JP2023141398A - ビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体の製造方法 - Google Patents

ビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023141398A
JP2023141398A JP2022047707A JP2022047707A JP2023141398A JP 2023141398 A JP2023141398 A JP 2023141398A JP 2022047707 A JP2022047707 A JP 2022047707A JP 2022047707 A JP2022047707 A JP 2022047707A JP 2023141398 A JP2023141398 A JP 2023141398A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
weight
vinylpyridine
monomer
water
styrene sulfonate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022047707A
Other languages
English (en)
Inventor
真治 尾添
Shinji Ozoe
優輔 重田
Yusuke Shigeta
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tosoh Finechem Corp
Original Assignee
Tosoh Finechem Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tosoh Finechem Corp filed Critical Tosoh Finechem Corp
Priority to JP2022047707A priority Critical patent/JP2023141398A/ja
Publication of JP2023141398A publication Critical patent/JP2023141398A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)

Abstract

【課題】安定かつ高濃度のモノマー水溶液から、所望の分子量と組成を有するビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体及び共重合体膜を製造する方法を提供する。【解決手段】水への溶解性が低いビニルピリジンの水溶液を調製する際に、スチレンスルホン酸リチウム又はスチレンスルホン酸N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンを共存させ、ビニルピリジンの溶解度を増大させることによって高濃度のモノマー水溶液を調製し、これを重合してビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体及び共重合体膜を製造する。【選択図】なし

Description

本発明は、高分子電解質として有用なビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体の製造法に関する。
4-ビニルピリジン/スチレンスルホン酸ナトリウムランダム共重合体からなる高分子電解質膜は、プロトン交換膜としての利用が期待されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。当該文献では、4-ビニルピリジンとスチレンスルホン酸ナトリウムとを水溶液中でラジカル共重合した後、共重合体を単離してジメチルスルホキシドに再溶解し、1,10-ジブロモデカンを用いてピリジン単位を四級化する方法によりプロトン交換膜を得ている。
一方、スチレンスルホン酸塩を含む硬化性組成物及びこれを用いた高分子電解質膜の製造法が開示されており、プロトン交換膜などの用途で利用されている(例えば、特許文献1参照)。当該特許では、例えば、スチレンスルホン酸リチウム、ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、連鎖移動剤及び光重合開始剤など、全て水溶性の成分からなる硬化性組成物を支持体に塗布した後、紫外線を照射して重合することにより、高分子電解質の架橋膜を1ステップで得ている。尚、このような高分子電解質膜の製造において、モノマー組成物の濃度が高いほど膜の空孔サイズが低減し、膜性能が良化することが知られている(例えば、当該特許文献の段落0005参照)。
非特許文献1及び2では、油溶性の4-ビニルピリジン(以下、4VPということがある。)と水溶性のスチレンスルホン酸ナトリウム(以下、NaSSということがある。)を水溶液中でラジカル共重合しているが、全モノマー濃度が19重量%~64重量%の高濃度条件では、仕込みモノマー組成と生成ポリマー組成の間に大きな乖離があった。
例えば、4-ビニルピリジン(4VP)とスチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)の仕込み比としてモル%で、4VPの量:NaSSの量=40:60の条件で重合すると、得られたポリマー中の4-ビニルピリジンの構成単位は0.0モル%~18.7モル%となった。この結果から、4VPの構成単位モル%が最大18.7%であり、仕込みモル%である40%の1/2以下であった。同様に、4VPの量:NaSSの量=50:50の条件で重合すると、得られたポリマー中の4VPの構成単位モル%は29.8モル%であり、仕込みモル%である50%の約3/5であった。また、4VPの量:NaSSの量=67/33の条件で重合すると、得られたポリマー中の4VPの構成単位モル%は22.2モル%であり仕込みモル%である67%の約1/3であった。
そのため同文献では、4-ビニルピリジンとスチレンスルホン酸ナトリウムを水溶液中で共重合するための最適な溶媒量は約90重量%と記載されている。この場合のモノマー水溶液組成の具体例は、スチレンスルホン酸ナトリウム濃度8.2重量%、4-ビニルピリジン濃度2.8重量%である。重合中の水溶液の状態、重合転化率及び分子量に関する具体的な記載はないが、重合開始剤として過硫酸塩を使用しているため、重合中に生成した硫酸によってビニルピリジンがカチオン化され、静電相互作用によってポリマーが凝集し、重合溶液が不均一化したため、或いは、各モノマーが水中に完全に溶解しておらず不均一状態だったため、上記のような組成の乖離が生じた可能性が考えられる。
なお環境省による「物質に関する基本的事項」に係る報告において、2-ビニルピリジン(以下、2VPということがある。)の水への溶解度は20℃で2.75×10mg/L(出展:Eastman Kodak Co. (1992): Basic Toxicity of 2-Vinylpyridine. EPA Doc. No. 88-920008941.Fiche No. OTS0546362)、つまり約3重量%程度とされており、4VPも同程度である。
特許文献1では、スチレンスルホン酸リチウム、ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、連鎖移動剤及び光重合開始剤など、全て水溶性化合物からなる濃度63重量%の硬化性水溶液組成物、及びこれを用いた高分子電解質膜の製造例が開示されているが(当該実施例21)、油溶性のビニルピリジンの共重合に関する記載はない。
ビニルピリジンとスチレンスルホン酸塩の共重合については、上記以外にも例えば、4-ビニルピリジン、スチレンスルホン酸ナトリウム及びポリエチレングリコールジメタクリレートを水溶液中でラジカル共重合する方法があり、刺激応答性ハイドロゲルへの応用が報告されている(例えば、非特許文献3)。しかし、当該文献で使用されるモノマー水溶液中の4-ビニルピリジン濃度は3.3重量%と低く、全モノマー濃度は16.0重量%と何れも低濃度域に限定されている。
また、スチレンスルホン酸ナトリウム、4-ビニルピリジン及びスチレンを水と2-プロパノールの混合溶媒中でラジカル共重合する方法、及びその脱塩膜への利用が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、当該特許で使用されるモノマー水溶液中の全モノマー濃度は30.0重量%と比較的高いが、スチレンスルホン酸ナトリウム濃度は5.9重量%と低濃度域に限定されている。
さらに、スチレンスルホン酸ナトリウムと、塩酸でカチオン化したビニルピリジンを水溶液中でラジカル共重合する方法、及びその温度応答性ポリマーとしての利用が開示されている(例えば、特許文献3)。当該特許では、重合前にビニルピリジンをカチオン化することにより、ビニルピリジンの水溶性を高めているが、全モノマー濃度は20重量%以下と低く、また、モノマー水溶液のpHが酸性のため、反応器へ供給する前に自然重合するという課題があった。また、ポリマー間の強い静電相互作用によって、重合中にポリマーが凝集し易いため、膜用途に適した高分子量体の製造には不向きであり、製造可能な共重合体組成にも制約があった。
すなわち、従来、著しく親水性に乏しくむしろ油溶性である2VPや4VPなどのビニルピリジンと逆に水溶性の高いスチレンスルホン酸塩とを水中において高濃度とした上で重合して共重合体を得ることについて報告されていなかった。このため、ビニルピリジンとスチレンスルホン酸塩からなる所望の組成を有するランダム共重合体及び良質の高分子電解質膜を簡便に製造するための方法が求められていた。
つまり従来の技術では、例えば、ビニルピリジンのように水に対する溶解度が低いモノマーを使う高分子電解質膜の製造において、膜の空孔サイズを低減し、膜性能が良化する高品質の高分子電解質膜を得るには、水への溶解度をいかに高めるかという課題があった。
また油溶性のビニルピリジンと水溶性のスチレンスルホン酸塩とを共重合する際、モノマーに由来する構成単位として所望の構成とすることができる制御可能な共重合体を得る製造方法及び高分子が望まれていた。
特開2016-033204号公報 米国特許出願公開第2014/0319047号明細書 国際公開第2020/188839号
Carmen Georgiana LICA, et.al, ‘SYNTHESIS OF NEW POLYMER POLY(STYRENE SULFONIC ACID-CO-4-VINYLPYRIDINE) FOR PROTON EXCHANGE MEMBRANE FOR FUEL CELL’, U.P.B.Scientific Bulletin Series B, Vol.76, Issue3, 151~158頁, 2014年 A.C.Nechifor, et.al, ‘A new solid polymer electrolyte membrane based on cross-linking of water soluble monomers’, Journal of Optoelectronics and Advanced Materials, vol.15, No.7~8, 639-644頁, 2013年 Rachel D.Harris, et.al, ‘Chemical and Electrochemical Manipulation of Mechanical Properties in Stimuli-Responsive Copper-Cross-Linked Hydrogels’, ACS Macro Letters,2,1095~1099頁,2013年
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来知られていなかった高濃度でビニルピリジンとスチレンスルホン酸塩を含み、且つ安定で取り扱い易いモノマー水溶液を用いたビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、油溶性のビニルピリジンがスチレンスルホン酸リチウム(以下、LiSSと略称することがある)やスチレンスルホン酸N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(以下、CHASSと略称することがある)の存在によって、水中に高濃度で可溶化できることを見出した。当該モノマー水溶液には多官能モノマー等の第三のモノマーを加えてもよく、これらのモノマー水溶液に水溶性重合開始剤を用いて重合することにより、所望の分子量と組成を有するビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体及び共重合体膜を簡便に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、以下の発明に係る。
[1]下記(a)及び(b)を含む均一かつ清澄なモノマー水溶液に、当該モノマーの総和に対して0.01重量%~10.0重量%の水溶性重合開始剤を加え、pHが8.0~11.0のアルカリ性の条件下で共重合する、ビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体の製造方法。
(a)スチレンスルホン酸リチウム又はスチレンスルホン酸N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン: 20.0重量%~48.0重量%
(b)2-ビニルピリジン又は4-ビニルピリジン: 4.0重量%~65.0重量%
但し、(a)及び(b)のモノマーの総和は、40.0重量%~72.0重量%である。
[2]前記(a)及び(b)を含むモノマー水溶液が、更に下記(c)を含む均一かつ清澄なモノマー水溶液である上記[1]に記載の製造方法。
(c)前記(a)のスチレンスルホン酸リチウム又はスチレンスルホン酸N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン及び(b)の2-ビニルピリジン又は4-ビニルピリジンと共重合可能な多官能モノマー:1.0重量%~16.0重量%
但し、(a)~(c)のモノマーの総和は、40.0重量%~72.0重量%である。
[3]前記水溶性重合開始剤が、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、4,4’-アゾビス(シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸リチウム、過硫酸塩からなる群から選ばれる1以上の水溶性重合開始剤である前記[1]~[2]のいずれかに記載の製造方法。
[4]前記共重合において、分子量調節剤を用いる前記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記分子量調節剤が、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、3-メルカプトプロパン-1,2-ジオール及びメルカプトエタノールなる群から選ばれる1以上のチオール化合物である前記[4]に記載の製造方法。
[6]前記共重合可能な多官能モノマーが、スチレン類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類及びマレイミド類からなる群から選ばれる1以上のラジカル重合性多官能モノマーである前記[2]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記ラジカル重合性多官能モノマーが、ジビニルベンゼンスルホン酸、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド塩、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、、N-[トリス(3-アクリルアミドプロポキシメチル)-メチル]アクリルアミド、N,N-ビス(2-アクリルアミドエチル)アクリルアミド、N,N’-[オキシビス(1,2-エタンジイロキシ-3,1-プロパンジイル)]ビスアクリルアミド、N,N’-1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド}及びN,N’-メチレンビスメタクリルアミドからなる群から選ばれる1以上のモノマーである前記[2]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
従来知られていなかった高濃度でビニルピリジンとスチレンスルホン酸塩を含み、且つ安定で取り扱い易いモノマー水溶液を用いたビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体の製造方法であり、良質の高分子電解質膜を簡便に製造することができるため、産業上極めて有用である。
4-ビニルピリジンとスチレンスルホン酸リチウムを25℃で水に溶解した際の飽和溶解度(参考例1~4)を示した三角図である。 4-ビニルピリジンとスチレンスルホン酸N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンを25℃で水に溶解した際の飽和溶解度(参考例5~8)を示した三角図である。 4-ビニルピリジンとスチレンスルホン酸ナトリウムを25℃で水に溶解した際の飽和溶解度(参考例9~12)を示した三角図である。 非特許文献1(U.P.B.Scientific Bulletin Series B, Vol.76, Issue3, 151~158頁, 2014年)154頁のTable 1(表1)に記載された共重合処方から重量基準の各モノマー濃度を換算し、前記した図3Aに追加したものである。 実施例1で得られた共重合体のGPC分子量分布曲線であり、横軸は分子量の自然対数を表し、縦軸はUV(波長230nm)吸収ピーク強度(単位は任意)を表す。なお、図中の分子量は、既知分子量による検量線をもとに、測定対象ポリマー(重合体)の分子量を測定した。以下の図5~8も同じである。 実施例2で得られた共重合体のGPC分子量分布曲線であり、両軸は図4と同じである。 参考例13で得られた共重合体のGPC分子量分布曲線であり、両軸は図4と同じである。 参考例14で得られた共重合体のGPC分子量分布曲線であり、両軸は図4と同じである。 参考例15で得られた共重合体のGPC分子量分布曲線であり、両軸は図4と同じである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、25℃の水に対する溶解度が約3重量%であり、水への溶解性が極めて低い2-ビニルピリジン及び4-ビニルピリジンのいずれかのビニルピリジン(以下、これらを単に「ビニルピリジン」という)に対してLiSS又はCHASSを共存させることにより、ビニルピリジンの水への溶解度が20倍以上増大することを見出したことによる(参考例1~8)。同様の現象は、芳香環を含まないビニルスルホン酸ナトリウムや中性のスチレンでは見られないことから、芳香環同士のπ-π相互作用、及びスルホン酸とピリジン窒素との静電的な相互作用によって、ビニルピリジンが水に可溶化されたためと考えられる。
更に、各種スチレンスルホン酸塩の中でも、特にリチウム塩とN,N-ジメチルシクロヘキシルアミン塩の可溶化力が高いため、ビニルピリジンとスチレンスルホン酸塩を同時に高濃度で水に溶解できることを見出したものである(参考例1~8と参考例9~12の比較)。
高濃度モノマー溶液は、特に1ステップで高分子電解質膜を製造するために必要であり、モノマー濃度が高いほど空孔サイズが低減し、膜性能が良化することが知られている(例えば特許文献1の段落0005)。
すなわち本発明は、(a)LiSS又はCHASSと(b)2-ビニルピリジン又は4-ビニルピリジンとを含む均一かつ清澄なモノマー水溶液に水溶性重合開始剤を加え、pHが8.0~11.0のアルカリ性の条件下で共重合する、ビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体の製造方法に係る。
当該共重合において、原料のカチオン化されていない油溶性のビニルピリジンがLiSS又はCHASSの存在下で均一かつ清澄な水溶液を形成しており、重合溶液の均一性と清澄性を保持しながら各モノマーが消費される。即ち、仕込んだモノマー組成に応じた組成のランダム共重合体を得ることができる。この際、重合溶液のpHが重要であり、酸性域ではビニルピリジンがカチオン化されるため、強い静電相互作用によって重合中にポリマーが凝集し易くなり、一方、強アルカリ域ではモノマー溶解度の低下、共重合性の低下及びモノマーの加水分解が起こるため好ましくない。よって重合溶液のpHは8.0~11.0が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウムなどの四級アンモニウム塩、三級アミンなどのアルカリを添加してpHを調整する。
上記のモノマー水溶液において、(a)LiSS又はCHASSの含有量は20.0重量%~48.0重量%であればよく、25.0重量%~48.0重量%が好ましく、30.0重量%~48.0重量%がさらに好ましい。(b)ビニルピリジンの含有量は4.0重量%~65.0重量%であればよく、10.0重量%~60.0重量%が好ましく、15.0重量%~55.0重量%がさらに好ましい。
上記モノマー水溶液における(a)及び(b)のモノマーの総和は40.0重量%~72.0重量%が好ましく、50.0重量%~72.0重量%がさらに好ましい。
上記モノマー水溶液において、モノマー(a)及び(b)の総和に対する、(a)LiSS又はCHASSの割合は、25.0重量%~92.0重量%であれば良いが、30.0重量%~80.0重量%が好ましく、40.0重量%~70.0重量%がさらに好ましい。
上記の水溶性重合開始剤は、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1’-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]}ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレートなどのアゾ開始剤、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素などのパーオキサイド類、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、エチル-4-(ジメチルアミノ)-ベンゾエート、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメタン、エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート、ベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、o-ベンゾイル安息香酸、4-メチルベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルベンゾイルフォルメイト、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸リチウム、2,2-ジメソキシ-2-フェニル アセトフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパン、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸リチウム等の光重合開始剤等が挙げられる。これらの内、汎用性と水溶性の観点から、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、4,4’-アゾビス(シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、o-ベンゾイル安息香酸、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸リチウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素がより好ましい。
また、上記したパーオキサイド類を使用する場合は、必要に応じて、アスコルビン酸、エリソルビン酸、アニリン、三級アミン、ロンガリット、ハイドロサルファイト、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウムなどの還元剤を併用しても良い。上記したパーオキサイドの内、過硫酸塩を使用する場合、これらの分解によって反応系内のpHが低下するため、緩衝剤や上記したアルカリを添加し、系内のpHを中性以上、より好ましくは8.0~11.0に維持しながら重合する。また、上記した光開始剤やアゾ開始剤を用いて光重合する場合は、波長230nm~450nm
の光がよい。開始剤の光吸収波長と重合速度を考慮すると、光の波長は230~390nmがより好ましい。
水溶性重合開始剤の使用量は、目的とする分子量や重合速度に応じて調整することができるが、全モノマー100重量部に対し、0.001重量部~20.0重量部が好ましく、0.01重量部~10.0重量部がさらに好ましい。
上記モノマー水溶液を重合して共重合体を製造する際に、所望の分子量を得るため、分子量調節剤を用いることが出来る。分子量調節剤としては、例えば、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルチウラムジスルフィド、2,2’-ジチオジプロピオン酸、3,3’-ジチオジプロピオン酸、4,4’-ジチオジブタン酸、2,2’-ジチオビス安息香酸などのジスルフィド類、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸、3-メルカプト安息香酸、4-メルカプト安息香酸、チオマロン酸、ジチオコハク酸、チオマレイン酸、チオマレイン酸無水物、ジチオマレイン酸、チオグルタール酸、システイン、ホモシステイン、5-メルカプトテトラゾール酢酸、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、3-メルカプトプロパン-1,2-ジオール、メルカプトエタノール、1,2-ジメチルメルカプトエタン、2-メルカプトエチルアミン塩酸塩、6-メルカプト-1-ヘキサノール、2-メルカプト-1-イミダゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、システイン、N-アシルシステイン、グルタチオン、N-ブチルアミノエタンチオール、N,N-ジエチルアミノエタンチオール等のメルカプタン類、ヨードホルムなどの沃素化炭化水素、4-シアノ-4-(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタン酸、3-((((1-カルボキシエチル)チオ)カーボノチオイル)チオ)プロパン酸、4-シアノ-4-(チオベンゾイルチオ)ペンタン酸、ベンゾジチオ酸2-シアノプロパン-2-イル、4-シアノ-4-[(チオベンゾイル)スルファニル]ペンタン酸、2-メチル-2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸、ベンジルジチオベンゾエート、2-シアノプロプ-2-イルジチオベンゾエート、S,S-ジベンジルトリチオカーボネート、シアノメチル(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール)カルボジチオエート、N-メチル-N-フェニルジチオカルバミン酸シアノメチルなどのジチオエステル化合物、有機テルル化合物、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム等が挙げられる。これらの内、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、3-メルカプトプロパン-1,2-ジオール、メルカプトエタノール等の水溶性メルカプタン類が、溶解性及び反応性の観点から特に好ましい。
分子量調節剤の使用量は、モノマー全量100重量部に対し、0.001重量部~20.0重量部が好ましく、0.01重量部~10.0重量部がさらに好ましい。
また、上記ランダム共重合体の親水性や疎水性を調整する目的で、ビニルピリジンとLiSSもしくはCHASSとを含むモノマー水溶液に、更にこれらとラジカル共重合可能なモノマーを添加して重合することができる。例えば、4-スチレンスルホニル(トリフルオロメチルスルホニルイミド)塩、ビニル安息香酸、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリルなどの親水性モノマー、スチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、4-メトキシスチレン、4-ブトキシスチレン、4-アセトキシスチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル]メタクリルアミド、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル]アクリルアミドなどの疎水性モノマーが挙げられる。
これらのモノマーの使用量は、ビニルピリジンと、LiSSもしくはCHASSとの総和に対して20.0重量%以下が好ましい。20.0重量%を超えるとビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体の特徴が損なわれることがあるため、10.0重量%以下がより好ましい。当該共重合可能なモノマーの使用量は、モノマー水溶液で0.01重量%~20.0重量%が好ましく、0.10重量%~10.0重量%がさらに好ましい。
本発明のモノマー水溶液に用いる溶媒は、基本的には水だが、上記疎水性モノマーの溶解性を高めるため、あるいは各種基材への濡れ性を高める目的で水溶性有機溶媒を併用することができる。該水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジヒドロレボグルコセノン、アセトニトリル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メトキシエタノール、メトキシプロパノール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられ、全溶媒中の水溶性有機溶媒の使用量は50.0重量%以下であればよい。これらの内、共重合後に溶媒を除去する際の作業の容易さを考慮すると、2-プロパノール、エタノール、メトキシエタノール、メトキシプロパノールが特に好ましい。
水溶性重合開始剤を添加した上記モノマー水溶液に、必要に応じて上記した分子量調節剤、ビニルピリジン及びスチレンスルホン酸塩と共重合可能なモノマー及び水溶性有機溶媒を加えて、攪拌、溶解し、目視で濁りのない均一で清澄な溶液とする。その後、アスピレーター等による減圧と窒素等の導入を繰返して脱酸素し、系内を不活性ガスに置換する。その後、25℃~90℃で2時間~48時間加熱、攪拌しながら重合することにより、所望の分子量と共重合組成を有するビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体を製造することが出来る。あるいは、上記モノマーと分子量調節剤を含む水溶液、及び水溶性重合開始剤を反応容器へ連続的に供給しながら重合することにより、ビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体を製造することが出来る。これらの内、重合熱の除去性や分子量制御性が優れる点では後者の逐次添加法が好ましい。前記したように、本発明では重合中の溶液pHは8.0~11.0であり、終始、均一性と清澄性又は透明性が保持されている。また、上記水溶性重合開始剤等を含むモノマー水溶液は、高濃度であるため、当該モノマー水溶液を各種基材に塗布した後、加熱又は紫外線を照射して重合することにより、コーティング膜を形成することもできる。
上記で得られた水に可溶なランダム共重合体をジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒に溶解し、1,10-ジブロモデカン、1,6-ジブロモヘキサン、1,5-ジブロモペンタン、1,4-ジブロモブタン、1,3-ジブロモプロパン、1,4-ジヨードブタン等のアルキルジハライドを加えて架橋反応することにより、水に不溶な高分子電解質膜へ変換することが出来る。アルキルジハライドの添加量は、共重合体中のビニルピリジン単位に対して20モル%~50モル%が好ましく、20℃~60℃で0.5~72時間反応するのが好ましい。
また本発明は、(a)LiSS又はCHASS、(b)ビニルピリジン及び(c)多官能性モノマーを含むモノマー水溶液に、当該モノマーの総和に対して0.01重量%~10.0重量%の水溶性重合開始剤を加えて共重合する、ビニルピリジン/スチレンスルホン酸ランダム共重合体の製造方法に係る。但し、(a)~(c)のモノマーの総和は、40.0重量%~72.0重量%である。即ち、前記したモノマー水溶液に、更に多官能モノマーを加えて共重合することにより、共重合体を極性有機溶媒に再溶解することなく、1ステップで水に不溶な高分子電解質膜を製造することが出来る。
上記多官能モノマーは、ビニル基を2個以上有するラジカル重合性モノマーであることが好ましい。具体的には例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルベンゼンスルホン酸、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド塩などのスチレン類、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレートなどのアクリル酸エステル類、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートなどのメタクリル酸エステル類、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N-[トリス(3-アクリルアミドプロポキシメチル)-メチル]アクリルアミド、N,N-ビス(2-アクリルアミドエチル)アクリルアミド、N,N’-[オキシビス(1,2-エタンジイロキシ-3,1-プロパンジイル)]ビスアクリルアミド、N,N’-1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド}などのアクリルアミド類、1,2-ビスマレイミドメタン、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタンなどのマレイミド類、N,N’-メチレンビスメタクリルアミドなどのメタクリルアミド類が挙げられる。これらの内、水への溶解性と共重合性の観点から、ジビニルベンゼンスルホン酸、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド塩、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、、N-[トリス(3-アクリルアミドプロポキシメチル)-メチル]アクリルアミド、N,N-ビス(2-アクリルアミドエチル)アクリルアミド、N,N’-[オキシビス(1,2-エタンジイロキシ-3,1-プロパンジイル)]ビスアクリルアミド、N,N’-1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド}、N,N’-メチレンビスメタクリルアミドがより好ましい。
上記モノマー水溶液において、(a)LiSS又はCHASSの含有量は、20.0重量%~48.0重量%であればよく、25.0重量%~45.0重量%が好ましく、30.0重量%~43.0重量%がさらに好ましい。(b)ビニルピリジンの含有量は4.0重量%~65.0重量%であればよく、12.0~65.0重量%が好ましく、15.0重量%~45.0重量%がさらに好ましい。(c)多官能モノマーの含有量は、1.0重量%~16.0重量%であればよく、2.0重量%~16.0重量%が好ましく、4.0~16.0重量%がさらに好ましい。
上記モノマー水溶液における(a)~(c)のモノマーの総和は、40.0重量%~72.0重量%が好ましく、50.0重量%~72.0重量%がさらに好ましい。
上記モノマー水溶液は、均一かつ清澄な水溶液であり、重合中は架橋反応が進行するが、見掛け上、均一性と透明性は保持される。使用できる水溶性重合開始剤とその添加量は前記と同じである。
上記モノマー水溶液を重合して、より均質性の高い高分子電解質膜を得るため、分子量調節剤を用いることが出来る。使用できる分子量調節剤とその添加量は前記と同じである。
また、上記高分子電解質膜の水に対する膨潤度や電荷を調整する目的で、ビニルピリジン、スチレンスルホン酸塩及びジビニルモノマーに加えて、更にこれらと共重合可能なモノマーを添加し、共重合することが出来る。該共重合可能なモノマーとその使用量は前記と同様である。本発明のモノマー水溶液に用いる溶媒は、基本的には水だが、モノマーの溶解性を高めるため、あるいはモノマー水溶液の表面張力を小さくするため、水溶性有機溶媒を併用することが出来る。使用できる水溶性有機溶媒とその添加量は前記と同様である。
水溶性重合開始剤を添加した上記モノマー水溶液に、更に必要に応じて上記した分子量調節剤、ビニルピリジン、スチレンスルホン酸塩及び多官能モノマーと共重合可能なモノマー、及び水溶性有機溶媒を採取し、撹拌、溶解してモノマー水溶液組成物とすることができる。該モノマー水溶液組成物は高濃度化が可能なため、そのまま、もしくは前記と同様の方法で脱酸素した後、油性媒体に懸濁して重合する方法、フィルムや基材表面に塗布して重合する方法、不織布などの多孔質支持体に含侵させて重合する方法、或いはフィルムやガラス等の型枠に挟んで重合する方法により、ビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体粒子や高分子電解質膜を簡便に製造することが出来る。また、該粒子又は高分子電解質膜を塩酸等の酸性水溶液に浸漬してピリジン単位をカチオン化し、無機塩を除去することにより、温度応答性の粒子又は高分子電解質膜を得ることも出来る。
また本発明では、ビニルピリジンと、LiSSもしくはCHASSとを含むモノマー水溶液を重合する際に、分子量調節剤やこれらと共重合可能なモノマーの他に、増粘剤などの添加剤を更に加えても良い。増粘剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアルキレンオキサイド、ポリN-ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリN-ビニルアセトアミド、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリ2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸塩、多糖類などの水溶性高分子が挙げられ、本発明のモノマー水溶液に所望の粘度を付与することが出来る。粘度を付与することにより、水溶性重合開始剤等を加えたモノマー水溶液組成物を不織布などの多孔質支持体へ塗布する際の染込みを抑制したり、コーティング膜の厚みを調整することが出来る。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。
<使用薬剤>
NaSS:パラスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー・ファインケム株式会社製、純度87.9%)
LiSS:パラスチレンスルホン酸リチウム(東ソー・ファインケム株式会社製、純度86.4%)
CAHSS:パラスチレンスルホン酸N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(東ソー・ファインケム株式会社製、純度97.6%)
4-VP:4-ビニルピリジン(東京化成工業株式会社製、純度95%)
2-VP:2-ビニルピリジン(東京化成工業株式会社製、純度97%)
St:スチレン(富士フイルム和光純薬株式会社製、純度99%)
PEGMA:ポリエチレングリコールジメタクリレート(メルク社製、平均Mn750)
BVBSI-Li:リチウム ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド(東ソー・ファインケム株式会社製、純度93.3%)
TMA:チオリンゴ酸(東京化成工業株式会社製、純度98%)
V-50:2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド(富士フイルム和光純薬株式会社製)
V-501:4,4’-アゾビス(シアノ吉草酸)(富士フイルム和光純薬株式会社製)
HEMPP:2-ヒドロキシ4-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(東京化成工業株式会社製、純度95%)
NPS:過硫酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製、純度97%)
DBD:1,10-ジブロモデカン(東京化成工業株式会社製、純度97%)
<溶解度の測定>
ガラスフラスコに薬剤、イオン交換水を採取し、密閉した後、磁気撹拌子で攪拌しながら25℃で30分攪拌した。その後攪拌を止め、25℃で10分静置した。その後、上澄み液を円筒型分液ロートへ移液し、水層を採取した。当該水層を0.20μmシリンジフィルター付きシリンジで採取し、高速液体クロマトグラフィーで各モノマー濃度を分析した。
・機種:東ソー株式会社製 HLC-8320
・カラム:TSK ガードカラムAW-H/TSK AW6000/TSK AW3000/TSK AW2500
・溶離液:硫酸ナトリウム水溶液(0.2M)/アセトニトリル=65/35体積比
・検出器:UV検出器(波長230nm)
・カラム温度:40℃
・流速:0.6ml/min
・注入量:10μl
<重合転化率と分子量の測定>
高速液体クロマトグラフィー(HLC)による分析条件は上記<溶解度の測定>と同じである。
<共重合体の元素分析>
炭素、水素、窒素については、乾燥試料を粉砕後、パーキンエルマー製2400II元素分析計にて測定した。
イオウ分については、上記粉砕ポリマーを精秤し、酸素燃焼フラスコ法で燃焼吸収後、イオンクロマトグラフィーを用いて下記の条件で定量した。
・カラム:TSKgel SuperIC-AP
・溶離液:2.7mM炭酸水素ナトリウム+1.8mM炭酸ナトリウム
・カラム温度:40℃
・流速:0.8ml/min
・検出器:電気伝導度
参考例1~4
種々の濃度の4-スチレンスルホン酸リチウム(LiSS)共存下で、4-ビニルピリジン(4-VP)の25℃での溶解度を測定した。その結果、表1に示したように、LiSSの共存によって4-VPの溶解度が劇的に増大した。
すなわち表1の均一水溶液組成(実測値)の項に示す通り、均一水溶液中のLiSS純分8.6重量%(表中、wt%と表記、以下同じ)~35.7重量%では、4-VPの水溶解度である約3重量%を大きく超えて、16.0重量%~62.5重量%となった。
ここで、図1の三角図は均一水溶液層の組成をプロットしたものである。図中、●で示される点の内、点aは、4-VP単独、点bはLiSS単独の溶解度であり、点cは表1にも示す通り、LiSS純分濃度35.7重量%、4-VP純分濃度16.0重量%、両者の合計51.6重量%である参考例1の組成を示す。
点dはLiSS純分濃度17.3重量%、4-VP純分濃度62.5重量%、両者の合計79.8重量%である参考例2の組成を示す。
点eはLiSS純分濃度12.4重量%、4-VP純分濃度61.9重量%、両者の合計74.3重量%である参考例3の組成を示す。
点fはLiSS純分濃度8.6重量%、4-VP純分濃度58.9重量%、両者の合計67.5重量%である参考例4の組成を示す。
以上の参考例1~4の結果からは、図中の点aで示される4-VP単体の水への溶解度に対して、著しく高くなることが明らかである。
LiSSの共存により4-VPの水に対する溶解度が増大した理由として、芳香環同士のπ-π相互作用、及びスルホン酸とピリジン窒素の静電的な相互作用によって4-VPが可溶化されたことが考えられる。
また、参考例1~4で調製した4-ビニルピリジンとLiSSとを含む均一水溶液組成物を25℃で24時間放置したが、高速液体クロマトグラフィー(HLC)による測定において重合物は見られず安定であった。
参考例5~8
種々の濃度の4-スチレンスルホン酸N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(CHASS)共存下で、4-ビニルピリジン(4-VP)の25℃での溶解度を測定した。その結果、表2に示したように、CHASSの共存によって4-VPの溶解度が劇的に増大した。
すなわち表2の均一水溶液組成(実測値)の項に示す通り、均一水溶液中のCHASS純分7.5重量%~39.8重量%では、4-VPの水溶解度である約3重量%を大きく超えて、16.2重量%~65.0重量%となった。
ここで、図2の三角図は均一水溶液層の組成をプロットしたものである。図中、●で示される点の内、点aは、4-VP単独、点bはCHASS単独の溶解度であり、点cは表2にも示す通り、CHASS純分濃度39.8重量%、4-VP純分濃度16.2重量%、両者の合計56.0重量%である参考例5の組成を示す。
点dはCHASS純分濃度16.9重量%、4-VP純分濃度65.0重量%、両者の合計81.9重量%である参考例6の組成を示す。
点eはCHASS純分濃度10.1重量%、4-VP純分濃度63.5重量%、両者の合計73.6重量%である参考例7の組成を示す。
点fはCHASS純分濃度7.5重量%、4-VP純分濃度55.2重量%、両者の合計62.7重量%である参考例8の組成を示す。
以上の参考例5~8の結果から、図中の点aで示される4-VP単体の水への溶解度に対して、著しく高くなることが明らかである。
CHASSの共存により4-VPの水に対する溶解度が増大した理由は、LiSSと同様である。
また、参考例5~8で調製した4-ビニルピリジンとCHASSとを含む均一水溶液組成物を25℃で24時間放置したが、高速液体クロマトグラフィー(HLC)による測定において重合物は見られず安定であった。
参考例9~12
種々の濃度の4-スチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)共存下で、4-ビニルピリジン(4-VP)の25℃での溶解度を測定した。その結果、表3Aに示したように、NaSSの共存によって4-VPの溶解度が増大した。
ここで、図3Aの三角図は均一水溶液層の組成をプロットしたものである。図中、●で示される点の内、点aは、4-VP単独、点bはNaSS単独の溶解度であり、点cは表3Aにも示す通り、NaSS純分濃度17.3重量%、4-VP純分濃度14.3重量%、両者の合計32.1重量%である参考例9の組成を示す。
点dはNaSS純分濃度15.0重量%、4-VP純分濃度57.8重量%、両者の合計72.8重量%である参考例10の組成を示す。
点eはNaSS純分濃度12.7重量%、4-VP純分濃度57.2重量%、両者の合計69.9重量%である参考例11の組成を示す。
点fはNaSS純分濃度9.5重量%、4-VP純分濃度52.5重量%、両者の合計62.0重量%である参考例12の組成を示す。
以上の参考例9~12は、図中の点aで示される4-VP単体の水への溶解度に対して高くなるが、全モノマー濃度はLiSS(参考例1~4)及びCHASS(参考例5~8)と比べて低いことが明らかである。このことは、特許文献1(特開2016-033204号公報)の記載からもうかがえるように、高分子電解質膜の製造において、モノマー組成物の濃度が高いほど膜の空孔サイズが低減し、膜性能が良化することに寄与できる。すなわち、4-VP等のVPの水に対する溶解度が高まり、LiSSやCHASSと共存した場合の全モノマー濃度を高濃度化できることから、高品質の高分子電解質膜が製造できることが期待できる。
前記した非特許文献1の共重合例1~6(154頁、Table 1(表1)、156頁、Table 1(表2)のデータを、用いたモノマーNaSSおよび4-VPについてモル数を重量換算してデータ化し、表3Bとして示した。
さらに上記した図3Aに、非特許文献1のデータを追加して図3Bとして示した。図3Bにおいて、点a~fは図3Aと同じであり、図3B中、×で示される点1~6は非特許文献1のTable 1のsample 1~6の仕込みモノマー組成を重量基準に換算した上でプロットしたものである。
表3Bでは仕込みモノマー組成と生成ポリマー組成の間に大きな乖離が生じている。この点は、図3Bに示す通り、点1,4および5が溶解度曲線から外れており、均一の状態では重合できておらず、不均一で制御困難な重合反応が生じていると考えられる。すなわち非特許文献1では全仕込みモノマー濃度が高い共重合例1,4及び5は、この溶解度の低さに起因すると考えられる。一方、全仕込みモノマー濃度が低い共重合例2及び3は重合開始剤として用いた過硫酸ナトリウム由来の硫酸分によって反応系が酸性となり、反応系が不均一化したためと推測される。
なお表3Bは非特許文献1のTable 1について、モル基準及び重量基準の両方で算定したものである。この内、重量基準の下、図3Bに×で示す点として示した。また表3BにおけるRUN 1~RUN 6は、SAMPLE 1~SAMPLE 6に相当する。
実施例1 常温で均一、共重合性良好
4-ビニルピリジン(4-VP)とスチレンスルホン酸リチウム(LiSS)の共重合性を確認した。尚、高濃度でのサンプリング性を考慮し、低分子量処方で共重合を実施した。
窒素導入管、三方コック、攪拌機及び温度計を備えたガラス反応器にLiSS(40.04g,181.94mmol)、4-VP(20.00g,180.71mmol)、チオリンゴ酸(3.00g、19.58g)、イオン交換水(40.00g)及び水溶性重合開始剤V-50(5.40g,19.71mmol)を仕込んで常温で溶解し、均一モノマー水溶液組成物とした。当該モノマー水溶液の組成は表4に示した通りである。この溶液をアスピレーター減圧と窒素導入を繰り返すことで十分に脱気した後、反応器を60℃の温浴に浸漬し、窒素雰囲気中、撹拌下、5時間重合した。重合前のモノマー水溶液は均一かつ清澄な溶液であることを目視で確認した。
その結果、目視した限り重合溶液の均一性と清澄性を終始保持しながら、各モノマーが同程度の速度で消費され(表5)、且つ単峰性の分子量分布を有するポリマーが得られたことから(図4)、ランダム共重合がスムースに進行したことが明らかである。
ロータリーエバポレーターを用いて上記重合溶液から水を留去した後、更に真空乾燥を用いて60℃で24時間真空乾燥し、乾燥ポリマー49.60gを得た。
当該乾燥ポリマー中の炭素/水素/窒素/イオウ含量=60.1/4.8/4.3/11.6(以上、重量%)であり、仕込みモノマー中の炭素/水素/窒素/イオウ含量=59.5/4.7/4.5/11.4(以上、重量%)と良い一致を示した。
また、参考例1~4と同様、水溶性重合開始剤を添加する前の当該モノマー水溶液は、常温で24時間放置しても、高速液体クロマトグラフィー(HLC)による測定において重合物は見られず安定だった。
上記の結果から、4-ビニルピリジンとLiSSを含む本発明のモノマー水溶液を用いることにより、所望の分子量と組成を有するランダム共重合体を製造できることが明らかである。
実施例2
実施例1において、4-VPの代わりに2-VPを用いた他は、全て実施例1と同じ条件でLiSSとの共重合を実施した(表4)。重合前のモノマー水溶液は均一かつ清澄な溶液であることを目視で確認した。
その結果、LiSSに対して2-VPの消費速度が速かったが(表6)、重合溶液の均一性と清澄性は終始保持され、且つ単峰性の分子量分布を有するポリマーが得られたことから(図5)、ランダム共重合がスムースに進行したことが明らかである。
実施例1と同様に乾燥ポリマー49.1gを得た。当該乾燥ポリマー中の炭素/水素/窒素/イオウ含量=60.2/4.8/4.4/11.5(以上、重量%)であり、仕込みモノマー中の炭素/水素/窒素/イオウ含量=59.6/4.7/4.5/11.3(以上、重量%)と良い一致を示した。
また、参考例1~4と同様、水溶性重合開始剤を添加する前の当該モノマー水溶液は、常温で24時間放置しても、高速液体クロマトグラフィー(HLC)による測定において重合物は見られず安定だった。
上記の結果から、2-ビニルピリジンとLiSSを含む本発明のモノマー水溶液を用いることにより、所望の分子量と組成を有するランダム共重合体を製造できることが明らかである。
参考例13
表4に示したように4-VPとLiSSの仕込み比を変え、かつ分子量調節剤を添加しなかった他は、実施例1と同じ操作で重合を実施し、共重合性を確認した。尚、サンプリング性を考慮し、全モノマー濃度は低めに設定した。
その結果、重合溶液の均一性と清澄性を終始保持しながら、各モノマーが同程度の速度で消費され(表7)、且つ単峰性の分子量分布を有するポリマーが得られたことから(図6)、仕込み比を変えてもランダム共重合がスムースに進行したことが明らかである。
実施例1と同様に乾燥ポリマー15.30gを得た。当該乾燥ポリマー中の炭素/水素/窒素/イオウ含量=68.0/5.3/7.1/7.6(以上、重量%)であり、仕込みモノマー中の炭素/水素/窒素/イオウ含量=67.2/5.4/7.6/7.3(以上、重量%)と良い一致を示した。
当該乾燥ポリマー1.00g(ビニルピリジン構造単位5.39mmol)をジメチルスルホキシド9.00gに溶解した後、1,10-ジブロモデカン0.40g(1.27mmol)を添加し、2時間撹拌した。当該溶液をガラスシャーレに流し込み、60℃で72時間加熱してキャストフィルムを得た。当該キャストフィルムを100mlのメタノールに一晩浸漬した後、イオン交換水に投入したところ、水に溶解しない膨潤ゲルであった。
また、参考例1~4と同様、水溶性重合開始剤を添加する前の当該モノマー水溶液は、常温で24時間放置しても、高速液体クロマトグラフィー(HLC)による測定において重合物は見られず安定だった。
上記の結果から、4-ビニルピリジンとLiSSを含む本発明のモノマー水溶液を用いることにより、所望の分子量と組成を有するランダム共重合体及び高分子電解質膜を製造できることが明らかである。
参考例14
表4に示したように4-VPとLiSSの仕込み比を変えた他は、参考例13と同じ操作で共重合を実施し、共重合性を確認した。
その結果、重合溶液の均一性と清澄性を終始保持しながら、各モノマーが同程度の速度で消費され(表8)、且つ単峰性の分子量分布を有するポリマーが得られたことから(図7)、仕込み比を変えてもランダム共重合がスムースに進行したことが明らかである。
実施例1と同様に乾燥ポリマー16.70gを得た。当該乾燥ポリマー中の炭素/水素/窒素/イオウ含量=54.1/4.3/1.2/15.4(以上、重量%)であり、仕込みモノマー中の炭素/水素/窒素/イオウ含量=53.6/4.0/1.4/15.1(以上、重量%)と良い一致を示した。
当該乾燥ポリマー1.00g(ビニルピリジン構造単位0.99mmol)をジメチルスルホキシド9.00gに溶解した後、1,10-ジブロモデカン0.10g(0.32mmol)を添加し、2時間攪拌した。当該溶液をガラスシャーレに流し込み、60℃で72時間加熱してキャストフィルムを得た。当該キャストフィルムを100mlのメタノールに一晩浸漬した後、イオン交換水に投入したところ、水に溶解しない膨潤ゲルであった。
また、参考例1~4と同様、水溶性重合開始剤を添加する前の当該モノマー水溶液は、常温で24時間放置しても自然重合せず安定だった。
上記の結果から、4-ビニルピリジンとLiSSを含む本発明のモノマー水溶液を用いることにより、所望の分子量と組成を有するランダム共重合体及び高分子電解質膜を製造できることが明らかである。
参考例15 三元、アルコール併用
表4に示したようにモノマー組成と溶媒組成を変えた他は、参考例13と同じ操作で共重合を実施し、共重合性を確認した。
その結果、重合溶液の均一性と清澄性を終始保持しながら、各モノマーが同程度の速度で消費され(表9)、且つ単峰性の分子量分布を有するポリマーが得られたことから(図8)、モノマー組成と溶媒組成を変えてもランダム共重合がスムースに進行したことが明らかである。
参考例13と同様に乾燥ポリマー7.60gを得た。当該乾燥ポリマー中の炭素/水素/窒素/イオウ含量=60.5/4.9/2.8/12.8(以上、重量%)であり、仕込みモノマー中の炭素/水素/窒素/イオウ含量=59.5/4.6/2.7/12.3(以上、重量%)と良い一致を示した。
当該乾燥ポリマー1.00g(ビニルピリジン構造単位1.90mmol)をジメチルスルホキシド9.00gに溶解した後、1,10-ジブロモデカン0.15g(0.47mmol)を添加し、2時間攪拌した。当該溶液をガラスシャーレに流し込み、60℃で72時間加熱してキャストフィルムを得た。当該キャストフィルムを100mlのメタノールに一晩浸漬した後、イオン交換水に投入したところ、水に溶解しない膨潤ゲルであった。
また、参考例1~4と同様、水溶性重合開始剤を添加する前の当該モノマー水溶液は、常温で24時間放置しても自然重合せず安定だった。
上記の結果から、4-ビニルピリジンとLiSSを含む本発明のモノマー水溶液を用いることにより、所望の分子量と組成を有するランダム共重合体及び高分子電解質膜を製造できることが明らかである。
実施例3 常温で均一、架橋膜
実施例1及び参考例13~15により、LiSSと4-ビニルピリジンの共重合性が極めて良好なことを確認できたため、高分子電解質膜の1ステップでの合成を試みた。
LiSS(3.50g,15.90mmol)、4-VP(5.00g,45.18mmol)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGMA)(0.60g、0.80mmol)、イオン交換水(2.00g)及び水溶性光開始剤HEMPP(0.50g,2.18mmol)を常温で溶解し、均一で清澄なモノマー水溶液組成物とした。当該モノマー水溶液の組成は表4に示した通りである。当該モノマー水溶液組成物を、PETフィルム製のスペーサー(厚さ0.5mm、5cm×5cm角のフィルム中央に3cm×3cmの窓をくり抜いたもの)を置いた透明ガラス板(厚さ1.5mm、5cm×5cm角)に滴下した後、同じ透明ガラス板を上から重ね合わせて、余分なモノマー溶液を排除した。2枚のガラス板を金属クリップで固定した後、ガラス面に対して垂直方向で5cmの距離から波長365±8nmのLED光(シーシーエス株式会社製 HLDL-200U6-1UCLKPSC)を3時間照射した。尚、LED照射面から垂直方向に5cm離れた位置の照度は100mW/cmだった。金属クリップを外し、当該ガラス板を純35体積%アセトニトリル水溶液500mlを満たしたガラス容器に常温で一晩浸漬し、共重合体膜を剥離した。当該膜を常温の純水1Lに一晩浸漬したところ、当該膜は水に膨潤するが溶解しないシート状の架橋物であった。
また、参考例1~4と同様、水溶性重合開始剤を添加する前の当該モノマー水溶液は、常温で24時間放置しても、高速液体クロマトグラフィー(HLC)による測定において重合物は見られず安定だった。
即ち、本発明の高濃度モノマー水溶液を用いることにより、所望の組成を有する高分子電解質膜を簡便に製造できることが明らかである。
実施例4
表4に示したようにモノマー水溶液の組成を変更した他は、全て実施例3と同様の操作で重合を実施し、水に膨潤するが溶解しないシート状の架橋物を得た。
また、参考例5~8と同様、水溶性重合開始剤を添加する前の当該モノマー水溶液は、常温で24時間放置しても、高速液体クロマトグラフィー(HLC)による測定において重合物は見られず安定だった。
即ち、本発明の高濃度モノマー水溶液を用いることにより、所望の組成を有する高分子電解質膜を簡便に製造できることが明らかである。
実施例5
表4に示したようにモノマー水溶液の組成を変更した他は、全て実施例3と同様の操作で重合を実施し、水に膨潤するが溶解しないシート状の架橋物を得た。さらに当該膨潤膜を60℃で24時間真空乾燥し乾燥膜を得た。以上の操作を6回繰り返すことにより、トータル2.27gの乾燥膜を得た。乾燥膜を破砕して混合し、元素分析した結果、炭素/水素/窒素/イオウ含量=63.0/6.9/5.8/10.8(以上、重量%)であり、仕込みモノマー中の炭素/水素/窒素/イオウ含量=63.3/6.8/6.0/10.2(以上、重量%)と良い一致を示した。
また、参考例5~8と同様、水溶性重合開始剤を添加する前の当該モノマー水溶液は、常温で24時間放置しても、高速液体クロマトグラフィー(HLC)による測定において重合物は見られず安定だった。
即ち、本発明の高濃度モノマー水溶液を用いることにより、所望の組成を有する高分子電解質膜を簡便に製造できることが明らかである。
実施例6
表4に示したようにモノマー水溶液の組成を変更した他は、全て実施例3と同様の操作で重合を実施し、水に膨潤するが溶解しないシート状の架橋物を得た。
また、参考例1~4と同様、水溶性重合開始剤を添加する前の当該モノマー水溶液は、常温で24時間放置しても、高速液体クロマトグラフィー(HLC)による測定において重合物は見られず安定だった。
即ち、本発明の高濃度モノマー水溶液を用いることにより、所望の組成を有する高分子電解質膜を簡便に製造できることが明らかである。
比較例1 酸性重合 特許文献3(国際公開第2020/188839号)の例
窒素導入管、三方コック、冷却器、撹拌機を備えた反応器に4-スチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)(6.55g,27.92mmol)、4-VP(3.00g,27.12mmol)、重合開始剤V-50(0.30g,1.08mmol)及び1N塩酸水溶液(60g、60mmol)を仕込んで溶解し、均一溶液とした。全モノマー濃度は12.3重量%、全モノマーに対する4-VPのモル比は49.3モル%、全モノマーに対する開始剤の重量比は3.45重量%、重合溶液の初期pHは2.5だった。
この溶液をアスピレーター減圧と窒素導入を繰り返すことで十分に脱気した後、60℃の温浴に浸漬し、窒素雰囲気下、撹拌しながら重合を開始したが、少なくなくとも1時間後には多量の凝集物が発生した。水層をGPCで分析した結果、未反応モノマーは検出されず、数平均分子量124,000、重量平均分子量420,000のポリマーが検出された。より高分子量のポリマーが静電相互作用によって凝集、析出したと考えられる。
また、4-スチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)(6.55g,27.92mmol)、4-VP(3.00g,27.12mmol)及び1N塩酸水溶液(60g、60mmol)からなる4-VP均一水溶液組成物を25℃で24時間放置したところ、多量の凝集物が発生した。酸性のモノマー水溶液が自然重合し、強い静電相互作用により凝集したと考えられる。
比較例2 NaSS高濃度(非特許文献1のSample4の条件)
窒素導入管、三方コック、冷却器、攪拌機を備えた反応器に4-スチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)(9.98g,45.16mmol)、4-VP(5.01g,45.27mmol)、重合開始剤NPS(0.17g,0.71mmol)及びイオン交換水11.85gを仕込んで常温で撹拌したが、濃厚スラリー状態であり、均一水溶液にはならなかった。
この溶液をアスピレーター減圧と窒素導入を繰り返すことで十分に脱気した後、70℃の温浴に浸漬し、窒素雰囲気下、8時間重合したが、白色の不溶分が副生し、重合溶液は不均一になった。モノマー溶液が不均一なため、ビニルピリジンリッチな水不溶性のポリマーとスチレンスルホン酸ナトリウムリッチな水溶性ポリマーが生成したと考えられる。
高濃度でビニルピリジンとスチレンスルホン酸塩を含み、且つ安定で取り扱い易いモノマー水溶液を用いたビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩共重合体の製造方法であり、良質の高分子電解質膜を簡便に製造することができるため、産業上極めて有用である。

Claims (7)

  1. 下記(a)及び(b)を含む均一かつ清澄なモノマー水溶液に、当該モノマーの総和に対して0.01重量%~10.0重量%の水溶性重合開始剤を加え、pHが8.0~11.0のアルカリ性の条件下で共重合する、スチレンスルホン酸塩/ビニルピリジンランダム共重合体の製造方法。
    (a)スチレンスルホン酸リチウム又はスチレンスルホン酸N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン:20.0重量%~48.0重量%
    (b)2-ビニルピリジン又は4-ビニルピリジン:4.0重量%~65.0重量%
    但し、(a)及び(b)のモノマーの総和は、40.0重量%~72.0重量%である。
  2. 前記(a)及び(b)を含むモノマー水溶液が、更に下記(c)を含む均一かつ清澄なモノマー水溶液である請求項1に記載の製造方法。
    (c)前記(a)のスチレンスルホン酸リチウム又はスチレンスルホン酸N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン及び前記(b)の2-ビニルピリジン又は4-ビニルピリジンと共重合可能な多官能モノマー:1.0重量%~16.0重量%
    但し、(a)、(b)及び(c)のモノマーの総和は、40.0重量%~72.0重量%である。
  3. 前記水溶性重合開始剤が、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、4,4’-アゾビス(シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸リチウム、過硫酸塩からなる群から選ばれる1以上の水溶性重合開始剤である請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
  4. 上記共重合において、分子量調節剤の存在下で共重合する請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記分子量調節剤が、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、3-メルカプトプロパン-1,2-ジオール及びメルカプトエタノールからなる群から選ばれる1以上のチオール化合物である請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記共重合可能な多官能モノマーが、スチレン類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類及びマレイミド類からなる群から選ばれる1以上のラジカル重合性の多官能モノマーである請求項2に記載の製造方法。
  7. 前記ラジカル重合性の多官能モノマーが、ジビニルベンゼンスルホン酸、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド塩、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、、N-[トリス(3-アクリルアミドプロポキシメチル)-メチル]アクリルアミド、N,N-ビス(2-アクリルアミドエチル)アクリルアミド、N,N’-[オキシビス(1,2-エタンジイロキシ-3,1-プロパンジイル)]ビスアクリルアミド、N,N’-1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド}、N,N’-メチレンビスメタクリルアミドからなる群から選ばれる1以上のモノマーである請求項2に記載の製造方法。
JP2022047707A 2022-03-24 2022-03-24 ビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体の製造方法 Pending JP2023141398A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022047707A JP2023141398A (ja) 2022-03-24 2022-03-24 ビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022047707A JP2023141398A (ja) 2022-03-24 2022-03-24 ビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023141398A true JP2023141398A (ja) 2023-10-05

Family

ID=88205644

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022047707A Pending JP2023141398A (ja) 2022-03-24 2022-03-24 ビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023141398A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Burguière et al. Block copolymers of poly (styrene) and poly (acrylic acid) of various molar masses, topologies, and compositions prepared via controlled/living radical polymerization. Application as stabilizers in emulsion polymerization
Cuthbert et al. Are RAFT and ATRP universally interchangeable polymerization methods in network formation?
Shaplov et al. Polymeric ionic liquids: comparison of polycations and polyanions
CA2721821C (en) Method for initiating radical polymerizations
Cao et al. Effects of substitution groups on the RAFT polymerization of N-alkylacrylamides in the preparation of thermosensitive block copolymers
US20120178835A1 (en) Use of branched addition coplymers in films and membranes
JP2015105315A (ja) 有機溶剤への溶解性と耐熱性に優れたスチレンスルホン酸リチウム共重合体、ならびに当該スチレンスルホン酸リチウム共重合体を用いた帯電防止剤
CagriAta et al. Synthesis and characterization of polyvinyl alcohol-g-polystyrene copolymers via MADIX polymerization technique
JP6885780B2 (ja) 固体高分子電解質膜
Liu et al. Thermo-and pH-sensitive comb-type grafted poly (N, N-diethylacrylamide-co-acrylic acid) hydrogels with rapid response behaviors
JP7504716B2 (ja) 上限臨界溶液温度を有する新規なポリイオンコンプレックス
JP2023141398A (ja) ビニルピリジン/スチレンスルホン酸塩ランダム共重合体の製造方法
JP7349492B2 (ja) 上限臨界溶液温度を有する新規なポリスチレンベースのポリアンホライト及びその用途
JP2006089747A (ja) フリーラジカル重合プロセスおよびそれによって得られるポリマー
Bilir et al. Novel partially fluorinated graft block copolymer ionomer as potential proton exchange membrane material
KR101598250B1 (ko) 중합체, 그의 제조방법, 이를 포함하는 조성물 및 막
Biery et al. Recent advances in the synthesis of diallylammonium polymers
JP2018030909A (ja) 超高分子量ポリスチレンスルホン酸又はその塩、その製造方法及びその用途
JP6107417B2 (ja) 双性イオン含有高分子ゲル
WO2004078811A1 (ja) 重合反応用溶媒および重合体製造方法
JP6777459B2 (ja) ポリマーエマルション及びその製造方法
JP2023087752A (ja) 上限臨界溶液温度型の温度応答性を有するカルボン酸系ポリマー及びその用途
JP4269107B2 (ja) 粘土鉱物含有ヒドロゲルの製造方法
Hub et al. Amphiphilic Block Copolymers via Blue-Light-Induced Iniferter RAFT Ab Initio Emulsion Polymerization in Water–Alcoholic Media
JP2015096560A (ja) 高強度ゲル