JP2023155566A - 緊張材の定着構造およびプレストレストコンクリート構造物の製作方法 - Google Patents

緊張材の定着構造およびプレストレストコンクリート構造物の製作方法 Download PDF

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Abstract

【課題】コンクリート構造物に経済的かつ効率的にプレストレスを導入する。【解決手段】両端部間をつなぐ挿通孔4が形成されたコンクリート構造物2,上記挿通孔4内に挿入される中空のスリーブ7,上記スリーブ7の中空6内に挿入される緊張材1,ならびに上記挿通孔4内および上記スリーブ7内に充填されるPCグラウト15を備え,上記緊張材1は,上記PCグラウト15が充填される前に緊張され,かつ上記PCグラウト15に所定の強度が発現した後に緊張が解放されたものである。上記緊張材1はポアソン効果によって径方向外向きに拡径しており,拡径した上記緊張材1と上記スリーブ7との間に充填されているPCグラウト15に発生する圧縮応力によって,上記緊張材1に上記スリーブ7がしっかりと定着される。【選択図】図3

Description

この発明は,緊張材の定着構造およびプレストレストコンクリート構造物の製作方法に関するものである。
プレストレストコンクリート構造物の施工方法として「プレテンション方式」と「ポストテンション方式」が知られている。プレストレストコンクリート構造物の施工条件および設計条件に応じてこれらの2つの方式のいずれかが採用される。
プレテンション方式は,あらかじめ緊張材を緊張し,これにコンクリートを打込み硬化した後に緊張材の緊張力を解放してコンクリート構造物にプレストレスを導入する方式である。プレテンション方式によってプレストレスが導入されるプレストレストコンクリート構造物は,緊張反力装置や蒸気養生設備が装備されているプレキャスト生産工場において生産されるので,効率的な緊張作業が可能である。後述するポストテンション方式において構造物の端部に個別に必要とされる定着装置および緊張装置が必要とされず,また,グラウト充填作業が不必要であるので,プレストレストコンクリート構造物を経済的に製造することができる。他方,工場生産であるために,大型橋梁に用いられるような長さの長いプレストレストコンクリート構造物の生産は難しい。また複数のコンクリート部材を接合して,コンクリート構造物の全長にわたってプレストレスを導入する必要がある場合にもプレテンション方式は不向きである。
他方,ポストテンション方式は,シース管を装着したコンクリート構造物を構築した後に,シース管内に緊張材を挿入し,定着装置を介して緊張力を導入した後に緊張定着する。緊張材の防錆目的でシース管内にPCグラウトを充填し強度を発現させる方式である。建設現場において緊張作業が可能なのでコンクリート部材長の制限はなく,また複数のコンクリート部材を接合するためにコンクリート部材の全長にわたってプレストレスを導入することができる。また,コンクリート橋梁をはじめとする長大コンクリート構造物にプレストレスを導入するのに適する。ポストテンション方式では,一般的にコンクリート構造物の一端部には定着装置が,他端部には緊張装置および定着装置が,現場において設置される。定着装置には種々のものが用いられるが,一般的に高価であり,また通常は鋼製であるので防錆処理を必要とする。
この発明に関連する特許参考文献を以下に示す。
特開昭62-125141号公報 特開平11-350736号公報 特開2016-8441号公報
特許文献1は,合成樹脂が被覆された緊張材を用いてポストテンション方式によってプレストレスが導入されるコンクリート構造物の端部付近に空間部を形成し,上記緊張材を緊張させた状態で空間部にグラウト材を充填する方法を開示する。しかしながら,グラウト材が充填される空間部はシース管の径よりもやや大きいだけである。空間部の長さについての記述はなく,充填されたグラウト材と緊張材との付着抵抗力のみでは,コンクリート構造物に十分な緊張力を定着させるのは難しい。
特許文献2もポストテンション方式による緊張力をコンクリート構造物に定着する方法を開示する。特許文献2ではシース管内に充填される材料としてグラウト材ではなくエポキシ樹脂が用いられている。エポキシ樹脂の付着強度がグラウトよりも高いとしても,エポキシ樹脂と緊張材,あるいはコンクリート部の接触面において十分な付着抵抗力が生じるとは考えにくい。
特許文献3は,プレテンション方式とポストテンション方式のそれぞれの利点を利用するプレストレストコンクリート構造物および施工方法を提案している。詳細には,プレテンション方式で製造したプレテンションブロックと,ポストテンション方式による現場接合を前提としたポストテンションブロックとを,ポストテンション方式によって一体化する施工方法を開示している。しかしながら,特許文献3では,従来のプレテンション方式および従来のポストテンション方式の組み合わせを用いる定着方法を開示するにとどまっている。
ポストテンション方式による定着方法には,以下の問題点がある。
(1)PC鋼ストランドによるポストテンション方式による定着方法の問題点
緊張材としてピアノ線を素材とするPC鋼ストランドが古くから多く用いられている。PC鋼ストランドは錆びるので,最近では錆を防止するためにPC鋼ストランドにエポキシ被覆を施したエポキシPC鋼ストランドも提案されている。以降の説明でPC鋼ストランドはエポキシPC鋼ストランドも含むこととする。
PC鋼ストランドを緊張材に用いる場合,その一端部(固定端部)の定着方法には大きく2通りがある。ひとつはクサビおよびアンカーヘッドを用いて直接に緊張材を把持し,アンカーヘッドをコンクリート構造物の一端部に設けられた支圧板により端部コンクリートに定着する方法である。もう一つの方法は冷間押出し加工によって緊張材の一端部に鋼製スリーブを圧着し,上記鋼製スリーブをコンクリート構造物の一端部に設けられた支圧板を介して端部コンクリートに定着する方法である。アンカーヘッドおよび鋼製スリーブが定着装置を構成する。
緊張材の他端部(緊張端部)については,緊張ジャッキを用いて緊張材を緊張した後に,その緊張力はクサビおよびアンカーヘッドを用いて他端部も設けられた支圧板を介してコンクリート構造物の他端部コンクリートに定着される。マンションタイプのクサビおよびロックナットのネジを用いて緊張後の緊張材の他端部をコンクリート構造物の他端部コンクリートに定着することもある。
PC鋼ストランドを緊張材として用いる場合,鋼製であって精密加工が要求されるクサビ,アンカーヘッド,鋼製スリーブおよび支圧板が,コンクリート構造物の両端部に緊張材の両端部を定着するための定着装置として用いられる。クサビ,アンカーヘッド,鋼製スリーブおよび支圧板は,精密加工が要求されるので高価であり,ポストテンション方式による施工費用のなかで多くの割合を占めている。
ポストテンション方式では,コンクリート強度発現後のコンクリート構造体に対してプレストレスが導入される。コンクリート構造物に対するプレストレスの導入は,コンクリート構造物の両端部に設けられ,緊張された状態の緊張材の緊張力をコンクリート構造物に両端部に定着する定着装置の性能に依存している。
まとめると,PC鋼ストランドによるポストテンション方式の定着方法の問題点としては,以下の通りである。
問題点1:固定端部および緊張端部に用いられる定着装置に鋼製の精密加工が要求される治具が用いられるので,高価である。
問題点2:定着装置を防錆する必要がある。一般的にはオイルシールされた容器を用いて防錆されるので,防錆オイル装置の費用と,その維持管理費用も必要である。
(2)連続繊維補強材によるポストテンション方式による定着方法と問題点
連続繊維補強材とは,炭素繊維,アラミド繊維,ガラス繊維などの連続繊維を数万本束ね,これにエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂などの熱硬化性樹脂,あるいは,ポリカーボネートやポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂を含浸して硬化させたものである。
緊張材として連続繊維補強材を適用した場合,緊張材の一端部(固定端部)をコンクリート構造物の一端部に定着する方法としては2通りの方法が実施されている。その一つは,鋼製スリーブ内に膨張剤を混入したセメント系組成物(以降,膨張材と称する)を充填し,膨張材の膨張圧を用いて緊張材の一端部と上記スリーブを一体化し,上記スリーブをコンクリート構造物の一端部に設けられた支圧板に定着する方法である。もう一つの方法は,PC鋼ストランドと同様にクサビとクサビスリーブを用いて緊張材の一端部を支圧板に定着する方法である。クサビによる強い締付けによって連続繊維補強材が損傷することを防止するために,クサビと連続繊維補強材との間には緩衝材が設けられる。そのためPC鋼ストランドの場合と比較して,現場でのクサビ定着作業に多くの施工手順があり施工時間を要することがある。
緊張材として連続繊維補強材を用いる場合の緊張端部の定着方法には,上述した膨張材を用いたものが多く用いられている。膨張した膨張材と連続繊維補強材の他端部とを一体化したスリーブ(以下,膨張材入りスリーブと称する)の外面にロックナットが装着され,このロックナットがコンクリート構造物の他端部に設けられた支圧板に定着される。緊張力の導入方法としては,膨張材入りスリーブに係合されたテンションロッドを介して,緊張ジャッキにより緊張力を連続繊維補強材に与える。膨張材入りスリーブおよび膨張材入りスリーブの外面に装着されたロックナットが,連続繊維補強材の他端部(緊張端部)をコンクリート構造物の他端部に定着するための定着装置として用いられる。
連続繊維補強材によるポストテンション方式の定着方法の問題点としては,以下の通りである。
問題点1:膨張材入りスリーブに装着されたロックナットを介して,支圧板に緊張力を定着する方法では,プレストレスが導入されるコンクリート構造物の長さに制限が生ずる。一般的に連続繊維補強材の緊張時の緊張力は,保証破断荷重の70%以下とすることが設計で定められている。つまり連続繊維補強材の直径に関係なく,緊張時の連続繊維補強材の引張歪は11,000μ~12,000μとなる。たとえばコンクリート構造体の長さがL=10mとすると,緊張時の連続繊維補強材の伸び量ΔL=110~120mmなる。一方,膨張材入りスリーブの長さは平均300~450mmが一般的であり,膨張材入りスリーブは予め工場生産されるために装着位置が限定されて,定着時のハンドリングを考慮すると,コンクリート構造体の長さはせいぜい15~20m程度に制限される。
問題点2:一般的にロックナットが装着される膨張材入りスリーブの外径は,コンクリート構造物に緊張材を挿入するためにコンクリート構造物に形成されるシース管の直径よりも大きい。膨張材入りスリーブの支圧板側の端部は,支圧板よりも外側にある。そのためロックナットを支圧板に定着させたとき,膨張材入りスリーブがコンクリート構造物の端部から300~400mm突出する。膨張材入りスリーブを突出させないために緊張端部付近のシース管径を大きくして,そこに膨張材入りスリーブを収めることも可能であるが,施工管理が煩雑となる。従来のPC鋼ストランドの端部定着においてもアンカーヘッドがコンクリート構造物の端部から外向きに突出することがある。一般的には,コンクリート構造物の端部から定着装置が外向きに大きく突出することは望ましくはない。定着装置を保護するためのカバー装置も必要である。
問題点3:膨張材入りスリーブに充填される膨張材には一般にセメント系組成物が用いられ,水和反応によって膨張材は膨張する。そのため,温度管理および湿度管理といった品質管理が要求され,膨張材入りスリーブの製造は工場生産に限定される。たとえば橋梁では30~50mの規模のものが多く,橋梁を構成するコンクリート構造物に仮に長さに0.5%の誤差が発生した場合,150mm~250mmの長さの誤差が発生する。また,プレキャスト製品をジョイントする場合では,プレキャスト製品の製品精度は非常に高いが,現場作業であるために,ジョイント部に誤差が蓄積される可能性もある。このような,プレストレスを導入すべきコンクリート構造物の長さに誤差が発生した場合,緊張材の緊張端部を固定するための膨張材入りスリーブの位置を調整する必要が生じるが,工場においてあらかじめ膨張材入りスリーブが緊張材に固定(定着)されていると,現場における位置調整はできない。なお,従来のPC鋼ストランドでは,基本的にくさび定着であるために,緊張材の切断は現地作業で行い施工誤差の調整が可能であり,また,定着位置は任意の位置で可能であるために,上記のような問題は発生しない。
(3)緊張材の緊張後の緊張力解除による方法
上述したポストテンション方式によるプレストレス応力の導入方法は,プレストレストコンクリートの歴史に中で,永年にわたり実施されてきた施工方法である。
一方,プレテンション方式によるプレストレストコンクリート構造も多く製造されている。
ここで,従来のポストテンション方式とは,完全に一致していないが,部分的に,プレテンション方式と類似したプレストレスを導入する方式が考えられる。それは,従来ポストテンション方式と同様に,緊張材を挿通するためのシース管を予め設置した状態でコンクリート構造物を製作し,緊張材をシース管内に挿通して固定端部側の緊張材を端部に仮固定し,緊張端部側の緊張材を仮緊張し端部に仮固定することにより,プレストレスを導入する。この状態を維持し,シース管内にPCグラウトを充填と養生を行う。PCグラウトに所定の強度が発現したら,固定端部と緊張端部の仮固定状態を開放する。仮固定状態を開放するとは,具体的には固定端部と緊張端部の定着装置から緊張材を切断することである。つまり,緊張力のコンクリートへの定着は,緊張材とPCグラウトとの間に作用する付着せん断抵抗力に期待するものである。
問題点1:上記の方法によりプレストレスをコンクリート構造物に導入する前提として,緊張材の緊張力を解放することによって緊張材に発生する緊張反力を,緊張材とその周囲のPCグラウトとの間に発生する付着せん断抵抗力により,プレストレスとしてコンクリート構造物に確実に定着することができるかどうかの問題がある。
問題点2:通常,緊張された状態の固定端部近傍,および緊張端部近傍の緊張材を切断することによって,緊張材の緊張力が解放(リリース)される。緊張材は,緊張力が解放されると一気に緊張材の軸方向に収縮する。緊張材の軸方向の変形量は,固定端部近傍あるいは緊張端部近傍が一番大きく,中央部に近づくにつれて小さくなる。つまり,緊張力が解放された際にはコンクリート端部近傍の付着剥離応力が大きくなる。さらに緊張力の除荷時間が短時間(例えばレシプロソーなどによる切断の場合では,切断に60秒程度の時間で終了)であるために,付着衝撃応力が発生して,端部から次々と付着破壊するものと考えられる。結局,緊張力の除荷時間を実用的な施工方法で実施した場合ではコンクリート構造物中にプレストレスを導入することは不可能である。
(4)ポストテンション方式においてPC鋼ストランドと連続繊維補強材による相違と特徴
従来,緊張材としてPC鋼ストランドが多く適用されてきた。PC鋼ストランドの利点は,鋼製クサビとアンカーヘッドにより,直接,PC鋼ストランドの任意の位置を把持することである。つまり,緊張ジャッキとPC鋼ストランドの両者を結合して緊張力の導入を容易にすることがきる。また,鋼製クサビとアンカーヘッドを介して支圧板に定着することができるために,有効プレストレスが緊張端部近傍まで期待できる。
しかしながら,PC鋼ストランドの場合は,固定端部や緊張端部において,鋼製の定着装置が露出し,これら装置の防錆のための装置費用や維持管理費用がコスト増大の要因となっている。
一方,連続繊維補強材とは,素線の材質が炭素繊維,アラミド繊維,ガラス繊維などを用いた素線をロープ状に加工した補強材である。そのために,連続繊維補強材の横方向の剛性や強度が低く,従来のような鋼製クサビ定着は不可能である。
そのために,現状では,連続繊維補強材の定着は,スリーブと連続繊維補強材の隙間に膨張材を充填・養生により膨張材の膨張圧力を利用した定着方法が最も適用例が多く,実用的な方法として普及している。
その他に,連続繊維補強材の周囲に摩擦増強シートを巻き付けることにより補強をおこない,その外側に従来の鋼製クサビよりもクサビ角度の緩い鋼製クサビを適用した定着方法も適用されている。しかしながら,クサビ定着の位置を任意に選定することや,選定位置の移動が困難である,また,操作に長時間を要するなどの,多くの制限があり緊張端部に適用することは困難である。
この発明は,ポストテンション方式によりプレストレストコンクリート構造物を構築する際に,従来から適用されているポストテンション用の定着装置を使用することなく,従来とは異なる方法によって,コンクリート構造物に対して経済的かつ効率的にプレストレスを導入できるようにすることを目的とする。
この発明は,従来のポストテンション方式における定着装置のコスト低減を目指して,ポストテンション方式による従来の緊張応力導入方法とは異なる施工方法と,これを実現するための定着構造を提供するものである。
第1の発明による緊張材の定着構造は,両端部間をつなぐ挿通孔が形成されたコンクリート構造物,上記挿通孔内に挿入される中空のスリーブ,上記スリーブの中空内に挿入される緊張材,ならびに上記挿通孔内および上記スリーブ内に充填されるPCグラウトを備え,上記緊張材は,上記PCグラウトが充填される前に緊張され,かつ上記PCグラウトに所定の強度が発現した後に緊張が解放されたものであり,上記緊張材がポアソン効果によって径方向外向きに拡径しており,拡径した上記緊張材と上記スリーブとの間に充填されているPCグラウトに発生する圧縮応力によって,上記緊張材に上記スリーブが定着されていることを特徴とする。
第2の発明による緊張材の定着構造は,両端部近傍を除く範囲に上記両端部を結ぶ方向にのびるように形成される挿通孔,および上記両端部近傍のそれぞれに設けられ上記挿通孔につながる中空を備える一対のスリーブを備えるコンクリート構造物,上記スリーブの中空内に挿入される緊張材,ならびに上記挿通孔内および上記スリーブ内に充填されるPCグラウトを備え,上記緊張材は,上記PCグラウトが充填される前に緊張され,かつ上記PCグラウトに所定の強度が発現した後に緊張が解放されたものであり,上記緊張材がポアソン効果によって径方向外向きに拡径しており,拡径した上記緊張材と上記スリーブとの間に充填されているPCグラウトに発生する圧縮応力によって,上記緊張材に上記スリーブが定着されていることを特徴とする。
緊張材は,PC鋼棒(高強度鋼製の棒状体)であっても,PC鋼より線(複数本のPC鋼線を撚り合わせたもの)であっても,連続繊維補強材であってもよい。いずれにしても緊張材は長手方向に長い形状を備え,その両側に端部を備える。連続繊維補強材は,炭素繊維,アラミド繊維,ガラス繊維などの連続繊維を数万本束ね,これにエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂などの熱硬化性樹脂,またはポリカーボネート,ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂を含浸し硬化させたものである。複数本の連続繊維を束にし,複数本の連続繊維束を撚り合わせることによって連続繊維補強材を構成してもよい。
緊張材の一端部(固定端部)をコンクリート構造物に固定し,他端部(緊張端部)を外向きに緊張することによって,緊張材には緊張力が導入される。緊張材の固定端部には固定治具(固定装置)が取り付けられ,コンクリート構造物の一端部に固定される。緊張材の緊張端部には,緊張端部を強固に把持し,緊張力を導入するための緊張装置が装着される。
緊張材は,緊張力が解放されることで長手方向に収縮する(元の長さに戻ろうとする)とともに,径方向外向きに拡径する(ポアソン効果)。このポアソン効果による緊張材の径方向外向きの拡径,およびスリーブのリング方向に有する拘束リング剛性が寄与して,緊張材とその周囲のスリーブとの間に充填されたPCグラウトに圧縮応力が発生する。緊張材は,上記スリーブによって囲まれている範囲において強固にスリーブ内に拘束され,かつ定着される。緊張材が長手方向に収縮することで緊張材に生じる緊張反力は,緊張材にしっかりと定着しているスリーブに伝達される。スリーブに伝達された緊張力は,スリーブの外側にあるPCグラウト(第1の発明),あるいはスリーブの外側にあるコンクリート(第2の発明)との間に発生する付着せん断抵抗力を介してコンクリート構造物に伝達され,コンクリート構造物にプレストレス(緊張応力)が導入される。
第1,第2の発明によると,ポアソン効果によって緊張材に強固に定着されるスリーブを介してコンクリート構造物に十分なプレストレスが導入される。従来のポストテンション方式では,緊張力をコンクリート構造物に定着するするために,コンクリート構造物の両端部には,それぞれ大がかりな定着装置を残存する必要があった。すなわち,第1,第2の発明によると,従来のポストテンション方式では必要とされた,コンクリート構造物の両端部に設けられる高価な定着装置(固定治具)は必要ではなく,その維持管理費用が不要となる。
緊張材が連続繊維補強材の場合,緊張するコンクリート構造物の長さ制限がなくなる。緊張作業を終えた緊張材の緊張端部に膨張材入りスリーブを固定し続ける必要もない。
好ましくは上記コンクリート構造物にシース管が埋設され,上記シース管の中空が上記挿通孔として用いられる。第1の発明では,緊張材はコンクリート構造物に形成された挿通孔内に挿入されたスリーブの中空に通される。第2の発明では,緊張材はコンクリート構造物に形成された挿通孔および一対のスリーブの中空に通される。
一実施態様では,上記コンクリート構造物の両端部のうちの少なくともいずれか一方に上記スリーブと一体の支圧板が設けられている。緊張材の緊張が解放されることで緊張材が長手方向に収縮すると,緊張材に強固にと定着しているスリーブにもその力が伝わり,さらにスリーブと一体の支圧板が,コンクリート構造物の端部コンクリートに対して均等な圧縮応力として作用する。その結果として,コンクリート構造物端部においても,有効プレストレス応力の範囲が拡大される。
好ましくは,上記スリーブの内面および外面の少なくともいずれか一方に凹凸部が形成されている。凹凸部によってスリーブとPCグラウトあるいはコンクリートとの間に発生する付着せん断抵抗力の増大,あるいは支圧抵抗効果が発生することにより定着性能が向上する。
一実施態様では上記スリーブに上記PCグラウトを上記スリーブ内に充填するための充填孔および上記スリーブ内の空気を上記スリーブ外に排出するための空気排出孔が形成されている。これにより,スリーブ内に隙間なくPCグラウトを充填することができる。
好ましくは,上記挿通孔が上記コンクリート構造物の両端部近傍のうちの少なくとも一方において拡径されている。たとえば肉厚が厚く,外径の大きいスリーブを上記挿通孔の拡径部分に挿入することができる。肉厚の厚いスリーブを用いることによって,スリーブのリング方向に有する拘束リング剛性が向上するので,ポアソン効果が増大する。また外径の大きいスリーブを用いることによってスリーブの外面とその周囲のPCグラウトの付着せん断抵抗面積が大きくなるので,短い長さのスリーブでも十分な定着力を得ることができる。
なお,第2の発明による定着構造では,スリーブの肉厚を大きくすることができるのでスリーブ長を短くすることができる。
(1)ポストテンション方式施工の特徴
この発明による定着原理を説明する前に,この発明によるポストテンション方式と従来のポストテンション方式の施工手順における相違を説明する。
この発明に適用する緊張材料としては,従来のPC鋼ストランド(エポキシ樹脂被覆のPC鋼ストランドも含む)でも連続繊維補強材であっても,緊張材の材質には無関係に適用が可能である。従って,以降の説明では,両者を含めて「緊張材」と称する。
従来のポストテンション方式によるプレストレス導入の施工手順としては,対象となるコンクリート構造物の配筋やシース管等の設置を行い,コンクリート打設と養生を実施,シース管に緊張材を配置して,固定端部を定着した状態で,緊張端部において緊張ジャッキ等により緊張材を緊張した後に,緊張端部の緊張材を機械的に定着する。プレストレスが導入された状態で,シース管と緊張材の隙間にPCグラウトを充填,養生する。コンクリート構造物の両端部に定着装置が露出している場合には,定着装置の防錆処理をする。
これに対して,本発明によるポストテンション方式によるプレストレス導入の施工手順は,対象となるコンクリート構造物の配筋や挿通孔を形成するためのシース管等の設置を行い,コンクリート打設と養生を実施,挿通孔に緊張材を配置して,緊張材の一端部である固定端部を,定着装置を用いてコンクリート構造物の一端部に仮に定着する。緊張材の他端部である緊張端部においては緊張ジャッキ等を用いて緊張材を緊張し,緊張端部の緊張材を,定着装置を用いてコンクリート構造物の他端部に仮に定着する。ここで,固定端部および緊張端部の仮定着とは,定着装置を用いて緊張材の両端部を一時的にコンクリート構造物の両端部のそれぞれに定着することを意味するもので,プレストレストコンクリート構造物の両端部に定着装置を用いて緊張材の両端部を永久に定着しないことを意味している。緊張力を保持した状態で挿通孔と緊張材のあらゆる隙間にPCグラウトを充填,養生する。PCグラウトが所定の強度に達したことを確認した後に緊張力を解放する。その結果,コンクリート構造物にプレストレスが導入される。その後,仮緊張に用いられていた定着装置を撤去する。
以上が,従来のポストテンション方式と本発明によるポストテンション方式の相違である。本発明の場合では,PCグラウトの施工手順が従来方式と異なる。つまり,本発明によるプレストレスの導入原理は,従来の緊張端部及び固定端部における機械的な定着装置を必要としない。
(2)本発明による定着メカニズム
本発明による緊張材の定着メカニズムを簡単に言及する。緊張材に緊張力を与えると,緊張材の緊張方向には引張歪が発生し,緊張材の緊張方向の直角方向にはポアソン効果により圧縮歪が発生する。この緊張状態を維持して,スリーブと緊張材との隙間にPCグラウトを充填し,その後に養生すると,PCグラウトに所定の強度が発現する。PCグラウトに強度が発現した後,緊張材の緊張力を解放すると,緊張材に存在していた緊張直角方向の圧縮歪が解放され,スリーブ内に充填されているPCグラウトを側方に広げるポアソン現象が発生する。同時にスリーブのリング方向に有する拘束リング剛性が寄与して,結果として,PCグラウトには圧縮応力が発生する。つまり,緊張材に緊張力の導入と解放を与えることにより生ずる,ポアソン効果を活用することにより,緊張材はスリーブに有効に定着される。
(i)スリーブ単体で定着する場合
PCグラウトは緊張材とスリーブの隙間,およびスリーブとコンクリート構造物に形成された挿通孔(シース管)の隙間に充填される。緊張材の緊張力が解放されると,緊張力(緊張反力)が,スリーブの外周面に作用する付着せん断抵抗力と挿通孔の内周面に作用する付着せん断抵抗力によってコンクリート構造物に伝達される。その結果,コンクリート構造物にプレストレスが導入される。
ポアソン効果によって緊張材からスリーブに伝達された緊張力が,基本的にはスリーブの外周面に発生する付着せん断伝達応力によってコンクリート構造物に伝達される。スリーブの外周面積は緊張材の外周面積よりも大きいので,スリーブの外周とその周囲のPCグラウトやコンクリートとの間は,緊張材の外周面積に作用する付着せん断応力よりも,より小さな付着せん断応力によっても定着可能である。スリーブの表面形状(凹凸形状)を選択することにより,付着せん断抵抗応力の増大に加えて,コンクリートやPCグラウトとの間に生ずる摩擦に起因する支圧応力効果を用いることもでき,この場合にはより効率的に緊張力をコンクリート構造物に伝達することができる。
(ii)スリーブと支圧板で定着する場合
スリーブに支圧板が係合,あるいは一体となっている場合は,緊張力は,ポアソン効果によりスリーブと緊張材は一体となっているために,スリーブに伝達される。スリーブと構造的に一体となっている支圧板には,緊張力がコンクリート構造物の端部に支圧力として伝達されるので,コンクリート構造物の全長にわたって有効なプレストレスが導入される。スリーブ単体による定着と比較して,支圧板を有する方が,コンクリート構造物の端部領域まで有効なプレストレスを導入することできる。
(3)本発明によるPCグラウトの発生圧力(緊張材が連続繊維補強材の場合)
連続繊維補強材とスリーブの隙間のPCグラウトにおいて,ポアソン効果により圧縮応力が発生する原理を利用した連続繊維補強材とスリーブとが強固に定着される機構は,実務的に供用している膨張材入り充填スリーブの実績を例として検証することができる。そこで,素線の材質が炭素繊維の場合の連続繊維補強材を使用した事例により,膨張材に発生する圧縮応力を以下に計算する。
連続繊維補強材として炭素繊維を適用した,連続炭素繊維補強材を対象として具体的に膨張材に発生する圧縮応力を計算することにより,定着のメカニズムを検証する。例題の連続炭素繊維補強材(CFCCと称する)およびスリーブの形状や特性は以下の通りである。
1)連続炭素繊維補強材(CFCC)データ:
CFCCの直径:φ=17.2mm,CFCCの有効断面積:Acf=151.1mm,CFCCの弾性係数: Ecf=150kN/mm,CFCCの保証破断荷重:PU=385kN,CFCCのポアソン比:ν=0.06(島津製作所による強化プラスチックの試験データより)である。
2)スリーブのデータ:
スリーブの材質:STKM13A,スリーブの内半径:R=11.4mm,肉厚:t=4.5mm,スリーブの弾性係数:E=210kN/mm
緊張時において最大の緊張力はCFCCの保証破断荷重の70%以下と規定されている。CFCCの保証破断荷重時の引張歪をεuとすると,緊張時の引張歪はε=0.7εuとなる。従って,緊張時のCFCCの引張歪はε=0.7×εu =0.7×PU/(Acf×Ecf)=11,890μ (式1)となる。
CFCCの緊張を解除すると,ポアソン効果により緊張材の直径はポアソン比に比例して大きくなる。径方向外向きの拡径歪をεlpとするとεlp=ν×ε=713μとなる。従って,緊張解除のCFCCにおいてポアソン効果が発生し,その結果,拡径することによりスリーブ内の内半径Rが膨張する量をΔRとすると,ΔR=φ/2×εlp=6,132×10-6mm (式2)となる。
スリーブ内の内半径がΔRの長さで拡径すると,「薄肉リングに作用する内圧の理論解析」の理論解を適用すると,PCグラウトに発生する圧縮応力pは,p=ΔR×t×Es / R2=44.6 MPa (式3)の解を得ることができる。
PCグラウトの圧縮応力が上昇することと,PCグラウトを介してCFCCがスリーブに定着されることの関係を以下に説明する。定着の性能は,CFCCとスリーブとの間にあるPCグラウトのせん断応力と,両者の境界面に作用する摩擦力と付着力の能力で決定される。
まず,スリーブとCFCC緊張材との隙間にあるPCグラウトに発生するせん断応力については,圧縮応力状態であり,しかも薄層であるために,せん断破壊することは考えにくい。一方,PCグラウトの内側と外側の境界面に作用するせん断力に対しては,摩擦力と付着力の和で抵抗する。付着力は,主にPCグラウトや緊張材の表面状態に依存する。一方,本発明の場合は,摩擦力による抵抗が支配的となり,その主要因がポアソン効果により発生するPCグラウトの圧縮応力pとなる。摩擦抵抗応力は,摩擦係数と境界面に作用する圧力の積で表現できるために,PCグラウトの圧縮応力pが大きい方が摩擦抵抗応力は大きくなる。
(4)従来の膨張材充填スリーブの膨張材の発生圧力
従来の膨張材充填スリーブの場合は,本発明のようなポアソン効果を適用するものではない。しかし,最終的な定着メカニズムは,PCグラウトの代わりに,膨張する材料を配合して得られる膨張性充填材(膨張材セメント系組成物)を使用して,膨張材が水和反応する過程で膨張する膨張圧力を利用するものであり,結果として,定着装置として使用する際には,類似のメカニズムを適用している。
本発明の妥当性を評価する上でも,既に実用化されている,膨張材入り充填スリーブの発生圧力pを求める。つまり,本発明の場合と同じCFCC緊張材と膨張材入り充填スリーブの形状材質で,発生する膨張材圧力による圧縮応力pを試算する。
1)連続炭素繊維補強材(CFCC)データ:
CFCCの直径:φ=17.2mm,CFCCの有効断面積:Acf=151.1mm,CFCCの弾性係数: Ecf=150kN/mm,CFCCの保証破断荷重:PU=385kN,CFCCのポアソン比:ν=0.06
2)膨張性充填材料:膨張ひずみ:εe=600μ(管理された養生温度条件下の無拘束状態での膨張ひずみ)
3)膨張材入り充填スリーブのデータ:
スリーブの材質:STKM13A,スリーブの内半径:R=11.4mm,肉厚:t=4.5mm,スリーブの弾性係数:Es=210kN/mm
膨張性充填材料は,スリーブの内半径内に充填される。スリーブの中心部には直径φ17.2mmのCFCCがある。膨張性グラウトは,CFCC素線の間にも充填されるために,膨張材の膨張範囲は,スリーブの内半径内であると考える。その結果,スリーブ内の内半径Rが膨張する量を,ΔRとすると,ΔR=εe×R=6,840×10-6mmとなる。
スリーブ内の内半径がΔRの長さで拡径すると,「薄肉リングに作用する内圧の理論解析」の理論解を適用すると,膨張性グラウトに発生する圧縮応力pは,p=ΔR×t×Es / R2=49.7 MPaの解を得ることができる。
以上,本発明によるPCグラウトに発生する圧縮応力と,従来の膨張性スリーブ内の膨張性充填材料に発生する圧縮応力は,ほぼ同等であり,本発明による定着効果が理論的にも検証された。PCグラウトに発生する圧縮応力は10~120MPa程度が好ましい。下限値の10MPaは,PCグラウトと緊張材との摩擦係数は,緊張材の種類にも依存するが0.5程度は可能であると考える。その場合の摩擦力は,5N/mmとなる。PCグラウトの強度にも依存するが,PCグラウトと緊張材との付着力は5N/mm程度は期待できる。したがって,ポアソン効果による摩擦力を少なくても付着力と同等以上期待したいとのことから,下限値を10MPaとした。一方,上限値を120MPaとした理由は,スリーブ内のPCグラウトの圧縮強度の制限である。緊張材とスリーブとの間に充填されたPCグラウトの圧縮強度は,非常に薄いテストピースによる圧縮試験のグラウト圧縮強度よりは大きくなる。これらの条件を考慮して上限値を決めた。
この発明は,ポストテンション方式によるプレストレストコンクリート構造の製作方法も提供する。第1の方法よるプレストレストコンクリート構造の製作方法は,両端部間をつなぐ挿通孔が形成されたコンクリート構造物を用意し,上記コンクリート構造物の上記挿通孔内に一対のスリーブを挿入し,上記スリーブの中空に緊張材を挿入し,上記緊張材の一端部を固定し,上記緊張材の他端部を緊張し,上記緊張材を緊張させた状態で上記挿通孔内および上記スリーブ内にPCグラウトを充填し上記PCグラウトが所定の強度に達した後に上記緊張材の緊張を解放するものである。
第2の方法によるプレストレストコンクリート構造物の作製方法は,両端部近傍を除く範囲に上記両端部を結ぶ方向にのびるように形成される挿通孔,および上記両端部近傍のそれぞれに設けられ上記挿通孔につながる中空を備える一対のスリーブを備えるコンクリート構造物を用意し,上記スリーブの中空に緊張材を挿入し,上記緊張材の一端部を固定し,上記緊張材の他端部を緊張し,上記緊張材を緊張させた状態で上記挿通孔内および上記スリーブ内にPCグラウトを充填し,上記PCグラウトが所定の強度に達した後に上記緊張材の緊張を解放するものである。
(A)は緊張状態の緊張材を,その周囲のスリーブおよびスリーブ内に充填されたPCグラウトとともに示す拡大断面図を,(B)は緊張が解かれた状態の緊張材を,その周囲のスリーブおよびスリーブ内に充填されたPCグラウトとともに示す拡大断面図を,それぞれ示す。 コンクリート構造物にプレストレスを導入する様子を示す断面図である。 プレストレスが導入されたコンクリート構造物を示す断面図である。 コンクリート構造物にプレストレスを導入する様子を示す断面図である。 プレストレスが導入されたコンクリート構造物を示す断面図である。 他の実施例のプレストレスが導入されたコンクリート構造物を示す断面図である。 他の実施例のプレストレスが導入されたコンクリート構造物を示す断面図である。 さらに他の実施例のプレストレスが導入されたコンクリート構造物を示す断面図である。 さらに他の実施例のプレストレスが導入されたコンクリート構造物を示す断面図である。 緊張材を緊張する様子を示す断面図である。 他の実施例の緊張材を緊張する様子を示す断面図である。 実験供与体と緊張装置の設置状況を概略的に示す。 プレストレス有効率と無次元定着長の関係を示す。
図1(A)は緊張状態の緊張材を模式的に示すもので,緊張状態の緊張材を,その周囲のスリーブおよびスリーブ内に充填されたPCグラウトとともに示す拡大断面図である。図1(B)は緊張が解放された緊張材を,その周囲のスリーブおよびスリーブ内に充填されたPCグラウト,ならびにPCグラウトに生じている圧縮応力(両端矢印で示す)とともに模式的に示す拡大断面図である。
以下に詳述するように,コンクリート構造物にプレストレスを導入するためにコンクリート構造物内に緊張材が設けられる。緊張材の一端部(固定端部)を固定し,かつ他端部(緊張端部)を外向きに緊張することによって,緊張材は長手方向に緊張される。緊張材の定着(固定)装置および緊張装置の具体例は後述する。
図1(A)を参照して,緊張材1には,PC鋼棒(高強度鋼製の棒状体),PC鋼より線(複数本のPC鋼線を撚り合わせたもの),連続繊維補強材等が用いられる。連続繊維補強材は,たとえば1本の心線と,その周囲に撚り合わされた複数本,たとえば6本の側線とから構成され,心線および側線はいずれも熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含浸させかつ硬化させた多数本または数万本の長尺の連続する炭素繊維を断面円形に束ねることによって構成される。炭素繊維に代えてアラミド繊維やガラス繊維を用いてもよい。熱硬化性樹脂にはたとえばエポキシ樹脂,ビニルエステル樹脂等が用いられ,熱可塑性樹脂にはポリカーボネート,ポリ塩化ビニルが用いられる。
緊張材1を長手方向に緊張すると,緊張材1には長手方向(緊張方向)に引張歪が発生する。同時に,ポアソン効果によって緊張材1の緊張方向と直角方向に圧縮歪が発生する。圧縮歪によって緊張材1の直径は直径D(図1(A)に破線で示す)から直径D1(D>D1)に変化する(縮径する)。
スリーブ7は,典型的には鋼製の剛性の高い金属製のもので円筒形を持つ。上述した緊張材1は円筒形のスリーブ7の中空内に通される。緊張材1の緊張状態が保持され,スリーブ7内にPCグラウト15が充填される。スリーブ7と緊張材1の隙間にはPCグラウト15が隙間なく充填され,充填されたPCグラウト15によって緊張材1の外周面が覆われる。PCグラウト15を養生し,所定の強度が発現した後に緊張材1の緊張力が解放される。
図1(B)を参照して,緊張材1の緊張力が解放されると,緊張材1の弾性体挙動により緊張材1は長手方向に縮み(L1>L2),かつポアソン効果によって直径D2は緊張時の直径D1よりも大きくなる(D>D2>D1)。他方,スリーブ7の直径(内径)は変化しない。緊張材1の直径が大きくなる,すなわち拡径することで緊張材1とスリーブ7との隙間に充填されているPCグラウト15に圧縮応力18が発生する。圧縮応力18によって緊張材1とスリーブ7との間に大きな摩擦抵抗応力が発生し,緊張材1はスリーブ7に強固に定着される。
図2および図3はポストテンション方式によってコンクリート構造物にプレストレスを導入する様子を示す断面図である。
図2を参照して,コンクリート構造物2に円筒状の金属製またはポリエチレン製のシース管5が埋設されている。シース管5の中空はスリーブ7が通される挿通孔4として用いられる。シース管5には,例えばその内外周面に凹凸を有する金属製スパイラル・シース管やポリエチレン・シース管を用いることができる。
シース管5の挿通孔4に,例えば金属製などの剛性の高い円筒状のスリーブ7が通されている。スリーブ7の外径は挿通孔4(シース管5の内径)よりも小さい。シース管5とスリーブ7との間には横断面において環状の隙間が形成される。スリーブ7の内外周面にも凹凸(たとえばねじ切り)が形成されていてもよい。
円筒状のスリーブ7の中空6内にスリーブ7の内径よりも小さい直径を持つ緊張材1が通されている。緊張材1とスリーブ7の内周面との間にも横断面において環状の隙間が形成される。
コンクリート構造物2の一端部(図2において下端)から外に出る緊張材1の一端部(固定端部)は固定装置(定着装置)12を用いてコンクリート構造物2の一端部に定着(固定)され,緊張材1の他端部(緊張端部)が緊張装置(図示略)を用いて緊張される。上述したように,緊張材1にはその長手方向(緊張方向)に引張歪が発生し,緊張材1には長手方向に伸びが生じる。同時に緊張材1の緊張方向と直角方向には圧縮歪が発生し,緊張材1の直径が小さくなる。
緊張材1の緊張を保った状態においてシース管5内にPCグラウト15が充填される。スリーブ7の適当な位置に充填孔/排出孔7aがあけられており,シース管5内に充填されたPCグラウト15は充填孔/排出孔7aを通じてスリーブ7内にも充填される。図3を参照して,必要に応じてシース管5およびスリーブ7の開口端に漏洩防止シール8が設けられ,シース管5およびスリーブ7からのPCグラウト15の漏洩が防止される。
PCグラウト15を養生し,所定の強度が発現した後,緊張装置を用いた緊張材1の緊張力が解かれる。図3を参照して,緊張材1はコンクリート構造物2の両端部において切断により緊張力が解放される。図1(A),(B)を参照して説明したように,ポアソン効果によって緊張材1の直径が大きくなり,緊張材1とスリーブ7との隙間に充填されているPCグラウト15に圧縮応力が発生する。その結果,緊張材1はスリーブ7に強固に定着されて一体化される。
スリーブ7の外周面とPCグラウト15の定着は,PCグラウト15のスリーブ7に対する付着抵抗応力,換言するとスリーブ7の外周面とPCグラウト15の間の付着せん断伝達耐力によって実現される。スリーブ7の外周面とPCグラウト15の間の付着せん断伝達耐力を大きくするために,スリーブ7の外周面には好ましくはねじ切りや異形鉄筋のような凹凸を形成しておくのが好ましい。またスリーブ7の内周面にもねじ加工などの凹凸を形成しておくのが望ましい。
スリーブ7とPCグラウト15の間の付着せん断伝達耐力はスリーブ7の外周面とPCグラウト15の接触面積に比例する。スリーブ7の外周面とPCグラウト15の接触面積はスリーブ7の長さを長くすることによって増大する。スリーブ7とPCグラウト15の間の付着せん断伝達耐力はスリーブ7の長さによって設計的に決めることができる。
図4および図5は変形例を示すもので,図2および図3に示す構造とは,全体が円筒状であるスリーブ7に代えて,円筒状部分7bの緊張端部側の一端部の外周面に,円筒状部分7bが伸びる方向と垂直方向に広がる支圧板7cが一体的に設けられた支圧板付スリーブ7Aが用いられている点が異なる。支圧板7cはねじ接合によって円筒状部分7bと一体化してもよいし,全体を鋳物として製造してもよい。
上述したように,緊張材1の緊張力が解かれると緊張材1には弾性変形が生じ,長手方向に縮み,かつ径方向外向きに拡径する。緊張材1は支圧板付スリーブ7Aの円筒状部分7bとしっかりと一体化されているので,緊張材1に生じた弾性変形による緊張反力は支圧板付スリーブ7Aの円筒状部分7bに伝達される。そして円筒状部分7bの一端部に支圧板7cが一体に設けられているので,支圧板7cに作用する緊張反力はコンクリート構造物2に対して,支圧力として作用することになる。つまり,支圧板7cによってコンクリート構造物2にプレストレスを効率よく導入することができる。
支圧板7cの錆を防止するために支圧板7cの表面をコンクリートによって覆ってもよいし,支圧板7cの素材に錆が生じないステンレスを用いてもよい。
図6は,他の実施例のプレストレスが導入されたコンクリート構造物を示す断面図である。
図6は,図2および図3に示す構造とは,全体が円筒形であるスリーブ7に代えて,厚い肉厚の円筒状部分7dを備え,円筒状部分7dの外周面に複数の環状の凸部7eが長手方向に互いに間隔をあけて一体に形成されている肉厚スリーブ7Bが用いられている点が異なる。また,全体が円筒形であるシース管5に代えて,テーパ付シース管5Aが用いられている点も異なる。テーパ付シース管5Aは,肉厚スリーブ7Bが挿入される範囲の直径が大きく(ここを拡径部5aという),緊張材1のみが通される範囲の直径が小さく(ここを一般部5cという),拡径部5aと一般部5cとが絞りテーパ部5bによって連結されたものである。肉厚スリーブ7Bと緊張材1との間には,そこにPCグラウト15を十分に充填できるだけの隙間が確保される。
肉厚スリーブ7Bを用いることによって,ポアソン効果に起因して肉厚スリーブ7B内のPCグラウト15に生じる圧縮応力を十分に支えることができる。また,肉厚スリーブ7Bの環状凸部7eによって凹凸となる肉厚スリーブ7Bの外面とPCグラウト15の間の付着せん断伝達耐力を一層大きくすることができる。環状凸部7eの高さは,たとえば肉厚スリーブ7Bの肉厚と同程度とされる。環状凸部7eによって付着せん断伝達耐力を大きくすることができるので,肉厚スリーブ7Bはその長さを短くすることができる。
また,肉厚スリーブ7Bの端部の面積が大きく,さらにテーパ付シース管5Aは絞りテーパ部5bにおいて絞られているので,コンクリート構造物2に導入されるプレストレスのロスを少なくすることもできる。
肉厚スリーブ7Bの内半径がΔRの長さで拡径すると,「薄肉リングに作用する内圧の理論解析」の理論解を適用すると,肉厚スリーブ7B内に充填されているPCグラウト15に発生する圧縮応力pは式3で示される。
p=ΔR×t×E/R (式3)
ここでtは肉厚スリーブ7Bの肉厚である。Eは肉厚スリーブ7Bの弾性係数である。Rは肉厚スリーブ7Bの内径である。
式3から,PCグラウト15に発生する圧縮応力は肉厚スリーブ7Bの肉厚tに比例し,内径Rの二乗に反比例する。
図7に示すように,肉厚スリーブ7Bの一端部に支圧板7cを一体に設けてもよい。図4および図5に示す構造と同様に,コンクリート構造物2にプレストレスを効率よく導入することができる。
図8は,他の実施例のプレストレスが導入されたコンクリート構造物を示している。上述した実施例と異なり,肉厚スリーブ7Bはシース管5の内部には設けられていなく,コンクリート構造物2中に埋め込まれている。シース管5は肉厚スリーブ7Bと縦続に接続されている。
この実施例では,シース管5およびシース管5に接続された肉厚スリーブ7Bが一緒にコンクリート構造物2内に埋設され,肉厚スリーブ7Bの外面は直接にコンクリート構造物2に接する。肉厚スリーブ7B内およびシース管5内にPCグラウト15を気泡が生じないように充填するために,コンクリート構造物2には充填ホース9aおよび空気抜きホース9bも埋設される。充填ホース9aを通じて肉厚スリーブ7B内およびシース管5内にPCグラウト15が充填され,空気抜きホース9bから空気が排出される。
肉厚スリーブ7Bをシース管5内に挿入する必要がないので,肉厚スリーブ7Bの直径を大きくすることができる。緊張力(定着力)の伝達経路が単純であるために設計的な評価も容易となる。肉厚スリーブ7Bの直径および肉厚を自由に設計でき,肉厚スリーブ7Bの長さを短くすることもできる。シース管5と肉厚スリーブ7Bを同時に設置することができるので,施工が容易である。
図9に示すように,肉厚スリーブ7Bの一端部に支圧板7cを一体に設けてもよい。図4および図5に示す構造と同様に,コンクリート構造物2にプレストレスを効率よく導入することができる。
図10は緊張材を緊張する様子を示している。
はじめに型枠内にシース管5が設置される。シース管5が設置された型枠内にコンクリートが打設され,その後に養生されることによってシース管5が埋め込まれたコンクリート構造物22が作られる。
シース管5の両端部からシース管5内に支圧板付スリーブ7Aがそれぞれ通される。支圧板付スリーブ7Aは,上述したように円筒状部分7bおよび支圧板7cを一体に備えるもので,円筒状部分7bがシース管5内に挿入され,支圧板7cはシース管5の外に位置する。上述した型枠において,支圧板7cを配置するためのスペースがあらかじめ確保されている。
支圧板付スリーブ7Aの円筒状部分7b内に緊張材21が通される。緊張材21の両端部は型枠の両端面からそれぞれ外に出される。最終的に緊張材1の両端部のそれぞれを切断するためのスペースを確保するために,両端部の支圧板7cの外面にラムチェアー31,38がそれぞれ設けられる。ラムチェアー31,38はその中心に緊張材21が通る挿通孔を備え,ラムチェアー31,38の挿通孔のそれぞれから緊張材21の先端部分がそれぞれ外に出される。
図10の左側を参照して,固定端部側では,ラムチェアー38にアンカーヘッド39が設置される。アンカーヘッド39は緊張材の先端部分が通される挿通孔と,クサビ40が押し入れられるクサビ用テーパ形状の中空を持つ。ラムチェアー38から外に出ている緊張材21の先端部分は,アンカーヘッド39の挿通孔および中空を通り,アンカーヘッド39の外に出される。アンカーヘッド39の外に出ている緊張材21の先端部分に必要に応じて緩衝材41が巻き付けられ,その外側にクサビ40が被せられ,クサビ40によって覆われた緊張材21の先端部分がアンカーヘッド39の中空に押し入れられる。緊張材21の先端部分はアンカーヘッド39のクサビ用テーパ形状の中空内にしっかりと定着される。
図10の右側を参照して,第1のラムチェアー31から外に出ている緊張材21の先端部分に膨張材入り充填スリーブ34が設けられている。膨張材入り充填スリーブ34には膨張材が充填されており,膨張材の膨張圧によって膨張材入り充填スリーブ34が緊張材21の先端部分に強固に定着される。膨張材入り充填スリーブ34の外周面にはネジ溝が形成されており,このネジ溝を用いて膨張材入り充填スリーブ34にリングナット33が固定される。
リングナット33および膨張材入り充填スリーブ34を取り囲むように,第2のラムチェアー32が第1のラムチェアー31に重ねられる。第2のラムチェアー32は,その中心にテンションバー35が通る挿通孔を備えるもので,この第2のラムチェアー32の挿通孔にテンションバー35が通され,テンションバー35が第2のラムチェアー32の外に出される。
第2のラムチェアー32にセンターホール緊張ジャッキ36が設置される。センターホール緊張ジャッキ36が設置された後,テンションバー35が膨張材入り充填スリーブ34の内ネジに係合される。テンションバー35はセンターホール緊張ジャッキ36を通過し,クサビ42およびアンカーヘッド43によってセンターホール緊張ジャッキ36のラムの先端に定着される。センターホール緊張ジャッキ36を動作させて緊張材21を緊張すると,センターホール緊張ジャッキ36のラムは,第2のラムチェアー32から離れる向きに移動する。センターホール緊張ジャッキ36はテンションバー35によって上述した膨張材入り充填スリーブ34に接続されており,テンションバー35を介して膨張材入り充填スリーブ34も第1のラムチェアー31から離れる向きに移動する。所定の緊張力が緊張材21に作用したところで,膨張材入り充填スリーブ34の外周面のリングナット33が締め付けロックされる。リングナット33が締め付けロックされることで緊張材21に作用する緊張力が,コンクリート構造物22に保持される。リングナット33を締め付けた後は,センターホール緊張ジャッキ36の動作を停止させ,センターホール緊張ジャッキ36,テンションバー35および第2のラムチェアー32は撤去される。撤去されたセンターホール緊張ジャッキ36,テンションバー35および第2のラムチェアー32は別の位置において,緊張材21の緊張に転用することができる。
緊張材21の緊張力を保持させた状態で,シース管5内にPCグラウトが充填される。PCグラウトによって,シース管5と緊張材21の隙間,シース管5と支圧板付スリーブ7Aの隙間,支圧板付スリーブ7Aと緊張材21の隙間が完全に埋め尽くされる。PCグラウトを養生し,所定の強度が発生した後,第1のラムチェアー31内,及びラムチェアー38内において緊張材21が切断され,これによって緊張材21の緊張力が解放される。その結果,コンクリート構造物22にプレストレスが導入される。
図11も,緊張材を緊張する様子を示している。上述した図10の態様ではコンクリート構造物2の両端部間のほぼ全長にわたってシース管5が埋設されており,支圧板付スリーブ7Aの円筒状部分7bがシース管5内に設けられているのに対し,図11に示す態様では支圧板付の肉厚スリーブ7Bがシース管5とともにコンクリート構造物2中に埋設されている点が異なる。
図11の態様では,シース管5と,シース管5の両端部にそれぞれ接合された一対の支圧板付の肉厚スリーブ7Bとが型枠内に設置される。シース管5および一対の肉厚スリーブ7Bが設置された型枠内にコンクリートが打設され,これによってシース管5および一対の肉厚スリーブ7Bがコンクリート構造物22中に埋め込まれる。
緊張材21の緊張およびその解放は図10を参照して説明したものと同じである。
既存技術の課題と本発明の比較
PC鋼ストランドによる定着方法の場合
PC鋼ストランドを適用してポストテンション方式により,緊張端部の定着を実施する際,従来の方法では,以下のような問題があり,本発明による解決方法を以下に示す。
(1)PC鋼ストランドを緊張材として使用して,ポストテンション方式によりコンクリート構造物に緊張力を導入するためには,固定端部や緊張端部において鋼製クサビやアンカーヘッドなどの精密加工や鋼材の焼き入れ等の加工が必要であり,高価となる。これら高価な定着装置は,コンクリート構造物中に装備され,すべての固定端部や緊張端部に必要とされるために,定着装置の必要個数が多くなる。
これに対して,本発明による定着装置は,クサビ定着を適用していないのでクサビやアンカーヘッドなどの装置が必要ない。スリーブ外側の凹凸加工についても,例えば異形鉄筋を適用して内部に中空の中グリ加工程度で済む。また,量産を考えるときは,鋳物加工することにより安価に生産することも可能である。
また,仮緊張,仮定着で使用するクサビやアンカーヘッドなどは,全て転用可能な装置であり,構造物中に装着されるものではないために,経済的である。
(2)従来の定着装置は,鋼製であり,端部に突出していることが多いために,オイルシールなどの防錆装置を設けることが要求される。防錆装置としては,防錆オイルシールを適用することが多く,防錆オイルの維持管理が必要である。
これに対して,本発明の場合の防錆に必要な部分は,支圧板を設けた場合である。支圧板の設置位置に箱抜き部を設けて,定着後に被りコンクリートで被覆する方法が採用できる。また,支圧板がない場合は,スリーブの材質をステンレス製とすることも可能である。これはクサビとアンカーヘッドによる機械的な定着装置ではないために,ステンレス材料を使用することが可能となる。
連続繊維補強材による定着方法の場合
(1)連続繊維補強材を緊張材として適用するポストテンション方式の定着装置は,緊張するコンクリート構造物の長さに制限が発生する。その主な理由は,緊張端部の定着では,膨張材入りスリーブをロックナットにより定着を行うため,予め膨張材入りスリーブを工場製作する必要がある。つまり,膨張材入りスリーブの固定位置は緊張時に移動できない制約があるために,緊張力により発生する緊張材の伸び量を考慮すると,コンクリート部材長がせいぜい10~20m程度に制限される。
これに対して,本発明によれば,仮緊張に際して,緊張端部において膨張材入りスリーブとリングナットの組合せを適用した場合でも,これらの装置は仮緊張のための装置であるために,膨張材入りスリーブが緊張端部に残存するものではなく,またコンクリート部材長が長くなっても,膨張材入りスリーブとリングナットの盛替えを,緊張材端部の外側で交互に行うことにより,部材長の制限が解除される。
(2)従来の緊張端部の定着装置は,比較的長い膨張材入りスリーブであるために,リングナットの位置を調整したとしても,コンクリート構造物の緊張端部から膨張材入りスリーブが100mm~200mm程度外側に突出することとなる。そのために,膨張材入りスリーブの突出部の保護のために防錆・保護のプロテクターが必要となる。また,その維持管理費用も必要となる。
これに対して,本発明の場合では,仮緊張作業で膨張材入りスリーブとリングナットの組合せを適用した場合でも,これらの装置は仮緊張のための装置であるために,膨張材入りスリーブが緊張端部に残存するものではない。また,本発明の定着装置をコンクリート構造物の内部に収納するように,コンクリート構造物端部において,予め箱抜きを設けて,緊張施工終了後に箱抜き部のコンクリート打設を行い,定着装置に被りコンクリートを設けることが可能である。
(3)従来,連続繊維補強材の緊張端部の定着方法としては,膨張材入りスリーブによる定着方法が唯一の方法である。膨張材入りスリーブは,セメント系組成物の膨張材料をスリーブ内に充填して水和反応時の膨張量を制御することにより連続繊維補強材の周囲に発生する膨張圧力を利用して,定着する機構である。膨張材の品質制御には温度,湿度管理などの品質管理が必要であり,工場生産に限定される。
一方,緊張対象のコンクリート構造物としては,例えば橋梁では30m~50mの規模の長さとなる。現場施工においては,コンクリート長の誤差は発生することを前提とする必要があり,またプレキャスト製品をジョイントする場合ではジョイント部の誤差も発生する。このような誤差に対して,工場生産による膨張材入りスリーブでは,現場での誤差の吸収が困難となる。
これに対して,本発明の場合では,仮緊張に膨張材入りスリーブを使用しても,現場において長さ調整が可能であるために,仮緊張や仮固定が可能である。一方,本発明のスリーブの設置位置は,現場施工により発生すると考えられるコンクリート長の誤差には無関係に,常にコンクリート構造物の固定端部と緊張端部に設置することが可能である。
実大実験による理論検証
本発明の定着構造の性能を証明するために,実物大の緊張材,定着装置,スリーブ,PCグラウト,及びコンクリート供試体を適用して,実際のプレストレストコンクリート構造物の施工と同じ緊張力レベルによる緊張力を導入して,本発明の施工方法に従って緊張力を解除する実大実験を実施した。以下は,その実験結果から,本発明の定着性能と定着メカニズムの妥当性を検証する。
(1)実験に使用した材料
(i)緊張材:連続繊維補強材の一種で,炭素繊維補強ケーブル(Carbon Fiber Composite Cable)略称CFCCで,以降CFCCと称する。緊張材の直径:CFCCφ=17.2mm,有効断面積:Acf=151.1mm,保証破断荷重:P=385.0kN,弾性係数:Ecf=150kN/mm2,ポアソン比:λ=0.06
(ii)コンクリート圧縮強度:σ=64.0N/mm2(7日),コンクリート弾性係数:Ec=42.6kN/mm2(7日),スランプ:SL=12cm,空気量:Air=4.9%
(iii)緊張時PCグラウト圧縮強度:σ=77.0N/mm2,PCグラウト弾性係数:E=7.7kN/mm2
(iv)スリーブ:材質 STKM 13A S45C,スリーブ弾性係数:E=210kN/mm2,内半径:R=11.5mm,外径=M33ねじ切り,肉厚:t=4.5mm,充填孔と空気排出孔あり
(v)シース管;ポリエチレン・シース管 外径φ44mm,内径φ38mm
(vi)支圧板形状:32×220×210mm
(2)実験供試体の形状寸法とセットアップ
図12は実験供試体と緊張時の緊張装置の設定状況を示している。コンクリート供試体の寸法は,220mm(高さ)×210mm(幅)×2500mm(長さ)である。コンクリート供試体の左右対称位置にコンクリートゲージが片側8枚ずつ貼り付けられ,緊張時から緊張力開放時,緊張の解放以降におけるコンクリート歪がコンクリートゲージによって測定される。固定端部および緊張端部にはそれぞれ支圧板が設置されている。固定端部ではクサビスリーブによって緊張材(CFCC)が定着される。緊張端部ではラムチェアーを介してジャッキによってCFCCに緊張力が与えられる。緊張荷重はロードセルによって測定され,ロードセルの測定値に基づいてジャッキによる緊張力が制御される。
(3)実験要因の組合せ
表1は,実験に用いた4種類の供試体の定着方法およびスリーブの長さLを示している。Case1はスリーブのみを用いた定着方法,Case2およびCase3は支圧板とスリーブの両方を用いた定着方法,Case4はスリーブおよび支圧板のいずれも設けることなく,緊張材とPCグラウトとの付着せん断抵抗のみに期待するケースである。支圧板とスリーブを組み合わせたcase2および3では両者をネジ接合させて一体化した。Case1およびCase2とCase3とではスリーブの長さを変化させており,それぞれ緊張材の直径φの30倍,50倍とした。
Figure 2023155566000002
(4)実験の方法
シース管と支圧板をセットした状態で,コンクリート供試体を製作し,所定のコンクリート強度に達したらスリーブと緊張材をセットする。緊張力としては緊張材の保証破断荷重Pの70%を与え,その制御はジャッキ先端に設けたロードセルにより行う。緊張時のコンクリート供試体に発生するプレストレス応力はσ=0.7×385×106/(210×220)=5.83N/mm2とする。この時のコンクリートに発生するプレストレスによる歪をεp1とすると,εp1=σ/Ecf=5.83/(42.6×103)=137μとなる。緊張力を保持した状態で,緊張材とシース管やスリーブとの隙間にPCグラウトを充填し,養生する。3日間のPCグラウトの養生後,PCグラウトの圧縮強度はσ=77.0N/mm2となった。その後に緊張力を解放する。緊張力の開放方法は,緊張端部をレシプロソーにより切断する方法を採用した。なお,いずれのcaseにおいても切断時間は60秒程度であった。また,コンクリートの乾燥収縮は時間変化するために,φ100×200mmのコンクリート・テストピースにひずみゲージ貼り付けで,実験の都度,乾燥収縮ひずみを測定し,コンクリート試供体の測定ひずみの補正を行った。
(5)実験結果の評価方法
本発明を検証する上で,実験結果の評価方法として,以下の項目が重要である。つまり,緊張力を解放した後にコンクリート構造物中に残存するプレストレス応力がどのような分布するか,つまり緊張力がコンクリート中に十分に定着されているかを明確にすることである。プレストレスの有効率は,緊張直後のコンクリート・プレストレス応力とひずみをそれぞれσp1,εp1,緊張力開放後のコンクリート・プレストレス応力とひずみをそれぞれσp2,εp2とすると,プレストレス有効率PE=σp2p1×100=εp2p1×100(%)となる。例えば,PE=100%は緊張時のコンクリート・プレストレス応力が緊張開放後においても100%維持されていることを示す。有効率PEはコンクリートの位置に依存して変化するので,緊張端部近傍からコンクリート供試体中央部付近までの範囲における有効率分布から本発明による定着性能を判断することができる。
図13はプレストレス有効率PE(%)(縦軸)と無次元定着長X/φ(横軸)との関係を示している。プレストレス有効率PEの算定は,プレストレス導入直後のコンクリート・プレストレスひずみεp2に対する緊張力開放7日後のコンクリート・プレストレスひずみεp1の測定値から求めた。なお,供試体のコンクリートの収縮ひずみについては,コンクリート・テストピースから得られた乾燥収縮のひずみのデータを用いて修正している。無次元定着長X/φは,緊張端部を原点として供試体軸方向の座標をXとし,緊張材の直径φにより除して無次元化した。
図13を参照すると,case1~case3については,所定の定着性能を示しているのものと考えられる。すべての供試体で共通する項目はコンクリート,PCグラウト,緊張力,緊張力開放の方法(切断時間が約60秒)などである。case1の場合,X/φ=10付近では有効率PEが小さいが,X/φ=55近傍では有効率PEは100%となっている。一方,支圧板とスリーブの両方を用いてcase2およびcase3では,X/φ=10付近では有効率PE=30%となっている。case3の場合,X/φ=55近傍では有効率PEは100%となった。case2の場合,X/φ=65近傍において有効率PEは100%となった。スリーブおよび支圧板の両方を用いていないcase4については,スリーブなしで緊張後にPCグラウトを充填し,緊張力開放する従来の方法である。その結果,明らかにX/φ=90以上の区間においても有効率PEは30%弱の状態である。つまり,PCグラウトのみで定着することは困難であると判断できる。以上の実験結果の比較により,本発明による定着構造と,一連のプレストレス導入方法が有効であることが証明された。
参考までに,供試体名称case1~case3において適用したスリーブにおいて,明細書の上述した式(3)により計算されるスリーブ内のPCグラウトにおいて発生する圧縮応力pは44.6MPaであった。
1,21 緊張材
2,22 コンクリート構造物
4 挿通孔
5 シース管
5A テーパ付シース管
7 スリーブ
7A 支圧板付スリーブ
7B 肉厚スリーブ
7c 支圧板
7e 凸部
15 PCグラウト

Claims (11)

  1. 両端部間をつなぐ挿通孔が形成されたコンクリート構造物,
    上記挿通孔内に挿入される中空のスリーブ,
    上記スリーブの中空内に挿入される緊張材,ならびに
    上記挿通孔内および上記スリーブ内に充填されるPCグラウトを備え,
    上記緊張材は,上記PCグラウトが充填される前に緊張され,かつ上記PCグラウトに所定の強度が発現した後に緊張が解放されたものであり,
    上記緊張材がポアソン効果によって径方向外向きに拡径しており,拡径した上記緊張材と上記スリーブとの間に充填されているPCグラウトに発生する圧縮応力によって,上記緊張材に上記スリーブが定着されていることを特徴とする,
    緊張材の定着構造。
  2. 両端部近傍を除く範囲に上記両端部を結ぶ方向にのびるように形成される挿通孔,および上記両端部近傍のそれぞれに設けられ上記挿通孔につながる中空を備える一対のスリーブを備えるコンクリート構造物,
    上記スリーブの中空内に挿入される緊張材,ならびに
    上記挿通孔内および上記スリーブ内に充填されるPCグラウトを備え,
    上記緊張材は,上記PCグラウトが充填される前に緊張され,かつ上記PCグラウトに所定の強度が発現した後に緊張が解放されたものであり,
    上記緊張材がポアソン効果によって径方向外向きに拡径しており,拡径した上記緊張材と上記スリーブとの間に充填されているPCグラウトに発生する圧縮応力によって,上記緊張材に上記スリーブが定着されていることを特徴とする,
    緊張材の定着構造。
  3. 上記コンクリート構造物にシース管が埋設されており,
    上記シース管の中空が上記挿通孔として用いられる,
    請求項1または2に記載の緊張材の定着構造。
  4. 上記コンクリート構造物の両端部のうちの少なくともいずれか一方に上記スリーブと一体の支圧板が設けられている,
    請求項1または2に記載の緊張材の定着構造。
  5. 上記スリーブが上記コンクリート構造物の両端部のうちの少なくともいずれか一方の端部近傍に設けられている,
    請求項1に記載の緊張材の定着構造。
  6. 上記スリーブの内面および外面の少なくともいずれか一方に凹凸部が形成されている,
    請求項1または2に記載の緊張材の定着構造。
  7. 上記スリーブに上記PCグラウトを上記スリーブ内に充填するための充填孔および上記スリーブ内の空気を上記スリーブ外に排出するための空気排出孔が形成されている,
    請求項1または2に記載の緊張材の定着構造。
  8. 上記挿通孔が上記コンクリート構造物の両端部近傍のうちの少なくとも一方において拡径されている,
    請求項1に記載の緊張材の定着構造。
  9. 上記緊張材の直径をφ,ポアソン比をν,保証破断荷重時(引張荷重時)の引張歪をεu,上記スリーブの内半径をR,肉厚をt,弾性係数をEとした場合に,以下の式(1)によって算出される上記PCグラウトに発生する圧縮応力pが10MPaから120MPaである,
    請求項1または2に記載の緊張材の定着構造。
    p=φ/2×ν×(0.7×εu)×(t×E)/R2・・・(1)
  10. ポストテンション方式によるプレストレストコンクリート構造の製作方法であって,
    両端部間をつなぐ挿通孔が形成されたコンクリート構造物を用意し,
    上記コンクリート構造物の上記挿通孔内にスリーブを挿入し,
    上記スリーブの中空に緊張材を挿入し,
    上記緊張材の一端部を固定し,
    上記緊張材の他端部を緊張し,
    上記緊張材を緊張させた状態で上記挿通孔内および上記スリーブ内にPCグラウトを充填し,
    上記PCグラウトが所定の強度に達した後に上記緊張材の緊張を解放する,
    プレストレストコンクリート構造物の製作方法。
  11. ポストテンション方式によるプレストレストコンクリート構造の製作方法であって,
    両端部近傍を除く範囲に上記両端部を結ぶ方向にのびるように形成される挿通孔,および上記両端部近傍のそれぞれに設けられ上記挿通孔につながる中空を備える一対のスリーブを備えるコンクリート構造物を用意し,
    上記スリーブの中空に緊張材を挿入し,
    上記緊張材の一端部を固定し,
    上記緊張材の他端部を緊張し,
    上記緊張材を緊張させた状態で上記挿通孔内および上記スリーブ内にPCグラウトを充填し,
    上記PCグラウトが所定の強度に達した後に上記緊張材の緊張を解放する,
    プレストレストコンクリート構造物の製作方法。
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