JP2023134945A - シンチレータパネルおよび放射線検出器 - Google Patents

シンチレータパネルおよび放射線検出器 Download PDF

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Abstract

【課題】バインダー樹脂の経時劣化に起因する性能低下を抑制したシンチレータパネルおよび放射線検出器を提供する。【解決手段】基材3と、前記基材3の上に形成された格子状の隔壁4と、前記基材3と隔壁4によって区画されたセル内に蛍光体層5を有するシンチレータパネル1であって、前記蛍光体層5は、蛍光体粒子と樹脂を少なくとも含み、前記蛍光体層5全体を100質量%としたときに、前記蛍光体層5内に含まれる樹脂の含有量が0.5質量%以下であり、さらに、前記蛍光体層5を被覆する保護膜8を有し、前記保護膜8をシンチレータパネル1から蛍光が発光される面側に備える、シンチレータパネル。【選択図】図3

Description

本発明は、シンチレータパネルおよび放射線検出器に関する。
従来、医療現場において、フィルムを用いたX線画像が広く用いられてきた。しかし、フィルムを用いたX線画像はアナログ画像情報であるため、近年、コンピューテッドラジオグラフィ(computed radiography:CR)や平板X線検出装置(flat panel detector:FPD)、ラインセンサー等のデジタル方式の放射線検出装置が広く開発、製造されている。
例えばFPDにおいては、放射線を可視光に変換する発光体パネルであるシンチレータパネルが使用される。シンチレータパネルは、ヨウ化セシウム(CsI)、酸硫化ガドリニウム(GOS)等のX線蛍光体を含み、照射されたX線に応じて、該X線蛍光体が可視光を発光する。そして、その発光を受光素子、たとえば、TFT(thin film transistor)やCCD(charge-coupled device)、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)等で電気信号に変換することにより、X線の情報をデジタル画像情報に変換する。
しかしながら、このような間接変換方式の検出装置は画像解像度が低いという問題があった。これは、X線蛍光体が発光する際に、蛍光体自体によって、可視光が散乱してしまうこと等に起因する。この光の散乱の影響を小さくするために、隔壁で仕切られた画素内に蛍光体を充填する方法が提案されてきた(特許文献1)。
特許文献1には、隔壁により画素構造(セル)を構成したシンチレータパネルの利点を最大限発揮させるためには、シンチレータパネルに対向する受光基板に配列された光電変換素子の各素子と、格子状の隔壁により形成されたセルをズレなく位置合わせして貼り合わせることが重要となる。これにより隣接セルへの光の拡散が抑制され、高い画像解像度を得ることができる。さらに、隔壁で区画された空間内に蛍光体およびバインダー樹脂を充填することが開示されている。
国際公開第2014/080941号 特開2000-241550号公報 特開2003-215256号公報
主に産業用途で使用される放射線検出器においては、X線などの放射線を照射されたままの長期間連続運転や、高温、高湿度環境下で使用されるなど過酷な条件にさらされることが多い。シンチレータパネルには粒子状の蛍光体をバインダー樹脂によって結着させた蛍光体層が広く用いられるが、このような環境下で使用されるとシンチレータの明るさの指標である輝度が経時的に低下し、検出器の性能が低下する。
この原因の1つとして蛍光体層中のバインダー樹脂が劣化するとともに着色し、蛍光体から発した光の一部がバインダー樹脂に吸収されることで、発光効率が低下することがある。蛍光体層とは、隣接する隔壁で区画されたセルに、蛍光体粒子同士を結着するバインダー樹脂を含むペーストが充填され、各構造体セル内に形成された蛍光体を含む層のことである。
バインダー樹脂は粒子を結着する目的で用いられており、バインダー樹脂を含む蛍光体層は、蛍光体粒子が飛散することがなく、安定な形状の蛍光体層を形成する。よって、バインダー樹脂を用いない場合には蛍光体層の形状が不安定になってしまう課題がある。特許文献2,3にはバインダー樹脂を含まない蛍光体層の製造方法が示されているが、蛍光体層が薄膜に限定されるなど形状安定性は低いと考えられる。
そこで、本発明は、バインダー樹脂の経時劣化に起因する性能低下を抑制したシンチレータパネルおよび放射線検出器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成からなる。
(1)基材と、前記基材の上に形成された格子状の隔壁と、前記基材と隔壁によって区画されたセル内に蛍光体層を有するシンチレータパネルであって、前記蛍光体層は、蛍光体粒子と樹脂を少なくとも含み、前記蛍光体層全体を100質量%としたときに、前記蛍光体層内に含まれる樹脂の含有量が0.5質量%以下であり、さらに、前記蛍光体層を被覆する保護膜を有し、前記保護膜をシンチレータパネルから蛍光が発光される面側に備える、シンチレータパネルである。
(2)前記保護膜が、前記蛍光体層と前記隔壁の上面部を被覆し、シンチレータパネルの発光面側の最表層に配置される(1)に記載のシンチレータパネルである。
(3)前記隔壁が、シンチレータパネルの発光面側の最表部に配置された(1)に記載のシンチレータパネルである。
(4)前記蛍光体粒子の平均粒子径が1~30μmである(1)~(3)のいずれかに記載のシンチレータパネルである。
(5)前記保護膜が厚み10μm以下の透明樹脂フィルムである(1)~(4)のいずれかに記載のシンチレータパネルである。
(6)(1)~(5)のいずれかに記載のシンチレータパネルと光電変換素子を含む格子状の受光部を有する受光基板とを少なくとも有し、前記シンチレータパネルの前記セルのセルピッチと前記受光部の画素ピッチとが正の整数倍(1、2、3・・n)の関係にあり、かつ、前記セルと前記受光部とが位置合わせされた放射線検出器である。
本発明によれば、シンチレータパネルの蛍光体層中のバインダー樹脂組成物を0.5質量%以下と低くするか、好ましくは含有しない、つまり、バインダーレスとすることにより、バインダー樹脂が使用環境起因で経時劣化することによるシンチレータパネルの輝度低下を抑制できる。
さらに、バインダー樹脂による光の吸収を低減できることから高輝度のシンチレータパネルが提供される。また、蛍光体層を被覆する保護膜を設けることで隔壁により区画されたセル内の蛍光体層から蛍光体粒子が脱落することを防止し、蛍光体層の形状を安定に保つことができる。すなわち、性能低下を抑制したシンチレータパネルおよび放射線検出器が提供される。
本発明のシンチレータパネルと受光基板の配置関係を模式的に表した斜視図である。 本発明のシンチレータパネルと受光基板の構成を模式的に表した平面図と部分拡大図である。 本発明のシンチレータパネルの構成を模式的に示す概略断面図である。 本発明のシンチレータパネルの構成を模式的に示す概略断面図である。 本発明のシンチレータパネルの構成を模式的に示す概略断面図である。 本発明のシンチレータパネルの構成を模式的に示す概略断面図である。 本発明のシンチレータパネルの構成を模式的に示す概略断面図である。 本発明のシンチレータパネルと受光基板を貼り合わせてなる放射線検出器を模式的に表した概略断面図である。 本発明のシンチレータパネルと受光基板を貼り合わせてなる放射線検出器を模式的に表した概略断面図である。
以下、図面を用いて本発明について説明するが、本発明はこの図面に示された態様に限定して解釈されるものではない。
シンチレータパネルは、一般的にX線を可視光線に変換する部材である。放射線検出器は、シンチレータパネルと可視光線をデジタル画像に変換する受光基板等で構成される。シンチレータパネルの発光に用いられる放射線としてはX線、γ線などの電磁放射線とα線、β線、中性子線などの粒子放射線を用いることができるが、なかでもX線が好ましく用いられる。シンチレータパネルは、隔壁によって区画されたセルに蛍光体層を形成する(セル方式と呼ばれる)。セル方式は、隔壁によって可視光の拡がりが抑制されるため、非常に鮮明なX線画像を得ることができるが、連続使用により、シンチレータパネルの発光量の低下が進むと、シンチレータパネルや検出器を定期的に交換する必要がある。
(シンチレータパネル)
図1は、シンチレータパネル1と受光基板2の配置関係を模式的に表した斜視図である。図1(a)は、シンチレータパネル1の発光面側を下向きに、受光基板2の光電変換素子が配置された受光面側を上向きに配して、発光面側と受光面側が対面された状態を示す。そして、図1(b)は、シンチレータパネル1と受光基板2が組み上げられた状態を示す。
シンチレータパネル1は蛍光体層5を少なくとも有し、X線等の入射された放射線のエネルギーを吸収して、波長が300~800nmの範囲の電磁波、すなわち、可視光線を中心に、紫外光から赤外光にわたる範囲の電磁波(光)を放射する。受光基板2はガラス基板などの基材上に光電変換素子が平面的に配列されている。シンチレータパネル1と受光基板2とは接着剤などを介して貼り合わされる。シンチレータパネル1と受光基板2は一般的にはそれぞれ矩形の平板状であり、また、シンチレータパネルの発光面と受光基板に配列された光電変換素子群、すなわち受光面は対向するように貼り合わされる。
図2は、シンチレータパネル1と受光基板2の構成を模式的に表した平面図および部分拡大図である。拡大図に示すとおり、シンチレータパネル1はシート状の基材3上に、その延在する縦横方向に同一ピッチで、隔壁4によって区画されたセルがマトリックス状に形成されており、区画されたセル内には蛍光体層5が配置されている。また、受光基板2はガラス基板6上に、その延在する縦横方向に同一ピッチで、光電変換素子7がマトリックス状に形成されている。図2の拡大図は、それぞれ正面から観察したもので、図1(a)に示すとおり、シンチレータパネル1の各セルの蛍光体層5が形成する発光面側を下向きに、受光基板2の各光電変換素子7が配置された受光面側を上向きに配して、各セル内の蛍光体層5と光電変換素子7を含む各画素が対面された状態に、位置合わせされて組み上げられる。
本発明において、前記隔壁4で区画されたセルのピッチと前記光電変換素子7の画素のピッチは、対向配置時に重なり合う少なくとも2つの方向で等しいか一方が他方の整数倍の関係にある。典型的な例としては、図2に示すとおり、隔壁4で区画されたセルと光電変換素子7は共に矩形であり、かつ、その形状および大きさは同一である。そして、両者は位置ずれすることなく、各セルと光電変換素子は対向した状態に位置合わせされて形成される。なお、位置合わせは直角の頂点または中心により行えばよい。整数倍の関係とは、正の整数倍であり、整数倍となるセルまたは画素の間にある隔壁4またはギャップを加算したピッチで位置合わせが構成されている。
図3~7は、図2の線AB間の断面図の例であり、蛍光体層5と保護膜8の構成を示している。この例によるシンチレータパネル1は平板状の基材3上に隔壁4が形成されている。図示しないが、基材とそれ以外の層を接着層で貼り合わせてシンチレータパネルを構成してもよい。隔壁4と基材の一部により区画された空間でセル構造を形成し、セル内には粒子状の蛍光体からなる蛍光体層5が形成されている。
シンチレータパネル1の発光面側(図3においては下側)には保護膜8が配置された構成である。蛍光体層5は周囲を隔壁4と基材の一部に囲まれているため蛍光体の発光はセルの開口が存在する基材の反対側のみに放射されることとなる。この発光の取り出しが行われ、受光基板の受光面と接する面を発光面側と定義する。
本発明における蛍光体層5は粒子同士を結着するためのバインダー樹脂が極端に少ないか、好ましくは含まれないため蛍光体粒子同士の結着力が弱く、振動や変形によりセル内から脱落しやすい。保護膜8は蛍光体層5の蛍光体粒子が脱落しないようセル内に固定する役割を果たす。ただし、光の取り出し効率の観点から保護膜は透明で可能な限り薄い方が好ましい。ここで、透明とは、光を透過できることをいう。
図3に示すシンチレータパネル1は、蛍光体層5が隔壁4と同じ高さまで形成され、保護膜8は隔壁4を橋渡しするように比較的平面に近い形状で、蛍光体粒子を封止している。図4および図5に示すシンチレータパネル1は、蛍光体層5が隔壁4の高さより低く、保護膜8は蛍光体層5に沿い、隔壁4の突起をカバーするように、蛍光体粒子を封止している。図4と図5の蛍光体層5のセル内での表面形状が異なるが、いずれの場合も隔壁4を含む全域を一面のシートでカバーされた状態である。
図6と図7に示すシンチレータパネル1は、蛍光体層5が隔壁4の高さより低く、保護膜8は蛍光体層5に沿い、隔壁4の突起の上端面は保護膜8がカバーしていない状態で、蛍光体層5の蛍光体粒子を封止している。図6と図7の詳細な構成については後述する。
図8と図9はシンチレータパネル1と受光基板2を貼り合わせた放射線検出器の一例を示した断面図(部分拡大図)である。受光基板2には光電変換素子7が配列されており、X線によって励起され、蛍光体から発せられた光を受けて電荷に変換し、出力部10を通じて電気信号を出力し、X線画像を得ることができる。一方、シンチレータパネル1の隔壁4は、光電変換素子7が構成する画素ピッチと同一ピッチまたは正の整数倍、つまり1、2,3・・・n倍となるピッチ(セルピッチ)で設計されており、受光基板の光電変換素子の画素ピッチと対応させて位置合わせして貼り合わされる。
図8と9は、セルピッチと画素ピッチとが同一ピッチの形態を示す。このように検出面の全面において互いのピッチを対応させることでシンチレータの隔壁で仕切られた画素内で発光した光が隣接する画素に拡散することなく受光基板側に取り出せるため非常に鮮明でボケの少ないX線画像を得ることができる。ここで、隔壁の幅(隔壁の上面部の幅)と光電変換素子間の大きさは必ずしも一致させる必要は無く、隔壁の幅と光電変換素子間の距離は等しいか前者の方が短いことが発光する光の利用効率を高める上では好ましい。
セルピッチは撮像対象に求められる解像度によって決められる。セルピッチが小さくなれば解像度は高められるが、シンチレータパネル全体における発光に寄与しない隔壁の本数が増加し、隔壁の面積割合が増加するため、セルピッチを小さくしすぎると明るさの指標である輝度が低下する。一方、セルピッチが大きすぎると解像度が低下して鮮明な画像が得られにくくなるため、輝度と解像度のバランスを鑑みてセルピッチを決めればよい。一般的には70~800μm程度のセルピッチのものが使われることが多い。
シンチレータパネル1と受光基板2は透明接着剤等からなる接着層9を介して貼り合わせるが、その厚みは可能な限り薄い方が良い。厚いと蛍光体から発せられた光が接着剤を通して画素外に拡散し、画像の鮮明度を損なう場合があるからである。また、画像鮮明度向上のため接着層9はパネルの外周部のみに設けて表示面内はシンチレータパネルと受光基板が接触する構成にしてもよい。
以下に、本発明のシンチレータパネルおよび放射線検出器の各構成部材について説明する。
(基材)
基材3は隔壁4、蛍光体層5などからなるシンチレータパネル1の支持体である。基材に用いられる材料としては、ガラス基板や高分子フィルムを用いることができる。隔壁4には感光性のガラス含有材料を用い、隔壁4のパターンを焼成工程で焼結させて形成する場合は耐熱性のあるガラス基板を用いることが好ましい。ガラス基板は高分子フィルムと比較してX線の吸収率が大きくなるため、ガラス基板を用いる場合は、可能な限り薄い厚みとすることが好ましい。
ガラス基板は、ガラス基板の線膨張係数をαs(K-1)とし、隔壁材料の成分であるガラスの線膨張係数をαg(K-1)とした場合、焼成工程における基材の反りを抑制するため、αsとαgの差を小さくすることが好ましい。例えば、線膨張係数の絶対値|αs-αg|は、200×10-7(K-1)以下であることが好ましく、50×10-7(K-1)以下であることがより好ましい。
基材は、X線吸収率の観点から、樹脂フィルムも好ましく用いられる。この場合、予めガラス基板上に形成した隔壁を剥離して樹脂フィルム上に貼り替えるか、樹脂フィルム上に感光性材料で直接隔壁を形成してもよい。樹脂フィルムを用いる場合、受光基板との寸法差を最小限に抑えるため、温度による寸法変化を考慮し、熱膨張係数の小さい材料が好ましい。熱膨張係数が小さい材料はシンチレータパネルの加工時に乾燥プロセスなどの熱工程を通過させる際にも寸法安定性が優れており、加工しやすい。樹脂フィルムの熱膨張係数は、30×10-6(K-1)以下が好ましい。具体的にはポリエステルフィルム(たとえばPETフィルム)、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。
(隔壁)
隔壁4は受光基板の光電変換素子と対応させて蛍光体を区画する仕切りであり、金属、樹脂、ガラス、セラミックなど様々な材料を用いることができる。
隔壁の幅としては5~150μmが好ましい。幅が5μm以上であることで、強度が向上し、格子状のパターンの欠陥が生じにくくなる。一方で、幅が150μm以下であることで、隔壁により区画された空間、つまりセルに配置可能な蛍光体の量が多くなり、得られるシンチレータパネルの発光輝度が向上する。
隔壁の厚み(図3において、隔壁4の上下方向の高さ)は、蛍光体層の厚みに応じて設計すればよいが、隔壁の高さと蛍光体層の厚みが等しくなるか、隔壁の高さが高いほうが好ましい。また、使用するX線のエネルギー帯により、厚みを最適化すればよい。一般的には低エネルギーのX線(軟X線)を用いる分野では薄く、50~200μm程度、高エネルギーX線を用いる分野になるほどより多くのX線を蛍光体で吸収させるために厚く、200μm~数mm程度の厚みの隔壁が用いられる。
隔壁のアスペクト比(厚み/幅)としては1.0~50.0であることが好ましい。厚みとは隔壁の高さにあたり、幅とは隔壁の上面部の幅にあたる。このアスペクト比が大きい隔壁ほど、隔壁により区画された1画素あたりの空間が広く、より多くの蛍光体を配置することができる。隔壁の加工法としてはエッチング、フォトリソグラフィ、ダイシング、スクリーン印刷、サンドブラストなど材料に適したものを用いればよい。中でも感光性ペースト用いたフォトリソグラフィは大面積を高精度に加工できるため好ましい。隔壁は基材上に直接形成してもよいし、別工程で形成した隔壁のパターンを基材に貼り合わせても構わない。
また、隔壁の表面には画素内の蛍光体の発する可視光を効率よく受光基板側へ反射するために、隔壁の蛍光体層と接する面に反射層を設けることが好ましい。反射層には反射率が高く、X線を透過する材料が用いられる。反射層は金属および/または白色顔料を有することが好ましい。金属としてはAu、Ag、Al、Niなどが用いられ、白色顔料としてはTiO、ZrO、Al、ZnOなどの金属酸化物が好ましく用いられる。
反射層は隔壁で仕切られた画素の内、蛍光体層と接するすべての面に形成されていることが光の取り出し効率を高める上で好ましい。反射層の厚みは使用する材料の持つ反射率を最大限発揮できる範囲で可能な限り薄い方がよい。厚すぎると画素内の蛍光体量が低下する。反射層の形成方法としては、金属の場合は真空蒸着やメッキ法などで成膜できる。白色顔料を用いる場合は顔料をペースト化し、画素内部に真空印刷法やスプレー法などで塗布、乾燥させることで成膜することができる。
(蛍光体層)
上述した隔壁によって区画されたセル内には蛍光体層5を有する。蛍光体層5を構成する蛍光体の材料としては、放射線から可視光への変換率が高い、CsI、GdS、LuS、YS、LaCl、LaBr、LaI、CeBr、CeI、LuSiO又はBa(Br、F)を用いることができる。発光効率を高めるために、蛍光体に賦活剤を添加しても構わない。賦活剤としては、例えば、ナトリウム(Na)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、ナトリウム(Na)、テルビニウム(Tb)、セリウム(Ce)、ユーロピウム(Eu)又はプラセオジム(Pr)が挙げられるが、化学的安定性が高く、かつ発光効率が高いため、GdSにTbを添加した蛍光体が好ましい。各セル内の各蛍光体層5は同じ材料構成である。なお、蛍光体層5は、各セルの各蛍光体層5を示すが、基材3上の各セルの蛍光体層5の全体を表記する場合にも使われる。
本発明における蛍光体の形状としては常温で固体の粒子状が好ましい。セル内に蛍光体を充填する場合、粒子状の蛍光体を溶液中に分散させてペースト状とし、セル内部に塗布、充填、乾燥させて溶媒成分を除去して形成する手法を用いることができるからである。
セル内に蛍光体ペーストを充填する際には、減圧条件下で塗布するか、隔壁上に一面塗布した後に減圧してセル内の泡を除去することで充填できる。充填後に加熱しながら静置する工程、遠心力を加える工程などを経ることで蛍光体粒子のセル内部への沈降を促進させ、緻密な蛍光体層を得ることができる。隔壁から溢れた余剰な蛍光体ペーストは、隔壁の上面部表面に沿って擦り切って除去することにより、隔壁の厚みと同等かそれ以下の蛍光体層5の厚みとすることでき、好ましい。
蛍光体層5が隔壁以上の厚みになると隔壁で蛍光体を完全に区分できなくなり、本来得られるはずの画像の鮮明度が得られにくくなるためである。また、蛍光体粒子の沈降状態を調整することで蛍光体層の厚みを変更することもできる。意図的に沈降しきらない状態で余剰な蛍光体ペーストを除去して溶媒を乾燥させることでセル内の蛍光体層が収縮し、隔壁の厚みより薄くすることもできる。
蛍光体の平均粒子径としては1~30μmが好ましい。ここでいう平均粒子径とは粒度分布における頻度の累積が50%となる粒子径D50の値とする。平均粒子径が1μmを下回ると、蛍光体の発光強度が低くなり画像のコントラストが低下しやすい。平均粒子径が30μmを超えると、セル内に充填した際、突起して画像鮮明度が低下しやすくなり、セルごとの蛍光体充填量にバラツキを生じやすくなる。発光特性と加工性を鑑みて5~20μmの平均粒子径を選択することがより好ましい。
蛍光体層5を構成する蛍光体粒子は、粒子同士が接触して塊りをなしており、粒子と粒子の間にはごく微小は空隙が存在する場合がある。粒子の塊りの観察は難しいが、粒子が脱落することから、粒子同士のつながりは弱いものと考える。
一般的に蛍光体ペーストには蛍光体粒子、溶媒、バインダー樹脂などが含まれる。バインダー樹脂は蛍光体の粒子同士を結着させ、蛍光体層となる膜形状を保持するために添加される。膜形状保持のためには一般的には1~10質量%のバインダー樹脂を含有する場合が多い。一方、本発明のシンチレータの蛍光体層5は、バインダー樹脂を含有しない。すなわち、蛍光体層内に含まれる樹脂が、前記蛍光体層全体を100質量%としたときに、前記樹脂が0.5質量%以下である。
バインダー樹脂を1~10質量%含むと放射線を照射しながらの長期間使用や高温、高湿度環境下での使用など過酷な条件にさらされることにより、バインダー樹脂が劣化とともに着色し、蛍光体から発した光を吸収することで発光効率が低下し、検出器の性能が低下する。これが放射線検出器としての寿命を決定する場合もあり課題であった。本発明ではバインダー樹脂劣化による性能低下を抑制するため、蛍光体層中の樹脂の含有量を0.5質量%以下にすることが重要であり、樹脂を全く含まないことがより好ましい。樹脂を含有しないことで前述のような蛍光体層の発光効率の低下が起こらないことは明らかで、0.5質量%以下とすることで仮に樹脂が着色したとしても発光に与える影響を限りなく低く抑えることができる。
ただし、平板上に本発明の蛍光体層5を形成しても蛍光体粒子の結着が弱く、蛍光体層となる膜の剥がれや崩れが発生しやすく、膜形状を保つことが難しいことがある。隔壁で区画したセル内に形成する場合も振動等で蛍光体層が脱落する場合がある。これを防ぐために後述するような蛍光体層を被覆する保護膜を設けることが必要である。
さらに、バインダー樹脂の含有量を低くするか、含有させないことは、バインダー樹脂自体が持つ光の吸収成分の影響を排除でき、シンチレータパネルの初期輝度向上の効果も得られる。
(保護膜)
保護膜8はシンチレータパネルの発光面側に蛍光体層を被覆するかたちで配置される。なお、図3~図5のシンチレータパネルの保護膜8は隔壁も含み全体に被覆されている。シンチレータパネルの発光面側とは、蛍光体粒子が発する光が取り出される方向で、受光基板と接する側をいう。つまり、基材と基材の上に形成された格子状の隔壁によって区画されたセルにおいて開口する面側が、発光面側となる。言い換えると、蛍光体粒子が光を発し、その光がシンチレータパネルから発光される側の面である。
本発明のシンチレータパネルは、保護膜8が蛍光体層と隔壁表面に密着することで蛍光体粒子の結着が弱い場合でもセルから脱落することを防止できる。
保護膜8は、接着材を塗布したシート状のフィルムを貼り付ける方法、化学蒸着法(CVD)などで形成できるが、CVDの場合、蛍光体粒子の隙間を通り、層内部まで入り込むことから、フィルムを用いることが好ましい。保護膜8には可能な限り薄い透明樹脂を用いることが好ましい。その厚みは10μm以下が好ましく、これより厚くなると保護膜を介して光が隣接画素に漏れ込み、画像鮮明度への影響が大きくなる。薄すぎるとフィルムの破れ、しわが発生しやすく、取り扱いが困難になるため、3~10μmとすることがより好ましい。フィルムを用いる場合、ポリエステルフィルム(たとえばPETフィルム)、ポリプロピレンフィルムなど一般的な透明樹脂フィルムを基材として片面に熱可塑性接着剤等を接着材として塗布したフィルムを用いることができる。
保護膜8と蛍光体層5との貼り合わせには真空熱ラミネーター等を用いて減圧条件下で熱と圧力を加え、蛍光体層の表面に密着させて貼り合わせることができる。
図3に示す例は、隔壁と蛍光体層の厚みを同一にしたシンチレータパネルである。隔壁および蛍光体層のうち発光面側の表面に一様に保護膜が形成されている。図4および図5は蛍光体層の厚みを隔壁の厚み以下にした構成である。蛍光体の充填量を最大にし、シンチレータパネルの輝度を向上させるためには、図3のように隔壁と蛍光体層の厚みを同一にすることが好ましい。一方、粒子径の大きい蛍光体を使用することで蛍光体粒子が隔壁より突起してしまい、シンチレータパネルの画像鮮明度に影響を与える場合は、図4および図5のように予め蛍光体層の厚みを小さくし、隔壁の厚みよりを薄めに形成してもよい。
図3~図5はシンチレータパネルの発光面側の最表層に保護膜8が配置された例である。この場合、保護膜8は蛍光体層と隔壁の上面部を被覆し、保護膜8が最表層に相当する。この構成は保護膜がラミネート工程のみで形成でき、生産効率に優れる。ただ、隔壁上の保護膜の影響で隣接画素への光漏れがわずかながら発生する。これを防止するシンチレータパネルを図6と図7に示す。シンチレータパネルの発光面側の最表面部、すなわち突起の上端面、隔壁の上面部に保護膜8はなく、隔壁が最表部(一部)に配置された例である。
図6において、蛍光体層5の厚みは隔壁4の厚みより小さく、保護膜は蛍光体層5を封止しても、隔壁の上端面よりも低く保たれる。このような構成とすることで、受光基板側とは隔壁の上面部が接することとなり、保護膜8がないため光漏れをさらに抑制できる。加工は保護膜を一面に貼り付けた後、隔壁上の保護膜を研磨して取り除くことで形成できる。
(シンチレータパネルの製造方法)
以下に本発明のシンチレータパネル1の製造方法の一例を記載する。ここでは感光性ガラスペーストを用いたフォトリソグラフィ法で隔壁を形成する場合の例を示す。
隔壁を形成するための基材としては、感光性ガラスペーストに使われる低軟化点ガラス粉末の焼成温度でも耐熱性が必要となる観点から、ガラス基板を用いることが好ましい。ガラス基板の表面に感光性ガラスペーストをスクリーン印刷機やダイコーターなどで一面塗布、乾燥して隔壁層が得られる。隔壁層は基板の表面に均一な厚みで一面に広がった膜状に形成される。隔壁層の厚みがおよそ蛍光体層の厚みとなるため、シンチレータパネルの特性上必要な厚みと焼成収縮による寸法変化を考慮して厚みを決定する。
次に、格子状の隔壁を形成するため、受光基板の光電変換素子の画素ピッチと対応させた露光パターンを用いて、隔壁となる部分を露光する。隔壁層となる部分の感光成分を硬化させ、現像により可溶な部分を洗い流すことで格子状の隔壁層が得られる。露光パターンの幅はおよそ隔壁の幅に相当するため形成可能な範囲で狭くすることが発光効率を高める上で好ましい。次に低軟化点ガラスの軟化温度に合わせた焼成温度で焼成することで隔壁層中の有機成分を焼失させ、ガラス成分を焼結させることで強固な隔壁を得ることができる。焼成による基材と隔壁パターンの収縮を加味して露光パターンの寸法を予め補正しておくこともできる。
その後、スパッタ装置などを用いて金属反射層を隔壁および基材の表面に成膜する。反射層に白色顔料を用いる場合は顔料をペースト化し、真空印刷法やスプレー法などで成膜することができる。
次に、蛍光体粉末を溶液中に分散させた蛍光体ペーストを用い、隔壁で仕切られたセル内に真空印刷法などで蛍光体ペーストを充填し、余剰な蛍光体ペーストをゴムスキージなどで隔壁の上面部表面に沿って擦り切って除去し、溶媒を乾燥させることで蛍光体層を得る。その後、透明フィルムの片面に熱可塑性接着層を設けた保護膜を蛍光体層上に積層し、真空熱ラミネーターなどを用いて貼り合わせることでシンチレータパネル1を得ることができる。
(放射線検出器)
本発明の放射線検出器は、光電変換素子を有する受光基板2と上述したシンチレータパネル1を有する。受光基板2の光電変換素子7の画素ピッチとシンチレータパネル1のセルピッチは対応し、位置合わせされている。受光基板2には、光電変換素子のほかに、制御回路や電源などが組み込まれている。放射線検出器は、被写体を通過したX線の強弱をシンチレータで可視光に変換し、その可視光を光電変換素子で電気信号に変換してX線画像を得ることができる。放射線検出器は、被写体の種類や受光基板の画素、基板サイズに合わせたシンチレータパネルを選択して、受光基板と貼り合わせることが一般的である。
放射線検出器は、隔壁でセルを形成したシンチレータパネルを用いて、受光基板の光電変換素子の画素ピッチと対応させて貼り合わせることで、隣接画素への光漏れが少なく鮮明なX線画像を得ることができる。このためには画素同士を位置ずれ無く対応させることが必要で、精度良く貼り合わせるためには画素と位置関係を対応させたアライメントマーク(図2(b)の+印)を設けて整合する方法や、撮像した画素の位置座標をもとにアライメントする方法などを用いる。
図8と図9は、シンチレータパネルと受光基板を貼り合わせてなる放射線検出器の概略断面図である。図8は、図3のシンチレータパネル1と受光基板を貼り合わせた構成で、図9は図6のシンチレータパネル1と受光基板を貼り合わせた構成である。シンチレータパネル1と受光基板2は、接着層9を介して接合されている。図8の接着層9は保護膜8と接着されており、一方、図9の接着層9は隔壁4と接着されている。
シンチレータパネルと受光基板の接着は光吸収が小さい透明接着剤等で行う。接着層9の厚みは可能な限り薄い方が良い。接着層9が厚いと蛍光体から発せられた光が接着剤を通して画素外に拡散し、画像の鮮明度を損なう場合があるからである。また、接着剤による光の拡散を防ぐために接着剤をパネルの周囲のみに設け、表示領域内はシンチレータパネルと受光基板が直接接するように配置してもよい。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明の要旨はこの例に限定して解釈されるものではない。各ペースト材料の作製に用いた原料は次のとおりである。
(隔壁と蛍光体ペーストの原料の一覧)
・感光性モノマーM-1:トリメチロールプロパントリアクリレート
・感光性モノマーM-2:テトラプロピレングリコールジメタクリレート
・感光性ポリマー:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=40/40/30の質量比からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量43000;酸価100)
・光重合開始剤:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1(IC369;BASF社製)
・重合禁止剤:1,6-ヘキサンジオール-ビス[(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート])
・紫外線吸収剤溶液:スダンIV(東京応化工業株式会社製)のγ-ブチロラクトン0.3質量%溶液
・粘度調整剤:フローノンEC121(共栄社化学株式会社製)
・バインダー樹脂:ブチラール
・溶媒A:γ-ブチロラクトン
・溶媒B:テルピネオール
・低軟化点ガラス粉末:SiO 27質量%、B 31質量%、ZnO 6質量%、LiO 7質量%、MgO 2質量%、CaO 2質量%、BaO 2質量%、Al 23質量%、屈折率(ng):1.56、ガラス軟化温度588℃、線膨張係数70×10-7(K-1)、平均粒子径2.3μm
・蛍光体粉末:3010-54TOR(日亜化学工業株式会社製平均粒子径10μm)。
(隔壁ペーストの作製)
4.0質量%の感光性モノマーM-1、6.0質量%の感光性モノマーM-2、24.0質量%の感光性ポリマー、6.0質量%の光重合開始剤、0.2質量%の重合禁止剤及び12.8質量%の紫外線吸収剤溶液を、38.0質量%の溶媒Aに、温度80℃で加熱溶解した。得られた溶液を冷却した後、9.0質量%の粘度調整剤を添加して、有機溶液1を作製した。60.0質量%の有機溶液1に、40.0質量%の低軟化点ガラス粉末を添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、隔壁ペーストを作製した。
(蛍光体ペースト1の作製)
20.0質量%の溶媒Bに80.0質量%の蛍光体粉末を添加した後、攪拌混合機にて攪拌し、バインダー樹脂を含有しない蛍光体ペースト1を作製した。
(蛍光体ペースト2の作製)
3.0質量%のバインダー樹脂を、20.0質量%の溶媒Bに温度60℃で加熱溶解した。得られた有機溶液を冷却した後、77.0質量%の蛍光体粉末を添加した後、攪拌混合機にて攪拌し、蛍光体ペースト2を作製した。蛍光体ペースト2には樹脂が含有されており、蛍光体ペースト2により作製する蛍光体層には樹脂が含有される。
(基板上への隔壁の作製)
大きさ250mm×250mm、厚み0.5mmのソーダガラス基板上にダイコーターを用いて隔壁ペーストを220×220mmのエリアに一面塗布、乾燥炉にて100℃、180分間乾燥し、隔壁層(厚み400μm)を得た。次に露光装置(波長:h線、露光量:500mJ/cm)にて格子状パターン(露光幅30μm、X方向セルピッチ200μm、Y方向セルピッチ200μm、パターンサイズ204.8×204.8mm)を用いて露光し、アルカリ現像液(0.5%炭酸ナトリウム水溶液)を用いて未露光部分を除去することで隔壁の格子状パターンを得た。
これを焼成炉にて590℃、10分間焼成し、隔壁中の有機成分を焼失させるとともに、隔壁中の低軟化点ガラス粉末を焼結させて強度の高い隔壁パターンを得た。焼成後の隔壁は焼結時の収縮により幅25μm、厚み300μmの形状となった。ガラス基板と基板上に形成した隔壁パターンの表面にスパッタ装置を用いて反射層を形成した。アルミニウムのターゲットを用いて約100nmの厚みとなるよう成膜を行った。隔壁が形成された基板を隔壁基板と呼ぶ。
<実施例1>
シンチレータパネルAの作製は次のとおり行った。真空印刷機を用いて隔壁基板上に蛍光体ペースト1を塗布し、500Paの減圧環境下でセル内に蛍光体ペースト1を充填した。次にオーブンで90℃、15分間加熱し、ペースト中の蛍光体粒子を沈降させた後、隔壁より溢れた余分な蛍光体ペーストをゴムスキージで除去した。その後、オーブンで120℃、60分間乾燥することで溶媒成分をすべて揮発させた。沈降させて緻密となった蛍光体粒子を隔壁の表面で擦り切ることで隔壁と蛍光体層の厚みが同一となるよう作製した。
次に、大きさ210mm×210mm、厚み4μmのPETフィルム上に3.5μmのポリエステル系接着剤(Tg:70℃)を設けた保護膜を蛍光体層上に積層し、真空熱ラミネーターを用いて100℃、1分間加熱して保護膜を接着した。その後、隔壁パターンの外周に沿って210×210mmのサイズとなるよう基材であるガラス基板をカットし、バインダー樹脂を含有しないシンチレータパネルAを作製した。シンチレータパネルAは図3に相当する構成であった。
作製したシンチレータパネルAの輝度特性を測定するため評価用の検出器に組み込み、X線(管電圧70kV)を照射したところ輝度値:100(初期輝度)が得られた。また、X線の長時間照射に対する輝度の変化を見るため、シンチレータパネルAに70kVで1000kGyの線量となるようX線を連続照射した。本評価は加速条件で実施し、通常条件では約10000時間相当の使用に相当するX線を照射した。その後、同様に輝度を評価したところ輝度値は95(X線連続照射後輝度、輝度低下率5%)であった。
放射線検出器Aの作製は、大きさ210mm×210mmのガラス基板上にXY方向ともに200μmピッチで光電変換素子が2元配列された受光基板(画素形状とサイズは隔壁と同一)の一面に熱硬化性接着剤を約20μmの厚みで塗布した。シンチレータパネルAの発光面側が受光基板の光電変換素子と対向するように近接し、おおよその位置合わせを実施した。その後、隔壁で囲まれたセルと光電変換素子の画素が一致するようにカメラで拡大撮像して高精度の位置合わせを行い、貼り合わせた。その後、均一に荷重を加えた状態で固定してオーブンにて80℃、60分間加熱して接着剤を硬化させた後、電気回路、電源等を接続し、互いの画素ピッチが対応し位置を合わせた放射線検出器Aを作製した。放射線検出器Aは図8に相当する構成であった。
放射線検出器Aは、蛍光体層を被覆する保護膜を設けることで蛍光体層から蛍光体粒子が脱落することはなく、蛍光体層の形状を安定に保つことができた。また、検出性能も良好であった。
<実施例2>
シンチレータパネルB-1およびB-2の作製は、次のとおり行った。シンチレータパネルA作製時と同様に蛍光体ペースト1をセル内に充填した。室温で15分間静置後、隔壁より溢れた余分な蛍光体ペーストをゴムスキージで除去した。その後、オーブンで120℃、60分間乾燥することで溶媒成分をすべて揮発させた。実施例1のような蛍光体粒子の沈降を促進させる熱工程を介さずに乾燥させることでセル内に充填した蛍光体ペーストが乾燥で収縮し、隔壁よりも厚みの薄い蛍光体層を形成できた。その後、シンチレータパネルA作製時と同様に保護膜を接着し、隔壁範囲外のガラス基板をカットすることでシンチレータパネルB-1を作製した。シンチレータパネルB-1は図4に相当する構成であった。
シンチレータパネルB-1を割断し、断面形状を確認したところ、隔壁の厚みは300μm、蛍光体層の厚みは270μm、保護膜の厚みは6μmであった。
別途作製したシンチレータパネルB-1について隔壁の上部の保護膜を除去するため研磨装置にてパネル表面の研磨を実施した。研磨には4000番相当の研磨フィルムを用い、研磨後、洗浄することでシンチレータパネルB-2を作製した。シンチレータパネルB-2は図6に相当する構成であった。
シンチレータパネルB-2についてシンチレータパネルAと同様の手法で初期輝度とX線連続照射後の輝度を測定したところ、初期輝度:96、X線連続照射後輝度:91(輝度低下率5%)であった。初期輝度がシンチレータパネルAより低いのは蛍光体の充填量が少ないことに起因している。X線連続照射後の輝度低下率に変化は無かった。
続いて、放射線検出器Bを作製した。作製したシンチレータパネルB-2を放射線検出器Aの場合と同様の工程で受光基板に位置合わせして貼り合わせ、放射線検出器Bを作製した。放射線検出器Bは隔壁上の保護膜を研磨除去しているため光電変換素子と隔壁との間隔が小さく、より光漏れの少ない高鮮明度の検出器となった。
<比較例1>
蛍光体ペースト2を用いてシンチレータパネルAと同様の手法を用いてシンチレータパネルCを作製した。蛍光体層中のバインダー樹脂の含有率は3.75質量%となった。
シンチレータパネルCについてシンチレータパネルAと同様の手法で初期輝度とX線連続照射後の輝度を測定したところ、初期輝度:94、X線連続照射後輝度:75(輝度低下率20%)であった。初期輝度がシンチレータパネルAより低いのは蛍光体層に含有するバインダー樹脂が蛍光体からの発光の一部を吸収し、光取り出し効率が低下したためと考えられる。X線連続照射後は蛍光体層がやや黄色く着色しており、バインダー樹脂の劣化が確認された。輝度低下率が大きいのはこのバインダー樹脂の着色に起因していると考えられる。
<比較例2>
蛍光体ペースト1を用いてシンチレータパネルAと同様の手法を用いてセル内に蛍光体を充填し、シンチレータパネルDを作製した。シンチレータパネルDは蛍光体層を被覆する保護膜は設けなかった。シンチレータパネルDについてシンチレータパネルAと同様の手法で輝度を測定しようとしたが、検出器に搭載する際に蛍光体層の一部がセルから脱落し、評価できなかった。保護膜による蛍光体層の固定効果が無いため振動等で蛍光体粒子が分離し、脱落したものと考えられる。
本発明のシンチレータパネルは、医療診断装置又は非破壊検査機器等に用いられる。
1 シンチレータパネル
2 受光基板
3 基材
4 隔壁
5 蛍光体層
6 ガラス基板
7 光電変換素子
8 保護膜
9 接着層
10 出力部
11 電源部
12 信号取出し線

Claims (6)

  1. 基材と、前記基材の上に形成された格子状の隔壁と、前記基材と隔壁によって区画されたセル内に蛍光体層を有するシンチレータパネルであって、
    前記蛍光体層は、蛍光体粒子と樹脂を少なくとも含み、前記蛍光体層全体を100質量%としたときに、前記蛍光体層内に含まれる樹脂の含有量が0.5質量%以下であり、さらに、前記蛍光体層を被覆する保護膜を有し、前記保護膜をシンチレータパネルから光が発光される面側に備える、シンチレータパネル。
  2. 前記保護膜が、前記蛍光体層と前記隔壁の上面部を被覆し、シンチレータパネルの発光面側の最表層に配置される請求項1に記載のシンチレータパネル。
  3. 前記隔壁が、シンチレータパネルの発光面側の最表部に配置された請求項1に記載のシンチレータパネル。
  4. 前記蛍光体粒子の平均粒子径が1~30μmである請求項1~3のいずれかに記載のシンチレータパネル。
  5. 前記保護膜が厚み10μm以下の透明樹脂フィルムである請求項1~4のいずれかに記載のシンチレータパネル。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載のシンチレータパネルと光電変換素子を含む格子状の受光部を有する受光基板とを少なくとも有し、前記シンチレータパネルの前記セルのセルピッチと前記受光部の画素ピッチとが正の整数倍(1、2、3・・n)の関係にあり、かつ、前記セルと前記受光部とが位置合わせされた放射線検出器。
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