JP2023156879A - 極低温冷却システム、超電導装置、及び極低温冷却システムの運転方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】冷却源と被冷却物との温度差を低減して冷却源の冷凍能力を向上させることができること。【解決手段】極低温冷凍機13の1段冷却ステージ15、2段冷却ステージ16A、16B、超電導コイル1及び低温ファン22を収容する真空容器14と、圧縮機17を除く主要部が真空容器内に配置され、圧縮機により圧縮されたガスを、極低温冷凍機の1段冷却ステージ15及び2段冷却ステージ16Aで冷却して超電導コイルを冷却するために循環させる第1の循環系11と、真空容器内に配置され、低温ファン22で圧送されてガスを、極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16Bで冷却して超電導コイルを冷却するために循環させる第2の循環系12と、を有し、第1の循環系11と第2の循環系12とが、超電導コイル1の上流側の合流点Mで合流し、且つ超電導コイルの下流側の分岐点Nで分岐して接続され構成されたものである。【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、極低温冷却システム、被冷却物が超電導コイルである上記極低温冷却システムを備えた超電導装置、及び極低温冷却システムの運転方法に関する。
超電導磁石(超電導コイル)は極低温に冷却される必要があり、当初、液体ヘリウムで冷却する方法が一般的であった。その後、液体ヘリウム温度まで冷却可能な小型の極低温冷凍機の開発により、この極低温冷凍機を用いて伝導冷却により超電導コイルを冷却する方式が開発されている。この方式は、専門知識が必要な液体ヘリウムを取扱う必要が無いこと、近年のヘリウム資源の枯渇による液体ヘリウムの入手困難性等の影響によって、その適用範囲が着実に広がっている。この極低温冷凍機による伝導冷却は、すでに小型の超電導装置では普及しており、今後、大型の超電導装置でも極低温冷凍機による冷却方式が主流になることが予想される。
小型の超電導装置の極低温冷凍機による冷却では、極低温冷凍機と超電導コイルとの間に良熱伝導体を用いる伝導冷却方式が一般的である。しかし、大型の超電導装置では熱負荷が大きく、伝熱距離も長くなるため、伝導冷却方式では極低温冷凍機と超電導装置の間の温度差が大きくなってしまう問題がある。そこで、極低温冷凍機で冷却したガスを循環させて超電導装置の超電導コイルを冷却するガス循環冷却方式が有利になる。このガス循環冷却方式では、極低温冷凍機と超電導装置とを離しても、これらの両者の温度差が変化しない利点がある。
一般に、ガス循環冷却方式の極低温冷却システムとしては、図6(A)に示す極低温冷却システム100と、図6(B)に示す極低温冷却システム110とがある。これらの極低温冷却システム100及び110は、冷却源として、1段冷却ステージ101及び2段冷却ステージ102を備えた極低温冷凍機103を有し、真空容器104内に収容された被冷却物としての超電導コイル105を冷却する。
極低温冷却システム100では、ループ形状の冷却配管106に圧縮機107、第1熱交換器108、1段冷却ステージ101、第2熱交換器109、2段冷却ステージ102、超電導コイル105、第2熱交換器109、第1熱交換器108及び圧縮機107が順次配設される。このうちの圧縮機107が真空容器104外に、極低温冷凍機103の1段冷却ステージ101及び2段冷却ステージ102、第1熱交換器108並びに第2熱交換器109が、超電導コイル105と共に真空容器104内にそれぞれ配置される。圧縮機107により圧縮されて吐出された冷媒のガスが、第1熱交換器108、1段冷却ステージ101、第2熱交換器109、2段冷却ステージ102にて順次冷却され、超電導コイル105に導かれてこの超電導コイル105を、極低温(例えば4K程度)に冷却する。
極低温冷却システム110では、ループ形状に形成された冷却配管111に低温ファン112、2段冷却ステージ102、超電導コイル105及び低温ファン112が順次配設される。これらの低温ファン112、2段冷却ステージ102及び超電導コイル105は真空容器104内に配置される。低温ファン112により圧送された冷媒のガスが、2段冷却ステージ102にて冷却されて超電導コイル105に導かれ、この超電導コイル105を極低温(例えば4K程度)に冷却する。
上述のガス循環冷却方式では、ガスが被冷却物(超電導コイル105)から熱を受け取ることで温度が上昇する課題がある。ガスにおける超電導コイル105の入口温度と出口温度の差は、伝熱量に比例しガス流量に反比例する。このためガス流量を増やすほど、超電導コイル105によるガスの温度上昇が小さくなり、ひいては、極低温冷凍機103と超電導コイル105との温度差が小さくなるので、ガス流量が多いほど良くなりそうである。しかしながら、ガス流量が多すぎる場合にも課題がある。
真空容器104外の室温の圧縮機107を用いる極低温冷却システム100(図6(A))では、ガスを真空容器104の外部(室温部)と内部(低温部)との間で循環させる必要があり、圧縮機107から低温部へ高温のガスを送り込むことになる。第1熱交換器108の効率が100%であれば、低温部からの戻りガスにより室温部からのガスを冷却することができるが、実在の第1熱交換器108は例えば効率が96%程度であり、4%分の熱が低温部に入る。これを熱交換器損失と呼ぶ。この熱交換器損失はガスの流量に比例するため、ガスの流量を増やすと熱交換器損失が増加し、極低温冷凍機103への熱負荷となって実効的な冷凍能力が目減りしてしまう。
一方、低温ファン112を用いる極低温冷却システム110(図6(B))では、上記熱交換器損失が無いため、一見問題なさそうに見える。しかし、低温ファン112の特性を見ると、低温ファン112の入口と出口の圧力差を大きく設定することができない課題がある。冷却配管111の圧力損失と低温ファン112の入口と出口の圧力差とが等しくなる条件でガス流量が決まるので、流せるガスの流量には上限がある。もちろん、低温ファン112の回転数を上げたり、低温ファン112を大型にすることで流量を増大させることは可能であるが、その場合には低温ファン112からの熱侵入量やガス圧送時の発熱等によって極低温冷凍機103への熱負荷が増え、実効的な冷凍能力が目減りしてしまう。
上述のように、極低温冷却システム100と110とを比較した場合、熱交換器損失が存在しない極低温冷却システム110の方が高性能とされている。しかしながら、極低温冷却システム110では、低温ファン112の入口と出口の圧力差が小さいためにガス流量に上限があり、また、極低温冷却システム100では、ガス流量の増加に伴う熱交換器損失の増大によって極低温冷凍機103と超電導コイル105との温度差に下限が生ずる課題がある。
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、冷却源と被冷却物との温度差を低減して冷却源の冷凍能力を向上させることができる極低温冷却システム、超電導装置、及び極低温冷却システムの運転方法を提供することを目的とする。
本発明の実施形態における極低温冷却システムは、冷却源の冷却部、被冷却物及びファンを収容する真空容器と、圧縮機を除く主要部が前記真空容器内に配置され、前記圧縮機により圧縮されたガスを、前記冷却源の前記冷却部で冷却して前記被冷却物を冷却するために循環させる第1の循環系と、前記真空容器内に配置され、前記ファンで圧送されたガスを、前記冷却源の前記冷却部で冷却して前記被冷却物を冷却するために循環させる第2の循環系と、を有し、前記第1の循環系と前記第2の循環系とが、前記被冷却物の上流側で合流し、且つ前記被冷却物の下流側で分岐して接続され構成されたことを特徴とするものである。
本発明の実施形態における超電導装置は、被冷却物が超電導コイルである前記実施形態に記載の極低温冷却システムを有して構成されたことを特徴とするものである。
本発明の実施形態における極低温冷却システムの運転方法は、冷却源の冷却部、被冷却物及びファンを収容する真空容器と、圧縮機を除く主要部が前記真空容器内に配置され、前記圧縮機により圧縮されたガスを、前記冷却源の前記冷却部で冷却して前記被冷却物を冷却するために循環させる第1の循環系と、前記真空容器内に配置され、前記ファンで圧送されたガスを、前記冷却源の前記冷却部で冷却して前記被冷却物を冷却するために循環させる第2の循環系と、を準備し、前記第1の循環系と前記第2の循環系とを、前記被冷却物の運転モードに応じて択一に切り換えて運転させることを特徴とするものである。
本発明の実施形態によれば、冷却源と被冷却物との温度差を低減して冷却源の冷凍能力を向上させることができる。
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(図1)
図1は、第1実施形態に係る極低温冷却システムを示す管路図である。この図1に示す極低温冷却システム10は、MRI(磁気共鳴画像診断装置)などの超電導装置を構成する超電導コイル1を被冷却物とし、この超電導コイル1をガス循環冷却方式により極低温(例えば4K程度)に冷却するものであり、冷却源としての極低温冷凍機13を含む第1の循環系11と、上記極低温冷凍機13を含む第2の循環系12と、真空容器14とを有して構成される。
[A]第1実施形態(図1)
図1は、第1実施形態に係る極低温冷却システムを示す管路図である。この図1に示す極低温冷却システム10は、MRI(磁気共鳴画像診断装置)などの超電導装置を構成する超電導コイル1を被冷却物とし、この超電導コイル1をガス循環冷却方式により極低温(例えば4K程度)に冷却するものであり、冷却源としての極低温冷凍機13を含む第1の循環系11と、上記極低温冷凍機13を含む第2の循環系12と、真空容器14とを有して構成される。
極低温冷凍機13は、例えばGM(Gifford-McMahon)冷凍機であり、冷却部としての1段冷却ステージ15及び2段冷却ステージ16A、16Bを有する。この極低温冷凍機13は、真空容器14に設置され、1段冷却ステージ15及び2段冷却ステージ16A、16Bが真空容器14内に収容される。極低温冷凍機13は、GM冷凍機に限らず、パルスチューブ冷凍機、スターリング冷凍機であってもよい。また、極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16Aと16Bは、2段冷却ステージ16Aが1段冷却ステージ15側に位置づけられて直列に配置されても、2段冷却ステージ16Bが1段冷却ステージ15側に位置づけられて直列に配置されてもよく、また2段冷却ステージ16A、16Bの両者が並列に配置されてもよい。更に、2段冷却ステージ16Aと16Bは一体化されてもよい。
第1の循環系11は、圧縮機17、冷却配管18、極低温冷凍機13、第1熱交換器19、第2熱交換器20、及び第1のバルブとしての室温バルブ21を有して構成される。
冷却配管18はループ形状に形成され、この冷却配管18に、圧縮機17、室温バルブ21、第1熱交換器19、極低温冷凍機13の1段冷却ステージ15、第2熱交換器20、極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16A、超電導コイル1、第2熱交換器20、第1熱交換器19、圧縮機17が順次配設される。このうちの圧縮機17及び室温バルブ21が真空容器14外に配置され、第1の循環系11の他の主要部である極低温冷凍機13の1段冷却ステージ15及び2段冷却ステージ16A、第1熱交換器19並びに第2熱交換器20が、超電導コイル1と共に真空容器14内に配置される。
圧縮機17は、ヘリウムガスなどの冷媒のガスを圧縮して吐出し、冷却配管18内で循環させるものである。この圧縮機17から吐出されたガスは、第1熱交換器19、極低温冷凍機13の1段冷却ステージ15、第2熱交換器20、極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16Aに順次供給されて段階的に冷却され、超電導コイル1に導かれてこの超電導コイル1を冷却した後、第2熱交換器20、第1熱交換器19を順次経て圧縮機17に戻されて循環する。
第1熱交換器19、第2熱交換器20のそれぞれは、超電導コイル1を冷却した後のガスにより、極低温冷凍機13の1段冷却ステージ15、2段冷却ステージ16Aのそれぞれに流入する前のガスを熱交換により冷却するものである。つまり、第2熱交換器20は、極低温冷凍機13の1段冷却ステージ15から流出して2段冷却ステージ16Aに流入する前のガスを、超電導コイル1を冷却した後のガスにより熱交換して冷却する。また、第1熱交換器19は、圧縮機17から吐出されて極低温冷凍機13の1段冷却ステージ15に流入する前のガスを、超電導コイル1を冷却し更に第2熱交換器20により熱交換した後のガスにより熱交換して冷却する。
室温バルブ21は、圧縮機17の下流側で且つ第1熱交換器19の上流側における真空容器14外の室温域における冷却配管18に配設され、冷却配管18内を流れるガスの流量を調整する。更に、この室温バルブ21は、極低温冷却システム10の運転時には第2の循環系12における後述の低温バルブ24と連動して開閉し、いずれか一方のバルブのみが開弁動作する。
第2の循環系12は、低温ファン22、冷却配管23、極低温冷凍機13、及び第2のバルブとしての低温バルブ24を有して構成される。冷却配管23はループ形状に形成され、この冷却配管23に低温ファン22、低温バルブ24、極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16B、超電導コイル1、低温ファン22が順次配設される。この第2の循環系12を構成する低温ファン22、冷却配管23、極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16B及び低温バルブ24は、超電導コイル1と共に真空容器14内に配設される。
低温ファン22は、ヘリウムガス等の冷媒のガスを圧送して、冷却配管23内で循環させるものである。この低温ファン22から圧送されたガスは、低温バルブ24を経て極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16Bに供給されて冷却され、超電導コイル1に導かれてこの超電導コイル1を極低温(4K程度)に冷却した後、低温ファン22に戻されて循環する。
低温バルブ24は、低温ファン22の下流側で且つ極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16Bの上流側における冷却配管23に配設され、この冷却配管23を流れるガスの流れを制御する例えば開閉弁である。また、この低温バルブ24は、後述の第2の循環系12の非運転時で且つ第1の循環系11の運転時に、第1の循環系11内を流れるガスが第2の循環系12に不必要に流入することを阻止する逆止弁であってもよい。
上述のように構成された第1の循環系11及び第2の循環系12では、第1の循環系11の冷却配管18と第2の循環系12の冷却配管23は、超電導コイル1の上流側の合流点Mで合流し、超電導コイル1の下流側の分岐点Nで分岐して接続される。なお、冷却配管18と23は、超電導コイル1に対しそれぞれ独立して接続されてもよい。
ところで、極低温冷却システム10では、超電導コイル1の運転モード、例えば超電導コイル1を室温から所定の極低温(例えば4K程度)まで冷却する予冷モードと、所定の極低温に冷却された超電導コイル1の温度を保持する定常冷却モードとに応じて、第1の循環系11と第2の循環系12とが択一に切り換えられて運転される。
つまり、超電導コイル1の予冷モードでは、第1の循環系11の室温バルブ21が開動作され、第2の循環系12の低温バルブ24が閉動作されることで、第1の循環系11のみが運転される。また、超電導コイル1の定常冷却モードでは、第1の循環系11の室温バルブ21が閉動作され、第2の循環系12の低温バルブ24が開動作されることで、第2の循環系12のみが運転される。
超電導コイル1の予冷モードでは、超電導コイル1の温度が室温に近く、仮に第2の循環系12を運転した場合、この第2の循環系12内を流れるガスの温度が高いため、冷却配管23の圧力損失が大きく、第2の循環系12内のガスの流量が少なくなってしまう。これに対し、第1の循環系11では、予冷モードにおいて超電導コイル1の温度が室温に近いので、第1熱交換器19及び第2熱交換器20の熱交換器損失が減少する。このため、冷却配管18内を流れるガスの流量を増加させることが可能になるので、予冷モードでは第1の循環系11の運転が選択される。
超電導コイル1の定常冷却モードでは、超電導コイル1の温度と室温との温度差が大きくなるので、仮に第1の循環系11を運転した場合、第1熱交換器19及び第2熱交換器20の熱交換器損失が増大して、第1の循環系11内のガス流量を増加させることができない。これに対し、第2の循環系12では、定常冷却モードにおいて超電導コイル1が極低温状態にあり、冷却配管23を流れるガスの温度が低いので冷却配管23の圧力損失が小さい。このため、第2の循環系12内を流れるガスの流量を増加させることが可能になるので、熱交換器損失も存在しない第2の循環系12の運転が定常冷却モードで選択される。
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)を奏する。
(1)超電導コイル1の予冷モードと定常冷却モードとで第1の循環系11と第2の循環系12とを択一に使い分け、予冷モードでは第1の循環系11を、定常冷却モードでは第2の循環系12をそれぞれ運転させる。これにより、超電導コイル1の各運転モード(予冷モード、定常冷却モード等)において各循環系(第1の循環系11、第2の循環系12)を流れるガス流量を最大化できるので、極低温冷凍機13と超電導コイル1との温度差を低減できる。これにより、極低温冷凍機13の冷凍能力を向上させることができ、超電導コイル1の冷却性能を高めることができる。
(1)超電導コイル1の予冷モードと定常冷却モードとで第1の循環系11と第2の循環系12とを択一に使い分け、予冷モードでは第1の循環系11を、定常冷却モードでは第2の循環系12をそれぞれ運転させる。これにより、超電導コイル1の各運転モード(予冷モード、定常冷却モード等)において各循環系(第1の循環系11、第2の循環系12)を流れるガス流量を最大化できるので、極低温冷凍機13と超電導コイル1との温度差を低減できる。これにより、極低温冷凍機13の冷凍能力を向上させることができ、超電導コイル1の冷却性能を高めることができる。
[B]第2実施形態(図2)
図2は、第2実施形態に係る極低温冷却システムを示す管路図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態とを同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
図2は、第2実施形態に係る極低温冷却システムを示す管路図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態とを同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
本第2実施形態の極低温冷却システム25が第1実施形態と異なる点は、第1の循環系26が、極低温冷凍機13の1段冷却ステージ15から流出したガスを、第2熱交換器20をバイパスして極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16Aに導くと共にバイパス弁28を備えたバイパスライン27を更に有して構成された点である。
一般に、極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16A、16Bの温度は1段冷却ステージ15の温度よりも低いため、超電導コイル1の定常冷却モードでは、第2の循環系12の運転時に、極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16Bの冷凍能力により超電導コイル1が冷却される。これに対し、超電導コイル1の予冷モードでは、超電導コイル1の温度が室温に近いため極低温冷凍機13の1段冷却ステージ15でも十分であり、しかも冷凍能力は1段冷却ステージ15が2段冷却ステージ16A、16Bの数倍高い。従って、超電導コイル1の予冷モードでは第1の循環系11が運転されて、極低温冷凍機13の1段冷却ステージ15及び2段冷却ステージ16Aにより超電導コイル1が冷却される。
特に、予冷モードの初期には超電導コイル1が室温程度であるため、この超電導コイル1から第2熱交換器20に流入するガス温度が高くなるので、バイパス弁28が開動作される。これにより、極低温冷凍機13の1段冷却ステージ15から流出したガスは、バイパスライン27を流れて第2熱交換器20をバイパスし、極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16Aに直接流入する。このため、2段冷却ステージ16Aに流入するガスは、第2熱交換器20の熱交換による温度上昇が防止される。
以上のように構成されたことから、本第2実施形態においても、第1実施形態の効果(1)と同様な効果を奏するほか、次の効果(2)を奏する。
(2)第1の循環系11を運転させる超電導コイル1の冷却モードでは、その初期に超電導コイル1の温度が室温程度であるので、バイパス弁28が開動作されて、極低温冷凍機13の1段冷却ステージ15から流出したガスは、第2熱交換器20をバイパスして、バイパスライン27により極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16Aに直接流入する。これにより、2段冷却ステージ16Aに流入するガスは、第2熱交換器20による温度上昇が防止されて効率的に冷却され、この結果、第1の循環系11内を流れるガスにより超電導コイル1を効果的に冷却することができる。
[C]第3実施形態(図3)
図3は、第3実施形態に係る極低温冷却システムを示す管路図である。この第3実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
図3は、第3実施形態に係る極低温冷却システムを示す管路図である。この第3実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
本第3実施形態の極低温冷却システム30が第1実施形態と異なる点は、第1の循環系31が、第3熱交換器33と、ガスを膨張して液化させるJTバルブ(JT:Joule-Thomson)32とを備えたJT冷却系34を更に有して構成された点である。これにより、第1の循環系31はGM/JT冷凍機と同一の構成になる。上述の第3熱交換器33、JTバルブ32は、極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16Aの下流側で且つ合流点Mの上流側の冷却配管18に、上流側から順次配設される。
ここで、第1の循環系31としてのGM/JT冷凍機と極低温冷凍機13のGM冷凍機とを比較する。GM/JT冷凍機は、JTバルブ32によりガスを膨張して液化させることで、冷凍能力がGM冷凍機(極低温冷凍機13)よりも3倍以上に増加する。また、GM/JT冷凍機におけるJT冷却系34の圧縮機17の所要動力は、GM冷凍機(極低温冷凍機13)を含む第2の循環系12の低温ファン22に比べて格段に大きい。即ち、GM/JT冷凍機としての第1の循環系31では冷凍能力及び所要動力が大きく、GM冷凍機(極低温冷凍機13)を含む第2の循環系12では冷凍能力及び所要動力が小さい。
一方、超電導コイル1の運転モードについて考察する。超電導コイル1の運転モードは、前述の予冷モード及び定常冷却モードのほかに、磁場を変化させる励消磁モードと、磁場を一定に保持する定常モードとがある。励消磁モードでは、定常モードに比べて超電導コイル1に多量の熱が発生する。
そこで、極低温冷却システム30は、励消磁モードまたは予冷モードでは、低温バルブ24を閉動作し、且つ室温バルブ21及びJTバルブ32を開動作して、冷凍能力の大きな第1の循環系31(GM/JT冷凍機)を運転して超電導コイル1を冷却する。また、極低温冷却システム30は、定常モードまたは定常冷却モードでは、室温バルブ21及びJTバルブ32を閉動作し且つ低温バルブ24を開動作して、所要動力(即ち消費電力)の小さな第2の循環系12を運転して超電導コイル1を冷却する。
以上のように構成されたことから、本第3実施形態においても、第1実施形態の効果(1)と同様な効果を奏するほか、次の効果(3)を奏する。
(3)極低温冷却システム30では、励消磁モードまたは予冷モードにおいて、冷凍能力の大きな第1の循環系(GM/JT冷凍機)を運転し、定常モードまたは定常冷却モードにおいて、所要動力の小さな第2の循環系12を運転する。これにより、極低温冷却システム30は、超電導コイル1の各運転モードにおいて、必要な冷凍能力を確保しつつ、所要動力(即ち消費電力)を全体として低下させることができる。
[D]第4実施形態(図4)
図4は、第4実施形態に係る極低温冷却システムを示す管路図である。この第4実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
図4は、第4実施形態に係る極低温冷却システムを示す管路図である。この第4実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
本第4実施形態の極低温冷却システム40が第1実施形態と異なる点は、極低温冷凍機13が単一の2段冷却ステージ16を有し、第1の循環系11の冷却配管18と第2の循環系12の冷却配管23とが、超電導コイル1の上流に配置された上記2段冷却ステージ16の上流側の合流点Mで合流し、超電導コイル1の下流側の分岐点Nで分岐して接続された点である。
上述のように構成されたことから、本第4実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)と同様な効果を奏するほか、次の効果(4)を奏する。
(4)第1の循環系11の冷却配管18と第2の循環系12の冷却配管23とが、極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16の上流側の合流点Mで合流して接続されたことから、極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16を共通化でき、極低温冷凍機13をコンパクトな構造に構成することができる。
[E]第5実施形態(図5)
図5は、第5実施形態に係る極低温冷却システムを示す管路図である。この第5実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
図5は、第5実施形態に係る極低温冷却システムを示す管路図である。この第5実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
本第5実施形態の極低温冷却システム50が第1実施形態と異なる点は、冷却源が複数(例えば極低温冷凍機13と極低温冷凍機53)存在し、このうちの少なくとも1つの冷却源、例えば極低温冷凍機53が第1の循環系51のみの構成要素として構成された点である。
つまり、極低温冷凍機53の2段冷却ステージ52は、第1の循環系51の冷却配管18における極低温冷凍機13の2段冷却ステージ16Aの下流側と合流点Mとの間に配置されて、2段冷却ステージ16Aにより冷却されたガスを更に冷却して超電導コイル1に導き、この超電導コイル1を冷却する。なお、極低温冷凍機53に代えて、例えば液体ヘリウムを貯溜する貯溜槽を冷却配管18に配設してもよい。
以上のように構成されから、本第5実施形態においても、第1実施形態の効果(1)と同様な効果を奏するほか、次の効果(5)を奏する。
(5)極低温冷却システム50では、第1の循環系51及び第2の循環系12の構成要素となる極低温冷凍機13のほかに、第1の循環系51のみの構成要素となる例えば極低温冷凍機53を有する。従って、極低温冷却システム50は、超電導コイル1の予冷モードまたは励消磁モードにおいて、例えば2つの極低温冷凍機13及び53により冷凍能力が向上して、超電導コイル1を迅速に冷却することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができ、また、それらの置き換えや変更、組み合わせは、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…超電導コイル(被冷却物)、10…極低温冷却システム、11…第1の循環系、12…第2の循環系、13…極低温冷凍機(冷却源)、14…真空容器、15…1段冷却ステージ、16、16A、16B…2段冷却ステージ、17…圧縮機、19…第1熱交換器、20…第2熱交換器、21…室温バルブ(第1のバルブ)、22…低温ファン(ファン)、24…低温バルブ(第2のバルブ)、25…極低温冷却システム、26…第1の循環系、27…バイパスライン、28…バイパス弁、30…極低温冷却システム、31…第1の循環系、32…JTバルブ、34…JT冷却系、40…極低温冷却システム、50…極低温冷却システム、51…第1の循環系、53…極低温冷凍機(冷却源)、M…合流点、N…分岐点
Claims (11)
- 冷却源の冷却部、被冷却物及びファンを収容する真空容器と、
圧縮機を除く主要部が前記真空容器内に配置され、前記圧縮機により圧縮されたガスを、前記冷却源の前記冷却部で冷却して前記被冷却物を冷却するために循環させる第1の循環系と、
前記真空容器内に配置され、前記ファンで圧送されたガスを、前記冷却源の前記冷却部で冷却して前記被冷却物を冷却するために循環させる第2の循環系と、を有し、
前記第1の循環系と前記第2の循環系とが、前記被冷却物の上流側で合流し、且つ前記被冷却物の下流側で分岐して接続され構成されたことを特徴とする極低温冷却システム。 - 前記第1の循環系は、真空容器外に配置された圧縮機と、冷却部としての冷却ステージを備える冷却源としての極低温冷凍機と、被冷却物を冷却したガスにより前記冷却ステージへ流入する前のガスを熱交換して冷却する熱交換器と、前記真空容器外に配置されると共に前記圧縮機の下流側に設けられてガスの流量を調整する第1のバルブと、を有して構成されたことを特徴とする請求項1に記載の極低温冷却システム。
- 前記第2の循環系は、ファンと、冷却部としての冷却ステージを備える冷却源としての極低温冷凍機と、前記ファンと共に真空容器内に配置され且つ前記ファンの下流側に設けられてガスの流れを制御する第2のバルブと、を有して構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の極低温冷却システム。
- 前記第2のバルブは、第2の循環系の非運転時で且つ第1の循環系の運転時に、前記第1の循環系を流れるガスが前記第2の循環系に流入することを阻止する逆止弁であることを特徴とする請求項3に記載の極低温冷却システム。
- 前記極低温冷凍機は、1段冷却ステージ及び2段冷却ステージを備え、前記熱交換器は、前記1段冷却ステージへ流入する前のガスを熱交換して冷却する第1熱交換器と、前記1段冷却ステージから流出して前記2段冷却ステージへ流入する前のガスを熱交換して冷却する第2熱交換器とを備え、
前記第1の循環系は、前記1段冷却ステージから流出したガスを、前記第2熱交換器をバイパスして前記2段冷却ステージへ導くと共にバイパス弁を備えたバイパスラインを更に有することを特徴とする請求項2に記載の極低温冷却システム。 - 前記第1の循環系は、ガスを膨張して液化させるJTバルブを備えたJT冷却系を更に有して構成されたことを特徴とする請求項2に記載の極低温冷却システム。
- 前記第1の循環系と前記第2の循環系は、被冷却物の上流に配置された冷却源の冷却部の上流側で合流し、且つ前記被冷却物の下流側で分岐して接続され構成されたことを特徴とする請求項1に記載の極低温冷却システム。
- 前記冷却源が複数存在し、少なくとも1つの前記冷却源が第1の循環系のみの構成要素として構成されたことを特徴とする請求項1に記載の極低温冷却システム。
- 前記被冷却物が超電導コイルである請求項1に記載の極低温冷却システムを有して構成されたことを特徴とする超電導装置。
- 冷却源の冷却部、被冷却物及びファンを収容する真空容器と、
圧縮機を除く主要部が前記真空容器内に配置され、前記圧縮機により圧縮されたガスを、前記冷却源の前記冷却部で冷却して前記被冷却物を冷却するために循環させる第1の循環系と、
前記真空容器内に配置され、前記ファンで圧送されたガスを、前記冷却源の前記冷却部で冷却して前記被冷却物を冷却するために循環させる第2の循環系と、を準備し、
前記第1の循環系と前記第2の循環系とを、前記被冷却物の運転モードに応じて択一に切り換えて運転させることを特徴とする極低温冷却システムの運転方法。 - 前記被冷却物を室温から所定温度まで冷却する予冷モード、または前記被冷却物としての超電導コイルの磁場を変化させる励消磁モードでは、第1の循環系を運転させ、
所定温度に冷却された前記被冷却物の温度を保持する定常冷却モード、または前記超電導コイルの磁場を一定に保持する定常モードでは、第2の循環系を運転させることを特徴とする請求項10に記載の極低温冷却システムの運転方法。
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JP2022066510A JP2023156879A (ja) | 2022-04-13 | 2022-04-13 | 極低温冷却システム、超電導装置、及び極低温冷却システムの運転方法 |
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