JP2023139663A - 通気性シート - Google Patents

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Abstract

【課題】真空吸着装置の吸着ステージに吸引固定された基材の表面へ印刷を施す際、前記吸着ステージと前記基材の間に介在させて使用する通気性シートであって、基材表面により鮮明な印刷パターンを印刷付与できる、通気性シートを提供すること。【解決手段】本発明の通気性シートは、不織布層と支持層を有し、前記不織布層の構成繊維の一部が不定形状で支持層の空隙に入り込むことで不織布層と支持層が接着しており、また、触針式表面粗さ測定機を用いて通気性シートの不織布層側の表面を測定したときの、うねり曲線の最大断面高さWtが19.0μm以下である。これにより、通気性シートの平滑性が高く、通気性シートを真空吸着装置の吸着ステージと、フィルムや布帛などの基材との間に介在させて基材を吸引固定した際に、基材がゆがみにくく、鮮明な印刷パターンを基材表面に施すことができる。【選択図】図1

Description

本発明は、プリンテッドエレクトロニクスで真空吸着装置の吸着ステージに吸引固定された基材の表面へ印刷を施す際に、前記吸着ステージと前記基材の間に介在させて使用する通気性シートに関するものであり、特に、フィルム等の非通気性基材の表面に電子部品を印刷形成する際、好適に使用できる通気性シートに関する。
電気機器の小型化に伴い、小型で軽量な、或いは厚さの薄い電子部品、例えば集積回路や配線材あるいは電子基板など(以降、包括的に電子部品と称することがある)の開発が進められている。このような要請に応える技術として、近年、プリンテッドエレクトロニクスが注目を浴びている。
プリンテッドエレクトロニクスとは、導電性成分あるいは半導体成分などを配合した各種インク(以降、プリンテッドエレクトロニクスに使用される各種インクを単にインクと称することがある)を、フィルムや布帛(例えば、不織布、織物、編物など)などの基材の表面に印刷し、前記基材の表面に種々の電子部品を形成する技術分野である。
プリンテッドエレクトロニクスを用いることで、例えば、フィルムや布帛などの軽くて薄い基材や、柔軟性を有する基材の表面に電子部品を形成し、小型・軽量化された、あるいはフレキシブルな電気機器を提供することができる。
プリンテッドエレクトロニクスにおいては、電子部品を形成するにあたって微細で鮮明な印刷が実現できるように、真空吸着装置の吸着ステージに吸引固定された基材の表面へ印刷を施す際に、基材が動かないことに加え、基材表面において凹凸が非常に小さいことが要求される。そこで、基材を真空吸着装置の吸着ステージに吸引固定する際に吸着ステージの吸引口から垂直に発生する吸引圧力を分散させ、その結果基材表面の凹凸が非常に小さくでき、基材への鮮明な印刷を実現できる、真空吸着装置の吸着ステージと基材との間に介在させる通気性シートとして、例えば、国際公開2016/021239号(特許文献1)に、非通気性基材に接する不織布層と、吸着ステージに接する織物または編物からなる支持層とを備えることを特徴とする通気性シートが開示されている。
国際公開2016/021239号
しかし、特許文献1の通気性シートを用いて、基材を真空吸着装置の吸着ステージに吸引固定する際に基材がゆがむことがあった。本発明者らは基材にゆがみが発生する原因について検討したところ、通気性シートの表面が粗く、平滑性が低いことが原因であることが判明した。
本発明は、上述した従来の問題点に基づくものであり、真空吸着装置の吸着ステージに吸引固定された基材の表面へ印刷を施す際、前記吸着ステージと前記基材の間に介在させて使用する通気性シートであって、通気性シートの平滑性が高く、基材を真空吸着装置の吸着ステージに吸引固定した際に基材がよりゆがみにくく、基材表面により鮮明な印刷パターンを印刷付与できる、通気性シートの提供を目的とする。
本発明の請求項1にかかる発明は、「平坦な吸着ステージ上に吸引固定された基材の表面へ印刷を施す際に、前記吸着ステージと前記基材の間に介在させて使用する通気性シートであって、前記通気性シートが、前記基材に接する不織布層と、前記吸着ステージに接する織物または編物から構成された支持層とを備え、前記不織布層の構成繊維の一部が不定形状で支持層の空隙に入り込むことで不織布層と支持層が接着しており、JIS B 0651に規定された触針式表面粗さ測定機を用いて通気性シートの不織布層側の表面を測定したときの、うねり曲線の最大断面高さWtが19.0μm以下である、通気性シート。」である。
本発明の請求項2にかかる発明は、「通気性シートを構成する不織布層が単一の樹脂で構成されている、請求項1に記載の通気性シート。」である。
本発明の請求項3にかかる発明は、「フラジール形法による通気度が0.1cm/cm/sec.以上である、請求項1又は2に記載の通気性シート。」である。
本発明の請求項1にかかる通気性シートは、不織布層と支持層を有し、前記不織布層の構成繊維の一部が不定形状で支持層の空隙に入り込むことで不織布層と支持層が接着しており、また、触針式表面粗さ測定機を用いて通気性シートの不織布層側の表面を測定したときの、うねり曲線の最大断面高さWtが19.0μm以下である。これにより、通気性シートの平滑性が高く、通気性シートを真空吸着装置の吸着ステージと、フィルムや布帛などの基材との間に介在させて基材を吸引固定した際に、基材がゆがみにくく、鮮明な印刷パターンを基材表面に施すことができ、ひいては優れた電子部品を高い再現性をもって提供することが可能となる。
本発明の請求項2にかかる通気性シートは、不織布層が単一の樹脂で構成されていることで、不織布層が複数の樹脂で構成されているものと比べて不織布層の凹凸が少なく、より平滑性の高い通気性シートであることができる。
本発明の請求項3にかかる通気性シートは、フラジール形法による通気度が0.1cm/cm/sec.以上であることで、通気性シートを真空吸着装置の吸着ステージと基材との間に介在させて基材を吸引固定した際に、十分に基材を固定できる。
本発明の通気性シートの使用時における、模式的断面図である。
本発明の通気性シートは、従来知られているプリンテッドエレクトロニクス技術と同様に、真空吸引装置に組み込まれた吸引ステージ上に載置された状態で、当該シートに接してフィルム等からなる基材を置き、装置を稼働させることにより印刷が実施される。
以下、本発明の通気性シートの使用時における、模式的断面図である図1を用いて説明する。本発明の通気性シート(3)は、少なくとも一層の不織布層(3b)と、少なくとも一層の支持層(3a)とを含むものである。また、不織布層(3b)の構成繊維の一部が不定形状で支持層(3a)の空隙に入り込むことで不織布層(3b)と支持層(3a)が接着している。通気性シート(3)は、吸引口(2)が設けられた吸着ステージ(1)に、支持層(3a)が接した状態で用いられ、不織布層(3b)に接して基材(4)が載置された状態で真空吸引装置を稼働し、基材(4)が固定される。
本発明の通気性シート(3)の作用効果として、吸引口(2)から基材(4)と吸着ステージ(1)との間の空気が吸引される際、これらの間に介在する通気性シート(3)のうち、まず、支持層(3a)によって吸引口(2)のパターンによる吸引力の局在化が緩和される。次いで、この支持層(3a)を貫く装置側の吸引力は不織布層(3b)を介して更に分散し、吸引対象物である基材(4)を吸着ステージ(1)側に引きつけ、当該基材(4)の平面性を保った状態で、インク付与部材(5)による印刷を鮮明に実施し得る。
なお、基材(4)はフィルムなどの非通気性基材であっても、紙や多孔性シートなどの通気性基材であってもよい。また、基材(4)を構成する成分などの諸構成や、厚さや剛性などの諸物性は、基材(4)の用途により適宜調整する。
通気性シート(3)の支持層(3a)を構成する織物又は編物は、厚さ方向、及び厚さ方向に直交する方向にも通気性を有している。このため、吸着ステージ(1)による吸引力を支持層(3a)における空隙内の多方向に分散できる。
プリンテッドエレクトロニクスでは、印刷するパターンを鮮明に印刷するために吸着ステージ(1)の吸引口(2)の直径を小さくし、吸引口(2)の直上での基材(4)の変形を抑制することが行われているが、吸引口(2)の直径が小さくなると、吸着ステージ(1)自体の加工コストが上がり、基材(4)の吸着効率は低下する傾向にある。本発明の通気性シート(3)は吸着ステージ(1)による吸引力を支持層(3a)における空隙内の多方向に分散でき、かつ不織布層(3b)によってさらに吸引力を分散させることで基材(4)に平坦な面を提供できるため、一般的な真空吸着装置の吸着ステージ(1)上に設置することで、著しいコストダウンと吸着効率の改善を図り得る。
本発明の通気性シート(3)は、不織布層(3b)の構成繊維の一部が不定形状で支持層(3a)の空隙に入り込むことで不織布層(3b)と支持層(3a)が接着している。これにより、通気性シート(3)の不織布層(3b)側の表面の平滑性が高く、通気性シート(3)を真空吸着装置の吸着ステージと、フィルムや布帛などの基材(4)との間に介在させて基材(4)を吸引固定した際に、基材(4)がゆがみにくく、鮮明な印刷パターンを基材(4)表面に施すことができ、ひいては優れた電子部品を高い再現性をもって提供することが可能となる。通気性シート(3)の不織布層(3b)側の表面の平滑性が高い理由としては、不定形状の不織布層(3b)の構成繊維の一部が不定形状で支持層(3a)の空隙に入り込むことで、支持層(3a)の凹凸を埋めるように存在しているためと考えられる。
なお、本発明の通気性シート(3)において、不織布層(3b)の構成繊維の一部が不定形状で支持層(3a)の空隙に入り込んでいるかどうかは、通気性シート(3)の主面に直交する方向である厚さ方向に通気性シート(3)を切り取って通気性シート(3)の断面を露出させ、前記通気性シート(3)の断面における支持層(3a)を顕微鏡で観察することで確認できる。本発明における「支持層の空隙」は、織物又は編物から構成された支持層(3a)の断面における、支持層(3a)を構成する隣接する2つの構成繊維の断面の間の領域を指し、「不織布層の構成繊維の一部が不定形状で支持層の空隙に入り込んでいる」は、前記支持層(3a)の空隙に不織布層(3b)の構成繊維が円形などの繊維断面形状を有しておらず不定形状となった状態で入り込んでいるものをいう。なお、通気性シート(3)の厚さ方向に通気性シート(3)を切り取って通気性シート(3)の断面を露出させ、通気性シート(3)の断面における支持層(3a)を顕微鏡で観察する際に、通気性シート(3)の支持層(3a)と不織布層(3b)が剥離するものは、「不織布層の構成繊維の一部が不定形状で支持層の空隙に入り込んでいる」ものではない。
本発明の通気性シート(3)は、JIS B 0651に規定された触針式表面粗さ測定機を用いて通気性シート(3)の不織布層(3b)側の表面を測定したときの、うねり曲線の最大断面高さWtが19.0μm以下である。これにより、通気性シート(3)の不織布層(3b)側の表面の平滑性が高く、通気性シート(3)を真空吸着装置の吸着ステージと、フィルムや布帛などの基材(4)との間に介在させて基材(4)を吸引固定した際に、基材(4)がゆがみにくく、鮮明な印刷パターンを基材表面に施すことができ、ひいては優れた電子部品を高い再現性をもって提供することが可能となる。うねり曲線の最大断面高さWtが低ければ低いほど、より通気性シート(3)の不織布層(3b)側の表面の凸凹が小さく、平滑性が高いことから、うねり曲線の最大断面高さWtは、17.0μm以下がより好ましく、15.0μm以下が更に好ましい。なお、うねり曲線の最大断面高さWtは、JIS B 0651の4.1.5に規定されている。
本発明の通気性シート(3)に含まれる支持層(3a)を構成する織物又は編物は、種々の有機樹脂または金属から構成することができるが、吸引力の作用時に構造を保持し得る金属製の織物である金属メッシュを採用するのが好ましく、特に防錆性並びに剛性に優れたステンレス鋼(SUS)製のメッシュが最も好ましい。
上述した支持層(3a)を構成する織物は平織り、綾織りなど、編物はメリヤス編みなどを選択し得るが、構造が簡素で比較的表面凹凸が小さく、かつ伸縮性が小さく変形しにくい平織りの織物を選択するのが好適である。特に、織物から構成された支持層(3a)の場合、支持層(3a)の目開きが0.030~0.270mmであるのが好ましく、0.060~0.250mmであるのがより好ましく、0.100~0.230mmであるのが更に好ましい。支持層(3a)の目開きを0.270mm以下と小さな目開きとすることで、通気性シート(3)全体の曲げ剛性を確保し、吸着固定された基材(4)に、平坦な表面を提供することができる。また、支持層(3a)の目開きが0.030mm以上と大きい目開きとすることで、支持層(3a)の通気度が十分であり、基材(4)を十分に固定できる。
ここでいう「目開き」は、ワイヤーあるいは糸同士で形成される網目状の開口の一辺の長さに相当する値であり、通常、メッシュ数とミリ単位とした線径dにより、以下の値で算出することができる。この計算式は広く知られた算出手法であるが、実際に顕微鏡で観察した結果と極めて高い相関があることを確認した。
目開き=(25.4/メッシュ数)-線径d
なお、織物の目開きが糸の配列方向により異なる場合、まず、一方の配列方向における目開きと前記配列方向と交差するもう一方の配列方向における目開きから開口の面積を算出する。次に、開口の面積から開口が正方形と仮定したときの開口の1辺の長さを算出し、この開口の1辺の長さを支持層(3a)の目開きとする。また、目開きの存在しない織物については、目開きの大きさは0mmとみなす。
編物から構成された支持層(3a)の場合、まず、編物から1cm×1cmの正方形の領域における編目を観察して前記正方形の領域における編目1つの面積の平均値を算出する。次に、編目1つの面積の平均値から編目が正方形と仮定したときの編目の1辺の長さを算出し、この編目の1辺の長さを支持層(3a)の目開きとし、上述の支持層(3a)の目開きの範囲であるのが好ましい。
支持層(3a)の積層前の目付、積層前の厚さ、積層前の空隙率などの諸構成は、適宜調整するのが好ましいが、支持層(3a)の積層前の目付は、50g/m以上であるのが好ましく、200g/m以上であるのがより好ましく、400g/m以上であるのが更に好ましい。支持層(3a)の積層前の目付の上限は適宜調整するが、1000g/m以下であるのが現実的である。なお、「目付」は最も広い面である主面1mあたりの質量であり、「支持層(3a)の積層前の目付」は、支持層(3a)を構成する積層前の織物又は編物の目付の値である。
また、支持層(3a)の積層前の厚さは、50μm以上であるのが好ましく、100μm以上であるのがより好ましく、150μm以上であるのが更に好ましい。支持層(3a)の積層前の厚さの上限は適宜調整するが、300μm以下であるのが現実的である。なお、本発明における「厚さ」は、0.054N/mm荷重時のもので、1mあたり15点測定した値の平均値であり、「支持層(3a)の積層前の厚さ」は、支持層(3a)を構成する積層前の織物又は編物を、上述の方法で厚さを測定した値である。
更に、支持層(3a)の積層前の空隙率は、空隙率の高い支持層(3a)であると、基材(4)を吸着ステージ(1)に吸引固定する際に十分に基材(4)を吸引できることから、支持層(3a)の積層前の空隙率は、40%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましく、60%以上であるのが更に好ましい。前記空隙率の上限は100%未満であり、基材(4)を吸着ステージ(1)に吸引固定する際に支持層(3a)が吸引圧力により形状変化しにくく、表面に凹凸が少ない通気性シート(3)であることができるように、支持層(3a)の空隙率の上限は90%以下が好ましい。なお、支持層(3a)の積層前の空隙率(単位:%)は、支持層(3a)の積層前の目付(単位:g/m)、支持層(3a)の積層前の厚さ(単位:μm)、支持層(3a)の構成材料の密度(単位:g/cm)により、以下の式から算出することができる。
空隙率=[1-{目付/(厚さ×密度)}]×100
次いで、通気性シート(3)に含まれる不織布層(3b)について説明する。吸引口(2)が設けられた吸着ステージ(1)に、通気性シート(3)の支持層(3a)が接した状態で用いられ、不織布層(3b)に接して基材(4)が載置された状態で真空吸引装置を稼働し、基材(4)が固定される際に、不織布層(3b)は、織物または編物から構成された支持層(3a)によって緩和された吸引口(2)のパターンによる吸引力を更に分散し緩和させることが出来る。この不織布層(3b)が吸引力を分散し緩和させる効果は、不織布層(3b)を構成する不織布は繊維が規則的に配置されている織物や編物に比べて繊維の配置が規則的でないことにより実現できる。
この不織布層(3b)は、乾式不織布、湿式不織布、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布など、種々の不織布であることができる。その中でもスパンボンド不織布またはメルトブロー不織布であると、通気性シート(3)からの発塵を防止し、かつ不織布層(3b)の基材(4)側表面の毛羽立ちを防止できることから、好ましい。
また、通気性シート(3)に含まれる不織布層(3b)を構成する繊維の組成は特に限定するものではないが、具体的には、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、エポキシ系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、ニトリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)、ビニロン系樹脂(酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなど)、導電性高分子(ポリピロール系、ポリアニリン系、ポリアセチレン系、ポリチオフェン系など)などの有機樹脂であることができる。これらの構成繊維は、単一の樹脂成分から構成されてなる繊維であっても、複数種類の樹脂成分から構成されてなる、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型などの複合繊維であってもよい。更に、不織布層(3b)は1種類の繊維で構成されていても、2種類以上の繊維で構成されていても良い。しかしながら、後述のように、本発明の通気性シートを構成する不織布層は、単一の樹脂成分で構成されていることが好ましいことから、不織布層(3b)は単一の樹脂成分から構成されてなる繊維1種類のみで構成されていることが好ましい。
更に、不織布層(3b)が単一の樹脂で構成されていることで、不織布層が複数の樹脂で構成されているものと比べて不織布層の凹凸が少なく、より平滑性の高い通気性シートであることができることから、不織布層は単一の樹脂で構成されているのが好ましい。
このシート状の不織布層(3b)を構成する繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を得る方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の技術を適用することができる。これら公知の不織布製造技術のうち、通気性シート(3)からの発塵を防止し、かつ不織布層(3b)の基材(4)側表面の毛羽立ちを防止する観点から上述した直接紡糸法で得られる長繊維であることが好ましい。
また、不織布層(3b)は、真空装置の吸引等によってフィルム等の基材(4)との間で帯電し易い傾向にあるため、不織布層(3b)は帯電防止を目的とした導電性繊維を含有しているのが好適である。また、この導電性繊維を含有する代わりに、不織布層(3b)の構成繊維の表面に界面活性剤を含むなど、種々の態様とすることができる。この際、界面活性剤の最終的な不織布層(3b)における含有量は、使用する界面活性剤の種類により任意好適に設計することができる。
不織布層(3b)の積層前の目付、積層前の厚さなどの諸構成は、適宜調整するのが好ましいが、不織布層(3b)の積層前の目付は、5g/m以上であるのが好ましく、10g/m以上であるのがより好ましく、15g/m以上であるのが更に好ましい。なお、不織布層(3b)の目付の上限は適宜調整するが、200g/m以下であるのが現実的である。なお、「不織布層(3b)の積層前の目付」は、不織布層(3b)を構成する積層前の不織布の目付の値である。
また、不織布層(3b)の積層前の厚さは、10~500μmであるのが好ましく、30~400μmであるのがより好ましく、50~300μmであるのが更に好ましい。なお、「不織布層(3b)の積層前の厚さ」は、不織布層(3b)を構成する積層前の不織布の厚さの値である。
本発明の通気性シート(3)のフラジール形法による通気度は、0.1cm/cm/s以上であるのが好ましい。通気性シート(3)のフラジール形法による通気度が0.1cm/cm/s以上であることで、通気性シートを真空吸着装置の吸着ステージ(1)と基材(4)との間に介在させて基材(4)を吸引固定した際に、十分に基材(4)を固定できる。より基材(4)を安定して固定できるように、通気性シート(3)のフラジール形法による通気度は、10cm/cm/s以上がより好ましく、50cm/cm/s以上が更に好ましい。通気性シート(3)のフラジール形法による通気度の上限は、通気性シート(3)の不織布層(3b)の構成繊維の一部が不定形状で支持層(3a)に入り込み、通気性シートの平滑性が高いように、300cm/cm/s以下が好ましい。なお、「フラジール形法による通気度」は、JIS L 1096に規定されるフラジール形法により測定された値をいう。
本発明の通気性シート(3)の目付、厚さ、嵩密度などの諸構成は、適宜調整するのが好ましいが、通気性シート(3)の目付は、55g/m以上であるのが好ましく、210g/m以上であるのがより好ましく、415g/m以上であるのが更に好ましい。なお、通気性シートの目付の上限は適宜調整するが、1000g/m以下であるのが現実的である。
また、通気性シート(3)の厚さは、厚さが大きいと印刷時に取り扱い性が悪いおそれがあるため、600μm以下であるのが好ましく、450μm以下であるのがより好ましく、350μm以下であるのが更に好ましい。一方、厚さが薄すぎると吸着ステージ(1)の吸引圧力が十分分散せず、基材(4)表面に凸凹が発生するおそれがあることから、50μm以上であるのが好ましく、130μm以上であるのがより好ましく、200μm以上であるのが更に好ましい。
更に、通気性シート(3)の嵩密度は、嵩密度の高い通気性シート(3)であると、基材(4)を吸着ステージ(1)に吸引固定する際に通気性シート(3)が吸引圧力により形状変化しにくく、表面の凹凸が少ない通気性シート(3)が実現でき、鮮明な印刷が実現できる一方、通気性シート(3)の嵩密度が高すぎると、通気性シート(3)の通気性が低くなり基材(4)を吸引固定し難くなるおそれがあることから、嵩密度は、1.0~8.5g/cmであるのが好ましく、1.5~4.5g/cmであるのがより好ましく、2.0~3.0g/cmであるのが更に好ましい。なお、通気性シートの嵩密度は、(通気性シートの目付)/(通気性シートの厚さ)で求めることができる。
本発明の通気性シート(3)はそのまま使用することができるが、通気性シート(3)と吸着ステージ(1)との密着性向上のため、通気性シート(3)外周部をテープなどで留めてもよい。また、通気性シート(3)における不織布層(3b)と支持層(3a)の面積は同じであっても、不織布層(3b)の面積の方が支持層(3a)の面積よりも小さい、あるいは不織布層(3b)の面積の方が支持層(3a)の面積よりも大きいなど、不織布層(3b)と支持層(3a)の面積が異なっていてもよい。
ここで、本発明の通気性シート(3)の製造方法の一例について説明する。
まず、上述した不織布層(3b)を構成する不織布、及び、上述した支持層(3a)を構成する織物または編物を準備する。
次に、不織布と、織物または編物を重ね、不織布の構成繊維の少なくとも一部を不定形状で支持層の空隙に入り込ませ、不織布と、織物または編物とを接着して、不織布層(3b)の構成繊維の一部が不定形状で支持層(3a)の空隙に入り込むことで不織布層(3b)と支持層(3a)が接着している、本発明の通気性シート(3)を製造する。このとき、不織布と、織物または編物とを接着する方法は、例えば、不織布と、織物または編物を積層したものをヒートロールや熱プレス機などに供することで、不織布の構成繊維の少なくとも一部を融解させ、熱で融解された不織布の構成繊維を織物または編物の空隙に入り込ませることで接着する方法が挙げられる。
なお、前記方法で通気性シート(3)を製造するにあたり、不織布の構成繊維の少なくとも一部が融解して、不織布の構成繊維の一部が支持層(3a)の空隙に十分に入り込むことができるように、不織布の構成樹脂の融点のうち最も低い融点よりも20℃以上高い温度で加熱して不織布の構成樹脂を融解させ、不織布の構成樹脂を流動させて、熱で溶融された不織布の構成樹脂の一部を支持層(3a)の空隙に入り込ませるのが好ましい。
また、必要に応じて、不織布と、織物または編物とを接着させた後にロールやプレス機に通気性シート(3)を供することで、通気性シート(3)の厚さを調整することができる。
以下に、本発明の実施例として、本発明の好適態様を含む種々の通気性シートを調製し、評価した結果を記載するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではなく、数値的条件などは、この発明の目的の範囲内で任意好適に設計し得る。
(不織布Aの準備)
ナイロン共重合体(単一の樹脂で構成、融点:105℃)の繊維(平均繊維径:40μm、連続繊維)からなる、メルトブロー不織布である不織布A(目付:40g/m、厚さ:203μm)を準備した。
(不織布Bの準備)
ポリエチレン共重合体(単一の樹脂で構成、融点:95℃)の繊維(平均繊維径:10μm、連続繊維)からなる、メルトブロー不織布である不織布B(目付:30g/m、厚さ:184μm)を準備した。
(不織布Cの準備)
ポリエチレン共重合体(単一の樹脂で構成、融点:95℃)の繊維(平均繊維径:10μm、連続繊維)からなる、メルトブロー不織布である不織布C(目付:60g/m、厚さ:283μm)を準備した。
(不織布Dの準備)
市販のポリプロピレン/低密度ポリエチレン(ポリプロピレンの融点:160℃、低密度ポリエチレンの融点:120℃)芯鞘型複合繊維(繊維径:10.5μm、繊維長:5mm)を湿式抄造し、加熱乾燥して製造した、低融点ポリエチレンにより構成繊維同士が結合している湿式不織布である不織布D(目付70g/m、厚さ:223μm)を準備した。
(支持体の準備)
支持体として、ステンレス鋼(SUS)製の金属メッシュ(平織り、線径0.10mm、目開き:0.15mm、目付:479g/m、厚さ:186μm、空隙率:68%)を準備した。
(通気性シートの作製)
(実施例1)
上述した不織布Aと上述した支持体とを積層させ、135℃に加熱したプレス機で不織布Aの構成繊維を融解(圧力:0.3MPa)し、25℃で冷却することで通気性シートを調製した。この通気性シートは、不織布A由来の不織布層の構成繊維の一部が不定形状で支持体由来の支持層の空隙に入り込むことで不織布層と支持層が接着していた。
(実施例2)
上述した不織布Bと上述した支持体とを積層させ、130℃に加熱したプレス機で不織布Bの構成繊維を融解(圧力:0.3MPa)し、25℃で冷却することで通気性シートを調製した。この通気性シートは、不織布B由来の不織布層の構成繊維の一部が不定形状で支持体由来の支持層の空隙に入り込むことで不織布層と支持層が接着していた。
(実施例3)
上述した不織布Cと上述した支持体とを積層させ、130℃に加熱したプレス機で不織布Cの構成繊維を融解(圧力:0.3MPa)し、25℃で冷却することで通気性シートを調製した。この通気性シートは、不織布C由来の不織布層の構成繊維の一部が不定形状で支持体由来の支持層の空隙に入り込むことで不織布層と支持層が接着していた。
(比較例1)
上述した不織布Aと上述した支持体とを積層させ、不織布Aの構成繊維を融解させずに、通気性シートを調製した。この通気性シートは、不織布A由来の不織布層の構成繊維が不定形状で支持体由来の支持層の空隙に入り込んでいなかった。
(比較例2)
上述した不織布Dと上述した支持体とを積層させ、不織布Dの構成繊維を融解させずに、通気性シートを調製した。この通気性シートは、不織布D由来の不織布層の構成繊維が不定形状で支持体由来の支持層の空隙に入り込んでいなかった。
(比較例3)
上述した不織布Dと上述した支持体とを積層させ、150℃に加熱したプレス機で熱圧着(圧力:0.3MPa)して不織布Dの構成繊維である芯鞘型複合繊維に含まれる低密度ポリエチレンを融解し、25℃で冷却することで通気性シートを調製した。この通気性シートは、通気性シートの断面における支持体由来の支持層を顕微鏡で観察する際に、通気性シートの支持層と不織布D由来の不織布層が剥離し、不織布層の構成繊維の一部が不定形状で支持層の空隙に入り込んでいるものではなかった。
実施例及び比較例の通気性シートの、目付、厚さ、嵩密度、通気度を以下の表1に示す。
Figure 2023139663000002
次に、以下の方法で、実施例及び比較例の通気性シートを評価した。
(うねり曲線の最大断面高さ測定)
JIS B 0651に規定された、触針式表面粗さ測定機「サーフコム(登録商標)130A」(株式会社東京精密製)を使用し、測定子先端半径2μm、測定長25mm、測定速度0.3mm/s、カットオフ0.8~25mmの条件で、通気性シートの不織布層側の表面の、うねり曲線の最大断面高さWtを測定した。なお、測定箇所は、通気性シートの特定の1辺に平行する方向に3点、前記平行方向に直交する方向に3点、計6点を測定し、平均値を算出し、うねり曲線の最大断面高さWtとした。
(フィルムへの印刷評価)
(1)基材として、非通気性の市販のポリエチレンテレフタレート製フィルム(厚さ25μm)を1辺180mmの正方形に裁断して用意した。
(2)実施例及び比較例の通気性シートを1辺190mmの正方形に裁断した。
(3)市販の真空吸着装置として、直径1.5mmの円形の吸引口が10mm間隔で格子状(縦15個、横15個)に合計225個開口され、開口領域の一辺が140mmの平板形状の吸着ステージを用意した。
(4)この吸着ステージの開口領域をすべて覆うように、吸着ステージと通気性シートの支持層が接し、また、基材の全面が通気性シートと重なるように、各通気性シート、基材を順次載置し、四方をテープで留めることによって吸引力の損失を回避し、この状態で、真空吸着装置の真空ポンプを動作させた。
(5)評価用の印刷スクリーン製版として、320mm×320mmのメッシュスクリーン中央部65mm角の領域にベタ印刷領域を有するスクリーン製版を用いた。インクは市販のインク「T-JET 250 緑」(株式会社ミノグループ製)に市販の遅乾溶剤「リターダーVZ3」(株式会社ミノグループ製)10mass%を添加させたものを用いた。スクリーン製版を基材上に載せ、その上からインクを流してブレード状のスキージにより印刷を実施することで、当該インクを、スクリーン製版を通して基材表面に印刷を行った。
(6)基材を取り出し、基材のインクを有する印刷面を撮影した。
(7)基材のインクを有する印刷面を撮影した写真において、市販の画像解析ソフトでインクの色が濃いムラの面積を測定した。面積4mm以上のインクの色が濃いムラがなければ「〇」、面積4mm以上のインクの色が濃いムラが1箇所以上あれば「×」とした。
評価結果を、以下の表2に示す。
Figure 2023139663000003
不織布層の構成繊維の一部が不定形状で支持層の空隙に入り込んでいる実施例1~3の通気性シートは、不織布層の構成繊維が繊維形状を保ち不定形状になっておらず、不織布層の構成繊維の一部が不定形状で支持層の空隙に入り込んでいない比較例1~3の通気性シートと比較して、うねり曲線の最大断面高さWtが19.0μm以下と小さく、印刷性に優れる通気性シートであった。
平坦な吸着ステージに吸引固定された基材の表面へ印刷を施す際に、前記吸着ステージと前記基材との間に介在させて使用する通気性シートであって、基材の表面へ所望の印刷パターンを形成できる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
1:吸着ステージ
2:吸引口
3:通気性シート
3a:支持層
3b:不織布層
4:基材
5:インク付与部材

Claims (3)

  1. 平坦な吸着ステージ上に吸引固定された基材の表面へ印刷を施す際に、前記吸着ステージと前記基材の間に介在させて使用する通気性シートであって、
    前記通気性シートが、前記基材に接する不織布層と、前記吸着ステージに接する織物または編物から構成された支持層とを備え、
    前記不織布層の構成繊維の一部が不定形状で支持層の空隙に入り込むことで不織布層と支持層が接着しており、
    JIS B 0651に規定された触針式表面粗さ測定機を用いて通気性シートの不織布層側の表面を測定したときの、うねり曲線の最大断面高さWtが19.0μm以下である、通気性シート。
  2. 通気性シートを構成する不織布層が単一の樹脂で構成されている、請求項1に記載の通気性シート。
  3. フラジール形法による通気度が0.1cm/cm/sec.以上である、請求項1又は2に記載の通気性シート。
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