JP2023134943A - 感光性樹脂組成物、硬化物および有機elディスプレイ - Google Patents

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昭典 佐伯
Akinori Saeki
洋平 山本
Yohei Yamamoto
雅仁 西山
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Abstract

【課題】加熱硬化時に発生する残渣を抑制することが可能であり、かつ、高い遮光性と良好な耐薬品性を有する硬化物を得ることが可能である感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。【解決手段】(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)感光剤、(C)シリカ粒子、(D)黒色剤、(F)熱架橋剤および(I)溶剤を含む感光性樹脂組成物であって、該(C)シリカ粒子が、(C-1)表面の少なくとも一部に架橋性官能基を有しているシリカ粒子を含み、該(F)熱架橋剤がウレア骨格、トリアジン骨格、イソシアヌレート骨格および1,1,1-トリフェニルエタン骨格からなる群より選ばれる一種類以上の骨格を含む感光性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、感光性樹脂組成物、硬化物および有機ELディスプレイに関する。
近年、スマートフォン、タブレットPC及びテレビなど、薄型ディスプレイを有する表示装置において、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」)ディスプレイを用いた製品が多く開発されている。
一般に、有機ELディスプレイは、発光素子の光取り出し側に酸化インジウムスズ(以下、「ITO」)などの透明電極を有し、発光素子の光取り出しでない側にマグネシウムと銀の合金などの金属電極を有する。また、発光素子の画素間を分割するため、透明電極と金属電極との層間に画素分割層という絶縁層が形成される。この画素分割層の開口部に画素が形成されるため、画素分割層形成後に開口部に残渣が発生すると画素の発光を妨げることになり、有機ELディスプレイの品質不良となる。従って、画素分割層形成後に開口部に残渣が発生しないことが非常に重要である。
また、有機ELディスプレイの発光素子に加工を施す場合、画素分割層が剥離液などの薬液に晒されることになるため、画素分割層には剥離液に晒されても特性が変化しない、耐薬品性が求められる。
また、有機ELディスプレイは自発光素子であるため、屋外における太陽光などの外光が入射すると、その外光反射によって視認性及びコントラストが低下する。そのため、外光反射を低減する技術が要求される。このような外光反射を低減するため、発光素子の光取り出し側に偏光板、1/4波長板又は反射防止層などを形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、例えば、偏光板を形成した場合、偏光板によって外光反射を低減することが可能である一方、発光素子から出力された光の一部も偏光板によって遮断されてしまうため、有機ELディスプレイの輝度が低下してしまう(例えば、特許文献2参照)。従って、偏光板などを用いずに外光反射を低減するため、画素分割層には高い遮光性が求められる。
画素分割層の遮光性を高めて外光反射を低減する技術として、例えば、黒色剤を含む感光性樹脂組成物を用いて画素分割層を形成する方法が知られている。(例えば、特許文献3、特許文献4参照)
特開2000-292783号公報 特開2006-286225号公報 国際公開第2019/182041号 国際公開第2018/186494号
特許文献3には、黒色顔料を含むネガ型感光性樹脂組成物を用いて画素分割層を形成する技術について記載があるが、筆者らが検討したところ、感光性樹脂組成物を加熱硬化する工程において開口部に残渣が発生しやすいことが分かった。また、加熱硬化して得られる硬化物を剥離液に浸して耐薬品性を確認したところ、膜厚の減少が見られ、耐薬品性が不足していることが分かった。
特許文献4には、黒色染料を含むポジ型感光性樹脂組成物を用いて画素分割層を形成する技術について記載があるが、筆者らが検討したところ、特許文献3に記載の感光性樹脂組成物と同様に加熱硬化時の残渣の発生ならびに耐薬品試験時の膜厚減少が見られた。
このように、加熱硬化時に開口部に残渣を発生させることなく、かつ、高い遮光性と良好な耐薬品性を有する硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物は知られていないのが現状である。
本発明は上記課題に鑑み、加熱硬化時に発生する残渣を抑制することが可能であり、かつ、高い遮光性と良好な耐薬品性を有する硬化物を得ることが可能である感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明の感光性樹脂組成物は以下の構成を有する。すなわち、
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)感光剤、(C)シリカ粒子、(D)黒色剤、(F)熱架橋剤および(I)溶剤を含む感光性樹脂組成物であって、該(C)シリカ粒子が、(C-1)表面の少なくとも一部に架橋性官能基を有するシリカ粒子を含み、該(F)熱架橋剤がウレア骨格、トリアジン骨格、イソシアヌレート骨格および1,1,1-トリフェニルエタン骨格からなる群より選ばれる一種類以上の骨格を含む感光性樹脂組成物、である。
本発明の硬化物は、以下の構成を有する。すなわち、
上記感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物、である。
本発明の有機ELディスプレイは、以下の構成を有する。すなわち、
上記硬化物を備える有機ELディスプレイ、である。
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(C)シリカ粒子が、(C-1)表面の少なくとも一部に架橋性官能基を有するシリカ粒子を含み、該架橋性官能基の数が該(C-1)成分中、0.5~2.5/nmであることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物は、前記架橋性官能基がアクリロイル基またはメタクリロイル基を含み、かつ、(C-1)表面の少なくとも一部に架橋性官能基を有するシリカ粒子の平均一次粒子径が5~30nmであることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物は、前記感光性樹脂組成物に含まれる固形分の総量を100質量%とした場合に、(C)シリカ粒子の含有量が、5~20質量%であることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、(A-1)ポリイミド樹脂、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂からなる群より選択される一種類以上の樹脂を含むことが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物は、(A-1)ポリイミド樹脂、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂からなる群より選択される一種類以上の前記樹脂中のジアミン残基の総量を100mol%とした場合、フェノール性水酸基を有するジアミン残基の含有量が10~100mol%であることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、前記(A-1)ポリイミド樹脂および/またはポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との前記共重合体樹脂を含み、
前記(A-1)ポリイミドおよび/またはポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との前記共重合体樹脂が、脂環構造と芳香族環を共に含む炭素数8~40の酸二無水物残基を含み、
前記(A-1)ポリイミド樹脂および/またはポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との前記共重合体樹脂中の酸二無水物残基の総量を100mol%とした場合、脂環構造と芳香族環を共に含む炭素数8~40の酸二無水物残基の含有量が40~100mol%であることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(F)熱架橋剤が、分子内に3つ以上の熱架橋性官能基を有する化合物を含むことが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(C)シリカ粒子の重量含有量をX、前記(F)熱架橋剤の重量含有量をYとしたときに、X/Yが2~50であることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(B)感光剤が、(B-2)光ラジカル重合開始剤を含み、さらに、(G)ラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。
本発明によれば、加熱硬化時に発生する残渣を抑制することが可能であり、かつ、高い遮光性と良好な耐薬品性を有する硬化物を得ることが可能である感光性樹脂組成物を得ることができる。
発光特性評価に用いた有機ELディスプレイの基板における工程(1)~工程(4)の製造プロセスを平面図で例示する概略図である。
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)感光剤、(C)シリカ粒子、(D)黒色剤、(F)熱架橋剤、(I)溶剤を含む感光性樹脂組成物であって、該(C)シリカ粒子が、(C-1)表面の少なくとも一部に架橋性官能基を有するシリカ粒子を含み、該(F)熱架橋剤がウレア骨格、トリアジン骨格、イソシアヌレート骨格および1,1,1-トリフェニルエタン骨格からなる群より選ばれる一種類以上の骨格を含む。
<(A)アルカリ可溶樹脂>
本発明の感光性樹脂組成物は(A)アルカリ可溶性樹脂を含有する。本発明におけるアルカリ可溶性とは、樹脂を有機溶剤に溶解した溶液をシリコンウエハ上に塗布し、120℃で4分間プリベークを行って膜厚10μm±0.5μmのプリベーク膜を形成し、該プリベーク膜を23±1℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に1分間浸漬した後、純水でリンス処理したときの膜厚減少から求められる溶解速度が50nm/分以上であることをいう。
(A)アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ラジカル重合性モノマーを含む重合体、ポリシロキサン樹脂、カルド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、およびこれらの共重合体などを挙げることができるが、上述のアルカリ可溶性を有すれば特に限定されない。これらのアルカリ可溶性樹脂は2種以上併用してもよい。上述のアルカリ可溶性樹脂の中でも、耐熱性に優れ、高温下におけるアウトガス量が少なく、耐薬品性などの膜物性に優れたものが好ましい。具体的には、(A-1)ポリイミド樹脂、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、およびポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂からなる群より選択される一種類以上の樹脂を含むことが好ましい。本発明の感光性樹脂組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂の総量を100質量%とした場合、(A-1)ポリイミド樹脂、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、およびポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂からなる群より選択される一種類以上の樹脂を合計で50質量%以上含有することが好ましい。
前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、前記(A-1)ポリイミド樹脂および/またはポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との前記共重合体樹脂を含み、前記(A-1)ポリイミドおよび/またはポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との前記共重合体樹脂が、脂環構造と芳香族環を共に含む炭素数8~40の酸二無水物残基を含み、前記(A-1)ポリイミド樹脂および/またはポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との前記共重合体樹脂中の酸二無水物残基の総量を100mol%とした場合、脂環構造と芳香族環を共に含む炭素数8~40の前記酸二無水物残基の含有量が40~100mol%であることが好ましい。これにより、樹脂のi線などの紫外線の透過率が向上するため、感光性樹脂組成物の高感度化が可能となる。加えて、脂環構造と芳香族環をともに含む構造を有することにより、(A-1)ポリイミド樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との前記共重合体樹脂の分子間のパッキングが抑制され、樹脂の溶剤溶解性およびアルカリ溶解性が向上され、現像後残渣の抑制が可能となる。脂環構造と芳香族環を共に含む炭素数8~40の酸二無水物残基の含有量は50mol%~100mol%であることがさらに好ましく、60mol%~100mol%含有することが特に好ましい。
(A-1)ポリイミド樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との前記共重合体樹脂において、脂環構造と芳香族環を共に含む炭素数8~40の酸二無水物残基が式(4)~式(6)のいずれかで表される酸二無水物残基からなる群より選択される1種以上であることが、入手が容易である点、i線などの紫外線透過率を高めることができる点、溶剤溶解性が良好である点から好ましい。
Figure 2023134943000001
式(6)中のXは式(7)~式(9)のいずれかで表される2価の有機基を示す。*は結合点を示す。
Figure 2023134943000002
式(8)中のXは直接結合または酸素原子を示す。*は結合点を示す。
式(4)~式(6)のいずれかで表される酸二無水物残基として、例えば、BzDA(式(10)、ENEOS(株)製)、TDA-100(式(11)、新日本理化(株)製)、PPHT(式(12)、日本精化(株)製)、PSHT(式(13)、日本精化(株)製)、などの酸二無水物の残基が挙げられる。
Figure 2023134943000003
(A-1)ポリイミド樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との前記共重合体樹脂は、前述の酸二無水物残基の他に、下記酸二無水物に由来する酸二無水物残基を有してもよい。
他の酸二無水物としては具体的には、1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシ-2-シクロペンタン酢酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、3,5,6-トリカルボキシ-2-ノルボルナン酢酸二無水物の様な脂環式テトラカルボン酸二無水物の残基、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物の残基や、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物あるいはこれらの化合物の芳香族環をアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物、およびアミド基を有する酸二無水物などの芳香族酸二無水物の残基を挙げることができる。これらは2種以上組み合わせて含有することができる。
前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、(A-1)ポリイミド樹脂、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂からなる群より選択される一種類以上の樹脂を含み、(A-1)ポリイミド樹脂、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂からなる群より選択される一種類以上の前記樹脂中のジアミン残基の総量を100mol%とした場合、フェノール性水酸基を有するジアミン残基の含有量が10~100mol%であることが好ましい。前記の範囲でフェノール性水酸基を有するジアミン残基を有することで、樹脂に適度なアルカリ溶解性を付与することが可能であるため、残渣軽減が可能であり、また、現像後に良好な形状のパターンを得ることができる。(A-1)ポリイミド樹脂、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂に含まれる全ジアミン残基の総量を100mol%とした場合、フェノール性水酸基を有するジアミン残基の含有量が10~100mol%であることが好ましく、30~100mol%であることがさらに好ましく、50~100mol%であることが特に好ましい。
フェノール性水酸基を有するジアミン残基は、分子内に1つ以上のフェノール性水酸基を有するジアミン化合物、またはその誘導体に由来する残基であれば特に限定されないが、式(14)で表されるジアミン残基、および/または式(15)で表されるジアミン残基を含むことが好ましい。
Figure 2023134943000004
は、直接結合、-SO-、-C(CH-、式(16)で表される2価の有機基、または-C(CF-を示す。*は結合点を示す。
Figure 2023134943000005
*は結合点を示す。
式(14)または式(15)で表されるジアミン残基は共にフェノール性の水酸基を有するため、アルカリ現像液に対する溶解性を付与することができ、現像残渣を低減できる。また、式(14)または式(15)で表されるジアミン残基がトリフルオロメチルの構造を含む場合、分子間パッキングが抑制され、溶剤溶解性を向上させることができるため、好ましい。
式(14)または式(15)で表されるジアミン残基は、ジアミンから2つのアミノ基を除いた構造である。式(14)または式(15)で表されるジアミン残基としては、具体的には、2,2-ビス[3-(3-アミノベンズアミド)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(HA)、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどのジアミンの残基が挙げられる。なかでも、顔料分散の安定性、(A-1)ポリイミド樹脂、アルカリ現像液への溶解性の観点から、6FAPおよび/または2,2-ビス[3-(3-アミノベンズアミド)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(HA)の残基を含有することが好ましい。
また、(A-1)ポリイミド樹脂、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂は、前述のジアミン残基に加えて他のジアミン残基を有してもよい。
他のジアミン残基の具体例としては、例えば、脂肪族ジアミン残基が挙げられる。脂肪族ジアミン残基とは芳香族環を有さないジアミンの残基を意味する。脂肪族ジアミン残基としては、アルキレン基や、ポリエチレンエーテル基、ポリオキシプロピレン基、テトラメチレンエーテル基などのアルキレンエーテル基を含む脂肪族アルキルジアミン、脂環式ジアミン、シロキサン構造を有する脂肪族ジアミンなどの残基を挙げることができる。
具体的には、脂肪族アルキレンジアミン残基としては、ポリメチレンジアミンのテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ポリエチレンエーテル基を含有するジアミンのジェファーミンKH-511、ジェファーミンED-600、ジェファーミンED-900、ジェファーミンED-2003、ジェファーミンEDR-148、ジェファーミンEDR-176、ポリオキシプロピレンジアミンのD-200、D-400、D-2000、D-4000、RP-409,RP-2009、テトラメチレンエーテル基を含有するジアミンのRT-1000、HT-1100、アミノ基含有アルキレンエーテルジアミンのHT-1000、HE-1000(以上商品名、HUNTSMAN(株)製)などの残基が挙げられる。脂環式ジアミン残基としては、シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンなどの残基が挙げられる。シロキサン構造を有する脂肪族ジアミン残基としては、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p-アミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどの残基を挙げることができる。耐熱性を低下させない観点、および、顔料分散性を悪化させない観点から、導入する際は、全ジアミン残基100mol%中脂肪族アルキレンジアミン残基が10mol%以下であることが好ましく、5mol%以下であることが更に好ましく、2mol%以下であることが特に好ましい。
また、耐熱性を低下させない範囲でシロキサン構造を有する脂肪族の基を共重合した場合、基板との接着性を向上させることができる。耐熱性を低下させない観点、および、顔料分散性を悪化させない観点から、導入する際は、全ジアミン残基100mol%中10mol%以下であることが好ましく、5mol%以下であることが更に好ましく、2mol%以下であることが特に好ましい。
また、その他の芳香族ジアミン残基としては、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのヒドロキシル基含有ジアミン残基、3-スルホン酸-4,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのスルホン酸含有ジアミン残基、ジメルカプトフェニレンジアミンなどのチオール基含有ジアミン残基、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルなどの芳香族ジアミンの残基や、これらの芳香族環の水素原子の一部を、炭素数1~10のアルキル基やフルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換した化合物などの残基を挙げることができる。これらのジアミン残基は、そのまま、あるいは対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして使用できる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂はジカルボン酸残基とビスアミノフェノール残基を有する。ここでいうジカルボン酸残基とは、ジカルボン酸化合物から2つのカルボキシル基を除いた残基を指し、ビスアミノフェノール残基とは、ビスアミノフェノール化合物から2つのアミノ基と2つのフェノール性水酸基を除いた残基を指す。
ジカルボン酸残基の例としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、トリフェニルジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、2,5-チオフェンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-フルオロテレフタル酸、2-メトキシテレフタル酸、2-フェノキシテレフタル酸などの残基が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ビスアミノフェノール残基の例としては3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン等の残基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(A-1)ポリイミド樹脂、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂は、モノアミン、酸無水物、モノ酸クロリド、モノカルボン酸、モノ活性エステルなどの末端封止剤により末端を封止してもよい。樹脂の末端を末端封止剤により封止することで、樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解速度を好ましい範囲に容易に調整することができる。中でも、フェノール性水酸基や、架橋性基を有する末端封止剤を用いることが好ましい。フェノール性水酸基を有する末端封止剤を用いることで樹脂にアルカリ可溶性が付与されるため残渣軽減が可能となる。また、架橋性基を有する末端封止剤を用いることで、加熱硬化の工程で架橋反応が進行するため、耐薬品性に優れる硬化物を得ることが可能になる。
末端封止剤としてモノアミンを用いる場合、その導入割合は、(A-1)ポリイミド樹脂、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂に含まれる全アミン化合物を100mol%とした場合に、好ましくは1mol%以上、特に好ましくは5mol%以上である。また、モノアミンの導入割合は、(A-1)ポリイミド樹脂、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂に含まれる全アミン化合物を100mol%とした場合に、好ましくは60mol%以下、特に好ましくは50mol%以下である。末端封止剤として酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物またはモノ活性エステル化合物を用いる場合、その導入割合は、(A-1)ポリイミド樹脂、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂に含まれる全アミン化合物を100mol部とした場合に、好ましくは1mol部以上、特に好ましくは5mol部以上である。一方、樹脂の分子量を高く維持する点で、末端封止剤の導入割合は、(A-1)ポリイミド樹脂、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂に含まれる全アミン化合物を100mol部とした場合に、好ましくは100mol部以下、特に好ましくは90mol部以下である。複数の末端封止剤を反応させることにより、複数の異なる末端基を導入してもよい。ここでいう全アミン化合物とは、モノアミン、ジアミン、トリアミンなど、アミノ基を有する化合物の含有量の合計を指す。
モノアミンの具体例のうち、フェノール性水酸基を有するものとして、5-アミノ-8-ヒドロキシキノリン、1-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-4-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、3-アミノ-4,6-ジヒドロキシピリミジン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノールなどが挙げられる。また、光架橋性基を有するものとして2-エチニルアニリン、3-エチニルアニリン、4-エチニルアニリン、2-アミノスチレン、3-アミノスチレン、4-アミノスチレン、その他として、アニリン、1-カルボキシ-7-アミノナフタレン、1-カルボキシ-6-アミノナフタレン、1-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-カルボキシ-7-アミノナフタレン、2-カルボキシ-6-アミノナフタレン、2-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、2-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸などが挙げられる。これらを2種類以上用いてもよい。
酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、またはモノ活性エステル化合物のうち、フェノール性水酸基を有するものとして、3-ヒドロキシフタル酸無水物、3-カルボキシフェノール、4-カルボキシフェノール、1-ヒドロキシ-7-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-6-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-5-カルボキシナフタレンなどが挙げられる。また、光架橋性基を有するものとして無水マレイン酸、ナジック酸無水物、マレイン酸、が挙げられ、その他として無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3-カルボキシチオフェノール、4-カルボキシチオフェノール、1-メルカプト-7-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-6-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-5-カルボキシナフタレン、3-カルボキシベンゼンスルホン酸、4-カルボキシベンゼンスルホン酸、テレフタル酸、フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,5-ジカルボキシナフタレン、1,6-ジカルボキシナフタレン、1,7-ジカルボキシナフタレン、2,6-ジカルボキシナフタレン、無水トリメリット酸、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物などが挙げられる。また、上記モノカルボン酸類について、これらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物を用いても良く、上記ジカルボン酸類の一方のカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物を用いてもよく、モノ酸クロリド化合物とN-ヒドロキシベンゾトリアゾールやN-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物を用いてもよい。これらを2種類以上用いてもよい。
(A-1)ポリイミド樹脂、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算で3,000~100,000が好ましく、より好ましくは、5,000~80,000であり、さらに好ましくは7,000~60,000である。重量平均分子量を上記範囲とすることにより、良好な溶剤溶解性、良好な現像液への溶解性、高い機械強度を全て満たしやすくすることができる。本発明において、重量平均分子量は後述の方法により求められる。
<(A-1)ポリイミド樹脂>
(A-1)ポリイミド樹脂としては、例えば、テトラカルボン酸、対応するテトラカルボン酸二無水物又はテトラカルボン酸ジエステル二塩化物などと、ジアミン、対応するジイソシアネート化合物又はトリメチルシリル化ジアミンなどと、を反応させることによって得られる反応物が挙げられる。また、これらの反応物を加熱又は酸若しくは塩基などを用いた反応により、脱水閉環させてもよい。従って、(A-1)ポリイミド樹脂はテトラカルボン酸及び/又はその誘導体残基と、ジアミン及び/又はその誘導体残基を有する。
(A-1)ポリイミド樹脂は、例えば、式(1)で表される構造単位、式(2)で表される構造単位および式(3)で表される構造単位からなる群より選択される1種以上を有することが好ましい。
Figure 2023134943000006
式(1)、式(2)および式(3)中、Rは酸二無水物残基を示し、Rはジアミン残基を示す。Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20の1価の有機基を示す。*は結合点を示す。
式(1)で表される構造単位は、構造単位中のアミド酸構造またはアミド酸エステル構造の全部が閉環しイミド化した構造単位を示す。式(2)は構造単位中のアミド酸構造またはアミド酸エステル構造の一部が閉環してイミド化し、一部がアミド酸構造またはアミド酸エステル構造となっている構造単位を示す。式(3)は構造単位中のアミド酸構造またはアミド酸エステル構造が閉環せず、全てがアミド酸構造またはアミド酸エステル構造となっている構造単位を示す。
(A-1)ポリイミド樹脂中の、式(1)で表される構造単位、式(2)で表される構造単位および式(3)で表される構造単位の数を、それぞれp、qおよびrとしたとき、p、qおよびrは0以上の整数である。
(A-1)ポリイミド樹脂のイミド環閉環率は好ましくは30%以上であり、より望ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。イミド環閉環率が30%以上であることにより、顔料分散液と混合した際の分散安定性を向上できるとともに、高温下におけるアウトガス量の低減が可能であり、有機EL装置の高信頼性を向上することができるため好ましい。
(A-1)ポリイミド樹脂のイミド環閉環率は、後述の方法により求められる。
式(2)および式(3)中、Rにおける炭素数1~20の一価の有機基としては、炭素数1~20の一価の炭化水素基を挙げることができる。炭素数1~20の一価の炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキル基等が挙げられる。炭素数1~20のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。感光性組成物の残渣の発生を軽減するため、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基またはエチル基の何れかであることが好ましい。
また、(A-1)ポリイミド樹脂は、式(1)で表される構造単位、式(2)で表される構造単位および式(3)で表される構造単位からなる群より選択される1種以上と、式(1)で表される構造単位、式(2)で表される構造単位および式(3)で表される構造単位以外の構造単位とを有する共重合体であってもよい。共重合体とする場合は、後述のポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体とすることが好ましい。
<(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂>
(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂としては、例えば、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸や対応するジカルボン酸クロリドやジカルボン酸活性エステルなどを反応させて得ることができ、ジカルボン酸残基とビスアミノフェノール残基を有する。また、このようにして得た反応物を加熱又は酸、塩基、無水酢酸若しくはカルボジイミド化合物などを用いた反応により、脱水閉環させてもよい。
(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂は、例えば、式(17)で表される構造単位、式(18)で表される構造単位および式(19)で表される構造単位からなる群より選択される1種以上を有することが好ましい。
Figure 2023134943000007
式(17)、式(18)および式(19)中、Rはジカルボン酸残基を示し、Rはビスアミノフェノール残基を示す。ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸化合物から2つのカルボキシル基を除いた構造である。ビスアミノフェノール残基は、ビスアミノフェノール化合物から、2つのアミノ基と2つの水酸基を除いた構造である。
式(17)で表される構造単位は、構造単位中のヒドロキシアミド構造の全部が閉環しオキサゾール化した構造単位を示す。式(18)は構造単位中のヒドロキシアミド構造の一部が閉環してオキサゾール化し、一部がヒドロキシアミド構造となっている構造単位を示す。式(19)は構造単位中のヒドロキシアミド構造が閉環せず、全てがヒドロキシアミド構造となっている構造単位を示す。
(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂中の、式(17)で表される構造単位、式(18)で表される構造単位および式(19)で表される構造単位の数を、それぞれs、tおよびuとしたとき、s、tおよびuは0以上の整数である。
(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂のオキサゾール環閉環率は好ましくは3%以上95%以下であり、より望ましくは5%以上85%以下であり、さらに好ましくは10%以上75%以下である。オキサゾール環閉環率が上記範囲内であることにより、顔料分散液と混合した際の分散安定性を向上できるとともに、耐薬品性に優れる硬化物を得ることが可能である。
(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂のオキサゾール環閉環率は、後述の方法により求められる。
また、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂は、式(17)で表される構造単位、式(18)で表される構造単位および式(19)で表される構造単位からなる群より選択される1種以上と、式(17)で表される構造単位、式(18)で表される構造単位および式(19)で表される構造単位以外の構造単位とを有する共重合体であってもよい。共重合体とする場合は、前述のポリイミドの繰り返し単位との共重合体とすることが好ましい。
<ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂>
ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂は、例えば、上記(A-1)ポリイミド樹脂の原料と、上記(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂の原料を一度に反応させてランダム共重合体として得ることも出来るし、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位を別々に合成した後に各の繰り返し単位を反応させてポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位を有するブロック共重合体として得ることもできる。
ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂は、例えば、ポリイミドの繰り返し単位である、式(1)で表される構造単位、式(2)で表される構造単位および式(3)で表される構造単位からなる群より選択される1種以上と、ポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位である、式(17)で表される構造単位、式(18)で表される構造単位および式(19)で表される構造単位からなる群より選択される1種以上と、を両方有することが好ましい。
(B)感光剤
本発明の感光性樹脂組成物は(B)感光剤を含有する。感光剤としては、(B-1)光酸発生剤や、(B-2)光重合開始剤が挙げられる。(B-1)光酸発生剤を含有することで、光照射部に酸が発生して光照射部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大し、光照射部が溶解するポジ型のレリーフパターンを得ることができる。また、(B-1)光酸発生剤と、後述する(F)熱架橋剤とを含有することで、光照射部に発生した酸がエポキシ化合物や熱架橋剤の架橋反応を促進し、光照射部が不溶化するネガ型のレリーフパターンを得ることができる。また、(B-2)光重合開始剤および(G)ラジカル重合性化合物を含有することで、光照射部に発生した活性ラジカルがラジカル重合性化合物中のエチレン性不飽和結合のラジカル重合を進行させ、光照射部が不溶化するネガ型のレリーフパターンを得ることができる。本発明の感光性樹脂組成物は、(B)感光剤として(B-2)光重合開始剤を含み、ネガ型の感光性を示すものが好ましい。光重合開始剤とは、露光によって結合開裂及び/又は反応してラジカルを発生する化合物をいう。重合開始剤を含むネガ型感光性樹脂組成物は、光照射部において連鎖的にラジカル重合反応が進行するため、ポジ型に比べ高感度することが可能である。従って、後述する(D)黒色剤を含むような光透過率が低い感光性樹脂組成物においても、高い感度を維持することが可能となる。
(B-1)光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。
キノンジアジド化合物としては、ポリヒド口キシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。また、(B-1)光酸発生剤を2種以上含有することが好ましく、高感度な感光性樹脂組成物を得ることができる。
本発明において、キノンジアジドは5-ナフトキノンジアジドスルホニル基、4-ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれも好ましく用いられる。4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のi線領域に吸収を持っており、i線露光に適している。5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のg線領域まで吸収が伸びており、g線露光に適している。本発明においては、露光する波長によって4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を選択することが好ましい。また、同一分子中に4-ナフトキノンジアジドスルホニル基、5-ナフトキノンジアジドスルホニル基を有するナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含有してもよいし、4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含有してもよい。(B-1)光酸発生剤のうち、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩は、露光によって発生した酸成分を適度に安定化させるため好ましい。中でもスルホニウム塩が好ましい。さらに増感剤などを必要に応じて含有することもできる。
(B-2)光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンジルケタール系光重合開始剤、α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、ビイミダゾール系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、芳香族ケトエステル系光重合開始剤、又は安息香酸エステル系光重合開始剤が好ましく、露光時の感度向上の観点から、α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、ビイミダゾール系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、又はベンゾフェノン系光重合開始剤がより好ましく、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、ビイミダゾール系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤がさらに好ましい。
ベンジルケタール系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンなどが挙げられる。
α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、例えば、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オンなどが挙げられる。
α-アミノケトン系光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オンなどが挙げられる。
アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
ビイミダゾール系光重合開始剤としては、例えば、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールなどが挙げられる。
オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、1-フェニルプロパン-1,2-ジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニルブタン-1,2-ジオン-2-(O-メトキシカルボニル)オキシムなどが挙げられる。
アクリジン系光重合開始剤としては、例えば、1,7-ビス(アクリジン-9-イル)-n-ヘプタンなどが挙げられる。
チタノセン系光重合開始剤としては、例えば、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル]チタン(IV)などが挙げられる。
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。
アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノンなどが挙げられる。
芳香族ケトエステル系光重合開始剤としては、例えば、2-フェニル-2-オキシ酢酸メチルなどが挙げられる。
安息香酸エステル系光重合開始剤としては、例えば、4-ジメチルアミノ安息香酸エチルなどが挙げられる。
その他の具体例として、例えば、国際公開第2019/087985号の[0226]~[0237]に記載の光重合開始剤や、国際公開第2019/087985号の[0239]~[0266]に記載のオキシムエステル系光重合開始剤を挙げることができる。
光重合開始剤は2種以上含有してもよい。
本発明において、(B)感光剤の含有量は(A)成分100質量部に対して0.01~50質量部が好ましい。特に、(B)感光剤として(B-1)光酸発生剤を含む場合、高感度化の観点から、(A)成分100質量部に対して0.5~40質量部が特に好ましい。また、(B)感光剤として(B-2)光重合開始剤を含む場合、(A)成分100質量部に対して0.1~20質量部が特に好ましい。0.1質量部以上であれば、光照射により十分なラジカルが発生し、感度が向上する。また、20質量部以下であれば、過度なラジ力ルの発生による光未照射部の硬化がなく、アルカリ現像性が向上する。
(C)シリカ粒子
本発明の感光性樹脂組成物は(C)シリカ粒子を含有する。また、(C)シリカ粒子は、(C-1)表面の少なくとも一部に架橋性官能基を有しているシリカ粒子を含む。ここでいう架橋性官能基とは、熱、酸、塩基、紫外線照射などにより、分子間で架橋構造を形成しうる官能基のことを指し、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、メチロール基、マレイミド基などが挙げられる。シリカ粒子の表面に架橋性官能基を有していることで、露光工程や加熱硬化工程において樹脂とシリカ粒子の間で架橋反応が進行し、得られる硬化物の耐薬品性を向上させることが可能である。また、シリカ粒子を含むことで感光性樹脂組成物の加熱硬化時の流動性をコントロールすることが出来、好ましいテーパー角を有する硬化物を得ることが可能になる。本発明の感光性樹脂組成物に含まれる(C)シリカ粒子の総量を100重量%としたときに、(C-1)表面の少なくとも一部に架橋性官能基を有しているシリカ粒子の含有比率が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物は(C-1)表面の少なくとも一部に架橋性官能基を有しているシリカ粒子を含み、前記架橋性官能基がアクリロイル基またはメタクリロイル基を含み、かつ、(C-1)表面の少なくとも一部に架橋性官能基を有しているシリカ粒子の平均一次粒子径が5~30nmであることが好ましい。
アクリロイル基、メタクリロイル基は露光工程において樹脂と速やかに架橋反応を起こすことが可能であるため、硬化物の耐薬品性の向上が可能である。加えて、露光工程で樹脂とシリカ粒子表面の架橋性基の間で架橋反応が進行することで、現像工程における現像液の浸み込みを抑制することができる。従って、例えば、ネガ型感光性樹脂組成物をハーフトーン加工する際、ハーフトーン部分は架橋反応が十分に進行しないため、パターンの開口寸法が現像時間により変化しやすい(現像時間に対する加工マージンがせまい)課題があるが、上記のようなアクリロイル基またはメタクリロイル基を表面に有するシリカ粒子を有することで、ハーフトーン部への現像液の過度な浸み込みを抑制することができ、現像時間を変化させた時のパターン開口寸法の変化量を小さくすることができる。つまり、ハーフトーン加工する際の現像時間に対する加工マージンを改善することが可能である。
上記効果を十分に発現させるため、シリカ粒子の平均一次粒子径は5~30nmの範囲内であることが好ましい。シリカ粒子の平均一次粒子径は5~30nmの範囲内であることにより、シリカ粒子の単位体積あたりの表面積が大きくなる。表面積が大きいと、シリカ粒子の表面に存在する架橋性基と樹脂の接触確率が上がり、架橋反応の反応性が向上すると考えられる。また、シリカ粒子の平均一次粒子径が5~30nmの範囲内であることにより、現像時にシリカ粒子が現像液に溶け込みやすくなり、現像後の残渣を軽減することが可能となる。
よって、本発明の感光性樹脂組成物は(C-1)表面の少なくとも一部に架橋性官能基を有しているシリカ粒子を含み、前記架橋性官能基がアクリロイル基またはメタクリロイル基を含み、かつ、(C-1)表面の少なくとも一部に架橋性官能基を有しているシリカ粒子の平均一次粒子径が5~30nmであることにより、硬化物の耐薬品性の向上、ハーフトーン加工時の加工マージン改善、現像後残渣の軽減が可能となるため、好ましい。
(C)シリカ粒子の平均一次粒子径は6~28nmであることがより好ましく、8~25nmであることがさらに好ましい。ここでいう平均一次粒子径とは、シリカゾルの300℃乾燥粉末の比表面積を比表面積測定装置モノソーブ(登録商標)MS-16(ユアサアイオニクス(株)製)を用いて測定した、窒素吸着法粒子径のことを指す。
本発明の感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物に含まれる固形分の総量を100質量%とした場合に、(C)シリカ粒子の含有量が、5~20質量%であることが好ましく、7~18質量%であることが特に好ましい。上記範囲で(C)シリカ粒子を含むことで、残渣を悪化させることなく、硬化物のテーパー角を好ましい範囲にコントロールできる。また、ネガ型感光性樹脂組成物においては、ハーフトーン加工する際の現像時間に対する加工マージンの改善が可能である。ここでいう固形分の総量とは、感光性樹脂組成物に含まれる溶剤以外の全ての成分の重量の合計のことであり、シリカ粒子の含有量とは、シリカゾルを坩堝に取り、150℃で乾燥後、得られたゲルを大気雰囲気下、1,000℃で焼成し、焼成残分を計量して算出した値のことを指す。
(C-1)表面の少なくとも一部に架橋性官能基を有しているシリカ粒子は、例えば、架橋性基を有するシランカップリング剤で表面改質されたシリカ粒子が挙げられる。シリカ粒子が架橋性基を有するシランカップリング剤で表面処理されている場合、
前記(C)シリカ粒子が、(C-1)表面の少なくとも一部に架橋性官能基を有するシリカ粒子を含み、該架橋性官能基の数が該(C-1)成分中、0.5~2.5/nmであることが好ましく、0.8~2.2/nmであることがより好ましい。架橋性官能基の数が前記範囲内であることにより、樹脂組成物中においても分散安定性を保つことができると共に、シリカ粒子表面の架橋線官能基が樹脂等の成分と密に架橋構造を形成することができ、硬化物の耐薬品性を高めることが可能である。
架橋性官能基の数は下記手法により測定することが可能である。
〔架橋性官能基の数の測定〕
(1)30ccの遠心分離管にシリカゾル3mLを入れ、トルエン20mLを添加する。
(2)遠心分離機(5000rpm×30分)にかけた後、上澄み液を除去する。
(3)アセトン4mLを添加してゲルを再溶解させた後、トルエン10mL、ヘキサン4mLを添加し、遠心分離(5000rpm×30分)を行う。
(4)更に(2)~(3)を再度行う。
(5)得られたゲルを60℃で真空乾燥後、得られた粉末を乳鉢で粉砕し、150℃で2時間乾燥する。
上記で得られた粉末について、元素分析装置を用いて炭素含有量を測定する。
さらに、上記で得られた粉末0.2gを0.05N水酸化ナトリウム水溶液10mLと混合・溶解させ、ガスクロマトグラフィー測定することで、表面に結合したアルコキシ基量を測定する。ガスクロマトグラフィーから得られたアルコキシ基量と吸着した溶媒に相当する炭素含有量を、上記元素分析で得られた粉末の炭素含有量から差し引く事で、不飽和結合基含有有機基の数を定量する。
(D)黒色剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(D)黒色剤を含む。黒色剤とは、可視光線の波長の光を吸収することで、黒色に着色する化合物をいう。有機ELディスプレイは自発光素子を有するため、屋外における太陽光などの外光が入射すると、その外光反射によって視認性及びコントラストが低下する場合がある。そのため、外光反射を低減する技術が要求される場合がある。そこで、(D)黒色剤を含有させることで、感光性樹脂組成物の硬化物が黒色化するため、感光性樹脂組成物の硬化物を透過する光、又は、感光性樹脂組成物の硬化物から反射する光を遮光する、遮光性を向上させることができる。このため、画素分割層、電極絶縁層、配線絶縁層、層間絶縁層、薄膜トランジスタ(以下、「TFT」)平坦化層、電極平坦化層、配線平坦化層、TFT保護層、電極保護層、配線保護層、ゲート絶縁層、カラーフィルタ、ブラックマトリックス又はブラックカラムスペーサーなどの用途に好適である。特に、有機ELディスプレイの遮光性を有する画素分割層、電極絶縁層、配線絶縁層、層間絶縁層、TFT平坦化層、電極平坦化層、配線平坦化層、TFT保護層、電極保護層、配線保護層、又はゲート絶縁層として好ましく、遮光性を有する画素分割層、層間絶縁層、TFT平坦化層、又はTFT保護層など、外光反射の抑制によって高コントラスト化が要求される用途に好適である。
黒色剤としては、遮光性の観点から、可視光線の全波長の光を吸収し、黒色に着色する化合物が好ましい。また、赤、橙、黄、緑、青、又は紫色の着色剤から選ばれる二色以上の着色剤の混合物も好ましい。これらの着色剤を二色以上組み合わせることで、擬似的に黒色に着色することができ、遮光性を向上させることができる。
本発明の感光性樹脂組成物としては、上述の黒色剤が、黒色顔料、黒色染料及び二色以上の染料混合物から選ばれる一種類以上を含有することが好ましく、遮光性の観点から、黒色顔料を含有することがより好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物としては、上述の黒色顔料が、黒色有機顔料、黒色無機顔料、及び二色以上の着色顔料混合物から選ばれる一種類以上であることが好ましい。中でも、黒色有機顔料は、一般的な無機顔料と比較して、絶縁性及び低誘電性に優れるため、黒色有機顔料を含有させることで、膜の抵抗値を向上することができるため好ましい。特に、有機ELディスプレイの画素分割層等の絶縁層、TFT平坦化層、又はTFT保護層などとして用いた場合に、発光不良等を抑制し、信頼性を向上させることができるため好ましい。
黒色有機顔料としては、例えば、アントラキノン系黒色顔料、ベンゾフラノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、アニリン系黒色顔料、アゾ系黒色顔料、ジオキサジン系黒色顔料、アゾメチン系黒色顔料、又はカーボンブラックが挙げられる。中でも、本発明の感光性樹脂組成物としては、露光時の感度向上、現像後のパターン形状制御による低テーパー化、および熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化抑制の観点から、上述した黒色有機顔料が、ベンゾフラノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、及びアゾ系黒色顔料からなる群より選ばれる一種類以上を含むことが好ましく、ベンゾフラノン系黒色顔料を含むことがより好ましい。
ベンゾフラノン系黒色顔料とは、分子中にベンゾフラン-2(3H)-オン構造又はベンゾフラン-3(2H)-オン構造を有する、可視光線の波長の光を吸収することで黒色に着色する化合物をいう。ベンゾフラノン系黒色顔料の具体例としては、例えば、国際公開第2019/087985号の[0324]~[0329]に記載のものなどが挙げられる。
ペリレン系黒色顔料とは、分子中にペリレン構造を有する、可視光線の波長の光を吸収することで黒色に着色する化合物をいう。ペリレン系黒色顔料の具体例としては、例えば、国際公開第2019/087985号の[0331]~[0333]に記載のものなどが挙げられる。
アゾ系黒色顔料とは、分子内にアゾ基を有する、可視光線の波長の光を吸収することで黒色に着色する化合物をいう。ペリレン系黒色顔料の具体例としては、例えば、国際公開第2019/087985号の[0335]~[0337]に記載のものなどが挙げられる。
黒色無機顔料とは、可視光線の波長の光を吸収することで、黒色に着色する無機顔料をいう。黒色無機顔料を含有させることで、樹脂組成物の膜が黒色化するとともに、隠蔽性に優れるため、樹脂組成物の膜の遮光性を向上させることができる。さらに、無機物であり、耐熱性及び耐候性により優れるため、樹脂組成物の膜の耐熱性及び耐候性を向上させることができる。
黒色無機顔料としては、例えば、グラファイト若しくは銀スズ合金、又は、チタン、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、ジルコニウム、若しくは銀などの金属における、微粒子、酸化物、複合酸化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、窒化物、炭化物、若しくは酸窒化物が挙げられる。遮光性向上の観点から、黒色無機顔料としては、ジルコニウム、チタン若しくは銀の微粒子、酸化物、複合酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、又は酸窒化物が好ましく、ジルコニウム、チタンの窒化物又は酸窒化物がより好ましい。
二色以上の顔料混合物とは、赤、橙、黄、緑、青、又は紫色の顔料から選ばれる二色以上の顔料を組み合わせることで、擬似的に黒色に着色する、顔料混合物をいう。二色以上の顔料混合物を含有させることで、樹脂組成物の膜が黒色化するとともに、隠蔽性に優れるため、樹脂組成物の膜の遮光性を向上させることができる。さらに、二色以上の顔料を混合するため、所望の特定波長の光を透過又は遮光するなど、樹脂組成物の膜の透過スペクトル又は吸収スペクトルを調整し、調色性を向上させることができる。赤色顔料、橙色顔料、黄色顔料、緑色顔料、青色顔料、及び紫色顔料としては、公知のものを用いることができる。
溶剤を除く、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分中に占める顔料の含有比率は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましい。含有比率が5質量%以上であると、遮光性及び調色性を向上させることができる。一方、有機黒色顔料の含有比率は、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、55質量%以下がさらにより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。含有比率が70質量%以下であると、露光時の感度を向上させることができる。
顔料の数平均粒子径は、1~1,000nmが好ましく、5~500nmがより好ましく、10~200nmがさらに好ましい。顔料の数平均粒子径が1~1,000nmであると、樹脂組成物の膜の遮光性及び顔料の分散安定性を向上させることができる。ここで、顔料の数平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置(N4-PLUS;べックマン・コールター(株)製)又はゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(ゼータサイザーナノZS;シスメックス(株)製)を用いて、溶液中の顔料のブラウン運動によるレーザー散乱を測定する(動的光散乱法)ことで求めることができる。また、樹脂組成物から得られる硬化膜中の顔料の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」)及び透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」)を用いて測定することで求めることができる。拡大倍率を50,000~200,000倍として、顔料の数平均粒子径を直接測定する。顔料が真球の場合、真球の直径を測定し、数平均粒子径とする。顔料が真球でない場合、最も長い径(以下、「長軸径」)及び長軸径と直交する方向において最も長い径(以下、「短軸径」)を測定し、長軸径と短軸径を平均した、二軸平均径を数平均粒子径とする。
また、本発明の感光性樹脂組成物としては、前記黒色有機顔料が、さらに、被覆層を含有することが好ましい。被覆層とは、例えば、シランカップリング剤による表面処理、ケイ酸塩による表面処理、金属アルコキシドによる表面処理又は樹脂による被覆処理などの処理することで形成される、顔料表面を被覆する層をいう。
被覆層を含有させることで、前記黒色有機顔料の粒子表面を酸性化、塩基性化、親水性化又は疎水性化させるなど、粒子の表面状態を改質することができ、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性、分散安定性又は耐熱性などを向上させることができる。それにより、顔料由来の現像残渣発生を抑制することができる。また、現像時のサイドエッチングが抑制され、現像後に低テーパー形状のパターンを形成することができ、さらに、熱硬化時におけるパターン裾のリフローが抑制されることで、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅の変化を抑制できる。加えて、現像後のパターン形状制御による、低テーパー形状のパターン形成が可能となることから、ハーフトーン特性を向上させることができる。また、粒子表面に絶縁性の被覆層を形成させることで、硬化膜の絶縁性を向上させ、リーク電流の低減などにより、ディスプレイの信頼性などを向上させることができる。
黒色有機顔料として、特にベンゾフラノン系黒色顔料を含有させる場合、ベンゾフラノン系黒色顔料に、被覆層を含有させることで、前記顔料の耐アルカリ性を向上させることができ、前記顔料由来の現像残渣発生を抑制することができる。
前記黒色有機顔料に対する、被覆層による平均被覆率は、50%以上が好ましく、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。被覆層による平均被覆率が、80%以上であると、現像時の残渣発生を抑制することができる。
前記黒色有機顔料に対する、被覆層による平均被覆率は、透過型電子顕微鏡(H9500;(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧300kVの条件下、拡大倍率を50,000~200,000倍として断面を観察し、無作為に選択した黒色顔料の粒子100個について、下記式により、各黒色顔料の被覆率M(%)を求め、その数平均値を算出することにより、平均被覆率N(%)を求めることができる。
被覆率M(%)={L1/(L1+L2)}×100
L1:粒子の外周のうち、被覆層により覆われた部位の合計長さ(nm)
L2:粒子の外周のうち、被覆層により覆われていない部位(界面と埋め込み樹脂が直接接する部位)の合計長さ(nm)
L1+L2:粒子の外周長さ(nm)。
(E)分散剤
本発明の感光性樹脂組成物は、特に黒色剤として黒色顔料を含む場合、分散剤を含むことが好ましい。(E)分散剤とは、顔料の表面と相互作用する表面親和性基と、顔料の分散安定性を向上させる分散安定化構造とを有する化合物をいう。(E)分散剤の分散安定化構造としては、ポリマー鎖及び/又は静電荷を有する置換基などが挙げられる。表面親和性基を有する分散剤としては、例えば、塩基性基のみを有する分散剤、塩基性基及び酸性基を有する分散剤、酸性基のみを有する分散剤、又は、塩基性基及び酸性基のいずれも有しない分散剤が挙げられる。顔料の粒子の分散安定性の向上の観点から、塩基性基のみを有する分散剤と、塩基性基及び酸性基を有する分散剤とが好ましい。また、表面親和性基である塩基性基及び/又は酸性基が、酸及び/又は塩基と塩形成した構造を有することも好ましい。
分散剤が有する塩基性基又は塩基性基が塩形成した構造としては、三級アミノ基、四級アンモニウム塩構造、又は、ピロリジン骨格、ピロール骨格、イミダゾール骨格、ピラゾール骨格、トリアゾール骨格、テトラゾール骨格、イミダゾリン骨格、オキサゾール骨格、イソオキサゾール骨格、オキサゾリン骨格、イソオキサゾリン骨格、チアゾール骨格、イソチアゾール骨格、チアゾリン骨格、イソチアゾリン骨格、チアジン骨格、ピペリジン骨格、ピペラジン骨格、モルホリン骨格、ピリジン骨格、ピリダジン骨格、ピリミジン骨格、ピラジン骨格、トリアジン骨格、イソシアヌル酸骨格、イミダゾリジノン骨格、プロピレン尿素骨格、ブチレン尿素骨格、ヒダントイン骨格、バルビツール酸骨格、アロキサン骨格若しくはグリコールウリル骨格などの含窒素環骨格が挙げられる。
分散安定性向上及び現像後の解像度向上の観点から、塩基性基又は塩基性基が塩形成した構造としては、三級アミノ基、四級アンモニウム塩構造、又は、ピロール骨格、イミダゾール骨格、ピラゾール骨格、ピリジン骨格、ピリダジン骨格、ピリミジン骨格、ピラジン骨格、トリアジン骨格、イソシアヌル酸骨格、イミダゾリジノン骨格、プロピレン尿素骨格、ブチレン尿素骨格、ヒダントイン骨格、バルビツール酸骨格、アロキサン骨格若しくはグリコールウリル骨格などの含窒素環骨格が好ましい。
塩基性基のみを有する分散剤としては、例えば、“DISPERBYK”(登録商標)-108、同-160、同-167、同-182、同-2000、若しくは同-2164、“BYK”(登録商標)-9075、同-LP-N6919、若しくは同-LP-N21116(以上、いずれもビックケミー・ジャパン社製)、“EFKA”(登録商標) 4015、同4050、同4080、同4300、同4400、若しくは同4800(以上、いずれもBASF社製)、“アジスパー”(登録商標) PB711(味の素ファインテクノ(株)製)、又は“SOLSPERSE”(登録商標) 13240、同20000、若しくは同71000(以上、いずれもLubrizol社製)が挙げられる。
塩基性基及び酸性基を有する分散剤としては、例えば、“ANTI-TERRA”(登録商標)-U100若しくは同-204、“DISPERBYK”(登録商標)-106、同-140、同-145、同-180、同-191、同-2001、若しくは同-2020、“BYK”(登録商標)-9076(ビックケミー・ジャパン(株)製)、“アジスパー”(登録商標) PB821若しくは同PB881(以上、いずれも味の素ファインテクノ(株)製)、又は“SOLSPERSE”(登録商標) 9000、同13650、同24000、同33000、同37500、同39000、同56000、若しくは同76500(以上、いずれもLubrizol社製)が挙げられる。
酸性基のみを有する分散剤としては、例えば、“DISPERBYK”(登録商標)-102、同-118、同-170、若しくは同-2096、“BYK”(登録商標)-P104、若しくは同-220S(以上、いずれもビックケミー・ジャパン(株)製)、又は“SOLSPERSE”(登録商標) 3000、同16000、同21000、同36000、若しくは同55000(以上、いずれもLubrizol社製)が挙げられる。
塩基性基及び酸性基のいずれも有しない分散剤としては、例えば、“DISPERBYK”(登録商標)-103、同-192、同-2152、若しくは同-2200(以上、いずれもビックケミー・ジャパン(株)製)、又は“SOLSPERSE”(登録商標) 27000、同54000、若しくは同X300(以上、いずれもLubrizol社製)が挙げられる。
分散剤のアミン価としては、5mgKOH/g以上が好ましく、8mgKOH/g以上がより好ましく、10mgKOH/g以上がさらに好ましい。アミン価が5mgKOH/g以上であると、顔料の分散安定性を向上させることができる。一方、アミン価としては、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましく、100mgKOH/g以下がさらに好ましい。アミン価が150mgKOH/g以下であると、樹脂組成物の保管安定性を向上させることができる。
ここでいうアミン価とは、分散剤1g当たりと反応する酸と当量の水酸化カリウムの重量をいい、単位はmgKOH/gである。分散剤1gを酸で中和させた後、水酸化カリウム水溶液で滴定することで求めることができる。アミン価の値から、アミノ基などの塩基性基1mol当たりの樹脂重量であるアミン当量(単位はg/mol)を算出することができ、分散剤中のアミノ基などの塩基性基の数を求めることができる。
分散剤の酸価としては、5mgKOH/g以上が好ましく、8mgKOH/g以上がより好ましく、10mgKOH/g以上がさらに好ましい。酸価が5mgKOH/g以上であると、顔料の分散安定性を向上させることができる。一方、酸価としては、200mgKOH/g以下が好ましく、170mgKOH/g以下がより好ましく、150mgKOH/g以下がさらに好ましい。酸価が200mgKOH/g以下であると、樹脂組成物の保管安定性を向上させることができる。
ここでいう酸価とは、分散剤1g当たりと反応する水酸化カリウムの重量をいい、単位はmgKOH/gである。分散剤1gを水酸化カリウム水溶液で滴定することで求めることができる。酸価の値から、酸性基1mol当たりの樹脂重量である酸当量(単位はg/mol)を算出することができ、分散剤中の酸性基の数を求めることができる。
本発明の感光性樹脂組成物が顔料及び/又は染料として分散染料を含有する場合、本発明の感光性樹脂組成物に占める分散剤の含有比率は、顔料及び/又は分散染料と分散剤との合計を100質量%とした場合において、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。含有比率が1質量%以上であると顔料及び/又は分散染料の分散安定性を向上させることができ、現像後の解像度を向上させることができる。一方、分散剤の含有比率は、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。含有比率が60質量%以下であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
(F)熱架橋剤
本発明の感光性樹脂組成物は架橋剤を含む。架橋剤とは、樹脂と結合可能な架橋性基を有する化合物をいう。架橋剤を含有させることで、硬化物の硬度及び耐薬品性を向上させることができる。これは、架橋剤により、感光性樹脂組成物の硬化物に架橋構造を導入することができ、架橋密度が向上するためと推測される。また、架橋剤を含有させることで、熱硬化後の開口部残渣を抑制することができる。これは、(F)熱架橋剤によってポリマー間に架橋構造が形成されることで、ポリマーが分解して昇華し、昇華物がパターン開口部に付着して残渣になることを抑制できるためと考えられる。
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる(F)熱架橋剤は、ウレア骨格、トリアジン骨格、イソシアヌレート骨格および1,1,1-トリフェニルエタン骨格からなる群より選ばれる一種類以上の骨格を含む。これらの骨格を含む熱架橋剤を用いることで、耐熱性が高いため加熱時に分解しづらく、耐薬品性の高い硬化物を得ることが可能となる。また、加熱硬化後に発生する残渣の抑制も可能である。
また、熱架橋性官能基としては、アルコキシメチル基、メチロール基、エポキシ基、又はオキセタニル基などの、加熱時に架橋構造を形成しうる熱架橋性官能基を、分子内に3つ以上有する化合物が好ましい。分子内に熱架橋性官能基を3つ以上有することで、加熱硬化時において速やかに架橋反応が進行するため、加熱硬化時に発生する開口部の残渣を軽減することが可能である。さらに、架橋密度を高めることが可能であるため、硬化物の耐薬品性を高めることが可能である。
(F)熱架橋剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.5~50質量部が好ましい。含有量が0.5質量部以上であると、硬化物の硬度及び耐薬品性を向上させることができるとともに、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。また、含有量が50質量部以下であると、硬化物の硬度及び耐薬品性を向上させることができるとともに、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。
前記(C)シリカ粒子の重量含有量をX、前記(F)熱架橋剤の重量含有量をYとしたときに、X/Yが2~50であることが好ましく、3~40であることがより好ましく、5~35であることが特に好ましい。ここでいうシリカ粒子の重量含有量は、シリカゾルを坩堝に取り、150℃で乾燥後、得られたゲルを大気雰囲気下、1000℃で焼成し、焼成残分を計量して算出した値のことを指す。シリカ粒子の重量含有量と熱架橋剤の重量含有量の比X/Yが上記範囲内であることにより、加熱硬化時に発生する開口部の残渣を軽減可能であると共に、得られる硬化膜の耐薬品性を高めることが出来るため好ましい。
上記の効果が得られる推定メカニズムを以下に記載する。シリカ粒子は加熱時に分解することがないため、加熱硬化後に残渣を増加させる懸念が低い一方で、シリカ粒子表面に存在する架橋性基はシリカ粒子に固着しているため分子の運動性が低く、分子間で架橋反応がやや起こりにくく、シリカ粒子だけでは硬化物の耐薬品性を向上させるのがやや難しいと推測される。一方で、低分子の熱架橋剤は運動性が高く、分子間で架橋反応を進行させやすいため耐薬品性を向上させやすい利点がある一方で、加熱硬化時に架橋反応が進行する前に昇華して加熱後残渣になる可能性がある。従って、シリカ粒子と熱架橋剤を好ましい比率で用いることにより、両方の成分の長所を引き出すことが可能となり、加熱硬化後残渣と耐薬品が共に優れる硬化物を得ることができるようになると推測される。
(G)ラジカル重合性化合物
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに(G)ラジカル重合性化合物を含み、(B)感光剤が(B-2)光重合開始剤を含むことが好ましい。かかる構成を採ることにより、上述のとおり、光照射部に発生した活性ラジカルがラジカル重合性化合物中のエチレン性不飽和結合のラジカル重合を進行させ、光照射部が不溶化するネガ型のレリーフパターンを得ることができる。その結果、感光性樹脂組成物は、ネガ型感光性樹脂組成物となる。
ラジカル重合性化合物を含有させることで、露光時のUV硬化が促進されて、露光時の感度を向上させることができる。加えて、熱硬化後の架橋密度が向上し、硬化膜の硬度を向上させることができる。
ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合の進行しやすい、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。露光時の感度向上及び硬化膜の硬度向上の観点から、(メタ)アクリロイル基を分子中に2つ以上有する化合物がより好ましい。ラジカル重合性化合物の二重結合当量としては、露光時の感度向上及び低テーパー形状のパターン形成の観点から、80~800g/molが好ましい。ラジカル重合性化合物の例として、例えば、国際公開第2019/087985号の[0192]、[0199]、[0200]、[0211]、[0212]、[0220]に記載のものなどが挙げられる。
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占めるラジカル重合性化合物の含有量は、アルカリ可溶性樹脂及びラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましく、30質量部以上が特に好ましい。含有量が15質量部以上であると、露光時の感度を向上できるとともに、低テーパーのパターン形状の硬化膜を得ることができる。一方、ラジカル重合性化合物の含有量は、85質量部以下が好ましく、75質量部以下がより好ましく、65質量部以下がさらに好ましい。含有量が85質量部以下であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができるとともに、低テーパーのパターン形状を得ることができる。
(H)溶解促進剤
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに(H)溶解促進剤を含み、(B)感光剤が(B-1)光酸発生剤を含む、ポジ型感光性樹脂組成物としても良い。溶解促進剤性は、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を補い、ポジ型感光性樹脂組成物において、感度を向上させることができる。溶解促進剤はフェノール性水酸基を有する化合物が好ましく、例えば、Bis-z、BisOC-Z、BisOPP-Z、BisP-CP、Bis26X-Z、BisOTBP-Z、BisOCHP-Z、BisOCR-CP、BisP-MZ、BisP-EZ、Bis26X-CP、BisP-Pz、BisP-IPZ、BisCRIPZ、BisOCP-IPZ、BisOIPP-CP、Bis26X-IPZ、BisOTBP-CP、TekP4HBPA(テトラキスP-DO-BPA)、TrisPHAP、TrisP-PA、TrisP-PHBA、TrisP-SA、TrisOCRPA、(商品名、本州化学工業(株)製)、BIR-OC、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-PCHP、BIP-BIOCF、4PC、BIR-BIPC-F、TEP-BIP-A(商品名、旭有機材工業(株)製)、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2,4-ジヒドロキシキノリン、2,6-ジヒドロキシキノリン、2,3-ジヒドロキシキノキサリン、アントラセン-1,2,10-トリオール、アントラセン-1,8,9-トリオール、8-キノリノールなどのフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられる。
(H)溶解促進剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して1~40質量部が好ましい。
(I)溶剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(I)溶剤を含有する。溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プ口ピレングリコールモノメチルエーテル、プ口ピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルなどのエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテ-卜、プ口ピレングリコールモノメチルエーテルアセテ一卜、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのエステル類、エタノール、イソプ口パノール、ブタノール、ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、シク口ペンタノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、N-メチル-2-ピ口リドン、γ-ブチ口ラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセ卜アミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどの極性の非プロトン性溶媒、卜ルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。(I)溶剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上であり、また、好ましくは2,000質量部以下、より好ましくは1,500質量部以下である。
(J)その他の添加材
本発明の感光性樹脂組成物は上記以外のその他の添加材を含んでいてもよい。(J)その他の添加材として、例えば、連鎖移動剤、増感剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、界面活性剤などが挙げられる。以下、これらの添加材について説明する。
<連鎖移動剤>本発明の感光性樹脂組成物としては、さらに、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤とは、露光時のラジカル重合により得られるポリマー鎖の、ポリマー生長末端からラジカルを受け取り、他のポリマー鎖へのラジカル移動を介することが可能な化合物をいう。
連鎖移動剤としては、多官能チオール化合物を含有することが好ましい。多官能チオール化合物を含有させることで、露光時の感度を向上できる。これは、露光によって発生したラジカルが、他のポリマー鎖へラジカル移動することで、膜の深部にまでラジカル架橋をするためであると推測される。特に、例えば、樹脂組成物が上述した着色剤として、黒色剤を含有する場合、露光による光が黒色剤によって吸収されるため、膜の深部まで光が到達しない場合がある。一方、多官能チオール化合物を含有する場合、ラジカル移動によって、膜の深部にまでラジカル架橋をするため、露光時の感度を向上させることができる。
多官能チオール化合物としては、例えば、β-メルカプトプロピオン酸、β-メルカプトプロピオン酸メチル、β-メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル、β-メルカプトプロピオン酸ステアリル、β-メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、β-メルカプトブタン酸、β-メルカプトブタン酸メチル、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸n-オクチル、チオグリコール酸メトキシブチル、1,4-ビス(3-メルカプトブタノイルオキシ)ブタン、1,4-ビス(3-メルカプトプロピオニルオキシ)ブタン、1,4-ビス(チオグリコロイルオキシ)ブタン、エチレングリコールビス(チオグリコレート)などが挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物に占める多官能チオール化合物の含有量は、アルカリ可溶性樹脂及びラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。含有量が0.01質量部以上であると、露光時の感度を向上できるとともに、低テーパーのパターン形状の硬化膜を得ることができる。加えて、現像時の残渣発生を抑制できる。一方、多官能チオール化合物の含有量は、15質量部以下が好ましく、13質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。含有量が15質量部以下であると、低テーパー形状のパターンを形成でき、現像後の残渣発生を抑制できるとともに、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
<増感剤>本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、増感剤を含有してもよい。増感剤とは、露光によるエネルギーを吸収し、内部転換及び項間交差によって励起三重項の電子を生じ、上述した光重合開始剤などへのエネルギー移動を介することが可能な化合物をいう。
増感剤を含有させることで、露光時の感度を向上させることができる。これは、光重合開始剤などが吸収を持たない、長波長の光を増感剤が吸収し、そのエネルギーを増感剤から光重合開始剤などへエネルギー移動をすることで、光反応効率を向上させることができるためであると推測される。
増感剤としては、チオキサントン系増感剤が好ましい。チオキサントン系増感剤としては、例えば、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、又は2,4-ジクロロチオキサントンが挙げられる。
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占める増感剤の含有量は、アルカリ可溶性樹脂及びラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。含有量が0.01質量部以上であると、露光時の感度を向上させることができる。一方、増感剤の含有量は、15質量部以下が好ましく、13質量部以下がより好ましい。含有量が15質量部以下であると、現像後の解像度を向上させることができるとともに、低テーパーのパターン形状の硬化膜を得ることができる。
<重合禁止剤>本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、重合禁止剤を含有することが好ましい。重合禁止剤とは、露光時に発生したラジカル、又は、露光時のラジカル重合により得られるポリマー鎖の、ポリマー生長末端のラジカルを捕捉し、安定ラジカルとして保持することで、ラジカル重合を停止することが可能な化合物をいう。
重合禁止剤を適量含有させることで、現像後の残渣発生を抑制し、現像後の解像度を向上させることができる。これは、露光時に発生した過剰量のラジカル、又は、高分子量のポリマー鎖の生長末端のラジカルを重合禁止剤が捕捉することで、過剰なラジカル重合の進行を抑制するためと推測される。
重合禁止剤としては、フェノール系重合禁止剤が好ましい。フェノール系重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシフェノール、1,4-ヒドロキノン、1,4-ベンゾキノン、2-t-ブチル-4-メトキシフェノール、3-t-ブチル-4-メトキシフェノール、4-t-ブチルカテコール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-t-ブチル-1,4-ヒドロキノン、若しくは2,5-ジ-t-アミル-1,4-ヒドロキノン、又は“IRGANOX”(登録商標) 245、同259、同565、同1010、同1035、同1076、同1098、同1135、同1330、同1425、同1520、同1726、若しくは同3114(以上、いずれもBASF社製)が挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物に占める重合禁止剤の含有量は、アルカリ可溶性樹脂及びラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、0.01質量部以上が好ましく、0.03質量部以上がより好ましい。含有量が0.01質量部以上であると、現像後の解像度及び硬化膜の耐熱性を向上させることができる。一方、重合禁止剤の含有量は、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。含有量が10質量部以下であると、露光時の感度を向上させることができる。
<シランカップリング剤>本発明の感光性樹脂組成物としては、さらに、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤とは、加水分解性のシリル基又はシラノール基を有する化合物をいう。シランカップリング剤を含有させることで、樹脂組成物の硬化膜と下地の基板界面における相互作用が増大し、下地の基板との密着性及び硬化膜の耐薬品性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、三官能オルガノシラン、四官能オルガノシラン、又はシリケート化合物が好ましい。
三官能オルガノシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1-ナフチルトリメトキシシラン、4-スチリルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]プロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(4-アミノフェニル)プロピルトリメトキシシラン、1-(3-トリメトキシシリルプロピル)尿素、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌル酸、又はN-t-ブチル-2-(3-トリメトキシシリルプロピル)コハク酸イミドが挙げられる。四官能オルガノシラン又はシリケート化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、若しくはテトラアセトキシシランなどの四官能オルガノシラン、又はメチルシリケート51(扶桑化学工業(株)製)、Mシリケート51、シリケート40、若しくはシリケート45(以上、いずれも多摩化学工業(株)製)、メチルシリケート51、メチルシリケート53A、エチルシリケート40、若しくはエチルシリケート48(以上、いずれもコルコート(株)製)などのシリケート化合物が挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物に占めるシランカップリング剤の含有量は、アルカリ可溶性樹脂及びラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。含有量が0.01質量部以上であると、下地の基板との密着性及び硬化膜の耐薬品性を向上させることができる。一方、シランカップリング剤の含有量は、15質量部以下が好ましく、13質量部以下がより好ましい。含有量が15質量部以下であると、現像後の解像度を向上させることができる。
<界面活性剤>本発明の感光性樹脂組成物としては、さらに、界面活性剤を含有しても構わない。界面活性剤とは、親水性の構造及び疎水性の構造を有する化合物をいう。界面活性剤を適量含有させることで、樹脂組成物の表面張力を任意に調整することができ、塗布時のレベリング性が向上し、塗膜の膜厚均一性を向上させることができる。界面活性剤としては、フッ素樹脂系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンエーテル系界面活性剤、又はアクリル樹脂系界面活性剤が好ましい。
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占める界面活性剤の含有比率は、ネガ型感光性樹脂組成物全体の、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましい。含有比率が0.001質量%以上であると、塗布時のレベリング性を向上させることができる。一方、界面活性剤の含有比率は、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。含有比率が1質量%以下であると、塗布時のレベリング性を向上させることができる。
<感光性樹脂組成物を製造する方法>
本発明の感光性樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、上記(A)成分~(D)成分、(F)成分、(I)成分の各成分、および必要によりその他の成分をガラス製のフラスコやステンレス製の容器などに入れて、メカニカルスターラーなどによって撹拌溶解させる方法、超音波で溶解させる方法、遊星式撹拌脱泡装置で撹拌溶解させる方法などが挙げられる。
得られた感光性樹脂組成物は、漏過フィルターを用いて漏過し、ゴミや粒子を除去することが好ましい。フィルター孔径は、0.5~0.02μm、例えば0.5μm、0.2μm、0.1μm、0.05μm、0.02μmなどがあるが、これらに限定されない。漏過フィルターの材質には、ポリプ口ピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン(NY)、ポリテトラフルオ口エチエレン(PTFE)などがあるが、ポリエチレンやナイロンが好ましい。感光性樹脂組成物中に無機粒子を含有する場合、これらの粒子径より大きな孔径の漏過フィルターを用いることが好ましい。
<硬化物及び硬化物を製造する方法>
本発明の硬化物は、本発明の感光性樹脂組成物を硬化してなる。感光性樹脂組成物を硬化させる方法として、例えば感光性樹脂組成物を加熱して硬化する方法や、活性化学線を照射する方法などが挙げられる。本発明の感光性樹脂組成物を硬化させることで、硬化物の耐熱性や耐薬品性を向上させることができる。
次に、本発明の硬化物を形成する方法について説明する。以下、代表例として、ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物を用いた硬化物の形成方法について記載する。
<塗膜を成膜する工程>
ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物を用いた、硬化物の製造方法は、(i)基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜を成膜する工程、を有する。ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物を成膜する方法としては、例えば、基板上に、上述した感光性樹脂組成物を塗布する方法、又は、基板上に、上述した感光性樹脂組成物をパターン状に塗布する方法が挙げられる。
基板としては、例えば、ガラス上に、電極又は配線として、インジウム、スズ、亜鉛、アルミニウム、及びガリウムから選ばれる一種類以上を有する酸化物、金属(モリブデン、銀、銅、アルミニウム、クロム、若しくはチタンなど)、又はCNT(Carbon Nano Tube)が形成された基板などが用いられる。インジウム、スズ、亜鉛、アルミニウム、及びガリウムから選ばれる一種類以上を有する酸化物としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)、酸化亜鉛(ZnO)などが挙げられる。
<基板上に、ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物を塗布する方法>
基板上に、ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、スリットコーティングなどが挙げられる。塗布膜厚は、塗布方法、感光性樹脂組成物の固形分濃度や粘度などによって異なるが、通常は塗布及びプリベーク後の膜厚が0.1~30μmになるように塗布する。
基板上に、ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物を塗布した後、プリベークして成膜することが好ましい。プリベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置、又はレーザーアニール装置などを使用することができる。プリベーク温度としては、50~150℃が好ましい。プリベーク時間としては、30秒~数時間が好ましい。80℃で2分間プリベークした後、120℃で2分間プリベークするなど、二段又はそれ以上の多段でプリベークしても構わない。
また、プリベークの前に真空チャンバーを用いた真空乾燥を行ってもよい。真空乾燥を行うことで、塗布膜厚の均一性を向上することができる。
<基板上に、ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物をパターン状に塗布する方法>
基板上に、ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物をパターン状に塗布する方法としては、例えば、凸版印刷、凹版印刷、孔版印刷、平版印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷、レーザー印刷などが挙げられる。塗布膜厚は、塗布方法、ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物の固形分濃度や粘度などによって異なるが、通常は塗布及びプリベーク後の膜厚が0.1~30μmになるように塗布する。
基板上に、ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物をパターン状に塗布した後、プリベークして成膜することが好ましい。プリベークは、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置、レーザーアニール装置などを使用することができる。プリベーク温度としては、50~150℃が好ましい。プリベーク時間としては、30秒~数時間が好ましい。80℃で2分間プリベークした後、120℃で2分間プリベークするなど、二段又はそれ以上の多段でプリベークしても構わない。また、プリベーク工程の前に上記の真空乾燥の工程を行ってもよい。
<基板上に成膜した塗膜をパターン加工する方法>
基板上に成膜した、ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物の塗膜をパターン加工する方法としては、例えば、フォトリソグラフィーにより直接パターン加工する方法、エッチングによりパターン加工する方法などが挙げられる。工程数の削減による生産性の向上及びプロセスタイム短縮の観点から、フォトリソグラフィーにより直接パターン加工する方法が好ましい。
<フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程>
ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物を用いた、硬化物の製造方法は、(ii)上述したネガ型感光性樹脂組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程、を有する。基板上に、ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物を塗布及びプリベークして成膜した後、ステッパー、ミラープロジェクションマスクアライナー(MPA)、パラレルライトマスクアライナー(PLA)などの露光機を用いて露光する。露光時に照射する活性化学線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線、KrF(波長248nm)レーザー、ArF(波長193nm)レーザーなどが挙げられる。水銀灯のj線(波長313nm)、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)、又はg線(波長436nm)を用いることが好ましい。また露光量は通常10~4,000mJ/cm2程度(i線照度計の値)である。必要に応じて所望のパターンを有するフォトマスクを介して露光することができる。
露光後、露光後ベークをしても構わない。露光後ベークを行うことによって、現像後の解像度向上又は現像条件の許容幅増大などの効果が期待できる。露光後ベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置、レーザーアニール装置などを使用することができる。露光後ベーク温度としては、50~180℃が好ましく、60~150℃がより好ましい。露光後ベーク時間は、10秒~1時間が好ましく、30秒~30分であることがより好ましい。
ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物を用いた、硬化物の製造方法は、フォトマスクとして、ハーフトーンフォトマスクを用いてもよい。ハーフトーンフォトマスクとは、透光部及び遮光部を含むパターンを有するフォトマスクであり、前記透光部と前記遮光部の間に、透過率が透光部の値より低く、かつ透過率が遮光部の値より高い、半透光部を有するフォトマスクをいう。ハーフトーンフォトマスクを用いて露光することで、現像後及び熱硬化後に段差形状を有するパターンを形成することが可能となる。なお、前記透光部を介して活性化学線を照射した硬化部は、厚膜部に相当し、前記半透光部を介して活性化学線を照射したハーフトーン露光部は、前記薄膜部に相当する。
ハーフトーンフォトマスクを介して活性化学線を照射して得られる、段差形状を有する硬化パターンにおいて、半透光部の透過率(%THT)%が、(%TFT)の30%である場合の薄膜部の膜厚を(THT30)μm、及び、半透光部の透過率(%THT)%が、(%TFT)の20%である場合の薄膜部の膜厚を(THT20)μmとした場合、(THT30)と(THT20)との膜厚差ΔT(THT30―THT20)μmは、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。膜厚差が上記範囲内であると、厚膜部と薄膜部の膜厚差、及び任意の段差の両側で隣接する薄膜部間の膜厚差を十分に大きくできることで、発光素子の劣化を抑制することができる。また、段差形状を有する硬化パターン一層で十分な膜厚差を有するため、プロセスタイム短縮が可能となる。一方、膜厚差ΔT(THT30―THT20)μmは、1.5μm以下が好ましく、1.3μm以下がより好ましい。膜厚差が上記範囲内であると、装置等に起因する僅かな露光量のぶれによる膜厚バラつきの発生を低減できることで、膜厚均一性及び有機ELディスプレイ製造における歩留まりを向上させることができる。
<アルカリ溶液を用いて現像し、パターンを形成する工程>
ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物を用いた、硬化物の製造方法は、(iii)アルカリ溶液を用いて現像し、上述したネガ型感光性樹脂組成物のパターンを形成する工程、を有する。露光後、自動現像装置などを用いて現像する。ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物は、ネガ型の感光性を有するため、現像後、未露光部が現像液で除去され、レリーフパターンを得ることができる。
現像液としては、アルカリ現像液が一般的に用いられる。アルカリ現像液としては、例えば、有機系のアルカリ溶液又はアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましく、環境面の観点から、アルカリ性を示す化合物の水溶液すなわちアルカリ水溶液がより好ましい。
有機系のアルカリ溶液又はアルカリ性を示す化合物としては、例えば、2-アミノエタノール、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、酢酸(2-ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸(2-ジメチルアミノ)エチル、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。硬化物の金属不純物低減及び表示装置の表示不良抑制の観点から、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウムが好ましい。現像液としては、有機溶媒を用いても構わない。現像液としては、有機溶媒と、ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物に対する貧溶媒の、両方を含有する混合溶液を用いても構わない。
現像方法としては、例えば、パドル現像、スプレー現像、ディップ現像などが挙げられる。パドル現像としては、例えば、露光後の膜に上述した現像液をそのまま塗布した後、任意の時間放置する方法、露光後の膜に上述した現像液を任意の時間の間、霧状に放射して塗布した後、任意の時間放置する方法などが挙げられる。スプレー現像としては、例えば、露光後の膜に上述した現像液を霧状に放射して、任意の時間当て続ける方法などが挙げられる。ディップ現像としては、例えば、露光後の膜を上述した現像液中に任意の時間浸漬する方法、露光後の膜を上述した現像液中に浸漬後、超音波を任意の時間照射し続ける方法などが挙げられる。現像時の装置汚染抑制及び現像液の使用量削減によるプロセスコスト削減の観点から、現像方法としては、パドル現像が好ましい。現像時の装置汚染を抑制することで、現像時の基板汚染を抑制することができ、表示装置の表示不良を抑制することができる。
一方、現像後の残渣発生の抑制の観点から、現像方法としては、スプレー現像が好ましい。また、現像液の再利用による現像液の使用量削減及びプロセスコスト削減の観点から、現像方法としては、ディップ現像が好ましい。
現像時間は、30秒以上が好ましい。現像時間が上述した範囲内であると、アルカリ現像時の残渣発生を抑制することができる。一方、タクトタイム短縮の観点から、現像時間は、5分以下が好ましい。
現像後、得られたレリーフパターンを、リンス液で洗浄することが好ましい。リンス液としては、現像液としてアルカリ水溶液を用いた場合、水が好ましい。リンス液としては、例えば、エタノール若しくはイソプロピルアルコールなどのアルコール類の水溶液、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類の水溶液、炭酸ガス、塩酸、酢酸などの酸性を示す化合物の水溶液などを用いても構わない。リンス液としては、有機溶媒を用いても構わない。
<パターンを光硬化させる工程>
ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物を用いた、硬化物の製造方法は、前記(iii)アルカリ溶液を用いて現像し、前記ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを形成する工程の後、さらに、前記ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを光硬化させる工程、を有してもよい。
パターンを光硬化させる工程により、パターンの架橋密度が向上し、脱ガス起因となる低分子成分が減量するため、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを備える発光素子の信頼性を向上させることができる。また、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンが段差形状を有するパターンの場合、パターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制でき、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。加えて、熱硬化時における膜表面のリフロー性を維持によって平坦性が向上し、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。さらに、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを備える有機ELディスプレイの製造において、有機EL層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。
パターンを光硬化させる工程としては、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンに活性化学線を照射することが好ましい。活性化学線を照射する方法としては、例えば、ステッパー、スキャナ、ミラープロジェクションマスクアライナー(MPA)、又はパラレルライトマスクアライナー(PLA)などの露光機を用いてブリーチング露光する方法が挙げられる。パターンを光硬化させる工程における、活性化学線の照射に用いられるランプとしては、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、Xeエキシマランプ、KrFエキシマランプ、又はArFエキシマランプなどが挙げられる。
パターンを光硬化させる工程における、活性化学線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線、XeF(波長351nm)レーザー、XeCl(波長308nm)レーザー、KrF(波長248nm)レーザー、又はArF(波長193nm)レーザーなどが挙げられる。パターンの熱硬化時におけるパターンリフロー抑制、段差膜厚向上、及び、パネルの歩留まり低下抑制の観点から、水銀灯のj線(波長313nm)、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)、若しくはg線(波長436nm)、又は、i線、h線及びg線の混合線が好ましい。
パターンを光硬化させる工程における、活性化学線の露光量は、i線照度値で、10mJ/cm以上が好ましい。一方、活性化学線の露光量は、i線照度値で、1,000mJ/cm)以下が好ましい。露光量が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。
ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物を用いた、硬化物の製造方法は、前記(iii)アルカリ溶液を用いて現像し、前記ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを形成する工程の後、さらに、前記ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを加熱する工程(以下、ミドルベークという)、を有してもよい。ミドルベークを行うことで、熱硬化後の解像度が向上するとともに、熱硬化後のパターン形状を任意に制御することができる。ミドルベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置、又はレーザーアニール装置などを使用することができる。ミドルベーク温度としては、70~200℃が好ましい。ミドルベーク時間としては、10秒~数時間が好ましい。100℃で5分間ミドルベークした後、150℃で5分間ミドルベークするなど、二段又はそれ以上の多段でミドルベークしても構わない。
<パターンを加熱して、硬化パターンを得る工程>
ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物を用いた、硬化物の製造方法は、(iv)上述したネガ型感光性樹脂組成物のパターンを加熱して、上述したネガ型感光性樹脂組成物の硬化パターンを得る工程、を有する。基板上に成膜した、ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物のパターンの加熱は、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置、又はレーザーアニール装置などを使用することができる。ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物のパターンを加熱して熱硬化させることで、硬化物の耐熱性を向上させることができるとともに、低テーパーのパターン形状を得ることができる。
熱硬化させる温度としては、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。熱硬化温度が150℃以上であると、硬化物の耐熱性を向上させることができるとともに、熱硬化後のパターン形状をより低テーパー化させることができる。一方、タクトタイム短縮の観点から、熱硬化させる温度は、500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下がさらに好ましい。
熱硬化させる時間としては、10分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。熱硬化時間が10分以上であると、熱硬化後のパターン形状をより低テーパー化させることができる。一方、タクトタイム短縮の観点から、熱硬化させる時間は、150分以下が好ましい。また150℃で30分間熱硬化させた後、250℃で30分間熱硬化させるなど、二段又はそれ以上の多段で熱硬化させても構わない。
また、ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物によれば、画素分割層、電極絶縁層、配線絶縁層、層間絶縁層、TFT平坦化層、電極平坦化層、配線平坦化層、TFT保護層、電極保護層、配線保護層、ゲート絶縁層、カラーフィルタ、ブラックマトリックス、又はブラックカラムスペーサーなどの用途に好適に用いられる硬化物を得ることが可能となる。また、それらの硬化物を備える素子及び表示装置を得ることが可能となる。
本発明の有機ELディスプレイは、本発明の硬化物を備える。好ましくは、本発明の有機ELディスプレイは、本発明の硬化物を画素分割層、電極絶縁層、配線絶縁層、層間絶縁層、TFT平坦化層、電極平坦化層、配線平坦化層、TFT保護層、電極保護層、配線保護層、ゲート絶縁層、カラーフィルタ、ブラックマトリックス、及びブラックカラムスペーサーからなる群より選ばれる一種類以上として備える。特に、ネガ型の本発明の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物(以下、ネガ型の本発明の硬化物という場合がある)は遮光性に優れるため、本発明の有機ELディスプレイは、ネガ型の本発明の硬化物を画素分割層、電極絶縁層、配線絶縁層、層間絶縁層、TFT平坦化層、電極平坦化層、配線平坦化層、TFT保護層、電極保護層、配線保護層及びゲート絶縁層からなる群より選ばれる一種類以上として備えることが好ましく、ネガ型の本発明の硬化物を画素分割層、層間絶縁層、TFT平坦化層及びTFT保護層からなる群より選ばれる一種類以上として備えることがより好ましい。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの範囲に限定されない。なお、用いた化合物のうち略語を使用しているものについて、名称を以下に示す。
(酸二無水物)
TDA-100:1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン
BSAA:2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
ODPA:3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物。
(ジアミン化合物)
HA:2,2-ビス[3-(3-アミノベンズアミド)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン
6FAP:2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン
APB-N:1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン
DAE:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
SiDA:1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(3-アミノプロピル)ジシロキサン。
(アミノ基を有する末端封止剤)
MAP:3-アミノフェノール。
(酸無水物構造を有する末端封止剤)
NA:5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物。
((B)感光剤)
OXL-21:式(20)で表される化合物(光ラジカル重合開始剤)。
Figure 2023134943000008
((C)シリカ粒子)
PGM-AC-2140Y:表面処理種がメタクリロイル基を有する、平均粒子径11nmのシリカゾル。シリカ含有量42重量%、溶剤PGME。日産化学(株)製。架橋性官能基の数:1.5/nm
PGM-AC-3140Y:表面処理種がメタクリロイル基を有する、平均粒子径21nmのシリカゾル。シリカ含有量41重量%、溶剤PGME。日産化学(株)製。架橋性官能基の数:1.8/nm
PMA-AC-2330Y:表面処理種がアクリロイル基を有する、平均粒子径12nmのシリカゾル。シリカ含有量30重量%、溶剤PGMEA。日産化学(株)製。架橋性官能基の数:1.7/nm
MEK-EC-2130Y:表面に非反応性の疎水性官能基を有する、平均粒子径12nmのシリカゾル。シリカ含有量30重量%、溶剤MEK。日産化学(株)製。架橋性官能基の数:0個/nm
MEK-EC-2430Z:表面処理種がエポキシシクロヘキシル基を有する、平均粒子径12nmのシリカゾル。シリカ含有量30重量%、溶剤MEK。日産化学(株)製。架橋性官能基の結合数:1.3/nm
PGM-AC-4130Y:表面処理種がメタクリロイル基を有する、平均粒子径43nmのシリカゾル。シリカ含有量30重量%、溶剤PGME。日産化学(株)製。架橋性官能基の結合数:2.0/nm
PMA-ST:架橋性官能基を有さない、平均粒子径12nmのシリカゾル。シリカ含有量30重量%、溶剤PGMEA。日産化学(株)製。
PGM-ST:架橋性官能基を有さない、平均粒子径12nmのシリカゾル。シリカ含有量30重量%、溶剤PGME。日産化学(株)製。
((D)黒色剤)
Bk-S0100CF:“IRGAPHOR”(登録商標) BLACK S0100CF(BASF社製;一次粒子径40~80nmのベンゾフラノン系黒色顔料)
ZrN-1:窒化ジルコニウム粒子(日清エンジニアリング(株)製;熱プラズマ法により製造、粉体状態での結晶子サイズが30nmの黒色無機顔料)。
((E)分散剤)
S-20000:“SOLSPERSE”(登録商標) 20000(Lubrizol社製;アミン価が32mgKOH/g(固形分濃度:100質量%)の三級アミノ基を有するポリオキシアルキレンエーテル系分散剤)。
((F)熱架橋剤)
HMOM-TPHAP:式(21)で表される化合物(本州化学工業(株)製、1,1,1-トリフェニルエタン骨格を含む。分子内に6つの熱架橋性官能基を有する。)
Figure 2023134943000009
MW-390:NIKALAC MW-390(商品名、(株)三和ケミカル製、トリアジン骨格を含む。分子内に6つの熱架橋性官能基を有する。)
MX-270:NIKALAC MX-270(商品名、(株)三和ケミカル製、ウレア骨格を含む。分子内に4つの熱架橋性官能基を有する。)
VG3101L:TECHMORE VG3101L(商品名、(株)プリンテック製、1,1,1-トリフェニルエタン骨格を含む。分子内に3つの熱架橋性官能基を有する。)
VL:TEPIC-VL(商品名、日産化学(株)製、イソシアヌレート骨格を含む。分子内に3つの熱架橋性官能基を有する。)
PAS-B22:TEPIC-PAS B22(商品名、日産化学(株)製、イソシアヌレート骨格を含む。1分子中に平均2.2個の熱架橋性官能基を有する。)
OXT-221:アロンアオキセタン OXT-221(商品名、東亞合成(株)製。分子内に2つの熱架橋性官能基を有する。)
((G)ラジカル重合性化合物)
DPHA:“KAYARAD”(登録商標) DPHA(日本化薬(株)製;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
A-BPEF:“NK ESTER”(登録商標) A-BPEF(新中村化学工業社製;9,9-ビス[4-(2-アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレン)MAA:メタクリル酸
STR:スチレン
TCDM:メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル;ジメチロール-トリシクロデカンジメタアクリレート
GMA:メタクリル酸グリシジル。
((H)溶解促進剤)
ビスフェノールAF:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(東京化成工業(株)製)
((I)溶剤)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
GBL:γ-ブチロラクトン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
MBA:3-メトキシ-n-ブチルアセテート
MEK:メチルエチルケトン
THF:テトラヒドロフラン。
(その他)
ITO:酸化インジウムスズ
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
DFA:N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール。
各実施例及び比較例における評価方法を以下に示す。
(1)ポリイミド樹脂およびポリベンゾオキサゾール樹脂の重量平均分子量
GPC分析装置を用い、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を測定して求めた。なお、ポリイミド樹脂およびポリベンゾオキサゾール樹脂の重量平均分子量は下記条件により測定した。
測定装置:Waters2695(Waters社製)
カラム温度:50℃
流速:0.4mL/min
検出器:2489 UV/Vis Detector(測定波長 260nm)
展開溶剤:NMP(塩化リチウム0.21重量%、リン酸0.48重量%含有)
ガードカラム:TOSOH TSK guard column(東ソー(株)製)
カラム:TOSOH TSK-GEL a-2500、
TOSOH TSK-GEL a-4000 直列(いずれも東ソー(株)製)
測定回数:2回(平均値を重量平均分子量とした)。
(2)アクリル樹脂およびカルド樹脂の重量平均分子量
展開溶剤をTHFに変更したこと以外は(1)と同様の方法にてアクリル樹脂およびカルド樹脂の重量平均分子量を求めた。
(3)イミド環閉環率(RIM(%))
合成例1~8で得られたポリイミド樹脂を濃度35質量%になるようにGBLに溶解した。この溶液を4インチのシリコンウエハ上にスピンナ(ミカサ(株)製1H-DX)を用いてスピンコート法で塗布し、次いで120℃のホットプレートで3分ベークし、厚さ4~5μmの樹脂膜を作製した。この樹脂膜付きウエハを2分割し、一方をクリーンオーブン(光洋サーモシステム(株)製CLH-21CD-S)を用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)において140℃で30分、次いでさらに昇温して320℃で1時間キュアして、イミド環を完全に閉環させた。赤外分光光度計((株)堀場製作所製FT-720)を用いてキュア前後の樹脂膜の透過赤外吸収スペクトルをそれぞれ測定し、ポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピーク(1,780cm-1付近、1,377cm-1付近)の存在を確認の上、1,377cm-1付近のピーク強度(キュア前:S、キュア後:T)を求めた。ピーク強度(S)をピーク強度(T)で割ったピーク強度比を算出し、熱処理前ポリマー中のイミド基の含量、すなわちイミド環閉環率を求めた(RIM=S/T×100(%))。
(4)オキサゾール環閉環率(ROX(%))
合成例9および10で得られたポリベンゾオキサゾール樹脂を濃度35質量%になるようにGBLに溶解した。この溶液を4インチのシリコンウエハ上にスピンナ(ミカサ(株)製1H-DX)を用いてスピンコート法で塗布し、次いで120℃のホットプレートで3分ベークし、厚さ4~5μmの樹脂膜を作製した。この樹脂膜付きウエハを2分割し、一方をクリーンオーブン(光洋サーモシステム(株)製CLH-21CD-S)を用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)において140℃で30分、次いでさらに昇温して370℃で1時間キュアして、オキサゾール環を完全に閉環させた。赤外分光光度計((株)堀場製作所製FT-720)を用いてキュア前後の樹脂膜の透過赤外吸収スペクトルをそれぞれ測定し、オキサゾールのC-O伸縮振動に起因する吸収ピーク(1,050cm-1付近)の強度(キュア前:U、キュア後:W)を求めた。ピーク強度(U)をピーク強度(W)で割ったピーク強度比を算出し、熱処理前ポリマー中のオキサゾール基の含量、すなわちオキサゾール環閉環率を求めた(ROX=U/W×100(%))。
(5)有機黒色顔料の粒子径の測定
ナノ粒子解析装置を用い、調整例1で得られた顔料分散液中の顔料の粒子径を測定した。なお、顔料の粒子径は下記条件により測定した。
測定装置:ナノ粒子解析装置 SZ-100((株)堀場製作所製)
レーザー波長:532nm
サンプル希釈溶剤:PGMEA
サンプル希釈倍率:250倍(重量比)
溶剤粘度:1.25
溶剤屈折率:1.40
測定温度:25℃
測定モード:散乱光
演算条件:多分散、ブロード
測定回数:2回(平均値を顔料の粒子径とした)。
(6)着色分散液中の窒化ジルコニウム粒子結晶子サイズの測定
調整例2、3で得られた顔料分散液を無アルカリガラス基板OA-10G(日本電気硝子(株)製)上に、スピンコーター(MS-A100、ミカサ(株)製)を用いてスピンコーティングにより塗布した後、ホットプレートを用いて100℃で120秒間プリベークし、膜厚3.0μmのプリベーク膜を作製した。
得られたプリベーク膜について、RU-200R((株)理学製)を用いて、X線源としてCuKα1線を用いて、広角X線回折法によりX線回折スペクトルを測定した。測定条件は、出力50kV/200mA、スリット系は1°-1°-0.15mm-0.45mm、測定ステップ(2θ)は0.02°、スキャン速度は0.4°/分とした。
回折角2θ=33.8°付近に観察されるZrN(111)面に由来するピークの回折角および半値幅を測定し、式(1)で表されるシェラーの式を用いて、粒子を構成する結晶子サイズを測定した。
Figure 2023134943000010
(7)基板の前処理
ガラス上に、ITOをスパッタにより100nm成膜したガラス基板(ジオマテック(株)製;以下、「ITO基板」)は、卓上型光表面処理装置(PL16-110;セン特殊光源社製)を用いて、100秒間UV-O洗浄処理をして使用した。Siウエハ(エレクトロニクス エンド マテリアルズ コーポレーション社製)は、ホットプレート(HP-1SA;アズワン(株)製)を用いて、130℃で2分間加熱して脱水ベーク処理をして使用した。
(8)膜厚測定
表面粗さ・輪郭形状測定機(SURFCOM1400D;(株)東京精密製)を用いて、測定倍率を10,000倍、測定長さを1.0mm、測定速度を0.30mm/sとして、膜厚を測定した。
(9)遮光性の評価
X-rite 361T(visual)densitometerを用いて、各実施例および比較例により得られた硬化物の入射光および透過光それぞれの強度を測定し、以下の式(2)より硬化物のOD値を算出した。
OD値=log10(I/I)・・・式(2)
:入射光強度
I:透過光強度
また、(8)膜厚測定の方法により硬化物の膜厚を測定し、OD値/膜厚を計算することにより、各硬化物の膜厚1μmあたりの遮光性を評価した。
(10)ネガ型感光性樹脂組成物の感度評価
下記、実施例1~24および比較例1~5に記載の方法で、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学(株)製)を用いて、感度測定用のグレースケールマスク(MDRM MODEL 4000-5-FS;Opto-Line International社製)を介して、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)でパターニング露光した後、フォトリソ用小型現像装置(AD-2000;滝沢産業(株)製)を用いて現像し、感光性樹脂組成物の現像後膜を作製した。
FPD/LSI検査顕微鏡(OPTIPHOT-300;(株)ニコン製)を用いて、作製した現像後膜の解像パターンを観察し、20μmのライン・アンド・スペースパターンを1対1の幅に形成する露光量(i線照度計の値)を感度とした。なお、i線の照度はUVD-365PD(ウシオ電機(株)製)を用いて測定した。下記のように判定し、感度が100mJ/cm未満となる、A、B及びCを合格とした。
A:感度が50mJ/cm未満
B:感度が50mJ/cm以上75mJ/cm未満
C:感度が75mJ/cm以上100mJ/cm未満
D:感度が100mJ/cm以上。
(11)ポジ型感光性樹脂組成物の感度評価
実施例51~55および比較例51~53により得られた硬化膜の開口部の残渣の有無を光学顕微鏡にて観察した。開口幅がマスク設計と同じ線幅(20μm)になる最低露光量(50μm)を感度とした。下記のように判定し、感度が100mJ/cm未満となる、A、B及びCを合格とした。
A:感度が50mJ/cm未満
B:感度が50mJ/cm以上75mJ/cm未満
C:感度が75mJ/cm以上100mJ/cm未満
D:感度が100mJ/cm以上。
(12)現像残渣
現像残渣の評価は、(10)および(11)で作製した現像後膜を用いて行った。
観察箇所は開口幅がマスク設計と同じ線幅(20μm)になる最低露光量で加工した際の20μmライン・アンド・スペースパターンとし、FPD/LSI検査顕微鏡(OPTIPHOT-300;(株)ニコン製)を用いて開口部における残渣の有無を観察した。
下記のように判定し、開口部における残渣の存在面積が10%未満となる、A、B、及びCを合格とした。
A:開口部における残渣無し(1%未満)
B:開口部における残渣の存在面積が1%以上5%未満
C:開口部における残渣の存在面積が5%以上10%未満
D:開口部における残渣の存在面積が10%以上。
(13)キュア後残渣
(12)の評価で使用したサンプルを高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム(株)製)を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)、250℃で60分間加熱して感光性樹脂組成物の硬化物を作製した。
FPD/LSI検査顕微鏡(OPTIPHOT-300;(株)ニコン製)を用いて、作製した硬化物の解像パターンを観察し、20μmのライン・アンド・スペースパターンの開口部における残渣の有無を観察した。下記のように判定し、開口部における残渣の存在面積が10%未満となる、A、B、及びCを合格とした。
A:開口部における残渣無し(1%未満)
B:開口部における残渣の存在面積が1%以上5%未満
C:開口部における残渣の存在面積が5%以上10%未満
D:開口部における残渣の存在面積が10%以上。
(14)硬化物の耐薬品性(膜厚減少量)
100mm□のITO基板上に、各実施例および比較例で調製した感光性樹脂組成物をプリベーク後の膜厚が5μmとなるようにスピンコーター(MS-A100;ミカサ(株)製)で塗布し、ついでブザーホットプレート(HPD-3000BZN;アズワン(株)製)を用いて、110℃で2分プリベークすることにより、膜厚約5.0μmのプリベーク膜を作製した。その後、実施例1~24および比較例1~5で作製したネガ型感光性樹脂組成物のプリベーク膜については露光量200mJ/cm(i線照度計の値)で露光し、次いで高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム(株)製)を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)、250℃で60分間加熱してネガ感光性樹脂組成物の硬化物を作製した。また、実施例51~55および比較例51~53で作製したポジ型感光性樹脂組成物のプリベーク膜に関しては、露光せず、高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム(株)製)を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)、250℃で60分間加熱してポジ感光性樹脂組成物の硬化物を作製した。上記手順にて得られた感光性樹脂組成物の硬化物を剥離液106(東京応化工業(株)製)を用いて40℃10分間の浸漬処理を行い、処理前後の膜厚を測定し、膜厚減少量を求めた。
下記のように結果を判定し、膜厚減少量が0.8μm未満である、A、B及びCを合格とした。
A:浸漬処理前後で膜厚減少が見られなかった。
B:浸漬処理で膜厚減少が見られたが、膜厚減少量が0.3μm未満
C:膜厚減少量が0.3μm以上0.8μm未満。
D:膜厚減少量が0.8μm以上。
(15)ハーフトーン加工特性
下記実施例に記載の方法で、ITO基板上に組成物のプリベーク膜を5μmの膜厚で成膜し、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学(株)製)を用いて、ハーフトーン特性評価用のハーフトーンフォトマスクを介して、透光部の露光量が、プリベーク後の膜厚が5μmの場合の感度の露光量となるように超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、及びg線(波長436nm)でパターニング露光し、フォトリソ用小型現像装置(AD-2000;滝沢産業(株)製)を用いて現像した。なお、現像時間は下記の通りとし、現像時間の異なるサンプルを計2枚作製した。
ネガ型感光性樹脂組成物(実施例1~24および比較例1~5):B.P.の1.4倍、B.P.の1.4倍+10秒
ポジ型感光性樹脂組成物(実施例51~55および比較例51~53):60秒、70秒
ハーフトーンフォトマスクとしては、次に記載のハーフトーンフォトマスクを用い、半透光部の透過率が30%の箇所を用いて評価を行った。
ハーフトーンフォトマスクとしては、透光部、遮光部、及び、前記透光部と前記遮光部の間に半透光部を有するフォトマスクを用いた。前記半透光部の透過率(%THT)%がそれぞれ、前記透光部の透過率(%TFT)の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%及び50%である箇所を有する。前記透光部と前記半透光部は隣接しており、前記半透光部と前記遮光部は隣接している。前記透光部、前記半透光部及び前記遮光部のパターン形状が、いずれもライン形状である箇所を有する。前記透光部及び前記遮光部が、いずれも四角形形状である箇所を有する。前記透光部のパターン寸法が、それぞれ、2μm、5μm、10μm、15μm、20μm、30μm、40μm、50μm又は100μmである箇所を有する。また、前記遮光部のパターン寸法は10μmである。一方、前記半透光部のパターン寸法は、それぞれ、2μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm及び100μmである箇所を有する。
FPD/LSI検査顕微鏡(OPTIPHOT-300;(株)ニコン製)を用いて、作製した現像後膜の半透光部の解像パターンを観察し、20μmのライン・アンド・スペースパターンの開口寸法幅を測長した。
ハーフトーン加工特性の指標として、開口寸法の変化幅を下記式により算出した。
開口寸法の変化幅=(現像時間が長い方のサンプルの開口寸法)-(現像時間が短い方のサンプルの開口寸法)。
下記のように判定し、開口寸法の変化幅が1.8μm未満となる、A、B及びCを合格とした。
A:開口寸法の変化幅が0.6μm未満
B:開口寸法の変化幅が0.6μm以上かつ1.2μm未満
C:開口寸法の変化幅が1.2μm以上かつ1.8μm未満
D:開口寸法の変化幅が1.8μm以上、または半透過部のパターンが形成されない。
(16)有機ELディスプレイの発光特性
(有機ELディスプレイの作製方法)
図1に、使用した基板の概略図を示す。まず、38mm×46mmの無アルカリガラス基板1に、スパッタ法により、ITO透明導電膜10nmを基板全面に形成し、第1電極2としてエッチングし、透明電極を形成した。また、第2電極6を取り出すため補助電極3も同時に形成した(図1(工程1))。得られた基板を“セミコクリーン”(登録商標)56(フルウチ化学(株)製)で10分間超音波洗浄し、超純水で洗浄した。次に、この基板上に、各実施例または比較例で得られた感光性樹脂組成物を、ネガ型感光性樹脂組成物に関しては実施例1に記載された方法で、ポジ型感光性樹脂組成物に関しては実施例51に記載された方法で塗布及びプリベークし、所定のパターンを有するフォトマスクを介してパターンニング露光、現像及びリンスした後、加熱し熱硬化させた。以上の方法で、幅70μm及び長さ260μmの開口部が、幅方向にピッチ155μm及び長さ方向にピッチ465μmで配置され、それぞれの開口部が第1電極2を露出せしめる形状の絶縁層4を、基板有効エリアに限定して形成した(図1(工程2))。なお、この開口部が、最終的に有機ELディスプレイの発光画素となる。また、基板有効エリアは、16mm四方であり、絶縁層4の厚さは、約1.0μmで形成した。
次に、第1電極2、補助電極3及び絶縁層4を形成した基板を用いて、有機ELディスプレイの作製を行った。前処理として、窒素プラズマ処理を行った後、真空蒸着法により、発光層を含む有機EL層5を形成した(図1(工程3))。なお、蒸着時の真空度は、1×10-3Pa以下であり、蒸着中は蒸着源に対して基板を回転させた。まず、正孔注入層として、化合物(HT-1)を10nm、正孔輸送層として、化合物(HT-2)を50nm蒸着した。次に、発光層に、ホスト材料として、化合物(GH-1)とドーパント材料として、化合物(GD-1)を、ドープ濃度が10%になるように40nmの厚さに蒸着した。その後、電子輸送材料として、化合物(ET-1)と化合物(LiQ)を、体積比1:1で40nmの厚さに積層した。有機EL層で用いた化合物の構造を以下に示す。
Figure 2023134943000011
次に、化合物(LiQ)を2nm蒸着した後、MgAg(マグネシウム/銀=10/1(体積比))を100nm蒸着して第2電極6とし、反射電極を形成した(図1(工程4))。その後、低湿窒素雰囲気下、エポキシ樹脂系接着剤を用いて、キャップ状ガラス板を接着することで封止をし、1枚の基板上に5mm四方のボトムエミッション型有機ELディスプレイを4つ作製した。なお、ここでいう膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。
(発光特性評価)
上述した方法で作製した有機ELディスプレイを、10mA/cmで直流駆動にて発光させ、発光画素を形成した面積を100%とした時の耐久試験前の発光領域面積を観察した。次いで、作製した有機ELディスプレイを、耐久性試験として、80℃で500時間保持した。耐久性試験後、有機ELディスプレイを、10mA/cmで直流駆動にて発光させ、発光画素を形成した面積を100%とした時の耐久試験後の発光領域面積を観察した。下記のように判定し、発光領域面積が85%以上となる、A,BおよびCを合格とした。
A:発光領域面積が95%以上
B:発光領域面積が90%以上95%未満
C:発光領域面積が85%以上90%未満
D:発光領域面積が85%未満。
合成例1 ポリイミド樹脂(PI-1)の合成
乾燥窒素気流下、三口フラスコにTDA-100を35.26g(117.44mmol)、NMPを200.00g秤量して溶解させた。ここにMAP 5.15g(47.21mmol)をNMP 50.00gとともに加え、40℃で1時間攪拌した。次いで、6FAP 34.58g(94.42mmol)をNMP 50.00gとともに加えて、40℃で1時間反応させ、次いで180℃で4時間攪拌した。撹拌終了後、溶液を純水2Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、純水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリイミド樹脂(PI-1)の粉末を得た。得られた樹脂のMwは14,000、イミド化率は100%であった。
合成例2 ポリイミド樹脂(PI-2)の合成
乾燥窒素気流下、三口フラスコにTDA-100を38.39g(127.85mmol)、NMPを200.00g秤量して溶解させた。ここにMAP 5.61g(51.40mmol)をNMP 50.00gとともに加え、40℃で1時間攪拌した。次いで、6FAP 4.71g(12.85mmol)、APB-N 26.29g(89.95mmol)をNMP 50.00gとともに加えて、40℃で1時間反応させ、次いで180℃で4時間攪拌した。撹拌終了後、溶液を純水2Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、純水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリイミド樹脂(PI-2)の粉末を得た。得られた樹脂のMwは14,500、イミド化率は100%であった。
合成例3 ポリイミド樹脂(PI-3)の合成
乾燥窒素気流下、三口フラスコにTDA-100を26.35g(87.75mmol)、BSAAを11.49g(22.08mmol)、NMPを200.00g秤量して溶解させた。ここにMAP 4.82g(44.15mmol)をNMP 50.00gとともに加え、40℃で1時間攪拌した。次いで、6FAP 32.34g(88.30mmol)をNMP 50.00gとともに加えて、40℃で1時間反応させ、次いで180℃で4時間攪拌した。撹拌終了後、溶液を純水2Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、純水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリイミド樹脂(PI-3)の粉末を得た。得られた樹脂のMwは14,800、イミド化率は100%であった。
合成例4 ポリイミド樹脂(PI-4)の合成
乾燥窒素気流下、三口フラスコに6FAPを39.66g(108.28mmol)、GBLを200.00g秤量して溶解させた。ここにNA 7.11g(43.31mmol)をGBL 50.00gとともに加え、40℃で1時間攪拌した。次いで、TDA-100 22.60g(75.25mmol)、BSAA 5.64g(10.83mmol)をGBL 50.00gとともに加えて、40℃で1時間反応させ、次いで160℃で4時間攪拌した。撹拌終了後、溶液を純水2Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、純水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリイミド樹脂(PI-4)の粉末を得た。得られた樹脂のMwは14,000、イミド化率は100%であった。
合成例5 ポリイミド樹脂(PI-5)の合成
乾燥窒素気流下、三口フラスコにTDA-100を11.75g(39.14mmol)、BSAAを30.30g(58.22mmol)、NMPを200.00g秤量して溶解させた。ここにMAP 4.27g(39.14mmol)をNMP 50.00gとともに加え、40℃で1時間攪拌した。次いで、6FAP 28.67g(78.28mmol)をNMP 50.00gとともに加えて、40℃で1時間反応させ、次いで180℃で4時間攪拌した。撹拌終了後、溶液を純水2Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、純水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリイミド樹脂(PI-5)の粉末を得た。得られた樹脂のMwは15,000、イミド化率は100%であった。
合成例6 ポリイミド樹脂(PI-6)の合成
乾燥窒素気流下、三口フラスコにBPDAを17.27g(58.70mmol)、ODPAを18.21g(58.70mmol)、NMPを200.00g秤量して溶解させた。ここにMAP 5.12g(46.96mmol)をNMP 50.00gとともに加え、60℃で1時間攪拌した。次いで、6FAP 34.40g(93.91mmol)をNMP 50.00gとともに加えて、60℃で1時間反応させ、次いで180℃で4時間攪拌した。撹拌終了後、溶液を純水2Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、純水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリイミド樹脂(PI-6)の粉末を得た。得られた樹脂のMwは16,000、イミド化率は100%であった。
合成例7 ポリイミド樹脂(PI-7)の合成
乾燥窒素気流下、三口フラスコにHAを21.2g(35.1mmol)、DAEを7.03g(35.1mmol)、SiDAを1.25g(5.01mmol)、NMPを400.0g秤量して溶解させた。ここにODPA 31.0g(99.9mmol)をNMP 25.0gとともに加え、40℃で1時間反応させた。次いで、MAP 5.47g(50.1mmol)をNMP 25.0gとともに加えて、40℃で1時間反応させた。さらに、NMP10gにDFA 16.70g(140.1mmol)を溶かした溶液を10分間かけて滴下した。滴下終了後、40℃で3時間攪拌した。攪拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を純水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、純水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリイミド樹脂(PI-7)の粉末を得た。得られた樹脂のMwは23,000、イミド化率は10%であった。
合成例8 ポリイミド樹脂(PI-8)の合成
乾燥窒素気流下、三口フラスコにHAを21.2g(35.1mmol)、DAEを7.03g(35.1mmol)、SiDAを1.25g(5.01mmol)、NMPを400.0g秤量して溶解させた。ここにODPA 15.5g(50.0mmol)、TDA-100 15.0g(50.0mmol)をNMP 25.0gとともに加え、40℃で1時間反応させた。次いで、MAP 5.47g(50.1mmol)をNMP 25.0gとともに加えて、40℃で1時間反応させた。さらに、NMP10gにDFA 16.70g(140.1mmol)を溶かした溶液を10分間かけて滴下した。滴下終了後、40℃で3時間攪拌した。攪拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を純水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、純水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリイミド樹脂(PI-8)の粉末を得た。得られた樹脂のMwは22,000、イミド化率は10%であった。
合成例9 ポリベンゾオキサゾール(PBO-1)の合成
乾燥窒素気流下、6FAP 19.3g(52.6mmol)とNA 3.45g(21.0mmol)をNMP75gに溶解させ、80℃で2時間攪拌した。その後、溶液の温度を-15℃まで冷却し、溶液の温度が-15℃になったことを確認した後にグリシジルエチルエーテル(東京化成工業(株)製)29.2g(28.6mmol)とNMP15.2gの混合液を添加し、15分間攪拌した。ここにジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド(イハラニッケイ化学工業(株)製)12.4g(42.1mmol)をNMP30gに溶解させた溶液を、反応系内の温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、6時間、20℃で撹拌を続けた。反応終了後、メタノールを10重量%含んだ純水3Lに上記溶液を投入して白色の沈殿を析出させた。この沈殿をろ過で集めて、純水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリベンゾオキサゾール樹脂(PBO-1)を得た。得られた樹脂のMwは23,000、オキサゾール化率は10%であった。
合成例10 ポリベンゾオキサゾール(PBO-2)の合成
合成例9で得られたポリベンゾオキサゾール樹脂(PBO-1)20gを50gのNMPに溶解し、乾燥窒素気流下190℃で1時間加熱撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を純水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、純水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、ポリベンゾオキサゾール樹脂(PBO-2)の粉末を得た。PBO-2のオキサゾール化率は60%であった。
合成例11 アクリル樹脂溶液(AC-1)の合成
三口フラスコに、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を0.821g(1mol%)、PGMEAを29.29g仕込んだ。次に、MAAを21.52g(50mol%)、TCDMを22.03g(20mol%)、STRを15.62g(30mol%)仕込み、室温でしばらく攪拌して、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間攪拌した。次に、得られた溶液に、PGMEAを59.47gにGMAを14.22g(20mol%)、ジベンジルアミンを0.676g(1mol%)、4-メトキシフェノールを0.186g(0.3mol%)溶かした溶液を添加し、90℃で4時間攪拌して、アクリル樹脂溶液(AC-1)を得た。得られた樹脂のMwは15,000であった。
合成例12 キノンジアジド化合物(D-1)の合成
乾燥窒素気流下、Tris-P-PA(商品名、本州化学工業(株)製)21.22g(0.05mol)と5-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド36.27g(0.135mol)を1,4-ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4-ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン15.18gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩をろ過し、ろ液を純水に投入した。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記式で表されるキノンジアジド化合物(D-1)を得た。
Figure 2023134943000012
合成例13 カルド樹脂(CD-1)の合成
乾燥窒素気流下、冷却水源に接続された蒸留管を備えた三口フラスコに9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン(東京化成工業(株)製)を25g(45mmol)、アクリル酸(三菱ケミカル(株)製)を8.0g(111mmol)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(東京化成工業(株)製)を0.2g(0.88mmol)、ヒドロキノン(東京化成工業(株)製)を0.2g(1.8mmol)投入し、52gのPGMEAに溶解させた。その後、攪拌しながら110℃で6時間反応させた。次いで、BPDA(三菱ケミカル社製)8.0g(27.2mmol)およびcis-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物(東京化成工業(株)製)1.8g(11.8mmol)を投入し、更に110℃で6時間攪拌して反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、回収することでカルド樹脂(CD-1)の溶液を得た。得られた樹脂の分子量は4500であった。
合成例14 チオール化合物(T-1)の合成
乾燥窒素気流下、冷却水源に接続された蒸留管を備えた三口フラスコにトリクロロシラン(信越化学工業(株)製)を20g(148mmol)、6-クロロー1-ヘキセン(富士フイルム和光純薬(株)製)を17.51g(148mmol)投入し、攪拌して均一な溶液とした。次いで、白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3,-テトラメチルジシロキサン錯体溶液(2重量%のキシレン溶液、シグマアルドリッチ社製)を0.02gを投入し、75℃で5時間攪拌して反応させた。反応後、反応溶液を室温まで冷却したのち、孔径が0.1μmφのテフロン製フィルターを用いてろ過をし、触媒を濾別した。その後、25℃で攪拌しながら反応溶液にメタノール(東京化成工業(株)製)15.6g(487mmol)を滴下漏斗を用いて30分間かけて滴下して投入した。次いで、50℃まで昇温した後、2時間攪拌して反応させた。その後、反応溶液中の溶剤を減圧留去にて除くことで、6-クロロヘキシルトリメトキシシランを得た。このようにして得られた6-クロロヘキシルトリメトキシシラン24g(99.7mmol)と、ナトリウムメトキシド(東京化成工業(株)製)8g(148mmol)と、0.8mol/Lの硫化水素のTHF溶液を187mL(150mmolの硫化水素を含む)と、100mLのメタノールをオートクレーブに投入し、100℃で2時間反応させた。次いで25℃まで冷却した後、100mLの1.25mol/Lの塩酸メタノール溶液を30分かけて、滴下漏斗を用いて滴下した。その後、生成した塩を濾紙を用いて濾別した後、溶剤を減圧留去することで下記式で表されるチオール化合物(T-1)を23g得た。
Figure 2023134943000013
合成例15 カルド樹脂(CD-2)溶液の合成
乾燥窒素気流下、三口フラスコに合成例13で得たカルド樹脂溶液(CD-1)80gと合成例14で得たチオール化合物(T-1)6.8g(28.6mmol)を投入し、攪拌して均一な溶液とした。次いで、60℃に昇温して4時間攪拌することでチオール化合物(T-1)をカルド樹脂(CD-1)に付加させ、シラン構造を有するカルド樹脂(CD-2)を得た。
合成例1~11、13、15で得た各樹脂の組成を表1-1、表1-2に示す。
調製例1 顔料分散液(Bk-1)の調製
分散剤として、S-20000を34.5g、溶剤として、MBAを782.0g秤量して混合し、10分間攪拌して拡散した後、着色剤として、Bk-S0100CFを103.5g 秤量して混合して30分間攪拌し、0.40mmφのジルコニアビーズが充填された横型ビーズミルを用いて、数平均粒子径が100nmとなるように湿式メディア分散処理を行い、固形分濃度15質量%、着色剤/分散剤=75/25(質量比)の顔料分散液(Bk-1)を得た。得られた顔料分散液中の顔料の粒子径(D50)は100nmであった。
調製例2 顔料分散液(Bk-2)の調製
熱プラズマ法により製造した、粉体状態での結晶子サイズが30nmの窒化ジルコニウム粒子(ZrN-1)(日清エンジニアリング(株)製)200g、ポリイミド樹脂(PI-7)50g、およびGBL 1,000gをタンクに仕込み、ホモミキサーで20分攪拌し、予備分散液を得た。0.05mmφジルコニアビーズを75体積%充填した遠心分離セパレーターを具備したウルトラアペックスミル((株)広島メタル&マシナリー製)に得られた予備分散液を供給し、回転速度10m/sで3時間分散を行い、固形分濃度20質量%、着色剤/樹脂=80/20(質量比)、窒化ジルコニウム粒子の結晶子サイズが15nmの顔料分散液(Bk-2)を得た。
調製例3 顔料分散液(Bk-3)の調製
使用する樹脂をポリイミド樹脂(PI-8)に変更したこと以外が調整例2と同様にして、固形分濃度20質量%、着色剤/樹脂=80/20(質量比)、窒化ジルコニウム粒子の結晶子サイズが15nmの顔料分散液(Bk-3)を得た。
調製例1~3の組成を、表2に示す。
[実施例1]
黄色灯下、OXL-21を0.190g、MW-390を0.024g秤量し、MBAを2.720g、PGMEAを8.320g、PGMEを1.731g添加し、攪拌して溶解させた。次に、合成例1で得られたポリイミド樹脂(PI-1)の30質量%のPGMEA溶液を5.142g、DPHAの50質量%のPGMEA溶液を1.187g、A-BPEFの50質量%のPGMEA溶液を0.475g、PGM-AC-2140Yを1.413g添加して攪拌し、均一溶液として調合液を得た。次に、調製例1で得られた顔料分散液(Bk-1)を7.333g秤量し、ここに、上述した方法によって得られた調合液を17.667g添加して攪拌し、均一溶液とした。その後、得られた溶液を0.45μmφのフィルターでろ過し、ネガ型感光性樹脂組成物である、組成物1を調製した。
調製した組成物1を、100mm□のITO基板上にスピンコーター(MS-A100;ミカサ(株)製)を用いて任意の回転数でスピンコーティングにより塗布した後、ブザーホットプレート(HPD-3000BZN;アズワン(株)製)を用いて110℃で120秒間プリベークし、膜厚約1.8μmのプリベーク膜を作製した。
作製したプリベーク膜を、フォトリソ用小型現像装置(AD-2000;滝沢産業(株)製)を用いて、2.38質量%TMAH水溶液でスプレー現像し、プリベーク膜(未露光部)が完全に溶解する時間(Breaking Point; 以下、「B.P.」)を測定した。
上述と同様にプリベーク膜を作製し、作製したプリベーク膜を、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学(株)製)を用いて、感度測定用のグレースケールマスク(MDRM MODEL 4000-5-FS;Opto-Line International社製)を介して、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、及びg線(波長436nm)でパターニング露光した。
露光後、フォトリソ用小型現像装置(AD-2000;滝沢産業(株)製)を用いて、2.38質量% TMAH水溶液で現像し、水で30秒間リンスした。現像時間は、B.P.の1.4倍とした。
現像後、高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム(株)製)を用いて、250℃で熱硬化させ、膜厚約1.2μmの硬化物を作製した。熱硬化条件は、窒素雰囲気下(酸素濃度が100ppm以下)、250℃で60分間熱硬化させた。
[実施例2~24及び比較例1~5]
実施例1と同様に、組成物2~28を表3-1、表3-2、表3-3に記載の組成にて調製した。得られた各組成物を用いて、実施例1と同様に、ITO基板上に組成物を成膜し、感光特性及び硬化物の特性の評価を行った。これらの評価結果をまとめて、表4-1、表4-2に示す。比較例1および4においては、シリカ粒子の表面に架橋性基を有さないため、プリベーク時や露光時に架橋反応が十分に進行せず、HT加工時の開口寸法バラつきが大きい結果となった。また、キュア時に架橋反応が十分に進行せず、得られる硬化物の耐薬品性が劣る結果となった。比較例2は熱架橋剤を含まないため、キュア時に塗布膜から昇華物が発生し、開口部に付着してキュア後残渣が多く発生したと考えられる。また、熱架橋剤を含まないことでキュア時に架橋反応が進行せず、硬化物の耐薬品性が劣る結果となった。比較例3はシリカ粒子を含まないため、比較例1で見られた耐薬品性の悪化、HT加工時のバラつきに加えて、硬化物のテーパー角の悪化も確認された。比較例5は架橋剤が分子内に有する架橋性官能基の数が少ないため、キュア時に架橋反応が十分に進行せず、耐薬品性が劣る結果になったと考えられる。
[実施例51]
黄色灯下、D-1を0.421g、HMOM-TPHAPを0.048g、ビスフェノールAFを0.337g、PI-8を1.251g秤量し、PGMEを21.07g、GBLを3.150g添加し、攪拌して溶解させた。次に、PGM-AC-2140Yを0.907g添加して攪拌し、均一溶液として調合液を得た。次に、調製例3で得られた顔料分散液(Bk-3)を2.344g秤量し、ここに、上述した方法によって得られた調合液を22.656g添加して攪拌し、均一溶液とした。その後、得られた溶液を0.45μmφのフィルターでろ過し、ポジ型感光性樹脂組成物である組成物51を調製した。
調製した組成物51を、100mm□のITO基板上にスピンコーター(MS-A100;ミカサ(株)製)を用いて任意の回転数でスピンコーティングにより塗布した後、ブザーホットプレート(HPD-3000BZN;アズワン(株)製)を用いて100℃で120秒間プリベークし、膜厚約1.8μmのプリベーク膜を作製した。得られたプリベーク膜に対して、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学(株)製)を用いて、ポジマスク(HOYA(株)製、ストライプ設計線幅20μm)を介して、紫外線を300mJ/cm(i線照度計の値)を最大露光量とし、10mJ/cmごとに露光量を下げて露光し、2.38%TMAH水溶液のアルカリ現像液で60秒間現像することで、感光性樹脂膜が所定のパターンに形成されたパターニング基板を得た。それぞれの露光量のパターニング基板を用いて[感度]の評価を行った。
次に、得られたパターニング基板を高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム(株)製)を用いて、250℃で熱硬化させ、膜厚約1.2μmの硬化物を作製した。熱硬化条件は、窒素雰囲気下(酸素濃度が100ppm以下)、250℃で60分間熱硬化させた。
[実施例52~55及び比較例51~53]
実施例51と同様に、組成物52~58を表5に記載の組成にて調製した。得られた各組成物を用いて、実施例51と同様に、ITO基板上に組成物を成膜し、感光特性及び硬化物の特性の評価を行った。これらの評価結果をまとめて、表6に示す。比較例51は熱架橋剤を含まないため、キュア時に硬化膜から昇華物が発生し、開口部を汚染して残渣が増加したものと考えられる。また、架橋剤を含まないことにより、硬化物の架橋性が不足し、耐薬品性に劣る結果になったと推測される。比較例52はシリカ粒子は含むものの、シリカ粒子の表面に架橋性基を有さないため、硬化物の架橋性が不十分となり、耐薬品性に劣る結果となったと推測される。比較例53はシリカ粒子を含まないため、耐薬品性に加えてキュア後のパターン断面形状が劣る結果となったと推測される。
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Figure 2023134943000022
Figure 2023134943000023
1 無アルカリガラス基板
2 第1電極
3 補助電極
4 絶縁層
5 有機EL層
6 第2電極

Claims (12)

  1. (A)アルカリ可溶性樹脂、(B)感光剤、(C)シリカ粒子、(D)黒色剤、(F)熱架橋剤および(I)溶剤を含む感光性樹脂組成物であって、
    該(C)シリカ粒子が、(C-1)表面の少なくとも一部に架橋性官能基を有するシリカ粒子を含み、
    該(F)熱架橋剤が、ウレア骨格、トリアジン骨格、イソシアヌレート骨格および1,1,1-トリフェニルエタン骨格からなる群より選ばれる一種類以上の骨格を含む感光性樹脂組成物。
  2. 前記(C)シリカ粒子が、(C-1)表面の少なくとも一部に架橋性官能基を有するシリカ粒子を含み、該架橋性官能基の数が該(C-1)成分中、0.5~2.5/nmである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
  3. 前記架橋性官能基がアクリロイル基またはメタクリロイル基を含み、かつ、(C-1)表面の少なくとも一部に架橋性官能基を有するシリカ粒子の平均一次粒子径が5~30nmである請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
  4. 前記感光性樹脂組成物に含まれる固形分の総量を100質量%とした場合に、(C)シリカ粒子の含有量が、5~20質量%である請求項1~3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
  5. 前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、(A-1)ポリイミド樹脂、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂からなる群より選択される一種類以上の樹脂を含む請求項1~4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
  6. (A-1)ポリイミド樹脂、(A-2)ポリベンゾオキサゾール樹脂、および、ポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との共重合体樹脂からなる群より選択される一種類以上の前記樹脂中のジアミン残基の総量を100mol%とした場合、フェノール性水酸基を有するジアミン残基の含有量が10~100mol%である請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
  7. 前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、前記(A-1)ポリイミド樹脂および/またはポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との前記共重合体樹脂を含み、
    前記(A-1)ポリイミドおよび/またはポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との前記共重合体樹脂が、脂環構造と芳香族環を共に含む炭素数8~40の酸二無水物残基を含み、
    前記(A-1)ポリイミド樹脂および/またはポリイミドの繰り返し単位とポリベンゾオキサゾールの繰り返し単位との前記共重合体樹脂中の酸二無水物残基の総量を100mol%とした場合、脂環構造と芳香族環を共に含む炭素数8~40の前記酸二無水物残基の含有量が40~100mol%である請求項5または6に記載の感光性樹脂組成物。
  8. 前記(F)熱架橋剤が、分子内に3つ以上の熱架橋性官能基を有する化合物を含む請求項1~7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
  9. 前記(C)シリカ粒子の重量含有量をX、前記(F)熱架橋剤の重量含有量をYとしたときに、X/Yが2~50である請求項1~8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
  10. 前記(B)感光剤が、(B-2)光ラジカル重合開始剤を含み、さらに、(G)ラジカル重合性化合物を含む請求項1~9のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
  11. 請求項1~10のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
  12. 請求項11に記載の硬化物を備える有機ELディスプレイ。
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