JP7165352B2 - 多能性幹細胞による慢性肺疾患の改善及び治療 - Google Patents

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Description

本発明は、再生医療における細胞製剤に関する。より具体的には、多能性幹細胞を含有する、慢性肺疾患の治療に有効な細胞製剤及び新規な治療方法に関する。
慢性肺疾患(chronic lung disease;CLD)、特に新生児の慢性肺疾患は、新生児医療の重大かつ頻度の高い合併症であり、呼吸窮迫症候群などの呼吸障害のために人工換気療法を受けた早産児の一群に認められる、慢性的な肺の病変である。今般、新生児医療の進歩に伴い、この20年間で先進諸国における出生体重1500g未満の児の生存率は、70%未満から80%以上へ上昇しているが、CLDの罹患率は在胎28週未満の児で53.2%、出生体重1000g未満の児で40%と依然として高率である。
新生児慢性肺疾患に関して、2001年に国際的に提唱された定義では、「在胎32週未満の早産児では、修正36週または退院前までに21%を越える酸素療法を28日以上必要とした児」とあり、その酸素依存度により重症度分類がされている。慢性肺疾患は退院後も在宅酸素療法を必要とする場合もあり、さらに、幼児期における呼吸器感染症の入院など、医療経済を考慮する上で重要な疾患である。また、慢性肺疾患は、新生児及び幼児のみならず、青年期にまで及ぶ呼吸機能の低下も大きな問題となっている。
これまで、新生児慢性肺疾患は、肺未熟性やサーファクタント欠乏状態に、感染、動脈管開存症、酸素毒性、人工換気などの損傷が加わり、肺組織の異形成に起因して、気腫化、線維化に至ると考えられていたが、近年、新生児慢性肺疾患は単なる肺の傷害だけではなく、発達途上の未熟肺が胎外に出て成長していく過程で様々な損傷が加わり、肺胞や血管系の発達が停止した状態と考えられている。
この疾患の治療法は、対症療法として投与する酸素濃度の制限、水分の制限、利尿薬による肺循環への水分負荷軽減、気管支拡張剤や呼吸刺激剤の投与、抗炎症作用や抗浮腫作用を期待してのステロイド投与などが行なわれている。例えば、特許文献1では、呼吸窮迫症候群患者が新生児慢性肺疾患に陥るリスクを低減させるために、ステロイド剤及び肺サーファクタントを組み合わせた、気管内投与に適用される医薬組成物が提案されている。しかしながら、ステロイドについては、成長期の中枢神経系への副作用が危惧されているため、重症例に対してのみレスキュー的に短期少量投与を行っているのが現状である。このように慢性肺疾患に対しては、対症療法的に治療が行われ、該疾患の根治を目指す治療薬及び治療法について報告されていない。
近年、再生医療分野において、幹細胞を用いた細胞療法が様々な疾患に対して研究が行われ、臨床への応用も行われつつ中で、慢性肺疾患、例えば、気管支肺異形成症(BPD)の改善や治療に幹細胞の適用が期待されている(非特許文献1~3)。例えば、骨髄間葉系細胞画分(MSC)は、成体から単離され、骨、軟骨、脂肪細胞、神経細胞、骨格筋等に分化する能力を有することが知られている(非特許文献4及び5)。しかしながら、MSCは様々な細胞を含む細胞群であり、その分化能の実体が分かっておらず、治療効果にバラつきが大きい。また、成体由来の多能性幹細胞としてiPS細胞(特許文献2)が報告されているが、iPS細胞の樹立には、間葉系細胞である皮膚線維芽細胞画分に特定の遺伝子や特定の化合物を体細胞に導入するという極めて複雑な操作を必要とすることに加え、iPS細胞が高い腫瘍形成能力を有することから、臨床応用への極めて高いハードルが存在している。
本発明者らの一人である出澤氏の研究により、間葉系細胞画分に存在し、誘導操作なしに得られる、SSEA-3(Stage-Specific Embryonic Antigen-3)を表面抗原として発現している多能性幹細胞(Multilineage-differentiating Stress Enduring cells;Muse細胞)が間葉系細胞画分の有する多能性を担っており、組織再生を目指した疾患治療に応用できる可能性があることが明らかになってきた。また、Muse細胞は、間葉系細胞画分を種々のストレスで刺激することにより濃縮できることも分かってきた(特許文献3;非特許文献6)。しかしながら、慢性肺疾患の改善及び/又は治療にMuse細胞を使用し、期待される治療効果が得られることを明らかにした例はない。
特開2007-262064号公報 特許第4183742号公報 国際公開第2011/007900号
Chou,H.C.,et al.,Am.J.Transl.Res.,Vol.8,p.342-353(2016) Kim,Y.E.,et al.,Pediatric Res.,2016,doi:10.1038/pr.2016.88 Luan,Y.,et al.,Mol.Med.Rep.,Vol.11,p.1945-1950(2015) Dezawa,M.,et al.,J.Clin.Invest.,Vol.113,p.1701-1710(2004) Dezawa,M.,et al.,Science,Vol.309,p.314-317(2005) Wakao,S,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.108,p.9875-9880(2011)
本発明は、再生医療において、多能性幹細胞(Muse細胞)を用いた新たな医療用途を提供することを目的とする。より具体的には、本発明は、Muse細胞を含む、慢性肺疾患(CLD)の治療に有効な細胞製剤及び医薬組成物、並びに新規な治療方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、高酸素負荷による慢性肺疾患モデルラットを作製し、静脈注射によりMuse細胞を投与することによって、慢性肺疾患が改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞から分離されたSSEA-3陽性の多能性幹細胞を含む、慢性肺疾患を改善及び/又は治療するための細胞製剤。
[2]外部ストレス刺激によりSSEA-3陽性の多能性幹細胞が濃縮された細胞画分を含む、上記[1]に記載の細胞製剤。
[3]前記多能性幹細胞が、CD105陽性である、上記[1]又は[2]に記載の細胞製剤。
[4]前記多能性幹細胞が、CD117陰性及びCD146陰性である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の細胞製剤。
[5]前記多能性幹細胞が、CD117陰性、CD146陰性、NG2陰性、CD34陰性、vWF陰性、及びCD271陰性である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の細胞製剤。
[6]前記多能性幹細胞が、CD34陰性、CD117陰性、CD146陰性、CD271陰性、NG2陰性、vWF陰性、Sox10陰性、Snai1陰性、Slug陰性、Tyrp1陰性、及びDct陰性である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の細胞製剤。
[7]前記多能性幹細胞が、以下の性質の全てを有する多能性幹細胞である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の細胞製剤:
(i)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(ii)三胚葉のいずれの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
(iii)腫瘍性増殖を示さない;及び
(iv)セルフリニューアル能を持つ。
[8]慢性肺疾患が、気管支肺異形成症(BPD)、ウィルソン・ミキティ症候群(WMS)、新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)、及び新生児高血圧症からなる群から選択される、上記[1]~[7]のいずれかに記載の細胞製剤。
[9]前記多能性幹細胞が肺組織に生着する能力を有する、上記[1]~[8]のいずれかに記載の細胞製剤。
[10]ヒト新生児、乳児又は幼児対象に前記多能性幹細胞を治療上有効量として約1×10細胞/個体~約3×108細胞/個体で投与する、上記[1]~[9]のいずれかに記載の細胞製剤。
[11]ヒト新生児、乳児又は幼児対象に前記多能性幹細胞を治療上有効量として、該対象一個体あたり約3×10細胞/kg~約3×10細胞/kgを体重換算した細胞量を投与する、上記[1]~[10]のいずれかに記載の細胞製剤。
本発明は、慢性肺疾患を患っている対象(主に新生児)に対し、Muse細胞を静脈等から投与することにより、抗炎症作用及び組織修復作用を発揮させ、正常な肺組織を構築させることができる。
GFP標識されたMuse細胞が、日齢15の慢性肺疾患モデルラットの肺組織において生着したことを示す。 Muse細胞投与群(「Muse」)、細胞懸濁液(HANK’S BALANCED SALT SOLUTION:HBSS)のみを添加した群(「ベヒクル」)、及びシャムオペ群(「シャム」)の慢性肺疾患モデルラットの肺組織を評価した結果を示す。短期群は日齢15のラットを被験対象とし、長期群は日齢29のラットを被験対象とした。縦軸は、組織の割合を示す。 Muse細胞投与群(「Muse」)、非Muse細胞投与群(「非Muse」)、細胞懸濁液(HBSS)のみ添加をした群(「ベヒクル」)、及びシャムオペ群(「シャム」)の慢性肺疾患モデルラットの肺組織を評価した結果を示す。短期群は日齢15のラットを被験対象とし、長期群は日齢29のラットを被験対象とした。縦軸は、組織の割合を示す。 日齢29のラットの肺組織における肺胞壁の割合を評価した結果を示す。肺胞壁割合が高いほど、肺胞壁が密に形成され肺組織が修復されていることを表わす。 日齢15の慢性肺疾患モデルラットの肺組織において発現した炎症性サイトカインのmRNA発現量を測定した結果を示す。縦軸は、シャムオペ群を1とした相対的な発現量を示す。 Muse細胞投与群(「Muse群」)、細胞懸濁液(HBSS)のみを添加した群(「ベヒクル群」)、及びシャムオペ群(「シャム群」)の慢性肺疾患モデルラットの心臓評価を行った結果を示す。縦軸は、右室壁の重量を左室壁と中隔の重量で除したものを示す。 Muse細胞投与群(「Muse群」)、非Muse細胞投与群(「非Muse細胞」)、細胞懸濁液(HBSS)のみを添加した群(「ベヒクル群」)、及びシャムオペ群(「シャム群」)の慢性肺疾患モデルラットの心臓評価を行った結果を示す。縦軸は、右室壁の重量を左室壁と中隔の重量で除したものを示す。 肺動脈血管の内壁率の変化を指標にして、各種投与群における肺動脈血管壁の肥厚の軽減を検討した結果を示す。図8(A)は、肺動脈血管を断面にした組織を抗α-SMA抗体を用いて染色した図である。図8(B)は、短期群及び長期群における肺動脈細胞の内壁率を測定した結果を示す。 慢性肺疾患に伴い亢進される肺動脈細胞の新生の抑制を各種投与群において検討した結果を示す。図9(A)は、組織学的に染色した結果を示し、増殖中の肺動脈細胞の核を抗Ki-67抗体で染色(緑色)し、α-平滑筋アクチンを抗α-SMA抗体で染色(赤色)し、肺動脈細胞の核をDAPIで染色(青色)した。図9(B)は、抗Ki-67抗体による陽性率を示す。 肺胞洗浄液中の炎症性細胞の数を検討した結果を示す。
本発明は、SSEA-3陽性の多能性幹細胞(Muse細胞)を含む、慢性肺疾患を改善及び/又は治療するための細胞製剤及び医薬組成物、並びに新規な治療方法に関する。本発明を以下に詳細に説明する。
1.適用疾患とその診断
本発明は、SSEA-3陽性の多能性幹細胞(Muse細胞)を含む細胞製剤又は医薬組成物を用いて、慢性肺疾患の改善及び治療を目指す。わが国では1996年に厚生労働省研究班により、新生児の「慢性肺障害」を「先天奇形を除く肺の異常により、酸素投与を必要とするような呼吸窮迫症状が新生児期に始まり、日齢28日を越えて続くもの」と定義し、さらに、肺障害のうち大部分を占める低出生体重児の慢性肺障害を疾患として特徴付けるために、「慢性肺疾患」を「胸部X線写真でびまん性不透亮像、泡沫状陰影など明らかな異常所見を伴う慢性肺障害のある場合」と定め、背景因子及び胸部X線所見から以下の表1に示すようにI~VIの病型に分類される。
Figure 0007165352000001
慢性肺疾患の診断は、上記基準に記載されるように、呼吸窮迫症候群における多呼吸を主とした症状と胸部X線により診断されるが、他の呼吸器疾患の可能性を否定した後の除外診断が基本となる。
一般的に、新生児慢性肺疾患は、肺の未熟性、酸素毒性、人工換気、炎症、感染、動脈管開存症などが危険因子として知られ、肺胞や血管系の発達が抑制された状態に起因した疾患であると捉えることができるが、本発明の適用疾患としての慢性肺疾患には、限定されないが、気管支肺異形成症(BPD)、ウィルソン・ミキティ症候群(WMS)、新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)、新生児高血圧症なども含めることができる。なお、気管支肺異形成症(BPD)は、1967年にNorthwayらが初めて報告したものであり、一般に欧米では慢性肺疾患の別名となっている。
新生児慢性肺疾患は、早産児に多い疾患であり、日齢28日又は修正36週を超えても酸素を必要とする呼吸障害が持続する疾患である。慢性肺疾患の病因としては、上記に記載の通りであるが、特に、高酸素療法(長期の高濃度吸収酸素、高圧の人工呼吸器管理など)や炎症を起因とするところが大きい。炎症(感染)との関連では、絨毛羊膜炎、臍帯炎などの出生前感染により慢性肺障害の病因となり、これらもまた本発明の適用対象となり得る。絨毛羊膜炎は、胎児を包む羊膜に炎症が波及し、胎盤炎症が起きた感染症の1つである。絨毛羊膜炎が起こると、胎内で炎症性物質が高値になり、そのため、気管支や肺胞上皮の剥離、肺胞構造の再生に必要な物質の低下を来たし、慢性肺障害を発症すると考えられている。
本発明によれば、上記の適用疾患を治療するために、後述する細胞製剤及び医薬組成物を対象に投与(以下、総じて「移植」と記述することがある。)し、適用疾患の改善及び/又は治療を可能にする。ここで、「改善」とは、慢性肺疾患に伴う各種の症状の緩和及び進行の抑制を意味し、好ましくは、日常生活に差し支えない程度にまで症状を緩和することを意味する。また、「治療」とは、慢性肺疾患に伴う各種の症状を抑制すること又は完全に消失させることをいう。
2.細胞製剤及び医薬組成物
(1)多能性幹細胞
本発明の細胞製剤及び医薬組成物に使用される多能性幹細胞は、典型的には、本発明者らの一人である出澤氏が、ヒト生体内にその存在を見出し、「Muse(Multilineage-differentiating Stress Enduring)細胞」と命名した細胞である。Muse細胞は、骨髄液、脂肪組織(Ogura,F.,et al.,Stem Cells Dev.,Nov 20,2013(published on Jan 17,2014))や真皮結合組織等の皮膚組織から得ることができ、各臓器の結合組織にも散在する。また、この細胞は、多能性幹細胞と間葉系幹細胞の両方の性質を有する細胞であり、例えば、それぞれの細胞表面マーカーである「SSEA-3(Stage-specific embryonic antigen-3)」と「CD105」のダブル陽性として同定される。したがって、Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団は、例えば、これらの抗原マーカーを指標として生体組織から分離することができる。また、Muse細胞はストレス耐性であり、間葉系組織又は培養間葉系細胞から種々のストレス刺激により濃縮することができる。本発明の細胞製剤には、ストレス刺激によりMuse細胞が濃縮された細胞画分を用いることもできる。Muse細胞の分離法、同定法、及び特徴などの詳細は、国際公開第WO2011/007900号に開示されている。また、Wakaoら(2011、上述)によって報告されているように、骨髄、皮膚などから間葉系細胞を培養し、それをMuse細胞の母集団として用いる場合、SSEA-3陽性細胞の全てがCD105陽性細胞であることが分かっている。したがって、本発明における細胞製剤及び医薬組成物において、生体の間葉系組織又は培養間葉系幹細胞からMuse細胞を分離する場合は、単にSSEA-3を抗原マーカーとしてMuse細胞を精製し、使用することができる。なお、本明細書においては、慢性肺疾患を改善及び/又は治療するための細胞製剤及び医薬組成物において使用され得る、SSEA-3を抗原マーカーとして、生体の間葉系組織又は培養間葉系組織から分離された多能性幹細胞(Muse細胞)又はMuse細胞を含む細胞集団を単に「SSEA-3陽性細胞」と記載することがある。また、本明細書においては、「非Muse細胞」とは、生体の間葉系組織又は培養間葉系組織に含まれる細胞であって、「SSEA-3陽性細胞」以外の細胞を指す。
簡単には、Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団は、細胞表面マーカーであるSSEA-3に対する抗体を単独で用いて、又はSSEA-3及びCD105に対するそれぞれの抗体を両方用いて、生体組織(例えば、間葉系組織)から分離することができる。ここで、「生体」とは、哺乳動物の生体をいう。本発明において、生体には、受精卵や胞胚期より発生段階が前の胚は含まれないが、胎児や胞胚を含む胞胚期以降の発生段階の胚は含まれる。哺乳動物には、限定されないが、ヒト、サル等の霊長類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット等のげっ歯類、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ロバ、ヤギ、フェレット等が挙げられる。本発明の細胞製剤及び医薬組成物に使用されるMuse細胞は、生体の組織から直接マーカーを用いて分離される点で、胚性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞と明確に区別される。また、「間葉系組織」とは、骨、滑膜、脂肪、血液、骨髄、骨格筋、真皮、靭帯、腱、歯髄、臍帯、臍帯血などの組織及び各種臓器に存在する組織をいう。例えば、Muse細胞は、骨髄や皮膚、脂肪組織から得ることができる。例えば、生体の間葉系組織を採取し、この組織からMuse細胞を分離し、利用することが好ましい。また、上記分離手段を用いて、線維芽細胞や骨髄間葉系幹細胞などの培養間葉系細胞からMuse細胞を分離してもよい。本発明の細胞製剤及び医薬組成物においては、使用されるMuse細胞は、レシピエントに対して自家であってもよく、又は他家であってもよい。
上記のように、Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団は、例えば、SSEA-3陽性、及びSSEA-3とCD105の二重陽性を指標にして生体組織から分離することができるが、ヒト成人皮膚には、種々のタイプの幹細胞及び前駆細胞を含むことが知られている。しかしながら、Muse細胞は、これらの細胞と同じではない。このような幹細胞及び前駆細胞には、皮膚由来前駆細胞(SKP)、神経堤幹細胞(NCSC)、メラノブラスト(MB)、血管周囲細胞(PC)、内皮前駆細胞(EP)、脂肪由来幹細胞(ADSC)が挙げられる。これらの細胞に固有のマーカーの「非発現」を指標として、Muse細胞を分離することができる。より具体的には、Muse細胞は、CD34(EP及びADSCのマーカー)、CD117(c-kit)(MBのマーカー)、CD146(PC及びADSCのマーカー)、CD271(NGFR)(NCSCのマーカー)、NG2(PCのマーカー)、vWF因子(フォンビルブランド因子)(EPのマーカー)、Sox10(NCSCのマーカー)、Snai1(SKPのマーカー)、Slug(SKPのマーカー)、Tyrp1(MBのマーカー)、及びDct(MBのマーカー)からなる群から選択される11個のマーカーのうち少なくとも1個、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は11個のマーカーの非発現を指標に分離することができる。例えば、限定されないが、CD117及びCD146の非発現を指標に分離することができ、さらに、CD117、CD146、NG2、CD34、vWF及びCD271の非発現を指標に分離することができ、さらに、上記の11個のマーカーの非発現を指標に分離することができる。
また、本発明の細胞製剤及び医薬組成物に使用される上記特徴を有するMuse細胞は、以下:
(i)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(ii)三胚葉のいずれの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
(iii)腫瘍性増殖を示さない;及び
(iv)セルフリニューアル能を持つ
からなる群から選択される少なくとも1つの性質を有してもよい。本発明の一局面では、本発明の細胞製剤及び医薬組成物に使用されるMuse細胞は、上記性質を全て有する。ここで、上記(i)について、「テロメラーゼ活性が低いか又は無い」とは、例えば、TRAPEZE XL telomerase detection kit(Millipore社)を用いてテロメラーゼ活性を検出した場合に、低いか又は検出できないことをいう。テロメラーゼ活性が「低い」とは、例えば、体細胞であるヒト線維芽細胞と同程度のテロメラーゼ活性を有しているか、又はHela細胞に比べて1/5以下、好ましくは1/10以下のテロメラーゼ活性を有していることをいう。上記(ii)について、Muse細胞は、in vitro及びin vivoにおいて、三胚葉(内胚葉系、中胚葉系、及び外胚葉系)に分化する能力を有し、例えば、in vitroで誘導培養することにより、肝細胞、神経細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、骨細胞、脂肪細胞等に分化し得る。また、in vivoで精巣に移植した場合にも三胚葉に分化する能力を示す場合がある。さらに、静注により生体に移植することで損傷を受けた臓器(心臓、皮膚、脊髄、肝、筋肉等)に遊走及び生着し、組織に応じた細胞に分化する能力を有する。上記(iii)について、Muse細胞は、浮遊培養では増殖速度約1.3日で増殖するが、浮遊培養では1細胞から増殖し、胚様体様細胞塊を作り14日間程度で増殖が止まる、という性質を有するが、これらの胚様体様細胞塊を接着培養に持っていくと、再び細胞増殖が開始され、細胞塊から増殖した細胞が広がっていく。さらに精巣に移植した場合、少なくとも半年間は癌化しないという性質を有する。また、上記(iv)について、Muse細胞は、セルフリニューアル(自己複製)能を有する。ここで、「セルフリニューアル」とは、1個のMuse細胞から浮遊培養で培養することにより得られる胚様体様細胞塊に含まれる細胞から3胚葉性の細胞への分化が確認できると同時に、胚様体様細胞塊の細胞を再び1細胞で浮遊培養に持っていくことにより、次の世代の胚様体様細胞塊を形成させ、そこから再び3胚葉性の分化と浮遊培養での胚様体様細胞塊が確認できることをいう。セルフリニューアルは1回又は複数回のサイクルを繰り返せばよい。
また、本発明の細胞製剤に使用されるMuse細胞を含む細胞画分は、生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞に外的ストレス刺激を与え、該外的ストレスに耐性の細胞を回収することを含む方法によって得られる、以下の性質の少なくとも1つ、好ましくは全てを有する、SSEA-3陽性及びCD105陽性の多能性幹細胞が濃縮された細胞画分であってもよい。
(i)SSEA-3陽性;
(ii)CD105陽性;
(iii)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(iv)三胚葉に分化する能力を持つ;
(v)腫瘍性増殖を示さない;及び
(vi)セルフリニューアル能を持つ。
上記外的ストレスは、プロテアーゼ処理、低酸素濃度での培養、低リン酸条件下での培養、低血清濃度での培養、低栄養条件での培養、熱ショックへの暴露下での培養、低温での培養、凍結処理、有害物質存在下での培養、活性酸素存在下での培養、機械的刺激下での培養、振とう処理下での培養、圧力処理下での培養又は物理的衝撃のいずれか又は複数の組み合わせであってもよい。例えば、上記プロテアーゼによる処理時間は、細胞に外的ストレスを与えるために合計0.5~36時間行うことが好ましい。また、プロテアーゼ濃度は、培養容器に接着した細胞を剥がすとき、細胞塊を単一細胞にばらばらにするとき、又は組織から単一細胞を回収するときに用いられる濃度であればよい。プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、システインプロテアーゼ、金属プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ又はN末端スレオニンプロテアーゼであることが好ましい。さらに、前記プロテアーゼがトリプシン、コラゲナーゼ又はジスパーゼであることが好ましい。
また、本発明の細胞製剤に使用される上記特徴を有するMuse細胞は、静脈投与等により生体に投与後、慢性肺疾患の肺組織に生着し、その後、Muse細胞は、該組織を構成する細胞に分化し、慢性肺疾患を改善及び/又は治療するものと考えられる。
(2)細胞製剤及び医薬組成物の調製及び使用
本発明の細胞製剤及び医薬組成物は、限定されないが、上記(1)で得られたMuse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団を生理食塩水や適切な緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水、HBSS)に懸濁させることによって得られる。この場合、自家又は他家の組織から分離したMuse細胞数が少ない場合には、投与前に細胞を培養して、所定の細胞濃度が得られるまで増殖させてもよい。なお、すでに報告されているように(国際公開第WO2011/007900号パンフレット)、Muse細胞は、腫瘍化しないため、生体組織から回収した細胞が未分化のまま含まれていても癌化の可能性が低く安全である。また、回収したMuse細胞の培養は、特に限定されないが、通常の増殖培地(例えば、10%仔牛血清を含むα-最少必須培地(α-MEM))において行うことができる。より詳しくは、上記国際公開第WO2011/007900号を参照して、Muse細胞の培養及び増殖において、適宜、培地、添加物(例えば、抗生物質、血清)等を選択し、所定濃度のMuse細胞を含む溶液を調製することができる。ヒト対象に本発明の細胞製剤又は医薬組成物を投与する場合には、ヒトの腸骨から数mL程度の骨髄液を採取し、例えば、骨髄液からの接着細胞として骨髄間葉系幹細胞を培養して有効な治療量のMuse細胞を分離できる細胞量に達するまで増やした後、Muse細胞をSSEA-3の抗原マーカーを指標として分離し、自家又は他家のMuse細胞を細胞製剤として調製することができる。あるいは、例えば、Muse細胞をSSEA-3の抗原マーカーを指標として分離後、有効な治療量に達するまで細胞を培養して増やした後、自家又は他家のMuse細胞を細胞製剤として調製することができる。
また、Muse細胞の細胞製剤及び医薬組成物への使用においては、該細胞を保護するためにジメチルスルフォキシド(DMSO)や血清アルブミン等を、細菌の混入及び増殖を防ぐために抗生物質等を細胞製剤及び医薬組成物に含有させてもよい。さらに、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)や間葉系幹細胞に含まれるMuse細胞以外の細胞又は成分を細胞製剤及び医薬組成物に含有させてもよい。当業者は、これら因子及び薬剤を適切な濃度で細胞製剤及び医薬組成物に添加することができる。
上記で調製される細胞製剤及び医薬組成物中に含有するMuse細胞数は、慢性肺疾患の改善及び/又は治療において所望の効果(例えば、死亡率低下、人工呼吸管理日数の短縮、酸素投与日数の短縮)が得られるように、対象の性別、年齢、体重、患部の状態、使用する細胞の状態等を考慮して、適宜、調整することができる。後述する実施例2~7において、高酸素負荷による慢性肺疾患モデルラットを用いて、Muse細胞移植による各種の効果を検討したが、体重約5~15gの該モデルラットに対しては、SSEA3陽性細胞を1×10細胞/頭(一個体あたり)で投与することにより、非常に優れた効果が得られた。この結果からヒト新生児(生後28日以内)、乳児(生後1年未満)、又は幼児(生後1~6年)の一個体あたり約3×10細胞/kg~約3×10細胞/kgを体重換算した細胞量を投与することで優れた効果が得られることが期待される。例えば、新生児及び乳児の体重を約400~10,000gとした場合、投与量としては概算で約1×10細胞/個体~約3×10細胞/個体が有効であると考えられる。一方で、血管への細胞投与による閉塞を防ぐために、1回投与分の量として、例えば、SSEA-3陽性細胞を3×10細胞/kg以下で細胞製剤に含有させるとよい。ここで個体はラット、ヒトを含むがこれに限定されない。また、本発明の細胞製剤及び医薬組成物は、所望の治療効果が得られるまで、複数回(例えば、2~10回)、適宜、間隔(例えば、1日に2回、1日に1回、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回)をおいて投与されてもよい。したがって、対象の状態にもよるが、治療上有効量としては、例えば、一個体あたり約1×10細胞~約3×10細胞で1~10回の投与量が好ましい。一個体における投与総量としては、限定されないが、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~5×10細胞、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~5×10細胞、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~5×10細胞、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~5×10細胞、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~5×10細胞、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~5×10細胞、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~5×10細胞、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~5×10細胞、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~5×10細胞、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~5×10細胞、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~5×10細胞、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~5×10細胞、1×10細胞~3×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、5×10細胞~3×10細胞、5×10細胞~1×10細胞、5×10細胞~5×10細胞、5×10細胞~3×10細胞、5×10細胞~1×10細胞、5×10細胞~5×10細胞、5×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~5×10細胞、1×10細胞~1×10細胞、1×10細胞~5×10細胞などが挙げられる。
本発明の細胞製剤及び医薬組成物は、慢性肺疾患を改善及び治療対象とするが、投与時期としては、出生後の小児科的な所見、胸部レントゲン写真やCT等により慢性肺疾患と診断された後であって、診断直後から数カ月以内であってもよい。あるいは、生後早期でも、呼吸状態が悪く、慢性肺疾患となる可能性が高いと判断された時(例えば、生後1週目)でもよい。一方、本発明によれば、該細胞製剤等は、受傷直後に投与されることが好ましいが、受傷後の遅い時期、例えば、受傷から1週間後、1カ月後、3カ月後、6カ月、12カ月後であっても、本発明の細胞製剤等の効果が期待できる。また、使用されるMuse細胞は、他家由来の場合でも免疫応答を惹起しないことが本発明者らの実験で確認されているので、慢性肺疾患の改善及び治療において所望の効果が得られるまで適宜投与されてもよい。なお、後述する実施例2~7において示されるように、慢性肺疾患モデルラットを用いたMuse細胞による該疾患の改善について肺組織評価及び心臓評価を行うと、短期(生後15日)の治療効果よりも長期(生後29日)の治療効果が顕著である傾向にある。
3.慢性肺疾患モデルラットの作製
本明細書においては、本発明の細胞製剤による慢性肺疾患の改善及び治療効果を検討するために慢性肺疾患モデルラットを構築し、使用することができる。該モデルとして使用されるラットには、限定されないが、一般的に、Wistar/ST系ラット、スプラーグドーリー(SD)系ラットが挙げられる。慢性肺疾患モデルラットを作製する方法は公知であり、例えば、Lu,A.ら(Pediatr.Res.,77,784-792(2015))の方法に従って慢性肺疾患モデルラットを作製することができる。また、上記方法によって作製されたモデルラットが、慢性肺疾患を有するかどうかを肺組織の評価により確認することができる。
本発明の細胞製剤及び医薬組成物に使用されるMuse細胞は、疾患部位に集積する性質を有する。したがって、細胞製剤又は医薬組成物の投与において、それらの投与部位(例えば、腹腔内、筋内、疾患部位)、投与される血管の種類(静脈及び動脈)等は限定されない。また、投与されたMuse細胞が疾患部位に到達し、生着したことを確認する方法としては、例えば、予め蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP))を発現するように遺伝子導入されたMuse細胞を作製し、生体に投与後、蛍光を検出できる方法(例えば、免疫組織染色)によって観察し、Muse細胞の動態を確認することができる。なお、本発明の細胞製剤及び医薬組成物に使用されるMuse細胞はヒト由来であるため、ラットとは異種の関係にある。モデル動物において異種の細胞等が投与される実験では、異種細胞の生体内で拒絶反応を抑制するために、異種細胞の投与前又は同時に免疫抑制剤(シクロスポリンなど)が投与されてもよい。
4.慢性肺疾患モデルラットにおけるMuse細胞による改善及び治療効果
本発明の実施形態では、本発明の細胞製剤及び医薬組成物は、ヒトを含む哺乳動物における慢性肺疾患及びそれに伴う各種症状を改善及び/又は治療することができる。本発明によれば、上記で作製した慢性肺疾患モデルラットを用いて、実験的に慢性肺疾患のラットにおけるMuse細胞による症状の改善等を検討し、該Muse細胞の効果を評価することができる。評価方法としては、ラットを用いた肺機能を評価する一般的な測定系を用いて行うことができ、例えば、FinePointe(商標)-呼吸・肺機能評価システム Noninvasive Airway Mechanics(NAM)などのラットの呼吸及び肺機能評価システムを利用することができる。また、モデルラットから取り出した肺組織について、例えば、肺胞壁の測定(肺胞間腔の拡大)、炎症性サイトカインなどのmRNA発現量の測定、あるいは、慢性肺疾患と関連付けられる右室心筋評価、肺血管評価を行うことにより評価することができる。
(1)肺組織の評価
本発明によれば、肺組織の評価の1つのとして、組織体積密度(Tissue Volume Density)を測定することにより、慢性肺疾患の治療改善効果を評価することができる。簡単には、被験対象から取り出した肺組織を4%パラフォルムアルデヒドで固定し、パラフィンブロック切片を作成後、ヘマトキシリン・エオジンで染色する。顕微鏡下で所定数のグリッドのうち肺組織の割合をカウントし、肺組織の病変を評価することができる(後述する実施例4を参照)。肺組織に損傷があると、肺胞腔率が高くなる。
別の態様では、肺組織において発現した炎症性サイトカインの発現量を測定することにより、慢性肺疾患に対する本発明の細胞製剤又は医薬組成物の有効性を評価することができる。一般的に、炎症性サイトカインには、IL-1α、IL-1β、IL-6、CCL2(MCP-1)、TNF-α、TGF-β、VEGF等が例示される。組織中に発現した炎症性サイトカインの発現量を常法により、例えば、RT-PCRを用いて測定することができる。後述する実施例5に記載されるように、Muse細胞を投与した群では、ベヒクルを投与した対照群と比較して、炎症性サイトカインの発現量を顕著に低下させることができ、Muse細胞は、慢性肺疾患の治療に期待され得る。
(2)心臓評価(肺高血圧評価)
高酸素負荷に起因した慢性肺疾患では、適用される高酸素濃度により、肺血管の肥厚が生じ、これに伴い心臓の肥厚が確認される。新生児の慢性肺疾患では、(重症になるほど)2次的な肺高血圧症を合併する。この2次的な肺高血圧症も生命予後を決める重要な要因である。持続的な肺高血圧は、右心負荷による右心室壁肥厚につながるため、心臓(心筋)の評価を用いて肺高血圧を評価することができる。後述する実施例6に示されるように、慢性肺疾患モデルラットにおいても右心負荷によると考えられる右室壁肥厚が観察され、この肥厚をMuse細胞の投与により低減させることができる。
(3)肺胞洗浄液中の炎症性細胞数の測定
慢性肺疾患においては、炎症性細胞数の増加が観察されるが、各種処置による慢性肺疾患の治療効果を肺胞からの洗浄液中の炎症性細胞数を測定することにより評価することができる。後述する実施例7に示されるように、Muse細胞は、慢性肺疾患モデルラットにおける炎症性細胞数を有意に減少させることができる。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1:Muse細胞の調製
ヒトMuse細胞の分離及び同定に関する国際公開第WO2011/007900号に記載された方法に準じて、Muse細胞を得た。
実施例2:慢性肺疾患モデルラットの作製とMuse細胞の投与
本研究に使用された実験動物に関するプロトコールは、名古屋大学医学部動物実験委員会によって承認されたものである。妊娠SDラットを日本エスエルシー株式会社(日本、静岡県)より入手した。出生後すぐ(24時間以内)より、母ラットと仔ラットは、実験期間中、食餌と水を自由に摂取できるようにされ、高酸素負荷がかけられるケージ(酸素コントローラーとセンサーアダプターを備えたアニマルチャンバー)内で、12時間の明暗サイクル下で飼育された。動物室とケージ内を常に23℃に維持した。母ラットもまた高酸素化で受傷するため、代理母ラットを2日毎に交替させた。
日齢5で上記慢性肺疾患モデルラットにイソフルラン吸入により麻酔を施し、処置群に対しては、Muse細胞(1×10細胞/個体)を右外頸静脈から投与した(処置群)。対照群では、Muse細胞に代えて、同体積のHBSSのみが投与された。Muse細胞及びHBSSがともに供されず、また、高酸素負荷がされないラットをシャム群とした。以下の実験では、日齢15と日齢29のラットをそれぞれ短期群及び長期群として、各種評価に用いた。なお、短期評価を行う日齢15まで、ラットは高酸素濃度(80%)に曝露され、その後、長期評価を行う日齢29まで、通常の酸素濃度(21%)に曝露された。
実施例3:肺組織におけるMuse細胞の生着確認
移植に使用されたMuse細胞が、肺組織に生着したことを確認する実験を行った。まず、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現し、Muse細胞がこれにより標識されるように、予めレンチウイルス-GFP遺伝子をMuse細胞に導入した。GFPで標識されたMuse細胞をGFPとSSEA-3の二重の陽性細胞としてFACSにて分離した。その後、実施例2に記載した通りに、Muse細胞を投与した。
次に、Muse細胞が投与された日齢15のラット(高酸素負荷後14日目)の肺において、以下の通り、Muse細胞が肺組織に生着したことを確認した。ラットを安楽死させた後、肺を切除し、常法に従って肺組織の切片を作製した。凍結切片を作製し、HistoVT one(ナカライテスク株式会社)にて抗原賦活を行った。抗体の非特異的結合を防ぐためにロバ血清でブロッキングを行った後、抗GFP抗体にて4℃一晩インキュベーションを行った。続いて、適切な2次抗体でさらにインキュベ-ションした。その後、DNAを染色するDAPIを含んだ封入剤で封入した。この結果から、ラットの右外頸静脈から移植されたMuse細胞は、肺障害を受けた肺組織に生着したことが示された(図1)。
実施例4:肺組織評価
慢性肺疾患モデルラットの肺組織の評価を以下のように行った。上記の短期群と長期群の該モデルラットを安楽死させ、右心室から生理食塩水を注入し肺血管を灌流した後、気管カテーテルを介して4%パラフォルムアルデヒド水溶液で肺を膨張させた(20cmHO、20分間)。肺を摘出し、4%パラフォルムアルデヒド溶液中で18~24時間(4℃)固定した後、各肺葉に切り分けた。切り分けた肺葉をエタノール水溶液、キシレンで脱水し、パラフィン包埋後、肺葉を厚さ5μmの切片とし、ヘマトキシリン-エオジン染色(HE染色)して標本を作製した。倒立顕微鏡(オリンパス社製、型番IX83)を使用し、顕微鏡ソフトウェア(Stereo Investigator)上で100のグリッド(×3カ所×6切片)を置き、それぞれのグリッド下が空間又は肺組織のいずれかであるかを確認した。100(計1,800)のグリッドのうち何%が肺組織であるかを評価した。通常、正常な肺組織では40%程度を占め、肺組織の損傷に伴って肺胞腔が大きくなる。図2に示されるように、短期群(日齢15)のラットにおいて、Muse細胞が投与された処置群(Muse群)及びHBSSが投与された処置群(ベヒクル群)は、正常状態のシャム群と比較して同程度であったが、長期群(日齢29)のラットでは、ベヒクル群と比較して、Muse群では有意な効果を示し、正常状態に近くに軽快することが示された。
上記と同様に、新たにMuse細胞を投与した群、ベヒクル群、シャム群の他に、非Muse細胞を投与した群を加え、短期群及び長期群のラットにおいて肺組織を再評価した(図3)。短期群においては、非Muse細胞が投与された処置群(非Muse群)は、ベヒクル群と同程度に肺組織の損傷の軽減効果は観察されなかったが、Muse細胞が投与された群(Muse群)では、以前の結果(図2)と同様に、Muse細胞による肺組織の損傷の顕著な軽減効果が観察された。一方、長期群においては、非Muse群では、ベヒクル群と比較して、肺組織の損傷の軽減効果は観察されたが、その効果は、Muse群と比較して小さかった。Muse細胞が投与されたラットでは、肺組織の損傷が、以前の結果と同様に正常状態近くに軽快することが示された。
さらに、日齢29のラットにおいて、肺胞壁割合を計測することによって肺組織を評価した。作製した標本を顕微鏡用デジタルカメラ(オリンパス社製、型番DP73)で撮影した。撮影画像をイメージングソフトウェア(オリンパス株式会社製、商品名cellSens)を用いて解析した。標本切片全体の面積から気管、血管及び障害部位の面積を除いて肺胞の面積とし、そのうち、肺胞壁が占める面積の割合(肺胞壁割合)を下記式によって算出した。
肺胞壁割合(%)=肺胞壁面積÷{肺標本全体面積-(気管部位面積+血管部位面積+障害部位面積)}×100
この肺胞壁割合が高いほど、肺胞壁が密に形成され肺組織が修復されていることを表わす。結果を図4に示す。シャム群では、肺胞壁割合は約22~23%であり、慢性肺疾患モデルラットにMuse細胞を投与した群では、破壊された肺胞壁が21%前後までに回復した。また、非Muse細胞群においても回復の効果が見られたが、Muse細胞群ほどには至らなかった。このように、上記の肺組織評価から、肺Muse群では有意な効果を示し、正常状態に近くに軽快することが示された。
実施例5:炎症性サイトカインのmRNA発現測定
慢性肺疾患では、肺組織において各種炎症性サイトカインの発現が増大するが、Muse細胞の移植によりこれらの発現量を低減させ得るのかを検討した。日齢15のラットから肺組織を採取し、常法に従って総RNAを抽出後、炎症性サイトカインであるCCL2及びVEGFのmRNA発現量を処置群とベヒクル群で比較した。具体的な手法としては、肺組織を素早く取り出した容器にTRI試薬を添加し、Dounceホモゲナイザー、21G針付きシリンジにてホモゲナイズした。クロロホルムを添加後、遠心分離し、RNAを含む水層を得た。イソプロパノールにてRNAを沈殿させ、指摘濃度にて溶解させたRNAをSuperScript(登録商標)VILO(商標)cDNA Synthesis KitにてcDNAを合成した。その後、SYBR Greenを用いて、リアルタイム定量RT-PCRを行った。結果を図5に示す。縦軸は、シャム群の発現量を1とした時の各サイトカインのmRNAの相対的な発現量を示す。Muse細胞を投与した処置群(Muse群)は、HBSSが投与された処置群(ベヒクル群)と比較して、いずれの炎症性サイトカインのmRNA発現量を有意に低下させることができた。
実施例6:心臓評価(肺高血圧評価)
Muse細胞による慢性肺疾患の治療効果として、ラットの心臓を用いた評価を行った。上記の短期群及び長期群のモデルラットから心臓を取り出し、右室壁(RV)と中隔+左室壁(IVS+LV)の2つに分離後、充分(60℃、48時間)に乾燥機にて乾燥させ、それぞれの重量を測定した。持続的な肺高血圧があると右室壁が肥厚(=重くなる)する。図6のシャム群は正常値であるが、慢性肺疾患(ベヒクル群)になると、0.4程度まで上昇した。これは、右室が肥厚したことを示す。これに対して、Muse細胞を投与した群(Muse群)では、ほぼ正常化することが分かった。
上記と同様に、新たにMuse細胞を投与した群、ベヒクル群、シャム群の他に、非Muse細胞を投与した群を加え、短期群及び長期群のラットにおいて肺高血圧の改善効果について再評価した(図7)。短期群及び長期群の両方において、非Muse細胞が投与された処置群(非Muse群)は、ベヒクル群と同程度に肺高血圧の軽減効果は観察されなかった。一方、Muse細胞が投与された群(Muse群)では、以前の結果(図6)と同様に、Muse細胞による肺高血圧の顕著な軽減効果が観察された。
続いて、高酸素負荷により損傷した肺組織の修復について、組織学的に評価を行った。最初に、肺動脈の血管壁を抗α-SMA(α-平滑筋アクチン)抗体により組織学的に染色し、各種投与群について肺動脈血管壁の肥厚の軽減効果を内壁率の変化を指標にして評価した。同時に、慢性肺疾患に伴い亢進される肺動脈細胞の新生が、Muse細胞の投与により抑制されるのかどうかについて、細胞周期関連核タンパク質であるKi-67を細胞増殖マーカーとして検討した。上記の実施例と同様にパラフィン切片を作製し、その後、クエン酸バッファーにて抗原賦活を行った。抗体の非特異的結合を防ぐためにロバ血清でブロッキング行った後、抗α-SMA抗体、及び抗Ki-67抗体にて4℃一晩インキュベーションを行った。適切な2次抗体でさらにインキュベ-ションした後、DNAを染色するDAPIを含んだ封入剤で封入した。
肺動脈血管の断面における組織染色の結果を図8(A)に示す。これらの画像に基づいて、各群の内壁率を以下の式:
内壁率(%)={(血管外径-血管内径)/血管外径}×100
に従って算出し、結果を図8(B)に示す。この図に示される通り、短期群及び長期群はともに類似した結果であり、Muse細胞群では、肺高血圧に起因する肺動脈血管壁の肥厚を顕著に抑制することができた。また、非Muse細胞群においても抑制効果は観察されたが、Muse細胞群と比較してその効果は小さかった。
増殖中の肺動脈細胞の核を抗Ki-67抗体により組織学的に染色し、肺動脈細胞の新生率について評価した。図9(A)では、抗α-SMA抗体、抗Ki-67抗体、及びDAPIによる三重染色を行った結果を示す。図に示された肺動脈標本は、非Muse細胞を投与した群のものであり、抗Ki-67抗体により染色された増殖中の肺動脈細胞が観察された。
次に、このような三重染色を各群について行い、DAPIによって核染色された肺動脈細胞のうち、Ki-67陽性である細胞の割合を算出した(図9(B))。短期群では、Muse細胞群において肺動脈細胞の新生は、ベヒクル群及び非Muse群と比較して、Ki-67陽性細胞の割合が減少していた。また、長期群では、Muse細胞群は、シャム群と同定までKi-67陽性細胞の割合が減少し、短期群よりもその効果は顕著であった。以上の肺高血圧評価から、Muse細胞は、慢性肺疾患の治療において有意な効果を奏することが示された。
実施例7:肺胞洗浄液中の炎症性細胞数の測定
慢性肺疾患においては、炎症性細胞数の増加が観察されるが、Muse細胞の投与により、これらの細胞数が減少するか否かを検討した。短期群のラットを安楽死させた後、肺動脈より血管を生理食塩水で灌流し、挿管されている気管カニューレから生理食塩水0.4ml(0.2ml×2回)を注入して、肺胞洗浄(BAL)を行い、BAL液(BALF)を回収した。BALF中の白血球、マクロファージ、好中球、及びリンパ球の数を以下の手法により計測した。具体的には、気管支肺胞洗浄液10μLにTurk溶液20μLを加えて染色し、Burker-Turk血球計算盤を用いて総細胞数を測定した。次いで、Cytospin4(登録商標)を使用して、気管支肺胞洗浄液100μLの塗抹標本を作製し、作製した塗抹標本をMay-Giemsa染色で染色した。顕微鏡下に、1標本あたり少なくとも200個の細胞をカウントして白血球分画を測定し、マクロファージ数、好中球数、及びリンパ球数を算出した。結果を図10に示す。慢性肺疾患に伴い増加した各種炎症性細胞の数が、Muse細胞の投与により軽減した。この結果から、Muse細胞は、慢性肺疾患の治療において有意な効果を奏することが示された。
本発明の細胞製剤及び医薬組成物は、新生児慢性肺疾患の改善及び治療に応用できる。
本明細書に引用する全ての刊行物及び特許文献は、参照により全体として本明細書中に援用される。なお、例示を目的として、本発明の特定の実施形態を本明細書において説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の改変が行われる場合があることは、当業者に容易に理解されるであろう。

Claims (9)

  1. 生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞から分離されたSSEA-3陽性の多能性幹細胞を含む、新生児慢性肺疾患を改善及び/又は治療するための細胞製剤であって、
    ここで、前記多能性幹細胞は、以下:
    (i)CD105陽性;
    (ii)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
    (iii)三胚葉のいずれかの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
    (iv)腫瘍性増殖を示さない;及び
    (v)セルフリニューアル能を持つ
    の全ての性質を有する、上記細胞製剤
  2. 外部ストレス刺激によりSSEA-3陽性の多能性幹細胞が濃縮された細胞画分を含む、請求項1に記載の細胞製剤。
  3. 前記多能性幹細胞が、CD117陰性及びCD146陰性である、請求項1又は2に記載の細胞製剤。
  4. 前記多能性幹細胞が、CD117陰性、CD146陰性、NG2陰性、CD34陰性、vWF陰性、及びCD271陰性である、請求項1~のいずれか1項に記載の細胞製剤。
  5. 前記多能性幹細胞が、CD34陰性、CD117陰性、CD146陰性、CD271陰性、NG2陰性、vWF陰性、Sox10陰性、Snai1陰性、Slug陰性、Tyrp1陰性、及びDct陰性である、請求項1~のいずれか1項に記載の細胞製剤。
  6. 新生児慢性肺疾患が、気管支肺異形成症(BPD)、ウィルソン・ミキティ症候群(WMS)、新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)、及び新生児高血圧症からなる群から選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の細胞製剤。
  7. 前記多能性幹細胞が肺組織に生着する能力を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の細胞製剤。
  8. ヒト新生児、乳児又は幼児対象に前記多能性幹細胞を治療上有効量として約1×10細胞/個体~約3×10細胞/個体で投与する、請求項1~のいずれか1項に記載の細胞製剤。
  9. ヒト新生児、乳児又は幼児対象に前記多能性幹細胞を治療上有効量として、該対象一個体あたり約3×10細胞/kg~約3×10細胞/kgを体重換算した細胞量を投与する、請求項1~のいずれか1項に記載の細胞製剤。
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