JP2023145370A - 熱硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂シート、絶縁シート及び半導体装置 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂シート、絶縁シート及び半導体装置 Download PDF

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知希 加藤
Tomoki Kato
俊行 田中
Toshiyuki Tanaka
敏行 澤村
Toshiyuki Sawamura
章則 木村
Akinori Kimura
裕也 古賀
Yuya Koga
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Abstract

【課題】絶縁性と高熱伝導性を両立するとともに、リフロー耐熱性に優れた絶縁シートを形成することができる熱硬化性樹脂組成物を提供する。【解決手段】熱硬化性樹脂と、芳香族骨格を有する固体エポキシ樹脂フィラーと、窒化ホウ素凝集粒子を含む無機フィラーとを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、前記固体エポキシ樹脂フィラーは、1分子中に少なくとも2つ以上のグリシジル基を含有し、かつ融点が100℃以上であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、半導体装置などの作製に用いることができる熱硬化性樹脂組成物、例えば、半導体装置を作製するのに用いる絶縁シートの材料として好適に用いることが可能な熱硬化性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂シートに関する。
鉄道、自動車、一般家電等の様々な分野でパワー半導体デバイスが使用されている。近年、パワー半導体デバイスにおいては、さらなる小型化、低コスト化、高効率化等のために、従来のSiを使用したパワー半導体からSiC、AlN、GaN等を使用したパワー半導体へ移行しつつある。
パワー半導体デバイスは、一般的には、複数の半導体デバイスを共通のヒートシンク上に配置してパッケージングしたパワー半導体モジュールとして利用される。
絶縁性及び耐熱性を備えた部材として、従来から、アルミナ基板や窒化アルミニウム基板などの熱伝導性の高いセラミック基板が使用されてきた。しかし、セラミックス基板では、衝撃で割れやすい、薄膜化が困難で小型化が難しい、といった課題を抱えていた。そこで、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と無機フィラーを用いた絶縁シートが提案されている。
熱硬化性樹脂と無機フィラーを用いた絶縁シートに関しては、例えば特許文献1において、Tgが60℃以下のエポキシ樹脂と窒化ホウ素を含有する放熱樹脂シートであって、窒化ホウ素の含有量が30体積%以上、60体積%以下である絶縁性を備えた放熱樹脂シートが提案されている。
窒化ホウ素(以下「BN」とも称する。)は、絶縁性のセラミックであり、熱伝導性、固体潤滑性、化学的安定性、耐熱性にも優れるという特徴を有することから、近年、電気・電子材料分野で特に着目されている材料である。
特許文献2には、熱伝導率と接着性を向上するため、窒化ホウ素凝集粒子とナイロンフィラーを含有してなる絶縁シートが開示されている。
特許文献3には、シート硬化物の加工時に、金型の摩耗を抑制するために、無機フィラーと有機フィラーを含有してなる絶縁シートが開示されている。
特開2017-036415号公報 特開2019-119883号公報 特許4495768号公報
ところで、前述のような絶縁シートを用いて半導体を作製する場合、銅箔などの基板に絶縁シートを積層し、その上に、電子部品などの表面実装部品をリフロー実装することが行われる。そのため、絶縁シートには、リフロー実装する際のリフロー温度に耐え得るための耐熱性(リフロー耐熱性)が求められる。
本発明は、絶縁性と高熱伝導性を両立するとともに、リフロー耐熱性に優れた絶縁シートを形成することができる熱硬化性樹脂組成物を提供せんとするものである。
本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] 熱硬化性樹脂と、芳香族骨格を有する固体エポキシ樹脂フィラーと、窒化ホウ素凝集粒子を含む無機フィラーと、有機溶剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、前記固体エポキシ樹脂フィラーは、1分子中に少なくとも2つ以上のグリシジル基を含有し、かつ融点が100℃以上であり、前記有機溶剤は、熱硬化性樹脂組成物100質量%のうち15質量%~50質量%の範囲内で含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
[2] 前記有機溶剤がシクロヘキサノン、メチルエチルケトン、又は、シクロヘキサノン及びメチルエチルケトンの混合溶剤であることを特徴とする[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[3] 前記固体エポキシ樹脂フィラーは、25℃のシクロヘキサノンに加えてマグネチックスターラーにて8時間攪拌した際、シクロヘキサノン100質量部に対して20質量部以上溶解しないものであることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[4] 前記固体エポキシ樹脂フィラーは、25℃のメチルエチルケトンに加えてマグネチックスターラーにて8時間攪拌した際、メチルエチルケトン100質量部に対して5質量部以上溶解しないものであることを特徴とする、[1]~[3]の何れか一に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[5] 前記固体エポキシ樹脂フィラーは、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンを1:1の質量割合で混合してなる25℃の混合溶剤に加えてマグネチックスターラーにて8時間攪拌した際、前記混合溶剤100質量部に対して10質量部以上溶解しないものであることを特徴とする、[1]~[4]の何れか一に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[6] 前記固体エポキシ樹脂フィラーは、質量平均分子量が1000以下である、[1]~[5]の何れか一に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[7] 前記固体エポキシ樹脂フィラーは、融点が250℃未満であることを特徴とする、[1]~[6]の何れか一に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[8] 前記固体エポキシ樹脂フィラーが、アダマンタンから誘導される構造を有する、[1]~[7]の何れか一に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[9] 前記窒化ホウ素凝集粒子がカードハウス構造を形成していることを特徴とする、[1]~[8]の何れか一に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[10] 前記固体エポキシ樹脂フィラーを0.01質量%以上30質量%以下の範囲で含有し、前記無機フィラーを60質量%以上80質量%以下の範囲で含有することを特徴とする、[1]~[9]の何れか一に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[11] 前記熱硬化性樹脂として、芳香族骨格を有し、かつ質量平均分子量が700以下であるエポキシモノマー(M1)と、芳香族骨格を有さず、かつ質量平均分子量が800以下であるエポキシモノマー(M2)とを含有することを特徴とする、[1]~[10]の何れか一に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[12] 前記エポキシモノマー(M2)が、40℃、1気圧において液体であることを特徴とする、[11]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[13] 前記エポキシモノマー(M2)が、1分子中に少なくとも3つ以上のグリシジル基を有することを特徴とする、[11]又は[12]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[14] 前記熱硬化性樹脂として、芳香族骨格を有し、かつ質量平均分子量が10,000以上である高分子量エポキシ樹脂を含有する、[1]~[13]の何れか一に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[15] [1]~[14]の何れか一に記載の熱硬化性樹脂組成物から作製した熱硬化性樹脂シート。
[16] [15]に記載の熱硬化性樹脂シートを硬化してなる絶縁シート。
[17] [16]に記載の絶縁シートと金属部とを有する複合成型体。
[18] [17]に記載の複合成型体を有する半導体装置。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、窒化ホウ素凝集粒子を含む無機フィラーを含有し、且つ、固体エポキシ樹脂フィラーと有機溶剤とを含有することにより、塗布などの工程により熱硬化性樹脂シートを容易に作製することができ、加圧加熱工程を経て絶縁シートとした際、絶縁性と高熱伝導性を両立するとともに、リフロー耐熱性を高めることができる。
カードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子の一例に係る粒子断面図の概念図である。
以下に、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
<<本熱硬化性樹脂組成物>>
本発明の実施の形態の一例に係る熱硬化性樹脂組成物(「本熱硬化性樹脂組成物」と称する。)は、熱硬化性樹脂と、固体エポキシ樹脂フィラーと、窒化ホウ素凝集粒子を含む無機フィラーと、有機溶剤とを含有し、必要に応じてさらに、その他のポリマー、硬化剤、硬化促進剤、その他の成分を含む組成物である。
本発明において「熱硬化性樹脂組成物」とは、熱により硬化する性質を有する樹脂を含有する組成物の意味である。すなわち、熱により硬化する余地が残された硬化性を有する組成物であればよく、硬化する余地が残された状態に既に硬化(「仮硬化」とも称する)されたものであってもよいし、未だ何ら硬化されていない(「未硬化」と称する)状態のものであってもよい。
本熱硬化性樹脂組成物の形態は、スラリー状、液状などの流動性のある形態に限定される。
本発明において「樹脂」とは、低分子量の有機化合物を除く有機化合物、例えば分子量100以上の有機化合物の意味である。よって、例えば「エポキシ樹脂」は「エポキシ化合物」、「主成分樹脂」は「主成分有機化合物」、「熱硬化性樹脂」は「熱硬化性化合物」とそれぞれ読み替えることができる。
本熱硬化性樹脂組成物を用いて熱硬化性樹脂シートを作製し加圧加熱工程を経た硬化シート、例えば絶縁シートを作製する際、窒化ホウ素凝集粒子を含むことにより、シート成形時の加圧加熱工程において凝集無機フィラーが互いに接触することで変形し、面接触しやすい。そのため、熱伝導のパスがより多く形成され、硬化物の熱伝導率が高くなる傾向がある一方、窒化ホウ素凝集粒子を含むことにより、フィラー間のボイド及びフィラー内のボイドが生じ易くなるため、ボイドを低減乃至消滅させることが絶縁性向上のために重要となる。
本熱硬化性樹脂組成物から作製した熱硬化性樹脂シートの加圧加熱工程において、フィラー間のボイド及びフィラー内のボイドを含めてボイドの多くが除去される。この点は、従来の熱硬化性樹脂シートと同様である。本熱硬化性樹脂組成物から作製した熱硬化性樹脂シートではさらに、固体エポキシ樹脂フィラーがシート中にフィラー状のまま分散する。そして、前記固体エポキシ樹脂フィラーが加熱において融解するため、融解した固体エポキシ樹脂フィラーが拡散してボイドを塞ぎ、残存したボイドも除去することができる。
さらに、融解した固体エポキシ樹脂フィラーは、熱硬化性樹脂乃至それが架橋してなる熱硬化性樹脂マトリックス中に拡散し、固体エポキシ樹脂フィラーのエポキシ基が熱硬化性樹脂マトリックスの官能基と反応することで、均一でより強固な樹脂マトリックスを形成する。それによって、当該樹脂マトリックスと、無機フィラーなどの他の含有成分との線膨張係数の差が小さくなり、耐熱性、特にリフロー耐熱性を高めることができる。また、ボイドを減少乃至消失させることにより、絶縁性をより一層高めることができるうえに、窒化ホウ素凝集粒子が互いに接触することで変形し、面接触することで、熱伝導のパスがより多く形成され、硬化物の熱伝導率をより高めることができる。ボイドが存在すると、ボイド内で放電が生じて周囲の、熱硬化性樹脂乃至それが架橋してなる熱硬化性樹脂マトリックスが劣化するため、絶縁性が低下する要因となる。
これに対して、熱硬化性樹脂組成物が、固体エポキシ樹脂フィラー以外の有機フィラーのみを含有する場合は、当該有機フィラーは、熱硬化性樹脂乃至それが架橋してなる熱硬化性樹脂マトリックスと反応できないため、前記のような均一で強固な樹脂マトリックスを形成することがない。そのため、樹脂マトリックスと、無機フィラーなどの他の含有成分との線膨張係数の差が大きいままであり、例えばリフロー工程中に、無機フィラーと樹脂硬化物との界面が剥離したり、樹脂硬化物内にボイドが発生して絶縁性や熱伝導性が低下したり、耐熱性、特にリフロー耐熱性の点で問題を抱えることになる。
<固体エポキシ樹脂フィラー>
本熱硬化性樹脂組成物が含有する固体エポキシ樹脂フィラーは、常温常圧、例えば25℃×1気圧において固体状態で存在し、加熱により融解するものであることが好ましい。
かかる観点から、前記固体エポキシ樹脂フィラーは、芳香族骨格を有する固体エポキシ樹脂フィラーであって、且つ、1分子中に少なくとも2つ以上のグリシジル基を含有し、かつ融点が100℃以上であるものが好ましい。
前記固体エポキシ樹脂フィラーは、常温常圧下において固体であり、加熱により融解する性質を有する観点から、芳香族骨格を有するエポキシ化合物からなるものであるのが好ましい。
当該「芳香族骨格」としては、例えばフェニル骨格、ビフェニル骨格、ビスフェノール骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格などを挙げることができる。
前記固体エポキシ樹脂フィラーは、常温常圧下において固体であり、加熱により融解して熱硬化性樹脂マトリックスと反応し架橋構造を形成する性質を有する観点から、1分子中に少なくとも2つ以上のグリシジル基を含有するエポキシ樹脂からなるものが好ましい。
前記固体エポキシ樹脂フィラーは、常温常圧において固体であり、加熱により融解する性質を有する観点から、融点が100℃以上であるのが好ましく、中でも110℃以上であるのがより好ましく、その中でも120℃以上であるのがさらに好ましい。他方、固体エポキシ樹脂フィラーが成型加工時の加圧加熱工程中に加熱により融解し、溶解した固体エポキシ樹脂フィラーが熱硬化性樹脂マトリックスと反応し架橋構造を形成マトリックスと反応する観点から、その融点は250℃未満であるのがより好ましく、中でも240℃以下、その中でも230℃以下であるのがさらに好ましい。
前記固体エポキシ樹脂フィラーは、融解した後熱硬化性樹脂乃至それが架橋してなる熱硬化性樹脂マトリックス中に拡散し、固体エポキシ樹脂フィラーのエポキシ基が熱硬化性樹脂マトリックスの官能基と反応することで、均一でより強固な樹脂マトリックスを形成する観点から、質量平均分子量が1000以下であるのが好ましく、中でも900以下であるのがより好ましく、その中でも800以下であるのがさらに好ましい。他方、より強固な樹脂マトリックスを形成する観点から、その質量平均分子量は100以上であるのが好ましい。
前記固体エポキシ樹脂フィラーは、常温常圧で固体であり、その他構成成分に溶解しない観点から、次の溶解性試験において、溶解性が低いものが好ましい。
例えば、25℃の100%シクロヘキサノンに固体エポキシ樹脂フィラーを加えて、その温度を維持しつつ、マグネチックスターラーにて8時間攪拌した際、シクロヘキサノン100質量部に対して20質量部以上溶解しないものが好ましい。
また、25℃の100%メチルエチルケトンに固体エポキシ樹脂フィラーを加えて、その温度を維持しつつ、マグネチックスターラーにて8時間攪拌した際、メチルエチルケトン100質量部に対して5質量部以上溶解しないものが好ましい。
また、100%シクロヘキサノンと100%メチルエチルケトンを1:1の質量割合で混合してなる25℃の混合溶剤に、固体エポキシ樹脂フィラーを加えて、その温度を維持しつつ、マグネチックスターラーにて8時間攪拌した際、前記混合溶剤100質量部に対して10質量部以上溶解しないものが好ましい。
前記固体エポキシ樹脂フィラーがその他構成成分に溶解しないことにより、熱硬化性樹脂組成物を塗布した際にフィラー状のままでシート中に分散することができる。
固体エポキシ樹脂フィラーの好ましい具体例として、アダマンタンから誘導される構造を有するエポキシ樹脂を挙げることができる。
アダマンタンから誘導される構造を有するエポキシ樹脂は、加熱により融解するほか、熱硬化性樹脂と反応することにより強固な樹脂マトリックスを形成することができ、さらには冷却しても再析出しない性質を有しており、再析出によって熱耐性が低下することがない点でも優れている。
アダマンタンから誘導される構造を有するエポキシ樹脂としては、下記一般式(I)~(IV)のいずれかで表される化合物を挙げることができる。
Figure 2023145370000001
Figure 2023145370000002
Figure 2023145370000003
Figure 2023145370000004
上記一般式(I)~(IV)において、R~Rは、それぞれ独立に、炭素数1~10の炭化水素基を示す。a~eは、それぞれ独立に、0~8の整数である。a~eがそれぞれ2以上の場合、複数のR~Rは、それぞれにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。
~Xは、それぞれ独立に、グリシジルオキシ基を示す。f~kは、それぞれ独立に、1~4の整数である。f~kがそれぞれ2以上の場合、複数のX~Xは、それぞれにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。
固体エポキシ樹脂フィラーの平均粒径は、250μm以下であるのが好ましく、200μm以下であるのがより好ましく、150μm以下がさらに好ましく、100μm以下が特に好ましい。
固体エポキシ樹脂フィラーの平均粒径が前記上限値以下であれば、様々な厚さの放熱絶縁シートを作製する際に、フィラー起因の膜厚変動を抑制することができ、絶縁性低下の恐れを低減することができる。また、硬化工程において融解した後、その他熱硬化性樹脂マトリックス中に溶融・拡散して反応し、均一な樹脂マトリックスを形成することで、絶縁シートの耐熱性がより向上する。
固体エポキシ樹脂フィラーの平均粒径を250μm以下とする手段の一例として、例えば目開き100μm(149メッシュ)の篩で篩分けして、篩下のフィラーを使用する方法を挙げることができる。但し、かかる方法に限定するものではない。
固体エポキシ樹脂フィラーの平均粒径は、固体エポキシ樹脂フィラーが溶融時に効果的にボイドを低減乃至消失させる観点から、1μm以上であるのが好ましく、5μm以上であるのがより好ましく、10μm以上であるのがさらに好ましい。
固体エポキシ樹脂フィラーの平均粒径の一例として、測定に供した粉体の体積を100%として累積曲線を描いた際に累積体積が50%となる時の粒子径を挙げることができる。測定方法は、分散安定剤としてヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する純水媒体中に凝集粒子を分散させた試料に対して、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等を用いて測定する湿式測定法、Malvern社製「Morphologi」を用いて測定する乾式測定法が挙げられる。
本熱硬化性樹脂組成物中の固体エポキシ樹脂フィラーの含有量は、有機溶剤を除いた固形分100質量%に対して0.01質量%以上であるのが好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が特に好ましい。他方、30質量%以下であるのが好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、17質量%以下が特に好ましい。
固体エポキシ樹脂フィラーの含有量が前記下限値以上であれば、硬化工程中に固体エポキシ樹脂フィラーが融解して熱硬化性樹脂マトリックス中に拡散しやすくなり、ボイドを低減する効果をより一層得ることができる。他方、固体エポキシ樹脂フィラーの含有量が前記上限値以下であれば、無機フィラーの含有量を確保することができ、熱伝導性をより高めることができる。
<無機フィラー>
無機フィラーは、電気絶縁性からなるフィラーすなわち粒子であれば、任意のものを用いることが可能である。
(材質)
無機フィラーとしては、電気絶縁性を十分なものとし易い点から、電気絶縁性の無機化合物からなるものが好ましい。例えば、金属炭化物、金属酸化物及び金属窒化物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の粒子から構成されるフィラーが挙げられる。
金属炭化物としては、例えば、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン等が挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イッテルビウム、サイアロン(ケイ素、アルミニウム、酸素、窒素からなるセラミックス)等が挙げられる。
金属窒化物としては、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が挙げられる。
これらの中でも、本熱硬化性樹脂組成物から作製した熱硬化性樹脂シートが硬化してなる硬化物、例えば絶縁シートが電気絶縁性に優れることになる観点から、金属酸化物、金属窒化物が特に好ましい。
無機フィラーの絶縁性能については、具体的には、20℃における体積抵抗率が1×1013Ω・cm以上であるのが好ましく、特に1×1014Ω・cm以上であるのがより好ましい。
このような無機フィラーとして、具体的には、例えば、アルミナ(Al、体積抵抗率:1×1014Ω・cm)、窒化アルミニウム(AlN、体積抵抗率:1×1014Ω・cm)、窒化ホウ素(BN、体積抵抗率:1×1014Ω・cm)、窒化ケイ素(Si、体積抵抗率1×1014Ω・cm)、シリカ(SiO、体積抵抗率1×1014Ω・cm)等が挙げられる。
これらの中でも、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、シリカが好ましく、アルミナ、窒化ホウ素がより好ましい。
また、無機フィラーは、熱伝導性を有するものがさらに好ましく、熱伝導率が2.0W/m・K以上であるものが好ましく、特に3.0W/m・K以上、特に5.0W/m・K以上、特に10.0W/m・K以上であるものがさらに好ましい。
前記炭素のみからなるフィラーとしては、例えばダイヤモンド(熱伝導率:約2000W/m・K)等を挙げることができる。
前記金属炭化物又は半金属炭化物としては、例えば炭化ケイ素(熱伝導率:約60~270W/m・K)、炭化チタン(熱伝導率:約21W/m・K)、炭化タングステン(熱伝導率:約120W/m・K)等を挙げることができる。
前記金属酸化物又は半金属酸化物の例としては、酸化マグネシウム(熱伝導率:約40W/m・K)、酸化アルミニウム(熱伝導率:約20~35W/m・K)、酸化亜鉛(熱伝導率:約54W/m・K)、酸化イットリウム(熱伝導率:約27W/m・K)、酸化ジルコニウム(熱伝導率:約3W/m・K)、酸化イッテルビウム(熱伝導率:約38.5W/m・K)、酸化ベリリウム(熱伝導率:約250W/m・K)、「サイアロン」(ケイ素、アルミニウム、酸素、窒素からなるセラミックス、熱伝導率:約21W/m・K)等を挙げることができる。
前記金属窒化物又は半金属窒化物の例としては、窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素(h-BN)の板状粒子の面方向の熱伝導率:約200~500W/m・K)、窒化アルミニウム(熱伝導率:約160~285W/m・K)、窒化ケイ素(熱伝導率:約30~80W/m・K)等を挙げることができる。
無機フィラーは、表面処理剤により表面処理が施されていてもよい。表面処理剤は、公知の表面処理剤を用いることができる。
無機フィラーは、一種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
(形状)
無機フィラーの形状は特に限定するものではなく、任意形状の無機フィラーが使用可能である。例えば、不定形粒子状、球状、ウィスカー状、繊維状、板状、又はそれらの凝集体、混合体であってもよい。
中でも、熱伝導性のさらなる向上という観点から、凝集無機フィラーを含むのが好ましい。
また、凝集無機フィラーと、凝集していない無機フィラーを併用してもよいが、その際は、凝集無機フィラーの割合を多くするのが好ましい。
[凝集無機フィラー]
凝集無機フィラーとは、一次粒子が凝集し二次粒子の形状となったものと定義することができる。
本熱硬化性樹脂組成物が、凝集無機フィラーを含むことにより、本熱硬化性樹脂組成物から作製した熱硬化性樹脂シートの加圧加熱工程において凝集無機フィラーが互いに接触することで変形し、面接触しやすくなる。そのため、熱伝導のパスがより多く形成され、絶縁シートの熱伝導率が高くなる傾向がある。ただし、本熱硬化性樹脂組成物が、凝集無機フィラーを含むことにより、熱硬化性樹脂シートを作製した際にフィラー間のボイド及びフィラー内のボイドが生じ易くなるが、本熱硬化性樹脂組成物においては、固体エポキシ樹脂フィラーが加熱において融解するため、融解した固体エポキシ樹脂フィラーが拡散してフィラー間のボイド及びフィラー内のボイドを除去することができる。したがって、本発明の効果をより一層享受できる点からも、凝集無機フィラーを含有することが好ましい。
なお、凝集無機フィラーの凝集形態は、走査型電子顕微鏡(SEM)により確認することができる。
凝集無機フィラーの凝集の方法、程度は、特に制限されない。ただし、凝集無機フィラーとして、下記の窒化ホウ素凝集粒子を用いることが好ましい。また、窒化ホウ素凝集粒子と異なる形状、種類のフィラーとを併用してもよい。
凝集無機フィラーの破壊強度は、300MPa以下が好ましく、100MPa以下がより好ましく、50MPa以下がさらに好ましく、20MPa以下がさらにいっそう好ましく、15MPa以下が特に好ましく、10MPa以下が最も好ましい。一方、破壊強度の下限値は特に限定されないが、取り扱いを容易とする点から、破壊強度は2.5MPa以上が好ましく、3MPa以上がより好ましく、3.5MPa以上がさらに好ましく、4MPa以上が特に好ましい。
凝集無機フィラーの破壊強度が前記数値範囲内であると、凝集無機フィラー同士が接触している部分で変形し、面接触が容易になる傾向にある。凝集無機フィラー内部の高い熱伝導率を維持しながら、凝集無機フィラー界面及び後述する金属基板と絶縁シートとの界面の接触熱抵抗を下げ、全体の熱伝導率を向上することができる。
なお、凝集無機フィラー破壊強度は、粒子1粒をJIS R 1639-5に従って圧縮試験し、下記式により算出できる。通常、粒子は5点以上測定し、その平均値を採用する。
式:Cs=2.48P/πd2
Cs:破壊強度(MPa)
P:破壊試験力(N)
d:粒子径(mm)
凝集無機フィラーの弾性率は、10MPa以上が好ましく、20MPa以上がより好ましく、30MPa以上がさらに好ましく、50MPa以上が特に好ましく、55MPa以上が最も好ましい。一方、十分な変形が得られやすい点から、5GPa以下が好ましく、2GPa以下がより好ましく、1.5GPa以下がさらに好ましく、1GPa以下がさらに好ましく、500MPa以下がさらにいっそう好ましく、300MPa以下が特に好ましく、150MPa以下が最も好ましい。
凝集無機フィラーの弾性率が前記数値範囲内であると、プレス処理時に球状を維持しやすい傾向にある。
凝集無機フィラーの弾性率は、破壊強度の測定に用いた装置を用いて、破壊が起きた時点の試験力とその時点の圧縮変位から下記の式より算出することができる。
E=3×(1-ν)×P/4×(d/2)1/2×Y3/2 (「E」は弾性率(MPa)であり、「ν」はポアソン比であり、「P」は破壊試験力(N)であり、「d」は粒子径(mm)であり、「Y」は圧縮変位(mm)である。なお、ポアソン比は一定(0.13)と仮定することができる。)
凝集無機フィラーの破壊強度及び弾性率は、凝集無機フィラーがシート中にある場合には、該凝集無機フィラーが変質しないよう、シートの樹脂を焼いて凝集無機フィラーを取り出してから、測定することができる。
[窒化ホウ素凝集粒子]
本熱硬化性樹脂組成物に含まれる無機フィラーは、吸湿の問題が少なく、毒性も低い点、熱伝導率を効率的に高めることができる点、及び、本熱硬化性樹脂組成物から作製した絶縁シートに高い絶縁性を付与できる点から、窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる「窒化ホウ素凝集粒子」を含有することが好ましい。
窒化ホウ素は、熱伝導性が高いが鱗片状であり、面方向には熱伝導するが面に垂直な方向には熱抵抗が大きい。取扱い性をよくするために鱗片を集めて球状に凝集させた凝集粒子を用いることが好ましい。
窒化ホウ素凝集粒子の形状は、球状であることが好ましい。
窒化ホウ素凝集粒子の凝集構造は、熱伝導率を向上させる観点から、カードハウス構造であるのが好ましい。
なお、窒化ホウ素凝集粒子の凝集構造は、走査型電子顕微鏡(SEM)により確認することができる。
カードハウス構造とは、板状粒子が配向せず複雑に積層されたものであり、「セラミックス・43・No.2」(2008年、日本セラミックス協会発行)に記載されている。
より具体的には、凝集粒子を形成する一次粒子の平面部と、該凝集粒子内に存在する他の一次粒子の端面部が接触している構造をいう。カードハウス構造の模式図を図1に示す。
該カードハウス構造の凝集粒子は、その構造上破壊強度が非常に高く、本熱硬化性樹脂組成物から作製した熱硬化性樹脂シートの加圧加熱工程でも圧壊しない。そのため、通常、シート長手方向に配向し易い一次粒子を、ランダムな方向に存在させることができる。
したがって、カードハウス構造の凝集粒子を用いると、本熱硬化性樹脂組成物から作製した絶縁シートにおいて、シートの厚み方向に一次粒子のab面が配向する割合をより高めることができるので、該シートの厚み方向に効果的に熱伝導を行うことができ、厚み方向の熱伝導率を一層高めることができる。
なお、カードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子は、例えば国際公開第2015/119198号に記載される方法で製造することができる。
カードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子を用いる場合、当該粒子は表面処理剤により表面処理が施されていてもよい。
当該表面処理剤としては、例えば、シランカップリング処理などの公知の表面処理剤を用いることができる。一般的に、熱伝導性フィラーと熱硬化性樹脂との間には直接的な親和性や密着性は認められない場合が多く、これは熱伝導性フィラーとしてカードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子を用いた場合も同様である。熱伝導性フィラーとマトリクス樹脂との界面の密着性を化学的処理により高めることで、界面での熱伝導性減衰をより低減できると考えられる。
窒化ホウ素凝集粒子の新モース硬度は、特に限定されないが、5以下が好ましい。新モース硬度が5以下であると、熱硬化性樹脂シートの加圧加熱工程においてシート中に分散した粒子同士の接触が面接触しやすく、粒子間の熱伝導パスが形成され、樹脂硬化物の熱伝導が向上する傾向にある。新モース硬度の下限値は特に制限されないが、例えば1以上である。
窒化ホウ素凝集粒子の体積平均粒子径は、特に限定するものでない。10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましい。体積平均粒子径が前記下限値以上であると、樹脂組成物及び樹脂組成物を用いた硬化物内において相対的に粒子数が少なくなるため、粒子間界面が少なくなることにより熱抵抗が小さくなり、複合樹脂シートが高熱伝導率になる傾向がある。
また、窒化ホウ素凝集粒子の体積平均粒子径は、100μm以下が好ましく、90μm以下がより好ましい。体積平均粒子径が前記上限値以下であると、樹脂組成物を用いた硬化物の表面平滑性が得られる傾向にある。
ここで、窒化ホウ素凝集粒子の体積平均粒子径は、測定に供した粉体の体積を100%として累積曲線を描いた際に累積体積が50%となる時の粒子径を意味する。測定方法は、分散安定剤としてヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する純水媒体中に凝集粒子を分散させた試料に対して、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等を用いて測定する湿式測定法、Malvern社製「Morphologi」を用いて測定する乾式測定法が挙げられる。後述の球状フィラーについても同様である。
[凝集していない無機フィラー]
凝集無機フィラーとは別に、その他の凝集していない無機フィラーを併用してもよい。
その他の凝集していない無機フィラーとしては、形状に制限はない。例えば、球状フィラーを用いることができる。
ここで「球状」とは、一般的に球形であると認識されるものであればよく、例えば、平均円形度が0.4以上を球状としてもよく、0.6以上を球形としてもよい。通常平均円形度の上限は1である。
円形度の測定は、その投影画像を画像処理することによって測定することができる。例えばシスメックス社のFPIAシリーズ等で測定することができる。
球状フィラーは、アルミナ、合成マグネサイト、結晶性シリカ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種以上が好ましい。これらの好ましい球状フィラーの使用により、得られる絶縁シートの放熱性をよりいっそう高めることができる。
球状フィラーの平均粒子径は、0.5μm以上40μm以下が好ましい。平均粒子径が0.5μm以上であると、加圧加熱工程時に樹脂及びフィラーが容易に流動することが可能となり、界面接着力を高めることができると考えられる。また平均粒子径が40μm以下であると、絶縁シートの絶縁破壊特性を維持しやすくなる。
球状フィラーの熱伝導率は10W/m・K以上が好ましく、15W/m・K以上がより好ましく、20W/m・K以上がさらに好ましい。球状フィラーの熱伝導率は、例えば10~30W/m・Kが好ましい。球状フィラーの新モース硬度は3.1以上が好ましい。
球状フィラーの新モース硬度は、例えば5~10が好ましい。このような球状フィラーを前述の凝集無機フィラーと併用することにより、得られる絶縁シートの金属に対する接着力及び放熱性を高めることができる。
(無機フィラーの含有量)
本熱硬化性樹脂組成物における窒化ホウ素凝集粒子を含む無機フィラーの含有量は、熱伝導性を高める観点から、本熱硬化性樹脂組成物から有機溶剤を除いた固形分100質量%に対して60質量%以上であるのが好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。他方、フィラー間のボイド及びフィラー内のボイドを低減する観点から、95質量%以下であるのが好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下であるのが特に好ましい。
本熱硬化性樹脂組成物における窒化ホウ素凝集粒子の含有量は、熱硬化性樹脂組成物から有機溶剤を除いた固形分100質量%に対して20質量%以上であるのが好ましく、30質量%以上がより好ましい。他方95質量%以下であるのが好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が特に好ましい。
窒化ホウ素凝集粒子の含有量が前記下限値以上であると、窒化ホウ素凝集粒子を含有することによる熱伝導性の向上効果を十分に得ることができる傾向にある。また、窒化ホウ素凝集粒子の含有量が前記上限値以下であると、フィラー間のボイド及びフィラー内のボイドを低減することができ、絶縁性が向上する傾向にある。
窒化ホウ素凝集粒子と共に、非凝集無機フィラーを併用する場合、樹脂組成物中の窒化ホウ素凝集粒子と非凝集無機フィラーの含有量比は、熱伝導率を向上させる観点から、質量比(凝集:非凝集)は、100:0~50:50であることが好ましい。
<熱硬化性樹脂>
本熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂は、バインダー樹脂としての役割を果たすものであり、熱によって硬化する性質を備えた樹脂であればよい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等を挙げることができる。これらの中で、粘度、耐熱性、吸湿性、取扱い性の観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂の含有量は、本熱硬化性樹脂組成物の固形分から無機フィラーを除いた樹脂成分100質量%に対し、5~99質量%であるのが好ましい。
熱硬化性樹脂の含有量が5質量%以上であれば、成形性が良好となるから好ましく、他方、99質量%以下であれば、他の成分の含有量を確保することができ、熱伝導性を高めることができるから好ましい。
かかる観点から、熱硬化性樹脂の含有量は、本熱硬化性樹脂組成物の固形分から無機フィラーを除いた無機フィラーを除いた樹脂成分100質量%に対し、5~99質量%であるのが好ましく、中でも10質量%以上、中でも20質量%以上、中でも30質量%以上、中でも40質量%以上、中でも50質量%以上であるのがさらに好ましい一方、98質量%以下の割合で含有することがさらに好ましい。
(エポキシ樹脂)
本熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂は特に好ましい。
エポキシ樹脂とは、分子内に1個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有する化合物の総称である。また、エポキシ樹脂に含まれるオキシラン環(エポキシ基)は、脂環式エポキシ基、グリシジル基のどちらでも構わない。反応速度もしくは耐熱性の観点から、グリシジル基であることがより好ましい。
エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ基含有ケイ素化合物、脂肪族型エポキシ樹脂、ビスフェノールAまたはF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
前記エポキシ樹脂は、芳香族オキシラン環(エポキシ基)含有化合物であってもよい。
その具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラフルオロビスフェノールAなどのビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型のエポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの2価のフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタンなどのトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなどのテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラックなどのノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
中でも、熱硬化性樹脂マトリックスの架橋密度を向上し耐熱性を向上する観点から、芳香族骨格を有し、かつ質量平均分子量が700以下であるエポキシモノマー(M1)と、芳香族骨格を有さず、かつ質量平均分子量が800以下であるエポキシモノマー(M2)とを、前記エポキシ樹脂として併用するのが好ましい。
前記エポキシモノマー(M1)の質量平均分子量は、樹脂マトリックスの架橋密度を向上し耐熱性を向上する観点から、700以下であるのが好ましく、中でも650以下、その中でも600以下であるのがさらに好ましい。質量平均分子量の下限値は特に限定されないが通常150以上であるのが好ましい。
エポキシモノマー(M1)としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラフルオロビスフェノールAなどのビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型のエポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの2価のフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタンなどのトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなどのテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラックなどのノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
エポキシモノマー(M1)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他方、前記エポキシモノマー(M2)の質量平均分子量は、樹脂マトリックスの架橋密度を向上し耐熱性を向上する観点から、800以下であるのが好ましく、中でも750以下、その中でも700以下であるのがさらに好ましい。質量平均分子量の下限値は特に限定されないが通常150以上であるのが好ましい。
前記エポキシモノマー(M2)は、該熱硬化性樹脂組成物の塗布時のハンドリング性を向上する観点から、40℃、1気圧において液体であるものが好ましい。
前記エポキシモノマー(M2)は、樹脂マトリックスの架橋密度を向上し耐熱性を向上する観点から、1分子中に少なくとも3つ以上のグリシジル基を有するものが好ましく、例えば、ナガセケムテックス社製の、EX321L、DLC301、DLC402等を用いることができる。
エポキシモノマー(M2)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本熱硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂は、「エポキシモノマー(M1)」および「エポキシモノマー(M2)」、さらに後述する「高分子量エポキシ樹脂」のいずれか一種又はこれらの二種類又は三種類を含有するのが好ましい。中でも、本熱硬化性樹脂組成物を硬化した際の硬度を高めることができ、耐熱性を高めることができ、さらに製膜性を高めることができる観点から、三種類を併用するのが好ましい。
(高分子量エポキシ樹脂)
本熱硬化性樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂として、或いは、熱硬化性樹脂と共に加える添加材料として、芳香族骨格を有し、かつ質量平均分子量が10,000以上である高分子量エポキシ樹脂を含有するのが好ましい。
このような高分子量エポキシ樹脂は、硬化して単独で樹脂マトリックスを形成することもできるが、低分子量のエポキシ樹脂、例えば上記「エポキシモノマー(M1)」および「エポキシモノマー(M2)」と組み合わせて使用することにより、本熱硬化性樹脂組成物を硬化した際の硬度を高めることができ、耐熱性を高めることができ、さらに製膜性を高めることができる。
当該高分子量エポキシ樹脂の好ましい一例として、例えばビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル呼格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有するフェノキシ樹脂を挙げることができる。
前記高分子量エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(1)で表される構造(以下、「構造(1)」と称す場合がある。)および下記式(2)で表される構造(以下、「構造(2)」と称す場合がある。)から選ばれる少なくとも一つの構造を有するエポキシ樹脂を挙げることができる。
Figure 2023145370000005
式(1)中、RおよびRはそれぞれ有機基を表し、少なくとも一方は分子量16以上の有機基であり、式(2)中、Rは2価の環状有機基を表す。 なお、「有機基」とは、炭素原子を含む基であれば如何なる基でも含むものであり、具体的に例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられ、それらはハロゲン原子や、ヘテロ原子を有する基や、他の炭化水素基で置換されていても構わない。以下においても同様である。
また、高分子量エポキシ樹脂として、下記式(3)で表される構造(以下、「構造(3)」と称す場合がある。)を有するエポキシ樹脂を挙げることができる。
Figure 2023145370000006
式(3)中、R、R、R、Rは、それぞれ分子量15以上の有機基を表す。 上記式(1)において、RおよびRのうちの少なくとも一方は、分子量が16以上、好ましくは分子量16~1000の有機基を表し、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基やフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、フルオレニル基等のアリール基を挙げることができる。RおよびRは共に分子量16以上の有機基であってもよく、一方が分子量16以上の有機基で、他方が分子量15以下の有機基又は水素原子であってもよい。好ましくは、一方が分子量16以上の有機基で他方が分子量15以下の有機基であり、特にいずれか一方がメチル基で、他方がフェニル基であることが、樹脂粘度等の取扱い性の制御が容易になることや、硬化物の強度の観点から好ましい。
上記式(2)において、Rは2価の環状有機基であり、ベンゼン環構造、ナフタレン環構造、フルオレン環構造等の芳香族環構造であってもよいし、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族環構造であってもよい。また、それらは独立に、炭化水素基、又はハロゲン原子等の置換基を有していても構わない。2価の結合部は、単一の炭素原子にある2価基であっても構わないし、異なる炭素原子にある2価基であっても構わない。好ましくは、炭素数6~100の2価の芳香族基、シクロプロパンやシクロヘキサンのような炭素数2~100のシクロアルカンに由来する基を挙げることができる。特に、下記式(4)で表される3,3,5-トリメチル-1,1-シクロへキシレン基(以下、「構造(4)」と称す場合がある。)が、樹脂粘度等の取扱い性の制御や硬化物の強度の観点から好ましい。
Figure 2023145370000007
上記式(3)において、R、R、R、Rは、それぞれ分子量15以上の有機基である。好ましくは分子量15~1000のアルキル基であり、特にR、R、R、Rのすべてがメチル基であることが、樹脂粘度等の取扱い性の制御や硬化物の強度の観点から好ましい。
高分子量エポキシ樹脂は、特に構造(1)および構造(2)のいずれか一方と、構造(3)とを含むエポキシ樹脂であることが、得られる硬化物である絶縁シートの吸湿性の低減と強度保持の性能の両立の観点から好ましい。
このような高分子量エポキシ樹脂は、一般的なビスフェノールA、ビスフェノールF骨格を有するエポキシ樹脂と比較して、疎水性の炭化水素および芳香族構造を多く含むため、高分子量エポキシ樹脂を配合することにより、得られる硬化物である絶縁シートの吸湿量を低減することができる。
また、吸湿量を低減するという観点から、高分子量エポキシ樹脂は疎水性構造である構造(1)、(2)、(3)を多く含むものが好ましく、具体的には質量平均分子量が10,000以上のエポキシ樹脂であることが好ましく、また質量平均分子量が20,000以上のエポキシ樹脂であることがより好ましく、さらに質量平均分子量が30,000以上、例えば30,000~40,000のエポキシ樹脂であることがより一層好ましい。
また、高分子量エポキシ樹脂はより疎水性であることが好ましく、かかる観点から、エポキシ成分のエポキシ当量は大きい方がよく、具体的には5,000g/当量以上が好ましく、7,000g/当量以上、例えば8,000~15,000g/当量がより好ましい。
なお、エポキシ樹脂の質量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されたポリスチレン換算の値である。
また、エポキシ当量とは、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量」と定義され、JIS K7236に準じて測定することができる。
このような高分子量エポキシ樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
高分子量エポキシ樹脂の含有量は、本熱硬化性樹脂組成物の固形分から無機フィラーを除いた樹脂成分100質量%に対し、10質量%以上30質量%未満であるのが好ましい。
高分子量エポキシ樹脂の含有量が10質量%以上であることで、無機フィラーの保持力と成膜性が保たれるから好ましく、30質量%未満であることで、硬化時の強度を保つことができるから好ましい。
かかる観点から、高分子量エポキシ樹脂の含有量は、本熱硬化性樹脂組成物の固形分から無機フィラーを除いた樹脂成分100質量%に対し、10質量%以上30質量%未満であるのが好ましく、中でも13質量%以上或いは29質量%以下、その中でも15質量%以上或いは28質量%以下であるのがさらに好ましい。
高分子量エポキシ樹脂及び多官能エポキシ樹脂を併用する場合、シートの成膜性とシート硬化物の弾性率の観点から、高分子量エポキシ樹脂の含有量100質量部に対し、多官能エポキシ樹脂の含有量は20質量部以上300質量部以下であるのが好ましく、中でも30質量部以上250質量部以下、その中でも40質量部以上200質量部以下であるのがさらに好ましい。
なお、高分子量エポキシ樹脂、エポキシモノマー(M1)およびエポキシモノマー(M2)以外のエポキシ樹脂であって、本熱硬化性樹脂組成物に含むことができるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール類をグリシジル化した各種ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル類をグリシジル化した各種ビフェニル型のエポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの2つの水酸基を有する芳香族性を有する化合物類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタンなどのトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなどのテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラックなどのノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂、およびシリコーン含有エポキシ樹脂から選ばれる等の1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
<有機溶剤>
本熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、固体エポキシ樹脂フィラー及び無機フィラーを均一に混合するために有機溶剤を含有することが好ましい。有機溶剤を含有する場合、有機溶剤は固体エポキシ樹脂フィラーを完全に溶解させないことが重要である。有機溶剤を含有する場合、熱硬化性樹脂組成物100質量%のうち、15質量%以上が好ましく、17質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。他方、50質量%以下が好ましく、48質量%以下がより好ましく45質量%以下がさらに好ましい。前記下限値以上であれば、熱硬化性樹脂、固体エポキシ樹脂フィラー及び無機フィラーを均一に混合することができる。他方、前記上限値以下であれば、熱硬化性樹脂組成物中のフィラーの沈降を抑制することができる。
本熱硬化性樹脂組成物が含有し得る有機溶剤の例としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。有機溶剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用して混合溶媒として用いてもよい。
<上記以外の含有物>
本熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、固体エポキシ樹脂フィラー、無機フィラー及び有機溶剤以外にも、必要に応じて、ポリマー、固体エポキシ樹脂フィラー以外の有機フィラー(「その他の有機フィラー」と称する)、硬化剤、硬化促進剤、分散剤、熱可塑性樹脂、有機溶剤、その他の成分を含有することができる。
(ポリマー)
本熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、質量平均分子量10,000以上の他のポリマーを含有してもよい。
このような高分子量ポリマーは、本熱硬化性樹脂組成物において、製膜性を高める役割を果たすことができる。
前記ポリマーとしては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂等のいずれであってもよい。
当該熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン又はポリエーテルケトン等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。また、上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂として、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミド、ベンゾオキサジン、ポリベンゾオキサゾールとベンゾオキサジンとの反応物などのスーパーエンプラと呼ばれている耐熱性樹脂群等を使用することもできる。また、スチレン、アルキルスチレンなどのスチレン系重合体、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの(メタ)アクリル系重合体、スチレン-メタクリル酸グリシジルなどのスチレン系-(メタ)アクリル系共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルベンザール、ポリビニルアセタールなどのポリビニルアルコール誘導体、ノルボルネン化合物を含有するノルボルネン系ポリマー、フェノキシ樹脂等も使用することができる。中でも、耐熱性と熱硬化性樹脂との相溶性の点で、フェノキシ樹脂が好適である。
上記熱可塑性樹脂及び上記熱硬化性樹脂はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の内のいずれか一方が用いられてもよく、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とが併用されてもよい。
質量平均分子量10,000以上のポリマー(高分子量エポキシ樹脂と併用する場合、該高分子量エポキシ樹脂も包含する)の含有量は、本熱硬化性樹脂組成物の固形分から無機フィラーを除いた樹脂成分100質量%に対し、10質量%以上30質量%未満であるのが好ましい。
前記ポリマーを10質量%以上含有することで、無機フィラーの保持力と成膜性が保たれ、30質量%未満の割合で含有することで、硬化時の強度を保つことができるから、好ましい。
かかる観点から、前記ポリマーの含有量は、本熱硬化性樹脂組成物の固形分から無機フィラーを除いた樹脂成分100質量%に対し、10質量%以上であるのが好ましく、中でも13質量%以上、その中でも15質量%以上であるのがさらに好ましい。他方、30質量%未満であるのが好ましく、中でも29質量%未満であるのがさらに好ましい。
(その他の有機フィラー)
上記の固体エポキシ樹脂フィラー以外に、絶縁性や熱伝導率、耐熱性を損なわない範囲で有機フィラーを含んでもよい。
この有機フィラーはエポキシ基を含まず、かつ、熱硬化性触媒に該当せず、有機成分で構成される室温で固体の成分である。
有機フィラーとしては、例えば、木粉等の天然物、変性されていてもよいセルロース、デンプン、各種有機顔料、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。具体例としては、アクリル樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子等がある。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
有機フィラーが含まれていると、樹脂組成物に適度な伸び性を付与し、発生する応力を緩和し、温度サイクル試験でのクラックの発生を押さえることができる場合がある。
有機フィラーの平均粒径の上限は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。有機フィラーの平均粒径が前記上限値以下であると、様々な厚さの放熱絶縁シートを作製する際に熱伝導率の低下の恐れを低減できる。
有機フィラーの粒径も、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
(硬化剤)
本熱硬化性樹脂組成物は硬化剤をさらに含有していてもよい。
硬化剤は、特に限定されない。例えば、フェノール樹脂、芳香族骨格又は脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物、該酸無水物の変性物が好ましい。
これらの好ましい硬化剤の使用により、耐熱性、耐湿性及び電気物性のバランスに優れた樹脂硬化物を得ることができる傾向にある。硬化剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化剤に用いる、フェノール樹脂は、特に限定されない。フェノール樹脂の具体例としては、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、t-ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ-o-ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ-m-ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ-p-ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。なかでも、樹脂組成物の柔軟性及び難燃性のよりいっそうの向上、樹脂硬化物の力学物性及び耐熱性向上のためには、剛直な主鎖骨格を持つノボラック型フェノール樹脂;トリアジン骨格を有するフェノール樹脂;が好ましい。また、樹脂組成物の柔軟性及び樹脂硬化物の靭性向上のためには、アリル基を有するフェノール樹脂が好ましい。
前記フェノール樹脂の市販品としては、明和化成社製のMEH-8005、MEH-8000H、NEH-8015;三菱ケミカル社製のYLH903;大日本インキ社製のLA-7052、LA-7054、LA-7751、LA-1356、LA-3018-50P;群栄化学工業社製のPSM6200、PS6313、PS6492等が挙げられる。
硬化剤に用いる、芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物、該酸無水物の変性物は、特に限定されない。具体的な例としては、サートマー・ジャパン社製のSMAレジンEF30、SMAレジンEF60;マナック社製のODPA-M、PEPA;新日本理化社製のリカジットMTA-10、リカジットTMTA、リカジットTMEG-200、リカジットTMEG-500、リカジットTMEG-S、リカジットTH、リカジットMH-700、リカジットMT-500、リカジットDSDA、リカジットTDA-100;大日本インキ化学社製のEPICLON B4400、EPICLON B570等が挙げられる。
脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物、該酸無水物の変性物は、多脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物、該酸無水物の変性物、テルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られる脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物、該酸無水物の変性物であることが好ましい。具体的な例としては、新日本理化社製のリカジットHNA、リカジットHNA-100;三菱ケミカル社製のエピキュアYH306、エピキュアYH309等が挙げられる。
硬化剤は、無機フィラー及び溶剤を除いた樹脂組成物100質量%に対して0~70質量%含まれることが好ましく、0~55質量%含まれることが特に好ましい。硬化剤の含有量が前記下限値以上であると、十分な硬化性能を得ることができる。硬化剤の含有量が前記上限値以下であると、硬化反応が効果的に進行し、架橋密度を向上させ、強度を増すことができ、さらに製膜性が向上する。
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、硬化剤の反応基の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂中のエポキシ基の量に対して、0当量であってもよく、好ましくは0.05当量以上、より好ましくは0.1当量以上、さらに好ましくは0.15当量以上、特に好ましくは0.2当量以上である。また、熱硬化性樹脂中のエポキシ基の量に対して、好ましくは2当量以下であり、より好ましくは0.9当量以下、さらに好ましくは0.6当量以下、特に好ましくは0.4当量以下である。
熱硬化性樹脂中のエポキシ基の量に対して、硬化剤の反応基の含有量が前記下限値以上であると、硬化速度の低減が抑制され、エポキシ基が残存し難くなり、樹脂硬化物の強度向上、吸湿性の抑制効果を得られる傾向にある。一方、前記上限値以下であると、樹脂硬化物の弾性率が高くなる傾向にある。
(硬化促進剤)
本熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、硬化速度や硬化物の物性などを調整するために、硬化促進剤として硬化触媒を含有することができる。
硬化触媒は、熱硬化性樹脂成分や硬化剤の種類に応じて適宜に選択するのが好ましい。
硬化触媒の具体例としては、鎖状または環状の3級アミン、有機リン系化合物、4級ホスホニウム塩類又は有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類等、イミダゾール類を挙げることができる。また、有機金属化合物類、4級アンモニウム塩類又は金属ハロゲン化物等を用いることもできる。上記有機金属化合物類としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫又はアルミニウムアセチルアセトン錯体等を挙げることができる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
中でも、特に保存安定性、耐熱性、硬化速度の観点から、イミダゾール類が好ましい。
好ましいイミダゾール系化合物としては、例えば2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等を挙げることができる。
特に融点が100℃以上、さらに好ましくは200℃以上のイミダゾール化合物を用いることで、保存安定性、密着性に優れた硬化物が得られる。さらに前述のイミダゾール環以外の窒素含有複素環化合物を含むものが接着性の観点からより好ましい。
硬化触媒は、有機溶剤及び無機フィラーを除く本熱硬化性樹脂組成物100質量%中に0.1~10質量%、特に0.1~5質量%含まれることが好ましい。硬化触媒の含有量が前記下限以上であると、硬化反応の進行を十分に促進して良好に硬化させることができ、前記上限以下であると、硬化速度が速すぎることがなく、従って、本熱硬化性樹脂組成物の保存安定性を良好なものとすることができる。
(分散剤)
分散剤は、水素結合性を有する水素原子を含む官能基を有することが好ましい。分散剤が水素結合性を有する水素原子を含む官能基を有することで、樹脂硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性をよりいっそう高めることができる。前記水素結合性を有する水素原子を含む官能基としては、例えば、カルボキシル基(pKa=4)、リン酸基(pKa=7)、フェノール基(pKa=10)等が挙げられる。
水素結合性を有する水素原子を含む官能基のpKaは、2~10が好ましく、3~9がより好ましい。pKaが2以上であると、分散剤の酸性度が適当な範囲となり、熱硬化性樹脂成分中のエポキシ樹脂の反応が抑制されやすくなる場合がある。したがって、未硬化状態の成形物が貯蔵された場合に、貯蔵安定性が向上する傾向にある。pKaが10以下であることで、分散剤としての機能が充分に果たされ、樹脂硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性が充分に高められる傾向にある。
水素結合性を有する水素原子を含む官能基としては、カルボキシル基、リン酸基が好ましい。この場合には、樹脂硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性をさらにいっそう高めることができる。
分散剤としては、具体的には、ポリエステル系カルボン酸、ポリエーテル系カルボン酸、ポリアクリル系カルボン酸、脂肪族系カルボン酸、ポリシロキサン系カルボン酸、ポリエステル系リン酸、ポリエーテル系リン酸、ポリアクリル系リン酸、脂肪族系リン酸、ポリシロキサン系リン酸、ポリエステル系フェノール、ポリエーテル系フェノール、ポリアクリル系フェノール、ポリシロキサン系フェノール等が挙げられる。分散剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、一般的に知られる如何なる熱可塑性樹脂も使用することが可能である。具体的には例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系ポリマー;ポリ乳酸樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン、ポリアミドアミン等のポリアミド;ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルベンザール、ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂;アイオノマー樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ABS樹脂、LCP(液晶ポリマー)、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、各種エラストマーが挙げられる。熱可塑性樹脂は、これらの例示した樹脂の変性品等であって構わない。
これらの熱可塑性樹脂としては、樹脂硬化物の樹脂相中で、均一になるものであってもよいし、相分離してその形状が認識されるものであっても構わない。相分離するものである場合、樹脂硬化物における熱可塑性樹脂の形状は、粒子状であっても構わないし、繊維状であっても構わない。また、熱可塑性樹脂は上述した有機フィラーとして含まれていてもよい。
熱可塑性樹脂が含まれていることで、樹脂組成物に適度な伸び性を付与し、発生する応力を緩和し、温度サイクル試験でのクラックの発生を押さえることができる場合がある。
熱可塑性樹脂及び前述の有機フィラーが熱硬化性樹脂に不溶である場合、前記樹脂組成物の粘度が上がることを防ぎ、例えば後述のようにシート状に成形する場合に、シート表面の平滑性を向上させることができる。この場合、熱硬化性樹脂に不溶な熱可塑性樹脂、有機フィラーを、大量の無機フィラーと同時に混合することで、熱可塑性で伸びのよくなる成分相を効率よく樹脂硬化物中に分散させることができ、応力を緩和しやすい。したがって、樹脂硬化物の弾性率を下げることなく、樹脂硬化物にクラックが発生することを抑制することができる。これらの理由から、熱可塑性樹脂として、ナイロン等のポリアミド樹脂、セルロース樹脂等が好ましく、特にナイロン等のポリアミド樹脂が好ましい。
(その他の成分)
本熱硬化性樹脂組成物は、上記成分以外に、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、熱硬化性樹脂組成物から絶縁シートを作製際に、場合により使用する無機フィラーと熱硬化性樹脂との界面接着強度を改善するシランカップリング剤等の表面処理剤、絶縁シートと金属板状材との密着強度を高める効果を期待できる添加剤、還元剤等の絶縁性炭素成分、粘度調整剤、チキソ性付与剤、難燃剤、酸化防止剤、着色剤、フェノールアクリレート系他のプロセス安定剤、熱安定剤、ヒンダードアミン系ラジカル補足剤(HAAS)、衝撃改良剤、加工助剤、金属不活化剤、銅害防止剤、帯電防止剤、増量剤等を挙げることができる。これらの添加剤を使用する場合の添加量は、通常、これらの目的に使用される量の範囲であればよい。
<<本熱硬化性樹脂シート>>
本熱硬化性樹脂組成物をシート状とした熱硬化性樹脂シート(「本熱硬化性樹脂シート」と称する)は、硬化前の状態のシートである。例えば、塗布工程を経たシート、塗布及び乾燥等の工程を経たシート等の硬化前の状態のシート状を呈する組成物を包含する。
本熱硬化性樹脂シートの厚みの下限値は、50μm以上が好ましく、60μm以上がより好ましく、70μm以上がさらに好ましい。他方、厚みの上限値は、400μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、250μm以下がさらに好ましい。
本熱硬化性樹脂シートの厚みを50μm以上とすることで、十分な耐電圧特性を確保できる。一方、400μm以下とすることで、特に熱伝導性樹脂シートをパワー半導体デバイス等に用いる場合、小型化や薄型化が達成可能であり、また、セラミックス材料による絶縁性熱伝導性層に比較して、薄膜化による厚み方向の熱抵抗低減の効果を得ることができる。
本熱硬化性樹脂シートは、熱硬化性樹脂シート100質量部のうち、0.01質量部以上5質量部未満、中でも2質量部未満の割合で有機溶剤を含む場合がある。
有機溶剤を含有する本熱硬化性樹脂組成物を用いて本絶縁シートを作製した場合、乾燥工程を経たとしても、この程度の有機溶剤が本絶縁シート中に残留する可能性がある。
<<本絶縁シート>>
本熱硬化性樹脂シートを硬化してなるシートは、絶縁性と高熱伝導性を有しているため、絶縁シートとして機能する。よって、本熱硬化性樹脂シートが硬化してなるシートを「本絶縁シート」と称する。
本絶縁シートは、DSC(示差走査熱量測定)で40℃から250℃まで10℃/minで昇温した際に得られる発熱ピークが10J/g以下であるのが好ましい。
本絶縁シートの厚さは、特に限定するものではない。好ましくは50μm以上であり、より好ましくは80μm以上であり、さらに好ましくは100μm以上である。また、樹脂硬化物の厚さは、好ましくは400μm以下であり、より好ましくは300μm以下である。本絶縁シートの厚さが前記下限値以上であると、耐電圧特性が得られ、絶縁破壊電圧が向上する傾向にある。また、樹脂硬化物の厚さが前記上限値以下であると、デバイスの小型化、薄型化を達成でき、得られる絶縁シートの熱抵抗を抑制できる傾向にある。
<<本熱伝導性樹脂シート及び本絶縁シートの製造方法>>
次に、本熱伝導性樹脂シート及び該シートの硬化物としての本絶縁シートの製造方法の一例について説明する。
本熱硬化性樹脂組成物をシート状に製膜して本熱伝導性樹脂シートを作製し(この工程を「製膜工程」と称する)、必要に応じて乾燥し(この工程を「乾燥工程」と称する)、加圧するとともに加熱して(この工程を「加圧加熱工程」と称する)、本絶縁シートを作製することができる。
<製膜工程>
本熱硬化性樹脂組成物を調製し、撹拌、混練によって均一に混合する。
混合には、例えば、ミキサー、ニーダー、単軸混練機、二軸混練機等の一般的な混練装置を用いることができ、混合に際しては、必要に応じて加熱してもよい。
各配合成分の混合順序も、反応、沈殿物が発生する等特段の問題がない限り任意である。例えば熱硬化性樹脂成分を有機溶剤(例えば、メチルエチルケトン)に混合、溶解させて樹脂液を調製し、得られた樹脂液に、無機フィラー、固体エポキシ樹脂フィラー、その他の成分を十分混合したものを加えて混合し、その後、粘度調整のためにさらに有機溶剤を加えて混合した後に、さらに、硬化剤、硬化促進剤、分散剤等の添加剤を加えて混合する方法が挙げられる。
調製した本熱硬化性樹脂組成物を、シート状に成形する方法は一般に用いられる方法を用いることができる。
スラリー状の熱硬化性樹脂組成物をシート状に成形する方法としては、ドクターブレード法、溶剤キャスト法、押し出し成膜法等の方法が挙げられる。
上記塗布法によりシート状に製膜する場合は、先ず基材の表面に、スラリー状の本熱硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する。即ち、スラリー状の本熱硬化性樹脂組成物を用いて、ディップ法、スピンコート法、スプレーコート法、ブレード法、その他の任意の方法で基材上に塗膜を形成する。
スラリー状の本熱硬化性樹脂組成物の塗布には、スピンコーター、スリットコーター、ダイコーター、ブレードコーターなどの塗布装置を用いることができる。このような塗布装置により、基材上に所定の膜厚の塗膜を均一に形成することが可能である。
なお、基材としては、後述の銅板ないし銅箔やPETフィルムが一般的に用いられるが、何ら限定されるものではない。
<乾燥工程>
上記のようにシート状に製膜した本熱硬化性樹脂組成物は、溶剤や低分子成分の除去のために、通常10~150℃、好ましくは25~120℃、より好ましくは30~110℃の温度で乾燥する。
乾燥温度が上記上限値以下であることで、本熱硬化性樹脂組成物中の樹脂の硬化が抑制され、その後の加圧加熱工程でシート状の熱硬化性樹脂組成物中の樹脂が流動してボイドを除去しやすくなる傾向がある。乾燥温度が上記下限値以上であることで、効果的に溶剤を取り除くことができ生産性が向上する傾向にある。
乾燥時間は、特に限定されず、本熱硬化性樹脂組成物の状態、乾燥環境等によって適宜調整することができる。乾燥時間は、好ましくは1分以上であり、より好ましくは2分以上、さらに好ましくは5分以上である。乾燥時間は、好ましくは24時間以下であり、より好ましくは10時間以下であり、さらに好ましくは4時間以下であり、特に好ましくは2時間以下である。
乾燥時間が上記下限値以上であることで、十分に溶剤が除去でき、残留溶剤が樹脂硬化物内のボイドとなることを抑制できる傾向にある。乾燥時間が上記上限値以下であることで、生産性が向上し、製造コストを抑制できる傾向にある。
この際の乾燥手段としては、例えばホットプレート、熱風炉、IR加熱炉、真空乾燥機、高周波加熱機等の公知の加熱方法で乾燥すればよい。
<加圧加熱工程>
本工程では、無機フィラー同士を接合させヒートパスを形成する目的、シート内のボイド、空隙をなくす目的、基材との密着性を向上させる目的等から、熱硬化性樹脂シートに加圧を行うとともに、熱硬化性樹脂を硬化させるために加熱を行う。
また、本熱硬化性樹脂シートにおいては、この加圧加熱工程で、固体エポキシ樹脂フィラーが融解し、融解した固体エポキシ樹脂フィラーが拡散してボイドを塞いでボイドも除去し、さらに、融解した固体エポキシ樹脂フィラーは、熱硬化性樹脂乃至それが架橋してなる熱硬化性樹脂マトリックス中に拡散し、固体エポキシ樹脂フィラーのエポキシ基が熱硬化性樹脂マトリックスの官能基と反応することで、均一でより強固な樹脂マトリックスを形成する。
加圧加熱工程では、荷重は特に限定されない。基材上の熱硬化性樹脂シートに2MPa以上の荷重をかけて実施することが好ましく、4MPa以上がいっそう好ましく、5MPa以上がより好ましい。荷重が前記上限値以下であると、無機フィラーの二次粒子が破壊することなく、空隙等がない高い絶縁性を有する絶縁シートを得ることができる。また、荷重が前記下限値以上であると、無機フィラー間の接触が良好となり、熱伝導パスを形成しやすくなるため、高い熱伝導性を有する絶縁シートを得ることができる。
加圧加熱工程では、基材上の熱硬化性樹脂シートの加熱温度は特に限定されない。加熱温度は、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。加熱温度は300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。この加熱温度が前記数値範囲内であると、塗膜中の樹脂の溶融粘度を低下させることができ、樹脂の硬化反応を効果的に進行させる。さらに、固体エポキシ樹脂フィラーが融解することで、熱硬化性樹脂シート及び絶縁シートのボイド、空隙を効率よく低減することができる。
また、前記上限値以下で加熱すると、熱硬化性樹脂シート及び絶縁シート中の有機成分の分解、劣化、残留溶剤により発生するボイドを抑制できる傾向にある。
加圧加熱工程の時間は、特に限定されない。加圧加熱工程の時間は、30秒以上が好ましく、1分以上がより好ましく、3分以上がさらに好ましく、5分以上が特に好ましい。
また、加圧加熱工程の時間は、5時間以下が好ましく、4時間以下がより好ましく、3時間以下がさらに好ましい。
加圧時間が前記上限値以下であると、絶縁シートの製造時間を抑制でき、生産コストを短縮できる傾向にある。一方、前記下限値以上であると、絶縁シート内の空隙、ボイドを十分に取り除くことができ、熱伝導性、耐電圧特性を向上できる傾向にある。
<<本絶縁シートの用途>>
本絶縁シートは、絶縁性が要求される各種用途に利用することができる。
次に、本絶縁シートと金属部とを有する複合成形体(「本複合成形体」とも称する)の例として、放熱積層体、放熱性回路基板、半導体装置、パワーモジュールについて説明する。但し、本絶縁シートの用途がこれらに限定されるものではない。
<放熱積層体>
本発明の実施形態の一例に係る放熱積層体(「本放熱積層体」と称する)は、本絶縁シートを備えた積層体であればよい。
本放熱積層体の一例として、本絶縁シートの一方の表面に、放熱性材料を含む放熱用金属層を積層したものを挙げることができる。
当該放熱性材料は、熱伝導性の良好な材質から成るものであれば特段限定されない。中でも、積層構成での熱伝導性を高くするために、放熱用金属材料を用いることが好ましく、中でも平板状の金属材料を用いることがより好ましい。
金属材料の材質は、特に限定されない。中でも、熱伝導性が良く、かつ比較的廉価である点から、銅板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等が好ましい。
本絶縁シートと放熱用金属層との積層一体化に関しては、バッチプロセスであるプレス成形を好ましく用いることができる。この場合のプレス設備やプレス条件等は、前述の本絶縁シートを得るための加圧加熱工程の範囲と同一である。
<放熱性回路基板>
本発明の実施形態の一例に係る放熱性回路基板(「本放熱性回路基板」と称する)は、本絶縁シートを備えたものであればよい。
本放熱性回路基板の一例として、本絶縁シートの一方の表面に、上記放熱用金属層を積層し、前記本絶縁シートの放熱用金属層とは他方の表面に、例えばエッチング処理等により回路基板を形成してなる構成を有するものを挙げることができる。具体的には、「放熱用金属層/本絶縁シート/導電回路」で一体化されたものがより好ましい。回路エッチング前の状態としては、例えば「放熱用金属層/本絶縁シート/導電回路形成用金属層」の一体化構成で、導電回路形成用金属層が平板状であり、本絶縁シートの片面側全表面に形成されたものや、一部面積で形成されたものが挙げられる。
導電回路形成用金属層の材料は、特に限定されない。中でも、一般的には電気伝導性やエッチング性の良さ、コスト面などの観点から、厚み0.05mm以上1.2mm以下の銅の薄板により形成されることが好ましい。
<半導体装置>
本発明の実施形態の一例に係る半導体装置(「本半導体装置」と称する)は、本複合成形体、例えば本放熱性回路基板を備えたものであればよい。
本半導体装置の一例として、本放熱性回路基板上に、予め個片化された半導体チップが搭載されたシリコンウエハー又は再配線層を形成してなる構成を備えたものを挙げることができる。
<パワーモジュール>
本発明の実施形態の一例に係るパワーモジュール(「本パワーモジュール」と称する)は、本絶縁シートを備えたものであればよい。
本パワーモジュールの一例として、本放熱性回路基板にパワー半導体デバイスを実装したものを挙げることができる。
このパワー半導体デバイス装置において、本絶縁シート以外のアルミ配線、封止材、パッケージ材、ヒートシンク、サーマルペースト、はんだというような部材は従来公知の部材を適宜採用できる。
<<語句の説明>>
本発明において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」あるいは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)あるいは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」あるいは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
本発明において「シート」とは、シート、フィルム、テープを概念的に包含するものである。
以下、実施例により本発明を更に詳説する。但し、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
<使用材料>
実施例及び比較例における使用材料は以下の通りである。
(無機フィラー)
・無機フィラーA:国際公開第2015/119198号に基づいて製造されたカードハウス構造を有する球状の窒化ホウ凝集粒子(平均粒子径(D50)45μm)、破壊強度 6MPa,弾性率 65MPa
・無機フィラーB:アルミナ球状粒子、平均粒子径(D50)10μm
(固体エポキシ樹脂フィラー)
・固体エポキシ樹脂フィラーC(大阪有機化学工業社製E-201、芳香族骨格を有し、1分子中に少なくとも2つ以上のグリシジル基を含有するエポキシ樹脂、アダマンタン誘導体、質量平均分子量が約500、融点190℃、149メッシュ篩下分)
・固体エポキシ樹脂フィラーD(三菱ケミカル社製YL6121HA、芳香族骨格を有し、1分子中に少なくとも2つ以上のグリシジル基を含有するエポキシ樹脂、質量平均分子量が約300、融点約130℃、149テフロンメッシュ篩下分)
(有機フィラー)
・有機フィラーE(東レ製ナイロン粒子、体積平均粒子径5μm)
(熱硬化性樹脂)
・エポキシ樹脂F:エポキシモノマー(M1)(芳香族骨格を有し、質量平均分子量が約400である、2官能のエポキシ樹脂。)
・エポキシ樹脂G:エポキシモノマー(M2)(芳香族骨格を有さず、一分子当たりにグリシジル基を4個含有する多官能エポキシ樹脂(質量平均分子量500以下)、40℃、1気圧において液体。)
・エポキシ樹脂H:重量平均分子量580、2官能の非芳香族エポキシ樹脂、エポキシ当量270g/eq
・エポキシ樹脂I:重量平均分子量290、3官能の芳香族エポキシ樹脂、エポキシ当量97g/eq
・エポキシ樹脂J:重量平均分子量390、3官能の非芳香族エポキシ樹脂、エポキシ当量130g/eq
・高分子量エポキシ樹脂K:上記構造(2)(R=構造(4))および構造(3)(R,R,R,R=メチル基)を有する高分子量エポキシ樹脂(ポリスチレン換算の質量平均分子量:30,000、エポキシ当量:9,000g/当量)
・高分子量エポキシ樹脂L:ビスフェノールF型エポキシ樹脂 重量平均分子量60000、エポキシ当量9840g/eq
(その他の成分)
・硬化剤M:フェノール樹脂系硬化剤「MEH-8000H」(明和化成社製)
・硬化触媒N:2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-17’)]-エチル-s-トリアジン(「2E4MZ-A」、四国化成社製、窒素原子を含有する複素環構造としてトリアジン環を有する化合物。)
融点:215~225℃
・硬化触媒O:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(「2PHZ-PW」、四国化成社製)
融点:230℃以上(230℃分解)
・硬化触媒P:イミダゾール系硬化促進剤「C11Z-CN」四国化成社製
・有機溶剤:100%シクロヘキサノン(CHN)、100%メチルエチルケトン(MEK)、100%シクロヘキサノンと100%メチルエチルケトンを1:1の質量割合で混合して混合溶剤(MEK/CHN)
[無機フィラーの平均粒子径(D50)の測定]
無機フィラーの粒子の平均粒子径(D50)は、分散安定剤としてヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する純水媒体中に無機フィラーを分散させた試料に対して、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等を用いて測定する湿式測定法、Malvern社製「Morphologi」を用いて乾式測定法により体積基準粒度分布を測定し、得られた粒度分布から求めた及び累積体積50%粒子径(平均粒子径D50)である。
[凝集無機フィラーの破壊強度及び弾性率の測定]
凝集無機フィラーの破壊強度及び弾性率の測定は、以下の手法により実施した。
凝集無機フィラーの破壊強度は、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、製品名「MCT-510」)を用いて測定した。
微小圧縮試験機の下部に設置された加圧板の上に試料を極微量散布し、1粒子ずつ圧縮試験を行い、粒子が破壊した時の破壊試験力と粒子の粒子径から下記の式を用いて破壊強度を求めた。5粒子について測定を行い、その平均値を凝集無機フィラーの破壊強度とした。
Cs=2.48P/πd
(「Cs」は破壊強度(MPa)であり、「P」は破壊試験力(N)であり、「d」は粒子径(mm)である。)
通常、破壊強度の算出は、破壊点の試験力を使用して計算するが、破壊点が明確でない(例えば、試料は変形するが急激な破壊を起こさない)場合、参考強度として10%の変形を与えた時の試験力を使用して10%強度として比較に用いることとした。10%強度は下記の式より算出した。
Cx=2.48P/πd
(「Cx」は10%強度(MPa)であり、「P」は粒子径の10%変位時の試験力(N)であり、「d」は粒子径(mm)である。)
凝集無機フィラーの弾性率は、破壊強度の測定に用いた装置を用い、破壊が起きた時点の試験力とその時点の圧縮変位から下記の式より算出した。
E=3×(1-ν)×P/4×(d/2)1/2×Y3/2(「E」は弾性率(MPa)であり、「ν」はポアソン比であり、「P」は破壊試験力(N)であり、「d」は粒子径(mm)であり、「Y」は圧縮変位(mm)である、なお、ポアソン比は一定(0.13)と仮定した。)
[固体エポキシ樹脂フィラーの溶剤に対する溶解試験]
25℃のシクロヘキサノン(CHN)100質量部に、固体エポキシ樹脂フィラーを20質量部加えて、その温度を維持しつつ、マグネチックスターラーにて8時間攪拌し、溶解したか否かを目視にて判定した。
25℃のメチルエチルケトン(MEK)100質量部に、固体エポキシ樹脂フィラーを5質量部加えて、その温度を維持しつつ、マグネチックスターラーにて8時間攪拌し、溶解したか否かを目視にて判定した。
25℃のシクロヘキサノンとメチルエチルケトン(MEK/CHN)を1:1の質量割合で混合してなる混合溶剤100質量部に、固体エポキシ樹脂フィラーを10質量部加えて、その温度を維持しつつ、マグネチックスターラーにて8時間攪拌し、溶解したか否かを目視にて判定した。
〇:溶解したもの
×:溶解しなかったもの
Figure 2023145370000008
<実施例1-8及び比較例1-3>
自転公転式撹拌装置を用いて、無機フィラーA、B、固体エポキシ樹脂フィラーC、D、有機フィラーE、エポキシ樹脂F、G、H、I、J、高分子量エポキシ樹脂K、L、硬化剤M、硬化触媒N、O、Pを、表2に示す質量比で、メチルエチルケトンとシクロヘキサノンの混合溶剤に加えて混合し、塗布スラリーとしての熱硬化性樹脂組成物を調製した。この際、固形分濃度が70.5質量%となるようにメチルエチルケトンとシクロヘキサノンを用いた。
調製した熱硬化性樹脂組成物を、ドクターブレード法でPET製基材(厚さ50μm)に塗布して、60℃で120分間加熱乾燥し、厚さ180μmのシート状に成形して熱硬化性樹脂シート(サンプル)を得た。
<比較例4>
実施例1の組成において、固形分濃度が90質量%となるようにメチルエチルケトンとシクロヘキサノンを用いた。
調製した熱硬化性樹脂組成物を、ドクターブレード法でPET製基材(厚さ50μm)に塗布を試みたが、使用した有機溶剤が少なかったため、熱硬化性樹脂が均一に溶解せず、かつフィラー同士が凝集することにより、均一な膜厚の熱硬化性樹脂シート(サンプル)を作製することはできなかった。
<<熱硬化性樹脂シートの評価>>
上記実施例・比較例で得た熱硬化性樹脂シート(サンプル)について、次のように評価した。
<熱伝導率>
(熱伝導率の測定用の絶縁シートの作製)
実施例・比較例で得た熱硬化性樹脂シート(サンプル)を2軸延伸PETフィルム(厚さ50μm)で挟み、120℃、5MPaで40分間、加熱及び加圧を行い、シート状樹脂硬化物を得た。また、実施例・比較例で得た熱硬化性樹脂シート(サンプル)を2枚重ねて又は3枚重ねて又は4枚重ねて、2軸延伸PETフィルム(厚さ50μm)で挟み、上記同様に加圧することで、厚みの異なる4種類のシート状樹脂硬化物を、熱伝導率測定用の樹脂硬化物として作製した。
(熱伝導率の測定)
上記のように作製した熱伝導率測定用の樹脂硬化物を、それぞれMentor Graphics社製「T3ster DynTIM Tester」を用いて熱抵抗を測定した。熱伝導率は、4種類の樹脂硬化物のそれぞれの膜厚と測定した熱抵抗値の関係より、シート厚さ方向の熱伝導率として算出した。測定時のプローブサイズはφ12.8mm、固定圧力は3400kPa、測定時間は300secとした。サンプルとプローブの密着性を上げるために信越化学工業社製「OIL COMPOUND (品名:G-747)」を用いた。
(判定の基準)
〇(合格):熱伝導率が10W/mK以上の場合
×(不合格):熱伝導率が10W/mK未満の場合
<絶縁破壊電圧>
(絶縁破壊電圧測定用の複合成型体の作製)
実施例・比較例で得た熱硬化性樹脂シート(サンプル)を、厚さ2,000μmの銅板と、離型層を備えた2軸延伸PETフィルム(厚さ50μm)で挟み、120℃、5MPaで30分間加圧を行い、続いて昇温し、175℃、5MPaで30分間加圧を行い、さらに昇温し、200℃、5MPaで30分間加圧を行い、絶縁破壊電圧測定用の複合成型体を得た。
(絶縁破壊電圧評価)
上記のように作製した絶縁破壊電圧測定用の複合成型体を、フロリナート(品番:3M社製FC-40)中に浸漬させ、交流電圧を印加した。測定条件は0.5kVstep、各step60secとし、絶縁破壊した時の印加電圧を絶縁破壊電圧とした。測定時のプローブサイズはφ25mmとした。
(判定の基準)
〇(合格):絶縁破壊電圧が35kV/mm以上の場合
×(不合格):絶縁破壊電圧が35kV/mm未満の場合
<リフロー耐性>
(リフロー試験用の複合成形体の作製)
事前に#120ヤスリにより100回ずつ表面を粗化処理した厚さ500μm、2,000μmの銅板を各1枚ずつで、実施例・比較例で得た熱硬化性樹脂シート(サンプル)を挟み、120℃、5MPaで30分間加圧を行い、続いて昇温し、175℃、5MPaで30分間加圧を行い、リフロー試験用の複合成形体を得た。
前記で得られた複合成形体を所定の手法にてエッチング処理することで、500μmの銅板をパターニングした。パターンはφ25mmの円状パターンが2カ所残存するようにした。
(リフロー試験による評価)
上記のように作製したリフロー試験用の複合成形体を、恒温恒湿機SH-221(エスペック社製)を用いて85℃、85%RHの環境に3日保管した後、30分以内に窒素雰囲気下において室温から290℃まで12分で昇温し、290℃で10分保持した後、室温まで冷却した(吸湿リフロー試験)。その後、超音波映像装置FineSAT(FS300III)(日立パワーソリューションズ製)により、銅板と樹脂硬化物の界面を観察した。測定には周波数50MHzのプローブを用い、ゲイン30dB、ピッチ0.2mmとし、試料を水中に置いて実施した。以下の基準で評価した。
(判定の基準)
〇(合格):界面剥離が認められない。
×(不合格):界面に剥離が認められた。
<総合判定>
以下の基準で、総合的に判定した。
〇(合格):上記3つの評価全てが合格基準を満足している。
×(不合格):上記3つの評価のうち一つでも合格基準を満足していない。
Figure 2023145370000009
上記実施例・比較例の結果、並びに、これまで本発明者が行った試験結果から、窒化ホウ素凝集粒子を含む無機フィラーと共に、常温常湿下では固体であり、加圧加熱工程時の加熱により融解する固体エポキシ樹脂フィラーと熱硬化性樹脂と有機溶剤とを配合することにより、塗布などの工程により熱硬化性樹脂シートを容易に作製することができ、加圧加熱工程を経て絶縁シートとした際、絶縁性と高熱伝導性を両立するとともに、リフロー耐熱性を高めることができることが分かった。
このように固体エポキシ樹脂フィラーを配合したことにより、絶縁シートとした際に絶縁性と共に、耐熱性特にリフロー耐性が高まる理由として、次のような作用機序が推察される。熱硬化性樹脂組成物から作製した熱硬化性樹脂シート中の固体エポキシ樹脂フィラーがシート中にフィラー状のまま分散する。そして、前記固体エポキシ樹脂フィラーが加圧加熱工程において融解して拡散することで、ボイドを塞ぎ、ボイドを消失させることができるため、絶縁性を高めることができる。さらに、融解した固体エポキシ樹脂フィラーは、熱硬化性樹脂乃至それが架橋してなる熱硬化性樹脂マトリックス中に拡散し、固体エポキシ樹脂フィラーのエポキシ基が熱硬化性樹脂マトリックスの官能基と反応することで、均一でより強固な樹脂マトリックスを形成し、それによって、当該樹脂マトリックスと、無機フィラーなどの他の含有成分との線膨張係数の差を小さくすることができ、耐熱性、特にリフロー耐熱性を高めることができるものと推察される。
このような作用機序からすると、熱硬化性樹脂の種類、窒化ホウ素凝集粒子以外の無機フィラーの種類などにかかわらず、実施例と同様の効果を得ることができると理解することができる。

Claims (18)

  1. 熱硬化性樹脂と、芳香族骨格を有する固体エポキシ樹脂フィラーと、窒化ホウ素凝集粒子を含む無機フィラーと、有機溶剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、
    前記固体エポキシ樹脂フィラーは、1分子中に少なくとも2つ以上のグリシジル基を含有し、かつ融点が100℃以上であり、
    前記有機溶剤は、熱硬化性樹脂組成物100質量%のうち15質量%~50質量%の範囲内で含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
  2. 前記有機溶剤がシクロヘキサノン、メチルエチルケトン、又は、シクロヘキサノン及びメチルエチルケトンの混合溶剤であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 前記固体エポキシ樹脂フィラーは、25℃のシクロヘキサノンに加えてマグネチックスターラーにて8時間攪拌した際、シクロヘキサノン100質量部に対して20質量部以上溶解しないものであることを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 前記固体エポキシ樹脂フィラーは、25℃のメチルエチルケトンに加えてマグネチックスターラーにて8時間攪拌した際、メチルエチルケトン100質量部に対して5質量部以上溶解しないものであることを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 前記固体エポキシ樹脂フィラーは、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンを1:1の質量割合で混合してなる25℃の混合溶剤に加えてマグネチックスターラーにて8時間攪拌した際、前記混合溶剤100質量部に対して10質量部以上溶解しないものであることを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. 前記固体エポキシ樹脂フィラーは、質量平均分子量が1000以下である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. 前記固体エポキシ樹脂フィラーは、融点が250℃未満であることを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. 前記固体エポキシ樹脂フィラーが、アダマンタンから誘導される構造を有する、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  9. 前記窒化ホウ素凝集粒子がカードハウス構造を形成していることを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  10. 前記固体エポキシ樹脂フィラーを0.01質量%以上30質量%以下の範囲で含有し、前記無機フィラーを60質量%以上80質量%以下の範囲で含有することを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  11. 前記熱硬化性樹脂として、芳香族骨格を有し、かつ質量平均分子量が700以下であるエポキシモノマー(M1)と、芳香族骨格を有さず、かつ質量平均分子量が800以下であるエポキシモノマー(M2)とを含有することを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  12. 前記エポキシモノマー(M2)が、40℃、1気圧において液体であることを特徴とする、請求項11に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  13. 前記エポキシモノマー(M2)が、1分子中に少なくとも3つ以上のグリシジル基を有することを特徴とする、請求項11に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  14. 前記熱硬化性樹脂として、芳香族骨格を有し、かつ質量平均分子量が10,000以上である高分子量エポキシ樹脂を含有する、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  15. 請求項1~14の何れか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物から作製した熱硬化性樹脂シート。
  16. 請求項15に記載の熱硬化性樹脂シートを硬化してなる絶縁シート。
  17. 請求項16に記載の絶縁シートと金属部とを有する複合成型体。
  18. 請求項17に記載の複合成型体を有する半導体装置。
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