JP2023141930A - バイオ由来ジメチルカーボネート、バイオ由来エチレングリコール、並びにその製造方法 - Google Patents

バイオ由来ジメチルカーボネート、バイオ由来エチレングリコール、並びにその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】環境に与える負荷が低減されたジメチルカーボネート、エチレングリコール、並びに及びその製造方法を提供する。【解決手段】バイオ由来エチレンオキサイドと、バイオ由来エチレンオキサイド又はバイオ由来エタノールの製造により副生する二酸化炭素と、を反応させてエチレンカーボネートを製造するエチレンカーボネート製造工程と、前記エチレンカーボネート及びバイオ由来メタノールを、触媒を備える連続多段蒸留塔A内に連続的に供給し、前記連続多段蒸留塔A内で反応及び蒸留を行い、前記反応により生成するバイオ由来ジメチルカーボネートを含む低沸点反応混合物(AT)を塔上部よりガス状で連続的に抜出し、前記反応により生成するエチレングリコールを含む高沸点反応混合物(AB)を塔下部より液状で連続的に抜出す工程を含む、ASTM D6866に準拠して測定されるバイオベース度が95~100%のバイオ由来ジメチルカーボネート及び前記バイオベース度が95~100%のバイオ由来エチレングリコールの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、バイオ由来ジメチルカーボネート、バイオ由来エチレングリコール、並びにその製造方法に関する。
ジメチルカーボネートは、洗浄剤、塗料、接着剤など広範囲に使用され、また、有機製品の原材料でもある。近年、ジメチルカーボネートは、リチウムイオン電池電解液の主要成分として用いられている。特に近年は、電子製品やクリーンエネルギー自動車業界の発展につれて、リチウムイオン電池電解液の重要性はますます増加し、それに伴いリチウムイオン電池電解液用の高純度のジメチルカーボネートの市場需要も大幅に上昇している。工業級のジメチルカーボネートには、水、メタノール、エタノール、エチルメチルカーボネート、重質成分などの不純物が含まれている。アルコール類及び水はリチウムイオン電池の使用寿命に影響し、重質成分は電解液変色に影響する。そのため、リチウムイオン電池電解液用のジメチルカーボネートとしては、これらの不純物の含有量をさらに低減し、極めて高純度(純度99.99質量%以上)とすることが求められている。
また、エチレングリコールは、溶媒、不凍液、ポリエチレンテレフタレート(PET)、繊維の原料などに使用されている。ジメチルカーボネート類及びエチレングリコールを併産する方法として、例えば、特許文献1には、エチレンカーボネートとメタノールとを原料とし、この原料を均一系触媒が存在する連続多段蒸留塔内に連続的に供給し、該塔内で反応と蒸留を同時に行う反応蒸留方式によって製造する方法が開示されている。
また、原料であるエチレンカーボネートは、エチレンからエチレンオキサイドを製造し、そのエチレンオキサイドと二酸化炭素を反応させて製造する方法が一般的に知られている(特許文献2、3、4)。
国際公開第2007/069514号 特開昭50-014632号公報 特開昭54-987651号公報 特開昭57-106631号公報
しかしながら、原料のメタノールや、エチレン又はエチレンオキサイドは、石油等の化石燃料由来成分を主成分としており、二酸化炭素も、石油化学プラントなどから排出される化石燃料由来成分が主成分である。そのような原料を用いてエチレンカーボネートを製造することは、近年注目されているSDGsやカーボンニュートラルなどの環境負荷低減に反する。
そこで、本発明は、環境に与える負荷が低減されたジメチルカーボネート、エチレングリコール、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、バイオ由来のエチレンオキサイドとバイオ由来エチレンオキサイド又はバイオ由来エタノールの製造により副生する二酸化炭素とを反応させて製造したバイオ由来エチレンカーボネート、及びバイオ由来メタノールを所定の方法で反応させることにより、バイオ度の高いバイオ由来ジメチルカーボネートとバイオ度の高いバイオ由来エチレングリコールを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]
バイオ由来エチレンオキサイドと、バイオ由来エチレンオキサイド又はバイオ由来エタノールの製造により副生する二酸化炭素と、を反応させてエチレンカーボネートを製造するエチレンカーボネート製造工程と、
前記エチレンカーボネート及びバイオ由来メタノールを、触媒を備える連続多段蒸留塔A内に連続的に供給し、前記連続多段蒸留塔A内で反応及び蒸留を行い、前記反応により生成するバイオ由来ジメチルカーボネートを含む低沸点反応混合物(AT)を塔上部よりガス状で連続的に抜出し、前記反応により生成するバイオ由来エチレングリコールを含む高沸点反応混合物(AB)を塔下部より液状で連続的に抜出す工程を含む、
ASTM D6866に準拠して測定されるバイオベース度が95~100%のバイオ由来ジメチルカーボネート及び前記バイオベース度が95~100%のバイオ由来エチレングリコールの製造方法。
[2]
(I)前記低沸点反応混合物(AT)を連続多段蒸留塔B1に連続的に供給し、バイオ由来メタノールを主成分とする塔頂成分(B1T)を塔上部より連続的に抜き出し、バイオ由来ジメチルカーボネートを主成分とする塔底成分(B1B)を塔下部より連続的に抜き出す第1の分離精製工程(I)と、
(II)前記塔底成分(B1B)を、側面抜出口を有する連続多段蒸留塔B2に連続的に供給し、バイオ由来ジメチルカーボネートを主成分とするサイドカット成分(B2s)を側面抜出口より連続的に抜き出す第2の分離精製工程(II)と、をさらに含み、
前記工程(I)において、前記低沸点反応混合物(AT)中のバイオ由来ジメチルカーボネートの濃度が25.00~95.00質量%であり、かつ前記連続多段蒸留塔B1の塔底温度が115℃以上であり、
前記工程(II)において、前記塔底成分(B1B)中のバイオ由来ジメチルカーボネートの濃度が99.00~99.95質量%であり、かつ前記サイドカット成分(B2s)中のバイオ由来ジメチルカーボネートの純度が99.99質量%以上である、[1]に記載の製造方法。
[3]
前記連続多段蒸留塔B1において、下記式(i)で算出される塔内液滞留時間が5分以上である、[2]に記載の製造方法。
塔内液滞留時間(分)=BTM容量(運転時に塔BTMに滞留している液容量(kg))/BTM抜出流量(塔底成分として抜き出す流量(kg/分))・・・(i)
[4]
前記工程(I)が、Feを含有する化合物の存在下で行われる、[2]又は[3]に記載の製造方法。
[5]
前記サイドカット成分(B2s)中の高沸点化合物の含有量が30質量ppm以下である、[2]~[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
[6]
前記サイドカット成分(B2s)中の金属含有量が1質量ppm以下である、[2]~[5]のいずれか1つに記載の製造方法。
[7]
前記サイドカット成分(B2s)中の水含有量が30質量ppm以下である、[2]~[6]のいずれか1つに記載の製造方法。
[8]
前記サイドカット成分(B2s)中のメタノール及びエタノールの合計含有量が20質量ppm以下である、[2]~[7]のいずれか1つに記載の製造方法。
[9]
前記サイドカット成分(B2s)中の2-メトキシエタノールの含有量が50質量ppm以下である、[2]~[8]のいずれか1つに記載の製造方法。
[10]
前記サイドカット成分(B2s)がガス状で抜き出される、[2]~[9]のいずれか1つに記載の製造方法。
[11]
前記連続多段蒸留塔B1のインターナルが、トレイ及び/又は充填物である、[2]~[10]のいずれか1つに記載の製造方法。
[12]
前記連続多段蒸留塔B1の還流比が0.5~5である、[2]~[11]のいずれか1つに記載の製造方法。
[13]
前記連続多段蒸留塔B2の還流比が0.2~4である、[2]~[12]のいずれか1つに記載の製造方法。
[14]
前記塔底成分(B1B)中の2-メトキシエタノールの含有量が100質量ppm以下である、[2]~[13]のいずれか1つに記載の製造方法。
[15]
前記塔底成分(B1B)は、前記連続多段蒸留塔B2へ直接供給するか、又は、工業級バイオ由来ジメチルカーボネートタンクへ供給後、該タンクから前記連続多段蒸留塔B2へ供給する、[2]~[14]のいずれか1つに記載の製造方法。
[16]
前記塔底成分(B1B)中の高沸点化合物の含有量が0.1質量ppm以上である、[2]~[15]のいずれか1つに記載の製造方法。
[17]
前記連続多段蒸留塔B2において、前記側面抜出口より上の塔径D21(cm)と前記側面抜出口より下の塔径D22(cm)との比が下記式(ii)の条件を満たす、[2]~[16]のいずれか1つに記載の製造方法。
0.2<D21/D22<1.0・・・(ii)
[18]
ASTM D6866に準拠して測定されるバイオベース度が95~100%のバイオ由来ジメチルカーボネート。
[19]
純度99.99質量%以上である、[18]に記載のバイオ由来ジメチルカーボネート。
[20]
ASTM D6866に準拠して測定されるバイオベース度が95~100%のバイオ由来エチレングリコール。
本発明によれば、環境に与える負荷が低減されたジメチルカーボネート、エチレングリコール、並びにその製造方法を提供することができる。
図1は本実施形態の連続多段蒸留塔B1及び連続多段蒸留塔B2の一例の概略図である。 図2は本実施形態の連続多段蒸留塔Cの例を示す概略図である。 図3は本実施形態の連続多段蒸留塔Eの例を示す概略図である。 図4は本実施形態のバイオジメチルカーボネート及びバイオエチレングリコールの製造方法のプロセスフローの一部の一例の概略図である。 図5は本実施形態のバイオエチレンカーボネートの製造方法のプロセスフローの一例の概略図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
[バイオジメチルカーボネート及びバイオエチレングリコールの製造方法]
本実施形態のバイオ由来ジメチルカーボネート及びバイオ由来エチレングリコールの製造方法は、バイオ由来エチレンオキサイドと、バイオ由来エチレンオキサイド又はバイオ由来エタノールの製造により副生する二酸化炭素と、を反応させてエチレンカーボネートを製造するエチレンカーボネート製造工程と、前記エチレンカーボネート及びバイオ由来メタノールを、触媒を備える連続多段蒸留塔A内に連続的に供給し、前記連続多段蒸留塔A内で反応及び蒸留を行い、前記反応により生成するバイオ由来ジメチルカーボネートを含む低沸点反応混合物(AT)を塔上部よりガス状で連続的に抜出し、前記反応により生成するエチレングリコールを含む高沸点反応混合物(AB)を塔下部より液状で連続的に抜出す工程を含み、ASTM D6866に準拠して測定されるバイオベース度が95~100%のバイオ由来ジメチルカーボネート及び前記バイオベース度が95~100%のバイオ由来エチレングリコールを併産する方法である。
[エチレンカーボネート製造工程]
エチレンカーボネート製造工程は、バイオ由来エチレンオキサイドと、バイオ由来エチレンオキサイド又はバイオ由来エタノールの製造により副生する二酸化炭素とを反応させてエチレンカーボネートを製造する工程である。本工程で製造されるバイオ由来エチレンカーボネートは、好ましくはASTM D6866に準拠して測定されるバイオベース度が95~100%(両端値を含む。本明細書中、特に言及する場合を除き、同様である。)である。
エチレンオキサイドは、下記式(1)で表される化合物である。エチレンカーボネート製造工程では、バイオ由来のエチレンオキサイド(以下、単に「バイオエチレンオキサイド」ともいう。)を原料として用いる。ここで、本明細書中、化合物がバイオ由来であるとは、ASTM D6866に準拠して測定されるバイオベース度が95~100%であることを意味する。バイオエチレンオキサイドのかかるバイオベース度は、好ましくは97%以上である。
Figure 2023141930000001
バイオエチレンオキサイドは、ASTM D6866に準拠して測定されるバイオベース度が95~100%であるエチレンオキサイドであれば、市販のものを用いてよく、従来公知の方法を用いて製造してもよい。例えば、バイオエチレンオキサイドは、バイオ由来のエチレンを空気酸化してバイオエチレンオキサイドを製造するエチレンオキサイド製造工程により製造してもよい。
かかるバイオ由来のエチレン(以下、単に「バイオエチレン」ともいう。)は、公知の製造方法により工業的規模で製造することができる。例えば、バイオマスからつくられたバイオエタノールを脱水してバイオエチレンを製造する技術が、ブラジルのBraskemやETH Bioenergia社によって事業化されている。
エチレンオキサイド製造工程は、例えばバイオエチレンを空気酸化してバイオエチレンオキサイドを得る工程である。エチレンオキサイド製造工程は、例えば、上記バイオエチレンを、銀を担持させたアルミナ触媒のもと、1~3MPa、200~300℃で酸素と作用させる工程である。このような工程によれば、二酸化炭素が副生される。
エチレンカーボネート製造工程における二酸化炭素は、バイオ由来エチレンオキサイド又はバイオ由来エタノール(以下、単に「バイオエタノール」ともいう。)の製造により副生する二酸化炭素を捕集し、精製したものである。かかる二酸化炭素は、上記のエチレンオキサイド製造工程で副生する二酸化炭素であってもよい。
エチレンカーボネート製造工程は、上記のバイオエチレンオキサイドと二酸化炭素とからエチレンカーボネートを製造する工程であれば、特に限定されない。エチレンカーボネート製造工程は、以下の国際公開第2004/108696号に記載の環状アルキルカーボネートの製造方法で製造することが好ましい。
具体的には、エチレンオキサイドを反応器中で触媒の存在下に二酸化炭素と反応させてエチレンカーボネートを製造する方法であって、反応器は配管を介して熱交換器のプロセス側流路と連通して循環回路を形成しており、該熱交換器は温度を所定の温度範囲内に調整した熱交換媒体を流すための熱交換側流路とエチレンカーボネートの製造に関連して熱交換が行われるプロセス液を流すためのプロセス側流路とを有し、該製造方法は上記反応中又は反応後に温度が140~200℃の熱交換媒体を該熱交換器の熱交換側流路に流しながら、該反応器と該熱交換器のプロセス側流路とを含む上記循環回路にプロセス液を流して、プロセス側流路の内部温度を135~200℃に維持することを特徴とする製造方法である。
以下、バイオエチレンカーボネート製造工程の一例を説明する。以下では、説明の便宜上、エチレンオキサイド製造工程と、エチレンカーボネート製造工程とからバイオエチレンカーボネートを製造する態様について説明するが、本発明の範囲はこれにより限定されるものではない。すなわち、本実施形態のエチレンカーボネート製造工程は、エチレンオキサイド製造工程を有していなくてもよく、市販のバイオエチレンオキサイドを用いてエチレンカーボネート製造工程を実施してもよい。また、エチレンカーボネート製造工程で用いる二酸化炭素は、バイオ由来エチレンオキサイド又はバイオエタノールの製造により副生する二酸化炭素であれば特に限定されず、そのような二酸化炭素を入手して用いてもよい。当該二酸化炭素は、上記のエチレンオキサイド製造工程により副生するものに限られず、上記のエチレンオキサイド製造工程以外のバイオエチレンオキサイド又はバイオエタノールの製造方法により副生するものであってもよい。二酸化炭素は、上記エチレンオキサイド製造工程により副生するものであることが好ましい。
(エチレンオキサイド製造工程)
エチレンオキサイド製造工程は、バイオエチレンからバイオエチレンオキサイドを得る工程である。エチレンオキサイド製造工程は、バイオエチレンオキサイドを生成すると共に、二酸化炭素を副生する工程であると好ましい。
エチレンオキサイド製造工程における原材料としてのバイオエチレンは、バイオマスから得られるエチレンであれば特に限定されない。バイオエチレンは、例えばバイオエタノールを脱水して得られるエチレンであってよい。原材料として用いるエチレンが、バイオ由来のエチレンであるかどうかを確かめるためには、ASTM D6866に準拠して測定されるバイオベース度を用いればよい。原材料として用いるエチレンのバイオベース度は例えば97%以上であり、好ましくは100%である。バイオエチレンのバイオベース度は、95~100%であってよい。
エチレンオキサイド製造工程は、例えばバイオエチレンを適当な触媒の存在下、空気酸化する工程である。当該触媒は特に限定されないが、例えば銀を担持させた固体触媒であり、好ましくは銀を担持させたアルミナ触媒である。エチレンオキサイド製造工程における反応系内の圧力は、例えば0.1~10MPa、好ましくは0.5~5.0MPa、より好ましくは1.0~3.0MPaである。エチレンオキサイド製造工程における反応温度は、例えば100~500℃、好ましくは150~400℃、より好ましくは200~300℃である。
(エチレンカーボネート製造工程)
エチレンカーボネート製造工程は、上記のエチレンオキサイド製造工程により得られるバイオエチレンオキサイド及び二酸化炭素を、更に反応させてエチレンカーボネートを製造する工程であってよい。バイオエチレンカーボネート製造工程において、上記バイオエチレンオキサイドを触媒の存在下で二酸化炭素と反応器中で反応させて、反応混合物を反応器中に得ることが好ましい。反応混合物は、下記式(2)で表されるエチレンカーボネートを含有する。
Figure 2023141930000002
バイオエチレンカーボネート製造工程において、バイオエチレンオキサイドと二酸化炭素とからエチレンカーボネートを得る反応は、以下の式(3)で表される。
Figure 2023141930000003
エチレンカーボネート製造工程において得られるバイオ由来エチレンカーボネートは、ASTM D6866に準拠して測定されるバイオベース度が95~100%である。バイオエチレンカーボネートの上記バイオベース度は、上記の範囲において、好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらにより好ましくは99%以上であり、特に好ましくは100%である。バイオエチレンカーボネートの上記バイオベース度を高めるためには、例えば原材料として用いるバイオエチレンオキサイド又はバイオエチレンのバイオベースを高くすればよい。あるいは、バイオベース度が高いバイオエチレンオキサイド又はバイオエタノールを製造する方法により副生する二酸化炭素を用いることで、バイオエチレンカーボネートのバイオベース度を高めてもよい。
エチレンカーボネート製造工程で用いる二酸化炭素は、バイオベース度が95~100%(好ましくは97%以上であり、よりこのましくは100%である。)のバイオエチレンオキサイド又はバイオエタノールを製造する方法により副生する二酸化炭素であることが好ましい。
バイオエチレンカーボネート製造工程において、バイオエチレンオキサイドと二酸化炭素との反応で使用する触媒は、上記式(3)の反応を実施するために通常用いられる触媒であれば特に限定はない。具体的には、テトラエチルアンモニウムブロマイド、5員環Z6員環炭化水素のハロゲン化物、ロダンアンモニウム又はその熱分解生成物のような有機物質系触媒金属;アルカリ金属の臭化物やヨウ化物などの無機物質系触媒;並びにこれらに少量のアルコール類や水を添加したものなどが用いられる。これらの中でも、触媒回収が容易である観点から、無機物質系触媒が好ましい。触媒の使用量は特に限定されないが、反応系に対して0.1~3質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましい。
バイオエチレンカーボネート製造工程において、バイオエチレンオキサイドと二酸化炭素との反応温度は、好ましくは100~200℃であり、より好ましくは150~190℃である。反応圧力は、好ましくは2~15MPaであり、より好ましくは4~12MPaである。反応時間は、原料であるバイオエチレンオキサイドと二酸化炭素との組成比、バイオエチレンオキサイドの種類、使用触媒の種類と濃度、反応温度等によって異なる。例えば、完全混合反応器の滞留液量と全供給液量から求められる平均滞留時間を反応時間と定義すると、通常、0.5~10時間、好ましくは1~5時間である。
バイオエチレンカーボネート製造工程を実施するにあたり、原料であるバイオエチレンオキサイドと二酸化炭素の量比は、バイオエチレンオキサイドに対する二酸化炭素のモル比で表して、通常、1~5、好ましくは1~2である。通常、反応器から余剰の二酸化炭素ガスを放出すると、同伴する未反応のバイオエチレンオキサイドも増える。したがって、バイオエチレンオキサイドと二酸化炭素との量比を調整する際には、余剰の二酸化炭素ガスを反応器から放出するのではなく、反応器圧力が一定となるように二酸化炭素供給量を調整する方法が好ましい。
バイオエチレンカーボネート製造工程において上記反応を実施するための反応器は、配管を介して熱交換器のプロセス側流路と連通して循環回路を形成していることが好ましい。
バイオエチレンカーボネート製造工程の反応方式としては、完全混合の反応器、完全混合反応器を直列に用いた多段反応方式、プラグフロー反応器、完全混合反応器とプラグフロー反応器を組み合せた方式等の、一般的に用いられる反応方式を使用することができる。
バイオエチレンカーボネートを完全混合方式の反応器を用いて製造する場合には、反応混合物中に二酸化炭素が溶解し易いように、大流量の反応液をポンプで循環する方法が好ましい。通常、単位時間当たりの循環回数は10~50回/時間であり、好ましくは20~40回/時間である。反応混合物をポンプ循環する配管の途中に熱交換器を設けて、反応熱の除去を行う場合には、大流量の循環を行うと、熱交換器の冷却能力が上がるので好ましい。
バイオエチレンカーボネート製造工程に用いられる熱交換器は、温度を所定の温度範囲内に調整した熱交換媒体を流すための熱交換側流路と、バイオエチレンカーボネートの製造に関連して熱交換が行われるプロセス液を流すためのプロセス側流路とを有するものであることが好ましい。プロセス液とは、熱交換器によって処理される(すなわち、温度が調節される)液体であり、熱交換媒体とは、プロセス液の温度を調節するための媒体である。そして熱交換器の熱交換側流路とは、熱交換媒体を流すための流路であり、プロセス側流路とは、プロセス液を流すための流路である。
上記熱交換器としては、温度が140~200℃の熱交換媒体を熱交換器の熱交換側流路に流し、プロセス側流路の内部温度を135~200℃に維持することのできるものが好ましい。例えば、反応器内部に設ける蛇管式熱交換器、二重管式熱交換器、一般的な多管式熱交換器などを単独又は組み合わせて用いることができる。熱交換器は、伝熱面積を大きくし、装置の小型化が可能な多管式熱交換器を用いるのが好ましい。
多管式熱交換器を用いる場合には、プロセス液と熱交換媒体は、多管式熱交換器のチューブ側及びシェル側のいずれを熱交換側流路又はプロセス側流路にしてもかまわない。熱交換器のチューブ側及びシェル側のそれぞれに何を通液するかは、小型の熱交換器を用いるために総括伝熱係数(U)を大きくするかどうかや、汚れ物質が付着しやすい流体をチューブ側に通液することで洗浄を容易にするかどうか等に応じて、適宜選択すればよい。
上記熱交換器は、予熱器と冷却器の両方として機能する装置が好ましい。このような熱交換器は、スタートアップ時は反応液を反応開始温度まで昇温する予熱器として使用し、定常運転中は反応熱の除去を行う為の冷却器として使用することができる。
熱交換器のプロセス側流路の材質はプロセス液に対する耐蝕性があれば特に限定はない。鉄さびはその触媒作用によりバイオエチレンオキサイドの重合物の生成原因となるので、ステンレス鋼を用いるのが好ましい。
バイオエチレンカーボネート製造工程で用いる熱交換媒体は、その温度を140~200℃、好ましくは140~180℃に維持することのできるものが好ましく、一般的に熱交換媒体として用いられる媒体、例えば、水、蒸気、熱媒油等が挙げられる。熱交換媒体としては、熱交換器の設計圧を低くできるという観点から、熱的に安定で蒸気圧の低い熱媒油が好ましい。更に、熱媒油は温度調整が容易であるため、熱交換媒体として用いると、熱交換媒体の供給量の増減で反応温度が調整でき、バイオエチレンカーボネート製造装置の運転操作が容易となる傾向にある。
[バイオ由来ジメチルカーボネート及びバイオ由来エチレングリコールの製造工程]
本実施形態の製造方法は、エチレンカーボネート及びバイオ由来メタノールを、触媒を備える連続多段蒸留塔A内に連続的に供給し、前記連続多段蒸留塔A内で反応及び蒸留を行い、前記反応により生成するバイオ由来ジメチルカーボネートを含む低沸点反応混合物(AT)を塔上部よりガス状で連続的に抜出し、前記反応により生成するエチレングリコールを含む高沸点反応混合物(AB)を塔下部より液状で連続的に抜出す工程(α)を含む。
工程(α)において、低沸点反応混合物(AT)は、バイオ由来ジメチルカーボネート(以下、単に「バイオジメチルカーボネート」ともいう。)と未反応バイオメタノールとを含む低純度バイオジメチルカーボネート混合物である。
さらに、工程(α)において、高沸点反応混合物(AB)は、バイオ由来エチレングリコール(以下、単に「バイオエチレングリコール」ともいう。)を含む。
このように、工程(α)は、バイオジメチルカーボネートとバイオエチレングリコールとを連続的に製造する、反応蒸留方式の工程である。
以下、工程(α)について詳細に説明する。
工程(α)における反応は、上記のエチレンカーボネート製造工程により製造されるエチレンカーボネートとバイオ由来メタノール(単に「バイオメタノール」ともいう。)とから、バイオジメチルカーボネートとバイオエチレングリコールとが生成する可逆平衡的なエステル交換反応である。
工程(α)において、バイオメタノールは、公知の製造方法により工業的規模で製造したものであってよい。原料として用いるバイオメタノールのASTM D6866に準拠して測定されるバイオベース度は、95~100%であり、好ましくは97%以上である。
工程(α)においては、反応蒸留塔である連続多段蒸留塔A内に触媒を存在させる。触媒を存在させる方法はどのような方法であってもよく、特に限定されないが、例えば、反応条件下で反応液に溶解するような均一系触媒の場合、反応蒸留塔内に連続的に触媒を供給することにより、反応蒸留塔内の液相に触媒を存在させることもできるし、あるいは反応条件下で反応液に溶解しないような不均一系触媒の場合、反応蒸留塔内に固体触媒を配置することにより、反応系に触媒を存在させることもできるし、これらを併用した方法であってもよい。
均一系触媒を反応蒸留塔内に連続的に供給する場合には、バイオエチレンカーボネート及び/又はバイオメタノールと同時に供給してもよいし、原料とは異なる位置に供給してもよい。連続多段蒸留塔A内で実際に反応が進行するのは触媒供給位置から下の領域であることから、塔頂から原料供給位置までの間の領域に該触媒を供給することが好ましい。そして該触媒が存在する段は5段以上あることが好ましく、より好ましくは7段以上であり、さらに好ましくは10段以上である。
また、不均一系の固体触媒を用いる場合、該触媒の存在する段の段数が5段以上あることが好ましく、より好ましくは7段以上であり、さらに好ましくは10段以上である。蒸留塔の充填物としての効果をも併せ持つ固体触媒を用いることもできる。
工程(α)において用いられる触媒としては、これまでに知られている種々のものを使用することができる。触媒の具体例として、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属類;アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水素化物、水酸化物、アルコキシド化物類、アリーロキシド化物類、アミド化物類等の塩基性化合物類;アルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩類、重炭酸塩類、有機酸塩類等の塩基性化合物類;トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ベンジルジエチルアミン等の3級アミン類;N-アルキルピロール、N-アルキルインドール、オキサゾール、N-アルキルイミダゾール、N-アルキルピラゾール、オキサジアゾール、ピリジン、アルキルピリジン、キノリン、アルキルキノリン、イソキノリン、アルキルイソキノリン、アクリジン、アルキルアクリジン、フェナントロリン、アルキルフェナントロリン、ピリミジン、アルキルピリミジン、ピラジン、アルキルピラジン、トリアジン、アルキルトリアジン等の含窒素複素芳香族化合物類;ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)等の環状アミジン類;酸化タリウム、ハロゲン化タリウム、水酸化タリウム、炭酸タリウム、硝酸タリウム、硫酸タリウム、タリウムの有機酸塩類等のタリウム化合物類;トリブチルメトキシ錫、トリブチルエトキシ錫、ジブチルジメトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、ジブチルジエトキシ錫、ジブチルフェノキシ錫、ジフェニルメトキシ錫、酢酸ジブチル錫、塩化トリブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫等の錫化合物類;ジメトキシ亜鉛、ジエトキシ亜鉛、エチレンジオキシ亜鉛、ジブトキシ亜鉛等の亜鉛化合物類;アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド等のアルミニウム化合物類;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン、ジクロロジメトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、酢酸チタン、チタンアセチルアセトナート等のチタン化合物類;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルメチルホスホニウムハライド、トリオクチルブチルホスホニウムハライド、トリフェニルメチルホスホニウムハライド等のリン化合物類;ハロゲン化ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムアルコキシド、酢酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物類;PbO、PbO2、Pb34などの酸化鉛類;PbS、Pb23、PbS2などの硫化鉛類;Pb(OH)2、Pb32(OH)2、Pb2[PbO2(OH)2]、Pb2O(OH)2などの水酸化鉛類;Na2PbO2、K2PbO2、NaHPbO2、KHPbO2などの亜鉛酸塩類;Na2PbO3、Na22PbO4、K2PbO3、K2[Pb(OH)6]、K4PbO4、Ca2PbO4、CaPbO3などの鉛酸塩類;PbCO3、2PbCO3・Pb(OH)2などの鉛の炭酸塩及びその塩基性塩類;Pb(OCH32、(CH3O)Pb(OPh)、Pb(OPh)2などのアルコキシ鉛類、アリールオキシ鉛類;Pb(OCOCH32、Pb(OCOCH34、Pb(OCOCH32・PbO・3H2Oなどの有機酸の鉛塩及びその炭酸塩や塩基性塩類;Bu4Pb、Ph4Pb、Bu3PbCl、Ph3PbBr、Ph3Pb(又はPh6Pb2)、Bu3PbOH、Ph2PbOなどの有機鉛化合物類(Buはブチル基、Phはフェニル基を示す);Pb-Na、Pb-Ca、Pb-Ba、Pb-Sn、Pb-Sbなどの鉛の合金類;ホウエン鉱、センアエン鉱などの鉛鉱物類、及びこれらの鉛化合物の水和物類が挙げられる。
これらの触媒は、反応原料や、反応混合物、反応副生物などに溶解する場合には、均一系触媒として用いることができるし、溶解しない場合には固体触媒として用いることができる。さらには、これらの触媒を反応原料や、反応混合物、反応副生物などで事前に溶解させた混合物を均一系触媒として用いることも好ましい方法である。
工程(α)において用いられるその他の触媒として、3級アミノ基を有する陰イオン交換樹脂、アミド基を有するイオン交換樹脂、スルホン酸基、カルボン酸基、及びリン酸基のうちの少なくとも一つの交換基を有するイオン交換樹脂、第4級アンモニウム基を交換基として有する固体強塩基性アニオン交換体等のイオン交換体類;シリカ、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、アルミノシリケート、ガリウムシリケート、各種ゼオライト類、各種金属交換ゼオライト類、アンモニウム交換ゼオライト類などの固体の無機化合物類等を用いてもよい。
工程(α)において固体触媒として好ましく用いられるのは、第4級アンモニウム基を交換基として有する固体強塩基性アニオン交換体である。より具体的には、特に限定されないが、例えば、第4級アンモニウム基を交換基として有する強塩基性アニオン交換樹脂、第4級アンモニウム基を交換基として有するセルロース強塩基性アニオン交換体、第4級アンモニウム基を交換基として有する無機質担体担持型強塩基性アニオン交換体などが挙げられる。第4級アンモニウム基を交換基として有する強塩基性アニオン交換樹脂としては、特に限定されないが、例えば、スチレン系強塩基性アニオン交換樹脂などが好ましく用いられる。スチレン系強塩基性アニオン交換樹脂は、スチレン及びジビニルベンゼンの共重合体を母体として、交換基に第4級アンモニウム(I型あるいはII型)を有する強塩基性アニオン交換樹脂であり、例えば、次式に示される構造を含む。
Figure 2023141930000004
上式中、Xはアニオンを示す。通常、Xとしては、F-、Cl-、Br-、I-、HCO3 -、CO3 2-、CH3CO2 -、HCO2 -、IO3 -、BrO3 -、ClO3 -の中から選ばれた少なくとも1種のアニオンが使用され、好ましくはCl-、Br-、HCO3 -、CO3 2-の中から選ばれた少なくとも1種のアニオンが使用される。また、樹脂母体の構造としては、ゲル型、マクロレティキュラー型(MR型)のいずれも使用できるが、耐有機溶媒性が高い点からMR型が特に好ましい。
第4級アンモニウム基を交換基として有するセルロース強塩基性アニオン交換体としては、特に限定されないが、例えば、セルロースの-OH基の一部又は全部をトリアルキルアミノエチル化して得られる、-OCH2CH2NR3Xで示される交換基を有するセルロースが挙げられる。ここで、Rはアルキル基を示し、通常、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどであり、好ましくはメチル、エチルである。また、Xは上述のとおりのアニオンである。
第4級アンモニウム基を交換基として有する無機質担体担持型強塩基性アニオン交換体とは、無機質担体の表面水酸基-OHの一部又は全部を修飾することにより、4級アンモニウム基-O(CH2)nNR3Xを導入したものを意味する。ただし、R、Xは上述のとおりである。nは通常1~6の整数であり、好ましくはn=2である。無機質担体としては、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、ゼオライトなどを使用することができ、好ましくはシリカ、アルミナ、シリカアルミナが用いられ、特に好ましくはシリカが使用される。無機質担体の表面水酸基の修飾方法としては、任意の方法を用いることができる。
第4級アンモニウム基を交換基として有する固体強塩基性アニオン交換体は、市販のものを使用してもよい。その場合には、前処理として予め所望のアニオン種でイオン交換を行なった後に、エステル交換触媒として使用してもよい。
また、工程(α)において用いられるさらに別の触媒として、少なくとも1個の窒素原子を含む複素環基が結合している巨大網状及びゲルタイプの有機ポリマー、又は少なくとも1個の窒素原子を含む複素環基が結合している無機質担体から成る固体触媒を用いてもよい。また、さらにはこれらの含窒素複素環基の一部又は全部が4級塩化された固体触媒も用いることができる。なお、イオン交換体などの固体触媒は、本実施形態においては充填物としての機能も果たすことができる。
工程(α)における触媒として、上記の中でもアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水素化物、水酸化物、アルコキシド化物類、アリーロキシド化物類、アミド化物類等の塩基性化合物類が好ましく、アルカリ金属の水素化物、又は水酸化物がより好ましく、アルカリ金属の水酸化物がさらに好ましく、水酸化カリウムが特に好ましい。上記の触媒は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい
工程(α)で用いられる触媒の量は、使用する触媒の種類によって調整すればよいが、反応条件下で反応液に溶解するような均一系触媒を連続的に供給する場合には、供給原料であるバイオエチレンカーボネートとバイオメタノールの合計質量に対して、触媒の含有量は、好ましくは0.0001~50質量%、より好ましくは0.005~20質量%、さらに好ましくは0.01~10質量%である。また、固体触媒を該蒸留塔内に設置して使用する場合には、触媒の充填量は、該蒸留塔の空塔容積に対して、好ましくは0.01~75容積%、より好ましくは0.05~60容積%、さらに好ましくは0.1~60容積%である。
工程(α)において反応蒸留塔である連続多段蒸留塔Aに、バイオエチレンカーボネートを連続的に供給する方法としては、特定の段に供給することが好ましい。例えば、原料であるバイオエチレンカーボネートは、連続多段蒸留塔Aの上から3段目以下であって、連続多段蒸留塔Aの上から(n/3)段目までの間に設けられた1つ以上の導入口から連続的に導入することが好ましい。ここで、nは連続多段蒸留塔Aの総段数である。バイオエチレンカーボネート導入口を3段目以下とすることにより、バイオエチレンカーボネート、バイオエチレングリコールなどの高沸点化合物が塔頂成分中に含まれないようにすることができる傾向にある。同様の観点から、バイオエチレンカーボネート導入口から上の段は3段以上あることが好ましく、より好ましくは4段~10段であり、さらに好ましくは5段~8段である。
工程(α)において、供給原料中に、生成物であるバイオジメチルカーボネート及び/又はバイオエチレングリコールが含まれていてもよい。バイオジメチルカーボネートの含有量は、連続多段蒸留塔A内に連続的に供給される供給混合物の総量に対して、好ましくは0~40質量%、より好ましくは0~30質量%、さらに好ましくは0~20質量%である。バイオエチレングリコールの含有量は、連続多段蒸留塔A内に連続的に供給される供給混合物の総量に対して、好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~7質量%、さらに好ましくは0~5質量%である。
工程(α)における反応を工業的に実施する場合、新規に反応系に導入されるバイオエチレンカーボネート及び/又はバイオメタノールに加え、上述の第1の分離精製工程(I)、第2の分離精製工程(II)及び/又は他の工程で回収された、バイオエチレンカーボネート及び/又はバイオメタノールを再利用してもよい。たとえば、工程(I)で分離精製される塔頂成分(B1T)は、通常、バイオメタノールを主成分とするバイオジメチルカーボネートとの混合物であるので、これを工程(α)の原料の一部として再使用することが好ましい。他の工程としては、例えば、バイオジメチルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とからジアリールカーボネートを製造する工程があり、この工程では、バイオメタノールが副生し、回収される。この回収副生バイオメタノールには、通常バイオジメチルカーボネートが含まれている。さらには、この回収副生バイオメタノールには、芳香族モノヒドロキシ化合物、アルキルアリールエーテル、少量のアルキルアリールカーボネート、ジアリールカーボネートなどが含まれる場合がある。本実施形態では、この副生バイオメタノールをそのままで原料として用いることもできるし、蒸留等により該バイオメタノールよりも沸点の高い含有物質量を減少させた後に原料とすることもできる。
工程(α)において反応蒸留塔である連続多段蒸留塔Aに、バイオメタノールを連続的に供給する方法としては、特定の段に供給することが好ましい。例えば、原料であるバイオメタノールは、連続多段蒸留塔Aの上から(n/3)段目から下であって、連続多段蒸留塔Aの上から(2n/3)段目までの間に設けられた1つ以上の導入口か導入されることが好ましい。バイオメタノール及びバイオジメチルカーボネートの混合物をバイオメタノール導入口に導入する場合は、導入口を上述した特定の段にすることがより好ましい。バイオメタノールは、連続多段蒸留塔Aの上から(2n/5)段目から下であって、連続多段蒸留塔Aの上から(3n/5)段目までの間に設けられた1つ以上の導入口から連続的に導入されることがさらに好ましい。
バイオエチレンカーボネート及びバイオメタノール等の原料は、液状、ガス状又は液とガスとの混合物として該蒸留塔に連続的に供給される。原料は、付加的にガス状の原料として、連続多段蒸留塔Aの中央部及び/又は下部から断続的又は連続的に供給してもよい。また、バイオエチレンカーボネートを、上記触媒の存在する段よりも上部の段に液状又は気液混合状態で連続的に供給し、連続多段蒸留塔Aの上記の段に設置された1つ以上の導入口からバイオメタノールをガス状及び/又は液状で連続的に供給する方法も好ましい方法である。そして、これらの原料が連続多段蒸留塔Aの好ましくは5段以上、より好ましくは7段以上、さらに好ましくは10段以上の領域において触媒と接触させるようにすることが好ましい。
工程(α)において、連続多段蒸留塔Aに供給するバイオエチレンカーボネートとバイオメタノールとの量比は、用いる触媒の種類や量及び反応条件によって適宜調整すればよいが、好ましくは、供給されるバイオエチレンカーボネートに対するバイオメタノールのモル比は、0.01~1000倍の範囲である。バイオエチレンカーボネートの反応率を上げるためにはバイオメタノールをバイオエチレンカーボネートに対して2倍モル以上の過剰量供給することが好ましいが、あまり大過剰に用いると装置を大きくする必要がある。このような観点において、バイオエチレンカーボネートに対するバイオメタノールのモル比は、2~20が好ましく、さらに好ましくは3~15、さらにより好ましくは5~12である。なお、未反応バイオエチレンカーボネートが多く残存していると、生成物であるバイオエチレングリコールと反応して2量体、3量体などの多量体を副生する可能性がある。したがって、本工程を工業的規模で実施する場合、未反応バイオエチレンカーボネートの残存量をできるだけ減少させることが好ましい。
工程(α)においては、好ましくは1時間あたり2トン以上のバイオジメチルカーボネートを連続的に製造する。この観点から、連続的に供給されるバイオエチレンカーボネートの最低量は、製造すべきバイオジメチルカーボネートの量(Pトン/時間)に対して、好ましくは2.2Pトン/時間、より好ましくは2.1Pトン/時間、さらに好ましくは2.0Pトン/時間である。また、連続的に供給されるバイオエチレンカーボネートは1.9Pトン/時間以下としてもよい。
工程(α)に係る連続多段蒸留塔Aは、蒸留機能に必要な条件だけではなく、安定的に高反応率でしかも高選択率で反応を進行させるために必要な条件を満たすものであることが好ましい。具体的には、以下の条件を満たす連続多段蒸留塔であることが好ましい。
下記式(4)~(9)を満たす長さL0(cm)、内径D0(cm)の円筒形の胴部を有し、内部に複数の孔をもつ棚段をn段有する棚段塔であって、塔頂部又はそれに近い塔の上部に内径d01(cm)のガス抜出し口、塔底部又はそれに近い塔の下部に内径d02(cm)の液抜出し口、該ガス抜出し口より下部であって塔の上部及び/又は中間部に位置する1つ以上の第1の導入口を有し、該液抜出し口より上部であって塔の中間部及び/又は下部に位置する1つ以上の第2の導入口を有する。
2100 ≦ L0 ≦ 8000 式(4)
180 ≦ D0 ≦ 2000 式(5)
4 ≦ L0/D0 ≦ 40 式(6)
20 ≦ n0 ≦ 120 式(7)
3 ≦ D0/d01 ≦ 20 式(8)
5 ≦ D0/d02 ≦ 30 式(9)
なお、「塔頂部又はそれに近い塔の上部」とは、塔頂部から下方に約0.25L0までの部分を意味し、用語「塔底部又はそれに近い塔の下部」とは、塔底部から上方に約0.25L0までの部分を意味する。ここで、「L0」は、上述の定義のとおりである。
式(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)を同時に満たす連続多段蒸留塔によれば、バイオエチレンカーボネートとバイオメタノールとから、バイオジメチルカーボネートを1時間あたり好ましくは2トン以上、及び/又はバイオエチレングリコールを1時間あたり好ましくは1.3トン以上の工業的規模で、高反応率・高選択率・高生産性で、例えば1000時間以上、好ましくは3000時間以上、さらに好ましくは5000時間以上の長期間、さらに安定的に製造できる傾向にある。
0(cm)が2100以上であると、反応率が向上するため上述した生産量を達成できる傾向にある。さらに、上述した生産量を達成できる反応率を確保しつつ設備費を低下させるには、L0を8000以下にすることが好ましい。より好ましいL0(cm)の範囲は、2300≦L0≦6000であり、さらに好ましくは、2500≦L0≦5000である。
0(cm)が180以上であると、上述した生産量を達成できる傾向にある。さらに目的の生産量を達成しつつ設備費を低下させるには、D0を2000以下にすることが好ましい。より好ましいD0(cm)の範囲は、200≦D0≦1000であり、さらに好ましくは、210≦D0≦800である。
0/D0が4以上40以下であると安定運転が容易となる傾向にあり、特に40以下であると塔の上下における圧力差が大きくなることを抑制できる傾向にある。これにより、長期安定運転が容易となるだけでなく、塔下部での温度を高くしなくてもよいため、副反応が抑制され選択率が向上する傾向にある。より好ましいL0/D0の範囲は、5≦L0/D0≦30であり、さらに好ましくは、7≦L0/D0≦20である。
0が10以上であると反応率が向上するため上述した生産量を達成できる傾向にある。さらに、目的の生産量を達成できる反応率を確保しつつ設備費を低下させるには、n0を120以下にすることが好ましい。さらに、n0が120以下であると塔の上下における圧力差が大きくなることを抑制できる傾向にある。これにより、長期安定運転が容易となるだけでなく、塔下部での温度を高くしなくてもよいため、副反応が抑制され選択率が向上する傾向にある。より好ましいn0の範囲は、30≦n0≦100であり、さらに好ましくは、40≦n0≦90である。
0/d01が3以上であると設備費が安くなるだけでなくガス成分が系外に出る量を抑制できるため、安定運転が容易になる傾向にある。D0/d01が20以下であるとガス成分の抜出し量が相対的に大きくなり、安定運転が容易になるだけでなく、反応率が向上する傾向にある。より好ましいD0/d01の範囲は、4≦D0/d01≦15であり、さらに好ましくは、5≦D0/d01≦13である。
0/d02が5以上であると設備費が安くなるだけでなく液抜出し量が相対的に少なくなり、安定運転が容易になる傾向にある。D0/d02が30以下であると液抜出し口や配管での流速が急激に速くなることを抑制でき、エロージョンを起こし難くなり装置の腐食を抑制できる傾向にある。より好ましいD0/d02の範囲は、7≦D0/d02≦25であり、さらに好ましくは、9≦D0/d02≦20である。
さらに、本実施形態ではd01とd02が式(10)を満たす場合、さらに好ましいことがわかった:
1 ≦ d01/d02 ≦ 5 式(10)
本実施形態でいう長期安定運転とは、1000時間以上、好ましくは3000時間以上、さらに好ましくは5000時間以上、フラッディングやウイーピングや、配管のつまりやエロージョンがなく、運転条件に基づいた定常状態で運転が継続でき、高反応率・高選択率・高生産性を維持しながら、所定量のバイオジメチルカーボネートとバイオエチレングリコールが製造されていることを意味する。
工程(α)では、好ましくは1時間あたり2トン以上の高生産性でバイオジメチルカーボネート及び/又は1時間あたり1.3トン以上の高生産性でバイオエチレングリコールをそれぞれ高選択率で長期間安定的に生産できる傾向にある。バイオジメチルカーボネート及びバイオエチレングリコールは、より好ましくはそれぞれ1時間あたり3トン以上及び1.95トン以上、さらに好ましくはそれぞれ1時間あたり4トン以上及び2.6トン以上それぞれ製造してもよい。また、工程(α)では、上記の連続多段蒸留塔のL0、D0、L0/D0、n0、D0/d01、D0/d02について、2300≦L0≦6000、200≦D0≦1000、5≦L0/D0≦30、30≦n0≦100、4≦D0/d01≦15、7≦D0/d02≦25を満たす場合は、1時間あたり2.5トン以上、好ましくは1時間あたり3トン以上、さらに好ましくは1時間あたり3.5トン以上のバイオジメチルカーボネートと、1時間あたり1.6トン以上、好ましくは1時間あたり1.95トン以上、さらに好ましくは1時間あたり2.2トン以上のバイオエチレングリコールとを好適に製造することができる傾向にある。さらに、工程(α)では、上記の連続多段蒸留塔のL0、D0、L0/D0、n0、D0/d01、D0/d02について、2500≦L0≦5000、210≦D0≦800、7≦L0/D0≦20、40≦n0≦90、5≦D0/d01≦13、9≦D0/d02≦20を満たす場合は、1時間あたり3トン以上、好ましくは1時間あたり3.5トン以上、さらに好ましくは1時間あたり4トン以上のバイオジメチルカーボネートと、1時間あたり1.95トン以上、好ましくは1時間あたり2.2トン以上、さらに好ましくは1時間あたり2.6トン以上のバイオエチレングリコールとを好適に製造することができる傾向にある。
本実施形態におけるバイオジメチルカーボネート及びバイオエチレングリコールの選択率は、反応したバイオエチレンカーボネートに対する割合として算出される。本実施形態において、バイオジメチルカーボネート及びバイオエチレングリコールの選択率は、好ましくは95%以上であり、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上である。また、本実施形態における反応率とは、通常、バイオエチレンカーボネートの反応率を表す。本実施形態において、バイオエチレンカーボネートの反応率は、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上、さらにより好ましくは99.5以上、特に好ましくは99.9%以上である。
工程(α)で用いられる連続多段蒸留塔Aは、インターナルとしてトレイを有する棚段塔式蒸留塔であることが好ましい。本実施形態におけるインターナルとは、蒸留塔において実際に気液の接触を行わせる部分のことを意味する。このようなトレイとしては、特に限定されないが、例えば、泡鍾トレイ、多孔板トレイ、リップルトレイ、バラストトレイ、バルブトレイ、向流トレイ、ユニフラックストレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラックトレイ、デュアルフロートレイ、グリッドプレートトレイ、ターボグリッドプレートトレイ、キッテルトレイ等が挙げられる。なお、工程(α)においては、一部の棚段部に充填物が充填された部分とトレイ部とを合わせ持つ多段蒸留塔も用いてもよい。このような充填物としては、特に限定されないが、例えば、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック等の不規則充填物や、メラパック、ジェムパック、テクノパック、フレキシパック、スルザーパッキング、グッドロールパッキング、グリッチグリッド等の規則充填物が挙げられる。なお、本実施形態における「インターナルの段数n(n0、n1、n2等)」とは、トレイの場合は、トレイの数を意味し、充填物の場合は、理論段数を意味する。したがって、トレイ部と充填物の充填された部分とを合わせ持つ多段蒸留塔の場合の段数nは、トレイの数と理論段数の合計である。
工程(α)のバイオエチレンカーボネートとバイオメタノールとの反応において、インターナルが所定の段数を有するトレイ及び/又は充填物からなる棚段式連続多段蒸留塔及び/又は充填塔式連続多段蒸留塔のいずれを用いてもよいが、インターナルがトレイである棚段塔式蒸留塔がより好ましい。さらに、トレイが多孔板部とダウンカマー部を有する多孔板トレイであるとより好ましい。該多孔板トレイは、該多孔板部の面積1m2あたり100~1000個の孔を有していることが好ましい。より好ましい孔数は該面積1m2あたり120~900個であり、さらに好ましくは150~800個である。また、該多孔板トレイの孔1個あたりの断面積は、0.5~5cm2であることが好ましい。より好ましい孔1個あたりの断面積は、0.7~4cm2であり、さらに好ましくは0.9~3cm2である。さらには、該多孔板トレイが該多孔板部の面積1m2あたり100~1000個の孔を有しており、かつ、孔1個あたりの断面積が0.5~5cm2であると特に好ましい。該多孔板部の孔数は、全ての多孔板において同じであってもよいし、異なっていてもよい。
連続多段蒸留塔Aの多孔板トレイの開口比は、1.5~15%の範囲であることが好ましい。開口比が1.5%以上であると、必要とする生産量に対して装置を小さくでき、設備費が安くなるだけでなく、滞留時間が短くなり副反応(例えば、反応生成物であるバイオエチレングリコールと未反応バイオエチレンカーボネートとの反応)が抑制できる傾向にある。また、開口比が15%以下であると各トレイでの滞留時間が長くなるので、高反応率を達成するための段数を低減させることができ、上記のn0をより大きくすることができる傾向にある。このような観点で、好ましい開口比の範囲は、1.7~8.0%であり、さらに好ましくは1.9~6.0%の範囲である。
本実施形態における連続多段蒸留塔の多孔板トレイの開口比とは、連続多段蒸留塔Aを構成する各トレイにおいて、ガス及び液体が通過できる各トレイの開口部の全面積(孔の全断面積)と、その開口部を有するトレイの面積との比を意味する。なお、ダウンカマー部のあるトレイについては、その部分を除いた、実質的にバブリングの起こっている部分の面積をトレイの面積とする。
なお、連続多段蒸留塔Aの各トレイの開口比は全て同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態においては、通常、上部のトレイの開口比が下部のトレイの開口比より大きい多段蒸留塔が好ましく用いられる。
工程(α)では、原料であるバイオエチレンカーボネートとバイオメタノールとを触媒が存在する連続多段蒸留塔A内に連続的に供給し、該塔内で反応と蒸留を同時に行い、生成するバイオジメチルカーボネートを含む低純度バイオジメチルカーボネート混合物(AT)を塔上部より(好ましくはガス状で)連続的に抜出し、バイオエチレングリコールを含む高沸点反応混合物(AB)を塔下部より(好ましくは液状)で連続的に抜出すことによりバイオジメチルカーボネートとバイオエチレングリコールとが連続的に製造される。
工程(α)で行われるエステル交換反応の反応時間は連続多段蒸留塔A内での反応液の平均滞留時間に相当すると考えられる。該反応時間は該連続多段蒸留塔Aのインターナルの形状や段数、原料供給量、触媒の種類や量、反応条件などによって調整すればよいが、好ましくは0.1~20時間、より好ましくは0.5~15時間、さらに好ましくは1~10時間である。
工程(α)における反応温度は、用いる原料化合物の種類や触媒の種類や量によって調整すればよいが、好ましくは30~300℃である。反応速度を高めるためには反応温度を高くすることが好ましいが、反応温度が高いと副反応も起こりやすくなる。この観点から、好ましい反応温度は40~250℃、より好ましくは50~200℃、さらに好ましくは60~150℃である。本実施形態において、塔底温度は、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは110℃以下、さらにより好ましくは100℃以下である。塔底温度の下限値は特に限定されず、例えば50℃、60℃、又は70℃であってよい。
また、工程(α)における反応圧力は、用いる原料化合物の種類や組成、反応温度などにより調整すればよいが、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよく、好ましくは1Pa~2×107Pa、より好ましくは、103Pa~107Pa、さらに好ましくは104Pa~5×106Paの範囲で行われる。
[バイオ由来ジメチルカーボネートの精製工程]
(第1の分離精製工程(I))
本実施形態の製造方法は、上記工程(α)に続く、第1の分離精製工程(I)と、第2の分離精製工程(II)とをさらに含むことが好ましい。工程(I)は、上記工程(α)で得られたバイオジメチルカーボネートとバイオメタノールとを含む低沸点反応混合物(低純度バイオジメチルカーボネート混合物)(AT)を連続多段蒸留塔B1に連続的に供給し、バイオメタノールを主成分とする塔頂成分(B1T)を塔上部より連続的に抜き出し、バイオジメチルカーボネートを主成分とする塔底成分(B1B)を塔下部より連続的に抜き出す工程である。
以下、工程(I)について詳細に説明する。
工程(I)において、連続多段蒸留塔B1に供給する、工程(α)により連続的に抜き出される低沸点反応混合物(低純度バイオジメチルカーボネート混合物)(AT)中のバイオジメチルカーボネートの濃度は、25.00~95.00質量%であり、30.00~90.00質量%であることが好ましく、35.00~85.00質量%であることがより好ましい。
低沸点反応混合物(低純度バイオジメチルカーボネート混合物)(AT)は、バイオジメチルカーボネート及びバイオメタノール以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、特に限定されないが、例えば、アルコキシアルコール、脂肪族カーボネートエーテル、アルキレンオキシド、二酸化炭素等が挙げられる。アルコキシアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、2-メトキシエタノール(以下「2ME」とも記す。)が挙げられる。脂肪族カーボネートエーテルとしては、特に限定されないが、例えばエチレングリコールモノメチルカーボネート(以下「EMMC」とも記す。)が挙げられる。アルキレンオキシドとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンオキサイドが挙げられる。
低沸点反応混合物(AT)中のバイオメタノールの濃度は、5.00~75.00質量%であることが好ましく、10.00~70.00質量%であることがより好ましく、15.00~65.00質量%であることがさらに好ましい。
低沸点反応混合物(AT)中の2-メトキシエタノールの濃度は、0.00~1.00質量%であることが好ましく、0.00~0.80質量%であることがより好ましく、0.00~0.60質量%であることがさらに好ましい。
低沸点反応混合物(AT)中の二酸化炭素の含有量は、0.00~1.00質量%であることが好ましく、0.00~0.50質量%であることがより好ましく、0.00~0.10質量%であることがさらに好ましい。
また、連続多段蒸留塔B1の塔底温度は、115℃以上であり、140~250℃であることが好ましく、180~220℃であることがより好ましい。
工程(I)において、連続多段蒸留塔B1に供給する低沸点反応混合物(AT)中のバイオジメチルカーボネートの濃度が前記範囲内であり、かつ連続多段蒸留塔B1の塔底温度が前記範囲内であると、連続多段蒸留塔B1の塔底より得られる、例えばジフェニルカーボネート製造原料として可能なレベルである純度99.0質量%以上の工業級バイオジメチルカーボネートから、例えば、リチウムイオン電池電解液用として使用可能なレベルである純度99.99質量%以上の高純度のバイオジメチルカーボネートを製造する際の消費熱量を低減することができる。つまり小さい還流比で純度99.99質量%以上の高純度のバイオジメチルカーボネートを製造することができる。通常、最終的に得られるバイオジメチルカーボネートの純度を高くするためには、連続多段蒸留塔B1に供給する低沸点反応混合物(AT)中のバイオジメチルカーボネートの濃度も予め高く(例えば、純度99.95質量%)設定するはずであるが、本実施形態の製造方法では、驚くべきことに当該バイオジメチルカーボネートの濃度を上述したような、従来より低い範囲に設定することにより、又は従来より低い範囲に設定したとしても、最終的なバイオジメチルカーボネートの純度を、リチウムイオン電池電解液用として使用可能なレベルである純度99.99質量%以上の高純度とすることができること、すなわち、純度99.0質量%以上のバイオジメチルカーボネートから純度99.99質量%以上のバイオジメチルカーボネートを、消費熱量を低減して製造することができることを見出した。
このような効果を発現するメカニズムは明らかではないが、本発明者らは以下のように推定している。連続多段蒸留塔B1に供給する低沸点反応混合物(AT)中には、通常、不純物として、バイオメタノール、微量のアルコキシアルコール、微量の脂肪族カーボネートエーテル等が含まれ得る。2MEは、バイオジメチルカーボネートと蒸留分離し難いため、このような不純物を含むバイオジメチルカーボネートを純度99.99質量%以上まで高純度化するためには多くの消費熱量つまり、大きい還流比が好ましい。本工程(I)では、連続多段蒸留塔B1に供給する低沸点反応混合物(AT)中のバイオジメチルカーボネートの濃度を25.00~95.00質量%のように低い範囲としており、また、バイオメタノールとバイオジメチルカーボネートとの蒸留分離を高圧下で行い、塔底温度を高温(例えば、115℃以上)に上げることを可能としている。供給混合物中のバイオジメチルカーボネートの濃度を下げ、かつ塔底温度を上げることで、バイオジメチルカーボネートを高純度化するための阻害物質である2MEを、高沸点化合物に変換することができる。高沸点化合物はバイオジメチルカーボネートとの蒸留分離が容易に可能であるため、工程(II)の連続多段蒸留塔B2において、還流比を下げ、消費熱量を低減して、バイオジメチルカーボネートを純度99.99質量%以上まで高純度化することが可能になる。
前記連続多段蒸留塔B1において、下記式(i)で算出される塔内液滞留時間は、5分以上であることが好ましく、8~150分であることがより好ましく、10~80分であることがさらに好ましい。連続多段蒸留塔B1において、塔内液滞留時間が前記範囲内であると、2MEの転化率が高くなり、連続多段蒸留塔B1より抜き出す塔底成分(B1B)中における2MEの残濃度が低く(例えば、10質量ppm以下)なる傾向にある。
塔内液滞留時間(分)=BTM容量(運転時に塔BTMに滞留している液容量(kg))/BTM抜出流量(塔底成分として抜き出す流量(kg/分)・・・(i)
工程(I)は、Feを含有する化合物の存在下で行われることが好ましい。
例えば、前記連続多段蒸留塔B1の内部又は表面に、Feを含有する化合物が存在することが好ましい。工程(I)が、Feを含有する化合物の存在下で行われると、バイオジメチルカーボネートを高純度化するための阻害物質である2MEを高沸点化合物に変換する反応を一層促進することができる。その結果、最終的なバイオジメチルカーボネートの純度を、例えば、99.99質量%以上とすることが一層容易になり、しかもこのような99.99質量%以上の高純度のバイオジメチルカーボネートを一層少ない蒸気量、つまり小さい還流比で製造することができる傾向にある。
Feを含有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、炭素鋼や酸化鉄等が挙げられる。
Feを含有する化合物の存在量は、低沸点反応混合物(AT)の量に対して、0.1質量ppb以上であることが好ましく、0.5質量ppb以上3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量ppm以上2.0質量%以下であることがさらに好ましく、10質量ppm以上1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
前記連続多段蒸留塔B1の回収部及び濃縮部のインターナルは、それぞれトレイ及び/又は充填物であることが好ましく、トレイであることがより好ましい。トレイの種類は限定されないが、例えば泡鐘トレイ、多孔板トレイ、リップルトレイ、バラストトレイ、バルブトレイ、向流トレイ、ユニフラックストレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラックトレイ、デュアルフロートレイ、グリッドプレートトレイ、ターボグリッドプレートトレイ、キッテルトレイ等が好ましい。この連続多段蒸留塔において2MEの存在量が少なく、実質的に反応が起こらない段(例えば、供給液導入段より上部の段)がある場合、この段充填物を充填した蒸留塔、すなわち、トレイ部と充填物の充填された部分とを併せ持つ多段蒸留塔とすることも好ましい。このような充填物としては、特に限定されないが、例えば、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック等の不規則充填物やラメパック、ジェムパック、テクノパック、フレキシパック、スルザーパッキング、グッドロールパッキング、グリッチグリッド等の規則充填物が好ましい。連続多段蒸留塔B1の回収部及び濃縮部のインターナルが、それぞれトレイ及び/又は充填物であると、最終的なバイオジメチルカーボネートの純度を、例えば、リチウムイオン電池電解液用として使用可能なレベルの高純度(純度99.99質量%以上)とすることが一層容易になり、しかも工業級のバイオジメチルカーボネートからこのような高純度(純度99.99質量%以上)のバイオジメチルカーボネートを、一層供給熱量を低減して(小さい還流比で)製造することができる傾向にある。
前記連続多段蒸留塔B1の還流比は、0.5~5であることが好ましく、0.8~4であることがより好ましく、1~3.5であることがさらに好ましい。本工程(I)をこのように小さい還流比とすることにより、消費熱量を低減できると共に最終的なバイオジメチルカーボネートの純度を、例えば、リチウムイオン電池電解液用として使用可能なレベルの高純度(純度99.99質量%以上)とすることができる。
前記連続多段蒸留塔B1の塔底成分(B1B)中、バイオジメチルカーボネートの濃度は、99.00~99.95質量%である。また、前記連続多段蒸留塔B1の塔底成分(B1B)中、2-メトキシエタノールの含有量は、100質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましく、10質量ppm以下であることがさらに好ましい。前記連続多段蒸留塔B1の塔底成分(B1B)中、2-メトキシエタノールの含有量の下限は、特に限定されないが、例えば、0質量ppmである。前記連続多段蒸留塔B1の塔底成分(B1B)中、バイオジメチルカーボネートの純度、及び2-メトキシエタノールの含有量が前記範囲であると、最終的なバイオジメチルカーボネートの純度を、例えば、リチウムイオン電池電解液用として使用可能なレベルの高純度(純度99.99質量%以上)とすることが一層容易になり、しかも工業級のバイオジメチルカーボネートからこのような高純度(純度99.99質量%以上)のバイオジメチルカーボネートを一層少ない消費熱量(小さい還流比)で製造することができる傾向にある。
前記連続多段蒸留塔B1の塔底成分(B1B)中、高沸点化合物の含有量は、0.1質量ppm以上であることが好ましく、1質量ppm以上であることがより好ましく、100質量ppm以上であることがさらに好ましい。高沸点化合物は、蒸留においてバイオジメチルカーボネートとの分離が難しい2-メトキシエタノールが変換された物質と考えられるため、当該高沸点化合物の含有量は上述の範囲であってもよい。つまり、連続多段蒸留塔B1の塔底成分(B1B)中、高沸点化合物の含有量が前記範囲であると、最終的なバイオジメチルカーボネートの純度を、例えば、リチウムイオン電池電解液用として使用可能なレベルの高純度(純度99.99質量%以上)とすることが一層容易になり、しかも工業級のバイオジメチルカーボネートからこのような高純度(純度99.99質量%以上)のバイオジメチルカーボネートを一層少ない消費熱量(小さい還流比)で製造することができる傾向にある。
前記連続多段蒸留塔B1の塔底成分(B1B)中、高沸点化合物の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば、1.0質量%である。
本実施形態において、「高沸点化合物」とは、760mmHgの圧力下で、主成分であるバイオジメチルカーボネートの沸点よりも100℃以上高い沸点を有する化合物である。
なお、本実施形態において、バイオジメチルカーボネートの濃度及び各成分の含有量は後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
工程(I)では、バイオジメチルカーボネート及びバイオメタノールを含む低沸点反応混合物(AT)を、バイオメタノールを主成分とする塔頂成分(B1T)とバイオジメチルカーボネートを主成分とする塔底成分(B1B)とに蒸留分離するために連続多段蒸留塔B1が用いられる。
工程(I)に係る該連続多段蒸留塔B1は、大量の低沸点反応混合物(AT)から所定の分離効率でバイオジメチルカーボネートを長期間安定的に分離する機能を有することが好ましく、そのために種々の条件を同時に満足させることが好ましい。
本実施形態では、バイオジメチルカーボネートとバイオメタノールとの低沸点反応混合物(AT)は連続多段蒸留塔B1内に連続的に供給され、バイオメタノールを主成分とする塔頂成分(B1T)が塔上部より(好ましくはガス状で)連続的に抜き出され、バイオジメチルカーボネートを主成分とする塔底成分(B1B)が塔下部より(好ましくは液状で)連続的に抜出される。該低沸点反応混合物(AT)は、連続多段蒸留塔B1内に供給するにあたり、ガス状で供給してもよいし、液状で供給してもよい。該低沸点反応混合物(AT)を連続多段蒸留塔B1内に供給するに先立って該蒸留塔B1の供給口付近の液温に近い温度にするために、加熱又は冷却することも好ましい。
また、該低沸点反応混合物(AT)を連続多段蒸留塔B1内に供給する位置は、回収部と濃縮部との間付近であることが好ましい。連続多段蒸留塔B1は、蒸留物の加熱のためのリボイラーと、還流装置を有することが好ましい。
本実施形態においては、該低沸点反応混合物(AT)は好ましくは約2トン/時間以上で連続多段蒸留塔B1内に供給され、蒸留分離され、該蒸留塔B1の上部から低沸点反応混合物である塔頂成分(B1T)が、下部から高沸点反応混合物である塔底成分(B1B)がそれぞれ連続的に抜出される。
工程(I)においては、該低沸点反応混合物である塔頂成分(B1T)中の該バイオメタノールの濃度を好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上にすることが可能である。塔頂成分(B1T)中の該バイオメタノール類の濃度の上限は特に限定されないが、例えば、100質量%である。そして、低沸点反応混合物である塔頂成分(B1T)の主成分として分離されるバイオメタノールは、好ましくは300kg/時間以上、好ましくは350kg/時間以上、より好ましくは400kg/時間以上の量である。この低沸点反応混合物である塔頂成分(B1T)の他の成分は主としてバイオジメチルカーボネートであるので、これをそのままで、あるいは他の工程で回収されたバイオメタノールと混合した上で、バイオエチレンカーボネートと反応させるバイオメタノールとして再使用することができる。これは本実施形態の好ましい実施態様のひとつである。回収されたバイオメタノールの量だけでは原料として不足する場合には新たにバイオメタノールが追加される。
また、工程(I)で分離される高沸点反応混合物である塔底成分(B1B)は、主成分がバイオジメチルカーボネートであり、塔底成分(B1B)における未反応バイオメタノールの含有量は好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらにより好ましくは0.6質量%以下である。塔底成分(B1B)中、未反応バイオメタノールの含有量の下限は、特に限定されないが、例えば、0質量%である。
また、本実施形態の好ましい実施態様では、ハロゲンを含まない原料や触媒を用いて反応が実施される。そのような態様によれば、生成するバイオジメチルカーボネートには、まったくハロゲンを含まないようにすることができる。したがって、本実施形態ではハロゲン含有量が、好ましくは0.1質量ppm以下、より好ましくは1質量ppb以下(イオンクロマトグラフ法による検出限界外)である。
工程(I)で行われる連続多段蒸留塔B1内での塔底圧力は、塔内組成と使用する塔底温度によって調整すればよいが、0.1~3.0MPaであることが好ましく、0.15~2.5MPaであることがより好ましく、0.2~2.0MPaであることがさらに好ましい。
工程(I)で用いられる連続多段蒸留塔B1を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、製造され、分離されるバイオジメチルカーボネートとバイオエチレングリコールの品質の面からは、炭素鋼、ステンレススチールなどの金属材料が好ましい。
(第2の分離精製工程(II))
本実施形態の製造方法は、第1の分離精製工程(I)に続く第2の分離精製工程(II)をさらに含むことが好ましい。工程(II)は、上述した工程(I)の連続多段蒸留塔B1の塔底部より連続的に抜出されたバイオジメチルカーボネートを主成分とする塔底成分(B1B)を、側面抜出口を有する連続多段蒸留塔B2に連続的に供給し、バイオジメチルカーボネートを主成分とするサイドカット成分(B2s)を側面抜出口より連続的に抜き出す工程である。
第2の分離精製工程では、低沸点成分である塔頂成分(B2T)を塔上部より連続的に抜き出してもよい。また、第2の分離精製工程では、塔底から高沸点成分である塔底成分(B2B)を塔下部より連続的に抜き出してもよい。
以下、工程(II)について詳細に説明する。
工程(II)において、連続多段蒸留塔B2に供給する、工程(I)により連続的に得られる塔底成分(B1B)中のバイオジメチルカーボネートの濃度は、99.00~99.95質量%であり、99.2~99.95質量%であることが好ましく、99.4~99.95質量%であることがより好ましい。連続多段蒸留塔B1の塔底成分(B1B)中、バイオジメチルカーボネートの濃度が前記範囲であると、最終的なバイオジメチルカーボネートの純度を、例えば、リチウムイオン電池電解液用として使用可能なレベルである純度99.99質量%以上の高純度とすることが容易になり、しかも工業級のバイオジメチルカーボネートからこのような純度99.99質量%以上の高純度のバイオジメチルカーボネートを、少ない消費熱量、つまり小さい還流比で製造することができる。
工程(II)において、連続多段蒸留塔B2の側面抜出口から抜き出されるサイドカット成分(B2s)中のバイオジメチルカーボネートの純度は、99.99質量%以上である。このような高純度のバイオジメチルカーボネートは、例えば、リチウムイオン電池電解液用として使用可能である。
前記連続多段蒸留塔B2の塔底温度は、120℃以下であることが好ましく、60~110℃であることがより好ましく、65~105℃であることがさらに好ましい。連続多段蒸留塔B2の塔底温度が前記範囲内であると、前記多段蒸留塔B1の塔上部凝縮器の熱交換により発生させ得る蒸気により加熱することができ、例えば工業級である純度99.0質量%以上のバイオジメチルカーボネートからリチウムイオン電池電解液用として使用可能なレベルである純度99.99質量%以上の高純度のバイオジメチルカーボネートを、外部からの供給熱量をより低減して製造することができる。
前記連続多段蒸留塔B2の側面抜出口から抜き出されるサイドカット成分(B2s)中、高沸点化合物の含有量が30質量ppm以下であることが好ましく、25質量ppm以下であることがより好ましく、20質量ppm以下であることがさらに好ましい。例えば、連続多段蒸留塔B1のみで、最終的に得られるバイオジメチルカーボネートの純度を99.99質量%以上になるように精製して塔底から抜き出すと、バイオジメチルカーボネート中に、高沸点化合物が含まれることが明らかになった。当該高沸点化合物は、リチウムイオン電池用等の電解液用途として使用する場合には、性能の低下につながるため除去されることが望まれる。本実施形態の製造方法によれば、工程(I)及び工程(II)の2段階の工程を経ることで、消費熱量を抑制しながら高沸点化合物の含有量を低下させることができる。なお、ここで「高沸点化合物」の定義は前述のとおりである。
前記連続多段蒸留塔B2の側面抜出口から抜き出されるサイドカット成分(B2s)中の金属含有量は1質量ppm以下であることが好ましく、0.8質量ppm以下であることがより好ましく、0.6質量ppm以下であることがさらに好ましい。例えば、連続多段蒸留塔B1のみで、最終的に得られるバイオジメチルカーボネートの純度を99.99質量%以上になるように精製して塔底から抜き出すと、バイオジメチルカーボネート中に、金属が含まれることが明らかになった。当該金属は、リチウムイオン電池用等の電解液用途として使用する場合には、性能の低下につながるため除去されることが望まれる。本実施形態の製造方法によれば、工程(I)及び工程(II)の2段階の工程を経ることで、消費熱量を抑制しながら金属の含有量を低下させることができる。
前記連続多段蒸留塔B2の側面抜出口から抜き出されるサイドカット成分(B2s)中の水含有量は30質量ppm以下であることが好ましく、25質量ppm以下であることがより好ましく、20質量ppm以下であることがさらに好ましい。水分は、リチウムイオン電池用等の電解液用途として使用する場合には、性能の低下につながるため除去されることが望まれる。本実施形態の製造方法によれば、工程(I)及び工程(II)の2段階の工程を経ることで、消費熱量を抑制しながら水分の含有量を低下させることができる。
前記連続多段蒸留塔B2の側面抜出口から抜き出されるサイドカット成分(B2s)中のメタノール及びエタノールの合計含有量が20質量ppm以下であることが好ましい。このような成分の含有量が前記範囲内である高純度のバイオジメチルカーボネートは、例えば、リチウムイオン電池電解液用として極めて有用である。
前記連続多段蒸留塔B2の側面抜出口から抜き出されるサイドカット成分(B2s)中の2ME含有量は50質量ppm以下であることが好ましく、40質量ppm以下であることがより好ましく、30質量ppm以下であることがさらに好ましい。2MEは、リチウムイオン電池用等の電解液用途として使用する場合には、性能の低下につながるため除去されることが望まれる。本実施形態の製造方法によれば、工程(I)及び工程(II)の2段階の工程を経ることで、工程(I)で2MEが高沸点化合物などに変換され、十分に除去された後に、工程(II)により更に精製されるため、消費熱量を抑制しながら2MEの含有量を極めて低くさせることができる。
サイドカット成分(B2s)中、高沸点化合物、2ME、金属、水、メタノール及びエタノールの各含有量の下限は、特に限定されないが、例えば、0質量ppmである。
前記連続多段蒸留塔B2において、サイドカット成分(B2s)がガス状で抜き出されることが好ましい。連続多段蒸留塔B2において、サイドカット成分(B2s)がガス状で抜き出されると、サイドカット成分(B2s)中において、バイオジメチルカーボネートに対する高沸成分量及び金属含有量を抑えられる傾向にある。
前記連続多段蒸留塔B2の還流比は、0.2~4であることが好ましく、0.6~2.0であることがより好ましく、0.8~1.5であることがさらに好ましい。本実施形態の製造方法では、このように小さい還流比とすることにより、消費熱量を低減できると共に最終的なバイオジメチルカーボネートの純度を、例えば、リチウムイオン電池電解液用として使用可能なレベルである純度99.99質量%以上の高純度とすることができる。
前記連続多段蒸留塔B2において、側面抜出口より上の塔径D21(cm)と側面抜出口より下の塔径D22(cm)との比が下記式(ii)の条件を満たすことが好ましい。D21/D22が下記式(ii)の条件を満たすと、例えば、リチウムイオン電池電解液用として使用可能なレベルである純度99.99質量%以上の高純度のバイオジメチルカーボネートを一層少ない消費熱量、つまり一層小さい還流比で製造することができる傾向にある。
0.2<D21/D22<1.0・・・(ii)
同様の観点から、D21/D22は0.3~1.0であることがより好ましい。
工程(II)では、連続多段蒸留塔B1の塔底部より連続的に抜出されたバイオジメチルカーボネートを主成分とする塔底成分(B1B)から、バイオジメチルカーボネートを主成分とするサイドカット成分(B2s)を蒸留分離するために連続多段蒸留塔B2が用いられる。連続多段蒸留塔B2により、塔底成分(B1B)から、低沸点成分である塔頂成分(B2T)と、高沸点成分である塔底成分(B2B)とを更に蒸留分離してもよい。
工程(II)の連続多段蒸留塔B2の回収部及び濃縮部は、インターナルとして前記のトレイ及び/又は充填物を有する蒸留塔であることが好ましい。トレイ部と充填物の充填された部分とを合わせ持つ多段蒸留塔を用いてもよい。
なお、連続多段蒸留塔B2の回収部及び濃縮部を合わせたインターナルの理論段数としては、3~40段であることが好ましい。
連続多段蒸留塔B2のトレイとしては、特に限定されないが、例えば泡鍾トレイ、多孔板トレイ、リップルトレイ、バラストトレイ、バルブトレイ、向流トレイ、ユニフラックストレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラックトレイ、デュアルフロートレイ、グリッドプレートトレイ、ターボグリッドプレートトレイ、キッテルトレイ等が好ましい。連続多段蒸留塔B2の充填物としては、特に限定されないが、例えば、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック等の不規則充填物やメラパック、ジェムパック、テクノパック、フレキシパック、スルザーパッキング、グッドロールパッキング、グリッチグリッド等の規則充填物が好ましい。
本実施形態では、連続多段蒸留塔B1の塔底部より連続的に抜出されたバイオジメチルカーボネートを主成分とする塔底成分(B1B)を連続多段蒸留塔B2に連続的に供給し、低沸点成分である塔頂成分(B2T)を塔上部より連続的に抜き出し、バイオジメチルカーボネートを主成分とするサイドカット成分(B2s)を側面抜出口より連続的に抜き出し、塔底から高沸点成分である塔底成分(B2B)を塔下部より連続的に抜き出すことが好ましい。該塔底成分(B1B)を連続多段蒸留塔B2内に供給するに先立って該蒸留塔B2の供給口付近の液温に近い温度にするために、加熱又は冷却することも好ましい。
また、該塔底成分(B1B)を連続多段蒸留塔B2内に供給する位置は、回収部と濃縮部との間付近であることが好ましい。連続多段蒸留塔B2は、蒸留物の加熱のためのリボイラーと、還流装置を有することが好ましい。
本実施形態においては、該塔底成分(B1B)は好ましくは約2トン/時間以上で連続多段蒸留塔B1から抜出され、連続多段蒸留塔B2内に供給され、蒸留分離され、該蒸留塔B2の上部から低沸点成分である塔頂成分(B2T)が、下部から高沸点成分である塔底成分(B2B)がそれぞれ連続的に抜出される。
低沸点成分である塔頂成分(B2T)の他の成分は主としてバイオジメチルカーボネートであるので、これをそのままで、あるいは他の工程で回収されたバイオメタノールと混合した上で、バイオエチレンカーボネートと反応させるバイオメタノールとして再使用することができる。これは本実施形態の好ましい実施態様のひとつである。回収されたバイオメタノールの量だけでは、原料として不足する場合には新たにバイオメタノールを追加することが好ましい。
前記連続多段蒸留塔B1の塔底成分(B1B)は、連続多段蒸留塔B2へ直接供給するか、又は、工業級バイオジメチルカーボネートタンクへ供給後、該タンクから連続多段蒸留塔B2へ供給することが好ましい。
[バイオ由来エチレングリコールの精製工程]
本実施形態の製造方法は、工程(α)に加えて、第3の分離精製工程(III)及び第4の分離精製工程(IV)をさらに含むことも好ましい。
工程(III)は、工程(α)における連続多段蒸留塔Aの下部からバイオエチレングリコールを含む高沸点反応混合物液(AB)を連続多段蒸留塔Cに連続的に供給し、該高沸点反応混合物(AB)中に含有するバイオエチレングリコールよりも低沸点の物質を塔頂成分(CT)及び/又はサイドカット成分(CS)として連続的に抜き出し、バイオエチレングリコールを主成分とする塔底成分(CB)を蒸留塔Cの下部から連続的に抜き出す工程である。
工程(IV)は、該塔底成分(CB)を連続多段蒸留塔Eに連続的に供給し、該連続多段蒸留塔Eのサイドカット抜き出し口からサイドカット成分(ES)として高純度バイオエチレングリコールを連続的に抜き出す工程である。
これにより、1時間あたり好ましくは約1トン以上の高純度バイオエチレングリコールを長期間安定的に製造できる。
工程(III)で用いる該連続多段蒸留塔Cは、該高沸点反応混合物(AB)中に含有するバイオエチレングリコールよりも低沸点の物質を塔頂成分(CT)及び/又はサイドカット成分(CS)として効率的に除去できる機能を有していることが好ましい。また、工程(IV)で用いる該連続多段蒸留塔Eは、大量の塔底成分(CB)から高純度バイオエチレングリコールを高収率で長期間安定的に取得できる機能を有していることが好ましい。
なお、該高沸点反応混合物(AB)中には、エチレンカーボネートが微量~少量含まれる場合がある。この場合、該連続多段蒸留塔Cの塔底成分(CB)中にエチレンカーボネートが実質的に存在しないようにしておくことが好ましい。このためには、少量の水を該連続多段蒸留塔Cに加え、該エチレンカーボネートを加水分解反応によってエチレングリコールに変換させるか、及び/又はバイオエチレングリコールと反応させてジエチレングリコールなどに変換させるための工夫(例えば、該反応が完全に進行するために必要な温度と滞留時間を確保すること、塔底成分の逆混合を少なくすることなど)がなされていることが好ましい。このような工夫がなされていることによって、該連続多段蒸留塔Cの塔底成分(CB)中には、エチレンカーボネートが実質的に存在しないようにすることができる。
なお、本実施形態において、「実質的に含まない」とは、その含有量が50ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下であることを意味する。本実施形態で用いられる、連続多段蒸留塔C及び連続多段蒸留塔Eは、上記の目的を達成するために、種々の条件を同時に満足させるものであることが好ましい。
具体的には、連続多段蒸留塔C及び連続多段蒸留塔Eは、以下の条件(a)~(f)を満たすことが好ましい。
(a)連続多段蒸留塔Cが、長さLC1(cm)、内径DC1(cm)であり、内部に段数nC1をもつインターナルを有する回収部と、長さLC2(cm)、内径DC2(cm)であり、内部に段数nC2をもつインターナルを有する濃縮部と、を備え、下記式(11)~(19)を満たすものである。
300 ≦ LC1 ≦ 3000 式(11)
50 ≦ DC1 ≦ 700 式(12)
3 ≦ LC1/DC1 ≦ 30 式(13)
3 ≦ nC1 ≦ 30 式(14)
1000 ≦ LC2 ≦ 5000 式(15)
50 ≦ DC2 ≦ 500 式(16)
10 ≦ LC2/DC2 ≦ 50 式(17)
20 ≦ nC2 ≦ 100 式(18)
C2 ≦ DC1 式(19)
(b)連続多段蒸留塔Cの濃縮部には、インターナルとして1つ以上のチムニートレイが設置されており、該チムニートレイには、式(20)を満たす断面積SC(cm2)の開口部を有するチムニーが1個以上設置されており、
200 ≦ SC ≦ 1000 式(20)
かつ、該チムニーの該開口部から該チムニーのガス出口までの高さhC(cm)が、式(21)を満たす。
10 ≦ hC ≦ 80 式(21)
(c)サイドカット抜き出し口が該連続多段蒸留塔Cの該チムニートレイの液溜り部に接続されている。
(d)該連続多段蒸留塔Eが、長さLE1(cm)、内径DE1(cm)であり、内部に段数nE1をもつインターナルを有する回収部と、長さLE2(cm)、内径DE2(cm)であり、内部に段数nE2をもつインターナルを有する濃縮部と、を備え、下記式(22)~(30)を満たす。
400 ≦ LE1 ≦ 3000 式(22)
50 ≦ DE1 ≦ 700 式(23)
2 ≦ LE1/DE1 ≦ 50 式(24)
3 ≦ nE1 ≦ 30 式(25)
600 ≦ LE2 ≦ 4000 式(26)
100 ≦ DE2 ≦ 1000 式(27)
2 ≦ LE2/DE2 ≦ 30 式(28)
5 ≦ nE2 ≦ 50 式(29)
E1 ≦ DE2 式(30)
(e)該連続多段蒸留塔Eの濃縮部には、インターナルとして1つ以上のチムニートレイが設置されており、該チムニートレイが、式(31)を満たす断面積SE(cm2)の開口部を有するチムニーが2個以上設置されており、
50 ≦ SE ≦ 2000 式(31)
かつ、該チムニーの該開口部から該チムニーのガス出口までの高さhE(cm)が、式(32)を満たす。
20 ≦ hE ≦ 100 式(32)
(f)サイドカット抜き出し口が該連続多段蒸留塔Eの該チムニートレイの液溜り部に接続されている。
なお、各々の要因の好ましい範囲は下記に示される。
連続多段蒸留塔Cにおいて、LC1(cm)が300以上であると、回収部の分離効率がより向上する傾向にある。また、目的の分離効率を確保しつつ設備費を低下させる観点から、LC1を3000以下にすることが好ましい。LC1が3000以下であると塔の上下における圧力差が大きくなりすぎず、長期安定運転がより容易となる傾向にあり、また、塔下部での温度を所定の範囲とすることができ、副反応が起こりにくくなる傾向にある。より好ましいLC1(cm)の範囲は、500≦LC1≦2000であり、さらに好ましくは、600≦LC1≦1500である。
C1(cm)が50以上であると、目的とする蒸留量を達成できる傾向にある。また、目的の蒸留量を達成しつつ設備費を低下させる観点から、DC1を700以下にすることが好ましい。より好ましいDC1(cm)の範囲は、70≦DC1≦500であり、さらに好ましくは、190≦DC1≦400である
C1/DC1が3以上30以下であることにより、長期安定運転がより容易となる。より好ましいLC1/DC1の範囲は、4≦LC1/DC1≦20であり、さらに好ましくは、5≦LC1/DC1≦15である。
C1が3以上であると回収部の分離効率がより向上する傾向にある。また、目的の分離効率を確保しつつ設備費を低下させる観点から、nC1を30以下にすることが好ましい。nC1が30以下であると塔の上下における圧力差が大きくなりすぎず、長期安定運転がより容易となる傾向にあり、また、塔下部での温度を所定の範囲とすることができ、副反応が起こりにくくなる傾向にある。より好ましいnC1の範囲は、5≦nC1≦20であり、さらに好ましくは、6≦nC1≦15である。
C2(cm)が1000以上であると、濃縮部の分離効率がより向上する傾向にある。また、目的の分離効率を確保しつつ設備費を低下させる観点からは、LC2を5000以下にすることが好ましい。LC2が5000以下であると塔の上下における圧力差が大きくなりすぎず、長期安定運転がより容易となる傾向にあり、また、塔下部での温度を所定の範囲とすることができ、副反応が起こりにくくなる傾向にある。より好ましいLC2(cm)の範囲は、1500≦LC2≦4000であり、さらに好ましくは、2000≦LC2≦3500である
C2(cm)が50以上であると、目的とする蒸留量を達成できる傾向にある。また、目的の蒸留量を達成しつつ設備費を低下させる観点から、DC2を500以下にすることが好ましい。より好ましいDC2(cm)の範囲は、70≦DC2≦400であり、さらに好ましくは、90≦DC2≦350である。
C2/DC2が10以上50以下であることにより、長期安定運転がより容易となる傾向にある。より好ましいLC2/DC2の範囲は、15≦LC2/DC2≦40であり、さらに好ましくは、20≦LC2/DC2≦35である。
C2が20以上であると濃縮部の分離効率がより向上する傾向にある。また、目的の分離効率を確保しつつ設備費を低下させる観点から、nC2を100以下にすることが好ましい。nC2が100以下であると塔の上下における圧力差が大きくなりすぎず、長期安定運転がより容易となる傾向にあり、また、塔下部での温度を所定の範囲とすることができ、副反応が起こりにくくなる傾向にある。より好ましいnC2の範囲は、30≦nC2≦90であり、さらに好ましくは、40≦nC2≦80である。なお、本実施形態においては、濃縮部に1つ以上のチムニートレイが設置されることが好ましいが、その段数は、上記のnC2に含まれるものとする。
また、本実施形態の連続多段蒸留塔Cにおいては、DC2≦DC1を満たすことが好ましい。
なお、工程(III)において、連続多段蒸留塔Cに供給される高沸点反応混合物(AB)中に、少量のエチレンカーボネートを含む場合は、塔下部において該エチレンカーボネートを反応させて、塔底成分(CB)中には実質的にそれが含有しないようにするための工夫を行うことが好ましい。したがって、該連続多段蒸留塔Cの塔下部にある回収部最下部のインターナルの下部に、さらに複数(nC3段)のトレイKを設け、該トレイKの最上段から液を一部連続的に抜き出し、リボイラーで蒸留と反応に必要な熱量を与えた後、該加熱された液を回収部最下部のインターナルと該最上段トレイKとの間に設けられた供給口から蒸留塔Cに戻し、残りの液を下部のトレイに順に供給することができるようにすることが好ましい。
このような工夫を行うことによって、連続多段蒸留塔Cの塔下部における液体の滞留時間を増加させることができる傾向にある。また、該トレイKの存在する段以下の塔径(DC3)を回収部の塔径(DC1)より大きくする(DC1<DC3)ことによって液体の滞留量を増加させ滞留時間を増加させることができ、充分な反応時間を維持することができる傾向にある。さらには、塔底液の液面レベルをトレイKの最下段のトレイよりも低くすることによって、塔下部における液体の逆混合を防止することができる傾向にある。したがって、このような態様によれば、高沸点反応混合物(AB)が少量のエチレンカーボネートを含む場合においても、エチレンカーボネートを工程(III)で大過剰に存在するバイオエチレングリコールと反応させ、高沸点のジアルキレングリコール等に完全に変換することができる。
このようなトレイKとしては、上記の機能を有している限り、どのような種類のトレイであってもよいが、機能と設備費とのバランスの観点から、多孔板トレイやバッフルトレイが好ましく、中でもバッフルトレイが特に好ましい。多孔板トレイやバッフルトレイの場合、堰が設けられていることが好ましく、その堰をオーバーフローした液は、ダウンカマー部から下段のトレイに連続的に落下するようにすることが好ましい。この場合、堰の高さは、4~30cmが好ましく、より好ましくは、6~20cmで、さらに好ましくは8~15cmである。バッフルトレイの場合、この堰がバッフルである単純なトレイが特に好ましい。
好ましい該トレイKの存在する段以下の塔径DC3の範囲は、1.2DC1<DC3≦5DC1であり、より好ましくは1.5DC1<DC3≦4DC1、さらに好ましくは、1.7DC1<DC3≦3DC1である。
また、上記トレイの段数nC3は、2段以上であるが、好ましいnC3の範囲は、3≦nC3≦20であり、より好ましくは、4≦nC3≦15であり、さらに好ましくは、5≦nC3≦10である。
連続多段蒸留塔Cの濃縮部に設置されるチムニートレイは、トレイの平面に断面積SC(cm2)の開口部を有するチムニー(煙突状の物体))が1つ以上設けられたものである。そして、それらのチムニーの上部開口部には、チムニーカバーが設置されていることが好ましい。このチムニーカバーは、下段から上昇してくるガス成分がチムニーの上部開口部(ガス出口)で横向きに流れることを補助すると同時に、上段から落下してくる液体成分が直接、下段に落下することを抑制することができる。
このチムニーの横断面の形状は、3角形、四角形、多角形、円形、楕円系、星型等、いずれでもよいが、四角形、及び円形が好ましく用いられる。また、このチムニーは上部から下部までその横断面の形や面積が異なるものであってもよいが、製作が容易で安価になるため、上部から下部までその横断面の形や面積が同じものが好ましい。また、2つ以上のチムニーが異なる形状を有していてもよいが、同じ形状を有するものが好ましい。
本実施形態では、チムニートレイに接続されたチムニーの開口部(該チムニーの横断面における最小部分)の断面積SC(cm2)が、式(20)を満足していることが好ましい。
200 ≦ SC ≦ 1000 式(20)
Cが200以上であると所定の生産量を達成する際に、多くのチムニーを必要とせず設備費を抑えることができる。また、SCが1000以下であるとチムニートレイの段におけるガスの流れが均一になりやすく長期安定運転がより容易になる傾向にある。より好ましいSC(cm2)は、300≦SC≦800であり、さらに好ましくは、400≦SC≦700である。
また、該チムニーの該開口部から該チムニーのガス出口(チムニーの上部開口部下端)までの高さhC(cm2)が、式(21)を満足していることが好ましい。
10 ≦ hC ≦ 80 式(21)
本実施形態で用いられるチムニートレイには、下段-液成分を落下させるためのダウンカマー部と液成分を保持するための堰が、通常、設置されている。この堰の高さは、hCに依存するが、通常、hCより5~20cm程度小さく設定されている。したがって、hCが10以上であるとチムニートレイに十分な液量が保持され、長期安定運転がより容易になる傾向にある。また、hCが80以下であると保持される液量が増加しすぎず、設備の強度が十分なものとなる。また、精製されたバイオエチレングリコールの塔内での滞留時間が短くなる点からも好ましい。より好ましいhC(cm)は、15≦hC≦60であり、さらに好ましくは、20≦hC≦50である。
また、該チムニートレイの開口比(チムニーの開口部断面積の合計と、該開口部全断面積を含むチムニートレイの面積との比)は、5~40%の範囲であることが好ましい。該開口比が5%以上であると長期安定運転がより容易になる傾向にある。また、チムニートレイの開口比が40%以下であるとチムニーの数、及びチムニーの高さを好適に調整することができる傾向にある。より好ましい開口比は、10~38%の範囲であり、さらに好ましくは13~35%の範囲であり、さらにより好ましくは15~30%の範囲である。
工程(III)では、1つ以上のチムニートレイが連続多段蒸留塔Cの濃縮部(塔への供給口よりも上部、かつ塔頂より下部の部分)に設置され、その液溜り部の底部に接続されたサイドカット抜き出し口からバイオエチレングリコールよりも沸点が低く、バイオ由来メタノールよりも沸点の高い中間沸点物質を主成分とするサイドカット成分(CS)が連続的に抜き出される。チムニートレイの数は必要に応じて2つ以上とすることもできるが、通常は1つで実施される。このチムニートレイの設置される段は、濃縮部のどの位置でもよいが、濃縮部の段の下から3段目以上で、濃縮部の段の上から10段目以下の段が好ましい。より好ましくは、濃縮部の段の下から4段目以上で、濃縮部の段の上から15段目以下の段であり、さらに好ましくは、濃縮部の段の下から5段目以上で、濃縮部の段の上から24段目以下の段である。
工程(IV)で用いられる連続多段蒸留塔Eにおいて、LE1(cm)が400以上であると、回収部の分離効率がより向上する傾向にある。目的の分離効率を確保しつつ設備費を低下させるには、LE1を3000以下にすることが好ましい。LE1が3000以下であると塔の上下における圧力差が大きくなりすぎず、長期安定運転がより容易となる傾向にある。また、塔下部での温度を高くしなくてもよいため、副反応が起こりにくくなる傾向にある。より好ましいLE1(cm)の範囲は、500≦LE1≦2000であり、さらに好ましくは、600≦LE1≦1500である。
E1(cm)が50以上であると、十分な蒸留量が得られる傾向にある。目的の蒸留量を達成しつつ設備費を低下させるには、DE1を700以下にすることが好ましい。より好ましいDE1(cm)の範囲は、100≦DE1≦600であり、さらに好ましくは、120≦DE1≦500である。
E1/DE1が2以上であり50以下であると長期安定運転がより容易となる傾向にある。より好ましいLE1/DE1の範囲は、3≦LE1/DE1≦20であり、さらに好ましくは、4≦LE1/DE1≦15である。
E1が3以上であると回収部の分離効率がより向上する傾向にある。目的の分離効率を確保しつつ設備費を低下させるには、nE1を30以下にすることが好ましい。nE1が30以下であると塔の上下における圧力差が大きくなりすぎず、長期安定運転がより容易となる傾向にある。また、塔下部での温度を高くしなくてもよいため、副反応がより抑制される。より好ましいnE1の範囲は、5≦nE1≦20であり、さらに好ましくは、6≦nE1≦15である。
E2(cm)が600以上であると、濃縮部の分離効率がより向上する傾向にある。目的の分離効率を確保しつつ設備費を低下させるには、LE2を4000以下にすることが好ましい。LE2が4000以下であると塔の上下における圧力差が大きくなりすぎず、長期安定運転がより容易となる傾向にある。塔下部での温度を高くしなくてもよいため、副反応がより抑制される。より好ましいLE2(cm)の範囲は、700≦LE2≦3000であり、さらに好ましくは、800≦LE2≦2500である。
E2(cm)が100以上であると、十分な蒸留量が得られる傾向にある。目的の蒸留量を達成しつつ設備費を低下させるには、DE2を1000以下にすることが好ましい。より好ましいDE2(cm)の範囲は、120≦DE2≦800であり、さらに好ましくは、150≦DE2≦600である。
E2/DE2が2以上であり30以下であると長期安定運転がより容易となる傾向にある。より好ましいLE2/DE2の範囲は、3≦LE2/DE2≦20であり、さらに好ましくは、4≦LE2/DE2≦15である
E2が5以上であると濃縮部の分離効率がより向上する傾向にある。目的の分離効率を確保しつつ設備費を低下させるには、nE2を50以下にすることが好ましい。nE2が50以下であると塔の上下における圧力差が大きくなりすぎず、長期安定運転がより容易となる傾向にある。また、塔下部での温度を高くしなくてもよいため、副反応がより抑制される。より好ましいnE2の範囲は、7≦nE2≦30であり、さらに好ましくは、8≦nE2≦25である。なお、本実施形態においては、濃縮部11つ以上のチムニートレイが設置されることが好ましいが、その段数は、上記のnE2に含まれるものとする。
また、本実施形態の連続多段蒸留塔Eにおいては、DE1≦DE2が好ましく、さらに好まくは、DE1<DE2である。
連続多段蒸留塔Eの濃縮部に設置されるチムニートレイは、トレイの平面に断面積SE(cm2)の開口部を有するチムニー(煙突状の物体)が2つ以上設けられたものである。そして、それらのチムニーの上部開口部には、チムニーカバーが設置されていることが好ましい。
このチムニーの横断面の形状は、3角形、四角形、多角形、円形、楕円系、星型等、いずれでもよいが、四角形、及び円形が好ましく用いられる。また、このチムニーは上部から下部までその横断面の形や面積が異なるものであってもよいが、製作が容易で安価になるため、上部から下部までその横断面の形や面積同じものが好ましい。また、2つ以上のチムニーが異なる形状を有していてもよいが、同じ形状を有するものが好ましい。
本実施形態では、このチムニートレイに接続されたチムニーの開口部(該チムニーの横断面における最小部分)の断面積SE(cm2)が、式(31)を満足していることが好ましい。
50≦ SE ≦ 2000 式(31)
Eが50以上であると所定の生産量を達成する際に、多くのチムニーを必要とせず設備費を抑えることができる。また、SEが2000以下であるとチムニートレイの段におけるガスの流れがより均一になりやすく長期安定運転がより容易になる。より好ましいSE(cm2)は、100≦SE≦1500であり、さらに好ましくは、200≦SE≦1000である。
また、該チムニーの該開口部から該チムニーのガス出口(チムニーの上部開口部下端)までの高さhE(cm)が、式(32)を満足していることが好ましい。
20 ≦ hE ≦ 100 式(32)
本実施形態で用いられるチムニートレイには、下段-液成分を落下させるためのダウンカマー部と液成分を保持するための堰が、通常、設置されている。この堰の高さは、hEに依存するが、通常、hEより5~20cm程度小さく設定されている。したがって、hEが20以上であるとチムニートレイに十分な液量が保持され、長期安定運転がより容易になる。また、hEが100以下であると保持される液量が増大しすぎず、設備の強度が十分なものとなる。また、精製されたバイオエチレングリコールの塔内での滞留時間が短くなる点からも好ましい。より好ましいhE(cm)は、30≦hE≦80であり、さらに好ましくは、40≦hE≦70である。
また、該チムニートレイの開口比(チムニーの開口部断面積の合計と、該開口部全断面積を含むチムニートレイの面積との比)は、5~40%の範囲であることが好ましい。該開口比が5%以上であると長期安定運転がより容易になる。また、チムニートレイの開口比が40%以下であるとチムニーの数、及びチムニーの高さを好適に調整することができる傾向にある。より好ましい開口比は、10~30%の範囲であり、さらに好ましくは、15~25%の範囲である。
工程(IV)では、1つ以上のチムニートレイが多段蒸留塔Eの濃縮部(塔への供給口よりも上部、かつ塔頂より下部の部分)に設置され、その液溜り部の底部に接続されたサイドカット抜き出し口から液状の高純度バイオエチレングリコールが連続的に抜きだされることを1つの特徴としている。チムニートレイの数は必要に応じて2つ以上とすることもできるが、通常は1つで実施される。このチムニートレイの設置される段は、濃縮部のどの位置でもよいが、濃縮部の段の下から3段目以上で、濃縮部の段の上から3段目以下の段が好ましい。より好ましくは、濃縮部の段の下から4段目以上で、濃縮部の段の上から4段目以下の段であり、さらに好ましくは、濃縮部の段の下から5段目以上で、濃縮部の段の上から4段目以下の段である。
工程(III)で用いられる連続多段蒸留塔Cと工程(IV)で用いられる連続多段蒸留塔Eにおいて、それぞれの回収部及び濃縮部は、インターナルとしてトレイ及び/又は充填物を有する蒸留塔であることが好ましい。トレイ部と充填物の充填された部分とを合わせ持つ多段蒸留塔も用いてもよい。
連続多段蒸留塔C及び連続多段蒸留塔Eにおけるトレイとしては、例えば、泡鐘トレイ、多孔板トレイ、リップルトレイ、バラストトレイ、バルブトレイ、向流トレイ、ユニフラックストレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラックトレイ、デュアルフロートレイ、グリッドプレートトレイ、ターボグリッドプレートトレイ、キッテルトレイ等が好ましい。連続多段蒸留塔C及び連続多段蒸留塔Eにおける充填物としては、例えば、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック等の不規則充填物やメラパック、ジェムパック、テクノパック、フレキシパック、スルザーパッキング、グッドロールパッキング、グリッチグリッド等の規則充填物が好ましい。
本実施形態における「インターナルの段数nC1、nC2、nE1、nE2」とは、トレイの場合は、トレイの数を意味し、充填物の場合は、理論段数を意味する。したがって、トレイ部と充填物の充填された部分とを合わせ持つ連続多段蒸留塔の場合、nC1、nC2、nE1、nE2はトレイの数と、理論段数の合計である。
連続多段蒸留塔Cにおいて、回収部のインターナル及び濃縮部のチムニートレイを除くインターナルが、それぞれトレイ及び/又は充填物であると好ましい。さらに回収部のインターナルがトレイであり、濃縮部のチムニートレイを除くインターナルが、トレイ及び/又は規則充填物である場合が特に好ましい。また、該トレイが多孔板部とダウンカマー部を有する多孔板トレイであるとより好ましい。また、該多孔板トレイが該多孔板部の面積1m2あたり100~1000個の孔を有していることも好ましい。より好ましい孔数は該面積1m2あたり150~900個であり、さらに好ましくは200~800個である。また、該多孔板トレイの孔1個あたりの断面積は0.5~5cm2であると好ましい。より好ましい孔1個あたりの断面積は、0.7~4cm2であり、さらに好ましくは0.9~3cm2である。中でも、該多孔板トレイが該多孔板部の面積1m2あたり100~1000個の孔を有しており、かつ、孔1個あたりの断面積が0.5~5cm2であると特に好ましい。
連続多段蒸留塔Cの回収部における該多孔板トレイの開口比(トレイ1段の孔の断面積の合計と該トレイの面積との比)は、2~15%の範囲であることが好ましく、より好ましくは2.5~12%の範囲であり、さらに好ましくは3~10%の範囲である。また、連続多段蒸留塔Cの濃縮部における該多孔板トレイの開口比(トレイ1段の孔の断面積の合計と該トレイの面積との比)は、1.5~12%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、2~11%の範囲であり、さらに好ましくは2.5~10%の範囲である。なお、連続多段蒸留塔Cにおいて、濃縮部に設置されているチムニートレイは、段数に数えるが、その開口比は前記のとおり、回収部における多孔板トレイの開口比とは異なるものである。そのような連続多段蒸留塔Cを用いることにより、好適に分離をすることができる。
連続多段蒸留塔Eにおいて、回収部及び濃縮部のインターナルが、それぞれトレイであると好ましい。さらに該トレイが多孔板部とダウンカマー部を有する多孔板トレイであるとより好ましい。該多孔板トレイが該多孔板部の面積1m2あたり150~1200個の孔を有していることも好ましい。より好ましい孔数は該面積1m2あたり200~1100個であり、さらに好ましくは、250~1000個である。また、該多孔板トレイの孔1個あたりの断面積が0.5~5cm2であることも好ましい。より好ましい孔1個あたりの断面積は、0.7~4cm2であり、さらに好ましくは0.9~3cm2である。中でも、該多孔板トレイが該多孔板部の面積1m2あたり150~1200個の孔を有しており、かつ、孔1個あたりの断面積が0.5~5cm2であると特に好ましい。
連続多段蒸留塔Eの回収部における該多孔板トレイの開口比(トレイ1段の孔の断面積の合計と該トレイの面積との比)は、3~25%の範囲であることが好ましく、より好ましくは3.5~22%の範囲であり、さらに好ましくは4~20%の範囲である。また、連続多段蒸留塔Eの濃縮部における該多孔板トレイの開口比(トレイ1段の孔の断面積の合計と該トレイの面積との比)は、2~20%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、3~15%の範囲であり、さらに好ましくは3~13%の範囲である。なお、連続多段蒸留塔Eにおいて、濃縮部に設置されているチムニートレイは、段数には数えるが、その開口比は前記のとおり、回収部における多孔板トレイの開口比とは異なるものである。
工程(α)によって生成するジメチルカーボネートは、通常、過剰に用いられ、未反応で残っているバイオ由来メタノールとの低沸点反応混合物(AT)として、塔上部よりガス状で連続的に抜出される。そして、生成するバイオエチレングリコールを含む高沸点反応混合物(AB)は塔下部より液状で連続的に抜きだされる。バイオエチレングリコールを主成分とするこの高沸点反応混合物(AB)中には、通常、残存するバイオ由来メタノールが10~45質量%であり、その他、微量のジメチルカーボネート、非常に少量(通常0.2質量%以下)のエチレンカーボネート、少量(通常0.4質量%以下)のエチレングリコールよりも低沸点の副生物(2-アルコキシエタノール等)及び触媒を含む少量(通常1質量%以下)のエチレングリコールよりも高沸点の副生物等が含まれている。
したがって、工程(III)では、連続多段蒸留塔C内に連続的に供給された該高沸点反応混合物(AB)中のバイオエチレングリコールよりも低沸点の物質(バイオ由来メタノール、微量のジメチルカーボネート及び副生CO2等の低沸点副生物)と少量のバイオエチレングリコールが、塔頂成分(CT)及び/又はサイドカット成分(CS)として連続的に抜き出され、触媒と少量の高沸点副生物を含むバイオエチレングリコールが塔底成分(CB)として連続的に抜き出されることになる。工程(III)においては、この塔底成分(CB)中のバイオエチレングリコールの濃度は通常、95質量%以上であり、好ましくは97質量%以上であり、さらに好ましくは98質量%以上である。
また、連続多段蒸留塔Cに供給された非常に少量(通常0.2質量%以下)のエチレンカーボネートは、この蒸留塔C内で大量に存在するバイオエチレングリコールと反応しジアルキレングリコールとなるため、エチレンカーボネートの存在量を実質的にゼロにすることは容易である。本実施形態においては、通常、エチレンカーボネートが実質的に存在しない塔底成分(CB)が、連続的に得られることになる。
なお、通常、バイオエチレングリコール中に含まれる可能性のある極微量のアルデヒド含有量をさらに減少させた超高純度バイオエチレングリコールや、紫外線透過率の高い超高純度バイオエチレングリコールを得る目的で、特開2002-308804号公報又は特開2004-131394号公報に記載の方法に従って、連続多段蒸留塔Cの下部に少量の水を供給することも好ましい。
工程(III)で行われる連続多段蒸留塔Cの蒸留条件は、蒸留塔のインターナルの形状や段数、供給される高沸点反応混合物(AB)の種類と組成と量、必要とするバイオエチレングリコールの純度などによって異なるが、通常、塔底温度が150~250℃の範囲の特定の温度で行うことが好ましい。より好ましい塔底の温度範囲は、170~230℃であり、さらに好ましい温度範囲は、190~210℃である。塔底圧力は、塔内組成と使用する塔底温度によって異なるが、通常、50000~300000Paの範囲であり、好ましくは、80000~250000Paの範囲であり、より好ましくは、10000~200000Paである。
また、連続多段蒸留塔Cの還流比は、0.3~5の範囲が好ましく、より好ましくは0.5~3の範囲であり、さらに好ましくは0.8~2の範囲である。
本実施形態においては、連続多段蒸留塔Cの塔頂成分(CT)中のバイオエチレングリコールの含有量は、通常、100ppm以下であり、好ましくは50ppm以下であり、より好ましくは10ppm以下であり、さらに好ましくは5ppm以下である。本実施形態では、塔頂成分(CT)中のバイオエチレングリコールの含有量をゼロにすることも可能である。
連続多段蒸留塔Cのサイドカット成分(CS)は、通常、バイオ由来メタノール、バイオエチレングリコールよりも低沸点の副生物(2-アルコキシエタノール等)、バイオエチレングリコール、少量のバイオエチレングリコールよりも高沸点の不純物(ジアルキレングリコール等)を含んでいるが、その量は通常、連続多段蒸留塔Cに供給された高沸点反応混合物(AB)の4%以下であり、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下である。
また、本実施形態においては、サイドカット成分(CS)中のバイオエチレングリコールの含有量を連続多段蒸留塔Cに供給されたバイオエチレングリコールの通常、0.5%以下、好ましくは0.4%以下、より好ましくは0.3%以下に容易にすることができる。
そして、連続多段蒸留塔Cの塔底成分(CB)として、バイオエチレングリコールよりも高沸点の副生物(ジアルキレングリコール等)を、通常、2質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1質量%以下と、微量の触媒成分を含むバイオエチレングリコールが連続的に取得できることになる。塔底成分(CB)として取得されるバイオエチレングリコールは、連続多段蒸留塔Cに供給されたバイオエチレングリコールの通常、99.5%以上、好ましくは99.6%以上、より好ましくは99.7%以上である。
このように高い回収率でバイオエチレングリコールが取得できるのが、本実施形態のひとつの特徴である。
なお、通常、バイオエチレングリコール中に含まれる可能性のある極微量のアルデヒド含有量をさらに減少させた超高純度バイオエチレングリコールや、紫外線透過率の高い超高純度バイオエチレングリコールを得る目的で、特許文献:特開2002-308804号公報又は特開2004-131394号公報に記載の方法に従って、連続多段蒸留塔E及び/又は連続多段蒸留塔Cの下部に少量の水を供給することも好ましい方法である。
工程(IV)で行われる連続多段蒸留塔Eの蒸留条件は、蒸留塔のインターナルの形状や段数、供給される塔底成分(CB)の種類、組成及び量、並びに必要とするバイオエチレングリコールの純度等によって調整すればよいが、通常、塔底温度は110~210℃の範囲であってよい。より好ましい塔底の温度範囲は、120~190℃であり、さらに好ましい温度範囲は、130~170℃である。塔底圧力は、塔内組成と使用する塔底温度によって調整すればよいが、通常、8000~40000Paの範囲であり、好ましくは、10000~33000Paの範囲であり、より好ましくは、12000~27000Paである。
また、連続多段蒸留塔Eの還流比は、6~50の範囲が好ましく、より好ましくは8~45の範囲であり、さらに好ましくは10~30の範囲である。
工程(IV)において、連続多段蒸留塔Eの塔頂成分(ET)は少量のバイオエチレングリコール(通常、供給されたバイオエチレングリコールの10%以下)であり、水を連続多段蒸留塔Eに供給している場合には、供給された水のほとんど全部が塔頂成分として抜き出される。この塔頂成分(ET)は、通常、連続多段蒸留塔Cにリサイクルされ、塔底成分(CB)の一部として再度連続多段蒸留塔Eに供給され高純度バイオエチレングリコールとして回収される。また、連続多段蒸留塔Eの塔底成分(EB)は少量のバイオエチレングリコールを含む高沸点副生物と触媒成分からなっている。
連続多段蒸留塔Eのサイドカット成分(ES)は、通常、99%以上、好ましくは99.9%以上、より好ましくは99.99%以上の高純度バイオエチレングリコールを含む。すなわち、工程(IV)において、このサイドカット成分(ES)中のバイオエチレングリコールよりも高沸点の不純物(ジアルキレングリコール等)を、通常、1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下とすることが容易にできる。また、本実施形態の好ましい態様では、ハロゲンを含まない原料や触媒を用いて反応が実施されるため、製造するバイオエチレングリコールには、まったくハロゲンを含まないようにすることができる。したがって、本実施形態では、ハロゲン含有量が0.1ppm以下、好ましくは、1ppb以下のバイオエチレングリコールを製造することは容易である。
本実施形態においては、ジアルキレングリコール等の、バイオエチレングリコールよりも高沸点の不純物が200ppm以下であって、ハロゲン含有量が0.1ppm以下である高純度バイオエチレングリコールを製造することができ、好ましくは、ジアルキレングリコール等の、バイオエチレングリコールよりも高沸点の不純物が100ppm以下であって、ハロゲン含有量が1ppb以下である高純度バイオエチレングリコールを製造することができる。
本実施形態のバイオジメチルカーボネート及びバイオエチレングリコールの製造方法は、以上に詳述したエチレンカーボネート製造工程、及び工程(α)を少なくとも含む。本実施形態の製造方法は、さらに工程(I)を含むことが好ましく、工程(I)及び(II)を含むことがより好ましい。本実施形態の製造方法は、さらに工程(III)及び(IV)を含むことも好ましい。本実施形態の好ましい態様において、少なくとも工程(I)、(III)及び(IV)を含み、工程(I)~(IV)の全てを含むことが特に好ましい。
[バイオ由来ジメチルカーボネート]
本実施形態のバイオ由来ジメチルカーボネートは、ASTM D6866に準拠して測定されるバイオベース度が95~100%のバイオジメチルカーボネートである。かかるバイオジメチルカーボネートは、上記の本実施形態の製造方法により得られるものであってよい。
本実施形態のバイオジメチルカーボネートは、好ましくは純度が99.99質量%以上である。そのようなバイオジメチルカーボネートは、バイオ由来でありながらも、極めて高純度であり、リチウムイオン電池電解液用として使用可能である。
[バイオ由来エチレングリコール]
本実施形態のバイオ由来エチレングリコールは、ASTM D6866に準拠して測定されるバイオベース度が95~100%のバイオエチレングリコールである。かかるバイオエチレングリコールは、上記の本実施形態の製造方法により得られるものであってよい。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
[バイオジメチルカーボネートの分析]
〔ジメチルカーボネート及びエチレングリコールの純度〕
ジメチルカーボネート及びエチレングリコールの純度は、ガスクロマトグラフィーにより測定した。ガスクロマトグラフィーでの分析は、GB/T 33107-2016に従って行った。
〔2-メトキシエタノール、高沸点化合物の含有量〕
2-メトキシエタノール、高沸点化合物の含有量は、ガスクロマトグラフィーにより測定した。ガスクロマトグラフィーでの分析は、GB/T 33107-2016に従って行った。
〔メタノール及びエタノールの含有量〕
メタノール及びエタノールの含有量は、ガスクロマトグラフィーにより測定した。ガスクロマトグラフィーでの分析は、GB/T 33107-2016に従って行った。
〔水含有量〕
水含有量は、電量滴定法により測定した。電量滴定法での分析は、JIS K 2275-3に従って行った。
〔金属成分の含有量〕
金属成分の含有量は、ICP法により測定した。ICP法での分析は、JIS G 1258に従って行った。
〔バイオベース度〕
ASTM D6866に記載された方法により測定した。なお、本方法での測定値には、最大±3%の誤差を含むと言われており、得られた測定値が100%を超えた場合はバイオベース度100%とした。また、得られた測定値が0%未満の場合は0%とした。
[実施例1]
<バイオエチレンカーボネートの製造>
バイオエチレンカーボネートは、国際公開第2004/108696号の実施例1と同様の装置と製造方法により以下のとおり製造した。
以下、図5に示す製造装置を用いてバイオエチレンカーボネートを製造した。なお、バイオエチレンオキサイド及び二酸化炭素は外部から入手したものを用いた。二酸化炭素は当該バイオエチレンオキサイドの製造時に副産したものであり、バイオエチレンオキサイドのバイオベース度は95~100%であった。
反応器40は、内径1.6mφ、直胴部長さ8m、容量20m3で、反応器上部に二酸化炭素ガスの吸収効率を高めるための液分散ノズルを有する、ステンレス製の縦型円筒槽であり、配管を介して熱交換器のプロセス側流路と連通して循環回路を形成している。熱交換器44は、1パス熱交換器(伝熱面積1476.6m2、チューブ外径42.7mmφ、チューブ長さ6.95m、チューブ本数172本)であり、チューブ側をプロセス側流路としてプロセス液を流し、シェル側を熱交換側流路として熱交換媒体を流す構造である。熱交換器44の熱交換側流路(シェル側)には、熱交換媒体として日本国、綜研化学製の熱媒油(商品名:KSK-oil-280)を流した。この熱媒油はスタートアップ時には加熱用流体として用い、定常運転時には冷却用流体として用いた。原料の1つとして約5℃に冷却されたバイオエチレンオキサイドを配管37からバイオエチレンオキサイドポンプ32に供給し、そこで昇圧して、配管55を介して配管45から反応器40に2,500kg/時間で供給した。もう一方の原料である二酸化炭素については、液化二酸化炭素を配管35から二酸化炭素供給ポンプ31に供給した。そこで昇圧し、温水浴型の二酸化炭素蒸発器34でガス化させ、約90℃の温度で配管36から反応器40上部の気相部に約9.5MPaの一定圧力となるよう調節して供給した。平均的な二酸化炭素供給量は2700kg/時間であった。
何らかの原因で反応器40の圧力が10MPa以上に上昇した場合には、反応器ベントガス調節弁53を開けて、反応器40内の気相ガスを配管52及び54を経由して排出し、反応器40の圧力を下げた。
触媒には、ヨウ化カリウム(KI)を用い、バイオエチレンカーボネート溶液に5wt%となるように調合した。触媒溶液は、バイオエチレンカーボネート製品を精製した後に回収した回収触媒を39部及びフレッシュ触媒溶液を1部の割合で調合して、配管38から触媒供給ポンプ33に供給し、配管56から配管45を介して反応器40に供給した。反応器循環液(反応系)のヨウ化カリウム濃度が0.23~0.26wt%となるように、触媒供給ポンプ33で、触媒溶液の供給量を274kg/時間に設定した。
反応器40内の液保有量が14.5トンで一定となるように、反応混合物を反応器40から排出した。反応混合物の排出量は送り出し調節弁50で調整し、配管49及び51を通して排出した。
バイオエチレンカーボネートの製造は、反応器40の底部に設けた温度計T1で測定した反応温度が176~177℃となる条件下で実施した。反応中には、熱交換媒体を熱交換器44の熱交換側流路に流しながら、反応器40と熱交換器44のプロセス側流路とを含む上記循環回路に反応混合物を流した。具体的には、反応混合物は反応器40の出口から抜き出し、反応器循環ポンプ39で昇圧し、配管41と42を経て、熱交換器44に送った。そして熱交換器44で温度を調節した反応混合物は、配管45を通って反応器40にその入口から戻すことで、循環回路内を循環した。反応器40の反応混合物循環量は、反応器循環流量計43で監視し、約400トン/時間で一定となるように調整した。その結果、反応器における平均滞留時間は2.61時間、循環回数は28回/時間であった。
熱交換器44においては、熱交換器出口に設けた温度計T2で測定した反応混合物の温度が173℃で一定となるように反応器温度調節弁46を自動制御して、熱交換媒体の流量を調整した。熱交換媒体は、配管48から熱交換器44のシェル側に供給した。熱交換器44に供給する熱交換媒体の温度は、初めは140℃に設定し、運転開始から23日目には145℃に昇温した。熱交換媒体の温度は熱交換器44の熱交換媒体供給口に設けた温度計t1で測定し、その流量変化は熱交換媒体のための流量計47で監視した。バイオエチレンカーボネートの生産量4,970kg/時間であった。
配管51を通して排出した反応混合液は、まずフラッシュタンク(図示せず)に供給し、未反応のエチレンオキサイド、未反応の二酸化炭素、微量のバイオエチレンカーボネートを系外に排出した。フラッシュタンクの作動条件は、760Torr、130℃であった。
さらに、フラッシュタンクの底部より、主にバイオエチレンカーボネートを含む混合物を抜き出し、バイオエチレンカーボネート回収塔(図示せず)に導入した。バイオエチレンカーボネート回収塔は、160℃、49Torrに制御された薄膜蒸留器である。
バイオエチレンカーボネート回収塔から抜き出されるバイオエチレンカーボネートの生産量は4,910kg/時間であった。
得られたバイオエチレンカーボネートのバイオベース度は、99%であり、純度は99.5質量%であった。
<バイオジメチルカーボネート及びバイオエチレングリコールの製造工程(工程(α)>
以下、連続多段蒸留塔Aを用いてバイオジメチルカーボネート及びバイオエチレングリコールを製造した。なお、バイオエチレンカーボネートは上記により製造したものを用い、バイオメタノールは外部から入手したものを用いた。バイオメタノールのバイオベース度は95~100%であった。連続多段蒸留塔Aとしては、インターナルとして多孔板トレイを有する棚段塔式蒸留塔を用いた。連続多段蒸留塔Aは、上記式(4)~(10)に関して、L0=3300cm、D0=300cm、L0/D0=11、n0=60、D0/d01=7.5、D0/d02=12、d01/d02=1.6であった。また、多孔板トレイは1m2あたり180~320個の孔を有し、多孔板部の孔1個あたりの断面積は1.3cm2であった。各トレイの開口比は、2.1~4.2%の範囲であった。
上記バイオエチレンカーボネートの製造工程で得られた、純度99.95質量%の液状のエチレンカーボネートを、3.04トン/時間で、下から55段目に設置された導入口から連続多段蒸留塔Aに連続的に導入した。ガス状のバイオメタノール(バイオジメチルカーボネートを8.95質量%含む)4.2トン/時間と液状のバイオメタノール(ジメチルカーボネートを6.66質量%含む)9.8トン/時間が、下から31段目に設置された導入口から蒸留塔に連続的に導入された。蒸留塔に導入された原料のモル比は、メタノール/エチレンカーボネート=12.7であった。
触媒としては、KOH(48質量%の水溶液)2.5トンにバイオエチレングリコール4.8トンを加え、約130℃に加熱し、徐々に減圧し、約1300Paで約3時間加熱処理し、均一溶液にしたものを用いた。この触媒溶液を、下から54段目に設けられた導入口から、蒸留塔に連続的に導入した(K濃度:供給バイオエチレンカーボネートに対して0.1質量%)。塔底部の温度を98℃とし、塔頂部の圧力が約1.118×105Pa、還流比が0.42となるように連続的に反応蒸留を行った。
塔頂部から14.3トン/時間で低沸点反応混合物(低純度バイオジメチルカーボネート混合物)(AT)を連続的に抜き出した。低沸点反応混合物(AT)は、バイオジメチルカーボネート4.13トン/時間、バイオメタノール10.08トン/時間、2-メトキシエタノール3.1kg/時間、及び二酸化炭素2.1kg/時間を含み、ジメチルカーボネートの濃度は約39質量%であった。
塔底部から3.205トン/時間で高沸点反応混合物(AB)を連続的に抜出し、工程(III)において用いた連続多段蒸留塔Cに送った。高沸点反応混合物(AB)の組成は、バイオメタノール0.99トン/時間、バイオジメチルカーボネート0.001トン/時間、2-メトキシエタノール0.009トン/時間、バイオエチレングリコール2.186トン/時間、ジエチレングリコール及び触媒成分0.019トン/時間であった。
<第1の分離精製工程(I)>
上記工程(α)において得られた低沸点反応混合物(AT)を、連続多段蒸留塔B1を用いて精製することで高純度のバイオジメチルカーボネートを精製した。連続多段蒸留塔B1としては、材質が炭素鋼であり、インターナルとして回収部、及び濃縮部において多孔板トレイを備えるものを用いた。
上記工程(α)において得られた低沸点反応混合物(AT)を、連続多段蒸留塔B1の導入口から連続的に供給した。連続多段蒸留塔B1は、塔底温度約207℃、塔底圧力約1.46MPa、還流比3.0で連続的に運転された。
連続多段蒸留塔B1の塔頂部から、10.59トン/時間で連続的に抜き出された塔頂成分(B1T)は、バイオメタノール10.07トン/時間、バイオジメチルカーボネート0.52トン/時間、及び二酸化炭素2.1kg/時間を含んでいた。塔頂成分(B1T)中のバイオメタノール濃度は95.1質量%であった。
また、連続多段蒸留塔B1の塔底部から、3.62トン/時間で連続的に抜き出された塔底成分(B1B)は、バイオジメチルカーボネート3.61トン/時間、バイオメタノール7.2kg/時間、2ME0.14kg/時間、及び高沸点化合物3.6kg/時間を含んでおり、バイオジメチルカーボネートの純度は、99.8質量%(工業級バイオジメチルカーボネート相当)であった。
塔底成分(B1B)において、2-メトキシエタノールの含有量は、39質量ppmであり、高沸点化合物の含有量は、841質量ppmであった。
連続多段蒸留塔B1において、下記式(i)で算出される塔内液滞留時間は、10分であった。
塔内液滞留時間(分)=BTM容量(運転時に塔BTMに滞留している液容量(kg))/BTM抜出流量(塔底成分として抜き出す流量(kg/分))・・・(i)
<第3の分離精製工程(III)>
上記工程(α)において得られた高沸点反応混合物(AB)を、連続多段蒸留塔Cを用いて精製することで高純度のバイオエチレングリコールを精製した。本工程(III)は、国際公開第2007/088782号の実施例1と同様の装置と製造方法により以下のとおり製造した。
図2は実施例で用いた連続多段蒸留塔Cを示す図である。上記工程(α)において得られた高沸点反応混合物(AB)を、連続多段蒸留塔Cに導入口1から連続的に供給した。この導入口1は、連続多段蒸留塔Cの下から10段目と11段目のトレイの間に設置されている。これとは別に、連続多段蒸留塔Cの塔底部のリボイラー7を経て、連続多段蒸留塔Eの塔頂成分(ET)0.155トン/hr(バイオエチレングリコール0.136トン/hr、水0.019トン/hr)が連続的に供給された。
連続多段蒸留塔Cは、塔底温度約200℃、塔頂圧力約11000Pa、還流比0.9で連続的に運転された。また、塔底液面レベルは、該多孔板トレイKの最下段のトレイよりも下に維持されていた。連続多段蒸留塔Cは、上記式(11)~(19)に関して、LC1=1100cm、DC1=110cm、LC1/DC1=10、nC1=10、LC2=3000cm、DC2=110cm、LC2/DC2=27.3、nC2=60であった。なお、塔底部から約500cmの間は、内径(DC3)を200cmとDC1よりも大きくしてあり、この部分には、ダウンカマー部を有し、堰(高さ:10cm)がバッフルであるバッフルトレイKが8段設置されている。このバッフルトレイKの最上段のトレイはその下部から、液の一部が連続的に抜き出されるように工夫されており、抜き出された液はリボイラーによって加熱された後、その段の上部に供給される。
また、濃縮部においては上部に理論段数52段のメラパックが充填されており、その下部にチムニートレイ1段が設置され、さらにその下部に8段のトレイが設けられている。この実施例では、回収部のインターナルとして多孔板トレイを用い、濃縮部のトレイとして多孔板トレイを用いた。これらの多孔板トレイは、孔1個あたりの断面積が1.3cm2であった。回収部での多孔板トレイの孔数は250~300個/m2の範囲であり、開口比は3~4%の範囲であった。また、濃縮部での多孔板トレイの孔数は150~300個/m2の範囲であり、開口比は2.8~3.6%の範囲であった。チムニートレイは、4個のチムニーを有しており、各チムニーのSCは500cm2、hCは25cmであり、その開口比は18~25%の範囲であった。このチムニートレイはダウンカマー部を有しており、堰の高さは10cmであった。
連続多段蒸留塔Cの塔頂成分(CT)として、バイオメタノール0.97トン/hr、ジメチルカーボネ-ト0.001トン/hr、水0.019トン/hrが連続的に抜き出され、サイドカット成分(CS)として、バイオメタノール0.023トン/hr、2-メトキシエタノール0.0091トン/hr、及びバイオエチレングリコール0.003トン/hrが連続的に抜き出され、塔底成分(CB)として、バイオエチレングリコール2.32トン/hr、ジエチレングリコール、触媒成分及び高沸点副生物0.019トン/hrが連続的に抜き出された。
塔底成分(CB)中のバイオエチレングリコールの濃度は99.1質量%であった。また、連続多段蒸留塔Cに供給されたバイオエチレングリコールの99.83%が塔底成分(CB)として回収された。
<第4の分離精製工程(IV)>
図3は実施例で用いた連続多段蒸留塔Eを示す図である。上記工程(III)において得られた塔底成分(CB)2.337トン/hrを、連続多段蒸留塔Eの下から8段目と9段目の間に設置された導入口1に連続的に供給した。連続多段蒸留塔Eの塔底部の導入口5からリボイラー7を経て、酸素濃度が10ppm以下の水0.019トン/hrが供給された。連続多段蒸留塔Eは、塔底温度約149℃、塔底圧力約14600Pa、還流比11で連続的に運転された。連続多段蒸留塔Eは、上記式(22)~(29)に関して、LE1=850cm、DE1=160cm、LE1/DE1=5.3、nE1=8、LE2=1000cm、DE2=200cm、LE2/DE2=5、nE2=11であった。また、チムニートレイ1段が濃縮部の段の上から5段目に設置された。
この実施例では、チムニートレイを除くインターナルとして回収部、濃縮部ともに多孔板トレイ(孔1個あたりの断面積=1.3cm2)を用いた。回収部での多孔板トレイの孔数は300~370個/m2の範囲であり、開口比は4~5%の範囲であった。また、濃縮部での多孔板トレイの孔数は約300~450個/m2の範囲であり、開口比は3~4%の範囲であった。チムニートレイは、12個のチムニーを有しており、各チムニーのSEは500cm2、hEは55cmであり、その開口比は15~20%の範囲であった。このチムニートレイはダウンカマー部を有しており、堰の高さは40cmであった。
24時間後には安定的な定常運転が達成できた。連続多段蒸留塔Eの塔項成分抜出し口2から、0.155トン/hrで連続的に抜き出された塔頂成分(ET)は、バイオエチレングリコール0.135トン/hr、水0.018トン/hrを含んでいた。この塔頂成分(E)は連続多段蒸留塔Cにリサイクルされた。連続多段蒸留塔Eの塔底成分抜出し口3から、0.04トン/hrで連続的に抜き出された塔底成分(EB)は、バイオエチレングリコール0.02トン/hr、ジエチレングリコール、触媒成分及び高沸点副生物0.02トン/hrを含んでいた。連続多段蒸留塔Eのサイドカット成分抜出し口4から、2.2トン/hrで連続的に抜き出されたサイドカット成分(ES)中のバイオエチレングリコールの純度は99.99%、ジエチレングリコール等の高沸点不純物の含有量は10ppm以下であり、ハロゲンは検出限界外の1ppb以下であった。
実施例1で得られたバイオジメチルカーボネートのバイオベース度は、100%であった。
また、実施例1で得られたバイオエチレングリコールのバイオベース度は99%であった。
[実施例2]
実施例1の第1の分離精製工程(I)で得られた濃度99.8質量%のバイオジメチルカーボネート(工業級バイオジメチルカーボネート)を以下に記載の分離精製工程(第2の分離精製工程)に付した。すなわち、本実施例2は、電子級スペックのバイオジメチルカーボネートの製造方法に対応する。第1の分離精製工程(I)及び第2の分離精製工程(II)において用いた連続多段蒸留塔B1及びB2の概要図を図1に示す。
<第2の分離精製工程(II)>
連続多段蒸留塔B2として、材質がステンレススチールであり、側面抜出口を有する連続多段蒸留塔を用いた。この蒸留塔において、側面抜出口より上の塔径D21と側面抜出口より下の塔径D22について、D21/D22は、0.6であった。この蒸留塔の理論段数は13段であった。
実施例1の工程(I)で得られた、濃度99.8質量%のバイオジメチルカーボネート(工業級バイオジメチルカーボネート)3.62トン/時間、メタノール7.2kg/時間、2ME0.14kg/時間、及び高沸点化合物3.6kg/時間(合計:3.65トン/時間)を含む塔底成分(B1B)が、導入口から連続多段蒸留塔B2に連続的に供給された。連続多段蒸留塔B2は、塔底温度約92℃、塔底圧力約3kPa、還流比2.0で連続的に運転された。
連続多段蒸留塔B2の塔頂部から、176kg/時間で連続的に抜き出された塔頂成分(B2T)は、ジメチルカーボネート169kg/時間、メタノール7.1kg/時間を含んでいた。また、連続多段蒸留塔B2の塔底部から、23.6kg/時間で連続的に抜き出された塔底成分(B2B)は、ジメチルカーボネート20.0kg/時間、2ME0.1kg/時間、及び高沸点化合物3.5kg/時間を含んでいた。また、連続多段蒸留塔B2の側面抜出口から、3.43トン/時間で、連続的にガス状で抜き出されたサイドカット成分(B2s)は、ジメチルカーボネート3.42トン/時間、メタノール0.06kg/時間、2ME0.04kg/時間、高沸点化合物0.00034kg/時間、鉄0.00013kg/時間、及び水0.012kg/時間を含んでおり、バイオジメチルカーボネートの純度は、99.991質量%であった。
また、当該連続運転において、サイドカット成分1トン当たりの1時間当たりの必要熱量(蒸気量)は、247kW/tであった。以上より、実施例2では、99.99質量%以上の純度のバイオジメチルカーボネートを、少ない消費熱量、つまり小さい還流比で製造することができることがわかった。
また、サイドカット成分(B2s)において、高沸点化合物含有量が20質量ppm以下であり、2ME含有量が30質量ppm以下であり、金属含有量は、0.6質量ppm以下であり、水含有量は、20質量ppm以下であり、メタノール及びエタノールの合計含有量が20質量ppm以下であった。
このように実施例2では、電子級スペックのバイオジメチルカーボネートを効率良く工業的規模で製造できた。
実施例2で得られたバイオジメチルカーボネートのバイオベース度は、100%であった。
また、実施例2で得られたバイオエチレングリコールのバイオベース度は99%であった。
[実施例3]
工程(I)及び(II)を下記のように変更した以外は、実施例2と同じ製造条件で電子級スペックのバイオジメチルカーボネートを製造した。
<第1の分離精製工程(I)>
連続多段蒸留塔B1として、インターナルとして回収部、及び濃縮部としてユニフラックストレイを備えるものを用いた。
ジメチルカーボネート3.87トン/時間、メタノール4.15トン/時間、2ME1.76kg/時間、及び二酸化炭素2.1kg/時間(合計:8.02トン/時間、ジメチルカーボネートの濃度:約48質量%)を含む低沸点反応混合物(AT)が、導入口から連続多段蒸留塔B1に連続的に供給された。連続多段蒸留塔B1は、塔底温度約207℃、塔底圧力約1.46MPa、還流比2.0で連続的に運転された。
連続多段蒸留塔B1の塔頂部から、4.38トン/時間で連続的に抜き出された塔頂成分(B1T)は、メタノール4.14トン/時間、ジメチルカーボネート0.24トン/時間、及び二酸化炭素2.1kg/時間を含んでいた。塔頂成分(B1T)中のメタノール濃度は94.5質量%であった。
また、連続多段蒸留塔B1の塔底部から、3.64トン/時間で連続的に抜き出された塔底成分(B1B)は、ジメチルカーボネート3.62トン/時間、メタノール24.0kg/時間、及び高沸点化合物2.06kg/時間を含んでおり、ジメチルカーボネートの純度は、99.3質量%であった。
また、塔底成分(B1B)において、2-メトキシエタノールの含有量が、0質量ppmであり、高沸点化合物の含有量が、566質量ppmであった。
連続多段蒸留塔B1において、下記式(i)で算出される塔内液滞留時間は、10分であった。
塔内液滞留時間(分)=BTM容量(運転時に塔BTMに滞留している液容量(kg))/BTM抜出流量(塔底成分として抜き出す流量(kg/分))・・・(i)
<第2の分離精製工程(II)>
連続多段蒸留塔B2として、側面抜出口を有する連続多段蒸留塔を用いた。この蒸留塔において、側面抜出口より上の塔径D21と側面抜出口より下の塔径D22について、D21/D22は、0.6であった。この蒸留塔の理論段数は13段であった。
工程(I)で得られた、ジメチルカーボネート3.62トン/時間、メタノール24.0kg/時間、及び高沸点化合物2.06kg/時間(合計:3.64トン/時間、ジメチルカーボネートの純度:約99.3質量%)を含む塔底成分(B1B)が、導入口から連続多段蒸留塔B2に連続的に供給された。連続多段蒸留塔B2は、塔底温度約92℃、塔底圧力約3kPa、還流比2.0で連続的に運転された。
連続多段蒸留塔B2の塔頂部から、148kg/時間で連続的に抜き出された塔頂成分(B2T)は、ジメチルカーボネート124kg/時間、メタノール23.9kg/時間を含んでいた。また、連続多段蒸留塔B2の塔底部から、24.5kg/時間で連続的に抜き出された塔底成分(B2B)は、ジメチルカーボネート21.6kg/時間、高沸点化合物2.06kg/時間を含んでいた。
また、連続多段蒸留塔B2の側面抜出口から、3.47トン/時間で連続的にガス状で抜き出されたサイドカット成分(B2s)は、ジメチルカーボネート3.47トン/時間、メタノール0.07kg/時間を含んでおり、ジメチルカーボネートの純度は、99.998質量%であった。
また、当該連続運転において、サイドカット成分1トン当たりの1時間当たりの必要熱量(蒸気量)は、240kW/tであった。以上より、実施例3では、99.99質量%以上の純度のジメチルカーボネートを、少ない消費熱量(小さい還流比)で製造することができることがわかった。
また、サイドカット成分(B2s)において、高沸点化合物含有量が20質量ppm以下であり、2ME含有量が30質量ppm以下であり、金属含有量は、0.6質量ppm以下であり、水含有量は、20質量ppm以下であり、メタノール及びエタノールの合計含有量が20質量ppm以下であった。
このように実施例3では、電子級スペックのバイオジメチルカーボネートを効率良く工業的規模で製造できた。
実施例3で得られたバイオジメチルカーボネートのバイオベース度は、100%であった。
また、実施例3で得られたバイオエチレングリコールのバイオベース度は99%であった。
[比較例1]
バイオエチレンオキサイドに代えて、化石燃料由来エチレンから製造されたバイオベース度が0%のエチレンオキサイドを使用し、該エチレンオキサイドを製造するときに副生する二酸化炭素を捕集し精製して使用したこと、及びバイオメタノールに代えて、化石燃料由来メタノールを使用したこと以外は、実施例1と同じ装置、製造条件で化石燃料由来エチレンカーボネートを製造した。
比較例1で得られたジメチルカーボネートのバイオベース度は、0%であった。
比較例1で得られたエチレングリコールのバイオベース度は、0%であった。
[比較例2]
比較例1で製造したジメチルカーボネートを使用した以外は、実施例2と同じ装置、製造条件で化石燃料由来ジメチルカーボネートを製造した。
得られた化石燃料由来ジメチルカーボネートは、電子級のスペックを全て満たしていた。
比較例2で得られたジメチルカーボネートのバイオベース度は、0%であった。
比較例2で得られたエチレングリコールのバイオベース度は、0%であった。
本実施形態のバイオジメチルカーボネート及び、バイオエチレングリコールの製造方法は、環境に与える負荷が低減されたジメチルカーボネートを効率良く製造することができる。また、本実施形態の電子級スペックのバイオジメチルカーボネートの製造方法は、電子級スペックのバイオジメチルカーボネートを効率良く製造することができる。また、本実施形態の製造方法で得られたバイオジメチルカーボネートは、例えば、リチウム電池電解液として有用である。
B1:第1の連続多段蒸留塔、B2:第2の連続多段蒸留塔、C:第3の連続多段蒸留塔、E:第4の連続多段蒸留塔、B12:連続多段蒸留塔B1のリボイラー、B22:連続多段蒸留塔B2のリボイラー、AT:連続多段蒸留塔B1への供給物である低沸点反応混合物、B1T:バイオメタノールを主成分とする連続多段蒸留塔B1の塔頂成分、B1B:バイオジメチルカーボネートを主成分とする連続多段蒸留塔B1の塔底成分、B2T:低沸点成分である連続多段蒸留塔B2の塔頂成分、B2s:バイオジメチルカーボネートを主成分とする連続多段蒸留塔B2のサイドカット成分、B2B:高沸点成分である連続多段蒸留塔B2の塔底成分、1:導入口、2:塔頂成分抜出し口、3:塔底成分抜出し口、4:サイドカット成分抜出し口、6:熱交換器、7:リボイラー、8:還流液導入口、9:チムニートレイ、hC:チムニートレイの開口部からチムニーのガス出口までの高さ(cm)、LC1:連続多段蒸留塔Cの回収部の長さ(cm)、LC2:連続多段蒸留塔Cの濃縮部の長さ(cm)、DC1:連続多段蒸留塔Cの回収部の内径(cm)、DC2:連続多段蒸留塔Cの濃縮部の内径(cm)、DC3:連続多段蒸留塔Cの塔下部の内径(cm)、K:トレイ、hE:チムニートレイの開口部からチムニーのガス出口までの高さ(cm)、LE1:連続多段蒸留塔Eの回収部の長さ(cm)、LE2:連続多段蒸留塔Eの濃縮部の長さ(cm)、DE1:連続多段蒸留塔Eの回収部の内径(cm)、DE2:連続多段蒸留塔Eの濃縮部の内径(cm)、31:二酸化炭素供給ポンプ、32:バイオエチレンオキサイドポンプ、33:触媒供給ポンプ、34:二酸化炭素蒸発器、35,36,37,38,41,42,45,48,49,51,52,54,55,56:配管、39:反応器循環ポンプ、40:反応器、43:反応器循環流量計、44:熱交換器、46:反応器温度調節弁、47:流量計、50:調節弁、53:反応器ベントガス調節弁、t1,t2,T1,T2:温度計。

Claims (20)

  1. バイオ由来エチレンオキサイドと、バイオ由来エチレンオキサイド又はバイオ由来エタノールの製造により副生する二酸化炭素と、を反応させてエチレンカーボネートを製造するエチレンカーボネート製造工程と、
    前記エチレンカーボネート及びバイオ由来メタノールを、触媒を備える連続多段蒸留塔A内に連続的に供給し、前記連続多段蒸留塔A内で反応及び蒸留を行い、前記反応により生成するバイオ由来ジメチルカーボネートを含む低沸点反応混合物(AT)を塔上部よりガス状で連続的に抜出し、前記反応により生成するバイオ由来エチレングリコールを含む高沸点反応混合物(AB)を塔下部より液状で連続的に抜出す工程を含む、
    ASTM D6866に準拠して測定されるバイオベース度が95~100%のバイオ由来ジメチルカーボネート及び前記バイオベース度が95~100%のバイオ由来エチレングリコールの製造方法。
  2. (I)前記低沸点反応混合物(AT)を連続多段蒸留塔B1に連続的に供給し、バイオ由来メタノールを主成分とする塔頂成分(B1T)を塔上部より連続的に抜き出し、バイオ由来ジメチルカーボネートを主成分とする塔底成分(B1B)を塔下部より連続的に抜き出す第1の分離精製工程(I)と、
    (II)前記塔底成分(B1B)を、側面抜出口を有する連続多段蒸留塔B2に連続的に供給し、バイオ由来ジメチルカーボネートを主成分とするサイドカット成分(B2s)を側面抜出口より連続的に抜き出す第2の分離精製工程(II)と、をさらに含み、
    前記工程(I)において、前記低沸点反応混合物(AT)中のバイオ由来ジメチルカーボネートの濃度が25.00~95.00質量%であり、かつ前記連続多段蒸留塔B1の塔底温度が115℃以上であり、
    前記工程(II)において、前記塔底成分(B1B)中のバイオ由来ジメチルカーボネートの濃度が99.00~99.95質量%であり、かつ前記サイドカット成分(B2s)中のバイオ由来ジメチルカーボネートの純度が99.99質量%以上である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記連続多段蒸留塔B1において、下記式(i)で算出される塔内液滞留時間が5分以上である、請求項2に記載の製造方法。
    塔内液滞留時間(分)=BTM容量(運転時に塔BTMに滞留している液容量(kg))/BTM抜出流量(塔底成分として抜き出す流量(kg/分))・・・(i)
  4. 前記工程(I)が、Feを含有する化合物の存在下で行われる、請求項2又は3に記載の製造方法。
  5. 前記サイドカット成分(B2s)中の高沸点化合物の含有量が30質量ppm以下である、請求項2~4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記サイドカット成分(B2s)中の金属含有量が1質量ppm以下である、請求項2~5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記サイドカット成分(B2s)中の水含有量が30質量ppm以下である、請求項2~6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記サイドカット成分(B2s)中のメタノール及びエタノールの合計含有量が20質量ppm以下である、請求項2~7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記サイドカット成分(B2s)中の2-メトキシエタノールの含有量が50質量ppm以下である、請求項2~8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記サイドカット成分(B2s)がガス状で抜き出される、請求項2~9のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 前記連続多段蒸留塔B1のインターナルが、トレイ及び/又は充填物である、請求項2~10のいずれか1項に記載の製造方法。
  12. 前記連続多段蒸留塔B1の還流比が0.5~5である、請求項2~11のいずれか1項に記載の製造方法。
  13. 前記連続多段蒸留塔B2の還流比が0.2~4である、請求項2~12のいずれか1項に記載の製造方法。
  14. 前記塔底成分(B1B)中の2-メトキシエタノールの含有量が100質量ppm以下である、請求項2~13のいずれか1項に記載の製造方法。
  15. 前記塔底成分(B1B)は、前記連続多段蒸留塔B2へ直接供給するか、又は、工業級バイオ由来ジメチルカーボネートタンクへ供給後、該タンクから前記連続多段蒸留塔B2へ供給する、請求項2~14のいずれか1項に記載の製造方法。
  16. 前記塔底成分(B1B)中の高沸点化合物の含有量が0.1質量ppm以上である、請求項2~15のいずれか1項に記載の製造方法。
  17. 前記連続多段蒸留塔B2において、前記側面抜出口より上の塔径D21(cm)と前記側面抜出口より下の塔径D22(cm)との比が下記式(ii)の条件を満たす、請求項2~16のいずれか1項に記載の製造方法。
    0.2<D21/D22<1.0・・・(ii)
  18. ASTM D6866に準拠して測定されるバイオベース度が95~100%のバイオ由来ジメチルカーボネート。
  19. 純度99.99質量%以上である、請求項18に記載のバイオ由来ジメチルカーボネート。
  20. ASTM D6866に準拠して測定されるバイオベース度が95~100%のバイオ由来エチレングリコール。
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