JP2023153459A - 浴槽 - Google Patents

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Teppei Onishi
三田村 宏
Hiroshi Mitamura
栄嗣 澤田
Eiji Sawada
直樹 仲田
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Abstract

【課題】フランジ部において、水はけを促すことができ、かつ、フランジ部と浴室壁との隙間を可能な限り狭くすることができる浴槽を提供する。【解決手段】浴槽1のフランジ部1bは、側面部の近傍において、浴槽部1aの外側から内側に向って、浴槽部1a深さ方向に傾斜しており、傾斜による高低差が3ミリメートル以内の面である第一傾斜面1eと、第一傾斜面1eよりも傾斜の度合いが急であって、第一傾斜面1eの先に連接されると共に浴槽部1aに繋がっている第二傾斜面1fとを有している。【選択図】図8

Description

本発明は、浴槽に関するものである。
従来、浴室内に設置される浴槽は、浴室の大きさなどに応じて複数のサイズのものが製造されていた。また、浴槽が浴室内の浴槽設置スペースより小さい場合は、浴槽と浴室内壁面との間にカウンターやスペーサを設け、寸法調節を行うということも行われていた。
例えば、バスルームの大きさに対応して、長さ寸法・幅寸法が設定できるプラスチック浴槽が提案されているが、切断基準用リブがフランジ部の裏面に必要であり、自在にサイズを変更することが出来なかった(特許文献1)。
また、浴室ユニット内に設置される浴槽を、切断加工可能な合成樹脂材で形成し、その浴槽部の上部周縁に一体形成されるフランジ部を、浴槽の長手方向において延出されたものとし、該フランジ部が浴槽側のカウンターとなされると共に、狭小な浴槽設置部に対しては、該フランジ部を切除することにより、浴室内壁面との寸法調節がなされるようにしたことを特徴とする浴槽の取付構造が提案されているが、エプロンや浴室壁などの周辺部材との具体的な固定方法が記されていない(特許文献3)。
特許文献4では、浴槽のフランジ部の裏面にボス部を形成させ、インサートナットを打ち込むことで、エプロンをボルトで締結する手法が、従来の取付構造として明記されているが、インサートナットを打ち込む際のクラック発生やインサートナットの抜けやすさが課題として挙げられている。
これらの課題を解決するため、浴槽のフランジ部の裏面に予め固定金具を接着固定させる手法が提案されているが、本手法では固定金具の作製および接着作業が必要となるため、製造効率が悪いという課題があった。
また特許文献2では、シートモールディングコンパウンド(SMC)をプレス成形する際に、ボルト、ナット等の接合用金具を予め金型内にセットすることにより、FRP成形品の裏面のフランジやリブに該接合金具をインサート成形する手法が提案されているが、SMC材料が接合用金具側に漏れ出して仕上げ加工が必要となり、製造効率を著しく悪化させる場合がある。
特許文献5では、第一壁載置部を有する浴室床パンまたは浴槽の少なくとも周縁のうち少なくとも一辺を所定の寸法に切断し、切断部分に3Dプリンターを用いた三次元造形により樹脂の第二壁載置部を形成する方法が提案されているが、該樹脂として、熱可塑性樹脂を用いた場合は部材強度が不十分となり、熱硬化樹脂を用いた場合には接合強度が不十分となる可能性がある。また、浴槽床パンや浴槽に対応した3Dプリンターを準備するには過大な設備投資が必要となる。
また特許文献5では、浴室壁を垂直に立てるため、壁載置部を水平とする必要があり、特に浴槽の場合には、浴槽の上部周縁に水たまりが残り易いという問題もある。
以上のとおり、従来、浴室の大きさに対応させるためには、複数サイズの浴槽を準備しなくてはならず、そのためには、高価な製造用金型を複数用意する必要があった。したがって、設備投資費が嵩み、製品単価の上昇を招くと共に、その金型は大きいため、設置や保管にも広いスペースを要するという問題点があった。
また、浴室の大きさなどに応じて複数のサイズの浴槽を製造したり、また、浴槽が浴室内の設置スペースより小さい場合は、浴槽と浴室壁との間にカウンターやスペーサを設けて寸法調節を行う必要があり、コストの上昇を招くと共に、その施工性が悪いという課題があった。さらに、このカウンターやスペーサは、サイズ調整だけではなく、人が腰掛けたりするなど相当の加重が掛かることが想定されるため、十分な強度を有する必要があり、設計や施工を難しくする場合があった。
実開昭61-163586号公報 実開平3-105530号公報 特開2002-282160号公報 特許第3104057号公報 特許第6650623号公報
一般的に、浴槽フランジは、水はけを促すために、浴槽の深さ方向に向かって傾斜している。上記特許文献1に記載されているとおり、バスルームの広さに合わせてフランジが切断された場合、フランジの上に浴室壁が取り付けられるところ、浴室壁の水平な下端面と、傾斜したフランジの上面との間に隙間が生じるため、隙間を埋める必要がある。隙間が広すぎた場合、別の部材で隙間を埋める必要があり、煩雑である。一方で、隙間を狭くするために、フランジの傾斜を水平にすると、水が滞留してはけなくなる。
本発明は、この様な実情に鑑みて提案されたものである。本発明は、フランジ部において、水はけを促すことができ、かつ、フランジ部と、このフランジ部の上に取り付けられる浴室壁との隙間を可能な限り狭くすることができる浴槽の提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る浴槽は、上端に、外側から内側に向って深さ方向に傾斜したフランジ部を有する浴槽であって、前記フランジ部のうち、浴室の広さに合わせて切断される任意の位置が、傾斜による高低差が3ミリメートル以内の面である第一傾斜面にある、ことを特徴とする。
本発明に係る浴槽は、水平に対する前記前記第一傾斜面の角度が、0.1~15度である、ことを特徴とする。
本発明に係る浴槽は、前記第一傾斜面の先に、前記第一傾斜面よりも傾斜の度合いが急な第二傾斜面が連接された、ことを特徴とする。
本発明に係る浴槽は、上端に、外側から内側に向って深さ方向に傾斜したフランジ部を有し、フランジ部のうち、浴室の広さに合わせて切断される任意の位置が、傾斜による高低差が3ミリメートル以内の面である第一傾斜面にある。すなわち、フランジ部は、浴室の広さに合わせて切断されることから、大きさの異なる浴室毎に浴槽やその金型を用意する必要がない。また、フランジ部の傾斜による高低差が3ミリメートル以内であれば、水はけが促されるうえ、フランジ部と、このフランジ部の上に取り付けられる浴室壁との隙間が、過度に広くならない。隙間は、例えば、シリコン等が充填されて均されることで適切に埋められ、止水される。したがって、フランジ部における良好な水はけと、狭小で目地処理しやすい隙間とを両立させることができる。
本発明に係る浴槽は、水平に対する前記第一傾斜面の角度が、0.1~15度である。したがって、フランジ部における良好な水はけと、狭小で目地処理しやすい隙間とを両立させることができる。
本発明に係る浴槽は、第一傾斜面の先に、第一傾斜面よりも傾斜の度合いが急な第二傾斜面が連接されている。すなわち、傾斜が急な第二傾斜面によって、更に良好な水はけが実現する。
図1は、本発明の実施形態に係る浴槽の簡略上面図である。 図2は、本発明の実施形態に係る浴槽の簡略裏面図である。 図3は、本発明の実施形態に係る浴槽に浴室壁を取り付けるための取付構造の第一例が示された簡略断面図である。 図4は、本発明の実施形態に係る浴槽に浴室壁を取り付けるための取付構造の第二例が示された簡略断面図である。 図5は、本発明の実施形態に係る浴槽に浴室壁を取り付けるための取付構造の第三例が示された簡略断面図である。 図6は、本発明の実施形態に係る浴槽の実施例1,2および比較例1でセルフタッピング適性を評価した固定部の断面図である。 図7は、本発明の実施形態に係る浴槽のフランジ部の裏面に配置できるリブの簡略裏面図と簡略断面図である。 図8は、本発明の実施形態に係る浴槽のフランジ部の断面図である。
本発明者等は、浴室(図示省略)内に設置される浴槽1を、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)で形成し、その浴槽本体としての浴槽部1aの上部周縁に一体形成されるフランジ部1bを、浴槽の長手方向および短手の奥手方向において延出されたものとし、該フランジ部1bが浴槽側のカウンターとなされると共に、狭小な浴槽設置部に対しては、該フランジ部1bを切除することにより、浴室壁Pとの寸法調節がなされるようにし、且つ、該フランジ部1bの裏面に浴室壁Pを固定するための固定部としてのボス部2を同時成形により備えることで、浴槽ユニットの大きさに対応して、浴槽1のサイズを狭小側に自在に調整でき、且つ、浴室壁Pを容易に固定できることを見出し、浴槽1を完成するに至った。
これにより、浴室の大きさに対応して、浴槽1のサイズを狭小側には自在に調整でき、且つ、浴室壁を簡易に固定できる樹脂浴槽1、および、その取付構造を提供することができる。さらに、浴槽1の取付構造であれば、浴槽1上部の周縁部から浴槽内部に向かって勾配を付けることが可能となり、浴室の使用中や使用後の水残りを抑制することができる。
以下、本発明の実施形態を図示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1は、本実施形態の取付構造に用いられる浴槽1の簡略上面図である。図示したように、この浴槽1は、浴槽部1aの上部周縁に一体形成されるフランジ部1bを、その長手方向(図1において左右方向)および短手の奥方向(図1において上方向)に大きく延出するように形成し、その前側のどちらか左右一方に、ワンプッシュ水栓ボタン用の取付孔1cを設けたものである。なお、図1において符号1dは、浴槽部1aの底面に設けられた排水口を示す。
また図1の点線は、フランジ部1bにおける、短辺方向および長辺方向の切断位置の例示であり、切断位置は適宜調整することができる。これらの切断方法は、特に限定されず、ノコギリ刃、丸鋸、エンドミル刃、レーザー加工、ウォータージェット加工などを用いて切断することができる。
また本実施形態の浴槽1において、ワンプッシュ水栓ボタン用の取付孔1c、排水口1dおよび給湯孔(図示なし)の加工方法は、特に限定されないが、ホールソーやエンドミルなどを用いて開口する方法が挙げられる。
図2は、本実施形態の取付構造に用いられる浴槽1の簡略裏面図である。図示したように、フランジ部1bの裏面には、本実施形態のボス部2を複数設けることができる。また、該リブ部2ならびにフランジ部1bを補強するために複数個所に補強リブ2aを設けることが好ましい。
浴槽部1aとフランジ部1bとボス部2を同時成形する際、成形方法は特に限定されないが、ボス部2はフランジ部1bより凸状に突出しているため、エア溜まりによる欠陥が発生し易いため、補強リブ2aは、ボス部2と接していることが好ましい。
また必要に応じて、浴槽部1aまたはフランジ部1bの裏面には補強のためのリブ3を備えても良い。
図3~5は、本実施形態の浴槽1とボス部2と浴室壁Pの取付構造の簡略断面図である。
図3は、浴室壁Pをフランジ部1bの端部に載置した例示1である。すなわち、ボス部2とL型形状金具Lをセルフタッピングねじ(セルフタップネジ)Tで締結することを特徴とし、且つ、該金具Lと浴室壁Pをねじ等で固定している。
図3に示すように、フランジ部1bと浴室壁Pの間には、止水の目的のため、防水パッキンBを挟むことが好ましく、それらの隙間に止水性や見栄えの観点からシリコンコーキングSを施しても良い。
前記L型形状金具Lと浴室壁Pとの固定方法は、上記例に限定されず、例えば、該金具Lにパネル固定用チャンネルの溝形金具Cを取り付けて、浴室壁Pを固定しても良い。図4は、該溝形金具Cをフランジ部1b外周に沿って水平に載置した例示2であるが、フランジ部1bの四隅コーナー部に垂直に設置することもできる。
また、浴槽1を防水パンの上部に設置する場合など、浴室壁Pをフランジ部1bに載置しない場合もある。図5は、L型形状金具Lを図3および図4とは上下反転した状態で締結し、該金具Lと浴室壁Pをねじ等で固定する例示3である。
本実施形態の浴槽1は、フランジ部1bの裏側のリブ部2とL型形状金具Lをしっかり締結できるため、該フランジ部1bが水平でなくとも、浴室壁Pを垂直に固定することが可能であり、該フランジ部1bが、浴槽部1aに向かって0.1~15度の傾斜(図3の角度θaに示す)を有することを特徴とする。前記のフランジ部傾斜の角度θaが0.1より小さくなると浴室壁側に水残りが発生し易く、15度を超えると防水パッキンBおよびシリコンコーキングSによる止水性の担保が難しくなるため好ましくない。さらに好ましくは、水残り抑制と止水性のバランスが優れることから、フランジ部傾斜の角度θaが0.1~13度、好ましくは0.1~5度、好ましくは0.5~3度の範囲内である。
また、フランジ部1bの浴槽部1aのつなぎ部分のフランジ部傾斜の角度θbは、角度θaより大きいことが、水残りを抑制できるため好ましく、更に好ましくは2度以上である。
ここにおいて、本実施形態では、この浴槽1をガラス繊維強化プラスチック(GFRP)で形成している。前記GFRPは、特に限定されるものではないが、本実施形態の浴槽1の単体での強度、外観および切断加工性の観点、並びに、ボス部2と浴室壁Pを固定する際の締結強度の観点から、ラジカル重合性樹脂(A)5~40質量部、無機充填剤(B)20~80質量部、ガラス繊維(C)1~40質量%、および、ラジカル重合開始剤(D)を含有する樹脂組成物からなることが好ましい。
前記のラジカル重合性樹脂(A)としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
ラジカル重合性樹脂(A)の添加量は、特に限定されず、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
前記の無機充填材(B)としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、クレー、セライト、アスベスト、バーライト、バライタ、シリカ、ケイ砂、ドロマイト石灰石、石こう、アルミニウム微粉、中空バルーン、アルミナ、ガラス粉、水酸化アルミニウム、寒水石、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、二酸化モリブデン、鉄粉、カーボンブラックなどが挙げられる。これらの無機充填剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
前記のガラス繊維(C)としては、例えば、ロービングと呼ばれる長繊維をカットした繊維、予め短くカットされたチョップドストランドと呼ばれる短繊維等が挙げられる。また、ガラス繊維を平織り、朱子織り、不織布、マット状の形態にしたものも使用してプリプレグ状にすることもできる。
ガラス繊維(C)の含有率は、特に限定されないが、本実施形態の浴槽1並びにボス部2の強度の観点から、1~40質量%の範囲が好ましく、浴槽1の外観が良好となることから、1~30質量%が更に好ましい。
ラジカル重合開始剤(D)は、特に限定されないが、有機過酸化物が好ましく、例えば、ジアシルパーオキサイド化合物、パーオキシエステル化合物、ハイドロパーオキサイド化合物、ケトンパーオキサイド化合物、アルキルパーエステル化合物、パーカーボネート化合物等が挙げられ、加熱圧縮成形の条件に応じて適宜選択できる。これらの重合開始剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
本実施形態のラジカル重合性樹脂(A)、無機充填剤(B)、ガラス繊維(C)、ラジカル重合開始剤(D)以外の成分として、着色柄材、低収縮化剤、重合禁止剤、離型剤、顔料、減粘剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、抗菌剤、安定剤、補強材、光硬化剤等を含有することができる。
着色柄材としては、平均粒子径0.1~3mmのものが好ましく、本実施形態により得られる浴槽1に人造大理石の意匠を付与することができる。
低収縮化剤としては、加熱成形時に熱膨張して成形収縮を抑制する効果がある熱可塑性樹脂であり、例えば、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、およびこれらを共重合等により変性した樹脂等が挙げられ、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、4-t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、トルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、ナフトキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ナフテン酸銅、塩化銅等が挙げられる。これらの重合禁止剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
離型剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックスなどが挙げられる。これらの離型剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
ここで、本実施形態の浴槽1は、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)であればよく、成形方法は特に限定されないが、例えば、本実施形態の樹脂組成物を用いた注型成型(RTM成型)、および、シートモールディングコンパウンド(SMC)またはバルクモールディングコンパウンド(BMC)の加熱圧縮成形(プレス成形)などが挙げられる。
また、本実施形態の浴槽1の厚み(肉厚)は、成形方法は特に限定されないが、堅牢度および成形性のバランスが良好となることから、2~20mmの範囲内が好ましく、3~15mmの範囲がさらに好ましい。
また必要に応じて、浴槽部1aまたはフランジ部1bの裏面には補強のためのリブ3を備えても良い。該リブ3の位置や形状(幅、高さ)は、特に限定されず、堅牢度と製品表面の外観に応じて適宜配置することができる。例えば、フランジ部1bの長手方向、短手方向、および、浴槽部1aの底面に、それぞれ垂直に配置することが好ましい。
但し、本実施形態の浴槽1のフランジ部1bを切断する場合、切断加工が容易となることから、切断する位置にはボス部2やリブ3を配置しないほうが良い。また、ワンプッシュ水栓ボタン用の取付孔1cや排水口1dは穴開け加工を施すため、これらの裏面にはリブ3を設置しないほうが良い。
特に、ワンプッシュ水栓ボタン用の取付孔1cの周辺部など、取付部品が干渉するため、通常のフランジ部1bと同様高さのリブ3を配置することが困難な場合、本実施形態の特徴であるフランジ部1bの傾斜を利用して、図7に例示するように、リブ3先端部の高さを水平とし、低いリブ3を密接させて広範囲に配置することができる。
ここにおいて、本実施形態では、この浴槽1をガラス繊維強化プラスチック(GFRP)で形成している。このGFRP製の浴槽1は、熱硬化性樹脂であるラジカル重合性樹脂(A)、無機系充填材(B)、ガラス繊維(C)、ラジカル重合開始剤(D)を配合した特定の樹脂組成物を、成形用金型内で熱硬化させることにより製造されるものである。したがって、浴槽部1aの上部周縁に一体形成されるフランジ部1bは、熱硬化性樹脂などにより、極めて堅牢にこの浴槽部1aに一体成形されており、このフランジ部1bを備えた浴槽1を、そのまま浴室内に設置すれば、フランジ部1bには、何ら補強を施すことなく、浴槽側カウンターとして機能させることができる。
このように本実施形態の浴槽1の取付構造では、予め大きく形成されたフランジ部1bを切除することにより、同じ金型で製造された浴槽1を、各種サイズの浴室の浴槽設置部に対応させ、設置することができるものである。
また、浴槽1と一体で体裁が良く、かつ堅牢なカウンターを、何ら取付金具や固定具などの別部材を要することなく、かつ、その取り付けの手間も要することなく、設けることができる。
本実施形態において、浴槽1と浴室壁Pの固定方法は、特に限定されないが、浴室壁Pがフランジ部1bの前側を除く三辺の端部に載置され、裏面のボス部2とL型形状金具Lで固定されていることが、固定強度および簡易施工性の観点から好ましい。
本実施形態において、フランジ部1bの裏面に配したボス部2とL型形状金具Lの締結方法は、特に限定されず、例えば、ボス部2の中心部に配したボス穴2aにセルフタッピングねじT(セルフタップ法)をねじ込んで固定する方法、金属製のナットをボス穴2aに打ち込んでボルトで固定する方法(インサートナット法)、および、金型のボス部に予め金属製のナットをセットして樹脂組成物を流し込む方法(インサート成形法)などが挙げられる。
上記の固定方法の中で、インサートナット法は、金属製ナットの打ちこみ工程が必要であり、その際にフランジ部1bにクラックが発生する不具合を発生する場合がある。また、インサート成形法では、金属製ナットの内部に樹脂組成物が流れ込む不具合が発生し、後加工での仕上げを必要とする場合がある。
上記の固定方法の中でも、製造効率が良好で、浴槽設置時の施工性に優れており、且つ、十分な固定強度が得られることから、セルフタッピングねじTを用いるセルフタップ法が好ましい。
但し、この場合、ボス部2にはセルフタッピングねじTをねじ込んだ際に、ボス部2が割れる場合があり、本実施形態のガラス繊維(C)の添加量が3質量%以上であることが更に好ましい。
前述のセルフタップ方式を用いる場合、ボス部2の形状について、ボス穴2aの直径が、セルフタッピングねじTの外径(呼び径)の70~90%の範囲内であることが好ましい。ボス穴2aの直径が、前記範囲より小さいとボス部2の割れが発生し易くなり、前記範囲より大きいと締結強度が不十分となったり、ねじの空転が発生するため好ましくない。
また、ボス穴2aの深さは、セルフタッピングねじTの外径(呼び径)の200~300%の範囲内であることが好ましい。ボス穴2aの深さが、前記範囲より小さいと締結強度が不十分となったり、ねじの空転が発生し、前記範囲より大きいとボス部2の割れが発生し易くなるため、好ましくない。
更に、ボス部2の先端部の直径は、セルフタッピングねじTの外径(呼び径)の200~300%の範囲内であることが好ましい。ボス部2の先端部の直径が、前記範囲より小さいとボス部2の割れが発生し易く、前記範囲より大きいとフランジ部1bの表面にヒケと呼ばれる外観不良が発生するため、好ましくない。
また必要に応じて、ボス部2を補強するためのボス補強用リブ2bを追加することができ、同時にボス補強用リブ2bをL型形状金具Lのガイドとして使用することもできる。ボス穴2aに接着剤を満たしてL型形状金具Lと共にタッピンスクリューで固定すると、より緩みの少ない強固な締結ができる。
本実施形態のセルフタッピングねじTは、特に限定されないが、ボス部2とL型形状金具Lの締結力が良好なことから、B0タッピング(2種)またはB1タッピング(2種)が好ましく、その材質に関しては、防錆性の観点からステンレス製が好ましい。
本実施形態のL型形状金具Lは、特に限定されるものではなく、一般的なL型形状の金具を使用することができる。該金具Lの材質も特に限定されないが、防錆性の観点からステンレス製が好ましく、例えば、SUS304、SUS430などが挙げられる。
(実施例)
以下本実施形態を実施例によって更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
浴槽用SMC(JC化工株式会社製「ポリマールマット」、ガラス繊維長さ:約25mmガラス繊維含有量:約25質量%)を図6に示すボス形状を金型でプレス成形し、セルフタッピング適性を評価した結果、締め付けトルク2.5~4.5N・mで問題なく、L型形状金具Lを固定できた。
[プレス成形条件]
金型温度:(表面)145℃、(裏面)130℃
プレス時間:360秒
ボス部2:先端部φ18mm、ボス穴φ5.2mm、ボス穴深さ15mm
タッピングねじT:B1タッピンねじ、呼び径6mm、長さ12mm
L型形状金具L:厚み2mm(ステンレス製)
(実施例2)
洗面ボウル用BMC(タカラ化工株式会社製、ガラス繊維含有量:約10質量%)を、実施例1と同様の手法でプレス成形し、セルフタッピング適性を評価した結果、締め付けトルク2.5N・mは問題なかったが、4.5N・mでボス部2に割れが発生した。
(比較例1)
実施例2で用いたBMCについて、ガラス繊維を0.5質量%のみ添加した状態で、実施例1と同様の手法でプレス成形し、セルフタッピング適性を評価した結果、締め付けトルク2.5N・mでボス部2に割れが発生した。
(実施形態の効果)
上記に説明したように、本実施形態は、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製の浴槽1に一体成形されるフランジ部1bを、浴槽1の長手方向および短手方向の奥側に延出することにより、このフランジ部1bを浴槽1側のカウンターとして用いたり、設置部分の寸法調節に用いるようにしたので、各種サイズの浴室に同じ金型で成形された浴槽1が利用できるようになる。よって、その成形用金型の数を減らすことができ、この面でのコストダウンがはかられると共に、金型の設置、保管スペースも削減されるという効果がある。
また、カウンターが浴槽1に一体成形されるので、見栄えが良くなり、しかも強度的にも優れたものとなる。さらに、別途、カウンターの取付金具などを準備する必要もなくなるので、その取り付けの手間も不要となり、この面でのコストダウンがはかられると共に、施工性も良くなるという効果が得られる。
さらに、本実施形態の取付構造であれば、浴槽1上部の周縁部から浴槽1内部に向かって勾配を付けることが可能となり、該部の水残りを抑制することができる。
本実施形態は、浴槽1を構成する樹脂組成物を限定したもので、浴槽1自体およびボス部2の強度が高くなり、本実施形態の効果に加え、浴槽1のフランジ部1bをカウンターとして使用した際の一層の強度の向上がはかられ、大きなカウンターを有するものにも対応できるという効果がある。
本実施形態は、取付構造をセルフタッピ法に限定したもので、浴槽1の製造効率が良好で、浴槽1設置時の施工性に優れており、且つ、十分な固定強度が得られるという効果がある。
また、本実施形態は、浴槽ユニット内で浴槽1との組み付けが施される、浴槽防水パン、浴室床パン部材およびエプロン部材などにも水平展開が可能である。
以下、本発明の実施形態に係る浴槽を図面に基づいて更に説明する。
図1及び2に示されているとおり、浴槽1は、桶状である浴槽部1aの上端にフランジ部1bを有している。詳説すれば、浴槽部1aは、平面視においてほぼ四角形であり、排水口1dが形成された底部と、この底面部の縁から立ち上がった側面部とを有し、側面部の上端にフランジ部1bが形成されている。フランジ部1bは、側面部の上端から浴槽部1aの外側に向って伸びており、浴室の広さに合わせた任意の位置(図中の破線参照)で切断される。したがって、大きさの異なる浴室毎に浴槽やその金型を用意する必要がない。フランジ部1bは、側面部の近傍において、浴槽部1aの外側から内側に向って、浴槽部1a深さ方向に傾斜しており、それぞれ傾斜の度合いが異なる第一傾斜面1e及び第二傾斜面1fを有している(図8参照)。フランジ部1bのうち、側面部から遠い側には、水平又はほぼ水平なフラット面1gが形成されている。
図8に示されているとおり、第一傾斜面1eは、傾斜による高低差Gが3ミリメートル以内の面である。詳説すれば、第一傾斜面1eは、高さ方向において、フラット面1gから3ミリメートル低い位置までの間に含まれる部分である。第一傾斜面1eの傾斜の角度θaは、上述のとおり、0.1~15度、好ましくは、0.1~13、0.1~5、0.5~3度である(図3参照)。第二傾斜面1fは、第一傾斜面1eよりも傾斜の度合いが急であり、第一傾斜面1eの先に連接されると共に浴槽部1aに繋がっている。第二傾斜面1fの傾斜の角度θbは、上述のとおり、角度θaよりも大きく、好ましくは、2度以上である(図3参照)。フランジ部1bの切断部は、第一傾斜面1eの範囲内から選択される。
図3に示されているとおり、切断されたフランジ部1bのうち、第一傾斜面1eの上には、浴室壁Pが取り付けられる。浴室壁Pは、フランジ部1bの裏面に形成されたボス部2を介してフランジ部1bに固定される。ボス部2は、浴室1の成形時において、フランジ部1bと一体で成形されている。浴槽1の材料は、繊維強化プラスチックであるうえ、ボス部2がフランジ部1bに一体的に成形されていることから、固定部2は堅牢である。更に、繊維強化プラスチックが所定の配合で作製されたことによって、固定部2の堅牢の度合いが顕著である。
図8に示されているとおり、ボス部2は、フランジ部1bのうち第一傾斜面1eの外側であって、第二傾斜面1fの裏面に形成されている。ボス部2は、セルフタッピングねじTがねじ込まれるボス穴2aが形成されている。ボス穴2aの直径は、セルフタッピングねじTの外径の70~90パーセントである。また、ボス穴2aの深さは、セルフタッピングねじTの外径の200~300パーセントである。すなわち、ボス穴2aが所定の大きさであれば、セルフタッピングねじTがボス部2に強固に締結され、破損や外観上の不良もない。
図3に示されているとおり、浴室壁Pとフランジ部1bとは、L字面を有する部材であるL型形状金具Lによって固定される。詳説すれば、浴室壁Pの背面とフランジ部1bの裏面のボス部2に、L型形状金具Lが取り付けられネジで固定される。L型形状金具Lの形状は、L字の面を有している限りにおいて任意である。したがって、図3及び4に示されたものの他、図5に示されているとおり、浴室壁Pの表面とフランジ部1bの裏面とに取り付けられる逆L字状のL型形状金具Lであってもよい。
第一傾斜面1eと、この第一傾斜面1eの上に取り付けられた浴室壁Pの下端面との間には、隙間が生じるため、例えば、シリコンコーキングS等が隙間に充填される。第一傾斜面1eが所定の範囲であることから、第一傾斜面1eと浴室壁Pとの隙間は、過度に広くならないため、シリコンコーキングSによって適切に埋められ、止水される。一方で、第一傾斜面1eは、水はけを促すうえで十分に傾斜しているため、水が滞留しない。したがって、フランジ部1bにおける良好な水はけと、狭小で目地処理しやすい隙間とを両立させることができる。傾斜が急な第二傾斜面1fによって、更に良好な水はけが実現する。
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
1 浴槽
1a 浴槽部
1b フランジ部
1c ワンプッシュ水栓ボタン用の取付孔
1d 排水口
1e 第一傾斜面
1f 第二傾斜面
1g フラット面
2 ボス部
2a ボス穴
2b ボス補強用リブ
3 リブ部
P 浴室壁
L L型形状金具
T セルフタッピングねじ
B 防水パッキン
S シリコンコーキング
C 溝形金具(浴室壁固定用チャンネル)
G 高低差
θa 角度
θb 角度

Claims (3)

  1. 上端に、外側から内側に向って深さ方向に傾斜したフランジ部を有する浴槽であって、
    前記フランジ部のうち、浴室の広さに合わせて切断される任意の位置が、傾斜による高低差が3ミリメートル以内の面である第一傾斜面にある、
    ことを特徴とする浴槽。
  2. 水平に対する前記第一傾斜面の角度が、0.1~15度である、
    ことを特徴とする請求項1に記載された浴槽。
  3. 前記第一傾斜面の先に、前記第一傾斜面よりも傾斜の度合いが急な第二傾斜面が連接された、
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された浴槽。
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