JP2023142625A - クロトンアルデヒドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 着色度の小さい高品質のクロトンアルデヒドを工業的に効率よく製造する方法を提供する。【解決手段】 本開示のクロトンアルデヒドの製造方法では、クロトンアルデヒド、水及び色相悪化成分を含む粗クロトンアルデヒドを蒸留して精製クロトンアルデヒドを得るクロトンアルデヒドの製造方法であって、蒸留塔の塔頂蒸気凝縮液を2層に分液させ、下層の還流比を2.7以下とすることにより、上層からハーゼン色数150以下の精製クロトンアルデヒドを得る。前記下層の還流比を1.2以下とすることにより、上層からハーゼン色数100以下の精製クロトンアルデヒドを得てもよい。前記粗クロトンアルデヒドは、アルドール類、アルドキサン、アルデヒド類(クロトンアルデヒドを除く)、及び、カルボン酸若しくはその塩からなる群より選択された少なくとも1種を含んでいてもよい。【選択図】 図1

Description

本開示は、クロトンアルデヒドの製造方法に関する。
クロトンアルデヒドは、ブチルアルデヒド、ブタノール、3-メトキシブタノール、クロチルアルコール、クロトン酸、ソルビン酸などの各種化学品の原料、中間体として有用である。クロトンアルデヒドの製造法として、アセトアルドール、又は、アルドキサンやパラアセトアルドール等のアセトアルドール誘導体を脱水反応に付す方法が知られている。
特開昭57-163333号公報には、アセトアルドール及びその誘導体を、触媒として陽イオン交換樹脂を用いて脱水して、クロトンアルデヒドを得る方法が開示されている。この文献では、反応液を常圧下、バッチ蒸留し、全量留出させてクロトンアルデヒドを得ている。留出液中の低分子量重合物(油状物質)の収率は0.1-0.2%、クロトンアルデヒドの収率は97-98%と記載されている。しかしながら、この文献には、蒸留条件の記載はなく、得られたクロトンアルデヒドの品質や不純物についての記載もない。
特開昭62-195341号公報には、アセトアルデヒドから、通常の二段法(アセトアルドールを経由する方法)ではなく、一段でクロトンアルデヒドを製造する方法、すなわち、炭素数5以上の高級アルコールのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも一種の金属塩触媒の存在下に、80~200℃の反応温度下で、アセトアルデヒドを二量化-脱水反応させ、生成するクロトンアルデヒド及び水を含有する反応生成物を反応域から蒸発させ、蒸気状態で取り出す方法が開示されている。より詳細には、反応槽からのベーパーを第1蒸留塔に仕込み、塔頂から未反応アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド及び水等の反応生成物を留出させ、その蒸気を部分凝縮器に導き、アセトアルデヒドは凝縮させず気体のまま抜き取って反応槽にリサイクルする。そして、前記部分凝縮器でクロトンアルデヒド及び水を凝縮させ、これをデカンターで二液層に分離し、上層(有機相)の一部は塔頂へ還流し、大部分は留出させて第2蒸留塔に供給している。第1蒸留塔の下層(水相)から生成水を抜き出し、塔底から高沸点成分を抜き取っている。第2蒸留塔はクロトンアルデヒドを精留する条件で操作し、塔頂から低沸点成分および水を留出させ、側流から製品クロトンアルデヒドを取得している。塔底缶出液はクロトンアルデヒドを回収するため、第1蒸留塔に再循環している。しかしながら、この文献には、第1蒸留塔及び第2蒸留塔のいずれについても蒸留条件の記載はなく、得られたクロトンアルデヒドの品質、高沸点成分及び低沸点成分の具体的内容についても記載がない。
特開昭57-163333号公報 特開昭62-195341号公報
クロトンアルデヒドは各種化学品の原料や中間体として利用されるようになり、着色度が小さく純度の高い製品が求められるようになっている。しかしながら、上記文献には、クロトンアルデヒドを取得する際の精製条件の記載がなく、反応で副生する高沸点成分、低沸点成分についての記載もない。また、上記文献には製品クロトンアルデヒドの品質を向上させるという課題もない。したがって、これらの文献から着色度の小さい高品質のクロトンアルデヒドをいかにして工業的に効率よく製造しうるかを知ることはできない。
なお、クロトンアルデヒドの品質としては、ハーゼン指数(APHA)150以下が好ましく、特に100以下が好ましい。また、純度は86%以上が好ましく、特に88%以上が好ましい。
したがって、本開示の目的は、着色度の小さい高品質のクロトンアルデヒドを工業的に効率よく製造する方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するため、クロトンアルデヒド精製塔の蒸留条件と製品クロトンアルデヒドの着色度との関係について鋭意検討した結果、クロトンアルデヒド精留塔において、塔頂蒸気凝縮液の下層(水相)の還流比を特定値以下にするか、或いは、上層(有機相;クロトンアルデヒド相)中の特定不純物成分の含有量を指標として、これを特定値以下にすると、製品クロトンアルデヒドに混入する色相悪化成分の量を低減でき、上層から得られるクロトンアルデヒドの着色度を小さくできることを見出し、本開示を完成させた。
すなわち、本開示は、クロトンアルデヒド、水及び色相悪化成分を含む粗クロトンアルデヒドを蒸留して精製クロトンアルデヒドを得るクロトンアルデヒドの製造方法であって、蒸留塔の塔頂蒸気凝縮液を2層に分液させ、下層の還流比2.7以下で蒸留することにより、上層からハーゼン色数150以下の精製クロトンアルデヒドを得るクロトンアルデヒドの製造方法(以下、「製造方法1」と称する場合がある)を提供する。
上記製造方法1において、前記下層の還流比1.2以下で蒸留することにより、上層からハーゼン色数100以下の精製クロトンアルデヒドを得てもよい。
また、上記製造方法1において、前記粗クロトンアルデヒドが、アルドール類、アルドキサン、アルデヒド類(クロトンアルデヒドを除く)、及び、カルボン酸若しくはその塩からなる群より選択された少なくとも1種を含んでいてもよい。
本開示は、また、クロトンアルデヒド、水、色相悪化成分、クロトンアルデヒド二量体及び2,4,6-オクタトリエナールを含む粗クロトンアルデヒドを蒸留して精製クロトンアルデヒドを得るクロトンアルデヒドの製造方法であって、蒸留塔の塔頂蒸気凝縮液を2層に分液させ、上層中のクロトンアルデヒド二量体及び2,4,6-オクタトリエナールの総含有量を3.9%以下にすることにより、上層からハーゼン色数150以下の精製クロトンアルデヒドを得るクロトンアルデヒドの製造方法(以下、「製造方法2」と称する場合がある)を提供する。
上記製造方法2において、前記上層中のクロトンアルデヒド二量体及び2,4,6-オクタトリエナールの総含有量を3.6%以下にすることにより、上層からハーゼン色数100以下の精製クロトンアルデヒドを得てもよい。
また、上記製造方法2において、前記粗クロトンアルデヒドが、アルドール類、アルドキサン、アルデヒド類(クロトンアルデヒド、クロトンアルデヒド二量体及び2,4,6-オクタトリエナールを除く)、及び、カルボン酸若しくはその塩からなる群より選択された少なくとも1種を含んでいてもよい。
本開示によれば、クロトンアルデヒドを精留する蒸留塔において、塔頂蒸気凝縮液の下層の還流比を一定値以下にするか、又は塔頂蒸気凝縮液の上層中の特定不純物成分の含有量を特定値以下にするという簡易な手段により、着色度の小さい高品質のクロトンアルデヒドを工業的に効率よく製造できる。また、製品クロトンアルデヒドの純度も向上できる。
従来、化学製品を蒸留する際、還流比を上げた方が製品の品質が向上するというのが、蒸留に携わる技術者にとって一般的な常識であった。然るに本開示において、還流比を下げることにより製品の品質を改善できたことは予想外の効果である。
本開示のクロトンアルデヒドの製造方法の一実施形態で用いられる蒸留装置の概略図である。 本開示のクロトンアルデヒドの製造方法の別の実施形態で用いられる蒸留装置の概略図である。 比較例1における精製クロトンアルデヒド(製品クロトンアルデヒド)のガスクロマトグラム(GCチャート)である。 比較例1における下層還流液のガスクロマトグラム(GCチャート)である。
本開示のクロトンアルデヒドの製造方法では、クロトンアルデヒド、水及び色相悪化成分を含む粗クロトンアルデヒド(以下、単に「粗クロトンアルデヒド」と称する場合がある)を蒸留して精製クロトンアルデヒドを得る。以下、図面を参照しつつ、本開示のクロトンアルデヒドの製造方法を説明する。なお、以下、粗クロトンアルデヒドを蒸留する蒸留塔を、「クロトンアルデヒド精製塔」と称する場合がある。前記「色相悪化成分」とは、クロトンアルデヒドの着色度を高める原因物質(着色原因物質)を意味する。前記粗クロトンアルデヒドのハーゼン指数の値が大きいほど、色相悪化成分をより多く含んでいるといえる。
図1は、本開示のクロトンアルデヒドの製造方法の一実施形態で用いられる蒸留装置の概略図である。本開示のクロトンアルデヒドの製造方法の一実施形態においては、粗クロトンアルデヒド(X-1)をクロトンアルデヒド精製塔Aに供給し、塔頂から、クロトンアルデヒド及び水の共沸混合物を主成分とするベーパーを抜き出して、これを凝縮器(A-1)で凝縮させ、デカンター(分離器兼還流タンク)(A-2)で二液層に分離する。デカンターの上層から製品となるクロトンアルデヒド(X-2)を得る。下層液は、主成分は水であり、クロトンアルデヒド精製塔Aの塔頂又は塔頂付近(例えば、塔頂と粗クロトンアルデヒド仕込み段との間)に還流する。塔底から、缶出液(X-3)(高沸点成分を含む水)を抜き取る。なお、塔底液を加熱蒸発させる加熱器等の記載は省略している。
図2は、本開示のクロトンアルデヒドの製造方法の別の実施形態で用いられる蒸留装置の概略図である。本開示のクロトンアルデヒドの製造方法の別の実施形態においては、粗クロトンアルデヒド(X-1)をクロトンアルデヒド精製塔Aに供給し、塔頂からクロトンアルデヒド及び水の共沸混合物を主成分とするベーパーを抜き出して、これを凝縮器(A-1)で凝縮後、デカンターに導入する前に、凝縮液の一部をクロトンアルデヒド精製塔Aへ還流させる。還流させる位置は、クロトンアルデヒド精製塔Aの塔頂又は塔頂付近(例えば、塔頂と粗クロトンアルデヒド仕込み段との間)が好ましい。凝縮液の残りは、デカンター(分離器兼還流タンク)(A-2)で二液層に分離する。デカンターの上層から製品となるクロトンアルデヒド(X-2)を得る。下層液は、主成分は水であり、クロトンアルデヒド精製塔Aに還流させる。下層液の還流位置は、クロトンアルデヒド精製塔Aの中間部以下の位置(例えば、粗クロトンアルデヒド仕込み段と塔底部との間)が好ましい。塔底から、缶出液(X-3)(高沸点成分を含む水)を抜き取る。なお、塔底液を加熱蒸発させる加熱器等の記載は省略している。
本開示のクロトンアルデヒドの製造方法において、前記粗クロトンアルデヒドとしては、クロトンアルデヒドと水、及び色相悪化成分を含有する液であれば特に限定されない。例えば、前記粗クロトンアルデヒドとして、(i)アセトアルデヒドのアルドール縮合により生成するアセトアルドール及び/又はその誘導体(例えば、アセトアルデヒドの環状三量体であるアルドキサン、アセトアルドールの環化二量体であるパラアセトアルドール等)を脱水反応に付して得られるクロトンアルデヒドを含む粗クロトンアルデヒドが挙げられる。また、前記粗クロトンアルデヒドとして、(ii)アセトアルデヒドのアルドール縮合により生成するアセトアルドール及び/又はその誘導体(例えば、アセトアルデヒドの環状三量体であるアルドキサン、アセトアルドールの環化二量体であるパラアセトアルドール等)を水添して1,3-ブタンジオール(1,3-ブチレングリコール)などの各種化学品を製造するプロセスにおいて、副反応生成物として生じるクロトンアルデヒドを含む粗クロトンアルデヒドが挙げられる。さらに、前記粗クロトンアルデヒドとして、(iii)アセトアルデヒドを二量化-脱水反応に付して生成するクロトンアルデヒドを含む、クロトンアルデヒドと水とを含有する粗クロトンアルデヒドが挙げられる。
上記(i)についてより詳しく説明する。アセトアルデヒドのアルドール縮合は、一般に、水酸化ナトリウムなどの塩基性触媒(アルカリ触媒)の存在下で行う。縮合反応生成物(アルドール縮合液)は、通常、希酢酸等の酸を用いて中和し、中和後の液はアセトアルデヒド分離塔(蒸留塔)に導入する。アセトアルデヒド分離塔の塔頂より未反応アセトアルデヒドを回収し、アルドール縮合反応器にリサイクルする。アセトアルデヒド分離塔の塔底液は、本開示のクロトンアルデヒドの製造方法における「粗クロトンアルデヒド」として使用できる。このアセトアルデヒド分離塔の塔底液には、クロトンアルデヒド、水以外に、通常、アセトアルドール、アルドキサン、酢酸ナトリウム、酢酸など、並びに色相悪化成分が含まれている。なお、クロトンアルデヒドは、上記アセトアルデヒド分離塔内で生成するが、アセトアルデヒドのアルドール縮合反応工程や、粗クロトンアルデヒド中にアセトアルドール又はその誘導体(前記参照)が含まれている場合はクロトンアルデヒド精製塔内でも生成しうる。
上記(ii)についてより詳しく説明する。上記(i)と同様、アセトアルデヒド2分子を少量の水酸化ナトリウムなどの塩基性触媒(アルカリ触媒)を用いてアルドール縮合させ、その後、通常、希酢酸等の酸を用いて中和する。中和後の液は、アセトアルデヒド分離工程に導入し、未反応アセトアルデヒドを回収し、アルドール縮合反応器にリサイクルする。アセトアルデヒド分離工程では、上述のアセトアルデヒド分離塔(蒸留塔)によりアセトアルデヒドを分離してもよいが、蒸留塔に導入する前に、蒸発工程を設けてアセトアルデヒドに富む流れを得てもよい。その場合は、蒸発工程で用いる蒸発器の留出液をアセトアルデヒド分離塔に導入し、未反応アセトアルデヒドを回収し、アルドール縮合反応器にリサイクルする。いずれにせよ、アセトアルデヒド分離塔の塔底液は、本開示のクロトンアルデヒドの製造方法における「粗クロトンアルデヒド」として使用できる。このアセトアルデヒド分離塔の塔底液には、上記(i)と同様、クロトンアルデヒド、水以外に、通常、アセトアルドール、アルドキサン、酢酸ナトリウム、酢酸など、並びに色相悪化成分が含まれている。ただし、蒸発工程を設ける場合は、酢酸ナトリウムの大半はアセトアルデヒド分離塔に仕込まれる前に蒸発工程で分離除去される。なお、クロトンアルデヒドは、アセトアルデヒドのアルドール縮合反応工程、上記蒸発器内、アセトアルデヒド分離塔内で生成するほか、粗クロトンアルデヒド中にアセトアルドール又はその誘導体(前記参照)が含まれている場合はクロトンアルデヒド精製塔内でも生成しうる。
本開示において、クロトンアルデヒド精製塔に供する粗クロトンアルデヒド中のクロトンアルデヒドの含有量は、特に限定されず、広い範囲の値をとり得る。粗クロトンアルデヒド中のクロトンアルデヒドの含有量は、例えば0.2~90重量%、好ましくは0.3~60重量%、より好ましくは0.5~40重量%、さらに好ましくは0.8~15重量%である。また、前記粗クロトンアルデヒド中の水の含有量も特に限定されず、広い範囲の値をとり得る。粗クロトンアルデヒド中の水の含有量は、例えば10~99.8重量%、好ましくは15~99.7重量%、より好ましくは20~99.5重量%、さらに好ましくは25~99.2重量%である。前記粗クロトンアルデヒド中のクロトンアルデヒドと水の総含有量は、例えば、15~99.9重量%、好ましくは20~99重量%、さらに好ましくは40~98重量%である。
前記粗クロトンアルデヒドには、該粗クロトンアルデヒドの取得経路によっても異なるが、通常、クロトンアルデヒド(CR)及び水のほか、アセトアルデヒド(AD)、パラアルデヒド(P-AD)、2-ビニルクロトンアルデヒド(2-VCR)、2,4-ヘキサジエナール、クロトンアルデヒドの二量体、2,4,6-オクタトリエナール、アセトアルドール(AAD)(=3-ヒドロキシブタナール)、アルドキサン(ADX)[=2,4-ジメチル-1,3-ジオキサン-6-オール]、パラアセトアルドール(PAAD)[=2-(2-ヒドロキシプロピル)-4-メチル-1,3-ジオキサン-6-オール]、2,5-ジヒドロフラン、ジエチルケトン、2,4-ジメチル-1,3-ジオキサン、カルボン酸[酢酸(AC)、クロトン酸、ソルビン酸、3-ヒドロキシブタン酸等]又はその塩(carboxylate)などの不純物が含まれている。また、前記粗クロトンアルデヒドには、それ以外にも、炭素数5以上の、炭素-炭素不飽和結合を有するもしくは有しない、側鎖を有するもしくは有しない、環式構造を有するもしくは有しない、アルデヒド類、アルドール類、ケトン類、アルコール類又はカルボン酸エステル類なども含まれ得る。そして、クロトンアルデヒド精製塔の塔底及び/又は塔内において、これらの成分が逐次的に反応或いは重合(縮合)して、高沸点成分、色相悪化成分(着色原因物質)が生成すると考えられる。なお、上記不純物の一部は、クロトンアルデヒドの精製工程の前段階、例えば、アセトアルデヒドのアルドール縮合反応工程やその後の精製工程でも生成しうる。
クロトンアルデヒド精製塔に供される粗クロトンアルデヒドのハーゼン色数(APHA)は、例えば、50超、或いは100超、好ましくは150超、より好ましくは200超である。前記粗クロトンアルデヒドのハーゼン色数(APHA)の上限は、特に制限されないが、例えば、5000、或いは1000である。
クロトンアルデヒド精製塔の理論段数は、例えば、1~100段、好ましくは5~80段、さらに好ましくは20~70段である。仕込液(粗クロトンアルデヒド)の供給位置は、塔頂部から下方に向かって、塔の高さの例えば10~90%、好ましくは20~80%、より好ましくは30~70%、さらに好ましくは40~60%の位置である。クロトンアルデヒド精製塔において、塔頂圧力は、通常常圧(0.1MPa)であるが、減圧下又は加圧下で蒸留することもできる。
本開示の製造方法1では、クロトンアルデヒド精製塔の塔頂蒸気凝縮液を2層に分液させ、下層(水相)の還流比を2.7以下にして蒸留することにより、上層(有機相)からハーゼン色数(APHA)150以下の精製クロトンアルデヒドを取り出す。下層の還流比とは、(下層の当該蒸留塔への還流量)/[留出量(塔頂蒸気凝縮液のうち当該蒸留塔外への抜き取り量)]を意味する。なお、2層に分液させるのは、クロトンアルデヒド精製塔の塔頂蒸気凝縮液の一部であってもよい。すなわち、例えば、クロトンアルデヒド精製塔の塔頂蒸気凝縮液の一部を2層に分液させることなく、そのまま、該クロトンアルデヒド精製塔に還流させてもよい。
上記下層の還流比は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.9以下である。下層の還流比の下限は、例えば0.01、或いは0.03もしくは0.05である。上層から取り出す精製クロトンアルデヒドのハーゼン色数(APHA)は、好ましくは120以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは80以下、特に好ましくは60以下、中でも50以下である。また、上層から取り出す精製クロトンアルデヒドの純度は、例えば86.0重量%、好ましくは86.5重量%以上、より好ましくは88.0重量%以上である。
一般に、蒸留塔の還流比を上げると留出液として得られる製品の品質は向上するが、前記粗クロトンアルデヒドを蒸留する場合は、下層(水相)の還流比を上げると、蒸留塔内で循環する水の量が増加し、蒸留塔の塔底液に存在する高沸点成分、色相悪化成分(着色原因物質)が水と共沸して塔頂に炊きあげられるためか、これらの成分が製品クロトンアルデヒド中に混入して、製品クロトンアルデヒドの着色度が増大し、純度も低下するものと考えられる。下層(水相)の還流比を下げることにより製品クロトンアルデヒドの品質を改善できることは極めて予想外のことである。
なお、図2に示されるように、蒸留塔塔頂凝縮液がデカンターに導入される前に、その一部を該クロトンアルデヒド精製塔へ還流させる場合には、該凝縮液の還流比(以下、「塔頂還流比」と称する場合がある)は、例えば、0.01~5.0、好ましくは0.1~3.0、より好ましくは0.3~2.0、さらに好ましくは0.5~1.6である。なお、前記塔頂還流比とは、[塔頂凝縮液(分液前)の当該蒸留塔への還流量]/[留出量(塔頂蒸気凝縮液のうち当該蒸留塔外への抜き取り量)]を意味する。
本開示の製造方法2では、クロトンアルデヒド精製塔の塔頂蒸気凝縮液を2層に分液させ、上層(有機相;クロトンアルデヒド相)中のクロトンアルデヒド二量体及び2,4,6-オクタトリエナールの総含有量を3.9重量%以下にすることにより、上層からハーゼン色数(APHA)150以下の精製クロトンアルデヒドを取り出す。
クロトンアルデヒド二量体は、下記式(1a)及び(1b)で表される。2,4,6-オクタトリエナールは、下記式(2)で表される。
Figure 2023142625000002
上層中のクロトンアルデヒド二量体及び2,4,6-オクタトリエナールの含有量(%)は、ガスクロマトグラフ分析(3%FFAP/Chromosorb101パックドカラム、FID検出器)により求めることができる。分析条件の詳細は後述する。
上層中のクロトンアルデヒド二量体及び2,4,6-オクタトリエナールの総含有量は、好ましくは3.6重量%以下、より好ましくは3.0重量%以下、さらに好ましくは2.0重量%以下、特に好ましくは1.0重量%以下である。色相悪化成分(着色原因物質)の詳細は明らかではないが、上層中の不純物の種類及び含有量と上層のハーゼン色数(APHA)との関係を検討した結果、上層中のクロトンアルデヒド二量体及び2,4,6-オクタトリエナールの総含有量と上層のハーゼン色数(APHA)との間に相関性があること、及び上層中のクロトンアルデヒド二量体及び2,4,6-オクタトリエナールの総含有量を3.9重量%以下とすることにより、上層のハーゼン色数(APHA)を150以下とすることができることを見出した。上層中のクロトンアルデヒド二量体及び2,4,6-オクタトリエナールの総含有量は、例えば、上述したように、下層(水相)の還流比を下げることにより低減できる。
本開示の製造方法2において、下層(水相)の還流比は、例えば、2.7以下、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.9以下である。下層の還流比の下限は、例えば0.01、或いは0.03もしくは0.05である。上層から取り出す精製クロトンアルデヒドのハーゼン色数(APHA)は、好ましくは120以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは80以下、特に好ましくは60以下、中でも50以下である。また、上層から取り出す精製クロトンアルデヒドの純度は、例えば86.0重量%、好ましくは86.5重量%以上、より好ましくは88.0重量%以上である。
本開示の製造方法2において、図2に示されるように、蒸留塔塔頂凝縮液がデカンターに導入される前に、その一部を該クロトンアルデヒド精製塔へ還流させてもよい。その場合、該凝縮液の還流比(塔頂還流比)は、例えば、0.01~5.0、好ましくは0.1~3.0、より好ましくは0.3~2.0、さらに好ましくは0.5~1.6である。
アセトアルデヒドのアルドール縮合反応工程、アセトアルドールの脱水によるクロトンアルデヒド生成反応工程、精製工程[アセトアルデヒド分離工程(蒸発工程、アセトアルデヒド分離塔)、クロトンアルデヒド精製工程]における各種不純物の生成メカニズムの概略を下式に示す。式中、ADはアセトアルデヒド、AADはアセトアルドール、CRはクロトンアルデヒド、PAADはパラアセトアルドール、ADXはアルドキサン、2-VCRは2-ビニルクロトンアルデヒドの略号である。上述したように、式(1a)、式(1b)で表される化合物は、クロトンアルデヒド二量体であり、式(2)で表される化合物は、2,4,6-オクタトリエナールである。
Figure 2023142625000003
なお、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。また、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下に、実施例に基づいて本開示をさらに具体的に説明する。なお、濃度の単位としての「%」は、特に断りのない限り重量基準である。
<着色度の測定>
下記表2において、ハーゼン色数は、日本電色工業社製の色彩・濁度計TZ7700を用いて、APHA(Hazen)比色原液(500番)試薬を蒸留水で希釈した標準液で検量線を作成して、測定した。
<水分測定(水分析)>
下記表2~4において、水分は、京都電子工業株式会社製の容量滴定式水分測定装置(KF法)MKV-710Sを用いて測定した。
<酸分測定>
下記表2~4において、酸分は、フェノールフタレインを指示薬として0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム規定液で滴定し、相当する酢酸量を重量法で算出した。
<各成分濃度及びクロトンアルデヒドの純度の測定>
各成分濃度の測定は、2種類のガスクロマトグラフ分析(GC分析)により行った。ガスクロマトグラフの分析条件を下記に示す。ガスクロマトグラフ分析条件1は、クロトンアルデヒドおよび主要不純物の分析に用いることができる。ガスクロマトグラフ分析条件2は、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、アセトアルドール、アルドキサン、パラアセトアルドール等の分析に用いることができる。
(ガスクロマトグラフ分析条件1)
分析カラム:3%FFAP/Chromosorb101パックドカラム(長さ2.1m、内径2.6mm)
カラムの昇温条件:80℃→10℃/分→200℃
試料導入温度:200℃
キャリアガス:窒素
カラムのガス流量:63mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、230℃
上記ガスクロマトグラフ分析条件1において、クロトンアルデヒド及び主要不純物の保持時間、及び、クロトンアルデヒドの保持時間を1.0とした場合の、主要不純物の相対保持時間を下に示す。
保持時間(分) 相対保持時間
クロトンアルデヒド 約10.5 1.0
アセトアルデヒド 約3.4 0.30~0.34
アセトン 約6.3 0.57~0.62
酢酸 約8.7 0.82~0.86
パラアルデヒド 約14.9 1.38~1.45
クロトン酸 約16.5 1.54~1.61
2-ビニルクロトンアルデヒド 約18.0 1.69~1.75
2,4-ヘキサジエナール 約21.0 1.96~2.03
クロトンアルデヒド二量体 約29.8 2.78~2.88
2,4,6-オクタトリエナール 約31.6 2.95~3.07
なお、アセトンは、ガスクロマトグラフ分析時に使用するマイクロシリンジの洗浄用に用いているものであり、混入の有無を確認するために測定している。
アセトアルデヒド、アセトン、パラアルデヒド、酢酸、2,4-ヘキサジエナールについては、標品を用いて検量線を作成して定量した(絶対検量線法)。上記以外の不純物の濃度は、各成分のピークの面積百分率をもとに、含有する水分を考慮し、{100-水分(%)}/100を各成分のピークの面積百分率に乗算した。例えば、不純物Xの濃度(水分補正後の濃度)は、次式により算出した。
不純物Xの濃度(水分補正後の濃度)(%)={(不純物Xのピーク面積)/(全てのピークのピーク面積の総和)}×{100-水分(%)}/100
精製クロトンアルデヒド中のクロトンアルデヒド二量体の濃度(含有量)、及び2,4,6-オクタトリエナールの濃度(含有量)は、上記式により求めることができる。
(ガスクロマトグラフ分析条件2)
分析カラム:HP-5キャピラリーカラム(液層の膜厚1.00μm、長さ60m、内径0.25mm)
カラムの昇温条件:70℃(5分保持)→5℃/分→100℃(1分保持)→10℃/分→130℃(15分保持)→20℃/分→250℃(24分保持)
試料導入温度:220℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1.72mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃
試料にTMS(トリメチルシリル)化処理を施した後に分析した
上記ガスクロマトグラフ分析条件2において、クロトンアルデヒド及び主要不純物の保持時間、及び、クロトンアルデヒドの保持時間を1.0とした場合の、主要不純物の相対保持時間を下に示す。なお、この保持時間及び相対保持時間は、試料をTMS化処理した後のものである。
保持時間(分) 相対保持時間
クロトンアルデヒド 約28.9 1.0
アセトアルデヒド 約3.9 0.12~0.15
酢酸 約9.0 0.29~0.33
アセトアルドール 約38.0 1.26~1.33
アルドキサン 約34.0 1.04~1.30
パラアセトアルドール 約39.5 1.35~1.39
3-HBE 約40.9 1.39~1.44
n-デカン(内標) 約20.8 0.71~0.74
アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、酢酸、パラアセトアルドール、3-HBE(3-ヒドロキシブタン酸の1,3-ブチレングリコールエステル)については、標品を用いて検量線を作成して定量した(内標法)。アセトアルドール、アルドキサンについては、パラアセトアルドールの標品を用いて検量線を作成し(内標法)、同じファクターを用いて定量した。なお、内部標準物質(内標)としてn-デカンを使用している。
(クロトンアルデヒドの純度)
表2の製品クロトンアルデヒドの分析結果において、クロトンアルデヒドの純度は、水分析とガスクロマトグラフ分析条件1の分析結果から、下記式により求めた。
純度(%)=100-{水分(%)+ガスクロマトグラフ分析条件1による各不純物濃度の総和(%)}
ここで、各不純物濃度とは、上記標品を用いて検量線を作成して定量したもの以外の成分については、水分補正後の濃度である。
(表2~5の分析)
表2において、アセトアルデヒド等の不純物の濃度は、ガスクロマトグラフ分析条件1及びガスクロマトグラフ分析条件2(アセトアルドール、アルドキサン、パラアセトアルドールについて)での分析結果である。表3及び表4において、クロトンアルデヒド、アセトアルデヒドの濃度は、ガスクロマトグラフ分析条件2での分析結果である。表5において、パラアルデヒド、2-ビニルクロトンアルデヒド、2,4-ヘキサジエナール、HB-a、HB-b、HB-c、HB-dの濃度は、ガスクロマトグラフ分析条件1での分析結果である。表5において、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、アセトアルドール、アルドキサン、パラアセトアルドールの濃度は、ガスクロマトグラフ分析条件2での分析結果である。なお、表5における「その他」には、ガスクロマトグラフでは検出できない不純物も含まれている。
比較例1
図1に示す装置を用い、表1に示す条件で蒸留を行った。蒸留塔として、ガラス製の段数55段の40mmφオールダーショウ塔を用いた。仕込み液は蒸留塔の上から27段目に所定量を仕込み、塔頂温度が所定値になるように加熱した。下層液は、デカンター(10℃一定管理)界面が一定になるように抜取り、蒸留塔の塔頂へ還流した。上層液は、デカンター上部の抜取り口からオーバーフローにより抜取り、製品クロトンアルデヒドを留出させた。塔底液は、塔底液面が一定になるように抜取り(缶出)を行った。塔頂圧力は常圧で操作を行った。結果を表2~表5に示す。表2は製品クロトンアルデヒドの分析結果、表3は下層還流液の分析結果、表4は缶出液の分析結果、表5は仕込み液の分析結果である。「ND」は検出限界以下であることを示す。表2において、HB-a、HB-b、HB-c、HB-dは高沸点不純物であり、GC-MS分析の結果、HB-a、HB-bは、それぞれ、クロトンアルデヒドの二量体、クロトンアルデヒドの縮合生成物である2,4,6-オクタトリエナールであることが確認されている。また、HB-c、HB-dは、それぞれ、炭素数8~10個のアルデヒド類、アルドール類、ケトン類、アルコール類又はカルボン酸エステル類である可能性が高い。
図1に示すクロトンアルデヒドを精留する蒸留塔の塔頂ベーパーは凝縮器で凝縮後、全量をデカンターに導入しており、デカンターに導入する前の凝縮液を塔頂へ還流する操作は行っていない。したがって、表1に示すように、塔頂還流量/留出量の重量基準における比である塔頂還流比はゼロである。デカンターで二液層に分離後、下層液はクロトンアルデヒドを精留する蒸留塔の塔頂へ還流し、上層から製品となるクロトンアルデヒドを留出させている。表1に、下層還流量/留出量の重量基準における比を下層還流比として示している。
下層還流比3.00で蒸留した結果、表2に示すように、上層留出液である製品クロトンアルデヒドのハーゼン色数は166、純度は85.3%であった。HB-a(クロトンアルデヒドの二量体)、HB-b(2,4,6-オクタトリエナール)の濃度は、それぞれ、3.0%、1.0%であった。クロトンアルデヒド、アセトアルデヒド、水、酸分以外の成分の濃度は5.9%であった。
なお、クロトンアルデヒドの二量体、2,4,6-オクタトリエナールは反応性が高く、クロトンアルデヒドの製造工程において、これら自身、及び/又は、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、2-ビニルクロトンアルデヒド、2,4-ヘキサジエナールなどとの逐次的な反応により、さらに高級のアルデヒド類などになり、着色が悪化すると考えられる。また、クロトンアルデヒドの製造工程におけるプロセス液中には、ガスクロマトグラフ分析では検出できない不純物として、さらに高級のアルデヒド類、アルドール類、ケトン類、アルコール類、カルボン酸エステル類が存在していると考えられる。たとえば、2,4,6,8,10-ドデカペンタエナールは、ガスクロマトグラフ分析では検出できていないが、着色原因物質である。HB-a(クロトンアルデヒドの二量体)、HB-b(2,4,6-オクタトリエナール)の濃度が高ければ、HB-c、HB-d、その他の高級な不純物への反応速度も速くなると考えられ、着色原因物質の濃度も高まり、品質がより悪化すると考えられる。
図3にクロトンアルデヒドを精留する蒸留塔のデカンター上層から得られた製品クロトンアルデヒド中の含有成分を示すガスクロマトグラムを示す。製品クロトンアルデヒドのハーゼン色数は前記の通り166であり、黄色に着色していた。図4にデカンターの下層液の成分を示すガスクロマトグラムを示す。下層液は無色透明の液であり、図3に較べて保持時間17分以降の高沸点成分(HB-a、HB-bを含む)が少なく、着色原因物質の大半は上層液に分配し、濃縮していることが確認された。なお、図3、図4に示すガスクロマトグラムは、ガスクロマトグラフ分析条件1によるものである。図3、図4におけるHB-4、HB-5、HB-6、HB-7は、それぞれ、上記HB-a、HB-b、HB-c、HB-dに相当する。ACは酢酸である。
比較例2
図2に示す装置を用い、表1に示す条件で蒸留を行った。蒸留塔として、ガラス製の段数55段の40mmφオールダーショウ塔を用いた。仕込み液は蒸留塔の上から27段目に所定量を仕込み、塔頂温度が所定値になるように加熱した。塔頂ベーパーを凝縮後、還流タイマーを用いて、所定の還流比で、凝縮液の一部を塔頂へ還流させた。凝縮液の残りをデカンターに導入し、下層液は、デカンター(10℃一定管理)界面が一定になるように抜取り、蒸留塔の上から33段目へ還流した。上層液は、デカンター上部の抜取り口からオーバーフローにより抜取り、製品クロトンアルデヒドを留出させた。塔底液は、塔底液面が一定になるように抜取り(缶出)を行った。塔頂圧力は常圧で操作を行った。結果を表2~表5に示す。分析方法は比較例1と同じである。
塔頂還流比0.25、下層還流比3.85で蒸留した結果、上層留出液である製品クロトンアルデヒドのハーゼン色数は175(黄色に着色)、純度は85.8%であった。HB-a(クロトンアルデヒド二量体)、HB-b(2,4,6-オクタトリエナール)の濃度は、それぞれ、3.0%、1.1%であった。クロトンアルデヒド、アセトアルデヒド、水、酸分以外の成分の濃度は6.0%であった。
実施例1~実施例5
比較例1と同様、図1に示す装置を用いた。表1に示す条件で蒸留を行った。その結果を表2~表5に示す。分析方法は比較例1と同じである。
塔頂還流比0において、下層還流比を低減した結果、製品クロトンアルデヒドのハーゼン色数および純度を向上させることができた。実施例4において、下層還流比を0.31まで低減して蒸留した結果、上層留出液である製品クロトンアルデヒドのハーゼン色数は32(ほぼ無色透明)、純度は91.1%であり、高品質のクロトンアルデヒドを得ることができた。製品クロトンアルデヒド中の不純物であるHB-a(クロトンアルデヒド二量体)の濃度は0.2%、HB-b(2,4,6-オクタトリエナール)はガスクロマトグラフ分析で検出はされているが痕跡程度(定量限界以下)であった。クロトンアルデヒド、アセトアルデヒド、水、酸分以外の成分の濃度も0.7%であり、比較例1に対して極めて少なくすることができた。
実施例6
比較例2と同様、図2に示す装置を用いて実施した。表1に示す条件で蒸留を行った。その結果を表2~表5に示す。分析方法は比較例1と同じである。
下層還流比を0.82まで低減して蒸留した結果、上層留出液である製品クロトンアルデヒドのハーゼン色数は41(ほぼ無色透明)、純度は89.6%であり、高品質のクロトンアルデヒドを得ることができた。製品クロトンアルデヒド中の不純物であるHB-a(クロトンアルデヒド二量体)、HB-b(2,4,6-オクタトリエナール)の濃度は、それぞれ、1.4%、0.3%であり、クロトンアルデヒド、アセトアルデヒド、水、酸分以外の成分の濃度は2.9%であり、比較例2に較べて大幅に低減することができた。
Figure 2023142625000004
Figure 2023142625000005
Figure 2023142625000006
Figure 2023142625000007
Figure 2023142625000008
A 蒸留塔
A-1 凝縮器
A-2 デカンター(分離器兼還流タンク)
X-1 粗クロトンアルデヒド
X-2 精製クロトンアルデヒド(製品クロトンアルデヒド)
X-3 缶出液

Claims (6)

  1. クロトンアルデヒド、水及び色相悪化成分を含む粗クロトンアルデヒドを蒸留して精製クロトンアルデヒドを得るクロトンアルデヒドの製造方法であって、蒸留塔の塔頂蒸気凝縮液を2層に分液させ、下層の還流比2.7以下で蒸留することにより、上層からハーゼン色数150以下の精製クロトンアルデヒドを得るクロトンアルデヒドの製造方法。
  2. 前記下層の還流比1.2以下で蒸留することにより、上層からハーゼン色数100以下の精製クロトンアルデヒドを得る請求項1記載のクロトンアルデヒドの製造方法。
  3. 前記粗クロトンアルデヒドが、アルドール類、アルドキサン、アルデヒド類(クロトンアルデヒドを除く)、及び、カルボン酸若しくはその塩からなる群より選択された少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載のクロトンアルデヒドの製造方法。
  4. クロトンアルデヒド、水、色相悪化成分、クロトンアルデヒド二量体及び2,4,6-オクタトリエナールを含む粗クロトンアルデヒドを蒸留して精製クロトンアルデヒドを得るクロトンアルデヒドの製造方法であって、蒸留塔の塔頂蒸気凝縮液を2層に分液させ、上層中のクロトンアルデヒド二量体及び2,4,6-オクタトリエナールの総含有量を3.9%以下にすることにより、上層からハーゼン色数150以下の精製クロトンアルデヒドを得るクロトンアルデヒドの製造方法。
  5. 前記上層中のクロトンアルデヒド二量体及び2,4,6-オクタトリエナールの総含有量を3.6%以下にすることにより、上層からハーゼン色数100以下の精製クロトンアルデヒドを得る請求項4記載のクロトンアルデヒドの製造方法。
  6. 前記粗クロトンアルデヒドが、アルドール類、アルドキサン、アルデヒド類(クロトンアルデヒド、クロトンアルデヒド二量体及び2,4,6-オクタトリエナールを除く)、及び、カルボン酸若しくはその塩からなる群より選択された少なくとも1種を含む請求項4又は5に記載のクロトンアルデヒドの製造方法。
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