JP2024524520A - 動物の変形性関節症の治療で使用するための間葉系幹細胞 - Google Patents

動物の変形性関節症の治療で使用するための間葉系幹細胞 Download PDF

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Abstract

本発明は、イヌおよびネコの変形性関節症の治療で使用するための間葉系幹細胞(MSC)または治療有効量のMSCを含む医薬組成物に関する。本発明はまた、末梢血から単離されたMSCを含む医薬組成物に関する。

Description

本発明はまた、イヌおよびネコの変形性関節症の治療で使用するための間葉系幹細胞に関する。
変形性関節症(OA)は、代謝障害と関節における炎症反応の結果として、獣医診療において最も頻繁に起こる関節障害のひとつである。1歳超のイヌの約20%に認められ、滑膜関節の進行性の変性とリモデリングが特徴で、最終的には慢性的な痛み、不快感、関節の腫れおよび跛行を引き起こす。さらに、全ネコの40%近くがOAの臨床的徴候を示し、12歳超のネコの90%がOAの証拠となるX線像を示す。体重管理、個々に合わせた運動ならびに非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)およびコルチコステロイドなどのOAに対する内科的治療は、主に鎮痛と炎症反応の治療に重点を置いているが、病気の進行を遅らせること、および病態を元に戻すことはできない。ある種の旧世代のNSAIDの持続的な大量投与は、胃腸、腎臓および肝臓の異常と関連している。副腎皮質ステロイドは鎮痛効果が短く、軟骨の損傷をさらに誘発する可能性がある。したがって、イヌおよびネコのOAには、効果的で長期的な治療選択肢が非常に強く求められている。
間葉系幹細胞(MSC)は、その免疫調節特性から、OAの炎症プロセスを抑制し、その進行をごく短期間で遅らせ、さらには持続的な障害を回復させる、可能性のある代替物として提案されている。変形性関節症の治療におけるその安全性と有効性については、いくつかのイヌの研究により調査されており、非常に興味深い結果が得られている。
このようなイヌの研究の大半は、罹患した関節に関節内注射で投与される、脂肪組織または骨髄(BM)由来の自己MSCを用いている。しかし、変形性関節症はイヌおよびネコの複数の関節を侵すことが多いため、この種のMSC療法は非常に高価で時間がかかる。関節内注射は侵襲的な手技であり、鎮静剤、経験および標的診断が必要である。
場合によっては、同種または異種MSCの使用が、健康で質の高い幹細胞ドナーを厳格に選定できることから、より好ましい選択肢となる。また、各個体の患者からMSCを侵襲的に採取することおよび時間のかかる培養を避け、すぐに使用できる製品を製造することができる。イヌおよびネコのMSCの培養能力は相対的に低いため、特に商業的用途、例えばイヌまたはネコのOA治療で使用する場合には、異種(例えばヒトまたはウマ)のMSCが有利に使用される可能性がある。加えて、異種MSCには伝染性の種特異的病原体がない。
場合によっては、天然のMSCの使用は、最小限の製造と取り扱いですぐに使用できる製品の生産を可能にし、それによって製造コストを削減できるため、好ましい選択肢となる。
当技術分野では、ネコおよびイヌの科において疾患の進行を遅らせる、および/またはOAの病的状態を回復すらさせるMSCの改良された使用に対する必要性が残っている。本発明は、前述の欠点の少なくとも1つを解決することを目的とする。
本発明およびその実施形態は、上記の欠点の1つまたは複数に対する解決策を提供する役割を果たす。この目的のために、本発明は、請求項1に記載の間葉系幹細胞(MSC)、またはイヌおよびネコの変形性関節症の治療で使用するための治療有効量のMSCを含む医薬組成物に関する。実施形態において、前記MSCは静脈内投与される。実施形態において、前記MSCは、天然のMSCである。実施形態において、前記MSCは、異種MSCである。本発明の使用のためのMSCの好ましい実施形態は、請求項2~19のいずれかに示される。請求項18による特に好ましい実施形態において、前記治療とは、変形性関節症と診断された、または変形性関節症に罹患しているイヌおよびネコの跛行および/または関節痛の治療である。
第2の態様において、本発明は、請求項20に記載の天然の末梢血由来のMSCを含む医薬組成物に関し、前記MSCは動物由来であり、滅菌液体中に存在する。
局所的な関節にしか到達せず、罹患している関節のそれぞれに別々に適用しなければならない関節内注射のMSCに比べ、静脈内投与のMSCは複数の関節に到達し得る。静脈内投与は非侵襲的な手技であり、鎮静剤を必要としない。このような侵襲的な手技および/または鎮静剤の使用は、特に、すでに変形性関節症を発症するリスクが高い高齢の患者にとっては、リスクを伴う可能性がある。したがって、静脈内(IV)注射によるMSCの全身投与は、治療への応用において大きな利点をもたらす。
3つの時点:0日目-治療当日、フォローアップ1-フォローアップ2-本発明の実施形態による天然のMSCによる治療後3週目、フォローアップ2-本発明の実施形態による天然のMSCによる治療後6週目でのイヌの跛行評価の概要を示す図である。 3つの時点:0日目-治療当日、フォローアップ1-フォローアップ2-本発明の実施形態による天然のMSCによる治療後3週目、フォローアップ2-本発明の実施形態による天然のMSCによる治療後6週目でのイヌの可動域(ROM)スコアの概要を示す図である。 3つの時点:0日目-治療当日、フォローアップ1-フォローアップ2-本発明の実施形態による天然のMSCによる治療後3週目、フォローアップ2-本発明の実施形態による天然のMSCによる治療後6週目でのイヌの関節滲出液スコアの概要を示す図である。 図4Aは、本発明の実施形態に従って天然のMSCで治療されたイヌ、または対照品で治療されたイヌの異なる群の、跛行スコアの経過を示す図である(平均±SD)。図4Bは、本発明の実施形態に従って天然のMSCで治療されたイヌ、または対照品で治療されたイヌの異なる群の、関節痛スコアの経過を示す図である(平均±SD)。図4Cは、本発明の実施形態に従って天然のMSCで治療されたイヌ、または対照品で治療されたイヌの異なる群の、関節滲出液スコアの経過を示す図である(平均±SD)。図4Dは、本発明の実施形態に従って天然のMSCで治療されたイヌ、または対照品で治療されたイヌの異なる群の、可動域の経過を示す図である(平均±SD)。図4Eは、本発明の実施形態に従って天然のMSCで治療されたイヌ、または対照品で治療されたイヌの異なる群の、平均最大力の経過を示す図である(平均±SD)。図4Fは、本発明の実施形態に従って天然のMSCで治療されたイヌ、または対照品で治療されたイヌの異なる群の、対称性指数の経過を示す図である(平均±SD)。図4Gは、本発明の実施形態に従って天然のMSCで治療されたイヌ、または対照品で治療されたイヌの異なる群の、平均力の経過を示す図である(平均±SD)。 コンカナバリンA刺激イヌ末梢血単核細胞(PBMC)を用いた混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて、変形性関節症を外科的に誘発したイヌを、本発明の実施形態に従う100.000個のePB-MSC(低用量)、300.000個のePB-MSC(標的用量)もしくは1.500.000ePB-MSC(高用量)、または生理食塩水(対照)で治療する前(-7日目、左)と治療した後(28日目、右)のPBMC増殖を示す図である。*p値<0.05。 コンカナバリンA(ConA)刺激イヌ末梢血単核細胞(PBMC)を用いた混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて、異なる投与量の本発明の実施形態によるePB-MSCまたはプラセボを受ける前(-7日目、左)と受けた後(126日目、右)のPBMC増殖を示す図である(すなわち、T1:プラセボ(対照群)、T2:推奨用量(=300.000ePB-MSC)の単回注射、T3:3×推奨用量の単回注射、T4:5×推奨用量の単回注射、T5:推奨用量の反復注射(n=3)、およびT6:5×推奨用量の反復注射(n=3))。 MLRアッセイの陰性対照、陽性対照および免疫調節試料の上清中のTGF-β1濃度(平均±SD)を示す図である。 MLRの陰性対照、陽性対照および免疫調節試料の上清中のTNF-α濃度(平均±SD)を示す図である。 MLRアッセイの陰性対照、陽性対照および免疫調節試料の上清中のPGE2濃度(平均±SD)を示す図である。 -21日目、14日目、28日目および42日目における、0日目で正規化したHA濃度のボックスプロットを示す図である(*p値<0.017)。 post-hoc分析(*p値<0.05)に基づくHA濃度(ng/mL)のボックスプロット描出を示す図である。塗りつぶし枠:対照、点線枠:症例。 -21日目、14日目、28日目および42日目における、0日目に対し正規化したPGE2濃度のボックスプロット描出を示す図である(*p値<0.017)。
本発明は、イヌおよびネコの変形性関節症(OA)の治療で使用するための天然のMSCに関するものであり、前記MSCは静脈注射により投与することができる。1つの静脈注射は、罹患した関節の各々に別々に適用されなければならない局所的な関節内注射と比較して、複数の関節に到達する全身投与である。さらに、静脈注射は非侵襲的な手技であり、鎮静剤を必要としない。このような侵襲的な手技および/または鎮静剤の使用は、特に、変形性関節症を発症するリスクがすでに高い高齢の哺乳類患者にとっては、リスクを伴う可能性がある。したがって、静脈内(IV)注射によるMSCの全身投与は、治療への応用において大きな利点をもたらす。
定義
他に定義されない限り、技術用語および科学用語を含め、本発明を開示する際に使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらなる指針として、本発明の教示をよりよく理解するために用語の定義が含まれる。
本明細書において、以下の用語は以下の意味を有する:
本明細書で使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、単数および複数の参照語を指す。例として、「1つの区画」は1つまたは2つ以上の区画を指す。
本明細書において、パラメータ、量および時間持続時間などの測定可能な値を指して使用される「約」は、開示された本発明において実行するのに適切な限りにおいて、規定値の+/-20%以下、好ましくは+/-10%以下、より好ましくは+/-5%以下、さらに好ましくは+/-1%以下、いっそう好ましくは+/-0.1%以下の変動を包含することを意味する。ただし、修飾語「約」が指す値自体も具体的に開示されていることを理解されたい。
本明細書で使用される「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」、および「含む(comprises)」および「含むこと(comprising of)」は、「含む(include)」、「含むこと(including)」、「含む(includes)」または「含有する(contain)」、「含有すること(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、例えば構成要素に続くものの存在を特定する包括的またはオープンエンドな用語であり、当該技術分野において既知であるか、またはそこに開示されている、追加の、言及されていない構成要素、特徴、要素、部材、ステップの存在を除外も排除もしない。
さらに、本明細書および特許請求の範囲において、第1、第2および第3などの用語は、特定されない限り、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも連続的または時系列的な順序を説明するために使用されるものではない。このように使用される用語は、適切な状況下では交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載または図示される以外の順序で運用可能であることを理解されたい。
端点による数値範囲の記載は、記載された端点だけでなく、その範囲に含まれるすべての数値と分数を含む。
用語「1つまたは複数」または「少なくとも1つ」、例えば、一群のメンバーのうちの1つもしくは複数または少なくとも1つのメンバーは、それ自体は明白であるが、さらなる例示によって、この用語は、特に、前記メンバーのうちの任意の1つ、または前記メンバーのうちの任意の2つ以上、例えば、前記メンバーのうちの任意の≧3、≧4、≧5、≧6または≧7等、および最大ですべての前記メンバーへの言及を包含する。
他に定義されない限り、技術用語および科学用語を含め、本発明を開示する際に使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらなる指針として、本発明の教示をよりよく理解するために、本明細書で使用される用語の定義が含まれる。本明細書で使用される用語または定義は、本発明の理解を助けるためにのみ提供される。
本明細書全体を通して「一実施形態」または「ある実施形態」という言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じて様々な箇所で「一実施形態において」または「ある実施形態において」という句が現れるのは、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではないが、その可能性もある。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1つまたは複数の実施形態において、本開示から当業者に明らかであるように、任意の適切な方法で組み合わせることができる。さらに、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含み、他の特徴は含まないが、当業者であれば理解されるように、異なる実施形態の特徴の組み合わせは本発明の範囲内にあり、異なる実施形態を形成することが意図される。例えば、以下の特許請求の範囲において、特許請求される実施形態のいずれかを任意の組み合わせで使用することができる。
「間葉系幹細胞」、「MSC」または「間葉系間質細胞」という用語は、特定の表面抗原セットを発現し、in vitroで培養した場合またはin vivoで存在する場合に、脂肪細胞、軟骨細胞および骨細胞を含むがこれらに限定されない様々な細胞型に分化することができる、多能性の自己複製細胞を指す。
「単離された」という用語は、細胞培養物または血液のような生物学的試料から細胞を物理的に同定および単離することを指し、これは、細胞培養物の検査と基準に対応する細胞の特徴付け(加えて可能で所望の場合には物理的分離)、または抗原の有無および/もしくは細胞の大きさによる細胞の自動選別(FACSなどによる)の何れかに基づく適切な細胞生物学的技術を適用することによって行うことができる。いくつかの実施形態において、「単離すること」または「単離」という用語は、特にフローサイトメトリーを実施することによる、細胞の物理的分離および/または定量化というさらなるステップを含み得る。
本明細書で使用される「in vitro」という用語は、体外または体の外側を示す。本明細書で使用される「in vitro」という用語は、「ex vivo」を含むと理解されるべきである。「ex vivo」という用語は、典型的には、身体から取り出され、体外、例えば培養容器またはバイオリアクター内で維持または増殖された組織または細胞を指す。
「継代」または「継代すること」という用語は当分野では一般的であり、培養された(間葉系幹)細胞を培養基材から、また細胞同士を剥離および分離することを指す。簡略化のため、細胞を接着培養条件下で初めて増殖させた後に行う継代を、一般に「最初の継代」(または継代1、P1)と呼ぶ。細胞は少なくとも1回、好ましくは2回以上継代してもよい。継代1以降の各継代は、例えば継代2、3、4、5、またはP1、P2、P3、P4、P5など、1ずつ増加する番号で呼ばれる。
「細胞培地」または「細胞培養培地」または「培地」という用語は、細胞の維持または増殖に使用できる栄養素を含む水性液体またはゲル状物を指す。細胞培地は血清を含んでもよいし、無血清でもよい。細胞培地は、成長因子を含んでもよいし、添加してもよい。
本明細書で使用する「成長因子」という用語は、様々な細胞型の増殖、成長、分化、生存および/または遊走に影響を及ぼし、単独でまたは他の物質によって調節された場合に、生物の発生的、形態的および機能的変化をもたらし得る生物学的に活性な物質を指す。成長因子は、典型的には、細胞に存在する受容体(例えば、表面または細胞内受容体)にリガンドとして結合することにより作用する。
本文脈におけるMSCの「自己」投与とは、ドナー由来のMSCをレシピエントに投与することをいい、レシピエントとドナーは同一である。
本文脈におけるMSCの「同種間」投与とは、ドナー由来のMSCをレシピエントに投与することであり、レシピエントとドナーは同種であるが、同一ではない。
本文脈におけるMSCの「異種間」投与とは、ドナー由来のMSCをレシピエントに投与することであり、レシピエントとドナーは異なる種に由来する。
本発明の文脈における「天然のMSC」とは、炎症性メディエーターなどの刺激環境に曝されていないMSCを指す。本明細書で使用する場合、「炎症環境」または「炎症状態」とは、(i)少なくとも1つの炎症誘発性免疫細胞、炎症誘発性サイトカイン、または炎症誘発性ケモカインの増加;および(ii)少なくとも1つの抗炎症性免疫細胞、抗炎症性サイトカイン、または抗炎症性ケモカインの減少を特徴とする状況または状態を指す。
「抗炎症性の」、「抗炎症」、「免疫抑制性の」および「免疫抑制剤」という用語は、局所的な炎症の少なくとも1つの徴候(熱、痛み、腫れ、発赤および機能低下などであるが、これらに限定されない)の減少を特徴とする任意の状況もしくは状態、ならびに/または(i)少なくとも1つの炎症誘発性免疫細胞、炎症誘発性サイトカインもしくは炎症誘発性サイトカインの減少;および(ii)少なくとも1つの抗炎症性免疫細胞、抗炎症性サイトカインもしくは抗炎症性ケモカインの増加を特徴とする全身状態の変化を指す。
本発明の「集団倍加時間」または「PDT」は、次式で算出され得る:PDT=T/(ln(N/N)/ln(2))、ここでTは80%培養密度に達するまでの細胞培養時間(日単位)、Nは細胞剥離後の最終細胞数、Nは時点ゼロでの初期細胞数である。
「抗凝固剤」という用語は、血液の凝固を阻害することができる組成物を意味する。本発明で使用される抗凝固剤の例には、EDTAまたはヘパリンが含まれる。
本発明の「バフィーコート」という用語は、凝固していない血液の画分として理解されるべきであり、これは、好ましくは、白血球と血小板を有する画分を濃縮する密度勾配遠心分離によって得られる。
「血液間相(blood-inter-phase)」という用語は、主に赤血球と多形核細胞からなる下部画分と、主に血漿からなる上部画分の間に位置する、好ましくは密度勾配によって得られる血液の画分として理解されるべきである。血液間相は、単球、リンパ球およびMSCを含む血液単核球(BMC)の供給源である。
本明細書で使用される「懸濁液径」という用語は、懸濁液中にある細胞の平均直径として理解される。直径を測定する方法は当技術分野で既知である。可能な方法は、フローサイトメトリー、共焦点顕微鏡、イメージサイトメーター、または当技術分野で知られている他の方法である。
「治療有効量」という用語は、疾患の症状を軽減する、または状態を改善するのに有効な化合物または組成物の最小量または濃度のことである。
「治療」という用語は、病的な状態または障害の発生または進行を抑えるまたは予防するための、治療的、予防的、または防止的な措置の両方を指す。
「変形性関節症」(OA)は、「変性関節疾患」(DJD)とも呼ばれ、軟骨の劣化によって引き起こされる関節の炎症が徐々に悪化する。健康な関節では、軟骨がクッションとして作用して、関節が全可動域でスムーズに動くことを可能にする。変形性関節症の場合、この軟骨のクッションが、加齢、怪我、反復性ストレスまたは病気などの要因により壊れ始める。この保護クッションが失われると、痛み、炎症、可動域の減少および骨棘の発生を招く。変形性関節症は体のどの関節にも発症する可能性があるが、最もよく影響を受けるのは手足と背骨の下部である。イヌおよびネコなどの動物では、OAの典型的な視覚的徴候として、こわばり、跛行もしくは起き上がりにくさ;傾眠;走る、跳ぶ、もしくは遊ぶのを嫌がる;体重の増加;易刺激性もしくは行動の変化;撫でられるもしくは触られた際の痛み;排尿もしくは排便の姿勢がとりにくくなる、もしくは家の中で粗相する;ならびに/または手足および脊椎の筋肉量の減少が挙げられる。
「患者」、「被験体」、「動物」または「哺乳類」という用語は、互換的に使用され、治療される哺乳類の被験体を指す。好ましくは、哺乳動物はイヌまたはネコなどのイヌ科動物またはネコ科動物である。
本発明における「ネコ」または「ネコ科動物」とは、ネコ科のネコを指す。この科のメンバーはネコ科とも呼ばれる。現生するネコ科は、2つの亜科:ヒョウ亜科とネコ亜科に分けられる。ヒョウ亜科には5種のパンテラ(Panthera)属と2種のウンピョウ(Neofelis)属が含まれ、ネコ亜科には10属34種が含まれ、イエネコ、チーター、サーバル、オオヤマネコおよびクーガーなどがいる。
本発明における「イヌ」または「イヌ科動物」とは、イヌ科のイヌ様肉食動物を指す。この科のメンバーはイヌ科と呼ばれる。イヌ科には3つの亜科があり、それは絶滅したボロファグス亜科とヘスペロキオン亜科、および現存するイヌ亜科である。イヌ亜科はイヌ科として知られ、イエイヌ、オオカミ、キツネ、コヨーテ、ジャッカルなどの現存種と絶滅種が含まれる。
「混合リンパ球反応(MLR)」アッセイは、外用剤がT細胞増殖を刺激するか、または抑制するかを調べるために伝統的に用いられている。MLRアッセイを用いることで、MSCの免疫調節特性を調べることができる。このMLRアッセイでは、レスポンダーT細胞を、特定の光周波数にさらされると緑色に光る蛍光色素でマークする。次に、これらのレスポンダーT細胞を植物マイトジェンであるコンカナバリンA(ConA)で刺激して、増殖を誘導または刺激する。ConAは抗原非依存性のマイトジェンであり、代替的なT細胞刺激として使用できる。このレクチンは、T細胞刺激実験において抗原提示細胞の代用として頻繁に使用される。コンカナバリンAは細胞表面の糖タンパク質に不可逆的に結合し、T細胞を増殖に向かわせる。これは転写因子とサイトカインの産生を迅速に刺激する方法である。T細胞が分裂を始めると、色素はその娘細胞に分配されるので、細胞分裂のたびに色素は連続的に希釈される。そのため、色の減少を見ることでT細胞の増殖量を測定することができる。したがって、MSCの免疫調節特性を調べるためには、これらのMSCを、刺激されたレスポンダーT細胞に加え、数日間コインキュベートする。試験が正常に行われるかどうかを確認するために、適切な陽性対照と陰性対照を含める。コインキュベーション期間終了時に、フローサイトメトリーを用いてT細胞増殖量を測定し、MSCがT細胞増殖を抑制したかどうかを確認することができる。
説明
第1の態様において、本発明は、イヌおよびネコの変形性関節症(OA)の治療で使用するための、またはイヌおよびネコのOAを治療する方法としての、またはイヌおよびネコのOAを治療するための薬物の調製に使用するための、間葉系幹細胞(MSC)または治療有効量のMSCを含む医薬組成物に関し、前記MSCは好ましくは天然であり、好ましくは静脈内投与される。
MSCは、その免疫調節特性から、炎症関連疾患の治療での使用が提唱されている。このような免疫調節特性は、特に変形性関節症(OA)の過剰な炎症プロセスを抑制し、その進行をごく短期間で遅らせ、さらには持続的な損傷の回復を引き起こす可能性がある。これまでの(イヌの)研究では、変形性関節症の治療における安全性と有効性が検討され、非常に興味深い結果が得られている。これらのイヌの研究の大半は、罹患した関節に関節内注射で投与された、脂肪組織または骨髄(BM)由来の自己MSCを使用している。しかし、イヌやネコのような哺乳類では、OAが複数の関節を侵すことが多いため、この種のMSC療法は非常に高価で時間がかかる。加えて、関節内注射は侵襲的な手技であり、鎮静剤、経験および標的診断が必要である。
したがって、MSCの全身投与は、注射または点滴などによる静脈内(IV)投与によって有利に達成される可能性があり、治療への応用において大きな利点を提供する。
前記イヌおよびネコは、イヌ科、好ましくはイヌ亜科のイヌ様肉食動物、より好ましくはイエイヌ(Canis familiaris);またはネコ科、好ましくはネコ亜科のネコ、より好ましくはイエネコ(Felis catus)であってもよい。
ある実施形態では、使用する前記MSCは天然である。このような天然のMSCは、まずin vitroで、炎症性メディエーターまたは炎症環境などの刺激剤に曝されていない。このような炎症環境とは、(i)少なくとも1つの炎症誘発性免疫細胞、炎症誘発性サイトカイン、または炎症誘発性ケモカインの増加、および(ii)少なくとも1つの抗炎症性免疫細胞、抗炎症性サイトカイン、または抗炎症性ケモカインの減少を特徴とする状況または状態を指す。天然のMSCの使用は、最小限の製造と取り扱いですぐに使用できる製品の製造を可能にし、それによって製造コストを削減できるため、好ましい選択肢となる。
好みにより、MSCは10μm~100μm、より好ましくは15μm~80μm、より好ましくは20μm~75μm、より好ましくは25μm~50μmの細胞サイズを有する。ある実施形態では、本発明による使用のためのMSCは、フィルターシステムによってサイズ別に選択され、ここで細胞は、40μmのフィルターを使用する二重ろ過ステップにかけられる。二重または複数回のろ過ステップが好ましい。後者は、単一細胞の高い集団を提供し、細胞凝集体の存在が回避される。このような細胞凝集体は、凍結による細胞の保存中に細胞死を引き起こす可能性があり、細胞の更なる下流への応用に影響を与える可能性がある。例えば、細胞凝集体は静脈内投与時に毛細血管塞栓症の発生リスクを高める可能性がある。
本発明による使用のためのMSCは、様々な組織または体液、特に血液、骨髄、脂肪組織または羊膜組織に由来し得る。MSCの骨髄採取は、出血、慢性疼痛、神経血管損傷、さらには死亡と関連することが報告されている。MSCの供給源としての脂肪組織は、より安全な選択肢とみなされている。しかし、脂肪組織からMSCを採取するには、ドナー動物の切開をなお必要とし、従って侵襲的な手技であることに変わりはない。血液由来のMSCは、骨髄および脂肪組織由来のMSCと同様の形態を示す。結果として、好みにより、MSCは、限定するわけではないが臍帯血および末梢血を含む、血液由来とする。より好ましくは、MSCは末梢血由来とする。血液は、非侵襲的で苦痛を伴わない供給源であるだけでなく、採取が簡単で安全であり、その結果、容易に入手できる。MSCまたはMSCを含む血液は、ヒト、家畜および農場動物、動物園動物、スポーツ動物、ペット動物、コンパニオンアニマルおよび実験動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタおよび霊長類、例えば、サルおよび類人猿を含むがこれらに限定されない全ての哺乳動物に由来し得;特に、ウマ、ヒト、ネコ、イヌ、げっ歯類等である。ある実施形態では、前記起源はウマである。特に、MSCは、末梢血、好ましくはウマの末梢血に由来するものであってもよく、これにより、ドナー動物に対する不快感または病的状態を最小限に抑えながら、1年に複数回のMSC採取が可能となる。
場合によっては、同種または異種MSCの使用は、健康で質の高い幹細胞ドナーの厳格な選定を提供することから、より好ましい選択肢となる。各個体の患者からMSCを侵襲的に採取することおよび時間のかかる培養を避け、すぐに使用できる製品を製造することができる。イヌおよびネコのMSC培養能力は、例えばウマまたはヒトのMSCと比較すると相対的に低いため、特に商業的用途、例えばイヌまたはネコのOA治療で使用する場合には、同種のイヌまたはネコのMSCよりも異種(例えばヒトまたはウマ)のMSCの使用が好ましい。
したがって、特定の実施形態において、本発明のMSCは、被験体への同種または異種投与に使用することができる。既に示したように、同種または異種の使用は、異なるドナーをスクリーニングし、最適なドナーを選択することができるため、MSCの品質をより良好に制御することを可能にする。機能的なMSCを調製することを考えると、後者が不可欠である。これは、MSCの自己使用とは対照的で、この場合、細胞の質を確保することがより難しくなるからである。とはいえ、自己使用にも利点があり得る。ある例では、血液MSCが単離されるが、そのために、後に単離されたMSCのレシピエントにもなるドナーの血液が使用された。別の例では、ドナーの血液から単離されたMSCのレシピエントと好ましくは同じ科、性別または血統のドナーからの血液が使用される。特に、これらのドナーは、幹細胞を介した病態または疾患の水平伝播の危険性を回避するために、一般的な現在伝播可能な疾患または病態について検査される。好ましくは、ドナー/ドナー動物は隔離された状態で飼育される。ドナー馬を使用する場合、例えば以下のような病態、ウイルスまたは寄生虫について検査を行うことができる:馬伝染性貧血(EIA)、馬鼻肺炎(EHV-1、EHV-4)、馬ウイルス性動脈炎(EVA)、ウエストナイルウイルス(WNV)、アフリカ馬疫(AHS)、媾疫(トリパノソーマ)、馬ピロプラズマ病、鼻疽(マレウス、鼻疽)、馬インフルエンザ、ライムボレリア症(LB)(ライム病ボレリア、ライム病)。
ある実施形態では、本発明の使用のためのMSCは、以下のマーカーCD29、CD44、CD90、CD105、ビメンチン、フィブロネクチン、Ki67、CK18、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つまたは複数が存在することによって特徴づけることができ/陽性である。さらなる実施形態において、本発明の使用のためのMSCは、間葉系マーカーCD29、CD44およびCD90の存在によって特徴付けることができる。後者によって、得られたMSCの純度を分析し、MSCの割合をもとめることができる。
CD29はインテグリンβ1遺伝子によってコードされる細胞表面受容体で、リガンドとの結合時に他のタンパク質と複合体を形成して、生理活性を調節する。CD44抗原は細胞-細胞相互作用、細胞接着および遊走に関与する細胞表面糖タンパク質である。加えて、CD44はヒアルロン酸のレセプターであり、オステオポンチン、コラーゲンおよびマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)のような他のリガンドとも相互作用できる。CD90抗原は、MSCのような幹細胞のマーカーとして考えられている保存された細胞表面タンパク質である。本発明のMSCはCD29/CD44/CD90についてトリプル陽性であるため、当業者はMSCを迅速かつ明確に選択することができ、さらなる下流への応用にとって重要なMSCの生物学的特性を提供する。
ある実施形態では、本発明の使用のためのMSCは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII分子、好ましくは現在知られている全てのMHCクラスII分子が存在しないことによって特徴づけられ/陰性であり、その細胞は、ネコまたはイヌの細胞療法などの哺乳動物の細胞療法に使用できる細胞として分類される。MSCが部分的に分化していても、MSCはMHCクラスII分子について陰性のままである。MHCII分子の有無の検出および発現の定量化は、フローサイトメトリーを用いて行うことができる。
別のさらなる実施形態では、MSCは造血細胞のマーカーであるCD45抗原について陰性である。
ある実施形態では、MSCはMHCクラスII分子とCD45の両方について陰性である。
特に好ましい実施形態では、本発明の使用のためのMSCは、間葉系マーカーCD29、CD44およびCD90について陽性であり、MHCクラスII分子およびCD45について陰性である。
一般に、MSCはその表面にMHCクラスI抗原を発現している。特定の実施形態において、本発明の使用のためのMSCは、MHCクラスIマーカーが低レベルであるかまたは検出されないレベルである。最も好ましい実施形態では、前記MSCは、MHCクラスIIマーカーについて陰性であり、MHCクラスIマーカーが低レベルであるかまたは検出されないレベルであり、前記細胞は、極めて低い免疫原性表現型を示す。本発明のために、前記低レベルとは、全細胞の25%未満、より好ましくは15%未満が前記MHC IまたはMHC IIを発現していると理解されるべきである。MHC IおよびMHC II分子の発現の有無の検出および定量化は、フローサイトメトリーを用いて行うことができる。
MSCのこのような免疫学的特性は、細胞移植後にレシピエントの免疫系が細胞、好ましくは同種細胞または異種細胞を認識し拒絶する能力を制限する。MSCによる免疫反応を調節する因子の産生は、局所的な刺激下で適切な細胞型に分化する能力とともに、MSCを細胞療法に望ましい幹細胞にしている。
ある実施形態では、本発明の使用のためのMSCは、炎症環境または状態に存在する場合、免疫調節性プロスタグランジンE2サイトカインを分泌する。
炎症環境または状態は、血液中の免疫細胞の動員によって特徴づけられる。炎症性メディエーターには、プロスタグランジン、IL-1β、TNF-α、IL-6およびIL-15などの炎症性サイトカイン、IL-8などのケモカインならびにTNF-αおよびIFN-γなどの他の炎症性タンパク質が含まれる。これらのメディエーターは、主に単球、マクロファージ、T細胞、B細胞によって産生されて炎症部位に白血球を動員し、その後、刺激性と抑制性の複雑な相互作用ネットワークを刺激して、組織の破壊と炎症プロセスからの組織の治癒を同時に行う。
プロスタグランジンE2(PgE2)は、プロスタグランジンファミリーのサブタイプである。PgE2は、膜リン脂質から放出されたアラキドン酸(AA)から連続的な酵素反応によって合成される。プロスタグランジン-エンドペルオキシダーゼ合成酵素として知られるシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)は、AAをプロスタグランジンH2(PgH2)に変換し、PgE2合成酵素はPgH2をPgE2に異性化する。COX-2は律速酵素として、成長因子、炎症性サイトカインおよび腫瘍促進物質による刺激などの生理的条件に応じてPgE2の合成を制御する。
特定の実施形態において、炎症環境に存在する前記MSCは、可溶性免疫因子プロスタグランジンE2(PgE2)を1mLあたり10~10ピコグラムの範囲の濃度で分泌して、MSC制御免疫抑制を誘導または刺激する。
これらの特定の濃度範囲におけるMSCのPgE2分泌は、in vitroでの抗炎症プロセスを刺激し、適切な細胞型に分化する能力とともに、それを細胞移植に望ましいものにする。
好ましい実施形態では、本発明の使用のためのMSCは:
-間葉系マーカーCD29、CD44、CD90について陽性であり;
-ビメンチン、フィブロネクチン、Ki67、またはそれらの組み合わせからなる群に含まれる1つまたは複数のマーカーについて陽性であり;
-MHCクラスII分子について陰性であり;
-造血マーカーCD45について陰性であり;
-好ましくは、MHCクラスI分子が低レベルであるかまたは検出されないレベルであり、前記低レベルとは、全細胞の25%未満、より好ましくは15%未満がMHC Iを発現していると理解すべきである。
最も好ましい実施形態では、本発明の使用のためのMSCは:
-間葉系マーカーCD29、CD44、CD90について陽性であり;
-ビメンチン、フィブロネクチン、Ki67、またはそれらの組み合わせからなる群に含まれる1つまたは複数のマーカーについて陽性であり;
-MHCクラスII分子について陰性であり;
-造血マーカーCD45について陰性であり;
-好ましくは、MHCクラスI分子が低レベルであるかまたは検出されないレベルであり、前記低レベルとは、全細胞の25%未満、より好ましくは15%未満がMHC Iを発現していると理解すべきであり、
ここで、前記細胞は、炎症環境または状態に存在する場合、免疫調節性PgE2サイトカインを1mL当たり10~10ピコグラムの濃度で分泌する。
別のまたはさらなる実施形態において、本発明による使用のためのMSCは、炎症環境または状態に存在する場合、同じ特徴を有するが前記炎症環境または状態にさらされていないMSCと比較して、IL-6、IL-10、TGF-β、NOまたはそれらの組み合わせから選択される分子の少なくとも1つの分泌が増加し、IL-1の分泌が減少する。
好ましい実施形態において、MSCは、炎症環境または状態に存在する場合、IL-6、IL-10、TGF-β、NO、またはそれらの組み合わせから選択される分子の少なくとも1つの分泌が増加し、IL-1の分泌が減少する。比較は、上記に示したのと同じ特徴を有するが、前記炎症環境または状態にさらされていない間葉系幹細胞との間で行うことができる。
好ましくは、MSCは、上記の因子のうちの2つ以上と組み合わせて、PgE2の分泌が増加する。
PgE2、IL-6、IL-10、TGF-BおよびNOは、T細胞およびB細胞のような主要な免疫細胞集団の増殖および機能を抑制するのに役立っている。加えて、MSCはその表面に低レベルのMHCクラスI分子を発現し、および/または、MHCクラスII分子について陰性であり、免疫原性反応を免れている。さらに、本MSCは、上記の因子の分泌を増加させることによって白血球の増殖を抑制することができ、重ねて宿主の免疫原性反応を回避するのに役立っている。
別のまたはさらなる実施形態において、MSCは、末梢血単核球(PBMC)の存在下で、PgE2、IL-6、IL-10、NOもしくはそれらの組み合わせの分泌を刺激し、および/または、TNF-α、IFN-γ、IL-1、IL-13もしくはそれらの組み合わせの分泌を抑制する。別のまたはさらなる実施形態において、MSCは、PBMCの存在下でTGF-β1の分泌を抑制する。
炎症環境において、MSCは宿主の免疫応答を調節する複数の因子を分泌する。さらに、MSCは、PgE2、IL-6、IL-10、NOまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の因子の分泌を誘導または刺激する刺激作用を有する。炎症環境におけるPBMCに対するMSCの刺激作用の次に、MSCは、PBMCの分泌を抑制する作用も有し、その結果、TNF-α、IFN-γ、IL-1、TGF-β1、IL-13またはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の因子が減少する。MSCは炎症環境において調節作用を有し、自身をあらゆる種類の疾患、特に免疫系の障害の治療に有用なものにする。
一般に、特定の細胞型(例えば、間葉系、肝系、造血系、上皮系、内皮系マーカー)、または特定の局在(例えば、細胞内、細胞表面、または分泌型)を有する細胞マーカーを同定し、特徴付けるための技術であって、文献に発表されているものであれば、MSCの特徴付けに適切であると考えられる。このような技術は、2つのカテゴリー:解析中に細胞の完全性を維持できるものと、そのような細胞を用いて生成された抽出物(タンパク質、核酸、膜などを含む)に基づくものに分類することができる。このようなマーカーを同定し、陽性か陰性かを測定する技術の中では、免疫細胞化学または細胞培養液の分析が、(ウェスタンブロットまたはフローサイトメトリーの場合のように)少量の細胞でも、それらを破壊することなくマーカーを検出できるため好ましい。
MSCの免疫調節特性は、MLRアッセイを用いてアッセイすることができる。このMLRアッセイでは、レスポンダーT細胞を、特定の光周波数にさらされると緑色に光る蛍光色素でマークする。次に、これらのレスポンダーT細胞を植物マイトジェン(ConA)で刺激して、増殖を誘導または刺激する。T細胞が分裂を始めると、色素はその娘細胞に分配されるので、細胞分裂のたびに色素は連続的に希釈される。そのため、T細胞の増殖量は色の減少を見ることで測定できる。したがって、MSCの免疫調節特性を調べるためには、これらのMSCを刺激されたレスポンダーT細胞に加え、数日間コインキュベートする。試験が正常に行われるかどうかを確認するために、適切な陽性対照と陰性対照を含める。コインキュベーション期間終了時に、フローサイトメトリーを用いてT細胞増殖量を測定し、MSCがT細胞増殖を抑制したかどうかを確認することができる。
MSCの関連する生物学的特徴は、フローサイトメトリー、免疫細胞化学、質量分析、ゲル電気泳動、イムノアッセイ(例えば、イムノブロット、ウェスタンブロット、免疫沈降、ELISA)、核酸増幅(例えば、リアルタイムRT-PCR)、酵素活性、オミックス技術(プロテオミクス、リピドミクス、グリコミクス、トランスラトミクス、トランスクリプトミクス、メタボロミクス)、および/または他の生物学的活性などの技術を用いて同定することができる。
本発明のMSCは、当該技術分野において既知の任意の標準的なプロトコルによって導くことができる。ある実施形態では、前記MSCは、MSCが血液または血液相から単離され、前記細胞が基本培地、好ましくは低グルコース培地中で培養および増殖される方法を介して得ることができる。
当該技術分野で既知の基本培地配合物としては、イーグル最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、α改変最小必須培地(α-MEM)、基本必須培地(BME)、イスコーブ改変ダルベッコ培地(IMDM)、BGJb培地、F-12栄養混合物(Ham)、リーボビッツL-15、DMEM/F-12、必須改変イーグル培地(EMEM)、RPMI-1640、199培地、ウェイマスの10MB 752/1またはウィリアムズ培地Eならびにそれらの改変物および/または組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。上記の基本培地の組成は、当技術分野で一般に知られており、培地および/または培地補充物の濃度を、培養される細胞の必要に応じて変更または調節することは、当業者の技術の範囲内である。好ましい基本培地配合物は、DMEMのような商業的に利用可能なものの1つであってよく、これは、MSCのin vitro培養を維持することが報告されており、その適切な成長、増殖、所望のマーカーおよび/もしくは生物学的活性の維持、または長期保存のための成長因子の混合物を含んでいる。
このような基本培地配合物は、哺乳動物細胞の発育に必要な成分を含んでおり、それ自体が既知である。例示であって限定するものではないが、これらの成分には、無機塩(特に、Na、K、Mg、Ca、Cl、Pおよび場合によってはCu、Fe、SeおよびZnを含む塩)、生理的緩衝液(例えば、HEPES、炭酸水素塩)、ヌクレオチド、ヌクレオシドおよび/または核酸塩基、リボース、デオキシリボース、アミノ酸、ビタミン、抗酸化剤(例えば、グルタチオン)ならびに炭素の供給源(例えば、グルコース、ピルビン酸、例えば、ピルビン酸ナトリウム、酢酸、例えば、酢酸ナトリウム)などが含まれ得る。また、多くの培地が、ピルビン酸ナトリウムの有無にかかわらず、低グルコース配合物として利用可能であることも明らかであろう。
血液または血液相からMSCを単離し、該細胞を培養および増殖させる方法は当該技術分野で既知であり、例えば国際公開第2014/053418号または国際公開第2014/053420号に記載されている。
ある実施形態では、血液または血液相からMSCを単離し、低グルコース培地中で前記細胞を培養および増殖させるこのような方法は、以下の:
a)抗凝固剤でコーティングされた試料バイアルに、ドナーから1つまたは複数の血液試料を採取するステップと;
b)前記血液試料を遠心分離して、血漿相、バフィーコートおよび赤血球相からなる3相分布を得るステップと;
c)前記バフィーコートを採取し、密度勾配に載せるステップと;
d)ステップc)の密度勾配から得られた血液間相を採取するステップと;
e)遠心分離により前記血液間相からMSCを単離するステップと;
f)2.5×10/cm~5×10/cmのMSCを培養液に播種し、デキサメタゾン、抗生物質および血清を添加した低グルコース増殖培地中にそれらを維持するステップとを含み得る。
ある実施形態では、抗凝固剤をMSCに添加してもよい。非限定的な例は、EDTAまたはヘパリンである。
播種の回数は、最終的に純粋で生存可能な集団のMSCを、許容可能な濃度で得るために極めて重要である。密に播種しすぎると、増殖中に大量の細胞死を引き起こし、MSCの集団が不均一になり、分散させすぎた播種は、MSCのコロニー形成がほとんどまたは全く起こらないため、増殖ができないか、ほとんどできないか、または増殖に時間がかかりすぎるからである。どちらの場合も、細胞の生存率に悪影響が及ぶ。
本発明の好ましい実施形態では、MSCは高い細胞生存率を有し、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%の前記細胞が生存している。
血液間相は、単球、リンパ球およびMSCを含む血液単核球(BMC)の供給源である。好みにより、リンパ球は37℃で洗い流し、単球は生存に必要なサイトカインの非存在下で2週間以内に死滅させる。このようにして、MSCが精製される。血液間相からのMSCの単離は、好ましくは、血液間相を遠心分離した後、細胞ペレットをリン酸緩衝液などの適切な緩衝液で少なくとも1回洗浄することによって行われる。
さらなる実施形態では、本発明のMSCは単球およびマクロファージについて陰性であり、いずれも0%~7.5%の範囲内である。
特に、間葉系細胞は増殖培地中で少なくとも2週間維持される。好ましくは、1%デキサメタゾンを有する増殖培地が使用される。これは、MSCの特異的な特徴が前記培地中で維持されるからである。
最低2週間(14日間)、好ましくは3週間(21日間)後、MSCのコロニーが培養瓶の中に確認できるようになる。続くステップg)では、少なくとも6×10幹細胞/cmが、MSCを増殖させる目的で、低グルコース、血清および抗生物質を含有する増殖培地に移される。好ましくは、MSCの増殖は最低5回の細胞継代で行われる。このようにして十分な細胞を得ることができる。好ましくは、細胞は70%~80%のコンフルエントで分割される。MSCは最大50継代まで培養液中で維持することができる。これを過ぎると、生命力の喪失、老化または突然変異の形成のリスクが生じる。
さらなる実施形態では、MSCの増殖中の各継代間の集団倍加時間(PDT)は、トリプシン化後0.7~3日であることが好ましい。MSCの増殖中の各継代間の前記PDTは、好ましくは、トリプシン化後0.7~2.5日である。
好ましい実施形態では、本発明による使用のためのMSCは紡錘形の形態を有する。本発明のMSCの形態学的特徴付けによると、該細胞は細長い繊維芽細胞様の紡錘形細胞として分類される。このタイプの細胞は、ほとんどが三角形または星型の細胞形状を示す小さな自己複製細胞を有するMSCの他の集団、および、顕著な核を有する大きな立方状または扁平なパターンを有するMSCの他の集団とは異なる。生物学的マーカーとともにこのような特異的な形態学的特徴を有するMSCを選択することにより、当業者は本発明のMSCを単離することができる。細胞の形態学的分析は、位相差顕微鏡を用いて当業者が容易に行うことができる。さらに、フローサイトメトリーにおける前方および側方散乱図、または当業者に既知の他の技術を用いて、MSCのサイズおよび粒状性を評価することができる。
別のまたはさらに好ましい実施形態では、MSCは10μm~100μmの懸濁液径を有する。本発明の使用のためのMSCは、サイズ/懸濁液径に基づいて選択されている。好みにより、MSCは10μm~100μm、より好ましくは15μm~80μm、より好ましくは20μm~75μm、より好ましくは25μm~50μmの細胞サイズを有する。好ましくは、細胞サイズに基づく細胞の選択は、ろ過ステップによって行われる。例えば、細胞濃度が1mLあたり10~10MSCの範囲にあるMSCは、好ましくは低グルコースDMEM培地で希釈され、細胞が40μmフィルターを使用する二重ろ過ステップを経るフィルターシステムによってサイズによって選択される。二重または複数回のろ過ステップが好ましい。後者は、単一細胞の高い集団を提供し、細胞凝集体の存在を回避する。このような細胞凝集体は、凍結による細胞の保存中に細胞死を引き起こす可能性があり、細胞の更なる下流への応用に影響を及ぼす可能性がある。例えば、細胞凝集体は静脈内投与時に毛細血管塞栓症の発生リスクを高める可能性がある。
ある実施形態では、前記治療有効量のMSCは、前記組成物中、10-10MSCである。
好ましい実施形態では、本発明による使用のためのMSCは、静脈注射または点滴による被験体への投与用に製剤化される。
ある実施形態では、治療有効量のMSCがイヌまたはネコの患者に投与され、好ましくは、患者あたり10-10MSCの用量が投与される。ある実施形態では、単一用量が投与される。
被験体に治療上の利益をもたらす最小治療有効用量は、1回の投与あたり少なくとも10のMSCである。好ましくは、各投与は静脈注射によるものであり、1投与あたり10~5×10MSCを含み、前記MSCは好ましくは天然および/または異種である。
ある実施形態では、前記MSCは少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、好ましくは間隔を空けて投与される。
別のまたはさらなる実施形態において、治療はさらに以下の:MSCまたはMSCを含む組成物の複数回の投与、例えばイヌまたはネコの患者あたり10-10MSCの用量の複数回の静脈内投与を含み、ここで、前記複数用量は、以下の時点の1つまたは複数を含むがこれらに限定されない、様々な時点で投与される:1日間隔、2日間隔、3日間隔、4日間隔、5日間隔、6日間隔、7日(1週間)間隔、2週間間隔、3週間間隔、4週間間隔、5週間間隔、6週間間隔、7週間間隔、8週間間隔、3ヶ月間隔、6ヶ月間隔、9ヶ月間隔、および/または1年間隔。好ましくは、各用量は少なくとも2週間間隔、より好ましくは少なくとも3週間間隔、さらにより好ましくは少なくとも4週間間隔、最も好ましくは少なくとも6週間間隔で投与される。
ある実施形態では、前記組成物は、滅菌液体中に存在する前記MSCを含む。このような滅菌液体の非限定的な例は、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)などの最小必須培地(MEM)である。前記滅菌液体は、哺乳動物患者への静脈内投与、例えば注射または点滴による投与に対して安全であるべきである。
非限定的な例として、前記滅菌液体は、基本培地のような最小必須培地である。当技術分野で知られている基本培地配合物としては、イーグル最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、α改変最小必須培地(α-MEM)、基本必須培地(BME)、イスコーブ改変ダルベッコ培地(IMDM)、BGJb培地、F-12栄養混合物(Ham)、リーボビッツL-15、DMEM/F-12、必須改変イーグル培地(EMEM)、RPMI-1640、199培地、ウェイマスの10MB 752/1またはウィリアムズ培地E、ならびにそれらの改変物および/または組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。上記の基本培地の組成は、当技術分野で一般に知られており、培地および/または培地補充物の濃度を、培養される細胞の必要に応じて変更または調節することは、当業者の技術の範囲内である。好ましい基本培地配合物は、DMEMのような商業的に利用可能なものの1つであってよく、これは、MSCのin vitro培養を維持することが報告されており、その適切な成長、増殖、所望のマーカーおよび/もしくは生物学的活性の維持、または長期保存のための成長因子の混合物を含んでいる。
このような基本培地配合物は、哺乳動物細胞の発育に必要な成分を含んでおり、それ自体は既知である。例示であって限定するものではないが、これらの成分には、無機塩(特に、Na、K、Mg、Ca、Cl、Pおよび場合によってはCu、Fe、SeおよびZnを含む塩)、生理的緩衝液(例えば、HEPES、炭酸水素塩)、ヌクレオチド、ヌクレオシドおよび/または核酸塩基、リボース、デオキシリボース、アミノ酸、ビタミン、抗酸化剤(例えば、グルタチオン)ならびに炭素の供給源(例えば、グルコース、ピルビン酸、例えば、ピルビン酸ナトリウム、酢酸、例えば、酢酸ナトリウム)などが含まれ得る。また、多くの培地が、ピルビン酸ナトリウムの有無にかかわらず、低グルコース配合物として利用可能であることも明らかであろう。
好みにより、前記組成物は少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%の単一細胞を含み、それによって前記単一細胞は10μm~100μm、より好ましくは15μm~80μm、より好ましくは20μm~75μm、より好ましくは25μm~50μmの懸濁液径を有する。前述したように、細胞の直径とその単一細胞性は、静脈内投与などの下流への応用および細胞の生命力にとって重要である。
好みにより、前記組成物は少なくとも90%のMSCを含み、より好ましくは少なくとも95%のMSCを含み、より好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%のMSCを含む。
MSCを含む滅菌液体の形態の組成物の体積および濃度は、好ましくは静脈注射に適合される。ある実施形態では、医薬組成物は、最終調整後、1mL当たり10-10細胞の濃度のMSCを含む滅菌液体の形態で動物に投与することができる。
ある実施形態では、各静脈注射または点滴で治療有効量のMSCが投与され、好ましくは、各注射または点滴は、10~10の用量の前記MSCを含む。
ある実施形態では、医薬組成物は、前記組成物1mL当たり10-10MSC、好ましくは1mL当たり10~10MSC、より好ましくは1mL当たり10-5×10MSCの治療有効量のMSCを含む。
ある実施形態では、治療有効量のMSCがイヌまたはネコの患者に投与され、好ましくは、患者あたり10-10MSCの用量が投与される。ある実施形態では、単一用量が投与される。
ある実施形態では、前記MSCは少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回投与される。
ある実施形態では、前記組成物の1投与量は、約0.5~5mL、好ましくは約0.5~5mL、好ましくは約0.5~3mL、好ましくは約0.5~2mL、より好ましくは約0.5~1.5mL、最も好ましくは約1mLの体積を有する。別のまたはさらなる実施形態では、前記組成物の1投与量は、最大で約5mL、好ましくは最大で約4mL、より好ましくは最大で約3mL、さらに好ましくは最大で約2mLの体積を有し、最も好ましくは、前記体積は約1mLである。この量は静脈内投与に適している。
前記投与量は、バイアルまたはプレフィルドシリンジに製剤化することができる。
ある実施形態では、組成物は、多血小板血漿(PRP)、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸をベースとする組成物、グリコサミノグリカン、もしくはグリコサミノグリカンをベースとする組成物、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される成分をさらに含む。これらは、本発明による組成物の下流への応用時に、さらに有益な機能を有することが知られている。MSCをこのような担体物質と混ぜることは、場合によっては、組成物の有効性を増大させ、または相乗効果を生じさせるために望ましい。例えば、前記担体物質は、細胞組成物中のMSCのホーミング能力および免疫調節効果を補助する。例えば、成長因子を豊富に含む物質であるPRPは、移植後の幹細胞を刺激する。好ましくは、幹細胞とPRPの両方が、適合性の理由から同じドナーから採取される。担体物質は、重力に対抗するためにも使用でき:幹細胞は重力の法則に従うため、幹細胞が移動できる担体がなければ、より高い病変に到達することは困難である。加えて、担体物質自体も病的環境に対して有益な効果を持ち、それらは組織修復自体に寄与し、またこの領域での細胞の分化を助けるために、良好な幹細胞微小環境を提供する。ヒアルロン酸、グリコサミノグリカンまたはこれをベースとした組成物の例としては、OSTENIL(登録商標)、OSTENIL(登録商標)、Adant(登録商標)およびAdequan(登録商標)が挙げられる。
ある実施形態では、患者への注射ごとに投与される組成物の体積は、患者の体重に応じて適合される。別の実施形態では、患者当たり10-10MSC、好ましくは10~10MSC、より好ましくは10-5×10MSC、最も好ましくは3×10MSCの固定された用量が投与される。
本発明者らはさらに、特に効果的な治療が、いずれかの実施形態において上述した使用のためのMSCまたは使用のための医薬組成物の少なくとも2つの投与量を含む投与レジメンによって達成されることを発見した。
したがって、さらなる実施形態は、イヌおよびネコの変形性関節症の治療で使用するための医薬組成物に関し、ここで:
-前記治療は、好ましくは静脈内に、患者あたり10-10MSCの総用量を含む前記組成物の第1の量を投与するステップを含み、
-前記治療は、好ましくは静脈内に、前記組成物の第2の量を投与するステップをさらに含み、前記第2の量は、10-10MSC tの第2の総用量を含み、前記MSCは、好ましくは、天然および/または異種であり、
ここで、前記第2の用量は、前記第1の量の1日後、前記第1の量の2日後、前記第1の量の3日後、前記第1の量の4日後、前記第1の量の5日後、前記第1の量の6日後、前記第1の量の7日後(1週間後)、前記第1の量の2週間後、前記第1の量の3週間後、前記第1の量の4週間後、前記第1の量の5週間後、前記第1の量の6週間後、前記第1の量の7週間後、前記第1の量の8週間後、前記第1の量の3ヶ月後、6ヶ月後、前記第1の量の9ヶ月後、および/または前記第1の量の1年後に投与される。好ましくは、各用量は、前記第1の量の少なくとも2週間後に投与され、より好ましくは、前記第1の量の少なくとも3週間後に投与され、さらにより好ましくは、前記第1の量の少なくとも4週間後に投与され、最も好ましくは、前記第1の量の少なくとも6週間後に投与される。
ある実施形態では、第2の用量は、第1の用量と同一である。別の実施形態において、第2の用量は、第1の用量よりも少ない。さらに別の実施形態では、第2の用量は、第1の用量よりも多い。
ある実施形態では、組成物の第3、第4および/または第5の量さえも、患者に、好ましくは静脈内に投与され得、前記第3、第4および/または第5の量は、10-10MSCの第3、第4および/または第5の総用量を含み、前記MSCは、好ましくは、天然および/または異種である。
ある実施形態では、組成物の第6またはそれ以上の量が、患者に、好ましくは静脈内に投与され得、ここで、前記第6またはそれ以上の量は、10-10MSCの第6またはそれ以上の総用量を含み、ここで、前記MSCは、好ましくは、天然および/または異種である。
変形性関節症と診断された、または変形性関節症に罹患しているイヌおよび/またはネコの多くは、跛行および/または関節痛の(視覚的な)徴候を示す。したがって、本発明はまた、変形性関節症と診断された、もしくは変形性関節症に罹患しているイヌおよびネコの跛行および/もしくは関節痛の治療において使用される先の実施形態の何れかに記載のMSCもしくは治療有効量のMSCを含む医薬組成物、または、変形性関節症と診断された、もしくは変形性関節症に罹患しているイヌおよびネコの跛行および/もしくは関節痛を治療する方法として使用される先の実施形態の何れかに記載のMSCもしくは治療有効量のMSCを含む医薬組成物、または変形性関節症と診断された、または変形性関節症に罹患しているイヌおよびネコの跛行および/もしくは関節痛の治療用薬物の調製に使用するための先の実施形態の何れかに記載のMSCもしくは治療有効量のMSCを含む医薬組成物にも関する。前記MSCまたは組成物は、好ましくは静脈内投与され、前記MSCは、好ましくは天然および/または異種MSCである。
跛行および/または関節痛の治療は、変形性関節症と診断された、または変形性関節症に罹患しているネコにおける、前記跛行および/または関節痛の予防、軽減、緩和、寛解および/または回復を含む。
先に示したように、イエイヌおよびイエネコなどのイヌおよびネコの変形性関節症の典型的な視覚的徴候には、硬直、跛行、起き上がりにくさ;傾眠;走る、跳ぶ、もしくは遊ぶのを嫌がる;体重の増加;易刺激性もしくは行動の変化;撫でられるもしくは触られた際の痛み;排尿もしくは排便の姿勢がとりにくくなる、もしくは家の中で粗相する;ならびに/または手足および脊椎の筋肉量の減少が挙げられる。
変形性関節症はしばしば複数の関節に影響を及ぼすため、MSCまたはMSCを含む医薬組成物を静脈内投与することによる跛行および関節痛の治療は、侵襲的な手技であり、鎮静剤、経験、および標的診断を必要とするMSCの関節内投与と比較して、一度に複数の関節を治療することにおいて大きな利点をもたらす。
ある実施形態では、MSCまたはMSCを含む医薬組成物は、上記のいずれかの実施形態に記載されるとおりである。
第2の態様において、本発明は、末梢血由来MSCを含む特定の医薬組成物に関する。前記組成物は、天然の末梢血由来MSCを含み、前記MSCは動物由来、好ましくは哺乳動物由来であり、前記組成物の1mL当たり10~10MSCの濃度で滅菌液体中に存在し、前記組成物の一投与量は約0.5~5mLの体積を有し、前記MSCは間葉系マーカーCD29、CD44およびCD90について陽性であり、MHCクラスII分子およびCD45について陰性であり、前記MSCは10μm~100μmの懸濁液径を有する。
ある実施形態において、前記医薬組成物は静脈内投与される。好ましい実施形態において、前記MSCはウマ由来である。
ある実施形態では、前記組成物の一投与量は、約0.5~5mL、好ましくは約0.5~5mL、好ましくは約0.5~3mL、好ましくは約0.5~2mL、より好ましくは約0.5~1.5mL、最も好ましくは約1mLの体積を有する。別のまたはさらなる実施形態では、前記組成物の一投与量は、最大で約5mL、好ましくは最大で約4mL、より好ましくは最大で約3mL、さらに好ましくは最大で約2mLの体積を有し、最も好ましくは、前記体積は約1mLである。この量は静脈内投与に適している。
別のまたはさらに好ましい実施形態では、MSCは15~80μm、より好ましくは20~75μm、より好ましくは25~50μmの懸濁液径を有する。
当業者であれば、上述の、変形性関節症の治療で使用するためのMSCもしくは医薬組成物の態様、または変形性関節症と診断された、もしくは変形性関節症に罹患しているイヌおよびネコの跛行および/もしくは関節痛の治療で使用するためのMSCまたは医薬組成物の態様の要素が、本発明の医薬組成物の態様に戻ることを理解するであろう。その結果、本発明のすべての態様は関連している。上述の態様の1つに記載されるすべての特徴および利点は、たとえ特定の態様と関連して記載されているとしても、これらの態様のいずれにも関連し得る。
本発明の使用のためのMSCまたはMSCを含む医薬組成物は、場合によっては上述のさらなる成分とともに、MSCまたは組成物の長期保存を可能にするために、好みにより凍結される。好ましくは、MSCまたは組成物は、-20℃未満の温度のような低温かつ一定温度で凍結される。これらの条件は、MSCまたは組成物の保存を可能にし、MSCがその生物学的および形態学的特性、ならびに保存中および解凍後の高い細胞生存率を維持することを可能にする。
より好ましい実施形態では、本発明の使用のためのMSCまたはMSCを含む医薬組成物は、最高温度-80℃で少なくとも6ヶ月間、任意で液体窒素中で保存することができる。MSCの凍結において重要な要素は、極低温培地、特にDMSOを含むものである。DMSOは凍結プロセスにおいて培地中の氷結晶形成を防ぐが、高濃度では細胞に対して毒性を示すことがある。好ましい実施形態では、DMSOの濃度は最大20%、より好ましくは最大15%、さらに好ましくは寒剤中のDMSO濃度は10%である。極低温培地は、低グルコースDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)のような低グルコース培地をさらに含む。
その後、本発明の使用のためのMSCまたは医薬組成物は、好ましくは、室温付近の温度、好ましくは20℃~37℃の温度、より好ましくは25℃~37℃の温度で、最大20分間、好ましくは最大10分間、より好ましくは最大5分間、投与前に解凍される。
さらに、MSCの生命力を保護するために、MSCまたは組成物は、好ましくは解凍後2分以内に投与される。
本発明は、本発明をさらに例示する以下の非限定的な例によってさらに説明されるが、これらは本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、また限定すると解釈されるべきではない。
例および/または図の説明
次に、本発明を以下の例を参照してさらに例示する。本発明は、与えられた実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1:イヌの変形性関節症の治療で使用するためのePB-MSC
本研究の目的は、現在の標準的な療法に反応しない、自然発生的な関節痛を患うイヌの治療としての、ePB-MSC(ウマ末梢血由来MSC)の単回静脈注射の可能性を評価することである。これにより、本治療の臨床効果と安全性を評価する。
材料と方法
イヌ
複数の動物病院(n=10)において、合計50匹のイヌ患者を治験薬(IVP)で治療する。患者の組み入れは、以下の組み入れ基準によって制限される:1つまたは複数の関節で数日/数週間にわたり関節痛がある、保存療法に反応しない、跛行が確認されている、既往症によって痛みが確認されている、X線検査(RX)または他の画像化モダリティによって関節痛に関連する徴候が確認されている、疼痛重症度スコア(PSS)≧3および疼痛干渉スコア(PIS)≧3を含むイヌ簡易疼痛調査票(CBPI)のアンケートが記入されている。以下の状態および治療を受けている患者は本研究から除く:捻挫、妊娠、本臨床研究に影響を及ぼす可能性のある他の疾患を有する、PSS<3およびPIS<3である、イヌの通常の治療に変更がある、休薬期間内に副腎皮質ステロイドの投与がある、または副腎皮質ステロイド治療を継続中である。すべてのイヌは、本研究中3つの評価ポイント(投与0日目、治療後3週目、治療後6週目)において、通常とは異なる行動、姿勢、および跛行の悪化、関節の膨張または注射部位における皮膚アレルギーなどの潜在的な有害事象の発生について観察される。評価はイヌの整形外科分野で少なくとも5年の実務経験を持つ獣医師が行う。飼い主は十分な情報を得た上で、評価時点間で起きる潜在的な有害事象の発生を報告することが課される。研究中も通常の治療はすべて継続する。この動物研究は、Global Stem cell Technology社の倫理委員会によって承認されている。
ePB-MSC(IVP)の単離と培養
既述の方法に従い、ePB-MSCを1頭のドナー馬の頸静脈から採取した静脈血から単離する。ePB-MSCの培養に先立ち、Broeckx et al. 2012に記載されているように、複数の感染性疾患の有無について血清を検査する。その後、幹細胞はGMPガイドラインに従い、有料医薬品製造基準(GMP)認定製造施設で継代(P)5まで培養され、生存率、形態、細胞表面マーカーの存在および集団倍化時間について特徴評価を行う。特定の細胞表面マーカーの存在(分化クラスターCD29、CD44、CD90)と非存在(主要組織適合抗原(MHC)IIおよびCD45)の評価は、以前に記載されたように(Spaas et al.)、フローサイトメトリーを用いて行う。しかしながら、詳細な発現および分泌パターンは、以前に国際公開第2020/182935号に記載されている。
細胞生存率はトリパンブルーを用いて評価する。その後、細胞をさらにP10まで培養し、トリプシン処理し、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)を有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)低グルコースに最終濃度300.000細胞/mLで再懸濁する。ePB-MSCは、さらに使用するまで-80℃で凍結バイアル(cryovial)中で保存する。最終製品の無菌性は、好気性菌、嫌気性菌、真菌、エンドトキシンおよびマイコプラズマが存在しないことで検査する。すべての患者は同じバッチのePB-MSCで治療する。
研究デザイン
すべての組み入れたイヌ患者に、ePB-MSC懸濁液1mLを含有するIVPバイアル1本を注射する。バイアルは手のひらで解凍し、静脈注射する。その後、3つの評価ポイント(0日目:治療用投与当日、フォローアップ1:治療後3週目およびフォローアップ2:治療後6週目)で、経験豊富な獣医師がイヌの臨床評価を行い、十分に情報を得た飼い主が常に全面的に観察を行う。評価ポイントでは、整形外科的検査、跛行評価、可動域(ROM)判定(主観的スコア化+関節可動域測定法による測定)および一般臨床状態への影響の評価によって治療効果を調査し、スコア化する(表1)。関節可動域測定器はROMを度単位で測定するためのもので、肢の軸上に中心を置き、透明なアームを肢の標認点に合わせることによって適用する。測定値は、Jaegger et al.(2002)による正常値と比較する(表2)。さらに、Brown(2017)に従い、各フォローアップポイントにおいて、疼痛重症度、疼痛の干渉および生活の質をCBPIを用いて飼い主がスコア化する。CBPIは、0から10までのスコア化システムの11の質問からなる。これにより、最初の4つの質問は疼痛重症度をスコア化するために使用し、次の6つの質問は疼痛の干渉を測定するために使用し、最後の質問はイヌの全体的な生活の質を計るために使用する(表3)。最後に、3つの時点で獣医師が患部の関節を触診し、関節熱、関節痛および関節滲出液を評価およびスコア化した(表4)。
統計分析
ノンパラメトリック縦断分析を、Rで利用可能なnparLDパッケージ(バージョン3.6.3)を用いて実行する。この方法は、混合モデルのノンパラメトリックなカウンターパートである。時間はカテゴリー固定効果因子として、イヌ(またはイヌ内の傷害)は層別化因子として含まれる。主な時間効果は、グローバルな5%有意水準でのロバストランクに基づく検定によって検証される。さらに、ノンパラメトリックなWilcoxon順位和検定を用い、Bonferroniの技法を用いて多重比較を調整した上で、3時点間の事後対比較を行う(比較に関する有意水準=0.05/3=0.0133)。ノンパラメトリック95%信頼区間も、時点間の差について導出する。
結果
イヌ
治療した50匹のイヌ患者のうち5匹からはフォローアップ1および/またはフォローアップ2の時点のデータが得られず、全研究期間のデータはそろっていない。さらに、9匹のイヌが事前に設定された組み入れおよび除外基準に適合していない。最後に、1匹のイヌが胃拡張捻転による胃破裂のため、研究終了前に安楽死させている。本研究のデータ分析には、事前に設定された組み入れおよび除外基準に適合し、完全なフォローアップデータセットを有する残りの35匹のイヌが含まれている。これらのイヌは以下の関節:肘、後膝関節、股関節のうち1つまたは複数で痛みを訴えていた。これらの組み入れ患者35匹のうち、18匹のイヌは片側の関節が冒されており(肘:12、後膝関節:4、股関節:2)、11匹のイヌは両側の関節が冒されており(肘:1、後膝関節:3、股関節:6、肩:1)、6匹の犬は複数の両側関節が冒されている(肘+股関節:1、後膝関節+股関節:3、肘+後膝関節:1、肘+後膝関節+股関節:1)(表5)。
整形外科的検査
3つのフォローアップポイントでの跛行評価の概要を図1に示す。研究の開始時(0日目)、23%のイヌが5段階でスコア5、26%が5段階でスコア3または4、17%のイヌが5段階でスコア2、9%のイヌが5段階でスコア1である。治療用投与の3週間後(フォローアップ1)の跛行スコアは、ベースライン時(0日目)にスコア1または2だったイヌが26%であるのに対し、44%のイヌが5段階でスコア1または2を示し(スコア1が26%、スコア2が18%)、有意に低下している(P=0.002)。治療用投与の6週間後(フォローアップ2)では、50%のイヌが5段階で跛行スコア1または2を示し(スコア1が24%、スコア2が26%)、ベースラインの状態と比較して有意に良好である(P=0.004)。フォローアップ1とフォローアップ2では、跛行スコアに有意差は認められない(P=0.484)。さらに、個々の患者の跛行評価では、62%の症例で6週間にわたる跛行の減少が認められる。残りの38%のイヌは、治療後6週目で跛行の程度が安定(26%)または悪化(12%)している。
整形外科的検査で検査される第2のパラメータは、罹患関節のROMである。スコア化の結果を図2に示す。2回目のフォローアップでは、ベースラインの状態(0日目)と比較して可動域への影響が有意に減少している(P<0.001)。50%のイヌが0または1のスコアを有し、0日目に33%であったのとは対照的である。また、0日目とフォローアップ1の間には有意差が認められるが(P=0.002)、フォローアップ1とフォローアップ2の間には有意差は認められない(P=0.455)。さらに、治療後6週目での関節ごとのROMの評価では、34%の関節でROMの改善がみられる。一方、不変または悪化した関節は、それぞれ関節の61%と5%である。
可動域は、関節可動域測定器を用いた度単位の変化率を計ることでも評価する。治療3週間後(フォローアップ1)の可動域は、度単位で、ベースラインと比較して中央値で9.0増加し(95%CI:[3.5;16.0])、有意に高い(P=0.001)。6週間後(フォローアップ2)には、ベースラインと比較して、可動域は、度単位で、中央値で8.5増加し(95%CI:[2.5;13.5])、有意に高い(P=0.004)が、2つのフォローアップ期間に有意差はない(P=0.964)。
臨床症状への影響を考慮すると、3つの時点のいずれにおいても有意差は認められない。
イヌ簡易疼痛調査票
動物病院での患者の3回の診察(0日目、フォローアップ1、フォローアップ2)の間に、飼い主はCBPIに記入し、疼痛重症度スコア、疼痛干渉スコア、生活の質を評価する。このアンケートは、0日目とフォローアップ1の間でPSSの有意な減少を示しているが(中央値=-1;95%CI:[-1.5,-0.5]、P=0.005)、0日目とフォローアップ2の間(中央値=-1;95%CI:[-1.0,0.0]、P=0.073)および2つのフォローアップ期間の間では有意な減少は見られない。PISに関しては、0日目とフォローアップ1の間(中央値=-1.4;95%CI:[-2.4,-0.9]、P<0.001)および0日目とフォローアップ2の間(中央値=-2.15;95%CI:[-3.1,-1.4]、P<0.001)では有意な減少が認められるが、フォローアップ1とフォローアップ2の間では認められない(中央値=-0.5;95%CI:[-1.0,0.1]、P=0.016)。最後に、投与後6週間の試験期間中に、66%のイヌで生活の質の向上が観察されている。一方、生活の質が6週間の試験期間中、同じまたは低下した症例はそれぞれ23%と11%である。
関節の評価
最後に、関節の評価を治療後に行う。熱感スコアには有意差は認められない。関節痛は、0日目とフォローアップ1の間で有意に減少している(中央値=-1.0;95%CI:[-1.5,-0.5]、P=0.005)。0日目とフォローアップ2の間(P=0.073)および両フォローアップ期間の間(P=0.429)では有意差は認められない。治療用投与後、関節滲出液スコアの減少が認められる。関節滲出液スコアは、0日目とフォローアップ1の間(中央値=-1.0;95%CI:[-1.5;-1.0]、P<0.001)および0日目とフォローアップ2の間(中央値=-1.0;95%CI:[-1.5;-1.0]、P<0.001)で有意に減少しているが、2つのフォローアップ期間では有意差は認められない(P=0.023)(図3)。関節ごとの関節滲出液の評価では、ePB-MSC投与の6週間後に38%の関節で滲出液の量が減少している。関節液の量の停滞または増加は、それぞれ56%と6%の関節で検出されている。
考察
我々の知る限り、これは、関節痛を有するイヌにおいて異種ウマ末梢血由来間葉系幹細胞の静脈注射の可能性を検討した初めての研究である。本研究において、治療用投与に関連した薬の副作用も重篤な有害事象も疑われないことから、幹細胞療法の忍容性は良好である。さらに、関節の評価では、関節の熱感も関節痛も増加は認められない。対照的に、関節痛は治療後3週目に有意に減少している。関節滲出液は治療用投与の3週間後と6週間後に有意に減少している。
これまでの研究では、自己MSCを用いた場合のOA治療におけるMSCの安全性と有効性が検討されてきた。しかし、本研究は、関節痛に対する治療の選択肢として、イヌにおけるウマ間葉系幹細胞の異種使用について述べた初めてのものである。以前、OA治療におけるウマ軟骨誘導MSCの関節内投与の使用が報告され、飼い主の評価によると治療されたイヌの跛行と疼痛は軽減された。本研究では、天然のMSCを関節内ではなく静脈内に注射するが、これは実質的な全身性抗炎症効果を持ち、罹患した多数の関節の痛みと炎症の軽減につながる可能性がある。さらに、MSCは炎症領域に移動できることが示されており、さらなる局所的抗炎症効果に寄与する。このタイプの投与は、すぐに扱える製剤で静脈注射できるという利点もある。本研究は、ePB-MSCの単回静脈注射の使用が、イヌの関節痛および跛行の有望かつ安全な治療であることを示している。
フォローアップ期間中、整形外科的検査において、跛行および可動域の悪化は認められず、改善傾向さえ認められる。跛行スコアは、ベースラインの状態と比較して、両フォローアップ時点で有意に低下している。可動域については、スコア化システムおよび関節可動域測定器による測定で、0日目と比較してフォローアップ1および2で有意な減少が認められる。しかし、両フォローアップ診察間で有意差は認められない。イヌ簡易疼調査票の結果は、イヌが経験する痛みの改善を示している。これは、0日目と比較して、初回フォローアップ診察時に疼痛重症度スコアが有意に減少していることと、両フォローアップ診察時に干渉スコアが有意に減少していることにより示される。フォローアップ1と2では、さらなる減少が観察されるものの、有意差は認められない。66%のイヌで生活の質が向上している。
結論
結論として、本研究の結果は、ePB-MSCの単回静脈注射は、関節痛および跛行を患うイヌの患者において非常に忍容性が高いことを示している。ePB-MSC注射後は関節痛および跛行が悪化することはなく、改善傾向さえ認められる。
実施例2:ネコの変形性関節症の治療におけるePB-MSCの使用
同様の実験を設定して、現在の両方に反応しない自然発生の関節痛を患うネコに対する治療として、ePB-MSC(ウマ末梢血由来MSC)の単回静脈注射の可能性を評価する。これにより、本治療の臨床効果と安全性を評価する。
材料と方法
ネコ
ネコの患者群を治験薬(IVP)で治療する。同様の組み入れ基準および除外基準を適用する。特に、組み入れ基準は:1つまたは複数の関節で数日/数週間にわたり関節痛がある、保存療法に反応しない、跛行が確認されている、既往症によって痛みが確認されている、X線検査(RX)または他の画像化モダリティによって関節痛に関連する徴候が確認されている、である。除外基準は:捻挫、妊娠、本臨床研究に影響を及ぼす可能性のある他の疾患、ネコの通常の治療に変更があること、休薬期間内の副腎皮質ステロイド投与、または副腎皮質ステロイド治療が継続中であること、である。すべてのネコは、本研究中3つの評価ポイント(投与0日目、治療後3週目、治療後6週目)において、通常とは異なる行動、姿勢、および跛行の悪化、関節の膨張または注射部位における皮膚アレルギーなどの潜在的な有害事象の発生について観察される。評価はネコの整形外科分野で少なくとも5年の実務経験を持つ獣医師が行う。飼い主は十分な情報を得た上で、評価時点間で起きる潜在的な有害事象の発生を報告することが課される。研究中も通常の治療はすべて継続する。
ePB-MSC(IVP)の単離および培養、研究デザインおよび統計解析
ePB-MSCは実施例1と同様に単離し培養する。研究デザインは、実施例1のイヌの場合と非常に似ている。すべての組み入れたネコ患者に、ePB-MSC懸濁液1mLを含有するIVPバイアル1本を注射する。バイアルは手のひらで解凍し、静脈注射する。その後、3つの評価ポイント(0日目:治療用投与当日、フォローアップ1:治療後3週目およびフォローアップ2:治療後6週目)で、経験豊富な獣医師がネコの臨床評価を行い、十分に情報を得た飼い主が常に全面的に観察を行う。評価ポイントでは、整形外科的検査、跛行評価、可動域(ROM)判定(主観的スコア化+関節可動域測定法による測定)および一般臨床状態への影響の評価によって治療効果を調査し、スコア化する。関節可動域測定器はROMを度単位で測定するためのもので、肢の軸上に中心を置き、透明なアームを肢の標認点に合わせることによって適用する。測定値は、正常値と比較する(表2)。さらに、実施例1と同様のやり方で、疼痛重症度、疼痛の干渉および生活の質を飼い主がスコア化する。実施例1の統計分析法を適用する。
結果
治療の6週間後、跛行スコアはベースラインの状態に比べて有意に良好である。この6週間の間に、一部の個々の患者は跛行の減少を示し、他の患者の跛行の程度は安定しており、少数のネコのみが悪化している。第二に、全体的な可動域の値は治療の3週間後有意に改善している。治療後6週目には、一部の個々の患者の関節のROMが改善している。さらに、ネコの飼い主が記入したアンケートによると、ベースラインと治療後3週目の間で、疼痛重症度スコアが有意に減少している。また、疼痛干渉スコアもベースラインと治療後3週目およびベースラインと治療後6週目の間で減少している。さらに、大多数のネコの生活の質は6週間の研究期間中に改善しているが、少数のネコでは悪化している。最後に、治療後の関節評価では、関節痛がベースラインと比較して3週間後に減少していることが示されている。さらに、関節滲出液のスコアもベースラインと比較して3週間後と6週間後に有意に減少している。
考察
我々の知る限り、これは、関節痛を有するネコにおいて異種ウマ末梢血由来間葉系幹細胞の静脈注射の可能性を検討した初めての研究である。本研究において、治療用投与に関連した薬の副作用も重篤な有害事象も疑われないことから、幹細胞療法の忍容性は良好である。さらに、関節の評価では、関節の熱感も関節痛も増加は認められない。対照的に、関節痛は治療後3週目に有意に減少している。関節滲出液は治療用投与の3週間後と6週間後に有意に減少している。
これまでの研究では、ネコにおけるMSCの安全性が検討されてきた。しかし、本研究は、関節痛に対する治療の選択肢として、ネコにおける、静脈注射されるウマ間葉系幹細胞の異種使用について述べた初めてのものである。本研究では、非誘導性/天然のMSCを関節内ではなく静脈に注射するが、これは実質的な全身性抗炎症効果を持ち、罹患した多数の関節の痛みと炎症の軽減につながる可能性がある。さらに、MSCは炎症領域に移動できることが示されており、さらなる局所的抗炎症効果に寄与する。このタイプの投与は、すぐに扱える製剤で静脈注射できるという利点もある。本研究は、ePB-MSCの単回静脈注射の使用が、ネコの関節痛および跛行の有望かつ安全な治療であることを示している。
ePB-MSC注射の安全性は、現在、臨床パラメータに基づいて評価されている。フォローアップ期間中、整形外科的検査で跛行および可動域の悪化は見られず、改善傾向さえ認められる。跛行スコアは、ベースラインの状態と比較して、両フォローアップ点で有意に減少している。可動域への影響は、3週目と6週目で0日目と比較して有意な減少が認められる。また、結果は、ネコが経験する痛みが改善されることも示している。これは、0日目と比較して、初回フォローアップ診察時に疼痛重症度スコアが有意に低下していることと、両フォローアップ診察時に干渉スコアが有意に低下していることによって示されている。また、大部分のネコで生活の質が向上している。
結論
結論として、本研究の結果は、ePB-MSCの単回静脈注射は、関節痛および跛行を患うネコの患者において非常に忍容性が高いことを示している。ePB-MSC注射後は関節痛および跛行が悪化することはなく、改善傾向さえ認められる。
実施例3:ePB-MSCのIV投与の用量有効性と安全性
静脈内投与に最適な投与量を検証するために、32匹の研究用に繁殖させたイヌを4つの治療群に分け、推奨投与量3×10ePB-MSCの0.2倍、1倍もしくは5倍の用量を静脈内投与するか、または本発明のePB-MSCを含まない対照注射を静脈内投与する研究を行う。
方法
治療投与の2週間前(-14日目)に、前十字靱帯を完全に切断し、大腿骨顆部の体重負荷面に両側軟骨欠損を形成することにより、32匹のイヌのそれぞれの右後膝関節に変形性関節症(OA)を外科的に誘発する。治療当日(0日目)、イヌを8匹ずつ4つの治療群(T1、T2、T3およびT4)に無作為に分ける。治療群T1、T2、T3のイヌには、それぞれ推奨用量3×10ePB-MSCの0.2倍(0.2mL)、1倍(1mL)および5倍(5mL)IV(静脈)注射する。対照群である治療群T4のイヌには、5mLの0.9%NaCl溶液(Vetivex9mg/mL)を静脈注射する。すべてのイヌは有害事象の発生を評価するために毎日臨床観察する。さらに、投与後42日目までの研究期間中、整形外科的、臨床的、血液学的、病理学的および組織学的パラメータについて評価する。
結果
一般的な臨床評価と身体評価
前研究期間中、臨床上の有害事象も一般的な健康状態の変化も報告されていない。さらに、定期的な血液分析によると、血液学的および生化学的に意味のある変化は検出されていない。
整形外科的評価
OA導入前に跛行、関節痛または関節滲出液を示した動物はいない。ベースライン後の各診察において、対照群(T4)では、3つの動物用治験薬(IVP)群(T1、T2、T3)と比較して、関節跛行、関節痛および関節滲出液がない、軽度または中等度の動物が少ない。さらに、T2群ではベースライン後の各診察において、すべての整形外科的スコアでベースラインからの有意な改善が認められる。さらに、跛行スコア、関節痛スコアおよび関節滲出液スコアは、T1およびT3と比較して、42±4日目にT2群で有意な減少が観察される(図4a、4bおよび4c)。-21日目および0日目の平均可動域(ROM)は全群で同程度である。14±1日目以降のベースライン後の各診察では、T4群と比較して、3つのIVP群でROM値が高い。T2群では、ベースライン後のすべての診察でROMの増加が最も大きい(図4d)。
0日目の平均力(MF)と平均最大力(MMF)は全群で同程度であった。しかし、28±1日目のMFとMMFは群間で有意差があり(MF:P=0.031、MMF:P=0.037)、T4群に比べIVP3群で平均値が高かった。0日目から42±4日目までのMFとMMFの変化は群間で有意差があった(MF:P=0.018、MMF:P=0.045)。T4群と比較して、3つのIVP群のそれぞれでより大きな増加が認められ、T2群で最も増加が大きかった(図4eおよび4g)。平均対称性指数についても同様の結果が得られた(図4f)。
CBPI評価
組み入れ時、すべての動物の疼痛重症度スコア(PSS)と疼痛干渉スコア(PIS)は0である。0日目の平均PSSおよびPISスコアは4群とも同程度である。ベースライン後の各診察では、平均PSSおよびPISスコアはプラセボと比較して3つのIVP群で有意に低い(P≦0.001)。さらに、42±4日目にT1(PSS:-1.9±0.35、PIS:-2.0±0.44)、T3(PSS:-1.6±0.38、PIS:-1.7±0.27)およびT4(PSS:-0.8±0.30、PIS:-0.28±0.33)と比較して、PSS、PISともにT2群が最もスコアが低下している(PSS:-3.0±0.55、PIS:-3.1±0.72)(データは示さず)。
生活の質スコアは-21日目で全動物がスコア1(=非常に良い)、0日目でスコア4(=悪い)であった。7±1日目以降のベースライン後の各診察では、T4群と比較して、3つのIVP群すべてでスコア2(=良い)またはスコア3(=普通)の動物が多い。T2群は、42±4日目にT1群(12.5%)およびT3群(0%)と比較してスコア2の動物の割合が最も高く(75.0%)、T4群(0%)よりも有意に良好であった(P≦0.001)(データは示さず)。
病理学、組織学および免疫組織化学
42±4日目では、滑膜炎と軟骨のスコア1の発生率がT1群(75.0%、50.0%)およびT3群(62.5%、75.0%)に比べ、T2群(87.5%、87.5%)で最も高い。各半月の平均総スコアは、T4群と比較して3つのIVP群すべてで低い。この差は、T4群と比較したT3群の内側半月(P=0.092)を除き、すべての群間比較で有意であった(P≦0.035)。T2群は、T1群(0.3±0.7)およびT3群(1.0±1.2)と比較して、両半月の平均スコアが最低(0)である(補足データ)。関節表面と滑膜の病理組織学的評価は、全群で同様の結果を示す。さらに、軟骨オリゴマー基質タンパク質(COMP)、II型コラーゲン、グリコサミノグリカン、von Willebrand因子(vWF)の免疫組織化学的評価においても、治療群間で有意差は認められない。最後に、注射部位、大腿骨内側顆部(MFC)、大腿骨外側顆部(LFC)、内側脛骨高原および外側脛骨高原には異所性組織は認められない。
実施例4:標的動物の安全性
イヌへのePB-MSCの単回および反復IV投与の安全性を評価するために、本実施例ではいくつかの臨床安全性パラメータを評価する。
方法
48匹の健康な研究用に繁殖させたビーグルを無作為に割り付けて、試験品(n=40)または参照品(n=8)の静脈注射を受けさせる。試験品で治療するイヌには、3×10ePB-MSC(1mL)(n=8)、9×10ePB-MSC(3mL)(n=8)および15×10ePB-MSC(5mL)(n=8)を0日目に投与するか(単回注射治療群)、または3×10ePB-MSC(1mL)(n=8)および15×10ePB-MSC(5mL)(n=8)を0、42および84日目に投与する(反復注射治療群)。注射後、すべてのイヌを252日間評価する。すべてのイヌについて有害事象の発生を評価するために毎日臨床観察を行う。血液と尿の試料を採取し、血液学的、凝固学的および生化学的分析を行う。試験期間終了時に、すべての動物を安楽死させ、徹底的な剖検と組織学的検査を行い、ePB-MSCの残存率を分析する。
結果
いくつかのMSC治療群で一時的に網状赤血球が増加したことを除いては、対照群と治療群の間で臨床安全性パラメータに明らかな差は観察されない。しかし、これはいかなる有害事象とも関連しておらず、全体的な平均値は基準範囲内である。身体検査、臨床検査および注射部位の観察中に、臨床的異常を示すイヌはいない。体重の有意な減少は認められない。研究薬に関連した有害事象は観察されず、研究中の検査結果はいずれも明らかな異常を示さない。文献調査に基づくと、研究中の異常所見(網状赤血球増加症以外)は偶発的なものであり、試験品とは無関係であると考えられる。剖検および病理組織学的評価において、異所性組織は観察されない。さらに、観察されたすべての(軽度の)異常は、試験品と関連するとは考えにくい。PCR分析により、eMSCは分析試料中に存在しないことが判明し、これは、MSCが組織および循環系に長期間存在しないことを示す。
結論
試験品は静脈内使用/投与について安全であることが示される。
実施例5:ePB-MSCを用いた治療前後のイヌにおける混合リンパ球反応(MLR):
設定:
イヌにOAを誘発した後、ePB-MSCを注射する前後の細胞性免疫反応を調べるため、イヌから単離した末梢血単核球(PBMC)を用いて混合リンパ球反応(MLR)アッセイを行った。
イヌにおけるePB-MSCの免疫調節特性を確認するために、混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて、コンカナバリンA(conA)刺激イヌ末梢血単核球(PBMC)とePB-MSCをコインキュベートする。その結果、PBMCの増殖(%)を、カルボキシフルオセインサクシニミジルエステル7-アミノアクチノマイシンD(CFSE-7AAD)標識法を用いたフローサイトメトリーで評価する。このアッセイは、2つの異なる臨床研究(概念実証研究と安全性研究)に組み入れられたすべてのイヌについて、治療の前後に実施する。
概念実証研究の32匹のイヌは、外科的OAモデルを導入した2週間後に、4つの治療群(すなわち、低用量(T1)(100.000ePB-MSC)、標準用量(T2)(300.000ePB-MSC)および高用量(T3)(1.500.000ePB-MSC)と、生理食塩水を用いる対照群(T4))に割り付ける。これには、関節の変性と軟骨欠損を引き起こす前十字靭帯(ACL)軟骨欠損モデルを用いる。
安全性研究に組み入れた48匹のイヌは、8匹ずつの6群に分け、異なる投与量のePB-MSCまたはプラセボを投与する(すなわち、T1:プラセボ(対照群)、T2:推奨用量(=300.000ePB-MSC)の単回注射、T3:3×推奨用量の単回注射、T4:5×推奨用量の単回注射、T5:推奨用量の反復注射(n=3)、T6:5×推奨用量の反復注射(n=3))。
結果
概念実証研究
コインキュベーション試料のPBMC増殖(%)は、治療前(-7日目)および治療後(治療後28日目)のすべての治療群において、陽性対照と比較して有意に低い(P<0.001)。また、(各治療群の)治療前と治療後のPBMC増殖(%)に有意差は認められない(P≧0.061)(図5)。
安全性研究
コインキュベーション試料のPBMC増殖(%)は、治療前(-7日目)および治療後(126日目)のすべての治療群において、陽性対照と比較して有意に低い(P≦0.002)。さらに、コインキュベーション試料のPBMC増殖(%)は、治療前と比較して治療後に低下している。しかし、これは6群中3群でのみで有意である(図6)。
結論
両研究のすべての治療群におけるPBMC増殖は、治療前後で陽性対照より有意に低く、刺激されたイヌPBMCの炎症反応を低減するePB-MSCの免疫調節能が確認される。さらに、ePB-MSCの強力な免疫調節特性は、治療前と治療後の両方で認められる。さらに、繰り返し注射してもePB-MSCの免疫調節特性は低下しない。それどころか、これらの免疫調節特性は、6群中3群で静脈注射後に有意に高くなることが認められる。この免疫調節特性から、異種ePB-MSCがイヌの変形性関節症の治療で使用できることが確認される。
実施例6:MLR上清中の免疫調節マーカーおよび炎症マーカー
設定:
ePB-MSCとconA刺激イヌPBMCを4日間コインキュベートするMLRアッセイ中に採取した上清について、市販のELISAキットを用いて免疫調節マーカーおよび炎症促進マーカーを試験する。これは、イヌPBMCに対するウマ末梢血由来間葉系幹細胞(ePB-MSC)の免疫調節特性をさらに調べ、ePB-MSCによって分泌されるどのパラクリン因子がこの免疫調節過程に関与している可能性があるかを同定するためである。
結果
結果は、陽性対照試料では陰性対照試料に比べてTGF-β1濃度が大きく上昇することを示している。しかし、免疫調節性試料では、陽性対照と比較して大きな減少が認められ、これは陰性対照と同程度である。TGF-β1の炎症促進作用は以前に報告されており、T細胞の炎症性Tヘルパー17細胞への分化を誘導または刺激する可能性がある。これらの結果は、ePB-MSCの免疫調節特性によって、TGF-β1の産生がベースラインレベルまでダウンレギュレートされることを示している(図7)。
さらに、陽性対照試料の上清中では、陰性対照と比較してTNF-α濃度の有意な上昇が認められる。このことは、イヌPBMCのConA刺激は、炎症性サイトカインTNF-αの放出を誘導または刺激することを示している。免疫調節性試料のELISA結果は、ePB-MSCがTNF-α濃度を陰性対照のレベルまで低下させることができることを示しており、これは、ePB-MSCがその免疫調節特性によってこの炎症環境を逆転させることができることを示している(図8)。
最後に、PGE2の結果は、陽性および陰性対照試料と比較した場合、免疫調節が上清中のPGE2の強い増加と相関していることを示している。これらの結果は、ePB-MSCの免疫調節効果におけるPGE2の重要性を示している(図9)。
結論
免疫調節上清試料についてのELISAは、ePB-MSCはTNF-αとTGF-β1濃度を陰性対照のレベルまで低下させることができることを示しており、これは、ePB-MSCが免疫調節特性によってこの炎症環境を逆転させることができることを示している。さらに、免疫調節上清試料では、陽性および陰性試料と比較してPGE2の強い増加が認められ、これは、ePB-MSCの免疫調節効果におけるPGE2の重要性をさらに強めるものである。
実施例7:イヌ血液中の炎症マーカーおよび軟骨代謝産物に対するIV ePB-MSC治療の影響
設定:
イヌのOA病態におけるePB-MSCのin vivo免疫調節特性をより深く理解するために、32匹のイヌの血清中で、治療前後の異なる時点(-21日目、0日目、14日目、28日目および48日目)で、対象のさまざまな炎症マーカーと軟骨代謝産物を評価する。32匹のイヌは、外科的OAモデル導入の2週間後に、4つの治療群(すなわち、低用量(T1)(100.000ePB-MSC)、標準用量(T2)(300.000ePB-MSC)、高用量(T3)(1.500.000ePB-MSC)および生理食塩水を用いた対照群(T4))に割り付ける。これには、関節の変性と軟骨欠損を引き起こす前十字靭帯(ACL)軟骨欠損モデルを用いる。調べる炎症マーカーと軟骨代謝産物は、トランスフォーミング成長因子β1(TGF-β1)、プロスタグランジンE2(PGE2)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、補体因子C3a、コラーゲンII型切断(C2C)およびヒアルロン酸(HA)である。
別の事後分析において、研究終了時(42日目)の滑膜炎および軟骨のスコアに基づいて、この研究の全イヌを対照と症例に分ける。単変量統計学を用いて、上記のマーカーに基づいてこれらの群間に有意差が認められるかどうかを調べた。
結果
300.000ePB-MSCで治療したイヌ(T2)の結果は、治療後28日目のHA血清レベルが対照群に比べ有意に増加している(図10)。さらに事後分析によると、HA血清レベルも症例と対象の間で有意差がある(図11)。加えて、300.000ePB-MSCで治療したイヌ(T2)では、治療用投与後のすべての時点において、対照群(T4)に比べてPGE2の血清レベルが高いことが認められる。しかし、これは治療後14日目でのみ有意差がある(図12)。ePB-MSCの投与は、評価時点において、他の試験されたin vivoマーカーに有意な影響を及ぼさないことが認められる。
結論
HAレベルの増加は、ePB-MSCが潜在的に軟骨分解の減少を引き起こし、ePB-MSCの軟骨保護効果を示していることを示している。このことは、軟骨と滑膜炎のスコア化とHA血清濃度との間に明確な関連性があることを示す事後分析によって強化される。さらに、PGE2レベルの増加は、PGE2がePB-MSCの免疫調節作用様式に関与しているというin vitroでの知見を裏付けている。
実施例8:OA関節へのePB-MSCの生体内分布
設定:
傷害部位へのePB-MSCのホーミング挙動を調べるために、OAモデルを用いた実験用イヌでの、99mTc標識ePB-MSCを用いた生体分布研究を設定する。3匹の研究用に繁殖させたイヌに外科手術を行って、生体内分布試験開始4日前にイヌOAモデルを誘導する。各イヌの右後膝関節に、前十字靭帯を完全に切断し、大腿骨顆部の体重負荷面に両側軟骨欠損を形成することでOAを誘導する。手術の3日前と4日後にパワードプラ検査を行い、手術が関節の血管形成に及ぼす影響を評価する。次に、99mTc標識ePB-MSCを用いて、注射24時間後に、傷つけた後膝関節と健常な後膝関節へのePB-MSCの生体分布を調べる。両後膝関節(対照と病変部)の放射能を、全身スキャンの側面像に手動で描画した関心領域(ROI)を用いて定量する。病変関節におけるePB-MSCの相対的取り込みは、対照病変に対する測定カウントの増加倍数で表される。
主な結果
イヌのOAモデルにおける99mTc標識ePB-MSCの生体内分布を調べたところ、注射後24時間で、対照関節(n=3)と比較して、手術した後膝関節では13.0±3.9倍高い取り込みが認められる。術後4日目に超音波検査を行ったところ、手術肢の後膝関節では軽度の灌流増加が認められるが、健常な後膝関節レベルでは軽度の灌流増加しか認められない(データは示さず)。
結論
これらの結果は、ePB-MSCが静脈注射後、傷害部位に自然にホーミングする挙動を示し、イヌのOA治療におけるその作用機序についてさらなる洞察を与えるものである。
本発明は、例に記載された、および/または図に示された実施形態に決して限定されない。それどころか、本発明による方法は、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの異なる方法で実現され得る。

Claims (20)

  1. イヌおよびネコの変形性関節症の治療で使用するための間葉系幹細胞(MSC)または治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  2. 前記MSCが静脈内投与される、請求項1に記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  3. 前記MSCが天然である、請求項1~2の何れかに記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  4. 前記MSCが血液、好ましくは末梢血に由来する、請求項1~3に記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  5. 前記MSCが同種または異種MSCであり、好ましくは異種MSCである、請求項1~4の何れかに記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  6. 前記MSCが動物由来、好ましくは哺乳動物由来、より好ましくはウマ由来である、請求項1~5の何れかに記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  7. イヌまたはネコ1匹当たり10-10MSCの用量が投与される、請求項1~6の何れかに記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  8. 単一用量が投与される、請求項1~7の何れかに記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  9. 複数用量が投与され、各用量は異なる時点で投与される、請求項1~8の何れかに記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  10. 前記組成物の1用量が最大で約5mLの体積を有し、好ましくは前記体積は約1mLである、請求項1~9の何れかに記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  11. 前記MSCが、MHCクラスII分子および/またはCD45について陰性である、請求項1~10の何れかに記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  12. 前記MSCが、間葉系マーカーCD29、CD44およびCD90について陽性であり、MHCクラスII分子およびCD45について陰性である、請求項1~11の何れかに記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  13. 前記MSCが炎症環境または状態に存在する場合、免疫調節性プロスタグランジンE2サイトカインを分泌する、請求項1~12の何れかに記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  14. 前記MSCが炎症環境または状態に存在する場合、同じ特徴を有するが前記炎症環境または状態にさらされていない細胞と比較して、IL-6、IL-10、TGF-β、NO、もしくはそれらの組み合わせから選択される分子の少なくとも1つの分泌が増加し;および/または、IL-1の分泌が減少する、請求項1~13の何れかに記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  15. 前記MSCがPBMCの存在下にある場合、PgE2、IL-6、IL-10、NO、もしくはそれらの組み合わせの発現を刺激し、および/またはPBMCの存在下にある場合、TNF-α、IFN-γ、IL-1、TGF-β、IL-13、もしくはそれらの組み合わせの分泌を抑制する、請求項1~14の何れかに記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  16. 前記MSCが滅菌液体中に存在する、請求項1~15の何れかに記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  17. 前記MSCまたは組成物が、血小板豊富血漿(PRP)、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸をベースとする組成物、グリコサミノグリカン、もしくはグリコサミノグリカンをベースとする組成物、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される成分をさらに含む、請求項1~16の何れかに記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  18. 前記治療が、変形性関節症と診断された、または変形性関節症に罹患しているイヌおよびネコの跛行および/または関節痛の治療である、請求項1~17の何れかに記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  19. 前記MSCまたは組成物が静脈内投与される、請求項18に記載の使用のためのMSCまたは治療有効量のMSCを含む医薬組成物。
  20. 末梢血由来MSCを含む医薬組成物であって、前記MSCは動物由来、好ましくは哺乳動物由来であり、前記組成物1mL当たり10-10MSCの濃度で滅菌液体中に存在し、前記組成物の1投与量は約0.5~5mlであり、前記MSCは間葉系マーカーCD29、CD44およびCD90について陽性であり、MHCクラスII分子およびCD45について陰性であり、前記MSCは10μm~100μmの懸濁液径を有する、医薬組成物。
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