細胞調製物は、握力の向上作用を奏する、すなわち、加齢性筋肉減少症における筋力の低下に対する治療効果を奏することがわかった。
また、各群のマウスについて、24週齢、28週齢、32週齢、および36週齢時点での持久力を測定した。持久力の測定は、以下の持久力測定方法により実施した。これらの結果を図3に示す。
(持久力測定方法)
速度 傾斜 時間
開始 6m/分 0° 0~ 5分
6m/分 10° 5~ 7分
8m/分 10° 7~ 9分
10m/分 10° 9~11分
12m/分 10° 11~13分
14m/分 10° 13~15分
16m/分 10° 15~17分
18m/分 10° 17~19分
20m/分 10° 19~21分
21m/分 10° 21分~
まず、各マウスについて、速度6m/分、装置の傾斜0°の条件で、5分間で走行させた。5分経過後、傾斜を10°に変更し、6m/分、装置の傾斜10°の条件で2分走行させ、以後2分毎に速度を2m/分ずつ速くした。また、最高速度は21m/分とし、各マウスが走れなくなるまでの時間を測定した。
図3は、持久力を示すグラフである。図3の各グラフにおいて、縦軸は、各群のマウスにおける持久力(min)の平均値を示し、横軸は、マウスの週齢を示す。図3(A)は、各群のマウスの持久力(min)を比較したグラフであり、円(●)のプロットは、コントロール(Control)を示し、四角(□)のプロットは、実施例A(Cell)を示し、三角(▲)のプロットは、参考例(Ex)を示し、三角(▽)のプロットは、実施例B(Ex+Cell)を示す。図3(B)は、コントロール(Control)のマウスの持久力を示すグラフであり、図3(C)は、実施例A(Cell)のマウスの持久力を示すグラフであり、図3(D)は、参考例(Ex)のマウスの持久力を示すグラフであり、図3(E)は、実施例B(Ex+Cell)のマウスの持久力を示すグラフである。
図3に示すように、実施例Aのマウスは、コントロールのマウスと比較して、32週齢時点において、有意に持久力が向上し、36週齢時点において、さらに持久力が向上していた。また、実施例Bのマウスは、参考例(Ex)のマウスおよびコントロールのマウスと比較して、32週齢時点において、有意に持久力が向上し、36週齢時点において、さらに持久力が向上していた。このため、本発明の細胞調製物は、持久力の向上効果を奏する、すなわち、加齢性筋肉減少症における筋力の低下に対する治療効果を奏することがわかった。
[実施例2]
本発明の細胞調製物の投与により、筋繊維サイズが向上していることを確認した。
前記実施例1で使用した各マウスを解剖し、腓腹筋(Gastrocnemius muscle)およびヒラメ筋(Soleus muscle)を採取し、重量の測定および形態観察を行った。これらの結果を図4に示す。
図4は、筋肉の重量の測定結果を示すグラフである。図4(A)は、各マウスの腓腹筋の重量を示すグラフであり、図4(B)は、各マウスのヒラメ筋の重量を示すグラフである。図4において、縦軸は、マウスの体重当たりの筋肉量(筋肉量(mg)/体重(g))の相対値を示し、横軸は、マウスの種類を示す。図4に示すように、実施例Aのマウスは、コントロールのマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、有意に腓腹筋およびヒラメ筋の重量が増加していた。実施例Bのマウスは、コントロールのマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、有意に腓腹筋およびヒラメ筋の重量が増加していた。
つぎに、採取した各筋組織について、Hematoxylin-Eosin(HE)染色を行い、形態学的観察を行った。また、採取した各筋組織について、Masson trichome(MT)染色を行い、各筋組織の間質線維化の程度を確認した。これらの結果を図5に示す。
図5は、筋組織の染色結果を示す写真である。図5において、(A)および(B)は、腓腹筋の結果を示し、(A)がHE染色の結果であり、(B)が、MT染色の結果である。図5において、(C)および(D)は、ヒラメ筋の結果を示し、(C)がHE染色の結果であり、(D)が、MT染色の結果である。また、図5(B)および(D)において、MT染色により青く染色された部分、すなわち、間質が線維化した領域を破線で囲って示している。図5に示すように、実施例Aのマウスは、コントロールのマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、腓腹筋およびヒラメ筋の筋繊維サイズの拡大がみられた。実施例Bのマウスは、コントロールのマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、腓腹筋およびヒラメ筋の筋繊維サイズの拡大がみられた。また、実施例AおよびBのマウスは、コントロールのマウスと比較して、腓腹筋およびヒラメ筋のいずれにおいても、間質線維化の減少がみられた。サルコペニア、フレイル等の加齢性筋肉減少症の患者においては、筋断面積(筋繊維サイズ)の減少、間質線維化等が起こることが知られている。本発明の細胞調製物は、筋断面積を向上でき、また、間質線維化を抑制できることから、加齢性筋肉減少症に対する治療効果を奏すると推定される。
以上のことから、本発明の細胞調製物は、筋断面積の向上および間質線維化の抑制を通じて、筋肉量を増加させ、これにより、加齢性筋肉減少症に対する治療効果を奏することがわかった。
[実施例3]
本発明の細胞調製物の投与により、ミトコンドリアの機能向上作用を示すことを確認した。
前記実施例2で採取した各マウスの腓腹筋(Gastrocnemius muscle)およびヒラメ筋(Soleus muscle)について、qPCRキット(PowersSYBRR Green CR Master Mix 、ThermoFisher社製、Cat. No.:#437659)を用いて、各筋組織中のPGC1-α、COX4、GLUT4をコードするmRNAの発現量をRT-PCR法を用いて確認した。また、前記腓腹筋において、PGC1-αの発現量を、ウエスタンブロッティングにより確認した。また、得られたゲルの染色像から、PGC1-αの発現量を算出した。なお、RT-PCRおよびウエスタンブロッティングの内在性コントロールとしては、グリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)を使用した(以下、同様)。これらの結果を、図6および図7に示す。
・PGC1-α用プライマーセット
フォワードプライマー:5'-CCGAGAATTCATGGAGCAAT-3'(配列番号1)
リバースプライマー: 5'-TTTCTGTGGGTTTGGTGTGA-3'(配列番号2)
・COX4用プライマーセット
フォワードプライマー:5'-AGCTGAGCCAAGCAGAGAAG-3'(配列番号3)
リバースプライマー: 5'-AATCACCAGAGCCGTGAATC-3'(配列番号4)
・GLUT4用プライマーセット
フォワードプライマー:5'-GACGGACACTCCATCTGTTG-3'(配列番号5)
リバースプライマー: 5'-GCCACGATGGAGACATAGC-3'(配列番号6)
・GAPDH用プライマーセット
フォワードプライマー:5'-ATGTGTCCGTCGTGGATCTGA-3'(配列番号7)
リバースプライマー: 5'-ATGCCTGCTTCACCACCTTCT-3'(配列番号8)
図6は、各マウスの腓腹筋における、PGC1-α、COX4、GLUT4の発現量を示すグラフである。図6において、上段の3図が、腓腹筋における結果を示すグラフであり、下の3図が、ヒラメ筋における結果を示すグラフである。また、図6の上段および下段のグラフにおいて、左から、PGC1-α、COX4、GLUT4の結果を示す。図6の各図において、縦軸は、内在性コントロール(GAPDH)に対するPGC1-α、COX4、またはGLUT4 mRNAの発現量の相対値を示し、横軸は、マウスの種類を示す。
図7は、ウェスタンブロットの結果を示す写真である。図7において、(A)は、腓腹筋におけるPGC1-αの結果を示すゲル画像であり、図7(B)は、腓腹筋におけるPGC1-αの発現量を示すグラフである。図7(A)のゲル画像において、上段は、PGC1-αの発現量を示し、下段は、内在性コントロール(GAPDH)の発現量を示す。また、図7(A)のゲル画像において、左側から3レーンごとに、それぞれ、コントロール(Control)、実施例A(Cell)、参考例(Ex)、実施例B(Cell+Ex)の結果を示す。
図6に示すように、実施例Aのマウスは、コントロールのマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、腓腹筋およびヒラメ筋におけるPGC1-α、COX4、およびGLUT4 mRNAの発現量の増加がみられた。実施例Bのマウスは、コントロールのマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、腓腹筋およびヒラメ筋におけるPGC1-α、COX4、およびGLUT4 mRNAの発現量の増加がみられた。
図7(A)および(B)に示すように、実施例Aのマウスは、コントロールのマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、腓腹筋およびヒラメ筋におけるPGC1-αタンパク質の発現量の増加が見られた。また、実施例Bのマウスは、コントロールおよび参考例のマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、腓腹筋におけるPGC1-αタンパク質の発現量の増加が見られた。これらの結果から、本発明の細胞調製物は、ミトコンドリアの機能向上という特有の機能を介して、筋肉量の低下を抑制していると推定された。
つぎに、腓腹筋中のミトコンドリアの形態を、電子顕微鏡(JEM-1400Plus、日本電子株式会社製)を用いて観察した。そして、単位面積当たりのミトコンドリアの数を計数した。これらの結果を図8に示す。
図8は、ミトコンドリアの測定結果を示す写真および図である。図8において、(A)は、腓腹筋の電子顕微鏡画像の結果を示し、(B)は、単位面積当たりのミトコンドリアの数の結果を示す。図8(A)および(B)に示すように、実施例AおよびBのマウスは、コントロールおよび参考例のマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、腓腹筋中におけるミトコンドリアの数の増加がみられた。
サルコペニア、フレイル等の加齢性筋肉減少症では、ミトコンドリアの機能低下が関係していることが示唆されている。このため、本発明の細胞調製物は、ミトコンドリアの機能向上作用を介して、加齢性筋肉減少症に対する治療効果を奏すると推定される。
[実施例4]
本発明の細胞調製物の投与により、筋細胞のアポトーシスが抑制されていることを確認した。
前記実施例2で採取した各マウスの腓腹筋(Gastrocnemius muscle)およびヒラメ筋(Soleus muscle)について、TUNEL(T-mediated digoxygenin(biotin)-dUTP nick end labeling)法により、各筋組織において、細胞のアポトーシスを示す断片化DNAの量を確認した。また、内因性アポトーシスのマーカーであるCleaved-caspase-3およびCleaved-caspase-8の発現量を、ウエスタンブロッティング法により確認した。これらの結果を図9に示す。
図9は、アポトーシス解析の結果を示す写真およびグラフである。図9において、(A)は、TUNEL染色の結果を示す写真であり、左の4図が、腓腹筋の結果を示し、右の4図が、ヒラメ筋の結果を示す。図9(A)の左右の4図において、それぞれ、左上が、コントロール(Control)の結果を示し、右上が、実施例A(Cell)の結果を示し、左下が、参考例(Ex)の結果を示し、右下が、実施例B(Cell+Ex)の結果を示す。なお、図9(A)において、TUNEL染色により染色された断片化DNAの箇所については、白色三角(▽)で示している。図9(B)は、腓腹筋におけるCleaved-caspase-3の発現量を示すゲル画像およびグラフである。図9(C)は、腓腹筋におけるCleaved-caspase-8の発現量を示すゲル画像およびグラフである。図9(B)および(C)のグラフにおいて、縦軸は、内在性コントロール(GAPDH)に対するCleaved-caspase-3またはCleaved-caspase-8の発現量の相対値を示し、横軸は、マウスの種類を示す。図9に示すように、実施例AおよびBのマウスは、コントロールのマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、各筋組織における細胞のアポトーシスを示す断片化DNAの減少がみられた。また、実施例AおよびBのマウスは、コントロールおよび参考例のマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、各筋組織における内因性アポトーシスのマーカーであるCleaved-caspase-3およびCleaved-caspase-8の発現量の低下がみられた。
サルコペニアの患者は、筋細胞のアポトーシスが亢進していることが知られている。本発明の細胞調製物は、例えば、筋細胞のアポトーシスを抑制できるため、筋肉量の低下を抑制でき、これにより、サルコペニアの治療効果を奏することがわかった。また、フレイル等の加齢性筋肉減少症においても、筋細胞のアポトーシスにより筋肉量が減少することから、本発明の細胞調製物は、他の加齢性筋肉減少症においても、治療効果を奏するといえる。
[実施例5]
本発明の細胞調製物の投与により、抗炎症作用を示すことを確認した。
前記実施例2で採取した各マウスの腓腹筋(Gastrocnemius muscle)およびヒラメ筋(Soleus muscle)について、前記qPCRキット(PowersSYBRR Green CR Master Mix、ThermoFisher社製、Cat.No.:#437659)を用いて、各筋組織における、炎症性サイトカインであるTumor necrosis factor-α(TNF-α)およびケモカインであるMonocyte chemotactic protein-1(MCP-1)のmRNAの発現量をRT-PCRにて確認した。また、採取した各筋組織について、CD68染色を行い、マクロファージを検出した。これらの結果を、図10に示す。
・TNF-α用プライマーセット
フォワードプライマー:5'-GACTTTCTCCTGGTATGAGATAG-3'(配列番号9)
リバースプライマー: 5'-AGGCTGCCCCGACTACGT-3'(配列番号10)
・MCP-1用プライマーセット
フォワードプライマー:5'-GCCCCACTCACCTGCTGCTACT-3'(配列番号11)
リバースプライマー: 5'-CCTGCTGCTGGTGATCCTCTTGT-3'(配列番号12)
図10は、炎症性サイトカインの発現量を示すグラフおよび筋組織の写真である。図10(A)は、各マウスの腓腹筋およびヒラメ筋における、TNF-αまたはMCP-1の発現量を示すグラフである。図10(A)において、上段の2図が、腓腹筋における結果を示すグラフであり、下の2図が、ヒラメ筋における結果を示すグラフである。また、図10(A)の上段および下段のグラフにおいて、左から、TNF-αおよびMCP-1の結果を示す。図10(A)の各図において、縦軸は、内在性コントロール(GAPDH)に対するTNF-αまたはMCP-1 mRNAの発現量の相対値を示し、横軸は、マウスの種類を示す。図10(B)は、CD68染色の結果を示す写真であり、左の4図が、腓腹筋の結果を示し、右の4図が、ヒラメ筋の結果を示す。図10(B)の左右の4図において、それぞれ、左上が、コントロール(Control)の結果を示し、右上が、実施例A(Cell)の結果を示し、左下が、参考例(Ex)の結果を示し、右下が、実施例B(Cell+Ex)の結果を示す。
図10に示すように、実施例AおよびBのマウスは、コントロールのマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、腓腹筋およびヒラメ筋における、TNF-αまたはMCP-1 mRNAの発現量が低下していた。また、CD68染色の結果から、実施例AおよびBのマウスは、コントロールと比較して、腓腹筋およびヒラメ筋におけるマクロファージの量が低下していることもわかった。
実施例AおよびBのマウスにおいて、筋組織中におけるTNF-αおよびMCP-1の発現量が低下すること、および筋組織中におけるマクロファージの量が低下すること等から、本発明の細胞調製物によれば、筋組織の炎症を抑制できることがわかった。老化が進むにつれて、筋組織では微細な炎症が起き、これにより筋肉量が低下しているといわれている。このため、本発明の細胞調製物は、筋組織の炎症を抑制することにより、筋肉量の低下を抑制でき、これにより、サルコペニアの治療効果を奏することがわかった。
[実施例6]
本発明の細胞調製物の投与により、筋細胞の増殖が向上することを確認した。
前記実施例2で採取した各マウスの腓腹筋(Gastrocnemius muscle)およびヒラメ筋(Soleus muscle)について、前記qPCRキット(PowersSYBRR Green CR Master Mix、ThermoFisher社製、Cat.No.:#437659)を用いて、筋組織中のTGF-β1のmRNAの発現量をRT-PCRにて確認した。また、採取した各筋組織について、PCNA(増殖細胞核抗原)の染色を行い、各筋組織における増殖細胞核抗原を検出し、Desmin+/Laminin5+蛍光二重蛍光染色を行い、各筋組織におけるデスミンおよびラミニン5の発現を確認した。これらの結果を図11に示す。
・TGF-β1用プライマーセット
フォワードプライマー:5'-TGGAGCAACATGTGGAACTC-3'(配列番号13)
リバースプライマー: 5'-GTCAGCAGCCGGTTACCA-3'(配列番号14)
図11は、TGF-β1の発現量を示すグラフおよび筋組織の写真である。図11において、(A)は、各マウスの腓腹筋およびヒラメ筋における、TGF-β1の発現量を示すグラフであり、(B)は、PCNA染色の結果を示す写真である。図11(A)において、左側の図が、腓腹筋における結果を示すグラフであり、右側の図が、ヒラメ筋における結果を示すグラフである。図11(A)の各図において、縦軸は、内在性コントロール(GAPDH)に対するTGF-β1 mRNAの発現量の相対値を示し、横軸は、マウスの種類を示す。図11(B)において、左の4図が、腓腹筋の結果を示し、右の4図が、ヒラメ筋の結果を示す。図11(B)の左右の4図において、それぞれ、左上が、コントロール(Control)の結果を示し、右上が、実施例A(Cell)の結果を示し、左下が、参考例(Ex)の結果を示し、右下が、実施例B(Cell+Ex)の結果を示す。なお、図11(B)において、PCNA染色により染色された増殖細胞核抗原の箇所については、白色三角(▽)で示している。図11(C)は、Desmin/Laminin5の蛍光二重蛍光染色の結果を示す写真であり、左の4図が、腓腹筋の結果を示し、右の4図が、ヒラメ筋の結果を示す。図11(C)の左右の4図において、それぞれ、左上が、コントロール(Control)の結果を示し、右上が、実施例A(Cell)の結果を示し、左下が、参考例(Ex)の結果を示し、右下が、実施例B(Cell+Ex)の結果を示す。なお、図11(C)において、Desmin/Laminin5の蛍光二重蛍光染色により染色されたDesmin+/Laminin5+(double positive)の箇所については、白色アスタリスク(*)で示している。
図11に示すように、実施例AおよびBのマウスは、コントロールのマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、腓腹筋およびヒラメ筋における、TGF-β1 mRNAの発現量が増加していた。また、PCNA染色の結果から、コントロールのマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、腓腹筋およびヒラメ筋における増殖細胞核抗原の数が増加している、すなわち、骨格筋細胞の増殖が亢進していることがわかった。さらに、Desmin+/Laminin5+蛍光二重蛍光染色の結果から、実施例AおよびBのマウスは、コントロールのマウスおよび参考例のマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、腓腹筋およびヒラメ筋における、DesminおよびLaminin5の発現量が増加していること、すなわち、骨格筋の修復が誘導されていることがわかった。
これらの結果から、本発明の細胞調製物は、骨格筋細胞の増殖を誘導し、これにより骨格筋の修復を促進することがわかった。また、TGF-β1は、骨格筋細胞の増殖を誘導することから、本発明の細胞調製物は、TGF-β1の発現誘導を介して、上記経路を誘導していると推定された。サルコペニア、フレイル等の加齢性筋肉減少症の患者においては、骨格筋細胞の数が減少することが知られている。このため、本発明の細胞調製物は、骨格筋の細胞増殖を誘導することにより、筋肉量の低下を植生し、これにより、加齢性筋肉減少症の治療効果を奏することがわかった。
[実施例7]
本発明の細胞調製物の投与により、骨格筋の修復が亢進されていることを確認した。
前記実施例2で採取した各マウスの腓腹筋(Gastrocnemius muscle)およびヒラメ筋(Soleus muscle)について、前記qPCRキット(PowersSYBRR Green CR Master Mix、ThermoFisher社製、Cat.No.:#437659)を用いて、カテプシンK(CatK)およびGAPDHをコードするmRNAの発現量をRT-PCR法を用いて確認した。また、Sirt1およびミオシン重鎖(Myosin heavy chain:MHC)の発現量と、GAPDHの発現量とを、ウエスタンブロッティング法により確認した。これらの結果を、図12に示す。
・CatK用プライマーセット
フォワードプライマー:5'-AGCAGGCTGGAGGACTAAGGT-3'(配列番号15)
リバースプライマー: 5'-TTTGTGCATCTCAGTGGAAGACT-3'(配列番号16)
図12は、CatK、Sirt1およびMHCの発現量を示すグラフまたは写真である。図12において、(A)は、各マウスの腓腹筋およびヒラメ筋における、CatKの発現量を示すグラフであり、(B)は、腓腹筋におけるSirt1の発現量を示すゲル画像およびグラフであり、(C)は、腓腹筋におけるMHCの発現量を示すゲル画像およびグラフである。図12(A)において、左図が、腓腹筋における結果を示すグラフであり、右図が、ヒラメ筋における結果を示すグラフである。図12(A)の各図において、縦軸は、内在性コントロール(GAPDH)に対するCatKの発現量の相対値を示し、横軸は、マウスの種類を示す。図12(B)および(C)のゲル画像において、上段は、Sirt1またはMHCの発現量を示し、下段は、内在性コントロール(GAPDH)の発現量を示す。また、各ゲル画像において、左側から三レーンごとに、それぞれ、コントロール(Control)、実施例A(Cell)、参考例(Ex)、実施例B(Cell+Ex)の結果を示す。図12(B)および(C)のグラフにおいて、縦軸は、内在性コントロール(GAPDH)に対するSirt1またはMHCの発現量の相対値を示し、横軸は、マウスの種類を示す。
図12(A)に示すように、実施例AおよびBのマウスは、コントロールのマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、有意に各筋組織におけるCatKの発現量の減少がみられた。また、実施例AおよびBのマウスは、コントロールおよび参考例のマウスと比較して、細胞投与から12週経過時点において、有意にSirt1およびMHCの発現量の上昇がみられた。
CatKは、筋肉の障害後に高発現し、炎症を惹起することにより筋肉の障害を増強し、再生を遅延させることが知られている。また、Sirt1等のサーチュイン遺伝子は、抗老化作用に関連する遺伝子であることが知られている。MHCは、筋肉量の修復および増大に関連する遺伝子であり、筋繊維の量を維持する機能があることが知られている。このため、本発明の細胞調製物は、骨格筋におけるCatKの発現量を抑制でき、Sirt1およびMHCの発現量を上昇させることができるため、例えば、骨格筋の修復を亢進し、これを維持できると推定された。このため、本発明の細胞調製物は、筋肉の障害を増強する遺伝子の発現を抑制し、他方、筋肉を再生させる遺伝子の発現を誘導することにより、筋肉量の低下を抑制し、これにより、サルコペニアの治療効果を奏することがわかった。
[実施例8]
本発明の細胞調製物のエクソソームが、筋細胞のアポトーシスを抑制できることを確認した。
(1)細胞調製物培養上清からのエクソソームの精製
本発明の細胞調製物のエクソソームが、アポトーシスを抑制することを確認するために、まず、細胞調製物培養上清からエクソソームの精製を行った。具体的には、実施例1(1)~(3)と同様にして調製した細胞調製物を、Corning(登録商標) CellBIND(登録商標)表面100mmディッシュ(コーニング社製、Product Number:#3292)に、細胞数1×10cell/1mlになるように播種し、48時間培養した。前記培養の培養液は、CiMS(商標)-BM(ニプロ株式会社、製品コード:87-070)に、ヒト間葉系幹細胞用基礎培養液アニマルフリー添加剤であるCiMS(商標)-sAF(ニプロ株式会社、製品コード:87-072)を、添付文書に従った割合で添加したものを用いた。前記培養後、300×g、10分の条件下で、第1の遠心を行い、細胞を除去し、第1の上清を得た。前記上清を、2000×g、10分の条件下で、第2の遠心を行い、細胞断片等を除去し、第2の上清を得た。その後、前記第2の上清を、0.22μmのフィルタを用いて濾過し、サンプルを得た。前記サンプルを超遠心用UCチューブに入れ、ローター(SW32Ti-12U、ベックマン・コールター社製)に設置し、超遠心機(Optima L-100、ベックマン・コールター社製)を用いて第3の遠心を行った。前記第3の遠心は、35000rpm、70分の条件下で行った。前記第3の遠心後、上清を除去し、沈殿物を得た。前記沈殿物に1mlのフィルタ濾過したPBSを添加し、ボルテックスを行った。前記ボルテックス後、PBSで35mlにメスアップし、前記第3の遠心と同様の条件で、第4の遠心を行った。前記第4の遠心後、上清を除去し、少量のPBSを添加し、ボルテックスを行い、エクソソーム溶液を得た。その後、前記エクソソーム溶液は、1.5mlの低吸着チューブに保存した。
(2)エクソソームの電子顕微鏡撮影
つぎに、前記エクソソーム溶液にエクソソームが含まれているか確認するために、前記エクソソーム溶液の電子顕微鏡による観察を行った。具体的には、10μlの前記エクソソーム溶液を、グリッドに載せ、10分間の条件下で、自然乾燥を行った。前記自然乾燥後、酢酸ウラニルを添加し、ネガティブ染色を行った。前記ネガティブ染色後、透過電子顕微鏡(JEM-1400PLUS、日本電子社製)を用いて、観察を行った。これらの結果を図13に示す。
図13は、電子顕微鏡によるエクソソームの写真である。図13において、スケールバーは、200nmを示す。図13に示すように、直径約50mmから約200mmの丸い小胞が、多数観察された。以上のことから、本発明の細胞調製物の培養上清から、エクソソームが精製できることが示唆された。
(3)エクソソームのマーカーの確認
前記電子顕微鏡で観察された丸い小胞がエクソソームか確認するため、ウエスタンブロッティング法を用いて、前記小胞が、エクソソームマーカーを発現しているか確認した。具体的には、前記実施例8(1)で得たエクソソーム溶液50μlに、50μlの2×サンプルバッファーを添加し、95℃で5分間加熱し、サンプルを調製した。前記調製後、10~20%スーパーセップTMエース(富士フイルム和光純薬社製)アクリルアミドゲルのウェルに前記サンプルをアプライし、電気泳動を行った。前記電気泳動後、ウエスタンブロッティングを行った。前記ウエスタンブロッティングにおけるエクソソームの検出は、一晩の条件下で、1次抗体を反応させた後、室温(約25℃)、1時間の条件下で、2次抗体で染色した。前記1次抗体には、エクソソームのマーカーである、抗CD9モノクローナル抗体(clone:1K、1000倍希釈、Cat.No:041-27763、富士フイルム和光純薬社製)、抗CD63モノクローナル抗体(clone:3-13、1000倍希釈、Cat.No:012-27063、富士フイルム和光純薬社製)、および抗CD81モノクローナル抗体(clone:17B1、1000倍希釈、Cat.No:011-27773、富士フイルム和光純薬社製)を用いた。前記2次抗体には、Anti-Mouse IgG, HRP-Linked F(ab’)2 Fragment Sheep(5000倍希釈、Cat.No:NA9310V、cytiva社製)を用いた。同様に、独立に追加で調製した3つのエクソソーム溶液について、エクソソームのマーカーの検出を行なった。これらの結果を図14に示す。
図14は、ウエスタンブロッティングによるエクソソームマーカーの検出結果を示す写真である。図14において、写真の左側は、エクソソームのマーカーを示し、写真の上部は、エクソソーム溶液のサンプルを示し、レーン1~4は、それぞれ、独立して調製したエクソソーム溶液の結果を示す。図14に示すように、エクソソーム溶液のいずれのサンプルにおいても、エクソソームマーカーが検出され、臍帯由来間葉系幹細胞がエクソソームを分泌していることを再現よく確認できた。以上のことから、本発明の細胞調製物の培養上清から、エクソソームが精製できることがわかった。
(4)エクソソームの粒子径分布の評価
本発明の細胞調製物の培養上清から得られたエクソソームの、粒子径分布について評価を行った。具体的には、実施例8(1)で得たエクソソーム溶液を、PBSを用いて50倍に希釈した。前記希釈後、粒径測定器(Nano particle tracking analysis(NanoSight)、Malvern Panalytical社製)を用いて、デフォルトのパラメータでエクソソームの粒子径を測定した。これらの結果を図15に示す。
図15は、エクソソームマーカーの粒子径の分布を示したグラフである。図15において、縦軸は、エクソソームの濃度(小胞数/ml)を示し、横軸は、エクソソームの大きさ(nm)を示す。図15に示すように、前記臍帯由来間葉系細胞のエクソソームは、40~400nmに分布し、116nmの大きさのエクソソームが一番多く、40nmの大きさのエクソソームが一番小さく、621nmの大きさのエクソソームが一番大きかった。また、約100nmから約300nmの大きさのエクソソームが多く見られた。以上のことから、本発明の細胞調製物の培養上清から得たエクソソームは、約100nmから約300nmの大きさのエクソソームであることがわかった。
(5)エクソソームの培養筋細胞への取り込みの評価
本発明の細胞調製物の培養上清から得られたエクソソームが、培養筋細胞に取り込まれるかについて評価を行った。具体的には、実施例8(1)で得たエクソソーム溶液(タンパク質量として10μg)を、ExoSparkler Exosome Membrane Labeling Kit-Green(Cat.No:EX01、同仁化学研究所社製)を用いて標識した。前記標識後、ディッシュに1.25×10細胞を播種したC2C12細胞(マウス横紋筋細胞)に、添加した。前記添加後、24時間インキュベートを行った。前記インキュベート後、4%パラホルムアルデヒド含有リン酸緩衝液(Cat.No:161-20141、富士フイルム和光純薬社製)を用いて、室温、20分の条件下で、前記細胞を固定した。前記固定後、室温、5分の条件下で、PBSを用いて洗浄を行い、さらに、前記洗浄を計3回行った。その後、蛍光顕微鏡(Super-resolution/confocal Microscopy(LSM880-ELYRA PS. 1、Carl Zeiss社製)を用いて、前記細胞の観察を行った。これらの結果を図16に示す。
図16は、エクソソームを取り込んだC2C12細胞を示した写真である。図16に示すように、C2C12細胞が、標識されたエクソソームを取り込んでいることがわかった。以上のことから、本発明の細胞調製物の培養上清から得たエクソソームは、筋細胞に取り込まれることがわかった。
(6)エクソソームによる、アポトーシス抑制の評価
本発明の細胞調製物の培養上清から得られたエクソソームが、前記エクソソームを取り込んだ培養筋細胞のアポトーシスを抑制するかを検討した。具体的には、カバーグラスが入ってた12ウェル培養プレートに、C2C12細胞(マウス横紋筋細胞)を2×10細胞となるように播種した後、300μmol/lのHを添加した。前記添加後、12時間インキュベートを行った。前記インキュベート後、前記実施例8(1)で得たエクソソーム溶液(タンパク質量として1μg)を添加したDMEM培地内で培養を行った。ネガティブコントロールには、前記エクソソーム溶液の代わりに、等容量のPBSを添加したDMEM培地を用いて培養を行った。前記培養は、12時間行った。前記培養後、TUNEL染色を行い、蛍光顕微鏡を用いて細胞を観察した。また、核の染色には、ProLongTM Galss Antifade Mountan with NucBlueTM(Cat.No:P36985、ThermoFisher社製)を用いた。核陽性細胞におけるTUNEL陽性細胞の割合を算出した。これらの結果を図17に示す。有意差の検定には、t tests (and nonparametric tests)を用いた。
図17は、エクソソームを取り込ませたC2C12細胞のアポトーシスを示した写真およびグラフである。図17において、(A)は、エクソソーム添加の有無によるTUNEL染色を示した写真であり、(B)は、エクソソーム添加の有無によるTUNEL陽性細胞の割合を示したグラフである。図17(A)において、写真の左側は、エクソソーム添加の有無を示し、写真の上部は、マーカーの種類を示す。図17(B)において、縦軸は、TUNEL陽性細胞の割合(%)を示し、横軸は、エクソソーム添加の有無を示す。図17(A)に示すように、エクソソームを添加したC2C12細胞(Exosome)では、エクソソームを添加していないネガティブコントロール(Control)と比較して、TUNEL陽性細胞は少なく観察された。また、図17(B)に示すように、エクソソームを添加したC2C12細胞では、エクソソームを添加していないネガティブコントロールと比較して、有意にTUNEL陽性細胞の割合が減少した。以上のことから、本発明の細胞調製物の培養上清から得たエクソソームは、前記エクソソームを取り込んだ筋細胞において、Hによって引き起こされるアポトーシスを、抑制できることがわかった。なお、臍帯由来細胞がエクソソームを分泌することは、本発明者らが初めて示したことである。
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
この出願は、2020年11月16日に出願された日本出願特願2020-190551を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物であって、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記2)
前記臍帯由来細胞は、臍帯由来間葉系細胞である、付記1に記載の細胞調製物。
(付記3)
前記臍帯由来細胞は、
(i)CD105、CD73、CD90、CD44、HLA-classI、HLA-G5およびPD-L2が陽性であり、かつ
(ii)CD45、CD34、CD11b、CD19およびHLA-ClassIIが陰性である、付記1または2に記載の細胞調製物。
(付記4)
前記臍帯由来細胞は、
(iii)炎症条件下でIDO、PGE2、PD-L1のいずれか1つの遺伝子および/またはタンパクの発現が誘導される、付記1から3のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記5)
前記臍帯由来細胞が、羊膜、血管、血管周囲組織および/またはワルトンジェリーを含む臍帯組織から調製された細胞である、付記1から4のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記6)
前記細胞調製物は、1×10~1×10個の臍帯由来細胞を含む、付記1から5のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記7)
前記細胞調製物は、前記臍帯由来細胞の抽出物および/または分泌物を含む、付記1から6のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記8)
前記細胞調製物は、筋組織におけるミトコンドリアの機能向上作用を示す、付記1から7のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記9)
前記細胞調製物は、筋組織におけるミトコンドリア数の増加作用を示す、付記1から8のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記10)
前記細胞調製物は、筋組織におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現誘導作用を示す、付記1から9のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記11)
前記ミトコンドリアの機能向上遺伝子は、PGC1-α遺伝子、COX4遺伝子、および/またはGLUT4遺伝子である、付記10記載の細胞調製物。
(付記12)
前記細胞調製物は、筋細胞のアポトーシス抑制作用を示す、付記1から11のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記13)
前記細胞調製物は、筋組織において、抗炎症作用を示す、付記1から12のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記14)
前記細胞調製物は、筋組織における炎症性サイトカイン遺伝子および/またはケモカイン遺伝子の発現抑制作用を示す、付記1から13のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記15)
前記炎症性サイトカイン遺伝子は、TNF-α遺伝子である、付記14に記載の細胞調製物。
(付記16)
前記ケモカイン遺伝子は、MCP-1遺伝子である、付記14に記載の細胞調製物。
(付記17)
前記細胞調製物は、筋細胞の増殖促進作用を示す、付記1から16のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記18)
前記細胞調製物は、筋細胞の増殖促進遺伝子の発現誘導作用を示す、付記1から17のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記19)
前記筋細胞の増殖促進遺伝子は、TGF-β1遺伝子である、付記18に記載の細胞調製物。
(付記20)
前記細胞調製物は、筋組織の修復作用を示す、付記1から19のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記21)
前記細胞調製物は、筋組織の修復遺伝子の発現誘導作用を示す、付記1から20のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記22)
前記筋組織の修復遺伝子は、SIRT1遺伝子および/またはMHC遺伝子である、付記21に記載の細胞調製物。
(付記23)
前記細胞調製物は、筋組織の障害抑制作用を示す、付記1から22のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記24)
前記細胞調製物は、筋組織の障害誘導遺伝子の発現抑制作用を示す、付記1から23のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記25)
前記筋組織の障害誘導遺伝子は、カテプシンK遺伝子である、付記24に記載の細胞調製物。
(付記26)
運動療法と併せて用いる、付記1から25のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記27)
筋組織において炎症が生じている対象に用いる、付記1から26のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記28)
静脈内投与用である、付記1から27のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記29)
筋肉量の低下が、加齢に起因するものである、付記1から28のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記30)
中高年に投与するための、付記1から29のいずれかに記載の細胞調製物。
(付記31)
加齢性筋肉減少症の治療に用いる細胞調製物であって、
付記1から30のいずれかに記載の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物を含む、細胞調製物。
(付記32)
前記加齢性筋肉減少症は、サルコペニアまたはフレイルである、付記31に記載の細胞調製物。
(付記33)
筋組織におけるミトコンドリアの機能向上に用いる細胞調製物であって、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記34)
筋組織におけるミトコンドリア数の増加に用いる細胞調製物であって、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記35)
筋組織におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現誘導に用いる細胞調製物であって、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記36)
前記ミトコンドリアの機能向上遺伝子は、PGC1-α遺伝子、COX4遺伝子、および/またはGLUT4遺伝子である、付記35に記載の細胞調製物。
(付記37)
筋細胞のアポトーシス抑制に用いる細胞調製物であって、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記38)
筋組織における抗炎症(炎症抑制)に用いる細胞調製物であって、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記39)
筋組織における炎症性サイトカイン遺伝子および/またはケモカイン遺伝子の発現抑制に用いる細胞調製物であって、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記40)
前記炎症性サイトカイン遺伝子は、TNF-α遺伝子である、付記39に記載の細胞調製物。
(付記41)
前記ケモカイン遺伝子は、MCP-1遺伝子である、付記39に記載の細胞調製物。
(付記42)
筋細胞の増殖促進に用いる細胞調製物であって、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記43)
筋細胞の増殖促進遺伝子の発現誘導に用いる細胞調製物であって、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記44)
前記筋細胞の増殖促進遺伝子は、TGF-β1遺伝子である、付記43に記載の細胞調製物。
(付記45)
筋組織の修復に用いる細胞調製物であって、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記46)
筋組織の修復遺伝子の発現誘導に用いる細胞調製物であって、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記47)
前記筋組織の修復遺伝子は、SIRT1遺伝子および/またはMHC遺伝子である、付記46に記載の細胞調製物。
(付記48)
筋組織の障害抑制に用いる細胞調製物であって、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記49)
筋組織の障害誘導遺伝子の発現抑制に用いる細胞調製物であって、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記50)
前記筋組織の障害誘導遺伝子は、カテプシンK遺伝子である、付記49に記載の細胞調製物。
(付記51)
対象の筋組織における間質の線維化の抑制に用いる細胞調製物であって、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記52)
対象における筋肉量低下の抑制方法であって、
対象に、付記1から30のいずれかに記載の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物を用いる、方法。
(付記53)
対象に、付記1から30のいずれかに記載の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物を投与する、付記52に記載の方法。
(付記54)
筋肉量の低下が生じている対象の処置方法であって、
対象に、付記1から30のいずれかに記載の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物を用いる、方法。
(付記55)
対象に、付記1から30のいずれかに記載の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物を投与する、付記54に記載の方法。
(付記56)
対象の筋組織におけるミトコンドリアの機能向上方法であって、
対象に、付記33に記載の筋組織におけるミトコンドリアの機能向上に用いる細胞調製物を用いる、方法。
(付記57)
対象に、付記33に記載の細胞調製物を投与する、付記56に記載の方法。
(付記58)
対象の筋組織におけるミトコンドリア数の増加方法であって、
対象に、付記34に記載の筋組織におけるミトコンドリア数の増加に用いる細胞調製物を用いる、方法。
(付記59)
対象に、付記34に記載の細胞調製物を投与する、付記58に記載の方法。
(付記60)
対象の筋組織におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現誘導方法であって、
対象に、付記35または36に記載の筋組織におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現誘導に用いる細胞調製物を用いる、方法。
(付記61)
対象に、付記35または36に記載の細胞調製物を投与する、付記60に記載の方法。
(付記62)
対象の筋細胞におけるアポトーシスの抑制方法であって、
対象に、付記37に記載の筋細胞のアポトーシス抑制に用いる細胞調製物を用いる、方法。
(付記63)
対象に、付記37に記載の細胞調製物を投与する、付記62に記載の方法。
(付記64)
対象の筋組織における炎症の抑制方法であって、
対象に、付記38に記載の筋組織における抗炎症(炎症抑制)に用いる細胞調製物を用いる、方法。
(付記65)
対象に、付記38に記載の細胞調製物を投与する、付記64記載の方法。
(付記66)
対象の筋組織における炎症性サイトカイン遺伝子および/またはケモカイン遺伝子の発現抑制方法であって、
対象に、付記39に記載の筋組織における炎症性サイトカイン遺伝子および/またはケモカイン遺伝子の発現抑制に用いる細胞調製物を用いる、方法。
(付記67)
対象に、付記39に記載の細胞調製物を投与する、付記66に記載の方法。
(付記68)
対象の筋細胞の増殖促進方法であって、
対象に、付記42に記載の筋細胞の増殖促進に用いる細胞調製物を用いる、方法。
(付記69)
対象に、付記42に記載の細胞調製物を投与する、付記68に記載の方法。
(付記70)
対象の筋細胞の増殖促進遺伝子の発現誘導方法であって、
対象に、付記43または44に記載の筋細胞の増殖促進遺伝子の発現誘導に用いる細胞調製物を用いる、方法。
(付記71)
対象に、付記43または44に記載の細胞調製物を投与する、付記70に記載の方法。
(付記72)
対象の筋組織の修復方法であって、
対象に、付記45に記載の筋組織の修復に用いる細胞調製物を用いる、方法。
(付記73)
対象に、付記45に記載の細胞調製物を投与する、付記72に記載の方法。
(付記74)
対象の筋組織の修復遺伝子の発現誘導方法であって、
対象に、付記46または47に記載の筋組織の修復遺伝子の発現誘導に用いる細胞調製物を用いる、方法。
(付記75)
対象に、付記46または47に記載の細胞調製物を投与する、付記74に記載の方法。
(付記76)
対象の筋組織の障害抑制方法であって、
対象に、付記48に記載の筋組織の障害抑制に用いる細胞調製物を用いる、方法。
(付記77)
対象に、付記48に記載の細胞調製物を投与する、付記76に記載の方法。
(付記78)
対象の筋組織の障害誘導遺伝子の発現抑制方法であって、
対象に、付記49または50に記載の筋組織の障害誘導遺伝子の発現抑制に用いる細胞調製物を用いる、方法。
(付記79)
対象に、付記49または50に記載の細胞調製物を投与する、付記78に記載の方法。
(付記80)
加齢性筋肉減少症患者の処置方法であって、
前記加齢性筋肉減少症患者に、付記1から30のいずれかに記載の細胞調製物を投与する、処置方法。
(付記81)
対象の筋組織の間質の線維化の抑制方法であって、
対象に、付記51に記載の対象の筋組織における間質の線維化の抑制に用いる細胞調製物を用いる、方法。
(付記82)
対象に、付記51に記載の細胞調製物を投与する、付記81に記載の方法。
(付記83)
筋肉量の低下抑制に用いるための、細胞組成物であり、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記84)
加齢性筋肉減少症の治療に用いるための、細胞調製物であり、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記85)
筋組織におけるミトコンドリアの機能向上に用いるための、細胞調製物であり、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記86)
筋組織におけるミトコンドリア数の増加に用いるための、細胞調製物であり、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記87)
筋組織におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現誘導に用いるための、細胞調製物であり、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記88)
筋細胞におけるアポトーシスの抑制に用いるための、細胞調製物であり、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記89)
筋組織における炎症の抑制に用いるための、細胞調製物であり、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記90)
筋組織における炎症性サイトカイン遺伝子および/またはケモカイン遺伝子の発現抑制に用いるための、細胞調製物であり、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記91)
筋細胞の増殖促進に用いるための、細胞調製物であり、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記92)
筋細胞の増殖促進遺伝子の発現誘導に用いるための、細胞調製物であり、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記93)
筋組織の修復に用いるための、細胞調製物であり、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記94)
筋組織の修復遺伝子の発現誘導に用いるための、細胞調製物であり、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記95)
筋組織の障害抑制に用いるための、細胞調製物であり、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記96)
筋組織の障害誘導遺伝子の発現抑制に用いるための、細胞調製物であり、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記97)
筋組織の間質の線維化の抑制に用いるための、細胞調製物であり、
前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
(付記98)
臍帯由来細胞に由来するエクソソームと、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
(付記99)
前記エクソソームの平均径は、1~500nmである、付記98に記載の医薬組成物。
(付記100)
前記エクソソームは、脂質膜および内腔を含み、
前記脂質膜は、前記臍帯由来細胞に由来し、
前記内腔は、前記臍帯由来細胞の細胞質を含む、付記98または99に記載の医薬組成物。
(付記101)
筋肉量の低下抑制に用いるための、付記98から100のいずれかに記載の医薬組成物。
(付記102)
筋組織におけるミトコンドリアの機能向上に用いるための、付記98から101のいずれかに記載の医薬組成物。
(付記103)
筋組織におけるミトコンドリア数の増加に用いるための、付記98から102のいずれかに記載の医薬組成物。
(付記104)
筋組織におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現誘導に用いるための、付記98から103のいずれかに記載の医薬組成物。
(付記105)
筋細胞のアポトーシス抑制に用いるための、付記98から104のいずれかに記載の医薬組成物。
(付記106)
筋組織における抗炎症(炎症抑制)に用いるための、付記98から105のいずれかに記載の医薬組成物。
(付記107)
筋組織における炎症性サイトカイン遺伝子および/またはケモカイン遺伝子の発現抑制に用いるための、付記98から106のいずれかに記載の医薬組成物。
(付記108)
筋細胞の増殖促進に用いるための、付記98から107のいずれかに記載の医薬組成物。
(付記109)
筋細胞の増殖促進遺伝子の発現誘導に用いるための、付記98から108のいずれかに記載の医薬組成物。
(付記110)
筋組織の修復に用いるための、付記98から109のいずれかに記載の医薬組成物。
(付記111)
筋組織の修復遺伝子の発現誘導に用いるための、付記98から110のいずれかに記載の医薬組成物。
(付記112)
筋組織の障害抑制に用いるための、付記98から111のいずれかに記載の医薬組成物。
(付記113)
加齢性筋肉減少症に用いるための、付記98から112のいずれかに記載の医薬組成物。
以上のように、本発明によれば、筋肉量の低下を抑制できる。このため、本発明によれば、筋肉量の減少により生じる疾患を治療できる。このため、本発明は、例えば、医薬分野等において極めて有用である。

Claims (32)

  1. 筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物であって、
    前記細胞調製物は、臍帯由来細胞を含む、細胞調製物。
  2. 前記臍帯由来細胞は、臍帯由来間葉系細胞である、請求項1に記載の細胞調製物。
  3. 前記臍帯由来細胞は、
    (i)CD105、CD73、CD90、CD44、HLA-classI、HLA-G5およびPD-L2が陽性であり、かつ
    (ii)CD45、CD34、CD11b、CD19およびHLA-ClassIIが陰性である、請求項1または2に記載の細胞調製物。
  4. 前記臍帯由来細胞は、
    (iii)炎症条件下でIDO、PGE2、PD-L1のいずれか1つの遺伝子および/またはタンパクの発現が誘導される、請求項1から3のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  5. 前記臍帯由来細胞が、羊膜、血管、血管周囲組織および/またはワルトンジェリーを含む臍帯組織から調製された細胞である、請求項1から4のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  6. 前記細胞調製物は、1×10~1×10個の臍帯由来細胞を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  7. 前記細胞調製物は、前記臍帯由来細胞の抽出物および/または分泌物を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  8. 前記細胞調製物は、筋組織におけるミトコンドリアの機能向上作用を示す、請求項1から7のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  9. 前記細胞調製物は、筋組織におけるミトコンドリア数の増加作用を示す、請求項1から8のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  10. 前記細胞調製物は、筋組織におけるミトコンドリアの機能向上遺伝子の発現誘導作用を示す、請求項1から9のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  11. 前記ミトコンドリアの機能向上遺伝子は、PGC1-α遺伝子、COX4遺伝子、および/またはGLUT4遺伝子である、請求項10に記載の細胞調製物。
  12. 前記細胞調製物は、筋細胞のアポトーシス抑制作用を示す、請求項1から11のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  13. 前記細胞調製物は、筋組織において、抗炎症作用を示す、請求項1から12のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  14. 前記細胞調製物は、筋組織における炎症性サイトカイン遺伝子および/またはケモカイン遺伝子の発現抑制作用を示す、請求項1から13のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  15. 前記炎症性サイトカイン遺伝子は、TNF-α遺伝子である、請求項14に記載の細胞調製物。
  16. 前記ケモカイン遺伝子は、MCP-1遺伝子である、請求項14に記載の細胞調製物。
  17. 前記細胞調製物は、筋細胞の増殖促進作用を示す、請求項1から16のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  18. 前記細胞調製物は、筋細胞の増殖促進遺伝子の発現誘導作用を示す、請求項1から17のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  19. 前記筋細胞の増殖促進遺伝子は、TGF-β1遺伝子である、請求項18に記載の細胞調製物。
  20. 前記細胞調製物は、筋組織の修復作用を示す、請求項1から19のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  21. 前記細胞調製物は、筋組織の修復遺伝子の発現誘導作用を示す、請求項1から20のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  22. 前記筋組織の修復遺伝子は、SIRT1遺伝子および/またはMHC遺伝子である、請求項21に記載の細胞調製物。
  23. 前記細胞調製物は、筋組織の障害抑制作用を示す、請求項1から22のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  24. 前記細胞調製物は、筋組織の障害誘導遺伝子の発現抑制作用を示す、請求項1から23のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  25. 前記筋組織の障害誘導遺伝子は、カテプシンK遺伝子である、請求項24に記載の細胞調製物。
  26. 運動療法と併せて用いる、請求項1から25のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  27. 筋組織において炎症が生じている対象に用いる、請求項1から26のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  28. 静脈内投与用である、請求項1から27のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  29. 筋肉量の低下が、加齢に起因するものである、請求項1から28のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  30. 中高年に投与するための、請求項1から29のいずれか一項に記載の細胞調製物。
  31. 加齢性筋肉減少症の治療に用いる細胞調製物であって、請求項1から30のいずれか一項に記載の筋肉量の低下抑制に用いる細胞調製物を含む、細胞調製物。
  32. 前記加齢性筋肉減少症は、サルコペニアまたはフレイルである、請求項31に記載の細胞調製物。

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